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私の本当に盗みたかったもの

#サクラミラージュ #ハートフル #本当に欲しいものは何ですか? #幻朧桜が大好きな影朧です #影朧と共に幻朧桜を愛でます

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#サクラミラージュ
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#幻朧桜が大好きな影朧です
#影朧と共に幻朧桜を愛でます


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●私の本当に盗みたかったもの
 私のドジは毎回だし、へっぽこ怪盗だっていう自覚は……残念な事にあった。
 でも、自ら怪盗って公言している位は怪盗をやっていたと思う。
 私には、どうしても欲しい物があった。どうしても、どうしても欲しい物があった。
 ……それが、手に入らないと分かっていても……それでも私はそれを……。

「サクラミラージュって所は、本当に不思議な場所だよな」
 そう語りかけるのは、リシア・エターナル(新しい世界を夢見る鳥・f29222)。
「転生って概念が一般的ってのも、やっぱり朧桜があるからなんだろうなって思う。だからこそ、皆、朧桜に惹かれてこの帝都に集まるんだろうな」
 リシアは猟兵達の方に目を向ける。
「……まあ、そんな訳で、朧桜に惹かれた影朧が現れたんだ。それも、まあ、ズタボロな姿でさ。その影朧は、どうやら、昔、帝都で怪盗をやっていたらしいんだ。……まあ、あんまり盗みが上手かったとは言えないし、どちらかと言えば愛嬌がある怪盗で、微笑ましく思われてたみたいだ。その辺りは、ズタボロな影朧になっていても変わってないから、まあ、会ってみれば分かるよ。で、彼女は……どうやら、どうしても盗みたかったものがあるらしい。その想いが強すぎて、その執念だけで帝都を彷徨っているんだ」
 その影朧自体は、もう長くないとリシアは告げる。
「……でもさ、そんな姿になってまで、叶えたい願いがあるんだ。出来れば叶えてあげて……彼女が転生出来るようにみんなに手伝って欲しいんだ。お願いできるかな?」


白鳥美鳥
 白鳥美鳥です。今回の影朧さんは怪盗さんです。どちらかと言うと、ドジっ子で微笑ましい人だった様です。そんな彼女には、どうしても盗みたいものがあり、それを探し求めています。
 まずは、弱り切っている怪盗『ティンクル』を無害化する為に、彼女の説得を行ってください。戦闘になりますが、戦いよりも言葉の方が何よりの武器です。彼女に寄り添ってあげてください。
 その後は、彼女を守りながら、彼女が『盗みたかったもの』がある場所に導くことになります。それはとても綺麗で……誰にも盗めないものですが、そこに連れていけば、きっと彼女が願っていた事が分かると思います。
 第三章のみ、お声かけを頂ければリシアもお手伝いいたします。

 リプレイは、ある程度集まってからお返しする形になると思います。状況により、まちまちになる可能性も高いので、マスターページやTwitterの確認をして頂けると幸いです。タグも使ってお知らせ出来るようにしたいと思います。

 皆様の優しさと思いやりが、影朧を救う鍵です。彼女が転生出来るよう導いて下さると嬉しいです。
 プレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『帝都を騒がす大怪盗』

POW   :    私は人を殺さない! …そのシリアスさだけを殺す!
【怪盗としてありったけの浪漫と非殺の決意】を籠めた【愛用のステッキ】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【シリアスな空気と戦う意思】のみを攻撃する。
SPD   :    毎回ピンチに陥って見せるのも怪盗の醍醐味ですよ!
【あえてピンチな状況に追い込まれた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ   :    怪盗といえばやっぱり予告状ですね!
【辺り一面に舞い散る予告状】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠村雨・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「おい、影朧だぞ。気付かれる前に逃げよう」
 道行く人が怯えて逃げている事に気が付かないように、彼女は歩いていた。ボロボロの怪盗衣装、その身体も透けてしまいそうだ。
「駄目、まだ……目的を果たしていないんだから……あれを……盗まなくちゃ」
世母都・かんろ
幻朧桜に導かれた彼女の、本当の願い
傷つけるばかりのわたしの力で
少しでも彼女の転生に役に立つのなら
叶えてあげたい

