神信の心の先の破滅を止めて(作者 長野聖夜
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#アックス&ウィザーズ  #猟書家の侵攻  #猟書家  #異端神官ウィルオーグ  #パラディン 


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 ――ノウリッジ。
 知識は人の行く先に光を照らすもの、と説く者達と知識は蓄え、徒に広めてはならぬと説く者達の其々の想いが交差するその街の中心にあるとある教会。
 その教会の祭壇において……その男は、高々とその両手を掲げていた。
「ノウリッジの知識神への篤き信仰を抱く者達よ! 今こそ、我等が神を蘇らせる時!」
 その男の煽動に煽られる様に。
 教会……年に何度か、知識神と其れに仕える龍達への奉納祭を開くことの出来るその場所に集まった街人達が、一斉にオオオオオッ! と雄叫びを上げる。
(「……お前達の求める其々が辿り着く道の果ては異なれども、『知識』に対する貪欲な想いはどちらも同じ」)
 熱狂の雄叫びを上げる愚民達を嘲笑しながら、男は心の奥底でそうほくそ笑み。
 その両手を掲げて、その手に抱く闇を重ね合わせた。
 重ね合わされた闇のその先から生まれ出でたのは、一体の龍。
 ――人々の『知識欲』の光と影を司る龍にして、偽神たるその存在。
(「さて……始めようか」)
 世界の終わりを奏でる漆黒の龍の咆哮と、民達の熱狂の声を聞きながら。
 その男は、高らかな笑い声を上げた。


 時、同じくして。
 一人の若者が、ノウリッジの街を訪れていた。
 この街の中央に起きている異変……収束していく闇と怨念の気配に気がつき、彼は思わず唇を噛み締める。
「間に合わなかったか……!」
 あの方……エギュレ信仰の始祖、ウィルオーグ様が人々の知識を求める心に付けいり、偽神を蘇らせるその儀式の完成に。
「だが……今ならまだ、間に合う筈だ……!」
 かの偽神がこの世界を闇に覆う、その前に。
 知識の光と闇……其れを巧妙に纏め上げるその存在を討ち果たすことが。
「急がねば……!」
 そう願い、若者……アランは教会へと向かう。

 ――堕ちた偉大なる始祖の悪行を止めるために。


「偽神が復活しましたか……止める必要がありますね」
 グリモアベースの片隅で。
 自らの目前に見えた事件に気がついたフィーナ・エメラルディア(フェアリーの精霊術士・f31642)がそう呟いて息を吐く。
 それからフィーナは、皆さん、と穏やかな声音で呼びかけた。
「アックス&ウイザーズにあるノウリッジと呼ばれる街で、幹部猟書家、『異端神官ウィルオーグ』が出現し、怨念と闇に凝り固まった邪龍であり、偽神である存在を蘇らせる事件を予知しました」
 ウィルオーグによって、既にノウリッジの人々は洗脳されてしまっている。
 元々知識を尊ぶ多くの学者であり聖職者でもある者達によって構成された街であるが故に、知識神の神官が訪れ、その歪んだ叡智を授けられたことによって、街の人達は一斉に洗脳されてしまい、何の疑義も挟むこと無く、偽神を蘇らせてしまったらしい。
「ですが知識を悪用されることを望まぬ知識神エギュレ様は神託を下し、アラン君と言う名の聖騎士を既にその現場に向かわせております。皆さんには、このアラン君と共に偽神を討伐後、今回の事件の元凶である幹部猟書家を討ち果たして欲しいのです」
 知識神の神託を受けた聖騎士達は、歪んだ知識によって生み出された偽神の力を自らに引き寄せる能力を持つ。
 彼と協力しなければ、恐らく偽神を撃退することは不可能でしょう、と沈痛そうにフィーナは軽く頭を横に振った。
「でも、皆さんであればきっと出来る筈です」
 そうたおやかに微笑みながら、小さき妖精は静かに頷く。
「私に出来ることは、皆さんをその地に転送する程度の些細な事です。ですがその地に辿り着けば、皆さんにならこの事件を解決できると私は信じています」
 ――だから。
「どうか、皆さんの無事の帰還を心よりお待ちしておりますね」
 おっとりとした微笑みを浮かべて。
 フィーナがそう呟くとほぼ同時に、猟兵達はグリモアベースから姿を消していた。


長野聖夜
 ――その闇を祓うために。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 今回は猟書家幹部シナリオを一本お送り致します。
 概要はOPの通り。
 今回は下記条件を満たす事で、プレイングボーナスを得る事が出来ます。
 プレイングボーナス……アラン(パラディン)と共闘する。
 アランは下記の様な20代位の生真面目な聖騎士です。
 使用ユーベルコードは、『無敵城塞』となります。
 ただ、一人で当ての無い放浪の旅を続けていた冒険者故か、あまり他人に心を開く様な事はありません。
 如何にして彼の協力を取り付けるのかもポイントとなります。
 また、偽神は教会に現れています。
 此処に街の人々も集まっていますが、基本的に偽神は、『無敵城塞』を使用したアランを狙うので、流れ弾だけ気をつけておけば恐らく死人は出ないでしょう。

 第1章のプレイング受付期間及びリプレイ執筆期間は下記です。
 プレイング受付期間:1月8日(金)8時31分以降~1月9日(土)一杯迄。
 リプレイ執筆期間:1月10日(日)~1月11日(月)一杯迄。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 ボス戦 『暗黒竜アジ・ダハーカの思念体』

POW ●神竜解放
【自身の生命エネルギーを代償に 】【自身の拘束具と封印を解除し】【一時的に完全体と同等の力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD ●邪眼覚醒
自身の【封じられた右眼 】が輝く間、【物理攻撃時】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ ●暗黒竜の覇気
自身の【翼 】から【背筋も凍りつくような覇気】を放出し、戦場内全ての【敵に掛かった強化効果】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊木・ましろです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎

『フェアリーランド』の壺の中から風/火/光の精霊、聖霊、月霊、戦乙女、天使を呼んで“七色金平糖”を配って『クリスタライズ』で姿を隠して『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃をして『エレメント・セイント・ティファーナ』でWIZを強化させて『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔で避けて敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させます♪
『聖精月天飛翔』でWIZを更に強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます☆
怪我人を『祝聖嬢なる光輝精』で治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します♪

「邪黒に清浄と祈祷で還れ☆」


ウィリアム・バークリー
アランさんに接する時は「礼儀作法」を心得て。
こんにちは。聖騎士のアランさんですね。ぼくらも目的を同じくする者です。共にノウリッジの街を救いましょう。

グリフォンの『ビーク』に「騎乗」して、「空中戦」を挑みます。
「高速詠唱」複数属性の「属性攻撃」「範囲攻撃」のChaostic Worldで、竜の翼を打ち破りましょう。
飛ばれると何かと迷惑ですからね。竜が飛べなくなれば、それこそ一方的な爆撃が出来るんですが。

竜が弱り始めたら『ビーク』に突撃を命じ、嘴と鉤爪でかすめる攻撃をさせた後、ぼくもルーンスラッシュで一太刀加えます。

暗黒竜が偽神とは、つくづく歪みきっていますね。早く討滅して街の人たちを救わなきゃ。


豊水・晶
欲深いものは身を亡ぼすといいますが、本当に欲と信仰が絡むと厄介ですね。なんせ神に肯定されるのですから、欲が膨れ上がってしまいます。これは、しっかりと始末をつけねばなりませんね。
戦いに協力してくれるアランさんでしたか。冒険者らしいので少し強引ですが酒場でうっかり粗相をして、部屋に連れ込んで話を聞いた後、膝枕と藍のもふもふでもあれば墜とせそうな気がします。
戦闘に関しては、UC【スイセン・リュウノアギト】でぼこぼこにします。慈悲はありません。
その他絡みやアドリブは自由にしていただいて大丈夫です。


神宮時・蒼
…まさか、竜が、出てくるとは、思っても、いません、でしたが…
…では、参りましょう、か

【WIZ】
何とも、禍々しい覇気、ですね
…アラン様、こんな、小娘と、共闘、するのは、抵抗が、ある、でしょう、けれど。…今は、一刻を、争う、事態。…ボクの事は、ただの、武器、とでも、思って、いただければ、結構、です
…助けたい、気持ちだけは、一緒、なの、で…

状況を見ながら「結界術」でアラン様を護りながら、攻撃の機会を伺います
相手の攻撃が止んだり、隙が生まれれば、勝機
「全力魔法」「高速詠唱」「属性攻撃」で光を纏わせた白花を降らせましょう
「浄化」の祈りも添えて、おやすみなさい、偽物の神様…


彩瑠・理恵
偽神ですか。この世界でドラゴンを神に据えるのは大変なのでは?
あぁ、リエ、そんなに主張しなくてもすぐに代わりますよ
ではダークネスカードを使い、【六六六人衆への闇堕ち(ダークネス・ロクロクロク)】で、闇堕ちしてリエに代わります

偽神、ハハッ!殺しがいがありそうな敵で嬉しいわ!
鮮血槍と鮮血の影業を六六六人衆の殺害の本能と思考で振るって、偽神アジ・ダハーカを殺害する為に一手一手追い詰めていくわ
偽神が右目を輝かせたら、素早く下がってアランの後ろに回って『無敵城塞』で盾にさせてもらうわ
段々理性を失ってダークネス六六六人衆らしくなっていくけど、だからこそ素直にアランを盾として利用することに躊躇わないわ


司・千尋
連携、アドリブ可

洗脳系は面倒だよなぁ…


今回は防御優先
アランに協力要請してみよう
敵の敵は味方って言うだろ?
偽神をどうにかしたいっていうのは同じだし
目的達成まで手、組まない?

敵はお前を狙うみたいだから
街人が巻き込まれない、守りやすそうな場所に立っててくれる?
俺が必ず守ってやるよ


攻防は基本的に『子虚烏有』を使う
範囲内に敵が入ったら即発動
範囲外なら位置調整
近接や投擲等の武器も使い
範囲攻撃や2回攻撃など手数で補う


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
アランや街人への攻撃は最優先で防ぐ


文月・統哉
冒険者としてアランに協力を申し出る

俺はエギュレ様の教えを知らない
でも貴方は天啓を受ける程に得の高いパラディンだ
これもまた神の導きであるのなら
今ここで何を信じ何をなすべきか
貴方はもう分かっているのでは?
俺は貴方を信じるよ
協力させて欲しい

意志を貫くには盾だけでなく
時には刃も必要となる
貴方が盾であるのなら
俺達が刃となるよ
偽神を倒し首謀者の悪行を止めて人々を助けたい
その想いは同じだから

アランや仲間と連携
洗脳された人々が戦場に出ないよう
流れ弾で被害が出ないよう注意

ワイヤーを駆使しての空中戦
攻撃と代償を見切りつつ
残像のフェイントで撹乱して
敵の体勢を崩して宵月夜
部位破壊で翼を斬り落とし
無敵城塞の無効化を防ぐ


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
成功数過多なら却下可

偽神も猟書家も、斬り倒すのみ

アランには共闘申し出
俺らはあの暗黒竜と、あれを蘇らせるために人々を洗脳した輩を倒しに来た
今、この場で目的は一致しているはずだ
信じられないなら、俺らの行動を見て信に値するか否か見極めろ

先に翼を斬り落とす方が良さげか
指定UC発動
「闇に紛れる」+高速移動で姿を隠しつつ背後に回り込み
翼のみを狙い「切り込み、2回攻撃、怪力」+衝撃波で一気に斬り落とす
隙あらば右目に投擲用ナイフを「投擲」し潰したいが…難しいか?

