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拳現幽如、影走炎如、剣散華如。

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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 拳が現ること月の如し。幽として現れ、現を以て打つ。
 影が走ること光の如し。無として来り、熱を以て刺す。
 剣が散ること華の如し。百として舞い、百を以て覆う。
 畢竟其処に残らるるは、碧海、山河、そして龍である。


 龍縁商業連合、龍商連から送信されてきた通信はあまりに突然で、一見して意味を要さないものだった。だが、
「――報告!!」
 龍商連の隣国、北方にある“農業と鉄鋼業、その他人民による全ての労働と血についての鉄鎖的同盟”、労鎖同盟はすぐにその通信の意味を知った。
「龍商連の軍事部隊の出動を確認!」
 二十四時間作動している同盟軍の観測所に、逼迫した声が響いた。
「我らが同志の地に向かって進軍中……!」
 全ての観測機器が、それが大軍だということを示していた。


「皆様、事件ですの!」
 猟兵達の拠点、グリモアベースでフォルティナ・シエロは言う。
「現場はクロムキャバリア。人型機械である『キャバリア』が特徴的な世界ですわね」
 クロムキャバリアは、無数に分裂した小国家同士が体高5mの人型兵器『キャバリア』を主力に、生産施設『プラント』を奪い合う、荒廃した世界だ。
「オブリビオンの暗躍によりこの世界は百年以上もの間、戦争を続けていますの……」
 『オブリビオンマシン』として蘇ったキャバリアが、搭乗者を破滅的な思想に狂わせ、戦火を拡大させている為だった。猟兵以外はどれがオブリビオンマシンか識別できず、その状況を認識する事もできない。
 現地の様子を映した資料を提示しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「今回私が予知した未来は、とある平和な小国家に、隣国のキャバリア部隊が侵攻してくる予知ですの。戦乱続く世界ですのでそれはある意味“常”であり、究極的には猟兵が関与する事ではありませんが、先ほども言った通り、その裏にはオブリビオンマシンが存在していますの。
 暴走した軍部の過激派……、その首謀者がオブリビオンマシンに乗って侵略行為を断行したのです。オブリビオンマシンによって巻き起こされる無益な争いは、食い止めなくてはなりませんわ」
 現場の状況を説明しますわ、と、画像を次々に用意していく。そこに写されていたのは雪原だった。三月という時期になっても白い色が広がるその場は、
「予知で見た両軍が激突する場所ですわね。“農業と鉄鋼業、その他人民による全ての労働と血についての鉄鎖的同盟”……、労血鉄鎖同盟とか労鎖同盟ともっぱら言われる彼らの領土ギリギリですの。この雪原で、攻めてくる龍縁商業連合、龍商連を迎え撃ってくださいまし」
 と、そこでフォルティナは指を立てた。
「幾つか注意事項が、ありますの」


 一つ、
「敵……、便宜上そう呼称しますが、敵は大軍ですの。首謀者は、龍商連のキャバリア達を謎のユーベルコードで『オブリビオンマシン化』し、自分に従う大軍勢を編成したようです。よって、大量のオブリビオンマシン軍が用意できたという訳ですわね。
 おそらくこの事件は、その後“軍部過激派の暴走行為”として解釈され、両国の政治状況に何らかの影響を及ぼす事でしょう。ですが、それは猟兵達の関与することではありません。猟兵はただ、オブリビオンマシンの破壊行為を食い止めるのみ、ですわね。
 ただ、“無益な争いを止める”という観点で言えば、国境を越させなければ、両国間のその後の状況も少しマシになるかもしれませんわね……」
 一つ、
「攻めてくる敵勢は皆、自分達が乗るオブリビオンマシンによって思想が狂わされています。なので機体だけを倒せば彼らは正気に返るでしょう。倒した後に安全な所にかくまってあげると、なお良いでしょう。まあ、彼らは兵士なので自分で身の安全は守れますが。余裕があれば助けてあげれば幸いですわよね。……でも問題は、周囲、だだっ広い雪原ですのよねー……」
 一つ、
「敵勢の第二波のパイロットは、おそらく首謀者の企みでしょうが、第一波にいた兵士達の親友や恋人、父親……といった『絆を持つ人』です。第一波でもし不幸にも死んだパイロットがいれば、彼らはオブリビオンの狂気に飲まれてパワーアップしてしまいますわ。逆に助けていて、その言葉や思いを伝えることができれば……、あるいは彼らを戦わずとも正気に戻すことが出来るかもしれませんの」
 一つ、
「首謀者、ですわね。元は立派な人物だったようですが、狂った主張で侵略行為を正当化して襲ってきます。もちろん、オブリビオンマシンに正気を奪われているせいですので、お間違いなきよう」
 そして最後に一つ。
「現れる敵は全て、体高五メートルの機械兵器です。生身で戦うのもアリですし、普通にそれが可能な方もいらっしゃるでしょう。ですがこの世界ではジョブやアイテムとしてキャバリアを持っていない方でも、現地の勢力から借りて乗ることができます。今回の場合ですと、労鎖同盟の軍部から借り受けることが出来ますわ。労鎖同盟軍の特徴としては量産型のジャイアントキャバリアですの。暴走の危険を孕んだ機体も、広大な領土では許容できるメリットと、そういうことかもしれませんわね。
 ――あ、因みに皆様のユーベルコード。それはキャバリアの武器から放つこともできますから、借りてそのまま発動して大丈夫ですのよ」
 五指を開いた掌から光を生み出す。砂状のグリモアだ。
「――まとめますわ」
 空間に、文字が書かれていく。

 ・クロムキャバリアでオブリビオンマシンに思想を狂わされた者が、隣国へ侵攻。オブリビオンマシンによる無益な争いを止めるため、猟兵はこれに介入。
 ・国境線……洗脳された兵士の扱い……。余裕があれば戦闘以外にも気を配るのも”アリ”でしょうね。無論、撃退に注力しても良いですの。
 ・人型機械『キャバリア』に乗って戦いたい場合は、貸与してもらえますの。

 転移の準備を進めながらフォルティナは顔を上げ、猟兵達の顔を見回す。
「各自のご希望に沿って転移しますが、恐らく転移が済み次第、そこは戦場と言って差支えない場所ですわ。
 ――ご武運をお祈りしてますわ!」


シミレ
 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 不慣れなところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。

 ●目的
 ・敵オブリビオン部隊の侵攻撃退。

 ●説明
 ・『クロムキャバリア』でオブリビオンマシンで思想を歪められたパイロットが、隣国へ大舞台を率いて侵攻を開始しました。オブリビオンマシンによる無益な争いを止めるため、猟兵達は向かいます。
 ・現場の状況は『雪原』です。それ以外は基本的に自由というか、皆様のプレイング通りの戦場になるかと思います。晴れとプレイングに書かれたら晴れですし、吹雪いている戦場をお望みでしたら、そうなります。
 ・この世界は『キャバリア』という人型機械が主力の世界です。「ジョブやアイテムとしてキャバリアを持っていないけど、搭乗して戦いたい!」という人は、現地勢力から貸与されます。今回の場合は攻め込まれる側の小国家『農業と鉄鋼業、その他人民による全ての労働と血についての鉄鎖的同盟(労働鉄鎖同盟、労鎖同盟)』から貸与されます。
 ・貸与されるのは、ジャイアントキャバリアです。重装甲、高機動、色々な種類があるかと思いますが、どれも暴走の危険が孕んでいます。

 ●他
 皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これを言ってますが、私からは相談は見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談しなくても構いません!)
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第1章 集団戦 『幽衛』

POW   :    鉄撃
【格闘攻撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    疾風
自身が操縦する【キャバリア】の【格闘性能】と【回避性能】を増強する。
WIZ   :    覚悟
【格闘】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【手応え】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「――!」
 雪原の上を黒鉄の機体が駆けていた。
 黒鉄の機体はキャバリアであり、数は複数。しかしそのどれもが武装という武装を持っていなかった。
 無手。
 ただ、己が身軽な事を証明するように、雪原の上を大きなストライドで駆けていっている。
『――幽衛隊へ通信』
 そして、無手のキャバリア部隊、幽衛隊へ通信が届いた。それは今回の侵攻の首謀者からの声だった。
『国境は目前。即ち彼我の接触は目前である。前線を膠着させることなく、そのまま突破せよ。――全機、背部加速器を始動』
 直後、幽衛隊の全機に変化が生じた。前面のエアインテークから吸気された大気が内部で圧縮、そして背部の大型加速器にて一気に消費されたのだ。
「……!」
 凄まじい勢いで加速した全機は、跳ねるような走りから、飛翔するような突進へ。吹き飛ぶ勢いで機体は前へ進み、足元の雪は宙にぶち撒けられていく。
『これより貴様らは混沌の中へ、幽として飛び込む。敵勢を掻き乱し――』
 突破するのだ、という指揮官からの言葉はしかし続かなかった。
『……!?』
 彼我、即ち龍商連と労鎖同盟との間に、突如として出現した姿あったからだ。
 全機がオブリビオンマシン化した龍商連の侵攻部隊は、本能でその相手を判別できた。
「猟兵……!」


 様々な場所に転移した猟兵達は、それを知った。
「……!」
「――!?」
 前方から雪の飛沫をぶち上げて突進してくる幽衛部隊も、後方である労鎖同盟の困惑の気配も。
 何もかもが突然で、衝撃的な現場だった。だが、その場にいた全ての存在は迷わなかった。
「突破する……!」
「――猟兵の支援要請を受諾!」
 動き出していく。
斑星・夜
キャバリア:灰風号搭乗

オーケー、状況は理解したよー!
よーし灰風号、俺達も頑張ってお仕事しよーね
ひとまずは敵のキャバリアの数を減らさないとだねぇ

雪原って事はちょっと滑りやすいかな、その辺りは戦いながら慣れていこう(※悪路滑走)
『ねむいのちゃん』にハッキングを頼んで周囲の状態を情報収集しつつ
利用できる地形があれば『RXSシルバーワイヤー』で蜘蛛の巣みたいに罠を張って敵の行動を邪魔しちゃおうかな!

コックピットはなるべく避けて『帯電熱超硬度短刀』で敵機の腕や足の切断し戦闘不能にするよう狙います
敵機に近づかれ過ぎたらこちらも格闘で対応
ワイヤーの張ってある方へ『グラウ・ブリッツ』で吹っ飛ばすよ!




「……!」
 労鎖同盟の者達はそれを見た。
 侵攻してくる龍商連の部隊との間に突如として現れた存在、猟兵。その内にあるキャバリアの一機は、自分達の小国家が主に利用するものと同じ種別だった。
 ジャイアントキャバリアだ。いくつかの装備は確認できたが、そのキャバリアもまた、ほぼ無手に近い状態だった。
 そして、そこから声が聞こえた。
『――オーケー、状況は理解したよー!』
 気さくな、男の声だった。


 ジャイアントキャバリアのパイロット、夜は操縦室の中で気楽な様子だった。
「よーし灰風号、俺達も頑張ってお仕事しよーね」
 灰風号。その名を持った機体を、夜は操縦していく。
「ひとまずは敵のキャバリアの数を減らさないとだねぇ……、っと」
 動き出した灰風号の足下はしかし雪原だ。凍結された大地は堅く、滑りやすい。少し動作に乱れが生じたが、夜はそれをすぐに修正。
「まあ、ここら辺は戦いながら慣れていけばいいか。――ねむいのちゃん? 周囲の地形、観測してくれる?」
 機体に取り付けられた操縦サポートAI“ねむいのちゃん”に話し掛ければ、
『――――』
 すぐに答えが帰ってきた。コンソールに表示された情報は、灰風号を中心とした地形情報だ。
 数十キロ単位で続く雪の平原は土地の隆起こそ少なかったが、しかし利用できないわけではなかった。
「うーん、あそことあそこ……、それにここだな!」
 夜の操縦を受けた灰風号は雪原の上で機動しながらも、“ある物”を手捌きで周囲へ投じていった。
 すると、そんな動きにやはり敵が反応した。
『罠か……!?』
 だが遠くから距離を詰めてくる幽衛隊は今、加速中だ。高速域の視界では“それ”を判別できなかったようだった。
 “それ”は一瞬で投じられたし、一見しては解るほど特徴的なものでもなかったからだった。
 罠の存在に警戒し、敵の歩みが僅かに押し止ったのを夜は見た。しかし、それも一瞬の事だった。
『……!』
 幽衛隊全機は、そこから更に加速した。自分達の判断か後方にいる首謀者からの命令か、罠にかかることを当然として押し通るつもりなのは明白だった。
 雪原を捲るような勢いで突進してくる敵勢は、まるで黒鉄の津波のようだった。
 怒涛。正しくその言葉通りが夜に押し寄せていた。だが、彼は構わなかった。
「――――」
 灰風号の手に握らせたのは一振りのナイフだ。“帯電熱超硬度短刀”、電熱を帯びた刀身は雪原を照らしていたが、その小ぶりな灯りは押し寄せる波濤に比べれば、とても僅かな物だった。
 灯りは、波に飲み込まれる。
 そのはずだった。
『……!?』
 瞬間。突進して来ていた幽衛隊の先頭が、灰風号の前方で足を止めた、否、それは足を止めたというより、
『見えない、壁……!?』
 それに衝突したような、そんな急激なブレーキングだった。しかしそれは正確ではなかった。
『違う! これはワイヤーだ――、がっ……!?』
 まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされたワイヤー、シルバーワイヤーだった。
 そんな鋼糸の罠に先頭が絡めとられれば、後続の機体もつんのめるように続き、
「それじゃ、行きますか!」
 一塊となった敵勢へ目がけて、夜は灰風号を加速させた。


