爆炎の中の王子様と遅れてきたリア充爆破犯
●爆弾を踏んではいけない
「こことここは通れないから、ここは安全で、こっちは……ダメだ、確定できない。迂回するしか……」
小柄な少年が、タイルの敷き詰められた不思議の国を歩いている。その手には一枚の地図が握られており、彼がその地図に何かを書き込むと部屋のタイルの上に旗が立った。そしてそれとは別のタイルに足を踏み出すと、手の中の地図に数字が表れる。その数字を確認しつつ、少年はまた地図に書き込みを加える。
「待ってろよ、クララ……!」
そしてそこからはるか離れた場所。まるで黒い粘液で作られたかのよう体を持った人魚の女が同じような地図を持ち、刻々と描画の変わるそれを眺めていた。
「あぁ、凄い凄い。貴女の王子様はとっても頭がいいのね」
馬鹿にしたように言う人魚。その周りには多数のアリスが拘束されており、その中でも特に厳重に拘束され、特別扱いとでも言うかのように他のアリスと離された大柄な少女に人魚は話しかけていた。
「貴女の王子様は、たった一人の大切なお姫様と、哀れな大勢の民、どちらを選ぶのかしら?」
「だめ……ダイヤ、きちゃだめ……!」
●爆発で死ななきゃそれでいい
「あなたのメルでございます。本日も猟書家の一人を叩き潰していただきます」
そう言ってメル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が配るのは、『バクダン』というゆで卵をすり身で包んだおでん種だ。
「本日向かっていただきますのはアリスラビリンス。相手取っていただきますのは『愛獄人魚マリーツィア』という猟書家でございます。彼女は王子様……ジョブの王子様ですね、に特にご執心で、今も一人の王子様を捕らえ、自身の作った『死の遊技場』なるものに強制的に挑ませています」
アリスにデスゲームを強いるのはアリスラビリンスの常。だが、猟書家が主催となればその目的も一味違う。
「彼女の目的は死の遊戯の果てに王子様に『捕らえた他のアリスの内誰を助けるか』という選択をさせて心を壊し、王子様の力の源でもある『未来への希望』を奪い強大なオウガへと変じさせることです。そうすることで、彼女のボスである『鉤爪の男』の望む『超弩級の闘争』とやらのための駒とするつもりのようで」
闘争を至上とするする鉤爪の男。卑劣漢でこそないが冷酷な戦闘狂である彼の事、目的のためなら部下がどれほど残酷な手段を用いようと意に介しないのだろう。
「まず皆様には、タイルの敷き詰められた不思議の国へ行っていただきます。ここは本来はタイルの下に色々楽しいものが隠されたくじ引きの国のようなところだったのですが、現在はマリーツィアによってタイルの下には爆弾が敷き詰められています。ただ、全てのタイルに爆弾が隠されているわけではなく、爆弾のない所には『隣接するタイルにいくつ爆弾があるか』の数字が書かれています。王子様は現在ここを爆弾を踏まないように慎重に進み奥に捕らわれたアリスの下へ向かっていますので、ここを突破し、奥に捕らわれたアリスを助けてください」
どこかで聞いたようなゲームだが、それはゲームだから許される状況なのだ。現実に人間を放り込むなど言語道断。だが、このゲームに攻略法はあっても必勝法はないことも、一部の猟兵は知っている。
「あ、突破して欲しいとは言いましたが、ゲームをクリアしろとは言ってません。わざわざ猟書家の遊びに付き合ってあげる必要などありませんから。爆弾だって普通のアリスをやっと殺せる程度のもの。皆さんなら痛いは痛いですが、一発二発じゃ死にはしないでしょう」
つまり『死の遊技場を通り抜ける』『王子様とアリスを助ける』この二点さえ達成すれば手段は問わない、ということだ。
「遊技場を越えたらマリーツィアとご対面です。彼女は愛し合うものを引き裂くことに喜びを覚え、その歌声で愛を否定し憎悪に変えたり、愛情深いものほど深いダメージを与えてきたりします。過去に何があったかは分かりませんが、愛というものに否定的な言動をとる割に自分は王子様にご執心となかなか面倒くさい性格でして……まあ、単にモテない故のひがみかもしれませんけどね?」
猟書家の事情など知ったことではない。とにかく敵は歌でこちらの愛の感情を操り、それで攻撃してくるということだ。勿論ユーベルコード故に耳を塞げばいいなどという単純な話ではない。強敵の操る攻撃との認識をしたうえ、明確に対処をする必要があるだろう。
「王子様は今は希望を折られかけ体もボロボロですが、皆さんが希望となれば力を取り戻し共に戦ってもくれるでしょう。もちろん実力は皆さんに遠く及びませんが、足手まといにはならないはずです」
絶望を希望に、あるいは意趣返しの手伝いでも、とメルは微笑む。
「マリーツィアはもし王子様がやってきたら、一人のパートナーと大勢の見知らぬアリスの命を天秤にかけさせるつもりの様です。猟兵の皆さんならこういう時の答えは決まっていますよね? それでは、両取りよろしくおねがいします」
そう言ってメルは頭を下げ、猟兵たちをアリスラビリンスへと送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。最近続きものばっかり書いてる気がしますがご容赦ください。
今回はアリスラビリンスにての猟書家戦です。今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス(全章共通)……王子様を励ます、あるいは共に戦う』
第一章では敵の作った『死の遊技場』を、王子様を助け突破していただきます。ゲームの内容はぶっちゃけますとリアルマインスイーパー。パネルは上に何かがかぶさった瞬間『乗った』と認識され開きます。ジャンプや飛行だけで一足飛びとはいきません。ただしOPでもありますように、真面目に挑む必要はありません。どんな手を使ってもいいので王子様を助けここを突破し、アリスの元までたどり着いてください。もちろん正面から解いてもOK。
第二章では猟書家『愛獄人魚マリーツィア』とのボス戦です。彼女は歌を武器にし、精神系の攻撃が多いです。王子様は疲弊していますが的確に指示すれば十分戦力になります。戦線に出したくないなら救出したアリスの護衛を任せるなど、何かしら仕事を与えてあげた方が(プレイングボーナス的に)良いでしょう。
以下、王子様と捕らわれているアリス詳細。
赤石・大弥(14) アリス適合者の王子様×探索者。背が低く体力はないものの、頭が良く計算高い考えもできる(ただし所詮は一般人レベル)。本来は頭脳労働担当で、力仕事はパートナーに任せて二人で生き延びてきた。
とある事件(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=24278 読まなくてもシナリオには支障なし)にて猟兵と面識があり、猟兵には遠く及ばないものの並のアリスよりは若干強い。パートナー以外にも人質がいることは知らない。
クララ・ブラックウッド(15) アリス適合者の力持ち×スーパーヒーロー。大柄巨乳の筋肉質で、体力があり力は強いがやや指示待ち気質。大弥の出す指示の元、肉体労働や戦闘を担当してきた。大弥と同様猟兵の事は知っている。(注・彼女は今回は救出できても戦いには参加しません)
その他のアリス マリーツィアがかき集めてきた迷い込んできたばかりのアリス達。二人とは面識がなく、『大事な一人』『知らない大勢』の二択を迫るための人員。恐怖に支配され切っているため、救出後は指示には全て従う。
それでは、爆発的なプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『死の遊戯場を打ち破れ』
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POW : 死の遊戯を強引に破壊するなどして、人質を救出する
SPD : 死の遊戯を速攻で突破し、人質を救出する
WIZ : 死の遊戯の裏をかいて突破し、人質を救出する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「くそ、いつか来るとは思ったけど……!」
地図と目の前のタイルを交互に睨み歯噛みする王子様の少年、赤石・大弥。
今まで数字の並びから爆弾の場所を割り出し進んできたが、とうとう考えてもどうにもならない、答えが複数ある数字の並びが来てしまった。戻ろうにもこの盤にはもう迂回路もなく、こうなれば最早運を天に任せるしかない。
「クララ、今行くからな……!」
ともに今まで生き延びてきたパートナーの少女の顔を浮かべながら、決死の一歩を踏み出そうとする大弥。
まだ間に合う、こんなゲームに付き合う必要などないと彼に教え、この世界の奥に捕らわれたアリス達を助け出すのだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
何とか間に合った、でしょうかぁ?
