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歪みし願いと冒涜の祈り(作者
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#アックス&ウィザーズ  #猟書家の侵攻  #猟書家  #異端神官ウィルオーグ  #パラディン 


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「何故……このような事をなされたのですか。始祖ウィルオーグよ」
「全ては遠大な計画の内なのだ。この世を『過去』で満たす為のな」

 アックス&ウィザーズの辺境に位置する、とある「神」の崇拝の地と化した地方都市。
 住民達が奏でる頽廃で冒涜的な祈りの中で、1人の女性と1人の老人が対峙していた。

 ほんの一週間ほど前まで、ここは何の変哲もないごく普通の、しかし平和な街だった。
 だが、この老人が現れてから全ては変わってしまった。素朴で善良だった人々は今や、虚ろな瞳で「神」への祈りを綴るばかり。心を操られ信仰に殉じる傀儡と化していた。

「救いを求める人々の祈り、願い、想い。それをこんな形で利用するなんて……」
「然り。人の想いや信仰の力は強い。だからこそ利用価値がある。違うかね?」

 聖印の刻まれた盾をかざし、冒涜を糾弾する女性に、老人は飄々とした態度で応える。
 彼――異端神官ウィルオーグにとっては、この地に住まう人々など贄に過ぎぬ。信仰の力を生み出し、己が望む『偽神』を作り上げるための。

「純朴で疑うことを知らぬ人間を洗脳するのは容易かった。今回は『素体』の方も良かったようだな。これほど早く完成にこぎ着けられるとは嬉しい想定外だ」
「貴方は……そこまで堕ちてしまわれたのか! エギュレの大神官であられた貴方が!」

 女性の糾弾の言葉には、深い悲嘆の色があった。その叡智にて多くの人々を救い導き、篤信と慈悲の心で多くの人々に慕われたという、知識の神の初代大神官――その成れの果てが、これだというのか。冥府からの蘇りはこうまで人の魂を歪めてしまうものなのか。

「……貴方は、ここで倒す。倒さねばならない。知識神エギュレの聖騎士(パラディン)として!」
「さて、できるかな? 今回の『偽神』は強大だ――人の祈りを喰らい、望み通りに育ってくれた」
『―――はい。わたしは願いを叶えるもの。あなたが願うのなら、願いどおりの"神"となり、この世界に災いをもたらしましょう』

 ウィルオーグの言葉に応え、天空より舞い降りる眩い光。流れ星の煌めきに似たそれは、一頭の竜の姿をしていた。周囲にいた傀儡の信徒達から、歓喜と狂乱の声が上がる。
 其は異端の神官に作られし『偽神』。破滅の願いを叶える凶星が、絶望を告げる――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「アックス&ウィザーズを侵略する猟書家の1人『異端神官ウィルオーグ』が、オブリビオンを『偽神化』させる計画を進めています」
 幾多の世界にまたがって侵略を行う謎の勢力『猟書家』。中でもアックス&ウィザードの侵略に関わる幹部猟書家達は、大天使ブラキエルの目論む「天上界への到達」を実現すべく、様々な行動を取っている。今回の異端神官ウィルオーグの計画も、その1つだ。

「ウィルオーグはとある街の全住人を洗脳し、ある一体のオブリビオンを熱心に信仰させています。彼はその信仰心を力に変えて『偽神』と呼ぶ強大なオブリビオンを完成させ、いずれ来る天上界攻略の中心戦力に据えようと企んでいるようです」
 人々の心を歪め、救いを求める祈りを、破滅をもたらすオブリビオンの力に変える――実に悪辣極まる非情な計画である。もしこの企みが成功してしまえば、ただでさえ厄介な猟書家勢力に、アックス&ウィザーズを脅かす大きな脅威がひとつ加わることになる。
「しかも今回ウィルオーグが偽神化の素体に選んだのは流星竜『アストラム』。流れ星を操るドラゴンで、かつては人々の願いを叶える吉兆の存在とされていましたが、死した後にその性質は反転し、オブリビオンの願いを叶える厄災の予兆と化しています」
 元々『願いを叶える』という性質を持つアストラムと、人々の信仰心を利用するウィルオーグの計画は非常に相性が良く、対象の偽神化は凄まじいスピードで進んでいる。

