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炎を見るたび思い出せ

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #偽りの炎精マナール #精霊術士 #災魔の卵

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●すぐ楽にしてやる
 アルダワ世界の中原地方。そこは見渡す限りの広大な砂漠と、そこに点在するオアシスからなる砂の世界。そしてそこに住まう人々は、魔導蒸気機関にて砂の上を動く『航砂船』を持って、交通や運輸の要としていた。
 そして今も、一艘の航砂船が砂の海をかけていく。
「まさか炎の精霊様がそのようなお姿とは……」
 その船の上、船長らしき男が乗客の女に話しかけた。女はその視線を受け、尊大な態度でそれに答える。
「炎に定まった形などない。どうした、私が怖いのか?」
 その女は悪魔のような……それでいて豊満で蠱惑的な体を、惜しげもなく船長に見せつけた。中原地方で崇められる炎の精霊。砂海のど真ん中を走る船の上に突然現れ、紫の炎を凄腕の術士も及ばないほどに扱って見せたこの女はそれを名乗り、この船に加護を与えに来たというのだ。
「い、いえ……そんなことは……」
 赤い肌と豊かな胸に、つい目が行ってしまう。女は相手の意思を全て見透かしたように笑うと、踵を返し機関室への扉を開けた。
「では今よりこの船に加護を与えてやろう。精霊の秘事ゆえ人が見れば目が焼かれる。入るのではないぞ」
 そう言って機関室へと入った女。周りに誰もいないことを確認すると……大きく笑い出した。
「あっはははは! ばっかじゃないの!? 精霊がこんなカッコしてるかっての。いやーそれにしてもあの喋り方疲れるわ、今度はもうちょっと緩いキャラで行こうかな? あーでもフランクすぎると信じて貰えないんだよねー。まーいーや。とりあえず、はい、どかーん」
 女が機関部に卵のようなものを放り込むと、一瞬にして船は紫の炎に包まれた。

●楽には死ねんぞ
「あなたのメルでございます。また新しい猟書家が現れました」
 そう言ってメル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)は集まった猟兵たちに紫芋タルトを配る。
「今回現れたのはアルダワ世界の中原地方。敵は『偽りの炎精マナール』。彼女はそこで信仰されている炎の精霊を騙り、爆破テロを行おうとしている模様です」
 目的はテロにより災魔を産みだすことと、炎の精霊の信仰を失墜させることだという。
「彼女は一艘の航砂船を炎で包み、動く爆弾としてオアシスの町に突っ込ませようとしています。皆様にはこの船に乗り込み、マナールを撃破して船を止めて頂きたく」
 猟書家の炎で燃える船だ。猟兵とはいえ突入は困難を極めるだろう。だが、突破口はあるという。
「このオアシスには現在、炎の精霊を正しく信仰している精霊術士たちが大勢います。新年の式典で集まっていた彼らは一種の神官のような側面もあり、炎の精霊に深く親しんでいます。勿論その炎スキルも、非猟兵としては折り紙付き。彼らを現場に急行させ、炎の影響を弱めたり炎耐性を付与して貰ったりしてはいかがでしょう」
 自身が突入するための援護はもちろん、突入に不安があるならいっそ猟兵が彼らのサポートに回ってしまうのもありだ。
 船へは小型のボートの様な航砂船で乗り付けることになるが、もちろん手段と自信があるなら砂の上を走ったり、飛んでしまってもいい。出来るのなら精霊術士を連れてそれをやるのもいいだろう。
「無事中枢までたどり着けたらマナールとの戦闘です。彼女は炎の精霊を騙りながら、紫の炎を使った攻撃を繰り出してきます。ただ炎と思ったら闇属性の技を出してくることもあるようなので、その辺りは警戒を」
 他人を惑わし、滅びる様を見るのが何より好きな性悪だという。手加減の必要はないだろう。
「この戦いでも精霊術士たちは敵の炎を弱めたり、援護攻撃するなどで力になってくれます。彼らは正しい炎の精霊を知っているので、敵に惑わされたりもしません。ただ正面から戦えるほど強くはないので、あくまでサポートに留めておくのがいいでしょう」
 猟書家を倒すのはあくまで猟兵の役目、ということだ。
「どれだけ迅速に中枢にたどり着いても、航砂船は街の近くまでは来てしまいます。そこで彼女は街から見ている者に炎の精霊への不信を植え付けるため、最初はやたら尊大な喋りでそれっぽい事を言いますが、余裕がなくなれば地が出るのでさっさとボコってしまうのがいいでしょう」
 テロを防げれば後は精霊術士たちが今回の『火消し』をしてくれる。その為にも迅速な勝利を、ということだろう。
「今年も戦いの一年となりそうですが、皆様どうぞよろしくお願いいたします」
 メルは一礼しながらそう言うと、猟兵たちをアルダワへと送り出した。


鳴声海矢
 遅まきながら明けましておめでとうございます。鳴声海矢です。今年一発目はマイ宿敵な猟書家のシナリオです。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス(全章共通)……精霊術士の助力を得る』

 第一章では燃え盛る航砂船に乗り込み、中枢を目指していただきます。行動としては炎を突っ切って内部へ侵入するほか、精霊術士たちの説得やサポートをメインに動くのもありです。

 第二章では敵は炎の精霊を詐称していますが、本物を知る精霊術士の助力を得ることで、炎の勢いを弱めたり自身に耐性を付与して貰ったり、またサブアタッカーとしても協力してくれます。勿論猟兵よりははるかに弱いので主戦力にはなりませんが、的確に指示を出せば大いに助けとなってくれるでしょう。
 街の方からも戦っている様子は見えますが、特に防衛を気にする必要はありません。

 精霊術士たちは種族、性別様々ですが、使う属性はほぼ炎特化。サブジョブはクレリックや戦巫女など僧侶系のものが多いです。やりたいことに合わせ適当に捏造していただいて構いません。

 それでは、燃えるプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『燃え盛る航砂船』

POW   :    何らかの手段で炎に耐えて突入する/精霊術士を強い意志で励まし、力を高めさせる

SPD   :    炎の手の弱い場所から素早く突入する/精霊術士の現場への移動を助ける

WIZ   :    航砂船の速度を落とす手段を講じる/精霊術士に何をすべきか指示する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「精霊様、これは一体!?」
「我が炎に焚べられる、これ以上の加護はあるまい。紫炎に抱かれそのまま死ね」
「なんと……!?」

 その頃オアシスの町では、新年の勤めを一通り終えた精霊術士たちが町へ出ていた。
「今年の新年祭も無事に終わりましたね。明日からは通常業務で……おや、随分と騒がしい」
 祝祭は終わったというのになぜかざわつく町。それもあまり良い騒ぎではないようだ。
「一体何事で……あれは!?」
 その騒ぎの原因。それは遠方に見える炎に包まれた航砂船であった。船はまるで炎に導かれるように、まっすぐ町へと突っ込んでくる。
「何だあれ……燃えてるのか?」
「そういや炎って言えば……」
 その姿に、信仰心のないよそ者を中心に疑問の声が上がり始める。
「あり得ない、炎の精霊様がかようなことをなさるはずは!」
 炎は危険なればこそ正しく扱うものに加護を与える。その代表格とも言える航砂船を焼き、あまつ町へ向かわせるなど決してあることではない。精霊と心を通わせた精霊術士なればこそわかるそれは、しかし力を持たぬ者には伝わらず、そして彼らも何をすればいいかは分からない。
 その答えを知るのは誰あろう猟兵だ。さあ、自ら燃える船に乗り込むか、あるいは精霊術士たちに今何をすべきかを知らしめるのだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
これは、急いだ方が良さそうですねぇ。

まずオアシスで『精霊術士』の皆さんに接触、『猟兵』と名乗り問題の無い範囲で『状況』を伝え、協力を要請しましょう。
最低限『火の精霊を騙って街を狙っている者が居る』程度の情報が伝われば、御協力頂ける筈ですので『小型航砂船』で向かいますぅ。

突入時は『術士』の方に『対炎防御』の術を施してくれる様お願いし、同時に【遍界招】を使用し『熔岩域』等の『高熱の環境』を想定した『耐熱防護用の装飾品の祭器』を召喚、二段構えの防護を用意すればまず問題無いでしょう。
突入前に『一般的な航砂船の構造』を尋ねておき、怪しい場所から順に捜索しますねぇ。