大弥さん、お久しぶりですぅ。
方法は色々と有りますが、今回は此方の手段ですねぇ。
まずは大弥さんを励ましつつ私の後ろに下がっていただき『FSS』を起動、周囲の『タイルの上』を飛行させますぅ。
『飛行しても被さった時点で反応する』なら、この『FSS』にも反応し爆発するでしょうが、この程度の威力なら全く問題ありません。
爆風等の影響は【仰域】で後ろの大弥さんを庇いつつ防御、後は『爆弾の補充』等に備え判明した安全なルートを通りつつ、大弥さんに後ろからついてきて貰いますねぇ。
吸収したエネルギーは『祭器』に供給、『猟書家戦』に備えましょう。
カツミ・イセ
僕の神様は言ったよ。「『ゲームだからこそ許されるもの命がけのもの』を現実でやる場合、めちゃくちゃに破壊していい」って。
というわけで、ルール破壊していくね。
UC使って、多くの『僕』を召喚。
『僕』たち。目の前のパネルは『ゲームだから許されるものを現実でやる』なの。わかるね?
うん、やっぱり僕だね。ルール無視して、真っ直ぐ目的地へ向かってる。
…この多くの『僕』、水でできてるから、たぶんどこかで爆弾も湿気る気がするんだよね。
あ、アリスの…えーっと、赤石さんだっけ。進む場合は僕のあとに着いてきてね。
僕、これでも人形だし、多少壊れても大丈夫なんだよ(胸はり)
怨燃・羅鬼
今日はらきちゃん☆猟兵としてお手伝いに来たよ!ぶい☆
アイドルは皆の希望☆つまりらきちゃんが王子様の助太刀すれば希望100倍百人力だネ!
ということでここはらきちゃんにお任せ!
鎖付きのふぁらりすくんをグルングルンして地面にえいや☆【重量攻撃】
こうすれば安全な場所か確認できて楽ちん☆らきちゃん頭いいネ!
さぁ!逝くよ王子様☆
燃やせ~燃やせ☆嫉妬の心に火を点けて~☆
愛は激しく燃え上がるもの…じゃあ愛獄なら激しく燃やさ亡きゃネ!くふふ
☆
パートナーを人質に取られ、死の遊戯に挑まされている王子様の少年赤石・大弥。ここまで頭と体を散々に酷使して進んできたが、ついに運に縋るしかない状況に追い込まれた彼は、それでも大切な人を助けるために無謀なる一歩を踏み出そうとする。その足を、聞き覚えのある声が押しとどめた。
「何とか間に合った、でしょうかぁ?」
何か月も前、恐怖の中逃げ惑うだけだった自分と仲間を守り導いてくれた声の一つ。その声に足を止めふり返ると、そこには間違いなくその時自分を助けてくれた者の姿があった。
「大弥さん、お久しぶりですぅ」
苦難の中現れた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)に、大弥は泣きそうな顔で縋りついた。
「助けてくれ……クララが、クララが……!」
その姿に、るこるは一度頷いて自分より低い位置にある彼の頭を撫でた。
「僕の神様は言ったよ。「『ゲームだからこそ許されるもの命がけのもの』を現実でやる場合、めちゃくちゃに破壊していい」って」
そして聞こえるもう一つの、今度は聞き覚えのない声。年齢を加味しても小柄な大弥よりさらに下から聞こえるその声は、しかし確たる自信と決意に溢れていた。
カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)は自身に満ちた表情で大弥を見上げる。その表情にあるのは、決してただの自惚れではない確たる何かに裏付けられた自信。この悪戯程度に命を奪う世界でそれを持ち続けられるのは、そこに確かなる力があるからだと、大弥は自分を救ってくれた者たちとの出会いから知っていた。
そしてもう一つ、対照的に全く気負いのない底抜けに明るい声も聞こえてきた。
「今日はらきちゃん☆猟兵としてお手伝いに来たよ! ぶい☆」
怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)が大弥の周りを、ぴょんぴょんと飛び回る。あざとく笑いかけるその姿に、大弥は思わず肩の力が抜けてしまった。
「アイドルは皆の希望☆つまりらきちゃんが王子様の助太刀すれば希望100倍百人力だネ!」
さらに大弥にむかってポーズを取り、ぱちんとウィンクする羅鬼。その姿は今まで命すら捨てる覚悟であった大弥の心を程よく砕けさせ、頼っていい、覚悟を決め過ぎなくていいとこの戦場に立つ彼に余裕を与えていた。
「……ありがとう……この場所は」
「あ、言わなくても大丈夫ですよぉ」
この場所について説明しようとする大弥を、るこるが制する。それは言われなくてもここがどういう場所か分かっているということ。そして、それ以上に取るべき手段があるということ。
「方法は色々と有りますが、今回は此方の手段ですねぇ」
「というわけで、ルール破壊していくね」
「ということでここはらきちゃんにお任せ!」
三人は顔を見合わせ一度頷きあい。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて供物を捧げましょう」
「僕の神様から賜りし水の権能、その一つ。僕と似た者たちをここに」
「ふぁらり~す☆はんま~☆」
各々のユーベルコードを一斉に目の前の遊技場へと放った。
るこるの浮遊兵装『FSS』がタイルの上へと進み、パネルを開けていく。勿論すぐに爆弾の隠されたパネルに差し掛かりそれを起爆してしまうが、もとより防御が本分のFSSにこの程度の爆風は通じない。
「『僕』たち。目の前のパネルは『ゲームだから許されるものを現実でやる』なの。わかるね?」
カツミと同じ姿をした人形たちが、まっすぐ出口へ向かって進んでいく。やはりすぐに爆弾を踏んで吹き飛ばされるが、この人形たちの素材は『水』。爆散したその体はすぐに爆炎へと覆いかぶさって鎮火し、さらには他の爆弾にまで湿気を撒き散らしていく。
「うん、やっぱり僕だね。ルール無視して、真っ直ぐ目的地へ向かってる」
その姿に、頼もしい、とばかりにカツミは頷いた。
「こうすれば安全な場所か確認できて楽ちん☆らきちゃん頭いいネ!」
羅鬼の鎖付き拷問具『ファラリスくん』がえいや☆とばかりに地面に叩きつけられる。その衝撃はタイルのみならずその下にある地面を、爆弾があろうとなかろうと叩き壊して瓦礫に変えていった。
猟兵たちの圧倒的な攻撃が、死の遊技場を壊し、破り、蹂躙していく。猟兵たちが大弥に伝えたかったこと、即ち『ゲームに従う必要はない』。三人の興す圧倒的な破壊は、巻き上がる炎と轟音、そしてそれさえものともせぬ三人の姿によってそれを雄弁に大弥へと伝えていた。
「大弥さん、大丈夫ですかぁ?」
後ろに下がらせ、爆炎を届かせないようにした大弥に尋ねる。彼の体は確かに傷ついているが、それは猟兵たちが来る前についたもの。今遊技場で起きている大爆発は、彼に一つの傷も負わせてはいなかった。
「あ、アリスの……えーっと、赤石さんだっけ。進む場合は僕のあとに着いてきてね。僕、これでも人形だし、多少壊れても大丈夫なんだよ」
圧倒的な破壊の果て、この場のタイルのほとんどは壊れ、安全な道が目の前に曝け出されていた。カツミは大弥を先導するように、その道を歩き始める。胸を張って歩くその足取りに迷いはなく、例え壊し残しがあろうと自分が受ければいい、後ろの者を守れるなら何の躊躇いもないという自信と自負が溢れる姿を見せていた。
神の教えがそうだから、自分もそうするのが正しいと思うから、カツミは壊した道を踏みつけていくことに躊躇はない。その姿は、正に神の如き正しささえ感じさせる堂々としたものであった。
「さぁ! 逝くよ王子様☆」
そして大弥の背を羅鬼が押し、共に歩き始める。
「燃やせ~燃やせ☆嫉妬の心に火を点けて~☆」
アイドルを名乗る彼女らしく歌いながら歩くが、その歌詞は物騒極まりない。あるいはこの焼け野原となった地には、これこそがふさわしいのかもしれないが。
「愛は激しく燃え上がるもの……じゃあ愛獄なら激しく燃やさ亡きゃネ! くふふ☆」
愛を否定し、爆弾の群れに人を放り込んだ者にその名にふさわしい報いを与えてくれよう。陰の気に従い罪人を燃やし殺すことを本当の喜びとする彼女の本質を歌声に乗せ、壊れたゲーム会場を王子様と共に進む羅鬼。
その歌声を仲間たちも否定はしない。何故なら、今王子様は怒り、敵の定めた法を破るべき時なのだから。
力と破壊と怒りは、正しき力として王子様の心に希望を蘇らせたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シウム・ジョイグルミット
[SPD]
困っている王子様発見!
さぁ、力を合わせて囚われのお姫様を救いに行こーっ!
このゲームのルールは聞いてきたけど、王子様の方が詳しいよね
ボクが前を歩くから、安全なルートがあったら後ろから教えてくれるかな?
確定ルートが無い時は『Lucky Star』の出番!
