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百竜殺し

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 風花舞う荒野を暴虐が征く。
 雲霞のように、飛蝗のように、それは透いた空を埋め尽くす。
 竜だった。百は下らなかった。
 進む先に在るものを全て食らい尽くし、竜の群れは荒野を征く。
 人も獣も等しく滅ぼされ、あとに残されたものは空虚な死のみ。

「竜狩りだ。恐ろしく数が多い。長期戦になるだろう」
 集った猟兵たちに手短に伝えたグリモア猟兵のショコラッタ・ハローは、テーブル上の二点を指し示した。その一指を、ゆっくりともう片方の指へと滑らせていく。
 動く指は竜の群れで、その先にある指は数多の人が住まう街だという。話は至って単純だ。町に到達する前に竜の群れを滅ぼせとショコラッタは言う。
「災厄の浮島、と地元の者の伝承で呼び習わされる怪物が群れの中心にいる。特筆すべきはその大きさだ。その名の通り、ちょっとした小島ほどのサイズがある。浮島の背中に巣を作る生態の竜がいるらしく、そいつらや、そいつらの仔竜によって竜の群れが築かれているようだ」
 竜の群れがなぜ移動をしているかは、わからない。重要なのは、竜の群れが人を含めた全ての生物にとっての脅威である、ということ。押し止めることができねば、蹂躙は免れない。
「狩りの訓練をさせているのかもな。浮島と成体の竜に先んじて、仔竜たちが先発隊として暴れまわっている。まずはこいつらを殲滅してくれ。ちょうど倒しきったころには、浮島と成体の竜どもと対峙することになるだろう」
 ひとたび現地に赴けば、休む時間もない。ただひたすらに竜と殺し合う、血みどろの戦場に身を置き続けることとなる。「覚悟はいいか?」とショコラッタは挑むような視線を猟兵たちに差し向けて、笑みを浮かべた。
「全て終わったら、討ち取った竜どもを喰ってやれ。それが弱肉強食の習いってやつだろう。例の地元の伝承によれば、浮島で育った竜の肉は大層美味だそうだ」
 征こう、猟の時間だ。グリモアをその手に浮かび上がらせながら、ショコラッタは席を立った。


扇谷きいち
 こんにちは、扇谷きいちです。
 リプレイの返却スケジュールなどを紹介ページでご連絡する場合があります。お手数をおかけしますが、時おりご確認いただければ幸いです。

●補足1
 街へ避難を呼びかける余裕はありません。
 竜の群れの迎撃に力を注いでください。

●補足2
 第三章は日常シナリオとなります。
 第一~第二章に不参加の方も気兼ねなくどうぞ。

●補足3
 第一章の開始時刻は朝。
 天候は晴れ雪。
 時刻と天候による有利・不利は存在しません。

 以上、皆様の健闘をお祈りしております。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天御鏡・百々
例え百をも超える数が襲い来ようとも
人々を護るために臆してはいられぬな
我が全力を尽くして戦い抜こうぞ!

数には数で……とも思ったが、
自然を操り範囲攻撃をする仔竜相手では
防御の薄い鏡像兵では少々分が悪そうか
ここは我自身で戦うとしよう

先ずは巫覡載霊の舞を使用し光を纏う
それから神通力(武器)による障壁(オーラ防御15)と
神霊体によるダメージ軽減で敵の攻撃は無視して
敵の密集するところに突っ込み(激痛耐性1)
真朱神楽(武器:薙刀)によるなぎ払いをお見舞いしてやろう(なぎ払い7)

我が舞うが如き戦いにより、味方を鼓舞することができれば僥倖だな(鼓舞5)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、絡み歓迎


ロー・オーヴェル
まァ確かに生まれたばかりじゃ何も経験がないからな
竜も人も経験して強く成長していくもんだ

でもお前らに成長されたら困るんだな
「てことで、こっちが成長する為の『経験』になってもらおうかね」

先頭に立ち堂々と戦闘するなんて
そんなのは騎士や戦士に任せる

仲間と竜との戦闘の間隙をつき
一体一体攻撃して傷を負わせていく戦法

前で戦う仲間の助力となる様
後方からのナイフ投擲で援護
極力【二回攻撃】で深手を負わす事を主眼

攻撃対象は仲間と交戦中の敵で傷深い個体優先
それを見落とさぬよう戦闘中は自身の立ち位置に留意し
把握可能な位置を常時保つ様注意

同時に自身が敵に囲まれぬ様に注意を払い
【見切り】も活用し攻撃を極力受けぬ様留意し行動


アメリア・イアハッター
浮島って何それ素敵
何それ素敵!
でも、敵かぁ……残念だなぁ……
いつか、本当の浮島を探しに行こ!
まずはいっぱいの竜から、空を返してもらおう!

・方針
数には数で勝負!
皆の後方から攻撃

・行動
UC【マジック・ミサイル・ダンス】使用
味方の後方から絶え間なくミサイルで攻撃
なるべく広範囲に攻撃し、当たらずとも爆風で敵の態勢を崩し、他の味方への攻撃を阻止することを狙う

また予め宇宙バイクに跨りながら攻撃し、敵に狙われたらすかさずバイクで逃走
距離をとり、十分敵を引き離したら再び攻撃開始
しつこいようならバイクを操縦しながら攻撃

長期戦になるならなるべく移動はバイクに任せて疲れにくいようにしましょう
よろしくね、エアハート!




 蒼穹はどこまでも高くどこまでも広く、冷えたターコイズブルーで満たされている。そんな雲ひとつない青空を、小指の先ほどの大きさにも満たない小さな雪が舞っていた。それは地に落ちる前に風にかき消され、荒れた大地を白く染めることは叶わない。
「浮島、かあ」
 鼻先にふわりと漂う雪華を掌で受け止めたアメリア・イアハッターは、予知でもたらされた"浮島"と称される存在に思いを馳せ、若葉色の瞳を夢想に輝かせながら嘆息した。
「すっごく素敵だけど、敵なんだよね。あぁ、残念だなぁ……」
「そう落ち込むなよ。ま、未知の存在に心惹かれる気持ちはわからないでもないけどな」
 隣を歩むロー・オーヴェルはジャケットの襟元を寄せながら笑うと、白い息をこぼして荒野の彼方を見遣る。青一色の空の向こうに、暗雲のように沸き立つ黒い影が見えた。竜の群れだろう。
「……しかし、物騒な連中が相手なら、そうも言ってられないのが難点か」
「うむ。物騒も物騒、さらには数も多いと来ている。一時足りとも油断は出来ぬだろうな」
 薙刀の覆いを解きながら、天御鏡・百々はゆっくりとうなずいた。幼さが先に立つ顔には、しかし、わずかな緩みもない。見る見るうちに迫りくる仔竜の群れを前に、彼女の表情はすでに、戦に臨む戦士のそれになっていた。
 アメリアが、またがったバイクのグリップを強く握りながら口の端を上げる。
「そうだね。本当の浮島探しは未来の私に託して、いまは目の前の竜たちから空を返して貰うことに専念しよう!」
 風の音の他になんの音もなかった荒れ地に、耳に煩わしい雄叫びが響き渡る。もはや数え上げることすら難しい黒き仔竜の軍勢が、猟兵たちの眼前に押し迫っていた。
 なんら劇的な光景を挟むことなく、人と竜との戦端は開かれる。
 獲物に喰らいつかんと迫る仔竜の咆哮に、アメリアの駆る鉄馬の唸りが混じった。勇壮なロデオのように後輪で大地を円状に切り裂きながら、彼女が可憐な所作で細い腕を払うと、生み出された数多の魔弾が青い空に剣呑な花火を咲かせていく。
 澄んだ冬の風に、鉄錆びた臭いが乗った。蛮勇に走った最前列の仔竜がアメリアの放った一撃を受けてバラバラと地に落ちていく。だが、同胞の死も鑑みない後続の連中は一層猛々しく猟兵たちに襲いかかってきた。
 ――なるほど、確かに百は優に超す軍勢のようだ。しかし、臆してはいられぬ。我が背に守る命は、百や二百で済むものではないのだから。
 多勢に無勢は百々も承知している。常ならば鏡像の兵を用いて相対するところだが、仔竜に対しては力不足は否めない。ゆえ、彼女は自らの身を以って竜の群れに相対する。
 陽光にも劣らぬ鮮烈な光をまといながら百々は躊躇なく仔竜の群れへと飛び込み、手にした薙刀で敵勢を切り払っていく。
 その様を「ひゅぅ」と小さく口笛を吹いて感嘆してみせたローは、「大のおとなが、年下の女の子たちに任せきりにはさせてられないな」と目を細める。
 それまで飄々としていたローの瞳に、鋭い光が差した。手に構えたと思った次の瞬間には、彼が投擲した短刀は曲線を描く間もなく仔竜どもの体躯を真っ直ぐに貫いていた。
 直後、骨をも凍らせかねない吹雪が戦場に吹き荒れる。接近するには不利と見て取った仔竜どもが、本能に突き動かされるまま冷気の豪風を吐き出し始めたのだ。
「危ない……っ! この数、この威力、小さいとはいえさすがは竜と言ったところかな?」
 ウィリー走行で急転回したアメリアは、背に迫る猛吹雪に巻き込まれるのをかろうじて回避した。風にあおられて背後になびいていた髪の先端が凍りつき、砕け散ってしまったが、身体的な怪我を負うには至らない。
 ――よろしくね、エアハート。これから無茶をさせてしまうけれど、どうか最後まで私についてきて。
 空を覆い尽くす悪しき者どもが竜ならば、宙駆ける竜騎兵たるアメリアの鉄馬もまた竜である。熱を帯び始めた愛機へ語りかけるように指先を這わせた彼女は、前線に挑む仲間たちを支えるためにいま再び地を疾走った。
 その疾駆に追いつける仔竜はなく、その身を囚える嵐も存在し得ない。そして、華々しく戦場を駆けるアメリアが放った魔弾は、眩い閃光と共に数多の仔竜を呑み込んでいく。
「助かる、アメリア殿、ロー殿。この助力をものにせねば、戦巫女の名折れになろうな」
 仔竜の注意をよく引きつけて前線を構築していた百々は、後方から届く援護射撃に小さく息をつく。敵の数は確かに多い。だが、こちらには一騎当千の頼もしい仲間たちがいる。少なからぬ怪我を負っていた百々だが、これしきのことで前線より退くつもりはなかった。
 ――我が舞は決して止められぬ。さあ、皆、疾く戦場を駆けようではないか。
 その小さな体のどこにそんな力が宿っているというのだろう。可憐にして勇壮な所作で薙刀を閃かせ、百々は血風のなかで死を招く戦舞を踊り続ける。
 牙を突き立てられ、竜の息吹を浴びせかけられども、天の加護で身を覆った百々には恐るるに足りない。
 百々がその手に携えた薙刀を縦横無尽に揮うたび、刃に囚われた仔竜の体躯が裂かれ、衝撃波に巻き込まれた仔竜の翼が断たれていく。
 小さくも大きな百々の勇姿に、多くの仲間たちが気持ちを奮い立たせる。ローもまた、その一人だった。
 ――その血の一滴も無駄にはさせない。任せな、確実に仕留めて見せる。
 戦意が落ちる様子も見せない仔竜どもを見据えたローは、指間全てにナイフを構えた両腕を胸前で交差させた。
 戦場に吹き荒れる風に煽られて、かぶっていたフードがめくれ上がった。影の落ちていたローの灰色の瞳に、青い空の色がかすかに映り込む。
 仔竜どもは、この短い戦いのなかで急速に戦いの方法を学んでいるようだ。バラバラに突撃していた個体は減り、隣り合う者同士で死角を補う者すらいる。
 これ以上"経験"を積まれて成長されたら困るな、とローは胸中で苦笑した。そして、力を溜めていた両腕がおもむろに空中を払った。
「……てことで、そうなる前にこっちが成長する為の『経験』になってもらおうかね」
 てんでバラバラに放たれたと思われた八本のナイフは、しかし、狙い違わず仔竜どもの急所を穿ってみせる。
 風花とともに荒野へと降り注いだ数多の仔竜の亡骸が、地をいびつな黒で彩っていく。凄惨な光景だ。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。
 未だ空を制する仔竜の群れに、猟兵たちは果敢に挑んでいく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と組み

