獣の欲動(作者 七凪臣
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●欲動
 崩れかけの尖塔に、半壊した石造りの闘技場。
 屋根はおろか壁まで朽ちた家々は、辛うじて街並らしき景色を構築しているが、雨風さえ凌げそうにない。
「悪くない」
 広がる廃墟を前に、男は機嫌よさげに笑い、噴水であったのだろう倒壊した女神像か作る水たまりを踏む。
 ぴしゃん。
 濡れた音を立て、水飛沫が跳ね上がり、男の獰猛な口の端を汚す。が、纏った襤褸でそれを拭った男の貌に不快感は微塵もなく、むしろ濃厚な歓喜が兆す。
(壊した生き物の血を浴びたようだ)
 想像と、廃墟の街のそこかしこで起きている殺戮の音色に、男の喉は恍惚と鳴った。
「酔い痴れろ」
 この廃墟の国を守ろうとする殺人鬼たちは、衝動を解き放ったバケモノと対峙しながら、必死に繋ぎ止めている理性を今、手放しそうになっている。
「溺れてしまえ」
 ――衝動の侭に、破壊すればいい。
「誘惑に抗う必要はない」
 ――力は、その為にある。
 所詮『守る為』というのも、破壊するための大義名分だ。正義を掲げれば、凶行も肯定される。挙句に、人々からの賞賛も受け得るのだ。
 ならば破壊して何が悪い?
 持った力は使ってこそ真価が発揮されるというもの。
「いや、それも言い訳に過ぎない」
 己が頭に浮かんだ思考を、男は面白おかしく一蹴する。

「欲望に従え、破壊しろ」

 理性を否定し、本能に誘いかける男の名はディガンマ。
 人間に廃棄された哀れな物らを身に帯び、人間への復讐という大義名分を隠れ蓑にした、ただ破壊の限りを尽くしたいだけの獣な猟書家。

●獣
 事は廃墟ばかりの不思議な国で起きる。
「ディガンマや、彼に与するオウガ達によって破壊されたわけではないよ。元から廃墟なのだ。廃れ往く情景に美を見い出す人々もいるだろう?」
 鉛色の空に、乾いた風。そこら中、廃墟ばかりで、見晴らしも良いやら悪いやら。それでも賑わいがないおかげで音だけはよく響く。
 その音を頼りにすれば探索に迷うことはないだろうと、目的地の凡そを虚空蔵・クジャク(快緂慈・f22536)は語り、さらにそこで繰り広げられる闘争について詳らかにする。

「廃墟の国では、心ある殺人鬼たちが、殺戮衝動を解放してオウガと化したらしい殺人鬼たちの侵攻を食い止めている状態だ」
 オウガを迎え撃つ殺人鬼たちは弱くない。このままオウガ対応を一任したとしても、きっと彼ら彼女らは役目を果たすだろう――己の理性を犠牲にして。
「老若男女、奮戦する殺人鬼たちは様々だ。共通するのは使命を全うすることに一途であること。まぁ、他の住人達は逃がして自分たちだけ残るような人達だ。当然のことかもしれないがね」
 守りたい一心で殺人鬼たちは戦っているのだとクジャクは言う。その一途さが徒になるのだと付け足すのも忘れずに。
「殺人鬼たちをこのまま放置すれば、今度は彼ら彼女らが国を害す存在に堕ちると私は断言するよ。だからあなた方には心ある殺人鬼たちが理性を失わないよう手助けして欲しい」
 我武者羅に戦うのを止めるよう声をかけ、戦いの幾らかを肩代わりすれば、殺人鬼たちの心にも余裕が戻るに違いない。
「或いは、壊れかけの彼ら彼女らさえ引く程の戦いぶりをしてみせるとかね?」
 ――……嘘だよ?
 幾らか間をあけて、提示した物騒な手段を否定したクジャクは、だが人の悪い笑みを金色の眸の奥に灯す。
 持つ力を存分に使ってみたいというのは、誰しもが持つ衝動だろう。
 されどその甘い誘惑に囚われた瞬間、人は人ではなく獣になる。

「私はあなた達が獣に堕ちることなく帰還することを信じている」
 信じている、と耳障りの良い言葉を嘯いて。クジャクは猟兵たちを、『獣』の最たる男が待ち受ける地へ送り込む。


七凪臣
 お世話になります、七凪です。
 猟書家・ディガンマ戦を、お届けに参上しました。

●シナリオ傾向
 心情込々壊れ戦闘系。

●シナリオの流れ
 【第一章】集団戦。
 …『咎鬼』との戦闘。
 【第二章】ボス戦。
 …ディガンマ戦。詳細は導入部を追記します。
 ※このシナリオは【二章構成】となります。

●プレイングボーナス(全章共通)
 殺人鬼達を適度に抑えながら、共に戦う。

●プレイング受付・シナリオ進行状況について
 第一章は導入部の追記はありません。OP公開と同時にプレイング受付を開始致します。
 プレイング受付締切や第二章に関しては、個別ページの【運営中シナリオ】にてご案内致します。
 システム的にプレイング送信可能であってもプレイング受付は締め切っている可能性がありますので、一度【運営中シナリオ】をご確認頂けると幸いです。

●第一章について
 上記の通り、導入部追記はありません。
 どんな殺人鬼の手助け(?)をしたいのかの指定を入れて頂いた場合、その内容は出来るだけ反映したいと思っています(設定的に厳しいと判断したらマスタリングします)。
 名前の指定もOK(お任せいただいても構いません)。
 ご自分の過去や未来、その他諸々を重ねてみるのはいかがでしょう(ほほえみ)。

●その他
 採用人数は各章クリアー最小数~6名様くらいまで。
 挑戦者数が6名以内でも、全員採用はお約束しておりません。
 お一人様あたりの文字数は800~1000字程度。
 受付期間外に頂いたプレイングは基本的にお返し致します。

 2021年、最初のシナリオになります。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
 今年も宜しくお願い申し上げます。
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第1章 集団戦 『咎鬼』

POW ●生ある者、皆咎人なり!
【伝染する狂気に耐えられぬ者全員が殺戮鬼】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD ●殺戮の輪廻
自身の【魔剣】が輝く間、【殺戮衝動に侵された者全員】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ ●魔道への誘い
【今まで殺してきたアリスの残骸】を披露した指定の全対象に【正気を失う程の怒りの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