予告状で眠らされてしまう前に
彼女の気を惹くために歌う

お喋りは苦手だから
この歌に、想いを籠めて
【歌唱、パフォーマンス


春のにおいがどこかでしたから
遠い夢の端っこ走る
ぼくがほしかったものなんて
きっとどこにもないけれど

冬のおわりをこの目にしたくて
つめたい夜街闊歩した
きみにあげたかったものなんて
こんなちっぽけだったんだ

桜が降ったら逢いにゆこう
宝物だけ抱きしめて

冬を越えきれなかったせいで
きみが泣いてしまわぬよう


出来るだけ傷つけたくないのは
誰も傷つけないあなただから

どうか、届いて
【優しさ



 よろよろと歩く怪盗『ティンクル』。
 その傍に歩み寄るのは、世母都・かんろ(秋霖・f18159)。
 影朧、ティンクルは、びくりと身体を震わせる。強い執着を持っている彼女。だからこその警戒だろう。その目的を邪魔されたくは無いから。
 そんな彼女……ティンクルに、かんろは伝えたい事が沢山ある。でも、かんろはお喋りが苦手だ。そこには少々複雑な理由があるのだが、歌う事は綺麗なボーイソプラノのそれだ。だから、言葉で話しかけるのは苦手でも、歌に乗せて言葉を紡ぐ事は出来る。
 心からの思いを籠めて、ティンクルに届くように。
「春のにおいがどこかでしたから 遠い夢の端っこ走る。ぼくがほしかったものなんて きっとどこにもないけれど♪
 冬のおわりをこの目にしたくて つめたい夜街闊歩した。きみにあげたかったものなんて こんなちっぽけだったんだ♪
 桜が降ったら逢いにゆこう 宝物だけ抱きしめて♪
 冬を越えきれなかったせいで きみが泣いてしまわぬよう♪」
 かのんの歌に、ティンクルは視線を向ける。興味を持った様だ。
「あなたにも欲しい物があるの? ……ああ、そうか。大切な誰かにあげたいものなんだね。私は……そうだな、自分が欲しい物」
 かのんの「きみ」は、ティンクルの事。だけど、初対面の彼女には、大切な誰かと感じたらしい。
「……でも、桜が降ったら、か。それって凄く素敵だよね」
 そう言って、ティンクルは、かのんに明るくにっこりと笑いかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

涼場・応為
アドリブ共闘大歓迎です。

「うおォォォ! 実は私は怪盗をリスペクトしているぞおォォ!」

と叫びながらズタボロということで手加減しつつSPD重視で
斬りかかります。…ホント探偵らしい台詞よね。

追い込みながら敢えて大きい被害を受けない程度にわざと負けます。

「参りやした! さすが音に効いた大怪盗の姉御!
しからずんば(?)この涼場、姉御の為に粉骨砕身でお手伝い致しやす!
犯罪行為はとにかく絶対にダメでやすが!」

と三下宣言してみます。こんな役やってみたかったんですよねえ。
他の共闘可の方も軽く誘っちゃったりして。

ズタボロということで一息どうぞとアイテムの冷えたサイダーを渡しつつ、
近づこうとしましょう。



「うおォォォ! 実は私は怪盗をリスペクトしているぞおォォ!」
 そう言いながらティンクルに飛び掛かって来るのは、涼場・応為(驚天推理の脳筋探偵・f27148)。
「ひやあああ!? どうしてリスペクトしてるのに襲って来るのー!?」
 敢えてピンチどころか、必死で逃げようとするティンクル。よく考えれば、ボロボロなので、既にピンチだった。
「えええええー!? えーと、えーと……」
 急に頭を抱えて考え出す。どうするか、考えているらしい。
「分かったわ! 私よりも凄い怪盗になりたいんでしょう!」
 ちょっと予定していた反応とは違ったが、まあこの流れでも問題が無い。応為は、ティンクルに頭を下げる。
「流石の推察力! 参りやした! さすが音に効いた大怪盗の姉御! しからずんば(?)この涼場、姉御の為に粉骨砕身でお手伝い致しやす! 犯罪行為はとにかく絶対にダメでやすが!」
「いやー、大怪盗だなんて、そんなー。……あれ、でも犯罪はするよ? 怪盗だもん」
「ま、まあ、そうなんですが……姉御が何か望んでいるように思いまして……」
 流石に犯罪の手伝いは出来ないのだが、上手い具合に望んでいる物を聞き出したい。応為は猟奇探偵なのだ。ここは腕の見せ所だろう。
「あ、ちょっと待ってくださいね」
 応為は用意してきたサイダーを持ってくると、ティンクルに渡す。
「一息どうぞ、サイダーです。よく冷えてやすよ」
「わ、ありがとう!」
 ぱあっと笑顔になるティンクル。思いの外、よく笑う女の子の様だ。
「そういえば、私が望んでいる事を知っていたよね?」
「はい! そこは、私も怪盗を尊敬する者でやすから」
「わー、そんな事が分かるなんて才能あるんだね! ……私もその位、頭が回ってたらなあ……ドジもしなかったのになあ」
「いえ、姉御は人気ありますよ!」
 可愛らしく明るく笑ったと思ったら、悲しそうな顔になってがっくりと肩を落とす。こういう人は可愛らしく思われるタイプだと思うから。
「えへへ、だと良いなー。……そういえば、あなたの桜、綺麗だね」
 目を細めて微笑むとティンクルは応為の頭にある桜にそっと手を伸ばす。
「……良いなあ、桜」
 そう微笑むティンクルの笑顔は、明るいものから、また寂しいものに変わった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・アンダーウッド
アドリブ共闘何でも歓迎

成る程、つまりエンターテイナーだね♪ボクと気が合いそうだ、一緒にお話しようよ!

からくり人形(以降呼称α)を連れ影朧の元へ駆ける。αには事前にクラウンの意識が失ったら全力で殴る様に命令しておく。

ねぇねぇ、これって観客受けいいと思うかなッ。
複数の炎を展開し一纏めにして出来た巨大な火の玉を影朧へ投げつける。影朧にぶつかる瞬間に火の玉をバラけさせ、一つ一つを蝶々の形に変えて影朧を包み込み負傷を回復させる。