考えても仕方ないなら、自分の【野生の勘】を信じて進むだけだね
コインを弾いて表が出たら進むっていうのもいいかも
勿論、ボクが先に移動して爆発しないか確認するよ
王子様の安全を確保しつつスリルを楽しむ、一石二鳥ってやつだね
ゲームに付き合う必要ないって言われたけど、クリアしたいよねぇ
突然現れた時計ウサギに突破されたら、きっと猟書家も悔しいだろうし♪
「困っている王子様発見! さぁ、力を合わせて囚われのお姫様を救いに行こーっ!」
タイルの道を進む王子様を見つけたシウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)は、明るく彼に声をかけた。戸惑う大弥の前に回り、まるで先導するようにしてから振り返るシウム。
「このゲームのルールは聞いてきたけど、王子様の方が詳しいよね。ボクが前を歩くから、安全なルートがあったら後ろから教えてくれるかな?」
まさにアリスを導く時計ウサギのように、前に立って歩くシウム。その後ろで、大弥は戸惑いながらも地図とタイルを見比べながら彼女に指示を出し始める。
「あ、えっと、ここは通れて、ここは駄目で……数字の並びで見ただけで確定できるところがあるから、そう言うのを優先的に開けて進んでいくんだ」
大弥の指示に従い、とんとんとタイルを踏んでは開けていくシウム。軽やかなそのステップは、大弥の指示の速さも相まってまるで踊るように軽快だ。
だが、しばらく進んだところで大弥の指示が止まる。
「あ……ここはもう数字じゃ判断できない。こことここ、どっちに爆弾があっても数字の並びが成立しちまう。こういう所は考えても解けないから、少し戻って迂回路を探さないと……」
進むほど盤面が複雑になっていくのか、再度出てきた正解を出せない数字。だが、戻ろうとする大弥を止め、シウムはその爆弾候補の二か所をじっと見つめた。
「なるほどなるほど、考えても仕方ないなら、自分の【野生の勘】を信じて進むだけだね。コインを弾いて表が出たら進むっていうのもいいかも?」
あくまでその道を行かんとするシウムに、大弥は怪訝な顔をする。だが目の前の相手が自分の計り知れない力を持っていることは分かっているためか、その行動自体を止める気はないようだ。
「運が悪ければ負けちゃうかもしれないなぁ……でもね、こうなってからが強いんだよねーボクって♪」
シウムはコイン『Heads or tails』を少し軌道を付けて指ではじいた。それはくるくると回転しながら一つのタイルの上へと飛んでいく。上に何かが差し掛かった瞬間乗ったとみなされるタイルはコインにも反応して開き、その中にあったものは。
「はい、こっちが正解だね♪」
1の数字が書かれた床の上に、表を上にしてコインが落ちていった。そのコインを拾いながら、シウムはその床の上に足を進める。
「ただの勘……じゃないよな……?」
「ううん、ただの勘、だよ? ただしとびきり当たる、ね♪」
運と勘に頼るしかない状況なら、その運と勘を強化すればいい。自らの上に幸運の星を呼び寄せるシウムの【Lucky Star】は、どんな知識も計算も通じないそれさえ呼び寄せ、理不尽なゲームを正面から解いて見せた。
そのまま新しい道を爆発しないかを確認しつつ、もし爆弾があっても王子様には影響がないように先導しながら進んでいくシウム。ユーベルコードで強化したとはいえ所詮勘は勘。確証があるわけではないし億千万に一つの失敗はあるかもしれない。そのスリルと、そうなった時の後方の安全確保のため、シウムは前に立って先へ先へと進んでいった。
「ゲームに付き合う必要ないって言われたけど、クリアしたいよねぇ。突然現れた時計ウサギに突破されたら、きっと猟書家も悔しいだろうし♪」
楽し気にそう言いながら、シウムは次々タイルを開けていく。理不尽で非道なルールの中あえて筋を通して勝つ。それはこの上なく難しく、そしてなし得た時には最高に胸のすくもの。
その誇り高く、そして敵にとっては何より冷酷で屈辱的な解法でシウムは死の盤面に希望の道を作り、王子様にその道を行かせるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイク・リー
※アリス、ミラーと行動
「事情は分かっている」
まだジョウのままで行動。記憶から前回の事を読み取っているので説明して行動。
「この遊技場を強行突破するか」
ウルフに大弥を乗せて突破、操縦はベガに任せる。操縦席に乗せておけば安全の確保と戦力になると考える。
乗せる理由としては疲労を癒すのもあるため。更に言えば元凶と対峙した時に戦力と壁役、どこまで有効か分からないが直接対峙させるよりマシだろうと考えたため。
アドリブOK
アリス・スラクシナ
※ジェイク、ミラーと行動
「生きていてなによりだ」
あの一件以来、会うことが無かったので気になっていたがまた会えてよかった。
「ああ、色々と積み重なって……戦ってはいる」
捕まっているクララたちの救助を優先すると伝える。詳しい事は後で説明する。
「なるほど。安全かつ最速で着ける方法だな」
なにより相手の用意したゲームに付き合う程、暇ではないからな。
ここを抜けたとしても、次の動きを考えねば。
アドリブOK
ベアトリス・ミラー
※アリス、ジェイクと行動
「数はいますし、助けるのは可能でしょう」
その前にここを抜ける必要がありますけど。
強行突破で前進することに。時間は惜しいですからね。
「その時は、赤石さんたちも手助けしてもらいます?」
様子がおかしいことぐらい気づいてました。
「精神的な問題というより、別の何かがあるのではと」
今は捕まってる人たちを助け出す、それが優先ですね。
「助けようとする意志と魔術?」
予想ですけどね。あとアリスさんも抱え込まない様に言っておきましょう。
アドリブOK
死の遊技場も残り僅か。最後の盤面を前にした大弥の前に、見覚えのある姿が再び現れた。
「あ……師匠!」
その呼び声を受けたのは、ジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)。彼もまたかつて逃げ惑うだけだった大弥とそのパートナーを助け、戦い方を教えたことがあった。大弥がジェイクをこのように呼ぶのは、その時のことを覚えているからと、他人に特別な呼び方をしてみたいという彼の年齢相応な心、それが発現するだけの余裕が戻ってきていることの現れであった。
「生きていてなによりだ」
アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)もその時に出会った彼に対し声をかける。
「あの一件以来、会うことが無かったので気になっていたがまた会えてよかった」
一度共闘したことがあるが、その戦いの最後に行方知れずになった彼ら。その瞬間を見ていた故その身をずっと案じていたが、こうして無事……とは言えずとも生きている姿を見て、一先ずは安心した。
「色々教えてもらったおかげでなんとか生き延びていられた、す……あ、でも、今、クララが……!」
今まさに相棒が危機にさらされていることを訴えようとする大弥だが、その彼をアリスが宥める。
「落ち着くんだ、分かっている」
「あ、すんません……あ、そう言えば、後の人は……」
一旦勢いを収めた後、以前アリスやジェイクと一緒にいた者の姿が見えないことに気づいた大弥が不安そうな声を上げる。それに対し、アリスは少し顔を曇らせて答えた。
「ああ、色々と積み重なって……戦ってはいる。三人とも」
自分が相棒を捕らわれているから不安になったのだろう彼を落ち着かせるため、アリスは他の者もこの場にいないだけだと説明する。だが、一般人としては頭の切れる大弥はその最後の言葉を聞き逃さなかった。
「え、三人……」
「俺はジョウだ。だが事情は分かっている」
今ジェイクの肉体を使っているのは別人格のジョウ。だが記憶から前回の事は読み取っているし、彼の意思を無碍にするつもりはない。そのことを告げると、大弥は一度頷き、ジョウを信頼する意思を見せた。
「捕まっているクララたちの救助を優先する。細かい事情は後で教える」
「数はいますし、助けるのは可能でしょう」
アリスの言葉を受けそう言うのは、唯一大弥と面識のないベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)。彼女はゆったりとした、しかし揺るぎない意思を潜ませる口調でそう言った。その言葉に、初対面ながら大弥は不思議な安心感を感じ、そして同時にアリスもまた、まるでその言葉を自分に言われたかのように頷いていた。
「その前にここを抜ける必要がありますけど」
そうして前に並ぶタイルを見るベアトリス。そこに並ぶのは、今まで抜けてきたのと一見同じような盤面。だが最初に踏めと指定されている場所に一歩を踏み出した大弥は顔をしかめた。
「いきなりこれかよ……!」
その一歩以外はどれ一つ空かず、そしてそこに書かれたのは4の数字。そこを囲む5つのタイルから勘だけで一つの正解を探せと言う、最後にして最悪の盤面のスタートを告げる数字であった。
「まあ、これは時間が惜しいですね」
ベアトリスはやはりのんびりと言うが、その態度に困った様子は一切見られない。そうしてジョウに目配せすると、ジョウもまた心得たという風に頷いた。
「この遊技場を強行突破するか。お前はこれに乗っていろ」
ジョウが呼び出したのは、鉄製の巨大な一人乗り戦車。『ウルフ』と名を持つそれに大弥が乗ると、操縦席から声が聞こえた。
『プログラムに従いこれより最短距離を直進します』
それはこの機体を操縦するAI『ベガ』の声。その声と共にウルフは直進し、足場の周囲を囲む5つのタイルを纏めて踏みつけた。
当然大爆発が起こるが、ウルフは全く揺らぐ様子すらなく進んでいく。
「なるほど。安全かつ最速で着ける方法だな」
アリスも安心したように言う。元はガラクタ同然だったウルフは、幾度もの改修を経て強靭な鉄の要塞へと生まれ変わっていた。自分も無造作にタイルを踏んでは爆発をねじ伏せつつ、ジョウはウルフの中の大弥に声をかける。