「――ですが。リムがこの事件を予知するよりも早く、敵の陰謀に気付いた者がいます」
 その人物の名はエクセリア。今は崇める者もほぼいなくなった古き神、「知識の神エギュレ」を今でも信仰するパラディンの女性で、名誉も称賛もなく、清貧のままに世界をさすらい、人知れず人々を守り続けてきた遍歴の聖騎士である。
「彼女はエギュレ神より天啓を授かり、今回の事件を知りました。なぜなら偽神化計画の首謀者であるウィルオーグとは、かつてエギュレ信仰を興した始祖、その人だからです」
 エギュレ神を信仰する全ての者にとっての偉大な祖が、汚濁と共に蘇った事を伝えられた彼女は、単身で偽神が信仰される街に向かった。その目的は言うまでもなく計画の阻止とウィルオーグの討伐――始祖の名がこれ以上穢される前に、堕落と罪を裁くことだ。

「エクセリアさんが現地に向かったことで、リムも遅ればせながら状況を予知することができました。皆様も彼女の後に続いて、偽神とウィルオーグの討伐に協力してください」
 いかにエクセリアが使命に燃えていたとしても、強大なオブリビオン2体に1人で立ち向かうのは不可能だ。しかしエギュレ神より加護を授かった彼女には、偽神化計画を阻止するための特別な力が宿っている。
「彼女の使用する【無敵城塞】には、偽神と化したオブリビオンの攻撃を引きつける効果があります。発動中は行動できませんが、偽神の攻撃でダメージを受けることもありません。うまく連携すれば彼女の影で攻撃をやり過ごし、戦いを有利に進められるでしょう」
 偽神と化したアストラムは、捧げられた祈りと集中した時間に応じて、オブリビオンの『願いどおり』の強大な存在となっている。正攻法で挑めば猟兵でも苦戦する強敵だが、エクセリアの無敵の盾があれば突破口も開けるだろう。

「ウィルオーグはアストラムが倒されるまでは直接戦わず、群衆に紛れて偽神化の完成に専念しています。この段階で彼に手を出すのは得策ではないでしょう。洗脳された人々を戦いに巻き込まないほうが優先です」
 それだけ自分の計画に自信があるのだろう。だが偽神化したアストラムを討たれれば、彼も見ているだけではいられない。計画の障害となる猟兵とエギュレのパラディンの力を認め、全力を以て排除にあたるはずだ。
「彼は戦士ではありませんが、知識の神の元大神官としての豊富な知識は今でも健在です。持てる知恵の全てを世界の滅びのために用いる彼を野放しにはしておけません」
 ウィルオーグに対してエクセリアの【無敵城塞】は特別な効果こそないが、「あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる」ユーベルコード本来の効果はそのままだ。純粋な戦闘力では猟兵よりも劣るが、その護りが有用であることは間違いない。

「アストラムもウィルオーグも、生前は善性の存在……それがオブリビオンとなって世界に災いをもたらすのは、誰も望んではいなかったでしょう」
 歪んだ偽神と異端の神官に終焉を。そう言って説明を終えたリミティアは、手のひらにグリモアを浮かべ、偽神が崇拝されるアックス&ウィザーズのとある都市への道を開く。
 猟書家の計画を阻止する為に、冒涜された祈りを正す為に、この戦いは負けられない。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」





