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ひゃっは~~~!!! 悪だ~~~っ!!!!!

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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 ここは良い子が泣き悪い子が笑うデビルキングワールド。悪な奴らが年中無休で悪事を働いているのだが、皆元旦くらいは休みを取っていた。
 二十四時間働く為には休息も必要なのだ。それに勤勉な態度は悪じゃない気がするので堂々とサボります。罪悪感は結構湧くものの、せめて三日間くらいはゆっくりしてもいいよねと悪魔を自称する良民たちは正月を満喫して餅をもりもりみかんをむきむき酒ごぼぼぼぼおえーーーっと食っちゃ寝していた。
 そんな中でも悪事をブチかまそうと現金輸送車を灯油の巡回販売をするくらいの速度で走らせる集団が、パラリパッパとラッパを吹かせて周りに泡を吹かせてやろうとしてやがるッ!! 果たしてこいつらはちゃんと悪いやつなのか!?

「ひゃあ! お餅屋さんのお通りだーー!! ワルだからお餅を食いすぎて夕飯を食えなくしてやるぜ〜っ?!」
「俺は天使だったが今は堕ちてるワルだからよォ〜……お餅ちゃんたちの間にベーコンとチーズを挟んでパリッパリに焼いちゃうンダよーーんっ!!」

 わあ、アレはもう直ぐ夕飯であろう民家の前でおもむろに現金輸送車改め餅輸送車を止め、七輪で焼く餅の匂いを民家の方向けて団扇を仰ぎ飯テロを行うデビキッザピーポーズ!
 奴等、ご家庭で作り過ぎた餅たちを回収するだけに飽き足らず、貰ったものは返さないと胃に収めて消化してしまうらしいなんて……なんて悪いやつなんだ!!

「ひゃひゃひゃ! 兄貴ィ見てみろよ。まだ1Dよりもちっちゃなおててをした可愛いベイビーが羨望の眼差しを向けているぜェ……?」
「……羨望ぅ? ソイツはオレたちにか? 違えな。餅にだ。オマエよりは餅の方がワルってこった!」
「そっそっっっっそんな!? いやでも餅ってじいちゃんの喉に詰まるヤベーやつだし、そうか……そうかも……」
「そ〜〜〜〜やって流されるからオマエはいつまで経っても巣立ちできねェんだブラーヴォ!! アイツを見てみろ!!」

 餅輸送車から降り立った今日もイマイチバッドボーイ、ひょろ長ブギーモンスターを叱咤するリーダー格の骸骨男は車の運転席から離れずに、痩せすぎて肉のない指先を別のブギーモンスターへと向けた。対象は他の怪物たちと違って体格が一回り大きく見える。

「あ、おばちゃーん!! ……へっへっへ。余った餅を寄越しなあ〜〜っ!! 俺たちが食ってやっからよ〜〜!!
 ……ナンダぁこんだけか? 遠慮せずにまだまだ持ってこいや!! 餅つき機で楽しく作りすぎちまって、冷凍庫を圧迫しているんだろ~~?? 太るのは嫌だろ~~?? 寄越しな~~??!」

 ゆ、強請りだ!!! 野郎っ保存食としては半年は持つであろう元つきたて餅を言葉は強くあれど態度は低姿勢プラス孫みオーラを発揮させてどこぞのママさんを懐柔しようとしている!! すごく悪いやつだ!!!!!

「わ、流石強請りのファットマン。ワルだなあ~っ」
「ボケっとすんなよブラーヴォ!! いい子呼ばわりされたくなかったら、さっさと隣のお宅を訪問して食いきれない餅を回収してこい!!」
「ひゃわわ!! わ、わかったぜ。頑張ってくるぜぇ~~い!」

 青白い炎を燃やす骸骨ニキはひょろ長ブギーモンスターを見届けた後、ホットサンドメーカーで餅とあんこを挟み悪事を働く助手席の堕天使と共にブギーモンスターたちを信じて待つ。
 因みに太っちょブギーモンスターに強請られていたどこぞのママさんは、「食べ物を粗末にするの、悪だと思ってたけど勿体ないものね~。悪に懐柔するのも悪よね、悪ー」と雑に処理して家庭の餅を全部帰らぬ餅へと泣く泣くせざるを得なかった。なんてこったい。やっぱデブって強キャラなんすわ。

「へっへっへ……ありがとうだぜぇ~~~??!」

 や、野郎!! 傷口に塩を塗るかのようにお礼まで言いやがって!!! こんな極悪非道が従うリーダーってのも相当な悪なんだろうな。だって部下に激励を送っているし、大型車を運転するんだもの。絶対ツヨイコワイ。

「ひゃーっひゃひゃひゃ! 俺だってやれたよぅ兄貴ぃ~~! 褒めてくれるかな~~っ?!?」
「あー。お餅屋さーん、コレも持って行ってくださいー」
「はあーいって、んん!? 待てキサマ~~! なんだぁこれは。ケーキにクッキーに、ミルク! サンタさんじゃあるめえしよ~~!!」
「あらー、実はサンタさんですよー! メリークリスマスですー」

 ひょろ長ブギーモンスターが目撃したソレは、ミニマムサイズであれど絶対的な悪を放つツワモノだった。
 微睡んだ緑眼はのぞき込む者を堕落させ、思いやり香る鮮赤花は摘む者の退廃を望んでいる。サンタを名乗るソレは真っ赤な衣装に身を包み、小麦肌の小さき人等を従えてはいるものの危害を加える様子は一切ないようで、戸惑う怪物に向けて優しく笑む。
 兄貴よりも1Dくらい強そうだなと呑気を思っていたひょろ長。そんなダメっこかいぶつの異変に気付いたスパリダのデビスケニキは乱暴に二人の間に割って入る。

「おいおいおいおいおいおい眠り姫かよ。春を待たずに目が覚めたのか? 気が早すぎるぜ、うちのシマじゃあサンタは深海から這い出てくるんだ」
「ふふー、冬眠なんて勿体無いことしてませんよー。それにクリスマスはまだ終わっていないし、終わらせませんー。
 集めるの、餅だけでいいんですかー? 餅だけじゃあなく。クリスマスもまだ家に残っているかもしれませんよー」
「……何が目的だ」
「へへへ、国を作りますー。巨大なクリスマスツリーの国。私はそれが欲しいのです。そうしたら、みんな嫌でもクリスマスを思い出してくれるでしょうからー!」
「へえ……いいぜ、その話乗ってやるよ!!」
「えええ!? 本気かよ兄貴ぃ!」

 ピり付いた空気が解かれたと同時に慌てるひょろ長の懐疑な視線を受け入れ流す骸骨男の燃える青火は大層愉快そうに燃え盛り、知恵の布を焼き焦がす勢いだ。
 弧を描く口元から放たれた言葉は、

「なんか悪っぽいからついてってみよ?」

 そうかな……そうかも……。ひょろ長は案外柔い素の口調で話す兄貴の言葉に納得したのだった。


「ハロウィーンやクリスマス、そういった一日限りの行事を長く楽しもうとする気持ちは誰にでもあるのではないでしょうか?
 事前に開催されるマーケットや準備期間は長いのに、本番はやたら短く儚いものです」

 グリモアベースにて。
 一日限りの個展に行けなかった日とかマジで病みますよねえと、ソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)はうんうんと深く頷いてみせるが、そのエピソードに共感できるのかは人それぞれだろう。

「予知を語りましょうか。オブリビオンである聖夜精、クリス・ベルがデビルキングワールドに『モチノキ』という新たな国を作りました。
 塔のような造形をした国は緑に染色した餅でできており、到る所にオーナメントが散らばっています。地面も壁も全てが餅ですので、実に厄介な地形ですね。
 道中では悪魔たちが邪魔をしてきますが、戦わずとも説得すれば味方になり得る者たちです。悪っぽい事をすれば付いてきてくれますが、その逆をすれば離れていきます。
 ですが、善行であれど堂々としていればいいのですよ。悪と言い張ればそれは悪なのですから。うまく活用してください」

 それでは、お気を付けていってらっしゃい。グリモアを展開させたソルドイラは、猟兵たちを転送させるのであった。


拳骨
 プレイング受付状況は、お手数をおかけしますが、マスターページをご確認ください。

●国について
 全貌:出来立てほやほやの国なので、建物も何もありません。土地だけ確保しただけの状態です。到る所にクリスマスオーナメントが飾り付けられています。
 地形:緑色に染色された餅でできています。ちょっと走りづらいですが、歩くには問題ありません。転ぶと起き上がるのに時間がかかるかもしれません。

●第1章
 魔界の一般住民との集団戦ですが、完全な戦闘ではなく、うまく声を掛けたら仲間にできます。説得の方法は人それぞれだと思います。

●第2章
 魔界の一般住民との集団戦です。第1章で仲間にした悪魔達が共に戦ってくれます。

●第3章
 悪のカリスマを充分に発揮して戦うボス戦です。戦闘中の悪魔達は悪のカリスマに敏感なので、悪っぽくない善良な行動を取れば寝返る可能性があります故、悪魔達を惹き付ける悪で対抗しながら戦いましょう。

●雑記
 拳骨です。6作目になります。コミカルギャグです。よろしくお願いします!!!!
 格好悪いと言われる行動をとっても、その者が全力である限り、心打たれて陶酔してしまうこともあるんじゃないかって自分は思います。つまり判定は緩いです。
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第1章 集団戦 『ブラックローブ』

POW   :    ダブルブラックローブ
自身の身長の2倍の【巨大ブラックローブ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    コールドハンド
【冷たい手による引っ掻き】が命中した物品ひとつを、自身の装備する【知恵の布】の中に転移させる(入らないものは転移できない)。
WIZ   :    ブラックアウト
【冷たい手で触れることで驚き】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【黒い知恵の布】から、高命中力の【意識を奪うような冷気】を飛ばす。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●LOVE&FOOL
「GOD! GURU! HELL! GOD! GURU! HELL!」
「GOD! GURU! HELL! GOD! GURU! HELL!」

 ジングルベル、ジングルベル。『サタンは我々を地獄へと導いてくれる』という意味が籠められた歌を掛け声代わりに、ブギーモンスターたちは聖夜精の姿を象った餅像を建築している。
 今日は新生魔王の誕生日なので誕生祭なのだ。建国記念日でもある。そんな生まれたてのフレッシュバブミーカントリーのキングサタンであるサンタさんは、いい子な悪民たちにプレゼントを配っていた。

「いいですかー? エリート骸骨の四天王な皆さん……このパーティグッズはこうして、こうして使うのですー!」
「おおー」

 ぱちぱちぱち。サンタさんの素敵なパフォーマンスに思わず拍手をしてしまう骸骨たちは少なくとも六人以上は頭数が確認される。だが六人皆が四天王だ。ここに居るエリート骸骨たちは大体五人組を作っており、皆それぞれが四天王なのだ。
 そんな数がやけに多い四天王たちにサンタさんは道具だけならず、道具を使ったワッザもプレゼントしてくれているようで。ひょっとしたらこのオブリビオン、いい子なのでは~~!?

「なあなあなあなあなあなあなあなあサンタさんよ~~~。プレゼントはステキだがよ~~~~っ
 まさかコイツを使って……路銀を稼げって言うんじゃあねェよな~~~??」
「うんー、それでDが稼げると思うならーいいんじゃないでしょうか? そんな努力するよりー、楽に大金稼げちゃうズルな方法、知りたくないですかー?」
「ヘエ。どんな方法で?」
「『転売』をします」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいソイツは犯罪級にサンタカッケェ~~~~~~悪なんじゃあねぇカ~~~~~???!!!」

 悪だよ。悪だよ転売は! 親父にぶたれたことない悪魔でも流石に平手打ちを食らうレベルで悪い事だよ、それは。特にこのシナリオ内では違法すれすれの悪事なのだ!!!! 
 畜生なんだこのオブリビオン!! やっぱり悪いオブリビオンじゃないか!!!!!!! こいつはめちゃ許せんよな~~~~ッ!!?

「だから気に入った。魔王サマ」

 許されたわ。超ド級にドデカイ悪事をブチかまさなきゃこの先生き残れないから仕方ないね。もし此処にひょろ長ブギーモンスターがいたならば、Dの圧に耐えきれずひゃあんと失神していただろう。
 ワルな転売をこれから行う自分のカッコよさを想像して、青火を打ち鳴らしケタケタ笑う骸骨たちに対し、サンタさんは喜んでもらえて何よりといわんばかりに満足げな仁王立ちをしたのだが、その一瞬目を大きくさせた。
 空を睨んだ彼女は薄金のしとやかな羽根を広げ、玉座あるベツレヘムの星へと飛ぶ。

「……、この気配はー。……やはり、猟兵でしたねー。うふふー、今では私はこの国の王、サタンさんなのです。
 Dを集めるのも大事ですけど、国をプレゼントしてくれた民を守るのも大事! 両方やらなきゃならないのが王の務めー!
 国を略奪せんとす愚かなる盗人よ、覚悟するがいいー……」」

 モチノキの頂点から赤土が目立つ大地を見下ろした彼女は、そのまま悪魔たちに言い放つ。

「ヤロー共さんたちー!! クリスマスパーティーの招待状を貰っていない、エキストラの訪問者たちを歓迎する時がきたらどうするか。言ってみろですー!!」
「ひゃあ!! パイ投げならないモチ投げの時間だオラァ~~~~~~っン!!」
「へっへっへ……。アリがたーく頂戴した餅で作られたこのパイはなあ? ホットサンドメーカーでいくらでも量産できちまうからよォ……球数が尽きないんだぜ~~~~!?
 しかもパイと違って形が崩れないのにカチコチじゃあないから顔面セーフなわけ。身体に当てず、わざと顔にぶち込んでやるよ~~~!!!」

 やっべえ、ブギウギモンステラの集団だ!! 圧倒的悪なビジュアルをした彼らだが、両手に餅を持っている辺りちょっぴりミスマッチな感じがするかもしれない。
 ネームドなイマイチ悪いやつはチョロそうだが、すごく悪いやつはフィジカル面でもツヨそうだ!!!!

「ヘーイ、ブギーブギーモンステェェェラッどもさんー! エントランスからパーティー会場までの道のりはさぞかし遠いものでしょー。迷子の奴らの道案内をしてやりな~~~~ーー!?
 行き先はもちろん地獄。クリスマスツリーの頂点はもう飾り終えているのでー!」
「「「「キサマら全員、地獄送りにしてやるぜ~~~~~~~!!!???」」」」

 ブギウギモンスターズ出動!! モチノキのてっぺんからわあわあと下へと駆けて猟兵たちに餅をお見舞いしにやってきた!!
 こちらには餅が手元にないが、地面や壁は餅でできている。さらにはクリスマスに関係する装飾品だって落ちており、何かしらに利用できるのかもしれない。
 敵として戦うか、味方として引き込むか。それとも? さあ、どうしたものか。
ハンナ・レドウィッチ
不採用含め全て歓迎よ!
悪が賛辞されるなんて、まるでこの私の為にあるかのような世界ね!ふふふ、でも全肯定というのも物足りな…転売?餅投げ?
こ、こいつら…確か餅は毎年何十億人のUDCの民を殺すとかいう恐ろし食糧兵器…!
この大天才邪竜神様が気圧される程の悪党ぶりね!

ならばこの素敵な悪党どもにワサビをプレゼントするわ!
乱れ飛ぶ餅はマイケルくんで防御しつつ宣伝。ワサビは餅の中に入れれば効果は倍増、全ての民を根絶やしにする戦略兵器の完成よ!
素直に受け取って私の配下になれば許してあげるけど、配下にならないなら…!
UC発動、囲んで棒で叩く。さあ、この圧倒的暴力に酔い痴れなさい!



●それなりに見える餅木のてっぺんを目指して
 デビルキングワールドでは悪がマブくて善がシャバい。善良であればあるほどにシャバ僧呼ばわりされちまう反転世界の中、花咲かせるには悪行に心を痛めども手を染めねばならないキマリがある。
 だが、悪行に心を痛めない邪竜神が、魔界に芽吹いた餅木の根に顕れた。薄暗く染まった白のハイビスカスを目にした者は崇め奉れ。其の女、今はオラトリオなれど嘗ては未だ見ぬ夢の月に本体を封印された――と、抜かす系女子!!
 マジメに邪神してたらしいハンナ・レドウィッチ(天災級自爆魔法使い・f31001)が、意気揚々とモチノキにやってきたぞ!

「ふふふ……悪が賛辞されるなんて、まるでこの私の為にあるかのような世界ね!」

 世界のニーズに適していた彼女は堂々と仁王立ち、横で腕を組む相棒と目を合わせては白く尖った歯を一人と一本を囲むブラックローブに見せつける。
 デビキンでは不良であればあるほどにシブく、シブ&マブな大天才邪竜神様はナチュラルにカッコいいオーラでメンチを切ってしまうのだ。超かっこいい。
 これには黒布に身を包んだブギウギモンステラたちも威圧されてしまい、ハンナの不意を衝き先制を取ることは叶わなかった。

「おいぃ、アレやばくネ? ナチュラルボーンにサタンじゃない……?」
「そうかな……そうかも……」
「ちょっとそこの黒布くん、この私がサタンですって? ふう……自己紹介、してあげましょうか」

 ソレもアリっちゃあアリだけどなあと思いつつもハンナは唇に手を添え、艶やかに笑う。その美しさたるや、普段のクソザコナメクジ具合を感じさせぬブッチギリな悪の華。
 餅の地にズドンと法杖を刺せばブラックローブはおののいたが、それはハンナ本人ではなく若干薄目になった煌君エンバリアードにだった。そんな事を知らない彼女は高く結いあげた灰髪とともにローブを手で揺らし、高々と名乗ってみせる。

「私はハンナ・レドウィッチ……未だ見ぬ夢の月に邪竜神の本体を封印された、と~~~~~~っても悪い! 悪い魔法使いよ!!」

 なんと!! ワルを自己申告するなんて、なんて悪そうなやつなんだ!? とっても悪いとか言っているし……悪そうだ!
 悪を名乗る者が居れば本当に悪いやつなのか、悪魔たちは確かめなければならない!! もしかしたら、新たなる魔王爆誕の瞬間が来るかもしれないからだ!!