楽しんでくれたかい?自分のしたいことと他人の幸福を両立できてこそ、本物のエンターテイナーだよね♪



「成る程、つまり、キミはエンターテイナーなんだね♪」
 クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)の言葉に、ティンクルは首を傾げる。
「エンターテイナー……あー、でも、そうかも。こう、予告状とか出すのは、言わば目立ちたいからだし」
 ぴっと指に挟んで取り出すのは予告状。クラウンは、もし眠ってしまった場合には全力で殴る様に命令しているからくり人形の方を見やる。この予告状は催眠効果を持っているからだ。
 だが、ティンクルは予告状を開くと、中身のカードを取り出しクラウンの前に突き出して見せる。
 カードには『本日、夜十時、宝石『薔薇の欠片』を頂きに参上いたします。怪盗ティンクル』と書かれていた。
「やっぱり、派手に登場するのも良いよね! みんながワイワイ騒いで、街灯に照らされてっていうのが良いんだよね! 失敗も結構あったけど……まあ、それはそれで味があるという事で……」
 語尾が段々と小さくなっていく。どうやら、彼女は色々とドジを踏んできたようだ。でも、愛される怪盗だったのは恐らく確かだろう。何故なら、彼女の能力には人を傷付けるものは一つも無いのだから。
「ねえねえ、僕も人形遣いで大道芸なんかもやっているんだ。ちょっと披露してみても良いかな? 観客受け良いって思うんだ!」
「そうなんだ! 見てみたい!」
 瞳をキラキラさせている彼女を見て、クラウンは思わず笑みが零れる。小さな女の子みたいだ。
「じゃあ、いくよ!」
 複数の炎がクラウンの周りに現れる。その炎がくるくると回りながら一つの巨大な炎となり、ティンクルの方に飛ばした。そして、ぶつかる瞬間に火の玉は蝶の姿に変わり次々と飛び交いながら、彼女の周りを羽ばたいて傷だらけの彼女を癒していく。
「楽しんでくれたかい? 自分のしたいことと他人の幸福を両立できてこそ、本物のエンターテイナーだよね♪」
「うん……凄い。綺麗だし……優しい炎だね」
 炎の蝶を指に止めながら、目を細める。愛しい物を見つめる、そんな瞳で。
 そして、先程見せたカードを再び、クラウンに見せた。
「予告状で盗むって書いた『薔薇の欠片』はね、偽物なんだよ。よく出来ているけどね。贋作を掴まされたのか、敢えて展示しているのかは知らないけど……これを盗んで、最後には偽物なんだよー! って派手に教えるんだよ。他人の幸福になるのかは分からないけど、偽物を本物だと信じたり偽ったり、そういうのってちょっとどうかなって思って。真実を明かす事が正しい、とは言い切れないけどね。でも、嘘も好きじゃないし」
 それから、ティンクルは視線を移し、とある方向を指差した。その先にあるのは幻朧桜。
「他人を幸福に出来るっていうなら、間違いなく朧桜だよね」
「そうだね。影朧を転生させる……サクラミラージュの象徴だからね」
「私ね……幻朧桜が好きなんだ……凄く凄く好きなんだよ」
 そう言って、ティンクルは微笑む。好きだという気持ちと悲しい気持ちを合わせもった笑顔で。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シグルド・ヴォルフガング
●POW
殺めるのを佳しとせず非殺という美学の怪盗ですか
生前は義賊として、さぞ世間を賑わかせ、話に花を咲かせていたのでしょう

その敬意を示すよう、こちらには交戦の意思は無いと剣を収めて会話に望みたい所ですが、見ず知らずの者に突然話し掛けられれば構えるでしょう
であれば、こちらも旅の最中に見覚えた一芸をして切っ掛けを作りましょう

さて、お立ち会い
桜紙を切れば、一枚が二枚、二枚が四枚
八枚十六枚三二枚六四枚百二十八枚、舞うは桜吹雪ならぬ紙吹雪

最後はフォースによる【念動力】で風もなく飛ばしますが、残念ながらガマの油はありませんのでここまでです

打ち解けた所で幾つか会話をし、その予告した場へ案内して貰いましょうか


アルゲディ・シュタインボック
そりゃあ、こんなド派手に予告しちゃったら警備も野次馬も何も倍増して盗む難易度ドカーンと跳ね上がるに決まってるじゃないのよ!!
(UCの炎で舞い散る予告状消し炭にしながら)
何と言うか、手段と目的がズレてるわね
どうせ死因もドジこいた奴なんでしょ?
ツッコみの血が騒ぐわ

で、なに? どれを盗みに行くの?
盗んだ後に派手に行きたいならそっちメインにしないと
手に入れるのはあくまでその下準備
驚きってのは勢いも大事だけど、計画性も大事よ
入念に準備して打ち上げる花火と一緒

さ、行くわよ怪盗ちゃん
その何とかっての、盗みに行くんでしょ?
大丈夫、チームでサポートするから
貴女の最期の大仕事、派手な大輪の花火にしてやるわよ!