第2章 ボス戦 『異端神官ウィルオーグ』

POW ●第一実験・信仰に反する行動の規制
【論文】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD ●第二実験・神罰の具現化
【自身や偽神に敵意】を向けた対象に、【天から降る雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ ●第三実験・反教存在の社会的排除
【名前を奪う呪詛】を籠めた【蝶の形をした黒い精霊】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【縁の品や周囲からの記憶など、存在痕跡】のみを攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠クシナ・イリオムです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんという事だ。まさか私の作り上げた傑作が敗れるとは」

 猟兵達の手で偽神アストラムを倒され、ウィルオーグは少なからず驚いたようだった。
 かつては知識神エギュレの初代大神官にして、現在は幹部猟書家の座につく異端神官。生前と変わらぬ叡智を以て、彼はこの世界を滅ぼす為の思索を行う。

「素体の適性は問題なかったはず……では与える信仰が不足していたのか? 規模、或いは想いの深さをより高める必要があるか……次回は洗脳術式を見直す必要があるな」

 今だ臨戦態勢の猟兵達を目前にしながら、彼にとっては戦いよりも計画のほうが重要な様子だった。古来から賢者と愚者は紙一重と言うが、彼のそれは寧ろ狂人のそれに近い。
 まるで実験台の上のモルモットのように、人の想いや信仰を弄ぶ。生前の高徳さを知る者ほど、オブリビオンと化した彼の堕落ぶりは目に余るだろう。

「……我らの始祖は、もうどこにも居ないのだな」

 深い哀しみをたたえた眼差しで、エクセリアが呟く。今、目の前にいるのは信仰を拓いた古の賢人ではなく、知を悪用し弄ぶ邪悪なオブリビオン。歪みの果てに猟書家の一員にまでなった彼に与えられる救済は、ここで骸の海に還すことのみ。

「ふむ、では実験を始めよう。猟兵とエギュレの信徒に私の術式がどう作用するか試してみたい。諸君らを殺してオブリビオンに変え、新たな偽神の素体にするのもよかろう」

 そう語るウィルオーグのローブの内側から、論文の紙片と禍々しい呪詛があふれ出す。
 戦士としての鍛錬を積んでいるようには見えない老人だが、その叡智と魔力は十分過ぎるほどの脅威。偽神に勝ったからと油断すれば、次に命を落とすのは猟兵達の番になる。

 歪みし願いと冒涜の祈りで、偽りの神を創造せんとする異端神官ウィルオーグ。
 その野望を打ち破るために、猟兵達は再び戦闘態勢を取り、彼との決戦に挑む。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

かつての賢人が惨憺たる有り様だな
お前の名を励みにする者も、未だこの世界にいるだろうに

敵の雷をエクセリアのUCで防ぎつつ、シガールQ1210で敵を銃撃
命中率が高い攻撃を食らった上で無効化する【無敵城塞】は役立つだろう
とは言え、この攻撃だけで決まるほど甘くはないか…

エクセリア、もう少しだけ壁になっていてくれ
今からコレの封印を解く

UCを発動
ナガクニの封印を解き、太刀に変化させる
敵の雷がエクセリアの【無敵城塞】に当たると同時に飛び出してカウンターでの斬撃を行う
もし雷が来たら、それごと叩き切ってやろう

その名を地に落とす前に骸の海へと沈ませよう
それがお前に贈る最大限の敬意だ、堕ちた賢人よ


「かつての賢人が惨憺たる有り様だな」
 異端に堕ちた神官ウィルオーグと対峙したキリカは、哀れみの籠もった呟きを漏らす。
 知識神信仰の開祖となり、多くの人々を導いたであろう賢人の叡智は、今は偽りの神を生み出し、人々を絶望に陥れるために用いられている。その変貌はあまりにも残酷。
「お前の名を励みにする者も、未だこの世界にいるだろうに」
「そのような愚か者共に興味はない。偽神の信者に仕立て易そうではあるがな」
 既に魂まで邪に堕ちたウィルオーグは冷たい笑みを浮かべ、枯れ木のような手ですっと天を指差す。それが攻撃の予兆と気付き身構えたのは、キリカと――そしてエクセリアも同時だった。

