おくりものがたり(作者 柳コータ
14


#アリスラビリンス  #猟書家の侵攻  #猟書家  #ベスティア・ビブリエ  #愉快な仲間 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#ベスティア・ビブリエ
🔒
#愉快な仲間


0



●for you
「ね、ね、何を貰ったの?」
「わたしは素敵なお洋服!」
「ぼくは素敵な約束さ!」
「わあ、すてきすてき! あたしはね、新しいお話を書いて貰ったの!」
 やったねやったね、うれしいね! 喜び合うのは、小さなクマのぬいぐるみに、うんと綺麗な薔薇の花、ぱらぱらと中身を見せる本――不思議の国の、愉快な仲間たち。
 生まれたばかりの不思議の国は、喜び合う愉快な仲間たちの周りから、鮮やかに色づいてゆく。
「あっ、誰かが来たよ! 行こう行こう!」
 雪空と朝焼けの空の間にぽっかり開いた、ウサギの穴を落っこちて来たのはプレゼントボックスだった。
 綺麗にラッピングされた箱がころんと開いて顔を出す、新しい仲間にもおんなじことを問いかけて、また世界は表情を変えてゆく。
 小さなプレゼントボックスから、家ほどに大きなプレゼントボックスまで、様々な贈り物で世界は彩られ、話のたびに移り変わってゆく。

 ――ここは、贈り物の国。
 誰かが誰かに贈った物が、想いが、素敵な贈り物の物語を交わし合う国。

「縺願�縺檎ゥコ縺�」

 その物語を喰い荒らさんと落っこちて来た、一冊の本に彼らはまだ気づかない。

●merry christmas & happy newyear
「ハァイ、明けましておめでとう。良い新年が迎えられたかしら?」
 新年早々足を止めさせて悪いわね、と真っ赤な男――ベルナルド・ベルベット(薔薇々・f01475)は目の合った猟兵たちへ茶目っ気たっぷりにウインクをして、新年の挨拶を口にした。
「ここで声を掛ける辺りでお解りだろうけど、お仕事のお願いよ。アナタたちに行って貰いたいのはアリスラビリンス。……知っての通り、平和になったと思っていたのだけれどね」
 各世界で始まった猟書家たちの侵略は、放置して良いものではない。その幹部のひとりがとある不思議の世界に現れるようだとベルナルドは言う。
「そこはさしずめ『贈り物の国』とでも言いましょうか。アリスが、誰かが誰かに貰った贈り物、それに込められた想いや記憶から生命を得た愉快な仲間たちが集う世界よ。……クリスマスに年末年始、素敵な贈り物や時間を交わし合ったコたちも多いのではないかしら?」
 ここで聞くつもりはないけれど、とベルナルドはくすりと笑った。
 教えてあげて欲しいのは、その世界の愉快な仲間たちにだと。

「……と言うのもね、この猟書家幹部と言うのが厄介で、触れただけであらゆる生命の持つ物語を喰らい尽くしてしまう能力を持っているのよ」
 この強力な能力は勿論猟兵たちへも及ぶ。まともに食らえば戦闘中の記憶を奪われたり、最悪動き方すら忘れてしまいかねない危険なものだ。
 特に擬似生命体である愉快な仲間たちは、己の持つ物語を奪われると即死してしまうのだと言う。
 けれど幹部とその部下は、愉快な仲間を狙うのだ。部下は幹部にその物語を献上するために、幹部はより上質な物語を喰らうために。
「だからこそ、この世界の愉快な仲間たちは囮足り得る。……そしてこの国のコたちは、進んで囮になってくれると思うわ」
 贈り物の国の愉快な仲間たちは、とにかく贈り物の話を聞きたがる。
 それは現れた敵にも、猟兵たちにも同じくなのだ。囮を頼むまでもなく、新しい子だ! お話が聞けるぞ! とほいほい行ってしまうだろう。無邪気な子供みたいなものだ。
「だからまず、上手くそれを止めて。贈り物の話をすれば一発よ。……そうして聞かせてあげることで、そのコの物語が膨らんで、幹部が喰らうのに時間が掛かるようにもなるから、一石二鳥と言うわけ」
 部下も物語的に美味しそうな囮を連れているだけで吟味を始めて隙だらけになるわ、とベルナルドは小さく笑う。
「贈り物は、実際の物を持って行ってあげても良いわ。勿論最近のものに限ったことでもなくて、アナタのずっと大切にしている贈り物でも構わない。まだ開いたことがないのなら、初めて開けてみるのも良いし、初めて使ってみるのも良いでしょう。何ならそこで贈り合っても構わないのよ。――アナタたちの素敵な思い出がきっと小さなコたちを守って、贈り物の国を素敵に彩るわ」
 危機ではあるけれど、楽しむ心も忘れずにと、真っ赤な案内人は微笑んだ。
 新しい年に、素敵な贈り物を携えて。『贈り物の国』へ導く、淡い光が広がった。
「今年もどうぞよろしく頼むわ。気をつけて、行ってらっしゃい」


柳コータ
 開けましておめでとうございます、柳コータと申します。旧年はたくさんのご縁を頂き、本当にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します。

●ご案内
 こちらは二章編成のシナリオとなります。受付状況は主にタグでお知らせします。
 一章:集団戦(贈物語)
 幹部と手下が一冊の本から出て来た所へ辿り着きます。
 様々なプレゼントボックスや、そこから出て来た『贈り物』の愉快な仲間たちで溢れた不思議の国で、『贈り物』を見せたり話をしたりして、敵のほうへ無邪気に行こうとする愉快な仲間たちを止めてあげて下さい。結果的に囮として活躍して貰うことになりますが、しようとしなくても勝手になってしまうので、もう積極的に贈り物話をしてあげるほうが安全です。
 こちらの章は遊ぶつもりで大丈夫です。貰った贈り物を自慢してあげたり、ご友人たちと贈り物を見せ合おう!贈り合おう!等も歓迎です。
 尚、贈り物の話とかしない方には押しの強い愉快な仲間が突撃しますので、無理やり言わされた体のプレイングをどうぞ。
 幹部の部下が狙って来ますが、贈り物の国の愉快な仲間といると隙だらけになり、UCの指定さえあればほぼ勝手に倒れます。

 ※贈り物はプレイングに記載されている事以上は基本的に描写しません。贈る場合のお任せもできません。

 二章:ボス戦(純戦)
 幹部との戦いになります。一章で贈り物を教えて貰った愉快な仲間がご機嫌になり、積極的に前に出て攻撃されますが、痛みや傷を負うことはなく、物語のみを攻撃されます。倒せば全て元通りになるので、倒すことに注力して下さい。

 プレイングボーナス(全章共通)……へんてこな「愉快な仲間」を連れてくる。

●プレイング受付
 1/5 08:31〜受付開始。
 二日程度の受付の予定ですが、人数によってはのんびり受付にする可能性がございます。

 複数参加人数に制限は設けませんが、4名以上の場合は総数を始めに送る方が記載して下さいますようお願い致します。(【🌹4】等)また各々の呼称をプレに含めて下さると大変助かります。
 採用はなるべく頑張りますが、全採用に至らない場合がありますのでご了承下さい。
 また、どちらかの章のみの参加も歓迎です。尚、受付が短期になる場合が多いため、章間の感想はなしで構いません。いつも本当にありがとうございます。

 以上、どうぞよろしくお願い致します。
86




第1章 集団戦 『共有する者達』

POW ●遊ぼう!遊ぼう!
自身の【食べたアリスの悲しい記憶】を代償に、【食べたアリスの楽しい記憶にあるもの】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【その姿に見合ったもの】で戦う。
SPD ●見て見て!そっくりでしょ?
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【食べたアリスの記憶にあるもの】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ ●お茶会しよう!色んなお話し教えて!
【食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物】を給仕している間、戦場にいる食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 空の色が澄みきった青になった。
 掛かるのは虹の架け橋。雲の階段。
 その上から、大きなプレゼントボックスが落ちてくる。赤いリボンがほどけて開いて、その中からやって来るのはだあれ?
「アリスかな?」
「わかんない! でもでもお空がきれいだもの、きっと素敵な『贈り物』を知ってるんだよ!」
 それが猟兵だと、まだ彼らは知らない。
 ぽんと弾けて開いた一冊の本から飛び出したのが、猟書家とその部下たちだと知らない。
「ねえ、行こう行こう! 贈り物を教えてもらおうよ!」
「うん、行こう行こう! 本から出て来た新しい子にも聞いちゃおう!」
 ぴょんぴょんと楽しげに上機嫌に、へんてこな愉快な仲間たちは、近くに来ようとしていた本から飛び出した猟書家の部下のほうへ浮いて飛んで近づこうとする。

 ――空の虹を、雲を降りて来る、楽しげな声が彼らに届いたのは、そのときだ。
エドガー・ブライトマン
おや、早速危ないカンジの状況だ
そこのキミ、ちょっと待ちたまえ
私の名はエドガー。通りすがりの王子様だよ

ねえ、良ければ私と一緒に話をしよう
私は世界を巡って旅しているんだ。多くのコトを知っているよ

どんな話をしようかな…ああ、コレの話をしよう
懐から緑色の石の飾られたペンダントを取り出して

コレは末妹から、私の十五の誕生日に貰ったものさ
彼女なりの加護のまじないが込められているんだとか
幼い彼女が私のために選んでくれたとおもうと、今でも嬉しい
私の大切なもののひとつなんだ

今日出会ったキミにも贈り物をあげる
友のツバメが咥えていた、白い小花を差し出して

今日という日の記念だよ
キミ自身にも嬉しい思い出が出来ればいいよね


●金色の箱、花咲む緑
「そこのキミ、ちょっと待ちたまえ」
 優しい声は青空に良く似合って、声を運ぶように飛ぶツバメと風と共に響いた。
 その声に吸い寄せられるように愉快な仲間である贈り物の子供たちは振り向き、声を輝かせた。
「わあっ、みてみて!」
「わあわあ、きれい! かっこいい!」
「あたし知ってる、王子さまだわ!」
 きらきらした夢の橋を渡って、王子様――エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)が雲の階段から降りて来る。
「私の名はエドガー。通りすがりの王子様だよ」
 エドガーがにこりと微笑めば、やっぱり王子さまだ! と嬉しげな声が弾けて贈り物の子供たちが集まって来る。エドガーはそれを快く迎えて、良ければ私と一緒に話をしよう、と誘い掛けた。
(これでひとまず、すぐさま危ないカンジの状況ではなくなったかな)
 嬉しそうに飛び跳ねる愉快な仲間たちの向こうにいる、一見ぬいぐるみのようで愛らしい見た目のオブリビオンにさえ微笑んだままで、エドガーは降り立った『贈り物の国』をゆっくり歩む。
「私は世界を巡って旅しているんだ。多くのコトを知っているよ」
「本当? 素敵な贈り物も知っている? あたしにも教えて教えて!」
 一番興味深々にエドガーの傍を浮かび飛ぶのは、真新しい本の姿をした愉快な仲間の子だ。話をせがむ声に、エドガーは真白いプレゼントボックスの前で立ち止まった。
「どんな話をしようかな……。ああ、コレの話をしよう」
 贈り物なら、と大切そうに懐から取り出したのは、ひとつのペンダントだった。
 緑色の石の飾られたペンダントは、エドガーの手に乗せれば小さく見える。
「コレは末妹から、私の十五の誕生日に貰ったものさ。幼い彼女が私のために選んでくれたとおもうと、今でも嬉しい」
 このペンダントには、彼女なりの加護のまじないが込められていると言う。王子として、人々の夢と希望である彼に、少しでも護りがあるように。たくさんの願いを受け止める彼に、痛みが少しでも和らぐように。
「わあ、すてき、素敵! とても大切な贈り物なのね」
「うん、私の大切なもののひとつなんだ」
 宝石のように澄んだ青い瞳を優しく緩めて、エドガーは緑石のペンダントを一度握ると、懐へ仕舞い直す。
 それと同時に、エドガーの背にあった大きな真白いプレゼントボックスに色が咲いた。箱を彩るのは、きらきらと美しく眩しい金色。それを包み彩る緑のリボン。
「おや、綺麗な色になったね。白だって綺麗だったけれど、私はこの色のほうがスキだなあ」
「わあ、ステキ! あなたの贈り物のお話のおかげだわ! ありがとう、王子さま!」
「私の?」
 嬉しそうにお礼を口にする贈り物の子に、エドガーはきょとんと首を傾げてから、なるほどと微笑む。そうして指先で、合図をひとつ。――小さな羽ばたきの音で、友のツバメたるオスカーが肩にとまった。
「なら、今日出会ったキミにも贈り物をあげる」
 差し出したのは、オスカーが咥えていた白い小花。それを、本の頁にそっと挟んでやる。
「私に? ほんとう? いいの?」
「モチロンさ、今日という日の記念だよ」
 ありがとう、と嬉しそうに飛び跳ねる本の表情はわからない。そのはずなのに、とても嬉しそうな幼い子の笑顔が見えたような気もして、エドガーも笑った。
「キミ自身にも、嬉しい思い出が出来ればいいよね」
大成功 🔵🔵🔵

琴平・琴子
あらあら愉快な仲間さん達
そちらの方よりも此方の方に耳を傾けてくれませんか?

親から貰った防犯ブザーというものなのですが見た事あります?
中には電池が入ってて、カラカラ音が鳴るのもちょっとしたお気に入りなんです

こう、水色の紐を引っ張ると…
あっ煩かったですよね、ごめんなさいね
うるさい音が鳴るのですがこれで周囲の人に何かあったとお知らせしてくれる道具です
可愛い見た目なのに結構やる子なんですよ

これは子供の身の安全を守るもの
そして親が心配してくれて愛された証の贈り物

こんな子でも使われた方が幸せなのでしょうが、
逆に使われない方が幸せなんですよね
不思議でしょう?

贈り物のお話はお気に召して貰えたでしょうか


●緑の箱、黄色のサテン
 きちんと磨いたブーツのつまさきをとんと鳴らして、琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は雲の階段を降りてゆく。
(少しお行儀が悪いのはわかっているんですけど)
 それでも音を鳴らすのは、この足音がうんと楽しげに聞こえるように。今にもオブリビオンのほうへ行ってしまいそうな小さな贈り物の子たちが、なるべく驚かず振り向けるように。小さな子供と言えば、琴子だってそうに違いはないけれど、あの子たちは琴子と違って身の守り方だって知らないのだ。
 とん、とん、とん。
「あらあら、愉快な仲間さんたち、そちらの方よりも此方のほうに耳を傾けてくれませんか?」
 ワルツのようなテンポで琴子が階段を降りながら声を掛ければ、贈り物の国の愉快な仲間たちはその前向きな足音に誘われるように、琴子の周りへぱたぱたと集まって来た。
「なんだいなんだい、楽しい贈り物の話かな?」
 聞かせておくれよ、と綺麗な薔薇の花がはしゃいだ声をあげるのに、琴子は笑って頷いた。
「ええ、そうですよ。こんなのは見たことがありますか?」
 両の掌に乗せて見せたのは、水色の紐がついた黄色の防犯ブザー。丸い見た目が可愛らしい、琴子の頭文字が刻まれたもの。
「これはなんだい? 卵かな?」
「いいえ、これは親から貰った防犯ブザーというものですよ。中には電池が入ってて、それにこうして……」
 琴子がブザーを振って見せれば、カラカラと音が鳴る。
「ほら、この音が鳴るのもちょっとしたお気に入りなんです」
「わあ、すごいすごい! ならこれは楽器なのかい?」
「でもないのですけど……こう、この水色の紐を引っ張ると……」
 ――瞬間、大音量のブザー音が鳴り響いた。
「びゃーーー!!!」
「わわーーー!!!」
 途端に愉快な仲間たちは飛び上がって、猟書家の部下まで驚いて転げたのが向こうに見える。
「良かった……あっ、煩かったですよね、ごめんなさいね」
 どうやら狙って来ようとしていた敵は無力化できたらしいと安堵しながら、琴子は慌ててきゅっとブザーを止めた。
「こんなにうるさい音が鳴るのですが、これで周囲の人に何かあったとお知らせしてくれる道具なんです」
「び、びっくりした……。けれどすごい、すごいね! そんなに小さいのに、あんな音が鳴るなんて!」
「そうでしょう? 可愛い見た目なのに、結構やる子なんですよ」
 すっかり楽しそうな声でブザーの周りを飛び回る薔薇の子に、琴子は緑の瞳を柔らかくして笑う。
「これは子供の身の安全を守るもの。そして、親が心配してくれて、愛された証の贈り物なんです」
 何かあったときのために。何かはないほうが勿論良いのだけれど、何かあったときに遠くでも気づけるように。親でなくとも、周りの誰かが気づいてくれるように。
 琴子は大切そうに、防犯ブザーを両手に包む。こんな子でも使われたほうが幸せなのでしょうが、本当は逆に使われないほうが幸せなんですよね、と小さく笑えば、薔薇の子が楽しそうに首を傾げる。
「ふふ、不思議だなあ」
「不思議でしょう? ――さあ、私の贈り物のお話は、お気に召して貰えたでしょうか」
「もちろん、もちろん!」
 薔薇が鮮やかな色をいっそう鮮やかに咲かせた瞬間、琴子の足元にあった小さなプレゼントボックスが色を変えた。鮮やかな緑の箱に、黄色のサテンリボンがふんわりと飾られた、可愛らしいそれ。
 まるで今の贈り物の話が詰まったかのようなその箱に、良かった、と琴子は防犯ブザーをカラリと鳴らした。
大成功 🔵🔵🔵

榎本・英
【春嵐】

この世界の愉快な仲間たちはとても可愛いね。
嗚呼。贈り物の話が聞きたいのかい?