 夜が、敵との接触を果たしたのはすぐだった。
「……!」
 加速した勢いそのまま、まず手近な一機の腕部を断った。その勢いを殺さず、残ったもう片方の腕部や脚部を、続く動きで無力化。
『……っ!』
 崩れ落ちていく幽衛を残し、次へ。そして次も、やはり同じだった。コックピットは狙わず、電熱を帯びた刃を突き込むようにしてキャバリアの四肢を切断していく。
 速度が落ちて互いが衝突し、団子状に固まった状態から立て直そうとする敵集団に対して、攪乱と盾役に主眼を置いた灰風号は抜群の性能を見せていた。
 止まらない。
 幾体目かの四肢を切り飛ばし、幾度目かのステップを踏む。雪原というイレギュラーな大地にももう慣れた。
 次……!
 なので次へと、そうしようとしたところで、夜は気付いた。
『おぉ……!』
 団子から抜け出した一機が、自分の方へ突進してくることをだ。死角から突然としてやってきた敵は、拳を固く握りしめていた。
『――!!』
 正しく鉄拳が、灰風号に突き込まれてきた。風切りの轟音を立てる一撃だった。
「格闘ならこっちも出来るんだよね!」
 だが夜は瞬時に反応し、短刀を握るのとは逆の拳を立てることでいなす。
 いなした。
『……っ!?』
「――それじゃ、ちょっと下がっててね!」
 一撃を逸らされたことでがら空きとなったボディへ、灰風号の蹴りが突き込まれた。
 ユーべルコード、グラウ・ブリッツ。電流を纏わせた打撃はその威力を証明するように、突っ込んできた幽衛をもう一度蜘蛛の巣へ吹き飛ばしていった。
「さあ、お仕事再開!」 

成功 🔵​🔵​🔴​

エルヴィン・シュミット
オブリビオンの連中ってのは場所を選ばねえもんだな。
あんまり冷えるのは好きじゃないんだがなあ…。

ふむ、奴らの動きから観察するに瞬発力はあるが長続きするタイプじゃないようだ。
高速機動による一撃離脱型のようだな。
それなら俺とドラグリッターの相手にはならなさそうだ。

【見切り】で動きを見切ってUCと【盾受け】で攻撃を受ける!
そして相手が離れる前に【串刺し】と【切断】で上体を狙って斬り捨てる!
コックピットは外してやるが、それ以上は何もしてやれないぜ。
俺とコイツはそこまで優しくないし器用でもないんでな。

『拳一つで倒せるほど俺はヤワじゃないって事、見せてやろうか!』




 雪原の上、両軍の間に立っている姿があった。
『…………』
 体高五メートルの姿はキャバリアだ。白いキャンバスに立ち上がった赤のシルエットは、周囲に鮮烈な印象を与える。
 と、シルエットから声が聞こえた。
『――ハ! オブリビオンの連中ってのは場所を選ばねえもんだな』
 豪放な雰囲気を持った声は、若い男の声だった。少年と、そう言ってもいい声だった。


 赤のキャバリアの操縦室、そこでエルヴィンは前方を睥睨するように眺めていた。
「あんまり冷えるのは好きじゃないんだがなあ……」
 視界一面が白の中、敵勢は雪煙を挙げて突進してくる。エルヴィンはそんな敵の様子を観察しているのだ。
 ふむ……。あの機体、瞬発力はある……。
 敵の機体、幽衛は前面から大気を吸い込み、背部の加速器から速度をぶちまけている。それは派手な光景だった。加速器から噴き上がる光も、立ち昇る地面の雪も進撃を雄々しく彩っている。
 だが、
「長続きするタイプじゃないようだな」
 雪に紛れて解りにくいが、幽衛隊は前進と後退を織り交ぜ、出力の調整や加速器の休息を行っているようだった。
「つまり、高速機動による一撃離脱型……。俺とドラグリッターの相手にはならなさそうだ」
 エルヴィンがそう言ったのと赤の機体、ドラグリッターがシールド一体型のアームを構えたのは同時だった。
 そうして、次の瞬間には、
「――来るか」
『……!』
 幽衛隊の最先端が、ドラグリッターの元へ辿り着いた。
「コード・ガルガンチュア、起動……!」
 大質量が衝突する激音が、雪原に響いた。


 幽衛隊は打撃の手応えを感じていた。突如現れた赤のキャバリア、その正中を捉えた確かな一撃だった。
 しかし、
「……!?」
 それは“感じた”だけだった。拳に返ってくる手応えからも周囲に響いた音からも、幽衛隊全員は不足を感じていた。
 打撃の結果として、自分達が慣れ親しんだある音が聞こえないのだ。それは、敵の装甲が砕け、散っていく破砕音だった。
 その音が聞こえないということは、何を意味するか。
『――終わりか?』
 衝突の衝撃によって雪が巻き上がり、視界素子からの情報が判然としない中、猟兵の声が聞こえたおかげで、聴覚素子に異常がないことを知れた。
「クッ……!?」
 打撃を終えた拳を慌てて引き、一旦距離を取ろうとするが、
『遅えなあ!』
「……!」
 叶わなかった。
 舞い上がった雪を切り裂くように現れたのは、赤のキャバリアのシールドとは逆腕に装備されたプラズマブレードだった。
 刺突。機体を縫い留めるように、鋭く差し込まれた光の刃はすぐに横へ薙ぎ払われ、幽衛の機体が一瞬のうちに二分された。


 プラズマブレードを払うように引き戻し、再度構えながら、エルヴィンは敵の動きが変わったのを知った。
「どうした、来ないのか?」
『…………』
 突撃した一機が一瞬にして断たれたのを見て、敵は歩みを止め、警戒した様子でドラグリッターを伺っている。
 眼下では、破壊されたキャバリアから、正気に戻ったパイロットが慌てて脱出するのが見えた。
「コックピットは外してやったが……。それ以上は何もしてやれないぜ」
 エルヴィンは言葉を続ける。
「俺とコイツはそこまで優しくないし、器用でもないんでな」
 さあ、どうすると。言外に問えば、
『……!』
 敵が、動いた。加速器に光を灯し、突撃してくるのは一機や二機ではない。様々な方角から、一度に襲ってきたのだ。
 狙いは明白だった。シールドがカバーできる範囲を超えた数によって、ドラグリッターを押し潰すつもりなのだ。
 だが、
「――――」
 エルヴィンはその全てに反応した。敵の一撃一撃を見切り、シールドを構えて的確に受けていくのだ。
 戦場に、鋼同士が連続でぶつかりあう音が鳴り響いた。
『……っ!?』
 雷が落ちたような轟音だったが、誰もそんな音に揺らがなかった。拳が届かず、弾かれ、故に身動きを固めてしまった幽衛達が、そんな雷鳴の数だけ両断されたからだ。
「――ハ」
 装甲を切り裂かれ、地面へ幽衛達が落下していく中、ドラグリッターは無傷で立っていた。
『どうなってる……!? 機体どころかシールドにも傷一つ……』
『愚問だ、相手は猟兵だぞ! ユーべルコードを使っている!』
「おお? そうだな、別にあれこれ説明してやる義理はねえが。ただまあ、確かに言えることはあるぜ」
 それは、
「拳一つで倒せるほど俺はヤワじゃねえってことだ……!」
 無傷の盾を掲げながら、ドラグリッターは雪原に聳え立ち続けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レン・ランフォード
蓮:やってきました封神…じゃないですね
れ:クロキャバだねー…長い名前の同盟だ…
錬:まぁやることは変わらんさ
蓮:そうですね、無益な戦いを止めましょう

戦いつつ救助となると手が足りませんね…なので増やします
【鬼丸兄弟】
戦闘用でもある式鬼達は当然キャバリア「操縦」も修得済みです
なので私の分含めて92機お借りしますね
ランフォード中隊出動です

雪原は「足場習熟」済
敵の合流・突撃を妨害班10機が斉射で止める「時間稼ぎ」している内に
戦闘班が7機がかりで全周囲から1機を取り押さえ「グラップル」、頭と四肢を「部位破壊」
操縦席とパイロットを安全地帯まで守りながら運ぶ5機の運搬班「救助活動」
を1小隊とした4小隊編成です




「やって来ましたね。新世界、封神……、……じゃないですね、ここ」
 レンは雪原を踏みしめた。大空の下、今、自分がいる世界は、
 ――クロキャバだねー……。
 もう一人の自分が、脳内で言う通りだった。
 雪原の先からやって来る大軍だけなら、まだ古代中国でもよくある光景かもしれないが、その全てがキャバリアであれば、間違いない。
「予兆を伝え聞く限りちょっと中華味を感じたのですが……。ともあれまあ、私たちの背後の同盟を、あの大軍から守らなければならないんですよね……」
 ――しかし、ながいなまえのどうめいだ……。
 ――まあ、やることは変わらんさ。
 もう一人を加えて、やはり言う通りだった。
「ええ、無益な戦いを止めましょう」
 そう言って、懐から手繰り寄せ、周囲へ撒いたのは人型の札だ。
「式鬼顕現」
 ユーべルコードを発動する。
 刹那。自分の周囲に、姿が生まれた。
 体高一・三メートル、鉄の長杖を持った二頭身のシルエットは式鬼だ。しかしそれは一体や二体ではない。百に近い数が一気に大地へ現れたのだ。
「……!」
 驚きや期待。様々な感情を内包した息を詰める気配が、背後であった。これだけの数が突如として現れれば、戦場を観測しているものであれば否が応でも気づき、注目を寄こして来るのだ。
「我々は無益な争いを止めるためにやってきました。侵攻軍は止めますし、彼らを救助もします。手が足りませんが、なので手を増やします」
 その方向へ振り向き、己は言う。
「この式鬼達、九十二機分のキャバリアの貸与をお願いします」


 一度に九十二機ものキャバリアを用意することは、流石にある程度の時間がかかったが、労鎖同盟軍の尽力によってやがて果たされた。
「……?」
 彼らは皆、足元を動き回る式鬼達に訝し気だったが、すぐにその認識を改めることになった。
「戦闘用の式鬼なので、当然キャバリアの操縦も修得済みです」
 剣を持たせれば刃を振るい、弓を持たせれば矢を射るということだ。式鬼達は器用にコックピットに潜り込むと、特に戸惑う様子もなく操縦コンソールを操作する。
『――――』
 そして始動。
 九十二のジャイアントキャバリア全てが動き出し、大地に整列していった。
 ならば、後はやることは一つだけだった。
「レンフォード中隊出動です」
 行く。


