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遠き日のぬくもりを求めて

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●ぬくもりを求めて
 新しい年を迎え、大通りを行き交う人々の顔もどこか晴れ晴れとしていて。
 ここサクラミラージュの帝都は、冬でも咲き乱れる美しい幻朧桜に見守られるように今日も賑わっていた。
 冬にも美しく咲き誇る幻朧桜に魅せられるのは、何も人間だけではない。傷ついた影朧もまた桜の精の癒やしを求めるようにやってくるのだ。
 そんな賑わいの中、大通りをとぼとぼと歩く犬がいた。中型犬ほどの大きさの犬はしなやかな筋肉とがっしりとした体格をしているが、その毛は白くふわふわとしていて柔らかそうだ。誰かを探しているようにきょろきょろと辺りを見回しては途方に暮れたようにしっぽが力なく垂れていた。
「あ、わんちゃんだ!」
 小さな女の子が、犬の歩く姿を見つけて後ろから近づく。母親が急に触っちゃだめよ、と声をかけるのも聞かず駆け出して。
 その声に耳をぴくりを動かした犬は子供の声に嬉しそうに振り向く。垂れていたしっぽを振って、嬉しそうに口を開けて。
「わんちゃ……ぎゃあああ! こわい、こわいよ、おかあさーん!!」
 少女が思わず泣き叫んでしまうほどに。
 その犬はものすごく強面だった。
 嬉しそうに開いた口が今にも噛みつかんばかりに少女には思えたのだろう。絶叫を上げて母親の元へと帰っていく。
 ――どうして。どうして。どうして誰もかわいがってくれないの?
 ――ただ、なでてほしいだけ。あそんでほしいだけなのに……!
 影朧は叶えられなかった願いと絶望を抱え、その魂を荒ぶらせていた。

●グリモアベースにて
「みんな、去年はたくさん力を貸してくれてありがとう」
 グリモアベースに集まった猟兵たちへと笑顔を向けると、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は丁寧に礼を述べてから、今年もよろしくね、と頭を下げた。
「早速だけど今年も力を貸してほしいの」
 そうしてエリシャは今年最初の依頼となる予知を語り始める。
「サクラミラージュの帝都に影朧が現れるの。この影朧はとても弱ってるみたいで儚い存在よ。よっぽど過去に辛いことがあったのね」
 現れる影朧は中型犬くらいの大きさのプードルのような姿なのだという。筋肉質で体格がよく、プードルにしては可愛さよりもたくましさが感じられるが、なによりその顔がとても強面なのだという。
「そんな見た目のせいで可愛がられるどころか、子供や他の犬にも怖がられたり逃げられたり。それでも昔は飼い主がいたみたいで、その飼い主とはきっと楽しく過ごしていたんでしょうね……」
 影朧が帝都に現れたのは、叶えられなかった何かを叶えようとしているからだ。
「このわんちゃん……昔は、真綿って名前で呼ばれてたみたい。ふわふわの白い毛から名付けられたのかしらね。名前を付けてくれた飼い主の女の子と仲良く暮らしてたみたいだけど、女の子は身体が弱くて早くに病気で亡くなってしまったみたいで……」
 顔を曇らせながら、エリシャは影朧の無念を語る。その少女が元気になったら一緒に帝都を彩るイルミネーションを見ると約束をしたのだ。だから真綿は、幻朧桜を彩る一番のイルミネーションエリアへと向かっていると推測される。
「無念を抱えているといっても影朧は帝都を脅かす存在。本来なら倒さなきゃいけないんだけど、影朧の無念を晴らすことができれば害を及ぼすことはないわ。そうなれば、影朧の救済を優先すべきというのが帝都桜學府の考えね」
 だからみんなには、この影朧の叶えられなかった望みを叶えてほしいとエリシャは告げる。
「帝都の大通りに現れた真綿は人々に怖がられてその魂を荒ぶらせているわ。ひとまず落ち着けてあげてほしいの」
 もとより人懐っこく遊び好きな犬なのだ。撫でてもらうのも、遊んでもらうのも大好きだという。猟兵だけでなく、使い魔やバディペットが真綿と遊んであげてもいいだろう。
「現れた場所は人が多いから、遊ぶなら近くに広い公園があるからそこがいいと思うわ。スキンシップだけでも、おもちゃを使って遊んでも、疲れたら一緒に休んであげるのでも、その魂を落ち着かせることができるわ」
 そうして真綿が果たせなかった執着を叶えることができれば、無念も晴れることだろう。
「サクラミラージュは転生という望みがある優しい世界。誰だって辛い出来事に傷つくことはあるわ。どうかその魂を少しでも慰めてあげてほしいの。それが帝都の平和にも繋がることだから……どうかよろしくお願いするわね」
 慈愛に満ちた微笑みを浮かべると、エリシャは星型のグリモアを掲げると、転送を開始した。


湊ゆうき
 こんにちは。湊ゆうきです。
 この時期のわんこは湯たんぽ以上に温かいうえに癒しです……!

●第一章【ボス戦】
 真綿という名前で呼ばれていた中型犬ほどもあるたくましいプードル風の犬。オス。人懐っこいわんこですが、帝都の人々に怯えられ、登場時は少々魂が荒ぶっております。
 なでなでしたり、遊んだりしているうちに落ち着いてきますので、全力でやっちゃってください。P/W/Sは気にしなくても大丈夫です。遊ばずに攻撃して弱らせることもできますが、悲しい顔をされます。近くに広い公園もありますので、道具を使って遊んでも走り回ったりしてもいいです。喜びそうなことならご自由に。

●第二章【冒険】
 影朧が現れてパニックになる帝都の人々をなだめたり、真綿を悲しませないように注意しながら、目的地までサポートしながら同行してください。楽しい話をしたりするのも有効です。

●第三章【日常】
 影朧の目的地は幻朧桜を彩るイルミネーションエリア。この頃にはすっかり辺りは暗くなっています。一緒に楽しんであげるのもいいですし、たくさんの人に驚かれたり怖がられたりすることなく楽しめれば満足のようですので、イベントを楽しむだけでもOKです。屋台も出ているようですので、食べ歩きや買い物もできます。
 お声掛けがあった場合のみエリシャもご一緒します。話し相手やわんこのふれあいのお供などできます。

 ご参加は途中からでも一章のみでも大歓迎です。
 プレイングはOP公開後すぐに受付いたします。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『強面わんこ』

POW   :    なでなでして
【撫でてほしい】という願いを【動物好きの人々】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD   :    あそぼ
【仲良く遊びたい】という願いを【動物好きの人々】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
WIZ   :    ねむねむ
【一緒にお昼寝したい】という願いを【動物好きの人々】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は三上・チモシーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】

●POW
事情はエリシャちゃんから聞いたけど
……そうなったら、こんな反応もやむ無しだよね

ビスマスちゃん、ちょっとまってね
荒ぶってるって事は、ある意味負の感情な訳だし、ボクに良い手が

薄荷餃霊剣を『属性攻撃(手袋)』と『化術』の併用で剣からミント餃子の力が籠った手袋に

そしてノーガードで近づき
なでなでして荒ぶる感情をダイレクトアタック(癒しと言う意味で)

ボク達は、あなたに危害を加えに来た訳じゃないんだよ……とこんな感じに

そう言えば、真綿ちゃんもボクもモフモフだったけど、ちょっとビスマスちゃんボク達をモフモフするってどんなだよぉ

幾らモフモフジャンキーだからって

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】
●SPD
エリシャさんから大体事情は聞いて解りましたが、過去のトラウマですか

他人事じゃない気がしますが
遊んで(モフモフして)落ち着かすなら事前に『料理』して持ってきた鮪のさんが焼きを片手に

普通のワンちゃんじゃないなら、こう言うのも食べれるでしょうか?鮪は鎮静効果の食効能もありますし

ってエミリさんに良い手段が?
あっ、なるほど……確かにミントも
リラックス効果はありましたっけ?

こう言う時、エミリさんの
餃心拳って小回り効きますよね

それにしても……モフモフがモフモフと戯れてる所を見ると、心の奥がウズウズするんですけど

わたしも癒されたいのでモフらせてくださーいっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●気持ちを和らげる食材
 サクラミラージュの帝都に現れた影朧――それは中型犬ほどの大きさの白いふわふわの毛並みのプードルのような犬だった。
「こわい、こわいよ、おかあさーん!!」 
 無邪気に触れ合いに行った少女が、その強面の顔に思わず泣き叫び、大通りは騒然とする。けれど傷ついたのは影朧の方でもあった。人懐っこい性格であるのに、その見た目のせいで人間にも他の犬にも怯えられてきたのだ。傷ついた心はやがて荒ぶる魂へと変わっていき。満たされない心に、影朧――真綿は牙をむいてうなり声をあげた。
「事情はエリシャちゃんから聞いたけど……そうなったら、こんな反応もやむ無しだよね」
 大通りが見渡せる場所から様子を窺っていたエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は、突然に豹変した真綿の様子に同情した。
「ええ、事情は聞いて解りましたが……過去のトラウマですか」
 エミリロットの言葉に、同じくその様子を見ていたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)も深く頷くと、少し遠い目をした。愛されない寂しさに、ひとりぼっちの孤独。それはビスマスの記憶にも深く刻まれている。どうしても他人事とは思えない。
「遊んであげたり、撫でてあげたら落ち着くと言っていましたよね。でもその前に……」
 そう言うビスマスの手には事前に料理して持ってきたお手製のマグロのさんが焼き。
「普通のワンちゃんじゃないなら、こう言うのも食べれるでしょうか? 鮪は鎮静効果の食効能もありますし」
 念のためにネギ類は除いて、味付けも薄味にしておいた。お腹が満たされれば落ち着くのは動物だってそうだろうし、鎮静効果も期待できる。
「うん、それもいいと思うんだけど……ビスマスちゃん、ちょっとまってね」
「ということは、エミリさんに良い手段が?」
 何か考えがあるようなエミリロットにビスマスが問いかけると、自信ありげな頷きが返ってきた。
「うん、荒ぶってるって事は、ある意味負の感情な訳だし……ボクに任せて」
 エミリロットは普段は緑の餃子剣として形を成す【薄荷餃霊剣】を、化術の力も借りて薄荷餃子の浄化作用と霊的作用を極限まで高めて生成した手袋へと変えていく。霊力と浄化の力を宿したそれは、肉体を傷つけることなく負の感情や苦痛、戦意などを取り除くことができるのだ。
「あっ、なるほど……確かにミントもリラックス効果はありましたっけ?」
 そうして唸り声をあげ、誰彼構わず牙をむき、我を忘れた様子の真綿にノーガードで近づくと、エミリロットは緑の手袋越しにわしわしとその身体を撫でるのだった。
「ボク達は、あなたに危害を加えに来た訳じゃないんだよ」
 努めて落ち着いた声音でそう囁き、その間にも背中やあごの下などを撫でては、荒ぶる感情を鎮めていく。
「こう言う時、エミリさんの餃心拳って小回り効きますよね」
 そう感想をもらすビスマスに笑顔を返しながら、エミリロットは引き続き声をかけながら撫でていく。
 理性の光を失っていた瞳にはようやく落ち着きが戻り、真綿は唸るのをやめ、代わりに嬉しそうにしっぽを大きく振った。
「お腹もすいていませんか? 特製のさんが焼きですよ」
 その様子を確認してビスマスもそっとマグロのさんが焼きを差し出す。真綿はビスマスの顔を見つめ、そこに自分への思いやりの感情を見つけると、嬉しそうにぱくぱくとそれを食べ始めた。
「ひとまずは落ち着いたね……っと、でも場所を変えた方がいいかな」
 遠巻きにこちらを眺めている通行人の視線に気づくと、エミリロットがよしよしと真綿を撫でてから辺りを見回す。
「確か近くに公園があると言っていましたし……そちらに移動しましょう」
 すっかり心を許した真綿は、二人が先導すると素直にあとをついていった。
 緑の多い広い公園には人はまばらで、ひとまず騒ぎは起きそうにない。
「さんが焼き美味しかったですか? まだありますから少しずつ、ですよ」
 嬉しそうにしっぽを振って、ビスマスにおねだりする真綿に、顔をなめられくすぐったそうにするビスマスは残りのさんが焼きを少しずつあげる。
「それならボクも真綿ちゃんが食べれるような餃子作ってこればよかったかな」
 ワンちゃん用の餃子はどんなのがいいだろう……また今度考えてみようと思いながら、エミリロットは遊ぶ方法を閃いた。
「シャオロンちゃん、ちょっとだけならいいよね?」
 麺棒型ドラゴンランスの【シャオロン】は槍形態のままならちょうどいい遊び道具にもなりそうだ。エミリロットがそれを勢いをつけて地面にころころと転がすと、真綿が嬉しそうに取りにいってくわえて帰ってくる。
「餃子の皮でフリスビーとかもありかも……!」
 いろいろとアイデアを閃かせては、エミリロットは真綿と遊び、時に撫でてはその寂しい心を和らげていく。
「それにしても……」
 エミリロットが遊んでいる間、その様子を見ていたビスマスはその微笑ましさにいてもたってもいられなくなっていた。
「モフモフがモフモフと戯れてる所を見ると、心の奥がウズウズするんですけど」
 ファードラゴンタイプのエミリロットもまた真綿に負けず劣らずもふもふで。
「わたしも癒されたいのでモフらせてくださーいっ!」
 抑えきれなくなった願望にビスマスが二人を同時にもふもふする。
「……ちょっとビスマスちゃん、ボク達をモフモフするってどんなだよぉ」
 真綿ちゃんはともかく、確かに自分もモフモフだけどと口をとがらせながらも、されるがままのエミリロット。
「まあ、いいじゃないですか」
「幾らモフモフジャンキーだからって……」
 けれど一緒にもふもふされている真綿がとても嬉しそうにしっぽを振っていたので。
「しょうがないなあ……」
 エミリロットもとびきりの笑顔を浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
ふむ。この犬か。…なるほど確かに強面の顔だな。
体格も相まって恐怖を感じる者もいるかもしれん。
外見で損をしている類のやつだな。これは。
「私に似てる、とはどういう意味だ。露?」
表情と可愛いところと言われたが…何?
ん?私も周囲からはああいう風にみられているのか?

