アリスラビリンスの一角、何もかもがアイスで出来たこの国にも、四季に似た変化によって、一層冷たい風が吹くようになりました。シュガーパウダーのようにちらついていた雪は、あっという間に勢いを増して、ケーキの表面みたいに白を重ねていきます。そんな冷たい風も、雪の温度も、ここに住まう愉快な仲間達にとってはむしろ心地良いものらしく、自分によく似た雪だるまを作ったり、雪の布団に寝転んだりと、彼等らしく呑気に過ごしていました。
昨年より続く猟書家の侵攻は、今なお勢いを緩めることなく続いている。そんな中、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が察知したのは、アリスラビリンスにあるアイスの国について。
その魔獣は物語を喰らう。対象の記憶を、経験を、情報を、夢や希望すら奪い取って食べてしまう。愉快な仲間にはこれがどうやら致命的なようで、『根源の情報』を奪われると、即死――この国の住民の場合は、ただの動かぬ雪だるまと化してしまうのだという。
これは猟兵達でも避けることができず、経験を奪われれば熟練の技を失ってしまうだろうし、記憶を奪われれば戦い方もわからなくなり、やがては何故ここにいるのか、自分が何者なのかすらわからない、廃人と化してしまうだろう。
愉快な仲間を敵の前に連れて行き、ベスティア・ビブリエがそちらの食事に夢中になっている間に攻撃する、という流れになるだろうか。幸い物語を喰らう行為は物理的な痛みもダメージも伴わない。さらに敵を倒せば奪われた物語は持ち主のもとに戻るということなので……最終的に敵を倒せれば、犠牲者ゼロで終わらせることが可能であると彼女は続けた。
普通に起こして協力を求めても良いし、眠ったままの者を運んで行ってもいい。しかし、そこら中に居る同種の愉快な仲間達の中でも、『変わった者』を選んだ方が、その後の囮としては相応しいだろう。
つじ
どうも、つじです。今回の舞台はアリスラビリンスのアイスの国、猟書家の侵攻に絡んだ、二章構成のシナリオになります。
●プレイングボーナス
ピーノくん、もしくは種族が愉快な仲間の猟兵を囮にすることができます。一組につき囮一名が推奨です。それ以上に囮を用意しても構いませんが、その分敵の動きも読みにくくなります。
●氷菓の国『ラクトパラディア』
アリスラビリンスにある不思議の国の一つ。凍った湖の真ん中にある島で、木や岩、花に果実、建物まで全て甘いアイスで出来た国です。
以前猟兵達によって開拓された国で、観覧車付きのお城、氷樹の森、氷の家で出来た街などがあります。
●愉快な仲間『ピーノ・オブコート』
ピーノくん。黒い防寒着を纏う雪だるま、といった見た目の愉快な仲間です。気の良い怠け者で、今回は基本的に全員寝ています。
独特の死生観を持っているためか、『情報を食べられること』に対してあまり恐怖を覚えていません。あまり重く考えず、気楽に囮にしてください。
●第一章
敵は『美味しそう』なピーノくんを探しているので、先手を取りやすくなっています。敵を蹴散らしつつ、ボス戦の囮になる愉快な仲間を確保してください。
ピーノくん達は基本的に猟兵に好意的ですが、怠け者なので動くのを嫌がります。何とかしてあげてください。
また、情報量の多い個体ほど『美味しそう』と見られ、囮としてよく機能します。変わったピーノくんを探したり、強烈な経験をさせたり、奇抜な格好をさせるなどすると、後の戦いをより有利に進められるかもしれません。
●第二章
ボス戦です。まともに戦うとかなり強いです。
敵は『愉快な仲間』を最優先で狙いますので、その間に攻撃する形がオススメです。種族が『愉快な仲間』の猟兵さんは、用意した囮をより目立たせるか、がんばって抵抗してください。
以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 集団戦
『虹色雲の獏執事』
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POW |
●「邪魔が入るようですね。番兵さん、出番です」
自身が【自身や眠っているアリスに対する敵意や害意】を感じると、レベル×1体の【虹色雲の番兵羊】が召喚される。虹色雲の番兵羊は自身や眠っているアリスに対する敵意や害意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
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SPD |
●「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
【リラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるリラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
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WIZ |
●「外は危険です。こちらにお逃げください」
戦場全体に、【強い眠気と幻覚を引き起こす虹色雲の城】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
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👑7 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 |
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月舘・夜彦
【花簪】
ピーノ殿達との関わりも何度目になりますか
……彼等も大変ですね
囮についてはオオカミ殿がおりますし
御本人もやる気に満ちておりますので任せられそうです
私はピーノ殿の誘導とオオカミ殿を美味しそうにすることに尽力致します
オオカミ殿、今回の美味しそうは異なりまして
貴方の記憶や体験という情報の量が必要になります
オオカミ殿は個性的ではありますが、見た目では分かり難いです
つまり……賑やかにすること
月夜ノ御使イにてバディペットを呼び出し
オオカミ殿を東雲に乗せ、そして肩には春暁
これだけでも賑やかで情報量が多くなりそうな気がします
私は何も出来ておりませんので、敵を倒しにいきましょうか
戦いも派手にいきましょう
ジョン・フラワー
【花簪】
アイスなアリスたちを囮にする必要はないさ!
この僕がいるんだもの!
というわけで今のうちに楽しいチャージ!
おいしそうに見えるようにいろんなことをするんだ!
クリームや塩を塗った方がいいかな。金属は外しておくべき?
なんだい違うのかい! 注文が多いなあ!
ものすっごい体験かあ
毎日楽しいから改めて言われると悩んじゃうね
簪のアリス何かある?
ワオ! 馬に乗るのは初めてだなあ!
鳥もお友達だ! アリスも一緒に乗って歌わないかい!
こういう音楽隊がいるんだよ! 愉快だねえ!
虹色のふわふわもなんとかしなきゃ
やあふわふわ君! 僕おいしそうにみえる?
キミと戦ったらもっとおいしそうになれる?
だったらやるしかないなあ!
