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Dは、のらくら花火のように

#デビルキングワールド


●ねずみ講
 魔界の通貨『D(デビル)』。
 それはデビルキングワールドにおけるカネである。生活するには必要なものであるが、悪徳が美徳とされる世界においては、稼ぐものというより奪い取るものというのが一般的であるかもしれない。
 いや、まっとうに、真面目にあくどい商売をして稼ぐことも美徳であるのだが、デビルキングワールドに住まう悪魔たちにとって、根が善良であるが故に、あくどい商売を思いつくことが難しいのだ。
 だからこそ、頻繁に銀行強盗が起こったり、現金輸送車が襲われたりする。怪我ないように気をつけながらね。

 とまあ、こんな具合に悪徳が美徳と定める『デビルキング法』があっても、致命的なことにはならないのだ。
 けれど、そんな悪魔たちをも震え上がらせるような悪徳な手段でもってカネをひたすらにかき集める悪魔の中の悪魔とも呼ぶべき存在が台頭してきていたのだ。

 名を『爆弾の悪魔』。言うまでもなくオブリビオンである。
「うんうん、今日も粗悪な売りつけた爆弾で『D(デビル)』がたんまり」
 彼女はかき集めたD(デビル)を浴槽に貯めて今日もD風呂に興じていた。正直意味はないいし、そそられる光景でもない。残念ながら。
 だが、そんな姿すらもデビルキングワールドに住まう悪魔たちにとって圧倒的ワルであり、同時に凄まじいカリスマを齎しているのだ。

「は~くっそチョロ。『現金輸送車を襲うなら爆弾が必要。これで君も悪のギャングスター!』なんて火薬不十分な上に湿気てる使い物にならない爆弾が商品になるなんてね~」
 オブリビオン『爆弾の悪魔』はそのおみ足をD風呂から、ざばりと上げてD硬貨を弄ぶ。
 そう、彼女のやっていることはマルチ商法である。
 いわゆるねずみ講ってやつだ。
 まず、適当な悪魔にすごくあくどい商売があるんだけど、と持ちかける。
 そうするとワルなことに真面目な悪魔はすぐ飛びつく。自分は爆弾を売りつけ、さらにそれを他の人に売ればいいとささやくのだ。
 さらに別の悪魔を紹介すれば、さらにマージンが入ると告げる。

 あくどい商売ができると聞けば、それだけで悪魔たちはよってくる。後はねずみ算のように悪魔たちが集まってきて上納金を自分に納めてくれるというわけである。
「ほんとちょろい。マジで。せこせこあくせくDを集めて『カタストロフ級の儀式魔術』を実現させるの、最初はたるいって思ってたけど、くそちょろですわ。やめられないとまらないわ~」
 正直、ここまで簡単に悪魔たちをそそのかせることができるとは思ってもみなかった。
 けれど、やってみれば意外にというか、マジでちょろいのである。
 それは悪魔たちの性根が善良であり、なおかつ『デビルキング法』があればこそ。
 あの法のおかげで、オブリビオンである『爆弾の悪魔』はあくどい商売がやりやすくってたまらんのである。

「でも、そのうち猟兵が嗅ぎつけてくるんだよね~……ほんと一人見かけたら、必ず二三人はいるっていうんだからたまらんわ~……屋敷の警備、もっと雇っておこう。なにせ、悪魔はみんな猟兵並のユーベルコード使いだからね~あはは! Dならあるのよ、Dならねぇ!」
 オブリビオン『爆弾の悪魔』は正しく悪役らしい高笑いをあげて、今日もD風呂に興じるのだった――。

●ぶちのめすは、オブリビオン。
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
 だが、いつもと様子がおかしい。
 というか、やたら瞳がランランと輝いている。正直怒らせたらヤバいやつを怒らせた時の感じだった。
「……お集まり頂きありがとうございます。デビルキングワールドでの事件となっております」
 にこやかな笑顔は変わらないのに、明らかにその瞳は怒っていた。激おこであった。
 しゅ! と何故か拳を突き出す仕草をしている所が洒落になっていない。
 今すぐにでも自分が飛び込んでいきそうな雰囲気である。

「お金……そう、デビルキングワールドにおける通貨『D(デビル)』をひたすらにかき集めているオブリビオンの存在が予知されました。名を『爆弾の悪魔』。彼女は悪徳なる商法によって悪魔の皆さんを陥れ、D(デビル)を集めて『カタストロフ級の儀式魔術』を行おうと目論んでいるのです」
 そう、デビルキングワールドの通貨『D(デビル)』は魔力が込められている。
 これらをたくさん集めることによって世界を滅ぼすことの出来るほどの儀式魔術を行使しようとしているのがオブリビオンなのだ。
 やはり、ナイアルテは根が善良なる悪魔たちをだまくらかしているオブリビオンの事が到底許せないようである。マジギレである。

「かの世界、デビルキングワールドは悪徳が美徳の世界。確かに世界が変われば文化も違うことでしょう。悪徳が美徳であることを私がとやかく言う筋合いはありません。ですが、そんな真面目にワルをしている悪魔さんたちを騙す類のことは許していいわけではありません」
 ナイアルテの拳が、ひゅぼ! と当たったらヤバいことになりそうな勢いでシャドーされている。こわ。

「皆さんは、『爆弾の悪魔』が『D(デビル)』を溜め込んでいる屋敷に乗り込んで、これらを根こそぎ奪ってください。容赦はいりません。ですが、オブリビオンは悪魔の皆さんをボディーガードとして雇っているのです」
 この世界の一般的な悪魔たちは、猟兵たちに匹敵するユーベルコード使いである。
 正面を切って戦うのは現実的ではない。
 猟兵の到来を予見してか、ボディーガードとして悪魔たちを無数に雇っているのだ。

「はい、ですので、皆さんはなんとか方策をねって、悪魔のボディーガードさんたちを出し抜き、『爆弾の悪魔』が『D(デビル)風呂』に興じている部屋まで到達してください」
 例えば、ボディーガードの目を盗んで侵入すとか、使用人に変装するだとか、そういった手法が取れるだろう。
 彼らを出し抜いた後、『爆弾の悪魔』をぶちのめした後は、溜め込んだD(デビル)を、アミューズメント施設で、ぱーっと使えばいい。

「使ってしまえば、下手に隠しておくよりも、収集は再び困難になるからです。悪銭身につかず、です。皆さんでD(デビル)が底を付くほど使って楽しんでくださいね」
 さらっと言っているが、わりとワルいことを言っている自覚があったのだろう。ナイアルテは、少々大人気なかったです、と顔を赤くしながら、頭を下げて猟兵たちを見送る。

「……思った以上に私自身、頭に血が登りやすい性質なのでしょうか……」
 一人ナイアルテは反省するのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はデビルキングワールドにおいて、不当な手段によって多額のD(デビル)を集め、溜め込んでいるオブリビオンをぶっとばして、そのD(デビル)を使い込んで遊ぼうぜ! という身も蓋もないシナリオになります。

 シナリオに登場する悪魔たちは猟兵の皆さんに匹敵するユーベルコード使いで強いです。

●第一章
 集団戦です。
 ですが、戦闘ではありません。多くのD(デビル)を溜め込んでいるオブリビオンの屋敷には悪魔のボディーガード、ガードマンがいっぱいいます。
 彼らの容姿は全てフラグメントの『フランケンシュタイン』 と同じ姿をした種族です。
『フランケンシュタイン』は皆、極大の電撃によって電誕(エレキヴァース)した人型悪魔であり、言葉を発するのが苦手な悪魔さんです。

 なんらかの方法で彼らを出し抜いてオブリビオンのいる部屋までたどり着きましょう。
 大富豪の屋敷然とした大きな建物ですので、いろいろな方法があるかと思います。

 戦いに寄る強行突破も可能ではありますが、悪魔の人数が多いので現実的ではありません。

●第二章
 ボス戦です。たどり着いたオブリビオンの部屋には全てのD(デビル)が集められています。
 きっと儀式魔術の準備を進めていたのでしょうが、D(デビル)風呂の魅力には勝てなかったのか、バスタブいっぱいに敷き詰めたD(デビル)の中を泳ぐようにして興じています。
 しかし、その実力は言うまでもありません。
 可愛らしい外見をしていますが、オブリビオンです。善良なる性根を持って、真面目にワルしてた悪魔さんたちを騙した罪は重いので、容赦なくぶっ飛ばしましょう。しゅっしゅ!

●第三章
 日常です。
 オブリビオンを倒し、奪ったD(デビル)を持って闇のアミューズメント施設で遊び尽くしましょう。
 アミューズメント施設には様々な娯楽があるので、自由にD(デビル)をじゃぶじゃぶ使って遊んで楽しんでください。
 決して、誰かのカネで肉が食べたいとかそういう理由ではなく、派手にお金を使えば如何にオブリビオンと言えど、再度集めることが難しくなるからです。割とまっとうな理由があるのです。

 それでは、悪徳が美徳の世界で極悪オブリビオンをぶっとばし、他人のD(デビル)で肉がうまい……じゃない、楽しむワル物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『フランケンシュタイン』

POW   :    マッドネスサンダー
自身の【知性】を代償に、【電撃】を籠めた一撃を放つ。自分にとって知性を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    フランケンナックル
【強靭な拳】で攻撃する。[強靭な拳]に施された【電撃発生装置】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ   :    ファイナルフランケン
【体内を流れる電流】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。

イラスト:炭水化物

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 オブリビオン『爆弾の悪魔』が居を構える屋敷は悪趣味な金ピカな装飾ばかりが目立つ、まさにワル目立ちする屋敷。
 D(デビル)によって雇われたであろう悪魔のボディーガードたちは屈強な体を持って、その仕事に真面目に取り組んでいた。
「フガ!」
「フンガー! フガフガ(こくこく)」
「イジョー、なしフガ」
 そんな風に真面目に巡回している所が、このデビルキングワールドの悪魔らしいところである。
 頼まれたら断れない善良なる性根があるおかげで『デビルキング法』があっても、言うことを聞いてしまうのだ。
 ワルこそかっこいい! 最高にクール! という価値観故に、ワルいことに敏感な彼らは、オブリビオンの震えるほどにあくどいマルチ商法もといねずみ講に心酔している。

「やっぱ『爆弾の悪魔』サン、やべーフガ」
「フガフガ。あんなD(デビル)を集めるなんて……ダレも考えつかない悪どいほーほーでフガ」
 ボディーガードたちはブルブル感激した様子でうなずき合う。
 あの人こそデビルキングに相応しい。
 そんなふうに心酔するほどにオブリビオンの所業に惚れ込んでいるのだ。
「なんか侵入者が現れるフガよって言われたフガ、本当フガね? 危ないことしないでほしいフガ」
「ほんとフガ。怪我したら危ないものフガ」
「フンガフンガ」

 あ、やっぱりなんか見た目に反してゆるい人たちだこれ。
 ワルさの片鱗が毛ほども見つからぬ『良い子』。
 見た目はちょいこわなフランケンシュタインたちであったが、それでも猟兵に匹敵するユーベルコード使いであることは変わりない。
 彼らを出し抜き、屋敷の部屋でD(デビル)風呂に興じる巨悪を討つために、征け、猟兵――!
月夜・玲
EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
背中にはバッグを背負い、デリバリースタイルに

こちら爆弾の悪魔さんのお宅ですかー?
あ、私侵入者じゃない侵入者じゃない
私通りすがりのデーバーイーツの職員です
デリバリーの押し売りに参りましたー

真面目なボディーガードの皆さん、素晴らしい!
好きなピザを選んでよ、爆弾の悪魔さんからの奢りだから!
なんのピザがいい?
チーズの掛かってないピザ、ソースの掛かってないピザ、トッピングは完璧だけど完全冷凍されてるピザ、激辛ソースかワサビ盛りかカラシ盛りしか無いピザ
色々アルヨー
食べないなんてそれこそ爆弾の悪魔さんの気持ちを台無しにしちゃうよ!

食べた?
じゃあ代金貰いに行くから通して



 イカすフォルムのバイクがオブリビオン『爆弾の悪魔』の屋敷の前に横付けされていた。
 そのバイクは本来、ある猟兵の模造神器を運用するためのマウントが備え付けられたものであったけれど、今はその面影だけを残すのみであった。
 そう、今の月夜・玲(頂の探究者・f01605)は猟兵である以前に背中に大型の四角いバッグを背負い、デリバリーバイトスタイルになっていた。
 所謂宅配業者そのものであった。

 屋敷の警護を固めるのは悪魔たちである。
 彼は一人ひとりが猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。そんな彼らが多数ボディーガードを務める屋敷に正面切って乗り込むのは得策ではない。
 何か彼らを出し抜く方策が必要であるとはグリモア猟兵の言である。
 そこで玲が見出した方策がこれである。
「こちら爆弾の悪魔さんのお宅ですかー? あ、私侵入者じゃない侵入者じゃない」
 しっかりとボディーガードとしての仕事をこなす真面目な悪魔、『フランケンシュタイン』たち。
 彼らは屋敷に近づく者に怪しい影があれば、即座に対応する生真面目さを、その性根の善良さでもって発揮していたのだ。

「確かに爆弾の悪魔さんのお宅フガ。でも、おまえ侵入者じゃないフガ?」
「見るからに怪しい風体フガ。そのサメのやつどこに売ってますかフガ?」
 徐々に本題から外れていきそうになるのは何故だろうか。微妙に気が抜けてくる。むしろ、サメのやつってなんだ。
 幻覚でも見えてるのか。
 そんな彼らを前に玲はどうどうと背中のバッグをくるっと回ってみせる。四角い箱型リュック。なるほどなー。
 最近良く増えてきている短期アルバイトのあれね。
 委託されて宅配する便利なデリバリーなあれだ。

「私通りすがりのデーバーイーツの職員です。デリバリーの押し売りに参りましたー」
 デリバリーの押し売りとは一体。
 むしろもう押し売りだけでよくないフガ? と疑問に思う『フランケンシュタイン』あれど、玲は勢いに乗せてバッグの中からいい匂いのするカロリーモンスターたちを登場させようと大盤振る舞いの体で雰囲気だけでどうにかしようとしていた。
「真面目なボディーガードの皆さん、素晴らしい! 好きなピザを選んでよ、爆弾の悪魔さんからの奢りだから! なんのピザがいい?」
「えー……フガフガ。何がいいフガ? え、こんな夜遅くに、ピザみたいなカロリーモンスターとっていいフガ?」

 あくまで悪魔たちは『良い子』なのである。
『デビルキング法』によって悪こそ美徳と教え込まれていても、遅い時間にカロリーを取る背徳の囁きに屈することこそワルの一歩であると言うように玲がささやく。
「チーズのかかってないピザ、ソースのかかってないピザ、トッピングは完璧だけど完全冷凍されてるピザ、激辛ソースかわさび盛りか、辛子盛りしかないピザ!」
 色々アルヨー。いっぱいアルヨー。
 何故エセチャイナみたいな言葉になるんだ玲さん。
 胡散臭さが倍増しである。

 だが、その言葉を信じるのであれば、わりとろくでもないものである。
 しかも玲が持ってきたピザはどれもひどいものである。
 あれだけフランケンシュタインたちを労働させておいて、差し入れがこれである。ひどい。ひどすぎる。
 世が世なら大暴動である。
 しかし、ここは悪徳が美徳の世界。デビルキングワールドである。
 故に、この震え上がるような悪逆非道こそが正道にして王道なのである。ピザとはこういうものをピザというのだという玲の無言の圧が凄まじい。
 まさに食べないなんてそれこそ爆弾の悪魔さんの気持ちを台無しにしちゃうアルヨーと、言外にまで染み入る圧。

 え、もしかして、玲の方がよほど極悪なのでは? と悪魔たちが思うのも無理なからぬことである。
 マジで?
 マジで食べないとダメな雰囲気? ほんとにこれ、人がしていい行い?
「ふ、フガ……えっと、頂くフガ……」
 その圧に押されてフランケンシュタインたちは全弾装填済みロシアンルーレットピザに興じる。
 いや、興じるっていうか、強制されてるっていうか。

 フンガー!
 アガガガ! これやばいやつ、これやばいやつフガ!
 目が、目に辛さがしみ、あー!?

 そんなフランケンシュタインたちの叫びが聞こえる。
 マジでヤバイやつだこれ。しかし、玲は臆することなく、むせび泣くフランケンシュタインたちの前に立つ。
 え?