「……!?」
 幽衛隊の全機は勿論その様子に気付いていた。突撃する自分達を迎え撃つように、大量のキャバリアが急ぎの動きで配置されたのだ。それは整然とした動きで、
「――発砲を確認!」
 射撃を寄こしてきた。迫り来るのは、大口径で衝撃力の高い砲。そんな風に砲撃の接近を探知しながら、思考する。
 これは、連射で押し止めるというよりは……。
 誘導だ。こちらの突撃をコントロールしようとする意志が感じられる。規則正しい斉射で、最初に見た敵の数に比べれば射撃の圧が随分と薄かったからだ。
 ただ単に突撃を止めるだけなら、もっと大量のキャバリアで弾幕を張るだろう。だが敵はそうしていない。一発一発が大きい砲撃で戦場を穿ち貫き、雪飛沫を挙げていく。
「チッ……! 進路を変更する!」
 今も、目の前が穿たれた。なので転身しようと機体を操作した。
 その瞬間。
「……!?」
 舞い上がった雪の飛沫の向こう側から、突如として手が突き出て来た。
 キャバリアの掌だった。
 武器を持たない手が、こちらを捉えようと伸びてくる。
 頭部狙い……!
 敵が雪煙に紛れて接近し、メインの視覚素子があるそこを狙った一撃だとすぐに解った。
 なので反応自体はすぐ出来た。敵は雪原という足場に慣れているようだが、こちらだって既にユーべルコードを発動している。
 “疾風”。
 格闘と回避の性能が増加し、いつも以上の動作を果たせるのだ。
 それは訓練と実戦で培い、身に染みたパターン動作だ。即ち、頭部に迫る腕を横合いから払い、逆に掴み取って、固め、砕く。
 そのはずだった。
「……!?」
 振り上げようとした己の腕が、頭部に迫るものとは別の手で捕らえられていたからだ。
 否、抑えられたのは腕だけではなかった。
「四肢が……!」
 全て、封じられていた。


 式鬼達は、共に戦場にいる自分達の主からの指示を聴いた。
『中隊、流れを止めずに。己の役割を果たして下さい』
 なのでその通りにした。
「……!」
 目の前の敵、幽なる衛士をその手で砕いていくのだ。
 頭部を掴もうとする動きで敵の反応を“誘い”、対応しようと敵が動き出せば、他の式鬼が抑えて、固める。
『おのれ……!』
 周囲にいる他の機体が仲間の拘束を解こうと突貫して来るが、こちらだって複数だ。
 頭部を狙う一機、四肢を狙う四機、そして
「――!」
『くっ……!』
 周囲を牽制する二機。計七機による戦闘班。それがここにいる自分達だった。
 七機といえど敵陣の中に飛び込めば多勢に無勢で、相手は“疾風”なるユーべルコードも発動している。だが、一瞬でも牽制できればよかった。
「……!!」
 その一瞬で、戦闘用の式鬼として熟知した破壊を、五機は実行した。
 頭部を握り潰し、両腕は肩からもぎ取り、払い上げた足を蹴り砕く。それらが一瞬の内に行われた。
 結果、
『な――』
 操縦席を内包した胴体だけが宙に浮き、手空きの式鬼がそれを確保。だが、抱えながら敵陣にいる余裕は無い。
「――――」
 なのですぐさま敵陣の外へ放り投げる。弧を描いて飛んでいく先にいるのは、五機編成の運搬班だ。
 彼らがパイロットを確保し、安全な場所まで連れていく。
 後の事は任せ、戦闘班である自分達は急ぎの動きでで退避した。
『妨害班! 敵の合流を阻止してください!』
『クソ、砲撃か……!』
 後方、十機による妨害班の砲撃がやって来るからだ。
 弾着。
『一小隊三班編成二十二機の計四小隊……。これを常として動いて下さい』
「……!」
 再度、雪煙が立ち上がっていく中、戦闘は続いていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
"農業と鉄鋼業、その他人民による"……これが国名ですか。
いえ、他所の事についてどうこう申すのは失礼ですね。

それより、目前の相手に傾注しましょう。


【八龍躍陣】により呼び寄せた式神に【騎乗】し、自らの動きをそのまま伝わせつつ対峙。

この世界で徒手空拳とは、却って侮りがたいものがありますが――こちらは太刀にて御免。

囲い込まれぬよう、斬撃の【衝撃波】で牽制しつつ、一騎討ちに持ち込むよう立ち回り。
四肢の動きを【見切り】、攻撃は先んじて躱しつつ、操縦席は外して機体を【切断】。

その要領で周囲の敵も撃破できれば、中の兵らを戦場から離れた場所まで護送しましょう。

後で迎えに参ります故、少し頭を冷やしておきなされ。




「…………」
 転移を済ませた景正は、自分の側にあった看板に目を引かれていた。
 そこに書かれているのは異国どころか異世界の言葉だが、読める。猟兵の加護だ。
「……“農業と鉄鋼業、その他人民による……”、……これが国名ですか」
 随分、長い。自分達の理念を表した名のようだが、サムライエンパイア出身の己からすれば、あまり馴染みが無い響きだった。
 と、そこまで考えてから、
 ……いえ、他所の事についてどうこう申すのは失礼ですね。
 戒めるように首を振った。
 未知を知れるのは異世界の妙ではあるが、今回の自分は観光に来たわけではないのだ。
 というか、
『……!』
 戦場だ。前方に敵がやって来ている。まだ距離としては離れているが、そんなものは人間大の感覚であり、巨人とも言える相手であれば、接敵はすぐだ。
「目前の相手に傾注するとしましょうか」
 遠く、雪を巻き上げながらより来たる敵に立ち向かうため、
「“提る、我が得具足の一太刀――」
 動き出していく。


 突撃していく幽衛隊は前方の異変に気付いた。
「! 警戒!」
 雪原の上に立っていた男の猟兵が、動き出したのだ。
 声が聞こえる。
「――今此時ぞ天に抛つ”」
 刹那。猟兵の前に、新たな影が生まれた。人の姿をした巨大なシルエットは、巨大な甲冑だ。
「ユーべルコードの発動を確認!」
 キャバリアかと思ったが、違う。それにしては小柄すぎるからだ。
 観測から、甲冑のサイズは三メートル半と少し。併せて、一瞬のうちに猟兵がその鎧を装着したのが見える。
 武者だ。それが、こちらと正対していた。
「敵は一人だ! 囲め!」
 号令に従い、隊はすぐさま散開。武者を包囲するように位置取ろうとしたが、
「――!?」
 それを許さぬというように、武者は手に持った太刀を左右に、二度振った。
 すると、刃から放たれた衝撃波が雪原の上を高速で走り、包囲を狙う動きを阻害する。
『この世界で徒手空拳とは却って侮りがたいものがありますが――、こちらは太刀にて御免』
 甲冑からのくぐもった声は、堂々とした響きを持っていた。
 幽衛隊の端から端まで睨みつけるように、鋭い刃は微塵も切っ先を揺らさなかった。


 景正は静寂の中にいた。否、戦場だ。周囲は当然騒々しいが、
「…………」
 しかし自分達の周囲だけは、確かに静寂に包まれていた。
 最初に包囲を阻害したのが、“効いた”のだ。
 太刀を持ってはいるが、己は敵より寡兵で、小柄だ。しかしそれを覆せるほどの実力を示せば、軽率に動き出す者はいなくなる。
 静寂は続いた。
 だが、
「――――」
 周囲の戦場から、流れ弾が自分達の至近に着弾した。
『っ……!』
 張り詰めた緊張がその大音で断ち切られ、すると一機の幽衛が飛び出して来た。
 焦るような機動で、一直線にこちらへ向かってくる。
『クッ、……!』
 静止しようとした他の機体も、動き出せば止まらなかった。
 来る。
「いざ……!」
 対し、己は衝撃波を再び放った。狙うは遅れて飛び出して来た周囲の幽衛達だ。押し止めるように牽制し、
『あ、ぁ……!!』
 派手に加速器を吹かしながら突撃してきた、最初の一機と正対する。
 一騎打ちだ。
 相手は生身ではなくキャバリアという姿だが、しかし四肢はある。
 緊張で“身体”を強張らせ、視線も定まっていない。振り上げられた拳の狙いは、手に取るように解った。
「――――」
『な……!?』
 なので一歩、外に動くだけで回避は叶った。正中を狙った拳は空を切り、己の真横に投げ出されている。
 そこへ刃を振り下ろせば、腕が飛んだ。そして腕が飛べば、重量の喪失で“身体”の重心が狂う。
『……!?』
 平衡を崩した敵が揺らげば、
「隙有り」
 胴を、横薙ぎに飛ばした。
「――まず一人」


 斬撃音だけが響く中、幽衛隊は疑問していた。
 どういうことだ……!?
 自分達は今、たtった一人に翻弄されている。それも太刀だけを持った相手にだ。
 既に何機も撃破され、一対一に勝ち目はないことは明白だった。ならば包囲しようと考えれば、
「……!」
 斬撃の衝撃波が飛んでくる。壁のようにこちらを塞ぎ、波のようにこちらの手足を持っていく。
 最初に比べればもう、随分と自分達の数は減った。
「――さらに一人」
 たった今、この瞬間も。


「…………」
 己の周囲に敵がいなくなっても、景正は刀を収めなかった。
「――大丈夫ですか?」
 言葉は、自分の周囲に散らばっている幽衛の胴体部に向けられたものだ。先の戦いで己が切り捨てたものだ。
「…………」
 すると全ての胴体から、恐る恐る両手が上がった。それを見て、小さく吐息を一つ。
「――――」
 そこで一閃。
 雪原を衝撃波で切り飛ばしたのだ。
 海が裂かれるように、雪が消し飛ばされて道が出来た。
「では、今から貴方達を安全なところまで護送します。――後で迎えに参ります故、この先で少し頭を冷やしておきなされ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイオライト・セプテンバー
※アドリブ歓迎

機体は自前の高機動型クロムキャバリア『ブルーテイル』で参加するわ

敵機は無手の格闘タイプ……速いな
機動性で負けるつもりはないが、クロスレンジに持ち込まれるのは厄介ね
〝引き撃ち〟で行きましょう

幸い【ブルーテイル】は軽量機。大推量のブースターによる【推力移動】を活かして雪原を滑るのもお手の物ってね
バック走で距離を取りながら、ユーベルコード【フラッシュ・トリガー】を用いたキャバリアライフルの射撃にて攻撃する

事後のことを思うと死人は出したくないからね
敵機の駆動系の位置を【見切】って狙い、コックピットは避けたい
……自機周辺を片付けて余裕があれば、燃料とレーションでも置いていってあげたいとこね




「……!!」
 幽衛隊は敵を確認した。突如として現れた猟兵は既にキャバリアに搭乗状態で、青と白の軽量機。確認できたのはその程度だった。
 次の瞬間には猟兵が動き出していたからだ。
 速い……!
 青白の機体は、雪原の上を滑るように移動していっている。機体から迸る光はブースターが大推量の証だ。雪原というアップダウンの少ない平滑な戦場で、敵は速度を緩ませず、止まらない。
 猟兵の狙いは明白だった。格闘で戦う自分達としては、第一に想定する敵の戦法だ。
「引き撃ち狙い……!」
 ライフルを向けながら距離を取っていく猟兵に対し、全機は急ぎ対応していった。


 アイオライトは止まらなかった。
 自前の機体であるキャバリア、ブルーテイルに搭乗した状態で転移し、間髪入れずに起動したのがつい先ほどだ。
 戦場のロケーションとしては単純だ。障害物の無い雪原、そこは大推量のブースターを装備した軽量機であるブルーテイルとしては、存分に力を振るえる。
「――!」
 ブースターに力を送り、雪原の上を滑るように移動していく。高速で流れていく視界の中で思うのは、
 ……敵も同じく速度を活かした機体ね。
 無手の格闘タイプ。武装といえる武装を持たず、機動力に特化しているのは見た目からして一目瞭然だった。拳が届くクロスレンジに潜り込まれると厄介だということも。
 機動性で負けるつもりは無いが危険は冒せない。敵はまだ第一波だからだ。距離を保ったまま攻撃を与える必要があり、それ故、己が選択した戦法は引き撃ちだった。
「当てるッ……!!」
 ブースターで推進しながら、構え続けていたライフルの引き金を引いた。炸裂音が戦場に響き、弾丸が凍えた大気を切り裂いていく。
 一直線に飛んでいった弾丸が向かう先は、引き撃ち狙いに気付いて急ぎ追ってくる幽衛隊だ。突撃してくる部隊の先頭にいた一機の幽衛に、弾丸は飛び込んでいった。
 だが、
『甘い……!』
 敵も高機動だ。背部の主加速器を吹かして、射線から回避。攻撃を受けず、さらにこちらへ距離を詰めようとした。しかし、それは叶わなかった。
『――!?』
 回避先を読んでいた第二射、第三射にぶち当たったからだ。幽衛の装甲が穿ち砕かれる音が響き、その内部にあった駆動系が完全に破壊される。
『く……!』
 加速器からの光が消え、徐々に、そして完全に失速していったのはその幽衛だけではなかった。
『な……!?』
「言ったでしょ、当てるって」
 ユーべルコード、“フラッシュ・トリガー”。早撃ちを可能とするそのユーべルコードによって、通常以上の連射を可能にしたのだ。
 それは比率にして、九十七分の一秒に一発。
「――!!」
 その比率のまま、ライフルが高速で火を噴いていった。


