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絲結い

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #バトラー・サファイア #クリスタリアン #漿船

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#漿船


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●漿船
 天より降り注ぐ人工光。
 光を浴びた床も、天井も、柱も。
 全てが内側からうっすらと、鈍く瞬いているように見えるだろうか。
 大きなホールに集ったクリスタリアン達は、新年を祝うべく賑々しくも華やかに。
 クリスタリアン達が大きく伸びた結晶の先へと手を伸ばすとまるで魔法のようにしゅるりしゅるりと解けて、くるくると捩られ糸へと紡がれてゆく。
 これは、彼女達の祝いの儀式。
 一年の幸福を祈って宝石糸を結う、この船のクリスタリアン達の伝統儀式。
 細き絲を、結いで糸に。
 縁を、命を、愛を、歴史を紡ぎ、結いあげる。
 大切な、大切な、一年の始まりを彩る儀式なのだ。
 ――そこにこつりと、一つの足音が響いた。
「あなたとも、随分と久しぶりですね」
 執事服を身に纏った、サファイアのクリスタリアンの女が床を見つめて。
 懐かしむように言葉を紡ぐと、床の奥がほんのりと色を蠢かせた。
「私はただプリンセス・エメラルド――、あなたの所有主であるプリンセスの為に力を借りたいだけですよ。そんなに怯えなくとも良いでしょう?」
 彼女が壁を柔く撫でると、ゆらゆらと何かを訴えかけるように。
 周りの床、天井、柱も、全てが色彩を移ろわせる。
 否。
 訴えているのであろう。
 ここは――この船は。
 もはや随分と前に失われた技術で建造された、世界最古の旧式移民船『漿船』である。
 全てが宝石で出来ている船体はその船自身が意志を有しており。
 その船の住人のクリスタリアン達は、船とテレパシーで意思疎通を行うことが出来ると言われている。
「あなたも長く生きたものですね。随分と意志が弱まっているようです」
 サファイアのクリスタリアンは、ほんの少し瞳を和らげて言葉を接ぎ。
 それから彼女は、宝石の壁を指先でとん、と叩いた。
「大丈夫ですよ」
 ――猟書家『バトラー・サファイア』は顔を上げると、クリスタリアン達を睨めつけて。
「別れの挨拶の時間位は差し上げましょう。――抵抗しても無駄ですよ。あなたの育んだ愛しきクリスタリアン達は、今から全て排除しますので」
 空中で円を描くように、一瞬で暗器が展開させた。

●グリモアベース
「あけましておめでとうございまーす!」
 丁寧に頭を下げた小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)が顔を上げると、ぴっと獣を耳を立てて。
「早速っスけれど、お仕事の話を聞いて欲しいっスよ!」
 そうして彼女は、スペースシップワールドに猟書家『バトラー・サファイア』が現れる予知を見たと語り出した。
 漿船――クリスタルシップと呼ばれる、クリスタリアン達が太古より使用している旧式の移民船群。
 その漿船達のかつての最長老であったプリンセス・エメラルドは、スペースシップワールドを欲し『帝国継承軍の誕生』を実現すべく既に行動を始めている。
「プリンセス・エメラルドに仕えるバトラー・サファイアは、漿船に住むクリスタリアン達を全滅させて船を奪おうとしているっス」
 バトラー・サファイアは、漿船の中に隠された『転送装置』を利用して船の中に突然現れる。
「けれど。今回は予知で現れる場所も見えているっス! ので、センセ達はそこで敵が現れるまで彼女たちの新年を祝う儀式の手伝いをして欲しいっス!」
 ――バトラー・サファイアも過去には漿船と関わりがあった。
 儀式に集まっているクリスタリアン達を一網打尽にすべく彼女は現れる為、前もって避難する事は彼女に不信感を与えるだろう。
 それに。
 クリスタリアンたちの命も、日常を守る事ができるのも、猟兵達だけなのだ。
「それでは、新年早々申し訳ないっスけれど、頼んだっスよセンセたち!」
 もう一度ぺこりと頭を下げたいすゞはコーンとぽっくり下駄を鳴らして、狐のように笑みを深めた。


絲上ゆいこ
 あけましておめでとうございます、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。始めましての猟兵さん達も、よく顔をあわせて下さる猟兵さん達も、どうぞよろしくお願いいたします!

●第1章『古い船に伝わる、古い習慣・行事・言い伝え』
 人工光の降り注ぐホールに、様々な種類の宝石が水晶のように生えています。
 地球での宝石のあり方に配慮する必要はありません。宇宙ですので!!!
 宝石は手を添えると細い幾つもの絲と成って解ける為、現地のクリスタリアン達が紡いで糸に加工してくれます。
 その糸を縁や、命や、愛や、歴史に見立てて、祈り結ぶ行事だそうです。

 具体的には、好きな宝石から糸を紡いだ後。
 クリスタリアン達に頼むと、宝石の糸や紐を作ってもらえます。
 それを現地の宝石碑に祈ったり、吊り下げる事で、悪い縁を置いていったり。
 指輪や根付等、アクセサリに加工する事で、紡いだ良縁を持っていったり出来ます。
 相手への縁を紡ぎ合って交換したりする事も、若者の中で流行っているそうですよ。

 宇宙なので、きっと私達の知らない宝石も沢山あるでしょう。
 宝石に詳しく無くとも、ふんわりとどうぞ!
 なんか良い感じに新年の始まりを祝って、加工したり、採取したり、お祈りしたりできる一章です。

●迷子防止のおまじない
 ・複数人でのご参加は冒頭に「お相手のキャラクターの呼び方とID」または「共通のグループ名」の明記をお願いします。
 ・3名以上でのご参加は、グループ名推奨です。2名でも文字数が苦しい時はグループ名を使用してみて下さい!

●その他
 ・プレイングが迷惑行為、指定が一方通行、指定の同行者が居ない、同行者のID(共通のグループ名)が書かれていない場合は描写できない場合があります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 日常 『古い船に伝わる、古い習慣・行事・言い伝え』

POW   :    ●『実際に体験してみたりする』

SPD   :    ●『聞いて回ってみたり、様子を伺ってみたりする』

WIZ   :    ●『自分の知識と照らし合わせてみたり、そこから推理してみたりする』

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイグレー・ブルー
新年を故郷の世界で過ごすのも良いですね…とはいえわたくしが住んでいる古い船よりとっっても綺麗であります!!

わたくしはクリスタリアンではないので直接お手伝いする事は叶わないのでありますが、お手を取り念動力で皆様の手の届かない所へお運びしてお手伝いできたら!
普段浮いて移動しております故、安全にえすこーといたします……!

あ、あと宝石の糸を少し分けてもらい、それで編んだ組紐で指環を作っていただいて是非お守りにしたいと思っておりますっ
わたくし、おともだちが欲しくて……今年もそれを目標にしたいと思っているであります
きっとわたくし自身が頑張らねばならないのですが、このお守りに背中を押していただきたいと……!



●おともだち
「わあぁ……!」
 銀河を宿したかのような、すべやかな星夜色の肌。
 掌をぎゅっと握りしめたアイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿す・f20814)は、瞳の緑を好奇心にぴかぴかと瞬かせて。
「とっっても綺麗であります……!!」
 ここもアイグレーの棲家である朽ちかけた宇宙船と同じ、スペースシップワールドだと言うのに。
 壁も、床も、天井も。全てが全て、宝石で出来たこの漿船は、全てが輝いて見えた。
 その中でも様々な種類の宝石を湛える晶洞のように、そこかしこから宝石の結晶が伸びるこのホールは一際美しく。
 折角の新年を故郷で過ごすのも良い、と引き受けた仕事ではあったが。スペースおのぼりさんのアイグレーからすれば、その全てが綺麗で珍しく見える。
「……」
 息を呑んだアイグレーが何となくそうっとこっそり宝石の先を突いた――、瞬間。
「あ、貴女が今日来てくれたという猟兵さん?」
「ほあっ!? はっ、はい!」
 掛けられた声にアイグレーは、肩どころか全身を波打たせて跳ねた。
 ペクトライトを身体に宿したクリスタリアンの少女がくすくすと笑って。
「驚きすぎだよ」
「ほ、本日は皆様の移動を、えすこーとさせていだたきます!」
「ふふ、ありがとう。マザー……この船も喜んでいるよ」
「漿船殿も喜んでくださるならば、なによりであります!」
 向こうに運んでくれる? と首を傾いだクリスタリアンの手を、アイグレーは取って。
 ふうわりふわり二人は空中を歩み出す。
 ラリマーは手近な一つの結晶へと手を伸ばすと、するりするりと糸を紡ぎだし――。
「そういえばクリスタリアン殿、後で少し糸を分けていただいてもよいでしょうか?」
「ラリマーで良いよ。……うん、勿論。マザーからも猟兵さんには、良くするように言われているからね」
「はっ、わたくしはアイグレーであります。ありがとうございます、ラリマー殿!」
「うんうん……それじゃどれが良いかなあ」
「あの、わたくし……」
 不思議な光景を興味深げにじっと眺めるアイグレーは、ぽつりと言葉を零す。
「おともだちが欲しくて……」
 ……お掃除ロボット以外のおともだちができますように。
 実は去年も、一昨年も、同じ目標であったのだが。
 その目標のためには、アイグレー自身が頑張らなければいけない事が沢山在るだろう、と感じている。
 だからこそ宝石をお守りにして背中を押して貰えるように、指輪にしたいのだとアイグレーが言うと、ラリマーはクスクス笑って。
「じゃあね、この宝石糸がぴったりだね」
 それはこっくりとしたオレンジがかったインペリアルトパーズより紡がれた、淡い糸。
「これはね。人も、幸福も惹き付ける強い力を持っている、……って言われている石なんだ」
 ラリマーがくるくると指を回すと、細い鎖状に編まれた糸が指輪に仕立て上げられ。アイグレーの指先にすぽりと収まり――。
「うふふ、頑張ってね」
「わっわっ、ありがとうございます!」
「いいよ。その代わりお手伝い頼むよ。――それにね、別に私でもいいんだよ?」
「えっ!?」
「さあさあ、次行こ~」
「は、はいっ!」
 くすくすと笑ったラリマーがアイグレーの手をぐっと引くと、慌ててアイグレーは力を籠めて。
 ふわり、ふわり。
 二人の少女は宝石の森を漂い、すり抜け。

大成功 🔵​🔵​🔵​

平賀・廣葉
●POWで判定
チーム名【葉蛍】
カナメ様と呼ぶ
お友達ですが偶然の出会いです

異世界のお祭りや行事に興味津々なので、折角ですしついでに体験です
が、宝石の知識など皆無なので「綺麗……」と眺めるだけになっていました
カナメ様は宝石に詳しいそうですので真剣に拝聴致します

カナメ様を見ていたから緑色の石、とアレキサンドライトを手に取ります
「すごいです、これ光の質で色が変わるそうです」
赤は親近感のある色なので気に入りました
意志や集中力、というのも良いですね
ではこれを結ってもらって……
「あ、では出会ったのは偶然ですがこれをお渡しして、縁としましょう」
これからの戦いの前に、お守りです


草守・珂奈芽
【葉蛍】

ここが漿船…同じ種族ばっかなんて初めてでワクワクするのさ!
あ、廣葉ちゃん!あけおめー!
そっちも興味あって来たんだね
どの石か決めた…ってあんま知らない感じ?

例えばこれは蛍石、わたしの石だあね(髪を持ち上げ)
脆いけど色鮮やかでさ、周りの他の色も同じ子なのさ!
堅さならダイヤとかルビーとか…石の意味で選ぶのもアリかも?

わ、アレキサンドライト!綺麗だよね
自分の意志や集中力を高めれるんだったかな?
気に入ったならいいんでないかな!
わたしは勿論蛍石!
新しく胸に生えた濃緑の石と同じ色を糸にするのさ
形が変わっても長い縁であれますよう
帰ったらお守りにしよっと
…え、廣葉ちゃんいいの?ありがと!大事にするのさ!



●運命の糸
「ふわあぁ……!」
 草守・珂奈芽(意志のカケラが抱く夢・f24296)が、感嘆の声を漏らして掌をぎゅっと握りしめた。
 人工光源に照らされぴかぴか瞬く宝石結晶達が幾つも伸びる大きなホールには、幾人ものクリスタリアン達が集って、賑々しく宝石糸の収穫を行っている。
 ヒーローズアース生まれの珂奈芽としては、これほど多く同族達が集まっている姿を初めて見るもので。
 蜂蜜色の瞳に隠しきれないワクワクを宿した彼女は、キョトキョト落ち着き無く周りを見渡していた。
 そこに。
「はっ、カナメ様……?」
「あ、廣葉ちゃん!」
 見慣れた鮮やかな緑髪に平賀・廣葉(亡国の羅刹姫・f11925)が思わず声を漏らすと、ぱっと振り向いた珂奈芽がぶんぶか手を振る。
「廣葉ちゃんも来てたんだねー、凄い偶然でない!? あけおめー! ことよろー!」
「はいっ、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します! その、こういうお祭りや行事は、どうにも気になってしまって……」
「ふむー、確かに宝石を糸にするなんて珍しいよねー。わたしも気になってしまったのさ!」
「ふふふ、同じ事に偶然興味を持って、偶然出会うなんて、なんだか……お友達! っぽい! ですね!」
 むんっと拳を握った廣葉に、珂奈芽は瞳を細めて笑って。
「うんうん、運命の出会いってやつなのさ! もう廣葉ちゃんはどの石か決めた?」
「あー……、っとですね……。あまり宝石に明るく無いもので……」
「おっ、あんま知らない感じ? したっけ、少し解説させてもらっていいかな?」
「はいっ! よろしくおねがいしますっ!」
 綺麗と宝石を眺めるばかりになっていた廣葉は、珂奈芽のありがたい申し出にコクコク何度も頷き。
 素直な生徒の誕生に珂奈芽がふふふと笑うと、丁度真横に生えていた大きな結晶を腕で示した。
 それはヒーローズアースの宝石の在り方とは、随分と違った様子ではあるが――。
「例えばこれは蛍石、わたしの石だあね」
 蛍石は火に近づけるとぱちぱちと蛍の光のように弾ける事から、名付けられた名だ。
 水には溶け出してしまうし、塩も日光も苦手で、脆く柔らかな石である。
 自らの髪を一度掻き上げるように持ち上げた珂奈芽は、そのまま腕を広げて。
「したっけ脆いという事は加工もしやすいという事さ! それに色鮮やかで、色の種類も多くてね。この周りの子達はみーんな蛍石なのさ!」
 色鮮やかな蛍石達を背に、珂奈芽は大きく腕を広げたまま。
 それは自らの身体の脆さの解説でもあるのだけれども、珂奈芽は事実を隠す事無く言葉を紡ぎ。
「わたしは勿論、蛍石を糸にするのさ!」
 そして廣葉に笑いかけた珂奈芽は、胸へと手を当てて。
 服の下に隠れている、新しく胸に生えたばかりの濃緑の石をなぞるよう。
 脆くとも、弱くとも。猟兵として、正義の味方として、ヒーローとして。
 本当の強さは、『知っている』からこそ手に入るもの。
 しないことには、はじまらない。
 そうして珂奈芽は胸の石によく似た色合いの結晶へと手を伸ばすと、クリスタリアンに教えて貰った通りに絲を引き出し始めた。
 ――たとえ、形が変わってしまったとしても。
 長い長い縁であれますように、と祈りを籠めて。
「まー、堅さならダイヤとかルビーとか……あっ、石の意味で選ぶのもアリかも?」
「ははぁ……なるほどなるほど……、石の意味から選ぶ事も出来るのですね」
 廣葉はしゅるりしゅるりと解けだした蛍石を見ながら、感心したように何度も頷いて。
 次に絲を紡ぐ珂奈芽の鮮やかな緑髪に視線を移すと、そのまま背の向こうに生えていた緑色の結晶へと視線を向けた。
 瞬間。
「……!?」
 ――その緑がゆらりと揺らめいて色を変えたように見えて、廣葉は目を丸くした。
 気のせいかと思って一歩近づいて覗き込むと、確かにその石は光の当たり具合で色が変わっているようである。
「か、カナメ様! すごいです、この宝石は色が変わるようです!」
 わあ、と驚いた様子で廣葉が珂奈芽へ声を掛けると、おおっと彼女も声を上げて。
「わ、アレキサンドライト! わたしの世界じゃ希少な宝石だけど、大くて綺麗だねえ!」
 たしか、自分の意志や集中力を高めれるんだったかな?
 首を傾いだ珂奈芽の言葉にぴかぴかと瞳を瞬かせた廣葉は、緑から赤へと色を変える宝石をうっとりと見つめて。
「赤は親近感のある色ですし……、意志や集中力、というのも良いですね。とっても気に入りました!」
「ん! 気に入ったならいいんでないかな!」
「はいっ!」
 早速、と。
 アレキサンドライトの結晶へと手を伸ばした廣葉は何かを思いついた様子で、珂奈芽へと顔を向けた。
「そうです。今日出会ったのは偶然ですが――。カナメ様へこの糸をお渡しして、縁といたしましょう」
 戦いの前に贈るお守りです、と。
 廣葉が眦を和らげて笑うと――。
「……え、いいの? やったー、ありがと!」
 瞬きを二度重ねた珂奈芽は、大事にするのさ! なんて。
 悪戯げに笑って応じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

かれと手を繋ぎホールを進み
宝石が糸になる、とはとても興味深いですね

光源により微妙な色の変化を見せる紫色のサファイアを見つければそれに触れようと
僕の器物に嵌められたカラーチェンジサファイアを使って
縁を、愛を紡いで形へとできるのならば
いっとう素晴らしい御守りになるのではと思います

かれの声には笑ってみせ
互いを愛おしく思えばこそ、似るのだと思いますよ
それからかれの色の糸と併せて紐を作ってもらい
それを使ったブレスレットを2つお願いしましょう

完成したそれを手首につけてもらい
彼の手首にもそれを結わえて
こうして揃いのものを身につけて、いつ何時でもきみのことを想えるのは幸せです


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵と手を繋ぎ宝石が満ちるホールを進む
これらを糸に出来るとは…本当に不思議な物だ

そう周囲を眺め行くも、己の本体に嵌る青いサファイアに似たそれを見れば手を伸ばそう
縁を結ぶ糸なのだろう?ならば俺の色を宵に持っていて欲しいからな
そして宵の声と紡いだ宵の瞳の色の糸を見れば照れ臭げに瞳を細めつつ笑みを
長い間共に居るとなんだ、想う事も似るものなのだな

その後は己の糸と宵の糸を撚り揃いのブレスレットを作って貰おうか
共に撚られたそれは寄り添う己達の様で思わず表情を緩めれば宵の手に付けんと手を伸ばそう
…長く離れる事は無いが。共に居らぬ時も同じ物を纏い想えると思うと、その…何だ。 …嬉しいもの、だな



●ひとつ
 二人で一つの貝のように繋いだ掌。
 共に歩む床すらも、全て、全て、宝石で出来ていた漿船の中。
 大きく開けたそこはまるで、様々な種類の宝石を湛える大きな晶洞のようにも見えた。
 数え切れぬ程の宝石が連なるホールには無数のクリスタリアン達が、楽しげにじゃれあうよう。
 母岩と成る小さな山から群晶めいた姿で伸びる石の先を抓むようにクリスタリアンが手を伸ばすと、するすると解けるように糸となってゆく。
「この固い宝石が糸になるとは……、本当に不思議な物だな」
 指先でつんと結晶を突くときちんと固い。
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は周りを見渡すように顔を上げて。
「ええ、とても興味深いですね」
 石が解けて糸になってゆく見慣れぬ不思議な光景を、瞳の奥に好奇心を揺らして眺めていた逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)がこっくりと頷いた。
 ふうむ、とザッフィーロも頷き返すと、もう一度大きな宝石結晶を撫でるよう。
「俺達も宝石を選んで糸を紡いで良いのだろう? 宵、良い宝石は見つかったか?」
 外から来た者達ならば特別な石を握り締め――この船のクリスタリアンならば手を翳すだけで、この船のクリスタリアン達にマザーと呼ばれる漿船自身の力によって、宝石を糸に加工できるのだとクリスタリアン達は言っていた。
 ぎゅっと加工用の特別な石を握り締めたザッフィーロは再び周りを見渡し。
「そうですね……僕はまだ……、――!」
 彼に倣うように周りを見渡した宵は、ひたり、とその動きを止めて。
 一つの石に射止められたかのように、息を飲んだ。
 自らの瞳の色とよく似た、宵を抱く紫色。一歩歩み寄ると淡く色が変化する所を見ると、光源によって表情を変えるカラーチェンジサファイアなのであろう。
 ――それは宵の器物を修飾するサファイアと、よく似ているように見えた。
「……!」
 宵とほぼ同時だろうか。
 彼とは反対方向を眺めていたザッフィーロも、一つの石へと目を奪われてしまっていた。
 その石の宿す色は、ザッフィーロの髪によく似た青玉の色。
 深い青を抱いたサファイアの姿は、ザッフィーロの器物である指輪に嵌まったサファイアとよく似ているように見える。
 ――見つけた、と思った。
「ザッフィーロ」「宵」
 同時に呼びかけあうと、重なった二人の呼び声。
 互いの指差した石を見比べた二人はこれまた同時に眦を和らげて、吐息を零すように笑った。
 自らの器物に嵌まった石と、よく似た石を選び合った二人。
 それを独占欲と呼ぼうか、恋と呼ぼうか、――愛と呼ぼうか。
 呼び方なんて、なんだって良いのだ。
 それは縁を、愛を紡ぎ、結ぶ象徴。
 ――自らの器物に宿る石を御守りとして、彼に持っていて貰える事が、何よりも嬉しく思う気持ちは一つだと言うこと。
「長い間共に居ると、……なんだ。――想う事も似るものなのだな」
 何処か照れくさげに、ザッフィーロは瞳を細めて笑って。
「ええ、そうですね。――互いを愛おしく思えばこそ、似るのだと思いますよ」
 愛おしげに眦を下げた宵は、ザッフィーロの手を再び握り締め。
 そうして逆の腕を上げると、クリスタリアンの紡ぎ手達へと大きく腕を振った。
「すみません。どうかブレスレットをふたつお願いできるでしょうか」
「ああ、よろしく頼む」
 彼の瞳の色、彼の髪の色。
 ――彼らの『本体』と同じ色。
 元は同じ鋼玉であろうとも。微かに交じる物によって、異なる表情と色を移す石。
 青玉の紫と青が寄り添うように、混じり合うように、編み込まれたブレスレット。
 互いに手首へと結わえ合った二人は、ふ、と同時に吐息を零して。
「共に居らぬ時も同じ物を纏い、想えると思うと、……その……何だ。……嬉しいもの、だな」
 宵より長く離れる気も無いのだけれども。
 互いの色を寄り添わせて纏う事が、ザッフィーロの胸裡をこんなにも暖かくするなんて。
 くすぐったげに頷いた宵も、きっと同じ気持ちなのだろう。
 指先でなぞるようにブレスレットを撫でると、真っ直ぐにザッフィーロの銀の瞳を見つめて頷いた
「はい。こうしていつ何時でもきみのことを想えるのは、――幸せです」
「ああ、……そうだな」
 温かな気持ちと、ときときと胸が高鳴る気持ちが混じり合い、寄り添い合う。
 それを独占欲と呼ぼうか、恋と呼ぼうか、――愛と呼ぼうか。
 呼び方なんて、なんだって良いのだ。
 きっとそれは、離れていたって。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
色は……夜彦の瞳と同じ緑
そこに白と金色に近い黄色をほんの少し

紡いで貰った宝石の糸を
水引の要領で編んで
四葉のクローバーを作ってく

完成したのはお願いして
ラペルピンに仕立てて貰おう

ん?あぁ……
交換するの流行ってるって聞いたから
あんた用のを?

幸運を呼ぶ、四葉のクローバーを
浄化の効果と邪気を祓う謂れがある水引で
スーツ着た時に襟元に飾る
ラペルピンにして貰った

ほら、これ(差し出してぐいぐい押し付け)

あんた、あんまスーツとか着ないけど
似合うと思うから

はは……そうだな
これからは着る機会増えるか……

そんな『一緒に過ごす未来』を
聞かせてくれるのが嬉しくて笑う

問いには茶色、かな?
花の色を殺さないだろ?それなら


月舘・夜彦
【華禱】
色は倫太郎の瞳と同じ琥珀色
下の部分だけ濃紺
花弁のように丸く薄いものを何個か

宝石の糸で根元だけ固定するように編んで花のように作る
これで宝石のお花の完成です
この形を見た時から、これが作れそうな気がしたのです

倫太郎は何を作っているのですか?
らぺるぴん……なるほど、服に飾るものなのですね

これを私に?嬉しいです
幸運を呼ぶだけでなく、浄化する作用もあるとは
UDCアースの世界で冠婚葬祭にスーツと聞いておりますので
今後着る機会は増えると思いますよ

私も貴方用にと考えて作っておりましたので
貴方が作ってくださったのと同じよう私も服に飾れるようにしましょうか
取り付ける部分は何色がよろしいですか、教えてください



●未来を語る
 彼の瞳の色を宿した宝石糸を、沢山集めて。
 紡いで、結わえて、一つにして。
 縁を、絆を、愛を、歴史を紡ぐ。
 ――月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は宝石で出来た椅子に並んで腰掛けて、一生懸命手芸タイムに勤しんでいた。
 夜彦の手元には倫太郎の瞳と同じ、甘やかな琥珀色に深い紺色を混ぜた糸。
 薄く丸い平たい糸を、纏めて、編んで。
 花弁に見立てた糸を結わえると、宝石の花を一輪。
 倫太郎の手元には、夜彦の瞳と同じ穏やかな碧色。
 そこに白と金色に近い黄色をほんの少し混ぜた宝石糸を、まるで水引のように結って四葉のクローバーを編んで行く。
「倫太郎、倫太郎。何を作っているのですか?」
「ん? あぁ、クリスタリアンの若いやつらの中じゃ――親しい相手と糸を交換するのが流行ってるっていってたろ?」
 倫太郎が仕上げにクリスタリアンに頼んで分けて貰ったパーツを、きゅっと付けると。
「これは、あんた用のラペルピンだよ」
 完成したのは、幸運を呼ぶと言われる四葉のクローバーをモチーフに。
 浄化の効果と邪気を祓うと謂れがある水引で作り上げた、倫太郎お手製のラペルピンであった。
「ほら、これ。あんた、あんまスーツとか着ないけど――似合うだろうから」
「なるほど、スーツに飾るピンなのですね。――幸運を呼ぶだけで無く、浄化する作用まであるとは凄いですね。」
 倫太郎に差し出された四つ葉のクローバーを受け取った夜彦は、ピンをじっと見つめてから。
 眦を和らげ、小さく首を傾げて。
「UDCアースの世界では、冠婚葬祭にはスーツを着るものなのでしょう? ならば、今後着る機会は増える事でしょうから。――嬉しいです」
 ありがとうございます、倫太郎。
 なんて、微笑んだ夜彦に倫太郎は瞬きを一つ、二つ。
「…………」
 それから一瞬の間を置いて、ふ、と吐息を漏らした。
「は、はは……。そうだな、そうだ。……これからは着る機会増えるよなあ……」
 それは夜彦が語ってくれた『一緒に過ごす未来』の話だ。
 彼が生きて行くだけならば、サムライエンパイアだって良い筈だ。
 スーツなんて着なくたって、生きて行ける世界だ。
 しかし、しかし。
 彼はUDCアースで過ごす予定を、――一緒に過ごす未来を語ってくれた。
 その言葉が。
 聞かせてくれた言葉が嬉しくて、倫太郎はくすくす笑う。
「……そうです、ね?」
 夜彦は倫太郎が何故笑っているのか分からないが、なんだか幸せそうである事に小さく肩を竦める。
 ――倫太郎が幸せそうにしている事は、決して悪い気分では無いものだ。
 どちらかというと、……そう、嬉しくなってしまう。
 温かな気持ちを胸に抱きながら、夜彦は自らの作った花を差し出して。
「そうそう。私の花も貴方用にと考えて作っておりましたので――、私の花も貴方が作って下さったように、服に飾れるようにしましょうか?」
「お、いいね」
「らぺるぴん……? の色は、何色がよろしいでしょうか」
「んー、そだな。茶色、かな?」
 くすぐったげな笑みを宿したまま、答える倫太郎。
 なるほど、と真面目な顔で頷く夜彦。
 ――紡ぐ縁、紡ぐ絆、紡ぐ愛に、紡ぐ未来。
 そんな幸せな糸をこれからも紡いで、結わいで行けるように。
「夜彦」
 倫太郎はピンのパーツを貰いに行くべくぴょい、っと立ち上がり様に夜彦に振り向いて。
「はい?」
「ありがとな」
 倫太郎はまたくすぐったげに、幸せそうに、――甘やかに笑った。
「……はい」
 夜彦もその表情が何とも嬉しく思えて、――また笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

煌めく宝石から紡いだ糸で、縁を、想いを、愛を結ぶ
そのいろは、まさに命の輝き
なんて素敵な儀式なのでしょう

この歴史と人々の命、決して猟書家に踏み躙らせはしないわ
必ず守り継ぎましょう

とはいえ折角の機会、今は純粋に祝祭を楽しみましょう
様々な宝石の中には「真珠」も含まれるのかしら?
本来は海の中の貝に抱かれた神秘の宝珠
純粋な白を宿した命の結晶
叶うならばその輝きを糸に紡いで

ヴォルフの選んだ蒼いラピスラズリの糸と共に
織り上げるミサンガ、約束の護り紐
輝く蒼と白は強く結ばれ、模様を描き
この想いも願いも決して引き裂かれぬように
歌う【愛の賛歌】

今までの思い出も、これからの道行きも
わたくしの人生は、あなたと共に


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
この宝石が糸になるのか……
何とも神秘的で、美しい
そしてそこに込められたクリスタリアンたちの願いの、何と尊いことか

この伝統も、人々の命も、必ず守り継がねばな

【守護騎士の誓い】と共に
選んだ糸はラピスラズリ
この狼の毛並みと同じ、深い夜空の色
何者にも屈することなき強い意志を宿して

ヘルガの真珠の糸と共に結い上げ
同じ祈りのミサンガを組む
解けぬように、裂かれぬように
強く、つよく寄り添い抱きしめるように
お前との絆は永遠に

ヘルガ、俺はお前と出会って
花や星や歌の美しさを知った
こうして二人で何かを作る喜びを知った
平穏な日々の営みの尊さを、人の心の優しさを
それを守りたいという願いも

どうか、これからも俺と共に……



●決意と誓い
「この宝石が糸になるのか……」
 感心したようにヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が零した言葉。
 天井自体が光をはらみ、柔らかに降り注ぐ光。
 まるで様々な宝石が生えてくる大きな晶洞のようにみえるホールで、幾人ものクリスタリアン達が楽しげに糸を紡いでいる。
 煌めく宝石が解け、絲と成り、糸と成る。
 ――糸を紡ぎ、縁を、想いを、愛を結ぶ。
「何とも神秘的で、美しい光景だな」
「あの儀式で紡がれる糸のいろは、まさに命の輝きのいろなのでしょうね」
 ヴォルフガングの言葉に同意を重ねるように。
 頷いたヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は甘やかに瞳を細めて、慈愛の色を宿した視線で、クリスタリアン達の姿を見やる。
「そうだな、儀式に籠められたクリスタリアンたちの願いの、何と尊いことか」
 このような素敵な儀式、このように神秘的な儀式。
 それを踏み躙りクリスタリアン達の命を、船を、奪おうとする者が訪れる事を二人は知っている。
 ヘルガは息を飲むと細く細く息を吐いて、胸の前できゅっと拳を握り締めて。
「――この歴史と人々の命。決して、決して、猟書家に踏み躙らせはしないわ」
「ああ。――この伝統も、人々の命も。必ず守り継がねばならぬものだ」
 決意の音を宿した言葉でヴォルフガングが応じると、ヘルガは一度瞳を瞑って。
「ええ、必ず守り継ぎましょう」
 ゆっくりと瞳を開くとホールを見据えて、こっくりと頷いた。
 ……とはいえ。
 敵がその姿を現すまでは、儀式を手伝う事も猟兵の仕事である。
「クリスタリアンさん、ここに真珠――は、ございますか?」
「ん。あるわよ。向こうの方に生えていたはずよう」
「まあ! ありがとうございます、そちらを探してみますわね」
「はぁい、はい」
 ――ヘルガの探す宝石は、本来ならば海中で貝が育てる宝珠である。
 純粋で美しい白を宿す、命の結晶。
 その輝きを是非糸に紡ぎたいと、ヘルガはミスミソウの咲く髪を揺らして――。

 ヴォルフガングが胸に抱いた糸は、夜の色。
 彼の髪と同じく深い深い夜空を抱いた、強く優しい色。
 何者にも屈することなき強い意志を、ラピスラズリの糸に宿して。
 自らの愛する伴侶の姿を、宝石の森の中より探し出す。
「ヘルガ、あったか?」
 群晶めいたミルク色の結晶達。
 それは見慣れた丸い形をした宝石とは、全く形は違えど――。
「ええ、ヴォルフ。――他の世界とは宝石の成り立ちが違う様ですが、確かに真珠のようです」
「成る程、やはり神秘的で不思議な場所のようだな」
「そのようだわ」
 頷いて応じるヘルガは、ヴォルフガングの抱くラピスラズリの色の色に、ふふ、と思わず花咲んでしまう。
 それは、本当に彼らしい色で。
 自らを象徴する白真珠の糸と合わせると、正に二人の色、と感じられたから。
「なあ、ヘルガ。……俺はお前と出会ってから、花や星や歌の美しさを知ったんだ」
「ねえ、ヴォルフ。わたくしはあなたと出会ってから、あたたかな光を知ったのです」
 彼の糸と、彼女の糸。
 重ねて、結いあげて。
 夜の色と穢れ無き白に、祈りを籠めて。
 甘く甘く愛の歌を口ずさむヘルガ。
 解けぬように、裂かれぬように。
 この思いも、願いも、決して引き裂かれる事のないように。
 結ばれた蒼と白が、縁を紡ぎ、絆を紡ぎ、愛を紡ぎ、歴史を紡ぎ、――一つの模様となる。
 強く、つよく寄り添い、抱きしめるように。
 ――そうして織り上げられたのは、願いと誓い。
 愛の籠もった約束の護り紐。
 蒼と白の宝石糸が美しい模様を描く、ミサンガであった。
 ヴォルフガングは、ヘルガに出会うまで知らなかったのだ。
 こうして二人で何かを作る喜びだって、平穏な日々の営みの尊さだって。
 ――人の心の優しさも、それを守りたいという願いだって。
「……どうか、これからも俺と共に在ってくれるか?」
「ええ、勿論。――今までの思い出も、これからの道行きも。わたくしの人生は、ずっとあなたと共にありますわ」
「――ああ」
 願いと誓い。
 たっぷりの愛を、ミサンガに籠めて。
 ヴォルフガングはヘルガをぎゅうと、抱き寄せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
【嵐雅】

