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#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 名前とは、その者を形作る物である。
 とすれば、名を呼ばれぬ者が抱える苦悩は、どれ程の物だろうか。

●名を呼ばれぬ者
 極夜卿ジル・ド・フラテルニオ。
 彼は美しい者を好む吸血鬼だ。
 美しさの種類は問わない。それが内的要因であろうが、外的要因であろうが、構わないのである。
 金剛石さながらの強固な精神、鋼よりも美しい肉体、ピアノの様な音の声、夜に似た髪。
 どれも好ましく、全て壊して慈しみたい。
 吸血鬼である彼は、それらをいとも容易く叶えて来た。
 圧倒的な力で踏みにじり、洗脳し、依存させ、飽きたら廃棄する。
 大事な芯を壊された者が堕ちるのは、自然な事だった。
 だが、そうでは無い者も居た。
 たしかに居たのだ!
 ああそれが彼にとって、どれ程救いであったことか!!
 壊れない玩具、耳を貫く囀り、この手を見事すり抜ける愛の鳥。
 なるほど。猟兵という物であれば、この願いが叶うのか!

 そう。彼には願いがあった。
 たった一つ、未だ叶えられぬ、けれどいとも容易く他の者は叶えて来た願いだ。
 それは……。

●という事で今回はダークセイヴァーです。
 ケース・バイケース(花・f03188)は看板の前で揺れている。
 看板にはこう書いてあった。
『猟兵をおびき出そうとしている吸血鬼がいます。おびき出せないと領民に酷い事をするので、罠へと向かってください。』
 花はうねっと次の看板を指した。
『オブリビオンは館の奥で待っている為、館の中からのスタートになります。』
 最初からラストスパートみたいな速さで進む冒険もあったものである。
『敵の種類は三種類です。かわいらしい女の子、洗脳された領民、今回倒すべき吸血鬼『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』です。』
 花はうねっうねっと揺れている。
『今回の館は、条件をクリアしないと先に進めない特殊な館です。そして敵も、それほど怖くありません。ただ、少し厄介です。』
 花は、動きを止めた。
『あなたたちは、誰かから、名前を呼ばれますか?』
 花はまた、通り過ぎる猟兵の話し声に合わせて揺れる。
『それでは、どうかお気をつけて』

 看板を読み終わったその瞬間、あなたの心が決まっていようと、いなかろうと、罠の様に待ち構えていたグリモアが光る。
 次にあなたたちが見る物。
 それはぽっかりと扉の開いた、大きな大きな館の姿だった。


KS
 長い名前って、呼びにくくないですか?
 極夜卿って口が絡まる気がしませんか?
 フラテルニオ、噛まずに言えますか?
 そんな気持ちから書いてしまったこのシナリオ、皆さんには『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』を言い難いながらもがんばって言って貰おうと思います。
 ちょっと声に出して10回くらい言ってみてくださいよ。
 言えました?

 こんにちは、KSです。
 このシナリオですが、一章では『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』のフルネームをひたすら連呼します。噛んでもらえるとMSが喜びます。
 二章ではジルさんにあだ名をつけてあげて、それを連呼します。良いあだ名だとMSが嬉しいです。
 そして三章ではなんと、極夜卿ジル・ド・フラテルニオの名前(あだ名も可)を叫びながらでないとダメージが通りません。語尾レベルで名前を呼ばないとダメです。感情を込めた叫びだとMSのテンションが上がります。

 このシナリオはギャグです。
 尚、極夜卿ジル・ド・フラテルニオの宿敵主様からはPL単位でのギャグ許可を頂いております。

 このシナリオはギャグです。
 進行人数は5人前後を想定しています。
 開始は断章をお待ちください。

 このシナリオはギャグです。
 よろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『慈愛の聖女』

POW   :    ちをあげるから、かわりにあいをください
【指先から流す血液】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD   :    こわいの、こっちにこないで
自身が【殺意】を感じると、レベル×1体の【相手が畏怖する存在】が召喚される。相手が畏怖する存在は殺意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    たすけて、ぱぱ
無敵の【ぱぱ】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はメルヒェン・クンストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●一部屋目

扉を潜った先で待っていたのは、白く可愛らしい少女だった。
少女は言う。
「まっていました。あなたたちが、りょうへいさん、ですね?」
可憐な小さな手に握られていた看板を、そっと立てる。
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオをスムーズに50回言えないと出られない部屋』
そこには堂々とそう書かれていた。

「ぱぱのなまえ、まちがえたら、やりなおしです。わたしは、じゃまもするので、りょうへいさん、がんばってください。できるって、しんじてます。」
少女はぐっと拳を握り、キラキラとした瞳で君たちを見ている。

ちなみにこの子と極夜卿ジル・ド・フラテルニオの間に血縁関係は一切無いです。
「わたしのてびょうしに、あわせてぱぱのなまえを、いってください。」
だいじょうぶですか?と首をかしげる。
「おてほん、しますね。」
パンパン
「きょきゅやきょゆ、ちる・ど・ふりゃてるにお」
パンパン
「きょきゅやきょぅ、じる・ろ・ふりゃてるにお」
パンパン
「・・・・・・こんな、かんじです!」
きりっ
自分の発音は完璧だと思っている顔で、少女は君たちを見ている。

「では、りょうへいさんの、ばんです。じゅんびができたら、おしえてください、ね?」
沢山練習した手拍子の為に手を合わせながら、少女はきりりと君たちを見ている。

この少女の瞳を裏切って攻撃出来る猟兵など(相当な鬼畜でなければ)、居ないだろう。
がんばれ猟兵。戦え猟兵。
どの技能を使うかはこじつけて、この局面をなんとか乗り切って欲しい。
六間・愛
きゃああああんかわいー!!しゅき!!(モツ出ししないハグ)
うんうん五十回ね言えばいいのねだいじょぶ
かっこいいお名前だもん
おねえちゃんにまっかせて~!

うふふ手拍子じょうず~
きょくにゃきょ、ああ~今のなし~
きょきゅにゃきょうじゅるど、ふりゃてるにょ
きょきゅやきょうちるろ、ふにゃてりゅにょ
きょくにゃきょうじるろ、らふてー、あれ?
きょくやきょう、ちるどで、ふらいあげてるにお
きょくやきょっかきょかきょく???
あーーーんむつかしいのねえ
あっそうだ
(歌唱、【揺々籃々】で歌うようにリズムをつけて)
きょくやきょう、じる、ど、ふらてるにお~
やたっ!
あららぁ寝ちゃった?
はっっっ寝顔かわいーーー!!(怪力ぎゅむ!!)


御心・雀
わかるよ。おなまえまちがえられるの、悲しいのね。じゃあ、じゃくもがんばってみるね。

きょくきゃきょう、きょくやきょう、じろろ、きょくやきょう、じる、ろ、ふらてるり…ふらてるりあ。ふらてるにあ。ふらてるにあ?
きょくやきょう、じるろ、ふらてるにあ、きょくやきょうじる、ろ、ふられ…きょくやきょうじる、ろら…きょくやきょう、じる、ど…ううん。
きょき、きょくやきょう、じるろ、ふらてるり…あん、もう。
きょくやきょう。じる。ろ。ふらてるにあ。
…いまので合ってる?

ええと、あとなんかい言えばいいのだったかしら。
思ったよりずうっとむずかしいのね。ぼくお歌ならちゃんと…あっ、お唄にしたら、覚えやすいのじゃないかしら。



●測れない事ってあるからさ。

「きょきゅあ?きょきゅや……」
「きょきゅにゃきょう?」
「ぱぱのなまえは、きょくにゃきょう、じるろ……」
三人は集まって各々が名前を練習している。
プレイングにある様な言い間違いを繰り返しながら、しかし顔を合わせながら何度も繰り返し極夜卿ジル・ド・フラテルニオをなんとか言おうと試行錯誤しているのだ。

「……う~ん、カウンター、回らないねぇ」
愛は看板の横に立ってるカウンターを見て困った顔をする。
きちんと言えていると、このカウンターが回って道が繋がる様になるらしい。
「ぱぱのなまえ、うまくいえてると、おもうのになぁ」
敵の少女もむぅ、と唇を尖らせている。
「思ってたよりも、ずうっとむずかしいのね。」
雀もまた、柔い表情のまま首を傾げた。
「長くて、舌が絡まって、大変なお名前だねぇ、パパ」
愛が、うーんと困って眉を八の字にしてしまう。
「でも、ぱぱのなまえ、かっこいいです。」
「そうだね。すごく強そうで、きっと大好きななまえなんだと、おもう。」
こくこくと頷く少女の頭を撫でて、雀はにこりと笑う。
「だから、じゃくもがんばるね。きっと、あなたのぱぱも、喜んでくれるように」
ぐっと握られた小さな拳に、愛の大きな手が重なりぶんぶんと大きく振られた。
「わたしも!わたしもがんばるよー!まだまだこれから、たっくさん呼んであげるんだから!」
先程までの八の字眉はどこへやら。きゅっときりっと上げて、気合を入れ直す。
「わたしも、がんばります。たすけて、ぱぱ。みんなを、おうえんしてください!」
えいっとここで少女が自身のユーベルコードを発動させる。
キラキラエフェクト共に現れたのは、無敵のぱぱ、こと極夜卿ジル・ド・フラテルニオその人だ。
とは言えこれは、少女が見る極めて精巧な創造物なのだが。

「あ!この人が、きょくやきょう、ちるどで、ふらいあげてるにおさん!」
愛の言葉に、困った顔で笑う極夜卿。
回らないカウンター。
「あれぇ~、上手く言えたと思ったんだけどなぁー」
しょんぼりする愛の腰をぺすぺすと叩いて、雀が提案する。
「唄にするのは、どうだろう?ぼく、歌ならとくいだよ?」
セイレーン。それは海賊を歌で誘惑する魔物の名。
その名を持つ種族である彼女であれば、確かに数節にも満たない文字の羅列など、どうという事は無いだろう。
「え!雀ちゃんもお歌じょうずなの?わたしもね、よくね、じょうずねって研究員さんたちに褒めてもらえるのよ!」
わぁい!と腕を大きく上げて、喜びを表現する愛に、雀はやわく微笑んだ。
「それじゃあ、いっしょに。」

「じゃあ、いきますよ。せーのっ」
パンパン
きょ~くやーきょう~ じる~ど~~ ふら~てるにーお~♪
パンパン
きょ~くやーきょう~ じる~ど~~ ふら~てるにーお~♪

