12
黒き庭園の女王

#ダークセイヴァー #地底都市 #第五の貴族

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#地底都市
🔒
#第五の貴族


0




「新たな『第五の貴族』の所在を発見しました。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「『第五の貴族』とはダークセイヴァーの地下深くに住まう、この世界の黒幕と呼ぶべき存在です。『紋章』と呼ばれる寄生虫型オブリビオンを配下に与えることで、地上世界の吸血鬼達を影から支配してきました」
 『紋章』に寄生された者は、通常のオブリビオンを遥かに超える力を得る。その創造主である彼らを倒さなければ、ダークセイヴァー世界に夜明けは訪れないだろう。1人ずつでも『第五の貴族』を討ち、ヴァンパイアの支配体制に楔を打ち込むのだ。

「今回リムが発見した第五の貴族は、『黒咲姫』ブラック・ブロッサムと名乗る女吸血鬼です。生物の生命力を奪う黒い花を操り、その性格は傲慢にして邪悪。地底深くに築いた自らの邸宅に、女王のごとく君臨しています」
 地上のヴァンパイアの暮らしぶりをより豪奢に、かつ悪趣味で頽廃的にしたような生活を送る彼女は、この世界を自らの黒い花で覆い尽くすという目的のために『紋章』を撒いてきた。その企てを放置すれば、いずれ全ての人々は花に生命を食い尽くされるだろう。

「予知によれば邸宅に住んでいるのは彼女だけのようですが、周辺の庭には『黒鈴蘭』という植物の魔物が植えられています。これが実質的に邸宅の警備と言っていいでしょう」
 黒いスズランのような見た目をしたこの植物は、周囲に張り巡らせた根や花から分泌する毒で幻覚を見せ、人々を誘き寄せる傀儡としたり、根を直接侵食させて栄養分とする。
 明確な知性がある魔物ではないが、近づく者がいれば養分にしようと無差別に襲い掛かる。そんな危険な花がブラック・ブロッサムの庭には何百・何千と植えられているのだ。
「しかも、ここにある黒鈴蘭は全てブラック・ブロッサムに『番犬の紋章』を与えられているので、自生しているものとは毒性も危険性も比較にならないほど強化されています」
 これと同じ紋章を持つ地底都市の『門番』1人にも、猟兵達は少なからぬ苦戦を強いられた。今回はその『門番』と同格かやや劣る程度のオブリビオンが無数に生えているのだ。とてもではないが、まともに相手をしていられる戦力差ではない。

「全ての黒鈴蘭を駆除するのは現実的に不可能です。幻惑毒や根による捕食を避けつつ、急いで庭を突破してください」
 幸いにして相手は植物。建物の中に入ってしまえば、追ってこられるような足はない。
 庭の中は黒鈴蘭が発する幻惑毒が充満し、地面のどこから根が襲ってくるかも分からない危険地帯だ。まともに戦い続ける事はできない以上、邪魔になる最小限の個体を倒し、邸宅まで駆け抜けるのが得策だろう。
「今回の目的はブラック・ブロッサムの討伐です。それまで体力の消耗はなるべく避けたほうが良いでしょう」
 そう、危険な庭を抜けて敵の邸宅に辿り着いたとしても、そこはまだゴールではない。
 邸宅内にいる敵は1人だけとはいえ――その1人が、黒鈴蘭の群れに『紋章』を与えた彼女が、配下よりも弱いはずがないだろう。

「紋章の創造主であるブラック・ブロッサムは、『黒花の紋章』という独自の紋章を持っています。これは周囲にある"黒い花"の数に応じて宿主を強化する特性があるようです」
 『黒咲姫』の異名通り、ブラック・ブロッサムは"黒い花"を咲かせ、操る能力を持つ。自らの能力で咲かせた花が増えれば増えるほど、彼女は際限なく強くなるということだ。
「この特性を活用するために、彼女の邸内には至る所に"黒い花"やその種子が隠されているはずです。逆に言うと"黒い花"がなければ『黒花の紋章』は充分な力を発揮しません」
 強大な『第五の貴族』を相手取るうえで、唯一の勝機となるのがそれだ。とにかく目についた"黒い花"を刈り、『黒花の紋章』の力の供給源を絶つ――そうすれば、ブラック・ブロッサムは本来の実力を発揮できなくなる。
「戦闘中の『黒咲姫』の目前でこれを行うのは容易ではないでしょうが、不可能でも無いはずです。諦めさえしなければ勝算はあります」
 これまでも多くの強敵に勝利してきた猟兵達を信頼するからこそ、リミティアは言う。
 だが、この世界を支配する『第五の貴族』の恐るべき力は、これだけには留まらない。

「首尾よくブラック・ブロッサムを倒せたとしても油断はしないでください。リムの予知では詳細を掴むことはできませんでしたが……過去の記録では、倒したはずの『第五の貴族』が新たな紋章と共に、まったく別の姿で蘇るというケースが報告されています」
 ブラック・ブロッサムが倒された後どんな姿で蘇るのか、新しい『紋章』はどのような特性を持つのかについては、現時点では一切情報がない。現地で実際に対峙して得た情報から、弱点を推測するしかない。
「どんな姿になるとしても、弱点が"無い"ということはないはずです。どれほど強大な力を持っていたとしても、彼女らは決して無敵ではありません」
 2つ目の紋章まで破壊された『第五の貴族』がまた蘇ったという報告は、現在まで確認されていない。強敵相手の二連戦――庭の黒鈴蘭を含めれば三連戦は苦しい戦いになるだろうが、これを乗り越えさえすれば猟兵達の勝利は確定する。

「この世界から絶望の闇を晴らすために、どうか皆様の力をお貸しください」
 リミティアは信頼の眼差しで猟兵達を見つめながら、手のひらにグリモアを浮かべる。
 開かれた道の先は黒い花の咲き乱れる地の底の庭園。生者が立ち入ることを許さない、この美しき地獄を超えた先に『黒咲姫』ブラック・ブロッサムの邸宅がある。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて、夜闇の世界を支配する強大な『第五の貴族』の一人を討伐するのが目的となります。

 一章はボスの邸宅の庭に植えられた『黒鈴蘭』との集団戦です。
 花の養分にされないよう、妨害を抜けて邸宅に突入するパートとなります。黒鈴蘭は全て『番犬の紋章』で強化(紋章は花にくっついています)されているので、全て刈り尽くして突破する方法はあまりお勧めできません。
 あくまで知性のない植物なので、その隙をうまく突けば難易度は下がるでしょう。

 二章は邸宅内で『黒咲姫』ブラック・ブロッサムとのボス戦です。
 荘厳なゴシック調に設えられた彼女の屋敷には、『黒花の紋章』の力を発揮するための種子が幾つも隠されています。戦場としての広さは充分です。
 紋章の効果と弱点についてはオープニングに記載された通りですので、いかにして弱点を突いて紋章の力を無効化するかが勝利の鍵となります。

 三章は復活した『第五の貴族』との連戦ですが、詳細は現時点では不明です。
 実際にこの章まで到達してから、断章にて状況説明と攻略の鍵をお伝えします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
282




第1章 集団戦 『黒鈴蘭』

POW   :    黒鈴蘭の嵐
自身の装備武器を無数の【幻覚をもたらす催眠毒を放つ鈴蘭】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    大地の福音
【侵食した大地】から【侵食、吸収能力に長けた根】を放ち、【毒性】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    享楽の傀儡
対象の【身体】に【幻惑毒を分泌する根】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[身体]を自在に操作できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カタリナ・エスペランサ
ようやく尻尾を掴めた訳だ
逃がしはしない。確実に仕留めてこの世界をオブリビオンの支配から解放する一手としよう

《第六感+野生の勘》による《情報収集》で敵方の動きを直感的に《見切り》、《空中戦》の高速機動で地上から距離を取って空中を進む
【架空神権】で事象の《ハッキング》に特化した黒風を展開、《属性攻撃+オーラ防御》の要領で纏い物理法則を改竄して更に加速。
黒雷を纏わせたダガーの《属性攻撃+貫通攻撃+スナイパー+投擲+部位破壊》も織り交ぜ、花の紋章も適宜撃ち抜くよ
怯むのでも狂暴化するのでも付け入る隙が増える事に変わりはないさ

敢えてこう言おうか――紋章の強化程度で、雑兵如きが。この私を阻めると思わない事ね



「ようやく尻尾を掴めた訳だ」
 ダークセイヴァー世界の地下深くに築かれた秘密の庭園。第五の貴族が一人、"黒咲姫"ブラック・ブロッサムの館を目前にして、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は静かに笑う。
「逃がしはしない。確実に仕留めてこの世界をオブリビオンの支配から解放する一手としよう」
 先ずはこの庭を突破して敵の拠点に辿り着く。園内に植えられた植物魔物を警戒して、彼女は美しく煌めく背中の双翼を羽ばたかせ、地上から充分に距離を取って空中を進む。

「ひどい匂いだ。あまり長居するのは良くなさそうだね」
 高度を上げていても下から漂ってくる、冒涜的なまでに甘い蜜の香り。それを発しているのは黒鈴蘭――黒咲姫のお気に入りにして、毒と侵食する根を持つ危険な魔物である。
 この地は既に彼らの侵食を受けているのか、地面からは根の先端がうねうねと蛇のように飛び出し、養分となる獲物を探して這い回っている。
「あんなのに捕まるのは御免だね……さぁて、少しばかり書き換えるよ?」
 カタリナは【架空神権 ― domination ―】を発動し、黒い風を身に纏う。この風は彼女に宿った魔神の権能であり、事象の書き換え(ハッキング)に特化したもの――物理法則そのものを改竄することで空気抵抗等を無視し、限界を超えた加速を可能とする。

「邪魔をしないで貰おうか」
 空中に伸びてくる根と根の間を素早くすり抜けながら、取り出すのは使い慣れた短剣。
 どこでも入手できるようなごく普通の刃物でも、カタリナが魔力を込めて投擲すれば、それは黒い雷を纏って、黒鈴蘭に架けられた『番犬の紋章』を撃ち抜く。
『――……!』
 第五の貴族の寵愛により強化された魔物にとって、紋章こそ力の源であり唯一の弱点。
 植物には悲鳴もなければ表情も無いが、紋章を傷つけられた花は動揺したようにびくりと揺れた。怒りか恐怖か、あるいはただの反射かもしれないが、根の攻撃は激しくなる。
「怯むのでも狂暴化するのでも、付け入る隙が増える事に変わりはないさ」
 攻勢の激しさは翻せば守備の荒さでもある。研ぎ澄まされた第六感と野生の勘によって敵方の動きを直感的に見切り、地面から突き出す根の隙間を翔け抜ける。その動きに迷いはなく、まるで彼女の瞳には最初から道が"視えて"いるかのようだった。

「敢えてこう言おうか――紋章の強化程度で、雑兵如きが。この私を阻めると思わない事ね」
 地を這うしか能のない雑草に、足止めを食らうつもりなど無い。閃風の舞手はその異名の通り、黒風と共に庭園を翔ける。未練がましく根を伸ばす、黒鈴蘭を置き去りにして。
 最小限の消耗かつ最速で、黒咲姫ブラック・ブロッサムの住まう屋敷を目指して――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
庭園の敷地外、邸宅を囲む外壁の上等、一望できるところで【狐九屠雛】を展開…。
【呪詛】を上乗せした上で霊火を庭園内に撃ち込み、再展開を繰り返して庭園内の大地と黒鈴蘭を凍結&【呪詛】で侵食…。

危険性が高いとはいえ、あくまで知性が無い植物…。
領域外からの攻撃には対処できない…。
それに、庭園の大地を侵食する程根を下ろしているのは確かに脅威だけど、逆にそれが仇になったね…。
強力な【呪詛】を上乗せした絶対零度の霊火は地面を凍結させ、呪いで侵食する…。
広域に張り巡らされた根は侵食する凍気と呪いを大地から吸い上げざるを得ない…。
結果、満足な戦闘行動を取る事ができない程弱体化する…。

悪いけど、通らせて貰うよ…。



「危険性が高いとはいえ、あくまで知性が無い植物……」
 庭園の敷地外、邸宅を囲む外壁の上から、地面を覆い尽くす黒鈴蘭の花を一望しながら雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は呟いた。傍らに浮かぶ地獄の霊火――九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】が、その横顔を妖しく照らす。
「領域外からの攻撃には対処できないはず……」
 庭園内を我が物顔で蔓延る植物魔物から道を切り拓くために、彼女は根の侵食が届かぬ場所から攻撃を開始する。呪詛を上乗せしたうえで庭園内に撃ち込まれた霊火は、灼熱ではなく極寒の冷気を発し、着弾点にある黒鈴蘭をまたたく間に凍結させた。

「これは魂をも凍てつかせる地獄の霊火……」
 絶対零度の炎は璃奈の操作に応じて庭園内に燃え広がっていく。敵はあくまで植物の生態としてテリトリーに入った獲物を襲っているだけ、という彼女の推測は当たっており、黒鈴蘭は炎を避けようとはしても、遠すぎる璃奈には反撃を仕掛けてこない。
『――……!?』
 触れたもの全てを凍らせる霊火から逃れようとするのは植物としての本能だろう。しかし火の手は収まる気配を見せず、黒鈴蘭が根を下ろす大地そのものを凍りつかせていく。

「庭園の大地を侵食する程根を下ろしているのは確かに脅威だけど、逆にそれが仇になったね……」
 璃奈は手元に呼び出した【狐九屠雛】を放っては再展開を繰り返しつつ呟く。強力な呪詛を上乗せした絶対零度の霊火は地面を凍結させ、さらに呪いで侵食する――獲物を【享楽の傀儡】にするため広範囲に根を張っていた黒鈴蘭は、これを逃れることができない。
「広域に張り巡らされた根は侵食する凍気と呪いを大地から吸い上げざるを得ない……」
 侵食・吸収能力に長けた根は、決して花にとって益になるものだけを吸収するわけでは無い。土壌そのものを汚染すれば邪魔な雑草を"根こそぎ"排除することができる。普通のガーデニングや農法では憚られる手法だろうが、オブリビオンの庭で遠慮はいらない。

『……! ……!!』
 結果――冷気と呪いに根から侵食された黒鈴蘭は、満足な戦闘行動を取る事ができない程弱体化する。真冬の寒波に晒された後のように、霜を被って重たそうに萎れた花々を見て、璃奈は外壁の上からひらりと身を躍らせ、とんと足音鳴らして着地する。
「悪いけど、通らせて貰うよ……」
 ここまで徹底して弱らせておけば、障害になるほどのものは何も残っていなかった。弱々しく根を震わせる黒鈴蘭を魔剣と妖刀で薙ぎ払い、彼女は冷気に包まれた庭園を進む。
 硝子の割れるような澄んだ音を立てて、凍りついた花が砕け散る。その細氷を踏みしめながら向かう先は『第五の貴族』の館。決戦にあたる呪力の余裕は、まだ充分にあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
自身に【念動力】の防御膜を展開。
【ブラッディ・フォール】で「龍脈火山帯の大熱戦」の「帝竜ガイオウガ」の姿(魔力で帝竜の姿を完全に再現構築し、外殻として纏った姿)へ変化。

遠距離から庭園内へ【垓王牙炎弾】を撃ち込み、炎の獣を生み出して庭を蹂躙。更に【垓王牙炎操】の竜の姿の炎の群れを追加投入し、鈴蘭へ向かわせるわ。

実体の無い炎の獣や竜の炎には毒も根による物理攻撃も効かない。
でも、知性が無い故に直近の相手を攻撃するしかできないわよね♪
炎と植物、相性最悪だしね。

後は【垓王牙溶岩流】で脚部を溶岩流化して屋敷へ侵攻。
根が邪魔しようとしても溶岩流なので意に介さずにそのまま焼き尽くし、壁を溶け破って侵入するわ



「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 "黒咲姫"の育てた黒鈴蘭の庭を視界に収めたフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は、開口一番【ブラッディ・フォール】を唱える。念動力の防御膜に包まれた彼女の身体を、煮えたぎるマグマと溶岩が上から覆っていく。
「ずいぶん生い茂ってるようだけど、根こそぎ焼き払ってしまえば問題ないわよね」
 群竜大陸は龍脈火山帯で交戦した「帝竜ガイオウガ」の姿と力を纏った彼女は、帝竜の外殻の中で艷やかに笑い――燃え盛る【垓王牙炎弾】を庭園内に撃ち込んだ。

「さあ、蹂躙しなさい」
 ガイオウガの全身の火口から吹き出した火山弾は、着弾と同時に炎の獣へと姿を変え、燃える爪で庭を荒らし回る。テリトリーに突如侵入してきた獲物に、敵は【黒鈴蘭の嵐】を吹かせるが――。
『――……??』
 幻覚をもたらす催眠毒付きの花びらに包まれても、炎獣達は動きを止める様子がない。
 それならばと大地から根を伸ばしてみても、逆に炎が燃え移って焼き焦がされる始末。
 炎獣達の攻勢は弱まらず、彼らが発する炎によって庭園内はたちまち紅蓮に包まれた。

「実体の無い炎の獣や竜の炎には毒も根による物理攻撃も効かない。でも、知性が無い故に直近の相手を攻撃するしかできないわよね♪」
 炎と植物、相性最悪だしね――と可笑しそうに笑いながら、フレミアはさらに【垓王牙炎操】を発動。竜の姿の炎の群れを追加投入し、炎獣達と合わせて黒鈴蘭に向かわせる。
 敵も本能的な危機感からか、火の手を払おうと葉を揺らし根を振るうが、根本的な相性の悪さは如何ともし難い。育て主から与えられた『番犬の紋章』による強化があっても、草が燃えなくなるわけでも、花に知恵が芽生えるわけでもないのだ。
『―――!!』
 彼らは植物としての生態のまま、ただ目の前にいる敵に攻撃を行う。それがどうあっても養分にしようがない、炎で形作られた獣や竜だとしても。その結果、炎の逆襲にあった彼らがどうなるのかは――まさに"火を見るよりも"明らかなことだった。

「それじゃあ、ここは通して貰うわ」
 前方の黒鈴蘭をあらかた炎の獣達に駆除させたところで、フレミアは侵攻を開始する。帝竜の外殻を纏ったまま【垓王牙溶岩流】を使い、超高熱の溶岩流に変異した脚部で庭園をのし歩く様は、まさに王者の行進であった。
『……――?!』
 地上の花が燃えても、地下の根は生きている場合もある。だがそんなものは意にも介さない。道を阻むように根が邪魔してきても、溶岩の脚に踏まれて焼き尽くされるだけだ。
 そのまま庭園を抜けて『第五の貴族』の館までやって来た彼女は「邪魔するわよ」と、壁を蹴りつけてからユーベルコードを解除する。溶岩流に溶け破られた大穴から、元の姿に戻った吸血姫は悠々と侵入を果たすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・デイドリーム
番犬の紋章に第五の貴族……オブリビオン側も色々仕込んでいるんだね
こういう相手は着実に力を削いでいくのが一番だ
頑張っていこう

まずは危険な植物の対処だね
植物が相手なら炎がシンプルかな
古代の戦士の霊を呼び出して、炎で道を切り開いてもらおう
僕も【衝撃波】で炎を煽ったり、敵を攻撃しつつ進んでいくよ

戦士さんは霊体だから根に寄生される心配はないけれど、僕やシュエは危険だね
【オーラ防御】でしっかり身を守らないと
幻惑毒の効果も気になるけど……ここから先に強敵との戦いも待ち受けてる
個人的興味で時間や体力を消耗するのは良くないね

払っても減らない黒鈴蘭の多さにはびっくりする
暫く鈴蘭は見たくなくなっちゃうかもなぁ



「番犬の紋章に第五の貴族……オブリビオン側も色々仕込んでいるんだね」
 地の底で企てられていた邪悪な陰謀とその黒幕に、レン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)は静かに唸る。百年以上に渡るヴァンパイアの世界支配――その元凶に猟兵達は迫りつつある。
「こういう相手は着実に力を削いでいくのが一番だ。頑張っていこう」
 彼もまたその一人として気を引き締めると、第五の貴族の館の敷地に足を踏み入れる。
 庭園の主たる"黒鈴蘭"の群れは、侵入者を察知すると直ちに毒の根を伸ばし始めた。

「まずは危険な植物の対処だね。植物が相手なら炎がシンプルかな」
 獲物を【享楽の傀儡】にせんとする黒鈴蘭の根に捕まる前に、レンは【サモニング・ガイスト】を発動。呼び出した古代戦士の霊に命じて炎を放ち、周囲の根や花を焼き払う。
 魔物とはいえ火に弱いのは普通の植物と変わらないらしく、怯えるように根を引っ込める黒鈴蘭。その後に切り開かれた道を、青年と亡霊が駆け抜けていく。
「戦士さんは霊体だから根に寄生される心配はないけれど、僕やシュエは危険だね」
 地面から飛び出す根に警戒しつつ、オーラを張ってしっかりと身を守る。実質敵の大群に囲まれた状況でも落ち着き払ったレンの身体からは、『シュエ』という名のUDCが辺りを窺うように白い触手を覗かせていた。

「幻惑毒の効果も気になるけど……」
 庭園内を歩いていれば嫌でも鼻につくのは、鈴蘭の花や根から滴る甘い蜜の香り。脳を痺れさせるようなこの芳香が生物――或いは人形である自分にどのような影響をもたらすのか、錬金術師の端くれとしては興味をそそられるが、調査している余裕はない。
「ここから先に強敵との戦いも待ち受けてる。個人的興味で時間や体力を消耗するのは良くないね」
 毒を吸い過ぎないよう息を細く。もちろん根には触れないよう、戦士の霊に頼んで切り払って貰う。今回の目的はあくまで『第五の貴族』の討伐だけ。庭に生えている雑草に手をこまねいていては本末転倒だ。

「それにしても、全然数が減らないね」
 払っても払っても減った気のしない黒鈴蘭の数の多さに、レンは驚きを隠せずにいた。
 黒咲姫が与えた『番犬の紋章』は、彼らの戦闘力だけでなく繁殖力も強化したのかもしれない。既に相当数を焼き払ったにも関わらず、視界から鈴蘭の花が消えることはない。
「暫く鈴蘭は見たくなくなっちゃうかもなぁ」
 ただ眺めているだけなら美しい花園も、一歩踏み入れば人食い魔物の巣窟。それがこうも執拗に襲い掛かってくれば、猟兵と言えども神経をすり減らすのは無理もないだろう。
 浮かない顔の青年を慰めるように、シュエの触手が頬を撫でる。相棒の気遣いにレンは「大丈夫だよ」と笑い、再び気を引き締め直すと『第五の貴族』の館に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…植物に紋章を与えるなんて酔狂な貴族もいたものね

防衛はともかく持ち運びには不向きだと思うんだけど…

…それだけ紋章を創造する事は容易いという事?
…まあ、敵の諧謔を考察しても致し方無いか

敵の毒属性攻撃を全身を覆う浄化のオーラで防御し、
精神干渉の余波は殺気や闘争心で受け流してUCを発動

…っ、防ぎきれない?こんな物で私を惑わそうとするなんて…

…だけどこの程度なら、諸ともに焼き払うまで…!