エンジ・カラカ


ハロゥ、ハロゥ
今日も元気デスネー。
イイ天気ー。そうだろ賢い君。

相棒の拷問器具の賢い君と一緒に登場ー。
アァ……血の臭いがするなァ…。

で、お前らは何をしている?
守っている?なーんのため?
ねェ、ねぇねぇねぇ。

守るコトに何の意味がある?
賢くなきゃ生き延びれない!オーケー?
だからコレがぜーんぶ全部もらう。

薬指の傷を噛み切って、君に食事を与える。
賢い君はコレよりも情熱的ー。

殺人鬼たちから敵を横取り!
守ってばかりも戦ってばかりもダメ。オーケー?
だからコレと賢い君が一緒に遊んであげようそうしよう。

赤い糸を敵サンに巻き付けて
君の炎で一気に燃やす
逃げなきゃお前らも丸焼きダ!
賢い君の炎はとーっても情熱的ダなァ


●躍
「今日も元気デスネー」
 ハロゥ、ハロゥ――気の抜けた緩いリズムで廃墟の国へ降り立ったエンジ・カラカ(六月・f06959)は、ぐるりと肩を回すと手を翳した。
「イイ天気ー。そうだろ賢い君」
 振り仰いだ空は鈍色だ。一般的な感性の持ち主ならば、『良い天気』とは言い難い。だがそんなことはエンジには些事だ。同意を求めた先が『賢い君』と呼ぶ、口きかぬ拷問器具であるのも同じこと。
 賢い君は、賢い君。エンジにとって相棒なのだから、機嫌を窺ったり、意見を尋ねたりするのは当たり前。例えそこに衆目があろうと。
「オイ、お前。いきなり――」
「そこは危ないです!」
「アァ……血の匂いがするなァ……」
 鳴った二つの声を耳に素通りさせて、エンジはクンと鼻を鳴らす。
 武器が飛び交う牢獄もかくやというくらい、無視するには濃厚過ぎる香りだ。上向けていた視線を足元へ落とすと、朽ちかけの石畳が夥しい朱に濡れている。
 そろとエンジが片足を上げると、びちゃりと粘着質な音が響く。
「ハァ……で、お前は何をしている?」
「は?」
 堪らず漏れた溜め息に尾を引かせたまま、エンジがぐるりと視点を変えると、唐突に語り掛けられた身形の良い青年が目を丸くした。
「は? は、ってナニ?」
「あ、いえ。それは返事ではなくて。僕はこの国を守って――」
「守って?? なーんのため?」
 びちゃびちゃびちゃと赤い飛沫を散らしてエンジは青年へと歩み寄り、返り血を浴びた顏を間近に覗き込む。
「ねェ、ねぇねぇねぇ」
「何のためって、それは」
「守るコトに何の意味がある?」
 不意に戦いに割って入った闖入者の問いに懸命に応えようとする青年の言葉を、エンジは待たない。待つ必要性を、感じない。
「賢くなきゃ生き延びれない! オーケー?」
 此処はエンジの独壇場。だってエンジが現れたのだから。他者のあれこれなんてくそくらえだ。
「だからコレがぜーんぶ全部もらう」
 ニカリと笑ってエンジは振り返る。振り返り様、薬指の傷を噛み切った。つぷっと浮き出した血は、『君』への食事。「アァ……いと惜しい」とエンジが囁くと、血潮は燃える赤い糸へと転じて、痺れを切らして跳ねたオウガの身に絡みつく。
「チィッ」
「ザンネン残念。でも、賢い君はコレより情熱的ー」
 さんざん無視された挙句に、背後から斬りかかろうとした途端に炎の糸に絡め取られたオウガは散々だ。けれど同情は欠片も不要。オウガとして在る時点で、運命は決まっている。
「守ってばかりも戦ってばかりもダメ。オーケー?」
 呆気にとられたままの心ある殺人鬼を置き去りに、エンジは糸を繰り、拷問器具と軽やかなステップを踏む。
「だからコレと賢い君が一緒に遊んであげようそうしよう」
 ぐっと腕をエンジが腕を引くと、オウガに巻き付いた糸が火力を増す。捉えた獲物を焼き尽くすまで一瞬だ。
 しかし敵は沢山。異変を察して駆け付けるオウガを、エンジは片っ端から紮げ取る。
「さァさ、逃げなヨ。逃げなきゃお前らも丸焼きダ!」

 轟々と燃える情熱的な紅蓮に、斃すべき仇敵を横取りされた殺人鬼も冷静さを持ち直す。
 彼の貌から困惑の色が消えることはなかったが、そんなのエンジの知ったこっちゃない。
大成功 🔵🔵🔵

佳月・清宵

他者の為、守りたいが為、危うい力を、なぁ
(見遣った青い小僧――如何にも本来は純粋で、己より他の身を案じる様な戦い方――その様に、或る女の俤が、序でに誰かの顔までもが、過って重なり)

――やれやれ、余計な世話を焼いてやるしかねぇか

小僧を庇う――突出し過ぎねぇよう割込
UC速度と早業活かし、敵の手元~魔剣狙い衝撃波で先制
武器落ちりゃ儲け
叶わずも光拒む呪詛仕込んでおき、暗く重い影で輝きを奪う
残像で動き眩まし次は喉元へ

解放した妖刀が獣宛らに欲動唆すも、どこ吹く風

おい、てめぇが壊れ、壊す側に堕ちちゃ元も子もねぇだろ
確りしな
(誰かは未だしも、女は――そうしてこの妖刀に飲まれ――
二の舞なんて滑稽は御免被る)


●俤の聲
 赤い刃を閃かせるオウガと、愚直な間での真っ直ぐさで切り結ぶ殺人鬼が居る。
(他者の為、守りたいが為、危うい力を、なぁ)
 転送(と)ばされた先。半ば瓦礫と化した廃屋の壁に背をついて、佳月・清宵(霞・f14015)は懸命な奮戦ぶりに、奥の奥に烱々たる紅眼を糸のように細めた。
 如何にも青い小僧だ。殺人鬼ではあるが、本来の根の純粋さと、己より他の身を案ずる献身ぶりが戦いの一挙手一投足から窺える。
「……」
 知らず、清宵の唇は溜め息を紡いでいた。
 出逢った事もない殺人鬼であるのは間違いない。だのに彼の姿に――在り様に、或る女の俤が重なってしまう。それだけで十分なのに、さらには誰かの横顔まで過って重なるとは如何したことだ。
「……やれやれ」
 二度目の溜め息をことさら長く吐き、清宵は冷たい壁に預けていた背をゆっくりと起こす。
「余計な世話を焼いてやるしかねぇ、か」
「え?」
「何!?」
 言葉尻の一瞬に、清宵は踏み出していた。風のように割って入った第三者に、鍔迫り合いを繰り広げていた二者が同時に目をむく。
「クソっ」
 先に我に返ったオウガが取り落とした太刀へと手を伸ばすが、その指先が柄に触れる間際に清宵の返す刃が衝撃波を放った。
「――ッ」
 舌を打ったオウガが後方へ跳ねる。だがそれさえも清宵の手の内。音もなくオウガが降り立った地面から、光拒む呪詛の影が立ち昇った。
「チクショウ!」
 悪態を吐くしかないオウガ――と、状況を飲み込み切れずにいる若い殺人鬼――の目には、瞬く間に起きた全てを理解することは出来なかったろう。
 それほどに、清宵が妖刀の怨念をまとって二者の狭間へ割り入り、剣を捌く序でに呪詛を仕込むのは速かった。
「遅ぇんだよ」
 侵された我が身を掻き抱き悶えるオウガへ肉薄し、清宵は翳の音色で言い放つ。
 ――どくり。
 喉元へ突き付けた刃を押し出す間際、握り締めた柄から伝わった獣宛らの欲動を唆す怨念が心臓をひとつ跳ねさせたが、清宵は眉一つ動かさずに敵の首を堕とす。
「おい、てめぇが壊れ、壊す側に堕ちちゃ元も子もねぇだろ」
 オウガを屠ったことに感慨はない。
 当然を成した素振りで清宵が淡々と歩み寄ると、茫然としていた殺人鬼が一度、二度と瞬く。
「確りしな」
「――ありがとうございます。助かりました」
 理知の光を取り戻した殺人鬼の眼を正面から見据え、清宵は「嗚呼」と口元を弛める。
 傍目には、若人を労い励ます微笑だ。しかし潜む本質は自戒と自嘲。
 ――誰かは未だしも、女は此の妖刀に飲まれた。
(二の舞なんて滑稽は御免被る)

 清宵が握る妖刀からは、絶えず呼び聲が聞えるよう――。
大成功 🔵🔵🔵

菱川・彌三八
暴れて善いんだろ
善き哉善き哉
そいつァ戯れ言だって?
さァ、俺にゃ聞こえなかったぜ

鳳凰の力で空から近道してやら
騒ぎの方へと風の速さで駆けつけ、叩くべき敵ってェのを見定めて
お前に決めたとばかりに一人、降下の勢いでめり込む程に殴りつける
先ずは一匹

闖入者に面食らってる間なんざありゃしねえよ
さんざっぱら高めた力で次々相手にしてやる
此れでも、頭は冴えてる方筈だぜ
一応見てはいるのさ、何処から来やがるか、どれから叩くのが良いか
どの力で死ぬか、首の皮一枚残せるなァ如何程か
其処に居る殺人鬼ってェ奴が、適当に手前の力が出せるなァどの程度か…ってな

