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寝台特急オリオン号の憧憬(作者 あきか
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#サクラミラージュ
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 ――お母さん、あれはなあに?
「あれはね、列車よ。お父さんが作ったの」
 子の問に応えた声は、見守る眼差し共に暖かくも切なかった。
 頬を撫でる風はとても冷たい冬の日、見つめる先に在るのは黒くて大きな箱のよう。
「とても素敵でしょう? それでね、隣の列車は――」
 母の気遣いと愛情溢れる言葉が降り注ぐ。一人娘には、父の記憶が無い。
 少女が知る『お父さん』は話を聞くだけの存在だった。
 己が生まれる前に、夜空で一番綺麗な星に成ったとも聞いた。
 そんな父と云う唯一確かな証が、目先の鉄塊だった。
 ――早く、乗りたいな。
「ええ。沢山思い出を、残しましょうね」
 返事は、乾いた熱い咳がひとつ。

 ――『  』は写真撮るの、上手ね。
 誰かの声がする。誰の声、だっただろう。
 舞い散る桜のように記憶は朧げだ。
 今解るのは、冷たい風に喧騒、汽笛の音。
 それと両手で握りしめる古ぼけたカメラの感触だけ。
 嗚呼、苦しい。咳き込む度にまた血の味がする。
 でも寝たきりだった頃とは違う。今は何故か歩いていける。
 自由な身で何かをしたかった、何だっただろう。
 女学生の頬に一筋の黒い涙が伝い落ちる。
 嗚呼、そうだ。一つ思い出した。あの人にしよう。

「写真を、とらせて、ください」
 何かを遺したかったんだ。

●星櫻の旅へ
「猟兵の皆さま、列車の旅はお好きかしら」
 オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)が優しく問いかける。
 答えを聞くと丸眼鏡の奥にある笑みを深め、そっと片掌を差し出す。
 夜空に瞬く星座のグリモアが浮かび華開いた。
「ご案内する世界はサクラミラージュ。寝台特急という乗り物が、舞台ですわ」
 それは沢山の人を乗せ長距離を移動できるものだと、軽い説明が入る。
「見事な造りの所謂豪華列車で美しい景色を観る旅に……行けたら素敵なのですけれども」
 伝える表情は小首を傾げ、何処か困ったような笑みに変わる。
「ええ、勿論影朧が現れますの。ただ彼女に敵意はないように思えますわ」
 荒ぶる魂が殆どであると同じもので、異なる存在。
 それは余りに辛い『過去』が具現化したものだと、グリモア猟兵は告げた。
「何より強い思いが他を害する衝動に勝った代償かしら。力はとても弱く存在も儚い」
 無論相手はオブリビオン。攻撃手段は在るがそもそも猟兵に興味が無いようで。
 何かをしようと賑わう駅の中で彷徨っているのが現状らしい。
「特徴は若い女性、学生風の格好をしていて……手にカメラを持っていますの」
 誰かを攻撃する事もなく、己が誰かすらも曖昧な様子で構内を歩き回る。
 唯一、自分を突き動かす『執着』を叶える為だけに。
「オブリビオンは倒すべき、でも無害ならば帝都桜學府は救済を望んでおりますわ」
 敵に情けを? との声に結果影朧を還すのであれば同じことですわと穏やかに返す。
 執着する『目的』を聞き出し叶える事で消滅するのならばやりましょうと。
「ただ、今は場に混乱など在りませんが彼女は道行く人に声をかけようとしていますの」
 一般人に影朧の存在がばれるのも時間の問題だろう。ならば。
「影朧を保護し、執着の目的を聞き出して。人々の混乱を収め、彼女の願いを叶える」
 少し骨が折れそうな内容だが、お願いしますわと星夜のオラトリオは緩く頭を下げる。
「幸い、予知で影朧の執着は一部判っておりますわ」
 そっと鞄から一枚のパンフレットを取り出し差し出した。
「本日発車予定がこちらの列車に、乗ることですの」
 日付、発車時刻等が記された冊子のタイトルは『寝台特急:オリオン号』。
 謳い文句に『銀河を映す水辺と桜並木を往く幻想夜の旅』と書かれていた。

 オリオン座を描くグリモアが周囲を照らし煌めいた。
 周辺が星流れる軌跡を描き、風景を賑やかな駅の光景へと塗り変えていく。
「皆さまは……乗車してもちゃんと、帰ってきて下さいませ」
 見送る声と共に、オリオは微笑んだ。





第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る
SPD先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する
WIZ影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる
👑7 🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――お前さん、聞きました?
 ――ええ、ええ。影朧が出たんですって!