過去の存在だけを焼く黒炎に魔力を溜め武器改造
無数に召喚した黒炎の剣を乱れ撃ちして敵の懐に切り込み、
呪詛を纏う大鎌をなぎ払い紋章を切断する2回攻撃を行う

…流石に数が多すぎるわね。まずは第五の貴族から先に討たないと…



「……植物に紋章を与えるなんて酔狂な貴族もいたものね」
 視界一面に広がる黒鈴蘭の花畑を前にして、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は呆れたように呟く。元がそれほど強くはない、それも植物の魔物に『紋章』を授ける貴族がいるとは、彼女も想像していなかったようだ。
「防衛はともかく持ち運びには不向きだと思うんだけど……それだけ紋章を創造する事は容易いという事?」
 これほどの数全てに『紋章』を行き渡らせるのに、かかる手間もまた想像もつかない。何度かの交戦を経てもなお、『第五の貴族』の持つ力には今だ底知れぬものがあった。

「……まあ、敵の諧謔を考察しても致し方無いか」
 案外本当に酔狂に過ぎない可能性も視野に入れ、リーヴァルディは思考を切り替える。
 精神に干渉する敵の催眠毒対策として、浄化のオーラで全身を覆い、心は殺気と闘争心で強く保つ。研ぎ澄まされた刃のような心持ちで、黒鈴蘭の庭に足を踏み入れた。
『――……』
 花は言葉を発さない。ただテリトリーに入ってきた獲物を察知すると、花弁を散らして【黒鈴蘭の嵐】を放つ。人々を誘き寄せ捕らえるための催眠毒は、『番犬の紋章』で強化された事で、猟兵にとっても油断ならない猛毒と化していた。

「……っ、防ぎきれない? こんな物で私を惑わそうとするなんて……」
 オーラの防御越しにも微かに香る甘ったるい芳香が、リーヴァルディに幻覚を見せる。
 誓いを交わした友人や、宿敵、想い人――好悪様々な感情を抱いた相手が、舞い散る花弁の中に浮かんでは消える。毒のせいだと分かっていても、心がかき乱されそうになる。
「……だけどこの程度なら、諸ともに焼き払うまで……!」
 今為すべきことを強く意識して、遮断しきれなかった精神干渉の余波を受け流す。自分の目的は『第五の貴族』の討伐。こんなところで花と幻に時間をかけている暇などない。
 漲る闘争心を焔に変えて、発動するのは【限定解放・血の魔剣】。瞬きほどの一瞬のみ吸血鬼化したリーヴァルディの傍らに、過去の存在だけを焼く黒炎の魔剣が召喚された。

「……邪魔をしないで」
 限定解放時の魔力を注がれた黒炎は無数の魔剣として顕現し、黒鈴蘭の嵐を焼き払う。
 花弁と共に幻覚が消え、視界が開けた瞬間に、リーヴァルディは敵の懐に切り込んだ。
『――……!』
 驚いたように黒鈴蘭が葉を揺らした直後、呪詛を纏った大鎌"過去を刻むもの"が、生い茂る草花を薙ぎ払い、花に寄生した『番犬の紋章』を切断した。力の源を失った魔物は、そのまま黒い炎に包まれて灰燼に帰す――その一連の流れは一瞬の出来事だった。

「……流石に数が多すぎるわね。まずは第五の貴族から先に討たないと……」
 庭園内にはまだ無数の黒鈴蘭がいる。全て刈り取るには余裕がないと判断したリーヴァルディは、進路を切り拓くことを優先して黒炎の剣を乱れ撃ち、邪魔な花を大鎌で刈る。
 向かうのは"黒咲姫"ブラック・ブロッサムの館。花に紋章を与える酔狂者の邸宅は、もうすぐ目の前にある――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

相変わらず、吸血鬼の邸宅は豪奢で悪趣味な造形をしているな…
フン、更に死の香りまで漂わせているとはな

UCを発動
敵の出す毒を分析して身体を敵の毒よりさらに強い毒性を持つ霧に身体を変化させて無効化
寄り道はせずに館への最短距離を目指して移動

毒使いに毒とは愚かな事をする
ついでだ、少し草刈りもしてやろう

進行方向に密集し、こちらの邪魔をする花があれば、デゼス•ポアやオーヴァル•レイを操作して切り裂き、焼き尽くす
さらに自分の足だけを根や花や葉を枯死させる強力な毒霧へと変化させて攻撃
文字通り根こそぎ駆除して進んでいこう

全く、手間のかかる雑草だ…
まぁ、悪趣味なこの館を飾るのに相応しいとも言えるがな



「相変わらず、吸血鬼の邸宅は豪奢で悪趣味な造形をしているな……」
 地の底に築かれたゴシック様式の館を見て、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は眉をひそめた。これまでに見てきた中でも『第五の貴族』の邸宅はその極めつけと言えるだろう、格別に荘厳で不気味な佇まいで見る物を威圧する。
「フン、更に死の香りまで漂わせているとはな」
 その庭園に足を踏み入れれば感じるのは、むせ返りそうなほど甘く冒涜的な花の香り。
 館主の寵花にして配下である黒鈴蘭が発する催眠毒が、辺り一面に充満しているのだ。

「だが、毒使いに毒とは愚かな事をする」
 幻覚をもたらす猛毒の【黒鈴蘭の嵐】にも怯む事なく、キリカは【プワゾン】を発動。
 嗅いだ香りを元に敵の出す毒を分析し、さらに強い毒性を持つ霧に身体を変化させた。
 その芳香は黒鈴蘭の香りをかき消すほどに強く、脳を痺れさせる官能的な甘さがある。
「天国が視えるほどに、甘い香りだろう? 植物には分からないかもしれないがな」
 毒そのものに自らを変えたキリカに、それよりも弱い毒が効くはずが無い。薄紫色の霧を漂わせながら、彼女は黒鈴蘭が繁茂する庭を悠然とした足取りで歩いていく。

「ついでだ、少し草刈りもしてやろう」
 大地に張り巡らせた根を伸ばし、進行方向に密集して邪魔をする黒鈴蘭を見かければ、傍らに滞空させた呪いの人形「デゼス・ポア」や、浮遊砲台「オーヴァル・レイ」を操作して排除にあたる。
「キャハハハハハハハ」
 無邪気に笑いながら人形は全身から生やした錆刃で花を切り裂き、卵型の砲台から放たれる高出力粒子ビームが焼き尽くす。『番犬の紋章』で強化されているとはいえ、所詮は知性もない植物、油断せず対処すれば遅れを取るような相手ではない。

「ついでだ、お前達も毒に侵される側になってみるといい」
 さらにキリカは自分の足だけを花や葉を枯死させる強力な毒素――言わば除草剤の霧に変化させて散布する。根や葉から彼女の毒素を吸引してしまった黒鈴蘭は、断末魔のように花を震わせながらしおしおと枯れ果てていく。
「全く、手間のかかる雑草だ……」
 文字通り根こそぎ駆除して先に進む。しかしまだ庭に植えられた黒鈴蘭は無数にある。
 その全てに『番犬の紋章』が与えられている事を考えると、全て根絶やしにするのは現実的ではない。闇黒の地底世界に繁茂する黒き花園は、美しくも不気味な光景だった。

「まぁ、悪趣味なこの館を飾るのに相応しいとも言えるがな」
 キリカは行く手を遮る花だけを刈り、寄り道はせずに館への最短距離を目指して移動を続ける。彼女が歩いた後には枯れた鈴蘭の黒い花弁と、薄紫の霧の残滓だけが残される。
 次はこの悪趣味な庭と館を作った吸血鬼の顔を拝ませてもらおうと、麗しき戦場傭兵は静かに微笑を浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
要点は催眠毒の無力化だな。

青く燃える鉛の翼を展開し【空中浮遊】、愛機こと専用トライクをUC【荒狂い破滅齎す戦車】形態で【騎乗】し上空から【ダッシュ】。
庭にいるとの話だが、天井に根を張っているのがいるなら車体を反転させ轢き潰す。
敵UCは翼の羽搏きと愛機の加速での風圧で【吹き飛ばし】て威力を減衰しよう。

上空から地形【情報収集】、邸宅周辺で敵の密度が薄いポイントを把握。

常々荒い扱い方だと自省しているが、今回は一際乱暴に行くぞ愛機よ。

ハンドルを握ったまま操縦席から離れ、把握したポイント目掛け愛機を【怪力】込めて【投擲】、邸宅壁及び周辺を敵諸共【地形破壊】する。
突破口ができたら追うように自身も突入する。



「要点は催眠毒の無力化だな」
 愛機こと大型トライクに跨り、青く燃える鉛の翼を展開した状態で、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は空から黒鈴蘭の庭を見下ろしていた。
 テリトリーに侵入した者を強力な催眠毒で惑わせ、根で捕食し養分とする植物の魔物。鎧である自分が草の養分になるか知らないが、知性のない連中は区別などしないだろう。
「我らが駆ける前には勝利の未来。しかし駆けた後には屍と瓦礫のみ!」
 この危険な庭を走破すべく、ルパートは【荒狂い破滅齎す戦車】を発動、自身から滴る燃える鉛で愛機を強化形態に変えて発進する。上空から青い炎の軌跡を描いて疾走する姿は、さながら死を告げる亡霊騎士の如し。

『――……』
 火の粉が爆ぜる音とエンジン音に反応した敵は【黒鈴蘭の嵐】を巻き起こし、獲物を惑わせようとする。しかしルパートの鉛翼の羽ばたきと愛機の加速が生み出す風圧は、舞い散る花弁を吹き飛ばし、毒素を寄せ付けない。
(庭にいるとの話だが、天井に根を張っているのがいるかもしれんな)
 ここは地の底にして敵地のど真ん中。空中にいても決して油断はせず、頭上で蠢くものを見かければ車体を反転させ轢き潰す。縦横無尽の機動で庭園の上を駆け巡りながら、彼は地形情報を収集し、邸宅周辺で敵の密度が高いポイントを探していた。

「常々荒い扱い方だと自省しているが、今回は一際乱暴に行くぞ愛機よ」
 敵の分布を把握したところで、ルパートは愛機のアクセルを握り込み、地上に向かって加速する。ひときわ高く唸りを上げるエンジンは、扱いの荒い操縦者への不満か、あるいは獲物を前にした獣の咆哮か。
「征け」
 降下寸前で彼はハンドルを握ったまま操縦席から離れ、敵が密集するポイント目掛け、怪力を込めて愛機を投擲する。無人となったトライクは自身の動力と与えられたベクトルに従って、青く燃え盛る鉛に包まれたまま庭園に飛び込んだ。

『――……!!?』
 植物に感情は無いはずだが、これには黒鈴蘭も驚いただろう。黒い花弁を吹き飛ばしながら、まっすぐに突っ込んできたトライクは、進路上に咲いていた花々を蹂躙していく。
 車体そのものを凶器としたルパートの恐るべき運転技術――いやさ殺人術。彼の愛機は慣性のまま庭園に蒼炎の轍を刻み込んだ後、"黒咲姫"の邸宅をゴールとして激突する。
 いくら立派な建造物だろうと、こんな乱暴な来訪は予期していなかっただろう。轟音と衝撃が辺りを揺らし、館の壁にぽっかりと大きな穴が開いた。

「これで突破口ができたな」
 ルパートは鉛翼を羽ばたかせて着地すると、愛機が駆けていった後を追って自らも邸内に突入する。無惨にも轢き潰された花達に、それを足止めするような力は残っていない。
 なお、全速力で館に突っ込んだ彼のトラクルは、驚くべきことに原型を保っていた――騎士として苛烈な戦いに身を置く彼の愛機となるには、それでこそ、なのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
黒鈴蘭を見て
「確かにこれだけの数。
真面に相手をしていられないな。」
ならばどうするか、……少し無茶だが。やってみるか。

ナイトメアフォースを発動。
「普通なら植物は夢を見る事はない。
しかし、仮にも命がある限り死を司る冥界の闇の影響は受ける。
そして、寄生している紋章自体にも夢を見せる事が出来るなら
必ず効果がある筈だ。」
冥界の闇をその身に纏い。黒鈴蘭に悪夢を見せて
自分を認識させず。その隙に龍翼の翔靴を使って跳躍。
極力黒鈴蘭を刺激しない様に飛びながら移動。
その場にある毒はスカイロッドの風で吹き飛ばしたり
月光のローブによる【オーラ防御】【毒耐性】
で耐え。毒が回る前に、そのまま邸宅まで駆け抜ける。



「確かにこれだけの数。真面に相手をしていられないな」
 "黒咲姫"の庭に群生する黒鈴蘭を見て、納得の面持ちで呟いたのはフォルク・リア(黄泉への導・f05375)。全てが『番犬の紋章』で強化された、猛毒を持つ人喰い植物の群れ――こんなものを駆除していては、魔力がいくらあっても足りない。
「ならばどうするか、……少し無茶だが。やってみるか」
 呪いの力が封じられた「冥理影玉」を掲げて、発動するのは【ナイトメアフォース】。
 宝珠からあふれ出した冥界の闇が彼の身体を包み、庭園内にじわじわと広がっていく。

「普通なら植物は夢を見る事はない。しかし、仮にも命がある限り死を司る冥界の闇の影響は受ける」
 闇は生命を眠りへと誘い、現実と見紛う悪夢を見せる。フォルクは黒鈴蘭を刺激しないよう慎重にユーベルコードの効果範囲を広げ、その中にいる花達の反応を観察していた。
「そして、寄生している紋章自体にも夢を見せる事が出来るなら、必ず効果がある筈だ」
 その推測は正しく、闇に包まれた黒鈴蘭は葉を閉じ、花に寄生した『番犬の紋章』と共に眠りこけていた。花だけでなく地面に張り巡らされた根にも反応はない――この隙に乗じて彼は空の精霊力を込めた「龍翼の翔靴」で地面を蹴り、飛ぶように空を走りだした。

(極力黒鈴蘭を刺激しない様に……)
 根を踏まぬよう、葉を揺らさぬよう、足音すらも立てぬよう、風に乗って空中を移動するフォルク。冥界の闇を纏った彼に気付く者はおらず、不気味な程の静寂が辺りを包む。
 ただ、黒鈴蘭を眠らせたからといってまだ油断はできない。かの花や根から分泌される催眠と幻惑の毒は、蜜のような芳香と共に庭中に充満しているからだ。
「俺まで悪夢(ゆめ)を見せられるわけにはいかないな」
 彼が着ている「月光のローブ」にはオーラによる防御と毒耐性の効果もある。それで多少なりとも幻覚に耐えつつ、手元に実体化させた「スカイロッド」から突風を吹かせ、毒素を吹き飛ばす。あまり強く吹かせれば敵が起きてしまう恐れもあるので加減が難しい。

「慎重に……だが、急がないとな」
 毒が回る前に邸宅まで辿り着けなければ、目を覚ました花の餌食となる。フォルクはローブの布地を口元に寄せ、呼吸を浅くして毒の摂取を抑えながら、邸宅まで駆け抜ける。
 彼と共に移動する冥界の闇に包まれて、黒鈴蘭はどんな悪夢を見ているのだろうか――その闇が晴れる時まで、花達が現実に戻ってくることは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イリス・ローゼンベルグ
第五貴族……黒咲姫ブラック・ブロッサム、ね
ふふっ、面白いじゃない
花に喰われるのが私かそいつか試してみましょう

さて、それにはまずこの悪趣味な庭を突破しないといけないのね
自身の周囲に【茨の触手】を展開
それを素早く動かし、行く手を阻む黒鈴蘭たちに進行方向とは別方向から攻撃を仕掛ける事で注意を逸らしてその隙に間をすり抜ける
まあ……疑似餌みたいなものね

避けられない黒鈴蘭に対しては戦闘力の高い【捕食触手】で【捕食】攻撃
連戦に向けて毒を蓄えておきたいし、敵の毒攻撃は出来るだけ食らって耐性をつけておきましょう
ある程度ダメージを負ったら【薔薇は散らず】を発動して体力を回復、連戦に備える



「第五貴族……黒咲姫ブラック・ブロッサム、ね」
 黒き花を操るという吸血鬼の邸宅の前で、イリス・ローゼンベルグ(毒を喰らうモノ・f18867)は優雅に微笑む。薔薇の因子をその身に宿す彼女もまた花と茨を操る能力者。その符号が興味と対抗心を抱かせたようだ。
「ふふっ、面白いじゃない。花に喰われるのが私かそいつか試してみましょう」
 薔薇と茨を纏った黒いドレス姿で、少女は敵の庭に足を踏み入れる。すると気配に反応した黒鈴蘭が葉を揺らし花弁を散らしながら、彼女を養分にしようと根を伸ばしてきた。

「さて、それにはまずこの悪趣味な庭を突破しないといけないのね」
 毒と根で生物を捕食する植物の魔物に対して、イリスは自身の周囲に茨の触手を展開。
 己の身体の延長線でもあるそれを行く手を阻む黒鈴蘭に向け、進行方向とは別方向から攻撃を仕掛ける。すると花達は別の獲物が現れたと勘違いして、根の矛先を変えた。
「まあ……疑似餌みたいなものね」
 戦闘力は『紋章』で強化されていても、しょせんは本能で動くことしかできない知性なき魔物。注意が逸れたその隙にイリスは花と花との間をすり抜け、敵の邸宅へと向かう。
 暫くはこの方法で敵を欺けるだろう。しかし目的地に迫るにつれて植えられた花の数も増える。群生する花々と張り巡らされた根に、一切触れないよう進むのは流石に難しい。

『――……』
 物言わぬ花達は盲目的に、幻覚をもたらす【黒鈴蘭の嵐】を起こす。庭に吹き遊ぶ無数の花弁からこれ以上は避けられないと判断したイリスは、敢えて嵐の渦中に飛び込んだ。
「連戦に向けて毒を蓄えておきたいし、出来るだけ食らって耐性をつけておきましょう」
 種は異なるとはいえ植物性の毒素。自らも有毒ゆえに高い毒耐性を持つ彼女は、黒鈴蘭から受けた毒を体内に取り込み、抗体を作り上げる。紋章の力で強化されたそれはバイオモンスターの肉体を蝕むほど強力ではあったが、幻覚で前後不覚に陥るほどではない。

「その程度? なら、期待外れね……」
 ある程度ダメージを負ったところで【薔薇は散らず】を発動。肉体を活性化することで体力を即時に回復し、より強固に己を変化させる。猛毒の嵐の中を散歩のような足取りで通り抜け、嵐の発生源までやって来たイリスは、戦闘力の高い【捕食触手】を取り出す。
「でも悪くはなかったし、頂いていくわ」
 鎌首をもたげた蛇の様に、その触手はハエトリグサに似た器官で黒鈴蘭に喰らいつき、噛み砕く。これまで多くの生命を養分としてきた彼らが、逆に捕食されて最期を迎えるのは、あるいは因果応報の末路と言えるかもしれない。

「あまり美味しくはないわね……なら、これを育てた奴の味はどうかしらね」
 黒鈴蘭を毒ごと喰らうことで、連戦に備えてさらなる毒素の補給と回復を行ったイリスは、口元に嗜虐的な笑みを浮かべながら先に進む。"黒咲姫"が如何ほどの相手だろうと戦う準備は十分、かの吸血鬼が住まう邸宅の扉は、もう目の前にまで迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
わらわらと咲き乱れる鈴蘭を全て刈る事は不可能。
まともに戦う必要は無い、
的を一個体だけに絞り速攻で駆け抜ける……スピード勝負になるな。

まず殺鬼影身にて分身を現出させ囮として突っ込ませる。
コイツは己が本能そのもの、膨大な殺気を放ち黒鈴蘭をおびき寄せてくれる。
根が分身を捕えたら、その隙に一気に駆け抜けるぞ!

オレの殺気と呪詛と毒が入り混じった影を存分に喰らうがいい……
紋章にまで呪いが侵蝕すれば根も伸ばせまい。



(わらわらと咲き乱れる鈴蘭を全て刈る事は不可能)
 庭中に生い茂った無数の黒鈴蘭を見て、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は即座にそう判断した。主人から『番犬の紋章』を与えられ、既にこれだけ増えきった魔物を根絶する術はない――しかし、だからと言って彼は絶望しているわけではなかった。
「まともに戦う必要は無い、的を一個体だけに絞り速攻で駆け抜ける……スピード勝負になるな」
 敵を刈り尽くすだけが戦いではない、ここは最小の消耗かつ最速で突破するのが最善。
 咎人殺しの殺人鬼は、魂に宿る殺戮衝動を静かに漲らせ、ユーベルコードを発動する。

「冥き器より出づる己は影か真か……」
 漲る殺気より実体化するのは【殺鬼影身】。蜃気楼のようにゆらりと現れたナギの分身が、本体のものとそっくり同じ武器を構えて庭に突っ込む。その瞬間、周囲にいた黒鈴蘭が根と花を一斉にそちらに向けた。
(コイツは己が本能そのもの、膨大な殺気を放ち黒鈴蘭をおびき寄せてくれる)
 ナギの思惑通り、囮にされた分身は【大地の福音】の洗礼を受け、大量の根に捕らわれ動きを止める。その隙に本体は持ち前の俊敏さを駆使し、花群の間を一気に駆け抜ける。

『――……!』
 たった今捕まえた獲物と"同じ気配"を感じ取った黒鈴蘭は、分身を拘束したままナギ本体にも根を伸ばそうとするが――びくりと小さな花を揺らして、急に動きが鈍くなる。
 見れば、分身に絡みついた根がドス黒く変色し、今にも腐り落ちそうになっている。それだけでなく根を通じて茎や葉や花にまで、禍々しきものがじわじわと這い登っていく。
「オレの殺気と呪詛と毒が入り混じった影を存分に喰らうがいい……」
 振り返る事なく走り続けながらナギが告げる。彼は侵食・吸収能力に長けた黒鈴蘭の根の特性を逆用し、自身の殺戮衝動から生み出した、害意の塊である分身を喰わせたのだ。
 生命を蝕む「冥き殺戮衝動の波動」はたちまち周辺一帯の黒鈴蘭を侵し尽くし、その汚染はやがて花に寄生している『番犬の紋章』にまで達した。

「紋章にまで呪いが侵蝕すれば根も伸ばせまい」
 館までの最短距離を走り抜けるナギの背後から、敵の追撃はなかった。大量の呪詛毒を吸わされた黒鈴蘭は、『紋章』を寄生させた花を弱々しく揺らすだけ。テリトリーに入った者に手当り次第に根を伸ばす貪欲な本能が仇となり、まんまと彼の策に嵌まった形だ。
『――……』
 他の地点に植えられた黒鈴蘭からの妨害も間に合わない。花達はただ、薄れゆく分身を置いて"黒咲姫"の邸宅に突入するナギの後ろ姿を見ていることしかできなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
此度の『番犬』は植物…見張りとしては兎も角、拠点防衛の意味では優れていますね
貴族の実力を加味すると『警報』よりも『侵入者の排除の代行』の性質が強い故でしょうか
(出自等で気になる分野)

…切り替えましょう
UCの毒は機械すら侵すケースもあり、まして相手は『番犬』
準備を整えても足を掬われかねません

●防具改造で気密性等●環境耐性を更に向上し侵入
放たれる花びらに対しUC発射し炸裂
粒子で花びらの制御を妨害、怪力で振るう盾の風で吹き飛ばし
風に流される鈴蘭の動き見切りスナイパー射撃で紋章狙撃

屋敷に花の仕込み…少々乱暴ですが焼き討ちして
いえ、貴族の逃走や変身後を考えると藪蛇ですね

出来た空白地帯を推力移動で駆け抜け



「此度の『番犬』は植物……見張りとしては兎も角、拠点防衛の意味では優れていますね」
 庭一面に植えられた黒鈴蘭の花畑を、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそのように評価する。知性ではなく本能に忠実に、侵入者を養分にするために襲い掛かる人食い植物の特性は、扱い方次第では無差別な防衛装置として有用だろう。
「貴族の実力を加味すると『警報』よりも『侵入者の排除の代行』の性質が強い故でしょうか」
 元銀河帝国の式典・要人警護用機体として開発された出自と、今は弱き民の守護を掲げる騎士としての性ゆえか、こうした分野は自然に気になってしまうらしい。敵が配置した配下の意図を思案すること暫し、機械仕掛けの騎士は改めて目的の屋敷を見据える。