真綿と露が遊んでいる様子を私は見守っていよう。
こういうことは露が得意だろうし…同類だからな。露は。
眺めていると本当にそう思えて思わず密かに笑ってしまう。
「じゃれ合っているようにも見えるか」

十分に遊び休みたいのか私の傍まで真綿が来たら撫でる。
撫でながら考える。もしかすると私は幸福なのかもしれない。
隣に理解者がいるのだから。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
「わv 可愛いわ。レーちゃんみたい♪」
シビラって名前つけたいくらいそっくりね。
え?表情と可愛いところがそっくりじゃない?
って言ったらすっごい顔されたわ。あれ?あれ?

「わーい。『シビラ』こっちにおいで♪ おいで」
しゃがんでから両腕広げて呼んでみるわ。
で。たっくさん遊んであげるわ。あそぼあそぼ♪
「『シビラ』~。お手しよ。お手♪ 可愛い~」
「これとってきてね。『シビラ』。はーい♪」
真綿って可愛い名前があるけどあえて変えてみる。
…あ。なんだか不思議な顔してる。レーちゃん。

あ!今度はレーちゃんに構ってもらうのねv
あたしも…って言いたいけど後にするわ。
代わりに撫でまくるわ♪



●子犬の円舞曲 幸福の協奏曲
 サクラミラージュの帝都。そこに現れた弱々しい影朧は、ひとまず他の猟兵と一緒に人の多い大通りから公園へ移動したようだ。なんとか落ち着いたように見えるその犬――真綿を仲間から預かったシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、その姿をじっと観察した。
「ふむ。この犬か。……なるほど確かに強面の顔だな」
 シビラに対して人懐っこくしっぽを振っているのだが、その眼光は鋭く、開いた口から覗く犬歯が恐ろしく見えなくもない。
「体格も相まって恐怖を感じる者もいるかもしれん」
 プードルらしいと聞いていたが、一般的に見るそれよりは明らかに大きいし、がっしりとして筋肉質だ。爪も伸びているので野性味が増しているとも言える。外見で損をしている類のやつだな、とシビラは神妙な顔で頷く。
「わ、可愛いわ。レーちゃんみたい♪」
 シビラが冷静に分析しているその隣にひょこっと顔を出した神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)が真綿を一目見てそう感想を述べる。
 シビラは一瞬自分の耳を疑った。今、自分に似てると言う意味の言葉が聞こえた気がしたが。
「シビラって名前つけたいくらいそっくりね」
 にこっと笑って真綿に近づく露は確かにそう言った。
「私に似てる、とはどういう意味だ。露?」
 これはひょっとしたら抽象的なたとえなのかもしれない。念のために露にそう確かめてみる。
「え? そのままの意味よ。表情と可愛いところがそっくりじゃない?」
 表情と可愛いところ? 表情……露には自分がこんな風な強面に見えているということなのだろうか。
「レーちゃんたらすっごい顔。あたしおかしなこと言ったかしら?」
 露の言葉も聞こえていない風のシビラがじっと真綿を無表情で見つめていると、真綿がごろんとその場にお腹見せるように寝転がった。
「レーちゃんがじっと見つめるから、ごめんなさいってしてるんじゃない?」
「む。別に威圧感を与えたわけでは……」
 しかし真綿にはどうやら怖かったようで。
(「私も周囲からはああいう風にみられているのか……?」)
 あながち露の言うことが間違っていないようで。こほん、と一つ咳ばらいをするとおもむろに告げる。
「こういうのは露、君の得意分野だろう。任せた」
「わーい。遊んでいいのね。『シビラ』こっちにおいで♪ おいで」
 ごろんとお腹を見せている真綿に対し、露はしゃがんで両手を広げて呼ぶ。ただしその名前は昔呼ばれていたものとは違って。
 真綿は一瞬だけ、きょとんという顔をしたが、それでもそれが自分を呼んでいるのだと気づくと、起き上がり、嬉しそうに露の元へと走りこんだ。
「おりこうね、『シビラ』。あたしがたっくさん遊んであげるからね」
 眼光鋭い瞳をキラキラさせると、はっはっと牙の覗く口を開けて真綿の視線は露へと注がれる。
「『シビラ』~。お手しよ。お手♪」
 露が右手を差し出すと、飼い主に教えてもらっていたのか、前足をさっと差し出して。
「可愛い~♪」
 そのしぐさに露もまた瞳を輝かせると、よくできたわね、と頭を撫でてあげる。
 その様子を公園のベンチに座って眺めていたシビラは思わず口元をほころばせる。子供と遊ぶように、露は真綿と遊んでいる。こういうのは露の得意分野だとわかってはいたが、飼い主の代わり、というより同類のように見える。
 なぜ真綿という名前があるとわかっているのに、シビラと呼ぶのかは理解できないが、露と真綿が遊ぶ様子はまるで子犬同士のようで。眺めているとそうとしか思えず思わず笑ってしまった。
「じゃれ合っているようにも見えるか」
「今度はこれとってきてね。『シビラ』。はーい♪」
 その辺りに落ちていた木の枝を拾い上げ、露はえいと遠くに投げる。それを犬の本能か嬉しそうに追いかけくわえては戻ってくる真綿。
(「……あ。なんだか不思議な顔してる。レーちゃん」)
 シビラを連呼する露にやや非難めいた視線を送っているのだが、露は不思議そうに首をかしげるだけ。だってそっくりなんだからそう呼ぶしかないと思うのだ。真綿もそう呼ばれるのが嫌ではないみたいだし。
 ひとしきり遊んだところで、真綿がベンチに座っていたシビラの元へとやってくる。
「どうした? そろそろ休みたいのか?」
 シビラのすぐそばに身体をくっつけて寝転ぶ真綿の身体をそっと撫でてみる。柔らかい毛並みが心地よく、そして撫でると体温が伝わり温かい。気持ちよさそうにそのまま真綿が身体を預けるものだから、シビラもまたそっとその毛並みを撫で続ける。
(「もしかすると私は幸福なのかもしれない」)
 外見だけで怖いと恐れられる存在。けれどその人の性格や考えていることは見た目だけではわかるはずもなくて。
 シビラは自分が表情に乏しく、対応が冷淡であるという自覚はある。それで誤解を受けることがなかったわけではない。
 けれど、そんなシビラを理解してくれる者がそばにいる。温かい陽だまりみたいな存在。
「あ! 今度はレーちゃんに構ってもらうのね♪」
 ゆっくりと真綿を追いかけてきた露がシビラに撫でてもらっている様子を見てにっこりと微笑む。
「あたしも……って言いたいけど後にするわ。代わりに撫でまくるわ♪」
 うふふ、と言いながら露は真綿をわしわしと撫でる。そしてなぜか時々シビラの頭も撫でる。
「……露、私は犬ではないのだが」
「あ! あんまりそっくりだから間違えちゃった~!」
「……絶対わざとだろう……」
 そんな二人に撫でられながら、真綿は満足そうにしばしの休息をとるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
モフが悲しい顔をしている!
これはアカネが行かねば誰が行くというのですか

まずは真綿様を歌でお呼びします
コミュ力を駆使して真綿様に両手を差し出します
ほら、武器など持っておりませんよー
手を振ったりおやつを出したりして気を引きまして、こちらへおいでと誘います
寄ってきたら迷わず抱きしめモフ!
肩や腕を噛まれても抵抗致しません
ほら、痛くない。大丈夫です

気を許してくださったら思い切り遊びましょう!
公園の広場でダンスです
わんこ様は思い切り走り回るのが一番のストレス発散になりましょう
鬼さんこちら、です
踊りながらモフり、追いかけモフり
追いかけっ子に疲れたら一緒におやつを食べましょうね
真綿様には骨を
アカネはココアです


彩瑠・姫桜
すごいわ、ホントにもふもふなのね…!
(目を輝かせ、撫でたそうにうずうず)

強面な顔は損すること多いけど、
こういう顔の子って優しい子が多いのよね
初対面だとどうしても誤解されがちだから辛いところだけど

戦う必要がなさそうなら、私が思いっきり遊んであげるわよ
フリスビーだってボールだって持ってるし!
(しゃきーんと取り出すは、わんこ遊びセット)
もふもふ達と遊ぶのに手加減なんてしてられないじゃない!(やる気)

UCは、拘束ロープを使うけど、拘束せずに縄遊びレベルで使えたらいいかしら

遊ぶ時はschwarz(黒蛇)と、Weiß(白蛇)にも協力してもらうわ
…って、あんた達、遊ぶの興味ないって顔しない
全力で遊ぶのよ?



●もふもふ少女同盟
 猟兵たちに保護され、早速何人かに遊んでもらった真綿はしばし夢の中にいた。
 夢の中では大好きな飼い主の少女が名前を呼んで、たくさん撫でて遊んでくれた。そう、夜も一緒に寝て……。
 病気で外に出ることはほとんどなかったから、一緒に散歩に行くことはあまりなかったけれど。それでも体調が良くなったら、一緒にイルミネーションを見に行こうねって約束したのだ――。
 まどろみの中にいた真綿の耳がぴくりと動く。近くからとても優しい歌声が聞こえる。
 とってもとってもやさしい声。きっとあの子が歌ったらこんなかんじじゃないかな……。
 先ほどまで遊んでくれた少女たちの顔をお礼のようにぺろりと舐めてから、真綿は歌が聞こえる方へと走った。
「あなたが真綿様ですね!」
 歌声の主――アカネ・リアーブル(ひとりでふたりのアカネと茜・f05355)は近づいてきた真綿に気付くと、まずは両手を広げて見せた。武器などは隠し持っておらず、危害を加える気などないというアピールだ。
 けれど真綿はそれをいらっしゃいと受け取ったらしく、嬉しそうにアカネに飛びついた。
「わ、真綿様、くすぐったいです! でももう恐れてはいないのですね。良かったです」
 怯えられるのではと危惧していたが、本当に人懐っこい性格のようだ。先に他の仲間たちが遊んでくれたせいもあるだろう。
「すごいわ、ホントにもふもふなのね……!」
 アカネと戯れている真綿を見て、彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)が思わず目を輝かせていた。その手は今にも撫でたそうにうずうずとしている。
「あ、姫桜様! もふもふあるところに姫桜様あり、ですね!」
 以前もアカネが予知したもふもふ依頼――れっきとした重要な任務である――を手伝ってくれたことがあるので、姫桜がもふもふ好きであることはわかっているのだ。
「あ、アカネさんたら……も、もふもふしたいだけで来たわけじゃないのよ? こんなにいい子なのに見た目で損してるなんてかわいそうだもの」
 姫桜がそっと真綿に近づいて怖がらせないようにしゃがむと、真綿は嬉しそうにしっぽを振って今度は姫桜に飛びついた。
「見た目は強面だから、損することは多いけど……こういう顔の子って優しい子が多いのよね」
「はい、真綿様は元気なだけで狂暴ではありませんし」
「初対面だとどうしても誤解されがちだから辛いところだけど……」
 姫桜が背中のふわふわの毛を優しく撫でると、嬉しそうにもっと撫でてと甘えてくる。けれど、きっとたくさんの人に怖いと逃げられ傷ついてきたのだろう。
「モフが悲しい顔をしているなんて耐えられません……!」
「ええ、望みを叶えてあげないとね」
 もふもふ好き少女の想いはひとつだ。
「こうして気を許してくださったのです。思い切り遊びましょう!」
「そうね、フリスビーだってボールだって持ってきてるし!」
 姫桜はしゃきーんとわんこが喜びそうな遊びグッズを取り出した。
「いいですね。わんこ様は思い切り走り回るのが一番のストレス発散になりましょう」
 姫桜が投げたボールを真綿が走って取りに行き、それをアカネに渡すのだが、アカネは真綿が思いっきり走れるようにと鬼ごっこのように逃げていく。
「鬼さんこちら、です」
 ダンスのように軽やかに舞いながら逃げるアカネを追いかけて、真綿が全力で走って追いつくと、ボールを放した口でぺろぺろと顔をなめる。追いつかれたついでとばかりに、アカネも全力でもふり倒すのだった。
「さあ、schwarzとWeißも一緒に遊ぶわよ?」
 ドラゴンランスの黒い毛並みの【schwarz】と白いからだの【Weiß】にも協力してもらおうと姫桜は振り返ったのだが、どうにも動こうとしない。
「……って、あんた達、遊ぶの興味ないって顔しない。全力で遊ぶのよ?」
 schwarzは見た目も仕草も猫っぽいので、犬に追いかけられるというのはあまり乗り気ではないようだった。けれど姫桜に言われて、おもちゃグッズをくわえて飛んでいく。ドラゴンたちがボールやフリスビーを投げると、真綿は嬉しそうにジャンプしてくわえては、またアカネに届けに行くのだった。
「さあ、このロープは結構頑丈にできてるから、引っ張りがいがあるわよ!」
 普段は敵を拘束するロープではあるが、今ならこうして遊びにも使える。真綿がダッシュでこちらに向かって来たので、姫桜もまた全力で応える。
「もふもふ達と遊ぶのに手加減なんてしてられないじゃない!」
 やる気に満ちた言葉と共に、全力の引っ張り合いっこ。押したり引いたりしながら、最後は姫桜が負けてあげる。
「楽しかったかしら?」
「姫桜様、真綿様、少し休みませんか?」
 アカネがベンチで飲み物を用意して待っていた。
「真綿様にはこちら、姫桜様とアカネはココアです」
 骨型の犬用ガムを差し出すと、真綿は嬉しそうに齧り始める。
「アカネさん、ありがとう」
「最高のモフタイムでしたね……」
 ココアを手にしながらも、片方の手は真綿の白いふわふわの毛を撫でながら、アカネの言葉に姫桜も笑顔を浮かべて頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
【鬼獣と竜】
(影朧を喰らおうとした竜(蛟鬼)の顔を咄嗟に覆う)
やめよ、竜(蛟鬼)。彼の者は討つべき敵に非ず。
■行
攻撃を加えようとする者の動きを止め、わんこと対面。
その際は【動物と話す】力を用いて、会話を試みる。

