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科学者執念物語・ 永遠なれ未完の恒星よ!(作者 頭ちきん
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#アポカリプスヘル 


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#アポカリプスヘル


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●それは、犠牲の上に見る夢物語。
「まあ元の約束はそういうものだったし君の言う事も理解できるけどそれじゃあ余りにも勿体無いじゃないかと思うのさ僕はね?」
 区切りなく滔々と語るのは年若い、少年とも少女ともつかぬ風貌である。
 身の丈に合わぬ白衣にぶ厚い眼鏡、何とも言えぬ暗い笑みを浮かべたその者を対面に、チャラポラ・ンン博士はしかめっ面を取り繕うでもなく腕を組む。
 そんな彼の服装は黄ばんで古ぼけているが、元は白だった事に疑いようのないタキシード姿である。
「もう一度考え直してくれないか時間ならばあるだろうしそう、むしろ時間を早めて欲しいぐらいなのだけど」
「時間は変えんし記録は全て破棄する。それに、どうせお前の事だ、どこかに複製を置いてあるんだろう?」
「もちろん」
 悪びれもなく答えたその者に、チャラポラ博士は苦い顔をして、気に食わないと視線を逸らす。
 立ち上がった博士を目で追って、どこか親しげな笑みを浮かべつつ、眼鏡を白衣で拭く。粗雑な扱いだ。レンズにも細かい傷があり、道具にも無頓着な性格が見える。
「君に夢を叶えて欲しいだけなんだ僕はね、そう、友達でありたいと思っているだけなんだよ。
 ただ、友達と言うからには少しくらい、ワガママを聞いてくれてもいいじゃあないか」
「お前には感謝している。友情の対価など、それで十分だろう」
 まあ、同意見だけれどね。
 博士の言葉に暗い笑みを浮かべたままで、眼鏡を頭に乗せる。
 と。
 二人の話す客間に呼び出し音が鳴り響いた。壁面に飾られたモニターには、訪問者である虫のような風体の歩行戦車が映る。
 背中の装甲を開き、サブアームからお盆と湯気立つコーヒーカップを掲げて。
『博士のオトモダチ! コーヒー持って来ーたよー』
「ああ、いたね、こんなのも」
 画面に映ったそれを興味も無さげに呟いていたが、はたと気づいて博士へ向き直る。
「コーヒー豆とタニシの区別がつかない個体らしいじゃあないか君が直したとも聞くけど他にも不具合があったら大変だし直してあげようか、僕が」
 博士は舌打ちして壁面の受話器を手に取ると、「いないのかな?」とカメラを覗きこむ歩行戦車を怒鳴り付けた。
「しばらくここには来るなと言っただろう、早く帰れ!」
『えっ、でも今日のコーヒーは美味しそうだよ?』
「知らんわ馬鹿たれ!」
 受話器を叩きつけて通信を切ると、すごすごと引き返す歩行戦車の後ろ姿が画面に映る。
 どうせなら飲んでみたかったが、そう嘯いて白衣の者はソファから飛び降り、眼鏡をかけ直した。
「それじゃあ、僕は行くよ。最後の出迎えがあるしね。君が心変わりしてすぐにでも実験を始めてくれることを願っているよ」
「…………、すまんな」
「いいよ別に。番によろしく言っておいてよ」
 白衣の言葉には答えず、一人になった部屋で机に置かれた写真立てを手に取る。
 綺麗に掃除されたそれは、すっかり色褪せてしまった写真に輝く笑顔を見せた女性とエコー写真が貼り付けられていた。

