流れ星をもう一度
#サクラミラージュ
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●
もう一度星が見たかった。満天の星が、流れる星が、見たかった。
黒いマントの影が揺らめく。ひどく儚げで脆いその影は、ふらりと歩いて雑踏と進む。
この街を超えて、あの丘を登れば──。
●
「サクラミラージュに、傷ついた影朧が、現れますー……」
寧宮・澪がグリモアベースで、新たな予知を告げる。
サクラミラージュに現れる影朧、これらは皆傷つき、辛い過去を背負った「弱いオブリビオン」である。けれど、その中でも特に儚く弱い影朧が現れたのだ。
夕刻、日が沈み始めた頃に、彼は唐突に帝都の雑踏に現れる。人々へ危害を加えることはないが、帝都はパニックになるだろう。
「本来なら、害を及ぼす影朧は倒すべき、ですが……無害になったなら、助けて、あげられませんでしょか……」
本当に弱いその影朧は、猟兵達が戦って力を弱めたなら決して害をなすことはない。すぐに消えることはないが、長くはないだろう。そうなった彼は、ただ果たせなかった執着を果たすために歩き出す。
パニックになっている人々が、消えてしまいそうな影朧を脅かさないようにしつつ、何とかなだめたり、協力を得ながら、影朧の目的地まで同行してほしい。
「しばらく歩くと、高台に明かりの少ない、公園があります……そこから、星を見たいようです」
順調に行けば、ちょうど四分儀座からの流星が流れる時刻にたどり着くのではないだろうか。天気は晴れ、邪魔をする建物もない。空一面に見える流星群だ。どうか影朧が星を見るのを見守りつつ、猟兵諸氏にも冬の夜空を楽しんでほしい。
しばらく星を眺めていれば、影朧は光に変わって消えていく。次の生へと巡るだろう。
「どうか、影朧の、願いを……満たして、あげてくださいなー……」
よろしくお願いします、と澪は頭を下げて、道を紡ぐのだった。
霧野
●
冬は空がよく見える気がします。
よろしくお願いします、霧野です。
●シナリオについて
弱った影朧の執着を果たすために星空を見に行きませんか、というお話です。
1章:帝都の夕方に現れた儚い影朧、謎の人物との戦闘です。
雑踏に現れた彼ですが、帝都の人々に危害を加えることはありません。
周囲への被害は気にしなくてOKです。
2章:闘い倒れ、消えそうな程に弱った謎の人物は、執着を果たすべく帝都を歩いていきます。
パニックになった人々が影朧を脅かさないようになだめつつ、影朧に同行してください。
3章:影朧は高台の公園で星を見ます。その様子を見守ってください。純粋に星を楽しんでもいいです。
●複数人で参加される方へ
どなたかとご一緒に参加される場合や、グループ参加を希望の場合は【グループ名】もしくは【お名前(ID)】を最初に参加した章にご記入いただけると、助かります。
●アドリブ・絡みの有無について
以下の記号を文頭に入れていただければ、他の猟兵と絡んだり、アドリブ入れたりさせていただきます。
良ければ文字数節約に使ってください。
◎:アドリブ歓迎。
○:絡み歓迎。
〆:負傷OK。 (血や傷の表現が出ます)
第1章 ボス戦
『謎の人物』
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POW : Thousand succored
戦闘力のない、レベル×1体の【無名の援助者 】を召喚する。応援や助言、技能「【盗み】」を使った支援をしてくれる。
SPD : I am There
【事件の小道具や被害者 】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
WIZ : Twin
【もうひとりの自分 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠寧宮・澪」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
夕焼けに染まる帝都の雑踏。とぷりと影が凝ったように、黒いマントが現れる。
ひどく儚いその影朧は、どこか覚束ない足取りで歩みだす。
帝都はこのままでは混乱に陥るだろう。
馬県・義透
◎
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
オブリビオンは嫌いなんですけどー…。まあ、ね。どうも今回は、私たちにより近い感じがしますねー。
ええ、強烈な未練というか。
まずは無力化ということですが。ああ、そのUCの性質はよく知ってますよー。
攻撃してくるのなら、私に近づかなければならない。
ですから、漆黒風を指定UCで鬼蓮の花びらへ。…桜以外の花も見て、損はないでしょう?
ああ、何ともやりにくいですねー…もう一度、と願うのがよくわかるのでなおさら。
●
何ともざわつく雑踏で、湧き出た影は声も発さず、その足を進める。進路上に人がいようと構うものか、ただ執着を果たさん、と歩みを進めるのみ。
人ならざる気配を感じてか、うろたえる者、怯える者、官憲を呼ぼうとする者で溢れる雑踏を、一人の猟兵がすり抜ける。
「オブリビオンは嫌いなんですけどー……。まあ、ね。どうも今回は、私たちにより近い感じがしますねー」
話す言葉はゆったりと泰然と、身のこなしも鷹揚に。けれど惑う人々にぶつかりも、よろけもせずに風が通るように、夕日を受けて金のまじる黒髪と着物の裾を靡かせて影朧へと近寄っていく男。
多々いるオブリビオンと比べても特に儚く、虚ろな影をへと顔を向け。彼が抱く何かを閉じた眼で見たかのように、呟いた。
「ええ、強烈な未練というか。そういったものを、ね」
四人の戦友で一人の悪霊と成りなった、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その内の一人、外邨・義紘は漆黒風を携えて、歩む影朧へと相対する。
逃げ惑う人々には目もくれず歩いていた影朧だったが、道を塞がれれば、流石にそれを邪魔と思ったのだろう。
「道を空けてはくれないか。只──もう一度、星を見たいのだ」
そう消え失せるほど小さな低い声が呟けば、影が揺らいで 黒いマントの怪人が二人に増えた。
刀を携えた義紘を押し抜けようと、同時に滑るように動いて手を伸ばしてくる。捕まえて、押し飛ばすのか投げ飛ばすのか。影朧は軽く触れただけでも、今後只人が同じように道をふさげば、それこそ惨事になるだろう。
「故に、まずは無力化ということですが」
するり、風が影朧達の間を抜ける。手が届かぬうちに届いたのは、鬼蓮の花びら。
ひとひら、ふたひら、三つ四つ五つ、幾つもの花びらが風に乗って舞い踊る。
「ああ、そのUCの性質はよく知ってますよー。攻撃してくるのなら、私に近づかなければならない」
ならば近づけさせなければいい。手にした漆黒風がほろりほろりと鬼蓮の花びらへと変わり、影朧を撫でては力を削いでいく。
近寄れずにただただ撫でられ、より存在を薄くしていく影朧へ、義紘は嘆息する。
「ああ、何ともやりにくいですねー……もう一度、と願うのがよくわかるのでなおさら」
もう一度、ただ一度。その願いは鬼であった彼が、他の彼らが死してなお、ここにいる。その事実に通じるのだから。
成功
🔵🔵🔴
ニャコ・ネネコ
◎〇/POW
はたせなかった、しゅうちゃく…
おまえ、なにか願いごと、あるにゃ?