沢山の宝石が生えとるの~
この光景は此処でしかみられんものじゃね、せーちゃん
(わしは宇宙よりせーちゃんの方がわけわからんわぁ)

私はどれで紡いでもらお
おお、この赤いのにしよ

せーちゃんはどんな感じかの?
わしはこれを、紐状にしてもろて持って帰る
こんこんのアクセにと家にいる子狐を思い浮かべ

せーちゃんもさめさめに?
それはお揃いじゃな。こんこんがどぎまぎしてしまうの
さめさめに片思いしておる様じゃからな
こんこんの恋が叶うように祈りこめとこ
お祈り…もふもふ祈り…

デバガメ?
いやいや…そんな、わしはただこんこんの幸せを
ちょっとは楽しいが…
子狐たちの幸せは兎も角もふもふの尊さとは…
わしももふもふじゃが(もふっ


筧・清史郎
【嵐雅】

宇宙は神秘に満ちていると聞いたが、宝石か
ああ、流石は宇宙だな、らんらん(宙に揺れる友の尻尾見つめつつ

俺は何色にしようか
友が触れた赤が絲と成り解ける様を興味深く見遣り
ふむ、こんこんの装飾…それは良いな

ならば俺は、さめさめ(使い魔の氷雨)の装飾を結って貰おうか
こんこんも、お揃いだと喜ぶだろう(微笑み
さめさめは所謂、くーるびゅーてぃーだが
こんこんの好意には満更でもなさそうであるし
何より二匹とも、とてももふもふだしな(重要

ふふ、らんらんは出歯亀するのが好きだな
まぁもふもふ同士仲良しなのはとても良い事だ(微笑み
では俺も祈りを馳せ、青の煌めきを絲にしよう
仔狐たちの幸せと、もふもふの尊さを込めてな



●もふもふの宇宙
 何処を見たって宝石で形作られた船内。
 現地のクリスタリアン達に教えられるがままに足を踏み入れたホールはまるで、様々な宝石を湛えた大きな晶洞のようにも見えた。
 それは他の世界とは全く違った、石の在り方。
「おお~、沢山の宝石が生えとるの~」
 どの種類の宝石も群晶めいた姿で大きな結晶となり。
 ぽこぽことそこかしこに生えている姿に感心したような声を零した終夜・嵐吾(灰青・f05366)は、手近な宝石を覗き込んで。
「宇宙は神秘に満ちていると聞いたが、宝石か」
 彼の後ろをついて歩いてきた筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の好奇心をそのまま写した赤の視線は、輝かしい宝石の森と、あとゆらゆらと揺れる友の尾へと向けられている。
「ふふ。この光景は此処でしかみられんものじゃね、せーちゃん」
「ああ、流石は宇宙だな、らんらん」
 ぱっと振り返った嵐吾が清史郎に声を掛けると、雅やかに頷く清史郎。
 せーちゃんはええ石みつけたじゃろか。
 なんて、何となく彼の視線の先を追った嵐吾は気がついてしまう。
 清史郎の視線が全然宝石なんて見向きもせずに、自らの尾をじっと眺めている事に。
「…………」
 なんでせーちゃんは、こんな場所まで来てわしの尾を見とるんじゃ……??
 宇宙関係なくない? 宇宙よりせーちゃんの方が神秘に満ちとらん?
 全くこの箱……、わけわからんわ……!
 一瞬で嵐吾の中を駆け巡るいろんな感情。
 しかし、しかし。
 よくよく考えてみればこの箱が自らの尾を狙う事は、宇宙であろうがなかろうがいつもの事。
 例えそれが毒霧の中であろうとも。下手したら火の中でも水の中でも眺められていそうな気すらするもので。
 ……あっ、この箱……、やっぱりわけわからんな……??
 勝手に納得した嵐吾は理解出来ないものへの理解を諦めて、宝石へとぱっと意識を切り替える。
「よし、わしはこの赤いのにしよかな」
 そうしてクリスタリアンに教えられた通りに、手を添えると――。
 しゅるりしゅるりと解けだした宝石が絲と成り、ふかふかと嵐吾の手元へと集まりはじめ。
「おお、本当に宝石が糸になるのだな」
「うん。紐にしてもろて、こんこんのアクセサリーにしてもらお」
「それは良いな、ならば俺はさめさめの装飾を結って貰おうか」
 二人はそれぞれ絆を結んだ、仔狐達の姿を思い浮かべて。
 くっくと喉を鳴らして嵐吾が笑った。
「そうなるとこんこんはさめさめとお揃いじゃな~。こんこんがどぎまぎしてしまうの~」
 どうやらこんこんは、さめさめに片思いしておる様じゃからな、なんて。
 二匹の仲睦まじい姿を思い出しながら、にまにまと更に笑う嵐吾。
「そうだな、こんこんの好意にさめさめも満更でもなさそうであるし、お揃いだと喜ぶだろう」
 コクコク頷く清史郎から見たって、さめさめはくーるびゅーてぃーではあるが、こんこんの事は好いているように見えた。
 ――それに、なにより。なによりも。
「二匹とも、とてももふもふだしな」
「まあ……そじゃな」
 嵐吾はその文脈のつながりに、いまいち納得していなさそうな相づちを打ちながら。
「こんこんの恋が叶うように祈りこめとこ」
 気を取り直して可愛い仔狐の恋路がうまく運ぶようにと、祈りを籠めて糸を紡いでゆく。
 かしこみ、かしこみ。
 おいのり、……もふもふ……。
 もふ……。
 だんだんもふに侵食されるお祈り姿(の尾)をニコニコと見つめながら、清史郎も蒼い結晶へと手を伸ばして――。
「ふふ、らんらんは出歯亀するのが、本当に好きだな」
 うんうん。
 二度頷いた清史郎は、蒼い宝石を絲と成して解きだす。
「えっ、なん? デバガメ?」
 なかなか聞き捨てならない言葉にぴーんと耳を立てた嵐吾が、ぴゃっと清史郎を見やって。
 絲をもこもこ生み出しながら、むむむと唸る。
「いやいや……そんな、わしはただこんこんの幸せを、……うんにゃ、そりゃちょっとは楽しいが……、いやしかし……わしの気持ちはぴゅあで純粋な……」
「まぁ、何はともあれ、まぁもふもふ同士仲良しなのはとても良い事だ」
 嵐吾の苦悩もそっちのけで雅やかに笑んだ清史郎は、しゅるりしゅるりと解け続ける宝石絲を引いて。
「俺も仔狐たちの幸せともふもふの尊さを込めて、祈りを馳せる事としようか」
「えっ? 子狐たちの幸せは兎も角……もふもふの尊さとは……??」
 また聞き捨てならない言葉に、ぴゃっと清史郎を見やる嵐吾。
 めちゃくちゃ箱に振り回されている狐は、無限に手元でもこもこし続ける赤い絲を糸とすべくぎゅっと引っ張りながら――。
「わしも、わしも!! もふもふじゃが!?」
「ああ。らんらんも、もふもふだな」
 ――なんだかんだで自分の尾のもふもふ具合に自信がある嵐吾はもこもこふわふわの尊さを、大きく揺らした尾でアピールするのであった。
 それもこれも、きっと神秘に満ちた宇宙のせい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
『漿船』の歴史と文化について色々『情報収集』しつつ

そうですね……赤、緑、黄色
ルビー、エメラルド、オパールいやビスマインでも良いですね

わたしの始まりのなめろう
恩師がご馳走してくれた
ハワイアンなめろうを示す3つの色
の宝石で糸を紡いで貰って

これを指輪に加工して、出会いと
言う意味でも良縁と……最後まで
わたしの信念を、なめろうを捨てない
ご当地ヒーローとしての志を貫けるように縁起を担ぎ

黒のスファレライトの糸は
吊り下げて、祈ってわたしに道を捨てさせる為につきまとう

悪い縁を断つ為に
作って貰うのお願いしましょうか

一度は捨てかけた夢……今度は
絶対に捨てませんから

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●諦めない
 壁も、床も、天井も。全てが全て、宝石で出来た漿船。
 様々な宝石の生え伸びる晶洞めいたホールの奥から姿を現したビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、瞳の奥に誓いの色が宿らせて。
 手にした宝石糸は、赤に、碧に、黄色。
 その三色はビスマスの始まりの色。
 ――恩師がご馳走してくれたハワイアンなめろうを示す、三つの色である。
「よーし……、はじめましょう!」
 宝石で出来た作業机の上へと丁寧に糸を並べたビスマスは、細く息を吸って、吐いて。
 真剣な表情で糸と向い、糸を編み結わえはじめた。
 この始まりの三色が、決して解けぬように。
 信念を、祈りとして。
 祈りを、願いとして。
 決して自らが折れぬよう、志を貫けるように。
 良縁を紡ぎ、良い未来を紡げるように。
 赤と緑と黄色を、固く、寄り添わせるように輪を形作ってゆく。
 一度は捨てかけた信念。
 一度は捨てかけた夢。
 ――今度は、今度は、最後まで。
 ご当地ヒーローとしての志を貫くが為、なめろうという信念を決して捨てない事。
 それこそがビスマスの願いであり、信念である。
 自らの志を指輪と成したビスマスは、その指輪をきゅっと嵌めると立ち上がり。
「さて、次は悪縁切りですね」
 ふ、と。
 指輪を見下ろしたビスマスは、その掌をきゅっと一度握り締める。
 ――なんだかそれだけで、指輪が力をくれるように思えた。
「今度は絶対に、……捨てたりしませんから」
 小さく言葉にすると、頷いて。
 唇に小さく笑みを宿したビスマスは、勇気を持って宝石牌へと向かって歩み出す。
 ……次は自らの道を断たんとする、悪縁を断つが為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】
ブラッドが帝国の奴隷だった事
一人生き延びてしまった事
彼がこの世界で経験した事、少しだけなら知っている

僕がいるよ、大丈夫と
ぎゅっと手を繋ぎ、彼の瞳を真っ直ぐ見詰めて頷くの


仲良く並んだ双子の宝石に手を翳し
真心伝える様静かに宝石へ話しかける

「僕ね、結婚するの
大好きで、とっても大切な人
その人と、これから先も、ずっとずっと一緒にいるために」

隣の彼と柔く微笑み合って
紡ぎ出されたのは金色の絲
真白の僕の唯一の色彩

糸に加工して貰ったらお礼をして
彼と向き合い

出逢って、添うて、支え合い、絡み合う
これまでも、これから先も二人で伴に生きていく――今はまだ、約束だけど

形無き誓いを形に
僕の欠片(金糸)をあなたの小指へ


ブラッド・ブラック
【森】
「帝国、継承軍…」
口にすれば躰中の細胞が強張り臓腑は重く喉が渇いて眩暈がする

常の飢え疲労恐怖
目の前で死んでいった同胞達
消えてはくれない過去の記憶が俺の頭を占領し―

力強い手の温もりが、陽光の瞳が、俺の心を捉え満たしていく

「嗚呼…サン、大丈夫だ」
感謝と愛しさ籠め、己が震え抑える様握り返して


並び宝石に手を添えて

隣で紡がれる言葉にサンの横顔見詰め
目が合えば眼光和らげ、胸中は温かく

「嗚呼、とても大切に想っている
こんな俺を受け容れてくれた―いや、己を卑下するのはもう止そう
これから先も伴に在りたいと思う
愛しているんだ」

紡がれたのは己が瞳と同じ、愛の色

其れをサンの小指に結ぶ
もう二度と此の想いは失くさない



●比翼
 敵の狙いは『帝国継承軍の誕生』である、と言う。
 話を聞いた瞬間、ブラッド・ブラック(LUKE・f01805)は躰を形作る細胞一つ一つが、鉛を飲み込んだかのような重苦しい居心地の悪さを感じた。
 強張る躰、ぐらぐらと視界が揺れている気がする。
 脳裏に過るは、『力』を得る前の事。
 ――ブラッドは『帝国』の奴隷であった。
 抵抗した者は、皆、皆、死んだ。
 抵抗せずとも奴隷や兵とされ、皆、皆、死んだ。
 無力、絶望、空腹、恐怖、飢餓、飢餓、飢餓。
 肚の中も、とうに空だ。いいや、ずっと、ずっと空だった。
 死にゆく同胞を助ける事等叶わぬ、力無き出来損ないの落ちこぼれ。
 味方の悲鳴から耳を塞ぎ、目を逸らし、生き伸びる事だけで精一杯だった。
 躰の形を維持する事で精一杯の疲労。
 船を貫く、眩い閃光。
「…………」
 押し黙ってしまったブラッドの掌をサン・ダイヤモンド(apostata・f01974)は、自らの掌で包み込むように手を繋ぐ。
 サンは何も言わない。
 ただ蜂蜜の色をした瞳でブラッドの鮮やかな花色の瞳を見据えて、頷いた。
 それは、僕がいるよ、大丈夫だよと伝えるようで。
 ――いつだって、いつだって。
 この『光』だけは変わらずブラッドのこころに、からだに。
 降り注ぐ陽光のように、何でもないことかのように触れるのだ。
 その温かさに、いつだってブラッドは救われてきた。
 ――しかし、今ならば。
 その温かな光の手を握り返す事だって、出来る。
「嗚呼……サン、大丈夫だ」
「うん。――行こ、ブラッド!」
 もう絶対に独りにしないと誓った。
 それは、もう絶対に独りにならないという誓いでもあるのだ。

 様々な種類の宝石が生え伸びる、晶洞めいた大きなホール。
 宝石で出来た天井自体が柔らかく光を発し、並ぶ二人を照らしていた。
「僕ね、結婚するの。――大好きで、とってもとっても大切な人と」
 根本のくっついている、双子の宝石結晶の前。
 真心を伝えるかのように穏やかな口調のサンは、まるで誓うかのように宝石へと話しかけている。
「これから先もずっと、ずっと、一緒にいるために」
 言い終えると、彼を見守ってくれていたブラッドを見上げるサン。
 交わす視線。
 ブラッドの花の色をした瞳の色が和らいだ事に、サンも眦を和らげて。
 同時に宝石の上へと、掌を伸ばした。
 しゅるりしゅるりと解けるように、紡がれるは瞳の色。
 白に一つだけ灯った色彩。蜂蜜色の眩い金の絲。
 黒に一つだけ灯った愛の色。鮮やかな紅紫の絲。
 柔らかで細い絲を、紡いで、撚って、糸として。
 ――出逢って、添い合い、支え合い、絡み合う。

 もうすぐ、出会ってから8回目のおいわいの日。
 もうすぐ、サンの18歳の誕生日。
 そしてそれは――。
「ねえ、ブラッド。交換しようよ」
「勿論」
 互い瞳の色をした糸を、指輪に結って。
 互いの欠片を、互いの小指で結び合う。
「――サン。俺はお前を、とても、とても大切に想っている」
 『こんな』俺を受け入れてくれた。
 ……否。
 サンの受け入れてくれた俺を下卑するのは、もう止そう。
 奪うのでは無い、共に在ると誓ったのだ。
 ブラッドは小さく首を振ると、真っ直ぐにサンを見つめて言葉を紡ぐ。
「これから先も、伴に在りたいと思う。――愛しているんだ」
 もう二度と此の想いは失くさない。
 誓いのような言葉に、サンはブラッドの金色の嵌った小指を握って、大きく頷いた。
「……うんっ」
 愛しきあなたと、縁を、心を、愛を、紡いでゆこう。
 形無き誓いを形にしよう。
 これまでも、これから先も、二人で伴に生きていこう。
 ――今はまだ、約束だけど。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、宝石の宇宙船なんて素敵ですね。
しかも、宝石から糸を作るなんて飴細工みたいですね。
私はこの水色の宝石から糸を作ってもらいますね。
アヒルさんはそちらの白い宝石ですか。
このふたつの糸を編み込んで刺繍にしましょう。
これでいつお別れの時がきてもいつまでも二人は一緒です。

ふええ、アヒルさん、お別れしたらこの刺繍も外すってひどいですよ。
せっかくのアヒルさんとの思い出なんですから大事にしてくださいよ。



●お別れしたって
「ふわぁ、キラキラしていて素敵ですね、アヒルさん」
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)が、ほうっと吐息を零しながらガジェットのあひるさんに声をかけた。
 全てが全て宝石で出来ているクリスタリアン達の船、――漿船。
 特にこの大きなホールは、まるで様々な種類の宝石が生える晶洞のようにも見える。
 全体が淡く光る天井に照らされて、そこかしこに伸びる宝石の結晶がぴかぴかと瞬く中。
 フリルはアヒルさんを肩に乗せると、興味深げに周りを見渡しながらのんびりと歩み出した。
「なんだか、宝石から糸をつくるのって飴細工みたいですね」
 糸を紡ぐクリスタリアン達や、石を選ぶ猟兵達の姿。
 結晶と結晶の間をすり抜けながら、フリルはふふふと笑ってアヒルさんに声をかける。
 宝石が解けて糸になって行く様は、溶けた飴を伸ばしているようにも見えてなんだか美味しそうで。
 そこにふわりとアヒルさんが飛び上がって、白い宝石の前でくるりと空中で旋回した。
「あ、アヒルさんはそちらの白い宝石にするのですね。それじゃ私は……、この水色の宝石にしましょうか」
 白の宝石と並んで立っていた、空の色をした宝石を撫でたフリルは少し瞳を閉じて。
 えいっと手を添えると先程クリスタリアンがしていたように、しゅるりしゅるりと宝石が絲となって解け出して――。
「ふわぁ……、なんだか綿あめっぽさもありますね」
 何にしても、ちょっと美味しそう。
 横目でアヒルさんを見ると、くちばしを使って上手に蒼い宝石を絲にしているようで。
 フリルは空の色をした絲をまとめながら、フリルはまた、ふふと笑った。
「後でこのふたつの糸を編み込んで、刺繍にしましょうね。――これでいつお別れの時がきてもいつまでも二人は一緒です」
 アヒルさんを真っ直ぐに見据えて言うフリルに、アヒルさんは――。
「ふええっ!? お、お別れしたら刺繍も外すなんてひどいですよ!?」
 拒否した。
 フリルがぴゃっと肩を跳ねて訴えるも、ぷいっと顔を背けるアヒルさん。
「う、うう……、せっかくのアヒルさんとの思い出なんですから大事にしてくださいよ」
 アヒルさんは答えてくれない。
 代わりにくうるりくるり。
 空中を回ってから背中に白い絲を載せて、再びフリルの肩に乗って。
「ふえぇ……わかりました、糸にして貰いに行きましょう。で、でも、アヒルさん、外さないでくださいよ?」
 フリルの必死の訴えにも、アヒルさんはのらりくらり。
「や、約束ですからね……?」
 ふたたびだんまりのアヒルさんを肩に乗せて。
 フリルはとぼとぼと、糸にしてくれると言っていたクリスタリアンの所へと向かって――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
ちゅん子(f04855)、りりぽよ(f00101)と一緒に!

へー宝石で糸を。何かお洒落じゃん!
ねぇねぇ、三人で選んだ糸を組み合わせてミサンガにしない?
三人でお揃、絶対可愛いよ!

私はねー、金色とかピンクが良いんだけど、迷うなぁ
…よっし、じゃあこのカナリーイエローのダイヤモンドで!
どうせなら派手に豪華に、ってね

へー、二人ともなんかイメージ通りの色って感じ
って、それは私もか
皆違ってみんな良いってヤツね

そうそう、切れたら願いが叶うんだって
だから簡単に千切れちゃうような結び方はダメなんだよ
そこんとこりりぽよご指導お願いします!!

80歳になったら多分ケーキとかより奈良漬けとかの方が好きになってそう……


リリー・ベネット
彩萌(f03307)とオートさん(f04855)と

宝石で糸を紡ぐんですか
ミサンガ良いですね。作ってもらいましょうか
欲張りすぎはいけませんよ。直感でもいいですから一番良いと思うものを選ぶんです

色とりどりで綺麗ですね
真紅と空が混ざあったような美しい紫を彩るこの宝石……素敵です
豪華な宝石は彩萌らしいですね
オートさんの宝石は元気が溢れるような輝きですね

ミサンガが切れる時願いが叶うといわれますね
ミサンガが切れてしまうのは勿体無いようにも感じますが、これは散る時も美しいでしょう
私の願い事は……特に無いので、貴方達の願いが叶うように、ですかね
オートさん、80歳の誕生日にケーキの……食べ放題は辛くないですか?


オート・チューン
彩萌ちゃん(f03307)リリーちゃん(f00101)と
一人称:わたい

宝石を選ぶのね!
全部素敵なので全部使います!(きりっ
えー全部はダメ?
迷うよ~

そしたらわたいの直観はコレ!ピンクスピネル?かわいい!
彩萌ちゃんダイヤモンド!とっても「ぽい」
リリーちゃんの宝石も綺麗!アントワネットとフランソワーズも一緒で嬉しいな!

ミサンガってお願いごとするんでしょ?ね、ね、何お願いする?
リリーちゃん欲がないな!今幸せいっぱいって事?うひひ

切れたら願いが叶うの?切れるの勿体ないよ~

あ!わかった!
「80歳のお誕生日に三人でケーキ食べ放題に行く!」
わたい天才!

!?じゃあ奈良漬け食べ放題もいく!



●塩分過多
 天井も、壁も、床も。
 全てが宝石で作られた漿船は、何処を見たって何処か上品できらびやか。
 天井自体が発光する、通路を抜けて。
 目的の大きなホールに足を踏み入れたリリー・ベネット(人形技師・f00101)は、翠眼を瞬かせて思わず呟いた。
「……色とりどりですね」
 その光景はとても綺麗だと思えるもの。
 晶洞めいたホールにはそこかしこから色とりどりの大きな宝石の結晶が、まるで柱のように伸び。船の住人であろうクリスタリアン達が宝石に手をかざすと、硬そうな結晶がしゅるしゅると解けるように絲となって行く。
「へー、本当に糸になるんだ」
 額に掌を当てて。
 遠くを見るようなポーズをとった斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)が、縦ロールの髪をぴょんと跳ねさせて。
「じゃあ、じゃあさ! わたいたちも、この中から宝石を選んでいいのね!」
 ミミズクの翼と腕を大きく広げたオート・チューン(太陽のバースデイ・f04855)は、早く見に行きたいと跳ねながら楽しげに笑った。
「そう言えば、りりぽよもちゅん子も、もう何を作るか決めてる? 良かったら、三人で選んだ糸を組み合わせてミサンガにしない?」
 絶対可愛いでしょ! と。
 悪戯げに唇に指を当てて提案した彩萌に、リリーはこっくり頷いて。
「良いですね、作ってもらいましょうか」
「うーんうーん、そうなると何色がいいかなー?」
 鳥の脚先が床を歩む度に、ちゃっちゃっと小気味よい音が立つ。
 オートは眉を寄せて。
 悩んだ表情でその場をぐるぐる回ると、ちゃっちゃっちゃっちゃっ。
 それから突然。
 カッと空色の瞳を見開くと、オートは人差し指を立てた。
「……――、よしっ、全部素敵なので全部使います!」
 キリリッ。
 とっても良いキメ顔で、リリーと斬断に向かって宣言するオート。
「欲張りすぎはいけませんよ」
「ちゅん子、何? それレインボー超えて、すごい色数の多いカラーペンの色見本?」
 一度だけ瞬きを重ねたリリーが一刀両断、彩萌は半笑い。
 名案だと思った案を却下されて仕舞えば、オートはかぶりを振って。
「そっかー……全部はダメ? 迷っちゃうよ~」
 ぷるぷる頭を振った彼女に、リリーは色とりどりの宝石達に視線を向けながら言葉を紡ぐ。
「直感でもいいですから、一番良いと思うものを選ぶんです」
 ――これほど色とりどりの宝石が揃っているのだから、悩んでしまう事は仕方の無い事かもしれないけれど。折角であれば一番良いと思った糸を選ぶ方が、縁を紡ぐにはきっと良いだろう。
「むむむむむーーーっ!!」
 リリーの言葉にオートは更にちゃっちゃと足音を立てて、ウロウロウロウロ。
 こんなに沢山の宝石たちの中から、直感で一つだけ選ぶなんて。
 直感、――……直感!? 直感ってどうすれば直感するの!?
「私は金色とかピンクが良いんだけど、うーん、たしかに迷うなぁ」
 彩萌もうんうんと頷いて、同意するように。
 しかし、次の瞬間には――。
「――よっし、決めた! このカナリーイエローのダイヤモンドにする!」
 名家にして財閥の若き当主の決断は、想像の倍早い。
 鮮やかなイエローダイヤモンドを指差した彩萌は、もう心変わりする事はなさそうだ。
「あーっ、たしかにそれ、とってもとっても彩萌ちゃんっぽいね!」
「確かに豪華な宝石は、とても彩萌らしいですね」
「うふふふ、どうせなら派手に豪華に、ってね?」
 悩んでいたオートも感心した様子のリリーも、彩萌の選択には納得の表情。
 笑う彩萌にオートはようし、と気合を入れ直して。
「そしたらわたいは……」
 それから、ぐるりと回りを見渡したかと思えば、オートは勢いよくぴしーっと人差し指を立てて宝石の結晶を指差した。 
「――わたしの直感がコレ! って訴えてるコレ! かわいい! コレかわいくない!?」
 その指の先には光を浴びて強い輝きを放つ、浅紅色の尖晶石。
「おおー、いいぢゃない。ピンクスピネルね」
「元気が溢れるような輝きで、素敵ですね」
「でしょ、でしょっ! わたいの直感良いでしょっ!」
 何となく彩萌は軽く拍手をしながら、リリーが感想を述べるとオートは鼻高々。
 胸をぐっと張ると、ばさっとミミズクの翼を一度広げて、畳んで。
「……」
 そんな彼女からリリーは先程から気になっていた宝石へと、視線を戻す。
 それは真紅と空色が混ざりあったような、夕焼けの色に似た紫。
 ――素敵。
 瞳を細めてたリリーが宝石に何となく手を伸ばすと、石はつるりとしたなめらかな触り心地を返し。
「リリーちゃんはその宝石にするの? うひひ、アントワネットとフランソワーズも一緒って感じだね」
 リリーの顔を覗き込んだオートは、ぴかぴか笑顔。
 なんだか嬉しいな、なんて。オートが笑えば、リリーも小さく頷いて。
「……確かに、そうかもしれません」
「うんうん、二人ともイメージ通りの色って感じの宝石を選んだわね……、てゆかそれは私もか」
 皆違ってみんな良いってヤツね、と、彩萌も笑えば。
 はっと思い出した様子のオートが、二人へとぴょーんと振り向いた。
「そういえばさ! ミサンガってお願いごとするんだよね? ね、ね、何お願いする?」
「そうですね。切れる時にお願いが叶う、と言われてるようです」
「そうそう、簡単に千切れちゃうような結び方はダメなんだよ」
 ふむ、と拳を顎に当てたリリーが伝えると、補足する形で彩萌が言葉を追いかける。
 またぴょーんと跳ねたオートは、瞳をどんぐりみたいにまんまるに見開いて。
「ええーーっ!? 切れちゃうのは勿体ないよ~!」
 ミミズクの羽根をばっさばさ。
 落ち着きのないオートの様子に、リリーは少し眦を和らげて。
「でも宝石の糸ならば、散る時も美しいでしょうから」
「むー、そっかー……」
「宝石だし、もしかしたら切れないかもしれないけどね」
 それも素敵ぢゃんね、なんて彩萌が付け加えると。
「切れないと切れないで、願いも叶わなくて寂しいかも……!?」
 オートは大きく開いてしまった口を掌で覆い隠してぷるぷるした。
 落ち着きのないオートから視線を外したリリーは、少し目線を下げて考え込むよう。
「しかし、願い事ですか……」
 今、リリーが願う事。
 ――友にも恵まれている。
 恋人とも、まあ、順調だろう。デデニーだってこの間行った。
 リリーはゆっくりと目線を上げて、二人を見て――。
「私の願い事は……特に無いので、貴方達の願いが叶うように、……ですかね?」
「リリーちゃん欲が無いな~! ね、ね、今幸せいっぱいって事~?」
「あー、そうそうっ、それよ! ねぇねぇ、りりぽよ! そこんとこ、どうかどうかご指導お願いします!!」
「指導ですか……?」
 一気に囃し立てるオートと彩萌。
 特に彩萌からすれば、乙女的な死活問題である。
 指導を貰ったところであの朴念仁がどうにかなるものなのかは、すこうし疑問だけれども。
 ――そこに。
「あーーーーっ! わかった! お願い事! 80歳のお誕生日に三人でケーキ食べ放題に行く! ってのはどう!?」
 突然思いついた様子で、宣言するオート。
 きょとん、と一瞬あっけにとられた二人は――。
「……オートさん。80歳の誕生日にケーキの……食べ放題は辛くないですか?」
「その歳だと、ケーキとかより奈良漬けとかの方が好きになってそうね……」
 少しばかり眉間に皺を寄せて応じた。
 ううん、元気な80歳予定ですね。
 ぱちぱちと瞬きを重ねたオートは、その意見を柔軟に受け入れて――。
「えっ!?!? じゃあ、奈良漬け食べ放題もいこ!」
「そういう問題!?」
「そういう問題ではありませんね」
 その柔軟すぎる対応策に、二人は同時に突っ込んだ。
「そうなの!?」
 そうなんですよね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

本当、どれも綺麗ですね…
キラキラ輝く宝石が、糸になるだなんて不思議です

私は…そうですね
蒼汰さんの瞳のような色が良いです!
いつでもお傍に蒼汰さんがいてくださる気がするから

金に近いシトリン
ターコイズと大人びた黒色に
お互いの誕生石のラピスラズリを添えて
夜空のような、落ち着いた色合いに仕上がったかな

はい、とっても綺麗です
蒼汰さんのすぐ傍に私の色があるのが
嬉しいけれどちょっと恥ずかしいですね

蒼汰さんの横で宝石碑にお祈りを
1年の始まりを、蒼汰さんと共に過ごせることに感謝を込めて
紡いだ糸のように
私達の縁も、美しく交わりますように
互いの腕で輝くその色に
幸せを感じて零れる笑み


月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

わあ、すごいきらきらしてますね!
宝石が糸になるって不思議だなあ…
ラナさんはどんな石がいいですか?
…なるほど
(ちょっぴり照れくさくて、くすぐったいけど)
じゃあ俺もラナさんの瞳のような色にしようかな

同じ水晶から採った金の糸に
深い赤と淡い桜色、それから月長石の糸を編み込んで
シンプルだけどキラキラしたミサンガブレスレットに
どうでしょう、ラナさん?
ラナさんのも、とっても綺麗です

繋いだ輪にほどけぬ縁を
重ねて束ねた色に、これからの幸いを
それから、…ラナさんへの、想いを
離れていても、この光がラナさんを護ってくれますように
宝石碑に手を合わせて感謝を祈り
紡いだ縁のしるしとして持ち帰ります



●はなれていても
「わあ、すごいきらきらしてますね!」
「本当、どれも綺麗ですね……!」
 全てが宝石で出来たクリスタリアン達の船、――漿船。
 船内の何処を見たって宝石に溢れかえっているのだけれども。
 その中でも大きな晶洞めいたホールは、一際美しく見えるだろうか。
 ホールの床を母岩として、様々な種類の宝石が柱のように生え伸びる道行き。
「こんなにキラキラ輝く宝石が、糸になるだなんて不思議です」
 ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)が柔く宝石を撫でると、すべやかだけれどもつるりと硬い手触りを宝石は返す。
「うん、本当です。でもこんなに綺麗な宝石ですから、糸になってもきっと綺麗でしょうね」
「ふふ、そうですね」
 不安定なごつごつとした道行きに、転ばぬようにとラナに手を伸ばした月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)が眦を和らげて言葉を紡ぐと、手を借りたラナは花笑み。
 赤に白、青に緑に黄色。
 色とりどりの宝石はどれも美しく、どうしたって目移りしてしまうだろう。
「ラナさんは、どんな石がいいか決まっていますか?」
 宝石の道をきょろきょろと見渡しながら蒼汰が尋ねると、ラナは少しだけ視線を落として。
「私は……、そうですね」
 それから真っ直ぐに蒼汰を見据えると、ふふ、とまた笑って言った。
「――蒼汰さんの瞳のような色が良いです! いつでもお傍に蒼汰さんがいてくださる気がしますから」
「……なるほど」
 真っ直ぐな視線で伝えられれば、ちょっぴり照れくさくてくすぐったいけれど。
「じゃあ俺も、ラナさんの瞳のような色にしようかな」
 蒼汰の言葉に、ラナはくすぐったげに肩を小さくあげて。
 掌で唇を隠してくすくすと笑った。
「それでは、お揃いですね」
「はい、お揃いです」

 ――とびきり澄んだ蜂蜜色をしたシトリンの、金の糸。
 彼の髪と同じターコイズを、大人びた黒で彩れば。
 紡いで、結いで。
 二人の誕生石のラピスラズリで飾って。
 夜空のように落ち着いた色合いは、穏やかな彼を感じさせるだろうか。

 ――彼女に分けてもらった、自らの瞳色をした金の糸。
 君の苺色をした深い赤、君の髪のように淡い桜色。
 紡いで、結いで。
 白に青虹が揺らぐ月長石の糸を編み込もう。
 決して派手では無いけれど、煌めくミサンガブレスレット。

 出来上がれば、互いに交換を。
「どうでしょう、ラナさん?」
「はい、とっても綺麗ですね」
 差し出されたブレスレットには、自らの色の横に彼の色。
 手首に合わせながら、ラナは小さくはにかんでしまう。
 ――彼の色のすぐ傍に自らの色がある事は嬉しくて、ちょっと恥ずかしくて。
 なんだか胸の奥がぽうっと暖かくなるよう。
「ラナさんも、とっても綺麗に仕上げられましたね」
 蒼汰も受け取ったばかりのブレスレットを手首に合わせながら。
 そんな彼の様子にラナはまたくすぐったげに笑った。
「そうですか? ふふ、できるだけ丁寧に頑張りました」
「はい、それはもう」
 柔く頷いた蒼汰もつられたように、柔く笑むと一歩歩み出し。
 ラナへと振り向いて首を傾いだ。
「それでは、そろそろ宝石牌の方にも行ってみましょうか」
「はい!」
 ――互いの腕で、優しい色が輝いている。
 心を、気持ちを、紡いで、結いで。
 繋いだ輪には、解けぬ縁を。
 重ねて、束ねて、幸いを祈る。
 宝石糸に託すは、君への想い。
 宝石牌へと手を合わせて、二人は並んで祈りを捧げて。
 ――紡いだ糸のように。私達の縁も、美しく交わりますように。
 ――たとえ離れていても、この光がラナさんを護ってくれますように。
「……」「……」
 そうして。
 目を瞑って牌へと祈っていた二人は、顔を同時に上げて。
 何となく顔を見合わせると、同時に笑みを零し――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【紅穂】

きらきらしてる
いろんな色があるねっ
まよっちゃう
…クレナイ?