「……切り替えましょう。ユーベルコードの毒は機械すら侵すケースもあり、まして相手は『番犬』。準備を整えても足を掬われかねません」
 過去にも『番犬の紋章』を持つオブリビオンとの交戦経験があるトリテレイアは、植物相手だからと油断はしない。甲冑を模した装甲に予め改造を施し、毒素に満ちた環境に耐えうるよう気密性を向上させる等して、万全の体制で庭園内に侵入する。
『――……』
 相手が養分としては不適そうな機械兵器だとしても、物言わぬ花は容赦しない。侵入からほぼ同時に【黒鈴蘭の嵐】が巻き起こり、幻覚をもたらす催眠毒の花弁が襲い掛かる。『紋章』で強化されたこの毒を長時間浴びれば、機械のセンサーにも影響が出るだろう。

「……スペースシップワールドの科学の力をご覧あれ!」
 対するトリテレイアは【制御妨害粒子散布用試製炸裂徹甲榴弾】を発射。機体各部の銃器から放たれた弾は空中で炸裂し、ユーベルコードの制御を妨げる特殊粒子を散布する。
 それまで一定の規則性のあった花弁の動きが、黒鈴蘭の制御から離れて無秩序に拡散していく。それを見逃さずに彼は、持っていた重質量大型シールドを力任せに振り回した。
『――……?!』
 3メートル近い大盾とウォーマシンの怪力が生み出す風圧は凄まじい。花弁が吹き散らされていく中で、黒鈴蘭は風に流されないようしっかりと地面に根を張り――その動きを見切ったトリテレイアが、花に寄生した『紋章』を狙撃する。

『――……!!』
 散りゆく花嵐の隙間を縫って、小さな紋章に弾丸が突き刺さる。『番犬』達に共通する力の源にして弱点――そこを狙い撃たれた黒鈴蘭達は、しおしおと力なく萎れていった。
「これが科学の勝利です」
 使用した弾丸は世界の加護を受けた猟兵でなければ効果を発揮しない、大分オカルティックな代物である事実からは目を背けつつ。トリテレイアは障害を排除した後に出来た空白地帯を、脚部スラスターによる推力移動で駆け抜ける。

「屋敷に花の仕込み……少々乱暴ですが焼き討ちして……いえ、貴族の逃走や変身後を考えると藪蛇ですね」
 花畑を抜けれた目的地はもう目前。"黒咲姫"の邸宅を前にして、事前に敵の仕込みを潰しておく事も考えたトリテレイアだが、生じる不都合を天秤にかけて断念する。無差別に全て焼き払うような行為は、少なくとも敵の所在を確認してからのほうが賢明だろう。
 黒鈴蘭の庭を突破してもここからが本番だと、騎士は気を緩めぬまま屋敷に突入した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「気分はガンシューティングね」

愛用のアサルトライフルを担いで挑戦だ
【情報収集】でルートを選定し、最短距離でこの場を切り抜けるとしよう

【スナイピング】で三点バーストし、ルートにある邪魔な花の紋章の【部位破壊】を狙い、間髪入れずに焼夷榴弾による火炎【属性攻撃】で根元を焼き払おう。通過の時間位は稼げたら幸いね

花部分に銃撃を放ちつつ突撃。【浸食した大地】から根が出るなら、「ガジェットブーツ」の【メカニック】で大跳躍
更に斥力跳躍機構で空中を足場に何度か跳ね、連中が対応する前に一息に脱出を図りたい

「悪いわね。一々相手してらんないのよ」



「気分はガンシューティングね」
 愛用のアサルトライフルを担いで、"黒咲姫"の庭に挑戦するのは才堂・紅葉(お嬢・f08859)。飄々とした態度とは裏腹に、内心では一切油断せず、敷地外からの観測や他の猟兵から得た情報を元に、最短距離で切り抜けられるルートを予め選定して事に臨む。
「動かない的を狙い撃つ練習なんて、散々やったわ」
 正確な照準からの三点バーストが、ダダダッと連なった銃声と共に黒鈴蘭の『紋章』を撃ち抜いた。間髪入れずに弾を焼夷榴弾に切り替え、今度は花の根元を狙って撃ち込む。

『――……!?』
 めらめらと燃え上がる炎に、黒鈴蘭はびくりと怯えたように茎を揺らす。魔物とはいえ植物である以上、火を恐れるのは本能なのだろう。初撃で弱点である『紋章』にダメージを負った状態であれば尚の事。
「通過の時間位は稼げたら幸いね」
 ルート上にある邪魔な花達が慌てている隙に、紅葉は鈴蘭の花部分に銃撃を放ちつつ、花群の間をすり抜けるように走り出す。敵が立ち直る前にここを突破してしまう算段だ。
 しかし敵もみすみすテリトリーに入ってきた獲物を逃しはしない。地上に出ている部分は炎と銃弾にボロボロにされても、地下に根が残っている限り植物はしぶとい――この庭の黒鈴蘭は、すでに庭全体にその根を張り巡らせている。

『――……!』
 浸食された大地から放たれるのは【大地の福音】。足元から襲い掛かる根は侵食・吸収能力に長け、一度捕まれば最後、哀れな犠牲者は養分を吸い付くされるまで虜囚となる。
「植物の攻撃パターンなんて読めているのよ」
 だが紅葉は根が出てきた瞬間に、ブーツに組み込まれたガジェットを起動して大跳躍。常人の脚力をはるかに超えた高さで攻撃から逃れつつ、さらに【斥力跳躍機構】を起動。
 手の甲の紋章から放たれる斥力にガジェットで指向性を持たせ、空中に足場を作り出す――今地面に降りれば根の洗礼が待っている。なら地に足を付けなければ良いだけの事。

「私専用とは言え、錬金科にしちゃまともな発明じゃない」
 これまで押し付けられてきたけったいな試作品やら馬鹿ピーキーな仕様やらとは違う、真っ当な使い心地に感心しつつ。紅葉はそのまま何度か空中を蹴って黒鈴蘭の上を越し、連中が対応してくる前に一息に脱出を図る。
「悪いわね。一々相手してらんないのよ」
 ここに植えられている花全てを駆除しようと思えば、弾も魔力もいくらあっても足りないだろう。目的遂行の為に最小限のコストで障害を突破するのがプロフェッショナルだ。
 未練がましく根を揺らす黒鈴蘭を置き去りにして、紅葉は"黒咲姫"の邸宅に向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
本来であれば、この植物も根こそぎにしたいのですが、後でもいいでしょう。最重要は『第五の貴族』です。

庭は見るからに毒で汚染されていますね。その上根も襲ってくる、と。
中に入って戦うのは骨ですが……動けない植物など、獲物ですらありません。ただの的です。

【ブリザードショット】を使用、庭の外で弾丸に冷気を籠め、十分に溜まったところで発射、吹雪で庭の入り口から館の入り口までの直線状にいる黒鈴蘭を凍てつかせ、また地面も凍てつかせることで根も生えないようにします。

ブリザードショットを撃った後は吹雪で吹き飛ばした幻惑毒がまた充満する前に凍った道を進んで館に入ります。



「本来であれば、この植物も根こそぎにしたいのですが、後でもいいでしょう」
 最重要は『第五の貴族』です――そう言ったセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の視線は黒鈴蘭の庭を挟んだ先、"黒咲姫"の住まう屋敷に向けられていた。
「庭は見るからに毒で汚染されていますね。その上根も襲ってくる、と」
 屋敷に入る為には必ず庭を通らなければならない。しかしその庭内は侵入者を無差別に養分にせんとする、危険な植物魔物のテリトリー。貪欲な根と幻惑毒で満たされたあの領域に無策で突入するのは、愚か者のやる事だ――なら突入する"前"に排除すればいい。

「中に入って戦うのは骨ですが……動けない植物など、獲物ですらありません。ただの的です」
 セルマは改造マスケット銃「フィンブルヴェト」を構えると、庭の外で弾丸に冷気を籠める。テリトリーの内側にしか興味がない黒鈴蘭は、その外側で彼女が何をしようが一切反応しない。『紋章』で強化されていようと、それが知性のない植物の限界である。
『――……』
 風に吹かれてぼうっと揺れている花々をスコープ越しに捕捉しながら、冷気を籠め続けるセルマ。この弾丸は準備にかけた時間に応じて無限に威力が上昇する。今のシチュエーションには最も適したユーベルコードだろう。

「そろそろ良いでしょうか」
 十分に冷気が溜まったところでセルマは庭の入り口に立ち、館の入り口に向かってマスケット銃を構える。ゆらゆらと根を蠢かせる黒鈴蘭の群れを射線上に収め、すうと小さく息を吸って集中――冷たい引き金に指をかける。
「……撃ちます!」
 万全の状態で放つ【ブリザードショット】。それは終焉の前に訪れる大いなる冬(フィンブルヴェト)を想起させる壮絶な猛吹雪となり、発射地点から目標までの直線上にいる尽くを凍てつかせていく。

『――……!!!?』
 外から吹き込む冷気に気が付いたところで、敵に為す術は無かった。極寒の猛吹雪が吹き抜けていった後には、芯まで凍りついた黒鈴蘭と、分厚い氷の張った大地だけが残る。
 これではもう花達は侵入者を阻むどころか、地面の下から根を生やすこともできないだろう。一発の銃撃が作り上げた凍土のラインは、"黒咲姫"の館の入り口まで続いていた。

「今の内です」
 セルマは銃口を下ろしてマスケットを担ぐと、その凍った道を進んで館に向かう。庭内に充満していた幻惑毒も吹雪に吹き飛ばされ、冷たく澄んだ空気が満ちている。じきにまた別の所から毒が流れて来るだろうが、それまでに館に入るのは歩いていても間に合う。
 静謐に包まれた美しい氷雪の花園の中で、彼女はもう次の標的だけを見据えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「『第五の貴族』…この世界の平和のためにも、必ず倒さないとっすね。暗殺は忍者の得意分野っす」

「こいつの感覚器官はなにかな…目はないから匂い、振動に、魔力感知と見ておくっすか」
匂い消しで体臭を消し、【化術】の応用で自身の周囲の妖力を黒鈴蘭の幻惑毒の持つ魔力に近づけることで【迷彩】。
地面の振動は感知しそうなので『トリプルどろんチェンジ』で一反木綿に変身して空を飛び、【結界術】で毒の空気を遮断しつつ地面からの奇襲に備えやすくする。

退路のことも考え、道中の排除すべき対象を見定め、手裏剣【投擲】で【暗殺】。番犬の紋章を集中的に狙う。
事後は急いで庭を突っ切り、邸宅内へ

「さあ、ここからが本番っす」



「『第五の貴族』……この世界の平和のためにも、必ず倒さないとっすね。暗殺は忍者の得意分野っす」
 首に巻いたストールをなびかせながら、標的の潜む館を見据える家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。人知れずこの世界に『紋章』という脅威をばら撒いてきた黒幕を、これ以上放置してはおけない。忍びの手練手管を活かして、確実に息の根を止めるのだ。
「まずはあいつらの"目"を誤魔化さないとっすね」
 敵の館に忍び込むための最大の障害になるのが、庭に植えられた無数の黒鈴蘭。知性はなく、ただテリトリーに侵入したものを捕食するだけの魔物だが、その単純さは『紋章』による強化と相まって厄介な防衛装置と化している。

「こいつの感覚器官はなにかな……目はないから匂い、振動に、魔力感知と見ておくっすか」
 花が獲物を見つける手段を推測しながら、衣更着は持ってきた匂い消しで体臭を消し、化術の応用で自身が発している妖力を、黒鈴蘭の幻惑毒が持つ魔力の波長へと近づける。
 いくら養分に飢えている花同士でも、お互いを喰いあったりはしない。根や花から分泌される毒が同類を識別する目印にもなっているとすれば、この偽装が迷彩となるだろう。
「あとは地面の振動は感知しそうっすから……」
 さらに彼は【トリプルどろんチェンジ】で飛翔力に長けた一反木綿に変身し、地面を歩くのではなく空中を進む。これらの偽装の甲斐あってか、敵は衣更着さすぐ傍をすり抜けていっても、微かに花を揺らすだけで襲っては来ない。

(いったい幾つ植えられているんすかね……ひどい匂いっす)
 庭内に侵入してまず鼻につくのは、大気に満ちた甘ったるい毒の香気。長居すれば猟兵でも幻覚による前後不覚は免れないだろう。衣更着は結界術を駆使して空気を遮断することで対策し、毒の発生源である地上の花々に目を凝らす。
(退路のことも考えたら、全部スルーってわけにはいかないっすよね)
 地下空洞という環境的にも、一切敵に触れず館までたどり着けるルートは無い。道中の排除すべき対象を見定め、素早く倒す――ドロンと一瞬だけ一反木綿から人間の姿に戻った彼は、目にも止まらぬ早業で忍者手裏剣を投げ放った。

『――……!?』
 急所である『番犬の紋章』を集中的に狙い、敵に反撃する暇を与えず倒す。そう目論んだ衣更着の暗殺を受けた黒鈴蘭は、紋章ごと花を刈り取られ、血のような毒液を散らす。
 警戒していた地面からの奇襲はなし。事を済ませた後は他の花に気付かれる前に、再び一反木綿に変身してその場から飛び去る。急いで庭を突っ切り、そのまま敵の邸宅内へ。
「さあ、ここからが本番っす」
 花の妨害を突破しても油断できない、奥から感じられる危険な気配。この先に待ち受ける強敵に備えてより一層気を引き締めながら、綿狸忍者は"黒咲姫"の館に突入する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『黒咲姫』ブラック・ブロッサム』

POW   :    【確定ロル型UC】ダークフラワー
【前章で猟兵の身体に密かに植えていた、】【種子を開花させる事で、猟兵の生命力を】【強制的に奪い、その生命力を吸収する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【確定ロル型UC】ヤドリギマックス
【前章で猟兵の身体に密かに植えていた、種子】から【猟兵の体内に向けて無数の根】を放ち、【生命力を奪い、その身体を乗っ取る事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    【確定ロル型UC】千死万香ノ花
レベル×5本の【前章で猟兵の身体に密かに植えていた、魔】属性の【種子を開花させる事で、その花から強烈な毒】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 危険な黒鈴蘭の庭を突破した猟兵は、"黒咲姫"ブラック・ブロッサムの館に突入する。
 花意匠の調度品で飾られた荘厳なゴシック様式の館内に漂うのは、甘い花の香り。その出元を辿っていけば、館主の居所はすぐに知れた。館の奥にあるひときわ広い部屋の中、黒いドレスに身を包んだ妙齢の美女が佇んでいる。

「よく来たわね、猟兵(イェーガー)。招いた覚えはないけれど、久方ぶりの客だわ」

 蠱惑的な雰囲気に高慢な態度、そして猟兵達を見下す冷たい視線は、典型的な吸血鬼のもの。しかしその身から発せられる魔力は凡百の吸血鬼とは比較にならず、優雅になびかせた黒髪には、オニキスの宝石のような黒い『紋章』が、髪飾りのように寄生している。

「私が『黒咲姫』ブラック・ブロッサム。この夜を支配する『第五の貴族』の一人」

 ダークセイヴァーの未来を夜闇で閉ざす黒幕は、猟兵達の前で堂々と名乗りを上げた。
 自らの手で『紋章』を作り出せる彼女には、その高慢な振る舞いに見合うだけの実力がある。その手をさっとかざすだけで、館のあちこちから花が咲き、黒い花弁を散らす。

「ここまで来れたということは、それなりの実力はあるようね。だけど残念ね、この館で私に勝てる者はいないわ」

 ブラック・ブロッサムの自信の源は『黒花の紋章』。"黒い花"の数に応じて宿主を強化するこの紋章を最大限活用するために、彼女は館内のあちこちに花の種子を隠している。
 だが、それだけならまだ対処の仕様はある。高慢ながらも周到な彼女は、紋章の力を活かせるように、グリモアでも予知できなかったもう一つの仕込みを行っていた。

「この館に入るまでに庭園があったでしょう? あそこを通ってきた貴方達の身体にも、もう種子は植えてあるのよ」

 黒鈴蘭に『番犬の紋章』を与えたのはおまけ。花達の真の役割は"黒咲姫"に仇なす者を花の苗床にする事。彼女の意思ひとつで猟兵達に植えられていた種子は開花し、その生命力を奪いながら『黒花の紋章』の力を高める。

「ここは私の庭、私の花園。許可なく踏み入った愚か者は、全て私の花の贄となるのよ」

 館に咲く花と自身に植えられた種。その両方――せめてどちらか片方でも対処しなければ『黒花の紋章』で強化されたブラック・ブロッサムの打倒は不可能に近い。困難な状況に直面した猟兵達だが、ここまで来て逃げるという選択肢が無いのもまた事実である。
 妖しく美しく、地底に咲き誇る黒き庭園の女王との、決戦の火蓋は切って落とされた。
才堂・紅葉
「敵ながら天晴な仕込みね。気付かなかったわ」
「ここでネタバラシしなければ100点満点だったわね」

方針は【気合】だ
自身に向けて紋章の輝く掌を押し当て【生命力吸収】攻撃
紋章に吸われた生命力は自身に還元されないが、代りに自身より遥かに小さな種子の生命力も根こそぎ奪い去る事も出来るだろう
同時にこれがUC発動のキーだ

「さんざん悪趣味を見せつけられた返礼よ、受け取りなさい」

真の姿の【封印を解く】と、片手を翳して【重力属性攻撃、捕縛、結界術】で動きを封じ
【グラップル、早業、怪力、重量攻撃】の超重力打撃の九連コンボの本体直撃及び、紋章への【部位破壊】を狙いたい

「ハイペリア重殺術・九頭龍……ってね」



「敵ながら天晴な仕込みね。気付かなかったわ」
 "黒咲姫"ブラック・ブロッサムの口上を聞き終え、紅葉はぱちぱちと気のない拍手を贈る。花を咲かせる能力と『紋章』を事前の仕込みによって最大限活かす戦略はなるほど見事なものだ。黒鈴蘭の庭の探索中、それに気付いた者は皆無だったろう。
「ここでネタバラシしなければ100点満点だったわね」
 こちらが恐怖で慄く顔でも見たかったのか知らないが、敵は能力を露見させるのが早すぎた。ヴァンパイアらしい傲慢が生んだ隙を逃すほど紅葉は――そして猟兵は甘くない。

「あら、ばらしたって構わないでしょう? だってもう決着はついているのだから」
 高慢とも言える余裕を崩さないままで、ブラック・ブロッサムはすっと紅葉を指差す。
 肌の下で何かが蠢いた――と感じた直後、密かに植えられていた種子が一斉に芽吹き、無数の【ヤドリギマックス】の根が体内へと突き刺さる。
「……!」
 全身に根を張り巡らされる激痛に、流石の紅葉も表情が変わった。彼女に寄生した根は生命力を奪い、その身体を乗っ取る事により行動を封じる。哀れな犠牲者は何一つ抵抗できないまま宿り木に命を吸い付くされる――これまでの犠牲者達はそうだったのだろう。

「さあ、この状況をどう打開するというの? 貴女に攻略の方針はあって?」
「方針は――」
 酷薄に笑う黒咲姫の前で、紅葉は自由を失いゆく我が身に気力を注ぎ込み、辛うじて掌を自身に押し当てる。すると手の甲に浮かんだ「ハイペリアの紋章」が輝き、接触した者の生命力を吸収し始める。
「――気合よ」
 紋章に吸われた生命力は自身に還元されないが、代わりに自身より遥かに小さな種子の生命力も根こそぎ奪い去る事も出来るだろう。一度は咲いた黒いヤドリギの花が、生育の過程を早回しにされたように、灰色に萎れて枯れ果てていく。

「あら……無茶をするのね」
 どうせ奪われるのならという割り切りの元、自分ごと種子の生命力を絶やすという荒業にはブラック・ブロッサムも驚いたようだ。だがこれで終わりではない。紋章による生命力の吸収は、同時にユーベルコード発動のキーだ。
「エナジー供給リンク確認……騎士認証確認……超過駆動承認ランク9」
 必要十分な量を得たことで、紋章がより一層の輝きを放つ。真の姿の封印が解かれ、焦茶の髪と瞳が紅く染まる。これなるは重力の覇者、【ハイペリアの騎士】の降臨である。

「さんざん悪趣味を見せつけられた返礼よ、受け取りなさい」
 紅髪の娘がすっと片手をかざすと、ブラック・ブロッサムを含んだ前方の風景が歪む。
 ハイペリアの紋章が生み出す局所的な高重力が、光を歪ませているのだ。突発的な重力の檻に捕らわれた敵は、その場から一歩も動くことができない。
「……ッ」
 それでも重力に押し潰されなかったのは、流石『第五の貴族』と言ったところだろう。
 だが一時的にでも動きを封じられさえすれば十分。紅葉は自身にも重力操作をかけて一気に敵の懐に飛び込むと、超重力を込めた打撃の九連コンボを叩き込む。

「ハイペリア重殺術・九頭龍……ってね」

 強壮なる重力の拳がほぼ同時に九度の軌跡を描いて標的に直撃する。それは"黒咲姫"の本体及び寄生する『黒花の紋章』を打ち抜き、芯まで響く確実なダメージを刻み込む。
「……思ったよりもやるじゃない」
 冷たい笑みを浮かべるブラック・ブロッサムの口の端から、つうと一筋の血がつたう。
 余裕ぶった態度を見せていても今の連撃は効いたようだ。いかに上位者を気取っていようと、無敵の存在ではない――それを知る紅葉は気合を入れ直し、固く拳を握りしめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「随分と念の入った事だ。
しかし、それはその力の脆さの裏返し。」

毒を受けながらも生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
自分の周囲に無数の花びらを展開し
花の生命力を奪うと同時に
自分の体の状態から植え付けられた花の所在を
【見切り】その箇所をスカイロッドを操り風の刃で切開。
鳳仙花の花びらに花の生命力を直接喰らわせ
花を枯らし自分の傷はフレイムテイルの炎で焼き止血。

その後は周辺の花を鳳仙花の花びらで枯らしつつ
「この花も生命がある以上それを奪って
枯れない道理はない。
しかし、お前にとっての本当の弱点は花より
それを晒して悦に入る傲慢さだよ。」
敵の攻撃は花びらで防御
隙を見て花びらを一点に集中し紋章や急所への攻撃を行う。



「随分と念の入った事だ。しかし、それはその力の脆さの裏返し」
 周到に仕込まれた敵の計画により、身体に種子を植え付けられたと知っても、フォルクが取り乱すことは無かった。万全に場を整えれば絶大な力を発揮する『黒花の紋章』――ならばその前提を覆えしてしまえばいいだけの事だと。
「さあ、それはどうかしらね? 私の花は何度だって咲き誇るのよ」
 ブラック・ブロッサムが指差せば、次はフォルクの身体から【千死万香ノ花】が咲く。
 密やかに植えられた魔の種子から芽吹いた黒い花は、庭園に植えられていた黒鈴蘭すらも上回る強烈な毒で宿主を蝕み始めた。

「よく見ておけ。これが、お前の命を刈り取る手向けの花だ」
 フォルクは猛毒を受けながらも【生命を喰らう漆黒の息吹】を発動。花のユーベルコードを操る敵への意趣返しのように、自らの周囲に黒い鳳仙花の花びらを無数に展開する。
 これは触れる者の生命を喰らう冥界の花。舞い踊る花弁と触れあった千死万香ノ花は、生命力を失い枯れていく。それと同時に青年は自分の体の状態から植え付けられた花の所在を見切り、その箇所にスカイロッドを向ける。
「ぐっ……」
 放たれた風の刃がメスのように彼の肉体を切開し、体内に根を張っていた千死万香ノ花を露わにする。彼はそこを鳳仙花の花弁に直接喰らわせ、文字通り根こそぎに花の生命を枯らす。