反撃は「見切り、武器受け、オーラ防御」で黒剣受けか濃密なオーラを展開し逸らす
万が一街の人々が巻き込まれたら「かばう」優先



「……まさか、竜が、出てくるとは、思っても、いません、でしたが……」
 ――ノウリッジの中心部にある、その教会。
 そこから漏れ出る漆黒としか形容することの出来ないそれを感じ取り、無表情の中に微かな憂いを漂わせながら、神宮時・蒼が、そう、囁いている。
 その蒼の囁きに。
「欲深い者は身を亡ぼすと言いますが……」
 何処か諦観する様な空気を孕ませて。
「……本当に、欲と信仰が絡むと厄介ですね」
 と、豊水・晶が続けた。
 何やら妙な実感の伴われている其れを聞きながら、やれやれ、と言う様に肩を竦めて小さく頭を横に振り、口元に皮肉げな笑みを浮かべたのは、司・千尋。
「まあ、洗脳系は面倒だよなぁ……。特に信仰なんてものがあれば、尚更だ」
 その、千尋の呟きに。
「人は、人の心は脆い。だからこそ何かに縋り、しがみつきたくなってしまう……」
 不意に自らの周囲に現れた蒼達の姿に驚きと戸惑いと不信感を隠せぬ表情の青年……アランが独りごちる様にそう返したのにそうですね、と晶が頷き返した。
「自分達の欲が神に肯定されるのです。そうなってしまえば、欲が膨れ上がってしまうのは、当然ですか」
(「その人々の信仰を自らの力としていた私が言うのも少々おかしな話かも知れませんが」)
 喉元まで込み上げてきていたその言葉は、辛うじて飲み込んだけれども。
 と、此処で。
「この様な状況下ではありますが、改めてご挨拶致します。こんにちは。あなたがアランさん、ですね?」
 少し遅れて姿を現したウィリアム・バークリーが丁寧に一礼をしながら、今、正に教会に向かおうとしているアランに呼びかけると。
「そうだが……貴方達は何故、此処に居る? どうして、僕のことを知っている?」
 怪訝そうに頬杖をつく様な仕草を取るアランに、俺達は、と文月・統哉が告げた。
「アラン、貴方と同じ冒険者だ。まあ俺は、エギュレ様の教えを知らないけれど。それでも、貴方が知識神から天啓を受ける程に徳の高いパラディンらしいと言う噂話なら聞いたことがある。それならば、俺達がパラディンとしての貴方を噂として知っていてもおかしくないだろう?」
 その統哉の呟きに。
 何か、胡散臭い者を見る様な澄んだ光を称えた瞳で問い質すかの様に自らの周囲に現れた蒼達を見渡すアラン。
(「まあアランからすれば、ある意味で当然の反応か」)
 そもそも神託を受けていないにも関わらず、このタイミングで何故こんなにも都合良く冒険者達が姿を見せたのか……不信を抱くその気持ちは分からないでもない。
 そう、館野・敬輔が思考を巡らすその間に。
 ウィリアムがぼく達は、と話を続けた。
「あなたと目的を同じくする者です。共にノウリッジの街を救いましょう」
「そうなのよね~♪ で、ボク達は、キミが頑張っているのを応援するために、此処に来たの!」
 そう告げたのは。
 まるで下着姿と見紛うばかりの薄手のフェアリードレスに身を包み、ウィリアムの前辺りをパタパタ飛んでいる、祝聖嬢・ティファーナ。
 自らの目前に現れたティファーナの霰も無い姿に軽く目を逸らしそうになりながらも、アランがフェアリーか、と呟いていた。
(「そう言えばこの世界の者達にとって、フェアリーは冒険を助ける『旅の導き手』、ともされていたか」)
 ティファーナを見たアランを見て、敬輔が、思い出した事を内心で呟くその間に。
「ウィリアムの言う事に付け加えてやるとな」
 と、冗談とも本気ともつかない、茶目っ気の混ざった笑みを浮かべて、千尋がそうアランに話しかけていた。
「別口で、俺達には俺達の情報網があってな。その情報網から此処に偽神が出現するって情報を手に入れた。で、俺達もそいつをどうにかしたいと思ったから此処に来た、と、まあ、そんなところだ」
 そこまで告げて肩を竦め、人を食った様な笑みを浮かべる千尋。
「まっ……お前が俺達の事を信じるも信じないも自由だがな」
「別口の情報網、か……」
 ティファーナ達の姿を見やってからアランがその眉を微かに顰める。
 と、此処で。
「……アラン様」
 そう、蒼が絞り出す様に言の葉を紡いだ。
「ボク達を、信じる、のは、抵抗が、ある、でしょう、けれど。……人々を、助けたい、気持ちだけは、アラン様と、一緒、なの、です……」
 自らの一言一句を、確認する様に。
 たどたどしくそう説明する蒼に、アランがじっ、と視線を注ぐ。
「俺等はあの暗黒竜と、あれを蘇らせるために人々を洗脳した輩を倒しに来ただけだ。だから、アンタと俺達の目的と利害は一致するだろう」
 その、敬輔の呼びかけに。
「ボク達は、キミとノウリッジの人達の助けになりたいのよ☆」
 と援護射撃をするティファーナを見て、アランは軽く自らの前髪を弄くり回した。
「まっ、敵の敵は味方って言うだろ? 信じろとは言えないが、利用し合う位なら問題ない筈だぜ?」
 眉をわざとらしくピクピクと動かしながら。
 からかう様にそう告げる千尋に、アランが軽く溜息を吐く。
「貴方達が僕に手を貸すこと。其れが、貴方達にどれ程危険なことなのか、分かっているのか?」
「当然だ。でも、俺達が此処に来たのもまた神の導きだとしたら、今此処で何を信じ、何を為すべきか、貴方にももう分かっているんじゃないか?」
 その赤い瞳で、真剣にアランの眼差しを覗き込みながら。
 そう問いかける統哉に、アランが思わず口ごもる。
 その沈黙こそが今の状況と、アランの胸中を雄弁に語っていた。
 ――故に。
「……では、参りましょう、か」
 それをアランなりの肯定と受け取った蒼の呼びかけに答える様に。
 アランが教会に向かって駆け出していく其れを、敬輔達が追っていく。
 と、此処である事に気がつき、晶がああ、と合点する様に頭を振った。
(「本当はもっとゆっくり時間を掛けて墜としたかったのですが……よく考えてみればこの状況で、アランさんを酒場に連れ込む暇はありませんでしたね」)
 ともあれ、偽神に対する慈悲は無し。
 そう結論づけ。
 晶もまたアラン達の後を追って、教会へと急行するのであった。


