17
アイスケーキバイキング

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ベスティア・ビブリエ #愉快な仲間 #ラクトパラディア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#ベスティア・ビブリエ
🔒
#愉快な仲間
#ラクトパラディア


0




●冬の眠り
 不思議の国にも、冬は訪れます。
 アリスラビリンスの一角、何もかもがアイスで出来たこの国にも、四季に似た変化によって、一層冷たい風が吹くようになりました。シュガーパウダーのようにちらついていた雪は、あっという間に勢いを増して、ケーキの表面みたいに白を重ねていきます。そんな冷たい風も、雪の温度も、ここに住まう愉快な仲間達にとってはむしろ心地良いものらしく、自分によく似た雪だるまを作ったり、雪の布団に寝転んだりと、彼等らしく呑気に過ごしていました。
 けれ、そんな中、雪に混じって一冊の本が落ちてきました。
「痛ーイ!?」
 ちょっと分厚いその本は、寝転がっていた愉快な仲間の頭に命中し、一度跳ねた後、ばさりと地面に落下します。そうして捲れたページから、不思議な光が広がって――。
「ワー、何デスカこれ?」
「だんだん眠くなってきマシタネー」
 ああ、それはまるでお花畑。色とりどりの花弁と蝶が舞い、柔らかな虹色の雲が、彼等を眠りに誘います。ただでさえのんびり屋の彼等が、それに抗えるはずもなく。

 最後に本の中から姿を現した諱舌m縺励>鬲皮坤が、舌なめずりをするように辺りを見回すと、そこには鄒主袖縺励>縺秘」ッがたくさん並んで。

「縺ィ縺ヲ繧らセ主袖縺励◎縺」

「はあ……何だか力が抜けていきマスー」
「今日はよく眠れソウ……」

 待っているのは、深い深い眠りの時間。雪の降り積もる白紙の世界。
 物語を食べられてしまった彼等は、そうしてただの雪だるまになってしまいました。

●猟書家との戦い
「やあ、諸君。集まってくれてありがとう」
 昨年より続く猟書家の侵攻は、今なお勢いを緩めることなく続いている。そんな中、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が察知したのは、アリスラビリンスにあるアイスの国について。
 以前猟兵達が開拓に手を貸し、ラクトパラディアと名付けられたその国は、あらゆるものが甘いアイスで出来ており、雪だるまによく似た愉快な仲間が暮らしている。
「あそこの住民はだいぶのんびりした気質らしくてね。あの魔獣の侵攻にうまく対応できるかと言うと……」
 そう言って、彼女は物憂げに目を細めた。予知の事もあり、猟兵の協力は不可欠だろう。

「今回現れるのは、ベスティア・ビブリエ……猟書家の一体である恐ろしい獣なのだよ」
 その魔獣は物語を喰らう。対象の記憶を、経験を、情報を、夢や希望すら奪い取って食べてしまう。愉快な仲間にはこれがどうやら致命的なようで、『根源の情報』を奪われると、即死――この国の住民の場合は、ただの動かぬ雪だるまと化してしまうのだという。
 これは猟兵達でも避けることができず、経験を奪われれば熟練の技を失ってしまうだろうし、記憶を奪われれば戦い方もわからなくなり、やがては何故ここにいるのか、自分が何者なのかすらわからない、廃人と化してしまうだろう。
「厄介な手合いだということは十分わかってくれたかと思う。しかし、付け入る隙はあるのだよ」
 グリモア猟兵はそう告げる。突破口となるのは、やはり『愉快な仲間』。
「物語が複雑で、そうして膨大であればあるほど食べ切るのには時間がかかる。その上、愉快な仲間というのは『とても美味しそう』に見えるらしくてね」
 そこで言葉を切った彼女は、少しばかり申し訳なさそうに。
「つまり、ここの住人に囮になってもらおう、というわけだよ」
 愉快な仲間を敵の前に連れて行き、ベスティア・ビブリエがそちらの食事に夢中になっている間に攻撃する、という流れになるだろうか。幸い物語を喰らう行為は物理的な痛みもダメージも伴わない。さらに敵を倒せば奪われた物語は持ち主のもとに戻るということなので……最終的に敵を倒せれば、犠牲者ゼロで終わらせることが可能であると彼女は続けた。

「現在、ラクトパラディアの住人は、ベスティア・ビブリエ配下の力によってほとんど眠らされている」
 猟書家に先立って現れた『虹色雲の獏執事』達は、たくさんいる愉快の仲間の中から、より美味しそうな、食べ甲斐のある者を吟味しているようだ。
「まずはそこに乗り込み、敵を倒しながら、その後の囮に丁度良い者を探してくれたまえ」
 普通に起こして協力を求めても良いし、眠ったままの者を運んで行ってもいい。しかし、そこら中に居る同種の愉快な仲間達の中でも、『変わった者』を選んだ方が、その後の囮としては相応しいだろう。
「少々心は痛むかもしれないが、結果的には彼等のためにもなることだ。優先順位を忘れず、使命を果たしてほしい」
 それでは、頼んだよ。最後にそう告げて、グリモア猟兵は一同を送り出した。


つじ
 どうも、つじです。今回の舞台はアリスラビリンスのアイスの国、猟書家の侵攻に絡んだ、二章構成のシナリオになります。

●プレイングボーナス
 ピーノくん、もしくは種族が愉快な仲間の猟兵を囮にすることができます。一組につき囮一名が推奨です。それ以上に囮を用意しても構いませんが、その分敵の動きも読みにくくなります。

●氷菓の国『ラクトパラディア』
 アリスラビリンスにある不思議の国の一つ。凍った湖の真ん中にある島で、木や岩、花に果実、建物まで全て甘いアイスで出来た国です。
 以前猟兵達によって開拓された国で、観覧車付きのお城、氷樹の森、氷の家で出来た街などがあります。

●愉快な仲間『ピーノ・オブコート』
 ピーノくん。黒い防寒着を纏う雪だるま、といった見た目の愉快な仲間です。気の良い怠け者で、今回は基本的に全員寝ています。
 独特の死生観を持っているためか、『情報を食べられること』に対してあまり恐怖を覚えていません。あまり重く考えず、気楽に囮にしてください。

●第一章
 敵は『美味しそう』なピーノくんを探しているので、先手を取りやすくなっています。敵を蹴散らしつつ、ボス戦の囮になる愉快な仲間を確保してください。
 ピーノくん達は基本的に猟兵に好意的ですが、怠け者なので動くのを嫌がります。何とかしてあげてください。
 また、情報量の多い個体ほど『美味しそう』と見られ、囮としてよく機能します。変わったピーノくんを探したり、強烈な経験をさせたり、奇抜な格好をさせるなどすると、後の戦いをより有利に進められるかもしれません。

●第二章
 ボス戦です。まともに戦うとかなり強いです。
 敵は『愉快な仲間』を最優先で狙いますので、その間に攻撃する形がオススメです。種族が『愉快な仲間』の猟兵さんは、用意した囮をより目立たせるか、がんばって抵抗してください。

 以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
206




第1章 集団戦 『虹色雲の獏執事』

POW   :    「邪魔が入るようですね。番兵さん、出番です」
自身が【自身や眠っているアリスに対する敵意や害意】を感じると、レベル×1体の【虹色雲の番兵羊】が召喚される。虹色雲の番兵羊は自身や眠っているアリスに対する敵意や害意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
【リラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるリラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    「外は危険です。こちらにお逃げください」
戦場全体に、【強い眠気と幻覚を引き起こす虹色雲の城】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月舘・夜彦
【花簪】
ピーノ殿達との関わりも何度目になりますか
……彼等も大変ですね

囮についてはオオカミ殿がおりますし
御本人もやる気に満ちておりますので任せられそうです
私はピーノ殿の誘導とオオカミ殿を美味しそうにすることに尽力致します

オオカミ殿、今回の美味しそうは異なりまして
貴方の記憶や体験という情報の量が必要になります
オオカミ殿は個性的ではありますが、見た目では分かり難いです
つまり……賑やかにすること
月夜ノ御使イにてバディペットを呼び出し
オオカミ殿を東雲に乗せ、そして肩には春暁
これだけでも賑やかで情報量が多くなりそうな気がします

私は何も出来ておりませんので、敵を倒しにいきましょうか
戦いも派手にいきましょう


ジョン・フラワー
【花簪】
アイスなアリスたちを囮にする必要はないさ!
この僕がいるんだもの!

というわけで今のうちに楽しいチャージ!
おいしそうに見えるようにいろんなことをするんだ!
クリームや塩を塗った方がいいかな。金属は外しておくべき?
なんだい違うのかい! 注文が多いなあ!

ものすっごい体験かあ
毎日楽しいから改めて言われると悩んじゃうね
簪のアリス何かある?
ワオ! 馬に乗るのは初めてだなあ!
鳥もお友達だ! アリスも一緒に乗って歌わないかい!
こういう音楽隊がいるんだよ! 愉快だねえ!

虹色のふわふわもなんとかしなきゃ
やあふわふわ君! 僕おいしそうにみえる?
キミと戦ったらもっとおいしそうになれる?
だったらやるしかないなあ!



●トリプル
「アイスなアリスたちを囮にする必要はないさ! この僕がいるんだもの!」
「でしたらお任せしましょう、オオカミ殿」
 やる気に満ちたジョン・フラワー(夢見るおおかみ・f19496)の言葉に、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が頷いて見せる。また巻き込まれた愉快な仲間達を、囮としてどうこうするよりは、きっと胸も痛まないし、安心できるはずだ。
「えーと、クリームや塩を塗った方がいいかな。金属は外しておくべき?」
「オオカミ殿」
 前言撤回。心配度合はあまり変わらないような気がしてきた。
「なんだい違うのかい! 注文が多いなあ!」
 夜彦の言及に従って、ジョンはお茶会セットから取り出そうとしていた調味料を仕舞い直す。普通なら頭を抱えたくなるところだろうが、この辺りは慣れたもの。夜彦はさも当然のように軌道修正を試み始めた。
「今回の美味しそうは異なりまして、貴方の記憶や体験という情報の量が必要になります」
「ものすっごい体験かあ……毎日楽しいから改めて言われると悩んじゃうね」
「とはいえ、今からそんな強烈な体験を狙うのは難しいでしょう」
「えっそうなの?」
 じゃあどうしようか。そう首を傾げるジョンに、夜彦は腹案を披露する。
「オオカミ殿は個性的ではありますが、見た目では分かり難いです」
「えっそうなの!?」
 こんなに綺麗な花輪が二つも付いてるのに!? ジョンの驚愕は置いておいて、夜彦は盛る方向に舵を切った。
「もっと賑やかにしましょう」
 こういう場合、基本は足し算である。『月夜ノ御使イ』――というか、夜彦は引き連れていた動物達に、ジョンの援護をするよう伝える。
「オオカミ殿、乗馬の経験は?」
「初めてだよ!」
 でしたら、と東雲の上へ彼を押し上げて、イヌワシの春暁をその肩へ。
「馬の背中って結構高いんだね! ワッ鳥もお友達だ!」
 はしゃぐジョンの元に春暁が舞い降りて、馬、オオカミ、イヌワシの三段重ねが出来上がった。これで、見た目だけでも随分賑やかになっただろう。それに――。
「アリスも一緒に乗って歌わないかい! こういう音楽隊がいるんだよ! 愉快だねえ!」
 そう、こんな感じの賑やかな音楽隊も居る。旅する彼等にちなんで歌い出そうとするジョンの様子を、もう一人……虹色雲の獏執事がじっと見つめていた。
 それに気付いたジョンは、相変わらず愉快気な様子で手を振って。
「やあふわふわ君! 僕おいしそうにみえる?」
「悪くないですね……何かこう、その三段重ねには物語を感じてしまいます……」
 吟味するように、考えながら執事はそう答えた。きっとこれならば、主も美味しく食べてくれるだろう。そんな高評価を感じさせる声に。
「わあ、ありがとう! キミと戦ったらもっとおいしそうになれるかな? だったらやるしかないよね!」
 にっこりと笑ってそう告げたジョンは、はさみと木槌を両手で構える。
 馬上で。
「ねえ簪のアリス。これどうやって戦えば良いんだい?」
「……」
 そういえば乗馬は初めてでしたか。そう頷いた夜彦は、腰の太刀へと手を遣った。
 丁度良い、と言えなくもないだろう。「今回あんまりやることがない」と若干手持無沙汰になっていたところだ。それに、見た目を盛った効果もあって、獏執事達はどうもジョンの姿を目で追っている節がある。
「とりあえず、走り回っていてください」
「わかった!!」
 わーい、みたいな歓声を上げるジョンを乗せて、東雲が走り出す。すると案の定、獏執事達の注意はそちらに引っ張られて――。
「それでは、後は私が」
 そこに閃く白刃が、虹色の雲を順に両断していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【エレルA】

ピーーーーノ!!!!!
ピーーーーノが寝ている!!!!タイヘン!!!

コレが囮になる。うんうん。
コレは愉快な仲間。うんうん。
狼の姿に変身しておびき寄せるを使う。賢い。

ワンワンワン!!!
コレは愉快な仲間だカラ羊を食べる。偉い。

ピーーーーノ!!!!!シンジュダメ!!!
ピーーーーーーノが囮!!!バーツ!
アァ……ピーーーーノが手を挙げてる…。
アァ……連れて行かれた……。
カナシイ。コレはカナシイ。

レンゲツは分かってくれる。
ピーノ囮ダメ。おーけー?
ええ……。ダメ?ピーノいいヤツ。
ピーノはコレの仲間。

仕方が無いカラ元に戻ってピーノを見守る。
狼のままだと守れる?
コレは賢いカラ狼に戻る。

ワン。


雅楽代・真珠
【エレルA】
ぴぃのがまた危ないようだ
僕がいないとぴぃのは本当に駄目なのだから

執事?
僕の如月の方が格上だよ
如月、主命だよ
やっつけて
先手必勝だ

ぴぃの、お起き
こら、ぴぃの
寝ないの
お前を素敵なところへ連れて行ってあげるよ
一等へんてこなぴぃのは、もう働かなくてよくなるよ
ただの雪だるまになって怠惰に過ごせるようになる(かもしれない
我こそは一等へんてこだと思うぴぃのは手をあげてご覧
…多いね
エンジ、煉月
どのぴぃのが一等へんてこ?
選んで

大丈夫だよ、エンジ
ぴぃのが危なそうだったらお前が護ってあげればいいんだ
狼姿のままでいれば騙せるかもしれないよ?

