5
大火が生み出す『歪な軍隊(バロックレギオン)』

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドクター・ハデス #バロックメイカー #アリス適合者 #アリス虐め #アリ虐 #オロチヒメ案件

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#ドクター・ハデス
🔒
#バロックメイカー
#アリス適合者
#アリス虐め
#アリ虐
#オロチヒメ案件


0




 お父さんが、燃えている。
 家族を巻き込んで無理心中を図った私のお父さんが、炎に包まれている。
 まるで全身がロウソクになったみたいだ。
 世界の在り方が急変し、政府から推奨された新しい生活様式は、私の家業である小さなお弁当屋を廃業に追い込んだ。
 資金繰りが滞り、脅迫まがいの借金取り立てと毎日の嫌がらせが家族を苦しめる。
 私達家族はもう、生きる気力も希望も失った。
 だから、今日、長年愛したこの弁当屋ごと燃えて消えようと火を放ったのだ。

 焼死は一説によると、焼ける熱さと激痛よりも、燃焼時に酸素が奪われることで発生する酸欠のほうで苦しむらしい。
 なんでそんな事が分かるのかは不明だ。
 焼死体に「焼かれた熱さと酸欠、どっちが苦しかったか?」とでも聞いたのだろうか?
 嗚呼、ナンセンスだ。
 だって、どちらが苦しいかはじきに分かる。
 私の衣服にもガソリンがたっぷり染み込んでおり、既に引火しているからだ。
 お母さんはじっと、祈るようにうずくまったまま燃えている。
 いつでもお父さんの言いなりだったお母さんが、私は情けなかった。
 嗚呼、私はこの人みたいになりたくはないな、なりたくなかったな。
 でも、もうお終いだ。
 熱い、熱い、苦しい、息が、でき、な――。

 目を再び開けると、そこは見知らぬ天井だった。
「気が付いたかい、アリス? いや、バロックメイカー?」
 くっくと笑う胡散臭くて怪しい男が挨拶をしてきた。
「フハハハ! 我が名は天才科学者ドクター・ハデス!
 いずれは全ての世界を征服する男だ。覚えておきたまえ!」
 ……は? なに、このオッサン?
 中二病も大概にしてほしい。
 てか、なんで私、生きてるの?
 両手両足が、動かない! って拘束されてる!
 よく見たら、ここ、もしかして手術室?
 誰か、助けて……!
「おっ、お嬢さん、やっとバロックレギオンを出してくれたね」
 ……なに、これ?
 炎の幽霊?
「しかし、駄目だね。この程度の! 雑魚を! 出されても困るのだよ。もっと強いヤツを頼む。いずれ私の兵隊として、強力なバロックレギオン……お嬢さんが出したその幽霊が欲しいのだ」
 男……ドクター・ハデスとか名乗ったイカレ脳味噌野郎は、ニヤニヤしながら暗闇から何かを持ってきた。

 ――え、それ、ポリタンク?

「知っているよ、そいつは猜疑心や恐怖心に反応して出るんだろう? そして、お嬢さん、君は先程まで……うわ言で『焼死体』やら『熱い』やらと呻いていた。ずばり、君のトラウマは……その身を焼かれることじゃないのかな?」
 え、ちょっと、その中身、まさかガソリン……!
 待って、まさか、そのライターで火を付けたりしないわよね?
「心配しないでくれたまえ! 何しろ私はドクターだからね。何にせよ治療は万全だから、その点は安心して、存分に恐怖してくれたまえ。フハハハ!」
 い……嫌ぁぁーっ! 誰か、助けて――!
 私の肉が、焼けてゆく。

「緊急の任務だ。この蛇神オロチヒメが、貴様ら猟兵共に神託を下す」
 グリモア猟兵の蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)に憑依している蛇神が、レモンの裏人格として顕現する。
 集まってくれた猟兵達へ、予知の内容を投映すると、今回の任務内容を語り始めた。
 過去にオロチヒメが予知した内容は、いずれも凄惨な内容ばかりだ。
 今回もその類に相違ないのだろう。

「アリスラビリンスにて、猟書家『ドクター・ハデス』の活動が予知された。彼奴はアリス適合者のバロックメイカーである少女を拉致し、自身のアジトの手術台に彼女を括り付けているのだ。バロックメイカーの少女は、先程の予知の投映通り、元の世界では焼死の憂き目に遭っていたようでな? トラウマもバロックメイカーも炎に起因しているのだ」
 ドクター・ハデスは鉤爪の男の目論む『超弩級の闘争』を実現すべく、捕らえたバロックメイカーの恐怖を煽り続け、バロックレギオンを増殖し、それを解き放ってアリスラビリンスを混乱させようとしているのだ。

「幸いにも、彼奴の行為は初期段階で貴様らを送り込める予知で出ているゆえ、転送されたらまずは、増殖した少女のバロックレギオンを駆除しつつ、トラウマを呼び起こす“原因”を除去せよ。早い話、散乱しているガソリンタンクや火炎放射器などの火器をアジトから消せ、手段は問わぬ。同時に、一刻も早く少女を慰め、バロックレギオンを引っ込めてもらわねばなるまい」
 少女のバロックレギオンは、激しく熱く燃え盛る幽霊達だ。
 迂闊に行動すると、周囲のガソリンに引火して誘爆をしかねない。
 対処の方法を絶対に間違えないでほしい、とオロチヒメが念を押した。
「以上である。事は急を要す上に、一歩間違えれば大惨事に発展しかねぬ状況だ。故に、最善を尽くし、猟書家を討つのだ」
 グリモアがアリスラビリンスへの転送を開始する。
「征け、愛しき人の子らよ。汝に蛇神オロチヒメの加護があろうぞ」


七転 十五起
 アリスラビリンスでの #アリス虐め シナリオです。
 今回は『アリス適合者のバロックメイカー』が標的です。
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス(全章共通)
 バロックメイカーをなぐさめ、トラウマを取り除く。

 第一章では、バロックメイカーの少女が生み出したバロックレギオン『炎の幽霊達』と戦います。周囲には至るところにガソリンが入った容器が散乱しているため、一歩間違うと手術室が吹き飛んで大惨事になってしまいます。ガソリンは少女のトラウマの原因でもあるため、うまく取り除いてから『炎の幽霊達』を駆除しましょう。

 第二章は、猟書家『ドクター・ハデス』との対決です。
 手術台に括り付けられたままの少女が、これ以上バロックレギオンを生み出さないようにしてもらうためにも、言葉や行動で慰めてあげて、トラウマを軽減もしくは取り除いてあげて下さい。あとは猟書家を撃破すれば、完全攻略完了です。

 それでは、皆様の挑戦をお待ちしております!
213




第1章 冒険 『バロックレギオンと過去のトラウマ』

POW   :    バロックレギオンの攻撃を正面から受け止め、その過去のトラウマごと、バロックレギオンを殴り倒す

SPD   :    バロックメイカーのトラウマのヒントとなるような物を探しながら、バロックレギオンと戦う

WIZ   :    バロックレギオンの外見や言動、戦い方などから、過去のトラウマが何か推理しながら戦う

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エメラ・アーヴェスピア
はぁ、魔導蒸気を使っている私が言える事でもないのだけれど、私自身も炎は苦手よ
なにせ私自身も燃えた事がある訳だし、ね
残念ながらその時の事をそれ以前の記憶を含め覚えていないから共感はできないのだけれど
…私のようになる前に助けてあげないと

とはいえ私のUC…つまりは兵器を考えなく使うと大惨事確定なのよね…
ああもう、とりあえず『出撃の時だ我が精兵達よ』、耐火仕様の消火装備で呼び出すわ
火には消火を、物品は残らず私の兵器庫(『歓待するは我が戦城』参照)に放り込んでおきなさい
幽霊相手は基本的に同僚さんに任せるわ、消火装備が利くとは思えないし…
兎に角私は危険を取り除くことを優先よ!

※アドリブ・絡み歓迎


ノインツィヒ・アリスズナンバー
だーくそ!!熱いんだよ!
素早く動いて触れる面積を小さくすれば燃えないとか、前にバカ姉に言われたけど熱いもんは熱い!

基本的には覚悟と環境耐性、激痛耐性で炎を耐えつつ、怪力と念動力で周辺のガソリンの入った容器を手術室から投げ飛ばす。
周辺の燃えそうなものを手術室から捨てたら、バロックレギオンをUCで手術室から投げ飛ばす。
兎にも角にも現場から離れて戦うようにする。
バロックメイカーの子には急を要するため、火からかばいつつお前はまだ生きているんだと言いくるめする。お前は燃えないし、私も燃えない。現にこうして生きてんだ。
いいから黙って私を信じろ!!



