財宝妖精の黄金像
酒場『アジュール』の扉を開くと、挨拶もせずにカウンターの端の席へと座る。
落ち着いて一息つくと同時に、注文するどころか声をかけるよりも前に、店主が無言でなみなみと中身を注いだジョッキをどんっと置いていく。
それが、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)にとって、見慣れたいつもの光景だったのだが。
その日は、ジョッキが出てこなかった。
「ん?」
不思議に思って視線を向けると、店主でありこの酒場と同じ名で呼ばれるガタイの良い男が、じっと夏梅を見ていて。
「……『白鷺』」
「何かあったのかい?」
呼ばれた名に、夏梅は表情を引き締めた。
そのまま店主は僅かに難しそうな顔をして、夏梅の後ろへ、すっと目を流した。
その視線を辿るように夏梅が振り返ると。
そこにあったのは、空のテーブルと4つの椅子。
いつもなら、夏梅とも顔なじみとなった常連客3人組が座っている席だった。
酒と賭け事が好きで、力自慢のヴァン。
酒に弱くてすぐ赤くなる、背の高いニュアージュ。
調子の良い、小柄で下っ端気質のエール。
ドラゴンには歯が立たないけれども、そこそこ腕の立つ冒険者グループだが。
空席から、そして店主の視線から察した夏梅は、1つだけ問う。
「行先は?」
「天空城」
「分かった。任せときな」
それだけの言葉を交わすと、夏梅はカウンターから立ち上がり、酒場を後にした。
「群竜大陸を探してる間に、天空城があったのを覚えているかい?」
猟兵達を集めた夏梅は、そう話を切り出した。
空飛ぶ巨岩群に囲まれた浮遊する城。
「そこにある財宝に挑んでいた冒険者パーティーが、ちょいと危ないことになってる」
古代帝国の財宝を巡る争いは、冒険者同士なら日常茶飯事なのだろうが。
犠牲となった冒険者『ゴールドゴーレム』が加わったからさあ大変。
さらに、猟書家『財宝妖精ブラクテ』も財宝を狙っているようで。
「優秀な冒険者達とはいえ、猟兵ではないからね。オブリビオンには敵わない。
何とか逃げてやり過ごそうとしているようだが……発見されるのも時間の問題だ」
だから、助けてやってほしい、と夏梅は言う。
それに、冒険者達は、財宝を探したり逃げ回ったりで、天空城の内部構造には詳しくなっているようだから。その協力を得れば、敵を罠にかけたり、逃げ場を奪ったりと、有利に戦いを進めることができるかもしれない。
「あと……その冒険者達とはちょいと顔見知りでね」
それも頼む理由なのだと苦笑を見せてから。
いつもの不敵な笑みに戻った夏梅は、猟兵達を送り出した。
「よろしく頼むよ」
「うふふ。財宝いっぱい、黄金もいっぱい」
天空城の中を、ふわりふわりと財宝妖精ブラクテが舞う。
弾む心そのままに。嬉しさを溢れさせながら。
「財宝はまだあるかしら。どこにあるかしら」
迷路のように入り組んだ城の中を、適当に飛んで行く。
そこは先ほど通ってもう探した場所なのだけれども。
「財宝はどこでワタシを待っているのかしら」
欠片も気にせず、ブラクテはふわりふわりと楽し気に舞う。
だって、この天空城にいるのはブラクテだけではないのだから。
財宝を狙う冒険者達が来る。
天空城の中を彷徨う元冒険者達がいる。
そして、だからこそ。
「新しい黄金がまた増えているのかしら」
無駄足を踏んでいる今この時でさえ、ブラクテには必要な時間。
何しろ、待てば待つほど、天空城の中に黄金像が増えていくのだから。
「本当にこのお城は素敵ね」
ブラクテは嗤いながら、ふわりふわりと舞い踊った。
佐和
こんにちは。サワです。
宝探しには危険がいっぱい?
天空城の中では3人の冒険者がばらばらに逃げています。
リーダーのヴァン。
ちょっと頭脳派のニュアージュ。
身軽なエール。
彼らを助け、また協力することでプレイングボーナスが発生します。
第1章は、犠牲となった冒険者『ゴールドゴーレム』との集団戦。
触れると黄金化する呪いを持ち、侵入者を黄金像にしています。
猟兵であっても黄金像にされてしまうので、注意が必要です。
天空城内には既に黄金像にされてしまった冒険者(先述の3人とは別)もいます。
黄金像を創り出したゴールドゴーレムを倒すことで、元に戻すことができます。
第2章は幹部猟書家『財宝妖精ブラクテ』とのボス戦です。
金ぴか大好きなのでこの天空城にやってきた模様。
冒険者達の実力では全く歯が立たない相手ですが、作戦によっては役立ってもらうことができるかもしれません。
それでは、冒険の欠片を、どうぞ。
第1章 集団戦
『犠牲となった冒険者『ゴールドゴーレム』』
|
POW : 黄金の打撃
単純で重い【黄金化の呪いが込められた拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 黄金の抱擁
【相手へ抱き着く行為】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黄金化の呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 黄金の咆哮
【黄金化の呪いが込められた助けを求める叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
斬り結ぶ剣の音が響く。
大剣でヴァンが受け払ったのは、金属の音を響かせる、拳だった。
金属製の武具をつけているわけではない。
その拳が……いや、ゴールドゴーレムの全身が黄金なのだ。
「触れられなければ何とかなる、か……」
呟いて、ヴァンはぎりっと奥歯を噛む。
ゴールドゴーレムの攻撃を弾くことは何とかできる。
だが、ヴァンの腕では、ゴールドゴーレムに傷を負わせることができない。
そして、ゴールドゴーレムの攻撃を一度でも受ければ。
「……ああはなりたくないな」
ちらりと視線を流した先には、殴り倒された体勢のまま黄金像となった、別の冒険者の姿があった。
「額に宝石があるものが敵、だな」
柱の影からゴールドゴーレムの様子を伺いながら、ニュアージュは確認する。
動いてこちらを襲ってくる黄金像……ゴールドゴーレムには、どれも額に赤い宝石が輝いていた。
動かない黄金像は、恐らくはこの天空城の財宝を狙ってやってきた別の冒険者達。
ゴールドゴーレムの被害者だろう。
その動かない黄金像には触れても何の影響もなかった。
ゆえに、気を付けなければならないのは。
赤い宝石を額に抱いた黄金像、のみ。
それが分かったところで、まだ勝機は見えないけれども。
「……おっと、この先は行き止まりだったか」
ニュアージュは天空城の構造をしっかり羊皮紙に描き足し、確認しながら。
ゴールドゴーレムを避けつつ、移動していった。
そして最後の1人、エールはというと。
「うおおおおお! ヤベえヤベえヤベえってマジで!」
ゴールドゴーレムに追いかけられながら、天空城を走り回っていた。
「気が付いたら1人きりだし捕まったら黄金像だしタガーじゃ歯が立たねぇし!
もうどうしたらいいんだよオレはあぁぁ!」
半分涙目で走り行くその後を、疲れすら見せずに追いかけるゴールドゴーレム。
ちらりとエールが振り返ると、1体だけだったはずのそれが3体に増えていて。
「どうにかしてくれよヴァン! ニュアージュ!」
エールは走る脚にさらに力を込めた。
込めるしかなかった。
「誰か助けてくれー!」
セシル・バーナード
黄金かぁ。領地経営の予算に繰り入れられたら楽になるんだけど……。
持ち帰っても呪われそうだし、真面目にゴールドゴーレムを討滅していこう。
分かりやすいパワーファイターだね。次元障壁でその打撃を受け止めよう。
「カウンター」に空間断裂をお見舞いするよ。物理的防御力は意味が無いからそのつもりで。
空間断裂で割って裂いて砕いて潰して磨り潰して。
ゴールドゴーレムの数が増えたら、空間裁断でまとめて片付ける。
終始余裕を持って口笛を吹きながら。口笛に気付いた人がやって来ないかな?
やあ、こんにちは。冒険者さん。丁度今作業中なんだけど、数が増えてきてね。もっと効率的に討滅出来る方法ってない?