「食べたよね? じゃあ代金貰いに行くから通して」
 あの、水とか、そういうのを差し入れてくれる優しさ的なものは……?
 そんな期待する瞳を裏切るように玲は微笑んだ。
 あるわけないじゃん★
 水、水ー!
 そんな風に叫ぶフランケンシュタインたちを尻目に玲は悠々とデリバリーの代金を請求するために、屋敷の中を進むのだった。

 その後、発見されたフランケンシュタインたち皆一様に、サメが、サメが……と毎夜うなされることになる。
 サメとは一体……――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久坂部・匡弥
ワルに憧れるクソ真面目な奴ら…
なんつーか、オモシロ世界もあったもんだなぁ。

そんじゃ、一か八かの正面突破をしてみっか。
態度は尊大でふてぶてしく。
嘘を付くのに罪悪感を感じる程、オレは真面目じゃないんでね。

釘バット片手に玄関から堂々と突入。
どーも、新しく雇われた用心棒でーす。
あ?聞いてない?テメェらに話が下りて無えだけじゃねえの?
威圧されても怯まず、煙草で一服して思考力UP。ついでにUC発動。
つーかさぁ…お前ら真面目すぎんだろ。
たまには主人に反抗し見たらどうよ?ワルくて格好良いんじゃねえの?
ゴネるようなら手近な物を釘バットで叩き壊すか、攻撃してきた奴らに容赦なく反撃。
…で、ここ通して貰えないかね?



 悪徳が美徳の世界、デビルキングワールド。
 それは通常の世界に生まれた者たちにとって、奇異なる世界に映ったことだろう。
「ワルに憧れるクソ真面目な奴等……なんつーか、オモシロ世界もあったもんだなぁ」
 久坂部・匡弥(彌駆徒・f30222)は煙草の紫煙を燻らせながら、つぶやいた。
 猟兵になったのは引退間近のことであったが、この年になってなお、新しい世界を目の当たりにするということは、彼にとって面白いことの一つでしかなかった。

 その胆力は驚嘆に値するものであったことだろう。
 どこまでいっても、人の価値観は根底が覆ることのないものである。生まれた世界が違えば文化も違う。
 同じ世界出逢っても風土が違うだけで、まったく異なる文化が育まれている。
 さらに世界が違えば、ここまで違うのかと笑うのだ。
「そんじゃ、一か八かの正面突破をしてみっか」
 態度は尊大に。さらにふてぶてしく。
 この世界の悪魔たちは性根が善良であるが故に、『デビルキング法』に従って悪さをするクソ真面目さである。

 ならば、匡弥はどうであろうか。
 嘘を付くのに罪悪感を感じるほどに、彼は真面目ではない。正面から扉を蹴破って匡弥の姿が現れる。
 突如して乱入してきた匡弥の凄みのある姿にフランケンシュタインたちはたじろいだ。
「なんでぇ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔しやがって。その図体が泣くぜ、おい」
「な、何者フガー!?」
 フランケンシュタインたちは、そのカリスマと言ってもいいほどの凶悪な風体、雰囲気をまとう匡弥の姿に怖気づく……いや、ワルのカリスマの如きオーラにしびれはじめていた。

 そんなのでいいのかと思うほどにちょろい。
「どーも、新しく雇われた用心棒でーす」
 新人と言うにはあまりにも年季の入ったオーラ。絶対その筋の人じゃん!
 絶対怒らせたらやべー類の人だとフランケンシュタインたちは即座に勘づく。むしろ、この風体でそれ以外の職業が思いつかない。
 こんな人がお花屋さんとかしてたら、絶対別の意味にしか聞こえなくなる!

 ぶるっとフランケンシュタインたちが震えて、それならそうなのかなーって雰囲気になったところに匡弥は畳み掛ける。
「あ? 聞いてない? テメェらに話が下りて無えだけじゃねえの?」
 ぷかーっと煙草の煙を吹付け、匡弥はメンチを切る。
 やべー。
 マジで本職のメンチ斬りじゃないですかやだー! フランケンシュタインたちはぶるぶる震えながら、あのーそのーとしどろもどろである。

 これが、匡弥のいつもの手段(ジョウトウシュダン)である。
 恫喝、読心、コミュニケーション(?)の技能を底上げする異常なまでに磨き上げられた匡弥のこれまでの人生の集大成であったものであろう。
「つーかさぁ……お前ら真面目すぎんだろ。たまには主人に反抗してみたらどうよ? ワルくてカッコイイんじゃねえの?」
 そうだよなぁ? おい? と眼力が言っている。
 答えはイエスかはいしかないやつだ。

 しかし、フランケンシュタインたちは根が真面目な良い子なのである。
 だから、雇われたのに仕事放棄するのはそのぉー……と言いかけるが、それを遮るように匡弥の釘バットが手近な高そうなツボを叩き割った。
 ものすごい音がして、高値のD(デビル)がついた国宝級の花瓶が砕け散る。
 ヒェッ。
「なあ、そうだろう? そうだよなぁ?」
 ビリビリ眼力が空気を震わす。
 これがマジのワル。ワルの中のワル。つっぱる以上のつっぱり。極道というものであろう。
 フランケンシュタインたちは、その雰囲気に押されて、応える返事が最早『はい』か『イエス』しか言えなくなっていた。
 語尾のフガフガってやつも忘れていた。

「……で、ここ通してもらえないかね?」
「大丈夫っす! どうぞお通りくださいっす! しゃっす! お疲れ様っす!!!」
 まるえ滝が割れるみたいにフランケンシュタインたちが道を開ける。
 皆一様に頭を下げているが、匡弥は動じない。
 というか、いつもの光景であるし、別段珍しいものでもない。

 自分は悠々と進めばいい。
 肩で風を切るように匡弥はゆっくりと、けれど確実に『爆弾の悪魔』のタマを取りに屋敷の中を歩くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

犬山・小夜
いやーあんな強そうな守衛さんがたくさんいては、確かに強硬策は無理そうですねぇ
というわけで、ここは裏口に回ってそこにいる悪魔さんの情に訴える作戦でいきましょうー

すみません、自分は見ての通り田舎の山から出てきた狼の悪魔ですけど、悪いことしようとしても全然うまくいかなくて……
このままじゃ悪いことできてないからって、捕まって故郷の山へ送り返されちゃうんですぅ
こんなに悪そうなお屋敷から何か盗み出せれば、すごく悪いことしたって認められそうなので、どうか自分を中に入れてください
適当に何か持ち出したら、すぐ逃げ出すのでお願いしますぅ

あ、そういえば侵入者を見逃す守衛さんって、すっごく悪いと思うんですよねー……!



 悪魔の種族である『フランケンシュタイン』の姿は異様なるものであったことだろう。
 極大の電流によって電誕(エレキヴァース)したとされるのが種族の起こりである。大抵の『フランケンシュタイン」の誕生はそのようなものばかりだ。
 彼らの姿はどれもが恐ろしげなものであり、それが彼らにとっての誇りであったとも言えるだろう。
 いかにもワルそうな姿は、悪徳が美徳の世界であるデビルキングワールドにおいては、ただそこに在るだけで徳を積んでいるような状態であった。
 だから、フランケンシュタインたちは人一倍、性根が善良でもあったのだ。
 正直ボディーガードとかやっているより、草花とか小動物とかと暮らしていた方が性に合っているのではないかと思っていたが、『デビルキング法』を遵守しようとする生真面目さがそれをさせないでいた。

 そんな彼らを伺っていたのは、犬山・小夜(送り狼・f31295)であった。
 東方妖怪『送り狼』。
 それが彼女の怪異としての姿であった。夜道で人を付け回し、恐怖や不安といった感情を糧とする妖怪。
 彼女にとって、悪徳が美徳の世界は心地よいものであったかも知れない。
「いやーあんあ強そうな守衛さんがたくさにては、たしかに強攻策は無理そうですねぇ」
 この世界の悪魔たちは性根こそ善良であれど、ユーベルコード使いとしては猟兵に匹敵する力を持つ者たちである。
 それが一般人と同じ数だけ存在しているのに戦って勝つことは現実的ではない。
 だからこそ、小夜は頭を巡らせるのだ。

 ととと、と軽い足取りで屋敷へと近づいていけば小夜は早速演技を始める。
「フガ。そこの狼悪魔、とまれフガー」
 フランケンシュタインたちの目に彼女の姿が止まることは想定内である。ここからが小夜の本領である。
 人間をおいたて、時にはだまくらかして面白がる。
 それが送り狼としての小夜だ。だからこそ、その演技力が光るのだ。
「すみません、自分は見てとの通り田舎の山から出てきた狼の悪魔ですけど、悪いことしようとしても全然うまくいかなくて……」
 よよよ、と泣き崩れるように小夜の瞳に涙がキラリと輝く。
 無論、目薬である。
 女の涙という武器はこう使うのだというかのように、小夜はささっと懐に目薬を隠した。

 マジか。
「フガ!? フガ、フガ……や、そのぉ、田舎とかそういうの関係なくって、ね? ほらそのー」
 フランケンシュタインたちはワタワタしてしまう。
 女の子の涙にはてんで弱いのである。最早伝統である。
「このままじゃ悪いことできないからって、捕まって故郷の山へ送り返されちゃうんっですぅ。もうあんな辺鄙なところは嫌なんです! テレビもない、ラジオもない、ついでに言うと車もそんなに走ってないんですぅ!」
 最後はなんかどっかで聞いたことある歌のフレーズであったが、気にしてはいけない。微妙に変えてるから大丈夫。セーフである。

「こんなに悪そうなお屋敷から何か盗み出せれば、すごく悪い子としたって認められそうなので、どうか自分を中に入れてください。適当に何か持ち出したら、すぐに逃げ出すのでお願いしますぅ!」
 とっさの演技であった。
 迫真の演技であると小夜は思っていたが、冷静に考えてみれば突飛もない理屈である。それ信じるやつがいるのだろうかというやつであったし、実際小夜も微妙に思っていた。
 だからこそ、ダメ押しのように彼女はフランケンシュタインたちに告げるのだ。

「あ、そういえば侵入者を見逃す守衛さんって、すっごく悪いと思うんですよねー……!」
 だが、その言葉をいい切る前に小夜の肩をがっしり掴むフランケンシュタインたち。
 やばい。
 流石に無理があったかと思われた瞬間、小夜の視界にあったのは涙をダーダー流しながら感涙しているフランケンシュタインたちの姿であった。

「苦労したんだフガね。うう、こんな若い女の子が田舎に強制送還なんて……!」
「そんな悲しいことないフガね。もっと都会を満喫したいはずフガ!」
「オーケーフガ! 此処は僕らに任せるフガ! 適当に誤魔化してくから、早く盗みをするフガ!」
 うひょー。
 マジすか。こんなことってある? とばかりにすんなり小夜は屋敷の中へと通されつてしまう。

 屋敷の中でもフランケンシュタインたちには話が通じているのか、皆一様に小夜のことを涙目に成りながら、声援と共に送り出してくれるのだ。
 なんとも微妙な居心地のまま小夜は屋敷の中を進む。
 目指すはD(デビル)風呂に興じるオブリビオン『爆弾の悪魔』のいる部屋だ。

 けれど、こんなに簡単に入れてよかったのだろうか……?
 そんなことを考えながらも、結果オーライであることに小夜は、ま、いっかと足取り軽く進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜谷・ひびき
すげー世界もあるんだな、住人が納得してるならいいんだけど
でもオブリビオンは許さねぇ
しっかり退治しに行くぜ

ボディガードの人達は……なんだか騙すのが申し訳ない
それならこの世界の流儀に則って、派手な悪行を働くか
……放火が手っ取り早い

愛用のコートを纏いつつ屋敷へ
【忍び足】で護衛の少ない場所へ移動し、UCで放火
燃やすのはあくまで無機物だけ、護衛は巻き込まないように調整するぞ
火の手がしっかりあがりはじめたら急いで離脱
護衛達が火の方に集まってきた頃を見計らい、屋敷の内部へ突入しよう

被害が出てるから騙すより悪い気もするが……
屋敷もどうせオブリビオンのもんだろ?
灰になっちまった方が世のため人のためってもんだ



 ワルいことがいいこと。
 ワルはカッコイイこと。
 ワルは素晴らしいこと。
 それが『デビルキング法』によって悪徳が美徳である世界、デビルキングワールドである。
 数多ある世界を渡る猟兵であっても、これほどまでに奇異なる世界は初めてであったかもしれない。
 善悪が逆転した世界。
 それはこれまでに知っていた世界とは真逆の価値観を持っていた。
「すげー世界もあるもんだな、住人が納得してるならいいんだけど」
 茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)はなんとも言えないような表情を浮かべ、デビルキングワールドの世界を改めて見つめていた。

 しかし、こんな世界にあってもオブリビオンの暗躍は止まらない。
 その心に確かにオブリビオンを許さぬという感情が在った。例え、善悪が逆転した世界であったとしてもオブリビオンはしっかり退治しなければならない。
 けれど、目の前にそびえ立つ『爆弾の悪魔』の屋敷はボディーガードである悪魔『フランケンシュタイン』たちによって守られている。
 この世界の一般の悪魔たちは、一人ひとりが猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。
 しかし、同時に性根の善良たる者たちでもあるのだ。
「……なんだか騙すのが申し訳ないな……」
 強攻策が得策ではないのだとしても、彼らを騙すのがどうにも腑に落ちないひびきは迷っていたが、悪徳こそが美徳の世界である。
 彼らの流儀に則ることこそが、彼らのためになると思い切って、ひびきが選んだのは放火であった。

 ――なんで?

 いや、マジでなんで? え、なんで放火? え?
 そんなツッコミが介在する余地はない。もはや際は投げられたのだ。愛用の冬コートを羽織って、ひびきは足を踏み出し屋敷へと向かう。
 ただし、正面からではなく忍び足でボディーガードの『フランケンシュタイン』たちが少ない場所へ移動し、ユーベルコードを発動させる。
 本当に放火していいのかとか、そういう良心の呵責はあったけれど、これもまた致し方ないことなのだ。

「手っ取り早いからな……!」
 自分の身体を切り裂き噴出する地獄の炎――ブレイズフレイムは紅蓮の炎となって屋敷の裏口付近に火を灯す。
 燃やすのはあくまで無機物のみだ。ボディーガードの『フランケンシュタイン』たちを巻き込まぬようにと火力を調整し、煌々と燃え盛る炎を確認してひびきは忍び足で離れる。

 そこへ続々と集まるのは護衛のボディーガードたちだ。
「火が上がってるフガ!?」
「なんで!? なんで火の気のないところから火が出るフガ!?」
「じゃなくって、水フガ! 水! あ、いや、消化器フガー!」
 彼らは混乱しっぱなしである。
 そんな彼らを尻目にひびきは申し訳ない気分でいっぱいになりながら、屋敷の中へと侵入していく。
 消火活動で手薄になったことで、簡単に侵入することがえきたが、屋敷が燃える小火を自分が起こしたことに対する罪悪感が湧き上がってくる。
 手っ取り早いからって、やるんじゃなかった。

 そんな想いに囚われそうになるが、ひびきは頭を振る。
「この屋敷もどうせオブリビオンのもんだろ? 灰になっちまった方が世のため人のためってもんだ」
 うん、その通り。
 大丈夫大丈夫。小火はフランケンシュタインたちが消してくれてるし、人的被害ないし。うん。
 自分に言い聞かせながらひびきは屋敷の中を走る。

 この大きな屋敷のどこかにいるだろうオブリビオン『爆弾の悪魔』を打ちのめすために駆ける。
 D(デビル)風呂なんてふざけたことをして、悪魔たちから搾取し続ける極悪非道なる行いを許してはおけない。
「待ってろよ、オブリビオン。しっかり退治してやるぜ!」
 ひびきは、決意を新たにして仕方ないとは言え、己が引き起こしたボヤ騒ぎに背を向けて走るのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
毎回悩ましいですが、ボディガードさん達は(例によって)悪い人達では無いので、戦闘にならないように突破したいです。

この世界の任務用に、日本人?らしく形から入った詩乃は、邪神様なりきりセット(ドレス&魔王笏)に着替え、正面から入ります。

悪のカリスマと威厳を纏って、「彼女の商用に関する事で参った。急用でな。」と精一杯ワルっぽく演技。
フランケンシュタインさん達が何か言おうとしたら、天候操作で近くの避雷針に落雷させ、「私は待つのは嫌いだ。怒らせぬ方が良いぞ。」「それにな、お前達が主の商売を妨害すれば、困るのはお前達だぞ。」と読心術で読み取りつつ言いくるめます。

ダメな時の最終手段ではUCで麻痺させます。



 これまでの世界に在りき善良なる価値観を持つ者は、皆、デビルキングワールドの様相に戸惑うことだろう。
 悪徳こそが美徳。
 それがこの世界であるデビルキングワールドにおける遵守すべき法、『デビルキング法』に定められた文言である。
 だからこそ、通常の世界で善良なるものは逆転した価値観の前に戸惑い、普段とはらしからぬ行動を取ることが多い。
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)もまたその一人であった。
「毎回悩ましいですが……」
 彼女は悩んでいた。
 それはもう大いに悩んでいた。彼女の心根が優しき女神であることからも、彼女の悩みの種は想像することは容易かったけれど。

 けれど、それでも詩乃は持ち前の真面目さで、大真面目に考えたのだ。
 なんとかして戦闘にならないようにと、自身の生真面目さ、善良さを覆い隠すことはできないかと。

 その結果がこれである。
「彼女の商用に冠することで参った。急用でな」
 このオブリビオン『爆弾の悪魔』の屋敷でボディーガードとして門番のように立ちふさがってい『フランケンシュタイン』たちが一様にキョドりはじめる。
 そう、今の詩乃は黄金製の笏を手に、大胆なスリットが入った黒い絹のドレスを身にまとって背いっぱいのワルさを演出していた。
 いやっふー!
 おみ足が! イエスだね!