(「殺めるのを佳しとせず非殺という美学の怪盗ですか。その敬意を示すよう、こちらには交戦の意思は無いと剣を収めて会話に望みたい所ですが……」)
 とはいえ、急に話しかければ驚いてしまうかもしれない。シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)は、旅の最中に見覚えた一芸をティンクルに披露する事から始める事にした。
「さて、お立ち会い」
 シグルドが披露するのは『がまの油売りの口上』だ。
「桜紙を切れば、一枚が二枚、二枚が四枚」
 桜紙を折りながら、それを切っていく。その様子をティンクルは、興味深そうにじっと見ていた。伝統芸の一つだが、彼女は初めて見るのかもしれない。
「八枚十六枚三二枚六四枚百二十八枚、舞うは桜吹雪ならぬ紙吹雪」
 小さな紙片がフォースの風に乗り、美しく舞い踊った。
「わー! 凄い、凄い! 桜吹雪みたい!! 本物とは違うけど、やっぱり綺麗な物は綺麗だね!」
 それに呼応するようにティンクルが嬉しそうにパチパチと手を叩いている。本当に嬉しそうで無邪気な笑顔だ。
「そういえば予告状もあんな感じでばらまいて……」
「こんなド派手に予告しちゃったら警備も野次馬も何も倍増して盗む難易度ドカーンと跳ね上がるに決まってるじゃないのよ!!」
 そうティンクルに華麗にツッコミを入れてくる、アルゲディ・シュタインボック(白金の癒杖・f03929)。手には一通の予告状。確かにその言葉通り、彼女がドジなのに加えて難易度を上げればそれは失敗が多々になっても仕方が無いだろう。
「そ、そうか! でも、やっぱりこう、人が集まってくれたり騒いでくれるとテンションが上がるというか……」
「それがハードル上げてるんでしょう? 何と言うか、手段と目的がズレてるわね」
「はうう!」
 次々と駄目出しを喰らうティンクル。その姿は悪戯に失敗した少女を叱っているお姉さんという感じだ。
「まあまあ、アルゲディさん。彼女は義賊として、さぞ世間を賑わかせ、話に花を咲かせていたのでしょう」
「……紙吹雪のお兄さん、優しい」
 シグルドのフォローに、涙目を浮かべるティンクル。だが。
「どうせ死因もドジこいた奴なんでしょ?」
「お、お姉さん、凄く綺麗で優しそうな顔してるのに……私の心を切り刻むのが上手い……私の心は今、お兄さんの紙吹雪の様だよ……悲しい方向の方で」
 アルゲディの容赦のない追撃に精神的ダメージを負う怪盗ティンクル。
「……ううう、大好きな幻朧桜を眺めてて、気が付いたら死んでたなんてお姉さんに知られたら、きっともっと容赦の無いツッコミが……!!」
 知られたくないと言いつつ、自ら白状しているティンクルにアルゲディは思う。どこまでもツッコめそうな子だと。寧ろ、今までどうやって盗んだり逃げ延びて来たのだろうか。盗む目的が義賊的だったり、この抜けている性格で笑いを誘って切り抜けていた確率の方が高そうだ。
「で、なに? どれを盗みに行くの?」
「……お姉さんの持ってる予告状の中、見てみてくれる?」
「ああ、これね……どれどれ?」
 先程、一枚残しておいた予告状。その封を開けてみる。
『今夜、幻朧桜を頂きに参上します。怪盗ティンクル』
 そう書かれていた。
「……これは」
「うん、無理でしょう。知ってる。それに、この予告状は本当に自分の願望だし、勿論出すつもりも無かったし、当然影朧になるつもりも無かったんだけど……死に方が悪かったのかなあ。まさか、幻朧桜への思い残しでこんな事になるとは……」
 その予告状の内容にシグルドは言葉を詰まらせる。これは、絶対に盗めない。ついでに影朧になるつもりも無かったらしい。だが、彼女にとって幻朧桜は特別な存在。盗めない事も分かっている。しかし、心のどこかでその想いは捨てきれていなかったのだろう。
「幻朧桜を手に入れる……事は無理でも、ちょっと位は包まれたかったのかなあ……」
 悲し気に呟くティンクルに、アルゲディは優しく背中を叩く。
「こればかりは入念に準備をするのは難しいけど、話を聞く限りでは死因が関与している可能性はあるわね。怪盗ちゃん幻朧桜を見て死んだ所はどこなの?」
「な、何でお姉さんがそれを……!!」
 悲壮な顔をしているティンクル。
「いえ、あなた、自分で言ったわよ? ねえ?」
「確かに、言っていましたね」
 アルゲディがシグルドに同意を求めると、彼も頷く。
「……あのね、幻朧桜が凄く綺麗に見える所があるの。記憶が途切れてるから、多分そこで死んだんじゃないかな。……でも、盗めないのは本当は分かっているし、どうせこのまま消えるなら幻朧桜をしっかり堪能してから消えたい、かな」
 そう言えば、気が付いたら死んでいたと言っていた。ドジが関与しているのかは分からない所だが……。
「まあ、幻朧桜を盗む事は無理でも、怪盗ちゃんの幻朧桜を堪能してから消えたいっていう願いなら叶えられそうね。そこに案内してくれるかしら」
「うん、良いけど……」
 その言葉に、アルゲディもシグルドも微笑む。幻朧桜を堪能したい……それは彼女が幻朧桜に包まれて転生出来る可能性がある。それこそ、彼女の本望だと思うから。
「大丈夫、チームでサポートするから貴女の最期の大仕事、派手な大輪の花火にしてやるわよ!」
「ありがとう! お姉さん、優しい人だったんだね!」
 最後の一言は余計だとアルゲディは思いつつ、一行はティンクルに案内されて、幻朧桜が美しく見える場所に案内される事になったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「みんな、ティンクルの説得をしてくれて有難う」
 リシアは感謝の言葉を伝える。
「ティンクルの心残りである『盗みたかったもの』とは『幻朧桜』の事だった様だ。勿論、彼女もそれが盗めないものである事は知っている。だから、彼女がお気に入りの『幻朧桜を見る場所』で、楽しい一時を過ごして欲しい。場所の方は俺が先回りで人が近づかない様にしておくから、皆には彼女が無事に辿り着けるようにして貰いたい。ただでさえ、消えそうだからな。宜しく頼むよ」
世母都・かんろ
ティンクルとお話しながら彼女のお気に入りの場所へ
移動は燕を先行させ偵察
なるべく人の少ない道を選ぶよう意識
騒ぎになる前に素早く歩いて
…なんだか、怪盗の気分