煉月がお洒落をさせたぴぃのにりぼんを結んで目印
ぴぃのの準備も万端だ


飛砂・煉月
【エレルA】

ぴぃの、ピーノ
美味しい国で雪だるまがいっぱい寝てるや
オレは初めて会うけど、皆知り合いなんだね

よし、変な執事蹴散らすトコから?
ハクって相方の名を呼び
白の槍にしたら竜牙葬送でダッシュ
槍投げで仕留めちゃおう
邪魔だよ、邪魔

ゆさゆさ、ゆさゆさ
ほーら、起きる時間だよー
いっぱいのピーノがもう自分で手上げてる
怠け者なのに挙手は素早い
真珠ってば扱い上手

オレ的に一体だけ面白い動きしてるアイツって指差す
序に着替えもどう?
面白い服の方が目立つしさー
後は記念撮影とか

ほらエンジ
真珠も言ってるけど狼で護ってあげたらバッチリだよ
オレも狼の方が良かったかな
あんまなった事ないけど
ともあれ目印のリボンで準備は完了だね~



●挙手制
 死屍累々。そう称するべき光景が、猟兵達の前に広がっていた。うつ伏せだったり仰向けだったり、思い思いに寝転んだ雪だるま型の住人達は、皆大人しく寝息を立てている。
「ピーーーーノ!!!!! ピーーーーノが寝ている!!!! タイヘン!!!」
「騒ぎすぎだよエンジ。ぴぃのが怠けているのなんて、珍しくもないだろうに」
 現場の惨状を見て悲鳴を上げるエンジ・カラカ(六月・f06959)を、雅楽代・真珠(水中花・f12752)が溜息混じりに宥める。とはいえ、このまま放っておけば猟書家の餌食になってしまうのもまた事実。こうして彼等が危機に陥るのは、果たして何度目になるのやら。
「僕がいないと本当に駄目だねぴぃのは……」
「ピーノ、か。オレは初めて会うけど、皆は知り合いなんだね」
 ふうん、と鼻を鳴らして、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)は倒れ伏した愉快な仲間達を順に眺める。冷気と共に感じる、アイスの柔らかな甘い香り。この不思議な国の住人としては相応しい姿ではあるが……。
「よし、まずはあの変な執事を蹴散らそうか」
 パステルカラーのこの世界に馴染んでいるようにも見えるが、やはり異質な気配を感じざるを得ないオブリビオン――獏執事達に目を向けて、煉月は相棒の名を呼ぶ。
 ハク。そう呼ばれた竜は、その身と同じ白銀色の槍となり、煉月の手に収まった。
「ならコレが囮になる。うんうん」
 おもむろに申し出て、エンジが狼の姿に変身する。雪混じりの風の中、黒い毛並みを靡かせて。
「これでコレも愉快な仲間。うんうん」
 そう頷く。『美味しそうなもの』を探している獏執事達は、現れた狼をチラ見するが。
「うーん、何か違う気がするんですよね……」
 速やかに元の作業に戻っていった。
「オオ……コレはこんなにも愉快な仲間なのに……」
「うん……うん?」
 フォローを入れた方が良いのか? 若干迷いながらも、エンジとピーノくんに気を取られた獏執事へ、煉月がその槍を振るう。鋭い穂先が届くと同時に、轟く竜の咆哮が敵を穿つ。
「いけませんね。そんなにうるさくしては、皆さん起きてしまうではないですか」
 すると、仲間の一体がやられたのを見遣り、残りの獏執事達が羊の番兵達を続々と呼び出し始めた。
「ワンワンワン!!」
 羊と聞いては黙って居られず、狼だか犬だかわからない声を上げて、エンジがそちらに喰らい付く。そして、真珠が従えていた『鬼』もまた。
「如月、主命だよ。執事として、お前の方が格上なのを教えてやるんだ」
 硝子玉のようなその瞳を輝かせて、獏執事達を仕留めにかかった。

 先手を取った彼等が、敵の群れを薙ぎ払うのにそう時間はかからなかった。虹色の雲が薄まったそこには、ただただ寝転がったピーノくん達が残るばかり。
「ぴぃの、お起き」
「ほーら、起きる時間だよー」
 真珠がそう声をかけて、煉月がゆさゆさと手近な雪だるま達を揺り起こす。まだ眠いー、などという声も聞こえてきたが。
「おやー? おはようゴザイマス猟兵サン」
「そしておやすみなさい猟兵サーン」
「こら、ぴぃの。僕が呼んでるんだから寝ないの」
 流れるように二度寝の姿勢に入った彼等を制止して、真珠は彼等に向けて語り始める。
「お前を素敵なところへ連れて行ってあげよう。一等へんてこなぴぃのは、もう働かなくてよくなるよ」
「エッ」
「ほんとデスカ?」
「ピーーーーノ!!!!! シンジュダメ!!!」
 寝転がりながらも反応を示したピーノくん達の様子に、エンジが嘆きの声を上げる。
「ピーーーーーーノが囮!!! バーツ!」
「エンジ……お前は確かに愉快だけど、愉快な仲間にはなれないんだよ」
 つまり、残念ながら囮の代わりは担えない。彼の言葉を却下して、真珠は提案の続きを口にした。
「我こそは一等へんてこだと思うぴぃのは手をあげてご覧」
「ハーーーイ!!」
「うわ、挙手だけ素早い」
「アァ……ソンナ……」
 一斉に手が上がる様子に、煉月が笑う。それから、肩を落としたエンジへと。
「大丈夫だよ、エンジ。ぴぃのが危なそうだったらお前が護ってあげればいいんだ」
「そうそう、真珠も言ってるけど狼で護ってあげたらバッチリだよ」
「ウーン……」
 本当に? しばらくそう渋ってから、仕方なくと言った様子でエンジは狼の姿へと戻った。
「それにしても多いね……。煉月、どのぴぃのが良いか選んで」
「えー、じゃああの一体だけ足上げてるアイツで」
 正直言って見分けがつかないので、面白そうな動きをしているやつを。そんな形で選ばれたピーノくんに、煉月は準備してきた衣装を着せる。
「記念撮影もしとく?」
「ワーイ」
「ほら、大人しくするんだよ」
 最後に真珠が目印代わりのリボンを巻いて、出来上がり。
「アァ……連れて行かれてしまう……」
 ひとまずは納得したものの、喜んで囮への道を進み始めたピーノを見て、エンジはへなりと尻尾を垂らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
【エレルB】

なんだい二人共
そんなに愉快なのに愉快な仲間じゃないの?
そりゃ見目は麗しいけどさ
シンジランナーイ

仕方ないから痛む心をおさえて
ピーノくんらの中から囮を立てる
一番中身が薄そうな子がいいね、気分的に
しかしどの子もうっっっすいなぁ
もうちょっとなんとかならなかったの?人生

僕の作戦はね
この薄い子を派手に飾って
なんかこう、知識量?情報量?アレが多く見えるようにさ
要するに薄いほどキャンバスが広いってことよ
例えばこのカンサイ風ジャケット(目がチカチカする柄)なんかいいと思う

大丈夫よ、ちゃんと元のピーノに戻してやるから
……なんだか戻りたくなさそうな気配が出てるね
……雪だるまは楽なのかい?
……気のせいかね


宵雛花・十雉
【エレルB】
おいおい、この中で一番愉快な男が何言ってんだい

けど愉快な仲間がいねぇんじゃ仕方ねぇよなァ
ピーノくんとやらに囮を頼も
って、みんな見事に眠ってんなぁ…
オレもここで寝てていい?
げ、スパンコールは勘弁

さぁて、まずは露払いだな
UCで蹴散らすぜ

なるほど、余白が多いほどたくさん書き込めるとか、未熟な方が伸び代があるとかそんな感じかい?
…って、いきなりドギツイやつ持ってきたなぁ
既に情報量が多くてツッコミが追いつかねぇよ
んじゃあダメ押しにこれもしようぜ、パーティー用鼻眼鏡

よっ、似合ってるぜピーノくん!
アンタが今日の主役だ!
なぁんか面倒くさそうだなぁ
抱っこしてってやろうか?
大サービスでおんぶでもいいよ


朽守・カスカ
【エレルB】
おや、全くおかしなことを言うね、師匠は
私を形容するならば「愉快な」ではなく「儚げで見目麗しい」ではないかな
……とまぁ、愛弟子ジョークはさておくとして
ピーノくんに囮をお願いするしかないから
目立つためにも沢山飾りつけよう

ピーノくんが眠気に抗う姿が想像できないが
【星灯りの残滓】
さぁ、これで存分に寝てても大丈夫
って、十雉君のことではないよ
君まで寝てしまったら
ピーノくん共々スパンコールで存分に飾り付けてしまおうか
(ピーノくんを盛り気味に、駄目押しと言わんばかりにキラキラ飾り付け)
(ランタンの灯りでゆらゆら照らせば)
ふふ、たとえ寝ていようとも
煌びやかで無視できない存在感を放つ囮の出来上がり、さ



●本日のスター
 ここを訪れるのも何度目か。皆で建てた城壁を遠目に見つつ、凍える風と甘い香りを懐かしみながら、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は仲間達へと向き直った。
「それじゃ、誰が囮やる?」
 そう問われた朽守・カスカ(灯台守・f00170)と宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は、二人で顔を見合わせて。
「誰と言われてもね」
「オレ達じゃ無理なんだよなァ」
 グリモア猟兵から得た前情報からして、それは確かなはずだけれど。しかし当のロカジは、意外そうな表情を浮かべてみせた。
「なんだい二人共、そんなに愉快なのに愉快な仲間じゃないの?」
「おいおい、この中で一番愉快な男が何言ってんだい」
「全くだよ。おかしなことを言うね、師匠は」
 軽い言いがかりに、やれやれと肩を竦めてみせたところでカスカが続ける。
「私を形容するならば『愉快な』ではなく『儚げで見目麗しい』ではないかな」
「いやあ、そりゃ見目は麗しいけどさ」
 だんだん言動が師匠に似てきたねえ、とそんな事を思いつつ、一同は改めて周りに視線を巡らせた。
「そうなると、やっぱりピーノくんらの中から囮を立てるしかないねえ」
「しっかし、みんな見事に眠ってんなぁ……」
 虹色の霞に囲まれ、すやすやと寝息を立てている雪だるま達を見ながら十雉が言う。これだけ居れば一人くらい、抵抗に成功していてもよさそうなものだが。
「まぁ……彼等が眠気に抗う姿なんて想像できないけれど」
「そうだねえ……」
 師弟でしみじみと呟き合ったところで、ロカジはとにかくこの場の方針を示す。
「できれば一番中身が薄そうな子がいいね、気分的に」
「余白が多いほどたくさん書き込めるとか、未熟な方が伸び代があるとかそんな感じかい?」
「そうそう、薄いほどキャンバスが広いっていう……」
 うんうんと頷きながら、足元に転がる彼等の寝顔を順に眺めて。
「しかしどの子もうっっっすいなぁ」
 思わず、胸の奥から溜息を吐いてしまう。何しろ揃いも揃って「趣味はお昼寝です休日は寝てます」みたいな顔をしているように見える。人生もうちょっとなんとかならなかったのだろうか。ならなかったんだろうな。そういう風に生まれちゃってそうだもんな。
「大差なさそうだから、一番しょうゆ顔の子にしよう」
「区別つくのか……?」
「まあ何となくね」
「何となくだね」
 ロカジとカスカで選んだあっさりした顔の子を、とりあえず揺さぶってはみるが。
「あぁ……まだ寝かせてクダサイぃ……」
「駄目そうかい」
「寝ているなら寝ているで、やりようはあるよ」
 そう頷いたカスカの手元、ランタンから零れた光が辺りに広がり、そこに居る者を癒し始める。ついでにピーノくんの飾り付けに集中している間は外部からの影響を受けないというおまけ付きだ。何やらさっきから濃くなってきている虹色の雲も、これなら眠気をもたらすことなく無効化できるだろう。
「さぁ、これで存分に寝てても大丈夫」
「オレもここで寝てていい?」
「十雉君も一緒に飾ってほしいのなら……」
 カスカの取り出した追加装飾用のスパンコールを見て、十雉は昼寝を断念した。
「目立たせるなら、まずはこのカンサイ風ジャケットなんかいいと思う」
「いきなりドギツイやつ持ってきたなぁ」
「さすが師匠。これなら私の用意したスパンコールも違和感なく馴染みそうだ」
 上着を着せ替えた上に盛り始めた彼等の様子を何とはなしに眺めていたところ、十雉は付近の獏執事達がこちらに向かってきている事に気付く。
「なぁ、敵はどうすんの」
「申し訳ないが、私はこちらに集中しないといけないのでね」
「ああ……じゃあこれも付けといてやってくれ」
 鼻眼鏡。追い打ちのそれを渡して、十雉は薙刀を手に敵の迎撃に取り掛かった。刃に添う紅蓮の炎が、虹色の雲を食い破るように疾り――。