「だーくそ!! 熱いんだよ!」
 火の手が回る手術室の扉を蹴破って侵入したノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)は、その凄まじい熱波に皮膚を焦がされてしまう。
「あのバカ姉の言葉を真に受けるんじゃなかった! 熱いもんは熱いっつーの!」
 ノインは手近なポリタンクを掴むと、遠心力を利用して手術室の外へ放り投げた。
 その際、同じフラスコチャイルドの姉……アリスズナンバー唯一の『最初の10人』である某8号さんが、かつて炎について次のように語っていた。

『――いいですか、NO.90? 炎が引火する最大の要因は、物体が炎の前で停止している事です。つまり、素早く動いて触れる面積を小さくすれば、此方は燃えないのです』

「なにが燃えませんだ! 秒でセットした髪の先が焦げたぞ!」
 此処にはいない姉へ恨み節を述べるノインツィヒの横で、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)が露骨に表情を歪めていた。
「はぁ、魔導蒸気を使っている私が言える事でもないのだけれど、私自身も炎は苦手よ。……なにせ、私自身も燃えた事がある訳だし、ね」
「え、まじ? ヤバくね?」
 エメラの告白にノインツィヒがギョッと目を丸くした。
 これにエメラは溜息混じりに答えた。
「残念ながら、その時の事をそれ以前の記憶を含め覚えていないから、アリスへの共感はできないのだけれど……それでも、私のようになる前に助けてあげないと」
 エメラの身体の大部分は機械化されているのだ。
 今回の事件で、下手に延命処置を施されてアリスが人間の枠からはみ出てしまわないためにも、エメラは苦手な大火へ挑む決意をした。
「ただ、ひとつ大きな問題があるわ」
「なになに? 私ちゃんもいるし、全然リカバリーおっけーだよ?」
 ノインツィヒは戦友に向かって親指を立ててみせた。
 エメラは迫りくるバロックレギオン――燃え盛る炎の幽霊達を近づかせないようにするべく、ユーベルコードで消防隊仕様の魔導蒸気兵の部隊を召喚してみせた。
 魔導蒸気兵が消化器の白い煙を炎の幽霊達へぶちまける!
「私のユーベルコード……つまりは兵器を考えなく使うと大惨事確定なのよね……。重火器がメイン兵装だから、ああもう、何が楽しくて幽霊に消化器を吹きかけなくっちゃいけないのよ!」
 普段なら幽霊だろうがオブリビオンだろうが、エメラは銃火の雨嵐を浴びせてゆくのだが、可燃物たっぷりかつ延焼が広がる手術室でそれをぶっ放せば、敵味方ともども木っ端微塵だ。
 だからこそ、召喚した95体の魔導蒸気兵達は、液体窒素の白い煙をバロックレギオンの集団へ吹きかけ、少しでも炎の勢いを弱めようと努めていた。
 しかし、やはり霊的な炎に液体窒素が効くわけがなかった。
「ごめんなさい、ノインツィヒさん。炎の幽霊はどうにかしてもらえないかしら? 私はガソリン入りポリタンクの処理に専念するわ」
「お、おっけーだよ☆ 私ちゃん、炎の幽霊の“胸倉”掴んじゃうね?」
 殺到する炎の幽霊達がノインツィヒに向かって手を伸ばす。
 霊体なので物質透過してくるのが厄介だ。
 無抵抗ならば、ノインツィヒの身体を炎が貫通して、体内から焼き焦がされてしまう!
 だが、ノインツィヒのユーベルコードは、空気だろうが幽霊だろうが、自信が“胸倉”だと認識したものならば何でも掴み掛かれてしまうのだ。
「これが私ちゃんの~『乙女の☆胸倉落とし・極(ブツリテキガールズトーク・キワミ)』だよ☆ せーの☆ くたばりやがれええええええ!!!!」
 ノインツィヒの右腕が横薙ぎに払われると、炎の幽霊達がひとまとめに掴まれてしまっているではないか!
「そのまま極楽浄土まで放り投げたらああぁぁぁぁ!!!」
 幽霊を鷲掴みにしたまま腕を振りかぶり、豪快なフォームで手術室の扉の外へ燃える幽霊を投げ捨てた!
 数秒後、外へ捨てていたポリタンクの中身に引火し、幽霊ごと爆発四散!
「これが私ちゃん流の悪霊☆退散!」
 爆発を背に決めポーズをかますノインツィヒは、さながら特撮ヒーローのような勇姿だ。
 それを遠くから眺めているのは、拘束されて身体を焙られてたアリスの少女であった。
 ノインツィヒもそれに気付き、大声で声援を送った。
「おい、いいか!? お前はまだ生きているんだ! お前は燃えないし、私も燃えない。現にこうして生きてんだ! だからもう少し耐えてくれ!」
「……で、でも……」
 恐怖で言葉が詰まるアリスの少女。
 更に、傍に控える猟書家『ドクター・ハデス』が、バロックレギオンを増産させるべく、アリスの右股に火を押し当てる!
「んぎいいぃぃっ!」
「てめえ……!」
 ノインツィヒはその悪辣さに怒りのボルテージが急上昇!
「おい、アリス! いいから黙って私を信じろ!! 痛くて熱くて死にたくなるだろうが、そんなクソ野郎にお前の人生を壊されるな! あとちょっとだけ我慢してくれ!」
 アイドルの言葉は落ち込んだ人々を励ます力があると、ノインツィヒは信じているから。
 だからこそ、その言葉は矢のようにアリスの心に突き刺さり、彼女に性への執着を芽生えさせる。
「……私は、負けないんだから!」
「むむ? 私はキミにはもっと怯えてもらいたいのだがね?」
 燃える炎をアリスの目の前にチラつかせる猟書家。
「……怖い、けど、あんたの言いなりなんてならない!」
 だが、アリスはキッと歯を食いしばり、恐怖の抑え込みを始めた。
 おかけでバロックレギオンが生み出されるスピードが緩やかになってきた。
「いいぞ! その調子だ! って、邪魔だドラァッ!」
 もう一度、幽霊をむんずと掴んで、手術室の外へ投げ飛ばしてゆくノイン。
 対して、エメラは魔導蒸気兵達にポリタンクを一箇所に集めるように指示していた。
「ええ、そうよ。『出撃の時だ我が精兵達よ(メイクアサリー)』! 消火活動を進めつつ、可燃物を此処まで運んで頂戴」
 エメラの目の前には、ガソリン入りのポリタンクの山が築かれてゆく。
「そろそろ頃合いね? 『歓待するは我が戦城(スチームアーモリィ)』発動よ」
 小さな特殊部品を組み込んだ魔導蒸気兵器がガソリンの山に触れた途端、一瞬で手術室から消えてなくなってしまったのだ。
「此処の周辺のガソリンタンクは、私の兵器庫に回収させてもらったわ。ガソリンも有効活用させてもらうわね?」
 あっという間にエメラとノインツィヒの周辺には、幽霊もガソリンも見当たらない安全地帯が出来たのだった。
 しかし、肝心の手術室から、未だ徐々に炎の幽霊が生み出されていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
トラウマを刺激され
苦しめられているとは
何という非道
必ずお助けします

弦を爪弾き
静かな心落ち着かせる旋律
安心させるようなメロディを奏で
魔力を練り上げ
矢と為します

優しさや勇気、火炎耐性も込めた水の魔力の矢を
上方へ打ち上げ驟雨として
少女さんを消火し守ります

もしハデスさんが邪魔するのなら
すかさず風の魔力の激風で吹き飛ばします

水の矢を束ねて激流とし
タンクや放射器を押し流し排除

消火にもなるでしょうし
破魔や祈りを込めた水の魔力が
炎の幽霊さん方を浄化します

そのまま演奏を続けて少女さんが落ち着くのを待ちます
お話をする前に
まずは落ち着いていただかなければ

もう大丈夫
私たちがお守りしますから


リカルド・マスケラス
炎がトラウマっすかー。一瞬、もっと深い闇とかが頭をよぎったっすけどあくまで憶測っすね。親子関係もよくなさそうな予知情報っしたし
とりまアリスを救うのが先決っすね

「アリス助け隊、華麗に参上っすよ」
飄々とした感じで登場
「お嬢さんのお名前は? 思い出せないなら仮にアリスと呼ばせてもらうっすよ」
【コミュ力】で喋りながらアリスに心を許してもらえれば憑依し、炎の【属性攻撃】【式神使い】等で幽霊を支配下に置けないか試みる
「炎の幽霊はアリスが呼んだもの。操れない道理はないっすよ。幽霊を操る感覚は自分を通じてアリスに教えてあげるっすよ」