綺麗、です、よ、ね
わた、し、帝都に、来るの、だいすき、なの
あなた、も、桜と、帝都、が
すき、なの、ね

彼女のお気に入りの場所に辿り着いたら
隣で一緒に幻朧桜の舞う光景を眺め

お、きにい、り、の、場所
とっても、素敵、です
ここ、は、秘密、の、場所、かし、ら?

もしそうなら
わたしも秘密のままに

誰も傷つけない
夢と浪漫をもった不思議な怪盗さん

生まれ、変わって、も
あな、たが、夢を、もてます、よう、に

桜がきっと
彼女のこころを導いてくれるはずだから
笑顔でお別れを



 ズタボロ影朧とはいえ、やはり影朧。街の人達にとっては脅威の存在。そんなティンクルを守りつつ、世母都・かんろはティンクルに話しかけつつ、使い魔の燕にお願いして、人が少ない道を選び、彼女の思い出の地に導いていく。
(「騒ぎになる前に素早く歩いて……なんだか、怪盗の気分」)
 そんな気持ちがかんろに過る。派手な予告をしてしまうティンクルとは逆だ。
「綺麗、です、よ、ね。わた、し、帝都に、来るの、だいすき、なの。あなた、も、桜と、帝都、が、すき、なの、ね」
 話す事が苦手なかんろだけれど、ティンクルの想いは分かる気がする。帝都の幻朧桜はとても綺麗だから。盗めない事を知っていても、心残りになってしまう位、彼女が幻朧桜を愛している事も分かるから。
「うん。大好き。帝都も好きだよ。まあ、色々とドジ踏んじゃったりもしたけれど……帝都の明るい雰囲気も、神秘的でとても綺麗な。幻朧桜も大好き。……後、影朧を転生させてあげたいって思っているサクラミラージュの人達の心も……やっぱり好きかな」
「お、きにい、り、の、場所、秘密、の、場所、かし、ら?」
「うーん、どうだろう。幻朧桜が綺麗に見える場所だから、知っている人も多いんじゃないかな。毎日通う人なんかは流石に少ないと思うけど、サクラミラージュの人にとって特別な桜だし。私、久し振りに行くから、凄く楽しみ!」
 にこにこと笑うティンクルは、本当にその場所が好きなのだろう。
 ティンクルは、誰も傷つけない夢と浪漫をもった不思議な怪盗だと思う。
(「生まれ変わっても、あなたが、夢をもてますように」)
 かんろは、強くそう思う。桜がきっと、彼女のこころを導いてくれるはずだから。だから、その時は笑顔でお別れをしたい。
 にこにこしている彼女が、また笑顔で生まれ変われる様に、そう願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルゲディ・シュタインボック
UCの蛇クン達には先行して貰って人通りの少ない場所選んで、と
怪盗ちゃん、私のパラソル貸してあげるわ
日傘として差しておけば、少しはそのボロボロ格好隠せるでしょ?

それにしても、影朧になるくらいだし…
相当思いがけない突然死だったのねこの子
病死には思えないし、事故死か他殺…?
つーかボロボロなのが気になるのよね…
――色々推測しつつ、会話の中で引き出せないかしら

行き先についても話を聞きつつ
それにしても盗みたいだなんて、独り占めは良くないわ
みんなで見た方が楽しいと思うんだけど
でも皮肉よね…影朧となった事で、上手く導かれたら貴女は文字通り幻朧桜に包まれるって事よね