ま、時間かければ問題ないか。
群竜大陸へ至るために古に造られた天空城。
ところどころに破損が見られ、寂れた雰囲気もあるそこを、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)は適当に眺めながら歩いていた。
その足取りは軽く、ただ散歩しているだけに見えるほど。
「黄金かぁ」
そしてその思考は、城の中にある財宝へと向いていて。
「領地経営の予算に繰り入れられたら楽になるんだけど……
まあ、持ち帰っても呪われそうだから無理かな」
未だ幼いながらも荘園領主であるセシルは、ひょいと肩を竦めて見せた。
「ねえ? 一緒に来てくれないかな?」
そのまま気軽に声をかけた相手は、ゴールドゴーレム。
冒険者の姿をした黄金像は、額の赤い宝石を輝かせながら、瞳は動かせずに顔だけをセシルに向けて。
拳を握りしめると床を蹴り、一気にセシルへと肉薄した。
だがセシルは余裕でその拳を避け。そのまま振り下ろされ、重い拳を叩きつけられることとなった床に大きなひびが刻み込まれたのを見下ろすと、気楽に口笛を吹いて笑う。
「分かりやすいパワーファイターだね」
妖艶な笑みを浮かべるセシルだが、その身体は小柄で、まだ成長途中の、女の子と見紛う程に華奢で非力な姿だったから。
床を割り砕く怪力を持ち、黄金に覆われ見るからに頑丈そうなゴールドゴーレムとの真っ向勝負では不利に思えるけれども。
セシルは口笛を吹き続けながら、そっと手を伸ばすとゴールドゴーレムを指し示した。
「切り裂く」
その念に応じて、不可視無音の空間断裂が走る。
物理的防御を全て無効化すると言っても過言ではない威力を持つ、空間の裂け目を生み出し作り上げた刃は、まるでバターのようにあっさりとゴールドゴーレムを切った。
さらにその力を応用して、様々な形でゴールドゴーレムに向かわせれば。
割って、裂いて、砕いて、潰して、磨り潰して。
黄金の欠片にまでなったところで、その姿が消えていった。
「まあ、こんなところかな」
セシルは、全然汚れていない手をぱんぱんっと払って笑う。
しかしすぐに、その手を口元に当てて考える仕草を見せ。
「でも1体相手に時間をかけ過ぎかな。
もっと効率的に討滅できる方法があるといいけど……」
顔を上げて振り返ると、こちらに走り込んでくる人影が見えた。
必死の形相をした冒険者らしき男は、全力でセシルの元に駆け寄ってきて。
「やあ、こんにちは……」
「誰か助けてくれー!」
声をかけたセシルに気づいたのかどうなのか、それすら分からないままにそのまま走り抜けていく。
男の後ろを追いかける3体のゴールドゴーレムも、そのままセシルの前を通過して。
おおー、とセシルは4つの背中を気楽に見送る。
そのまましばし、小さくなっていく足音を聞いて……
「ま、問題ないか」
セシルはまた口笛を吹きながら、軽い足取りで城を進んでいった。
成功
🔵🔵🔴
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
とりあえずまずは合流からか。
あまり人が来ない場所なら痕跡から辿れそうだが…難しいかな。
伽羅と陸奥の手を借りて、人の痕跡、ゴーレムたちの動きから目的の冒険者たちを探そう。
もちろん俺達も目立たないように、時に影の闇に紛れUC水月で道の先の情報を得、不要な戦闘を避けながら先に進む。
合流出来たらわかってる範囲での探索状況を教えてもらう。
ゴーレムとの戦闘では奇襲からの暗殺をしかけるようにし、なるべく反撃が来ないうちに倒しきる。数が多い時は伽羅の雷撃や陸奥の風で足止めを狙い、なるべく1対1になるようにする。
敵の物理攻撃はなるべく武器で受けるようにし、声は伽羅の雷撃の音で相殺を狙う。
城の柱の陰から陰へ、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は静かに天空城を進んでいた。
そっと床にしゃがみ込み、壁に目を凝らし、その痕跡を見るけれども。
「……それなりに出入りがある、か。
あまり人が来ない場所なら辿れるかと思ったが……」
侵入者である冒険者達の足跡は、びっしりと多いわけではないけれども、新旧様々にそこそこの数があったから。
これらから、今逃げ回っている者達を辿るのは難しそうだった。
「やはり手を借りるよ。伽羅。陸奥」
呼びかければ、水神の黒竜が瑞樹の周囲をくるりと泳ぐように回り、風を纏った白虎がこちらを見上げてきゅっと目を瞑って見せる。
そのままくるりと踵を返した白虎・陸奥は、しなやかで素早い動きで、もちろん静かに城を駆けていき。
黒竜・伽羅もと促すように見つめると、だが逆に金の双眸に見つめ返された。
ふと首を傾げた瑞樹は、でもすぐに思い至って。
「怠けはしないさ。俺はこっちで探す」
言って苦笑すると、自身の足元を指差した。
そこに広がるのは黒い影。
城内の灯りに照らし出され、ぼんやりと足元に溜まっているだけだった黒は、瑞樹の声に応えるかのようにその色を濃くし、瑞樹と同じくらいの大きさにまで伸びて。
「行け!」
指示に従い、影は瑞樹を先導するかのように進みだした。
納得したかのように、伽羅も先へと空を泳ぎ出す。
五感を共有した影から情報を得ながら、伽羅と陸奥の動きを見ながら。
瑞樹はそっと城内を巡り。
まずは迷っているという冒険者達の誰かとの合流を目指す。
途中で見つけたゴールドゴーレムとは戦わずに回避しつつ、その動きから探す相手の居場所を推測しながら、影の闇にも紛れながら道行けば。
陸奥がどこか嬉しそうにこちらへ駆け戻ってきた。
「見つけたか」
よくやったとその頭を撫でれば、陸奥は心地よさげに目を細めて。
そしてすぐに、瑞樹と伽羅を導くように歩き出す。
さらに念のために影で警戒しながらも進んだ先には。
「味方だ。助けに来た」
細身の剣を必死に構えた背の高い冒険者が、かけた声にほっと息を吐いた。
「黒鵺・瑞樹。こっちは伽羅と陸奥」
「あ、ああ……猟兵、か。俺はニュアージュという」
驚きながらもすぐにこちらの素性に思い至る判断力に、へえ、と瑞樹は感心して。
すぐに、その手に握られた羊皮紙に気付く。
「それは地図か?」
「そうだ。完全ではないが、この辺りは網羅した」
素早く情報交換すると同時に作戦を立てて。
すぐさま瑞樹は動き出した。
狙うのは、1体で動くゴールドゴーレム。
情報をもとに奇襲をかけつつ陸奥の風で動きを抑えると、黄金化の呪いを込めた叫びすら伽羅の雷撃で打ち消して、反撃を許さないまま倒していく。
その間にも影で索敵を続け、額に赤い宝石を埋め込まれたゴールドゴーレムの位置と地図に起こした情報から動きを予測すれば、次のターゲットを絞り込んで。
また1体、瑞樹の刃がゴールドゴーレムを斬り伏せ、倒す。
「……すごいな」
1対1の状況を作り出した上で不意打ちからの戦いを仕掛けているとはいえ、苦も無く刃を振るい着実に敵の数を減らしていく瑞樹に、思わずニュアージュが感嘆の声を零し。
それを聞き留めたらしい伽羅が、どこか嬉しそうにくるりと宙を回った。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
冒険者なら自己責任だけど
相手がオブリビオンなら話は別だ
三人を助けるぜ
行動
三人の発見・保護優先
飛行し移動
戦闘や逃走の物音(剣戟や足音
を聞き取り探す
俺はサウンドSだ
途中ゴーレムに出会ったなら
行きがけの駄賃で
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い
高熱で溶かしながら突っ切る
誰か一人を見つけたら
火力を挙げて
一瞬、大焔摩天へと変化させ
巨大化させて振り抜き
その質量も乗じて砕き
その周囲の敵を薙ぎ払う
冒険者は勿論
黄金像を壊さないよう注意する
敵の咆哮を
炎が生む気流で音の伝播阻害
&紅蓮が叫びそのものを喰らい灰に還す
ああ今助けるぜ
海へ還してやる
事後
鎮魂曲
安らかにな
黄金像から回復した冒険者らを救助
三人>
ダチにあんま心配かけんなよ
「さあ、嵐のお通りだ。……焔摩天、転生!」
天空城に足を踏み入れた木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、早速ユーベルコードを発動させると、その身を地獄の炎で覆った。
そのままふわりと浮かんだかと思うと、一気に空中を駆ける。
まるで翼を広げた不死鳥のように。
空を裂く火矢のように。
高速で城内を飛び回った。
とはいえ、ただ飛んでいるだけではない。
近づくウタに気付いて振り向いたゴールドゴーレムを、行きがけの駄賃とばかりに、刃に焔摩天の梵字を刻んだ巨大剣・焔摩天で薙ぎ払う。
ウタ自身と同じように、獄炎に覆われた刀身は、その高熱により強化されて、硬い金属のはずのゴーレムを溶かすようにして斬り伏せた。
1体。また進む先に見つけて、もう1体。
そして次はと見つけた金色の像は、だが近づくウタに振り向くことはなく。
ウタも焔摩天を収めて、避けるように通り過ぎる。
すれ違いざまに見た黄金像の額には、先ほどまで倒したゴールドゴーレムのような赤い宝石はなかった。
(「オブリビオンの仕業、か」)
それがこの天空城に挑んだ冒険者の成れの果てであることを察して、ウタは苦笑する。
冒険には危険がつきもので、それを覚悟で挑んではいただろうけれども。
(「冒険者なら自己責任だけど、相手がオブリビオンなら話は別だ」)
助けなければ、とウタはまた、進む先に注意を向けた。
視界だけでなく、耳を澄ませて。
高速飛翔をしていても、手掛かりとなる音を聞き逃すまいと。
(「俺はサウンドソルジャーだからな」)
自身のジョブに誇りを以って、未だゴールドゴーレムから逃れているはずの冒険者達を探していく。
そんなウタに、微かな金属音が届いた。
それは甲高く鈍い音。
まるで、金属に金属を打ちつけたかのような。
黄金を剣で切りつけ、弾かれたかのような。
(「剣戟の音!」)
察したウタは、その音が聞こえた方向へ進路を取った。
程なくして見えたのは、ゴールドゴーレムと切り結ぶ、大剣を構えた男の姿。
轟音と共に近づくウタに、男は目を見開いて。
背を向けていたゴーレムもこちらを振り向く。
「見つけたぜ」
好戦的な笑みを浮かべたウタは、一気に地獄の炎の火力を上げると、手にした焔摩天をさらに炙って進化させる。
大焔摩天となった大剣は、巨大剣と化して。
振り抜いたその巨大質量で、ゴールドゴーレムを薙ぎ払った。
通常の剣戟では傷1つつけられなかった相手が、あっさりと斬り伏せられたのを見て、男がぽかんとした表情で立ち尽くす。
その前に降り立ったウタは、男ににやりと笑って見せて。
「ダチにあんま心配かけんなよ」
「ダチ……?」
かけた言葉に、男が眉を寄せた。
「猟兵、ということは『白鷺』……? アルのことか!」
ようやく思い至ったらしい男が口にしたのは、恐らく酒場の主の名だろう。
納得したらしい男に、ウタは頷いて見せて。
そして、近づいてくる足音に耳ざとく気付いて振り返った。
新たに姿を見せたゴールドゴーレムに、ウタはまた、纏った地獄の炎を燃やし、男をその背に庇うように、大焔摩天を構えて見せる。
ゴールドゴーレムは嘆くような表情でその口を開き、助けを求めるかのように黄金化の呪いが込められた叫び声を放つけれども。
「ああ、今助けるぜ」
同時にウタは大焔摩天を振るい、紅蓮の光刃で、そして光刃が纏う炎が生む気流で、伝わる音すらも喰らいながら黄金を斬り裂く。
「海へ還してやる」
深い傷を刻まれたゴールドゴーレムは、地獄の炎に包まれて。
灰となって崩れながら、ウタの紡ぐ鎮魂歌の中で、その姿を消した。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、また天空城に行くんですか?