一定のリズムと音程で、荘厳さすら感じさせる輪唱が展開される。
これは彼女らのユーベルコード。
家路を揺々籃々辿る物。
守り唄はやわくやわく、厳かに続く。

やがて手拍子が止み、終わったのかと少女を見れば、暖かさに負けたのかうつらうつらとまどろむ姿が目に入る。
無防備なその顔を見ていると、愛は胃よりも上、人が心と呼ぶ臓が、熱くなっていくのを感じる。
「んぁ~~~っ、寝顔かぁ~~わいいねぇーーーーっ」
ぎゅむっ!!圧し潰さんばかりの怪力を、止めたのは少女がぱぱと呼ぶ極夜卿だった。
「随分と強い抱擁だね、美しい君。」
ギチギチと骨が鳴く。それでも砕けないのは、果たして愛が本気ではなかったからか、この細い吸血鬼が頑丈だったからなのか。
「カウンターを御覧、可愛らしい小鳥たち。」
何故かばっきばきに壊れているカウンターを顎で指し、極夜卿は言う。
「どうやら、君達の可愛らしさにカウントが正確に出来なかったらしい。けれども道は繋がったから、もうお行き。」
ギチギチと抱きしめられながら、夜は雀の顔を見る。
「青の小鳥。君の身体は、とても美しい。清らな心も、好ましい。君が最後の部屋に来るのを、楽しみに待っているよ。」
サバ折りよろしく鳴る骨の音を、出している本人とは思えないほど涼やかに極夜卿ジル・ド・フラテルニオは微笑んだ。
「さぁ、大きな小鳥。ハグはもう充分だろう?」
腕を優しく叩く姿は、父の様にも、母の様にも、神の様にも見えただろう。

「扉は既に開かれた。閉じる前に、進むと良い。」
言い聞かせる様な言葉に、愛はゆるゆると腕を離した。
「わかった!じゃあ、またねちるどふらいさん!」
「ジル・ド・フラテルニオだよ大きな小鳥?」
ぶんぶんと手を振る愛と、小さくばいばいする雀を見送り、カウンターをぶち壊した本人であるフラテルニオは思った。

『次は頼むから、もう少ししっかり名前を呼べる者が来てくれたら、良いなぁ』と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
…幾度もこの世界を訪れましたが
中々に奇特なケースのようですね

(いえ、名の拘りは理解出来るのです
トリテレイアシリーズ・シリアルナンバーゼロナイン
騎士と振る舞うという自戒の為、守護の花言葉の機種名を名として私は選んだのですから)

(膝を付き目線を近づけ)
お任せを
私に噛む『舌』等ありませんので
(スピーカー音声)
その前に、書面にサイン願えますか?
(「私」は「署名者」に治療を行う事)

始めましょう

極夜卿ジル・ド・フラテルニオ

パンパン

極夜卿ジル・ド(略)

お疲れ様でした

手拍子で痛くはありませんか?
掌を診てあげましょう
(医術+優しさ)

(手を汚す覚悟はありますが、そんな形でこの娘を骸の海に還したくは…ありませんね)



●無力

クッションの上でむにゅむにゅと眠る少女とその横に立つ看板を認知。
解読。
そしてトリテレイアは、僅か数瞬ではあれど確実にフリーズした。

『……幾度もこの世界を訪れましたが……』
そう。ダークセイヴァーには昔から困難が多く、それ故にオブリビオンによる暴力も数が知れない。
この世界の困難に立ち向かった回数も、90に近い。
けれど、この様な事態は
『今回は、中々に奇特なケースの様ですね。』
普段は独り言など必要としない機械の身体であっても、回路の冷却も兼ねて音声が零れ出るのも仕方が無い。
こんなシリアスな世界でギャグをしようと思うだなんて、稀有な者も居たものである。

しかし、名に拘りを持つ者が居る事は理解出来る。
本機もまた、騎士として振る舞う事を己に課した末、名乗る事を決めたコードを背負っているのだから。

既に来ていた人間のユーベルコードがようやく切れたのか、少女はもそもそと起き上がった。
「……」
目の前の白い甲冑を、ぼんやりと視認。
寝起きの頭で現状を理解しようと、ぐしぐしと頭を撫ぜる。

「…………あっ、りょうへいさん、ですね!」
少しして、ようやく解った少女は、ぴん!と耳を立てながらぽんと手を打った。
「ぱぱのかっちゅうが、うごきだしたかと、おもいました。かっこいいですね。」
自分が身に付ける事など無いフルアーマーを見事に着こなしていると受け取ったのか、ウォーマシンを知らぬ少女はトリテレイアの周囲をちょろちょろと回った。
「すこし、さわってもいい、ですか?」
普段危ないからと触らせて貰えない鋼鉄に、幼い好奇心は勝てなかった。
ぴんと立つ尻尾が、それを物語っている。

本当はすぐにでも看板に書かれている問題に応え、先へ急ぐべきだろう。
回路もそう答えを出している。

しかし

きらきらと大きく開かれた目を裏切って尚、それは果たされるべき物だろうか。

結論。ここでの否定は騎士の矜持と反する。
故に

『分かりました。私はその提案を、受け入れましょう。』

騎士が傅く姿の様に、トリテレイアは膝を付く。
どうぞ、と手を差し出せば小さな手が白いその手をぎうと握った。
「……わぁ」
近付いた目線のすぐ先で、きらきらの瞳が大きく開いた。
「すごい、とても、かたいのですね。おしろのかべと、おなじぐらい?いいえ、いいえ、もっとつよそうです。」
きらきらは次に視線を移す。
腕をぺたぺたと触り、胸部装甲に触れ、それから顔へと移動する。
「まっしろで、つやつやで、きずなんてとてもつけられなさそうです。」
手が届かない物に触れ、喜ぶ姿はただの幼子だ。
過去に手が届くのであれば、この娘もまた守るべき者だった、のかもしれない。
「でも、とても冷たいのですね。」
少女は小さな身体で、硬い鎧の頭部を覆う。
ぎうと抱きしめるやわい肉は、いとも容易く鋼に沿って形を変える。
動けば殺してしまうかもしれない。
緊張で締まる回路に、少女が言う。
「ちょっとだけ、あたたかいですか?」
よし、よし、と頭部後方にやわらかな衝撃。
おそらく、小さな手が、危害の意図無く叩いているのだろう。
あやす様な仕草に、彼女よりも余程強く完璧な機械であるトリテレイアは、どんな感情を寄せればよかったのだろうか。

それは数十秒だろうか、数分だろうか。
されるがままになっていたトリテレイアは、身動きは取れないまま音声を流した。
『……お名前を、呼ばなくともよいのでしょうか。』
少女はそれを聞いてはっとする。
「そうでした!りょうへいさんに、ぱぱのなまえを、いってもらわないとですっ」
ぱっと離れた姿に漸く安堵し、トリテレイアは動く。
『それでは、始める前にこちらの書面にサイン願えますか?』
差し出された書類には、署名者に治療を行う制約が書かれている。
「さいん?わぁ、さいんなんて、はじめて!」
何が書いているかも分からないまま、少女は指定された場所にミミズがのたくった様な線を描く。
きっと、名前なのだろう。
機械の彼にさえ、その文字の判別は出来ないが。

『承諾いたしました。それでは、始めましょう。』

パンパン
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』
パンパン
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』
パンパン
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』

~~以下ループ50回~~

時折変わるテンポや、似た様な言葉で惑わしてくるといった妨害も、機械であるトリテレイアにはなんのその。
どこ吹く風と言った様子で、見事に50回それはスムーズに言い切った。
カウンターもきっちりと回り切っている。

「すごいですりょうへいさん!かんぺきですね!」
きゃっきゃっとはしゃぐ少女の手は、赤くなっている。
それは、痛ましいとも映るだろう。
『……手拍子で、痛くはありませんか?』
囁く様な指摘に少女は自らの手を見つめる。そういえば、痛いかもしれない。
過去の幻影など、所詮は遺物。
「だいじょうぶ、ですよ。わたしは、せいじょ、なので」
その顔は、笑っているだろう。
けれど落ちた尻尾と耳とは語る。
過去の聖女に弱音は赦されなかった。
過去の聖女は否定を持たなかった。
過去の少女は理不尽な暴力でさえ、きっとこうして笑ったのだろう。

『お手をこちらに』
白い騎士の手が、小さくやわらかな手をすくう。
『私が、診てさしあげましょう。』
そう言って、トリテレイアは医術による治療を開始する。
この世界よりもずっと進んだ癒しの技術は、彼女の手をあっと言う間に治すだろう。

彼女は過去の残影だ。
放っておけば本人の意志ではなくとも害となる、哀れな被害者の過去だ。
それを殺す覚悟は、無論有る。
騎士として、無力を守る意思は揺らがない。
けれど、殺すという方法で、この少女を骸の海へと還したくはなかった。

『さぁ、もう痛くはありませんか?』
手をぐーぱーする少女に訊ねれば、元気に「はい!」と返事があった。
「きしさまは、すごいのね。なんでも、できてしまうのですね。」
『はて、私は騎士と名乗っていなかったと、記憶しますが。』
くすくす、少女は宝物を抱えた様に笑う。
「きしさまですよ。だって、みあげるほどにおおきくて、わたしにこんなにやさしくて、よろいだって、まっしろなんですから。」

トリテレイアが何かを言うその前に、カウンターがカチカチと音を立てながら数字を0へと戻していく。
それを見た少女が、慌てて騎士の背を押した。
「たいへん、もういかないと。みちが、とじてしまい、ます」
はやく、はやく、と扉へと誘導する力を拒否する訳にもいかず、トリテレイアはその微量な力で先へと進まされてしまう。

とん、と押された先で、扉は閉まる。
続くのは、長い一本の廊下だけ。そしてその先にまた、扉が待ち構えていた。

『お別れも、言えませんでしたね。』
僅か見えたまたねと手を振る少女の影に、この手を振る前に扉は閉じてしまった。
ここで見た少女と、二度会う事は無いだろう。
過去に行く術が無い以上、彼女を救う術は誰も持ち得無い。

騎士は憂い、願う。
あの少女の逝く末が、せめて苦しくは無い様に、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…吸血鬼が奇妙な嗜好に走るのは良くある事だけど……どういう事なの?

…もしかして連続で名前を呼ぶ事で某かの呪術的な要素が…え、違う?