願いごとなら、にゃあにおまかせにゃ
おにいさん?にまたたびキャンディあげるにゃ
これたべるといいにゃ、少しは力が出るはずにゃ
…にゃにゃ!捕まえようとしてもムダにゃ!
(UCを使ってするっとすり抜けつつ)
…もふもふで元気出るなら、するといいにゃ
でもおいたはだめにゃ
(器用に攻撃を避けて相手が疲弊するのを待って)
行きたいところがあるなら、にゃあが案内するにゃ
手伝いがいるなら、にゃあが手伝うにゃ
だから、あきらめちゃだめにゃ
なんじの願い、この魔女ニャコがかなえてやろう…だニャ!
(びしっと謎の決めポーズのようなものを決めて)
●
ゆらりと揺らぐ影は未だ健在。散らばり消えゆく鬼蓮の花びらをそれでも超えて、影は己の目指す場所へと進みゆく。
目指す先には多くの帝都の民が右往左往。このまま進んでも足を止められる、と判断したか、影朧が手をすいと上げたその時、小さな影がまろびでる。
人の足ほどの大きさの猫は、キトンブルーの瞳をきらめかせ、哀れな影朧へと声をかけたのだ。
「はたせなかった、しゅうちゃく……おまえ、なにか願いごと、あるにゃ?」
ニャコ・ネネコ(影色のストレガ・f31510)は儚い影へと問いかける。影はゆっくりと手を下げて、小さな声で応じた。
「……ああ。星が、見たいのだ」
「願いごとなら、にゃあにおまかせにゃ」
偉大なる広い主の後を継いだと自負するネネコはくん、と尻尾を持ち上げて胸を張ってみせる。そう、彼女は魔女であるのだから、願い事を叶えるなんて容易いことだ。多分。
ゆらゆらと揺らめく陽炎のような儚い影を力づけるためにも、ころりとキャンディを差し出してみせる。
「おにいさん、またたびキャンディあげるにゃ。これたべるといいにゃ、少しは力が出るはずにゃ」
またたびにはちみつ、元気の出る魔法を少々込めた特製キャンディ。作ってるときに熱々触ってやけどの失敗もあったけれど、ちゃぁんとできたこれなら効果抜群。
けれど影朧は、もう話は終わりとばかりに指を鳴らす。途端、その場に何人もの人のようなものが現れた。
「さあさあ邪魔しなさんな」
「この人を行かせてあげておくれ」
無名の援助者達はネネコに手を伸ばし、捕まえてそっと道を空けさせようとしてくるのだ。
「……にゃにゃ! 捕まえようとしてもムダにゃ! もふもふで元気出るなら、するといいにゃ。でもおいたはだめにゃ」
けれどネネコは捕まらない。するりするりと影へと黒い毛並みを溶け込ませ、伸ばされる手をすべてかいくぐり、生み出したことで疲労した影朧へと問いかける。
「行きたいところがあるなら、にゃあが案内するにゃ。手伝いがいるなら、にゃあが手伝うにゃ。だから、あきらめちゃだめにゃ。なんじの願い、この魔女ニャコがかなえてやろう……だニャ!」
ちょんと右の手を上げ、体を少しひねり、もちろん尻尾も素敵な角度で決めてみせ。
魔女たるネネコはその願いを手伝おう、と迫るのだった。
成功
🔵🔵🔴
ノエル・クラヴリー
口調(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
◎○〆【SPD】
「星空を見に行くのですか?」
「奇遇ですね、私もそうなのです。」
「行き着く先が同じならば、ともに星を眺めませんか?」
「私の中の星たちが騒いでおります。きっといつもと違い、特別な夜になることでしょう。」
「今日はこんなにも空が澄んでいるので、綺麗な星空が見られそうですね。」
UCで出現場所を予知して先回りしたり、回避したりします。
影朧が諦めるまで話しかけてみます。
ノネ・ェメ
◎○〆
もしかして: 影朧の夢かなえたろか、な依頼?
周囲へ被害が及ばなければいーのね?
“最期”の願いかもしれないとしても。全う、させたげたい。
UCの伴奏やコーラスとともに歌い、影朧さんが何人増えよーと、衝撃も殺傷力も吸収するかのごとく音楽を紡ぎ、出来る限り無力化。音楽自体もお気に召すといーけど。
それ以外は全力で影朧さんをサポートしたい構え。あれ要りますか? それしましょーか? と質問攻め……になってしまわぬよーに、っと。。多少煙たがられてもお世話焼き隊。
だって、そんなになってまで願うくらい本気なんでしょ?
でも、ここまで突き動かされるくらいの、どんなエピソードがあったんでしょーか。。
●
願いを問う猫の魔女をくぐり抜け、影朧はゆらりと揺らめきながら足を進める。その彼の前に、人の形を取った夜空が現れた。
「星空を見に行くのですか?」
とろり、柔らかな声が語りかける。暮れ行く帝都の空も彼女のようになるだろう。暗い肌に呼応する銀の星、顔には金の星が煌めいた。きらりきらりと、今を光る星の光を宿した姿が夕に浮かぶ。
(もしかして: 影朧の夢かなえたろか、な依頼?)
もう一人、紺色のドレスと髪、瞳に星を煌めかせるバーチャルキャラクター。彼女のほうが揺らめく影朧よりもよほど世界に確固たる存在感を示すほど。この依頼の意義を考えながら、首を小さく傾げている。
まさに夜空を切り取ったかのような二人、ノエル・クラヴリー(溢れ流るる星空・f29197)とノネ・ェメ(ο・f15208)は、影朧の前へと現れた。
彼女達を一瞥し、しばし足を止めた影朧はけれど再び歩き出す。
「星を、見たい。故に邪魔してくれるな」
そんな彼を追うようにノエルも歩く。
「奇遇ですね、私もそうなのです。行き着く先が同じならば、ともに星を眺めませんか?」
影朧からは答えがない。彼女を無視してただ歩く。
その一方、ノネは周囲を守るように四つの楽器を広げていく。
(周囲へ被害が及ばなければいーのね?)
トントン、とリズムを取って。彼女のそばの楽器が演者もなしに音を奏で出す。前奏の合間に、そっと呟いた。
「“最期”の願いかもしれないとしても。全う、させたげたい」
そして、歌い出す。ゆるり慰撫するように、影朧の力を削いでいく歌を。
歌が届いた影朧は少し眉をひそめたようで。邪魔をされたと受け取ったか、影がゆらり、二つにぶれた。一人はその場から消え失せ、もう一人は響く歌を止めようとノネに手を伸ばす。
そのまま触れられれば傷つくかもしれない。吹き飛ばされるかもしれない。けれどその手に力は入らない。
伸びやかに響く電子の夜空の歌声が、揺らぐ影朧の力をどこまでも削いでいくのだ。
「あったかい毛布とか要ります? 道案内、しましょーか?」
ノネは歌の伴奏を続けながら、問いかける。彼女はただ影朧をサポートしたい、そう願っているのだ。うっとうしげにもう一人の影朧は首を降る。
「要らぬ。ただ通してくれ」
「でもですね、うーん。お手伝いしたいんですよ。何かできません?」
「要らぬ」
ひどく希薄になりながらも彼は歩みを止めたりしない。邪魔をしてくる歌を止めようとただ進んでくるのだ。
だけれど、ノネは。煙たがられようと問いかけをやめはしない。
(だって、そんなになってまで願うくらい本気なんでしょ?)