大竜の前の仔竜、か
面白いではないか
ならば此方も乗ってやろう

どちらが多く墜とすか競争だ、師父よ

【餓竜顕現】で暴れ竜を喚ぶ
傍らへ置く事で死角をひとつ潰し
黒剣を薙ぎ払うことで広めの範囲を補う

仔竜にあまり接近された場合は蹴飛ばし
他の個体へぶつけ、他猟兵への攻撃を妨害
他者の死角を狙う者あらば阻止も行う

また師の雷が狙い易い様引き付け、瞬時に退く
暴走した自然現象が師を巻き込む気配あらば
迷わず其方へ駆け、庇う

爪は見切るか、第六感か
叶わねば剣、あるいは共に打ち振った暴竜の身体で受ける
無傷の勝利など有り得ぬのは覚悟の上と耐え
ただ次の仔竜を見据えるのみ

さあ、まだまだ百には足りぬぞ


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
やれやれ、虐殺も彼奴等から見れば狩りの訓練か
ふむ――確かに良い機会だ
あの愚か者共に強者の存在を教えてやらねばなるまい
良いぞ許す、その勝負に乗ってやろう
勝った方に酒を奢る…如何だ、これで良かろう?

群を成す仔竜へ落とすのは【雷神の瞋恚】
高速詠唱で多くの、範囲攻撃で広範囲に雷を落とす事で多くの仔竜を巻き込む
麻痺させる事が叶えば自然現象の暴走も抑えられるだろう
ジジは勿論、他の猟兵への支援も惜しまぬ
如何せん敵は数が多い
死角を狙われぬよう声掛けは怠らず
隙を補うよう業を行使

天災が降り注ごうと、敵が牙を向こうと
一歩たりとも引く事はない
ふふん、何故ならば私には愚直で優秀な従者がいるのだから




「笑えない話だな。我らからすれば虐殺だが、彼奴らからすれば狩りの訓練というわけか……ならばいい機会だ。狩りというものが命を賭けて臨むものだということを、教えてやらねばなるまい」
「どちらが狩り、どちらが狩られるか、というわけか。面白い。大竜の前の仔竜、どちらが多く墜とすか競争だ、師父よ」
 戦場を乱れ飛ぶ仔竜を見上げるアルバ・アルフライラとジャハル・アルムリフは、余裕とも取れるやりとりとは裏腹に、その表情を固く引き締めていた。慢心が戦において最大の敵であることを、二人はよく知っていたからだ。
 ゆえに前線の一翼を担う二人が講じる手立ては堅実だ。ジャハルは彼の巨躯よりもなお大きな鋼の半竜を召喚せしめると、それを引き連れて仔竜の群れへと突き進んでいく。
 じゃれるように振るわれる仔竜の爪を黒剣で受け流し、荒れ狂う吹雪の咆哮は己が半身でもある半人の暴竜の身を盾にして防いでいく。
 文字通り歯が立たない堅牢な守りに業を煮やして突っ込んできた仔竜には、蹴りを見舞って間合いを取ってみせる。そうしてジャハルは、仔竜の一群をそうと悟られぬまま一箇所に誘導していった。
「常のように、肉を切らせて骨を断つような真似はせんか。ジジめ、兄貴分気取りで仔竜どもに戦のイロハを教授しているつもりか? ふふん」
 踊るように戦場に立つ弟子の姿を愉しげに見つめていたアルバは、瞼を一寸の間だけ閉じると、昏い魔の光を宿した蒼玉の瞳を見開いた。
 内に刃を秘めた瀟洒な杖を高々と掲げれば、雲ひとつない晴天にパチリと乾いた雷音が幽かに鳴った。それはまたたく間にトグロを巻く雷の龍神へと変じ、空を埋める仔竜たちを恐れおののかせる。
 一匹の仔竜がその手立てを止めようとアルバに牙を剥かんとするが、熟達した魔術師の詠唱に追いつけるはずもない。指揮棒を揮うように杖を振り下ろせば、天の怒りの如き雷撃が仔竜どもをまとめて焼き払う。
「そうだ、お前が持ちかけた勝負だがな、ジジよ。買った方に酒を奢るというのはどうだ?」
 雷撃の残滓が空気を焦がすなか、ジャハルが雷に敵を巻き込むように誘導していたことを知った上で、アルバは悪戯めいた笑みを差し向ける。
「……ならば、師父へ向けられた凶爪を防いだ数を、俺に加算してもらおう。そうでなければフェアではない」
 剣に食い付いて牙を折った仔竜を断ちながら、ジャハルは肩越しにアルバを見遣る。面食らった様子の師父が反論を口にする前に、竜人の男は空中より飛来する仔竜どもへと向き直った。
 ――元より百に至るまで屠るつもりだ。負けはしない。竜にも、師父にも。
 ジャハルは半身になって剣を構え、仔竜どもを間合いに捉えるギリギリまで時を待つ。そして、仔竜どもが嵐の息を吐き出さんと口を開いた次の瞬間、暗色の刃を薙いだ。彼が従えた半竜がそれに倣い、ただの一振りで多くの仔竜の首を刎ねてみせる。
「まったく、良くも悪くも優秀な従者だ、お前は。いいだろう、条件を呑んでやる。だから……然と我が身を守ってみせろ。頼りにしているぞ、ジジ」
 思わぬ頓知を利かせた返しを受けたアルバは、首なしの仔竜の落ちる先に視線を向けながら、呆れたような、感心したような表情を浮かべて、再び杖に魔力を込めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

境・花世
深い宵の菫色した鱗に思わず微笑む
懐に仕舞ったおんなじ色の鉱石
――また逢えたね、かわいい仔たち

あどけない攻撃は可能な限り見切って避け
それでも向かってくるなら衝撃波で押し返し

骸の海の向こうから
何度でも孵って、還って来るのなら
その度に子守歌を聴かせてあげよう

“花開花落”

ひらり翻す杪春の扇を
そのまま花弁へと変えて風に乗せ
一匹でも多く、もっと遠くまで

散れ!

守りを捨てて殺気と共に放つ攻撃
血塗れになっても倒れるほど柔じゃない
それに、そう、死ぬのだって怖くはないんだ

誰かが叫ぶ声が聴こえたならもう一度
残念ながら強いのはわたしたちの方だね
春が来る前に――いいこで、おやすみ

※アドリブ・絡み大歓迎


都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

優美なる風花が
我を忘れて踊り狂ったかのような
大気の乱れへ双眸を細め

かの童話の如く赤い靴を履かされた踊り子の竜達
脚を斬らねば進軍止まらぬのなら
せめて
花筐――舞う花の群れを餞に贈りましょう
柔らかな輪舞となりますように

飛来する様から凡その数や戦況把握に努め
皆へ声掛け

不意打ち、急襲、死角に備えて第六感を研ぎ澄まし
見切りと先制攻撃で迎撃、回避
オーラで自他共に防御

二回攻撃、範囲攻撃を駆使して
流星符で捕縛、皆の援護
花筐は北極星の名を持つ白花の幻想、広範囲の敵を一掃
春呼ぶ花に抱かれて
逝く道を示す星に導かれて、眠りなさい

冬野はやがて
貴方という過去の骸と記憶を苗床に
きっと優しい草花に満つでしょう


ジル・クラレット
元より短期決戦のつもりだったけれど
仔竜だからこそ畏れを知らないのだとしたら厄介ね
さぁ、良い子はそろそろおやすみの時間よ?

基本、弱っている仔竜を優先的・中心に【花嵐】で纏めて攻撃
すばしっこい子や、後一撃で屠れそうな子は【薔薇籠】で拘束をして
確実に討つわ
回避や、距離を詰める必要がある時は【花踊】も併用
空を駆けられるのは、あなた達だけじゃないのよ?
全体的に疲弊しているようなら【シンフォニック・キュア】で回復を
一手たりとも、無駄にはしない

弱肉強食は自然の摂理
それに感情論をぶつける気は更々ないわ
あなた達は、生きる為に人を襲い、喰らうのよね?
奇遇だわ、私達も同じなの
――生きる為に、あなたの命を頂戴?




