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【旅団】神立の邂逅

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団

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【これは旅団シナリオです。旅団「迷ひ路」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです】


●追想:雨煙る世界で
 突如降り出した夕立に、手に入れたばかりの書を身の下に抱え込み古い家屋の軒先へと逃げ込んだ。
 時折遠くの山の上で白い雷光が迸る。
 煙る世界の中、強い雨足に叩かれて紫陽花が俯いていた。
 濡れる爪先を思い、家屋の壁際に少し寄ったなら、なにやら懐かしい香り。振り向いた先、未だ開かれたままの戸の向こう側には骨董品が薄暗い室内に並んでいるのが見えた。
 主は居ないのだろうか。戸を締めにくる気配はないようだ。
 何気なく覗いていた店の、同じく軒先へ駆けてくる足音に気付く。
「……あら」
「お、」
 濡れた着物の飛沫を払う顔は、既知のそれで。
 奇遇ですねと笑ったなら、そうネと軽く肩を竦めて返る応えに空へと視線を送る。
 雨はまだ、止みそうにない。
「少し、お話ししませんか。──雨が、落ち着くまで」

 雨は好きだ。
 ただ、書が濡れるのはいただけない。
 彼が、雨が嫌いだと言うことは聞いたことがある。
 ただ、その理由は聞いたことがない。

 物珍し気に店先の骨董品達を眺めていた相手は、少し挑むような視線を寄越した。
「──……物好きだなァ」
「ええ。これはもう、性分でして」
 例えば彼が答えたくないと言えば踏み入るつもりはないけれど。
 許されるのなら識りたいと思うのは、識るために歩み探る手足を得たこの身の摂理ではないだろうか。──なんて。
 言い訳めいた詞遊びも性分だ。

「……ま、いいか。お付き合いしましょ?」

 神の声が囁いた。


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 朱凪です。
 しかし申し訳ありません。こちらは【旅団シナリオ】となっておりますので、参加できるのは『迷ひ路』の団員さまのみとなります。

 『迷ひ路』の団員さまは、断章の追加をお待ちください。
 その後はお好きにどうぞ。
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第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●追想:軒先の
 ぱたり。漆黒の髪より落ちた雫が店の入口にまるい染みを作った。青磁の瞳が動いて、雄弁に問う。『入ってみます?』。
 店主不在の様相だけれど。あおい目の神の問いに、あかい目の神は肩を竦めた。
「……まァ、こんな軒先突っ立っててもしゃあねえしネ」
 怒られるときは一緒だ。足を踏み入れ、めいめいに手に取るでもなく居並ぶ骨董品たちを眺めて──まるで会釈でもするかのように──そしてあおい目の神が問う。
「どうして、苦手でいらっしゃるの? ──雨」
「──、」
 あかい目の神が足を止める。口の端に僅か乗せた笑みの気配。その眸がひたと見据え、けれど言の葉が空気を揺らすまでには長い沈黙があった。
 相手は諦めもせず飽きもせず、ただ穏やかな笑みを湛えたまま。
 小さく零した吐息を掻き消すかのような、戸板の向こうの途切れぬ音。
「……ほら。聴こえる?」
 大きな雨粒が土に跳ねる。屋根を叩く。葉を揺らす。そんな音。
 けれどあおい目の神はゆるりと首を傾いだ。敢えて問うのは、彼の言葉に霞を掛けたくないと思うが故に。
「どの音でしょう。あなたを憂えさせる聲なのかしら」
「んふふ、」
 空々しくもあるあおい目の神の言葉に、あかい目の神はひらり手を振って見せた。
「ここで話し声が聴こえたら、怒られっか邪魔したかだわ」
 その掌が示すのは静かに薄暗い店に居並ぶ『彼ら』。物言わぬそれらはかつての己たちと同じであると知ればこそ聲と聞くもあり得るのだと。
 けれど彼はかそけく首を振った。
「絶えるような絶えないような、音は落ち着かねえでしょ」
 ざあざあ。ざあざあ。ざあざあ。
 ぱたぱたぱた、ぱたぱたぱた。
 とくん──とくん、とくん。
「……何かが絶えるのを知るのは、怖いですか?」
「さって。俺の見えねェとこでやってくれりゃ良いな」
──絶えるのも続くのも。
 縁の欠けた小さな器を手に取り、背を向けたまま軽く竦められた肩を見遣る。あおい目の神はそっと目に留めた花器へと歩み寄る。両手付の、ひと抱えもある品で古びた持ち手にはひとの指に染まった古い痕が窺えた。それをそっと撫でる。
 ここに並ぶ品々は、かつてどこぞの誰かの所有物であったはずで。
「あなたは持ち主殿との最後を、覚えていらっしゃいますか」
 あおい目の神の問いに、あかい目の神は欠けた器を元通りの場所に戻してやり、すいと眦を細めた。
「覚えてねェし、思い出したい用もない」
 左手で触れる、柄。振り返る先には変わらぬ笑み。
「──だから、雨が嫌い。んふふ、綾は逐一覚えてそうだな」
 少し揶揄うように顎を上げて見せたなら、あおい瞳の神は瞼を伏せて微笑んだ。
「いいえ、私も同じく。ひと言ふた言の記憶はありますが、はて誠に耳にしたものだったか──何せ、耳と呼べる器官が物には無いですからね」
 身を得てのち妄想を重ねて捏造したものかもしれませんし。そして慈しむように撫でる手付きを、あかい目の神が眺める。
「んふふ。誰にも証左がねェでしょうよ。ひと言ふた言なら尚のこと」
「此の花器に呼び掛けて答えてくれたなら『聞こえて居ました』と確かになるかしら」
「……同じとは限らねェわあ。ンな些細な妄念すら、あんまり細いと掻き消える」
 あおい目の神は左手の添えられた柄を見遣る。その先が傘だったのなら、雨を喜べたのだろうか、なんて戯れてみたなら、打たれっぱなしじゃん、と己の浅い金の髪からぽたと雫が落ちるのを見遣って口角を吊り上げた。
 ならばとあおい目の神は花器から手を離す。
「いつか私が涯てる時には、あなたの目に留まらぬところに雲隠れいたしましょう。いえ、雲はいけませんね。雨が降る。そう、旅に出たことに致しましょ。ほら此れで、」
 嫌いな理由がひとつは──ひとかけらは、無くなるかしら。
「前提で大赤点だわ、綾」
 そっと告げた台詞を、あかい目の神はひと断ち。いっそ増えると笑ってみせて、そんな時間があるのならば。ならば──と続く言葉は胸の奥に仕舞い込む。
 「赤点ですか」ぱちりと瞬いたあおい目の神は「其れはいけない。再試はありますか、センセイ」なんて嘯く傍ら、仕舞ったはずの胸の奥を見透かす。眼差しが伝える。
 紡いだよすがは細く頼りない糸ではない、何せ今は確かに傍らにあって、声も温度も感じている。物事には必ず終りが来るけれど、いつかが恐ろしいのなら、そう──。
──私があなたを断ちましょう。
 紡ぐ想いに揺らぎはなく。
「でも、ねぇ、あなたの居ない道のりは、やはり寂しいに違いないから」
 遺していかないでくださいよ、なんて。ねぇ、笑うかしら? それとも怒るかしら。
 その表情からわざと視線を外したまま、終ぞ顔を見せることのなかった店主の商売っ気の無さに、己の店のありようを重ねてこそり、あおい目の神は咳払いひとつ。
「あなたは何処へ向かうところでしたの。目的無ければ私の処で一杯如何。いえ、ね、斯様に書を増やしてしまったものだから、独りで帰っては縫に叱られること必至でして。共犯者になってくださいな」
 そうして見遣った戸口の向こう。湿った空気に甘い香り。雨は絶えたか、まだ見通せぬ細い光の向こうに、神は僅か目を細めた。
 