「少しうるさいが、そこで座って休んでいろ。ただ簡単な弄り方くらいはベガに聞いておけ。元凶と対峙した時は君も戦力の一人だ」
ウルフの役割は大弥を守るための壁であると同時に、直接対峙させないままに彼を戦力足らしめるための武器。決して彼は後ろで守られているだけの弱者ではない。その扱いは彼にも、彼の『師』に対しても侮辱に当たるから。
「なにより相手の用意したゲームに付き合う程、暇ではないからな」
笑いながら、自身も爆弾をわざと踏みつけつつアリスが言う。その動きに、ベアトリスは静かに、だが釘を刺すように言った。
「精神的な問題というより、別の何かがあるのではと」
その無駄な動きは自身の心も乱れを隠すためか。だが今はそんなことで気を紛らわせている時ではないとの、優しくだが確かなる指摘。そしてその為の爆弾をなくすかのように、無敵の【クイーン・フォース】を盤面に放って余計な爆弾を駆除していくベアトリス。その姿に、アリスもまた自分の成すべきことを確かに思い出す。
「ここを抜けたとしても、次の動きを考えねば」
そうして真っ直ぐ進み始めるアリスに、ベアトリスももう一度笑いかける。
「助けようとする意志と魔術? 予想ですけどね。あとアリスさんも抱え込まない様に」
その言葉の意味はお互いにしか分からないが、少なくとも悪い意味ではない。良くなっていくアリスの動きがそれを如実に物語っていた。
「その時は、赤石さんたちも手助けしてもらいます?」
もちろん猟兵でないものを本気で巻き込むつもりはない。だが、彼らにしかできない何かがあるならば。
それぞれに助けたいものの事を思いながら、死の遊戯を踏み潰し最後の出口へと四人は雪崩れ込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『愛獄人魚マリーツィア』
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POW : あなたは私のもの。誰にも渡さない
【愛や誠意を嘲笑い冒涜する退廃の歌】が命中した対象の【心の隙間に生じた動揺】から棘を生やし、対象がこれまで話した【他者に向けた温かな愛と幸福の感情】に応じた追加ダメージを与える。
SPD : 私を愛しているのなら、そいつを殺して
【愛を憎悪に反転させる背徳の歌】を披露した指定の全対象に【大切な人や世界への嫌悪や殺意、破壊衝動の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : 愛も願いも、全ては闇に溶ける儚い泡……
命中した【愛や願いが報われぬまま終焉する悲劇の歌】の【聴衆の心を抉る残酷な歌詞】が【魂を侵食し破滅願望へと誘う昏い絶望】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
イラスト:塒ひぷの
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヘルガ・リープフラウ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「嘘……何よこれ……!」
マリーツィアは手の中の地図を見て、声を震わせた。
死の遊技場と連動しその盤面の状況を知らせるための地図。そこに描かれた盤面では広範囲のパネルが一度に開かれ、爆弾が次々と爆発し、その上で最短での攻略ルートが迷いの一切窺えないスピードで開かれていくなど、最早ゲームとしての体をなしていなかった。
「あり得ない……そんなはずはない……愛にこんな力なんてあるわけない!」
狂ったように喚き散らし、地図を破り捨てるマリーツィア。その言葉を否定するように、アリスを大勢閉じ込めていた場所の近くの壁が吹き飛んだ。
「クララ! 大丈夫か!」
そこから現れたのは、お姫様を奪われ命がけの救出劇と絶望の選択を強要された……されるはずだった王子様。マリーツィアの用意した順路すら無視した最短経路で、彼はこの最後の部屋まで乗り込んできたのだ。
「ダイヤ!」
彼の姿を見て、全身を拘束された少女が涙声を上げる。感動の再開、それは最後の悲劇の始まりだ。そのはずだったのに。
「どうして、そんな力なんて……!」
「俺にはないさ、でもな……!」
その周囲を固めるように現れた者たちが、アリス達をあっという間に解放していく。
王子様が伴ってきたのは、綺麗なだけの白馬でも有象無象の兵士でもない。アリスラビリンスを、そして他の世界さえもを救い、それを否定せんとする猟書家を阻む最強の勇者達。
彼女たちもまたその存在を知っているのか、捕らわれの姫は笑い、黒き人魚は歯ぎしりをした。
「よくも、私のゲームをぶち壊しにしてくれたわね……! いつだってそうよ、私だけが捨てられる、残される……皆、皆真っ黒になれ! 汚れて沈んで消えてしまえばいい!」
呪詛の言葉を乗せた声が、恨みの歌となって響き渡る。己の悲劇にだけ酔う猟書家『愛獄人魚マリーツィア』の歌声を、無限の希望で塗りつぶしてしまえ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
貴女がそう思うこと自体は否定しませんが。
周囲への押し付けは辞めていただきますぅ。
大弥さんにはクララさん達の護衛に加え、彼女達を鼓舞し『応援』の指示をお願いしますぅ。
『FCS』により『FRS』『FSS』の弾頭を炸裂弾に変更、『FBS』を四肢に嵌め飛行し【刻讐】を発動しますねぇ。
人魚さんの能力は『歌が命中する』ことが条件であれば、『FRS』『FSS』による[爆撃]で『爆音』を起こし『歌声』をかき消しましょう。
『護衛』となる大弥さんの分は当然、『応援する意思』を送って頂ければ、彼女達の『屈辱』や『痛み』も【刻讐】で『手数』に変える事が可能ですぅ。
彼女達の分もお返ししますねぇ。
一方的な恨みの声を上げ、猟兵と王子様、そして救出されたアリス達を睨みつける『愛獄人魚マリーツィア』。その身勝手な恨み節に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は静かな声で返した。
「貴女がそう思うこと自体は否定しませんが。周囲への押し付けは辞めていただきますぅ」
浮遊戦輪『FBS』を四肢にはめ宙に浮き、るこるは後方に下がる大弥とアリス達をちらと振り返る。
「大弥さん、クララさんやアリスさんたちをお願いしますねぇ。それから、私に『応援』を送っていただけると幸いですぅ」
「分かった!」
大弥はその指示を受け、解放されたばかりで疲弊しているアリス達の前を守るように立って全員を鼓舞する。
「聞いてくれ、俺たちに直接戦う力はない、けど、応援だって力になるんだ!」
その声に、クララがまず祈るような姿勢を取り、そして他のアリス達もめいめいに声援を上げたり、各々の宗教の礼拝の仕草を取るなどしてるこるへの声援を上げ始めた。
「そんなもの、慰めにだってならない……愛なんてただの性欲、誠意なんてお金で買える、応援するのは助かりたいから、全部ごまかし、綺麗ごと!」
マリーツィアはその応援の姿勢を否定する言葉を、陰鬱なリズムに乗せて紡ぎ出す。その歌声はるこる、そして大弥やアリス達の耳にも届き、その心を揺さぶりはじめた。
「聞いてはいけません……大いなる豊饒の女神の名に於いて、仇なす者達に報いを」
るこるはその歌がアリス達の心をくじく前にと、【豊乳女神の加護・刻讐】を発動する。乳白色の波動が自身と兵装たちを包み、その波動の中、射撃機能を備える『FRS』『FSS』の二種が、追加兵装『FCS』によって弾頭を交換された。そしてその弾頭は即座にマリーツィア目がけて滅多打ちにされる。
「そんな撃ち方じゃ当たらない!」
「すべて当たらなくてもいいのですよぉ」
マリーツィアは声を上げながら身をかわし直撃を避けるが、避けた弾は地面に当たった所で、轟音を上げながら爆発を起こす。それは炎でマリーツィアを炙り、そしてなによりその爆音で歌声をかき消した。
「みんな私を無視するの……歌も聞きたくないって……!」
炎の中、マリーツィアは歯噛みしながら恨み節を口にする。その声はやはり爆音にかき消されてほとんど届かないが、それでもただの音ではないユーベルコード。僅かな空気の揺れ、唇の動き、それだけでも多少なりとの効果は残り、るこるの体を少しずつ蝕んではいた。
「逆恨みもここまでくれば立派ですが……こちらには心を一つにしてくれる方がいるのですよぉ」
そのダメージを、波動が力へと変えて兵装へと送り、さらにその砲撃速度を上げた。
さらに続いて乗せられるのは、大弥やクララ、アリス達がここまで受けてきた痛みや屈辱の力。応援という友好的な行為によって『仲間』となった彼らの痛みもまた、【刻讐】の力となって兵装に送られる。
本分である快楽や恥辱でこそないためそれに比べれば多少効果が落ちる部分はあれど、それでも、彼らが受けた痛みは如何程か。大切な人を奪われ、捕らわれ、何も分からぬままゲームの道具にされる。その怒り、恨みは今力となってるこるへと伝えられていた。
「彼女達の分もお返ししますねぇ」
その正しき怒りが、敵の身勝手を許さぬとばかりに無数の炸薬となってマリーツィアに降り注いだ。マリーツィアはまるで生きたまま網に乗せられた魚のように、炎の中でうねり、撥ねて逃げ回る。
「どうして、どうしてこんなこと……私は猟書家の使命を全うしているのに、愛などよりずっと純粋な、鉤爪様の闘争の為に……!」
まさにそれが原因でこうなっていることなど分からぬかのように、恨みの声をさらに重ね、それは爆音の合間を縫ってるこるの体を少しずつ削る。なれどその痛みは正しき怒りとなり、結局はマリーツィアに返されて行くのだ。
るこるの熱い炎と冷たい眼差し、そして王子様と捕らわれた者たちの怒りが、独りよがりな人魚に正しき制裁を加えていた。
成功
🔵🔵🔴
カツミ・イセ
目論見崩れて、残念でしたーっ(年相応のいたずらっ子顔)
うん、神様の教えは間違ってなかったや。
赤石さん。このUC発動した簪を預けるから、他のアリスたちの避難を任せていい?