 血に墜ちた仔竜どもの流す血でぬかるんだ荒れ地に、猟兵たちの無数の足跡が刻まれていく。天の高みに至った陽は緩やかに下り始めども、なお風花は尽きることなく彼方の空より降り続けていた。
「ようよう折り返しと言ったところでしょうか。皆さん、お怪我は」
 白く烟る息を漏らしながら、都槻・綾は慎重に周囲へ視線を送る。彼と肩を並べて戦場に立つジル・クラレットが、顔を濡らした竜の血飛沫を拭いつつかぶりを振った。
「少しだけ。でも、まだ行けるわ。踊りを止めるには、まだ早すぎるでしょう?」
「そうだね。あの仔たちも同じ気持ちのようだ。なら、お相手するのがわたしたちの務めというものだよ」
 共に戦線を構築する境・花世もまた少なからぬ傷を負っていたが、その表情に陰りは見えない。いつ終わるとも知れない戦に皆一様に疲労こそ隠せないものの、士気を落とした者は誰ひとりとしていなかった。
 美しく頼もしい仲間たちの姿に綾はほのかに口元を和らげ、術符を手に携えて死の満ちる戦場に向き直る。
 猛り吠える仔竜の数は、少なくない。直近に迫る個体数をすかさず把握した綾は、ぬかるんだ泥を跳ねながら地を蹴り、あえて敵の群れに身を投じていく。
 避けるにせよ防ぐにせよ、それはこちらの体力を削る行為に他ならない。ならば先を制して攻めてしまえばいい。綾は息をかけて術符に霊気を吹き込むと、それを風花を踊らせる冬風に乗せて仔竜どもへ届けていく。
 身を拘束されて地に落ちていく仔竜ども。綾がそれらにとどめを刺す合間にも、後続の仔竜は攻め手を止めない。
 花世はふと、懐中に仕舞った鉱石を衣の上より指先でなぞった。眼前に迫る仔竜の鱗と同じ色彩を帯びた藍菫。奇妙な親しみを覚えて、彼女の唇が無言のうちに言葉を紡ぐ。
 ――また逢えたね、かわいい仔たち。
 さりとて情を抱いて手を緩めるほど花世は幼くもない。喉笛に喰らいつかんとする牙は最小限の動きでかわし、春の終いを模した扇を打ち払う。
 巻き起こる衝撃波が仔竜を吹き飛ばし、玉突きが如く互いの体躯を叩きつけ合わせれば、骨と内臓が潰れる不快な音色が戦場に響き渡った。
「空を駆けられるのは、あなた達だけじゃないのよ?」
 綾の縛符と花世の衝撃波から逃れた仔竜に、すかさずジルが追撃を加える。舞い散る雪よりも軽やかに、女は巧みに風に乗って空を駆け上がっていた。
 頭上を取られた経験など、兄弟との戯れの他にはないのだろう。ジルの細い指先から放たれた薔薇の茨に搦め捕られた仔竜どもは、逃れられない死の気配に飲み込まれてか細く鳴く。
 ジルの白い頬が再び血で赤く染まった。彼女が手にした銀の短剣は、迷わず仔竜どもの頚椎を貫き、瞬く間に命を摘み取っていく。
 戦の熱がもたらす狂騒に駆られた仔竜どもは、同胞の仇を討とうとでも言うのか、退くことも知らずに突撃を繰り返してくる。
 その様を目にした綾は、虚栄心ゆえに死するまで踊り続ける呪いを受けた赤い靴の娘の物語を思わずにはいられない。睫毛についた風花をまばたきで振るい落とすと、彼は新たに懐から取り出した術符に縫い綴られた星に指を沿わせて嘆息する。
 ――いや、死するまで踊り続ける宿命を負った者は、なにも仔竜たちだけではない、か……。
 綾は猛進する仔竜たちの動きを絡め取りながら、共に戦う二人に声かける。
「このまま相手の攻撃を許していては埒が明きません。怪我を負う前にまとめて打ち払い、突破口を開きましょう」
 牡丹よりもなお深く艷やかな髪を乱して戦に戯れる花世は、もはや幾度目かもわからぬ扇の一手で仔竜を地に叩きつけると、花開くように笑顔を零して綾へと顔を向けた。
「構わないよ。この子たちにも還るべき場所がある。冬の寒さは辛かろうから――もう、送り届けてあげようか」
 乾ききった、そして慈しみ深い声音で花世は言葉を紡ぐ。上空を旋回して攻める期を伺う仔竜に向ける視線はどこか情深い印象を抱かせるが、扇を開いて迎撃の構えを見せる様は、刑の執行に臨む刑吏のそれを思わせる。
「良い子はそろそろおやすみの時間、か。いずれ決着をつけねばならない相手なのだから、頃合い、なのかもしれないわね」
 元より長々と戦を長引かせるつもりはなかったジルも、ここが勝負の仕掛け時だと判じて二人の戦士に賛同をした。ごく短い間に終わるであろう膠着状態を利用して、熟れた果実のように芳醇な歌声を響かせた歌姫は、疲弊した戦友たちの心身に生命の恵みを与えていく。
 ――生きる為に他者を喰らうのは、人も竜も同じこと。それならば……。
 そこに差し込むべき感情は在りはしない。自然の摂理の前に、人が組み立てるロジックなど全くの無粋だ。万事は人が物想うより単純で、そして尊い。ジルは銀の短剣を両手で握ると、天を仰いで白い息を風のなかに散らせた。
 ここが正念場だと、人も竜も察していた。
 時間にすれば、一分にも満たない睨み合いだっただろうか。最前線に立つ三人の猟兵が互いの死角をかばい合うのと同時に、仔竜たちも身を寄せ合って猟兵に相対する。
 一瞬だけ風が凪いだ。それを合図に、人と竜が動いた。
 綾の術符が、極北の星の名を冠する数多の白花へと変じていく。
 ジルの銀刃が、冬の無彩色を掻き消さんばかりの百花へと変じていく。
 花世の杪春が、未だ訪れぬ春の終わりを告げて落花へと変じていく。
 まさしく百花繚乱だった。
 三人の猟兵が天に伸ばした手から溢れいずる幾百万もの花弁は、あまりにも美しく、そしてあまりにも残酷な冥府へのいざないだ。
 仔竜どもが巻き起こした極寒の嵐に乱されながらも、花の嵐はよく空を舞い踊り、数え切れないほどの仔竜の命を奪い去っていく。陽光を浴びて煌めく花弁が風花と共に地に降り注げば、あれだけ彩り豊かだった花弁は総じて血の赤に染まっていた。
 ――おやすみなさい。いずれ、その命が春に芽吹かんことを。
 はらはらと降りしきる花の雨のなか、誰ともなしに囁かれた死出の旅へと贈る言葉。いま再び己が手に戻った得物を強く握りしめながら、花世は、綾は、ジルは、死屍累々の大地を見渡し、そして大空を仰いだ。
 残された仔竜はわずかだ。
 しかし、遠い空の彼方から巨大な影の威容が迫りつつあった。
 長き戦はまだ、半ばにも達していなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆アルミィの姐さん(f02059)と
◆他、連携等OK

やれやれ、すごい数だな
どっちが多く狩れるか勝負でもする? ……なんてな
ま、仕事だ
真面目にやるさ

姐さんと協働して死角のないよう立ち回る
【見切り】によって得た相手の動きの特徴や性質
個体ごとの動作の癖を把握
蓄積してきた【戦闘知識】と合わせて相手の動きを読み取る
視覚情報だけじゃなく【聞き耳】なんかも用いて
意識に死角を作らないよう気を付けるよ

ある程度傾向が掴めたら【確定予測】で動きの先を読み
相手の攻撃を回避しながら
ナイフを用いた近接戦闘で一匹ずつ狩っていく
動きの止まった相手や弱った相手がいれば其方を優先
数減らしは戦闘の基本だ、狩れる時に狩らないとな


アルミィ・キングフィッシャー
鳴宮・匡(f01612)と参加だ。

やたらスケールの大きい敵だねえ、雑魚ですら大量にいるとは。
まずは足止めして、他の猟兵達のサポートに撤するか。

レプリカクラフトでトリモチの罠を用意して敵が近づいて来たら四方八方にばらまいて動きを止める奴を作ろう。

止めを刺すには力もタイミングもいるからな、固めればそれも容易だろう。

あらかた罠が発動し終わったら、止めを刺しに行こう。
幼体つってもドラゴンだ、気をつけないと、こっちが料理されちまう。
食える所は少なそうだが。

これも弱肉強食って奴なのかね。どう思う、二枚目。

さて、次の親の事も考えないとね。でかすぎる相手だが、実入りも多いだろうよ。




「これで何匹目だったかな……覚えているか、姐さん」
「いんや、とっくに忘れちまったよ。これじゃ勝負はお預けだね」
 仔竜との戦も終わりが見え始めたものの、人と竜、いずれかが滅びるまで退くという選択肢は双方にはない。鳴宮・匡も、アルミィ・キングフィッシャーも、血と汗で全身が汚れきっていた。初めのうちは顔についた返り血だけでも拭っていたが、あまりにキリがなく、いつしか目に入らぬ限りはそれも諦めるようになっていた。
「倒した数はともかく、残された数は六匹か……しかし」
 血泥と竜の死骸に足を取られないよう慎重に立ち位置を定めながら、匡は残された仔竜を観察する。今まで相手をしてきた個体よりも、明らかに体が大きい。成竜になりつつある連中のようだ。
「一矢報いようってワケかい。竜にもメンツなんてものがあるのかね」
 牙を剥いて唸りをあげる最後の仔竜ども。アルミィは大きく息を吐き出すと、血でぬめった掌を拭って、短刀の柄を握りしめる。
 先に動いたのは匡だった。これまでの戦いのなかで、受け手に回るよりも積極的に攻めたほうが仔竜を制しやすいということを、彼は見抜いていた。
 仔竜の行動を他の仔竜を挟むことで阻害し、匡はこちらに及ぶ攻撃のリスクを最小限に抑えていく。思うように彼の動きを捉えられないことに業を煮やした数匹の仔竜が吶喊を仕掛けてくるが、それは匡にとっては思う壺だ。
 ――少しばかり図体が大きくなっても、知能は変わらないようだな。
 冷静に分析しながら匡が仔竜の注意を一身に引きつけると、すかさずアルミィが敵の群れの動きを封じるために動く。
 その手が創造するものは、白い粘性の塊。ただの模造品であれば大した威力を発揮しないだろうが、熟達した探索者である彼女の手にかかればその性能は実物と何ら遜色がない。
「狩りの最中に余所見は厳禁だ。覚えておきな、坊やたち」
 投げ縄を打つ要領でアルミィは掲げた腕を大きく回し、錬成のトリモチを一本の長大な鞭へと変貌させる。一振りごとに轟々と風を切る音が荒野に響き、さすがの仔竜どもも彼女が繰り出さんとする一手に気がついたようだ。
 しかし手遅れである。トリモチは仔竜どもを纏めて拘束し、大地に縫い付ける。
 取り逃した仔竜は一匹。だが、そいつは虚を突かれたためか反撃に出ることもせず、大慌てで上空へと逃れていく。その個体に警戒をしながらも、匡とアルミィは拘束された仔竜を先に仕留めていく。反撃の機会は決して与えず、竜の息吹を吐かんと目をギラつかせる個体から優先的に首を狩る。その様は捕らえた獲物の血抜きを行う猟師のそれにも似て、至って淡々としていた。
「これも弱肉強食って奴なのかね。どう思う、二枚目」
「野生の掟の話なら、俺にはわからない。こいつらの狩りを食い止める仕事を、俺は請け負っただけだ。それ以上の意味はない」
「ははっ、違いない。だけど、そう言い切れるっていうのは、やっぱり強者の立場ゆえだよ」
 含みのあるアルミィの言葉に、匡は少しだけ物思って視線を彷徨わせる。だが、それも短い間のこと。二人はすぐに意識を戦場へと戻し、風花舞う空を見上げた。
 最後の一匹の仔竜が、空を割らんばかりの勢いで二人に急降下をしてくる。命がけの特攻なのだろう。数多の同胞の無念を晴らそうというのだろう。何も知らぬ者が見れば、胸を打つ光景だったかもしれない。
 けれど、堂々と受けて立つつもりは匡にもアルミィにもなかった。巻き起こる絶対零度の竜巻を難なく避けた二人は、地に激突する前に制動をかけた仔竜の隙を突く。
 息吹を吐かせないために、匡は真っ先に仔竜の喉笛をナイフで切り裂いた。それだけでは仔竜は息絶えないから、アルミィは爪の反撃を喰らわないために背後から仔竜の頚椎を短剣で断ち切る。長き戦いのなかで二人が学んだ、竜狩りの作法だった。
 しばし、湯気たつ血潮を溢れさせる最後の仔竜を見下ろしていた匡は、後背に広がる死で埋め尽くされた荒野を見やり、それから、再び空を見た。
「……休む暇はない、か」
 雷鳴の如き咆哮と、猛る波濤の如き羽ばたき、そして、陽の光を遮るほどの巨躯が泳ぐ大気の唸り。空を圧する竜の軍勢と竜の巣が、今まさに猟兵たちに迫っていた。
 アルミィはその光景を見て首を鳴らすと、常通りの朗々とした調子で笑った。
「ようやく親の出番というわけだ。それじゃ、今度こそ実入りに期待させてもらうかね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『災厄の浮島』