●トリプル
「アイスなアリスたちを囮にする必要はないさ! この僕がいるんだもの!」
「でしたらお任せしましょう、オオカミ殿」
やる気に満ちたジョン・フラワー(夢見るおおかみ・f19496)の言葉に、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が頷いて見せる。また巻き込まれた愉快な仲間達を、囮としてどうこうするよりは、きっと胸も痛まないし、安心できるはずだ。
「えーと、クリームや塩を塗った方がいいかな。金属は外しておくべき?」
「オオカミ殿」
前言撤回。心配度合はあまり変わらないような気がしてきた。
「なんだい違うのかい! 注文が多いなあ!」
夜彦の言及に従って、ジョンはお茶会セットから取り出そうとしていた調味料を仕舞い直す。普通なら頭を抱えたくなるところだろうが、この辺りは慣れたもの。夜彦はさも当然のように軌道修正を試み始めた。
「今回の美味しそうは異なりまして、貴方の記憶や体験という情報の量が必要になります」
「ものすっごい体験かあ……毎日楽しいから改めて言われると悩んじゃうね」
「とはいえ、今からそんな強烈な体験を狙うのは難しいでしょう」
「えっそうなの?」
じゃあどうしようか。そう首を傾げるジョンに、夜彦は腹案を披露する。
「オオカミ殿は個性的ではありますが、見た目では分かり難いです」
「えっそうなの!?」
こんなに綺麗な花輪が二つも付いてるのに!? ジョンの驚愕は置いておいて、夜彦は盛る方向に舵を切った。
「もっと賑やかにしましょう」
こういう場合、基本は足し算である。『月夜ノ御使イ』――というか、夜彦は引き連れていた動物達に、ジョンの援護をするよう伝える。
「オオカミ殿、乗馬の経験は?」
「初めてだよ!」
でしたら、と東雲の上へ彼を押し上げて、イヌワシの春暁をその肩へ。
「馬の背中って結構高いんだね! ワッ鳥もお友達だ!」
はしゃぐジョンの元に春暁が舞い降りて、馬、オオカミ、イヌワシの三段重ねが出来上がった。これで、見た目だけでも随分賑やかになっただろう。それに――。
「アリスも一緒に乗って歌わないかい! こういう音楽隊がいるんだよ! 愉快だねえ!」
そう、こんな感じの賑やかな音楽隊も居る。旅する彼等にちなんで歌い出そうとするジョンの様子を、もう一人……虹色雲の獏執事がじっと見つめていた。
それに気付いたジョンは、相変わらず愉快気な様子で手を振って。
「やあふわふわ君! 僕おいしそうにみえる?」
「悪くないですね……何かこう、その三段重ねには物語を感じてしまいます……」
吟味するように、考えながら執事はそう答えた。きっとこれならば、主も美味しく食べてくれるだろう。そんな高評価を感じさせる声に。
「わあ、ありがとう! キミと戦ったらもっとおいしそうになれるかな? だったらやるしかないよね!」
にっこりと笑ってそう告げたジョンは、はさみと木槌を両手で構える。
馬上で。
「ねえ簪のアリス。これどうやって戦えば良いんだい?」
「……」
そういえば乗馬は初めてでしたか。そう頷いた夜彦は、腰の太刀へと手を遣った。
丁度良い、と言えなくもないだろう。「今回あんまりやることがない」と若干手持無沙汰になっていたところだ。それに、見た目を盛った効果もあって、獏執事達はどうもジョンの姿を目で追っている節がある。
「とりあえず、走り回っていてください」
「わかった!!」
わーい、みたいな歓声を上げるジョンを乗せて、東雲が走り出す。すると案の定、獏執事達の注意はそちらに引っ張られて――。
「それでは、後は私が」
そこに閃く白刃が、虹色の雲を順に両断していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
【エレルA】
ピーーーーノ!!!!!
ピーーーーノが寝ている!!!!タイヘン!!!
コレが囮になる。うんうん。
コレは愉快な仲間。うんうん。
狼の姿に変身しておびき寄せるを使う。賢い。
ワンワンワン!!!
コレは愉快な仲間だカラ羊を食べる。偉い。
ピーーーーノ!!!!!シンジュダメ!!!
ピーーーーーーノが囮!!!バーツ!
アァ……ピーーーーノが手を挙げてる…。
アァ……連れて行かれた……。
カナシイ。コレはカナシイ。
レンゲツは分かってくれる。
ピーノ囮ダメ。おーけー?
ええ……。ダメ?ピーノいいヤツ。
ピーノはコレの仲間。
仕方が無いカラ元に戻ってピーノを見守る。
狼のままだと守れる?
コレは賢いカラ狼に戻る。
ワン。
雅楽代・真珠
【エレルA】
ぴぃのがまた危ないようだ
僕がいないとぴぃのは本当に駄目なのだから
執事?
僕の如月の方が格上だよ
如月、主命だよ
やっつけて
先手必勝だ
ぴぃの、お起き
こら、ぴぃの
寝ないの
お前を素敵なところへ連れて行ってあげるよ
一等へんてこなぴぃのは、もう働かなくてよくなるよ
ただの雪だるまになって怠惰に過ごせるようになる(かもしれない
我こそは一等へんてこだと思うぴぃのは手をあげてご覧
…多いね
エンジ、煉月
どのぴぃのが一等へんてこ?
選んで
大丈夫だよ、エンジ
ぴぃのが危なそうだったらお前が護ってあげればいいんだ
狼姿のままでいれば騙せるかもしれないよ?
煉月がお洒落をさせたぴぃのにりぼんを結んで目印
ぴぃのの準備も万端だ
飛砂・煉月
【エレルA】
ぴぃの、ピーノ
美味しい国で雪だるまがいっぱい寝てるや
オレは初めて会うけど、皆知り合いなんだね
よし、変な執事蹴散らすトコから?
ハクって相方の名を呼び
白の槍にしたら竜牙葬送でダッシュ
槍投げで仕留めちゃおう
邪魔だよ、邪魔
ゆさゆさ、ゆさゆさ
ほーら、起きる時間だよー
いっぱいのピーノがもう自分で手上げてる
怠け者なのに挙手は素早い
真珠ってば扱い上手
オレ的に一体だけ面白い動きしてるアイツって指差す
序に着替えもどう?