誰が気の毒だ、何の因果なんざ関係ねェなァ楽な喧嘩サ
狂気とやらではない
多分


●華
 鉛色の空を炎の翼が滑空する。
 轟々と燃える熱だ。迫る前から頬を焙る羽搏きに、斬り結ぶ事に夢中な二者も流石に間合いを取って後退る――が。
「なっ、ふざけんじゃ」
 ねぇよ、と続くはずだったオウガの語尾は焼け焦げた。最期の瞬間、オウガが知覚したのは、頬へ叩きつけられた熱と、かんらかんらと笑う声。けれどもその元を辿りきる前に、鳳凰に喰らい尽くされたオウガは灰燼と帰す。
「そォれ、もう一丁だ」
 威勢のよい掛声と共に、鳳凰が再び重い空へと舞い上がる。
 ぽかんと口を開けてそれを見上げるのは、つい先ほどまでオウガと熾烈な殺し合いを繰り広げていた殺人鬼だ。
(まるっきり、ボウズじゃねェか)
 みるみる遠ざかってゆく殺人鬼を鳳凰は――鳳凰の力を得た菱川・彌三八(彌栄・f12195)は眼下に見遣って肩を聳やかす。
 思わぬ闖入者に、さぞかし面食らったことだろう。
 だが丁寧な御託を呉れる心づもりは彌三八にはない。
(暴れて善いんだろ?)
 耳にした朗報を、彌三八は善き哉善き哉と反芻する。
 戯言だなんて訂正を受け付ける気はサラサラない。
(まァ、俺にゃ聞えなかったぜ)
 くつり。彌三八の喉が愉快気に鳴る。否、『気』ではない。実に愉快痛快爽快だ。
 羽搏く、羽搏く、羽搏く。
 重い空を吹く風も、熱で煽れば上へ上へと加速する。そうして至った高みからは、廃墟に蠢く一同がよく見えた。
 オウガか、心ある殺人鬼かの判別は、動きで判じる。幸い、心は躍りに踊りまくっているが、頭の芯はシンと冴えたままだ。しかし今の彌三八が理性的かといえば、そうでもない。
(次ァ、どいつでい?)
 細く開かれた目の、薄茶の眼が爛々と輝く。
 ひとふたみ、と地上の点を数えて、次に仕留めるべき獲物に狙いを定める。
 そこからはまた急降下。旋毛風めかして吹き荒れて、嵐のように幾打もの拳を叩き込む。
 それでも盲滅法の一歩手前で踏み止まる。どれだけ好きに暴れていても、彌三八は加減を忘れないのだ――猟兵としての本能で。
「――ッハ!」
 口からまろび出かけた笑いを気勢にすり替え、彌三八は首の皮一枚で命を繋ぎ止めているオウガを、先ほどから変わらない姿勢で立ち尽くしている殺人鬼目掛けて蹴り飛ばす。
 呆然自失の体の若造殺人鬼が、我に返って繰り出す一撃でも十分に絶命し得る状態だ。間違いが起きる可能性は、一厘も無い。
 火事と喧嘩は江戸の華。そのお江戸で生きる彌三八だ、喧嘩上等に決まっている。
(誰が気の毒だ、何の因果なんざ関係ねェなァ――)
「楽な喧嘩サ」
 自在に空を征き、炎で地を舐め、彌三八は阿修羅の如く振る舞う。
 此れは狂気ではないと、信ぴょう性の乏しい持論を胸中で笑いながら。
大成功 🔵🔵🔵

誘名・櫻宵


血湧き肉躍るとはこの事かしら
刀を振るうあなた
お手伝いしてあげる

慾に身を任せて酔いしれて
斬って壊して殺して
噫、いと楽しきことね
前の私なら慾に任せて遊んでいたわ

でもね
私のこの刀は
師から継いだ剣術は守るためのもの
私は護龍
だから私は護るために刀を振るい
護るために喰らい
抉って蹂躙して
咲かせて裂くわ!

悪い子には神罰が降る
『喰華』
微笑みと共に誘惑するようになぎ払い、衝撃波を放つ
生命喰らう桜咲かせて
迸る慾ごと喰らって咲かせて斬り殺す
あなたの慾は美味しいかしら?

衝動に呑まれるなんて二流だわ
獣は飼い慣らさなきゃ
私は私の意思で喰い咲かす

これが守る為の力
私がそう言うのだから
誰がなんと言おうとそう


神様に怒られちゃう


朱赫七・カムイ


噫、厄が渦巻いているかのようだね
この場所はあの子の…巫女の障りとなる
其の前に何とかしなければ

己が慾の衝動に身を委ねる事―其れはいと恐ろしきこと
知らぬ己が現れる
見たくない己を識る
…私は、慾をみることが恐ろしい
己を犠牲にしても守りたいと願い、其の通りに振る舞う彼らの美しきこと
彼らを理性なき獣になど、堕とさせはしないよ

彼らの手伝いをしよう、カグラ
守りの結界を張って
疾く駆け抜け、なぎ払い触れた刀と慾ごと切断する

―春暁ノ朱華

見切り、第六感と読心で相手と殺人鬼達のこころを察し動く

呑まれそうなら鼓舞しよう
そなたは守護者だ
彼らと同じ地に堕ちてはならぬと

破壊だけの意志と
守りたいという意思
同じ力を振るうとて
違う


●『護』
 飛沫いた血が、桜のように舞っていた。
 一太刀、二太刀、三太刀、四太刀。片や濃い紅の、片や澄んだ銀の。二刀が切り結んで火花を散らし、傷を生み、夥しい赤を滴らせる。
(血湧き肉躍る、とはこのことかしら)
 ふふりと口の端を吊り上げて、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は桜鼠の髪と艶やかな衣の袖を靡き翻す。
 滑り入る先は、交わる狭間。
 身を低くして駆け込んで、触れ合う間際の二色の鋼を、振り上げる一払いで櫻宵は弾いた。
「あなた、お手伝いしてあげるわ」
 紅の刀を手にした青年――オウガの腹を蹴って吹き飛ばし、すっくと立った櫻宵は、銀の刀を握っている少女へ笑みかける。
 雪を思わす儚い少女だ。だからこそ白い頬を伝う赤が生々しい。
「貴方、は」
「猟兵よ。自己紹介はこれで充分よね」
 肩で息をする少女の弁を半ばで断ち、櫻宵は少女の手を取り、流れる血を指先で辿ると、香り立つように微笑んだ。
(慾に身を任せて酔いしれて、斬って壊して殺して――)
「噫、いと楽しきことね」
「……え?」
 櫻宵の囁きは、唇の際で靄のようにほどけ消えるもの。辛うじて音を拾った少女は、意味までは解せず、代わりに櫻宵の艶にあてられ上気した頬をほやりと緩ませる。
「何でもないわ」
 かあいらしい少女だこと、と櫻宵は少女の頭を撫で、きつと唇を引き結んだ。
 恰好の戦場だ。以前の櫻宵ならば、慾に任せて遊んでいたに違いない。
(でもね)
 少女を一先ず背に遣って、櫻宵は幽鬼のように立ち上がったオウガへ一瞥をくれ、血桜の太刀を構え直す。
(私のこの刀は――師から継いだ剣術は守るためのもの)
「私は護龍」
 呟きは、決意の顕れ。貪婪屠櫻であったのは既に過去。今の櫻宵は爛漫咲櫻。
「私は護るために刀を振るい、護るために喰らい――抉って蹂躙して、咲かせて裂くのよ!」
 動けば間合いが詰まるまで一瞬。だが櫻宵はオウガが身構える隙を敢えて与えて、最後の一歩を踏み出した。
「知っているかしら? 悪い子には神罰が下るのよ」
 三度目の微笑は毒のように甘く甘く。されど抜いた刃は疾く鋭く。櫻宵の眸に捕らえられたオウガは、守りごと容易く断ち切られる。
「――く、そ! やられたままでいると思うなよっ」
「ええ幾らでも歯向かってらっしゃい。あなたの慾は美味しいかしら?」
 オウガの命運をかけた一撃は、フェイントを取り混ぜた突き。それを櫻宵は身を翻してひらりと躱し、尚も蠱惑な誘引を舞って敵の首を堕とした。
「……イマイチ、ね」
 啜った生命は二流の味わい。そも衝動に呑まれること自体が二流なのだ、美味であるはずがなく、櫻宵は残滓の桜花を出来立ての血だまりへ手放した。
「獣は飼い慣らさなきゃ」
 少女の熱い視線を背中に、櫻宵は櫻宵らしく守る為の力を発揮する。獰猛なのは百も承知。それでも誰が何と言おうと、これが護龍たる櫻宵。
「噫、神様に怒られちゃうかしら」
 新たに獲物に定めたオウガへ走りつつ、櫻宵は凄絶な微笑を花咲かす。

