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倩兮女

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●朱に染まる迎春
 市。
 新年を迎え、新しい年を祝う初市。
 神社へとむかう人々は列をなし、あぶれた人は横にある屋台へと財布の紐を緩ませている。
 門出を祝う人々の頭上から、年を越して雪がちらほらと降っていた。
 人々の熱気はそれでも止むことはない。
 情熱が色移りしたかのように、降雪にあわせて桜の花びらが行き交う人の肩に落ちる。
 ここ、サクラミラージュでは桜吹雪を見ない日は無い。
 たとえ冬の日、新年を迎えようとも、幻朧桜の花びらは静かに舞い散り、その淡い色を誰彼に魅せつけているだった。
 こん。
 民衆の一人が咳き込んだ。
 風邪か。
 熱気に溢れているとはいえ、冬の寒さでは仕方のないこと。
 こん。
 こん。こん。
 咳き込んだ人が口から何かを吐いた。
 桜か。
 否。
 雑踏に踏み固められた白い絨毯に、血泡が飛び散り朱く染め上げる。
 振り散る幻朧桜より更に朱く、朱く。
 こん。こん。
 こん。こん。こん。こん。
 咳き込む人は、一人では終わらなかった。
 口々に咳き込み、血を吐き出す人達。
 それを見て悲鳴をあげる観衆も、やがて等しく血反吐をはく。
 祝賀ムゥドに包まれるはずの初市は、血臭漂う陰惨な光景と化した。
 そして、その中を二人の女性がしずしずと歩いて行く。
 あはははは。
 はははははははははは。
 前を進む女性は嗤っていた。
 倒れいく人々を踏みしめ、履き物を朱く染め上げながら。
 後ろの女性は、屍を避けながらその後をついていく。
 哄笑する女性が後ろをふりむき、満面の笑みで連れに尋ねる。
「愉しいわねぇ、楓」
「……ええそうね、姉さん」
 そう返事をする女性。
 しかしその顔には、はっきりと憔悴の色が浮かんでいたのであった。

●グリモアベースにて
「これが、私の視た予知でございます」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
 頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
「影朧に囚われてしまった人が、言われるままに罪を供にしようとしています」
 先ほどの光景のなかを歩いていた二人。
 彼女達は姉妹なのだという。
 もっとも、そこには生前という文字が入るのだが。
「楓さんの姉である梓は影朧となってこの世に蘇りました。なぜあの様な凶行をしでかすのか現時点ではわかりません。しかし、その片棒を楓さんが担いでしまう結果になるのは間違いないことでしょう」
 たとえ仲の良かった姉妹でも、共犯になることは無い。
 ましてやそれが影朧ならば尚更だ。
「皆さんにおきましてはサクラミラージュの初市に赴きまして、楓さんを影朧から決別するべく説得して欲しいのです」
 猟兵といえど、兄弟姉妹の絆は断ちがたい。
 しかしこのままでは人々が惨殺されてしまう予知が現実となってしまう危険があるのだ。
 ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
 それは人々でごった返す初市の光景。
 この一年の幸せを家族で祝おうと行き交う人々の姿であった。
「最悪、強行な手段をも視野に入れる必要があります。心苦しいとは思いますが惨劇を回避するために、協力してくれるようお願いします」
 そう言ってライラは、猟兵達に深々と頭を下げたのであった。


妄想筆
 みなさん、明けましておめでとうございます。妄想筆です。
 今年最初の依頼は、初市。
 人々でごった返す市に現れる影朧が起こすであろう事件を未然に防ぐことです。
 一章は大勢の人がいる市。その中で影朧と接点がある楓さんを見つけてください。
 楓さんは今年で二十歳、晴れ着を着ています。
 雑踏の中で探すのにそれが助けとなるでしょう。
 猟兵達はオープニングの光景でターゲットの容姿を知っています。
 探すついでに市を楽しんでも構いません。
 神社にいけばおみくじを引けますし、そこかしこに屋台があります。
 二章は楓さんの説得です。
 対応しだいでなぜ影朧の手引きをしているのかを話してくれるでしょう。
 三章は影朧との戦闘です。
 二章の展開しだいでは妹をも手にかける姉の凶行、または止めようとして殺される妹の姿があるでしょう。

 オープニングを読んで興味出た方、参加してくださると嬉しいです。
 よろしくお願いします。
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第1章 日常 『雪と桜』

POW   :    美味しい食べ物、飲み物を楽しむ

SPD   :    仲間たちとの愉快な雑談を楽しむ

WIZ   :    幻想的な雪桜と澄んだ空気を楽しむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 新年というものは、人々を浮き足立たせるものだ。
 初市のこの熱気、どの顔を見ても楽しそうな表情を浮かべている。
 だが放っておけば、ここが惨殺の地へと変貌してしまう。
 影朧の供をする楓、彼女はなぜ匿う真似をするのであろうか。
 本人に直接聞かねばなるまい。
 この人手、知り合いも多そうだ。
 彼女に会う前に、見つかることもあるだろう。
 屋台を巡るついでに探すのも、また手かもしれない。
 雪がちらほらと降り注ぐ。
 朱に染まるにはまだ早い。
 猟兵たちは、それぞれの行動に出るのであった。
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

うむうむ、この華やかな雰囲気は心浮き立つのう。
どのような土地でも節目を祝うお祭りでは皆笑顔であふれているのじゃ。
(狼と大鷲の群れを呼び出して、人海?戦術で探索)
お主らはこの笑顔を守る為に予知で見た楓殿を探してくるのじゃよ。
わしは向こうに見えるアマザケの屋台で待っておるでな。
(甘酒の屋台でのんびり)
これ店主、わしとマニトゥにアマザケを2杯頼む。
後で大勢(狼と大鷲が)来るからその温めてある鍋の中身は全て貰うぞ。
支払いはカード(サアビスチケット)じゃ。
やはり寒い日は暖かい物に限るのじゃ。暫し風景を楽しみつつマニトゥとアマザケでぬくぬくしておくかのう。



 迎春。
 それはこの地にやってきたエウトティア・ナトゥアにとっても、浮き足立たせる何かを秘めている。
 行き交う人々の笑顔につられてか、彼女の頬も緩みがちになってしまうのだ。
 こういう祝い事は嫌いでは無い。
「楓殿、といったかのう」
 しかし予知は、凄惨な未来を映し出していた。
 グリモアベースで見た光景を、今見ている人々に重ね合わせる。
 慶喜ごとをひっくり返すなどとは、彼女にとって許しがたいことであった。
 今現在ではわからぬが、この一件にあの人物が絡んでいることは間違いない。
 とはいえこの中から探すのも、非常に骨が折れることだろう。
「やれやれ、新年早々厄介なことよ」
 愚痴をこぼしながらも、エウトティアは片手をあげて皆に合図した。
 狼と鷲の群れが彼女を中心に四方へと飛んでいく。
 人の多さに対抗するのは、やはり数。
 エウトティアは人を探すのに基本の基本、人海戦術で手がかりを追うことにした。
 大勢が離れたあとに、ぽっかりと空間が拡がる。
 それは冬の寒さを一段と感じさせるものであった。
 心なしか、降り積もる雪が一層と強さを増したように感じる。
 ぶるりと身体を震わせたエウトティアが辺りを見回すと、しめしめといった表情を浮かべた。
「これは好都合。皆が戻ってくるまであそこで待つことにするかのう」
 そうしてエウトティアも、自分の足を動かすのであった。

 屋台の暖簾が、外気の寒さを幾ばくか和らいでくれている。
 エウトティアは椅子に座って杯をあおっていた。
 彼女が居るのは甘酒を売っている屋台。
 そこで身体を温めているのであった。
 甘酒を温めている鍋の熱気が暖簾によって阻まれて、中は意外と暖かい。
 しばし身を休めるには絶好の場所である。
 彼女の足下に身をかがめているマニトゥにも、甘酒の器が置いてあった。
 自分だけ頂こうとする考えは彼女には無い。
 相伴に預かるのは、皆一緒だからである。
「これ店主、店は仕舞いでよいぞ。その鍋の中身はわしが全て貰うでな」
 御冗談を、と店主は鼻で笑った。さては甘酒に酔うた戯れ言か。
 そんな顔を浮かべていたが、エウトティアが懐から出した物を見て色が変わった。
「もちろん支払いはきちんとするのじゃ、このカードでな」
 猟兵に与えられた特権、サアビスチケットで甘酒を買い込んだエウトティアは、暖簾を上げて辺りを眺めてみた。
 温かい口内から吐かれた息が、すぐに雪のように白くなる。
 彼らはうまくやっているであろうか。
 首尾良く情報を集めることが出来たのならば、暖かく迎えてやらねばなるまい。
 そうこう考えている内に、一匹の鷲が舞い戻ってきた。
 報告を聞く前に、エウトティアは店主に一杯追加を頼む。
 杯を鷲の口元に近づけ労をねぎらってやった、ついでに自分とマニトゥの分も追加して。
 背を回し、暖簾の向こうを眺めながら杯をあおる。
 新年を祝う初市の活気。
 どこもかしこも人々の笑顔でいっぱいだ。
「うむ、やはり暖かい物は良いのう」
 身も心も温めて、エウトティアはこれからのことに備えるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。