●夢の終わり。
 集まった猟兵を前に、事態は深刻だとタケミ・トードー(鉄拳粉砕レッドハンド・f18484)はホワイトボードにペンを打つ。
「アポカリプスヘルの中で、最近トラブルの多い拠点付近にある巨大農場の防衛を頼む」
 タケミが記した巨大農場は所々崩れているものの防壁に囲われ、少しは防御能力があるだろうと告げる。
 更に付け加えるならばと、農場を見下ろすように設置された環状実験施設。
「こいつが起動すればかなりの熱量を発散してな、冬でも農作物を育てるのに十分な温度を確保できる訳だ」
 ならばこれを破壊されるのは農場にとっても痛手になるだろう。そもそも、破壊されてしまうと瓦礫やら内容物やらで畑が汚染されてしまうのだが。
 この巨大農場を目指すオブリビオンは大規模な数が予想される、アポカリプスヘルでも災害の一種と捉えられている存在だ。
「その名もヤドトリ。まあ、ヤドカリみたいなもんだが中身は害獣だな。
 雑食で単体でも繁殖する上に知能が高い。人間の扱う道具も理解して使用する厄介者だぞ」
 もちろん、人も彼らの食糧だ。拠点を襲い大量に繁殖しながら十分に育った個体が、他の個体と共に移動できるよう改修した拠点の一部を背負ってコロニーを形成する。
 そうやってこの荒野を食い潰し繁殖している。畑を襲えば次の目標は、延長線上にある拠点となるだろう。
 だが。
「この拠点に重大な問題が発生している。いや、しようとしている」
 今現在、同盟を組んだ拠点と共に技術を育む天才と呼べる程の科学者。彼は己の夢の為に様々な実験を行い、その都度危険な目に遭いつつも前進してきた。
 しかし。
「何処で知り合ったのか分からんが、オブリビオンと面識があったみたいだな。
 そう考えれば今まで襲われて来たのも、博士の手引きかもしれないぜ。オブリビオンをけしかける事で猟兵の介入による問題の排除と技術の入手、そして自分たちの存在を悟らせないようにしてきた訳だ」
 問題は。猟兵が現れなければ自分の命すら犠牲になっていたであろう作戦を強行したチャラポラ・ンン博士の決意にある。
 今までの実験も、猟兵がいなければ多大な被害を出したであろう事、そして今回の件も含めて、彼は自身の夢の為ならばその命を惜しみはしないだろう。
 他者の犠牲など構う様子もない。
「博士の実験は恒星のエネルギーを手中に収める事、それほどの力を持つ動力炉の発明だ。
 そんな代物、技術だけで完成するはずはないし、アポカリプスヘルなんて劣悪な状況なら言わずもがな、確実に失敗する」
 彼の最後の実験施設は拠点の地下に建造された。レイダーたちに、そして猟兵たちに見つからぬよう造られたのだ。
 これまでの実験でも規格外のエネルギーを生成している代物ばかりで、そんなものが拠点地下で暴走してしまえばどうなるか。
 拠点周辺地域は崩落し、人的被害も避けられないだろう。
「…………、依頼内容は三つ。オブリビオンの脅威を排除し、博士の実験施設を破壊し、博士を排除するんだ」
 答えを決めた人間は、覚悟を決めた人間である。この実験を止める事は出来るだろうが、それだけで彼を止める事は出来ない。例え手足を奪われようと命ある限り、彼は自らの大願達成を諦めないだろう。
 もはや、博士の存在はオブリビオンに並ぶ脅威なのだ。
「博士は、何故かすぐに実験をするつもりはないようだ。オブリビオンの排除後は拠点の住人と交流してくれ。
 博士のいなくなった後も、彼らが前へ進めるようにな」
 タケミの言葉に戸惑う猟兵たち。だが彼女の言葉通りの選択をするかは彼らが決める事だ。
 その結果、その先の道を、誰も知らないのであればこそ。





