新年彩(作者 四ツ葉
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#グリードオーシャン 


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#グリードオーシャン


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 その洞窟にはハープの音が響いていた。
 時に爪先弾むようでいて、時に郷愁を誘い、時に艶やかな色を纏って。
 深き洞窟の奥、海より寄せては帰る波を前に、海賊達は旋律に耳を傾けていた。
 その音色を奏でる女は、彼らの知る面影を残してはいないのに、旋律は耳に残る其ればかり。
 爪弾く音階が跳ねる毎、響く音色が木魂する毎、彼らの眸の色が現実から遠のいてゆく。

 そうして、艶やかな笑い声が聞こえたかと思えば。
 彼らは暗き波の向こう、大きく開いた口の中へとその身を捧げたのだった。



 「皆々、新年あけましておめでとう。今年も宜しゅう頼むよぅ」
 集う面々へと、新年の挨拶を柔く告げ、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は髪の鈴蘭を揺らしながらゆっくりと一礼をした後、再び口を開いた。

 「新年早々、お仕事の話で申し訳ないが、こうして集まってくれて嬉しいよぅ。早速なのじゃが、グリードオーシャンにあるひとつの島で、『海賊の掟』を為そうとしている一団がおってなぁ。しかし、妾の予知では、その成果が思わしくないものとなっておるのじゃよ」
 そ、と眉を下げて語る彼女が言うには、元は海賊団の楽士であった船員が、メガリスの試練にて命を落とし、コンキスタドールとなってしまったらしい。其処で「海賊の掟」にのっとり、一団がひとつの島へと向かうのだが、苦戦を強いられたのち返り討ちに遭う……という状況が見えたと言うのだ。

 「どうか彼らを助け、共に『海賊の掟』を履行してきて欲しいのじゃよ。先ずは、島の洞窟に囚われている海賊達を助けてきて欲しい。このまま放置すれば、彼らはコンキスタドールの使役する『島喰らい』の餌となってしまう。……多くのヒトが、喰らわれることなど、あってほしゅうない」
 語る少女はそっと眉を顰め、痛ましげな表情を見せた後、再び猟兵達へと視線を向けて続ける。

 「そして、そういったものを使役する相手であるせいか、牢を守る配下達もまた、食欲旺盛でな。どうやら常に腹ペコな様子で、些か注意力も散漫であるから、真っ向から戦う以外にも、上手くすり抜ける方法もあるやも知れぬよぅ」
 配下達をいなし、洞窟の中にある幾つかの牢から海賊達を助けた後、洞窟の最奥、海に繋がる地に座すコンキスタドールを討伐する。
 大きな流れはこうだ、と簡潔に流れをまとめた少女は其処で一度言葉を切ると、少し明るい表情でさらに続けた。

 「――で、今回向かってもらう島なのじゃが、アリスラビリンスから落ちた島であるせいか、まるで絵本や童話のような、不思議なことが起こる地でもあってのぅ」

 『妖精達の本棚』と呼ばれているそうじゃよ。

 フェアリーテイルから捩られたのじゃろうかのぅ、と続けた彼女は柔く笑んで。
 「そうして、この島の不思議のひとつに、天候に関するものがあってな?なんでも、雨や雪が降るように、天気の一つとして花が降るのじゃと。そうして、その天気をかの島では『彩』と呼ぶのだそうな」
 そして、新たな年を迎え、その年初めての『彩』の日を『新年彩』と呼び、予め天気詠みによって予報されたその日に、祭りが催されるのだという。それが丁度、予知された事件の翌日だというのだ。

 『新年彩』当日には海岸に出店が並び、賑やかな祝祭の雰囲気になると言う。其処で買ったものを味わいながら降りゆく花を眺めたり、雪のように降り積もる花々を集めたり、花を使って遊んだりするのもいいだろう。
 「それから、その年初めて降る花を小瓶に詰めて、想いと共に海へと流す……というのも、その島の行事となっているそうじゃよ。元は、海に出た者や届かぬ人へ想いを送る、というところから始まったそうじゃが、今は新年の抱負や願いなどを想いとして籠める者も多いとか」
 花と共に、その想いを綴った文を入れる者も少なくないようで、小瓶だけでなく一筆箋や筆記具を扱う出店も数多い様子。