UCを発動して"魔動鎧、道化師、演者"の呪詛を付与
手拍子に合わせて「極夜卿ジル・ド・フラテルニオ」と、
自動詠唱(●パフォーマンス)するよう"呪避けの呪詛"を●防具改造

…戦闘以外に対処する為に編み出した術式だけど
まさか、こんな事に使う時が来るなんてね

自身は相手の妨害を警戒して身構えておき、
口パクで名前を連呼している●演技を行う
部屋から出た後、試しに名前を言ってみましょう

…きょくやきょう、じる、ど、ふらてるにお
きょきゅやきょ……ん。次に行きましょうか



●それでも吸血鬼は吸血鬼なので狩りに行きます。

リーヴァルディは思った。

ここの吸血鬼頭は大丈夫か?と。
もちろん大丈夫なので安心して欲しい。

「……名前を何度も呼ぶ事で術式が完成するとか、そういう要素が……?」
「ないです。」
「……そう……。」
吸血鬼が奇妙な嗜好に走るのはよくある事だ。
長命の退屈がそうさせるのか、あるいは人間という弱者の上に立つ者だという絶対的な自信から変態性に目覚めるのか。
ちなみにこのシナリオでの極夜卿ジル・ド・フラテルニオにはそういった特殊な性癖は無いのでここも安心して欲しい。とってもノーマルだ。

「……でも、なんにしろ50回言わないと、この部屋を出られないのよね?」
確認に少女は首肯する。
「そうです。あのかうんたーが50になると、とびらがひらいて、つぎのみちへつながり、ます。」
少女に嘘の気配はない。
溜息を一つ。
「……わかったわ。」
とリーヴァルディは頷いた。
そして瞬きの間僅か0.15秒で全て準備は整った。
目の前で起きた早着替えは、しかし少女に何も視認させはしない。
瞳が開いたその時には終わっていたのだから。

「……それじゃあ、始めましょう」
リーヴァルディの言葉に少女は頷き、こうして彼女の極夜卿ジル・ド・フラテルニオ50回言えるかなチャレンジは始まった。

パンパン
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』
パンパン
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』
パンパン
『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』

この繰り返しだが、リーヴァルディは実は口を動かしているだけで一切発音はしていない。そういう演技だ。
彼女が装備アイテムへと変更した呪避けの呪詛を『極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』と繰り返す様防具改造したのである。
これで途中でうっかり噛むという心配は無い。
だが、少女は途中で邪魔をしてくると言う。殴りかかって来る可能性まで考慮に入れ、リーヴァルディは少女の動きに注意しながら口パクを続けた。
やがて20を超えた頃、少女はテンポを変えて来た。

パンパンパン
『!? 極夜卿ジル・ド・フラテルニオ』
パパンパン
『極夜、卿ジル・ド・フラテルニオ!』
パンパパンパン
『極夜卿、ジル・ド・フラテルニオ!』

リズムからずれない様、瞬間ごとに防具改造を施し呪詛を微調整するリーヴァルディ。絶妙にしんどい。
さらには言い間違いを誘発する様な邪魔もしてくるのだが、これに関しては呪詛の効果で全く邪魔にならなかったので割愛させて頂こう。

そうこうしているうちにカウンターは50を指した。

ぱちぱちぱちと少女が称賛の拍手を贈る。
「りょうへいさん、すごいです。50かい、ぜんぶいえましたよ!」
改造を解き、演技も止め、通常の状態へと戻ったリーヴァルディは頷いた。
「……それじゃあ、先に進ませてもらうわね。あの扉で良いのかしら?」
「はい、そうです。」
それじゃあ、と小さく手を振ったリーヴァルディにぶんぶんと手を振る少女の姿は、直ぐに見えなくなった。

リーヴァルディはなんだかよく解らない疲労に息を吐く。

戦闘以外の、例えば物探しであるとか、情報収集であるとか、呪いへの耐性であるとか、そういった事に使う為に編んだユーベルコードだった筈なのだが……よもやこんなアホみたいな事に使われようとは、このUCも思わなかっただろう。

ふと、リーヴァルディは考えた。
もしかして普通に言えたかもしれない事に、UCを使ってしまったのではないか?と。
あの微調整、実は無駄だったんじゃない?と。

「……きょくやきょう、じる、ど、ふらてるにお」
うん、言える言える。
「きょきゅやきょ」
噛んだ。
「……さ、次に行きましょうか。」

自動再生のおかげでまだ体力も残っている。
次の戦いに備えながら、リーヴァルディは速やかに歩いて行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
アドリブ歓迎

嘗て友を攫い、僕達の故郷を滅した吸血鬼
その名と記憶に傷痕が…敗北の証明がじくりと痛む
…だが、今の僕は違う
必ずや奴の所まで辿り着いてみせる

…。
いや、予知を疑ってる訳じゃないんだ
君達も沢山練習したのだろう
だが、これだけは言わせてほしい
…何だこれ。
思わず頭を抱えた
…でも…やるしかない
覚悟は決めたよ

手拍子に合わせて
極夜卿ジル・ド・フラテルニオ
…うん。大丈夫
正直腹立たしいし肌も粟立つようだけど
逆に冷静になってきた
…【天誓の暁星】
我が誓いは不撓不屈(真面目)
君達の妨害も受けて立つよ(大真面目)
100回でも言い切ってやるとも!(鋼の大真面目)

…あ、終わったら浄化の光属性で送るよ
お疲れ様でした…?



●罪とはどこに宿るのか

恐らくその行動と結果に宿るのだろう。
では、今目の前で起きているこの、この……なに?なにこれ?に罪はあるのだろうか。

アレクシス・ミラは頭を抱えていた。

看板
少女
期待の目

遡る事ちょっと前、アレクシスは憎き吸血鬼の気配を感じていた。
どこにいるのかと風よりも早く駆け、あの時と同じ事は誰であってもさせまいと復讐と使命とに燃える心を強く握りしめた拳で抑えながら。

そうしてようやく見つけた依頼は、三度ぐらい通り過ぎた看板に有った。

内容も読んだ。
花に促されるまましっかり読んだ。
真面目に読んだ。
ふむ、特殊な館へと飛ばされ、出題される条件をクリアしなければならない。
なるほど、どんな無理難題が来ようともやりとげて見せよう。

青空に似た清んだ瞳に光を携え、アレクシスはグリモアへと足を踏み入れる。
何が待っていようと、災禍へと進む足は止めない。そう星に誓ったのだから。

そうして飛ばされた先、再びの看板。

『極夜卿ジル・ド・フラテルニオをスムーズに50回言えないと出られない部屋』

now

アレクシス・ミラは頭を抱えていた。
「……いや、予知を疑っている訳じゃないんだ……」
そう、疑っている訳では無い。だから本当に、言わないとここから進めないのだろう。
ふんふんと両の手をぐーにして気合十分なポーズを取っている少女を見つめる。
「君達も、条件の出題をするに当たって色々と練習もしただろう……うん」
ぶんぶんと頷く少女。
「だが、これだけは言わせて欲しい。もちろんこれは、君に言っている訳じゃないから気にしないでくれ。うん。それじゃあ言うよ。」

虚空を見上げるその目は、少し霞んでいたかもしれない。

「……何だこれ。」

きょとんと首を傾げる少女に、気にしないでくれと手の平を見せながらアレクシスは頭を振って思考を切り替える。
「大丈夫、気にしないで。やるしかない、そう、やるしかないんだ」
ごめんなこんな事考えて。
心配そうに見上げる少女に、青年は穏やかに、けれど決意を込めて笑う。
太陽はもう、曇らない。