押しの強い子だね。
ゆっくりと順番に話すから、そう焦らずとも。
嗚呼。待ち給え。

私は沢山の贈り物を頂いたのだよ。
両手で持ちきれない程の贈り物を、本当に沢山ね。

例えばほら。
からっぽの右手を愉快な仲間にみせよう。

なにもない?否、こゆびに。
彼女からの頂き物だよ

他は持ちきれないからね、今は持ってきてはいないのだが
どれもこれも私の心に大切にしまいこんであるよ。

あたたかい贈り物の数々は、目に見える物だけではない。
思い出もまたその一つだね。

君たちに出会えたことも、贈り物の一つだとも。
なゆ、君の話は如何かな?


蘭・七結
【春嵐】

虹の橋に雲の階段
この世界は不思議に満ち溢れているわ

右から左からとあいらしい声が弾むよう
そう焦らずとも順番に、ね
贈り物の話ならば幾らでも語らいましょう
わたしも、数多のものをいただいたの

鴇鼠を掻き分けとがり耳を晒す
この耳飾りは大切な心のしるし

幽世でいただいた出逢いと云う贈り物
あかい耀きを溢す幽世蝶

そして、左手の小指
刻んだ痕も贈り物だと云えば驚くかしら
目にみえるもの
このいとも大切だけれど
本当に大切なものは、目にはみえないの

此処にはないものもたくさんあるわ
語らうならば夜が訪れてしまうほどに

贈り物に添わされたこころ
注がれた想いを得て、わたしが居る

ステキな機会をありがとう
此度の出逢いも大切にするわ


●飴色小箱、あかのいと
 そらのあおを透かす虹の橋を渡れば、雲の階段が見えて来る。
 ふわりと溶けてしまいそうで、けれども足先に確りとした感触を伝えて来る雲の階段へ進みかけたところで、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は訪れたばかりの不思議の国をもう一度見渡した。
「どうかしたかい」
 手を差し伸べながら問うたのは、立ち止まった彼女の一歩先にいた榎本・英(人である・f22898)だ。その手を取って再び歩み出しながら、七結は瞳を緩ませた。
「……まるでお伽話の本の中のよう。この世界は不思議に満ち溢れているわ」
「嗚呼。事実は小説よりも奇なり――なんて、使い古された諺ではあるが、この世界にとってはそれが当たり前なのだろうね」
 ごらん、と英が指差した先。もうじきに終わる階段の下で、待ちきれぬようにそわそわ、わいわいとしている小さな贈り物の子たち――愉快な仲間たちがいる。花に本、ぬいぐるみ。他にも様々な『贈り物』から生まれた子らは、自分たちが本来喋らないものだなんて、まだ思ってもいないのだ。一番綺麗な空から降りて来る英や七結たちを、素敵な贈り物を秘めている仲間だと心底信じて疑わない。だからこそ。
「ねえねえ、お話きかせて!」
「ぼくも聞きたい、はやくはやく!」
「まってたんだ! すてきな贈り物の話を聞かせて!」
 わあっと一斉に声が溢れる。右から左から、きらきらした声が弾み飛び交う。英と七結はその真ん中でほんの一瞬驚いたように瞬いて、互いの視線を交わせばくすくすと笑み零した。
「この世界の愉快な仲間たちはとても可愛いね」
「ええ、本当にあいらしいこと。……そう焦らずとも順番に、ね」
 贈り物の話ならば幾らでも語らいましょう、と七結が紡げばわあっと歓声が上がる。その中からぴょいと飛び出したのはふわふわのクマのぬいぐるみの子だった。
「ねえねえ、あなたも教えてくれる? どんな贈り物をもらったの?」
「私かい?」
 目の前に飛び出された英は、眼鏡の奥の瞳を少しだけ丸くする。何せぬいぐるみが浮かんだのはその眼前。それがずいずい迫って来るのである。
「そう! ステキな服? それともお花? それともそれとも……」
「嗚呼。待ち給え」
 ずいずい。ぐいぐい。遠慮もなければ期待ばかり目一杯込めたまん丸の瞳に見つめられて、英は観念したように息を吐いた。隣で七結がちいさく笑っている。
「押しの強い子だね。ゆっくりと順番に話すから、そう焦らずとも」
 やったやった、と喜ぶクマの子の声に気を取り直すように眼鏡を押し上げて、英はその指をゆっくりと握って、開いた。
「私は沢山の贈り物を頂いたのだよ。両手で持ちきれない程の贈り物を、本当に沢山ね」
「そんなにたくさん?」
「嗚呼。例えばほら」
 ひらりと振るのは、からっぽの右手。それを覗き込むクマの子と、その後ろから覗く他の愉快な仲間たち。けれども小さな子らは一様に首をうんと傾げて、七結だけが意味を解したように唇に笑みを乗せる。
「なにもないよ?」
「なにもない? 否、こゆびに」
 そう言って英が示す右手の小指には、赤い糸が結ばれていた。見えたかい、と問うて、英は柔らかく微笑んだ。その視線が向かうのは、すぐ傍に。
「彼女からの頂き物だよ」
 他は持ち切れないから持ってきてはいないのだと、英は言う。
「どれもこれも、私の心に大切にしまいこんであるよ。――けれどね、あたたかい贈り物の数々は、目に見えるものだけではない」
 穏やかな声音のままでそう笑んで、英は七結へと視線を向けた。
「なゆ、君の話は如何かな?」
「ふふ。わたしも、数多のものをいただいたの」
 彼の声と、期待いっぱいの視線を受けて、七結は柔らかな髪を指先で掻き上げる。淡く春めく鴇鼠色の隙間から、ぴんと覗くとがり耳が姿を見せた。その白い耳朶を彩るのは、耳飾り。
「この耳飾りは、大切な心のしるし」
 幽世でいただいた出逢いと云う贈り物。あかい輝きを溢す幽世蝶。
 ――そして。
「左手の小指。……刻んだ痕も贈り物だと云えば驚くかしら」
 小指に結ばれた、あかいいと。それは英とおなじもの。繋がるもの。繋げてゆくもの。
「このいとも大切だけれど。本当に大切なものは、目にはみえないの」
 此処にはないものもたくさんあると、七結もまた紡ぐ。全ての話を語らうならば、きっと夜が訪れてしまうほどに。
「わあ、わ、わ。すてき、すてき! ふたり、おなじなの?」
「同じとも、違うとも云えるだろう。思い出もまたその一つだね」
「贈り物に添わされたこころ。注がれた想いを得て、わたしが居る」
 想いを生命と得てはしゃぐ、贈り物の子たちへふたりは微笑んだ。重ねた日々と時間と、貰ったものは見えずとも、知らずとも。
「君たちに出会えたことも、贈り物のひとつだとも」
「ほんと? ほんと?」
「ええ、ステキな機会をありがとう。此度の出逢いも、大切にするわ」
 優しい声で紡げば、嬉しげな声たちが弾けて飛び跳ねる。
 それにふたり、目を細めながら、ふと触れ合った小指の先を繋げば。
 その足元で、飴色小箱にあかい糸が結ばれて、はなひらくように彩りをそうと世界に増やした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リュカ・エンキアンサス
【蒼空】
オズお兄さんと

贈り物…か
色々ありすぎて、少し悩むな
お兄さん、何に…(って言ってる間に愉快な仲間に囲まれた
…数、多すぎない?
えっと…じゃあ、この銃(うたいの鼠)とか
俺が、ちょっと変わった銃が欲しいって言ったら
そこの、オズお兄さんが一緒に作ってくれて
それで…まあ色々、成功したり失敗したりして、最終的にできたのを俺にくれたんだよ
楽しい思い出も一緒にもらった

ああ、そうだったね
あの鼠はかわいかった
あ、喜んでもらえてた?
それは良かった。大事にしてくれるといいね

後はこのホルダー(わたり鼠)は…
(ちらっとお兄さんを見て)
…サンタに、貰ったんだよ
まあうたうとわたりが俺たちらしいかなあ、とはちょっと思った


オズ・ケストナー
【蒼空】

わあ、いっぱいだっ
おいでおいで
おくりものの話、たくさんあるよっ

そうっ
みて、ベルトに刺繍があるでしょ
どうしてねずみさんかっていうとね

銃を組み立ててるときに、部品の山の中からね
はしるねずみのおもちゃが飛び出してきたからなんだっ

丸めた手を走らせ

ネジをまくと、はしっていくねずみさんでね
リュカといっしょにその子もなおしたんだよ

その子がはしると音楽が鳴るように
オルゴールをおなかにいれてね
リュカのアイディアだよっ

なおしたねずみさんは
こどもたちにプレゼントしたよ
とってもよろこんでくれたっ

でね、リュカが銃の名前にねずみをのこしてくれたの
だから
サンタさんもおくりものにねずみをつけたくなっちゃったんだっ
ふふ


●星空の箱、空色リボン
 青い空を雲の階段で降りてゆく。
 それは不思議なようで、慣れたことのようで、どちらであってもリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の足は迷わず止まることもない。青空に星空のマフラーを靡かせて、階段を下り終える最後の一歩を踏み出しながら、リュカは考え込むように口元に手をやった。
「贈り物……か。色々ありすぎて、少し悩むな。お兄さん、何に……」
 何にする? とすぐ後ろにいたはずのオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)を振り向こうとして――リュカは目の前をどっさり埋め尽くす、愉快な仲間たちを見つけることになった。
「いや、いるのはわかってたんだけど」
 見晴らしの良い空の上から降りて来たのだ、勿論その下に小さな贈り物の子たちが待ち構えていたのは知っていたのだけれど。
 振り向いた先。右。左。もう一度戻って前。色々な『贈り物』たる彼らに目も口もないはずなのに、きらきらした期待の眼差しが注がれるようで。
「……数、多すぎない?」
 表情の少ないリュカの瞳がぱちぱちと瞬いた、その隣に飛び出るようにぴょんと駆けたのがオズだった。
「わあ、いっぱいだっ。おいでおいで、おくりものの話、たくさんあるよっ」
「お兄さん、どこにいたの」
「ふふ、この子たちがね、あっちのほうに行っちゃいそうだったから、呼んできたんだっ」
 あっち、とオズがキトンブルーの瞳を向ける先には、一見愛らしい見た目のオブリビオンがいる。どうやら愉快な仲間たちの吟味に忙しいらしく、危険なことはなさそうだけれど。
「おいでおいで、おくりものの話、たくさんあるよっ」
 オズが良く通る声で呼び掛ければ、贈り物の子たちがまた集う。ふえた、と呟いたリュカに、オズが贈り物の子たちと同じくらいきらきらした笑みを向けた。
「リュカ、おはなししてあげようっ」
「……そうだね。えっと、じゃあ、この銃の話とか」
 ほんの小さく笑うような息をこぼして、リュカは一丁の銃を両手に持った。
「なあに、なあに? これなあに?」
 ぴょこんと興味津々に覗き込むのは、ぴかぴかのティーカップ。ソーサーをくるくる回し浮かべば、星柄の模様をきらきらさせている。
「これは武器、ではあるんだけど。俺がちょっと変わった銃が欲しいって言ったら、そこのオズお兄さんが一緒に作ってくれて」
 空色のネジがきらめく拳銃は、武器であるのに澄んで見える。名前を出した途端にオズに視線が集まった気がしたのは気のせいではない。
「それで……まあ色々、成功したり失敗したりして、最終的にできたのを俺にくれたんだよ」
「いっしょにつくったおくりもの?」
 リュカとオズ、どちらもを見比べるようにくるくる回るティーカップに、オズが満面の笑みで頷いた。
「そうっ」
「……楽しい思い出も、一緒に貰った」
「すてきすてき、とってもすてき! じゃあ、お話もふたりぶん?」
「ふふ、そうだね、たくさんあるよっ。みて、ベルトに刺繍があるでしょ?」
 オズが示したベルトに刻まれた刺繍は、鼠のかたちをしている。どうしてねずみさんかっていうとね、とベルトを示していた指を丸めて、手をびゅんっと走らせる。
「銃を組み立てるときに、部品の山の中からね、はしるねずみのおもちゃが飛び出してきたからなんだっ」
 こんなふうにね、と鼠に見立てた手を集まった子らの真ん中からひょっこり飛び出させれば、うんと楽しげな歓声が上がる。
「ああ、そうだったね。……あの鼠はかわいかった」
 思い返すようにリュカがぽつりと零して、刺繍の鼠を指先で撫でた。
「ネジをまくと、はしっていくねずみさんでね。リュカといっしょにその子もなおしたんだよ」
「すごいすごい! ちゃんとなおったの?」
「うんっ! その子がはしると音楽が鳴るように、オルゴールをおなかにいれたんだ。リュカのアイディアだよっ」
 ぴゅんっと走りながらオルゴールの声でうたう鼠。その子はこどもたちにプレゼントして、とても喜んで貰えたのだと。贈り物は、そこでもまたひとつ。
「喜んでもらえてたなら良かった。大事にしてくれてるといいね」
 何処かでうたっているかもしれないおもちゃの鼠を思うように口にする。そうしながらリュカは拳銃を仕舞おうと、いつもの動作でホルダーに触れて、あ、とそのホルダーを取り出した。
「あと、このホルダーは……」
 言いかけて、ちらりと視線はオズのほうへ向く。目が合った。

「――サンタに、貰ったんだよ」

 本当は誰からかなんて言うまでもなく、聞くまでもないのだけれど。
「ちなみに、この銃はうたいの鼠、ホルダーは不思議と、貰ったときからわたり鼠って名前でね」
「ふふ、リュカが銃の名前にねずみをのこしてくれたから、サンタさんもおくりものにねずみをつけたくなっちゃったんだっ」
「……なるほど」
 不思議だよね、サンタって。リュカは息を吐いて、小さく笑う。その傍で、星空の箱に空色のリボンがかけられたプレゼントボックスが彩りを得た。
 そのふたつの色は、互いにとって何処か見慣れた色のようで。
「……まあ、うたうとわたりが、俺たちらしいかなあとはちょっと思った」
「ふふ」
 楽しげに笑うオズと、唇に小さな笑みを乗せたリュカと。話し終われば、わあっと賑やかな歓声がふたりを彩るようだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リル・ルリ
🐟神歌

ふふー、僕がもらった贈り物かい?
それはね、かあさんからこの歌声をもらったよ
とうさんからは、たくさんの歌をもらった!
つまり、僕という存在が愛の贈り物なんだ!……ていうとちょっとはずかしいかな?
でもね、僕は大切にしてるんだ
この白の彩だって、かあさんがくれた愛で、願いなの
とうさんもかあさんも、もういないけどさ
歌えばいつだってあえる気がして
ちゃんと、僕が想いも命も継いだんだ、って
辛いことがあってもがんばれるんだ!

ヨルだって櫻宵がくれた贈りもの

カムイ、君の大切な贈り物はなに?
名前―嗚呼、素敵な贈りものをもらったね
君は、君という存在を…大切に

ふふ!
なら僕の贈り物を披露してあげる
歌うよ―『望春の歌』


朱赫七・カムイ
⛩神歌

贈り物、
リル、そなたのいっとう大切な贈り物はなんだい?