傷ついた魂が再び戻ってくるほどに。あんなに薄らいで、消えそうになりながらも進んでいくほどに。
手を伸ばし、ノネに触れそうな程に近づいた影朧の手が薄れる。ゆらゆら、もう一人の影朧がかき消える。
歌を静かに続けながら、ノネも本体を追いかけだす。
(でも、ここまで突き動かされるくらいの、どんなエピソードがあったんでしょーか。。)
最後に至る前に聞けたら、と思いながら。
帝都の雑踏、滲むように援助者の一人の元に影が現れた。未だ聞こえる歌にゆらりとぶれながらも、その足は止まらない。逃げ惑う雑踏を進むために足を進める。
その背に声がかかる。
「私の中の星たちが騒いでおります。きっといつもと違い、特別な夜になることでしょう」
ノエルが再び現れ、影朧の後を追っているのだ。
影朧は再び、彼女を振切るように姿を消す。現れる度、自分の存在が薄れて行くのを感じながら。
「今日はこんなにも空が澄んでいるので、綺麗な星空が見られそうですね」
けれどそんな彼の前にまたもノエルが現れる。彼女に取り込まれた時の力で少しだけ先を見て、影朧の現れる場所へと到達したのだ。にこやかに笑みを浮かべて、彼女は穏やかに話しかける。
「……ならば、邪魔をしないでくれるか」
ただ己は、星を見たいのだから。そう呟いて彼はかき消え、ノエルの背後、援助者のいるもとへ消える。そのまま排除するために攻撃するだろう。
けれどノエルには見えている。するりとその拳を交わし、柔らかな声音で再度語りかける。
「ええ、邪魔はいたしません。ただ一緒に見に行きたい、それだけなのです」
ひたすらに、ただの人々を傷つけることのないように。ノエルはただただ影朧を追いかけ、話しかけ続ける。彼が諦めるように、と。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鹿村・トーゴ
◎
影朧って儚いモンだっつーのは聞いてたけどそれに輪を掛けて、ねェ
何か必死の未練だけであの世から現れちゃうなんてさあ
幽霊てのとそんな変わんないじゃん
そー思うと帝都の人も成仏させてあげよ、って思わない?
被害が出ないよに影朧を弱らしとくからさ
もーちょい時間ちょうだい?
そっか
星が見たいんだ?
オレも星は好きだよ
エンパイア生まれのオレらには好きも嫌いも生活必需なモノだけど
オレはそれ以上にね
アンタは星にどんな思い入れあったのかな
なぁ影朧のにーさん
この時期は流星群があるってよ
観に行こっか
UCで敵と分身体を牽制(視野的にも)
【忍び足/追跡/野生の勘】で接近、徒手で攻撃
素手が通らないならUC解除しクナイの柄で打つ
●
二人の星空を振り切って、弱った影朧はそれでも足を進める。直に日の沈む帝都に消えては現れる影朧は、ひどく脆くなってもまだ進む。それでも一般人にはまだ危険な存在だ。
こうなっても下手に刺激すれば危険である、と赤髪の忍者は見定めた。その上で彼は一人ごちる。
「影朧って儚いモンだっつーのは聞いてたけどそれに輪を掛けて、ねェ」
彼の視線の先には揺らめく影朧。今まで見てきたオブリビオンよりも更に弱まったその姿に鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)はやるせない心地になる。
「何か必死の未練だけであの世から現れちゃうなんてさあ
幽霊てのとそんな変わんないじゃん」
少しずつ、声を響かせ、辺りの人へと届くように。かの影は哀れなものである、そんな心地が伝わるように。
「そー思うと皆も成仏させてあげよ、って思わない? 被害が出ないよに影朧を弱らしとくからさ、もーちょい時間ちょうだい?」
声が辺りに伝われば、帝都臣民に落ち着きが見える。この辺りの者は道を空けるように、互いに落ち着きあうように動き出した。
「なーにーさん、どこへ向かうんだい?」
進みやすくなった道を揺らめきながら進む影へトーゴは話しかける。
「星の、見える場所へ」
「そっか、星が見たいんだ?」
小さく頷く影朧へ、立ちふさがりながらもトーゴは話し続ける。
「オレも星は好きだよ」
彼の生まれ故郷、サムライエンパイアにおいては星は方角や時節、天気を知るための必需品であって、好き嫌いで語るものではないかもしれない。
けれど、トーゴにはそれ以上の存在であったのだ。
「アンタは星にどんな思い入れあったのかな」
その問いに影朧は答えない。それすら惜しい、と言うかのように足を進める。
「なぁ影朧のにーさん。この時期は流星群があるってよ」
トーゴの手にしたクナイがほどける。ひらりひらりと小さな黄色がこぼれては舞い上がる。
「だからさ、観に行こっか。きっと綺麗に見える」
道を塞ぐもの、と認識した影朧も二つに別れる。邪魔をしないでくれ、と左右から飛び掛って来る。
けれどそれより先に菜の花の吹雪が視界を覆った。ぶわりと彼らを包み込み、分身が消え失せる。
吹雪に身を隠して近づいたトーゴの拳が、影朧本体を打ち据えた。
成功
🔵🔵🔴
アンリ・ボードリエ
◎◯〆
叶えたい夢がある。
それが人を傷つけるものでないのなら、それが心からの願いならば…ボクは喜んで貴方に協力いたしましょう。
だからどうか、ボクの言葉が貴方に届いたのなら、誰かを傷つける前に一度足を止めてください。
受けた攻撃は[激痛耐性]で耐える。ボクはいくら傷ついても、どれだけ痛くても大丈夫。
UCを発動。聖なる光で彼を包み[浄化]します。精一杯の[祈り]と[優しさ]を込めて。
もう一度、星が見たい…素敵な願いですね。大丈夫、きっと叶いますよ。
貴方の夢を叶えるために、ボクはここに来たのですから。
●
もうすぐ日は完全に沈む。夕焼けもだんだんと夜へと姿を変えるだろう。
菜の花の吹雪を耐えて、影朧は進む。あと僅か、己の存在が残るうちに、と。
そんな儚い存在を空の銀河のような色の瞳が見つめる。存在を削りながらも進む彼の前に、ひとさし夜を含めた金の髪の青年が立った。
穏やかな表情で、彼は静かに語り出す。
「叶えたい夢がある。それが人を傷つけるものでないのなら、それが心からの願いならば……ボクは喜んで貴方に協力いたしましょう」
そっと手を差し伸べ、願う。手助けをしたいと、道を繋ぎたいと、アンリ・ボードリエ(幸福な王子・f29255)は言う。