無理そうなら念動力で鎖分銅の魔法陣描き、水【属性攻撃】【破魔】【結界術】でUC



 手術台の周囲で炎が舞うたび、台に手脚を縛られたアリス適合者のバロックメイカーの少女が悲鳴を上げる。
「んぎいいぃぃっ!」
「いいぞ! もっと苦しみたまえ! そしてもっと強力なバロックレギオンを生み出すのだ!」
 ドクター・ハデスが嬉々として少女に火を押し付ける。
 だが、それを妨害するべく、水の矢が猟書家の手元を狙う!
「おおっと! 邪魔をしないでくれないか、猟兵諸君?」
 猟書家が振り返ると、そこには黒猫の箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)と白い狐面のヒーローマスクのリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)が身構えていた。
「トラウマを刺激され、苦しめられているとは何という非道でしょう。必ずアリスさんをお助けします」
 蒸気機関式竪琴『カッツェンリート』を爪弾いて、静かな心落ち着かせ、安心させるようなメロディを奏で始める。
 そしてシンフォニアの技能が、その音色に魔力を宿し、ユーベルコード『トリニティ・ブラスト』を発動させる。
「練り上げた三色の魔法矢、どんどん増やしてゆきますよ~」
 炎・水・風属性の魔法を矢に変えて撃ち出すこのユーベルコード。
 今回は炎を封印し、水と風だけで対処する。
 その矢の数は470本ずつ、合計940本にまで膨れ上がる!
 その傍らで、リカルドを被った藍髪ポニーテールの少女が、じっと猟書家を見詰めていた。
(炎がトラウマっすかー。一瞬、もっと深い闇とかが頭をよぎったっすけど、あくまで憶測っすね。親子関係もよくなさそうな予知情報っしたし)
 見た目は少女でも、意識はリカルドのそれだ。その証拠に、彼を装着して体をあずけると、髪の色が藍色に、瞳は橙色に変わるのだ。
(とりまアリスを救うのが先決っすね)
 リカルドは周囲に群がる炎の幽霊に、念動力で鎖分銅の魔法陣描くことで水の魔法を顕現させる。
 そしてユーベルコード『森羅穣霊陣(グレイスフル・ガーデン)』を発動!
「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ!」
 手術台周囲に突如、聖なる水の結界が発生!
「ぬおっ! こ、これは……!」
 悪しき存在である猟書家を結界が弾き飛ばし、更には周囲の炎の幽霊達も浄化されながら掻き消されていった。
「アリス助け隊、華麗に参上っすよ」
「リカルドさん、さすがですね~」
 箒星も負けじと、優しさと幽鬼を魔法の矢一本一本に込めると、手術台の真上の天井目掛けて水魔法の矢を発射!
 すると、矢は天井に激突してミスト状に形状を変えて少女を包み込んでゆく。
 これも水の結界の一種である。
「この魔法の霧は、大火から身を守ってくれるのですよ~」
 手術台周辺の炎を消火し、炎の幽霊達を浄化して消し去ってしまう。
「ええい! 邪魔をしないでくれたまえ!」
 ドクター・ハデスが箒星へスパナで殴りかかろうとするが、箒星が指先ひとつで風魔法の矢を一斉射すれば、風圧に身を潰された猟書家が遠くの壁に激突していった。
「んぐッ!」
 壁に叩き付けられた猟書家は、たたらを踏んでその場で意識朦朧としている!
 しばらくはその場所から動けないだろう。
「あとはガソリンを風と水で外へ押し流してしまいましょうか」
 突風と水流の矢はポリタンクを容赦なく手術室の外へ排出して、足の踏み場もなかった手術室がたちまちスッキリ整頓されていった。
「もう大丈夫。私たちがお守りしますから」
「うう……うあああーっ!」
 だが、箒星の声など耳に入っていないかのごとく、錯乱する少女!
「いけません! まだ恐怖心で心が閉ざされています!」
 すぐさま箒星は、竪琴の演奏により力を入れ始めた。
 その音色はゆったりとしつつも、何処か励まされるような楽曲だ。
「落ち着いてほしいっす。自分らはお嬢さんを助けに来たっすよ。あ、お嬢さんの名前は? 思い出せないなら仮にアリスと呼ばせてもらうっすけど?」
 リカルドの質問に、胸元を激しく上下させながら少女は答えた。
「ハァ、ハァ……! ヨ、ヨウコ。私は、ヨウコ!」
「ヨウコっすね? オッケーっす。自分はリカルド、このお面が本体っすよ。そんで、こっちの黒猫は……」
「はじめまして、ヨウコさん。私は箒星・仄々と申します。演奏しながらで失礼します」
 リラクゼーション効果満載の竪琴の音色のお陰で、ヨウコは猟兵達の言葉に耳を傾ける余裕が生まれていた。
 ならば、やるなら今だ。
「ヨウコ、今から自分を被ってもらうっす」
「な、なんでよ……? 急にそんな事言われても!」
 未知への恐怖心が呼び起こされ、炎の幽霊達が手術台の周囲に顕現される。
 だが、結界と魔法の霧の効果で、すぐにそれらの存在は消失していった。
「ほら、そうやって炎の幽霊を呼んでしまうっす」
「ごめんなさい……怒らないで!」
 目をぎゅっと瞑って何かに耐えようとするヨウコ。
 その姿に、やれやれとリカルドは首を竦めてしまう。
「自分は別にヨウコを叱ってるわけじゃないっす。それにヨウコを叩かないっすよ」
「え、本当……?」
 ここでようやく、ヨウコは自分が責められているわけじゃないと確信した。
 リカルドはヨウコにゆっくり、優しく言い聞かせ始めた。
「炎の幽霊はアリスのバロックメイカーであるヨウコが呼んだもの。だから操れない道理はないっすよ。幽霊を操る感覚は自分を通じてヨウコに教えてあげるっすよ。だから、自分を被ってほしいっす」
 さあ、と狐面を指差すリカルド。
 これにヨウコは、ゆっくりと首を縦に振った。
「決まりっすね」
 リカルドは自身の本体である狐面を、アリスの少女に被せてあげた。
 途端、ヨウコの髪の色が藍色に変化した。
 ヨウコの身体に、リカルドの意識が重なった瞬間だ。
『ふんふん、なるほどっす。だいたい理解できたっすよ』
 ヨウコの身体を通じて、バロックメイカーの操作術の何たるかを感覚で掴んだリカルドは、浄化しきれていない炎の幽霊達を手術台へ向かわせる。
『仄々、まだ矢の残弾はあるっすか?』
「ええ、勿論ですとも」
 弦を爪弾いて出てきた蒼の旋律が、流水の矢に変換されて空中を漂い始める。
 これにリカルドは躊躇なく告げた。
『近寄ってくる炎の幽霊達を撃ち抜くっす!』
「わかりました!」
 竪琴の音色が掻き鳴らされるたびに、炎の幽霊が世界から消失してゆく。
 そして、リカルドがわざと水の矢に炎の幽霊達を誘導させることで、操縦の感覚をヨウコに覚えさせようとしていた。
『幽霊の操作、難しいのは数が多いところだけで、自分から言わせてもらえれば、撮影用ドローンの操縦よりも楽っすよ!』
「あ、え、うそ……? そんな感じでいいの?」
 ヨウコは戸惑いながらも、自分の力で炎の幽霊を制御できるか試してみた。
 すると、全部が全部ではないが、3割ほどの炎の幽霊を自らの意思で操作できるようになったのだ!
『やったっすね、ヨウコ!』
「まずは第一歩、ですね~」
 リカルドと箒星は、ヨウコの成長をべた褒めしてゆく。
 そこへ、意識を取り戻したドクター・ハデスが叫ぶ!
「いい加減にしたまえ! ここは私の手術室だぞ!」
 一喝する猟書家に、ヨウコは反抗的な視線を送って無言の抗議。
 これに気を悪くしたドクター・ハデスが歯軋りしてみせる。
「んぎぎぎぎ……! まだトラウマが足りないようだ!」
 猟兵達は、また一歩、アリスことヨウコの心を持ち直させたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
親って実は良く判らないんですよね
生まれた時にぽい捨てされたっぽいので

「さらっと重いねご主人サマ!メルシーがお母さんになろうか?それとも御姉様?」
ふざけんなポンコツ

お前こそ微妙に不安そうですね

残ればいいのに

「まさかー♪ちょいと気になる事があるだけだよ♪」(UC発動。射程半減・移動力強化少女形態

【情報収集・視力】
周辺状況と何よりガソリンタンクと火炎放射の位置を把握

女の子虐めて軍隊とか悪趣味ですね
偶には格好よく助けるとしましょうか

【属性攻撃】水属性を己とメルシーに付与
【盗み・二回攻撃・空中戦・スナイパー】

水の弾丸を連打
炎の幽霊の迎撃に努
戦いながらポリタンクの強奪

メルシー
強化した移動力で回収優先


テラ・ウィンディア
…ひでーな
「ええ、でも人は時に幾らでも残酷になれるんです…」
家族に殺されかけた上に同じ事を繰り返すってか(想像する。自分の家族がそうなったらを

……(怒りが突き抜けすぎて沈黙

UC起動

助けるぞヘカテ!

【戦闘知識・属性攻撃】
周囲の状況とガソリンタンクの位置と危険の確認
闇属性を全身に付与

【魔力溜め・全力魔法・結界術・除霊・破魔】

炎の幽霊を結界で閉じ込めて動きを封じて強化した除霊と破魔による浄化を試み

【見切り・第六感・残像・空中戦】
飛び回りながら残った幽霊に襲い掛かり

【二回攻撃・早業】
剣と太刀により切り捨て

対ガソリン
【属性攻撃・結界術】
結界で閉じ込めた上で土属性によるセメントで固める!

待ってろよ…!