ふえ?今回は直接天空城に転送するから登らなくていいんですか。
それは良かったです、さすがにあの道のりは険しすぎです。
あの、転送されていきなりピンチってどういうことですか。
ふええ、触ったら黄金像になってしまうというのにアヒルさんは触って黄金のアヒル像になっちゃってますし、こちらのエールさんも私と同じ状況ですし、どうしたらいいんですか。
えっと、触らなければいいということはサイコキネシスで受け止めればいいんですね。
・・・えっと、受け止めた後はどうすればいいのですか?
「ふええ。あの、転送されていきなりピンチってどういうことですか」
天空城の一角で、逃げ惑うフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)の嘆きのような悲鳴が響き渡っていた。
必死で足に力を込め、走り回って逃げるのは。
ゴールドゴーレムが追いかけてきているからで。
「アヒルさんは黄金のアヒル像になっちゃってますし」
その手に抱えたアヒルちゃん型のガジェットは、白い身体も黄色いくちばしもフリルと意匠を合わせた前掛けも、全てが金色に輝いていて。
ゴールドゴーレムに捕まったらどうなるかを見事に示していた。
「直接転送してもらえるから、あの険しい道のりをまた登らなくていいと、安心していたんですよ。それなのに……」
以前、フリルが別の天空城へ向かった時は、まだ群竜大陸が発見される前で。天空城の存在がようやく判明した頃のこと。ゆえに、周囲を漂う巨石群を飛び渡って、天空城に入る必要があったのだが。
群竜大陸までもが攻略された今ならば、天空城へ直接、グリモアによる転送を行うことができるようになっていた。
便利になったと感心して、ほっとしたのも束の間。
「いきなり目の前にゴールドゴーレムさんがいるなんて、聞いてないです」
不意の遭遇に慌てたフリルの手から、ガジェットが飛び出し。
ゴールドゴーレムに体当たりをした、と思った瞬間、黄金のアヒル像が出来上がり。
訳が分からないまま、とりあえず金色になったガジェットを拾い上げたフリルは、咄嗟にその場を逃げ出して。
追いかけられ続けて今に至る。
「ふええ。いつまで逃げればいいんですか」
「いやホントそれな」
独り言だったはずの声に、不意に返事のような言葉が返ってきて。
ふえ? とフリルが横を見ると、いつの間にか男が1人、並走していた。
引きつった笑みを浮かべる男も、フリルと同じ境遇に陥っているのだろう。
いつの間にか合流していた逃亡仲間に、少しだけ親近感を覚える。
それでも、極度の人見知りなフリルにとっては、見知らぬ男に声をかけられた、その衝撃は大きく。微かな親近感はあっという間に吹き飛んで。
「ふえええ!?」
思わず、被っていた大きな帽子の広いつばを引き寄せて、その場にしゃがみ込んだ。
「おいおいおい!?」
慌てる男も、つられるように足を止め。
その愚策に気付いて、はっと顔を上げたその目前に。
ゴールドゴーレムの拳が迫ってきていた。
恐怖に染まる男の顔と。
そこに迫る、金色の一撃。
帽子のつば越しに見上げるフリルの赤い瞳に、その光景がやけにゆっくり映って。
(「えっと、触ったら黄金像になる、ということは、触らなければいいということですから……」)
反射的に思考が回って。
フリルは、男に当たる直前の拳を、サイコキネシスで受け止めていた。
「やるじゃねぇか嬢ちゃん」
男が笑顔を取り戻し、フリルに称賛の声を送る。
フリルも、おずおずとその様子を見ながら、その場に立ち上がって。
ふと、首を傾げた。
「……えっと、この後はどうすればいいのですか?」
「え?」
固まる男。
反対側にもう一度首を傾げるフリル。
2人は無言のまま視線を交わして。
ゆっくりと、どこかぎこちなく振り向いて。
サイコキネシスで動きを止めたゴールドゴーレムの向こうから、さらに4体のゴールドゴーレムが迫って来ているのを見て。
「逃げろおぉぉぉ」
「ふええぇぇ」
再び、天空城内を走りだした。
成功
🔵🔵🔴
ポーラリア・ベル
天空のお城でお宝、お宝♪なおなお(f01298)と一緒だよー!
黄金の雪って、綺麗かしら?じゃなかった。冒険者さんを冬に導いて、黄金をやっつけるのね。助けるー!
なおなおの頭に乗ってしゅっぱーつ!黄金像は【フリーズコレクション】にご回収してくよ!
物理攻撃はなおなお、お願い!飛んでくる咆哮は【呪詛耐性】で我慢できるけど…
そうだ、あたしのベルの【楽器演奏】なら音波相殺できるかも!
それも人間さんなら強い音出るかも。冒険者さん強く鳴らして!(ベル渡し)
音でかき消しながら【属性攻撃】の雪玉でどかんどかんしていくよ!
日野・尚人
ポーラ(f06947)と天空城へ!
そういえば前もお前と一緒に冒険者気分で乗り込んだんだっけ・・・
とはいえ今回は財宝探しじゃなく冒険者の救出だ! 頼りにしてるぜ、相棒!
まずは<索敵>で敵を避けつつ、<聞き耳><追跡>で救助対象を探さないとな?
あ、道すがら見つけた黄金像(冒険者)は回収してくか。
元に戻った直後に俺たちの居ない所でブラクテと遭遇したらマズイし。
救助対象を発見したら即援護! 助けに来たぜ!
黄金化の呪いには<呪詛耐性><オーラ防御><幸運>で対抗。
当然ヴァンたちとポーラは<かばう>。
ゴールドゴーレムの叫びを凌ぎつつ反撃だ!