先ずは情報集めだ……彼に『何かあったのか』を聞いてみる。
勿論だが、深く追求しすぎない程度に。
ある程度理由が分かったら『折角だから遊ばないか』と返し、
わんこの魂を抑えることを試みる。
他にも、彼に何かお願いされた場合は気前よく乗るぞ。

後は、そうだな……
竜(蛟鬼)が『自分達と同じ存在』である事と、『うまいものを
持っているから分けて貰うといい』と伝えよう。

※アドリブ歓迎不採用可・『』は獣語


荒覇・蛟鬼
【鬼獣と竜】
おお、なんと可愛そうな魂でしょう。
一刻も速く其の身を喰らい、送らねば……
■闘
彼の身体を軽やかに【グラップル】し、頭から……ん?
何者かの手に顏を覆われてしまいましたぞ。これは……
鬼獣(清綱)ですか。何故塵を扶く真似をするのです。

ほう、これは敵ではない?相も変わらず狂った事を云う。
分かりました。では彼に敵意がないと証明してごらんなさい。
できなければ、これは私が喰わせて頂きますぞ?
(敵意があるとわかるまで待機します)

ふむ、どうやら敵意はなさそうですが……む?
何です、私の所に来て。この飴が気になるのですか?
生憎ですが、あげられそうなものは持っておりません。

※アドリブ歓迎・不採用可



●討つ者 救う者
 大通りで人々に怯えられていたという影朧は、猟兵たちによって公園へと向かったのだと聞いた。辺りを見回せば件の影朧はすぐにわかった。確かにたくましい体格の犬だ。だが今は走り疲れたのか、強面なりにも無防備な寝顔をさらして寝息を立てていた。
「おお、なんと可愛そうな魂でしょう」
 漆黒の髪と瞳の背の高い青年が、憐れむようにそう告げる。けれど、彼――荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)にとって、オブリビオンという存在は世を蝕む“塵”そのもの。いかに弱り切った影朧、儚い存在だとしても、地獄の獄卒である彼がその身に宿る竜神の力と閻魔王の力を振るって討つのは当然のことだった。
「一刻も速く其の身を喰らい、送らねば……」
 すやすやと寝息をたてて眠る真綿の身体を軽々と掴み上げ、その頭から喰らおうとしたまさにその時だった。気配を感じることのないまま、何者かの手が蛟鬼の顔を覆ったのだ。
「やめよ、竜」
「これは……鬼獣ですか」
 相手を見ずともその声で察した蛟鬼に呼ばれると、蛟鬼が鬼獣と呼ぶ愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)はその手を離した。
「何故塵を扶く真似をするのです」
「彼の者は討つべき敵に非ず」
 不満そうな蛟鬼の言葉に、清綱は冷静に告げる。
 その善悪を問わず、蛟鬼が世を蝕む“塵”だと見做せば、彼は完膚なきまでに敵を討ち壊す残虐なる「鬼竜」となるのだ。清綱もまたオブリビオンには敵として対峙し、刃を交えてきた。けれど数多の世界を渡り、戦を重ねるごとに清綱の心もまた変化した。敵として対峙したものの中にも、救える者たちがいる。その全てを救うことはできないとしても。目の前にいる救える魂は救うという信念をもとに、こうして世界を渡り歩いているのだ。
「ほう、これは敵ではない? 相も変わらず狂った事を云う」
 猟兵にとって、相手がどんな姿をしていようとオブリビオンはそれだとわかる。今はおとなしくしているが、この犬も紛れもなく帝都を脅かす影朧なのだ。それがわからない清綱ではないはずなのに。彼は救うことにこだわる。
「……分かりました。では彼に敵意がないと証明してごらんなさい」
 一歩も引く様子を見せない清綱に、しびれを切らしたのは蛟鬼の方だった。
「ああ、俺に考えがある」
「できなければ、これは私が喰わせて頂きますぞ?」
 蛟鬼が真綿を解放し、一旦退いたのを確認すると、清綱はようやく重い瞼を持ち上げ目覚めた真綿へとしゃがみ込み近づいた。
『もし、わんこよ』
 清綱の言葉に真綿は耳をぴんとたて、驚いたように嬉しそうに清綱を見つめた。
『……ああ、そうだ。俺は動物と話すことができる』
 蛇の鱗と牙、大鷲の翼と爪、牛の角と膂力を持つキマイラの清綱もまた年齢より大人びた容姿と長身のせいもあって迫力がある。外見で恐れられてきた真綿は、そんな清綱を怖がる様子もなく、自身と向き合いたいと真摯な表情でこちらを見つめる清綱へとすぐに心を許した。
『なに、撫でてほしいのか? わかった。俺で良ければ……』
 背中や腹を撫でてやると、真綿は嬉しそうにしっぽを振った。
「今のところ敵意は感じられませんが……いや、巧妙な罠という可能性も皆無ではありません」
 蛟鬼が現状を見守る中、清綱はなぜ真綿がこのような存在になったのかを情報収集することにした。
『このような身になったのには何か事情があったと推察する。……一体何があったのだ?』
 そうして清綱が真綿から聞き出したのは、真綿は飼い主である少女と楽しく暮らしていたこと。けれど少女は病気である日突然亡くなってしまったこと。その前に一緒に幻朧桜を彩るイルミネーションを見に行くと約束したのに果たせなかったこと。少女の死後、彼女の両親は少女を思い出して辛いからと真綿を手放したこと。その見た目からもらい手もなく、真綿は帝都をさまよい、恐れられ、石を投げられ、疲れて飢えて野垂れ死にしたことを語ってくれた。
『それは……辛かったであろうな。どうすればその心が晴れるだろうか』
 少女と約束したイルミネーションが見たい。もう少女はいなくても、自分だけでも見て約束を果たしたいと。誰にも怯えられることなく、それができればいいと……そう語ったのだった。
 真綿自身も誰かに話を聞いてもらいたかったのだろう。清綱が思っていた以上に深い話が聞けた。理由がわかればその思いを果たすこともできよう。
『よし、ここは公園だ。折角だから遊ばないか』
 その言葉に真綿はしっぽ振って目を輝かせて応える。どこかからくわえてきたボールを投げてほしいと清綱にせがむ。
『これを投げるのだな。任せろ』
 清綱の怪力で投げたボールは勢いよく転がり、真綿が嬉しそうに追いかけて走る。心から遊びを楽しむ真綿の魂はもう悲しみに荒ぶってはいなかった。
『あちらが気になるか。怖そうに見えるかもしれないが竜も自分たちと同じ存在なのだ』
 ちらちらと蛟鬼に視線を送る真綿にそう説明すると、清綱はとっておきの情報を教える。
『ああ見えて、実はうまいものを持っているから、分けて貰うといい』
 うまいもの、の言葉に真綿が目を輝かせる。
「ふむ、どうやら敵意はなさそうですが……む? 何です、私の所に来て」
 清綱の破魔と浄化の力もあって、真綿から悪意のようなものは一切感じられなかった。蛟鬼の前にちょこんとお座りすると、期待を込めた目で見上げてくる。
「この飴が気になるのですか?」
 いつも口に咥えている球状の棒付き飴を指さすと、真綿がしっぽを振る速度を加速させた。
「……生憎ですが、あげられそうなものは持っておりません」
「では、遊んでやるのはどうだ?」
「遊ぶ? 私が? ……狂った事を云うのも大概になさいませ」
 それでも真綿が期待に満ちた目で蛟鬼で見つめると、仕方なさそうに袖に潜んでいる蛇の使い魔を呼び出す。
「濡姫は化術も操れますからね」
 蛟鬼が小さい頃から仕える従者である蒼蛇は、返事をするようにちろりとその長い舌を覗かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●果たせなかった約束
 帝都に現れた影朧・真綿の傷ついた心と荒ぶる魂は、猟兵たちによって鎮め、癒され、もはや誰かを傷つけることのない無害な存在となった。
 けれど真綿には果たせなかった執着があるのだ。飼い主の少女と約束した、幻朧桜を彩るイルミネーションを見に行く――それが真綿の望みだった。
 この公園からイルミネーションエリアまでは、大通りをしばらく歩いて行かなければならない。ただ、先ほど騒ぎになったばかりで、影朧である真綿に人々は恐怖を抱き、パニックになってしまう恐れもある。
 そうならないように真綿を守り、帝都の人々をなだめたり説き伏せたりしながら道を開く必要がある。非常に儚い影朧であるので、心無い言葉などに傷ついてしまえば、真綿は目的を果たす前に生きる希望を失い、消えてしまうかもしれない。そのため真綿に楽しい気持ちになってもらう言葉をかけたり行動をとるのも効果的だろう。
 すっかり猟兵たちに心を開いた真綿だが、大通りを行く人々を前に少しのためらいを見せる。過去の辛い思い出が蘇ったのかもしれない。
 それでも、叶えたかった望みを果たすため――猟兵たちに見守られながら、しっかりとその足を踏み出したのだった。
エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】

●POW
事前にボクとビスマスちゃんで
UCによる物を食べ技能を強化の後
真綿ちゃんに『迷彩』と『属性攻撃(幻)』を込め『化術』で加工した『オーラ防御』で覆い被せ、別の犬に見た目を変化させて

その後、ビスマスちゃんと交代交代で真綿ちゃんと遊びつつ突き進むよ

勿論、念のために回りに警戒しつつ
可能なら人通りの少なく幅が広いルートを探しながら

ボクは【餃子手拭い】を『化術』でフリスビーにして追い付ける範囲で投げながら

シャオロン(麺棒モード)の先に
くくりつけて、猫じゃらしみたいにしてみても……猫じゃらしって犬にも効果あるのかな?

術が解けそうになったら
解けない内にかけ直し

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】

●POW
事前にエミリさんのUCの
恩恵に肖り、エミリさんが
真綿さんに準備を施したのち

わたしは万が一の時に備え、真綿さんを『かばう』守れる様に備えつつ

わたしの今に至るまでの切欠の
始まりのなめろう

わたしが恩師にご馳走に
なったハワイアンなめろうについて
のエピソードと恩師にドライバーを
貰い猟兵になるまでの話を

そう言えば現物は
用意してませんでしたね

あっ、無いなら遊び道具も
兼ねて代打を生成しましょう
匂い付きの犬の遊び道具もありますし

甘い匂いは犬も好きですから
UCでハワイアンなめろうビームフリスビーを非殺傷で生成し

これで『パフォーマンス』しつつ一緒に遊びつつ進みます

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●それぞれの特技で
「真綿ちゃんには帝都の人を害するつもりなんてないけど……」
「先ほどの騒ぎがあったから、向こうはそうは思ってくれないでしょうね」
 叶えたかった望みを果たすべく、目的地に向かおうとした真綿をサポートするために、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)とビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は人通りの多い道を行き交う通行人の様子を窺う。そのまま真綿を歩かせたのでは、何があるかわからない。最悪の事態が起これば、真綿は目的を果たせず消えてしまうかもしれない。そうならないためにも、できることをやっておくべきだ。
「というわけで、真綿さん、少し待っていてくださいね」
「医食同源、食は薬なり……コレにはこう言う使い方も在るんだよ」
 エミリロットがユーベルコードで作り出したのは、治癒と増強効果のある霊力が籠められた霊芝入り茸餃子。気の塊として撃つこともできるが、ここは美味しく二人でいただく。そうすれば霊芝入り茸餃子の霊力で技能の能力を一時的に高めることができるのだ。
「真綿ちゃん、ちょっとじっとしててね」
 おとなしくしている真綿に、エミリロットが迷彩と幻属性を込めた化術で加工したオーラ防御を覆い被せることで、その見た目を変化させる。それは体格こそ同じような犬だったが、その特徴的な強面が一般的な犬のものに周りからは見えるはずだ。
「今の間だけですから、何かあればわたしたちが守りますから。安心していきましょう」
 二人の想いを感じ取った真綿は、ゆっくりと大通りを歩き始めた。
 エミリロットは真綿に付き添いながらも辺りにしっかりと目を配りながら、できる限り人通りが少なくなおかつ道幅の広い場所を探して歩いていく。
「真綿ちゃん、ほら」
 エミリロットが手にしているのは、フリスビー。もともとは餃子の皮に気を注入した餃子手拭いなのだ。それを化術でフリスビーにしてみせて、ほんの少し先に投げる。少し追いかけてキャッチできる距離なので通行の邪魔にもならない。楽しく遊びながら目的地を目指せるのだ。
 真綿が嬉しそうにしっぽを振っているのを見て、ビスマスも笑顔を浮かべる。もちろんいつだって真綿を守れるように準備は万端だが、その無邪気な様子に心を和ませる。
「真綿さん、せっかくなのでわたしの話を聞いてくれませんか? わたしの今に至るまでの切欠の……始まりのなめろうの話を」
 ビスマスは語る。小さい頃、愛情を注いでくれるはずの親からネグレクトされたこと。家の外でもクラスメイトにいじめられ、居場所を失ったこと。
「だから真綿さんの気持ちもわかるんですよ」
 でも、今のわたしは違うでしょう? と問いかけて。確かにあの時、世の中に絶望して行方をくらました。けれどその旅の中で、自身と同じビスマス結晶の輝きを宿したクリスタリアンの男性になめろうを勧められたことから全てが始まったのだ。
 あの時に恩師がご馳走してくれたハワイアンなめろう。味噌を切らしているからと、バナナを代用したそれがとても美味しくて、今でも思い出の味なのだと。そうして恩師にドライバーを貰って猟兵になるまでの物語を真綿に話して聞かせる。辛いことがあっても、きっと理解してくれる人はいると、真綿に伝えたくて。
 美味しそうな料理の話ということがわかったのか、真綿はキラキラと目を輝かせるが。
「そう言えば現物は用意してませんでしたね」
 ないなら、それはそれで代わりのもの作ることもできる。どうせなら、遊び道具として。
「甘い匂いは好きですか?」
 匂い付きの犬の遊び道具があるのだから、きっと真綿も気に入るのではないかと思って。
 ビスマスがユーベルコードで作り出したのは、なめろうビームを生成する武器……を応用したビームフリスビー。バナナの入ったハワイアンなめろうが甘い香りを漂わせ、目を輝かせた真綿とそれを投げて遊びながら目的地まで楽しく向かっていく。
「ほら、真綿ちゃん、こっちはどうかな?」
 エミリロットが次に取り出したのは、先ほど公園でも大活躍した麺棒形態のシャオロン。その先に紐を括り付けておもちゃをぶら下げてみる。
「猫じゃらしって犬にも効果あるのかな?」
 それでも真綿は楽しそうにそのおもちゃをくわえようと飛びついて。じゃれつく、というより遊ぶという感じだが、楽しそうなので犬猫問わずにおもちゃになるようだ。
 辺りには楽しそうに遊ぶ犬にしか見えないだろう。ただ術が解けてしまえばその限りではないのかもしれない。
 解けないうちにもう一度かけなおそうかとも思ったが。他の猟兵たちもいるし、先ほど遊んだ者たちとの交流もまた真綿は喜ぶかもしれないと思い。
「真綿ちゃんはひとりじゃないよ」
「目的地までわたしたち猟兵がきっと守りますからね」
 そう力強く声をかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩瑠・姫桜
ハーネスと散歩紐を真綿にさせておこうかしら
市販のだめそうならUCの拘束ロープを結んで作って使うわね