その簪、僕の秘密基地へ続いてるんだ。でも、あっち(マリーツィア)も放っておけないからね?お願い。
僕はマリーツィアに近接戦を仕掛けよう。水流燕刃刀での切りつけが主だね。
悲劇の歌。僕にはそれがまだ、よくわからない。わからないからこそ、送り出されたのかもしれないけれど。
止まってしまうかもしれない。でもね、武器が一つだなんて誰も言ってないよ。…『偽装皮膚』解除、影の糸みたいになった偽装皮膚からのだまし討ち。
知ってた?僕って人形なんだよ?
金の装飾のついた黒の着物に身を包み、静かにマリーツィアの前に進み出るカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)。幼い少女ながら神の使いとしての自信と自負に溢れた、凛々しささえ感じさせる彼女は静かにマリーツィアを一瞥し。
「目論見崩れて、残念でしたーっ」
年相応のいたずらっ子顔で思い切り相手を馬鹿にした。それはまさにしてやったり、相手を完全に嵌めた会心の笑顔で、それを見たマリーツィアは血が通っていれば顔を真っ赤にしていたであろう形相でカツミを睨みつける。
「うん、神様の教えは間違ってなかったや」
その表情に、自分の取った行動の正しさを再確認するカツミ。そのまま何事か罵声を撒き散らすマリーツィアを尻目に、後ろにいる大弥に自らの簪を手渡した。
「赤石さん。このUC発動した簪を預けるから、他のアリスたちの避難を任せていい?
その簪、僕の秘密基地へ続いてるんだ。でも、あっちも放っておけないからね? お願い」
その一見すると単なる簪にしか見えないものを、大弥はしっかりと握りしめる。そしてその簪を助け出された他のアリス達に触れさせると、彼らはすっと音もなく、その簪の中へ吸い込まれるように消えていった。
アリス達を避難させた簪を守ること、それがカツミが大弥に託した使命であり、彼をこの戦いに参加させる方法であった。しっかりとその簪を握りしめた大弥と、全てを彼に任せきりにすることをよしとせずこの場に残ることを選んだ彼のパートナーを背に、すらりと蛇腹の刃を持つ剣をカツミは抜く。
「さあ、ここからは近接戦だ。君の間合いにいるつもりはない」
踏み込んでの初撃をマリーツィアはぬるりと動いて躱し、胸に手を当てて声を張り上げた。
「愛も願いも、全ては闇に溶ける儚い泡……あなたが王子様に託したそれも、後ろの二人も、みんな闇に消えていくの!」
全てを悲劇に沈めてくれよう、その歌は、カツミの心に棘となって突き刺さる。自身の心を破滅への誘いが侵食していくのを感じながらも、冷静な思考でカツミは思う。
(悲劇の歌。僕にはそれがまだ、よくわからない。わからないからこそ、送り出されたのかもしれないけれど)
分からなくとも攻撃は通る。その歌に体は傷つき、心は抉られ、魂は蝕まれていた。例えどれほど狭量な心を持っていたとしても猟書家の一人、その力は折り紙付きだ。覚悟はしていたが、人形の体とはいえ破壊されれば機能は停止する。腕の力をすべて失ったかのように、カツミは『水流燕刃刀』を取り落とした。
武器を失いなお心身に刺さった棘に動きを鈍らせるカツミを、マリーツィアは嘲笑いながら尾びれを巻き付け両手でその頬を包み込んだ。
「他人の愛なんてものの為に出しゃばったおばかさん。そんなくだらないものの為にあなたはここで消えていくの」
ゆっくりと聞かせるように、カツミに謳いかけるマリーツィア。その声が耳から体へ、そして魂へ突き刺さっていくダメージに耐えながらも、カツミは表情を崩さず行った。
「ああ、そうだね。止まってしまうかもしれない。でもね、武器が一つだなんて誰も言ってないよ」
カツミの服が僅かに緩む。そして、その下にある関節部の肌……それさえもがするりとほどけ、無数の黒い糸となってマリーツィアに絡みついた。
黒き糸はマリーツィアの体に食い込み、その黒い体を別の黒に染めていく。
「ひ、いや……何、これは……ぐ、げっ……!」
「知ってた? 僕って人形なんだよ?」
それはカツミの纏う『偽装皮膚』。ドールとしての関節を隠し保護する人工皮膚であり、その身に纏う隠された武器。戦場で愛を否定する歌を歌い続けるマリーツィアは、愛など微塵も関係ないだまし討ちで喉を締めあげられその歌声を止められた。
「いつかは学ぶ時が来るかもしれない。でも、これだけは言える。君の歌に聞く価値なんてない」
悲劇も破滅も絶望も、人が人である限り持ちうるもの。その存在そのものを否定することは出来ない。だが、それがマリーツィアの歌を肯定する理由にはならない。その悲劇を乗り越え守る役目を負った王子様の姿を背で感じつつ、人形は戦場で悲劇に酔う人魚を吊るし、戒めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
怨燃・羅鬼
愛に不可能なんて無い☆ということで愛の堕天使らきちゃん惨状!
くふふ♪愛と哀は表裏一体なんてね☆
そんな寂しい人魚さんにはアイドルの荒逝(アイ)をプレゼント☆
あっ、王子様は皆を守ってネ!よろよろ♪
相手が歌うならアイドルとして受けて立たなきゃネ!
歌に合わせてらきちゃんも歌うよ☆くふふふ♪
あな口惜しや口惜しや生きてる者が恨めしや…
陰摩羅鬼は人の積屍気から産まれた妖怪
つまり増悪なんて常のこと♪
さぁ!愛獄の人魚は哀獄へ☆一人寂しく躯の海の泡と消えましたとサ!