すべてを凍てつかせる氷の警鐘・・・ぶちかましてやるっ!(UC発動)
「天空のお城でお宝、お宝♪」
にこにこ笑顔で声を弾ませながら、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)は天空城の中をきょろきょろ楽し気に見回していた。
傷がついたり少し壊れていたりもして、古く寂れた、でもどこかわくわくする雰囲気の景観に、青い瞳は輝いて。
「黄金の雪って、綺麗かしら?」
空から降り降りて来る金色の結晶を想像しながら、冬の妖精はまた微笑み。
しかしすぐに、はっとして、その白い両頬に雪影色の手袋を当てた。
「……じゃなかった。冒険者さんを冬に導いて、黄金をやっつけるのね」
そのまま両手を上に掲げ、助けるー! と明るく宣言すれば。
ポーラリアの下から、吹き出したような笑い声が漏れた。
「そうだな。今回は財宝探しじゃなく冒険者の救出だ!」
日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)は、以前訪れた別の天空城を思い出しながら、こちらも楽しそうに笑う。
あの時も一緒に、宝探しな冒険者の気分で乗り込んだんだっけ、と変わらぬポーラリアに笑みを深めながら。
でもしっかり今回の役割を思い出して、気合いを入れる様子を感じ、尚人は、顔を上げないようにしながら、見えないけれども頭上へ視線を向けた。
「頼りにしてるぜ、相棒!」
「うんっ。それじゃ、なおなお号、しゅっぱーつ!」
短い茶髪の中で、ポーラリアがびしっと前を指差すと、はいはい、と尚人は何となく止まってしまっていた歩みを再開する。
そう。ポーラリアが居るのは、尚人の頭の上。
透き通った氷のように綺麗な羽根を背中に持ちながら、ポーラリアは自分で飛ぶことなく、尚人の頭に乗って天空城を進んでいたのだった。
小さなフェアリーであるポーラリアなら、別に頭が重くなることはないし。
ちょっと興奮して髪を引っ張られたり、ぺしぺし叩かれたりするのはご愛敬。
むしろ尚人はそんな感覚を楽しみながら、早速見つけた黄金へと近づいていった。
「なおなお、これはお宝?」
「お宝……まあ、回収するべきもの、って意味ではお宝、か?」
頭の上でポーラリアが首を傾げた気配に、尚人は苦笑してその金色を見やる。
両腕を顔の前に重ねて怯えた顔を反らした、冒険者の服装をした男の人の黄金像。
細かいところまで作り込まれた、今にも動き出しそうな像は、本物の冒険者がオブリビオンによって黄金化されてしまったものだと聞いていたから。
尚人は黄金像を指差して、頼むな、と頭上に声をかけた。
「元に戻った直後に俺たちの居ない所でブラクテと遭遇したらマズイしな」
「かいしゅーかいしゅー!」
ふっと少しだけ頭が軽くなったと思うと、ポーラリアがふわりと黄金像の前に飛び。
差し出したのは、小さなスノードーム。
「ずっと溶けない、真冬の世界へようこそ♪」
すると、そのスノードームの中に吸い込まれるかのように、黄金像が消えて。
ポーラリアが覗き込むと、ドームの中にきらりと光る黄金が1つ、立っていた。
それはポーラリアのユーベルコード。
スノードームの中は、ポーラリアが作り上げた極寒の氷雪世界だから。
これなら何体でも回収して持ち運べると、尚人も小さなスノードームを見て頷いた。
そしてポーラリアはまた尚人の頭上に戻り。
再び2人は天空城を歩き出し、そしてまた黄金像を回収する。
そうして進んで行くうちに、その行く手に見えたのは、輝く炎に照らされた黄金。
今度の黄金像は数いる上に、額に赤い宝石を輝かせ、その拳を振るっていて。
そして炎を纏った少年が、巨大剣を構えて対峙していたから。
あれがゴールドゴーレムか、と尚人は駆け出した。
近づけば、剣を構えた少年の後ろに、体格のいい冒険者らしき男がいたから。
「助けに来たぜ!」
これが探していた遭難者かと判断して、尚人は声をかけた。
そのままゴールドゴーレムに相対するように、男を背にして立ちはだかれば。
頭の上のポーラリアが、くるりと身体ごと後ろを振り向いた。
「ごきげんよう。あたしポーラ。一緒なのは、なおなおね。冬を告げに来たよ」
「え? あ……俺はヴァンだ」
話しかけられるまで頭上に居ると気づいていなかったらしい小さな妖精に、急に、しかも普通に挨拶されて、男は……ヴァンは戸惑いながらも名乗る。
どこかぽかんとしたその様子に、でもポーラリアは返事が来たことに満足して。
またくるりと回って前へと向き直ると。
「さ、なおなお、がんばれー!」
気楽な応援に、大鷲の短剣を構えていた尚人が苦笑した。
そこに、ゴールドゴーレムが嘆くように口を開く。
放たれた黄金化の呪いを込めた叫びに、炎の少年は剣を振るい、そして尚人とポーラリアは呪詛耐性で何とか耐える。
(「我慢、できるけど……」)
どうにかしなきゃ、と対抗手段を探したポーラリアは。
「そうだ」
ぱんっと両手を打って、顔を輝かせると、冬告げのベルを取り出した。
(「これなら音波相殺できるかも」)
そしてさらに、また振り向いてヴァンを見上げると、ふわりとその目の前に飛び。
「冒険者さん、強く鳴らして!」
「あ、ああ……」
手にしたベルをずいっと差し出し、半ば押し付けるようにして渡す。
訳が分からないまま、ヴァンはそれでも、言われるがままに力任せにベルを振り。
その怪力で、大きな大きな音が響く。
強く振れば強く鳴る。
当たり前のことだけれども、その音に力があるのなら。
強く振れば強くなる。
ポーラリアが狙った通り、冬告げの響きはゴールドゴーレムの叫びをかき消した。
「反撃だ、ポーラ! ぶちかましてやるっ!」
「うんっ。なおなお♪」
それを好機と尚人が飛び出せば、援護するようにポーラリアは雪玉を放ち。
雪合戦かと思う最中に、さらにポーラリアは尚人へ氷属性のその力を分け与える。
終焉を齎す清冽なる氷鐘。
冬の妖精の力を纏った大鷲の短剣は、秘められた氷の魔力も強化して。
ゴールドゴーレムを切り裂くと同時にその傷口を凍らせる。
さらにそこに尚人が撃ち込んだ弾丸も、氷属性を得ていたから。
氷の警鐘を鳴らすような銃声が響くと同時に、ゴールドゴーレムの全てを凍てつかせてその動きを封じていく。
そこにさらに、尚人は止めの銃弾を撃ち込んで。
「……へへ。俺たちを敵に回したことを後悔しながら冬眠(ねむ)るんだな!」
氷と共に砕け散った黄金は、消えゆく間際に一瞬、細かくきらきらと瞬いたから。
「わあっ。黄金の雪~♪」
ぱちぱちとポーラリアが拍手を送った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シリン・カービン
【WIZ】
あれだけの数に追われてまだやられないとは、
お調子者とは言え、さすが名うての冒険者ですね。
まあ、このままではいずれ危なくなりそうですが。
【スプライト・ハイド】で姿を消して通路で待機。
発射音を悟られない様に風の精霊弾を装填します。
姿を隠したまま、ゴーレムを引き連れたエールが来るのを待ち、
彼が通り過ぎたらゴーレムの宝石を狙撃。
ゴーレムに気づかれたら叫びを上げる前に風の精霊に呼びかけ、
音を消して叫びを封じます。
エールが騒ぎながら逃げてくれれば、
またゴーレムが集まってくるでしょう。
申し訳ありませんが、もう少し頑張って下さいね。
「帰ったら、一杯奢らせてもらいましょう」
彼らの冒険譚を肴にして。
「うおおおおお!」
「ふえぇぇぇ」
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が遠目に見つけたのは、城内を逃げ回る、軽装備で身軽そうな冒険者の男と大きな帽子を被った少女だった。
必死の形相で、半泣きの困った顔で、それぞれに悲鳴のような声を上げながら、通路を全力で走り抜けていく。
それを追うのは、動く黄金像……ゴールドゴーレム。
額に赤い宝石をつけた、黄金に輝くゴーレムは、むしろこちらの方が悲鳴を上げていそうな悲痛な表情で、だが逃げる2人を執拗に追いかけていた。
その数、5体。
数の差があるからか、単純に実力不足を感じてか、2人は反撃の素振りすら見せず、ただただ逃げ回るばかりだったけれども。
(「あれだけの数に追われてまだやられないとは……さすが名うての冒険者ですね」)
それを眺めるシリンの胸中にあるのは感嘆だった。
確かに、広いとはいえ建物内。障害物や遮蔽物があるとはいえ、こうしてシリンが様子を見れる程には開けた場所で。逃げ続けるだけでも称賛に値する。
(「確か……エール、といいましたね」)
シリンは、今回の件の依頼元である酒場を訪れたことがあり、逃げ回る男を見かけたこともあった。仲間2人と楽し気に酒を飲み交わし、陽気に軽い口調でその場を盛り上げるどこかお調子者の彼の様子が思い出された。
どちらかといえば、仲間に助けられていそうな彼でさえこの実力。
そこそこ名の知れた冒険者、と酒を片手に語っていたのは、伊達ではないようだ。
とはいえ。
(「まあ、このままではいずれ危なくなりそうですが」)
オブリビオン相手に、猟兵ではない冒険者が逃げ続けるのはやはり難しいことだから。
シリンはそっと、その手に精霊猟銃を構えた。
精霊の力を宿したボトルアクションライフルを、慣れた様子で、特になるべく音を立てないように気を付けながら操作して。装填するのは風の精霊弾。
「いたずら妖精いたずら妖精、その手を繋げ」