「……様になって来たんじゃないかい?」
「そうだね。でも何か物足りないような……」
「化粧もさせてみようか」
「なるほど、この顔は化粧映えするかもしれない」
 そうこうしている内に魔改造はどんどん進んで行き、周りの敵が粗方片付くころには完成形へと至っていた。
「アノ……何か僕の身体眩しくないデス?」
「鼻眼鏡よりサングラスの方が良かったかもな」
 目を覚ましたピーノくんの呟きに、十雉が頷いて答える。カスカのランタンの灯に照らされた彼は、クリスマスの飾りもかくやという勢いでピカピカキラキラと輝いていた。
「たとえ寝ていようとも煌びやかで無視できない存在感を放つ、完璧な囮の出来上がり、さ」
 満足気に胸を張るカスカに対し、ピーノくんは「よくわからないけどカッコイイからいいや」とあっさり受け入れ態勢に入った。
「よっ、似合ってるぜピーノくん! アンタが今日の主役だ!」
 十雉からも声援が飛ぶ。この後の運命を考えると、多少胸が痛む面もあるが……。少しばつの悪い思いを抱きながら、ロカジはピーノくんの頭に手を置いた。
「大丈夫よ、最後にはちゃんと元のピーノに戻してやるから」
「そうデスカー……」
「何でちょっと残念そうなんだい……?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ
ふわーわ
眠気は我慢しないとね(持ち込んだエナドリ決め)
ちいさくなーれーちいさくなーれー

今回は相手の死角から集中に集中を重ねた幼児化の糸をぶっ放し
糸を裁縫の腕前で操り敵を満遍なく子供化させちゃうわ

子供の考える迷路なら難易度も大きく下がるでしょうし
アタシ自身幻覚の類への理解は深いから反撃もある程度簡単に抜け出せると予測するわ
はい、アイス(子供化したバクに食べさせて懐柔を試みる)

で、メインはどのピーノ君を囮にするか、よね

はい、それじゃウチの社員の人―手ー挙げてー
その中でもストライキしたことある人―
モデルもしたことあってー
(中略)
アリスを追いかけたことがある人ー
よし、キミね!(布と針を手に迫る魔の手)



●GOATia支社春の闘い
 薄く漂う虹色の霞が、極寒の空気の中でも柔らかな眠気を誘う。ふわぁ、と欠伸をしながらも、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)はそれを掻き消すべくエナドリをキメた。カフェインやら何やらが脳みそに染み渡り、瞼の自由落下が抑えられるのを感じつつ、彼女は早速敵の群れへと狙いを定めた。
 しっかり目を開いて集中。ちいさくなーれーちいさくなーれー。
「さ、お着替えの時間よー」
 飛び出したのはA&Wにある彼女の領地の名産品。時を戻す蜘蛛糸は、紡がれたそばから獏執事達を絡め取る。
「ああっ、なんてことをなさるのです!?」
「身体がどんどん小さく……!」
 愉快な仲間達を吟味中だった彼等は、抵抗できぬままに幼児へと変えられていく。迎撃、せめて時間稼ぎをと虹色雲の迷宮を作り出して見せるが。
「ま、子供の考えた迷路なんてこんなものよね」
 出来上がったのは、ただただ曲がりくねっただけの一本道。エナドリ缶を片手に、リダンはそれを悠々と踏破して見せた。今回ばかりは先制攻撃の決まった影響がとても大きい。関門をさっさと突破されてしまった獏執事は、動揺しながらも次の手に移ろうと試みる。
「えーい、こんどはもっとむつかしい迷路に――」
「まあまあ、これあげるから仲良くしましょ?」
 もう一度ユーベルコードを展開される前に、リダンは途中で採れたアイスの果実を三段重ねにして差し出した。
「し、しかたありませんね」
「アイスはおいしいですからね……」
 こういう時、幼児はあまりにもちょろい。こうして障害をすべて退けた彼女は、寝転がったピーノくん達の元へと辿り着く。ここからの問題は、どのピーノ君を選ぶか、ということになるのだが。
「みんな、起きてるかしら?」
「ワー、してんちょーサンじゃないですかー」
「あ、ちゃんと居るわねウチの社員」
 うんうんと頷いて、彼女は続ける。どうせ一人連れて行くなら、その辺りから選びたいところだ。
「じゃあウチの社員の人ー手ー挙げてー」
「ハーイ」
「その中でもストライキしたことある人ー」
「ハーイ」
「えっ、社員全員??」
「楽しかったデスヨー」
 そんなこんなで質問を繰り返し、候補を絞っていく。
「アリスを追いかけたことがある人ー」
「ハイ!」
「よし、キミで決まりね!」
「ワーイ、ヤリマシター」
 最後まで手を上げていた比較的元気なピーノくんを手招いて、リダンは布と針を手に、笑みを浮かべた。
「それじゃ早速、モデルになってもらうわね」
「ボーナスとか出マス?」
「それはこの後の働き次第かしらー」

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
【POW】

うー、囮かあ
かなり気が進まないケド
そうするしかないってんならやらなきゃ

『大鷲』で空から敵サンを探そう
雪色アイスの中なら虹色は目立ちそうだ
ピーノ君たちを襲っている獏執事を見つけたら最優先
先ずは突っ込んで蹴飛ばす!
番兵羊が出て来た時も一旦空中に逃げたり
スピードで振り切ったりしながら柳で応戦しよう

助けたピーノ君たちがまだ寝てる様なら
多少は安全そうな広場とかに6人以上になるまで集めるよ
安全になるまで避難してもらいたいしね
まあ兎も角、いつもの(息を吸って)
ほら、起ーきーてー!

顔見知りだったり
変わった服きたピーノ君が居たらそいつに囮を頼もう
ごめんな、ちょっと協力して欲しいんだ
絶対後で助けるからな



●久しぶり
 冷たくて甘いアイスの国は、凍った湖の上に成り立っている。島のサイズ自体はそこまで大きなものではなく、こうして――『大鷲』の力で空を舞う九之矢・透(赤鼠・f02203)は、すぐにその全容を再確認することができた。皆で建てた街並みに、いつぞや襲撃を受けた城の尖塔。様々な色のアイスに彩られ、何だかんだカラフルなこの国だが、今日は降り積もった雪のため、白く輝いて見える。
「意外とたくさん居るな……?」
 そんな光景だからこそ、国中で獏執事が広げる虹色の雲はよく目立つ。その中の一体に狙いを付けて、透は急降下していった。

 特に抵抗するでもなく眠りに付いたピーノくん達を順番に確認し、『美味しそうな』個体を探していた執事の一体が、「これなんか良いのでは?」と足を止める。見た目は他とさして変わらないようにも思えるが、その面構えは何かこう、決定的な違いを感じさせるような――。
「はい、そこまでー!」
 早速連れ去ろうとした獏執事に、舞い降りた透の蹴りが決まる。
「あーーッ、何をなさるのです!?」
「それはこっちの台詞なんだけどなぁ」
 積もった雪の中に倒れ込んだ獏執事から注意を逸らさず、彼女は狙われていたピーノくんの傍らに降り立った。先制の一撃を決めることは出来たが、相手がそれだけで諦めてくれる様子はない。早速と言わんばかりに、獏執事は羊の番兵達を展開し始めていた。
「ピーノくん、とりあえず安全な所まで逃げ――」
「むにゃむにゃモウ食べられマセーン」
 あー、これだけ騒いでも起きないかあ。だよなー、と半分諦めるような思いで、透は迫り来る番兵達を迎え撃つ。翼の持つ速度で翻弄し、敵の群れを躱した彼女は、番兵達を呼び出す獏執事に、『柳』による一撃を見舞った。

「――で、敵は退けたわけだけどさあ」
 助け出したピーノくんの安らかな寝息を聞きながら、うーん、と透は頭を悩ませる。
「ほら、いいかげん起ーきーてー!」
 やけに既視感のある光景。揺さぶってはみるがその反応は薄い。というか明らかに起きるつもりがなさそう。
「やっぱり六人揃えないとダメ……?」
 普段はこの通り怠け者の極みを行く彼等だが、六人一組に揃えると目覚ましい働きをみせる。その状況に持ち込めば強制的に起こすことも可能だろうが……。
「近くのピーノくんの所まで連れていくかなあ」
 また抱えて飛ぶのも大変なので、透は寝そべった丸い身体を転がしにかかる。すると。
「アーー……」
「……うん?」
「転がして移動されると、雪がくっついて太っちゃうんデスヨネー」
「……」
 ははあ、と息を吐いて、透は目の前のピーノくんの顔を覗き込んだ。
「いつから起きてた?」
「……」
 気まずい沈黙が流れる。どうしようかな、と視線を彷徨わせるその姿を半眼で眺めていると、何となく、見覚えがあるような……。
「……小豆のアイス食べマス?」
 あ、氷の女王の時の子だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

納・正純
【授与】
付き合ってもらって悪いな、有
物語を喰らう獣ってのにシンパシーを感じてな、興味があるんだ
さて、取引の時間だぜ? お前の力を見せてくれ
上手くいったら煙草でも酒でも持ってってやるさ、お前が満足するまでな

・方針
戦うのは有に任せ、俺はレアものを自作するのに専念する
手頃なピーノくんに【知性有理】を撃ち込んで、ありったけの知性と知識を授けよう
後はそいつと一緒に逃げるなり、俺がそいつを担いで逃げるなり、流れに任せるさ
いずれにしても片手は空くだろ?
眠くなろうが、一発くらいなら戦ってる有の援護は出来るだろうぜ

・台詞
喫煙者のピーノ君なんざいるか? もしいたら最高だがな
逃がした奴だけでいいのかい、欲がないねえ


芥辺・有
【授与】
ふーん……まあ、そういうの好きそうだからね
見せびらかせるほど大したことできるワケでもないが
そうだね できるかぎりはやるようにしよう
タバコのためにでも

正純が何だかんだしてる間に、敵が群がらないように蹴散らそう
しかし寒い中でよく寝られるよ、この雪だるま
起きないようなら物とかで釣ってさ……
……タバコくらいしか持ち合わせなかったな

……と、そっちに関わってる場合でもないか
紅茶だっけ?温かいのがほしいとこだったんだ 寒くてね
眠気なんてのはこう、杭でちょいと手でも掻き切れば目が覚めるかな
あとは見落とさない限りはどいつも串刺しってヤツだ

まあ、逃した分くらいは頼むよ



●知性派雪だるま
「付き合ってもらって悪いな、有」
 不思議の国へと降り立った納・正純(Insight・f01867)は、早速今回の協力者、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)へと声をかけた。今回こちらへ出向いたのは他でもない、侵攻する猟書家の在り方に知識欲が疼いたためだ。
「物語を喰らう獣ってのにシンパシーを感じてな、興味があるんだ」
「ふーん……まあ、そういうの好きそうだからね」
 平坦な口調でそう返して、有は周囲に視線を巡らせる。その辺に転がる、横倒しになった雪だるまのような連中が、件の愉快な仲間だろう。そして、それらを覗き込みながら、虹色の霞を漂わせているのが今回の邪魔者か。
 同様にそれを認識したのであろう、正純の口の端に笑みが浮かぶ。
「さて、取引の時間だぜ? お前の力を見せてくれ」
「そうだね。できるかぎりはやるようにしよう」
 彼特有の芝居がかった物言いを受け流すようにしながら、有は黒色の杭を手に、敵へと足を踏み出した。
 まあ、見せびらかせるほど大したコトはできないけれど。
「上手くいったら煙草でも酒でも持ってってやるさ、お前が満足するまでな」
 なるほど。ならばこれはタバコのための闘いだ。
 依頼の内容は至ってシンプル。何やら試したいことがあるという正純に、邪魔が入らないようにするだけだ。相手となるのはこの辺りに展開している敵、獏執事達。
「お仕事で御座いますか……大変ですね。お仕事の前に、紅茶とお菓子でも如何でしょうか」
 こちらを認識した獏執事からの提案に、有は手の内で杭を遊ばせる。敵の動きの機先を制して蹴散らすのも一つの手ではあるだろうが。
「……丁度温かいのがほしいとこだったんだ」
 早速用意されたテーブルについて、彼女は一杯お茶を貰うことにした。
「それでは、ごゆっくり」
「ああ」
 注がれたそれに口を付ける。何しろこの国は無闇に寒い。柔らかな湯気を立たせる紅茶はいつもよりも美味しく感じられることだろう。
 サボっているように見えなくもないが、これも敵を引き付ける事にはなっている。彼のオーダーから外れては居ないだろう。
 温かなそれを楽しみながら、有は依頼主の方へと目を向ける。少し離れたそこに居るのは正純と、呑気な寝顔を晒した雪だるま。
「しかし、この寒い中でよく寝られるよ」
 自分が同じことをしたら凍死してしまいそうだが、身体が雪で出来ていそうな彼等にはむしろ心地良いのだろうか、眺めていても愉快な仲間に目覚める気配はない。正純が何をしたがっているのか聞いていないが。
「起きないようなら、物で釣ってみるとか」
 まあ、私はタバコくらいしか持ってないけど。

「いや、タバコより良いものがあるぜ」
 そう言って、正純が取り出したのは彼の愛用する精霊銃だ。眠りこける雪だるまへと銃口を向けた彼は、迷いなく引き金を引いた。
 『知性有理』、銃声と共に飛び出した弾丸は、貫いた対象へと多くの知識と豊かな知性を授ける。それはこの愉快な仲間とて例外ではない、何一つ悩みの無いような間抜けな寝顔を晒していた雪だるまが目を開くと、そこには穏やかな理性の色が浮かび上がっていた。
「遠路遥々ようこそ、猟兵諸君」
 ふ、と意味深な笑みを浮かべた雪だるまは、やけに滑らかな口調で喋り始める。
「成る程、かの猟書家と事を構えるのであれば、我々の存在は良い釣り餌となるだろう。――よろしい、誰かが身を呈さねばならぬと言うのならば、私がそれを担おう」
「ああ、話が早えな」
 眠いだの面倒くさいだの、その手の欲求と我儘を超えるのは、他ならぬ『理性』なのだから。これも正純によるレアモノ作成の副産物と言えるだろう。
「だが猟書家に挑むというのならば、まずは目の前の障害を排除するべきでは?」
「心配するなよ、そっちの方は――」
 知性派ピーノくんの懸念に答えながら、正純は協力者の方へと視線を向けた。