果たしてそれが幸せか、私には解らないけど…ね



 アルゲディ・シュタインボックは癒やしの光で象られた蛇達に先行して貰い、人通りが少ない道を選びながら、目的の場所に向かう。
「怪盗ちゃん、私のパラソル貸してあげるわ。日傘として差しておけば、少しはそのボロボロ格好隠せるでしょ?」
 パラソルをそっとティンクルに差し出すアルゲディを見て、ティンクルは感動した顔で瞳をキラキラとさせている。
「お姉さん、本当に優しいんだね! 怖い人だって誤解してごめんなさい……」
 まだ最初に心に加えてしまった恐怖心がティンクルには若干残っているらしく、最初はパラソルにびくっとしたが、貸してくれる意図を聞いて感動している。
 アルゲディが貸してくれたパラソルをウキウキと差すティンクル。
「パラソルかー、パラソルを使った演出はした事が無かったなあ」
「うん、それは何となく止めておいた方が良いと思うわよ?」
 頭の中でパラソルの扱いに失敗しているティンクルが浮かんで、アルゲディはそれとなく伝える。
「……確かに慣れない物を使うと酷い事になるかも。パラソル、素敵なのになあ……」
 ドジの自覚のあるティンクルはがっくりとしつつ、アルゲディの薄紅色のパラソルをくるくるさせている。気に入ったのだろうか。薄紅色は桜の花弁の色にも似ていないとは言えないから。
(「つーかボロボロなのが気になるのよね……」)
 パラソルを楽しそうに回転させているこの影朧はボロボロで今にも消えかねない状態だ。幻朧桜を見ながら死んでしまったとの事なので、影朧になってしまった原因は、恐らく病死ではなく事故死か他殺、なのだろうか?
「うん? お姉さん、どうかしたの?」
 アルゲディの視線に気が付いたティンクルが視線を向けてくる。
「久し振りに行く場所なのよね?」
「うん。あそこから見る幻朧桜はとても綺麗で……あはは……ちょっと、私、酷い恰好だからなあ」
 自身のボロボロの姿に、少し苦笑いをティンクルは浮かべた。
「どうしてまた、そんな姿になってしまったの? 怪盗なんだから、衣装には気を使ったでしょうに」
「うん、そうなんだけどね……何で影朧になったのかその辺りは分からないし、やっていた事を考えれば殺されたのかもしれないけれど、復讐したいかって言えばそんな事は無いし。生きている時も今も、誰かを傷付けたいって気持ちは無いのは変わらないかな。でも色々な人を驚かせちゃうし、幻朧桜を見ながらどこなら私は居ても良いんだろうって思ったりして……結構長い間帝都を彷徨っていたかも。経年劣化なのかなあ?」
 影朧に経年劣化等聞いた事は無いが、影朧の多くは傷つき虐げられてきたものの過去。殺された可能性の方が高いかもしれない。……結果、殺意の欠片も持たない影朧が生まれてしまった訳なのだけれど。
「で、何か……盗めもしないのに幻朧桜に執着するようになってきて」
「独り占めは良くないわ。みんなで見た方が楽しいと思うんだけど」
「それは、お姉さんの言う通りなんだよね。私も昔はそうだったし……何だろう、帝都を彷徨っているうちにそんな気持ちがどんどん強くなっちゃったっていうか」
 何故、自分自身も幻朧桜を盗もうとしたのかは分かっていない様だ。盗めるものでも無い事を承知もしていた。影朧は幻朧桜に惹かれ、幻朧桜も傷ついた影朧を呼び寄せている。『好きな幻朧桜』が、彼女が長く影朧として彷徨ったが為に『幻朧桜を求める』様になってしまったのかもしれない。そして、かつての怪盗の心と結びつき、強い執着へと変わった可能性もある。
「でも、今度は盗むんじゃなくて、ちゃんと楽しむ。一緒に居てくれる人がいるならその人達と一緒に思いっ切り楽しむよ」
 にっこりと笑うティンクル。しかし、アルゲディは少々複雑だ。幻朧桜が好きな彼女が影朧として上手く導かれたら……本当に文字通り幻朧桜に包まれる事になる。それが、幸せな事なのかどうかはアルゲディには分からない。話の内容からすれば、彼女はサクラミラージュの住人だろう。その感じ方はまた、別なのかもしれない。
(「でも、この子が笑っていられたら……少なくとも彼女にとっては『幸せ』だと思っても良い、のよね?」)
 この先にあるという彼女のお気に入りの場所、そこの幻朧桜は彼女をどう迎えてくれるのだろうか? そう思いを馳せるアルゲディだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「ふうん、雪菜ちゃんは雪や氷が好きなんだ」
「はい。手に触れた時、雪の結晶が溶けていく様子が凄く好きなんです」
 氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)とティンクルは話しながら目的地であるティンクルの大好きな幻朧桜の咲いている場所に向かっていた。
「雪の結晶が溶けていく……うん、綺麗だよね。私、幻朧桜が大好きなんだけど、桜も桜吹雪が綺麗なんだよ。幻朧桜の桜吹雪、凄く綺麗だから雪菜ちゃんも気に入ってくれるかなって思うんだけど……」
「確かにサクラミラージュは桜が舞っていて、雪みたいですよね。とても綺麗です。……実は、私、花も好きなんです。この先に、幻朧桜が綺麗に見える場所があるんですよね? どんな風に帝都の幻朧桜が見られるのか楽しみです」
 雪や氷だけではなく、花も好きな雪菜。困っている人……ではなく、ボロボロで消えかけていて、思い残した大好きな幻朧桜を見て消えたいというティンクルは、雪菜の性格的に放っておけなかった。それに、幻朧桜の話をする時のティンクルの表情はとても明るくて、彼女がどの位、幻朧桜を愛しているのかという事も伝わって来る。そんな彼女がお気に入りの光景とはどんなものなのか気になって来た。
「うんうん、楽しみにしてくれて良いよ! お花が好きなら絶対に気に入ると思う!」
 にこにこ笑うティンクル。幻朧桜は影朧を転生に導いたりもするサクラミラージュ独自の桜。ティンクルはその影朧であり、生前から大好きだった幻朧桜を見てから消えようと思っているらしい。
(「……まるで、お話みたい」)
 転生に導く幻朧桜を最期に見たいと思っている影朧。もし、上手くいけば……彼女は大好きな幻朧桜によって転生へと導かれる。それは、まるで絵本に出てきそうなお話。それが、今、現実に隣りで笑っている。不思議な感覚だ。
「あ、見えてきたよ! あそこで見る幻朧桜はとっても綺麗なんだ!」
 ティンクルが嬉しそうに指差す先には、幻朧桜が沢山咲き乱れている場所だった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『夜桜の宴』