「なんてまあ、無茶を……」
 放置すれば死ぬとはいえ、毒花を除くために自分の身体を切り刻むという荒療治。それを迷いなく断行したフォルクに、ブラック・ブロッサムは呆れたような表情を浮かべる。
 寄生した花を全て枯らすと、フォルクは黒手袋「フレイムテイル」から発する炎で自分の傷を焼いて止血し、さらに【生命を喰らう漆黒の息吹】をより広範囲に拡げていく。
「この花も生命がある以上それを奪って枯れない道理はない」
 『第五の貴族』の邸宅に吹き荒れた鳳仙花の花吹雪は、周辺に植えられた花の生命も枯らしていく。力の供給源を断たれた『黒花の紋章』の輝きは濁り、それは取りも直さず敵本体の弱体化をも意味していた。

「しかし、お前にとっての本当の弱点は花より、それを晒して悦に入る傲慢さだよ」
 その傲慢さが猟兵達に窮地を乗り越えるチャンスを作った。不快そうに眉をひそめたブラック・ブロッサムは、即座に新たな花を咲かせるとその花弁をフォルクに差し向ける。
「御託はいいわ。どうせあなた達はここで死ぬのよ……!」
 怒りと共に降りかかる花吹雪を、フォルクは漆黒の息吹で防ぎ。攻撃の後に生まれた隙を見て花弁を一点に集中し、敵の急所――すなわち『黒花の紋章』目掛けて撃ち込んだ。

「お前も知らない冥界の花だ、とくと味わうといい」
「ぐ……ッ?! よくも……!」
 槍のように集束された花弁が紋章を穿つ。自らが育てた花に数多の生命を喰わせてきた"黒咲姫"も、それをやり返される側に回るとは思っていなかっただろう。苦々しく歪んだ顔には苦痛だけでなく、屈辱と怒りが多分に含まれているのをフォルクは察していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
地底に籠って暗躍者気取り、周到に罠まで仕掛けて用心深い事ね
――そんなに私たちが怖い?
まぁ、無意味よ。絶望して死になさい

対策UCは【虚実反証】、確定事象の反転に特化した権能。
挙動を封じられているからこそ“絶対に発動し”、種子の攻撃は回避不可能だからこそ“必ず躱せる”。
確実に封殺しようとすればするほど裏目に出るという訳。種明かしなんてしてあげないけれど。

実体の無い影法師の身体に物理的な攻撃は効かないにせよ、《第六感+戦闘知識》の《見切り》で警戒は最大レベルを維持。
UC副次効果による加速も合わせ《空中戦》で攪乱、劫火を振り撒く《属性攻撃+範囲攻撃+蹂躙+地形破壊》で館の花諸共に敵を焼き払いましょうか



「地底に籠って暗躍者気取り、周到に罠まで仕掛けて用心深い事ね」
 自らの館で高慢に佇む黒咲姫に、冷たく軽蔑するような眼差しを向けるのはカタリナ。
 強く、そして計略を弄する事を厭わない高位のヴァンパイア。なるほど強敵には違いないだろう――だが、ここまで策を張り巡らせてようやく自分達の前に姿を現すとは。
「――そんなに私たちが怖い?」
「なんですって……?」
 格別の嫌悪と嘲りを込めたその一言が、ブラック・ブロッサムの勘気に触れた。膨大な魔力が迸り、館内に咲く花をざわざわと揺らす。オブリビオンですらない定命の者に、自分が恐怖を抱いているなどとは、彼女からすれば絶対にあり得ない侮辱であった。

「なぜ私が、あなた達のような下等生物を恐れなければいけないの!」
 敵は怒りを込めて指を鳴らし、カタリナの身体に植えた【ヤドリギマックス】の種子を芽吹かせようとする。発芽と同時に無数の根を生やすこの種は、宿主の身体を乗っ取ると共に生命力を奪い尽くす――その筈だった。
「まぁ、無意味よ。絶望して死になさい」
「――なッ?!」
 だが、どれだけ念じてもカタリナの身体から根は生えてこない。冷然とした表情のまま人狼の娘は平然とそこに立っている。彼女に植えられたはずの種子は全て不発だったか、あるいは最初から寄生に失敗していたか――そんな事はありえないと黒咲姫は驚愕する。

「ありえない。私のユーベルコードは絶対よ! こんな事って……!」
「絶対なんてものは"絶対に"存在し得ない――なんてね? 何事にも抜け道はあるものよ」
 カタリナが使用したのは【虚実反証】。己の肉体を影法師に変え、確定した因果を反転させ無効化する事に特化した権能である。これは挙動を封じられているからこそ"絶対に発動し"、種子の攻撃は回避不可能だからこそ"必ず躱せる"。敵ユーベルコードの発動を"絶対に"防ぎえない状況だからこそ、最大限の効果を発揮する裏技だ。

(確実に封殺しようとすればするほど裏目に出るという訳。種明かしなんてしてあげないけれど)
 黒咲姫のように自分から手の内をバラすほど、彼女は愚かでも傲慢でもない。敵の動揺が冷めやらぬうちに翼を広げ、全速で飛び立つ――影法師化の副次効果により、その加速は平常時の比ではない。あっという間に天井付近へと達し、そのまま戦場を翔け巡る。

「それじゃ、焼き払いましょうか」
 羽ばたきから振り撒かれる劫火が、紅蓮の雨となって館内に降り注ぐ。それは館に植えられた花諸共に敵を巻き込み、焼き焦がす。花を力に変える『紋章』持ちには辛かろう。
「このッ……小癪なやつ……ッ!!」
 ブラック・ブロッサムは花弁の矢を放ってカタリナを撃ち落とそうとするが、『紋章』の加護が十全でない状態で彼女の飛行を捉えることはできず、逆に撹乱されるばかり。
 そうこうしている間にも火の手は館全体に広がっていく。黒花を統べる女王の領域は、閃風の舞手に蹂躙され、破壊され、完璧だったはずの策略は根本から破綻していく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
外から駆けつけてきたカビパンが黒咲姫の話に割って入ってきた。新手の攻撃かと飛びずさる。

突然の乱入者に黒咲姫が視線を向けながら問うと、カビパンはババッと素早く変なポーズを取ると高らかに宣言した。

「ガチンゴチントークしましょう!」
「…」
謎のガチンゴチン言葉遣いになる雪女を見て黒咲姫の身には大きい脱力感が全身を包んだ。

「あたくし年甲斐もなくすんげぇドキドキしております!ごめんあそばせ、カメラを前にするとすぐにキンチョーしてしまうのがあたくしの悪い癖なの。反省…コツン。てへっドミ★」
その最初から最後まで意味の分からない頭がおかしくなりそうな、勢いとノリとプレッシャーによる惨事に黒咲姫は恐怖したという。



「思ったよりも面倒な外注共ね。でも問題ないわ。すぐに全て駆除して――」
「はい、ちょっと失礼します」
「――あげる、って誰?!」
 予想を超えた猟兵達の力に苦戦しつつも、高慢な態度を崩さぬブラック・ブロッサム。
 その話に割って入ってきたのはカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。館の外から駆けつけてきた不審な人物に、敵は新手の攻撃かと飛びずさる。

「あ、あなたも猟兵? わざわざ苗床になりに来るなんて殊勝なことね」
 一瞬動揺してしまった自分を恥じつつ、突然の乱入者に視線を向けながら問う黒咲姫。
 するとカビパンはババッと素早く変なポーズを取ると、唐突かつ高らかに宣言した。
「ガチンゴチントークしましょう!」
「…………は?」
 何だそれはと問う間もなく、始まってしまう【黒柳カビパンの部屋】。伝説級のトーク力を持った霊をその身に宿したカビパンは、有無を言わせぬ強烈なプレッシャーで場を制し、圧倒的なトークを披露する。ただしいつもとは違う妙な言葉遣いで。

「あたくし年甲斐もなくすんげぇドキドキしております!」
 謎のガチンゴチン言葉遣いでまくし立てる雪女姿の悪霊。外見的には二十代に見えるが本当は一体何歳だと言うのか。そんなことはブラック・ブロッサムにはどうでも良かったし、トークに付き合うつもりも無かった。
「ちょっと貴女、いい加減に……」
「ごめんあそばせ、カメラを前にするとすぐにキンチョーしてしまうのがあたくしの悪い癖なの」
 しかしカビパンは止まらない。言葉遣いこそ変だがお前絶対緊張してないだろと言いたくなるほど良く回る舌で、くるくると矢継ぎ早にトークを展開する。しかも内容の大半は相手にとって意味不明かどうでも良いことばかりで、ゲスト黒咲姫のストレスは鰻登り。

「反省……コツン。てへっドミ★」
「…………(イラッ)」
 擬音を口で言いながら舌を出すあざとウザい仕草に、黒咲姫は苛立ちを覚えながら動けなかった。その気になれば【千死万香ノ花】でコイツの口を封じれたかもしれないのに。
 彼女は恐怖していたのだ。その最初から最後まで意味の分からない、頭がおかしくなりそうな、勢いとノリとプレッシャーによる惨事に。

「あらやだあたくしったらまだゲストの紹介もしていませんでしたわ。本日のゲストは……えーとどなたでしたっけ? キンチョーしすぎてお名前を忘れてしまいましたドミ★」
「……もう、いいわ……」
 全身を包む大きな脱力感に襲われて、がっくりと膝を付くブラック・ブロッサム。相手をするだけ時間と精神をすり減らすだけだと、黒柳カビパンの恐ろしさを身を以て味わった彼女は、これ以上ガチンゴチントークに巻き込まれないように退避するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

招かれざる客か…それはお前の方だろう?
この世界でお前は害悪以外の何者でもない、庭園の雑草と同じように除草処分してやろう

デゼス・ポアを放ち、同時に銃で攻撃をする
弾幕を敵に張って注意をこちらに向けている隙に、デゼス・ポアの持つ刃で周囲の花や種子を密かに破壊する

フン、寄生植物か
存分に咲いてみるがいい…できるものならな

敵がUCを発動したらカウンターでこちらもUCを発動
開花する直前に全身を腐蝕性の猛毒ガスに変えて全て枯死させる
周囲の種子や花を含めてあらかた片付いたらデゼス・ポアと一気に追撃を行う

この花もお前も、宿る場所を間違えたな
そのまま骸の海の底で狂い咲くがいい、お前には似合いの場所だ



「招かれざる客か……それはお前の方だろう?」
 猟兵達のことを害虫のように扱う黒咲姫に、キリカは冷たい表情のままそう返した。
 この世界において有り得ざるもの。過ぎ去りし時の具現化、滅びの予兆オブリビオン。世界そのものから受け入れられない意味では、連中のほうがよほど招かれざる存在だ。
「この世界でお前は害悪以外の何者でもない、庭園の雑草と同じように除草処分してやろう」
 デゼス・ポアを放ち、同時に銃のトリガーを引く。銃声と弾幕に振り返った黒咲姫は、キリカ以上に冷酷で、残忍で、まさに害虫を見るような眼差しで彼女を見つめ返した。

「言ってくれるわね、猟兵風情が。楽に死ねるとは思わないことよ」
 殺意の込もった視線が射抜くのと同時に、キリカに植え付けられた【ダークフラワー】の種が芽吹く。寄生した宿主の生命力を強制的に奪い、黒咲姫へと還元する呪いの花――黒鈴蘭の庭に隠された恐るべき罠が今、花開こうとしている。
「フン、寄生植物か。存分に咲いてみるがいい……できるものならな」
 だが、キリカは黒い花が開花する直前に【プワゾン】を発動。黒鈴蘭の庭を切り抜けた時と同様に全身を紫の毒霧に変える。植物が生育する余地のない、腐食性の猛毒ガスに。
 敵のユーベルコードによる種とはいえ、実体すらない霧に寄生できるほど特殊な生態はしていない。彼女に根を張ろうとした種達は、花を咲かせる前に全て枯死していった。

「こいつ……ッ!?」
 仕込みを無効化されたブラック・ブロッサムは憎々しげに顔を歪めつつ、ならば力尽くで毒霧化したキリカを吹き散らそうとする。だが、そのために黒い花吹雪を起こそうとした所で彼女は気付く――自身の『紋章』の力が弱まっていることに。
「ヒヒヒヒヒャハハハハハ」
 見れば不気味でしわがれた哄笑を上げながら、デゼス・ポアが屋敷に植えられた花や種を破壊していた。錆びついた刃が庭師の鋏のように踊り、黒い花をチョキンと刈り取る。言うまでもなくその目的は、敵が持つ『黒花の紋章』の効力を失わせるためだ。

「しまった……!」
 キリカがこれ見よがしな挑発や弾幕を張って注意を向けさせたのは、その隙に人形に花を処理させるため。黒咲姫がそれに気付いた時にはもう手遅れで、付近にある花はあらかた片付けられた後だった。
「この花もお前も、宿る場所を間違えたな」
 奢りと慢心から致命的に判断を誤った敵に、酷薄な態度で告げて。キリカは戻ってきたデゼス・ポアと一気に追撃を行う。秘術と聖句で強化された銃弾と呪われし刃の連携攻撃――『第五の貴族』が万全な状態では牽制程度にしかならずとも、今ならばどうか?
「がぁッ!!?」
 寄辺となる『紋章』の加護を失ったブラック・ブロッサムの悲鳴が、その答えだった。

「そのまま骸の海の底で狂い咲くがいい、お前には似合いの場所だ」
 死せる過去を在るべき場所へと還すために、容赦のない追撃を叩き込むキリカと人形。
 散りゆく黒い花に混じって、紅い鮮血が花弁のように戦場に散る。劣勢に追い込まれた敵はやむなく彼女に背を向けて、まだ黒い花の咲いている場所まで撤退する他なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・デイドリーム
用意周到だね、敵ながら好感が持てるよ
だからといって状況はまったくよろしくないんだけど……さてさて

この状況、僕とシュエだけで対処するのは大変だ
だから、こういう時は人海戦術
幽霊騎士団の招来だ
彼らを館の中へと散らばせて、花を見つけ次第刈りとってもらおう
大暴れしてきてね

僕に植えられた種はシュエに探してもらおう
体内に潜ってもらい、種を発見したら教えてね
見つかり次第【呪詛】でその種や花を腐らせるよ

余裕が出来たら反撃開始
吸血鬼にも種と同じように【呪詛】を向けよう
どんなに美しい宝石でも砕け散ってしまえばそれまで
どんなに綺麗な花だっていつかは枯れてしまう
それは君も同じだね
土に、そして骸の海に還る時間だ



「用意周到だね、敵ながら好感が持てるよ」
 屋敷に侵入した敵対者に予め罠を仕込ませておくその手腕を、レンは手放しで讃える。
 ここまでの道程だけでなく、この屋敷そのものが敵が最大の力を発揮するための舞台。仇なす者を確実に屠るための準備は、悪辣ながら効果的であると評する他になかった。
「だからといって状況はまったくよろしくないんだけど……さてさて」
 後は敵の合図ひとつで体内に植えられた種は開花し、彼の生命を蝕むだろう。客観的には生殺与奪を握られているにも等しいこの状況で、しかし彼はまだ諦めてはいなかった。

「この状況、僕とシュエだけで対処するのは大変だ。だから、こういう時は人海戦術」
 そう言ってレンは【幽霊騎士団の招来】を発動し、自らの手足となって働く霊を召喚した。蹄の音と軍馬の嘶きと共に現れた数百の騎士は、彼の指示に応じて館内を散らばり、隠された花を見つけ次第刈り取っていく。
「大暴れしてきてね」
 という召喚主のリクエスト通り、物言わぬ騎士達は剣を振るって黒い花を散らし、種を馬蹄で踏み砕く。荘厳なゴシック様式の建物は彼らの手によって破壊され、略奪された後のような無惨な様相を呈する。

「それ以上やらせるものですか」
 無論、その狼藉を相手も黙ってはいない。分散した騎士を駆逐するよりも召喚主を排除したほうが早いと考えたか、黒咲姫はレンの体内の【千死万香ノ花】の種を開花させる。
「花の毒に侵され、腐り果てるがいいわ!」
 レンの身体に根を張って咲いた花は、強烈な毒素を発して宿主の身体を蝕みだす。だが彼も屋敷の中の種ばかりを気にして、自分に植えられた種をスルーしていた訳ではない。騎士達が館内を捜索している間、彼はシュエを自分の体内に潜りこませていたのだ。

(種を発見したら教えてね)
 レンの体に入った白いUDCは、自身の依代に侵入してきた"異物"の存在を見つけ出すとその位置を伝える。すると彼は即座にシュエが示した箇所に強烈な呪詛を流し込んだ。
 一度は彼の全身を覆い尽くすほどに咲いた千死万香ノ花達が、根から腐り落ちていく。花が枯れれば毒素の発生も止まり、蝕まれていた身体は再び自由を取り戻す。
「ちっ……!」
 それを見た黒咲姫が舌打ちし、次の手を打とうと――その前にレンは反撃を開始する。

「どんなに美しい宝石でも砕け散ってしまえばそれまで。どんなに綺麗な花だっていつかは枯れてしまう」
 それは君も同じだね――と、穏やかな笑みと共にレンが吸血鬼に向けるのは、種を腐らせたのと同じ呪詛。幽霊騎士団の破壊工作によって『黒花の紋章』の効力が低下している今、ブラック・ブロッサムはそれに耐えうるだけの抵抗力を持たない。
「土に、そして骸の海に還る時間だ」
「おのれ……こんな、もの……ッ!」
 いかに強がろうとも花枯れの呪詛は容赦なく彼女の身体を蝕んでいく。当初の凛とした様子は見る影もなく、萎れて頭を垂れた花のように膝を付くその姿は哀れでさえあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「狸忍者の衣更着と申しまっす。『第五の貴族』骸の海に送りまっす!」

忍者手裏剣でけん制しつつ、まず自分に埋め込まれた種の除去。
「いつの間に種を…ならば【化術】の真価は森羅万象あらゆるものになれる事。狸火変身の術っす!」
【化術】で炎に変身し【属性攻撃】で種子や花を排出、人に戻りストールで【なぎ払い】!

「次は館の黒い花の除去っす!」
妖怪煙放出して【迷彩】し【化術】で【おどろかし】て敵前離脱。
忍者ゴーグルの【視力】や【暗視】や熱視野、【第六感】を使って【索敵】し黒い花を種子ごと【串刺し】。

「強化は潰した、落花の時間っす!」
再度接敵、【結界術】で攻撃を防ぎ、動きを【見切り】ユベコで【なぎ払い】【暗殺】



「狸忍者の衣更着と申しまっす。『第五の貴族』骸の海に送りまっす!」
 忍者としての礼儀なのか、これから仕留める相手に挨拶する衣更着。その手が素早く動いたかと思うと、様々な形状を持つ忍者手裏剣がブラック・ブロッサムに襲い掛かった。
「私を骸の海に……? できるものですか。思い上がるな、害虫共ッ!」
 劣勢に立たされつつある"黒咲姫"は苛立った様子で手裏剣を払い、射殺すような眼光で衣更着を睨みつける。隠密術に長けた彼の身体にも魔花の種は既に植えられている――まずはそれを除去しない限り、この戦いに勝機は無いだろう。

「いつの間に種を……ならば化術の真価は森羅万象あらゆるものになれる事。狸火変身の術っす!」
 衣更着は手裏剣で敵を牽制しつつ【千死万香ノ花】を開花させられる前に化術を発動。どろんバケラーの真価とも言えるその力で変えられるのは、姿や生物だけとは限らない。どろんと立ち上る妖怪煙と共に、彼の身体は完全な炎となる。
「おいらの身体から出ていけっす!」
 たとえ魔の花と言えど火に弱いのは普通の植物と同じ。炎熱で炙った種子を体外に排出すると、すぐさま人の姿に戻り綿ストールでなぎ払う。珈琲豆のようにこんがり煎られた種子は、花を咲かせることなくパチンと砕けて散った。

「次は館の黒い花の除去っす!」
「くっ……!?」
 さらに化術を使う際に放出された妖怪煙は敵の目を眩ませる迷彩となり、見慣れぬ化術に驚いていた事もあって、ブラック・ブロッサムは衣更着の姿を見失う。その隙に彼は敵前を離脱すると「忍者ゴーグル」を被って、館の内部に隠された黒い花の捜索にあたる。
「視界良好っす!」
 視野拡大、暗視、熱視野等、様々な機能で視界を補助するこのアイテムは、暗い地底で小さな目標を探すにはうってつけだった。研ぎ澄ませた第六感も駆使して黒い花を見つければ、槍のように尖らせたストールで種ごと串刺しにしていく。

「力が抜ける……また私の花が刈られているの……!?」
 煙幕が晴れるまでの僅かな間に、衣更着が除去した黒い花の数は相当だった。付近にある花をパワーソースとする『黒花の紋章』の効果は大きく削がれ、黒咲姫の力が弱まる。
「強化は潰した、落花の時間っす!」
 その好機を逃さず、衣更着は【綿ストール・本気モード】を発動して再度接敵。焦った黒咲姫は掌から花吹雪を放って追い払おうとするが、即座に展開された結界がそれを防ぎ止める。慌てて後退しようとする彼女の動きを見切り、綿狸忍者はさらに前に一歩。

「散れっす!」
 射程・威力共に大幅に強化された綿ストールの一閃が、黒咲姫の身体を横になぎ払う。
 切り裂かれた花吹雪と共に、舞い散るのは真紅の鮮血。忍者として暗殺の業にも長けた彼の攻撃は、標的の急所を正確に捉えていた。
「がは……ッ!!?」
 女は苦悶と共に血を吐き、自らが作った血溜まりの上にがくりと膝を付く。自分が深手を負わされたのが信じられないという表情で――その瞳には怒りと屈辱が籠もっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
脅しやブラフ……ではないのでしょうね。
ではそれを伝えたのはなぜでしょうか? こちらが驚く、怯える表情を見るためでしょうか。
芽吹くその前に種を明かすその傲慢さが命取りです。

【ニヴルヘイム】を使用、自身の半径97mを絶対零度の冷気で覆います。この範囲内では花も種も全て凍るのみです。
無論私自身も冷気の影響圏内、この極寒の中では発芽もできないでしょう。

効果時間が切れた後も種が生きていれば発芽を許すでしょうが、その前に終わらせます。
向上した身体能力を活かし接近、「フィンブルヴェト」の銃剣で『串刺し』にし、絶対零度の弾丸の『零距離射撃』を撃ち込みます。



「脅しやブラフ……ではないのでしょうね」
 忌まわしい魔花の種を植えられたと聞いて、セルマは微かに目を細める。身体に違和感はないが、このタイミングで『第五の貴族』がハッタリをかますとも思えない。黒鈴蘭の花畑に注意を向かせたうえで、確実に侵入者を殺す策を練っていたということか。
「ではそれを伝えたのはなぜでしょうか? こちらが驚く、怯える表情を見るためでしょうか」
 クールな無表情で問いかけるセルマに、ブラック・ブロッサムはニヤリと嗜虐的な笑みを返した。愚かな敵が致命的な状態にあることを知り、恐怖と絶望に踊るさまを眺めるのが彼女にとっては何よりの娯楽なのだろう。そういった連中は地上でも腐る程見てきた。