これは締め付けて動きを制限させたいわけじゃなくて
おまじないみたいなものよ
帝都の人々が、見た目に少しでも安心だと思ってくれれば
真綿に心無い言葉を投げかける人はいなくなると思うからね

あとは…和み要素かしら

強面さん(真綿)の背中に
猫(schwarz)と蛇(Weiß)を乗せて歩いてたりしたら
見た目にもふもふ団子でちょっと可愛いと思うのよね(瞳輝かせ
…って、(schwarzに「えー」って素振りされ
いいじゃない協力しなさいよねっ(赤面

真綿、大丈夫よ
今はみんな、あなたと一緒だから
絶対守るから
一緒に行きましょう?


アカネ・リアーブル
真綿様を安心させるようにそっと頭を撫でます
大丈夫ですよ真綿様
アカネ達がついております
ゆっくり歩いて行きましょうね

楽しい気持ちになるようお話を
よろしければ、以前の飼い主の女の子の話をお聞かせ願えますか?
楽しかったこと、嬉しかったこと
きっと沢山あるはずです
真綿様と飼い主様の想い出話を聞きながら通りを歩けば
心無い言葉など聞こえてこないはずです

楽しい話にアカネも笑顔に
飼い主様は、とてもお優しい方だったのですね
真綿様が忘れなければ飼い主様は生きています
真綿様の心の中で
だから寂しくないですよ

イルミネーションエリアまでの道のりで
できる限り沢山の思い出をお聞きします
真綿様と飼い主様がずっと一緒にいられるように



●思い出は色褪せることなく
 大通りへと足を踏み出し、目的地に向かって歩き出した真綿。途中まで一緒に歩いてくれていた仲間の猟兵から真綿を引き受けると、アカネ・リアーブル(ひとりでふたりのアカネと茜・f05355)は、まずは安心させるようにその頭をひと撫でした。
「大丈夫ですよ真綿様。アカネ達がついております」
 怖い目に、酷い目になど決して遭わせない。ちゃんとその目的を果たすまで一緒にいると柔らかく微笑んで。
「ええ、その通り。そのためにもこれをつけておきましょうか」
 アカネの言葉に同意した彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)の手には、犬用のハーネスと散歩紐。真綿も以前は飼われていた犬なので、それをつけることに抵抗はないのだろう。むしろ飼い主の少女との散歩を思い出したのか嬉しそうにしっぽを振っていた。
「これは締め付けて動きを制限させたいわけじゃなくて……おまじないみたいなものよ」
 強面の犬が襲い掛かってくるかもしれない――悲しいがそう思われてしまいがちなのだ。けれど、きちんと散歩紐に繋がれてコントロールされていると思えば、帝都の人々も恐怖を抱くことはないだろう。
 とはいえ、普通の犬ではないので、何かが起これば市販のものでは少し心もとない。ユーベルコード製の拘束ロープを補強のように結んでおく。これで安心だ。
「真綿様、いいですね。これはお散歩です。ゆっくり歩いて行きましょうね」
 アカネと姫桜と一緒に、ゆっくりと大通りを歩いていく。ハーネスと散歩紐の効果は抜群で、もとよりおとなしくなった真綿は強面なだけで普通の犬と変わりなく、人々の注目を集めすぎることはなかった。
「真綿様には以前素敵な飼い主の女の子がいたのだと伺いました」
 道中真綿が楽しい気持ちになれるようにと、アカネはそう切り出した。大好きな少女との約束が、彼女の死により果たせなかったことは悲しいが、それでもきっとそれまでにたくさんの思い出があるはずだ。楽しかったこと、嬉しかったこと。
「真綿様と飼い主様の想い出話を聞きたいです」
「きっと楽しい思い出がたくさんなのでしょうね」
 ただ、真綿はこちらの言葉を大体は理解しているようだが、話すことはできない。だから、こちらから話を振ってその反応でその思い出話を少しでも聞き出せるようにしたのだった。
「真綿様が小さい時から、飼い主様と一緒だったのですか?」
 その問いに、どこか誇らしげにしている真綿。小さい時から一緒に過ごし、きょうだいのように育ったのかもしれない。
「こうして一緒に散歩にもいったの?」
 姫桜の言葉には、ほんの少し悲しそうな目をして。病気で亡くなったということだから身体が弱かったのかもしれない。けれど散歩好きそうな様子にきっと何度か一緒に行った楽しい思い出もあるのだろう。
「たくさん撫でてくれましたか?」
 アカネがその背中を優しく撫でると、何かを思い出すように目を閉じて。
「たくさん声をかけてくれたのよね」
 大好きだよ、いつも一緒だよ、ずっといようねって……きっとかけたであろう言葉を想像し、姫桜も目を閉じる。
 真綿にとって飼い主の少女は家族そのもの。姫桜にとっても家族は大切な存在で力の源なのだ。
 こうして一緒に歩いていれば、真綿のことを心無い言葉で罵る人など現れない。
「飼い主様は、とてもお優しい方だったのですね」
 真綿の様子を見ているだけでそのことが知れて、アカネも思わず笑顔になる。
「真綿様が忘れなければ飼い主様は生きています……真綿様の心の中で」
 死という喪失が空ける穴を簡単に埋めることはできないけれど。それでも大切な思い出があるのなら、忘れたくないと願うのなら、その思いは心の中でずっと生き続けると思うから。
「……だから寂しくないですよ」
「ねえ、真綿。他の犬……ではないけれど、こんなのどうかしら?」
 姫桜が提案したのは、ドラゴンランスの【schwarz】と【Weiß】をその背中に乗せて歩くというもの。黒い猫のような毛並みのschwarzと白蛇のようなWeiß。強面の背中に乗ると、見た目にももふもふ団子状態で絶対に可愛いと思うのだ。
 瞳を輝かせる姫桜に対して、ドラゴンたちはあまり乗り気ではないようで。えーという表情で背中に乗らずにふわりと飛んでいくschwarzに、決して自分の趣味でやっているのではないと言いたくて。
「……って、いいじゃない協力しなさいよねっ」
 頬を赤らめつつも姫桜はえいとドラゴンたちをその背に乗せる。
「もふもふの上のもふもふが可愛くないわけないですね!」
 ぐぐっとアカネが拳を握りしめると姫桜もそうでしょ! と瞳を輝かせる。強面の真綿であっても、とても和めてしまう光景だった。
 真綿もドラゴンの友達ができたと嬉しいようで、その顔をぺろぺろとなめようとするが、ドラゴンたちは遠慮しますというようにそっと顔を背けた。
「真綿、大丈夫よ。今はみんな、あなたと一緒だから」
 飼い主の少女はいなくても、大切に思う存在がここにいるのだと伝えたくて。
「絶対守るから、一緒に行きましょう?」
 心配はいらないと温かな声と優しい手が真綿を包み込む。
「さあ、道のりはまだ遠いですが……その間にたくさんの思い出話をきかせてくださいね」
 真綿と飼い主の少女が心の中でずっと一緒にいられるように――そう願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
大通りをゆく前にシビ…いや。真綿にすることがある。
まず真綿の前でしゃがみ丁寧にゆっくりと撫でてやる。
「…そんなに心配をするな。任せておけ、真綿」
真綿の気持ちを落ち着かせてから目的地へ行こう。
「む? 私を数人召喚して…真綿に?」
よくわからんが露の願いを聞き入れ【小さい援軍】行使。
3人ばかり『私』を召喚しようか。何の役に立つんだ?
真綿の…頭や背中へ乗っていれば印象も変化するらしい。
さて。
私は別行動で…ん?一緒に行こう?私も含めて三人で?
…ん。問題はないのだが…フォローはどうするんだ?
ちまが乗っているから問題ない?…そうなのか…。
まあ態々接近し言葉の危害を加える者は警戒しよう。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
シビラ撫でてるレーちゃんをみながら。
そうだ。とっても良いこと思いついたわ♪
「ねえねえ。レーちゃんあのねあのね…」
ちまちゃんをシビラにのっけたら可愛いわ!
って何人でもいいからお願いって言ってみる。
「うん。更にとっても可愛くなったわ~♪」
これで悪口とか言われないわね♪えへへ~。

「え? レーちゃん別行動するの~?」
あたしもシビラも寂しいから一緒がいいわよ。
大丈夫。シビラに悲しい思いとかさせないわ。
「シビラもレーちゃんと一緒がいいわよねー♪」

もし帝都の人達が騒いだらちゃんと対応する。
ぎゅっ、てシビラに抱きついてアピールしたり。
あたし達が猟兵で保護してるってこと説明したり。



●みんなで一緒に
 真綿の目的地までようやくあと半分くらい。猟兵たちに交代で守られる真綿を引き受けて。今までは辛い目に遭うことはなかったようだが、また新たな道を行けば何かがあるかもしれなくて。
 未知のものに対する恐怖に怯えるのは、動物なら当たり前だ。だから、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)はその不安を少しでも和らげようと真綿の前にしゃがみ、目線を同じ高さにすると安心させるようにゆっくりと丁寧に身体を撫でる。
「シビ……いや、真綿。そんなに心配をするな。任せておけ」
 さきほどあまりにもシビラと連呼されていたから思わずつられかけて。真綿にとってはどちらで呼ばれても嬉しいのかもしれないが、自分と同じ名を呼ぶというのも気恥ずかしいものだ。
「そうよ、シビラ。あたしたちがついてるから大丈夫だからね」
 シビラ呼びを続ける元凶――もとい張本人の神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)もおっとりした笑顔で一緒に真綿を撫でてあげる。
「シビラを撫でるレーちゃん……可愛いが可愛いを撫でる……そうだ! とっても良いこと思いついたわ♪」
 一緒に撫でていた露だが、シビラが真綿を撫でる姿を見て何かが閃いたらしい。
「ねえねえ。レーちゃん、あのねあのね……」
 真綿が目を細めて気持ちよさそうにしているのを見て、すっかり気持ちは落ち着いただろうとシビラが静かにその手を放したところ、露がそっとシビラに耳打ちする。
「む? 私を数人召喚して……真綿に?」
 露の願いはこうだ。シビラにそっくりの小さな手乗りサイズのシビラを召喚してもらい、それを真綿の背中に乗せるというもの。
「ええ、たくさんとは言わないわ。何人でもいいからお願い」
「よくわからんが……何の役に立つんだ?」
 それが一体何を意味するのか、判然としないままシビラは請われるまま【小さい援軍】を三人ばかり召喚する。黒ヴェールをかぶった手乗りサイズのシビラは、露に『ちまレーちゃん』と呼ばれていて、それはそれは可愛がられているのだ。
「シビラ、ちまレーちゃんを乗せてあげてね」
 露がちまを順番に抱き上げ、真綿の背中に乗せていく。普段は結界術などで支援することの多いちまたちだが、これも支援の一つの形と、ふわふわの毛をきゅっと掴んで真綿の背中の上で器用に安定を図る。
「うん。更にとっても可愛くなったわ~♪」
 可愛いに可愛いが乗っているのだから、可愛くないわけがない。というのが露の持論である。こんなに可愛いのだ。悪口なんて言う人がいるとは思えない。
「まあ確かに見る者の印象が変化するという説には一理あるな」
 なんというか、和む。それは確かだとシビラも頷いて。
「さて」
 ならばここは露に任せて、シビラは離れたところから真綿を見守ろうと思ってその場から立ち去ろうとしたのだが。露にきゅっと衣服を掴まれる。
「え? レーちゃん別行動するの~?」
 その言葉に、真綿もどことなく寂しそうな瞳でシビラを見つめて。
「少し離れて、何かあればすぐ動けるようにと思ったのだが」
「あたしもシビラも寂しいから一緒がいいわよ」
「ん? 一緒に行く? 私も含めて三人で?」
 そうよ、と露が笑顔で返せば、シビラもそこまで別行動にこだわっているわけではないのでふむと頷く。
「……ん。問題はないのだが……フォローはどうするんだ?」
 シビラの懸念はその一点だけ。けれど露はぶんぶんと首を横に振って。
「大丈夫。シビラに悲しい思いとかさせないわ。なによりちまレーちゃんが乗っているんだから、悪口言う人なんていないわ。大丈夫!」
「……そうなのか……」
「そうよ、それになにより……シビラもレーちゃんと一緒がいいわよねー♪」
 大事なのはきっと真綿の気持ちだと、露は真綿に一緒がいいわよねと問いかける。
 つん、とその鼻先でシビラの手をつついて。一緒に行こうと真綿はじっとシビラを見上げる。
「シビ……いや、真綿がそうなら同行しよう」
 もちろん、こちらにわざわざ近づいてきては何か危害を加えようとする者がいれば警戒して、真綿を守るのだと心に決めて。
 そうしてしばらく大通りを進んでいけば、道行く少女に可愛いと指を差され、笑顔をプレゼントして。真綿も二人と一緒で心底安心したのだろう。その足取りは軽かった。
「あの……」
 順調に歩いていると、露たちに遠慮がちに話しかけてくる帝都の女性がいて。ちらちらと真綿の方を見ながら口を開く。
「わたし、先ほど見たんです。その犬が大通りで牙をむいて……影朧なのだとしたら、また牙をむいて……」
 その言葉にシビラはさっと真綿と女性の間にかばうように立ち、露は真綿の身体をぎゅっと抱きしめて守る。
「確かに先ほどは少し魂が荒ぶっていたのかもしれない。だが今は無害だ。人々に危害を加えることはない」
「そうよ、シビラはいい子なの。あたし達猟兵が保護しているから大丈夫」
 その言葉に女性は、はっと顔色を変える。
「超弩級戦力の方々でしたか……それは失礼しました」
 丁寧に頭を下げると女性は去っていった。真綿を害そうとしたわけではなく、何も知らないのならと忠告に来ただけだったのかもしれない。
「シビラ、大丈夫よ。ちゃんと目的地まで送り届けるからね」
「ああ、心配は無用だ」
 二人を信頼のまなざしで見つめ、真綿は先ほどよりも軽くなった足取りで、大通りをまた一歩確実に進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
【鬼獣と竜】
御厚意痛み入る……その時は好きにしても構わん。