クレナイみたいな紅だって気になるし
うーんとぐるぐる歩いてたら
あれ?
石の色が変わった気がして
後ろ歩き

やっぱりっ

金の石は角度を変えれば紫に煌めいて
なんだかクレナイの瞳を思い出す

色がかわったら、クレナイびっくりするかも
この石にしようっ
触れて解かれた絲を水のように掬う
わ、ほんとうに糸になった
きれいっ

わたしにもクレナイのわけてっ

クレナイの選んだ糸と編んで作るブレスレット
市松模様っ
鞄にだってつけられるから

青を手にすれば
あれ?
シュネーの瞳の色みたい
すごいっ
ふふ、ピンクと紫の組み合わせもかわいい

せーのっ
わあ、いっしょだっ
うれしい
早速つけて並んで


朧・紅
【紅穂】

色々迷っちゃう
いつもはたんぽぽ色って思っちゃうですが…
オズさんをじぃ
ぅやっ
瞬くキトンブルー
コレですっ

少し濃いですねぇ
もっと澄んだ…
んっ壁のあの石!
うんと背伸び

触れれば絲がふわり降り注ぐ
わぁきれいっ
う?この糸触れた所が少しの間桜に色づくですっ
まるで…

細い紐にして下さーい

ねっ
オズさんの紐一本貰っても?
僕のと一緒に編み込むの
青桜とオズさんの金に普通の白紐を組紐に
背中合わせに何を作るかは内緒
あみあみ~♪
ぅや?金の紐が紫に煌いてる…
(僕と朧の瞳みたい、オズさんはまだ朧を知らない筈なのに
嬉しさに振り向きたくなるけど我慢

せーの
じゃーんブレスレットです!
ぅや、一緒?
ふふ
市松模様かわい~
きらり腕で輝いた



●きみのいろ
 宝石が柱のように、水晶めいて沢山生え伸びている。
 ここは様々な宝石が生えている晶洞のような、大きな大きなホール。
 天井自体が柔く光って、宝石たちをぴかぴかと照らし出して。
 そんな宝石と宝石の間から、ひょいっと顔を覗かせたオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が、子猫みたいな青い瞳を瞬かせた。
「ねっ、ねっ。いろんな色があるねっ、まよっちゃう!」
 そんなオズの横に、並んでぴょいっと顔を覗かせたのは朧・紅(朧と紅・f01176)の姿だ。
「うん、うん、迷っちゃう!」
 どんな色にしよう、どんな石にしよう。
 こんなに沢山の宝石を、どれでも糸にできてしまうというのだから。
 迷ってしまうことも、悩んでしまう事も、仕方の無い事だろう。
 なんとなく紅は、オズの顔を見やって。
「……」
 じぃっ、眺める彼の顔。
 金の糸みたいな、キレイなプラチナブロンド。
 それに子猫みたいにぐりぐりと表情を変えるキトンブルーのまあるい瞳。
「……クレナイ?」
 真剣な顔で紅が顔を見つめてくるものだから、オズは瞬きをぱちぱちと。
 不思議そうに首を傾いで彼女の名を呼ぶと――。
「ぅやっ、決めましたっ!」
「わあっ、すごいっ。わたしはどれにしようか、まだ決まってないのにっ」
「ふふ、僕にお任せくださいねっ」
 ぴしっとポーズをとった紅は、ぴょこんるんたた、宝石の道を歩みだす。
「あっ、クレナイ! いっちゃった……」
 駆けてゆく紅の背を見やって、オズはもっともっと考える。
「うーん、うーん」
 どんな色がいいだろう。
 クレナイみたいな紅色だって気になるし、アレはアヤカの瞳みたいな赤。リュカみたいな星の色に――。
「……あれ?」
 ぐるぐる歩いていたオズは、はた、と何か気づいた様子で後ろ歩き。
「わあ、やっぱりっ!」
 そうしてぴょんと跳ねたオズは、くすくす笑った。
 金色の石は、角度が変わると紫に煌めいて。
 なんだかその色の移り変わりは、紅の瞳を思い出す色だ。
「この石――、クレナイもびっくりするかもっ」
 早速、クリスタリアンに習ったとおりに手を添えると、しゅるしゅると解ける絲をオズは掬い上げて。
「わ、ほんとうに糸になった」
 きゅっと引っ張ると金色が紫色に溶けて、きらきらときらめいた。
「……ふふ、きれいっ」
 楽しげにくすぐったげに、オズはくすくすと笑って――。

「うーんうーん、あれは少し濃いですし……」
 宝石の道をぐるぐる歩いているのは、紅だって同じ事。
 見上げた先の宝石は海のような深い青。
 オズのキトンブルーの瞳の輝きは、もっともっと澄んだ色だ。
 これだけ宝石があれば、きっと、きっと、オズの色だって――。
 ゆっくりと歩んでいた紅は、ぴた、とその足を止めて。
 そろそろ後ろ歩き、顔をあげて――。
「ぅゃ、みつけました!」
 壁の上の方に、澄んだキトンブルーの宝石が生えているのを発見した。
 ぴょん、ぴょん、跳ねれば手は届くけれど。
「んーっ……!」
 うんと背伸びをして、絲解き。
 ふわりふわりと頭の上に落ちてきた糸の色はキレイな青。
 紅は手で糸を拾い上げると――。
「……う? わあ……っ!」
 一瞬、触れた所から桜色に色づく青。
「わぁ、きれいっ……」
 その色はまるで、彼のお姉さんであり友達の――。

「ねっ、一本紐を貰ってもいいです?」
「あっ、わたしにもクレナイのわけてっ」
「ふふ、いいですよ、とりかえっこです」
「とりかえっこだねっ」
 無事糸に、紐へと仕立てて貰った二人は再び合流を。
 仲良く並んで、……あれ、背中合わせ。
 そう、二人は何を作るか内緒で、作り合いっこをするのだ。
「あーみあみーっ」
「あみあみ~♪」

 オズが編んでいるものは、青桜色と金紫色の市松模様のブレスレット。
 ――あれ、不思議。
 この色、シュネーの瞳の色みたいだっ。

 紅が編んでいるものは、青桜色と金紫色に白をあわせた組紐のブレスレット。
 ――ぅゃ?
 この色、――僕と朧の瞳みたい。
 別の人格である朧の事を、オズはまだ知らぬハズなのに。

 ふたりとも交換した紐の色の変化が、なんだか嬉しくって。
 振り向きたくなるけれど、出来上がるまで、がまんがまんっ。
 ――同じようにブレスレットを作っている事を、二人はまだ知らない。
 同じだね、と。
 二人が笑い合うまで、後もう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小結・飛花
此方がお話にあった場所ですか。
あな、まぶし。

人工的に作られた光とはこんなにも眩いのですね。
幽世のおおきなお月様とは大違い。

透き通った宝石の、薄墨をこぼしたやうな、ほそく棚引く模様は
幽世で逢った蝶々の翅のようですね。
たれかがこの宝石に物語を書き込んでいるようです。

その隣に並ぶ白い宝石は、真白の頁でしょうか。

ふたつともあたくしが結んで合わせましょう。
あゝ、そう。結ぶ事は苦手でした。

加工をして下さった宝石種族の方は宝石絲の結び方もご存知でしょうか
一寸、教えて下さい。

この糸にどのやうな祈りを捧げるのかは決めておりません。
けれども真白い頁に、薄墨で文字を縫い合わせてみたかったのです。



●ものがたり
 全てが全て、宝石で出来た船――漿船。
 その床も、壁も、柱も、天井も、宝石で出来ている。
 幾つもの宝石が柱のように生え伸びる大きなホールは、まるで迷路のようで。
 天井自体が淡く発光している様に、小結・飛花(はなあわせ・f31029)は眩そうに瞳を眇めた。
「……人工的に作られた光とは、こんなにも眩いのですね」
 幽世のお月さまとは全く違った光。
 この世界は幽世のよくよく発達した文明様式の部分よりも、もっともっと発達しているように思える。
 クリスタリアン達がさんざめくよう。
 語り合いながら宝石より糸を紡ぐ様を横目で見やった飛花は、瞬きを重ねて。
 目の前の透き通った宝石に薄墨をこぼしたように棚引く色は、幽世で逢った蝶々の翅のようだと思う。
 ――細い細いその跡はまるで、宝石に描かれた文字のようにも見えて。
「――たれかがこの宝石に、物語を書き込んでいるようですね」
 呟いて柔く眦を和らげると、そうろりと宝石の柱を撫でた。
 ならば。
 真横に並ぶ乳白色の宝石は、まだなにも物語が書かれては居ない真っ白な頁だろうか。
 飛花は長いまつ毛を揺らすと、ふ、と鼻を小さく鳴らして。
「ふたつともあたくしが結んで合わせましょうか」
 しゅうるり、しゅるり。
 毛糸で編まれた服の端を引いたように、絲と成って解ける宝石。
 しかし、しかし。
 問題が一つ。
 ――飛花は糸を結ぶといったような事が、決して得意では無い。
「……あゝ、宝石種族の方は宝石絲の結び方もご存知でしょうか」
 船に住むクリスタリアン達ならば、きっと加工方法も詳しいだろう。
 それは気紛れか、それとも必然か。
 何と祈りを捧げるかも、決めてはおらずとも。
 けれども、不思議と教えて貰ってでも結んでみたかったのだ。
 真白い頁に、薄墨で文字を縫い合わせてみたかったのだ。
 ――物語を紡ぐ、ひとのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
なゆさんと/f00421

確かにそうね
ピカピカした石たち
なゆさんと一緒に出会えてうれしいわ

石から絲が出来るなんてふしぎ
何か形にできるといいな

まずは一つ……
ううん、悩んでしまう
ちらと隣のあなたを見上げ
浮かんだ色と同じコに

指に触れたのは日長石
春の様に淡くあたたかなあか
赤銅色の煌きが花吹雪のよう

これで組紐のミサンガを仕立てて頂ける?
叶結びにしてほしいの

常に軽やかに踵を鳴らして歩むひと
その道が木漏れ日みたいに
明るくあたたかくあるように

なゆさんが選んだ絲はなあに?
わ、わ!
ルーシーに?えへへ、うれしいな
そう言ってもらえるなら
頬がゆるんじゃう

なゆさんもとてもステキ!
このご縁がずっと続きますようにと願って結ぶの


蘭・七結
ルーシーさん/f11656

輝石の類とよい縁に恵まれているわね
仕立てあげた絲を編み込んで
なにかを作ってみたくなるわ

まずはひとつを選びましょうか
とりどりの彩のまばゆいこと
指のさきを伸ばしては引いて
また伸ばして、を繰り返してしまうわ

双眸で捉えたのは黄水晶の姿
洋名ではシトリン、と名のつく宝玉かしら
石言葉は成功や繁栄などがあるけれど
幸福、希望……こちらの言葉が相応しいかしら

あいらしいあなたが見る世界
その先に、数多の幸福と希望がありますように
願いを込めて仕立てていただこうかしら

黄の彩は、あなたによおく似合う
わたしはとても好ましいと感じるわ

黄水晶に秘められた言葉たち
心の内にて唱えながら、そうと結わいましょう



●あたたかないろ
 色とりどりの宝石たち。
 大きなホールには様々な種類の宝石の結晶が、晶洞の中のように生え伸びている。
 宝石の柱の合間を縫うように、並んで歩む蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)とルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)の視線は、向こうを見たり、こっちを見たり。
「むー……こんなに沢山あると、悩んでしまうわ……」
 ルーシーが思わず唸ってしまうのも、きっと仕方がない事なのだろう。
 眺めているだけでも、知らずしらずどんどん時間が流れていってしまいそうな宝石の森。
 天井そのものから溢れる光に照らされた宝石達は、どれも眩く輝いて。
 ステンドグラスの影のように、鮮やかな彩が幾つも重なっている。
「そうね。数多の宝石のとりどりの彩がまばゆいこと――、どれも素敵でとても悩んでしまうわね」
 最近輝石の類とは、よい縁に恵まれる事が増えているように思えるけれども。
 だからといってすぐに選べるものでは無い。
 こっくりとルーシーの言葉に頷いた七結は、瞳を眇めて。
 七結自身だって、宝石へと手を伸ばそうとしては手を引いてを繰り返してしまっているのだから。
 悩む事は仕方がないと同意を重ねながらも、小さく笑んで。
「それでもまずは、ひとつを選んでみましょうか」
「ええ、まずは一つ……」
 七結の和らいだ眦に宿る色を見上げたルーシーは、よし、と心を決める。
 そんなルーシーを真っ直ぐに見つめ返した七結も、小さく頷いて――。

 あなたに似合いの彩りを、誂えましょう。
 あなたに似合いの彩りを、拵えましょう。
 しゅるり、しゅるり、解ける石。

 七結の指先で燃えるように解ける、澄みきった黄色の彩。
 あいらしきあなたの行く先に、数多の幸福と希望がありますように。
 幸福を運ぶ黄水晶は、絲と成り。

 ルーシーの指先で温かな色で解ける、春の様に淡いあか。
 軽やかに踵を鳴らすあなたの行く先が、木漏れ日のように明るくあたたかなものでありますように。
 赤銅色に輝く日長石が、絲と成る。

 ――そうして生まれた絲を、クリスタリアン達へと託せば。
 ぴかぴかと美しい糸が紡がれて行く様もまた美しく見える。
 解いて、紡いで、結いで、編んで。
 縁を、祈りを、願いを紡いで、糸と成しましょう。

 ルーシーは出来たばかりの日長石の組紐を大切そうに掌で覆ったまま、七結へと向かって振り返り。
「なゆさんのも仕上がったのよね、どんな感じになったのか見せてほしいわ!」
「ええ、もちろん喜んで」
 相槌を打った七結はルーシーの前でしゃがんで、目線を合わせるよう。
 それからルーシーの腕へと、柔く手を添えて――。
「わっ、……わっ?」
「ふふ、ルーシーさん」
 黄水晶の組紐をルーシーの手首へと結ぐと、眦を和らげた。
「――黄の彩は、あなたによおく似合うと思うわ」
「これ、ルーシーに?」
「ええ、そのとおりよ」
「えへへ、……うれしいな! ありがとう、なゆさん!」
 くすくすと笑ったルーシーは、それなら、と。
 日長石の組紐を取り出して、七結の腕へと結わぐ。
「……ルーシーもね。なゆさんによおく似合うようにと、あたたかな彩の石を選んだのよ」
「ふふ、わたしもあなたも、想うところは同じだったようね」
 打ち合わせた訳でも無く、互いに相手の事を想って選んだ宝石糸。
 あなたと一緒に、この宝石たちと出会えてうれしいわ。
 宝石が紡いでくれる――、この縁がずっと続きますように。
 心の中で、祈って、願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
ジャック君(f16475)と
見てごらん、辺りに宝石が生えている!珍しい光景だ
どれもキレイで、見ていて飽きないな

石のひとつひとつに名があるのは知っているけれど
あいにく私は覚えてあげられない
でも、そうだなあ…この金色のまるい石が良い
硬く頑丈そうだけれど、優しい光をもっている
ジャック君、どれにするか決めたー?

その石、とても良い青色だ
私の石が月なら、それは青空を映しているよう

クリスタリアン君に糸を託し
紐を作ってくれるかい?簡単に切れない、カッコいいやつ

はい、ジャック君。コレをあげる
キミが笑顔でいられるまじないをかけたから
きっとキミを守ってくれるよ

くれるのかい?ありがとう!うれしいなあ
心強いよ、とてもね


ジャック・スペード
エドガー(f21503)と

ああ、とてもキレイだな
色々な彩に、つい目移りしてしまう

俺が選んだのは
ネオンブルーのアパタイト
青色の宝石は数あれど
暗闇の中でも光を放つほど
眩く煌めく此れが気に入った

エドガーが選んだ宝石は
月みたいな彩で綺麗だな

絲を紡いだらクリスタリアンに仕事を頼もう
これで、紐を作って貰えないか
可能なら繊細に、細めにして貰えると有難い

…貰っても良いのか?
それは嬉しいまじないだな
口許覆うマスクの下で笑う
ありがとう、大事にしよう

俺の完成品はエドガーに贈りたい
貰ってくれるだろうか
あんたの目の彩に一番似た宝石を選んだんだ

暗闇でも煌めく此れが
エドガーの標となるように
…まあ、お守りのような物だ



●おまじない
 もはやこの世界より、失われてしまった技術。
 全てが宝石で造られた、意志を持つ宇宙船――漿船。
 その船内も勿論、床も、壁も、天井も。全てが全て、宝石で出来ている。
「見てごらん、ジャック君! 宝石が生えているよ!」
 大きなホールへと足を踏み入れたエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は、わあ、と感嘆に似た声を零して、澄んだ空色の瞳を好奇心の色に瞬かせた。
「珍しい光景だなあ、どれもキレイだ」
 晶洞の様な印象を受ける大きなホールの中は、彼の言う通り。
 石の上で生まれる訳の無い宝石達も、その様な結晶の形になる訳の無い宝石達も、全てが全て角柱状に生え伸びて。様々な宝石達が寄り添う宝石の森のように見えた。
「ああ、とてもキレイだな」
 機械の貌、金の双眼を真っ直ぐに森へと向けたまま。ジャック・スペード(J♠️・f16475)が相槌を打つと。
 随分と高い位置にあるジャックの顔へと視線を移したエドガーは、こくと頷いた。
「ウンウン、ずっと見ていても飽きそうにないね」
「しかし、コレほどに数があるとどんな宝石を絲にするか悩んでしまうな」
 天井自体より降り注ぐ光に照らされた宝石は、どれも美しく輝いて。
 その彩についつい目移りしてしまうが、だからと言って絞り込めないのも困ってしまう。
「たしかに! どの宝石もステキな輝きだものね」
 困ったねえ、と笑うエドガーの顔を見やれば、その空色の瞳はぴかぴかと好奇心の色が宿ったまま。紡ぐ言葉とは裏腹に全く困った様子は見えない。
「そうだな」
 同意の言葉を返すジャックは、ホールを再び見渡して――。
「おや」
 ひた、と。
 その視線が一点を見据えている事に気が付いたエドガーは、小さく首を傾いだ。
「ジャック君はもう、どの宝石にするか決まったようだね?」
「ああ、この宝石にするかな」
 頷きながらジャックが手を添えたのは暗闇の中で光を放つ程、冴え冴えとネオンブルーを眩く煌めかせるアパタイトであった。
 その青はとても輝かしくて。
 ――まるで『あんた』に誂えられたモノのように、思えたのだ。
「そうか、とても良い青色だね」
 この宝石達の一つ一つに、全て名が在ることは知っているけれど。
 エドガーは覚えてあげることが出来ない。……覚えていることも出来ないだろう。
 だけど。
 金色を宿した、この美しい宝石の名は知らずとも。
 硬くて頑丈そうだけど優しそうな彩は、――『キミ』にピッタリだと思ったのだ。
「そうだなあ、私はこの石が良いかな」
 よし、と頷いてから金色に掌を当てたエドガーは、再びジャックの瞳を見上げ。
 ジャックがふむ、と静かに声を漏らした。
「あんたの選んだ宝石は、月みたいな彩で綺麗だな」
「私の石が月なら、キミの選んだその石は、青空を映したようだね」
「俺もそこが良いと思ったのさ」
「フフ! 良いね!」
 そうして。
 二人が宝石を抓むように掌を引いた途端、宝石はしゅるりしゅるりと解けて絲と成る。
 クリスタリアンに頼めば、絲は糸に。
 ――宝石に籠めた思いと縁を、紡いで、結わえて、編みあげて。
 出来上がったのは、金を宿した月の色。
 頼んだ通りにかっちりを仕上げられた紐を、エドガーは差し出して。
「はい、ジャック君。コレをあげる」
 ジャックは差し出された紐を見やると金色の双眸を揺らめかせて、首を傾ぐ。
「……貰っても良いのか?」
「勿論! この組紐にはキミが笑顔でいられるまじないをかけたから、きっとキミを守ってくれるぜ」
「それは嬉しいまじないだな」
 小さく胸を張ったエドガーに、納得した様に首肯するジャック。
 成程。
 それならばはじめより、同じ思いで選んでいたと言う訳だ、と。
「――ありがとう、大事にしよう」
 その柔らかに響いた言葉の奥、口許を覆うマスクの下は笑んでいるのだろう。
 ならば、とジャックも組紐を差し出して。
「そうだな。お返しと言う訳では無いが、俺の選んだ紐を貰ってくれるか?」
 そう。
 ふたりとも始めから互いに相手へと贈るために、宝石を選んでいたのだ。
 エドガーの空色の瞳の彩に、一番良く似たネオンブルーのアパタイト。
 繊細に編み上げられた細めの組紐は、眩く煌めいている。
「くれるのかい?」
「……まあ、お守りのような物だ」
「ありがとう! うれしいなあ」
 ――この煌めきが、彼の標となるように。
 ジャックの祈りも、きっとおまじない。

 縁を、思いを、祈りを。
 相手を想う気持ちを絲を糸に、紡いで、結わえて、編みあげて。

「心強いよ、とてもね」
 そうしてエドガーは人差し指を唇に当てて、口角を持ち上げて笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
f01786/綾と

さざめく光の海原の瞬く言葉の楽し気で
歌う灯りの旋律と、踊るよに航る夢の内
隣に弾む秘色のうちに映り込んで
やあ、綾、あなたの眸も宝石のようねえ

砂漠の薔薇は暁に
琥珀の滴は黄昏を
立ち上る泡の藍玉と
擽るよなあなたのお声と光を指先に
蛋白石は綾の心に似ているかしらね

永い夜をひとつずつ縒りだして
明けるまで語っても尽きなかろ
心躍らせながらも汲みだすのは
僕とおんなじユークレース
囁きと一緒にひそりと波を掌の内

波に攫われ天を割ったのはあなたの白い指先
まるで星の瞬くようで頬の緩んでしまうのは
宝物を見つけたような心地になるものだから
そうね、
その煌めきすっかり解けてしまうまで
あなたの物語ってくださるならば


都槻・綾
f01543/イアさん

祝いの広場は
まるで花畑か氷原か
宝石の苑を漫ろ歩く

歩調を合わせてのんびりと、の
つもりだけれど
心弾むのはきっと必然

蕾綻びし『砂漠の薔薇』は目覚めたばかりの乙女のよう
触れるのは躊躇われますね
なんて笑って次なる花群れ

琥珀に宿るは甘く蕩ける歳月の夢
海抱く藍玉
虹に遊ぶ蛋白石

其々に物語を秘めているに違いなく

イアさんがいっとう惹かれるのは
どんな奇譚かしら

どれも素敵で迷ってしまう
けれども――そう、

伸ばした指の先は夜の底
藍と紫の光沢を持つ黒水晶
爪先でそっと弾けば
何処までも澄んだ冬の宵空の如く、清冽な響きがする

邪気を祓うと聞くモリオン
吉祥結びの栞にしたら
受け取ってくださるでしょうか
ねぇ、あなた



●紡ぐ物語
 色とりどりの宝石の柱の間を縫って、ひらりひらり。
 泳ぐように、踊るように歩むイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)。
 宝石で出来た天井自体に宿った光が、宝石を透かして。
 色鮮やかな影が重なる合間を歩む道行きは、花畑にも地上の珊瑚礁のようにも見えるだろうか。
 どこか夢にさえ思える宝石の道の足取りは、イアに合わせてゆっくりと歩んでいるつもりでも、都槻・綾(糸遊・f01786)が気づかぬうちに知らず知らず軽くなってしまうだろうか。
 くうるり振り向いたイアが、人懐っこい笑みを唇に宿している。
「やあ、綾、あなたの眸も宝石のようねえ」
「おや、――あなたの眸も宝石のようですよ」
 そう。
 ふくふくと笑った綾の秘色の瞳を覗き込むイアは、クリスタリアンだ。
 藍色の瞳は、美しき宝石そのもの。
 綾の言葉に、余韻ごと飲み込むようにくっくっと笑い。
 長い睫毛をふさと揺らしたイアは再び、軽い足取りで歩みだす。
 ――道行きに現れる砂漠の薔薇は、暁に目覚めて蕾を綻ばせるよう。
「目覚めたばかりの乙女のようで、触れるのは躊躇われますね」
「そうねぇ。まだ目覚めきっては、いないよう」
 ――まるで柱のように伸びた琥珀。
 黄昏色の甘い色の中には、重ねた歳月が目覚める事も無く夢をたゆたう。
 振り向けば空の色を飲み込んで、海の波を抱いた藍玉。
 彩を幾つも抱く蛋白石は、虹に溶けて。
「ねえ、蛋白石は綾の心に似ているかしらね」
「遊ぶよな蛋白石の揺らぐ虹の彩が私の心に似ているというのならば、それは嬉しいこと」
 眦を和らげた彩は、イアへと首を傾ぐ。
 ――宝石が生まれるまでには、長い長い年月を重ねるもの。
 そこに物語はたしかに秘められて居るのであろう。
「やぁ、イアさん。――イアさんがいっとう惹かれるのはどんな奇譚かしら?」
「あらあら。数々の奇譚は永い夜をひとつずつ縒りだして、明けるまで語っても尽きなかろ」
 それこそ千一夜語ったって選べるものではないと、甘やかにイアは笑う。
 そう。
 どの石だって、物語を秘めている。
 どの石だって、素敵で迷ってしまう。
「それでも、ひとつを選ぼうねえ」
「ええ、いっとう気に入ったひとつを、選びましょうか」
 ――イアの伸ばした指先は、自身と同じユークレースへと添えられて。
 ――彩の伸ばした指先は、夜の色。藍と紫の光沢を持つ黒水晶へと触れる。

 つま先で弾けば、澄んだ冬の宵空の如く清冽に石が響き。
 海が解けて絲と成り、しゅるりしゅるりと波を産む。
 夜が解けて絲と成り、しゅるりしゅるりと天を割る。

 その姿がどうにも星のように眩くて、思わず緩む頬がくすぐったい。
 まるで宝物を集めるように、絲を紡ぎ結いで。

 そう、邪気を祓うと言う黒水晶。
 絲を糸と成して、吉祥結びの栞と成したら――。
「ねぇ、あなた。――あなたは受け取ってくださるでしょうか?」
 彩が瞳を細めて、首を傾げば。
 光を浴びたイアは、また眦を和らげて。
「そうね。――その煌めきすっかり解けてしまうまで、あなたの物語ってくださるならば」
 絲を糸に。
 糸を紐に。
 願いを縁に。
 祈りを加護に。
 あなたの先行きが、良きものでありますように。
 糸を、物語を、結わいましょう。
 解いた年月を、歴史に紡ぐように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

徒梅木・とわ
桃色の桃簾石に、白い曹灰硼石
この二つから成った絲を紐に加工してもらおう

そいつで何をするかって?
飾り結びさ。紅……まあ概ね紅白。うん、縁起良し
何を結うかって?
くふふ、とわに限っちゃあそいつは決まり切っている

麗しく、さらに魅力的にと桃の紐
聡明に、判断力に磨きをと白の紐
結った形は魔除けにして運命向上、五つ花弁の梅の花
今年一年の息災と飛躍を祈って

……梅結びの意味するところは、もう一つある
固く結ばれた絆
桃の紐と白の紐、どうか離れ離れになりませんように
切れ過ぎるくらい切れ者のアイツが、彼方へ此方へと問題解決に奔走しているアイツが、どうか何処かへ行ってしまいませんように
碑に捧げて、さて、仕事に備えよう



●だいたい紅白
 晶洞の様な印象を受ける大きなホール。
 石の上で生まれる訳の無い宝石達も、その様な結晶の形になる訳の無い宝石達も。
 全てが全て角柱状に生え伸びて、それは宝石達の寄り添う森のよう。
 賑々しく糸を紡ぐクリスタリアン達に頼み、絲を糸に。
 紐へと加工してもらった徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は、宝石で出来た作業テーブルへと紐を並べていた。
 一年の幸福を祈って宝石糸を結う、伝統儀式。
 はじめてこの船に訪れたとわだが、ばっちりちゃあんとすべき事を理解している。
 桃色の桃簾石の宝石紐に、白い曹灰硼石の宝石紐。
 まあ、だいたい紅白だろう。片方桃色だけど、すこし位おまけしてもらおう。
 うん、うん、縁起がよいし目出度い感じだろう?
 なんたって陰陽師は縁起を担ぐものだ。
「くふふ、それでは始めようか」
 手慣れた様子でしゅるりしゅるり、とわは結ぶは飾り結び。
 桃簾石は、女性的な魅力を高めて、安らぎを与えてくれる。
 曹灰硼石は、判断力と集中力を高めてくれる。
 五つ花弁の梅の花に結いげば、魔除けにして運命力を向上してくれることだろう。
 ――お勉強だけは、たっぷりと重ねてきたものだから。
 とわはこういう縁起事に関したって、とても詳しいのだ。
 今年一年の息災と飛躍を祈って。
 加護と祈りと願いを籠めた、御守りの完成だ。
「……」
 とわは梅の形に結ばれた、だいたい紅白の紐を見下ろし。
 細く細く息を吐いてから、ちょいと梅を指先で突いて桃色の瞳を細めた。
 ――梅結びの意味するところは、もう一つあるのだ。
 それは、固く結ばれた絆。
 ああ。
 そうだ。
 今も考えてしまっている。
 桃の紐と白の紐が、どうか離れ離れになりませんように、と。
 切れ過ぎるくらい切れ者のアイツが。
 ……彼方へ此方へと問題解決に奔走しているアイツが。
 どうか、どうか、どうか何処かへ行ってしまいませんように。
 なんて。
「…………さて、碑に捧げたら仕事に備えようか」
 肩を一度大きく竦めたとわは頭を振って、大きな狐尾を揺らして宝石碑へと向かって歩みゆく。
 一度、瞳を瞑る。
 ――どうか、どうか。
 この絆が、固く結ばれたままでありますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ショコラ・リング
【GOATia】の皆様と参加します

白や銀色系の宝石糸がありましたら、そちらを編む形で装飾付きの髪留め紐を編んでみたいのでございます
リダンさんの編む手元や助言を参考にしたりして編んでみるのです
手に職を付けるとはこういうことでございましょうか

流石本職のリダンさんは凄いのですね
宝石の繊細さと煌びやかさが調和しているような気がするのです

ナミルさんはらしさがとてもよく出ている金の糸でございますか
力強い輝きを持った皆様の目を惹くマントになりそうでございますね

こうやって様々な色の糸が混じり紡がれ、切れぬ縁となったと考えると素敵だと思うのです
この様な貴重な体験、一期一会に感謝でございますね


リダン・ムグルエギ
【GOATia】の皆と

服飾師としては見逃せないイベントね
紡ぎ方や現地の流行・文化を学ばせてもらうわ
量がもらえるなら宝石糸服を量産もしてみたいわね!

アタシは青く澄んだ、宇宙特有の宝石を尋ねてみましょ
丁寧に縫って手袋に
宝石のような指先ってステキよね
あ、暖かさは大丈夫かしら?

しょこりんは縫いぐるみ作った時の経験が生きてるわね、上手!
石の宝石も添えてみない?

ナミルちゃんには大きめの金のマントを編んであげましょ
銀色系の糸で模様を織り込むときっと綺麗よ
文字か絵か、希望はある?

最後は皆の糸をちょっとづつ貰って三つ編みの簡単なミサンガを3つ作っちゃうわ
切れたら願い事が叶う…あ、宝石の糸って切れにくいかしら?


ナミル・タグイール
【GOATia】の皆と
どこ見てもキラキラにゃ!すごいデスにゃ!

いろんな金ぴか石あるにゃ!全部ナミルのにゃー!カラフル金ぴかゲットにゃ!(取り過ぎを怒られたら渋々従う)
宇宙なら金ぴかに似てる石も色々ありそうだし、コンプして最強金ぴか糸にしたいにゃ!

ショコラとリダンの糸もキラキラ綺麗にゃー。
でもやっぱり金ぴかデスにゃ!ナミルが作るのは最強の金ぴかにゃー!(金ぴかゴリ押し猫)

リダンー!この最強金ぴか糸で最強アクセ作ってデスにゃー!
絵にゃ?じゃナミルの物ってわかるように猫入れて欲しいにゃ!

にゃ!キラキラアクセにゃ!?(ミサンガ)
皆の色って感じにゃ?カラフルキラキラも綺麗デスにゃ!ありがとにゃー!