「悪い魔法使いだって~~~?? しかも封印ってよお、悪い事して封印されたってーやつだったり?」
「そうよ! 悪い事したから未だ見ぬ夢の月に封印されたわ!」
「ア、アロ……エ?」
「未だ見ぬ夢の月(アロゥ・エンデバリカン)ね。黒布くんたちみたいに、黒い靄を纏った亡者がわんさかいるところよ」
「亡者!! えっじゃあさじゃあさ、そのっアロゥ、アロエバカリンって国で亡者を従えるキングだったりするの?」
「アロエは群生していないわね。でも、ここに居る集団より多くの亡者たちを私は使役しているの!」
「マジデ~~~!? ちなみに世界とか掌握したりクシャミで国とか消し飛ばしたりした?」
「したわ!! そりゃあもう、いつの間にか掌握してたし、ついうっかりで全部消したわ!!」
「やっっっやば~~~~!!? デビルやば~~~~!!!」

 さてハンナが言ったことが本当かどうかはハンナ・レドウィッチのみが知るところ、しかし先に言いがかりをつけてきたのはブラックローブ。全肯定して悪魔たちを手名付けようとするハンナはとっても賢いし、気分もイイ。
 正にWIN-WINの関係といっても差し支えないこの状況、だがネームドワルはそう簡単に軍門に降るわけにゃいかないのだ。場の空気に決して流されたりなどしない!

「ひゃあ~~~っははは!! 待ちなあ同胞どもぉ! なあ~~~にはしゃいじゃってンのサ。
 そんなにお客サマに道案内したいのなら、オマエらから地獄に行くのがスジってモンじゃねぇの?」
「それにヨォ~~~よくよく見てみるとよ~~~……お姉さんからは、クソザコナメクジって感じのオーラが出ているんだよな~~~?? シャバを誤魔化してシブくなってるつもりか~~~!?」
「「「「「な……なにいっ!?」」」」」

 全肯定されて物足りないとは思っていたが、まさかの単純な悪口! ハンナもびっくりだ。なんだか目開かぬ法杖がうんうんと頷いている気がして思わずソレに睨みつけてしまうと、今度はひょろ長いブラックローブがハンナに指を指してきたではないか!! 悪いやつだ!!

「おっとっと~~~!? 視線を逸らしたなあ。つまり図星ってことサ。つまり転売も餅投げもできねえいい子ちゃんなんだヨ~~~ン! ひゃは、このブラーヴォの称号を継承してやるよ~~~~!!」
「転売に、餅投げ? ……こ、こいつら! 確か餅は毎年何十億人のUDCの民を殺すとかいう、恐ろし食糧兵器!!」
「ひゃっはあ~~!! 地獄送りだ~~~!!! 俺の手で冷えちゃったけど餅の威力は伊達じゃあないぜぇ~~~!!? 食らえい!!」
「うわっとお!? まるで雪玉みたいね。餅合戦にしてはこちらの球数が心もとないけれど、ハンデをくれてやるわ!」

 大天才邪竜神様が気圧される程の悪党どもが冷えた餅を投げてきた!! 触らなくても判るほどに冷やっこい気を纏う餅に当たってしまえば驚いた後絶体絶命! 当たると痛いよ。例えカチコチでなくても痛いよ、餅は。
 それに対してハンナは餅の地から餅をもにゅっと引っ張っては丸めてこねて、即興で餅球をぶん投げて素早く反撃。相棒であるマイケルくんだって全身を使い、乱れ飛ぶ餅をかっ飛ばして主の防御に徹する。

「顔面を戸惑いなく狙うだなんて、なんて素敵な悪党ども! 気に入った。でも、足りないわ! まだ全然足りていない」
「へっへっへ……褒めてくれてありがとうよぉ~~~!! 気分がイイからスナオに聞いてやろうじゃねえの。お姉さん、一体何が足りないってンだ~~~!?」
「教えてあげるわ黒布くん、威力よ。インパクト! こんなのを暴力っていうなら生ぬるい事この上なし!!」

 歪んだ笑みをこぼすハンナが懐から取り出したのはワサビ。漢字で書くと山葵なそのまま食べると辛くない、けれどすり下ろすと酵素とシニグリンが反応して辛味成分になる薬味の一種である。
 そんなワサビを餅球の中に入れれば威力も効果も倍々増、全ての民を根絶やしにする戦略兵器の完成だ!!

「さあ、プレゼントよ! 威力は身をもって経験なさいな!!」
「ひ、ひゃ~~~~?!?!?」

 宣伝した矢先、超至近距離から掌底打ちを繰り出すハンナの餌食になったひょろ長ブラックローブ!! 冷たい両の手でハンナの腕を鷲掴もうとするもハンナが手を引っ込めれば同時にブラックローブはもがき苦しむ!

「ひゃわ~~~~!!? 顔が痛ぇ~~い!! でも俺の手が冷たいから、手で冷やせばだいじょーび……ってうぼあ!!」
「あ、あのワサビバカリンの女! 冷たさに驚いたひょろ長に自らの意識を奪わせるなンて……なンて悪いやつなんだあ~~~~っ!?」
「ふふふ……ワサビも群生していないわ! でも私はワサビ餅を沢山手に持っている。今だってマイケルくんが防御の合間に餅を補充してくれている!!
 さあ、素直に手で受け取って私の配下になれば許してあげるけど……?」
「む……むむむ!」
「何がむむむよ! 配下にならないなら囲んで棒で叩くまで!! さあ、この圧倒的暴力に酔い痴れなさい!!」

 ユーベルコード【大天才ミゼリコルディア・オナガー!】。それは殺傷力のほぼ皆無な棒が複雑に飛翔する包囲攻撃、囲んで叩いて叩いて叩きまくる物理に超特化した魔法。
 邪悪な幾何学模様を描いた六百六十本の棒たちは、六十六メートル半径内にいるブラックローブたち全てを認識した。
 そこにはハンナも含まれる。失敗すれば自滅してしまうギャンブルテクニックに対し、勝利の女神は微笑むだろうか? いいや、勝利の女神は笑わない。そして勝利の女神など、彼女には必要ない。
 ハンナ・レドウィッチが笑う限り、己は勝利をつかみ取るのだと疑わない。

「ふっふふ……成功、成功ね!? だって私に向かって飛んできてないもの! やったわ~!! ふふ!!」

 魔法使いは無邪気に笑う。目の前でブラックローブたちがボコボコ殴られて気絶させられて、ネームドワルの二体が逃げ出していたとしてもウキウキハンナは気にも留めない。ワルにとっては、そんな些細な事などどうでもよいのだから。
 ご機嫌な彼女をよそにマイケルくんは気絶したブラックローブたちをどっこいせと餅の壁に押し込み、簡易的な拘束をするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガンズ・ハルモニア
…なんてこった餅の王。つまりサイレントキラーロード。
なんて悪だ!(膝をつく)あ、マジでくっついた。やばい取れない。

ふぐぅ…やめろよぉ、餅なげるなよー!!(抵抗する)(無駄)
所詮、私はミサイルとレーザーを撃つしか能がないんだ。畜生…ッ!
うぶぇええええ(涙目やけくそ抵抗)(無駄)


…うぇええええええええ!!!(泣く。敗北感と共に電子転送システム起動)
【デジタルウェポン】コズミックリング装着。特殊効果・貼りつき除去

空中浮遊でどむっとブラックローブにぶつかって倒れる。
うぶぇうぇへへ餅巻き海苔だぁああああ(泣き笑い)
早業、餅でブラックローブを巻いて立ちあがる。

…あけましておめでとう!(餅巻き量産の構え)



●Don't cry? Gimme a smile!
 デビキンに突如生えた緑色の餅の塔、モチノキカントリーに降り立ったガンキューブは頂点にて光り輝く星を見る。空から流れるは星の屑、ではなく青火を放ちながら紐なしバンジージャンプを行い落下していく白骨体。

「なんだあれ!?」

 二度見、三度見と陸の餅地と空の骨屑を見比べるガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)は、いきなり頭をトマホークステーキで殴られた感覚に陥った。
 どちらかと言えばスカイダイビングが近いのかもしれないただの自由落下の行く先を、まだ幼い指の隙間から確認する彼女の青眼に飛び込んできた映像はバイオレンスだとかショッキングだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ。

「ひいいいいいいいいいいいいやっはあああああああああ!!!!!!!!!!!!! 餅投げの時間だだコラアアアアアアアアアアアアアアン!??!?!」
「餅が当たっちゃった人にゃあ申し訳ないねぇ、ゴメンナサア~~イ!? お詫びに拾ってくれた人にはタダでアゲちゃうワ。…………なンて、訳ね~~~~~~~だろ!!!!
 パクらず持ち主である俺たちのもとに代金と一緒に持ってこないと、痛い目みるぜぇ~~~!!?」
「ひーーーーはははははあっ!! むしろむしろよ、餅に当たれば超逆ラッキー! なンでかって~~~~???
 サンペイサンセンノギってヤツよ、ヤツぅ。詳しくは知らないけどネ~~ンっ!!」

 あ、あれは確か転売部隊らしい骸骨四天王ズの一角!? 転売というよりかは、ネガティブオプションやアポイントメントセールスに近い悪質極まる商法でDを回収しようと、彼らは国外へ現金輸送車を走らせているようだった。
 口も悪いし態度も悪い。先ほどのブギウギが青く見えるほどにスッゲーホットにワルワルですよコイツらは!!
 一方、そんな悪徳業者を目にしてしまったガンズはわなわなワナビーなんてこったい困ってしまったい。あんな悪そうな手下を従えているのかメインボスは。
 しかもアレは見るからに中堅。ガンズの目の前に立ちはだかるであろう黒布ブギウギズはその手下! 両手に平べったい餅を持ち、腕は上下に腰は左右に振るご機嫌スマイル体操をしている彼らの余裕は計り知れない!!

「サボタージュする程にワルなのかあいつらは!? ……なんてこった餅の王。つまりサイレントキラーロード。
 隠密行動を取ろうにも足場は悪く、ハマればハチの巣とりもちモチもちの餅! だが行く!!
 だってツリーは餅でできている。じゃあてっぺんは星よりミカンの方が似合う! そう、ミカンになる為に私はここに来た……よし。今はそういう感じで行こう」

 フィーリング完了。橙色じゃなくてもいいじゃない、鮮やかに昇ろうぜマッドチェイス。

「突撃いいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 果敢に加速するガンズの目標は、彼女から最も近い距離にいた餅でお手玉をしているブラックローブ。他のブギウギと違って図体が二回りも大きいビッグローブだ。
 呑気にサボっている彼らは、クリスマスパーティーのゲストである猟兵を迎えに行く途中、飽きて餅遊びを始めた不良である。悪いやつだ!
 先鋒とはまた違う悪党の一人であるターゲットのビッグローブはもともとガンズとの距離が近いのもあったのか、彼女の接近にいち早く気が付いた。そんなこと知ったことかと突っ込むガンズはいたずらな笑みを浮かべ加速する!

「ひょえ? ……、……ひょ、ひょひょひょーーーーーーーー!?!? なんだアあの丸っこい!? ……お餅みたいなフォルムの、クリスマスツリーに飾るクーゲルみたいな球体のぉ?
 …………、……お蜜柑みたいに」
「例えで本題をふわふわにするのよくないぞタックルアタック体当たりィ!!!!!!!!!!」
「ひょあっ意味が重複しポルガトラヴァッ!!!!!!!!!!!!!!!」
「ダブリがなんだ!! 宣言通り、三回連続攻撃だ!! まだあと二回も残っているぞ!!!」
「えっマジデェ?! おいらマジピンチ状態? …………同胞ォーーーーッ!!! 敵さんがきたっぽいけど、どうする~~??」
「何がどうするだア? このひょうきん太郎!! 餅を投げるに決まってるじゃね~~~っの!?」
「そっかあ~~~!! ひょひょほーーーい! じゃあお返しと行こうじぇ~~~い、ひょひょ!!」
「うばっやっはな!? ……くちに、モチをきゅーに詰めっほむとは……うまうま」
「だろ~~~ぃ。お茶いる?」
「いる。ください」
「はいよ~~~~~っとぉ!」
「あれれまま待って~~~~~?! っいや待ちなア、ひょうきん太郎ォ!! ゲストを丁重にもてなすたあどういうこった……ま、まさか裏切るのか俺たちを」

 囮作戦か? 絆されたのか!? ざわざわと、多くのブラックローブが小声で意図を探る中、ひょひょひょと一人笑うブラックローブは悪魔と猟兵その両方から注目を浴びる。
 冷たい手で持った故か、驚くほどにキンキンに冷えた茶器の中身を彼はぐい飲みし、先ほどのガンズと似たような笑みを浮かべ、その彼女へ指を指す。悪いやつだ……。

「かかったなアホが。かかったなアホが!? キサマは既に我の術中に在り!」
「なっなにを?!」
「キサマは我に向かって三回攻撃すると言ったな!? だがどうだ!! 茶々を入れたことにより一度しか我は攻撃を食らっていない!! コレが俗にいう、連打キャンセルってやつよ~~~~~!!」
「あっ忘れてた。食らえコレは二回目のぶん!!」
「あふんっ!? ア、アレ!? なん――」
「三回目! 四回目!! 五回っ六回っ七回八九十!!!!!!!!!!!」
「ばワポルルルルルルルアァァッーーーーーーーー!!?!!!!!」
「……同胞ども。ひょうきん太郎の犠牲は無駄にはするンじゃねーぞ!!!! 今の内に投げろ投げろ!!」
「「「「「「ひゃっは~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!! 仲良く生き埋めになってしまえ~~~~~~~~~!!!!!!」」」」」」
「ひょっひょわわわ~~~~~~~~~~~!??!?!? 痛っ餅当たると意外と痛いたた!?」
「っあなたたちは本気なのか!? さっきまで仲間だった相手に、戸惑いなく餅を投げるだなんて……
 なんで……っなんて悪だ!!」

 悪党どもの容赦のなさにやるせなさを感じ、膝をついてしまったガンズ。行き詰った腕を高く振りかぶり、ダアムッ! と彼女が地面の餅をついた途端。

「あ」
「ああ!? あ……」
「「「「「「あっ…」」」」」」

 バラバラだった皆の心が、一つになった。

「………ああ~~っ!? お膝がお餅とくっついてるぜぇ?? 地面に穴開けるとそりゃそうなるヨナ」
「やばいマジでくっついた」

 やばい。取れない。えっ取れない?

「あ。あう、あれ絡まる……?」

 動けば動くほどに粘着性が増すだなんて、すごい強力な接着剤みたいな鳥黐トラップ。
 集団ローブたちは「おいあれどうする?」「どうしよ……」「ひょうきん太郎がなんとかするでしょ」「するかなあ」とこっそり素でひそひそ話だ。内緒だぞ。

「どうすんだよこれ。取れない、取れないと……このまま? このままずっと?!?!?
 ぎゃーーー困る!!! 困る!!! 此処から出せーーーーーーーー!!!」
「ひょひょひょーーー!!! なんかよくわからんが食らえだ!! 追い打ちチャンス! 同胞、投げろ投げろ~~~~~い!!」
「えっあ、ああ。ア、アレちょっと球数少ないカモナー?? 餅はゆっく~~~り、ていね~~~いに投げよっカナー!!!」

 こ、こいつ!!! わざとらしい優しさを見せたうえでの追い打ちをしようというのか!? なんたる冷酷、なんたる残忍!! 血も涙もないブラックローブたちはゆったりとガンズを追い詰めようとしている。もしもしポリスメン!? このままだと彼女、餅で生き埋めになりかねないんですけどこの件は本当にデビルキング法で制定されていますか?!! 合法ですか?!

「ふぐぅ……やめろよぉ、餅なげるなよー!! あんまりだろがよー……!
 ううううう! 所詮、私はミサイルとレーザーを撃つしか能がないんだ。畜生……ッ!」

 ガンズ、唯一無事な左手で頑張って抵抗してみるも、無駄!! ぺちゃーんっと餅がくっついてきた。剥がれない。剥がせない。どうして。お前ら人間じゃねえ。人間じゃないけど、人間じゃねえよ!!!

「う、うう……っうぶぇええええ……」

 ガンズ、それでも涙目ながらもやけくそに抵抗。だがしかし無駄無駄ア!!!
 こんなことある??? ガンズが味わうのは敗北感。ぐずぐずとした悔しさから視界がにじみ、下唇を噛んでも嗚咽が隙間を通って外に出る。熱くなる身体と変わって心は冷静で、されど悔しさを飲み込もうにもささくれにつっかえて通らない。
 ならば、噛み砕け。電子転送システムは起動された。産声を轟かせ続けるのだ。

「……うぇえええええええええええええ!!」

 ――ユーベルコード【デジタルウェポン】発動。コズミックリングと泣き声のハウリングにより餅の張り付きは除去されていく。繭から生まれた少女は、巻き添えを食らっていた司令塔のひょうきん太郎の方へと倒れていった。
 流石のブラックローブたちにも情はあるのか、罪悪感に冷や汗をかきながらもしどろもどろに冷たい手を宙でわちゃわちゃさせて懺悔のタイミングを計っている。

「あっあ。あの、あのご――」
「うぶぇうぇへへへへ餅巻き海苔だぁああああああ」
「めあばばばっばばばっばばええええええぁーーーーーーーー!?!?」

 ハヤワザ!!! 粘着性を無効化するコズミックリングにより今や餅はただのゴム紐!! 一秒に何回も回転しすぎてバターになりかねないビッグローブはウルトラ上手に簀巻きにされました。
 ドザアアと地に落ちた同胞をみたブラックローブたちは己の冷たい手よりも凍る背筋に、皆餅を地面にそっと置いて無抵抗のバンザイを繰り出した。
 だが無駄である。理不尽には理不尽で返すのがスジってもんなのだ。海苔巻き餅量産すべし、慈悲はない。
 餅巻き量産の構えを取ったガンズは泣き笑いながら、クリスマスの終わりを告げる。

「……あけましておめでとう!」

 虎礼華羅喪夜露死苦!

