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徒桜に誘われて

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●果たされぬ約束
 はらり、はらりと幻楼桜の花弁が降る。
 賑わう街並みに、ぽつりと一人、男が立っていた。黒い軍服が風に揺られて、切なく揺れる。
 虚ろに、ただ目的もなく歩く。鋭い眼光は、空を見つめ、見る影もない。

 約束を、した―。
 そう、何か大切な、約束を。
 内容までは思い出せないけれど、とても、とても大切な―。
『じゃあ、今度帰ってきたときは―――』
 頭の奥で、誰かの声が木霊する。優しい、愛しい声がする。
 思い出さねば、そう思うのに。どれだけ考えても、悩んでも、彼の記憶は水底に沈んだまま。
 覚えているのは、自分は兵士だった。けれど、平和に興じる人々が、何時までもぬるま湯に浸かっているのが、赦せなくて。
 悔いを抱いていた事はしっかりと覚えているのに。
 どうして。どうして、何も思い出せないのだろう。
『…約束、ですからね?』
 また、声が。けれど、不思議と不快ではない。寧ろ、心地よい此の声の持ち主は、誰なのだろう。

 そうして、影朧は歩き出す。思い出せぬ、優しい思い出を求めて。
(嗚呼、お前は、貴女は、誰なのだ―)

●貴方と交わした約束は
「…報告。…サクラミラージュに、影朧が、現れ、ます」
 何処か、ぼんやりとした様子で神宮時・蒼(終極の花雨・f03681)は言葉を紡ぐ。
 影朧が現れる事自体は、別段いつも通りではあるが、この影朧は、特に弱く、儚いのだという。
 そもそも、影朧は差異はあれど、傷付き生まれる弱い、オブリビオン。
 きっと、余程辛い過去か、未練が残っていたのだろう。
「…無理を、承知で、お願い、します。…どうか、この、影朧の、お願いを、未練を、叶えては、くれません、か」
 目を伏せて、紡ぐ言葉には何処か悲しみが漂っている。
「…どうやら、この、影朧は、叶えられなかった、約束、を、果たそうと、街へ、向かって、いる、よう、です」
 其れが何か。知る事は出来ないけれど。
 勿論、オブリビオンは倒すべき相手。其れが道理。解っている。解っているけれど。
「…此の、影朧は、一度、戦闘を、行うと、無害化、します」
 無害化してしまえば、誰かに危害を加える事は出来ない。けれど、其れは影朧側の都合。
 普通の街を歩く人々にとって、影朧は脅威でしかない。姿を見ただけで、パニックになるかもしれない。
 けれど、其れすらも、無理を承知でお願いしたいのです、と蒼は告げる。
 ―果たされなかった約束。
 こんな姿になってまで、叶えたい、叶えなければならなかった約束。其れは一体、どんなものなのだろう。
「…影朧の、目的地は、郊外の、カフェーの、ようです」
 其処まで影朧を連れて行ってほしい、と、少女は深く頭を下げる。
 そうすればきっと。オブリビオンの、彼の未練を晴らす事に繋がるから。
 其れに。連れて行った後は、好きにカフェーを楽しんで構わないとも言う。
「…此処のカフェーは、いろいろな、甘味が、置いてある、そう、ですよ」
 ふわふわのパンケヱキ、かりかりのワッフル、きらきら輝く果実のパルフェ。
 蕩けてしまうプリン・ア・ラ・モード、雲みたいなシフォンケヱキ。
 きっと、楽しめる事だろう、と。

「…大変な、お願いだと、言う事は、分かって、います。…それでも、皆様なら、叶えてくれると、信じて、います」
 そうして、静かに、蒼は転送の準備を始める。
 果たされなかった、約束。其れは一体、どんな約束なのだろう。
 さあ、行こう。貴方の未練を晴らしに。


幽灯
 幽灯(ゆうひ)と申します。
 今回は、サクラミラージュのお話をお届けします。
 マスターページの雑記部分にプレイング受付日と締め切り日を記載させていただきます。
 お手数ですが、一度マスターページをご確認くださいませ。

●一章
 ボス戦です。未練を唄う男を無害化してください。
 自身の進路を阻む者に敵対するので、街の人々に危害を加える事はありません。

●二章
 無害化した彼を、目的地まで誘導してください。
 パニックになった街の人を宥めながら、彼と共に進んでください。

●三章
 男の未練とは何なのか。
 最後まで寄り添うか、純粋にカフェーを愉しむか。皆様の心のままに。
 三章のみ、蒼に何かありましたらご用命ください。

 ご一緒する方は「お名前」か「ID」を記載してください。
 それでは、良き冒険となりますよう。
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第1章 ボス戦 『幻朧将校』

POW   :    影朧兵器『グラッジ弾』
【任意の対象へグラッジ弾を撃ち影朧】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    影朧兵器『ラプラスの悪魔』
自身に【影朧の入った薬物を射ち、瘴気】をまとい、高速移動と【未来余地によって放つ衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    影朧兵器『黙示録の軍団』
自身が【怒りや恐怖心】を感じると、レベル×1体の【名も無き影朧】が召喚される。名も無き影朧は怒りや恐怖心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠氏家・禄郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●其れは形を歪めて
 大切だったという思いの欠片はあれど、思い出せぬジレンマが。
 胸を掻き毟りたくなるような焦がしさあれど、手を伸ばせないもどかしさが。
 ぽかりと胸に穴を開けたように虚無が吹きこむ。
 浮かんでは消えて、浮かんでは消えて―。

 嗚呼。もう、貴女の顔が、思い出せない。
 嗚呼、もう、貴女の声が、聞こえない。
 
『絶対、絶対ですからね!』
 あの日、私は。一体何を約束したのだろう。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

こういう未練を持つ影朧を見てしまうと、正直俺は不安になる。
命つきた時、俺はこういう存在にならずにいられるだろうか。
何も心残りもなく躊躇いなく逝けるだろうか。
そう、不安になる。

…カフェへと向かう彼は、待ち合わせでもしてたんだろうか。

影朧の様子を見てからの判断になるが、奇襲をかけたほうが一撃を入れられそうだと判断したら存在感を消し目立たない様に立ち回る。そしてマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC野分で攻撃。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らうものは激痛耐性で耐える。