母親と、父親からの…其れが無償の愛というものかな
何よりも強い、愛の贈りもの
私は両親という存在のいない神たる身故
その愛が如何なるものか知らない
けれど私は知らねばならない

嬉しげに語るリルが眩しい
噫、之がそうなのかと合点が行く
リルの歌も姿も、心も魂だってこの上なくうつくしい
美しさの秘密は愛だったんだね

私の贈り物かい?
……其れならば
この私という存在を示す『名前』だろうか
私が巡り生まれた時にね
再び巡りあった親友が――サヨがつけてくれたんだ
かれが、私という神(存在)に名をくれた
そして私は私になったのだと感じているよ

噫、歌っておくれ
リルの贈りものを


●朱色の箱、櫻結紐、白のヴェール
 青空に、赫と白の色彩がふわり、靡いた。
 ふたりが虹と雲を辿り、空から降りれば、贈り物を問うあどけない声たちがあふれる。
「ね、ね、おくりものをおしえて!」
「どんなすてきなものをもらった?」
「綺麗なもの? あかいもの? しろいもの?」
「……贈り物か。リル、」
 四方八方から遠慮なく飛んでくる愉快な仲間たちの子らの好奇心を制するでもなく、朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は隣に浮かぶ白の彩の人魚――リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)へと声を掛けた。
「何だい、カムイ?」
「そなたのいっとう大切な贈り物はなんだい?」
 そう問うたのは、贈り物の子らへ柔らかく微笑む彼がそれを知っているに違いないと、そう思ったからだ。何かを大切にすることを知っていると、知っているからだ。
「ふふー、僕がもらった贈り物かい?」
 問われたリルは、答えは決まっているとばかりに唇に笑みを乗せ、白い指先でとんと自分の喉へ触れた。
「それはね、かあさんからこの歌声をもらったよ」
 ずっとずっととおくの海にいたかあさん。その透明な歌声は、リルの紡ぐ歌声に継がれ。
「とうさんからは、たくさんの歌をもらった!」
 歌を紡ぐ旋律。それはいくつもの言葉を乗せて、リルを成すもの。
「つまり、僕という存在が愛の贈り物なんだ! ……ていうと、ちょっとはずかしいかな?」
 誇らしげに口にしてから、ふふ、と照れ隠すように笑み零して、リルはふわりと尾を揺らす。
「すてき、すてき! お歌をうたうの?」
「すごいわ、すごいわ! たくさん歌えるの!」
「ふふ、ありがとう。……でもね、ほんとうに僕は大切にしてるんだ」
 わあっと色めき立つ贈り物の子へ笑いかけてから、リルはカムイへ視線を戻す。カムイは口元に笑みを浮かべたまま、どこか眩しいものを見るように、ただゆっくりと頷いた。それに促されるように、リルは続ける。
「この白の彩だって、かあさんがくれた愛で、願いなの。……とうさんもかあさんも、もういないけどさ」
 浮かんで、弾けて、刹那の泡沫であっても。
「歌えばいつだってあえる気がして。ちゃんと僕が、想いも命も継いだんだって――つらいことがあってもがんばれるんだ!」
 それこそがきっと、とうさんとかあさんが残してくれた愛のかたち。
「……其れが、無償の愛というものかな」
 リルの贈り物の話に、カムイはそっと瞳を閉じた。父親や母親、その存在を神たるカムイは持つことはないけれど。
「私はその愛が如何なるものか知らない。――けれど私は、知らねばならない」
 心から嬉しげに、誇らしげに、いとおしげに。両親の愛を語ったリルを、眩しいと思った。
 カムイは再び瞳を開く。そうして再び白彩を映すこのふたつの瞳は、とても美しいものを見ている。
(臆、之がそうなのか)
 ――リルの歌も姿も、心も魂だって、この上なくうつくしい。そのわけに合点が行った。
「美しさの秘密は、愛だったんだね」
 贈り物に込められたもの。たったひとりのために注がれるもの。
「ふふー、だと、嬉しいな。ヨルだって、櫻宵がくれた贈りものだよ」
 いつだってリルの傍らにいるペンギンの式神は、きっと今いたら嬉しそうにぱたぱた飛び跳ねてくれたかもしれない。
「ね、カムイ。君の大切な贈り物はなに?」
「私の贈り物かい?」
 同じように問い返されて、カムイは少し考え込むように顎に手をやり、そうしてとんと胸に手を当てた。
「……其れならば、この私という存在を示す『名前』だろうか」
 カムイ。すっかり当たり前のように呼ばれるようになったこの名前は、神として巡り生まれ、両の脚で立ってなお、持たざるものだった。所在のない存在を確かなものにしてくれたのは。
「私が巡り、生まれた時にね。再び巡り逢った親友が――サヨがつけてくれたんだ」
 あなたの名前を、と。そう紡がれたそのときに。
「かれが、私という神――存在に、名をくれた。そうして私は私になったのだと感じているよ」
 私の巫女。そう神たるカムイが呼ぶのは、だからこそたったひとりだけなのだと。
「……嗚呼、素敵な贈りものをもらったね」
 紡がれる贈りものを聞いて、リルは微笑んで櫻を想う。かれが大切にするものは、リルにとってだって大切なもので。
「君は君という存在を……大切に」
 願うように目蓋を下ろし、再び幕を開けるように開いて、リルはすっかり聞き入ってくれている愉快な仲間たちの中でふわりと尾を泳がせた。
「どうかな? お話は気に入ってもらえた?」
「もちろん、もちろん! すてき、うたも、なまえも!」
「ふふ! なら僕の贈り物を披露してあげようか」
 瞬間、わあっと嬉しげな贈り物の子たちの声が輝く。それを聞き届けたように、カムイも紡いだ。
「臆、歌っておくれ。リルの贈りものを」
「――うたうよ」
 柔く笑む声に応えるように、青空に透明な歌声が、泡と桜の花吹雪が舞い、響いてゆく。
 紡がれるのは『望春の歌』。決して忘れぬ、胸に咲くうた。

 ふわり、ひらり。舞う花弁に朱桜が混ざれば、白いばかりだった大きなプレゼントボックスが朱色の箱へ染まり変わり、桜の結紐で結ばれ、白のヴェールが掛かる。
 それはうつくしい愛を知る、贈りもののうた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

キディ・ナシュ
【姉妹2】
わたしの物語はきっとまだ始まったばかり
だからこそ、取られてしまっては困ります
お任せあれ、ぺったんぺったん捏ねて
狼さんの本日のおやつにしてあげましょう!

みなさーん!こちら向いてくださいな!
おねえちゃんの横で飛び跳ねて注意を引きます

素敵なプレゼントをわたしも頂きますし
わたしもおねえちゃんによく渡していますよ!
特別な日にもらった素敵な服に髪飾り!
どれも素敵なレディになれちゃいます!
それから毎日のごはんに美味しいおやつは本当に美味しくて
わたしもおねえちゃんにお返ししたいのですが
うまくいかないのですよね
今後もがんばりますねっ!

もらうのも、あげるのも
胸がほわほわ温かくなって
とても良いことです!


イディ・ナシュ
【姉妹2】

物が物語を失ってしまえば
本当に、何も、何一つ残りません
…空恐ろしい侵食を目論む敵にしては
随分と可愛らしい配下様の姿に少々気が削げますけれど
キディが丁寧に捏ねてあげては如何です?

さ、愉快な御仲間様がた
どうぞ余所見をなさらずに
ぱんと手を打って気を引けば
お話に耳を傾けて頂きましょう
眠いようでしたら、どうぞご遠慮なさらずに

私達は家族のようなものですから
幸いプレゼントの話題に事欠きません
花冠、似顔絵、レシピも見ずに作り上げる暗黒のお菓子
キディからの贈り物の趣味は
小さな子供のそれですが
込められた想いがとびきりなのは言わずもがな

誰かの為に何かを選ぶ
その時間は、送り主だけが味わえる幸せなのでしょうね


●藍色の箱、向日葵のリボン
「……賑やかな国ですね」
 こつん。
 イディ・ナシュ(廻宵話・f00651)が控えめな足音を鳴らして降り立った不思議の国には、たくさんの色が溢れていた。
 大小様々なプレゼントボックスは彩りのみならず、贈り物の出づる場所。ありふれたただの物が誰かのために選ばれ、意味を持ち、贈られることで物語を得る。
 その物語の得方は様々なれど、きっと。
「物が物語を失ってしまえば、本当に、何も――何一つ残りません」
 ほとんど動かぬ無表情のまま、イディは呟いた。その視線の先には、見た目ばかりは愛らしい猟書家の部下、物語を狙う敵がいる。
 こつん。
 物がただの『物』でしかなければ、この賑やかな国はなく、イディがこの靴音を響かせることもなく、
「――おねえちゃあああん! どうして! 置いて! 行ったのですか!!」
 どんがらがっしゃん!
 元気のよい足音で、キディ・ナシュ(未知・f00998)が駆けて来るわけもなかったわけである。
「あら。遅かったですね、キディ」
「おねえちゃんが階段を降りてすぐ愉快な仲間さんたちに囲まれるや否や類稀なる人見知りステルス能力を発揮して行方をくらましたのですっかり取り囲まれて動けなかったんです!」
 妹によるノンブレスの主張。
「淑女たるもの、息継ぎは上手にしなくてはいけませんよ」
 姉による鮮やかなスルー。
「……ともあれその様子だと、気を引くまでもないような気は致しますが」
 イディはキディの後ろからわいわいついて来た贈り物の子らを見やり、もう一度敵のほうへ苺色の瞳を向けて浅く息を吐く。
「猟書家の配下様があちらです。……空恐ろしい侵食を目論む敵にしては、随分可愛らしいお姿で、少々気が削げますけれど。キディが丁寧に捏ねてあげては如何です?」
「何だかとっても隙だらけに見えますが、わかりました! ぺったんぺったん捏ねて、狼さんの本日のおやつにしてあげましょう!」
 お任せあれ! とキディは胸を張る。またも体よく肉体労働を任され切ったのにはあんまり気づいていないけれども。
(わたしの物語はきっとまだ始まったばかり。だからこそ、取られてしまっては困ります)
 そしてそれは、今ここにいる贈り物の子たちもきっと同じだ。
 イディと同じ色の無邪気な瞳が愉快な仲間たちを映して、満面の笑顔になった。
「みなさーん! こちら向いてくださいな!」
 ぴょんぴょんと飛び跳ねていっそうその気を引くように、キディはぶんぶんと手を振る。
「なになに? 贈り物のお話、してくれる? る?」
「る! です! 素敵なプレゼントをわたしも頂きますし、わたしもおねえちゃんによく渡していますよ!」
 どんなどんな? 途端にわくわくした声が一斉に上がって、キディも釣られてにこにこ笑う。
「特別な日にもらった素敵な服に髪飾り! どれも素敵なレディになれちゃいます!」
 そうなってほしいのですが、とはイディの声。
「それから、毎日のごはんにおやつは本当に美味しくて……わたしもおねえちゃんにお返ししたいのですが、うまくいかないのですよね」
 でも、今後もがんばりますねっ! きらきらした無邪気な笑顔にがんばってーの無邪気な声が返るのには、そこはかとなくイディが遠い目をした気がしなくもない。
「……食事に関しては頑張られると、私の臓腑が溶けますが、ええ。私たちは家族のようなものですから、幸いプレゼントの話題に事欠きません」
 すごいすごい、すてきすてき、と嬉しげな声へ、イディは静かに居住まいを正す。次の手番を示すように手を鳴らし気を引けば、すっかり視線はイディへと集まった。
「さ、愉快な御仲間様がた、お話はまだ終わりません。どうぞ余所見をなさらずに。――眠いようでしたら、どうぞご遠慮なさらずに結構ですよ」
 そうして耳に心地良い声で紡がれるお話は、まるで絵本でも読むように。
「花冠、似顔絵、レシピも見ずに作り上げる暗黒のお菓子――キディからの贈り物の趣味は、小さな子供のそれですが」
 込められた想いがとびきりなのは、言うまでもなく聞くまでもない。だからこそこうして語るに労はなく、ひとつひとつの贈り物がたくさんの意味を、物語を持っている。
 ゆっくりと語る声を聞くうちに、うとうとと舟を漕ぎかけた猫のぬいぐるみをそっと撫でて、イディは話を結ぶ。
「誰かの為に何かを選ぶ。……その時間は、送り主だけが味わえる幸せなのでしょうね」
「もらうのも、あげるのも、胸がほわほわ温かくなって、とても良いことです!」
 そう、満面の笑みで笑ったキディの後ろで、うんと大きな藍色の箱が色づいて、するりと橙のリボンがかかり、向日葵が飾られたのはそのときだ。
「わあっ、すごいです! これはわたしたちのお話でしょうか?」
「……そうかもしれませんね」
 同じ色の瞳を見交わせば、わあっと愉快な仲間たちから歓声が上がる。
 おおきな箱は、ふたりの語った贈り物のお話がまるで綺麗に包み上げられたように、確かにそこに残された。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

都槻・綾
f04599/クロウさん

えぇ
素敵な国ですね
皆さんとても嬉しそうで
私も温かな気持ちになります

燥ぐ愉快な仲間達と手を取り
一緒にくるくる回ったり
喜びを分かち合って楽しもう

私まで素敵な贈り物を貰った気分です
こんなにもあたたかな想いになったのだもの

微笑んでクロウさんへ向き直れば
差し出された品にふわりと綻び、破顔

あな嬉し
ね、似合うでしょうか

おくりものは
相手を想い描いて選ぶもの
つまり
心をいっとき独占するということ

鮮やかに笑って
袂から取り出す小さな小瓶

露草や菫、朝顔を精製した深い青の花雫
インクにもなるけれど
爪先を彩れば
指を遊ばせる度に艶やかな香りが広がる

いつも美しく粧うあなたに
返礼です

誠、
最高のひと時ですとも


杜鬼・クロウ
綾◆f01786
アドリブ◎

ココの愉快な仲間達は想いなどから生まれたらしいが、
ヤドリガミの俺にも少し通じるモノがある(親近感を抱く

愉しそうな綾達見て顔綻ばせ

綾、少し遅い聖夜の贈り物ってヤツだ
去年も世話になったからよ
プレゼント交換は初めてか?
お前にとって最高の一時となりゃァイイが

・贈物
名は「紬」
薄ら見える亀甲模様の濡羽色の羽織り
上質な生地
裏地は風景を切り取った柄

服飾には拘りあってな
この模様とか
触ってみるか?(愉快な仲間達へ問い
綾の和服に似合う一品探したンだぜ!
着てみてくれよ
ン、俺の目に狂い無しだわ(満足気

綾からの贈り物に喜々
彼からの香りは一等特別にも似た
礼を言う

洋墨にも香りにもなるなんてなァ
綺麗だ


●濡羽色の箱、紺青水引
 真新しい色のプレゼントボックスが開いて、中から生まれたての贈り物の子が飛び出して来る。
 そうしてその子らは必ず言うのだ、「おくりもののお話をおしえて」と。
 それは、彼らを成すもので、彼らが一番大好きなもの。すっかり賑わう『贈り物の国』を見渡して、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は色違いの両目を僅かに細めた。
「ココの愉快な仲間たちは贈り物の想いなどから生まれたらしいが。……俺にも少し通じるモノがあるな」
 クロウはヤドリガミたる存在だ。百代を過ごした器物に宿るヤドリガミは、その器物が持つ記憶、経験、込められた想いなどからその身を成すものが多い。その成り立ちは何処かこの国の愉快な仲間たちにも似ていて、だからこそ覚えたのは親近感だった。呟いて、ふと隣へ笑う。
「いや、俺たち、か?」
「ふふ。ええ、素敵な国ですね」
 向けられた声に微笑んで、都槻・綾(糸遊・f01786)は楽しげに頷いた。
 耳に届くのは、贈り物の話をねだる声、たずねる声、こたえる声。
 誰かが誰かへ込めた想いが、素敵なものに違いないと信じている声。
「皆さんとても嬉しそうで、私も温かな気持ちになります」
「ほんとほんと? うれしいね、うれしいな!」
 楽しげな声は、すぐ傍からも。あちこちからさまざまな姿を見せる贈り物の子らが弾んだ声で喜ぶのに、綾はいっそう優しげに笑って手を伸ばした。
「さ、ならばご一緒に」
「わあい! あそぼう、あそぼう!」
 小さな蛙のぬいぐるみの手を取って、はしゃぐ声に合わせるようにくるくる回る。
 わたしもわたしも、ぼくもぼくもと集まって来る様々な贈り物たちと笑い合えば、うれしい、楽しい――喜びがこんなにも分かち合える。
「ふふ、私まで素敵な贈り物を貰った気分です。こんなにもあたたかな想いになったのだもの」
 ありがとうございます、と綾が紡ぐのに、贈り物の子らの嬉しそうな声が返る。
 すっかり愉しげなその様子に、クロウはふ、と小さく綻び笑った。
「贈り物と言えば、だ。――綾、渡してイイか?」
「ええ、勿論」
 綾は微笑んで、楽しげな愉快な仲間たちからクロウへと向き直る。
 その目の前に差し出されたのは、濡羽色の羽織りだ。薄らと亀甲模様が織り込まれた手触りの良い上質な生地に、裏地は風景を切り取ったような柄になっている。
「少し遅い聖夜の贈り物ってヤツだ。去年も世話になったからよ」
 プレゼント交換は初めてか、と問うのは、ならばこの時間が最高の一時であれば良いと思うからだ。
「あな嬉し」
 差し出された羽織りを大切そうに両手で受け取って、綾はふわりと破顔した。
「ね、似合うでしょうか」
「それの名は『紬』。着てみてくれよ。綾の和服に似合う逸品探したンだぜ!」
 そう促されて綾が羽織りを靡かせ羽織れば、ひと目で良く似合うとわかる。服飾に拘りのあるクロウにとっては、それもまた嬉しいことだ。
「ン、俺の目に狂いなしだわ。お前らも触ってみるか?」
 満足げに頷いて、クロウは愉快な仲間たちへも声を掛ける。わっとすぐさま集まって来る愉快な仲間たちもまた、すごいすごいと口々に言う。
 それを微笑んだままに見ながら、綾は袂から小さな小瓶を取り出した。
 浮かぶのは、鮮やかな笑み。
「おくりものは、相手を想い描いて選ぶもの。――つまり、心をいっとき独占するということ」
 誰かのために、あなたのために。だからこそ贈り物は嬉しく、尊い。
「いつも美しく粧うあなたに、返礼です」
 差し出された小瓶に詰められているのは、深い青の花雫。露草や菫、朝顔を精製したそれは、インクにもなるが、爪先を彩ることだってできるのだと。
 そうすれば、指が遊ぶたび。広がる香りは艶やかにクロウを彩るものになる。
「へェ、洋墨にも香りにもなるなんてなァ」
 小瓶を受け取れば、青を揺らす。瓶の蓋を僅か緩めるだけで香るそれは、綾から貰った香りだと思えば、一等特別にも似た想いがする。
「礼を言う。綺麗だ」
 嬉々として笑んで、クロウは小瓶を大切に仕舞い、綾は羽織りを身に纏ったままに靡かせる。
 その傍で、色のなかったプレゼントボックスが濡羽色に染まり、紺青の水引で彩られた。まるで、ふたり交わした贈り物を世界が覚えたように。
「ふ、粋なコトするじゃねェか」
「ええ、誠、最高のひと時ですとも」
 クロウと綾は楽しげな笑みを交わし、その後も贈り物を見せてとねだるちいさな子らに応えて。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

真白・時政
ワァ~!ハジメマシテこんにちは!
ウサギさんのお出迎えシてくれたの~?
この国のコ達はイイコばっかりだねェ~

なになにウサギさんの贈り物のお話聞きたいってェ~?
んフフ、じゃあお話シてあげるカライイコにお座りシてくれる?