 「祭りの日の楽しみ方は人其々、無事に掟を成した海賊達と共に宴に混ざるも良し、花降る地にて新たなる一年を想うのも良いのではないじゃろうか。その前にと、一仕事こなして頂くことにはなるが、人助けで始まる一年、というのも、妾達猟兵らしいのではないかえ?」
 どうか、よろしく頼むよぅ。そして、為した暁には、存分に楽しんでらして?と、微笑みながら一礼をした少女は、君達をかの島へと送るのだった。


四ツ葉
 明けましておめでとうございます。そして、初めまして、またはこんにちは。四ツ葉(よつば)と申します。
 此の度は当オープニングをご覧頂き、有難うございます。
 未熟者ではございますが、本年も精一杯、皆様の冒険を彩るお手伝いが出来ましたら幸いです。

 それでは、以下説明となります。

 ★各章について。
 第1章:集団戦『マンティコアキッズ』
 洞窟に囚われている海賊達を救出して下さい。牢の鍵は探す、壊す、奪う等、思い付く方法をプレイングに記載下さい。腹ペコな配下は倒しても上手くあしらってもお好みで。

 第2章:ボス戦『『侯爵夫人』と『島喰らい』』
 洞窟の最奥、海に通じる場にて待ち受けています。1章で救出した海賊達も応援、参戦してくれますが、あまり前線に出させると危険です。

 第3章:日常『言ノ葉流し』
 無事に「海賊の掟」を履行し島に平和が戻れば、新年の祝祭『新年彩』が催されます。花降る新年のひとときを楽しくお過ごし下さい。詳細な雰囲気は章公開後、断章にて記載いたします。
 もしお声がけがあれば、此方のみ当シナリオ案内役のティルが顔を出しますが、あくまでメインは皆様方のお時間です。皆様のお時間に少し交ざる、くらいのイメージで関わらせて頂ければ、幸いです。

 ●プレイングについて
 オープニング及び各章公開後に断章を追加し、マスターページ及びタグにて、受付開始日をお知らせ致します。
 受付の〆についても、同様にご連絡差し上げますので、お手数をおかけいたしますが、プレイング送信前にご確認下さい。
 今回、1章及び2章の受付は人数集まり次第短めの〆で、少人数採用、早めの進行予定です。
 また、3章もご参加頂く人数によっては、全員採用出来ない場合があります。其々、先着順ではなく、可能な限りの描写となりますので、ご了承頂けますよう、お願い申し上げます。

 ●その他
 ・同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)とID(f○○○○○)】又は【グループ名】のご記入お願いします。キャパの関係上、1グループ最大4名様まででお願い致します。また、記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・逆に、絶対に一人がいい。他人と組んでの描写は避けたい、と言う方は【絡み×】等分かるように記載して頂ければ、単独描写とさせて頂きます。記載ない場合は、組んだり組まなかったりです。
 ・グループ参加時は、返却日〆の日程が揃う様、AM8:31をボーダーに提出日を合わせて頂ければ大変助かります。

 では、此処まで確認有難うございました。
 皆様どうぞ、宜しくお願い致します。
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第1章 集団戦 『マンティコアキッズ』

POW ●こいつをたおしたらご飯にしような!
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD ●もうちょっとだけがんばる!
【お昼寝の時間までがんばる気持ち】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ ●今がチャンスだけどおやつが食べたい…
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【おやつ】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 ぴちゃん、ぴちゃん。
 天井から時折落ちる雫に混じり、幼なげな声が洞窟に響く。

 「なあなあ、腹へったよー」
 「さっき交代したばっかだろ?ちゃんと見張らねぇと、おやつ貰えないぜ?」
 「だって、こんなとこ、見張ってなくたって誰も来やしないよ」
 「こーんな古臭い鍵持ってたって、食えないもんなー」

 ゆらゆらと、鈍色の鍵を爪で摘んで揺らす彼の腹が、同意するようガチガチと鳴る。いや、それでもいいから食わせろと言っているようにも見えた。小柄な身でありながら、異形の彼らは、3人……3頭、面倒臭そうに頭を突き合わせている。

 「それにさ、こーちゃく……『侯爵夫人』のハープの力で、こいつら寝てんだろ?ほっといて良くね?」
 「言ってたじゃんか、万が一、ってやつに備えるのも大事なんだって。俺サボっておやつ減るのやだぜ?」
 「ちぇーっ!誰かなんか差し入れとか持って来てくんねーかな?」
 「さっき、誰も来やしないって言ってたの誰だよ……」

 そんな会話が交わされるすぐ後ろ、洞窟に鉄格子を取り付け作られた牢の向こう。海賊風の身なりをした者達が数人、静かに眠りに落ちていた。
ミラ・ホワイト
妖精の本棚――御伽噺のよに素敵な場所を
丸呑みになどさせません

侯爵夫人の召使を装い接近
おつとめご苦労さまですっ
僅かばかりの差入れを
そつと差し出すビスケット

ね、もっと欲しくありません?
大きなお耳へ寄せる内緒話
美味しいものを頂ける所を知ってるの
手にしたまぁるい玻璃の中
降る雪も染めゆく煌びやかな街並
ヴルストやシュトレンなどの出店が並ぶマーケット
見てるだけでお腹の虫が大合唱!