ニャコ・ネネコ
アドリブ連携歓迎

目立たなさをいかして、こっそり後をつけるにゃ
しばらく様子をみて、どこへ行こうとしてるのか探るけど
わかんなかったら声をかけるにゃ

おまえ、どこ行こうとしてるにゃ?
もしみちあんないや助けが必要なら、にゃあがてつだうにゃ
だから、一緒にいってもいいかにゃ?
足もとにすりよって、話しかけてみるにゃ

もし敵対的な行動を見せたら
UC【ねこのもふもふ】で眠りのオーラを放って
影朧をちょっとだけ眠らせるにゃ

……落ち着いたかにゃ?
まちのひとにおいたはだめにゃ!
にゃあは魔女にゃ、おまえみたいなのの助けになるのが生きがいにゃ
だから何かあったら、たよってほしいにゃ


北条・優希斗
連携・アドリブ可
『果たされなかった』約束、か…
忘れた儘の方が本当は幸せだったのかも知れないが…
…いや。
只の独り言だよ
無力化が目的か
なら相手が自らに薬物を射ちこむより先に先制攻撃+早業でUC使用
残像+見切り+ダッシュ+舞踊+軽業+地形の利用で敵の軌跡を見切り肉薄
早業+グラップルで薬物を叩き落とす
攻撃は2回攻撃+騙し討ち+フェイント+鎧無視攻撃+グラップルを軸に
防御は見切り+残像+ダッシュ+第六感+オーラ防御+軽業+舞踊で
なあ…アンタ
その薬物でアンタの後悔は断ち切れないよ
だから、思い出して欲しい
アンタが何に未練を持ち、何に後悔しているのかを
…何で気になるかって?
…俺も似た様な記憶を夢に見るからだよ


グウェンドリン・グレンジャー
未練、か
(ふと思い出したのは、まだ狂っていない頃の父。そして、生きていた母)

私……は、あなたの、邪魔は、しない
けど、戦わせて、もらう
(腰の辺りから、服を突き破り生えてくる異端の黒翼)
グラッジ弾、撃ってきたら、第六感で、タイミングと軌道、予測し回避
あるいは、念動力、バリア状に展開
空を飛びつつ、避けて接近
翼にも似た、生体内蔵式クランケヴァッフェ、怪力で強化、ぶん殴る

あなた……は、何を、やりたかった?
成し遂げ、たかった?
Glim of Anima――魂呼びのランプ、灯して、影朧に、問いかける

Brigid of Kildareを発動
浄化の炎……でも、まだ、あなたを、転生はさせない


初里・ジン
【WIZ】
「僕はマジックで人を笑顔にしたい…だけど目の前には笑顔を失った者がひとり…せめて未練は僕が断ち切ってあげないとね。」

まず敵が影朧を召喚してきたら【全力魔法】で氷の魔術を発動。影朧を凍らせて動きを鈍らせて足止めし、M・T・Bで影朧達を迎撃。さらにその攻撃の合間に【目立たない】ように身体を液状化させて敵の後ろに回り込んで瞬時に元に戻った後、ルーンソードに雷の魔術を纏わせた【属性攻撃】を敵に叩きつける

「これが僕の瞬間移動マジックさ!ちょっとインチキだったかな?」

上記の作戦が失敗したら【激痛耐性】を使用して攻撃を耐えつつ距離を取る

※アドリブ&連携OK



 最初に記憶から失われるのは、聲から。次いで、顔。―最後に、想い出、なのだそうだ。
 ならば、此の影朧は思い出だけを原動力に動いているのだろうか。
 じっと、影朧を見据えながら黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はただ漠然と不安を覚える。
 もしかしたら、此れは未来の自分の姿なのではないだろうか、と。
(俺は、何も心残りもなく躊躇いなく逝けるだろうか…)
 左手に握る黒曜の刃、―瑞樹の本体を、無意識に強く、強く握る。此の不安が晴れる事は、きっと、無い。
 同じように、ぼんやりと黄金の瞳が、影朧を映す。
「未練、か」
 ぽつりと、言葉一つ。グウェンドリン・グレンジャー(Heavenly Daydreamer・f00712)の脳裏に思い出されるのは、ただ幸せだったあの日の事。
 憐れみの果て、妄執に憑りつかれた父と、凛と佇む母の―。けれど、其の記憶は小さく頭を振る事で振り払う。
 だって、もういない。あの日のグウェンドリンは、死んだのだから。想い出に浸る事なぞ、あってはならない。
 でも、まだ交わした約束を思い出せるだけ良いのかもしれない。
 大切な何かを失った事は覚えていても、何を失ったかまで思い出せない、自分よりは。
 嗚呼、でも。もしかしたら。
「忘れた儘の方が本当は幸せだったのかも知れないが…」
 思い出さない方が、良い事も。きっと世の中には、あるのだから。北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が落とした言葉は、誰に聞かれる事なく、風と共に空へ消えた。
 そんな猟兵たちの間を縫って、てこてこと黒猫が前に出る。
 けれど、そんなニャコ・ネネコ(影色のストレガ・f31510)を抱き上げたのは、ニャコと同じ色彩を抱く初里・ジン(黒い奇術師・f10633)の黒き腕。
「僕はマジックで人を笑顔にしたい…」
 抱き上げられた黒猫は、ぱちりと大きな蒼玉の瞳を瞬かせて。そっとジンがシルクハットを持ち上げれば、ばさりと白い鳩が空へと舞い跳ぶ。
 目の前には、笑顔を失い、孤独に彷徨う影朧の姿。涙こそ見えないけれど、其処に笑顔が無いのであれば。
「…せめて未練は僕が断ち切ってあげないとね」
 人を笑顔にするのが奇術師の本懐だろう、とにこりを笑みを浮かべる。
『脳裏に響く、此の聲は!誰なんだ…!』
 ―嘗て、世界を混乱へと陥れようとした、一人の男。
 抱く妄執は、たった一人の誰かの、思い出せぬ約束。
 彼の影朧が未練は、一体なぁに?―ならば、思い出させてあげようではないか。
 冷静さを欠いていては、思い出せるものも思い出せない。なら、方法は、ひとつ。