喜ばしい空気に似合わぬ血生臭い光景が脳裏に焼き付く。
少し顔を曇らせた浄雲とは正反対に、市井を行きかう人々は一様に顔を綻ばせていた。
「折角の晴れ着、血に染めるのは勿体ないでしょうに」
焼き付いた光景を洗い流すかのように酒をあおる。
この人々の笑顔を奪わせてはならぬと胸が騒ぐ。
「しかして焦りは禁物。目立つ格好をしているのならば捜索は外道に。わたくしは足で稼ぎましょうか」
使いを走らせ、浄雲は屋台周りで飲食、特に酒を飲む人間に目をつけて聞き込みを行おうと試みる。
酌をして話に耳を傾ければ、あとは酒が口の滑りをよくしてくれることだろう。酒で頬に朱をさして少し科を作る仕草もお手の物だ。



 朱に染まる人々。それに積もる雪。
 惨劇を覆い隠そうとする雪に抗うように、血の染みはじわりと血の底から這い上がり、そこかしこに血桜を現していく。
 この世に現れた地獄。
 音羽・浄雲は脳裏に浮かんだ光景に眉宇を曲げ、瞬きして打ち消した。
 目の前に映るは行き交う楽しげな人達。
 あの予知はまだ、出現してはいない。
「折角の晴れ着、血に染めるのは勿体ないでしょうに」
 逸る己の気持ちを沈めようと、浄雲は酒に口をつけた。
 甘酒ではない。度数のある正真の日本酒だ。
 影朧がここに現れるのは間違いないこと。
 しかし今だ手がかりは掴めてはいない。
 だからこそ、自分が動くのだ。
「しかして焦りは禁物。目立つ格好をしているのならば捜索は外道に。わたくしは足で稼ぎましょうか」
 グリモアベースで見たかの人物、楓は季節柄に相応しい晴れ着を着こなしていた。
 せっかくの一張羅、血に汚しては風情が無いというもの。
 だらりと腕を下げれば指先から闇が落ち、人々の影を縫って先へと奔る。
 音羽忍法、外道。
 このような場所でなら色々と見聞きしながら対象を探せるであろう。
「さて、それでは諜報活動といきましょう」
 酒を飲み干し、浄雲は雑踏の中へと身を沈ませて行くのであった。

 祭りというものは、人の気持ちを軽くさせる。
 普段とは違った雰囲気に、見慣れない人でも気さくに話しかけられるようになるものだ。
 その中を行き交いながら、浄雲は耳をそばだて楓の情報を掴めないかと話をかわす。
「姐さん、別嬪さんだねえ。ひとつ買っていくかい?」
「それはどうも。でも、他のみなさんにも仰っているのでしょう?」
 年相応の女性を演じ、浄雲は屋台の主ととりとめもない話に興じる。
 楓とは何の接点もない人達。
 だからこそ、目についたものをたいした事も無く話してくれるものだ。
 この先にある神社では、初詣の他に成人式も行なうらしい。
 この市に来ている晴れ着の女性達はその予行、お披露目の練習といったところか。
 耳ざとく彼女達の話を聞きつけ、浄雲はその一団に酒を振る舞う。
「成人おめでとうございます。ようやく酒を飲める年齢ですね」
 見ず知らずの人からの饗応。
 普段ならば訝しがることだが、今は新年正月。
 祝いの席であるならば、これを断るのは野暮というものであろう。
「ありがとうございます、ええと……」
「音羽と申します」
 年の近いことが功をそうし、難なく女性達と打ち解ける。
 女三人よればとはいうが、それより多ければ尚更だ。
 女性達は浄雲が聞かずとも、自分からべらべらと喋ってくれる。
 神社の境内へとむかう先で楓の姿を見かけたという。
 彼女たちも今し方そこで旧知に会い、久方ぶりの交友を深めてきたそうであるらしかった。
「神社周辺、ですか」
 ならばと、外道の意識もそこへと向かわせる。
 事が起こる前に必ずや見つけてみせよう。
 そのまえに、と浄雲は左右を見回した。
 せっかくの屋台である。
 道すがら彼女は屋台でつまみを求めながら、人々の話に耳を傾けまた酒に口をつけるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エミリロット・エカルネージュ
●POW
楓ちゃんを探してコンタクトを取るのもそうなんだけど、その前に神社でお参りして行こうかな

ボクも親友のビスマスちゃんも
それぞれ大切な物を捨てる様に長い間
追われていたけど

逃げ隠れるのも、終わりにしようと
思うし、爺ちゃんから受け継いだ
餃心拳……捨てたくなんてないからね

ボクは受け継いだモノを
餃子の拳を絶対に捨てない
最後まで託された物を守り抜けます様に

ビスマスちゃんも守り抜きたい
信念を貫き通せます様に

これで良し、後はおみくじを引いて
屋台巡りをしながら楓ちゃんを探し回るかな?

二十歳で晴れ着、これだけで手掛かりになるかな?『第六感』にも頼りつつ『情報収集』をしながら探すかな

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 町の活気を通り抜けて、エミリロット・エカルネージュは神社の境内へとやってきた。
 ここにも相変わらずの人、彼女はその混雑を抜けて神社の方へとむかう。
 楓を探すのは勿論だが、まず初詣をすまそうとエミリロットは考えたのだ。
 去年は色々とあった。
 年が新しくなっても、自分の本質という物はそう易々とは変わらない。
 だが、決意を新たにすることはできるのである。
 銅銭を投げ入れて礼に乗っ取った参拝をし、エミリロットは目を瞑った。
 浮かんでくるのは自分のこと、友のこと、そして師匠。
 神社に参拝するのは自分独り、同門と一緒に参ることも出来はしない。
 しかし培ってきた拳法は、確かに己がここにいると感じさせてくれる。
 辛い修行も、思えば自分を創るための日々であったのかもしれない。
 瞼に、これまでのことが思い起こされる。
 いつの間にかエミリロットは殿ではなく、開いた己のてのひらをじっと見つめていた。
「……爺ちゃん」
 両手に、過去のありし日々が走馬灯のようによぎる。
 師匠であり育ての親でもある、老師の顔を。
「餃心拳……ボクは受け継いだモノを餃子の拳を絶対に捨てない」
 だから爺ちゃん、見守ってくれるよね?
 思いを柏手に封じ込め、エミリロットは一礼した。
 再び起こした顔は、年相応の娘の顔である。
 くるりと振りむいて、彼女はにこりと呟いた。
「さて、探す前におみくじでも引いていこうかな?」
 そう言い残して、賽銭箱を背にするのであった。

 片手にひらひらとおみくじをなびかせて、エミリロットは楓を探す。
 くじの結果は吉と出た。
 しかし探し人に対してはあまり良くはないようであった。
「う~ん、こうして見ると着飾った人が多いよね?」
 彼女の言う通り、境内のあちこちには晴れ着に身をつつんだ女性がいっぱいだ。
 二十歳、晴れ着と情報は貰ったが、さすがにこれだけ多いと行き当たりばったりでは見過ごしてしまいそうである。
 己の勘を信じ、とりあえず女性群からつかず離れず、よもやま話に聞き耳をしながら楓を探すことにするエミリロット。
 彼女が少女で幸いした。
 あっちにこっちにと女性陣の周りをフラフラする姿は、男性であれば咎められたに違いない。
 見留がれることもなく、流れてきた話をエミリロットは繋ぎ合わせる。
 聞こえてきた話の中には、楓の知り合いもいたらしい。
 運良くエミリロットは、楓の人となりを知ることが出来たのだ。
 楓には姉がいた。三歳年上の姉。名は梓という。
 梓は成人を迎える前に亡くなったらしい。
 それも事故で。
「でも良かったんじゃ無い? あんな奴、死んで当然よ」
「そうそう、楓さんも二十歳むかえることも出来なかったんじゃ」
「ちょっと! 新年早々、故人を悪くいうことはないわ」
 女三人のかしましさ。
 咎められた者も口をつぐみ、別の話題へと舌を変える。
 その様子を遠巻きに見ていたエミリロットは考えあぐねる。
「仲は……あまり良くなかった?」
 どういうことであろうか。
 グリモアベースで見た光景。
 確かに姉のあとを妹はついていっていた。
 あのとき見た、楓の表情。
 浮かない顔は、また別の意味を含んでいたのであろうか。
「ともあれ、これは仲間にも伝えるべきかな」
 情報を共有するべく、エミリロットはその場を後にするのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
新年のめでたき日に悲劇は合わない。
必ずや阻止してみせよう。