 猟兵達の努力の甲斐あって、炎の幽霊達とガソリン入りのポリタンクは、手術室から順調に取り除かれていった。
 手術台に括り付けられているアリスのバロックメイカーことヨウコも、猟兵の力を借りてバロックレギオンの制御に慣れつつあった。
 だが、猟書家『ドクター・ハデス』はヨウコの身体にガソリンをぶちまけると、なりふり構わず火を放った!
 爆発する手術台! 火柱が天井まで昇る!
「いやあああああっ!」
「ふははは! 熱いだろう? でもキミは死なせやしないよ。バロックレギオンをどんどん生み出してくれさえすれば、きちんと治療して延命させ続けてあげよう!」
 ドクター・ハデスは、ヨウコが被っていた白い狐面を剥ぎ取って放り投げると、更に火炎放射器で家のjの身体を炙っていく。
 そこへカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が駆け付け、ドクター・ハデスの体を攻撃した。
「女の子虐めて軍隊とか悪趣味ですね。偶には格好よく助けるとしましょうか。メルシー、射程半減の移動力強化で頼んだ!」
「任せて、ご主人サマ!」
 メルシーと呼ばれた銀髪の美少女の姿が、一瞬、白銀のまんまるスライムに代わったかと思えば、すぐさま魔法少女姿のメルシーに変身したではないか。
「ラジカル☆マジカル♥高圧水流スプラーッシュ♪」
「グワーッ!!」
 メルシーは人間サイズへ縮小したRBS万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』から噴出した凄まじい勢いの水流でドクター・ハデスを押し流し、更にヨウコの身体の炎を消火!
 その水圧の強さで、メルシーの身体が空中に浮いてしまうほどのの勢いを誇っていた。
「ヨウコちゃん、待ってて! メルクリウス☆ヒーリングッド♪」
 火傷だらけのヨウコの身体に水が浴びせられると、あっという間に焼けただれた皮膚が治癒してゆく。
「メルシーは万物の根源である賢者の石で駆動する美少女サイキックキャバリア♪ 人間の肉体の再構成なんて楽勝楽勝☆」
「って、これ、僕も出来るんですね!? メルシーの力が逆流してるだとっ?」
 カシムは周囲を徘徊する炎の幽霊達に賢者の石から生み出された水鉄砲を浴びせていた。炎の幽霊達は霊水を浴びて浄化されて消失!
「よし、ポリタンクが残りましたね! メルシー、タンクを押し流すのです!」
「了解だよ☆」
 タンクを水流で押し流しつつ、残る炎の幽霊達をまとめて“鎮火”していった。
 テラも負けじと星刃剣『グランディア』に浄化の祈りと魔力を籠め、刃を媒介に結界を発動させる。
「炎の幽霊達よ、そこでおとなしくしていろ!」
 まるで見えない棺桶に閉じ込められたかのように、その場で見を悶えさせる炎の幽霊たち。完全に熱も炎もシャットアウトされているため、近くのポリタンクへの影響はゼロである。
「やっとおとなしくなったか? ……しかし、ひでーな」
 テラの言葉に、黒猫モードで付いてきた三界神機『ヘカテイア』が答えた。
「ええ、でも人は時に幾らでも残酷になれるんです……」
 その言葉の意味を、若干12歳のテラは理解していた。
「家族に殺されかけた上に同じ事を繰り返すってか……」
 テラは想像する。
 自分の家族が、他人の目的のために嬲られ続ける光景を。
 容易に想像できてしまった自分に絶望すると同時に、そんな事をする存在……猟書家に対して、怒りの上限を軽く突き抜けてしまい、思わず絶句してしまった。
「絶対に許しちゃいけない! 助けるぞヘカテ! ウィザードモード起動! 詠唱省略、ダイレクトにおれの魔力を受け取れ!」
「うにゃっ!? しっぽは掴んじゃ駄目ですって~!」
 テラがヘカテにゃんのしっぽをギュッと握って魔力を送る。
 すると、ヘカテにゃんを介して増幅した魔力が逆流し、様々な技能が覚醒を果たす!
「強化された今のおれの技量なら!」
 まずは足元に転がるガソリンのポリタンクを、結界で完全に覆い尽くしたあと石化の呪力で完全に石へと変えてしまう。
 そして、閉じ込めている炎の幽霊達は、一瞬で消滅させられて強制成仏させられてしまった。
 おまけに星刃剣『グランディア』で結界ごと炎の幽霊を真っ二つに断ち切ってみせると。ヨウコへ振り返って告げた。
「待ってろよ……! お前の怖がるもの、全部なくしてやるから……!」
 それを眺めていたカシムは、冷静に独りごちる。
「テラさんは熱いですね。実は僕、親って実は良く判らないんですよね。生まれた時にポイ捨てされたっぽいので」
「さらっと重いね、ご主人サマ!」
 唐突なカシムの告白に、いつもとは立場が逆転してメルシーがツッコミを入れた。
「その話、今するべきじゃないんじゃないかな?」
「いやでもですね? 親なんていてもいなくても、始めから気にしなくとも生きていけるもんですよって言いたいわけですよ」
「ご主人サマって結構ドライモンスターだよね……? きっと幼少期に愛を知らずに、そのまま大人になっちゃったんだね? 今からでも遅くはないから、メルシーがママになろっか? お姉ちゃんでもいいよ?」
 擦り寄ってくるメルシーの口元に、カシムはポリタンクの中身を注ぎ込みながら答えた。
「ふざけんなポンコツ。お前、半分はオッサンじゃねーか、この雌雄同体が! ほらガソリンですよ。機械なんだからグッと飲み干しておけ」
「もごもごご……! ぷはぁっ! まっずぅい! ぺっぺっぺ! 賢者の石はガソリンで動かないんだってば、もう~!」
 舌を出して、げーっと嗚咽を漏らすメルシー。
 だが、その様子はどことなく変だった。
「……どうした? 微妙に不安そうですね? 此処から先は僕ひとりでもやれますよ? 無理せずお前は手術室の外で待機してろ」
 これにメルシーは無理強いするように、笑顔を作っておどけてみせた。
「まさかー♪ ちょいと気になる事があるだけだよ♪」
「へぇ? まぁ、いいですけど?」
 カシムはあまり気に留めずに、炎の幽霊へ高圧水流を吹き掛け続けていた。
「それじゃ、ご主人サマ! 残りのガソリンタンクは運び出しちゃうね!」
 今のメルシーは、普段の移動力の5倍に強化されているのだ。
 彼女が目にも留まらぬ速さで手術室を駆け巡ると、気が付けばガソリンは周囲から消え去ったのだった。

 残るは、猟書家『ドクター・ハデス』を倒すだけだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ドクター・ハデス』

POW   :    行け、我が創造せし怪物よ!
無敵の【人造生命体】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    我がしもべに加えてやろう、光栄に思うがいい!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【即席で改造し、意思なきしもべ】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    進化し続けること、其れこそが我が天才たる所以!
【工具】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アイ・リスパーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんてことだ! これではバロックレギオンが呼び出せないじゃないか!」
 猟書家『ドクター・ハデス』は金切り声を上げて悔しがる。
「こうなったら、このアリスに肉体的苦痛を与えて、無理矢理にバロックレギオンを引きずり出させてやろう! これでどうだ!」
 ガツンッと手に持っていた六角レンチが、ヨウコの額をかち割った!
 すると、ヨウコの身体がみるみるうちに膨張し、異形の姿へ変化してゆく!
「ぎゃああああっ! なんなの、この身体!? いや、死にたくないっ!」
 手術台の上でのた打ち回る異形の肉体!
 平常心を取り戻していたヨウコは再びパニックに!
 次々と溢れ出てくる炎の幽霊たちに、ドクター・ハデスは魔改造を施していった。
「フハハハハハ! 出来たぞ、我が軍が! これこそが我が天才たる所以!」
 あれはドクター・ハデスのユーベルコード!
 おそらく、ヨウコの身体が変異したのもユーベルコードの影響なのだろう。
 あまり時間を掛け過ぎれば、バロックレギオンごとヨウコ自身がドクター・ハデスの被造物へと作り変えられてしまうだろう!
 事態の状況の悪化を悟った猟兵達は、再びヨウコへ言葉を投げかけつつ、元凶であるドクター・ハデスを撃破するために動き出すのだった。
ルナリリス・シュヴァリエ(サポート)
何かお困りですか? 私は旅の聖剣使いです
誰かの力になりたい、そんな思いから猟兵活動をしています
私で良ければ力になりましょう。

お人好しな性格で、並みいる敵を聖剣でなぎ払い、罠やトラブルは体当たりで乗り越えていく
そんな突撃隊長的なキャラクターです。

あとはお任せで、よろしくおねがいします。


水鏡・怜悧(サポート)
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
NG:エロ・恋愛
「楽しめそうだ」「美味そうだな」「ヒャハハハハ」
行動優先順は1.NPC含む他者の救助、2.攻撃。ホントは敵を喰う方を優先してェんだけど、ロキが煩せェからな。
UDCを纏って獣人風の格好で戦うぜ。速度と勘を生かして攻撃を避けつつ、接近して爪で切り裂くか噛みついて喰うのが得意だ。UC使った遠距離攻撃もするが、銃はちょっと苦手だ。牽制に使ったりはするけどな。
技術的なヤツとか、善悪論とかは苦手だし、興味もねェ。楽しく殺して喰えれば満足だ。喜怒哀楽は激しい方だが人として生きた経験は短けェからな。価値観とか常識は知らねェよ。まァヤバイときはロキが止めるだろ。


グァンデ・アォ(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》

「おや? あれは何だろう……ねーねー、そこのオネーさん、これは何なの?」

通常はだいたいイラストの通りのキャラクターです。
好奇心の向くまま、あちこちウロチョロ飛び回っては、なんやかんやで状況を動かします。
念動力でその場にあるものをなんやかんやしたり、ウロチョロ飛び回ってなんやかんやしたり、危険な行為に勇気を出してなんやかんやします。

「サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします」

マシンヘルムに変形して誰かに装着してもらう(攻性ユニット化)場合に限り、口調と人格が大人のそれになり、装着者の行動をアシストします。


アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」

楽観的で感情豊か、夢見る乙女な性格の少女
年相応に無邪気であり、根本が人でない故に残酷

神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も一応遵守しようとするが、それはそれとして楽しそう、面白そうで物事を判断し、それを優先して行動する

バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ

戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、捕食等の野性味溢れる攻撃スタイル
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる


サエ・キルフィバオム(サポート)
猫かぶりな妖狐で、直接的な戦闘というよりも、情報を集めたり、不意打ちやだまし討ちのような奇襲を得意とします

猫をかぶってる時は「あたし」と自身を呼び、語尾に「~」が入るような間延びしたしゃべり方をします
真剣な時は「私」呼びになり、口数は少なくなり、語尾の間延びは消え、気に食わない相手には結構キツめの口調になります