「成程、これが偽神ですか」
 教会に辿り着き、咆哮を上げる暗黒竜の姿を認めて。
 彩瑠・理恵が、何処か疲れた様に、ぽつり、と呟いている。
 自分の中の六六六(ダークネス)人格……リエが胸中で騒いでいるのに気がつきつつも、それにしても、と理恵は頭を横に振った。
「この世界でドラゴンを神に据えるのは、大変なことではありませんかね?」
 その、理恵の呟きに。
「だが……現実に始祖様は、神として据えるべく行動している。これを放置すれば、その竜神によってこの地に禍が齎される。其れがエギュレ様の神託だ。ならば其れを食い止めるのは、僕の役割」
 そう答えたアランが理恵を一瞥し、暗黒竜アジ・ダハーカの方へと白き十字の刻み込まれた盾を掲げて身構えていた。
 歯を食いしばる様にして目前の邪念の塊と言うべき竜からの覇気を堪えるアランの額から零れ落ちる冷汗。
 その、うすら寒い研ぎ澄まされた、破壊の意志は……。
「……何とも、禍々しい覇気、ですね」
 として蒼にもはっきりと捉えられ、その背筋に薄ら寒い悪寒を与えていた。
 と、此処で。
 ――ピュイッ!
 ウィリアムが口笛を鳴らして其れを呼ぶ。
「ビーク!」
 そのウィリアムの呼びかけに応じる様に。
 空中に描き出された巨大な鷲の上半身とライオンの下半身の幻獣、グリフォンの姿が中央に印された方陣が描き出され、そこからグリフォン『ビーク』が顕現した。
 顕現した『ビーク』の嘶きに応じて素早くビークに跨がりながら、ウィリアムが両手を重ね合わせてすかさず詠唱を開始。
「堅き大地よ、移り行く水よ……」
『グルァァァァァァァ!』
 咆哮が、轟いた。
 その雄叫びとほぼ同時に、暗黒竜はその翼を羽ばたかせ、その背を凍てつかせんばかりの邪気と覇気の放出を、戦場全体へと広げていく。
 同時に、自らの全身を覆う様に捲かれた鎖がブチブチブチ……と音を立て破砕していき、その右目が凍える闇の様な輝きを伴った。
「偽神、ハハッ! 殺し甲斐がありそうな敵で嬉しいわ!」
 その闇に当てられる様に。
 理恵が懐から取り出した黒いカード……ダークネスカードがどす黒い闇と共に、理恵の全身を血染めに染め上げていく。
 血に染まり行く自らの体とその背に影の様に付き従う血溜まりを見て、リエは、たった今、理恵が理恵である事を捨て、六六六(ダークネス)たるリエに、その体の支配権が譲渡された事を、即座に理解。
 それから直ぐに口元に哄笑を浮かべたリエが、覇気に当てられて自らの衣服にべっとりと付着した血糊をサイキックエナジーで凝縮し、血色の槍と化させて肉薄しながら投擲する。
 投擲された槍を煩わしげに払った暗黒竜が、その口腔内に溜め込んだ漆黒のブレスを戦場全体を焼き付くさんとばかりに吐き出し、既に用の無い人々毎、教会全体を焼き払おうとするが。
「知識神エギュレよ! 今こそ我が身に御身のご加護を!」
 祈りの言の葉を朗々と紡いだアランが携えた白十字の盾を構えて、その漆黒のブレスを纏めて受け止めようとする。
 だが暗黒竜から放たれる覇気は、そんなアランの神への祈りをも断とうとし、アランの防御そのものを根こそぎ剥ぎ取ろうとしていた。
 しかし……。
「安心しろ、お前が望むなら、俺達がお前も、街人達も纏めて守ってやる」
 告げながら千尋がその両手から展開したのは、無数の鳥威。
 自らの本体でもある結詞に繋がれた鳥威が十重二十重に渡って展開され、その漆黒のブレスを真正面から受け止め、それらの威力を削ぎ取るその間に。
「皆、ボクに力を貸してね☆」
 ティファーナが祈りと共に、懐に大事そうに抱えていた壺の蓋を開いた。
 開かれた壺から飛び出してきたのは、風と、火と、光の魔力をその身に宿した精霊、聖霊、月霊、戦乙女、天使……無数の幼く愛らしい姿をした少女達。
 天真爛漫・無垢な表情を浮かべている彼女達へと、ティファーナはそ~れ! と勢いよく腰に着けていた虹色の小さな沢山の砂糖粒……金平糖をばらまき、現れた少女達に授けてその力を貸してくれる様に懇願する。
 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫……大凡七色に分類されるそれらの金平糖を其々に受け取った少女達は、ティファーナの願いと祈りを叶えるべく、ふっ、と水晶の様に透き通った透明色と化して姿を消した。
(「何かを仕掛けるつもりの様だな」)
 ティファーナの金平糖が一粒、そう思っていた敬輔の掌に、偶然にも落ちてくる。
 その偶然落ちてきた金平糖とティファーナの祈りが一つになり、敬輔の姿もまた、突き刺さる様な漆黒の覇気に溶け込む様に消えていった。
 ――お兄ちゃん。
 ――これは……。
(「ああ……分かっているさ」)
 定めるべき狙いが、何処にあるのかは。
(「偽神も猟書家も、斬り倒すのみだ」)
『彼女』達の願いと、自らの闘争心を闇衣の如く身に纏い。
 敬輔が円を描くかの様に走りながら、赤黒く刀身が光輝く黒剣を撥ね上げる、その黒剣に纏われた白き靄が斬撃の衝撃波と化して、暗黒竜の片翼に迫っていった。
「皆さん、先ずは小手調べ、と言ったところでしょうか? でしたら、私達は正面から引き付けた方が良さそうですね、統哉さん、蒼さん」
 そう、告げながら。
 その刀身が、水纏う水晶の様に透き通った美しき双剣、瑞玻璃剣をダラリと垂れ下げる様に構えた晶の呼びかけに「……はい」、と蒼がか細く短い声で、統哉が「ああ」、とその肩に巨大な漆黒の大鎌『宵』を構え、確固たる意志と共に頷いている。
『……何にも、染まらぬ、誠実なる、白』
 ポツリ、ポツリ、と。
 蒼が暗黒竜の眼前で、月の夜に刹那の瞬きを示す月下美人の如き純白にして妖艶なる白き輝きを伴った杖を、トン、と大地に突き立てて詠唱を開始。
 更に左手を扇ぐ様に振るって、無数の純白の花弁を吹雪かせ、千尋の鳥威に重ね合わせる様に纏わせ、アランに向かう覇気を食い止めんとする。
 その間に統哉がクロネコワイヤーを射出。
 ワイヤーの先端の猫の爪型フックが、教会の天井の梁を掴み取り、そのまま統哉を一気に空中の高みに押し上げていた。
 その勢いを殺さぬままに、『宵』を大きく統哉が振りかぶりながら。
「貴方が、盾であるのならば」
 千尋の鳥威と蒼の生み落とした結界術に守られる様にして、街人達を極力巻き添えにせぬ位置取りを選ぶアランに向けて。
 月下美人の仄かな香りに鼻腔を擽られながら空中を蹴る様にして暗黒竜に瞬く間に迫りつつ、統哉が続けた。
「俺達が、貴方の刃になるよ」
 告げながら、暁闇を払う月光の輝きを刃先に伴った『宵』を袈裟に一閃。
 解き放たれた月光の軌跡を纏った『宵』の一閃が、敬輔の牽制代わりに放たれていた衝撃波に傷つけられた翼に迫る。
『ガァァァァァァッ!』
 させじ、とばかりに、右眼を怒らせる様に輝かせた暗黒竜の右の鉤爪が、漆黒の血を滴らせながら統哉の袈裟の一撃を受け止めた。
 その鉤爪に塗りたくられる様に零れ落ちた漆黒の血が統哉の一閃を滑らせて、その翼を叩き斬るのを防いでいた。
(「流血の代償をこう使用してくるか……。これは……」)
 一合で得る事の出来た情報を精査し、次の一手を考え始める統哉に合わせる様に。
「参りますよ」
 晶が双剣の内の右の瑞玻璃剣を、横一文字に振るう。
 振るわれた晶の一閃が、続けざまに統哉を狙おうとしていた暗黒竜の左腕に食い込み、流血を加速させた。
「好きになんて……させませんから」
 そのまま、左の瑞玻璃剣を唐竹割りに振り下ろす。
 水晶の如き煌めきと輝きを伴って放たれたその一閃にして二閃足りうるそれが、その左腕に十文字の傷を付け、暗黒竜を僅かに怯ませた。
「爆ぜる火よ、駆け抜ける風よ……千尋さん!」
 僅かに生まれたその隙を、『ビーク』に騎乗しながら見て取ったウィリアムが詠唱を続けつつそう叫べば。
「ああ、分かっているぜ。消え失せろ」
 千尋がその右腕の周囲を浮遊していた850本の刀身に複雑な幾何学紋様の描き出された光剣の内、350本を解き放っていた。
 解き放たれた350本の光剣が、正しく矢の如き勢いで暗黒竜の全身に迫り次々にその身に突き立てられ、その体を少しずつ分解していく。
 分解され体の彼方此方に刺傷を作る暗黒竜に向けて。
「まだ、まだだよ♪ 『歌唱う、我らが精霊・聖霊・月霊よ♪ 歌い、踊り、唄い、舞踏れ♪ 素ノ源ヨリ来タレリ……♪』」
 周囲に溶け込む様に姿を消していたティファーナとティファーナに従う、全部で465体の風・光・火属性の各精霊・聖霊・月霊が暗黒竜に向けて殺到した。
 光の精霊・聖霊・月霊が、漆黒に包み込まれたその闇を晴らす様に瞬く光となって暗黒竜の翼から解き放たれている『覇気』を払い。
 風の精霊・聖霊・月霊が火の精霊・聖霊・月霊達を煽る様に風を吹き付け。
 そして、火の精霊・聖霊・月霊達が、暗黒竜を焼き払うべく魔法の矢の如く殺到し、ティファーナの歌声に合わせる様に着弾し、その身を焼き払う。
『グルァァァァァァァァァァッ?!』
「ハハハハハハッ!」
 苦悶の咆哮を上げる暗黒竜にリエが嘲笑と共に暗黒竜から滴り落ちる漆黒の流血と、自らの体を朱に染め上げているリエ自身について回る血溜まりを絡め合わせて、無数の影刃を生み出し、暗黒竜の体中に裂傷を作り上げていった。
(「一手一手、確実にボクの手で追い詰めてやるわ……!」)
 嘲弄と共に内心でそう叫びながら、続けざまに血溜まりから生成した黒と赤の血液の入り混ざった禍々しき鮮血槍を空中へと展開、一斉に発射するリエ。
 放たれた鮮血槍の内の2本は流血を続ける漆黒の尻尾で煩わしげに払い落とす暗黒竜だったが、その2本をフェイクに解き放った1本の槍が、光り輝く右眼に迫り、吸い込まれる様に突き刺さる。
『グガァッ!?』
 悲鳴の様な雄叫びと共に狂った様に尻尾を振り回し、肉薄していたリエに叩き付けようとする暗黒竜。
 だが、リエはその表面にベタ付いている漆黒の鮮血の滑りを利用する様に朱雀門高校女子制服を翻して躱しながら、千尋の鳥威と蒼の月下美人の花弁の結界に覇気を薄められ、自らの力……無敵城塞を起動させたアランの影に隠れる様にして、その攻撃を受け止めさせた。
 蒼の月下美人の花弁の結界にその威力を削ぎ落され、千尋の無数に展開した十重二十重の鳥威によって勢いの弱まったそれは、アランの掲げる白十字の盾とアラン自身の肉体に傷一つつける事さえ叶わない。
「……アラン様」
 微かに気がかりそうな声調を交えて呼び掛ける蒼に、アランが大丈夫、と優しく微笑み返した。
「此処迄戦って来てくれているんだ。君達の事、信じさせて貰う様にするよ」
「……こんな、小娘で、申し訳、ありません、が……はい。……ならば、ボクは、アラン様の、ただの、武器、と、なりましょう」
 淡々と、たどたどしくそう頷いて。
 蒼が再び詠唱に戻る。
「『……何にも、染まる、無垢なる、白』」
 蒼の、その詠唱に応じる様に。
 ふわり、と上衣とスカートが風を孕んで舞う様に宙に靡いた。
 その向こうに見えた蒼の足元には、月下美人を思わせる紋が描き出されている。
 その、蝶の様に蒼の着衣を靡かせる風に煽られる様に。
 ウィリアムの『ビーク』が嘶きを発するのに頷つつ、ウィリアムも詠唱を続けた。
『留める氷よ、迅き雷よ……!』
「グルゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
 ウィリアムの詠唱を完成させてはならぬ、とばかりに傷だらけの暗黒竜がアランと千尋をも巻き添えにして、翼を羽ばたかせて暴風を呼び起こし、そのままウィリアムとワイヤーアクションで空中を飛び回る統哉を纏めて叩き落そうとするが。
「おおっと、キミの好きにはさせないよ!」
 ティファーナがすかさず指を鳴らし自らが呼び出した戦乙女と一体化する。
 其は、精霊であり、聖霊であり、月霊であり、英霊であり、天使でもある妖精。
『精・聖・月・天』の力を纏ったティファーナが、自らの壺から呼び出した戦乙女の意志に従い、ウィリアムと蒼の詠唱の間に背後を取る様に回り込んでいた敬輔の隣に姿を現し、その指を暗黒竜に突き付けた。
 突きつけられた指先に呼応する様に天空から降り注いだ光の柱が、上空から暗黒竜の背を撃ち抜いた、その刹那。
「その翼……叩き切ってやる!」
 深淵に溶け込む様に闇に沈んでいた敬輔が姿を現し、白き靄を纏った黒剣を逆手に持ち替えてその背の翼の付け根に振り下ろす。
 振り下ろされた赤黒い刀身が、ティファーナの光の柱に穿たれた傷を貫き、その中で全方位に向けて放出された衝撃波がその体を内側から断ち切り、その肉と暗黒竜の体を構成する『核』を砕いていく。
 背後から砕かれたその体に口から体液をぶちまけつつ苦悶の咆哮を上げる暗黒竜を、晶は静かな眼差しで見つめながら、瑞玻璃剣の柄頭を接合させた。
「あなたの様な罪深き偽神……神騙りに与えるべき慈悲はありません」
 ただ、淡々とそう呟き。
 ティファーナと敬輔にその背を穿たれ重傷を負った暗黒竜に向かって直進し、瑞玻璃杵をその腹部に向けて突き出す晶。
 突き出された瑞玻璃杵のその切っ先が暗黒竜の体に突き立ち、腸を切り裂き、その体に罅を入らせていく。
「ハハハハハハハッ! バラバラに、バラバラになっちゃえー!」
 罅の入ったその体を見たリエが哄笑と共に滴り落ちる血を自らの血だまりと融合して更に無数の影の刃を生み出し、更にその傷を穿つ、その間に。
「さて……翼をやるなら今の内ですよ、皆さん」
 晶が、分かっているかの様に、そう呼びかけた。
 その呼びかけに応じたのは。
「……はいっ! 『万物照らす光よ、遍く喰らう闇よ。我が敵を虚無に還せ!』 Chaostic World!」
 黄土・青・赤・緑・水色・黄・白・黒……全部で8色の魔法陣を周囲に編み上げ、それを起動させたウィリアム。
 その魔法の始まりは、黄土色の魔法陣から放たれた……地属性の子供の頭位の大きさの弾丸だ。
 それが右翼に着弾し、暗黒竜が呻くその間にも、青から水属性の、赤から火属性の、緑から風属性の、水色から氷属性の、黄から雷属性の、白から光属性の、そして黒から闇属性の弾丸が絶え間なく降り注ぎ、その右翼を穿つ。
『グルァァァァッ?!』
(「このまま飛べなくなってしまえば、後は一方的に爆撃を浴びせかけるだけになりますから……!」)
 そのまま魔力球を弾幕にして絶え間なく叩きつけるウィリアムに続く様に。
「……斬る!」
 クロネコワイヤーで天井の梁に貼りつく様に両足を乗せていた統哉が天井の梁を蹴って慣性に任せて『宵』を振り下ろした。
 振り下ろされた『宵』による一太刀が、その左翼を叩き切らんと暗黒竜の至近に迫るが、暗黒竜がそれに気が付き、弱まりつつある覇気を叩きつけんと統哉にその翼を翻そうとする。
 ――だが。
「ギリギリだね♪ そこだ~っ!」
 叫びと共に、ティファーナが自らの周囲に浮かべていた、満月・半月・三日月・新月……月の満ち欠けを表す月霊達をエレメンタルロッドで誘導して呼び出し、暗黒竜に向けて叩きつけた。
 新月……漆黒の中にあって見えぬ月は、やがて三日月、半月、満月へと姿を変えて、暗黒竜の左翼を締め上げる様に覆い尽くしていく。
『ガルアッ?!』
 驚愕冷めやらぬ暗黒竜に、統哉の『宵』が、ティファーナの月の満ち欠けの光を受けて月光の煌めきを一段と増させて、弧を描く様に振るわれた。
 月光の輝きと共に放たれた『宵』の一閃が、暗黒竜の左翼の中央を満月の如き形にくりぬいた、その瞬間。
「今が、勝機、です。『……舞え、吹き荒れろ』」
 蒼が静かにそう言の葉を紡ぎ、月の夜に瞬く月下香で描いた陣術……月下美人の魔法陣を、暗黒竜に向けて突き付けていた。
 暗黒竜に突き付けられた月の夜に瞬く月下香の先端が淡く白く光り輝き、月光の中で美しく咲き誇る純白にして、儚き美……そして強い意志と言う花言葉を持つその白花を、天空より降り注がせる。
 それは……光纏いし、月下の白花吹雪。
 浄化の意味合いの籠められた月花ノ吹雪が暗黒竜に纏わりつき、そこに千尋が手を突きつけた。
「こいつは……一気に攻めたほうが楽そうだな」
 そう呟くと同時に、防御用にと残しておいた500本の光剣を叩きつける様に解き放つ千尋。
 千尋の腕から放たれたその刀身に幾何学文様の描かれた残り500本の光剣は、月花ノ吹雪に悶える暗黒竜の体を、片端から分解していき。
「ビーク! 突撃です!」
 ウィリアムが自らの騎乗するビークに呼び掛けるや否やビークが咆哮と共に肉薄し、そのくちばしと鍵爪で残された暗黒竜の体を抉り、啄み。
 ――そして。
「断ち切れ……『スプラッシュ!』」
 すかさず抜剣したルーンソード『スプラッシュ』に集わせた氷の精霊達による袈裟の一閃をウィリアムが放ち、分解されつつある暗黒竜の残された肉と体を切り裂く。
 そこに。
「邪国に、清浄と祈祷で還れ☆」
 ティファーナがパチン、とウインクしながら。
『神罰なる天罰の刺突を!☆彡』」
 詠唱と共に自らの周囲に神々しい輝きを伴う聖なる槍、鉾、矢、杭を召喚。
 それらを無数の弾丸の如く暗黒竜に突き立てていき、それが、無数の神聖なる神罰と化して、暗黒竜を磔刑に処したところに……。
「此処迄の様ですね」
 晶が止めとばかりにそう告げて、暗黒竜の胸に、瑞玻璃杵を突き立てた。
 ――シンシン、シンシン。
 絶える事無く降り続ける白花ノ吹雪。
 吹雪く風にスカートと上着が靡くに任せ、自分と暗黒竜を隔てるそれを抑揚の無い眼差しで見つめていた蒼が、ふと、祈る様に静かに目を瞑り、淡々と、しかし、何処か優しい声音で、暗黒竜に呼び掛ける。
「おやすみなさい、偽物の神様……」
 その、蒼の子守歌の様に透き通った『白』と形容される声を聞き。
 吹雪く白花の向こうに見える、アランと彼を守る千尋、そして蒼に憎悪の眼光で貫きながら。
 無念の化身とも言うべき、暗黒竜アジ・ダハーカが、月下美人の如き白花の花弁と化して、消えていった。