 街からも確認できる、紫の炎に包まれた航砂船。その燃える船は街中の者の注目を集めていたが、一際険しい目でそれを見つめる者がその中にいた。
「これは、急いだ方が良さそうですねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はその燃える船を確認しつつ、周囲で慌てふためく精霊術士たちの一人に声をかける。
「そちらの方は炎の精霊さんを信仰する精霊術士の方とお見受けします。私は猟兵……アルダワ魔法学園で災魔と戦っている者、と言えばお分かりになりますでしょうか?」
 突然かけられた声に、精霊術士はさらに驚きを重ねたような表情になる。詳しいことは伝わっていないが、一年ほど前学園で大きな騒動があり、外部の者が客員生徒や臨時講師としてその鎮圧にあたったという話は聞いている。目の前の相手はその当事者、ということか。
「炎の精霊を騙り、船を燃やして町を襲おうとしている者がいます。その目的は炎の精霊信仰を揺らがせること。それを止めるためにご協力いただけないでしょうか?」
 あまりに唐突な話だが、現に信仰心のないものを中心に、あの船を炎の精霊と結びつけるものが現れている。いずれにせよあの船の調査には誰かが向かわなければならないのだし、官憲と連携を取っている暇もどう考えてもない。そう考えた精霊術士は、一度頷いて協力の意思を示した。
「わかりました。どうせ誰かがあれを止めなければならないのです。小型の航砂船がありますので、こちらへ」
 精霊術士の案内に従い船着き場へ向かい、魔導蒸気エンジンを積んだモーターボートの様な航砂船に乗るるこる。そのまま術士の操船で燃える船へと真っすぐ向かうと、程なくして炎の熱が肌を炙り始めた。
「これはすごい……それでは私が乗り込みます。炎を抑えるための防御術をお願いできれば」
「わかりました!」
 炎の熱が限界近くなったところで、るこるはボートから船へと飛び移る。
「大いなる豊饒の女神、その鴻大なる知と力を持つ『祭器』を此処にお与え下さい」
 船を取り巻く業火に焼かれぬよう、【豊乳女神の加護・遍界招】にて重厚な耐火服を召喚。加護の力で溶岩域さえ耐えるそれを纏ったるこるに、術士が自分のエレメンタルロッドを投げつけた。ロッドはるこるにぶつかる瞬間赤い炎の塊と化し、そのままるこるの体を取り巻く。一見すれば彼女を燃やすようにも見えるそれは、だが決してその身を焼くようなことはなく、外から来る邪悪な炎への防壁として第二の服としてその身に纏われた。
 二重の防御に守られたるこるは紫の炎熱地獄の中でも火傷一つ追うことなく、その船の中を進んでいく。
「恐らくは船後方……あの煙突の下でしょうかぁ」
 事前に聞いておいた航砂船の構造は、外輪型の蒸気船に似ていた。ただ駆動のための魔導蒸気エンジンは機関室ごと船後方に据え付けられているようで、敵が災魔の卵をエンジンに放り込んだということは彼女はそこにいる可能性が高い。
 燃える船の甲板を、るこるは炎を書き分け進んでいく。操舵室や船倉への入口などを迂回し後方まで行くと、そこにあったのは武骨な金属の扉のついた鉄製の箱のような部屋。
「それでは、お邪魔しますよぉ」
 炎に炙られ高熱となった扉を、るこるは躊躇なく掴んで開ける。炎の加護に守られたその手は焼け爛れることもなく、熱で歪んだ扉も力任せに強引にこじ開けた。
 扉が開くとともに紫の炎が一気に吹き上がり、バックドラフトを起こす。その向こうにあったのは紫炎を噴き上げるエンジン、そして一つの赤い人影……

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
誑かし
信仰を踏みにじった上で
更に大勢の命を奪おうとは
虫唾が走るぜ

船を止めて町を守り抜くぜ

行動
説得後乗り込む

説得
あの船の炎は
炎の精霊を語るオブリビオンの仕業だ

船を止める為
そいつをぶん殴るため
あんたらの力を貸してくれ

突入
ボートで乗り付け

炎の加護を依頼
焔摩天を包む獄炎が更に燃え盛る

爆炎でボートから跳躍
落下しながら焔摩天の炎刃で
船を包む炎を唐竹割

更に獄炎が紫炎を喰らい滅しながら
甲板に降り立つ

事後
船員>
助けに来たぜ
もう大丈夫だ
と鼓舞

偽りの炎精ってのはアンタか
すぐに海へ還してやる


紬雁・紅葉
あらあら…騙り神とは罰当たりな…
クスクス笑い
御鎮めします

船を出してもらい現場に接舷

偽りの火、何するものぞ…!

羅刹紋を顕わに戦笑み
先制UC発動
火属性を防御力に付与
地形を利用し魔力を増幅

天羽々斬を鞘祓い釼の火竜を顕現
ダンス降霊で正しい火の精霊を顕して仲間を鼓舞

術師に「中枢はどちら?」精霊力の強い場所を示してもらう

そのまま火の中へ突入
焔は燃えない…!

残像忍び足でするすると侵入、炎の中へ切り込む
途中遮るものは火属性の鎧無視攻撃で薙ぎ払う

術師含む窮地の仲間は積極的にかばう

安い騙りの代償が如何に高くつくか…思い知って頂きましょう♪

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※



 街に徐々に近づき、その全容が肉眼でも観測できる距離まで来た燃え盛る航砂船。その船を睨み、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が忌々し気に呟く。
「誑かし信仰を踏みにじった上で更に大勢の命を奪おうとは……虫唾が走るぜ」
 猟書家の所業に怒るウタ。船を止めて街を守り抜く、その決意は確かだが、ここで闇雲に突っ込んでも仕方ないことは分かっている。
 ウタはまず付近に精霊術士がいないかを探し辺りを見回した。すると程なくして、法衣の様な衣装をまとった男が見つかる。この街では精霊術士は神官のような役目も持っているため、その衣装は非常に分かりやすい。
 船を見上げあっけに取られている男に、ウタは近寄って声をかけた。
「あの船の炎は炎の精霊を語るオブリビオンの仕業だ」
 端的に状況を説明するウタ。
「船を止める為、そいつをぶん殴るため、あんたらの力を貸してくれ」
 真っ直ぐに目を見つめ説明するウタに、男は僅かにたじろぎながらどうしていいか分からないようだ。目の前の相手が嘘をついているようには見えない。だが、この状況に突然現れた見知らぬ人間に素直に従っていいのか、自分に何かできるのか……
 そう戸惑う男の隣で、今度は女の声が聞こえた。
「あらあら……騙り神とは罰当たりな……」
 紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)は笑いながら言うが、その声音はどこか冷たい。
「神を奉るものとして、あのような者は決して許しておけません。貴方も……そうでしょう?」
 優しく、だがその奥に険しさを込めて言うその言葉に、術士は真を感じていた。
 炎使いと神職、己と相通ずる力を持つ二人の言葉に、術士は彼らと共に船へと向かうことを決意する。
 彼の案内で、二人は蒸気式のモーターボートのような小型航砂船に乗り込んだ。
 見る間に周囲の温度が上がり、汗が噴き出しはじめる。だが、その程度の熱でこの船に乗る者たちを止めることは出来ない。
「偽りの火、何するものぞ……!」
 紅葉が羅刹紋を露にし戦の笑みを浮かべた。それと共にその体は炙るものとは違う内からの熱を帯びていく。
「壱の式……来たれ」
 トリニティ・エンハンスを自らの形にアレンジした【トリニティ・エンハンス壱式】。アルダワの作法とはやや違う形で、炎の魔力がその体に防御力として纏われた。その炎は地形に燻ぶる熱すら喰らい、己の守りに変えていく。
 それと共にウタも愛剣『焔摩天』を抜き放ち、そこに自らの【ブレイズフレイム】の炎を纏わせる。
「あんたの炎も貸してくれ」
 ウタが術士にそう告げると、術士は自らが契約する炎の精霊に語り掛け、焔摩天にそれを重ねるように纏わせた。
 さらに燃え盛った獄炎を、ウタはボートの端から砂海へと出す。そして一気にその炎を燃え上がらせ、その爆発の勢いで跳躍、ロケットのように飛び出し燃える航砂船へと飛び込んでいった。
「では、わたし達も」
 紅葉も術士の手を掴むと、ひらりと跳びあがり炎の中へとその身を躍らせた。
「焔は燃えない……!」
 その言葉通り、炎を使う男と炎を纏う女、そして炎に仕える男は燃え盛る船の中に焼かれることなく着地した。
 その場で紅葉はすらりと天羽々斬を鞘祓い釼の火竜を顕現、降霊の舞いを踊ることで火の精霊を正しくそこに顕現した。竜を形どるその姿は、国は違えど荒さと恵みを共に持つ正しき炎の力を持つもの。それは正しき炎を奉ずる精霊術士と、そして炎を力とするウタの心を滾らせ、紫の炎の中へと進みゆく力を与えた。
「中枢はどちら?」
 一しきり舞い終えた紅葉が術士に尋ねると、彼は船後方の機関室と答える。
「なるほどな。すぐそこに向かいたいが……しばらく待っててくれ」
 それを聞いたウタは、だがまずは目の前にある船室へと続くであろう扉に向けて焔摩天を構え、一閃した。紅蓮の獄炎が扉を焼き捨て、さらにその奥から噴き上げてきた紫の炎さえも食らっていく。
 そして炎に炎を食らわせたまま、ウタは船室の中へと踏み込んでいった。
「助けに来たぜ、もう大丈夫だ」
 果たしてそこには、彼の読み通り熱と酸欠でうずくまっていた船員たちがいた。ウタは彼らを守るように炎を巻いて紫炎を散らせつつ、彼らを船の外まで送り出す。
 走るのが砂の上でもやはり船か、ついていた救命艇に彼らを乗せて船から切り離した後、ウタは仲間の元へと戻った。
「待たせたな」
「お疲れ様です。邪魔は払っておきました」
 その間、紅葉もまた火の守りを破る火の斬撃で道を阻む炎を散らし、目的地までの道を切り開いていた。その道の先に見えるのは、扉が既に開け放たれた機関室。
 そしてそこから吹き上がる紫の炎の中、二人が纏う炎とはまた違う、邪悪なる赤色が佇むのが見える。
「偽りの炎精ってのはアンタか。すぐに海へ還してやる」
「安い騙りの代償が如何に高くつくか……思い知って頂きましょう♪」
 その赤を消し去るため、二人は機関室へと踏み込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラー、ジェイクと行動
かなり露出度が高くグラマーな人間の女精霊術士