面白い服の方が目立つしさー
後は記念撮影とか
ほらエンジ
真珠も言ってるけど狼で護ってあげたらバッチリだよ
オレも狼の方が良かったかな
あんまなった事ないけど
ともあれ目印のリボンで準備は完了だね~
●挙手制
死屍累々。そう称するべき光景が、猟兵達の前に広がっていた。うつ伏せだったり仰向けだったり、思い思いに寝転んだ雪だるま型の住人達は、皆大人しく寝息を立てている。
「ピーーーーノ!!!!! ピーーーーノが寝ている!!!! タイヘン!!!」
「騒ぎすぎだよエンジ。ぴぃのが怠けているのなんて、珍しくもないだろうに」
現場の惨状を見て悲鳴を上げるエンジ・カラカ(六月・f06959)を、雅楽代・真珠(水中花・f12752)が溜息混じりに宥める。とはいえ、このまま放っておけば猟書家の餌食になってしまうのもまた事実。こうして彼等が危機に陥るのは、果たして何度目になるのやら。
「僕がいないと本当に駄目だねぴぃのは……」
「ピーノ、か。オレは初めて会うけど、皆は知り合いなんだね」
ふうん、と鼻を鳴らして、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)は倒れ伏した愉快な仲間達を順に眺める。冷気と共に感じる、アイスの柔らかな甘い香り。この不思議な国の住人としては相応しい姿ではあるが……。
「よし、まずはあの変な執事を蹴散らそうか」
パステルカラーのこの世界に馴染んでいるようにも見えるが、やはり異質な気配を感じざるを得ないオブリビオン――獏執事達に目を向けて、煉月は相棒の名を呼ぶ。
ハク。そう呼ばれた竜は、その身と同じ白銀色の槍となり、煉月の手に収まった。
「ならコレが囮になる。うんうん」
おもむろに申し出て、エンジが狼の姿に変身する。雪混じりの風の中、黒い毛並みを靡かせて。
「これでコレも愉快な仲間。うんうん」
そう頷く。『美味しそうなもの』を探している獏執事達は、現れた狼をチラ見するが。
「うーん、何か違う気がするんですよね……」
速やかに元の作業に戻っていった。
「オオ……コレはこんなにも愉快な仲間なのに……」
「うん……うん?」
フォローを入れた方が良いのか? 若干迷いながらも、エンジとピーノくんに気を取られた獏執事へ、煉月がその槍を振るう。鋭い穂先が届くと同時に、轟く竜の咆哮が敵を穿つ。
「いけませんね。そんなにうるさくしては、皆さん起きてしまうではないですか」
すると、仲間の一体がやられたのを見遣り、残りの獏執事達が羊の番兵達を続々と呼び出し始めた。
「ワンワンワン!!」
羊と聞いては黙って居られず、狼だか犬だかわからない声を上げて、エンジがそちらに喰らい付く。そして、真珠が従えていた『鬼』もまた。
「如月、主命だよ。執事として、お前の方が格上なのを教えてやるんだ」
硝子玉のようなその瞳を輝かせて、獏執事達を仕留めにかかった。
先手を取った彼等が、敵の群れを薙ぎ払うのにそう時間はかからなかった。虹色の雲が薄まったそこには、ただただ寝転がったピーノくん達が残るばかり。
「ぴぃの、お起き」
「ほーら、起きる時間だよー」
真珠がそう声をかけて、煉月がゆさゆさと手近な雪だるま達を揺り起こす。まだ眠いー、などという声も聞こえてきたが。
「おやー? おはようゴザイマス猟兵サン」
「そしておやすみなさい猟兵サーン」
「こら、ぴぃの。僕が呼んでるんだから寝ないの」
流れるように二度寝の姿勢に入った彼等を制止して、真珠は彼等に向けて語り始める。
「お前を素敵なところへ連れて行ってあげよう。一等へんてこなぴぃのは、もう働かなくてよくなるよ」
「エッ」
「ほんとデスカ?」
「ピーーーーノ!!!!! シンジュダメ!!!」
寝転がりながらも反応を示したピーノくん達の様子に、エンジが嘆きの声を上げる。
「ピーーーーーーノが囮!!! バーツ!」
「エンジ……お前は確かに愉快だけど、愉快な仲間にはなれないんだよ」
つまり、残念ながら囮の代わりは担えない。彼の言葉を却下して、真珠は提案の続きを口にした。
「我こそは一等へんてこだと思うぴぃのは手をあげてご覧」
「ハーーーイ!!」
「うわ、挙手だけ素早い」
「アァ……ソンナ……」
一斉に手が上がる様子に、煉月が笑う。それから、肩を落としたエンジへと。
「大丈夫だよ、エンジ。ぴぃのが危なそうだったらお前が護ってあげればいいんだ」
「そうそう、真珠も言ってるけど狼で護ってあげたらバッチリだよ」
「ウーン……」
本当に? しばらくそう渋ってから、仕方なくと言った様子でエンジは狼の姿へと戻った。
「それにしても多いね……。煉月、どのぴぃのが良いか選んで」
「えー、じゃああの一体だけ足上げてるアイツで」
正直言って見分けがつかないので、面白そうな動きをしているやつを。そんな形で選ばれたピーノくんに、煉月は準備してきた衣装を着せる。
「記念撮影もしとく?」
「ワーイ」
「ほら、大人しくするんだよ」
最後に真珠が目印代わりのリボンを巻いて、出来上がり。
「アァ……連れて行かれてしまう……」
ひとまずは納得したものの、喜んで囮への道を進み始めたピーノを見て、エンジはへなりと尻尾を垂らした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
【エレルB】
なんだい二人共
そんなに愉快なのに愉快な仲間じゃないの?
そりゃ見目は麗しいけどさ
シンジランナーイ
仕方ないから痛む心をおさえて
ピーノくんらの中から囮を立てる
一番中身が薄そうな子がいいね、気分的に
しかしどの子もうっっっすいなぁ
もうちょっとなんとかならなかったの?人生
僕の作戦はね
この薄い子を派手に飾って
なんかこう、知識量?情報量?アレが多く見えるようにさ
要するに薄いほどキャンバスが広いってことよ
例えばこのカンサイ風ジャケット(目がチカチカする柄)なんかいいと思う
大丈夫よ、ちゃんと元のピーノに戻してやるから
……なんだか戻りたくなさそうな気配が出てるね
……雪だるまは楽なのかい?
……気のせいかね
宵雛花・十雉
【エレルB】
おいおい、この中で一番愉快な男が何言ってんだい
けど愉快な仲間がいねぇんじゃ仕方ねぇよなァ
ピーノくんとやらに囮を頼も
って、みんな見事に眠ってんなぁ…
オレもここで寝てていい?
げ、スパンコールは勘弁
さぁて、まずは露払いだな
UCで蹴散らすぜ
なるほど、余白が多いほどたくさん書き込めるとか、未熟な方が伸び代があるとかそんな感じかい?
…って、いきなりドギツイやつ持ってきたなぁ
既に情報量が多くてツッコミが追いつかねぇよ
んじゃあダメ押しにこれもしようぜ、パーティー用鼻眼鏡
よっ、似合ってるぜピーノくん!
アンタが今日の主役だ!
なぁんか面倒くさそうだなぁ
抱っこしてってやろうか?