冬備えの格好で市へ。
病を撒く類の術なら事前に避難経路などの確認も大事だろう。
警らという程の事も出来んが、市の全体を見て周り特に姉妹連れに注意しておく。
黒椿も起こして探索に役立てる。
私は怪しく見られぬよう買い食いでもしながら回るが、黒椿にはやらん。貴様は仕事が先だ。

姉妹連れを見て暫しの回顧。
里の姉様達は息災だろうか。このような人出とは無縁の村だったが。
…ふふ、いつまでも妹気分では笑われてしまう。私にも可愛い妹分が出来たしな。

……だからこそ、姉妹の縁をこの手で断たねばと思うと。
…為すべきを為す、覚悟は刀に込めるとしよう。

■アドリブ歓迎です。



 鍛錬を積んでも冬の厳しさはあらがいがたいものだ。
 影朧の行いを阻止しようとやってきた花盛・乙女はいつもより厚着をして事に臨もうとしていた。
 襟巻きをまき直し、口から漏れる息の色は白い。
 しかしその寒さの中でも市に群がる人々には笑顔が浮かんでいた。
 初市の賑やかさのなかで、花盛の顔はいささか険しかった。
 当然である。ここへ来る前に悲劇を見せられたのだから。
「敵は胡乱な術を使うのか?」
 血を吐き崩れ落ちる人々の幻影。
 仮に襲撃があったとしても避難経路の確保、そのための検分は済ませなければならないであろう。
「まだ安全と思うが、用心はするべきだろうな」
 花盛は嫌々ながら己の刀に手をかけた。
 するとどうであろうか。
 擦りあげたように赤煙が立ちのぼり、鬼の顔つきをした化生がその場に形を為した。
「同じ狢であれば貴様の方が都合が良いであろう。何かあれば知らせろ」
 浅ましき化生に冷たく言い放つと、煙鬼は冷笑を浮かべながらユラリと身体をゆらめかせ、たちまちその場から姿を消した。
 花盛は此奴が嫌いであった。
 しかし人の役に立つならば、己の嫌気など些細なことであろう。
 要は使い方しだいである。
「尋ね人は姉妹であったな」
 気持ちを切り替え、花盛は辺りを見回した。
 新年の良き日。
 そのせっかくの舞台を血で穢すことなど無粋の極み。
 必ずや阻止してみせよう。
 そう決意し、花盛は襟巻きをたなびかせて、探索に出向くのであった。

 当たり前だが、人の数は多い。
 家族連れ、親子連れ、そして姉妹兄弟。
 尋ね人はいまだ見つけることは出来ていなかったが、花盛の頬は緩んでいた。
「……そういえば何年も里に帰ってはおらぬな」
 猟兵という路に休息という文字はない。
 そう意気込んで刀を振るってきたが、楽しげに語らう娘達をみると望郷の思いがじわりと浮かんでくるのであった。
 生まれた村にも、新年を祝う祭りがあった。
 このように人手はなかったが、寄り添い合い、楽しげに顔を合わせる一幕が思い起こされる。
 懐かしさに後ろ髪を引かれる気持ちを押さえて、花盛は柄を握りしめる。
「……ふふ、いつまでも妹気分では笑われてしまうな」
 そこにあるのは笑顔のなかにも決意を秘めた、剣士の顔。
 護るべき者のために剣を振るう、猟兵の姿があった。
 里を離れ姉妹とは離ればなれになってしまったが、今の自分には家族と呼べる人達がいる。
 だからこそ。
「断たねば、ならぬか」
 凶行を回避するために、姉妹の絆を断つ。
 果たしてそれが出来るのであろうか。
 いや、やらなければならないのだ。
「いざとなれば、汚れ仕事は私が引き受けよう」
 握りしめていた腕に纏わり付くように、煙鬼が戻ってくる。
 してやったり、といった顔。
 下卑た顔は侍にはそぐわないものだ。
 それを使役する己の、なんと愚かなことよ。
 陰鬱な気分を打ち消そうと辺りを見た花盛に、ひとつの屋台が目にとまった。
「そういえば、歩き続けてひとつも口にしてはなかったな」
 腹が減って無様に足を引っ張っては花盛の名が折れる。
 目当ての人物に会う前に、腹ごしらえでもいたそうか。
 買い食い。剣士としては失格であろう。
 きゃいきゃいと騒ぐ娘達に混じって、屋台の品を食す花盛の姿。
 そこには年相応に振る舞う女性の姿があったのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャック・アイトール(サポート)
普段の口調「オレ、てめぇ、だ、だぜ、だな、だよな?」
時々(素が出てるとき)「オレ、アンタ、だ、だね、だろう、だよね?」

アポカリプスヘル出身、ヤドリガミってやつらしい。
戦いも何もない時間ってのは慣れねぇな、まぁ折角だしゆっくりさせてもらうが。

あまりはっちゃけることはしねぇ、一人で静かにしてることが多いな。
やらなきゃいけねぇことがあるなら多少は手を貸すぜ
宝探しや戦利品を持って帰っていいって言うなら少しノリがよくなる

大体何でもやるが行き過ぎは良くねぇよな、公序良俗から外れすぎない程度に任せる
あ、お色気系はお兄さん得意じゃないかな、うん!

口調は大体プレイングの通り
連携もアドリブ大歓迎、よろしく頼むぜ



「初市、ねえ」
 ジャック・アイトールは大きくため息をつく。
 人助けとあらばいかねばならないと意気込んできたものの、こういう何事もない空間は居心地が悪いと感じていたからだ。
 やる気が出ないわけではない。
 戦乱渦巻く世界にくらぶれば、ここは静かすぎる。
 祭りを楽しむ人々の喧噪。
 それはわずかばかりの食料を奪い合おうとする人々の怒号とはまったく違う賑やかさなのだ。
「まぁ折角だしゆっくりさせてもらうがね」
 ジャックは屋台の品を囓りながら、辺りを捜索し始める。
 ゆっくりとはいうが、傭兵としての本分は忘れるはずも無い。
 楓という女性。
 それが事件の原因となっているならば、ここで見つけなければならないのだ。
 とは言っても人通りは多く、おいそれと見つけることは難しい。
 とりあえず目についた晴れ着の女性方に注目し、うろうろとあてもなくジャックはさまよっていた。
 すると、女性の困った声が耳に入る。
 楓ではない。
 しかし、酔っ払いに絡まれているうら若き女性が、ジャックの目に入ったのであった。
 やれやれと、頭を掻いた。
 該当者ではないが、見過ごすわけにもいかない。
「行き過ぎは良くねぇよな」
 女性と酔漢の間に割って止めにはいろうとするジャック。
「楽しむのは結構だけど、その辺にしときな。嬢ちゃん困ってるじゃねえか」
「ああん? 引っ込んでろチビ!」
 悪態とアルコール臭。
 それがジャックの怒りに油を注ぐ。
「誰が……!」
 素人相手に技は用いない。
 しかし減らず口を叩く馬鹿にはきついお仕置きが必要だろう。
 二の句を告げる前に、ワンツーのストレート。
 それで相手は大人しくなった。
「余計なお世話だったかな」
「……いえ、ありがとうございます」
 ぐったりする男を抱え運ぼうとするジャックに、娘は礼を述べてくれた。
 そんな彼女に、ジャックは精一杯の笑顔で尋ねた。
「そうだ、もし良ければ楓って人を知っているかい?」

成功 🔵​🔵​🔴​

蛇塚・レモン(サポート)
多重人格者のシャーマン×戦巫女
いつも元気で優しく、快活な性格
その身に蛇神を宿す20歳の娘

普段の口調
「元気一杯レモン(主人格)」
語尾に『っ』を多用します

時々「蛇神オロチヒメ(裏人格)」です
老人口調NG
レモンの母親代わりの白蛇の神様(元邪神)

霊能力(念動力)で空を飛んだり、運搬したり、物体を操作することが得意です
食べること大好き!
お肉や甘味は大歓迎!

UCで受肉した蛇神様と一緒に日常を楽しみます
この際、レモンは両目が琥珀色、蛇神様は両目が真紅に変化
一見すると双子のようだけど、接し方は仲のいい母娘兼親友

レモンは年上の渋いおじ様大好きっ!
おっさんがいると尊さで暴走するので、蛇神様がツッコミ役になります!