POW   :    花見に適した場所を確保する。

SPD   :    周囲を散策しながら夜桜を楽しむ。

WIZ   :    提灯の灯りを調整し、最も桜が美しく見える光量を模索する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

世母都・かんろ
夜空と桜
ぼんぼりの明かり
水面に映る全てが綺麗で、ため息が零れる

ここ、が
あなた、の、お気に、入り、の、場所

本当、に
盗、みたく、なるくらい、ね

そろり、桜の歌を口ずさむ
帝都の流行歌はいくつか知っていて
その中でもお気に入りの春の歌

お別れの歌だけど、またねを願う詞だから

水面に落ちた花弁のひとひらも
彼女の心の欠片に見えて

わたしは、優しい素敵な怪盗さんの心に
添えているかしら

わからないけれど
傷ついた影朧をこうして救えるなら
わたしは、この帝都に来てよかった

ティンクル
もし、生まれ、変わった、ら

また、あな、たに
会いたい、と、思う、の

誰も傷つけない怪盗さんの活躍に
わたしはきっと、心を躍らせてしまうから



「ここ、が、あなた、の、お気に、入り、の、場所」
「うん、凄く綺麗でしょう?」
 世母都・かんろの言葉に、ティンクルは嬉しそうに笑う。
 夜空と幻朧桜、ぼんぼりで淡く照らされた桜の花に、水面に映る光と桜……。
 その全てが綺麗で美しくてため息が零れる。
 ――ここがティンクルの大好きな場所。お気に入りの場所。ここで、彼女は幻朧桜をいつも見ていたのだ。
「本当、に、盗、みたく、なるくらい、ね」
「――うん、この景色ごと、全部盗みたくなっちゃう位、綺麗でしょう? ここの幻朧桜はいつも綺麗で、いつまでも見ていたくなっちゃうんだよね」
 ティンクルの瞳には綺麗な桜が映っている。そんな彼女を見ながら、かんろは桜の歌を紡ぐ。その歌は帝都での流行歌で、かんろがいくつか知っている歌。そして、この歌は、かんろのお気に入りであり、この桜の景色に似合う春の歌だ。
 この歌はお別れの歌だけれど、またねを願う歌。かんろがティンクルに伝えたい詞が紡がれている。
 水面に落ちた花弁のひとひらも彼女の心の欠片に見えて、かんろはこの優しく素敵な怪盗の心に添えているのか、そんな事を思う。
 その怪盗は幻朧桜を眺めながら、かんろの歌に耳を澄ませて聞き入ってくれているようだ。答えは彼女の中にあるのだから、分からないけれど、彼女を救える事が出来るのであれば帝都に来て本当に良かったと思う。
 かんろが歌い終わった時、ティンクルは彼に向かって微笑んだ。
「初めてあなたに会った時も、綺麗な歌を歌ってくれたよね? この歌も好きだけれど、あなたの歌声も凄く好き。歌ってくれて……また聞かせてくれてありがとう」
 初めてティンクルに出会った時も、かんろは歌を歌った。それを、まだ心も開いてくれていなかった彼女は覚えていた様だ。その事を覚えていてくれたのは嬉しく感じる。
「ティンクル。もし、生まれ、変わった、ら、また、あな、たに、会いたい、と、思う、の」
「うん……私も。もし、また会えたなら……歌を聞かせてね?」
 もし、彼女が生まれ変わったら、どんな人生を辿るのだろう。また、誰も傷つけない怪盗になっていたら、かんろの心は踊るだろう。そして、それが違っていたとしても――幻朧桜を愛する者になっているのではないだろうか。
 ――もしかしたら、かんろの歌を、その言葉通りに聞きに来てくれるかもしれない。
 また、いつか――帝都のどこかで、きっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・アンダーウッド
やぁやぁ、花見の準備をしていたら遅れてしまったよ。
もしもボクがキミに付き添っていたらパレード実施待ったなしだったね!

リシアさん、ボクらと一緒に花見しませんか?
後の幻朧桜周辺の封鎖はボクの人形達にやらせますから。

夜桜が最も映える場所にシートを引き、二人にブランケットを手渡す。

飲み物も色々用意しているから欲しい飲み物あったら教えてね♪
クラウンは自分用に甘酒を取り出す。

そういえば、桜の下には死体が埋まっているなんて話があるよね。
ティンクルの生前の遺体も桜の下にあったりして...なんて。あぁ、樹の下に埋葬された人物でロビンフッドって奴がいたなぁ。ある意味、ロビンフッドとティンクルは似た者同士だけどね♪


アルゲディ・シュタインボック
うわぁ…何て言って良いのかしら
夜の深い蒼と、桜の薄紅色
私の生まれ育った世界じゃまず無い風景だわ
水のせせらぎに提灯の明かりに…全てがまるで芸術、ね
うん、怪盗ちゃんが盗みたいとか言っちゃう気持ち、理解出来たわ

――そうだ、写真撮っておきましょ
アース世界で使ってるスマホで風景を撮影
怪盗ちゃん、貴方も撮ってあげる
軽く服整えてから…撮るわよー
どうかしらこの写真。貴方だけの桜になってるんじゃない?