「第二実験・神罰の具現化」
 偽神の神官に敵意を向けた者に、天から雷が降り注ぐ。エクセリアは聖印付きの盾を頭上にかざした構えで【無敵城塞】を発動し、キリカは咄嗟にその"傘"の下に飛び込んだ。
(命中率が高い攻撃を食らった上で無効化する【無敵城塞】は役立つだろう)
 二人分の落雷を聖騎士の盾が弾き返す。偽神から猟書家に相手を移しても、その護りの堅牢さは健在。守備を彼女に任せながらキリカは強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"を構え、秘術により強化された銃撃を敵に浴びせる。
「ほう。よく出来た連携だ」
 弾丸の幾つかが標的を捉えるが、ウィルオーグは感心したように笑うのみ。武術の心得はなくとも何らかの備えはしているのか、さほどのダメージを負ったようには見えない。

「この攻撃だけで決まるほど甘くはないか……」
 キリカは機関拳銃のトリガーを引きっぱなしにして少しでも敵を牽制しながら、懐に忍ばせた短刀に手を添える。秘術弾でも撃ち抜けない強敵が相手となれば、こちらもそれ相応のリスクを背負わねばなるまい。
「エクセリア、もう少しだけ壁になっていてくれ。今からコレの封印を解く」
「任せろ。あの方を止める為なら、いくらでも耐えてみせる……!」
 不動の構えで頷くエクセリア。決して崩れぬ守りに信を置き、キリカは【影打・國喰】を発動――短刀"ナガクニ"に施された二柱の神の封印を解き、秘められし力を解き放つ。

「忌まわしき邪龍の牙よ、呪われたその力で目の前の獲物を討ち、存分に喰らうがいい……」
 ナガクニの鍛造には、かつて邪龍と呼ばれるまでに堕ちた悪しき竜神の骨が素材として使われている。平時は抑え込まれているその力の封印が緩めば、刀身より溢れ出した邪龍の力は不気味な鳴動と共に、短刀を一振りの凶々しい太刀に変化させる。
「往くぞ」
 敵の雷が再びエクセリアの無敵城塞に弾かれるのと同時に、キリカは飛び出した。抜き放たれた邪龍の太刀は強力な反面、使い手の魂すらも蝕む諸刃の刃。長時間の使用は推奨されない以上、決めるならばカウンターでの一撃が望ましい。

「ほう……その力、興味深いな」
 ウィルオーグは好奇の眼差しと共に、明確な敵意を持って近付いてくるキリカに狙いを変えて雷を落とすが――刹那、目にも留まらぬ速さで閃いた邪龍の太刀は、驚くべきことに落雷を"斬った"。
「その名を地に落とす前に骸の海へと沈ませよう。それがお前に贈る最大限の敬意だ、堕ちた賢人よ」
 國を喰らうという名に偽りのない、げに恐るべき邪龍の力。それを彼女が解禁したのはかつての聖賢の名を守るため。落雷を斬り落としてなお勢いを衰えることのない斬撃は、そのまま敵を袈裟懸けに叩き斬った。

「ぐ……ッ!!」
 これは流石に堪えたか、苦悶と共にウィルオーグが片膝をつき、黒い衣が血に染まる。
 興味深い――尚もそう呟く老人の瞳は、決然とした覚悟で立つ猟兵達を観察していた。
大成功 🔵🔵🔵

カビパン・カピパン
ウィルオーグと対峙した瞬間

「し、師匠!!」

「すみません師匠。不肖の弟子は修行が足りずに、師のお怒りになられる理由に見当もつきません。ご気分を損なわれたのなら、この通り伏して謝りますゆえ。賢明なる師のお慈悲をもって、私が叱られる訳を教えてくださいませんか」
一部の隙も無く平身低頭してスラスラと謝罪を述べた。その敬服に値するカビパンの気持ちを受け止めたウィルオーグは本当に弟子をもっていたような感覚に陥る。