第2章 ボス戦 『ハカセ』

POW ●つまりは加速と強度と質量の話だね。
単純で重い【パンチやキック 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD ●まずはその無駄な機能を削ぎ落として改良すべきだ。
【なんの変哲もないノコギリ 】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
WIZ ●その力を行使する際の思考と体の繋がりを調べたい。
【筋弛緩剤入り注射器 】【拘束ロープ】【違法な治験同意書】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠タケミ・トードーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●スタンディング・ウィナー!
 ヤドトリたちを跳ね飛ばし、猛然と進むデッカイザー。
(おんどりゃー!)
(死に晒せーっ!)
『回避行動に移りまーす! 皆さん落ちないようお気をつけ下さーい!』
 銃器を持ち出すヤドトリたちの射線上から身を左右に揺らし、機敏な動きでかわす鬣デッカイザー。
「さすがですね、デッカイザーくん!」
『それほどでもー!』
「いやしかし、これは素晴らしい運動性能だぞ」
 その回避力や遮蔽物を利用したフェイントなど気転の働きは目を見張るものがある。
 今回、この戦いに参加した四機の内、過去この個体のみが熾烈な戦場を生き延びたのだから、当然と言えるかも知れない。
「ようし、ここだ。あの超巨大ヤドトリと農場の中間地点。ここのヤドトリを叩き、敵の攻勢を挫くんだ」
「お任せを」
『お任せをー!』
 さて。
 現れた猟兵たちに警戒するヤドトリ。彼らを前にバーベキューセットを組み立てるジェリッド。
「おい、ヤドカリども」
(僕たちはヤドトリです~、ヤドカリじゃないです~!)
「あぁ、ヤドトリぃ!? 知るか名前なんて!」
(ひえっ)
 声を張り上げるジェリッドに小型ヤドトリは体をびくつかせる。止めて、相手は子供なのよ!
 しかし怒りの収まらないジェリッドさんは、すっかり萎縮したヤドトリを睨みつけた。
 磔だ。静かな意志がジェリッドから発せられた。
 彼らヤドトリは特殊な信号を生体器官から発している。ならばジェリッドの演算回路【Cruelty factor】によるジャミング機能の効果も適するだろう。
(!? あれ、さっきまで猟兵がいたんだけどなー、あれっ? ?)
 きょときょとと周囲を見回すヤドトリ。今の彼にはジェリッドが同族であると錯覚しているのである。
「…………」
(? ぴっ!?)
 無言で近付いたジェリッドさん、穴の空いたトランクケースをヤドにしているヤドトリを持ち上げると、怪訝そうな彼からヤドを剥ぐ。
 状況が飲み込めず触角を動かすヤドトリさん。トランクケースに隠れていたお尻が思いの外にぷりぷりしてて美味しそうです。
「さて」
 逃がす訳にはいかない。
 巨大なバーベキューセットの網はすでに良い感じに炙られている。そのままヤドトリを網に降ろすと──、あ、今回は残酷な描写はカットしてお送り致しますので、美味しそうなヤドトリの丸焼きを調理するジェリッド・シェフの姿をお楽しみ下さい。
 漂う香りは芳しく、食欲を誘う生焼きであるがそれだけでは終わらせない。さっと炙られて色付いた本体を両断し、断面を上にじっくりと火を通していく。
 熱に踊る肉がまた赤く色付いて食欲を誘う。しかしジェリッド・シェフは特に何とも思っていないようだ。
 分けた肉の上に醤油ベースの特性タレをふんだんにかけつつ、スライスしたバターを乗せる。その熱気ですぐに溶けていく黄色がとろりと殻の皿から溢れたのを見送って、ジェリッドはヤドトリの丸焼き二人前を皿に取り分けた。
「さあて、次はどいつだぁ?」
 赤のアイカメラがぬらりと光り、仲間だと錯覚したヤドトリたちがジェリッドの前を無警戒に歩いていた。
 そんな美味しそうな香りが漂う戦場で、桜花もお腹が空いたなと頭の片隅におきつつ、桜の花弁を纏った鬣デッカイザーくんと共に迫り来る敵の波を切り裂いて行く。
(ぴぎぃっ!)
(ぴぎゅ──、ぴぃっ!)
 桜花の桜吹雪によりその身を削られたヤドトリたちを、デッカイザーの突進により鉄の体が粉砕していく。
 更には桜の花弁を左右に開くことで網のように敵の勢いを殺し、弱まった甲殻を再びデッカイザーが打ち砕いていく。
 まるで以前から知り合ってでもいるかのように息のあったコンビプレイだ。
 もはや大型ヤドトリですら止められない彼女たちの進撃は敵の波をめちゃくちゃに切り捨て、その戦列を乱していく。
「上出来です、あの超巨大ヤドトリから来る他のヤドトリたちもどんどん数が少なくなっています。私たちの勝ちですよ、デッカイザーくん!」
『ウェーイ!』
(ま、待ってください!)
 追い詰められたヤドトリ。彼はデッカイザーのまえに身を投げ出すように平伏し、彼なりに高伏の意思を示しているのかやどにしていた犬小屋を脱ぎ捨てた。
「……何を……?」
(僕には八匹の子供がいるんです! 僕がいなくなると育てられません! あの子たちに罪はないんです、後生ですから見逃して下さい!)
 猟兵さんはお前ら絶滅させに来てるんだぞ。
 そんな事を言われても、生き残る為の争い、望みが叶うは一方だと語ったのは桜花自身である。
 可哀想だとは思う。だが、ここで退く訳にはいかないのだ。
(あれ? お前んちの子供なら近所の奥さんとお前が食べて三匹になってなかったっけ?)
 …………。
(そうだっけ? じゃあ三匹の子供の為に見逃して下さい!)
「貴方がたは子供の命をなんだと思っているんですか!?」
 それは強制的に口から飛び出させた言葉。信号により相手に干渉するヤドトリたちのユーベルコードなのだ。
 それは御しがたい隙となる。しまったと思った時にはもう遅く、ヤドトリたちは走り出していた。
(おりゃー!)
(死に晒せー!)
(おんどりゃーっ!)
 カサカサカサカサカサ!
「…………」
『…………』
 一生懸命走るヤドトリさんたちは遅く、一瞬の隙などほとんど意味がなく。
『えいっ』
(ぬわぁー!)
 とりあえずデッカイザーのメインアームの一振りで幕は閉じた。
 こうして自慢の数も減らされ、隊列も疎らになった彼らがレイリスの要塞と化した農場を、獰猛なアリスや猟兵並みのスーパーパワーを手にした超拠点住民を抜けられるはずもない。
 戦いは終局へ向かっていた。
(ぴぎいいいいいいいいいいいいいいっ!!
 ぴいいいいいいいいいいいいいいいっ!!)
「っ、く!?」
 超巨大ヤドトリから発せられる信号が脳を揺らす、とまではいかないが、不快な信号にコノカは思わず顔をしかめた。
 往生際の悪い。そう敵を断じて薙刀を構える。
 すでに摩那が引き摺り回して超巨大ヤドトリ周辺の衛兵たちは、その巨体の下敷きとなった。あれだけ揺らされては中に残るヤドトリも無事では済まないだろう。
「さあ、決着を!」
「ええ!」
「ギイイイイイッ! ガチガチガチ!」
(いっただっきまーす!)
 コノカを先頭に、摩那とアリス、三人娘が突撃する。
 大きく振り上げた巨大な鋏。超巨大ヤドトリの迎撃の一振りは、上空より急降下するウタによって阻まれた。
 地獄の炎に炙られ紅蓮の光を湛えた【大焔摩天】。
(ぴぎいいいっ、ぴいいいいいいいいっ!!)
 もはや叫んでも、その身を守りに来る者などいない。
「コノカさん!」
「お願いするわ!」
 アリスの上に再び飛び乗った摩那、彼女のエクリプスがコノカの胴を捕らえ、大きくぶん回してつけるは回転。
「はああああっ!!」
 気合一閃、真っ正面から叩きつけた翠の光が、ぶ厚い甲殻に包まれたヤドトリの頭部を引き裂いた。
 その直上から再び接近するは紅蓮の光。
「──、内部からこんがり焼いてやるぜ!」
 開いた眉間に突き刺さる紅蓮の刃は、彼の右腕から立ち上る【ブレイズフレイム】と繋がっている。
 獄炎をその身から溢れさせて、遂にはヤドトリの進撃は止まったのだった。