「だからどうか、ボクの言葉が貴方に届いたのなら、誰かを傷つける前に一度足を止めてください。貴方の願いを叶えるために」
けれど影朧にはその声は通じない。ただ彼は頑なに、己の道行きを邪魔してくれるな、と乞う。もう夜は近い。星はじきに空を彩り、美しく輝くだろう。
「願いを叶えると、言うのなら。どうか、どうか。道を塞いでくれるな」
もう保たないとわかっているかのように、彼は小さく呟いた。その体躯が更に大きく揺らぐ。その存在が薄くなり、消える前に、影朧は二人に分かたれた。
「ただ、星が見たいのだ」
彼は願いを口にして、立ち塞がるアンリへ凶手が伸びる。弱っているとはいえ、その威力は侮れない。ばしりと衝撃がはしる。
強かに打ち据えたその拳を受け止めてアンリは祈る。
(ボクはいくら傷ついても、どれだけ痛くても大丈夫)
この痛みも受けとめよう。その願いも叶えよう。
彼の痛みがどうか、どうか、薄れるように、と柔らかな光が包み込む。優しい祈りを運ぶようにツバメが舞う。アンリの記憶を少し削って、聖なる光が影朧の力を削いでいく。
弱った影朧のもう一人が消え、本体も光に包まれ小さく呻く。
「もう一度、星が見たい……素敵な願いですね。大丈夫、きっと叶いますよ」
受け止めた拳をそっと握り、告げる。
「貴方の夢を叶えるために、ボクはここに来たのですから」
彼は悲しみを払うため、喜びを分かち合うためにいるのだから。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『はかない影朧、町を歩く』
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POW : 何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る
SPD : 先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する
WIZ : 影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
傷ついた影朧は力を失った。もうただの人と変わらぬほどの力しか持たないだろう。
存在が散らされたとき、猟兵達は幻を見たかもしれない。
少年が家族と。青年が恋人と。彼が冤罪をかけられ、追いやられ、死するときに。
幸せな記憶と、痛み悲しみの記憶とともに星があった、名も伝わらない青年の記憶の幻を。
力を失った影は歩く。頑なな態度は薄らぎ、今なら話が通じるだろう。
そして力を失った彼は、今なら帝都の人々に簡単に傷つけられてしまう。生きる気力を失えば、星を見るより先に消えるだろう。
彼が星を見られるように。猟兵達は道を繋ぎゆく。
日は沈み、夕焼けの名残が残る。星空はもうすぐ訪れるだろう。
鹿村・トーゴ
◎(一瞬見た幻では全てを見通せないけどなんとなく哀しく感じて)
な。そこまで星を見たい、なんて只ならぬ思い入れだねェ
寡黙なのも訳アリかい?
帝都の人、特に影朧に同情寄りのグループにのんびりとした様子で声掛け
周囲の人も落ち着いてくれたら
>見ての通りアレは瀕死だよねえ
もって明け方までの影朧だ
見て見ぬフリして貰えない?
最期にひと目…ってやつを叶えさせてやろーよ、害もないし
あの影朧は暴れるよりただ星を見る事で頭がいっぱいだもん
【情報収集/野生の勘/旅愁を誘う】
手助けも…うーん
影朧を見守ろっかユキエ(相棒の鸚鵡に)『そうね?』
冬の星明りは格別だねェ(見上げて)
どの星が好きだい?昴、三ツ星、双子星…流れ星もね
●
トーゴはこの儚い影朧の過去の姿を垣間見た。
一瞬の幻ではその未練も感情も全ては見通せやしない。けれど、その哀しさは何となくでも感じられた。
その思いが溢れたか、ふらりと歩き続ける先よりも希薄になった彼へと話しかける。
「な。そこまで星を見たい、なんて只ならぬ思い入れだねェ。寡黙なのも訳アリかい?」
「……星は、喜びと、悲しみと。両方を思い出す」
ぽつりと、世界に溶けてしまう小さな声が返る。
「元来、喋るのは不得手で。加えて己の最後において、言葉は通じなかった。ならば喋らずとも──いいだろう」
そう言えば彼は再び口を閉ざしてただ歩く。
トーゴは一つ頷いて、くるりと辺りを見回した。
弱った影朧へと多少は落ち着いているが、やはり怯える者や慌てる者、いっそ退治てしまおうかという者、そして──同情的な風情を見せる者。
十人十色の様相を見せるが、トーゴはその中でも同情を寄せる者達の集まる方へと近づいた。そして全く聞きを感じさせぬ、穏やかな風情で語りかける。
「見ての通りアレは瀕死だよねえ、もって明け方までの影朧だ。朝日が登れば、光に溶けて消えちまう」
まさに幻のように、この夜だけのものだ、と。
「なぁ、見て見ぬフリして貰えない? 最期にひと目……ってやつを叶えさせてやろーよ、害もないし」
すっかり存在感を薄れさせた哀れな姿を指し示す。
「あの影朧は暴れるよりただ星を見る事で頭がいっぱいだもん。昔見たものをもう一度、見たいのさ」
穏やかに、誰しも抱く郷愁をさそうかのような声と語り口に、人々の間により同情が広がっていく。
その思いは少しずつ広がっていく。この辺りは影朧の道行きを邪魔しないだろう。
さてあとはどうしようか、と影朧を見る。
「……うーん。見守ろっかユキエ」
『そうね? 彼は自分で歩いているもの』
肩に乗せた相棒の鸚鵡と話す。まだ自分で歩けるなら、その歩みを見守るべきだろう。
ゆっくりとつかず離れず、歩きながらトーゴとユキエは少しずつ浮かび始めた星空を見上げる。
「冬の星明りは格別だねェ」
澄んだ空には一つ二つ、明かりが常より見えるよう。
「どの星が好きだい? 昴、三ツ星、双子星……流れ星もね」
小さな声が返った。
「……どれも好きだが。子の星をぐるり巡る空と、流れる星が、より」
成功
🔵🔵🔴
リヴェンティア・モーヴェマーレ
葎さん(f01013)と一緒に行動デス
【P】
「葎さん、何かあったときの為に頑張って壁役こなしましょうネ!」
いつでも動けるように動物達(実際は剣や宝石だったりする)を召喚しておいて周りを警戒しておきますネ
情報収集等を駆使して周囲に情報網を巡らせておきましょうカ