「君の好きなタイミングで構わない。準備が出来たら、始めよう。」


~~~以下ループ極夜卿ジル・ド・フラテルニオ~~~

パンパン
「極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!」
パンパン
「極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!」
とうきょうとっきょ?
「……っ極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!」
パンパン
「極夜卿」
ジル・ド・レ?
「ジル・ド・フラテルニオ!!」
なまむみなまもめ
「極夜卿!ジル・ド・フラテルニオ!」
となりのきゃくはよくかきくう
「極夜卿ジル・ド・フラテルニオー!」

最初の方こそ嫌悪感と怒りがあったが、それも天啓の前には些事となった。
百であろうと言い切るという覚悟の通り滞りなく名前の連呼は進んでいく。
少女の手も赤くなってきた。間違えてなるものかと、アレクシスは気合いを入れ直す。
やがて

「極夜卿!!!ジル・ド・フラテルニオ!!!」

最後に全力で!と言われるがままに、強く吼える。
ぜぇはぁと息を切らしながら確認したカウンターは、むしろお前よく百も言い切ったなと言わんばかりに数字を止めている。
少女も流石に手に限界が来ていた為、途中から音声案内となっていた。

「わーー、きしさますごいです!」
ぱちぱちと赤くなった手で称賛の音を鳴らす少女は、とても、とても嬉しそうだった。
息を整えながら、アレクシスは困った様に笑う。
「……ありがとう。でも、終わってしまったから、僕は君を送らなければならない。」
きょとん、とオブリビオンの少女は首を傾げる。

罪とは、どこにあるのか。

「君は」

憎き敵の味方であるこの少女は。
過去である彼女は。
何も知らぬ無邪気と無垢を携える幼子は。


それでもアレクシスは、少女へと光を差し出した。

「……わぁ」
きらきらと眩いそれに過去の聖女は手を伸ばす。
ぽろ、欠ける指先に痛みは無い。
「きれい。きしさま、わたしまどからすこしだけ、おなじものをみたこと、あります。あれは、なんだったかしら。たしか、」
ぼろぼろと崩れる身体で少女の瞳は輝いていた。
ああ、そうたしかあれは
山の合間、木々の隙間、闇の終わり

夜の明け。

「……おつかれさま。次はきっと、この光が珍しくも無い様に。」
ぐっすりと眠ってほしい。

開いていた扉が、ギィと音を立てる。
アレクシスはもう一度だけ少女へと小さく祈り、次へと進む廊下へと踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『信仰し進軍する人の群れ』

POW   :    人の群れが飲み込み、蹂躙する
【槍を持ち一斉突撃を行うこと】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    全てを焼き払い、踏みつけ進軍する
【持ち帰られた弓から放たれる斉射】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【火矢】で攻撃する。
WIZ   :    守るべき信仰の為に
対象のユーベルコードに対し【集団による防御結界】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


大きな扉があった。

静寂が支配する月さえ見えぬ廊下を進んだその先に、その扉は在った。
その先を見るべきか。
一瞬の躊躇の後で、きっとあなた達は開けるのだろう。

ギィ、と古びた番の音が鳴る。

「えーーーーそれではこれより、記念すべき100回目の極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様のあだ名を決めよう会議を開催しまーーす!皆様お手元に資料は届いておりますでしょうか~~。無い方は手を上げて頂ければ持って行きますので~~大丈夫ですか~~?」

わいのわいの。
顔すら覆う白い服。
彼等は教徒。信仰の為に在るだけの民。

わいのわいの。
彼等は資料と呼ばれた紙へと目を通す。
「今回のフラテルニオ様も超イケメンだなぁ」
「おっ、また街を襲撃していた他のオブリビオンを片手で倒したそうだぞ!」
「ひゅ~~!流石だぜ領主様~!俺達には出来ない事を簡単にやってのけるぅ!そこに痺れる憧れるぅ!!」
どこから持ってきたのやらブロマイドに熱視線を向けながら、彼らは思い思いに極夜卿ジル・ド・フラテルニオへの褒め言葉を流している。

ごほん、と大きな咳払いが聞こえて来た。
リーダー格らしき白装束が注目される。

「諸君!我々の目的を忘れてはいけない!」

静寂に音があるのなら、耳を痛める程だったろう。

「いいか、我々の目的はただ一つ」

白いこの場所に現れた猟兵は、場違いな程に浮いている。
にも拘わらず

「極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様に!あだ名をつける事だ!!」

ザン!と音がする。全員が踵を打ち付けたのだと、分かったのは数瞬後だ。
猟兵達の事を、白装束達は気にも留めない。

「だが我々だけでは、もうどうにも出来ないのだ。」

いいや、気には止めている。
どころか、あれだ。

「だって極夜卿ジル・ド・フラテルニオって名前として完璧過ぎん?無理だよこれ変えるのとか、神をも恐れぬ冒涜じゃん……」

ちら、とリーダーが猟兵をガン見する。

「という訳で今回は!猟兵の力を借りようと思う!!全員囲め囲めー!」

わらわらと集まる白装束。

「頼む猟兵!!我々の為に極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様のあだ名を考えてくれ!この間も窓辺で『……あだ名、か……』ってアンニュイに呟いてるのを見てしまったんだ私は!!!」
「だがフラテルニオ様の名前は完璧で、思い入れの強い我々ではどうにも出来ないのだ!」
「頼む猟兵!かっこいいのが良い!」
「いや俺としては可愛いのも良いと思う!」
「ここは洒落たので行くべきだろう!?」
「まてまて情熱的な方が!」

わいのわいの がやがや

「何か提案してくれたら、先に進んでくれて良いからさ。我々を助けると思って。な?」

君達はあだ名を考える必要がある。
どんなものを出すかはお任せしよう。

馬鹿にしたものは、望ましくない。
なぜなら彼らは、極夜卿ジル・ド・フラテルニオが大好きなのだ。

頑張れ猟兵。
戦え猟兵。
君の機転が世界を救う。

(お待たせしました。プレイングの受付を開始します。)
トリテレイア・ゼロナイン
これは難問ですね…
実は私の名付けに関するセンスは(UCの名称通り)芳しくない物で

(UCをジャラリと見せ)この武装に対装甲破砕鉄球と名付けるような『分かればよい』式の名称を人様に付ける訳には参りません

ここはあだ名というより『二つ名』の方向で考えましょう
御伽噺の騎士や英雄は『宵闇の騎士』に『輝く兜』だの『赤毛の』だのその人物の代名詞を背負っているものです

極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様なら…やはり極夜に関するものでしょう

『永久(とこしえ)の夜の帳』
『昇らぬ陽』
『夜(よ)を統べる者』

一度、二つ名を付けて名前を合唱してみましょう
彼の人を称えるように…いっせーの、で

申し訳ございません
仰々しい上に更に長く…



●解りやすい名前って良いよね。

トリテレイアは困っていた。

「これは難問ですね……」
「わかる……難問だよな……」

それに頷いたのは白装束の一人だ。
「既にある最上級の物を崩して、新たに構築するのはどうしたって難しいよ。だから俺達は極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様のあだ名を付けられなかったんだ。」
「そうですね。とても良き名前である事が、私にも分かります。思い入れが強い程、崩す事はし難いでしょう。」
トリテレイアは困っていた。
「ですが、私もまた、あだ名をつけるという行為は苦手でして……」
「えっ」
「見てください。こちらの武器なのですが」
取り出したのは棘付きの鉄球が付いた武器、すなわちモーニングスターだ。
「おっ!かっこいいな!あんた特有の武器か!?」
ゴツくて強い武器を見た時テンションが上がるのは、男児の宿命なのだろうか。
そう、トリテレイアが持つモーニングスターは常人では持つ事さえ困難な大きさをしているのだ。
「そうです。こちらはバーニアスラスタ……ええっと、補助エンジン、と言えば分かり易いでしょうか。」
「エン…ジン……?」
「すみません、そうですよね……。と、とにかく軌道を自在に操れる様に加工されていて、当たれば中から鉤爪が跳び出す仕組みになっております。」
「へぇーー!すっげ!男児の憧れじゃん!」
白装束の目が見えていれば、それはキラキラしていた事だろう。
「ありがとうございます。その様に言って頂けると、こちらを制作された技術者の方々も喜ばれる事でしょう。このデザインと機能は私が提示した物ではなく、彼等に編み出して頂いた物ですから。」
回路が僅かに熱を帯びる。
この感覚は、誇らしいに該当するのだろうか。

「話を戻しますが、こちらの武器から跳び出す鉤爪には放電装置の役割もあります。相手を拘束する為です。」
へー!と話を聞いている白装束は問う。
「そんな凄い武器なら、すっごい名前が付いてるんじゃないのか?トールとか、ゼウスとか!」
「いえ……この武器の名前は拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球です。」
「……なんて?」
「拘束鉄爪内蔵式、対装甲破砕鉄球、です。分かり易く横文字にするとワイヤード・ジェット・モーニングスターになります。」

白装束は沈黙する。
ちょっと色々情報が多くて考えてしまっている様だ。
だがしかし、白装束もバカではない。一つの答えに辿り着く。
「……そのまんまだな……?」
「そうなのです。そのままの名前なのです。」
「oh……」
「私はどうにも、名前を考えるセンスが欠けているのか……このように『分かれば良い』形式の物を生み出してしまう可能性が、高いのです。」
トリテレイアの回路は思案する。
だが何度考えても出てくるのは『メッチャツヨイキュウケツキ』レベルのあれそれだ。
MSにセンスがあれば三通りぐらい上げたかったが、無いので省略する。
トリテレイアは、諦めという文字に首を振る。

「あなた方が大切だと思っている存在に、そんな名前をつけるのは好ましくない、と私は思っています。ですから、あだ名ではなく二つ名を提案しても、よろしいでしょうか?」
「それは……極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様の名前が、さらにかっこよくなる……ってこと……?」