めでたしめでたし♪
恨みの歌を喚くように歌い続けるマリーツィア。その前に、まるで真逆の楽しそうな様子を隠すこともなく、怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)が踊り出た。
「愛に不可能なんて無い☆ということで愛の堕天使らきちゃん惨状! くふふ♪愛と哀は表裏一体なんてね☆そんな寂しい人魚さんにはアイドルの荒逝(アイ)をプレゼント☆」
愛を否定するマリーツィアをさらに否定するように、愛らしく愛を謳い飛び回る羅鬼。その姿勢に、マリーツィアの怒りはさらに募っていくが、羅鬼はそれに構わず後方の大弥を振り返る。
「あっ、王子様は皆を守ってネ! よろよろ♪」
後方の防衛を彼に任せ、羅鬼はマリーツィアに向かい合う。すべきはこの黒き人魚を滅することと言わんばかりのその行動に、マリーツィアもまた恨みの声で答えた。
「私を愛しているのなら、そいつを殺して……そいつを愛しているのなら、そいつを殺して!」
愛の感情を憎悪に書き換える歌声が羅鬼を襲い、守護の感情を憎悪へと変えていく。だが、羅鬼はあくまでアイドルらしい笑顔を崩さず、その歌声に正面から立ち向かう。
「相手が歌うならアイドルとして受けて立たなきゃネ! 歌に合わせてらきちゃんも歌うよ☆くふふふ♪ それじゃあ☆ラキちゃん☆歌いま~す☆」
含み笑いから大きく息を吸い、羅鬼は歌に歌で反撃を試みた。
「あな口惜しや口惜しや生きてる者が恨めしや……陰摩羅鬼は人の積屍気から産まれた妖怪、つまり増悪なんて常のこと♪」
愛らしいその姿から放たれるその歌詞は、マリーツィアに負けず劣らずの暗い恨み節。ついでに言えば歌唱力だけは一級品のマリーツィアとは真逆の殺人的音波。その声にマリーツィアはもちろん後ろの大弥も思わず耳を塞ぐ。
「ぎぃぃ、なによ、この歌……滅茶苦茶よ!」
思わず歌声が止まるが、それだけではない。まるで音波が粘液にも似たマリーツィアの体を揺さぶるが如く、その体がさざ波だち、外被が破れ血の代わりに黒い液体がどろどろとその体から漏れ出したのだ。
マリーツィアの歌がただの歌ではなく、心を侵すユーベルコードであるように、羅鬼の歌もまた【羅鬼羅鬼楽逝舞】、その声を物理的な破壊力に帰るユーベルコードなのだ。歌声は無差別故大弥にアリス達を保護させつつ下がらせたが、同時にその無差別さはマリーツィアの歌で植え付けられた味方への破壊衝動の発散にもつながっていた。
「あなただって一緒じゃない……なのに何で、何であなたは認められて、私は取り残されるの!? こんなの不公平よ!」
「らきちゃんが歌うのは人の恨み。無念に死んだ屍の気、その積もった恨みを晴らすため、陰摩羅鬼は蟹の星から降りてきた☆」
それぞれの恨み節を声に乗せてぶつけあう二人の歌い手。その暗くやり処のない歌合戦は、片や相手の心を、片や相手の体を壊しながら続けられる。
だが、一方的に自分の恨みをぶつけるだけのマリーツィアの歌と、自身で言う通りに晴らせぬ人の恨みを背負って歌う羅鬼では重みが違う。何より羅鬼自身が陰の気は大好物なのだ。マリーツィアが供する愛を転換する心の恨みは、そのまま羅鬼の好物として吸収されてしまっている。
恨みを飲むのはより大きく重い恨み、そうとでも言わんばかりに、やがてマリーツィアの全身が割け、そこから流れる黒い液体の中に彼女は倒れ込んだ。
「さぁ! 愛獄の人魚は哀獄へ☆一人寂しく躯の海の泡と消えましたとサ! めでたしめでたし♪」
物語の終わりはハッピーエンド。たとえそれが恨みの歌で塗りつぶされたものであろうとも、それで救われた者がいて、自分も楽しめたのならば。
底抜けに明るくアイドルポーズをとる羅鬼の前で、黒い人魚が人の恨みにすり潰されていた。
成功
🔵🔵🔴
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
過度なグロ×
POW
マリーツィア様……なんて悲しいお方……
私はドゥルール。オブリビオン救済を掲げる者です
私も半吸血鬼というだけで人類から迫害を受けて育ちました。
友好的に接してくる人間も
私の体が目的で、肝心な時に助けてはくれなかった
私も人間の愛など信じません。
故に私が愛そのものとなり
人類から否定される貴女達を救済するのです。
私と同じ想いをさせない為に!!
守護霊の【ドーピング】で戦闘力増強。
私もろとも【結界術・全力魔法】に閉じ込め
致命傷を受けても【激痛耐性・気合い】と『永劫火生』の強化復活で
彼女が憎悪を吐き出しきるまで耐え【怪力】で抱擁。
身も心も【慰め】るように優しい愛撫とキスで【生命力吸収】
過去に何があったのか定かではないが、愛を否定し愚弄するマリーツィア。その姿に、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は悲し気に目を伏せた。
「マリーツィア様……なんて悲しいお方……私はドゥルール。オブリビオン救済を掲げる者です」
そのドゥルールの自己紹介にも、マリーツィアはあくまで怒りの表情を崩さない。
「救済とか……いったい何のつもり? どうせあなたも私を殺しに来た。そうやって綺麗なことを言って、最後に私を裏切るのよ!」
それも経験故か、あるいはただ被害妄想が強いだけか、ドゥルールの言葉を頭から否定するマリーツィア。だがその剣幕にも負けず、ドゥルールはなおも彼女に語り掛ける。
「私も半吸血鬼というだけで人類から迫害を受けて育ちました。友好的に接してくる人間も私の体が目的で、肝心な時に助けてはくれなかった」
それはドゥルールの出自から来る哀しい経験であり、彼女の人間不信の根底にあるもの。普段は態度に表すのみであまり語らないその経験を話すのは、マリーツィアの心にある不信を共有できると信じるからか。
「私も人間の愛など信じません。故に私が愛そのものとなり、人類から否定される貴女達を救済するのです。私と同じ想いをさせない為に!!」
そう言って証拠を見せると言わんばかりに、自身の体に今まで救済したオブリビオンの魂を宿らせ、さらに結界で自身とマリーツィアのみを囲い、他のアリスや世界そのものからも隔離する。だがそれでも、マリーツィアの頑なな態度は揺らぐことはなかった。
「愛そのもの……だったら、あなたが一番の私の敵よ!」
マリーツィアは胸に手を当て、大声で歌い始める。愛を憎悪に変えるその歌は、オブリビオンを愛するドゥルールには何よりも効果覿面、自身に宿る霊たちへの憎悪をその心に湧き上がらせ、振り払い破壊しようとする衝動を巻き起こす。
それを懸命に耐え、ただその場にとどまるドゥルール。だが彼女が耐えても、宿した守護霊には耐えられない者もいる。彼女たちは自身の宿るドゥルールにその内側からダメージを与えていき、奇しくもそれは彼女たちのドゥルールへの愛がいかに深いかを表すようでもあった。
それでも、ドゥルールは懸命に自らの衝動だけは耐え、マリーツィアの歌を聞き続ける。だが、やがて内側からのダメージに耐えきれぬかのようにその体は裂け、灰となって崩れ落ちた。
「あ、ははは、愛なんてやっぱり滅ぶだけ、大勢に愛されたあなたはそれに殺されるのよ!」
勝ち誇ったようにマリーツィアが笑う。だがその笑いのかき消すように、ドゥルールであった灰から声が聞こえた。
「私は過去も未来も超越した、永遠の女神」
灰が盛り上がり、その中から無傷のドゥルールが立ち上がる。瀕死の体を脱ぎ捨て復活を遂げる【永劫火生】、それによって蘇ったドゥルールは改めてマリーツィアの前に立った。
「一度で殺されたりないなら……何度だって殺してあげる! 愛を捨てない限り何度でも苦しむのよ!」
その姿に再度声を張り上げるマリーツィア。その歌声をまたしても正面からドゥルールは受け止める。そしてまた体が崩れては復活し、そうすればマリーツィアが声を張り上げる、その繰り返しが幾度となく続き。
「あ……はっ……かっ……」
さすがにマリーツィアの体力も尽きてきたか、喉を抑えてうずくまる。そうなったマリーツィアを、ドゥルールは優しく抱きしめた。
「憎しみは吐き出しきれましたでしょうか。ではその体を、改めて愛で満たしてください」
そう言って唇を重ね、枯れた喉をいたわるように唾液を送り込み、代わりに生命力を吸い上げる。疲れ切っていたマリーツィアはそれに抵抗することができず、力を吸われていく。戒めを振りほどこうとするも、元より格闘戦はほとんど行わないマリーツィアの腕力は存外弱く、ドゥルールの腕から抜け出すことは出来ない。
そのまま体を優しく慰められながら、マリーツィアは自分に注がれる感情を心で否定しつつも抵抗できない……あるいはしないまま、腕の中に留め置かれるのであった。
成功
🔵🔵🔴
アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラー、ジェイクと行動
(ジョウの手助けもないが、何とかする)
意識を失い、安全な場所に隠しているとエルーゼと華澄にも話している。
前衛は私とエルーゼでやる。
華鳥封月を抜き、攻撃を仕掛ける。
歌を封じるなら喉に蹴りを食らわせてやるだけだ。
問題は大弥達をここに居させては危険だという事だ。
「私が奴を食い止める。その間に逃がしてくれ」
エルーゼや大弥達に捕まっていた人達を託し、足止めをやる。
「いくぞ!」
ダッシュで距離を詰めようとした時、間に何者かが。
(黒い狼?)