「普通じゃないのは分かる」
元素扱ってるから普通の炎とは違うのは分かる。
とにかく、船に乗り込む方法を見つけないといけないのだけど。
(大丈夫なのかな)
お酒飲んで酔ってる。実力は確からしいけど不安も。
「船に乗り込んで元凶絶つから何とかしてほしいのよ」
耐性付与とかでも弱いところでもなんでもいいから!
華澄が橋を架けるみたいだけど、結界術で身を護りながらこっちも空中浮遊で運ぶわ。
時間もなさそうだし、早くやらないと。

アドリブOK


アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラー、ジェイクと行動
ドラゴニアンの女精霊術士

「乗り込む方法か」
連れて乗り込む事も考えなければならないのでそこも考える必要がある。
さらに言えば精霊を名乗る猟書家の仕業であるという証拠。
災魔と言えば伝わるだろうが、そこはボロを出させればいいか。
「乗り込むと言って集まったのか」
この状況を何とかしたいという思いか。なら何とかして道を作るしかないか。
ラヴェンツァがなんとかすると言うが、無事に乗り込むとなれば精霊術士の協力も必要になるだろう。
「元凶は何とかする。この炎を何とかしてもらえればいい」
耐性と結界術を合せれば無事に通れるかもしれない。

アドリブOK


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラー、ジェイクと行動
ケットシーの男精霊術士

乗り込む方法をなんとかしないとですね。
まず炎への耐性を付けて、侵入できそうな場所を探さないと。
ラヴェンツァを呼び出して炎への防御と渡る為の端を用意します。
侵入できそうな場所を見つければそこに魔術で橋を架ければ。
精霊術士の人たちと協力できれば安全に侵入できると思います。

アドリブOK


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄、ジェイクと行動
人間の女精霊術士と行動

「事情を説明してみたらこんなに」
人数は多いほうがいいでしょうし、何より時間がないので。
「事情は説明した通り、船内の中枢へと入り災魔の討伐の為にお力を貸していただきたいのです」
災魔、猟書家の方はこちらで始末すると。
「ジェイクさん」
万が一に備えておく必要もあるので用意はしてもらうと。
「最悪、そうなるわね」
間に合わないと判断したら強制的に止めると。
こちらが焦るのを見せたらダメと。
中枢についてそこからが本番になると。

アドリブOK


ジェイク・リー
※アリス、エルーゼ、華澄、ミラーと行動
ケットシーの男性新米精霊術士と行動

「とりあえずウルフを待機させてある」
最悪の場合はロボット形態で軌道を逸らせるかスラスター使って強制的に止めると伝える。
「いいか、ゲス野郎がパチモンだと証拠を撮ればいい。見つかりゃ演技を続けるかもしれん」
ベガに撮影、つまり証拠となる映像記録を任せる事に。
「ガッツがある奴は好きだぜ」
新米でありながら乗り込む覚悟に称賛しつつ魔力で竜の翼を形成。
「俺達も行くぞ」
新米精霊術士を脇に抱えて結界術と合わせてから空中浮遊で侵入を行う。

アドリブOK



 燃える船が街へと迫る中、幾人かの精霊術士が外部の者と連れ立ってその船へと向かっていくのが目撃されていた。またそれと入れ替わるようにして、船から本来の乗組員と思しき者たちが救命艇にて街まで脱出、精霊術士の拠点へと助けを求めてきた。
 彼らの話を元に船の状況を確認、対処すべく精霊術士たちは本格的に動き始める。それに丁度手を貸す形を取るように協力を申し出る一団がいた。
「事情を説明してみたらこんなに」
 ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)は自分の呼びかけに応じ集まってきた精霊術士の人数を見て驚いたように言う。ちょっとした小隊程度の人数の精霊術士が彼女の前に集まり、そのリーダー格らしき人間の女精霊術士が彼女の前に進み出ていた。
「ありがとうございます。我々も全力を尽くしますわ」
 そう言う女術士の言葉を受け、具体的ん作戦を考え始める一同。
「乗り込む方法をなんとかしないとですね」
「乗り込む方法か」
 藤宮・華澄(戦医師・f17614)とアリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)は、彼らを率いまずなすべきことを考える。
「船に分乗する形となるでしょうか」
「だがそんないくつもの船を急に用意は出来ないわ。よしんばできたとして、十分に連携を取れるか……」
 副隊長格らしきケットシーの男性とドラゴニアンの女性がそう言う。確かに彼らは優秀な精霊術士だが、あくまで神職であり軍人ではないのだ。とっさに統制の取れた作戦行動ができるわけではなく、ましてや複数の小舟に分乗し未知の敵へ挑むという高度な連携は取りたくてもなかなか取れないだろう。
「そこは私に考えがあります。ね、ラヴェンツァ!」
 華澄は【蒼き旅人ラヴェンツァ】を呼び出し、何事かを示し合わせる。
「精霊を名乗る猟書家の仕業であるという証拠。災魔と言えば伝わるだろうが、そこはボロを出させればいいか」
「事情は説明した通り、船内の中枢へと入り災魔の討伐の為にお力を貸していただきたいのです」
 アリスとベアトリスも精霊術士たちに、敵に対してすべきことを提案する。敵の目的は炎の精霊信仰を失墜させること。それ故敵が炎の精霊と無関係な災魔であるという証拠が欲しかった。その証人となってもらうためにも、精霊術士たちには船まで同行して欲しい所だ。
 そうしてこれまでにない大勢での災魔討伐隊となった彼らは、連れ立って船の見える場所へと進んでいった。
 一方その頃、その隊に加わるでもなくまた後方での作業に従事するでもなく、遠方で燃える船を眺める人間の女がいた。
「普通じゃないのは分かる」
 その女の隣で、エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)が同じように船を眺めながらつぶやく。元素の魔法を扱う身、あれが自然の炎はもちろん、並の魔法で作られたものですらないと言うのはよくわかった。
「へえ、あんたもそう言うのわかるんだ」
 女はそう言ってエルーゼに声をかけるが、口を開くと強烈な酒の匂いがエルーゼの鼻を突いた。
(大丈夫なのかな)
 その様子を見て、エルーゼは心の中で呟く。術士の中での腕利きはいないかときいて回った所、『腕だけなら』と苦々しい表情と共に紹介されたのがこの女だ。その姿は他の術士のような法衣ではなく、豊満な体を惜しげもなく露出した、聖職とは程遠い服装。腕はこの街でもトップクラスだが、奔放が過ぎてはみ出し者となっている女術士との話だ。
「船に乗り込んで元凶絶つから何とかしてほしいのよ」
 その実力を見込み、エルーゼは彼女に協力を仰いでいた。女は手にした酒瓶を振りながら、わざとらしく考えるような仕草を取る。
「んー、だってあれ、ヤバすぎるくらい強い災魔でしょ? あたしだって腕に自信はあるけど、世界最強だなんて自惚れちゃいない。勝てない喧嘩はいくら積まれたって売る気はないよ」
 最初から報酬を要求すること前提にそう渋る女。恐らく彼女は左程街や精霊への忠誠心はないのだろう。だが、精霊と対等な関係を結ぶ精霊術士として、これもまた一つの在り方なのかもしれない。
「そこまで頼るなんて誰も言ってないわよ! 耐性付与とかでも弱いところでもなんでもいいから! 出来るとこだけ手を貸してちょうだい!」
 エルーゼも面倒な交渉は不要と、詰め寄って女に要求を出す。それを聞いた女は、しばし考えたのちに笑って答えた。
「なるほど、あたしじゃ力不足だから出来る手だけ貸せと。雑魚扱いは久しぶりだよ。いいわ、それで済むなら手伝ってあげるよ」
 そう言って女はくっと酒を煽る。
(実力は確からしいけど)
 その姿にやはり僅かな不安を覚えつつも、エルーゼは彼女と共に華澄たちと合流すべく船着き場へ向かうのであった。
 そしてさらに別の場所では、鉄の戦車をジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)が弄っていた。その傍らには、一人のケットシーがいた。
「とりあえずウルフを待機させてある」
 そう言って仲間と離れ別働で調整をかけていた彼に声をかけてきたその術士。聞けば討伐隊への参加を志願したが、新米だという理由で却下されたのだという。それで個人的に連れていってもらえないかと、ジェイクに直談判しに来たのだ。
 正直、ジェイクから見ても彼は戦力足り得る実力を備えているとは思えなかった。それを指摘し、敵は災魔の中でも相当に強い部類に入ること、例え後方にいても巻き添えで命も危なくなる可能性があることを説明して一度は諦めるように言うが、彼は決して首を縦に振らなかった。
「僕は炎の精霊術士です。炎を悪用する災魔を見て何もしないなんて炎使いの名折れです!」
 自分の実力も顧みない無謀な発言だが、その覚悟と根性は本物だと、その言葉からジェイクは感じ取った。
「ガッツがある奴は好きだぜ」
 根性しか持っていないなら、それ以外は全部自分が補ってやればいい。ジェイクは彼の同行を許し、その為に必要な調整をウルフに施していた。
「最悪の場合はロボット形態で軌道を逸らせるかスラスター使って強制的に止める。いいか、ゲス野郎がパチモンだと証拠を撮ればいい。見つかりゃ演技を続けるかもしれん」
 ジェイクはウルフのAI『ベガ』に敵が偽物であるという証拠を残すよう命じる。
 そうしてすべきことの準備を整えた後、ジェイクは新米術士を抱え上げ、魔力で竜の翼を生やす。
「俺達も行くぞ」
 その言葉と共にジェイクは浮き上がり、術士、そしてウルフと共に燃える航砂船へと飛翔した。
 そして船着き場では、華澄がラヴェンツァと共に自身の魔力を高め、練り上げる。
「これで!」
 ラヴェンツァと共に内在する魔力や使えそうな道具をありったけ使い、船への巨大な橋をかける。武骨で簡素な橋だがこれだけの大工事だ、それだけで彼女の魔力はほぼ付きかけるが、そこを補える存在が今はいる。
「元凶は何とかする。この炎を何とかしてもらえればいい」
 アリスの言葉に、術士たちは一斉に炎の加護を呼び、それでその場にいる全員、そして橋をも包み込んだ。加護は船から飛び火する紫炎も砂漠の熱風も防ぎ、即席の橋を寄り頑丈にする。
「よし、いくぞ!」
 アリスは自らも結界術で身を守り橋を駆け出し、ベアトリス、そして術士たちもそれに続く。橋を支えながら華澄とラヴェンツァが最後尾を渡り始めると、二つの飛翔物が彼らを追い抜いた。
「あのはみ出し者……!」
「あの馬鹿! 大人しくしていろと言ったのに!」
 それを見た人間の女術士とケットシーの術士がそれぞれに声を上げた。彼らを追い抜いていったのはエルーゼとジェイク、そして二人がめいめいに連れた術士たちだ。
「おっさき~❤」
「時間もなさそうだし、早くやらないと」
 リーダーにわざとらしく投げキスをする豊満な術士をエルーゼが窘め。
「ごめん、兄さん……でも……!」
「認めてほしけりゃ態度で示せ」
 下方に何かを言おうとする新米術士をジェイクは前を向かせる。
「ジェイクさん」
 飛んでいく彼らを見て、ベアトリスは得心したように頷く。
「最悪、そうなるわね」
 最後の手段としては相打ち覚悟でウルフをぶつけて船を強制的に止めるつもりだろうという彼の意図をベアトリスは読み取った。だが、例えその手段を考えていたとしても焦りは禁物だ。
 中枢についてそこからが本番になる。その戦いに向け、猟兵と精霊術士の一団はそれぞれの手段で船へと乗り込んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂村・理恵
困っている人がいるのなら、助けるのがヒーローの仕事、です!
それに、炎を悪事に使われるのを黙って見てる訳にいきませんから