見張りはどうぞお任せを
ご心配なく、見つかっても誤魔化せますっ
ぺこぺこなお腹を満たしてきて下さいな
…そうそ、そちらもお預かりして良いでしょか
賑わいの中、失くしてはいけませんもの

見送りと共に手にした鈍色は
救いの鍵

*他者協力、アドリブ可




 ぴちゃん、ぴちゃん。
 静かな洞窟に水音が木霊する。
 薄暗い中を足速に進みつつ、ミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)は洞窟に入る前の景色を、そしてこの島の名を思い出し乍ら呟いた。
 「妖精の本棚――御伽噺のよに素敵な場所を、丸呑みになどさせません」
 静かでありながら、決意を秘めたようなその響きは、洞窟の反響を経てその裡へと再び返る。

 そんな彼女の耳に、少し高く幼い話し声が届いた。駆けていた歩調を緩め、湾曲した通路からそっと覗けば、その先には3頭のマンティコアキッズ達が、あれやこれやと言い合いながら頭を突き合わせていた。
 まだ、此方には気づいていない様子に、ふぅ、と小さく息を吐き、スカートの裾を軽く叩き身を整えたなら。こつり、と小さく足音を響かせて、彼らの前へと姿を現した。

 「誰だ!」
 「えっ!?本当にだれかきたぞ!」
 「おい、お前ーっ、何しにきた!」
 口々に声を発し、警戒する風の彼等へと、柔らかな笑みを湛えたミラは、一度立ち止まり一礼し、その鈴なるような声で明るく紡ぐ。
 「おつとめご苦労さまですっ。差入れをと、侯爵夫人さまから申しつけられまして」
 「え?侯爵夫人から?」
 「差し入れ?」
 「もしかして、おやつか!?」
 警戒も一転、侯爵夫人からの使いという言葉と共に、彼女がそっと差し出したビスケットに彼らの瞳は釘付けで。

 「うふふ、わたし、侯爵夫人さまの召使いなんです。頑張るみなさまに、ごほうびを、と」
 「ごほうび!」
 「ほら、サボらず見張っててよかったろ?」
 「でも、たったこれっぽち?」
 物足りなさげな彼らに、ミラは木苺の瞳を少しばかり悪戯に煌かせ、更に一歩、彼らへと近づいたなら、その大きな耳へ内緒話、と。てのひら添えた唇寄せて。
 「――ね、もっと欲しくありません?美味しいものを頂ける所を知ってるの」
 そうして差し出す彼女のてのひらに、まぁるい玻璃がひとつ。その内に映るのは、降る雪も染めゆく煌びやかな街並。ヴルストやシュトレンなどの出店が並ぶマーケット。

 腹ペコな彼らは、見てるだけでお腹の虫が大合唱!

 「スゲェ!美味しそうなものがいっぱいだ!」
 「この中に、入れるの?」
 「――……でも、俺たちがいなくなったら」
 「見張りはどうぞお任せを。ご心配なく、見つかっても誤魔化せますっ」
 ぺこぺこなお腹を満たしてきて下さいな。そう添えるミラの笑顔に、最後に残った、彼らの少しばかりの使命感すら、雪の如くに溶け消えて。すっかりご馳走に心奪われた彼らは、我先にと煌めく街の景色へと手を伸ばす。
 「……そうそ、そちらもお預かりして良いでしょか。賑わいの中、失くしてはいけませんもの」
 そう、瞳で示し、柔いてのひらを差し向けた先は、彼らの一人が手に持つ鈍色。
 「そうだった!」
 「古臭い鍵だけど大事だもんな!」
 「さんきゅ!じゃあいってくる!」
 「ええ、では。往きましょ、光溢れる街へ」