大成功 🔵​🔵​🔵​

薬師神・悟郎
クロウ(f04599)

黒ジャージ、背中に銀の登り竜
フードを被り、サングラスも掛ければ、俺が考えるチョイ悪系に変身
ここではクロウをアニキと呼び、オラオラする彼をひたすらヨイショしよう

クロウが無双を始めれば、乱入目的や逃亡する奴等をUCで纏めて一掃してやる…ただし、手加減はして
派手に蹴散らしてやれば、奴等がどんな頭をしていても実力差を理解することができるはずだ

ある程度削れば、クロウと共に奴等の懐柔を試みる
「ここまでガッツを見せた奴は初めてだ」とかなんとか言いくるめ
イメージは殴り合いの末に生まれる友情といったところか

ところで、クロウが違和感がないほど似合いすぎるんだが
まさか天職だったりしないだろうな


杜鬼・クロウ
悟郎◆f19225
アドリブ◎

・服装
サングラス
柄シャツ
太めの金のネックレス
クロコダイルのクラッチバック持つ

似合ってンじゃねェか悟郎!
アニキとかよせや(満更ではない
ンじゃおっぱじめようぜ

・作戦
まず最初は力で圧倒
どちらの立場が上か思い知らしめる(半分は楽しみつつも本気
グラサン代償に【無彩録の奔流】使用
剣に炎属性出力させ、約2mの両刃の鋸歯で派手に暴れる
敵の攻撃は餅でガード
炎で焼き餅に

オイオイ逃げンなよ
テメェらの悪はンなモンかァ?ァ?(恫喝

悪者は何方か
一通り見せつけた後に友情路線

なかなか根性ある奴等だぜ
悪を名乗るだけはある
どうだ、俺達と手ェ組む気はねェか


何処ぞのヤクザかって?
只の猟兵だが(威圧的な笑顔



●闇Dイェーガーくん
 クリスマスオーナメントが光る緑一色の地表は草木と違い、来る者の足にくっ付き止まらせようと背伸びしては、激シブ通り越してカタギを疑われそうな危険な男たちに踏みつけられて滑らかさを増す。
 薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)と杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。両者ともども、普段着からデビルキングワールドにふさわしい身だしなみでモチノキを駆けていた。
 クリスマスパーティーにはドレスコードが付き物だ。参加するならば条件を満たしてなんぼ。それに猟兵は世界の加護により、どんな外見であったとしても近隣住民に違和感を与えない特性を持っている。
 そしてその世界に馴染むような努力をしてみるとアラ不思議、どこからどう見てもデビルキングワールド出まれデビルキングワールド育ちな猟兵二人組です。本当にありがとうございました。

「似合ってンじゃねェか悟郎! 背中丸めてるトコロもサマになってるぜ」
「クロウのアニキに褒められるとは、光栄だ。正しく背筋も伸びる、が……どっちの方がチョイ悪だ?」
「アー。猫背の方」
「そうか。今の俺はひたすらアニキをヨイショする舎弟。相槌と茶々は任せてくれ」
「さっきからアニキアニキって言ってた理由はソイツかァ……慕ってくれている分、よせとは言い辛いモンだ」
「流石はアニキ、お優しい」

 よせやい、と満更でもなさそうに射干玉を揺らす杜鬼の服装はヤカラもバビる大人ファッション。ぶっちゃけ頭文字Yの自由業だった。
 こがね色のバロック柄が走る黒地のドレスシャツは優美を秘めつつも威厳を放ち、立て襟から除く首肌の前には太めの金のネックレスが岩戸を封印するしめ縄のようにかかっていた。
 整った爪を黒に染めた彼が手に持つは牛革よりも強度がスゴイらしいモノホンのクロコダイルレザー製のクラッチバッグだ。超絶ラグジュアリー。
 黒色のサングラスは二つの瞳色だけでなく長いまつ毛をも暗闇に隠し、そこから読み取れる表情は喜であると、白い犬歯が答えてみせる。

「ところでアニキ。同じ猟兵でも違和感を無くすほどに格好が似合いすぎているんだが、まさか天職だったりしないだろうな」
「オウオウ、慕っている割には早速言うじゃあねェか。凌ぎが正義と謳われるこの世界に帰して属していれば、今頃俺ァ大金持ちだろうよ。ガキにせびる程金に困っちゃいねェがな」

 クロウが作る国はどういったものになるのだろうかと、薬師神は風を受けてあらわになった乱灰を、もう一度フードを被ることで隠し直す。彼の服装もまたアウトロー極まれり。カバンにテープを巻いたツッパリじゃあなくても目を惹く憧れる。
 廃れることのない黒ジャージは正に王道。向かう薬師神とすれ違う者が居たとして、目深に被ったフードに覆われた顔の良さを確認できたとすれば運の良い事この上なし。顔の良さを再度確認しようとすれ違う者が振り向けば、彫師も頷くレベルにド迫力の銀の登り竜が飛び込んでくるものだから首を回転させる勢いで二度見をしてしまうだろう。
 サングラスの奥で光る金瞳は、コレがチョイ悪なのだと確証を得ていたのだがチョイも積もれば極なのだ。極が餅道を往くだなんて字面が凶悪にもほどがあるぜ。これは悪そうだとか悪いかもしれないだなんて領域の話じゃねえ。まさしく『悪』なのだ!!!!!!!!!!!!!

「ひゃあ~~~~~~~~~~~!??!?!?! 悪そうお姉さんたちから逃げてきたら、また悪そうなお兄さんたちとエンカウントしちまっただアーーーーーーッ!!!!?!?」
「へっへっへ……なンでか知らねえが餅に巻かれていた同胞を救える限り救って本拠地に戻ろうとしてたってのに……運がねえなあ~~っ。おっと、オレたちの事じゃあないぜ……」

 出たわね、手負いのブラックローブ集団。クリスマスパーティーのゲリラゲストたる猟兵たちにポコパンされ続けてきたせいか、血の気が多くなっているようで見るからに臨戦態勢だ。どうやら話は通じないようだが、幸か不幸か力は通じてしまうようで。
 ならば力で圧倒すればいい。勝った方が偉くて凄くてかっちょいい。単純素直なブラックローブたちが好みそうな、実にシンプルでわかりやすい作戦である!!
 サングラスを外したオッドアイは細まった。どちらの立場が上か、思い知らしめてやろうじゃねェかと。
 目を明かさない夜は陰に潜む。裏で調子を合わせる方が己に合っているし、理にもきっと適っている。

「ンじゃおっぱじめようぜ。地獄送りの前に、地獄がどんなところか身をもって体験することだな」
「クロウのアニキから逃れられると思ってくれるなよ。背を向けた者から俺が捕まえて……此処に、連れ戻すからだ」

 ユーベルコード【無彩録の奔流】。サングラスを代償に約二メートルの両刃鋸歯を顕現した杜鬼は、片方の空いた手でブラックローブたちを招き誘う。対し、挑発に容易く乗ってしまうブラックローブたちは両腕を高く上げて餅をアッピルさせていた。

「ひゃあ~~~!!!!! 野郎ども~~っ巨大化して囲んでポイの作戦を決行するぞーーーー!!」
「「「「「ひーーーーーーーーっはーーーーーーーーーっ!!!」」」」」
「ひゃあ~~はははっは!! こンだけ大きな餅が沢山降ってきたら大変だろうな~~~~~っ
 ……それ~~~~~~~~~~!! それそれそれぇ~~~い!!!」

 ひょろ長ブラックローブの掛け声により、ブラックローブたちは自分の身長より二倍デカい巨大ブラックローブを召喚させた。巨大ブラックローブの冷たい手が握る武器は餅。巨大餅だ!!!
 今までの餅は手のひらサイズが限度だったが、杜鬼を覆う円形の影は時が経つにつれてどんどん大きくなっていく。それが何十個も降ってくるとはお餅怖い。
 しかし杜鬼は動かない。動かずに黒魔剣の炎を出力させ続けて地形を焼く。すると、パチパチと餅が拍手をしてきたと思いきや美味しそうな匂いを焦げ臭さと共に漂わせ、瞬間。ボッカリと白い壁がそそり立った。
 杜鬼たちを囲うようにカマクラ状に形成されていった餅の障壁は弾力がすさまじく、ぼんっと巨大餅を跳ね飛ばしているのだと震える壁が視覚に訴えていた。
 攻撃が止んだと感じ取った杜鬼は反撃を開始する。

「ひーーーーーーーーっ!?! なンで巨大餅が跳ね返ってきてるノォ~~~~~ン!?!? お餅とお餅同士、くっ付いてぺしゃんこになるンじゃあないの~~~~~~~~!!?」
「さアな!? 俺もわからねェが、ンなことより餅を食えオラァ!!!」
「あたちゃちゃちゃちゃちゃ!?!?!? あっつあ!!!!??」
「オラ!!! お前も焼きたての餅だぞ!! 焼きたて、美味いもんな。食えやア!!!!!」
「わぼあばちちちちあたあつあああーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?」

 なんたる!? 焦げ目のついた焼きたてのアチアチオモチを口に放り込んだり突っ込んだりして食わせるだなんて、悪いお方だ!!!!!!!!!!!
 餅を食って火傷を負った同胞が倒れたのを見たブラックローブたちは戦慄し後方を確認する。逃げるべき? でもあの人ものすごくワルっぽいからついていくべき? それともダチの仇を取りに行くべき???

「へっへっへ……ついに、とっておきのサクを使う時が来たようだな~~~っ」
「ファ、ファットマンブギー!!」
「いいかア野郎ども。俺はお兄さんたちの相手をするからよォ~~~っ野郎どもは足を使いな~~~?!」
「あ、足を使うって……まっまさか!!!」
「そ~~~~~~っ!! そのまさかサ!!! 悟られないうちにさっさとしちゃいナ~~~!!?」

 ザザっと杜鬼の前に立ちはだかったファットマンは先ほどのブラックローブたちと同じく巨大ビッグローブを召喚する。
 杜鬼に向けてファットマンが何か、さっきはよくもだとか、今日の夕飯なんだと思うとか。杜鬼の気を引こうと口を回しているらしいのだが杜鬼は以外にもコレをスルー。首を伸ばさずとも巨大ローブから視線を外せば状況は一目瞭然。
 ブラックローブたちが散り散りにこの場から消えようとしているではないか。

「「「「「逃げるんだよォーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」」」

 シャバい。この逃げ様はあまりにもシャバい!! ファットマンのシブさは上がっても全体的にシャバ憎であれば相対的にファットマンもシャバ憎である!! 巻き込み事故だ!!! 悪い子たちだ!!
 だが、そうやすやすと逃げ切れるほど現実は甘くないものだ。

「捕らえろ」

 ユーベルコード【泡粒の檻】。それは座頭鯨の群れが持つバブルネット・フィーディングの能力を、戦闘用に強化して使用する。
 バブルネット・フィーディングとは何か。座頭鯨は狩りをする際、獲物の周りを円を描くように泳ぎ、泡を吐き出し海面へ追い込むという。闇に紛れて隠密行動を取っていた薬師神はずっと罠を張っていたのだ。

「うぼぼわっわーーー??!? なんだあこれは~~~!?!? み、水ぅ?! ま、回っているよ~~~~~!??!」
「なんの、これしきの妨害!!! 爪で引っ掻いて、知恵の布の中に転移して~~~っ爪で引っ掻いて……知恵の布の中に転移して……、……んんん??
 ……水だから除去作業延々と続いちゃうワ~~~~!??!?!?」
「なんの!!! 泳いで渡ればあばば泡がもぼあ押し込まれあオモチが流れてきてもあうままま」
「あれっれ……あれれれーーーーー?!?? いつの間にか元の場所に戻ってきちゃってるぜぃ~~~!?」

 水流の中心へと流れていったブラックローブたちは先ほどよりも密集した状態で杜鬼の元へ連れ戻されていく。無傷なのは薬師神が手加減をしてくれたからであり、ついでに餅による火傷も冷えたのか、先ほどよりもマシになっていた。それに餅巻きにされていたブラックローブは水流でうまいこと餅がはがれたのか晴れて自由の身。自由を謳歌しようと懲りずに逃げ出したが、案の定連れ戻されてきた。

「言っただろう。背を向けた者から俺が捕まえると。もう逃げられないぞ。逃げてもいいが、二の舞だ」
「じゃあ三の舞を……」
「こら遊具じゃあないぞ」
「ええー」

 なんとアトラクション扱いである。使用者の手加減がなかったら知恵の布が剥がれるだけじゃあ済まないぞ!!!
 すっかり戦闘意欲が抜け落ちてしまった腑抜けたブラックローブたちは、猟兵二人の前に正座してしょんもりしてしまっていた。またしてもポコパンされてしまった故に猟兵はとんでもヤベー奴等でどんなに頑張ってみようにも実力の差がありすぎて、自分たちじゃあどうしようがないのだと本能で理解してしまったのだ。
 本能で危険を感じ取ってしまえば身体はへっぴり腰で逃げたくなってしまうもの、しかし。

「オイオイ逃げンなよ……テメェらの悪はンなモンかァ? ァ?」
「ひん……ひいん……っ」

 柄シャツサングラスクロコダイルの三コンボからなされる恫喝で見えないおみ足は小鹿のバンビ。ヒヨるのも無理もない。ガッタンガッタン揺れている身体は見ていて可愛そうになるほどだ。
 悪者は何方か。シャバい悪とシブい悪、どちらも悪故、何かしら惹かれ合うものもあるのではないだろうか。そう、今この時のように。

「しかし、アニキ。ここまでガッツを見せた奴は初めてなんじゃあないか?」
「えっ本当?」
「マジにマジに。いや強かったなー、すごかったなー。水を除去する発想までは、良かったと思うぞ。本当に。手段は……良い発想だったんじゃないか?」
「え……そお~~~~っそうかな~~~~!?」

 即落ち懐柔。モンスターだけにってか~!?

「……マア、なかなか根性ある奴等なのは確かだぜ。悪を名乗るだけはある」
「えっ本当?」
「ホントホント。アクじゃあなくダチを取るところとかシビれたぜ」
「へ……へっへっへ……な、なかなか見る目がありすぎるようだな~~~っ??」

 即落ち懐柔その二。モンスターハンターである。一体一体に一声一声かけていけば友情パワーで世界を包み込まれるレベルでビリーブマイラブ。あれもこれもラブなのだ。

「どうだ、俺達と手ェ組む気はねェか」
「え、い。いいのぉ~~~???」
「よおしみんな聞いてくれ。アニキ、このクロウのアニキはとんでも凄いんだ。どのくらい凄いかというと、具体的に言えば世界で一番悪い」
「「「「「せ、世界で一番悪い!?!?!?!?!?!?!?」」」」」

 掛けなおしたサングラスがズレた気がした杜鬼は、一度サングラスを外して薬師神を見る。すると薬師神は任せてくれといわんばかりにグッドサインを送ってきたので、杜鬼は視界を黒色に戻した。

「まず見てくれからだ。ヤクザみたいだろう。ヤクザというのは転売のプロだ。そしてアニキだって転売のプロだ」
「て、転売のプロ……!」
「こんなにワルそうなのに面倒見は良く部下にはとことん優しい。スゴクヤサシイ」
「わ、わかるかもしれない……」
「だろう。何よりアニキについていけば……、……超かっこいい!!!!」
「「「「「「超カッコいい!!!!!!!!!!!!」」」」」」

 薬師神は思った。懐柔完了だと。こんなふわふわした説明で納得してくれるのが悪魔たちの良いところであり悪いところでもあるのだろう。だが説得しやすいのは、イイものである。
 大盛り上がりに新魔王ならぬ新アニキの誕生にブラックローブたちがキャッキャしているところで、転売のプロという風評被害を受けたアニキこと杜鬼・クロウが薬師神をこついていた。

「誰が転売のプロだ。誰が」
「否定するのはそこだけでいいのか?」
「アー……俺は優しいアニキらしいデスノデェ?」
「……やっぱりヤクザだな、その恰好だと」
「お前も大概だろ」

 威圧的な笑みを浮かべる杜鬼に対し、薬師神も人の悪い顔をする。そして悪魔たちをみてもう一度杜鬼に視線を移す。

「クロウはヤクザも似合うが、悪魔たちのやり取りを見る限り、保育士も似合いそうだ」
「へえそりゃ、足洗ってもしばらくは暮らせるワケだが、警察からのマークは厳しそうで」
「その時は俺が警官にでもなっておこう」
「汚職はすンなよ?」
「クロウが何かしない限りはまっとうだろうさ」
「……マア、俺たちは只の猟兵なンだがな?」

 そうだな、とはしゃぐブラックローブたちをサングラス越しに映す男二人は新たなる部下を従えてモチノキを続けて昇り上がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『デビルスケルトン』

POW   :    デビルスピア
【槍の穂先】が命中した対象を燃やす。放たれた【槍から伸びる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ボーンフレイム
対象の【骨】に【炎】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[骨]を自在に操作できる。
WIZ   :    デビルファイア
レベル×1個の【青色に輝く魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●!!BONUSDDD!!
 年を越しても帰らないサンタクロースに塩をまいて悪霊退散すべく、ワルな猟兵たちはブラックローブを従えて餅の肌を駆け上る。
 ブラックローブたちはとんでもねえワルさを秘めた猟兵たちの力にバビりバズってロックンロール。クリスマスパーティーを乗っ取ろうと、カラーギャングは緑色の地面を紅白めでたい二色へと塗り替えんとペイントしまくっていた。相変わらず悪いやつらだ。
 そんな悪い事をしているワルは必ず悪い事をしているワルとひかれ合う。パーーパパパッパパーパパパパッッとラッパだけでなく、アルトサックスとテナーサックスとトロンボーンの四つの管楽器でアンサンブルを吹かす、時速二十キロの現金輸送車が前からも後ろからもやってきた。国のパトロール中だった現金輸送車と、外回りから帰ってきた現金輸送車。つまり挟み撃ちの形になるな。
 モチノキの領地は狭い為、ご近所付き合いを怠ると高速で噂が回ってしまうのだ。なんと恐ろしい国か。猟兵たちのおいでなすったもブラックローブたちの推し変もバレた結果、転売見習いの四天王が直々に勝負を仕掛けてきたぞ!

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいブラックローブブラックローブブラックローブ!! お使いも満足にできないのか? このブラーヴォども!!」
「ひあははは。おーおーボンちゃんよ、お説教とかスル暇ないってェ。オレたちはサンタ様にD届けるのが目的よ? も・く・て・き」
「そーそー。オレたち転売のおかげでモリモリパワー溜めちゃってるから勝ち目はあるけどサ、逆に負けたら集めた資金ぜぇ~~~ンぶ横流し!
 与えられたお仕事全うできないソコのシャバ僧と同列、それ以下! 捨て置くのが最善ってモンよ~~~~~っ」

 意外とインテリジェンスの高いデビルスケルトン。その中には嘗てブラックローブたちが慕っていたデビスケ兄貴もいるようだが、皆同じ顔で四天王をしているので見分けはつきそうになかった。
 無暗な争いを避けるべく骸骨たちは猟兵たちを避けようとするも、こっちはそうはいかんもち。喧嘩っ早いブラックローブたちが、現金輸送車のタイヤに餅を滑り込ませ足止めさせてしまったからだ!