ところで、航砂船の動力は熱、というか精霊さんの炎なんでしょうか?
えーと、つまり、炎を何とかすれば止めたり遅くしたりできるか、事前に精霊術士さんに聞いておきたいです。

後は船を借りて……
一応私自身も今はそういう存在だし、《火炎耐性》もあるけれど……
大丈夫そうならそのまま、駄目そうなら加護をお願いします!

髪を変化させた自前の竜翼で航砂船に移ったらUC【吸熱炎霊】!
可能なら動力部の、無理なら周囲の炎へ「周りの熱や炎を吸収し強化される炎霊」達を放って炎を抑えこみます!

※アドリブ他歓迎です



 すでに多くの猟兵と精霊術士たちが船へと向かっていが、船は止まる様子はなく街へと進んでくる。その燃える船を、一人の赤茶の髪の少女が見つめていた。
「困っている人がいるのなら、助けるのがヒーローの仕事、です! それに、炎を悪事に使われるのを黙って見てる訳にいきませんから」
 穂村・理恵(普通の武装変身魔法少女・f26637)はバイオモンスターであるが、炎の精霊を模した魔獣の力を使うヒーローでもある。その彼女にとって、世界の違いこそあれ炎の精霊を騙り、あまつ炎の力で災厄を招こうとする今回の敵は決して許して置けるものではなかった。
 だが、だからと言って無策で乗り込むようなことはしない。まずは今回の騒動の大きな原因であり、敵の武器にすらなっている燃える船を何とかしなければならないことは分かっている。その為の情報を仕入れるべく、理恵はまず精霊術士たちが集まる大きな建物へと向かった。
「すみません、航砂船の動力は熱、というか精霊さんの炎なんでしょうか? えーと、つまり、炎を何とかすれば止めたり遅くしたりできるか……とか。そこのところどうなのでしょう精霊術士さん?」
 すでに本格的な対策が始まり、外部の者の協力を受ける態勢も整っていた術士たちは、突然の来訪者の質問にも慌てずその質問に答える。
「え、ああ……あれは魔導蒸気機関の一つです。その気になれば炎以外の力でも動力に出来ますが、航砂船の場合大抵は炎の精霊様の力を動力に用いています」
 海の船ならば三精霊機関だが、ことこの中原地方の大砂漠ならば炎の精霊に特化した方が効果的だ。その答えを聞き、理恵は取るべき対策を頭の中でまとめ上げる。
「後は船を借りて……一応私自身も今はそういう存在だし、《火炎耐性》もあるけれど……」
 船を包むのは災魔の卵を焚べられた猟書家の放つ炎だ。万全の対策を取っておくに越したことはない。
 理恵は精霊術士を一人伴い、小型船で燃える船へ向かって漕ぎ出した。
 近づくにつれ紫炎が肌を炙り、炎の力を持つ理恵ですらその熱さに体を焼かれそうになる。
「やっぱりきつそうかな……それじゃ、お願いします!」
 理恵の声に、術士は炎の守りを彼女の体に纏わせた。赤い炎が理恵の体を覆うと同時に、理恵は自らの髪を竜の翼へと変化。燃える翼をはばたかせながらボートから飛び立ち、単身船へと降り立った。
 船の中はやはり紫の炎に包まれ、外部とは比較にならない熱が襲い掛かってくる。
 そしてその炎の中、理恵が向かうのは航砂船の動力部であり、この炎の火元にもなっている場所だ。一般的な航砂船の構造は聞いてある。それに従い最後部へと行けば、既に扉が壊され開け放たれた入口からごうごうと紫の炎が噴き出す機関室がそこにあった。
「これを何とかすれば……みんな、おねがい! 吸熱炎霊(フレイムイーター)!!」
 理恵の呼び声に答え、73もの犬や猫を象った炎が現れ、それらは一斉に機関室へと飛び込んでいった。その炎たちが通った後には紫炎も熱も、まるで吸い取られたかのように残ってはいない。
 否、かのようにではない。この【吸熱炎霊】たちは周囲の炎や熱を喰らい大きくなっていく魔獣の炎。たとえそれが邪なる炎であろうと、彼らにとっては上等な餌でしかないのだ。
 炎の獣たちは見る間に前方の紫炎を食い尽くし、蒸気エンジンの中へと入りこんでいく。そしてその中の炎熱さえ食らい、燃え上がるエンジンを急速に冷ましていった。
 炎の獣を使い、荒れ狂う炎を喰らい沈める。その姿はこの事態を引き起こしたまがい物などより、よほど炎の精霊の名にふさわしいもののようにも見えた。
 やがてエンジンはその動力の炎を大きく失い、それと共に暴走する航砂船は急激にそのスピードを落としていった。
 荒れ狂う紫の炎が静まり、機関室の内部が露になる。そこには、炎とはまた違う赤き何かが一つ。
 その赤から紫の爆炎が上がり、機関室を吹き飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『偽りの炎精マナール』

POW   :    偽精の裁き
【偽りの『炎の精霊による裁きの言葉』】が命中した対象を燃やす。放たれた【紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    炎精の偽典
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【炎属性に見せかけつつ、実際は闇】属性の【紫の炎でできた大波】を、レベル×5mの直線上に放つ。
WIZ   :    死出の導き
戦場全体に、【出口部分にのみ殺傷能力のある紫炎】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メル・メドレイサです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 燃え盛る紫の炎に包まれた航砂船は、街寸前でギリギリその進行を停止した。
 動きを止めた動力機関、それを囲う機関室が紫の爆発に吹き飛ばされ、その爆炎の中心には赤い人影が一つ。
「あーもう、気持ちよく走ってたのに……何で邪魔が入るかな全く!」
 楽しみを邪魔された、と言う感じに軽い怒りを滲ませつつ言うその姿は、赤い肌に被膜の翼をもった悪魔のような姿と、豊満な体を隠さない薄着を纏った異形の少女。
 少女は船に乗り込んできた者たちの姿を認めると、両手に紫炎を灯しながらゆっくりとそちらに向き直る。
「何者かと思えば……私の加護を賜りに来たか? さもしい者どもよ」
 独り言を聞かれていないとでも思ったか、重い声を作って言いながら少女はふわりと空中に浮き上がる。
「この痴れ者め! 炎の精霊様を騙った罪は重いぞ!」
 猟兵と共に乗り込んできた精霊術士の一人が声を荒げるが、少女は馬鹿にしたような笑みを浮かべてそちらを一瞥した。
「私の言葉を信じられぬとは愚かしい。だが私は慈悲深い。貴様のような愚物にも祝福を与えてやろう……貴様の死をもってな!」
 その言葉とともに、船上に紫の炎の柱が巻き上がる。
 だがどんな力を使おうと、どれほど言葉を取り繕おうと、猟兵たちは知っている。彼女が『偽りの炎精マナール』、炎の精霊を騙り不信と災魔を世界にまき散らさんとする猟書家であるということを。
 さあ、この悪しき炎を全て消し去り、化けの皮を剥がしてやれ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
これだけのことをされた以上、相応の報いは受けていただきますねぇ?