「……終わりましたか」
 カチャリ、と瑞玻璃杵の連結を外して、双剣、瑞玻璃剣に戻しつつも、ダラリと力を抜いた姿勢で構えたままに。
 深呼吸を一つついた晶の其れに、そうね、とティファーナが頷き周囲を見回す。
 周囲に蹲る様に倒れている街人達の上に被せられた無数の千尋の鳥威。
 更には背に強烈な一撃を放った敬輔が流れ弾に街人達が当たらぬよう構え、更に白十字の盾を油断なく構えて真っ直ぐに祭壇を見つめているアランの姿を認めて、ティファーナはあわわ、と思わず両手で口を覆った。
「怪我人はいる!? 大丈夫よ、キミ達は直ぐにボクが治すから!」
 そう告げたティファーナが歌う様に呪を紡ぐ。
『精霊、聖霊、英霊、月霊よ、癒し慈しみ輩を治癒し蘇生を……☆』
 そのティファーナの呼びかけに応じた精霊、聖霊、英霊、月霊達がわっ、と一斉に周囲の人々の方へと散開していくのを見つめたティファーナが、自らの裡に眠る治癒の光輝を解放し、精霊、聖霊、英霊、月霊達を通じて傷ついた人々……特に街人達を守り続けたアランと千尋……の傷を癒し、更に清らかな歌声で、精霊・聖霊達と共に歌い始めた。
 美しきその歌声に聞き惚れた街人達の心と狂騒を、ティファーナが癒すその間に。
「さて……一先ず偽神を倒すことは出来ましたが」
 リエの力を解除して、理恵に戻った理恵が小さく溜息を一つ漏らす。
 その視線は、険しい表情の儘にあの暗黒竜が守っていた祭壇へと視線を向けているアランと、花弁と化して散っていった偽神への手向けの祈りを手早く捧げた蒼の方へと向けられていた。
「アラン。……この祭壇の先、なのか?」
 アランの想いや、蒼の想いを慮る様に。
 クロネコワイヤーを巻き取って地上に降り立った統哉がそうアランに問いかけるのにアランが無言で首肯する。
 その首肯に、どれ程の想いが籠められているのだろう。
「暗黒竜を偽神とする。これ程までに歪みきった話もありませんよね。一先ず、暗黒竜の討滅は完了しましたが、この先にいるであろう猟書家も討滅して、街の人達を完全に救わないと」
 同じく『ビーク』から下馬し、『スプラッシュ』を納剣したウィリアムの呟きに、そうですね、と晶が頷いた。
 その肩に止まっていたフワフワした獣、藍が其れに応じる様に一鳴きするのに思わず微笑み、軽くそんな藍をモフリ、と優しく揉みほぐす。
 千尋がそんな晶の様子に口元に思わず微苦笑を綻ばせつつ、さて、と些かわざとらしく咳払いを一つ。
「大方この祭壇の下に隠し階段が……とかそう言うことなんだろうな。で、そこに今回の事件の元凶がいる、と」
 何処か揶揄する様な千尋の其れに。
「ああ……そうだ」
 アランは特に気分を害した様子も無く、そう首肯したが、それだけに彼なりの計り知れない苦悩の様はあるのだろうなと言う思考が、敬輔の脳裏を微かに過ぎった。
 或いは其れは、『彼女』達の想いだろうか。
(「まあ、どちらでも良い、か」)
 いずれにせよ、進まねばならぬ現実は、何一つ変わりないのだから。
 そう結論づけた敬輔が、ティファーナによって傷を癒されたアラン達の後に続いて、ゆっくりと祭壇に近付いていく。
 祭壇の近くに辿り着いたティファーナが、あっ! と思わず小さな声を上げた。
「皆、ここに怪しい所があるよ!」
「怪しい所……ですか」
 ティファーナの呼びかけに晶が反応し、ティファーナが指差した先を見つめる。
 まるで何かを隠すかの様な蓋と化している其れを晶が脇にどけてみると……。
「正しく隠し階段、か」
 成程、と納得した様に頷く統哉にアランがそうだね、と頷き返した。
 『彼』は恐らく、この先にいるのであろう。
 その確信と、共に。
 ――だから。
「……参りましょう、アラン様……」
 背を押す様にそう紡いだ蒼の言葉に頷いて。
 アランが先行する様にその階段を降り、統哉達が其れに続く。
 まるで棺桶の中に足を踏み入れる様な……冷たくて凍える様な感覚を覚えるその通路の、その先へ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴


第2章 ボス戦 『異端神官ウィルオーグ』

POW ●第一実験・信仰に反する行動の規制
【論文】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD ●第二実験・神罰の具現化
【自身や偽神に敵意】を向けた対象に、【天から降る雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ ●第三実験・反教存在の社会的排除
【名前を奪う呪詛】を籠めた【蝶の形をした黒い精霊】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【縁の品や周囲からの記憶など、存在痕跡】のみを攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠クシナ・イリオムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


*業務連絡:次回プレイング受付期間及びリプレイ執筆期間は下記となります。
プレイング受付期間:1月15日(金)8時31分以降~1月16日(土)一杯迄。
リプレイ執筆期間:1月17日(日)~1月18日(月)一杯迄。
何卒、宜しくお願い申し上げます*

 ――教会の隠し通路の、その先で。
 昏き闇に包み込まれた、恐らくこの儀式のためだけに作り上げられたその祭壇の最奥部に、『彼』はいた。
「……ふむ。偽神、アジ・ダハーカ様は敗れ去ったか。不甲斐ない話だ」
 然程残念そうで無い声音と。
 採点したテストの点数に不満を抱く教師の様な表情で『彼』……『異端神官ウィルオーグ』が、そう呟いている。
 その不甲斐ない生徒を見つめる教師の様なウィルオーグの表情に、アランがウィルオーグ様、と沈痛な声音で問いかけていた。
「何故……知識神エギュレ様に仕え、エギュレ様信仰の祖となった貴方が、この様な汚濁に塗れて蘇ってしまったのですか……?」
 そう問いかけるアランの其れに。
 ふむ、と軽くその髭を扱くウィルオーグ。
「その問いは、あまりにも無意味だな。そもそも、此処にお前が冒険者……否、猟兵達と共に来た段階で、既に私の新たな実験は、半ば成功に至っている」
 そう何気なく、告げられたウィルオーグの其れに。
「えっ……?」
 アランが震えと戦慄を感じながら問いかけると、ウィルオーグは、淡々と、この祭壇の地面に描かれた漆黒の魔法陣を指差した。
「知識は探求され、貪欲に吸収され、そして後生に伝えられていくべきものだ。私はただ、知識神様より授かった新たな知識をこの世界に遍く広げ、そして人々に伝えてゆくべく行動したに過ぎない。その為にはアラン、お前の様な我等が知識神に仕える聖騎士と、強き者達……猟兵と言う贄が必要だった。ただ……それだけの事よ」
 歪んだ愉悦を交えて淡々と自らが抱える真実を語るウィルオーグに、貴様……!  と、アランが怒りにその全身を震わせた。
「知識神エギュレ様は、その様な事のために、貴方様に知識を与えた訳ではない……! 例え、我等が知識神エギュレ様の信仰を広めた偉大なる方であったとしても、知識神エギュレ様を愚弄することは許さんぞ……!」
 意気軒昂なアランのその姿に。
 出来の良い生徒を見た教師の様な表情を浮かべてウィルオーグがふむ、と頷いた。
「中々、威勢の良い聖騎士だな。お前の様な者こそ、アジ・ダハーカ様以上に優れた神を作る生贄……その『核』とするのに相応しい」
 猟兵の生贄を血肉とし。
 アランを、この儀式の核とする。
 それは、先の偽神より更に強い偽神を作るための、格好の材料だ。
「だが……今の儘では、大人しく私に従ってはくれぬであろうな。ならばお前達は、矯正しなければなるまい」
 自ら贄となる事を望む、人形に。
 そう結論付けたウィルオーグが、自らの足下に散らばっている紙片……論文を拾い上げて、ゆっくりと立ち上がる。

 ――自らの真の目的を、果たすために。

*第2章にも引き続きアランは参戦致します。
*今回は一般人の被害への考慮は、場所が移動しているので不要です。

 ――それでは、良き戦いを。
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎

「貴方ですか…」笑顔の中に静かな闘志を燃やし『フェアリーランド』の壺の中から風/火/生命の精霊、聖霊、月霊、戦乙女、天使、死神を呼んで「お願いね☆」と“七色金平糖”を配って『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃を仕掛け『エレメント・セイント・ティファーナ』でWIZ>SPDを強化し『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避けて敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化をはかります♪
『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します☆
『聖精月天飛翔』でWIZを強化し『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で攻撃をする


ウィリアム・バークリー
信仰のことはよく分かりませんが、ご老体が世界の敵だということはよく分かります。この場で討滅させてもらいますよ。

Active Ice Wallを行動の邪魔にならない程度に生みだし、「盾受け」をさせて異端神官の攻撃を防ぎます。今回は頭上にも展開した方がよさそうですね。
ぼく自身は、アランさんの側に控えていましょう。

氷塊にはReflect Ice Wallをかけておき、ある程度攻撃を受けたら、ユーベルコードをウィルオーグに叩き返します。
攻め手が足りなければ、氷塊を砲弾として叩き付けます。

そろそろ決着ですね。ぼくも前へ出ます。剣を抜いて、ルーンスラッシュで袈裟斬りに切り裂きましょう。
これで終わりです。


司・千尋
連携、アドリブ可

信仰とか宗教って面倒だな…
これもまぁヒトなんだろうけど


今回も防御や仲間の援護優先
『錬成カミヤドリ』を使い
複数の紐を網状にしたり引っ掻けたりして行動の阻害を狙う

天から降る雷は鳥威で防ぐ
無理なら回避や防御する時間を稼ぐ
上からくるってわかってるから防ぎやすくて助かるぜ


基本的に攻防ともに『錬成カミヤドリ』で全方位から攻撃
敵に紐を絡めて行動の阻害を狙う
近接や投擲等の武器も使い
範囲攻撃や2回攻撃など手数で補う


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
アランへの攻撃は最優先で防ぐ


神宮時・蒼
…何とも、まあ。…とんだ、思想の、持ち主、だった、ようで…
…このように、慕って、くださる、方も、いたと、言うのに
…外道へと、堕ち果て、ましたか…

【WIZ】
…おや、貴方も、蝶を、操る、のですか…。…ボクの、蝶は、強い、ですよ
「見切り」で相手の攻撃を避けつつ、避けれない場合は「結界術」で防御姿勢
アラン様の動きも気にしておきましょう
名を奪われてもさして気にせず
本当の名前など、ボクにはありませんし
おや、名を奪われて、畏れぬ者などいませんでしたか。生憎、ボクは物なので…。
…貴方には、異質に、見えるでしょう

世の中には、理解できない事が、たくさん、あるの、ですよ
黒花狂乱ノ陣で相手を引き裂いてしまいましょう


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

貴様が持つ知識そのものに善悪はないが
知識の生かし方には善悪の概念が宿るだろ

ウィルオーグ、貴様の所業は「悪」と言わざるを得ないな
知識神も恐らくそう断じている
天啓を授かったアランがこの場にいる事こそが、何よりの証拠だ

…故に、ここで叩き切る

闇に包まれているならこちらに都合がいい
「暗視、視力」で死角となり得る場を探り
「闇に紛れる、ダッシュ」で気配を消し死角へ移動
頃合いを見て「2回攻撃、怪力、属性攻撃(聖)」+指定UCで叩き斬るのみ

天から降る雷は「オーラ防御、電撃耐性、激痛耐性」で漆黒のオーラを頭上に展開し軽減
神罰? 上等だ
どちらに知識神の加護が宿るか、根競べと行こうか


ユーフィ・バウム
蛮族のユーフィです。
アランさん、遅ればせながら助太刀しましょう
【礼儀作法】【コミュ力】を駆使し申し出
対異端神官に参戦します

格闘戦を挑みます、前はお任せを
《戦士の手》と――共に。

【ダッシュ】で近づいての【怪力】での【鎧砕き】と
肉弾戦を狙っていきます
相手の攻撃――特に「雷」には警戒し、
【見切り】、致命を避けて【電撃耐性】【オーラ防御】で凌ぐ

私に、神のことはわかりませんが
貴方が倒すべき敵であることは分かります
ゆえに、【勇気】と共に【力溜め】た打撃を振るう。
負けないッ

仲間と連携し、隙を見出して攻撃を続け
危ない仲間がいれば【かばう】ことで凌ぐ
私は頑丈です、まだまだッ
【限界突破】して勝利を。

※アドリブ歓迎


豊水・晶
神の教えを広めるというあなたの想いを否定することはしません。しかし、方法を間違えました。信仰するものがありながら、偽物の神を頂くなど信徒として言語道断どころか破門です。神の名を貶めるのであれば知識神エギュレに変わりこの私が神罰を下します。覚悟してくださいね。
UC【スイセン・リュウのアマクダリ】で攻撃します。魔法陣や研究資料など巻き込めればいいですね。技能(神罰)(切断)ものせます。
アドリブや絡みは自由にしていただいて大丈夫です。


文月・統哉
オーラ防御でアラン庇い前に出て
炎の属性攻撃で論文を焼く

刃になるって言っただろ?
俺達が支えるよ
その意志貫き通せ、アラン!