■行
持っている武器を竜(蛟鬼)に託し、街へ先回りしよう。
先ずは身分と事情(特に「影朧の救済」)影朧を連れた猟兵が
街を通ろうとしている事を人々に説明し、通行の許可を要請。

その際は不本意であるが、竜と真綿の風貌も明言しておくか。
竜は『笠を被った浪人風の男』、真綿は『鋭い眼差しを持つ子犬』
互いに一見恐ろしい者達だが、穏やかで親しみやすいと伝える。
情報の伝達に成功したら、真綿の元に戻って歩調を合わせて歩く。

『猟兵がこの道を通る』と伝えただけだ。変わった事は言っていない。
(こっそり袖に隠れた濡姫に『忝い、濡姫殿』と声をかけた)

※アドリブ歓迎


荒覇・蛟鬼
【鬼獣と竜】
ほう、まだやる事があるのですか?
いいでしょう、鬼獣の巫。やってごらんなさいな。
但し、もし少しでも騒ぎがあったら……お分かりですな?
■行
【POW】
私はほぼ何もしません。鬼獣に渡された武器の類を身に着け、
真綿を連れつつ飴を咥えながら堂々と進みましょう。

街に来たら、本当に人々の理解を得られたか監視させて頂きます。
万一少しでも真綿に驚いた者がいた場合は……「これは消えかけの
影朧です」と暴露してしまいましょう。
さあ、此処からどうするのですかな、鬼獣の巫?

……おや、云った瞬間好意的な態度を見せる者がちらほらいるのは
何故か。鬼獣、あなた一体なんとお伝えたしたのですかな?

※アドリブ歓迎



●陰の支援
 真綿が目的地に向かって大通りを歩き出す少し前。
「ほう、まだやる事があるのですか?」
 球状の棒付き飴を口に咥えたまま、荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)は、これから少しやることがあると告げた愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)へと問いかけた。
 見た目はどうあれ、蛟鬼にとって目の前の犬は影朧であり、世を蝕む“塵”なのだ。とりあえず他者に危害を加える心配はないようだと理解はしたが、それを無害だからとのさばらせておくのはどういった事情があるのか。
「この影朧にはやり残したことがあるのだ。それを果たしてから送ってやりたい……」
 オブリビオンは倒すべき敵。そのことは清綱も重々理解している。けれどこうしてその魂を救うことだってできるのだ。救える魂は救う――それが清綱の信条なのだ。
「いいでしょう、鬼獣の巫。やってごらんなさいな」
 何か反対されるかと思ったが、蛟鬼はあっさりと了承した。しかし、次の瞬間、鋭い眼光と共に容赦ない笑みで告げる。
「但し、もし少しでも騒ぎがあったら……お分かりですな?」
「御厚意痛み入る……その時は好きにしても構わん」
 蛟鬼がそう言うのも理解できる。今はただ清綱の行動の邪魔をしないでいてくれるだけでありがたい。
 清綱はまず、自身の武器を蛟鬼に託し、これから真綿が歩いていく道のりを目的地から逆算し、先回りすることにした。UDCアースなどで言う根回しというものだ。
 しかし少し時間がかかってしまいそうなので、ひとまず真綿は他の猟兵に任せておく。彼らもそれぞれの方法で真綿を守るに違いないから。
「さて、どうなるか見ものですね」
 その間、清綱に託された武具を身に着け、笠を被った浪人風の見た目となった蛟鬼は、何も行動を起こさず、他の猟兵に連れられて歩いていく真綿をつかず離れずの距離で見守るのみ。飴を咥えて歩いていく様は通りに溶け込んでいた。
 清綱は道行く人に『帝都桜學府』や『ユーベルコヲド使い』について話ができるところがないかを聞いて回ったところ、この大通りにかの者たちがよく出入りする場所があるとわかる。そこで話をすればここを通行する許可も得やすいだろう。
「話したいことがあるのだが」
 教えてもらった場所を訪ね、ユーベルコヲド使いであるという青年に清綱は事情を説明する。自分たちは猟兵であり、影朧の救済に来たこと。そのためにもこの街を平和に通行する必要があり、その許可がほしいこと。
「君たちが超弩級戦力か!」
 影朧事件をたちどころに解決する超弩級戦力はこの世界で歓迎される。清綱の言葉を真剣に聞いたのち、ユーベルコヲド使いの青年は協力すると申し出てくれた。
「わかったよ。協力しよう。街の人たちに情報を伝達するユーベルコヲドがあってね……それで伝えておけば騒ぎにはならないはずさ」
「忝い……協力に感謝する」
 深々と頭を下げる清綱に向かって、青年はこちらこそ影朧事件の解決はとても助かるよと応えて。
「それで、その影朧の容貌を教えてくれるかな」
「ああ、そうだな……影朧は中型ほどの大きさの鋭い眼差しを持つ子犬。それを連れている猟兵は笠を被った浪人風の男だ」
 一見恐ろしく見えるかもしれないが、その中身は穏やかで親しみやすいのだと言い添えて。
 全てを終えて清綱が戻った時には、他の猟兵に連れ添われ、真綿はある程度の道のりを歩くことに成功していた。ここから先はと清綱が引き継げば、それを傍らから見ていた蛟鬼がふらりと姿を現す。
「やるべきことは終わったのですか?」
「ああ、これで大丈夫だ」
 自信たっぷりの清綱に、不思議そうな視線を向けながらも、蛟鬼は真綿と連れ添って通りを歩いていく。
(「鬼獣は人々に理解してもらい、この通りを歩く許可を得たと云っていましたが……」)
 辺りをゆっくりと見渡す。確かに特別真綿を見て驚いたり、騒いだりする者はいないように思える。むしろこちらにちらちらと送られる視線はどこか温かいもののような。
「ねえ、あれじゃないの?」
「あ、ほんとだ。目つきが鋭いよね」
 ひそひそとこちらを窺いながら話す女学生たちがいて。影朧だと気づかれたろうかと蛟鬼は敢えてこちらから正体を暴露することにした。
「気になりますか? これは消えかけの影朧です」
 そう言ってしまえばこの学生たちは驚くか嫌悪するか――。
(「さあ、此処からどうするのですかな、鬼獣の巫?」)
 意味深な視線を清綱に送った蛟鬼だったが、女学生たちの反応は蛟鬼が想像しなかったものだった。
「超弩級戦力の方ですね! お勤めご苦労様です!」
 きゃっとはしゃいではきらきらとした瞳で蛟鬼と真綿に視線を送ると、女学生はぺこっと頭を下げて、そしてはしゃぎながら去っていった。
 その後も同じようなことが何度となく続き。
「……おや、云った瞬間好意的な態度を見せる者がちらほらいるのは何故か」
 確かに混乱が起きないように道行く人に情報伝達がなされている。恐れないだけならわかるが、なぜかそれ以上に好意的に受け止めてくれるのはどうにも解せない。
「鬼獣、あなた一体なんとお伝えたしたのですかな?」
 蛟鬼の問いには、みなまで答えず素知らぬ顔で清綱は淡々と告げる。
「『猟兵がこの道を通る』と伝えただけだ。変わった事は言っていない」
「それだけとは思えませんがね……」
 真綿も自分も見た目だけでは近寄りがたい存在だと思っていたのに、こちらを見る人の目が明らかに温かく好意的だ。真綿だけならともかく、自分もというのがどうにもおかしい。
「騒ぎは起きない。それでいいではないか」
「まあ、それもそうですが……」
 騒ぎが起きたのなら蛟鬼は塵を討ち果たすだけだ。今のところはその心配もなさそうだが。
「目的地まであと少し……いざ無念を晴らそう」
 真綿を撫でてやれば、力強くその歩みを進める。そうして清綱は、未だ納得していない様子の蛟鬼の袖元に向かってこっそりと声をかける。
『忝い、濡姫殿』
 いつも陰ながら蛟鬼を支えてくれる袖に隠れた蒼蛇に感謝の言葉を伝える。
 そうして真綿が目指した目的地に着くころには、辺りはすっかり夕暮れに包まれ、幻朧桜を彩るイルミネーションにも明かりが灯り始めていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『桜のイルミネヱション』

POW   :    食べ歩きをする

SPD   :    飾り付けを眺める

WIZ   :    買い物をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●約束の場所で
 季節は冬。クリスマスの催しは既に終わってしまったが、冬なお咲き誇る幻朧桜を彩るイルミネーションは、今もなお帝都の人々の目を楽しませている。
 辺りはすっかり宵闇に包まれ、空に浮かぶ月と星が地上の明かりと競演しているようで。
 様々に色を変える電飾もあれば、アンティークのランプがぶら下がっていたりと、帝都らしい大正浪漫とクリスマス的な西洋文化が混ざり合ったような趣のあるイルミネーションが広い範囲で辺りを照らしている。
 真綿の飼い主であった少女がこの光景を見たいと願ったのも納得だ。身体が弱く、真綿と一緒に散歩に行くこともあまりできなかったという少女。だからこそ、真綿と一緒にこのイルミネーションを楽しみたいと願ったのだろう。
 猟兵たちに守られ、辿り着いた目的地。真綿の目にもその鮮やかな色どりの明かりが映り込んでいた。
 もうそばに大好きな飼い主の少女はいないけれど。彼女の分もこの光景を目に焼き付けるのだとでも言うように。
 猟兵たちの計らいで、辺りの人たちには影朧の救済のためにやってきたことは既に伝わっている。だからもう真綿のことを恐れたり、心無い言葉を投げつけられたりする心配は無用だ。
 ただ真綿が楽しめるように見守ったり、一緒に楽しんであげればいいだろう。
 辺りには食べ物を売る露店も出ているし、歩き疲れたらカフェーで一休みするのもいいだろう。雑貨や土産物を売る店もあるので、イルミネーションを目で楽しみながら、様々な思い出を作るのもいいだろう。
 みんなが楽しそうに過ごす姿こそ、真綿にとってもまた良き思い出となるだろうから。
エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】

●POW
幻朧桜回りの人達には、事情が知れたってるなら、イルミネーションの所に行く前に、真綿ちゃんやビスマスちゃんと一緒に屋台回りして食べ歩き

その後、エリシャちゃんにもご挨拶して
これからもお世話になる事と、エリシャちゃんも、もふってみる?と

あっ、ボクにじゃれ付いてるビスマスちゃんはお気にせず

屋台で集めた食べ物を肴に真綿ちゃんとビスマスちゃんとイルミネーションを楽しもうと思うよ

ボクも、餃子の拳を捨てる事を求められる程、窮地に陥っていたけど……真綿ちゃんと、そう言う事については似た者なのかもね

でも、真綿ちゃんは希望に至ったんなら、ボク達も希望を持たなくちゃ

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】

●POW
イルミネーションは最終目的ですが
一緒に見るのに、お供のがあっても良いですよね、エミリさんや真綿さんと屋台回りを

真綿さんが転生するなら、意味は無いのかも知れませんが、転生後も何処かの片隅に刻み込まれるなら

それにしても、もふもふ天国って
良いですね、別の意味で思い出に残りそうで(隙を見て真綿さんやエミリさんをもふもふ)

あっ……わたし達、これからイルミネーションを見に行くんですが、エリシャすんも良かったら一緒にどうですか?