「ごめんなさい、あたし道に迷っちゃってぇ~……」
子供らしく振舞って油断を誘う、色気を出して魅力で釣るなど、あの手この手を使います

「は?私がそんな事許すと思った?」
本性を現し後ろから絞殺糸を巻き付けるようなイメージです

基本的に行動はおまかせします
アドリブや絡み歓迎です
よろしくお願いします



 猟書家『ドクター・ハデス』のユーベルコードによって、アリス適合者のバロックメイカーことヨウコの身体は、醜く膨れ上がった異形の姿に変えられてしまった。
 ヨウコは先程までとは違い、自身の体の変化に恐怖に慄いている。
 そのせいで、制御できていたはずのバロックレギオンが暴走・増殖してしまっていた。
「いいぞ! もっとだ! もっとバロックレギオンを生み出してもらおうか! 邪魔する猟兵達を蹂躙するのだ! フハハハハ!」
 生み出された炎の幽霊達が発する熱波で汗ばむドクター・ハデスの高笑いが、手術室に木霊する!
 そこへ、サポート猟兵が駆け付けてきた!
「これは……なんて酷いことを……!」
 絶句するルナリリス・シュヴァリエ(サキュバスの剣姫・f25397)は、目の前の惨劇に思わず目を細めてしまう。
「猟書家様、覚悟なさい。正義を司る女神を宿した聖剣アストライアが、貴方様を粛清してみせます」
 金の柄と巨大な白銀の剣身が輝く聖剣を正眼に構えるルナリリス。
 その横で、多重人格者の水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の人格のひとつ、粗野な性格で紫目の『アノン』が、狼の耳を頭から生やして唸り声を上げる。
「ったくよ……。ロキの奴、あのアリスを助けろってうるせェんだよ……」
 別人格の『ロキ』……平時に現れる比較的良識のある人格が、アノンへアリス救出を強く請うのだ。
 アノンは今すぐにでも猟書家を食い殺したい気分だが、内なる自身の忠言にやむなく従うことにした。
「ヒャハハハハ! 感謝しろよ、イカレたヤブ医者? 少しは寿命が伸びるぜ?」
 ゴキゴキとアノンは指を鳴らし、猟書家を守るように群がるバロックレギオンを睨み付けた。
 更に、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)とサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は、バロックレギオンの発する熱波に顔をしかめていた。
「植物は炎に弱いんだよう……」
「なにここ~? こっちまで焼かれそう~」
 かたや植物の化身である巨大な怪物少女、かたや桃髪のぶりっ子妖狐少女。
 炎の幽霊達との相性は、一見するとよくないようにみえた。
 と、そこへ、何処からともなく飛んできたヘルメットみたいな物体……もといヒーローマスク(?)のグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)が手術室へ迷い込んできた。
「なになに? なんか大事件?」
 どうやらグァンデは事の経緯を知らないらしい。
 だが、サエを見るなり、急にテンションが上りだしたではないか。
「わぁ! きれいなピンクの髪の妖狐さんだ! 今日はこの人を手伝おっと!」
「え、なんですか~?」
 上空に漂う謎存在に呼び止められたサエが、思わずグァンデを見上げた。
 その次の瞬間!
 マシンヘルムに変形したのち、ガッシーンッとグァンデがサエの頭部へ装着!
「きゃー! なんですかこれ~!?」
 まるでVRゴーグルのように、サエの顔半分を覆い尽くすグァンデ。
 そんなグァンデがサエへ語り掛ける。
「はじめまして。サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします」
「サポートAI……? って、わっ! なんか、すごい!」
 ゴーグルに表示されたARデータが、サエの戦闘を完全にバックアップ!
「敵勢力の分析が完了しました。炎の幽霊の対処法を検索……完了。以下の対処が有力です。ご確認ください」
「え、なにこれ……? よくわかんないけど、助かる~!」
 サエはグァンデの補助を受け、万全の対策を講じることが出来た。
 その横で首を傾げるアウルは、とりあえずサエを先導させることにした。
「炎の幽霊は任せるよ。あれをなんとかしてくれたら、猟書家はわたしが頑張るから」
 いくら苔や植物を操る能力に長けていても、炎には敵わない。
 2人は即興で連携を取ることになった。
 そんな段取りをしている間に、アノンとルナリリスが猟書家へ迫るべく、炎の幽霊達をかき分けてゆく。
「どんなに険しい道のりも、過酷な運命も、私を阻む事はできません」
 ルナリリスはユーベルコード『超絶美少女(ハイパー・ヒロイン)』を無自覚に発動させ、自身に宿る“超自然力”を増幅させる。
 彼女の“超自然力”とは、すなわちバーチャルキャラクターがゆえの記憶保持量の限度による思い出の上書き、それに伴う心身の復元を差す。
 つまり、彼女はいくらダメージを受けても、『そのダメージを受けた記憶』が新たな記憶によって上書きされると、同時に傷も癒えてしまうのだ。
 それを強化するということは、ほぼ無敵状態を意味する!
「これくらいの火傷、どうとありません!」
 炎の幽霊の軍団を聖剣で斬り伏せて未知を切り開き、その合間をアノンが駆け抜けてゆく。
「とりあえず、拘束された手脚の一部だけでも解いてやるか」
 アノンはヨウコが縛り付けられている手術台に駆け寄ると、己の爪で拘束具のひとつを引きちぎった。
 これにより、ヨウコは左腕が自由に動くようになった。
 だがこれを猟書家が看過するわけがなかった。
「邪魔をしないでくれたまえ!」
 振るわれる六角レンチが、炎の幽霊を殴る!
 すると、殴られた炎の幽霊の全身が、鬼のような筋肉質の巨体に変身!
「即席の改造だが、幽霊は既に死んでいる存在だ。容易く改造できる! さあ、我がしもべに加えてやろう、光栄に思うがいい!」
 更には、炎の幽霊を素材に、無敵の人造生命体を即興で作ってみせるドクター・ハデス。
 天才を自称するだけはあり、もはや何でもありだ。
「行け、我が創造せし怪物よ! 猟兵共を殺せ!」
「「グルルルル……!」」
 唸り声を挙げながら、ルナリリスとアノンへ襲い掛かる怪物達。
 しかし、ルナリリスの“超自然力”の前では、無敵の人造生命体が殴りかかろうがすぐに傷が癒えてしまうため無意味である。
 これにドクター・ハデスは、自身の創造物に疑問を抱いてしまう。
「なぜだ? なぜ、ひ弱な女騎士ひとりを殺せない?」
「正義の女神の加護のお陰です! そして、無敵といえども、人の形でしたら急所がありますよね?」
 聖剣が一段と光を放つと、怪物を袈裟斬りに伏してしまったではないか!
 創造物の強さに疑問を感じたため、ルナリリスの攻撃が通ってしまったのだ。
 アノンもユーベルコードを発動させ、体内に宿したUDC怪物を呼び起こす。
「ヒャハハハハ! 少しは楽しめそうだな、オイ?」
 体内から飛び出した触手の刺突・打撃・斬撃・拘束攻撃といった超高速攻撃が、炎の幽霊や改造された怪物達をことごとく破壊!
 そこへ、グァンデを被ったサエが乱入!
「なるほど、炎を吹き飛ばせばいいんだ! バースデーケーキのロウソクみたいだ」
「改造された怪物は、わたしがぶっ飛ばしておくね」
 サエがキャンディ型一極集中拡声器で炎の幽霊を強烈な音波で掻き消してゆく。
 その後ろから押し寄せてきた改造生物は、アウラの巨大な刻印左腕(ドライバーレフト)で握り潰し、そのまま自身の口元へ放り込んで捕食してしまった。
 まだまだバロックレギオンの数はいるが、4人(+ヘルメット)は、とうとう猟書家に辿り着く。
「正義の一閃を、受けてみなさい!」
「猟書家の肉って美味いのか? 痩せたその身体だからマズそうだけどな?」
 ルナリリスの聖剣の斬撃に、アノンの触手の超高速攻撃が、ドクター・ハデスの身体に容赦なく叩き込まれた!
「ぐぬぅ……!」
 決して浅くない傷を追ったドクター・ハデスは、裂かれた体の傷を手で抑えて苦痛の声をあげる。
 そこへ追撃として、アウルが『新緑、太古よりの旋律を奏でろ(ディノトリオ・ビギニングフワワ)』を発動!
「特別なカタチ……どれになろうかな?」
 巨体が、メキメキと骨格を変形させて、次第に恐竜のような姿に変貌を遂げてゆく。
「グルゥアアァァァーッ!!」
 完全に“竜”へと変化したアウルが、猟書家の肩の肉に貪り突き、鋭利な犬歯でゴリゴリと噛み砕いていった。
「今です。強撃を撃ち込んでしまいましょう」
「謎ヘルメットさん、ありがとう~!」
 グァンデに導かれるサエは、必殺の一撃を浴びせようと身構える。
 だが、そこへ改造された怪物達が、ドクター・ハデスに操られてサエを襲撃!
「フハハハハ! 油断したな! 数の暴力を思い知りたまえ!」
 勝ち誇る猟書家の声が手術室に弾む。
 だが、サエを襲っていた怪物達の挙動が、徐々に変化を起こしてゆく。
「成功した……って、思ったでしょ。ざーんねん♪」
 サエの妖狐の魅力が数倍に跳ね上がって、体中から発散された。
 途端、サエを殴っていた怪物達の操作権限が、ドクター・ハデスからサエに移行したのだ。
「殴られている間、完全に脱力していたから。タダで殴られると思った?」
 サエは怪物達をドクター・ハデスへけしかけてゆく。
「数の暴力、思い知るといい」
「ば、馬鹿な!? こんな事、何かの間違いだ!」
 自分で作った怪物達に袋叩きにされ、悲鳴を上げるドクター・ハデス。
 その背後にサエは忍び寄ると、鋼糸を巻きつけ、左肘から下を括り斬ってみせたのだった。
「首は落とせなかったか。でも、左腕はこれで封じた……!」
「ぎゃあああぁーっ! 腕が! 医者の生命線が!?」
 目の前に転がり落ちる自分の腕を見て、ドクター・ハデスはみっともなく狼狽したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

カシム・ディーン
「ねぇご主人サマ?あの人はメルシーに任せて貰える?」
はぁ…やっぱりか
妙に覚悟決めた面しやがって…
「ええとー…今度はご主人サマの期待通りに色々ふぎゅっ「(頭掴まれ」
魔力精力9割
生命力五割
今日食べたご飯の熱量全部
を代償に強化!

【医術】
ヨウコに駆け寄り状態を確認
状態と必要処置を確認

大丈夫!これでも僕は天才だ!絶対に戻すから安心しろ!

メルシー
【視力・情報収集】でハデスを解析
「……はぁぁぁ…」ほっとした様子で深い溜息
「なんだぁ…名前からぷっさんかその血縁かと思ったけど全然違うじゃーん…紛らわしいなぁもう…君なんかにその名前は勿体ないよ。パーデスに改名して」

速足で駆ける者発動

【二回攻撃・切断】で猛攻!!


テラ・ウィンディア
……なぁ…教えてくれよ
そいつは親に殺されかけて
火が凄く怖くて
その上にそんな風に体を変えられて…なんでそんなに苦しめられるんだよ
どうしてそんな酷い事できるんだよ…

どんな答えであれ
(表情が消えた。唯…黒ちび子猫を抱きしめたまま

【戦闘知識・見切り・第六感・残像・空中戦】
ハデスの動きから攻撃を見切り飛び回り回避しながら

そっか…喜べよ
おれもそのお姉さんと同じ事できるんだ
メルシーだったな
頼む…そのお姉さんを安全な場所に逃がしてくれ(感情の消えた声

怒りが臨界点を超える…!
UC発動!
【重量攻撃・砲撃・属性攻撃・リミッター解除】
重力属性と限界突破で更に強化
全てのブラックホールを一つに収束
消え失せろ…存在ごと!!