「……そういう予定は聞いてなフガが……?」
 フランケンシュタインたちは訝しんでいた。
 そういう予定があれば、門番である己たちに連絡が来ているはずだ。けれど、そういう連絡はない。
 けれど、今目の前にいる詩乃の堂々とした雰囲気は、もしかして連絡不足的なやつかなと思うには十分な威容を持っていた。
 詩乃の考えは、こうだった。
 ボディーガードである悪魔たちは見た目こそ強面であるが、悪い者たちではないのだ。それどころか善良なる良い子なのだ。
 精一杯ワルぶっているだけ。
 だからこそ、戦闘にならないようにと詩乃は、なりきりセットを身にまとい、この屋敷にやってきたのだ。
 ありがとうございます。

「ちょっと連絡してみるフガ……――」
 その瞬間、落雷が避雷針に落ち、凄まじい轟音を響かせる。
「私は待つのは嫌いだ。怒らせぬ方が良いぞ」
 落雷が詩乃の仕業であることを知らしめるように黄金製の笏に大きな紅玉が輝いていた。
 それは彼女の持つ天候操作の力であったが、フランケンシュタインたちを戦かせるには十分であった。
 さらに詩乃は畳み掛けるように言葉を紡ぐ。
「それにな、お前達が主の商売を妨害すれば、困るのはお前達だぞ」
 虚勢であった。
 けれど、このハッタリはフランケンシュタインたちには大いに効いた。というか、詩乃とんでもなくワルそうな雰囲気(なりきりセット)にこの人只者じゃない感を勝手に彼らは感じてくれていたのだ。

「ふ、フガ……で、でも……」
 しどろもどろになったところに詩乃はユーベルコードを発言させる。
 正直ちょっと此処まで渋られると思っていなかった。彼らは性根が善良であるがゆえに、生真面目なのだ。
 仕事を頼まれた以上、しっかりとこなそうとする気概があった。
 それが裏目に出たのだ。

「フランケンシュタインさん、ごめんなさい!」
 最後までワルそうな雰囲気が詩乃は保たなかった。ごめんなさいと謝った瞬間、ユーベルコード、帰幽奉告(キユウホウコク)の音色が周囲に響く。
 それはフランケンシュタインたちの精神へと直接攻撃する音色。
 響く響月の音色にしびれたフランケンシュタインたちを尻目に詩乃は黒く深いスリットの入ったドレスを翻し、屋敷の中に駆けていく。

「まさか、最終手段を使うことになるとは……フランケンシュタインさんたち、噂に違わぬ強敵でした……!」
 詩乃は何度もしびれさせたフランケンシュタインたちにわびながら、それでも一刻も早く『爆弾の悪魔』をぶっとばそうと決意を新たに、彼女が興じているD(デビル)風呂の部屋へと急ぐのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シニストラ・デクストラ
※二人で一人のキャラです。
「」の台詞はシニストラ
『』の台詞はデクストラです。
連携、アドリブはご自由どうぞ。

「Dのお風呂だって兄様。」
『まさに汚いお風呂だね。』
「でもDがいっぱいなの。」
『纏めて奪えばがっぽがっぽだね。』

迷子のふりして近づくの。
ワタシタチ6歳の子供だし…。

おじさん、おじさま道に迷ったの。
おじさん、おじさまパパママどこなの?

しくしくしく…。
今日は寒いね兄様。
お部屋で温まりたいね姉様…。

ねえおじさん…
ねえおじさま…

パパが
ママが…迎えに来るまででいいから…風のない場所で休ませてくださいしくしくしく…。


ねえ、兄様お屋敷にはいれたわ
ねえ、姉様温かいね。

それじゃあ、おやすみなさい(UC発動)



 D(デビル)――。
 それはデビルキングワールドにおけるカネである。それ自体に魔力が籠もっているため、集めれば集めるほどに強大な儀式魔術を執り行うことができる。
 この世界のオブリビオンはD(デビル)をかき集め、『カタストロフ級儀式魔術』でもって世界を滅ぼそうとしているのだ。
 まさに『爆弾の悪魔』がそうである。
 彼女は悪魔たちも思いつかなかったような悪徳商法によってD(デビル)をかき集め、今さにD(デビル)風呂に興じているのだ。

 よく雑誌の広告とかで見るやつだ。
 うぇーい! って札束のお風呂で美女二人を侍らしてるあれと同じである。
「Dの風呂だって兄様」
『まさに汚いお風呂だね』
「でもDがいっぱいなの」
『まとめて奪えばがっぽがっぽだね』
 そんな風に物騒なと言うか、子供らしい発想のままに会話しているのは、シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人であった。

 彼女たちは二人で一人。
 迷子のふりをして『爆弾の悪魔』の住まう屋敷の前までやってきていた。迷子を装うんはとっても簡単だった。
 だって彼女たちは未だ六歳児である。悪魔たちにとっても可愛い盛りの子供なのだ。
 その本性が凶悪なるラスボスと勇者であることはわからないまでも、彼らの行動に不備は一切なかったのだ。
「フガ?」
 屋敷のボディーガードをしていたフランケンシュタインたちが、彼らを見つけたのはある意味で当然であったかもしれない。

 彼らの性根は善性そのものである。
『デビルキング法』を遵守しなければならないという生真面目さ故に、彼らは精一杯ワルを気取っているが、根っこの部分は善良なのだ。
 故に困ってるふうなシニストラとデクストラを見れば、なんとかしてあげたいと思うのも無理なからぬことであった。
『おじさん、おじさま道に迷ったの。おじさん、おじさまパパママどこなの?』
「しくしくしく……今日は寒いね兄様」
『お部屋で暖まりたいね姉様』

 二人は無論嘘泣きである。
 そんな彼らを見てフランケンシュタインたちは目頭が熱くなるのだ。
 いや、かなり強面な風貌であるから、その様子はかなりびっくりするものであったが、善良な良い子である彼らにとって、迷子の幼子を放っておくことなどできようはずもないのだ。
「フガ! それは大変フガ! おじさんたちが一緒に探してあげるフガ!」
「だ、だれかー! この子達のパパママをご存知ありませんかフガー!」
 フランケンシュタインたちは一斉に周囲に声を張り上げる。
 けれど、この寒空の下である。
 人の通りもまばらであり、当然シニストラとデクストラのパパママはいない。どれだけ声を張り上げても、誰一人として手を挙げる者は居ない。

 なんてことだ!
 フランケンシュタインたちは、二人の心細さを慮るだけの心の優しさがあったのだ。
 まあ、其処に付け込む作戦なんですが。
『ねえ、おじさん……』
「ねえ、おじさま……」
 二人は見上げる。
 此処からは殺し文句である。
「パパが」
『ママが……迎えに来るまででいいから……風のない場所で休ませてください」
 しくしくしくとさめざめと泣かれては、フランケンシュタインたちも自分達の気の利かなさに反省しながら、快く屋敷の中に入れてくれるのだ。

「きっとパパとママはおじさんたちが見つけてみせるフガから、心配しなくって良いフガよ! 待ってるフガ!」
 そんな風に二人を励ましてくれるフランケンシュタインたち。
「ねえ、兄様お屋敷にはいれたわ」
『ねえ、姉様温かいね』
 二人の様子にフランケンシュタインはにっこりである。
 けれど、次の瞬間、ユーベルコードが炸裂する。
 シニストラの放った睡魔の誘い(アルプトラオム)が、フランケンシュタインを夢の中へと誘う。

 ごとん、と大きな音を建ててフランケンシュタインが鼻提灯を浮かべながらぐーぐー眠りこけるのを見下ろし、双子は笑う。
「それじゃあ、おやすみなさい――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束

と目立った時点で今回、私は不利なのでは?
くっ、クノイチの概念が憎い…!

まあ見つかったら仕方ないのでクノイチ的な正面突破でいっきまーす!

【かげぶんしんの術】!
これでぶわーっと増えましてフランケンさんの視界を覆い尽くします
「ふっふっふ! 私の本体が見破れますかね!?」
とか言いながら私(本体)はこっそり裏側に回りましょう
汚いなさすがクノイチきたない
胸が目立っても木を隠すなら森に隠せ
同じ胸で覆い尽くせば目立たないって作戦です!
クノイチ的には忍べてませんけども!

※アドリブ連携OK



 潜入という任務においてクノイチはまさに最適解であったことだろう。
 どんな困難なミッションにおいても、その忍びの技術は言うまでもなく、闇に紛れ屋敷に潜入し、目的を果たす。
 しかし、クノイチという概念を持つサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、普通のクノイチとはひと味もふた味も違う。
 そう、彼女は割と目立つほうのクノイチなのだ!

「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……ってあー!?」
 まさかの前口上キャンセル。
 嘘だろお前ってなるほどに華麗なる前口上を、さらっとキャンセルしたのは悪魔の種族である『フランケンシュタイン』たちであった。
 彼らは皆、オブリビオン『爆弾の悪魔』のボディーガードである。
 多くの猟兵たちがすでに屋敷に潜入しているのだが、それが返って裏目に出ていたし、サージェという目立ちに目立つ姿をしているクノイチを見逃すわけがないのである。
「フンガー! やっぱり侵入者フガ! そんな目立つ格好しておいてクノイチとかおかしいフガー!」

 フランケンシュタインたちがフガフガいいながら屋敷に潜入したサージェに迫る。
 彼らは生真面目故に、サージェの侵入を許さぬとばかりに彼女を追いかけ回すのだ。
「くっ、まさか胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!! まで言えないとは……! 今回私不利すぎませんかね?! くっ、クノイチの概念が憎い……!」
 いや、クノイチってそういうものだったっけ。
 もっとこー……と思ったが、思い返し見てたらバーチャルゲームの中のクノイチたちは、そのなんていうか、こう、ね?
 ばゆんばゆんしててだゆんだゆんしてる人多いし、露出度もね? でへへ!

「まあ、見つかったら仕方ないのでクノイチ的な正面突破でいっきまーす! しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
 サージェのユーベルコード、かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)にて一斉に増えた分身達。
 褐色の波がフランケンシュタインたちの視界を覆うように展開され、その見事な肉体美を惜しげもなく晒すのだ。

 もはや影分身の術とかそういうんじゃなくお色気的なそういう術なのでは、とフランケンシュタインたちは思ったが、それを言うのは野暮かもしれないし、根が善良である彼らにとって、サージェの格好は、その刺激的過ぎたのだ。
「フガ……!」
 大量の褐色の肌が露出度的にも大変素晴らしいサージェの姿にフランケンシュタインたちはもじもじしてしまうのだ。
 仕方ない。
 わかる。わかるとも。

「あれっ、なんかみんな動きが鈍いような……私の本体が見破られますかねって言う前にみんな、なんかもじもじしてる……?」
 しかし、これはチャンスである。
 フランケンシュタインたちがもじもじしてる間に本体であるサージェ本人がこっそり裏側に回って突破すればいいのだ。

 胸が目立って仕方ないのなら、木を隠すなら森に隠せっていうやつである。同じ胸で覆い隠せば目立たないって作戦である。
 いや、クノイチ的には忍べていないが、絵面的には大成功である。あ、いや、こっちの話である!
「ふふふ、汚いさすがクノイチ汚い」
 サージェは自分の作戦がうまく言ったことを喜びながら、軽い足取りでフランケンシュタインたちを躱していく。

 目指すは『爆弾の悪魔』がD(デビル)風呂に興じている部屋を目指すのみ!
 サージェのお色気の術……じゃない、影分身の術の前には、如何に強力な悪魔たちであってもタジタジなのである!
 これぞ、クノイチの真骨頂!

 ほんとに?
 そんな疑いの眼差しを受けてもサージェはご機嫌で屋敷の中を走るのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
数が多いみたいだし
こっそり忍び込もう

ドローンや使い魔で邸内の様子を伺い
見張りの居ない隙を狙って侵入
ワイヤーガンによる移動を上手く使って忍び込もう

邸内でも同じように見張りを避けつつ移動
どうしても避けられない時は
複製創造で台座を創り
その上で封印の縛めを使って
彫像のふりをしてやり過ごしつつ
会話を聞いて情報を得よう

我ながら素晴らしい造形ですの
このままもう少し愛でていたいですの
ああ動いては駄目ですの、形が変わってばれますの
もちろん見張りが居ない時だけ出てきますの

触られっぱなしなのも癪だし
目的地と逆、かつ見張りの居そうな方に突き飛ばして
自分は先に進もう

大丈夫大丈夫
ここなら味方を囮にするのもきっと美徳だから



 悪魔『フランケンシュタイン』たちの数は圧倒的だった。
 オブリビオン『爆弾の悪魔』の屋敷の至るところに彼らは点在していて、確かに強行突破するには些か現実的ではないことを示していた。
 彼らは一人ひとりが猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。
 だからこそ、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はこっそり忍び込むことに決めたのだ。

 ドローンや使い魔たちを有効的に使い、邸内の様子を伺っていた。
 この屋敷に侵入を試みた猟兵は晶だけではない。他の猟兵たちも様々な手法を用いて、あの手この手で屋敷に入り込んでいるのだ。
 具体的には小火を起こしたり、デリバリーを装ったり、はたまた主人に用があると正面から入ったり。
 それはもう様々なやり方だった。
 正直晶はどうやって侵入しようかと思っていただけに、それらの対処に追われてフランケンシュタインたちがてんでバラバラに動き始めていたのは行幸だった。
「よしっ、と……結構中は騒ぎになってるなぁ……」
 ワイヤーガンを駆使して、屋敷の囲いを飛び越え、見張りの少ない場所を狙って晶は駆ける。

 他の猟兵たちの行動が揺動になっているのだろう。
 思った以上にすんなりと邸内に入り込むことができるが、問題はこれからだ。
「見張りが居ないところを……っと! 言ってる傍から!」
 フランケンシュタインたちがドタドタと慌てた様子で駆けてくるのを察知し、ユーベルコードを発現させる。
 封印の縛め(シールド・スタチュー)によって己の身体を鉱物に変え、さらに台座を複製した上に立つ。
 そうすれば、立派な一分の一晶スタチューモデルの完成である。

 その出来栄えは見事な彫像そのものであった。
 こうして彫像のフリをしていれば、やり過ごすことは可能であったし、なんならフランケンシュタインたちの会話を聞いて情報を収集することもできる。
「フガフガ! 侵入者がいっぱいフガー!」
「あっちで小火が起こってるフガー! 応援よろしくフガ!」
 彼らは皆、一様に他の猟兵たちへの対応に追われているようだった。
 これは案外簡単かもしれないと晶は思った瞬間、そこに割ってくるのが、身の内に融合した邪神であった。

 しかも分霊として現れ、彫像と化した晶を撫で回すのだ。
「我ながら素晴らしい造形ですの。このままもう少し愛でていたいですの」
 うっとりした顔で彫像となった晶を撫でる邪神の分霊。
 正直かなりヤバい。
 というより、この状況でそんなことをすれば、フランケンシュタインに不審に思われてしまう。
「ちょ、待って、やめ……」
「ああ動いては駄目ですの。形が変わってバレますの」
 もちろん、フランケンシュタインたちが居ないタイミングを見計らってのことだが、それでも限度というものがある。

「……あー! もー! 触られっぱなしなのは癪なんだよ!」
 封印の縛めを解いて、どかっと邪神の分霊を目的地とは逆、かつフランケンシュタインたちが居る方向へと蹴り飛ばす。
 そのまま晶は振り返りもせずに駆け出していく。
 え、と邪神の分霊がキョトンとしているところにフランケンシュタインたちがワラワラと集まってくるのだ。

「あれー!?」
「侵入者フガー!」
 邪神の分霊を追いかけ回すフランケンシュタインたち。その様子を背中で感じながら晶は笑っていた。
「大丈夫大丈夫。ここなら味方を囮にするのもきっと美徳だから」
 確かにそのとおりなのであるが、遠くから邪神の分霊の恨みがましい声が響いてくる。
 この後のことを考えると少し背筋が寒く感じるものがあったが、それはそれである。