POW   :    竜の巣穴
【「炎」「氷」「雷」属性のドラゴンの群れ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    空を照らす光
【触覚から放たれる閃光】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体当たり】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    雲隠れ
【口】から【雲状の吐息】を放ち、【視界を遮ること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 災厄の浮島はその身に竜の巣を抱えども、自身の姿はむしろ魚のそれを思わせた。どこかトボけた表情はある種の愛嬌を備えているが、かと言って図体がでかいばかりの人畜無害というわけではないらしい。荒野を赤と黒で染め上げた無数の仔竜の亡骸を目にした浮島は、周りを飛び交う竜と共に怒りの雄叫びを上げたのだ。
 大咆哮の音量に堪らず耳を塞いだ猟兵たちだったが、その視線は抜け目なく敵を攻めるための手立てを探っていた。
 空を泳ぐ浮島に遠距離攻撃だけで相対するのは分が悪い勝負に思える。宙を駆けるすべを持つ者はともかく、地を踏みしめて生きるすべしか持たない者は、素早く思考を巡らせていく。
 己の力だけで浮島に喰らいつく手立てがなければ、仲間の手を借りるか、浮島そのものが地上にまで降りてくる機会を待つべきか。いっそ飛び交う竜を踏み台にすれば、浮島を手に掛けることも叶うだろうか?
 上手くその身に乗り込めば大きなアドバンテージを得られるだろうが、それは常に震動する大地で数多の竜を相手取らねばならないリスクも孕む。
 どうあれ、決して一筋縄ではいかない相手だということを、猟兵たちは一目で理解した。それでも、ここで尻尾を巻いて逃げるという選択肢はない。
 この荒野こそが、竜と浮島の墓場となる。そうせねばならない理由が、猟兵たちにはある。
 勇敢な戦士たちは各々の得物を構え直すと、地に影を落とす災厄の浮島に挑み掛かっていく。
ウレルト・ジュペル
あぁ怒っているのね
仔らを喪ったのなら当然かしら
でも街で暴れられたら困っちゃうから
ここで止めるわ

う〜ん出来れば背中に乗りたいのよね
「バウンドボディ」で腕を伸ばして触覚を掴めば
腕を元に戻す反動で上がれるかしら
腕は外れないようにくるっと巻きつける感じで
上手く根元辺りを掴めば背に降りられると思うのよ

頭に「蹄撃」を叩き込んだらちょっとクラっとしてくれたりしないかしら
もっと怒っちゃう?
それで周りの飛竜達がこっちにきてくれるならちょうどいいかもしれないわ
他の人たちへの注意が逸れるもの
背中の障害物を手すり代わりに使いながら逃げ回るわ
近づいてきたら蹄撃で反撃するわよ

※アドリブ・共闘歓迎


天御鏡・百々
凄まじき巨体だな
さらに空の上とは
はてさて、如何にして戦うべきか

無理に乗り込むよりも、地上からの援護をするとしようか

「空を照らす光」による巨体の体当たりは、まともに受けてはひとたまりもあるまい
「幻鏡相殺」にて、最優先で相殺したいところだな

「雲隠れ」に対しては、「天鏡破魔光」の光を道しるべとして
視界の妨害に対応できぬであろうか?

もちろんダメージを受けた味方には
「生まれながらの光」で治療を行うぞ

我は道具であるが故
どちらかと言えば攻撃よりも援護の方が得意なのだ

地上より援護に徹し、味方を鼓舞し、勝利を祈るぞ(鼓舞5、祈り10)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、絡み歓迎


神埜・常盤
油断大敵、気を引き締めて行こうか
僕は空を飛ぶ術がないから工夫しないとなァ
飛び交う竜どもの力を借りてみよう

先ずは簒奪者に捧げし狂宴で
竜たちへ管狐を嗾け誘惑試みる
見た目は小さな狐だから美味しそうに見えるだろう?
一旦狐を手元に戻せば追いかけて来たりしないかな

竜が近づいて来たら催眠術を試してみよう
命令は1つ「浮島の元へ連れて行け」
無理なら有難く踏み台にさせて貰う、いざ跳躍!

浮島に乗り込めば暗殺の知識を活かそう
余り長く掴まれないから振動のダメージや
竜からの攻撃は激痛体勢で堪え

素早く急所を探した後は管狐の炎で捨て身の一撃を
視界を遮られても第六感を信じて攻撃を回避したいなァ
体力危うく成れば吸血で少し摘み食い




 飛竜たちが蒼穹を背に猛然と迫ってくる。神埜・常盤はかじかんだ指先をほぐすように両の手の指を開け閉めすると、鋭い三白眼を空へと差し向けた。
 ――子を喪った親の怒りってわけかい。気持ちはわかるが、同情も悔悟も無用の戦の場だ。迎え撃たせて貰うよ。
 ひとたび戦の風の下に身を置けば、命のやりとりに罪罰などありはしない。炎を撒く火竜に狙いを定めた常盤は、式する管狐を解き放った。それは彼の命令を良く理解し、軽やかに宙を駆け上がって火竜の鼻先にじゃれてみせる。
 鬱陶しげに鼻を鳴らした火竜が、踵を返した管狐を噛み殺さんと、大口を開けて後を追いかけてきた。その先に待ち構えていた常盤は両手で印を結び、霊気を宿した舌から力ある言霊を火竜に投げかける。
「良い子だ。さァ、今度はお前の番だ……私を浮島の元へ連れて行け」
 途端、それまで猛り狂っていた火竜の動きが緩慢になった。言霊による催眠術だ。常盤は肩に乗った管狐の労をねぎらうように背中を指で揉んでやりながら、火竜の背に乗り移る。
「常盤殿、それに皆の者、武運を。地は我に任せて、貴殿らはあの災厄どもから空を取り戻してくれ」
 白い陽光を薙刀の穂先に煌めかせ、天御鏡・百々は災厄の浮島に挑んでいく仲間たちの背に力強い言葉を贈る。支えることを至上とする彼女の生き様は、一番槍の誉こそ無縁であるが、その戦働きがもたらす戦果は一騎当千のつわものに遅れをとるものではない。
「凄まじき巨体だな……だが」
 飛び交う竜の群れの合間を縫って、浮島が見る見る内に高度を下げてくる。その巨体もろとも大地に体当りし、猟兵たちを根こそぎ始末する心算なのだろう。
 その真正面に、百々は臆すること無く駆けつける。そして、魔を返す幻鏡を掌中に生み出した。
「一歩たりとも、我らを押し返すことなど出来ぬと心得よ!」
 幻鏡が映し出したものは、迫る浮島の幻影だ。それは地に激突する寸前でぶつかりあい、力を相殺しあう。大質量同士の衝突に凄まじい衝撃波が発生し、地はヒビ割れ大気は荒れ狂い、バランスを崩した飛竜が吹き飛ばされていく。
「とんでもない力ね。まともにぶつけられていたと思うと、ゾッとするわ。ありがとう、百々ちゃん」
 姿勢を低くして大激突の爆風から身を庇っていたウレルト・ジュペルは、柔和な笑みを百々に向けるなり、再び上空へと昇っていく浮島の後を追い始めた。
「この機会を逃すわけにはいかないわ。その背中に乗らせて貰うわよ」
 豊麗な曲線を描くウレルトの肢体が、地を走りながらぐにゃりと不定形に歪む。ブラックタール族のみが持ち得る柔軟性を発揮した彼女は、その腕を鞭のようにしならせて、浮島の触覚目掛けて伸ばしていく。
 規格外の巨躯を誇る浮島は、ウレルトが取り付いていることに気がついていないのかもしれない。だが、周囲の竜は別だ。腕の伸長を戻して浮島に上陸した彼女目掛けて、竜どもが殺到してくる。
 ――ちょうどいいわ。わたしに気を取られている隙に、みんなが上陸してくれれば儲けもの、ね?
 ウレルトは浮島の背に広がる木々や岩山の合間を、伸ばした四肢をワイヤー代わりにして跳び回り、竜の追撃から逃れていく。目指す先は、浮島の頭部だ。
「共に行こう、ウレルト君。弱点を突くなら一点集中のほうが効率がいい」
 火竜の背に乗って浮島の上空にまで達した常盤は、浮島の触覚の根本付近へ差し掛かるなり、呪縛の符で動きを封じた竜の背から飛び降りた。
 すかさず式神を走らせて、常盤は災厄の浮島の弱点を探っていく。
 ――図体の大きさは圧巻だが、これも生物であるなら急所はあるはずだ。すぐに見つけ出してやろうじゃないか。
 常盤の目にも見えない姿なき神が戻ってきて、そっと彼の耳に浮島の急所を囁きかける。無言でうなずきを返した彼は、強風で乱れた髪を手で撫で付けながら駆け出した。
「さすがに怒っているみたいね。仔らを喪ったから当然といえば当然かしら。でも、邪魔はさせないわ」
 常盤と共に浮島の頭部のてっぺんへ向かいながら、ウレルトは追撃する竜たちの攻撃を巧みにかわしていく。巻き起こる炎や雷撃の全てをかわすことは至難だが、足を止めねばならないほどの痛手は喰らわない。
「ふふ、しつこい子」
 足を止めぬままウレルトは一度だけ後ろを振り返り、苦笑しながら腕を払った。しなるブラックタールの腕が空を切り裂き、彼女を執拗に付け狙っていた雷竜の頭部をしたたかに打ち据える。
 追手の気が怯んだのを見届けた常盤は、「ここだ」とウレルトに告げて足を止める。浮島の頭の頂点だ。周りを見渡せば、地平線の彼方まで見通せる。守るべき街は、空から見下ろせば思いのほか近くに存在していた。
「もう一働きしてくれ。頼んだよ」
 常盤が命じると、肩から飛び降りた管狐がその身に炎を纏っていく。小さな体ではあるが、その火力は火神の加護そのものだ。魔を祓う火は瞬く間に灼熱の豪炎へと育ち、辺りの空気は真夏のそれよりも熱せられる。
「さァ、蹂躙したまえ」
 豪炎が浮島の脳天を焼き尽くしていく。分厚い皮が、肉が焼け爛れ、流れる血が瞬く間に蒸発して霧散する。
 炎の熱がまだ残るなか、ウレルトが常盤に続いた。彼女は両手の拳をきつく握りしめると、練気を集中させていく。
 どこまでも柔軟なウレルトの肢体のなか、蹄に変じた拳はあたかも鍛え上げられた鋼のように硬質化する。
「クラッとして頂戴な」
 ウレルトはその場で高々と跳躍すると、蹄の拳に全ての力と体重を乗せて、焼き尽くされて脆くなった浮島の脳天に強烈な一撃を叩きつけた。
 地鳴りのような轟音が響き渡り、浮島の体が一瞬沈む。次の瞬間、身が竦むような絶叫と震動が辺りを圧した。常盤の炎が、ウレルトの蹄撃が、浮島の巨体に確かな打撃を与えたのだ。
「皆、うまくやっておるようだな。浮島の奴め、苦悶に震えておるわ」
 地上から戦いを支えていた百々は、表情を歪めてのたうち回る浮島を見上げて口の端を上げた。だが、吼える浮島が口から奇妙な雲のような白煙を吐き出し始めたのを見て、すぐに表情を引き締める。
 ――口から吐き出すあの雲は……毒ではないな。煙幕のようなものか。守りに入られては厄介だ、防いでやらねば。
 百々はすかさず懐から神鏡を取り出すと、高々と頭上に掲げてみせる。
 それは永き時を経て神宿りとなった百々の、魂そのものである。陽の光があたると、神鏡は陽光よりも何倍もの輝きを放ち始め、その眩さに百々の他には誰一人として目も開けていられなくなるほどだった。
「打ち祓え!」
 破魔の輝きは百々の掛け声と共に収斂していき、一条の光線と化す。浄化の光は頭上を飛ぶ浮島を捉えてなお余りある射程を持ち、百々が神鏡を振るえば、それは猟兵たちの視界を塞がんと広がりつつあった雲を、立ちどころに消し飛ばしていった。
 攻めるよりも支えることに重きを置く百々であったが、だからと言って、決して牙なき猟兵ではない。彼女の行動を阻害しようと迫る氷竜を、百々は神鏡の光線を浴びせかけて迎撃する。
 翼を断たれて墜落した竜など恐れるに足りず、雲を払いきったのを確かめた百々は神鏡を懐にしまい、薙刀を振るって氷竜を絶命せしめた。
「見た目は女童なれど、侮るなよ。我からすればお前も仔竜と変わらんのだ」
 薙刀についた血を振り切った百々は、再び空を見上げて浮島へ視線を注ぐ。戦いはまだ始まったばかりだ。体勢を整えつつある浮島を見遣る彼女の瞳は、険しいままだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ほう、浮島とは良く言ったものだ
彼奴の怒りは最もだが
大人しく蹂躙される心算はないのでな