 ちゃり、と空色の涙石を揺らしてニャコがジンの腕から大地へ降り立つ。
 其の小さな音が、合図となったのか、嘆き唄う男、―幻朧将校が放つは嘆傷纏う一欠けの弾丸。
 小さな其れも、数と速度を重ねれば、人へ致命を与える脅威と為りて。
 びり、と小さく衣類が裂ける音と共に、グウェンドリンの腰へ異端の黒翼が翻り、羽根を散らす。
 街の外れへ向かっていたとしても、此処は市街地。遠巻きながら、人の姿ちらほら見られる。
 ならば、と月に魅入られし娘は、己が勘と、向けられた銃口を見据えて、不可視の力を展開する。
 其れは攻としてではなく、守の力として。
 けれども、幻朧将校の判断も早かった。其れは戦を都度経験した将校の経験故か。
 声は響けど、思い出せない憤りが、無から儚き影朧を生み出す。
 ずらりと並んだ黒影は目の前の全てを殲滅せんと、ただそれだけを目的に歩を進める。
「それはだめなのにゃ」
 立ち並ぶ影に恐れを抱かず、青いリボンがふわりと風に揺れる。ふわりと漂う、癒しの波動が影朧の動きを緩やかに鈍らせる。
 隙を逃さず、ジンが編み上げた魔力が周囲の空気をぱきり、と凍らせていく。
 意識無き影朧は、儚さ故か、足元からゆるりと身を凍えさせ、やがて礫となりて地へ破片を落とした。
 まさに、手詰まり。
 だが、幻朧将校の瞳は死んでおらず。懐から取り出したる小さな注射器を己に打たんと手を降り下ろす。
 しかして其れは、予測していた優希斗へ阻まれる。
 じわりと滲む瘴気が、身を焦がすが、それすらも些事であると素早く注射器を叩き落とす。
「その薬物でアンタの後悔は断ち切れないよ」
 まるで未練を断ち切るかのように、刃が振り抜かれる。
 同じくして幻朧将校の背後へ回っていた瑞樹も、其の刃を降り下ろす。
 斬り付けられて尚、失せぬ影朧の敵意は、轟と燃え盛るグウェンドリンの炎に焼き焦がされる。
 神の僕の形を取った精神体もまた、浄化ではなく鎮静に其の力を振るう。
 がくり、と膝を付いた将校に追い打ちを掛けるように。ジンの放つ刃が、雷が、影朧を穿って、そして。
 のうりに、こえが、こだま、して。いとしい、あのひととの、やくそくが―。

 すっかりと敵意が失せた男へ、そっとニャコが摺り寄る。
「…落ち着いたかにゃ?」 
 其の言葉に、影朧は頭を撫でる事で答えた。
 幻朧将校、名は―。
『ああ、明。そう、俺は、明』
 ぽつり、と名を零す。元来の性格か、大きな声ではなかったけれど、其れは集った猟兵へ届くには十分だった。
「あなた……は、何を、やりたかった?」
 小さく首を傾げ、グウェンドリンが問う。ぼんやりと、空を見つめて、想い出をなぞる様に、明が小さく言葉を紡ぐ。
『俺、は…、そう、誰かと、約束をしていて…』
(カフェへと向かう彼は、待ち合わせでもしてたんだろうか…)
 己の思考は決して口には出さず。彼の邪魔はしたくない、と、瑞樹は壁に寄りかかり、様子を伺う。
『今度の、任務が終わったら、…そうだ、デヱトしましょうと』
 笑った顔が、可愛らしいのだ、と。
 気付けば、影朧の形はほろりと歪んで。きっと生きていたであろう頃の姿をゆらり取り戻す。
 儚さは消えず、けれど何処か優しい眼差しをしているのは思い出せぬ約束の断片を取り戻したからか。
『けれど、随分と待たせてしまった。…きっと、彼女はもう』
 揺らぐ影朧の言葉に被せる様に、優希斗が言葉を重ねる。
「…確かに、もう遅いかもしれない。でも、後悔は残すな」
 其れは、彼に向けた言葉か、それとも。失くした記憶を夢に見るけれど、其れは優希斗自身の物なのか。はたまた。
「にゃあは魔女にゃ、おまえみたいなのの助けになるのが生きがいにゃ」
 じぃ、と子猫が真っ直ぐに男を見据える。嘘は許さぬと、本心に従え、と。
 幾らか視線を彷徨わせた後、影朧だった男が下した決断は―。
 其の様子に、満足そうにジンが頷く様子が見て取れた。

 さあ、未練を晴らそう。一つの曇りも無いように。
 其の道のりは、彼らがきっと手伝ってくれるから―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●希う道程
 ―約束はきっと果たせないけれど。叶う事ならば、約束の場所へ。
 害意失いし影朧が出した答えは、皆が望んだ言葉。

 けれど、忘れてはいけない。
 幾ら無害化されようが、事情を知らぬ者からすれば、影朧は脅威たるもの。
 目的地が、街の外れにあるとしても、人々は怯え、脅威を排除しようと動くだろう。
 他の影朧と違い、此の今にも消えてしまいそうな儚きものは、少しの悪意に晒されても消えてしまうだろう。
 其れは、決して望むところではない。
 目指す場所は、街郊外のカフェー。
 彼の人の願いを叶える為に。
 今は、街の人の悪意から、怯えから、彼を護る盾と為ろう。

 本懐を果たした時。
 もしかしたら、奇跡が起こるかもしれない。
 そう、願いながら、街を歩こう―。
北条・優希斗
【SPD】連アド可
…誰かを護るのは得意では無いが
後悔を残さず転生できる様、俺なりの最善は尽くそう
明が影朧で在る事が人々に分かるのを承知の上で
【コミュ力】+【世界知識】で人々に説明を
「彼は、確かに影朧だ。未練を残してこの世界を彷徨う悲しき魂の成れの果て。それは何時か、貴方達もなる可能性のある存在でもある。でも、無事に転生の儀を迎えれば彼の魂は救われる。だから俺達は彼を彼にとって大切な『約束』の地に連れて行きたい。今は彼…明さんを心穏やかに見守って欲しい」
と説明して彼等に道を開けて欲しいと頼む
もし、其れが難しそうなら超弩弓戦力で在る事を明かし
多少力任せに人々を掻き分けて明さんを目的地に連れて行こう


黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
SPD

影朧に先んじて歩き周りの人々に説明をしよう。
きちんと説明して、もしもの時責任をとる事を話せばわかってもらえるはず。
ただ彼には願いがあるだけ。そしてそれを意図的に悪くとらえる人はいないだろう。
俺はそういう人の善性を信じてるから。
今の所、影朧の身上・心情を思い図る事は出来ないからうまい言葉をかけられない。
ただ少しでも手助けになれば。
確かにもう人としての生はないけれど、悔い無き終わりを願うのは悪い事じゃないと思う。
俺だって悔いなく終わりたいと願ってる。
その為の手助けは惜しみなくやっておきたい。