攻撃と共に情報収集
油断なく手の内見切り仲間と連携
周囲へ密かにワイヤーも張り避雷針に

一筋縄じゃいかない相手だが
だからこそ得られる事もあるだろう
アランにとっても俺達にとっても

知識の神に仕えし者か
嘗ての真摯な心もまた
彼が人生を通して知った貴重な知識の一つ
捨てられるものじゃない筈だ
例え欲望に歪んでも
全てが消えていないなら
求める何かがそこに

故に祈りの刃を

ウィルオーグという存在にとっては
この戦いも一つの断片に過ぎないのだろう
それでも
彼の遺した教えを正しく受け継ぐ者がいる事を
知って欲しいから


彩瑠・理恵
人格は六六六人衆のリエのままよ

お前が狩猟家幹部、異端神官ウィルオーグね?
くくっ、お前も殺しがいがありそうね

くっ!敵意に対する天罰、ね
回避も難しくて厄介ね
だけど、六六六人衆を舐めないことね!
敵意も殺意もなく、理由すらなく、ただ息をするように殺す
かつての六六六人衆には結構そういうタイプはいたわ、私もその域に至ればいい
仮にそこまでいかなくても、敵意も殺意もなく殺すというのは六六六人衆なら殺ってみせるわ
敵意も殺意も排除し、ただお前を殺す為に思考して、本能のままに殺してみせるわ!
アランに意識を取られたその隙に、鮮血の影業で眷属を嗾け、本命の槍で串刺してやるわ!
さぁ、慄け咎人!今宵はお前が串刺しよ!



 ウィルオーグの慢心とも言うべき其れを聞き、戦場全体に紙吹雪の如く論文をちりばめるその姿を目の辺りにしながら。
「……何とも、まあ」
と、神宮時・蒼は思わず嘆息した。
「とんだ、思想の、持ち主、だった、ようで……」
そう続けられた呟きの奥底に秘められているのは、虚無か、それとも憐れみか。
「ええ……そうですね」
 そんな蒼の胸中を知ってか知らずか。
 水晶の様に透き通ったその刀身に水龍の尾を曳く様な、水の霧を纏った双剣……瑞玻璃剣をゆっくりと持ち上げる様に構えた豊水・晶が首肯を返しながら、あなたの、とウィルオーグに向けて、静々と言葉を紡ぐ。
「『神の教えを広める』。そのあなたの想いを、否定する事はしません」
 教えが広められなければ、その神への信心は廃れ、其れを自らの力の拠所とする神々の力もまた弱まるものだ。
 ――だからこそ私は、あの時、守る事が出来ませんでした。
 自らの故郷とも言うべき、龍神信仰の栄えたその村を。
 けれども。
「あなたは、その方法を間違えたのです」
 その、晶の呼びかけに。
「私が、間違えた? 何をどう、間違えたと言うのだ?」
 怪訝そうに顔を顰めるウィルオーグに、右の瑞玻璃剣の切っ先を突きつけながら晶が続ける。
「信仰するものがありながら、偽物の神を頂く等と言う事です。それは、信徒として言語道断どころか……破門されるのが、当然でしょう」
 その、晶の呼びかけに。
 ククッ……と喉元からくぐもった笑い声をウィルオーグは上げた。
「我等が知識神は、寛容なる神だ。私が他の神を神として頂く事をお許しにならぬ筈が無い。ましてや、それが人々の救世の道へと繋がるのであれば、尚更のことだ」
「救世の道、だと?」
 怪訝そうに眉を顰めて、そう問いかけたのは館野・敬輔。
 敬輔の其れに、そうだ、とウィルオーグが首肯する。
「私の広範なる知識を元に、この地に偽神を顕現させる。人はそれだけの力を、知識を持つ事が出来、それを灯火に世界を照らすことが出来る。その真実を伝えることこそ、私の選んだ救世の道。故に私は、この力を人々に広げていくことを望む。それこそが、私がこの地に生み落とされた使命にして、神意」
「……貴様の知識の生かし方。そして、この地の人々の命と意識を『贄』としてあの偽神を呼び出した。その様な貴様の所業が『善』である筈が無い。知識神も恐らくそう断じている。だからこそ、天啓を授かったアランが、この場にいるんだ」
 その敬輔の怒気を孕んだ問い詰めに。
 それはどうかな、と言う様に愉快そうに眉を上下に動かすウィルオーグ。
「その若者が知識神様の天啓を受けたのは真実であろう。だがその事実こそが、この私の信仰の何よりの証明だ」
 その、ウィルオーグの呟きに。
「何……?」
 思わず、と言った様に息を呑んだのは、アラン。
 そのアランの様子を愉快そうに眺めながら、講義を少ししよう、とまるで教師の様な口調でウィルオーグが語りかけた。
「そもそも、この儀式を成功させるために必要なのは、お前達『力ある猟兵』の血肉。そしてその血肉を喰らい、新たなる『神』として顕現するために必要なものこそ、我等が神、エギュレ様の天意を受けた者と言う『器』だ。若者よ。お前は、新たなる神がこの世界に顕現するための『器』として、知識神様が選んだ私が望む神の顕現に必要な『核』なのだよ」
「……違う! 僕は、ただ貴方様を止める様、知識神エギュレ様より意を受けたのだ。貴方様の我欲を満たすための器として、僕を知識神エギュレ様が遣わすなど……エギュレ様への愚弄にも程があるぞ!」
 グッ、と拳を震える様に握りしめながら慟哭を上げるアランに、興味が無さそうに髭を扱くウィルオーグ。
「さて、お前を私の元に遣わせたエギュレ様は、本当にそうであるのか。お前が受けた天啓を、お前自身が都合良く解釈している……その様に考えたことは無いのか? もし、そうであるのならば、本当に知識神エギュレ様を愚弄しているのは、どちらであろうな?」
 嘲笑交じりに言葉を叩き付けるウィルオーグと、微かに怯んだ表情を浮かべたアランの間に。
 ルーンソード『スプラッシュ』を抜剣したウィリアム・バークリーが割って入る様に姿を現し、ぼくには、と軽く頭を横に振った。
「信仰のことは、正直よく分かりません。ですが……ノウリッジの人々の命を弄び、この世界に新たなる神……偽神を蘇らせようとするご老体、あなたが世界の敵であることは、ぼくには良く分かっています」
 そう告げて。
『スプラッシュ』の先端をウィルオーグに突きつける様に向けながら、ゆっくりと魔法陣を描き出し始めるウィリアムのその背から。
「同感だね♪」
 向日葵の様に明るい笑顔の中に。
 目前の『敵』への闘志をその胸中で燃やしつつ。
 ひょっこりと姿を現し、その手の壺の蓋を開けた、祝聖嬢・ティファーナが首を縦に振る。
 そのティファーナの姿を見て、ウィルオーグが忌々しげに舌打ちを一つ。
「……旅の導き手も共にいたか」
「はい☆ 人々に聖なる笑顔と祝福を齎す為に、ボクは貴方を倒します!」
 キラッ、と八重歯を光らせながら。
 下着姿と見紛うばかりの薄手のフェアリードレスを纏ったティファーナの其れに、やれやれと言う様に肩を竦めて、アランの隣に立つ司・千尋。
「面倒だよな、信仰とか宗教ってやつは。ヒトによって都合良く解釈され、自らの正義を正当化するのには、格好の手段だ」
 その、千尋の皮肉交じりの呟きに。
「……ですが」
 ヒトの夢の毎き儚さを感じさせる様な声音で、蒼が頭を横に振る。
「……彼は、外道へと、堕ち果て、ています……」
(「……アラン様、の様に、慕って、くださる、方も、いたと、言うのに……」)
 茫洋とした琥珀色の蒼の瞳には、何が映し出されているのであろうか。
 でも……。
(「例え、彼が外道に堕ちているのだとしても」)
「いや・・・・・だからこそ、俺達が、止める必要があるんじゃ無いのか? 蒼」
 そう告げて。
 その左掌を突き出し、不死鳥の如く燃え盛るクロネコの群れを呼び出し、ウィルオーグの論文に向けて殺到させるのは、文月・統哉。
「アハハハハハハッ! 別にそんな事、ボクにはどうでも良いのよ! 殺し甲斐さえあれば、それでいい!」
 その全身から噴き出す瘴気の様な殺意を抑えることなど無く。
 現れた彩瑠・理恵……否、リエの哄笑が、戦場一帯に響き渡った。
 リエのその殺気に当てられる様に。
 自らの論文の一部を統哉に燃やされながらも、ウィルオーグが鋭く目を細める。
「ならば私は、私に与えられた知識を広めるべく、最善の行動をするまでだ」
 その低い呻きと共に。
 一部焼け焦げた論文を放出し、自らに敵意を向けるリエ達を睥睨しながら。
 その地面から無数の蝶の形をした漆黒の精霊を、ウィルオーグは呼び出した。