「へっへっへ……『Dを積んでる』だって情報。落っことさなきゃあよかったのにな~~~っ!?」
「同胞ーーーー! アレを奪えばオイラたちゃワル! お姉さんやお兄さんはツヨくなってもっとワルだ~~~! 盗れ、盗れ~~~い!」
「ひゃっは~~~!!!!! ごめん、じゃなくてありがとうだぜ~~~~~~い!?!?」

 はしゃぐブラックローブに対し、デビルスケルトンは青火混じりのため息をついた。その淡い火元は温度を上昇させ、みるみる大きく広がっては己だけでなく現金輸送車をも燃え上がらせる。
 火に溶けた餅はあっけないもので、再び現金輸送車のタイヤは回り始めた。

「よっわ。オマエたちの餅ってツマらねえのなあ……? 杵に張り付く根性もねえし、粒は荒くて美味そうじゃあない。だから焼き直してキレイにしてやったワケ」
「負けてオレたちに再びついたら救いようのないシャバ憎だぜ~~~? おウチに帰ってチャンネル争奪でもしてた方がまだマシってもンだ。
 教えてアゲないとわかンないのカナ~~~~? しょ~~~がねェな~~~折檻だ。成長したトコロみせてくれや」

 ブラックローブの継ぎ接ぎのワルっぽさと違ってデビルスケルトンのワルは実にこなれている様子である。四天王の名は伊達ではないようだ。
 四天王を仲間にすることは難しいかもしれないが、ドロップアイテムたるDは現金輸送車一台だけでもかなりの額。魔界の通貨であるDには魔力が籠められており、持っているだけで強くなれるという。オブリビオンであるサンタさんもこれを狙っていたから悪魔たちにDを集めさせていた。
 しかし、それを奪ってしまえば? ……もしかしたら、この場は最高の稼ぎ場なのかもしれない。
ハンナ・レドウィッチ
不採用含めて全て歓迎よ!
餅を燃やすなんて…貴方たちの餅って醜くない?え、燃やすのが普通?

デビスケ兄貴に餅つきで勝負を挑むわ。相手は槍、しかし私は箒!
面積的にも私の方が餅を突くのに適した…何、兄貴は貴方じゃない?いえ貴方よ。違う?違わないわ。骨違い?そう。

前言撤回、皆まとめて吹き飛ばしてやる!
同じ顔をした奴らが集まって四天王だなんだとこじゃれちゃって!おでこに名前を書いておきなさい!
UC発動、大天才邪竜神様の名をその身に刻むといいわ!
なに、マイケルくん。現金輸送車から離れろですって?
私が魔法に失敗する訳ないじゃない。…ちょっと、押さないでよ!



●HEY! SAY! WABISABI!
 餅がめでたく空を飛んでは青白い炎が水を差す。モチノキの中部あたりにて、突発的に起きた大抗争の中心に居る猟兵の一人であるハンナ・レドウィッチ(天災級自爆魔法使い・f31001)は、聖夜という道を綺麗に舗装し直してやろうと群れた骸骨たちに言葉を投げた。

「餅を燃やすなんて……貴方たちの餅って醜くない? まるでコゲコゲで、アクリルアミドだらけの砂利道ね」
「醜いだあ? おォ~~~い待ちなよ。待てってンだ。餅ってのは……苦~~~~~~い焦げ目にシタツヅミを打つくらいがちょうどよくて、乙なもンなのよ」
「それにそれに? 体に悪いものを好んで摂取するってーのは……ハ・イ・ト・ク・テ・キ。
 食べ方に美醜を求めるなんて、な~~~~んて、お嬢様ったらァ。頭でっかちゃんの箱入り娘ちゃんなのかしら~~!??」

 なんたる狼藉。お言葉をかけてくださった邪竜神様に無礼を働くなんて、デビルスケルトンズはワルいやつらだ!
 しかしハンナは口角を上げたまま上機嫌に餅道を歩き出す。懐から取り出したるは先刻完成してしまった戦略兵器、山葵餅。モチノキロードとはまた違った緑色をしたソレは和を感じさせると同時に悪を放っていた。

「え、燃やすのが普通? 貴方たちってそれ以外の方法で餅を食したことはないのかしら……。
 でも、そんな湯たんぽファイアーでぬくぬく育ったお坊ちゃんたちには、この業火に焼かれた闇の餅なんて食せないわよね。残念だわあ……」
「な、なにをう?! ……食べられらァ!!」
「あら強がらなくていいのよ? だってこれ、ブラックローブくんたちが気絶しても尚もがき苦しんだ最高傑作だもの!
 それとも、耐える耐えられる以前に美味しいと言える自信があるのかしら。そりゃあそうよね! 四天王を名乗っているのだから」
「は~~~~~~~~~!!?? 黙って聞いてりゃあ言いたい放題言ってくれるじゃねェのお姉さんよォ~~~~~~~?!?」
「私としては食べるか食べないかをハッキリしてほしいわね!」
「食べるに決まってるじゃねえか!! 寄越しなア!!!!!!!!!」
「ええ寄越してあげるわ! でもその前に私と餅つき勝負よ。私に勝てたら賞品として山葵餅をお見舞いしちゃうから、精々頑張りなさいな!」
「うぐぐぅ! 一方的に話を進めるゴーイングマイウェイさ……オマエ、なかなかの悪じゃねえの……っ!!」

 釣れた。
 楽しくなる表情を眉間にしわ寄せて緩和するハンナは手に持つ箒を手首のスナップを効かせて回す。主によく似た鋸刃のような線を、マイケルくんは平行にすることなく音のない笑声を唄う。
 勝負が始まる前から悪に魅入られかけたのかダメージを少し受けてしまったデビルスケルトンの得物は槍。対してハンナは箒を杵変わりに餅つきを行う様子。
 面積的にもハンナの方が餅を突くのに適しており、更には勝っても負けても相手は大損なこの勝負。圧倒的に彼女の方が有利なのである!! 言葉巧みにデビルスケルトンを翻弄し、自分の土俵に上がらせた大天才は紛うことなきワルいお方だ!!!

「ひゃっは~~~!!!!! 餅と臼の用意ができちまったぜぇ~~~~い!!?」
「ひょひょひょひょお!! 両者揃いに揃って……見合え、見合え~い。
 オイラがはっけよいの後を言う前に動いたら、即座に失格させるから泣いて慄くがいい~~!!」

 いつの間にかブラックローブたちが用意してくれていた臼らしき箱はどう見てもクリスマスプレゼントを取り出した後の空き箱だが、何層も箱が重ねられているのか耐久力は申し分ないようだ。中には茹ったモチ米が待ちわびており、つきたてのお餅を食べようと味方のブラックローブや敵のデビルスケルトンが観客として周囲にわらわらと集い始めていた。これも抗争の一種である。
 臼の傍に立ったハンナ選手とデビルスケルトン選手の間には返し手兼審判たるブラックローブが居る。冷たい手を持つ彼は冷気で餅が驚かないようにとデビルスケルトンの青白い炎で手を温めてきたらしい。協力を惜しまないのは、勝負に抜かりがあってはならないからだ。決して良い子なわけではない!

「さあ、勝負よデビスケ兄貴!」
「え。オレ、デビスケ兄貴じゃないんだけど」
「えっ?」
「え?」

 えっ。このデビルスケルトンは、嘗てブラックローブたちが慕っていたスパリダデビスケ兄貴かと思っていたがそうではない?
 そんな馬鹿なとハンナは灰色を瞬きする。どこからどう見てもデビルスケルトン、まるで見分けのつかない量産型。
 ……もしかすると、もしかして? でももしかしないかもしれないからもしもしドライビングスクール?

「え。……何、兄貴は貴方じゃない? いえ貴方よ」
「えっ。えっ、違うよ?」
「違う? 違わないわ」
「骨違いだよ?」
「骨違い? そう。え、デビスケ兄貴じゃないなら貴方に用はないわ」
「えっ」
「はい山葵餅。もう帰っていいわよ」
「えっ」
「そうそう、デビスケ兄貴に私が探していたってことは伝えておいてね?」
「え……ひどくない?」
「ノーカン!!!! ノーカン!!!! 不戦勝でもなンでもねえ、審判審判審判審判審判審判審判審判審判よォ~~どォ~~~~見ても……あっちが棄権してるだろ~~!?」
「エエ~~!? タダで山葵餅貰えたのって……悪だろォ……?」
「悪なわけあるかよ!!!!! とにかくやり直せ~~~~!!!!!!!??」
「ヒャ、ヒャア~~~!?!?」

 ハンナの悪っぷりに言葉を失うデビルスケルトンの素の声。それはシャバ憎の情けない悲鳴だったが同じ種族であるデビルスケルトンたちの骨に強く響き、同調は一つとなり憤怒の炎を焚きあがらせる。
 一方でブラックローブたちは賞品が受け渡ったことに素直に拍手していた。されど非難囂々は止まずのさばり、蔓延るのも時間の問題かデビルスケルトンたちは各々不満を垂れていた。猛烈にヒートアップしていく口論は遂には胸ぐらを掴み掴み合う始末。ワルいやつらどもだ!!!!

「仕掛けておいてなンだよそれ~~~~!?!? 引くレベルで悪だわ、ないわ!!!」
「あるわよ!! 同じ顔をした奴らが集まって四天王だなんだとこじゃれちゃって! おでこに名前を書いておきなさい!」
「へっへっへ……お姉さんよォ……オレ名前筆の魔っ記ー持ってるぜ~~~!? 使いな~~~!!?」
「でかした! 貴方、名前は!?」
「誰が教えるか!!」
「兄貴じゃないその一、兄貴じゃないその二! 兄貴と見せかけて?」
「俺アニキ違うよ?」
「その三ね!」
「デコに書くなデコに!!! チクショーーーーーーーーーーっこうなったら実力行使の暴力だ!!!
 暴力は全てを解決する。つまりそういうこった。もう許さねーーーーーーーーーーーっ!!!」
「許さなくて結構! こっちだって前言撤回、皆まとめて吹き飛ばしてやる! 大天才邪竜神様の名をその身に刻むといいわ!」

 ユーベルコード【大天才ウィザード・ミサイル】。射程五メートルぽっちしかない魔法の矢だが、つかみ合いが殴り合いに発展しかけるほどに至近距離であったデビルスケルトンへの着弾はほぼ確実であった。

「あっちあ?! あちああたたぼあっ!!」
「ば、爆発が連鎖してオレたちの火が消し飛ぶ勢いの風圧とか煙がすごっぼあやばびゃば!!!!」
「げっほ、げほ!? 不味ったわ!? 矢と近すぎて私も被弾す……とたばばっ!?」
「ひゃ、ひゃ~~~~!!?!? 知恵の布がまた汚れちゃうよォ~~~!??! っひゃばーーーーーーーっ!!!」

 接触することによって爆発する炎矢は自爆することなく花火を咲かせるも、至近距離故かハンナも多少は火の粉を浴びてしまう煙も吸っちゃうし、ブギウギズだって結構燃えてる。放置されていた臼はほぼ形を残していないし、中に入っていた餅はすっごい燃えて膨らんでいる!! すごい美味しそう!! 美味しいからワルに違いない!!!!
 慌ただしい餅つき会場の中、あたふたとハンナの相棒であるマイケルくんが身振り手振りで大変だ大変だと主に必死に物を伝え飛んでいる。一体どうしたんだいマイケルくん!

「ん……なに、マイケルくん。……現金輸送車から離れろですって? なにそれ」

 腕らしい枝をしならせた先には青と赤の二色に燃え盛る二台の現金輸送車。溶けかけた鉄の中から除かれる金貨はまるでクリスマスに見かけるイルミネーションをのように光って綺麗。
 そういえばとハンナはデビルキングワールドの文化について思い出す。Dという金貨には魔力が籠められており、持っているだけで強くなれるブーストアイテム。

「なるほどね? アレを回収しろってことね!? って、ちょっと、押さないでよ! どうして現金輸送車から私を遠ざけようとするの!
 ……自爆するかも? 私が魔法に失敗する訳ないじゃない」

 未だ止まぬ火雨を懸念するマイケルくんは言わぬ口でハンナに言うのだ。せめて魔法を止めてからDを回収しないかと提案するも、己を信じるハンナは己を貫き回収に至る。

「ふふふ……ほら! なんともないじゃない。現金輸送車の車内だからか、随分と熱いけど。
 ……それにしてもDったらスゴイわね。魔力が溢れる感覚があるわ」

 今なら魔法の成功率も上がっているし、大召喚をしなくても大魔法を使えたりするのではとハンナは考えるも行わない。こんな狭い空間に土地を一部でも召喚したら圧し潰されるだろうと思えたからだ。
 だが、知らず知らずにあふれ出ていた魔力は無意識の願いを読み取り叶えようと暗躍し、そして対価を求める。

「あら、金貨だけでなく紙幣もあるし、燃えているわ。燃えているわ!?」

 土地こそ召喚されていないものの、先ほどの炎矢がピンポイントにドアの隙間を縫って車内へと飛び込んできていた。車内のDから魔力を吸収して爆発の威力を増そうと膨らむ魔法の矢から逃れようとするも、刹那の一瞬。

「……わばぎゃーーーーーーーー!??!?!」

 外で待機していたマイケルくんは彼方へ吹っ飛ぶハンナを空洞の目に映す。己が受け止められる距離よりも遠く遠くへ消える彼女を、それでも受け止める為に箒は急ぎ足で持ち主の元へと駆けていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガンズ・ハルモニア
ガンキューブに搭乗操縦
メーリーー!
空中浮遊、カッ飛びながらミサイル発射
クルシミマス!!(クリスマスの否定)
現金輸送車と衝突。交通事故だ!損害賠償を払ってもらう!?
遅れて絨毯爆撃で自分ごと範囲攻撃ぐわー『重機兵召喚』発動
現金輸送車に合せ巨大ガンソルジャーに搭乗

ウィーウィッシュアメリクルシミマス!(大質量の拳で殴る殴る)
私から奪ったものを返してもらう!!(現金輸送車をひっくり返す)
大型遠距離武器・単発式爆弾発射カタパルトを展開
貴様らのせいで、私はクリスマスに独り寂しくチキンとケーキを
貪ったんだ!!ぜったいにゆるさねぇ!(八つ当たり)あ、こんにちは!!
ハッピーニューヤー!!?!!(大型爆弾発射)



●餅時々D
 二台の現金輸送車の爆発は青白い火の粉と赤い煙とともに、Dをふんだんにまき散らす。風に乗り空を舞う紙幣に、重力と共に餅地に落ちる金貨。その後者にぶつかったガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)は痛、と声を漏らしていた。

「……Dだ。お金だ! 貰っておこう。強くなれるから」

 頑丈なガンキューブに搭乗していても思わず音声を発してしまったその原因を拾い上げ、ポリスメンへ届けることなくガンキューブの内部へしまい込んだガンズの選択はとんでも強烈なワルだった。
その様子を後方から見ていたブラックローブたちも戦慄する程に、Dを拾う動作は自然と流れるように美しい。
 今までも数多くの金貨をああやって戸惑いなく拾っていたのだろうかと空想するブラックローブたちをよそに、ガンズはDを所持したことによって身体能力が上がっていることを実感した。
 現に、電子データを確認してみても数値は向上中。過度な異常も見当たらず、シンプルにDを拾えば拾うほどに伸びるステータスに対して楽しみを見出したガンズは、ひょひょいと餅地をスキャンしてヒカリモノがないかを確認する。
 時折クリスマスオーナメントが引っかかるのは仕方がなしか。しかし、モチノキの頂点に君臨するサンタさんがDを回収して来いと命令しなければ、こちらもボーナスタイムに突入することは叶わなかったのだろうとガンズはちょっぴり感謝しつつもガンキューブを操縦してどんどんDを回収していく。塵も積もれば山となり、レベルキャップが解放されるのだ。
 しかし、Dを回収する行動を取っている者、それはガンズだけではない。新たに目についたDを蓄積しようと球体のガンキューブが向かおうとした矢先、現金輸送車から降りたデビルスケルトンがDを回収しようとしているではないか! 横取りである!! なんたるアウトロー野郎が!!
 だがガンズだってアウトローには負けちゃいない。横取りされたなら奪い返せばいいだけのこと。それに自ら道端でDを拾いてちまちま稼ぐよりは、ボランティア活動を終えた魔界の住民をユスった方が上手に稼げてしまう。とてもデビルワルい考えだ……!!!!

「だが……このガンズ・ハルモニア、容赦せん! 要するに待てない。待つのはまどろっこしいのです。それにDで強化されたガンキューブを味合わせたいし、私も味わいたい!!
 強請るなら今だ!! 寄越せええーーーーーーーーーーーー!!!!」
「ひゃっは~~~~~!!! ガンズの姉貴に続こうぜ野郎ども~~~~~~~!!!!!!!!!」
「「「「「「ひーーーーーーーーーーーはーーーーーーーーーー!!!」」」」」

 ゆったりと空中浮遊していた球体はブースターを一斉発射。後ろにいたブラックローブたちは風圧を受けて体勢を崩す者も居れば吹っ飛んでいった者も居たらしい。
 後方の隊列確認はブラックローブたちに任せたガンズはガンキューブをカッ飛ばしてはそのままミサイルを発射させる。自動追尾機能が備わっているミサイルは標的であるデビルスケルトンをゆらりと探して爆発せんと各々飛び交い始めた。着弾を待たずしてガンズは現金輸送車の前に降り立ち、そのまま勢いを殺さず活かして突撃する!! 急な障害物にデビルスケルトンは慌てざるを得なかった!!