初里・ジン
【SPD】
「ご通行中の皆様、街に影朧が現れました。しかし、ご安心を。僕達が無力化させましたよ。え?信じられませんか?だったら僕の強さを皆様にお教えしましょう!」と言って【パフォーマンス】を民衆の前で披露

その後は【属性攻撃】を上に発射し、自分の頭上から落ちてくる火炎弾を【火炎耐性】を使って受け止めたりしたり、ステッキから雷の魔法を自分に流して【電撃耐性】で耐えたりする

「ほら、僕はこんなにも強いんです。だから影朧を無力化できました。皆様、どうか僕を信じて影朧の事はすべて任せてくれませんか?」と協力を呼びかけてみる

※アドリブ&連携OK



 往来闊歩―。
 先の闘いを見ていた幾人が、其の瞳に怯えの色を滲ませる。
 戦わぬ力を持たぬ者が、脅威を目にした時。其の心中に生まれるのは、恐怖か侮蔑か。はたまた別の何かか。
 害意を削がれた”彼”も、其れは分かっているのだろう。
 何処か頼りない表情を浮かべている。
 あの日果たせなかった約束が、彼の人を思い留まらせている、たったそれだけ。
 きっと、心の何処かでは諦めが滲んでいるであろう其の表情に、何とか明かりを灯してやりたい、と。
 そう思うからこそ、各々が出来る事を。
 先に動いたのは、瑞樹。
 遠巻きながら、此方を見つめる街の人々へそっと近づけば、にこりと人好きのする笑みを浮かべる。
 幼さ残る顔が、更に幼く映る
 先の騒動を納めた猟兵たちだ。話を聞く価値はあると思ったのか、瑞樹の話に耳を傾けてくれるよう。
 其れに、笑みを称えた人を邪険にするような心持の人間はきっと、此の場には居ない。
 確かに、人は悪性に染まりやすいけれど、同じように善性もそうであると、信じているから。
「さっきは騒がせてすまなかった。あの通り、かの影朧も今は落ち着いているから安心してほしい」
 まずは、先の騒動の謝罪を。ぺこりと小さく頭を下げれば、僅かに疑心はあれど納得はしてくれた。
『そ、そうなのか?』
 けれど、今この場には僅かな疑心すら残してはならない。
 ほんの僅かな悪意でさえ、”彼”は、明は、消えてしまうのだから。何より、彼がそう思われては当然などと思ってはいけないのだ。
「彼には、願いがあるだけ。その本懐を俺たちは叶えてやりたいと思っています」
『でも、影朧なのよね…?また突然襲ってきたりするかもしれないじゃない』
 小さく息を吐いて、優希斗が言葉を紡ぐ。
「ああ。その可能性は、残念ながら否定する事は出来ない」
 影朧とは、痛んだ過去の幻影。消えぬ未練が形を取った存在。此の都市にも舞う、幻朧桜が癒し、未来を与える存在。
 其の在り方は知識として在れど、争い事と関わらぬ人々にとっては、畏怖すべき存在。
「けれど、それは何時か、貴方達もなる可能性がある存在でもある」
 そう、過去を持つ人間ならば、誰しも影朧になり得る可能性を秘めているのだと。
『確かに、そうだけど…』
「もしもの時は、俺たちがきちんと責任を取る。勿論、貴方たちに危害を加える事は絶対に無いとも、約束する」
 其の為の力ならば、自分たちは有している。
「俺達は彼を彼にとって大切な『約束』の地へ連れていきたい」
 ただ、彼の人の魂を在るべきところへ還してやりたい。そう、言葉の端に願いを込める。
 ちらり、と苦言を呈していた街の人が、”彼”の方へと視線を向ける。
 先程までの負の色は無く、ただ見定める様に、じっと、見つめる。
 ぼんやりと、空を見つめるだけの、影朧の姿に。毒気を抜かれたのか。
 大きく、息を吐く音が聞こえた。
『分かった、分かったよ。猟兵さんたちがそういうんだ。俺たちは何もしないよ』
『そこまで真摯に頭下げられたんじゃあ、ね。あたしらは普段の生活に戻る事にするよ』
 気付けば、此方を伺っていた幾人が散っていく。いつもの生活の営みへと戻っていく。
 誰かを護るのは不得手であると優希斗は言う。
「え。本気で言ってんのそれ」
 たった今、”彼”の心を護る為に行動したのでは、と。
 瑞樹の言葉に、ぐっと優希斗が言葉に詰まる。
 人の数だけ、未練は生まれる。けれど、悔いのない終わりを迎えたいと瑞樹は常々思う。
 だから、彼が納得行く終わりを遂げられたらいい。
 幸いに、道は開けた。さあ、進もう。

 納得して、日々の生活に戻った人々がいた。
 けれど、道を進めば、其れを知らぬ人だって出てくる。
 それでなくても、人にとって、影朧とは脅威の一端。
 街を歩く影朧が居れば、怯えも拡がろう。でも、悲鳴の一つも上がらないのは、其れは偏に彼に、影朧に付き従う者の姿があるからだ。
 其れを察してか、ジンが人の輪へ足を向ける。
 にこり、と一つ笑みを浮かべれば、声を張り上げ周囲の視線を全て己へと向ける。
「ご通行中の皆様!ご安心を!街に現れた影朧は僕たちが無力化させました!」
 ざわり、と広がるは困惑の声。だが、決して気にはしない。
「え?信じられませんか?だったら!僕の強さを皆様にお教えしましょう!」
 注目を寄せる事なぞ、手品師にとっては造作も無い事。
 売れていようがいまいが、見てもらわねば、一芸は成立しないのだから。
 燃え盛る火の弾を、幾つか頭上へと放ち、受け止める。―小さな悲鳴が上がった気がする。
 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
 熱さなど物ともせず、お手玉の要領で、火炎纏う弾をくるくると宙で弄ぶ。
 インチキか?と勘繰る人もいたけれど、其れは熱に揺らぐ空気が、本物の火の玉である事を認めさせた。
 人々の注目を集め、気を良くしたジンが、ぱちりと電気を空に浮かせる。
 綺麗な光の奔流が、人々の目に留まり、弾けて消えた。
 小さな拍手が、疎らに起これば、恭しく一礼。
 大きく両手を広げれて、大々的に告げる。
「皆様、どうか僕を信じて影朧の事はすべて任せてくれませんか?」
 意を唱える物は、居なかった。