キミ達を見下ろしてお話スるのは最近もらったあのコのコト
素直じゃないウサギさんのお友達がね、自分は要らないからってくれたンだよォ~
今日は危ないから一緒じゃないケド
狭い箱の中でギュウギュウになってて可哀想だったのを助けてあげたンだって
んフフ、ヤサシーのに素直じゃないでしょォ~?

ン?ソレがナニかって?
んフフフ~内緒♥
キミ達に似てるケド全然違うコ
どんなコなのか想像シてみてウサギさんに聞かせて


●白い箱、白いリボン
 とん、とととん、とん。
 不規則なリズムで雲の階段を降りてゆけば、みるみるうちに楽しげな声が近くなる。
 それは贈り物を尋ねる声だ。そして、新たなお話をしてくれる誰かを――真白・時政(マーチ・ヘア・f26711)を待ちかねる声だ。
「あっ、ほらほら来たよ、いらっしゃい、いらっしゃい!」
「ワァ〜! ハジメマシテこんにちは! ウサギさんのお出迎えしてくれたの〜?」
 階段を降り切るや否や、わっと取り囲む小さな贈り物の子たちに、時政はおどけたような声音で挨拶をする。はじめましてこんにちは! と声の揃った挨拶が返れば、にこにこいつも通りに笑ったままで、時政は指でまるを作って見せた。
「この国のコたちはイイコばっかりだねェ〜」
「ほんとほんと? ぼくら、贈り物のお話が聞きたいんだ!」
「なになに、ウサギさんの贈り物のお話聞きたいってェ〜?」
 そうだよ、そうだよ! ぴょこぴょこ飛び跳ねるようにねだる声に、ちらと時政は愉快な仲間たちのいる向こう、彼らを吟味するように見る、一見愛らしい見目の敵を見つける。
「んフフ」
 見つけて笑って、知らないふりでまた笑う。
「じゃあ、お話シてあげるカラ、イイコにお座りシてくれる?」
「お座り? おすわり! はあい!」
「イイコのお返事だねェ〜」
 時政が言うままに、贈り物の子たちはさまざまな姿で、ちょこんと時政の足元に座る。目も口もばらばらだけれど、見下ろせば期待の眼差しがきらきらと見上げるようだ。

「そうだなァ〜なんの話をしよう? ――あ、じゃあ、あのコのコト」
 思いついたのは、最近貰ったあのコ。それをくれたのは。
「素直じゃないウサギさんのお友達がね、自分は要らないからってくれたんだよォ〜」
「なにを? なにを?」
「んフフ、今日は危ないから一緒じゃないケド、狭い箱の中でギュウギュウになってて可哀想だったのを助けてあげたンだって」
 ぎゅうぎゅう。繰り返すようにして首を傾げる子たちに、にこにこと変わらず時政は笑う。
「ヤサシーのに素直じゃないでしょォ〜?」
「ね、ね、それはなあに?」
「んフフフ〜内緒♡」
 時政は勿体ぶるようにそう言って、小さなぬいぐるみや様々な贈り物の子たちを見渡した。
「キミたちに似てるケド、全然違うコ」
「どんなの子なの? なの?」
「それはねェ〜、どんなコなのか想像シてみてウサギさんに聞かせて」
 イイコのお返事は〜? はーい!
 時政の声に、元気な声が揃って返る。その後ろに積み上がった色とりどりのプレゼントボックスの上に、真白い箱がことんと落ちる。それは見る間に白いリボンで結ばれて、大きなウサギのような耳を作った。
 どんな子だろう? 楽しげな声は続いて、笑う。それに笑い返しながら、時政は今ここにないひとつの贈り物を思い浮かべて、楽しげにまた笑った。
大成功 🔵🔵🔵

ベスティア・クローヴェル
花世(f11024)と参加

贈り物をする習慣は色々あるけれど、今までに貰ったものを全て語ろうとすると時間が足りない
かといって、どれかひとつに絞るのも難しい
どれも大切な気持ちが詰まったものだから、ね、と笑い返す

だけど敢えて選ぶとしたら、私はこの黒い手袋かな
贈り主とはちゃんと言葉を交わしたことはないのだけれど…
左手がそんなだと、手も繋げないだろうって
熱くは無いし、私が意識しなければ燃えもしないけど、躊躇する人は多かった気がする

語り終えると、そっと手袋をした左手を差し出す
花世なら手袋無しでも握ってくれそうだけど

手袋越しに花世の温かさを感じながら、興味津々に訊ねる
花世は、どんな贈り物が印象に残ってる?


境・花世
ベティ(f05323)と

贈り物をもらうのは、
今でも慣れずにどきどきしてしまうけど
うれしい、ね、とほほ笑んで

静かにベティの贈り物の話を聞こう
きみのことを、きみの生き方を見つめて
唯一人だけのために選ばれた手袋を

しなやかで美しい生地越しにふれるのは、
蒼い炎ではなくいのちの温もり

わたしの贈り物語はね、

懐から取り出したヒトガタの依代は、
破魔の祈りが籠った身を守る盾

わたしがすぐに傷だらけになるのを
捨て身の戦い方しかできないのを
ずっと隣で見ていて贈ってくれたんだ
――たったひとりの、わたしの神さま

冬を融かすように淡く綻んで、
繋いだままの指先をもいちど握ろう
やさしい贈り物に守られて、
わたしたち、ここにいる


●薄紅の箱、蒼銀の組紐
 華やかな贈り物の彩りが世界を染めている。
 贈り物を尋ね賑わう声はまるでお祭りのように明るく澄んで、楽しげに響く。
 静かにそれを見守るばかりだったベスティア・クローヴェル(没した太陽・f05323)と境・花世(はなひとや・f11024)たちも小さな贈り物の子らにすっかり囲まれていた。
「おくりもののおはなしを聞かせて!」
「すてきなおくりもの、ある? ある?」
「……贈り物をする習慣は色々あるけれど、今までに貰ったものを全て語ろうとすると時間が足りない」
 贈り物の話をせがむ声に、ベスティアは長い睫毛を伏せて考え込むように呟いた。
 かと言って、どれかひとつに絞るのも難しいことだ。
 ふふ、とちいさな笑い声が聞こえて視線を隣にやれば、つい悩んでしまったのが伝わったのか、花世が柔らかく微笑んでいた。
「贈り物をもらうのは、今でも慣れずにどきどきしてしまうけど。うれしい、ね」
「どれも大切な気持ちが詰まったものだから、ね」
 ベスティアが小さく笑い返せば、ゆっくりでいいよ、と花世が言う。そう、急ぐことはなく、ここで語ることを選ばなかったとして、それが大切でないなんてことはない。
「ね、ベティ。聞かせて?」
「……敢えて選ぶとしたら、私はこの黒い手袋、かな」
 そう言って持ち上げたのは左手。そこにはめられた、黒の手袋。――その下は、燃え盛る蒼炎がかたちを繋いでいる。それを隠したいと思ったことはなかった。けれど熱くもない炎が常に身を灼くその左手を包むように在る手袋が贈られたのは、隠すためではなく。
「左手がそんなだと、手も繋げないだろうって」
 ベスティアの炎はベスティアが意識をしなければ燃えることはない。それをわかってくれるひとだっていたけれど、触れるのを躊躇するひともまた多かった。
「贈り主とは、ちゃんと言葉を交わしたことはないのだけれど……」
「きみのために、唯一人だけのために選ばれた手袋、だね」
 花色の瞳をふわり緩めて、花世は微笑む。それにベスティアもこくりと頷いて、そっと左手を彼女のほうへ差し出した。
「花世なら、手袋なしでも握ってくれそうだけど」
「ふふ、それはもちろん、握らない理由がないもの。……でもね」
 いまは、この手袋越しにふれよう。ベスティアのために贈られた、しなやかで美しい黒の手袋に。伝うぬくもりは、いのちの温もり。
「……花世の手は温かいね。花世は、どんな贈り物が印象に残ってる?」
「ベティのおかげだよ。――わたしの贈り物語はね」
 興味津々にベスティアが問い返せば、花世が大切そうに懐から取り出したのは、ヒトガタの依代。
 破魔の祈りが籠ったそれは、花世の身を守る盾となってくれるもの。傷つくことを、おそれはしないけれど。
「わたしがすぐ傷だらけになるのを、捨て身の戦い方しかできないのを、ずっと隣で見ていて、贈ってくれたんだ」

 ――たったひとりの、わたしの神さま。

 紡ぐ音は冬を溶かすほどあたたかく、花が綻ぶようにやわく、淡く。
 ふわり。その声に応えるようにふたりの傍で色づいたのは、薄紅の小箱。
 掌に収まるほど何気ない大きさで、春を告げるような彩りで。それを結び彩る、蒼銀の組紐は、大切なものを零し落とさぬように結ぶもの。
「すてき、すてき!」
 贈り物の子たちが、嬉しそうに飛び跳ねる。その声たちに、色づいた贈り箱に微笑んで、花世とベスティアは繋いだままの指先をもういちど握る。
 伝うぬくもりは、こころに咲いた花はどこまでもあたたかく。
「それが花世を守るもの、なんだ」
「うん。やさしい贈り物に守られて、わたしたち、ここにいる」
 語ることばは、きっと足りない。
 けれど繋いだ手が、宿るぬくもりが何よりも確かに、ふたりに贈られたものだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リーヴル・ブック
アドリブ◎
も、物語を喰らうなんて…
そんなの…ダメです
私も頑張って止めないと…えっ、私の贈り物ですか?
えっと…あ、あの…その…これです
この本が私の、初めてもらった大切な贈り物
いえ、誰かにもらったとかそういうのじゃないんです…!
ただ…ずっと波が運んでくれる歌とお話だけが
私の物語で、世界で…

ただ、憧れるだけだった
遠くで光る星みたいに
暗い暗い海の底からは手が届かないもの
私なんかじゃ手に入らないもの
でも…綺麗で、大好きなもの
そうやって諦めて、漂うばかりで…

でも…波が、運んできてくれたんです
それは初めてこの手に触れた物語のかたち
偶然なのかもしれない
ううん、きっとそう
けど…私にとっては、大切な贈り物なんです


●紺碧の箱、泡沫リボン
 そとのせかいは、潮騒よりずっと賑やかだった。
「わ……っ」
 海と同じ色の空を、雲の階段で降りてゆく。ずっと水の中の世界にいたリーヴル・ブック(セイレーンの精霊術士・f30327)にとって、それはとてもこわくて、どきどきして――まるで初めてのお話を聞くときみたいに、胸が弾むことだった。
(すごい、……すごい)
 ぎゅっと、胸に抱いた本を抱きしめる。
 一歩進めば、一歩近づく。ゆらゆら、波に揺蕩うばかりじゃなくて、耳を澄ますばかりじゃなくて、あんなに遠いと思っていたあこがれのなかに、リーヴルはいる。
 ふわり、海の紺碧から泡沫の白にたゆたう水成りの髪を揺らせば、ぱちんと浮かぶ泡が弾けて、またきらめきを宿して浮かぶ。怖いけれど、はしゃいでしまっているのはきっと、本当で。
(ああ、でも――私はお仕事に来たんです。物語を喰らうなんて……そんなの、ダメです)
 頑張って止めないと。もう一度心に思い直して、雲の階段を降りて――そうして。

「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「まってたよ、まってたよ! おくりもののおはなしをきかせて!」
「ぴゃっ」
 一斉に取り囲まれて、つい本で顔を隠してしまった。おそるおそる覗けば、小さな贈り物の子たちがわくわくした様子でリーヴルを見つめている。
「えっと……あ、あの……その……」
 さっぱり言葉なんて出て来なかった。だってこんなふうに話しかけられることだって、水の中ではなかったのだから。
「こ、これです……」
「なに、なに?」
「あ、あの……この本が私の、初めてもらった大切な贈り物、なんです」
 顔の前に掲げてしまっていた本を、そのまま両手で差し出す。そうするだけで興味津々に覗き込む愉快な仲間の子たちに、リーヴルはどきどきしたままで言葉を続けた。
「あっ、いえ、誰かに貰ったとか、そういうのじゃないんです……!」
「もらってないのに、おくりもの?」
「は、はい……あの、私、ずっと波が運んでくれる歌とお話だけが私の物語で、世界で……」
 ゆらゆら、揺蕩う水の中。そこに見える全てが、聞こえる全てが、リーヴルのいる世界のぜんぶだった。
 ただ、憧れるだけだった。
 遠くで光る星みたいに、暗い暗い海の底からは手が届かないもの。
(私なんかじゃ手に入らないものだって、ずっと思ってた)
 諦めて、漂って。――それでも綺麗で、大好きなもの。
「でも……波が、運んで来てくれたんです」
 それは海のおくりもの。不意に波の隙間から揺蕩い落ちて来た、一冊の本。
 かすかに聞こえる歌ではなく。波の間のお話ではなく――それは、リーヴルが初めて触れた、物語のかたち。
 海の中でも朽ちず、物語を示すその本は、まるで憧れた流れ星が落ちて来たみたいに。
「偶然なのかもしれない。……ううん、きっとそう。けど、私にとっては、大切な贈り物なんです」
 本に綴られた冒険は、リーヴルを海の外へと導いた。たくさんの物語があふれる、小さな世界の外側へ。それが本当は何なのか、まだリーヴルは知らないけれど。
「こ、こんな話で大丈夫……だったでしょうか……」
「すてき、すてき! ありがとう!」
 おずおずと贈り物の子たちを見れば、うんと嬉しげな声が返って、リーヴルは心底ほっとする。よかった、と微笑めば、ぱちんと水泡が弾けて、すぐそばにあった大きな真白い箱を紺碧に染めた。
「わ、わ……っ?」
「おくりもの、きれい!」
「こ、これ……私のお話が……?」
 そんなことってあるんでしょうか。呟き見上げるリーヴルの目の前で、紺碧の箱は純白の泡沫のレースで結び彩られる。
 それは大きくて、小さな世界のはじまりの物語。
 ――リーヴル・ブックの冒険の始まり。
大成功 🔵🔵🔵

呉羽・伊織
【花天】
贈り物と其から生まれた命、か
(肌身離さぬ数珠に触れ――)
この名も、この数珠も、恩人に貰った大事なモノでさ――俺もヤドリガミだからか、物と其に宿る心や物語は感慨深くて
(“俺自身”も、今は呪物と成り果てたが――最初は誰かが誰かを想って贈った物だった
――と、一瞬だけ目を伏せるも、此処はもっと明るい話をしようと顔を上げた矢先)