●ハカセが居る。
「いやー、すげえもん見れたなぁ」
「全くだぜぇ~、兄者よう~!!」
「……カニ……来なかったな……」
 平和に済んだというのになぜか不満そうな力瘤三兄弟。だからお前らモヒカンなんだぞ。
 血みどろの戦場であったにも関わらず、なぜか美味しそうな匂いが漂い腹を空かせている。拠点住民たちは、災害を自分たちの手で防ぎ切ったんだと抱き合って喜んでいた。
「おっ。あのクソデッケェヤドトリ、城みたいなカラがそのまんまだぜ?」
「中を探れば、オトモダチの喜ぶ物資に溢れているかも知れんな」
「まあ、まずは掃除からってところかねぇ」
 違いない。ヤドトリたちの残骸が残る荒野を笑い飛ばす。
 全て終わったのだと、安堵仕切った様子の彼ら。だが、猟兵だけは知っている。まだ終わりではないと。
「やれやれ、ようやく静かになったかなぁ」
 超巨大ヤドトリの背負う要塞の一室で、メスを置いたその者はぶ厚いレンズの眼鏡をかけ直す。
 部屋の一面には磔にされたヤドトリたちの姿があり、様々な部分が兵器と置き換わっている。
 白衣に彼らの体液で汚れた手を雑に拭い、机の上で頭を切開されたヤドトリへ機械を繋げていく。
「ふむ。やはり君たちの言語能力は失われたようだけど自意識は残っているのかなそれなら色々と確認したいんだけど答えてくれないんだものねしょうがないさ、その腕を切ってまず様子を見るべきだと思うんだ僕はね?」
 もはや言葉を発さず、時折震えるだけとなったヤドトリを前に、白衣はノコギリを取り出した。

・ボス戦となります。戦場は超巨大ヤドトリの背負う要塞内です。
・オブリビオンは改造ヤドトリを従えていますが固定砲台のようなもので回避を行わない上、無茶苦茶な改造により自らの攻撃で簡単に壊れてしまう状態です。
・要塞そのものを何らかの手段で破壊する事でボスへダメージを与え改造ヤドトリを全滅させられます。ただし、要塞内の物資も失われてしまいます。
・オブリビオンは戦闘技術は低いものの、非常に硬く、また高い攻撃力を備えていますので注意しましょう。
・特に隠しだてするつもりはないようで、チャラポラ博士の情報を問えば答えてくれるでしょう。
・派遣戦力は引き続き使用可能ですが対応できる相手ではないので、盾として扱う形となります。被害は避けられないので注意して下さい。
・被害の有無はシナリオの成否に関わるものではありません。
紅月・美亜
 新技の防衛拠点の方は問題無さそうだ。BLACKは自動制御で周囲を哨戒。これでコイツ相手に集中できるな。
「Operation;FRONTIER、発令。私がわざわざ呼び出された目的を果たすか」
 フィギュアサイズの戦闘機で航空支援。調節操縦しているの箱の一機だけだ、簡単に堕とされはしない。
 機銃で牽制しつつ主砲六発を叩き込む。折を見てボンバーを投下して操縦席から飛び降りる。操縦席から離れれば私は元のサイズに戻る。【CYBER CORE】の力だ。
「お前の口から出る情報など誰が信じるか」
 光リ輝ク銀ノ銃で撃ち貫き、ワイヤーアンカーで有線ハッキング。チャラポラ博士に関する情報を全て抜き取る。


メルティア・サーゲイト
 白兵戦闘なら人型モードだぜ。戦車だと拠点ごと潰しかねないからな。
「たまには初心に帰ってみるのもいいか」
 って事で武器はガトリングカノンとガトリングショットガン。がしんがしんと歩きながら撃ちまくって弾幕を張るぜ。
「ひゅんひゅん飛び回るロボットは趣味じゃねンでな」
 火力と装甲と射程距離があれば機動性は無くても何とかなる。改造ヤドトリを先に破壊しておくぜ。
「一応聞いておくが、チャラポラ博士を知ってて来たのかお前」
 あくまでも一応だ。回答はどっちでもいい。
「悪いが、テメーに用があって来たんじゃねェンだ。とっととくたばれ」
 後は大体撃ちまくるだけだろ。レイリスちゃんが情報引っこ抜いてくれる筈だし。