 ―静かに、ただ静かに、街並みを眺める。
 多少の変化はあるけれど、何処か懐かしさを覚える。
 誰かと、一緒に歩いたような、そんな道。
『ねえ、聞いてくださる?今度ね、カフェーって言うのが出来るんですって』
 ふと、誰かの声が頭に響く。
『忙しいのは知ってるわ。でも、次の逢瀬では―』
 花が綻ぶような、そんな笑顔を浮かべているんだろう。
 嗚呼、懐かしい。其の言葉に自分は、一体何と答えただろうか―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニャコ・ネネコ
アドリブ連携歓迎/WIZ

がんばって、おにいさんをごあんないできるといいにゃ
だいじょうぶ、にゃあがついてるにゃ
ひょこっとおにいさんの肩にのって
れっつごー、にゃ!

デートだなんて、ろまんちっくだにゃ
おにいさん、いがいといろおとこだったにゃ?
…にゃにゃ、ごめんにゃ!冗談だにゃ!

もしよかったら、だけど
その待ち合わせのひとがどんなひとだったか
にゃあにもおしえてくれるかにゃ?
どんなふうにすごしたのか
どんな思い出があったのか…にゃあも知りたいにゃ

おにいさんが街の人たちの様子から
できるだけ気をそらせるように
いっぱいおはなしするにゃ



 不躾な視線を送る街人は居なくなったけれど、それでもやはり、影朧が街を歩く、と言うのは異質なのだろう。
 ちらちらと、様子を窺うように此方を見つめる目が―。
「だいじょうぶ、にゃあがついてるにゃ」
 とっ、と軽やかに地面を蹴った黒猫が、彼の人の、明の肩へと降り立つ。
 肩を踏み踏み、具合の良い位置を陣取って。ちゃり、と涼し気な音を立てて、澄んだ涙色の石が首元で揺れた。
 小さくも頼もしいボディガードの姿に、強張っていた彼の顔にも僅かに笑みが浮かぶ。
 恐る恐る、其れでも優しさを滲ませて、ニャコの頭を撫でる。くふくふと、喉から喜びの声が漏れた。
「カフェーでデートにゃ?ろまんちっくだにゃ」
 幼くても、其処はやはり女の子。色恋沙汰に興味が出てくるお年頃のよう。
「おにいさん、いがいといろおとこだったにゃ?」
 ぴたり、と明の動きが止まる。其れに気付いたニャコがバツが悪そうに謝罪を紡ぐ。
 思い出せない誰かとの約束。想いも強ければ、其れは呪いへと変じる。
「もしよかったら、だけど」
 教えてほしい。正気を失って尚、焦れる何かを求める気持ちを。
 教えてほしい。果たせぬ約束を求めて、彷徨うまでに至る強い思いを。
「明の思い出を、にゃあにおしえてくれるかにゃ」
 じっと、明を見つめる子猫の青い瞳は真剣そのもの。其れは、ニャコも思い出を抱えて歩く一人だからか。
『そう、だな…』
 未だ全てを思い出せた訳ではないけれど、先よりは鮮明に、彼女の事を思い出せる。
『彼女と俺は、家で決められた婚約者同士だったんだ』
 あの剣呑な視線が嘘だったかのように、瞳に懐かしさを滲ませながら、彼は語る。
『家同士で決められた婚姻なんて、彼女からしてみれば不本意だっただろう。けれど』
 ―明さん、とおっしゃるのね。私、■■と申します―
 にこやかに、強かに。気丈に振る舞うか、涙を零すか。其のどちらかと思っていたのに。彼女は違ったのだと。
 けれど、己が抱く思想は彼女を不幸に貶める。解っていたのに―。
『笑顔が素敵な人で…。…逢瀬を重ねるうちに、その、知らずのうちに、心を奪われてしまったよ』
「…にゃ、にゃにゃ…!」
 ニャコはまだ、恋なぞ知らぬ。恋する日が来るのかすらも分からない。亡き主の跡を継ごうと必死だから。
 知らぬ恋の、甘酸っぱい話に、ニャコも続きを促す。周りを気にしなくていいように。想い出に浸れるように。
 戦に身を置く彼にとって、彼女との時間は憩いの一時だったのだろう。纏う雰囲気がどんどん柔らかくなる。
『可憐な人なのに、何処か男前で―』
 ざあ、一陣の風が桜の花弁を舞い上がらせる。
 はらり、はらりと雨のように、桜が降る。視線の先には、年期の入った建物と、小さなテーブルと椅子が見えた。
 此処が噂のカフェーだろう。


『次の逢瀬では、私ね、貴方に伝えたい事があるの』
 ―だから、絶対来てね。私、ずっと待っているわ。
 そうして、交わした約束は。自分の死という形で永遠に叶わぬものとなってしまった。
 彼女は、己を恨んだだろうか。
 国を裏切った逆賊の許嫁として、凶弾されたりはしなかっただろうか。
 けれど、其の答えを得る事は、きっと二度と―。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『花の帝都の小粋なカフェ―』

POW   :    軽食やお菓子に舌鼓を打つ

SPD   :    同席者や店員との会話を楽しむ

WIZ   :    洒落た内装や窓からの眺めを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●人は其れを
 其処は、少し年季の入った煉瓦造りの建物だった。
 燦々と降り注ぐ陽に照らされて、くすんだ赤色が鈍く輝く。
 街の外れ故か―。
 郊外に咲く幻朧桜が、風に揺られてさわりと音を立てた。
 影朧であった男は、何処か瞳に寂しさを滲ませながら、建物を眺めていた。
『…此処が、彼女が来たかった―』
 ―かつん。
 不意に、背後から音が響いた。振り返れば、一人の老婦人が杖を片手に立っていた。
『……あ』
 静かに佇む影朧の姿に、恐怖を抱いたのだろうか。
 瞬間、ふわりと涙と笑みを浮かべて、猟兵たちへ―否、”彼”へ話しかける。
『素敵なお方。宜しければ、此の老婆の話を聞いていただけませんか?』
 誰も彼も警戒の姿勢を取るけれど、其れもすぐに解かれる。
 だって、老婦人が纏う雰囲気は、敵意を抱くと言うよりも―。
『…聞いていただきたいお話が、たくさん、たくさんあるんです』
 恋を抱く、少女の其れだったから。