 何かおかしなことになってるな、と正純らを観察していた有は、この辺りが頃合いかとお茶を飲み干す。
「おかわりは如何です? それとも、そろそろお休みになられますか?」
「いや、どっちも要らない」
 すかさず告げられた獏執事の申し出を断って、有は杭の先端で自分の掌を掻き切った。先程の紅茶によって湧き上がる異常な眠気をその一手で収め、金の瞳で敵を見遣る。
 瞬間、零れ落ちた血と同じ色の杭が生じ、獏執事達をその場に串刺しにした。
「援護は――要らなそうだな」
「一つくらい残しておけばよかった?」
 いや、と首を横に振った正純は、拳銃の代わりにライターを手に取り差し出す。
 そうしてひと時の間、紫煙を燻らせて。
「私にも一本いただけるかな?」
「……ピーノ君にも喫煙者が居たのか?」
「いや、知識だけはあるのだが、体験したことが無くてね」
 殊勝なことを言ってタバコを咥える雪だるまを、正純と有が物珍し気に見守る。
 彼等の前で目を瞑り、煙を深く味わったピーノくんは、身体の中で十分に冷えた空気を、ゆっくりと吐き出した。
「意外と様になってるな」
「タバコは凍ったみたいだけど」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
物語を食べる獣か。ピーノくん達がただのお洒落な黒服雪だるまになるなんてとんでもないしきちんと止めないとね。
囮にするにも心苦し…くはあるけどあんまり悲壮感が湧かないのはピーノくんなら何とかなると思ってるからかな?

さて、UCで攻撃力強化しつつ羊狩りへ。
木陰や氷の建築の影に隠れながら忍び寄り一気に距離詰め一撃を。
番兵羊が出て妨害してきても獏執事をとにかく優先で潰す。
美味しそうなピーノ君…氷像近くで元気貰ってそうなピーノくん、とか?
普通に起こして協力要請。大丈夫、もっとゆっくり眠れる場所まで来てくれるだけでいいから、と猟書家の方へと誘導する。
…倒せば元通り、だから嘘じゃないよね。

※アドリブ絡み等お任せ



●囮確保
 冷たい木々の合間を抜けて、氷で出来た建物の影に潜み、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はアイスの国を駆ける。何度か訪れた事がある分だけ、土地勘もあるのが幸いした。ここの住人達が集まって良そうな場所にも当たりは付いている。漂う虹色の霞を裂くようにして飛び出した彼女は、風の魔力を纏った槍の一閃で、獏執事を貫いた。
「な、何が……!?」
 起きたのでしょうか、と続ける間もなく、獏執事は力尽き、倒れる。
「ああ、仕事の邪魔をしないでいただけますか?」
「そうもいかないんだよねぇ」
 仲間の一体がやられたことで奇襲に気付き、周囲の獏執事達が迎撃の構えを取る。眠りを誘う虹色の雲とは別に、羊の番兵達が呼び出され、執事達の周りを囲み始めた。
「ええ……ちょっと数が多くないかな?」
 とはいえ、それはそれで好都合。何もこれらすべてを相手取る必要はないのだ、召喚主である獏執事だけを狙うならば、番兵達を死角に使うこともできる。迫り来る敵の妨害をものともせず、クーナは素早くその場を平定していった。

「……とはいえ、ここからが本番だよね」
 敵が居なくなれば、後に残るのは眠りこけたピーノくん達ばかり。彼等に限って風邪を引くこともないだろう、ということでクーナは囮に相応しい個体を選び始めた。
「それにしても、物語を食べる獣か……」
 この愉快な仲間達がただの雪だるまにされてしまうなんて、と思考を巡らせる。囮としてそんな目に遭わせるのも心苦しい……ような、そうでもないような。彼等ならきっと何とかなるだろうと考えつつ、彼女は氷の劇場へと至った。
「こう、氷像近くでよく冷えてそうな子、とかかな……」
 とりあえず目当ての個体を定めて、揺り起こす。簡単に事情を説明すれば、彼等はすぐに協力してくれるだろう。
「――というわけで、手を貸してほしいんだ。一緒に来てくれないかな?」
「エー」
「めんどくさそうだね……大丈夫、もっとゆっくり眠れる場所まで来てくれるだけでいいから」
「本当デスカー?」
 うんうんと疑いの眼差しを受け流して、クーナはそのピーノくんを連れて、猟書家の居るはずの場所へと向かっていった。
「……まあ、倒せば元通り、だから嘘じゃないよね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【咲日花】
シャボン玉に乗って獏をえいえいっ
ピーノくん、だいじょうぶ?

ピーノくん、あそぼうっ
きょうはまめまきをするんだよね、クロバっ

アイスにぴったり合う
ピーナッツチョコが食べほうだいだよ

おにはね、とくべつなかっこうをしなくちゃいけないんだ
そこに立っててね
わたしたちでかざりつけちゃうから

正月と豆まきとバレンタイン全部混ぜ
ピーノくんの頭にみかんを乗せ赤いリボンでむすんで
鬼の面

どうかな?
頷いてもらったら笑って
ピーノくん、おっけーだってっ
じゃあ、いくよーっ

おにはーそとっ
ふくはーうちっ

宣言通りピーナツチョコをぱらぱら
つまみ食いしながら
おいしいっ
クロバにもあげるね

わあ、クロバはやいっ
つぎはわたしがおにするっ


華折・黒羽
【咲日花】

黒帝と獏を倒し
ピーノさんを起こします

はい、節分が近いので
一緒に豆まきをしましょう

チョコはばれんたいんという催しに因んでのもの
オズさんが今ピーノさんに乗せたみかんは
正月の伝統的な飾り「鏡餅」を真似て
身につけているものは着物と言って…

と色々な事をピーノさんに教えながら着付けていき
完成したところでどうかなというオズさんの言葉に満足気に頷く
ふとやりすぎた気もしたが
オズさんとピーノさんが楽しそうなので
良しという事で

鬼は、外
福は、内

鬼面被ったピーノさんに豆をぽとん
つまみ食いも美味しく頂き
少し経ったら交代です
次は俺が鬼役をしますね
手加減無用ですので

ひょいひょい猫の様に身軽な鬼役が雪の上を走り行く



●ごちゃ混ぜ
 黒い獣、黒帝を従えた華折・黒羽(掬折・f10471)の振るう刃虹色の雲を切り裂いて、シャボン玉に乗ったオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が上からえいえいと敵を仕留める。辺りの安全を確保したところで、ふわふわと降りてきたオズが、ピーノくんの傍らにしゃがみこんだ。
「ピーノくん、だいじょうぶ?」
 返事がない。とはいえこれは「大丈夫じゃない」というわけではなく……。
「眠っていますね……」
 聞こえてくる寝息を遮るように、黒羽は眠りこけたままの愉快な仲間を揺り起こす。
「ウゥ……心地良い虹色お花畑がぁ……」
 まだまだ夢うつつ、といった感じのようだが、ようやく身を起こしたピーノくんへ、オズは元気よく声をかけた。
「ピーノくん、あそぼうっ。きょうはまめまきをするんだよね、クロバっ」
「はい、節分が近いので、一緒に豆まきをしましょう」
「エエー……」
 寝起きのピーノくんはいつにもまして面倒くさがりなようで、「よくわからないけれど寝てたらダメですか?」という気配を醸し出している。
「アイスにぴったり合う、ピーナッツチョコが食べほうだいだよ」
「ウーンそれは惹かれマスネー……」
 それじゃあ試しにやってみよう、と説き伏せた二人は、早速ピーノくんを飾り付け始める。
「何が始まるんデスカ?」
「おにはね、とくべつなかっこうをしなくちゃいけないんだ」
「今ピーノさんに乗せたみかんは、正月の伝統的な飾り『鏡餅』を真似たものです」
「ははぁ、ナルホド……?」
 どっちにしろ動く気のないピーノくんの頭に蜜柑を乗せて赤いリボンで固定する。一方の黒羽は逐一解説を加えながら、着物を気付けていった。
「チョコはばれんたいんという催しに因んでのものです。それから、これは着物と言って……」
「それでね、これが鬼のお面だよ」
 そうするとやがて、和洋折衷、というか正月と節分とバレンタインが一度に来たような姿が出来上がる。
「どうかな?」
 そうオズが窺えば、黒羽が満足げに頷いて見せた。
「ピーノくん、おっけーだってっ。じゃあ、いくよーっ」
「オー、ばっちこーいデスヨー」
 少し冷静になってみると盛りすぎているような気がしてきた黒羽だが、遊び始めたオズの表情を見て、「まあ良いか」と思い直した。
「おにはーそとっ、ふくはーうちっ」
「鬼は、外。福は、内」
 口を開けて待ち受けているピーノくんにピーナッツチョコをパラパラと撒いて、ついでに二人もいくつかそれをつまみ食い。
「おいしいっ。クロバにもあげるね」
「ありがとうございます」
 美味しいですねと頷きながら、豆まきに勤しんでいた黒羽だが、ふと鬼の様子を改めて見れば。
「ワーイ、ごちそうさまデース」
「……」
 さっきから全く動く気配がない。これは豆まきと言うよりエサやりみたいになってはいないか。
「ピーノさん、鬼を交代しましょう」
「エッ」
「今度は俺に向かって豆を投げてくださいね」
「うぅ……ワカリマシタヨー」
 渋々鬼のお面を渡して、ピーノくんが立ち上がる。ようやくちゃんと参加する気になったらしいと頷いて、黒羽は早速鬼としての役割に入った。
「それでは……」
「わあ、クロバはやいっ」
「アー! 待ってクダサイー!」
 身軽な彼を捕らえるのは中々に難しい。ひょいひょいと飛び回る鬼を追って、オズ達は豆を手に駆けていく。
「手加減無用ですからね」
「そんなコト言われても全然追い付けませんヨー」
「クロバ、つぎはわたしがおにするっ」
 しばし、森に賑やかな声がこだました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
めでたしめでたしで閉じられるよう、努めるとしましょう。

紅茶もお菓子も今は結構。
動きが鈍るなら、手数を増やせば良いのよ。

ねこの分霊を呼び出しましょう。
あの執事はあたしが斬るから、その間に美味しそうなピーノくんを探して頂戴。
……。…………大雑把過ぎる? そう。そうね……。
美味しそうというのなら、やはり目に楽しいのがよいと思うの。
おしゃれな子はいないかしら。いた?
それじゃあ盛りましょう。

雪でおだんごを作って、おはなをたくさん飾るわ。
キラキラのスパンコールも降らせるわね。かわいいもの。きらきらよ。かわいい。
長めの睫毛も付けてあげるわね。かわいい。

……起きる気配がないなら、このまま運びましょうか。



●しんでれら
「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
 いつもと同じ、物騒な機械剣を携えた花剣・耀子(Tempest・f12822)に、虹色雲の獏執事が紅茶を給仕し始めた。
「いいえ、紅茶もお菓子も今は結構」
「そう仰らずに。寝付きの良くなる特別なハーブも添えますから」
 相手が答えなど求めていないことを知りながら、彼女は律義に断って前へと踏み出す。途端、その歩みが急激に遅くなる。身体が重いというよりは、ただ反応が鈍いという、奇妙な感覚。敵のユーベルコードに寄るものなのは、考えるまでもなく明らかだ。
「――あの執事はあたしが斬るから、その間に美味しそうなピーノくんを探して頂戴」
 処理能力が落ちると言うなら、並行してこなすまで。鈍くなった足を構わず進めながら、耀子は《花映》、機械剣とリンクした分霊へとそう呼び掛けた。大きな猫のような形のそれは、すぐにそれに応じて。
「……」
 いや、応じたけれども。小首を傾げたそれは、続きを促すように耀子の顔をじっと見ていた。
「…………大雑把過ぎる? そう。そうね……」
 改めて考えると丸投げが過ぎただろうか。今回は美味しそうという概念自体が変わっている上、その種類も多岐に及ぶ。あまりにも面倒だが、少なくとも方針きらいは示さなくてはならないだろう。
「やはり目に楽しいのがよいと思うの。おしゃれな子はいないかしら」
 それならば、と動き始めた分霊を見送って、耀子は機械剣を駆動させる。自分の動きは酷く緩慢になっているけれど、その刃の唸りは変わらずその場に響き渡った。