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、苦戦を余儀なくされていた。
 2人は猟書家への対策は万全であったが、ヨウコから呼び出されたバロックレギオン――炎の幽霊の軍団への対処が抜け落ちていたのだ。
 サポート猟兵の活躍により、かなりの数が駆逐されたとはいえ、未だヨウコの身体からバロックレギオンの出現は止まっていないのだ。
 故に、ドクター・ハデスになかなか辿り着けず、彼等は目の前の敵をただひたすら斬り伏せる他なかった。
「この数は想定外でした。バロックレギオン、すごく邪魔ですね……!」
「ご主人サマ、このままじゃジリ貧だよ?」
「分かってる! 今、どうするべきか考えてますから!」
 魔眼宝石半仮面を被り、霊的な補助力を得たカシムは、帝竜眼を媒介に浄化属性の霊光を放つことでバロックレギオンの接近を阻害していた。
 一方で、テラは無表情のまま、機械的に紅龍槍『廣利王』を振るってバロックレギオンを退ける。
 テラは、バロックレギオンの後ろで切断された腕をユーベルコードで接着しているドクター・ハデスに向けて、静かな怒りの言葉を向けた。
「……なぁ……教えてくれよ。そいつは親に殺されかけて。火が凄く怖くて。その上にそんな風に体を変えられて……なんでそんなに苦しめられるんだよ? どうしてそんな酷い事できるんだよ……?」
「酷い事? はて? 私は『自分が従えるべき最強のバロックレギオン』を生み出してもらっているに過ぎないのだが? それにご覧の通り、アリスは殺していない。私は医者だ、人名最優先でやっている。何処か問題があるのかね?」
 ドクター・ハデスの言動に、テラの双眸から光が消えた。
「……大アリだ。自分のやってることが悪い事だとも気付いていないのか……」
 深い絶望と悲しみ、そして感情を殺してしまうほどの強烈な怒りがテラを飲みこんでゆく。
 服の中に潜り込んでいたヘカティア(黒猫形態)が、心配そうに顔を出す。
「テラ、気を確かに!」
「……ヘカテにゃん。その姿でもブラックホールが撃てるか?」
「ま、待ってください! 此処で撃ったら、ヨウコさんを巻き添えにしてしまいますよ!」
 冷静さを失いつつあるテラを必死になだめるヘカテにゃん。
 だが、テラは止まらない。
 彼女はメルシーに告げた。
「お姉さん……メルシー、だっけ? 確か、凄く早く移動できたはずだよな?」
「え、あ、うん♪ ご主人サマのラブパワーがあれば、最高速度はマッハ27まで出せるよ!」
「そっか。よかった……。じゃあ、あのアリスのお姉さんを連れて、此処から逃げてくれ」
 テラがそういうと、押し寄せる炎の幽霊を槍で薙ぎ払ってバックステップ。
 首元のヘカテにゃんをむんずと掴むと、ドクター・ハデスへその顔を突き付けた。
「さあ、メルシー。早くやってくれ」
「う、うん……。って事で、ご主人サマ? あの人はメルシーに任せて貰える?」
 メルシーの申し出に、カシムは溜息で返答した。
「やっぱりか。妙に覚悟決めた面しやがって……でもスライムはダメだ! 前回の時は、本当に死ぬかと思ったぞ! あれでクッソ気持ち良くなかっら、ただのトラウマ製造機だからな? だからスライムは禁止だ!」
「はーい。じゃあ、ええとー……? 今回は、ご主人サマの期待通りに色々ふぎゅっ」
「黙れ。今はふざけている場合じゃないでしょうが!」
 カシムはメルシーの顔面を真正面から鷲掴み!
 そこからカシムの魔力と精力を9割、生命力の半分、更に今日食べた食事で得られた熱量全部をメルシーへ注ぎ込んでゆく。
「……ぷはぁっ! あーキツい! どうだ、メルシー?」
「……うん、強化完了だよ。でも、せめてアイアンクローじゃなくて、キスでも良かったんじゃ……?」
 しょげるメルシーに、足元がふらつくカシムがめるしーの肩に掴まった。
「うるせえ。今はヨウコを助けるのが先決だ。……うまくいったら、ご褒美にキスしてやるから」
 カシムの突然のデレ発言!
 メルシーの瞳にやる気が漲る!
「えへへ♥ 約束だよ? 絶対、連れて帰ろうね?」
 メルシーはカシムをおんぶすると、炎の幽霊の群れの合間を縫って、手術台へ迫る。
 カシムを手術台の近くで下ろすと、メルシーは押し寄せる炎の幽霊達を抑えるべく、高速移動でなぎ払い始めた。その手には鎌剣ハルペー。不死者をも冥府に送る力を持つとされる、彼女の専用武器だ。
「ああ、も~! 数が多すぎるって!」
「待ってろ、メルシー! おい、ヨウコ! 大丈夫! これでも僕は天才だ! 絶対に戻すから安心しろ!」
 竜の魔具を媒介に、ヨウコの魔力の浄化を試みるカシム。
 だが、かなり汚染が進んでいることが分かると、カシムは内心焦り始める。
(今の僕の残存魔力では、浄化を完全に推し進められません……!)
 故に、膨れ上がった肉体から毒素を消し去る施術だけを行うに留まる。
 更に、テラのユーベルコード『滅界虚空・全終焉(ブラックホールエンディング)』の準備が整っており、いつでも手術室の半分を消滅させることが可能な状態だが、ヨウコを脱出できずに発射が出来ない!
「もう我慢出来ない……。手術台ギリギリに撃つ!」
 怒りが限界を超えたテラは、カシム達を避けてユーベルコードを発射!
 ブラックホールがバロックレギオンの一部を飲み込み、そのまま跡形もなく消滅させてしまった。
 猟書家の右足も飲み込まれてしまったが、すぐにドクター・ハデスはユーベルコードで治療し、右足を再生させてしまったではないか!
「フハハハハ! どうやら、ユーベルコードの相性が私の方が有利のようだな?」
「……くそ! 炎の幽霊の対策さえしていれば!」
 ギリリと奥歯を噛み締めるテラ。
「もういいです、テラ! ここは撤退です! 他の猟兵達に後を託しましょう!」
「こっちもダメだ! 僕も手に力が入らない……!」
「ご主人サマ、しっかりして! ヨウコさん、ごめんなさい! でも私達の仲間が必ずあなたを助けるから!」
 メルシーはヘロヘロのカシムを抱えて、バロックレギオンの包囲網を脱出!
「……ドクター・ハデス。次の『お前』に会った時は、絶対に負けない……!」
 テラは燻った怒りを胸に抑え込んだまま、やむなく手術室を去る他なかった。
 事後は、他の猟兵に託される。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ノインツィヒ・アリスズナンバー
そうやって命を弄りまわすんじゃねえ。
どこまでもムカつくヤローだなてめえは。
人は、命は……てめえのおもちゃじゃねえんだよ。

相手の工具による命中を奪い取るために、UCで剣を飛翔させてドクターハデスの腕にぶっ刺す。切り込みつつ接近して、工具が手元から落ちたら念動力でこちら側に引き寄せて、カウンターで私を叩く。
効果による戦闘力の増強を頂いたら、楽しい楽しい暴力の時間だよ☆
炎の幽霊ごと吹き飛ばして、その面が見えなくなるまでメリケンサックでボコボコにしてくれる。