大サービスでおんぶでもいいよ
朽守・カスカ
【エレルB】
おや、全くおかしなことを言うね、師匠は
私を形容するならば「愉快な」ではなく「儚げで見目麗しい」ではないかな
……とまぁ、愛弟子ジョークはさておくとして
ピーノくんに囮をお願いするしかないから
目立つためにも沢山飾りつけよう
ピーノくんが眠気に抗う姿が想像できないが
【星灯りの残滓】
さぁ、これで存分に寝てても大丈夫
って、十雉君のことではないよ
君まで寝てしまったら
ピーノくん共々スパンコールで存分に飾り付けてしまおうか
(ピーノくんを盛り気味に、駄目押しと言わんばかりにキラキラ飾り付け)
(ランタンの灯りでゆらゆら照らせば)
ふふ、たとえ寝ていようとも
煌びやかで無視できない存在感を放つ囮の出来上がり、さ
●本日のスター
ここを訪れるのも何度目か。皆で建てた城壁を遠目に見つつ、凍える風と甘い香りを懐かしみながら、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は仲間達へと向き直った。
「それじゃ、誰が囮やる?」
そう問われた朽守・カスカ(灯台守・f00170)と宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は、二人で顔を見合わせて。
「誰と言われてもね」
「オレ達じゃ無理なんだよなァ」
グリモア猟兵から得た前情報からして、それは確かなはずだけれど。しかし当のロカジは、意外そうな表情を浮かべてみせた。
「なんだい二人共、そんなに愉快なのに愉快な仲間じゃないの?」
「おいおい、この中で一番愉快な男が何言ってんだい」
「全くだよ。おかしなことを言うね、師匠は」
軽い言いがかりに、やれやれと肩を竦めてみせたところでカスカが続ける。
「私を形容するならば『愉快な』ではなく『儚げで見目麗しい』ではないかな」
「いやあ、そりゃ見目は麗しいけどさ」
だんだん言動が師匠に似てきたねえ、とそんな事を思いつつ、一同は改めて周りに視線を巡らせた。
「そうなると、やっぱりピーノくんらの中から囮を立てるしかないねえ」
「しっかし、みんな見事に眠ってんなぁ……」
虹色の霞に囲まれ、すやすやと寝息を立てている雪だるま達を見ながら十雉が言う。これだけ居れば一人くらい、抵抗に成功していてもよさそうなものだが。
「まぁ……彼等が眠気に抗う姿なんて想像できないけれど」
「そうだねえ……」
師弟でしみじみと呟き合ったところで、ロカジはとにかくこの場の方針を示す。
「できれば一番中身が薄そうな子がいいね、気分的に」
「余白が多いほどたくさん書き込めるとか、未熟な方が伸び代があるとかそんな感じかい?」
「そうそう、薄いほどキャンバスが広いっていう……」
うんうんと頷きながら、足元に転がる彼等の寝顔を順に眺めて。
「しかしどの子もうっっっすいなぁ」
思わず、胸の奥から溜息を吐いてしまう。何しろ揃いも揃って「趣味はお昼寝です休日は寝てます」みたいな顔をしているように見える。人生もうちょっとなんとかならなかったのだろうか。ならなかったんだろうな。そういう風に生まれちゃってそうだもんな。
「大差なさそうだから、一番しょうゆ顔の子にしよう」
「区別つくのか……?」
「まあ何となくね」
「何となくだね」
ロカジとカスカで選んだあっさりした顔の子を、とりあえず揺さぶってはみるが。
「あぁ……まだ寝かせてクダサイぃ……」
「駄目そうかい」
「寝ているなら寝ているで、やりようはあるよ」
そう頷いたカスカの手元、ランタンから零れた光が辺りに広がり、そこに居る者を癒し始める。ついでにピーノくんの飾り付けに集中している間は外部からの影響を受けないというおまけ付きだ。何やらさっきから濃くなってきている虹色の雲も、これなら眠気をもたらすことなく無効化できるだろう。
「さぁ、これで存分に寝てても大丈夫」
「オレもここで寝てていい?」
「十雉君も一緒に飾ってほしいのなら……」
カスカの取り出した追加装飾用のスパンコールを見て、十雉は昼寝を断念した。
「目立たせるなら、まずはこのカンサイ風ジャケットなんかいいと思う」
「いきなりドギツイやつ持ってきたなぁ」
「さすが師匠。これなら私の用意したスパンコールも違和感なく馴染みそうだ」
上着を着せ替えた上に盛り始めた彼等の様子を何とはなしに眺めていたところ、十雉は付近の獏執事達がこちらに向かってきている事に気付く。
「なぁ、敵はどうすんの」
「申し訳ないが、私はこちらに集中しないといけないのでね」
「ああ……じゃあこれも付けといてやってくれ」
鼻眼鏡。追い打ちのそれを渡して、十雉は薙刀を手に敵の迎撃に取り掛かった。刃に添う紅蓮の炎が、虹色の雲を食い破るように疾り――。
「……様になって来たんじゃないかい?」
「そうだね。でも何か物足りないような……」
「化粧もさせてみようか」
「なるほど、この顔は化粧映えするかもしれない」
そうこうしている内に魔改造はどんどん進んで行き、周りの敵が粗方片付くころには完成形へと至っていた。
「アノ……何か僕の身体眩しくないデス?」
「鼻眼鏡よりサングラスの方が良かったかもな」
目を覚ましたピーノくんの呟きに、十雉が頷いて答える。カスカのランタンの灯に照らされた彼は、クリスマスの飾りもかくやという勢いでピカピカキラキラと輝いていた。
「たとえ寝ていようとも煌びやかで無視できない存在感を放つ、完璧な囮の出来上がり、さ」
満足気に胸を張るカスカに対し、ピーノくんは「よくわからないけどカッコイイからいいや」とあっさり受け入れ態勢に入った。
「よっ、似合ってるぜピーノくん! アンタが今日の主役だ!」
十雉からも声援が飛ぶ。この後の運命を考えると、多少胸が痛む面もあるが……。少しばつの悪い思いを抱きながら、ロカジはピーノくんの頭に手を置いた。
「大丈夫よ、最後にはちゃんと元のピーノに戻してやるから」
「そうデスカー……」
「何でちょっと残念そうなんだい……?」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
ふわーわ
眠気は我慢しないとね(持ち込んだエナドリ決め)
ちいさくなーれーちいさくなーれー
今回は相手の死角から集中に集中を重ねた幼児化の糸をぶっ放し
糸を裁縫の腕前で操り敵を満遍なく子供化させちゃうわ
子供の考える迷路なら難易度も大きく下がるでしょうし
アタシ自身幻覚の類への理解は深いから反撃もある程度簡単に抜け出せると予測するわ
はい、アイス(子供化したバクに食べさせて懐柔を試みる)
で、メインはどのピーノ君を囮にするか、よね
はい、それじゃウチの社員の人―手ー挙げてー
その中でもストライキしたことある人―
モデルもしたことあってー
(中略)
アリスを追いかけたことがある人ー
よし、キミね!(布と針を手に迫る魔の手)