それと万が一に備えて、オーラ防御でコーティング
「こ…これは…ゲーミング森の動物達!!」
七色に光る森の動物達を見て目を輝かせつつ葎さんの方を見る
「そうデス!まさか、この子達が…(自分でやった)凄いデス!こんな伝説が見れるだなんて!!(自分でやった)これは何が来ても守れる気がしまス!」
硲・葎
リヴェちゃん(f00299)と。
「そうだね、油断せずにいこう!この人が何か楽しいこと思い出せればいいんだけど」
聞き耳を立てて、視力を使いながらあたりを警戒。
格物致知を使いながら情報収集をして、できるだけ素早く抜けられるようにルートを考えてみようか。
彼を優しさとコミュ力で気遣い、無理のない速度で歩いていこうか。
リヴェちゃんの様子を伺いつつ、
連携を取り合おう。
「え?こ、これがあの伝説と呼ばれたゲーミング!!」
「7色に光れば最強だもんね!どんな危険でも腹からパンチを出して守るよ!」
いざとなったら求漿得酒を使ってUC発動。
●
ゆらりゆらりと移ろうように道を行く影朧を遠巻きに見る帝都の人々。たとえ無力になった影であっても、ただの人にはそれはすぐさまわかるわけでなく。怯えや不安、恐怖や焦り、異質な物への負の感情が吹き出せば、それがそのまま影朧を暴力的に襲うかもしれない。そうなれば、この儚い彼は星を待たずに消えるだろう。
ならばそうならぬように、と二人の女性は暮れなずむ帝都へ降り立った。
夜に近づく空のような髪の、朗らかな乙女がくるりと周囲を見渡して言う。
「葎さん、何かあったときの為に頑張って壁役こなしましょうネ!」
こくり、その言葉に頷きを返すのは千歳緑をたなびかせる、目つきは鋭く、雰囲気は柔和な女性。
「そうだね、油断せずにいこう! この人が何か楽しいこと思い出せればいいんだけど」
二人、周囲に気を配り、悲しいことが起きないように。かの影が本懐を遂げられるように。心を配って動き出す。
リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)と硲・葎(流星の旋律・f01013)は消えそうな影朧を守るため、己のできることをしよう、と決めてきたのだから。
リヴェンティアが虚空に手を差し伸べれば、浮かび上がるは小さな小さな動物達。ころりところがる様に現れた彼らは、元は剣や宝石であるものだ。ハムスターやチンチラ、ハリネズミも入り乱れ、周囲の人が不用意に影朧に近づかぬように壁になるよう並んで歩く。
急に現れた動物達に毒気を抜かれたり、気を惹かれて影朧への敵意が徐々に薄らいでいく。
葎は事前に得た帝都の地図や、人の流れ、影朧の向かう場所や方角を考え、耳を、目を、最大限に働かせて警戒する。近づく者、遠ざかる者、何が今起きているのか、細かに情報を取得する。その上で、影朧をどのように導けば一番平穏に、素早くこの雑踏を抜けられるかを演算、そして見出していく。
「ねえ、お兄さん。公園に行くなら左に曲がったほうがいい。この時間、まっすぐ行くと人で混んでいるから」
「……ああ。有難う」
ゆっくりと、彼の歩く速度に合わせて。刻一刻と変化する状況を処理し、演算結果を変え、時折誘導し。とてとてと帝都の人々が恐れぬように、小さな動物達が守りながら、灯りが灯り始めた帝都を進んでいく。
少し人の多い場所を通る時、万が一、暴徒が現れても傷つかぬように、とリヴェンティアは周囲を守る動物達へオーラの守りを与える。主の守りを受け止めた動物達は、虹を纏って輝き出す。
──それは、伝説の姿のようであった。
「こ……これは……ゲーミング森の動物達!!」
きらきらと小さな森の仲間達の毛並みが虹色に輝き、光るその姿はまさにゲーミング森の動物達。
葎もその様子にきゅっと上がった目を丸くする。
「え? こ、これがあの伝説と呼ばれたゲーミング!!」
「そうデス! まさか、この子達が……凄いデス!こんな伝説が見れるだなんて!!」
自画自賛であるが、リヴェンティアは心からそう思っている。自分がやったことではあるが、余りに想定外だったのだ。そんな彼女に賛同する葎も興奮冷めやらぬ様子だ。
「これは何が来ても守れる気がしまス!」
「7色に光れば最強だもんね! どんな危険でも腹からパンチを出して守るよ!」
暴漢が出ようが車が飛び込んでこようが、ビルヂングが崩れてこようが大丈夫。だってゲーミング森の動物達は無敵だから。
時折光る動物に興味を抱いた子供や大人に笑顔を振りまき、苺の飴を分けたりしつつ。
ちょっぴりポンコツな人形と、おちゃめな機械の二人組は、ゆらゆら揺らめく影を守って帝都を進む。
目指すは星の見える公園。彼が見たいと望む場所へ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
馬県・義透
◎◯
引き続き『疾き者』
はてさてー、どうしましょうかー。
…そうですねー、帝都の人たちに話しましょうかー。
今から弱々しい影朧が通るのですが、大丈夫ですよー。
そう、彼はただ、星を見たいだけなのでー…。ええ、本当にそうですよー。
彼の未練を少しでも…少しでも解消させたいのでー。
未練って、本当に強いんですよー。それが転生を拒む要素にもなってしまいますからー。
彼には、転生と癒しがもたらされてもいいと思うのですよ。
万が一のときは、どうにかしますので。
ノネ・ェメ
◎○〆
刹那、影朧さんの過去を読み込んでしまった気がして焦り。“また”やってしまった……?
でも他の猟兵さんも何か感じとってるっぽい? わかんないけど。ちょっと一安心できたら、駅伝のアンカーにつかず離れずの先導車よろしく引き続きゴールまでサポートを。
存在も希薄なら見た目もふらふらとして見えて、人目についてしまいそーで。わたしが目をひけば多少はやり過ごせる?
影朧さんを見てそうな人がいたら積極的に絡みにいって、UCを披露します。サクミラへ来るのもお初ではないけど、道行く人々をよく見て【流行知識】もチェック。瞬時にいろんなファッションに着替え、【ブームの仕掛け人】を目指す勢いで興味をひけたらと。
●
ひらりと舞うマントから千切れるように影朧の、力が削がれて舞った。その中に、影朧のかつての過去を刹那に垣間見たノネは、焦りを覚えた。
(“また”やってしまった……?)