 ミラへとそれをぽい、と渡し、誘う彼女の言葉と共に、煌めくスノーグローブに触れたなら。彼らの姿は魔法のように、その内側へと吸い込まれていった。
 「いってらっしゃい」
 優しげな面差しで彼らを見送ると共に、ミラが手にし、柔らかに包み込んだ鈍色は……そう、奥で眠る者たちの、未来を護り繋げる『救いの鍵』。
大成功 🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

此処が海の世界かい?サヨ
漣に塩っぱい水に…初めての世界に好奇心がとまらない
何より嬉しいことは、きみが隣に居ることだけれど

そうだった
囚われたひとを助けなければいけないね
まずは、鍵を探さないといけないね
サヨが腹ぺこの彼等に差し入れをするならば、私はその間に鍵を探そう
カラス、偵察しながら失せ物探しをするよ
幸運が味方してくれることを祈ろう

腹ぺこはサヨも同じかい?
それより
サヨの作ったカップケーキ…私も食べたい
約束だよ、サヨ
サヨが引き付けてくれている間に海賊たちを救い出そう
鍵が見つからなかったなら、牢の檻ごと切ってしまおうか
サヨに攻撃が届く前に「再約ノ縁結」―私の巫女を傷つける
なんて未来は約されない


誘名・櫻宵
🌸神櫻

うふふ、そうよ!強欲なる海の世界
カムイは海、初めてだったわね
好奇心に瞳を煌めかせる神のかぁいらしいこと
くすりと笑み転がして

さぁカムイ
海賊たちを救い出すわよ
カムイが鍵を探してくれるのね
頼もしいわ
大丈夫よ、もし見つからなかったなら檻を斬ってしまえばよいわ!
見張りのあの子たちは私があしらいましょう
美味しいカップケーキを差し入れよ!
お口に合うかしら、と何気なく置いてくる
うふふ、カムイにはあとであげるわよ

柔く微笑みながら
笑顔に恐怖の圧を感じるなんて心外だわと笑み深め
―「喰華」
腹ぺこなあなたは、美味かしら?
桜と化す神罰を巡らせて隙をつき薙ぎ払う

私がひき付けるから
その間に救出をお願いね

皆無事かしら?


 ●

 「此処が海の世界かい?サヨ」
 「うふふ、そうよ!強欲なる海の世界。カムイは海、初めてだったわね」
 漣に塩っぱい水。初めての世界に好奇心がとまらない様子の朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)の隣、好奇心に瞳を煌めかせる神の姿に、かぁいらしいこと、と、くすりと笑み転がして、眦和らげるのは誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)。
 ざぁ、と寄せては返す波の音を互いに耳にしながら、歩む爪先はぽっかりと口を開けた洞窟の入口へと辿り着いた。

 「さぁカムイ、海賊たちを救い出すわよ」
 「そうだった。囚われたひとを助けなければいけないね」
 初めての世界を堪能したい気持ちはあれど、其れは為しに来たものを終えてからだ、と、並び立つ声にて思い出せたなら、朱き神は緩んだ眼を引き締めつつも、笑みは崩さず。潮騒の音色と青き景は暫し預けども、何より嬉しいことは、きみが隣に居ることなのだから。

 そうして、重なる足音静かに響かせ、暗き地を進みゆく。分岐の一つを、先ゆく白き少女が左へ折れたのを見て、異なる道を足速に。そうして辿り着いたのは、少しひらけた休憩所のような場所。その奥には二つほど穴があり、更に奥がありそうだ。
 「まずは、鍵を探さないといけないね」
 今はまだ配下の姿見えぬその広間をくるりと見渡して、カムイが思案げに顎をさする。
 「カムイが鍵を探してくれるのね。頼もしいわ」
 「だが、見つかるだろうか……」
 慣れぬ地だ。心配めいて少しばかり眉を下げた彼に、櫻宵は花咲くような笑みを浮かべ、その手を軽く薙いで見せる。
 「大丈夫よ、もし見つからなかったなら檻を斬ってしまえばよいわ!」
 常と変わらぬ笑みで愉しげに咲い告げる櫻宵に、一度瞬いたカムイもその双眸を和らげて頷く。すると、片方の穴から配下達らしき声が聞こえてきた。そちら側をそうと覗けば、会話するマンティコアキッズ達と、その向こうに牢の鉄格子が見てとれた。