 今はオブリビオン『爆弾の悪魔』のいる部屋へと向かうことが先決である。
 邪神の分霊、君の尊い犠牲は忘れないよ。
 そんな晶の呟きに反応したかのように、階下からは邪神の覚えているのですのー! という叫びが木霊するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『爆弾の悪魔』

POW   :    ガンガンいこうぜ
レベル×5体の、小型の戦闘用【爆弾を括りつけた一般悪魔】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
SPD   :    みんながんばれ
レベル×1体の【時限式の爆弾を括りつけた一般悪魔】を召喚する。[時限式の爆弾を括りつけた一般悪魔]は【爆発】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ   :    いのちをだいじに
【黒い瞳】から【大量の透明な魔力機雷】を放ち、【「動くと死ぬぞ」という警告】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:白漆

👑11
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 ばーん!
 それはオブリビオン『爆弾の悪魔』がD(デビル)風呂に興じていた部屋の扉が開かれる音だった。
 そこはどこを目にしてもD(デビル)だらけの部屋。
 これまで悪どいマルチまがいな商法で持って一般悪魔たちからD(デビル)を巻き上げてきた成果があった。
 この量、一日や二日で積み上げられたものではない。
 これまで密やかに、けれど確実に『カタストロフ級儀式魔術』を執り行うために計画されてきたことであったのだろう。

「えー!? 猟兵!? なんで猟兵がここに!?」
 ざばりとD(デビル)風呂から飛び上がって、バスタブからすってんころりんと『爆弾の悪魔』が転げ落ちる。
 あまりのことに気が動転していたのだろう。
 腰が抜けたようにワタワタと立ち上がって、『爆弾の悪魔』はびしっとポーズを決めるがいまいち決めきらない。

「え、えーと、よ、よくぞ私の計画に気がついたわね! だけど、ここまでD(デビル)集めるのほんとに大変だったんだから! 悪魔たちはクソ強いけど、クソチョロで、でもでも、この商売を考えついた時に私は思ったの」
 何を?
 いや、律儀にみんな待っていてくれているみたいだけど、絶対にろくでもない理由である。

「人の働いたカネで生活するのってサイコーって!」
 こんなクソチョロ人生手放してなるものですか、と『爆弾の悪魔』は叫ぶ。
 そう、悪魔たちは超強いが、根が真面目故に騙すのは簡単なのだ。
 それは猟兵たちの多くも身を持って実感しているだろう。だからこそ、放ってはおけない。
 放置はしておけないのである。

「だから、私の銭ジャブ生活のために、あなた達には死んでもらうわ――!」
シニストラ・デクストラ
「へえ、面白いこと考えてるわ。」
『ねえ、だったらこの悪魔のD奪ったらボク達がっぽがっぽだよ。』

人の働いたカネで生活するのってサイコーなんだよねー。

UCでシニストラの部下を呼ぶよ。
73体の四天王(292体?)がシニストラに跪いて『悪のカリスマ』に涙しています。
「さあ蹂躙の時間よ。」
『やあ一緒に戦おうね。』
デクストラの『援護射撃』を受けたシニストラの魔王軍が爆弾の悪魔を『蹂躙』します。
「突撃ーーー。」
『姉様…これは酷い…。』
爆弾持った悪魔と一緒に戦場で爆発してる四天王にドン引きだよ姉様。
四階級昇格させなきゃね兄様。

「Dは私たちが根こそぎ貰うわ。」
『凄いねボク達凄い悪いよ。あとでツボも割らないと…』



「というわけでカモン! ボディーガードの『フランケンシュタイン』ズ!」
 オブリビオン『爆弾の悪魔』が指を鳴らすと、その体に爆弾を巻きつけた一般悪魔『フランケンシュタイン』たちが部屋のあちこちから、どこからともなく現れる。
 そう、ここはいわば、オブリビオンのホーム。
 屋敷の至るところに雇った悪魔たちに爆弾をつけ、自爆攻撃を仕掛けさせようとしているのだ。

「へえ、面白いこと考えてるわ」
『ねえ、だったらこの悪魔のD(デビル)奪ったらボクたちがっぽがっぽだよ』
 シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は部屋の中を埋め尽くさんばかりのD(デビル)を前にして瞳を輝かせていた。
 少し動いただけでDがそこら中に飛び散る有様は、確かに二人の中にある欲望という名のスイッチを押したのかも知れない。
 けれど、オブリビオン『爆弾の悪魔』の呼び寄せたフランケンシュタインたちもまた負けてはいない。

「フンガー! パパとママどこにもいないフガ! 騙したフガね!」
 けれど、そんな言葉にシニストラとデクストラは動じない。だってデビルキングワールドに置いて嘘っていうのは、美徳だからね!
『謝らないよー。だって人の働いたカネで生活するおってサイコーなんだよねー』
 シニストラの瞳がユーベルコードに輝く。
 デクストラの言葉に応えるように現れるのは73対の四天王。かける4であるから、総勢292体の悪魔たちがDであふれかえる部屋の中にすし詰め状態になってしまう。

 どれだけこの屋敷が広くても限度というものがある。
「さあ蹂躙の時間よ」
 魔王シニストラ軍(サタナ・エゼルチト)が大きめの屋敷とは言え、すし詰め状態の部屋の中を蹂躙する。
『やあ一緒に戦おうね』
「多すぎじゃないかしら!? え、うそ、ここで戦うの? まってまって、そんなこんなところで『ガンガン行こうぜ』って、それちょっとまっ――」
 うろたえる『爆弾の悪魔』。
 しかし、この程度で止まる二人ではない。
 むしろ、面白そうだからという理由だけで攻撃を開始するのだ。

「突撃――」
 シニストラの号令と共に一斉に四天王たちがフランケンシュタインと『爆弾の悪魔』に襲いかかる。
 いや、もう突撃とか蹂躙とかそんなレベルではなかった。
 フランケンシュタインたちにくくりつけられた爆弾が爆発し、フランケンシュタインたちは頑丈なので平気だが、屋敷の外に吹き飛ばされていく。
「フンガー!? 出番これだけフガかー!?」
 そう、ごめんだけど、そういうことなのである。
 フランケンシュタインたちが爆風に吹き飛ばされて屋敷の更に外へと飛んでいくのを見ながら、デクストラは若干引いていた。
 いや、ドン引きしていたい。

 だってもう、部屋の中は凄まじいことになっていた。
 四天王達は次々とフランケンシュタインたちに飛びかかり、爆弾を起動させて一緒に爆発とともに吹き飛ばされていく。
 それに巻き込まれる『爆弾の悪魔』。
 阿鼻叫喚とはこのことなのだろう。
『姉様……これはひどい……』
 けれど、シニストラは何が? とわかっていて言うのか、それとも判っていないのかいまいち判然としないままにつぶやく。

「四階級昇格させなきゃね、兄様」
 そういう問題んじゃないよ姉様、とデクストラは思ったが、空気読んだ。
 だって爆発が起こりまくる部屋の中では、きっと何を言ったところで耳に届かないだろうし。
 それに今はワルいことの真っ最中である。

「Dは私達が根こそぎもらうわ」
 その言葉にデクストラは一転して笑顔になる。そうだ、Dである。カネがあれば大抵のことはなんでもできる。
 ならばこそ、デクストラも爆発に巻き込まれて悲鳴を上げる『爆弾の悪魔』に言うのだ。
『凄いねボク達凄い悪いよ。あとで国宝級のツボも割らないと……』

 その言葉にいよいよ『爆弾の悪魔』は悲鳴を上げる。
「やめてー! アレ高かったの! お気に入りなのー!」
 だが、それはもう敵わぬ願いである。
 だって、もう他の猟兵が釘バットでぱかーってした後なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
しゅっしゅ!のデリバリーでーす!
ボディーガード達にピザのデリバリー勝手にしといたので、料金徴収に来ました!

貴様だけにクソちょろ人生はさせないぞ
私だって人の金で焼肉食べたり、色々経費で落としたり、暗かろうって言いながら紙幣燃やしたりしたい!!!
羨ましい!


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『オーラ防御』でバリアを貼りながら周囲の透明機雷『吹き飛ばし』!
そしてD風呂確保!
動けば死ぬ?なら動かない!
【光剣解放】起動
なんかこう…良い感じに機雷の間を通って爆弾の悪魔殴っといて!
そして私はD風呂へダイブ
ここは占拠した
とりあえず怪しい商材みたいな写真を撮って記念撮影
大金持ちじゃー!



 ちわっす! 三河屋でーす!
 みたいなノリはどこまで通じるだろうか。奥さん、何がご入用で! そんな昼下がりの団地妻みたいなやり取りをしてみたいと思うのもまた人生である。
 いや、言っていてちょっと意味分かんないなって思ったけれど、今目の前に広がるD(デビル)の海の如き光景に月夜・玲(頂の探究者・f01605)はまさにそんな気分であったのだ。
 どこを見てもD(デビル)、D(デビル)、D(デビル)なのである。
 これだけあったら何が出来るだろうか。
 欲しかったアレもコレもソレもぜーんぶ買えてしまうではないか。だからこそ、玲は声高々に言うのだ。

「しゅっしゅ! のデリバリーでーす! ボディーガード達にピザのデリバリー勝手にしといたので、料金徴収に来ました!」
 ものすごい言い草である。
 押し売りも此処まで極まったのかと思うほどに玲の笑顔はすがすがし……くはなかった。
 どっちかというと嫉妬よりであった。
 だってそうであろう。目の前のオブリビオン『爆弾の悪魔』は爆発に巻き込まれて焦げ焦げにこそなっているが、これまで甘い汁をたっぷり吸ってきたのだ。
 黙っていてもカネが振り込まれて見る見る間に通帳の残高が跳ね上がっていく生活。
 それはもう甘美なるとか何とかそんなレベルですらない。

 許せるわけがない。許していいわけがない。シリアスな時でもこんなに許すまじという感情は湧き上がらなかったのに、今玲の本音が炸裂する。
「貴様だけにクソちょろ人生はさせないぞ。私だって人の金で焼き肉食べたり、色々経費で落したり、暗かろうって言いながら紙幣燃やしたりしたい!!!」
 一息に捲し立てる玲の肩はぜーぜー上がっていた。
 もう、欲望の限り叫んだ。
 普段なら言えないこともなんか全部言った気がするけど、知り合いいないからセーフ。いや、アウトだよ?

「えっと、つまり……?」
「羨ましい!」
 だよねー。
 だが、その一瞬の隙を見逃すオブリビオンではない。
 その黒き虚の如き瞳から溢れる大量の魔力機雷。
 それは見えずとも感じる機雷の気配を、玲に感じさせていた。触れればタダではすまぬことを予見させたのだ。
「動くと死ぬぞってことよ。わかるわよね? 私の元に集められたD(デビル)は渡さない。クソアマクソチョロ人生を投げ出したりなんかしない! これは私のDなの!」
 勢いに乗せられているが、言ってることはクソである。
 故に玲は容赦なかった。いや、羨ましい感情を爆発させたとかそんなこと関係ない。玲さんがそんなこと言うわけ無いだろ! いいかげんにしろ! 

「動けば死ぬ? なら動かない!」
 吹き荒れるオーラの力が透明なる機雷たちを吹き飛ばし、屋敷のあちこちにぶつかって爆発が巻き起こり、Dが舞い散る。
 さらに玲の瞳がユーベルコードに輝く。
「機能解放、光剣よ舞い踊れ! ――光剣解放(セイバー・リリース)!」
 その輝きは千にも届こうかというほどの無数の光の剣たちの群れであった。
 それらが一斉に魔力機雷の放つ爆風の間隙をいい感じに縫って『爆弾の悪魔』を袋叩きにするのだ。

 それはもう妬ましさ爆発と言った具合にぼこじゃか叩きまくる。
「あいた!? いた!? 痛いんですけど!? え、ちょ、ちょっとまって、ほんとにタコ殴りにする気!? って、あー!?」
 オブリビオン『爆発の悪魔』は見た。
 どさくさに紛れて玲がD(デビル)風呂を確保し、その中へダイブしている姿を。
 まさにバブリー。
「此処は占拠した! いえいいえい!」
 もうやりたい放題である。
 なんか自撮り棒に備え付けたスマートフォンとかでD風呂に浸かる玲さんのサービスショットとかそういうのがあるのかなって思ってたけど、そんなことはなかったぜ!

 なんかの広告の商材の如き写真を取って記念撮影に興じる玲をよそに、光剣があいも変わらず『爆弾の悪魔』をぼこぼこタコ殴りにしているのを尻目に、玲は満足げに叫ぶのだ。
「大金持ちじゃー!」
 その声はまさにこれから訪れるであろうD(デビル)使いたい放題天国への道を示すように、爆風吹きすさぶ屋敷に響き渡るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

犬山・小夜
こんなひどい言い分の死んでもらう宣言は初めてですよーもう呆れちゃいますねぇ
ところで、同じ部屋の中で爆弾付きの悪魔を呼んだら自爆しますよねー?
それに大切なお金が燃えてしまうのではー?

なんて言って動揺を誘いつつ、配下の妖怪「千疋狼」を呼び出しますよー
ごめんなさーい、見つかっちゃったので故郷の(舎)弟達に助けてもらいますー!
あとその爆弾は、ちゃんと持ち主に返した方がいいと思いますー

そう言って可能なら狼達に括りつけられた爆弾を引きちぎらせて爆弾の悪魔に投げつけさせますー
無理なら仕方ありません、狼達の体当たりでそのまま爆弾の悪魔に突っ込ませましょうー
爆弾が品切れになったら、オマエマルカジリの時間ですねぇ



 オブリビオン『爆弾の悪魔』の言い分は、あまりにも理不尽なものであったし、そのユーベルコードの効果は言うまでもなく悪逆非道なるものであった。
 ボディーガードとして本来雇ったであろう『フランケンシュタイン』たちに時限式の爆弾をつけて猟兵達にけしかけているのだ。
 それはあまりにも無体な所業であったけれど、ここはデビルキングワールドである。悪徳こそが美徳となる世界であればこそ、そのワルさ全開の所業に『フランケンシュタイン』たちは感激してしびれまくっているのである。
「私の銭ジャブ生活のために喜んで死んでちょうだーい! さあ、貴方たち、あの侵入者たちを木っ端微塵に玉砕アタックで粉砕してー!」

 まさに極悪である。
 その裏腹で無邪気な笑顔から出たとは思えぬほどの言葉にフランケンシュタインたちは喜んで猟兵に突っ込んでくるのだ。
「こんなひどい言い分の死んでもらう宣言は初めてですよー呆れちゃいますねぇ」
 犬山・小夜(送り狼・f31295)は襲いくる時限式の爆弾を身に着けたフランケンシュタインたちから身をかわしながら、呆れ果てていた。
 こんなひどいことを平気でするなんて、信じられなかった。
 というより、せっかくの配下をこんなもったいない使い方をする方がよほど変だとさえ思っていた。

 悪魔は一般的であっても猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。
 そんな彼らを使い捨てにするような戦法は小夜にとって、まさに論外であった。
「ところで、同じ部屋の中で爆弾付きの悪魔を読んだら自爆しますよねー? それに大切なお金が燃えてしまうのではー?」
 小夜は何気なくそう言葉にした。
 それは事実であった。これまでも猟兵たちの戦いは、まさにD(デビル)が吹き飛ぶのもお構いなしの戦い方であり、同時に『爆弾の悪魔』からDを奪うような行いばかりであった。

「はっ!? 確かに! あ、時限爆弾なしなし! とりやめー!」
「フガ? でもこれ取れないフガよ?」
「はー!?」
 フランケンシュタインたちと『爆弾の悪魔』たちの微笑ましいやり取りをみやりつつ、小夜は頷く。
 悪いけど、今だよね。
 ユーベルコードに輝く小夜の瞳。
 それは彼女の故郷の(舎)弟達を呼び出すユーベルコードである。なんだか弟たちの前に()でくくられた文字が見えた気がしたが、気のせいである。
 気の所為ったら、気の所為なのである。
 送り狼に襲われたくなければ、気にしてはならぬのである!