見てはいけない、触れてほしくないものに勝手に触れたか、そわそわと周りを見る。
義透を形作る一人、義紘も同じものを見たか、ふむ、と首を傾げて。ノネの視線に気づけばにこ、と笑って見せた。
その笑顔に少しだけ安心できたノネは、影朧の先へ立つように駆け出した。つかず離れず、先を導くように。
残った義紘はふらりと揺らめくような影を見遣りながら、顎に手を当て首をひねる。
「はてさてー、どうしましょうかー」
猟兵により力を削がれた彼はもはや無力。周囲の人々に手を出されたり、心無い言葉を浴びせられれば、最早形を保つこともできずに消えてしまうだろう。それを避けるにはどうすべきか、と。
僅かの間、逡巡した後。義紘は方針を固めた。
「……そうですねー、帝都の人たちに話しましょうかー」
誠意を尽くし、言葉を尽くし、技を尽くし。義紘は後ろから影朧を見る者達へ語りかける。
「皆さん、今から弱々しい影朧が通るのですが、大丈夫ですよー。そう、彼はただ、星を見たいだけなのでー……」
「本当かい? もう暴れないのかい?」
「ええ、本当にそうですよー。ですので、通してあげてくださいー。彼の未練を少しでも……少しでも解消させたいのでー」
害を為すことも、厄や災を振りまくでもない、か弱い存在だ、と誠意を込めて語りかける。無論、同情を誘うような声音で語るのも忘れない。
「未練って、本当に強いんですよー。それが転生を拒む要素にもなってしまいますからー」
そう言われれば、しょうがない、ふむ成るほど、などと民衆から声が上がる。無論、それに反発するような声も。
一人の男が義紘へと食ってかかる。彼ないしは近い者危害を加えられたことでもあるのだろう、怒りと怯えが透けて見えた。
「未練が残ってようが何だ、消しちまえばいいじゃないか」
「そう言われるほど、彼は何かあなたに、皆さんにしましたかー?」
そう言われれは男は黙る。猟兵が先に動いていたのだから、被害は髪一筋たりとも出ていない。
そんな躊躇を読みとって、更に重ねる。
「影朧は傷つき弱い存在。かつて害されながらも、今害を与えない彼には、転生と癒しがもたらされてもいいと思うのですよ」
どうでしょう、と問われれば男の威勢は弱まった。それでも小さく問いかける。
「なあ、それでももしも、あいつが暴れたらどうするんだ?」
「ええ、万が一のときは、どうにかしますので」
手の内、袖の内、身頃に潜ませた重みを感じながら。鬼と呼ばれた男はあくまでも穏やかに、にっこりと笑って見せた。
先を行くノネはちらりちらちらと後ろにいる影朧をうかがいながら歩く。
黒いマントに黒い仮面、黒いズボン。迫る宵闇に溶けていきそうなその影は、存在も希薄。揺らめくような足取りも相まって、そのまま消えてしまっても不思議はなく。
(人目についてて、少し心配)
先程までの戦いの名残か、影朧出現の報に浮足立ったか。そこに加えて日常通りの生活を送る者もいるのだ。猟兵が護衛しているかのような影朧はどうしたって目を止める。
どうしたって目を引く存在なのだ、ならば隠すのは難易度が高くなる。逆にうすらとしているが故に目を引くならば。
(わたしが目をひけば多少はやり過ごせる?)
より派手に、より目立てば。興味や関心がノネに集まれば、影朧への反発もやり過ごせるのでは。
そう、あそこで目を釣り上げて見ているあの男性とか──。
「えっと、さあさあ御覧じろ!」
ぱっとノネが躍り出る。影朧と男性の間に身を翻し、声を張り上げて手を広げ。
「世にも見事、遠いなら近くで、近いならばよぉく聞いてくださいな!」
くるりと夜空が海老茶の矢絣と濃紫の袴に。
「種も仕掛けもございません、皆々様の目の前でイリュゥヂョンをお見せしましょう!」
またくるり、モガの如きドレスにファーの襟巻、ブーツに。
「ご希望があればその姿にもなりましょう、変幻自在のファッションショウ、どうぞ足を止めて御覧じろ」
道行く人の心を掴むように、辺りの流行りを見極めて、瞬時に着替えて見せてみる。
辺りの人々は唐突に始まったファッションショーに目を白黒させつつも、瞬時に鮮やかに変わる姿に惹かれて立ち止まる。
華やかに鮮やかに、若い乙女がくるりひらりと変幻自在のイリュージョンを見せ、いっそ新たなブームを巻き起こすかのような装いを見せつける様は、狙い通り衆目を集め。
その影でうっすらとした影朧は静かに歩み去ることができたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アンリ・ボードリエ
◎
帝都の皆さん。もう彼が皆さんを傷つけることはありません。
彼はただ最期に星が見たいだけです。だからどうか、協力していただけないでしょうか...。
そう言って頭を下げます。
[優しさ]を込めて、影朧さんの[手をつなぐ]
ここまで良く頑張ってきましたね。
さあ、あと少しですよ。
彼を元気づけながらゆっくりと公園へと歩を進めます。
きっと今夜は星が綺麗に見えますよ。
楽しみですね。
UDCに[祈り]を込めます。
どうか今宵の星達が、まるで宝石のように、美しい煌めきを見せますように...。
●
アンリは朗々と帝都の人々へと語りかけた。
「帝都の皆さん。もう彼が皆さんを傷つけることはありません。彼はただ最期に星が見たいだけです。大切な記憶の縁を思い返すように、心安らかであれるように」
儚い影となり、ただ穏やかな望みを果たしたい、その影朧を助けてほしい、と。もう怯える敵ではないのだと、正体がわからぬ不安に怯えた人々を宥めるために。
ざわざわと不安げな声、怒りを湛える声は減っていく。変わりに増えたのは戸惑う視線、同情を寄せる言葉。
「皆さんが望むもののと同じなんです。だからどうか、協力していただけないでしょうか……」
つばくろの羽を一枚、黄金に飾った髪が夜の気配の帝都に燦めく。灯り始めたガス灯や、家や店の灯りを映しながらアタマを下げる異国の青年に、帝都の人々は戸惑いながらもその言葉を受け入れた。
猟兵達が誘導し、守る道を行くゆらりと薄い存在の彼へ、アンリは手を差し伸べた。
「ここまで良く頑張ってきましたね。さあ、あと少しですよ」
そうっと黒い手袋の手を握る。ひんやりと消えていく夜霧のような体温が少しでも温まるといい、と思いながら。
「もう少し行けば、星もよく見えます」
灯りの少なくなる道を辿る。少しずつ坂へと変わる道をゆっくりと、影朧の進む速度のままに。
辿り着いて未練を果たすまで、保てるように、とぽつりぽつりと、元気づけるように語りかける。
「きっと今夜は星が綺麗に見えますよ。楽しみですね」
「ああ。……そうなら、良い」
アンリの瞳のように集まる星がより良く見える夜空までもう少し。日は沈んで夜がすぐそこまで来ている。
アンリは祈る。代償はあれど願いを叶えてくれる超常の存在に、この夜をより良きものになるように。
(どうか今宵の星達が、まるで宝石のように、美しい煌めきを見せますように……)
悲しい存在に癒やしを。見るもの達に喜びを。
少しだけ暖かくなってきた手を引きながら、高台への階段を登る。灯りのない空には、もうすぐ空いっぱいに星が輝こうとしていた。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『スタアゲイザー』
|
POW : 願い事をたくさんする
SPD : 願い事を素早く3回唱える
WIZ : 願い事に想いを込める
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
夕焼けは消え、藍色が空を覆う。冷えて澄み切った空気は見上げる空を邪魔しない。
未だ灯りのない、高台の公園からは星が良く見えた。幾つの幾つも瞬いている。見上げていれば、流星も流れて来るだろう。
ここまで想いに支えられ、辿り着いた影朧は一人、立ち尽くし空を見上げている。
「──ああ。これが、見たかった」
−−−−
・影朧は星を見上げています。放っておいても満足するでしょう。話しかければ、気分次第で言葉が返ってきます。
・澪は温かいお茶やホッカイロの準備で忙しいので出てきません。
鹿村・トーゴ
◎
こりゃーめちゃ寒い…
ユキエ:『凍っちゃう…』
けどよ、星見には良い所だぜこの公園
(防寒に二重にした手拭いを襟巻き代わりに。相棒の鸚鵡ユキエは寒さに弱いので懐に抱いてやって)
夜明け前と黄昏終わりが一番昏い
月の光もまだ強くない…
冴ゆる空、てワケだ
おにーさん
アンタの観たい星はすぐ上に瞬いてるよ
子の星さん、それに柄杓、それから夫婦星の赤い方…その真ん中を見てな?