おいアリス。いや、ヨウコだっけ?
何があったかなんて聞くつもりはねえが、今やることは一つだ。
生きな。何があっても生きてりゃ今んとこ勝ちだ。



 ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)は激怒した。
 目の前で繰り広げられるドクター・ハデスの所業に、いまだかつてないほどの憤怒が、自身の腹の底から湧き上がってくるのを感じた。
 ノインツィヒもバロックレギオンへの詳細な対策は考えていない。
 しかし、ノインツィヒは最初から手段と目的が定まっていたのだ。
「よく聞け……クソ医者モドキが」
 ノインツィヒはマイクを片手に、ドクター・ハデスへ言葉をぶつけてゆく。
「そうやって命を弄りまわすんじゃねえ。どこまでもムカつくヤローだな、てめえは。人は、命は……てめえのおもちゃじゃねえんだよ」
「嗚呼、そのとおりだとも」
 ドクター・ハデスは、気色の悪い笑みを浮かべながらノインツィヒへ答えた。
「人は、命は、私の大事な『検体』であり『実験材料』である!」
「いい加減にしやがれ、ド腐れビチクソヤローッッッ!」
 ノインツィヒの怒声がマイクを通じてハウリングを発生させ、耳障りな高音が手術室に響いた。
「いいか? 『宣言』してやる。てめえがスパナを振るった瞬間、てめえの身体は穴ぼこだらけのチーズみてーになるってな?」
「フン、虚勢の良さは褒めてやろう。だが多勢に無勢だが、どうする気かね?」
 周囲には、十、二十は軽く超えるバロックレギオンの集団がノインツィヒを包囲。
 その上で、ドクター・ハデスはバロックレギオンをヨウコに呼び出させるため、スパナで殴りつけて肉体変化を促そうと試みる。
 だが、それをノインツィヒは許さない。
「……振り上げたな? スパナを、振り上げたな?」
 ノインツィヒはすぐさま息を吸い込み、ユーベルコードを体現した歌を披露し始めた。
「てめえに今、ピッタリな歌をプレゼトしてやる。曲名? それは――」
 ノインツィヒの背後に、七色に輝くスピーカーユニットが召喚されると、もの悲しげなピアノの旋律が流れ始めた。
「“Welcome to the Black Parade(地獄へようこそ)”って奴だ」
 ユーベルコード『私達は人間で、人形でも英雄でもない(ブラック・パレード)』。
 この世の怒りと理不尽、そして人間の讃歌を歌い上げるノインツィヒ。
 その曲調はメロディアスなものから、激しいパンクロックのバンドサウンドへと移ってゆく。曲調と歌詞の内容に呼応するかのごとく、ノインツィヒの周囲、そして手元には、超常(ヴォーパル)殺しの魔法剣が出現する。歌と旋律がユーベルコードで奇跡を起こし、430本もの浄化作用を持つ剣の雨を生み出したのだ。
「炎の幽霊ごとまとめて、全身を縫い付けてやる!」
 ノインツィヒがドクター・ハデスを睨み付けた次の瞬間、超常殺しの浄剣の嵐が手術室に吹き荒れる!
 これならば、バロックレギオンへの対策も兼ねているので一石二鳥だ!
 その証拠に、炎の幽霊達は剣の効果で次々と消滅してゆく。
 異形化したヨウコにも剣が刺さると、みるみるうちに元の姿へ戻ってゆくではないか!
「なんだと! そんな事があって堪るか!」
 驚愕するドクター・ハデス。
 だが、彼にも浄剣の弾幕が殺到!
「ぐげぇッ!!」
 醜い悲鳴を挙げた猟書家は、全身を手術室の壁に縫い付けられてしまう。
 そこへ駆け寄るノインツィヒ。手には一振りの超常殺しの浄剣!
「再生なんてさせねえーッ! 磔の刑だコノヤロー!」
 スパナを握る側の肩に剣先を深々と突き刺す!
「んぎぎぎぎぎッ!」
 だが、何たる執念か!
 ドクター・ハデスは肘から先でどうにか自身をスパナで殴りつけようと、苦悶の表情を浮かべながらも決して諦めてなかった!
 これにノインツィヒが低い声で言い放つ。
「そんなに殴りたけりゃよォ……」
 ドクター・ハデスに駆け寄るノインツィヒ。
「――私を殴りやがれ」
 ノインツィヒは念動力で無理矢理にドクター・ハデスのスパナを握る手を操作し、自分の頭を殴らせたのだ!
 つまり、ノインツィヒは傷が癒え、その代わりに異形化してパワーアップ!
「あ、ああ……! なんて、奴だ! どうかしてやがるぞ、キミ!」
 よもや自分を殴らせる猟兵がいるとは、ドクター・ハデスは想定していなかったのだ。
 異形化して鬼か悪魔のような風貌へと変化したノインツィヒは、一回り大きくなった身体を確かめながら、ニィッ……と笑みを浮かべる。
「ありがとよ。こいつは馬力がありそうな身体じゃないか。アイドルとしては絶対に表に出れない姿だが、てめえを気の済むまで殴るには最適な筋力はありそうだ」
「ヒッ……! ま、待ちたまえ! こんなにボロボロの私を殴るつもりか、キミは? それは卑怯者のやることだぞ!」
 ドクター・ハデスの詭弁! 欺瞞!
 お前がそれを言うかと反論したくなるような口ぶりだが、ノインツィヒは逡巡する。
「なるほど。確かに、ボロボロのてめえを殴っても、私が勝つのは当然だな。達成感がないかもしれねーなあ?」
「そ、そうだろう? だから、ここは私の負けを認めるから、この辺で手を打たないか?」
 猟書家の狡猾な交渉を前にノインツィヒは出した結論は?
「……だから、“てめえを治してから”ぶん殴ることにした」
 再び、ノインツィヒは念動力でドクター・ハデスの腕を操作し、彼自身を敢えて殴らせた。
 体中に刺さった剣は抜け落ち、猟書家の傷が癒えた。
 これにノインツィヒは悪魔めいた喜色満面の笑みを浮かべた。
「それじゃ、ここからは~楽しい楽しい暴力の時間だよ☆」
「ヒ、ヒイイィィィーッ!」
 強化された腕力から繰り出されるメリケンサックの殴打が、何発も何発もドクター・ハデスの顔面を叩きのめしてゆく。
「く た ば り や が れ こ の ダ ボ が ッ !」
「アッバアアアァーッ!!!」
 轟く猟書家の悲鳴!
 鬼気迫る暴力の現場を呆然と眺めるヨウコ。
 ノインツィヒは彼女へ、背中越しにメッセージを贈った。
「おいアリス。いや、ヨウコだっけ? 何があったかなんて聞くつもりはねえが、今やることは一つだ」

 ――生きな。
 
「いいか? 何があっても生きてりゃ今んとこ勝ちだ。諦めずに努力すりゃいつか報われるもんだから、なっ!」
 ノインツィヒがドクター・ハデスの顎に痛烈なアッパーカットを見舞うと、元の美少女の姿に戻る。
 殴られ続けた猟書家は、顔面が紫色に腫れ上がったまま吹っ飛んでいった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「ヨウコ、君の炎は何を燃やす為にあるんすか?」
ヨウコのトラウマの根幹は炎よりも父親に関係すると見た。最悪、彼女が親に火をつけた可能性もあるが、それも考慮の上で正義感や贖罪を原動力に能力を使える様になって欲しい

「ここで理不尽に押し潰されていいんすか?それに対抗する力は今のヨウコにはあるはずっす!」
またヨウコが炎の幽霊を制御するのを手伝い、なんなら自分の似た系統のUCも駆使して、誘導したり攻撃の補助をする
さらにブラックコートをかけ、彼女の体の負担を自分が【かばう】
「ちょっとくらいなら自分が請け負うっすから」

ドクター・ハデスはテンプレの様な悪人面で、攻撃の対象としてぶつけやすいんで、そこは感謝っすね


エメラ・アーヴェスピア
酷い事するわね…!オブリビオンの科学者系はこれだから…
…時間をかける訳にはいかなくなったわ、手早く行くわよ

貴女にとっては酷かもしれないけれど、気をしっかりと持ちなさい
そうすればすぐにこの悪夢は終わるわ…いえ、私達猟兵が終わらせる
私も先程戦えなかった分を取り戻させてもらいましょうか
再装填・『出撃の時だ我が精兵達よ』、今度はちゃんとした戦闘装備よ
【集団戦術】で運用し、魔力を込めた弾丸で幽霊の相手もできるように装備も変更…引火する心配もほとんどないでしょうしね
彼女に当てない様にだけ気を付けなさい、私の軍勢
…貴方の考えた軍勢が無力であることを教えてあげるわ