真綿さんは皆さんのお陰で希望に至った、わたし達を嘲笑う人達はまだ居るかも知れませんが、一人じゃないですし

きっと乗り越えられますよね

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●希望の灯
 幻朧桜からぶら下がるアンティークランプが明るく照らし出す通りを、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)が目を輝かせて歩いていた。
「真綿ちゃん、ビスマスちゃん、屋台がいっぱいだね」
 隣を歩くビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、真綿を撫でながらエミリロットの様子に微笑んだ。
「ここも灯りが綺麗ですが、向こうにはもっとすごいイルミネーションがあるみたいですよ。イルミネーションを眺めるお供に何か買っていきましょうか」
「うん、そうしよう! たくさんあって悩んじゃうね」
 二人と一緒に歩く真綿もまた辺りの様子を見渡しては嬉しそうにしっぽを振っていた。たくさんの人が集まって楽しいひとときを過ごしている。それが何より嬉しいのだろう。
「真綿さんは何がいいですか? 焼き芋とかなら大丈夫そうでしょうか」
「ビスマスちゃん、ボクはあっちのたい焼きがいいな。見てみて桜餡だって。白玉と桜の花びら入り……これはスイーツ餃子にも応用できるかも……」
 餃心拳を受け継ぐ少女は思わず真剣にレシピを考えてしまうのだった。
「エミリさんがそうなら、わたしはイカの姿焼きにしましょうか。さすがに屋台に生魚はありませんが、こうして見て回るだけでも楽しいですね」
 そうして二人と一頭は屋台をめぐってたくさんのお供を手にメインイルミネーションへと向かう。
(「真綿さんが転生するなら、意味は無いのかも知れませんが……」)
 もうすぐ真綿は執着を果たして消えてしまう。それは時間の問題だ。けれど、この世界には転生という救いがある。ただ転生した先にこの楽しかった記憶を持っていけるわけではないだろう。
(「それでも、転生後も何処かの片隅に刻み込まれるなら」)
 記憶として持ってはいけなくても、楽しかった思い出はきっと魂に刻まれると信じて。
 そうしてふとビスマスが隣を見ると、エミリロットがお手製の餃子手拭いフリスビーを真綿と引っ張りっこして遊んでいた。
「それにしても、もふもふ天国って良いですね、別の意味で思い出に残りそうで」
 我慢できず、白いもふもふと緋色のもふもふを全力でもふるのだった。
「ビスマスにエミリ! ふふ、真綿と一緒に楽しんでいるのね」
 二人を見つけたエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)が手を振って笑顔で駆け寄った。
「エリシャちゃん、会うのは久しぶりかな? ボクもまたこれからお世話になるのでよろしくお願いするね」
「ええ、エミリがいてくれると心強いわ。こちらこそよろしくね」
 そうしてもふもふされているエミリロットと真綿を微笑ましそうに見た。
「えっと……エリシャちゃんも、もふってみる? あっ、ボクにじゃれ付いてるビスマスちゃんはお気にせず」
 あら、いいの? と言いながらも、そのふかふかもふもふの毛並みの魅力にエリシャもそっと手を伸ばす。ふかふかのドラゴンの翼にそっと触れると、柔らかくて温かくて手触りが良い。
「ドラゴンって爬虫類っぽさがあるけど、ファードラゴンはクマさんみたいな可愛らしさがあるわね」
「癒されますよね……」
 ビスマスがさらにエミリロットをもふもふしていたが、ふと思い出し口を開く。
「あっ……わたし達、これからイルミネーションを見に行くんですが、エリシャさんも良かったら一緒にどうですか?」
「あら、一緒に行ってもいいの? 真綿も一緒ね」
 真綿の背中のもふもふ毛並みも撫でながら、エリシャは嬉しそうに頷く。
 そうしてメインイルミネーションへと向かった一行は、よく見える場所を確保し、屋台で買ったお供を食しながら、その光景を楽しむ。たくさんの電飾を使い、滝の流れを表現したもの。季節の移り変わりを表現し、緑の葉が赤や黄色に色づく様子や、雪の中に舞い散る桜を表現したものなど様々に移り変わっていく。
「はい、真綿ちゃん」
 エミリロットが焼き芋を一口大にして差し出すと、真綿は美味しそうに食べながらイルミネーションを見つめる。季節の変化とともに色を明滅させる灯りを見つめ、飼い主の少女と過ごした月日を思い出してでもいるのだろうか。
「二人ともすっかりこの子と仲良くなったのね」
「はい。わたし達は似た者同士だったのかもしれません」
 だからその心を理解できたし、真綿もまた心を許してくれたのかもしれないと。
「ボクも、餃子の拳を捨てる事を求められる程、窮地に陥っていたけど……真綿ちゃんと、そう言う事については似た者なのかもね」
「そうだったの……そうね。誰しも孤独を感じてしまう時はあると思うの。世界に見放されたような気になって」
 叶えられなかった夢や希望は大なり小なり誰にもあって。人と人の繋がりも温かいものばかりでなく、時にひどく冷たく、刃のように心を傷つけることもある。
「でもね、気づくの。一人じゃないって。支えてくれる人が、見守ってくれている人がいるって」
 真綿もみんなに支えられて勇気が出たんだと思うわとそっと呟いて。
「真綿さんは皆さんのお陰で希望に至った……わたし達を嘲笑う人達はまだ居るかも知れませんが、一人じゃないですし」
「うん、真綿ちゃんが希望に至ったんなら、ボク達も希望を持たなくちゃ」
「ええ、きっと。その先に光ある未来があるとあたしは思うわ」
 辛いことを経験したからこそ優しく、強くなれる。二人を頼もしそうに見つめ、エリシャは力強く頷いた。
「きっと乗り越えられますよね」
 その呟きを肯定するように、真綿がぺろりとビスマスの頬を舐める。大丈夫だよ、と強面の顔の瞳はきらきらと輝いて。
「なんだか逆に励まされちゃったね」
 エミリロットが照れたように頬をかき、真綿と一緒に見るイルミネーションを目に焼き付ける。
 これから先に困難に出会った時も、きっとこのことを思い出して乗り越えられると思うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩瑠・姫桜
確かにこのイルミネーションは見応えあるわね
真綿の飼い主さんが楽しみにしていたのもわかる気がするわ

真綿を見守りつつ、私も露天を楽しもうかしら
都合合わなくて親友誘えなかったのがちょっと残念な気もするけど
お土産買って渡すのもいいかもしれないわね

エリシャさんもお疲れ様
そうだ、お願いがあるのだけど
一緒に、私の親友へのお土産選んでくれないかしら
個人的にはアクセサリとか小物がいいかなって思うんだけどね
このイルミネーションに合った雰囲気のが探せたらいいかしらね

お土産買ったらカフェ―に行くわ
エリシャさんや、他の人もよかったら…って、もちろん、無理にじゃないからね?
(思わず照れた)
先約とかあるならそちら優先でね



●宵闇桜の煌めきを
 この世界に転送されてきた時はまだ日は明るかったけれど。夕闇に包まれた今、飾られた電飾が賑やかに辺りを明るく照らし出す。
「確かにこのイルミネーションは見応えあるわね」
 UDCアースでクリスマスのイルミネーションを見慣れている彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)の目にも、幻朧桜を彩るイルミネーションはどこの世界にも引けを取らない美しい輝きとして映る。冬に桜と一緒にイルミネーションを楽しめるのはこの世界ならではだ。
「真綿の飼い主さんが楽しみにしていたのもわかる気がするわ」
 この輝きは必ず一度は目にしてみたいと思うだろう。あまり外に出ることが出来ない病弱な身ならなおのこと。大好きな愛犬と一緒に見たいと願ったのだと思うと、その約束を果たすためにやってきた真綿の姿を探す。
 真綿は他の猟兵たちと一緒に露店を回っていた。その様子をそっと見守りつつ、せっかくだからと姫桜も露店を楽しむことにした。
 このイルミネーションの美しさは誰かと共有したくなるもの。姫桜も本当は親友と一緒に来たかったが、今回は都合が合わなかったのだ。それは少し残念でもあるのだが、それならお土産を買って渡すのもいいかと思いなおす。
「あら、姫桜はお買い物?」
 かけられた声に振り返ると、そこにはエリシャの姿が。
「みんなのおかげで真綿も願いを果たせそうね。本当にありがとう」
「エリシャさんもお疲れ様」
 真綿とたくさん遊んで一緒に過ごして。それで願いが果たせるのならなによりだと姫桜も嬉しそうに微笑んで。
「そうだ、お願いがあるのだけど」
「あら、なあに?」
「一緒に、私の親友へのお土産選んでくれないかしら」
 姫桜の言葉にエリシャはすぐに誰へ渡すお土産かピンときて、もちろんよと嬉しそうに頷いた。
「本当は一緒に来たかったんだけど、ちょっと都合が合わなくて」
「そうよね、この桜とイルミネーションは一緒に見たいって思うわよね」
 桜の文字を名前に持つ姫桜たちにとってはまた特別かもしれないと思って。そんなことを話しながら二人は小物や雑貨を扱う露店を見て回る。
「個人的にはアクセサリとか小物がいいかなって思うんだけどね」
「そうよね、可愛いものがいいわよね」
「このイルミネーションに合った雰囲気のが探せたらいいかしらね」
「あ、ここに桜のアクセサリーがたくさんあるわよ」
 年中幻朧桜が咲き誇るこの世界においてはやはり桜は特別な花。そのモチーフとなったアクセサリーや小物も多い。
「そうね、とっても可愛い。この中から選ぼうかしらね」
 ネックレスにイヤリングに髪留め。ポーチやハンカチにブローチと種類も豊富だ。
「あ、これは? 宵闇にイルミネーションが輝いてるように見えない?」
 エリシャが手に取ったのは、夜空のような樹脂の中に小さな桜と煌めくビーズが閉じ込められたブローチ。他に茜色や桜色もあるが、藍色の中に閉じ込められたビーズは夜に煌めくイルミネーションに見えなくもない。
「本当ね、イルミネーションに見えてくるわ」
「二人でおそろいで持ってもいいかもしれないわね」
 ブローチ以外にも簪やネックレスにイヤリングと同じようなモチーフの小物が並んでいる。姫桜はじっくりとその中からひとつを選んでは親友のお土産にと購入した。
「エリシャさん、付き合ってくれてありがとう。もしよかったらこのあとカフェーに行かない? も、もちろん無理にじゃないからね?」
 見た目はクールに見える姫桜だが、実は人見知りで感情表現が下手なのだ。他にも用事があるかもしれないのに、当然のように誘ってしまったことにちょっと照れて頬を染める。
「もちろんよ。せっかくだから桜についての思い出話とか聞かせてほしいわ」
 両親がきっと思いを込めて桜の入った名前を付けたのだと思うから。
 二人は微笑みあうと、桜とイルミネーションが見渡せるカフェーの扉を開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
わぁ、なんだかクリスマスのお祭りみたい
クリスマス遊び足りなかったから
またあの時のような気分が味わえて嬉しいな

寒いし、何かあったかい食べ物が欲しいな
目に留まったのはほかほかの中華まんのお店
あれ食べたいっ、と梓を引っ張って行く

定番の肉まんやあんまんの他に
変わり種も色々あって目移りしちゃう
悩んだ末、一際食欲をそそる香りで
誘惑してくるカレーまんをチョイス
梓は2つも食べるの?
あはは、バレてるー

ベンチに座ってお楽しみ中華まんタイム
熱々で、具もぎっしりで凄く美味しい
もちろん梓のも一口貰う
鳥みたいにあーんと口開けて受け取り

近くを一匹の犬(真綿)が通りがかったから
顎の下を撫で撫で
人懐っこくて可愛いねぇ


乱獅子・梓
【不死蝶】
えっ。あれだけクリスマスに遊びまくったのに
まだ足りてなかったのかお前…?
カレー作ったりテディベア見に行ったり
ケーキ食ったり遊園地行ったり
あらゆる思い出が蘇る

分かったから、引っ張るなって!
美味そうなものにロックオンした綾
こうなると止められないから大人しくついていく

じゃあ俺は肉まんを2つ頼む
いや、焔と零に分け与える分と
お前に取られる分を見越してだ
どうせお前、一口ちょーだいとかねだる気だろう?
長い付き合いだから予想出来る
そして綾が俺に買わせることももはや想定内なので
始めから纏めて会計