あ、春!奇遇!寧ろ運命的な?
冷たい…(ぱあっと顔を明るくした直後に秒で大袈裟に悄気て)
…えっ、何?
(また笑って受け取って)
縁結…うっ優しさが身と目に沁みる
(贈り物に嬉し泣き気味
だが相変わらず脈もなくて涙)
んじゃ俺もお返し
この一年、また幸いが咲くように
(桜の幸運守をそっと)


永廻・春和
【花天】(最初は別々に)
振り返れば、沢山の幸いと共に頂いた物が多く、語りきれぬ程に――ですが、そうですね
此処は愛刀のお話を一つ

此は両親が『私自身にとっても、影朧にとっても、良き道を切り開けるように』と祈りを込めて贈ってくれたもの
大切な、かけがえなき一振です
(と、ふと遠くに、見知った顔が翳って見え)

…呉羽様?
いえ、唯の偶然ですね
(軽口は素気なくあしらうも)
そういえば、贈り物といえば――貴方様にもお渡ししたいものがありました
(手渡すは縁結びの御守)
お誕生日のお祝いも兼ねて――今年こそは良縁があるよう、心より祈っておりますよ
(そして同時に、私も幸いを祈っております――とは、仲間さんにだけ小声で)


●漆黒の箱、桜色結び
 選んで、包んで、開いて、贈って。
 ひとくちに贈り物と言えど、その道筋は様々だろう。この贈り物の国には至る所にプレゼントボックスが彩りを広げ続けているけれど、それもまた『贈る』心の顕われのひとつ。
(ああ、また)
 ゆっくりと歩みゆく呉羽・伊織(翳・f03578)の目の前で、ころんと落ちて来た小さな箱から、もっと小さな愉快な仲間――贈り物の子が飛び出して来た。そうして贈り物の話をねだって楽しげに跳ねてゆく。
「おはなし、きかせて!」
「おお? こっちから来たのか」
 ぴょこん、と元気よく肩の後ろから顔を出した愉快な仲間が近づいて来ているのなんて、わかってはいたのだけれど、わざと今気づいたふうで笑って、いいよと頷く。
「贈り物と其から生まれた命、か」
 無意識に指先が肌身離さぬ数珠に触れた。
「この名も、この数珠も、恩人に貰った大事なモノでさ――俺もヤドリガミだからか、物と其に宿る心や物語は感慨深くて」
 だからこうして歩き回って、楽しげな贈り物の子らを見るのも、聞こえる話にそっと耳を傾けるのも飽きはしない。
(“俺自身”も、今は呪物と成り果てたが――最初は誰かが誰かを想って贈った物だった)
 わくわくした様子で話を聞く愉快な仲間はまだ、贈り物は素敵なものであると、心から信じている。あるいはそれは、本当だろう。伊織の『自身』に最初のすがたがあったように。
「?」
「……何でもないない、贈られるモノも嬉しいものだよな」
 ほんの一瞬伏せた目を上げて、伊織は笑みを浮かべる。此処はもっと明るい話が良いだろうと顔を上げた。
 そのときだ、聴き慣れた声が聞こえたのは。

 遡って、少し。
「――そうですね」
 少しの間考え込んでから、永廻・春和(春和景明・f22608)は桜色の瞳をすいと上げた。
 目の前には、わいわいと取り囲む愉快な仲間たちがいる。
 贈り物、と問われて振り返れば、沢山の幸いと共に貰ったものばかりで、全て語ろうとすれば語りきれぬものだ。けれど。
「此処は、愛刀のお話を一つ」
 選ばねばならぬと言われれば、共に戦場を駆ける一振りを。すいと腰に佩いた刀を両手に携えれば、わっと小さな歓声が上がった。
「此は両親が『私自身にとっても、影朧にとっても、良き道を切り開けるように』と祈りを込めて贈ってくれたものです」
「かげろ?」
「嗚呼、わかりませんか。……いいえ、きっと生まれは私も影朧も、そして貴方様方も大きくは変わらないでしょう」
 願われたもの、巡りついたもの。あるいは惑い迷う道に辿りついたとて、切り開くべきは『良き道であれ』と祈られた、この一振りで。
「……大切な、かけがえなき一振りです」
 そう語らい、春和は顔を上げる。そうして気づいた。遠くに見知った顔が在ること――その顔が、僅か翳っていること。
 理解すると同時に、脚は勝手に駆け出した。そして声の届く距離で呼ぶ。

「……呉羽様?」
「あ、春!」
 ぱっと顔を上げた伊織の顔は、翳りなどおくびにも見せぬ笑みを浮かべていた。
「春も来てたのか! 奇遇! むしろ運命的な?」
「いえ唯の偶然ですね」
「あっすごいいつも通り冷たい……」
 ぱあっと表情を輝かせた後、一瞬のうちにずうううんとしょげて見せる伊織こそ、いつも通り過ぎるほどだ。そこに先程見えた翳りなどはないけれど。
「……そういえば、贈り物といえば――貴方様にもお渡ししたいものがありました」
「……。……えっ、何? オレの聞き間違い?」
「やめますか」
「冗談デス! 春、何?」
 もう一度問い直した伊織の手に、そっと手渡すのは御守り。手触りの良い生地に縫い込まれた文字は――縁結び。
「縁結びのお守り……」
「お誕生日のお祝いも兼ねて、今年こそは良縁があるよう、心より祈っておりますよ」
「うっ、優しが身と目に沁みる……」
 贈り物はものすごく嬉しい。泣くほど嬉しい。嬉しいけれどよりにもよって縁結びである。脈無しも良いところでそっちでも泣ける――なんて言うのはほんの瞬き三つ分で押さえて、伊織は受け取ったお守りを片手に大切そうに納める。
「んじゃ、俺もお返し」
 気を取り直したように、もう片方の手から春和の手へ渡すのは、桜色の幸運守。
「この一年、また幸いが咲くように」
「……ありがとうございます」
「俺こそ、ありがとう、春」
 互いに手にした御守りは、互いの幸いを願うもの。

 ――私も貴方様の幸いを祈っております、と春和が贈り物の子らにだけ、小さな声で告げた言葉は、漆黒の箱に桜結んだ贈り箱の彩りの前で、ひそやかに。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『ベスティア・ビブリエ』

POW ●縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励◆
攻撃が命中した対象に【埋まることの無いぽっかりと空いた心の穴】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【一秒毎に記憶を次々と失っていき、衰弱】による追加攻撃を与え続ける。
SPD ●譏疲�縺ゅk縺ィ縺薙m縺ォ
自身の【憑依しているが、使い捨てる本のページ】を代償に、【Lv×1体の幸せそうな物語の登場人物達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【世界の『正』を『負』に捻じ曲げた幻想】で戦う。
WIZ ●蟷ク縺帙↓證ョ繧峨@縺ヲ縺�∪縺励◆
いま戦っている対象に有効な【精神攻撃をする『物語』を演じられるもの達】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フィオレンツァ・トリルビィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 楽しげな声が贈り物の国に響き、様々なお話は彩りとなって、プレゼントボックスが連なる。
「すてき、すてき!」
「たのしいね、うれしいね!」
 たくさんの贈り物の話を聞いて、愉快な仲間たちはたいそうご機嫌だ。すっかり幹部へ献上する物語の調達が間に合わずに、話の合間に倒されてしまった敵がいたことを、猟兵たちは気づかせなかった。
 だからこそ、彼らは知らない。
 すぐそこに、おそろしいものがいることを。
 だからこそ、彼らは恐れず前に出る。
 すぐそこに、初めて見る物語がいるのだから。
「ねえねえ、あれなあに?」
「大きいね、オオカミかな?」
「あの本から出て来たよ。行ってみようよ!」
「ぼくもぼくも!」
「私も私も!」
 ぴょん、ぴょんと上機嫌なまま、贈り物の子たちは顕われた巨大な獣のほうへ近づいてゆく。
 ――それをまた止めるのも、猟兵のお仕事であるわけだけれど。

「えっ? だめなの? どうして?」
「えっ? 行くならみんなで? 一緒にいってくれるの?」
「そのほうが楽しいから――うん! そうだね!」
 上機嫌な子供たちは、はーい! と良い子のお返事で猟兵たちの傍にちょこんとくっついた。
 お約束はひとつ。
「いいって言うまで、はなれないよ!」
リュカ・エンキアンサス
【蒼空】
ん、行ってらっしゃい
…あなたたち(贈り物の子たち)はこっちにいて
あまりそっち行かないで

……
(って、あれ。じゃあこの子たちの相手をするのは俺か)
お兄さん、早く帰ってきて
兎に角、早く、帰ってきて

なるべく子供の相手をすることから目をそらしながら灯り木で攻撃
敵が何かを呼び出したら、お兄さんと合わせて片っ端から銃弾を撃ち込んでく
決闘?え、それ決闘なの
いや、俺は決闘の邪魔をしてるわけじゃなく…(やいやい横から言われて
(扱いは得意ではないしおざなりにもできなくて困る

…お兄さん、フォロー頼んだ
後、早く帰ってきて(三度目
兎に角さっさと一掃して場所を開けるから、
後はお兄さん頼んだ
頼りにしてる
色んな意味で


オズ・ケストナー
【蒼空】
じゃあいってくるねっ
斧持って駆けだす

ちゃんと物語がハッピーエンドになるように
ガジェットショータイム
現れたのは剣
本から出てきたのは

王子さまっ
ふふ、そっか
決闘だねっ

斬りつけた場所は傷を覆うように花が咲く
生命力吸収

王子さまたちはオオカミさんにだまされているんだよっ
ちゃんと元にもどすからね
わたしをおうえんしててっ
物語を聞かせるように愉快な仲間たちに告げて

リュカと共に登場人物一掃

オオカミさんは狩人さんにこらしめられちゃうんだよ
ね、リュカっ
あれ?
表情は変わらないけど切実な雰囲気に気づいた
うん?
うん、わかったっ
頼まれたから張り切ってベスティアのところへ

この国にあふれるのは
すてきな物語じゃなくちゃねっ


 言葉にならない声が聞こえる。
 けれども後ろには、無邪気な返事をした愉快な仲間――贈り物の子たちがいるのをよくわかっていて、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は楽しげな笑みを浮かべて一歩を踏み出した。
「じゃあいってくるねっ」
 たんっと軽い足音で、ぎゅっと握りしめた斧を確かめて。駆け出す刹那、向けた視線の先には、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)がいる。
 リュカがいるならだいじょうぶ、なんてきっと口にするまでもなかった。
「ん、いってらっしゃい」
 贈り物の子たちの傍で、リュカは相変わらず表情を然程動かすことなくオズを見送った。そうしながら無意識に手に確かめるのは、使い慣れたアサルトライフル――灯り木の形。
「あれあれ、ぼくらは行かないの?」
「行かないよ。あなたたちはこっちにいて。あまりそっちに行かないで」
「はあい! きみはぼくたちといてくれるの?」
「そう、俺はここにいるから……」
 オズについて行きそうな贈り物の子たちの前に立ち、無邪気な声に頷いたところで、リュカは気づいた。
(って、あれ。じゃあこの子たちの相手をするのは俺か)
 どう考えてもそれしかない。否、いつも通りの自然な流れではあるのだ。オズが前に出て、リュカが後方から支援する。だからこうしてオズの背を見送るのだって慣れてはいるのだけれども。
「やったやった、あそべる?」
「すごいね、斧大きいね、何するのかな?」
「またおはなし聞ける? る?」
 わいわい、きゃいきゃい。――はしゃぐ子供の相手には全く全然慣れていない。
「……。…………。とにかく、俺がこの銃を構えてるときは触っちゃ駄目だよ」
「だめなの?」
「どうしてどうして?」
「遊んで遊んで!」
 わいわい、きゃいきゃい。
 楽しげな無邪気な声に反して、リュカの表情は更に無に帰してゆく。どうしよう。どうしようもない。とりあえず正確に弾丸を放って、オズの道を開きながら。
「お兄さん、早く帰ってきて」
 切実に。
「兎に角、早く、帰ってきて」
 二回言った。

「さあ、今だよっ」
 弾丸と愉快な仲間たちの声に猟書家幹部――ベスティアが気を取られている間に、オズはその目前まで駆け寄った。
 斧を蒼い空に放り投げ、空いた両手をうんと伸ばしてガジェットを喚ぶ。
「ちゃんと物語がハッピーエンドになるように!」
 くるくる回って、青い空から戻って来たのは斧から姿を変えた剣。大きな空色のネジのついた柄を掴み取ると同時、敵の本から飛び出して来たのは――顔が黒く塗りつぶされた、
「おうじさま!」
「おうじさまだー!」
 贈り物の子たちがわあっと声をあげる。それに応えるように剣を握ったオズも笑った。
「ふふ、そっか。決闘だねっ」
「決闘? それ決闘なの?」
 王子さまっぽいの複数いるけど決闘なの。ごもっともであるが、子供たちは大喜びである。リュカは真顔で困惑している。
「王子さまたちはオオカミさんにだまされているんだよっ。ちゃんと元に戻すからね! だからみんな、わたしをおうえんしててっ」
「はーいっ!」
 元気な返事にオズはもう一度笑って剣を振るう。飛び跳ねるように近づいて、思い切り振り下ろして。斬りつけたところからは、綺麗なバラが咲く。
 ベスティアが呼び出した黒塗りの王子たちは、やはり愉快な仲間たちを狙おうとしているようだった。その行く手を、青い剣が阻む。
「リュカっ」
「任せて」
 一瞬の隙にオズの剣を掻い潜った王子が駆け出たのを、リュカの弾丸が過たず撃ち抜いた。
 ――のだけれども。
「ああっ、ダメだよう!」
「決闘の邪魔しちゃだめーっ」
「え。いや、俺は決闘の邪魔してるわけじゃなく……」
「いいこでまってなきゃだめだよ!」
「よ!」
「……。…………」
 リュカは吐き出しそうになったため息の代わりに、精密な射撃を王子たちへ撃ち込む。早く一掃しよう、そうしよう。
「お兄さん、フォロー頼んだ。後、早く帰ってきて」
「うん? うん、わかったっ」
 三回めの切実な要望にオズが首を傾げながらも頷いたのを確認して、リュカは最後に残っていた王子を二体続けて撃ち抜く。流星の軌跡のようなきらめきが残って、そうして。
「場所が空いた。後はお兄さん頼んだ。――頼りにしてる。色んな意味で」
 いってらっしゃい。
 最初と同じ言葉で、最初よりも切実に、リュカがオズを送り出す。
「うん!」
 いってくるね!
 その弾丸が開いた道を、オズが満面の笑みで駆けて、ベスティアへ空色剣を振り下ろした。
「譏疲�縺ゅk縺ィ縺薙m縺ォ?」
 物語にならぬ声が真っ直ぐに断ち斬られたのは次の瞬間だ。

「この国にあふれるのは、すてきな物語じゃなくちゃねっ」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

真白・時政
ウンウンみんなイイコイイコ~
ウサギさんがイイヨ、っていうまで傍を離れてイロんなトコ行かずにソコにいてネ

ウサギさんはみんながケガシないよォに!って、お祈りスるの~
ケガシてアイタタになってもだいじょォ~ぶ
ウサギさんが痛いの痛いの飛んでけ!ってシてあげる~んフフフどォカナどォカナもう痛くなァい??
イイコたちにはほわほわぬくぬくなおひさまの光~!
ワルイコにはギンギラビカビカなまぶしー光でやっつけちゃうヨ!
んフフ~ウサギさんってばスゴイウサギさんでしょ~?もっとスゴイって言ってイイヨォ~んフフフ

ウサギさんにキクセイシンコーゲキってナンだろナンだろ
アハハ、ウサギさんもワカンナイからヘッチャラだァ~!