「芽吹くその前に種を明かす、その傲慢さが命取りです」
 自分は吸血鬼の手で踊らされるつもりは無い。毅然とした態度を取り続けるセルマに、黒咲姫の笑みは苛立ちの籠もった渋面に変わる。矮小な人間如きが思惑通りに動かない、それはこの世界の黒幕として長年暗躍してきた吸血鬼のプライドを損ねるものだった。
「本当に口の減らない奴らね。花の苗床にされても同じ事が言えるかしら……!!」
 彼女に植えたのは無数の根で生命力を奪い、体の自由を乗っ取る【ヤドリギマックス】の種だ。身動きの取れないままじわじわと生命を搾り取ってやれば、その澄まし顔も歪むだろうと――最大の悪意を以て開花を命じようとした時、黒咲姫は異変に気付いた。

「なに、この寒さは?」
 かじかんだ指先が無意識に震える。いつの間にか吐く息も白くなっている。地底世界は地上に比べて気候の変化に乏しい――これほど急激な寒波の発生は明らかな異常事態だ。
「貴女の仕業ね……!」
「ええ、当然でしょう」
 その寒波の発生源たるセルマは、マスケットを構えながら事も無げに頷く。彼女が発動したのは自己強化と同時に周囲を絶対零度の冷気で覆う【ニヴルヘイム】。彼女を中心とした半径97m以内は、生命の息吹さえ凍りつくような極寒の地獄と化した。

「この範囲内では花も種も全て凍るのみです」
 先刻、黒鈴蘭の庭を蹂躙したブリザードと同等かそれ以上の寒気を以て、セルマは周辺に隠された花と種子を凍結させていく。吸血鬼が育てた魔花と言えども、絶対零度の中で花開くのは無理だ。氷晶と化して黒花が散るたび、敵の『紋章』から光が失われていく。
「無論私自身も冷気の影響圏内、この極寒の中では発芽もできないでしょう」
「おのれ……ッ!!」
 自らの思惑を盤面ごと覆され、いよいよ黒咲姫は憤怒を露わにして襲い掛かる。だが、パワーソースを失った彼女が弱体化しているのは動きからも明らか――その機を逃さず、セルマは力強く氷の床を蹴った。

(効果時間が切れた後も種が生きていれば発芽を許すでしょうが、その前に終わらせます)
 セルマが【ニヴルヘイム】を維持できる時間は99秒のみ。タイムリミットに加えて代償も重いユーベルコードだが、引き換えに得られる恩恵もまた大きい。冷気を纏って疾走する彼女の身体能力は、『黒花の紋章』の強化が消えた敵を上回っていた。
「なに、この疾さは……ッ、があっ!?」
 動きを追いきれなかった黒咲姫に、「フィンブルヴェト」の銃剣が深々と突き刺さる。アルマスと名付けられたその剣は、氷のように研ぎ澄まされた刃で標的を串刺しにした。
 銃身を挟んで向かい合う両者。苦しげに呻くブラック・ブロッサムと、変わらず冷静なセルマの視線が交錯した直後――トリガーが引き絞られ、銃声が戦場に鳴り響く。

「終わりです」
「―――ッ!!!?」
 ニヴルヘイムの絶対零度を宿した弾丸による零距離射撃。衝撃で吹き飛ばされた黒咲姫の体は、弾を撃ち込まれた部位を中心に凍りついていき、流れた血潮さえ紅い氷となる。
 庭園の女王を謳い、高慢にも己の勝利を確信していた吸血鬼は、その傲りさえも凍てつかせる絶対零度によって、敗北へと追い詰められつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
吸血鬼らしい見積もりの甘さだ。
自分に向かってくるのが一人残らずマトモで脆弱な人間だとしか考えていない。

UC【黒騎士呑み込む青き業火】。
鎧の中の種子と周囲の"黒い花"を鉛に変換しつつ【焼却】しつつ【ダッシュ】。
【地形の利用】と【地形破壊】の一石二鳥、加えて【生命力吸収】ならば此方も可能。
【限界突破】した戦闘力で接敵し大剣で【串刺し】にする。

凶悪な力を振るう貴様らに挑むのだ。
ここまで来たということは、それ以上の凶悪な存在と化しているのは至極自然というもの。
進化と呼べるような真っ当な有様ではないがな。

贄になるのは貴様の方だ、『第五の貴族』。焼き尽くしてくれる。



「吸血鬼らしい見積もりの甘さだ。自分に向かってくるのが一人残らずマトモで脆弱な人間だとしか考えていない」
 侵入者を蹂躙する為に仕組まれたブラック・ブロッサムの周到な罠を、ルパートは杜撰と評した。成程、ただの人間相手ならば密かに植えられた種子は恐ろしい結果をもたらしただろう。だが生憎と彼の身体は種が根を張れるような造りをしていない。
「我が血はもはや栄光なく……されど未だ我が業と炎は消えず……!」
 兜の奥で詠唱を紡ぐと【黒騎士呑み込む青き業火】が発動し、鎧の中に入り込んだ種子が燃える鉛に変換される。蒼く発火しながら体内より溢れ出したそれは、彼に寄生しようとした種を焼き尽くすのみならず、周囲に咲く"黒い花"をも焼却していく。

「……不粋な化け物が紛れ込んでいたわね」
 蒼炎を纏い佇む黒騎士に、黒咲姫は嫌悪の視線を向ける。主が死してなおその魂を宿し稼働を続け、肉体も記憶も喪ってなお残る騎士道に従い悪を討つ――血の通わぬ執念の化身となった彼は、全ての吸血鬼にとっての脅威だ。
「凶悪な力を振るう貴様らに挑むのだ。ここまで来たということは、それ以上の凶悪な存在と化しているのは至極自然というもの」
 地上での戦いを経て、遥かな地の底へ。闇夜の黒幕たる『第五の貴族』を目前に捉えたルパートが駆け出すと、滴り落ちた鉛が床を燃え上がらせる。蒼炎と鉛を纏ったその姿はただ敵を滅ぼさんがために魂を燃やす、覚悟の強化形態であった。

「進化と呼べるような真っ当な有様ではないがな」
「ふざけるな、亡霊もどきが……!」
 ブラック・ブロッサムがさっと手を振ると、どこからともなく黒い花弁が嵐を起こす。
 主の元から狼藉者を遠ざけようとするそれを、しかしルパートは一顧だにしない。花であれ建物であれ、今の彼に触れる物は全て焼き尽くされるか鉛の一滴に変換されるのみ。敵に整えられた舞台を破壊しつつ、自身に有利なよう地形を塗り替えられて一石二鳥だ。

(加えて生命力吸収ならば此方も可能)
 黒騎士は【ダークフラワー】を焼き払いながら白兵戦の間合いに踏み込むと、手にした大剣を猛然と突き出す。燃える鉛を浴びて炎を纏ったその刀身は、驚愕するブラック・ブロッサムの胸に、深々と突き刺さった。
「がぁ……ッ!!」
 その美貌を苦痛に歪め、獣のような呻き声を上げるブラック・ブロッサム。胸の中心を剣で串刺しにされても生きているのは流石に高位の吸血鬼と言えるだろう。だがルパートの燃え盛る執念の炎は、この程度で収まりはしない。

「贄になるのは貴様の方だ、『第五の貴族』。焼き尽くしてくれる」
 突き立てられた大剣を通じて、吸血鬼の命が黒騎士に吸われていく。その生命力は即座に燃える鉛に変換され、更に火力を増すための糧に。それは標的の生命が尽きるまで消えることのない、青き業火の連鎖であった。
「が、ああぁぁぁぁァァッ!!!!」
 黒咲姫の叫びがひときわ大きくなり、炎上する邸宅に悲鳴が木霊する。栄光を求めず、実直に己が務めを遂行する黒騎士は、果たして着実に『第五の貴族』を追い詰めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
気密性(●防具改造)を高めていたのが功を奏しましたね

(●操縦する妖精ロボの精密動作と●情報収集性能活かしレーザー●スナイパー乱れ撃ち射撃で躯体に損傷与えず生えた花や周囲の花を瞬間思考力で素早く所在●見切って焼き切り除去)

装甲の清掃や簡易的な整備など、この手の作業は慣れておりますので
ですが、庭師として雇って頂く為に訪れた訳ではありません
地上の解放の為、騎士として討ち取らせて頂きます

花のレーザー除去を妨害せんとする黒咲姫から妖精ロボをかばい同時並行で戦闘
飛ばす種子を剣盾で防ぎ、近接戦闘
弱体化を防ごうと場所を移さんとすれば妖精ロボで紋章狙撃
回避行動取らせ動きを制限

すかさず推力移動で接近、紋章斬りつけ



「くそ……もっと……花よ、もっと私に力を……!」
 猟兵達の攻勢に追い詰められていく"黒咲姫"ブラック・ブロッサム。傲慢な彼女は劣勢を認めず、新たな花を咲かせて『黒花の紋章』の力を増そうとする。邸内に狂い咲く無数の花々、そこには猟兵の体内に植えられていた種子も含まれていた。
「気密性を高めていたのが功を奏しましたね」
 だが、黒鈴蘭の毒対策の一環として装甲を改造していたトリテレイアは、機体中枢への種子の侵入を免れていた。開花した【ダークフラワー】は彼の生命力を奪おうとするが、伸ばされた根は表面装甲とフレームの一部を侵食するに留まる。

「殖えすぎた花は根から除去しなくては」
 黒花の侵食が中枢に達する前に、トリテレイアの肩部収納スペースから【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード】が発進する。飛び立った機械の妖精達は偵察用機体としての精密動作と情報収集性能を活かし、機械騎士の躯体に生えた花にレーザーを照射した。
「装甲の清掃や簡易的な整備など、この手の作業は慣れておりますので」
 正確な照準と出力調整で、躯体には損傷を与えず花のみを焼き切る。自由を取り戻した彼は関節部に残った根を引き抜くと、妖精達に指示して周囲に咲いた黒花の除去も行う。
 マシンの分析力と瞬間思考力は、まだ開花する前の種の所在も素早く見切り、レーザーの乱れ撃ちで焼き尽くす。邸内に出現した花畑は、またたく間に焼け野原と化していく。

「大した腕前だこと。猟兵でなければ私の庭で雇ってあげても良かったわ」
「『第五の貴族』に評されるとは光栄な事ですね」
 苛立ちを表情に隠さず、皮肉の籠もったブラック・ブロッサムの言葉に、トリテレイアは平然と返す。黒花を除去する妖精ロボをかばうように、剣と盾を構えて前に出ながら。
「ですが、庭師として雇って頂く為に訪れた訳ではありません。地上の解放の為、騎士として討ち取らせて頂きます」
「機械人形如きが、偉そうに!」
 ヒステリックな叫び声と同時に、女の傍らに咲いた黒花が種子を飛ばす。除去の妨害と再寄生を狙ったそれを機械騎士は剣盾で防ぎながら前進。近接戦闘の間合いに踏み込む。

「ちぃっ……ここももう駄目ね」
 黒花を焼き払われ『紋章』の効力が万全でない状態で、騎士と近距離で戦うのは不利。そう判断したブラック・ブロッサムは場所を移そうとするが、それを見たトリテレイアは妖精ロボに支援射撃を指示する。
「狙撃開始」
 黒髪に紛れて寄生する『黒花の紋章』を、妖精のレーザーが狙い撃つ。当たれば僥倖だが目的はそれではない、黒咲姫に回避行動を取らせ動きを制限することができれば十分。

「面倒な虫ケラどもめ……!」
「心強い味方というわけです。……動かしているのは私なのですが」
 黒咲姫が反射的に身を翻した隙を突いて、トリテレイアは推力移動で距離を詰め。妖精達が狙ったのと同じ箇所、すなわち『黒花の紋章』目掛けて儀礼用長剣を振り下ろした。
「お覚悟を」
「……ッ!!?」
 渾身の膂力にて斬りつけた一撃が『紋章』にヒビを入れる。それが力の源である点では『第五の貴族』も配下と変わらない。がくりと糸が切れたように、黒咲姫が膝を付いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
身体が……軋む!
体内で魔物が蠢いている!?
奴の種子だけではない。
開花を止めようと悪魔の心臓が呪詛鼓動を高め始めたか。
ディーモンハートはアンタの花がお気に召さないらしい。

オレの体内には無数の呪物が埋め込まれている。
綺麗な花を咲かす苗床としちゃ不適格過ぎるな。
そして我が呪獣ソウルトーチャーは既に放たれている。
館内の花を刈るように命じた。
穢れた禍き花の気配なら感じとり易いだろう。
花刈りの邪魔はさせんよ、ここでオレと遊ぼうぜ?
呪詛鼓動が高めた殺気を掌で練り上げる、呪殺弾の雨を浴びろ!

ソウルトーチャーが帰ってきたらUC始動
黒花を喰らった今宵の呪獣は如何な姿に変わるのか?
お姫様の身体で試してやろう!



「身体が……軋む! 体内で魔物が蠢いている!?」
 『第五の貴族』との戦いが激化する中、ナギは我が身に起こった異変に苦しんでいた。
 ざわざわと体内に根を張ろうとする何かと、ドクンドクンと激しく脈打つ鼓動。全身を駆け巡る痛みと共に、彼の中では今ふたつの力がせめぎ合っている。
(奴の種子だけではない。開花を止めようと悪魔の心臓が呪詛鼓動を高め始めたか)
 奴隷だった幼少期に受けた人体改造の証、体内に埋め込まれた悪魔の心臓。宿主の寿命を代償に力を付与するそれは、同じ宿主から生命力を奪おうとする【ダークフラワー】を"外敵"と認識したらしい。ナギからすれば勝手な話だが、これを利用しない手はない。

「ディーモンハートはアンタの花がお気に召さないらしい」
 ナギは皮肉げな言葉を黒咲姫に投げつけながら、胸が張り裂けそうなほどに暴れ回る心臓の鼓動を、押さえ込むのではなく敢えて好きにさせる。闇の花が何だというのだ、彼の身体にはそれより遥かに悍ましいモノがとうに巣食っている。
「オレの体内には無数の呪物が埋め込まれている。綺麗な花を咲かす苗床としちゃ不適格過ぎるな」
 まるで病原体を攻撃する白血球のように――などと表現するのは綺麗過ぎるか。悪魔の心臓を始めとした呪物達はナギに寄生しようとした種子に反応し、膨大な呪力でその開花を阻む。芽を出すことさえ叶わなかった種は、体外に排出され腐れ落ちるのみ。

「苗床にすらならないなんて……なんて悍ましい!」
「さて、残念だったな」
 黒咲姫から浴びせられる嫌悪の罵倒を、涼しい顔で受け流すナギ。敵に恐れられる事などとうに慣れている。ましてや業深き吸血鬼共に何を言われたところで気になるものか。
「そして我が呪獣ソウルトーチャーは既に放たれている」
「――ッ!?」
 続く一言で女吸血鬼の顔色が変わった。彼の発言はブラフではなく、咎人の骨肉より錬成された拷問兵器「ソウルトーチャー」は主人の命令を受けて単独行動中である。そしてこの状況下で配下を別行動させる目的など、ひとつしか無いだろう。

「館内の花を刈るように命じた。穢れた禍き花の気配なら感じとり易いだろう」
 呪獣の役目は『黒花の紋章』から力の供給源を断つこと。邸内に隠された種も含めて、咲き乱れる黒い花がひとつ散るたびに、ブラック・ブロッサムの力は徐々に衰えていく。
 これ以上花を失うのは不味いと、彼女は慌てて呪獣の排除に向かおうとするが、当然のようにナギが目の前に立ちはだかった。
「花刈りの邪魔はさせんよ、ここでオレと遊ぼうぜ?」
 呪詛の鼓動が高めた殺気を掌で練り上げ、呪殺弾の雨を浴びせる。直接間接を問わず数多の人間を殺めてきた輩に、情けをかける理由は微塵もない――咎人殺しの殺人鬼の殺意が、紋章の力を喪ったブラック・ブロッサムを攻めたてる。

「くっ……調子、に……!」
 呪弾の雨を浴びながらも敵は反撃の機会を窺っていたが、それよりも先に付近の花を刈り終えたソウルトーチャーが帰ってくる。役目を果たした呪獣の労をねぎらう代わりに、ナギはそいつの口元に自身の血を垂らし【禍ツ凶魂】を始動させる。
「黒花を喰らった今宵の呪獣は如何な姿に変わるのか? お姫様の身体で試してやろう!」
 酷薄な表情を浮かべる青年の前で、封印を解かれた呪獣は見るも悍ましき殺戮捕食態に変化する。禍つ花さえも己の糧として、肉と骨と植物が混じり合ったような異形の姿は、黒咲姫すら恐怖に震え上がるほどだった。

「や、やめなさい……やめて、来ないでッ!?」
 ブラック・ブロッサムの悲鳴も虚しく、襲い掛かったソウルトーチャーは剥き出しの爪牙で獲物を蹂躙する。獣の咆哮と悲鳴が邸内に木霊し、むせ返るほどの血臭が充満する。
 常に捕食者であった彼女は、捕食される側になったことで、初めて真の恐怖を知った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
ガイオウガ(外殻)の中まで通すなんて…。
一つ、賭けをしてみましょうか

【ブラッディ・フォール】で「侵略の氷皇竜」の「氷皇竜メルゼギオス」の力を使用(氷皇竜の翼や尻尾等が付いた姿に変化)。
【アイシクル・ミサイル】を自身の魔力【属性攻撃、誘導弾、高速詠唱、全力魔法、鎧砕き、鎧無視】で強化。【アイシクルミサイル】と【多重詠唱】した凍結魔力弾を大量に津波の様に敵へ放つのみならず、四方八方、手当たり次第に壁をぶち破って発射。
屋敷中をミサイルと魔術で凍結させ、花を対処。
更に自身ぼ花は自らに凍結弾を撃ち込み対処し【アイス・リバイブ】で復活・強化再生。

最後は【アブソリュート・ゼロ】で全て凍結させてあげる!



「ガイオウガの中まで通すなんて……」
 庭では溶岩の外殻を纏っていたにも関わらず、改めて意識すれば微かな異物感がある。
 密やかに仕込まれていた敵の罠に、フレミアは厄介ねと眉をひそめ。しかしながら怖気づいた様子はなく、その表情はすぐに微笑みに変わった。
「一つ、賭けをしてみましょうか」
「なんですって……?」
 訝しむ敵の目の前で、再び【ブラッディ・フォール】を発動したフレミアの姿が変わっていく。今度は熱気ではなく冷気を――「氷皇竜メルゼギオス」の力を得た彼女は竜の翼や尻尾を生やし、氷の鎧を纏った竜人の姿となって、黒き庭園の女王に挑む。

「どんな力を使おうと無駄よ! 私の花に食らい尽くされなさい!」
 黒咲姫がパチンと指を鳴らすと、予め植え付けられた【千死万香ノ花】の種が芽吹く。寄生先に根を張りながら咲いた花は、先刻の黒鈴蘭のそれを上回る強烈な毒素を発する。
 対するフレミアは毒花に侵されながらも【アイシクル・ミサイル】を使用。自身の魔力で強化した氷の棘と、同時に多重詠唱した氷の魔力弾を大量展開し――津波の如く放つ。
「わたしが毒にやられるのが先か、氷が花を凍てつかせるのが先か……」
 それは敵のみならず四方八方、手当り次第に放たれては壁をぶち破り、屋敷中に仕込まれた"黒い花"を凍らせていく。のみならず凍結弾は彼女自身にも向かい、体内から生えた千死万香ノ花を撃ち抜いた。

「馬鹿ね……苗床にされるのが嫌だからって、自分で自分を撃つなんて」
 自暴自棄のようなフレミアの対処法に、嘲りの笑みを浮かべるブラック・ブロッサム。だが、その表情はすぐにミサイルと魔術を浴びた花達と同様に"凍りつく"ことになる。
「……賭けに勝ったわ」
 舞い散るダイヤモンドダストの中から現れたフレミアの身体は、先ほどよりも分厚い氷の鎧に覆われていた。彼女は寄生した花を凍らせると同時に【アイス・リバイブ】で自身が受けたダメージを瞬時に回復、さらに戦闘力を強化した状態で再生復活を遂げたのだ。

「これでもう、あなたに力を与える花は無いわね」
「く……ッ!?」
 凍結弾の嵐が吹き荒れた跡地で、今度は氷皇竜フレミアが冷たく笑う。付近にあった黒い花は全て凍りつき、ブラック・ブロッサムの『黒花の紋章』はもはや力を失っている。
 華麗にして苛烈な氷の舞台の最後を締めくくるのは【アブソリュート・ゼロ】。物体を一瞬で分子レベルまで凍結させる冷気の奔流が、怒涛の勢いで戦場を蹂躙する。

「全て凍結させてあげる!」
 フレミアの高らかな宣言の下、荘厳なゴシック式の屋敷が氷の帳に覆われていく。それは屋敷の主たるブラック・ブロッサムも例外ではない。広域を無差別に蹂躙する絶対零度から逃れる術など無く、身を守る盾もここには無い。
「―――……ッ!!!!」
 吐く息すら凍るような極寒の中、黒き庭園の女王の声にならない悲鳴だけが木霊する。
 半身が凍りついたその姿は見るも無惨で、王としての威厳はもはや無いに等しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
用意周到だね…。まさか、庭園がそんな罠とは思わなかった…。
これ以上はやらせない…!