都槻・綾
書を求めに出ると
度々雨と搗ち合うのは
もう増やすなと言う縫の呪いだろうか
突然の空模様へそっと吐息

…雨男と呼ぶのでしたか
此の場合、――どちらが?

同じく廂の下に飛び込んだ姿を認めて
戯れの問い

やぁ
奇遇ですねぇ

なんて挨拶もそこそこに
だって其処はお誂え向きに飲み屋なものだから

薄暗い店内
仄かに燈るのはどうやら酒のよう

今も雨が苦手でいらっしゃる?

ぽつりぽつりと語らい乍らの乾杯もまた
小雨めいているかしら
其れとも
こんな雨ならば良いと思ってくださるかしら

おまじないを差し上げましょう、と
懐紙で折るのは小さな傘

おや
疑っていますか
傘を持ち歩くと降らない法則があるのですって

そんな嘯きも
雨の憂鬱をひとつ、祓うものであればいい


ユルグ・オルド
雲に背向けたとこで
やぁネー降る気はしたんだと肩竦め
合わせた顔に笑ったのは前髪の滴に
どっちかってと……綾じゃん?

狙ってたワケじゃ、…ないケドも
雨障にゃ持って来いだわ

グラスの雨垂れ指で伸ばしつつ
よく覚えてんなァと頬杖の
途切れず他愛なく並べるのは雨音の代り
伏せて浮かぶのは何時かの戸の向こうで、まァ、
綾は嫌いなコトがなさそうな
それともと傾けて呑んで
笑ったのは肯定の代り

駄駄こねる度に付き合ってくれンなら悪かないが
括って腰にでも吊るして提げておく?
児戯に重ねた正解もまァ似たようなモンで

ええ、ソウ
えー
利益がありゃアいいケド
礼を言うか笑おうか
面映ゆくって溢す呟きも雨音の向こう
掌にそっと包んだのは内緒の話



●絶えぬ雨音の中
「あら」
 抱えた腕には和綴じの書物が数冊。
 充足した心持ちで店を出て、数歩。ぽつり、膚を叩いた一滴の雫は、あっと言う間に数を増やして、あおい目の神──都槻・綾(絲遊・f01786)はその身で書を覆うようにして足を速めた。
──此れは、もう増やすなと言う縫の呪いでしょうか。
 書を求めて出歩く度に、叢雨に出くわす。
 雨足は太く強くなる一方で、身を呈しての帰路には限界があった。仕方なく逃れた軒下で、綾は灰色の空を見上げて小さく息を零した。
 