「噫、厄が渦巻いているかのようだね」
 濁った空に、澱む風。強すぎる血の匂いに、朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は困ったように眉間を寄せて――ふぅ、と深い溜め息を一つ吐いた。
 そこかしこから聞こえる雑多な音に、愛おしい響きが混ざっている。
「この場所は、あの子の……巫女の障りとなる」
 出来るなら『あの子』が触れる前に祓ってしまいたかったが、一足遅かったようだ。
 とはいえ飲まれる気配は感じない。むしろ五感に触れる気配は、目映いほどに輝いている。
 これならば、一働きするくらいの余裕はあるだろう。穢れであるのは、間違いないが。
 それに、ただ『あの子』の事だけを思い行動するには、此処はカムイにとって想う事が多すぎる。
(己が慾の衝動に身を委ねる事――其れはいと恐ろしきこと)
 血の紅に似て、けれども同じではなく。柔らかく咲き綻ぶ春こそ相応しい彩の瞳をカムイは伏せて、静かなる裡に心の視線を注いだ。
(慾に堕ちた己……)
 其れは、知らぬ己。
 視たくない、己。
 知らぬはずなのに、識っている己。
「……私は、慾をみることが恐ろしい」
 ぞくりと背筋を立ち昇った寒気に身を震わせ、カムイはおそるおそる瞼を押し上げる。
「……噫」
 ほろと零れたのは、熱い息だ。
 瓦礫の街に、数多の殺人鬼たちが戦っている。無謀な戦いぶりは胸に痛いが、己を犠牲にしても守りたいという願い、そして其の振る舞いの美しさたるや……!
「彼らの手伝いをしよう、カグラ」
 気付けば凛と背筋を伸ばしていたカムイが、目指すべき地を見据えたまま言うと、背後に控えた桜竜神の荒御魂が宿した人形がカタリと動く。
 慾に慄いている場合ではない。誇り高き殺人鬼たちを、理性なき獣に堕とさせぬ為に、今は走り出す時。
「――世の中に たえて桜の なかりせば」
 最初の一歩を踏み出すと、主の意を察した人形が追随しながら守りの結界を前面に展開する。
 あとは駆け抜けるだけ。
「春の心は のどけからまし」
 対峙しているのは濁が四、清が三。読みにくい乱戦の太刀筋をカムイは心の眼で視て、理も存在も事象も断つ一閃を繰り出し、狙った四のみを斬り捨てた。
 奪ったばかりの生命が、温い血潮となってカムイを濡らす。しかし慾も厄も遠いまま。
「そなたらは守護者だ。故に、彼らと同じ地に堕ちることはない」
 言霊は力。現れた救援者に戸惑いつつも、生まれた余裕に理性を兆す殺人鬼たちへ、カムイは厄斬硃赫神として彼らを言祝ぐ。
 祝された魂が、容易に穢されることはこの先あるまい。
 破壊だけの意志と、守りたいという意志。例え同じ『力』を振るうとしても、根源相反する二者が同じ末路を辿ることはないのだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

アウグスト・アルトナー


殺戮衝動に身を任せるな、ですか……
かつて奴隷商人を皆殺しにしたぼくが言っても、説得力はないかもしれませんが

「殺しすぎると、呑まれて戻れなくなりますよ」
「ぼくもお手伝いしますので、どうかあなたは『人間のままで』あってください」

あの時ぼくは、オラトリオとして覚醒しました
それは、人を捨てたということではないでしょうし、神の祝福なのかもしれません
ですが、『神の罰である』かもしれないという想いも捨てきれないんです

【救済の花】を30秒ほど使用
自らと殺人鬼たちが感じる怒りを、花の香りで抑えます
その間に敵を、拳銃の【クイックドロウ】からの【零距離射撃】で倒していきます


●『人』
「殺しすぎると、呑まれて戻れなくなりますよ」
 からん、ごろん、がらん。
 片手に持った三つ連ねた鉄の鳥籠の中で、されこうべ達が揺れている。
 背後からかけられた声よりも、振り返った途端に目に飛び込んで来たそれに瞠目した女の殺人鬼に対し、アウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)は表情を変えることなく二の句を継いだ。
「ぼくもお手伝いしますので、どうかあなたは『人間のままで』あってください」
 我ながら、抑揚のない声だとアウグストは思う。
 そも自分に、殺戮衝動に身を任せるな、と殺人鬼を引き止める資格があるか分からない。
(少なくとも説得力は皆無でしょうね――)
 年のころは変らないだろう女の、あまり恵まれた風ではない装いに、アウグストの裡に過去が過る。
 遠い、遠い、昔。
 酷使され、搾取されるばかりの日々に在ったアウグストは、ついに奴隷商人たちを皆殺しにした。
「――兄さん、母さん、父さん」
 自身の一挙手一投足に合わせ鳥籠の中で鳴るされこうべ達を上から順にそう呼んで、アウグストは温度のない溜め息をひとつ吐く。
 と、その時。アウグストと向い合っている女が身構えた。
「……させませんよ」
 間髪入れずにアウグストが静かに唱えると、アウグストの右腕の傷跡から咲き綻んだ無数のクリスマスローズたちが、女が膨らませた殺気を瞬く間に消し去る。
 しかし此れは、殺人鬼の女のアウグストへの害意を封じたのではない。困惑を抱きながらも『使命』に実直であろうとした彼女を鎮めただけ。
「させませんよ」
 先ほどと同じ句を、今度は明確な意図を含ませ繰り返し、アウグストは腕だけを後方へ伸べた。
「なっ」
 驚嘆が聞えたのと、雪結晶が記された銃の引金をアウグストがひくのはほぼ同時。放たれた弾丸に胸を撃ち抜かれたオウガは、断末魔も残さず頽れる。
「どうかあなたは『人間のままで』あってください」
 敵を討ったばかりの拳銃を胸元へ引き戻し、アウグストは怒りを取り払われ、理性を取り戻した瞳を正面に見据えて重ねて言の葉を紡ぐ。
「……助力に感謝します。ありがとう」
 返された是にアウグストが覚えた感情の色を知れる者は、朽ちかけの国にはいない。

 『あの時』、アウグストは常人ならざる力に目覚めた。
 けれどもそれが人を捨てたということにはならないとアウグストは思う。
 力を得たのは、神の祝福か――はたまた神の罰か。
 置き去りに出来ぬ想いを抱え、今日もアウグストはされこうべ達と往く。
大成功 🔵🔵🔵

呉羽・伊織
思い詰めた様な、張り詰めた様な――本当にギリギリの危うい雰囲気の少年を支えに

さて邪魔するぜ!
敢えて明るい声色で励ます様に庇い入り、早業でUC使い先制
烏羽や風切に重苦しい呪詛乗せ、敵の剣へぶつけ輝けぬよう阻害
其でも攻撃回数増えりゃ、残像やフェイントで撹乱して凌ぎつつ、敵の手足へ更に呪詛刻み動きを鈍らせに

苦しかったら、頼ってくれていい
俺も君と似た様なモンで、そんな時もある
――もし心を見失いそうになったら、必ず引き戻してやるから、大丈夫

(守りたい、一心――その強い心こそを、俺は守りたい
暗い力を解放して尚、彼らを彼らたらしめる、目映く根強く咲く想いを、支えたい
心を壊す事も、命を奪う事も、決して――)


●信
 今にも泣き出しそうな少年がいた。
 だというのに彼の剣閃は苛烈で、上がった口角からは狂気が滲んでいる。
 僅かでも均衡が崩れたら、壊れてしまいそうだ。
 だから――。
「さて、邪魔するぜ!」
 これ以上ないくらい朗らかな声と共に、呉羽・伊織(翳・f03578)は交わされる刃の最中へ割り入ると、少年へにかりと笑いながら黒刀を抜いて払う。
(――御してみせる)
 口の中での唱えに、剣閃に重苦しい呪詛が乗る。向けられた先は当然、少年と殺り合っていた紅の刃。
「っ、お!?」
 不意に芽生えた扱いづらさに紅の刃の主――オウガが瞠目したところへ、伊織はすかさず暗器を放つ。
 影によく紛れる其れは、伊織自身が落とした暮明に紛れて飛び、オウガの眉間を容易く貫く。
 しかし手を休めるのはまだ早い。
 迫る気配を五感で計り、伊織は再び黒刀を閃かせた。
 今度は地を這う低い薙ぎ。己を軸に切っ先に円形を描かせた斬撃は、呪詛を四方へくまなくばら撒き、物陰から襲い掛かる隙を伺っていたオウガ達をまとめて襲う。
 そこかしこから、あぁ、とか、うぅ、とか呻きが聞こえる。
 決して耳障りの良いものではないが、稼ぎ出した幾ばくかの間に、伊織はようやくあらたまって少年殺人鬼と向い合った。
「守らなきゃ」
「そうだな」
「守らなきゃいけないのに、僕は守られてしまって……」
 場にそぐわない伊織の快活さに中てられた少年の、ぴんと張り詰めていた気が緩んでいるのが見て取れて、伊織は密かに胸を撫でおろす。
 先ほどまでとは異なる意味で少年は追い込まれている感はあるが、彼に思考力が戻っている証拠だと思えば悪くない。
「気にするな――って言っても気にしそうだが。苦しかったら、頼ってくれていい。俺も君と似た様なモンで、そんな時もある」
 自分の目線からだと旋毛が見える頭へ乗せようとした手を、伊織は少年に悟られる前に引き戻す。
 慰めたいわけではない。甘やかしたいわけでもない。
(守りたい、一心――その強い心こそを、俺は守りたい)
 暗い力を解放して尚、彼を――彼らを彼らたらしめる想いの、なんと目映いことか。
 行為そのものは血生臭いというのに、彼らの心は火の光を目一杯に浴びて咲く花のようだと伊織は思う。
(オレは、その真摯さを支えたい。心を壊す事も、命を奪う事も、決して――)
「守る為に、オレを上手く使えよ」
 伊織は笑う。余裕の在り方を教えるように、少年の尊厳を貴ぶように。
「もし心を見失いそうになったら、必ず引き戻してやるから、大丈夫」