「メーーーリーーーーーーーー!!!!! クルシミマス!!!!!!!」
「うわーーーーーーーーー?!?!? 急ブレーキ!!!!!!!!」
「ふはは、あなた、いい子だな!? いい子がブレーキを踏むのは想定済みだ!! クルシミマス!!!!!!!!!!」
「うわーーーーーーーーーーーーーー?!??! 助けて?!?!?!」

 すごい、交通事故の恐怖体験だ! こんなの教習所でもめったに味わえないしデビルキング法スレスレの悪事である!! 悪いお方ですこと!!!!!!!!
 ベテランドライバーも泣きたくなる受動的交通事故。ブレーキを踏んでも慈悲なく突撃してくる球体は恐怖の象徴にふさわしい。

「クルシミマス!!!!!!!!」
「さ、三回も言う?!?! あ、危ないだろうがよォ!!!!!!!!!!!!!」
「そう、危なかった……私は現金輸送車と衝突。すなわち交通事故だ!! 損害賠償を払ってもらう!?」
「アタリヤスピーチ……!! オマエ、悪だな……!?」

 アタリヤとは邪悪である。それは故意に事故を起こして損害賠償を請求する者のことを指し、そして相手に十割負担を求めるのがアタリヤスピーチだ。これらの行為はデビルキングワールドだからギリ許されているのであり、他世界だとこんなスムーズに話は進まないだろう!

「そうだ、悪だ。悪だから損害賠償を払ってもらわないと……」
「も、もらわないと……?」
「ミサイルが飛んでくグワーーーーーーーーーーーーーーッ?!!??!」
「ウ、ウワーーーーーーーーーーーーーー!??!?!?!」

 着弾確認、おかえりミサイル!! 先ほどガンズが放つだけ放って放置していたミサイルの第一波、続けて第二波が発射した当人ごと絨毯爆撃しにやってきたぞ!!! デビルスケルトンがあたふた慌てて現金輸送車から降り飛び出た瞬間をガンズは見逃さない。
 ユーベルコード【重機兵召喚】を発動させた彼女はミサイルの被弾によって穴ぼこになっている無人車の現金輸送車を己に取り込み、巨大ガンソルジャーへと変身する!!

「クルシミマアアアアアアアアス!!!!!!!!」
「ロ、ロボだアレ~~~~~~~~~~!?!?」
「でっけ~~~~~~!!!!!!! かっちょえ~~~~~!!!」
「おいぃ見ろよ、黒いボディにDの金ぴかが光って超……ワルっぽい。ワルっぽくない?」
「スケールがでかすぎてオレたちじゃあ対処できなくなってきたぞ、どうする……!?」
「ピッカンきたワ。オレたちも合体すればいーンじゃないのォ~~!!? Dの蓄積量は勝っているんだし、ワンチャンつかみ取ろうや」
「ア~~~。じゃァついで、ついでによ。少人数にDをありったけ渡して、こっそり運搬してもらおうじゃないの。オレたちが負けてもサンタ様が勝てるようにするのが大事じゃない?」

 コール・ガンズ。それは転送機能を使用することで大型遠距離武器を生やした三百五十メートル弱の人型兵器に変身するロマンあふれるドリームテクニックである。
 クリスマスを否定する雄たけびを放つ巨大ガンソルジャーの足元ではブラックローブたちがきゃっきゃと巨大ガンソルジャーの格好良さにはしゃいでいたし、一方でデビルスケルトンたちはどうしたものかと頭を悩ませている様子が見て取れた。そんな会話に耳を傾けてみるも、ガンズはデビルスケルトンに暴力で訴えでも損害賠償を払ってもらわないといけない状況にある。
 
「ウィーウィッシュアメリクルシミマス」
「「「「え。わ、わぎゃあああああああああああああ!!!?」」」」

 デビルスケルトンズに降りかかるは大きな大きな拳の雨。一粒がデカすぎるってのに沢山降ってくるものだから恐怖しかありません。歌を歌いながら大質量の拳で殴り殴る姿はまさしく悪。悪は許可以下すると負けフラグは言うが……果たして?!!?

「私から奪ったものを返してもらう!!」

 現金輸送車を一台一台ひっくり返して中身を確認するガンズ。そんな彼女にデビルスケルトンズは自身の得物である槍に炎を点してやり投げを行いて攻撃を行う。が、命中して延焼し続けているにも関わらず気づく気配のない様子にデビルスケルトンズたちはマジでどうやって対処すンのと未だ考えていた。そして考え付いたのか彼らは青白い炎を燃え滾られ影を作る。やがて人型へと至ったソレはデビルスケルトンを模倣して作られた炎骸骨だ! でも武器まではついてこなかったのか、槍で攻撃しない代わりに口から火を吐いてきた!!
 炎をモロに浴びるガンズの視界は青白く染まる。巨大ガンソルジャーは決してくじけないが、現金輸送車は火に弱いのか関節フレームに違和感を与えてくれた。早急に対処せねばと巨大ガンソルジャーが展開させたのは、大型遠距離武器である単発式爆弾発射カタパルト。そこに八つ当たりの心を添えれば新しい年の幕開けです。世界を掴んでDの海を泳ぐんだ。
 再度、巨大炎骸骨の口元から火が吹かれた。だがそれは単発式爆弾発射カタパルトに燃料を与えたと同じ事! 爆発寸前の高圧蒸気はガンズの怒りの感情とよく似ていた。
 そう、クリスマス。本来のクリスマスの日のことだ。ガンズ・ハルモニアは一人でクリスマスを過ごしたのだ。かなしみが怒りに代わる時、そのエネルギー変換の熱量は巨大炎骸骨を理不尽レベルに上回る!!

「……貴様らのせいで!!  私はクリスマスに独り寂しくチキンとケーキを貪ったんだ!! ぜったいにゆるさねぇ……。
 ゆるさねぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 咆哮。びりびりとモチノキを震え揺らす人間兵器の電子音はドスが効いた威圧感のある重低音を轟かせる。一つ、息をついたようにうなだれた巨大ガンソルジャーの瞳が薄暗くなって、また明るい青を点した時、子供のような甲高い音が周囲に響き渡った。

「あ、こんにちは!! ハッピーニューヤー!!?!!」

 巨大炎骸骨に向けられた挨拶からの大型爆弾発射。気持ちを切り替えた巨大ガンソルジャーは吐き出した感情に引きずられたりなどしないのだ。
 しかしそれは一種の不気味さを感じさせるもので、巨大炎骸骨を操るデビルスケルトンズは悪ではなく畏怖を感じ取ってすっかり動きが鈍くなっていた。その結果は直撃でありついでに現金輸送車もバチバチに破壊され、青白い炎と共にバラバラと雨吹雪のようにDが舞い落ち巨大ガンソルジャーに当たって跳ねた。

「痛。……痛くないけど、当たると痛いって言っちゃうねぇ」

 どうやってDを回収しようか。できれば楽な方法がいい。巨大ガンソルジャーから降りたガンズ・ハルモニアの頭上にはDが落ちてきたもんだから、今日はDがよく被弾する日なんだなあと彼女は頷くことにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薬師神・悟郎
クロウ(f04599)

見てみろ、クロウ
鴨が葱も味噌も鍋もコンロも背負ってやってきたぞ
これは期待に応えて、食い付くしてやるしかないだろう

闇に紛れ早業で輸送車を纏めて奪取
輸送車の上から周囲をぐるりと見渡せる場所を位置取り、Dの護衛も兼ねつつUCでぱぱっと纏めて一掃
クロウの火でこんがり焼いた奴等の後の後始末は俺が請け負おう

万が一、舎弟にしたデビル共の中に裏切り者が現れれば奴等と共に流し去ってやる
手加減なしの追加ダメージ付きの威力を身をもって知るが良い

泣き叫べ、恐怖するが良い愚民共!
これがクロウ親分の力だ!(ドン)

クロウの威を借りつつ好きに暴れることの、何と楽しいことか
引き続きヨイショは任せてくれ


杜鬼・クロウ
悟郎◆f19225
アドリブ◎

ぶっ…誰が上手ェコトを言えと!
まァその通りなンだがな
要は現金輸送車丸ごと強奪して四天王の一人をボコせば万事解決だぜ!(脳筋
Dだけ奪ってトンズラするのは止めておけよ、お前ら(恫喝して釘刺す
どっちを敵に回したら怖ェか身に染みて分かってるだろ

舎弟達へ悟郎と一緒に輸送車を奪う手伝うよう命令
二個目のグラサン投げ捨て庇う様に前へ出る

テメェの相手は俺だぜ、おらァ!

敵を煽り【聖獣の呼応】使用
上空から破魔の炎雨降らす
一気に距離詰め
玄夜叉に黒焔宿し槍と対峙
意志が力になるので火力が徐々にUP
剣で圧して灼き尽くす

今の俺は”アニキ”なんでなァ
格好悪ィトコは見せられねェンだわ

上機嫌で悟郎と乱闘



●Hit the jackpot
 雪の代わりにと振り落ちる現金輸送車とデビルスケルトン。そこから零れ落ちるDと炎は幻想的に見えなくもないが何せ絵面がカオスなものだからギラギラしていてとってもうるさい。

「クククククク……デビルスケルトンがやられたか!! だがしかしかしかししかししかししかしィーーーーーーーーーーーーーッ!!!
「奴らは四天王の中では下の下のシャバボンボン!!!!!!!! 余所者に負けるだなんて四天王の面汚しよォーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「「「「ゲーーーーーーーーーーララゲゲゲラゲラゲラゲラ!!!!」」」」

 けたたましく笑う骸骨らは囂々と青を燃やして地を燃やす。しかし降ってくるDをよそに骸骨をお姫様抱っこして回収したりしているイケメンボーンも居たりしてあいつこそデビルスケルトンのプリンスメン。
 もちろん、Dを面積の狭すぎる得物の槍で突っつきながら回収しているデビルスケルトンもいるがマアーーー統率力なんてもんはない。だって皆が四天王。数が多ければ多いほどにイレギュラーは存在するのです。

「クロウ、クロウ。聞いたか、四天王の中では最弱だけでなく、四天王の面汚しも言ったぞ。中々のワルじゃないか……!?」
「待て、悟朗。ンン? 待て待てお前感化されすぎてねェかこの世界に。順応力が高いのはイイ事だがよ」
「確かに絵面はひどいがが言葉だけを聞いたらワルだろう? それに今の装いを踏まえると言動だけでなく思考も寄せるべきだと思えてきてな。
 ……柄じゃないからもしれないが、ノってみるとちょっと楽しい」
「ソイツは水を差す事言っちまったな。だが着こなしもサマになってきたじゃねェの。
 だがくれぐれもムチャはするなよ?」
「大丈夫だ。流石はアニキ、優しさが染みるな」

 デビルキングワールドの反転性質や悪魔の道徳にも慣れてきたのか、薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)はサングラスを頭に乗せサングラスを目にかけていた。ダブルサングラスだなんて、なんて悪いお方!
 明るい場所を好まない悟郎にしてはものすごいノリノリだから心中無理しているんじゃないかと、薬師神の兄貴分である杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は透き通った二色に銀の登り竜を浮かばせる。帰ったら飯食いに行く次いでにケアもしたい。
 そんな杜鬼と並んでいた薬師神はアニキより一歩前に出る。目立つためにとフードを取り、両手をジャージのポケットに入れ少し背を丸めつつも声は大きく。いつもは控え目な性格故かそれとも職業病か、なかなか目立つような行動をしない彼は深呼吸を二回繰り返した。
 これから自分なりにオラついた口調で宣戦布告をしようにも、やはり慣れないことには落ち着きを求めてしまうもの。だが、覚悟はとうに完了し終えている。後は声を発するだけなのだ!

「おいおいおいおいおい見てみろクロウのアニキぃ! 鴨が葱も味噌も鍋もコンロも背負って仲良しこよしでお出かけしているじゃあないか。これからどこにピクニックしようっていうんだろうなあ~~?!」
「誰がカモみたいな頭してるだこら!?」「誰がネギみたいに身体カッスカスに細いだこら!?」「誰が味噌っかすだって~~~!? お味噌汁は底にたまった滓こそが美味しいんだろうが??!?」「な、鍋を作る素材に骨を使う気!? オレの身をはぎ取る気!? セ、セクハラはデビキン法では違法間近わよ!」「ハアン!!? 毎日鍋食ってるデブなのに肉が付かないからデブじゃあないオレにケンカ売っちゃってるの?!?!」「なァにい~~~ッ!? オマエ~~~!! オレの青火がガスコンロみたいだって言いたいのか~~~~!!!?」「だっ誰が相手を感動させる呪文使いそうな女の子に初恋を奪われていそうだって?!」
「おうおうおうおうおうおうおうおう各々思い当たる節が色々ありすぎるようだな! もうそれ以上は名乗りを上げなくていいぞ」
「誰が――」
「っアア? 聞こえなかったか。俺に同じことを言わせるつもりかア!?」
「ヒ、ヒエ?! なンだオマエやんのかオラアアアアアアアアアン!??」

 「オースゲー」「今四天王ビビってなかった?」と、後方にてブラックローブたちは薬師神に羨望の眼差しを向ける中、杜鬼の兄貴は感情のよくわからない笑みが混みあがってくるのを眉間に皺を刻み込むことで抑えていた。
 デビルスケルトンズの言葉は一斉に発射されたせいで半分も聞き取れていないがそんなことは今はどうだっていい重要じゃない。

「があがあ鳴いてて気づかなかったが、随分と人の言語が上手いチキン共だ。なんだ、食われるために言葉を勉強したのか? 健気なところを見せてるじゃあないか」
「チキン!? おいおいおいサングラス腐ってるンじゃね~~~のか?! どこからどう見ても骨骨骨~~~なデビルスケルトンだろうが!!」
「見てくれだけは、な。……ああ、そうか。肉が付いていない分、そうでもしないと売れ残って廃棄されるところてんのような運命が待っているんだったな……それはそれは、大変素晴らしい努力だ!」
「てっテメーーーーーーーーーー!!? だれが売値十円でありながらも三十四年間くらいスーパーに厄介になっていたところてんだって~~~~~~~~~~?!???!?」
「お、おお……ところてんか。ところてんがそんなに嫌か? やーい、お前ん家ところてん!!!」
「ッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!! オマエ、オマエオマエオマエ許さねーーーーーーーーー!!!!!! もうデビルキング法にはない残酷な私刑でギッタギターノメッタメターノしなくちゃオレの気は済まねえと思いなあああああああ?!?!」
「うるさいところてん!! 語彙が貧弱だぞところてん!! 貧弱なところてんに合わせて俺も語彙を下げてやったぞ消費期限延期野郎!!!
 これは期待に応えて、救済も踏まえて、食い付くしてやるしかないだろう!!!」
「ぶっは……! ……ッ誰が上手ェコトを言えと! 口が達者だなァ悟朗!? まァ、その通りなンだがな。
 デビルスケルトンが何を言っていたかはさっぱりだが、悟朗の話は聞けたろう、お前らァ……悟朗と一緒に現金輸送車パクってこい」
「ひゃっは~~~~~!!! わかったぜぇ~~~いクロウのアニキ~~~!!」
「アア、そう。そうだ。Dだけ奪ってトンズラするシャバ僧は舎弟にした覚えはねェが、止めておけよ? どっちを敵に回したら怖ェか身に染みて分かってるだろ」
「へっへっへ……ンな奴が居たらよォ~~~~~~っ……オレが更生させちゃうから、そこは安心しちゃいナ~~~~~!!?」

 思わず破顔した杜鬼は啖呵を切った薬師神を庇うように前へ出る。二個目のグラサンを投げ捨てて餅地にサクーっと刺されば其方に目がいってしまうものもいるだろう。悠々と笑う杜鬼はメンチを切りながらデビルスケルトンズイズ四天王ズの釘を打ちにやってきた。
 対して後退した薬師神は闇に紛れ、続けてブラックローブたちも名前にブラックってついているしイケルデショと思って闇にこっそり紛れてみる。その結果スゴク目立っているが、代わりに薬師神は群衆に紛れることができるのだ。
 槌代わりの漆黒の大魔剣、玄夜叉を持てど構えぬ杜鬼は詠う。モチノキの上空はぽつぽつと朱が広がり、染まり終えた部分から今にも落ちてきそうなインク溜まりが杜鬼の一声を待っている。

「よォ。テメェらの相手は俺だぜ、コラ。舎弟に手ェ出そうもンなら、骨を折り、刻み、二度と両足で地を歩けなくさせてやるからよ。ソコは間違えンなよ?」
「なンだあ藪から棒に!! だがオマエが大将なら話は別だア!!!!! 四天王全員で相手してやろうじゃね~~~~~~~~のォ!??!」
「数が多いとか今さら言うンじゃあねーーーーーーーーーっぞ!? まとめて相手をしたことを後悔させてやるぜ~~~~~!!」
「だがところてんだとか散々言ってくれたアイツは別だァーーーーーーーーー!! オレはアイツをギタメッタ……アレェどこいったのアイツぅ?!?!」
「よそ見する余裕があるのか? アーそうか、ピクニックに来ていたンだったっけか。じゃあ目移りしちまうのは仕方ねェか!
 だがよォ、天気も悪くなってきた。雨天決行も辞さない、日時は選ばないクチか?」
「なに? 天気が悪い……?」
「な、なンだあーーーーーーーーーっ!!? 空の色が赤いぞ!? し、しかも何か振って、落ちてくグベン!?」
「……は、羽だッ!! 鳥のしなやかな羽根ッ!! つ、突き刺さって……取れそうにないッ!」

 四天王ズの一人また一人が首を上にあげた途端、杜鬼は空火より鮮やかな赤を口内から覗かせた。天を飛ぶは朱の鳥。降り注ぐ羽は刃のように鋭くも美しく。
 それはユーベルコード【聖獣の呼応】。聖なる朱炎は魔を破らし、雨としてやさしく肌に溶け馴染んで消えていく。

「あばーーーーーーーーーーーーーーーーっ!? イ、イタェーーーーー!?!?」
「アイツ火だ!!!!!! 火を使って来るぞォ?!? オレたちへの当てつけかよォーーーーーーーーーーッ!!!」
「……風流をテメェらにゃア求めちゃいなかったが、なンつーか、騒がしいのな。
 嫌いじゃあない。が、いつまで経っても俺を視界に入れてくれねェってのは無骨だぜおらァ!!!!!」
「ぎゃばん?! や、やりおったなキサマ!!」

 縮地法の要領で一気に破魔の火雨に歓声を上げるボンボン野郎との距離を縮め詰めた杜鬼は玄夜叉を薙ぐ。雨気とともに吹き飛ぶ四天王ズは上空にて、再度めでたい歓迎を受けざるを得なかった。地に落ちれば黒焔が歓迎してくれるのだろう。エグい火葬場だあ!!
 その一方。常闇の薬師神は、前方にあったモチノキパトロール現金輸送車を制圧し終えていた。乗員は皆外へ出っ張らっており、内回りの車だったためかDは空。いわゆるスカでありハズレなのだが、片道の端を一つだけで敵の退路は絞られてしまうもの。