 始まった戦いの音はどうしたって緊張を伴う。
 けれどもそれを『戦い』ともまだ知らずにじいっと見つめる贈り物の子たちは、ただ何となくそわそわして、わいわいと肩を寄せ合うばかりだ。
「なにかななにかな?」
「賑やかなおはなし?」
「んフフ、そうだよォ。ウンウンみんなイイコイイコ〜」
 約束守ってイイコだねェ、と真白・時政(マーチ・ヘア・f26711)は何気ない足取りで無邪気な子たちの前へ出てゆく。にこにこと浮かべた笑みは変わらず、機嫌よく笑った口元のまま、時政は白い髪を揺らして振り向いた。
「だからねェ、ウサギさんがイイヨっていうまで、傍を離れてイロんなトコ行かずにソコにいてネ」
「はーいっ」
 イイお返事。機嫌よく笑ったままで、時政はベスティアを見やる。その視線は時政の傍にいる愉快な仲間たちへばかり注がれているのだけれど。
「蟷ク縺帙↓證ョ繧峨@縺ヲ縺�∪縺励」
「何言ってるかワカンナイなァ〜。ワルイコかな?」
 振り下ろされた大きな爪を身軽に避けて、時政は首を傾げる。
 まともに攻撃を喰らえば不味かろう。物理的に大きさが桁違いだ。けれどもその大きなものは、小さなものに気を取られ続けている。
「それじゃあネ、ウサギさんはみんながケガしないよォに! ってお祈りスるの〜」
「おいのり? ――わあ!」
「そうだよォ。そうやってケガしてアイタタになってもだいじょォ〜ぶなようにネ」
 にこにこ笑みを浮かべたままで捧げるネガイゴト。それはきらきらした光を放って、うっかり前に顔を覗かしたおてんばな子が狙われた傷を、柔らかな陽光が治癒させてゆく。
「痛いの痛いの飛んでけ! フフフ、どォカナどォカナ、もう痛くなァい?」
「さいしょからいたくないけど、あったかい! すごいすごい!」
「んフフ〜ウサギさんってばスゴイウサギさんでしょ〜? もっとスゴイって言ってイイヨォ〜」
 痛みも感じずに物語を齧られた愉快な仲間の子に光を与えて上機嫌に笑って見せながら、デモデモ、と時政はもう一度祈りを捧げる。贈り物の子たちを包み込むのは、ほわほわぬくぬくしたおひさまの光ばかりだけれど。
「ワルイコにはギンギラビカビカなまぶしー光でやっつけちゃうヨ!」
 ぴっと指を向けた先。鮮やかな虹彩が、ベスティアの身の内を引き裂いた。
「蟷ク縺帙↓證ョ繧……」
 言葉未満の言葉が時政の頭に流れ込む。それは精神を攻撃する言葉だったのだろう。物語だったのだろう。ただそれがどんなものか――時政にだってわからない。
「アハハ、ワカンナイからヘッチャラだァ〜!」
 真っ白ウサギは軽快に笑って、楽しげに指はピースを作る。
 スキなコたちを守る光はキライなコをばりんと引き裂いて、代わりに虹を掛けた。
大成功 🔵🔵🔵

都槻・綾
f04599/クロウさん

愉快な仲間達へ
依り代となる霊符を贈り物

嬉しい気持ちを更に上乗せしたら
百人力のお護りとなるだろうか
純粋な彼らを少しだって傷付けたくないの

さぁさ、
誰が一番に駆けるかしら

仲間達とクロウさんへ
悪戯っぽく笑んで促し
応えを聞く前に跳ねるよう走り出す

速度を落とさぬままに
詠い紡ぐ花筐
掲げた符を妖しへ放てば
薄紗がふわりと解けて解れて
鮮やかな福寿草の花嵐となる

舞う花弁に燥いで飛び跳ねたり
楽し気にころころ転がる愉快な仲間達に
ふくふくと揺らす肩

ねぇ
クロウさんならきっと
腹ぺこの狼さんに喰われても
不撓不屈に突き破って出てくるのではない?

そんな軽口も
共に駆け行く青年の
頼もしき背を信頼しているからこそ


杜鬼・クロウ
綾◆f01786
アドリブ◎

危ねェっつっても…好奇心には勝てなさそうだなァ(溜息
うし、一緒に行ってもイイが絶対に俺達から離れねェコト
約束、守れるよな?
綾、ナイス!助かるぜ(小声で

知らぬ儘
彼らには平和で倖せな生活をこの先も

同じく愉快な仲間達を囮にせず
守護して幹部と対峙
綾と目配せ

殿は俺に任せろ
おら、こっちだぜ!

自分達に意識向けて煽り【魔除けの菫】使用
足止めし綾の花嵐を目晦ましに一気に幹部の懐へ
意志を力に
大剣の炎属性を出力
幹部が召喚した敵ごと喰い破る勢いの二連撃

俺のコトよく分かってンじゃねェの、綾
窮地からの逆転劇
物語の結末ははっぴーえんどが好きでなァ!

自信に満ちた笑みは
直ぐ傍に頼れる彼がいるからこそ


 ベスティア・ビブリエから響く言葉は言葉に満たず、叫ぶ声さえ悲鳴にはならぬ。――なればこそ。
「ねえね、あのこはなんていってるの?」
「わかんないね、ききたいねっ」
「行こうよ行こうよ、聞きに行こうよ!」
 恐ろしいことが起こっていることさえ知らず、興味津々に身を乗り出す贈り物の子らに、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は大きなため息を吐いた。
「危ねェっつっても……好奇心には勝てなさそうだなァ」
「ふふ、子供と言うのは駄目と云われる程、冒険心を持つものでしょう」
 花緑青の瞳を和らげて、都槻・綾(糸遊・f01786)はふくふくと笑う。微笑みと共に傍に寄ったちいさな子らにひとつひとつ手渡すのは、依り代となる真白い霊符。
「これは? これは?」
「私からの贈り物ですよ。失くさず持っていてくださいな」
「!! おくりもの!」
 綾の言葉に一斉にきらきらした声が上がる。贈り物の話が大好きな贈り物の子たちが『贈物』を喜ばないはずがなかった。途端にわいのわいのと依り代の見せ合いっこが始まったその上で、綾とクロウは視線を交わす。綾から贈られたもの――それだけで、効果の程は問うまでもないけれど。
「イイのか?」
 ――連れて行っても。
「あれだけ喜んでくれるなら、百人力のお護りとなるかもしれませんね」
 ――置いてなど行けないでしょう?
 純粋な彼らを、少しだって傷つけないように。
 知らぬ儘、彼らには平和で倖せな生活をこの先も。
 その意思が同じなのは互いに言うまでもなかった。一見そうは見えぬクロウが面倒見が良いことだって、よくよく知っている。
「うし、一緒に行ってもイイが、絶対に俺達から離れねェコト」
「やったー!」
「バンザーイじゃねェ。ほら、約束。守れるよな?」
 しっかり言い聞かせるように視線を合わせて言えば、一様にはーい! と良い子の返事が返る。
「じゃあ行こう行こう! あのこのとこまで!」
「うん! 行こう行こうっ」
「あ、ッたく、言ってるそばから……!」
 ぴょんと飛び出し掛けた贈り物の子たちの前へ、夜色の影がするりと躍り出たのはそのときだ。

「――さぁさ、誰が一番に駆けるかしら」

 贈り物の子たちへ、クロウへ。悪戯に笑んで促すように、綾が応えを聞かずに走り出す。
 その後をわあっとちいさな愉快な仲間たちが追って行けば、その殿を護るようにクロウも駆け出出した。
「綾、ナイス! 助かるぜ」
 ほんの小声で渡した声は笑みで返され、そうして駆ける速度は緩めぬままに、綾の唇が詠い紡ぐ。
 見据える先、大口を開いたままのベスティアへ掲げた符を放てば、楽しげな声に乗るように薄沙が解けて、解けて、花弁と成る。
 ふわり。咲くは鮮やかな福寿草。一息のうちに花嵐へと変われば、まるで子供たちを隠すようにベスティアを呑み込む。
「おら、こっちだぜ!」
 クロウの耳元、菫青石のピアスから放たれる重い衝撃。共に投げられた煽り立てる声に、ベスティアの気が取られたのは確かだった。――その瞬間、花嵐を目眩しのようにして、クロウはベスティアの懐へ飛び込む。
「縺願�縺檎ゥコ縺�――」
「何言ってンだかわかンねェなァ!」
 クロウが抜き放つ大剣が意志によって炎を纏う。その物々しい刀身は、きっと花嵐で贈り物の子らには見えてはいまい。
「きれい、きれい!」
「すごーい!」
 依り代の守護の元、ひらひらと舞う花弁に贈り物の子たちははしゃぐまま、ころころと転がり楽しげだ。すぐ傍で行われている戦いなど知らぬまま、――それで良い、と綾はふくふく肩を揺らす。
 綾にも、クロウにも端から愉快な仲間たちを囮にする気などなかった。その役すら自分たちでやってしまえば良い。ふたり、いるのだから。
「ねぇ、クロウさんならきっと腹ぺこの狼さんに喰われても、不撓不屈に突き破って出てくるのではない?」
 なんて軽口は、共に駆ける青年の頼もしき背を信頼しているからこそ。
「は、俺のコトよく分かってンじゃねェの、綾」
 なんて浮かべる自信に満ちた笑みは、直ぐ傍に頼れる彼がいるからこそ。

 子供たちが無事遊ぶ花筺を見守りながら、もう片方の花嵐は凄絶なもの。花弁と共に共に巻き上がる炎は、クロウの大剣を鮮やかに彩る。
「縺願�縺檎ゥコ縺�!��!」
 物語を喰らう大口は、開いた瞬間にその内側へ吹き荒れる花嵐と炎を呑み込んだ。
「物語の結末は、はっぴーえんどが好きでなァ!」
 ごうと勢いを増す風に、きゃっきゃと無邪気な声も舞い上がる。
 倖せな儘、無垢な儘。いまは、まだ。――器物に宿るかみたちの願いのままに。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

琴平・琴子
怖い狼さんかもしれませんね
でも此処にあるのはそれを撃ち倒すための猟銃
悪い獣は何時だって倒されるものですから

攻撃を仕向けてくるなら猟銃で一度銃声を鳴らして威嚇射撃
攻撃を頂いても心の空虚は耐えられる
元の世界に帰る切欠を失うかもしれないけれど
そんなのまた、探せばいいだけ

お前が食べる物語は此方ですよと挑発するようにおびき寄せ
さあいらっしゃい
近付いてきたところでお前はこの銃の餌食になるだけ

危ない空少し離れて下さいね
愉快な仲間が離れたところで敵の横腹を
猟銃で薙ぎ払う様に体勢を崩したところで
敵の頭を狙う一撃

痛いですか?
吐いて貰いますよ、愉快な仲間たちの物語を
――お前が食べた私の記憶も全部


  足音はきちんと淑やかに。カラリと鳴った防犯ブザーは大切に鞄に仕舞って、琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)はその代わりに銃を握った。
 その小さな肩の後ろから、ひょこりと薔薇の愉快な仲間が顔を覗かせる。
「やあやあ、何だかとっても大きな口だね。あれがオオカミってものかな?」
 まだ恐れを知らないその視線の先には、言葉ならぬ声を羅列させる物語喰らい――ベスティアがいる。
「ええ、あなたも一飲みにしてしまう、怖い狼さんかもしれませんね」
「ひ、ひとのみかい? でもそれならきみだって、」
「いいえ。だって、此処にあるのはそれを打ち倒すための猟銃ですよ」
 かちゃん。軽い音で琴子の小さな腕に収まるのはマスケット銃。それをくるりと回して両の掌に馴染ませれば――さながら少女は、緑の狩人のように。
 知っていますか? 澄んだ金緑の大きな瞳を前へと向けて、琴子は迷わぬ一歩を前へ出す。
「悪い獣は、何時だって倒されるものですから」

 駆け出せば、ベスティアの視線が琴子の動きを追う。否、愉快な仲間を追っているのだとすぐに分かる。
「縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ」
 話しているのか、叫んでいるのか、笑っているのか。それだってわかることはない。ただ確かなのは、振り上げられた大爪が、薔薇の子へと狙い澄まして勢い良く落ちて来ようとしていること。
(そうはさせません)
 ――ダァン!
 撃ち鳴らされた銃声に怯んだように、ベスティアの狙いがずれる。それでも大きな爪は琴子の身を引き裂くように振り下ろされた。
「……ッ」
 咄嗟に悲鳴を飲み込んだのはいつもの癖と、傍にいる贈り物の子に怖い思いをさせないように。
 身に走った衝撃よりは、その奥を、心を抉り取るような嫌な感覚が、胸の真ん中にぽっかり空虚を残すけれど。
(だいじょうぶ)
 耐えられる。きゅっと唇を噛んで、顔を上げた。
 何を喰われたかはわからない。元の世界に帰る切欠を失うかもしれないけれど。
(そんなのまた、探せばいいだけ)
 ずっと探してきた今までと同じ。――だから、まだ何も失っていないこの子のお話は、食べさせない。

「さあ、いらっしゃい」
 おびき寄せるように駆けて、琴子は小さな身を翻す。
「お前が食べる物語は此方ですよ」
 ノイズのようなベスティアの声が響く贈り物の国を走る。
 走って走って、琴子は大きなプレゼントボックスの影に身を隠した。
「薔薇さん、少しだけ離れていてくださいね」
「それはいいけど、大丈夫かい? オオカミはきみを呑んでしまうの?」
 首を傾げながらもぴょこぴょこと言う通りにしてくれる薔薇の子に、琴子はゆっくり首を横に振る。
「いいえ、あの子は食べ過ぎですから」
 ベスティアが琴子と愉快な仲間を追って姿を見せたのはその瞬間だ。大きな影はすぐさま琴子を覆い尽くしてしまうけれど、その分的は大きい。
 手にした猟銃を持ち直してしっかりと両手で握れば、琴子は渾身の力でベスティアの横腹を薙ぎ払った。撃っても打っても、猟銃はつよいものである。
「縺願�縺檎∋縺セ縺励!?」
「痛いですか?」
 驚いたように、けれど確実に巨体がぐらつく。その脳天へ今度こそ向ける銃口と、引き金にかけた白い指。真っ直ぐな瞳は、恐れず迷わずを見据える。
「吐いて貰いますよ、愉快な仲間たちの物語を」
 それから。
 銃声が高く鳴り響く。銃弾はベスティアの大きな口ごと、悪い獣の頭を撃ち抜いた。

「――お前が食べた、私の記憶も全部」
大成功 🔵🔵🔵

エドガー・ブライトマン
本の子を戦場までついてこさせるのは
王子として少々気が向かないけれど
まあコレも作戦だから仕方ないね

私たちが勝てばいいだけのコトさ

ごきげんよう、オオカミみたいなキミ
オオカミにツノは無かった気がするけれど、まあいいや
ここでお別れだし、多分キミのこともすぐに忘れてしまう

愉快な本君。私のそばから離れるんじゃないよ
本君を攻撃してくるところを迎撃するカンジで攻めていこう
『正』を『負』に捻じ曲げた幻想とやらに
私たちが負けるワケにはいかない

すこしずつオオカミみたいなかれと間合いを詰めて
好機は逃さず《早業》で“Jの勇躍”
本君が傷ついてしまったなら、その分までしっかりお仕置きしてあげよう
さあ、あるべき海へ還りなさい


 遠く響いた銃声は、まるで祝砲のようだ。
 贈り物の国の彩りは鮮やかなまま、喜びに満ちているようなのに、似つかわしくない戦いの音があちこちで響き始めている。
(愉快な仲間の子を戦場まで着いて来させるのは、王子としては少々気が向かないけれど)
 エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は白のマントを青に翻して足を進めた。それでも楽しげな声が絶えず聞こえるのは、共に来た猟兵たちがそれを護っているからに他ならない。
「何だか楽しそうな音がするわ!」
「フフ、そうかい? それは良かった」
 エドガーの傍らにも、はしゃいだ様子で浮かんでいる本の子がいる。
 何も知らない本の子は、自分を狙って近づいて来る低く響くそのに音すら、楽しげに頁をぱらぱら踊らせた。そんな無邪気な様を『囮』と呼ぶのは憚られるけれど、それは『作戦』と言い換えることができるものだ。
「愉快な本君、私のそばから離れるんじゃないよ」
「? わかったわ!」
 約束したもの、と素直にちょこんとくっついた本の子に優しく笑って、ふとエドガーは視線を前へ、大きなプレゼントボックスの奥へと据えた。
 先行していた友たるオスカーがくるりと尾羽を翻し何か報せるように囀る声に、エドガーはひとつ頷く。
「やあ、ありがとうオスカー。勿論わかっているよ。――私たちが勝てばいいだけのコトさ」
 この作戦は、決してあの子を犠牲にするためのものではない。
「譏疲�縺ゅk縺ィ、」
「わわあっ、なに? オオカミさん?」
 だから前に出過ぎかけた本の子をひょいと引き戻す。
 物陰から現れた巨大な獣に、エドガーは茶目っ気たっぷりにウインクをして見せた。
「ごきげんよう、オオカミみたいなキミ。……オオカミにツノはなかった気がするけれど」
 まあいいや。あっさりと笑って、エドガーは手にしたレイピアを大きな口を開いた幹部、ベスティアへと向ける。
「ここでお別れだし、多分キミのこともすぐに忘れてしまうからね」
 ただ綺麗に微笑んで、エドガーはマントを脱ぎ捨てる。ふわりと風を孕んだ白と青は、小さな空を作るように落ちた。――その瞬間に、一歩を踏み込む。

 ベスティアが振り上げた大爪が、本の子を狙っているのは明らかだった。ならばその間に割って入るのだって容易いことだ。爪をいなし、間合いを詰める。
「譏疲�縺ゅk縺ィ縺薙m縺ォ――」
 意味を為さぬ声と共に、ベスティアの元にある本から顔やそこかしこが黒く塗り潰された誰かたちが飛び出した。それはおそらく本に描かれた、あるいはベスティアが喰らった物語の中にいた登場人物だったのだろう。けれども顔も見えなければ、ただ闇雲に攻撃するばかりの狂った影のようなもの。
 顔も姿も塗り潰された登場人物たちの中には、立派なマントを翻す誰かだっていたけれど。
「『正』を『負』に捻じ曲げた幻想とやらに、私たちが負けるワケにはいかない」
 エドガーは顔の見えない誰かを迷うことなく打ち倒す。
 さあ、ご照覧あれ。響く剣戟の音は歪められた登場人物たちを一掃し、やがて目前に残ったのは、ベスティアの巨体ただひとつ。
「愉快な本君、無事だね」
「無事だわ! ちょっと引っ掻かれたけど、いたくもなんともないもの! ねえ、それよりすごいわすごいわ、さすが王子様!」
 確かめた問いには、はしゃぎきった声が返った。本の子はどうやら無事に元気らしいと知って、エドガーは少し笑う。
「フフ、ありがとう。王子だからね。……それにしても、本君が傷ついてしまったなら、その分までしっかりお仕置きしてあげよう」
 残るはキミだけだからね、とエドガーはレイピアの切っ先をベスティアへ向ける。その意識はそれでも愉快な仲間のほうへ向いていた。
「――譏疲�縺ゅ◆!」
 物語に飢えた大口と爪が襲い掛かるのをするりと躱し、身体に染み付いたままの構えで、とんとベスティアの腕に乗り上がる。隙だらけの頭上で急所を外してやる理由もない。
 真っ直ぐ持ち上げられた刀身は、過たずベスティアを貫き通した。
「さあ、あるべき海へ還りなさい」
大成功 🔵🔵🔵

キディ・ナシュ
【姉妹2】
素敵な藍色のプレゼントボックスは
残念ながらあなたに差し上げるためのものではありません

あなたに差し上げる物語は
めでたしめでたしの
ハッピーエンドの眠りのみです!