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

今日は大漁ー、みんなー今夜はヤドカリパーティーよー
でもその前に、悪いオブリビオンさんを退治しましょー
えーと、あのどこかで見たよーなハ人が悪者なのねー
うーん?あの改造ヤドトリ、壁の方には攻撃できないよねー?
まずは試しに幼い妹(幼虫)達に超巨大ヤドトリを掌握して貰って、【トンネル掘り】で壁の内側から改造ヤドトリの体内に喰いこんで寄生して貰いましょー
寄生に成功したら、暫くばれない為に味方におざなりに攻撃してー
ハカセさんの攻撃にタイミングを合わせて、超巨大ヤドトリを操って要塞を揺らし体勢を崩したら改造ヤドトリで一斉射撃しましょー
あ、幼虫達は改造ヤドトリが破壊されそーな場合は逃げてねー


●いざ往かん、移動要塞ヤドトリ!
 美味しそうな香りの立ち込める戦場で、すっかり勝利者気分の拠点住民たちがなぜか美味しそうに調理されたヤドトリを食している。
 そいつら主食に人間も入ってるからね?
 そんな彼らを背に、超巨大ヤドトリへ進行するアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)は自らと同じ姿形の妹たちを従えていた。
「ギチギチ、ギエエエエエ!」
(今日は大漁ー、みんなー今夜はヤドカリパーティーよー)
(わーい!)
(やった~!)
 倒したヤドトリは相当数。例え彼女たちの戦いが終わっても食糧が消える事はないだろう。
 ぞろぞろと進むアリス軍団に乗って猟兵たちが進む中、一際目立つのは二足歩行する巨大人型機動兵器ゴーレムユニット。
「新技の防衛拠点の方は問題無さそうだ。ブラックは自動制御で周囲を哨戒、これで例の相手に集中できるな」
 ゴーレムユニットの手に腰掛けるのは『大いなる始祖の末裔』ことレイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット、こと、紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)である。
 彼女のユーベルコードにより巨大農場を囲う防壁は要塞の如くなり、自動迎撃機能を備えた砲台が周囲を警戒している。
 先の戦いでこちらの防衛陣を突破する敵に対し、劇的な戦果を挙げた小型機動兵器も周囲を警戒している。
 抜け目なく語るレイリスを運ぶのはメルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)。先の戦闘ではこちらもゴーレムユニットを重戦車として、レイリスと共にヤドトリたちを踏み潰していた訳であるが。
(白兵戦闘なら人型モードだぜ。戦車だと、ヤドトリの背負ってる要塞ごと潰しかねないからな)
 胸中で呟く。
 この要塞内の物資は周辺の各拠点に配布すべき物だ。それをむざむざと失う訳にはいかない。
 超巨大ヤドトリを内部からじっくりと焼いても物質までは焼かなかった木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)も気持ちは同じくだ。
「折角だし、他にもヤドトリを美味しくいただける調味料があるといいな」
「その時はウチが美味しく焼きますよ」
 ウタの言葉に続いてジェリッド・パティ(red Shark!!・f26931)。彼こそが本日のヤドトリ・シェフである。
 なお火加減はばっちりだが料理が得意と言う訳ではない。これもガジェットの力であったのだろうか。
「調味料。色々とあるならお出汁をとって煮付けても良さそうですね」
 そういえば、以前は彼らに味噌を分けたような、と御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は記憶を探る。こちらはガジェットがなくとも料理の腕前が高く、味を疑う必要はないだろう。
「良いですね! カニの出汁にピリリと辛い調味料を加えて……ああ、美味しそうです……!」
 アリス妹の上で揺れながら手を組む黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)。彼女の味覚センスで考えるならば、ピリリとは常人にとって舌が裂けるかのような地獄の辛さである。
 彼らの横を走るバイク・アルタイルに乗る、と言うのか置かれているリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だ。
 影響下に敷いていた拠点住民たちも解放し、自らを苦しめていた呪縛ももはやない。
(あのオブリビオンがここの連中とどんな因縁があるかは自分は分からないっすけど)
 守るべき者は守る、それだけだと嘯いて、仮面は風を抜いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リカルド・マスケラス
ここの連中とどんな因縁があるかは自分は分からないっすけど、守るべきものは守る。それだけっすかね

拠点住人達を帰したら、【霧影分身術】で5Lv分くらいの分身を19体作る
「数は減るけど、住人達への危険性が減る分、気楽っちゃ気楽っすね」
主に改造ヤドドリを撃破して味方をサポート。敵の攻撃は分身を1Lv分分離させて【かばう】させる。自分以外に味方もかばう。

「味方にこんな改造施して、心は痛まないんすかね」
などとハカセに言ってみて、自分が拠点住人を強化して戦わせたことをもし指摘されれば
「一緒にしないで欲しいっすね。あれは彼らの明日の選択肢を広げる下準備みたいなもんすよ」
結局は平行線な会話になりそうっすけど


黒木・摩那
あなたがヤドトリ達を差し向けたのですね。
チャラボラ博士とは一体どんな関係なのでしょうか?
エネルギーが目的なら、もっと積極的に関わっていれば、それも可能だったかもしれません。
なぜそうしなかったんですか?