 幽衛隊は弾丸の雨の中を突き進んでいた。
「臆するな! 冷静に――」
 対処しろと、そう言おうとした味方は今、敵の射撃に倒れた。
『……!』
 先ほどからと同様、的確に駆動系を狙った射撃はキャバリアを沈黙せしめ、次々とこちらの数を減らしていく。
 引き撃ちを行ってくる敵に対して、自分達の対策は散開し、包囲。射線外の様々な方角から仕掛けるのが常だ。だが、
「クソ……!」
 近づけないどころか、散開することも許されない。こちらがそんな動きを見せれば、猟兵はすぐに察知し、弾丸を浴びせかけてくるのだ。しかも夥しい速度の連射なので、猟兵が一方に気を取られる内に別の者が抜け出すということも不可能だった。
 高機動の最中であっても駆動系だけを貫いている時点で、こちらの動きや動作を見切っているのだろう。
 そして何より、
『――!!』
 あの大推量のブースターだ。幸運にも散開できたとしても、自分達で効果的な包囲が描けるかどうか。
『――――』
 そしてまた一機、撃ち貫かれた。
「ッ……! 態勢を立て直すべきだ! 離脱する!」
 突撃するでもなく、散開するでもなく、離脱を選ぼうとする者もいたが、
『――逃がさないわよ』
 先ほどまで前方にいた猟兵が、推力に任せて一気に回り込んで来た。
 聞きなれた射撃音と破砕音が繰り返し響いた。
「おのれ……!」
 もはや残った幽衛は、数えるほどだった。


「……ふう」
 アイオライトは一息をつき、己の戦果を確認した。
「…………」
 周囲に立ちすくむキャバリアは、全て幽衛だった。駆動系だけを損傷し、直立や歩行は可能だろうが、先ほどのような全力機動は無理だろう。
 どうやら、もう正気に戻ったようね……。
『……!? ……!?』
 コックピットを開き、混乱した様子で互いに視線を交わすパイロット達の様子から、もう危険が無いことを知る。
 否、
「ねえ、死にたくなかったら、早くどこかに避難しなさい」
 ここは戦場なのだ。危険は未だ残っている。なので彼らにそう忠告しながら、ブルーテイルに懸架していた物資を近くの一気に放り投げた。
『……?』
 慌てた様子だが、無事に受け取れたことでやはり彼らの動作に不備はないことを知る。
「中に、食料とキャバリアの燃料が入ってるから。それを持って早く行きなさい」
『――感謝を』
 こちらの言葉に感謝し、幽衛達は戦場から退避していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『シャドウブレイダー弐型』

POW   :    幻影格闘機動
装備中のアイテム「【EPミラージュユニット】【BXプラズマ剣】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD   :    朧纏い
【無音高速移動を可能とするEP遮音ユニット】【機体を低視認化させる光学迷彩システム】【あらゆるセンサー探知を無効化する特殊装甲】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    鉄冠変幻
自身の【キャバリア(武器も含むかは任意で選択) 】を【戦場内の指定した敵キャバリアのいずれか】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 戦場である雪原は、一旦の落ち着きを見せた。攻め込んできた幽衛隊の全機を押し止めることに成功したからだ。
 戦闘の余波によって、大地のあちこちで雪が巻き上がり、周囲は判然としないが、確かに戦闘の音は無くなっていた。
 しかし、
「――――」
 これで終わりだと、そんなことは誰も考えていなかった


 “それ”は、その瞬間まで多くの者に知覚されていなかった。
「……?」
 霧のように広がった雪煙の中。
「今、雪の向こうに何か――」
 そこを突き抜けていく存在を、猟兵の中の誰かが視認するまでは。
 否、正確には“それ”を視たわけでも、認めたわけでもなかった。
 何故なら、
「……!?」
 その存在が、殆ど透明だったからだ。
 距離はまだ猟兵達より遠く、そして透明故見ることも敵わないが、しかし確かにそこにいる。
 押し退けられ、渦巻く雪煙の様子から、その存在は大質量で高速。十中八九、第二波のキャバリアだということは確かだった。
 しかしこれはどういうことだと、そう思っていた時、通信が来た。
『猟兵の皆様!』
 背後の観測所だ。慌てた響きを持った声は、声を続けていく。
『僅かな反応ですが、それゆえ敵を判別出来ました! 名はシャドウブレイダー弐型。
 偵察や追跡、狙撃や急襲等、隠密機動作戦に投入される特殊機です!』
「……!」
 雪煙の向こうから、殺気がどんどんと近づいてきた。


 シャドウブレイダー二型は、白い霧の中を機動していた。
 思う。自分たちの機体は、様々なステルス機能を搭載していると。ユーべルコードも使って全力を出せば、自分達を捉えるのは今以上に困難だ。
 主装備は手に持つプラズマ剣だが、出力の調整次第で刀身の形状は自在に変化させられる。
 つまり、自分達は様々な状況に対応できるということだ。
 油断は無い。
 そこで、後方に控える指導者からの声を聴いた。
『――影が走ること光の如し』
 続く言葉を、自分達は知っている。
「無として来り、熱を以て刺す……!」
 そうだ。光だ。
 音も無く、間も無く接近し、高熱で対象を刺し貫く。
 そうだ。
 突如として現れた猟兵達といえど、自分達に油断は無い
 しかし、焦りは有った。
 第一波である幽衛隊、彼らの安否の全容が未だ解らないからだ。彼の機体に乗っていたのは皆、自分達にとって仲間以上の存在だ。
 しかし今確かなのは、幽衛隊の殆どが無力化されたということだけだった。
「っ……!」
 機体首部の炎状スラスターが着火した。
 マフラーのようなそれを開放すれば隠密が薄れる危険はあったので、指導者からは使用を控える指令が出ていたが、一人がそうすれば誰もが最初の者に続いた。
 さらなる速度を得た視界の中、吠える。
「仇を……!」
 果たしに行くのだと。
アイオライト・セプテンバー
※アドリブ歓迎

――速く、そして隠れる敵
シャドウブレイダー……確か、あの〝マフラー付き〟か。厄介なのが現れたわね
ましてこの雪霧の中で……

この相手に、自機のセンサーは役に立たない
だがそこにキャバリアが存在するなら、そこには戦場のセオリーも、乗り手の意思もある
先に打たれた仲間のことを想うなら猶更ね

武装はプラズマブレード【BX-Aスラッシュ】を選択
攻撃時にコックピットを避ける方針は変わらない

自機キャバリアの、センサーと連動した操縦補助機能を全てカット
ユーベルコード【ライトニング・マニューバ】

この目と耳と――数々の戦場で生き抜いてきた経験則
私自身の兵士としての感覚と生き様をかけて、攻撃を避け、的を捉える




 アイオライトは、迫り来る敵に覚えがあった。
 速く、そして隠れる敵……。
 そして観測所から聞いた名はシャドウブレイダー。間違いなかった。過去に己が戦ったことがあるオブリビオンマシンだ。
「“マフラー付き”……」
 厄介なのが現れたわね、というのが正直な感想だ。ましてこの雪霧の中だ。隠密を得意とするシャドウブレイダーにとって有利に働く。
 なので既にブルーテイルの各センサーは切っていた。もはや相手に有効ではないからだ。
「――――」
 ライフルの装備も解除した。代わりにと装備したのはプラズマブレード、“スラッシュ”だ。
 伸びた光刃に雪が焼かれ、染み入るような音が周囲に響いていく。
 思う。周囲のどこかに敵が存在するなら、見えずともそこには戦場のセオリーと、そして乗り手の意志があると。
「――!」
 事実、雪の向こうからの剣呑な気配が膨らむのが解った。明らかにこちらに向けられたものは、先ほどまでとは比べ物にならない。
「自分達の仲間のことを想うなら猶更、ね」
『……!』
 来る。


 戦闘の始まりは、両者にとって一瞬の連続だった。
 まずブルーテイルが停止した。
「――――」
 ほんの僅かな間だが、単に動きを止めたのではなく、まるで糸が切れた人形のように動作を停止したのだ。
 一瞬といえど戦闘中においては明確な隙であり、それを突けぬシャドウブレイダー達ではなかった。
 彼らからすれば、機体を雪煙の中から飛び出させる必要もない。今はまだ柄だけのプラズマ剣から刃を伸長し、ブルーテイルの元へ走らせるだけだ。
 そしてその通りになった。
 瞬く間に光剣が突き込まれた。
 激音が、鳴り響いた。
『……!?』
 だが、その音はブルーテイルの装甲を砕く音では無かった。波が飛沫くような快音は様々な方向から突き込まれたプラズマ剣同士が衝突し、干渉しあった結果だった。
 膨れて弾けた光が、閃光となって周囲を照らす。しかし光の届く範囲にブルーテイルはもういなかった。
『どこだ……!?』
 シャドウブレイダー達は周囲を観測し、そしてブルーテイルを発見したが、それはブルーテイルの軌跡だけだった。
『!?』
 機体の残像や、プラズマブレードの残光。それしか捕らえられなかったのだ。


 アイオライトはブルーテイルと共に戦場を駆けた。
 武装はスラッシュのみ。敵は未だ雪闇の中に潜んでいるが、
「――!」
 関係無かった。最初にセンサーと連動している操縦補助機能を全てカットした。この相手に限っては、視覚素子が敵を視認することも、聴覚素子が敵の音を聞くことも無いからだ。
 頼れるのは機体の感覚ではなく、己の経験と、
「技量……!」
 敵の残す僅かな痕跡や気配を察知し、そこから相手の思考を読み取り対処していくのだ。
 シャドウブレイダー達が踏んだ雪原、ぶつかり回り込んでいく風の唸り、そして炎状スラスターの煌めきだ。自分の周囲に錯綜している痕跡を、長年の経験から読み取っていく。
 それは簡単な事ではなかったが、数々の戦場を生き抜いてきた自分の生き様を賭ける価値はあった。
「そこよ……!」
 己の目が影を捉えれば、構わずそこを突いた。
 己の耳が波を察すれば、疑わずそれを躱した。
 ただ全ての直感に従い、ただ機体を操作する。
『――!』
 ユーべルコード、“ライトニング・マニューバ”。積み重ねられた経験と技量によってブルーテイルは戦場を支配し、その結果は一目瞭然だった。
「……!」
 力を振るった数だけ、隠れていたシャドウブレイダーの姿が現れていくからだ。切り落としたことで隠密システムから切断された四肢が露わとなり、駆動系を破壊すれば機体そのものが露わとなる。
 鋼の破片が散らばる中、ブルーテイルと己は止まらなかった。
「おぉ……!!」
 己の全てをかけて、戦い続けていったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

レン・ランフォード
蓮:失う怒りや恨みを戦術に組み込むなんて酷い事を考えますね
れ:まぁ…救助してるから無益な感情だけどね…
蓮:ええ、早く目を覚まさせてあげましょう

各班、発煙弾を投擲しながら合流、密集陣形に結界術も足して防御態勢に
更にジャミングで機械と肉眼両方を目潰しし時間稼ぎ

その間に救助した方々に通信を
各々の操縦席から相手に説得してもらいましょう
胴体毎運んだかいがあるというものです
壊れてたら此方のを御貸ししますが

更に説得の後押しのためUCを使用
創造するは拡声器型サウンドウェポン
全てのオブリビオンが持つ世界を破滅させようとする意思
音波による範囲攻撃で彼らに纏わりつくそれのみを破壊します

さあ、目を覚ましなさい!