従者と共に浮島の背へ
襲い来る竜は我が魔術で退けてくれる
その身に降り立ったならば仕込み杖の鞘を抜き刃を深々と沈め楔とする
辛うじて大地を踏み締めたとて動けず幾多の竜を相手取る事になろう
ならば高速詠唱で私とジジを中心として【雷神の瞋恚】を展開
雷の障壁を形成する事で浮島への攻撃は勿論
竜共の猛攻を少しでも減らす
動きを封じられようと魔術は変わらず行使し続けよう

万一死角より従者が狙われたならば覚悟を決め庇う事も辞さぬ
腕一本位もがれようと何ら支障はない
――不敬者め
従者を傷つけんとした罪、死すら生温いと知れ


ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と組み

…は、見事な図体だ

師の希望は直接の撃破
叶えうるは只一つ

師を抱え、翼で飛翔し浮島の背を目指す
空の戦とて多少は心得ている
近付く敵には片手の剣で応戦
ドラゴン達を掻い潜り、蹴って軌道を変え
狙いをつけさせぬよう動きながら
師の魔法で怯んだ隙を翔ける

背に着ければ師と背中合わせに
師の麻痺攻撃で動きの鈍ったものや
範囲を逃れ襲い来るものから【竜墜】で浮島ごと穿たんと

短い声は敵でなく師への合図
余波で地形が崩れきる寸前に即、師を抱えて移動
追撃は黒剣で打ち払う

視界奪われたなら師の詠唱する声でその位置を把握
その背が浮島から振り落とされぬよう気を払いながら

相手が何であろうと砕かせはせん
地へ跪け




「……は、見事な図体だ」
 空を翔けるジャハル・アルムリフは、近づけば近づくほど視界いっぱいに広がっていく災厄の浮島の巨躯に、感心と皮肉を込めて呟いた。
「ああ。浮島とは良く言ったものだ。どういう進化の経緯であの巨体を得たのか、気になるところだが」
 翼を羽ばたかせる竜人のジャハルの背に掴まって浮島へと向かうアルバは、眼前を往く敵を興味深げに観察する。好奇心を惹かれる相手ではあるが、探求に耽るような余裕は残念ながら戦場にはない。
「少し荒っぽい飛び方になる。師父よ、振り落とされぬように気をつけてくれ」
 見れば、体勢を整えた竜どもが浮島に近づく二人を阻むように周りを囲んでいた。ジャハルは片手で黒剣を構えると、もう片手でアルバの身を支えながら、あえて真正面から眼前を飛ぶ火竜に挑みかかっていく。
 吐き出された火焔を旋回して避けたジャハルは、陽炎で激しく揺らめく熱気のなかを突っ切って、横手から火竜の腹に刃を突き立てた。そのまま飛行するに任せて腕を払えば、硬い鱗に覆われた火竜の身とて無事では済まない。
 痛みと怒りで唸り声をあげる火竜の背を蹴って加速すると、ジャハルは反撃を受ける前に間合いを取っていく。
「タダで上陸できるとははなから思っていないが、こう次から次へと竜に襲われていたのでは保たないな。ジジよ、しばし回避に専念せよ。前方から襲ってくる竜を先に沈めるぞ」
 そう告げたアルバは、体の支えをジャハルに委ねて両手で杖を構えた。空の色よりも透いたブルーの瞳が見つめる先には、遠方から嵐を起こさんとする二匹の氷竜の姿。
 アルバが手にした杖の周囲に細かい稲妻が弾けていく。それは彼が紡ぐ詠唱が進むにつれてより大きな奔流となり、やがて一筋の雷となった。
 氷竜が巻き起こした吹雪は、アルバたちに届く前に掻き消える。氷竜二匹は、吹雪を吐いた直後に空を切り裂いて走った雷撃に打たれて絶命したからだ。
 行く手を阻む竜を倒したジャハルとアルバは、追ってくる他の竜を振り切って浮島の森へと着陸することに成功した。だが案の定、待ち構えていた別の竜がジャハルに襲いかかってくる。
 仔竜とは比べようもない危険な咬撃をかろうじて受け流したジャハルは、剣一本での戦いは不利とみて、己の拳に心身の奥底に蟠る呪いの一端を走らせていく。
「師父よ、そう長くは此の場に留まれなさそうだ。竜ごと浮島を穿つぞ」
「わかった。纏めて仕留めてみせよう」
 背中合わせのアルバが応じたのを引き金に、ジャハルは片腕に溜めた呪詛を解放する。眼前の竜どもの腕より禍々しい黒色の鱗に覆われた竜腕を顕にした男はごく短く、そして激しく、気魄を込めた息を吐いた。
「墜ちろ!」
 竜腕が雪華を掻き乱しながら風を砕いた。ジャハル目掛けて火焔を浴びせかけていた火竜の首をへし折りながら、彼は力任せに腕を浮島の背に叩きつける。
 ジャハルの竜墜に前後して、アルバもまた竜殺しの手立てを講じていた。
 浮島に着地するなり、アルバは杖に仕込んでいた細身を抜き去って、それを草地に覆われた浮島の背に突き立てたのだ。
 ――この刃の一刺しは、此奴にとっては蚊に刺されるよりも軽いものだろう。だが、お前もまた蹂躙される側の立場であることを教えてくれよう。
 周囲に集まりだした竜が放つ攻撃を防ぎながら、アルバの研ぎ澄まされた精神は、神代に伝わる雷神の怒りを再現する儀式を言霊で組み上げていく。
 その背に庇った従者には指一本触れさせない。血を流すことも厭わないアルバの強固な意思と殺気に、一瞬、襲いかかる雷竜が怯んだ。
「墜ちよ!」
 わずか数秒の詠唱を終えて、雷神の儀が成立する。ジャハルの竜腕が浮島の背を叩いたのと同時に、天地を繋ぐかのような雷の柱が突き立てた仕込み杖に目掛けて落ちてくる。
 浮島の吼える雄叫びよりも、なお大きな爆音が轟き渡った。
 地はジャハルを中心に大きくえぐれ、血肉が洪水のように辺りに撒き散らされる。落ちた雷は浮島の体内深くにまで浸透し、分厚い皮と筋肉で守られた内臓をも焼き焦がしていく。
 堪らず、浮島が身を捩って暴れ出した。しがみつき続けることは叶わず、二人は空中に投げ出されるが、翼を広げたジャハルがアルバを抱えて難を逃れる。
「助かったぞ、ジジ」
 アルバが告げると、ジャハルは師父と仰ぐ男が負った怪我を見て、かぶりを振った。
「それは俺が告げるべき言葉だ、師父よ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロー・オーヴェル
恐らく俺が空を好きな理由は
空を飛ぶ術を持たないからだと思う