ごくり、真剣な表情でトリテレイアを見る白装束。
頷くトリテレイア。
「ええ。お伽噺の騎士や英雄は、その代名詞を背負っているものです。極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様であれば、やはり夜に関係した物が良いでしょう……そうですね……」

幾つかの、詩的であると言われている表現をピックアップする。
「永久の夜の帳……昇らぬ陽……夜を統べる者……こういったものがよろしいかと思うのですが、いかがでしょう?何かピンと来る物は有りましたか?」
「うーーんうーーーーん、どれもすごいかっこいいけど、俺的には夜を統べる者ってかっこいいと思う!」
「good.では、それでいきましょう。私は感情表現がやや不得意である為、彼の人を恭しくは呼べないでしょう。ですから、試しに呼んで頂いてもよろしいでしょうか?」
「おっ!いいぞ!!」
「では、せーの」
「夜を統べる者きょきゅあ卿ジル・ド・フラテルニッ」
噛んだ。様子から見るに舌を噛んだ。
「…… ……申し訳ございません……まさかそれ程言い難くなるとは想定しておらず……」
ジェスチャーで大丈夫大丈夫と手をぱたぱたさせる白装束。だが、ここで無言な辺りあまり大丈夫では無さそうだ。
「手当て、と言っても口内、舌の手当てとはどうしたら……」
トリテレイアが身を屈めおろおろしながら様子を窺っていると、白装束がトリテレイアの肩を叩きながら笑いかけてくるではないか。

『俺はもうダメだ。というかここにいる奴らじゃ、そのかっこいい二つ名含めたフラテルニオ様の名前なんて呼べる訳がねぇ。だから、あんたが呼んでくれないか……猟兵。 頼む。俺達じゃ出来なかった事も、あんた達なら出来る筈なんだ……。』
まるでもう死ぬ親友からの遺言よろしく、笑顔だけでそんな事を伝えて来る白装束。
スーパーテクノロジーによりそれが理解出来てしまったトリテレイア・ゼロナイン。
彼は肩へと置かれた手を取って、重く頷いた。

「わかりました。それが、私に託す貴方の願いだと言うのであれば。必ず、とは言えませんが、努力致します。」
『ありがとう……これで思い残す事は無い……ありがとう猟兵……がくっ』
「しっかり!しっかりしてください!そんな、命に別状がある様な怪我ではなかった筈です!どうし……」
て、と続けようとしたその時、トリテレイアの聴覚センサーは健やかな寝息を拾う。
すぴー ふすーー ぴーー
ふと近付いて来た白装束が言った。
「あ、そいつ、ここ3日ぐらい寝ないで資料の作成とか、あだ名考えたりとかしてたからさ……なんかごめん。」

トリテレイアが人間であれば膝をついていたかもしれない。まぁ機械なのでそんなコメディアンな動きはしない訳だが。

「いえ、それ程の情熱を託されたのです。私は私に出来る事を致しましょう。」
ぐっ、と白い拳を握る。

これが一部の答えとなった。

そうして場面は、また別の猟兵へと移っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
……なんぞこれ

こほん、失敬。取り乱したわ

…良いかしら、そもそもあだ名とは親しみを込めて呼ぶものであり、
往々にしてその人の名前を呼びやすくしたものよ

私の場合はリーヴァとかリーヴェとかになるようにね
ならば極夜卿ジル…ド……極夜卿のあだ名はジルで良いのでは?
……安直過ぎるからダメ?そっかー

…そもそも。あだ名をつけるにしても私は彼の人となりを知らない
だから、あだ名をつける為にまずは貴方達に教えてもらう必要があると思うの

極夜卿が何が得意で何が苦手か。どんな能力を持っているのかとかその他諸々…

具体的にはPOW、SPD、WIZのユーベルコードとか

(情報収集の後)……少し名前をもじって……ジャイルズでどう?



●オタクに概要なんて聞くもんじゃねぇ

リーヴァルディは囲まれている。

白装束達に囲まれている。

四方八方から来るあーでもないこーでもない、だが極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様はカッコイイだのを聞いていたリーヴァルディは言ってしまった。

「……なんぞこれ」

きょとん、と首を傾げる白装束の1人。
「えっ、極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様のあだ名を考える会だけど……」
「うん、違うの。そうじゃないの。取り乱しただけよ、気にしないで。」
パタパタと手を振る彼女に、そっかぁ大丈夫ならいいけど。あ、喉乾いてる?水分摂らないとこの時期キツイよ。と能天気な白装束は水を勧めた。
(ただの水、と見せかけて何か入っている可能性は有るけれど……変に断って波風を立たせるのも宜しくないわね。)
リーヴァルディは少し考えた後、その水を受け取った。
「ありがとう。折角だし、頂くわ。」

ゆっくりと警戒しながら飲み干して行く。
冷蔵庫なんて物は無いダークセイヴァーの、良くも悪くも飲みなれた水の味がする。
リーヴァルディは飲みながら確信した。
「……ただの水ね。」
「ただの水だけど……えっ、砂糖とか入ってた方がよかった?あっちゃー、ごめん気が利かなくて」
「いいったら。そもそもここでは砂糖なんて高価でしょう?そこまで厚かましくはないわ。」
「いやでも有るなら使ったほうがいいかと思って。どうせ俺達は消えるし、ここには誰も居なくなるんだろうから。」

気付いていたの、と言うことをリーヴァルディは躊躇った。
「……いいの?」
代わりにそう聞いていた。使徒は通常使役者を助けようと行動する。殺されるのを黙って見ている者はいない筈だ。
「いいよ。ここの極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様は、そういうお方だから。」
「そんな事ある?」
「あるある。聞く?俺的極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様のカッコいい所100」
「それより渾名考えさせなさいよ。」
「それは本当にそう。すみませんでした」
少女はため息を吐く。
「なんかやりにくいのよね。敵の自覚あるの?」
「ないよ?」
「ないの……」
「でも、ないからって見逃したり出来ないだろ?猟兵は世界を護るのが仕事だもんな。」
あーでもない、こーでもない、と長ったらしい名前を作っては消している白装束にリーヴァルディはもう一度ため息を吐いた。
「あだ名がどうしてそんなに長くなるのよ……貸しなさい、呼びやすい物を考えてあげるから。」
「ひゅーー!ありがとう猟兵!!」
「代わりに、私の質問に答えて。私はあなた達程彼の事を知らないわ。そうね……好きなものや苦手なもの、得意な事不得意な事、それに能力ね。どんな事が出来るのか、教えてもらえると助かるわ。あるでしょう?こう、力入れてる時に使う能力とか、頭使ってそうな能力とか、なんかそういうの。」
ぱぁ、と雰囲気の華やぐ気配。
今そんなテンション上がる事聞いた?と首を傾げる少女の前に、ドズンと置かれる紙の束。
この世界で紙って割と高価じゃなかったろうか。
「聞いてくれるのか!!ありがとう猟兵!」
リーヴァルディは嫌な予感がした。
「まって。端的に、簡単に、ざっくりと説明してくれたら、それで、」
「先ずは一枚目を見てくれ猟兵!俺たちと極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様との出逢いから解説させてもらうぜ!!」
「それ絶対に私が必要としてる情報入ってないわよね!?」

そんなこんなでやく2時間、ファンのオタク解説に付き合わされたリーヴァルディ・カーライルはげっそりと机に突っ伏しながら呟いた。

「……ジャイルズで、いいんじゃない……?」
「えっ!?めっちゃいいじゃん!!ありがとう猟兵!!それ絶対本人に言ってあげてくれよな!」
「は?アンタたちが呼ぶんじゃないの?」
「恐れ多すぎて呼べるわけないだろ??何言ってんだよ」

もう帰りたい。そんな言葉が頭を過ぎる。
だがしかしそれでは吸血鬼を殺せないので、頭を抱えるに留めて置いた。

そんな彼女を横に置き、カメラは他の猟兵へと移るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御心・雀
あだなというのは、
ほんとうのお名前とは違う、
呼びやすくするためのお名前ね?
ええと、そうね
ほんとうのお名前よりも素敵でないといけないよね

ううん、むつかしいねえ…

じゃくはねえ
“弱”くても、“鳥”みたいに自由にってなまえなのよ
だから、きょくやきょうさんも、意味を大事にしたらいいのじゃないかしら

夜の…『夜のおかた』だと、ちょっと短すぎるよねえ
兄さまとか父さまは肩書で呼ばれていたけど、
そういうのはあだなとはちがうのよね?
そうね、もっと親密な感じのがいいとぼくもおもうよ
他にも…

そうだ
『月影のきみ』とかはどうかしら
兄さまがたまにそんなふうに…
…いまいちかなあ…
お名前かんがえるの、じゃくにはむりだったかなあ



●それはきっと優しげな、深く深い青

「ええと、あだなというのは、ほんとうのお名前とはちがう、呼びやすくしたお名前、なのね。」
「そうそう」
「ほんとうのお名前よりも、すてきでないといけないよね。」
「そうなんだよーー」
「ううん、むつかしい、ねぇ……」
「ほんとそれ……」
「もともと、すてきだものね」
「話の分かる猟兵で俺感動だよ……飴ちゃん食べて……」
そっと掌に渡された砂糖を堅めただけの様なキャンディは、しかし返そうとしても首を横に振られてしまうので、雀は少し笑って大事そうに握り込んだ。
「ありがとうね。じゃく、がんばってあだ名考えてみる、ね。」

でもあだ名ってどうやってつけたらいいのかしら。雀は首をゆぅらり揺らす。
「じゃくはねえ、弱くても、鳥みたいに自由に、って名前なのよ。じゃくは、この意味もふくめて、このお名前が好き……。だからね、きょきゅ……きょくやきょうさんも、意味を大事にしたら、いいのじゃないかしら?」
ね。と笑う少女に、白装束はうんうんと肯定を返す。
「夜……とってもふかい、夜だから……『夜のおかた』だと、ちょっと短すぎる、よねえ……兄さまや父さまは、肩書で呼ばれていたのだけれど、そういうのは、あだ名とは違うのよね?」
「そうだなぁ。俺的にはもう少し親しみがあった方が好みだなぁ。」
「そうよねえ。じゃくもそう思う。ううん……」

「でも、そんなに悩まなくても良いと思うぜ?猟兵が良いなぁって思った名前で呼ばれるのが、きっと良いんだろうからさ。」
「そう……?じゃくが、いいなと思ったお名前……そうねえ……」
ゆぅらりゆぅらり頭を揺らす雀に、家族の姿が過ぎる。それから、話せることが嬉しいのか、時に笑顔で、時に赤らんだ顔で、情熱と共に呼ばれたソレが思い浮かんだ。
「『月影のきみ』……は、どうかしら?」
「月影の君?」
「そう。兄さまが、たまにそんなふうに呼ばれていて……」