 賑やかな午後の駅構内に、不穏な会話が混ざり出す。
 陽は傾き夕焼け色が世界を照らした。

 ――見た、見たよ! 若い女だコンコースにいたんだ!
 ――嗚呼怖いねぇ怖いねぇ。

 今は未だ小さな不安が其処彼処から聞こえてくる。
 清流だった人の流れが濁り、留まり、でもまだ逆流はしていない。
 通路で見たんだ、カフェーで見たんだ、ホームに居たんだ。
 逃げよう、何処へ? 外にだっているんじゃないのか?
 噂が憶測を呼び誰もが恐怖で動けない。

 ――でも。

「駅長!」
「どうしたのかね」
 駅心臓部にも、話が届く。
「影朧が駅内に!?」
「はい、今の所被害報告はありませんが確かな目撃情報が多々」
 何故こんな時に。もうすぐ予定の発車が近いと云うのに。
 駅の指揮を任された初老の男は部屋に飾られた一枚の写真を見やる。
 二号の寝台特急を背景に、沢山の人々が笑顔で並んでいた。
 オリオン号は兎も角、シリウス号は老朽化の為後何度運行できるか解らない。
 だが人命に替えてはならない。拳を握り、顔を上げる。
「すぐに業務中止しお客様の安全を……」
「――駅長、それと」

「……何、ユーベルコヲド使いの方が?」
 ――ユーベルコヲド使いの人も見たんだよ!
「はい、しかも『超弩級戦力』の方々がいらっしゃるようです」
 ――影朧を抑えていたんだ、流石の強さだったなぁ。
 例え未知の恐怖が眼前に居たとしても、世界には希望が存在する。
 彼等が居る限り、人々の心に絶望が満ちる事はない。

「全駅員に報せよ、お客様の安全確保を優先。ただし『ユーベルコヲド使い』の方がいらした場合は指示に従うように!」

 そして。

 女学生はひとり、オリオン号の停車ホームに佇んでいた。
 先頭車両に近付き、そっと黒い車体に触れる。
「……思い出したの。あなたは、お父さんが造った列車」
 彼女が言う『お父さん』自体の記憶は無い。
『お母さん』が教えてくれた噺だけが、全てだった。
「お父さんがシリウス号に憧れて、シリウス号が沢山の人に愛されたから」
 そう話す母の顔も愛情に満ちていたのだって今なら思い出せる。
「オリオン号も沢山愛されるといいって。きっと、そうなるだろうって」
 だから、見たかった。撮りたかった。
 父が造った列車が大勢の人に愛されて、楽しんで貰える所を。
 何枚も何枚も残して。ずっと、ずっとこの先の誰かに。
 ――オリオン号は愛されていたと、思ってくれたら。
 大切な思い出を、遺したい。……のに。
 喧騒の音色が変わる、幸せそうだった声が聞こえてこない。
「どうして」
 カメラを握りしめ、辺りを見回す。
 影朧の瞳もまた不安に揺れていた。
「どうして……オリオン号は、動かないの」

 寝台特急からの蒸気は途絶えている。
神代・凶津
乗客が避難しちまったら列車が大勢の人に愛されるのを見たいって言う影朧の嬢ちゃんの無念が晴れなくなるな。
「・・・どうにかできないかな。」
相棒、いい考えがある。乗客の集まっている場所に行くぜ。


紳士淑女の皆様お立ち会いッ!
寝台特急が出発するまでの余興を一つッ!
演目は『祓神楽』さあさあ、御照覧あれッ!

病や怪我を祓う神楽を舞って範囲内の乗客に治癒を与え続けるという超常の力を見せ付けるパフォーマンスを行い俺達『超弩級戦力』の存在を認識させて恐怖を払う。
『超弩級戦力』はここに有り。
『超弩級戦力』がいる限り心配事は、ただの杞憂で終わると乗客に思わせてみせるぜッ!