「さあーて、楽しまないとねっ!」
 桜花と雪片が舞う祭りの市を、うきうきと蛇塚・レモンがはしゃいでいた。
 こういう人々の祭りは、わけもなく気分が高揚してしまう。
 そして一目を惹く屋台の品の数々。
 あれも欲しくこれも欲しい。手が何本あっても足りないくらいだ。
 落ち着け、というほうが無理があるだろう。
 新年の空気がレモンの財布の紐を緩めさせ、甘味を買い求めることを強いさせていた。
「落ち着きなさい、レモンや」
 彼女の頭の中で誰かが囁く。
 その身に宿す蛇神さま、オロチヒメの声である。
「わかってるよ! 楓っていう人を探せばいいんだよねっ!」
 口で味わっていたリンゴ飴の甘さが、依頼内容を打ち消そうと侵食していたが、オロチヒメの声によってレモンは本分を思い出す。
「でもでもこんな楽しいこと、まずは一緒に楽しんだほうが良くないっ?」
 レモンが片手を上げた。
 するとそこに、もう一人のレモンが姿を現す。
 違ったことといえば、目の色が違うだけだ。
 現れたレモンは、やれやれと被りを振った。
「やれやれ、仕方のない娘ですね」
 現れたもうひとりのレモンは、顕現したオロチヒメであった。
 その手を握り、レモンはかけ出す。
「とりあえず、あっちの屋台を見てみない?」
 言葉では注意するが、それ以上とがめ立てはせず、一緒についていくオロチヒメ。
 前しか見ないレモンに代わって、首を左右に振り確かめながら後を行く。
 楓という女性は、この場所のどこかにいるのは間違いない。
 片方が楽しみ、片方が見つければ帳尻を合わせることが出来るだろう。
 そんな真面目な顔をしているオロチヒメに、紙皿が突きつけられた。
 みればレモンも同じ紙皿にヤキトリをのせているではないか。
「甘味ばかりじゃ飽きるしねっ。まずはこれでも食べようよ!」
 満面の笑み。それにつられてオロチヒメも笑う。
「やれやれ、仕方のない娘ですね」
 そう言って、娘といっしょに屋台が連なる路を歩むのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『花びら舞う帝都の下で』

POW   :    「聞かせてみろよ、お前の本心を……でっけえ声で叫んでみろ!」

SPD   :    「この写真に写っているのは家族ですね。我々が守ります、安心してください」

WIZ   :    「影朧は人外にてあなたの手に余る物、我々の手に委ねてください」

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 神社。
 そこから離れた林の中。
 そこに楓は居た。
 彼女の顔に、祭りを楽しむ色はうかがえない。
 重く沈んだ表情で、じっと地面を眺めていた。
「楓ー?」
「どこにいったのかな?」
 その声にはっと振り返り、慌てて声がした場所から遠ざかる。
 陰からひそんで見れば、自分を探している級友たち。
 はやく過ぎ去って欲しい。そう楓は考えていた。
 彼女たちは、ここに来るべきでは無いのだ。
 呆れてもいい。怒ってもいい。
 そうすれば、悲劇に巻き込まれることもないだろう。
 大きくため息をついた。
 降りしきる雪は、自分の肩にも降り注ぐ。
 だがそれは、そっと手で払えばすぐに落ちるほどの粉雪。
「……このまま、雪に埋まって消えてしまえればいいのに」
 時間は刻一刻と過ぎていく。
 だが一般人である自分にはどうしようもない。
 ただここで、無為に時を潰すことだけだ。
「はあ……」
 楓は先ほどより、大きくため息をついたのであった。

 神社で楓と、その友人らしき人影を発見した猟兵達。
 目的の人物は見つけた。
 あとは影朧との関係を断つことだけだ。
 周辺から事情を聞き出してみるか。
 それとも直接正してみるか。
 猟兵達は、二の足を出すのであった。
エミリロット・エカルネージュ
楓ちゃんの事を色々神社周辺を中心に【情報収集】で聞き回り
或いはさっき楓ちゃんの事を語っていた知り合いが居たら

事情を話し楓ちゃんとその姉の事を詳しく聞いてみるよ

必要なら猟兵と言う事も明かして。

●POW
余り仲が良くなかった……ひょっとしたら

姉が影朧になる前から楓ちゃんは畏怖していたか、或いは苛められていて

今も尚、それを引きずってるんじゃ

集めた情報と推測を込めて
楓ちゃんに直接聞いてみよう
もし姉に恐怖や焦燥感があるなら

必要ならボクのUCを発動させて
それを『属性攻撃(手袋)』と『化術』を併用し剣から手袋にして
撫でて落ち着かせ

恐れや焦燥感とかの負の感情を癒し弱らせる事を試みるよ

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


花盛・乙女
隠れ鬼をしているなら、見つけるのも鬼の仕事だ。
まだるっこしい方法は私の性に合わんからな。
雪に埋まって消えたいなんて儚い事は口に出すものじゃない。
溜め息を吐くくらいなら、その心にあるものを吐き出してみないか?

後先になるが名乗りはきちんとしておこう。
名前、猟兵である事、危機を阻止しに来たこと。
それがつまり、姉君を倒す事であるという説明もだ。
察するに今の姉君には恐怖しているように思える。
本当に想っているなら…共に戦う道もある事を示そう。
転生だったか。この世界では、魂を浄化できるそうだ。
それは私達猟兵ではなく、きっと楓殿の協力が必要だ。

だから確認だ、楓殿。
姉上をどうしたいか、教えて欲しい。



 楓の姿を追い、神社へと辿り着いたエミリロット・エカルネージュ。
 彼女はここに来る道程から、楓の人となりを聞くことが出来た。
 楓の姉である梓は、気性の激しい女であったという。
 周りを見下し己以外を袖にする、まるで歌劇に出てくる悪役令嬢のような存在であった。
 楓はそんな姉に、使用人のように扱われていたという。
 姉妹。
 その響きには、家族の温かみが含まれている。
「うっかりしていたんだよ」
 まさか、その文字に、上下関係が刻まれていたとは。
 血縁ではなく隷属。
 その関係性を断ち切ることが今回の鍵になることは間違いない。
 自分を縛りつけていた存在が蘇り、再び己の前に現れる。
 その恐怖は、どれほどのものであろうか。
 グリモアベースで見た楓の表情。
 あれは、そういった意味合いを含んでいたのではないだろうか。
 今のままでは推測を越えない。
「やっぱり直接聞くべきだと思うんだよ」
 エミリロットは頷き、楓に会うことを決めたのだった。

「だ、誰です!?」
 見知らぬ人物に不審そうな声を荒げる楓。
 煌びやかな服装に、怯えがはっきりと見てとれた。
 エミリロットはつとめて冷静に、彼女に向かって名乗りをあげる。
「はじめまして、ボクの名前はエミリロット・エカルネージュ。いちおう猟兵って呼ばれている者なんだよ」
 猟兵の証であるサアビスチケットを懐から取り出し、身分を証明する。
 明かしたことで幾分か気分は和らいだのか、楓の表情が和らいだ。
「猟兵さんが、いったい私に何の御用ですか?」
 楓の質問。
 それに答えたのはエミリロットではなかった。
「猟兵の役目は、人を護ることにある」
 凜とした声。
 楓とエミリロットが振り向けば、そこに居たのは一人の剣士。
 花盛・乙女の姿があった。
 楓を探すために色々と駆けずりまわったのであろう。
 吐く息は相変わらず白い。
 だがその呼気には、溢れる熱気が感じられた。
「後先の非礼を詫びるが名乗らせて貰う。私の名前は花盛・乙女、そちらと同じく猟兵だ。そして……危機を阻止しに来た」
 言葉を選び花盛はエミリロットが言わなかった先を続ける。
 その言葉に、楓はそっと顔を伏せた。
 エミリロットと花盛は、その表情で確信する。
 やはりこの娘は、何かを知っている。
 影朧に関する何かを。
 逡巡する彼女を助けなければ、影朧と同じく闇に引き摺りこまれて悪の道へと進んでしまうだろう。
 二人の脳裏に、グリモアベースで見た光景がよぎった。
 予知は変える、変えてみせる。
「盗み見は良からぬ行為とわかってはいるが、先ほどの貴殿の行為、姉君には恐怖しているように思えた。溜め息を吐くくらいなら、その心にあるものを吐き出してみないか?」
 花盛の言葉にエミリロットも続く。
 「もしかしたら楓ちゃんは、生前からお姉さんに苛められていたのかな? それで怯えて、正常な判断が出来なくなっているんじゃないかな」
 エミリロットの掌が剣を生み出す。
 剣は柔らかい光を放ちながら姿を変え、手袋へと。
 そしてその格好から漏れ出す光は辺りを照らし、楓の心中に染みこみ、癒やす。
「だとしたら、ボク達が護ってあげるよ。だから、なにがあったか話して欲しいんだよ」
 撫でようとするエミリロット。
 楓は逃げようとしない。
 黙って頭を撫でられ、下を向いていた。
「……私は、許されないことをしたのです」
「それは悪事の片棒を担ぐほどのことなのか?」
 花盛の声。
「正直に話すが私達は影朧、姉君を倒す。だが貴殿にはいまだ迷いが見える。本当に想っているなら…共に戦う道もある事を示そう」
 花盛が襟巻きを払うと、被っていた雪がふり散った。
 そして幾つかまとわりついていた、桜の花びらも」
 それを横目で追いながら、花盛は語る。
「幻朧桜……儚く良き物だ。この世界では、魂を浄化できるそうだ。だがそれは無理矢理にという訳にはいくまい。それは私達猟兵ではなく、きっと楓殿の協力が必要だ」
 猟兵達の言葉に、楓はやがて、おずおずと顔を上げた。
 暗い表情は相変わらず。
「姉は……気性の激しい人でした」
 ポツリポツリと語り出す楓。
 その語りに、二人は黙って耳を傾ける。