 カチリ、と最後のピースが埋まる。
 姿は可憐なのに、行動の一端が凛々しくて。
 手を引かれるよりも、自ら手を取って先導していく。
 笑顔が素敵な、其の女性は―。
『……千陽(ちよ)さん…』
 掠れた声で影朧が―。嘗ての姿を取り戻した男、明が彼女の名を呼ぶ。
『………はい。……千陽は、ずっと、待っていましたよ。…明さん』
 そう言って、千陽はとても綺麗な笑顔を浮かべた。
 嘘みたいな、本当の話。
 きっと人は此れを、―奇跡と、呼ぶのだろう。

 さあさあ。
 そうして千陽に手を引かれた明が手近な席へと誘導される。
 何年ぶりの逢瀬だろう。
 二人きりにするのもいいし、敢えて千陽に話を聞くのもいいかもしれない。
 彼に残された時間は、きっともう残り僅か。
 本来の姿を取り戻したのならば、大丈夫。
 其れに。 
 ふわり、ふわり。
 香ばしくも甘い匂いが、周囲に漂う。
 店の軒先に立てかけられたイヰゼルにはお勧めの甘味が白墨でつらつらと書かれていた。
 しっとりバタアのパンケエキ、さくさくワッフル、彩り果実のパルフェ。
 他にも、チョコレエトを使った甘味なんかもあるようで。
 軽食にサンドウィッチもある様子。
 残念ながら、アルコールは扱っていないようだけれど、珈琲や紅茶、果実水など、一通りの喫茶メニュウは揃っているようだ。
 ゆったりとした一時を過ごすのもいいかもしれない。
 此れからどう過ごすかは、貴方次第なのだから。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
WIZ

二人から少し離れた席に座り、何を頼もうか。
甘味は苦手だがチョコは気になる。香りは好きなんだよな、リラックスできるというか。でもなぁ、甘い物食べすぎると痒くなるんだよな…。
結局サンドイッチなんかの軽食と珈琲を店員に頼んで。
時折二人の様子を見ながら舌鼓。

ああいう姿になってしまったとはいえ、それでも今のあの二人の姿はまぶしいな。
そして羨ましい。
ともに歳を重ねていたのなら良い夫婦というかカップルと言っていいのかな?
そういう言葉で片付けていいような気はしないけど、他に言葉が思い浮かばない。
でもそういう良い二人になってただろうな。
羨ましいと思うし手助けできたことがとても嬉しく感じる。



 老婦人と、青年将校だった男―。
 傍から見れば、不思議な並びではあるが、纏う空気は柔らかく、そして温かい。
 其の様子を横目で見ながら、瑞樹はやや離れた位置へと腰を落ち着ける。
 ふわり、と眼前を幻朧の桜花が風に流れて静かに落ちた。
 明にとってはそうでなくとも、千陽にとっても久方ぶりの逢瀬。邪魔するのも野暮というもの。
 気付けば、丸い机にはお品書き、と書かれた冊子が置かれていた。ぱらぱらと捲ってみる。
(甘味は苦手だが、チョコの香りは好きなんだよな)
 ほんのりと甘い香りは、気分を落ち着かせてくれる。一つ、難点があるとするならば―。
「甘い物を食べすぎると、…痒くなるんだよな」
 無意識の内に、そっと腕を擦る。ぺらぺらと頁を捲るけれど、心惹かれる物には出会えなかったよう。
 近くを通りかかった店員へ、軽食と珈琲を頼み、改めて瑞樹は再会を果たした二人を見やる。
 語り掛ける千陽を見つめる明の瞳は愛しさに溢れていて。対する千陽も、頬を染め語り掛ける様は恋する少女の其れ。
 偶然に偶然が重なった、まさしく奇跡の再会。
 本来であれば、二度と出会う事は出来なかった二人。其れが瑞樹には眩しく、―羨ましい。
 ただの武器で在った頃の主たる青年との別れ、そしてヤドリガミとして人の身を得てから世話になった恩人との別れ。
 もう、決して彼らに会う事は出来ない。解っている。
 でも、この胸中を占める寂しさは、きっと生きている限り永久に付き纏うのだろう。
(もし。…もしも。サクラミラージュに戦争が無かったなら、あの二人は良い夫婦になれたのだろうか)
 どうにも、しっくりくる言葉が見つからない。
『お待たせいたしました』
 ことり、と白い陶器のカップが置かれる。ふんわりと、苦くも香ばしい香りが鼻腔を擽る。
 次いで置かれた皿には、つるり輝く卵のスライスと、淡い桃色のハムのサンドウイッチ。
 そっとカップを持ち上げ、薫りを愉しむ。
(言葉には出来ないけれど、永年共に連れ添うって言うのは)
 ―ああいう事を言うのかもしれない。
 喜びも、悲しみも、苦しみも全部。共に分け合って生きていく、そんな二人。
(…困っている。あれは、多分困っているんだろうな)
 けれど、敢えて助けは出さず。共に在れなかった分まで、語り明かせばいいのだ。
 珈琲を一口、含む。切れのある苦味が、口の中へ広がる。
 こんな光景が見れるとは思っていなかった。手助けする事が出来て、良かった、とも。
 もし、瑞樹にこんな奇跡が降るなら。そう頭を過ぎった考えは、振り捨てて。
 小さく息を吐き、瑞樹はそっと空を見上げる。

 本日、快晴。
 ―幻朧桜は今日も優雅に花を落とす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
【SPD】アド可
蒼さん同行希望
明と千陽の逢瀬を見て
―今回は、守れたか
それが僅かな時間でも
邂逅した2人に祝福を
2人を遠巻きに見守り情報収集
好みの甘味を俺の奢りで手配した後
端っこで果実水を飲む蒼さんに断ってから
隣に座り甘酒と羊羹を注文しよう
甘酒は無ければ抹茶で
蒼さんに羊羹を勧めつつ少し話を
哲学的ゾンビって知っているかい?
人は思考し意識を持つ者を自分と同じヒトと認識する概念らしい
蒼さん
君の予知が無ければあの奇跡は起きなかった
奇跡を願う君の心が彼等の邂逅を呼び寄せたのだと思う
その願いを抱ける君は
俺には『物』ではなく、心優しい『ヒト』に見えるよ
すまない、少し気になってね
少し心に留めて置いてくれれば幸いだ