 時間を稼ぎ逃れようとする獏執事達を斬り伏せて、耀子は緩慢ではなくなった動きで、分霊の姿を探す。
「いた?」
 応えるように、顔を下げた猫の鼻先を目で追えば、そこには寝息を立てるピーノくんの姿があった。
「おしゃ……れ……?」
 思わず耀子も首を傾げる。周りに何人も転がる雪だるまと、その衣装に大して差があるようには思えない。しかしよくよく見れば、毛皮付きの外套を着崩しているような気配があるし、新雪のように肌艶も良い気がする。とりあえずこの子にしようと決定して、耀子はその傍らに膝を付いた。
「それじゃあ、盛りましょう」
 雪だるまのような彼等を盛るなら、順当に雪を使うべきだろう。積もった雪でおだんごを作って、たくさんの冷たいお花で飾り付け。キラキラのスパンコールも降らせてあげれば、素朴な印象のピーノくんも違って見えてくるだろう。
「わるくないわね……」
 かわいい。一人納得するように頷いて。
「あの、猟兵サン……?」
「せっかくだから、長めの睫毛も付けてあげるわね」
 途中でピーノくんが目を覚ましたようだが、ここまで来たら止められない。
 一体何をしているのか、と問う彼に、耀子は鏡を差し出して見せた。
「こ、コレが、僕……!?」
「かわいいでしょう?」
「カワイイ……」
 雪だるまにしては血色が良く見える化粧に、眺めの睫毛で彩られたつぶらな瞳。
「そうか……モシカシタラ、僕は女の子だったのカモ知れませんね……」
 謎の悟りを得たピーノくんを立ち上がらせ、耀子は導くようにして、その手を差し出す。
「そうね。そのかわいい姿を、連中にも見せてあげましょう」
 まあ、その連中と言うのは猟書家ということになるのだが。
 風に吹かれ、ピーノくんの身体から落ちたキラキラが、彼女の道行を眩く彩っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ベスティア・ビブリエ』

POW   :    縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励◆
攻撃が命中した対象に【埋まることの無いぽっかりと空いた心の穴】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【一秒毎に記憶を次々と失っていき、衰弱】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    譏疲�縺ゅk縺ィ縺薙m縺ォ
自身の【憑依しているが、使い捨てる本のページ】を代償に、【Lv×1体の幸せそうな物語の登場人物達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【世界の『正』を『負』に捻じ曲げた幻想】で戦う。
WIZ   :    蟷ク縺帙↓證ョ繧峨@縺ヲ縺�∪縺励◆
いま戦っている対象に有効な【精神攻撃をする『物語』を演じられるもの達】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フィオレンツァ・トリルビィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 それぞれの場所で猟書家の部下を蹴散らして、猟兵達はこの後のための囮を確保した。
 彼等が目指す先で待つのは、本より出でて、物語を喰らう獣。

「迚ゥ隱槭?蛹ゅ>縺後@縺ヲ縺阪∪縺励◆」

 顔の真ん中に空いた、赤く輝く眼窩を向けて、それは言う。

「縺ゅ≠縲√→縺ヲ繧ゅ♀閻ケ縺檎ゥコ縺阪∪縺励◆」

 美味しそうな匂いが近づいてくる。食事の時間だ、と。
芥辺・有
【授与】
面白そうかい?こんな面倒そうな奴ごめんこうむりたいけど
言ったからにはね
まあ、こっちの欲張りには応えとくか

ピーノだっけ?そこの、私の血でも落ちてるとこ
使えそうなら使いなよ 炎になる
壁くらいにはなるかもね
溶けないようには気をつけてもらわないといけないけど
せいぜい少しでも長い時間囮しててよ
私の記憶を一瞬の間だって奪われるのは願い下げだからね
命削ったってさ

餌に釣られる奴らからそっと離れて
こっち見てなきゃ一瞬でいい
銃弾の影に隠れて獣の背後を狙って走る

……掴まえた
さて、お前は薪くらいが丁度いいかな
ツマミにはまずそうだからね

……ほんと、一服くらいしたいもんだ


納・正純
【授与】
これからが本番って訳だ、面白くなってきたな?
バイキングの始まりだぜ――ただし、奴が喰うのは甘いアイスケーキなんかじゃねえがな
それじゃ、あの欲張りにそのことを気付かせてやるとしようか!

・方針
前線は今までと同じに有に任せ、囮にピーノくんを立てる
俺は後方の射程内で待機し、敵を細かく確認しておこう
敵が召喚するもの、敵が良く用いている体の部位、その他全部頭に叩き込んで、【魔弾論理】で有が仕掛ける一瞬をこじ開ける一発を放つ

・台詞
上手く逃げてくれよ、ピーノくん。知識あるお前ならそれができるさ
俺が隙を作るから、有はとにかく前に出な。できるかぎりはやるんだろ?
――二人とも、これが終わったら一服どうだい?



●バイキング中止のお知らせ
 浮かび上がった本の中から、黒い獣が現れる。禍々しく伸びた角の間で光る、爛とした瞳が、距離を置いて向かい合う三人を順に彼等をなぞった。有と正純、それからその間に立つ愉快な仲間。
「繧「繧、繧ケ繧ア繝シ繧ュを見つけました。ああ、なんて美味しそうなのでしょう」
 耳障りな鳴き声、そして獲物を定めた狩猟者の瞳。それらを察しながらも、正純は不敵に笑ってみせる。
「これからが本番って訳だ、面白くなってきたな?」
「面白そうかい? こんな面倒そうな奴ごめんこうむりたいけど」
 まあ、それでも『取引』なんて言ったからにはね。そんな風に応えて、有は地から浮かび上がる影をその身に纏わせた。
「上手く逃げてくれよ、ピーノくん。知識あるお前ならそれができるさ」
「ははあ、信頼いただけるのはありがたいが中々難しいオーダーだね。我々流に言うなら『本気デスカー?』と言ったところだよ」
 先刻撃ち込まれた『知恵』によるものだろう、めちゃめちゃ流暢に喋るピーノくんが前に出ると、その一歩に応じて獣が身を震わせる。
「反応は上々だね――それじゃ、せいぜい少しでも長くもたせてよ」
「ふむ……善処しよう」
 溢れ出る知性を持ったピーノくんには、有が現在進行形で命を削っているのも察せられているのだろう。速やかに、獣――ベスティア・ビブリエと視線を合わせる。敵の認識外へと逃れるべく、有と正純が別方向へと逃れたのを見て取ったピーノくんは、じり、と間合いを測り、相手の動きを窺って、側方へと駆け出した。
「悪しき獣よ、餌が欲しいならこちらに来い!」
 威勢の良い言葉を追うように、獣もまた、積もる雪を蹴り付け、飛び出す。囮への食いつきは十分、しかしながら。
「足が遅い……」
「知性じゃ足の短さはどうにもならねえからな……」
 そんな言葉を交わしながら、二人は攻撃の機を窺い、死角へと回る。
 見たままと言えばその通り、雪だるまは走るのに向いていないらしい。この調子ではすぐにとっ捕まってしまいそうだが。
「とーう!」
 下り坂に差し掛かったところでピーノくんはその身を投げ出し、丸い身体でごろごろと転がり始めた。
 身体を張った加速法で距離と時間を稼いだピーノくんは、やがて平地に差し掛かったところで減速し、最終的には氷の樹にぶつかって止まってしまう。
「ううむ、妙案だと思ったのだが……如何にも目が回ってしまうね」
 雪の上を転がって大きくなったピーノくんが、立ち上がれないでいるそこへ、駆けてきた獣が飛びかかる。だがその軌道上、雪の中には、先程三人の歩いた足跡が残っている。そして、その隣には、事前に落とされた有の血の跡も。
「なるほど、上手く引き付けたってわけか」
 両者を追っていた有が、狙いを察して力を振るう。「使えるなら使え」と事前に伝えてあったそれは、血を媒体とする『罠』。先程とは違い炎の壁となったそれは、ベスティア・ビブリエの眼前で燃え上がった。
「――!?」
 言葉にならない悲鳴を上げて、獣が仰け反る。行く手を遮る障害、そして何か大きくなって食べがいの増した獲物を前に、獣は高く、吠えた。

「さあ、譎ゥ鬢蝉シの始まりです。パーティーを仕切る雪の精霊達は、その冷たい息でキャンドルの火を吹き消して、雪のカーテンで会場を飾り付けました」
 ベスティア・ビブリエの憑依した本からページが外れ、舞い散るのと同時に、描かれていた物語がそこに顕現する。
「彼等は料理人であると同時に、給仕もこなします。迎えた縺雁ョ「縺輔∪のために、大きな大きな繧「繧、繧ケ繧ア繝シ繧ュを切り分けて――」
 現れた『雪の精霊』達は、有の炎を掻き消して、不可視のナイフをピーノくんへと突き立てる。切り付けられたピーノくんに外傷はないが、しかし。ベスティア・ビブリエが喰らうのはその『物語』であるがゆえに。
「ああ、これが失うという感覚かね。記憶の中に虫食いが生じたかのような、思考が鈍く、削れていくような――ナンダカ眠くなってきマシタネー」
 付与されていた知性がごりごり削れていくのが見て取れる。そのまま美味しく完食されれば、彼はただの雪だるまになってしまうだろう。
「食事中申し訳ないんだが」
 が、ここまで時間を稼いだ分、準備はとうに整っている。
「お前が喰うのは甘いアイスケーキじゃねえ」
 銃声が一つ。正純の放つ『魔弾論理』に彩られた銃弾は、雪のカーテンを裂き、雪の精霊を一つ貫いて、最後にベスティア・ビブリエの伸ばした腕を弾き飛ばした。そして、真っ白なパーティー会場に作られた道を、黒い影が駆け抜けて。
「……掴まえた」
 獣の背に取り付いた有が、手にした杭で獣を地へと縫い付けた。
「さて、お前は薪くらいが丁度いいかな。ツマミにはまずそうだからね」
 周囲の敵が対応する前に、掌の血を獣に落とす。
 食べてなんかやらない、とそう告げたところで、燃え盛る炎がベスティア・ビブリエを包み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジョン・フラワー
【花簪】
囮だから遊ばずに逃げてるんだけど馬は走るのがはやいね!
本のオバケだって簡単に追いつけないよ!
鳥も振り落とされないようにがんばって!
っていうかついてきてるアリスもすごくないかい!
わーい! すごーい!

逃げてるの飽きた
僕も走りたい! 遊びたーい!
馬君ここでお別れだ。僕はいくよ! とうっ!

馬から飛び降りながらおおかみにヘンシン!
追いかけてきてるオバケに食いついてぶんぶん振り回すぞ!
いいじゃないかアリス! ひとりで遊んでてずるいんだぞ!
食べられるなら先に食べちゃえばいいのさ! 簡単なことだね!

まあ僕食べられたら消えちゃうかもしれないけど
夢みたいにステキなおおかみだし?
なあに、夢でまた会えるさ!


月舘・夜彦
【花簪】
オオカミ殿を囮にする作戦は良いと思ったのですが
さて、此処からどうしたものか
……私は自力で走って追いかけましょうか
己が肉体も武器ですから

動物使い、動物と話す技能にて指笛で春暁には攻撃を仕掛けられるよう連携を
東雲には敵を私の方へ誘導するように指示をしましょう
唯一の心配は、オオカミ殿がこの状況で大人しくしていられるかという所

……駄目でしたね

ならば後は叩くのみ
東雲には私と合流して騎乗
敵に近づき過ぎない位置から早業の抜刀術『神風』
2回攻撃で手数を増やしてオオカミ殿に当たらぬよう注意しながら攻撃
春暁は引き続き上空から攻撃を繰り返す

そう悲しいことは仰らず早く倒してしまいましょう
夢よりも現実がいいです



●記憶の扱い
「縺昴%縺九i縲∬干縺ョ陷懊?鬥吶j縺後@縺セ縺」
 現れた猟書家、ベスティア・ビブリエから逃れるように、東雲が雪を蹴立てて駆けていく。敵の狙いは馬ではなく、その背に跨った愉快な仲間、ジョン・フラワーだ。
「わあ! やっぱり馬は走るのがはやいね! 本のオバケだって簡単に追いつけないよ!」
 緊張感のない歓声を上げて、ジョンは肩に止まった鳥が振り落とされないよう手を添える。雪の中の追いかけっこは、彼にとってはまあまあ楽しいものだけれど。
「さて、此処からどうしたものか……」
 それを後方から眺めながら、夜彦が悩まし気に呟く。ジョンに囮を任せるのは良い作戦だと思ったが、東雲も貸してしまった現状では自分の足で走るしかない。追いかける事は可能だろうが、ここから追いついて奇襲……というのはさすがに彼でも難しい。
 ならば、と夜彦は指笛を鳴らす。それを合図に東雲は走る方向を修正し、春暁はジョンの肩から飛び立った。
「あれ、行っちゃうの?」
 上空へと舞い上がり、木立の上を旋回し始めたそれを、ジョンが目で追う。夜彦の意図に従って、春暁は連携攻撃を、東雲は彼の元へと敵を誘導する準備に入っていた。あとはタイミングを図り、奇襲を仕掛ければ良い。足を止めかけた夜彦は、しかしそこで、一抹の不安に眉根を寄せる。
 心配事はひとつ。この奇襲は『囮』の存在を前提としているという点だ。
「まあ、オオカミ殿が大人しくしていてくだされば……」
「うん、逃げるの飽きて来たね! 僕は行くよ! とうっ!」
 あろうことか、馬の背から跳んだジョンは、向かい来る獣の方へと飛び掛かった。
「……駄目でしたか」
「いいじゃないかアリス! ひとりで遊んでてずるいんだぞ!」
 半ば予想はできていたが、改めて夜彦は溜息を吐く。どうせなら自分の足で走りたいし、前に出て直接相手をしたいと、彼ならそう思うだろう。だったらもう少し別の盛り方もできたかもしれないが……今は言っても仕方ないだろう。ジョンがベスティア・ビブリエよりも大きな体躯の狼へと姿を変えるのを見ながら、夜彦は東雲を自分の方へと呼び寄せた。
 囮役が大人しく出来なくとも、それならそれで、対応するのみだ。