 楓が物心ついた時から、姉である梓は手荒な真似が多かったのだという。
 人を人とも思わぬ不遜な態度。
 当然人は離れ、梓は独りぼっちとなってしまう。
 そこで姉が目をつけたのが、妹の存在であった。
 家族という最小単位。
 他人ならば家に逃げ込むことも出来ようが、姉妹であれば何処へ逃れよう。
 父や母は、姉妹のやりとりをただのじゃれ合いとしか感じてなかった。
 父母の前では梓は良き姉を演じていた。
 歳をとるにつれ、梓は狡猾を増していったのである。
 地に這う根の如く、姉の悪辣さは静かに太く、楓の心を蝕んでいく。
 長年の虐待は、楓に反抗しようとする気概を喪わせてしまっていたのだ。
 生前も、姉に従って悪事に荷担したりもした。
 姉の言うがままされるがままに、決して悪事はバレずに。
 だが犯罪をしでかしてしまったという行為は、楓の精神を更に痛めつけていく。

「だから私は、あなた方が助けるべき人間ではないのです」
「違うと思うな」
 エミリロットの掌が光る。
 それは再び温かく柔らかく、周囲を照らす。
「楓ちゃんがここにいたのは、他の人を巻き添えにしたくないと思っていたから。それは良心があるっていうこと。お姉さんとは絶対に違うって思うよ」
「左様」
 花盛が両手で楓の手を握る。
 彼女はどのくらい長い時間、ここに佇んでいたのであろうか。
 花盛の手から、楓の手へと温かさが奪われていく。
「雪に埋まって消えたいなんて儚い事は口に出すものじゃない。暴を奮う鬼あれば我らが斬ってくれよう」
 握る花盛の手は、自然と力が入っていた。
 姉と呼ぶ人はいた。妹と呼べる人も出来た。
 だがそんな人達を、悪事に染めようと思ったことは一度も無い。
 害そうなどという考えなど、起こったことはない。
 それは姉妹などではない。
 断ち切ってしまうべき、因果の鎖である。
「だから確認だ、楓殿。姉上をどうしたいか、教えて欲しい」
 真摯な、それでいて真っ直ぐな花盛の問いかけ。
 楓はようやくその視線を受け止め、前を向き始めようとしていた。
「ボクからも頼むんだよ。楓ちゃんの本当の思い、ボク達は聞きたいんだよ」
「わ、わたしは……」
 猟兵達の問いかけに、楓は口を開こうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

おお、ようやく楓殿を見つけたのじゃ。
どうやら浮かない様子、やはり本意ではないのじゃろうな。
わしは難しい事はよく解らぬ、ここは真正面からお話してみるのじゃ。
(陰鬱な雰囲気を吹き飛ばすように朗らかに)
やあやあ、楓殿じゃな?わしは猟兵のエウトティアじゃよ。傭兵的な不思議なパワーで梓殿が虐殺を行うと知って止めにきたのじゃ。
どうじゃ?わしらなら不思議パワーで惨事を未然に防ぐ事もできるが、ここはひとつ事情を話してみぬかのう?
ほれほれ、もふもふなマニトゥの背に腰かけて温かいアマザケでも飲みながらくつろぐがよいぞ。
まだ時期が早いが精霊にお願いして【春属性】の【そよ風】も吹いていて心地よいぞ?


音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。

聞いた話を整理する限り姉妹仲はあまりよろしくはなかったのだろうか、と思案する。
「まだ些か情報が欠けますか」
評判がいいとは言えない、事故で命を失い影朧と化した姉と、それに付き従う憔悴した妹。
姉の死に事故以外の何かがあるのだろうか。
「周りの人物には推し量れない、でしょうね」
本人に問うには酷かもしれない。
しかし問わねばならぬ、明かされぬ。
ならば。
「貴女も、貴女のご友人も、必ずやわたくしどもが守りましょう。故に、聞かせてはいただけませんか?」
何故、従うのか。
何故、その様な顔をするのか。
明かさぬ方がいいのかもしれない。知らないかもしれない。
しかし、今は藁の一片のも逃せないのだ。



 初市を巡っていたエウトティア・ナトゥアも、楓の姿を見つけていた。
「おお、ようやく楓殿を見つけたのじゃ」
 見つけるという目的は達成した、あとは影朧との関係を正すのみ。
「まだ些か情報が欠けますが」
 エウトティアと一緒に歩く音羽・浄雲。
 彼女の頭の中では今だピースが当てはまってはいない。
 なぜ彼女は影朧に付き従っているのか。
 その疑問は今だ晴れてはなく、完全に解決とは言いがたい。
 想念は概念を縛りつける。
 この疑念が晴れなければ、妖を滅したとしてもいずれこの世に舞い戻ってくるのではないだろうか。
 浄雲にはそれが気がかりだったのである。
「ふむ、浄雲殿もなにやら浮かないご様子のようじゃのう」
 横目で見ながらエウトティアが笑った。
 じゃが、と続ける。
「わしは難しい事はよく解らぬ、じゃからここは真正面からお話してみるのじゃよ」
「そのようですね」
 浄雲が頷いた。
 百聞は一見にしかず。
 彼の者に窺えば、この疑念は晴れるに違いない。
 それがどんなことであろうとも。
 どんなことであれ、無辜の人々を護るのは猟兵の業なのだから。

 楓の前に二人は姿を現した。
 出来るだけ警戒されずに、明るく努めて。
 楓の表情はいまだ晴れていない。
 これからのことに不安があるのだろう。
 無理もない。
 何の力もない一般人が、影朧相手にどう立ち向かえというのか。
 しかし彼女は、前を向き始めようとしている。
 その一歩を踏み出すことが出来るのならば、結末まではあと僅かだ。
「やあやあ、楓殿じゃな? わしは猟兵のエウトティアじゃよ。先ほどの御仁方と同じく傭兵的な不思議なパワーで梓殿が虐殺を行うと知って止めにきたのじゃ」
 身分を明かし、エウトティアは用件を伝えた。
 ちらりと後ろを振り返る。
 神獣マニトゥの様子に変わりは無い。
 影朧の脅威をまだ周辺には感じてはいないようだった。
 ならば、話あう時間はまだまだある。
 ふりむき直し、エウトティアは続けた。
「どうじゃ? わしらなら不思議パワーで惨事を未然に防ぐ事もできるが、ここはひとつ事情を話してみぬかのう?」
「事情、ですか?」
 わずかに眉をひそめる楓。
 その身に、浄雲の言葉が降りかかる。
「何故、従うのか。何故、その様な顔をするのか。我々周りの人物には推し量れないでしょうね」
 人が話したくない事柄は、古き傷痕を抉るようなものである。
 だが、問わねばならぬ時もある。
「貴女も、貴女のご友人も、必ずやわたくしどもが守りましょう。故に、聞かせてはいただけませんか?」
「……私は、許されないことをしたのです」
「それは?」
 浄雲が問うた。
 楓が口をつぐんだ。
 寒風が吹く。楓と猟兵達の間を通り過ぎていく。
 それが、彼女との距離だった。