『FBS』を四肢に嵌め飛行、【仰域】を使用し『乳白色の波動』を纏いますねぇ。
『命中』の定義によるとはいえ『言葉』で発火出来るのは厄介ですが、それが『ユーベルコード由来の炎』である以上【仰域】による吸収が可能ですぅ。
『吸収』に気づいて解除しても、それまで蓄積したエネルギーは利用可能ですし、相手の攻撃を遮断出来る点は変わりません。
また『声の届く範囲』の方々が巻込まれる可能性が有りますから、『精霊術士』さんには其方の対処をお願いしましょう。
後は『FRS』『FSS』による[砲撃]を中心に、確実に狙って参りますねぇ。



 燃え盛る船の上高圧的な態度を保ちながら、壊れた機関部の代わりのように紫炎の発生源となって浮かび上がる悪魔のような少女『偽りの炎精マナール』。
 どうにか一先ずは防がれたとはいえ大規模テロを企てた彼女に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は毅然とした態度で向かい合った。
「これだけのことをされた以上、相応の報いは受けていただきますねぇ?」
 宙に浮く相手に対抗するよう、るこるは浮遊戦輪『FBS』を四肢にはめ浮き上がる。それに対してマナールは少し高度を上げるこるよりわずかに高く浮き上がり、彼女を見下すような姿勢を取って口を開いた。
「貴様に炎精の裁きを下す……燃え尽きろ、潔くな」
 マナールの言葉がるこるの耳に入ると同時に、その体を紫の炎が包み込んだ。炎はまるでるこる自身から噴き出るかのようにその身に纏わりついて焼く。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて供物を捧げましょう」
 るこるはその炎を耐えながら【豊乳女神の加護・仰域】を使い、乳白色の波動を自らに纏った。波動は球状にるこるを包み込んだ後、そのまま彼女を中心に包囲を縮めていく。やがてその白い境界が炎と触れ合うと、それは窒息消化するかのように噴き出る炎を抑え込んでいき、そのままるこるの身に触れるとともにその炎を完全に消し去った。
「我が裁きに従わぬか。信薄き愚か者め。我が信徒どもよ、炎の精霊を前にした者が如何にすべきかこの愚昧なる者に教えよ……灰となれ」
 発火を耐えたるこるから、マナールは後ろに控える精霊術士に狙いを切り替えそちらに偽りの裁きを下した。だがるこるは身を包んだ白き波動を今度は広がるように拡散させ、術士側へ届く言葉を発火と同時にいったん抑え込み、そのまま術士へと声をかける。
「『声の届く範囲』の方々が巻込まれる可能性が有りますから、そちらの対処をお願いいたしますぅ」
 彼一人を守ることなら何とか出来るが、後続の猟兵や彼らの連れた術士が戦線に加わる前に初撃を受けてしまってはまずい。この初戦が終わるまでは、敵の言葉を誰にも届かない状況にする必要があった。
「わかりました……制御が難しい、巻き込まれないでください!」
 精霊術士はそう言ってエレメンタルロッドで甲板を殴りつける。するとそこからマナールのものとは違う赤い炎が巻き上がり、それは竜巻となって術士の周りを取り囲んだ。
 精霊術士の基礎能力である【エレメンタル・ファンタジア】の発現、その中でも代表格である『炎の竜巻』だが、その属性に特化した彼が使えば他の属性より格段に制御はしやすい。その竜巻は轟音を立てて周囲の空気をかき回し、さらには火の粉を大量に注がせ『炎の豪雨』さえも呼び込んだ。暴風雨で声をかき消すという乱暴極まりない措置だが、声と言葉を発動条件とするマナールの【偽精の裁き】への対処としては上々だろう。
 その赤い炎を背にしながら、るこるはマナールに改めて向き合う。
「一思いに裁かれていればすぐ楽になれたものを……こうなればもう楽には死ねんぞ!」
 マナールはアンダースローに手を振り、紫の炎を巻き上げた。ユーベルコードではないそれは火力は数段落ちるが、一方でるこるの波動に吸収されることもない。
 しかし波動はこの炎を吸収こそできないが、攻撃手段の阻害としての効果を持ってぶつかり合い、勢いを抑えることは出来た。それでも炎の一部は波動を突き抜けるこるの肌を焼くのは、マナールが曲がりなりにも猟書家であり、高い実力を有しているが故であろう。
「精霊として偽物であっても力は本物、ということでしょうかぁ」
 ここまで防御主体の戦い方であったるこるは、自身の前に射撃能力を持つ兵装『FRS』と『FSS』をずらりと並べ攻めの姿勢に転じる。マナールと同様ユーベルコードではない攻撃手段であり、やはりそうなれば力比べでは不利を取りかねない。だがさらにもう一つ、るこるには重ねるものがあった。
「それではその力、お返ししますよぉ」
 乳白色の波動が並んだ兵装たちに叩きつけられ、それを合図としたかのように兵装は一斉に砲撃を開始した。そこから出る弾は紫……マナールの炎と同じ色に染まり、しかしその力を操るはずのマナールに一斉に着弾し空中でその姿勢を揺らがせ、そのまま下へと彼女を叩き落とした。
「これ、私の……!?」
 波動が吸収したマナールの炎、それを力として上乗せされた砲撃は、まさに報いとなってマナールに返されたのだ。自身の力の高さを逆手に取られ、マナールは甲板へと叩きつけられる。
「いったぁ……何すんのよ……!」
 小さく漏れた歯噛みの声、その声自体は赤き炎が起こす轟音に掻き消され誰の耳にも届かなかった。しかしその姿に、るこるは彼女の仮面にひびが入り始めたのを確かに見て取ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
SPD

ごきげんよう、炎精マナール様。
私はドゥルール。
貴女の加護と寵愛を賜りに参りました♥

守護霊の【ドーピング】の戦闘力増強と
【オーラ防御・気合い・火炎耐性・呪詛耐性】で
炎属性でも闇属性でも平気

剣で左腕を自傷し『侵食』で相手の左腕を私の頭部に変え
【吸血】しつつ光の【属性攻撃】を注ぐ【マヒ攻撃】

空気が暖められると密度の小さい部分と大きい部分ができ
光を屈折させる……シュトーレン現象でしたっけ?
炎精を演じ、光に強いと思わせる聡明な貴女に
私の愛の炎は燃え滾り、愛の水が溢れ出てしまいます♥

【誘惑・催眠術】で愛を囁き
【化術】で肉棒を生やし【串刺し・乱れ撃ち】しつつ
乳をしゃぶる【慰め・生命力吸収】



 燃える船の上、その炎を背に立ちあがるマナール。一度落とされたとてまだその偽りの姿勢を解くことはなく、不敵な態度をとり続ける。
「ごきげんよう、炎精マナール様。私はドゥルール。貴女の加護と寵愛を賜りに参りました♥」
 それ故に、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の言葉にもあくまで精霊として答える。
「良い心がけだ。ならば、貴様の全てを灰に変えてやる」
 尊大にそう言って、両手を何かを捧げ持つように胸の前で開くマナール。その手の中に炎が溜まり、まるで本のような形をつくった。マナールはまるでそれを読むように高速で口を動かすが、そこから紡がれるのは猟兵の変換能力をもってしても聞き取れない、どこのものでもない異質な言語だ。その言葉に呼応するように、マナールの周囲を紫の炎が高速で取りまく。
「血染めの真っ赤な灰にな!」
 最後にはっきりとそう言うと、その炎が大波となって船上をかけ、ドゥルールへと襲い掛かった。その波はドゥルールを飲み込み、その姿を紫炎の中に覆い隠す。
 まるで嵐の中、船が船体より大きな波に飲まれ沈没させられるかのような光景だが、そのまま炎は船を通り抜け、後方の砂海へと消えていく。その後には、残り香のようにちらちらと残る紫炎と、そしてそれに取り巻かれたドゥルールの姿があった。
「まだ形がある……!?」
「素敵な『炎』でございました。それでは返礼を。私と一つになりましょう?」
 そう言ってドゥルールは短剣を取り出し、それを自身の左腕に突き立てた。それは柄近くまで深々と突き刺さり、そこから鮮血を溢れさせる。その刺さった場所と深さからしてしばらく……少なくともこの戦いの間は、彼女は左腕は使えないだろう。
 その左腕がだらりと垂れさがるが、それと同時に、今度はマナールの左腕が彼女の意思を無視して持ちあがり始めた。
「何……うあっ!?」
 そしてその腕の中程、ドゥルールが刺したのと同じ場所の肉が盛り上がり、形を成していく。何とそれはドゥルールの頭部そのものの形状となり、そのまま口を開いてマナールの肩口へと噛みついた。
「ぐうっ!?」
 歯の突き立てられた場所から血が溢れ、ドゥルールの頭部はそれを飲み干していく。そしてドゥルール本体も、まるで自分がそれを飲んでいるかのように舌なめずりをした。
「空気が暖められると密度の小さい部分と大きい部分ができ光を屈折させる……シュトーレン現象でしたっけ?」
「それはシュリーレン現象! 私は菓子か! ……愚か者が!」
 ツッコミを入れて思わず素が出かけるが、取り繕うようにまた口調を戻す。だが、ここで突然光の現象の話とは何のつもりか。
「炎精を演じ、光に強いと思わせる聡明な貴女に私の愛の炎は燃え滾り、愛の水が溢れ出てしまいます♥」
 その言葉に、マナールは驚きの表情をし、そして悔しさを滲ませドゥルールを睨みつけた。
「分かっていたか……!」
 マナールが先にドゥルールに浴びせた紫の大津波、それは炎に擬態した闇の力の奔流であった。これ見よがしに炎を操り炎精を騙るマナール、相対すれば必然的に炎技ばかりを使うと思われるだろう。その思い込みを逆手に取り、炎とは親和性の低そうな闇の力を相手にぶつけ防御の方向を見誤らせること、それこそが【炎精の偽典】の本質であり本当の狙いだった。あとは死体だけ炎で焼却してしまえばあたかも焼死したかのように見せかけられる。
 人を騙すことを喜びにするマナールの性格をそのまま体現したかのようなその技、事前の情報からそれが分かっていたドゥルールは、呪詛への耐性と念のための炎の耐性でそれを乗り切り、自称を行える体力を残して反撃に転じた。
 噛みつく頭部が擦った血の代わりとでもいうかのように光の力をマナールに流し込む。特定の属性に特化した者の常として逆属性には弱いのか、その光はマヒ毒となってマナールの体をその場に縛り付けた。
 耐えたとはいえ猟書家の攻撃のダメージは大きいが、吸血でそれを少しでも回復しつつドゥルールはマナールに近寄る。
「偽り濡れの貴女に、本物の愛を」
 そう言ってドゥルールは動けぬマナールの豊かな乳房を露出させ、そこに吸い付いて生命力を直接吸い上げる。さらに逆の乳房には左腕の頭部が吸い付き生命を搾り上げつつ、ドゥルール自身はマナールの下ばきを下ろして水属性をふんだんに宿した肉の槍をそこに突き刺した。
「あひっ、きゃっ、あぁぁぁん!!」
「あら、水属性もお使いになれるので? とても甘いお味ですわ」
 誘惑、籠絡の時には使わぬ外見年齢通りの悲鳴を上げるマナールに、ドゥルールは痺れる光と熱き水を乱れ撃ち彼女の生命を吸い上げるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
マナール
この期に及んで
猿芝居を続ける気かよ