セミロングの光る髪に黒い狼の頭部を模したヘルム、青紫色の肌の魔人。
「お前は……」
アドリブOK
エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラー、ジェイクと行動
大弥達と再会できたのはいいけど、喜ぶのは後ね。
「ま、悪運強いし大丈夫でしょ」
安全な場所に隠してるなら後で拾って何とかする。
今はこいつを何とかしないと。
夢幻で柄と光刃を形成してダンスを用いて攪乱させるわ。
歌は一時的に凌げても、回復されたらあれね。
「……無理しないでよ」
アリスが足止めすると。クララも戦えない状態だし、逃げられるか分からないけどやる。
「蒼い竜の翼?」
魔力で出来た翼、あれだけからも凄い魔力を感じる。
「狼と竜……まさか」
アドリブOK
ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄、ジェイクと行動
「眠っている彼を信じましょう」
大弥さん達に伝えます。独りではないと伝えればきっと。
「伝わったようですね」
セミロングの光る髪に黒い狼の頭部を模したヘルム、青紫色の肌に魔力で出来た翼、胸部にエメラルドグリーンの光が見える亀裂に腹部は青い焔の様な魔力を宿すアーマー、具足は狼の足を模していると。
二の腕部分は竜の頭部を模して、腕の部分に狼の頭部を模してるけど、両方とも口から出てるみたい。
「容姿をメモに取る理由ですか?作品に使えるかなと」
こちらは気にせず戦ってもらいましょう。
アドリブOK
藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラー、ジェイクと行動
「今できることを」
話を聞いてやれる事をします。
ラヴェンツァを呼び出して魔力の障壁を作り出して歌からの効果を弱めれるかを試します。
捕まっていた人達の治療に専念するので戦闘は任せるしか。
(独りではないと伝える)
大弥さんとクララさんが祈るようにして、私も届くように祈ります。
「きっと来てくれる」
なぜか不思議とそう思って。
アリスと敵との間に何かが落ちてきて。
「ジェイクさん?」
アドリブOK
ジェイク・リー
クロビス一族の犠牲となった者達の業から解放され、光の糸を辿って走る。
希望を託そうとする英霊達が背を護る中、光へと手を伸ばす。
今度は大丈夫だから、無力故に護れなかった少女の声がした。
「誰も死なせねえ!」
空中浮遊で飛び上がり、真の姿となってアリスとの間に入る。
「くだらねえリサイタルは終わりにさせてもらうぜ」
八邉鬼衆を具現化させ、早業による居合やジヴァ・アラスの覇気を剣に形成して操る。
集中による魔力溜めを行いながら戦闘、連携して追い込む。
溜めた魔力を右手に集中させ、衝撃波と地形破壊を引き起こす程の爆撃の様な範囲攻撃を繰り出す。
アドリブOK
次にマリーツィアを囲むのは、四人の猟兵。その内の一人が背後にかばう大弥を振り返って声をかける。
「大弥達と再会できたのはいいけど、喜ぶのは後ね」
エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)はその言葉通り、以前の事件で大弥やそのパートナーとの面識があった。隣で同じように頷く藤宮・華澄(戦医師・f17614)もまたそうである。
彼女たちの実力は大弥もよく知っているが、それでもなぜか彼は不安げな表情をしていた。
「そう、すね……あの、師匠、じゃなくてジョウさんは……」
彼が気にかけるのはジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)と、その肉体を使っていた別人格のジョウ。つい先刻まで自分を守り、戦っていてくれた彼の姿がいつの間にか見えなくなっていることに、大弥は気が付いていた。
それに対してはアリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)が戸惑いながらも答える。
「意識を失い、安全な場所に隠している」
強大な力を使ったから少し休んでいるだけだというその言葉に、事前にそれを伝えられていたエルーゼや華澄も同意する。彼のことは心配だが、それ以前に目の前の敵を何とかしなければならない状況だ。大弥もそのことは分かっているため、それ以上効くようなことはしなかった。
(ジョウの手助けもないが、何とかする)
あるいは、アリスのその秘めた決意を無意識に感じ取っているのだろうか。
「眠っている彼を信じましょう」
信じる者がいれば無事に復帰してくる。祈りは力になるのだと、これまでの戦いで何度も示されてきたことをベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)改めて彼らに伝えた。
そして、それぞれが今すべきことをなすべき時だと、全員がマリーツィアを見た。
「ま、悪運強いし大丈夫でしょ」
後で拾って何とかすればいい。あえて軽くそう言うエルーゼに並び、アリスも『華鳥封月』を構える。
「そんなにぞろぞろ揃って……愛となれ合いに何の違いがあるの? 不安だから群れてるだけの癖に!」
愛を愚弄するその声。それは心を揺らがせ棘となり聞いたものに突き刺さった。この場にいる者たちはそれぞれに愛する者がいて、そしてそれゆえの揺らぎや悩みを抱えている。だからこそその場の誰もがダメージを受けるが、まずはエルーゼがそれを乗り越え躍りかかった。
「そんな歌じゃ誰も踊ってくれないわよ」
踊るようにマリーツィアの周囲を舞いながら、『夢幻』の柄と光刃でマリーツィアに切りかかった。それはその目をくらませ、周囲を切るかと思えば離れるなど近接戦になれぬマリーツィアを惑わせていく。
「歌を封じるならこれに限る」
その惑いの隙に、アリスが一直に踏み込み鋭い蹴りをマリーツィアの喉に見舞った。エルーゼとは逆に、一切無駄のない動きが喉を抉り、その声を詰まらせる。
「がっ……!」
喉を抑えうずくまるマリーツィア。とはいえ仮にも猟書家、これだけで簡単に封殺できる甘い相手ではないだろう。それを察したアリスは後ろをちらと見、エルーゼと大弥に声をかける。
「私が奴を食い止める。その間に逃がしてくれ」
互いを思う感情を逆手に取るマリーツィアにとって、互いに支え合う大弥たちは恰好の的。ならば早々に敵の射程から離さねばなるまいと、アリスは助けた捕虜の保護を仲間に頼んだ。
「……無理しないでよ」
その言葉に、エルーゼはアリスの身を案じつつも従い後ろの防衛に入った。元々二人が役割を分担して戦っているのを知っているエルーゼも、直接戦闘担当であるクララが戦えない以上二人の力が削がれているのは分かっている。さらにはより力のない者まで捕らわれていたのだ、後方の安全は何よりも優先しなければならない。
エルーゼに連れられ後ろ差に下がった大弥と救出された者たちを、手早く華澄が診察していく。
「今できることを」
華澄は【蒼き旅人ラヴェンツァ】を召喚し、彼女に結界を張らせ防壁と即席の診察室にすることで治療へ専念できる態勢を作った。もちろん攻撃に加わらない不安がないわけではない。だが、今自分にできることはこれと、大弥やクララ、それに捕らわれていた者たちに的確な治療を施していく。
「独りではないと伝えればきっと」
自らの【クイーン・フォース】をその場の護衛に着けつつ、ベアトリスが大弥たちに伝えた。そしてその言葉は華澄にもまた届く。
(独りではないと伝える)
元が他の捕虜よりは僅かながら強靭な大弥とクララは簡単な治療で済み、ベアトリスに言われた通りジェイクの無事を心に念じた。そして華澄も、また彼が無事に帰ることを強く祈った。
「きっと来てくれる」
不思議とそれには確信があった。
そして前衛では、アリスがマリーツィアの歌声を一身に受け耐えていた。
「みんなあなたに任せきり、あなた一人だけ傷ついて、そんなの本当に嬉しいの?」
愚弄するようなマリーツィアの声。そこから生じるダメージに耐えながら、アリスはなおも最前線に立つ。
「いくぞ!」
その負傷した体を押し踏み込もうとした瞬間、その間に何者かが割り込んだ。
クロビス一族の犠牲となった者達の業から解放され、光の糸を辿って走ってきた者。希望を託そうとする英霊達が背を護る中、光へと手を伸ばした男。今度は大丈夫だから、無力故に護れなかった少女の声がした、その瞬間目覚めた戦士。
「誰も死なせねえ!」
そう叫んだセミロングの光る髪に黒い狼の頭部を模したヘルム、青紫色の肌の魔人。
(黒い狼?)