もっとも、そのおかげで今こうして対峙できているのですけどね。

さて、オブリビオンの硬さは厄介ですね。
ここは相手の力を利用させてもらいましょう。
魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
UC【暗黒球雷】の吸収球を剣の表面に集めて、【武器受け】で相手の攻撃を受け続けます。
その内にエネルギーが貯まるでしょうから、120%でオブリビオンに【衝撃波】でキャッシュバックします。


御園・桜花
「貴方がオリジナルでもクローンでも。貴方が貴方であることにかわりないでしょう?生きることは願うこと。在り続ける以上、どんな願いを持つのも構わないけれど…ぶつかりあえば叶わないこともある…それだけです」
UCで炎の精霊を召喚し敵の放つUCを追尾炎上させ味方に当たらないようにする
また高速・多重詠唱で弾丸にも炎の属性を付与し制圧射撃
敵の攻撃や行動を阻害して仲間の攻撃が通りやすくする

「貴方がオブリビオンでなかったら。貴方が貴方になる前に、切磋琢磨出来る他者、貴方を愛し慈しむ他者がいたら。貴方の願いは、此程迄に他者とぶつかりあわなかったと思うのです」
鎮魂歌で送る

ンン博士を害する行為は仲間であっても阻害する


●博士とハカセと猟兵と。
 粗末なスクリーンに映る自分の顔を横目に、切り開いたヤドトリの頭部にコードを差し込む。ヤドの代わりに背負わせた制御盤を弄るとヤドトリの目がくりりと動き、それに合わせてスクリーンの映像にも動きが生じる。
 どうやら彼の視界と繋がっているようだ。
「まあ手動なのは電気信号の確認の為だストレスを受けているのは人なら組織の色で判断できるけど君たちはどうだろうねとりあえず縫合するけど君たちの甲殻は堅いんだ、あまり激しい運動は止めてくれるようにお願いするよ」
 暗い笑みを湛えてヤドトリの頭部に金槌で鉄芯を打ち込み、むりやり甲殻を繋いでいく。再生を目的とした縫合ではなく、中身がこぼれないよう閉じただけの施術。
 それだけでこのオブリビオンが、被験体のその後に関心を持っていないことが分かるだろう。
(ハカセー! 侵入者が出ましっ、たぁい!
 あ、これどうぞ昼食です)
 ばぁん、と勢いよく開いた大扉が勢いよく戻って顔面を痛打したヤドトリくん。
 その鋏で器用に持つお鍋を落とさず、散らかり放題の部屋にカサカサやってくる。
「そうかい? 特にお腹は空いてないんどけどなあ。じゃあ、そこにでも置いててくれないかい」
(ハカセー! お昼ご飯なんて気にしてる場合じゃないよ!)
 自分が持ってきたにも関わらず、侵入者が来たっつってんだろとじたばたしているが、それより気にすべきことが部屋中に磔にされてるではないか。
 場合によっては共食いするヤドカリと同じく、彼らも同種の命に対してそこまで関心がないのかも知れない。猟兵へ子供を食っていたような話をしていたが、あながち嘘ではなかったか。
(もー! 迎撃準備しなきゃ──ぴぎぃっ!)
 再び勢い良く開いた大扉。重量のあるそれと壁に挟まれて、今儚い命がひとつ消えてしまった。
「おや、来たね」
 鍋の中の、煮込まれてもいない虫の集る肉を面倒だとばかりに匙でつついていたハカセと呼ばれたオブリビオン。
 それは来訪者へ顔を向けると暗い笑みを浮かべた。獲物、否、材料の組合せを探るかのような子供の目。生理的嫌悪を伴う笑顔でハカセは歓迎しようと手を開く。
「君たちが来たって事は、大体の話の流れも知っているんだろう? どうだい、食べ物もあるんだ。一緒に彼が夢を叶える所を見ていかないかい?」
 運んで来た彼は潰れてしまったけれど。
 ぼそりと付け加えられたその言葉にびくりと体を震わせたのは、大扉を開いた本人たるアリスだ。そっと潰してしまったヤドトリを覗いていたが慌ててオブリビオンに向き直っている。
 広い超巨大ヤドトリ内部探索の為に参会した猟兵たちだったが、件の鍋を持ったヤドトリを発見したことで結集し、この部屋に押し入った。
 その折、散らばったアリス妹たちはそのまま探索を続行させている。
「あなたが、ヤドトリたちを差し向けたのですね?」
「そういう事になるね」
 摩那の言葉に肩を竦めるオブリビオン。まるで他人事だ。多くの拠点を食い潰してきた存在を差し向けた者の態度とは思えぬほど、関心がないというその態度。
「テメーとにこにこお食事する為に来た訳じゃねェって、分かってんだろ?」
 立て付けの悪い大扉を引き裂くように、部屋の中に入ってきたゴーレムユニットをハカセは興味深そうに見上げている。