●GOATia支社春の闘い
薄く漂う虹色の霞が、極寒の空気の中でも柔らかな眠気を誘う。ふわぁ、と欠伸をしながらも、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)はそれを掻き消すべくエナドリをキメた。カフェインやら何やらが脳みそに染み渡り、瞼の自由落下が抑えられるのを感じつつ、彼女は早速敵の群れへと狙いを定めた。
しっかり目を開いて集中。ちいさくなーれーちいさくなーれー。
「さ、お着替えの時間よー」
飛び出したのはA&Wにある彼女の領地の名産品。時を戻す蜘蛛糸は、紡がれたそばから獏執事達を絡め取る。
「ああっ、なんてことをなさるのです!?」
「身体がどんどん小さく……!」
愉快な仲間達を吟味中だった彼等は、抵抗できぬままに幼児へと変えられていく。迎撃、せめて時間稼ぎをと虹色雲の迷宮を作り出して見せるが。
「ま、子供の考えた迷路なんてこんなものよね」
出来上がったのは、ただただ曲がりくねっただけの一本道。エナドリ缶を片手に、リダンはそれを悠々と踏破して見せた。今回ばかりは先制攻撃の決まった影響がとても大きい。関門をさっさと突破されてしまった獏執事は、動揺しながらも次の手に移ろうと試みる。
「えーい、こんどはもっとむつかしい迷路に――」
「まあまあ、これあげるから仲良くしましょ?」
もう一度ユーベルコードを展開される前に、リダンは途中で採れたアイスの果実を三段重ねにして差し出した。
「し、しかたありませんね」
「アイスはおいしいですからね……」
こういう時、幼児はあまりにもちょろい。こうして障害をすべて退けた彼女は、寝転がったピーノくん達の元へと辿り着く。ここからの問題は、どのピーノ君を選ぶか、ということになるのだが。
「みんな、起きてるかしら?」
「ワー、してんちょーサンじゃないですかー」
「あ、ちゃんと居るわねウチの社員」
うんうんと頷いて、彼女は続ける。どうせ一人連れて行くなら、その辺りから選びたいところだ。
「じゃあウチの社員の人ー手ー挙げてー」
「ハーイ」
「その中でもストライキしたことある人ー」
「ハーイ」
「えっ、社員全員??」
「楽しかったデスヨー」
そんなこんなで質問を繰り返し、候補を絞っていく。
「アリスを追いかけたことがある人ー」
「ハイ!」
「よし、キミで決まりね!」
「ワーイ、ヤリマシター」
最後まで手を上げていた比較的元気なピーノくんを手招いて、リダンは布と針を手に、笑みを浮かべた。
「それじゃ早速、モデルになってもらうわね」
「ボーナスとか出マス?」
「それはこの後の働き次第かしらー」
大成功
🔵🔵🔵
九之矢・透
【POW】
うー、囮かあ
かなり気が進まないケド
そうするしかないってんならやらなきゃ
『大鷲』で空から敵サンを探そう
雪色アイスの中なら虹色は目立ちそうだ
ピーノ君たちを襲っている獏執事を見つけたら最優先
先ずは突っ込んで蹴飛ばす!
番兵羊が出て来た時も一旦空中に逃げたり
スピードで振り切ったりしながら柳で応戦しよう
助けたピーノ君たちがまだ寝てる様なら
多少は安全そうな広場とかに6人以上になるまで集めるよ
安全になるまで避難してもらいたいしね
まあ兎も角、いつもの(息を吸って)
ほら、起ーきーてー!
顔見知りだったり
変わった服きたピーノ君が居たらそいつに囮を頼もう
ごめんな、ちょっと協力して欲しいんだ
絶対後で助けるからな
●久しぶり
冷たくて甘いアイスの国は、凍った湖の上に成り立っている。島のサイズ自体はそこまで大きなものではなく、こうして――『大鷲』の力で空を舞う九之矢・透(赤鼠・f02203)は、すぐにその全容を再確認することができた。皆で建てた街並みに、いつぞや襲撃を受けた城の尖塔。様々な色のアイスに彩られ、何だかんだカラフルなこの国だが、今日は降り積もった雪のため、白く輝いて見える。
「意外とたくさん居るな……?」
そんな光景だからこそ、国中で獏執事が広げる虹色の雲はよく目立つ。その中の一体に狙いを付けて、透は急降下していった。
特に抵抗するでもなく眠りに付いたピーノくん達を順番に確認し、『美味しそうな』個体を探していた執事の一体が、「これなんか良いのでは?」と足を止める。見た目は他とさして変わらないようにも思えるが、その面構えは何かこう、決定的な違いを感じさせるような――。
「はい、そこまでー!」
早速連れ去ろうとした獏執事に、舞い降りた透の蹴りが決まる。
「あーーッ、何をなさるのです!?」
「それはこっちの台詞なんだけどなぁ」
積もった雪の中に倒れ込んだ獏執事から注意を逸らさず、彼女は狙われていたピーノくんの傍らに降り立った。先制の一撃を決めることは出来たが、相手がそれだけで諦めてくれる様子はない。早速と言わんばかりに、獏執事は羊の番兵達を展開し始めていた。
「ピーノくん、とりあえず安全な所まで逃げ――」
「むにゃむにゃモウ食べられマセーン」
あー、これだけ騒いでも起きないかあ。だよなー、と半分諦めるような思いで、透は迫り来る番兵達を迎え撃つ。翼の持つ速度で翻弄し、敵の群れを躱した彼女は、番兵達を呼び出す獏執事に、『柳』による一撃を見舞った。
「――で、敵は退けたわけだけどさあ」
助け出したピーノくんの安らかな寝息を聞きながら、うーん、と透は頭を悩ませる。
「ほら、いいかげん起ーきーてー!」
やけに既視感のある光景。揺さぶってはみるがその反応は薄い。というか明らかに起きるつもりがなさそう。
「やっぱり六人揃えないとダメ……?」
普段はこの通り怠け者の極みを行く彼等だが、六人一組に揃えると目覚ましい働きをみせる。その状況に持ち込めば強制的に起こすことも可能だろうが……。
「近くのピーノくんの所まで連れていくかなあ」
また抱えて飛ぶのも大変なので、透は寝そべった丸い身体を転がしにかかる。すると。
「アーー……」
「……うん?」
「転がして移動されると、雪がくっついて太っちゃうんデスヨネー」
「……」
ははあ、と息を吐いて、透は目の前のピーノくんの顔を覗き込んだ。
「いつから起きてた?」
「……」
気まずい沈黙が流れる。どうしようかな、と視線を彷徨わせるその姿を半眼で眺めていると、何となく、見覚えがあるような……。
「……小豆のアイス食べマス?」
あ、氷の女王の時の子だ。
大成功
🔵🔵🔵
納・正純
【授与】
付き合ってもらって悪いな、有
物語を喰らう獣ってのにシンパシーを感じてな、興味があるんだ
さて、取引の時間だぜ? お前の力を見せてくれ
上手くいったら煙草でも酒でも持ってってやるさ、お前が満足するまでな
・方針
戦うのは有に任せ、俺はレアものを自作するのに専念する
手頃なピーノくんに【知性有理】を撃ち込んで、ありったけの知性と知識を授けよう
後はそいつと一緒に逃げるなり、俺がそいつを担いで逃げるなり、流れに任せるさ
いずれにしても片手は空くだろ?