 「見張りのあの子たちは私があしらいましょう」
 美味しい差し入れをしてくるわ。と、櫻宵は片目をパチリと瞬いて。
 「ああ、サヨが腹ぺこの彼等に差し入れをするならば、私はその間に鍵を探そう」
 まかせて頂戴と微笑む櫻宵の手には、美味しそうな蜜色を湛えたカップケーキが収まっている。
 「――サヨの作ったカップケーキ……私も食べたい」
 其の香りが食欲をそそったのか、いや、サヨの作ったものだから、か。思わず零れた呟きに、櫻宵は嬉しそうにその相貌を和らげて。
 「うふふ、カムイにはあとであげるわよ」
 「約束だよ、サヨ」
 そう告げて頷いた彼はこの広間を再び見廻し、三つ目鴉の方を見てひとつ頷いて。
 「カラス、偵察しながら失せ物探しをするよ」
 この広間に物はさほど置かれておらず、一見探すべきところは多くない。で、あればこそ。幸運が味方してくれることを祈ろう、と。カムイとカラスは求める鍵を探し始めた。

 そうして彼等が捜索を始めた頃、櫻宵もまた異形の子らと対峙していた。
 「な、なんだお前!」
 「えっ?だれか来たのか?」
 「うふふ、腹ペコさん達に、美味しいカップケーキを差し入れよ!」
 「カップケーキッ?」
 櫻宵の言葉にその手のカップケーキへと視線を向けたなら、大きく目を見開いてひくひくと鼻をひくつかせ、一気に色めき立つマンティコアキッズ達。
 しかし、お口に合うかしら?と彼らの眼前へと其れを置きながら、浮かべられた艶やかな笑みに、何故か背筋にぞわりとしたものが走る。それは獣としての本能か。食欲との鬩ぎ合いをしながらも、僅か後ずさる者がある。
 「……なんか、こわい」
 「――あら、笑顔に恐怖の圧を感じるなんて心外だわ」
 そう告げながらも、つと深まる笑みは何処か満足げな色をも含んでいた。笑み深まりゆく儘、花開いた唇から彼らへ終を齎す言の葉が紡がれる。

 ――「喰華」。

 静かなる言葉と共に、つ、と細められた眼差しに捉えられ囚われたのは、海賊達を捕えていた筈の彼らであった。そう、虚ろに意識を奪われ乍ら、桜の獄へと。その存在が、宿す力が、櫻宵の桜を尚美しく咲かせゆく糧へと変わっていく。
 「腹ぺこなあなたは、美味かしら?」
 「腹ぺこはサヨも同じかい?」
 まるでゆったりと味わうように、美しい赤き長爪を唇になぞらせ囁く櫻宵の傍らに、先の部屋を捜索し終えたカムイが傍らにて柔く問う。
 「残念ながら、あちらに鍵は無かったよ。サヨ」
 「そう、うふふ。残念だけれど無いものは仕方ないわね」
 「サヨの言っていた様に、檻ごと切ってしまうとするよ。その間、此処は任せて構わないかい?」
 「ええ、勿論よ!私がひき付けるから、その間に救出をお願いね」
 ぱちり、と片目を瞑って見せる櫻宵に笑んだ朱き神は、どうか気を付けて、と気遣わしげな視線をも向け、檻へと向かう。櫻宵の頼もしさは知っている、けれども、その身が傷つくのは耐え難いから、速やかにと気も逸り。
 「――サヨが引き付けてくれている間に、海賊たちを救い出そう」
 言い聞かせるよう、呟いたなら。鉄格子を前にすらりと紅き刀身を露わにする。カムイが太刀『喰桜』を流るように横へ薙いだならば、まるで柔い物を切る様に、一閃の軌跡に添って鉄格子がカラカラと音を立ててその役目を終えた。

 カムイが檻を壊す様を横目で見届けて、満足げな笑みを浮かべた櫻宵もまた、虚ろな瞳で桜の糧へと変わりゆく異形の子らへと、その隙を突き手にした太刀で以って薙ぎ払う。其は邪を祓い屠り咲き誇る桜龍の牙。守る為の神刀が桜花を咲かせるか如く、舞った。

 「皆、無事かしら?」
 動かくなった子らを一瞥し、太刀を下しカムイの方を眺める櫻宵の背後。じり、と動く影ひとつ。倒れ伏した1頭がもうすこし、と、力尽きるその前にその身を櫻宵へと向かわせた。大きく開いた腹の口が、無防備にも見えるその背へ向かう最中。

 ――人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は。

 唱えられた和歌が洞窟内に木魂して。櫻宵へと喰らいつこうとしていた腹の牙が、見えざる神力に阻まれた。その未来をを解していたかのように。下した太刀を振り向き様にひと薙ぎしたなら、最後の1頭もまた、櫻宵の手により骸の海へと還された。
 
 「――私の巫女を傷つける……なんて未来は、約されない」

 静かになった一室にカムイの言の葉が響き、振るいし太刀を鞘へ納め微笑む櫻宵の眼差しが、彼の其れと交差した。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

波山・ヒクイ
猟兵って本当年中無休じゃよな!
…まあいいんじゃけどー。そんじゃま、寝正月になってもうた海賊達をたたき起こしに行こうか!