おぉ…こっちの肉まんもジューシーで美味い
焔と零と、綾にも一口分ちぎって食わせる
何だかドラゴンが3匹居るようだ



●美味しい時間
「わぁ、なんだかクリスマスのお祭りみたい」
 街には煌めくイルミネーション。それを眺めに来たたくさんの人に、通りに並ぶ食べ物の屋台に雑貨を扱う露店。
 その光景は、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)にこの冬たくさん楽しんだ聖夜の祝祭を思い出させた。
「クリスマス遊び足りなかったから、またあの時のような気分が味わえて嬉しいな」
 あっという間に過ぎたクリスマス。たくさん遊んだ気もするが、綾にとってはまだまだ遊び足りなかったのだ。
「えっ。あれだけクリスマスに遊びまくったのに、まだ足りてなかったのかお前……?」
 一緒にクリスマスのイベントを過ごした乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は綾の発言にぎょっとした顔をした。
 控えめに言ってもなかなかたくさんのイベントに参加した。無人島で雪だるまカレーを作って食べたり、テディベアと一緒にレストランで食事を楽しんだり、高額なテディベアを買わされそうになったり……。その他にもケーキを食べたり、遊園地に行ったり……そのひとつひとつがどれも楽しかったもので、梓の脳裏にその思い出が蘇る。
「冬に桜が舞う中イルミネーションが楽しめるっていうのがいいよね」
 クリスマスにも二人でサクラミラージュに行ったが、風景を楽しむより美味しいものを食べていた記憶の方が強い。
(「まあ、綾が楽しそうならいいか」)
 遊び足りないというなら、今日も全力で楽しめばいい。二人が楽しむことで、儚い影朧もまたこのイルミネーションを楽しみ、執着を果たすことが出来るならなによりだ。
「寒いし、何かあったかい食べ物が欲しいな」
 しばらくイルミネーションを楽しんでいたが、綾の視線が電飾から屋台の方へと移る。やっぱり食べ物に行きつくのが自分たちらしいと梓はくっと笑みを漏らし口元を押さえると、今日も湯たんぽ代わりに懐に入れていた相棒ドラゴンの焔と、寒さには強い氷竜の零に向かって何か食べるか? と問いかけた。
 綾が目を付けたのは、せいろからほかほかの湯気がたっている屋台。あれは中華まんを売る店だ。
「梓、あれ、あれ食べたいっ」
 返事を聞く間もなく梓をぐいぐい引っ張っていく。
「分かったから、引っ張るなって!」
 美味しそうなものにロックオンした綾は誰にだって止められないのだ。ドラゴンたちと一緒に梓も大人しく屋台へと向かう。
 湯気の立つせいろにはたくさんの中華まん。定番の肉まんやあんまんの他に変わり種もあるようだ。
「わーたくさんあって目移りしちゃう」
 変わり種には、コロッケまんや肉じゃがまんなどあまり目にしたことのないものもある。桜餡のあんまんは薄い桃色の生地で桜の花びらの塩漬けがあしらわれていて見た目にも可愛らしい。
 綾はさんざん悩んだ末、ほかほかの湯気と共に一際食欲をそそる香りで誘惑してくるカレーまんを選んだ。
 中華まんのバリエーションの豊富さに今度自分でもいろいろと作ってみたいと考えていた料理上手の梓は、肉まんを二つ頼む。
「梓は2つも食べるの?」
 手渡された肉まん二つを見て綾が訊ねる。
「いや、焔と零に分け与える分と、お前に取られる分を見越してだ」
 わくわくとした目でこちらを見つめるドラゴンたちへと目配せして、そうしてきっとこのカレーまんも自分に買わせる気に違いないとまとめて会計を済ませる面倒見の良い梓だった。
「どうせお前、一口ちょーだいとかねだる気だろう?」
「あはは、バレてるー」
 長い付き合いなのだ。そのことは容易に想像できた。そして美味いものを一緒に分け合いながら食べるのは梓にとっても楽しい時間でもあった。
「じゃあ、あのベンチに座って食べようよ」
 桜とイルミネーションが楽しめる場所を確保し、お楽しみ中華まんタイムの始まりだ。
 まだ湯気の立っているほかほかのカレーまんを口に運ぶ。クリスマスにサクラミラージュで食べたカレーのようになかなか具材もしっかり入った食べ応えのあるもので。
「熱々で、具もぎっしりで凄く美味しい」
 美味しそうに食べる綾はいつ見てもいい。その様子を眺めてから梓も肉まんにかぶりつくと、口の中にしっかりとした肉の旨味が広がる。
「おぉ……こっちの肉まんもジューシーで美味い」
 寒さがより美味しさを引き立ててくれているようで。梓は焔と零に一口大にちぎった肉まんを食べさせる。
「梓、こっちも」
 まるでひな鳥のようにあーんと口を開けて待つ様に、梓は苦笑を漏らしながらその口に肉まんを放り込む。
「……何だかドラゴンが3匹居るようだ」
 順番に口に放り込んでやるとそんな言葉がつい生まれてしまう。
 そんな二人の朗らかとした様子に気付いたのか、中型犬がしっぽを振ってこちらを見ていた。二人とそしてドラゴンたちを交互に見つめている。
「おいで」
 綾が手を差し出すと、強面の犬――真綿は嬉しそうに寄っていった。先ほど猟兵のドラゴンと遊んだから、ドラゴンは遊んでくれる友達だと思っているのかもしれない。
「肉まん、食べるか?」
 梓が差し出した一口大の肉まんを美味しそうに平らげて、綾が顎の下を撫でてやると幸せそうに目を細めた。
「人懐っこくて可愛いねぇ」
 飼い主の少女と約束したイルミネーションを見ることが出来て、影朧である真綿の執着は果たされようとしている。
 でも、もう少しだけ。
 この幸せの時間をここにいる人たちと分かち合いたいと、そう願っているかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)と真綿と♪
「シビラはなにしたい?」
ってしゃがんで真綿の顔を見ながら聞いてみるわ。
したいことが多すぎて真綿は迷うかもしれないけど。
そんなときはゆっくり撫でながら待つわ♥
「焦らなくてもいいわ。好きなことしていいのよ~」

そういえばレーちゃんはどこかしら?(真綿撫でなで)
レーちゃんレーダーだと近くには居るみたいだけど…。
…あ♥どこいって…え?真綿にご飯?…そーいえば…。
わあ。あたしの分も?レーちゃん優しい~♪
「じゃあじゃあ、食べ終わるまでに考えとこっか♪」
真綿の右側に座って買ってきたものを食べるわ。
えへへ~♥こーゆーことも楽しいわ~♪
食事が終わったら真綿と思いっきり遊ぶわ。


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と真綿。
考えてみれば真綿は何も食べ物を摂取してないな。
真綿と露が遊ぶ相談をしている間に屋台へ向かう。
ふむ。
私と露はその辺の…たこ焼きや焼きそばでいいだろう。
真綿は影朧とはいえ元は犬。人の食べ物はタブーだろう。
周辺の屋台をうろつき真綿が食べられそうなものを探す。
ペット用の食べ物を扱っている店があればいいが…。
「遊ぶ前に食事だ。お互い何も口にしてないだろう?」
適当に見繕ったものを露に渡して座る場所を探す。
私は真綿の左側に座り食事。時々真綿を撫でる

さて。遊ぶ際は多少広い場所がいいか。探す。
もし遊べるような場所がなかった場合は飾り付けを眺める。
真綿が満足するまで私の膝上でいるといい。



●仲良く並ぶ三つの影
 ずっと見たかった帝都の幻朧桜を彩るイルミネーション。真綿は自分を気遣ってくれる猟兵たちと一緒にその風景を目に焼き付けるように楽しんでいた。
「シビラはなにしたい?」
 一通り他の猟兵たちと会場を回ったようだが、まだまだこれからだと言うように、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)はしゃがんで目線を合わせると、真綿にそう問いかけた。
 ずっと来たかった場所。誰も自分を怖がらない優しい世界。きっと真綿にはまだまだしたいことがたくさんあるはずだ。ひょっとしたら多すぎて迷ってしまうかもしれない。
「焦らなくてもいいわ。好きなことしていいのよ~」
 おっとりした口調でそう告げると、ゆっくりと真綿の身体を撫でる露。撫でられるのが好きな真綿は嬉しそうにごろんと地面に寝転がってお腹を見せた。
 邪魔にならない場所でひとしきり真綿を撫でていた露はふと思い出して顔を上げる。
「そういえばレーちゃんはどこかしら? レーちゃんレーダーだと近くには居るみたいだけど……」
 そう首を傾げながらも、真綿を撫でる手は止めず。高性能で親友を探し出すことが出来る露に搭載された第六感という名のレーダーによるとそう遠くへは行ってはいないようだ。
「帰ってくるまでに何するかゆっくり考えましょうね、シビラ」
 親友によく似た真綿を存分に撫でるのだった。

 その頃、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は近くの屋台へと足を延ばしていた。
(「考えてみれば真綿は何も食べ物を摂取してないな」)
 せっかくならお腹も満たしてあげたいと考えたシビラは、自分たちと真綿が食べるものを探して屋台をめぐる。
「ふむ」
 屋台で売られているものを目にし、シビラはひとつ頷く。縁日に定番のたこ焼きや焼きそば、カステラにりんご飴などが売られている。
「私と露はその辺の……たこ焼きや焼きそばでいいだろう」
 けれど真綿は影朧とはいえ、元は犬。人の食べ物を食べていいものか悩むところだ。
 屋台を回ってみるが、なかなかよさそうなものが見つからない。犬のぬいぐるみを売っている露店に、ペット用のおやつがないか訊ねてみたシビラに店主は犬用のクッキーを差し出した。
「私のところでも飼ってるから、ポケットに散歩であげる用の残りのがあったから良かったら使ってね」
 ありがたく受け取り、礼を言ったシビラは、屋台で買った食べ物を手に露と真綿の元へ戻った。
「……あ♥ レーちゃん、どこいって……」
 問いかけに応える代わりに買ってきた戦利品をシビラが差し出すと、露はあっという顔をした。
「真綿にご飯? ……そーいえば何も食べてなかったわよね。わあ。あたしの分も? レーちゃん優しい~♪」
 えらいえらい、と真綿にするようにシビラの頭を撫でる露。複雑な心地はしたが、今日は真綿に免じて何も言わないでおこうと思うのだった。
「遊ぶ前に食事だ。お互い何も口にしてないだろう?」
 真綿はいい匂いのする包みに興味津々。シビラへとキラキラした目で駆け寄る。
「シビ……真綿にはクッキーを用意した」
 実は他の猟兵たちからもいくらかおやつをもらっていた真綿だが、犬の食欲はある意味底なし。嬉しそうにしっぽを振ってシビラが手渡してくれるのを待つ。
 桜とイルミネーションが良く見える川沿いに、誰でも座っていいというように茣蓙が敷かれていた。そこに並んで座って買ってきたものを食べる。真ん中に真綿がちょこんと座り、右側に露、左側にシビラが並ぶ。
「シビラ、食べ終わるまでに何がしたいか考えとこうね♪」
 宵闇に輝くイルミネーション。そこへ桜の花びらが舞い散り、幻想的な光景が広がる。たこ焼きを食べ終え、たい焼きを口にしたシビラはそんな光景を眺めながら、時折真綿を撫でる。そこに確かにある温もりに思わず顔が自然とほころぶ。
「えへへ~♥ こーゆーことも楽しいわ~♪」
 仲良く並んで一緒に食事をする。飼い主の少女と一緒ではないけれど、それもきっと真綿がしたかったことのひとつかもしれない。
「シビラはやっぱりもっと遊びたい? じゃあいっぱい遊んであげるわね~」
 川沿いに少し広い場所があったので、露はそこへ真綿と一緒に駆けていった。
 追いかけっこをしたり、ボールを投げてみたり、もみくちゃになって転がったり。思いっきり遊ぶ姿は強面だとしても無邪気な犬そのもので。そんな姿を見れば、怖いと思う人もいなくなるのではとシビラは思うのだった。
(「似ていると言われても初めはぴんとこなかったが……」)
 真綿から学ぶものは少なくなかったと思うのだ。
「楽しかったね、シビラ! あ、レーちゃんのところに行くの?」
 遊び終えた真綿がシビラの元へとやってくる。座っているシビラのその膝の上にそっと顎を置いて。撫でてほしいとねだるようにしっぽを振った。
 シビラは口元をほころばせ、望むまま撫でてやる。嬉しそうにしっぽが高速でぱたぱたと揺れる。
「満足するまで私の膝上でいるといい」
 ずるーい、あたしも! という声が背後から聞こえてきた気もするが。
 シビラはしばらくそうして真綿を撫で続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
エリシャ様と真綿様と

高台から見る光景に目を輝かせ
エリシャ様ご覧ください!まるで光の絨毯のようです!
色々な色の光が幻朧桜を彩って
これが真綿様と一緒に見たかった景色なのですね

先程真綿様が思い出された飼い主様は今
どのような顔ですか?
笑っていらっしゃいますか?喜んでいらっしゃいますか?
そうであればアカネも嬉しいです

アカネは真綿様の転生を望みます
影朧になった真綿様は転生できるかも知れません
ですが飼い主様はどうなのでしょう?
エリシャ様はどう思われますか?

別れ際最後にモフ
どうぞお元気で
もしまた会えたなら
またモフらせてくださいませ

真綿様と飼い主様が
いつか仲良くこの景色を見られればいい
そんな風に思ってしまいます


櫟・陽里
エリシャに会えるかなーと思ってさ、配達帰りにフラッと来てみた
顔見られるだけで満足だけど
せっかくだし一緒に行く末を見守らせてもらっても良いかな?

俺がオブリビオンに対して割り切った考えなのは知ってるだろ?
でもさ、一回だけ…
このサクラミラージュで転生を見る機会があって以来ちょっとだけ
事情を聞くのも悪くないって思えるようになった

俺、神様ってのもまた良くわかってねぇんだけど
転生って現象には少し神様を感じたんだよ
だからもうちょっと知りたい
皆や一般人がどう考えてどう接するのかも知りたい

んっ?遠くから見守りたいのであって…
動物は不慣れだから遊ぼうとしても物凄くぎこちないと思うよ?
視線で助けを求めると思うよ??