 否定ではなく、肯定。庇うのではなく、あくまで助力。
 伊織の真意を悟った少年は、俯いていた顔を上げた。
 叶うなら自らの手のみで成し遂げたくはあるだろう。とは言え、獣を討ち果たしたとしても、己が獣と化しては元の木阿弥だと理解できたのだ。
 それに伊織は『似た様なもの』と言ってくれたから。
「信じます」
 言い切りは走り出した少年の背に伊織が何を視て、何を抱いたのかを知るのは、伊織ただひとり。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『ディガンマ』

POW ●引き裂く獣腕
単純で重い【獣腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD ●恩讐の獣霊
【周囲の廃品や不用品と融合する】事で【獣性を露わにした姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●縫い留める獣爪
命中した【獣腕】の【爪】が【怯えや劣等感を掻き立てる「恨みの針」】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠虚空蔵・クジャクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●獣
 哀れな襤褸をまとっただけで、大義名分は容易く手に入った。
 罵られるべき蛮行も、復讐という形に収まった途端、容認され得る。
 歴史に埋もれ忘れ去られた名を持ったのも、何かの縁だったのかもしれない。
「俺はただ破壊したいだけなのにな」
 嘲りを隠そうともせず、ディガンマは嗤う。
「守りたい? 上等なことだ。助けたい? 美しいな。ああ、美しいだろうとも」
 ディガンマが心にも無いことを口にしているのは一目瞭然だった。いや、心底そう思っているかもしれないが、獣たる男の関心がそこに向けられることは一切ない。
 ディガンマは、ただ破壊したいだけだ。
 抗おうと、抗うまいと。目の前にあるものは尽く壊し尽くす。人だろうが、国だろうが、世界だろうが。

「俺に復讐したいんだろ? なら、そうすればいい」
 あからさまな挑発だ。しかし国を蹂躙された殺人鬼たちの怒りを煽るには十分。
 壊したいから壊したのだと、そこに意味などないのだと言われたのだ。侵略は、意味があっても許容できるものではないというのに。
 けれど猟兵たちの在り様を具に見た殺人鬼たちは、無闇に飛び出そうとはせず、じっと傍らの動向を窺っている。

 相手は獣だ。
 同じ様に獣と化して暴れても、誰も咎めはしない。そこに狂気を見い出した殺人鬼たちは、今後一切、破壊衝動に溺れることはなくなるだろうから。
 或いは、理性的に殺人鬼たちを導き、支援するのも良い。自らの手で本懐を果たした殺人鬼たちは、無意味と決めつけられた戦いにも意味を見つけることができるだろうから。
 忘れてならないのはただひとつ。
 ディガンマが破壊衝動の権化だということ。
豊水・晶(サポート)
 竜神の神器遣い×陰陽師、24歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、相棒には「気さく(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
アドリブや絡みなどは大歓迎です。
性格はいつもニコニコしていて他者、特に子供に優しいです。ただ、キレるとオハナシに強制連行します。
ユーベルコードは必要であれば躊躇いなく使用します。戦闘は前線でばっさばっさ斬っていることが多いですが後衛からの攻撃もできます。
好きなものは、子供とお酒とお宝です。


ハルピュイア・フォスター(サポート)
絶望を与えるのがわたしの仕事…。
無表情で口調は事実を淡々と告げます

【暗殺】が得意です
また【迷彩】【目立たない】【闇に紛れる】【地形の利用】など使用して隠密にまた撹乱しながらサポート行動

回避は【残像】で、怪我は厭わず積極的に行動

武器;首にマフラーの様に巻いてある武器『零刀(未完)』は基本は両手ナイフだが鞭や大鎌など状況に合わせて形を変貌させ使用

他猟兵に迷惑をかける行為はしないが、デザート系は別問題…奪います

後はおまかせでよろしくおねがいします


チヒローズ・イッシー(サポート)
自由都市を故郷に持ち、本人も自由を愛する女性です。
戦闘では指定したユーベルコードを状況に応じて使い、人々の自由を取り戻す為に皆さんと力を合わせて戦います。
オラトリオの聖者×プリンセスということで、もしよければキラキラっとした華やかな戦闘演出を描写していただけると嬉しいです。

口調はステータスシートの通り、「なの、よ、なのね、なのよね?」という感じの優しく人当たりのいい女の子といった感じの喋り方です。
一人称は「私」、二人称は基本的に年齢や男女を問わず「さん」付けの呼び方です。
あとはマスターさんにお任せします。よろしくお願いします!


●全霊
 廃墟の国には乾いた風が吹いている。
 故郷の自由都市を渡るものとは随分と違って感じるそれに、チヒローズ・イッシー(オラトリオの聖者・f20852)は唇をきゅっと噛み締めた。
 ただ破壊にのみに生きる――ディガンマの生き様は、或る意味において『自由』と言えなくはない。が、チヒローズはそれを肯定しようと思えない。
 チヒローズの愛する自由は、もっと瑞々しく、優しいものだ。人々の心を軽やかにし、笑顔にするものだ。
「さあ、どう出る?」
「――」
 泰然自若の構えを崩さない猟書家の男と無言で相対したまま、チヒローズは背後へ意識をやる。
 そこにはディガンマに抗うために集まった、心ある殺人鬼たちが居る。
 数多のオウガを退けた殺人鬼たちには、士気こそ高いが疲労の色が濃い。年若い少年少女の殺人鬼たちの中には、今にも膝から崩れてしまいそうな者も多くいる。
「あと少しだけ、我慢してね」
 チヒローズと同じことを思ったのだろう。美しく澄んだ揃いの二刀の切っ先でディガンマを牽制する豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)の声音は優しく、一瞬だけ子らを振り返った顔は穏やかな笑みで彩られていた。
(今度こそはちゃんと守らなきゃいけないの)
 朽ちかけの景色は、かつて守護した農村を晶に思わせる。
 ――守りたい。
 それは晶だけではなく、獣性の化身であるディガンマへも怯まない殺人鬼たちの胸にもある想い。
 壊させたりしない。そんな自由、許しはしない。
「あなた、征けるわね?」
「もちろんよ」
 年若いチヒローズを気遣う晶の尋ねへの応えは、真っ直ぐで一途な是。
 ならばあとは駆け出すだけ。
「世を隔てるは川の流れ、囲んでしまえば抜け出でることかなわず」
 朗々と唱え、晶は八つの水分八卦楔を手から放つ。打根によく似た楔たちが、そのまま地面に落ちるかに見えたのは一瞬。すぐに目には見えぬ力に操られ、戦場の八方へ飛ぶ。
 普通に考えたなら、楔たちは遠隔操作の飛び道具だ。
 けれどその気配が見えないことに訝しんだディガンマは、間合いに入ったチヒローズへ振り被った腕が透明な壁に阻まれたことに事態を把握する。
「、そういうことか」
 速度を味方につけたディガンマの一撃を、チヒローズが防ぐ手段はなかったはずだ。だのに爪がチヒローズに届かなかったのは、晶の結界術が施されていたから。
「よそ見は危ないのよ?」
 そして得た絶好の機会を、チヒローズは逃さない。
「――お願い」
 自らの鼓動に合わせリズムを刻むプリンセスハートを、チヒローズは空高くへ掲げる。
 キラ、と鈍色の空に小さな光が煌いた。最初は小さく、やがて虹色のプリズムと鳴った光は、穢れなき白い花弁へと姿を変えてゆく。
「力を貸して」
 巻き起こった鈴蘭の嵐は、欲に塗れた獣を雪ぐよう吹き荒れる。