命と命が生みだす未来とを
歯牙にもかけないあんたには
本物の炎なんざ扱えやしないぜ

せめてもの情けだ
炎で送ってやる

術士へ依頼
被害が船外に及ぶばない為の炎の結界
敵の火力減
炎の精霊の加護の祈念

戦闘
術士の祈りの言葉に合わせて
ワイルドウィンドを爪弾き
即興のメロディを奏でる

セッションと行こうぜ
讃美歌で偽野郎をぶっ倒すぜ

奏でると同時に
身から放つ獄炎で紅蓮の渦を生む

弦の音色と燃え盛る炎の音
炎が生む風の音で
偽の裁きの言葉なんて届かないぜ

高まる祈念に呼応して
渦と音とが大きく強く広がり
紅蓮が紫を喰らいながら
そのまま敵を灰へ還す

事後
鎮魂曲
海で安らかにな

いいセッションだったな(ぐっ


穂村・理恵
……だいたいあなたのいう祝福とか加護って具体的には何なんですか
どっちにしても災いをまき散らそうというのなら止めます!

もう一度お願い、【吸熱炎霊】!
ただの炎なら鎮めてしまえばいいですし、
炎に見せかけて他の攻撃を行えば「炎の精霊」と名乗るのは難しくなるかもしれません
迷路を生み出すUCに対しても同様です
悪い炎を鎮め、それ以外の攻撃は炎霊たちのかばうなどで防ぎ、
こっちの『炎霊の紅玉』の力で《焼却》しちゃいます

もし普通の炎では止めきれなかったら……その時は、
感情を糧にして情動を焼く『紫焔』の力(《精神攻撃/継続ダメージ》)を纏わせた炎霊たちと共に……
その精神を焼くことで、終わらせます

※アドリブ歓迎です



「次から次へとろくでもない無礼者共が来る……私は炎の精霊、この中原の支配者だぞ!」
 体を整えながら、怒りの声を猟兵にぶつけるマナール。だがその口調はまだ高圧的で仮初の威厳が残されており、実際には未だ演技を続ける余裕があることを表していた。
「この期に及んで猿芝居を続ける気かよ」
 それを見ぬいた木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)がそこを突いて糾弾するが、マナールは態度を変えることはない。
「……だいたいあなたのいう祝福とか加護って具体的には何なんですか。どっちにしても災いをまき散らそうというのなら止めます!」
「我が炎に包まれるが加護。灰となりこの砂漠に撒かれその砂となるが祝福。案ずるな、貴様ら全てが燃え尽きた後は我が眷属でこの地を満たしてやろう」
 だから穂村・理恵(普通の武装変身魔法少女・f26637)の言葉にも平然とそう答えた。人を焼き尽くし災魔を撒く。ある意味嘘は言っていないが、それを祝福や加護などと評するのは許されることではない。あるいは真実であるがゆえに、より炎の精霊への侮辱となりその信仰を揺らがせる言葉ともなるということか。
「命と命が生みだす未来とを歯牙にもかけないあんたには、本物の炎なんざ扱えやしないぜ。せめてもの情けだ。炎で送ってやる」
 そう言ってウタが構えるのはギターを模したサウンドウエポン『ワイルドウィンド』。そしてウタは後ろに控える精霊術士に声をかけた。
「被害が外へ及ばないように結界を張ってくれ。あとは奴の火力を抑えるために祈ってほしい。本物の炎の精霊様のご加護ってやつをな」
 その言葉に、術士は力強く頷き赤い炎を周囲を取り巻くよう張り巡らせた。さらにその炎をウタと理恵へと纏わせ、身を焼く紫炎からの守りとする。
「不遜な、私に逆らうなど。ならば」
「炎の精霊よ、この正しき炎を猛らせたまえ!」
「偽物の火を焼き尽くす、本物の紅蓮の炎をな!」
 マナールが偽りの裁きの言葉を言い切る前に、術士とウタが同時に声を張り上げた。同時に業火とワイルドウィンドから巻き起こる激しい曲が鳴り響き、マナールの言葉を遮り誰の耳にも届かなくする。
「…………!!」
 その音の中、マナールは何かを叫ぶようになお口を動かした。その声はやはり誰にも聞こえないが、本来の力の高さ故か言葉を発するその口の動きだけでも効果は表れ、ウタの体に紫の炎が取り付いた。
「もう一度お願い、【吸熱炎霊】!」
 そのウタを助けるかのように、理恵が炎の獣たちを放った。獣たちはウタに取り付き、身に纏わりつく紫の炎だけを的確に食らっていく。
「炎ならこれで鎮められます。もしこれで治まらないような炎じゃないものを使えば……炎の精霊を名乗るのは難しくなりますよね?」
 炎を喰らう理恵からの、闇属性を使えるマナールに対しての挑発。やはりそれは業炎の音に消され届いているかどうかは定かではないが、マナールは歯噛みしながら手の上に溜めた炎を握り潰していた。
「さあ、セッションと行こうぜ。讃美歌で偽野郎をぶっ倒すぜ!」
 ウタが一層激しく楽器をかき鳴らし、荒々しくも知恵と命の炎への礼賛に満ちた声を上げる。それは偽りの言葉を許さない炎と、聞く価値のないものを遮る暴風となって船を取り巻き、マナールを赤い炎で包みこんだ。
「く……私を焼くなど冗談にしても笑えない! ここを制するのは私、と私の炎だ!」
 翼を広げ強引に炎を振り払うマナール。それに呼応するように周囲に散っていた紫炎がまるで固形物のように立ちあがり、甲板上を壁となって覆い尽くした。その炎の壁に当たった赤の炎は押し返されるように小さくなり、また理恵の炎の獣も幾度か壁に体当たりをするが、それを喰らうことは出来なかった。
「案ずるな、出口はすぐそこにある。短い道で私に許しを請う言葉を考えろ!」
 炎はいくつかの曲がり角こそあるが、元が船の上に作ったもの、さしたる大きさがあるわけではない。勿論、親切心で短くしたわけではないことなど分かり切ったことだ。
「私が先に……出口は任せてください!」
 理恵が先に立ち、迷路をかけていく。言われた通りすぐに出口につくが、これまで壁のように硬かった紫炎がそこだけ揺らめき、一気に理恵へと襲い掛かった。
「お願い……耐えて!」
 理恵は炎の獣たちに自身をかばわせるが、やはりそこだけに殺傷能力を集中させたゆえか熱を喰らいきれず理恵自身も炙られる。さらに『炎霊の紅玉』の力も合わせ炎を押し返して強引に炎を突破して、待ち構えていたマナールへ理恵は飛びついた。
「さあ、聞かせてもらおう。今更の命乞いの言葉を」
 尊大に言うマナールの眼前で、炎霊の紅玉が紫の光を帯びていく。
「普通の炎で止めきれないなら……!」
 そこから吹き上がるのは、マナールの使うものに似た紫の炎。だがこれは人を焼く邪なものではなく、感情を糧に情動を焼く炎。紫焔が紫炎に食らいつき、それに塗り固められた偽りの炎精という仮面を保つ心を焼き切っていく。
「あなたの精神を焼いて、その偽りの心を終わらせます! 炎霊たちと共に……!」
「ありがとうな! さあ、こいつで最後だ!」
 迷宮の出口を理恵が抑え込んだことで、ウタと術士は無傷で出てくる。そして祈りを込めての演奏で、紅蓮が紫を喰らいながらマナールを包み込んだ。
「正しきものを守り給え!」
 ともに炎に捲かれる理恵は術士の祈願が守り、正しき炎は偽りの炎精だけを焼き清めていく。
「放せ、放してよ! 私が炎に焼かれるなんて……きゃあああああっ!」
 偽る心の余裕を焼かれていたマナールは地の口調で言いながら理恵を引きはがすが、その瞬間炎の渦に完全に取り巻かれ、船後方へ吹き飛ばされ自分が壊した機関部に直撃した。
 演奏を止めると赤き渦もまた消え、ウタは理恵と術士に拳を突き出す。
「いいセッションだったな」
「はい!」
 理恵のその答えを聞きながら、ウタは今度は静かに鎮魂歌を歌いはじめる。海に還ったその時くらいは、彼女が何も偽らずに済むようになればと思って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラー、ジェイクと行動
アドリブOK