「食べられるなら先に食べちゃえばいいのさ! 簡単なことだね!」
 真の姿となったジョンは、襲い来る獣へと喰らい付く。巨体と膂力を活かし、彼はそのまま敵の身体を振り回しにかかった。ジョンの動きに抗い切れず、ベスティア・ビブリエが地に叩き付けられ、降り積もっていた粉雪が反動で宙を彩る。
「……あまり、時間はなさそうですね」
 それを後方から確認しながら、夜彦が馬の背に飛び乗る。ベスティア・ビブリエが愉快な仲間に狙いを定めている以上、ああして迎え撃っても囮としての役割は変わらないだろう。だが逃げ回るのではなく、真正面から一対一でやりあうとなると――。
 さらに二度三度と地に叩き付けられながら、ベスティア・ビブリエは自分に噛みつくジョンの頭に爪を立てる。その時点で、大勢は決した。
「……あれ?」
 奪われたのは、もっとも表面にある新しい記憶の頁だ。たったそれだけで、『目の前の相手が何者か』を見失ったジョンは、口を離してしまう。
 記憶の中に生まれた空白は、ベスティア・ビブリエの牙によって、さらに秒刻みで広がっていく。どうしてここにいるんだっけ? そもそもここはどこだった? 足元の情報が失われれば、大抵の者は立っていられなくなるだろう。
 ただ、それでもなお、ジョンは本能のままに。
「遊ぼう、アリス!」
 君が誰だかわからなくても。巨体でじゃれ付くその動きで、ベスティア・ビブリエを押し倒す。
 僥倖。その隙を逃さず、夜彦が刃を振るう。抜刀術『神風』、鞘走りの音色と共に、不可視の斬撃が飛んで、黒い毛皮に赤を刻んだ。
 同時に舞い降りた春暁が、次なる一太刀までの合間を埋めるように襲い掛かる。間を置かぬ追撃で、すぐさま敵を追い詰め――。
「あ!!」
 そんな彼等の姿を見つけたジョンが、嬉しそうに声を上げる。そうして名前を呼ぼうとしたところで、それが記憶にないことに気付いた。
 黒い獣に圧し掛かったまま、彼は首を傾げて。
「ねえ、そろそろ僕は消えちゃうかもしれないんだけど」
 本能的に察したそれを口にする。何しろ、もう、自分の名前もわからない。
「大丈夫だよ、きっと夢でまた会えるから!」
 にこやかに告げられたそれを受けて、なおも淀みなく、夜彦は最後の刃を一閃させた。
 黒い獣が力を失い、消え行くのを見送りながら、花冠を乗せた狼へと歩み寄る。
「あまり悲しいことは仰らないでください」
 そして、眠るように目を瞑った彼へと手を伸ばした。

 もう一度会うのなら、夢よりも現実が良いですよ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リダン・ムグルエギ
今回はバレンタイン仕様のピーノ君のお披露目よ
ハートや苺系パステルカラーの色合いの模様にリボン風のベルトに…
うん、これは色々美味しそうね

今回のコードは『思想の無力化と上書き』に特化してるわ
故に、どんな『物語』を容易に飲み込めるの
何かを召喚した時が、チャンス

さぁ、皆ー!
今から『ストライキの時間』はっじまるわよー!
仕事も指名も投げ捨てて、だっらけましょー!

『ピーノくんの体験を咀嚼し、知った』故に――
それが楽しい事を
それのやりかたを
ベスティアは
召喚された登場人物達は学んでしまっているの

本来の仕事や食事を放棄してる隙に
一発蹄で蹴りあげてから
ピーノくんを抱き上げ逃げましょ

後でボーナスはちゃんと弾まないとね



●ラクトパラディア労働争議
 捕まえたピーノくんを、リダンが早速改造していく。
「真っ黒な防寒着はハートや苺系パステルカラーの模様に変えちゃいましょう。リボン風のベルトも良いわね」
「アーレー」
 着替え完了。そうして誕生したのは、華やかなバレンタイン仕様になった雪だるまだ。
「うん、これは色々美味しそうね」
 すると満足気に頷いた彼女の狙い通り、その魅力につられてベスティア・ビブリエが姿を現した。一冊の本から出でた黒い獣は、獲物と定めたピーノくんへと迫る。
「縺願藷蟄の務めるケーキ屋さんに、大量の注文が入りました。納期は明日、材料はあるだけ全て。このままでは失敗の許されない菴懈・ュを、夜通し続けることになるでしょう――」
 ばらばらとページが捲れると同時に、猟書家は物語に描かれた登場人物……『動くお菓子のケーキ屋さん』を召喚した。そうして現れた顔色の悪いクッキーやキャンディ型の生き物達は、死んだ目でケーキ作りを始めている。
「急にブラックな職場の雰囲気を出してきたわね……?」
 これも精神攻撃の一種? リダンがそう疑問を感じる間もなく、ブラック社員の一人がピーノくんに目を向けた。
「あぁ、あそこにアイスケーキがあるぞ!!」
「捕まえて納品しちまえ!」
 ゾンビみたいな顔で迫り来る彼等の様子に、リダンは一旦身を引いて。
「それじゃあ頼んだわよピーノくん!」
「了解デスヨー支店長ー」
 とっ捕まったピーノくんが猟書家の前に運ばれていくのを待った。
 空腹のベスティア・ビブリエは、早速その『物語』を喰らう。知識を、経験を、記憶を、咀嚼し呑み込んでいく。その中にはきっと、アレもあるはずだと、リダンはそう確信していた。
「あなた達、そんな生活じゃ身がもたないわ! もっと楽しい事をしましょ!」
 あの黒い獣がそれを味わった頃合いに、彼女は声を張り上げる。あのピーノくんの保有していた記憶、それは。
「『ストライキの時間』を始めるわ! 仕事も指名も投げ捨てて、だっらけましょー!」
 そう、皆でやったストライキの思い出だ。
 『トレンドブレイカー・GOATia』、ユーベルコードも併用してその情報を伝播させると――。
 くあ、と一人が大きな欠伸をしたのを皮切りに、猟書家の呼び出した生き物達が次々と仕事を投げ出し、怠け始めた。ついには、ベスティア・ビブリエ自身も動きを止めて、仕事を放棄してしまうべきか悩んでいるような気配が見える。
「どうぞそのままサボってて!」
 これを好機と見たリダンは、動きの止まった敵に強力な蹄の一撃を入れる。そして、敵が我に返る前に、『食べ残し』のピーノくんを抱えて逃げ出した。
「ンー、何だか大事な事を忘れている気がシマス……」
「ボーナスはちゃんと弾むから、とりあえず大人しくしててね……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
【咲日花】
逃げるピーノさんの後ろ姿
ひらひらしていて少し疼く心地
…っと、そんな事を考えてる場合ではありませんでしたね

ピーノさん
さっと走ってすっと死角に隠れるんです
オズさんが言う通り攻撃は俺達が食い止めますので
心配しないでください

弾けるお菓子に眸瞬き
知ってる。ぽっぷこーんというもの。
ガジェットにこんな使い方が…
これなら沢山食べてもらっても問題ありませんね
然しながら喉が渇くでしょう
──紬

ベスティアの頭上に大量の水玉を生み出し
さあ、お水です
存分に潤して下さい

ええ、見事な鬼っぷりでした
…オズさん、ピーノさん
俺、今度は先程のぽっぷこーんが食べたいです

弾け出したぽっぷこーんに
ぴんと耳は立ち眸は輝き出すだろう


オズ・ケストナー
【咲日花】
ピーノくん鬼がきたよっ
じゃなかった、鬼になる番だよっ

装飾もりもりのピーノくんをねらってる

だいじょうぶ
やっつけちゃうから、にげてにげてっ
さっきれんしゅうしたとおりにねっ

追いかける背中にガジェットショータイム
ガトリングガンで豆?を大量発射

ぽんぽぽん
熱で弾けながらベスティアの元へ
わあ、ポップコーンだっ
いいにおい
あつそうだけど、たくさんめしあがれっ

物語の鬼が出てもまとめて攻撃

もしこっちにきたってクロバがいてくれる
呼ばれたツムギに手を振って
クロバもツムギもすごいっ

ピーノくん、ばっちり鬼できてたよっ
ふふ、それじゃあぜんぶ終わったらポップコーン大会だねっ
あまいのもしょっぱいのも、いろいろつくろうっ



●ポップコーンパーティー
 現れた黒い獣、ベスティア・ビブリエの視線を受けて、オズがピーノくんへと注意を促す。
「ピーノくん、鬼が来たよっ」
「エ!?」
「じゃなくて、鬼になる番だよっ」
 彼の命じるのは先程までの延長。豆まきで培った経験をこの場で生かしてもらおうという算段だ。
「やっつけちゃうから、にげてにげてっ。さっきれんしゅうしたとおりにねっ」
「ハーイ」
 着物に蜜柑にリボンと装飾を盛られた状態のピーノくんは、さらに鬼のお面を装着。そして早速その場に座り込み、口を開けて豆を放り込まれるのを待った。
「……ピーノさん、そっちではなくてですね」
 先程俺が鬼をやった時を思い出してください、という黒羽の説明を受けて、ようやくピーノくんはその場から逃げ始める。
「さっと走って、すっと死角に隠れるんです」
「エー、大変すぎマセン?」
 文句を言いながらも走り出したピーノくんの、ごてごてひらひらを本能的に目で追って――いや、それどころではないと、黒羽は意識を敵の方へと戻した。
 迫り来る黒い獣は、やはり愉快な仲間にその注意を向けている。それもただ追い縋るだけではなく、自ら憑依した本のページを前方へとばら撒いて。
「さあ、お祝いだ、お祝いだ。集まった人々は、驕ク縺ー繧後@閠を湛えるべく、胴上げを始めました」
「ワーッ!?」
 踊るページの一枚一枚から現れた『お祝いする村人』は、逃げるピーノくんを捕まえて、猟書家の読み上げた通り胴上げを始める。当然、こうなっては逃げられない。空中に何度も放り投げられている愉快な仲間に向かって、ベスティア・ビブリエは急接近、大口を開けて襲い掛かった。
 そこに響き渡るのは、連続した銃声。オズの手で展開されたガトリング型のガジェットから、豆のような弾丸が次々と発射される。見るからに威力の無さそうなその銃弾は、しかし空中でポンと弾けて、炎と共に敵を撃つ。
「わあ、ポップコーンだっ」
「ぽっぷこーん……見たことがあります。しかし、ガジェットにこんな使い方が……」
 そう驚く合間にも、飛び出した弾丸は次々と弾け、ベスティア・ビブリエに奇妙な悲鳴を上げさせていく。
「縺顔・ュ繧翫?譁咏炊が螟壹☆縺弱kようです!」
「あつそうだけど、たくさんめしあがれっ」
 効果の程を確認したオズは、銃口をぐるりと巡らせて、ベスティア・ビブリエの呼び出した『村人達』もポップコーン弾の餌食にしていった。
「アーッ、大変!」
 敵の数が減ったことで、捕まっていたピーノくんが地面に墜落、解放される。それを逃がすまいと、黒い獣が牙を剥くが。
「クロバっ」
「はい、オズさん。――紬」
 黒羽の召喚した水の精霊が、それを迎え撃つ。
「ポップコーンだけでは喉が渇くでしょう。さあ、お水をどうぞ」
 黒羽の言葉をなぞるように、空中に大きな水玉が生み出される。紬によるそれは、なおもそのサイズを膨らませていって。
「――存分に潤して下さい」
 解放された巨大な水塊は、雪積もる大地に着地すると、まるで濁流のようになって、敵達を押し流していった。

「ワー、すごいデスネー猟兵サン達」
「ピーノくんも、ばっちり鬼できてたよっ」
「ええ、見事な鬼っぷりでした」
 敵を退けたのを見て取ったピーノくんへ、オズと黒羽がそう笑いかける。割とすぐにとっ捕まった上、胴上げされている間楽しそうにしていたような気もするが、そこはそれ。
「……オズさん、ピーノさん。俺、今度は先程のぽっぷこーんが食べたいです」
「それ美味しいんデスカー?」
「ふふ、それじゃあぜんぶ終わったらポップコーン大会だねっ」
 黒羽の提案に頷いて、オズはこう一度ガジェットの引き金を引く。美味しそうな香りと軽やかな音色が、祝砲のように空に響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【エレルA】

片足を挙げてたピーーーーーーーーーノ!