 ――ゴロゴロゴロゴロゴロ……。
 昏き儀式場所の天井に忽ちの内に垂れ込めてくる暗雲。
 クロネコ型の炎の群れによって蝋燭の様に焼け焦げていく論文が、煌々と、不気味な彩りを持って、戦場全体を怪しく照らし出している。
「……神よ! 私に仇なす者に制裁を!」
 その深淵を断ち切る様に朗々と歌い上げられた裁きの祈り。
 その祈りに応じる様に大地に描かれた漆黒の魔法陣が不気味な血色に蠢き、同時に天空から光切り裂く暗黒の雷が、嵐と化して降り注いだ。
「……っ!?」
 あまりの速さで解き放たれた雷の群れに、ユーベルコードを起動させる暇も無く、驚きに目を白黒させるアラン。
「させるものかよ」
 咄嗟にそう呟きながら、その左手で空中に半円を描き出し86体の結詞を召喚、更に天空に向けて無数の鳥威を展開する千尋。
 その間、ウィリアムは『スプラッシュ』で円形を描き出し、無数の小さな魔法陣を戦場全体に展開、青と雪色の混ざり合うその魔法陣の其々に、氷の精霊達を収束させている。
 けれども天からの裁きの雷は、ウィリアムの術式が完成するよりも一足早い。
 放たれた雷が瞬く間に千尋の鳥威を貫きその威力を減じさせながらも、尚、アラン目掛けて降り注ごうとした、正にその時だった。
「あなたの好きになんて……させませんっ!」
 其れは、何処か幼さの残る声。
 けれども、凛とした勇気に満ちたその声の持ち主が、アランの上空を舞う様に飛ぶ。
 そしてその雷を、蒼穹と紅蓮の双竜を纏った双腕を交差させて蒼と緋が綯い交ぜになった太陽に照らし出される地球の如き美しさを伴った結界を張り巡らし、身を挺してアランを庇った。
 そのまま銀のポニーテールを風に靡かせ揺らめかせながら、地面に着地する『少女』の姿に、ほう……と千尋が愉快そうに目を細める。
「ユーフィか。久しぶりだな」
 その、千尋の呼びかけに。
 跳ねる様にポニーテールを風に揺らしながら、左腕に炎竜を、右腕に水竜を纏った少女……ユーフィ・バウムが、驚いた表情になって千尋の方を振り向いた。
「千尋さん!? 来ていたのですかっ!?」
 その、ユーフィの問いかけに。
 口元に笑みを浮かべながら、千尋がああ、と軽く首肯。
「……千尋様。お知り、合い、なの、ですか……?」
 まるで、疾風の様に不意に姿を現したユーフィへの気安い千尋の挨拶に、蒼がコトリ、と軽く首を傾げて千尋にそう問いかけ。
 アランも驚愕冷めやらぬ、と言った表情で思わずユーフィの方を見やっていた。
「貴方は……?」
 自らを庇う様に現れたユーフィの背に向けて、アランが掠れた声で問いかけると。
「あっ……すみません。初めまして、アランさん!」
 少し慌てふためいた様子でそう告げて、腰に帯びた勇気の実を取り出し、パクリと一つまみしながら、アランの方を振り返るユーフィ。
 好意を寄せる親友から授けられた一つまみの勇気の実が、彼女の全身を巡る熱き血潮を駆け巡り、見る見る内に、幼さの残るその顔立ちに、凛とした勇気を、その空色の瞳へと、強き戦士の意志を、漲らせていく。
「わたしは、蛮族のユーフィと言います。遅ればせながらアランさん、あなたに助太刀せんと、この場に馳せ参じました」
「よくこの場所が分かりましたね、ユーフィさん」
 術式の完成目前で、その魔法陣の中に新たな譜を刻み込みながら問いかけるウィリアムに、はい、とユーフィが頷いた。
「『旅の導き手』が、わたしを導いてくれましたから」
「そうだね! 彼女は、ボクと同じフェアリーだからね!」
 ユーフィの其れに、ティファーナが朗らかな笑みを浮かべる。
 ティファーナの脳裏を過ぎったのは、この事件の予知者である『フェアリー』
 即ち、自らと同じ、『旅の導き手』の姿。
「ほう……私の初撃を受け流すとは……思ったよりは、やる様だな」
 何処か面白がる様に鼻を鳴らしながら、即座に自らの手をヒラリと横に振り、まだ煤けながらも焼け残った論文達を颶風を吹き荒れさせて、戦場へと降り注がせるウィルオーグに向けて。
「そ~れ!」
 パカッ! と言う音と共に、その手の小さな壺の蓋を開けて、そこから風/火/生命の精霊、聖霊、月霊、戦乙女、天使、死神……その呼び名からは想像のつかぬ小人の様に愛らしい姿の少女達を呼び出すティファーナ。
「皆、お願いね☆」
 と、呼び出した彼女達に、腰に着けていた赤、橙、黄、緑、青、藍、紫……大凡七色の小さな沢山の砂糖粒……金平糖をばらまいてキビキビと餌付けしていく。
 ティファーナに餌付けされた少女達を迎え撃つのは蝶の形をした、漆黒の精霊達。
 ヒラヒラと黒粉を鱗粉の様にばらまきながら戦場を羽ばたく蝶達の姿を見て、颶風に靡くスカートや外套の裾を気にせず、……おや、と蒼が微かに目を瞬かせた。
「貴方も、蝶を、操る、のですか……」
 そう、呟きながら。
 時には無垢な、時には妖艶な、時には蠱惑的な花弁を飛ばす白き花……夜に瞬く月下香を携えた蒼が、口元に微かに蠱惑的な笑みを浮かべて見せた。
「……でも、ボクの、蝶は、強い、ですよ?」
 そうして、黒き鋭き悪魔の花を、夜に瞬く月下香の先端に収束を開始させ始める蒼を一瞥し、ウィルオーグが漆黒の大鎌、『宵』を肩に担いだ統哉と、哄笑と共に鮮血槍をその手に握りしめたリエ、そして瑞玻璃剣の刃を撓らせる様に打ち振るわせている晶に向けて、戦場全体を覆い尽くす様に展開した論文の一部を貼り付ける様に叩き付け……。
「動くな!」
 と、一括。
 同時に、論文の中に忍ばせていた『禁則事項』、『動くな』と書き込まれたルーン文字が不気味な輝きを伴い、自らに肉薄しようとする統哉達の体を鋭く切り刻む様な痛みを与える。
「……この程度の痛みで、私達を止められるとは思わないことですね」
 ガハッ、と口から喀血しながらも、尚、動きを止めずに左の瑞玻璃剣を下段から撥ね上げる晶。
 その一太刀だけで、自らの体を蝕む『禁則事項』に出血を強いられるが、それでも、晶の剣閃は止まらない。
 止まらぬ下段からの剣閃に、咄嗟に漆黒の結界を右手で展開してその攻撃を受け止めるウィルオーグに向けて、リエの血が凝縮された鮮血槍が、晶の一撃で微かに罅の入ったウィルオーグの結界を穿ち、統哉の『宵』が大上段から振り下ろされる。
 深淵に溶け込む様に消えていた漆黒の刃先が纏うは、宵闇を斬り裂く星空の如き瞬きを伴った淡い光彩を放つ一閃。
 その時ウィルオーグは、自らの『邪心』を断つであろう、その星の如き光の危険性を直感した。
「好きにはさせぬよ」
 告げながら、戦場に羽ばたかせた蝶の群れ達を統哉へと集結させるウィルオーグ。
 其は、己が縁の品や、周囲からの記憶……即ち、存在痕跡を穿ち破壊する社会的存在排除の法。
 ――けれども。
「……貴方の、好きには、させ、ませんよ……」
 そう告げた蒼の夜に瞬く月下香の先端に生まれ落ちた黒き鋭き『悪魔の花』
 そこから溢れる蜜に魅入られる様に姿を現したのは、緋の愁いとともに、切ないほどに、甘く哀しく、優雅に舞う幽世蝶。
 生み落とされた幽世蝶の群れが、白鳥の如く優雅に空を泳ぎ、統哉に向かった漆黒の蝶に覆い被さる様に襲いかかり、黒き蝶達を相殺する。
「助かったぜ、蒼!」
 礼を述べながら完全に自らの大鎌『宵』を振り下ろす統哉だったが、『動くな』と書かれた『禁則事項』が統哉の全身に激痛を走らせ『宵』の切っ先が、空を切った。
「くっ……流石に一筋縄じゃ行かないか……!」
「統哉さん、下がって下さい!」
 思わず舌打ちする統哉と入れ変わる様に蒼と緋の双竜を双腕に帯びたユーフィが、その背に背負った巨大武器、ディアボロスに搭載されたディアボロスエンジンを起動させてジェット噴射の如く加速してウィルオーグに肉薄、水竜を纏った右腕で鮮やかな正拳を叩き込む。
 清流の如き澄んだ流れの様な線を曳いたその拳の一撃が、統哉を追撃させようとその指先から雷を解き放とうとしていたウィルオーグの脇腹を容赦なく打ち据えた。
 その隙を見逃さず、そのまま左の火竜の雄叫びの如きオーラを纏った拳でアッパーをウィルオーグに叩き込もうとするユーフィ。
「私に、神のことは分かりませんが……!」
 屈み込むと同時に、バネの様に体を伸ばして全身からの力を伝えられた左拳が、大気との摩擦によって生じる熱によって更に加速し、衝撃波の如き一撃と化して、ウィルオーグの顎を撃ち抜いた。
「がっ?!」
 目から火が飛び出す様な痛みと共に、よろけて2、3歩後退するウィルオーグ。
「貴方が倒すべき敵であることは、分かります! だから!」
 ユーフィの叫びに応じる様に。
「神の名を貶める背教者ウィルオーグ。知識神エギュレに変わり、龍神たる私が、神罰を下します!」
 鞭打つ様な鋭い声音を切る様に叩き付けた晶が、右の瑞玻璃剣を唐竹割りに振り下ろす。
 自らの膂力を乗せた瑞玻璃剣による強烈な重い斬撃は、ウィルオーグの体を切断するに、十分に足る一撃だったが。
「この程度でやられはせんよ」
 よろめきながらも尚、その手に抱いた禍々しい精霊を銃弾の様に晶の右腕に叩き付けるウィルオーグ。
 その一撃は、張り付いた『論文』による禁則事項にその体を蝕まれ喀血していた晶の右腕を打ち据え、瑞玻璃剣の軌道を逸らすに足りた。
 そのまま大地に叩き付けられた瑞玻璃剣が、ズシン、と鈍い音と共に、地面に描き出された魔法陣を斬り裂いている。
 だが、同時に撃ち抜かれた右腕から流れ落ちる晶の血が、魔法陣に吸い込まれるや否や、地面に描かれた魔法陣が、妖しげに脈打っていた。
(「瑞玻璃衣が無ければ、腕を持って行かれていたかも知れませんね……」)
 傷ついた自らの腕から零れ落ちる血を素早く止血しながら晶は思う。
 その晶の思いを感じ取ったか。
(「……やはり、そう簡単に獲らせてはくれないか……!」)
 戦場を包み込む様な深淵の中に溶け込む様に。
 その姿を闇に紛れて殺していた敬輔が、忌々しげに舌を一つ打った。


(「……漸くですか……!」)
 自らの周囲に展開した、無数の魔法陣が青と雪色、そして黄金に彩られた輝きを伴うのを見つめながら。
 目前の刹那の攻防を見据えていたウィリアムが、内心でそう呟き。
「行け! Active Ice Wall!」
 ウィリアムの詠唱と共に、撃ち出されたのは、戦場全体を包み込まんばかりの無数の氷塊。
 天井の隅々にまで展開された氷塊の群れに、千尋が口元に微笑を浮かべ、目前で行なわれていた戦いに目を奪われていたアランをちらりと見やる。
「おい、アラン。もう覚悟は出来ているんだろ? だったら、さっさと行くぞ」
 敢えて突き放す様な口調で千尋がアランに呼びかけたのは、人情からか、それとも只の好奇心か。
「ああ、分かっている!」
 ギリ、ときつく唇を噛み締めたアランが千尋にそう返し、白十字の刻み込まれた盾を構えて前線に向かうのにウィリアムが追随して駆けていくのを見送りながら、そのまま自分と共にアランの事を微かに気掛かりそうに見やっていた蒼に千尋は、皮肉げな視線をくれた。
「心配か? アイツのこと」
 告げながら、天井に向けて無数の鳥威を展開する千尋に、蒼が思わず千尋の方を振り向く。
 その琥珀色の瞳を、『人』への僅かな不信と、自分の中で揺蕩う何かに、戸惑うかの様に、彷徨わせながら。
「……どうで、しょうか……」
 深く干渉するつもりもなく、自らの足で他人に歩み寄ることも無く。
 けれども『人』たるアランや統哉達の行動を具に観察し、状況に応じて援護の手を差し伸べる蒼の姿にやれやれ、と千尋が思わず溜息をつく。
「まあ、俺達は『ヤドリガミ』。『ヒト』とは如何しても考え方が『違う』よな」
 そう、呟きながら。
 自らの周囲に展開した86本の結詞を伸長し、或いは鳥威を纏め、そこに緋色の結界を展開させて天空からの雷に備えた防御を強化する千尋に、パチパチと蒼が目を瞬かせる。
「……ボクは、ヒトに、とっては、呪い、です」
 その、蒼の呟きに含むモノを感じ、千尋が思わず吹き出した。
「奇遇だねぇ。俺もそうらしいんだよ」
 そう告げて。
 自らの両脇に控える様にしていた2体の人形、『宵』と『暁』、そして自らの周囲に浮かぶ飾り紐を見て冗談めかして千尋が笑う。
「……そう、ですか」
 訥々と呟く蒼に、だが、と千尋が愉快そうに肩を竦めた。
「だからこそ、ヒトを見ているのは愉快だよ。少なくとも、退屈はしない。お前は、どうなんだ?」
 その、千尋の問いかけに。
 何も答えぬままに、蒼が天へ祈る幽霊花を戦場にばらまきながら、摺足をする様に、大地を蹴って前進するのを援護して。
 千尋が86本の結詞の内、防御に回しておらぬ30本の結詞を解き放った。