だが、その姿を見た時疑問は消え、確信が全員の心に湧き上がる。
「お前は……」
「ジェイクさん?」
その言葉に、男はその真なる姿を現し、青き竜の翼を広げ舞い上がる。
「師匠!」
姿は変われど、誰もが分かった。ジェイク・リーが戻ってきたのだと。
「くだらねえリサイタルは終わりにさせてもらうぜ」
全て分かっている。そう言わんばかりにジェイクは『八邉鬼衆』を具現化させ、マリーツィアへと迫った。高速の居合術や剣と成した『ジヴァ・アラスの覇気』による攻撃が瞬く間にマリーツィアを追い詰めていく。
「蒼い竜の翼?」
魔力で出来た翼、そこからだけでもエルーゼには凄い魔力を感じとれる。
「狼と竜……まさか」
何か思い当たる節があるのか。だが、交戦するマリーツィアにはそんなもの関係ない。
「焦らして出てきて……ただの目立ちたがりの癖に! 使えなければすぐ捨てられるのよ!」
いらついたように叫ぶマリーツィア。それはジェイクの心にも棘として刺さるが、今のジェイクの心身は以前よりはるかに強化されている。
「これが俺達の力だ」
『護る』そのシンプルで困難な誓いを元にエルーゼが察したその姿を強化する【狼竜合連】。その正義の誓いは今守るべき『仲間』と『弟子』を後ろに持つジェイクにこれ以上ない力を与え、それはその右手に魔力の奔流となって蓄積された。
そしてその魔力をマリーツィアに向けて一気に放つジェイク。それは衝撃波と地形破壊を引き起こす程の爆撃となり、まるでマリーツィアが悪戯に仕掛けた爆弾の報いを与えるかのように、辺り一面を破壊しつくした。
「セミロングの光る髪に黒い狼の頭部を模したヘルム、青紫色の肌に魔力で出来た翼、胸部にエメラルドグリーンの光が見える亀裂に腹部は青い焔の様な魔力を宿すアーマー、具足は狼の足を模していると。二の腕部分は竜の頭部を模して、腕の部分に狼の頭部を模してるけど、両方とも口から出てるみたいですね」
ベアトリスはその姿を熱心にメモに取る。後方で守られていたクララがその様子を首をかしげ見つめるが、ベアトリスはその意図を察し笑顔で答える。
「容姿をメモに取る理由ですか? 作品に使えるかなと」
そう言いながら、ベアトリスは前に目を向ける。今はこちらよりも、帰ってきた男に意識を集中すべきだ。その戦い方を目に焼き付け、そしてこちらへ来た時に歓迎するためにと。
大成功
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シウム・ジョイグルミット
[SPD]
ボクはちゃんとゲームをクリアしてきたよー?
さあ、ボスを倒してハッピーエンドで終わろう!
【空中浮遊】して猟書家の近くをふよふよ飛び回っちゃおう
その状態で色々話かけようかな
もう愛の力を認めちゃいなよーとか
ネガティブ発言ばっかりだから皆離れていくんじゃない?とか
歌い出したら、だらけた顔で『Jack pot』を使うね
ダメダメ、歌は楽しく歌わなきゃ
ほら、愛がない歌は全然心に響かないから、全部流れ出ていっちゃう
怒って歌えなくなるように【精神攻撃】を逆に仕掛けていこー
で、ここで王子様の出番だね
こっちに気を取られてる隙に、猟書家へ全力の一撃をお見舞いしちゃえ!
愛の力、身をもって味わってみるといいよー
「何よ……何よ、私のゲームを滅茶苦茶に壊して、ルール違反したのはそっちじゃない! なんで私が悪いことになるの!」
そもそもそのゲーム自体が悪だということなど理解できぬ風に喚くマリーツィアに、シウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)は大げさな動作を取っていう。
「ボクはちゃんとゲームをクリアしてきたよー? さあ、ボスを倒してハッピーエンドで終わろう!」
きっちりルールに則って真正面からやってきた彼女は心外だ、とでも言うような大げさな動作を取りながらふよふよとマリーツィアの周りを飛びまわる。理不尽なルールさえ遵守しそれを越えてきたというこの上なく屈辱的な発言に、マリーツィアの怒りは極限まで膨れ上がった。
「みんなそうやって私を馬鹿にする! 私の敵になる!」
飛び回るシウムを捕まえようと、細腕を振り回すマリーツィア。元より対して腕力もなく、心も乱れ無暗に振り回されているだけのその腕を、ゆらゆらと揺れて躱しながらシウムはさらに彼女に囁く。
「もう愛の力を認めちゃいなよー」
「ふざけないで、そんなもの私にはいらない、知らない!」
「ネガティブ発言ばっかりだから皆離れていくんじゃない?」
「いつも捨てられて、敵ばかりで、いい事なんて何もない私に他にどうしろって言うのよ!」
激昂しなんどもシウムに掴みかかるが、その都度のらくらとした様子で躱され続けるマリーツィア。その怒り様はまるで、本当は分かっているのに蓋をしていることを抉られたかのような必死さすら感じさせる。
「もう……もう絶対に許さない!」
マリーツィアは怒りのままに胸に手を当て、息を大きく吸い込んだ。
「殺して、殺して! 私を愛しているのなら、愛していなくても! 大切なものがあるなら全部引き裂いて! 私と同じになって!」
愛を憎悪に変える背徳の歌。それが来てもシウムはまるで動かず、構えることすらなくだらけた顔でそれを受け止めた。
「ダメダメ、歌は楽しく歌わなきゃ。は~い、なんと奇跡の大当たり~♪」
その脱力したシウムの前にスロットマシンが現れ、777の表示と共に大量のコインが吐き出された。マリーツィアの歌声はその大当たりの騒音にかき消され、誰の耳にも届かずにただコインとなって排出されていく。
「ほら、愛がない歌は全然心に響かないから、全部流れ出ていっちゃう」
「そうよ! 遊びに狂って愛を捨てるなんていつもの事じゃない! 結局あなただってそうなのよ!」
怒り狂うマリーツィアがどれだけ声を張り上げても、それは全てスロットマシンのコインとなって消えていく。まるで聞き流すような態度でスロットマシンを回し続けるシウムにマリーツィアの声は一切届かず、ついに声も枯れ果てたか息を切らしてマリーツィアはその体を折った。
その瞬間、スロットを回す手が止まり、シウムはマリーツィアとは別の方向へ声を上げた。
「出番だよ王子様! 猟書家へ全力の一撃をお見舞いしちゃえ!」
「ああ!」
その声に、近くまで来ていた大弥が答えた。
シウムのスロットマシン、【Jack pot】は脱力状態で受けることで相手の攻撃を無効化するもの。自ら攻めるのには向いていないが、一方でその脱力姿勢はマリーツィアのような感情的な相手を精神攻撃し操作するには持って来いの姿勢でもある。ならば、相手の攻撃を一身に受けて無効化し、その隙に誰かを攻撃に向かわせればいい。蓋を開けてみれば単純な囮作戦だが、愛を否定し仲間を持たないマリーツィアはそこに思い至ることができなかった。
そして、時計ウサギにそこへと導かれた王子様が最後の一撃を放つ。
マリーツィアの周りを【レプリカクラフト】で作られた8つの精巧な仕掛け爆弾が囲んだ。マリーツィアの足元には、さしずめ8の数字でも書かれたような状態だろうか。だが、これは最後の一撃。
「プレゼントだ、受け取れ真っ黒人魚!」
大弥は手元に持った9つ目の爆弾を、マリーツィアに向けて投げつけた。
豪速球とは言えないそれだが、踏み出そうにも周囲は爆弾の囲い。そのまま爆弾はマリーツィアの手元に落ち、周囲の爆弾も巻き込んで大爆発を起こした。
「どうして、どうして私が……助けて鉤爪様、誰か私を……いやっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
黒き人魚は最後は泡になることすらなく、炎の中へ消えた。
猟兵よりずっと力の劣るはずの大弥の攻撃が上級のオブリビオンであるマリーツィアにとどめを刺せたのは、それだけ彼女が傷つき追い込まれていたから。それを成したのは誰あろうここまで戦ってきた猟兵たちである。多くの者たちがこの強豪と戦い、その力を極限まで削ぎきったから、そしてシウムがそのために敵の心を攻め気を引くことに徹したから。
これもまた友愛、隣人愛などと呼ばれる愛の形の一つか。そして悲劇的な恋愛ばかりを歌い、否定しながらそれに執着したマリーツィアにはこの形の愛の存在を知っていたのか。
「ダイヤ……ダイヤぁ……!」
「よかった……クララ……」
解放されたお姫様が大きな体で小さな王子様を抱きしめ泣く。それが一しきり収まるのを待ってからシウムは再び彼らの前に立った。
「さあ行こう。アリスを導くのは時計ウサギのお仕事だからね」
二人も他のアリスも、未だアリスラビリンスの虜囚であることには変わりないのだ。シウムはウサギ穴をあけ、一人でも多くのアリスが脱出できることを願いながら彼らを別の世界へと導いていく。
その後にはそこに黒い人魚がいた最後の証のように、黒く焦げ付いた世界だけが残されていた。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年01月11日
宿敵
『愛獄人魚マリーツィア』
を撃破!
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