コレはカナシイ
ピーーーーーーーーーノが囮になるのはカナシイ
ケドシカタナイナー

狼の姿に変身して囮になったピーノを守る
賢い君は危ないカラ今回は大切にしまい込んでおく
それにピーノが賢い君に惚れたらいけない
コレとピーノはトモダチ

シンジュとレンゲツに色々任せて
コレはピーノを守るコトに徹する
ピーノが危なくなれば敵サンに飛びついて
ピーノが寝ていればコレが吠えて起こす

アァ……完璧だなァ…。

ピーノ。終わったらアイスを食べよう
シンジュとレンゲツもアイスを食べよう

小竜もイイヨ
コレにも白と黒の小さい非常食がいるいる
小竜仲間ダ
みんなでアイスを食べようそうしよう。


雅楽代・真珠
【エレルA】
ほらぴぃの、あれだよ
あの獣がお前を働かないでもよくしてくれる
けれどあの獣の方がへんてこだね
傍でへんてこあぴぃるをしておいで
転がって足を上げているだけでもいい

エンジは好きにさせておくよ
エンジの分も如月と皐月が働くよ
敵の注意はピーノと…エンジに向くだろうから
その隙きに攻撃してしまうよ、煉月
如月は前衛として真直ぐ前へ
掌打等で攻撃
でももしピーノとエンジが危なかったら庇っておあげ
皐月は鋼糸で縛り上げる
今だよ、煉月

残念だったね、ぴぃの
現実は厳しいものだよ
そうだね、皆であいすくりんを食べよう
皆で、だから
当然小竜もいっしょにね
僕とエンジはこの国に詳しいんだ
煉月にもおすすめを教えてあげるよ


飛砂・煉月
【エレルA】

物語を喰う獣は初めて見たけれど
ふぅん、可愛くないや

ピーノ、いってらっしゃい
別に働かなくていイイよ
何なら転がっててもイイから

ハクって相棒の名前を呼んで小竜を竜槍に
駆けて槍投げの時間――竜牙葬送
エンジはピーノを守るみたいだから
うん、隙は逃さず行こ、真珠
第六感が何かを告げるなら声で伝えるよ
…アイツの血は要らないかなーと
血に頼る戦いはパス
真珠の言葉におっけーってダッシュして
縛り上げられた相手に今一度
竜の鎮魂歌を
さっさと終わらせて一息つこ

アイス、イイね食べたい!
冬のアイスって美味しいらしいよ?
ピーノとエンジ、真珠とオレ
あ、ハクも一緒してイイ?
応えに小さな竜が喜ぶ傍らで
オススメ沢山聞かせてって



●寝相の悪い雪だるま
「片足を挙げてたピーーーーーーーーーノ! コレはカナシイ!!」
 ピーノくんを囮にせざるを得ない状況に、エンジが引き続き嘆きの声を上げる。けれどこれは仕方がない、避けられぬこと。そう受け入れようと努力する彼をとりあえず放置して、真珠は選ばれしピーノくんに声をかけていた。
「ほらぴぃの、あれだよ。あの獣がお前を働かないでもよくしてくれる」
「あれデスカー。なんだかヤベー顔してマスネー」
 真珠の指差した先には、本から現れた黒い獣、ベスティア・ビブリエの姿が見える。飢えに瞳を爛々と輝かせ、牙を剥くその姿は、まあどう見ても友好的ではない。
「確かに可愛くはないよね」
 煉月の感想に頷きつつ、真珠は愉快な仲間を言葉巧みに誘導していく。
「あの獣の方がへんてこかもしれないね。お前も負けないように傍であぴぃるをしておいで」
「アピールと言われマシテモー」
「わからなければ、転がって足を上げているだけでもいい」
 それなら出来そうデスネ、と頷いたピーノくんは早速待ち受ける獣の方へと駆けて行った。
「ピーノ、いってらっしゃい」
 煉月達が見守る中で、ごろんと寝転がったピーノくんを、黒い獣はじっと見つめる。寝相が悪いとかそういう話でもない姿勢、逆さ向きの雪だるまはまあまあ不思議な物体に見えたのか、食欲をそそられている様子で獣は涎を垂らし始めた。この無防備な生き物を、とりあえず一口にしてしまおうと、獣が口を大きく開いたそこで。
「鬟溘∋縺ヲ縺励∪縺?∪縺」
「ピーーーーーノ!!」
 狼へと姿を変えたエンジが飛び掛かった。側面からの体当たりに、ベスティア・ビブリエが姿勢を崩して地面を転がる。しかしすぐに体勢を立て直した敵は、食欲のままに愉快な仲間へと腕を伸ばした。
 鋭い爪の並んだそれを、狼は今度も半ばで遮ってみせる。手首へと喰らい付き、押し退けて、吠え声を上げてピーノくんへ「起きろ」と命じる。
「エー、でもこの姿勢カラ動きたくアリマセンヨー」
「ピーーーーーーノ!?」
 というわけで、引っくり返ったピーノくん諸共、エンジもその物語をベスティア・ビブリエに奪い取られた。

「仕方ないね、今の内に仕掛けるよ、煉月」
「うん、隙は逃さず行こ、真珠」
 エンジを好きにさせた結果こうなったが、想定の内ではある。食事に夢中になりつつある敵へと向けて、真珠の手駒である如月が間合いを詰めていた。懐に飛び込んだ絡繰人形の掌打に続いて、煉月の放つ槍が黒い獣に突き刺さる。
「ハク!」
 煉月の呼び声に応えた白き槍は、竜の姿へと戻り、咆哮を上げた。
「縺ゅ≠縲√b縺」縺ィ鬟溘∋縺溘>窶ヲ窶ヲ?」
 その衝撃に仰け反りながらも、ベスティア・ビブリエは『食事』を止めない。その影響下にあるエンジとピーノくんの記憶に、秒刻みで虫食いが生じていく。
「此処は何処、コレはドレ? コレとピーノはトモダチ……?」
「友達デスヨー、デモお名前なんデシタっけ?」
「エー」
 そんな混乱状態にある二名を狙い、獣がその腕をさらに伸ばすが、そこに如月が立ち塞がった。
「庇っておあげ」
 シンプルだが明確な指令に従い、絡繰の瞳が赤く輝く。『鬼』と化し、頑健さを増したボディを以って、如月は敵の腕をその場に留める。その間にもう一体の絡繰人形、皐月が鋼糸を巻き付けて。
「今だよ、煉月」
「おっけー」
 敵の拘束を確認すると同時に、そう声をかける。応じた煉月は、戻ってきた相棒の竜を再度槍へと変化させた。
「……アイツの血は要らないかなー」
 一つ呟いて、槍を手に駆ける。血に頼る戦法を避ければ、そう。この相方の鎮魂歌が一番の頼りろいうことになるだろうか。
 今一度放たれた槍が、もがく獣を貫き、葬送曲がその脅威を掻き消した。

「アァ……静かになった」
「そうデスネー。でもまだ何も変わってないんデスケドー?」
 奪われた記憶も戻ってきたようで、状況を察したエンジとピーノくんが各々に声を上げる。特にピーノくんとしては、「もう働かなくてよくなる」という話につられて付いて来ていたのだが。
「残念だったね、ぴぃの。現実は厳しいものだよ」
「そ、ソンナー」
 真珠にぽんと肩を叩かれて、彼はがっくりと膝を付いた。
「ピーノ。終わったからアイスを食べよう。シンジュとレンゲツも」
「そうだね、皆で食べようか」
 エンジの提案に真珠が頷く。ついでに「お前もだよ」とピーノくんに起きるように促して。
「あ、ハクも一緒してイイ?」
「イイヨ。コレにも白と黒の小さい非常食がいるいる。小竜仲間ダ」
「非常食……?」
 聞き捨てならない単語が混じった気がしたが。とにかく相方の竜を肩に乗せた煉月も、それに参加することにした。
「僕とエンジはこの国に詳しいんだ。煉月にもおすすめを教えてあげるよ」
「本当に? ……ああ、ハクもオススメ沢山聞かせてって」
 嬉しそうにしている小竜と共に、一行はその場を後にする。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ロカジ・ミナイ
【エレルB】

えっちらおっちら
ド派手でキラキラでやたら美味しそうなピーノくん
装飾の成果いつもより重たいが
頑張って運んでくれたまえよ、うんうん
やれやれ、さぞ重かろうね、可哀想に

ピーノくんは眠ってるかい?
眠ってたんじゃ晴れ姿も拝めねぇし
起きたとしても拝む前に脳味噌の中を奪われちまう
嗚呼、可哀想に

……え?何を悠長に飲んでるかって?
これは天運解毒湯
エレル特製の甘い汁よ

さてさて、敵さんのお出ましだ
踏んだり蹴ったりのピーノくんに
最強の踏んだり蹴ったりがやってきたわけさ

可哀想に
仇は取ってあげるよ

弟子に友人よ、準備はいいかい?
かっこいい僕らの時間だ


宵雛花・十雉
【エレルB】

おやまぁ、こりゃあ見事に夢の中
派手に着飾ったくらいじゃ中身までは変わんねぇか
けど、眠ったまんまの方が幸せかもなぁ
これから起こることを考えっと

お、こいつはお利口なライオンさんだねぇ
子ライオンを運ぶ親みてぇで微笑ましいや
それにしても、動く度にスパンコールが光ってミラーボールみてぇだな

うへー、なんだその薬
薬屋ってスゲェな
踏んだり蹴ったりなピーノくん…アンタの犠牲は無駄にはしねぇぜ
いや、被害を最小限にするよう努力はすっけどさ

おう、ようやく出番かい
暴れちまっていいんだな?
ピーノくんの為にもさっさと終わらせっか
特別製の破魔矢さ、喰らいな!
先に謝っとくけど掠ったらすまねぇ、ピーノくん!


朽守・カスカ
【エレルB】
私の細腕では、とてもじゃないが運べない
しかしこのままではいけない
【ライオンライド】
ガブっと獅子で咥え
ピーノくんを運んでしまおう

大丈夫かい?苦しくないか?
自分の足で囮をやってくれたら…それは望むべくもない、か
なれば十雉君の妙案に従い
ランタンで照らし一層目を引く囮にしよう

ピーノくんが不運であるほど師匠が強くなるとは
その事実だけで、ピーノくんが不幸が約束されたようで言葉もない
せめて手早く済ませよう

ガブっと咥えられたピーノくんが
ガブリと丸齧り、なんてことにならないよう注意しつつ
獅子の膂力を存分に振る舞うが
流石に扱いが不憫だ

よし、全てが終わったら
スパンコールは進呈するから
もう少し耐えておくれ



●蜜の味
「さて、それじゃあいこうかピーノくん」
「ハーイ」
 思い切り着飾らせたピーノくんへ、カスカはその手を差し出した。よいしょと引っ張り起こそうとしてはみるが。
「アー……」
「返事だけは良かったね……」
 立ち上がる気力の薄いピーノくんは、ずるずると引きずられていくばかり。付け足した装飾の分だけ身体が重い、ということだろうか。
「頑張って運んでくれたまえよ、うんうん」
「いや、私の細腕ではちょっと……」
 完全に他人事のようなロカジのコメントから、そっちの手伝いは得られないだろうと見て取って、カスカは召喚した獅子の助力を得ることにした。
「頼んだよ、ライオン君」
 現れた黄金の獅子は、カスカをその背に乗せると、転がったピーノくんの首元を咥えて持ち上げた。
「お、こいつはお利口なライオンさんだねぇ。子ライオンを運ぶ親みてぇで微笑ましいや」
 感心したように言う十雉を他所に、カスカはぶら下がった愉快な仲間を覗き込む。
「大丈夫かい? 苦しくないか?」
「平気デスヨー」
 むしろ動かなくて良いから楽、という答えが返ってきたので、カスカはとりあえずこのまま行くことにした。
「とはいえ、自分の足で囮をやってもらうのは無理そうだね……」
 この調子では、走るどころか歩くことすら面倒くさがりそうだ。何か手を打つ必要があると、彼女は獅子を歩ませながら考える。現状でも撒き餌くらいの効力はあるだろうが、やはり囮として誘導と、時間稼ぎを担ってもらえるのが理想なのだが。
 そんな思惑を他所に、ピーノくんは首根っこを捕まえられたまま、再度うたた寝を始めていた。
「おやまぁ、また夢の中に行っちまった」
「ああ、寝ちゃったのかい」
 十雉の声に、ロカジが応じる。大げさに一つ、溜息を吐いて。
「眠ってたんじゃ晴れ姿も拝めねぇし、起きたとしても拝む前に脳味噌の中を奪われちまうか。嗚呼、可哀想に」
「そう考えると眠ったまんまの方が幸せかもなぁ」
 嘆きのついでにロカジが薬瓶を煽るのを見て、「何だいそれは」と十雉が疑問を差しはさむ。
「これかい? これはね、天運解毒湯って名前の――言うなればエレル特製の甘い汁よ」
 曰く、それを飲んだ者は、身近な者の不幸を糧に力を得る。
「うへー、なんだその薬。薬屋ってスゲェな」
 感心したような、呆れたような、そんな声を上げる十雉の後ろで、「うーん」とカスカが頭を悩ませる。それではまるで、この愉快な仲間が不運な目に遭うのが確定しているような……いや、囮になるんだからもう確定しているのか……?
「アンタの犠牲は無駄にはしねぇぜ、とかそういうやつか?」
「いやあ、可哀想にねえ」
「まあ……せめて手早く済ませよう」
 溜息混じりのそんな言葉を交わしながら、一行は猟書家が居ると思しき場所へと駒を進めた。

「それにしても、動く度にスパンコールが光ってミラーボールみてぇだな」
 道中に十雉の言った、そんな言葉がヒントになった。それじゃそんな感じで行こうかと、カスカはピーノくんの頭上にランタンを吊り下げる。
「さあ、美味しそうなご飯があるよ、猟書家君」
 ピカピカに輝くそれを揺らして見せれば、それに惹かれるようにして、黒い獣がその姿を現した。
「さてさて、敵さんのお出ましだ」
 踏んだり蹴ったりのピーノくんに、最強の踏んだり蹴ったりがやってきた、と言ったところだろう。口の端を上げるロカジの横で、早速カスカが獅子を操る。現れたベスティア・ビブリエの視線は、先程からピーノくんにだけ向けられている。恐らく『とても美味しそう』に見えているであろうそれを咥えたまま、獅子は雪を蹴立てて駆け出した。
「蜈峨j霈昴¥魄ョ繧?°縺ェ譫懷ョ溘?ゅ&縺樒セ主袖縺励>縺薙→縺ァ縺励g縺?棡螳」
 黒い影は逃げ行く黄金の獣を、そしてそれがぶら下げた美味しいご飯を目指して追いかける。禍々しい牙の並んだ口で、鋭い爪の生えた腕で、それを捕まえようとして。
「オワーッ、なにごとデスカ!?」
「お目覚めかいピーノくん。すまないが、少し揺れるよ」
 鼻眼鏡の下で悲鳴を上げるピーノくんを振り回すようにしながら、カスカの獅子は追撃から身を躱す。せっかく囮として上手く動けているのだ、ガブリと一口でいかれてしまっては意味がない。けれど強敵の動きを完全に読み切る事は難しく、僅かな交錯から、愉快な仲間の『物語』が、頭の中の記憶が、徐々に奪われていく。
「アノ……何か僕の身体眩しくないデス?」
「そのくだりはもうやったよピーノくん」
「アァ……力が抜けて、だんだん手足が冷たくなってきマシタ……」
「最初からじゃないかな……?」
 弱音を吐くピーノくんを励ましつつ、カスカはさらに敵から逃れるべく獅子を走らせる。味わったばかりの美味しい囮をさらに引っ張る事で――。
「縺ゅ≠縲√b縺」縺ィ鬟溘∋縺溘>?」
 黒い獣は夢中になったように咆哮を上げた。

 一方、ピーノくんが『物語』を齧り取られ始めたことで、こちらの力は十分すぎるほどに高まっている。
「――可哀想に、仇は取ってあげるよ」
 太刀を抜いたロカジは、駆ける黄金の獣と、傍らの十雉に声をかけた。
「弟子に友人よ、準備はいいかい?」
「おう、ようやく出番かい。暴れちまっていいんだな?」
 準備が整ったのを見て取り、カスカは獅子の向かう先をそちらへ定める。次いで、ぼんやりしてきたピーノくんへと声をかけて。
「よし、全てが終わったらそのスパンコールは進呈するから、もう少し耐えておくれ」
「ワーイ、キラキラしマスヨー……」
 氷の木々の間を駆け抜けて、敵を二人の前へと誘導する。
「先に謝っとくけど掠ったらすまねぇ、ピーノくん!」
 喰らいな、という声と共に、待ち受けていた十雉が紙飛行機を放った。空中で破魔矢へと姿を変えたそれは、迫る獣の前肢に突き刺さり、突進の勢いを鈍らせる。
 隙を晒せばそれで十分。強化されたロカジの一太刀は、猟書家でさえも防ぎきることは出来ないだろう。
「さあ、かっこいい僕らの時間だ」
 剣閃が、黒い獣を両断する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

クーナ・セラフィン
宥め賺しつつめんどくさがりなピーノくんをどうにか誘導してみれば…ええと何言ってるのこの魔獣。
よく分からないけどピーノくんを美味しそうにみてる事は分かる…!