●金ぴかにゃ!
「にゃにゃにゃにゃにゃっ! どこ見てもキラキラにゃ! すごいデスにゃーっ!」
 獣の耳としっぽをぴいんと立てたナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は、思わず両手を固く結んで、相違う瞳の色にぎらぎらとした光を宿す。
 ここは最早この世界より失われてしまった技術、全てが宝石で造られた意志を持つ宇宙船――漿船の中。
 天井も、床も、壁も、全て宝石で出来た廊下を抜けて。
 クリスタリアンに案内された大きなホールは、まるで様々な種類の宝石が生えている晶洞めいていた。
 それに他の世界の宝石とは、成り立ち自体が違うのであろう。
 真珠や、黒玉、珊瑚に琥珀。
 石の上で生まれる訳の無い宝石達も、その様な結晶の形になる訳の無い宝石達も、全てが全て角柱状に伸びるている。
 それはまるで様々な宝石達が寄り添って共生する、宝石の森のように見えるだろうか。
「にゃーーっ、向こうに金ぴか石にゃ! あっ、向こうにもありマスにゃ!?」
 そんな宝石の森の間を、ひょーいひょーいと跳ねて、飛んで。
「カラフル金ぴかゲットにゃ! 金ぴかはぜーーんぶ、ぜーーんぶ、ナミルのにゃーーっ!」
 雪にはしゃぐ柴犬よりもすごい勢いで駆け回るナミルを眺めながら、ショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)は微笑む。
「ナミルさんが楽しそうにしていると、なんだかボクまでワクワクしてしまいますね」
「いやーあれは、はしゃぎすぎだと思うわ。……でもあの位はしゃぐしょこりんも、少し見てみたい気もするわね……」
 ぱたぱたと手を振ってリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は一刀両断。それから肩を竦めると、ショコラにニンマリ微笑みかける。
「は、はしゃ……? えっ? そ、その……、き、金ぴかは全部ボクのものですにゃ! みたいな……感じでございましょうか……?」
「そうね……、にゃ部分は評価するわ。でも、あの方向ではしゃぐのはオススメできないかしら……」
 控えめながらに頑張ってくれたショコラを評価するリダンは、縦横無尽に駆け回るナミルを横目で見やる。
 ぐんぐん抱える絲を増やしながら、駆け回るキマイラは――。
「全部コンプし、にゃっ!?」
「あっ」「あっ」
 現地のクリスタリアン数人に囲まれて、苦言を申し立てられはじめていた。
「あっ、あっ、ごめんなさいデスにゃ!?」
 そう。
 いくら猟兵がこの船を救いに来てくれたとは言え、これは新年の儀式。
 もはや失われた技術で造られた船内で大暴れしながら、儀式の御守りの材料を根こそぎ持っていこうとすれば当然止められるもので。
 現地のクリスタリアンにこっぴどく怒られているナミルの尾からは、だいぶ元気が失われている。
 目を逸らすリダン。
「……さて、しょこりん。どの石にする?」
「えっ、放っておくのでございますか?」
「餅は餅屋、服は服屋、強盗と脱税には警察よ。アタシは服飾師だもの」
「そ、そうでございますか……」
 ――そういう訳で。
 叱られるナミルを放置して、絲紡ぎは始まったのであった。

 リダンの手には青く澄んだ、海の色をした宝石糸。
 ショコラの手には、月の銀を宿した宝石糸。
 するすると魔法のように。
 レース編み要領で手袋を編み上げてゆくリダンに、ショコラは目をまんまるくして。
「……さすが本職でございますね」
 宝石の繊細さと煌びやかさが調和しているような気がするのです、と。
 ゆっくりと髪留め紐を編みながらショコラが驚いた様子で呟くと、まあねとリダンは笑って。
「宝石のような指先、って良いキャッチフレーズじゃない? でもそういうしょこりんも、縫いぐるみ作った時の経験が生きてるわね、上手よ!」
 本職に褒められれば、そりゃあ嬉しいもの。
 ショコラは尾をふかふかと揺らして、眦を和らげ。
「はい、ありがとうございます!」
「ねえ、それ石の宝石も分けてもらって飾りにしたらもっと素敵じゃない?」
「成程、良さそうでございますね……」
 ご指導ご鞭撻。
 手に職を付けるとはこういうことでございましょうか。
 コクコクと頷いたショコラが、更に紐を編んでいると――。
「ショコラー! リダンー!」
「あっ、帰ってきたわね」
「随分と怒られていましたね……」
 手をブンブン振りながら駆けてきたのは、ナミルであった。
 二人が作業している宝石テーブルへと一気に跳ねて距離を詰めたナミルは、どさっとテーブルに大量の金糸を置いて。
「リダン、リダン! この最強金ぴか糸で最強アクセ作ってデスにゃー!」
「随分沢山貰ってきたのね……」
 リダンには特別な儀式に使う糸だから、とそこまで沢山は分けてもらえなかったというのに。
 いや、ナミルの事だから強奪してきた可能性すらあるのだけれども。
 ……ま、しっかり怒られてきたみたいだしいいわ。うん。
 折角貴重な糸に触れる機会だもの。
 やや現実から目を逸らしたリダンは、すこうしだけ思案顔。
 なんといってもナミルは既に、全身金ぴかアクセサリーまみれだ。
 後なにか付けていないものと言えば――。
「そうね。これだけ糸があるならば大きめの金のマントも編めるかしら? 銀色系の糸で模様を織り込むと、きっと綺麗だと思うけれど……」
 文字か絵か、希望はある? なんて、リダンが首を傾ぐと。
 にゃーっとナミルは両手を上げた。
「じゃナミルの物ってわかるように猫入れて欲しいにゃ!」
「はいはい、了解したわ」
「金色のマントですか……、力強い輝きを持った皆様の目を惹くマントになりそうでございますね」
「これでますますナミルは、じゃらじゃらきらきらにゃ♪」
 ショコラが目をぱちぱちさせながら言葉を紡ぐと、その横に瞳をぴかぴか瞬かせたままのナミルが待てをするように、すとんと座って。
 それを横目にリダンはマントを編み上げて行き――。

「ああ、そうそう。皆の余った宝石糸はミサンガにしてみたわ」
 そうして、マントを編み上げた後に。
 思い出したようにリダンが取り出したのは、青に銀そして金の糸が三編みにされたミサンガ三本であった。
「にゃっ! キラキラアクセの追加にゃっ!? カラフルキラキラも綺麗デスにゃー、ありがとにゃ!」
「折角だものね。切れたら願いが叶うらし…………、あ、もしかして宝石の糸って切れにくかったり……したわね。そうだわ、切れにくかったわ……」
 ミサンガへと飛びついて早速腕に結ぶナミルの横で、作業中も大変だった事を思い出すリダン。こめかみを抑えてあちゃー、なんて。
 そりゃあもう。
 作業中は脳がハイになっているので、気づけ無いことが割とあるものだ。
 ミサンガを手にしたショコラが、ふるふるとかぶりを振って小さく笑う。
「でも。……こうやって様々な色の糸が混じり紡がれ、切れぬ縁となったと考えると、素敵だと思うの……です!」
「さっすがしょこりん。良いこと言うわね!」
「にゃ!」
 ショコラのフォローに、リダンが笑うとナミルも大きく頷くと。
「この様な貴重な体験、一期一会に感謝でございますね」
 なんて。
 ショコラはもう一言、良さげな言葉を付け足すのであった。

 ――絲を糸に、紡いで、結わえて、編みあげて。
 縁を、思いを、絆を結うように。
 皆との日々を、思い出を、更に更に、紡いでゆきましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
山や海じゃないのに色んな宝石があるよ
これも宇宙の神秘ってやつかな?

色とりどりの宝石の中で目に止まったのは
乳白色の中に七色が輝く石
へぇ、ホワイトオパールって言うんだ
ただの真っ白じゃなくて
沢山の色が閉じ込められているのが見ていて飽きない
これは俺よりも似合いそうな梓に贈ろう

新年といえば願い事
この宝石に願いを込めればいいのかな
「今年も梓と沢山遊びに行けますように」

一年前の俺ならそう言ってたかもね
今でも戦いは勿論好きなんだけど
まず頭に浮かんだのは
夏休みやクリスマス、梓と作ってきた思い出たち
普通の人のような平穏な日常を君が沢山教えてくれた
もっともっと知りたい

だから、俺の願い事、叶えてよね


乱獅子・梓
【不死蝶】
宇宙の神秘で片付けていいのかそれは…
これ本当に生えているのか?
インテリアとして貼り付けているのでは?
と疑ってしまうのは俺の悪い癖

俺だけ貰うのも悪いし
俺からも綾に宝石を選んで交換としよう
綾といえばパッと思い浮かぶのは赤や黒
そして見つけたのはガーネット
赤い宝石といえばルビーも定番だが…
この深みのある赤がより一層綾を思わせる

…何だか意外だな
お前のことだから「今年もいっぱい戦えますように」とか
そんな危なっかしいことを言うと思っていた
俺も去年なら「綾が死にませんように」とか
願っていたかもしれないな

じゃあ、俺の願い事は
「今年も綾と沢山遊びに行けますように」だ
お前こそちゃんと叶えろよ?



●ねがいごと
 降り注ぐ柔らかな光は、どうやら天井そのものが発光しているようで。
「へぇ、すごいねぇ。――これも宇宙の神秘ってやつかな?」
 目線を上げた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、少しばかり興味深げに言葉を零し。
「いやいや、これは宇宙の神秘で片付けていいのか……?」
 眉を寄せる乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が訝しげに眉を寄せて、肩を竦めた。
 ここは天井を見たって、床を見たって、壁を見たって。全て、全て、宝石で出来ているクリスタリアン達の船。――とうに失われた技術で造られた世界最古の旧式移民船、漿船の中である。
 その中でも二人の今立っている大きなホールは、一際眩くまるで晶洞の中のようだ。
 ……しかし彼らの言う、『宇宙の神秘』とは。
 一種類の宝石がまさに晶洞の如く存在すると言うのならば、話は早い。
 だがこのホールには、幾つもの種類の鉱石、鉱物が存在し。
 その上真珠や、黒玉、珊瑚に琥珀まで。石の上に生まれる訳の無い宝石達や、その様な結晶の形になる訳の無い宝石達までもが、全てが全て、角柱状に伸びているものだから。
「……置いてるだけじゃないのか?」
「いやぁ、宇宙の神秘でしょ?」
 疑り深く宝石の柱を撫でる梓に、綾は何時ものように緩い笑みで応じ。
「お」
 そのまま目の前に立っていた宝石の柱に目を止めた。
 乳白色に宿る、虹の色彩。
 覗き込む角度を変えると、きらきらぴかぴかと瞬く色。
 ただ単に白いだけでは無くその中に幾つもの彩が閉じ込められている様は、ずっと見ていても飽きそうに無い。
 梓の背と宝石を見比べた綾はそのままホワイトオパールの柱へと手を添えて。
 きゅっと抓むようにクリスタリアンに教わった方法そのままに、宝石を絲へと解き出す。
「ん、石を決めたのか?」
 梓が振り返って尋ねると、綾は頷き。
「うん。俺よりも梓に似合いそうだと思ってね」
「いやお前……まぁ良いけどな……」
 それは自らの為に糸を紡いでくれるという宣言に他ならず。
 ならば、梓も綾の為に宝石を選ばねばならぬだろう。
 綾の顔と宝石の群れを交互に見やってから、梓は瞳を細める。
 ――綾の色。
 ぱっと思い浮かぶのは、赤や黒。それも鮮やかなルビーでは無く――。
「綾には、コレだな」
「へぇ、誂えてくれるんだ」
「俺も選んで貰ったしな」
 梓も赤色の宝石柱に手を添えると、絲をしゅるりしゅるりと紡ぎ出して。
 ……ガーネットの深みのある赤は、綾にぴったりだと思う。
「そうか、ありがとう。じゃあ、この宝石糸に願いを籠めさせて貰おうかな」
「お? どんなのだ?」
 首を傾ぐ梓の顔を真っ直ぐ見据えると、綾は淀みない様子で。
「今年も梓と沢山遊びに行けますように、なんて……どう?」
「……何だか意外だな」
 綾がそんな事を願うとは、と梓は瞬きを一つ、二つ。
「お前のことだから『今年もいっぱい戦えますように』とか、そんな危なっかしいことを言うと思ってたが……」
「そりゃ、今でも勿論戦いは好きだけどさ」
 一年前の俺ならそう言ってたかもね、なんて綾は肩を竦めて。
「――願い事を考えた時に、まず頭に浮かんだのが君と遊びに行った時の事だったんだよね」
 夏休み。
 クリスマス。
 梓と一緒に色んな場所へ行った、色んな経験を重ねた。
 ――まるで戦うことを知らぬ普通の人のような。
 平穏な日常を、君が沢山教えてくれたんだ。
 今はそれを、綾はもっともっと知りたいと思っている。感じている。
 それは、君が変えてくれた事。
 視線を逸らすこと無く、綾は梓を見やったまま。
「……へえ?」
 梓の唇に小さな笑みが宿る。
 そりゃ梓だって。
 去年の今頃であれば『綾が死にませんように』なんて、願っていたかもしれない。
 でも――今は。
「じゃあ、俺の願い事は『今年も綾と沢山遊びに行けますように』だな」
「お、いいね」
 くっと喉を鳴らした綾は人差し指をぴっと立てて、梓の顔の前に差し出して。
「俺の願い事、叶えてよね?」
「お前こそ、ちゃんと叶えろよ?」
 瞳を眇めた梓は、まんざらでもない声色で応じるのだ。
 変わる心、揺れる心。
 日々を紡ぎ、縁と成して。
 二人で編み上げる歴史は、また彼らの色に彩られて行くのであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベリル・モルガナイト
あら。ご先祖様が。生まれた。世界で。こうして。私と。同じ。輝きに。触れる。というのは。少し。不思議な。感じが。致します。ね?

私が。選ぶ。宝石は。モルガナイト。他にも。宝石が。使える。のでしたら。
ふふ。空色の。美しい。石も。探して。みます
作って。頂くのは。紐に。致しましょう
私も。お手伝い。できる。ことなどは。ある。でしょうか?
折角の。機会。ですもの。自分の。手でも。作ったり。してみたい。ですから

完成したら。宝石碑に。吊り下げ。祈りと。誓いを
空色の。人形の。ような。彼の。平穏を
そして。こんな。祈りを。捧げる。素敵な。一時を。くれた。ここの。皆様を。守り。抜くことをT



●騎士のこころ
 大きなホールを照らす人工光は、天井自体が光っているようで。
 光を浴びた様々な宝石達が、ステンドグラスのように色鮮やかな影を地へと落としている。
 まるで晶洞の中のように、宝石の結晶がそこかしこより生え伸びる道行き。
 柱のように伸びた様々な種類の宝石たちは、他の場所であれば決してこの様な形で成長したりはしないだろう。
 全て、全て、宝石で出来ている、クリスタリアン達の船。
 ――とうに失われた技術で造られた世界最古の旧式移民船、漿船の一角。
 ベリル・モルガナイト(宝石の守護騎士・f09325)は周りに立つ宝石の柱と同じ様に、宝石の髪に透ける淡紅色の影を地へと落としながら、軽い足取りで宝石の森を歩みゆく。
 ベリルはクリスタリアンではあるが、この世界の出身では無い。
 いわゆる神隠し等で異世界から流れ着いた、アックス&ウィザーズの異種族達の寄り集まった集落の出身である。
 どこか儚げな笑みを唇に宿したまま、ベリルは自らの身体を構成する石――モルガナイトの結晶に手を添えて。
 漿船のクリスタリアン達に教えられた方法そのままに、掌を引くとしゅるりしゅるりと毛糸のセーターを解くように、絲を紡ぎ出した。
 たしかにこの世界は、彼女の生まれた世界では無い。
 しかし。
「ふふ。ご先祖様が。生まれた。世界で。こうして。私と。同じ。輝きに。触れる。というのは。少し。不思議な。感じが。致します。……ね?」
 ぽつりと囁いたベリルは紡いだ絲を手に、花の蕾が綻ぶように小さく笑みを深めて。
「さて。ぴったりの。石が。あれば。良いの。ですけれど」
 呟くと、更に宝石の森の奥へと歩みだす。
 彼女の探す色は――柔らかな薄紅を抱く、美しきあの空色。
 クリスタリアン達も糸の作り方を教えてくれると言っていた。
 無事見つける事ができれば、紐を編み上げようと思う。
 自らの色と、彼の色。
 絲を糸へと紡いで、結いで。
 縁を編み込み、祈りを、誓いを編み込んで。
 ベリルが自ら編んだ紐で、宝石碑へ祈りと誓いを捧げましょう。
 それは。
 まるでお姫様みたいな人形の――人形のような彼の、平穏を願う誓い。
 そして。
 此の様に祈りを捧げる機会を。
 平和な一時をくれたこの船の皆を、守り抜く事への誓い。
「……がんばり。ましょう」
 まずは、あの空色を目指して。
 ベリルは宝石の道を、ゆっくり、ゆっくり歩む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花川・小町
【錦】
ええ、でも他の子を誘っちゃ駄目とは言ってないわよね
それに大丈夫よ、私はちゃんと解ってるから――私を誘うという事はつまりそういう事(本当は清宵ちゃんも誘いたいけど照れ臭くてみたいなあれ)でしょ?
ふふ、糸ならぬ意図を汲んで縒り合わせてあげるって愉しいわね

さ、それよりこの奇縁と新年を皆で仲良く祝しましょ
あら、私には最高の縁しか見えないけれどね?

(金剛石に似た不思議な石――光受け万華の様な煌めき魅せる其から、絢爛な絲手繰り)
――伊織ちゃん?(生温かい微笑み)

もう、駄目よ
折角素敵な絲が揃ったのだから――これも縒り合わせれば一層素敵な綾錦に仕上がるんじゃない?(男性陣の糸を纏めて拗…編んであげつつ)


呉羽・伊織
【錦】
…オレは姐サンを誘ったんだケドネ?
どーして又候こんな邪魔者ばかり!
(狐共に恨めしげ&忌々しげな視線向け)
そんなワケあって堪るか、オレはちっとも楽しくない!
揃いも揃って余計な世話焼きしかいない…姐サン、ソレは拗れさせると言うのヨ

くっ…まぁ縁は大事にしよーと思うヨ?
でもネ、世の中には腐れ縁とか悪縁とかいう宜しくないモノもあるでしょ?

――はっ、分かったぞ
(喧しい連中を無視り、唐突に紫水晶に触れ同色の絲を得て)
其方の素敵な宝石のお嬢サン
折角なんでコレをお嬢サンとの縁結糸に仕立――ゴメンナサイほんの冗談デス

悪縁両断祈願に碑に捧げたいんで何卒!
ちょ、やめて絡めないでほどいて祝いどころか呪いになるー!


佳月・清宵
【錦】
ああ、そういうこった――小町に面白ぇ話を吹っ掛けりゃ、俺がついてこない訳がねぇと解りきってんだろ
相変わらず良縁を掴めもしねぇ孤独な野郎を哀れんで、態々付き合ってやろうってんだ
折角の祝いの場で新年早々辛気臭ぇ面してねぇで、もっと愉しもうぜ?

おう、もっと有難く大事にしろよ
この俺がこうも構ってやるなんざ貴重だってのに、悪く言うとは酷ぇなぁ?

(粗方読めた行動と展開を、それはもう微笑ましく見守ってやりつつ――深い紅黒が目を惹いた柘榴石風の一片を撫で)
ああ、浮気野郎にゃ糸よか手綱が必要か?

(慌てて止めんとして逆に余計縺れさせそうな伊織に一層笑い)
こりゃ今年も綾錦の彩の如く、飽きぬ一年になりそうこって


千家・菊里
【錦】伊織の雛亀と共に
俺は仕事兼伊織監視にご一緒した迄です――亀さんとぴよこさんというものがありながら、浮気は駄目ですよ(ジト目の雛亀を向け返し)
序でにお祝い事は皆でした方が楽しいですしね
流石小町さん、鮮やかな取り持ちで(拍手)

おやおや
悪縁も何も――すぐ絆されて、自ら切るに切れぬ程こんがらがりに行くのは伊織自身でしょう?

(伊織を生温かく見送る傍ら、清宵とはまた少し違う苦礬柘榴石風の欠片に手を――序でに雛亀にも紅玉から赤糸紡ぎ)
伊織、君の赤い糸の相手は此方(更にジト目の雛亀)でしょう

全く困ったご主人ですねぇ
(自分の糸は小町さんに任せつつ
伊織&雛亀糸の一部を繋ぎ可愛い雛亀用首飾りを結ってあげた!)



●紡ぐ日常
 全てが宝石で出来た船内。
 その中でも一際大きなホールの中には、様々な種類の宝石の結晶が晶洞の中のように生え伸び。天より降り注ぐ光を浴びた宝石の鮮やかな影が重なる、美しき宝石の森の中で。
 眉間に深い深い皺を刻んだ呉羽・伊織(翳・f03578)は、心底恨みがましい半眼のじっとりとした表情を浮かべていた。
「……オレは姐サンを誘ったんだケドネ??」
「ええ、でも他の子を誘っちゃ駄目とは言ってないわよね?」
 その視線に含まれる、負の成分に全く気づいていないような笑顔。
 綺麗に花笑んだ花川・小町(花遊・f03026)は、あっけらかんと言い切り。
「そーだケド……、どーーして、どうしてっ、またぞろこんな邪魔者ばかり集めたのっ!?!?」
 言い切られてしまえば、伊織だって何時ものようにわあっと嘆く。
 そんないつもの様子をはっと鼻で笑った佳月・清宵(霞・f14015)が、やれやれと肩を竦めて。
「相変わらず良縁を掴めもしねぇ哀れで孤独な野郎の為に、態々付き合ってやろうってのにご挨拶だなァ?」
「俺は仕事兼、伊織監視にご一緒した迄ですよ」
 清宵の横に立つ千家・菊里(隠逸花・f02716)は悪びれる様子も無く言いながら、その腕に抱いている普段は伊織にくっついている亀をずいっと差し出した。
「しかし、もう。駄目ですよ? 亀さんとぴよこさんというものがありながら、浮気なんて……」
 菊里の言葉に伊織に向かって前足をわしゃわしゃ上下させる亀。
 何となくその目線は伊織を責めるように、じっとりしている様な気がしない事も無い。
「はーーい!! 新年早々、腹黒狐達は静かにしていてくださーーい!!」
 注意する小学生みたいな調子で、高らかに言った伊織。
 どうしてその亀をまた連れて来ちゃってるの!?
「ふふ、伊織ちゃんったら照れちゃって。――ちゃんと解っているわ。――私を誘うという事はつまりそういう事でしょ?」
 そんな三人と亀の仲睦まじさが喜ばしい様子の小町はまた楽しげに微笑んで、解っているわよ、の目配せ一つ。
 それは本当は清宵ちゃん達も誘いたいけれど、実は照れ臭くてみたいな。
 そういうアレ的な事でしょう? みたいな目配せである。
「違いますケド!?!?!?!?」
 伊織は信じられない速度で首を左右に振って力強い否定を重ねるが、それだっていつだって照れ隠しだとしか思われないのだ。残念ながら、そういう星の下に生まれついているのであろう。
 その証拠に――。
「違わねぇだろ? ――小町に面白ぇ話を吹っ掛けりゃ、俺がついてこない訳がねぇと解りきってんだろ」
「それに亀さんとぴよこさんも寂しがりますしね」
 清宵はまた、はっと鼻で笑って。
 菊里が亀に尋ねるように首を傾げば、亀がコクコク頷いてくれる。
「ああ。折角の祝いの場だ、縁を掴めず新年早々辛気臭ぇ面するくらいなら、亀とぴよこを連れてくる方がまだ目出度いし愉めるだろうな」
「ですよねえ」
 清宵と菊里がワイワイと納得した様子で言うものだから、伊織は拳を固く握りしめ。
「そんなワケあって堪るかっっ!! オレはちっとも楽しくないっっ!!」
 噛みつかんばかりの勢いで吠えるのだが――。
「相変わらず楽しげで息がぴったりねえ」
 小町からすれば、全てが楽しげなじゃれ合いにしか見えないもので。 
「姐サン!?」
「ふふ、糸ならぬ意図を汲んで縒り合わせてあげるって――愉しいわね」
 それから。
 今日も徳を積んでしまったわと言わんばかりの良い顔で、小町はサムズアップ。
「姐サン……ソレは拗れさせると言うのヨ?」
 世話焼きさん達に完全に退路を立たれた伊織は、吐息を零した。
「……そりゃあ、まぁ縁は大事にしよーと思うヨ?」
 絲を縁に見立てて紡ぎ結う儀式に自主的に参加しようとする程度には、縁は大切なものだと伊織は思っている。
 しかし、しかし。
「おう、大事にする気があるなら有難く大事にしろよ」
 宝石を見渡す清宵が、ゆるゆる手を振って。
 うーーん!
 これは狐!
 こんな偉そうな悪縁は必要としていないんだヨネ~。
「ちょっと黙っててくれない!? ほら、姐サン? 世の中には腐れ縁とか悪縁とかいう宜しくないモノもあるでしょ!?」
 最早一度優しく微笑んでしまった伊織が、カッと瞳を見開き。
「へぇ、この俺がこうも構ってやるなんざ貴重だってのに、悪く言うとは酷ぇなぁ?」
「おやおや。悪縁も何も……すぐ絆されて、自ら切るに切れぬ程こんがらがりに行くのは、伊織自身でしょう?」
「ちょっと話をこんがらがらせるのヤメテ!?!?!」
 そこに妖狐たちがワイワイと口を開きだすものだから、伊織はまたわっと吠えた。
「ふふ。――私には最高の縁しか見えないけれどね?」
 そんな。
 繰り返されるお約束も、繰り返される悪態も。
 仲が良くなければ、紡ぐ事の出来るものでは無いでしょう。
 小町は笑いながら腕を大きく広げて、切り替えるように一歩進み。
「さ。そんな事よりも、この奇縁と新年を皆で仲良く祝しましょ?」
「そんな事!?」
 伊織の言葉を完全にスルーした小町は、クリスタリアンたちに教えて貰ったままに。
 光を受けて万華鏡のような彩を宿す、ダイヤモンドに似た宝石へと手を添えた。
「流石小町さん、鮮やかな取り持ちですね」
 ぱちぱちと拍手を重ねた菊里も、宝石を既に決めている様子で。
 熟れた柘榴のような色の――苦礬柘榴石めいた石を、しゅるりしゅるりと絲へと解き出す。
 ――ついでに亀さんにもルビーを紡いであげた様子で、亀の甲羅の上には赤い絲が載せられている。
「……はっ」
 そこに。
 もう全てがイヤになりつつあった伊織が突然背中をピッと伸ばして、手早く紫水晶を絲にすると突然駆け出して。
 その向かう先は――。
「――其方の素敵な宝石のお嬢サン。ここで出会えた事はきっと運命。折角ですし、コレをお嬢サンとの縁結糸に仕立て下さいませんか?」
「へっ?」
 絲を紡いでいた現地のクリスタリアンへと、伊織はキリリと紫色の絲を差し出し。
 そんなナンパをはじめた彼を視線だけで追った皆は、やれやれと同時に肩を竦めた。
「……あー、浮気野郎にゃ糸よか手綱が必要か?」
 深い紅黒色を宿す柘榴石を絲にしながら、清宵は心底呆れた口調。
「伊織、君の赤い糸の相手は、此方にいるでしょう?」
 全く困ったご主人ですねぇ、なんて。
 菊里は亀さんの為に首飾りを編みながら、伊織を見る事も無く言った。
 なんたって。
「…………伊織ちゃん?」
「ゴメンナサイ、ほんの冗談デス」
「もう、……駄目よ?」
 生暖かい笑顔で小町が伊織を見てやれば、彼がすぐ帰ってくる事くらい見なくたって解っている。
「どうなるか解っていてするのですから、伊織ですねえ」
「全くだな」
 そうして菊里と清宵はいつもどおりの伊織に、やれやれと顔を見合わせるのであった。
 ――閑話休題。
「さてと、……折角素敵な絲が揃ったのだから、縒り合わせれば一層素敵な綾錦に仕上がるんじゃないかしら?」
 皆が紡いだ美しき宝石の絲達。
 小町は自分以外の絲を纏めると、紡いで、結って――。
「待って、姐サン。そ、ソレは拗れさ……」
「何? 伊織ちゃん」
「ヒェッ」
 恐る恐る伊織が声をかけるも、振り向かれるだけで伊織の原初の魂が震えてしまう。
 こういう時の小町を諭す事に、伊織は心底向いていないのだが――。
 それでも、それでも。
 あの腹黒狐達と、縁を撚り合わされる事だけは心底止めたいもので。
「いや、……待って、待って、姐サン! 絡まってる、絡まってる! 祝いどころか呪いになりそうなんだケド!?!?!」
「やあねえ、編めてるわよね」
「俺の縁ーーーッ!?」
 伊織だって本気で頑張って止めようとしているのだが。小町は勿論気にした様子も無く、サクサクと男達の縁の絲を糸へと仕上げてゆく。
「悪縁両断祈願に碑に捧げたいんで、ほんと、待って、姐サン!!」
 このままではガッチリと繋がれてしまいそうな縁に、否最早結ばれてしまった縁にわたわたする伊織。
 寄り添ってゆく亀、微笑みながら糸を編む小町。
「……こりゃ、今年も綾錦の彩の如く、飽きぬ一年になりそうこって」
「ですねえ」
 そうして。
 年が明けても変わらぬ光景に清宵と菊里は、また顔を見合わせて笑うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
【猫ひげ】

宝石からほんとに糸が
零時くんには見慣れたものなんだっけ
アレ違うの?すごい技術なんだね

どんな宝石で紡ごうかなぁ
あちこち零時くんを引っ張って見付けたのは
光の加減で色んないろに見える宝石
鈍い色にも煌く色にも
きっと一本一本同じものはない
数千の時で今まで数え切れないぐらい
連綿と繋がるえにし
それを束ねたらきっとこんな色になると思う

あと君の髪も頂戴…うわめっちゃ手慣れてる
髪をもらって絡めて紡いで
うーんなに作ろうかなぁ
ねぇねぇ零時くんはどんな色にしたの?
わぁ綺麗なあおいろ
アクアマリン選ぶの零時くんらしいね

どんなものつくろう
なくさないで身に付けられるものって…うーん
あ、髪留めにしようか
ふふーお揃いだね


兎乃・零時
【猫ひげ】

宝石糸は見慣れたもんだけど…なんか製造方法うちと違う!
(自前の宝石糸を思い出し)
宝石から直接糸…その技術知りてぇ…!

引っ張られつつロキが見つけた宝石はなんかすごいキラキラしてる…
え、めっちゃ綺麗じゃん…ん?俺様のか?

俺様が見つけた宝石はこれかな!
目についた一目ぼれ
それは白藍色のアクアマリン
透き通る結晶、されど角度や場所次第で12の鮮やかな色の変化を果たす、摩訶不思議な藍玉だ

俺様の髪も大丈夫だぞ―!(手慣れたように髪を一本ハサミで切って渡す)
俺様の色は…この透明な奴!なんかびびっと来た!やっぱ自分関係だしな!

どんなものかー、ん―…

無くさないでってなら…髪留めとか!

ふっふー、お揃いだな!



●おそろい
 全てが宝石で出来た船。
 全てが宝石で出来たホール。
 様々な宝石が生える晶洞めいたホールに集まったクリスタリアン達が、角柱状に伸びた宝石に手を添えて引くだけで、まるで毛糸のセーターを解くように宝石が絲へと解けて行く。
 その様子を後ろから見ていたロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は、ほうっと息を吐いて。
「わあ。すごいね、ほんとに宝石が糸になってるよ」
 兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)の反応を見るように、彼の顔をロキは見た。
 ――彼はクリスタリアンで、宝石糸には馴染みが深いと聞いている。
 そんな彼からすれば宝石が糸になる事は当たり前で、すごくもなんとも無い事かもしれないけれど――。
「いや、えっ、なんか、製造方法がうちとぜんぜん違う!」
「え? アレ違うの?」
 ロキの予想を裏切って目をまんまるにした零時は、ちょっと興奮気味。
「うちの宝石糸は髪だし、えー……! 宝石から直接糸を作るその技術……、知りてぇ……!!」
 そうすればもっと色んな宝石糸を作る事が、零時にだって出来るかもしれない。
「へえぇ、すごい技術なんだね」
 ぐぐっと拳を握った零時に、ロキはゆるーく笑って。
「後で聞いたら答えてくれっかなぁ?」
「ふふ、そうだねぇ。聞いてみよっか」
 ロキの顔を見上げて言った零時に、ロキはこっくり頷いた。
 ――絲の紡ぎ方を教えてくれたクリスタリアンによると。
 外から来た者達ならば特別な石を握り締め――この船のクリスタリアンならば手を翳すだけで、この船のクリスタリアン達がマザーと呼ぶ漿船自身の力によって、宝石を糸に加工できるそうで。
 ――漿船の製造方法が既に失われた技術である事から、方法を教える事はできないと言われてしまうのだが――。
 しかし。
 方法が判らずとも、今は加工する事が出来るのだ。
 渡された石を握りしめた二人は、光を浴びた様々な宝石達がステンドグラスのように色鮮やかな影を地へと落とす道を並んで歩む。
「あ。あの宝石にしようかな?」
 足を止めたロキの視線の先には、光の加減で様々な彩を宿して見える宝石が立っていた。
「おー、いいな! なんかすごいキラキラしてるし、めっちゃ綺麗じゃん!」
「うん、綺麗」
 ロキが手を添えると、しゅるりしゅるり、解けだした絲。
 その絲の鈍い色にも、煌く色にも、きっと一本一本同じものは無いのであろう。
 ――ロキの重ねた数千の時で、今まで数え切れないぐらい連綿と繋がるえにし。
 そのえにしを束ねると、きっとこんな色になるのかもしれない、とロキは思う。
 そこに。
 はたと気づいた様子で、ロキは零時を振り返り――。
「あ、あと、零時くんの髪も貰える?」
「お? 良いぞ!」
 手慣れた様子でハサミを取り出すと、零時は自らのアクアマリンの髪を一本切って。
 ――これが彼の言う所の、彼の宝石糸の製造方法だ。
「うわ、めっちゃ手慣れてるね」
「まあな!」
 零時はふふんと胸を張って笑った。
 そんな彼の様子にロキは眦を和らげて。
 重ねたえにしの色に、彼の色を重ねる。
「そういえば、零時くんはどんな石にするの?」
「ん? ああ、俺様は――あれだ!」
 零時が指差す先は、白藍色のアクアマリンの柱。
 透明度の高い白藍色ではあるが、角度によって幾つもの彩を宿す光に一目惚れしたのだと零時は拳をきゅっと握りしめ。
「わぁ、綺麗なあおいろ。なんだか零時くんらしい色だね」
「ふっふふー、そうだろー? やっぱ自分関係だしな、びびっと来たぜ!」
「うんうん、ぴったりだよ」
 ロキはふわふわと笑いながら、絲を握りしめる。
「……けど。うーん、どんなもの作ろうかなぁ」
「あれ、まだ思いついてないのか?」
 零時の質問に、こっくり頷くロキ。
「うん、なくさないで身に付けられるものって、何かなーって」
「うーん……、ミサンガはちぎれるし……、ブレスレットとか……?」
「……腕とか飛んだ時になくさないかな?」
「……????? 腕が飛ぶ予定が……あるのか……?????」
 目を丸くしたまま、零時の眉間にきゅっと皺が寄る。
「えっ? 飛ばない?」
 ロキがよくある事のように首を傾ぐものだから。
「飛ばさないほうが良いと思う……!!!」
 ぷるぷると左右に首を振って応じる零時。
 しかし、敵に齧らせる為に腕を敵の口へと突っ込んだ事が零時にもあるもので。
 あまり深くそれ以上追求しない事としよう。
 それから零時は思考回路を切り替えて、すこうし思案顔を浮かべ。
「……んー、髪留め、とか?」
「あ、いいね。髪留めにしよっかな」
「俺様も髪留めの予定だしなー!」
 ぱっとロキがはちみつ色の瞳を瞬かせて、笑みを深めて。
 その笑みに零時もにんまりと笑い返す。
「ふふー。それじゃ、お揃いだね」
「ふっふー。そうだな、お揃いだな!」
 縁を重ねて。
 縁を結って。
 ――重ねた縁は、歴史と成るのだろう。
 二人は並んで、作業スペースへと向かって――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
クロト(f00472)と
好きな色は沢山…(迷

ほどける絲を掌へ
清らな菫青石に
絹糸のような雲母が幾筋かと
一本か細い紅玉

それらを託してお願いしたのは
青紫の宙に星屑の煌きを宿し
内側に薄らひとすじ赤を隠した指輪
紡ぎ手殿に真心込めてお礼を

己の道行きや削った寿命の残りを思えば
全き安らぎを約せるわけではなく
指輪を贈ることに迷いがあった
けれど今の私の想いを
形にして渡したいと思うから

翠玉を選ぶ彼がとても愛らしい
花結ぶ手さばきに息を呑み
また花をくれたことが嬉しくて
大切に胸に抱く
その手の優しさをまた知った

いつも幸を紡いでくれるひと
何にも替えられぬ唯一つの宝
…愛してる
共に幸いが続きますように
手を取り、指輪を右手の薬指へ


クロト・ラトキエ
千之助(f00454)は好みの色とか…
いえ、何でも無いデス。

紡ぎ、結う――その全てが。
己の様な輩には似合わぬと…
基、あって害のみ一利なしと
…以前なら。

漿船の方々にお頼みし礼を述べ、
翠玉に似た結晶に手を伸べて。
…敵さんの色、微妙な感もありますが。
頂いた紐。中央に花を結い、長めの首飾りに。
何でこの宝石か…解られてたら、聊か恥ずかしいですけど。