鞍馬・景正
ふむ、まるで陽炎――。
ですが殺気だけでも感じ取れるなら、やり様はあります。


大蛇麁に【騎乗】したまま、【第六感】で接近を察知。
気配が近付けば、先鋒の兵らが生存している事を伝えましょう。

信じぬなら護送中に聞き出した彼らの名、縁者への伝言、そして避難させた方角を教えます。

矛を収めるなら、彼らの元まで案内いたす。
しかしこのまま国境を侵せば、取り残された彼らがどうなるか、考えられよ。

そう説得の合間も不意打ちには警戒。
特に、衰える様子の無い戦意には即応の構えを。

仕掛けられれば直感に従うまま回避、後の先の【天暁不露】にて操縦席を避け、不殺の上で無力化を狙います。

生憎、肉眼のみに頼る稽古はしておりませぬ故。




「……っ」
 蓮は気配の圧を感じていた。雪煙の向こうから迫る殺気は尋常では無かった。
「……失う怒りや恨みを戦術に組み込むなんて、酷い事を考えますね」
 戦闘において喪失があるのは当然の事なのかもしれないし、喪失を踏まえた上で戦術を組み込むこともあるだろう。だがそこから生まれる感情すらも積極的に利用するのは、受け入れ難い思いがあった。
 ――まぁ……、きゅうじょしてるからむえきなかんじょうだけどね……。
 ええ、ともう一人の自分に思考で返事をし、
「早く目を覚まさせてあげましょう ――各班」
 己は式鬼達へ指令を発した。
「敵が来ます。私の周囲に密集陣形を組んで迎え撃ちます。全ての戦闘班と運搬班は急ぎ一個の班となり、こちらへ合流を。妨害班、彼らの合流支援の為に発煙弾を」
『――!』
 式鬼達の発煙弾が加わった雪原は、白の色が濃くなっていった。
 しかしその中に、新たな色が朧気に見えた。
「! 気を付けてください、敵はそこら中にいます! 互いに援護しながら、ジャミングも忘れず!」
『……!』
 シャドウブレイダー隊だ。炎状マフラーや光剣の迸りは、合流してくる式鬼隊を狙う動きだった。
 自分が召喚した式鬼は九十一、キャバリアも同数であり、その内の後方にいる妨害班他を除けば、前線に残っているのは半数近くとなる。
「無手の戦闘班と運搬担当を中央に、護衛担当を外側に配置してください!」
 十六機の護衛担当が二倍の数を“護送”する形で、周囲に弾幕を張りながら急ぎ後退していく。同時に放たれたジャミングも相まって敵からの攻撃は薄いようだが、何しろこちらの数が多い。
 しかし合流は、予想していたより速い時間で果たされた。
『お行きなさい、名も知らぬ式鬼達よ』
 前線に、一人の猟兵もいたからだ。


 景正は一人、前線に残っていた。
 幽衛隊の護送から戻った矢先に第二波が襲来し、戦闘が再開したのだ。
 そこで式鬼達と出会った。名も知らぬし、キャバリアの中にいるので姿も見えないが、どうやら自分達の主の元へ戻って陣を張る様子だった。
 そして、撤退するそれらへ追い縋るように“何か”がいるのが解った。姿が見えぬそれは、シャドウブレイダーという敵だった。
 なので助太刀した。
 シャドウブレイダーが手に持つ剣は通常、柄だけだ。刃を振るう際にだけ、光が出現する。それは一瞬の間だが、その瞬間を狙って、光剣だけを弾き飛ばしたのだ。
『……!?』
 そうすると、周囲の雪霧の中で、気配が一気に変わった。
「――ふむ」
 己はそれを感じながら、敵はまるで陽炎のようだと、そう思っていた。
 雪霧に包まれた周囲、姿は見えぬが、確かに揺らぐような“圧”を感じる。また、速度を得るための火炎や武装である光剣が時折に生まれるので、よく目を凝らせば実際の高熱として陽炎も見える。
 しかし次の瞬間には、
「――――」
 消えた。
 ああ、と思う。陽炎だと。大気に染み込むように、音すらも無く消える。
「ですが、殺気だけでも感じれるならやり様はあります。――さあ、お行きなさい。式鬼達」
『――!』
 こちらに一礼した式鬼達が、後退していく。
 敵の数は多く、それこそ正確な数なぞ把握できない程だ。陣に戻っても攻撃は続くだろうが、陣自体はもう近い。ここを切り抜ければ辿り着くだろう。
 式鬼達を追おうとするシャドウブレイダーもいたが、刀の切っ先を向けるだけで、差し止める。
『……!』
 見えぬはずなのに正確に首を指し示した刃に、相手から動揺した気配が伝わってきた。
「聞け」
 告げる。何よりも重要なことを。
「先の戦い、幽衛隊の者達は生きている」


「生きて……!?」
 自分達の仲間である幽衛隊が、生きている。シャドウブレイダー隊は猟兵からの言葉に、驚愕を隠せなかった。
 しかし中には、
「ハッ……。ほざけ。あの数の幽衛隊を生かした? 誰が信じられるか!」
 激情を刺激され、突撃する者もいた。隠密したまま、一瞬にして相手へ距離を詰めていく。
 柄のみだったプラズマ剣から光刃が生まれ、猟兵に突き込まれようとした。
 だが、
『――――』
 相手はまるでそれが見えているように回避。流れるような身捌きで刀を大上段に構えると、
『――散れ、天暁の前の露が如く』
「!?」
 突撃したシャドウブレイダーが、肩から断たれた。プラズマ剣を持った右腕が宙へ吹き飛び、隠密システムから切断。白日の下に晒される。
「クッ……!」
 後退する相手を一瞥すると、猟兵は刀を構え直した。
『こちらの言葉が信じられず、剣を疑うのも良し。しかしそちらの攻撃を封じたのはこれで二度目。生憎、こちらは肉眼のみに頼る稽古はしておらぬ故。
 ……そして私の言葉が信じれぬというのなら、彼らの言葉を伝えよう』
 それは、
『――レイからウージンへ、新婚旅行はやっぱりL.S.にしよう』
「!?」
 間違いなく自分達の仲間の名と、彼らからの伝言だった。


『――カイリンからハオへ、母さんのキャバリアはどう?』
 蓮は猟兵の声を聞いた。一応、既知ではある。スペースシップワールドの依頼で見かけたことがある。その彼の声を聞きながら、戻ってきた全ての式鬼へ指示を出していった。
「陣形を組むのと並行で結界術も足し、防御態勢を強固にしてください!」
 敵が、未だにこちらへ攻め続けているからだ。
『どういうことだ……!?』
 混乱と驚愕のまま、光剣が陣へ振るわれていく。だが式鬼達が印を刻み、言葉を紡ぐ方が早かった。
「――!」
 密集陣形を包むように、結界が生じたのだ。
『な……!?』
 突如生まれた障壁に光剣が衝突。飛沫くようにプラズマが散らされ、周囲は激しく照らされた。だが刃が、それより奥へ届くことは無かった。
「足を狙って、応射!」
『……!』
 その隙を逃さず、射撃武装を持った式鬼が彼らの脚部を狙って、結界の中から射撃した。
「敵はプラズマ剣の出力を増加させることも可能です! 予兆を逃さず、こちらも術の出力をいつでも加圧できるようにして下さい!」
 指示を出し続けるのと同時に、己の手は無線通信のチャンネル操作をしていた。
 回線を開く。
「聞こえますか? 力を貸してください……!」


『……!?』
 シャドウブレイダー隊は困惑していた。今、自分達は攻勢に打って出ている。猟兵が結界を張り、雪原の一角に陣を敷いたからだ。
 その様子は、さながら攻城戦のようだった。
 聳え立つ障壁は厚く、高い。内部からは銃口が向けられており、こちらのプラズマ剣で破るのは容易ではない。
 しかしユーべルコードを使えば……。
 “幻影格闘機動”。それを発動すれば、プラズマ剣の出力が三倍となる。効果と威力、射程。全てが三倍化するのだ。一転に集中すれば、あの障壁を破れる可能性が生まれるかもしれない。
 しかし、それは出来なかった。
『…………』
 “城”の正面とも言える場所に、武者が一人、立っていたからだ。
 その武者が脅威なのは間違いなかったが、しかし自分達がユーべルコードを放てないのはそれが理由ではなかった。
 先ほどから武者は、刃ではなく言葉をこちらへ伝えてきていた。
『――シャオピンからクウォンへ、コウビンへの誕生日プレゼントは自転車にしてあげよう』
 彼からのその言葉が、自分達を封じていた。
『……彼らは今、ここを離れ南西の方角へ。安全な場所まで私が同行し、責任をもって護送した次第。矛を収めるならば、彼らの元まで案内いたす』
 しかし、
『このまま国境を侵せば、取り残された彼らがどうなるか、考えられよ』
「っ……!」
 自分達の仲間は生きていると、武者は言う。彼らからの言葉と、避難場所も伝えてきた。そしてこの“城”の後ろへ辿り着き、国境を侵せばどうなるか、とも。
 どういうことだと、どうするべきなのかと、誰もが思った。
 その最中だった。
『――おい、聞こえるか!?』
 声が、聞こえてきた。
 自軍の、それも隠密部隊専用の秘密チャンネルを知っているのはほとんどいない。
 幽衛隊の声だった。


 蓮は幽衛隊達への通信に成功した。
「幽衛隊の皆さん、皆さんから彼らへ言葉を伝えてあげて下さい。自分達は生きているのだと」
 隊の多くは、四肢を破壊されただけだ。胴体部や動力部は生きており、通信設備は生きている。
 胴体だけ運んだ甲斐はありましたね……。
 壊れていた場合は式鬼を向かわせ、キャバリアを貸そうと思ったが、全機良好のようだった。
 皆、自分の大切な相手へ言葉を送っている。
『俺達は無事だ! だから――』
 だが、聞こえてきたのは彼らの声だけでは無かった。
『――猟兵と同盟の攪乱である。耳を貸すな』
『な……、将軍!?』
 彼らの後方、彼らの指導者であり、この事件の首謀者でもある人物からだった。


 シャドウブレイダー隊は困惑していた。
 もう自分達の回線は無茶苦茶で、戦闘どころではなかった。
『――俺達を信じろ! 奴に耳を貸すな!』
『――私を信じるのだ。奴らに耳を貸すな』
 愛する者と、指導者の声が同時に響くからだ。
 右を聞けば心は右に傾き、左を聞けば心が左に傾くのが解った。
『侵攻作戦なんてどうかしていた! 洗脳されていたんだ、俺達は!』
『正しき道に障害は多い。屈せぬことこそが第一歩である。さあ――』
 と、次の瞬間だった。
『――――!!』
 戦場に、大きなハウリング音が響いた。
 耳をつんざくような甲高い音は、“城”の内部からだった。
『……シャドウブレイダー隊の皆さん……』
 労鎖同盟のジャイアントキャバリア、その内部にいる猟兵の少女からだった。
『どちらを信じるか、あなた達はもう解っているはずです!』
 キャバリアの手には剣でも砲でもなく、巨大な拡声器が握られていた。ホーンは間違いなく自分達へ向けられており、
『さあ、目を覚ましなさい……!!』
 そこから増幅された声が、全身を打撃するように響いた。


 一連のやり取りを見ていた観測所の結論は、拡声器からの少女の声が響いた後、戦場は変わらなかったというだけだ。彼女の声は、何ら力を持っていなかった。
 舞う雪の一粒すらも動かせず、戦場に響いたが音として雪に染み込むこともなかった。
 それはただ、
『――投降する』
 敵が持つ邪悪な意思のみを、攻撃したかのようだった。
 その場にいたシャドウブレイダーの全てが、雪原にプラズマ剣を、そして隠密装備すらも放棄した。
『……彼らの元まで案内しましょう。さあ』
 戦場の一角で、確かに戦闘が終了した瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルヴィン・シュミット
感じる、感じるぜ…
センサーがどうとかじゃなくて、体の芯にピリピリと伝わってくる。
『何か』がそこら中を走り回ってる、ってなぁ!

目に見えないならそれ以外に頼る他に道はない!
【野生の勘】と【第六感】で敵の動きを感じる事に集中する!
相手の先制を許すことにはなるが、タダで帰してやるつもりもねえ!
UCで右腕をドラゴンの頭に変えて相手の動きを待ち、一瞬でも動きが見えれば【見切り】と【カウンター】で喰らいつく!
そしてそのまま右腕で敵機を拘束して盾の代わりに、左腕は【RXシールドアーム】でカバーする!
全てが上手く噛み合えば奴らの動きを抑えられそうだ!