それを構えながら、シリンはユーベルコードを紡ぎ。
こちらへと進路を変えた2人と6体のゴールドゴーレムを見据えた。
あ、増えてる。
「うおおおおお!」
「ふえぇぇぇ」
必死な男と半泣きの少女は、そんなシリンに気付くことなくその横を通過して。
追いかけるゴーレムも、シリンに一瞥すらくれることなく近づいてくる。
それもそのはず。
シリンはユーベルコードでその身を透明にして隠していたのだから。
かなり接近した距離で、それでも相手に気付かれぬまま、シリンはトリガを引く。
狩人としても、アーチャーとしても、容易い距離で放たれた弾丸は、狙い通り、一番後ろを走っていたゴールドゴーレムの額にある赤い宝石を撃ち抜いた。
ゴーレムは、走り込んできた勢いのまま、数歩は先に進んだけれども。
すぐにその脚が力なく折れ、倒れ伏すとその姿を消した。
そして、仕留めた獲物をちらりと確認してすぐ、シリンは動く。
逃げる2人の進路を予測し、またシリンの方へと戻ってくる動きを確認して。
同様に、また最後尾の1体を仕留めた。
さすがに、続く不審な動きに気付いたか。倒れたゴールドゴーレムのすぐ前にいた者が足を止め振り返り、シリンがいる辺りを探るように眺める。
透明化したままのシリンを、その黄金の瞳が捉えることはなかったけれども。
何かを感じたのか。それとも念のための無差別な対応なのか。
黄金化の叫びを上げようと口を開いた。
「風の精霊、お願いします」
けれども、囁くシリンの声に応え、ゴールドゴーレムの周囲を風の精霊が舞い。
包み込むような風の流れが、叫び声の伝播を、そして黄金化の呪いを防ぐ。
そして、大きな口を開けたまま、その額の赤い宝石が砕けた。
倒れ消えるゴールドゴーレムを見下ろして、シリンは銃弾を撃ち込んだその姿勢からゆっくりと立ち上がる。
「うおおおおお!」
「ふえぇぇぇ」
そしてまた、逃げる2人の様子を眺めて。
(「程よくゴーレムを集めてくれているようです」)
また増えて4体のゴールドゴーレムに追われるその様子に小さく微笑む。
(「申し訳ありませんが、もう少し頑張って下さいね」)
そしてまた、シリンは姿を消したままで猟銃の狙いを定め。
「帰ったら、一杯奢らせてもらいましょう」
彼らの冒険譚もいい肴になりそうだと楽しみにしながら。
必死に逃げ続けるエールの知らぬところで、そっと呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『財宝妖精ブラクテ』
|
POW : 財宝の竜<グランツ>
自身からレベルm半径内の無機物を【合体させ、巨大な財宝竜】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD : 収集欲<ベギーアデ>
【財宝】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[財宝]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ : 竜の眼<アオゲ>
【【竜眼の宝珠】の呪詛】によって、自身の装備する【3秒以上視続けた財宝】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナミル・タグイール」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
数多のゴールドゴーレム、その全てを倒した後。
幾つもの通路が合流する広間のような開けた場所で。
「ヴァンんん! ニュアージュうぅぅぅ!」
「うお!? 何だ何だエール!?」
「せめて鼻水は拭け」
再会を喜ぶ冒険者3人と。
黄金像から元に戻り、驚きながらきょろきょろあたりを見回す冒険者達。
助けられたか、と安堵するも束の間。
「あらあら。ワタシの黄金が減ってしまったわ」
ふわり、と黄金色に輝く妖精が姿を現した。
蒼く長い髪を揺らし、青く煌めく羽根をはためかせて。
手にした竜眼の宝珠よりも格段に多くの黄金を、どこかドラゴンを思わせる形で、顔に腕に脚に纏い輝くオブリビオン……『財宝妖精ブラクテ』。
「折角素敵なお城だったのに、何で邪魔をするのかしら」
ドラゴンの尾の骨を象ったような、長い黄金をゆらりと振って。
「ワタシの財宝を奪おうというのかしら」
装飾の黄金球を揺らす、両肩を通した大きな輪飾りも黄金に輝かせて。
ブラクテは猟兵達にギロリと目を向けた。
「何か出たー!」
「どう見ても友好的とは程遠いな」
早速後ろに隠れたエールの前に立ち、大剣を構えたヴァンが苦々しく呟く。
「俺達のことは気にしないでくれ。邪魔にならないくらいはできる」
相手はまたオブリビオン。猟兵のようには戦えない冒険者では役者不足と感じてか、ニュアージュがそう告げるけれども。
「それでも、オレ達でも何か力になれると言うなら」
「ああ。遠慮なく言ってくれ」
ニュアージュに続けて、ヴァンも力強く頷いた。
「マジかよぉ……」
エールだけが情けない顔を見せていたけれど。
それでもさっさと逃げ出すようなことはなく。諦めたような様子で、3人以外の冒険者達に向けてひらひらと手を振り、少し離れた安全そうな場所を示して身を隠させる。
ぼやきながらも戦いの準備を進めるその様子に、ヴァンがふっと笑い。
「さあ、どうする?」
財宝妖精ブラクテと、対峙した。
フリル・インレアン
それじゃあ、お言葉に甘えて隠れさせて・・・。
ふえぇ、やっぱり駄目ですよね。
アヒルさんはそのまま隠れていてください。
財宝の妖精さんなら財宝、つまり無機物を操る力があると思いますので、近づかないでくださいね。
なんて話してたら財宝が集まって大きなドラゴンさんが出来上がってます。
それなら、こちらはぬいぐるみの魔法です。
ぬいぐるみは有機物でできてますし、フォースセイバーは光なので物質でもありません。
ふえ?なんでさっきこれを使わなかったのかって
・・・この子が受けた効果は私が受けてしまうんですよ。
「オレ達でも何か力になれると言うなら」
「ああ。遠慮なく言ってくれ」
「マジかよぉ……」
三者三様に協力を申し出る言葉を聞いて。
「それじゃあ、お言葉に甘えて隠れさせて……」
その他の冒険者達と一緒に、少し離れた安全そうな場所へと移動したフリル・インレアン(f19557)だけれども。
フリルの手の中のアヒルちゃん型ガジェットが、ガアガア騒いで暴れ出した。
「ふえぇ、やっぱり駄目ですよね」
言ってみただけです、と帽子のつばを握って引き寄せながら、つついてくる黄色いくちばしを何とか遠ざけると。
「アヒルさんはこのまま隠れていてください」
ガジェットだけをそこに置いて、フリルは元の場所へと戻ってくる。
後ろから尚も聞こえる鳴き声に、ふええ、と困った顔をしながらも。
対峙するのは、財宝妖精ブラクテ。
と思いきや、ブラクテの近くに集められた黄金色の数多の財宝が、幾つかの大きな山に積み上げられて。
さらに合体し、形作られたのは3体の巨大な財宝竜。
黄金の身体と宝石の瞳を持ち、複雑な装飾を散りばめた豪奢なドラゴンは、ブラクテを守るかのようにフリル達の前に立ちはだかった。
「やっぱり、財宝の妖精さんですから財宝……つまり無機物を操る力があるのですね」
当たった予想を目の当りにして、フリルは頷く。
だからこそ、いつも傍にいてくれるガジェットを、無機物でできたアヒルさんを、ブラクテから遠い安全な場所に置いてきたのだから。
珍しく1人で、でもしっかりと財宝竜と対峙したフリルは。
「それなら、こちらはぬいぐるみの魔法です」
自身の2倍程もある、大きくて可愛いぬいぐるみを召喚した。
有機物でできているぬいぐるみなら、ブラクテに操られる心配はない。
それに。
フリルがその手にサイキックエナジーで形作られたフォースセイバーを生み出すと、ぬいぐるみもその身体の大きさに見合ったフォースセイバーを手にして。
前へと踏み出し、フォースセイバーを振るうフリルの動きをトレースして、ぬいぐるみは財宝竜の1体へと斬りかかる。
フォースセイバーも、光であるため無機物どころか物質ですらない。
相手の能力に、そして巨大な体格にも、しっかりと対応したフリルだが。
そこに遠くからアヒルの鳴き声が届いた。
「ふえ? なんでさっきこれを使わなかったのか、ですか?」
それは、ゴールドゴーレムを相手にしていた時のこと。
何やかんや逃げ回るだけで終わった、戦いと言えないかもしれない戦い。
確かに、その時にこのぬいぐるみを召喚していたならば。
巨大なぬいぐるみでゴールドゴーレムを潰せていたかもしれないし。
巨大なフォースセイバーで難なく蹴散らせていたかもしれない。
そう思うのも当然ではあるのだが。
言い難そうに俯いて、フリルはちらりと、鳴き声の元へと視線を送った。
「……この子が受けた効果は私が受けてしまうんですよ」
それはぬいぐるみに付随する、ユーベルコードの効果で。
例えばゴールドゴーレム相手なら、殴られてもぬいぐるみが大丈夫な代わりに、フリルが黄金像になってしまうから。
その対策がない以上、さっきはこのぬいぐるみが使えなかったわけで。
「でも、この肩代わりって何の意味があるんでしょう?」
ユーベルコードの根本に首を傾げるフリルと、それをトレースしたぬいぐるみに。
呆れたようなガジェットの声が、響いた。
大成功
🔵🔵🔵
セシル・バーナード
これが妖精? ミニドラゴンの間違いじゃないの?