牙も爪も怖そうですが
わたしの狼さんの方が格好いいですからね
あ、愉快な仲間さんを間違えて食べてはいけませんよ!
それはおやつではないです

では皆さん、鶏さんと一緒にゴーなのです!

鳴き声石化にスパナさんぶんぶん振り回し
せーの!で振り抜き派手に砕きましょう
ふふ、わたしは最高傑作ですからね!
腕っぷしには自信がありますとも!

心が食べられたようにぽっかり穴開けても
奪い返すがおねえちゃんの教えの正義なのです!
狼さんのお口はあなたよりも大きいですよ!


イディ・ナシュ
【姉妹2】

キディはああ言っておりますけれど
めでたしめでたしで終わる物語ばかりでないのだと
私としては知って頂きたいところですね
奪うからには、奪われる覚悟もおありなのでしょう?

魔導書の頁を繰って喚ぶ黒鶏は狼と足並み揃え
砕き易く石にしてしまいましょう
さあ、愉快な御仲間様がた
どうぞ三匹の獣の脚に踏まれないようお気を付けて
本から出ずる怪物同士の力比べでもお楽しみ下さいましね

ああ、一番の力持ちは私の義妹なのですが
偽りの物語りなぞ
あの勢いが全て吹き飛ばしてしまうでしょう

スパナを振り回す姿が頼もしいような、
…もう少しお淑やかにして欲しいような
複雑な姉心とはこういう気持ちの事を言うのかもしれません


 キディ・ナシュ(未知・f00998)たちがその獣の前に立ったのは、大口と大爪を持つ巨体がぐらりと傾いだ頃だった。
「縺願�縺檎縺……�」
 しかしベスティアは倒れることなく、言葉にもならぬ声を発してぐるんと身体の向きを変える。その眼下にいるのは、キディと愉快な仲間たち。それから。
「――お。……大きいです!! 見えますかおねえちゃん!!」
「ええ、大きいですから」
 見えますとも。キディから更に後方でひとつ息を吐いて見せたのはイディ・ナシュ(廻宵話・f00651)だ。
 けれどその溜息に滲んだ溜息の意味を察することなく、キディは満面の笑みで良かったです! と笑う。よかった、よかった! と周りを囲む無邪気な声は贈り物の子たちのもの。すっかり仲良しの様子である。
「あの牙も爪も怖そうですが、わたしの狼さんのほうが格好いいですからね」
 えっへんと胸を張るキディの踵がここんと鳴れば、その足元から巨大な狼が現れる。確かにその大きな身体と牙ならばベスティアにも対抗出来るだろうが、しかし。
「……格好よさの問題なのですか?」
「違うのですか?」
 まんまるな瞳がきょとんと瞬くから、イディはそっと長い睫毛を伏せた。これは発展途上の感性である。そう信じたい。――などと思ったかはさて置いて、問答の代わりに開くのは白の魔導書。手袋に包まれた細い指が頁を繰って喚ぶ黒鶏は、蛇の尾を揺らして狼と並び立つ。
「さあ、愉快な御仲間様がた。どうぞ三匹の獣の脚に踏まれないようお気をつけて」
「たのしいの? たのしいの?」
 無邪気な声に、イディはぶれぬ無表情のままでひとつ頷いた。
「ええ、きっと。本から出ずる怪物同士の力比べでもお楽しみくださいましね」
 そう言うと同時、姉妹の視線が一度交わされて前を向く。

「では皆さん、鶏さんと一緒にゴーなのです!」

 元気の良い声と共に、狼が鶏が、愉快な仲間たちが、そしてキディが駆け出した。
「あっ、愉快な仲間さんを間違えて食べてはいけませんよ、狼さん!」
 それはおやつではないです、とちょっと慌てて付け足された義妹の声に、溜息の音がまた一つ。
 足並みを揃えて駆けた先でまず鳴き声を響かせたのは黒鶏だった。
 ベスティアの本から滲み出るように這い出た囁く影を一声で石に変えてゆく。そこへ狼が噛みついて、キディがぶんぶんと振り回した巨大なスパナが振り抜かれれば。
「せーの!」
 ――ばきん、がしゃん、どごん!
 派手すぎるほど派手な音で、敵は一息に粉々になった。戦いを理解しているのかどうか、わあっと上がった愉快な仲間たちの声に、キディは得意げに笑う。
「ふふ、わたしは最高傑作ですからね! 腕っぷしには自信がありますとも!」
 さあ、どんどんいきましょう! 満面の笑みで、更にスパナは勢いを増した。
 大きな牙が、爪が心にぽっかり穴を空けたって、その元気な足音は止まりはしない。
「奪われたら奪い返すが、おねえちゃんの教えの正義なのです!」
「つよいつよーい!」
「ちからもち!」
「……ええ、あの中で一番の力持ちは私の義妹なのですが」
 並び立つ巨体の獣たち。その中で一番小さく見えるあの子が一番力強いだろうと、イディは知っている。
「偽りの物語なぞ、あの勢いが全て吹き飛ばしてしまうでしょう」
 その言葉通り、キディのスパナはまだまだ衰えを知らず、次々と敵の繰り出す影を打ち砕いてゆくのは頼もしい限りだけれど。
(もう少しお淑やかにして欲しいような)
 レディとしての礼節に、スパナを全力でぶん回せる、なんてものはないのだから。
「……複雑な姉心とは、こういう気持ちのことを言うのかもしれません」
 頬に手を当てて溜息を吐く様は、どちらかと言えば育児に悩む母のそれに近しい、なんてことも、まだ愉快な仲間たちにはわからない。

 イディの心中など知らぬまま、キディのスパナは勢い良く振り下ろされ、振り回されて、ベスティアを徐々に後退させてゆく。
「さあ、引いて下さい! ここのプレゼントボックスは――あの素敵な藍色のプレゼントボックスは、残念ながらあなたに差し上げるものではありません!」
 振り回したスパナを指の代わりにまっすぐ差して、キディはベスティアの巨体を見上げた。
「あなたに差し上げる物語は、めでたしめでたしのハッピーエンドの眠りのみです!」
「……キディはああ言っておりますけれど、めでたしめでたしで終わる物語ばかりではないのだと、私としては知って頂きたいところですね」

 ――奪うからには、奪われる覚悟もおありなのでしょう?

 ベスティアの言葉ならぬ声さえ石にするように、イディが繰る鶏が鳴く。
「キディ、頃合いです。――全力で、けれど淑やかに」
「はい、おねえちゃん! 狼さんのお口は、あなたよりも大きいですよ!」
 ばきん!
 唸り駆けた狼の鼻先に投げたクッキーとまるで同じように、キディの狼とスパナによって石と化したベスティアの巨体が砕き散らされた。
 淑やかさがそこにあったかどうかは、定かではない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

蘭・七結
【春嵐】

彼方から此方からと声が聞こえて
終いには前方へと駆けていってしまう
好奇心が旺盛で、活発ね

嗚呼、けれど
それでは喰われてしまうわ
転がすような笑い声が悲鳴に変じてゆく
そのようなおしまいは後味が悪いでしょう

イルルは賢い子だけれど
あの子たちのように好奇心旺盛なの
遊び相手になってあげてちょうだい
五感を共有して注意を向けるわ

あの子たちが楽しんでいる間に終えましょう
ふわもこさんたち、お願い出来るかしら

針と糸が足りない時には与えましょう
黒鍵を携えたのならば
前線に立つあなたたちの傍へと

憂いも恐れも感じることのないように
ラン
あの子たちに護りのひかりを

あなたたちが居るのだから
胸を穿つような物語なぞ、知りもしない


榎本・英
【春嵐】

嗚呼。そんなに前に出ては危ない
君たちはもう少し後ろに――、聞いていないようだね

彼らのような無垢な者たちが
あの巨大な怪物の餌食になってしまうのはいただけないね
とは言っても、聞く様子もない

なゆ。君の子は、イルルだったかな?
その子は彼らの安全を確保しながら戦えるかい?
ふわもこは恐らく囮になった彼らを守る

針を持って何とかしてくれるだろう
その隙に間を縫って敵に近付いてほしい

ふわもこたち。針と糸は持ったかい?
彼らを守りながら戦うのだよ

私は後方からふわもこたちの援護をしよう
情念の獣もいるからね
数だけなら此方の方が上だよ

彼らの欠ける物語は綴らせない
それがこの筆の答えだ


 低く、高く。響くのは祭りの音にも似た――戦いの音。
「すごいね、すごいな!」
「こっちかな、あっちだね!」
 行こう行こう! 彼方此方から飛び交う愉快な仲間の子らの声は戦いを知らぬまま、相変わらず賑やかだ。
「嗚呼。そんなに前に出ては危ない。君たちはもう少し後ろに――、聞いていないようだね」
 その小さな声たちを追いながら、榎本・英(人である・f22898)は眼鏡の奥の瞳を僅かに曇らせた。楽しげに上機嫌に飛び跳ねる無垢な子供たちは、自分たちを待ち構えるように大きく開いた獣の口が危険なものだと知ってはいないけれど。
「……それでは喰われてしまうわ」
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は英の隣でぽつりと零す。転がすような笑い声が悲鳴に変じてゆく。そのさまが瞳に映るようで、七結は静かに長い睫毛を伏せた。
「――そのようなおしまいは後味が悪いでしょう」
「嗚呼、そうだね。とは言っても、聞く様子もない」
 さてどうしたものか。英は手癖のように一度眼鏡を押し上げて――その縁にひょこりと覗いた丸いものに気づいた。
「なゆ」
「どうしたの――、あら」
 名を呼ぶ声にあかい瞳を見上げようとして、七結もそのふんわりもこもことした影に気づく。英の服の中から覗いた毛糸玉じみた色とりどりの愉快な仲間たちは、まるいからだをぷるぷるさせて、じいっと視線を前へ跳ねる贈り物の子らへ注いでいる。
 ふふ、と。思わずと言ったように微笑んだ彼女の口元に、英もゆっくりと笑んだ。
「どうやら心配で出て来たようだ。……君の子は、イルルだったかな? その子は彼らの安全を確保しながら戦えるかい?」
「どうかしら。イルルは賢い子だけれど、あの子たちのように好奇心旺盛なの。――イルル。遊び相手になってあげてちょうだい」
 七結の呼び声で姿を見せたのは白蛇だ。神の御使いじみたその厄蛇は赤い瞳に贈り物の子たちを映すと、変幻自在の白き身をするりと走らせる。その瞳に、身体に。七結の五感を繋げれば、贈り物の子たちの注意を惹けるよう促した。
「わあわあ、ヘビさんだ!」
「まっしろだねえ、きれいだねえ」
「……あの子たちが楽しんでいる間に終えましょう」
「嗚呼。――ふわもこたち。針と糸は持ったかい?」
 贈り物の子たちの中に混ざったイルルが上手く注意を引いてくれている。それを確かめながら、英はころころと転がるふわもこたちを見渡した。問いかけには、ぴっと針を掲げる仕草が返る。
「彼らを守りながら戦うのだよ」
 行っておいで。
 送り出したふわもこたちは、心なしか意気揚々と贈り物の子たちとイルルの中にころころふわふわと混ざり込んだ。見目は至って和む何かだが、おそらく囮になった彼らを守ってくれるだろう。敵の牙も爪も、既に小さなそれらを狙い澄ましている。

「縺願�縺檎ゥコ縺�――」
「どうやら彼方もお待ちかねのようだ。なゆ、隙を縫って行けるかい」
「ゆきましょう。ふわもこさんたち、お願いできるかしら」
 白い手に、黒鍵を携えて。迷わず前へ駆け出た七結に着いて出たふわもこたちがころころ転がる。承知したと言わんばかりに針と糸を掲げる仕草に、つい心和んでしまうけれど。
 ぎゅっと纏まって勢い良く突進すれば、贈り物の子たち目掛けて振り下ろされた爪さえ弾くのだ。
 イルルが気を引くように頭をもたげ、英の放った情念の獣が牙を剥く。
「数だけなら此方の方が上だよ」
「ラン、あの子たちに護りのひかりを」
 立つのは前線。知らぬまま囮となってくれた、無垢な者たちのかたわら。
 その無邪気な声が、護りの手が、憂いも恐れも感じることのないように。
「なになに、あそんでくれるの?」
「あそぼうあそぼう!」
 ちいさき子らの視線が逸れたその間隙。獲物を追う物語喰らいの牙が吠えるその前へ七結は立つ。黒鍵を振り下ろす。背にはあの子たちがいるのだから。
「胸を穿つような物語なぞ、知りもしない」
 振り抜いた瞬間、七結の前へ迫った爪を情念の獣が、紫のふわもこが跳ね除けた。その後方で、英がひとつ息を吐く。
「彼らの欠ける物語は綴らせない」
 それは、彼女も然り。死さえ筆によって許されぬ文豪は、確かな一節を綴り出す。
 無垢な声。楽しげな笑い声が、巨大な怪物の餌食になってしまうのはいただけない。
「それがこの筆の答えだ」
 ――英の言葉と同時、七結の黒鍵が物語喰らいの大きな牙を穿ち貫いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩神歌

私達の贈り物はいとうつくしき彩をしている
リル、大切にしよう

好奇心は猫を殺すともいう
噫、いい子たちは約束だ
私達の後ろにいるんだよ
あの本に狼に近づいてはいけない
食べられてしまうからね
……カグラ、あの子たちに害が及ばぬよう結界を張りながら守っていて

リル、参ろうか
リルを守るように前に出、疾く駆ける
邪意をなぎ払い切断し斬り進む

惑わせられる物語はきみを喪い続ける物語
咲いては散るきみを永遠に見送る
其れは、正しき物語―私の負

―其の未来は約さない

負を断つように刀を滑らせる
―春暁ノ朱華

神罰だ
其の結末こそを枯れ散らす

此度、そなたと紡いだ此の物語
歌うように聴かせてあげよう
かえろうか
私達からの贈り物を届けなければ


リル・ルリ
🐟神歌

カムイの大切なものをしれた
僕の大切を確認できた
目の前には、大切の具現である箱がある
大切にしよう
僕達を誘ってくれたさくらいろ

物語はひとつの舞台
哀しくて寂しくて時に残酷であったとしても―最後ははっぴぃえんどがいいんだ

物語をしりたいよね
僕も数多の物語を歌いたい
いいかい?
悪い子をすると狼に食べられてしまうんだ
どんな物語の中にも影はあるのだから

カムイ!気をつけて!
心を抉る物語は君を揺るがすだろうか
いいや―鮮烈な赫は揺るがない

君は、自身が抱くその熱こそが

『愛』であると気づいている?