荒覇・蛟鬼
【鬼獣と竜】
全く、悪質な冗句もあったものですな?
本当に何も起こりませんでしたよ。
■行
【POW】
退屈になってしまいましたので、私は甘味でも頂きますか。
売っているお菓子はもう全店舗回って一品ずつ買っていきます。
折角ですし、此処でも影朧のことを話してしまいましょう。

(が、ここでも賞賛の声が)
またこれですか。あの鬼獣、いつ声をかけたのでしょうな。
然も、何で私が「守った」事になっているのです?
『若の悪名が広まらなくてよかったではありませんか』

(街を背に、甘味を抱えて去る)
さて、もう此処に要は有りません。
鬼獣の巫、あなたの理想が塵と消えるのを楽しみにしていますぞ。

※アドリブ歓迎不採用可、『』は濡姫


愛久山・清綱
【鬼獣と竜】
ここか、真綿の行きたかった場所というのは。
……おお、これはなんと美しいことか。
俺の古郷の街とそっくりでござる。
■行
俺は真綿の傍にいるか。もう少しだけ、話をしておきたいからな。
もう一度【動物と話す】力を用いて、声をかけてみよう。

そうだな、飼い主との話を聞いてもいいだろうか?
先程は、少々慌ただしかったからな……もしよければ、
少しでもいい故、話してほしい。
(話の最中で、ふと目を離してしまう)

それでな真綿、俺の古郷にはこんな風景が……む、真綿?
………そうか。
(いなくなった真綿が“いた”場所で、男は【祈り】を捧げた)
願わくば、来世の貴方に幸多からんことを……

※アドリブ歓迎・不採用可



●温もりに包まれて
 すっかり日も落ち、幻朧桜を彩るイルミネーションの明かりが美しく帝都の夜を照らし出している。
 ここに至るまでに自分を守り導いてくれた猟兵たちと一緒の時間を過ごした真綿の願いは叶えられた。きっとあと少しすれば執着を果たした真綿は消えてしまうことだろう。
「真綿様、他にしたいことはありませんか? アカネはもう少しこの時間を真綿様と一緒に楽しみたいです」
 きゅっともふもふの身体を抱きしめて、アカネ・リアーブル(ひとりでふたりのアカネと茜・f05355)は真綿に問いかける。
「エリシャ様もそう思いませんか?」
 たくさんの猟兵たちと共に過ごした真綿の時間もおそらくもうわずか。そう感じながらも、まだ真綿がここにいるということはきっとまだやりたいことがあるのだろうとエリシャも頷く。
「真綿もきっと同じ気持ちなのよ。助けてくれたみんなとの最後の時間をもう少し楽しみたいのかも」
 ずっとこうしていられるわけではない。真綿は影朧だ。ここに留まるわけにはいかないのはアカネにもわかっていた。
「よう、二人とも」
 ふいにかけられた声に顔を上げたアカネは見知った姿にぱっと顔を輝かせた。
「陽里様、いらしていたのですね」
「あら、陽里。来てくれたの?」
 現れた櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)は二人に笑顔を見せ近づくと、手を挙げながらやってきた。
「エリシャに会えるかなーと思ってさ、配達帰りにフラッと来てみたんだ」
 依頼のことは聞いていたし、顔を見られるだけでもと思ったのだが、どうやら強面の犬はまだここにいて、最後を一緒に見守ることができそうだと気づく。
「せっかくだし一緒に行く末を見守らせてもらっても良いかな?」
「ええ、もちろんよ。真綿にとっても猟兵みんなが大切な友達なの」
「はい、みんなで見送ればきっと真綿様も寂しくないと思います……あ!」
 真綿を撫でていたアカネは、通りを行く人波の中に一際背の高い姿を見つける。
「清綱様、真綿様はこちらです!」
 以前も依頼で一緒になった時、行き場のない霊を祓い清めた心強い仲間。きっと真綿を探していると思ったのだ。
「真綿はここに……アカネ殿、声をかけていただき感謝」
 蛇の鱗と牙、大鷲の翼と爪に牛の角を持つキマイラの若者、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は嬉しそうにしっぽを振って歓迎してくれる真綿の姿を見て目を細めた。
「清綱のおかげでこの会場でも大きな混乱が起きずに済んだのよ。いろいろと動いてくれてありがとう」
「いや、当然のことをしたまで」
 エリシャの賛辞にも表情を変えず静かに頷くだけだったが、みんなの想いは同じ。真綿を静かに送り出してあげたいという気持ちで一致していた。
「あら、そういえば一緒に来てた彼は?」
「竜は……影朧である真綿が害をなさないか窺っていたようだが、その心配もない今、おそらく甘味を求めてその辺りを歩いているのではないだろうか」
「そうよね、オブリビオンに対してはいろいろな考え方があるもの」
 真綿は儚い影朧であったが、オブリビオンは等しく世界の敵なのだ。そういった考えを否定することはできない。
「俺もさ、オブリビオンに対しては倒すべきものって、割り切った考え方をしてるんだけど……」
 閉鎖された宇宙船内においては、ひとつの判断ミスがその船に乗る全ての命を危険にさらす。だから陽里はその辺りについては容赦なかったのだが。
「でもさ、一回だけ……このサクラミラージュで転生を見る機会があって。以来ちょっとだけ事情を聞くのも悪くないって思えるようになった」
 他の世界にはない転生という救い。容赦なく倒す前に、もしそこに何らかの事情があるのなら、それに対して聞く耳を持ってみる選択もあると思い始めたのだ。
「はい、アカネは真綿様の転生を望みます。この世界ではそれが許されるのですから。……先ほど、あちらの高台から見るイルミネーションが素晴らしいと聞いたのです。真綿様と一緒に行きませんか?」
 ここから見る景色もそれは美しいけれど、せっかく真綿と飼い主の少女が楽しみにしていたイルミネーションをより堪能したいとアカネは提案しては皆に微笑みかけた。

「全く、悪質な冗句もあったものですな?」
 影朧が街に現れるというから、どんなに儚い存在であろうとそれが害となすというのなら、討ち果たそうとやってきたというのに。
「本当に何も起こりませんでしたよ」
 荒覇・蛟鬼(鬼竜・f28005)は口に棒付き飴を咥えたまま、どこか拍子抜けしたように呟いた。
『……物足りないご様子ですね』
 蛟鬼の袖からちろりと蒼蛇が顔を出した。蛇の使い魔・濡姫の言葉に、蛟鬼は首を横に振る。
「“破滅”は、ちっぽけな塵が呼び起こすもの……塵が塵のままであるとは限らないというのに、鬼獣の巫は救うことにこだわる」
 今回は結果的に上手くいったが、いつもそうとは限らない。破滅をもたらす可能性がある存在は完膚無きまで討ち壊すべきだと蛟鬼は考えている。
 しかし今回はもう蛟鬼に出来ることはないようだ。
「退屈になってしまいましたので、私は甘味でも頂きますか」
 大の甘党の蛟鬼は甘味を売る店をひとつひとつ回っていく。棒付き飴はいくらあってもいいし、桜餡の饅頭に、色とりどりの金平糖。桜の形をしたカステラなど普段見ることのない菓子も多数ある。それをすべて一品ずつ買っては、食べたり持ち帰ったり。
「そういえば、この辺りに消えかけの影朧が現れたようですね」
 せっかくだからと、試すように甘味を売る店の人間にそう話しかけてみる。
「そうみたいだね。でも超弩級戦力の人たちが救うために動いてくれたって聞いたよ。……おや、あんたはその影朧を救ってくれた存在に似てる気がするけど……?」
 ここでもまた猟兵たちに対する賛辞の声が聞かれ、蛟鬼はそれ以上は訊ねずに次の店へと足を向ける。
「またこれですか。あの鬼獣、いつ声をかけたのでしょうな」
 これがたまたまではなく、行く店行く店で同じような話になっているので、さすがに蛟鬼も首をかしげる。
「然も、何で私が『守った』事になっているのです?」
 最後に真綿と一緒に歩いていたからだろうか。その姿を目撃した者たちに、影朧を守った存在として尊敬のまなざしを送られる始末だ。
『若の悪名が広まらなくてよかったではありませんか』
 濡姫の涼やかな声に、どこか含みを感じながらも、本当に討ち果たすべき存在がいるのなら、相手の見かけや周りの声など一切関係なく蛟鬼は自分のなすべきことをするだけだ。討った者は未来永劫赦さず、獄卒帳に其の姿を永久に記し続ける。それが地獄の獄卒たる蛟鬼の生き様だ。たとえ幾多の憎悪と怨恨をその身に背負うことになろうとも。
 全ての店を回り終えた蛟鬼は甘味を抱えて街に背を向ける。
「さて、もう此処に用は有りません」
 今頃清綱は最期を見届けるためにあの影朧の傍にいるのだろう。清綱は初めから影朧を救おうとしていた。自分が影朧を討ち果たそうとするのを見越してもいたようだ。そして街中に広がる称賛の声。清綱がどうしてそうしたのか――その意味を正確に図りかねることはできないけれど。
 オブリビオンは敵。それは未来永劫覆ることのない事実なのだ。
「鬼獣の巫、あなたの理想が塵と消えるのを楽しみにしていますぞ」
 それだけ言い残すと、蛟鬼はイルミネーションが照らし出す華やかな世界から目を背けて歩きだした。

「エリシャ様ご覧ください! まるで光の絨毯のようです!」
 イルミネーションを見渡せる高台に移動したアカネは、その美しい光景に目を輝かせて感嘆の声をもらす。様々な色の光が幻朧桜を彩って輝き、他の世界でも見ることのできない唯一の景色。これが真綿が飼い主の少女と見たかった景色だということを思えば、アカネの胸も熱くなるというもの。
「ええ、本当に綺麗……」
「下から見るのとはまた違った良さがあるな」
 エリシャも陽里も明滅するイルミネーションの美しさに目を細める。
 真綿の行きたかった場所。それを充分に堪能できる場所を見つけた喜びは真綿もひとしおだったようだ。
「……おお、これはなんと美しいことか。俺の古郷の街とそっくりでござる」
「清綱の故郷はキマイラフューチャーだったかしら?」
「確かにあそこなら、年中こんな風景が見れても不思議じゃないよな」
 しばしそうして真綿と夜景を眺めていた四人だが、やがて訪れる別れの時を思うと、どうしても言葉少なになって。
「俺、神様ってのもまた良くわかってねぇんだけど……転生って現象には少し神様を感じたんだよ」
 一度サクラミラージュで見たという転生について、陽里はそう口を開く。神様という存在はきっと人によって様々な形があると思うけれど、それでも他の皆や一般人がどう考えてどう接するのかも知りたいと思ったのだ。
「影朧になった真綿様は転生できるかも知れません。ですが飼い主様はどうなのでしょう?」
 真綿が転生したとして、大好きだった飼い主の少女にまた会えることはあるのだろうか。アカネは明滅する光をその藍色の瞳に映しながら問いかける。
「あたしはね、神様はたくさんいると思うの。いろいろな神様がいていいのだと思う。そして死というのは、肉体の死だと思うの。魂はきっと滅びることなく受け継がれていくの。真綿の飼い主も、きっとね。次は真綿が飼い主で、飼い主の女の子が犬になるってこともあると思うわ」
 巫覡を務める清綱にとっても、魂の存在は確かに感じるもの。オブリビオンに成り果てたとしても、結果的に滅することになれど魂を救うことはできると信じているから。
「もう少しだけ真綿と話をしておきたい」
「清綱様は真綿様とお話ができるのですか?」
「ああ」
 清綱は頷くと、しゃがみこんで真綿と目線を合わせると、ゆっくりと話しかけた。
『もう少し、飼い主の話を聞かせてくれるか?』
 先ほど真綿が清綱に語ったのは、どちらかといえば悲しい話だった。けれど、今回は楽しい話を聞かせてくれた。
 飼い主の少女が好きだったお菓子や、よく口ずさんでいた歌。桜モチーフの小物が好きで集めていたこと。
 その全てが真綿にとっても大切な思い出なのだろう。
「清綱様ありがとうございます。真綿様が語っていたことを伺えてアカネも嬉しいです」
 胸に手を当て、アカネは思いを馳せるように目を瞑る。アカネの瞼には飼い主の少女と真綿が楽しそうに過ごす姿が目に浮かぶ。
「他には何かしたいことがあるとおっしゃっていますか?」
「皆には感謝していると……」
「ねえ、あたしには言葉はわからないけど、真綿が陽里と遊びたいって顔してるわよ」
 他の猟兵とはたくさん同じ時を過ごしたが、先ほど合流した陽里のことがどうやら気になるようで。エリシャの言葉に、清綱も真綿に訊ね、頷いた。
「ああ、できることなら撫でてほしいと言っているな」
「いや、遠くから見守りたいのであって……」
 動物は不慣れなので、遊ぼうとしても物凄くぎこちなくなる気がするのだ。こんなことならバイト先でもっともふもふに慣れておくべきだったと思いながら。
「大丈夫ですよ、陽里様。もふもふには愛です。愛だけです!」
 なんだか妙に気合の入ったアカネがぎゅっと真綿に抱きついて実践して見せる。
「先程真綿様が思い出された飼い主様は今どのような顔ですか?」
 もふもふに顔をうずめながらアカネは優しく問いかける。
「笑っていらっしゃいますか? 喜んでいらっしゃいますか? ……そうであればアカネも嬉しいです」
「ほらほら陽里も撫でてあげたら? あたしの義弟だと思えばいけるでしょ?」
「いやいや、わんちゃんぽいからってそれはどうかと……」
 と言いながらも、断れない雰囲気で陽里もそっと真綿のふわふわの毛並みへと手を伸ばす。ちょっとぎこちなくはあったが、真綿がおとなしくしているのでほっと一つ息を吐き出す。
「そうです、陽里様出来ていますよ」
 気持ちよさそうに目を細める真綿を見てアカネが笑顔を向ける。
「あたしも最後にぎゅっとさせてもらうわ」
 エリシャがふわふわの毛に顔をうずめ、アカネももう一度ぎゅっと抱きしめる。
「どうぞお元気で……もしまた会えたならその時はモフらせてくださいませ」
 別れの時を感じながら、清綱はもう一度眼下に広がるイルミネーションを見晴るかす。やはり懐かしさを感じてしまう。
『それでな真綿、俺の古郷にはこんな風景が……』
 ふと視線を戻した先には、先ほどまで変わりなかったはずの真綿の身体がきらきらと輝きを放ちながら光っていた。
「真綿様……行ってしまうのですね」
 アカネは願う。真綿と少女が仲良くこの景色を見られる日がくればいいと。
 ぺこりとお辞儀をするように頭を下げた真綿は光を放ちながら消えていく。けれど、清綱の耳には確かに感謝の言葉を告げる真綿の声が届いていた。
「……そうか」
 先ほどまでアカネが抱きしめていたその空間。確かに真綿がいたその場所で、清綱は祈りを捧げる。
 同じように残った三人もそれぞれの形で祈りを捧げた。
(「願わくば、来世の貴方に幸多からんことを……」)
 優しい願いと祈りに包まれ、儚い影朧は最期に温もりに包まれて消えていった。
 その魂はたくさんの優しい願いによって、またどこかで生を受け、生まれ変わることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月05日


挿絵イラスト