「ブラックローブたちは此処で待機だ。俺だけでなくクロウのアニキともやりあえたガッツ……存分に発揮したいだろうが、はしゃぐな。いいな?」
「「「「はぁい」」」」

 れ、レクチャースピーチ! まるで引率の教師みたいだ……これにはブラックローブたちも素直にお返事をするしかない。
 いい子かと思うじゃん? 悪いふりをしていることも、また悪いことなのだ。悪いやつらなんです。
 残る径路を潰しに薬師神は掃除に向かう。道中必須、四天王相手に一人無双するクロウの兄貴とすれ違う薬師神は、黒焔を宿し槍と対峙する姿を金瞳に取り入れる。
 骨に青色に輝く白炎を生やす四天王は三人がかりでやっと一人前。その一人前が五つ揃ってようやく相手に攻撃が通るらしい名ばかり四天王。それでもやはり戦いは数なのか、チキン共だって後退しつつも善戦しているらしい。
 その戦術は理に適っているが、逃げ道がなければ無駄足を踏むことと同じだことだ。それに、杜鬼の意志が力となり火力が徐々に上がる剣は戦が長引くほどに燦めきを増す。伍は輝きを失わず、青と白を圧しては場そのものを焼き尽くしていた。

「今の俺は”アニキ”なんでなァ!! 格好悪ィトコは見せられねェンだわ」
「流石クロウのアニキーーー!! 格好いいぜヒューー!!」

 ヤジを飛ばした薬師神はアニキとすれ違い様にハイタッチ。力強さが残る手のひらにはやはり満更の二文字が書かれているように思えた。
 ところで働きアリの法則というものがある。二割がよく働き六割が普通に働き、残り二割は怠けるという集団でよく起きる不思議な現象だ。
 ありったけのDをかき集め、サンタさんへ探し物を献上しに行くはずの現金輸送車に乗り下がるデビルスケルトンは果たしてどちらの二割だろうか。

「ひっひひ……今の内にィ、トンズラするのが賢い骨ちゃんよ~っ!!
 悪い事しちゃってるオレこそがサタンにふさわしい立派な悪魔、デビルスケルトン!! 四天王から魔王にジョブチェンジだオラ~~~~~ンっ!?」
「ふむ……なるほど。確かにこれだけの量のDがあれば立派な魔王になれるのだろう。しかし、孤軍奮闘は四面楚歌にもなり得てしまう」
「ひ、ひひーーーーーんゅ?!? だ、誰だよオマエ~~~!!??
 なに勝手に助手席に座っちゃってンのォ~~~~~~~……あ、もしかしてェ。仲間になりたそうにこちらを見ている?」

 エンジンをかけていた一台の現金輸送車のドアを開けて普通にお邪魔していた薬師神。注意散漫なデビルスケルトンが気づかなかっただけで神出鬼没扱いされている彼は、こんな奴がドライバーだなんて不安でしかないなと冷ややかな視線を送っていた。
 冷淡な表情のままにデビルスケルトンへ手を差し伸べた薬師神の行動を好意的に受け取った魔王の卵は握手かなーハイタッチかなーと手をまごまごさせているが、一度奥へ引かれた手の動きにデビルスケルトンは首をかしげる。途端、急に振り下ろされた手刀。

「あて身」
「うぼあっ」

 薬師神は 新魔王を 気絶させた。薬師神の 悪さに 磨きがかかった!
 Dを入手したことにより薬師神はレベルアップのついでに能力値も上がるぜ上がる。素早さにDポインヨを振れば早業で現金輸送車を纏めて奪取することも造作もなし。新魔王でも四天王でもなくなったただの屍の墓上から戦況を確認する薬師神は周囲をぐるりと見渡した。

「……輸送車を中央に走らせるのが一番か。よし、起きていいぞ蘇生」
「あばらっ……はれ!? オレは一体」

 助手席に戻った薬師神は再び屍に手刀を放って更に悪に磨きをかける。悪魔は喚ばれたら覚醒めなければならないと考える律儀な種族なのだ。

「さあ、車を全部走らせてくれ。代金はDでいいか」
「え。え!? お、お客さんコレ現金輸送車であってタクシーじゃないんですケド……アッアッ手を上げないで首がなンでか痛くなる。てか全部? 全部?!!?!?」
「そうだ。全部だ。個別に炎を操作できるだろう? その応用で頑張ってくれ。さもなくば……」
「ひ、ひひいーーーーー!!」

 青色に輝く魔の炎が放たれた現金輸送車たちは低速走行を開始する。ちなみに代金であるDは現在薬師神が乗っている現金輸送車から拝借したため産地直送だ。悪いお方!!!
 Dの護衛も兼ねてユーベルコード【泡粒の檻】を再度発動させた薬師神の助けもあってか、時速十キロ程度の現金輸送車たちはまるで座頭鯨の群れのように茫洋と餅地を往く。
 泰然とした鉄塊に気づいてしまったデビルスケルトンたちは青白い火に負けないくらい顔を同じ色に変え、得物である槍を放り投げてでも今すぐにと逃げ出そうとしていた。

「な、なンだあ……現金輸送車が低速走行で突っ込んできていやがるぞ~~~~~~~っ!!!! 退避、退避ーーー!!!」
「アア? アー悟朗か。……時速十キロ程度ににビビるたァ。ダサいぜ?」
「んぎぎぎいぎぎ!!? だ、だだだ……!! アッ車、でもだっだあ!!」
「ダサい」
「うわーーーーーーーーーーーーーダサいって言うなーーーー?!」

 どうやら弱点ワードらしい。ガスコンロのツマミをオフにしたように一気に鎮火してしまったシャバ僧スケルトンズ。ところてんとダサいが同列とは、デビルキングワールドに住まう魔族の感性はやはり自分たちとは違うよなあと杜鬼は一人納得した。

「まァ……逃げてみてもいいぜ? 逃げられるのならな」
「え、いいの逃げて。え、じゃあ……逃げるンだよォーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
「さァて。俺から逃げても、悟朗から逃げられるか?」

 容赦のない泡の津波はゆったりと、しかし確実に獲物を中央へと追い詰める。四方から吐き出されたような泡の網はぐるぐると円を描き、逆らおうものなら呑まれたまま戻ってこない。

「うばばばばっばばば!?!? めがまわ脳がこぼれええええええええええええええ!!!!!!!!???」
「脳ないけど色々こぼべあわあわっわくちびあわぼごも……」
「おあああーーーーーーーーーーっ負けね~~~~~~~~!! でもクロールしてもクロールしてもながさっ――」
「ひっ消え!? 消えたあああああああああああ!?!?!?」

 杜鬼の火でこんがり焼かれたデビルスケルトン等は、薬師神による手加減なしの檻に閉じ込められ、藻掻き、溺れ、流されては追加ダメージ付きの威力を身をもって思い知る。

「……ア、あれ!? 流れがとま……あ、あこれ逆回転。右回りから左回りに? 
 しぇ、シェイクアイウトアアアアアアアアアアアアアーーーーーー!!???!」
「ヤダバアアアアアアアア!?!? ア、ア!? 助かった? でも地面に足が着かないってことはここは空中ってこあああああああああああああああああああああああああ」
「うわあああああああああああああ??!?! 泡から逃れても場外は餅地じゃないって生き地獄だよおおおおおおおおおおおおん!!!?!?」

 流され去っては落ちていく。阿鼻叫喚とはこの事かと、Dが集いし中央にて杜鬼は腕を組み仁王立つ。その隣でフードを被りなおす男は、薬師神・悟郎。息を吐き、大きく吸った彼は杜鬼に向けてDを紙吹雪のように撒きて声を張り上げた。

「はーははははあ!! 泣き叫べ!!! 恐怖するが良い愚民共!!!!! これがクロウ親分の力だ!!!!!!!」
「す、すっごーーーい!!」

 ドンと大きく泡の柱が打ちあがる。薬師神を運んだ現金輸送車の中ではわわと羨望の眼差しを向けるデビルスケルトンは一掃を免れた奇跡の骨だ。
 ヨイショされた当の本人は苦笑してDを拾い上げてコインをはじく。

「随分とノってたじゃねェか、悟朗」
「ああ。クロウの威を借りつつ好きに暴れることの、何と楽しいことか」
「お。こりゃア一緒に居たら、サタンもサンタも悟朗を恐れて逃げていくだろうな!」
「……まあ。実は。今になって、羞恥心が少し、募ってきたわけだが」
「照れるな照れるな。カッコよかったぜ?」
「ああ……クロウが俺のヨイショによせと言った意味がわかる。そうだ、よしてくれ」
「ハ、俺は世辞は言わねェっての」

 よせやい、と。満更でもないとクロウの言葉で書かれた手で顔を覆う薬師神は、まだその字を飲み込めそうになかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『聖夜精『クリス・ベル』』

POW   :    ソルジャー・ブレッドメン
レベル×1体の【ジンジャークッキーの兵士】を召喚する。[ジンジャークッキーの兵士]は【魔】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    スラップ・スティック
対象の【キャンディケイン】に【オーナメント】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[キャンディケイン]を自在に操作できる。
WIZ   :    パーティー・ピープル
【サンタ帽】から、対象の【何もかも投げ出して遊びたい】という願いを叶える【魔性の魅力を持つパーティーグッズ】を創造する。[魔性の魅力を持つパーティーグッズ]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠大宝寺・朱毘です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Merrrrrrrrrrrrrrrry Christmasss!!!!!
「えーー。えーーー!? 四天王の皆さん、みーんなコテンパンにやられちゃったんですかー!?
 うむー……やはり、優秀な指揮官がいないと物量作戦は通じないのですね。うっかりうっかりー」

 ベツレヘムの星が輝くクリスマスツリーを象った新国モチノキ。赤いカーペットが玉座まで続く頂上にて、魔王としてデビルキングワールドに君臨したオブリビオン、聖夜精『クリス・ベル』は猟兵たちの姿を確認するや否や怠惰の緑眼を丸めたものの、心外だと述べる言葉には真意は混ざれど本意ではないようで。どこかわざとらしい仕草をする彼女はごほん、と咳を大きく払ってみせた。

「ふふふー、よくぞきましたなー! 猟兵ー!! きさまさんたちの悪行、玉座の上でしっかり見させてもらいました。メリークリスマース!!
 さーさー、クリスマスをしましょー、クリスマス。モチモチクッキーに餅入りミルク、はちょっと勇気がいるかもしれませんが! 餅粉を使ったケーキだってあるんですよー。
 チキンだってー、中に餅を入れ込みました。猟兵の皆さんも、お一つどうですかー? ……。……むう、ダメっぽい!」

 弧を描く口元は多少膨れど、嬉々とした瞳の輝きは失われることなく。穏やかに羽根を揺らす彼女の横には、よくサンタクロースがしょっている白くて大きな袋が子ヤギを食べたオオカミの胃袋のように張っており、異質な存在感を放っていた。

「うーん……私はーただ、クリスマスが続いて欲しいだけなのです。クリスマスの、心浮かれる空気がずっと続いて欲しいのです。
 だって、勿体ないですよー。でも、でもでもー……価値観の違い、というものもあります。とすれば力で従わせるのも致し方の無いことー!! カッコよくねじ伏せてしんぜよおー・……っとと、とー。集めすぎたから袋が重いー」

 じゃり、と軽い金属音が幾多に重なる袋を持ち上げ背負ったクリス・ベルはキャンディーケインをくるりと振っては小麦肌の小さき人等を呼び起こした。
 サンタが持つ袋には、出どころは不明だがDがたんまりと詰め込まれていた。愛嬌ある顔をした彼らは体内にDを埋め込んでおり、小柄ながら強い魔力を持っていることが予想される。
 猟兵たちに焼き菓子人形を仕掛けたサンタクロースは柔らかながらも勝気な笑みを浮かべ、胸元のベルを鳴らした。

「あららー、真サタンである私が玉座で胡坐をかいていたと思いますかー。いいえ、私はサンタさんなのです。ちゃーんと転売してDを集めていました!
 さあ、パーティーしましょー。今日もクリスマスですよー!」
ハンナ・レドウィッチ
不採用含めて全て歓迎よ!
クリスマスが続けばいいって?私の所にはサンタさんなんて来なかったわ!
打倒クリスマス!ノーモア・クリスマス!憂さ晴らしするわよ!

しかし良い子が祝福されるべきなのも事実。UC発動!
我が庇護に縋りし善なる者、未だ見ぬ夢の月より来る者よ、褒美をくれてやろう。
具体的にはあの焼き菓子人形を食べさせて敵の魔力を奪うわ。自殺願望あっても死ねない亡者だから結果的に良い子でしょ!

作戦成功如何に関わらず、亡者の皆さんごと久し振りに全力の大魔法をサンタのアンチクショウに叩きつけるわ。
肉壁がいるから防御は捨てて大丈夫でしょ!(フラグ)

敵UC:抵抗できる訳ないじゃない!あなたの柔い肉で遊びましょ?



●PARTY TIME
 クリスマスが続いてほしいだけ、と。
 ハンナ・レドウィッチ(天災級自爆魔法使い・f31001)は聖夜精『クリス・ベル』の言葉に首を傾げた。クリスマスを迎えた人々の心は確かに浮かれていたかもしれない。しかし、そこに自分は含まれていただろうか?
 白い頬に人差し指を当て、左上を向けば蘇る去年の年末。そうね、クリスマス。クリスマスといえばサンタクロースよね? でも、私のところにはサンタさんは来なかったわ。なんでよ、マジメに邪神してたじゃない!

「クリスマスが続けばいいって? 私の所にはサンタさんなんて来なかったわ!
 サンタさんが来ないクリスマスなんて、平日よ平日!」

 それに黒いサンタとやらも来なければ、目の前の自称サンタも来なかった。
 いい子のところにしかサンタクロースはやってこないのだ。でも来てくれたっていいじゃない!! と、腕を組むへの口ハンナは結構長い人生を歩んできているのだが、幾つになってもプレゼントは貰ったら嬉しいものなのです。
 クリスマスを平日呼ばわりされたクリス・ベルは動揺せずにはいられなかった。ハンナの元に、サンタさんが来なかったという現実に! プレゼントを貰えなかっただなんて、なんて悪い子!! つまり此処デビルキングワールドではとっても強いやっばい敵である!!

「え。えーー!? 猟兵さんのところにはサンタさんが来なかったというのですか!? ……かわいそうー!」
「なに。なによ、その目!! 憐れんでいる暇があったらプレゼント寄越しなさい!! もちろん、私が欲しいものをね?」
「む、む! サンタさんの存在を信じて、更にはおねだりもするだなんて、さては……いい子ちゃんですねー!」
「そうよ!! いい子よ!!! プレゼント寄越しなさい!!!」

 わお、太々しい! いい子を誇張してまでプレゼントを強請るこの猟兵はなんて悪い子なんだと戦慄するクリス・ベルをよそに、ハンナに着いて来ていたブラックローブたちは悪玉同士の口上戦を観戦しつつ、やんややんやと好き放題言っていた。

「ンンン~~~!? 魔女のお姉さんがいい子だって~~~?? そうかな……そうかも?」
「……でもよォ? ああいう図々しい態度ってのは……悪だろぃ」
「そうかな……そうかも……」
「しかししかしィ、しかしのよっちゃんヨ。サンタさんはいい子だと煽った可能性もあるンだぜぇ~~い? まだプレゼントを渡していないのも悪……、……つまり。この勝負に勝った方が悪ってことデ!」
「「「そ、それだ~~っ!!」」」

 勝った方が偉くて悪い。実にシンプルな結論だと女王二人はそれぞれの思想を叶えるべく武器を取る。
 勇敢なる小さき兵士を連れた金髪の女王は、甘い香り漂う紅白のキャンディーケインを灰髪の女王へと指し示す。進軍するたびに輝くコインは、モチノキに君臨したサンタクロースからのギフトであった。
 いざ対抗せんとブラックローブが戦場を駆けようとするも、それを制したのは意思を持つ箒。不敵な笑みを浮かべるマイケルくんが見る空洞に、灰髪の女王は映らない。
 暗闇に浮かび上がるは邪竜神。アロゥ・エンデバリカンにて眠る彼女は目覚め歌を口ずさむ。
 出でよ未だ見ぬ夢の月、我が都を戴く失われた大地よ。

「我が庇護に縋りし善なる者、未だ見ぬ夢の月より来る者よ、褒美をくれてやろう」

 この世界を災禍に包まんが為、再び産声をあげなさい。

 ――アロゥ・エンデバリカン・ユーゴッド。ユーベルコード【大召喚】。
 ハンナの頭上に召喚された土地は、未だ見ぬ夢の月そのものだった。それは一部分であれど邪気は確かに定着しており、たった一部で戦場全体を未だ見ぬ夢の月と同じ環境に変化させた。
 魔力を取り戻したハンナは空を撫で、土を滑らせる。黒黒しい靄は辛うじて人と判断できる形を作っており、その者は既に亡くなっていた。にも関わらず、その亡者らを使役するハンナは閉じた法杖を回して煌君に故郷をお披露目してみせた。

「良い子は祝福されるべきよ。その事実はどの世界でも変わらない……が。憂さ晴らしすることには変わりないわ!!
 さあ、あのちっちゃな焼き菓子人形を食べて、敵の魔力を奪っちゃいなさい。自殺願望あっても死ねない亡者だから結果的に良い子でしょ!」

 打倒クリスマス! ノーモア・クリスマス! と掛け声を言わせながら突き進んでくるハンナ・レドウィッチは悪い子なんてレベルじゃねえ!!! 邪神悪だ!!!!!
 悪とはなんだ。良い子とはなんだ。そんな概念や御託は真の邪悪には通じない。
 良い事だと言ったらそれは良い事なのです。なんて素晴らしい善行か!! お優しいぜ流石は大天才邪竜神様。亡者も泣いて喜んで崇め奉ります。

「い、良い子とはいったいー……っなんのー!! クリスマス続行! フォーエバー・クリスマスー!!
 ジンジャークッキーさん! 齧られる囮一人を決めて、三人が掛かりで対処を行ってくださいー。犠牲を無駄にしてはいけませんよー!」