「さー舎弟たち、あの爆弾を食いちぎって、ちゃんと持ち主に返してあげてー」
「うっす! 姐さんのためなら!」
「マジリスペクトっす! おつかれっす!」
「っしゃおらー! いくぞお前らー! 気合い入れて行くぞー!」
 次々と小夜の号令と共に舎弟たちの狼達が駆け出す。
 一匹が狂えば千匹の狼が狂う(イツピキガクルエバセンビキノオオカミガクルウ)というやつである。
 いや、まあ、なんていうか、すごいヤンキーな雰囲気のする狼たちであるし、姉さんっていう響きより姐さんていう、こう、任侠的なあれな感じの言葉の響きばかりであるし、絶対絶対、これ血の繋がった兄弟っていうか、盃で繋がる類の兄弟っていうか――。

「そういうのは気にしない!」
 小夜の号令で駆け抜けた狼達が次々とフランケンシュタインたちに設置された時限爆弾を食いちぎって口に咥えて部屋を駆け抜ける。
 そのまま投げつけちゃいなって思ったが、上手く生きそうにない。というか、口ぎったはいいが、この時限爆弾、生体にひっつくタイプである。
 つまり、フランケンシュタインから狼達に宿主が移っただけの話なのだ。
「……えっと、姐さん……」
 もしかして?
 そう、もしかしてである。
 言うまでもない。皆まで言うなというやつである。

「じゃ、体当たりでそのまま突っ込んでね」
 にっこり笑う小夜。
 マジで悪魔である。いや、妖怪だけど。しかして姐の命令に舎弟は従うが絶対である。
 盛大に爆発しながら『爆弾の悪魔』に体当たりをかまして爆発していく狼達を見送り、小夜はいい笑顔で言うのだ。
「やー、姐思いの舎弟を持つのっていいものですねーさて、品切れになったところでオマエマルカジリの時間ですねぇ」
 あーん。
 がぶっと。その鋭い牙は『爆弾の悪魔』の悲鳴と共に爆音轟く屋敷に響くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜谷・ひびき
オブリビオンは堂々とぶん殴れるから気が楽だぜ……
と思ったが、こいつ一般悪魔を利用しやがるのか
どう対処したものか……

刻印を起動し、移動力を5倍にして装甲を半分に
敵がガンガンくるなら俺もガンガン攻め込むしかない
【ダッシュ】で部屋を駆け回り、邪魔するやつはどんどんぶん殴っていくぜ

悪魔達はこの程度で死にはしないと思うが……
出来る限り命を落とさないように工夫はしよう
爆炎が危険なら俺が受け止める
【激痛耐性・火炎耐性】で軽減しつつ、負傷は地獄の炎で補う
……どんどん火だるまになってないか、俺

兎に角前に突き進み、最後に狙うはオブリビオン
【怪力】を籠めた拳を全力で叩き込んでやる
この詐欺師が、骸の海で反省しやがれ!



 オブリビオン『爆弾の悪魔』のボディーガードとして雇われた悪魔『フランケンシュタイン』たちの体は頑強である。
 どれだけ爆弾を取り付けられて自爆攻撃として放たれても、ひゅるるんとどこか遠くに飛んでいくギャグ時空の如き耐久力でピンピンしているのだ。
 まさにそれは猟兵に匹敵するユーベルコード使いであるという証左に違いなかった。
 それに彼らの性根は善良そのものなのである。
 彼らは良い子すぎたせいで絶滅しかけた種族。
 そんな彼らを出し抜いたり、ぶっ叩いたりというのはなんとなしに気が引けるものである。

「オブリビオンは堂々とぶん殴れるから気が楽だぜ……」
 ぐるんぐるんと腕を回しながら、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は部屋の中へと歩みをすすめる。
 そこは先行した猟兵とオブリビオン『爆弾の悪魔』との戦いで焼け焦げたD(デビル)や自爆攻撃で吹っ飛んでいった『フランケンシュタイン』や、はたまた諸々焦げている『爆弾の悪魔』がいた。
 そう、彼女の攻撃は殆どが『フランケンシュタイン』たちを利用した自爆攻撃ばかりなのだ。

 それに足を止めて、ひびきは思案する。
「あはは! 猟兵って大変ね! 色んなものに気を使わないといけないんだから! その点いくと私は楽よ。なんでもかんでも爆弾にしてしまえばいいんだから!」
『爆弾の悪魔』が高笑いするが、ひびきは微妙な面持ちで見つめていた。
 所々焼け焦げているのは、これまでの猟兵達にその攻撃が通用しないどころか、やり返されているからであろう。
 その余裕、そのメンタル、どこからやってくるのか本気で知りたい。なんだその強メンタル。

「あんたを殺さないと先がないんだ。だから、ガンガン攻め込むしかないんだよなぁ……」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 それはひびきがオブリビオンを殺す者(コロスモノ)である証である刻印を起動させた輝きであった。
 殺戮に特化した状態へと移行したひびきの体に浮かぶ刻印が爆ぜるように輝く。
「ひぇっ……あなた達、『ガンガンいきなさい』! 今すぐそいつをつまみ出して!」
『爆弾の悪魔』はひびきのユーベルコードの輝きにおののく。
 アレは必ずオブリビオンを殺す者の瞳だった。あの輝きを見た上で逃げられるわけがない。
 なら、殺される前に殺さなければならない。

「ああ、ガンガン行くしかねぇよなぁ! 俺も、あんたも!」
 駆け出す。
 部屋中を凄まじい速度で駆け抜けるひびき。
 彼の姿はフランケンシュタインたちですら追いきれるものではなかった。なにせ、己の防御を棄てた加速である。
 その速度たるや、部屋中のD(デビル)を巻き上げ、きらきらと照明と爆煙を受けて輝かせるばかりのものであった。

「邪魔をするなら!」
「フンガー!」
 目の前には爆弾をくくりつけたフランケンシュタインたち。
 けれど、その目にも留まらぬ速度でひびきが放った拳に彼らは吹き飛ばされ、屋敷の空に打ち上げ花火みたいに爆弾が爆発する。
 そんな中であっても彼らが無事なのは、彼らが強大な力を持つ悪魔であるからにほかならない。
 故に、ひびきの動きに順応してくるフランケンシュタインたちも居るが構わない。もうガンガン責めると決めているのだ。

 それに彼らを死なせるつもりなんてない。
 爆炎が襲うのならば、己の身を挺して護る。それはあまりに自殺的な行為であったが、それでもひびきは退かない。
 もう決めたのだ。
「……どんどん火だるまになってないか、俺」
 だが、止まらない。
 地獄の炎が負傷を全て補ってくれている。その姿はまさに地獄からの使者そのものであった。
「なんで、なんで止まらないのよ、あんた!」
「さあな! だが俺は決めてるんだよ、最初から! あんたを全力でぶん殴るってな!」
 フランケンシュタインたちを吹き飛ばし、凄まじい勢いで『爆弾の悪魔』に迫るひびき。

 その手が握りしめられ、有り余る怪力のすべてを込めた拳を、憎きオブリビオンへと叩き込む。
「この詐欺師が、骸の海で反省しやがれ!」
 打ち込まれた拳が爆ぜるように地獄の炎を噴出させ、『爆弾の悪魔』の体を吹き飛ばす。
 ひびきの体のあちこちから、まるで排熱するように獄炎を上げ、その怒りを一撃に込めたことを証明するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
(本来の巫女装束に戻り、いつもの毅然とした詩乃の表情で)ねずみ講ですか、私の世界にも騙されて不幸になった人が沢山いました。
オレオレ詐欺もそうですが、人を騙して不幸を量産するような悪事は特に許せません!
ここで終わりです。貴方は骸の海に還し、貯めたDは社会に還しますので、諦めなさい。

相手のUCは初発之回帰で無効化、通常攻撃はオーラ防御を纏った天耀鏡による盾受けで弾き返します。

「私にとってワルっぽい行動はとてもストレス掛かるのです。なので、きっついお仕置き行きますよ!
と、多重詠唱による炎と雷の属性攻撃を纏った煌月を構え、神罰追加した上でなぎ払う貫通攻撃で、相手の防御を無効化して斬ってしまいます。



 デビルキングワールドに神の怒りが轟く。
 それは天候操作によって天より放たれた轟雷であった。その力を知ら示すのは、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)であり、彼女の溜まりに溜まったストレス。
 彼女はかなり無理をしていた。
 不慣れな邪神なりきりセットに身を包み、悪徳が美徳の世界に馴染もうと必死であったのだ。
 それもこれも、良い子ばかりの悪魔たちを唆し、己の欲望のままに振る舞うオブリビオンがいるからこそだ。
 元凶たる『爆弾の悪魔』の部屋に押し入った詩乃は、盛大に声を張り上げた。
「私にとってワルっぽい行動はとてもストレスが掛かるのです。なので、きっついお仕置き行きますよ!」

 激おこであった。
 ぷんぷん丸であった。まるで誰かの怒りが乗り移ったかのような神々の怒りの矛先が今、オブリビオン『爆弾の悪魔』へと向けられていた。
 というより、まさに今『爆弾の悪魔』は先行していた猟兵達にボコにされていて、よろよろと立ち上がっていたが、詩乃にはあんまり関係なかった。
「え、ちょっとまって! ね? 私はちょこっとみんなの幸せを願って爆弾売っていただけなの。それに悪どい商売をすることがこの世界の美徳なの。そう! 私はいいことしていたのよ!」
『爆弾の悪魔』の言葉は自己弁護のものであったが、確かにデビルキング法が制定されているこの世界においては、確かに道理に沿ったものであったかも知れない。

 けれど、詩乃は騙されなかった。
 多分、この世界でなかったのならば、彼女とて少しは同情心のようなものが湧いたかも知れない。彼女の心優しき女神としての性質が、それを許容したかもしれない。 だが、今は違う。
 そう怒っていらっしゃるのだ!
「ねずみ講ですか」
「ギクッ」
 今ギクッって自分で言った。はじめて見たわ、自分でギクッ、って言う人。
「私の世界にも騙されて不幸になった人が沢山いました。オレオレ詐欺もそうですが、人を騙して不幸を量産するような悪事は特に許しません!」
 一歩を踏み出す詩乃へと『爆弾の悪魔』のユーベルコードが輝く。

「しゃらくさい! そういう理屈は自分の世界だけにしておきなさいよ! 動くと死ぬわよ!」
 オブリビオン『爆弾の悪魔』のユーベルコードが虚の如き暗黒の瞳から魔力の機雷を生み出し、不可視なる力を持って詩乃の周囲に撒き散らされる。
 少しでも触れてしまえば、一瞬で爆散し、詩乃を傷つけるだろう。彼女が動けぬ間に逃げようとして、『爆弾の悪魔』は見てしまった。

 その神の怒りを。
 その力の中核をなすユーベルコードの輝きを。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう。そう、貴方にはお仕置きが必要なのです。この世界の悪魔さんたちと同じように、その性根を善良なるものに叩き直してさしあげます!」
 それはユーベルコード、初発之回帰(ハジメノカイキ)。
 その瞳が見たユーベルコードを発動前の状態に時間遡及する神力によって相殺し、打ち消す力である。
 すなわち、『爆弾の悪魔』が生み出した魔力機雷の尽くが霧散し消えている。
 一歩を詩乃は踏み出した。
 その形の良い唇が多重詠唱によって神力を紡いでいく。手にした薙刀に炎と雷がまとわれ、空気を引き裂く音を立てていた。

「ひぇっ! ね? 反省してます。反省してますから――」
「いいえ、いいえ。ここで終わりです。貴方は骸の海に還し、貯めたD(デビル)は社会に還しますので、諦めなさい」
 それは冷ややかな言葉であった。
 どこにも情状酌量の余地などなかった。すでに決定していたことであった。普段怒らぬ穏やかなる神を怒らせた『爆弾の悪魔』が悪い。
 どう考えても悪い。

 炎と雷をまとった薙刀がきらめく。
「も、もしかして、神罰、ってやつ……?」
 イエスイエス! ぱにっしゅめんと!
「お仕置き、です――! お尻を出しなさい!」
 詩乃の薙刀が神罰の力を宿し、その一撃で持って、盛大なケツバットの如き痛烈なる痛みを『爆弾の悪魔』へと与える。
 それはどんな防御も何もかも無意味とするような激烈なる痛みであった。

 オブリビオン『爆弾の悪魔』のごめんなさーい! という悲哀の籠もった叫びが、デビルキングワールドの夜に響くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久坂部・匡弥
成程、手下も手下なら頭も頭か。
この窮地はテメェのツメの甘さが招いた必然だろうなぁ
カネを賭けての殺し合い、おっ始めようぜ!

念の為。
コイツ、冷静なら頭が回りそうだし
「あ、そうだ。廊下の高そうなツボ割っちまった。悪ぃな」
逆上か戦意喪失狙いで詫びとく

UC発動。一般悪魔らに未合体状態でブチ込む
間合いが空いてる状態なら、敵爆弾を撃って先に無力化させるか

俺は混戦に紛れつつボス悪魔に釘バットで攻撃、容赦はしねえよ
UC達の仕事が済んだら合体させて俺に加勢
敵の逃走も見逃さず、拳銃で牽制するぜ
逃げんじゃねえ、テメェが始めた戦いだろ?
ゴメンで済むなら猟兵はいらねえんだよ

いや~、ワルモノから金巻き上げんのは楽しいなぁ!



 度重なる猟兵たちの攻撃、もといお仕置きの前にオブリビオン『爆弾の悪魔』のお尻は腫れ上がるばかりである。
 ジンジンと痛むお尻をさすりながら、それでも『爆弾の悪魔』は銭ジャブ生活を諦めきれていなかった。
 それもそうであろう。
 人は一度楽なことを覚えると再び元の生活に戻ることを考えられなくなる。いや、考えられたとしても、味をしめてしまえば、再び楽なことをしたいと考えるものである。
 だからこそ、悪は陳腐で、特別なことではないのだ。
「もう! なんで私ばっかりケツバットされなきゃいけないの!? やるんなら、こいつらもでしょうが!」
 オブリビオン『爆弾の悪魔』は時限式爆弾をくくりつけたボディーガードである『フランケンシュタイン』たちを猟兵達に差し向ける。

「成程、手下も手下なら頭も頭か。この窮地はテメェのツメの甘さが招いた必然だろうな」
 だが、そこに割って入るのは久坂部・匡弥(彌駆徒・f30222)。ロマンスグレーの髪をなでつけたいぶし銀のダンディな任侠そのものであった。
 いや、猟兵であるので、正しいような正しくないような。
 けれど、その尋常ならざる迫力は言うまでもない。その風体、雰囲気にフランケンシュタインの多くはシビれていた。
 だってそうだろう。
 彼らの憧れるワルの雰囲気がすごいのだ。

 立っているだけで絵になるというのはすごいことなのだ。
「カネを賭けての殺し合い、おっぱじめようぜ!」
 ドスの利いた声が響き渡る。
 だが、匡弥は、あ、と思いついたように。それこそ、なんでもないように言うのだ。
「あ、そうだ。廊下の高そうなツボ割っちまった。悪ぃな」
 めんごめんご。
 そんな軽い雰囲気で言うものだから、『爆弾の悪魔』は最初何を言われたのかを理解できていなかった。
 いや、理解出来た瞬間、何かが糸を切ったような音をたてた。

「――あ、あれ割ったの――!? え、ううぇ?!」
 冷静ならば『爆弾の悪魔』が頭の回りそうなオブリビオンであると匡弥は判断していたがゆえの言葉であったが、それは思った以上に効果的だった。
 国宝級のツボ。
 D(デビル)をたくさん掛けて買ったあのツボわった? わっつ、ほわい?