「今更と思うが」
独り言を聞かれてないと思っているのか。記録は取られてるから言い逃れはできんだろうが。
華鳥封月を抜き、魔力溜めを行いながら攻撃する。
加護があるとはいえどこまで持つか分からない。
残像を残して迷彩で隠れて引き寄せられれば隙はできるはず。
「随分と余裕がなくなってきたようだが?」
だが追い込んでからが油断できないな。何をしてくるのか。


エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラー、ジェイクと行動
アドリブOK

船は止まったし、後は元を絶てば終わりね。
「炎の聖霊の割になんで闇の魔力持ってるの?」
上手く隠してるつもりでも、所々に闇の魔力が出てる。
「ここで倒すのは変わりないけど、踏み躙った代償は払ってもらうわ!」
連れてきた術士に力を借りて形成されたのは柄と刀身の間に赤い霊石の嵌められた長剣。しかも剣の形状なのに片刃という。
全力魔法とリミッター解除で属性攻撃による火炎の一撃を繰り出す。


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラー、ジェイクと行動
アドリブOK

あとは倒してしまえば事件は終わりですね。
まあその、なんか空気が悪いような。乗り込むときになにかあるなとは思ってましたけど。
今は団結して対処しないといけないので。
ラヴェンツァを呼び出してサポートに回ります。
恐らく、相手は炎以外にも仕掛けてくると思うのでその時は防御に結界を張って護ります。
あとは能力上昇などの支援も。


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄、ジェイクと行動
アドリブOK

「今は事態の解決をですね」
それぞれに色々とあるようですが、まだ終わってないので。
「周りと違う人でもうまく丸め込めば扱えるものですよ」
はみ出し者と呼ばれる人も言いくるめてしまえば従ってくれるでしょうし。
おだてるか押してやるかは状況によりますけど。
集団戦術で囮役をしましょう。呼び出した兵なら耐えられると思いますし。

「報酬ですか。なら私もお付き合いしましょう」
エルーゼちゃんと術士さん、二人だけではと。
三人で朝までお楽しみで。


ジェイク・リー
アドリブOK

「ここまで来る覚悟があるのは確かだぜ」
中途半端だったならここに立っていないと告げる。
呼び出したのは杖と本を持ち、腕や胴にルーンの刺青を入れ、袖のないロングコートを着た青年。
ダークブルーの猛禽類と時折全身に紋章を浮かび上がらせる黒豹を連れた青年は語る。
「炎を操る悪魔。真の焔を消すことはできない」
鳥が電撃弾を撃ち、豹は背の部分から鎌や槍を伸ばしたり全体を回転刃に変えて突進したりする。
アラスと新しく長剣を持ったフェンも呼び出すが。
「おおっと、フェン選手が一点リード!」
「数え直せ!まだ同点だ」
お互い得物で勝負中でグリムも巻き込んで。
「OK、あの悪魔倒した奴が勝ちだ」
「いいだろ」
「全く」



 既に船は止まり、元凶を断つだけとなったが、船自体は未だに紫の炎に包まれている。その炎を見てエルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)はあえてマナールへと尋ねる。
「炎の聖霊の割になんで闇の魔力持ってるの?」
 上手く隠したつもりでも、所々に闇の魔力が出ている。勿論炎使いであれば多種の炎を使えても不思議ではないのだが、彼女が炎に混ぜるのは闇の力ばかりだ。その部分を指摘すると、マナールは怒りの表情でエルーゼを睨みつけた。
「どこまでも私を愚弄して……!」
 歯噛みして怒りの声を出すマナール。まだどこか作り声が混ざるその怒り様に、アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)は呆れたように言う。
「今更と思うが」
 独り言を聞かれていないとでも思ったか。だが、その時折漏れる地の声はただ聞いた者がいるだけでなく、録音までされている。それを持ちかえれば今この場だけでなく、仮にまた彼女が骸の海から甦り別所で事件を起こそうとしても、その予防とすることができるだろう。
 あとはこの偽精を追い込むのみと構える二人。だがその後ろでは、また別の緊張がその場を支配していた。
「あとは倒してしまえば事件は終わりですね。ただまあその、なんか空気が悪いような……」
 藤宮・華澄(戦医師・f17614)は連れ立ってきた精霊術士の一団を取り巻く空気に困惑気味に声を上げる。華澄の作った橋を渡ってやってきた精霊術士たちだが、そうではない手段でやってきた別の術士二人と船上で鉢合わせた時からずっと睨み合うような状態が続いていた。
「どういうつもりですか? 協力を拒否しておきながら個人で勝手に乗り込んでくるなど」
「勝手にするって言ったでしょ? 来ないのも勝手、来るのも勝手。別にあんたたちを手伝いに来たわけじゃないし」
 精霊術士たちのリーダーと思しき女性と、他の術士とはまるで違う衣装をまとった豊満な女性。恐らく組織内での対立や不和があるのだろうが、今はそんなことをしている場合ではない。
「今は事態の解決をですね」
 ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)がそこに割って入り睨み合いを止める。豊満な術士の方はそれでさっさと自分を連れてきたエルーゼの方に行ってしまったので、残ったリーダーの方へと声をかけるベアトリス。
「周りと違う人でもうまく丸め込めば扱えるものですよ」
 組織を率いるのなら硬軟合わせての対応が必要。相手がやりたいようにやるのならそのやりたい方向を全体の利になる方に向かせてしまえばいいと、ベアトリスはリーダーに対し説く。
「はみ出し者と呼ばれる人も言いくるめてしまえば従ってくれるでしょうし」
 絵にかいたような堅物であるリーダーにそう言う狡さを持ってはどうかと言い、ベアトリスは改めて敵へと向き直った。
 また他方では。
「この状況でお前が何かの役に立つと思っているのか!」
「僕だって精霊術士だよ!」
「まだ見習いだろう!」
 言い争う二人のケットシー。一人はこの集団のサブリーダーを務める腕の立つ術士。そしてもう一人はまだ精霊術士となったばかりの新米。同行を願い出た新米をサブリーダーが実力不足を理由に却下したが、彼は個人で猟兵に頼み込みこの場へと来ていたのだ。その勝手な行動を上司として、そして兄としてしかりつけるが、新米は決して自分の意思を曲げなかった。
「ここまで来る覚悟があるのは確かだぜ」
 終わらない言い合いに、新米をここに連れてきたジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)が口をはさむ。中途半端ならここに立っていない。そう告げて、彼を持ち上げ、共に敵側へと向かうジェイク。確かに実力は足りていないが、それでもいざという時臆病風に吹かれて逃げることだけはない。ならその覚悟を尊重し、この場に参陣させるだけでも意味はあると、彼の実力部分を補うつもりでジェイクは新米をここに連れて来ていた。
「ごめんなさい、組織にもいろいろあるの」
 もう一人のサブリーダーであるドラゴニアンの女性が隣にいたアリスに詫びる。もしかしたら彼女が潤滑油役なのかもしれないと思いつつ、とかく一応は収まったと本格的な戦いに向けアリスは『華鳥封月』を抜いて構えた。
「私に仕える者が集団で私に逆らうとは……その不敬、死をもって償うがいい!」
 マナールが精霊を偽りながら裁きの言葉を吐くと、その意思を執行するかのようにその場にいる者全体に炎がつき、燃え上がり始める。
「大丈夫、行きましょう!」
 それに合わせ、華澄が後方からケットシー率いる一団と共に防御魔術を使い炎の影響を弱めた。言葉と言う不可視のものを媒体としているが、効果としてはぶつけた相手を燃やすだけ。防御を高める加護の術と、負ったダメージを癒していく回復術の組み合わせと言う対症療法でこの場は凌ぐことができた。
「私のファイアチームをみせてあげましょう」
 その上で、ベアトリスが【クイーン・フォース】の女兵士たちを差し向ける。
「いかに増えようと、私の前では全て無力だ!」
 その兵士たちにもマナールの言葉が注ぎ全身が紫の炎に包まれるが、兵士たちは身を守る様子すらなく平然と前進を続け、マナールから後続を守るよう彼女を包囲した。
 想像力のある限り無敵の兵士たちはいかに燃やされようと進軍を止めることはない。後続を守る堅牢なる壁となって攻撃を防いだ兵士たちを飛び越え、エルーゼがマナールへと躍りかかった。
「ここで倒すのは変わりないけど、踏み躙った代償は払ってもらうわ!」
 そうして抜き放つ『夢幻』が姿を変えたのは、柄と刀身の間に赤い霊石の嵌められた長剣。洋剣風の形状をしてはいるが片刃という、自分で形成した時はまず出さない変わった形状だ。
「いいデザインのができたじゃない」
 エルーゼに力を貸した豊満な術士が得意げに言う。この形状は彼女の力を借りた影響かと思いながらそれを一閃すると、剣の軌跡をなぞるように赤い炎が走り、マナールを斬撃と炎撃の両面で責め立てた。
「私にこんな下賤な炎を……!」
 苛立ったように言うマナール。あるいは偽の炎を扱うからこそ、本物の精霊の力を伴った炎は一層不快なのかもしれない。
 さらにそこにアリスが踏み込んげ追撃を狙うが、マナールは片手に炎を宿しそれを打ち上げながら上方へ跳んだ。
「消えろ!」
 火柱がアリスの全身を包み込む。マナールが着地し炎が収まると、跡形もなく焼き尽くされたかのようにアリスの姿はなくなっていた。
「加護があるとはいえどこまで持つか分からないからな」
 だが、そことは違う場所から聞こえたアリスの声。何事かとマナールは当たりを見回すが、その姿はどこにも見えない。
「どこだ! 出てきなさいよ!」
 マナールは滅多打ちに炎を撒き散らすが、何かが燃えた手ごたえはない。
 そうして焦るマナールの足元から、突如として鋭い斬撃が彼女を襲った。
「惨劇に踊れ!」
 そのまま放たれる【罪なる災害】の連撃。残像を焼かせ、さらに炎熱の加護による陽炎を迷彩として肉薄しての斬撃は、隙を突く形で完全にマナールを捕らえていた。
「……よく地味系と言われるので」
 その加護を与えたらしいドラゴニアンがぼそりと呟く。
「あ、ああ……まあとにかく随分と余裕がなくなってきたようだが?」
 口調がはっきり乱れ出したマナールにアリスはそう告げる。だが、追い込まれてからが何をするか分からない。それを証明するかのように、マナールは手に本の形の炎を溜め高速で口を動かし始めた。
「狂い散れ!」
 そうして投げつける仕草を取ると、本そのものが炎の大津波となってその場の全員を飲み込む。その巨大さと射程の長さは、彼女の実力だけは偽りでないことの証明とも言えるだろう。
「ラヴェンツァ、来ます!」
 華澄が召喚した【蒼き旅人ラヴェンツァ】と共に結界を張る。その力は耐火ではなく耐闇……聖と光の力を主軸にした防御術だ。炎以外にも仕掛けてくると踏んでいた華澄は、炎に対する防御は術士たちに任せ、それ以外の属性を防ぐことに注力した。その読みは当たり、炎に擬態した闇の力である偽典の炎からその場にいる者全てを護ることに成功、そのまま守りの力を前衛に与えて攻めの力に変えていく。
 その闇の大津波を書き分けマナールに向かうのは、杖と本を持ち、腕や胴にルーンの刺青を入れ、袖のないロングコートを着た青年。
 ダークブルーの猛禽類と時折全身に紋章を浮かび上がらせる黒豹を連れたその青年は、マナールに向け語る。
「炎を操る悪魔。真の焔を消すことはできない」
 その言葉に導かれるように、猛禽は電撃を放ち豹は自身の体を鎌や槍、さらには回転刃物に変え一斉にマナールを攻めたてる。
「面白そうな遊びだな、俺も混ぜろよ」
 さらに飛び出すのは獣の皮を纏い長剣を持った男。男は素早くマナールに斬撃を加えると、すぐに離れて言った。
「おおっと、フェン選手が一点リード!」
「数え直せ! まだ同点だ」
 その言葉に張り合うように先に出ていた男がさらなる攻撃を重ねる。まるでゲームの的のような扱いにマナールは苛立ちを隠さず、両手に本の形の炎を携えた。
「私で遊ぶな!」
「遊んでいるつもりはない……私は」
 さらに聞こえるのは、まるで機械で加工したような声。それと同時に放たれる雷光が、マナールを大きく後方に跳ね飛ばし痺れさせた。
「飛び入りか、グリム!」
「遊び過ぎだ、アラスまで」
 【守護者召現】で呼び出された者たちが軽く言い合いながらマナールを追い詰めていく。人を騙し弄ぶことを好むマナールだからこそ、他人にいいようにされるのはこの上なく屈辱ということだろう。その顔はごまかしのない本気の怒りに満ちていた。
「あんたたち……絶対殺してやぶぅっ!?」
 言い切る前にその顔面で炸裂する炎。
「……お前にも1ポイントだ」
 ジェイクに守られた新米術士。火球を放った彼にアラスが言う。
「OK、あの悪魔倒した奴が勝ちだ」
「いいだろ」
「全く」
「何よ、何なのよあんたたちはぁぁぁぁぁっ!」
 さらに続く総攻撃に、マナールの仮面は完全に打ち砕かれた。偽りの炎は、既に消えかけている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紬雁・紅葉
ぅふふ♪
では神罰を以て応じましょう
天の炎が、貴女を呼んでいますよ…