眠くなろうが、一発くらいなら戦ってる有の援護は出来るだろうぜ
・台詞
喫煙者のピーノ君なんざいるか? もしいたら最高だがな
逃がした奴だけでいいのかい、欲がないねえ
芥辺・有
【授与】
ふーん……まあ、そういうの好きそうだからね
見せびらかせるほど大したことできるワケでもないが
そうだね できるかぎりはやるようにしよう
タバコのためにでも
正純が何だかんだしてる間に、敵が群がらないように蹴散らそう
しかし寒い中でよく寝られるよ、この雪だるま
起きないようなら物とかで釣ってさ……
……タバコくらいしか持ち合わせなかったな
……と、そっちに関わってる場合でもないか
紅茶だっけ?温かいのがほしいとこだったんだ 寒くてね
眠気なんてのはこう、杭でちょいと手でも掻き切れば目が覚めるかな
あとは見落とさない限りはどいつも串刺しってヤツだ
まあ、逃した分くらいは頼むよ
●知性派雪だるま
「付き合ってもらって悪いな、有」
不思議の国へと降り立った納・正純(Insight・f01867)は、早速今回の協力者、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)へと声をかけた。今回こちらへ出向いたのは他でもない、侵攻する猟書家の在り方に知識欲が疼いたためだ。
「物語を喰らう獣ってのにシンパシーを感じてな、興味があるんだ」
「ふーん……まあ、そういうの好きそうだからね」
平坦な口調でそう返して、有は周囲に視線を巡らせる。その辺に転がる、横倒しになった雪だるまのような連中が、件の愉快な仲間だろう。そして、それらを覗き込みながら、虹色の霞を漂わせているのが今回の邪魔者か。
同様にそれを認識したのであろう、正純の口の端に笑みが浮かぶ。
「さて、取引の時間だぜ? お前の力を見せてくれ」
「そうだね。できるかぎりはやるようにしよう」
彼特有の芝居がかった物言いを受け流すようにしながら、有は黒色の杭を手に、敵へと足を踏み出した。
まあ、見せびらかせるほど大したコトはできないけれど。
「上手くいったら煙草でも酒でも持ってってやるさ、お前が満足するまでな」
なるほど。ならばこれはタバコのための闘いだ。
依頼の内容は至ってシンプル。何やら試したいことがあるという正純に、邪魔が入らないようにするだけだ。相手となるのはこの辺りに展開している敵、獏執事達。
「お仕事で御座いますか……大変ですね。お仕事の前に、紅茶とお菓子でも如何でしょうか」
こちらを認識した獏執事からの提案に、有は手の内で杭を遊ばせる。敵の動きの機先を制して蹴散らすのも一つの手ではあるだろうが。
「……丁度温かいのがほしいとこだったんだ」
早速用意されたテーブルについて、彼女は一杯お茶を貰うことにした。
「それでは、ごゆっくり」
「ああ」
注がれたそれに口を付ける。何しろこの国は無闇に寒い。柔らかな湯気を立たせる紅茶はいつもよりも美味しく感じられることだろう。
サボっているように見えなくもないが、これも敵を引き付ける事にはなっている。彼のオーダーから外れては居ないだろう。
温かなそれを楽しみながら、有は依頼主の方へと目を向ける。少し離れたそこに居るのは正純と、呑気な寝顔を晒した雪だるま。
「しかし、この寒い中でよく寝られるよ」
自分が同じことをしたら凍死してしまいそうだが、身体が雪で出来ていそうな彼等にはむしろ心地良いのだろうか、眺めていても愉快な仲間に目覚める気配はない。正純が何をしたがっているのか聞いていないが。
「起きないようなら、物で釣ってみるとか」
まあ、私はタバコくらいしか持ってないけど。
「いや、タバコより良いものがあるぜ」
そう言って、正純が取り出したのは彼の愛用する精霊銃だ。眠りこける雪だるまへと銃口を向けた彼は、迷いなく引き金を引いた。
『知性有理』、銃声と共に飛び出した弾丸は、貫いた対象へと多くの知識と豊かな知性を授ける。それはこの愉快な仲間とて例外ではない、何一つ悩みの無いような間抜けな寝顔を晒していた雪だるまが目を開くと、そこには穏やかな理性の色が浮かび上がっていた。
「遠路遥々ようこそ、猟兵諸君」
ふ、と意味深な笑みを浮かべた雪だるまは、やけに滑らかな口調で喋り始める。
「成る程、かの猟書家と事を構えるのであれば、我々の存在は良い釣り餌となるだろう。――よろしい、誰かが身を呈さねばならぬと言うのならば、私がそれを担おう」
「ああ、話が早えな」
眠いだの面倒くさいだの、その手の欲求と我儘を超えるのは、他ならぬ『理性』なのだから。これも正純によるレアモノ作成の副産物と言えるだろう。
「だが猟書家に挑むというのならば、まずは目の前の障害を排除するべきでは?」
「心配するなよ、そっちの方は――」
知性派ピーノくんの懸念に答えながら、正純は協力者の方へと視線を向けた。
何かおかしなことになってるな、と正純らを観察していた有は、この辺りが頃合いかとお茶を飲み干す。
「おかわりは如何です? それとも、そろそろお休みになられますか?」
「いや、どっちも要らない」
すかさず告げられた獏執事の申し出を断って、有は杭の先端で自分の掌を掻き切った。先程の紅茶によって湧き上がる異常な眠気をその一手で収め、金の瞳で敵を見遣る。
瞬間、零れ落ちた血と同じ色の杭が生じ、獏執事達をその場に串刺しにした。
「援護は――要らなそうだな」
「一つくらい残しておけばよかった?」
いや、と首を横に振った正純は、拳銃の代わりにライターを手に取り差し出す。
そうしてひと時の間、紫煙を燻らせて。
「私にも一本いただけるかな?」
「……ピーノ君にも喫煙者が居たのか?」
「いや、知識だけはあるのだが、体験したことが無くてね」
殊勝なことを言ってタバコを咥える雪だるまを、正純と有が物珍し気に見守る。
彼等の前で目を瞑り、煙を深く味わったピーノくんは、身体の中で十分に冷えた空気を、ゆっくりと吐き出した。
「意外と様になってるな」
「タバコは凍ったみたいだけど」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
物語を食べる獣か。ピーノくん達がただのお洒落な黒服雪だるまになるなんてとんでもないしきちんと止めないとね。
囮にするにも心苦し…くはあるけどあんまり悲壮感が湧かないのはピーノくんなら何とかなると思ってるからかな?