「まあまあ浄雲殿、あまり詰問しては話辛いであろう。ここは一杯やるとしまいか」
「ナトゥア殿」
 振り返ればいつの間にか、エウトティアの両手には注いだ杯が持たされていた。
 エウトティアが市にて購入した甘酒である。
 落ち着け、ということであろう。
 浄雲は勧められるままにそれを受け取り、口をつける。
 楓の手にも渡され、彼女はそれをじぃっと見つめていた。
 やがてそれに口をつけ、飲み干した。
 温かい。
 寒空に立ちつくしていた身に染み渡る温かさ。
 気のせいか、風も柔らいだような気がする。
 いや、気のせいではなかった。
 いつのまにか楓の傍に、巨大な狼が居たのである。
「ほれほれ、もふもふなマニトゥの背に腰かけて温かいアマザケでも飲みながらくつろぐがよいぞ」
 エウトティアが笑う。
 どうやらこの子は、彼女のペットであるらしい。
 そう合点がいった楓は、乞われるままにマニトゥの背に身を預けることにした。
 自分でも気がつかなかったが、立ったままの姿はよほどこたえていたらしい。
 しゃがむとどっと身体に疲れがのしかかってきた。
「なんのかまいも出来ませんが」
 浄雲も楓にむかって差し出した。
 屋台で手に入れたつまみの残りだが、何も無いよりましであろう。
 腹にいれて人心地がつけば、話しにくいことも話してくれるかもしれない。
 ふと浄雲は気づいた。
 いつの間にか寒風は和らぎ、手足の先に冬の厳しさを感じないようになていた。
 これは如何なる神技か。
「ナトゥア殿のおかげですか」
「まあのう」
 浄雲の微笑みに、エウトティアは笑顔で返した。
 カチカチと歯が震える寒さより、歌でも歌いたくなる陽気の方が舌も回るはず。
 猟兵二人はそれ以上は問わず、楓の周りを見守った。
 陽気と甘酒が楓の身体に紅を戻させた時、彼女はようやく口を開いたのであった。

 絡みつく枝のように、姉は自分の半生にしがみつき離れなかった。
 どんな時も、いかなる時も。
 姉の悪戯は、妹から見ても度が過ぎるのがわかった。
 時には人を殺めかねない危険な遊戯。
 それは時たま楓にも振りかかり、酷い目をうける。
 このままずっと、自分は姉の玩具なのだろうか。
 焦燥感。暗澹たる気持ち。
 かと言って、幼き少女に家を出る勇気などない。
 あるのはただ、きっと明日は良いことがあると信じて姉についていくことだけだ。
 きっといつか。
 きっと、いつか。
 楓はそう反芻しながら、俯いて姉のあとをついていく。
 どのようにして、その日はそうなってしまったかはよく覚えてはいない。
 覚えているのは姉が木の枝をよじ登っていたこと。
 あれは風船だったか。それとも、風で飛んだ姉の私物であったか。
 いつもなら楓に取りに行かせる姉であったが、その日はどうしてか姉自身が取りに行った。
 登っていく姉。
 それを見上げる私。
 背中を貫き、恨み辛みが枝を貫いたのか。
 姉は落ちた。
 真っ逆さまに落ちていく姉の顔と目が合った。
 水柱。水しぶき。
 すぐに、姉が川に落ちたのだということを理解した。
 あたりに人はいない。
 いるのは姉妹二人だけ。
 思わず悲鳴をあげてしまいそうな口を両手で押さえる。
 そして、誰かが背中で囁いたような気がした。
 悲鳴を、大声をあげれば、誰かが助けに来たのかもしれない。
 しかし楓は逃げ出した。
 一目散にそこから逃げようと。
 家へと帰り、部屋に戻り、布団を被った。
 それから永遠とも勘違いしそうな長い時間。
 両親が戸を開けて自分に尋ねる。
 梓を見なかったか、と。
 私は答えた。
「いいえ、知らないわ」
 と。

「……そして、姉は再び帰って来ました。何事もなかったかのように。私が見捨てたことをなじり嘲り、人非人と」
 楓が肩を落とす。
 どんなことであれ、助けずにいたことは事実だ。
 その罪悪感が、彼女を苦しめているのだろう。
「姉は私の友人を殺すと言っています。逃げればその倍を殺すと、友人知人の縁者に渡って殺すと。私のせいです。私が姉を見捨てたからだと」
 両手で顔を覆い、さめざめと泣く楓。
「でも何もしなくても、姉は誰かを害すでしょう。猫や烏を躊躇いもなく殺める人でした。気持ち悪い笑みを浮かべて、楽しそうにと」
 嗚咽する楓に、浄雲が近づいてしゃがんだ。
「苦悩なされたのですね。ですが、大丈夫です。改めて誓いますが貴女も、貴女のご友人も、必ずやわたくしどもが守りましょう」
 罪業を告白するのは勇気のいることだ。
 彼女には、立ち向かおうとする心がきっと残っている。
 罪科は誰にでもある。大切なのは償おうとする気持ち。
 影朧によって歪まされるものでは断じてないのだ。
「そうですよね、ナトゥア殿」
 立ち上がってエウトティアを見つめる浄雲。
 その眼は、猟兵の顔つきに戻っていた。
 そしてエウトティアも、凜々しい顔つきとなっていた。
「勿論じゃ、そろそろお客さんのようじゃな。やれやれ、アマザケの代わりを飲みたかった処じゃが」
「それは、戦いが終わったあとにいたしましょう」
 浄雲が武器を構えるのと同じく、エウトティアが杖を構える。
 マニトゥが楓を護るように立ち塞がった。
 風の向こうから、冷たい殺気が吹きつけてくる。
 柔らかい暖風をこそぎ落とすように、哄笑が聞こえてくるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『桜染め少女』

POW   :    五臓六腑の生ける花
【強烈な呪詛】を籠めた【あらゆる障害を通過して対象に到達する閃光】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【内側に血染め桜を咲かせ、内側】のみを攻撃する。
SPD   :    人肉造花
【無数に舞い散る桜の花】が命中した対象を爆破し、更に互いを【精神・肉体的に対象を侵食する桜の枝】で繋ぐ。
WIZ   :    死してなお、恨めしく。
全身を【血染め桜の花】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃を吸収、その攻撃力】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 あははははは。
 あはははははははははは。
 けらけらと私は嗤う。
 人の不幸を愉しみに。
 哀しみや憎しみに人の顔が歪むのは、何と楽しきことだろう。
 あははははは。
 あはははははははははは。
 生まれた時からずっと、それが楽しみだった。
 もっともっと、楽しみたいと思っていた。
 我が身に起こった不幸。
 肺に溜まる水音。
 あれはいつの頃だったかよく思い出せはしない。
 だが身体にみなぎる活力。
 息をするたびに感じる匂い。遠く耳に聞こえる人々のさんざめき。
 肌に感じる外気の感触。
 自分はたしかに、ここに生きている。
 あははははは。
 あはははははははははは。
 己の心を体現するかのように、曲がりくねった枝木が身体に纏わり付く。
 だがその締め付けが、逆に心地よい。
 頭に楓の姿がよぎる。
 楓。私の大事な妹。
 怯えて、狼狽えて、恐れて、万華鏡のように愉しませてくれる大事な妹。
 私を見捨てたことを許してあげる。
 だって私はお姉ちゃんだから。
 あなたの傍で、ずっと語りかけてあげる。
 溺れて苦しかったこと。逃げ出したあなたの背中がどんどん小さくなっていったこと。
 でもでもそれは仕方がないわよね、貴女がしでかしたことなのだから。
 でも私を見捨てたことを許してあげる。
 ずうっとずうっと傍にいてあげる。
 あははははは。
 あはははははははははは。
 初市に賑わう人の波。それが血反吐をはいて苦しみもがく様をみたら、楓はどういう顔をするのかしら。
 それを見てみたい。
 もっと非道いことをして、もっと酷い顔をさせてあげたい。
 ああ、たまらない。待ちきれない。
 あははははは。
 あはははははははははは。
 さあ行きましょう楓、姉妹仲良く。
 だって世界にひとつの姉妹だものね。
 あははははは。
 あはははははははははは。

 血染めの枝木を身体中から吹き出しながら、影朧が哄笑とともにやってくる。
 その声にびくつく楓を庇いながら、猟兵達は前に出る。
 哄笑を防ぐ楯となろうと。
「あら、貴方達誰かしら? 私の妹に何かするつもり? なら許さないわ!」
 あははははは。
 あはははははははははは。
 耳障りな哄笑とともに、影朧がむかってくる。

 影朧『桜染め少女』が真っ赤な桜を散らせながら襲いかかってきた。

※参加者全員まとめての描写になります
※ボス撃破後、軽いエピローグを挿入します
※完全アドリブでよければ◎を 描写が必要なければ×を
※(×の方は依頼後すぐに帰還した扱いになります)
※○~~~~~と記載あれば適宜アドリブを入れて描写致します
※プレイングは1月22(金)8:30~より送信してくださるようお願いします
リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
得意なのはサポートで、NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能

接近戦で戦う場合は鎖鎌の【薙ぎ払い】と鎖分銅の【ロープワーク】による【2回攻撃】がメイン。
遠距離戦では宇宙バイク内臓のビーム砲で【薙ぎ払い】
その他状況によって【属性攻撃】や【破魔】等使用。

猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる。


姫神・咲夜(サポート)
 桜の精の死霊術士×悪魔召喚士、女性です。
 普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 片思いの人には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

清楚で女流階級風の口調で、お淑やかな性格です。
基本的に平和的な解決を望みますが
戦わざるを得ない時は果敢に戦いに向かう勇敢さを持っています。

 あとはおまかせです。よろしくおねがいします!