その音はきらきらしていた様に思う。憧れ、という複雑な感情の当て嵌めは、少女には少し難しいけれど。
あれ?でもこれは夜のおかたと、なにがちがうのだろう?
「……いまいち、かなあ……」
けれど雀には、それ以上のきらきらもほわほわも思い浮かばない。

「お名前かんがえるの、じゃくにはむりだったかなあ……」
肩を落とす少女に、白装束は首を横に振った。
「そんな事ねえよ、良いと思うぜ月影の君。深い夜と優しさが、なんか伝わってくるしさ!」
白装束はぐっ!と拳を握る。
「それに、猟兵が"良い"って思った名前なんだろ?自分の好きなやつに、考えて悩んで良いって思った物を渡されたら、それだけで嬉しいもんだろ?」
雀の肩に手を置いて見えないフードの下の目を真っ直ぐに、黒に近い藍の瞳に向ける。
「だから胸を張ってその名前を呼んでくれ猟兵。な!俺たちには出来ないからさ!」
勢いに押され、雀はゆっくりこくこくと頷く。
白装束は満足そうに少女の肩を離した。
「極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様も、きっと喜んでくださる。本当にありがとうな。」
再び渡される飴ちゃん。
困る雀。
この気持ちをどう言い表せばいいのだろうか?
しばし考え、思い至る。
「……あなたにも、いっしょに食べて欲しいな。じゃくひとりで食べても、なんだかさみしいもの」
にこにこと、受け取った飴を渡し直す。
白装束は自分の手に戻ってきたそれと、少女とを交互に見る。一度、二度。
「…そうか。寂しいなら、俺も一緒に食べるか!」
はは!と大きく笑って、キャンディを開ける。
雀もうんと頷いて、淡い色の包みを開ける。

そんな二人の姿を残し、場面は次へと移るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラビット・ビット
【推し💙】
アドリブ◎

推しと因縁の敵が戦うと聞いて駆けつけました記録係です
ってあれれ~?おかしいぞぉ?
いやこのノリビットくんはお祭りすきですけどアレスさんは大丈夫ですかね!?
はぁい落ち着くには深呼吸ですよ~ひっひっふーひっひっふーアレスさんが産むわけないだろういい加減にしろ
落ち着いたならはりきって…はりきらなくていいですね!
適度に!うんうん!
高速手のひら返しは得意ですよだって推しがこの世の正義ですから
けど先に行けないのは困ります
んービットくんが呼ぶならジルフラさんですかね
適度に短く適度に要素を取り入れて
これならアレスさんも呼べ…なさそう!

アレスさんの勇姿しっかりとこの目に焼き付け(録画)ねば!


アレクシス・ミラ
【推し💙】
アドリブ◎

…困惑はしているけれど
大丈夫だよ。ビットくん
しかし、名前にあだ名…
誰かに呼ばれたいみたいだな…
まさか…僕の親友に、呼ばれたかったと…?
…。
…失礼
(一度廊下へ戻る
数秒後、衝撃音
色々覚悟を決めた顔で再び入室…拳から謎の煙が)
深呼吸…よし、
…分かった。考えてみよう

真剣に考えるも…頭を抱えた
あの吸血鬼を思い浮かべる程、友好的ではないものばかり浮かんでしまう…
駄目だ、これはあだ名ではない…っ

ジルフラ…成る程!
そうか、僕も…
(奴を…アレスと同じ感覚、で…?)
…大丈夫。折角君が考えてくれたんだ
呼んでみるよ
…見ていてくれるかい

あ、彼らも浄化の光で…
…いや、彼らがあだ名を贈った後に送ろうか



●赤星

「あれれ〜?おかしいぞぉ〜?」
推し記録係のビットくんは青酸カリ舐めちゃうタイプの少年探偵に似た様子で首を捻った。
だ〜れも戦ってないぞ〜〜?なんかほのぼのしちゃってるし、このお題なに??
「いや〜まぁビットくんは好きですよこのお祭りみたいなノリ?でもアレスさんは大丈夫ですかね!?」
扉の奥から聞こえて来る衝撃音と共に、部屋が揺れる。
「あ!ダメそう!!」
察しのいいウサギの視線の先に現れたのは、拳から煙を出しているアレクシスだった。
「落ち着いてくださいアレスさん!落ち着くには深呼吸が効果的です!ね!」
覚悟を決めた太陽は、心配そうに耳を下げるふわふわに不器用な苦笑で頷いて、深く息をする。二度、三度。
「そうですそうです!良い感じですよ!その調子でひっひふーですひっひっふーーってアレスさんがラマーズ方なんてするわけないだろいい加減にしろ!」
ふかふかの白い手で自己ツッコミとして頬を打つウサギに、太陽は少しだけ笑う。
「ありがとうビットくん、もう大丈夫だよ。」
なにも大丈夫じゃなさそう!という一言をビットくんは推しのために言わなかった。

「ま、まぁまぁ、落ち着いたなら何よりです!ではでははりきってー」
いやまてビットくん!推しめちゃくちゃ拳握っとるぞ!!
「はりきらなくていいですね!!はい!はりきらなくていいです!適度にいきましょう!」
高速手の平返しであった。
「そりゃそうですよ。推しがこの世の正義ですもん。」
こ、こいつ地の文にまで反応を……!?
「うーん、でも先に進めないのは困りますね。あだ名、親しみやすいあだ名ですかー」
うーんうーんと考える。
推しの顔色は悪い。
「んーー、ビットくんが呼ぶならジルフラさん、ですかね。適度に短く、適度に要素を取り入れているのではないですか?うんうん」
ちら、と推しを見れば手を一つ大きく叩いて、それだ!という顔をしている。
ビットくんは勝利を確信した。
「ありがとうビットくん!それなら僕も呼べそうだ!」
「やったーー!推しの役に立てたならこのビットくん思い残す事はありません!いや嘘ですめちゃくちゃあります!推しの生涯を記録したい!なんにしろ呼べそうならなによりです!サクッと進んでしまいましょう!」
「そうだね。僕も君と同じように親しげに……」
親しげに。
頭を過ぎるのは星瞳を細めて夜が呼ぶ、自分のあだ名。
『アレス』と歌う様に、笑う様に、跳ねる声。
それと、同じように?

思い出すのは怒りだけで生きていた、あの時の君の目だ。
涙すら燃え枯れた星の、悲鳴に似た一太刀だ。

魂が吠える。

「呼べる物か!!!」
怒号に似た、いや怒号だったのかもしれない声が、闇を映す窓を揺する。
忘れてはいけない。
太陽とは、業火で身を包んだ者だ。

アレクシスは意図的に呼吸を大きく、ゆっくりとする事で再度精神の安定を図る。

思い出すのは母の様だった人の、首の無い死体。
自分のせいで死んだ母。
無力な自分の前で連れ去られた村の人々。
あの日した挨拶が、最後になるとは思っていなかった少女。

刻まれた敗北の記しが、憤怒の炎で焦げ痛む。

それでも性根から真面目な男は、提案された名前を呼ぼうと口を開く。
親しげに自分の名を呼ぶ友の様に、あの男の名を。

ゴッと鈍い音がした。自分で自分を殴っていたらしい。

慌てて止めようとするビットくんの後ろから、白装束の声が聞こえた。
「どうした兄ちゃん!さっきからしんどそうだな!?うわっひでぇ顔!なんかあったんか?」
場違いな程の能天気な声。
思わず睨み付けそうになる青の目を閉じ、アレクシスは苦笑した。

「実は……」
かくかくしかじか
「なるほどなー、あだ名が呼べないから困ってたんかぁ」
「そうなんですよー。アレスさんはとても真面目なので、こういうの難しいんですよね。因縁もありますし。」
気まずそうに視線を下げるアレクシスに、白装束は顎に手を当て考える。
「なら呼ばなくてええよ?」
えっ!?と二人の声がハモった。
「いや、そこのウサギのあだ名は必要だけど。兄ちゃんはフラテルニオ様にそれだけ思い入れが有るって事やろ?したらフルネームでその感情思いっきりぶつけたら、それでええと思うで。」
うん。と頷く白装束。
「マスコメと書いてる事違いません?」
「何事にも例外はあるもんやろ〜?ま、兄ちゃんの考えるあだ名は聞いてみたかったけどな!しゃーないしゃーない!な!元気出しーや!」
笑いながらアレクシスの背中をバンバン叩く白装束。
「……僕達は、進んでいいのか?」
「おう!わいがオッケー出したるさかい、気にせんと堂々進み!」
「そうか……ありがとう」
ほっと息を吐く騎士に、白装束はよし、と手を叩いた。
「これで全員。あんたらが最後や。極夜卿ジル・ド・フラテルニオ様によろしくな」
頷く。
夜を終わらせるのは、太陽の役目であるからして。

「そうだ、君達を送りたいと思っているんだが……」
「ええーーそれは困るわぁ!フラテルニオ様があんさんらの付けたあだ名で満足そうにしてるの見てからでなきゃ死ぬに死ねんよぉ!堪忍したってや猟兵!な!邪魔はせんから!な!?後生やから!あ!この後生ってもう行くんなら洒落にならんな!わはは!」
「わ、わかった。わかったから。ああ、きちんと君達が満足してから、送るよ。」
「ありがとう兄ちゃん!いいやつだな!」

元気な白装束に見送られ、二人は大きな扉を開ける。
他の者たちは、もう進んだのだと言う。
歩けばカラコロと鈴が鳴り、青星との約束が身体を巡る。
「大丈夫ですか?」
推しの為の武器を渡し、自分はうちわを装備しながらビットくんが問う。
「ああ。感情のままに呼んで良いのなら、思いっきり呼べるしね。君の武器もある。勝てるよ。ありがとうビットくん」
「そうですか!わかりました!ではビットくんは推しの勇姿をしっかり記録しておく為にすっごいガン見しておきますね!!えへへへへ」
「う、うん。よく分からないけど、よろしく。」
「はい!!!」

扉が閉まる。
深い深い夜に似た闇が、ぽっかり口を開けて待っている。
アレクシスは躊躇無く足を踏み入れ進む。

最後のドアは一等大きく、重厚に。
それが静かに音を立て、二人を招き入れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『極夜卿『ジル・ド・フラテルニオ』』

POW   :    死した相手を殺す事などお前達には容易いだろう。
【対象が殺した相手や、対象に近しかった者】の霊を召喚する。これは【吸血鬼を守るが自我を持ち、呪詛を吐く者】や【死を受け入れる者等、様々いる。生前の武器】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    私のかわいい籠の鳥。今日はこの者を殺しなさい。
【憎悪や殺意】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【心を蝕む幻覚を見せ、人を狂わせる鳥籠】から、高命中力の【鳥籠に繋ぐ白銀の鎖】を飛ばす。
WIZ   :    今傷つけたのは私か自身か。或いは愛しいモノか?
【黒鳥の羽】が命中した対象を爆破し、更に互いを【自身の受けた痛みを一方的に共有する呪詛】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠セリオス・アリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●三部屋目

さて、君たちの前には壁がある。
いいや、重工で美しいそれは、そう。扉だ。

中から声が聞こえる。
「入ると良い。」
ゴン、と音が響き軋む様に開いていくその先に、男はただ座っていた。
シンプルにも映る椅子。月光を受ける白い肌。