 チヒローズが下がれば、次は晶の番だ。
 竜神の女は攻守を器用に使いこなす。おかげでディガンマの意識が他所へむくことは早々ない。
(……さて、と)
 建物の形を成さぬ瓦礫の影に身を潜め、ハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)は深い呼吸を繰り返しながら機を窺う。
 同じ猟兵として、晶とチヒローズはハルピュイアの存在を知っている。だがディガンマは知らない――いや、目の前の物を破壊することに夢中なディガンマが気にかけることはない。
 それだけ彼の猟書家には余裕があるともいえる。その慢心こそ、致命傷を受け得る危機に転じるおそれがあるにも関わらず。
(もしかしたら、そういうのも含めてなのかもしれないね)
 いざとなればハルピュイアだって怪我の一切を省みない。敵へ絶望を与える為ならば、命を危険に晒すことも厭わないだろう。
(……)
 赤と青、左右で異なる彩を持つ瞳をハルピュイアは細め、重い空を見上げた。
 此の空では、星も見えない。煌びやかで魅力的なスウィーツを楽しむことなぞ以ての外だ。
 すぅ、と吐いた息をゆっくり吸い上げ、ハルピュイアは呼吸を整える。
 討とうと挑むことが、ディガンマを本能的に歓喜させるのかもしれないが、この不思議の国から排除しなければならない事に変わりはない。
 つまり今日もいつも通り。淡々と。
 と、その時。チヒローズがふわりとオラトリオの翼で飛んだ。
(――ここ)
 見極めた機に、ハルピュイアは闇を渡る。
 疾く、疾く、疾く、疾く。
「っ、新手か!」
 チヒローズが地面に落とす影を味方につけて奇襲をしかけたハルピュイアを、ディガンマが「面白い」と口の端を吊り上げた。
 さすがの猟書家だ。反応速度は凄まじい。
 不意をついたというのに、予備動作なしで獣腕が振り払われた。
 鋭い爪がハルピュイアの肩を抉る――でも、それは既にハルピュイアの術中。
「ただ重いだけ。致命傷を避けるのは、難しくないね」
 平らな声で、ハルピュイアはディガンマへ言い放つ。途端、血気に溢れていた獣の男の挙動が固まる。
「あなたの前に立ちはだかるのは誰?」
 ――Lost memory。
 ユーベルコードの弱点指摘をきっかけに、失われし記憶を蘇らせ、敵の挙措を封じる技。
「……っち」
 忌々し気に舌打ちするディガンマが今、何を視ているかは誰も知らない。
 ただ発生した180秒の有余に、晶もチヒローズも全霊を賭す。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

アウグスト・アルトナー
では、『悪い例』をお見せしましょう
絶対にぼくの真似をしてはいけませんよ、貴女(第1章で関わった殺人鬼へ)

【薄氷の上の幸福】発動
『あの時』と同じ力を使います
今この時、ぼくは獣になりましょう

家族が入った鉄の籠は左手に持ち
右手だけで拳銃を【クイックドロウ】しつつ、ディガンマへと駆けます

爪は【オーラ防御】で弾きますが
たとえ刺さったとしても、問題ありません
怯えも劣等感も、自分を【鼓舞】することで打ち払います

兄さんの応援
母さんの【祈り】
父さんの視線

ぼくは、家族の信頼に応えるんです

ディガンマの体に【零距離射撃】
続けて、噛みついて【捕食】

あ、意識が……
ですが、きっと彼女(殺人鬼)が助けてくれることでしょう


エンジ・カラカ
なァに?遊ぶ?遊ぶ?
イイヨー。あーそーぼー。

薬指の傷をもう一度噛み切る。
だって君はコレの血が大好物。
飲めば飲むほど強くなるンだ。

どーやって倒す?どーやって遊ぶ?
首に君を結びつけよう!
それとも足?手?
胴を引っ張って一緒にダンスもイイネ!

自慢の足で走っておびき寄せて走って
真っ赤な君の糸をぐーるぐる!

一瞬でやってしまうのはイヤー。
アァ……すぐに壊れたら面白くないだろう…?
じっくり、たっぷり遊んで遊んで、飽きたらポイッ。

君の糸は毒の糸。

見のうちから焦がれる感覚!
君が侵食してくる感覚!
そうだろうそうだろう、情熱的だろう?

もっともっと欲しい?
そんなことは言ってない?
まァいいや。

次は何してあそぶ?


●獣たちの遊戯場
「絶対にぼくの真似をしてはいけませんよ、貴女」
 助力に対する感謝のように付き従っていた殺人鬼の女をアウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)は一度だけ振り返ると、凶暴さと獰猛さを隠そうともしない獣の男と正対し――目を伏せる。
「頑張らないといけませんね」
 これから披露するのは、心ある殺人鬼たちにとって反面教師となる『悪い例』だ。
 理解っているが、アウグストの中に思い留まるという選択肢はない。
 自ら望んで、悪い例を見せると決めたのだ。それにこうすれば『家族』を身近に感じられる。
「兄さんも、母さんも、」
 からん、ごろん、がらん。
 軽く手を掲げたら、鳥籠の中でされこうべ達が歌う。その響きに、アウグストは幻想を視た。
 父が、母が、兄が、信頼の眼差しでアウグストを見ている。当然、ただの妄想だ。薄氷の上の幸福に過ぎない。
 だがそれだけで、アウグストは強くなれる。
「父さんも、ぼくを見ていますし」
 どくり。結んだ唱えに、心臓が高く脈打った。これは『あの時』に使った力。
(――今、この時。ぼくは獣になりましょう)
 鉄の鳥籠を左手に移し替え、右手に拳銃を握ったアウグストは、開いた眼にディガンマだけを捉えてまっすぐに駆け出す。
「へぇ」
 迎え撃つ形になったディガンマも、即座に地面を蹴った。
 二者の激突は瞬きの間の後。アウグストが絶え間なく撃ち続けた弾丸を容易く掻い潜った猟書家は、歓喜の笑みを満面に描きながら獣爪を放つ。
 常態のアウグストであれば、致命傷になり得る一撃だ。けれども今のアウグストには急所を外すことが出来る。
 展開したオーラの守りで威力を削ぎ、脇腹に突き刺さった爪先から染み入る負の感情を、アウグストは自らを鼓舞することで耐え凌ぐ。
 兄の応援する声が聞えた。母の祈りに、包まれる。父の視線を感じれば、全身の血液が沸騰した。
「ぼくは、家族の信頼に応えるんです」
「おめでたいヤツだ」
 揶揄か、侮蔑か。いずれにせよ耳障りの良くないディガンマの言葉は受け流し、アウグストは零距離から獣を撃ち――文字通り、食らいつく。
 感情の一切が浮かばない表情のまま噛みついたディガンマの腕は、埃塗れの古布の風味の奥に命脈を感じた。勢いに任せて食い千切ると、飛んだ血がアウグストの髪に咲くクロユリに朱を散らす。
 返礼とばかりに背を食われたが、獣と化したアウグストは気にも留めない。
 喰うか、喰われるか。それだけ。
 力の酷使の反動で、昏睡するまであとわずか。そうなる前にきっと『彼女』が助けてくれるとアウグストは、殺人鬼の女の事を勝手に信じている。だって獣も、生き残る為ならば、助け合い、連携するものだから。