「――お前ら、存分に暴れてこい」
 次の瞬間、匡弥のユーベルコードが輝く。
 それは右手甲に1と数字の刻印された刀と拳銃を装備した影人たちがあふれかえるユーベルコード、カチコミ幻影(カコノサイゲン)。
 彼らは一気に戦場となった部屋を駆ける。目的は時限爆弾を身に着けたフランケンシュタインたちである。

 わーわーぎゃーぎゃー。

 もうそれはそう表現するしか無いほどの大乱戦であった。
 おんどりゃ! やったんぞ! わりゃ!
 とかなんとか、どこかの任侠映画でしか普段聞くことのない罵詈雑言ばかりであったが、匡弥にとってはある意味で聞き親しんだものであったことだろう。
 彼の過去にいかなることがあったのかは押して測るべしである。
「あーもー! めちゃくちゃじゃない! 時限式にしたのが仇になった――わっ!?」
 空を切る音が響く。
 舌打ちするように匡弥が外したかと、手にした釘バットを二度三度と振りかぶる。

「容赦はしねえよ」
 劇画調になるほどに冷や汗が止まらなくなる『爆弾の悪魔』。
 やばい。やばい。やばたにえん。
 これ本職の人だ。
『爆弾の悪魔』は本能的に恐怖を感じ、乱戦の中を逃げ惑う。
「いやー! ごめんなさい! ごめんなさい! 出来心だったんです! 決して銭ジャブ生活でウハウハとか思ってませんからー!」
「逃げんじゃねえ、テメェが始めた戦いだろ? ゴメンで済むなら猟兵はいらねえんだよ!」

 そこからはもう見るに堪えないやつであった。
 ワハハと笑いながら釘バットを振るう匡弥。涙目に成りながら逃げ惑う『爆弾の悪魔』。
 それはもう、もうやめたげてよぉ! となるほどの追走劇であった。
 しかし、匡弥の言う通りだ。
 ごめんで済むなら猟兵は世界を渡らないのである。

 その真理を胸に抱きながら、それでは聞きましょう。『爆弾の悪魔』が釘バットでケツバットされている悲鳴を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
恨みがある訳じゃないけど倒させて貰うよ
遠慮なくガトリングガンをぶっ放させて貰おうか

召喚された悪魔達は
使い魔で麻痺させつつ
神気で爆弾を固定し爆発を防御

警備をしていた方々が集まっているという事は
当然私が自由になる訳ですの

背後からこっそり爆弾の悪魔様に抱き着きますの
時間を固定しつつ近付けば簡単ですわ
そのまま彫像になって頂きますの
余計な指示を出せないように
一番に舌を石にしてしまいますの

なんかいい笑顔でこっちみてるな
まるで次はお前だと言わんばかりだ

さて、警備の皆、大人しくしないと
ボスが彫像に変えられてしまうよ
早く部屋の外に出て貰おうか

分霊が相手を彫像にできそうなら放っておくし
無理そうなら纏めて射撃しよう



 ケツバットって地味に痛いよね。
 そう思ったのは、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)であった。
 今まさに屋敷の中ではボディーガードの悪魔とオブリビオン『爆弾の悪魔』、そして猟兵達による大乱戦が引き起こされていた。
 そんな中、幾人かの猟兵達によるケツバットの敢行によって悲鳴を上げている『爆弾の悪魔』の姿には在る種の哀れみすら感じていた。

 決して恨みが在るわけではないのだけれど、そえでもオブリビオンは倒さねばならない。
 戦いがあるからこそ、猟兵とオブリビオンは滅ぼし合わなければならない。
 世界と欲望。
 その二つを天秤にかけることはできないのだ。だからこそ、晶は恨みがあるわけでもないのに倒さねばならないオブリビオンに――。
「遠慮なくガトリングガンをぶっ放させて貰おうか」
 あ、いや、これ別にそういう理由の前フリいらんかったやつですね、はい。

「顔とやることあってないんですけどー!?」
 お尻を擦りながら『爆弾の悪魔』が抗議を上げる。
 いやさ、悪魔さんや。ここはデビルキングワールドである。言ってることと顔が一致しないことなんて当たり前である。
 恨みがないけどガトリングガンをぶっぱする。
 それって悪いことかな? イエス、悪いことである。で、ここに『デビルキング法』がある。
 つまり?

「悪いことはいいこと。恨みがないけどガトリングガンはぶっ放す。これって美徳だよね?」
 晶の笑顔と共に放たれるガトリングガンの斉射は『爆弾の悪魔』を追い詰める。
 悲鳴を上げながら逃げ惑う『爆弾の悪魔』が呼び寄せたボディーガードである『フランケンシュタイン』たちはすでに使い魔たちが麻痺させている。
 肝心な時に役立たないボディーガードたちにどくづきながら『爆弾の悪魔』はガトリングガンの弾丸から逃げ惑うのだ。
「もういやぁー!? なんで、こんなに猟兵たくさん来てるのよ! 私の銭ジャブ生活のクソチョロ人生楽しみたいだけなの! 他人の汗水垂らして働いたカネで冷暖房完備の部屋で優雅にワイングラス片手にあーはーんってやりたいだけなのにー!」

 言ってることは正直クソである。
 クソオブクソである。
 だが、それでも悪徳が美徳の世界においては、極上のワルとして尊敬を集めるのだ。随分生きやすい世界ですこと、と『爆弾の悪魔』の背後から抱きつくのは、邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)でも言おうか、邪神の分霊であった。
「警備していた方々がここに集まっていったので、こっそり後をつけてきましたの。当然私が自由になるわけですの」
 このまま彫像になっていただきますの、とまずはそのおしゃべりな舌から、と石化させていくのだ。

「あが――!?」
『爆弾の悪魔』は渾身の力でもって、石化の権能に抗っていた。
 ここで彫像にされようものなら、どうなるかわかっていたのだ。
 しかし、対するは邪神である。石化をどうにか停滞させることができたとしても、その場に釘付けなのである。
 にこにことした笑顔を邪神の分霊は浮かべている。
 それは『爆弾の悪魔』を彫像にできる喜び意外に、自分を蹴飛ばして囮にした晶にも向けられるものであった。

「……なんかいい笑顔でこっちみてるな」
 まるで次はオマエだと言わんばかりの笑顔に晶は苦笑いする。
 そんなに怒らんでもいいのに、と気安い笑顔とガトリングガンの銃口を向ける。そして、フランケンシュタインたちに精一杯のワルい笑顔を浮かべて告げるのだ。
「さて、警備のみんな、おとなしくしないとボスが彫像に変えられてしまうよ。早く部屋の外に出てもらおうか」
 ほら、はやくーと言うようにガトリングガンの銃口を向けると、フランケンシュタインたちはすごすごと部屋の外に出ていくほか無い。

 彼らは生真面目で根が善良なのだ。
 そんな彼らにとって雇われと言えどボスの生命には変えられない。しかし、そのやり口は彼らにとって憧れるワルのやり口そのもの。
 ちょっとカッコイイフガーとかそんな感想抱いてすらいたのは、晶としては少し方の力が抜ける思いでもあった。

「さて……彫像に……できそうにはないね。悪いね、邪神。これも戦いってやつだからさ」
「え」
 にこっと晶は笑顔でガトリングガンのトリガーを引く。
 銃声と共に後で覚えておくといいですのー! という叫びが『爆弾の悪魔』の絶叫と共に響き渡るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
くっ、このオブリビオンわかりやすい!
私のクノイチと匹敵するくらいですね!
ん?誰か何か言いました?(首傾げ

きっとDのお風呂は悪魔さんたちにとって恐れ慄くほどに偉業なのでしょう
なので壊しますね(笑顔

【VR忍術】Dだけを的確に貫くハリネズミの術!!
説明しましょう!
これはDに価値を求めない者だけが行える悪魔(概念の方)の所業!
困るのはオブリビオンだけなので
実質被害はゼロっていうエコにして
精神的インパクトがすごい技なのです!
ついでに爆弾の悪魔の爆発に破片を投じまして
木っ端微塵にしましょう

ふぅ、いい仕事をしました!
ちなみに爆発物処理については何も考えてないので
巻き込まれるものとします

※アドリブ連携OK



 これまで猟兵とオブリビオンの戦いは無数にあったことだろう。
 それこそ空に浮かぶ星々の数よりも多かったかもしれない。それほどまでに猟兵とオブリビオンの戦いは幾度となく繰り広げられていた。
 けれど、ここまで緊張感のない戦いも珍しかったのではないだろうか。

 ケツバットとガトリングガン、後タコ殴り。
 そんな攻撃に晒されて涙目でオブリビオン『爆弾の悪魔』はひんひんと泣いていた。
「どうしてー! どうして、私が銭ジャブ生活したらいけないの! みんなの泣いたD(デビル)で飯ウマしちゃいけないの!」
 悲壮感を漂わせる泣き言であったが、言ってることはクソであった。もっと悪く言えばクズであった。
 けれど、それでも『爆弾の悪魔』は真剣にクソチョロ人生を諦めていなかったのだ。
 だって、黙っててもD(デビル)は貯金通帳に振り込まれてくるし、自堕落極まりない生活をしても誰も咎めない。
 はっきりいって天国であった。いや、見た目は地獄だけど。

「くっ、このオブリビオンわかりやすい! 私のクノイチと匹敵するくらいですね!」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は戦慄していた。
 自分のアイデンティティをくらわんばかりの個性。
 わかりやすくて、それでいてビビット。いや、意味分かんないなっていうツッコミがどこからか聞こえてきそうであったけれど。
 それでもサージェは戦いていたのだ。自分がクノイチであると傍から見て瞭然であるように、彼女もまたわかりやすいくらいに小悪党であったのだ。

「ん? 誰か何か言いました?」
 言ってませーん。
 大丈夫でーす。
 なんかツッコミあった気がするんですけど、とサージェは小首をかしげる。けれど、彼女がやることは一つである。
「きっとD(デビル)のお風呂は悪魔さんたちにとって恐れ慄くほどに偉業なのでしょう。なので」
 なので?
「壊しますね」
「ちょ――!」
 待てよ! そういう短絡的なのよくないと私思うな! と『爆弾の悪魔』が制止しようとするも、もう遅い。

「メモリセット! チェックOK! 参ります!」
 まさに問答無用であった。
 VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によってインストールされたのはDだけを的確に貫くハリネズミの術である。

 説明しよう!
「はい! これはDに価値を求めないものだけが行える悪魔かっこ概念の方の所業! 困るのはオブリビオンだけなので、実質被害はゼロっていうエコにして精神的インパクトがすごい技なのです!」
「あー! やめて! やめて! 私のD(デビル)がー! 私の銭ジャブお風呂がー」
 まってまってと『爆弾の悪魔』が走る。 
 だが、サージェのVR忍術は止まらない。Dばっかりを的確に貫くハリネズミの術。それを阻止せんと『爆弾の悪魔』はそこらじゅうに転がっていた時限式爆弾のコードに引っかかって転倒してしまう。

 ずってんと顔面から倒れ込んだ『爆弾の悪魔』。
 うわっ、きっつ。
 そう思った瞬間、爆弾が起動して爆風が吹き荒れる。
 それはあまりにも盛大な火柱であった。猟兵たちがフランケンシュタインに取り付けられた爆弾を食いちぎったり、取り払ったりした残りの爆弾全てが一斉に爆発したのだ。
 その中心にサージェは『爆弾の悪魔』を放り投げる。
「それじゃ、さよならです。ふぅ、いい仕事しました!」
 えっへん!
 胸を張る褐色クノイチ。しかし、『爆弾の悪魔』の悲鳴と共にさらに盛大な爆発が起こる。
 これまで溜め込んだDを渡してなるものかと仕掛けていた自爆爆弾が炸裂したのだ。

「――……これって」
 そう、みんな大好き爆発オチだよ!
 カッ! と光がほとばしり、『爆弾の悪魔』の屋敷が爆散する。盛大にDを撒き散らしながら、サージェはボロボロの衣装とともに、もう爆弾は懲り懲りだと言わんばかりのコミカルな様子で吹き飛ばされていく。

「もうっ、本当に爆発物処理のこと、もっと勉強しておくのでしたー!」
 大量のDが空に巻き上げられながら、サージェはそれでも『爆弾の悪魔』が骸の海へと還るのを確認しながら、クノイチとしての使命を果たしたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『闇のアミューズメント』

POW   :    危険な絶叫マシンを全制覇する

SPD   :    毒々しいお菓子や軽食の食べ歩きを楽しむ

WIZ   :    過激な悪者ショー(悪のヒーローショー)を見物する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 かくして『爆弾の悪魔』の屋敷は、盛大な爆発と共に爆散した。
 溜め込まれたD(デビル)は空に舞い上がり、ひらひらと雨のように降り注ぐ。
 それは見るものにとっては、非現実的な、それこそ夢のような光景であったことだろう。

 猟兵たちの活躍によって、不当なる悪魔、オブリビオンは撃滅された。
 そんな彼らにフランケンシュタインたちがいそいそとD(デビル)を集めてきてくれるのだ。
 これまで屋敷の中での数々の悪行……もとい悪徳は彼らにとってシビれるものであったのだ。
「流石フガ! やっぱ、猟兵のみんなはすごいワルフガねー! これ、飛び散ったDフガ! ぜひ貴方方に使って欲しいフガ!」
 根が善良すぎるのも考えものであるが、そうやって集めてきてくれたDを一箇所に止めておくのは、いつまたオブリビオンがこれを嗅ぎつけて『カタストロフ級儀式魔術』を行うかわからない。

 ここは、彼らの行為に甘えて……いや、当然の報酬だと言わんばかりに振る舞ってもらっておこう。

 そして、そのDを使って猟兵達はぱーっと打ち上げのように大抵の娯楽は揃っている闇のアミューズメントパークで使い切ってしまおう。
 そう、カネならあるのだ!
 カネなら――!
月夜・玲
いえ、金が欲しくてやったわけではありません
全ては世界を守る為です
そう見返り何て求めていま…せ……ん


…しかし
どーーしても
どーーーしても使ってくれって言うなら
仕方ないなー、本当は使いたくないけど仕方ないなー
よっしゃ皆、私の奢りだ!
食事に行こうぜ!

金に任せた最高の贅沢と言えば、デリバリーをやっていないような高級店を無理矢理呼んで特注料理を作らせる事!
札束ビンタ!札束ビンタ!
最高級のデビル料理お願いねー!
金なら幾らでもあるんだから!

…あ、こいつ等は一番安い定食で

お代は勿論現金で
幾ら?
ふんふん、えっと細かいのあったかな…
よし、ぴったり!
請求書書いといてね

遠くまで出張ありがとね
デビルで焼いた焼き芋食べる?



 爆発四散したオブリビオン『爆弾の悪魔』の屋敷の周囲は飛び散ったD(デビル)がひらひらと落ちていく光景が非現実的だった。
 しかし、ここは悪徳が美徳の世界であれど、そこに住まう悪魔たちの性根は生真面目にして善良である。
 空からD(デビル)という金が舞い散ることになったのだとしても、道行く悪魔たちはネコババすることなく拾い集めて、回収にやってきたフランケンシュタインたちに手渡しているのだ。
 それどころか、手伝いますよとみんながみんなして拾ってくれているのだ。

 他の世界であれば絶対に見ることの出来ない光景が目の前には広がっていたし、善悪の逆転した世界で、このような光景が見られるとは他の世界からやってきた猟兵たちにとっては、どのように映ったことだろうか。
「いえ、金が欲しくてやったわけではありません。全ては世界を守る為です」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は固辞していた。
 そう、フランケンシュタインたちが猟兵たちに使ってほしいと持ってきたアタッシュケースにパンパンになったD(デビル)すなわちカネを断っていたのである。

 わりとかなり欲望のままに振る舞っていた玲さんであるが、猟兵としての体面は必要なのだ。
 曲がりなりにも何度も世界を救った猟兵である。
 そこらへんの分別はできているんだ。おい、そこのオマエ! 何を疑いの目で玲さんを見てんだおらぁん!
「そう見返りなんて求めていま……せ……ん」
 様子がおかしい玲さん。
 顔面がなんかこう、シリアスの皮かぶりきれてない感じになってはいやせんか。
「……しかし」
 ん?
「どーーしても。どーーーしても使ってくれって言うなら、仕方ないなー、本当は使いたくないけど仕方ないなー」
 がっしりその手はアタッシュケースを掴んでいた。
 いや、玲さんそれはまずいっすよ! あんなこと言ってた手前、それは流石に……! あ、この人力強いな!? 全然離す気ない!

 ひったくるようにアタッシュケースを抱えた玲は高らかに宣言する。
「よっしゃ皆、私の奢りだ! 食事に行こうぜ!」
 気っ風の良いこと言っているが、そのカネは玲さんのものじゃなくってオブリビオンが集めたやつ……というのは野暮だろう。
 ひゃっほいーとフランケンシュタインたちを引き継kれて玲はスマホでぺぽぱってする。
 どこに電話を掛けているのかと思っていたら、まさかの高級料理店である。

「あーあー、最高級のデビル料理お願いねー! カネなら幾らでもあるんだから!」
 おら! 札束ビンタをくらえ!
 無理ですお客様って言われても関係ねー! 札束ビンタの威力をそのほっぺたに刻むのだ! と言わんばかりに玲さんの無茶振りが轟く。
「あ、こいつらは一番安い定食で」
 いや、高級料理店に定食ってあるのかなって思ったけど、そんなことは些細なことである。
 こっちはごまんとDがあるのだ。
 そう、Dこそパゥワー! カネで買えないものはあるけど、大抵のことはカネでどうにかなるのは世の理である。

 そうこうしている内に爆発四散した元『爆弾の悪魔』の屋敷の路上で高級料理パーティが始まる。
 飲めや歌えやの大騒ぎである。
 ただし、請求書はぴったりビタ一文まけないのである。というか、普通に領収書まで請求しているところをみると、一体その領収書で何をするつもりであったのか……。

「よし、ぴったり! 遠くまで出張ありがとね。あ、D(デビル)で焼いた焼き芋食べる?」
 マジでやりたい放題である。
 悪徳極めり。
 そんな言葉がしっくり来るであろう玲さんの豪遊生活は、デビルキングワールド中に轟き、その名を知らぬものがいないほどに勇名なるワルとして名を馳せるのであった。

 その後の歴史の教科書で、今日の日の出来事が故事として、玲の姿が若干デフォルメされた風刺イラストで、
「寒い日には焼き芋だよね。そら、デビルで焼いた焼き芋だ。おいしからう」
 載っているとか載っていないとか――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シニストラ・デクストラ
「Dが沢山手に入ったね。」
『全部爆弾の悪魔のDだよ。』
「他人が苦労して集めたDで豪遊するなんて悪い子だね。」
『「人の働いたカネで生活するのってサイコーって!」って爆弾の悪魔も言ってたしねー。』


あ、パパママ探してくれたフランケンシュタインさんにお礼と嘘言ったお詫びしておくの。
ウソついてごめんなさい(奪ったDを入ったジュラルミンケースを無理やり渡していく)
他人のお金を恩人に押し付けるなんて、悪いね。
これで共犯者だね。犯罪幇助だねー。(デビキン流恩返し?)