豪奢ではない。けれど美しい部屋の中で尚、最も優美なその男は口を開く。

「ようこそイェーガー、私の名を呼ぶ者よ。」

男はゆっくりと足を組む。
「随分遅かったじゃないか。猟兵に対しては、多少期待していたのだかね。」
そわっ
「それで、お前達はいったい何をしに来たんだ。」
そわそわ
「言ってみると良い。気が向けば、君達の望む結果が得られるかもしれない。」
そわりそわり
「まぁ、そんな気に、なる筈もないのだがね。」
ちらっ ちらっ

名前呼ばれ待ちである。

「それでは、かかって来るが良い。死出の言葉の準備は出来ているか?言っておくが、私は強いぞ。猟兵共」

立ち上がる。その動きだけで、勝てるビジョンが塗り潰される。
籠を取る。
動く気力すら奪われる。

頑張れ猟兵
闘え猟兵
君たちのこころと優しさが、きっと世界を救うのだ。

(*この極夜卿ジル・ド・フラテルニオはめちゃくちゃ強いので、ユーベルコードによる攻撃すら、不意をつかねば通りません。)

(攻撃を通す方法はただ1つ。名前や渾名を呼び、集中を途切れさせる事です!)
(魂を込め、祈りを込め、あるいは怨みや憎しみを込めて、彼を現す名を呼んでください。)

(よろしくお願いします。)
御心・雀
こんにちは。ええと、あの。きゃ……きょくやきょっ、きょう……きょくやきょうさん。
(うぅ、うまく言えない……)(ううん、でもがんばらないと)(おなまえ、よんでほしいのだものね)
じゃく、じょうずじゃなくてごめんね。
きょくやきょう……じる、ど……ふらてるにお!
……さん!

あのね、夜のあなた。
きっとあなたを待ってるひとが、いるよ。
だからね、……おかえりなさい。
(うみは、きっとあなたをむかえてくれるよ)



●濃紺色の祈りは揺蕩う

一番最初に着いたのは、セイレーンの少女だった。
「こんにちは、きょきゅやきょゆ……きょくやきょう、さん」
ゆっくりと視線を合わせ夜は笑う。
「青の小鳥、よく来たね。」
さぁおいでと広げられた腕は、そこに行けば緩やかな微睡みがあるだろう誘惑を湛えている。
けれど、雀は首を振る。
「きょくあ、きょく、やきゅ」
ぐ、と拳に力を籠める。
「きょくやきょう、じる、ど、ふらてるにお!……さん!」
なんとか言い切って強い藍が朱の瞳を見上げた。

「ごめんね、じゃくは、じょうずによべない、けど」
幼い少女に願われ、優しい白に託された。
そうして目の前の黒がそれを望んでいる。
だから
「じゃくは、なんどでも、呼ぶよ。きょくやきょ、う、じる、ど、ふらてるにお、さん。夜のあなた。月影のきみ。」
圧倒的な気配が揺らぐ。
うれしいのかしら。少女は安心したように笑った。

「……そんな優しい事を言って良いのかい、青の小鳥。私は君たちが会って来た者たちを使役していた者だよ。」
UCの準備が始まる。
「いいかい、私は美しい者を集め、飾り、愛でる事が好きなんだ。」
解るかい?と美しい顔をわずかに傾げ、雀を見る。
「か弱い人間の心を壊すなんて造作もない。そうして洗脳された弱者はただ私に媚びるだけのペットに堕ちる。滑稽で私は嫌いでは無いのだがね。愛と勇気を持っていた者がただの愚物に成り果てるその様は」
さて、ともう一度少女を赤い目が見つめる。
「青い小鳥がこの城で見て来た者も、そうして私の言いなりになった者達だが……いいのかい?そんなに優しい事を言っているだけで?」
暗い、暗い、夜が迫る。
常人であれば泣いて許しを請うだろう重圧の中で、少女は静かに頷いた。

「いいのよ。だって……」
説明をしようとして、雀の口が止まる。

白装束の持っていた飴は、とても甘くて、大切な味がした。
最初に出会った少女の思う吸血鬼は、とても優しく、穏やかだった。
あと二部屋めの最初には、領地を守るために他のオブリビオン倒してたって言ってた気がするし。
これらの要素を端的に言い表す的確な言葉を、少女は持っていない。

「だって……じゃくのまえにいる、きょくやきょう、じる、ど、ふらてるにおは、あんまりこわくない、もの」
ふふとほほ笑むその顔には、憎悪も嫌悪も殺意も無く、慈しみに似た色だけがあった。

「じゃくは、オブリビオンになる前の、夜のきみはぜんぜん知らないのだけれど……あのね、きっといまのあなたにはね、待ってるひとが、いるよ。」
夜の貴方、月影の君。極夜卿ジル・ド・フラテルニオ。
「だからね、こわいことも、さみしいことも、ないのよ。」
おかえりなさい、と弱が囁く。
海が、揺れる。
きょ~くやーきょう~ じる~ど~~ ふら~てるにーお~♪
やわく、響く。それは帰路を示す光。
骸の海より尚遠く、近い、往く果てを指す光。
それを遮る事はこの吸血鬼にとって容易い。ただ少女の口を閉ざせば良いだけだ。
殴ればいい。衝撃でその音は途切れるだろう。
殺せばいい。水の体であるのなら、その心を壊せばいい。

けれど、そう出来る筈が無い。

なぜならば
きょ~くやーきょう~ じる~ど~~ ふら~てるにーお~♪
声が、歌が、己の名が、響く。

聴き入ってしまう。
呼ばれる事の無かったこの名を、歌にしてまで届けようというその海のかけらに、如何する事が出来ようか。

「くっ」
夜が呻く。
歌は終わり、海は彼の鬼の力を奪う。
還る道にそれは不要であるが故。

「ねぇ、月影のきみ、あのね」
言いかけて、ふと顔を上げる。
次の来訪者だ。
雀は戦線から離れる為に一歩後ろへ下がることにした。
この場所は、複数人で暴れるには少々狭い。

「きっと、海はあなたをむかえてくれるよ」
だってそうでなければこのコードが、貴方の力を奪う筈が無いのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
極夜卿ジル・ド・フラテルニオ
おぬしを倒すためにこの名を呼ばねばならぬというのならば、何度でも呼ぼうではないか、極夜卿ジル・ド・フラテルニオ

…………

なるほど、これはなかなかに厄介な概念防御じゃのう
本来、「敵」と1文字で済むべきところが、「極夜卿ジル・ド・フラテルニオ」では14文字も必要となる

極夜卿ジル・ド・フラテルニオ
この名を口にした分だけ、わしはおぬしを倒すための行動を取れなくなるという仕組みか
ほれ、まだ何もしておらぬというのにもう残り80文字じゃ

極夜卿ジル・ド・フラテルニオよ
おぬしがこれまで民に為してきたこと、決して許されるものではない
我が剣をもって、骸の海に還して残り8文字

消えよ、極夜卿ジ



●俺たちの戦いは以下略

一撃二撃と光剣を振るいながらクレア・フォースフェンサーは考えていた。

「なるほど、これは中々に厄介な概念防御じゃのう」

事有る毎に彼の名前を言わなければいけない。この行動が意味する事を、クレアは理解している。

「ほう?興が乗った。言ってみると良い。」
口角を僅かに上げ、極夜卿ジル・ド・フラテルニオは言葉の意味を促す。

「先ず、その名を呼ばなければ攻撃が通る事は無い。つまりロジックが分からない者には手の出しようが無い。これは充分な脅威になろう。」
キンッと鋭い音が鳴る。極められた業を鳥籠で優に受け止めた際に響いた物だ。
「そしてそれが分かっていたとしても、じゃ。極夜卿ジル・ド・フラテルニオ、その名は14文字必要なのじゃよ。解っておろう。それがどれほど厄介か」

「なるほど。さては貴様、気付いているな?」
斬撃、それをクレアは半歩ズレる事で躱す。

「そうじゃ。我々は通常300文字分の行動しか起こせぬ。敵と一文字で片付く所をおぬしを呼ぶには14倍じゃぞメタで妨害入れてくるとか何考えとるんじゃ極夜卿ジル・ド・フラテルニオ」
ちなみに現時点での文字数は470。実はこの時点でリプレイとしては完成して良かったりする文字数である。
「ククク、まさかメタを持ち出す者がいるとは……侮れないものだな猟兵とは!さぁ本気でかかってこい、800以内に終わらせてやろう!」

文章って長くするより短くする方が難しいって知ってるんだろうか。無茶を言わないで欲しい。
バッサァ外套を翻す極夜卿ジル・ド・フラテルニオをクレアは睨む。
「おぬしがこれまで民に為してきた事、決して許されるものではない。我が剣をもって、骸の海に還し」
あと100文字ぐらいなんで巻きます。
「では行くぞ」

一歩、大きく踏み込むクレアの剣は確かに極夜卿ジル・ド・フラテルニオを捉えている。
その俊足は一瞬、確かに敵の目を抜けた。
光が闇を圧し
「消えよ、極夜卿ジ

文字数は間に合わなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

多々羅・赤銅
きょきゅぱきょうジルドンフラフラ忘れたーー!!!!
(突如殴り込みし薄紅頭! 力任せに呼びつつ抜刀、噛み噛みの癖に鋭さ失わず切り掛かる!)

えーん だめかぁ
やっぱ最初に噛まずに呼べるかなチャレンジすべきだったな〜
ごめんね行き当たりばったりで来てさ〜許して?
でも呼ばれないのって寂しいよね、わかるわかる
うーんジル……もうひとひねり欲しいよね。ジルドンかっこ良くない?
あ、思いついた。さびしんぼうさちゃんって呼ぶのどう?籠とか持っちゃってもうそんなん寂しんぼの象徴だしお目目赤いし〜
え、西洋はうさぎの目赤くないの?うそぉ
あっ斬れた
うさちゃーーん!!
地獄でまた逢おうねうさちゃーーん!!!



●目が合った時、あんまり嬉しそうだったから。

蝙蝠が集まり夜の欠けを塞ぐ。回復にかかる時間は僅か。

「きょきゅぱきょうジルドンフラフラ忘れたーー!!!!」
突如現れた薄紅頭が斬りかかる。岩をも袈裟斬るそれを、極夜卿ジル・ド・フラテルニオは軽く流した。

「えーんだめかぁ~愛は込めたんだけどな~~」
第一関門第二関門を素通りしてきた赤銅は困った。
ほら~噛まずに呼べるかなチャレンジ無視して来ちゃうから~。
「ごめんね行き当たりばったりで来てさ~許して?」
きゅるんとかわいいポーズをする赤銅は、しかし極夜卿ジル・ド・フラテルニオの召喚した者達を即座に斬り捨て返す刀で再度攻撃を試みる。
ああ、まるで空を斬る様だ。
「でも呼ばれないのが寂しいっていうのはね、わかるよ。わかるわかる。」
その言葉は本心だ。魂が、そう語るのだから。
バックステップ。先ほどまでいた場所に、鉄塊に似た刃が落ちる。その大剣を振るった男のミルクティー色は、けれど本人の方がおいしそうだな、なんて。
「今あだ名考えるからちょいまってね~~ん~~~ジルドンとかどう!?」
炎が上がる。うんうん、ドラゴンだもんね。そういうのも格好良くて好きだぞ!
「んダメかぁ~~!」
ああほら前に首を出しちゃダメだって。いやでも偽物ならこんなもんか。
落ちる頭にため息一つ。あっという間に消えてしまって、あとは夜だけが前に居る。
白くて黒いそいつは、それがうれしそうで、楽しそうで
「あ、思いついた。」
ぽん、と赤銅が手を打った。
「さびしんぼうさちゃんって呼ぶのどう?」
「は?」
これには極夜卿ジル・ド・フラテルニオもびっくり。
「いやだってさ~籠とか持っちゃってそんなんもう寂しんぼの象徴だしお目目赤いし~」
「目が紅い事と兎がどう繋がると言うんだ……?」