まあいいさ。討滅することには変わりない。
お、デカいの出してきたね。それでこそ切り刻み甲斐があるってもんさ。
「全力魔法」の空間裁断で財宝竜の全身を空間の断裂でズタズタに引き裂く。手足はもぎ取りたい。
反撃は次元障壁で防ぎ、とどめの空間断裂を「カウンター」で叩き込む。
さあ、次は君の番だ、財宝妖精。
空間断裂の威力は十分に分かったよね。大人しく首を差し出してよ。
嫌だっていうなら無理矢理に。
対話が終わると同時に空間断裂。卑怯? 遺言を垂れ流す時間は十分にあげたんだ。温情だと思ってほしいくらいだね。
その間に財宝竜が再生成されるかもしれないけど、動く前に討滅する。
「これが妖精? ミニドラゴンの間違いじゃないの?」
財宝妖精ブラクテの姿を目にしたセシル・バーナード(f01207)は、素直にそんな感想を零していた。
確かにフェアリーらしく羽根を青く煌めかせ、小さな小さなサイズだけれども。
手脚に付けた黄金は、太い竜の爪のようで。
頭にかぶる黄金は、竜の大きな顎のようで。
腰から揺れる黄金は、長い竜の尾のようで。
ドラゴンを思わせる印象なのは否めない。
これで妖精と言われても素直に納得できないのも道理なのだが。
「まあいいさ。討滅することには変わりない」
ひょいと肩を竦めたセシルは、オブリビオンであるということ以外は些事であると言うかのように、あっさりと抱いた疑問を放棄した。
「ワタシの財宝を奪おうというのかしら」
その間に、ブラクテはギロリとした目をセシル達へと向けて。
うるさい羽虫を見るかのように、ウンザリとしたような声を漏らして。
「ならば、グランツ。ワタシの邪魔をする者を蹴散らしなさい」
告げると同時に、ざわり、とブラクテの足元がざわついた。
それは黄金を主とした数多の財宝。
ある程度近い場所に集め、貯めていたのであろうそれらが、操られるようにブラクテの元に集まると、積み重なって山を作り上げ。
1つの山には収まりきれず、崩れ始めると、3つに分かれてまた山になる。
そして、それぞれが見上げるほどの高さになったところで。
財宝の山は、巨大な財宝竜へとその姿を変えた。
「お、デカいの出してきたね」
緑色の瞳の上に片手をかざす仕草で、気軽に見上げたセシルは。
その大きさに怯むどころか、にっこりと妖艶に微笑む。
「それでこそ切り刻み甲斐があるってもんさ」
言いながら、しかしその手に刃物などなく無手のまま。
警戒の欠片も見せずに財宝竜の1体へと歩み寄って。
「砕け散れ」
笑顔で放った言葉と共に、財宝竜の振り上げた右腕、その手の先に鋭く輝く太い爪が無音のままに切り裂かれた。
と思うと次々に、腕の方へも傷が刻まれて。
幾つも幾つも重なる見えない斬撃が、ついに右腕を斬り落とした。
それはセシルが空間を操り作り出した、不可視無音の空間断裂。
それを無数に重ねることで、大きな財宝竜の太い腕すらも斬り断ち。
落ちたそれをさらに刻んで、砕いていく。
お返しとばかりに、財宝竜はその太く長い尾を振るい、セシルを狙うけれども。
何の動作も見せないまま、セシルは空間断裂を平面状に展開して障壁と成し、受け止めると共にその尾も細かく斬り裂いた。
「次は、左腕かな」
宣言通りに左腕も落とし、背に広がる翼も、短くなって残っていた尾も、そして床を踏みしめ立つ両足も難なく砕いていくと。
倒れ込み、首をもたげるぐらいにしか動けなくなった財宝竜に微笑んで。
「はい、おしまい」
空間断裂を集中させると、止めの一撃を放った。
もう動かなくなった財宝竜は、見下ろすセシルの前で元の財宝へと戻っていき。
見れば、斬り砕いた腕も、脚も、翼も尾も、粉々だったはずのそれら全てが綺麗に煌めく財宝の姿を保っていた。
財宝妖精の執着の表れというべきか。
それでも、そのまま放っておけば、また財宝竜が創り出されてしまうから。
「さあ、次は君の番だ、財宝妖精。大人しく首を差し出してよ」
セシルは踵を返し、ブラクテに向き直ると改めて、笑った。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
三人組
ブラクテの注意が猟兵に向いて
隙あれば
財宝の奪取や破壊を依頼
ダチの為にも絶対無理はすんなよ
戦闘
爆炎をスラスターとしたり
迦楼羅の炎翼で自在に機動
獄炎纏う焔摩天で攻撃
回避や武器&炎壁で受けながら
じりじりと後退し通路の一つへ誘き寄せ
その巨体が入り口にぶつかり
動きが止まったところで
大焔摩天の紅刃一閃
薙ぎ払い砕く
竜の元になったお宝を
そのまま高熱で溶かし気化させて
城の隙間や空けた穴から空へ
リサイクルさせないぜ
ブラクテ
命の輝き、
命が生み出す未来の価値ってのが判らないとは
大した鑑定眼だな(にやり
今、海へ還してやる
事後
天空城から降り注ぐ金色の雨を眺めながら鎮魂曲
安らかにな
んじゃアジュールへ戻ろうぜ(ぐっ
「グランツ。ワタシの邪魔をする者を蹴散らしなさい」
財宝妖精ブラクテの声に応え、財宝の山が3体のドラゴンを形作っていく。
その様子を正面にしながら、木霊・ウタ(f03893)はちらりと横目で3人の冒険者達に視線を送った。
「確か、地図があったな?」
「あ、ああ。完全じゃないが、この辺りは網羅してる」
尋ねる声に、背の高い1人……ニュアージュが反応して羊皮紙を差し出してくる。
手書きのそれは、逃げながら書いたものだからか、線は歪み、大分乱れた文字になってはいたけれども。それでも見知った範囲では正確に描かれていたものだから。
ウタは現在位置とそこから繋がる通路をさっと追い。
「ありがとな」
納得したように頷くと、羊皮紙を差し返した。
それを受け取ろうと手を伸ばしたニュアージュに、そうだ、とウタは思い付いて。
地図と一緒に頼み事も渡してみる。
「……分かった。やってみよう」
「任せたぜ。
あ、でも絶対無理はすんなよ。ダチの為にもな」
「ダチ……?」
先ほど別の1人とやったようなやり取りをニュアージュとも繰り返してから。
ウタはにっと笑うと、再び獄炎を身に纏い、その背に翼として大きく広げた。
そのまま炎翼を羽ばたかせ、同時に爆炎で勢いを増して。
1体の財宝竜の前を、引き付けるように飛び回る。
鋭く大きな爪が輝く腕が振り下ろされるのを避け。
しなやかに襲い来る竜の尾を焔摩天の梵字を刻んだ刃で受け流し。
その動きから流れるように、地獄の炎を纏わせた巨大剣を振り回して。
財宝竜と迦楼羅は戦う。
だがしかし。いくら自身の身長程もある巨大剣を振り回そうと、財宝竜はウタが見上げなければならない程に、それこそ山のように大きな存在だったから。
その巨体に圧されるように、ウタはじりじりと後退していった。
広間の隅に追いやられ、そこから伸びる通路に逃げ延びて。
追いかけた財宝竜の身体が、狭い通路の入り口で挟まったように止まる。
「おしっ」
その瞬間、ウタは床を蹴り、財宝竜へと飛び込んだ。
手にした巨大剣をさらに地獄の炎で炙って、紅蓮の光刃を持つもっと大きな剣へと……大焔摩天へと進化させる。
そのまま、狙い通りに動きを止めた財宝竜を、紅刃一閃、薙ぎ払った。
そう。大きさに負けたかのように後ろに下がっていたのはこのため。
ある程度狭くて、そして何より、ブラクテに挟撃されないことを地図で確かめた通路を使って、財宝竜の動きを抑える作戦。
狙い通り、薙がれ大きな2つの塊に分かたれた財宝竜に、ウタはさらに斬りかかると、獄炎の剣で尚も砕いていき。
「っと、リサイクルさせないぜ」
その最中に自身の身体も傷つけて、そこから噴出する地獄の炎で火力を上げる。
紅蓮の炎に包まれた、財宝竜だったお宝は、次々と溶けて気化して。
風の流れに乗って、窓から、隙間から、天空城の外へと流れ出ていく。
どんな形になっていても、ブラクテのユーベルコードが解ければ、ドラゴンを形作っていたお宝は元の姿に戻るのだろう。
だとしても、その場所までを元通りにはできないはずだから。
財宝を城から空へと出してしまえば。
地上に降り注ぐ金色の雨のように、遠くに落としてしまえば。
財宝を集め、それを力とするという財宝妖精の、強化を防げるから。
「こんなもんだな」
作戦通り、とウタは剣を持たぬ手をぐっと握って笑った。
そして他の戦況を見れば。残る2体の財宝竜は、片や大きくて可愛いぬいぐるみと斬り結び、片や見えない刃に刻まれてバラバラに崩れていくところだったから。