 その視線すらも鬱陶しく、メルティアは舌打ちして操縦席を開くとその赤い目でオブリビオンを睨み付けた。
「一応聞いておくが、チャラポラ博士を知ってて来たのかお前」
「知ってて? ……ああ、なるほど……違うよ。知りはしない、と言うのは正確じゃないかな。今の僕は彼の事を知らなかったんだ」
 骸の海から再び現れるとは、そういう事なのだろうとハカセは笑う。まどろっこしい答え方だ。
「それじゃあ、ンン博士があんたと組んでたってのは本当なのか?」
「まあね」
 ハカセの言葉に身を乗り出すウタ。あっさりと認めた白衣に眼鏡を拭くオブリビオンへ、視線を厳しく変えて拳を握る。
「あんたが焚きつけたのか、ンン博士を。ンン博士に何をさせるつもりだ?」
「焚きつけた? 僕が?」
「周囲や自分の命を顧みない実験だなんて、許せないぜ。なぜそんな事をしようとしている?」
「そんな事、だって? そりゃあ、君、とんでもない事だよ。要は彼にとって、他人の命も自分の命も、自分の夢を叶える為なら顧みる価値は無いって事なのさ
 僕はただ、彼に夢を叶えて欲しいだけなのさ」
 それほど彼の夢は大きく素晴らしいんだ。芝居がかった仕草でヤドトリらの体液で汚れた両腕を広げる。
 ならばその夢とは一体、何だと言うのか。他者も己も顧みない夢などと。
「あなたはその夢を知っている、と。チャラポラ博士とは一体どんな関係なのでしょうか? 恒星エンジンとやらのエネルギーが目的なら、もっと積極的に関わっていれば、それも可能だったかもしれません。
 なぜそうしなかったんですか?」
「恒星エンジンの、エネルギーだって? そんなもの、何の役にも立ちやしない。ああ、いや、違う、意味が変わるね。エネルギーを取り出す事なんて絶対にできないから、何の役にも立たないと答えたのさ僕はね」
 ハカセの言葉に、猟兵たちは違和感を覚えた。彼の長年の夢とは恒星エンジンの完成ではなかったのか。だがこのオブリビオンの言葉だと、それとは別にあるように語っている。
 それどころか、まるでグリモア猟兵と同じく失敗が当然だと理解している口振りだ。そこからもチャラポラ博士の夢を応援しているという言葉と剥離している。
 否。やはり言葉通りの意味ではないのか。オブリビオンとチャラポラ博士の目的は恒星エンジンの完成で無いのだとしたら。
「それに、彼には色々と協力させて貰ったよ。恒星エンジンの製作に利用できるオブリビオンの素材さ。君たちに倒して貰わなきゃならなかったし、お陰で危ない橋を渡る事にもなったけど。
 僕が直接関わってしまうと、素材研究も進む前に君たち猟兵と出くわしてしまうかも知れなかったからね。彼らを一ヶ所に押し留めておくのは、結構、骨が折れたんだよ?」
 素材となるであろうオブリビオンの選別やチャラポラ博士への関与など、エンジン作成中に猟兵との戦闘になってしまえばご破算だ。
 だからこそ回りくどくも着実に研究が進む方法を考えたのだ。それは彼と同じく研究者であるからこその発想だったのだろう。
「…………、なんだ、アンタも博士なのか?」
 ハカセの言葉に対して、どちらにせよお前は破壊対象だとジェリッドは蔑んだ。
「オブリビオンには拷問を。博士の方は高齢だし、耐久力を踏まえて尋問だ」
 きちんと対象の違いを認識するのはさすがのウォーマシン。ハカセも見習って欲しいアフターケアだ。
 しかしてハカセはその言葉に関心も薄かったが、ふと気づいて背後のスクリーンに目を向けた。
「そうかそうだなそれも面白いじゃないか拷問いい考えだなぁ」
 興奮した様子でまくし立てると傍らのヤドトリの頭部に深く根差すコードを引き抜く。大きく震えたヤドトリを一切気にせずソケットにコードを移して電話をかけると、素朴な椅子に腰かけた白いタキシードの背中がぽつりと、スクリーンに映し出された。
 チャラポラ博士だ。
 彼の目の前にはスクリーンに映り切らない巨大な鉄の塊が鎮座していた。
「やあ君聞こえているかいこっちを振り返ってごらんよ面白い話があるからさ」
『……何だ、今度は何の邪魔を……!?』
 振り向いた先にはモニターでもあるのだろうか、手を振るハカセの背後に続く猟兵の姿を確認して驚愕に目を見開く。
「聞いてくれよ、君、彼らは僕を拷問するって言うんだ。その次は君の番になるだろう。だから君、実験は早めたほうがいいと思うのさ僕はね?」
『…………、そういう事か』
 じろり睨み付けるのは、受話器を握る悪びれない子供の顔。
「アンタ、目的を話さないとコイツの二の舞になると思っておいたほうがいいですよ」