 クリス・ベルもオブリビオンだから邪悪な存在なはずなのだが、猟兵力も相まってハンナの方が一枚上手か!? 動揺したらやっていけないぜこの世界デビルキングワールドは。やりたいことやったもん勝ち悪気100%でもう頑張るしかないさ。
 双方、質も量も問題なし。ぶつかり合う人海を操る腕はクリス・ベルの方が勝っていたが、餅の大地は未だ見ぬ夢の月と化した今では亡者も同様。
 ザクザクとクッキーが割れる音は亡者の口に含まれたからか、打撃によって破損したからか。命亡き者はいくら食べても満たされず。手足がもげたとしても読めぬ表情は、何を思っても口にはできず。
 均衡状態である中、邪竜神の元に先駆けたのはしとやかな薄金を羽ばたかせる聖夜精だった。振り下ろされたキャンディーケインの鐘音を受け止めるのは煌君エンバリアードを片手にするハンナ自身。

「大将自ら首を差し出しにくるだなんて、降参でも言いに来たのかしら!」
「いいえー、勝ち誇る兎さんの首を刎ねる為に私は来たのですよ。
 これでも一応、国王サタンですのでー! ついでにプレゼントでもいかがー?」
「あら、嬉しい。じゃあそのDがたんまり詰まった白袋を寄越しなさい!!」
「現ナマ要求は夢がありませんー!! 通りでサンタさんが来ないわけですー。
 でもでも、でーもー? そんなかわいそうな猟兵さんを満足させるプレゼントを私は差し上げてしんぜよおーう」

 クリス・ベルが被るサンタ帽から創造されたのは魔性の魅力を持つパーティーグッズ一式セット。
 クラッカーはもちろん個性的なサングラスを筆頭にしたおめかし道具、家庭用チョコレートファウンテンだって、それら全てに紐が括り付けられており、空に浮かぶパーティーグッズたちは色鮮やかなクリスマスバルーンによって支えられていた。

「チョ、チョコレートが滝のように流れるアレだわ!?」
「ふふふー……今ならなんと……マシュマロやフルーツもついてきます……」
「へ、へえ? でもチョコが流れてないんじゃあ……」
「はーい、チョコ流しましたよー」
「抵抗できる訳ないじゃない!! あなたが手に持つ柔い果肉を付けて、遊びながら食べてオイシイ思いするしかないじゃない!!」

 なんてこったクリスマスパーティーが開催されちまった!! チョコが掛かったイチゴを頬張るハンナは堕落してしまい、退廃の道を辿ってしまうというのか!?
 女子二人が素敵なパーティーしている間にもクッキーと亡者はお互い健闘している!! ブラックローブたちは胡坐をかきながらマイ火鉢を用意して手元に余った餅を乗せながら呑気に鑑賞している!!
 悪って自由なんだなあ。うっかりオヤツをたらふく食べてしまったハンナだが、クリス・ベルの手元には在庫が復活している。さあさあとクリス・ベルが無限にハンナへ供給を続けることでおかわりし放題が続くはずだった。のだが、胃袋には限界が設定されている。

「あ。いえ、もういいわ。お腹いっぱい」
「何を言っているのですかー。まだまだ素敵パーティーは始まったばかり! ずーっと楽しく食っちゃ寝し続けましょうー!!」
「嫌よ!! 太っちゃうでしょうがサンタのコンチクショウめ!!
 もーーーいいわ。久し振りに全力の大魔法を叩きつけてあげる。未だ見ぬ夢の月より来る者よ! 大天才邪竜神様の元に集いなさい!!」
「なあ!? っジンジャークッキーさん!! 亡者さんたちを羽交い絞めて動きを止めてくださいー!!」
「あっそう! なら亡者の皆さんも巻き込むまでよ!! マイケルくん!!」
「へ!? ほうき、っきゃん!!」

 ハンナとクリス・ベルの間に割って入ってきたマイケルくんの枝にはクラッカーが握られていた。掛け声に応じて糸を引っ張り飛び出てきたテープは勢いよくクリス・ベルの顔面に飛んでいく! こんなの怯むっきゃねえ!! 人に向けてクラッカーを放つだなんて、悪いマイケルくんだ!!!!!!!!!
 更にこの箒、クリス・ベルの背面に生えた羽根を引っぱたいてバランスを崩させたではないか!! 最後にハンナが法杖で小突けば
よろよろ転げて無事に横転の完成である。恐ろしい悪のコンボだ……!!

「ふんふふーん、腕が鳴るわね。これまで魔法は全部成功してきたのよ? つまり大魔法だって成功するに決まっているわ!
 範囲なんて指定しなくてもいいのよ。サンタのアンチクショウが吹き飛べばいいんですもの」

 ハンナがこれから発動する魔法は破壊魔法。指定した半径レベルメートルの範囲を空間を爆砕する現象がこれから起きるのだが、彼女は範囲を指定しなかった。

「え。なによマイケルくん。肉壁がいるから防御は捨てて大丈夫でしょ! ……あら、そういえば肉壁が集ってきてないわね」

 向こうを見ていていれば羽交い絞めから解放された亡者がジンジャークッキーをむしゃむしゃしてやっているではないか。今も反芻している。

「コラー!! あなたたち、何をしているの!! 早く戻って肉へにあえああああああああああああああああああ――――!??!」 

 カアオッ!!!!!!! と青白い閃光が走ったモチノキ兼未だ見ぬ夢の月の一部。
 大きくて広い空に吹き飛んでいるのはハンナにクリス・ベルに、Dとクッキーと黒い靄。それとブラックローブと、ブラックローブなどなど、皆平等におそらきれい。
 やがて地上に戻る頃には邪気は餅によって浄化されたのか餅がミント並みに繁殖力がやばいのか餅の大地に戻っていて、柔らか餅地面に垂直に突き刺さったハンナは身動きが取れなくなってしまっていた。

「う、……動けば、動くほどに……っ餅が絡まる!? せ、接着剤かなにかなの!?
 …………マ、マイケルくーん!?」

 胴まで刺さるも両手は無事だった。のだが、その両手を地面につけた途端、餅が手にくっ付いて離れなくなっていたのだ。やばいじゃん?
 相棒に助けを求めてみるも彼は軽い為か未だ空を飛んでいるようで。しかしマイケルくんはハンナの声あらばすぐに駆け付けてくれる相棒なのだ。
 空から飛んできた箒はハンナの頭上目掛けて一直線に落ちてくる。それも空気抵抗を減らすために、縦向きで。
 ハンナの頭上目掛けて。落ちてくる。

「マイケルく……? ……ま、待っ! マあっマイケくみ”っ!!」

 魔法使いの脳天に、箒の先っぽが。雷のように落ちてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガンズ・ハルモニア
長かった…餅の銃火を掻い潜り(記憶美化)
当たり屋共から無罪と慰謝料を勝ち取った(記憶詐称)

ガンソルジャー召喚、操縦。焼却熱線を放射。
モチノキは今日から、鏡餅です!!
あけましておめでとう!(ガンマシンキャノン制圧射撃)
ふはは焼き過ぎボロボロな体に鉛玉は致命的だ!
じゃ、さよなら(踵を返す)

私は蜜柑の化身。
【箱呼】Dは沢山。サイズアップはすごい。つまり文字通り、
ミカンになる為に私はここに来た。有言実行する女。
重量攻撃、超特大サイズのガンキューブ。
国の上で空中浮遊状態から、堕ちる。どーん

クリスマスもお正月も、過ぎ去っていくから楽しい。
いっつもクリスマスじゃ楽しさに飽きちゃうからね
惜しむぐらいが私は好き



●Blue tangerine
 ――長い戦いだった。

「くっ……俺を置いていけ! もう走れねえ……!!」
「っあなた、何を言っている!! 私の背中に乗るんだ!!」

 ――餅の銃火を掻い潜り、

「ぐわー?! 餅が手にくっ付い……ぬわーー!??」
「ひゃあ~~~大変だあ!! ガンキューブのお姉さんがまたしても壁にめり込んでしまったダアーーーーー!!」
「私に構うなァーーーーッ!! 迎撃を開始するんだーーーッ!!」
「あ、……姉貴ィィィーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 ――当たり屋共から……

「二千円あげるから! 二千円あげるからー!! だから頼むぅお母さんには言わないでくれーーー!!」
「いいやッ駄目だね!! あなたのお母さんには言いつけてやる食らえオモチパンチーーーーーーーーッ!!!」
「もごおァァアーーーーーーーーっ!!?」
「ヒューーーーー!! カッコいいぜ姉ィーーーーーーー!!!」

 ――無罪と慰謝料を、

「なあオマエ……オレと組まないか? オマエだってよォ!! 大きな世界で己の悪を試してみたいって思っているはずだろおおおおおおおおおおおおおおああああ?!??!」
「うるさいいいからDを寄越せえええええええええ!!!!!!!!!」

 ――勝ち取ったのだ。

「ええー? ほんとにですかぁ?」
「本当だよ? 記憶美化も記憶詐称もしてないよ?」
 
 欺瞞!!!! 欺瞞とは人の目を誤魔化し騙すことであり、それはもうんっごい悪である!!!! ガンズ・ハルモニア(ガンガンガン・f17793)はとんでもんっゴい悪い子だ!!!!!
 しかしガンズの晴れ晴れとした青瞳には、何一つ濁りなどありはしない。
 花弁の欠けたポインセチア二輪を揺らす聖夜精『クリス・ベル』は、モチノキの玉座から離れていても四天王ズを蹴散らした清らかガンズの綺麗な思い出が火薬香る苦いものだと知っていた。
 だがそれを口にするのは野暮な事。というか言っても言い負かされる気がするので、先ほど吹き飛んだクリス・ベルは微笑みを絶やすことなく、衣服に着いた餅の破片を掃う。

「メリークリスマスですよー猟兵さん。あなたの元にはサンタさん、きましたかー?」
「サンタ、さん??? ……来なかった。なんでだ? なんで私はクリぼっちだったんだ!!? それはあなたが来ないからだ!!!」
「ええーーー!? かわいそう!! 猟兵さんってみんなそうなのですかー!?」
「みんなはそうじゃないけど私はそうだ!!! うっ先ほど改竄した記憶を思い出して頭が……」
「……おかしいですねー。クリスマスを楽しいと思ってくれる猟兵さんになら共感してもらえるはずなのに……。
 まさか、かわいそうな猟兵さんしかやってこないとはー?」

 一緒に吹き飛んだ猟兵は大人だからかなあと納得していたクリス・ベルだが、今対峙するこの子は祝福されるべき子供。楽しくないクリスマスを経験してしまった彼女がクリスマスの永続を望むはずがないだろうと、クリス・ベルはこめかみを抑えたくなったが、既にガンズが両の手で頭を抱えていたので、クリス・ベルは手のやり場を失った。

「くっ……私の記憶をかき乱し、もてあそぶとはなんという悪!!」
「……ええいー! 相手が子供でも、魔王サタンは容赦はしませんー。悔しかったら武力行使で黙らせてみるがいいー!!」
「言ったな!? 武力行使オッケー!! 武力介入ゴーゴー!!」

 ひゃあ! 流石悪事をキメてきたワルのガンキューブだ、ノリノリだぜ!! 武力は全てを制するのです。
 ガンソルジャーを召喚し、操縦するガンズは間髪入れずに焼却熱線を放射。目標補足されていたクリス・ベルは目を見開くも慌てず、キャンディーケインで餅地を突けば、ベルが鳴って従者が集う。指揮棒と同じく甘い香りを漂わせる小麦肌のジンジャークッキーたちは白い餅鎧を装着して装甲を固めており、アイシングされた表情はばってん印でもボクシングフォームは崩さなかった。
 熱線で焼却されてもDで強化されている為もあってか、ジンジャークッキーたちはコゲッコゲに焼け焦げてもまだ美味しそうな状態で済んでいた。まだ食べられる。ですが今は食べないでください。

「鎧の餅が良い感じに膨らんだジンジャークッキーさんは後ろに下がって築城をー!
 前線に進む方は肉を切らせて骨を断つー! 鎧の餅を投げて機動力を奪うのですよー!!」

 わあ、と餅地をとたたと走るソルジャー・ブレッドメン。ファンシーな見た目だが鎧の餅を握って雪玉のように投げつけてくる姿は驚異そのもの!
 歯と歯の間にホウレンソウが詰まって中々取れないように、ガンソルジャーの関節などの隙間に粘着物体を潜り込まれたら溜まったもんじゃあない事をガンズは経験から理解していた。

「だが、餅は焼くもの。クッキーも焼いて食べるもの。焼き続けたらいずれ朽ちてしまうが、この後スタッフが美味しくいただきます。歯磨きすれば虫歯にはならないんだよおおおお!!!!」

 そう、食後の歯磨きとは大事である。忘れたりしなかったりは悪魔たちにとって悪判定だが、その分痛い目を見かねないぞ!! だからこっそりいい子な悪魔たちは歯磨きを徹底とするんだなあ。こっそりは悪だから大丈夫だよ。悪い子!
 そんな悪い子がちんちくりんに見える極悪非道を平然とやってのけるガンズの姉貴は国を燃やしていた。モチノキ革命は今ここに在り。

「虫歯を恐れなければ餅は食べ放題。お雑煮、汁粉、餅ピザ、モダン焼き……全て、餅がなければ作れない料理です。
 お飾りの時期に決まりはないが!! 鏡開きは今さ!!! あけましておめでとう!!!!!!!」

 シェフ、ガンズ・ハルモニアの火加減は最高にベリーベリーバーン。火炙られたジンジャークッキーの兵士をガンマシンキャノンの銃弾で貫けば、例え膨らんだ餅鎧を着こんでいたとしても制圧射撃は完了する。

「ふはは焼き過ぎボロボロな体に鉛玉は致命的だ! モチノキは今日から、鏡餅です!!
 ……お金が落ちてる!? お、お年玉が本当に落ちてる!!!! ラッキー頂戴しよう」
「イヤー!!? ジンジャークッキーさんの形見ですよソレはー!!
 そ、それにそれにこれ以上Dを持たせるわけにはいきませんー……!! 返してくださーいー!!!」

 ね、ネコババだあ!? 白昼堂々とポケットマネーに換算するガンズはウルトラに悪い子だ!!! だが落とし主が事切れている以上、貰ってしまっても構わんのだろう。デビルキング法はきっとガンズの味方!!

「時化てんな……相手がいない以上、ジャンプしてみろも言えないから、もう私が言えることは何もない。じゃ、さよなら」
「……えええーーーー?!?! ……え?!? まさか帰るっ帰ろうとしているのですかあー?!?」

 踵を返したガンズは文字通り来た道を引き返し、撤退。小さくなるガンソルジャーの背中にクリス・ベルは何が起きているのかさっぱりだ。
 本当に帰りやがったと肩を震わせる彼女は精神攻撃を受けており、狼狽えずにはいられない。一体全体なんなのです?? 作戦なのですか?? ろ、籠城すべきー……?? わからないー!!!!
 目を回すうちに、なんだか大きく見えてくるガンソルジャーの……、……!?

「…………あの猟兵さんー。また、巨大化。してませんかー……?」

 目の錯覚か? 気が遠くなってからの錯覚か? いいえ、いいえ。聖夜精の考えは当たっておりました。またしても巨大化です。

「――私はミカンの化身」

 所変わって、帰宅途中に思えたガンズ・ハルモニアはユーベルコード【箱呼】を発動させていた。浮遊箱型兵器に変身した彼女はスケール調整を行っていたのだ。

「――私は有言実行する女」

 手元にDは沢山。さっきも拾ったし、コイン同士が触れ合うとちゃりしゃり鳴って面白い。面白いからもっと大きくなろう。デカいってのは強いんだ。サイズアップはすごいんだ!

「――つまり文字通り、……」

 ガンズが言葉を話す度に、空気は重くなり重圧がかかる。遠くにいるはずなのに、近くから聞こえる幼い声は上から降ってくる。

「ミカンになる為に私はここに来た」

 クリス・ベルが膝をついたのは、謎の重力に耐えきれなかったからだ。弱くも無視できない重力付与に彼女のしとやかな羽根は耐えきれずへにょってしまっている。
 それでもキャンディーケインの鈴の音を鳴らし立ち上がろうとするクリス・ベルは怠惰な瞳で上空を睨みつけ、ガンズの姿を確認した。

「……ううむむぅー!! 敵影確認ヨシ、ですがー……これは、逃げ道の確保もままなりませんー……!」

 モチノキに影を作るは超特大サイズのガンキューブ。ゆっくり、しかし確実に落下してくる球体は隕石のように、割れないくす玉としてクリス・ベル一行を祝福しようと墜ちてくる。
 青い太陽が接近するにつれて重力は増し、折角築き上げた餅の要塞はぺっしゃんこ。玉座あったベツレヘムの星は割れ、きらきらと金粉をまき散らす。

「クリスマスもお正月も、過ぎ去っていくから楽しい」
「うぐっ」
「いっつもクリスマスじゃ楽しさに飽きちゃうからね」

 確信を突かれた。と、クリス・ベルはうめき声を鳴らして下唇を噛む。しかし、飽きるという言葉は彼女にとってのNGワードだったようで。
 悔しそうに激情し、反論を行うとしたのだが過ぎゆく時間は停滞する者の言い分を許してはくれなかった。

「あ、飽き!? クっクリスマスに飽きだなん、てー……わ、わわわ。
 …………わわあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?!?!?!?」

 Dを沢山詰め込んだ、丸い玉が落っこちた。大きな大きな球体は、どーんとめでたく転がった。

「惜しむぐらいが私は好き」

 変身を解いた彼女は、大の字で寝っ転がるよう四肢を伸ばしており、餅地に身体を預けていた。
 粘着性が薄くて、くっつかないところもあるんだなあ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
悟郎◆f19225
アドリブ突っ込み◎

お前もこの波に乗るンだよ!(悟郎引っ張り
甘いモンはお断りだがクリスマスが続いたらそりゃァ楽しいだろうな
でも困るヤツが俺の隣にいるンだわ
このままだと彼女…イヤ、嫁から悟郎がバレンタインチョコを貰えなくなる
アニキの俺が人肌脱いで終止符打つぜ

悟郎から誕生日時に貰ったUC発動
初めてがこんなカオスな戦場ですまねェ
敵集団を炎で一薙ぎ
熱察知で鬼火でクッキーを爆破
その先の本体を糸で繋いで捕縛し叩く

悟郎…!
馬鹿野郎がッ(震え
お前の犠牲で永らえたこの命、無駄にはしねェ

…こんなンでイイ?
覇王様ってふざけすぎだろ(笑い堪え
茶番も茶番だな

最後はド派手に爆発オチ
Dは記念に二枚残しとけよ


薬師神・悟郎
クロウ(f04599)

来たぞ、最後のビッグウェーブが
乗るしかないこのビッグウェーブに、クロウが
俺の幸せのために奴等には必要な犠牲となってもらう
頼むぞ、親分!