どうか幸福でいて、と。
僕は幸せです、と。
それから
――愛しくて、恋しい。
…受け取って貰えたら、嬉しい。

千之助は花が好きだと言う。
…好きで埋め尽くしたい。
自分を削るのをまるで躊躇わないから、尚の事。

君が僕の宝。泣きたい程の倖い。
宝、なら、
どうか、取り零さないでいて



●愛の成就
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は緊張した面持ちで喉を鳴らす。
 縁。
 紡いで、結わう。
 クロトはそのどれもが、自らには縁遠い言葉だと思っていた。
 己のような輩にはその様なものを紡ぐ資格など有りはせず、似合うわけも無いと。
 ――もとい。あって害のみ一利なしと、以前なら思っていたのだ。
 彼と――佐那・千之助(火輪・f00454)と出会う前は思っていたはずなのだ。
「……ああ」
 彼に好きな色を聞こうとも思いもしたが。
 ――嗚呼、嗚呼。
 自らで選んでしまった敵の親玉が宿す宝石。翠玉の紐の中央に花を結った、長めの首飾り。
 縁。
 紡いで、結わう。
 クロトはそのどれもが、自らには縁遠い言葉だと思っていたと言うのに。
 この宝石の意味が伝わってしまえば、……それは嬉しくも恥ずかしい事。

 全てが宝石で出来た船内。
 その中でも一際大きなホールの中には、様々な種類の宝石の結晶が晶洞の中のように生え伸び。天より降り注ぐ光を浴びた宝石の鮮やかな影が重なっている。
 宝石を選んだ後に、二人は別々に結いで貰っていたのだ。

 千之助も結ぎ終わったのであろう、彼が振り返った瞬間高鳴る心臓。
 クロトは掌の中の首飾りの存在感が強くなったような気がする。
 太陽の色を背負う彼が、眩い。
「クロト」
 千之助が名を呼び近づいてくる、それだけで今のクロトは背がぴんと伸びる思いだ。
「……千之助」
 彼の名を呼び。
「――受け取って、貰えますか?」
 なんとか彼の紫色の瞳を見つめて、クロトは首飾りを差し出す。
 彼は花が好きだと言っていた。
 君を好きで埋め尽くしたい。
 君は自分を削るのをまるで躊躇わないから、尚の事。
 ああ、ああ、ああ。
 ――どうか、どうか、幸福でいて。
 ――今、僕は、幸せです。
 それから。
 ……――愛しくて、恋しい。
 言葉にできぬほどのクロトの想いを全て籠めて、差し出された首飾り。
 そのクロトの真剣な視線に射止められたように、千之助は息を呑んで。
「……ありがとう、とても嬉しい」
 その翠玉の輝きの意味を知るからこそ。
 とてもとても彼が愛らしい。
 ――添えられた花も、彼を抱きしめたく成るほどに嬉しいものだ。
 クロトの手の優しさを、千之助はまた一つ知った。
 だからこそ。
 だからこそ。
 紡がれた菫青石は清らかな彩、光に照らされて美しく輝く。
 絹糸のような雲母に、紅玉。
 今、千之助の掌の中には、青紫の宙に星屑の煌きを宿した内側に薄らひとすじの赤を隠した指輪が握られている。
 自らの道行き、戦いに削った寿命の量。
 決して、決して。
 千之助のあり方は、クロトへ安らぎを約せるものでは無いだろう。
 だからこそ、今まで指輪を贈ることに迷いがあったのだ。
 それは、今だって代わりはしない。
 しかし、けれど。
 ――それ以上に。
 今の千之助の想いを、形にして渡したいと思ってしまったのだ。
 首飾りを受け取ったままの距離で、彼の右手を取る。
「クロト」
「……!」
 目を丸くした彼が、愛おしい。
「おぬしはいつも幸を紡いでくれるひと、……何にも替えられぬ唯一つの宝だ」
 千之助はクロトの右手の薬指へと、指輪を嵌め。
「――愛してる」
 そうして千之助は、クロトの深い青を見据えて甘やかに、甘やかに、眦を和らげる。
「……っ!」
 また息を飲んだクロトは、息を上手に吸えなく成ってしまう。
 それは、それは、それは。
 あまりに温かな、泣きたい程の倖い。
「宝、……なら、……どうか、取り零さないでいて、ください……」
「……ああ」
 なんとか紡げた言葉は、それだけ。
 後は、ただ、ただ、彼の胸に顔を埋めて。
 その温かさを、その倖いを、確かめるように。
 薬指の倖いを撫でる。
 共に幸いが、続きますように。
 祈りを結いで、願いを結いで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サ、サヨ……!
初めての宙
慣れぬ感覚に戸惑い傍らの親友にしがみつく
噫、有難う
宝石から絲を紡ぐなど不思議なこともあるのだね
万華鏡のように煌めく宝石に恐る恐る触れ
瞬く様が楽しい

カグラ、壊さないようにね
サヨとカグラのはしゃぎようが似ていて何だか微笑ましい…何てカラスと顔を見合わせる
噫、宝石より君の笑顔の方がうつくしい

どれも綺麗だ
私は桜色がいい
きみの瞳のような桜霞の宝石に触れる
桜…角度により朱に染まるそれが気に入った

紲の証、いのちを結い約結ぶ彩
何時だって私のこころを充たす桜と紅

サヨは白?
噫…敵わないな
込められた願いが嬉しくて堪らない

寄り添う白と桜紅の紐
きみにも結ぼう
私の鈴と共に
優しくその綺麗な首に


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイ!
私の神様の宇宙デビュー
ふわふわしててかぁいらし
手を伸ばして引き寄せて
私達の宝石探しをしましょ
私、宝石って好き
ピカピカ綺麗でまるで私のようと
はしゃいでしまう
大喜びしてるカグラに親近感を憶えるわ

どの石がいい?
赤も良い
青も…カムイは桜?

選ぶ石は人形と同じ
カグラ
やっぱりこれがいいわよね

嘗て
幾千の永い永い時を生けども桜一色にしか染まらなかったその心
あなた/お前が
眩いほどの数多の倖(彩)に染まり
縁結び紡ぎ満たされるよう

過去(イザナ)の心と意図と重なる想と絲結ぶ

白い絲を紡ぐ

カムイの桜紅と撚り結び一つの紐にして
結ぶわ
あなたの命に一番近い指(左手薬指)に

うふふ
似合う?龍に首輪をつけるなんて
流石ね



●誓い
「さ、サヨ……!」
 誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)にぎゅうと抱きつく朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は、初めて訪れる世界の感覚に未だ慣れぬ様子で。
 しかし、親友に頼られる事は櫻宵にとってとても嬉しい事。
 ――ふわふわしててかぁいらしいわ。
 カムイの手を引き寄せて取ってやった櫻宵は、くすくすと笑って。
「さ、宝石探しに行きましょうか」
「あ、噫、有難う」
 櫻宵はカムイの手を引いて、大きなホールへと足を踏み入れる。
 降り注ぐ光は、天井自体が光っている様子で。
 光を浴びた宝石達が、床へ鮮やかな色の影を落としている。
 晶洞めいたホールの中には、賑々しくクリスタリアン達が集い。
 その手を宝石へと添えた途端、宝石の柱が解けるように絲と成って行く。
「……不思議な光景だね」
「そうね、すごいわ! 綺麗ね、カムイ」
 驚いた様子で目を丸くするカムイの横で、櫻宵は瞳をぴかぴかに瞬かせる。
 沢山の宝石が生えている様だって美しいし、生まれる絲もまた美しい。
 ぴかぴか瞬く宝石は本当に綺麗で。
「行きましょうか、カムイ!」
 その美しさは自分自身のようだと、櫻宵は足取りが軽くなってしまうのだ。
 ――そして。
 カムイの世話をしてくれる人形のカグラも、櫻宵と同じ調子で宝石を眺めてはぐんぐんと奥に歩んでいこうとしているもので。
 カムイはカラスと顔を見合わせて。
「ねえ、……サヨとカグラのはしゃぎよう、似ていると思わないかい?」
 なんて、カムイがくっと笑みを深めていると――。
「ねえ! カムイ! どの石が良いかしら!」
「どれも綺麗だね」
 振り向いて大きく手を振った櫻宵が、ぱっと角に花を揺らして。
 ――噫。
 カムイにとっては。
 どんな宝石よりも、櫻宵の笑顔のほうがうつくしく見えるのだ。
「赤もいいわよね、……青色もいいし……あっ、あの宝石も綺麗だわ!」
 色とりどりの宝石に、次々に目移りしている様子の櫻宵。
 その後ろを歩むカムイは、ひたりと足を止めて――。
「そうだね、本当にどれも綺麗だけれど……でも、私はこれが良いな」
「……まあ、桜色?」
 こっくりと頷くカムイの触れた宝石は、まるで櫻宵の瞳のような桜霞を宿して。
 光の当たる角度によっては、朱色の彩に染まる石は――紲の証。
 いのちを結い、約結ぶ彩。
 カムイのこころを充たすのは、いつだって桜と紅の彩なのだ。
 しゅるり、しゅるり、絲を解いて、紡いで、結んで。
「櫻宵は……、噫」
「ふふ、カグラ。あなたもこれがやっぱり良いと思う?」
 カムイが瞳を瞬かせて、櫻宵が咲う。
 いっとう心が惹かれた宝石の前には、既にカグラが立っていたものだから。
 ――イザナイカグラ。
 人形に宿る魂は、櫻宵と同じ色をしている。
 そうして、きっと。……その願いだって。
 ――幾千の永い永い時を生けども、桜一色にしか染まらなかったその心。
「あのね、あなたが」
 ――お前が。
「眩いほどの数多の倖に染まって、縁結び、紡ぎ、――満たされるように」
 真っ白な宝石から絲を紡ぎながら、櫻宵は――カグラは想いを重ねて糸を結ぶ。
「噫……、敵わないな」
 それはカムイの胸の奥が、満たされ暖かくなってしまう言葉。
 籠められた想いが、願いが、嬉しくて堪らないもので。
 櫻宵はカムイの手へと手を伸ばし、桜紅の糸を手にすると白に寄り添わせて一つの紐に編み上げる。
「結ぶわ」
 ――それは巫女として。
 カムイの命に一番近い指。
 左手の薬指に、櫻宵は白と桜紅を指輪と結んで。
「……では、きみにも結ぼう」
 ――それは神として。
 カムイは白と桜紅に鈴を通すと、櫻宵の首へと結ぶ。
「……ふふ、似合う?」
「噫、似合うよ」
 りんと涼やかな音を立てる鈴を首に宿した櫻宵は、あまやかにあまやかに睫毛を揺らして。
「龍に首輪をつけるなんて、流石ね」
 それは綺麗に、笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
魔法もオーバーテクノロジーも、初めて見るわけではないけれど。
それでも、ここが殊更不思議な場所に思えるのは、やはり宇宙だからなのかしら。

そらの上にも、暦はめぐるのね。
お手伝いをしつつ、折角なので見て回りましょう。
どんな意味を持つのかまでは分からないけれど。
詳しくはなくても、石はすきよ。
ええと、……そうね。赤色と、白色の糸を頂けるかしら。
新年のお祝いなのでしょう? お目出度いものがいいわ。

作って貰った糸で、花結び。
あたらしい日々を、日常を。
繰り返す、紅白の言祝ぎを。

ここのヒトたちのためにひとつ。
お土産にも、ひとつ。

嗚呼、べりるちゃんでも誘えば良かったかしら。
……やあね。変に里心が付いてしまったわ。



●言祝ぎ
 宝石を糸にする技術なんて、もしかすると他の世界にも在る技術かもしれない。
 魔法だって、オーバーテクノロジーだって、初めて見るものでは無い。
 もしかすると、自分たちの世界だって見かける事ができるかもしれない。
 しかし、しかし。
 晶洞めいたホールに、様々な宝石達が立ち並ぶ姿。
 天井自体が光を宿して、光を浴びた宝石たちがステンドグラスのように鮮やかな影を地に落とす姿。
 鉱物でも無いのに地から生えて、ありえない形で伸びる真珠や、琥珀。
「不思議な場所ね」
 ぽつりと呟いた花剣・耀子(Tempest・f12822)が殊更その様に感じてしまうのは、ここが宇宙だからかもしれない。
 宇宙は身近で、とても遠い場所。
 そらの上であっても、暦はめぐるらしい。
 ――新年を祝うという概念がここにある事が、当たり前であるのかもしれないけれども、それすらもなんだか不思議に思えてしまうもの。
 宝石の道を歩んで、宝石の柱をくぐって。
 全てが全て宝石で出来た不思議な宝石の森を、耀子は歩む。
 宝石の名前も、その宝石に付けられた意味も、詳しくないけれど。
 ――むしろ。
 ここにある宝石が自らの世界の物と同じである保証なんて全くないけれど。
 それでもぴかぴか光を浴びて瞬く姿は、美しいと思えるものだ。
「ええと、そうね、……赤と、白で良いかしら?」
 なんたって、新年のお祝いなのだから。
 赤と白は耀子の世界ではとても目出度いもの。
 名前もしらない宝石を、しゅるりしゅるり紐解く。
「……やっぱり不思議よね」
 ――絲を糸に。糸を縁に。縁を歴史に。
 見立てて紡いで、結いで、編み上げる。
 クリスタリアンに頼んで作ってもらった糸を赤と白の花を結んで、不思議な宇宙の世界と、自らの知る目出度い行事を結びつける。
 ――新しい日々を、日常を。
 繰り返す、紅白の言祝ぎを。
 花と紡いで、花と結わいで、編み上げる。
 この世界の宝石牌に捧げる為に一つ。
「あとは……」
 お土産にも、一つ。
「…………」
 ――新しい日々を、日常を。
 繰り返す、紅白の言祝ぎを。
 あとどれほど繰り返せるかも、わからないのに。
「……嗚呼、べりるちゃんでも誘えば良かったかしら?」
 ほう、と息を吐いて耀子は肩を竦める。
「やあね」
 ――変に里心が付いてしまったわ。
 なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
宝石が絲になるなんて…不思議
周囲で解けてゆく宝石に驚き魅入る

あらあら、こんなに簡単に??
試しに、とそっと手を添えたのは煌めくオレンジのサンストーン
とても、綺麗ねぇ…
するすると出来上がる絲を落とさないよう綺麗にまとめ光に翳す

…ちょっと楽しいかも
オレンジ色の絲が出来上がったなら、次の宝石を探してきょろきょろ
続けて見つけたのは紅いルビーに、桜色のインカローズ、青いサファイア、柔らかな白のムーンストーン
ちょっと欲張りすぎちゃったかしら?なんて苦笑を浮かべ

あの、これを帯飾りにしてもらうことって出来ますか?
5色の絲をそっと差し出して
ふふ、とても可愛らしいですねぇ
完成したら御守として帯に添えて行きましょう



●御守りを一つ
 全てが全て、宝石で出来た不思議な船。
 その中でも一番不思議な大きなホールには、様々な種類の宝石の結晶が、まるで晶洞の中のように生え伸びて。
 ステンドグラスのように鮮やかに重なる彩は、天井自体が宿した光に照らされた宝石の影。
 ルビーにサファイヤ、美しき鉱物や鉱石。
 それに他の世界の宝石とは、成り立ち自体が違うのであろう。
 真珠や、黒玉、珊瑚に琥珀など。石の上で生まれる訳の無い宝石達も、その様な結晶の形になる訳の無い宝石達も、全てが全て角柱状に伸びている。
「あらあら……こんな簡単に……??」
 クリスタリアン達に教えてもらった通りに手を添えるだけで、鮮やかなオレンジがしゅるりしゅるりと解けてゆく。
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は、その宝石と同じ色の瞳をまんまるにしてから、ふふふ、と笑った。
「とても、綺麗ねぇ……」
 生まれた絲は頼りないほど細いけれど、重ねて光にすかすと美しくぴかぴかと瞬いている。
 もっと、もっと、絲を作ってみたい、と。
 千織の中の好奇心がむくむくと訴えかける。
 獣の耳をぴいんと立てて、宝石の森をぐうるり見渡す。
 鮮やかな紅を宿す、ルビーの絲。
 薄紅色が美しい、インカローズの絲。
 海よりも深い色をしたサファイアの絲。
 絹のように白い、ムーンストーンの絲。
「……あらあら……、ちょっと欲張りすぎちゃったかしら?」
 なんて、苦笑を浮かべるけれども。
 とても楽しかったという満足感だってたっぷりだ。
「うふふ、何にしてもらおうかしら?」
 5色の美しい絲を光に透かして、千織は花が綻ぶように笑って。
 ――そうね。
 お守り代わりに、帯飾りにしてもらうなんてどうかしら。
「ふふ、きっととても可愛らしいですねぇ」
 ゆうらりゆらり、気分も良さげに揺れる猫の尾。
 帯に添えるのが、楽しみだと。
 千織はクリスタリアン達の元へと歩みだす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
縁、ねえ。うーん。
宝石が糸になるなんて宇宙の神秘すごいにゃー。
慌てさせるのも大変だし、何よりも興味もある。
敵さんが来るまでに私達が色々やってみるのも楽しそうだね。
さあどうするかにゃー。

さてさてまずは宝石選び。
色とりどりどれを選ぶかとても目移りしちゃう。
その中で…アレキサンドライトとかあったりするのかな。同じ石でも光加減で違う色に見える系の。
繋いでおきたい、そうでなければならない縁を表すのなら…うん。
昼と夜、今の私はどっちの色なんだろうね。
さてさて紡いだ糸はお願いして…根付きにして貰おうかな。
確かに在った縁、その証として常に持っておくのに上等過ぎる位にいいものに、ね。

※アドリブ絡み等お任せ



●移り変わる彩
「うーん。……宝石が糸になるなんて宇宙の神秘すごいにゃー」
 クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はゆっくりと宝石の柱をくぐり抜ける。
 全てが宝石で出来た船。
 全てが宝石で出来たホール。
 様々な宝石が生える晶洞めいたホールに集まったクリスタリアン達が、角柱状に伸びた宝石に手を添えて引くだけで、まるで毛糸のセーターを解くように宝石が絲へと解けて行く姿は、やっぱり宇宙の神秘を感じるもの。
「……うん、でも楽しそうだね」
 好奇心にぴょこぴょこと尾を揺らしたクーナは、一つ頷くと宝石の森へと飛び込んでゆく。
 色とりどりの輝きを宿した宝石達は、本当に様々な種類が生えている。
 赤に青、白に黄色。黒に――。
 天井から落ちる光に照らされた宝石達は、鮮やかな影を地に落とし。
 その美しさにクーナは、どうにも目移りをしてしまうけれど――。
「あ、これ、とっても綺麗だにゃー」
 ぺたりと肉球で撫でる柱。
 それは深い青緑色から赤紫色へと、角度と光の加減で彩を移すアレキサンドライト。
 ――繋いでおきたい、そうでなければならない縁を表すのならば。
「……うん」
 ふ、と唇に笑みを宿したクーナは、藍色の眦を下げる。
「昼と夜、今の私はどっちの色なんだろうね?」
 ぽつり、と呟いた言葉に答える者は居ない。
 クリスタリアンに教えられたままに、手を引くとしゅるりしゅるりと解け紡がれる絲。
 縁を解いて、縁を紡いで、縁を結いで。
「さて、さて、……根付にでもしてもらおうかな?」
 この美しい絲が紡いでくれるものならば。
 確かに在った縁。
 その証左として常に持っておくには、上等過ぎる位素敵な物になるだろう。
 クーナは絲を纏めて、天上の光に透かして瞳を眇める。
「――綺麗だねぇ」
 彼女の横に今は、だれも居はしないけれど。
 その縁は、たしかに――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『バトラー・サファイア』

POW   :    ナイブスストーム
【サファイアでできた無数の暗器】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    アカンプリッシュメント・オブ・アサシン
レベル分の1秒で【麻酔針】を発射できる。
WIZ   :    サファイア・フラッシュ
【サファイアの肌】から【蒼く眩い閃光】を放ち、【目を眩ませること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エリル・メアリアルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帰還
 天井に宿った光が不安定に瞬き、揺らいだ。
 それは船の意志が船の住人達へと、警戒と避難を告げる揺らぎだ。
 ホールの入り口へと向かいくる禍々しき気配にクリスタリアン達は、蜘蛛の子を散らすように。
 色とりどりの宝石の柱の立ち並ぶ、晶洞の奥へと向かって駆け出して。
 彼女の退路を護るべく、ホールの入り口へと向かって猟兵達も身構える。
 そこに。
 ――こん。
 ホールの入り口に姿を見せたサファイアのクリスタリアン――バトラー・サファイアのヒールが、高らかに音を立てた。
「逃がしても良いですけれども、無駄ですよ」
 姿勢の良い歩みに合わせて、深い青色の髪が靡いて、揺れて。
 床――漿船を見下ろす彼女は、冷たい響きで更に告げる。
「……あなたの主が誰だと思っているのですか? あなたの構造位、把握しています」
 それから小さくかぶりを振ると、値踏みするかのように。
 道を塞ぐ猟兵達を見据えながら、更に漿船へと言葉を次ぐ。
「あなたの育んだ愛しきクリスタリアン達を排除します。――勿論、無駄な抵抗の為に呼んだその異物達も、ですけれど」
 そうして。
 表情を変える事も無く暗器を円状に展開すると、まるで威嚇するかのように刃を鋭く一斉に放ち。
 彼女は愚直なまでに、一直線に踏み込み猟兵達へ向かって駆け出し。
 ――そのまま猟兵達に突っ込むかと思われた、刹那。
「こういう児戯は、鬼ごっこと言うのでしたっけ?」
 まばゆい閃光を放った彼女は、大きく横に跳ねて宝石の柱を蹴り上げ。
 蹴り上げられてへし折られた宝石の破片が光を照り返してきらきらと煌く中で、彼女は初めて猟兵達へと向けて言葉を紡ぐ。
「それでは、はじめましょうか」
 この場合はどちらが鬼に当たるのでしょうね。
 なんて。
 宝石を蹴る事で強引に空中で軌道を捻じ曲げて猟兵達の包囲をすり抜けたバトラー・サファイアは、逃げるクリスタリアン達の背を追って駆け出した。
篝・倫太郎
そんな可愛いモンじゃねぇだろ、これ
まぁ、本物の鬼(羅刹)だから遠慮無く追うけどな!

ダッシュで後を追い
射程内なのを確認したら足を止めることなく拘束術使用

鎖での先制攻撃と同時に拘束
拘束出来なくても敵の速度を落とす事が出来れば僥倖ってな
何も全て1人でやろうとしなくていい話だ

第六感や野生の勘も駆使して敵の動きを予測し
拘束術の鎖で進路妨害も行う
鎧無視攻撃と鎧砕きを乗せた華焔刀で攻撃
攻撃が単調にならないように注意して
フェイントも交ぜてく

フェイント時は部位破壊も乗せて、下肢も時々狙ってく
移動速度を少しでも落とせりゃいい

敵の攻撃は見切りで回避
回避不能時や足を狙われた場合は
オーラ防御とジャストガードで防いで凌ぐ


草守・珂奈芽
【葉蛍】

船と住む人たちはお互い思いあってるんでしょ
それを壊すなんて許せないのさ!

UCで変身してスピードで急加速、相手の走る方向に割り込むよ
廣葉ちゃんの衝撃波で援護があれば攻撃も怖くない!
それに自分でも翠護鱗の結晶を盾にするし、体に纏った鱗で多少なら痛くない
ちゃんと自分を守って、そして人を守る!
どっちもこなせてこそ人を助けれるヒーローなのさ!

これで廣葉ちゃんと挟み撃ち、時間稼ぎはできるはず
あとは一撃入れさせてもらうのさ
廣葉ちゃん、派手に撃つから気を付けてねっ!
正面から〈衝撃波〉を撃ちながら、草化媛が色んな方向から〈属性攻撃〉の〈範囲攻撃〉!
逃げ道なんて与えないで当ててみせるのさ!


平賀・廣葉
【葉蛍】
「鬼を相手に鬼ごっことはいい度胸です」
巫覡載霊の舞の衝撃波でカナメ様の突撃を援護します
クリスタリアンの方々に被害を出さないことが第一なので
あちらからの攻撃に巻き込みそうでしたら
この身で庇いましょう。神霊体は攻撃を軽減するので適任です
かといって支援の手を止めるのは悪手、攻撃も出来る限り続けます
足場にする柱を先んじて壊す!……のは申し訳ないのでやらずに
「……竜に変じる技とはすごい、いえ美しいですね」
カナメ様の声でこちらも合わせましょう
衝撃波と敵が足場にした柱を利用して、追い込みます
「ごっこなどと言わず本物の鬼を見せて差し上げます」
「まあ鬼より怖い竜に追われたので懲りてるかもしれませんが」



●開戦
 バトラー・サファイアが包囲をすり抜けた、その刹那の事。
「――鬼ごっこなんて、そんな可愛いモンじゃねぇだろ? これ」
 戦場に慣れた倫太郎の反応は、速かった。
 咄嗟に遠のくサファイアの背へと向かって跳ね飛べば、見えぬ鎖を振り放ち。
 一直線に伸びて迫りくる鎖の気配に身を捩ったサファイアは、宝石の柱を蹴って更に身体を翻し。空中で弧を描くように跳ねると、柱がばらりと砂と石と成って砕け散った。
 瞳を眇めた彼女は、狭いくる猟兵達を鋭く睨めつける。
「ま、本物の鬼だから遠慮なく追わせて貰うけどな」
 その視線に羅刹たる倫太郎は、にいっと犬歯を見せて笑いかえすと薙刀を構えて。
「成程。私が追われる側ならば、妨害はいたしましょうか」
 ――逃げるためにね。
 鋭く指を弾くと同時に生み出された幾つもの暗器が、倫太郎へと向かって一斉に解き放たれる。
「へえ」
 そりゃあ鎖で拘束できれば一番良いが、しかしここには仲間たちがいる。
 何も全て、一人でやる必要は無いのだ。
 放たれた刃を薙刀で叩き落としながら倫太郎は、地を蹴って更に前へと踏み込んで。
「なら俺達が妨害したって、良い訳だな」
 そう。
 倫太郎は一人では無い、猟兵たちは一人で戦う訳では無い。
 ――一瞬でも足止めができれば僥倖。
 倫太郎へと攻撃する隙に、クリスタリアン達を見失ってくれれば更に良しだ。
 彼女は折角無事に包囲を抜けたと言うのに、『一瞬』でもコチラに興味を向けてくれた。
 ……それは猟兵達にとってこの上ない好機となると、倫太郎は知っている。
「船と、住んでいるクリスタリアンたちはお互い思い合ってるのに! それを壊すなんてわたしたちが許さないのさ!」
 宝石の柱の合間を縫って。地面スレスレを滑空する珂奈芽の身は、硬い蛍石の鱗に覆われてまるで竜の如く。
 翼に力を込めれば風を切って更に加速して、サファイアの進行方向を塞ぐ形で身体を割り込ませて。
「!」
 ぶつかる。
 サファイアは進行方向を変えようと宝石を蹴るが、既に遅い。
 珂奈芽が両腕を前に交わして翠護鱗へと力を流し込むと、盾と成って展開される。
「脇見していると、危ないよ!」
 速く駆けるモノが衝突すれば、それだけで撃力は生まれるもの。
 ただし。
 衝撃に備えてガードしていた珂奈芽と、ただ突っ込まされてサファイアへ与えられる衝撃自体は同等であるが、ダメージは同等ではありえないだろう。
 激突と同時にサファイアの身体が、後ろへと強かに弾き飛ばされ。
 固めたガードで衝撃をあしらった珂奈芽は、大きく広げた翼で自身の身体を空中で受け止める。
 ――珂奈芽の身体は脆かった。
 それでも。
 それを知っているからこそ、珂奈芽は強くあろうと思えたのだ。
 何よりも――あの日背中を押して貰ってから。自分は一歩一歩強くなっていると、珂奈芽は信じている!
 ちゃんと自分を守って、そして人を守る!
 ――どっちもこなせてこそ、人を助けれるヒーローなのさ!
「廣葉ちゃん、派手に撃つから気を付けてねっ!」
 更に珂奈芽が力を籠めると魔導人形――草化媛が、蛍石の光弾を雨あられと降り注がせて。
 金の瞳で敵を見据えた珂奈芽はもう一度大きく翼を開き、握りしめた拳に衝撃波を纏わせると大きく薙ぎ下ろし――。
「――行けぇえええッ!」
「……竜に変じる技とはすごい、――いえ、美しいですね」
 降り注ぐ光。
 蛍石の竜鱗を纏う珂奈芽の姿は、廣葉のまなざしにはとても眩しく見えた。
「それでも、負けていられません。――ごっこなどと言わず、本物の鬼を見せて差し上げましょう!」
 ――故郷は滅ぼされたとは言え、廣葉は羅刹の姫である。
 羅刹の鬼たる姿を、敵に見せずとして何が羅刹か。
 鋭く息を吐き出した廣葉は、重心を落とすと得物を構え。その身を神のみたまへと委ねると珂奈芽に合わせて鋭く刃を薙ぎ払い、斬撃は衝撃となって敵へと叩き込まれる。
「ぐっ――!」
 足場のない空中で連撃をまともに貰ったサファイアは、宝石の柱へと強かに身体を打ち据えられ。小さく呻き声を上げて、ずるりとその身を地まで滑り落ちさせ。
「勝手に潜り込んだ異物達に、……私たちが何を遠慮する必要があるというのですか」
 ぎっと奥歯を噛み締めたサファイアの睨めつける先には、腰を抜かしたのか座り込んで動かぬクリスタリアンの姿があった。
「ひ……ッ!」
 怯えた声を漏らすクリスタリアン。
 クリスタリアンへと一目散に駆け出したサファイアは、ぴかりと身体を瞬かせると猟兵達の視界を奪うと同時に、暗器を侍らせて――。
「……! させない、のさっ!」
 眩さに世界が白く見える。
 だからといって、止まることは出来ない。
 ――ヒーローは、人を守ってこそ。
「……させませんっ!」
 珂奈芽が慌てて空中を旋回すると、珂奈芽が同時に地を蹴る。
 神霊体と成った事で視界を奪われる事は無かったが、このままでは暗器の方が――。
「鬼ごっこで本物の鬼が負ける訳ないだろ?」
 そこに響いたのは、倫太郎の凛とした声音であった。
「!?」
 彼が腕を大きく薙ぎ払うように引けば、サファイアの身体が空に舞った。
 それは彼女も気づかぬうちに、絡め取られていた見えぬ鎖。
 足を引かれて跳ねるサファイアの身体は弧を描くが――しかし。
「邪魔、です……ッ!」
 無情にも動けぬクリスタリアンに向かって、暗器は放たれる。
「全くです」
 鋭く叩きこまれた暗器がかんかん、と硬い音を立てた。
「……鬼ごっこをするならば、相手が何者であるかを確認するべきでしたね」
 ――それは廣葉が得物を薙いで、衝撃波で暗器を弾き落とした高らかなる音だ。
 呟く彼女の腕の中には、腰を抜かして動く事が出来ぬクリスタリアン。
 倫太郎が時間を稼いでくれたからこそ、廣葉は間に合った。
 得物を水平に構え直すと羅刹の姫は真っ直ぐに指し示すように。
 唇を笑みに持ち上げて、肩を竦めた。
「ほらほら、鬼のお兄様と――鬼程に怖い竜が来ますよ!」
「ッ!」
 ――一人だけでは戦えぬ事もあるだろう。
 しかし、仲間たちがいれば。
 サファイアの背後へと迫るは、二人の猟兵の姿。
「逃げ道なんて、もう与えないのさ!」
「鬼さんはこっちだ、ぜっ!」
 珂奈芽の光を纏った拳が、衝撃波を叩き込み。
 地を蹴って踏み込んだ倫太郎は、高く掲げた薙刀をサファイアへと振り下ろし――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

現れたな、バトラー・サファイア!
銀河帝国の復活など……まして、人々を虐殺し漿船の意志を踏み躙る悪逆非道な行いなど、断じて許すものか
いくぞ、ヘルガ。この船は必ず守り抜く!

【守護騎士の誓い】を胸に、ヘルガを庇うように立ちはだかり、彼女を襲う暗器も閃光も全て我が身で受け止める

ああ、ヘルガの歌が聞こえる
傷ついた俺を癒してくれる
心配するな、今までだって俺は何度も敵に立ち向かい
激痛や狂気に耐えてきた
お前がいれば恐れるものは何もない

ヘルガの光に敵が怯んだ隙を突き、二度目の暗器を全てなぎ払い叩き落して
鎧砕きの力を込めた一撃を叩き込む
俺たちがいる限り、その悪辣が成就することはないと知れ……!


ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

貴方がバトラー・サファイア……
元は同じクリスタリアンだったでしょうに、この船で出会った人たちのような温かさや優しさを感じない
その視線も振る舞いも、何て冷たいの……
これ以上この船やみんなを傷つけないで!

祈りを込めて歌う【涙の日】
ヴォルフや共に戦う仲間達には限りない慈愛と癒しを
そして敵には神罰の光を

ごめんなさい、ヴォルフ
わたくしはまたあなたを危険な目に遭わせてしまった……
だけど決して、あなたの命をここで摘み取らせはしない
二人で紡ぎ織り成した、あの二色のミサンガのように
わたくしたちは永久に寄り添い、命を、歴史を繋いでゆく

この胸の想いは、誓いは、命の輝きは
あの青い閃光にも決して負けはしない……!