『精霊、聖霊、英霊、月霊よ、癒し慈しみ輩を治癒し蘇生を……☆』
 千尋と蒼の短いやり取りの間隙を縫う様に。
 ティファーナの祈りと願いの籠められた歌声の様に澄んだ声が戦場に響き渡る。
 戦場に朗々と響き渡るティファーナの祈りに答える様に、先程呼び出された『生命』を司る精霊、聖霊、月霊達が眩く神々しい光輝を解放。
 その『生命』の精霊、精霊、月霊達の光輝が、ティファーナの体内に宿る光輝と共鳴し、太陽の如き煌めきと祝福と化して、戦場全体を閃光で覆う。
 ティファーナのその祈りに共鳴する様に、ウィリアムの氷塊達が、光輝を乱反射してその力を加速度的に強化して、緒戦で傷ついた統哉と晶、ユーファにリエの傷を癒していった。
「皆、続けていくよ☆ 『歌唱う、我らが精霊・聖霊・月霊よ♪ 歌い、踊り、唄い、舞い踏れ♪ 素ノ源ヨリ来タレリ……♪』」
 疲労しても尚、祈る手を、止めることも無く。
 美しく鮮烈たる響きを伴った歌を重ね合わせたティファーナの其れに応じた精霊・聖霊・月霊が我先にと、ウィルオーグに向かって殺到していく。
『風』の精霊・聖霊・月霊達に煽られ、その勢いを遙かに増した『火』の精霊・聖霊・月霊達が、全てを焼き尽くす465本の炎の矢と化して怒濤の如くウィルオーグに向かって殺到していく圧倒的な其れに、ウィルオーグが微かに目を見張りながら、ドン、と大地に自らの足を叩き付けた。
 晶によって大地に描かれた魔法陣は4分の1程を抉り取られていたが、それでも、先程吸った晶や統哉の血に鳴動した魔法陣が不気味な黒い蠢きを見せ、再び呼び出された漆黒の蝶達が『火』の精霊達を迎え撃たんと殺到し、次々にぶつかり合い、爆ぜていく。
「アハハハハハッ! この位でボク達は止まらない、止まらないよ!! 六六六(ダークネス)である、ボクのその名に賭けてね!」
 ティファーナの呼び出した精霊・聖霊・月霊達の群れと。
 ウィルオーグの呼び出した黒い蝶の姿をした精霊達のぶつかり合いによる爆発をモノともせずに、哄笑をあげたリエが自らの後ろを影の様についてくる血溜まり……鮮血の影業を無数の影刃に変えて、チャクラムの様に投擲して振り回した。
 振り回された無数の影の刃が、五月雨の様にウィルオーグに向かい、その体を切り裂くその間にも、六六六(ダークネス)としての本能が、理恵の持つ理性を喰らい、『リエ』へと自らの存在を塗り潰していく。
(「敵意も殺意も無く、理由すら無く、只息をする様に殺す域にまで至る事が出来れば、それが最上なのだけれども……まだまだね」)
 そう内心で呟くそれは、まだ喪失されていない理性……邪念とも言うべき其れが残っているからであろう。
 ウィルオーグが、そんなリエの頭上から、天雷を叩き落とさんと怒号を上げた。
「この地にあるべきでは無い、異端者よ! 我が神罰を受けよ!」
 その怒号に応じる様に。
 リエの天空より降り注ぐ雷であったが……。
「おっと、そういうわけには行かないぜ?」
 千尋が解き放っていた56本の結詞で編み上げて強化した鳥威が結界と共にその威力をたわめている。
「ふんっ……! ならば、出力を上げてやるまでのこと……!」
 その様子を見たウィルオーグが鼻を鳴らしてパチン、と指を一つ鳴らす。
 それが千尋の鳥威を打ち破り大地を疾駆するリエに降り注ごうとした正にその時。
「今ですね……!」
 ウィリアムが素早く手を翻す様に横薙ぎにその左手を振るった。
 その、ウィリアムに振るわれた手に応じる様に無数の氷塊達が、リエの頭上に浮かぶと、ほぼ同時に。
「Ice Wall……Reflect!」
 ウィリアムが、詠唱の残りを完了させる。
 刹那、無数の氷塊達が、ティファーナの光輝を纏ったかの如き輝きを伴い、閃光と共にその天雷を受け止めて、鋭角的な角度で、ウィルオーグにそれを反射させた。
「なにっ……!?」
「自分の呼び出した神罰で、自ら裁かれて下さい!」
 反射された自らの天雷に驚愕するウィルオーグを鞭打つ様に、容赦なくウィリアムの号令が飛ぶ。
 それは、ウィリアムの呼び出した氷塊達が吸収した無数の神罰の雷が、雷神の一撃と化して、そっくりウィルオーグに返される、裁きの号令。
「グゥオオオオオオッ?!」
 全身を感電させる様な雷に自らの体を焼かれ苦痛の呻きを上げるウィルオーグ。
 そしてその瞬間を、敬輔は、見逃さなかった。
「今だ……叩き斬る……っ!」
 闇の中から飛び出す様に表れた漆黒の鎧で全身を覆った黒騎士、敬輔。
 一気に肉薄した敬輔が鞘から抜き放ったその刀身が、赤黒く光り輝く黒剣の中に、何処か静謐さとその面頬の奥に光る青き瞳を思わせる碧き輝きが混ざり合い、一条の光の剣と化して、ウィルオーグに襲いかかった。
「オオオオオオオオオッ!」
 背後から振り下ろされる怒濤の如き18連撃。
 閃光の様な爆発を伴う無限にも等しい乱舞に籠められた一撃、一撃に籠められた重い斬撃が、ウィルオーグの全身を細切れにするかの如くズタズタに斬り裂いていく。
「ガアアアアアアアッ!」
 背、目、両腕、両足、鼻、口、右肩、左肩、右脇腹、左脇腹、両踝、そして両膝の細胞が無惨に斬り裂かれ、迸る大量の黒い血潮。
 ただのオブリビオンであれば、それだけで討滅には事足りたであろう。
 されども、自らに与えられた神の加護を我武者羅に信じる異端神官は、その程度の斬撃で『死』を賜る程、甘くは無い。
「まだだ……まだやられぬ……!」
 同じくその両目、その口から大量の血を喀血する敬輔の血をその背に編み上げた結界で受け流しながら、呪詛の様な呻きを上げ、大地に描かれた魔法陣と、未だ存在する論文達を無造作に操るウィルオーグ。
 けれどもその無数の論文に対しては、クロネコワイヤーを梁に掛けて空中へと飛び上がった統哉が『宵』の大鎌の先端を突きつけていた。
「焼き尽くせ、クロネコファイヤー!」
 統哉の叫びと共に、『宵』の先端から解放される巨大なクロネコの姿を象り、口を大きく開いた紅蓮の獣が、ウィルオーグの論文を焼き尽くすべく戦場を荒れ狂い。
「どうした? もう終わりなのか?」
 千尋が続けざまに皮肉な笑みを刻んだままに、30本の結詞を伸長させ、ウィルオーグの体を絡め取っていた。
 その結詞が、敬輔に傷だらけにされた、両足と両腕、そして首に絡みつき、そのまま酸欠させる勢いで力任せに締め上げていく。
「がっ、がが……っ!」
 苦しげな呻き声と共に、吐瀉物の様に血を吐き出すウィルオーグ。
 酸欠の影響で、見る見るうちにその顔が青ざめていくのを見つめながら、左翼からユーフィが、右翼から晶がウィルオーグに肉薄する。
 そのウィルオーグを守るべく、僅かに残された論文達が精霊の様に周囲を飛び交い、ユーフィと晶に張り付こうとした、正にその時。
「その意志を貫き通せ、アラン!」
 統哉の叫びにその背を押されるが如く。
「これ以上、貴方様に罪を重ねさせないためにも……!」
 祈りの籠められた呟きと共に、白十字の刻み込まれた巨大盾を突き出すアラン。
 同時にその全身が鋼鉄の如く堅くなり、その全身に論文が張り付いていく。
『動くな』と言う、ウィルオーグのその命令。
 然れど、迷いを捨て、無敵城塞の力を発揮させたアランにとっては、その程度の命令など、何の意味も持たぬ。
 其ればかりか……。
「アハハハハハハハッ! 精々利用させて貰うわよ!」
 甲高い笑い声を上げたリエが、アランを盾にして天空から飛来する神雷を躱しながらその影から飛び出す様にして、自らの血と、ウィルオーグの血が混ざり合って、刃と化した真紅の影刃を、鎌鼬の様に解き放った。
 解き放たれた影刃が既に傷だらけのウィルオーグをズタズタに切り裂き、更なる負傷を積み重ねて行くその間に。
「『光りを怯える闇と悪よ、その罪を悔い改めるんだよ!』」
 ティファーナがその指先を、ウィルオーグに向けて突きつけた。
 ――瞬間。
 天より降り注ぐ様に落ちてきた巨大な光の柱が、傷だらけのウィルオーグの体を浄化せんと撃ち抜いていく。
「ガボォッ?!」
 喀血と共に大きく仰け反ったウィルオーグの懐にディアボロスエンジンをフルブーストさせ、暴風の如き速度と共に、ユーフィの左腕を覆う火竜の拳と、右腕を覆う水竜の拳が、噛み付かんばかりの勢いで、ウィルオーグを殴り飛ばした。
「隙が出来た……今です!」
 右腕の拳に纏われた水の如き蒼穹のオーラに打ちのめされ、その身が凍てつかんばかりの様子を見せたウィルオーグに、間髪入れずに叩き込まれる、火竜の如きオーラを纏った真紅の左拳。
 氷炎の嵐とも呼ぶべきユーフィの拳による乱打がウィルオーグを打ち据えて。
「今度こそ、神罰を受けなさい、背教者よ」
 そこに、晶の二刀の瑞玻璃剣が激流の衣を纏って袈裟と逆袈裟……X字型に振り下ろされる。
 振り下ろされた晶の双刃がユーフィの拳により凍てつき、そして熱されたその体を凍てつかせんばかりにその温度を大きく奪い去り、ウィルオーグがそれにグラリと今にも倒れんばかりの勢いでその場に倒れ伏しかけた。
 だが……。
「……まだ……終わらぬ……!」
 今際の際、と言うべきであろうか。
 それ程までに追い詰められているにも関わらず、千尋に締め上げられ血泡を吹きながらも尚、ウィルオーグは諦めること無く晶の斬撃に更に削り取られた魔法陣を起動させた。
 そうして蝶の姿をした黒き精霊達が、この地に居る全ての者達の記憶を、思い出を、大切なモノの何もかもを奪い取ろうとする。
「……っ!」
 そしてそれは、先のユーベルコードにより喀血し、その場に膝をついていた敬輔の大切な其れを奪い取ろうとするが……。
「……そうは、させ、ません」
 その間に、割って、入る様に。
 夜に瞬く月下香を大地に突き立てて黒き鋭き悪魔の花……されど、『気品』と言う花言葉を持つ、深淵の中に咲く、玉沙参を咲かせた蒼が立ちはだかり、その漆黒の蝶の群れを自らの身へと引き寄せていた。


「……蒼!」
 それは誰かの、悲鳴の様な、叫び声。
 けれども……。
(「……何、です、か……?」)
 その意味は、呪いの品である氷晶石と琥珀のブローチの『ボク』には分からない。
 ――蒼……? 空の、色……?
 でも……ボクには、差して気にならない。
 そもそも、ボクには……。
「名前……」
 あの蝶は、確かにボクを、奪ったのだろう。
 ボクが呼ばれていた、名前という名の、その記号を。
「そう……そんなモノ、ボクにはありません。『……黒き鋭き、悪魔の花。……気高き姿に、畏れよ』」
 だから、ボクは残されたその呪を紡ぐ。
 名前すら忘れた、その花を呼び出すための、それを紡ぐ。
 その、瞬間……。
 血塗れの『彼』は、恐怖と畏敬の念を表情に浮かべ、驚愕にその目を剥いていた。