さて、氷像近くで冷え冷えになってた彼を囮にしつつ仕掛ける。
こっそり潜みあの本とか枕にしたらいい寝心地なんじゃないかにゃーとか言ってピーノくんに魔獣の本の所へ向かって貰う。
どれだけ気を惹けるか分かんないから魔獣の注意が彼に向いたら一気に距離詰めUCで奇襲、至近距離から連撃で刻んでやる。
物語の登場人物が召喚されても構わず動ける限り全力で槍を振るい続ける。
魔獣撃破後はピーノくんにお礼を忘れずに。
いいお昼寝場所探す手伝うよ。

※アドリブ絡み等お任せ



●冷やし雪だるま
「縺ゅ≠縲√→縺ヲ繧ゅ♀閻ケ縺檎ゥコ縺阪∪縺励◆」
「……ええと?」
 何を言っているか分からない。まあ、魔獣の鳴き声を理解できるはずもないが。それでも、この黒い獣がピーノくんに向かって飢えた目を向けていることだけは、クーナにも察することが出来ていた。グズる相手をどうにか説得して連れてきた甲斐があった、というところだろうか。
「あの本とか枕にしたらいい寝心地なんじゃない?」
「本当デスカー?」
 ベスティア・ビブリエが憑依しているらしいそれを指し示して見せると、半信半疑ながらピーノくんはそれを寝床にするべく歩き出した。向こうからすれば、餌が勝手に懐に入り込んで来たようなものだろう、敵の注意が完全にそちらに向けられるのを確認しつつ、クーナはその死角へと回り込んだ。
 あのピーノくんは他の個体よりもきっとよく冷えているから、敵の眼はそちらに釘付けだろう。早速牙を剥いたその獣によって、愉快な仲間の『物語』が喰われ始める。物理的な傷を残さぬそれは、思ったよりもずっと静かなものだったが――こうして犠牲を払った以上、果たすべき役割があるはず。槍を手に、軽やかに地を蹴って、クーナは隙だらけのベスティア・ビブリエの背へと仕掛けた。
 『騎士猫は旋風のように』、銀槍を操り放たれる高速連撃。確たる手応えを感じながら、彼女は止まる事なく敵を抉る。黒い毛皮と血飛沫、それに混じって本の頁が周囲に飛び散る。悲鳴を上げた魔獣は、それを反撃の糧として。
「食事中でございます。お控えください」
 再度召喚された虹色の獏執事達が、また眠りに誘う虹色の雲を噴出し始めた。
「アー……よく眠れそうデスネー」
 早速昼寝に入った愉快な仲間と共に、クーナも眠気に襲われるが。
「後で、もっといいお昼寝場所を探すからね……」
 感謝と謝罪の入り混じったような言葉を彼へ。そしてさらに敵へと一歩踏み込んで、至近距離での連撃速度をさらに上げる。
 飽くまで狙うのは猟書家のみ、眠りに落とされる前に押し切る覚悟で放たれたそれは、ベスティア・ビブリエを確りと貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
キラキラ盛り盛りにしたピーノくんを、
……、……んんんんんん。
いえ。平気……平気なのよね……?
使えるものは何でも使う派だという自負はあるのだけれど、ちょっぴりこころが痛むのよ。
決して新しい扉を開かせてしまった罪悪感ではないわ。ないはずです。

ピーノくんにマフラーも巻いてあげましょう。
直ぐ終わらせるから、ここでまっていてね。

――囮を務めて貰えるのなら、あとはそれに見合う働きをするまでよ。
時間を掛けては居られないけれど、焦って機を見誤る真似も出来ないの。
物語を食べることに気を向けた瞬間を狙うわ。
あたしに出来る最高速で、踏み込み斬り果たしましょう。

何を取りこぼそうとも。
おまえを斃すまで、引く気はないわ。



●つけま
 この辺りが頃合いだろうか。付近に敵の気配を察知した耀子は、手を引いてきたピーノくんの方を改めて振り返る。
 服装自体に大きな変化はないけれど、盛った飾りとスパンコールと、何よりも疑いの無い瞳が眩しい。
「どうかシマシタ?」
「いえ……」
 んんんん、と思わず言葉に詰まってしまう。囮になることに大きな問題が無いことは理解しているし、そもそも彼女は使えるものは何でも使う派、仕事に当たって優先順位を違えるようなタイプではないのだが。
 どうしても、ほんの少し、心が痛む。
「ちゃんとご飯食べてきマシタ?」
「お腹が空いたわけではないのよ」
 やめてその目で見ないで。あと何か女の子っぽい仕草を取るのを控えて。内心そんなことを思いつつ、耀子はその場に屈んで、ピーノくんの首元にマフラーを巻き付けていった。
「直ぐ終わらせるから、ここでまっていてね」
「ハーイ」

 キラキラに盛ったピーノくんは、その準備の甲斐あって、確りと囮の役割を果たしてくれた。つまり、ベスティア・ビブリエの毒牙にかかり、『物語』を奪われてしまうわけだが。
「アーーー、お化粧が落ちちゃうぅーーーー」
 気にするところそこで良いの? 当然の疑問は湧くが、とにかくピーノくんは役割を果たしてくれた。ならば、それに見合う働きを。
 踏み込んだそこは敵の懐。迷いなく、最高速で突き進んだその場所で、耀子の機械剣が唸りを上げた。
「譁ー縺励>鬟滉コ九〒縺吶°?」
 喰らい付くクサナギの牙に身を捩らせながらも、猟書家は耀子に反撃を加える。
「……!」
 外傷はない。痛みもない。代わりに感じられるのは、思考のあちこちに生じた空白。でたらめに『物語』が齧り取られ、現状認識と言う名の足元が揺らぐ。
 が、それでも耀子は変わらず前へと進んだ。
「おまえを斃すまで、引く気はないわ」
 刃を振るったのならば、ただそれを全うする。その意志のままに。

「猟兵サン……」
 ふと声が聞こえて、耀子は自分の思考が突如正常に回り出すのを自覚した。空白は埋まり、抜け落ちていた歯車が戻ったかのような、奇妙な感覚。刃を下ろして声の方に視線を落とすと、こちらも元に戻ったらしいピーノくんが、彼女の方を見上げていた。
「この睫毛、どうやって付ければ良いんデスカ?」
「……やってあげる」
 もしかすると、何か新しい扉を開いてしまったのだろうか。
 ――これは罪悪感ではないわ。ないはずです。自らにそう言い聞かせながら、彼女は傍らに剣を置いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
小豆のアイス……テレポート……
うっ、何か記憶が
いやそれ何処じゃなかった

本ッ当にごめんな
絶対に後で助けるからな!
以前もらった防寒着をピーノ君に着せて囮になってもらおう

ベスティアが囮のピーノ君を見つけて物語を食べるまで
目立たない様に気配を殺して待機
忍び足で背後に回るよ
食事にに夢中になっている隙に
『エレメンタル・ディザスター』!!
雪だるまになったピーノ君を溶かしたりしないように
氷の竜巻を喚ぼう

どんな精神攻撃をしてくるかな
ピーノ君を囮にしてる事をついて来るかも
何であれ
そもこの世界を侵略しようとしたのはアンタだし
囮にしたからにはキッチリ確実にアンタの事倒すからな!
柳でUCで傷つけた所を更に狙いに行くぞ



●小豆抹茶アイス
「本日はどうされマスカー? また着ぐるみになりマス?」
「いや、今日はそうじゃなくて……あー……」
 首を傾げるピーノくんに、透が気まずげに返事をする。大体此処はあの国ではないのだから着ぐるみにはなれないだろうに。いや、ただ、しかし。
「……本ッ当にごめんな、絶対に後で助けるからな!」
「エッ、何デスカそれ怖い」
 以前この国で手に入れた、良い感じに模様の入った防寒具をピーノくんに被せて、透は思わず目を逸らした。
 そう、彼にはこのまま囮になってもらわねばならない。

 所定の場所へとピーノくんを連れて行って、透はとりあえず見つからない所に身を潜める。猟書家、ベスティア・ビブリエは、戦いの経験を経て、見た目的にも派手目なあのピーノくんに必ず食いつくだろう。食いつくはずだ。あー。
「ワー、はじめまして。怖い顔してマスネー」
 のんびりとしたピーノくんの挨拶が、やがて悲鳴へと変わる。
「ハワー……だんだん身体が動かなく……コレハ……楽……」
 むしゃむしゃと物語を食べられたピーノくんは、どことなく安らいだ断末魔と共に雪だるまになってしまう。けれど、この『食事』の間に、透は気付かれる事無く猟書家の背後に回り込んでいた。喰われていく彼を見るのは中々に忍びない。だから、全力を込めて。
「エレメンタル・ディザスター!!」
「菴穂コ九°縲∫ェ∫┯蜷ケ髮ェ縺鯉シ」
 完全なる不意打ち、巻き上がる氷の竜巻がベスティア・ビブリエを巻き上げて、取り付いた本ごと刻み、地に落す。
「繧医¥繧ゅd縺」縺ヲ縺上l縺セ縺励◆縺ュ」
 漏れ出たのは苦鳴まじりの声。黒い獣は体勢を立て直しながら、反撃に出た。
 ばらばらと本の頁が捲れて、その中から、この場に相応しい下僕を生み出す。
「アバー……コ、コンニチハー……」
「こ、これは……ピーノくんのゾンビ!?」
 緑色と黒が混ざり、溶けかけた感じの雪だるま達が、ゆっくりと立ち上がり、透を取り囲むように動き出した。
「ナ、何で見捨てたんデスカー……?」
「タスケテー、タスケテー」
「うわぁ……」
 恐ろしいほど棒読みだが、先程ピーノくんを囮に使った負い目を、彼等はちくちくと突いてきている。とはいえ透とて覚悟を決めてここに挑んだのだ、そうそう立ち止まるわけにはいかない。
「調子に乗るなよ! そもこの世界を侵略しようとしたのはアンタだし!」
 のそのそと動いている偽物のピーノくんを乗り越えて、透は敵へと指を突きつける。
「囮にしたからには、キッチリ確実にアンタの事倒すからな!」
 精神攻撃を振り払い、敵を睨めば、先程の術で大きな傷がついているのも見て取れた。狙いはそこだと、透は指に挟んだナイフを放ち――。

 致命傷を負った敵が消えれば、雪だるまになっていたピーノくんも、『物語』を取り戻す。のそのそと起き上がるその姿を見て、透はようやく安堵の息を吐いた。
「ウーン、過去一番気持ちよく眠れたんデスケドネー」
「そっち……?」

大成功 🔵​🔵​🔵​


●縺顔オゅ>
 猟兵達の手によって、また一つ、猟書家の企みは挫かれた。

 一冊の本が塵と消え、猟書家ベスティア・ビブリエも骸の海へと還っていく。主を失った配下達も消滅し、獣が奪った『物語』も、その瞬間に元通り。ただの雪だるまと化していた愉快な仲間が、また元のように動き出した。
「イヤー、よく眠れマシタ。身体が軽いよーな気がシマスネー」
「……デトックスくらいの認識なんだね」
 どうやら後遺症の心配もないらしい。連れてきたピーノくんの無事を確認して、有と正純は共に顔を上げる。見た目通りというべきか、この愉快な仲間は良い具合に鈍感で、たくましい。
 この不思議な国もまた、何事も無かったかのように、平和な時間を過ごしていくのだろう。

「二人とも、一服どうだい?」
「ああ、丁度一息付きたかった」
「凍らないタバコってアリマス?」
「あー……それはちょっと」
「無いかな……」
 残念デスネー、とピーノくんが呟くのを聞きながら、二人は煙草に火を付ける。この国の空気は冷たく、そして仄かに甘い。

最終結果:成功

完成日:2021年01月30日


挿絵イラスト