初手UC発動
クロウから授けられた首飾りの効果発動!
鴉の記念すべき初登場がかなり特殊な戦場であることに心の中で謝罪しつつ、暴れてもらう

ふざけたように見える敵とはいえ、放たれた凶弾からクロウを庇い
親分…いや、クロウ閣下、いや、クロウ覇王様
貴方の下で働けて幸せだった…(ガクッ)

…と、こんな感じで最後を飾りたいんだがどうだろう?
オーラ防御のお陰でダメージすらない茶番なんだが

締めは敵と輸送車を巻き込んで派手な爆発で飾ろうか?
悪には汚い花火がよく似合う



●Let’s surf
「ひいえー……ひどい目に、あいましたけどー……!
 至って、元気のー……かすり傷! まだまだクリスマスの永続は諦めきれませんー!!」

 ヘロヘロになったしとやかな羽根を伸ばし、きらびやかな光を餅地に落とす聖夜精『クリス・ベル』は、崩れた髪形をほどいてもう一度結びなおす。
 一つに結った下がり髪の付け根に首元のリボンを新たに結べば、悪い笑みを浮かべようと微笑む姿が其処に在る。
 潰れた玉座の遠方にて、聖夜精の姿を視認した杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)と薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)率いる悪の集団ブラックローブズは、みんな黒いサングラスをお揃いでかけていた。
 チョー怖くてヤバイ悪いつよつよお兄さん二人の後ろを不気味なブギーモンスターがぞろぞろと憑いてくる様はカラーギャングの百鬼夜行。
 ヘッド同士がかち合った今、モチノキ分け目の戦いが幕を開ける!

「メリークリスマスー。さあー二人の猟兵さんに問いましょう……。
 クリスマスプレゼント、貰いましたかー!? 楽しかったですかー!?」
「プレゼント、か。……アイシングクッキーで出来た時計を手に入れたなァ」
「俺はクリスマスパーティーで山盛りなパイケーキを沢山いただいてしまった。さくさくしてうまかった」
「おお~~!! 賑やかで楽しそうなクリスマスを過ごしているー!!
 へへへ。じゃあじゃあ、じゃあですよー? もっと長く続けばいいのにって思いませんでしたー!?」
「……いやァ? 大して」
「別に……いいかなって」
「…………、……ええええーーーーーーーーーー????!? あれえ、ええ???
 っな、なんでですかー!? 楽しいクリスマスを楽しく過ごしたはずでしょうー!?」

 今までの猟兵と比べてみると、楽し気なクリスマスを過ごしたはずだと判断したクリス・ベル。しかし、グラサンでワルな兄ちゃん二人から返ってきた返答はどうやら彼女が望んだものではなかったようで。
 クリスマスの永続をちょっとでも、ぴくちりでも。敵であれど分かってもらえるかと思ったら、まずそこまで気持ちが昇っていなかった。大人な対応をした大人に対し激情したクリス・ベルは、頬を大きく膨らませて薄金をダバダバ羽ばたかせる。

「猟兵さんってみんな、みんなそうなのー!? どーしてですかぁー!! クリスマス特有の浮かれた空気はステキでしょうー!! 楽しいでしょうー!?
 楽しいがずうっと続くのにー……一体、何がお気に召さないというんですかー……」
「……甘いモンはお断りだが、クリスマスが続いたらそりゃァ楽しいだろうな。でも困るヤツが俺の隣にいるンだわ」
「ふ、ふむ! じゃあ困りごとを解決すればいいんですねー!?」
「あァ、このままだと彼女、……イヤ。嫁から。悟郎が嫁からバレンタインチョコを貰えなくなる」
「なるほどー! じゃあバレンタインチョコをクリスマスチョコにすれば大丈夫ですよお!! はい、解決ー!!」
「異議あり! 大丈夫じゃあない否決だ。俺はクリスマスチョコよりバレンタインチョコの方が欲しい。もっと言えば嫁から、俺の嫁からバレンタインチョコが欲しい。
 嫁のチョコが欲しくない男がいるか? いや居たらタダでは済まさないのだが。空想とて、許しては置けない存在だろうそうだろう?
 ……とにかく。俺の幸せのために、バレンタインの先の未来のために! 季節間違いの餅サンタには必要な犠牲となってもらう!!」
「むっむむむむうーー!!! 時期間違いではなく、季節間違いですってー!? サンタさんは春夏秋冬問わず現れてクリスマスパーティーしてくれるのですよー?!?!
 それにそれにっそーれーにー! な……なんなのですかさっきの惚気は?!? ハレンチですーー!! やっぱりやっぱり、猟兵さんとは一生分かち合えませんー!!!」

 今のどこに破廉恥要素が含まれていたんだと、顔を合わせる杜鬼と薬師神。ひょっとして初心なのかと疑いの視線をサングラス越しに向けられたクリス・ベルは怠惰の緑瞳を吊り上がらせて、キャンディケインのベルをジングル鳴らす。餅地で叩かれた指揮棒はジンジャークッキーの兵士を召喚し、指先が全てくっついた拾い手のひらにはべっこう色のキャンディケインが供えられている。
 今度は餅地ではなくクリス・ベルがキャンディケインを叩いてみせた。すると丸いグリップの装飾はみるみる数を増していき、ゴテ盛りながらも艶やかな大輪を咲かせていく。
 ブレッドメンが握るべっこう飴も同じこと。クリス・ベルほどに賑やかではないがオーナメントが次々と生えていく。その中にはDも装飾として混ざっているようで、兵士だけならず武器にも魔属性が付与されているようだった。
 波立つ茶色の焼き菓子をみて、薬師神は後援のブラックローブから何か板状のモノを受け取り、杜鬼の足元に置き渡す。

「来たぞ、兄貴。最後のビッグウェーブが」
「あァ……ところで悟郎。コレ何? 餅でできているこたァ、判る」
「サーフボードだ。乗るしかないだろう? このビッグウェーブに! ……クロウが」
「俺かよ。お前は乗らないのか?」
「乗りたいのはやまやまだが、悪いなクロウ! このサーフ板は一人乗りなんだ。頼むぞ、親分!! 負けるな、親分!!」
「……ブラックローブ!! サーフボード、もう一艇用意して来い!!」
「ひゃあ!! わかったぜぇ~~~い、クロウの兄貴ィ~~!!」
「へっへっへ……オレ、この戦いが終わったら、サーフボード職人になるんだ……」

 何い、と驚愕の顔をする薬師神に対し、サーフボードを受け取った杜鬼はワルイ顔で笑んでは黒ジャージの腕を引っ張ってみせた。

「お前もこの波に乗るンだよ!」
「やるな、クロウ。俺の悪ふざけを……掻い潜るとは。しかし本当にこれで行くのか?」
「実のところ止めといたほうだイイと思うケド。ノせられたからにゃァ、アニキの俺が人肌脱いで終止符打つぜ」

 ヒューッ。流石だぜぃクロウの兄貴!!!! ゴロウの兄貴も頑張れ~~!! と、ブラックローブが知恵の布をバタバタさせて見送る中、陸へと飛び出る二人は餅サーファー。
 ジャンプしてクッキーの波に乗ればそこら中から甘い香りが漂って来るものだから、杜鬼は思い切り顔をしかめてしまった。
 それに対し、この兵士が持つべっこう飴も食べられるのかと考える薬師神は杜鬼から授けられた首飾り、偷偷の効果を発動させる。
 鏡片の珠と翡翠色の宝玉の連なりは形を変え、鳥類へと姿を変え、やがて鴉となった玻璃色は、ユーベルコード【抉跪】。
 硬質でありながらも滑らかな羽根を伸ばし平行する鴉に対し、記念すべき初陣がこのようなかなり特殊な戦場であることに薬師神は心の中で謝罪する。しかし、鴉が見慣れぬ世界で戸惑いなく、真っ直ぐに飛ぶことができるのは薬師神を信頼しているからだ。
 ならば存分に暴れてもらおう。敵の身体が血と肉ではなく、砂糖と小麦粉であることは幸いか。

「焼き菓子の兵士に問う! 主人たる聖夜精は悪か!? カッコいいと思うか!?」

 声なき兵士は、例えアイシングで描かれた表情を百面相させても答えは出ない。
 玻璃鴉は答えられぬ問に満足いくか? 否、さらけ出さぬ者には跪かせて屈服を。音開かぬ口を抉じ開けよ。音閉じた口に用はなし。鋭利な羽根を飲み込んでしまえ。
 小麦肌の兵士等に降り注ぐ玻璃色は美しいと杜鬼は思う。ザクザクと鳴るのは焼き菓子で、カラコトと鳴るのはべっこう飴。はじけ飛ぶ甘菓子の中には幸運のコインが一つだけとは言わず。中々な景色だが、サーフボードが餅で出来ていることが彼を現実に引き戻してくれる。
 一夜城を築城し終えたクリス・ベル一行は小さながらも確かな天守閣にてべっこう飴をライフルのように構えていた。

「Dを銃弾にした魔属性のデーモンビーム、三段撃ちの用意、ヨシー!! 
 ……第一弾、はっしゃあーーーーー!!」
「籠城戦で三段撃ちたァ、それなりに考えてはいるようだなァ!
 だがその火種、Dごと貰っていくぜ!!」

 猟兵二人に降り注ぐと思われた銃弾は火花を咲かす。青く光るそれは狐の悪戯か。それとも鴉の悪戯か。いやいや風の悪戯だ。
 夜影蝙蝠が連れた玻璃鴉が、悪を浄化せんと神罰落とし、風がなびけば鬼は戯れ、炎の勢いを増すばかり。

 ――ユーベルコード【鬼遊び】。
 熱籠る銃光線を焚いだ炎は人海を一薙ぎしては焼け焦げたソルジャークッキーの中で燻る熱を察知し、鬼は小人を爆破させた。
 火の海の勢いは止まることなく、やがて城へとたどり着き、糸となりてクリス・ベルのキャンディケインを巻き取ってみせる。

「きゃあ!? ……あ。ああーーーーっ!!!? 私のキャンディケインが! と、取られちゃう!?
 は、放して……っ!! いえ、私が放しますー!!」

 爆破の予兆を知っていたクリス・ベルは被弾を避けるために己の得物を手放した。幸あってか捕縛を免れたものの、戦闘能力を向上させるクラウンを失ったクリス・ベル一行の戦力は見るからに低下していった。
 それでも攻撃は止むことなく、威力は大幅になくなった弱火の種子島がまたしても二段、三段、続けて四段とやってくる。

「チッ。弱過ぎて火の足しにはならねェな!! 悟郎!! お前から貰った技、初めてがこんなカオスな戦場ですまねェ!」
「構わないさ! それよりも――っ?!」

 瞬間。薬師神の金瞳に赤い衣服が映って見えた。それは聖夜精だ。手袋を外した彼女の手には玻璃鴉の鋭利な羽根が握られている。
 小柄な体躯を活かして急激に接近していたオブリビオンは杜鬼を狙っている。
 クロウの首元を目掛けて、小さな細腕が。首に。振り下ろす。振り下ろされる。

「クロウ!!」

 餅板から降りた薬師神は兄貴分にタックルをかます。オーラ防御を背面に集中させていたからか、受けた傷跡は浅いどころかなんともない。
 だが此処はデビルキングワールド!!! 真剣っぽい勝負に茶々を入れまくって茶番劇にしちゃうのもまた悪なのだ!!!!!!!!!!

「ぐ……ぐはあっ!!」
「悟郎!!! お前、俺を庇って……馬鹿野郎がッ!! 何故、なんで庇ったんだ!!!」
「う、お……おやびっ……ぐっ、はあ! おやぶん……!」

 変なところで噛んでしまった薬師神は笑いを堪えようと呻き声で誤魔化した。段々と呼吸が浅くなってきたのは、なんとか平常心を取り戻せたからである。
 対し、肩を震わせる杜鬼は咳払いができないので、腹筋だけでなく表情筋も大変だった。そらもう深い深い皺を眉間に沈みこませたさ。悪い大人たちだ……。

「……いや、クロウ閣下、いやクロウ覇王様。…………貴方の下で働けて幸せだった……ガクウっっ」
「悟郎。……、……っ悟郎……!! お前は。本当に。本当に……。
 ……イイ、相棒だったぜ」

 寝たふりをする薬師神の瞼をそっと、閉じさせる杜鬼は一足先に笑ってもいいデビキン二十四時の世界に行ったことに口を強く結んで茫然としていた聖夜精、クリス・ベルと向き合った。

「お前の犠牲で永らえたこの命、無駄にはしねェ」
「う。ううー……! 私は退きません! クリスマス特有の浮かれた空気の永続の為ならば、猟兵さんだって殺せちゃいま」 
「当身」
「ぎゃばんっ!?」

 杜鬼は 元魔王元サタンなる ただの妖精型悪魔を 気絶させた。杜鬼の 悪さに 磨きがかかった!
 さらに杜鬼は 笑ってもいい デビキン二十四時間の権利を 会得した!

「……今のは、悟郎から引き継いだ技だ。もう聞こえちゃあいないがな。……。…………」

 長い沈黙だった。空気は重くもどこか甘い香りがしみ込んでいて、気を失った主人あってか焼き菓子たちはボロボロと身を崩壊させていた。
 空を飛ぶ玻璃鴉が杜鬼の肩に止まった。かと思えば飛んでいき、眠る薬師神の灰髪を弄ぶ。すると痛、という声が飛んできて。

「……俺が声かけるまで起きない感じ?」
「起きない感じ」
「こんなンでイイ?」
「ああ。クロウと一緒にふざける時間は楽しいな」
「お。じゃあ……もういいかい?」

 もういいよ、とはどちらも言わず。無邪気な男たちの笑い声がモチノキのてっぺんから地上に木霊したという。

●Be a bad boy
「いやァー!! それにしても、閣下から覇王様って!! 最後ふざけすぎだろ!
 まァ、ふざけているのはコイツも似たような感じだったか」
「だな。ふざけたように見える敵とはいえ……アサシンみたいな行動を取るとは思わなかったから、少し肝が冷えた」

 ふざけた奴と称されたクリス・ベルは目をぐるぐるとさせていて一向に起きる気配がない。そんな彼女は鬼火で簀巻きにされていた。周りにはたくさんの現金輸送車が止まっており、中は他の猟兵に持っていかれたのか、ここに来る前に一度起きた爆風で吹き飛んでしまったのかすっからかんだ。

「クリスマス、か……今年のクリスマスはどうするかねェ」
「そうだな、だいぶ先だが……またすぐやってくるのだろう」
「時の流れは早いもンだ。ンでよ、悟郎。コレもアレか? やくざっぽいのか」
「ああそうだ。後は導火線に火を付けて、高みの見物でもすれば完璧だ」
「成程。じゃァ始めるぞ当身」
「はがあっ!? わ、私は……あれー動けないですね。拘束されて……拘束されてるー?!?」
「よーォ。お目覚めかい、お嬢さん」
「ええーーええとーーーーこ、この状況はいったいー……!?」

 やっと目を覚ましたクリス・ベルは気づいたら簀巻き。周りには現金輸送車が沢山。そしてチョー怖くてヤバイ悪いつよつよお兄さんが一人と一人、合わせて二人。
 おかしい、さっき一人は確実に殺ったはずなのに生きている!! ゾンビだ!! ゾンビな猟兵がニコニコとした表情で話しかけてきたぞ!? も、もしかしたら良い奴かもしれない!?

「悪には汚い花火がよく似合う」
「……????? 花火するのですかー?」
「そうだ。此処に魔界で流通しているらしい、魔っ血があるだろう? これを鬼火へ焚る」
「え。え。あの、えっ」
「後は……そうだな。身を持って経験した方がいいだろう」
「あの、あのあのあのー!? こ、こればくは、ばくはつ……」

 にこやかなクロウはくるりと華麗に踵を返し、彼に代わって銀の登り竜が返答してくれた。
 爆発しますと。教えてくれた。爆発って。何が? まさか自分が? ばんなそかな。わはははは。……。

「わあああああああああああ?!?! 出してーー!! ここから出してーーー!!?」
「どうする兄貴!? 活きのいい金魚が掬ってくれと地表を跳ねているぞ……」
「どうするって、高みの見物するンじゃあなかったか?」
「そうだな。下に降りてブラックローブたちと派手な爆発を見守ろう」
「ン? 高みの見物……まァいいか、どっちにしろド派手な爆発オチ、期待してるぜ!」
「期待しないでくださーーーいーーー!!!! よくないーー!!! どっちにしろ助けてーーーーーーーーーーーーー!!!??」
「アー。じゃァ、何か面白い事言ってみろ」
「面白い事!?!? この状況でー?!?」
「その状況で」
「…………ク、クリスマスとかけましてー! ……ミサンガとときますー!!」
「その心は?」
「どどちらもっ美しい結末が待っている、ことでーしょぅー……」
「……悟郎」
「いかがなさった、我が覇王」
「現金輸送車追加で」
「承りました、我が覇王」
「うわあああああああああん?!?!?!」

 Dを指ではじく杜鬼とともに下山を開始する薬師神は、強く頷きながら兄貴分に語り掛ける。イタズラを仕掛け終わった結果を待つ二人は、とっても悪い子だ。

「やはり、クロウにはよく似合いすぎている絵面だったな」
「…………此処って大喜利する世界だったっけ?」
「……悪とはいったい何なのか、考えさせられる世界。じゃあないか?」
「成程。教育的だ」

 跳ねたコインが薬師神の元へ飛んできた。反射的に掴んだDを見てみると、表面。

「記念品だ。一枚や二枚くすねたところで……此処じゃあ正当な行為だろ?」
「流石は兄貴。悪いお方だ」

 二人が下山した丁度、モチノキのてっぺんにて爆発音が響いたという。地表に振り落ちてくる金色の鱗粉は、ワルでカッコいい勝者たちへの祝福であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月02日


挿絵イラスト