あは、知ってる?流れ星のやって来るとこ、だよね
オレはねーすばる好きだよ
三つ星の下の小三つ星
本で読んだな
そこは星が幾らでも生まれてくる場所なんだと
星って神様ぐらい長生きすんの
そんなんでも生まれて来るって凄くね?
アンタの未練も次の生で叶うと良いねえ
●
「こりゃーめちゃ寒い……」
『凍っちゃう……』
しんと静まった公園は闇の中、満天の星空が良く見える。トーゴは手拭いを二重に重ねて首に巻き、常ならば肩にいる相棒は胸元に抱える。一人と一匹は体温をわけあいながら、凍える空を見上げた。
「けどよ、星見には良い所だぜこの公園」
遮るものは何もない、邪魔する明かりも何もない。月は低い位置にあり、星へと光を投げかけるにはまだ弱い。凍るほどに冷えた木枯らしも今は吹いていない。
「夜明け前と黄昏終わりが一番昏い。月の光もまだ強くない……冴ゆる空、てワケだ」
『良く見えるわ、でも寒いのはツライのよ』
手に持つ、猟兵が配っていたホッカイロが温まったのを更に手拭いでくるんで懐へと入れ直す。ユキエにその温かさが伝われば、少し気が緩んで彼女も静かに星を見上げている。
トーゴは胸元の温もりを抱え、闇に溶けるような彼へと近づく。影朧は北の空をただひたすらに見上げていた。
「おにーさん、アンタの観たい星はすぐ上に瞬いてるよ」
つい、と褐色の指が空を指す。北を示す子の星、その周りをぐるり巡る星々をなぞるように指が円を描く。
「子の星さん、それに柄杓、それから夫婦星の赤い方……その真ん中を見てな?」
影朧が指が止まる方、七つ星とうしかい座の赤い星の方を見ていれば、白い線が天を走る。流星が一つ、流れていった。
「四分儀座の、流れ星」
「あは、知ってる? 流れ星のやって来るとこ、だよね」
また一つ、白が走る。夜明けまで走る星は、こうしてみているうちに増えていくのだろう。
また指をついと動かして、トーゴは別の空を指す。
「オレはねーすばる好きだよ」
オリオンのベルトから少し下、小さな三つ星。何百も星が集まった
「本で読んだな、そこは星が幾らでも生まれてくる場所なんだと」
幾つも集まり生まれいでる、星の誕生の地であるとトーゴは言う。
「星って神様ぐらい長生きすんの。そんなんでも生まれて来るって凄くね?」
何百光年も空の彼方、何万年も生きる星ですら生まれて来るのだという不思議にトーゴは笑う。
「アンタの未練も次の生で叶うと良いねえ」
「叶ったような、ものだ。朝まで見れればそれで」
そう言うと影朧は口を閉ざして上を見上げる。子の星、シリウス、流星が巡る空を見つめて。
トーゴとユキエも空を見る。次へと巡るだろう、魂を送るように。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
◎◯
引き続き『疾き者』
ああ、無事に着いてよかったですー。
天気も良くて…良き星見の日ですねー。
昔住んでた所はともかく、今住んでるところ(UDCアース)だと、見えないんですよねー。
だからこそ、たまにはこうして見るのもいいですよねー。
見たいものを見れて、よかったですー。ふふ、ここの星空、本当に綺麗ですねー。
返事がなくてもいいんですよー。だって、邪魔する気は無いんですから。
…そう、未練残していくよりは、ずっといい。
●
「ああ、無事に着いてよかったですー」
義透のうちの一人、義紘は空を見上げる。遮るものは何もない、冷え切って澄んだ空には星が瞬く。寒いけれど、それはそれ。静かに肌を指すような空気がより住んだ心地にさせてくる。
「天気も良くて……良き星見の日ですねー」
天に輝くは星々。大きな星、小さな星。幾つもの星がきらきらと輝いて。一つ星、三つ星、星の集まり、天の川。汚れなき空気は遠くの星もよく見せた。
土の香り、配っていた緑茶の香り、冷えた空気の香り、そんなものを匂いながら星を見る。
(昔住んでた所はともかく、今住んでるところだと、見えないんですよねー)
現在居を構えるUDCアースは夜も明るく、いつも音が尽きない。影が濃くなって潜むものもいるけれど、自然の闇はひどく薄い。空気も人が暮らす中で淀んでしまっている。だから空の星の光が見えない。隠され、かき消されてしまう。
「だからこそ、たまにはこうして見るのもいいですよねー」
未だゆっくりとした発展具合であるからこそ残る星空。排ガスも二酸化炭素も邪魔をしない空に、緑茶を啜りながら義透は呟いた。
ちらりと、佇む影朧を見る。彼は静かに北の空を見上げている。日の光が登ればそのまま消えて、巡るのだろう。
邪魔する気はなく、返事がなくても良かったけれど。少しだけ声を投げてみた。
「見たいものは、見れましたかー?」
「ああ」
小さな応えが返る。ここに至るまで支えた人々へ多少は感謝の念が生じたのか、最初の頑なな態度は今は鳴りを潜めていた。
「なら、よかったですー。ふふ、ここの星空、本当に綺麗ですねー」
白が走る。北の空、四分儀座から星が流れる。どの方角を見ても星は流れて、白を描いていく。
きらきら光る星の間を、白が渡って流れて行く空はひどくきれいだった。
これを見て満足して逝けると言うなら、それは幸いなのだろう。
「……そう、未練残していくよりは、ずっといい」
未練がなければ彼らは今ここにはいないけれど、未練があるからこそ苦しいのだ。
銀灰色の髪が、ふと吹いた風に揺れた。同じ色の目に浮かぶのは悔悟が憤怒か、諦観か。それとも僅かの希望か。
それは彼ら自身にしかわからなかった。
成功
🔵🔵🔴
ノネ・ェメ
◎○〆
全うできたみたいでなにより。ほっと一息つき、影朧さんの傍で適当な所に腰おろし。
星を前に影朧さんが思い出す事、想う事。今なら伺える? ……いざとなると躊躇われてしまう。ワンチャン聞き役になれるよに、耳だけは澄まして待機してよ。
誰にでも寄り添える、そんな人になれたらいーなぁ。わたしは他人。何も知らない他人。。ぉゃ、ふよふよ? ずいぶん高く上がって……ゎぁ。
(IC頭上のふよふよした子が何体か天高く昇ったかと思うと、星のマネをするかのようにくり返し輝き流れ)
……ふふ。
転生したらどーなるかも、またさぱらないところだけど。少なくともオブリビオンの今よりかは、これからの方が幸せ、だよね──?
●
静かな公園の空はどこまでも澄んでおり、遥か何光年も先の星の光が瞬いていた。冷え冷えとした冬の空気の中、一人で星を見上げる影朧の傍らにノネは腰を下ろし、ほっと一息つく。
(依頼、全うできたみたいでなにより)
夜空の黒に紛れそうな傍らの影を、その向こうのホシヲ伺いながらノネは少し、悩む。
(星を前に影朧さんが思い出す事、想う事。今なら伺える?)