『好きにしろ。それに、俺の目的は』
「恒星を造る事、だものね」
 恒星を造る。それが恒星エンジンを指すものではないのだと、否、恒星エンジンを利用した彼の夢なのだと猟兵たちは直感する。
 ジェリッドの脅しの言葉にも冷めた目を向けたのは、自らの命を既に秤に載せているからなのか。ただ命惜しさなどではなく、隠す気もなく。
 答えた言葉を引き継ぎハカセは猟兵たちへ振り返る。オブリビオンを見つめていたチャラポラ博士もまた、溜め息を吐いて機械の方へと向き直った。
『何をするのも好きにしろ。俺はやる事をやるだけだ』
 ぷつりと音をたてて映像が消える。彼に繋げていた回線が切断されたのだ。
「だってさ。困っちゃうよねぇ、君たちが彼の元に着く前に、すべき事をすべきだって思うんだけど、彼は聞く耳を持ってくれないのさ」
 だから、自分が攻撃を受けている所を見せつけたかったらしい。
 ハカセもまた自らの体などどうでも良いのだろう。それなのに博士を気にかけ、その夢に協力している。
 だと言うのに犠牲を他者にも強要するその心は。
「味方にこんな改造施して、心は痛まないんすかね」
 リカルドの言葉。アルタイルの代わりに青年がそのお面を頭の横に張り付けている。
 それがヒーローマスクでもある彼の真の姿であった。
「味方? と言うには少し誤解があるようだけど。それ以前に、味方を改造しちゃあいけないのかい?」
 まるで理解できない様子のオブリビオン。博士のはリカルドの狐面を指し、改造と言うならば君もしていたではないかと笑みを浮かべる。
 甚だ心外である。まるで個を否定したような、幼児の遊び場のようなこの研究室での出来事と自分の行為を同視するなど。
「一緒にしないで欲しいっすね。あれは彼らの明日の選択肢を広げる、下準備みたいなもんすよ。
 興味本意で明日を奪うお前とは違う」
「…………、まあ、確かに僕の実験はあくまで記録用だからね。でも構わないじゃあないか、幾らでもある材料なんて」
 睨み付けるその目に、やはり何一つ理解していないハカセ。
 一発触発の雰囲気に緊張感が高まる中、アリスは桜花へ顔を寄せた。
「ギチチッ、ギチギチ」
(えーと、あのどこかで見たよーなハカセ? 人? が悪者なのねー)
「ええ、そうですね」
 いつか顔を合わせた敵を前に、アリスと桜花はハカセを見つめる。
 完全に倒す事の出来なかったオブリビオンは骸の海へと還り、再び時の牢獄で眠り続ける。
 だがその骸の海から目覚める彼らにその記憶が無い者もいる。メルティアとハカセの問答からすると、ハカセに先に声をかけたのはチャラポラ博士だろう。今のハカセではなく過去、骸の海から現れたハカセと面識があるのだとすれば、桜花とアリスが共に戦った、惨劇の起きた拠点の生き残りの可能性もある。
 その時の光景は今のヤドトリたちを遊び散らかした部屋の比ではない。もしそうだとするならば、人を人とも思わぬハカセに、それでも接触したチャラポラ博士の狂気的覚悟は。
「質疑応答の時間は、もう不要だろう。これ以上の時間稼ぎをさせる訳にはいかない」
 その思考を断つように前に進み出たレイリス。
 全くもってその通りだと時間稼ぎであることを認めて、ハカセはそれでも言葉を重ねた。
「君も、他の彼らのように聞きたい事はないかい?」
「ふん、お前の口から出る情報など、誰が信じるか」
「嘘なんて吐かないけどなぁ」
 頭を掻くオブリビオンに、そういう話ではないのだとレイリス。
 このオブリビオンの価値観と倫理観は、まるで狂人のそれなのだ。このオブリビオンは言葉通り嘘は吐かないだろう。だが、その歪んだ思考で捉えた現実が、真実とは限らないのだ。
 それが妄想でないなどと、誰が保証できると言うのか。
「そうかい。なら、仕方ないね」
 やれやれと自分の肩を叩くと、壁に磔にされたヤドトリたちが一斉に動き始めた。
「それじゃあ、しようがない。時間稼ぎをしようか。僕が骸の海に還るまで」
「自己犠牲のつもりか? 下らんな。貴様は自分の研究に他者の犠牲を強要するように、博士の研究の為に犠牲を強いているに過ぎない!」
「そこは問題じゃあないのさ」
 熱を見せたレイリスとハカセの言葉。
 そんな二人ではなく、磔から抜け出した武装化する改造ヤドトリにを見つめるアリス。
「……ギギギ……」
(うーん? あの改造ヤドトリ、壁を壊せる武器ないよねー?)
 ぬばたまの瞳がきょろきょろと、這い回るヤドトリたちを捉えていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