【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!
周囲を崩壊させる程の媛神による莫大な呪力を自身の種子へ注ぎ込み、侵食…。
種子及び花を呪力で崩壊させて除去するよ…。

後は無限の終焉の魔剣に【呪詛】で更に強化し、連続斉射で攻撃…。
魔剣の呪力による弱体化を狙うと同時に、回避された魔剣も少しずつ屋敷を呪力で侵食して枯らしていく事で黒い花を少しでも除去…。

敵の力を削ぎ、こちらの環境を整えつつ戦闘を行い、なるべくこちらが有利に立ち回れる様に展開…。

終焉の魔剣の斉射と共に一気に接近し、凶太刀・神太刀の二刀で紋章を狙い、一気に斬り捨てるよ…。



「用意周到だね……。まさか、庭園がそんな罠とは思わなかった……」
 黒鈴蘭の庭に仕掛けられていた敵の策略を知った璃奈は、警戒を強めながらそっと胸元に手を当てる。"黒咲姫"の意思によって花開いた【千死万香ノ花】は、既に彼女の身体に根を張り、強烈な毒素を放ち続けている。
「これ以上はやらせない……!」
 毒が回りきり戦えなくなる前に、発動するのは【九尾化・魔剣の媛神】。封印解放と共に解き放たれた莫大な呪力を、寄生する種子へ注ぎ込み、侵食――その圧に耐えきれず、毒花の種は根こそぎ崩壊していった。

「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……!」
 体内の花の除去が完了すると、璃奈はすぐさまその力を黒咲姫に向ける。媛神の呪力を呼び水として顕現するのは、終焉の力を宿した魔剣。呪詛によって更に強化された無限の刃が、豪雨となってブラック・ブロッサムの下に降り注いだ。
「このっ……いい気になるんじゃないわよ!」
 髪に飾った『黒花の紋章』を輝かせ、花吹雪を起こしながら魔剣の連続斉射に対処する黒咲姫。しかしこれまでに蓄積されたダメージと疲労から、その動きは明らかに精彩を欠き、避けきれなかった刃が彼女の身体を切り裂く。

「ッ……! この剣、呪いが……!」
 璃奈の魔剣に込められた呪力は、斬った相手の力を弱体化させる。万全な状態の『第五の貴族』であれば、さしたる影響は無かっただろう。しかしそれも累積すれば話は別だ。
 同時に回避された魔剣も少しずつ屋敷を呪力で侵食していく。こちらは敵本体の弱体化ではなく『紋章』のパワーソースを枯らすのが狙いだ。
(黒い花を少しでも除去できれば……)
 封印を解かれた璃奈の呪力は、ただ放出するだけでも周囲を崩壊させる。それを込めた魔剣が突き立った箇所から屋敷は急速に朽ちていき、隠されていた黒い花も巻き込まれて枯れ果てる。完璧に整えられていた筈の黒咲姫の舞台は、今や張りぼても同然であった。

「だいぶ弱ってきたみたいだね……」
「五月蝿いッ!」
 敵の力を削ぎ、こちらの環境を整えつつ戦闘を行い、なるべくこちらが有利に立ち回れる様に展開――それが璃奈の作戦だった。黒咲姫は毅然と吠えるものの、無限の魔剣と呪力による戦場の再構成に対応できず『紋章』の輝きも失せていく。
「この私が、自分の屋敷で遅れを取るですって? そんな馬鹿な事が!」
 今だ劣勢を受け容れられぬ精神とは裏腹に、肉体に現れる弱体化の影響は顕著だった。敵の動きが鈍ったのを好機とみて、璃奈は終焉の魔剣を斉射すると共に一気に接近する。

「私が……負けるはずが……ッ」
 余力を振り絞って魔剣を振り払った直後、黒咲姫の目前に現れたのは二つの妖刀を構えた魔剣の媛神。使い手に比類なき疾さを与える「九尾乃凶太刀」、斬った相手の不死性や再生力を封じる「九尾乃神太刀」――その二刀による連撃が邪悪なる吸血鬼を襲う。
「一気に斬り捨てる……!」
 目にも止まらぬ速さで放たれた双刀の斬閃は、狙い過たずに『黒花の紋章』を捉えた。
 ピシリと音を立てて大きくひび割れる紋章。力の源を損なったブラック・ブロッサムは「ぐがぁッ」と獣のような叫びを上げて、力なくその場に崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イリス・ローゼンベルグ
即座に銃型の【フェイクウェポン】と防御用のナイフを構え、黒咲姫を攻撃
あの悪趣味な庭と言い、先の話といい、彼女は嗜虐的で尊大
なら、その性格を最大限利用させてもらうわ
あくまで私は普通の人間、すぐに殺せる取るに足らない存在、そう油断させる
相手の目を私に引きつけ、足下から伸ばした【狂乱の触葬】で館に咲く花の捜索と排除をする隙を作る為にね

防戦一方、といった【演技】で花排除の時間を稼ぎ、一気に反撃に出る
体を変形させ【茨の触手】を展開、【串刺し】を狙う
植え付けられた種子は【致死の体液】を噴出させる事で枯死させ対処、最悪埋められた部位を切り離す

「残念だったわね……私はあなたの天敵よ」
「花に喰われて逝きなさい」



「ごほっ……いい気にならないことね。この館で私に敵う者などいないのだから……!」
 全身におびただしい数の傷を負い、美しいドレスもボロボロになって。それでもなお、黒き庭園の女王は高慢な態度を崩さなかった。『第五の貴族』としての絶大な力、そして今だ館内に隠された無数の種子が彼女の自信となっているのだろう。
「負けるわけがないのよ、この私が! 猟兵如きに!」
 しかしその表情に浮かぶのは隠しきれない焦り。万一の敗北の可能性が脳裏をよぎるからこそ、彼女はより傲慢に振る舞おうとする。そこにイリスは付け入る好機を見出した。

(あの悪趣味な庭と言い、先の話といい、彼女は嗜虐的で尊大。なら、その性格を最大限利用させてもらうわ)
 擬態した少女の姿で微笑むと、イリスは即座に銃と防御用のナイフを構え、黒咲姫に攻撃を仕掛ける。放つのは何の変哲もない鉛玉――いくら手負いでも高位の吸血鬼にそんなものが通用しないのは承知の上で。
「効くわけないでしょう、こんなものッ」
 片手で弾丸を払い飛ばしながら、黒咲姫がイリスを睨め付ける。殺気の籠もったその視線に、少女は怯えたようにびくりと震え、後ずさりながら鉄砲のトリガーを引きまくる。
 それを意にも介さず、返礼に押し寄せるのは黒い花吹雪。植え付けた種を開花させるまでもないと言うことか、ユーベルコードではない攻撃のみで獲物を蹂躙するつもりだ。

(あくまで私は普通の人間、すぐに殺せる取るに足らない存在)
 そう油断させられればしめたものと、イリスは花吹雪に対して防戦一方といった演技をしながら心の中で舌を出した。相手の目を自分に引きつけ時間を稼ぎつつ、気付かれないよう足下から複数の触手を地中に潜航させ、館に咲く花の捜索とその排除に当たらせる。
 敵はまだ少女の見た目に騙され、その本質に気付いていない。密やかな【狂乱の触葬】は黒い館の全域に広がっていき、隠された花の種までひとつも残さず徹底的に排除する。
「馬鹿な人間め。たっぷり後悔して死になさ……なに?」
 いい気になって少女を攻撃していたブラック・ブロッサムもやがて異常に気付く。いつの間にか『黒花の紋章』から輝きは失われ、黒い花による強化が消えた彼女は今や"ただの吸血鬼"と同等のレベルまで弱体化していた。

「簡単に騙されてくれて助かったわ」
 ここに至ってイリスは本性を現し、身体を変形させて一気に反撃に出る。薔薇と茨が絡み合った異形より展開された茨の触手は、油断しきっていた標的に回避や防御の暇を与えず、その胴体を深々と刺し貫いた。
「がは……ッ! あ、貴女、人間じゃなかったの……!?」
 串刺しにされた黒崎姫は驚愕に目を見開きながら、慌てて【千死万香ノ花】を開花させようとする――だが、イリスの体内に植え付けられていたはずの種子は、ひとつとして芽吹くことはなかった。

「残念だったわね……私はあなたの天敵よ」
 イリスは体内を流れる「致死の体液」を噴出させ、種子が開花する前にその大半を枯死させていた。深くに埋まって対処の難しい種も、触手の集合体である自身の一部を切り離せば事足りる。薔薇のバイオモンスターである彼女が、同じ花に殺されるはずがない。
「そんな……ッ!!」
 花を操る能力者であるブラック・ブロッサムにとって、彼女はまさに相性最悪だった。黒い花に満たされていたゴシック屋敷は、今や床や壁をつたう薔薇の茨に侵食され、その模様を様変わりさせていた――まるで館の主が別の者に移ったかのように。

「花に喰われて逝きなさい」
 薔薇の女王と呼ぶに相応しい威厳を以て、イリスが静かに宣告する。茨の触手がうねり、獲物を貫いたままその血肉を喰らう。数多の生命を花の苗床にしてきた黒咲姫にとって、これほどの屈辱と恐怖はあるまい。
「や……やめなさい……やめて……ッ!!!!」
 ブラック・ブロッサムの上げた悲鳴は、絡みつく無数の茨によって遮られ。必死に逃れようともがくほどに、茨の棘はより深く彼女の身体を傷つけ、苦痛をもたらすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ええ、お前達の力は誰よりも知っている
その紋章の事も、お前自身の事も…ね

だからこそ加減はしない。全身全霊、推して参る…!

過去の戦闘知識から敵のUCを見切りカウンターでUCを発動
瞬間的に肉体を"闇の炎"化する早業で体内の種子を焼却し、
闇炎属性攻撃の爆発を乱れ撃ち周囲の黒花をなぎ払い武器改造

…来たれ、この世界を覆う大いなる力よ
我が身に宿りて、万象を裁く獄炎となれ…!

限界突破した魔力を溜め自身を闇炎の鳥に変化して突撃
闇炎のオーラで防御を無視し残像のように体内に切り込み、
生命力を吸収する闇炎の大爆発を起こす

…この一撃で終わらせる。花と散りなさい、黒咲姫…!

…この世界に仇なす存在を討つ。それが私の使命よ



「あり得ない……『第五の貴族』であるこの私が、なぜ……!?」
 猟兵の攻勢に追い詰められ、満身創痍のブラック・ブロッサムは、それでもまだ自分の劣勢が信じられないと叫ぶ。紋章の創造主が、最も有利な場所で、周到に罠を仕掛けた上で戦いに臨んでいるのに、どうして負けるはずがあるのか。
「私はお前たちなどよりずっと強い! 猟兵如きに遅れを取るはずがない!」
「……ええ、お前達の力は誰よりも知っている。その紋章の事も、お前自身の事も……ね」
 惑乱する女吸血鬼の叫びに、静かな調子で応えたのはリーヴァルディ。過去を刈り取る大鎌を構え、佇まいには一分の隙もない。何度も戦ってきたからこそ、吸血鬼の力は骨身に沁みるほどに理解している――その攻略法も、弱点も、策を凌駕する業も。

「だからこそ加減はしない。全身全霊、推して参る……!」
「ッ……ならその全てを奪い尽くして、私の糧にしてやるわ!」
 ぐっと姿勢を低くして切り込みの構えを取ったリーヴァルディに対して、ブラック・ブロッサムは【ダークフラワー】を発動。密かに植えられていた最後の種子が開花すれば、少女の生命力は吸血鬼に奪い取られ、両者の力関係は揺るぎないものとなるだろう。
「……限定解放。テンカウント……ッ」
 だが、歴戦の戦闘知識から敵のユーベルコードの起こりを見切ったリーヴァルディは、即座に対抗して【限定解放・血の魔装】を発動。瞬間的に自身の肉体を"闇の炎"と融合させ、開花する前に体内の種子を焼却した。

「……来たれ、この世界を覆う大いなる力よ。我が身に宿りて、万象を裁く獄炎となれ……!」

 闇の炎と完全に一体化したリーヴァルディは、爆発を起こして周囲の黒花をなぎ払う。
 その姿形は徐々に人間のそれから離れていき、闇炎の翼を広げた巨大な鳥に変化する。
 この【血の魔装】は絶大な攻撃力と耐久力を誇るが、代償として十秒以上使用すると徐々に暴走を始め、最悪の場合そのまま意識を失い戻らなくなる。まだ"帰ってくる"つもりが彼女にあるのなら、攻撃を仕掛ける猶予は一度きり。

「……この一撃で終わらせる。花と散りなさい、黒咲姫……!」
 限界を超えた魔力を漆黒のオーラとして迸らせ、闇炎の鳥が飛翔する。それは瞬きする間もない刹那に戦場を翔け抜け、残像のようにブラック・ブロッサムの体内に切り込む。
 その直後――文字通りにリーヴァルディの"全身全霊"を費やした闇炎の大爆発が起こり、轟音と共に戦場を揺るがした。

「が―――ああああぁぁぁァァァァァッ!!!!!?!!」
 闇の炎が糧とするのは生命の灯そのもの。その全熱量を体内に叩きつけられた黒咲姫の絶叫は苦痛に満ちたものだった。心臓が燃え尽きてもその勢いは衰えず、炎に包まれたまま彼女は踊り狂う。その背後で、血の魔装を解除したリーヴァルディが人の姿に戻った。
「……この世界に仇なす存在を討つ。それが私の使命よ」
 理性を失う瀬戸際に立ってもなお、その紫の瞳から信念の輝きは失われはしなかった。
 それとは対照的に、敗北を悟った黒咲姫の瞳は、闇炎の中で絶望に染まっていき――。

「わ、たシが、負ける……そンな……そんナ馬鹿ナアアァアァァァァァァァッ!!!!」

 狂ったような絶叫と共に"黒咲姫"ブラック・ブロッサムの身体は完全に灰となった。
 最後に残る『黒花の紋章』も、まるで花が散るようにバラバラに砕けて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『絶望の集合体』

POW   :    人の手により生み出され広がる絶望
【振り下ろされる腕】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に絶望の感情を植え付ける瘴気を蔓延させる】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去
いま戦っている対象に有効な【泥のような身体から産み出される泥人形】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    過去はその瞳で何を見たのか
【虚ろな瞳を向け、目が合うこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幾千という絶望な死を疑似体験させること】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の奮戦により、黒き庭園の女王たる"黒咲姫"ブラック・ブロッサムは斃れた。
 その肉体は滅び去り、力の証である『黒花の紋章』も完全に破壊された。いかに吸血鬼でも復活の余地のない完全なる死。しかしまだ猟兵達は警戒を緩めてはいなかった。

『グ……オォ……オオォォォ……』

 残された黒咲姫の遺灰の中から、不気味な呻きと共に新たな『紋章』が這い出てくる。
 それはオニキスのような『黒花の紋章』とは違い、タールのように濁った黒色だった。新たな『紋章』の出現とそれに伴う敵の復活、ここまでは前例から予想されていた事だ。

『ウウゥゥゥゥゥ……オォオォォォォォォ……!!』

 謎の呻き声はだんだんと大きくなり、ごぼり、と音を立てて『紋章』の周りが黒い汚泥に変わる。それは何処からともなく際限無く溢れ出し、やがて紋章を包む漆黒の巨塊と、ひとつきりの虚ろな目を形作った。

 その姿を見た猟兵達は直感する――これは『絶望の集合体』だ。
 過去へと消費された絶望の感情が、"黒咲姫"が最期に遺した絶望と『紋章』の力を呼び水として骸の海より染み出したモノ。無差別な破壊のみをもたらす負の感情の集合体だ。
 この変貌を"復活"と呼ぶにはあまりにも異形であり、それまで黒咲姫が有していた知性も理性もこの怪物は引き継いでいないようだ。しかし独自の『紋章』をその身に宿すということは、この絶望の集合体も『第五の貴族』としての力を持っているという事である。

『アアァァァァァウゥゥゥゥゥ……』

 具現化した絶望が呻くと、猟兵達は心身に脱力を覚える。まるで底なし沼に落とされたような虚無感と閉塞感。闘志は萎え、戦意は挫け、全ての抵抗を諦めてしまいたくなる。
 この虚脱感は絶望の集合体に近づくほど強くなり、逆に遠ざかれば多少は和らぐ。恐らくはこの作用こそが絶望の集合体が持つ『紋章』の力なのだろう。

 近付く者から抵抗力を奪う紋章――名付けるなら『絶望の紋章』と言ったところか。
 グリモアの予知にはその詳細は記されず、特性や弱点は状況から判断するしかない。
 少なくとも無策で挑んだとて、際限なき絶望の塊に呑まれて果てるのが落ちだろう。

 絶望――そう、このオブリビオンが骸の海に沈んだ数多の負の感情の集合ならば。
 このオブリビオンが持ち得ない感情こそが『紋章』の力に抗うカギかもしれない。
 あるいは、その力がなるべく及ばない遠距離から攻めるか、接近を最小限にするか――戦法の工夫でも活路を見出すことはできるだろう。

『ガアアァアアァァァァァ……!!!!』

 何れにせよ、この絶望の集合体は猟兵達を逃がすつもりはないようだ。全てを破壊し、殺戮し、この世を絶望で満たすことだけが、ソレに遺された唯一の行動原理なのだから。
 尽き得ぬ絶望の化身と成り果てた『第五の貴族』に、今度こそ完全なる滅びをもたらすために――猟兵達は再び戦闘態勢を取った。
リーヴァルディ・カーライル
直近から放たれる紋章の精神属性攻撃に、
闘争心を賦活して気合いで耐えるも、
母の泥人形が現れ反射的に負の感情(殺気)を抱き、
左眼に聖痕を刻まれ生贄にされた過去の残像を暗視してしまう

…っ、しま…っ

…くっ。こんな物で…私の心を、折ろうなんて…

…うそ、かあさま?ああ、そんな、どうして…

絶望に陥る心を"呼符"の護りにより遅らせてUC発動
自身を洗脳して恋人への暖かい想いで絶望のオーラを防御し、
同時に敵を洗脳して同じ想いを抱かせて絶望の浄化を試みる

…これは?…そう、ありがとう、晴久。もう大丈夫よ

…まさか、貴女の御業を真似る日が来るなんて思わなかったけど

…あの時のように今一度、絶望を覆す様を見せてあげるわ、母様



「……これは」
 凶々しい変貌を遂げた第五の貴族――否『絶望の集合体』を前にして、リーヴァルディは微かな驚きを漏らす。泥濘が積み重なったような異形の巨体、その中央に埋もれるように存在する『紋章』が、辛うじて貴族としての証明となっていた。
『オオォォォォォォォォォ……』
「……っ、しま……っ」
 地獄の底から響くような呻き声と共に、その紋章から放たれるのは絶望の波動。虚脱感をもたらし抵抗の意思を萎えさせるそれを、彼女は不運にも直近から食らってしまった。
 心を折られぬように闘争心を賦活して気合いで耐えるも、絶望の集合体は濁った単眼で彼女を見下ろすと【粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去】を発動。泥のような身体から生み出された人形が、対象にとって忘れがたき者のカタチを取る。

「……くっ。こんな物で……私の心を、折ろうなんて……」
 現れたのは他でもない、母の泥人形。掛け替えのない肉親の姿を絶望の現身として呼び出され、リーヴァルディは反射的に殺意を抱いてしまう。だがそれは彼女の心から『絶望の紋章』に対する抵抗力を失わせ、忘れがたき凄惨な過去の残像を想起させてしまった。
「……うそ、かあさま? ああ、そんな、どうして……」
 左眼に刻まれた名も無き神の刻印――『代行者の羈束』が痛みを発する。この聖痕を刻まれ、悪神への生贄とされた幼き日の事が、まるで昨日のようにまざまざと思い出せる。

 ――痛み。侵食。血統。
 しんじていたのに あいしていたのに

 ――狂気。絶望。覚醒。
 こわい いたい あつい ゆるして

 その日はリーヴァルディ・カーライルという人物の一つの終焉であり、始まりだった。
 魂を抉るような幻痛と衝撃に襲われ、指先すら動かすことができない。左眼が映すのは現在ではなく、忌まわしい儀式の現場と、悍ましく歪んだ母の笑顔。
「……たす、けて……」
 もがくように訴えても、救ってくれる者はいない。悪神の狂信者であった彼女の母は、自らの娘を刺し、その眼に聖痕を刻んだのだから。あの日の再現を為すように、泥人形はいつの間にか短剣を握り締めており、立ち尽くす少女の瞳を抉ろうと――。

『――……ウゥ?』
 その時。様子を眺めていた絶望の集合体が、困惑したような声を発した。母の泥人形が突き出した短剣は、リーヴァルディに刺さらず――彼女の懐に収められた一枚の呼符が、結界を張って刃を阻んでいる。
「……これは?」
 本人が意図して発動させたのではない。まるで符に込められた想いが彼女を護ろうとしているかように、オーラの光が少女を包む。それは、彼女にとって最愛の恋人からの贈り物だった。

「……そう、ありがとう、晴久。もう大丈夫よ」
 絶望に陥る心を呼符の護りにより支えられたリーヴァルディは、幻視を振り払いながら【限定解放・血の薫香】を発動。その身を瞬間的に吸血鬼化させ、あらゆる者を洗脳する魔性の香気を放つ。
「……まさか、貴女の御業を真似る日が来るなんて思わなかったけど」
 嫌でも母の事を思い出してしまうため、あまり使いたくはなかったが。かつて自分を絶望に誘った力に、もう一度自身を洗脳させ――恋人への暖かい想いで心を満たしていく。
 それは過去を乗り越え、絶望を振り切るための希望。たとえ離れていたとしても、彼の想いはいつだって傍にある。無上の愛を抱いた少女に、もはや絶望のオーラは届かない。

「……あの時のように今一度、絶望を覆す様を見せてあげるわ、母様」
『う、うぅぅぅぅ……!!!?』
 毅然とした表情でリーヴァルディが前に進むと、母の泥人形が苦しげに呻き後ずさる。
 彼女から放たれる魔性の香気は、周囲の者にも彼女と同じ想いを抱かせる。絶望と相反する愛情や希望、それは絶望の集合体にはあまりにも眩すぎる光だ。

『ああぁぁぁぁ……!!』
 甘やかな香気に包まれて、崩れ落ちた泥人形は跡形もなく消え失せる。そして人形だけではなく、本体も――『紋章』を宿した絶望の集合体も、薫香に呑まれて縮小していく。
 あの日から歩み続けてきた軌跡は、少女を支える礎となり。追いかけてきた過去を再び振り切る力となって、絶望を浄化してみせたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
随分お誂え向きの姿ね
元より遍く絶望からこの世界を解放する為の戦い、願っても無い機会よ
今の私に出来る全力で屠り尽くすとしましょうか…!

《先制攻撃》で【叛逆の黒紅】発動しUCを多重起動、【暁と共に歌う者】の不死鳥が奏でる未来と希望を祝福する《鼓舞+祈り+歌唱》により自己強化・敵の弱体化・紋章対策を兼ねるわ
【失楽の呪姫】で更に《限界突破+リミッター解除+ドーピング》し《継戦能力》を確保、【閃風の庇護者】の技能強化で防御面を補完。
攻め手は【天災輪舞】で機動力強化した《空中戦》で翻弄し《蹂躙》
近距離なら【閃紅散華】で大剣を振るい、遠距離なら【神狩りし簒奪者】の多重《属性攻撃》で泥人形諸共薙ぎ払いましょう



「随分お誂え向きの姿ね」
 再誕した『第五の貴族』の悍ましき姿を見て、刃のような鋭い眼光を向けるカタリナ。
 この世界で生まれた数多の絶望が、骸の海より溢れた集合体。質量すら感じられる圧倒的負の感情をぶつけられても、彼女の瞳は揺らぎもしない。
「元より遍く絶望からこの世界を解放する為の戦い、願っても無い機会よ」
 絶望そのものをこの手で討てる絶好機に、何を怖じ気付く理由があるのか。翼を広げた閃風の舞手は虚空を掴むように手を伸ばし、魔神の権能たるユーベルコードを発動する。

「今の私に出来る全力で屠り尽くすとしましょうか……!」
 闘志を萎えさせる『絶望の紋章』の力が及ぶよりも先に。カタリナは【叛逆の黒紅】を発動し、黒紅の大剣を顕現させる。この剣は彼女が保有するユーベルコードの増幅強化と多重発動を可能とする、権能を復元・昇華させたカタチにして最大の切り札である。
「“我在る限り汝等に滅びは在らず、即ち我等が宿願に果ては無し――来たれ我が眷属、焔の祝福受けし子等よ!”」
 神剣の顕現と共に発動するのは【暁と共に歌う者】の召喚。傍らに現れた不死鳥の群れが、未来と希望を祝福する祈りの歌声を奏で、カタリナの戦闘能力を強化する。それには絶望の集合体に相反する想いをぶつけ、『絶望の紋章』の効果を弱める狙いもあった。

『グゥゥゥ……アアァァァァ……!!』
 負の感情の集積たる自らが持ち得ない未来と希望を嫌悪するように、あるいは嫉妬するように。絶望の集合体は【粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去】を発動し、耳障りな歌を止めさせようと泥人形を差し向ける。
「――私の本気、見せてあげる」
 対するカタリナは【失楽の呪姫】を発動して更に自己強化を重ねる。あらゆる守護を貫く黒雷と、終焉を招く劫火の欠片を身に纏ったその姿は、かつて主神に追放された叛逆の魔神の化身――否、魔神そのもののようにさえ見える。

「あなた達の相手は私だよ」
 重ねて技能面も【閃風の庇護者】で強化したカタリナは、不死鳥の歌い手を狙う泥人形の前に立ちはだかり、その攻撃を大剣でいなしながら【閃紅散華】を放つ。黒から紅に変化した雷光が刀身に伝わり、またたく間に九度の斬撃が人形をバラバラに斬り捨てた。
「ふ、ふふ、あはははははっ! さぁ、最っ高のパフォーマンスで魅せてあげるよ!」
 その直後に雷光の色は紅から蒼に。【天災輪舞】による無類の機動力を得たカタリナは思うさまに権能を奮う高揚感に哄笑しながら、目にも留まらぬスピードで戦場を翔ける。

『ウゥ……グアアァ……』
 絶望の集合体が新たな泥人形をいくつ産み出そうとも、その度に手を変え品を変え権能を変えてくるカタリナには通用しない。有効な対策を講じられようとも別の手段に切り替えればいい、複数のユーベルコードを多重発動できる【叛逆の黒紅】最大の利点だろう。
 無論、その代償は決して小さくはない。個々のユーベルコードが持つ代償に加えて黒紅の大剣を使用する負荷も、同時に強い力を発揮するほど劇的に増大する諸刃の剣である。
「――構わない。この戦場はもう私の掌の上よ」
 文字通りに命を削りながら絶望を蹂躙し、翻弄し、殲滅する。そして高く舞い上がったカタリナは7つ目となるユーベルコード――【神狩りし簒奪者】を発動し、異能封じの縛鎖と黒炎の嵐、白雷の槍による三重の属性攻撃を放った。

「我らが真名、暁の主にして失楽の呪姫なれば――貴様の大義、貴様の欲望、貴様の力、その悉くを否定しよう! 幾度でもッ!」
 権能の多重発動によって極限まで強化された怒涛の猛攻が、絶望の集合体を縛り上げ、焼き焦がし、突き穿つ。泥人形諸共敵陣をなぎ払うその様は、まさに神罰の具現が如し。
『グアアアアァァァァァァ―――!!!!!』
 絶望の絶叫が戦場に木霊し、鮮血の代わりにタールのような泥がびちゃりと床を汚す。
 いかに圧倒的な総量の絶望にも屈さない、未来を切り拓く魔神の化身。その力は気高くも儚く、そして美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「やはり体内の紋章…復活というよりこれは…考察より、まずは強大な敵への対処が先決っすね!」

手裏剣【投擲】しつつ妖怪煙で視線を合わせないことも踏まえた煙幕を張りながら距離をとり、【結界術】で瘴気を防ぐ。
「『絶望の紋章』が厄介っすね!生成される泥人形も、手裏剣やストールの効きが悪いっす!」

しかし希望と【優しさ】を胸に奮い立つ!
「人を守るため、絶望なんかに負けないっす!来い、テングリーフ!」
『収納鏡』からキャバリアを取り出し搭乗。
【ダッシュ】や【推力移動】で加速した『流星突撃槍』による一撃必殺のヒット&アウェイ!ついでに【戦闘知識】を生かした位置取りで効果的に【衝撃波】を与えて泥人形も破壊っす!