「馬鹿な……っ! 名を奪われ、存在する意味すらも奪われたお前が、尚、私に迫るだと……!?」
 ウィルオーグの声に滲み出るは、恐怖。
 しかしウィルオーグが感じる其れは、敬輔や、ユーフィ、そしてアランでさえも、感じているものだ。
 敬輔の背筋には拭えぬ程に冷たい汗が這い回る様に駆け巡り、ユーフィは軽く身震いを一つさせ、アランはその目を驚愕のあまりに白黒させている。
「……蒼!」
 統哉が額から染み出る冷たい汗を無意識に拭う様にしながら、蝶の直撃を受け、その名を奪われた『蒼』に必死に呼びかける。
 けれども、蒼は止まらない。
 ただ、無機質にも取れる琥珀色の瞳で、射貫く様にウィルオーグを見つめるのみ。
「……おや? 名を奪われて、畏れぬ者など、いませんでしたか?」
 酷く流暢な、抑揚の無い声で。
 淡々とそう告げる『蒼』……否、呪いの品であるボクの姿に、ウィルオーグが明らかに怯んだ表情を見せる。
 そんなウィルオーグを見た『蒼』であった物は、何をそんなに畏れているのだ、と言わんばかりの表情で、ウィルオーグを繁々と眺めていた。
「生憎、ボクは……」
「そうだ。俺達は『ヒト』ではない。『ヤドリガミ』……物に魂の宿ったモノだ」
 そんな彼女の様子を見て、唯一千尋だけは微苦笑を口元に綻ばせて、皮肉げに肩を竦めている。
 自分も、『彼女』も所詮はヤドリガミ。
 自らを識別する千尋、そして蒼と言う名は、ある意味で仮初めのモノに過ぎぬ。
「そう、ですね。千尋様。ボク達は『物』、なのです」
 例え、名を奪われようとも。
 敵と味方の区別は出来る。
 だから……。
「『精霊、聖霊、英霊、月霊よ、聖精詠み…・・・月天風よ流れよ…・・・☆彡』」
 朗々と、ティファーナがその呪を紡ぎ、自らが先に呼び出した戦乙女と、天使と合身し、その姿を顕現させた。
 その右手を振るえば、光/火/風/水/土/闇/聖/月……八大属性の精霊達の力を自在に振るえる戦乙女であり、その左手を振るえば神聖なる力を帯びた、『槍、鉾、矢、杭』を雨あられと降り注がせ、無数の神聖なる神罰を与える、天使の力を自在に使いこなす、神聖なる裁きの死神のその姿を。
 放たれた八大属性の精霊達が殺到し次々に着弾し、ウィルオーグの体を撃ち抜くその間に、裁きの光輝を発した、槍・鉾・矢・杭を叩き付ける様に降り注がせるティファーナ。
 全身を精霊達に打ち抜かれ、更に槍・鉾・矢・杭にその身を貫かれたウィルオーグがビクン、ビクン、と痙攣を起こしながら恐怖と畏敬の念を籠めて、名を奪われし『彼女』を、呆けた様に、見つめている。
「……貴方には、異質に、見えるのでしょう。ですが、世の中には、理解出来ないことが、たくさん、あるの、ですよ」
 無表情で、無機質に聞こえる囁き声。
 けれども、何の情感も感じさせぬ『彼女』の其れは、その声そのものが、ウィルオーグの奥底に深い畏敬の念を根付かせてしまう。
 その畏敬の念を、存分に感じ取りながら。
「終わり、です。『……跪け、首を垂れろ』」
 歌う様に彼女がそう命じた、その瞬間。
 名も無き……否、失われなければ忘れることの無き、気品を意味する、悪魔の爪の様な姿を持つ、美しき紫花、玉沙参の、鉤爪の様なその花弁から鋭意な全てを斬り裂く衝撃波を解放し、ウィルオーグの身を引き裂いていく。
 その鉤爪に切り刻まれ、その身の痙攣を更に加速させるウィルオーグ。
 既に意識がある様な、無い様な、そんな夢現な状態の中にあるウィルオーグのその姿にいたたまれなさを感じて、統哉が静かに頭を横に振り、それから無表情で攻撃を続ける蒼を、切なさを伴った瞳で見つめていた。
「本当は、貴方は、アランと同じ様に、嘗ては真摯な心の持ち主だったのだろう」
 それは、ウィルオーグへの手向けと餞別の言葉。
 ウィルオーグが聞いているか、聞いていないかも分からぬままに、統哉が、でも、と小さく呟いた。
「貴方には、貴方の人生があった。そして其れを通して、貴重な知識を一つ、知った筈だ」
 ――其れがどれ程の欲望に塗れ、歪められたモノだったのだとしても。
 この偽神を蘇らせる儀式の法もまた……。
「貴方には、捨てられるモノじゃない筈だ」
 自らの生み出した炎に焼き尽くされた論文達を切ない光を称えた瞳で見つめながら。
 統哉がだから、と更にウィルオーグを切り刻まん事を欲する蒼を一瞥し、そのまま『宵』を自らの肩に担ぐ。
『宵』の漆黒の刃先から、晶のしなやかな清流の如き光を伴った蒼き光が、星の様に瞬き、溢れ出していた。
「統哉さん……!」
 その蒼穹のオーラを思わせる光を『宵』に纏わせた統哉に向かって、煤けて残った『論文』の焼け残りが張り付かんと襲いかかるが、これ以上の邪魔はさせぬとばかりに、その『論文』をユーフィが最低限の箇所を防護する薄衣、抗魔から放たれる、蒼穹のオーラを前面に展開して受け止める。
 ユーフィ、そして統哉の放つ蒼。
 雲一つ無い青空を思わせるその光は、まるで大海の様に広がって、名を奪われしヤドリガミの琥珀色の瞳に、何処までも透き通った光の様に映し出された。
(「これ……は……?」)
 統哉が、茫洋とした『彼女』に微笑みかけつつ、でも、と小さく呟いている。
「貴方達の中から、全てが消えていないのならば、求める何かは、そこに在る筈だ」
 ――だから、統哉は解き放つ。
 ウィルオーグではなく、その魂に巣くう『邪心』のみを断ち切る、蒼穹の刃を。
(「アラン達に意識を取られたわね……!」)
「さぁ、慄け、咎人よ! 今宵は、お前が串刺しよ!」
 リエが哄笑と勝利の雄叫びを上げながら。
 自らとウィルオーグの血を凝縮して生み出した鮮血槍を投擲した。
 それは、ティファーナの神聖なる神罰の光を帯びた槍・鉾・矢・杭に四肢を貫かれ、磔刑となっていたウィルオーグの心臓の部分に確かに突き刺さり……そのまま祭壇へと叩き付ける様に串刺しにする。
 既にヒュー、ヒュー、と息を鳴らすことしか出来ぬウィルオーグの苦しみを。
 そして、その胸中に巣くうその闇を、少しでも、払うために。
 統哉が蒼穹の淡い輝きを曳いた『宵』でウィルオーグの体を三日月型に薙ぎ払う。
 その一撃は、彼の知識を遍く広く世界に届ける為に偽神を蘇らせると言う、ウィルオーグの歪んだ知識欲を、確かに袈裟に断ち切っていた。
「ウィルオーグ。貴方にとっては、この戦いも一つの断片に過ぎないのだろう。それでも俺は、アランの様に、貴方の遺した教えを、正しく受け継いでいく者がいることを、知って欲しい……。そう、心から願っている」
 だから、今は払うのだ。
 その心に巣くう、その邪心を。
 ――そして。
「これで終わり、ですね……。断ち切れ! 『スプラッシュ!』」
 その叫びと共に。
 だんっ、と自らの生み出した氷塊の群れを蹴り上げて前線に飛び出したウィリアムが、氷の精霊の力を帯びた『スプラッシュ』を袈裟に振るった。
 その袈裟の一撃が凍てつく吹雪と化して、ウィルオーグを切り裂き……。
 磔刑に処されていたウィルオーグに、静かな最期を、遂げさせるのであった。


「取り敢えず、終わりましたか……」
 瑞玻璃剣の柄頭を接合した連結剣、瑞玻璃杵を構え直し。
 その刃先から絶えること無き水を滴らせながら、ウィルオーグが遺した、地面に描かれた最後の魔法陣に瑞玻璃杵を突き立てる晶。
 突き立てられた瑞玻璃杵が、遺された魔法陣を抉り取る様に地面にその刃をめり込ませ、その刃先から水の槍と化した水流が迸り、その魔法陣を完全に消滅させた。
(「これで、この街の人々の安全は、手に入れることが出来たでしょう」)
 そう確信し、そっと胸を撫で下ろす様に息をつく晶だったが、直ぐに表情を改めて、『彼女』へと気遣わしげな視線を向けた。
 名を奪われたヤドリガミである『彼女』は、夜に瞬く月下香を構えたままに、統哉達によるウィルオーグの臨終の時を、呆けた様に見つめたままだったが、やがてぐらり、と軽くその身を傾がせた。
「おい……蒼。何時までそうしてぼうっとしている?」
 足を掬われた様に地面に転びそうになる彼女に、やれやれ、と些か呆れた様に溜息をついた千尋が結詞で釣り上げる様に彼女を絡め取り、結詞を調整して、優しく地面に彼女を下ろした。
「もう大丈夫よ! 気をしっかり持ち直して! 『歌唱う、精霊・聖霊よ♪ 癒し、治し、生命の灯火を再び与えたまえ…・・・⭐』」
 涼やかな、甘い美しい声で。
 ティファーナが、周囲に佇む生命の精霊・聖霊達と共に、名を奪われた彼女の心身を癒す様に高らかに、その歌を紡ぎ上げていく。
「あの……蒼は……何だったの……でしょう……か」
 本当に、忘れてしまったかの様に。
 首を傾げてキョトンとしている『彼女』を見かねたか、敬輔があの『蒼』は、と小さく溜息をついて、『彼女』に話しかけた。
「大空であり、大海の世界を現す『蒼』色という。そしてその蒼は……あんたの名前でも在る筈だ、蒼」
 そう告げる敬輔に同意する様に、そうですね、と晶が『蒼』に向けて頷いた。
「少なくとも、始めてこの地に一緒に訪れた時、貴女は私達に蒼ちゃんと名乗っていました。貴女が、今の貴女をどう認識しているのかは定かではありませんが、少なくとも私達にとって、貴女は蒼ちゃん、です」
「……蒼……ですか。それが……ボクの……?」
 茫洋としたままに呟く蒼の、その言葉に。
 ふと、アランが気掛かりそうな表情を浮かべて蒼を見つめ、そうだよ、と微かに哀しげに頷いた。
「貴女は、僕に、自分のことを只の武器だと思って欲しい、そう言っていた。けれども本当に、貴女が『蒼』さんと言う自らの名を奪われ、忘れたままでは、僕達は貴女失ってしまった事になる。この戦いの果てに、その様な結末を知識神エギュレ様は、お求めになど、なっていない」
 その、アランの呼びかけに。
 自らの名前と共に奪われ、失われつつあったそれを取り戻したかの様に、ぺたん、とお尻を地面に付けて行儀悪く座っていた蒼が、ゆっくりと此方を伺う様に見つめているアランを見上げ、子供の様にコクリと頷いた。
「……分かり、ました……。ボクは、蒼、と言うの、ですね」
 子供の様な幼さを感じさせるその頷き方が、自分と同年代位の年相応の少女の様に見受けられて、戦い終わり、全てを取り戻すことの出来たことに対する安堵の微笑を浮かべたユーフィが、そっと胸を撫で下ろしている。
「蒼さん……無事に自分の名前を取り戻せて良かったですね。蛮族のわたしにとっても、蒼はとても大事な色ですから……思い出して貰えて、本当に良かったです!」
 口元を緩めたユーフィの表情にあるのは、戦士としての矜持と勇気に満ちたそれではなく、15歳という年相応の少女らしい、愛らしい笑顔。
 そんなユーフィの其れに、千尋が軽く肩を竦め、次いで、アランに差し出された手を取って立ち上がる蒼の姿を見つめて、愉快そうな笑みを浮かべた。
(「やはりヒトは、見ていて面白いものだな」)
 ヤドリガミと呼ばれる器物に魂の宿った自分達の様な存在さえも、ヒトの様に受け入れることの出来るヒトと言う存在は。
 その、千尋の思いに気がついているのか、いないのか。
 ウィリアムがちらりと千尋を一瞥しながら、コホン、と軽く咳払いを一つ。
「それでは皆さん、そろそろ帰りましょうか」
 その、ウィリアムの呼びかけに。
 アランがウィリアムの方を見て、もう、と軽く言の葉を紡いでいた。
「もう、行くのかい?」
 その、アランの呼びかけに。
「はい。私達の任務は、完了しましたから」
 リエからその体を返された理恵が、静かに頷くのにアランが微かに悄然と頷いた。
「貴方達には、本当にお世話になった。この借りは、何時か必ず聖騎士としての、僕の名にかけてお返ししましょう」
「そうね。その時は、宜しくね」
 そのアランの騎士の宣誓に、ティファーナが精霊達に礼を述べて壺に戻しながら笑顔を浮かべて頷いたところで。
「では、行きま、しょうか。アラン様、も、これから、の、旅の、無事を、お祈り、します」
 蒼のその拙く辿々しい挨拶に。
 アランが静かに頷くのを確認した統哉達は、そっとノウリッジの街を後にする。

 穏やかな春風を思わせる、翡翠色の風に運ばれて。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年01月17日
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