「アレー、終わっちゃったの?」
 人の遊びを邪魔するのは無粋だ。それくらいは心得ていると事態の推移を見守っていたエンジ・カラカ(六月・f06959)は、口元を血に塗れさせたディガンマを見てほくそ笑んだ。
「なァに? 次は俺? 遊ぶ? 遊ぶ?」
 意識を失った猟兵が、視界の端で殺人鬼の女に引き摺られている。アレは死んではいないし、放っておいても助かるだろう。
 何となく、そんな感じでエンジは同胞のことは捨て置いて、獰猛さの増したディガンマに向けて浮かれたステップを踏む。
「そうだな、遊ぶか」
「ワァ! そうこなくっちゃー。イイヨー、イイヨー。あーそーぼー」
 児戯めかして語尾を遊ばせ、エンジはディガンマに背を向け、加速する。
 真正面から殴り合うのも悪くないけど、遊びといえば鬼ごっこは欠かせない。
「賢い君、できるよなァ……」
 追いつかれるのはあっという間だ。でもその隙にエンジは、未だぷっくりと血が浮く薬指の傷を、再び噛み切った。
「これはネー、飲めば飲むほど強くなるンだ」
「それは結構なことだぜ」
 二足から四足へ。より獣性を強めたディガンマの足は恐ろしく速い。しかしすぐ足元から聞こえた声にもエンジは微塵も驚かず、血を与えた拷問器具から糸を繰った。
「やっぱり、獣には首輪が必要だよねー」
 くるり。ダンスを踊るリズムでディガンマの体当たりを辛うじて躱し、エンジは自在に動く赤い糸を獣の首へ巻き付ける。
「サァ、どーやって倒す? どーやって遊ぶ?」
 自問めいた繰り言は、他者に向けたものではなく、さしたる意味はない。エンジはただ刹那刹那、『君』の気が向くに任せるだけ。
「真っ赤な君の糸でぐーるぐるだァー」
 エンジは笑う。
 笑って、ディガンマの首に巻いた糸を引く。
 このまま引き続けたら、頑強な獣の首も堕ちるかもしれないが、そんなに簡単に終わってしまうのは勿体ない。
 だってこれは、楽しいお遊戯。じっくり、たっぷり遊んで遊んで、遊び尽くさないと面白くない。
「飽きたら、ポイ! だけどねー」
「飽きられるのは、どちらだろうな?」
「ワァ!」
 不意にエンジの身体が宙に浮いた。自ら糸をからげて手繰ったディガンマが、四つ足のまま跳躍したのに引き摺られたのだ。
「すごーい。サーカスみたいー。観覧車? メリーゴーランド?」
 ぐるりと回る視界にもエンジは笑い、手慰みのように『君』の宝石を弄ぶ。
 きらりと生まれた光は糸に毒を齎す。じんわり沁み往くそれは、やがてディガンマの身を痺れさせること請け合い!
(身のうちから焦がれる感覚! 君が侵食してくる感覚!)
 未だ見ぬ光景に、エンジの鼓動はますます高鳴る。情熱的な毒に溺れて、ディガンマはどうなるのだろう。
 もっと欲しいと強請るのだろうか、それとも――。
「まァいいやー」
 背中から地面に叩きつけられたエンジは、圧し掛かって来る獣の顏を両手で捉え、喉を鳴らす。
「鬼ごっこはお終いー。次は何してあそぶ?」
 獣のくせに人間らしいディガンマの首は、エンジの巧妙な手つきによって、あらぬ方向にへし曲がった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

菱川・彌三八
喧嘩に理由なんざありゃしめェよ
奪う方は何時だって自由サ

さあて、如何すりゃ楽しい喧嘩が出来る?
同じ攻め手も芸がねェ、ちいと変えてみようか

真言を紡ぎ、輪光が如き宝剣を背負い駆ける
速さでついて来るたァ驚いた
似た様な手ェ使いやがる
善き哉

独鈷は攻撃と牽制で使い分け
只投げるだけじゃあ避けられちまうだろう
…が、目の端に坊主が見えりゃあ僥倖
攻めの一手として働いてもらうゼ

先ずは剣を矢継ぎ早に放つ
避けた先は俺が拳を
牽制の剣をちらつかせ、坊主の方へ避けさせる
坊主の攻めを躱すンなら、避けた先で刺す
手に掛けようってンなら、其の隙を狙う

見え様が速かろうが、無策じゃ仕方ねェ
ヒトの喧嘩なら、俺に分があるやも知れねえな


●祭
 猟兵も、獣も、両者がわらっている。
 笑っているのか、嗤っているのか、哂っているのか定かではないが、傍目に異様であるのは間違いない。
 頭の螺子が数本、飛んでいるかのような戦いぶりだ――が、菱川・彌三八(彌栄・f12195)はそれを悪いとは思わない。
 喧嘩は派手にやって初めて華となる。同時に、喧嘩に理由や道理があったためしは古今東西ありはしない。
(奪う方は何時だって自由サ)
 彌三八は胸中で、カラリと笑う。如何すれば、楽しい喧嘩が出来るか考える。
 此れは祭だ、喧嘩の祭。
 勝ちを優先させ過ぎるのも面白くない――負けるつもりはないが――し、馴染んだ攻め手も芸がない。
(ちいと変えてみようか)
 膝を折って、筆を置く。
「オン イダテイタ モコテイタ ソワカ」
 立ち上がりながら真言を紡ぎ、具現化した韋駄天の梵字を見に纏うと、彌三八は駆け出す。
「へぇ、速いな」
 やり合っていた猟兵を組み伏せたディガンマが並走をしかけてきたのは、金剛杵とも呼ばれる独鈷柄付剣を彌三八が背負った瞬間。
「善き哉!」
 されど宝剣を日輪の如く背に輝かせ、彌三八は心からの快哉を吼えた。
 足自慢の飛脚も泣いて謝る韋駄天だ。速さでついてこられたのは、正直驚いた。けれども、やはり悪くない。
 繰り出す手が似たものならば、対等な力比べが出来る。力を出し惜しむことなく、喧嘩に興じることができる。
 真横に薙いだ剣閃は牽制だ。ひょいと跳ねて躱されても痛くも痒くもない。
「さすが犬っころだゼ」
「どうせなら狼にしておいてもらおうか」
 ディガンマの着地点を狙って、彌三八は独鈷を投じた。それを半壊の石畳ごとディガンマは踏み抜き、爪を繰り出す。
 僅かでも届けば血塗れになるだろう鋭さを、彌三八は矢継ぎ早に放つ剣で凌ぐ。そしてついでのように仕掛けた拳の方が本命――。
「念入りな事だぜ!」
 ディガンマが高らかにわらった。彌三八の拳を金色の眼で見極め、寸でで躱したところでわらった。
 何故なら僅かにバランスを崩しながらの踏み込みの先で、若造殺人鬼が鈍色に光るナイフを構えていたのだ。
 ディガンマと競りながらも、彌三八の視界の端には、油断せずに状況を窺う少年の姿が常にあった。
(僥倖、僥倖)
 冷静な少年は、獲物を仕留めるための良い眼を持っている。彌三八と少年、同じ相手と遣り合う仲だ。言葉を交わす必要なんてない。
(阿吽の呼吸ってやつサ――そうさな)
「坊主!」
「わかってる!」
 身を低く沈ませた少年が、跳ねあがるようにナイフを突き出す。腹部を貫くはずだったそれが、猟書家の本懐たる書を仕舞うウエストバッグのベルトを切り裂いたのは、偏にディガンマの驚異的な反射速度のせい――ではなかった。
 無理な姿勢から、更に無理を重ねた獣の背はがら空きだった。そして彌三八の剣は、元よりそこに合わせてある。
「見え様が、速かろうが。無策じゃ仕方ねェ」
 背から腹へ輝く剣を突き立て、彌三八は祭囃子を遠くに聞く調子で言う。
 ディガンマは確かに獣だ。けれど策を尽くし、ヒトの喧嘩に持ち込めたなら、彌三八にも勝機は十二分にある。
(いや、俺だけじゃねェか)
 血を吹いたディガンマへ足払いをかけ、返り討ちに遭いながらも次手を巡らす少年殺人鬼に、彌三八は機嫌よく唇を吊り上げた。
 喧嘩の勝負はまだついていない。
 せっかくの祭だ。心行くまで、やり合うに限る。速さの代償である命を、削り切るつもりは毛頭ないけれど。
大成功 🔵🔵🔵

呉羽・伊織
【守】
――有難うな、信じてくれて
そしたら此の侭、共に頑張ろう
復讐の為でなく、国を取り戻し、立て直し(――そしてその覚悟と矜持を、目映く咲く心を)、また護ってく為に、な
その手なら、心なら、復讐以外だって成せる筈

彼の心が届くよう、俺は最後迄支えに
UCでまた重苦しくなる得物と裏腹に、変わらず軽快に
今度は彼を背に、早業で暗器と刀操り先に動く
残像やフェイントで目眩まし掛け、融合箇所に呪詛刻み、動き鈍らせ隙を作る

(不意の加勢に顔顰めるも)
――無駄口叩いてる場合かよ、お節介
俺だって今は余計な獣にまで構う暇はないっての!
言われずともちゃんとやってみせる

な、少年!(名を呼んで、決手を任せ――彼なら成すと信じて)