水泡のオーラで守りながら
歌うのは「薇の歌」
君を傷つける物語なんて《何も無かった》

そうだ!僕らの物語を携えて
帰るんだから


 楽しげな声と戦いの音に桜結紐がふわりと揺れる。
 それは贈り物を結ぶもの。つなぐもの。大切の具現。
 ――僕たちを誘ってくれた、さくらいろ。
「ね、カムイ。大切にしよう」
 リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は鮮やかに色づいた贈箱と同じ色の髪を揺らす朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)へ柔らかな笑みを向けた。
「カムイの大切なものを知れた。僕の大切を確認できた。だから、」
「――臆、リル。大切にしよう」
 リルと同じ言葉をカムイが紡ぐ。
 歌い、巡り。――いまはそれをこそ、大切にできるのだから。
「私達の贈り物は、いとうつくしき彩をしている」
 それを踏みつけ喰らわんと来る悪食の獣を、白と赫の彩が並び見据える。
「だれかきた!」
「おはなしききに?」
「おうたかも!」
「おなまえきかなきゃ!」
 わいわい、きゃいきゃい。敵の影に無邪気に声を上げる贈り物の子らに、カムイは小さく笑う。好奇心は猫を殺すともいうけれど。
「いい子たちは約束だ。私たちの後ろにいるんだよ。あの本に、狼に近づいてはいけない」
「どうして?」
「わからないかい。大きな口が見えるだろうに。――食べられてしまうからね」
 秘密の話をするように、唇に長い指を当てて神は笑う。きゃあっと声を弾けさせた子供たちは、それを冗談に思っているだろうが、それで良かった。
「……カグラ、あの子たちに害が及ばぬよう結界を張りながら守っていて」
 いつも世話をしてくれる人形へと声を落とせば、返事の代わりに櫻の花弁がふわりと舞った。その花弁が与える護りの結界は、ちいさき子らに知られることなくその身を護る。
 返る言葉はなくとも承知してくれたらしいのにもうひとつ笑って、カムイはすいと前へ進み出た。一歩、二歩。迫る巨体の獣の気配の元へ、リルの前へ。緩慢な動作で刀を抜けば、まるで舞うように。
「リル、参ろうか」
「うん、行こう。……ね、みんな。物語をしりたいよね。僕も数多の物語を歌いたい」
 うつくしい尾鰭を揺らし頷いて、リルは贈り物の子たちへ微笑みかけた。
「いいかい? 悪いことをすると狼に食べられてしまうんだ」
 どんな物語の中にも、影はあるのだから。そう語り聞かせたリルの言葉を、小さな子たちは首を傾げて聞くばかりで、まだそれを知らないけれど。
「どうして?」
「物語はひとつの舞台だからさ」
 だから、どうか見ていて。僕たちの物語を。この赫と白の舞台を。
 歌うように紡いで、リルは先行して駆け出したカムイの後を追いかけた。

 刀を手に、カムイは疾く駆ける。邪意を、言葉ならぬ声を斬り伏せ、前へ前へ。
「カムイ! 気をつけて!」
 リルの声に反射的に身を引いた。振り下ろされた大爪が地面を抉り、ベスティアの元にある本の頁が舞い踊る。刹那、脳裏に灼きつくように見えたのは、きみ。
 爛漫と咲いては散るきみを永遠に見送る。散りてこそ――そう詠う言葉こそが正しき物語だと知っているけれど。

「――其の未来は約さない」

 鮮烈な赫は揺るがない。見せつけられた負を断つように刀が滑りゆく。
「君が揺るぎやしないって、知っているよ」
 リルは笑った。同じ箱に、想いを詰めたのだから。
「哀しくて寂しくて時に残酷であったとしても――最後ははっぴぃえんどがいいんだ」
 だからうたおう。ひびけ、響け『薇の歌』。泡沫をよんで、泡沫を聴いて。透明な声は、囁くように。
 水泡のオーラは無邪気な声と、赫に宿る熱を守る。君を傷つける物語なんて《何も無かった》のだって。
(君は、自身の抱くその熱こそが――『愛』であると、気づいている?)

 リルの歌の護りを得て、カムイはベスティアへ滑らせた刀をもう一度構えた。
「神罰だ」
 其の結末こそを枯れ散らす。
 黒桜と共に、赫の一閃を刻んで、カムイはリルを振り向いた。
「此度、そなたと紡いだ此の物語。歌うように聴かせてあげよう。――私たちからの贈り物を届けなければ」
「そうだ! 僕らの物語を携えて、帰るんだから!」
 歌は響き、刀は負を断つ。
 ――かえろう。あの櫻の彩の傍へ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

呉羽・伊織
【花天】
春、何の内緒話を――なんて聞く間も無くお邪魔虫のご登場か!
ああ、好奇心は何とやらになんてさせるまい

真正面から向かうであろう上機嫌な子達は春に任せ、俺は気を取られた敵の横面殴る隙を狙いに

――彼らの無邪気な心を囮とするのはどうしたって心苦しくもある
敵が生み出す夢幻とはいえ、幸せそうな人達が使い捨てられる――そしてこの手で其を掻き消さねばならぬというのは、歯痒くもある

けれど
囮と成っても傷付けさせやしない
幸すら不幸に捻じ曲げかねぬ者達を野放しには出来ない

UCで力高め、手早く暗器放ち幻想を断ち、一息に敵本体へ2回攻撃で肉薄
花明突き付け、彼らを、この地を、護ろう

そして幸いなる物語の道筋を切り開こう


永廻・春和
【花天】
ええ、本当に間が悪う御座いますね――内緒話は兎も角、無邪気に楽しむ彼らに水を差す真似は許しません

贈り物の子達の後には私がついて、敵が触れる前に助けるよう警戒
同じく、囮となって頂く事は複雑なれど――彼らの心に、楽しい記憶に、穴等開けさせはしません

敵が気を取られ攻撃の手を伸ばさんとすれば、その瞬間を狙い澄まして割り込み、UCと刀で魔の手を払い退ける様に
万一受けた場合はすかさず浄化の霊符で助けを

彼方でまた複雑な顔をされている呉羽様の心の内は、痛く解る――想いは同じ、共に無垢なる心を護る為に尽力を

はい――受け取った御守の下、不幸な結末等跳ね除けましょう
良き贈り物の傍らには、幸いなる物語を必ずや


 彩りを増すばかりの贈り物の国に響き出した戦いの音は、着実に近づいて来ている。
 けれど今、耳を澄ますのは。
「なになに? ――きこえた!」
「ふふ、きいちゃった!」
「内緒ですよ」
 囁き落とした言葉を仕舞うように唇に指を立てて、永廻・春和(春和景明・f22608)は愉快な仲間たちへ桜色の瞳を向ける。その仕草に首を傾げるのは呉羽・伊織(翳・f03578)だ。ひょいと一歩近づいて口を開き、
「春、何の内緒話を――なんて聞く間も無くお邪魔虫のご登場か!」
 次の瞬間に視線は現れた巨大な影へと向けられた。
「縺願�縺檎ゥコ縺�」
「なになに?」
「きこえない!」
「いこういこ……わわ?」
「いけませんよ、約束をしたでしょう。――それにしても、ええ。本当に間が悪う御座いますね」
 贈り物の子たちを下がらせるように前へ出て、春和はベスティアを見上げる。
「内緒話は兎も角、無邪気に楽しむ彼らに水を差す真似は許しません」
 その視線は一欠片もぶれず、敵を射抜く。
 兎も角、で片付けられてしまった内緒話に伊織は小さく苦笑を浮かべたけれども。
「ああ、好奇心は何とやらになんてさせるまい」
 ぴょこぴょこと上機嫌な贈り物の子らを一瞥して、伊織はすいと駆け出した。きっとその好奇心は止められやしないのだ。ならばそれへと向かう危機を止めれば良い。
「春、任せた」
「はい」
 ほんの一呼吸ですれ違う刹那、滑り込んだ言葉に頷いて春和は刀を抜く。
 何を任されたか、委細を告げられずとも承知しているつもりだ。――この無邪気な子たちを囮とするのが複雑であるのは、同じくだろうだからこそ。
(彼らの心に、楽しい記憶に、穴など開けさせはしません)
 敵が動くと同時に駆ける。無邪気な贈り物の子ばかり注視して振り上げられた大爪の軌道は読むに易い。
 その間に割り込めば、霊力を込めた刀身が淡く光り、巨大な魔の手を払い退ける。
 ベスティアの手が弾かれた勢いで巨体ごと傾いた瞬間、その横面へ肉薄したのは伊織だった。
 靡いた漆黒の髪が僅かに交差して、次の瞬間には暗器が叩き込まれる。
「どうしたの? あそんでるの?」
 贈り物の子が無邪気に首を傾げるのが視界に掠めて、伊織は僅かに眉を顰めた。
 ――彼らの無邪気な心を囮とするのは、どうしたって心苦しくもある。
「呉羽様」
 伊織の心の内は春和にも痛いほど解るものだ。笑うでもなく浮かんだ彼の複雑な表情を見上げて、春和は小さき子らを背に庇う。その無垢なる心が護れるように。翳した霊符は、贈り物の子にも伊織にも、浄化の助けを淡く与えた。
 ふと合った視線で、伊織は頷く。
「……傷つけさせやしない」
 敵の本が生み出す夢幻さえ、幸福そうな人々が使い捨てられるのは――そしてこの手で其れを掻き消さねばならぬというのは歯痒くもあるけれど。
 暗器によって振り払い、大振りな動きを躱し切って、伊織はその懐へ潜り込む。
「幸すら不幸に捻じ曲げかねぬ者達を野放しには出来ない」
 彼らを、この地を、護ろう――と。
「はい――受け取った御守りの下、不幸な結末など跳ね除けましょう」
 楽しい声が途絶えぬように。互いに貰った御守りが、きっとそれを叶えてくれる。
「良き贈り物の傍らには、幸いなる物語を必ずや」
 春和の刀が切り開いたその喉元へ、伊織は匕首の刃を突きつけた。敵の動きが軋んで止まる。

「そして、幸いなる物語の道筋を切り開こう」

 ――それもまた、伊織と春和の語るおくりものがたりである、と。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

境・花世
ベティ(f05323)と

うれしげに跳ねる小さな子らを
そっとつかまえて肩の上に乗せ

いいこ、もっと面白いお話を聞かせてあげる
これは今からわたしたちが贈る、形のない絵本

――悪者から世界を救う物語、だ

ひらりと一振りした扇から、
溢れ零れる花びらの嵐
真っ直ぐなベティの背を押すように、守るように吹かせたなら
やわらかな春の彩で、綻ぶ笑い声で、
邪悪な物語を包んでしまおう

挑むわたしの懐に、駆けていくきみの手に、
贈り物が今もあるから――負けるわけがない

さあ、今だよ、正義なほうのベティ!

花びらごと燃えゆく敵が消えたなら、
完全無欠なハッピーエンドの物語を
愛らしいきみたちへの贈り物にしよう

ふふ、ね、喜んでくれる?


ベスティア・クローヴェル
花世(f11024)と

優しく言い聞かせる花世へ微笑みかけ、守るように一歩前へ

これから贈る物語はちょっと危ないんだ
だから、私より前へ出てはいけないよ

―それじゃ、語り始めるとしようか

銃の咆哮を轟かせ、注意を引きながら敵に向かって一直線
後ろに攻撃を流さないよう、囮になろう
贈り物の子達は平気かも知れないけど、花世はそうもいかないから、ね

目配せをして頷くと、立ち止まり手袋を外して炎の剣を創り上げる

花世の作ってくれたチャンスを無駄には出来ない

舞い踊る花弁を熱で焼きながら、全力で炎剣を叩きつける

こうして、私と同じ名前の悪者は倒されたのでした
めでたし、めでたし……なんて、ね


 その声はいくら連なっても物語を成さない。満たされない。
 楽しげな声は絶えぬまま、まるで遊びの一環のように、物語喰らいの獣は猟兵たちによって追い詰められてゆく。
 あちらこちらで誘われては獲物を得ることもなく、飢えた獣は吠えようとして。
「――、――!」
 吐き出す物語すら最早ほとんど残ってはいない。けれどそれでも、だからこそ。
 ベスティア・ビブリエはその狂爪を振り上げた。

「あのこはどうしたの、おなかがすいたの? あそんでくれる?」
「ふふ、そうかもしれない。……けれどね」
 おいで。優しい声で贈り物の子を呼んで、境・花世(はなひとや・f11024)はぴょこぴょこと飛び跳ねる小さな子らを肩へと乗せてやった。
「いいこ、もっと面白いお話を聞かせてあげる」
「おはなし?」
「そう。これは今からわたしたちが贈る、形のない絵本」
 ね、と花色の瞳を向けた先で、ベスティア・クローヴェル(没した太陽・f05323)が視線を返して微笑んだ。一歩前へ出るのは小さな子らを――大切な友人を守るため。
「これから贈る物語はちょっと危ないんだ。だから、私より前へ出てはいけないよ」
「だめなの?」
「だめだよ。……でも、ほら。特等席だと思うな」
 見てご覧。そうベスティアが微笑むままで示すのは、花世の右目に咲き誇る八重牡丹。そのきれいな花色の瞳も、髪も。優しい声だってすぐ傍だろう、と。
 ベティ、と僅かにはにかむように呼ぶ声に少しだけ悪戯な笑みを返して、ベスティアは銀の髪をふわりと翻した。
「……それじゃ、語り始めるとしようか。ね、花世」
 向けた背を預けるとは言うまでもなく。その背を守るとは、語るまでもなく。
 ひらり。物語の終幕の始まりを告げるように、花世の扇が一振りされれば、はなひらく。

「はじめようか。――これは、悪者から世界を救う物語、だ」

 咲いて溢れた花びらの嵐は、駆け出したベスティアの背を押すように。守るように共にある。
 わあっとうれしげに上がった声に応えて笑って、ほんの瞬きの間に春は広がった。
 寒い冬の向こう側。花世の心に咲いたはるのいろを語るには、きっとこれでも足りないけれど。
「邪悪な物語を包むには、きっと充分だから、ね」
 溢れて零れた花びらが、あたたかくベスティアと――ベスティアを包み込み始める。
(同じ名前の敵と言うのも、そうは巡り合わないだろうけれど)
 飢えて隙ばかりの巨大な獣は、きっと今あるぬくもりを知らない。抉り取るばかりで、その手に触れてくれる誰かの手を知ろうともしない。
「よそ見はしないで」
 銃の咆哮が轟けば、獣の意識はベスティアに向く。その凶悪な爪の下へ、牙の下へ、迷うことなく真っ直ぐ駆けた。
 勿論贈り物の子たちも危険に晒したくはないが、あの子たちには効かぬ攻撃も後ろにいる花世には届いてしまうのだから。
(そうはさせたくはないから、ね)
 花びらの中でもがく獣を一瞥し、ベスティアは後方へ視線を向ける。その瞬間に、花世の扇から更なる花嵐が吹き荒れた。
 その懐に、駆けてゆくベスティアの手に贈り物が今もあるから。――負けるわけがないと知っている。

「――さあ、今だよ、正義なほうのベティ!」

 それが、合図。笑み綻んで聞こえた声に綻び返す口元で、ベスティアは左手の手袋を外す。
 創り出すのは炎の剣。それは花を纏い花弁を爛漫と咲かせるように燃え盛る。
 ごうと唸るのは花か炎か。ほんの一瞬花嵐が巨体の獣を飲み込んだ刹那、ベスティアは炎剣を叩きつけた。
「縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励◆――」
 最後に吐き出されたような言葉さえ言葉にならず、花嵐は炎と共に勢い良くベスティアを焼き尽くす。
 そうして燃えゆく花びらが消えた後には、おそろしい影はどこにも残ってはいなかった。
「すごいすごーい!」
「きれいきれい!」
 きゃっきゃと喜ぶ声をあげる贈り物の子たちに微笑んで、花世はベスティアの元へ駆け寄る。
「ベティ!」
「花世、平気?」
「きみがいてくれたもの。それより、ほら」
 これが完全無欠なハッピーエンド。この物語を、愛らしいこの子たちへの贈り物にしよう。
 そう伝えるように手袋のない左手に触れる花世の手をそっと握って、ベスティアは頷く。
「ええと……こほん。――こうして、私と同じ名前の悪者は倒されたのでした。めでたしめでたし……なんて、ね」
 おはなしを締めくくるのは慣れていないけれど、途端に上がった歓声に、つい笑い溢してしまったりして。
「ふふ、ね、喜んでくれる?」
「すてきすてき!」
「だいすきー!」
「たのしかった!」
 花世の肩で跳ねる贈り物の子たちが無垢なまま、きらきらした声を響かせた。


 これは、贈物語。
 世界を鮮やかに彩り守る――大切なおくりもののおはなし。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年01月16日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