●この生命は守るべき者の為に
「――来たな、バトラー・サファイア!」
「……貴方が……!」
 猟兵達の猛追を何とか凌ぎ、尚も駆けるサファイア。
 そんなサファイアの前へと立ちはだかったヴォルフガングは、ヘルガを庇うように背に。
「銀河帝国の復活など……! まして人々を虐殺し、漿船の意志を踏み躙る悪逆非道な行いなど、断じて許すものかッ!」
 強い思いを言葉に宿して得物を抜き放つと、真一文字に構えた。
「――成程。あなたは持ち物に汚れがついていても、汚れを払わないのですね」
 対するサファイアは立ち塞がる彼を見据えたまま、決してその歩みを止める事無く。
 小さく指を鳴らすと澄んだ綺麗な音を立て、サファイアで出来た暗器が彼女の周りに円を描くように舞い上がった。
「貴方も元は同じクリスタリアンだったでしょうに……、貴方からはこの船で出会った人たちのような、温かさや優しさを感じない……」
 くっと息を飲んだヘルガは、そのサファイアの鋭い視線に肩をきゅっと竦める。
 彼女の視線からも、彼女の振る舞いからも。
 触れただけで身体が凍てついてしまいそうな冷たさを、ヘルガは感じ取っていた。
 それでも、それでも。
 ここを通すわけには、いかない。
 この船を守らなければ、いけない。
「――ヘルガ」
 そこに彼女の名前を呼ぶ、小さな声。
 それはまるで大丈夫だ、と伝えるかのように。あたたかでやさしく響く、彼女の気持ちを包み愛しく思う呼びかけだ。
 ヘルガの想いを感じ取ったかのようなヴォルフガングの尾が、くるりと彼女を撫ぜると。
 凍てつく冷たさに貫かれた気持ちが、溶けてゆくよう。
「いくぞ。この船は必ず守り抜く!」
「ええ、――これ以上、この船もみんなも傷つけはさせない……!」
 二人の想いは、はじめから一つだ。
 大きく頷いたヘルガは、歌声に祈りを乗せて。
 その歌声は癒やしの加護を宿し。
 敵には――。
「……!」
 ばぢりとサファイアの進路で、神罰の光が弾けた。
 眩きその光は悪しき邪気を打ち払う、歌に宿された裁きの光である。
「邪魔です……ねっ!」
 吐き捨てるように言い放ったサファイアが宝石を蹴って光を避けると、ヘルガへと向かって一直線に暗器を放ち。
 ヴォルフガングはヘルガを庇うようにステップを踏んで、一斉に放たれた暗器をその身体で受け止める。
「ヴォルフ!」
 思わず歌を止めてしまったヘルガは、目を見開き。
「……大丈夫だ、心配はいらない。……お前の歌を、聞かせてくれ」
 優しく伝えるように言ったヴォルフガングは、得物を構え直して。
 すり抜けようとしたサファイアを牽制するように刃を振るうと、サファイアは宝石を蹴り上げてバックステップで彼より距離を取る。
「……!」
 彼の覚悟を改めて感じ取ったヘルガは、コクリと頷いて。
 再びその唇に歌を乗せはじめる。
 ――嗚呼。
 ごめんなさい、ヴォルフ。
 わたくしはまた、あなたを危険な目に遭わせてしまっている。
 だけど決して、あなたの命はここで摘み取らせはしない。
 ヘルガは祈りを、願いを籠めて。
 更に歌を口ずさみ――。
 幾度となく放たれる暗器が身体を貫き、目を眩ませる光にその足取りが奪われようとも。
 ヘルガを庇うヴォルフガングは、サファイアが道を抜けぬように刃を振るう。
 彼は決して、ヘルガを、船の者達を、……傷つけさせるわけには行かぬのだ。
 それに。
 甘やかな癒やしの歌声が、身体を癒やしてくれている。
 ――嗚呼。
 心配しないでくれ、ヘルガ。
 今までだって俺は何度も敵に立ち向かい、激痛や狂気に耐えてきた。
 お前がいれば、俺は何も恐れはしない。
 ――二人で紡ぎ織り成した、あの二色のミサンガのように。
 二人は永久に寄り添い、命を、歴史を繋いでゆくのだから。
 この胸の想いは、誓いは、命の輝きは。
 あの青い閃光にも決して負けはしないのだから――!
 瞬間。
 ヘルガの強い気持ちが、静謐なる聖歌に宿り。
 一際大きな神罰の光が、避け続けていたサファイアへとまともに降り注いだ。
「っっ!」
 思わず足を止めた敵のその隙を逃すこと無く、ヴォルフガングは大きく地を踏み込む。
 そして上半身の全ての膂力を籠めて、筋が引きちぎれんばかりに引き絞ると、得物を振り上げ――。
「俺たちがいる限り、その悪辣が成就することはないと知れ……!」
 重く強い刃を、サファイアへと叩き込んだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビスマス・テルマール
此処のクリスタリアンの皆さんは
ある意味文化の紡ぎて、それを考えると尚の事、貴女の手に掛けさせる訳には行きませんっ!

●POW
サファイアのスピードに追い付き、仕掛けながら足止めなら、ハワイアンなめろう絡みのこのUCが適切ですね

早業でUCを発動
三色の鎧装を装着し
宝石の欠片を物としない為に
激痛耐性を備えオーラ防御を張り

空中戦で突っ込みカッ飛ばし

攻撃に対し第六感で見切り
残像で回避しつつ属性攻撃(デコイ)を一斉発射の弾幕で範囲攻撃でばら蒔き

念動力で本物っぽく遠隔操作で
撹乱しつつ食い付き

ウルシさんの属性攻撃(餅)の砲撃で
動き制限させつつ

なめろうフォースセイバーで怪力で
2回攻撃の切り込みを大名下ろしの如く


フリル・インレアン
ふええ、サファイアさんがクリスタリアンさん達の方を追いかけて行ってしまいました。
えっと、この場合はどうしたらいいのでしょうか?
ガラスのラビリンスじゃ、クリスタリアンさん達が襲われていたら助けに入れなくなりますし。
そうです、お菓子の魔法でサファイアさんの動きを遅くすれば
あ、でもクリスタリアンさん達も遅くなってしまうから。
ふえ、アヒルさん痛いですよ。
考えるのはいいからお菓子の魔法を使えって、追いかける私達が早ければ問題ないんですね。
今回のお菓子がパンだから恋?物語な感じで違和感がありますが、
アヒルさん、パンを麻酔針の盾代わりにするのはやめてくださいよ。



●美味しい魔法
 目の前をびゅーんと駆けて行ってしまった、バトラー・サファイアの背。
 どうやら敵は猟兵より先にクリスタリアンを狙っているようで。
 自分の前で止まってくれる事を、少し期待していたフリルはふるふるとかぶりを振って。
「ふえぇ……、えっと……この場合はどうしたらいいのでしょうか……?」
 帽子の縁をぎゅうっと下ろして目線を隠すように呟いた。
 何をすれば敵の足止めができるのかも、ぱっと思い浮かばず。ぐるぐると思考を巡らせて――。
「あっ、そうです!」
 ぽん、を掌をあわせたところに、ガジェットのアヒルさんが頭に突っ込んできた。
「ふえっ、アヒルさん痛いですよ……!」
 考えるよりも動け、とアヒルさんは言っているようで。
 赤い瞳に答えを見つけた色を宿して、フリルは再びかぶりを振った。
「サファイアさんと一緒にクリスタリアンさん達の動きも遅くなってしまったとしても、追いかける私達が早ければ問題ないですよね?」
 そうして作ってきた菓子パンを取り出したフリルは、一口ぱくり。
 それは魔法のお菓子。
 お菓子を楽しんでいない者の、行動速度を下げる不思議な魔法だ。
 ――瞬間。
 びゅうんと後ろから飛んで来ていた人影の速度が、がくりと落ちた。
 そう。
 その者はフリルの魔法によって、移動速度が下がってしまったようで――。
「ふえええぇっ、ま、まってくださいっ、あの、あのっ、お菓子を……お菓子をおひとつどうぞ……っ!」
 慌ててフリルが手をブンブン振ってアピールすると。
 影――ハワイアンなめろうカラーのカラフルな鎧を身に纏ったビスマスは、空中でホバリングするようにその足を止めた。
「どうされました?」
「あの、お菓子を……お菓子をおひとつ……」
「……成程」
 差し出された菓子パンを受け取りながらビスマスは、得心した様子で頷いた。
 猟兵のユーベルコードの中には、楽しんでいない者の行動速度を落としてしまうものが在る。
 ビスマスも楽しむものこそ違えど、同じ様なユーベルコードを使う事ができるもので――。
 鎧のフェイスシールドを一度下げて、パンを齧ったビスマスはにっこり笑って応じる。
「ありがとうございます、――行きましょう!」
「は、はいっ!」
 その笑顔に笑い返したフリルは、アヒルさんの背へと菓子パンを一つ乗せて。
 ぐんと飛行速度をあげたビスマスが空を駆け出すと、フリルも頷いて地をとてとてと走り出した。
 ――行動速度の落ちた敵なんて、ビスマスにはすぐに追いつく事ができるもの。
 その場で旋回した彼女は、得物を構えて朗々と吠える。
「――この船の皆さんは、文化の紡ぎ手です。貴方の手に掛けさせる訳にはいきませんっ!」
「鬼とはこうも執拗に追いかけてくるものなのですね」
 その声にやれやれと肩を竦めて振り返ったサファイアは、鋭い後ろ蹴りで宝石の柱を蹴り砕き。
 礫のように砕けた宝石が、ビスマスへと一斉に迫る。
 しかし。
 ――足が上がってから、砕かれるまで、ビスマスにはその動きの全てが見えていた。
 菓子を楽しんでいる者と居ない者の差が、そこには歴然と現れている。
 ――例えば。
 彼女が食べ物を楽しむ心の余裕があれば、また結果は違ったのかもしれない。
 なんて。
 残像を残しながらビスマスは空中で回って、避けて。
 椀型の支援機より幾度も砲撃を放ちながら、サファイアへと一気に肉薄する。
 その腕に宿すは、ビスマスの愛するハワイアンなめろうの気配。
 なめろうの気を含んだエネルギー武器――なめろうフォースセイバーを体の前に構えたビスマスは、大きく刃を掲げて――。
「――ここで止めさせて頂きますっ!」
「アヒルさん……っ! お願いします……っ!」
 駆けてきたフリルの願いに応じて、ガジェットのアヒルさんがぶちかましを決めると同時に。
 ビスマスのフォースセイバーが、サファイアへと向かって振り下ろされた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ベリル・モルガナイト
させません
貴女の。ような。輩の。手で。犠牲に。なる。人など。ただの。一人とて。出しは。しない
彼らの。紡いできた。想いを。守る。私は。盾の。騎士。なのですから

宝石の。魔力で。身体を。強化し。敵の。後を。追います
彼女が。鬼と。いうのなら。まず。狙うのは。足の。遅い者。逃げ遅れた。者。でしょうか
彼らを。盾で。庇って。いきます
暗器も。不意打ちや。暗殺でない。のなら。ただの。武器
私の。盾と。体で。誰一人。傷つけ。させたりは。しない

攻撃の。隙が。できたら。盾で。守り。剣で。切り払い。ながら。一気に。敵の。元へと。駆け。行き。盾で。壁へと。押し込み。ましょう


クーナ・セラフィン
鬼ごっこか。逃したらとても怖い鬼、仕事をさせるなんてとんでもない。
さっさととっ捕まえてお家に帰って貰わなきゃね。

とにかく突破を狙ってくるだろうから距離を取りつつ周辺の敵味方の位置を把握。
逃げ遅れたクリスタリアン達がいるなら割り込んで庇えるように位置取り。
第六感と野性の勘で閃光を放つ気配察知したら帽子を深く被り直しつつUC発動、花弁と吹雪で閃光を和らげつつ向こうを幻に落とし込む。
それでも向こうが正確に誰かを狙ってくるならその前に割り込み革命剣で暗器を捌きつつ突撃槍向けて至近距離からUCを喰らわせ凍らせよう。
――ここはキミの場所ではない。今を生きる彼等の為の漿船なんだからね。

※アドリブ絡み等お任せ



●今の為に
 猟兵達の猛追を掻い潜り、その身を傷つかせながらもサファイアは駆ける。
 ――全てはプリンセスの為に、この漿船の異物を全て排除する為に。
 ふ、と。
 瞳を瞬かせて足を止めたサファイアは、人工光に照らされた宝石の奥に揺れる何かを見つけたようであった。
 ヒール音を響かせて、そっと覗き込むと――。
「ああ、そこにいらっしゃいましたか」
 一気に持ち上げた足先。
 ピンヒールを捻り込むように鋭く蹴り上げれば、爆ぜるように割れた宝石柱。
「ひ……っ!」
 喉を引きつらせたような音を零して、後ずさり。
 宝石の雨霰と共に、後ろに隠れていたクリスタリアンの少女の姿が露わと成り。
「やっと一人ですか。なんとも効率の悪い話ですが――」
 その姿にサファイアはやれやれと肩を竦める。
 全く邪魔ばかり入るもので――。
「させま。せん」
 そこに。
 勢いよく鮮やかな淡紅色が、間を割り居り飛び込んで来た。
「……やはり邪魔が入ってしまうのですね」
 予測はしていたのだろう、サファイアが瞳を細めると。
 その目前を床を転がる事で勢いを殺しながら、クリスタリアンの少女を抱きしめたベリルは、身を低くしたまま。宝石の盾を構えて割れた仮面の奥より、サファイアを真っ直ぐに見据えて。
「貴女の。ような。輩の。手で。犠牲に。なる。人など。ただの。一人とて。出しは。しない……!」
「全くだね」
 ベリルの言葉についで、同意を示す声が響いた。
 それは突撃槍を手に、こちらを見下ろす小さなケットシー――クーナの声だ。
「鬼さんこちら、とも呼んではいないと言うのに。ぞろぞろ集まってきたものですね」
 忌々しげに瞳を眇めたサファイアは、咄嗟に暗器を円状に展開して。
 そのまま鋭く刃を撃ち放ちながら、猟兵達と距離を取るべく横に大きく跳躍し。
「逃したらとても怖い鬼に、仕事をさせる気はこちらとしても無いからねえ」
 暗器を払い除けながらその一瞬前までサファイアの居た場所へと、クーナごと降り落ちてきた槍が勢いよく刺さり。
 床が一瞬で凍結したかと思えば、雪を纏った花吹雪がはらりはらりと舞い落ちる。
「――彼らの。紡いできた。想いを。守り。ます。……私は。盾の。騎士。なのですから」
 しっかと構えた盾で暗器を弾いたベリルは、クリスタリアンの少女を庇い抱き寄せたまま。
 サファイアとの間合いを測りながら、じりりと体勢を立て直す。
 ……暗器とは言え。
 目の前で展開されるのならば、それは最早ただの武器と代わりはない。
 ならば盾の騎士たるベリルが防げぬ道理など、ひとつも有りはしないのだ。
「ここは。私が。道を。護り。ます。――あなたは。おにげ。ください」
「ありがとう……おねえちゃん!」
 そうして。
 ベリルと宝石の瞳で視線を交わした少女は、こっくりと頷くと一目散に更に奥へと駆け出した。
「勝手な事を――、お待ちなさい!」
 サファイアが少女を追おうとするも――。
「――私の。盾と。体で。誰一人。傷つけ。させたりは。しません」
 煌めく魔力の光をぱちぱちと放つベリルは、駆け出した少女の退路を護るべく道の真ん中に立ち尽くし。魔力を宿した宝石のレイピアの刃先を、サファイアへと向けて。
「うん、うん。解ったならさっさとお家に帰ってくれるかい?」
 帽子をきゅっと目深に被り直したクーナも、真っ直ぐにサファイアへと刃を向ける。
「なんたって、――ここはキミの場所ではないからね。……ここは、今を生きる彼等の為の漿船だよ」
「では全て殺してしまえば、プリンセスのための漿船が返ってくると言う事ですね」
 刹那。
 軽口のように言葉を紡いだサファイアが、その身体をぴかりと瞬かせた。
「そんな訳ないでしょ」
 帽子の鍔を深く被ることで、目が潰れる事を回避したクーナが横薙ぎに槍を払い。
 雪と花の吹雪を敵へと捩じ込むと――。
「そんな訳。あり。ません」
 盾を前に差し出す形で飛び込んだベリルが、サファイアを宝石柱と盾の間に挟み込んだ。
 例え。
 眩さに視界が奪われてしまって、前が見えずとも。
 面積の大きな盾で押し込むのならば、身体の一部を捕らえることはできるのだ!
「お願い。します!」
「にゃっ!」
 呼びかけに身軽にベリルをひょいひょいと駆け上ったクーナは、ぴょーんと大きく跳躍すると槍を空中でくるんと回し。
 ベリルの盾と宝石柱の間へと押し込み挟まれたサファイアへと向かって。
 刃を真下に向けて反すと柄へと抱きつき、――全ての体重と重力を籠めた槍の一撃をお見舞いして――!
「っ!」
 強かに槍をねじ込まれ、盾と宝石柱の間でただ身体を跳ねたサファイア。
 そこに。
 サファイアの身体を挟み込んでいた盾が、高く掲げ持ち上げられ。
「おまけ。です!」
 そのまま強烈なシールドバッシュとなって、敵へと叩き込まれた!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

サファイアの肌とその色―――それなりに、親近感などを覚えもしますが
この世で最も美しい青は、僕の愛おしい青のみなので
こわくて恐ろしい鬼さんは、さっさと倒してしまいましょうね

彼女と住民たちの間にある宝石をユーベルコードで砕いて目くらましとしつつ
同時に彼女自身も狙って意識をこちらに向けさせようと

逃げ遅れた住民がいないか確認しつつ
いた場合は「結界術」と「オーラ防御」を併用して住民達を攻撃から守ります

相手が跳ぶなら空中を狙って「衝撃波」を放ち「吹き飛ばし」
ザッフィーロへと攻撃が向かうなら、「高速詠唱」して生み出した隕石で相殺と反撃を狙います
―――おさわり禁止、ですよ?


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

サファイアのクリスタリアンか
常ならば親しみを覚えるのだろうが今は言うまでもないな
そう宵へ目配せ
笑みと共に繋いでいた手を名残惜し気になぞった後戦闘へ

戦闘時は住民へ攻撃が行かぬ様『挑発』しつつ行動
【穢れの影】にて逃げる住民への攻撃を遮る様『かば』いながら敵の動きを封じられればと思う
『武器・盾受け』でかばえる様常に宵の至近距離にて行動を心掛けつつ
前衛に立ち宵へ向かう攻撃を手にしたメイスや盾で払い落さんと試み行が…住民を守る事に注意を向けている為多少己自身の護りは薄くなるか
宵に庇われたなら助かったと声を投げつつも本当にお前は…とつい笑みを
まあ、俺も同じ心持故宵は誰にも触れさせんが…な?



●青
「サファイアか」
 銀色を細めたザッフィーロはホールの奥へと消えた背を見据えて、ぽつりと呟いて。
 それから手をしっかと結んだままの宵へと、目配せ一つ。
「――常ならば親しみを覚えるのだろうが」
 ザッフィーロ――彼の器物は、サファイアの指輪だ。
 それに宵の器物にも、カラーチェンジサファイアが嵌っている。
 自ら達の本体である器物と同じ石の彼女には、たしかにそれなりに親近感は覚えはするが――。
「この世で最も美しい青は、僕の愛おしい青のみ、ですよ」
 ザッフィーロの銀の視線に、くっと小さく笑みを零した宵は深宵色を向けて。
「こわくて恐ろしい鬼さんは、さっさと倒してしまいましょうか」
「ああ、行くとしよう」
 宵の笑みへ愛おしげに眦を和らげたザッフィーロが固く結んだ指先を撫でるように解くと、互いの色を結わえたブレスレットが手首で揺れて。
 頷きあった二人は、宝石の立ち並ぶホールの中へと駆けて行く。
 ――そうして見つけたのは。
 宝石の森の奥で刃を構え、クリスタリアンの少女を見下ろすバトラー・サファイアの姿であった。
「……その手を止めろ」
 噛み付くように言い鋭く地を踏み込んだザッフィーロが駆ける足に力を籠めて、更に加速を重ねて。
「おや、猟兵達」
 対するサファイアは気安い挨拶の言葉でもかけられたかの様子で顔を上げて、そのまま少女を見やること無く狂刃を首へと振り下ろす。
「止めろ、と言っただろう」
 もう一度言葉を重ねるザッフィーロ。
 足元で蠢いた影が、サファイアの手首へと向かって鞭のように撓り伸びた。
「……鬼が更に鬼に追いかけられる状況と言うのは、なかなか厄介ですねえ」
 やれやれと首を上げたサファイアは、影に腕を縛られ。
 仕方が無いと言わんばかりの動きで、暗器を空中へと幾つも生み出して。
「そうですね……それでは先に貴方達から排除致しましょうか」
「宵!」
 ――彼女を縛ったままのザッフィーロがすれ違いざまに立てぬ様子の少女の腕を引きあげながら、愛おしき相棒の名を呼び。
「はい!」
 彼の言葉に――信頼に応じるように杖を揺らした宵より魔力が揺らいだ。
 生み出されたのは、星の欠片。
 そして次の瞬間には、欠片は流星となってサファイアへと降り注ぐ。
「……ッ!」
 直撃するのはまずい、と。
 ザッフィーロの生み出した影を無理やり引きちぎった彼女は、ステップを踏んで。
 ふわふわと円を描いて浮く暗器へと号令を与えるかのように腕を引き下ろした。
 瞬間。
 少女を抱いて駆けるザッフィーロへと、暗器が鋭く殺到して――。
「……はっ!」
 片手で少女を抱き直したザッフィーロがメイスを円を描くように振りかざすと、暗器を叩き落とす。
「走れるか?」
「は、……はいっ!」
 そうして。
 少女を地へと下ろすと駆け出した彼女を庇う形で、ザッフィーロは踵を返して自らの轍を踏んでサファイアを見据えると。彼女は眩い蒼の強い光を放ち。
「……!」
 まともに光を見てしまい、奪われるザッフィーロの視界。
 目を見開いたザッフィーロへと、サファイアが間合いを一気に詰めると――。
「おさわり禁止、……ですよ!」
「!」
 宵のたしなめる言葉と共に、サファイアの真横に魔力が渦巻き。
 生み出された隕石が、彼女の脇腹をまともに抉った。
「彼に触れようと言うのならば、先に僕を倒して頂きましょうか」
 強かに床へと身体を打ち据えられた彼女の横をすり抜けて、ザッフィーロの元までたどり着いた宵は杖を構え直し。
「――本当にお前は……」
 呟いたザッフィーロは戦闘中だと言うのに、思わず笑みを零してしまう。
 なんたってそれはザッフィーロにしたって、同じ事なのだから。
「俺も宵を誰にも触れさせぬが、――な?」
 宵の横に立ち、並びながら。
 メイスを構え直したザッフィーロは、小さく小さく甘やかな言葉を付け足した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オズ・ケストナー
【紅穂】

おにごっこだって、クレナイっ
わたしたち、おにごっこはとくいだよ
ねっ

ガジェットショータイム
現れるのは空飛ぶトナカイのソリ
前にソリでトナカイさんとおいかけっこしたんだ

いっしょに乗ってびゅーんと追いかけ
おいついたよっ

こわがらせるあそびなんてあそびじゃないよ
このゲームはわたしたちが鬼
つかまっちゃうのは、きみだよっ

飛んでくる針を
斧をくるくる武器受けで弾く

クレナイ、いまだよっ

宝石の糸と赤い糸が降る様に
わあ、きれいっ

ふふ、つーかまえたっ
船となかよしさんなんてすてき
きみもおんなじように、宝石の糸でおいわいしたのかな

倒さないといけないけれど
その前にもう一度糸をむすぶくらい
してもいいよね

わたしたちみたいに


朧・紅
【紅穂】

おにごっこですねオズさんっ
そうっ逃げても捕まえちゃうですよぅ
ねっ

オズさんっ
ぴょんとソリに乗り
あの時も僕たちの勝ちだったのです
ソリを楽しんじゃう

針はギロチン刃で武器受けて

はぁいっ!
サファイヤさんはこのお船さんと仲良しさんだったのでは?
今日は色んなモノを結い繋げる儀式の日
も一度縁を結ぶのですよぅ

ソリから天井の水晶に触れ
沢山絲となった宝石が絡まる様にサファイアへ

つっかまえたー!

その絲に忍ばせた赤い糸
血糸は斬れず頑強な強度でサファイヤに絡み拘束
(これならオズさんに血とはバレず心配させないハズ
追わせないです
斬る事も出来るですが
ぐるぐる想い出結び
誰とどんな糸でお祝いしたのかなぁ

贈りあった紐がキラリ



●想い出
「おにごっこだって、クレナイっ」
「おにごっこですね、オズさんっ」
 オズの青空色と、紅の薄明色の視線が交わされあって。
「わたしたち、おにごっこはとくいだよ」
「そうっ、逃げても捕まえちゃうですよぅ!」
 ねっ、なんて。
 二人は首を傾ぎ合って笑った。
「よーしっ!」
 えいっとオズが魔法使いのように長い斧を振り上げれば、蒸気が吹き上がり。
 召喚されたのはまるでクリスマスにサンタクロースがトナカイに引いてもらうような、木製の空飛ぶソリであった。
 そのソリは、二人とも見覚えがあるもので――。
「オズさんっ」
 あの時とは逆に、先にぴょんと乗り込んだ紅が手を伸ばして。
 手を引かれてソリへと乗り込んだオズは、真っ直ぐ前を見据える。
「よし、いこっ!」
「ふふ、はいっ! あの時も僕たちの勝ちだったのです」
「うんうんっ、今日もつかまえちゃおう!」
 ――あの時は本当はトナカイじゃなくて鹿だったけれど。
 トナカイの代わりに空を駆けて、おいかけっこをするのは今日だって同じ。
 宝石結晶の連なるホールの色鮮やかな影をくぐり抜けて、蒸気を吐くソリが空を駆ける。
 もえるようにまっかな大きなルビーを躱して、ラピスラズリの夜の色を超えて。
「――みーつけたっ!」
「猟兵!」
 その先を駆ける、深海色の青。
 バトラー・サファイアの背に向かって、二人の乗ったソリはぐんと加速する。
 クリスタリアン達を怯えさせて怖がらせて、――そんなのは全然遊びなんかじゃ無い。
「このゲームはわたしたちが鬼だよ、――つかまっちゃうのは、きみっ!」
「ですよっ!」
 オズはぴしっと指を立てるとサファイアを示し、紅も合わせてぴしっと指を立てた。
「成程。鬼は怖いですからね――鬼退治と致しましょうか?」
 調子をあわせて言葉を返したサファイアは牽制するように、ぴかぴかと瞬く針を幾つも射出しながら地を蹴って跳躍すると、宝石の柱の上を跳ねて駆け出した。
 それを見て立ち上がったオズはソリの上でぐうるり回って、蒸気を纏う長い斧を振り回し。合わせて紅もソリにぎゅっと捕まったまま、ギロチンの刃を自在に空を駆けさせると、放たれた瞬く針が叩き落され、弾き落とされ。
「クレナイ、いまだよっ!」
「はぁいっ!」
 オズが声を掛けて蒸気をソリが一際大きく吐き出した、瞬間。
 サファイアと併走するほどにソリが速度を上げた。
「――サファイヤさんは、このお船さんと仲良しさんだったの?」
 なんて、言葉を紡ぎながら。
 手を伸ばした紅が宝石の柱へ掌を当ててぐんと腕を引くと、ばらりと宝石が絲と解け。
「ね、今日は色んなモノを結い繋げる儀式の日ですよ! も一度、お船さんと縁を結びましょ?」
「!」
 たった今駆けていた足場は絲と成り、サファイアが目を見開いて――地へと落ちてゆく。
「わあっ、きれいっ!」
 紅の手によって解ける宝石はどんどん、しゅるりしゅるりと絲と成り。
 宝石が一気に絲になって行く様に、思わず瞳をまんまるにして歓声をあげたオズ。
 地へと落ちるサファイアを包み込むように、沢山沢山絲が生まれ行き。
 ……その絲に紅が忍ばせたのは、細い細い、血液の絲。
 宝石に混じった紅の血の絲は、サファイアを絡め取って拘束を強固なものと成す。
 紅は指先をくうるり回すと、更にぎゅうっとサファイアへと絲を絡みつかせ。
 それから、……血を流している事をオズにバレていないか、ちらりと彼を見やった。
「ふふ、つーかまえたっ」
 けれど笑うオズが気づいた様子も見えないから、紅も声をあわせてぱっと笑って。
「つっかまえたー! クリスタリアンさんたちは、追わせないですよ!」
 安心した紅はサファイアへとさらに糸をぐるぐる巻き、巻き。
「ね、ね、きみもおんなじように、宝石の糸でおいわいしたのかな?」
 船とお話ができるくらい、なかよしさんだったんだから。
 なんてオズが首を傾ぐと、紅が頷いて。
「そうかも、誰とどんな糸でお祝いしたのかなぁ?」
 二人の贈りあった紐が、光をあびてきらりきらりと輝いた。

 ……倒さないといけない事くらい、解っているけれど。
 むかーしむかし、きみが船となかよしさんだったなら。
 その前にもう一度糸をむすぶくらい、してもいいよね?
 ね、わたしたちみたいに!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クロト・ラトキエ
壊し散らして…品の無い。
執事たる者、主人に破損品を献上など論外では。
それとも貴女、実は“battler”で?
“butler”は…
フットマンからどうぞ出直しを。

挑発。ま、乗らぬでしょうが。
言動一つの間に操る鋼糸。
人の垣より狭い糸の檻、抜けるなら傷はお覚悟を。
貴女がお速い程に。

漿船の方々の防衛、敵の足止めを主軸に
…は無論本気ですが。
十重二十重は暗器使いの嗜み…でしょう?

得物の展開は円…
光は片目を瞑り視覚を保ち。
視線、挙動、軌道に速度…
見切る全てを情報に回避へ繋ぎ。

合間に混ぜる極細の糸。
纏わり、絡め…
可視不可視、全を以て引き斬り断つ
――拾式

鬼ごっことは、言葉選びがお悪い。
こちとら――悪鬼畜生の類でね



●搦め手
 絡められた絲を千切って、傷ついた身体より宝石の欠片を零して。猟兵達の猛追に、サファイアは追う側から追われる側へと成りつつあった。
 それでも。
 自らが壊れたとしてもオブリビオンには『次』がある事を知っている。
 だからこそ彼女に退くという選択肢はありえない。
 少しでも敵の排除を、船が手に入らぬというのならば少しでも破壊を。
 ――全ては、全ては、プリンセスの為に。
「……ふっ!」
 ――思い切り宝石の柱を叩くと罅が入った宝石が、がしゃりと音を立てて崩れ落ちる。
 嗚呼。『次』がある事位知っている。
 それでも――それでも、上手く行かない事は腹立たしい事だ。
 そこに。
「やれやれ。壊し散らして……全く品の無い事ですね」
 背へと掛けられた声に、サファイアは鋭く振り向いた。
「執事たる者、主人に破損品を献上など論外でしょう」
 そこに立っていたクロトは戯けるように、ボウアンドスクレイプ。
 サファイアは素早く針を生み出し、一気にクロトへと殺到させて――。
「その上、客に対して性急な対応とは! 執事として二流、三流の対応じゃないですか」
 外套を翻して針を受け止めたクロトは首を傾いで。
 誂うように、戯けるように、嘯くように。
 唇に宿した笑みをそのままに、呼気に笑みを混じらせて言葉を継ぐ。
「それとも貴女、実は『Butler』ならぬ『Battler』で?」
 そして外套を翻したクロトが指先をきゅっと引くと、天井からあふれる光に何かがきらきらと煌めいた。
「――Footmanから出直した方がよろしいのでは無いでしょうかね」
 彼は尚も挑発の言葉を紡ぎながら、指先を引いて鋼糸を紡ぐ。
「それがプリンセスの為になると言うのならば、いくらでも」
 真っ直ぐに言葉を返したサファイアは、更に針を放ち。
「成程」
 流石に安い挑発には乗ってくれないか、とクロトは大仰に肩を上げて。
 例え細い針とは言え、あまりに受けすぎると分厚い外套だって抜けてくるだろう。
 重ねて放たれた針へと外套を掲げながら、クロトはまるで逃げ込むように宝石の柱の影へと駆けだした。
 ――仕込み自体は、既に終わっている。
 後は彼女が引くか、来るか。
「……ッ!」
 そこにクロトの耳に届いた、小さな身じろぐ声音。
 引っかかってくれたようだ。
 クロトは手の感触と声に確信を抱くと、指先に結んだ糸を結いで引く。
 張り巡らせた極細の鋼糸が、纏わりついて、絡みついて。
 ――拾式。
 見えぬ糸は、全てを引き斬り断つ。
「ぐ、あ、……ああっ!」
 ぱきん、と何かが落ちた音がした。
 宝石の柱の影でクロトは彼女を見に行く事も無く、ゆるゆると首を振って。
「鬼ごっことは、言葉選びがお悪い。こちとら――悪鬼畜生の類でね」
 もう一度肩を上げて、下げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナミル・タグイール
【GOATia】(作ってもらった物はつけたまま付けたまま)
にゃー!ナミ…皆のキラキラに何するにゃ!
許さないにゃ!ぶっ倒すデスにゃー!
(キラキラ壊すの勿体ないからちょっとだけ攻撃控えめ猫)

追いかけ回すにゃ!突撃にゃー!
最短距離で直進にゃ。防御は考えないにゃ!
うにゃー!すばしっこいにゃ逃げるにゃー!
UCで金ぴか歯車を展開して呪いの輝きを放つにゃ!周り全部キラキラな場所だし反射しまくって逃げ場無いはずデスにゃ!
動き鈍くして追いついてやるマスにゃ。

反撃されても無視して直進攻撃にゃー!(捨て身猫)
きっとリダンとショコラがなんとかしてくれるにゃ。
サファイアじゃなくて金ぴか持ってこいデスにゃ!


リダン・ムグルエギ
【GOATia】
やー、絆を紡ぐ糸になる宝石を初手キックとか
絆なんか蹴り捨てろって感じで無駄にロックな人ね
って、速い!超速い…ナミルちゃん、任せた!

衣装に織り込んだ催眠模様を用いての幻惑が得意戦法のアタシが
ナミルちゃんのマントに織り込まないはずが無いわよね
前後感覚が歪むキラキラ衣装を見てナミルちゃん狙いの暗器を外すがいいわ!

発光攻撃はパリピサングラスを…サイズ調整してしょこりんにかけてあげて対応

アタシは衣装を敵が見さえすれば仕事は出来るし
目を眩んで動けなくなったアタシは暗器類の格好の的な囮になれるわ
衣服は強化改造済みだから死にはしないでしょ

アタシを狙った針を放つその隙を
絆の矢が狙ってくれるハズよ


ショコラ・リング
【GOATia】の皆様と参加します

目的遂行にのみ注力し、敵に背を向けることも厭わない……厄介でございますね
しかしクリスタリアンの方々を守る為にもこの追いかけっこで負けるわけにはまいりません!

ぱ、パリピサングラスでございますか?
う、うぇーいというやつでございましょうか?

リダンさんの衣装催眠効果を活かす為、ボクは迷彩の外套で全身を包み、相手の視線から外れるように動きますね
狙うのは相手が攻撃に転じる一瞬の隙でございます
リダンさんから頂いたサングラスとナミルさんの勇猛果敢な攻撃を信じ、気配を殺し遅くなった相手の動きをよく見て第六感も併用しながらその瞬間を待ち、一撃を加えます



●うぇい
 鮮やかな色を透かせた影の落ちる、大きなホールの中はまるで宝石の迷宮のよう。
 猟兵達は船のクリスタリアン達を安全な場所へと導きながら、バトラー・サファイアとのかくれんぼめいた鬼ごっこを続けていた。
 掌をゆるゆる振って宝石の群れを見上げたリダンも、そんな猟兵達の一人だ。
「やー、無駄にロックな人よね」
 口にしていたのは、サファイアの人柄への感想。
 姿を現した途端に、絆を紡ぐ糸の元である宝石を蹴り砕き。
 駆け出した彼女の姿は、絆なんて捨ててしまえと全身で訴えるように感じられた。
「……しかし、厄介でございますね」
 それはショコラにとっては、目的遂行にのみ注力し敵に背を向けることも厭わない敵に見えるもの。
 むっと眉を寄せた少年は、困ったように息を吐く。
 ――しかし。
 この追いかけっこに負ける訳には行かない。
 船のクリスタリアン達は追いつかれたら最後、サファイアの狂刃に倒れてしまうのだから。
「!」
 そこに。
 尻尾髪を弾ませて駆け込んで来たのは、サファイアであった。
「噂をすれば……、って、感心してる場合じゃないわね!? えっ、なーにあれ! 速ッ、超速い……、ナミルちゃん!」
 目を丸くしたリダンが指差すと同時に、ナミルは金ぴかのマントをひいらり靡かせて。
「にゃっ!」
 突撃にゃー!
 訓練された猟犬の様な動きで両手を床に付いたナミルは、思い切り地を蹴り込み全力で跳躍する。
「ナミ……、皆のキラキラになんて酷い事をするのにゃ! 許さないにゃッッ!」
 そしてそのままサファイアへと肉薄すると、大きく掲げた腕――黄金の爪を振り下ろして。
「鬼が本当に多い鬼ごっこですね……!」
 既の所でステップを踏んでなんとか一撃を下げたサファイアは、逃げ駆ける足を止める事無く。
 円を描く様に展開した、サファイアで出来た暗器を鋭くナミルへと向かって撃ち放つ。
「うにゃにゃっ! 逃げるにゃ、待つにゃーーーっ!」
 光を受け止めてぴかぴか青く光るサファイアの暗器は綺麗だけど、金ぴかのほうがもっと綺麗デスにゃ。
 追い縋るように腕を上げたナミルは、ぽすぽすと大きな尾の毛で暗器を薙ぎ払い。――否、薙ぎ払えずぶすぶす刺さっている。
 それでもナミルは駆ける足を止めたりしない。
 ――なんたってナミルは一度走り出したら止まれないタイプの猫なのだから!
 後、仲間が何とかしてくれマスにゃ! 多分!
「あっ、しょこりん。そろそろコレを……」
「ふぇっ!? さ、サングラスでございますか!?」
 そんな二人の捨て身の追いかけっこへ手を出すタイミングを見計らって居たショコラに、リダンが差し出したのはぴかぴかの鏡のように輝くパーリーピーポーなサングラスであった。
「アタシはもう『仕事』は終えたもの。――後はもう一つの『仕事』をするだけよ」
 でもしょこりんには、重要な『仕事』が残っているでしょう?
 なんて、リダンは直接ショコラの顔へとサングラスを掛けてやって。
「はい。それじゃ、りぴーとあふたみー。うぇーい、ぷちょへんざ」
「……う、うぇーい……ぷちょへんざ……で、ございますか?」
「ぷちょへんざー」
「ぷ、ぷちょへんざー……」
 リダンが両手を上げると、合わせてぎこちない動きで手を上げるショコラ。
 満足したリダンは、サムズアップ。
 勿論ショコラに可愛いことを強いるのも、リダンの『仕事』ではあるが。
 ――リダンの『仕事』は、ナミルにマントを編み上げた時点で終えているのだ。
 後は催眠模様を織り込んだナミルのマントを敵が見ている内に、勝手に催眠にかかってくれるだろう。
 このサングラスをショコラへと託した理由は、敵が目眩ましを使う事を初見で把握していた為だ。あと、ナミルも凄く光る戦い方をするのは、先刻承知の事。
 ならば。
 リダンの次の仕事は囮として立ち回る事。
 そして――ショコラは最後の切り札として温存する。
 そうする事が一番勝率が高い、とリダンは判断したのであった。
「……ありがとうございます。リダンさんも気をつけて」
 その事を理解した上で、ショコラはかぶりを振って。
 こっくり頷くリダンの前で、迷彩外套を彼は被る。
 ――全ては、全ては。
 敵が油断した、一瞬の隙を突くがために。
「にゃっ、にゃっ、にゃあっ!」
 爪を振り下ろし、暗器を叩き落とし、駆けるナミル。
 敵だってだんだん動きが鈍ってきているようにも見えるが、どうにも攻撃があたってくれない。
 紙一重で避け続けられている事に、ナミルはむきゃーっと喚くように。
「もうっ、いい加減すばしっこすぎるにゃ!」
 そうして彼女の周囲へとに展開されたのは、罅割れた黄金の歯車達。
 ギヂギヂと軋んだ音を立てた歯車が回りだした、刹那。
 世界が黄金の輝きに包まれて――。
「止まるデスにゃーーっ!」
「……!」
 溢れ出した金色の呪詛は足を絡め取るかのように、サファイアの速度を刈り取った。
 最早この速度では逃げ切れぬと判断したのであろう。
 サファイアは舌打ちを一つ、少しでも今は戦力を減らしたい所だと。
 一番無防備に立ち尽くしているように見えた、リダンへと向かって暗器を放とうと、振り向き――。
「……そこは通せません!」
 瞬間。
 朗々と響いたのは、弓を構えたショコラの声だ。
 同時にサファイアの指先を貫いたのは、不可視の矢。
 ……否。
 矢が命中した、という事実であった。
「く……」
 一瞬のサファイアの逡巡。
 それは速度が落ちている彼女にとって、致命的な一瞬であった。
「サファイアじゃなくて、金ぴか持ってこいデスにゃ!」
 にゃーっ!
 大きく腕を振り上げると地を蹴って、体重と重力と膂力の全てを詰め込んで。
 鬱憤がたまりきった様子のナミルは金ぴかの爪を輝かせて、最早回避ができぬサファイアへと飛び込み――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

斬断・彩萌
ちゅん子(f04855)、りりぽよ(f00101)と一緒に。

この場合の鬼はちゅん子でしょうね…
だってほら、獲物を狩る目してるもん
やっぱ猛禽なだけあるわよね~

さて、今回の私はサポート役
ちゅん子が一番攻撃を直に受けるでしょうから
ドラッグ・バレッドで回復弾を撃ち込む
あ、良いよそのまま走り回ってて
こっちは誘導弾だからね、自動でちゅん子に当たるって寸法よ

りりぽよだけど、相手の麻酔針が厄介か
先んじて撃ち込んでおくことで能力の向上を図るわ
まぁ、これはおまけ要素みたいなもんだけどね
先に撃っておくことでリジェネ効果発動が本目的

手隙になったら念動力でその辺の瓦礫とか飛ばして攻撃支援
さぁ、逃げ回ってごらんなさい


オート・チューン
彩萌ちゃん(f03307)リリーちゃん(f00101)と
一人称:わたい

わたい鬼ゴッコ大好き!サファイアちゃんを捕まえるよ!まっかせてー!
鳥足の脚力と華麗な翼捌きを見せてやるわ!

彩萌ちゃんの弾丸が追っかけてくる?!逃げろー!
って当たったら怪我が治った!彩萌ちゃんすごーい!

【雀の望月】を応用して
追っかけながらその辺の物を投げまくり
大きな柱や石をメキっと折ってナイブストームの盾代わりに!
住民がいたら抱えてぽーいの救出も可能!
わははー!どうだー!

鬼はわたいだけじゃない!
リリーちゃんと彩萌ちゃんも居るんだよ!
アントワネットないすー!
つっかまーえーた!
手遊び歌であーそーぼ!(びったんびったん


リリー・ベネット
彩萌(f03307)とオートさん(f04855)と

鬼ごっこは得意なんですよ、オートさんが
彩萌もなかなか負けず嫌いですからね、きっと楽しませてくれますよ

深紅の血滴る薔薇の棘で封印を解いてアントワネットから荊を伸ばし、敵を拘束します
体の外と中から動けなくなる感覚はいかがでしょうか
麻酔針はなるべく避けたいところですが、アントワネットによる拘束を優先します

攻撃はオートさんに、サポートは彩萌にお願いします。頼りにしてますよ
オートさんがぽーいしたクリスタリアン達はフランソワーズがキャッチ、逃してあげてください
ありがとう彩萌、貴女のおかげで私も多少の無理がききます
アントワネットも、もう少し頑張ってくださいね



●鬼の中の鬼
 立ち並ぶ宝石が鮮やかな色を影に透かして、色がとりどりに混ざり合う道行き。
 この戦いを鬼ごっこと称してその姿を消したバトラー・サファイアを追って、三人は再び晶洞めいた宝石の道を歩んでいた。
「生憎、鬼ごっこは得意ですからね」
 翠眼で真っ直ぐに道の奥を見据えたリリーは、ぽつりと呟き。
「オートさんが」
 ちらりとオートを見やると、さらっと言葉を付け足した。
「そうね、この場合の鬼は……ちゅん子でしょうね」
 うんうんと彩萌も頷いて同意を重ねて。
 そう。
 こういう体力勝負的なのは、この三人の中ではダントツでオートが得意なのだ。
 その証拠に――。
「はーーい! わたいね、わたいね、鬼ゴッコ大好きだよ!」
 ふふーんと胸を張り、めちゃくちゃ元気を有り余らせた様子のオートはアピールするように。二人に向かって掲げた手を、ぶんぶん振って振って振りまくる。
「ちゅん子は得物を狩る目をしてるもんね、やっぱ猛禽よね~」
「うひひ、そうそう! まっかせといて! わたいの得物を狩る視線と、鳥足の脚力! それに華麗な翼捌き、じっくりしっかり見せてやるわ!」
 ぴっかぴかに瞳を輝かせるオートの瞳は、正に得物を狩る目……えっと、目を……。
 ――ええと、まあ。彩萌が言う所にはそうなのだ。獲物を狩る目をしているのだ。
「そういう彩萌もなかなか負けず嫌いですから、好い線を行くのでは無いでしょうか?」
 二人のやり取りにリリーが口角を笑みに上げると、人差し指を立てる。
「えー、今日はサポートに回る気なんだけ……あっ!」
 拳銃を抜きながら顔を上げた彩萌は、声を上げたまま瞳を見開き。
 その視線の先を追ったオートがちゃっと音を立てて、一気に地を蹴った。
「あーーーっ! 見つけたっ! 待て待てーーっ!」
「また今度は騒がしい鬼に見つかってしまいましたね……っと!?」
 サファイアが、やれやれと言葉を紡いだ瞬間。
 鈍い音を立てて、真横へと降り落ちてきたのは巨大な宝石の柱であった。
「……!?!?」
「そこでじっとしててね! わたいが捕まえちゃうよー! えーーいっ!」
 その巨大な柱を投げ込んで来たのは、勿論オートだ。
 彼女はぴっかぴか笑顔で引き続き宝石の柱を引き抜くと、更に持ち上げて――。
「――あんなめちゃくちゃな重戦車が相手とは聞いていませんよ!?」
 展開した暗器を一気に投げ放ちながら、サファイアは泡を食った様子で再び駆け出した。
「待て待てーーっ、わははーーっ!」
 ぶんぶん巨大な柱を振り回しながらオートが駆ければ、暗器は叩き落とされ、宝石柱はブチ壊されて。
 地形を変えてしまいそうな勢いで、場の柱が均されてゆく。
「やっぱり鬼と言えばオートさんでしたね」
「そうね、鬼といえばちゅん子ね」
 顔を見合わせたリリーと彩萌は、納得し合うように頷きあって。
 それから弾を装填を終えた銃を、彩萌はまっすぐにオートへと向けた。
「……って、ええーっ!? なんでなんで、なんでーーっ、なんで彩萌ちゃん、わたいを狙うのーー!?」
 そうして。
 放たれた弾丸はオートを追って、縦横無尽。
 わーっと慌てたオートは柱を振り回しながら、追いかけてくる銃弾から逃げ延びようと大暴れ。
 対するサファイアは、暗器を放つも瓦礫と成った石に阻まれて。
 それどころか。
 自分にも関係ない場所まで破壊するオートの、仲間たちへと抗議の声を上げた。
「ちょっと、その暴走機関鳥は止められないのですか!?」
 声を掛けられた彩萌は、リリーのこめかみに銃口を押し付けている所。
「……えっ、もしかして、止まれって言って止められると思っているタイプの人?」
「うーん、今は無理ですね」
「あなた達はあなた達で何をして……?」
 サファイアが思わず突っ込みに回ってしまった瞬間。
 彩萌が引き金を引き絞るとリリーへと弾丸が撃ち込まれ、くらりとリリーがその場で蹈鞴を踏んだ。
「……!?」
 見た目だけで言えば完全にクレイジーな猟兵達に、サファイアは絶句する。
 勿論。
 彩萌だってオートやリリーを斃そうとして銃弾を打ち込んでいる訳では無い。
 ――この弾は怪我を癒やし、戦闘力を増強する医療弾なのだから。
「……ありがとう、彩萌。それでは『止めましょう』か」
 くっと踏みとどまったリリーは、体の前で腕を交わして。
 指先に纏った細い細い糸を引き絞った。
 細い細い糸に引かれて。
 紅色のドレスを翻して、立ち上がるアントワネット・ローズ。
 空色のドレスを翻して、立ち上がるフランソワーズ・シャルマン。
 二人の人形はカーテシーでご挨拶をして――。
「あっ、クリスタリアンさんもみーーーっけっ!」
 そこにオートの朗らかな声と共に、瓦礫と化した柱の横に隠れていた船のクリスタリアンがぽーいっと投げこまれた。
 駆けるフランソワーズがクリスタリアンを抱き上げると、安全な場所まで誘導すべく更に奥へ。
 同時にアントワネットのスカートの下から、猛毒の棘を纏う荊が萌え伸びた。
 荊はしゅるり、しゅるり、呆気にとられていたサファイアの足首へと巻き付いて――。
 リリーの宣言通り、『止められた』のはサファイアの足取り。
「アントワネットないすー!」
 その一瞬を逃さず。
 オートは大きな跳躍と共に、翼を広げてサファイアの上へと舞い降りる。
「うひひ。ね、ね――今日の鬼はね、わたいだけじゃないんだよ!」
 リリーちゃんだって、彩萌ちゃんだって。立派な猟兵で、立派な今日の鬼なのだから。
「いっしょにあーそーぼっ!」
「待っ」
 彩萌の弾によって元気を更に有り余らせたオートは、サファイアの足をひっつかんで――。
 びったん、びったん。
「ここから逃げ回る事がまだ出来るかしら?」
「……やっぱり鬼はオートさんですね」
「まあね」
 彩萌が肩を竦めると、リリーが瞳を眇めて。
 床にビッタンビッタンされるサファイアをただ見つめた。
 合掌。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ジャック・スペード
エドガー(f21503)と
追いかけっこ、得意なのか
じゃあ、追い詰める役はあんたに任せよう

俺の方は敵の牽制を試みる
リボルバーからマヒの弾丸を乱れ撃ち
少しでも動きを鈍らせたく

麻酔針が飛んで来たら
大きく展開したシールドで弾き飛ばそう
エドガーも入ってくれ
あんたが刺されては大変だからな
それでも弾けない時は
弾丸をばら撒いて針を撃ち落とせたらと

さて、そろそろエドガーに一手を繋がなければな
この身に屑鉄の王を降ろせば
稲妻を其の身に纏ったモノアイの異形へ変化し
バトラーの頭上や周囲へ、蒼き稲妻を降らせよう
電撃で足止めが叶えば僥倖だ

さあ、決めてくれ
俺の電池が切れる前に
鉄の塊を引き摺っては帰れ無いだろう?


エドガー・ブライトマン
ジャック君(f16475)と
追いかけっこだっけ?いいねえ、乗ったよ
私、幼少の頃から得意だったんだ。負ける気がしないなあ

牽制はジャック君に頼らせてもらおうかな
私は私の剣を誇りにおもっているけれど、
それはそれとしてやっぱり銃はカッコいい
シールドが開かれたなら潜らせてもらっちゃおう
マントではちょっと防げそうにないからね…

さて、私の出番が近いかな
ジャック君の降らせる稲妻をムダにはしないさ
電撃が当たるより前に、マントを脱ぎ捨てて飛び出そう
より身軽になって《早業》でバトラー君に迫る

決めて見せるさ、ジャック君を背負って帰るのは流石に厳しい!
捕まえたよ、バトラー君
“Jの勇躍”
追いかけっこは終わりにしようか




 晶洞めいたホールには、宝石を透かした色とりどりの影。
 宝石の結晶の合間をゆっくり歩んでいた先程とは違って、エドガーとジャックは並んで美しき道を駆けていた。
「私、追いかけっこは幼少の頃から得意だったんだ。ウーン、負ける気がしないなあ」
「成程。ならば、追い詰める役はあんたに任せるとしようか」
「フフ、任されたよ!」
 アメシストの宝石柱を抜けて、鮮やかなガーネットを曲がって。
 鮮やかな色の宿る影の先に見えた深海色の青の背。纏められた尻尾髪がゆらゆらと跳ね揺れる。
 ――それこそ探し人。バトラー・サファイアの姿を発見したジャックは銀のリボルバーを引き抜くと、遠慮無くその背に向かって幾度も弾丸を撃ち放った。
「おや、また鬼に追いつかれてしまいましたか」
 猟兵達とやりあった際に、隻腕と化したのであろう。
 カッティングされた観賞用の宝石のように、美しく瞬く腕の断面。
 弾を避けるべく強引に地を蹴りあげたサファイアは、宝石に手を付いて真横に横に跳び。
 その軌道を追って更に弾を吐くジャックの銃口。
 麻痺の力を宿した弾は、着弾した地に紫電を爆ぜさせる。
「しかし追いかけてきた鬼を、追いかけられる者が倒してはいけないと言う決まりも無いでしょう?」
 防戦一方といった様子のサファイアは、冗句の様に言葉を紡ぎ。
 そのまま大きく腕を払うと、弧を描いて幾つもの針が射出された。
「鬼が追いかける者を倒してはいけないという決まりも無いな」
 短く応じたジャックは、針に向かってリボルバーの弾が切れるまで撃ち。
 そのまま外套の裾を引くとエドガーの身体をも覆い隠す形で、長い裾を靡かせた。
 刹那。
 外套に沿って展開されたシールドが針を弾き、ばらばらと地へと針を零して。
「ありがとう、フフ。キミの銃はカッコいいねえ、惚れ惚れしてしまったよ」
 真っ直ぐな空色の瞳をジャックの顔へと向けたエドガーは、小さく微笑んだ。
 勿論、エドガーは自分の剣を誇りに思っているが、それはそうとして銃の格好良さは別腹なのだ。
「どういたしまして。――さて王子様、舞踏会に向けての準備は万端か?」
 対するジャックは、金色の視線で敵を見据えたまま。
 リボルバーのラッチを押し上げてシリンダーを開放するとばらりと排莢してから手早く弾を再装填して。
「オッケー! そろそろ私の得意な事を見せておきたいと思っていた所さ」
「ああ、任せた」
 ならば、次の一手を繋ぐが為に。ジャックの身体でばぢり、と音を立てて電撃が跳ねた。
 ――その身を屑鉄の王へ委ねれば、更に蒼い稲妻が迸る。
 廃獄より蘇り、在るべき姿と解き放たれた王は、金に輝く一つのまなこでサファイアを睨めつけ。
 ――もしこの身に蓄えられた電力を全て使いきって仕舞えば、ジャック自身は動けなくなってしまうけれども。
 今、サファイアの足を止めて。
 今、サファイアの視線を惹き付けられれば。
 今はそれで良いのだ。
 屑鉄の王と成ったジャックは、サファイアへと蒼い稲妻を雨霰と迸らせて。
 ジャックが彼女の目を惹き付け、こちらに向いていないうちに、と。
 エドガーは宝石の柱を蹴り登り。そのまま宝石の上を駆けるとサファイアへと一気に間合いを詰めながら、ばさりとマントを投げ捨てた。
「……っ!?」
 サファイアの頭上へと、投げ捨てられたマントの影が落ちる。
 それはエドガーの身を更に軽くして、サファイアの視界を一瞬を奪う一手である。
「さあ、決めてくれ!」
 蒼い稲妻を撒き散らす王――ジャックは言った。
 なんたって。
 ジャックの電池が切れるまで戦った場合、彼にこの巨躯の鉄の塊を引き摺って帰ってもらう事となるのだから。
「ああ、決めてみせるさ」
 レイピアを構えた王子――エドガーは頷いた。
 なんたって。
 流石にジャックの巨躯を背負って帰るのは、エドガーが王子様とは言えさすがに厳しいのだから。
 そうして。
 レイピアを鋭く翳したエドガーは宝石の上から飛び降りると、体重と重力、そして宝石を蹴り込む事で更にスピードを増した剣先を垂直に突き出して。
「――捕まえたよ、バトラー君」
 追いかけっこは、もうおしまい。
 鋭きレイピアの刃先は真っ直ぐに、真っ直ぐに、サファイアを貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蘭・七結
ルーシーさん/f11656

響き渡る靴音が聞こえるでしょう
驚異となる藍玉の彼女のお出ましのよう
ルーシーさん、準備はよいかしら
あまり前には往きすぎないように、ね

――あら、まあ
華麗で素早い身のこなしだこと
このままでは彼らが砕かれてしまう
追うも追われるも、すきよ
ルーシーさんはかけっこは得意かしら
……ふふ、当たり

よーいどん、は必要なさそうね
眼前の彼女を追うて駆けて往きましょう

呼び起こすのは花の嵐
紡ぎあげた風の力を添わせて
彼女の往く道を阻み、包んでみせるわ

飛び立つ蔦竜の素早いこと
後ほどララさんにありがとう、と告げましょう

深い海の如き青を宿す宝石のひと
鮮烈なるあかの彩は、如何かしら
お気に召すとよいのだけれど


ルーシー・ブルーベル
なゆさんと/f00421

深くて冷たいあお
青はきらいではないけれど
モチロンいつでもいけるわ、なゆさん
うん、お行儀よくしているわね

わあ
煌めきに目を閉じたのは一瞬だったハズなのに
もうあんなに先を駆けている
ルーシーの大事な絲を紡いで下さった方々を
砕かせなどしないわ
お守りしなきゃ

ルーシーは力いっぱいかけっこするの好きよ!
なゆさんは……何となく、お好きそう?
やっぱり!

ええ、もうフライングされてしまったみたいだしね?
共に疾く駆けるとしましょう

腕の中の水色兎に呼びかけるの
ララ、起きて
なゆさんのあかと共に飛び立って
あのひとを追って
藍玉は違うあおをお見せするわ
前を遮り
香りと花弁で足止めを
ほら赤い嵐がきれいでしょう



●いろとりどり
「ルーシーさんは、かけっこは得意かしら?」
「ええ! ルーシーは力いっぱいかけっこするの好きよ!」
 晶洞めいた大きなホールは騒然と。
 クリスタリアン達は船に導かれるが侭に奥へと逃げ出し。
 彼等を追って駆けるオブリビオン――バトラー・サファイア。
 猟兵達は彼女の靴音を追って、再び宝石の道を駆け歩み出していた。
「なゆさんも……何となく、お好きそう?」
「……ふふ、当たり」
「やっぱり!」
 言葉を交わす七結とルーシーもまた、彼女を追う猟兵達の一人。
 二人は視線を交わし合うと、一つこくりと頷いて。
「ではルーシーさん、準備はよいかしら?」
「モチロン、いつだっていけるわ!」
「――そう、あまり前には往きすぎないように、ね」
「うん、お行儀良くしているわね」
 鮮やかな宝石の色が透ける影。
 色とりどりの色彩が重なった道の奥に、その深く冷たい蒼の背は立っていた。
 猟兵達の猛追を何とか振り切ってきたのであろう。
 一つに纏められた尻尾髪の彼女は、満身創痍といった出で立ちだが――。
 宝石の影に隠れて言葉を交わす二人の目前で。
 ぱっと何かを見つけた様に、サファイアは再び駆け出した。 
「よーいどんはもう、必要なさそうね」
「ええ、もうフライングされてしまったみたいだしね?」
 どれだけ傷つこうとも、仕えるプリンセスの為にサファイアが行うことは一つだ。
 船の奪取の為にその船に根付いたクリスタリアン達の排除である。
 そう。
 サファイアの向かう先には、クリスタリアンの少女が腰を抜かした様子でへたり込んでいる。
「駄目よ、あなた」
 駆け出した七結が腕を前へと差し出すとあかいあかい牡丹一華の花弁が解けて、嵐と化した花弁がサファイアの進路を阻み。
「……猟兵ですか。今あなた達を相手している時間は無くなったようなのですよね」
 ゆるゆるとかぶりを振ったサファイアは、あかい嵐に足を取られる事が鬱陶しそうに。
 暗器を一直線に並べるとその身が砕ける事も憚らず、空中へと侍らせて。
「せめてあの者は、排除させて頂きますよ」
「――させないわ! あの方はルーシーの大事な絲を紡いで下さった方だもの!」
 ルーシーはその腕の中に抱いた、水色のウサギのぬいぐるみへとお願いする。
 ……ララ、ララ! 起きて!
 瞬間。
 ウサギのぬいぐるみがその身体を膨れ上がらせて。
 頭を擡げると滑らせるようにその背へとルーシーを乗せて、絡みついた蔦がしゅるりしゅるりと伸び、音を立てて青い花の蕾が芽吹く。
 青い花を咲かせた蔦竜と成ったララは、一気にサファイアの前へと飛び出して――。
「――邪魔をしないでください!」
 サファイアが苛立った様子でクリスタリアンの少女に向かって暗器を一斉に解き放つも、空を翔けるララの方が更に速い。
「あなた、手を!」
「……はい……っ!」
 サファイアの蒼とはまた違う美しき青の花弁と、鮮やかな赤の花弁が嵐と成って舞い散る中。クリスタリアンの少女の腕を取ったルーシーは、ララの上へと少女を引き上げながら、叫ぶ。
「なゆさん! こちらの方は無事ですっ!」
「ふふ、ルーシーさんも、ララさんも、ありがとう」
 少女がルーシーに救われたのならば、最早七結にとって憂いは無い。
「――深い海の如き青を宿す、宝石のひと」
 青の花弁が混じるあかいあかい花嵐を更に強く吹き荒ばせて、首を小さく傾いだ七結。
「鮮烈なるあかの彩は、如何かしら。……お気に召すとよいのだけれど」
 そうして深く冷たい蒼を宿した執事を見据えると、唇に綺麗な笑みを宿して――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

徒梅木・とわ
お、鬼ごっことか、冗談だろう……
ああもう、下駄なんて履いていられるかっ

ぜ、は……た、短距離走も、長距離走も、やっていられるか……! 迷路走に、変更だ……!
義手用まにぴゅれえたあの、回路……こいつは最近の仕事でも……いや、仕事じゃあなかったが、とにかく複雑な回路だ
そうそう簡単に出られると思わないでくれたまえ

……とまあ啖呵は切るが、あの身軽さじゃあな
迷路なんかに付き合わず飛び越えていきかねない
予想の一つとして構えられるだけましだけれど

迷路の上方、そこに結界を張ろう。頭をぶつけて痛い目を見るように
咄嗟に避けられない、飛び上がった後で
なあに、目を眩ませられたって【聞き耳】を立てていれば大凡判断はつくさ



●迷路走
「待っ、はあ……っ、はあ……っ」
 履いてきた下駄も脱いだというのに、走るという事は斯くも苦しいことなのか。
 そう、とわはダイエ――体力作りの為に走ってみた事も在った。
「ぜ、ひゅっ……はっ……ひゅ……っ」
 しかし、しかし。
 とわ自身は気付いているのか、いないのか。
 まあまあとわは、体力が絶望的な節があるもので。
 何も言葉に出来ない言葉を吐息にすべて溶け込ませて、ただただ肩で息をする。
 周りを見やれば連なる美しき宝石達。光に透かされた影は鮮やかに地へと落ちて重なって、実に美しい光景だ。
「は……はっ……」
 いやまあ、今のとわにそんなこと感じ入る余裕すらないのだけれども。
 膝に手をついて何とか呼吸を整えようと肩で息を重ねるとわは、他の猟兵の事を閉じ込める危険性から今の今まで止めておいた手段へと思い当たる。
 こうなっては手段を選んでいられないだろう。
 ――なんたって目の前に。
 いや。
 大分向こうになりつつあるけれど、……兎も角。
 駆けるオブリビオン――バトラー・サファイアの背が見えているのだから。
 あともうこれ以上短距離も長距離もとわには走りきれない。死んじゃう。
「はあ……っひゅ、っ――でんの、れいふ……っ」
 薄紅色の尾を揺らしながら紋を切って符を取り出したとわは――、ぐっと息を飲み込んで絞り出すように言葉を紡いだ。
「さあきっと……!」
 瞬間。
 宝石の道の姿が一変した。
 それは自らの直してきた電子回路を模した、伝導体で出来た迷路。
 とわの最近の仕事の中でも――否、仕事では無かったけれども。義手用の滅茶苦茶面倒で複雑であった回路を模している。
「そうそう、かんたんにでられっ、はあ……っ、とは、おもわないで、くれたまえ……っ」 何とか啖呵を切り抜いたとわは肩を上げて、下げて。
 敵がその身体能力で無理矢理迷路を脱出しないように、蓋をするような形で結界を張り巡らせると、大きく息を吸って吐いた。
 そうやって何とか息を整え直したとわは、自らの脳の中にある回路のマップを思い返す。
「さあて、行こうか」
 そう。
 この迷路のマップを知っているのは、とわ一人。
 あの面倒で複雑な回路を搭載した義手を触ったとわだけが、行き止まりも、出口も知っているのだ。
 ――唇に笑みを宿したとわは、一番有利な道のりを頭の中で探りながら歩み出す。
 ちょっと今は、走る事がしんどい感じですので。

成功 🔵​🔵​🔴​

花川・小町
【錦】
素敵な風習を楽しませて貰ったお礼は、ちゃんとしなくちゃね
ふふ、嗚呼、それにしても鬼ごっこだなんて――私とても得意よ
あら伊織ちゃん、そんな鬼でも見た様な顔してどうしたの?

微笑みつつ男衆の牽制に乗じ追撃
UCの力とオーラ纏い身を強めつつ、敵の背や足へ衝撃波の範囲攻撃放ち、体勢崩して足止めを
おまけに閃光奪う暗く重い呪詛も込めておき更に阻害
それでも閃光防ぎきれぬと察せば、目を伏せ第六感に任せ攻撃――大丈夫、息ぴったりな子達は上手く躱すでしょうから、ね?

此処に紡がれてきた歴史の糸、命の糸――此程に美しいもの達を壊すだなんて無粋、見逃せないわ
ええ、悪い遊びは終わりにしてお帰りなさいな、お転婆執事さん


呉羽・伊織
【錦】
ああ、平和に紡がれ続けた縁や命を、途絶えさせる訳にゃいかないからな
(活き活きした姐サンをチラ見し)
…ウン、姐サンに狐とか鬼に金棒だよネ、敵う訳ないよネ
(一瞬凄い角が見えたのはきっと幻覚)

そんな無駄口以上に手を動かし早業でUC
物影から、敵の影から、縦横無尽に鴉達呼び、目潰しや足止め狙い体勢崩し
同時に2回攻撃で、自らも光と自由奪う呪詛を風切に込めて放ち牽制
麻酔針は第六感で警戒しつつ、残像で狙い散らし欺いたり、風切投げ返したり――最悪毒・激痛耐性で相殺
気が置けなさ過ぎる連中も何のその、無論躱す

悪い遊びはいい加減にしとけ(敵&一瞬狐も見て)
この船と彼女らの命運を、良き縁を――未来へ繋いでみせよう


佳月・清宵
【錦】
ま、そうさな、祝いの場に水差す奴は摘まみ出す他ねぇ
然し鬼ごっことは、なぁ?(鬼も戦く女と名高い約一名と、青鬼もかくやという顔色の伊織を見て笑い)
目出度い序でだ、少し早めの追儺と行くか

UCと早業で敵の背や蹴らんとした箇所へ衝撃波見舞い牽制
麻痺と暗影齎す呪詛も忍ばせ、足止め兼閃光阻害
針は高速移動と其に伴う残像で回避狙いつつ、地形(宝石の壁)も利用し直撃阻止
最悪此方も早業で暗器ぶつけて武器落とし、後は耐性で凌ぎ切る
後は有難く伊織の影も利用し、不意打ちやフェイントも

ああ、楽しい遊びならまだしも、笑えねぇ戯れはよくねぇよなぁ?
さて、女――てめぇとこの船との悪縁だけは、綺麗さっぱり断ち切ってくれよう


千家・菊里
【錦】
楽しい一時という報酬は既に頂きましたからね
後はきっちりお仕事を果たしましょうとも
(小町さんは色んな意味で鬼ごっこのプロですもんねぇ――追いかけっこも、鬼になりきるのも――とか暢気に思いつつ)
ふふ、では鬼は外と参りましょう

敵も攻撃も先へ通さぬ様に、炎属性霊符を広範囲に展開した炎壁と、オーラ巡らせた結界を重ねて張り包囲
その影にUCも紛れさせ閃光や針を封じに
強引に越えんとすれば、皆と連携し麻痺霊符放ち阻害
最悪でも耐性や第六感頼りに、敵味方の動き読んで凌ぎましょう

遊びはお互い楽しんでこそ
嫌がる方々をいじめるのは良くないですよ(しれっと)
今の貴女の還る地は此処に非ず――海へ送って差し上げましょう




 色とりどりの宝石の柱が光を浴びて、鮮やかな影で地を彩っている。
 天井で、床で。ゆらゆらと揺らめく光はきっと、この船のクリスタリアン達へと何かを訴えているのだろう。
 ――このホールに満ちる宝石たちの美しさは数刻前と変わりはしないというのに、この場に満ちた空気は正に戦場そのものであった。
「やれやれ、鬼ごっこだとよ」
 観光目線で見れば美しき宝石たちも、戦場目線で見れば遮蔽物が多い岩場のようなもの。清宵は肩を竦めると瞳を細めて、周りを見渡し。
「隠れる所も多いですし、隠れ鬼かもしれませんけれどね」
 大きな尾を揺らした菊里が奥の奥を見据えようとするかのように、細い路地のように入り組んだ宝石の間を覗き込んだ。
 そんな狐達の言葉に、いかにもおかしげにくすくすと笑う声。
「そうね。そういう遊びは私、――とても得意よ?」
 唇に綺麗な笑みを宿した小町は人差し指を一本立てると唇に寄せて、妖艶に瞳を歪める。
「……アア、ウン」
 そんな小町の表情を見てしまった伊織は、想像していた以上に得心の深い声が思わず漏れてしまう。
「あら伊織ちゃん、そんな鬼でも見た様な顔してどうしたの?」
「ウンウン! 姐サンが鬼なら、鬼に金棒だよネ、敵う訳ないよネ~!」
 首を傾いだ小町に、慌てて空笑いを浮かべた伊織はコクコク頷いて誤魔化すよう。
 なんたって。
 楽しげに笑った小町の瞳の奥に、加虐的な色が灯っていたと言いますか。
 羅刹でも無いのに、本当に鬼の角が見えた気がしたと言いますか。
 伊織は手をフリフリ、なんでもないデスと言う表情を取り繕い。
 その様子に清宵はくつくつと喉を鳴らして、どこか満足げな表情を浮かべた。
 ――鬼も戦くと名高い彼女だ。その圧に伊織が押されてしまったとしても仕方の無い事だろう。
 それにしたって慄いた様子の伊織は見ているだけで――。嗚呼、なんとも酒が旨くなりそうな表情だ。
 清宵は笑みを深めると、笑いの籠もった吐息に鼻を鳴らして。
 その横で呑気に微笑む菊里はふと目線を宝石柱の奥へと移し。
 ――小町さんは『色んな意味』で鬼ごっこのプロですものねぇ、なんて。
 それからその奥に見えた色に、瞳を細めた。
 覗いた色は深い深い海のような蒼。
 駆ける足取りに尻尾髪を跳ねさせる彼女こそ――クリスタリアンたちにとっての『鬼』、バトラー・サファイア、その人であった。
「ふふ、では鬼は外と参りましょうか」
 霊符を手にした菊里は、発見をしたと言う代わりに皆に目配せをして。
「そうだな。目出度い序でだ、少し早めの追儺と行くか」
 菊里の目線に応じて刃を抜いた清宵が、戯れるように言葉を紡ぎ。
「ああ、平和に紡がれ続けた縁や命を、途絶えさせる訳にゃいかないからな」
 手のひらの中に暗器を忍ばせた伊織も、こくりと頷いて。
「ふふ、鬼ごっこだなんて、――腕が鳴るわね」
 最後に小町が花笑むと、薙刀を握りしめた。
「ヒャッ」
「……伊織ちゃん?」
「ナンデモゴザイマセン……」
 圧。
 思わず声が出てしまった伊織は、速やかに小町から目を反らしてぷるぷる首を振った。
 なんたって鬼がやってきたかのような威圧感を感じた、なんて。
 もちろん小町には言えないもの。本当に鬼が来てしまう。
 そんな二人のやり取りを見る清宵はこの瞬間、どの世界の誰よりも楽しげな悪い笑いを浮かべていた事だろう。
 気を取り直してサファイアを見やる伊織。
「なあ、アンタ。悪い遊びはいい加減にしとけよな」
 紡ぐ言葉と共に彼の影が蠢いて、影の中で幾つもの羽ばたきが生まれた。
 身内の鬼オーラに怯えていたって、ちゃあんと仕事を果たそうとするのが伊織の良い所だ。
 あと伊織で悪い遊びをする悪辣狐達も、ついでに睨めつける事も忘れない。
 伊織の影の中で鳥が空を掻くと、影が膨れ上がり。
 顕現した影鴉が、宝石の道を駆けるバトラー・サファイアへと殺到する!
「――また邪魔をしにきたのですね、猟兵!」
 吠えたサファイアは真一文字に暗器を奔らせると、群がる影鴉を切り裂き。
 それから麻酔針を空中へと展開して、猟兵達へと鋭く針を撃ち放つ。
「ええ、――遊びはお互い楽しんでこそ。嫌がる方々をいじめるのは良くないと伝えにきましたよ」
 敵の視線も、伊織の視線も。
 常の笑みでゆるーく返した菊里が炎を生み、纏う霊符で地を焼く。
 それは彼女を逃さぬ檻であり、針を焼き阻む盾の炎と成って。
「ああ、楽しい遊びならまだしも、笑えねぇ戯れはよくねぇよなぁ?」
 それとも楽しく遊ぶ事も出来ぬほど、ご立派な執事サンにゃ余裕がねぇのか?
 伊織の『お前にも言ってるからな』の視線を受け流して身を低く構えた清宵は、向かいくる針を避けて宝石柱の横っ面を蹴りあげると、横っ飛びに更に踏み込んだ。
 合わせて、制動をかけながら刃を振り放つと、鈍い光を照り返した斬撃が衝撃波となって放たれ。
 そこに。
 清宵の対角線上から、ぴょんと飛び出してきたのは小町であった。
 薙刀を露払いと一度払い。
 サファイアとの間合いを一気に詰めた小町は、指先を彼女の前へと差し出して窘めるように。
「素敵な風習は楽しまなきゃあ、ね?」
 刹那。
 神霊体と化した身体の膂力を武力と成して、振り払った小町の一撃は鬼の名を恣にする事だろう。
 地を削り、地を割り。
 まともにねじ込まれたサファイアの身体が、強かに地へと跳ねた。
「あのね、お転婆執事さん。此程に美しいもの達を壊すだなんて無粋、見逃すわけには行かないのよ」
 小町は薙刀の刃を反すと、真っ直ぐにサファイアへと向けて。
「祝いの場に水差す奴は摘まみ出す他ねぇよな。――てめぇとこの船との悪縁は、綺麗さっぱり断ち切ってくれようよ」
 とん、と宝石の柱上へと身軽に跳び乗った清宵が、鈍色の刃を水平に構える。
「さあ、お仕置きの時間です。――骸の海までの送迎ならお任せください」
 快適な旅路である保証はできませんけれど、なんて。菊里が符をばらりと構え――。
 空に侍る影の鴉を一羽、腕へと留まらせた伊織はサファイアを見据えて言葉を紡ぐ。
「この船の命運、良き縁は――こんな所で断たせるわけにゃ行かないもんだ」
 結いだ良縁を未来へと繋いでみせよう。
 暗器を構えた伊織は赤い瞳に決意を宿して、――ばさりと影の鴉を舞わせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

サン・ダイヤモンド
【森】
あなたに加護を
黒の指先へ口付け『天使の抱擁』介し彼にオーラ防御付与
「大丈夫だよ
僕達がいるんだから」

糸の行方を愛しく見守り
「行こう、僕の全て」
彼と合体、心通わせ共に飛翔

身を捻り宝石の間を擦り抜け加速

僕には猛禽(狩人)の血が流れてる
訓練だって重ねてきた
森に棲む鳥が木にぶつかる事は無い


暗器を躱しながら敵の行く手を塞ぐよう立ち回り
高速飛翔によって生まれた衝撃や
羽搏きで起こす風に炎を乗せ敵を攻撃&暗器を弾く(衝撃波&属性攻撃
次に属性を炎から氷へ変え、床と共に敵の体を急激に冷やしていく

宝石達よ、力を貸して!
『破魔爪』へ全力のダイヤモンド属性付与し敵の頭狙い急降下
外しても回し蹴り、一部は砕き皆へ繋げる


ブラッド・ブラック
【森】
「嗚呼、もう奴等の好きにはさせない」
サンから加護を授かり
「糸も、失くさない」
大事に躰の裡へと仕舞い込む

サンを包み込み【比翼の鳥】
己の躰をサンの鎧と翼に変え共に飛翔、敵を追う

俺はもう己の醜さを、運命を嘆きはしない
此の手で此の躰で、お前と、未来を護り
お前と伴に

翼を畳み、身を捻り
立ち並ぶ宝石の間を擦り抜け追い抜き加速する
訓練の成果を見せてやろう
逃がすものか

俺達は二人で一つの獣
時に翼は手足の様に
地を蹴り、サンを護り、躱し切れぬ敵の刃を武器受け・薙ぎ払い
大きく振るえば風を生む

サファイアの硬度は9
熱に強く、靭性はダイヤをも上回る
しかし熱衝撃―急激な温度変化には弱いという

過去よ、大人しく眠っていてくれ



●ふたりでひとつ
 入り組んだ宝石の森は、光を透かした石の色鮮やかな影に彩られている。
 猛禽の趾を覆う爪が地を掻いて、ちゃっ、と音を立てた。
「見つけた」
 呟いたサンの瞳孔が陽光色の真ん中できゅっと細まる。
 立ち並ぶ宝石の向こう側。
 彼が見据えた先には、冷たく冴えた蒼をその身に宿した一人のクリスタリアン――バトラー・サファイアが立っている。
 まだ距離がある為に、彼女はこちらに未だ気がついてはいないらしい。
 サンの言葉に応じたブラッドもまた、真っ直ぐに彼女を見据えて。
「嗚呼、もう奴等の好きにはさせない」
 彼女の仕えるプリンセスの目的は――帝国を復活させようと言うものだ。
 帝国はブラッドにとって、過去という抜け出せぬ泥濘の象徴であった。
 ――もちろん。
 自らを惑わす過去は、突然消えたりしない。
 思い返すだけで鉛を流し込まれたかような感情に苛まれる事も、確かである。
 それでも――、それでも。
 小指に結いだ金糸が未来をくれるように、今のブラッドには感じられるのだ。
「大丈夫だよ、僕達がいるんだから」
 ブラッドの手を取ったサンは加護を宿した口づけを彼の指先へと落として、花の蕾が綻ぶように甘やかに笑った。
「行こう、僕の全て」
 サンのその小指に揺れる、愛の色。
 同じ色に燃える瞳でブラッドは頷くと、くろがねの躰を膨れ上がらせる。
「嗚呼」
 決して、この手を離さぬように。
 決して。この糸を失わぬように。
 ブラッドはもう己の醜さを、運命を嘆きはしない。
 此の手で此の躰で、お前と、未来を護ろう。
 ――お前と伴に。
 まるで宝物でも扱うかのようにブラッドは躰の裡へと、大事に大事にサンの身体と結わえた金糸を包み込む。
 そうしてその身でサンを覆ったブラッドは、彼を守るくろがねの鎧と翼へと姿を変えて。
 大きく翼を広げて飛翔すると、急加速をかけた。
 ……サンの中には、狩人たる猛禽の血だって流れている。
 ブラッドと一緒に訓練だって重ねてきた。
 決してぶつからぬように、翼を畳んで、身を捻って。
 立ち並ぶ宝石の合間を紙一重ですり抜けて、ぐんぐん風を飲み込んで。
 長い髪を靡かせるサンは、サファイアを狙って一直線に空を翔ける。
 どれほど障害物の多い場所で速度を出したって大丈夫だ。
 サンとブラッドは今、二人で一つの獣なのだから。
 ――森を飛ぶ猛禽が獲物を狙っているからと言って、木にぶつかりはしないだろう。
「また来ましたか、――猟兵!」
 はっと気付いた様子のサファイアはが吠えると。光を浴びて蒼く瞬く暗器を侍らせて。
 迫り来るくろがねの鎧を纏ったサンへと、幾つもの刃を一気に解き放った。
 サンの背負う大翼が、まるで巨大な手のひらのように一瞬膨れ上がり。
 向かい来る暗器がサンへと届かぬように、薙ぎ払い食らうよう。
 それから一度地を蹴ったサンは、翼にはらむ風へと炎を纏わせて、更にサファイアへと羽撃いた。
 ――サファイアは硬い宝石だ。
 その上熱に強く、靭性はダイヤをも上回るほど。
 しかし。
 熱衝撃――急激な温度変化には弱いといわれている。
「宝石達よ、力を貸して!」
 サンはブラッドに告げられた作戦をなぞるように。
 燃える炎の次は。翼にはらむ風へと氷の魔力を纏わせて。
 嗚呼、サン。過去は大人しく眠らせてやろう。
 うん――行こう、ブラッド!
 そうして急降下したサンは鋭い爪へとダイヤモンドの加護を宿して、サファイアへと向けて――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

兎乃・零時
【猫ひげ】
アドリブ歓迎

ある意味二度目で間違いは無いだろうさ
鬼ごっこ…鬼ごっこ…???
まぁ当然!俺様達が捕まえさせやしないけどな!
それに無駄な事なんてないさ!
何故なら俺様達がいるんだからな!


UC!これで普段以上に速度上げれるさ!
おうとも、やってやろうじゃん!
ロキはなんだかんだ元気そうだし早々に決着をつける迄!
相手が麻酔針を発射してようと俺様は当たらねぇ!
ロキから光が閃くと共に、自身も周りの力……そう、ロキの力と手を合わせる様に繋げ
その状態で光魔術で攻撃!

光【属性攻撃×全力魔法×限界突破】!

リミテッドオーバーレイ
 極光一閃!

神力…この感じがそうなのか

おぉ、良いなそれ!
後で結び合いっこしようぜ!


ロキ・バロックヒート
【猫ひげ】

君とは初めましてかな
それとも二度目まして?
おや鬼ごっこしたいんだって零時くん
簡単に捕まるのを見てるのもつまんないよね
猟書家とクリスタリアンの間を影で遮って邪魔するよ
君のも綺麗な髪だよね
縁として結んでやりはしないけど

零時くんやクリスタリアンたちを影や体でかばうよ
麻酔針にはやられたーってぱたっと転げるかもだけど
【神の指先】だけ向いていればいいし
あとは零時くんがなんとかしてくれるでしょう?なんて
雷光めいた白い光が閃いて
零時くんの魔力とも手を取り合うように
絡め結んで導き猟書家を灼く
これが俺様の神力だよ
まるで秘密でも教えるみたいに

あぁそうだ
髪留めは今は手首に付けてるけど
後で結び合いっこしようよ



●力を合わせて
「うーん。君とは、はじめましてかな?」
 対して悩んだ様子も無いけれど、ロキはこてんと首を傾いで。
 蒼を身に宿すクリスタリアン――バトラー・サファイアを阻む形で立ったまま、彼女に尋ねる。
「それとも二度目まして? かな?」
 ――一度目。
 前の彼女と会うために、二人は図書館で大冒険をしたものだ。
 勿論。
 過去から滲み出したオブリビオンが、同じ形をしていても同じものでない事くらい知っているけれど。
「ある意味、二度目で間違いは無いだろうけどな」
 零時は肩を大きく竦めてから、構えながら応じる。
「記憶にございませんね」
 対して。
 二人に道を阻まれ対峙するサファイアは、その瞳の冷たい冴えた色もそのままに。
 素気なく言い切って大きく腕を薙ぐと、その軌道に沿って幾つもの針がロキと零時へと向かって撃ち放たれた。
「そっか、残念だな。でも君の髪も綺麗だけど――縁として結んでやりたいと思えないしね」
 だから次にまた君と出会ったとしても、きっとまたはじめましてだ。
 影を蠢かせたロキは指先を彼女へとひたりと向けて。
 まともに針をその体ですべて受け止めた。
「あっ」
 指を向けたままその場にひっくり返るロキ。
「ま、いっか。――あとは零時くんに任せようかな」
「えっ!? いや、いいけどさ!?」
 ご指名を受けて目を丸くした零時はぐんと地を蹴って。
 重ねて放たれた針を掛け避けると、――過去と未来を共鳴させる。
 零時の腕が、足が、背が、身体が、ぐんと伸びて。――彼の想像する大人へと、零時の姿が一気に成長をする。
「よっし、やってやろうじゃん!」
 先程よりもずっと長い足は、未来と過去の力を秘めている。
 光の魔力をぽぽぽと揺らすと、零時は牽制するようにサファイアへと撃ち込んで。 
「おおー」
 零時の頑張る姿に寝転がったままのロキがゆるーい声を漏らして、ぱちぱちぱちー、なんて口で言った。
 うーん緊張感。
「図体が大きくなったと言う事は、的が大きくなったという事でしょう?」
 サファイアが光の魔力を暗器で打ち払うように薙ぎ。
 重ねて針を放つが、零時はぴょいぴょいと跳ねるだけで軽く針を避けて。
 ぽんと跳躍して宝石柱の天辺まで一気に上り詰めた零時は、サファイアをぴしっと指差した。
「俺様には当たらねぇよ、そんな遅い攻撃はな!」
「本当になんとかしてくれそうだね」
 なんて、しびしびしたままのロキは笑い。
 ――それでも、すこうしは手伝おうかな。
 サファイアへと人差し指を向けると、雷光めいた白い光を膨れ上がらせて瞬かせた。
 瞬間。零時の身体を、ぴりりと不思議な感覚が貫いた。
 それは、何かが掴めそうな不思議な違和感。
 魔力が絡み合い、導かれるような――。
「……!? なんだ、この感覚は……?」
「ふふ、これは――俺様の神力だよ」
 床に倒れたまま、秘密を教えてあげるみたいに。
 ロキは甘やかに笑って。
「……そうか、……この感じが……!」
 零時は自らの力と、神の力を結わぐ事ように。
 感じた違和感をしっかと掴んで、自らの中の魔力と紡ぎ合わせ。
 ああ、いまならできる気がする。
 サファイアを睨め付けた零時は、白い光を膨れ上がらせ。
「――極光一閃ッ!!」
 轟音と共に大きな大きな白い一筋の光が、サファイアを飲み込んで――!
「ねえ、ねえ、零時くん。後で髪留めの結び合いっこしない?」
「おぉ、良いな!」
 麻痺したままのロキが転がったまま声をかけると、零時もぴかぴか笑顔で応じた。
 うーん、緊張感。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

都槻・綾
f01543/イアさん

ね、
私も捕まえてみてくださいな

天翔で疾く跳ね
サファイアの前へ降り立つ

地に着くより早く
扇状に開いた符を薙いで起こす、衝撃波
繰り出された攻撃の軌道を逸らし
ひらりと躱そう

さぁさ
鬼さん此方

続く歌声にふくり笑って

逃げる人々を追いかける為に
サファイアが踵を返すのなら
再び翔けて跳ね
進路を塞ぐ

罪なき彼らから離すよう
然り気なくサファイアを誘導

おや
苛々したら駄目ですよ
だって此れは
あなたにとって遊びなのでしょ

いのちを狩ることを戯れと称する彼女へ
仰々しく肩を竦めて見せる

其の一瞬の隙は
ささやかな罠

捕まってもね
いいえ
捕まってからが
ほんとうの「鬼」でしょう

鮮やかに笑って抜刀
私もあなたを狩るものになろう


イア・エエングラ
f01786綾と

やあ、次は遊びのお時間かしら
僕を仲間外れだなんて、いやよ
十も数えず跳んだ背を追いかけて
走るの得意でないからのんびりと

――手の鳴る方へ

お歌をついでサファイアのむこうとこちら
同胞から遠ざけるよにさらさら流れる海の底
死霊の影を手招いて呪詛がお前を焼くかしら
砕かれた怨嗟がお前と遊ぼうと呼んでるよ
まぜてくださる、遊びだものな
ひらひら飛び交う綾の言葉にたのしくて

ああでもそうな、そう、逃げるも飽いた
次は僕らが鬼の番
逃げてくださる?
誥紫の手がお前を呼んで
繋いだならば届くかしら
やあ美しい、鬼狩りだこと
お前が遊びとうたったことの
報いをどうぞ、受け取って



●あそび
 宝石の道を駆けるサファイアは満身創痍。罅割れ、欠けて、それでも駆ける足は止められない。
 蒼の欠片を零しながら。光に透かされた鮮やかな影を受けて、彼女は駆ける。
 次の自分が在る事も、知っているけれど。
 否。
 次の自分が在る事を、知っているから。
 ――全てはプリンセスの為に、全てはこの船の戦力を少しでも減らす為に。
 この身が粉となるまで、仕えられる幸運を。
「いました、か」
 立ち並ぶ宝石の向こう側。
 彼女が見据えたのは船の住人。――クリスタリアンの姿を見つけたサファイアはいっそう早く駆け出して。
「ああ、見つけた」
 そこに割り入ったのは、空を蹴って、空を駆けて。
 まるで重力なんて忘れてしまったみたいに、宙を蹴って跳ねる綾であった。
「こんにちは、あなた」
「――猟兵達の事は、今相手をしたい気分じゃないのですけれども……」
 鬱陶しそうに瞳を細めたサファイアが、大きく腕を薙ぎ。
 応じるように生まれた針は一列に並んで、綾へと殺到する。
「おや、ね、そう言わずに」
 攻撃を放たれても焦った様子も無く。
 楽しげに笑った綾は、軽い足取りの踵が地へと着く前に、ばらりと扇のように広げた符を薙いだ。
「私も捕まえてみてくださいな」
 刹那の凪。
 次の瞬間に生みだされた衝撃波は針の軌道を空中で逸らして。
 ひらりと針を避けた綾は、敢えてサファイアの横を狙って地へと降りたった。
 ――なんたって。
 こうして彼女の横に綾がいるだけで、彼女が住人に手を出す事は阻止できるだろうから。
「やあ、僕を仲間外れだなんて、いやよ」
 そこにかけられた、夢をみるような声。
 それはのんびりとコチラへと歩んでくるイアの声だ。
 すこしね、駆ける事は苦手なのよう。
 それでも、それでも、一緒に遊びましょう。
「さあさ、――手の鳴る方へ」
 わらべ歌を口ずさんだイアが両の掌の指先を合わせると、手を鳴らすは死霊のかいな。
 船の住人達が遠くへと駆けて逃げてくれるまで。
「おや、お前、お前。砕かれた怨嗟がお前と遊ぼうと呼んでるよ」
 少しでもクリスタリアン達を遠ざけるようにイアの喚ぶ死霊の腕が、サファイアの足を掴む。
「……邪魔だと行っているのが、理解できませんか?」
 びかり、と大きな蒼い光を瞬かせたサファイアは強引に足を引いて。
 宝石の柱を蹴り上げた所に、ひいらりと再び前へと割り込んでくる綾の姿。
「おや、――あなたにとっての遊びで、苛々しては駄目でしょう」
「そうそ、僕もまぜてくださる? せっかくの遊びだものな」
 窘めるように言葉を紡いで大きく肩を竦めた綾に、イアだってくすくすと楽しげに言葉を継ぐ。
 かっと大きく瞳を見開いたサファイアは、自らの前へとわざわざ近寄ってきてくれた綾へと腕を伸ばして――。
「そう、……それほどまでに熱烈に望んで頂けるのならば、遊んであげましょうか」
 至近距離でサファイアの暗器を生み出すと、――すぱり。
 綾の前へと転がる、サファイアの欠片。
「捕まってもね」
 ああ、いいえ。
「――捕まってからが、ほんとうの『鬼』でしょう?」
 伸ばされた腕を振りほどくように、抜刀した綾は鮮やかに笑って。
 すぱりと裂かれたサファイアの美しき断面が、曝け出されていた。
「やあ、美しい、鬼狩りだこと」
 ぱちぱちと緩く手を叩いたイアは、また甘やかに笑って。
「ああでもそうな、そう、ずうと逃げるだけでは飽くものな。ならば、ならば、次は僕らが鬼の番かしら」
 綾へと向かって生み出された暗器を掴んだ死霊の腕が、サファイアへとその手を向ける。
「ねえ、お前。逃げてくださる?」
 それとももう、かいなは届いてしまうのかしら。
 おいでおいでする手が、ひゅうるり伸びて。
 やあ、ね。
 ――お前が遊びとうたったことの報いをどうぞ、受け取って。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

巫女がくれた私への倖
生命に一番近い指―左薬指に結ばれた絲が嬉しい
込められたふたつの櫻の意図が嬉しくて

私に斯様な倖を齎してくれたこの地
迎えてくれた宝石人達に恩義を感じる
斯様な美しい地を宿す生命達を砕かせない
恩返しをしよう

鬼ごっこ?
久方振りだ
ちょこまかと逃げる小さなサヨの姿が脳裏に過る
よく途中で転んで泣いていた

何でもない
サヨ
転ばぬ様に

『祝災ノ厄倖』

カグラの結界で巫女と舟、宝石人を守って

早業で疾く駆け
切込み切断し―神罰を結ぶ

麻酔針は当たることは無い
閃光は桜吹雪に遮られ
足が滑って転び
避けることなく斬撃は当たる―不運なことだ

サヨには幸運を結び約す

そなたは此処に断つ

龍の首に揺れる鈴飾り

実に気分が好い


誘名・櫻宵
🌸神櫻

カムイの喜ぶ姿のかぁいらしいこと

凛、と首の鈴がなる
首飾りは首輪のようで嫌いだったけれど
之は悪くないわね
無自覚か、否か―伝う独占欲が心地よい
仄かに滲む無垢な神の慾が美味で堪らない
噫もっと、食べさせて欲しいわ?

あなたらしいわね
こんなにかぁいい神をみせてくれたんだもの
恩返しと行きましょう

うふふ!
鬼ごっこはすきよ
よく―(師匠としたっけ)
だって私は逃げるの、得意だもの!
か、カムイ?何故笑っているの?

神が約す倖の喜ばしいこと
あなた随分、運が悪いのね?

―朱華
桜罰巡らせ、針など衝撃波ではねとばす
なぎ払い蹂躙するよう斬撃這わせ美しい碧を抉り
裂いて美しい桜を咲かせましょ!

刀薙ぐ度光るカムイの薬指

心地よい



●慾
 二人並んで再び歩む、宝石の道。
 ――クリスタリアン達が襲われている事は知っているけれども。
 込められたふたつの『櫻』の意図。
 いのちに一番近い指に結わがれた糸。
 櫻宵が――カムイの巫女がくれた倖を前にしてしまえば、やっぱり笑みはこぼれてしまうものなのだ。
「ふふ」
 唇に笑みを宿したまま歩むカムイは、櫻宵から見たってはしゃいでいるように見えて。
 まあ、まあ、まあ。かぁいいこと!
 和らげた眦で神様を見つめる櫻宵の白い首に結わがれた鈴が、りんと澄んだ音を立てた。
 ――櫻宵はその音を聞く度に、どうしたって感じてしまう。意識してしまう。
 この鈴は、この首飾りは。
 無邪気に薬指を撫でて喜ぶカムイの、仄かに滲む無垢な慾の表れのようだ、と。
 櫻宵は背をぞくと震わせると、喉を鳴らした。
 噫、美味しいわ。
 噫、もっと、もっと、食べさせて欲しい。
 それは首輪のようで苦手であった首飾りも、悪くないと思える程に。
 そんな櫻宵の内心を知ってか知らずか、はしゃいだ様子でカムイは櫻宵へと笑いかけて。
「ねえサヨ、私は恩返しをしたいんだ」
 倖を齎し暖かく迎えてくれたクリスタリアン達を、砕かれたくは無いとカムイは言う。
 それでこそ、私の神様、と櫻宵は甘やかに笑い返して。
「うふふ、そう。あなたらしいわね」
 それに何より、こんなにも――かぁいい神様の姿を見せてくれたのだから。
 櫻宵としてもこの船への恩義はたっぷりなのだ。
「しかし、鬼ごっこか」
「私ね、鬼ごっこはすきよ。逃げる事は得意だもの」
「そうだね、サヨは……」
 言葉事息を呑んだカムイは、眦に笑みを柔らかな笑みを宿す。
 ――そう。
 『昔』は良く、鬼ごっこをしたものだ。
 ちょこまか逃げ回る小さな彼の姿がカムイの脳裏に過ぎり。
 ……そう、そう。よく途中で転んで泣いていたものだ。
「……ふ、ふふっ」
「……えっ? か、カムイ? 何故笑っているの?」
「いいや、何でもない。でも、サヨ。転ばぬ様に気を付けて」
「こ、転ばないわっ!」
 少し頬をぷくりと膨らせた櫻宵もまた、あの頃のようで。
 カムイはまた、くすくすと笑った。
 ――そんな二人の前へと駆け込んでくる、一人の影。
「……たすけ、てっ!」
 駆け込んできたのはクリスタリアン。
 いまにもまろびそうな足取りのこの船の住人を抱き留めたカグラは、さっと結界を展開する。
 逃げてきた者がいるという事は、追ってくる者が居るという事。
「来たわね!」
「サヨ」
 さっと人差し手を伸ばして櫻宵の幸運を結び約したカムイが、地を蹴って間合いを詰める。
 追ってくる者。――それは今にも崩れそうな蒼を宿したオブリビオンのクリスタリアン。バトラー・サファイア。
 得物を構えて駆けたカムイは彼女と擦れ違い様に、櫻宵とは真逆に厄を結び約す。
「そなたは此処で断たせて頂く」
「そうね、あなた随分――運が悪いみたい」
 からかうように言葉を紡ぎ。得物を抜いた櫻宵が刀を薙げば、一閃は空間ごと斬り裂くように。
「邪魔を……っ!」
 ぐんと身を屈めてその一撃を避けたサファイアは――。
「!?」
 そのままスッ転んで、地へと頭を打ち据えた。
 彼女に突然襲いかかった不運は、カムイの力だ。
 厄を結んで、厄を約す。
 幸運を結んで、幸運を約す。
「うふふ、それじゃ、せめて最後に美しい桜を咲かせてあげましょうか」
 ――神の巫女は、花咲くように微笑んで。
 ちらり、と神様のいのちに一番近い指を見やる。
 刀を手に厄を約す神は、眦を和らげて。
 巫女の白い首に揺れる、首飾りを見やる。
 自然、唇に灯るは笑み。
 噫。
 ――なんて、なんて。
 気分が良くて、心地良いのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

橙樹・千織
私達は彼らも、この船も護り抜く
糸桜のオーラ防御・毒耐性を纏い、敵を見る

こちらは遊びのつもりは一切無い
故に……鬼ごっことは言わない
放たれる刃は残像を目眩ましに躱すか、薙刀を振るう衝撃波で吹き飛ばす

その先へは行かせません
漿船内の地形を活かし、空中戦も交えながら追跡
敵の視線や体の動きを見切る、もしくは野生の勘で進行方向を把握
その先に障害物となる結界を作り出し、妨害をしましょう

足が止まっているようですが?
放つ衝撃波は麻痺の呪詛を帯び、次第に動きを縛ってゆく

愛しきものを護るのが私の役目
それを脅かすというならば
これで終いにしましょう
隙を突き、破魔と浄化を込めた刃でなぎ払う


花剣・耀子
随分と小賢しい真似をしてくれること。
鬼ごっこは得意よ。鬼だもの。

砕け散る燦めきに惑わされず、真っ直ぐに追いすがりましょう。
逃げるみんなとの間に割って入るわ。
おまえがあのヒトたちを狙うなら、その軌道は此方に向くでしょう?
守るなんて柄でもないのだけれど。
判っているなら、斬り果たせる。

放たれる宝石を、白刃で迎え撃ちましょう。
足りなければ遮蔽物でも、体でも、咄嗟に使えるものは何でも使うわ。
誰も失わせないわよ。
折角のお目出度い日に、無粋なことをしないで頂戴。

元々の在りようや所有権なんかは、あたしの知った事ではないの。
只、いまから未来へ続く日々を塗りつぶす過去が気にくわない。
あたしは過去の敵。それだけよ。



●あそびの時間は、おしまい
 きらきらと輝く宝石の柱が天井より瞬く光を浴びて。
 鮮やかな影が落ちる道を、耀子は駆けていた。
「もう。いい加減観念なさいな」
「それはこちらの台詞ですよ」
 心底鬱陶しそうに眉を寄せて、バトラー・サファイアは宝石を蹴り砕く。
 砕けた宝石の欠片は礫と成って。
 ばらばらと降り落ちる輝きを、耀子はステップを踏んで躱して。
 引き倒されてきた宝石の柱を潜り抜けて、耀子は尚をサファイアを追う。
 なんたって耀子は羅刹……鬼なのだから。鬼ごっこくらいお手の物だ。
 そうして追われる者。
 ――猟兵達の猛攻に満身創痍のサファイアは最早猟兵の排除を諦めて、船の住人を殲滅すべく駆け回っていた。
 それは彼女の最後の意地であり、意思。
 自らが壊れてしまう前に、プリンセスの為に一人でも敵を減らしておこうと言う、最後の抵抗だ。
 耀子は斬る事以外は余り得意では無い。
 人々を守るなんて、とても柄では無いのだけれども。
 ――それでも失わないほうが良いもの位は、知っている。
「!」
 とこに突然サファイアが足を止めたものだから。
 追い縋っていた耀子はきゅっと踵を滑らせて制動をかけて、その先に立ち塞がる者を見た。
「――この先は、通しません」
 朗々と言った千織は、サファイアを真っ直ぐに見据えて。
 ここは宝石の連なる、袋小路。
 この奥に傷を負って駆けられなく成ってしまったクリスタリアン達が隠れている事を、千織は知っている。
 だからこそ、だからこそ。
 千織はここから一歩も退く気は無かった。
 ――何より、千織はこれが遊びだとは一つも思っていない。鬼ごっこなんてよんではあげない。
 遊び半分に命を脅かそうと言うのならば――。
「そちらのあなた、――合わせて頂けますか?」
「ええ、勿論」
 薙刀を真っ直ぐに構えた千織に合わせて、耀子は機械の剣を唸らせる。
 ――このさきは、いきどまり。
 それはきっと、クリスタリアンにとっても。
 それはきっと、サファイアにとっても。
 初めは追いかけて。
 最後には逃げて。
 そうして最後の最後には、自ら退路を断つ道へと迷い込んでしまった。
 ……それは弱き者を虐げようとした者の末路だったのかもしれない。
「もう、逃がさないわ。――折角のお目出度い日に、無粋なことをしないで頂戴」
「もう、逃げられないですね。――これで終いにしましょう」
「……ッ!」
 奥歯を噛んだサファイアは、牽制するように円状に暗器を展開して。
 ――迷い無くその刃を、二人の猟兵では無く千織の後ろの袋小路へと向かって一気に射出した。
 それは千織が通さぬ理由を、考えた結果だったのだろう。
 しかし。
「そう来ると思っていたわ。――誰も失わせないわよ」
「……全く、救えないですね」
 二人の猟兵は、その狂刃を通してなんかやらない。
 千織は敵が命を脅かすというのならば、護るだけ。
 耀子は斬る事以外は余り得意では無いので、守るなんて柄では無いのだけれども。
 ――それでも失わないほうが良いものくらいは、知っている。
 判っているなら、斬り果たせるものだ。
 サファイアを狙わず千織側へ鋭く跳躍した耀子は、放たれた暗器へと向かってさぱりと白刃を斬り結び。
 逆に前へと踏み込んだ千織は、真っ直ぐに構えた薙刀に膂力と魔力の全てを宿して。
 サファイアの脳天へと、薙刀を力一杯叩き込んだ!
「…………ッ、猟兵、共……ッ!」
 蹈鞴を踏んだサファイアの端から、ざらり、ざらりと蒼の欠片が零れた。
 元より罅割れ今にも壊れそうだった身体に決定打を打ち込まれ、サファイアの身体はバラバラと砕け始めて。
「この船は元より、わたし、……たちの」
 憎々しげに紡がれるサファイアの最後の言葉。
 ――耀子はそんな言葉だって、斬る事しか知らないのだ。
「……元々の在りようや、所有権なんかは、あたしの知った事ではないの」
 彼女は崩れ落ちる彼女へと振り向くことも無く言葉を紡ぐ。
 彼女の守りたかったものに、思いを馳せる訳にはいかないのだから。
「只、いまから未来へ続く日々を塗りつぶす過去が気にくわない。――あたしは過去の敵。それだけよ」
 わあ、と袋小路の奥からクリスタリアン達が歓声を上げて、猟兵達へと駆け寄ってくる。
「そうですね、今を喰らう過去から――愛しきものを護るのが私の役目ですもの」
 その愛おしきものたちに太陽の色をした眦を和らげた千織は、獣の耳を倒して微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月21日


挿絵イラスト