「どうやら話し合う余地はなさそうですね」
 姫神・咲夜はため息をつく。
 なんという邪悪に咲き誇る悪の華であろうか。
「そ~っすね~、コイツは許せませんっすよ」
 リカルド・マスケラスはさりげなく姫神の前に立ちながら、軽薄そうに応える。
 ちゃらちゃらと鳴る鎖鎌が彼の心を代弁しているかのようであった。
「貴方達に許される必要はないわ」
 影朧が嗤う。
 あははははは。
 あはははははははははは。
 その哄笑が響き渡れば、たちまち桜吹雪が舞い落ちる。
 赤い赤い花びら。
 それがひとひら落ちると、予想外の威力を持って爆発した。
「コイツは! やべ~っすよ~!」
 リカルドが舞い落ちる桜を、分銅を振りまして防ごうとする。
 自分はこの身を守れるが、姫神は大丈夫であろうか。
 雪白い地に、赤く降り注ぐ悪の花。
 その中において、姫神は優雅に微笑んだ。
「ご安心を。そんなに簡単に当たりませんよ」
 姫神が舞う。
 リカルドの目にはそのように映った。
 彼女が身を逸らし、手を伸ばし、身体を動かして、降り注ぐ花びらを次々と躱していく。
 神技の如き所業。
 受け止めるのではなく、防ぐのではなく、躱す。
 躱す。そう、躱す。
 たった二文字に満たない結果であるが、この幾重にも降り注ぐ桜吹雪に老いて、成功しつづけるのは如何なる御業か。
 そのたおやかなる容姿に似合わず、彼女もまた猟兵などだと確信させる見事な動きであった。
「おっと、見惚れている場合じゃないっすね」
 リカルドが感嘆の声をあげながら、己を叱咤する。
 彼女の舞台を見に来た訳ではない。
 影朧を倒すために、ここへとやってきたのだ。
 躱す手段は自分にも勿論ある。
 彼女に比べれば無作法ではあるが、それが自分のやり方なのだ。
「夢か現か幻か、とくとご覧あれっすよ!」
 リカルドが印を結ぶと、周囲に霧が立ちこめた。
 そこから次々と現れる、リカルドの分身たち。
 違うことと言えば、実物と違って仮面に数字が刻まれていることだけだ。
 現れはするものの、桜吹雪によって分身たちは爆散していく。
 消える分身たち。
 リカルドはそれに構わず、次々と分身達を生みだしていく。
 やがてその半径が大きくなっていく。
 リカルドは無尽蔵に生み出す分身を盾として、影朧へと肉薄しようと考えていたのだった。
 さりげなく姫神にも分身達をむかわせることは忘れない。
 自分にはこの吹雪を止めることは無理だ。
 だが、盾を造りだすことは出来る。
「あ、よいしょっ!」
 吹雪の勢いを押し返し、鎖鎌を影朧へと投げつける。
 血が敵から零れ落ちた。
 あははははは。
 あはははははははははは。
 影朧は嗤う、猟兵達を見据えて。
 その邪悪な笑顔をちらりと一瞥し、リカルドは横目で姫神を見た。
「なにか?」
 姫神が優雅に微笑んだ。
 それにつられて、リカルドも笑った。
「やっぱり笑顔は、こっちの方が素敵っすよ~!」
「あら、お上手ですね」
 お互い見つめあって笑い、猟兵達は敵に向き直る。
 戦いはまだ、始まったばかりなのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

多々羅・赤銅(サポート)
一切合切大成敗。赤銅鬼が、お邪魔すんぜ
混ーぜて!

NG:子殺し

性格:人助けに躊躇無い破竹の快楽主義】
酒煙草賭け事、悪巫山戯も夜伽もだぁいすき。ガタイの良い真摯な奴とか特に好き♡敵でも惚れちまうね、赤い糸ごと御魂を斬って、何れ地獄の果てで落ち合おう。
あとな、私すっっげー寂しがりなの!
だから敵ともガンガン話すし、人には好かれたい!
ま、敵は仲良くなっても斬れっけど。

戦闘:鎧無視斬撃と耐火特化】
斬れないモンは何も無えよ。
鉄、炎、音さえも
見切り受け流し斬り伏せる。
身体に流れる聖者の血が、多少の傷は次々塞ぐ
肉盾役も、ご要望とあらば

日常冒険:酒、交流、笑う脳筋】
人と話すの好き!はしゃぐのも大好きー!あそぼ!



「一切合切大成敗。赤銅鬼が、お邪魔すんぜ」
 多々羅・赤銅が不敵に笑う。
 妖怪変化は幾たび斬れど、悪の花は尽きぬ事無し。
 やれやれと肩をすくめるが、それを助けるのが自分たち猟兵の責務なのだ。
「ええ、邪魔よ。早々に退場なさい」
「はっ! こいつは嫌われたぜ!」
 刀を握って躍りかかれば、たちまち睨みつける敵の視線。
 その眼光が、多々羅の身体を貫いた。
 ごふりと多々羅の口の端から血が漏れる。
 影朧の視線はこの身を貫通し内臓を焼いたのであった。
 常人なら幾度無く死ねるほどの激痛を、多々羅は外から感じさせることもなく、口の端についた血を拭って笑顔で返した。
「殺すような目つきってこういうことをいうのかい? だったら大層嫌われたもおnだぜ」
 減らず口をほざく多々羅ではあるが、負傷を感じていない訳ではない。
 だがこの身を流れる熱き血潮が、敵に膝を屈することを由としないのだ。
「お互い挨拶は終わりだな、じゃあ改めて行くぜえ!」
 再び刀を構えて多々羅が走る。
 負傷を感じない軽やかさで、一気に敵の間合いをつめる。
 影朧の身を取り巻く木々が、本体を守ろうと歪ませ壁となる。
 笑止。
 そのような薄壁で、この刃を止められると思うなどとは。
 口の端を吊り上げて、多々羅が刀を振り下ろす。
 豆腐を斬るより容易く、その刃は木々を裂き、敵の身体を深々と切り裂いた。
 多々良が吐いた血より更に多く、影朧が血飛沫をあげる。
「悪いねえ、こんな状況じゃなかったらお話しときたいところだが」
 パチンと刀を立たせて見得をきる。
「悪党はぶった切る主義でね」
 傷つきもがく影朧の姿。
 眼前の成果に満足し、多々良は笑うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

やれやれ、同じ妹を持つ身としてお主は見るに堪えぬし不愉快じゃ。
妹は守るものじゃ、たわけが。
さて、さっさと懲らしめてやりたい所じゃが、楓殿が近すぎるかの?
まずは楓殿を風の障壁で守りつつ、狼達に【騎乗】してもらって少し距離を取るのじゃ。
狼達よ、楓殿の護衛は任せたぞ。
態勢を整えたら直接の交戦は前衛に任せて、影朧を風の障壁で取り囲み桜の花びらを風で絡め落としてお味方を守り援護するかの。
わしは後方から【風属性攻撃】の【追跡】する矢で枝打ちして【援護射撃】じゃ。
お味方が攻撃に専念できればそのうち影朧に隙ができるじゃろう。
頃合いを見計らってマニトゥを嗾け、爪や牙で切り裂いてやるわい。


エミリロット・エカルネージュ


楓ちゃんに何かをしているのは……貴女の方だと思うんだけど、許さないのはこっちの方だよ

楓ちゃんの人生は貴女の玩具じゃない
……変身っ!(真の姿、エカルドに)

●POW
エカルドに変身後『オーラ防御&呪詛耐性&激痛耐性』で備え

『早業』でUC発動

『空中戦』で駆け回りつつ『第六感』で『見切り』『残像』回避

当たりそうなら、備えた技能で『受け流し&ジャストカード』

懐に飛び込み、武装の【健脚、発勁、尻尾】の『グラップル』から『残像』で撹乱の一撃離脱

頃合い見て【緋色の龍の炎&島唐辛子餃子のオーラの乱気流】を【健脚】に纏い『ダッシュ&ジャンプ』キックで『属性攻撃(炎)』を加えた『焼却』の

ギョウザライダーキックッ!