じゃあ残りのDで遊ぶの。
使い切る為にみんなと遊ぶの。
あと保護者無しで施設にいるとすぐに心配されるし、保護者役は必要なの。
今度はあれで遊びましょう。



 オブリビオン『爆弾の悪魔』が溜め込んでいたD(デビル)は天文学的数字……とまでも、それなりに貯め込まれていた。
 言う成れば、年末なジャンボなくじびきに当たって感じくらいの金額と言えばわかりやすいだろうか。
 屋敷が爆発四散したことによって大部分は燃えてしまったけれど、それでも戦いに赴いた猟兵達で分け合ってもなお、十分すぎるほどの分け前を貰うことは可能な額であったことは言うまでもない。
「Dが沢山手に入ったね」
『全部爆弾の悪魔のDだよ』
 シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は、互いに見つめ合って相談する。

 彼らにとって、この破格なるDは普段持ち慣れない金額であったことだろう。
 これからどうやってこのDを使い切ろうかと思案するのは、とても悪いことのように思えたのだ。
「他人が苦労して集めたDで豪遊するなんて悪い子だね」
『人の働いたカネで生活するのってサイコー!って爆弾の悪魔も言ってたしねー』
 そうなのである。
 オブリビオン『爆弾の悪魔』はクソチョロ生活を送っていたし、銭ジャブ生活を送っていた。
 それを羨ましいとは思わなかったけれど、二人からすれば、それはとってもワルなことであることは間違いなかった。
 
 だから、それに習うわけではないけれど手に入れたDを持って豪遊しようとアミューズメントパークにやってきていたのだ。
「あ、パパママ探してくれたフランケンシュタインさんにはお礼と嘘を言ったお詫びをしないとね」
 シニストラとデクストラは二人揃って『フランケンシュタイン』たちのもとに歩いていく。
 これからすぐに豪遊してもいいけれど、やっぱりこういうけじめというやつはしっかりとしておいた方が後腐れなくっていいのだ。

「フガ?」
 フランケンシュタインたちはあれだけ爆発に巻き込まれたというのに嘘みたいにピンピンしている。 
 これがデビルキングワールドにおける一般の悪魔の強靭さと言えよう。首を傾げて二人を見下ろすフランケンシュタインたち。
 何かようなのだろうかと思っているのだろう。
『ウソついてごめんなさい』
 デクストラが奪ったDの入ったジュラルミンケースを彼らに無理矢理渡していく。
 え? え? と困惑しているフランケンシュタインたちをよそに二人は掛けていく。振り返ることなんてしない。

 だって、振り返ってしまえば、きっとフランケンシュタインたちは自分達を追いかけてくるだろう。
 謝ること無いのにっていうかもしれない。
 だから、二人は振り返らずに駆けていく。
「他人のお金を恩人に押し付けるなんて悪いね」
『これで共犯者だね。犯罪幇助だねー』
 二人はクスクス笑い合いがならアミューズメントパークに駆けていく。

 Dの大半は渡してしまったけれど、それでも手元にはまだ沢山のDがある。遊ぶには十分であるし、それに保護者なしで施設にいるとすぐに心配されてしまう。
 だから、二人はユーベルコードによって四天王たちを呼び出すのだ。
 彼らの分のDだって潤沢にある。
 彼らと共に遊ぶのならば、誰に心配をかけることもないだろう。
「あれが楽しそう」
『今度はアレがいいよ』
「じゃあ、アレで遊びましょう」
 シニストラとデクストラ、そして四天王達はアミューズメントパークのあらゆる施設を網羅し、あらゆる売店の食べ物を食べ尽くしていく。

 なんたってカネならあるのである。
 そう、これはあぶく銭というやつである。宵越しの銭は持たない。それが悪魔的ワルの生き方というものであるというように、彼らは大いにアミューズメントパークを楽しむのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

久坂部・匡弥
オイオイ、健全な消費方法しかねえのか。
まあ金を使い切るまでが依頼だしな、了解了解。

適当に園内を見回り。
…悪のヒーローショー、なぁ。
(後ろで立ち見)
過激らしいがが生温くねえ?ツッコミどころ満載でモヤるぜ…
おっ、悪がやられそうでピンチだから観客から助っ人募集?
はーい!
悪のピンチヒッターでーす!
恥ずかしげもなく挙手、躊躇なく登壇。
正義役の一人を人質に取って、
コイツをバラされたくなかったら大人しくしろや。
正義を脅して
ほーらテメェら、今がボコるチャンスだぜ?
悪を煽る。
最後は釘バット持ち出してオレも加勢。


…大人気無く楽しんだが、金減らねえなぁ。
楽しかったぜ、これ取っとけ。
ショー胴元に札束たんまり置いてくわ



 たんまりと手にれたD(デビル)。
 これこそがデビルキングワールドにおける金銭であり、ワルさのバロメーターでもあった。
 基本的にデビルキングワールドの住人たちである悪魔たちは頼まれれば何でもタダでやってしまうため、金銭的な価値をDには見出していない。
 故に彼らはDを己のワルさのバロメーター程度にしか見ていないのだ。
 久坂部・匡弥(彌駆徒・f30222)は、そのせいかどうかはわらかないが、ややげんなりしていた。

「オイオイ、健全な消費方法しかねえのか」
 豪遊したり、ぱーっと使ったりと色々できるはずであるが、不健全な消費方法とは一体……。
 ちょっとこれ以上は突くとヤブから蛇が出るとかそういうレベルではないことになりそうなので黙っておくことにしよう。
 きっとその方が互いのためである。
 けれど、どうしたってD(デビル)の消費方法はアミューズメントパークでの豪遊やら、その他のやり方しかないのだ。
 こればかりは納得して貰うほか無い。
「まあカネを使い切るまでが依頼だしな、了解了解」
 わかっているのか、わかっていないのかイマイチ判然としない様子であったが、匡弥は一人適当に園内を見回っていた。

 アミューズメントパークと言っても、己にはあまり縁のないものであったせいだろうか、匡弥は特に心惹かれるものなく、ふらふらりと園内を歩く。
 けれど、お、とそんな彼でも目を引くものがあった。
「……悪のヒーローショー、なぁ」
 正義の、と付かぬところがデビルキングワールドらしいと言えばらしい。
 匡弥は見物客の背後から、ショーを見やる。
 立ち見であったけれど、悪徳が美徳の世界のショーともなれば、過激なるものを期待していたのだが、基本良い子なる種族である悪魔たちにとっては、ショーは匡弥の感覚から言えば、そうでもなかったのだ。

「とぁー!」
「ぐあー!? やーられーたー」
「え、大丈夫かい?! 痛むところは……!」
 いや、見ているだけでほんわかしてくるやり取りである。これで本当にショーとして成り立っているのかと思って周囲を見回せば、観客の反応もショーの温度と同じであった。
 みんな応援しているのだ。
 ヒーローもヴィランも、どっちもがんばえー! ってやつである。

 その光景を見て、匡弥はもやもやっとしたものを感じていた。
 だが、次の場面転換で悪い方がやられそうになっているとショーのお姉さん悪魔が呼びかける。
「大変! このままで正義の味方にやられてしまうわ! 誰か助けてあげて!」
 そんなある意味でお約束の展開になっているのを見た瞬間、匡弥は獰猛なる笑顔を浮かべて手を上げた。
 正直、かなり怖い笑顔であった。
 あれは悪いことを考えているときの顔であった。
「はーい! 悪のピンチヒッターでーす!」
 恥ずかしげもなく挙手して、はいどうぞという招きもなしに普通に匡弥は壇上に上がっていく。

 お姉さんもヒーローも、ヴィランも、観客さえも、え!? という顔をしてしまっていた。
「よぉし、オマエだな。おら、こっちこい」
 困惑している正義のヒーローの一人を匡弥はとっ捕まえると、即座に首根っこを掴んで羽交い締めにしてドスの効いた声を上げるのだ。
「コイツをバラされたくなかったらおとなしくしろや」

 う、こわ。
 おおよそ堅気の人に向けていい顔ではなかった。
「くっ……! なんてワルい笑顔なんだ……! だが、それに痺れる憧れる……!」
 ワルこそ、格好良くクールであるのならば、匡弥の行いは正しく『デビルキング法』に則った正しいものであった。
 超絶ワルなる振る舞いにみんな、とぅんく……ってなっているのである。
「ほーらテメェら、今がボコるチャンスだぜ?」
 煽るような匡弥の言葉に悪側のヴィランたちは頷く。
 いつのまにか匡弥を悪の親玉と崇め、ヴィランたちが駆けだ出す。ついでに匡弥は人質の首根っこを捕まえたまま釘バットを持ち出して大乱闘である。

 ちぎってはなげ、ちぎってはなげを繰り返す匡弥。
 それは大人げない楽しみ方であったが、本来の目的であるDの消費には到底及ばぬものであった。
 どうしたもんかな、と考えていたが、匡弥はショーの胴元に札束をたんまりと置いて礼を告げる。
 こういう世界でなければできない暴れ方もある。
 それを思えば、こういった経験も悪くない。

 故に匡弥はこう告げて、この場を後にするのだ。
「楽しかったぜ、これ取っとけ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

犬山・小夜
お金ならある、いい響きの言葉ですねー
ここは先程頑張ってくれた可愛い弟達と一緒にぱーっと使いましょうー

まずはなんだか高そうな料理店に千疋狼達と一緒に入って食事ですねー
ほらほら、肉でも魚でもなんでも好きなだけ頼んで食べていいんですよー?
頑張ったご褒美ですからねー!

食事をしたら次は……ほほう、ここにはお化け屋敷まであるんですねー?
おやおや、なんですかこのちゃちなおどかしは……なってないですねぇ
お金に飽かせてお化け屋敷を本格仕様に大改装して、さらに本物の妖怪の自分達がおどかしてあげますよー

いやーこちらがびっくりするくらい悪魔さん達は驚いてくれますね!
もう恐れの感情でごはん三杯いけちゃいますよーあははっ



「お金ならある、いい響きの言葉ですねー」
 犬山・小夜(送り狼・f31295)はフランケンシュタインたちが集めてきてくれたD(デビル)の詰まったケースを躊躇いなく受け取って、ホクホクした笑顔で笑った。
 これだけあれば、当面の生活には困らないが、小夜は東方妖怪である。
 彼女が糧にするのは人々の感情だ。
 恐れや不安と言った感情だけが彼女の腹を満たすものであった。
 だから、これだけ沢山のD(デビル)すなわちお金が合ったところ、腹は膨れないのである。

 だからといっていらないのかと言えば、そういうわけでもない。
「ここは先程頑張ってくれた可愛い弟達と一緒にぱーっと使いましょうー」
 マジっすか! 姐さん! あざっす!
 と何処からともなく一匹が狂えば千匹の狼が狂う(イツピキガクルエバセンビキノオオカミガクルウ)に千疋狼……(舎)弟たちがわらわらと集まってくるのだ。
 これまたすごい数の(舎)弟たちであるが、彼らと協力すればたんまりともらったD(デビル)も無事に散財することは可能であろう。

「それじゃあ、まずはなんだか高そうな料理店に行きましょう。ほらほら、肉でも魚でもなんでも好きなだけ頼んで食べていいんですよー?」
 お許しが出たところで、(舎)弟たちである狼たちは小躍りするように思い思いの料理を頼んでいく。
 メガ盛りも斯くやと言わんばかりに盛大にテーブルの上には彼らの注文の料理が届く。
 瞬く間に消えていく料理たち。
 その食べっぷりを見て、小夜は満足気に頷く。

 感情を糧にする妖怪であればこそ、弟たち……まあ、舎弟であれども、その楽しそうな顔を見るのは悪くないものであったのかもしれない。
「がんばったご褒美ですからねー? お、次はどうしましょうかね……腹ごなしに歩きますか」
 小夜は配下でもあり、舎弟……あ、舎弟って言ったわ。
 まあ、今更であるけれど、舎弟たちを引き連れてアミューズメントパーク内を歩いているとお化け屋敷を見つける。

 妖怪としては、なんでお化け屋敷が売りになるのか理解に苦しむところであったが、此処は一つ本職として冷やかしてやろうとぞろぞろと舎弟たちと入っていくのだ。
「おやおや、なんですかこのちゃちなおどかしは……なってないですねぇ」
 それは本物の妖怪である小夜たちにとっては、おどかしにもならないものであった。
 だからこそ、鼻を鳴らして笑う。
 そして、同時にこうも思うのだ。

「お金に飽かせてお化け屋敷を本格仕様に大改装しましょう。さらに本物の妖怪の自分達がおどかしてあげますよー」
 それは無茶苦茶なお金の使い方であったけれど、舎弟たちは口を挟まなかった。
 姐さんあっての自分らっすから!
 と行儀よく待っているのである。そのおしりを蹴っ飛ばして、小夜は吠えるのだ。

「あなた達も手伝うんですよー」
 そこからはもう凄まじい勢いの大改装であったし、小夜たちが脅かすのは、本職どころか、本物の仕込みであったために戯れに入った悪魔たちが腰を抜かすほどの出来栄えであったことは言うまでもない。
 むしろ、マジでこれはちびるやつであると言わしめるほどであった。

「いやーこちらがびっくりするくらい悪魔さんたちは驚いてくれますね!」
 小夜たちの渾身の大改装によって恐怖が増し増しになったお化け屋敷は、小夜にとっては満腹以上の感情を糧とすることができた。
 それにしたって、悪魔たちのリアクションはたまらないものがあった。あれだけ盛大に怖がったり、驚いたり、腰を抜かしたりしているのを見るのは、久方ぶりであったかもしれない。
 かつて在りし世界においては、己たちの姿さえ見えなくなった。忘れ去られてしまったが故に幽世へと移り住んだわけであるが、それ以来であったかもしれない。

「もう恐れの感情でごはん三杯いけちゃいますよーあははっ!」
 小夜の楽しげな声がお化け屋敷の中に木霊する。 
 背後から忍び寄って、近づいて、それでいておいたてたりと大活躍である。
 彼女たちのレクチャーによってお化け屋敷は、デビルキングワールドにおいて、一番の恐怖スポットとして名を馳せることになるのだが、それはまた別の話である――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜谷・ひびき
別に金はあんた達で使ってくれても……
でも断るのも失礼か
どうせならたっぷり遊んでいこうかな

遊園地って言っても何やればいいんだろう
あんまりこういう所に来ないんだよなぁ
何をやろうかと思って見つけたのは巨大な絶叫マシーン
乗ってみるか

この世界の絶叫マシーンってどんなのだろう
少しわくわくしつつ乗ったら……あまりの凶悪さに死にそうになる!
なんだあの回転!
なんだあのスピード!
ついでに悪戯をしかけるのはやめろ!
おまけにコースが死ぬほど長い!
これ悪魔が基準なんだろうな!あいつら頑丈だもんな!