「……降る気はしたんだ」
 やぁネー、とひと声。叩き付ける雨粒から逃れる術もなく、あかい目の神──ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は飛沫跳ね上げて屋根の下へと駆け込んで。
「「……」」
「……雨男、と呼ぶのでしたか。此の場合、──どちらが?」
「どっちかってと……綾じゃん?」
 どちらからともなく口許に笑みを浮かべたなら、ぱたり。ふたりの前髪から落ちた雫が屋根の下にまるい染みを作った。
 奇遇ですねぇ、なんて挨拶もそこそこに、紫陽花の季節を思い出して背後を窺ってみたならばそこは骨董品店、……ではなく。
「やぁ、此処は……飲み屋でしょうか」
「狙ってたワケじゃ、……ないケドも」
 キマイラフューチャーらしい派手なネオン看板が挙がっているが、小さく切り取られた窓から伺える店内は落ち着いた雰囲気で薄暗く、カウンターの上にはなにやらぼんやりと燈るものが見える。
 そわり。『入ってみます?』。振り向いた神のあおい目に抑え切れない好奇心が点るのを見逃しはせず、あかい目の神は口角を吊り上げた。
「雨障にゃ持って来いだわ」
 
●軒下の向こう側
 カウンターに並び座ったふたりが注文したそれは、シンプルなロックグラスに注がれて手許に届いた。荒く砕いた氷の間を満たす液体は僅かに浅縹と深緋にそれぞれ淡く光っていた。
「酒そのものが燈るのですね」
「安心安全、身体にゃ完全無害だよ」
 カウンターの向こうにいるバーテンダーが瞳を輝かせる綾へ笑い掛ける。
 かつんと互いに杯を合わせて口に含めば、花のような香がした。
 ナニ買ったの。書を僅か。懲りないねェ。申し開きの言葉もありません。そんな世間話をぽつり、ぽつり、間を埋める小雨のように幾許か。
 話題がひと段落して、片手で頬杖をつき、汗をかいたグラスをついと指先で撫でる横顔へと、綾は薄っすらと口許に笑みを刷いて問う。
 
「今も雨が苦手でいらっしゃる?」
 
 ざあざあ。ざあざあ。ざあざあ。
 ぱたぱたぱた、ぱたぱたぱた。
 とくん──とくん、とくん。
 
「……よく覚えてんなァ」
 頬杖をついたままの状態で、あかい目があおい目を見る。さらりと金糸の髪が揺れた。
 相手の瞳に宿るいろに、ユルグは小さく笑みを歪ませたまま瞼を伏せる。脳裏を掠めるのはいつかの神立。「……まァ、」転がす言葉はいつものようにどこまでが本心か。
「綾は嫌いなコトがなさそうな」
「そんな。私にもあるかもしれませんよ?」
「へェ、なに?」
「貴方が教えてくださるのなら」
 片眉を上げたユルグの煙に巻かれることなくひたと見据える綾が「其れとも」と紡ぐ。
「こんな雨ならば良いと思ってくださるかしら」
 あかい目の神は再び瞼を伏せてそっと笑みを返した。
「……駄駄こねる度に付き合ってくれンなら悪かないが」
 否定はしない。むしろどちらかと言うならば。
 一筋縄ではいかないユルグと、けれど察せないほど短い付き合いでもない。
「なら、おまじないを差し上げましょう」
 綾は懐から懐紙を取り出し、折り始める。ユルグはグラスを傾けながら器用なその指先を眺めた。
 薄い笑みを口角に乗せ、より重みを腕に預けたユルグの前で綾がはい完成と掌に乗せたのは、小さな傘。
「ふゥん、括って腰にでも吊るして提げておく?」
 このサイズじゃ、雨は避けらンねェなァ、なんて零して掌からその傘を抓み上げる。
「おや、疑っていますか」
「ええ、ソウ」
 きっぱりと答えるユルグに綾は小さく笑う。
──例え些細な嘯きでも貴方の雨の憂鬱をひとつ、祓うものであればいい。
「傘を持ち歩くと降らない法則があるのですって」
「えー」
 ころころ、ころころ。掌を転がしつつユルグはあかい目を細める。
「まァ、利益がありゃアいいケド」
 捻くれた舌はそう告げて。けれど綻んだ口許はこれまでと種類の異なるそれで。
「──……」
 
 ざあざあ。ざあざあ。ざあざあ。
 ぱたぱたぱた、ぱたぱたぱた。
 とくん──とくん、とくん。
 
 小さなその傘を掌にそっと包んだのは、内緒の話。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月01日


挿絵イラスト