『こういう時は、自分のカンを信じるしかないのさ!』




 ドラグリッターの中で、エルヴィンは歯を向いていた。
 感じる、感じるぜ……。
 戦場だ。敵の気配があるのは当然だが、“これ”は一際強かった。
 センサーがどうとかじゃなくて、体の芯にピリピリと伝わってくる……!
「“何か”がそこら中を走り回ってる、ってなぁ!」
『――!』
 自分の周囲は雪煙に包まれているが、そこを駆け回る存在がいた。名はシャドウブレイダー弐型といい、隠密に特化している機体だ。
 事実、ドラグリッターのセンサー類は異常を検知していない。しかし目に見えなくとも、敵は確かにそこにいるのだ。
 ならばどうするか。
「それ以外に頼る他に道はない……!」
 シールドアームを掲げながら、周囲を注意深く観察する。この雪煙の中で敵の動きを見つけるのは容易ではない。
「だけど、そっちから来るんだろ?」
 シールドは左腕であり、空いた右腕には武器を持っていなかった。しかし、
「――――」
 右腕は既に、強力な武装へと変質していた。肩から先が、ドラゴンの頭部になっていたのだ。
 “DRAGON BITE”。己の身体部位一つをドラゴンの頭部へと変形させるユーべルコードは、キャバリアに登場した状態でも正しく発動されていた。
「――!」
 竜の軋むような唸り声が、雪に染み込んでいった。
 シールドと竜。その両方で周囲に睨みを利かせ、敵の出方を待ち続ける。
「タダで帰してやるつもりはねえぜ……!」
 さあ、と己は両腕の武器を構えながら、思う。
 こういう時は、自分のカンを信じるしかないのさ……!
 敵に先制を許すということは、言うなれば出たとこ勝負だ。後手に回り、対応力が試される。
 だが同時に、こうも思っていた。
 このまま全てが上手く噛み合えば……。
 奴らの動きを抑えられる、と。


 おのれ……。
 シャドウブレイダー弐型隊は、全員が心中を共にしていた。
 それは仇を前にした興奮や恨みという感情もあったが、仇、猟兵との戦闘方法についてもだ。
「…………」
 全機が、攻めあぐねているのだ。
 響く雪煙の向こうに、猟兵の機体がいる。シャドウブレイダーに搭載された熱源探知やその他様々なセンサー類が、その詳細を示していた。
 ペイントは赤。頭部の角型の飾りが特徴的な機体は、左腕に大型のシールドを構え、右腕は信じられないことだが本物の竜となっているようだった。
 そして気配については、センサーに頼らずとも分かった。
『……!』
 まさしく竜そのものな気迫が、雪闇を突き破って押し寄せてきているからだ。地を揺らすような唸り声だった。
 そんな右腕の竜もそうだが、左腕の盾も同じく脅威だ。大型で分厚い盾を操作するのに不慣れが無いということは、ただ守るだけに用いるのではないということだ。
 迂闊に踏み込めば、果たしてどうなるか。
 それが解らない自分達ではなかったが、
「虎穴に入らずんば、か……」
 自分達は龍の縁に連なる者達なのだ。
 虎が何するものぞ。
「いわんや竜なぞ……!」
 遮音ユニット、光学迷彩システム、特殊装甲。全て万全だった。
 突撃する。


「……!」
 プラズマ剣による全方位からの突撃。
 その標的になったエルヴィンは、しかし臆さなかった。
「上等……!」
 吼え声を挙げれば、右腕の竜も文字通り叫びをもって“呼応”した。
 次の瞬間。
「――!」
 シールドを構え、前方へ突っ込んで行った。
 プラズマ剣ごと押しつぶすように、盾を突き込んでいく。シールドチャージだ。
 盾面と衝突したプラズマ剣が光となって弾け散っていくのが、シールドの後ろ側から見えた。
 しかしそれで終わりではない。
「おぉ……!!」
 そのまま勢いを止めず、剣どころか、敵の体ごと崩すようにさらに押し込んでいったのだ。この突進で、前方とそして両サイドの光剣を一度に回避できた。
 そしてすぐさま、手近の一機に右腕の竜で食らいつく。
『な……!?』
「噛み砕かれると、そんな風に思ってたか!?」
 甘えな、と。竜の顎に捕らわれたシャドウブレイダーを、バックハンドで後方へ振り抜く。
 すると間を置かず、背後で轟音が炸裂した。
『! クッ……!』
 突進したドラグリッターに追いつきかけた後方の敵が、仲間の機体が寸前で振り回されてきたことによって、思わずプラズマ剣を停止。
 しかし突撃の勢い自体はは止まらず、もつれるように衝突したからだ。
 管楽器をぶちまけたような音が鳴る中、
「どうした! 終わりか!?」
 シャドウブレイダーを抜き出し、再度盾として構えた。未だ、原型は保っている。
「さあ、かかってこいよ……!」


 おのれ……!
 シャドウブレイダー弐型隊は、全員が心中を共にしていた。
 敵である猟兵は今、自分達の仲間の一人を盾にしている。その機体は先ほど一部と衝突したが、まだ無事だ。
 そして無事だからこそ、まだ盾として使っているのだ。
 するとそこから、通信が来た。
『俺に気にせず、やれ……!』
 隠密任務を主とする自分達にとって、犠牲は珍しいものでは無い。敵に捕らわれた際の覚悟など、とうに出来ている。
 シャドウブレイダー弐型隊は、全員が“心中”を共にしていた。
 だが、
「……!」
 あの赤の機体を追っていた者達が、プラズマ剣の出力を思わず止めてしまった理由も、誰もが解っていた。
 既に自分達は、幽衛隊を失くしているのだ。
 これ以上の損失を前に、誰もが揺らいだ。
 揺らいでしまった。
「くっ……」
 誰もが動けなかった。そしてやがて、
「……降伏する」
 誰ともなく、武装を手放した。
 戦闘を放棄することを、決意したのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

斑星・夜
キャバリア:灰風号搭乗

ステルス機能ね、なるほどなるほど
あちらさんは、雪原との相性はすこぶる良さそうだねぇ

それじゃ、ユーベルコード『小さなお星さま』を使おうか
味方を巻き込まなさそうなら攻撃、巻き込みそうなら治癒を選択
どちらにせよ使用時間はごく僅かで良い。目的は位置の特定だから
味方以外の星の光が集まった場所が敵機の位置だ

位置を特定したら即座にRXSシルバーワイヤーを射出
捕縛、もしくは武器の落としを狙って巻き付ける

そのまま距離を詰めて(※悪路滑走)
『ぺネトレーター』で足を狙って零距離射撃
動きは速いなら動きを止めようか!

こちらもなるべくコックピットは狙わずに戦うよ
敵機の無効化が最優先!




「――♪」
 夜は、灰風号の中で歌を口ずさんでいた。
 ただでさえ周囲は戦場であり、歌など似つかわしくない場ではあったが、
「光る――♪」
 構わず、歌った。童謡のような呑気なメロディを口ずさみ続け、思う
 ステルス機能、ね……。なるほどなるほど……。
 己の周囲に潜む敵勢だ。姿が見えない彼らは、その機能を駆使して潜んでいるようだった。
 先の戦闘で雪が舞い上がって判然としないこの戦場において、そんな彼らはすこぶる相性が良いと、素直にそう思う。
 だが、
「星よ――♪」
 それも、先ほどまでだった。
 今、自分の周囲は、戦場は、無数の星々で照らされていたからだ。


 何だ……!?
 シャドウブレイダー隊は驚愕していた。
 目の前の、猟兵が乗るキャバリアを自分達が包囲したのが、つい先ほどだ。
 すると、
『――――』
 猟兵が息を吸い込み、何か言葉を発する気配が通信から伝わってきた。
 しかし自分達は意に介さなかった。相手は仇だ。言葉を交わす必要も無く、すぐに撃破し、幽衛隊への手向けとする。
 そうするべきだと思い、そうしようとした。
 だが、次の瞬間に聞こえてきたのは予想だにしない言葉だった。
『――♪』
 違った。正確には、言葉ではなかった。
 音階と旋律を持った言葉を、何と言うか。
「歌声……!?」
 それが、いきなり聞こえてきたのだ。
 刹那。
「な……!?」
 シャドウブレイダー隊の全機は、一斉に攻撃を受けた。


 夜は歌った。無論、ただの歌ではない。ユーべルコードだ。
 “小さなお星様《グリュック・シュトラール》”……。
 歌を小さく口ずさんでいる間、無数の星形の光が周囲に展開されるというものだ。このユーべルコードの対象はごく単純で、そして効果もごく単純だった。
 それは、
「――味方には治癒を、そして敵にはダメージを、ってね」
 治癒は白の星々で、ダメージは金の星々だ。
『……!? ……!?』
 雪闇という夜空のあちこちで、金の星々が瞬いていた。
 煙立つ向こう側、何も無いように見える場所に、木々のように金色の光が立ち並んでいた。
「おー、いるねいるね。いっぱいだ」
 その全てが敵、シャドウブレイダー弐型だった。歌を口ずさむのを止めた今、ユーべルコードの発動は終了している。なので星の光は徐々に失われ、敵はまた闇の中に消えようとしていた。
 が、彼らの位置はもう己の頭の中に入っていた。
「……!」
 なのでそこを狙った。
 即座の射撃として放ったのは、灰風号の武装の一つであるワイヤーガンだ。
 星の残光が残る箇所に目がけて、放たれたシルバーワイヤーが突き抜けるように走っていった。
 そこは何も無いように見える空間だったが、しかしワイヤーはそこで衝突音を挙げた。
 そして、擦れ走るような軽い音もだ。
「――――」
 見えないが、手元のワイヤーガンに返ってくる反力で、ワイヤーが敵の機体を捕らえたのだと解った。
 巻き付いている。なので手元の操作でワイヤーを一気に引き絞ると、
『……っ!』
 巻き取られまいと、敵が抵抗するように大地を踏み締めた。ならば、そんな相手の動きを利用するまでだった。
「――GO!」
 相手を支えにし、灰風号自らが行ったのだ。雪原を駆け抜け、一気に敵へと距離を詰めていく。踏み固められて荒れた地形であっても、愛機の足は止まらなかった。
「貰った……!」
 大地へ飛び込むように、滑り込むようにしながら、ワイヤーガンとは逆手に持っていた拳銃を虚空へ向けた。
 何も見えない。だがそこにあるのは、
「――足!」
 ペネトレーター。大型の拳銃から放たれた大口径の弾丸は、その威力を存分に発揮した。
『……!』
 連射で叩き込まれた弾丸が脚部を砕き、シャドウブレイダーを跪かせたのだ。
 よし……!
 手応えを感じ、すぐに体勢を立て直していく。
「――と、甘いよ?」
『な……!?』
 そのタイミングを狙って敵が迫って来ていたので、プラズマ剣をワイヤーガンで封じた。
 抜き打ち気味に放ったワイヤーを剣の柄に巻き付け、自分の方へ引き寄せたのだ。
「――!」
 灰風号の足裏が柄を踏み砕き、銃声が二発。さらに一機のシャドウブレイダーが膝をついた。
「動きが速いなら、その動きを止めようか!」
『くっ……!』
 ワイヤーガンとペネトレーター、両方の射撃音が戦場に響き続けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『百腕の機神』メカトンケイル』

POW   :    ハンドレッドデモリッション
【様々な武器を持った無数の腕(最大百本)】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ターゲッティング オブ デス
攻撃が命中した対象に【ロックオン状態】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【様々な武器を持った無数の腕】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    フローティングハンド・デストラクション
【浮遊する無数の腕による多彩な攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠夢幻・天魔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 遠くから迫っていた黒波は、墨を散らすだけで、何も流すことが出来なかった。
 白く広がっていた雪原は、荒れ果てることになったが、しかし強固となった。
 誰もの頭上に在った春天は、撒き散らされた雪が天幕となって、蓋をしていた。
「――――」
 天蓋に、剣を突き立てた。


 猟兵の内、何人かは一斉に同じ方向を見た。
「…………」
 雪煙の向こうで、最後の敵が動き出したからだ。姿が見えなかったが、見えるまでそれほど時間はかからなかった。
『――!』
 銀閃が走ったかと思えば、次の瞬間には雪煙が消失したからだ。
 否、煌めいたのは鋼の銀だけではなかった。
 鉄の黒。紫電の黄と紫。火炎の赤。
 様々な色が走ったが、その全てが共通していた。
 鋭利で、速く、全てが刃だった。
 大量の刀剣や槍矛を、たった一機のキャバリアが捌いていたのだ。
『“百腕の機神”……!?』
 観測所から、悲鳴のような声が聞こえた。


『――黒波、墨を散らして未だ雪を汚さず。
 ――雪海、珠を散らされ却って塁壁と成る。
 ――春天、煙を散らして天啓が降り注ぐ』
 歩いてくる。
『――嗚呼』
 そうだ、と。
『――天啓である。国を散らして龍の端を通すべし、と』
 悠然とした歩みのまま、最後のキャバリアが全ての剣を掲げた。
『……剣が散ること華の如し。百として舞い、百を以て覆う』
 畢竟、其処に残らるるは――。
 
エルヴィン・シュミット
親玉…もといデカブツのお出ましか!
随分とデカいし、腕の数も十分…だが、それで俺を倒せるとでも思っているのか?
"コイツ"はそこいらのキャバリアとはワケが違うんだぜ。

UCを発動し【RXシールドアーム】で攻撃を全て受け止めて奴に向かって突き進む!
多少のダメージは覚悟の上だ!無理矢理に押し切って【BXプラズマブレード】で足元から順に【串刺し】と【切断】でバラしてやる!
俺とコイツは器用じゃないんでね、全力で正面からぶつからせてもらうぞ!