もう、逝く時が近づいているかしら
それだけ幻朧桜を愛してるなら、きっと素敵な転生先に導かれるわ
さようなら、お茶目な怪盗だったティンクルちゃん
(最後の最後に名で呼び)
貴方の次の人生に幸多からん事を
祈り微笑んで送るわね



 ティンクルと共に過ごす花見の準備をしてきた、クラウン・アンダーウッド。
 この場所はリシア・エターナルが人払いをしていたのだが、彼にもティンクルとの花見を楽しむために、人形遣いである彼は人形達にそれを任せて、花見に誘った。人数が多い方が、きっと楽しく過ごせるだろうから。
 ティンクルの意見も聞きつつ、幻朧桜が綺麗に見える所にシートを引く。そこに、アルゲディ・シュタインボックも参加し、クラウンは夜の寒さをしのぐ為に、ブランケットも配った。
「うーん、ここから見る幻朧桜も綺麗だねえ。こうやって、他の人達と見るのは初めてかも。……あ、でも子供の頃はあったかな。大人になってからは、ほら、私、怪盗やってるから……一応、それなりに目立つ可能性もあるし、ね。だから、ちょっとワクワクしちゃうし、凄く新鮮かも」
 これだけ幻朧桜が好きなのは、やはり子供の頃の影響もあるのだろう。小さな頃から目を輝かせていたに違いない。
「飲み物も色々用意しているから欲しい飲み物あったら教えてね♪」
 色々と用意してきた飲み物を用意しつつ、クラウンは甘酒をお供にお花見を楽しむ。
「ふふ、こんなお花見、久しぶりだなあ」
 お花見にティンクルは楽しんでいる様だ。いつも見ていた時とは違う、幻朧桜の楽しみ方が楽しくて仕方が無いらしい。
(「そういえば、桜の下には死体が埋まっているなんて話があるよね。ティンクルの生前の遺体も桜の下にあったりして.……なんて」)
 そんな事をクラウンは思う。でも、これだけ幻朧桜が好きなティンクルなので、それはそれで本望かもしれない。勿論、サクラミラージュにそんな事が起きるかどうかは分からないけれど……もしそうだったらロビンフッドを思い出す。人を殺さない事を身上とする怪盗である彼女と、一風変わった彼は似ている所があるから。
「うーん、一人で見る幻朧桜も好きだったけど、4人で見る事が出来るのは嬉しいなあ。幻朧桜がより一層、素敵だなって思えるし……消える前に見る事が出来て良かったな」
 この場所はティンクルがいつも幻朧桜を見ていた場所とは違うけれど、彼女は随分と体験していなかったお花見に心を奪われている様だ。その瞳は幻朧桜を映していて、本当に彼女が好きでたまらないという気持ちが伝わって来る。
「……何て言って良いのかしら。夜の深い蒼と、桜の薄紅色。私の生まれ育った世界じゃまず無い風景だわ」
「私は他の世界を知らないから分からないけれど、ここから見る幻朧桜は最高だと思うよ。きっと、他の世界に負けない位」
 影朧を引き寄せる幻朧桜。それはきっと、このサクラミラージュだけの光景。美しくも儚い……それでも、心を惹かれる、そんな桜。
「水のせせらぎに提灯の明かりに……全てがまるで芸術、ね。うん、怪盗ちゃんが盗みたいとか言っちゃう気持ち、理解出来たわ」
「有難う、お姉さん。……本当に、ここを私だけのものにしたくなる位に綺麗で……多分、心残りになっちゃったんだろうなあ。でも、ここの幻朧桜を最期に見られて良かった」
「――そうだ、写真撮っておきましょ」
 アルゲディが取り出したスマートフォン。見た事の無いものなので興味深そうにティンクルが覗き込んでくる。
「この小さな……機械かな? これで、写真が撮れるの?」
「ええ、こんな感じでね」
 アルゲディが映した幻朧桜の写真を見て、ティンクルは驚いている。
「凄い! 直ぐに写真が撮れるんだ!」
 わくわくとしているティンクルに、アルゲディは微笑む。
「怪盗ちゃん、貴方も撮ってあげる。軽く服整えてから……撮るわよー」
「え、私も!? えっと、えっと……こんな感じで良いかな?」
 ボロボロながらも、一生懸命に身なりを整えるティンクルをアルゲディは写真に収める。
「どうかしらこの写真。貴方だけの桜になってるんじゃない?」
 幻朧桜とティンクルの映った写真。それを見て、ティンクルはため息をつく。
「……本当だ。私だけの幻朧桜みたい。……凄く嬉しいな」
 幸せそうに微笑むティンクルの身体は、もう透けてきている。もう、お別れの時間なのだろう。
「それだけ幻朧桜を愛してるなら、きっと素敵な転生先に導かれるわ。さようなら、お茶目な怪盗だったティンクルちゃん」
「……!」
 アルゲディが名前を呼んでくれた事にティンクルは満面の笑顔を見せる。
「うん、ありがとう。アルゲディさん。それからクラウンさんやリシアさんも最期の我儘に付き合ってくれて有難う」
 ティンクルもお姉さんではなくアルゲディの名前を呼んで感謝を伝える。そして、共に幻朧桜を楽しんだ二人にも感謝の言葉を伝えた。
 薄く消えていく彼女は……桜の花弁に包まれるように薄くなっていく。
「貴方の次の人生に幸多からん事を――」
「――うん、有難う。いつか……もし、どこかで会えたら宜しくね」
 微笑みながら桜の花弁と共に消えていくティンクル。
 ――幻朧桜に導かれて、帝都の怪盗が、再び転生する事を、皆、心から祈りながら――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月01日


挿絵イラスト