さて、UCで攻撃力強化しつつ羊狩りへ。
木陰や氷の建築の影に隠れながら忍び寄り一気に距離詰め一撃を。
番兵羊が出て妨害してきても獏執事をとにかく優先で潰す。
美味しそうなピーノ君…氷像近くで元気貰ってそうなピーノくん、とか?
普通に起こして協力要請。大丈夫、もっとゆっくり眠れる場所まで来てくれるだけでいいから、と猟書家の方へと誘導する。
…倒せば元通り、だから嘘じゃないよね。
※アドリブ絡み等お任せ
●囮確保
冷たい木々の合間を抜けて、氷で出来た建物の影に潜み、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はアイスの国を駆ける。何度か訪れた事がある分だけ、土地勘もあるのが幸いした。ここの住人達が集まって良そうな場所にも当たりは付いている。漂う虹色の霞を裂くようにして飛び出した彼女は、風の魔力を纏った槍の一閃で、獏執事を貫いた。
「な、何が……!?」
起きたのでしょうか、と続ける間もなく、獏執事は力尽き、倒れる。
「ああ、仕事の邪魔をしないでいただけますか?」
「そうもいかないんだよねぇ」
仲間の一体がやられたことで奇襲に気付き、周囲の獏執事達が迎撃の構えを取る。眠りを誘う虹色の雲とは別に、羊の番兵達が呼び出され、執事達の周りを囲み始めた。
「ええ……ちょっと数が多くないかな?」
とはいえ、それはそれで好都合。何もこれらすべてを相手取る必要はないのだ、召喚主である獏執事だけを狙うならば、番兵達を死角に使うこともできる。迫り来る敵の妨害をものともせず、クーナは素早くその場を平定していった。
「……とはいえ、ここからが本番だよね」
敵が居なくなれば、後に残るのは眠りこけたピーノくん達ばかり。彼等に限って風邪を引くこともないだろう、ということでクーナは囮に相応しい個体を選び始めた。
「それにしても、物語を食べる獣か……」
この愉快な仲間達がただの雪だるまにされてしまうなんて、と思考を巡らせる。囮としてそんな目に遭わせるのも心苦しい……ような、そうでもないような。彼等ならきっと何とかなるだろうと考えつつ、彼女は氷の劇場へと至った。
「こう、氷像近くでよく冷えてそうな子、とかかな……」
とりあえず目当ての個体を定めて、揺り起こす。簡単に事情を説明すれば、彼等はすぐに協力してくれるだろう。
「――というわけで、手を貸してほしいんだ。一緒に来てくれないかな?」
「エー」
「めんどくさそうだね……大丈夫、もっとゆっくり眠れる場所まで来てくれるだけでいいから」
「本当デスカー?」
うんうんと疑いの眼差しを受け流して、クーナはそのピーノくんを連れて、猟書家の居るはずの場所へと向かっていった。
「……まあ、倒せば元通り、だから嘘じゃないよね?」
大成功
🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
【咲日花】
シャボン玉に乗って獏をえいえいっ
ピーノくん、だいじょうぶ?
ピーノくん、あそぼうっ
きょうはまめまきをするんだよね、クロバっ
アイスにぴったり合う
ピーナッツチョコが食べほうだいだよ
おにはね、とくべつなかっこうをしなくちゃいけないんだ
そこに立っててね
わたしたちでかざりつけちゃうから
正月と豆まきとバレンタイン全部混ぜ
ピーノくんの頭にみかんを乗せ赤いリボンでむすんで
鬼の面
どうかな?
頷いてもらったら笑って
ピーノくん、おっけーだってっ
じゃあ、いくよーっ
おにはーそとっ
ふくはーうちっ
宣言通りピーナツチョコをぱらぱら
つまみ食いしながら
おいしいっ
クロバにもあげるね
わあ、クロバはやいっ
つぎはわたしがおにするっ
華折・黒羽
【咲日花】
黒帝と獏を倒し
ピーノさんを起こします
はい、節分が近いので
一緒に豆まきをしましょう
チョコはばれんたいんという催しに因んでのもの
オズさんが今ピーノさんに乗せたみかんは
正月の伝統的な飾り「鏡餅」を真似て
身につけているものは着物と言って…
と色々な事をピーノさんに教えながら着付けていき
完成したところでどうかなというオズさんの言葉に満足気に頷く
ふとやりすぎた気もしたが
オズさんとピーノさんが楽しそうなので
良しという事で
鬼は、外
福は、内
鬼面被ったピーノさんに豆をぽとん
つまみ食いも美味しく頂き
少し経ったら交代です
次は俺が鬼役をしますね
手加減無用ですので
ひょいひょい猫の様に身軽な鬼役が雪の上を走り行く
●ごちゃ混ぜ
黒い獣、黒帝を従えた華折・黒羽(掬折・f10471)の振るう刃虹色の雲を切り裂いて、シャボン玉に乗ったオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が上からえいえいと敵を仕留める。辺りの安全を確保したところで、ふわふわと降りてきたオズが、ピーノくんの傍らにしゃがみこんだ。
「ピーノくん、だいじょうぶ?」
返事がない。とはいえこれは「大丈夫じゃない」というわけではなく……。
「眠っていますね……」
聞こえてくる寝息を遮るように、黒羽は眠りこけたままの愉快な仲間を揺り起こす。
「ウゥ……心地良い虹色お花畑がぁ……」
まだまだ夢うつつ、といった感じのようだが、ようやく身を起こしたピーノくんへ、オズは元気よく声をかけた。
「ピーノくん、あそぼうっ。きょうはまめまきをするんだよね、クロバっ」
「はい、節分が近いので、一緒に豆まきをしましょう」
「エエー……」
寝起きのピーノくんはいつにもまして面倒くさがりなようで、「よくわからないけれど寝てたらダメですか?」という気配を醸し出している。
「アイスにぴったり合う、ピーナッツチョコが食べほうだいだよ」
「ウーンそれは惹かれマスネー……」
それじゃあ試しにやってみよう、と説き伏せた二人は、早速ピーノくんを飾り付け始める。
「何が始まるんデスカ?」
「おにはね、とくべつなかっこうをしなくちゃいけないんだ」
「今ピーノさんに乗せたみかんは、正月の伝統的な飾り『鏡餅』を真似たものです」
「ははぁ、ナルホド……?」
どっちにしろ動く気のないピーノくんの頭に蜜柑を乗せて赤いリボンで固定する。一方の黒羽は逐一解説を加えながら、着物を気付けていった。