「では実験を始め「師弟コントですか!」
斯くして、師弟漫才が始まった。緊張してガチンゴチンなカビパンは、むやみやたらにハリセンでツッコミする。そのせいでウィルオーグの叡智と魔力と術式は台無しになった。


「し、師匠!!」
 ウィルオーグと対峙した瞬間、カビパンは何故か感極まったように開口一番で叫んだ。
 彼が知識神の初代大神官だったのは遠い昔の事で、現代の猟兵達と面識などあるはずがない。当然ながら師匠と呼ばれたウィルオーグの方も、怪訝そうな顔で首を傾げている。
「はて? 私にはお前のような弟子を取った覚えなど無いが」
 老人であってもオブリビオンとなっても、彼の脳ミソはまだボケてはいない。どの神のものとも知れない宗教的な服を着た、悪霊化した女の弟子などいなかったはずだ。しかしカビパンは本気で師匠に対する弟子のような態度で、一分の隙も無く平身低頭する。

「すみません師匠。不肖の弟子は修行が足りずに、師のお怒りになられる理由に見当もつきません。ご気分を損なわれたのなら、この通り伏して謝りますゆえ。賢明なる師のお慈悲をもって、私が叱られる訳を教えてくださいませんか」

 そしてスラスラと謝罪を述べる。よく噛まずに言えたなと思わずにいられない長広舌、これまた一分の隙もないガチ謝罪である。その敬服に値するカビパンの気持ちを受け止めたウィルオーグは、なんだか本当に弟子をもっていたような感覚に陥る。
「そうだな。そこまで言うのなら私の実験の役に立ってみせるがいい。その結果如何によっては許してやらんこともない」
 彼は気付いていない。謝罪という形を取った【ハリセンで叩かずにはいられない女】の特大ボケの術中にもう嵌まっている事に。戦場はシリアスからギャグの空気に塗り替えられ、カビパンのペースに掌握される。こうなってしまえばもう彼女の独壇場だ。

「では実験を始め「師弟コントですか!」
 師匠の言葉を遮るというド無礼なことを早速かましつつ、ぱっと顔を上げたカビパンはハリセン片手に立ち上がる。いや違うぞとウィルオーグが言っても全く聞く耳を持たず。
 斯くして師弟漫才が始まった。巻き込まれたウィルオーグの困惑をよそに、尊敬(?)する師匠と一緒の舞台に立ったカビパンは、やたらめったらハリセンでツッコミをする。
「いや漫才ではない。私は実験を――」
「なんでやねん!」
「話を聞け。これから行うのは第三実験――」
「なんでやねん!」
「反響存在の社会的排除。対象の名を奪うことで、存在痕跡を――」
「なんでやねーん!」
 およそ漫才としての間を考慮していない、矢継ぎ早のツッコミの連打。このカビパン、いつものように好き勝手振る舞っているように見えて、実は緊張してガチンゴチンになっている。本当の師匠でもない(はずの)相手に何をそうまで緊張しているのかは謎だが。

「なんでやねん! なんでやねん! なんでやねん! なんでやねん!」
「貴様、いい加減に……というか、私にも話をさせろ……!」
 むやみやたらにツッコミ続けるカビパンのせいで、ウィルオーグの段取りは無茶苦茶。悪いことに彼女が振り回すハリセンにはあらゆる奇跡を霧散霧消させる女神の加護が宿っており、準備していた呪詛や精霊も散らされてしまった。
「こんな奴に私の実験が……貴様はもう破門だ! 破門!」
 どんな叡智も魔力も術式も、こうなってしまっては台無しである。怒れる師匠から直々に破門を言い渡されたカビパンは、野良猫のように戦場から追い払われたのだった――。
大成功 🔵🔵🔵