ドラゴン戦への加勢は不要と判断したウタは。
またその背に炎翼を広げ、獄炎を纏わせた剣を携え、飛翔する。
「命の輝き……命が生み出す未来の価値ってのが判らないとは、大した鑑定眼だな」
にやりと不敵に笑いながら迫るは、財宝妖精ブラクテ。
爆炎をスラスターとして、ウタは一気にその間合いを詰めて。
「今、海へ還してやる」
焔摩天を振り抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
戦争の時も思うけど、オブリビオンって同じ姿をしてても違う個体って感じだよな。
今回は前に見た奴よりおとなしめだ。
さて、彼らにがっつり戦って貰うのは気が引けるが…でもほどほどに気を引いて貰えたら助かるかな。
UC炎陽の炎で視界を遮るようにし相手のUCの発動を阻害するようにする。ついでにいっそ財宝も炎で溶けてしまった方が、財宝でなくなって操作できなくなるんじゃないかと期待。
そうなったら冒険者各位には申し訳ないが。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らうものは激痛耐性で耐える。
「あらあら。ワタシの黄金が減ってしまったわ」
どこか芝居がかったゆったりとした言動で嘆いてみせる財宝妖精ブラクテ。
その姿を見据えて、黒鵺・瑞樹(f17491)はふと思う。
「オブリビオンって同じ姿をしてても違う個体って感じだよな」
蒼く長い髪。青く煌めく羽根。竜眼の宝珠を手に、ドラゴンを象ったかのような数多の黄金をその身に纏わせ飾り立てた、フェアリーのオブリビオン。
その姿は、一月ほど前に対峙した『財宝妖精ブラクテ』と全く同じものだったけど。
「前に見た奴よりおとなしめだ」
その時出会ったブラクテは、もっと姦しく。
もっと猟兵相手に余裕なく、もっと小物な感じがした。
それもそのはず。
骸の海から染み出た過去が受肉した怪物であるオブリビオンは、完全に同一の過去から滲出するとは限らず。過去の一部でも欠ければ、その性格が変わるのは道理。
姿形や、その存在の根本となる基幹の過去……今回のブラクテで言うなら、財宝への執着心や蒐集という行動は、そう変わらないし。世界を過去で埋め尽くそうという、オブリビオン共通の本質も変わらないけれども。
逆に言えば、それ以外の部分が全く同じものとして現れるのは稀だから。
同じ姿を持つ違う個体。
瑞樹がその感覚を抱くのは当然だった。
さまざまな世界での戦争……短期間に同じオブリビオンと何度も戦うこととなるその時に顕著に感じるそれを、改めて肌で感じながら。
倒さなければならない世界の敵であることに変わりはないと。
右手に胡の銘を持つ奉納の刀を、左手に刃が黒い大振りなナイフを抜き放ち、瑞樹はブラクテを見据えた。
ぎろりと、逆に猟兵達を見回したブラクテは、その周囲に財宝を集め。
山のようになったそれから3体の財宝竜を作り出す。
へぇ、と感心して見上げるうちに、1体に大きな可愛いぬいぐるみが挑み、1体は見えない刃で次々と切り刻まれて。残る1体にも、冒険者の1人から地図を見せて貰っていた黒髪の少年が、巨大剣を携えて挑みかかっていった。
財宝竜の抑えは充分か、と判断したところで。
冒険者の別の1人に、エルフの女性が何やら話しかけているのが見え。
残る1人、一番体格のいい、大剣を持った男……ヴァンがふと、瑞樹の目についた。
向こうもこちらの視線に気づいてか、振り向いてくれたから。
「頼んでもいいかな?」
ブラクテに視線を向けたまま、そっとヴァンに近づいて小声で告げる。
「少しだけ、気を引いて貰えたら助かる。
もちろん、がっつり戦えっていうわけじゃないぜ」
「そのくらいなら、何とかできそうだ」
ヴァンが頷く気配に、瑞樹も首肯して。
2人はブラクテに向けて駆け出した。
「もう。グランツの操作中なのに……こっちも邪魔をするの?」
その動きに気付いたブラクテが、苛立たし気な声を上げると、手にした竜眼の宝珠を掲げ、呪詛で煌めく瞳を周囲に残る財宝へとじっと向ける。
それは、竜の眼。
見つめ続けた財宝を遠隔操作するユーベルコードだと瑞樹は気付いて。
「緋き炎よ!」
その視界を遮るように、金谷子神の錬鉄の炎を放った。
炎陽から逃れ、後ろに飛び下がったブラクテは、咄嗟に顔を背けたから。その場にある財宝全てが操られることはなかったけれども。
それでもそこそこの数の財宝が、ふわりと浮かび上がる。
「そら、こっちだ!」
そこに飛び込んだヴァンが、声も上げながら大剣を目立つように振り上げれば、それに気を引かれたかのように、幾つもの財宝が飛び行き。
残り少なくなった財宝を冷気が覆い、動きを凍らせたのも横目に、瑞樹は駆けた。
一気にブラクテの目前にまで迫る瑞樹だが。
咄嗟にだろう、竜の尾の骨を模したような黄金が振り回され。
鞭打つように襲い掛かってきた黄金の尾が強かに瑞樹を打ち据える。
だが瑞樹はその痛みに耐え、続く2撃目は左手で逆手に切り上げた黒いナイフで打ち払うと、その攻撃の隙を縫うようにして右手の剣を振るった。
鋭い一閃は、ブラクテの胸部の周囲を飾っていた金色の輪を断ち切る。
「ワタシの黄金が!?」
動揺を見せ、そしてその怒りのままに振り回される尾に、鋭い黄金の爪が光る手足に、瑞樹は一旦距離を取るように後ろに飛び下がった。
「皆、目を」
そこに短い声が響き、咄嗟に左腕を前に掲げると。
腕の向こうが白く輝く。
唐突な眩い閃光に、ブラクテは対応できなかったらしく、振り回す尾や手足が出鱈目なものになっていたから。
読み切れない攻撃に突撃するのは愚策か、と瑞樹は視線を周囲に向けると。
先ほど目くらましに使った炎陽を、操られずに床に残った財宝へ放った。
複数合体で強化された火力は、主に黄金でできた財宝を次々と溶かし崩していった。
溶かして形を変え、財宝でなくなれば操作されなくなるのではと期待しての対応ではあったけれども。
「ああ、もったいねぇ……」
「エール、お前なぁ……」
(「申し訳ないことをしてしまったかな」)
冒険者達の声に少し苦笑して、でも瑞樹は黄金を溶かし続けた。
大成功
🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
財宝妖精さんだ!あたしは冬!宜しくね!
(自身のベルが黄金ではっとなり)ポーラのベルは渡さないよ!
渡したら雪で真っ白なんだから!
【属性攻撃】で氷の粒を周囲に展開。目立ちつつ[凍雪の吐息]で飛んでくる財宝を凍らせ、雪で覆って無力化の【時間稼ぎ】しながら、
財宝をかすめ取ろうとする冒険者さん達がブラクテから死角になる様【おびき寄せ】るの。
隙を見せたら冒険者さんに合図して、ブラクテの操作してない財宝を奪って逃げてもらうよ!
なおなおが宝珠を奪いに行ったら、吹雪の【目潰し】で怯ませて援護。
宝珠なくなったら、もう力ないないだよね。
黄金の代わりに、真冬の白に染めてあげるねー♪(吐息で相手ごと一面雪と氷の世界に)
シリン・カービン
「財宝はお好きですか?」
エールを手招きして耳元でボソボソ。
うえーとか言ってもニッコリと助力を頼みます。
「あなたは私の獲物」
プラクテの前に立ち光の精霊弾を発射。
眼前で炸裂させ目を眩ませます。
その隙に【シャドウ・ダブル】を発動。
影を天井近くに潜ませ上からの視界を確保。
精霊猟刀を抜き放ちプラクテに肉迫。
殺到する財宝を弾き、死角からの攻撃も影の視界で
背後が見えているかのように回避。
プラクテの意識が私に向いている間に影が竜眼の宝珠を狙撃。
術が切れて床に落ちる財宝をエールに回収してもらいます。
動揺した隙を突き、私の斬撃、影の狙撃でとどめを。
「エール、帰ったら一杯奢ります」
なぜと言われても答えられませんが。
日野・尚人
引き続きポーラ(f06947)と行動
出たな金ぴか妖精!
宝探しは冒険者のロマン。
生前のあんたとならこいつ(ポーラ)とみたいに意気投合出来たのかもな?
ヴァン、それに他のみんなも力を貸してくれ!
作戦は俺たちがブラクテを足止め。
その隙にみんなには財宝を持てるだけ持って城の外へと走ってもらうって感じだ。
あいつ(ブラクテ)の戦力を削ぐ重要な役割だからな、頼んだぜ?