『剣が走るは雷が如し!俺の剣は龍さえ断ち切るとここに示す!』




「来るか」
 百腕の機神、メカトンケイルに乗車した将軍は敵の接近を見た。
『――!』
 観測所の向こうから赤のキャバリアが迫って来ていた。
 猟兵だ。


 エルヴィンは行った。最後の戦いだ。ドラグリッターの速度は最初からフルに、雪原を蹴散らしていく。
 随分とデカいし、腕の数も十分……。
 視線はずっと、正面から外していない。
 そこで待ち構える機神は多腕だった。周囲に数多くの腕部パーツが浮遊しており、その威容は通常のキャバリアより巨大な印象を与える。
 だが、
「それで俺を倒せるとでも思っているのか?」
『――剣が散ること華の如し』
 機神を中心として花が開くように全ての腕が全開となり、そして周囲へ一斉に飛び立っていった。
 花弁であれば風に運ばれるのだろうが、加速器を有したあれは違う。
「……!」
 風を切り裂き、飛翔してきた。数は百。全てが凶悪な得物を有した腕を前にして、
「“コイツ”はそこいらのキャバリアとはワケが違うんだぜ。――コード・ガルガンチュア、起動!」
 ドラグリッターは盾を構え、正面からぶち当たっていった。


 戦場に、激音が鳴り響いた。
「……!!」
 力が衝突し、そして弾かれる音だ。
 鋼や鉄、紫電に火炎。全ての武具が相手を砕かんと飛来し、しかしドラグリッターの盾は壊れなかった。
「おぉ……!」
 前方から襲いかかる剣の嵐の中、エルヴィンは吼えた。発動したユーべルコードは幽衛戦と同じく“GARGANTUA”。防御力と装甲強度を増強するものだ。
『回り込め』
「!」
 敵は盾を回避するため、腕を迂回させて攻めてきた。両サイドから飛来してきた腕を防ぐには、どちらかに盾を振らなければならないが、
 多少のダメージは覚悟の上だ……!
 ユーべルコードは盾だけでなくドラグリッター自身も強化している。それにオブリビオンマシンへ接近する必要があるのだ。
「俺とコイツは器用じゃないんでね……!」
 両脇からの襲撃が迫ってきていたが、防御もそこそこにそれを押し切って更なる前進を選択した。
 激音がドラグリッターの装甲を走った。横合いから様々な武具が飛来してくるのだ。それは打撃であり、斬撃であり、刺突であった。機体表面に様々な傷が生まれていく。
「ぐっ……!?」
 受けた衝撃によって、機体がふらつき、歩みが揺らぎそうになるが、
「あ、ぁ……!!」
 敵から目を逸らさなかった。
 直進していく。


 将軍は猟兵の狙いを察した。相手は剣の嵐とも言える空間を無理やりに抜け、こちらに接近して来るつもりなのだと。
『……!』
 そして事実、幾重もの攻撃を浴びながらも敵は歩みを止めていなかった。
「くっ……!」
 腕を引き寄せ、打ち下ろし、振り払うが、そのどれでも敵は止まらなかった。
 そして、嵐の中からキャバリアが飛び出して来た。
『――――』
 見える。赤の機体の表面には至る所に傷があったが、確かにこちらを見据え、盾とは逆腕に構えられた光剣は既に抜刀済みだ。
『剣が走るは雷が如し! 俺の剣は龍さえ断ち切るとここに示す!』
 一閃。
 高出力のプラズマが戦場の冷気と、機神の装甲を切り裂く音が走った。
「おのれ……!」
 損害覚悟の攻撃が通った瞬間だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

斑星・夜
※『灰風号搭乗』

あらま、腕すげーいっぱいあるねぇ
あれだけの腕を一度に操作するなんて、頭がパンクしそうでちょっと考えたくないなー
ま、相手が誰でもぶっ飛ばすだけだから、こちらはシンプルで良いね
よーし、天啓なんて御大層な事言ってる奴をぶっ飛ばそうか!

AEP可変式シールド・アリアンロッドで盾を展開
敵の攻撃を『盾受け』しつつ近づいて『悪路滑走』しつつ敵の懐に潜り込む
近づいたらUCを使用した『シールドバッシュ』で敵機の『体勢を崩す』

そのまま『RXSシルバーワイヤー』で腕を複数まとめて『捕縛』
腕って引き離せるのかな
利用できるなら『怪力』で引っ張って『部位破壊』
そのままワイヤーで腕を振り回して敵にぶつけるよ!




「あらま。腕、すげーいっぱいあるねぇ」
 灰風号の視界が捉えたその光景を、夜は見ていた。
『――――』
 宙に、キャバリアの腕部パーツが浮かんでいるのだ。機神と呼ばれるオブリビオンマシンから分離したそれらは、全て武器を有しており、自立駆動だった。
「……あれだけの腕を一度に操作するなんて、頭がパンクしそうでちょっと考えたくないなー」
 百でナントカ~ってことはアレ百本なのかな……、と敵の言葉を思い出しもするが、
「ま、相手が誰でもぶっ飛ばすだけだから、こちらはシンプルで良いね」
 そうだ。やることは一緒なのだ。と、そう思った時だった。
『――笑止』
 敵の声が聞こえ、次の瞬間には灰風号へ攻撃が来ていた。
「……!」
 正面上空。武器を持った腕部の、振り下ろしの一発だった。
 衝突。
 速度が乗った斜め上からの一発は、灰風号の足下にあった雪を震わせた。
 それは打撃が決して空振らず、機体を通じて大地に届いたという証だった。周囲の大気も衝突の結果として、残響音を響かせている。
 が、
「――よーし、行けるね」
 愛機の内部で、己は己自身と愛機の無事を確認していた。
『――――』
 警戒と驚愕の視線を向けてくるオブリビオンマシンだったが、その答えはすぐに知ることになった。灰風号が顔前に掲げていたからだ。
『――盾、か』
 AEP可変式シールド・アリアンロッド。両腕に装着し、腕を合わせて展開する事で巨大盾となるそれが、振り下ろしの一撃を防いだのだ。
「そ」
 短く答え、しかし言葉は続けた。
「さあ、天啓なんて御大層な事言ってる奴をぶっ飛ばそうか!」
 前進していく。


 戦闘は、一方的だった。
『――!』
 灰風号が進むごとに幾重もの攻撃が迫り来るからだ。
 上空から雨のように降り注ぐこともあれば、正面から波のように襲い来ることもあった。攻撃の方法も斬撃や打撃と様々だ。
 しかし、
「――!」
 夜は怯まなかった。灰風号もだ。近~中距離での盾役に主眼を置いたキャバリアは嵐の中でも前進を続けていく。
『――剣が散ること華の如し』
 アリアンロッドを砕かんと、多種多様の武具がひっきりなしに襲いかかってくる今、盾の向こう側は激戦の一言だ。
 力と力が衝突する重奏が連続している。
「――――」
 そして時には、攻めてくる腕の中には盾と衝突せず、迂回してくることを選択したものもある。
 己は思う。面倒だ、と。
 この盾は一つしかないからねー……。
 アリアンロッドのカバー範囲外からの攻撃に対応する必要があった。しかし盾を振れば正面が空き、正面が空けば重奏を灰風号のその身で受けることになる。
 ならばどうするか。
「――行こうか!」
 アリアンロッドは動かさず、寧ろ激戦の中へ押し込むように機体ごと前進していった。
『……!?』
 雪原という悪路を滑走することで速度を得たのだ。残された腕が勢い余って地面に激突する音が背後に聞こえる。
 こちらを押し止めるため、敵は慌てた動きで腕を正面に集中してくるが、そこには先ほどから変わらずアリアンロッドがある。
 迎撃を防ぎ続け、やがて灰風号は機神の懐に飛び込む。
『っ……!?』
 そして間髪入れず、その胸へ打撃をぶち込んだ。アリアンロッドのシールドバッシュだった。
 幽衛隊相手にも使ったユーべルコード、“グラウ・ブリッツ”。盾の周囲には雷撃が迸っていた。
 腕が届かぬ懐に飛び込み、滑走とユーべルコードの勢いが乗った一撃なのだ。機神は堪らず姿勢を崩し、後退していく。
「――――」
 その隙を逃さなかった。だが狙うのは機神本体ではなかった。
 狙いは、
「腕……!」
 周囲に浮遊していた機神の腕部に目がけて、ワイヤーガンを放ったのだ。固まっていた幾つかをワイヤーで絡めとり、手に持っていた武具ごと捕縛。
「せー……、の!」
『な……!?』
 そして、それを宙で引きずり回した。加速器が付いている腕部パーツは無論、抵抗してきたが、力ずくだ。
「……!」
 ワイヤーガンを握りしめ、灰風号の出力任せに振り回していけば腕は段々と速度を得ていき、今や風を切っている。
「ほら、返すよ!」
『がっ……!』
 その勢いのまま、腕が持つ武具の先端を機神へ叩き込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイオライト・セプテンバー
※アドリブ歓迎

……まさに真打登場というわけか
機体の機動力だけでも、私の技量だけでも、あの無数の刃を躱しきるのは不可能でしょうね

私も犠牲を払う覚悟が必要、ってことか

全リミッターを解除、当機ブルーテイルの真の姿を開放
ユーベルコード【バースト・モード】を発動

機体出力を最大限に上げ、【推力移動】を用いた高速機動で、奴の攻撃とロックオンを振り切り……一瞬の隙を見つけ
腕部ブラストナックル【ハウリングホーク】の一撃で最大威力の【貫通攻撃】を叩き込む


最大出力の加速は、私の肋骨や内臓にダメージを与えるでしょう
でも、そのワンチャンスにかけるしかない

しかし徒手空拳の格闘か……最後の最後、幽衛隊に倣うことになるとはね




 アイオライトは前方を見ていた。
「……まさに真打登場というわけか」
 雪原の先、そこに最後の敵がいる。機神と呼ばれたその相手の最大の特徴は、側に浮遊している“腕の群れ”だ。
『――――』
 数は左右合わせて百。それはまるで雪原の上に立つ壁のようだった。中央の機神を柱として、広がった腕が壁だ。こちらへプレッシャーをかけてくる
 そして、
『――剣が散ること華の如し』
 次の瞬間には壁が崩れ、花と散った。
 来る……!
 全ての腕の、全ての加速器が光が迸った。
 一斉に迫ってくる。散ったひとつひとつが花弁だとするなら、それらはまるでこちらを包むようだった。
 そんな光景を見ながら同時に、取れる選択肢が限られていることも理解していた。
 ブルーテイルの機動力だけでも、己の技量だけでも、あの無数の刃を躱しきるのは不可能だと。
「私も犠牲を払う覚悟が必要、ってことか」
 短く、呟いた。
 それだけだった。
 次の瞬間にはブルーテイルは姿を変えていた。


 機神に乗った将軍が得た結果は、二つだった。
 一つは、猟兵に放った腕の攻撃が空振りに終わったということ。回避されたのだ。
 そしてもう一つは、
「……!?」
 回避した猟兵の姿を見失ったことだ。唯一捉えられるのは、回避の痕跡だけだった。
 思う。これはシャドウブレイダー隊の時と同じだと。あの時も、この青白のキャバリアは攻撃を回避していた。
 だが、あの時とは明確に違った。シャドウブレイダー隊が察知できたのはキャバリアの残像程度だったが、今回はさらに多かった。
 しかしそれは、猟兵が不手際で痕跡を多く残したということではない。
「速い……!」
 単純にシャドウブレイダー隊の時より回避が強烈だったのだ。
 機神の感覚器で察知できたのは、加速器が出力を全開にしている駆動音と、その出力で推進する衝撃音。それらの勢いで噴き上がった大地の雪。
 そして最後に、
「金の、光……?」
 明らかに、猟兵はこの戦闘で最高の速度を得ていた。