羅刹紋を顕わに戦笑み
十握刃と都牟刈を顕現

先制UCを日耀(光)属性で発動
破魔火属性を乗せて最大範囲展開

残像忍び足で正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔火光属性衝撃波神罰UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるか見切り
躱せるなら残像などで躱し
さもなくば破魔衝撃波オーラ防御武器受け等で防ぐ

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

如何に炎を騙ろうと
天照らす日輪の炎に遠く及ばず
破邪顕正
見せましょう…草薙の炎を!

総ての力を溜め
とどめは都牟刈の火属性

天魔覆滅…
去り罷りませ!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※



 演技する余裕もなくなり、ほとんど地声で喋るようになったマナール。その彼女の前に、笑顔を浮かべた紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)が立った。
「ぅふふ♪では神罰を以て応じましょう。天の炎が、貴女を呼んでいますよ……」
 このへ来る前、舞いで得た炎を手に溜めマナールに見せつける紅葉。
「なら燃え尽きてよ……潔くね!」
 同じように紫の炎を手に溜め、握りつぶすマナール。それと共に炎が広がり、周囲を覆い尽くす。だが、その炎は紅葉に触れても、その身を焼くことはなかった。
 別の猟兵と戦った時に同じような文句と共に放ったのは言葉を鍵にする偽りの裁き。だが、今度は炎は壁のようにそそり立ち紅葉の視界を遮り、マナールをその向こうへと隠した。
「この期に及んでまだ嘘をつきますか」
 同じ台詞を言いながら違う技を放つ安いフェイントと、先制をされるくらいなら最初から交戦を避ける逃亡。苦し紛れのようなその行動だが、あるいはそれこそが彼女らしさと言えるのかもしれない。紅葉は羅刹紋を顕わに戦笑み、十握刃と都牟刈の二つの神器を顕現し紫の迷路を進んだ。
 その足取りはゆるゆると穏やかで、一見隙だらけに見える。だが、曲がり角から炎が地を這い駆けてきた瞬間、その身を残像だけ残し僅か横に躱し、それに紛れた掴みかかりも破魔の力を込めた武器で受け止め、そのままオーラを噴き上げさせ弾き返した。
 攻撃を防がれればマナールはすぐに炎の壁の向こうに姿を消し、また別の角に潜んで炎を飛ばし、時には自ら飛び出すなどして次々に攻撃をかけては再度逃げていく。
 この迷路の炎は出口を除いて殺傷能力はない。だからこそ彼女は自分から攻めてこなければならないし、紅葉もそれが分かっているから敵襲に備えながら急がず、ゆっくり道を進んでいく。そしてマナールは迷路の構造を知っているのだから、自ら袋小路に追い詰められるようなことはしない。つまり逃げる彼女を追っていけば、迷路の出口にもそのうち辿り着くのだ。
 果たして、何度目かの迎撃の後、明かな熱を放つ炎の壁際にマナールが立っていた。
「ここまで来たらもう……遊びは終わりだよ!」
「八雲立つ、出雲……!」
 翼をはためかせ出口の炎を一気に紅葉へと吹きかけるマナール。それに対し紅葉は、【九曜陣・八雲】を自身の足元に展開、そこに光の力を込めて自身を強化した。その力で、破魔の力を持つ火と光の乗った一撃でその炎をなぎ払う。その一撃は強烈な衝撃波をも生み出し、翼を広げていたマナールをそのまま出口の外へと吹き飛ばした。
「あぐっ……!」
 マナールが迷路から弾き飛ばされると同時に、迷路そのものも消え失せる。後に残るのは光の九曜紋と、その上に立つ紅葉の姿。
「如何に炎を騙ろうと天照らす日輪の炎に遠く及ばず。破邪顕正、見せましょう……草薙の炎を!」
 九曜紋から赤き炎が立ち上り、天叢雲剣……草薙の剣である『都牟刈』が火の属性を纏う。それは闇と混ざったマナールの偽りの炎をなぎ払う清めの炎。
「何で私が炎に焼かれなきゃならないの!? もっと私に惑わされて、泣けっ、叫べっ、そして……!」
「天魔覆滅……去り罷りませ!」
 極限まで溜められた聖なる炎を乗せた一撃が、最後まで言うことを許さずマナールに叩きつけられた。その一撃は周囲の紫炎さえもをなぎ払い、辺りを赤一色に染め上げる。
「嫌ぁぁぁぁぁっ! あ、熱っ、やだ、もっと、私は……何度でも這い出てきて、復讐してやる……! このままじゃ、終わらないんだから……!」
 最後は心からの恨み言を言いながら、マナールは炎の中倒れていく。そして次の瞬間紫色の大爆発が起き、屍さえ残すことなく偽りの炎精は完全に消滅した。
 船を包んでいた炎は全て消え、後には無残に黒く焼け焦げた航砂船だけが残されていた。
「……燃えました、でしょう」
 最後に都牟刈一振りしてそこに残った炎を消し、紅葉は静かに船から立ち去るのであった。



 かくして、偽りの炎精が巻き起こした事件は終幕となった。精霊術士たちと猟兵が生き証人となることで、本物の炎の精霊へのあらぬ疑惑は程なく晴らされるだろう。
 だが、マナールの最後の言葉通りいずれまた骸の海より這い出した彼女が、あるいは彼女が死してもその遺志を継ぐ者が、何度でも同様の事件を起こすのだろう。それが災魔……オブリビオンであり、猟書家なのである。
 猟書家の侵攻は、まだ終わらない。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年01月22日


挿絵イラスト