※アドリブ・絡み歓迎


箒星・仄々
ヨウコさん
このまま他者に
父親やイカレ科学者に
自分の命を委ねることを受け入れるのですか?
運命は
未来は貴女の意思で切り拓くものです

生き抜く意思が
境遇への反逆が
幽霊さんのコントロールを取り戻す
きっかけになる事を期待

幽霊さん
生まれたきっけかはトラウマだとしても
只々ヨウコさんを苦しめ
過去に留める為の存在ではない筈

どうかヨウコさんが未来へ進む標の灯と
なって下さいますように

戦闘
ヨウコさんの異形及び
幽霊さんたちを治療し元へ戻します

機会あれば演奏に炎の魔力を乗せて
ヨウコさんとコンビネーション攻撃

ハデス
女性の頭をレンチで殴るとは
紳士の風上におけない御仁ですね
覚悟して下さい

終幕に鎮魂の調べ
ヨウコさんの未来を祝す曲



 超常殺しの浄剣により、ヨウコの身体は元の姿へ戻った。
 だが、怯えた心は簡単に収まるものではなく――だいぶ頻度が減ったとはいえ、バロックレギオンは彼女の身体から生み出され続けている。
「もう嫌だ……! なんで、私ばかりこんな目に……!」
 恐怖は次第に悲しみへと変わり、ヨウコの心は絶望の底へゆっくり沈んでゆく。
「酷い事するわね……! オブリビオンの科学者系はこれだから……」
 苛立つエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、周囲に可燃物や炎がなくなっていることを確認した上で、戦闘用魔導蒸気兵達を再び召喚。今度こそ、決戦兵装仕様だ。
「時間をかける訳にはいかなくなったわ、手早く行くわよ」
 横に並び立つ藍色の髪の少女が被る狐面ことリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)と黒猫魔奏剣士の箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)に告げたエメラが、戦闘用魔導蒸気兵達95体へ隊列編成を命じた。
「ヨウコさん、聞こえてるかしら? 貴女にとっては酷かもしれないけれど、気をしっかりと持ちなさい。そうすればすぐにこの悪夢は終わるわ……いえ、私達猟兵が絶対に終わらせる」
「そうっすよ、ヨウコ。さっき、自分が教えたバロックレギオンの制御の仕方を思い出すっす。ヨウコなら物にできるっすよ」
 リカルドもヨウコを励まし、バロックレギオンの出現を抑えようと目論む。
「ヨウコさん。このまま他者に、父親やイカレ科学者に、自分の命を委ねることを受け入れるのですか?」
 箒星は敢えて、ヨウコの現状を認識させ、それを否定させるところから話を導入する。
「運命は、未来は、貴女の意思で切り拓くものです。生き抜く意思が、境遇への反逆が、この状況を打破するカギなのです」
「やめろ……! 猟兵共め……!」
 満身創痍の身体で、壁伝いによろよろと立ち上がるドクター・ハデス。
「こうなったら、私自らが戦う! 残りのバロックレギオンを瞬時に改造! 私の配下に加え、私自身もユーベルコードで治癒、そして強化!」
 バロックレギオンに工具が命中すると、炎の幽霊は意思なき傀儡となってドクター・ハデスの元へ集結。更にドクター・ハデスの身体がメキメキと音を立てて体格が膨張してゆく!
 あっという間に、猟書家の貧弱な痩躯がゴリラのような筋肉質の巨体に早変わり!
「フハハハハハハ! どうだ! 天才の私にかかれば、自身への肉体改造など造作もない! そして、見たまえ!」
 ドクター・ハデスは手術室の壁を殴りつけて見せれば、一撃で壁が粉砕されたではないか!
「どうだ! このパワー! このパワーで、猟兵共の頭を腐ったトマトみたく握り潰してあげよう!」
 ゲラゲラと嘲笑をあげるドクター・ハデス。
 これにエメラは呆れ返って呟いた。
「……醜悪の一言に尽きるわ。それに的が大きくなって、此方としては助かるわね。それじゃ、私も先程戦えなかった分を取り戻させてもらいましょうか。再充填(リローデッド)!」
 戦闘用魔導蒸気兵達が一斉にコッキングして銃の弾を籠め、その銃口を筋肉怪人とかしたドクター・ハデスへ向ける。
「彼女に当てない様にだけ気を付けなさい、私の軍勢。対幽霊・対物仕様の特殊魔導弾。その弾幕の威力を、とくと味わいなさいな」
 エメラの背後に浮游する、金色の浮遊型魔導蒸気ガトリングガンが回転開始!
 下知が飛ぶ!
「――全軍、一斉発砲!」
 激しい雨夜めいた数多の発砲音の中、手術室は荒れ狂うバレットストームに包まれる!
 卓越した発砲技術とエメラの演算能力で、ヨウコには銃弾ひとつとて掠りはしない!
 炎の幽霊達は撃ち抜かれるたび、蒸発するように消滅してゆく。
 そして、全身に銃弾を浴びせ続けられるドクター・ハデス!
「ぐわあああぁァァァァーッ!!!」
 弾幕で全身から血を噴き出すも、更にユーベルコードで治癒と強化を重ね、その身体がまた肥大化!
「フハハハハハハ! 何度だって復活してやる!」
「そう、頭や全身を撃ち抜いたくらいじゃ復活するってことね? なら、死ぬまで撃ち抜くまでよ。貴方の考えた軍勢が無力であることを教えてあげるわ」
 エメラが容赦なくドクター・ハデスに銃弾を浴びせている間、リカルドはヨウコに近付いて拘束を解こうと鎖鎌の切っ先でベルトを引っ掻いていた。
「ヨウコ、君の炎は何を燃やす為にあるんすか?」
 不意に、リカルドはヨウコに問うた。
「ヨウコのトラウマの根幹は、炎よりも父親に関係するんじゃないっすかね?」
 その問いに、ヨウコは唇を噛み締めながら静かに頷く。
「やっぱりそうっすか。いや、これ以上の詮索はしないっすよ。安心するっす」
 もしかしたら……予知では明らかにならなかったが、父親が火達磨になっていたのはヨウコが原因じゃないかと、リカルドは推測している。
(予知の中で、母親は既に燃えていたっす。そして父親の身体が盛大に燃え盛ってた。にもかかわらず、ヨウコの焼身は一番最後だったっす。これってつまり、『ヨウコは最後、自分に火を放った』ことになるっす)
 それは即ち、母親が焼死した後、父親に火を放ったのは父親自身ではなくヨウコの可能性があるのだ。若しくは、最悪の場合、両親2人をヨウコが焼き殺した場合も考えられる……!
 だが、リカルドはそれをも考慮した上で、正義感や贖罪を原動力に能力を使える様になってほしいと願った。
「仄々も言ってたっすけど、ここで理不尽に押し潰されていいんすか? それに対抗する力は、今のヨウコにはあるはずっす!」
「それって、この炎の幽霊……?」
「そうっす! だからもう一度、自分を被った時の感覚を思い出すっすよ! って、外れたっす!」
 バチンッと拘束具が音を立てて裂け、ヨウコは手術台から遂に解放された!
「こっちは完了っす! 仄々の首尾はどうっすか?」
 リカルドがヨウコを立ち上がらせ、自身が着ていた黒いコートを羽織らせた。
「ヨウコ、このコートで受け止めたダメージは、全部自分に向かうっす。ちょっとくらいなら自分が請け負うっすから」
「……ありがとう。本当に、ありがとう……」
 お礼を言うヨウコ。
 その周囲では、箒星がユーベルコード『シンフォニック・キュア』による蒸気機関式竪琴『カッツェンリート』の演奏で、バロックレギオンと対話を図っていた。
「幽霊さん、生まれたきっけかはトラウマだとしても、只々ヨウコさんを苦しめ、過去に留める為の存在ではない筈です。どうか、ヨウコさんが未来へ進む標の灯となって、守護して下さいますように」
 竪琴の音色に共感した存在全てに影響を与えるユーベルコードは、どうやらバロックレギオンにも効果があったようだ。
 幽霊の一部から、何やら人語が聞こえてきた……。
「よ、ウ……こ……!」
「ブジ……で、よか、……タ」
「え、嘘……? もしかして、お父さんとお母さんなの?」
 ヨウコの瞳から涙が零れ落ちる。
 トラウマから呼び出した炎の幽霊の正体は、彼女の両親の魂の残滓だったのだ!
「まさかの展開っすね~! 幽霊の正体は両親だったすか。これは、ヨウコの事を愛していたってことっすよ。じゃなきゃ、バロックレギオンになってまで一緒に居ようとはしないはずっす」
「あ、ああ、ああああ……! ごめん、ごめんなざいっ! 私が! 2人に、火を……火を放っでっ! ころ、殺し……ああああああっ!」
 泣き崩れるヨウコ。リカルドがそっと肩を抱く。
 真実は最悪のパターンであったが、今は元凶を叩くのが先決だ。
「ヨウコ、今はほんの少しだけ泣くのを我慢するっす。倒さなくちゃいけない敵がいるっすからね」
「……うん! 今なら、やれる気がする!」
 涙を拭ったヨウコは、銃弾を浴びても何度も再生する猟書家の姿を、じっと勇気を出して見詰める。
「やっぱり怖い……。だから、お願い。都合がいいのは分かってる、けど、助けて、お母さん、お父さん……!」
 途端、無秩序に動いていたバロックレギオン達が、ヨウコの声に応えるべく、一糸乱れぬ動きで統率され始めたではないか!
 リカルドはヒュゥ~♪と口笛を吹いてニヤける。
「制御成功っすね! こういうときばかりは、ドクター・ハデスのテンプレの様な悪人面に感謝っすね。攻撃対象としても、躊躇なくぶつけやすいんで」
 リカルドも炎系のユーベルコードで、ヨウコと連携を図る。
「ちょっと、火遊びはどうっすかね? 忍法・神火分霊撃っす!」
 ヨウコのバロックレギオンに紛れさせた人型の炎。
 その大群がエメラの弾丸再充填の隙を埋めるように、ドクター・ハデスへ殺到する!
「銃弾でダメなら焼き尽くすっす! 再生させる暇なんかないっすよ?」
 96体の人型の炎が、バロックレギオンと共に強大化した猟書家の肉体を勢いよく燃え上がらせてゆく。普段よりも火力が凄まじいのは、箒星のユーベルコードのサポートのお陰である。
 その箒星も、自ら前に出て攻撃に参加する。
「女性の頭をレンチで殴るとは、紳士の風上におけない御仁ですね? 覚悟して下さい。私も珍しく怒ってますよ~!」
 両刃細身の魔法剣『カッツェンナーゲル』の鋭い尖端が、明星の如き白光が灯る。
 あれは超光熱のプラズマ炎! その温度は軽く1億℃は超える!
「再生するというのなら、急所を狙いましょう。速やかに骸の海へお還りください」
 猫の身軽さを利用し跳躍! 手術台を蹴り、空中三回転ムーンサルト!
「いやぁぁーっ!!」
 気合一閃!
 そのままひねりを加えた剣先が、ドクター・ハデスの厚い胸筋の中へ滑り込む。
 白光の魔法剣が一気に心臓を貫き、血液が、心筋が、プラズマ炎で瞬間蒸発!
「ぎゃあああぁアァァーッ!?」
 流石に心臓の中から沸騰させられるのは堪えたようだ。
 全身の大火傷も相まって、ようやくドクター・ハデスは手から六角レンチを手放した。
「今がチャンスですよ~!」
 剣を引き抜いて、ドクター・ハデスを蹴って離脱する箒星。
 ヨウコのバロックレギオン達が、ドクター・ハデスの肢体を拘束する。
 そこにトドメの銃口を向ける、エメラと彼女の軍隊達!
「目障りよ、ドクター・ハデス。親子の絆を、命を弄んだ罪。その命で贖いなさい!」
「アッバババババアアアァーッ!!!」
 エメラが発砲許可を下した次の瞬間、霹靂のような爆音が手術室につんざき、狂った医者の身体がたちまち木っ端微塵に吹き飛んでいったのだった。

 全てが終わった後、猟兵達とヨウコは手術室を脱出。
 猟兵達は次の不思議の国の扉を見付けると、偶然出会った時計ウサギにヨウコを預けた。
「この楽曲は、オブリビオンさんへの鎮魂曲、そして同時にヨウコさんの未来を祝福し、はやく『自分の扉』が見付かるように祈願する曲です」
 箒星の爪弾く弦の音色が、ヨウコの心に染み渡る。
「もう、大丈夫。私は、両親2人と一緒に、必ず『自分の扉』を探してみせるから」
「本当は、グリモアで転送してあげたいっすけど……猟兵じゃないと無理っぽいっす。だから、早く見付かるよいいっすね、扉!」
 リカルドもヨウコに声援を送って見送る。
「これから困難がまだまだ待ち受けているでしょうけど、あなたはもう大丈夫。諦めなければ、元の世界に帰れるはずよ」
 エメラも口元を僅かに綻ばせて首肯した。
「……それに、お礼を言うわ。今回の件で……ほんの少し、ごくごく僅かだけど、炎への嫌悪感が薄れたかもしれないし、そうでもないような気もするわ……でも、感謝するわ」
「私こそ、本当のトラウマを思い出せたから、感謝してる。猟兵の皆さん、ありがとう! そして、行ってきます!」
 時計ウサギの先導で、ヨウコは扉をくぐり、別の不思議の世界へ旅立った。
 猟兵達は彼女の背を見送ると、空に浮かぶ骸の月を見上げた。
 まだまだ猟書家の侵略が続くだろう。
 だが、水際で食い止めることで、いつかは侵略を食い止められる。
 そう信じて、彼等はグリモアベースへ帰還してゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月24日


挿絵イラスト