佳月・清宵
【守】
さて、後は俺も唯、面白味に欠く思惑をぶち壊すのみ
だが、序でにお前の本懐にも付き合おう
(青くも根は丈夫な若芽――其の一心が実を結ぶ迄――噫、我ながら実にお節介で)

苛む鬼や獣の聲に委ねりゃ楽にはなろうが、愉しくはねぇ――黙ってろ
UCに伴い響く聲ごと消す様に衝撃波や暗器を敵へ――先行く男の影に乗じ、重い呪詛や欺く残像を重ねて阻害

(顰め面へ面白げに)
おう奇遇だな――然し今はてめぇの世話まで焼けねぇからな?
一丁前に格好つけて信を得た手前、上手くやれよ

憤怒や復讐の念を懐くなとは云わぬ
其は人の心の性でもある
唯、其だけで終わるのではなく――本来のてめぇを忘れず、行け
意味なぞ自ずと後からついてくるだろうよ


●綺羅星
 湿っぽくはなりたくない。
「――、有難うな」
 自身の胸元くらいにある旋毛を見ながら呉羽・伊織(翳・f03578)が言うと、仰向いた少年が不思議そうに首を傾げた。
「オレのこと、信じてくれてって意味だ」
 言の葉の端に滲みそうになる感慨を、気負いのない笑顔で覆い尽くした伊織は、少年の両肩で軽やかに掌を跳ねさせる。
「此の侭、共に頑張ろう」
 ぽんぽん、と伊織の手が弾んだ肩から、過剰な力が抜けた。良い傾向だと思いながら、伊織は右足を軸に身体を捻り、何気ない仕草で少年を自身より前へ押し出す。
「そういえば、キミの名は? オレは伊織。呉羽・伊織」
「ソラ――ソラ・イーシュヴァン」
「よし、それじゃあ始めようとしようぜ。復讐の為でなく、国を取り戻し、立て直し、……また護ってく為に、な」
 ――その覚悟と矜持を、目映く咲く心も。
 息継ぎにしては長い間にこそ潜み願われるのが、伊織の想い。だがソラと名乗った少年にそうと気取られる前に、伊織は成長途中の背中を、更に前へと押す。
「信じろ。その手なら、心なら、復讐以外だって成せる」
「――はい」

「容易く壊れないものほど壊し甲斐があるってものだ」
 破壊を宣いながら、むしろ己の方が壊れそうなディガンマへソラが斬り込む。
 数多の傷を負い、毒も受けたのだろう猟書家の動きは、おそらくベストからは程遠い。にも関わらず四足で駆けるディガンマは容易くソラの一閃を躱し、獰猛な牙で首筋を食い千切ろうと後方へ跳ねる。
「御してみせるさ!」
 弱体化していても、決して侮れない相手だ。わかっていながら、――いや、わかっているからこそ伊織はこれまで以上に軽快な声で少年殺人鬼を鼓舞し、呪詛をまとわせたせいで振るうことにも労を要す得物を、事も無げを装い繰る。
 ディガンマの眼前を薙いだ刃は囮。本命の暗器で伊織は獣の右下肢を封じ、近接した代償として鋭い爪に左耳を裂かれた。
「、っ」
 引き千切られこそしなかったが、痛烈な痛みに伊織は息を呑む――が、ディガンマの方も視えぬ幽鬼に足をからげられて鑪を踏む。それでもディガンマは不気味に笑みを深くしている。
「はは!」
 獣が快哉を謳った。
 ――壊れている。
 ――狂っている。
 肌で触れる獣の狂気に、しかし伊織も軽薄な笑みを返す。
「随分とご機嫌じゃないか」
「かもしれないな」
 言葉で、攻撃で、ディガンマの気を引く。引いて、引き付け、少年殺人鬼が踏み込む隙を作る。
 伊織は自身の役割を決めていた。それに伴う苦痛なら、まるごと飲み干す覚悟もできている。
 その為にも笑顔の仮面を脱ぐことはできない。出来ないはずだったのに。
「おう奇遇だな」
 思うように鈍重化してくれないディガンマの蹴りを顎に受けそうになった刹那、割り込んで来た声に伊織は無意識に顔を顰めた。
「――無駄口叩いてる場合かよ、お節介」
「安心しろよ、今はてめぇの世話まで焼けねぇからな?」
 咄嗟の反論は、馴染み過ぎて素が出た証。

 過る俤を消し去る事はどうしたって出来ない。それでも抱えた感傷は指先ほども覗かせず、佳月・清宵(霞・f14015)が一途な少年殺人鬼と視線を合わせたのは、猟兵とディガンマ双方の笑い声が聞える頃。
 おおよそ戦っている最中とは思えない哄笑に、少年の眼は落ち着きがない。
「さて、後は俺も唯、面白味に欠く思惑をぶち壊すのみ」
 少年の青さは好ましくあるが、生き抜くためには不安要素でもある。
「だが、序でにお前の本懐にも付き合おう」
「ありがとうございます」
 さっきも聞いた謝辞に、清宵はひらと掌を閃かし、あくまで『序で』であることを強調してみせた。
 こういうところも含めて、我ながらお節介だと清宵は心中で自らを笑う。
 放っておけば手折れてしまいそうな、青い若芽。だが根の強さは信じられる――根が強くなければ、こんな戦いに身を投じるわけがない。必要なのは、水と光を与えること。
(――其の一心が実を結ぶ迄)
「……」
 征けるな、とも、着いて来い、とも清宵は言わない。
 言わない代わりに、先に発つ。
 大人と子供。追い縋るだけでも、一苦労なはずだ。理解っていて、清宵は全力で駆けた。

「お前達も壊されたいのか? それとも俺を壊すか?」
「――黙ってろ」
 伊織へ投げた視線を切り替え、清宵は妖刀の鍔でディガンマを押し返し、蹴り飛ばす。
 鞠のように跳ねた獣が、中空で体を整え、四足で半壊している地に降り立った。
 まるっきり獣だ。
(そりゃあ、楽にはなるだろうさ)
 苛む鬼や、獣の聲。自らの裡に巣食うモノを思い、清宵は片頬で皮肉に吊り上げる。
 理性を手放せば、楽になるに決まっている。けれどそれでは――。
(愉しくはねぇ)
「おい、一丁前に格好つけたんだ。上手くやれよ」
「言われずともちゃんとやってみせる。俺だって今は余計な獣にまで構う暇はないっての!」
 今度はディガンマをねめつけたまま、清宵は声だけを投げた。寄越された伊織の応えの威勢の良さに、清宵は愉し気に喉を鳴らす。
(憤怒や復讐の念を懐くなとは云わない)
(其は人の心の性でもあるから)
 ――唯、其だけで終わるのではなく。
 一足飛びにディガンマとの間合いを詰める清宵は、すぐ後ろに少年殺人鬼の気配を感じていた。
 上手く清宵の影を活かしている。これならば、獣の懐へ飛び込めるだろう。
「本来のてめぇを忘れず、征け」
 ディガンマの間合いに入る直前、清宵は両手を広げた。翻った衣の袖が、翼のように大きく広がる。
 そこから巣立つ少年の姿に、清宵はやはり誰かの俤を視る――けれども、過剰に手を差し伸べようとはしなかった。
(征け、自分の力で)
「そうすれば、意味なぞ自ずと後からついてくるだろうよ」

「畜生、イイとこ持っていきやがって!」
 地団太代わりの気勢を伊織は吐くと、囮の役目を果たしディガンマの突進を受け止めた清宵の上を飛び越えた。
 眼下では、獣の首筋に少年殺人鬼が刃を押し当てている。
 一思いに断ち落とせないのは、力が足りないからだ。
「あとは任せたぜ、ソラ!」
 中空で身を捻り、伊織は自分を追って跳躍した少年殺人鬼を更に高みへと押し上げる。
「まかせてください、イオリ!」
 呼ばれた名に頷いたソラが、伊織の両手を蹴って鈍色の空を突く。

 重力を味方につけたソラは加速しながら頭から落ちていく。
 前へ前へと伸ばされた手に握られたナイフの行方を伊織と清宵は追わず、未だ破壊を求めるディガンマの咆哮にも耳を貸さない。
 未来は既に決した。
 ソラの荷重がディガンマの背の少年殺人鬼に加わる時、それが獣の終わりになるのは疑うべくもない事実。
 衝動に飲まれず、一途な想いを殺人鬼たちが果たし遂げる。
 その綺羅星の様な在り様が伊織も清宵も誇らしく――そして眩しかった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年01月17日
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