出来ない事を渇望し
届かない物を希求する
簡単に入手できる物を人は強く求めない

だからこの浮島を斃せれば
そんな『憧れ』が手に入る――のかもしれない

浮島が射程距離内に入った瞬間での攻撃を選択
自分一人の戦闘ではない以上
戦況の推移でその好機は訪れるはず

好機到来までは仲間の陰に隠れる事や【見切り】も活用し
自身の攻撃までに戦闘不能にならぬ様留意

浮島の攻撃する時の隙や
仲間の攻撃により出来た隙を付く様浮島の行動を注視
好機後は【ダッシュ】も併用し一気に近づき決める

このやり方を卑怯と思うか?
だが俺は盗賊だ
「狙った物を手に入れられるなら、神だって利用する男だぜ」


ジル・クラレット
あれが親竜?
愛らしさに少し拍子抜け
でも、お生憎様
私、そんなことで情に絆されるような女じゃないの

【白鷲帝】で浮島の頭上へ
空の皇帝の速さ、見せてあげる

竜の群れは【花嵐】で蹴散らし
【シーブズ・ギャンビット】で急所を2回攻撃
可能な限り白鷲帝の背へ戻り、これを繰り返すわ

白鷲帝も攻撃できそうなら
雲隠れは風で払い、雷で攻撃
一手でも少なく、手早く屠る
どうしても、あなたはこの荒野で止めなきゃいけないの

敵の動きを注視して、第六感も併用して極力攻撃は回避
特に触覚の閃光には要注意ね

負傷が目立つ人には【シンフォニック・キュア】

情は掛けない
でも、哀れまないわけではないわ
最期は【花嵐】で攻撃
墓標たる荒野へ、手向けの花を




 ロー・オーヴェルは、明らかに高度を維持できなくなっている浮島を見やりながら、"その時"が来るのをじっと待ち続ける。
 辺り一帯に響く浮島の咆哮から、かつてのような力強さが失せていた。陽が西へと沈む刻限に至り、戦の趨勢は猟兵に傾きつつある。ローは己が刃を振るう頃が近いことを知り、呼吸を整えた。
 空を飛ぶ術を持たない身であるローは、だからこそ空に焦がれる。大空を往く浮島をこの手で倒すことができれば、手に届かないはずの"憧れ"に少しでも近づくことができるだろうか。
 ――いや、そんなことを考えるのは今はいい。欲しいと思ったものをこの手に掴む……それが俺の生き方だ。
 地上に残る猟兵たちに食らいつく数多の竜を切り払いながら、ローは怪我を負わぬよう抜け目なく戦場を駆け抜け、空を往く者たちへの渇望を振り払う。
「……最初は、愛らしさに少し拍子抜けしたけれど」
 これでもう幾度目の空だろうか。高く、高く、浮島や竜の頭上を取ったジル・クラレットは、眼下で血混じりの雲を吐き出す災厄の浮島を見下ろしながら、目元にかかった乱れ髪を手で払って独り言ちた。
「見た目通りじゃないのは、人もオブリビオンも同じね」
 純白の鷲を駆って空をゆくジルの姿は、あたかも空の覇者だ。激しい空中戦を繰り広げてきた彼女はすでに満身創痍だったが、その姿はしかし、戦が始まる前よりもなお生き生きと輝いているようにも見える。
 牙を剥いて襲い来る竜の一群を花の舞を残して切り払いながら、ジルは白鷲とともに浮島目掛けて急降下を仕掛ける。およそ人の身では到達し得ない速度で宙を貫く紅風となった彼女の姿は、天から降り注ぐ神の投槍のそれに等しい。
 仲間たちが攻め続け、大きく抉れた浮島の背に銀の短剣を振りかざせば、その身はとうとう巨大な浮島の肉体を貫通するに至る。
 文字通りの血の雨が荒野に注いだ。背から腹へと風穴を開けられた浮島は、飛翔する勢いそのままに大地に体当たりを仕掛けてくる。いや、それはただ、飛ぶ力も失いつつあるだけなのかもしれないが。
「いよいよ、だな。奪わせて貰うぜ。空の災厄さんよ」
 絶妙な観察眼で浮島の墜落地点を予測していたローは、すでに駆け出していた。纏っていたジャケットを脱ぎ捨てるなり見せた、地を縮めるかのような瞬駆に、浮島を守らんと集まり始めた竜どもは立ち塞がることすらできない。
 偶然にも……或いは不運にもローの眼前に躍り出た竜は、彼が繰り出す刃の一閃に命ごと肉体を切り刻まれることとなる。ローは倒した竜には一顧だもくれず、地に伏せてなお岩山のように巨大な浮島目掛けて、跳躍した。
「卑怯、だなんて言うなよ。恨むなら地に落ちたお前さん自身を恨みな。それに……俺は狙った物を手に入れられるなら、神だって利用する男だぜ」
 鈍い銀色の光が二筋の弧を描き、浮島の触覚に深い裂傷を与える。刃渡りの短いナイフでは、それだけでは断つにはいたらない。ならば手数を増やせばいいだけだ。三度、四度と、ローは目にも留まらぬ速さで刃を翻し、十秒にも満たぬ間に事を成し遂げてみせた。
「あなたはこの荒野で止めなきゃいけないの。恨むなら恨みなさい……例えいつの日か忘れても、私はそれを受け止めてあげるから」
 浮島の体を貫いた勢いで地に衝突する直前、白鷲の背に助けられたジルが再び空より降りてくる。忘れべからぬ死を想わす銀の短剣に口づけを落とせば、彼女の周囲は一足早い春が訪れる。
 虹よりも豊かな色彩を誇る花の嵐はこの世の楽園を思わすが、それがジルが相手へと贈る死への餞であることは、共に戦ってきた猟兵たちは良く知っていた。
 ――情に絆されたことは一瞬たりともなかったわ。でも……せめて、手向けの花を。
 慈雨のように降り注ぐ花嵐は無数の刃となって、地に墜ちた浮島に残された命の残り火を濯いでいく。並み居る竜もまた、ジルがもたらした一手に抗う術を持たない。ともすれば美しくもあるその光景に、紛れもない魂潰える断末魔が響き渡る。
 やがて最後の花びらの一枚が風花と共にジルの眼前に舞い降りてきた。
 その一片をジルが掌で受け止めるころには、旧い骸の海より黄泉還ってきた災厄の浮島は幾億もの純白の灰へと変じ、血の染みの一つも残さず消え失せていた。
「少しだけ。少しだけ……哀れには思っていたのよ。本当は」
 ジルは誰にも聞かれない小さな声で呟くと、暮れ泥む夕焼けを見上げて、目をつむった。彼女の側には、そして猟兵たちが歩んできた荒野には、無数の竜と仔竜の亡骸だけが残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『いきなり!ドラゴンステーキ』

POW   :    食って食って食いまくれ!!!

SPD   :    ガーッと一気に食いまくれ!!!

WIZ   :    いろんな食べ合わせで美味しく食いまくれ!!!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 災厄の浮島は、猟兵たちの手によって討伐された。
 旧き海より這い出た悪しき者は消え失せ、夕闇の迫る荒野に残されたものは無数の竜の亡骸。ともすれば凄惨な光景ではあるが、腹を空かせた荒野の動物たちが三日も経たぬうちにきれいに平らげてくれるだろう。
 命の循環の妙にそれぞれ思いを馳せながら、半日にも及ぶ戦いに勝ち抜いた猟兵たちは、失った血を補うために、あるいは勝利を祝うために、ささやかな宴を開くことにする。

 ちょうど戦場から少し離れた場所に流れていた小川の側に火を焚いて、竜の亡骸を幾つか運んでくる。
 仔竜を数匹、火竜、氷竜、雷竜をそれぞれ一匹ずつ。
 成竜一匹でも十分猟兵一同の腹を満たせるだろうが、これだけ種類豊富なのだから、味比べをしてみたくなるのも人情というものだ。
 戦いのあとの宴会を見越して、ちゃっかり調味料やら他の食材やら飲み物を持ち込んだ要領の良い者もいる。
 猟兵たちは互いの働きを称えあった後、ある者は肩を並べて戦った仲間と共に、ある者は一人静かに、また、ある者は純粋に宴の空気を楽しむために、思い思いの時間を過ごすのだった。
アルミィ・キングフィッシャー
鳴宮・匡(f01612)と参加

仔竜に手間取っている内に大物が落ちてしまったか
まあいいや
調理に精を出そうかね

まずは解体からか。
飛竜はやったことあるけどこっちはどうなんかね
火竜とか中になんか持ってそうなんだよなあ

余った肉とかあったら、こっちで引き取るよ
腐らせるのも勿体無いしね(小さな大倉庫に入れ)

さて調理といえば焼くのが基本だが…。煮込みとかも悪くないね。(調理用ワインやハーブを取り出す)
おう、二枚目。味見していくかい?

…命張るんなら、いつ末期の食事になるか分からないからね。できるだけ手の混んだものにしときたいのさ(杯を傾けて)

あちらの独り身にも渡しておくかね。一人でいても腹は減るものだからね


鳴宮・匡
◆アルミィの姐さん(f02059)と


料理はできないこともないけど
野外で野生の生物を調理したことはねーんだよな……
まあ、解体くらいなら手伝えるかな
戦った相手の体の構造くらいなら把握してる
それ以外でも手伝えることがあれば言ってくれよ

食事に特別な感慨っていうのはなかったんだ
生きる為に必要だから摂るだけで
別に必要なければなくてもいいんだけどさ
勝たなきゃ死んでるような職業だ
勝利を喜ぶって習慣もあまりなかったんだけど
でも、……こういうのは悪くない、のかもな

ああ、飲むなら付き合うよ
一人でってのも味気ないだろうし
さすがに目上の女性に手酌はさせらんないしさ

ま、お疲れさん
またの機会があったら頼りにしてるよ、姐さん




 眼前にずらりと並ぶ、文字通り山盛りとなった竜を前にして、アルミィ・キングフィッシャーは腰に両手をあてながら「さーって、どっから始めるかねえ」と首をコキコキ鳴らした。
 料理をするなら、まずは解体から始めねばなるまい。いつぞや飛竜の解体をしたことがあったが、さて、その時の経験を活かせるだろうか。妙な器官を内蔵していたらイヤだな、と警戒しつつ彼女はナイフを竜の鱗に突き立てていく。
「火竜は、火を噴く前に息を吸い込んでいた。肺の近くに火を起こすための器官があるはずだ。胸に直接刃を通すのは避けておいたほうがいい」
 その様を見ていた鳴宮・匡が、横から忠告を発した。彼は振り向いたアルミィの視線を受けると、小さく肩をすくめてみせる。戦った相手の構造くらいなら、把握している……そう告げて、彼女の隣に立った。手には、竜を屠っていた時と同じく無骨なナイフが握られている。
「手助けありがとさん、助かるよ。アンタ、不器用そうだけど料理は出来るのかい?」
「できないこともないよ。けれど、野外で野生の生物を調理した経験はないな。手伝えるのは解体くらいだけど、構わないか?」
「それだけ出来るなら上等さね。そんじゃ、匡には調理助手としてキリキリ働いて貰おうか!」
「おおせのままに、ボス」
 笑みを浮かべあい、共に戦場を駆けたアルミィと匡は、揃って竜の調理に取り掛かる。
 共に刃物の扱いは慣れたもので、大柄な成竜もあっという間に亡骸から食材へと姿を変えた。アルミィは部位ごとに分けた竜肉を、さらに料理ごとに切り分けて、下拵えを施していく。
 何を作る予定何だ? という匡の問に「スタンダードな串焼きと、あとはシチューにでもするかね」とアルミィは答えた。幸い、竜肉の他にも食材や調味料も揃っている。素材そのものの味を楽しむのも、少し手の込んだ味を楽しむのも、両方できそうだ。
「食事に特別な感慨っていうのはなかったんだが、こうして料理の手伝いをするというのも、悪くはないかもな」
 アルミィの指示を受けて簡単な手伝いをしながら、匡はなんとはなしに呟いた。生きるために栄養を取るだけなら、料理という名の作業に時間を費やす必要はないはずだ。それでも、一見すれば非効率的にも思えるこの行為を、少なからず楽しんでいる自分に、匡は微かなくすぐったさを覚えていた。
「それでいいのさ。アタシらは命を張ってなんぼの稼業だ。訪れる一瞬一瞬の全てを味わってこその人生だよ。だってさ、この食事が最期の晩餐にならないとも限らないだろう?」
 出来上がった料理を、アルミィは匡に差し出して味見をうながす。肉汁したたる火竜の串焼きをかじった匡が「美味い」とシンプルな感想を漏らすと、彼女はニッと白い歯をこぼして「だろう、二枚目」と彼の肩を叩いた。
「最期の晩餐だなんて、思いたくはないけどな。けれど、言いたいことはわかるよ。これもきっと、人として必要なことなんだろう。勝利を喜ぶ習慣もあまりなかったんだけど……今日は別だ。素直に楽しんでみたいって、そう思う」
 匡は率直な気持ちを吐露すると、もう一度串焼きの肉を頬張った。焼き立ての肉は熱く、口のなかがヤケドしてしまいそうなほど。目を白黒させて息をつく彼の姿を見て、アルミィはますます楽しげに笑い声をあげる。
「そうこなくっちゃ。でなけりゃ、手の込んだ料理を作った甲斐もないしね。さあ、乾杯といこうじゃないか。ここまできて、下戸だなんて言わせないよ」
「ああ、安心してくれ。飲むなら付き合うよ。今さら一人酒も味気ないし、なにより目上の女性に手酌はさせらんないしさ」
 アルミィが掲げたボトルを手にとった匡は、そう言って柔らかな微笑を口元に浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロー・オーヴェル
「よーし、それじゃあ勝利を祝して乾杯っ!」
え?図々しい?
まぁいいじゃないか

煙草は心と頭の栄養分だが
身体の栄養分は何といっても肉

てことで俺、食べる人
俺以外、作る人
という俺の中で確定した定義の元に
色んな種類の肉を食うとするか

「あ、肉はちゃんと焼いてくれよ。俺の好みのミディアムまでな」

狩りの様な戦闘であり
戦闘の様な狩りの時間

その後に齎された
自分たちがまだ生き続けられる権利と
竜の肉という“天からの恵み”
かくもささやかな『感謝祭』

こういう時間も悪くないもんだ

「浮島に仔竜……アイツらにも思い描いていた未来はあったはず。でも……」
未来を望み
未来を構築できる者は

「勝者だけなんだ」
(煙草をふうっと吐き出しつつ)


境・花世
竜がおいしいなんて
そんなこと知ったら
今後戦う度にお腹が、

(ぐう)

……うん、絶対空くよね
神妙な顔でナイフを構え

でも、次のお給料日まで
空腹を耐えられそうにない
禁断の味! いただきます!

かぷりと食めば溢れ出る肉汁
余りのおいしさに身悶えながら
野趣溢れる赤身の味を堪能して

だめ、これ、幾らでも食べられる
こんなのずるい…ずる……お代わり!