財宝を奪われて怒り心頭のブラクテの隙を突き「竜眼の宝珠」を掠め取る!
UCの斬撃と銃弾に織り交ぜ・・・
<盗み攻撃><フェイント><早業><見切り><ダッシュ><幸運>!
(ニッと笑い)
こいつが無けりゃ戦力ダウンだよな? ポーラ今だ、冬に閉ざしちまえ♪
「出たな金ぴか妖精!」
財宝妖精ブラクテの姿を目の当たりにして、日野・尚人(f01298)はどこか嬉しそうにも見える笑顔で、その指をびしっと突き付けた。
「財宝妖精さんだ! あたしは冬! 宜しくね!」
その頭上で、ポーラリア・ベル(f06947)も顔を輝かせ、弾む声で自己紹介する。
オブリビオンだから倒すべき敵ではあるのだけれども。
黄金を、財宝を集める姿は、冒険者と重なるものがあるから。
「宝探しは冒険者のロマンだからな」
もしかしたら、オブリビオンとなる前の、生前のブラクテとなら、意気投合して仲良く冒険ができたのかもしれない、と尚人は思う。
(「ポーラとみたいに、な?」)
頭の上で楽し気にはしゃぐフェアリーの、重さとも言えない重さを感じながら。
ここに仲良くブラクテもいたのだろうかと想像しながら。
「あ! でも、ポーラのベルは渡さないよ!
渡したら雪で真っ白なんだから!」
自身の持つベルにも黄金が施されていることに気付いたポーラリアが可愛くわたわたするその下で、尚人は吹き出すようにまた笑った。
強敵を相手に、しかし楽し気にわいわい騒ぐ2人を、3人の冒険者の中でも一番小柄な1人……エールはどこか呆れたようにぽかんと見てしまい。
緊張感が削がれていく中で、ぽん、とその肩が軽く叩かれる。
「宝探しは冒険者のロマン……あなたもですか? エール」
振り向くと、シリン・カービン(f04146)が笑みを浮かべていた。
「財宝はお好きですか?」
「あ、ああ……」
穏やかな笑みのはずなのに、エールは何だか嫌な予感を感じて顔を顰め。
何となく逃げ腰になってしまうその耳元で、シリンがそっと声を紡ぐ。
「うえー……マジっすか、姉さん」
あからさまに嫌そうな、困ったような顔を見せるエールだけれども。
断る様子は見せないことに、シリンはまた微笑みを浮かべ。
「頼みますね、エール」
「力を貸してくれ!」
そしてその小声をしっかり聞き留めていた尚人も、期待するようにエールに向けて手をぐっと握って見せた。
その間に、ブラクテは3体の財宝竜を生み出し。
さらに操った財宝が次々と襲い掛かってきた。
「ここはポーラに任せて!」
ふわりと尚人の頭上から飛び立ったポーラリアは、周囲に氷の粒を展開して。
「ふーっ……」
息を吐くその仕草と共に、凍雪の吐息が財宝へ放たれる。
凍てつく冷気が、雪の吐息が、飛び来る財宝を受け止めると、凍り付き、雪で覆われ、無力化されていき。
さらにその雪できらきらと自身を輝かせながら、ポーラリアは目を惹くように、氷のようにきらきら輝く羽根で宙を舞った。
「なるほど……視線とあの宝珠、ですね」
その様子を、構えた精霊猟銃の照準器越しに見据えたシリンは、しっかりとその能力を見極めて。じっとその機会を狙い。
「ワタシの黄金が!?」
銀髪の青年の一撃に動揺を見せたブラクテに。
「皆、目を」
短く声を響かせてから、引き金を引いた。
放たれたのは、光の精霊弾。
それはブラクテの眼前で炸裂し、その目を眩ませて。
「闇よ来たれ、影よ行け」
そしてその隙に、シリンは闇の精霊も召喚する。
シリンの影を象った闇の精霊は、だがブラクテには向かわず、影らしく床に広がったまま滑るように広間の隅の方へと動いていなくなったが。
シリンは気にすることなく精霊猟刀を抜き放った。
見やると、視界を奪われたブラクテは、むやみやたらに尾や手足を振り回していて。
読み切れないその動きは、躱すのも厄介なものだったけれども。
構わずシリンはブラクテへと飛び込んでいく。
正面から来る、黄金の爪が輝く腕は精霊猟刀で受け止め弾き。
不意に死角から迫る黄金の尾も、まるで見えているかのように回避して。
黄金の兜の下で驚きに目を見開いたブラクテの、その意識が自分だけに向けられていることを確信した、その瞬間。
天井から放たれた銃弾が、ブラクテの右手を撃ち抜いた。
そこに潜むのは、先ほど姿を消した、シリンの影。闇の精霊。
シリンと同じ強さを写し取った影は、天井に潜み、共有した五感でシリンの死角を補うと共に、その手にした精霊猟銃での不意打ちを狙っていたのだ。
そして狙い通りに撃たれたブラクテの右手には、竜眼の宝珠。
「な……っ!?」
動揺し、何とか左手を添えて宝珠を支えるブラクテだけれども。
反れた意識を表すかのように、操られていた財宝が幾つも幾つも床に落ち。
「今だよ!」
「行くぞ、エール」
「ああもうどうにでもなりやがれ!」
ポーラリアの合図と、もう1人の冒険者・ニュアージュにも背中を押され、エールが飛び出した。
『私達がブラクテの意識を引きつけ、財宝にかけられた術を解きます。
その隙に、エール、財宝を回収してください。
ブラクテの力を強化している財宝を減らす、その助力を頼みたいのです』
先ほどそっと紡がれた声を思い出しながら。
同様の指示を別の猟兵から受けていたニュアージュと共に。
エールは、ブラクテの近くを走り抜けるようにして、財宝を奪い去った。
その周囲で、残された財宝が炎に炙られ溶けていく。
「ああ、もったいねぇ……」
「エール、お前なぁ……」
遠くからそんなやりとりが聞こえる中で。
「ワタシの財宝を溶かすだなんて!」
それ以上に大きく、驚愕の声を上げるのはやはり、ブラクテ。
だが、財宝を盗み出したエールとニュアージュや、財宝を炙る炎の源を追撃させる暇など与えず。
空間を引き裂く見えない刃が。
獄炎を纏った巨大剣が。
ブラクテへと襲い掛かり、その竜のような尾を断ち切ると。
さらに尚人も、怒りと負傷で混乱するブラクテの元へと飛び込んだ。
凍てつく吹雪のような氷属性の銃弾を撃ち込みながら近づけば。
「行っちゃえなおなおー!」
応援するポーラリアの声と共に、吹雪がブラクテの目を眩ませて。
怯んだそこに、尚人は氷の斬撃を繰り出しつつ、ブラクテの横をすり抜ける。
思わず閉じてしまった目を開けたブラクテは。
「宝珠! ワタシの宝珠が!」
「こいつが無けりゃ戦力ダウンだよな?」
空になった右手を見て悲鳴のような声を上げる姿に、尚人は、掠め取った竜眼の宝珠を右手で掲げて見せながら、にっと笑った。
「ポーラ、今だ。冬に閉ざしちまえ♪」
「うん。黄金の代わりに、真冬の白に染めてあげるねー♪」
そして、尚人の声に応えるように、ポーラリアが凍雪の吐息を放つ。
雪に覆われ、凍り付いていくブラクテの姿を、シリンはしっかりと見据え。
吹雪の中を走るように再び接近すると、精霊猟刀を振り抜いた。
「あなたは私の獲物」
刃はブラクテを覆う黄金の兜を断ち割って。
素顔を見せたその姿を、天井からの銃撃が撃ち貫いた。
「ああ……ワタシの……財宝、が……」
崩れるように消えていく、財宝妖精の姿。
皆はそれを静かに見つめて。
「……終わった、のか……?」
静寂を破ったのは、恐る恐る様子を伺っていたエールの声だった。
「ええ、終わりましたね」
「終わりー!」
ふわりと笑いかけるシリンに、元気にはしゃぐポーラリアに、場の空気が緩み。
「んじゃ、アジュールへ戻ろうぜ」
黒髪の少年が終わりを宣言する。
「残った財宝は貰っていっても構わないよな」
「もちろんだろ。ロマンだからな」
「ろまんー!」
「ふええ。あの、こっちにも落ちてましたぁ」
「あー……この溶かしてしまったのはどうしようか」
「もう冷えて固まっているね。持ち運べるように切り刻む?」
「そういえば、城の外にも落としてなかったか?」
「あ、悪ぃ。結構落とした」
「マジかよ。早く拾いにいかねぇと!」
盛り上がる皆の中、シリンはそっとエールへ近づくと。
「エール、帰ったら一杯奢ります」
「え? いやシリンの姉さん、奢るのはオレらの方じゃね?」
不思議そうな顔で首を傾げるエールだが。
ゴールドゴーレムの囮にしていた、なんて理由は告げられないので。
「私が奢ります」
「ま、まあ、姉さんがそうまで言うなら……?」
訝し気なエールを、シリンは穏やかな微笑みで押し切った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