「チョコはばれんたいんという催しに因んでのものです。それから、これは着物と言って……」
「それでね、これが鬼のお面だよ」
そうするとやがて、和洋折衷、というか正月と節分とバレンタインが一度に来たような姿が出来上がる。
「どうかな?」
そうオズが窺えば、黒羽が満足げに頷いて見せた。
「ピーノくん、おっけーだってっ。じゃあ、いくよーっ」
「オー、ばっちこーいデスヨー」
少し冷静になってみると盛りすぎているような気がしてきた黒羽だが、遊び始めたオズの表情を見て、「まあ良いか」と思い直した。
「おにはーそとっ、ふくはーうちっ」
「鬼は、外。福は、内」
口を開けて待ち受けているピーノくんにピーナッツチョコをパラパラと撒いて、ついでに二人もいくつかそれをつまみ食い。
「おいしいっ。クロバにもあげるね」
「ありがとうございます」
美味しいですねと頷きながら、豆まきに勤しんでいた黒羽だが、ふと鬼の様子を改めて見れば。
「ワーイ、ごちそうさまデース」
「……」
さっきから全く動く気配がない。これは豆まきと言うよりエサやりみたいになってはいないか。
「ピーノさん、鬼を交代しましょう」
「エッ」
「今度は俺に向かって豆を投げてくださいね」
「うぅ……ワカリマシタヨー」
渋々鬼のお面を渡して、ピーノくんが立ち上がる。ようやくちゃんと参加する気になったらしいと頷いて、黒羽は早速鬼としての役割に入った。
「それでは……」
「わあ、クロバはやいっ」
「アー! 待ってクダサイー!」
身軽な彼を捕らえるのは中々に難しい。ひょいひょいと飛び回る鬼を追って、オズ達は豆を手に駆けていく。
「手加減無用ですからね」
「そんなコト言われても全然追い付けませんヨー」
「クロバ、つぎはわたしがおにするっ」
しばし、森に賑やかな声がこだました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花剣・耀子
めでたしめでたしで閉じられるよう、努めるとしましょう。
紅茶もお菓子も今は結構。
動きが鈍るなら、手数を増やせば良いのよ。
ねこの分霊を呼び出しましょう。
あの執事はあたしが斬るから、その間に美味しそうなピーノくんを探して頂戴。
……。…………大雑把過ぎる? そう。そうね……。
美味しそうというのなら、やはり目に楽しいのがよいと思うの。
おしゃれな子はいないかしら。いた?
それじゃあ盛りましょう。
雪でおだんごを作って、おはなをたくさん飾るわ。
キラキラのスパンコールも降らせるわね。かわいいもの。きらきらよ。かわいい。
長めの睫毛も付けてあげるわね。かわいい。
……起きる気配がないなら、このまま運びましょうか。
●しんでれら
「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
いつもと同じ、物騒な機械剣を携えた花剣・耀子(Tempest・f12822)に、虹色雲の獏執事が紅茶を給仕し始めた。
「いいえ、紅茶もお菓子も今は結構」
「そう仰らずに。寝付きの良くなる特別なハーブも添えますから」
相手が答えなど求めていないことを知りながら、彼女は律義に断って前へと踏み出す。途端、その歩みが急激に遅くなる。身体が重いというよりは、ただ反応が鈍いという、奇妙な感覚。敵のユーベルコードに寄るものなのは、考えるまでもなく明らかだ。
「――あの執事はあたしが斬るから、その間に美味しそうなピーノくんを探して頂戴」
処理能力が落ちると言うなら、並行してこなすまで。鈍くなった足を構わず進めながら、耀子は《花映》、機械剣とリンクした分霊へとそう呼び掛けた。大きな猫のような形のそれは、すぐにそれに応じて。
「……」
いや、応じたけれども。小首を傾げたそれは、続きを促すように耀子の顔をじっと見ていた。
「…………大雑把過ぎる? そう。そうね……」
改めて考えると丸投げが過ぎただろうか。今回は美味しそうという概念自体が変わっている上、その種類も多岐に及ぶ。あまりにも面倒だが、少なくとも方針きらいは示さなくてはならないだろう。
「やはり目に楽しいのがよいと思うの。おしゃれな子はいないかしら」
それならば、と動き始めた分霊を見送って、耀子は機械剣を駆動させる。自分の動きは酷く緩慢になっているけれど、その刃の唸りは変わらずその場に響き渡った。
時間を稼ぎ逃れようとする獏執事達を斬り伏せて、耀子は緩慢ではなくなった動きで、分霊の姿を探す。
「いた?」
応えるように、顔を下げた猫の鼻先を目で追えば、そこには寝息を立てるピーノくんの姿があった。
「おしゃ……れ……?」
思わず耀子も首を傾げる。周りに何人も転がる雪だるまと、その衣装に大して差があるようには思えない。しかしよくよく見れば、毛皮付きの外套を着崩しているような気配があるし、新雪のように肌艶も良い気がする。とりあえずこの子にしようと決定して、耀子はその傍らに膝を付いた。
「それじゃあ、盛りましょう」
雪だるまのような彼等を盛るなら、順当に雪を使うべきだろう。積もった雪でおだんごを作って、たくさんの冷たいお花で飾り付け。キラキラのスパンコールも降らせてあげれば、素朴な印象のピーノくんも違って見えてくるだろう。
「わるくないわね……」
かわいい。一人納得するように頷いて。
「あの、猟兵サン……?」
「せっかくだから、長めの睫毛も付けてあげるわね」
途中でピーノくんが目を覚ましたようだが、ここまで来たら止められない。
一体何をしているのか、と問う彼に、耀子は鏡を差し出して見せた。
「こ、コレが、僕……!?」
「かわいいでしょう?」
「カワイイ……」
雪だるまにしては血色が良く見える化粧に、眺めの睫毛で彩られたつぶらな瞳。
「そうか……モシカシタラ、僕は女の子だったのカモ知れませんね……」
謎の悟りを得たピーノくんを立ち上がらせ、耀子は導くようにして、その手を差し出す。
「そうね。そのかわいい姿を、連中にも見せてあげましょう」
まあ、その連中と言うのは猟書家ということになるのだが。
風に吹かれ、ピーノくんの身体から落ちたキラキラが、彼女の道行を眩く彩っていた。
大成功
🔵🔵🔵