シンプルに塩と柑橘で
全種類を丁寧に食べ比べたら
共に戦った仲間にベストを差し出し
そっと伝えたい、このおいしさ

くちくなったお腹を抱えて
夕闇に沈んでゆく大地の、
駆け続けてもきっと果てには届かない
その雄大さを見つめて

――終わりゆく今日を、
お疲れ様と笑い掛けよう

※アドリブ・絡み大歓迎


都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

共闘者へ
お疲れ様でしたと労いを

持参した酒は
戦で穢れた地と心身と、肉の清めを兼ねて
との口実のもと
勿論呑む気満々で小川で冷やす

漂う香ばしき焼き加減
恭しく手を合わせ
糧となる竜達へ胸裡で礼

美味しく頂きます
其々味わいが違うのでしょうか
楽しみですね

本性が物である己は
いつか誰かに命を繋ぐ事が出来るのだろうか
子も生せるとは聞けど
ひとと触れ合う事もあれど
実感としては遠い

…大事な物を忘れるところでした

川から酒を手に戻る
葡萄酒、清酒、麦酒
様々な種類を沢山

竜ごとに合う酒を調べてみませんとね

悪戯っぽく笑って掲げる盃
夕闇空を見上げれば渉り飛ぶ鳥達の姿
塒へ帰るのだろうか
安心してお休みなさい

――あぁ、一番星


ウレルト・ジュペル
【POW】
みなさんお疲れ様
大きな被害もないみたいねよかったわぁ
じゃああとは竜の子たちのお肉を美味しく頂かなくちゃね
それが命を奪ったものの礼儀だもの

お肉はやっぱり塩と胡椒と直火よね
竜の種類で味が違うと聞いたけど本当かしら
どしどし焼いて試してみましょう
かまどを作るのは慣れているから火も貸し出せるわよ

それでそのう…他にお料理をしている方がいれば
おすそ分けをいただけないものかしらと……
いえ、だってすごく美味しそうな匂いがしているから!
お礼は蜂蜜酒しかもっていないのだけどよかったら

戦って食べて飲んでお話をして
なんて生き生きとした一日なのかしら

※アレンジ・交流歓迎




 輝ける黄金色の地平線から、緩やかに濃紺へと色彩を移ろわせていく夕空の下、失せていく太陽の代わりに眩く燃ゆる炎を囲む猟兵たち。
 猟の心得がある者たちが下拵えをしてくれたおかげで、つい半刻ほど前まで死闘を繰り広げていた竜たちは、今や倒すべき敵から美味しく頂くためのお肉へとその姿を変えていた。

「みなさんお疲れ様。誰一人欠けること無く戦いを終えられて何よりだわ」
 戦を終えてそう間もないが、ウレルト・ジュペルの様相はいつも通りの柔和な女性のそれへと戻っている。彼女は料理に先立ち、川辺に転がっていた石を器用に組み上げて即席のカマドを作り上げていた。
 ウレルトの手際の良さに、宴を前にした猟兵の面々は「おおー」と歓声を上げる。彼女に負けじと、力の余っている男衆がさっそく素材の準備に取り掛かった。
「これは……ダメよ」
 小川のそばに設置された長机の上に並ぶ、切り分けられた鮮やかな紅色の竜肉。それを目の当たりにした境・花世の桃色の瞳がキラリと輝く。
「竜がおいしいなんて、そんなこと知ったら……わたし、今後この子たちと戦う度にお腹が、ね」
 花世は慌てておなかを押さえたが、少し遅い。ぐぅ、と可愛らしい音がキャンプファイアの爆ぜる音に混じった……ような気がした。
「はは、失礼。長丁場だったもので、おなかの虫が鳴いてしまいました。眺めていても面白くありません、悪くなる前に竜肉を焼いていきましょう。お好みの焼き加減はありますか?」
 さりげなく腹の虫の音を自分のものだとフォローした都槻・綾は、オリーブオイルを垂らしたフライパンで、サイコロ状に刻んだ竜肉を焼いていく。
 持参したブランデーを最後に垂らしてフランベすれば、野趣溢れる猟兵飯も途端に高級レストランのそれへと早変わりする。
「お、いい感じいい感じ。ちゃんと俺好みのミディアムに収めてくれたな!」
 焼き加減を側で見守っていたロー・オーヴェルは、見る見るうちに香ばしい焼き色に染まっていくサイコロドラゴンステーキを目にして、満足げに頷いてみせる。
 図々しさは自覚しているもので今さら正すつもりもないが、せっかくの馳走を冷ますのは非効率も甚だしく、ローは時短の意も込めて皆のグラスに飲み物を注いでいった。

「よーし、それじゃあ勝利を祝して乾杯っ!」
「ええ、乾杯」
「かんぱーい!」
「乾杯、ですね」

 長い戦いを走り抜けた四人は、互いの労をねぎらいながら杯を掲げ合う。
 お皿に盛られた四種の竜肉、それぞれ見た目が少しずつ違う気もする。綾は胸中で手を合わせたあと、まずは仔竜の肉から口に含んでいく。
「嗚呼、我ながら佳い焼き加減に落ち着きました。思いのほか柔らかいものですね」
「おう、悪くないもんだな。飛んでいた間は不味そうだったが、こうして食ってみれば良いもんだ。綾とウレルトの腕前がいいおかげだろうな」
 一噛みごとに幸せな弾力を返してくれる竜肉を次々と口に運びつつ、ローは綾とウレルトに向けてグッと拳を向けてみせる。
「ありがとう。お肉はやっぱりお塩と胡椒と直火焼き、ね。さあ皆さん、どんどん召し上がれ。種類ごとにだいぶ味が違うみたいだから。それと……わたしも、その、そろそろおすそ分けを頂けるかしら……?」
 綾と共に料理に携わっていたウレルトは、鼻をくすぐる佳い香りにとうとう白旗をあげて、恥じらいながら食事する側に回るのだった。無論、それを止める者など一人としていない。
 ウレルトのお皿に「はい!」と山盛りのお肉を給仕する花世。
 それから彼女は、うっとりと頬を染めつつ、甘い肉汁をたっぷり含んだ柔肉をただただ無心で頬張っては、禁断の果実を貪るに等しい快楽に目を細めるばかり。
 あっと言う間にサイコロステーキを腹に収めると、彼女はスッと空のお皿を差し出した。
「やっぱり、こんな美味しいのずるい……! お、おかわり!」

 大火を囲みながら仲間と宴を共にするうちに、ローは嵐のような戦の光景を不意に思い出す。死闘でもあり、狩りでもあったその一瞬一瞬の果てに得た、この天からの恵み。それは少しばかり遅めの感謝祭と言うべきだろうか。
「ちょいと、一服な」
 心地よい時間にどことなく面映さを覚えたローは、煙草を口に咥えてしばし三人のそばから離れる。視線は期せず、浮島と竜が進んでいた東の空の彼方へと向いていた。あの者たちは、この空の向こうへどんな未来を望んでいたのだろうか。
 今となっては確かめる術もなく、そして、知るべきことでもなかった。風下に顔をそむけて紫煙をくゆらせながら、ローは誰に聞かせるでもなく独り言ちる。
「思い描いた未来を掴めるのは、勝者だけなんだからな」
 そんなローの背中を見送ったウレルトは、みんなに振る舞うために持ち込んだ蜂蜜酒をグラスに注ぎながら、幸せのおかげで少しばかり膨れたおなかをそっと撫でる。
 ――美味しくいただいた命。奪った事実は覆せないけれど、それをしっかりと受け止めるのがわたしたちの礼儀というものよね。
 おすそわけ程度に食事ができればいい、くらいに思っていたウレルトだが、そんな控えめな彼女に仲間たちはむしろ「もっともっと!」と料理を勧めてくれた。
 戦は確かに激しく凄絶なものだったけれど、共に戦う仲間のハートの温かさはそれを補って余りある。戦い、飲み、おしゃべりをして。生き生きとした今日という日に、ウレルトは淡い微笑を浮かべ、夕空と仲間たちに祝の酒を献上する。
 ウレルトから盃を受けた花世は、いつもよりちょっぴりだけ熱量高めの様子で笑顔を返した。そして、食べ比べの末に決定したマイ・フェイバリット・ドラゴン・ステーキに塩とレモンをさっと掛けた一品を、三人へと差し出す。
「わたしのオススメはこれね。ミディアムレアの氷竜しっぽ肉に塩レモンちょいかけ! しつこくない肉質とサッパリした味わいが、舌とお腹をいつまでも甘やかしてくれるのよ」
 自身もそのフェイバリットをつつきながら、すっかり収まった腹の虫をあやすようにおなかを撫でて、暮れ行く広大な地平線に視線を向ける。
「ほんとに、お疲れ様。終わってみれば、いい一日だったかもしれないね」
「ありがとうございます、花世さん。頂きます。それに……お疲れ様でした。良い一日になったのは、花世さんを始め、共に立った皆さんのおかげなのでしょうね」
 隣に座る牡丹の娘の視線に釣られるように、綾もまた彼方へと視線を向ける。勧められた氷竜の肉に合う酒は、花と果実の香りを思わすやや甘口の清酒。お猪口に注いだそれをちびちびと口づけつつ、綾は命の巡りを宴のなかで思う。
 ――本性が物である己は、いつか誰かに命を繋ぐ事が出来るのだろうか。
 問われれば、それは可能なのだろう。だが、身と心の幽かな乖離は認めざるを得ない。
 ふと視界に入った空を往く渡り鳥に、いまは己の分まで命の巡りを託すことにする。酒盃に映った一番星を呑み下して、綾はそっと瞼を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と

ドラゴンの肉か
角に尾、翼、それから…、

――…なあ、師父よ

どこの部位が良い?

なんだ、躊躇うとでも思ったか
糧は糧だ、弔いともなろう

よく焼けているぞ
塩か、それとも胡椒か
柔らかい仔竜を口に運びやすいよう
小さめに切り分け、葉に包んで師へと
確り喰わねば早く傷が癒えんからな

持ち手にした骨ごと掲げて
これか?
よく分からんので全種類取ってきたが
俺は火竜が気に入った、頬が旨いぞ
どれ、御身にも切ってこよう
焼き目の付いた骨付き肉は
良く知った師の限度には少々多いやもしれんが

…ああ、そうだな
喰い喰らわれ、地に還り、そして

胸中で複雑に霧が揺らぐような
…この巡りは、止まることがあってはならぬのだろうな


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
紡がれた言葉に目を丸くする
…共食いと躊躇うかと思うたぞ
まあ良い――我等が殺めた命
その責、腹に収める事で負うとしよう

そうさな、では塩を
臭みが強ければ胡椒も借りよう
切り分けられた仔竜を口に運ぶ
それは大層美味く、思わず舌を巻く程
時間を掛け確と味わったならば
ちらと傍らに居るであろう男を見る
…なあ、ジジ
お前の喰らう肉はどの竜の物だ?
いやなに、随分と美味そうに食うもの故
どの様な味か興味が沸いてな
ふむ、火竜か
用意されたそれに齧り付く
はむ、なるほど…これは中々…
世辞にも大きいとは云えぬ胃が満ちる迄
共に肉を咀嚼し、命を噛み締める
命を喰らう行為は尊きものだと、改めて実感する