何を思って、想ってここに来たいと願ったのか、未練を果たしたいと願ったのか。今ならば聞けるのかもしれない。
けれど、それを言葉にするのは躊躇われた。
(ワンチャン聞き役になれるよに、耳だけは澄まして待機してよ)
もしも、何か語ってくれるならそれを聞き逃さないように。じっとその心を拾うように、耳を澄ませたまま星を見上げる。
影朧が話し出すことも、呟くこともなかったけれど、ノネは傍らで静かに座っていた。
(誰にでも寄り添える、そんな人になれたらいーなぁ)
沈黙のまま、星が流れていくのを見る。一つ、二つ、と増えていく星々。影朧は何か願いをかけるだろうか。何を考えているだろうか。
(わたしは他人。何も知らない他人)
だからこそ聞けない。踏み込めない。けれど、それでも沿うことができたなら。やさしくあれたなら。
思考に沈むノネの視界の片隅で、ふわりと水色が舞い上がる。
「ぉゃ、ふよふよ? ずいぶん高く上がって……ゎぁ」
くるり、ひらり。水のような不思議な姿が、流れる星のように降りてくる。降りては登り、輝いて流れ。
空に描く白と頭上の青は、とてもきれいだった。
「……ふふ」
ノネは小さく笑う。
(転生したらどーなるかも、またさぱらないところだけど)
朝日の頃に消えてしまう彼が、このあとどうなるかなんて、ノネにはわからない。けれど、きっと。
(少なくともオブリビオンの今よりかは、これからの方が幸せ、だよね──?)
新たな生の道行きが幸せであることは間違いないだろうと、ノネは思うのだった。
成功
🔵🔵🔴
硲・葎
◎【WIZ】
リヴェちゃん(f00299)と!
「流れ星か。サムライエンパイアにいた頃、見たことはあるけど、願い事はしたことなかったかも」
見れた嬉しさで、割とそれどころじゃなかったかもなあ。
「ああ、願いを叶えられるっていうジンクスがあるね。せっかくだし、願い事してみようか!」
キラキラした目で見るリヴェちゃんの願い事、叶うといいなあ。
私は……もっと強くなって、大事な人を護れるようになりたいな。
悲しい思いをする人が出ないように。せめて、私が手の届く範囲だけでも。それができるように、そして、お父さん、お母さん、お兄ちゃんが安心して天国から見守ってくれるように。
リヴェンティア・モーヴェマーレ
【WIZ】
◎
続けて葎さん(f01013)と一緒デス
「私、流れ星って初めて見たかもしれないでス」
初めて見た瞬きを物珍し気に見上げて
「葎さん、葎さん!!あの流れているものにお願い事すれば良いのですカ?」
『願いが叶う』と言う響きが凄く甘い蜜の様で叶うなら是非やりたい、そんな気持ちでいっぱいの表情で葎さんの方を見る
「私のお願い事は、皆さんと一緒にずっと幸せでいられマスように!!」
期待を思いっきり掲げるように両手を空にあげて、ニコニコキラキラしながら期待を夢を込めてお願い事を口に出して
葎さんは何をお願いしたのでしょうか?
きっと葎さんの事だから素敵なお願いにちがいありませんネ
●
風もない穏やかな夜空を見上げていれば、星の間を縫うように北の空から白い線が走り出す。それは最初は数えるほど、徐々に数を増やして、見渡す限りの空へと散らばっていく。
リヴェンティアと葎は、冷え冷えと冴え渡る夜空を見上げ、流れる星を目で追いかけていた。
周りに遮る建物も光もない夜空は小さな星の光すら邪魔するものはなく、どこまでも続いている。穏やかで風もない、冬の夜空を自在にかけめぐる流星を並んで見上げながら、ぽつりぽつりと話していた。
「私、流れ星って初めて見たかもしれないでス」
リヴェンティアは初めて見る瞬きをもの珍しげに見上げている。白い線を引いて星が流れるのはほんの一瞬。彼女の記憶にない現象はとてもリヴェンティアの気を惹いてやまない。幾つも幾つも、尽きることなく流れる星を目で、指で、追いかけて。
「流れ星か。サムライエンパイアにいた頃、見たことはあるけど、願い事はしたことなかったかも」
葎は目を細めて、かつて星を見たときを思い出す。そのときは流れる星を見れた嬉しさでいっぱいだった。流れる星に願えばそれが叶う、というジンクスを試してみようなんて思いもしなかったのだ。
リヴェンティアはそんな葎の言葉に目を輝かせ、また一つ流れた星を指差した。
「葎さん、葎さん!! あの流れているものにお願い事すれば良いのですカ?」
葎の呟いた『願いが叶う』、その言葉の響きが凄く甘い蜜の様で叶うなら是非やりたい、そんな気持ちでいっぱいだった。その気持ちのまま向けられた表情は、とても目が輝いて期待に満ちていた。
「ああ、願いを叶えられるっていうジンクスがあるね」
そう言った葎の笑顔はとても柔らかなものだった。期待に満ちた表情に顔をほころばせ、幾つも流れていく星へとよし、と気合を入れる。
「せっかくだし、願い事してみようか!」
「ハイ!」
早速リヴェンティアは幾つも流れる星に届けと言わんばかりに手を伸ばして広げ、輝く笑顔と眼差して願いを口にする。
「私のお願い事は、皆さんと一緒にずっと幸せでいられマスように!!」
きらきらと流れる星と同じくらい輝いて、希望と期待に満ちたリヴェンティアの優しい願い。どうかそれが叶ってほしい、と傍らで微笑ましく見ていた葎は、流れる星に願いをよせた。そして、別の星にそっと胸中で願いを呟く。
(私は……もっと強くなって、大事な人を護れるようになりたいな)
葎の手は全てを守れるほど長くも強くもない。けれど、せめて手の届く範囲だけでも悲しむ人が出ないように、と願わずにはいられない。
(お父さん、お母さん、お兄ちゃんが安心して天国から見守ってくれるように)
強くなりたい、と天をかける星へと願っていた。
リヴェンティアはそんな彼女の傍らで、今は静かに星を見ていた。
(葎さんは何をお願いしたのでしょうか?)
真剣に、けれど優しい表情で星を見上げる葎の願いはとても気になる。けれど聞くのは、少しだけはばかられた。
(きっと葎さんの事だから素敵なお願いにちがいありませんネ)
だから、リヴェンティアは再び流れた星へと願うのだ。葎の願いが、叶いますように、と。
二人、互いに願いをかけながら、時折おしゃべりをしながら。朝日が上るまで星を見上げていたのだった。
●
白い線が流れる夜空の東の端が赤みを帯びた。もう夜明けが来るのだろう。
静かに星を見上げていた影朧は存在を薄れさせていく。黒い影は溶けるように光へと変わる。
太陽が顔を出す頃には、満足そうな顔の男はすっかり姿を消していた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