「えっ、この辺のうさぎってもしかして目赤くないの?うそぉ」
実は西洋のウサギは主に野ウサギを指し、そして野ウサギの目は基本的に黒、よく見て茶色なのだ。ピーターなラビットとか分かりやすいですね。

「まぁそんな訳でお前はさびしんぼうさちゃんだ!よろしくなさびしんぼうさちゃん!ちなみに私は多々羅赤銅!」
言いながら斬りかかればあっけに取られていたのかサクッと斬れた。
「え!?今のありなの!?うさちゃん!?」
敵の高速再生で傷が治りきる前に再度斬りかかる。
斬れるわ。
「斬れたわ!!うさちゃーーーーん!!かわいいねうさちゃーーん!!」
呼びながら玉子雑炊を振るう赤銅。ズバズバ斬られる極夜卿ジル・ド・フラテルニオ。
最後に大きく振り抜かれた刀で、腕が一本落ちて行く。
それを確認した侍は、2つの足音に大きく後ろへ飛び退いた。

「よし!私おしまい!地獄でまた逢おうねうさちゃん!!!」

じゃ!と手を振り駆けていくピンク頭を、極夜卿ジル・ド・フラテルニオはえっおいちょっとまてと言いながら見送る事しか出来ない。

そうして鬼が去ったその後からは、黄金輝く太陽がひとつ、顔を出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラビット・ビット
【推し💙】
アドリブ◎
やったぁ!込めるのは親しみだけじゃなくていいみたいですよアレスさん!
これなら勝てますね!!楽勝です!
光って音のなる赤星DXを手渡したのでギャグ依頼成分もバッチリです

ところでビットくんに近かった者って誰ですか?
夢半ばで消えてった自CPの者ですか?
それならビットくんと気持ちは一緒のはず
アレスさんの故郷の人だって同じはず!
だっていつだってビットくんは推しの味方!!ですからね!
というわけで下がっててって言われたしここで声援を送りながらアレスさんを応援しませんか?
大丈夫大丈夫、ジルフラさんの名前を適度に呼べばジルフラさんの味方っぽくもあるし守ってる判定貰えますって~!
この日のために鍛えた(過言)言いくるめをもって
全ての霊とサイリウム振りながら応援ですよ!
いけー!アレスさん!かっこいい!
ジルフラさんは…えーっとかおはいい!ジルフラさん!
短いあだ名でよかった字数は死なないジルフラさーん
これでアレスさんの攻撃が通りやすく…!?(振り向き)

は~アレスさんがかっこよくて
ビットくんが死ぬ


アレクシス・ミラ
【推し💙】
アドリブ◎

ああ。ありがとう、ビットくん
君という友から授かったこの赤星で切り開いてみせるよ

…僕もあの時の僕ではないぞ
極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!
魂で吠え、先制の斬撃

そのまま次の攻撃へ…いけなかった
近しかった者
優しい故郷の人達
彼らの姿に震えてしまいそうになる
─けれど
攻撃を、呪詛を耐えて
受け止めて
微笑う
…諦めていないさ
それに僕には約束がある
守ると誓った…この先も名前を呼びたい人達がいる
怒りにも悔恨にも呑まれず
想いは決意に
痛みを超えて
前へ征く
ひとりで戦っていないから
だから…見ていて

指輪に唇で触れる
真の姿、オーバーロード
暁、朝空…夜空の六枚光翼を背に
願うは運命を変えるいちばんの星
【貴方の青い鳥】
この剣は護る為に
受け止めた力を祈りと浄化の光に変え
呪詛のみを祓い、霊の解放を狙おう
皆を取り戻してみせる
極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!

守りが緩めば光の速さで羽撃こう
たとえ貴様が相手だろうと
何度だって僕達が闇を斬り祓ってやる
極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!!
全力の光の一撃
夜明けをこの手で迎えに行く!



●Day break front line.

極夜を睨む青の瞳が、憎しみに染まりかけ鈍くなる
「やったぁ!込めるのは親しみだけじゃなくていいみたいですよアレスさん!」
前に、それはそれは元気な声が後ろから響いた。

「これなら勝てますね!!楽勝です!」
ふんすふんす!と団扇片手にてぽてぽ現れたうさぎ。それこそがオタク、ラビット・ビットくんだ。
その声のおかげだったのだろうか?そちらを見る為に下がった空に陰りは無く、ただ快晴だけが広がっている。
「……楽勝、だろうか」
「ええ、ええ!楽勝ですとも!その赤星DXがあればギャグ依頼成分もバッチリですし!なによりアレスさんは強いので!!」
ふ、と笑う黄金は、それこそ太陽と呼ぶに相応しい。
「ああ。ありがとう、ビットくん」
肯定。これは自らと、そして大切な者の尊厳を賭けた戦いである。
剣を掲げ、宣言する。

「君と言う友から授かったこの赤星で、切り開いてみせるよ。」

違えぬ約束と共に剣がスイッチオンな音を出す。
こうして戦いの幕が開けた。

「茶番はその程度で満足か?もっとやりたいなら見ていてやっても構わないが」
腕が完全に回復した極夜卿ジル・ド・フラテルニオは優雅にワインをくゆらせていた。
傷が痛む。幼き日母を亡くすに至るあの傷が。
何も出来ず全てを失ったあの痛みが。
だが
「…僕もあの時の僕ではないぞ」
キュインッ 発光する赤星DXを構え、アレクシス・ミラが一歩を踏み出した。
勿論その軌道も、剣筋も、何もかもが夜には解る。当たり前だ。闇の中では光こそが何よりも見えるのだから。
ワインを置き、一歩避けようとするその姿に向けて魂が吠える。
「極夜卿!ジル!ド!フラテルニオ!!!」
お前は殺す。ここで殺す。例えそれが過去の残骸であろうとも!!

ああ、これこそが、待っていた音だと夜は笑う。
ただ畏怖が無い事は残念だと、そんな事を少し思っている間に、切っ先が届いていた。

ズパァンッ!気の抜ける音が剣から出てエコーする。
初撃、成功。
流れる様に次の攻撃へと移ったアレクシスは、けれど振り抜く事が出来なかった。
「アレス……?」
線の先に、大切な者の顔が在った。
口を開こうとする。その名前を呼ぼうとする。
けれど、閉じた。ここでその名を呼ぶ訳には(MSの規約的にも)いかないのだ。
次々と現れる気配に顔を上げる。
僕を庇った母が見える。首を斬られた友の母、剣を残した父。僕らと笑っていた少女が、あの頃はまだ年上だった姉貴分が、友に薬を分けた男が、助け合う事でしか生きられる道が無かったあの日の街の人々が、太陽を睨む。
どうして?と聞こえたかもしれない。いいや、誰もそんな事は言っていなかったかもしれない。
どうしてあの日最後まで吸血鬼に縋りつかなかったのか、どうしてあの日勝てもしない相手に斬りかかろうとしたのか、どうしてあの日連れていかれたのがあの子だったのか、死ななければしけないのが自分だったのか。何故のうのうと太陽の下で生きているのか。星空さえ見えない夜に殺されていく私たちを、どうして助けてくれなかったのか。
「アレス」
美しい声が耳に届く。ああ、それでも本人の方が、曇りない夜空の様な声だと思う。
何か言おうとして口を閉じる。それでも何かを言おうとする口を、鳥は自分で殴り飛ばうと拳を上げる。
その拳を掴んで、いいよ。と灯の声が言う。
自分を攻撃しろと言う。
ああ!それがどれほどこの偽であろうと青星を!街の人間を!傷つける事か!
「おまえっ、そういう、ところが……!!」
「僕は君を……例え本物でなくとも、傷つけたくない。僕は君の盾だ。」
特にそんな傷ついた顔をしていれば、余計にそうだ。
「……っ!」
「はーーーい!そこまでそこまででーーす!!」
何かを吠えようとした美しい生き物の声を、元気な声が遮った。
ビットくんが団扇を振ってシリアスすぎる空気にギャグの気配を送り込む。
「あんまりその雰囲気続けてると書けなくなっちゃうって泣いちゃう気配があるのでそこまでです!ビットくん的にはずっと見ていたいんですけどね!!?」
ありがとうビットくん。君はいつだって我々の味方だ。本当にいつもありがとう。

「そこの霊的な方々!ビットくんの話を聞いてください!」

~~そして説得タイム~~

「いける訳ねぇだろ!?」
「いやいけますいけます!適度に名前呼んどけばジルフラさんの味方っぽいですしいけますって!」
「ほんとかよ……」
「本当ですって!これはギャグシナリオなんですよ!?あと基本的にプレイングに書いた事は優先されて守られるんです!」
「プレ…?なに……?」
「とにかく!大丈夫ってことです!ほらこれ持ってください!よし!オッケーです!」
「なんだこれ?」
「サイリウムです。ふふーん、色はちゃんとセッティング済みですから安心して振ってください!」
「お、おぅ」
「さぁ下がりますよ!ここに居ては顔だけは良いジルフラさんとすごくかっこいいアレクシスさんの戦闘の邪魔になりかねませんからね!!」
ほーら邪魔しちゃ悪いですからね~、ジルフラさんの視線遮るとかね、守ってない判定されちゃうかもしれませんからね~と誘導され人々は扉の方へと移動するのだった。

~~説得タイム終了~~

「さ!ビットくんたちの事は気にせず戦ってくださいアレクシスさん!」
左手に団扇、右手にサイリウム。ビットくんの戦闘態勢整えり!
「ありがとうビットくん!待たせたな極夜卿ジル・ド・フラテルニオ!そうだ、僕はひとりで戦っている訳じゃない!」
意地でも自分を攻撃しようとしなかった青を思い出しながら、指輪に唇で触れる。
真の姿、オーバーロード。
それは例え出来なくとも、すべてを成す為のおまじない。

空の時間全てを背に、太陽は在った。
願うは運命を変えるいちばんの星。
青い鳥が囁いた。それは春風よりも確かな、光の調べ。
その声に、浄化の眩さに、霊の心は凪いで行く。
ありがとう、なんてお礼が聞こえた様な、気がした。
あと大興奮で声すら出せてないビットくんの居たような気がした。

切っ先を吸血鬼へと向ける。

デュイン 赤星DXが鳴いた。
「これは、闇を払う戦いだ!」
デュイン デュイン デュイン
力を溜めているのか、音は数度響き、その度光が眩くなって行く。
ーー承認。

「いくぞ!極夜卿!!ジル・ド・フラテルニオ!!!これが僕の、全力、だ!!!!」

当たるか当たるか等は関係の無い、ただ莫大な力を込めた一閃が柱へと変わる。
ゴッと音が聞こえたのは、光が過ぎ去ってからだったかもしれない。

光は壁を突き破り、空を灰色に覆う雲さえ払い、極夜の消え去った城に太陽を招く。
背中の翼は、力を使い切ったからかいつの間にか消えていた。
朝焼けを運ぶ風が吹く。
花々を揺する様にビットくん(死体)の毛を揺らす。

「何度だって、夜明けをこの手で迎えに行く。ああ、行けるとも。僕達はお互いの剣であり盾であり、光なんだ。」

今一時の快晴を、けれどいつか一面の青空に。
その為に彼らは戦うのだ。これまでも、これからも。


お疲れ猟兵、がんばれ猟兵。
これにて此度の阿保騒動、幕引き終了お元気で。
お付き合いどうもありがとうございました、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月27日


挿絵イラスト