 笑顔が咲く。今のあの二人には、きっとそんな言葉が似合う。
(―今回は、守れたか)
 知らず、安堵の息が零れる。けれど、優希斗の表情には切なさが伴っている。
 だって此の逢瀬は、本来ならば在り得ぬ奇跡。ならば、其処に水を差すのは野暮と言う物だろう。
 でも、これくらいのお節介なら赦されるだろう。
 じっと黒曜の瞳が、笑みを称える二人を見やる。明の手元には、珈琲が。よく見れば、砂糖の包みが一つ空いている。
 千陽の方は、紅茶にミルクを注いでああり、同じく砂糖の包み紙が一つ空いている。ほんの少し、甘い方が好みなのだろうか。
「ふむ…」
 せめて、この時間が二人にとって善き思い出になりますように―。
 そんな願いを込めて、一つずつ甘味を手配して。そうして建物の影に、目立たぬように座る少女の元へと足を向ける。
「隣、いいかい?」
 そっと伺い立てれば、少女は僅かに目を見開いて。けれど、戸惑いがちに小さく頷いた。
 慣れた手つきで、手早く注文を行うと、優希斗は改めて目の前の少女に向き合う。
 少し離れた卓から、千陽の喜色の声が僅かに届いた。
「蒼さん」
 おずおずと、視線が交わる。緊張しているのか、それとも別の要因か。その表情は硬い。
「哲学的ゾンビって知っているかい?」
 其の言葉に、少女は小さく首を傾げる。―どうやら、聞いた事はないらしい。
『…哲学、的、ゾンビ…、です、か…?』
 小さく音に出された言葉に、優希斗は頷く。
「人は思考し意識を持つ者を自分と同じヒトと認識する概念らしい」
 昨今、様々な世界が見つかり、それに伴い、新しい種族も見つかっている。
 けれど、其の誰も彼もが、意識を持ち、意思を伴い、言の葉を交わすヒトである。
 例え、どのような見目をしていても、間違いなく彼らはヒトなのだ。
 ―ことり。
 真面目な話を察してか、そっと店員が皿を置いていく。ほわり、と透明な器から湯気が上がるが、風に揺られて、流れて消える。
『…え、と…』
 ざぁ、と桜の枝が揺れる。風に巻き上げられて、地へと落ちた花弁が空へ舞って、桜の花雨が降る。
「蒼さん」
 再び、名を呼ぶ。嘗て、軽率に名を、存在を、意義を捨て去った彼女へ、馴染ませるように。
「君の予知が無ければあの奇跡は起きなかった」
 ふっと笑って、奇跡の出会いを果たした二人へ視線を向ける。其の視線に気付いてか、二人が此方へ手を振る。
 其れに、小さく手を振る事で応えて。
「あの邂逅は、奇跡を願った君が呼び寄せたものだと思う」
 だから―。
「誰かの為に、願いを抱ける君は、俺には『物』ではなく、心優しい『ヒト』に見えるよ」
 元来、ヤドリガミは、物に魂が宿った存在。其の肉体は仮初であり、偽物。
 けれど、誰かの幸せを願い、誰かの痛みを憂い、奇跡を祈り願う者が、ヒトではなく何だというのだろうか。
 ぱちぱちと、色彩異なる双眸の瞳が瞬く。
『…ボクが、…ヒト…』
「すまない、少し気になってね」
 その話を聞いた時、ただ純粋に驚いた。同時に、己を人と思えぬ事に一縷の悲しみを。
 この言葉が、彼女が変わるきっかけになれば、と柄にもなく小さく祈る。
 思考の海に沈んだ蒼の前へことりと皿を置く。抹茶と桜餡の二層の羊羹の上には、桜の塩漬けが寒天に閉じ込められている、春色の甘味。
 共に運ばれてきた器には、白い麹がたっぷり沈む甘酒。此方も同じように一片の桜の花弁が浮いている。
「よかったらどうだい」
 ぱちくり、と、驚き一つ。

 さあ、いろんな話をしようか。人同士の、他愛もない話を―。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニャコ・ネネコ
アドリブ連携歓迎/POW

やさしそうなおばあちゃま
おにいさんも、おばあちゃまも、会えてよかったにゃ

…おそくなっちゃったかもだけれど
のこされた時間は少ないかもにゃけど
やくそく、叶ったのかにゃ

さて、「あとはわかいおふたりで」というやつにゃ!
おじゃまするのはヤボだにゃ
遠くの席からふたりを見守りつつ
にゃあも甘いものたべるにゃ!

アイスが盛られたぱんけえき
一度食べてみたかったにゃ!
お店の人に切り分けて貰ったのを
しっぽでフォークつかんで食べるにゃ

あ、蒼だにゃ!
このまえはいっしょに戦ってくれてありがとだにゃ
蒼もあまいものたべるにゃ?
あまいものって、なんだかたのしいきもちになるにゃ、ふしぎにゃ
これも魔法かにゃ?


初里・ジン
「やる事は終わったしカフェで休もうかな。」

一息ついた後、「僕のマジックを見ていかないかい?」と蒼に声をかけ、テーブルに招き入れる

「ここに小さな水晶の欠片があるよね?これを瞬間移動させるよ…はい!水晶はどこかって?ここだ。」

コップの中に入れたはずの水晶の欠片がティーポットの中に移動している。タネは水晶の欠片は実は2つあり、片方は氷で出来ている。片方の氷に塩を振り、服の袖の下に隠してある紐を氷にくっつけて引っ張り、コップを逆さにした瞬間に手の中に入れて【属性攻撃】の火の魔術の熱で解かす。そして、最初から仕込んでいた本物の水晶の欠片が入ったティーポットの蓋を開け、あかたも移動したかのように見せている