「やはり体内の紋章……復活というよりこれは……考察より、まずは強大な敵への対処が先決っすね!」
 新たな『紋章』によって別物に変貌した『第五の貴族』。以前にも見たその異様な特性について考える前に、衣更着は目の前に立ちはだかる絶望をどうにかする方を優先する。
 まずは小手調べとばかりに手裏剣を投擲しつつ、視線を合わせないように妖怪煙の煙幕を張って距離を取る。敵の身体から漏れ出す瘴気に巻かれないよう、結界術による防御も万全だ。

『アァァゥゥゥゥゥ……』
 絶望の集合体は慟哭とも怨嗟ともつかない呻きを上げ続け、新たな泥人形を生み出す。
 【粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去】――それは煙の中でも何らかの手段で標的を捉えているのか、まっすぐ衣更着に向かって襲い掛かってくる。
「こういうの何かのゲームで観たことあるっす!」
 即座に迎撃する衣更着だが、不快感が胸に重くのしかかり思うように身体が動かない。
 心を強く保っていなければ、抵抗する気力まで萎えてしまいそうになる。絶望の集合体が持つ『紋章』の力は、本体から離れていても無視できない影響を及ぼしていた。

「『絶望の紋章』が厄介っすね! 生成される泥人形も、手裏剣やストールの効きが悪いっす!」
 気力を削ぐ紋章に、此方に有効な形状を取る泥人形。先の"黒咲姫"に勝るとも劣らぬ脅威を実感した衣更着は、しかし希望と優しさを胸に奮い立つ。どれだけ敵が強大であろうとも、自分達猟兵にはそれを乗り越えてきた実績と実力がある。
「人を守るため、絶望なんかに負けないっす! 来い、テングリーフ!」
 高らかな宣言と共に【収納鏡】の中から取り出すのは、クロムキャバリア「テングリーフ・ホワイト」。そのコックピットに乗り込んだ彼はスラスターを全開にして一気に加速すると、泥人形の横を突っ切って敵本体に突撃を仕掛けた。

「流星の化身『天狗』の力を借りて、流星のごときランスチャージっす!」
 巨大突撃槍「ハイノーズランス」を構え飛翔するキャバリアによる【流星突撃槍】――超音速に達する一撃は絶望の集合体を貫いても止まらず、そのまま敵の後方に離脱する。
『グオォォォ――!!!?』
 敵が悲鳴を上げる間もなく、衣更着は機体を反転して再度突撃。接近するほど影響が強まる『絶望の紋章』から逃れつつ攻撃するにはヒット&アウェイが有効だと考えたのだ。
 さらにキャバリアによる超音速飛行は衝撃波を伴い、周囲の泥人形を蹴散らしていく。これも効果的に敵を巻き込めるよう、移動ルートや移動後の位置取りを考えてのことだ。

「この突撃、止められるものなら止めてみろっす!」
 泥の飛沫を蹴散らして、白き天狗が戦場を翔ける。胸に希望を秘めたその力強い突進は絶望にさえ止められない。何度も何度も、繰り返し槍に貫かれるたびに、絶望の集合体は徐々に縮小していき、絶叫が絶え間なく館に響き渡る。
『グアアアァァァァァァ……!!!!!』
 翔ける希望、悶える絶望。両者の戦いの天秤は、少しずつ前者の方に傾きつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
冒頭の絶望の集合体のようなうめき声に動揺が走る。
「失礼、私のお腹の音です…おやっ?」

アレは過去にちゃぶ台をバックにどつきあい、決闘の後二人でぶっ倒れるとお互いの目を見て笑い合い、健闘を称えあった絶望の集合体ではないか。感動の再会の瞬間であった。

「アナタの瞳は百万ボルト~♪私のギャグは在庫かぎり限定セット~♪瞳とギャグで百万一~♪あ~あ~セットでも別にお得じゃない~♪」

絶望的なギャグ世界と音痴歌が同時に攻めてくる。
そんな恐ろしい生き地獄の衝撃に脳震盪でも起こしたのか、絶望の集合体はおぼつかない足取りでフラフラフルフルと全身を震えさせてぶっ倒れた。

「前のあなたは…もっとギャグセンスがありましたよ」



『グウウゥゥぅぅぅぅぅぅぅ……』
 巨大な絶望を前にしても、希望を胸に戦い続ける猟兵達。その攻勢に徐々に押されつつある『絶望の集合体』は、なおも哀しげに恨めしげに、地獄のような呻きを上げる――。
『ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~』
 ――いや、これは違う。絶望の集合体の声に合わせて、何か違う音が紛れ込んでいる。
 ぎょろり、と汚泥の中に浮かぶ単眼が視線を動かすと、そこに居たのはお腹をぽんぽんとさするカビパンであった。

「失礼、私のお腹の音です……おやっ?」
 動揺する絶望の集合体とカビパンの目があう。実は彼女、過去に別の依頼でこれと同様のオブリビオンに出会った経験がある。その時はちゃぶ台をバックにどつきあい、決闘の後二人でぶっ倒れるとお互いの目を見て笑い合い、健闘を称えあったという――まあ控えめに言ってもカオスな事をやっていた。
『ウゥゥゥゥ……』
 その時の事を今カビパンの前にいる『第五の貴族』が覚えているかは定かではないが、目があった瞬間にソレは明らかにイヤそうな顔をした。なんというか、この女はどうあっても絶対に絶望しなさそうだなという、そんな雰囲気を感じ取ったのかもしれない。

「これはこれは。感動の再会じゃありませんか!」
 絶望の集合体の直感に違わず、カビパンはハリセンを手に持って話しかけてくる。周囲の抵抗力を削ぐ『絶望の紋章』の効力も、目があった対象に幾千という死を疑似体験させる【過去はその瞳で何を見たのか】も、常にお気楽な彼女とは相性が悪いようだ。
「では再開を祝して一曲」
『グウゥゥぅ……!?』
 やめろと言うように敵が呻くのも無視して、【ハリセンで叩かずにはいられない女】は唐突に歌いだす。ギャグ世界と化した戦場に響き渡るのは、精神を病むほど絶望的に酷い音痴歌――数々のオブリビオンをギャグ的に葬ってきた【カビパンリサイタル】である。

「アナタの瞳は百万ボルト~♪私のギャグは在庫かぎり限定セット~♪ 瞳とギャグで百万一~♪ あ~あ~セットでも別にお得じゃない~♪」

 ギャグと音痴の(ある意味)絶望的な二重奏に、同時に攻めたてられる絶望の集合体。
 そんな恐ろしい生き地獄はシリアス一辺倒の存在には衝撃が強すぎたのか、泥濘の巨体は脳震盪を起こしたようにフラフラフルフルと震え、おぼつかない足取りでぶっ倒れた。

『グゲエエエェェェェェ……!!!』
 そのままビクンビクンと床で痙攣する塊を見て、歌い終えたカビパンはぽつりと一言。
「前のあなたは……もっとギャグセンスがありましたよ」
 さらなる絶望の力を得てパワーアップした事がギャグ耐性を失わせ、逆に首を締める事になってしまうとは――カビパンという(色んな意味での)イレギュラーを想定しえなかったがために、絶望の集合体はメンタル的に大きな痛手を負ってしまったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

「絶望」か…
フッ、私にとっても馴染みのある言葉だな

UCを発動
ヴェートマ・ノクテルトのリミッターを解除して強力な念動力を周囲に放射
泥人形達を吹き飛ばしながら敵本体に切り込みをかける

絶望と言う感情を私はよく知っている…
だからこそ、その闇に飲まれぬように希望を紡ぐ事もできる

生命を削るほどに膨大な念動力を使い、敵の動きを一時的に止めたら
あえて近づいて、そのまま溢れるエネルギーを片腕に通して敵に叩き込む
天使から与えられた聖剣が、人々の希望となって絶望を打ち払うように、その腕には祈りを込めて

絶望へと堕ちたお前のために、今だけは蟠りを捨てて祈ろう
せめて、その魂の行きつく場所に幸いがあるように



「『絶望』か……フッ、私にとっても馴染みのある言葉だな」
 目の前に立ちはだかる絶望の集合体に向けて、キリカは恐怖に怯えるのではなく、ふと笑みを零した。『絶望の紋章』がもたらす強烈な虚脱感を受けても、よろめくことなく、しゃんとその場に立っている。
『ウウゥゥゥゥゥゥゥ……』
 絶望と対峙して膝を屈さぬ者。それは負の感情の集積体にとっては嫌悪の対象なのか、憎々しげな呻き声が響く。【粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去】――その心身を折り砕くべく、泥人形の群れが彼女に襲い掛かった。

「コード【épique:La Chanson de Roland】承認。リミッター全解除……起動しろ! 【デュランダル】!」
 だが、キリカは力強い宣言と共に装着したバトルスーツ「ヴェートマ・ノクテルト」のリミッターを外し【デュランダル】を発動。スーツの補助機能を増幅器(ブースター)に転換し、爆発的な念動力を周囲に放射する。
『――……!!!』
 牙剥こうとした泥人形は突如の衝撃に吹き飛ばされ、彼女はその後を駆け抜けて敵本体に切り込みをかける。そのスピードは人体が本来発揮しうる限界を超えており、スーツにより強引にその力を引き出した負荷がどれほどのものかは想像に難くない。

「絶望と言う感情を私はよく知っている……だからこそ、その闇に飲まれぬように希望を紡ぐ事もできる」
 凄まじい苦痛に身を苛まれながら、それでもキリカはまっすぐに『絶望』を睨みつけ、生命を削るほどに膨大な念動力を放つ。高層ビル程度なら数瞬で圧壊させるであろうそのパワーは、巨大な絶望の集合体の動きを一時的に止めるのに十分なものだった。
『オオォォォぉオォぉ……!?』
 不可視の力に拘束された巨体が泥の飛沫を撒き散らしながらもがき、その間にキリカはあえて接近を試みる。それに伴い『絶望の紋章』の影響は増大するが、全身を襲う虚脱感をスーツの出力を上げることで補い、心には決して屈することない希望と祈りを抱いて。

「絶望へと堕ちたお前のために、今だけは蟠りを捨てて祈ろう」
 すっと片腕を敵に伸ばし、溢れ出すエネルギーを直に叩き込む。天使から与えられた聖剣が人々の希望となって絶望を打ち払うように、その腕には敵意ではなく祈りを込めて。
「せめて、その魂の行きつく場所に幸いがあるように」
『グ、オオオアアアァァァァァァァ―――!!!!』
 聖剣の如く収斂された念動力が絶望の集合体を貫き、その巨体に大きく風穴を開ける。
 直後、戦場に響き渡る絶叫は無数の魂の断末魔か、あるいは解放の叫びにも似ていた。現し世に滲み出した絶望はまた徐々に、再び骸の海へと還っていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「ったく……何処までもクソ迷惑な紋章ね」
圧し掛かる絶望に体の芯が震える
膝を屈したくなるが、こう言う時に物を言うのは【気合】だ
指を噛み切り、その流血を血化粧を行う

「出番よ。私の血を啜って、あいつをぶち抜きなさい……“楔”」

超偽神兵器の【封印を解く】事で、オブリビオンへの無念を背負って超強化
飛躍的に増大した身体能力を持って、泥人形の展開を【見切り】、「高周波シャベル」や携帯火力で【怪力、なぎ払い】で突破をはかりたい
「機構靴」で奴の巨大な腕を足場にして、その紋章へと肉薄を狙います
目標はその紋章に向けて神殺の杭をぶち込み【吹き飛ばす】事です

「それじゃあ次は地獄で会いましょう、蛭の親玉さん」



「ったく……何処までもクソ迷惑な紋章ね」
 一度は撃破した『第五の貴族』の骸から、絶望と共に現れた新たな紋章に、紅葉は吐き捨てるように呟いた。ただソレが存るというだけで、圧し掛かる絶望に体の芯が震える。膝を屈したくなるが、こう言う時に物を言うのは気合だ。
「この程度で私が折れると思ったら大間違いよ」
 指を噛み切り、その流血で戦化粧を施す。荒々しい闘志を表すような、顔を伝う紅の線――その面で強気な笑みを浮かべると、彼女は【対戦車杭打銃“楔”】の封印を解く。

「出番よ。私の血を啜って、あいつをぶち抜きなさい……“楔”」
 巨大な形態式パイルバンカーの杭となった超偽神兵器の欠片が活性化し、その本来の力を取り戻す。同時に紅葉自身はこの遺物の所有者であった死せる奪還者の、オブリビオンへの無念を背負うことで超強化される。
『グウウゥゥぅぅぅぅぅぅぅ……!』
 膨大な力の高まりを敵も感じ取ったのだろう、わななく絶望の集合体から泥人形の群れが産み出される。しかしその展開を見切っていた紅葉は杭打機を担ぐのとは逆の手で「高周波シャベル」を構え、飛躍的に増大した身体能力を以て敵群の突破をはかった。

「邪魔よ、どきなさい」
 硬い岩盤や鋼板も掘削するシャベルの刃が、泥人形どもをなぎ払う。その直後に武器をアサルトライフルに持ち替え、弾幕を張りながら前進する紅葉。『絶望の紋章』がもたらす虚無感にも負けず、向かうは絶望の集合体の正面。
『オオォォ……!?』
 全く臆さずに近付いてくる相手に驚いたように、敵は泥濘でできた巨大な腕を振るう。
 だが彼女はそれさえもガジェットブーツの機構を活かして足場にしてみせる。泥の腕を踏みしめて、本体の中央に半ば埋もれるように宿る『絶望の紋章』に狙いを定めて。

「随分手間をかけさせてくれたけど、こいつで最後よ」
 絶望の紋章に肉薄し"楔"を構える紅葉。血化粧の上から泥を浴びたその姿は勇ましくも凄絶で、絶望も震え上がるほどの気迫に満ちている。外しようのない至近距離で、泥濘に浮かぶ単眼がギョロリとどよめくように揺れる――だがそんなものにはもう構わない。
「それじゃあ次は地獄で会いましょう、蛭の親玉さん」
 別れの言葉と共に、活性化した神殺の杭を最大出力でぶち込む。その貫撃の破壊力たるや、およそ実体あるもので穿てぬものは無いだろう。『第五の貴族』が作り上げた紋章であれ、そこに例外はなく。

『――――!!!!?!』
 衝撃に吹き飛ばされる絶望の集合体。驚愕と苦悶が入り混じった咆哮が戦場に轟く。
 杭に貫かれた紋章には風穴が開き、どろどろと黒い血のような何かを垂れ流していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イリス・ローゼンベルグ
「往生際が悪いわね」
「もう幕は下りたのよ、さっさと退場しなさい」

死の絶望を払うのは生きようとする強い意志
見せてあげるわ、この私の生き汚さをね
【成長する災厄】を発動、この程度で絶望するならとうの昔にしているわ
上半身を除いた部位の擬態を解き、巨大化した茨の姿で絶望と対峙する

周囲に広がる瘴気を【毒耐性】と【狂気耐性】で振り払い
振り下ろされた腕の攻撃は【茨の盾】で【盾受け】して防御
さらに防御した腕に【茨の触手】を絡みつかせる事で攻撃を封じて【串刺し】攻撃による反撃を行う

そして、十分にダメージを与えた所で【捕食触手】の【捕食】攻撃でトドメを刺すわ
私は絶望すらも喰らってみせる



「往生際が悪いわね」
 新たな紋章の力で復活を遂げた"黒咲姫"――否、既に別の存在と成り果てた絶望の集合体に、イリスは胡乱な目を向ける。彼女が拘っていた黒き庭園の主との決着はついた以上、ここにいるのはカーテンコールを邪魔する不粋な輩に過ぎない。
「もう幕は下りたのよ、さっさと退場しなさい」
『オアアアァァァァァァ……!』
 引き際を弁えぬ絶望の集合体は、彼女の言葉に異を唱えるように身体を震わせる。その中央に埋もれた紋章が不気味な光を放てば、胸の奥から熱を引きずり出されるような感覚と共に、急激な脱力と虚無感が襲ってくる。

「死の絶望を払うのは、生きようとする強い意志」
 押し寄せる絶望に抗うために、イリスは【成長する災厄】を発動。眼前の敵に対する嫌悪感を爆発させると共に、上半身を除いた部位の擬態を解除――絡み合う無数の茨の触手で構成された、バイオモンスターとしての真の姿を露わにする。
「見せてあげるわ、この私の生き汚さをね」
 感情の昂りに比例してその身は巨大化し、敵と同等のサイズにまで膨れ上がっていく。
 茨の山の頂点で、少女の上半身は優雅かつ嗜虐的に微笑み、絶望の集合体と対峙する。

『グウウゥゥぅぅぅぅぅぅぅ……!!』
 巨大化したイリスに対し、絶望の集合体は巨大な腕を振り回して【人の手により生み出され広がる絶望】を撒き散らす。『紋章』の力に頼らずとも、このオブリビオンは絶望を植え付ける瘴気を蔓延させることができる――その力は常人の心を挫くには十分なもの。
「この程度で絶望するならとうの昔にしているわ」
 しかしイリスは屈さない。一度は死の淵を垣間見、人の身を捨てることで生き永らえたこの命、こんなところでくれてやるつもりは微塵もない。一向に折れる気配を見せない彼女に業を煮やしたように、絶望の集合体は腕を振り下ろした。

『オオオオオォォォぉぉぉ……!』
 咆哮と共に唸りを上げる巨大な腕。生者の希望を蹂躙する絶望の一撃は、しかし幾重にも絡み合わされた「茨の盾」に受け止められる。さらに防御の瞬間、茨の棘が絶望の腕を傷つけ、触手がぐるりと絡みついた。
『グォ……?』
「捕まえたわ」
 攻撃が封じられた直後、反撃の茨が敵を串刺しにする。ユーベルコードにより強化された茨の威力は『第五の貴族』にも十分なダメージを与えうるもので――その傷をより深く抉るように、イリスはさらに感情を爆発させる。

「私は絶望すらも喰らってみせる。目障りよ、私の前から消えなさい!」
 触手に備わった茨の棘で敵を抉りながら、トドメとばかりに放ったのは「捕食触手」。
 大きく開かれたハエトリグサ型の捕食器官が、獲物の真上からばぐんと喰らいついた。
『グゴガアアアアァァアァァァァァッ!!!?!』
 耳を塞ぎたくなるような絶叫が木霊する。辛うじて丸呑みにされるのは免れたものの、絶望の集合体は半身をごっそり齧り取られ、見るも無惨な姿でその場に崩れ落ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
虚脱感に襲われる四肢を、地に突き立てた大剣で支える。
【戦闘知識】で磨かれた【第六感】が紋章の強制力を認識する。
血や生命の垣根も超えたそれが貴様らの行き着く果てか、吸血鬼。


だからどうした。
言った筈だ、貴様らという凶悪に挑むのだと。
黒騎士を舐めるな!『絶望』など、一番初めに殺すモノぞ!

【覚悟】と【覇気】をもって虚脱感を退け、敵UCの一撃を【見切り】青く燃える鉛の翼で飛翔回避。
UC【青炎より再誕せし神殺しの魔剣】抜剣、高高度【空中浮遊】からの急降下による【捨て身の一撃】!
魔剣の【呪詛】斬撃【衝撃波】で瘴気蔓延する周囲を【地形破壊】、敵諸共【吹き飛ばし】撃滅する!

粛清宣告!その黒き絶望、消し去る!