 エウトティア・ナトゥアが露骨に顔をしかめ、嫌悪を露わにする。
 妹を持つ身であるが、このような輩の妄言は断じて許せるわけがない。
「妹は守るものじゃ、たわけが」
 吐き捨てるように言うと、楓を影朧から遠ざけるように身構えた。
「風の精よ、全ての悪意から彼の者を護れ!」
 楓の前に障壁が起こり、影朧を押し返す。
 その隙に狼たちが現れて、エウトティアは楓に背に乗るよう促した。
「乗れ、楓殿! ここはわしらが引き受けようぞ!」
 反応できずにいるのが、立ちすくむ楓。
 するとエミリロット・エカルネージュが彼女を抱きかかえ、狼の背に乗せた。
「楓ちゃんの人生は貴女の玩具じゃない!」
 彼女が走り去るのを見届け、影朧を睨みつけるエミリロット。
 その目はやはり、エウトティアと同じく怒りに燃えていた。
「部外者が偉そうに、姉妹の絆を断とうなど許さないわ」
 影朧の眼が妖しく光った。
 射貫くような眼。
 その形容詞通りに閃光が襲いかかり、エミリロットを貫いた。
 ごほり、と咳き込むと口から鮮血がこぼれ落ちる。
 鮮血は花びらとなり、たちまち彼女の足下に血桜を敷き詰める。
 赤い赤い桜の花びら。
 それは雪景色をたちまち影朧の狂気へと染め上げていく。
「エミリロット殿!」
 エウトティアが叫んだ。
 グリモアベースで見た惨劇。
 あれがエミリロットにも起ころうとしている。
 駆け寄ろうとするエウトティア。
 彼女が近づく前に、エミリロットは立ち上がった。
 その身を、装甲を纏う戦士の姿に変えて。
「……許さないのはこっちの方だよ!」
 真の姿、エカルドにへと己を変えてエミリロットは大きく息を吐く。
 負傷疲弊した様子はない。
 影朧に対する怒りの炎が、敵の攻撃を阻んだのであった。
 爆進。
 踏み込みは突進となり、弾丸のように敵の間合いを一気に狭める。
 その道筋に、桜吹雪が渦を巻いてエカルドを包み込もうとする。
 肩口に、一片の花びらが舞い落ちた。
 爆散。
 花びらが爆ぜるとそれはエカルドの身体に芽を生やし、たちまち枝木となって成長し絡みついてくる。
 失速するエカルドであったが、気合い咆哮、進むことを止めない。
「こんなもの……楓ちゃんの痛みに比べたら! あなたのしたことに比べたら! なんてことはないんだよ!」
 身体中から枝木を生やしつつも、エカルドは影朧に迫ることを止めはしない。
「よくぞ言うたエミリロット殿! たわけの悪戯などわしらにとってはなんともないことよ!」
 エウトティアが弓矢をつがえ矢を放つ。
 それは影朧ではなくエミリロットの元へと。
 ぱしん、ぱしんと乾いた音が響く度に、エカルドの身体から枝木が祓われていく。
 一本一本そぎ落とされる度に、エカルドの身体が調子を取り戻していく。
「小賢しい!」
 影朧が吠える。
 再び邪悪な桜吹雪が舞い降りる。
 エカルドの元へ、エウトティアの元へと。
「お主の方がな!」
 弓を杖に持ち替え、エウトティアが吠える。
 楓を避難させておいて良かったと、心底思う。
 周りや他人を巻き込むことを何とも思わぬこの外道を、好きなままにさせていたら大変なことになっていただろう。
 任務ゆえに動物を使役することはあるが、決して梓のように道具、玩具扱いしようと思ったことなど一度もない。
 楓のみならず狼や鷲が口から血泡を吐き、赤い絨毯に次々と伏していく光景を、エウトティアは幻視した。
 それが彼女の心に火をつける。
「同じ妹を持つ身としてお主は見るに堪えぬし不愉快じゃ、その花咲かせることは断じて許さぬ。わしらが潔く引導、散らしてくれるわ!」
 エウトティアが杖を掲げて天に祈る。
 先ほど楓を慰めた、柔らかき暖風。
 それが渦となり旋風となって、たちまち桜吹雪を吹き飛ばした。
 そしてその風は、影朧に向かって道筋を創る。
 その螺旋の渦の中心を一直線に、エカルドが駆けていった。
 聖なる風が、エカルドの身体を後押しする。
 吹き出すオーラが風に煽られ、炎の渦を巻く。
 邪視、閃光。
 だがエカルドは逃げない。
 今更わずかばかりの痛み。
 楓のこれまでにくれたら何ほどのことがあろうか。
 仲間が造ってくれたこの道程、逸れることなどあろうことか。
 影朧の目に残像だけを残し、エカルドが視界から消えた。
 否。
 エカルドはすでに間合いを詰めており、影朧の目の前に居たのであった。
「せいっ!」
 気合いの発勁。
 影朧の身体がくの字に歪む。
 今度こそ本当に、エカルドの身体は影朧の視界から消えた。
「こんな……なぜ?」
 ごほり、と影朧が血桜を口から吐いた。
 赤い赤い桜吹雪が、足下に垂れる。
 その顔に哄笑の色はない。
 呆然とした姿がそこにあった。
「因果応報。楓殿を大切にすれば、お主の身はそこになかったであろうな」
 遠く呟くエウトティアの声は、梓には届かない。
 代わりに巨狼の爪と牙が、影朧を刺し貫いた。
 かはっ。
 再び影朧が血を吐いた。
 赤く赤く、雪景色に己の徒花を咲かせていく。
 雪空を見上げのけぞる梓。
 影朧が最後に見たもの。
 それは冬の太陽より更に燃えて輝く、エカルドの姿であった。
「ギョウザライダーキックッ!」
 高速落下蹴りを受けて、おおきく影朧は吹っ飛ばされる。
 その身が虚空を舞い、炎に包まれて放物線を描く。
 焰が影朧を焼き尽くしていき、飛び散っていく火の粉が花片のようにも見えた。
 影朧の身が焼滅していく。
 わずかに残った残り火が、地へと降り落ちるが、それはやがて雪景色の中へと埋もれていった。
 影朧の狂気を残すものはなにもない。
 二人の猟兵は、しばし振り落ちる雪模様を眺めていた。

●それから~

 雑踏の中をエウトティアは歩いていた。
「やれやれ疲れたのう」
 人知れず行なわれた影朧との戦い。
 人はそれに気づくこともなく、市を楽しんでいた。
 予知は外れた。人々が襲われる惨劇は回避できたのであった。
 事が落ち着けば、楓にも今回のことは報告しようと思う。
 悪辣な姉が彼女を苦しめることは、もう無くなったのだ。
「お主らもよくやってくれたのう」
 エウトティアが狼たちを労い頭を撫でる。
 姉妹兄弟のようなこの仔たち。
 己の楽しみにいたぶるなどと、エウトティアには想像も出来ない。
 自分らも労えと、舞い降りる鷲たち。
 人だかりならぬ獣だかりが、市の一角に生まれた。
「ふむ、こうしておいては何かと目立つのう。皆の衆、まずは一休みといこうぞ」
 そういえば甘酒を確保しておいたことを忘れていた。
 店主いまだ確保してくれているであろうか。
 そうでなければまた買えばいいか。
「では皆の衆、勝利の美酒に酔いしれようとするかのう」
 獣たちを引き連れて、好奇の視線を受けながらエウトティアは路地を進む。
 家族と連れ立つのに、なんのはばかりがあるのやら。
 エウトティアの顔は明るく微笑んでいた。

 からんからんと鈴を打ち鳴らし、エミリロットが神社にむかって手をあわせる。
 境内ですれちがう娘達。
 着飾りたいという乙女心はエミリロットにも勿論ある。
 だが、修練によって磨かれた拳によって、悪は倒された。
 この身を鍛えてなければ、勝つことは難しかったであろう。
 鍛錬の感謝の気持ちを、老師と同門にエミリロットは伝えようとしていたのであった。
 表をあげれば、そこには誇らしい笑顔。
 娘のようになれずとも、今の自分には後悔していない。
 ほっとすれば気が抜けたのか、ぐうと腹が鳴る。
「そういえば、お腹がすいたんだよ」
 陽は傾きつつもまだ高く、まだまだ人の波は盛況である。
 影朧が消え去って落ち着けば、楓の表情も晴れるであろうか。
 石段を下りれば、左右に目につくのは娘達の笑顔。
「きっとそうだよね」
 これが終われば、一緒に楓を誘おうか。
 心の重しがなくなった楓は、きっとこれから自由なのだ。
 それに戸惑う彼女ならば、手を差し伸べてあげようとも思う。
「まずは、何か買った方がいいのかな?」
 眼下に見下ろす屋台の数々。
 そこへとむかい、エミリロットは飛び降りるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月24日


挿絵イラスト