 優しい笑み、優しい掌。
 姿形は違うのに、雰囲気が、千陽に何処か似ているように思えるのは錯覚なんだろう。
 儚き影朧は、嘗ての姿を取り戻した。漂う未練は、約束は。優しい時間となって果たされた。
 たくさん話したい事がある、と告げた千陽は、其の宣言通り、ずっと明に語り掛けている。
 話を頷きながら、相槌を打つ明の目線は、とても優しい色をしていた。
 けれど、どちらも其の眦に薄く涙を浮かべて。其れはこの時間が永久に続かない事に気付いている寂しさなのか、それとも約束を果たせた事による安堵なのか。
 その答えは、二人にしか分からないけれど。でも、浮かぶ笑顔は、嘘じゃないと思えるから。
「さて、あとはわかいおふたりで、というやつにゃ!」
 時間が止まってしまった明と違って、順当に時間を重ねた千陽には、まだまだ語りたい言葉がたくさんあるだろう。
 だってほら、おっとりと笑みを浮かべながら―。
『私、貴方の事がずっと忘れられなくて。ふふ、初恋は叶わないと言うけれど、貴方以上に良い人に出会えなくて。だから、ずっと』
 ―忘れられなかったの。ずっとずっと、お慕いしておりました。
(にゃ、にゃああああ…)
 甘酸っぱい気持ちがニャコの胸いっぱいに広がる。ニャコに恋はまだ分からない。理解出来る日が来るのかすらも。けれど。
 にゃふにゃふと、頬が緩む。そんな二人の様子を見守りながら、ニャコは軽やかに椅子の上に飛び乗る。
「おじゃまするにゃ」
 既に其の卓には先客の姿が。海を思わせるジンの青い瞳が細められる。
 傍らには、白いポットとカップ。紅茶の茶葉の爽やかな香りがニャコの鼻先に届く。
「いらっしゃい」
 にこやかな笑みを浮かべて、ジンは小さな同席者に歓迎の意を示す。
 注文を取りに来た店員へ、アイスクリンが添えられたパンケエキと、温かい飲み物をお願いする。
 美味しい物と、美味しい物。二つ合わされば、もっと美味しいに決まっている。
「あ、蒼だにゃ!」
 遠くの席で、共に戦った青年と話す少女の姿を見つける。何かを青年に断ってから、少女の足が此方の卓へと向かう。
「このまえはいっしょに戦ってくれてありがとうだにゃ」
 ぱちくり、と瞬き一つ。刹那、白い頬がふわり、と朱に染まる。
『…あ、いえ…。…ボクの、方、こそ、たくさん、お世話に、なり、ました…』
 たくさんもふって貰った。頭の上と言う、ほんの少し地面より高い世界を見れた。
 戦いの場ではあったけれど、楽しかったので無問題なのである。
 其れを見たジンが面白い物を見た、と言わんばかりに口元を緩める。
「僕のマジックを見ていかないかい?」
 其れならば、これならどうだろうか。四つの瞳が、ぱちくりと瞬いた。
「ここに小さな水晶の欠片があるよね?」
 取り出したるは澄んだ、小さな水晶の欠片。カップを持ち上げて、二人に見える様に掲げる。
「これを瞬間移動させるよ…はい!」
 ぽちゃん、と小さな音と波紋を残して、水晶はカップの其処へ沈んで―。
 消えた。
「にゃ。きえたのにゃ!」
 思わず、椅子からニャコが机へと飛び乗り、カップの中をまじまじと見つめる。其処には琥珀の液体が広がるばかり。
「水晶はどこかって?…ここだ」」
 かちゃ、と陶器が擦れる音を響かせて、ポットの蓋を開ければ、ころりとした水晶の欠片が其処に沈んでいた。
「ほんとにゃ、すごいのにゃ!」
 大興奮するニャコと、小さく首を傾げる少女の姿を見て、ジンの口に笑みが浮かぶ。
 マジシャンとは夢を与えるもの。驚きに染まる少女たちに、わざわざ種を明かす必要もあるまい。
 ―氷と火の魔術を使った、ちょっとした種も仕掛けもあるマジック。
 こんな驚きの顔が見れるのだ、これからマジシャンは辞められない。ほんのりとしょっぱくなった紅茶を飲みながら、ジンは二人を見つめる。
『お待たせしました』
 ことり、と置かれたのは、ふわふわのパンケエキ。こんがり焼けた表面には、猫の足跡の焼印。
 小さく切られた苺と、紅い酸塊(スグリ)がキラキラと輝いて。
 パンケエキに添えるようにバニラのアイスクリンが、パンケエキの熱でほんのり融けた。
 気を利かせてくれたのか、ニャコが食べやすいように小さなサイズに切られた其れを見て。
「一度食べてみたかったにゃ!」
 黒いしなやかな尻尾が、くるりと突き匙を掴む。パンケエキに突き刺せば、ふんわりとした弾力が返ってくる。
 ほんの少し、冷まして小さな口へと運べば、優しい甘さとふかふかの食感。空を写した青い瞳が、きらきら喜びに輝く。 
「おいしいにゃ…!!」
 ぴこぴこと黒い耳が揺れ動く。心なしか尻尾もゆらりゆらゆら。
「蒼もあまいものたべるにゃ?」
 緩やかに首を傾げてニャコが問うけれど、当の少女は小さく首を横に振った。きっと、初めてのパンケエキ体験。
 心ゆくまで楽しんでください、と少女はたどたどしく告げた。
 とろりと溶けたアイスクリンがパンケエキに絡んで、また違う美味しさを演出する。
 アイスクリン単体なら、ひんやりと口を冷やしながら広がる甘さを愉しんで。
「あまいものって、なんだかたのしいきもちになるにゃ、ふしぎにゃ」
 ―これも魔法かにゃ?
 そう告げられた言葉に、小さく、本当に小さく淡く微笑んで。
『…そう、かも、しれません、ね』
 ―美味しいものは、素敵で、幸せにしてくれる、魔法なのよ。遠い記憶で、誰かが言った。
 
『―あ』
 一陣の風が吹き抜ける。小さく声を漏らした明の手が、ほんのり透けて。この逢瀬の終わりを告げる。
『…明さん』
 千陽が、小さく嘗ての婚約者の名を呼ぶ。其の顔は、まるで少女の様に、輝いて。
『来世では、一緒に幸せになりましょうね』
 ふわり、と花が綻ぶように笑って。
『千陽さん…。…ええ、来世では、共に―』
 心からの笑顔を浮かべて、そうして、明は風に攫われた。
『きっと、また、私は貴方に恋をするわ』

 果たされた約束は、新たな願いを生む。来世こそは、きっと―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月04日
宿敵 『幻朧将校』 を撃破!


挿絵イラスト