――美味いな、ジジ




 竜の解体をしてめぼしい部位を運んできたジャハル・アルムリフは、それらを豪快に長机の上に並べていく。
「――……なあ、師父よ。どこの部位が良い?」
「共食い、と躊躇うかと思っていたが、存外堂々としているな」
 従者の常通りの様子に安心したような、驚いたような、複雑な表情を浮かべるアルバ・アルフライラだったが、遠慮する必要がないとわかればこちらも気が楽だ。「糧は糧だ」と淡々と言ってのけるジャハルの言葉に「腹に収めることで責を全うするか」と応じてみせる。
 従者らしく調理を担ったジャハルは、黒剣の代わりに持ち替えたナイフを操って仔竜の肉を細かく切り分けていく。それらを火にかけた網の上に並べていけば、途端に食欲をそそる香りが辺りを包んだ。
 味見も兼ねて軽く塩を振った一切れを食すジャハル。少し臭みがあるのは師父は好まぬだろうと、胡椒もかけてから葉に包んでアルバに渡した。
「うむ、ありがたく頂戴しよう」
 ジャハルが調理する姿を楽しげに見ていたアルバは、受け取った肉料理をまずは目と鼻で楽しむ。皿ではなく香りよい葉に包んで渡してくるあたり、無骨な成りの割には妙なところで繊細な気遣いを見せるな、とアルバは目元を緩める。
「ああ、美味い。血を失った身に染みる」
 味は言うまでもない。程よい弾力を保つ肉をしっかり噛み締めながら、アルバは至福の時を傍らの従者とともに味わう。
 共に同じものを食べていても、健啖ぶりはジャハルのほうに軍配があがる。さっと仔竜を平らげた彼は、今度は火竜の頬肉やら雷竜のスネ肉やら、いかにも彼が好みそうな野性的な部位を網にかけていく。
 じゅうじゅうと脂が炙られる幸せな音を浴びながら、ジャハルは焼き上げた頬肉に豪快にかぶりついていく。ふと、アルバの視線を感じた彼は「たぶん火竜の頬だ」と答える。色々纏めて焼き始めたので、どれがどれやらわからなくなってきた。だが、美味ければそれでいい。
「仔竜とはまた違う味わいだな。しかし火竜のくせに炎できちんと焼けるというのも、面白いものだ」
 ジャハルが切り分けてくれた火竜の骨付き肉を受け取ったアルバは、ほどよい焦げ目がついた艷やかな褐色の肉をナイフで切りながら、感心したように呟く。こういう場においても、つい探求に気を取られてしまうのは悪いクセか。
 理屈抜きに美味い食事を取っているのだから、いまは理屈を抜いて楽しもう。アルバはナイフとフォークを置くと、隣で肉を喰らう従者に倣い、思い切って骨付き肉に齧りついていく。
 一通り竜肉の食べ比べをしたころには、腹もそれなりに膨れてくる。小休止も兼ねて床几に腰を下ろしたジャハルとアルバは、夕空を見やりながら白くかすむ息をついた。
「命を喰らう行為は尊きもの。それが美味いのであれば言うこともない。そう思わないか、ジジ」
「御身の言う通りだ、これも尊ぶべき弔いの一つなのだろう。やがて俺たちも地に還ることを思えば……」
 この生命の巡りの輪のなかにいることも、悪いものではない。
 二人は揺らめく炎を見つめながら、静かに杯を合わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
ジンノ(f04783)と、たぬちゃん(f03797)と

おっつかれさーん!
鉄鍋とスパイス山盛り抱え、張り切って持ってきた!とワクワクを隠し切れず

命の恵みには感謝をこめて、丁寧に捌く
野菜と一緒に塊肉を煮込む間、ステーキ用に捌いた肉を焼いて切り分けてくヨ
やはり骨の周りが美味いかなぁ、と部位別にも出して
合間に自分もしっかりイタダキマス

薬味で頂くのもイイけど
この赤ワインに合わせるなら野菜のソース掛けも良さそう
話しながら視線を巡らせば、そこに美味しそうに食べる顔
ああ、嬉しいねぇ
この時間こそがご馳走だ、なんて大袈裟かしら

そうだねぇ、お二人が食材を安定供給してくれるなら
メニューに追加してもイイかもネ?


神埜・常盤
コノハ君(f03130)さつま君(f03797)と

ふふ、労いを有難う
早速宴会と行こう!
極上の肉に合いそうな
赤ワインの用意もバッチリさ

狩った命に感謝を捧げて
「いただきます」
あァ、管狐もよく頑張った
僕の取り分を分けてあげよう

さつま君は真剣に食べているねェ
肉それ自体も美味いが
コノハ君が作る料理はとても美味なので
僕も全制覇目指したいなァ
スパイスも沢山あるようだし
ステーキは色々食べ比べてみよう!

僕としては雷竜推しかな
何となく雷属性って格好いいだろう?

ふふ、煮込みも凄く美味しいよ
これをコノハ君のお店で出せたら
きっと人気メニューに成るだろうねェ
……ウン、安定供給は無理だな!
今のうちに目一杯味わっておこう


火狸・さつま
コノf03130と常盤f04783と参加

常盤、お疲れ。
軽く片手上げて出迎える

コノ、凄い荷物……
俺も、持つ。

ぱんっ!と両手あわせて頂きますのお辞儀
両手にフォークとナイフを構え
ステーキを前に、いざいざ
喰おう。と、二人に視線向け
皆そろって、いただきます
ステーキぱくり

口に物が入っている間は言葉は発しない
無言で大人しくもぐもぐ。
味比べ、全種類…制覇?
余裕で、食べれそう(うまい)
単純に塩コショウでもうまいけど
コノの料理、凄く美味しい
常盤のワインに良くあう
また、店でも作っ………
?!
安定、供給…………
常盤と顔見合せ
こくり頷き、もぐもぐもぐ
しっっかり堪能しとこう




「おっつかれさーん!」
「常盤、お疲れ」
 宴の場の片隅で、壮絶な戦いを労う声が二つ。コノハ・ライゼと火狸・さつまだ。竜狩りに従事した神埜・常盤は馴染みの顔を見るや表情をほころばせて、二人の元へと歩んでいく。
「ふふ、労いを有難う。無事に済んで良かったよ」
 コノハが持ち込んできた大鍋や各種調味料や食材、それにメインである竜肉の量は相当なもので、とても一人では持ちきれないほど。半分以上の量を請け負って運んできたさつまは、それらを長机に置くと、常盤に片手を上げて改めて挨拶をする。
「さあ、腕が鳴るね。たぬちゃんは荷物運んでくれてありがとう、ジンノもゆっくりしていてネ。とびきりの御馳走を作っちゃうからさ」
 そう言って、コノハは手際よく料理を進めていく。大鍋で野菜と一緒に竜のモモ塊を煮込みつつ、素早くステーキ用の肉の仕込みをこなしてみせる。
 さすがの早業に常盤もさつまも感心しきりだ。ほどなくして料理の第一弾が出来上がると、常盤は「せめてこれくらいはさせてくれよ」と、持参した赤ワインを皆のグラスに注いでいく。食欲そそる料理の香りに、馥郁たる葡萄酒の香りがふわりと絡んだ。
 料理が一段落ついたコノハも交えて乾杯を済まし、三人はさっそく食事を楽しむことにする。
 ――いただき、ます。
 ずらりと眼前に並んだ御馳走の皿に、さつまは「ぱんっ!」と大きく両手を合わせてお辞儀をする。口にこそ出さないけれど、尊い命の恵みへの感謝は人一倍だ。せっかくの御馳走だから、みんなと揃って味わいたいところ。同席の二人に視線を向けて、真っ先にナイフを入れたのは、氷竜のステーキだ。
 一切れ口に含めば、思いのほかタンパクで癖のない舌触りが心地よく、さつまは満足げに頷きながらしっぽをパタパタと揺らしてみせる。
 無言で料理を頬張るさつまの姿が、なによりもこの料理に対する高評価を表している。「さつま君は真剣に食べているねェ」と微笑みながら、常盤もステーキを一口ずつ食べ比べていく。
 食材が新鮮なものだから、シンプルな塩胡椒の味付けだけでも食が進む。
「とても美味しいよ。コノハ君の腕前はさすがだなァ。これなら全制覇どころか、二週目、三週目だっていけそうさ」
 美味なる料理に舌鼓を打ちながら、常盤は赤ワインに口をつける。今日、とても頑張ってくれた管狐にも、小さく切り分けてやった竜肉をおすそ分けだ。
「ふたりとも喜んでくれて何より。骨の周りのお肉が美味しいだろうから、スペアリブも炙ってみたよ。良かったら食べて食べて」
 どちらかと言えば、食べるよりも料理の提供に時間を割くコノハ。おろした玉ねぎやニンジン、ニンニクで作ったさっぱりとした風味の野菜ソースを、脂の乗ったバーベキューに乗せて提供していく。「脂っこさを和らげてくれるから、赤ワインの酸味とも合うんじゃないかな」と一言添えて、常盤とさつまの前へと皿を差し出す。
「味が変わると、新鮮……余裕で、全部たべられそう」
 お行儀よく口元をナプキンで拭ったあと、さつまは素直な感想を述べる。
 コノハが提供してくれた料理はどれも絶品で甲乙つけがたいが、やっぱり手間暇かけて造られた料理のほうが美味しく感じるものだ。さつまは野菜ソース掛けのステーキにナイフを入れながら、「今日のコノの料理、一番はこれ」と再び口に運んでいく。
「野菜ソース掛けもワインに合うねェ。僕の好みは雷竜かなァ。味もそうだけれど、なにより格好いいからね、雷って」
 冗談めかして目を細める常盤の表情は、つい先程まで竜と戦っていたときとは全く別人のようだ。しっかり煮込まれた竜肉はスパイスと香草の香りもよく、冬風に晒されて冷えた体を内側から温めてくれる。ワインをそれに合わせれば、カッとおなかが熱を帯びたようになり、戦いで疲労した体に活力が戻ってくるようだ。
 さつまと常盤が食事をとる姿を眺めていると、コノハの表情はそれだけで緩んでしまう。今日あった出来事を語らい、なんてことのない日々の話題に花を咲かせ、ささやかな冗談で笑い合う。
 ――ああ、嬉しいねぇ。
 この時間こそがご馳走だ、なんて言ったら大袈裟だと笑われてしまうだろうか? けれど、コノハにとっては今こうして仲間たちと食卓を囲む時間が、なによりも愛おしい。この気持ちは他の誰も否定できない自分だけの宝物だ。
 二人が絶賛してくれた野菜ソース掛けを肴にグラスを傾けていけば、いつもよりも少しばかり饒舌に言葉が溢れてくる。
 おなかが膨れてきたころ、常盤が「この料理をコノハ君のお店で出したら大人気メニューになるだろうねェ」と差し向けると、さつまもピコピコと耳を動かしながら頷いて同意をした。この料理を今日だけのものにするには、あまりにもったいなかったから。
 そんな二人にコノハは「それは喜んで。ただし、お二人が食材を安定供給してくれるなら、かな?」と少しばかりイジワルっぽく笑ってみせる。
 常盤とさつまは、目を丸くしながら顔を見合わせたあと、「参ったな」と言うように苦笑しながら、おかわりを求めてお皿を差し出すのだった。
 この極上の料理は、どうやら今宵だけの御馳走になりそうだ。


 やがて荒野の彼方に陽は沈み、夜空に無数の星が輝き出したころ、猟兵たちの宴も終わりを迎えることとなった。
 災厄は去り、戦いの日は終わった。失われた命は多いが、それは幾億年ものあいだ、この星で絶えず紡がれてきた命の循環の一つに過ぎないのだろう。
 どこか遠くから、狼たちの鳴き声が聞こえる。
 夜闇の空に、翼を広げた猛禽の影が見える。
 猟兵たちはささやかな命の輪を彼らに託し、荒野をあとにするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月13日


挿絵イラスト