「血や生命の垣根も超えたそれが貴様らの行き着く果てか、吸血鬼」
 悍ましい姿に変貌した『第五の貴族』を睨め付けながら、虚脱感に襲われる四肢を、地に突き立てた大剣で支えるルパート。幾多の戦闘知識で磨かれた彼の第六感は、対峙する者から抵抗の意思を奪う『紋章』の強制力を認識していた。
『ウウウウアアァァァァァァァ……!』
 かの異形と対峙する限り、虚脱感による戦闘力の低下は免れ得ない。加えて近付けば近付くほど影響力の強まる性質は、白兵戦を得手とする騎士にとっては最悪の相性である。

「だからどうした。言った筈だ、貴様らという凶悪に挑むのだと」
 ルパートは頑とした覚悟と覇気をもって虚脱感を退け、甲冑の身体から青炎を燃え上がらせる。相性が悪いだの強敵だの、そんな事が退却の言い訳になるものか。絶望的な邪悪にこそ立ち向かい、無辜の民草のために明日を切り拓く。それが騎士の往く道なれば。
「黒騎士を舐めるな! 『絶望』など、一番初めに殺すモノぞ!」
『オ、オオォォォォォ……!?』
 怪異の咆哮すらかき消すほどの、義憤と決意に満ちた力強い叫び。それに恐れを為したかの如く、絶望の集合体は【人の手により生み出され広がる絶望】の腕を振り下ろした。
 あらゆる抵抗を粉砕せんとする巨腕。しかしルパートは敵の動作を見切ると、青く燃える鉛の翼を背中から放出し、飛翔とともにその一撃を回避する。

「我が血はもはや栄光なく。されど、罪科の剣は今一度この手に」
 抜剣――【青炎より再誕せし神殺しの魔剣】。高高度に飛び上がったルパートの手で、柄だけとなっていた魔剣の刀身が再生成される。折れる以前程の力はないが、本人の誇りと闘志によって補われた刃は、この一時のみ往時にも劣らぬ鋭さを取り戻す。使い手の心に疑念が生じぬ限り、この剣が再び折られる事は絶対に無い。
『ウゥゥぅぅぅぅぅ……??!』
 そして魔剣が放つ呪いは絶望すら生温いと思えるほどで、上空で昂ぶる青炎と呪詛の力に怪異がぎょろりと目を剥いた。その反応は明らかな"恐怖"の証――直後、ルパートは神殺しの魔剣を両手で振りかぶり、捨て身の急降下攻撃を仕掛けた。

「粛清宣告! その黒き絶望、消し去る!」

 燃え盛る青と漆黒の軌跡が、流星の如く天より墜ちる。振り下ろされた撃滅の一太刀は絶望の集合体を捉え、頭頂部から接地面までバターのように切断し、大地へと降り立つ。
 同時に発生する呪詛の衝撃波は、周囲に蔓延する瘴気を敵と地形諸共に吹き飛ばした。

『グ、オオオアアアァァァァァァァッ!!!!!?!』
 黒騎士の覚悟と神殺しの魔剣がもたらす圧倒的破壊に、絶望の集合体が絶叫を上げる。
 真っ二つに両断されたその肉体の断面からは、どろどろと泥濘が流れ落ち――消し炭のようにボロボロと崩壊を始めつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・デイドリーム
これは予想外だ
知性すらないただの怪物と化すなんてね
だからといって逃げられはしないんだけども

性質としてはUDC怪物を思い出すかな
それなら対処も出来る
狂気には狂気だ
シュエ、力を貸して

体内の魔力炉を起動
シュエと共に結界を生み出し、相手の力を出来るだけ弱める
紋章も虚ろな瞳も影響を与えてくるのは精神だと思うからね
諦めはしない
積み重なる死も否定する
【狂気耐性】も重ねて心を守る

その隙に全力の【呪詛】をぶつけよう
君の絶望をかき分け、その一つ一つに呪いをかける
より深く絶望し、骸の海で眠るといい
その方が君にとっても幸福だと思うよ

タイムリミットの前にUCは解除
【オーラ防御】で身を守りつつ敵から距離を取ろう



「これは予想外だ。知性すらないただの怪物と化すなんてね」
 曲りなりにも貴族としての威厳を保っていた先ほどまでとは違い、完全な異形に変わり果てた『絶望の集合体』を見上げて、レンは驚いたように呟く。それが紋章の作用によるものだと理解していても身体はすくみ、虚脱感に心を支配されそうになる。
「だからといって逃げられはしないんだけども」
 ここでこの怪物を放置すれば、さらなる災禍が世界を襲うのは想像に難くない。何より敵も逃がしてはくれないだろう。骸の海から溢れた膨大な負の感情の集積体であるソレに破壊と蹂躙以外の目的は存在しない。

「性質としてはUDC怪物を思い出すかな。それなら対処も出来る」
 遭遇した者の心を狂わせるような、冒涜的で名状しがたい怪物の扱いなら心得ている。レンは共生する白い触手のUDCをそっと撫でて、自身の体内にある魔力炉を起動する。
「狂気には狂気だ。シュエ、力を貸して」
 ふたつの力をひとつにして、発動するのは【白影共鳴・凪】。彼らを中心に魔力結界が放出され、戦場内全ての者を包み込む。その瞬間、猟兵達を襲っていた重圧や虚無感が、幻のようにふっと消え去った。

『ウウゥゥゥゥ……?』
 戦場全体に起こった異変に絶望の集合体も困惑を示す。ソレは知る由もないことだが、邪を禁ずるに邪を以てす、という言葉がレンの出身世界にはある――彼が放った魔術はまさにその体現。シュエに宿る邪神の力で狂気を否定する禁忌の術式である。
「紋章も虚ろな瞳も影響を与えてくるのは精神だと思うからね」
 もはや『絶望の紋章』に近付こうと、敵と目を合わせようと、彼の精神や正気が蝕まれることは無い。【過去はその瞳で何を見たのか】――幾千という絶望な死を疑似体験させる極悪な精神攻撃さえ、白影の結界は完全に無力化していた。

『オアアァァァ……!?』
 ソレに言葉を発する機能があれば、何故だと口にしていただろう。どんなに凄惨な死の光景を見せつけてやっても、目の前にいる青年は小揺るぎもしない。脈打つ魔力炉の鼓動を静かに響かせながら、彼は相棒と共にそこに佇んでいた。
(諦めはしない。積み重なる死も否定する)
 元より強い狂気耐性に守られたレンの心は、平静を保ったまま呪文を紡ぐ。敵が動揺しているこの隙に、自身が持ち得る全力の呪いを――絶望すら殺す特大の呪詛をぶつける。

「より深く絶望し、骸の海で眠るといい。その方が君にとっても幸福だと思うよ」
 敵の絶望をかき分け、その一つ一つに呪いをかける。レンの手でされた負の感情は対象に自家中毒を引き起こさせ、やがては自滅へと導く。泥の塊のような絶望の集合体の身体がボコボコと泡立ち、耳を塞ぎたくなるような苦悶の声がその中からあふれ出した。
『ギイイィィィィィィヤアアァァァァァァァ……ッ!!!!』
 こうなってはもう敵は猟兵を排除するどころではないだろう。レンはその間に禁術のタイムリミットが来る前にユーベルコードを解除し、オーラで身を守りながら距離を取る。
 呪いにより暴走する絶望が、かの怪異に与えたダメージは深く。泥状の肉体の崩壊は留まることを知らず、その体格は既に当初の半分以下にまで縮んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
わたしはもう、絶望に屈したりはしない…!
絶望に打ち勝つ希望…希望が不可能を可能にする…!

【九尾化・天照】封印解放…!

光を集束させ、【破魔】の力を乗せたレーザーを照射して滲み出る絶望をなぎ払うと共に、太陽の光を剣に付与し、敵の核となるだろう「絶望の紋章」へ光速の動きによる光速連撃を実施…。
絶望の紋章に対抗する為、絶対に生き抜くという強い意思、未来を信じる心を強く持って耐え抜くよ…。

絶望の後には必ず希望が待つ…この世界にも必ず希望はやって来る…。だから、わたし達は負けない…!

人々の絶望の集合体よ…骸の海へ還り安らかに眠ると良い…!



『グウウウオォォォォォォ……!!!』
 猟兵達の果敢な攻勢によって、再び窮地に立たされる『第五の貴族』。絶望の集合体と化したその身が咆哮するたびに、瘴気がまき散らされ脱力と虚無感が周囲に広がる。だがここまでやって来た猟兵の中に、それしきのことで諦めるような者は一人もいなかった。
「わたしはもう、絶望に屈したりはしない……!」
 璃奈もまた毅然とした姿で魔剣を構えながら、はっきりと絶望に抗う意志を宣言する。
 彼女はオブリビオンの侵攻で故郷と家族を失い、自らも奴隷として辛酸を味わった――だからこそ、理不尽な絶望と戦う決意は人一倍強い。

「絶望に打ち勝つ希望……希望が不可能を可能にする……!」
 希望を信じる少女の身体から、暖かな光があふれ出す。暗闇に包まれた地底世界において、本来ならあり得ないはずのそれは太陽の力の具現化――【九尾化・天照】発動の証。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 その瞬間、璃奈の髪と尾は金色に染まり、九本に増えた尾がゆらりと揺れる。後光のように放たれる光は彼女を太陽神・天照大御神の化身のように、燦然と美しく彩っていた。

『おオオォォォぉぉぉぉ……!?』
 地底を照らす天照の光に、絶望の集合体の目が眩む。この世界においては強すぎる輝きを覆い隠そうとするように、泥塊から幾つもの人形が産み出され、璃奈に襲い掛かった。
 【粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去】――いずれも璃奈のトラウマを想起させるような形態をした泥人形に、しかし彼女は動じない。あふれ出す光を収束させ、破魔の力を乗せたレーザーとして照射する。
「こんなもので挫けない……」
 滲み出る絶望がなぎ払われ、敵の本体と璃奈の間に一本の道ができる。その機を逃さず彼女は手にした剣に太陽の光を付与し、自身もまた一条の閃光と化して敵に切り込んだ。

(狙うなら敵の核となるだろう、あの『絶望の紋章』……!)
 天照の封印解放によって得た、光速の剣技と移動力。それらを最大限活用した超高速の斬撃が、泥濘の中に浮かぶ『紋章』を斬り裂く。一撃のみに留まらず、何度も、何度も、標的が罅割れ砕けるまでそれは続く。
『ガアアアァァァァ……ッ!!?!』
 光速連撃を受ける絶望の集合体からは泥の飛沫が上がり、苦悶の叫びが木霊する。だがソレに肉迫するのは『絶望の紋章』の影響を間近で受けるということ――これまで以上の虚脱感や閉塞感が、璃奈の心身に重くのしかかる。

「絶望の後には必ず希望が待つ……この世界にも必ず希望はやって来る……。だから、わたし達は負けない……!」
 それでも璃奈の太刀筋は鈍らない。絶対に生き抜くという強い意思、未来を信じる心を強く持ち、『絶望の紋章』に対抗している。並大抵の精神力では、至近距離からの侵食は耐えられないはずだ。それを耐え抜くとは、彼女の心に太陽の如き希望が宿っている証。
 強大な絶望と対峙することで希望はより強く輝き、何物にも勝る光を剣に宿す。斬撃は加速し、幾条もの閃光の軌跡が敵を抉り、切り裂き、貫いていく。

「人々の絶望の集合体よ……骸の海へ還り安らかに眠ると良い……!」
 希望に満ちた璃奈の斬閃が、ついに『絶望の紋章』を貫く。深く穿たれた紋章からはどす黒い何かが止めどなくあふれ、それと同時に絶望の集合体の絶叫が戦場に響き渡った。
『グギイイィィィィィィィッ!!!?』
 核に蓄積された甚大なダメージは『第五の貴族』に準じる力を誇るソレにとっても重篤なのは間違いない。よろめき這いずるその異形から、当初の存在感は失われつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あらゆる絶望の中、最後に残るモノ。それが希望。
この程度でわたし達を無力化なんてできると思わない事ね!

【吸血姫の覚醒】で真の姿へ変化。
絶望と対となる希望、生き抜く力の源となる希望こそが絶望の紋章を破る鍵と信じ、強く自分の意思を以て戦闘。

光と爆裂属性を付与した爆裂魔法【属性攻撃、誘導弾、高速・多重詠唱、全力魔法】を一気に放ち、敵を足止め。
敵の攻撃を超高速で飛び回って回避し、反撃・牽制に爆裂魔法を放ちつつ、魔力を限界以上にチャージ。
限界以上【限界突破、力溜め】に達した【神槍グングニル】を絶望の紋章に叩き込んで、全て骸の海へ消し飛ばしてあげるわ!


絶望の化身よ、真祖の吸血姫の名の下、骸の海へ還るが良い!



「あらゆる絶望の中、最後に残るモノ。それが希望」
 闇の中でも決して消えることのない光の名を謳い、フレミアは悪しき怪異と対峙する。
 まだ多少の距離のあるこの位置からでも『絶望の紋章』は抵抗の意志を奪わんとする。しかし彼女の心に宿る意志は堅く、挫けることはない。
「この程度でわたし達を無力化なんてできると思わない事ね!」
 絶望と対となる希望、生き抜く力の源となる希望こそが絶望の紋章を破る鍵と信じて、彼女は強く自分の意思を以て戦闘に臨む。その魂の気高さを現すように、爆発的な勢いで真紅の魔力があふれ出し、炎のように煌々と輝いた。

「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
 真祖の魔力に包まれながら、フレミアは真の姿へ変化する。幼さを残した外見は17~8歳程に成長を遂げ、背中に生えた4対の翼で空に舞い上がる。真祖の血統に連なる吸血姫として、その風格ある佇まいは『第五の貴族』の威厳にも劣りはしない。
『グウウゥゥぅぅぅ……』
 我が物顔で空に鎮座する吸血姫を見上げ、絶望の集合体は恨みがましく腕を振り回す。
 【人の手により生み出され広がる絶望】を蔓延させる泥の腕は、直撃すれば脅威には違いない。しかし巨体故に緩慢なその攻撃は飛行能力を得たフレミアに容易く避けられた。

「喰らいなさい!」
 敵の頭上を超高速で飛び回りながら、フレミアは反撃の爆裂魔法を放つ。さながら空爆のように上空から降り注ぐ閃光と爆発が、絶望の集合体を揺さぶり泥濘を飛び散らせる。
『オォぉぉぉぉッ!!?』
 地底に反響する苦悶の呻き。しかしこれは覚醒した吸血姫にとっては余剰魔力を使った牽制に過ぎない。爆撃で敵を足止めしながら、彼女は魔力の大半を魔槍「ドラグ・グングニル」へのチャージに費やし、決定的な一撃を叩き込むチャンスを窺っていた。

「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
 限界以上の魔力をチャージされた魔槍は全長数メートルに及ぶ真紅の神槍へと変化し、その矛先を絶望の集合体に向ける。この【神槍グングニル】はフレミアのユーベルコードの中でも特に高い威力を有する大技――しかも今は覚醒中の真祖の魔力を注がれている。
 穂先に収まりきらなかった余波だけでも、大気を震わせるほどの膨大な魔力量。今にも破裂しそうな力の高まりをギリギリの一線で支えながら、彼女は高らかに叫んだ。

「絶望の化身よ、真祖の吸血姫の名の下、骸の海へ還るが良い!」

 渾身の膂力で投げ放たれた神槍は、紅い流星となって空を翔け――絶望の集合体の中央に埋もれた『絶望の紋章』に突き刺さる。その直後、目を開けていられないほどの爆光と衝撃波が戦場を揺るがし、遅れて爆音が地底に轟く。
『グオオオアアアアァアァァァァァァァッ!!!!!!!』
 クレーター状に抉れた爆心地では、体躯を構成する泥の過半を吹き飛ばされた異形が、のたうち回りながら絶叫する。莫大な絶望の総量を誇る『第五の貴族』にも、再びの終焉の時は確実に迫りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
あれは『絶望卿』が都市に嗾けていた…
感情に働きかけ活力を奪う能力が更に強化されているようですね

……(瞬間思考力で思案)

正道の騎士ならば輝きを胸に対峙したでしょうが
…私はこちらの方が確実でしょうね

希望も絶望も関係なく
ただ戦い続けられるからこその機械なれば

作戦目標は…後続の為の紋章露出
…地上に行かせはしません

UC起動

センサーでの情報収集で体躯計測
瞬間思考力で見切り脚部スラスター推力移動で腕回避
同時にワイヤーアンカー射出しロープワークも用い泥状体躯を怪力で疾走

敵体内の紋章直上付近地点に到達すれば全格納銃器乱射と同時、近接武装用いた体躯破壊
目標確認と同時、前腕部伸縮機構を作動し引き摺り出し紋章露出



「あれは『絶望卿』が都市に嗾けていた……」
 一度力尽きた『第五の貴族』が復活を遂げた姿は、トリテレイアが以前別の事件で遭遇したオブリビオンと同じものだった。あの時は別の吸血鬼の尖兵として、都市一つに大災害を巻き起こしていたが――『紋章』を獲得した今はそれ以上の脅威と化している。
「感情に働きかけ活力を奪う能力が更に強化されているようですね……」
 本来の特性とマッチした厄介な紋章の組み合わせ。これを攻略するために彼は思案を巡らせる。電子頭脳の演算力をもってすれば、答えを導き出すまでの時間は一瞬であった。

「正道の騎士ならば輝きを胸に対峙したでしょうが……私はこちらの方が確実でしょうね」
 正負の感情と切っても切り離せない「人」ならば、希望を抱いて絶望に挑むのが正攻法だろうが――【機械騎士は「人」ではない】。感情表現もあくまでプログラミングされた演算の結果であり、要不要に応じて凍結させられる「機能」に過ぎない。
「希望も絶望も関係なく、ただ戦い続けられるからこその機械なれば」
 ウォーマシンに基本搭載されたベルセルクトリガーを限定励起し、自身の制震構造を戦闘優先に最適化。カメラアイの発光が翠から赤に変化し、立ちはだかる標的を見据える。

「作戦目標は……後続の為の紋章露出」
 光学・振動・熱源等のマルチセンサーを起動し、目標の体躯を計測。ダメージの蓄積した絶望の集合体は、これ以上の損傷を忌避するように『紋章』を自身の身体の奥深くに沈めてしまっていた。かの異形に確実なトドメを刺すには、まずその発見は最優先となる。
『グウウゥゥぅぅぅぅぅ……』
 当初と比較すれば随分と小さくなった体躯を丸め、核を隠そうとしながら、その異形は【人の手により生み出され広がる絶望】を宿した腕を振り下ろす。しかしただ本能のままに叩きつける単調な攻撃を軌道計算する程度、今のトリテレイアにとっては容易い事――スラスター推進による回避と同時、射出されたワイヤーアンカーが腕に突き刺さる。

「……地上に行かせはしません」
 平時とは異なる無機質な口調で呟きながら、ワイヤーを命綱として敵の体躯の上を疾走するトリテレイア。泥濘の塊のような足場でも戦闘機動が可能なのは、ウォーマシンの怪力と戦闘用に最適化された高度な機体制御の為せる技だろう。
『ウウゥゥゥゥ……!!!』
 自身の身体を駆け上られ、絶望の集合体は煩わしげに腕を振り回すが、ここまで近付かれては巨大な腕は逆に当て辛くなる。敵がまごついている内にトリテレイアはセンサーで検知した『紋章』の隠し場所――その直上付近地点に到達する。

「全銃器展開、一斉発射」
 ウォーマシンの機体各部から格納された銃口が飛び出し、零距離から目標に発砲する。
 同時に近接戦闘用の儀礼剣と大盾を叩きつけ、掘り進むように泥濘の肉体を抉る。敵が苦悶に身を震わせようともお構いなしに、破壊し、粉砕し、底を見る。
「……目標確認」
 深い泥の中に埋もれた、ボロボロに罅割れた黒いブローチ型の寄生虫。それを捉えると同時、伸縮機構の作動した彼の前腕は蛇のように伸びて、『絶望の紋章』を掴み取った。

『グギイイィィィィィィィッ』
 聞くに堪えない耳障りな叫びと共に、これまでにない絶望の波動が押し寄せる。しかし感情機能の一切を封印したトリテレイアには、いかなる精神的な悪影響も無意味である。
 そのまま目標を握り潰さんばかりに堅く掴み、表層部まで引き摺り出す。再び露出させられた『絶望の紋章』は、絶望の集合体と共にジタバタともがき苦しんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
もともとオブリビオンですが、生物の形すら成していませんね。
この世界で人が生きる害になるのであれば、撃つのみです。

精神の浸食は邪神の得意技、この世界で戦うにはそれに抗うのは必須技能です。この意思が折れない限り、絶望に飲まれはしません……が。
距離を取るのが有効と分かっていて、それをやらない理由もありません。

【氷炎殺界】を使用、両手に「フィンブルヴェト」と「ラグナロク」を手にして氷と炎の弾丸の『乱れ撃ち』で『弾幕』を張るようにして遠距離から泥人形を倒していき、射線が開いたところで絶望の集合体にも弾丸を撃ち込みます。

吸血鬼に抗い猟兵になった日から、立ち向かい続けると決めています。今更折れはしません。



『グ……ウゥウゥぅぅ……アアァァァァァァ……』
 汚泥じみた身体を震わせ、悍ましい呻き声を上げる絶望の集合体。激戦の末に満身創痍となったソレはドロリと原型を歪め、周囲に瘴気を撒き散らしながら崩壊を始めている。
「もともとオブリビオンですが、生物の形すら成していませんね」
 その異形さを冷たい眼差しで見据えながらセルマは呟く。愛用のマスケット銃に弾丸を込め、銃口を向けて、照準を合わせる。数え切れないほど繰り返した手順を行いながら。
「この世界で人が生きる害になるのであれば、撃つのみです」
『オアアアァァァァァ……!!』
 氷のような決意宣言と、知性の欠片さえ感じさせない咆哮が重なる。黒き庭園の屋敷で繰り広げられた『第五の貴族』との長き戦いは、ついに最後の時を迎えようとしていた。

「精神の浸食は邪神の得意技、この世界で戦うにはそれに抗うのは必須技能です。この意思が折れない限り、絶望に飲まれはしません……が」
 近付く者の戦意を挫かんとする『絶望の紋章』の位置をスコープ越しに確認しながら、すっとその場から後退するセルマ。その照準が動いても一切ブレていないのを見れば、けして恐怖から後ずさったわけではないと分かる。
「距離を取るのが有効と分かっていて、それをやらない理由もありません」
 狙撃手である彼女にとって遠距離での戦いはむしろ得意分野。遠ざかっていくその姿を逃すまいとするように、溶け崩れた泥の中から人形の群れがわらわらと産み落とされる。

『ウウウウおオオォォォぉぉぉぉ……!』
 【粘りつく身体はぬぐい切れない凄惨な過去】。出現した泥人形は絶望の集合体を守る肉壁となり射線を塞ぐ。生物ですらない異形にも生存本能はあるのか――しかし今更この程度の眷属を召喚したところで、セルマの相手をするには力不足だ。
「逃しません……あなたは、ここで殺す」
 【氷炎殺界】を発動した彼女は炎と冷気を纏う真の姿を取り、もう一丁のマスケット銃が手元に現れる。その名は「ラグナロク」、フィンブルヴェトと対を成すように炎の弾丸を放つ銃。両手に二丁のマスケットを手にした彼女は、その銃口を泥人形どもに向ける。

「邪魔です」
 一切の容赦なく乱れ撃つ、氷と炎の弾幕。距離を詰める暇もなく、泥人形が辿る末路は凍りつくか、燃え尽きるか、さもなくば蜂の巣になるか。辛うじて人型と認識できる程度の異形の群れが、断末魔と共に骸の海へ還っていく。
『グウううアアアァァァァあぁぁ……!?』
 邪魔者が消え射線が開かれたところで、そのままセルマは絶望の集合体にも弾丸を撃ち込む。凍てつく氷弾と燃え盛る炎弾、この二つを同時に叩き込まれてはいかなる強敵とて無事では済むまい。

「吸血鬼に抗い猟兵になった日から、立ち向かい続けると決めています。今更折れはしません」
 響き渡る咆哮にもまとわり付く虚無感にも心を乱さず、氷炎の射手の精神を支えるのは揺るぎない決意。どんな絶望が眼前に立ちはだかろうとも、決して目を背けはしない――その瞳が泥の中から晒された『絶望の紋章』を捉える。
「これで……終わりです」
 トリガーを引く。放たれた氷の弾丸がボロボロだった紋章を射抜き、完全に破壊する。
 その瞬間――絶えず聞こえていた絶望の集合体の声がだんだん小さく遠ざかっていく。

『アアアアぁァァァぁぁァぁぁぁ―――…………』

 それは死か、あるいは解放か。骸の海より溢れた絶望の塊は再び骸の海に還っていく。
 後に残るものなど何もない。主なき屋敷に満ちる静寂が、戦いの終わりを告げていた。


 ――かくして猟兵達は黒き庭園の女王として君臨した『第五の貴族』討伐を果たした。
 地底世界に潜む黒幕がまた一人倒れたことで、闇夜の世界は未来に向かってまた一歩、小さくも確実な前進を遂げたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月04日


挿絵イラスト