フランケン達もこういう遊びが好きなんだろうか
感想戦をするのも楽しいかもしれないな
あとはジュースを飲みつつのんびり過ごすか……



 猟兵たちにとって、D(デビル)とは即ち、オブリビオンが『カタストロフ級儀式魔術』を執り行うために必要な媒介でしかなかった。
 金銭というものに特に価値を見出すこともなかったのならば、それに執着しない者もまた居て当然であったことだろう。
 その中のひとりである茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は、爆発四散したD(デビル)を集めてきてくれた悪魔『フランケンシュタイン』たちが差し出すケースを前にして、戸惑っていた。
「別に金はあんた達で使ってくれても……」
「フガフガ。猟兵のみんの活躍にしびれたフガ。せっかくなら、カッコイイ人たちに使って欲しいフガ」

 そんなふうに言われては、ひびきも断ることのほうが不義理のように感じてしまう。
「なら、せっかくだしたっぷり遊んでいこうかな」
 ありがとうな、とひびきは礼を告げて、アミューズメントパークに足を向ける。
 これだけたっぷりとDがあれば遊べないものなんてないだろう。
 けれど、遊園地と言っても何をやればいいのだろうかとひびきは悩んでもいた。あまりこういう場所にやってくる機会がなかったのもある。
 心惹かれるものが在れば、それに挑戦してみるのもいいだろうと、何の気なしに見上げた先にあったのは、巨大な絶叫マシーンであった。

 それはひびきの出身世界では見ること無い巨大さであり、同時に本当にこれは大丈夫かと思うような創意工夫を凝らしたものであった。
「この世界の絶叫マシーンってどんなのだろうって思っていたが……なんだこれ!? なんだこれ!?」
 ひびきは早くも絶叫マシーンに乗ったことを後悔していた。
 だって、まず安全保全のためのロールバーがない。
 ないのだ。
 ほんと乗ったらすぐに出発であるし、徐々にスピードを上げていくとか、そういうハードルを超えていくとかそういう次元にすらない。

 いきなりトップギアに入ったかのような加速。
 ちょっとでも乗る前にワクワクしていたの自分をぶん殴ってでも止めてやりたいほどの殺人的加速。
 自分が猟兵でなかったのならば、その時点で気を失っていたかも知れない。
「なんだこの回転!? 曲がれるスピードじゃないだろ!?」
 終始ひびきはアトラクションの盛大なる歓迎にグロッキーであった。さらに加速していくコースターにイタズラするように悪魔たちが飛んでくるのだ。
「やめろ、やめろ! ついでみたいにイタズラするのはやめろ! ていうか、まだ終わらないのか!?」
 そう、50分コースである。
 いや、長すぎであるが、これがデビルキングワールドにおけるスタンダードであるのだから仕方ない。
 嫌なスタンダードすぎる。

 ようやくにして50分に渡る絶叫マシーンの洗礼を受けたひびきは、ぐったりとしながらコースターから降りる。
「こ、これが悪魔の基準なんだろうな……! 確かにあいつら頑丈だもんな……!」
 ぜーはーと息を吐きだしながら、ひびきは、今回出逢ったフランケンシュタインたちを思い出す。
 ああいうフランケンシュタインたちもこういう遊びが好きなんだろうか。
 そんなことを思っていると、『爆弾の悪魔』のところにいたフランケンシュタインたちとばったりと出くわす。
 よぉ、と気安く手を上げて呼びかけると、あちらも見知った顔を見かけてよってくる。

 どうせならとジュースを驕って、のんびりと彼らと絶叫マシーンについて語り合ったが、どうやらフランケンシュタインたちはああいう絶叫系は苦手なようであった。
 どっちらかというメリーゴーランドとか、回るカップとかそういうのが好きという意外なギャップを感じながらひびきは、久方ぶりののんびりとした時間を過ごしていた。
「まあ、たまにはこういう時間も必要だろ……あ、そうだ。ならよ、あっちの迷宮なんちゃらっていうのに行こうぜ、な?」
 そんなふうにフランケンシュタインたちと親交を深めつつ、ひびきはアミューズメントパークを満喫するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
霊験あらたかで賑わっている神社の祭神であり、海賊の島の船レースで大穴当ててメガリスや財宝をがっつり入手した過去があり、しかも普段の生活ぶりは慎ましやかな詩乃にとって、大金に舞い上がることなく、どう使い切れば良いのか考えました。

まずはアミューズメントパークで悪のヒーローショー見物。
住民達を説得する為の参考にしようと、セリフ回しや演出について熱心にメモを取る。
「こういう言動が受けるのですね、今後の参考にしましょう。私にできるかというと自信無いのですが<汗>。」

その後ヒーローショーの事務所に行き、「猟兵を名乗るヒーローがオブリビオンという名の敵を倒すショーを作ってほしい。」と札束積んで依頼します。



 世界が一つではなく、数多ある世界の一つでしかないことを知る猟兵にとって、生命とは多種多様に及ぶものである。
 同時に猟兵にもまた規則性はなく、想像を絶する者も存在する。
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)もまた、その一人である。
 彼女は霊験あらたかで賑わっている神社の祭神である。そう、神たる身であっても猟兵でありえる。
 それが猟兵達に規則性がなく、同時に統制がない理由でも在る。
 予知によって、それを捨て置けぬと思うからこそ駆けつけ、人々をオブリビオンから救う。

 かつては海賊島の船レースで大穴を当てメガリスや財宝をがっつり入手した過去からも、彼女の運は強運や幸運というよりも豪運であることは誰の目に見ても明らかなことであった。
 しかして彼女の普段の生活ぶりは慎まやかなものである。
 大金が例え手元に転がり込んできたとしても舞い上がることはない。
「……どうしたものでしょうか」
 そう、悩んでいた。
 これだけのDを爆発四散した屋敷から回収してきてくれた悪魔『フランケンシュタイン』たちの努力と好意を無にするのは、それこそ詩乃にとってオブリビオンを滅することよりも難しいことであったのかもしれない。

 あんな風に純粋なる好意を向けられて、断ることなど詩乃にはできなかった。
 悪意よりも好意に弱いというところが、彼女の神としての本質故であったことだろう。邪神なりきりセットを持ち込んでたことは忘れるんだいいね。
 あれは詩乃という猟兵ではなく、悪魔で邪神である。
 あんな大胆スリットの入ったドレスを詩乃さんが着るわけないだろ。だから、別人なのだ。
「どう使い切りましょう……遊んでいいということでしたが……」
 そんな風に頭を悩ませながら、詩乃はアミューズメントパークで繰り広げられている悪のヒーローショーに目を留めた。
 悪徳と美徳が逆転している世界であればこその見世物であった。

 なぜだか猟兵の一人が助っ人で参加し、それはもう極悪なる非道の限りをお手本のように見せているのは、一瞬詩乃でも面食らったものであるが、それはそれとしてなるほど、と詩乃は生来の生真面目さを発揮し、メモを取っていた。
「こういう言動が受けるのですね、今後の参考にしましょう」
 しかし、その乱暴な口調や、歯に物を着せぬ言い口には詩乃もたじろいでしまう。
 熱心に演出やセリフ回しなどを勉強してはいるのだが、それはどうにもなれぬものであった。

「私にできるかというと自信がないのですが……」
 メモを取ったものを読み返してみても、やはり自信というものは湧き上がっては来そうにない。
 セリフを告げる前に、自分の中の良心の呵責や生真面目さが先行してしまうような気がしたのだが、それがいいよね、と誰かが言った気がしたが、気のせいである。

 だが、見世物、ヒーローショーを見ているだけではD(デビル)は減らない。
 このかき集められたDを消費しないことには、また再びオブリビオンが目をつけ、『カタストロフ級儀式魔術』を行おうと目論むとも知れない。

 ぴこん。

 詩乃頭上に豆電球が閃いた気がした。
 彼女はそのままヒーローショーを行っている事務所に赴き、熱心にプレゼンを開始する。
 それは――。
「猟兵を名乗るヒーローがオブリビオンという名の敵を倒すショーを作ってほしいのです。ええ、猟兵はそれは素敵でかっこいい人達なのです。貴方方の思うクールなワルです。そして、オブリビオンは――」
 最初は渋っていた悪魔たちであったが、目の前に積み上げられた札束を前にして押し黙るしかなかった。

 だって、この世界においてD(デビル)とは即ちワルのバロメーターである。
 こんな簡単に札束をドサドサと積み上げる詩乃のワルバロメーターはうなぎ登りである。
 どんなワルいことをしてこの人、ここまでDをかき集めたのだろう。
 それにヒーローショーをセルフプロデュースするなんて……。マジですごい人なのでは? と悪魔たちは首を縦に振る。
 そうして、その後、このアミューズメントパークには、なぜだか巨額のDが投資され、盛大にリニューアルして盛況さを轟かすのであるが、それはまた別のお話である――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
分霊でもガトリングガンくらいじゃ
どうこうならないのはお互い分かってたと思うんだけど

そういう問題ではありませんの

ところでショップで買い漁ってた
この小悪魔とか堕天使とか形容詞がついてるっぽい服の山は一体

帰ったら着せ替え人形になって貰いますの

…比喩じゃないんだろうなぁ
既に爆弾の悪魔の服装っぽい服に着替えさせられてるけど
彫像にできなかった腹いせか、代りに彫像になれって事か…

本体と比べて価値観が人間に近いから話しやすくはあるんだけど
その分面倒が増えてる気もするなぁ

次は食べ歩きですの
色んなスイーツ食べてみますの

すごく体に悪そうな色合のアイスとかクレープだね
赤や橙はまだ良いけど蛍光っぽい青とか紫はきついなぁ



 いや、わかっていたのだ。
 何を、と問われれば、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はため息交じりにこう応えただろう。
「ガトリングガンくらいじゃ、どうこうならないのはお互いわかってたと思うんだけど」
 それは、彼女たちがオブリビオン『爆弾の悪魔』との激戦の最中に起こった出来事のことを指していた。
 晶はオブリビオンごと邪神の分霊にガトリングガンをぶっ放した。
 いや、それは邪視の分霊がガトリングガンではどうにもならない存在であることを認識していたからであり、別に分霊ごとオブリビオンがどうにかできないかなと思ったことではないのだ。

 それは同時に邪神の分霊にもわかっていたことだと思ったのだが、どうやらそういうことではないらしいことを晶はひしひしと身を持って痛感していた。
「そういう問題ではありませんの」
 ぷんすこしている邪神の分霊の横でため息をつく晶。
 すでに彼女はフリフリのなんかこう、女の子女の子した格好に着替えさせられて、邪神の分霊とショッピングに興じているのだ。
 いや、楽しんでいるのは邪神の分霊だけであることを此処に記しておこう。

「ところでショップで買い漁っていた、この小悪魔とか堕天使とか形容詞がついてるっぽい服の山は一体」
 それはあまりも大量な服の山であった。
 昨今袋の有料化などが叫ばれているが、デビルキングワールドにおいて、過剰包装とは美徳である。
 大仰なラッピングに包まれた衣服の山は、それだけで晶に寒気を走らせるには十分であった。
「帰ったら着せかえ人形になって貰いますの」
 その言葉に、晶は辟易する。

 比喩ではなく、文字通り着せかえ人形にされてしまう未来を幻視してしまっている。今も女の子女の子した服装は、先程まで戦っていた『爆弾の悪魔』の着用していたものに近いものであった。
「きっと彫像にできなかった腹いせなんだろうなぁ……」
 なんとも言い難い気分になりながら、晶はため息をつく。
 これも仕方のないことであると言われたら、それまでであるのだが。

 いや、忘れていたわけではないのだ。
 本体である邪神と比べて価値観が人間に近いから話しやすく、理解できる部分もあるが、根本的に彼女は邪神と繋がっているのだ。
 だからこそ、その分面倒さが浮き上がってしまっている。
「次は食べ歩きですの。いろんなスイーツ食べてみますの」
 そんな風に無邪気に笑うから、忘れがちになってしまうのだけれど。
 それでも楽しそうに笑う顔は、年相応にさえ見えてしまうのだ。だからというわけじゃないけれど。

 それでも楽しそうにしている者を見て、微笑まないわけにもいかない。
 はいはい、とげんなりしつつも付き合いのいい晶に邪神の分霊が笑う。
「はい、これですのー」
 手渡されたクレープを受け取って、晶は前言を撤回したくなる。
「すごく体に悪そうな色合いのアイスクレープだね……」
 その手にあったのは赤や橙、ショッキングピンクやビビッドカラーの青や紫といった毒々しい色合いのアイスクリームやクレープ生地。
 もうなんていうか、食欲減退色だとかなんだとか、そういう次元を超越している。

 けれど、ニコニコと邪神の分霊に促されては口にしないわけにはいかない。
 はたして、そのお味は。
 どんなものであったかは、きっと晶と邪神の分霊の楽しい思い出の一幕となって、後々に語られることだろう。
 きっと、こんな日があってよかった。
 そんな風に思える日がきっと。

「あるわけないだろ――!?」
 激辛激甘激酸。
 そんな味のパレードが弾けるみたいに晶の口内で弾けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
悪は滅びました
いえ、より強大なクノイチに駆逐されたのです!
はい、称えて称えてクノイチ称えてー

そんな感じで裏工作しながら
さてどうしましょうか

こう物理的にDに込められた魔力を発散したいところですが
それだと壊すしかありませんしねー

ではこのDを使い倒して今日の記念品をつくましょう!
こうフランケンさん全員に行き渡るくらいバッチリガッツリ作ってしまいましょう!
残ったら食べるしかありませんね食べるしか!
ここの料理全制覇いきますよー
ついてこーい!

※アドリブ連携OK



 オブリビオン『爆弾の悪魔』の脅威は、爆散して消え去った。
 それは猟兵たちが為したことであり、彼らの厳しい戦いがあったからこそ、このデビルキングワールドに『カタストロフ級儀式魔術』を引き起こさずにすんだのである。
「悪は滅びました。いえ、より強大なクノイチに駆逐されたのです!」
 爆発四散した『爆弾の悪魔』の屋敷の瓦礫の上でサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は演説をぶつかのように大きな声で注目を集めていた。

 クノイチ的に注目されるのはいいのかとか、そういう野暮なことはいいっこなしである。
 周囲には四散したD(デビル)をわざわざ集めてきてくれた悪魔『フランケンシュタイン』たちがサージェの周りに集っていた。
「はい、讃えて讃えてクノイチ讃えてー」
「クノイチバンザイ! クノイチバンザイ!」
 なんか妙にカクカクした動きでフランケンシュタインたちがサージェを讃えている。
 悪いことがクールでカッコイイことであるデビルキングワールドにおいて、かっこよさの頂点としてクノイチという概念を広めようとするサージェの裏工作が実を結ぶのかどうかわからないが、それはこれからもサージェがクノイチとして汚い流石汚いやり方を浸透させていくことにかかっているだろう。

 もしも、悪のクノイチが現れたとしても、サージェがそれを塗りつぶせばいいのだ。
 そういうものだったっけ、クノイチ概念とかそんな疑問を持ってはいけない。
「さて、どうしましょうか。これだけ大量のD(デビル)……」
 使い道があまり思い浮かばないのだ。
 それはほとんどの猟兵たちにも共通していたことであるが、もち慣れない大金を手にして、どうしていいのかわからなくなってしまうのは、どんな種族であっても同様であったのかもしれない。
 物理的にD(デビル)に込められた魔力を発散させて手短にと思ったが、それだと燃やすか壊すかしかないのが芸のないところだ。

 ふーむ、とサージェが頭から捻出したのは記念品を作ることであった。
「そう、私が活躍したから今日はクノイチ記念日。ふふ、なんとなく賞を取れそうな一句ですね! そういうわけでフランケンさんたちに全員に行き渡るくらいバッチリガッツリ作ってしまいましょう!」
 そういってサージェが発注したのは、サージェ印の缶バッチであった。
 褐色クノイチの笑顔眩しい缶バッチはフランケンシュタインたちのジャケットの胸元に燦然と輝く勲章のようであった。

 微妙にデザインがデフォルメされているところはご愛嬌というやつであろう。
 だが、それでも貯め込まれたD(デビル)は残っている。
 ならば、やることは一つである。
「食べるしかありませんね食べるしか!」
 そう言ってサージェはフランケンシュタインたちを引き連れて、アミューズメントパークに繰り出していく。
 そう、目指すはこのパークの料理全制覇である。

「さあ、皆さんいきますよー! ついてこーい!」
 良い笑顔のままサージェはフランケンシュタインたちと共にパークの中に繰り出していく。
 だが、まだ彼女は知らない。
 此処がデビルキングワールドであり、悪魔的料理の数々が彼女の胃袋を襲うことを。

 そして、悪魔的料理といえば、美味しいのは勿論のこと、カロリー的な意味でも悪魔的であるということだ。
 肥満?
 なにそれ、美味しいは正義っていうか、悪魔的な料理なんだからカロリー倍増しどころでは済まないのは予想できたことであるかもしれない。
 バターにオリーブオイル、はたまたマー油。
 もう、カロリーモンスターもびっくりなくらいに脂ギッシュな料理。
「う……これは流石に」
 けれど、大丈夫。
 こう見えてサージェはクノイチである。
 そう、クノイチはいくら食べても太らないし、なんなら一部分しか増えないので安心である。

 それを見て世の女性の方々叫ぶだろう。

「流石クノイチ。汚い――!」
 だが、それでいいのだ。
 汚いこと、悪どいこと。いくら食べても何故か腰は細いのに出て欲しいところばかりばいんばいんになってしまう。
 そんな憧れを一身に受けるのがクノイチという概念なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月12日


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#デビルキングワールド


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠シスカ・ブラックウィドーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト