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昏き翼のフェアリーテイル

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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●満たすもの
「退屈」
 使い魔の蝙蝠たちに話しかけるように、少女は呟いた。キャシャシャシャと面白可笑しく笑う返事が返ってくる、元々会話は期待していない。退屈だ。食事だけが、今の私の唯一の楽しみと言っても良い。

 ――先祖返り。少女は、悪魔である。元は普通に……背中の羽根は服の中に仕舞って、頭の角はフードで隠して、人間のように振舞っていた。村でも少女の本性に気付く者は居なかったし、気付かれないように努力した。だって、気付かれたら面倒臭いし。
 しかし、その時は唐突に訪れた。古の大悪魔の血を引き、親ですら顕現しなかった力が突如発現し、力を制御しきれなかった少女は村人から石を投げられ、罵りの言葉を投げかけられた。
 ――どうして。こんなの私のせいじゃない、私は何も悪くないのに! 少女の怒りと哀しみは一夜にして村を死の香りで満たした。
 だから少女が悪魔であることを、本当の本当に、誰も知らない。だったらもう人間のフリをする必要もない。少女は翼を広げ星の瞬く夜天へと羽搏いた――。

 辿り着いたのは人間が築き上げた希望の砦。其処に舞い降りた黒き翼に、人々は恐れ戦いた。半ばパニックになりながらも、砦の代表者である壮年の男が前に出る。
「あなたは一体……? その羽根、ヴァンパイアですか」
 震え声に対し少女はのらりくらりと言葉を交わす。嗚呼、久しぶりの会話だ。言葉が通じるというのは、やはり素晴らしいことだ。
「何でもいいわ、食べさせてくれない? お腹が空いて死にそうなの」
「そんな! 私達はあなた達の食糧じゃない!」
「? 何を言ってるの?」
「うわぁああああ!!」
 恐怖のあまり鍬を振りかぶり少女を一撃で殺さんと、月光を受けてぎらりと鈍く光る刃。それは少女に届く前に、使い魔である蝙蝠が身を挺して受け止めた。ぶしゃっと、果実が熟しすぎて破裂したように、その場に血が拡がる。
「あーあ、こういう時良い子から死んでいくのよね。残念だわ」
 少女は血のついた服をやれやれといった様子で見つめ、鍬を振りかざした者へ鞭のようにしなやかに伸びる尾でスパッと腕を切断した! 悪魔の少女が思うのも変な話だが、天罰だと嘯いて。
 腕が捥げカランと鍬を落とし「ああああ!!」と煩わしく叫ぶ村人なんかには目もくれず、少女は代表者に宣言すると同時に確信する。やっぱり、人間って野蛮。話なんて、通じなかった。
「これより此処を私の食糧庫とするわ。三日に一回、美味しそうな者を差し出して」
 この世界に肥えた人などおらず、美味しそうの基準といえば美醜くらいなもの。少女は食べられさえすれば肉でも野菜でも果実でも何でも良かったが、どうせなら人間を喰らい尽くしてやろうと心に決めた。
 人は皆、醜い。この翼があるせいで、少女は人から迫害された。人は自分と違う者を受け入れられないのだ。でも、不思議な事にこの翼を手放したいとは一切思えない。この翼は少女が少女である証。今更引き千切ることなんて出来やしない。
 ――だったら、もう自由奔放に生きてやろう。降りかかる火の粉は振り払い、私は静かに美味しいものを食べる。食物連鎖の頂点にいる私が、下々の者に遠慮する必要なんて最初からなかったのね。
「あ、ああ……」
 人類の希望が、失われていく。此処もまた他の領主に従属してしまう村と同じになってしまうのか。
 少女は昏き翼を大きく広げ、砦の中心部に向かっていく。其処は大聖堂だった。少女は其処を根城とし、此の砦に居座ろうという魂胆である。
 ――神の対極にいる悪魔が無辜の人間を蹂躙する様を、何も出来ないまま見ていると良いわ、神様。

 少女に神は居ない。それはひとえに、悪魔だからに他ならず。しかし自ら望んでそうなったわけではない。だのに、助けのひとつも寄越さないなんて、やっぱり神様なんていないんだわと諦めて。
 退屈そうに今日の供物を啜る。震える供物の脳天を一突きし、死んだのを確認したら、最初は血抜きから。ジュルルと啜る血の味のなんて甘美なこと! 今まで知らなかっただけで、やはり少女は悪魔、故に人を喰らう宿命。一気に少女の瞳に光が宿る。
「……美味しい。じゃあ屹度、今日のお肉も美味しいわね」
 少女が砦に居を構えてから一か月。配下の蝙蝠たちが常に人々を見張り、逃げおおせる者は誰も居なかった。それまでに9人の人間が食べられた。次で記念すべき10人目。
 折角なら老人ややせっぽちはダメ、特別若くて柔らかい……年頃の若者が食べたいと。少女は初めて供物をオーダーした。砦の未来を繋ぐ子供たちを食べさせるわけにはいかない。何か、何か方法は無いものか……砦の住人は思案し、神に祈る。そんな折。
「あら、この光」
 ふわりと現れた幻想的な光に、少女は目を奪われた。幻光虫と呼ばれるその虫は、一定の期間だけ光を放ち、異性を誘惑するという珍しい生き物。その美しさから『神の遣い』と呼ばれることもある。うふふ、と少女は喜んだ。
「特別な日の料理を、特別な光で頂けるなんて、素敵だわ」
 幻光虫はふわりふわりと少女のまわりを飛び回り、少女にとってはまるで祝福されているかのように戯れる。悪魔といってもやはりまだ『女の子』、こういったものには弱いらしい。
 ――嗚呼、もし神様がいるのなら、今日という日の為に焦らしていたのね。意地悪。でも良いわ、私は今とても気分がいいもの。だから……。
「素敵な時間を邪魔しないでね。また退屈になったなら、いっそ全員食べてしまうかも」

●グリモアベースにて
「っていうわけ。状況が飲み込めない人は手ェあげて~」
 グリモア猟兵、斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は集った猟兵達に今しがたグリモアが見せた予知の内容に疑問がある者はいないか声をかける。皆状況は切羽詰まっている事は理解出来たようだ。
「この女の子の悪魔が、今回倒してもらいたいオブリビオンよ。人類砦のド真ん中に居座って、3日に一度人間を食べてる。そして明日は30日目……つまり、10人目の犠牲者が出る予定の日よ」
 猟兵達には至急人類砦に向かって貰い、まずは砦に侵入する為に配下である蝙蝠型のオブリビオンと戦ってもらう必要がある。
 村人は戦闘が始まると各々砦の中に引きこもるので、巻き込む心配はない。蝙蝠型配下は数こそ多いが個体は猟兵の力を以ってすれば苦戦する事はないだろう。
「配下を倒したら砦の中心……あ、この砦は丸い形をしています。その真ん中ね。そこに大聖堂があるの。戦場としては十分な広さがあるわね。そこで無邪気に幻光虫と戯れてる悪魔娘を倒せばミッションコンプリート!」
 少女は3日ぶりの食事を楽しみにしているところを猟兵に邪魔をされれば、面倒臭そうに猟兵達を追い払おうとするだろう。それを往なしながら全力で戦って欲しい。
「相手は古の大悪魔の血を引く娘。本人には及ばずとも匹敵する力を持ってるわ。ただ、使う場面がなかっただけ。猟兵が自分を殺そうとするなら、存分に力を振るってくるでしょうね」
 気を付けて、と彩萌は念を押して、再度グリモアを起動する。転送する前に、もう一言。
「退屈な死合にはならなそうね」
 そう付け加え、一人ずつ現地に送り出すのだった。


まなづる牡丹
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。まなづる牡丹です。
 今回の舞台はダークセイヴァーにて、悪魔の血を引くオブリビオンと戦って頂きます。

●第一章
 『ワイリー男爵』。
 悪魔少女の配下である蝙蝠型オブリビオンです。個体はそれほど強くないので、大量に囲まれでもしない限り苦戦することはないでしょう。

●第二章
 『大悪魔の血を引く少女』。
 強大な力を持ちながらも今まで使ったことがあるのは一度きり。そして今回が、その力を振るう最後の時になるでしょう。猟兵の敵意に対し敏感で、一度拳を交えれば戦闘力を爆発させ降りかかる火の粉を振り払います。
 猟兵の強さを見抜いた少女は辟易し、最初から全力です! こちらもどうぞ侮ることのないようにお願いします!

●第三章
 『???』。
 少女が去った後には、何が残るのでしょうか。

●プレイング送信タイミングについて
 各章ごとに断章を執筆します。第一章の受付は1月7日の8時31分以降です。
 2章以降はMSページとタグにてプレイング受付期間を告知いたしますので、お手数ですがご確認お願いします。
 (基本的に断章を投下した次の日よりプレイングを受付致します。申し訳ありませんがそれ以前に送られたプレイングは返金とさせていただきますのでご了承ください)

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ワイリー男爵』

POW   :    我輩に鮮血を捧げよ
【手下である蝙蝠の大群】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    我輩に愉悦を捧げよ
【手を叩く】事で【全身を緋色に染めた姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    我輩に絶望を捧げよ
【両掌】から【悪夢を見せる黒い霧】を放ち、【感情を強く揺さぶること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 さぁさ此処から先は我らを倒してからお通り下さい! と言わんばかりに、キシャシャシャと手を叩いて見せる蝙蝠型配下。名をワイリー男爵! 紳士的でありながら本性は残忍で狡猾な、まさしく悪魔の僕として相応しいオブリビオンである。
 その証拠に、背中には大きな黒い翼! 眷属として少女に召喚された時に生えた翼は、こうして忙しなく飛び回るのに十分な飛翔能力を得ている。
 パンパンと手を叩き、蝙蝠の群れを呼び出したならば自身は緋色に姿を染める。そうして両掌を広げ黒き霧を放つ……それは悪夢を見せる邪悪な霧。思い出したくないことを呼び起こし、感情を揺さぶることで動きを封じる。
 砦から人間どもが出てこないように見張りつつ、猟兵たちの相手をする事になるわけだが、相手は数の暴力とばかりにその群力で猟兵を圧倒してくる。
 君は個体を確実に減らしていっても良いし、敢えて大群の中に飛び込んでも良い――。
レティシア・ヘネシー
【ギャングスタ・フィーバータイム】でサブマシンガンを持つスクラップギャング達を出し、物量戦で張り合う

戦闘の最中、レティシアは考え込む。
悪魔の少女の境遇が、過去の来歴から「悪」と決め付けられ、そのまま悪行を重ねてしまった自分と重なって見えて、思わず呟く

助けられないかな、友達になれないかな、なんて

悪魔に手を差し伸べるなんて、きっと正しい行為では無いだろう
だけどそれじゃ、少女に寄り添う相手が誰も居ないまま。それはあまりにも寂し過ぎる

まずはこの状況を何とかしないと。スクラップを抱え、自分も戦いの最中へと飛び込んでいく

人が信じられないなら「人でなし」のレティなら信じてくれるかな?




 相手が数で押してくるなら、こちらも同じく数で対抗すれば良い。なに、律義に一体ずる相手にする必要などどこにもないのだから。レティシア・ヘネシー(ギャング仕込のスクラップド・フラッパー・f31486)は片手をワイリー男爵どもに向け高らかに唱える!
「さぁレティのギャング達! 仕事の時間だよ!」
 するとどこからか、ギャング風の人型スクラップが姿を現す! 禁酒法時代を駆け抜けたスクラップギャング達は、手にした銃火器で凶弾を撃って撃って撃ちまくる! 物量戦で負ける気など全くない。こちらは無限、あちらは有限。さて、有利なのはどちらかな?
 戦闘の最中、レティシアは考え込む。悪魔の少女の境遇が、過去の自分と重なって見えたからだ。『密輸に使われた車』というだけで悪と決めつけられ、そのまま悪行を続けてしまった自分。悪魔の血をひくというだけでまだ何もしていない内から悪と決めつけられた娘。
 レティシアは思わず呟いた。
「助けられないかな……友達に、なれないかな」
 なんて。悪魔に手を差し伸べるなんて、屹度正しい行為ではなく、歓迎される事ではないだろう。だけどそれじゃあ、少女に寄り添う相手が誰も居ないまま。それはあまりにも寂しすぎる。
 スクラップギャング達はバラララララとショットガンを撃ちまくり、ワイリー男爵達を撃ち抜いて、まるで林檎が弾けるようにぶしゃっと血が噴き出す。だというのに次から次へと湧いて出てくる敵。本当に有限か? 無限沸きじゃないよね? と訝しみながらも、自爆特攻やら手榴弾をぶっぱなしている内に数の減り目も見えてきた。
 ――そうだ、まずはこの状況を何とかしないと。
 スクラップを抱え、レティシア自身も戦いも最中へと飛び込んでいく。スクラップを組み合わせて作ったお手製のバラックスクラップの内、レティが選んだのは矢張り銃。こんな混戦の中、敵に向かって行っては味方の銃に撃たれかねない。
 今時古めかしいリボルバー。これでも禁酒法の時代ではまだまだ現役だったのだ。特性の薬莢を装填し、狙いをつけてBAN! と音を立てワイリー男爵に当たれば、一瞬の停滞の後、木っ端微塵に炸裂する。血がぶしゃっと仲間のワイリー男爵たちにも浴びせられ、視界を奪われたり翼が重くなって動きにくそう。
 兎に角暴れ回るスクラップギャング達と共に戦いながらも、レティシアはやっぱり悪魔の娘の事を考えていた。これは親近感? それとも同情?
「人が信じられないなら『人でなし』のレティなら信じてくれるかな?」
 悪いと分かっていながらヴィランとして振舞っていた事実が蘇る。覆ることはない、歴代のオーナーみたいに自分もロクでもない人種なのかもしれない。だったら、いっそ心が通じるかも。レティシアは期待を込めて、まだまだ湧いて出てくるワイリー男爵の始末に追われた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノウル・イル
【アドリブ連携歓迎】
悲しい……ですね。人を食べるしかなかったなんて。
……私も、一歩間違えればああなってしまっていたのかもしれません。

っと、まずは蝙蝠ですか。はい、食べたことはありますよ。
味はともかく、群れてくれるのは楽ですね。斬り捌く手間が省けますから。
飛んで火に入る、というやつです。近づくモノは[切断]し、飛ぶモノは[投擲]で叩き落として。片端から[捕食]してしまいましょう。
UCの御蔭で、少しの無茶は効くでしょうか。
飛び込むことになってもいい。傷を負ったっていい。辿り着かないと。
辿り着いて、誰かがあの子を救ってあげないと。

「道を開けてください。……さもなくばその翼、私が喰らい尽くします」




 お腹が、空いている。事実としてそうなのではなく、感覚的なものだ。ノウル・イル(絶え間なき無限、廻りて餓えよ・f28493)は常に飢餓状態であるが故に、悪魔の少女の行動に何か通じるものを見つけた。
「悲しい……ですね。人を食べるしかなかったなんて。……私も、一歩間違えればああなってしまっていたのかもしれません」
 人を食べる、というのは真っ当な人間社会にとってはありえない行為だが、此処はダークセイヴァー。貧困が限度に達したならば、そうなる事もあっただろう。ノウルはゾっとした。あの時食べていたのがオブリビオンじゃなかったら? もし人間だったら、私もオブリビオンと化していた? そんな疑問が渦巻く。
 ともあれ、まずは蝙蝠相手だ。勿論、食べたことはある。味はともかく、栄養価はそれなりにあった気がする。貴重な肉食系蛋白質を取る手段として食べていたっけ。なんて思いだしながら、群れているのは楽だなとマチェットナイフを構える。斬り捌く手間が省けると、向かい来るワイリー男爵をいなす!
 飛んで火に入る、というやつだ。近づくモノは切り上げからの横一文字で切断し、飛ぶモノは的確な投擲でヒット! ばたっと叩き落される。
 ――さぁ、片っ端から捕食してしまいましょう。
 ワイリー男爵を引っ掴み、その臓腑を喰らうノウル。むしゃっ、がりっと肉も骨もしゃぶり尽くす。ああ、本当に美味しい。それと同時にせりあがって来るような捕食衝動。身体の奥底から力が湧いて出てくるのが分かる。
 多少の無茶が効くようにようになったのを良い事に、ノウルはワイリー男爵の群れの中に飛び込んで再び狩りを始める。ばさばさばさっと蝙蝠の大群がノウルに群がり行く手を阻んだが、しかし、歩みは止めない。斬って堕として滅ぼして。先へ進まなくてはならない。
 ――傷ついたって良い、辿り着かないと。辿り着いて、誰かがあの子を救ってあげないと。
 悪魔の血を引くと言うだけで、人々から迫害された娘。その娘が最後の抵抗としてやったのが、人間を食べることだったのだろう。そこまで言うなら、せめて悪魔らしく振舞ってやろうという、少女の小さな、僅かな、微かな矜持。腹が空いていたのなら尚のこと、人間の味はさぞかし甘美だっただろう。
 蝙蝠の群れを振り払い、追ってくるワイリー男爵を次々と食べて、娘との戦闘に備える。話を聞いたところによれば、恐らく凄まじい力を持っているのだろう。力を、溜め込んでおかねばならない。ノウルは喰らえるだけ喰った。喰って、文字通り血肉とした。
 それでも恐れをしらぬ戦士のように次々と湧いて出てくるワイリー男爵に少し苛つきながら、ノウルはマチェットナイフを振りかざし静かに、しかし怒気を孕んだ口調で語る。
「道を開けてください。……さもなくばその翼、私が喰らい尽くします」
 話が通じる相手なら良かったのだが。襲い来る敵に向けて、再びマチェットナイフが閃く――!

成功 🔵​🔵​🔴​

蛇塚・ライム
まったく……聞けば聞くほど、私の境遇と重なるわね……

かつて自身もオブリビオンへと墜ち、姉さんに救われてから、この身体に転生するまで色々とあったけど
人間を食糧と認識してるなら、その娘はこの世界の異分子でしかないわ

空を飛ぶ相手は苦手なんだけど……
でも、まずはヒヒイロカネの勾玉から1億℃の熱光線を放って撃ち落とすわ
って、大群が鬱陶しいわね!
でも、仲間の負傷と🔴の数に応じて、私のUCの威力が比例して強化されるのよ
囲まれないように、私の長い髪の毛に覇気を纏わせ、振り回してなぎ払いつつ敵を殴るわ!

そして、一気に敵の群れに必殺の熱光線を放ってみせるわ!
最後に笑うのは、この私よ……!




「まったく……聞けば聞くほど、私の境遇と重なるわね……」
 かつて自身もオブリビオンへと堕ち、姉に救われてからこの身体に転生するまで、紆余曲折色々とあったけど、蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』/IGNITE POP DiVA・f30196)はこうして人の道へ戻ることが出来た。けれど、この娘は違う。人間を食糧と認識しているなら、それはもうこの世界の異分子でしかない。
 蝙蝠の大群がライムに襲い掛かる! 髪を乱し、噛り付いてきたりとうっとおしい。ライムはまずヒヒイロカネの勾玉から一億℃の熱光線を放射状に放って自身に纏わりついてきた敵を撃ち落とす。ワイリー男爵はそれすらも楽しむようにキシャシャシャシャと耳障りな声を上げた。
「空を飛ぶ相手は苦手なんだけど……ああもう、鬱陶しいわね!」
 こんなに沢山の蝙蝠、どこから湧いて出てくるのかと言えば、それを操るワイリー男爵そのものが原因だ。何体もいる彼らを一掃しなければ蝙蝠どもが絶えることはない。
 しかし、ライムには秘策があった。味方の負傷に応じて、ライム自身の拳と武器に力が宿る。蝙蝠に囲まれないように長い髪に覇気を纏わせ、ぐりんぐりんと振り回して蝙蝠を薙ぎ払っていく! それすら掻い潜る敵には渾身の拳をお見舞いして。
「どうせやられるだけなんだから、そろそろ撤退しても良いのよ?」
 なんて言ってみるが、ワイリー男爵に話など通じない! 手を叩き自身の身体を緋色に染めて、ライムに向けて突進してくる! しかしこれこそ好機! 相手から向かってくるというのなら、迎え撃つまでのこと! 熱い拳とワイリー男爵の身がぶつかり合う!
『キシャ……シャ……』
「あなたに足りないもの……それは絶対に勝つという意思よ!」
 ワイリー男爵は狡猾で、残忍で、人の心などまるで持ち合わせていない。だからこそ、勝ちへの欲求もない。勝って当たり前の世界に生きてきた、慢心が敗北を呼んだのだ。
 さて、そうこうしている間にも次のワイリー男爵が蝙蝠の群れと共に現れる。はぁ、と思わずため息を吐くライム。いい加減にしてほしい。
「最後に笑うのは、この私よ……!」
 一気に敵の群れに向けて、必殺の熱光線を放つ!! あまりに熱く、少しでも逸れれば砦が崩れてしまうだろう。しかし精密な動きで操られた熱光線は敵だけを貫いていく!! ジュワジュワと肉が焦げる匂いが周囲に立ち込めた。
 さしずめワイリー男爵の丸焼きといったところか。正直、美味しくなさそうである。ライムは今度はふぅ、と安堵のため息を吐き更に数を増して群がってくる男爵たちを相手にする。
 ――大丈夫、私には仲間から貰った力がある。
 その心強さを信頼し武装を解き放ち、再び集うワイリー男爵達へ戦いを挑む――!

成功 🔵​🔵​🔴​

リリィ・アークレイズ
【POW】(アドリブ、連携可)
民間人は居ねェ。目標は確認済み…良い作戦だな
家爆破とか燃やさなきゃ良いンだモンな…わーッてるって。気をつけるって
燃やすときは上向けるから大丈夫だって、な?
…ショットガンとバーナーの出番だな。射線には出て来ンなよ。

さァて、前菜共!メイン前に楽しませてくれるんだろうな?
テメェらのボスに用があンだよ。害獣はすっこんでな
良いか? 飛び回るしか能の無ェお前等に教えてやる、
戦いってのは手数と速さだ。一個撃破なんて面倒臭ェ!
纏めて相手してやるからかかって来いや!【覚悟】

的は的らしく飛び回れや!その方が楽しいからよッ!
【制圧射撃】【焼却】【乱れ撃ち】


白峰・歌音
信じれば裏切られる世界。何を憎むかといえば、きっとこの世界に優しさが通る余地が無い世界の在り方なんだろうなって思う。
だから、この先に待つ奴へ、色々と言ってやりたい言葉がある。…ここを通させてもらうぜ、コウモリ共!
「無くした記憶が叫んでる!救いのない絶望の連鎖に終わりを告げろと!」

群がってくるやつらを蹴散らしてから、一気に敵の居場所へ駆け抜けるぜ!
UCでそよ風の領域を作りだし、それによる先読みと【第六感】を頼りにした【見切り】で躱しながら【カウンター】の拳と風の刃の【属性攻撃】で着実に数を減らしていくぜ!

アドリブ・共闘OK




 信じたら裏切られる世界。何を憎むかと言えば、きっとこの世界に優しさが通る余地がない『世界の在り方そのもの』なんだろうと白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)は考える。もし隣人へ、或いは少女へ、少しでも優しさを伝えられたなら、こんな悲劇は起こらなかった。
 だから、この先に待つ少女へ色々と言ってやりたい言葉がある。
 ――その為に……此処は通させてもらうぜ、コウモリ共!
 歌音はワイリー男爵の元へ突っ込んでいく! 対するワイリー男爵、その身を緋色に染め臨戦態勢。両者、共に戦う意思に変わりなく。……さて、民間人なし。目標は視認出来る位置にわらわらと。家を爆破したり燃やさなければ良い、簡単な案件である本作戦。リリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)は「ハッ」と嗤った。
 ――成程、良い作戦だ。簡単すぎて腹ごなしにもなりゃしねぇ。
「おい、アンタ! そのど派手な獲物で家ごと丸焼きにするなよ」
 歌音の忠言にからからと喉を鳴らして愉快そうに返事をするリリィ。
「わーッてるって。気を付けるって。燃やすときは上向けるから大丈夫だって、な?」
 ショットガンとバーナーの出番だ。昔から雑魚相手には炎上滅却と相場が決まっている。ガチャっと準備をするリリィを余所に、歌音は次々に群がってくるワイリー男爵自身とその配下である蝙蝠の群れを拳ひとつで蹴散らしていた。
「無くした記憶が叫んでる! 救いのない絶望の連鎖に終わりを告げろと!」
 陽気に心弾ませる喧しい春乙女の囁きが、そよ風の領域を作り出し、敵の一歩先を行く。相手の動きは見切った、自爆特攻のような突進も、転がりながら軽々しく躱していく。
 それを見たリリィはヒュゥと口笛ひとつ投げかけ、準備万端とばかりに敵に向け銃口を向けた。
「はーん、アンタやるじゃねーの。じゃあこっちも勝手にさせてもらうぜ!」
 赤唐辛子、黒玉葱、レモネードに紫煙を吐くバニラ。緑胡麻に紅炭酸、ついでに銀酒も添えて、リリィの蹂躙が始まる!
「さァて、前菜共! メイン前に楽しませてくれるんだろうな? こっちはテメェらのボスに用があンだよ。害獣はすっこんでな」
 キシャシャシャシャと声を上げながら蝙蝠の大群が真っ黒な闇の膜のようになって襲い掛かる! しかし、リリィにとってはなんて事はない。相手が弾幕で来るなら、こちらも同じだけ返してやれば済むこと!
「良いか? 飛び回るしか能の無ェお前等に教えてやる。戦いってのは手数と速さだ、一個撃破なんて面倒臭ェ!」
 ――纏めて相手してやるからかかって来いや!
 その言葉を皮切りに、四方八方から蝙蝠がわーっとリリィに群がった。まずは火炎放射器で近付く蝙蝠を一掃。続いて拡散弾をばら撒いて、仲良く並んでる敵には貫通弾をお見舞いする!
 ――そらそら、的は的らしく飛び回れ。……その方が『楽しい』からよッ!
「オレも負けてられねぇな。そらっ!」
 加速してその身諸共道連れにと突撃を仕掛けてくるワイリー男爵に対し、腕をクロスさせ一旦受け止める。そして間髪入れず解いた拳を風の刃に属性攻撃を乗せて渾身の一撃! ぐしゃっと汚い音を立てて堕ちるワイリー男爵。しかしまだまだ数は多い。
 着実に数を減らしながら戦う歌音に対し、リリィは凶悪なまでに全ての敵を一気に相手取っていた。無限沸きとも思えるこの状況。弾が尽きるのが先か、敵の在庫が切れるのが先か。乱れ撃ちは楽しいが、生憎機構は無限じゃない。
「なぁアンタ。オレがあの親玉をなんとかする。アンタは邪魔な蝙蝠どもを何とかしてくれねぇか?」
「あん? いいぜ。だがオレの射線上には出るなよ。万が一にも喰らいたくねェだろ?」
「おーこわ。じゃ、行くぜ!」
 ワイリー男爵を守る様に黒い壁となっていた蝙蝠どもをリリィは容赦なく焼き尽くし、逃れた奴等を一体ずつ撃ち落して、そうしてやっと無防備になったぬいぐるみの様な姿に、力いっぱいの拳撃でぶっとばした。歌音はやっと一息。
「ふぅ、ここら辺はいい感じだろ。次いくぜ」
 まだまだ敵は沸いている。害獣駆除も楽じゃない、なんて思ったのは果たしてどちらだったか――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ブラミエ・トゥカーズ
余を恐れる人もおらぬ。
敵も蝙蝠のような何かであるな。
つまり、面倒且つ、余の腹も膨れぬということである。
故にこういった手合いは従者に任すのが常道であろうな。

やつした身から現れるは、ブロッケンの妖怪。
霧の妖であり、感情の無い自然現象の怪異。
霧が有る所全てに虹色の光で攻撃。
有効な武器として範囲を広げる霧も召喚される。

太陽光と霧の悪戯で生まれた妖怪のため、
吸血鬼、及び眷属に有効。
なぜなら”それがいる所は太陽の光がある所”であるため。
カクリヨの伝承妖怪であるブラミエは普通に焦げる。

なお、伝承混合により阿弥陀如来の属性も持つ為、人、人であった者には神々しく見える時もある。
ブラミエには眩しすぎて目が焼ける。




「余を恐れる人もおらぬ。敵も蝙蝠のような何かであるな」
 つまり、面倒且つ、ブラミエ・トゥカーズ(”妖怪”ヴァンパイア・f27968)の腹も膨れぬということである。故にこういった手合いは、従者に任すのが常道であろう。
「この地に示せ、貴公の伝承を。震え恐れよ。怯え伝えよ。カクリ世よりいずる彼のモノこそは」
 やつした躰から現れるのはブロッケンの怪物。霧の妖であり、感情などない自然現象の怪異。ワイリー男爵は霧には霧で対抗しようと、悪夢を見せる黒い霧を両掌から生み出した。混じり合う透明と黒。じわじわと溶け合うように、制したのは透明な方。
 霧があるところ全てに虹色の光で攻撃。有効な武器として範囲を増幅させる霧も援護に召喚。真っ黒だったものが虹色に輝き、宝石の原石のようにすら見える。
 それ以上の援護をしようにも、無理は禁物。ブロッケンの怪物は太陽光と霧の悪戯で生まれた怪物である。依って、吸血鬼やその眷属に有効。なぜなら、”それがいる所は太陽の光がある所”である為。此処が普通の場所なら、カクリヨファンタズムの伝承妖怪であるブラミエは普通に焦げてしまう。
 とはいえ此処はダークセイヴァー。僅かな光こそあれど太陽のない世界。案外戦いやすい処なのでは? とブラミエが考えている内に、ワイリー男爵は束になって黒い霧を発生させて虹を侵していく。
 ――嗚呼、全て黒に染まる。在るのは闇だけ、意味も理由も価値も無い世界。
 ――嗚呼、赤が欲しい。ワインでも、トマトジュースでも、ケチャップでも、鮮血でも。
 ――余の虹を否定するか、眷属の分際で、舐めた真似を。
 ブロッケンの怪物を直接見ないように、侵食する黒を両腕で振り払う。そして「もっと光を! 虹を為すだけの光を!」と、ブラミエが思った時、ぽつりと現れたのは幻光虫。ふよふよと漂って、ブロッケンの怪物をその今にも消えそうな光で照らした。
 その光に呼応するように、ブロッケンの怪物は黒い霧を圧し返し、ワイリー男爵を数匹一気に捉えギュっと霧を瞬間凍結させることにより圧殺した。ボトボトと堕ちたワイリー男爵は、もはやあの耳障りな声を上げる事すらできない。
 ブラミエは内心ホッとする。伝承混合により阿弥陀如来の属性も持つブロッケンの怪物は、人や人であった者には神々しく見える時もあるのだと言う。正直、ブラミエには眩しすぎる。下手に扱えば目が焼けるだろう。策はハマったが危険と隣り合わせの戦闘だったと、自己分析などして。
「では往こうか、斯く娘の元へ。余と張り合うだけの実力者であれば良いがな」
 若干楽しみさえ感じ乍らブラミエは大聖堂へと向かった。其処に居るのが吸血鬼でないことが少し残念だけれど、それでは情も沸いてしまうかもしれない。結局、これが一番いい形――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…犠牲が出るのは避けられなかった、か
希望を求めてこの地に集ったはずなのに…やるせないものね

…だけど、そこまでよ。これ以上の狼藉は赦さない
疾く元いた場所に還してやるわ、悪魔の眷族共

左眼の聖痕に取り込んだ霊魂の残像を暗視してUCを発動
蝙蝠の群を全身を覆う呪詛のオーラで防御して、
オーラに触れた物の生命力を吸収して迎撃する

…来たれ。我と共に在りし未だ鎮まらぬ魂達よ
救世の誓いの下、我が身に悪を打ち払う力を宿せ…!

今までの戦闘知識から敵の動きを予測して見切り、
限界突破した魔力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い、
無数の闇属性攻撃の斬撃を放ち敵陣を乱れ撃つ

…お前達に構っている暇は無い。消えなさい、永遠に…




 少女が砦に来て30日目、今日は記念すべき、何もない状態から1ケ月生き延びた日である。それはつまり、9人の人間が犠牲になり、これから10人目が差せ出される日ということでもあるのだ。オブリビオンに見つかったが最後、なんの被害も無いなんてことはありえない。
 それでも此の人類砦は運が良かった。少女は暴れ回ることも無ければ、喰らった人間の骨はその家族に帰した。それは少女がかつて『人間のフリ』をしていた習慣がそうさせたのかもしれない。でも。
「……犠牲が出るのは避けられなかった、か。みな希望を求めてこの地に集ったはずなのに……やるせないものね」
 だけど、そこまでだとリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は決意する。これ以上の狼藉は赦さない。卑劣なものどもには制裁を!
「疾く、元いた場所……骸の海へと還してやるわ、悪魔の眷属共」
 左目の聖痕に取り込んだ霊魂の残像を暗視し、死者の霊魂と精神同調することによって戦闘力を底上げする。蝙蝠の群れを、全身を覆う呪詛のオーラで防御して、オーラに触れたものの生命力を吸収することによって迎撃する!
 これで相手は迂闊に手を出せなくなった。例え蝙蝠一匹でもオーラに呑み込まれればリーヴァルディの力となってしまう。既に詰みの状態かと思えば、ワイリー男爵はパパン! と手を叩き、その身を緋色に燃やし特攻を仕掛ける。上等!
「……来たれ。我と共に在りし未だ鎮まらぬ魂達よ。救世の誓いの下、我が身に悪を打ち払う力を宿せ……!」
 今まで培った戦闘知識から、ワイリー男爵の動きを予測して見切る! すぐに反転して突撃してくるワイリー男爵を、限界突破した魔力を溜め込んだ大鎌で、怪力任せに薙ぎ払った! スパっと翼が切れて地に転がったワイリー男爵を、渾身の力で踏み潰せば一瞬「キシャ……」と音を立て黙した。
 その後もどこからこんなに出てくるのか、いい加減にしてほしいとばかりにワイリー男爵とその眷属である蝙蝠が群れを成してやってくるのだ。しかし、恐れる事は何もない。蝙蝠はオーラで生命力をリーヴァルディのものとすれば良いし、ワイリー男爵は蝙蝠に比べて圧倒的に数が少ないくせに、彼らをうしなうと蝙蝠は散り散りになっていく。
 無数の闇属性を乗せた斬撃を放ち、敵陣を乱し、片っ端から撃ち落とす。
「……お前達に構っている暇は無い。消えなさい、永遠に……」
 さぁ、次の敵はどこ? いい加減首魁のところに行かせて欲しいのだけど、なぁんて零せば、返ってくるのは「キシャシャシャシャ!」という声とバサバサと羽搏く音だけ。雑魚は雑魚らしく、群れてそのまま骸の海へと帰ると良い。
 ――私に蹂躙されないうちに、ね――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディアボリカ・ティタノマキナ
【アドリブ連携歓迎】

…我には理解が出来ぬ…選ばれし存在は孤高であり…至高。並び立つ者などは存在しない永遠の存在…特別な者。

…故に知らねばならない、矮小な心を持つ、強き存在を…!立ち会わねばならない…その最期を…!生き様を…!!

…おっと小さすぎて気付かなんだ…蝙蝠か、邪魔だ排除する

まずは【殺気】で動揺させるか…群れるなら丁度いい。
【フルメタル】を膨張…更に強固に【力の証明】で炎を纏う…【重量攻撃】中心に、量には質で対抗する。UCで地形も壊せる…利用できそうな物は利用する。見ての通り全身が武器だ…蝙蝠如きに止められるか見物だな。




 少女の行動はディアボリカ・ティタノマキナ(Malignoid:Representa・f30873)にとって理解不能だった。考えれば考えるほど不可解なレベルと言ってもいい。選ばれし存在は孤高であり……至高。並び立つ者などは存在しない永遠の存在……特別な者。
 それは己が『そう』であるから。強者は何人居ても良いが、王者は一人でなければならないのだ。故に、ディアボリカは知らねばならない。矮小な心を持つ、強き存在を。立ち会わねばならない、その最期を! 生き様を……!!
「……おっと。小さすぎて気付かなんだ…蝙蝠か、邪魔だ排除する」
 蝙蝠の群れがディアボリカの巨躯に蝗の様に大量に飛来する。だが、その大きさの差は歴然。蟻が象に勝てないのと同じで、羽虫が如き蝙蝠風情が巨人であるディアボリカの行く手を邪魔することなど出来やしない。
 まずは殺気を放ち蝙蝠どもに威圧を与える。超音波で動く蝙蝠は殺気によって波長を乱され、群れだって行動していたものがバランスを失ったようにフラフラと力なく揺らめく。
 ――丁度いい、そのまま狂い死ぬが良い。我はお前たちに構っている程暇ではない。
 超硬質な、筋繊維に擬態した寄生体であるフルメタルを膨張させ、更に強固に身体に迸るエネルギーラインから炎を纏う。相手が物量で押して来るのなら、こちらは質で相手をしてみせよう。一撃一撃が重く、灼熱の拳に、蝙蝠は近づくことさえ困難な状況。
 ドンッ!! と蝙蝠を地面に叩きつけ、床は割れて瓦礫が生まれる。利用できるものは何でも利用する質のディアボリカだ。身体も、周囲の瓦礫も、全てを武器にして戦う。常に戦場に身を置く事で「闘う事」を学習するように、ディアボリカは成っているから。
 そうこうしている内に数も減って来て、右往左往する配下の蝙蝠を見かねたワイリー男爵自らのお出まし! キシャシャシャシャとあがる声が耳障りで、とても聞いていられない。その身を緋色に染めて、ワイリー男爵は灼熱の躰へと突進してくる!
「……蝙蝠如きに止められるか見物だな」
 その心意気には拍手を送ろう、だが実力差を見誤りましてや意味もなく命を散らすなど愚の骨頂。ディアボリカは煮え滾る拳を真正面からぶつけた! ぐぐぐっと一瞬耐えるが、長くは持たない。圧を受けてワイリー男爵は盛大に空へと吹き飛んだ!
 司令塔を失った蝙蝠は飛散したかと思えば、次のワイリー男爵がまたパンパンと手を叩く。それを合図に再び群れるちっぽけな存在。所詮誰かに命令されなければ動くことすら出来ないか。ディアボリカはいっそ哀れに思った。
「蝙蝠も、オブリビオンも、何も変わらぬ。全て、全て、往く手を阻むのなら排除するまで」
 フルメタルがキーンと音を立てたような気がした。まだ敵はわんさかといる。この先に進む為に、ディアボリカは全てを薙ぎ払う――!

成功 🔵​🔵​🔴​

水桐・或
人も悪魔も命をつなぐのに"奪う"のは自然なこと
それは否定しないけどね
もう少し慎ましくした方が良い

僕の腕は二本しかない
他の猟兵が荒らしてくれたところに紛れて、端から殴っていこう

封刑手套【墨】を外して『リミッター解除』
略奪の腕の右で敵を引き寄せて、左で捕獲、さらに右のUCで命を『略奪』

ああ、ああ、愉しくなるなよ、僕……
こんなのはただの命のやり取りだ、興奮も熱狂も必要ない

黒い霧には気をつけよう
人生なんて思いだしたくもないような嫌なことばかりだから、怖くて怖くて仕方がない
ヤバいと思ったら恥も外聞もなく距離を取るよ

戦闘が終わったらホワイトセージをポリポリ食べよう
『呪詛耐性』で気を落ち着けるんだ




 人も悪魔も、命をつなぐのに"奪う"のは自然なこと。それは否定しないけど、と水桐・或(剥奪と獲得・f31627)は考える。しかし、ちょっとばかし派手にやりすぎだ。もう少し慎ましくした方が良い。
 或の腕は二本しかない。武器となる物も持ってないし、混戦には向いていない。他の猟兵が荒らしたところに紛れて、片っ端から殴っていく事にする。何、殴るのは得意だ。いつもこうして"奪って"きたのだから、普段と何も変わらない。
 封刑手套【墨】を外し、己に科したリミッターを解除する。何事もやり過ぎは良くないが、こう数が多いのであればそうも言っていられない。蝙蝠の群れの中を掻い潜り、ワイリー男爵の元へ。略奪の右腕でワイリー男爵を引き寄せ、左腕で捕獲。動きを無理くり封じたら、再び右腕で命を『略奪』する。
 ――ああ、ああ、愉しくなるなよ、僕……こんなのはただの命のやり取りだ、興奮も熱狂も必要ない。
 快感を覚えそうになるのを心を強く保ち、堪える。今の或は制御するものが何もない状態。一度でもその快感に身を委ねてしまえば、敵も味方も区別なく奪う悪魔となるだろう。そうはなりたくない、或の罪悪感がそう叫ぶ。
 次のワイリー男爵は両手をぐにぐにと揉み込んで、次に手を開いた時には黒い霧が周囲に立ち込めていた。呑まれた者に悪夢を見せるというそれ。或はバッと、恥も外聞もなく素早く距離を取る。
 人生なんて思い出したくないような嫌なことばかりだから、怖くて怖くて仕方がないのだ。それは或の在り方そのものだったり、全く関係のないことに巻き込まれたり、果ては略奪の逆襲だったり。思い浮かぶことなんて、わざわざその黒霧に触れなくてもいくらでもある。
 ――ああ、嫌だいやだ。僕は、これからもそうやって生きていくのか?
 他者から奪わずとも完成した確固たる"我"を築くことが目標の或にとって、それはある意味辛酸を嘗めるような気分だった。しかし、略奪の悪魔である以上、それは或の生き様そのものである。否定したところで、変わる事など出来やしない。
 黒霧が霧散し、無防備になったワイリー男爵に急加速で接近し、捕縛から生命を奪い取る一連の動作。慣れたものだ、なんて、誇らしくも何ともないけれど。蝙蝠の群れがうざったい、次の狙いを定め、略奪を繰り返す。何度も何度も、其処に敵が居なくなるまで。
 そうしてどのくらい時間が経ったか。半刻も掛かってないとは思うが、もっとずっと充足した時と過ごした様な気もする。
 此処はもう安全だと認識した或は、懐から徐にホワイトセージを取り出し、ポリポリと食べる。聖なるハーブは本来の使い方ではないが、心と昂った気を落ち着ける為にそのまま噛り付く。ゆっくりと、張った気が抜けていくのが分かる。
 ――次は、例の娘か。悪魔……僕と何が違う?
 或は自らへの問いかけの答えを見つけに、大聖堂へ向かい歩き出す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
天罰なんてそんなものは、ない
嘆きの声が障りとなって自分も周りも蝕む…
人を呪うのは人そのものだと、私は思っているよ

悲しいと嘆く声があるなら、手を伸ばさずにはいられない
呪いを祝いに
苦しみには安らぎを
それが救い主の務めだもの

ここを通して貰うよ
敵の数が少ないところに灯火を放ち包囲網を無理に突破しようとする

抵抗を続ける男爵たちに焦りを滲ませ
私はあなた方の主を救いにきたんだ
なのに…どうしてきみたちは…
…退け、と言っているだろう!
普段の穏やかな様子から打って変わって感情のままに大鎌を振るい


…あ…、

瀕死の男爵たちには破魔+毒にてせめて安らかな最期を

…もう一度言う
ここを通して貰うよ




 天罰なんてそんなものは、ない。嘆きの声が障りとなって自分も周りも蝕む……人を呪うのは人そのものだと、セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は静かに一歩踏み込んだ。対峙するのは大量の蝙蝠の群れに囲まれたワイリー男爵。
 悲しいと嘆く声があるなら、手を伸ばさずにはいられない。呪いを祝いに、苦しみには安らぎを。……それが救い主の務めである故に。此れは件の少女の為でもあり、セツナ自身の為でもあり、何より世界の為だ。傍観者ではいられない。
「ここを通して貰うよ」
 蝙蝠の数が比較的少ない箇所へ灯火を放ち、無理矢理にでも包囲網の突破を試みる。しかし、そうは問屋が卸さない。灯火を恐れることなく、バサバサと翼と打ち鳴らしながらセツナに群がる蝙蝠たち。ワイリー男爵には、まだ遠い。
 その隙を狙って、ワイリー男爵は大きく広げた両掌から、黒い霧を発生させる。悪夢を見せるというそれは、セツナを苦しめる。
 ――領主様、許して。赦しを下さい。どんな罰も受け入れます。
 ――ねぇゼロ。君がいなくなるなんて、こんなの夢に決まってる。そんなこと……現実であるはずがない! そうだと言ってよ、返事をしてよ、ゼロ……!
 霧は尚もセツナを追い詰める。しかし心に灯る火のお陰で、暗闇の中でも歩んでいられた。ワイリー男爵は何度も手を叩き、黒い霧を発生させるが……絶望ではセツナの脚を止める事などできない。これでは効果が薄いと見たか、ワイリー男爵は蝙蝠を集め巨大なひとつの蝙蝠の様な形にし、セツナに向け特攻を仕掛ける!
 しかし、蝙蝠がひとつになったことでワイリー男爵自身は無防備となる! セツナは思い切り踏ん張って切り込んだ! がしっと引っ付かまえたワイリー男爵はその身を緋色に染めて必至の抵抗を続ける。セツナにも焦りが見え始めた。相手はまだまだいる。この一体に時間を掛けてはいられない。
 セツナは内心無駄であると諦めつつも、叫んだ!
「私はあなた方の主を救いにきたんだ。なのに……どうしてきみたちは……。……退け、と言っているだろう!」
 普段の穏やかな様子から打って変わったかのように感情を露わにするセツナ。ワイリー男爵はその叫びと共に真っ二つに割かれ、ぐしゃっと地に堕ちた。
「……あ……」
 統率を失った蝙蝠たちは再び個が荒れ狂う嵐となって襲い掛かる。それを往なし、次のワイリー男爵の元へ。他の猟兵の戦いもあり、数はだいぶ減ってきた様子。ピクピクと動いている死に切れていないワイリー男爵へ破魔と毒を使い、安らかな最期へと導いた。
 これから会うのは『ヒト』か『悪魔』か。セツナは見極めなければならない――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リンタロウ・ホネハミ
よくある救われねぇ話ではあるっすけど……やっぱどうにも慣れないっすね、この手の仕事は
つっても、オレっちがどんだけ渋いツラしても、人が死んでるのには変わりねぇっす
なら、やるしかないんすよね

蝙蝠の骨を食って【〇〇六番之卑怯者】を発動するっす
いくら数が多かろうがスピードが速かろうが、オレっちからしたら動きが素直すぎて読みやすいんすよね
手を叩いた端から呪骨剣で斬って捨てる……
いいや、今のオレっちなら手を叩こうとする動作すら聞こえちまうんすよね
そらっ、オレっちの勲しの一つになってもらうっすよ!




 悪魔が来たりて人を喰らう。その悪魔は人なんか喰らいたくなかったけれど、しかし、もうそうするより他に何も思い浮かばなかった。人々は自分たちとは違うというだけで、悪魔を迫害した。であれば、悪魔もそう振舞う他なかったのだ。
「よくある救われねぇ話ではあるっすけど……やっぱどうにも慣れないっすね、この手の仕事は」
 地面の土をざりざりと慣らし、銜えた骨を上下させ、リンタロウ・ホネハミ(骨喰の傭兵・f00854)はこのやり場のない気持ちを整理する。
「つっても、オレっちがどんだけ渋いツラしても、人が死んでるのには変わりねぇっす。なら、やるしかないんすよね」
 目には目を、蝙蝠には蝙蝠の、なんて諺はないが。リンタロウは懐から携帯用の蝙蝠の骨を取り出しガリっとひと齧り。【〇〇六番之卑怯者】、発動。蝙蝠が本来持つ超音波ソナーの能力を得て、一度に複数の敵を相手取る事が可能となる!
「いくら数が多かろうがスピードが速かろうが、オレっちからしたら動きが素直すぎて読みやすいんすよね」
 所詮相手は配下の配下。下請けの下請け。期待している程仕事は丁寧じゃない。蝙蝠どもがリンタロウにわーっと群がるのを、最小限の動きで躱していく。
 痺れを切らしたワイリー男爵は、その身を緋色に染めて突進してくる。なんともまぁ、素直な軌道だ。わざわざ蝙蝠の骨に頼る必要すらない。パンパンパンッ! と手叩いた端から、呪骨剣で斬って捨てる。緋色のぬいぐるみ姿は生意気にも真っ赤な血を流してその場に堕ちた。
 すかさず次のワイリー男爵が攻め入る、大きく手を広げて……。
「いやー、今のオレっちなら手を叩こうとする動作すら聞こえちまうんすよね」
 両手が再びくっつく前に、ザシュっと音を立てて切り伏せる。蝙蝠の大群が呼ばれると、結構面倒なのだ。何せ敵が多いと、こっちの獲物は無骨な呪いの骨剣がメインウェポン。小さな敵を相手にするには少し骨が折れる。骨だけに。
「予備の骨でも補充しときやしょーかね」
 斬り捨てられた蝙蝠を両手で引き裂き、剥き出しになった骨を抜く。適当に振り回して血を拭ったら、さっと衣嚢に仕舞いこんで。
 ワイリー男爵はカンカン、怒り心頭だった。こちらの動きは見切られ、配下は相手の武器になってしまい、挙句の果てには自分の強みである反応速度がまるで活かせないこの状況。切羽詰まったワイリー男爵は自爆特攻とばかりにありったけのスピードでリンタロウに向かい来る!
「いいねぇ、そういう分かりやすいの。そらっ、オレっちの勲しの一つになってもらうっすよ!」
 緋色の身体が呪骨剣でまっぷたつになる。今や肉片となったワイリー男爵の血を払い、剣を仕舞う。
 ――まぁ待ってろ、今から何とか――その何とかは今考えてる――するっすから。なんて思いながら、リンタロウは歩みを進めた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
先祖返り、か
可哀そうに
ただ普通に生きたかった
それだけだったんだろうな

けど
人を餌とするなんて
心まで人じゃなくなった
悪魔となることを選んだってことだ

同情はするが容赦はしない
海へ送ってやる

でまずは配下からだな

戦闘
UC発動
自身と得物を獄炎で覆い
敵群へ突っ込む

霧を
炎が蒸発させる&炎が生む気流が吹き飛ばす

万が一悪夢を見ても
その悪夢ごと燃やし尽くして回復だ

俺達は未来へ進む
寝ぼけてる暇はないぜ

飛び回りながらギターを演奏
奏でる音色に破魔&浄化&炎の属性を付与

音が広がり
拡がる音の波紋が炎の渦となり
男爵共を焼却し灰へと還す

派手な火葬になったな

事後
鎮魂曲を奏でる
海で安らかに

それはまた
少女も海へ還すとの誓いの旋律




「おおっと嵐のお通りだ。ちょいと荒っぽいぜ? ……焔摩天、転生!」
 全身と武器を獄炎で覆い、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は蝙蝠の群れの中へと突っ込んだ! 炎が蒸発させた霧と、その炎が生み出す気流が、蝙蝠たちを次々に吹き飛ばす。一気にワイリー男爵の元へ詰め寄ったウタへ、ワイリー男爵は両掌から悪夢を見せる黒い霧を放つ!
 嫌な事、恨めしい事、後ろめたい事、疚しい事。色んな負の感情がウタの中で暴れ回る。しかし、ウタはそんなものには負けない。悪夢ごとワイリー男爵を獄炎で包み込み、燃やし尽くして回復する。
「ふぅ……ヤなもん見せられたぜ」
 ウタは、猟兵は、生きとし生けるものすべては、未来へ進む。寝ぼけている暇は無い。パンっと両手で頬を叩き、気合を入れて戦場を飛び回る。燃え盛るギターが奏でる音色に、破魔と浄化と炎の属性を付与し、ギュインギュインと荒ぶる音が響き渡る。
 音の広がりは波紋となり、炎の渦を作り出した。逃げようと思ってももう遅い、周辺のワイリー男爵はみな獄炎の渦に呑み込まれた。炎と破魔に焼かれながらも甲高い声を上げて笑うワイリー男爵の最期。残ったのは骨も残らぬ灰のみ。それすら風にのってどこかへ消えた。
 後にはなにも残らない。蝙蝠の群れも、ワイリー男爵も。それは相手がこちらへやったのと同じ熱量を返しただけのこと。暑苦しいのは好みじゃないって? 残念、屹度ウタはこれからもこの路線で詩を紡ぎ続けるのだろう。
「派手な火葬になったな」
 手下を始末して、ウタは件の少女の事を想う。人として生きることを拒否され、人々に『悪魔』であることを背負わされた娘。
 ――先祖返り、か。可哀想に。ただ普通に生きたかった、それだけだったんだろうな。
 ――けど、人を餌とするなんて、心まで人じゃなくなった。悪魔になることを選んだってことだ。
 ――だから、同情はするが容赦はしない。せめて静かなあの海へと送ってやる。それが、俺に出来る唯一の優しさだ。
 例え虐げられても、踏み躙られても、越えてはいけない一線がある。少女はそれを越えてしまった。だったら、もう後には戻れない。お互いに。
 ウタはギターを……今度は全てを灰燼に帰す炎ではなく、暖かく柔らかな炎を纏ったそれで、鎮魂歌を奏でる。例え手下であっても、骸の海で安らかに。願わくばもう二度と会う事のないように、祈りを捧げて。
 それはまた少女も骸の海へ還すとの誓いの旋律。
 ――行こう、あんたの元へ。手加減はなしだ、最初からアップテンポでいかせてもらう。
 背中を押される様に、ウタは大聖堂へと走り出した――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…生まれとは選べぬもの。その境遇には確かに、彼女に責など無いのでしょう。
事の引き金となったのもヒトの言。
私も出会いが変われば同様に、ただ衝動のまま貪る獣として在ったのでしょうね。

この蝙蝠達も、あるいは彼女の『友』であったのでしょう。
されど過ぎた過去は不変。事ここに至り『今』に仇為すとあらば、
彼女の敵として立つ他は在りません。

――ここを、推し通らせて頂きます。


UCを発動
野生の勘、見切りにて相手の速度に対応しつつ、残像、怪力、2回攻撃での高速戦闘にて蝙蝠を撃破
撃破速度が足りなければアイテム『氷柱芯』を使用しワイヤーを敵に巻き付けて
怪力、範囲攻撃にて振り回し、敵そのものを武器に周囲の敵性を一掃する




 人も、動物も、樹々も、花も。生まれとは選べぬもの。その境遇は確かに、少女に責など無いのだろう。事の引き金となったのもヒトの言の葉。月白・雪音(月輪氷華・f29413)も出会いが変われば同様に、ただ衝動のまま貪る獣として在ったのかもしれない。
 バサバサバサっと蝙蝠が群れを成し雪音へ容赦なく牙をむく。研ぎ澄まされた野生の勘頼りに軽いステップで蝙蝠の動きを読み避ける。
 ――この蝙蝠達も、或いは彼女の『友』であったのでしょう。
 ――されど過ぎた過去は不変。事ここに至り『今』に仇為すとあらば、彼女の敵として立つ他はありません。
「――ここを、推し通らせて頂きます」
 御冗談を! とでも言わんばかりに、ワイリー男爵はパンパン! と手を叩いて大量の蝙蝠を四方八方から雪音へ向かわせる。しかし、今の雪音にはどんな敵の動きも見てとれた。
 遅い、一歩下がって空間を生み出したら、奥の方でキシャシャシャシャと愉しげに声を上げているワイリー男爵に向け氷柱芯を投げつける! ワイヤーが素早くワイリー男爵を絡めとり、何が起こったのか分からずといった様子で首を傾げているワイリー男爵。
 それを怪力任せに思い切りぶんぶんと振り回し、ワイヤーに触れた蝙蝠からスパっと切断されていく。絡め取られたワイリー男爵も抜け出そうと藻掻かばもがくほどワイヤーは深く食い込み身動きが取れない。敵そのものを武器とし、配下の配下を一掃すれば、また出てくる次のワイリー男爵と蝙蝠たち。
 まだ使えそうか、ワイヤーの先を見る。其処には目を回した最初のワイリー男爵が居た。こういう時敵があまりに脆いと使い勝手が悪いのだが、そうでもないようで安心した。重しには丁度いい。
 ――これでまだまだ戦えますね。
 射程の長いモーニングスターの様になった氷柱芯を握りしめ、敵陣に突っ込んでいく雪音。恐れる事は何もない。相手より素早さでは上を取っている。ワイヤーの切れ味も今宵は磨きがかかっているようだ。戦場を走り回り蝙蝠とワイリー男爵を纏めて囲み、つん、をワイヤーを弾けばブシャッと切断される敵。
 此処ら一帯の雑魚は片付いた様で、もう次が出てくることはなかった。雪音と、他の猟兵たちの戦いの賜物だろう。雪音はシュルシュルとワイヤーアンカーを引き戻し、ふにゃふにゃになってぐったりしている最初のワイリー男爵を、高下駄でぐしゃっと踏み潰した。
 残る敵は少女だけ。さて、一体どのような姿をしているのでしょう。話によれば伝承通りの角と翼、そして尻尾。でも、雪音が知りたいのはそんな事じゃない。悪魔の少女の貌が見たいのだ。少女はどんな貌をして、悪魔たらんとしているのか、とても興味深いから。
「あなたの『友』は私達が打ち滅ぼしました。敵討ちくらいはしますでしょうか? それとも、言葉などいらずただ戦うのみでございましょうか」
 雪音は氷柱芯についた血をピシっと振り払い、大聖堂へと駆けた――。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『愁魔』メルスィン・ヘレル』

POW   :    はあ面倒……害虫が視界に入ったら潰すしかないもの
単純で重い【『悪魔の脚』による上空からの踏みつけ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    しっしっ……寄らないでよ汚いなあ、消えて?
【自在に伸縮し鞭のように撓る『悪魔の尻尾』】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    殺した後に汚れを落とすのが一番面倒なんだよね……
【飛翔し、一瞬で敵に接近して『悪魔の爪』】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 砦を囲んでいたワイリー男爵の群れを撃破した猟兵達は、砦の中心部にある大聖堂へと駆けた。近づく程に幻光虫があなたのまわりをふよふよと漂うのに気付くだろうが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
 悲劇の少女か、もしくは人の心など最初から無かった悪鬼羅刹か、これから戦うのは、そういう相手。少女が全て悪いのではないと、猟兵も分かっている。同時に、確かに少女が悪の根源であることも。
 大聖堂の扉をバンっと開ける。そこには幻光虫の灯りを頼りに本を読んでいた少女が一人。
「――あなたたちね、さっきから騒がしいのは」
 古の大悪魔の血を引く娘――『愁魔』メルスィン・ヘレルは猟兵達と対峙してもさして驚いたり慌てる様子もなく、本を置きとんっと講壇から飛び降りた。
 どことなく剣呑な雰囲気を感じ取ったメルスィンは、幻光虫のカーテンを潜り猟兵の様子を窺う。どちらが先に攻め入るか、読み合っているのだ。最初の一撃が鍵になる――そう考えたメルスィンが天井の高い大聖堂の上に着く程高くジャンプし、猟兵を踏みつけようと試みる!
 地響きと共に着地点は大きく凹み、衝撃がバリバリバリと伝わって大聖堂を彩るステンドグラスを幾つか割った。再び両者距離を取り、一呼吸にすら緊張感が漂う。
「避けないでくれる……? 厄介ごとは早めに潰したいの」
 その言葉に猟兵の誰かが「恐れているのか、猟兵を」と口にした。ムっとしたようにメルスィンは気怠い視線をそちらに向ける。
「恐れる……? 私が? ふふ……面白いことを言うのね、あなた」
 両手と翼を大きく広げ、降り注ぐ幻光虫の光を背後にしたメルスィンはいっそ神々しいほどだった。そして愚かな人間《猟兵》どもに告げる。
「丁度いい。少し運動してお腹が減っていた方が料理は美味しくなるわ。それまで退屈せずに済みそうね」
 その言葉に光が一層激しく輝いた。もうやせ細った根菜や、半分粃の木の実、カサカサの果実を食べていた頃には戻れない。少女は『味』をしめてしまった。本当はそうなりたくなったのに、一度味わえば忘れることなどできやしない。少女は自嘲気味に嗤う。
 ――私は悪魔だから、人にはなれない。あんなに人らしくあろうとしたのに、本当の私は誰も受け入れてくれなかった。なら、もう良いじゃない。人々が望むように、私は悪魔たろう――。
水桐・或
うっわ、踏みつけでこの威力か
正面からやり合うのは避けたいし、『言いくるめ』て隙を作ろう

悪魔の性に苛まれる同士、僕と君とは何が違うかなんて考えたが、思っていたよりだいぶ違うね
君は今を随分と満喫しているようだ
それは幸せなことだけど、そうなったらもう戻れない
そうはなりたくないと思っていた頃の自分に一生後ろ指を指されながら生きていけ

少しでも心を乱してくれた状態での攻撃なら一撃くらい受けても死なないで済むと思いたい
攻撃に耐えながら右手で相手の顔面を掴む
そして左手で幻光虫に触れてUC発動、右腕に発光の性質を獲得
小虫のサイズなら美しくても人のサイズなら、それも極至近での発光ならば
光の『目潰し』で視力を奪う




 叩き込まれた少女の悪魔の脚から響く衝撃で、美しいステンドグラスに一気にびひが入り、中には割れるものまであった。単純な踏みつけでこの威力、当たれば相当痛いことは一目瞭然だ。或は想像して少しゾっとする。
「うっわ、踏みつけでこの威力か」
 これを見せつけられて正面からやりあうのは出来れば避けたいところ。言いくるめて隙を作ろうと考える。相手に寄り添う素振りを見せれば、多少なりともこちらに耳を傾けるだろう。なにせ彼女は、話が通じる相手を求めていたのだから。
「悪魔の性に苛まれる者同士、僕と君は何が違うかなんて考えたが、思っていたよりだいぶ違うね。君は今を随分と満喫しているようだ」
「あなたにはそう見えているのね、この私が『今に満足している』と」
「ああ。……それは幸せなことだけど、そうなったらもう戻れない。そうはなりたくないと思っていた事の自分に、一生後ろ指を指されながら生きていけ」
「どうしてそこまで言われなきゃいけないの。満ち足りた人生を追い求めるのはそんなにいけないこと?」
 今度は逆に或が責め立てられる番だった。メルスィンの言い分全てが間違っているとは言えない。でも確かに、メルスィンのやっている事は『いけないこと』なのだ。他者から略奪すること、それが良い訳がない。或が一番、それをよく分かっている。
 心を揺らめかせたメルスィンは切れ味の良い尻尾を鞭のようにしならせ、バチンバチンと大聖堂の椅子を破壊していく。でも大丈夫、相手は心乱れている。一撃くらい受けても死なないで済むだろう。……そうだと思いたい。そんな或は鞭尾の攻撃に当たらぬようひたすら避けつつ、一瞬の隙をついて切り込みメルスィンの顔面を掴む!
「ッ!?」
 左手では幻光虫に触れ、獲得術式・換骨を発動! 右腕に発行の性質を付与する。小虫のサイズなら美しくても、人のサイズ、それも極至近距離の発光ならばそれはもう眩いばかりだろう。光の目潰しでメルスィンの視界を奪う。
「くっ……やってくれるじゃない」
 メルスィンは踉めき乍らも踏ん張り、椅子の背もたれに手をかけ視界が元に戻るのを待つ。しかし、そんな時間を猟兵がみすみす見逃すわけがない。それは或も同様で。
「きみは略奪者だ、僕と同じで、やっぱり違う。君は正しく、悪魔だね」
 或の剥奪の右腕が、光を宿したままフラつくメルスィンへとヒット! メルスィンはごろごろと転がり、弾さにぶつかって止まる。ぐぅ、と呻いた後憎々しげに確かに或を『見た』。
「あなただって悪魔のくせに……!」
 それは恨みか、羨ましさからくる妬みか。兎も角、メルスィンは或を『同族』ではなく『敵』だと正しく理解した――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィ・アークレイズ
【POW】(アドリブ、連携可)
……別に、事情を知ったからって生かすワケにはならねェな。どーであれ、人を喰ったアンタは殺す。オレ達はその為に此処に居るンだよ

覚悟は良いか?

「射程」は半分で良い。代わりに「攻撃力」欲しいのは火力だ。アンタを沈めるのは生半可なヤツじゃ足りねェ。機械化部位の両腕右脚フル稼働、銃も総出で行こうじゃねーか
多少動き難くても良いさ、なんたってサイボーグだからな。足場は関係ねェ
来いよ腹ペコハニー。最期のダンス、楽しく盛大に踊ろうぜ。絶対ェ退屈させねーからよ

…そうだな。アンタがもし来世なんて信じるンなら…今度美味いピザ屋紹介してやる。人より絶対美味ェからよ。

…じゃあな。




 同情の余地は無い。メルスィンは確かに人を喰らい、それに歓びを見出してしまったのだ。それはとことん、悪魔の所業。人に害為すオブリビオンで間違いない。例えそこに至るまでの経緯がどんなに哀しいものだったとしても、許せることではないのだ。
「……別に、事情を知ったからって生かすワケにはならねェな。どーであれ、人を喰ったアンタは殺す。オレ達はその為に此処に居るンだよ。覚悟は良いか? お嬢さん」
 射程は半分で良い。代わりに欲しいのは火力だ。メルスィンを静めるには生半可なモノでは足りないと踏んだリリィは、攻撃力特化で行くと決めた。機械化した部位の両腕右脚フル稼働、銃も総出でお出迎えとくれば、相手も満足するだろう。
 漸く視界がはっきりとしたメルスィンは、危険を察知してか高く跳んだ! そのままリリィに向かい踏みつけを行うが、スライディングで素早く着地点から逃れる。着地点は大きく窪み、その破壊力を示していた。背中からビリビリと伝わる振動が、戦場の臨場感を感じさせてくれる。
 多少動きにくくなったが、関係ない。なんてったってリリィはサイボーグ、足場は関係ない。いざとなれば足場の展開くらい自分でしてみせる。
「来いよ、腹ペコハニー。最期ノダンス、楽しく盛大に踊ろうぜ。絶対ェ退屈させねーからよ」
「そう……期待させてね、ダーリン」
 近接格闘に特化したリリィの腕がヒュッと音を立ててメルスィンの頬を掠める。メルスィンも当たれば無事では済まないと分かっているからこそ、華麗なステップで回避していく。続いては脚だ、一歩踏み込んで拳を鳩尾目掛けて瞬速の構え!
 メルスィンは『避けられない』事を察知して、腹に力を入れて耐える方向へシフトした。そこに真っ直ぐ吸い込まれていく拳。ぐぐぐっと柔らかい腹にめり込む。
「ぐ……ッ!!」
 吹き飛びこそしなかったものの、その場で腹を抑えながらリリィを睨みつけるメルスィン。嗚呼、この痛み――お腹が空いた時より、苦しい。
「まだ立ってられるかい、ええ? そろそろ沈んでおいた方がアンタの為じゃねぇかい。ダンスも結構体力使うんだぜ」
「そうみたいね。随分と荒っぽいリードだったわ」
 ハッ、と嗤ったリリィは再び拳を握りしめ、真っ直ぐにメルスィンを見つめた。普通に生きたかった娘の、最早普通とは程遠い所業にやれやれと肩をすくめて。
「……なぁ、アンタがもし来世なんて信じるンなら……今度美味いピザ屋でも紹介してやる。人より絶対美味ェからよ」
 それは確実に此処で沈めるという覚悟。そう、覚悟はお互いに必要だったのだ。じゃあな、と呟いて、再び拳が炸裂する――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノウル・イル
【アドリブ連携歓迎】
可哀想に。可哀想に。
死にたくないでしょう。分かりますよ。
でも、世界はそれを許さないのです。
だからせめて、私が貴女を喰らいましょう。貴女を世界から救うために。
貴女がオブリビオンである限り。貴女は私の被食者なのですから。

UC。捕餌/喰慾タル獣性。
刃で斬り断ち、抉り、削ぎ、喰らう。
痛いでしょう。苦しいでしょう。怖いでしょう。それが貴女が喰った彼らにしたことです。
反撃を喰らっても。赦しを請われても。
貴女を喰らい尽くすまで、私は止めるつもりはありません。
見せてください。貴女の想いを。貴女の味を。貴女の全てを。

きっと忘れませんよ、貴女のこと。
……貴女の全て、私の糧にしてあげます。




「可哀想に。可哀想に。死にたくないのでしょう。分かりますよ。でも、世界はそれを許さないのです」
 歌うように、ノウルは言葉を重ねる。一時の慰めか、それとも現実を叩きつけるものか。それはメルスィンの受け止め方次第。続けてノウルは語る。これらは全て、歴然とした事実。これから起こる事の予告。
「だからせめて、私が貴女を喰らいましょう。貴方を世界から救うために。貴女がオブリビオンである限り。貴女は私の被食者なのですから」
「……冗談がキツイわ。私は捕食者、全ての食物連鎖の頂点に立つ者……あなたなんかに食われたりしない」
「ふふ、さて。どこから味わいましょうか」
 相手は本気で自分を食べようとしている。そう気付いたメルスィンは跳躍し大聖堂の中を破壊しながら逃げ回る。時にノウルの頭蓋を叩き潰そうと、隙を狙い攻撃を仕掛けてくるが、ノウルだってただやられてやる心算なんて更々ない。落ち着いて、最小限の動きで攻撃を避ける。
 【捕餌/喰慾タル獣性】を発動したノウルは、逃げるメルスィンを追いかけてスクラップマチェットを投擲しながら段々と大聖堂の隅へと追い詰めてゆく。
「あ……」
「いただきます、美味しそうな貴女」
 刃でその身を斬り断ち、抉り、削ぎ、喰らう。悪魔の成せる業なのか、その箇所はすぐに再生していったが、メルスィンは痛みに悲鳴を上げた。それはそうだろう、治るからと言って痛くないとは限らない。話が全く別なのだから。
「うぁ……あああっ!」
「痛いでしょう。苦しいでしょう。怖いでしょう。それが貴女が喰った彼らにしたことです」
 メルスィンは渾身の力でノウルを突き飛ばし、その大きな翼で広い大聖堂の中央へと逃げおおせた。しかし、それで諦めるノウルではない。例え反撃を喰らおうとも、万が一赦しを請われても、メルスィンを喰らい尽くすまで、止めるつもりは無い。
「見せてください。貴女の想いを。貴女の味を。貴女の全てを」
 追いかけてくるノウルは、メルスィンにとって余程『悪魔』のように見えた。喰われるかもしれない恐怖、そんなものを自分が体験することになろうとは、夢にも思っていなかったから。そして同時に深く想うのだ。――嗚呼、私はやっぱり、悪魔なんだ。と……。
「きっと忘れませんよ、貴女のこと。……貴女の全て、私の糧にしてあげます」
「まさか。糧になるのはあなたたちよ!」
 その場でぐっと脚に力を入れ、ピキ……と床にヒビが入ったところで、メルスィンの反撃! 足場を自分のものとし、着実に首を狙ってくる悪魔の脚。
 ――これは食べ尽くすのに時間が掛かりそうですね……なんて、ノウルは再び刃を振り上げる……――。

成功 🔵​🔵​🔴​

白峰・歌音
他人と違うってだけで蔑まされて怯えられて、誰も優しくない。そんな世界じゃ諦めもするし、嫌になるよな。オレも、そんな優しさの無い世界なんて、嫌いだって思うぜ。良かったら教えてくれよ、どんな酷い事があったのかさ?オレ達がちょっとやそっとじゃ倒れないのは分かったろ?ならたまには怒りのままに暴れてみるのも退屈しのぎになるかもだぜ?
オレも同情はあるけれど手心は与えない。もうお前は人と共存して生きるには戻れないくらい業を重ねてしまったと思ってるからな。
だから…ヒーローではなく、白峰歌音として、どっちが生き残るか命がけの大ゲンカ、させてもらうぜ!

やる事はただ一つ!拳一つで大ゲンカだ!

アドリブ・共闘OK




 この世の中、いやどこの世界だって理不尽だらけである。他人と違うだけで蔑まされ、怯えられ、誰も優しい手を差しのばしてなどくれない。そんな世界じゃ諦めもするし、嫌になってしまうのも仕方のない事だと、歌音はメルスィンにある程度の共感を示す。
「オレも、そんな優しさの無い世界なんて、嫌いだって思うぜ。良かったら教えてくれよ、どんな酷い目にあったのかさ?」
「……まず、石を投げられたわ。次に呪いの言葉を浴びせられた。最終的には私を殺そうと、武器を取り出された。それで……そこからのことは、もうあんまり記憶にない。その村は、もう無いから」
 私が全て、殺したから。と締めくくり、沈黙。歌音は状況を想像し、吐き気を覚える。恐らく、少女はまだ『何も』していなかったのだ。例え姿を隠しつつも人らしくあったのに、それが悪魔だと分かった瞬間、人々は掌を返すように責め立てたのだろう。なんと理不尽で不条理。非道徳的。
「なぁ、オレ達がちょっとやそっとじゃ倒れないのは分かったろ? なら、たまには怒りのままに暴れてみるのも退屈しのぎになるかもだぜ?」
「私のこの虚無感を満たしてくれるというの?」
「ああ。お互い手加減なしでいこうぜ」
 歌音も同情こそあれど手心を加えるつもりは一切ない。もうこの少女は人と共存して生きるには戻れないくらい、業を重ねてしまったと思っているから。だから……ヒーローではなく、白峰歌音として、やることはただひとつ! 拳一つで大ゲンカだ!
「どっちが生き残るか命がけの大ゲンカ、させてもらうぜ!」
「そう……うふふ、退屈しないで済みそうよ」
 広い大聖堂の中を二人、走り回りながら距離を詰める。先に仕掛けたのはメルスィン! 強烈な悪魔の脚による蹴りが炸裂する。それを両腕を交差させ固く受け止めると、一瞬のタメの後、歌音の拳がメルスィンの右肩へ吸い込まれる様な強打!!
「ぐっ……!」
「まだまだァ!」
 続けざまの拳と蹴りの連撃をメルスィンに向け繰り出せば、避ける暇も場所もない相手の芯を捉え、脚をひっかけて体勢を崩したところに顔面目掛けて拳を振り降ろす! 寸でのところで顔を背けることで回避したメルスィンは、鞭尾を使い歌音に反撃を繰り出す。
 其の手は読んでいた、とばかりに歌音はさっとその場を離脱すると、再び両者離れる距離。じわじわと、お互い好機を伺う。
 ――さぁ、その調子。思い切りお前の想いの丈をぶつけてみろ!!
 いっそ楽しんでいたのは、メルスィンも歌音も同じだったのかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
「避けないで」か
それが貴女の望みなのかな
…分かった
敵意がないことを示すために両手を広げ、目を伏せる

無防備なセツナに敵の攻撃が直撃――する直前にゼロが間に割り込み、ギリギリで一撃を弾く
敵が体勢を崩したタイミングでゼロと場所をスイッチ
袖に隠し持っていた破魔+毒を仕込んだナイフで斬りかかる
ありがとう、ゼロ
防いでくれると信じていたよ
『出たとこ勝負で命を賭けないでくれ』って?
はは、気をつけるよ

…貴女の望みは
「繋がりが欲しい」ではないかな
この砦を恐怖の鎖で無理やり繋いだとしても虚しいだけではないのかな
だって、今の貴女はとても寂しそうだもの
貴女の望みを叶えることはできないが…最期の瞬間まで私が傍にいるよ




 少女が踏み荒らした聖堂内をぐるりと見渡して、セツナは何か……切なる願いを感じ取ったのか、両手を上げて目を伏せた。
「『避けないで』か。それが貴女の望みなのかな。……なら、わかった」
 武器も持たず完全に無防備なセツナに向けて、メルスィンの悪魔の鞭尾がその首を狙い鋭く突き刺さる――直前に、ゼロが間に割り込んだことでギリギリ間一髪のところで攻撃を弾く。あとコンマ1秒でも遅ければ、セツナの頭と胴は離れ離れになっていたことだろう。
 予想外の反撃に体勢を崩したメルスィンの隙を見計らい、ゼロと場所をスイッチ。今度こそセツナが前に出る。本来これがあるべき形なのだ。
「ありがとう、ゼロ。防いでくれると信じていたよ」
「出たとこ勝負で命を賭けないでくれ。ビビるだろーが」
「はは、気をつけるよ」
 袖に隠し持っていた破魔属性と毒を仕込んだナイフでメルスィンに斬りかかる! 振りかざしたナイフはそのまま悪魔の腕へぐさっと差し込まれた。響く悲鳴。破魔が体中の『悪魔』であるその身を焼き、毒が動きを鈍らせていく。
 別にセツナはメルスィンを痛めつけたくてこんなことをしているのではない。メルスィンの中に流れる血潮と、喰らわれた人々の怨嗟が積もり、結果的に苦しむことになっている。それはもうどうしようもない、少女が『悪魔』である限り。
「あ、嗚呼……どうして。どうしてこんなこと! 私は……捕食者なのに!」
「……貴女の望みは『繋がりが欲しい』ではないかな。この砦を恐怖の鎖で無理矢理繋いだとしても、虚しいだけではないのかな」
「なにを……あなたに何が分かるというの?」
「分かるとも。だって、今の貴女はとても寂しそうだもの」
 首を傾げるメルスィン。寂しい、寂しい……? 反芻してみる。すると、すとんと腑に落ちた。なんだ、私は寂しかったのかと、此処で漸く自覚する。それを埋める為に他者を支配することで、ぽっかりと開いた心の隙間を満たしていた心算になっていたのだ。
「なによ……今更。何もかも遅いのよ! もう私は、人を喰らう悪魔なんだから! 今更私に寄り添ってくれる人なんて、誰もいない!」
「……貴女の望みを叶えることはできないが……最期の瞬間まで、私が傍にいるよ」
 ――だから安心して、貴女は想うままに振舞えばいい。それを私は受け入れよう。
 メルスィンは毒の回った躰を揺さぶり起こし、セツナを睨みつける。それは憎悪というよりも、本心を見透かされたことへの恐怖からであった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
望む未来へ進むことを諦め
流されるまま人の命を弄び喰らう生は
さぞ心が痛くて辛いだろうな

ヘレル
必要な時に手を差し伸べてやれず
間に合わなくて悪ぃ
せめて炎で送ってやる

戦闘
剣や炎壁で仲間を庇う

敵攻撃をいなし間合いとタイミングを計る

で上空からの踏みつけ攻撃に合わせ爆炎で跳躍
炎を一気に燃え上がらせて視界を灼きながら薙ぎ払う
白い世界を紅蓮が迸る

もしその翼で滞空し避けられそうなら
すかさず迦楼羅を炎翼として顕現して追い縋り
赤光の軌跡を残す一閃

愁魔が人としての安らぎを得られぬ理不尽を
灰に帰す

事後
鎮魂曲を爪弾き
静かな眠りを願う

もし遺体が残るなら火葬


砦の住民のケアが必要だよな
仲間を食餌として…ってのはキツいぜ




「あんた、名前は?」
「名前……? そんなもの聞いてどうするの」
 例え敵であろうとも、かつて一人の『人間』であったのなら、個を尊重すべきだと考えたウタは、まず少女に名を訊ねた。名前とは個を現わす最も原始的で尊いものだからである。
「メルスィンよ、メルスィン・ヘレル。お返しにあなたの名前も聞いてあげる」
「俺は木霊・ウタ! 過去を骸の海へと還す者だ!」
「そう……という事は、私のことを葬ろうというのね。あの村の住民みたいに」
「……必要な時に手を差し伸べてやれず、間に合わなくて悪ぃ。――せめて炎で送ってやる」
 望む未来へ進むことを諦め、流されるまま人の命を弄び喰らう生は、さぞ心が痛くて辛いだろう。しかし、だからといってメルスィンがやってきたことが許されるかと言えば話は別だ。彼女は文字通り、既に悪魔と成り果てた。即ち、人に仇為す、全ての生きとし生ける者の敵対者である。
 ウタは剣と炎の壁で仲間を守りながら、高くジャンプしたメルスィンの踏みつけをいなし、間合いとタイミングを計る。一瞬の攻防だ、次に相手が動いた時がウタの動くチャンスだと、時を待つ。メルスィンもウタが何ぞやってくるのでは? と疑心暗鬼に行動は慎重に。
 そうして睨み合っていたのは何秒だったか。実際はほんの僅かな時間のはずなのに、とても長く感じられた。痺れを切らしたメルスィンが再び地を蹴った動きに合わせ、ウタは爆炎で跳躍! 炎を一気に燃え上がらせて、視界を灼きながら薙ぎ払う。
 白い世界を紅蓮が迸る。メルスィンは咄嗟に『普段なら絶対頼らない悪魔の翼』で滞空し、炎を避けようとするが、ウタはそこまで読んでいた。すかさず迦楼羅を炎の翼として顕現して追い縋り、赤光の軌跡を残す眩き一閃。
「!? くっ……!」
「ッらぁぁーーーーっ!!」
 赤、燃えるような。いいや、実際燃えている。メルスィンの身体とこころを、灼たかな炎が包み込む。あまりの熱さに髪や肌を掻き毟り、消火に専念するメルスィンに、ウタは憐れみを覚えた。この少女は『悪魔』であることを望まれただけで、本当は……。
「――はぁッ、ねぇ、ウタと言ったわね、あなた。私を殺したあとはどうするつもり? 私を殺しても、食べた人間は戻ってこないのよ」
「そんなこと分かってる。……そうだな、鎮魂歌を奏でてやるぜ。静かな眠りにつけるようにな」
 くすっ、とメルスィンは笑う。そんな事になんの意味があるのだろうと思いながらも、不思議と嫌な気分はしなかった。簡単に死んでやる心算はないけれど、灼熱のあなたが奏でる歌は聞いてみたいかも。なんて、思うの可笑しいことだろうか。
 ウタもウタで、終わってからやることは沢山ある。まずは砦の住民のケア。仲間を食餌として捧げた住民たちの心の傷は深いだろう。それを癒さなければ。その為に、まずは目の前の敵に集中――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…かつてのお前がどんな存在で、どんな過去があったとしても、
今を生きる人々の幸せを踏みにじるならば容赦はしない

…裁きの時よ、悪魔の娘。さあ、お前が犯した罪を数えなさい

第六感が捉えた敵の殺気や闘争心を自身の戦闘知識に加え、
敵の空中戦機動を暗視して攻撃を受け流しつつUCを発動

…汚れ、ね。ならばその身に刻むが良い
お前が食い物にした者達の怨嗟を…!

大鎌に9人の犠牲者の魂を降霊して魔力を溜め武器改造を施し、
大鎌を巨大剣の柄に変形し限界突破して長大な光刃を形成
残像が生じる早業で怪力任せに巨剣をなぎ払い、
呪詛のオーラで防御を無視して敵を切断する闇属性攻撃の光刃を放つ

…この一撃を以て手向けとする。眠りなさい




 かつてのメルスィンがどんな存在で、そんな過去があったとしても、今を生きる人々の幸せを踏みにじるならば容赦はしないと、リーヴァルディは大鎌を擡げた。メルスィンは面倒臭そうに視線をリーヴァルディに向ける。重なった視線はバチバチを火花を起こしそうだった。
「……裁きの時よ、悪魔の娘。さあ、お前が犯した罪を数えなさい」
「罪? さぁ? 覚えがないわね」
 その揶揄うような言い草にムっとしたリーヴァルディは、大鎌をメルスィンに向け言い放つ!
「本気で言ってるのなら、もう救いようがない。私はお前を排除する」
「やってみれば? 出来るものなら。私は最初から救いなんて求めていない」
 第六感が捉えたメルスィンの殺気を自身の戦闘知識に加え、相手の動きを読む。メルスィンは翼を持っている、やろうと思えば飛行することだって出来るのだ。それを加味してリーヴァルディは動かなければならない。
 嫌々といった雰囲気丸出しで、少女は飛翔した。この翼のせいで、少女は人々から恐れられた。迫害された。勝手に『悪』だと決めつけられた。だからなるべく使いたくないのが本心なのだろう。でも、それもメルスィンの一部であることに変わりなく。
 空中からの急降下でリーヴァルディへ鋭い爪を振りかざす。真っ直ぐな軌道だった。リーヴァルディは横にステップする事で避けるも、腕を掠める。それだけで肉が少し抉れたのが分かった。じくじくとした痛みに耐えながら過去を刻むものをメルスィンへと構える。
「はぁ、退屈。殺した後に汚れを落とすのが一番面倒だし……」
「……汚れ、ね。ならばその身に刻むが良い。お前が食い物にした者達の怨嗟を……!」
 大鎌に今まで喰われてきた9人の犠牲者の魂を降霊し、魔力を溜めながら大鎌を大胆に武器改造! 巨大剣の柄に変形させ、長大な光刃を形成する。それは最早限界すら突破したリーヴァルディの本気。残像が生じる程の早業で、怪力任せに巨剣を薙ぎ払う!
 メルスィンは一歩下がって再び後方へと飛翔する。あの光の一太刀を浴びたらただでは済まないと分かった上での回避行動。それは同時に再び攻撃へと転じる合図でもある。
「中々面白い武器を持ってるのね」
 そう言いながら一瞬で間合いを詰めてくるメルスィンへ、リーヴァルディも呪詛のオーラを纏い、仮に相手が防御したとしても貫通して切断する強烈な闇属性の真っ黒に光る刃を放った! 幾重にも重なった光刃はメルスィンの皮膚を破り、どくりと紅い血が流れる。
「……痛いじゃない。これがあなたたちの言う裁き? 随分と野蛮ね」
「好きに捉えればいい。……この一撃を以って手向けとする。眠りなさい」
「お生憎様、寝るのは夜だけよ」
 言葉の応酬に、先に手が出るのは果たしてどちらだったか――。

成功 🔵​🔵​🔴​

蛇塚・ライム
……私も、かつてはオブリビオンとして人類に害を成したわ
私は幸運だったわ
多くの人達の絆が、私に2度目の人生を歩ませてくれた
それは、私が姉さんと仲間達を信じられたからだと思うの

でもあなたはどうかしら?
あなたは他者を信じようとしなかった
人を嫌って森の奥へ潜むことも出来た
でもあなたは人を喰らった
ならあなたは

罪人よ

上空からの踏み付け対策は簡単
私を踏みつける寸前、カマドGを顕現させるわ!
『我がライムの盾と成らん!』
ヒートクローで武器受け
そこへ私がカマドGを駆け上って肉薄!

あなたが延々と撒き散らした悪意のお陰で
私の攻撃回数は無限大!
煌めく爆炎紅蓮色の覇気を武器に纏って怪力任せに乱打・焼却

甘えんな、馬鹿……!




 ――嗚呼、記憶が蘇る。七色の希望が、私の中の八岐大蛇を退けたことを。かつてのライムは、オブリビオンとして人類に害為す存在であった。しかし、幸運なことに多くの人達の絆によって、二度目の人生を歩むことが出来ている。それは姉と仲間達を信じられたからだと、ライムは思う。
 では、この少女はどうだろうか。ライムはじっとメルスィンを見つめる。深碧の瞳と目が合った。ライムは言の葉をメルスィンに投げかけてみた。
「あなたは他者を信じようとしなかった。人を嫌って森の奥へ潜むことも出来たのに、それを選ばず、あなたは人を喰らった。ならあなたは――罪人よ」
「飢えを満たすことがそんなに悪いこと? あなただって家畜を喰らうでしょう。同じことよ、私は『そういう生き物』だと、今まで気付いてなかっただけ」
「本当に? あなたはその答えに納得しているの?」
「…… ……」
 返答はない。それが答えだった。メルスィンはライムの言葉を振り払うように高く跳躍し、上空からの強烈な踏みつけで圧し潰そうとする。自分の持ち得なかった答えを持つライムの言葉が、刃のように深く心を抉ったから。許さない、そんな意思を込めて。
 とはいえライムもここまでの猟兵たちの動きを見て、踏みつけへの対策は済んでいる。メルスィンがライムを踏みつける寸前、深紅のスーパーロボット炎鋼巨神カマドGが顕現した!
『我がライムの盾と成らん!』
 自我を持つ鋼神は、ヒートクローでメルスィンの攻撃を受け止める! ガガガガっと音を立てながらも踏ん張るカマドGに、「さっすが頼りになるぅ、相棒!」と感謝を述べつつ、その巨躯を駆け昇ってメルスィンと肉薄!!
「なんなのよ、この鋼の塊は……ッ!」
「あなたの知らない世界……いいえ、知ろうとしなかった世界の産物よ!」
 メルスィンが延々と撒き散らした悪意のお陰で、ライムの攻撃回数は最早無限に至るかの領域へと到達した! 煌めく爆炎紅蓮色の覇気を憤怒の炎を宿す両腕に纏って、怪力任せに乱打と焼却の繰り返し! メルスィンは殴打に耐え、バサっと翼を広げ高く飛び立つ。
 それは、普段なら絶対にしないメルスィンの行為のひとつだった。
 ――この翼は私のもの。切り離せはしない。でも、同時に憎くもある。この翼のせいで、私は――。
「あなたのこと、嫌いになりそうよ。痛いし、……昔を思い出させるから」
「あら、それは結構。私も昔を思い出したわ。路が違っただけで、案外同じ轍を歩んでいたのかもしれないわね、私達」
「そんなこと、どうでもいい。私は唯……人でありたかったのに、それを邪魔されただけ!」
「甘えんな、馬鹿……!」
 ライムの叱責にビクっと怯えるメルスィン。なにを被害者ぶっているのか。メルスィンは間違いなく、人類の敵。であれば、そこにかける情け容赦などない。ライムは渾身の一撃を叩き込んだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
貴公はまだ骸魂ではないのであろう?
なら、ただの人殺し、であるな。
余の属する世界の表では人殺しだけでは必ず死罪にはならぬし、
その様な生き物ならば仕方が無い。
ただ、贄と恩恵の比が悪ければ退治されるのも古来よりのお約束であるな。
ならば、”今は”食を細くして餌を護るという事をお勧めするぞ?
人も似た様な事はしておるしな。

切断されても霧に変身し回避する。
方法を知れば、子供ですら退治できる吸血鬼であるが、知らなければ退治できない。
ましてや異世界ならなおのことである。

過去何人殺そうが、余の様に健在であるモノもおるのが今の世であるしな。
余は人に負け尽くして型に嵌められた最弱の生命体(病原体)であるがな。




「貴公はまだ骸魂ではないのであろう? なら、ただの人殺し、であるな」
「そうね、人殺し。それは間違いないわ。でも敢えて言わせてもらうなら、私は生きる為の殺しよ。家畜を殺すのと、何が違うの?」
「……余の属する世界の表では、人殺しだけでは必ずしも死罪にはならぬし、そのような生き物でならば仕方がない」
 ただ、と続けるブラミエの表情は固い。メルスィンは首を傾げその続きを促す。
「贄と恩恵の比が悪ければ退治されるのも古来よりのお約束というものであるな。ならば、”今は”食を細くして餌を護るという事をお勧めするぞ? 貴公の言う通り、人も似た様な事はしておるしな」
「……そう。残念だけど、交渉決裂ね。お腹が空くのは『自然の摂理』だもの。そんなお約束、蹴散らしてやるわ」
 言うが早いか、メルスィンは悪魔の鞭尾を自在にしならせ、ブラミエの心臓目掛けてドスっと貫いた……はずだった。しかし、実際のところブラミエは其処に居なかった。どういうことか、メルスィンは瞠目した。まるで狐狸にでも化かされているような――。
 種明かし。文字通り、ブラミエはメルスィンを化かしていた。それもただ化けるのではない、霧となり切断も突きも通用しない状態へと変化して。このままでは攻撃することは出来ないが、この霧にも仕掛けがある。ずばり、幻覚に陥る病を含んでいるのだ。
 ブラミエ自身は方法を知れば子供ですら退治できる吸血鬼であるが、逆に言えば知らなければ退治できない。ましてや異世界の出身ともあれば尚のことである。御伽噺の吸血鬼は、ダークセイヴァーに古来より巣食うヴァンパイアとは違う。
「これは……なに? いやっ、やめて……私は、私を、嗚呼!」
 苦しみだしたメルスィンを見遣り、ブラミエは再び人のかたちを取る。じわじわと霧の効能が効いてきている様で、一人勝手に暴れ回る。その動きは半狂乱にも等しく、ブラミエはすすす、とメルスィンから離れた。こんな相手に付き合ってやる必要など全くない。
 翼を大きく広げ、鞭尾で周囲のものを壊し、鋭い爪で自らの貌を覆うメルスィン。その姿はいっそ哀れなほどに、か細く儚く見えた。
「私は……何を……人を、食べ、て……? 違う、違う違う違う! 私は悪くない! 悪いのは、みんなよ! 私を虐げて、突き放して! 嗚呼、その怯えた眼をこっちに向けないで!」
「――過去何人殺そうが、余の様に健在であるモノもおるのが今の世である。貴公も生まれる時代と世界が違えば、また異なる未来を歩めたのかもしれぬな」
 まぁ、斯く言う余は人に負け尽くして型に嵌められた最弱の生命体であるがな。と付け加えて、ブラミエは再び幻惑の霧でメルスィンを蝕む――。

成功 🔵​🔵​🔴​

月白・雪音
…その内心がどうあったとて、一度はヒトとして生きること
を是とした選択は尊いものです。

されど、既に貴女はヒトの味を知り、捕食者の道に踏み入ってしまった。

同族を手にかける前に邂逅し得なかった事を悔やむばかりですが…、
今此処にて、貴女を討たせて頂きます。


UC発動にて、怪力、2回攻撃による拳打、
野生の勘、見切り、残像での攻撃回避にて戦闘展開
隙を見てカウンター、グラップル、部位破壊で
手刀にて相手の尾を切断する


自らを殊更に『悪魔』と称することも、それは貴女がまだ『ヒト』である事の証左です。

事ここに至らば、貴女を助ける事は既に叶いませんが…。

貴女の名を覚え置きましょう。
悪魔ではなく、他ならぬヒトの名として。




 例えその内心がどうあったとて、一度はヒトをして生きることを是とした選択は尊いものだ。されど、少女は既にヒトの味を知り、捕食者の道に踏み入ってしまった。同族を手にかける前に邂逅し得なかった事を悔やむばかりの雪音であったが、さりとてやる事は殺らねばられない。
「今此処にて、貴女を討たせていただきます」
「させないわ。私はヒトを喰らってまで生きてきた……その分、生きなきゃいけないのよ」
 その言葉に雪音は少なからず驚いた。ヒトを喰らったことを嘆くでもなく、前向きに捉えている。しかし、少女は完全に悪魔と化したというわけでもなく、『食べもの』に感謝すらしているような口ぶりだ。何とも業の深い話である。
 【拳武】を発動し、己の戦闘技能を最大限まで高めた雪音は、その細腕からは想像できない程の怪力で少女を殴打する! パシッ、パシッと音は軽けれど一撃一撃が非常に重い。そんなもの何発も受けていたら躰が歪むと、少女は悪魔の鞭尾で応戦する。
 しかしその刃のような尾は雪音には届かない! 研ぎ澄まされた野生の勘が、次に来る攻撃を予測し、残像を残しながら素早く回避する。少女は「チッ」と小さく舌打ちした。
「自分は私を痛めつけるくせに、自分は逃げるだなんて、ズルじゃない?」
「戦いに狡いも正しいもないでしょう。あるのはただ――勝敗のみ」
 ぐっと突き入れるような拳を繰り出しながら時を待つ。隙だ、隙が欲しい。その為には、敢えて敵の攻撃を受けることも厭わない! 伸びてきた鞭尾がスパっと雪音の振袖を断つ。一張羅になんてことをしてくれるのか。いや、それはともかく。
 暴れ回る鞭尾をカンウターの要領でがしっと掴み、鋭い手刀で尾を切断する!
「きゃっ!」
 少女は声をあげ切断された自分の尾の先が落ちているのを見た。怒りが沸々と湧いて出る。それと同時に、悪魔の尻尾は切断された面からにょきにょきと伸び再び元通りになった。今度は雪音が「まぁ!」と驚きの声を上げる番だった。
「悪いわね、私は悪魔なの。ちょっとやそっとじゃ傷つかない」
 これは詭弁だ。これまでの猟兵たちとの戦いで、少女は確実に疲弊し、傷ついている。それでも生への執着を失っていない。
「……自らを殊更に『悪魔』と称することも、それは貴女がまだ『ヒト』である事の証左です。事ここに至らば、貴女を助ける事は既に叶いませんが……貴女の名を覚え置きましょう」
「名前、名前ね。メルスィン・ヘレルよ。もうその名で呼ぶ人はいないけど」
「メルスィン。ええ、ええ、覚えました。悪魔ではなく、他ならぬヒトの名として」
 『愁魔』メルスィン・ヘレルは漸くここにきて、名前が尊いものだと思い出した。誰かに覚えておいて貰えるなら、こんな戦いも悪くない。勿論、この数の猟兵を相手に、負ける気は未だ以って無いけれど――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディアボリカ・ティタノマキナ
【アドリブ連携OK】
お前が…件の悪魔か…良い…!
とても良い…!

さぁ…!死合おう…!!

【UC】を初手に発動。
速度では勝てん…必要なのは耐久…強靭な身体
冷気を纏い動きを制限しつつ、敵の大振りを【捨て身の一撃】にて【捕縛】しよう…

聞き忘れていたが…我は理解に苦しむ事が…1つ

何故人間に復讐する事に執着する…?
特別な存在にしてはちっぽけな行動をする…?
…やっている事がまるで「人間」その者だぞお前

捕縛が出来たのなら…【グラップル】しつつ【怪力】で締め付け体力を奪おう…
力はこう奮うのだ…!
(前方に重力波ごとぶん投げて、すかさずスサノオで壁ごと切断する)…慰めの言葉がいりようではあるまいな…?




「お前が……件の悪魔か……良い……! とても良い……! さぁ……死合おう……!」
 先手をとったのはディアボリカ。その巨躯では如何に大聖堂が広いと言えど若干の狭さ、有り体に言えば圧を感じるのであったが、そんなことは気にせず超硬質寄生生命体【フルメタル】の能力をフル活用し、強固な盾を作り上げた。
 速度では勝てないことは分かっている。必要なのは耐久力、強靭な肉体。その結果、細い悪魔の尻尾では、中々その盾を破ることは出来ずにいた。これにはメルスィンも驚いたのか、距離を取りディアボリカの様子を伺う。両者、睨み合い……再びメルスィンの鞭尾がしなる!
 これぞ好機と見るや否や、冷気を纏い動きを制限しつつ、メルスィンの大振りの一撃を喰らう覚悟で、捨て身の捕縛を試みる! うねりながらギチギチと怪力で締め付け、じわじわと体力を削っていく。当然ながらメルスィンも抵抗し、触手を片っ端から鞭尾で斬って漸く逃れた頃には、随分と疲れが滲み出ていた。
 触手を切られたディアボリカは「ふむ」と顎に手を持っていく。そう言えば、気になっていたことがあった。
「聞き忘れていたが……我は理解に苦しむ事が……一つ」
「……なによ」
 対話の意思はあるようで、メルスィンは言葉を返した。それに続くディアボリカ。
「何故人間に復讐する事に執着する……? 特別な存在にしてはちっぽけな行動をする……? ……やっていることがまるで『人間』そのものだぞ、お前」
「私はッ! 特別な存在なんかじゃないッ!!」
 メルスィンは声を大にして叫んだ。――そうだ、特別なんかじゃない。特別な存在ならば、もっと尊ばれるはずだから。こんなに苦しむことも、悩むこともないはずだ。だから私は……メルスィン・ヘレルは特別じゃない。……そう思い込むことで、必死に自我を保とうとしていたのを、あっさりディアボリカに見破られた。
 人間でありたいという欲求と、悪魔であることに妥協してしまった自分。それを恥じるものの、時既に遅く。人を喰らい蹂躙した此の身では、最早『人間の様に振舞っていた頃』の様には戻れない。
「悪魔にだって感情くらいある。復讐はその中のほんの一部の気持ちに過ぎない。おわかりかしら」
「やはり……理解には程遠く……お前の目的は……何だ……?」
「簡単よ。生きること、それだけ」
 成程。とディアボリカは頷けば、再度メルスィンは攻撃を仕掛けてくる! それをまた強靭な肉体が受け止め、耐えながら、一瞬の隙をついてまたも捕縛。力とはこう奮うのだと教えるかのように、メルスィンを圧倒する。
 そのまま前方に重力波ごとメルスィンをぶん投げて、すかさず虚神刀・スサノオで壁ごと切断する様に刃を振るう! パラパラと零れ落ちる壁だった瓦礫の中から這い出てくるメルスィンは、息も絶え絶え。
「……慰めの言葉がいりようではあるまいな……?」
「冗談を。そんなもの、死んでもいらないわ」
 皮肉めいたメルスィンの強がりは、ディアボリカに伝わったのだろうか――。

成功 🔵​🔵​🔴​

レティシア・ヘネシー
アドリブ連携OK
ギャング達を砦の警護に回し、少女の元へ向かう。

初手は絶対に攻撃をせず、車譲りの馬鹿力で怪我を恐れず少女の攻撃を受け止める

はじめまして!貴女と友達になりに来たレティだよ!

大声で叫ぶ。周りの冷たい視線や少女の攻撃が来るかもだけど、お構い無しに

人が信じられない?レティは人じゃないよ!(と言って右腕を【ラットロッド・スカルズ】に変える)
人の味を覚えた?ならもっと美味しい物を一緒に探そ!
もう手遅れ?レティも負けないくらい昔はやらかしたよ!

人とか悪魔とか知らないし!死んで償えとか生きて贖罪をとか言う気もないよ!

レティに教えて!貴女はどうしたいのか!纏まらないなら、トコトン付き合うからさ!




 呼び出したスクラップギャング達を砦の警護に回し、いざ少女の元へと向かうレティシア。少女はレティシアを見るや否や、「また面倒なのが増えた」と言いたげな瞳を向けながら、鋭い鞭尾をしならせバチバチとあらゆるものを切断していく。
 レティシアの柔肌にもスっと切れ目が入るが、車譲りの馬鹿力で怪我を恐れず少女の攻撃を受け止める。こちらから攻撃はしない。レティシアは少女を退治しに来たのではない。対話しにきたのだから。
「はじめまして! 貴女と友達になりに来たレティだよ!」
「はぁ?」
 まずは大きな声で挨拶から。周りの冷ややかな視線や少女の呆れたような表情にもお構いなしに言葉を続ける。
「人が信じられない? レティは人じゃないよ!」
 そう言ってレティシアは右腕を車のパーツで出来た、鉄屑のような髑髏の頭部へと変える。それには少女も驚いて目を見開き、改めて会話をする気になったのか鞭尾を引っ込める。
「貴女も虐げられてきたの?」
「どーだろ! レティは車だからね。酷使はされたしぶつけられたりはしたけど!」
「ふぅん。あなたは私と友達になりたいと言ったわね。それは今更無理な話よ。私はもう人の味を覚えた『悪魔』だもの。昔には戻れないわ」
 俯く少女を覗き込むように腰を曲げて、じっと目を合わせる。少女は何だか居心地が悪くて、スっと目を逸らした。何といえば良いのか、少女はこの手の手合いにどう対処すべきなのか分からないでいた。折角の言葉を無碍にすることはしたくない。でも、もう後戻りできないことも分かっている。
「もう手遅れなのよ、なにもかも」
「人の味を覚えたなら、もっと美味しいものを一緒に探そ! レティだって、昔はいっぱいやらかしたよ!」
「そう……それでもあなたは、人間なのね」
「厳密にいえばちょっと違うけど、そうだね! だから貴女だって何も遅くないよ! 人生は何度だって、何時からだってやり直しができるんだから!」
 もし本当にレティシアの言うように、やり直せたならどんなに楽だろう。しかし、もう少女にはどこからやり直すのが正解か分からなかった。この砦に来なければ良かったのか、それとも今は無き故郷をひっそりと去るべきだったのか。
「人とか悪魔とか知らないし! 死んで償えとか生きて贖罪をとか言う気もないよ! ねぇ、レティに教えて! 貴女はどうしたいのか! 纏まらないなら、トコトン付き合うからさ!」
「えぇ……?」
 そこまで言われてはと渋々自分を見つめ直す少女。辿り着いた答えはやっぱりレティシアとは相容れなかったけど、久しぶりの会話らしい会話に、少し満足している自分がいる事に少女は気付いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ
一つ問うてもいいっすか、お嬢さん
悪魔だからと呪われて、だから悪魔たらんとするお嬢さんに問うっす
人として生きたいと願ったことはないっすか
周りの人間の呪い等知るか、人として生きたいんだと、再び願いたいとは思わないっすか
そう願うのであれば、全力でその身を護ることを約束するっす
しかしそうでないというなら――

豹の骨を食って【〇八三番之韋駄天】を発動
ちと軌道が読みづらいっすけど、捉えられないわけじゃないんすよね
戦ったことのない、素直な軌道っすから
尻尾を細切れにして一刀の下に斬り伏せるのは容易いっす

……戦士を倒せば武勲詩、怪物を倒せば英雄譚
此度は何も残せねぇっすね……
後味の悪さばっかり残りやがる




 疑問に思っていたことがある。これまでの戦いの中で、少女は傷つき、多くの猟兵相手に互角に戦ってきた。それは自分を守る為なのか、それとも邪魔者を排除しようという傲慢な考えからくるものなのか。リンタロウは色々言いたいことはあれど、ひとつに絞って少女に問い掛けた。
「一つ問うてもいいっすか、お嬢さん。悪魔だからと呪われて、だから悪魔たらんとするお嬢さんに問うっす。……人として生きたいと願ったことはないっすか」
「さぁ? どうかしらね。前はそんなことを思っていたこともあったかもしれないわ」
「周りの人間の呪い等知るか、人として生きたいんだと、再び願いたいとは思わないっすか。そう願うのであれば、全力でその身を護ることを約束するっす。しかしそうでないというなら――」
 少女は目を伏せ、首を横に振った。もうそんな刻はとっくに過ぎさってしまった。今あるのは生きたいという願いだけ。ひとが悪魔と言うんだから、自分は悪魔なのだろうという諦めが、少女の心を支配していた。であるならば、最早言葉は必要ない。お互いの命運を賭けて戦うのみ。
 少女は鞭尾を叩きつけるようにしなり暴れさせ、大聖堂の椅子や講壇なんかをめちゃくちゃに壊していく。リンタロウは「やれ、こんな時は」と豹の骨を食って【〇八三番之韋駄天】を発動、豹の如き瞬発力を得る。少女の攻撃は少し軌道が読みづらいものの、今のリンタロウにとって捉えられないわけじゃない。
 戦ったことのない、素直な軌道だ。単純で、いや、少女の中にも何か考えがあるのかもしれないが、それをいきなり放り出された戦闘で即座に反映できるといったらそうじゃない。戦いとは、慣れである。傭兵であるリンタロウはよく分かっていた。――痛い程に。
 悪魔の鞭尾を素早く避け、尻尾を掴んだなら先端から順にスパパパパっと細切れに刻んでいく。再生速度よりも早く、速く。何度も何度も斬りつけて、もう再生する体力も残っていないのか、遂に最期の一刀の下、少女はリンタロウに斬り伏せられた。ガツッと音を立てて倒れこむ少女。
 これまでの戦闘による消耗も大きかったが、それよりもリンタロウの言葉が少女を動揺させたのだろう。でなければ、あまりにも容易い。
「……私、死ぬの……?」
「そうっすね。骸の海に還ることになるっす」
「ふふ……案外あっけなかったわね。私の人生。ううん、もう人じゃないから、人生というのは相応しくないかしら」
「あんたは確かに『人間』だったっすよ。ちょっと、道を逸れただけで」
 その言葉に安心したように、少女は静かに息絶えた。9人もの人を喰らった『悪魔』は、確かに退治されたのだ! しかし、どうにもすっきりしない気分のリンタロウがいる。
「……戦士を倒せば武勲詩、怪物を倒せば英雄譚。此度は何も残せねぇっすね……後味の悪さばっかり残りやがる」
 リンタロウはマントを翻し、その場を去る。後始末は、他の世話焼きな猟兵たちがやってくれるだろうと信じて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『きっと君のためのワルツ』

POW   :    豪快に光と戯れる

SPD   :    軽快に光と戯れる

WIZ   :    風流に光と戯れる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幻光虫がふよふよと、まるで少女の魂を天へと召すかのように踊る。その光景は幻想的で美しく見える一方で、どこか寂しく、砦の住民を安堵と祈りへ導いた。此処は人類砦、人々の希望が集う場所。恐ろしい脅威は去ったのだ。
 今回食べられるはずだった生贄の若者は、胸を撫で下ろして大聖堂を見上げた。――神はやはり御座したのですね。感謝の一礼をして、祝いの声がする方へと向かう。神のご加護が在る限り、我らは希望を捨てませんと心に誓って。
 一仕事終えた君たち猟兵は、幻光虫と戯れても良いし、しんみりと過ごすのも、はっちゃけるのも、砦の住人と話すのも自由だ。悔いのないように過ごすと良い――。

 ※PSWを気にする必要はありません。幻光虫のことは一切無視しても大丈夫です。
ブラミエ・トゥカーズ
かくして、村を脅かす化け物は退治されました。
めでたし、めでたし…と。

大聖堂で祈っている若者を驚かせにゆく。
陽の光の届かない所には恐ろしい物がいるのだと。
故に畏れる事を忘れない様に。

病は撒かない。文明レベルから危険なため。
霧になって影に潜んで姿を顕し驚かせる。

希望を棄てぬのは良いが、次の厄は如何するのかな?
考え、抗い、負けて果てに勝利し、暗きを捕え追放し尽くすと良い。
人間こそ、最も恐るべき生き物なのだから。

人間に負け尽くした余が保証してやろう。
とはいえ、祈るだけの生き物には負けぬがな。
余も、この世界にもいるであろう目に見えぬ物共はな。

それはそうと、血を貰えぬかな?仕事をして喉が渇いた。




 斯くして、村を脅かす化け物は退治されました。めでたし、めでたし……と。ブラミエは激戦を終え、口笛でも吹きたくなるのを止め、一路、大聖堂で祈りを捧げている若者を驚かせに向かった。陽の光が届かない所には恐ろしい物が居るのだと。故に畏れる事を忘れないように。
 文明レベルで危険が及ぶ為病は撒かず、ただの霧状になって影に潜み、懇々と祈る若者の下からぐわっと這い上がるように顕れ驚かせる。若者は驚きのあまりその場に尻もちをついて、何が起こったのか事態を呑み込もうと必死だ。
 よく見れば、砦の中から伺っていた際、あの煩わしい蝙蝠を叩きのめし、悪魔を退治しに向かった女ではないか。若者はホッと一安心しつつも、何故こんなことをするのか疑問に思う。それを見透かしたようにブラミエは語る。
「希望を棄てぬのは良いが、次の厄は如何するのかな? 考え、抗い、負けて果てに勝利し、暗きを捕らえ追放し尽くすと良い。人間こそ、最も恐るべき生き物なのだから」
 それはブラミエという妖怪が直に味わってきたことだった。だからこそその語り口には凄みがあったし、なんなら説得力すらある。若者は小さく「……はい」と頷いた。ブラミエは未だ霧状だった足元まで確りとこの身をこの世に表し、無表情のまま淡々と続けた。
「人間に負け尽くした余が保証してやろう。とはいえ、祈るだけの生き物には負けぬがな。余も、この世界にいるであろう目に見えぬもの共はな」
 目に見えるものだけを恐れるな。姿を持たぬものだっている、形を如何様にも変えられるものもいる。何より恐ろしいのは悪意と、悪を自覚しない蹂躙者である。そんなものがこの世にはごまんといて、未だ潰える兆しはない。だからこそ、ブラミエはよぅく言い聞かせた。
「この砦は我々の希望です。此処で産まれた新しい命だってあります、それを摘み取らせはしません」
「言うではないか。では余は、その希望とやらが奇跡を起こすことを願ってやろう」
「……ありがとうございます」
「ところで、話は変わるのだがな」
 ブラミエはぐっと若者に近づき、その妖艶なる翠の瞳で若者の目を覗き込んだ。ごくりと息を飲む若者に、ブラミエは普段と変わらぬ声音で呟く。
「ちと血を貰えぬかな? 仕事をして喉が渇いた。ほんの啜るだけだ」
「!! ……ヴァ、ヴァンパイアだったのですか……!?」
 再び驚愕する若者に、この世界の吸血鬼とは似て非なる存在であることを説明すると、若者は納得はせずとも命の恩人の頼みとあれば仕方ないと、首は流石に怖いので手首を差し出した。其処に牙を立てたブラミエは、本当に喉を潤す程度啜って、腕を解放した。若者はあからさまに安堵していたのは言うまでもない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
…救えなかったけど
安らかは贈るぜ

火葬で葬送
他に延焼させない

幻光虫の動きをワルツに見立てて合わせた
軽やかな旅立ちの旋律を即興で
静かな眠りを願う


仲間を守れなかったこと
砦が安全でなかったこと
辛い現実が諦観を生んで
抗う意思を
対抗の決意を揺らがせちまうかもって心配してる

余計なことかもだけど
住民達の声や思いに耳を傾けて
勇気づけてやりたいぜ

ああ辛いよな
そして、あんたたちの目的は
吸血鬼の支配から脱することだろ?
ならその道行がどんなに辛くても
歩みを続けなくっちゃな
進むことでしか
望む未来には届かないんだから
俺達も力になるぜ

許可が出たら大聖堂の壁に
炎で炙り9人の名を刻む
9人の英雄を称える勇壮な曲を奏でる




 少女の遺体が心無い者に壊される前に、ウタは少女を抱きかかえ大聖堂を出ると、砦の住民がが見守る中そっと火をつけた。みるみるうちに燃え上がる遺体、他に延焼しないように気を付けて。救うことは出来なかったけど、安らぎは贈れるように、幻光虫の動きをワルツに見立てて合わせた軽やかな旅立ちの旋律を即興で奏で、静かな眠りを願う。
 住民は少女の遺体が灰になるまで、誰も口を開かずじっと見つめていた。この悪魔の手によって9人、犠牲になった。尊い犠牲だった。くじ引きで決めたことも、自ら志願した者もいた。誰もがこの砦にいつか救いの手が伸ばされると信じて、逝った。その祈りは、漸く通じたわけだが……決して早かったとはいえない。
 仲間を守れなかったこと、砦が安全でなかったこと。辛い現実が諦観を生んで、抗う意思を、抵抗の決意を揺らがせてしまうかもと、ウタは心配した。余計なことかもしれないが、住民達の声や思いに耳を傾け、勇気づけてやりたいと思う。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
 火葬と鎮魂歌を終えたウタに、子供が駆け寄って来て訊ねる。
「あのお姉ちゃんはどこにいったの? 天国? じごく?」
「……天国、かな。この子も、生きるのに必死だったんだ。全てが悪かったわけじゃない」
 本当は骸の海に還ったのだけど、言っても伝わることはないだろう。子供は「ふぅん」と言って、ウタに向かい「ゆうしゃさま、ありがと!」と告げ去っていった。勇者か、と自嘲気味に笑ってウタは拳を握りしめる。本当に勇者だったら、少女の魂すらも救えただろうにと。
 少女の遺灰が風に乗って消え去ると、砦の住民は堰を切ったように喜び、同時にウタへ向けて感謝の意を述べた。
「ありがとうございます。お陰でこの砦は救われました。しかし、犠牲者は帰ってきません。それだけが、辛い」
「ああ、辛いよな。でも、あんたたちの目的は吸血鬼の支配から脱することだろ? ならその道行がっどんなに辛くても歩み続けなくっちゃな。――進むことでしか、望む未来には届かないんだから。俺達も力になるぜ」
 力強いウタの言葉は、住民たちの心にじんと染みわたった。これからどんなに辛く険しい路であろうとも、決して希望を失わず、逞しく生きていこうと誓える程には。
「なぁ、犠牲となった9人の名を大聖堂の壁に刻むのはどうだ?」
 ウタの提案に、砦長は是非ともお願いしますと頼んだ。ぼろぼろになった大聖堂。ステンドグラスは割れ、一部吹き抜けになってしまっているところもあるけれど、無傷の場所を探し9人の英雄の名を炎で炙り刻みつける。彼らを称える勇壮な曲に、幻光虫もまたくるくると舞い躍った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水桐・或
奪われたら奪い返される
その当たり前が成っただけさ
とはいえ……

悪魔の少女のための墓を作ろう
ここじゃあ砦の人たちに嫌がらせそうだし、どこか静かな所が良いかな
幻光虫はどこから来たのだろう?
虫に左手で触れて、生物の帰巣本能の性質を己の脳に獲得
それで住み処を探してみよう
その傍に墓を建てたら、少しは安らかになってくれないかな?

なんでこんなことをするかって?
僕は人から奪う時、せめて慎ましくありたいと思っているのさ
申し訳ないという態度を忘れたくない
それで君が僕を許すわけではないだろうけど

……僕と君は違うと言ったけれど、いつか奪い返されるのは僕も同じだろう
君には嫌われてそうだから、できれば地獄で会いたくはないな




 何事も奪われたら奪い返される。物も、命も、希望も。その当たり前が成っただけ。とはいえ、どこか遣りきれない想いの或がいることもまた事実。心はそうすんなりと、敵を倒しました! はい終わり! とはいかないのだ。此処に至るまでに何人もの犠牲が出ているなら尚のこと。
 或は、少女の為の墓を作ろうと考えた。しかし、砦の中に作ったのでは住民たちに嫌がらせを受けそうな気もするし、どこか静かな場所が良いと悩む。ふと、目の前を飛んで行く幻光虫が目に入った。
 ――この幻光虫はどこから来たのだろう?
 左手で優しく触れて、生物の帰巣本能の性質を或の脳は獲得する。そのまま歩き出した、この柔い光を放つ虫の住処を探す為に。その傍に墓を建てたら、少しは安らかになってくれないかな? と或なりの思いやりを込めて。
 砦から出て少し歩いたところに、一際光を放つ、大木の窪みがあった。此処が幻光虫の本来の巣穴なのだろう。砦の中へ幻光虫が行くのは、僅かな食べかすや花の蜜を求めてか。ともかく、周辺になにか目印になりそうな物がないか探す。適当な石を丸く大木の根元に並べて、簡素な墓の出来上がり。
 何故こんなことをするかと言えば、或は人からなにかを奪う時、せめて慎ましくありたいと思っているから。申し訳ない、という態度を忘れたくない。それで命を奪われた少女が或を許すかと問われたら、甚だ疑問ではあるけれど。
 何匹もの幻光虫が並べられた石の上を歩く。まるで追悼の意を表すかのように、少女が救われることを祈っているように、ぽつりぽつりと集まってくる。その光景は幻想的で……少し哀しい。
「……僕と君は違うと言ったけれど、いつか奪い返されるのは僕も同じだろう。君には嫌われてそうだから、できれば地獄で会いたくはないな」
 等と或が口にすれば、ひらりと舞い上がる幻光虫たち。この声が届いているのか、だとしたらもう一言二言、言ってやろうか。
「大体、足りないくらいだよ。君は9人から奪った。そして自分は1回しか死んでない。釣り合いが取れないよね。それに……君が死んだからって、君が喰らった9人は帰ってこないんだ。永遠にね。それなのに君ときたら、骸の海で再びこの世界に現れる時を待っているんだろう? 不公平だ」
 唇を尖らせる或。返事はどこからも返ってこない。大木に群れる光たちが、或の周りにふよふよと漂っては去っていく。否定も肯定もない。でも、それでいい。結果としてこの砦が救われたこと、それに間違いはないのだから。
「じゃあね。――」
 そういえば名を聞く暇も無かったなと思い出し、しかし名前くらいは奪わないでやろうと、或は静かに砦へと戻った。其処では喜び、哀しみ、賞賛、後悔……色んな感情が渦巻いていたのを、或は忘れない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・ライム
……神のご加護、ね
私、神様のせいで人生メチャクチャになったのよ

それに実は私、この間まで悪い神様だったの
――って言ったら信じてくれるかしら?
(元生贄の若者に微笑みかけながら

カマドGを砦の広場に顕現させて、砦の住人たちと交流するわ
どこの世界も鋼鉄の巨大ロボは注目されるはずよ

集まった住人たちへ、私から話を

心の拠り所を求めることは間違っていないわ
この不条理な暗黒の世界ならば尚の事よね

でも、忘れないで
神様は直接あなた達に施してはくれないの
自分達を救うのは、いつだって自分達の努力の賜物よ
故に、これからは自衛手段を考える必要があるわ

さしあたって砦の強化ね
今回の襲撃で損壊部分は?
カマドGで補強工事を申し出るわ




 今回の贄となるはずだった若者が神に祈る中、隣に立ったライムは皮肉めいた口調で話しかけた。いや、ライムの生い立ちを考えれば実際多少の皮肉も混じろうというもの。
「……神のご加護、ね。私、神様のせいで人生メチャクチャになったのよ。それに実は私、この間まで悪い神様だったの――って言ったら、信じてくれるかしら?」
 ニィと口角をあげるライムに、若者はなんとも言えぬ顔をした。この少女が神だったというのも、神が人の人生を狂わせるのも、信じがたい様子で。その反応に声も出さず笑って、大聖堂を後にするライム。信じるか信じないかは、全て誰か次第なのだ。
 砦の広場にカマドGを顕現させれば、住人はわらわらと集まってきた。特に子供とその親が。どこの世界でも鋼鉄の巨大ロボは童心を擽らせるのか、子供たちは「なにこれー!」「でっかーい!」と騒いだりカンカンとカマドGを叩いてみたりしていた。
 交流するにはもってこいの状況になった。砦の未来を担う子供と、その彼らを育む保護者たちへ、ライムはカマドGの肩に乗って熱弁する。
「みんな、聞いてくれる? 心の拠り所を求めること、それ自体は何も間違っていないわ。この不条理な暗黒の世界ならば尚のことよね」
 でも、忘れないで。先程まで朗らかだったライムの表情が、声音が、真剣なものに切り替わる。子供たちは相変わらずカマドGの周りをまわったりしているけど、保護者たちもまた真摯に言葉の続きを待つ。
「神様は直接あなた達に施しを与えてはくれないの。自分達を救うのは、いつだって自分達の努力の賜物よ。故に、これからは自衛手段を考える必要があるわ」
 納得したようにこくんと頷く保護者たち。しかし、自衛といっても何が出来るだろうか。今回の一件で砦の一部は壊れてしまったし、暴れずとも強力な敵が現れたら抗うことなど到底出来やしない。住民たちがあーでもないこーでもないと言う中、ライムは率先して指揮を執る。
「さしあたって砦の強化ね。今よりもっと堅牢で、尚且つ目立たないようにするのが良いと思うわ。今回の襲撃での損壊場所は? そこから補強工事をしていきましょう」
 このカマドGがね! と付け加えれば、子供たちは「わーっ!」「すごーい!」と目を輝かせる。ライムも自慢のスーパーロボットがこんなに人気なら、悪い気はしない。しかし、動くにあたっては危ないので「みんな退いてー!」と指示しながら、損壊箇所に向かう。
 石と木で出来た簡素な砦だ。これでコンクリートでもあればどんなに楽で丈夫なものが作れたか悔やまれるが、元来その世界にないものを持ち込んで生態系を崩すのは宜しくない。ライムとカマドGはこつこつと丁寧に、石垣をくみ上げ、ついでに家屋の修理もしてまわったとか。
 助けてくれない神様より、助けてくれる人間の方が余程ありがたいと実感した住民達だったとな――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…どうやら無事に終わったみたいね

…ならば後は10人の犠牲者の魂を鎮めるだけ

…後少しだけ、この大聖堂を使わせてもらうわ

左眼の聖痕に魔力を溜めてメルスィン・ヘレルの魂を暗視し、
大鎌に降霊した9人の犠牲者の魂を解放しつつUCを発動
彼らの魂を浄化し"光の精霊"化して召喚する

…このまま現世に死者の霊魂を残しておく事はできない

…だけど、残された人達に別れの挨拶をする時間ぐらいはあるわ

…どうか心安らかに眠れるように、最期の時を過ごして来て

全て終わったら大聖堂で祈りを捧げるわ

…死という罰を受けて貴女の罪は赦され、その魂は浄められた
最期は悪魔としてではなく人として神の御許に向かうが良い




 少女の肉体は灰となり土に還った。では魂は、一体どこへ向かうのだろう。天国か、地獄か、再び骸の海か。それともどこにも行けずこの世を彷徨うのか。リーヴァルディは大聖堂の中央、神を象った像を見上げる。
「……どうやら無事に終わったみたいね」
 ならば後は、9人の犠牲者の魂を鎮めるだけ。あと少しだけ、この大聖堂を使わせて貰うことにする。左目の聖痕に魔力を溜めて、メルスィンの魂を暗視し、大鎌に降霊させた9人の犠牲者の魂を解放する。彼らの魂を浄化し、光の精霊と化してこの世に再び呼び戻す。
 ――このまま現世に死者の霊魂を残しておく事はできない。……だけど、残された人達に別れの挨拶をする時間くらいはあるわ。……どうか心安らかに眠れるように、最期の時を過ごして来て。
 リーヴァルディの計らいに、光の精霊たちは幻光虫に紛れてふわっと大聖堂を飛び出した! 向かうのは家族の元、恋人の元、大切な人の元。ユーベルコードによって昇華された魂は24時間継続する。その間に、束の間だけど安寧の時を過ごして欲しいと思った。犠牲となった9人の為だけじゃない、その彼らが向かった先の者にとっても、大事な時となるはずだから。
 己にやれることは終わったと、リーヴァルディは大聖堂、神象の前に跪き祈りを捧げる。それは9人の犠牲者、怯える日々を過ごした住民、そしてメルスィン、この砦で起こった出来事に関わる全ての者に対しての祈り。
「……死という罰を受けて、貴女の罪は赦され、その魂は浄められた。最期は悪魔としてではなく、人として神の御許に向かうが良い」
 リーヴァルディは、メルスィンの魂が天国へ行くことを望んだ。哀れみでも、神へ責任を押し付けたわけでもない。本心からメルスィンが救われることを願って。幻光虫が一匹、リーヴァルディの指に止まる。小さな光だ、あっけない程弱弱しくも、沢山集まれば照明になる程度の光はある。
 この虫を、メルスィンは嫌がることもなく受け入れていた。それはきっと、本来光の中で生きたかったからなのだろう。物理的な光に限らない。日陰者な暮らしではなく、誰かに必要とされたり、受け入れてもらえたり。そう言った人の心の灯火に、メルスィンは触れたかったのかもしれない。
 ――同情はしないわ。貴女から先に、人間を裏切ったのだから。貴女に本当に必要だったのは、対話だったのでしょうね。カッとなることなく、ただ「果実と水を」の一言があれば良かった。そうすれば今頃、また違った未来があったのでしょう。
 もう何もかも遅すぎるけど。メルスィンを討ったところで犠牲になった9人が蘇るわけでもない。リーヴァルディ達猟兵は、悩みのタネを解決したに過ぎず、あと出来る事と言えば、住民の心に寄り添うくらい。でも、それで良い。それで贄より救われた人間が、心の傷を癒され救われる人間が、数多く居るのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レティシア・ヘネシー
ギャング達と共に砦の復興の手伝いに尽力した後、大聖堂に戻ってあの子の亡骸があった場所にゴロンと寝転がる

正直かなり悔しい。本当はあの子に手を取って欲しかったな、と

ふと、神に祈りを捧げているであろう青年と目が合う。青年はレティにお礼と共に「貴女達は神からの遣いだったのですね」なんて言葉をかけてきた

思わぬ言葉に返答に困る。よりによってレティに言うのね

気まずくてしどろもどろになってると、ふとあの子と話していた時の困り顔が思い浮かぶ。あの子もこんな気持ちだったのかもしれない。ちょっと悪い事しちゃったかな

青年に零す。本当はあの子も助けたかったと

もし生まれ変わりがあるのなら、

次こそはちゃんと友達になりたいな




 砦の復興の手伝いにスクラップギャング達を回し、自身も忙しなく動き回った。材料集め、資材を切ったり組み合わせたり、石垣を積み上げたり。一日やそこらで終わる量じゃないと踏んだレティシアは、一息吐くために大聖堂に戻る。そしてメルスィンの亡骸があった場所へ、ゴロンと寝転がった。
 ――正直、かなり悔しい。本当はあの子に手を取って欲しかったな。
 と、思わずにはいられない。レティシアの全身全霊の本心は、メルスィンの心に少しでも届いたのだろうか。結果としては相容れなかったけど、本当はメルスィンだって、もう後に退くことなんて出来なくて、半ばヤケになっていたのかな、とも考える。
 ぐるぐると渦巻く思考。その時、神に祈りを捧げていた若者と目が合った。若者はレティシアに感謝の意を述べると共に、意外な一言を投げかけてきた。
「貴女達は神からの遣いだったのですね」
「…… ……」
 思わぬ言葉に返答に困り、返事が出来ない。よりによって、レティシアに言うとは。気まずくてしどろもどろになっていると、ふとメルスィンと話していた時の困り顔が思い浮かぶ。
 ――あの子もこんな気持ちだったのかもしれない。ちょっと悪い事しちゃったかな。
 レティシアはぽつりと若者に零す。「本当はあの子も助けたかった」と。若者は驚いて目を見開くも、勝手に何か納得したのか、「それが神の遣いである貴女方の意思なれば」と答えた。悪魔すらも救済する、それが神の御意思なら従っていた、ということなのだろう。
 全員の総意ではないかもしれないけど……少なくとも、レティシアにとってはそうだった。ひとりぼっちで人間を諦めた少女に、何かしてやりたいと思って辿り着いたのが、友達になることだった。
「もし生まれ変わりがあるのなら、次こそはちゃんと友達になりたいな」
 若者は「流石言うことが違いますね」なんて感心していた。冗談で言ってると思われているのだろうか。だとしたら失礼な。レティシアは本心からそう願っている。寝転んだまま手を天に向け、ぐっと握りしめた。これは決意の証。二度とこんな悲しい事件が起こらないように、起こったとしても、相手を救えるように、と。
 拳に幻光虫が2~3匹寄ってくる。淡い光がレティシアの決意を応援しているようだった。改めて上を見る。大聖堂の上方には、沢山の幻光虫が集まって、光のカーテンを生み出していた。奇しくもそれは戦闘開始直後と同じ光景で、レティシアは少し、哀しくなる。
 でも、此処で立ち止まっているわけにはいかない。世界にはレティシアを求める声が至る所にある。それはオブリビオンの声かもしれないし、助けを求める無辜の民のものかもしれない。それらにも耳を傾け、話が通じそうなら出来るだけ話そう。何も言わず、ただ痛めつけるなんて、レティシアの流儀じゃない。
 「私は人間じゃないから。ただの人間よりは話せるよ!」、そう笑顔を浮かべる日も遠くない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白峰・歌音
(聖堂の中を見据えながら、まだ痛みが残ってる部分に手を触れて)メルスィン、お前の痛みと想い、受け取ったぜ。
もし生まれ変わるって事があるんだったら、やっぱりこの世界で生まれるんだろうか?
もしそうなら…次はこんな悲劇の連鎖が起きないような世界にして見せるぜ?
人間だったら、優しさを分け与えられるような余裕がある、そうでなかったら…優しさをもらえるような温かい世界に。神に祈らなくてもみんながみんなへ救いを紡げる世界に。
お前の無念を、この世界を暗く覆った奴にぶつけてみせるからな、必ず。


アドリブ・共同OK




 聖堂の中を見据えながら、まだ痛みの残る部分に手を触れて、歌音はきりっと神の象を見上げた。そしてじっとりとその痛みと共に想う。
 ――メルスィン、お前の痛みと想い、確かに受け取ったぜ。
 もし生まれ変わることがあるのなら、やはりこの世界で生まれるのだろうか。この陽光のない、常闇の世界で。誰もが等しくひもじく、特権階級と称する支配者たちだけが潤うこの冷えた世界に、また。
 ――もしそうなら……次はこんな悲劇の連鎖が起きないような世界にして見せるぜ? 人間だったら、優しさを分け与えられるような余裕がある、そうでなかったら、優しさをもらえるような温かい世界に。神に祈らなくても、みんながみんなへ救いを紡げる世界に。
 歌音の言う事は半分は正しいが、半分は間違っている。人は同情や憐れみから、または愛しさや下心から優しさを向けることはある。しかし、それは相手を見下している時だ。相手が圧倒的強者であった場合、その優しさは畏怖へと変わり、人は従属の道を選ぶ。
 だから今回起こった悲劇も、少女が『悪魔の姿』をしていたから人々は恐れ戦き、話を聞くことすらせずただ拒絶した。そのショックは、哀しみは、メルスィン本人にしか分からないだろう。姿の違いが、こんなにも会話を困難にさせるなど、思ってもいなかったはずだ。
 ――弱い者ほど徒党を組む。当たり前だよな、一人でいるより寂しくない。隣で笑い合える仲間がいるってのは、それだけで心強い。お前にも、そんな仲間がいたなら、あるいは……。
 もしもの話だ。既に起こった出来事に対して、ifに意味はない。明瞭な事実が、此処に深い爪痕を残していったことは明白。
 住民は再び、安らかな夜を過ごせるようになるだろう。でも、油断してはいけない。死は、悪意は、無邪気な暴力は、この世界のどこにでも存在している。それらに立ち向かえるよう、住民を指導するのもまた猟兵の役目。
 その場を走り出した歌音は、砦の復旧作業を行うみなのもとへ駆ける。今自分に出来ることといえばそのくらいだから。でも、いつか。
 ――お前の無念を、この世界を暗く覆った奴にぶつけてみせるからな、必ず。
 誓いを立てて、歌音はもういない少女を想いながら復興を手伝った。猟兵が居る分人手は増えたが、損壊は大きい。特にこの美しかった大聖堂の飛び散ったステンドグラスなんて、直すのにだいぶかかるだろう。それでも住民は、屹度この大聖堂を元の姿に戻すのだろうと思った。
 神の遣い、なんて烏滸がましいけど。住民の中には自分たちのことをそう思っている者もいるようだから。夢は壊さないでやろうと、その話題を振られてもうんとも言わずはぐらかし、手を動かす。何かやってなきゃ、この空虚は埋まらない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
……終わった、のかな
戦いが終わったという実感が湧かず
彼女が今までいた場所を見つめ

砦の若者の声に我に返って
取り繕うに微笑みを浮かべて
彼の姿が見えなくなるまで見送ろう

…また、生き残ってしまったね
きみを失い、きみを得た時
人々に光をもたらせると誓った感情に偽りはない
だけど、いつ掻き消えても構わない…という気持ちも本心なのだよ…

だから、自分の身を投げ出すような戦いをするのかもしれない
危険であればある程、自分の生を実感することができ、その瞬間がいっそ愉しいとすら感じてしまう…

『博打打ちが相方になっちまうと大変だな
まあ、オレがいる限り死なせねぇからさ』

…うん、死なないよ
きみと生きると決めたのだから




 戦いが終わったという実感が湧かず、少女が今までいた場所を見つめるセツナ。ぽつり、零れた「……終わったのかな」という呟きに、誰からも返事はない。戦いは確かに終わったが、しかし、少女を救うことは最期まで出来なんだ。
「もし、勇者さま」
「え、あ――私かい?」
「勿論! 今回は本当にありがとうございました。お陰で私は……この砦は救われました」
「……」
 若者の声に我に返り、かけられた言葉に取り繕うように微笑みを浮かべ、若者が去ってゆくのを見送った。勇者、だなんて。そんな称号、私には相応しくないと、セツナは白手袋の上から指を噛みしめる。確かに『悪魔』を一体倒しただけで多くの命が救われたけど、数の問題ではない。
 セツナは今回の戦いを振り返る。思えば、ギリギリの橋を渡ったものだ。相棒もよく反応してくれた。
 ――……また生き残ってしまったね。きみを失い、きみを得た時、人々に光をもたらせると誓った感情に嘘偽りは一切ない。だけど、いつ掻き消えても構わない……という気持ちも本心なのだよ。
 だから、自分の身を投げ出すような戦いをするのかもしれない。危険であればある程、自分の生を実感することができ、その瞬間がいっそ愉しいとすら感じてしまう……。この感情は罪か、愚かか。自問自答しても得られるものは何もない。その代わりにゼロが応えてくれる。
『博打打ちが相方になっちまうと大変だな。まあ、オレがいる限り死なせねぇからさ』
 その言葉に静かに頷くセツナ。ゼロが言うなら間違いない。と、セツナはゼロに全幅の信頼を寄せているから。だから、死なない。死ねない。
 ――きみと生きると決めたのだから……これからもよろしく頼むよ。
 お願いするセツナにゼロはクククと笑って、セツナの背を叩く。そこには「当たり前だろ」と「なにを今更」が混じっていて、ゼロは面白くなってしまったのだ。セツナもまたその心意気を受け入れ、ほわっと柔らかい……本物の笑みを返す。
「ありがとう、ゼロ。当分死ぬ心配はなさそうだね。今度はもっと大胆にいこうか」
『馬鹿言え、フォローする方の身にもなれってんだ。今回だって結構危なかったんだからな?』
「はは、それでも何とかしてくれるのがきみだろう」
『世辞で浮かれるようなタマじゃねーぞ、オレは』
 そんな軽口を叩いて、大聖堂を後にする。砦の中は少女の遺体を燃やした後の独特の匂いが、瓦礫の誇り臭さに消されていくようだった。少女が今度生まれた時は寂しい生を送らないで済むように……セツナは心の中でひっそりと祈った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ
さぁて、砦の皆さん。話をしようじゃないっすか
悪魔になってしまった少女の話を、オレっちの知る限りっすけどね

まあ、そりゃあそんなもん今更知りたくもねぇってなるっすよね
そんなの一々気にする余裕なんざこの世界にゃないっすし
もし最初からあのお嬢さんのことを知っていたとして、何も変わらなかったかもしれないっすし

それでも、あのお嬢さんの話を聞いて
もし出会い方が、接し方が違えば何かが違ったかもしれないと思ったのなら

どうか、墓を立ててやってはもらえないっすかね
1人の不幸な少女の墓を、その悲劇を忘れないためにね




 砦の住民が灰となった少女の周りに集まり、じっとそれを眺めているなか。リンタロウは誰に対するわけでもなく、全体に行き渡るような声で言の葉を紡ぐ。砦を守った勇者の有難いお言葉だと、皆顔を灰からリンタロウへと向けた。
「さぁて、砦の皆さん。話をしようじゃないっすか。悪魔になってしまった少女の話を、オレっちの知る限りっすけどね」
 予知で見させられた光景を思い出しながら、ひとつひとつ少女の生い立ちを語る。人のふりをしていたこと、先祖返り、人でありたかったこと、本当は人間など食べなくても生きていけたこと、性根はただの『女の子』であったこと……。
 住民は話を聞きながら憐れむ者もいれば、当然の報いだと言う者、悪魔であることに変わりはないと事実だけを見る者と様々だった。そして――今それを知ってどうなるとも。
「そりゃあこんなもん今更知りたくもねぇってなるっすよね。そんなの一々気にする余裕なんざこの世界にゃないっすし。もし最初からあのお嬢さんのことを知っていたとして、何も変わらなかったかもしれないっすし」
 その通りだ。実際少女の本性を知ったとしても、人間はそう簡単に自分達と異なる者を受け入れられるようには出来ていない。それは猟兵に対しても同じだ。砦を、贄を助けてくれたことに感謝こそすれど、芯から信用できるかと言われたらそうではない。謂わばポっと出の勇者だ、敵ではないが味方かは分からない。
 だからこそリンタロウは住民に問う。彼女は悪魔であったが、『悪』であったかと。人を喰らう行為は『善』とはならないこの世界で、それでも善の反対は果たして本当に悪なのかを。
「私たちはどうするのが正解だったのでしょうか」
 そんな疑問の声に、リンタロウはぐっと伸びをして回答を――いや、この場合指針か――を示す。
「正解なんて、どこにもないっすよ。既に起こった出来事に「もしも」は無意味っす。それでも、あのお嬢さんの話を聞いて、もし出会い方が、接し方が違えば何かが違ったかもしれないと思ったのなら……どうか、墓を立ててやってはもらえないっすかね」
 一人の不幸な少女の墓を、その悲劇を忘れない為に。これには住民は賛否が分かれた。リンタロウの話を聞いて同情した者からは「墓くらいなら」と声が上がるし、未だ悪魔の恐怖に怯える者は「不吉なものを残したくない」と言う。そのどちらも正しい、間違いではない。
 リンタロウは結論は住民に委ねた。砦長が決めるでも、多数決でも、犠牲者家族の意見を参考にするでも、何でも良い。ただ、出来ることなら弔いの場があればと願うだけ。そこに毎日花を活けろとか、そんな事を言う心算は更々ない。
 ――お嬢さん、あんたの行動は、確かにこの砦の住民の心を動かしたっす。良い方向にも、悪い方向にも。
 そう考えながら、そっとその場を立ち去る。議論が白熱するのは、人々が生気を取り戻した証――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…彼女に想う所はあれど、私は猟兵としての道を選んだ身。
『殺した』側である私が弔いの言葉を述べた所で響く事は無いのでしょう。

この選択が間違いであったと云う気も御座いません。
過去よりもたらされた力に抗い今を守るが我らが務めなれば。

…されど、ヒトにもヒトならざるモノにも与さぬ貴方がたならば。
彼女を一時慰める事は出来るでしょうか。


動物と話すの技能にて、幻光虫に彼女のいた場所へ光を回せるよう依頼。

貴方がたにとって、これは短い生の中での命の営みであることは承知しています。
されど、ただ一時。その営みに選ぶ場を、貴方がたを愛でた少女の…、
――メルスィン・ヘレルの眠る場と定めて頂く事は叶いませんか?




 人を喰らいし悪魔の少女……彼女に想う所はあれど、雪音は猟兵としての道を選んだ身。『殺した』側である雪音が弔いの言葉を述べたところで、響く事は無いと考える。しかし、同時に思うのだ。この選択肢が間違いであったという気は毛頭無いことを。
 過去よりもたらされた超常なる力に抗い、今を生きる全てのものを守ることが猟兵の務めなのだから。故に、後悔はない。謝る心算も、今更くどくど説教を垂れる心算もない。心にはただ、仕事を終えたという静寂が満ちていた。
 ――されど、ヒトにもヒトならざるモノにも与さぬ、しかして彼女が戯れた貴方がたならば、彼女を一時でも慰めることは出来るでしょうか。
 雪音は類稀な意思疎通能力で、幻光虫に少女の居た場所へ光を回せるように依頼した。すると幻光虫は群れを成して講壇に集まり、少女は確かに此処にいたんだと雪音へ伝える。そこへ行ってみると、一冊の本が置かれていることに気付く。
 ――そういえば、戦う前。彼女は本を読んでおりましたね。まさかとは思いますが、聖書でしょうか?
 本はそう厚くない。しかししっかりとした作りの本だ。雪音は読もうとして表紙に手をのばすが……開く前に手を止め再び講壇に本を戻した。これは彼女を形作った、最期のひとかけら。他人……長く此処に留まるでもない猟兵が、易々と手を出して良いものではないと思った。
 幻光虫は雪音のまわりをふよふよと漂い、まるで『あの子のようにあなたも私達と遊んで!』と語り掛けているようだった。此処にいる幻光虫は、屹度少女にめいっぱい愛でられていたのだろう。であれば。
 ――貴方がたにとって、これは短い生の中での命の営みであることは承知しています。されど、ただ一時。その営みに選ぶ場所を、貴方がたを愛でた少女の……、――メルスィン・ヘレルの眠る場と定めて頂く事は叶いませんか?
 想いに応えるかの如く、幻光虫はわっと広がり、神像の唇と講壇を行き来した。それは恐らく、これは雪音の「そうであって欲しい」という願いかもしれないけれど、神は少女を救い給うたということを現わしているのだと感じた。
 最後まで生きることを諦めなかった少女。彼女は天には行けない、地の底にも行けない。再び骸の海へと還り、今度は違う形でこのダークセイヴァーに顕現する時を待つのだろう。でも、今回は、このヒトにも悪魔にもなりきれなかった少女は、他と違うと思いたい。
 ――メルスィン・ヘレル。私はヒトとしてその名を覚えておくことを約束しました。ですから、どうか貴女も忘れないで下さいませ。貴女という存在を認めるモノが、確かに居たことを。
 さざめく幻光虫の舞に身を任せ、雪音はかつて此処にいた少女の名残を味わい、静かに大聖堂を後にした。躍る幻光虫は、まだ少女がそこにいるかのようにいつまでも光の波を作っていたという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィ・アークレイズ
…神サマ…ね。本当に神が居るンなら、アイツにももうちょっとマシな道を選ばせてやれたんじゃねェのかよ。
喰らうって行動は生きるってコトだ。美味いモンを喰えるってコトは幸せなコトだ。それを全否定されるってのは、遠回しに「死ね」ってコトなんだよな。
じゃあアイツは悪魔に返った時点で「死」…ってコトなのかよ。

……いや、もう終わったコトだな。オレは仕事をした、それだけだ。
ずるずる引き摺ンのは性に合わねーし、それより腹減ったわ。
今日は美味いピザが喰いてェな。
とびきり美味くて、とびきりデカイのが良いぜ。




 ふん、とその辺にあった瓦礫を蹴って、リリィは砦に寄りかかった。想うのはひとつ、あの名前も聞けなかったあの少女のこと。身体に仕舞いこんだ武器に変調がないか確かめて、ふと空を見上げた。幻光虫がぽつりぽつりと光っているのが見える。確か現地では『神の遣い』なのだっけ。
「……神サマ……ね。本当に神が居るンなら、アイツにももうちょっとマシな道を選ばせてやれたんじゃねェのかよ」
 喰らうという行動は、即ち生きるということに直結する。美味しいものを喰えるということは、とても幸福なことだ。それを全否定されるというのは、遠回しに「死ね」と言っているのと同じ。では少女は、悪魔に返った時点で「死」……ということになってしまう。
 それじゃああんまりじゃねェか、と。リリィは舌打ちでもしてやりたくなった。だってそうだろう、全ての生きるものは何かを喰らう。獣も、鳥も、人も、家畜ですら。その『当たり前』を拒まれたなら、誰だって怒りが湧く。虚しくなる。哀しくもなる。
「いや、分かる。この世界がそんな優しくねェことくらいよ。でもよォ、こんな結末は誰だって望んでなかったはずだろ?」
 少女は生きたかった。砦の住民も生きたかった。それでも互いにもう少し歩み寄れたなら、とも思うが、もう終わったコトだ。リリィは与えられた仕事をした、それが事実で結末。もう覆ることはない。犠牲者が戻ってこないのと同じように。
「あーあー。ずるずる引き摺ンのは性に合わねーし、それより腹減ったわ」
 あれだけの激戦を繰り広げたのだ。運動量に見合った空腹感が込み上げてきても何ら不思議ではない。如何にサイボーグ、身体の8割が機械化されていようとも、燃料は必要である。リリィは何を食べようかと考えて……嗚呼そういえばと思い出す。
「ピザだ。今日は美味いピザが喰いてェな。それもとびきり美味くて、とびきりデカイのが良いぜ」
 ――今度生まれくるアンタに紹介する予定のピザ屋だぜ。そりゃもう美味すぎて、人の味なんか忘れるくらいだ。オレが保証するんだから間違いない。あの世で涎垂らして眺めてな。
 リリィは「よっ」と地を蹴り、砦を後にする。一仕事終えた後のメシ程美味しいものはない。折角だ、今日は豪勢にサイドメニューにポテトと唐揚も付けて、盛大に供養してやると決めた。
 この世に溢れる美味しいものを、リリィは沢山知っている。ジャンクフードは勿論、サラダだって美味いし肉も魚も果実もたまらない。少女はどれだけの味を知って、そして知らずに逝ったのか定かではないが……少なくとも、極上のピザは知らないだろう。
 ――アンタが喰えなかった分まで、オレが喰っておいてやるからよ。今度は上手く生きれるように、神サマとやらに頼んどくぜ――。





 ――これはつい最近あった出来事。とある少女は小さな村で、慎ましく過ごしていました。少し人と違うところがあるとすれば、蝙蝠のような翼と、黒曜の角、尻尾が生えているくらい。
 少女は自分が人と違うことを認識していました。だから、『違う部分』を隠して、ひっそりこっそり生きてきました。でも、そんな少女に悲劇が起こります。
 先祖返り。太古の悪魔の血が突如暴走し、少女は溢れ出る力を抑えきれず『違う部分』を村人に露呈してしまいました。今まで優しかった村人達は、掌を返すように少女に石を投げ、呪いの言葉を浴びせます。
 少女は村人たちに言います。「私は何も変わってない! 信じて!」その声は誰にも届きません。遂には少女を殺めようと村人たちは武器、といっても農具などだけれど。それを構えて。
 もう言葉は通じないのだと、少女は哀しくなりました。今まで慕ってきた村人、少ないけど居た友達。それら全てに裏切られたような気持ちになり……そこから先のことは覚えていません。
 気付いた時、村は真っ赤に染まり、死の匂いが充満していました。しかし、どうしたことか、先程まで感じていた哀しみが一向に沸いてこないのです。少女は不思議に思いながらも、かつての故郷を後にしました。
 それから数日。そろそろお腹もすいてきた頃。少女は大きな翼で上空を翔けていると、まぁるい形の砦を見つけます。そこには人も見えました。丁度いい、食べ物を分けてもらおうと、少女は降り立ちます。
 「お腹がすいて死にそうなの」少女の言葉に、砦の住民は震えあがりました。この異形の少女は、自分たちを喰らうつもりなのだと、勝手に推測したのです。
 「私達はあなたの食糧じゃない!」少女は何を言われているのか分かりませんでした。人間が食糧のわけがない……そう思っていたのに、いざ言われてみると、人間という生き物がとても美味しそうに見えたのです。
 此処でも少女は『普通とは違うこと』で拒絶されました。人々は少女を『悪魔』と罵ります。でも、少女は既に先祖返りをした身。普通の人間から見れば、確かに『悪魔』だったのです。
 ですから、少女は『普通である』ことを諦めました。対話を諦めました。人間を辞めました。「そんなに言うなら」と、悪魔らしく振舞おうと決意したのです。
 そうして9人の砦の住民が犠牲になりました。みな少女の胃袋の中へ納まり、糧となっていきました。少女は腹は満たされても、どこか空虚な気持ちを抱えたまま過ごしていました。
 今の少女の友達と言えるのは、配下として召喚したワイリー男爵と名乗る小うるさい蝙蝠と、僅かな光を放つ幻光虫だけ。その光を頼りに、少女は砦の中心にある大聖堂で本を読んでいました。
 その時、扉が勢いよく開かれます。それは開戦の合図。少女を退治しようとした、勇者たちの姿です。少女は面倒臭いなと感じると共に、ついにこの時が来たかと覚悟しました。
 長いようで短い戦いの中で、少女は自分について再び悩みました。考えました。そして最期には『人間』であったことを思い出し、静かに入滅しました。
 少女が読んでいた本のタイトルは『昏き翼のフェアリーテイル』。子供向けの、悪魔には天罰が下るという内容の本でした。しかし、少女の辿った結末と本の結末は少し違います。
 それは、少女は満足して逝ったこと。悪魔ではなく、最期は人として死んだ少女は、いつか必ず救われる日が来るでしょう……。

【おしまい】

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月23日


挿絵イラスト