 戦闘は、何もかもが高速のやり取りだった。
「……!」
 ブルーテイルの中で、アイオライトはそれを見ていた。
 空中に浮き上がった雪も、そこを突き抜けこちらを倒さんと迫る機神の腕も、視界に入ったかと思えば、次の瞬間には視界から消えている。
 ブルーテイルが全てを背後へ流し、置き去ったのだ。。
 ユーべルコード、“バースト・モード”。ブルーテイルのリミッターを解除し、超高速戦闘形態となった今、操縦室の内部は警告の表示がひっきりなしだった。
 制限を超過した機動は機体の各部に負荷を与え、
「くっ……!」
 それは搭乗者である自分も同じだった。通常より圧倒的な速度域において、敵の攻撃を振り切ったとしても、一瞬でも気を抜けば次の瞬間には機体がクラッシュする。
「……!」
 だが構わなかった。
 敵の攻撃はユーべルコードだ。一発でも貰えばブルーテイルをロックオンし、攻撃を回避することは今以上に難しくなるだろう。
 クラッシュは出来ず、しかし減速も論外。となれば速度を緩めず、全て回避していくしかなかった。
 だからそうした。
 さらに加速する。
「あぁ……!!」
 ブルーテイルのハッチは最初から全開であり、熱は陽炎として排している。今以上の速度を出すために選択したのは単純、抵抗を減らすことだった。
「――――」
 ライフルもプラズマソードも何も装備していない。ただ手にあるのは拳のみだった。
 ブラストナックル、“ハウリングホーク”。それだけを携えて、加速していく。
 警告表示で真っ赤になったコンソールは、己の顔を照らす。現在の速度は幾らだろうか。速度計なんてもうずっと見ていなかった。赤く染まった視界の中でただ見えるのは雪と、腕と、そして、
『……!!』
 敵だ。
 正面に一瞬、姿が見えれば、
「――――」
 次の瞬間には目の前だ。
 頭部。
 キャバリアの視覚素子同士で“目が合った”。
「あ、あぁあ……!!」
 そこへ、速度を乗せた拳を突き込んだ。
 強打だった。
『な――』
 将軍は、何かを言ったのかそれとも叫んだのか。しかし何も聞くことはなかった。機神の頭部を打撃し、突き抜けた感触だけは覚えている。
「ぁ……!」
 聞こえなかったのは、己も愛機も無事では済まなかったからだ。ブルーテイルは打撃の勢いで吹っ飛び、雪原の上をもんどり打つように転がっていく。
「ぐっ……! ……あぁ」
 何とか立ち上がろうと機体に指示を与えたが、身体中に激痛が走った。明らかに骨や内蔵にダメージを受けている。
「……!」
 咳き込んだら、意識が飛びそうになるほどだった。霞む視界の中、見えるのは、
「ハウリングホーク……」
 ブルーテイルの拳だった。それが視界に映っていた。
「……最後の最後、幽衛隊に倣うことになるとはね」
 痛みはあったが、ハ、と息を吐いて笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
れ:沢山の手…サイキャバかな…?
蓮:そして今回の元凶ですね
行きましょう私達。アレを制圧しこの事件を終わらせます!

百に対せば此方は92と少ないですが
百の花弁があろうと茎は一本、所詮は一輪
数の力で圧倒しましょう

射撃班が敵本体に向かって攻撃、敵を足止めします
撃ち返して来たら防御班が結界術で防ぎます

今回も射撃は牽制、本命は左右後ろ5方向からの接近し
迎撃してくる腕を全て部位破壊し無力化する事です

此方も前にでる前衛を結界術で援護する形
それでも攻撃を喰らったらすぐに後退
それを追って来る追加攻撃に後ろに控えていた別機がカウンター
そのまま交代し敵を休ませず攻め続けます

後ろに向けば弾丸で抉ります




 ――たくさんのて……。サイキャバかな?
 蓮はもう一人の自分の言葉を脳内で聞いていた。言葉の対象は前方にいる敵だ。
『――――』
 れんの言う通り、敵は、オブリビオンマシンの種別としてそれが適しているように感じた。
「そして、今回の元凶ですね……」
 ならばやることは一つだけだった。貸与されたジャイアントキャバリア九十二機の内の一つとして、自分の中隊に指示を出す。
「行きましょう私達。アレを制圧しこの事件を終わらせます!」


 戦闘は火力の応酬から始まった。
「射撃班、敵を足止めしてください!」
『――剣が散ること華の如し』
 片方は銃弾で、片方は武具を持った腕だ。雪原の上を飛来し、互いが互いにその発射源を狙う。
 銃弾に狙われた機神は機動による回避を選択し、飛翔する腕に狙われた蓮は、
「防御班!」
 付近の式鬼隊に命令を出した。直後だった。結界が目前に展開され、飛来して来た剣の群れがそこへ衝突する。
「……!」
 連打。剣や槍が衝突する度に結界表面で波紋のような光が生まれていった。
 やはり応射してきますね……。
 見る。光の障壁の向こう、弾き返された敵の腕は未だ健在だ。武具を取り落とすことも無く、衝撃から持ち直すと一度距離を取り、再びアタックを仕掛けてくる。
 そんな腕の数は左右合わせて百。自分達より僅かに多い。だが、
「百の花弁があろうと茎は一本。所詮は一輪です」
 こちらからの射撃を逃れた敵は、今も雪原の上に佇んでいる。
「数の力で圧倒しましょう。――前衛班!」
 己がそう声を張れば、飛び出す影があった。方向は自分達の背後と斜め後方、そして左右の五つだ。
『……!』
 前衛班は陣の中から飛び出し、結界の外まで繰り出していく。そうすれば当然、敵の攻撃が前衛班に迫るが、結界術の範囲を伸ばせば防げる。
「――!」
 防いだ。前衛班を押し潰さんと迫った腕群を、拡大された障壁が弾いていく。そんな加護の下、前衛班はキャバリア毎貸与された様々な武装で、結界外の腕を破壊していった。
 ライフルやナイフ、果ては幽衛隊の時と同じく素手による掴み取りからのグラップルなど様々だ。だが、彼らは自陣を飛び出して敵陣とも言える場にいる。
「! 損傷を受けた者は退いて下さい!」
 長く居れば防げぬ攻撃が積み重なり、傷となる。戦えなくなるまでに退かせねばならないが、
『逃さぬとも』
「……!」
 敵の腕を撃破出来たのはまだほんの一部で、未だ数多く残っている。急ぎ退却させるが、全方位から迫る腕の方が早かった。しかし
「予測しています……!」
『!?』
 踏み込んできた腕を、掴む手があった。傷を負ったキャバリアの後ろに控えていた別動隊が、彼らの撤退を援護するのだ。
「……!!」
 捕まれた機神の腕にナイフが突き込まれ、光と煙を激しく噴き出しながら沈黙した。
「攻撃と撤退のローテーション。この動きを絶やさぬようにしてください!」
 敵は多勢といえど百だ。攻撃を弛ませねば数は減っていく。
 なので、そう指示を出したのだが、
『――チッ』
「!」
 機神の攻撃の手が弱まったのが解った。
 見る。
 遠く離れた先、機神がこれ以上の腕の損耗を防ぐために、腕を順次撤退させていくのだ。
 無論、黙ってそれを逃すつもりなど自分達には無かった。
「各自、遠隔武装で追い打ちを……!」
 放たれた弾丸が、ミサイルが、撤退していく機神の腕を穿っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
――あれが此度の元凶。
千手観音の如き姿なれど、衆生を惑わすは方便に非ず。

野狐禅の魔境に囚われたなら、警策をお与えしよう。


依然、大蛇麁にてお相手致す。

百腕とて一度の攻勢に打ち掛かれる数には限りがある筈。
全方位を囲めば一方は手薄となり、一点を固めれば他方は薄くなるが道理。

故に、正面の圧力が薄ければ太刀の【斬撃波】で払いつつ突破し、それが能わぬなら【残像】を残して迂回しつつ距離を詰めて参りましょう。

多少の被弾は【結界術】で押し潰しつつ肉薄。
そのまま突進の勢いを乗せ、【屠竜】の太刀を。

断つはその鋼のみ、人は傷付けずに無力化を狙いましょう。

竜とは時に荒ぶり、天地も人も惑乱させるもの――そこに罪は無し。




 雪の上に、青の色が立っていた。
『…………』
 沈黙するその姿は体高三メートル半と少し。雄々しい角飾りを具え、暗色の羽織を風に流すその姿を機神に搭乗した将軍は知っていた。
 この侵攻作戦の序盤から変わらぬ姿だ。幽衛隊を押し止め、シャドウブレイダー隊を説得した武者だった。


 景正は構えを崩さず、敵からも視線を外さなかった。
 ――あれが、此度の元凶。
 その姿は多腕であり、それはある姿に似ていた。
「千手観音……」
『ほう。観音、か』
 小さく呟いた声に、敵が反応した。
『成程、確かに。衆生を導くため私はここにいるとも』
「衆生を惑わすは方便に非ず」
『惑わす? 否。逆だ。惑わしを与えているのでなく、確たる言行で導きを示しているのだ』
 示してきた。
 己の機体、大蛇麁の周囲を機神の腕で包囲して来たのだ。
「…………」
 構えは解かず、視線だけを周囲に向ける。
 数は百……。
 千手というには足りぬが、己を包囲するには足りている。
『そう、賢人が樹下で答えを得たのと同じく、私も悟ったのだ。この機体に乗った時に』
 それは、
『――この大地には血が足りぬと』
「……愚かな。千の手は衆生に何をお与えになるためか。千に足らぬ百腕の鎧を得ただけで何もかもを解し、脱したなど野狐禅の魔境である。それに囚われたというなら――」
 言う。
「貴様に警策をお与えしよう」
『――!』
 機神からの答えは、言葉ではなく力として来た。


 戦場は、強風が吹き荒れていた。
「……!」
 機神の腕が嵐のように迫る中、景正は恐れていなかった。太刀を構え、迫る嵐を見切っていく。
 百腕とて、一度の攻勢に打ち掛かれる数には限りがある筈……。
 周囲を包囲されたとしても、そのまま突っ込んで来れば腕同士は干渉しあう。加えて、機神はキャバリアであり、その全ての腕は無論、キャバリアとして適した規格となっている。
 キャバリアに比べて上背が低い大蛇麁相手に攻撃を通すのであれば、敵は差し向ける腕の数を絞る必要がある。
「そこ……!」
 後は簡単だ。
 大蛇麁の機体を覆うように全方位を囲んでくるならば、それは層として薄い。太刀を振り抜いた衝撃波で蹴散らし、空いた空間を突破していく。
 すると、飛び出して来たこちらを打つために、敵は新たな腕を一方向に集中してくる。飛び出して来たところを押し戻すような、そんな攻撃の圧が迫ったが、
『!?』
 波が貫いたのは大蛇麁の残像だった。
 既に、そこには居ない。
『……!』
 回避したこちらを仕留めるため、全方位から腕が追い縋って来れば正しく嵐の只中であり、乱戦となった。
 正面に来れば斬り伏せ、追ってくるのならば振り切った。中にはこちらへ辿り着く腕もあったが、多少の被弾は想定内だった。
「――――」
 手捌きで印を組み、句を唱えることで機体に結界術を張り巡らせる。それを敵からの守りとすれば、後はもう、ただ敵の元へ前進するだけだった。
『く……!』
 幾度の戦闘で荒れた雪原を駆け抜け、一気に敵へと肉薄していく。
 間合いを詰められた敵は、急ぎ周囲の腕を振るおうとしたが、それが叶うことは無かった。
「――徒爾か、究竟か。確かめて頂こう」
 大上段からの一刀が、その百腕の身体へ振り下ろされたからだ。
『……!』
 “屠竜”。
 周囲の風ごと千切り捨てた強力な一太刀は、字の通り竜を屠る為の技だった。
 大気が切り捨てられ“空”となったそこへ風が流れ込み、衝突。
 弾けた風が、周囲の雪を吹き飛ばした。
 果たして、それほどの一撃を浴びせられた敵は、確かに滅されていた。
『――――』
 機神の表面にある照明や、内部から聞こえていた駆動音が一切止んでいる。周囲でも、置き去りにしていた腕が次々に地面に落下する音が聞こえてきた。
 しかし、敵の全てが滅されたというわけでも無かった。
「竜とは時に荒ぶり、天地も人も惑乱させるもの。――そこに罪は無し」
「……あ? な、私、は……?」
 機神の装甲だけが断たれ、操縦室に座っていた壮年の男が、呆然とした表情で周囲を見ていた。
 ……一旦とはいえ、これで落ち着きを得るでしょう。
 最後の戦いが終わり、侵攻事件が停止した瞬間だった。
 幽衛隊、シャドウブレイダー隊、そしてこの機神。自分達猟兵の尽力で、全て相手国の国境を侵していない。
 しかし、この件が両国間における繊細な課題となることは事実だろう。その課題がどのような決着を得るにしろ、今ここで自分達の役割が終わったことは確かだった。
「――――」
 納刀の音が、雪に染み込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月06日


挿絵イラスト