【技能・ダンス、楽器演奏、慰め】
【アドリブ歓迎】


●大盤振舞
 斜陽の彩が徐々に地を染めていく。
 足を止めた人々が囁く不安の音は今の所大きな混乱へと転調する気配が無い。
 それは彼等の近く、遠くでも。悲鳴や破壊音等の切欠が聞こえて来ないから。
 群衆は総じて様子を見ている。ただ、良い雰囲気かと言えば違うだろう。

 凶津と相棒の桜はそんな人々の姿を見つめていた。
『乗客が避難しちまったら』
 巫女に視界を調整して貰いながら小さく零す。
 昼過ぎの賑やかさが消え去り、皆伺うように辺りを探っている。
 例えるならば、今は嵐の前の静けさだ。
『列車が大勢の人に愛されるのを見たいって言う、影朧の嬢ちゃんの無念が晴れなくなるな』
 ――撮りたかった。遺したかった。思い出を、忘れないように。
 影朧と成って迄、叶えたかった願い。
 もう少しで届くその道が――途絶えそうな気がした。
 鬼面の考えに、彼女もまた同じ想いだった。彼を包む手に力が入る。
「……どうにかできないかな」
 この呟きは弱音では無い。問うているのだ、するべき事を。
 清明な双眸は真直に。相棒の答えを待ち、覚悟をしていた。
 だからこそ、提案できる。
『相棒、いい考えがある。乗客の集まっている場所に行くぜ』

 桜降る世界の大型駅構内を、謎の仮面と旅する巫女が駆け抜ける。
 清き紅白を身に纏い、或いは鮮烈な赤を手に鮮明な黒髪を風に靡かせた。

 防げないと云うのなら、此れより起こる嵐を『厄』とするのか?
 ――否。
 楽しみ心躍らせて来た人達を、悲しみの儘帰しても良いのか?
 ――否!

『紳士淑女の皆様お立ち会いッ!』
 高らかな口上が、コンコース中央から述べられる。
 驚く人々の視線は全て、一人の女性へと集められた。
『寝台特急が出発するまでの余興を一つッ!』
 芍薬の立姿、両の手に添えた扇子の天元を地と水平に。
 願い捧げる一礼の洗練さを見た群衆が等しく観客と化してゆく。
『演目は『祓神楽』! さあさあ、御照覧あれッ!』
 親骨を押し開く雅な地紙、惹き込まれるのは必然だった。
 静まり返る大広間に笛囃子が鳴り響く。
 一つ踏み出し、扇を前へ。迷い無き動きまこと見事也。
 拍子合わせ翻す身に艶黒と巫女装束が宙を舞う。
 観衆の驚きは其れのみに非ず。神楽より生まれ出る奇跡が超常の力を見せ付けた。
 厄を祓い観る者達の心に巣食う不安をも癒やすような、神気が満ちていく。
 勿論彼等が振舞うのはそれだけではない。
『『超弩級戦力』はここに有り!』
 我等の存在を、我等が今此処に居るという絶対的な安心を。
 人々が失いかけている希望を惜しげもなく与え続けた。
『『超弩級戦力』がいる限り心配事は、ただの杞憂で終わると乗客に思わせてみせるぜッ!』
 吹き手が叫び、舞人が頷く。
 切欠は、猟兵達によって善きものとして生まれ変わる。
 嵐は絶え間ない拍手であった。

「ねぇお母さん」
 オリオン号が見える硝子無き大窓から、桜花弁と共に優しい風が舞い込んでくる。
 少年がひとり、母の服を掴んで見上げていた。
「僕、やっぱりオリオン号に乗りたいな」
 湧き上がる歓声は、幼き心に勇気を灯す。
 ずっと楽しみにしていたんだと、諦めかけていた瞳に星が瞬く。
 母と呼ばれた女は子の頭を撫で顔を上げる。
 不安を祓われた眼で、舞い終え紅き鬼面を手に凛と立つ巫女を見た。
「そうね……あの人達がいるならきっと」

 窮地はいつだって、彼等が塗り替えていく。
大成功 🔵🔵🔵