と言うわけで、ハッピーニューイヤーはらぺこキッズ!わっちは通りすがりの悪い配信者です!
悪い配信者なので、昼寝の時間まで頑張ろうってやる気出してるイイコ達にこっそりお菓子をプレゼントしちゃいマース!
はい3・2・1ポン!
……え、お菓子が出てこない?横を見てみ、頭ほど有りそうな超でっかいケーキが見えるじゃろう?

…と、まあこうして変化させた頭にはらぺこキッズがてんやわんやしておる隙に、強化した【手先】で鍵をくすねて海賊を起こしに行く作戦なんじゃけどね。
さあ野郎共、起床の時間だオラー!


 ●

 「猟兵って本当年中無休じゃよな!」
 新年早々仕事に明け暮れる己が身を、そして共に関わる猟兵の面々を思い、波山・ヒクイ(ごく普通のキマイラ・f26985)は、誰にともなく言葉に変える。入り口の狭さに比べ、内部は存外広いようで、彼女は選んだ道をひとり駆けている。返る言葉ないのを知りつつか、……まあいいんじゃけどー、と、軽く続けて彼女はその速度を一段上げた。

 幾つの分岐を折れたろう、その耳に会話らしきものを拾ったなら、速度を緩めて岩陰からそっと先を窺う。案の定、視線の先には気怠そうなキッズ達が数頭と、その先の牢には横たわる人影が薄らと見えた。
 「そんじゃま、寝正月になってもうた海賊達を、たたき起こしに行こうか!」
 ニィ、と笑えば気合ひとつ。翼の如き腕を羽撃かせるよに一振りすれば、仄か巻き起こる砂塵。それを合図に、ヒクイは子らの元へと軽やかに地を蹴った。

 「――と言うわけで、ハッピーニューイヤー!はらぺこキッズ!わっちは通りすがりの悪い配信者です!」
 「わーっ!なんだお前ーッ!」
 「悪い、はいしん、しゃ?なんだそれ!」
 「なんか知らないけど、侵入者ってやつだろ!」
 突然現れた侵入者に、すっかり気の抜けていたキッズ達は、驚きながらも迎撃の態勢を整える。
 「配信者っていうのはー……あー、まあ、面倒やしええわ。ともかく!」
 言葉の意味を解していない子らへと、説明をしようとして……やめた。分からないままでいい時もあるのです!
 「悪い配信者なので、昼寝の時間まで頑張ろうってやる気出してるイイコ達に、こっそりお菓子をプレゼントしちゃいマース!」
 「え?なになに?お菓子っ!?」
 「マジー?おやつくれんの!?悪いなんとかって、いい奴じゃん!」
 ヒクイの言うお菓子という単語に、わかりやすく瞳を煌めかせる腹ペコ達。その先で、ニヤリと金色の瞳が弧を描き、口元の八重歯が顔を覗かせた。

 ――はい、3・2・1……ポン!

 悪戯に声を弾ませながら、大きくその腕を羽撃かせたなら、あら不思議!
 「ーー……?何にも出てこねえよ?」
 「こいつ、嘘つきやがった!やっぱ悪い奴だ!」
 何も現れ出でない事に、ウゥッと唸る子らの1頭。そんな様子は想定済み、と、可笑しげに笑ったヒクイがその翼の爪先を、彼等の方へと差し向けて。
 「……え、お菓子が出てこない?横を見てみ、頭ほど有りそうな超でっかいケーキが見えるじゃろう?」
 「なんだって?そんなのどこに……ってうわあ!」
 「え?ぎゃーっ!ケーキ頭のおばけ!」
 「ハァ!?それはお前だろ!」
 そう、彼女が齎す変化の力によって、彼らの頭は大きなケーキへと変じていたのだ。突然の思わぬ出来事に、ぎゃあぎゃあとパニックに陥るキッズ達。

 その様子に、けらけらと一頻り楽しげに笑ったヒクイは、強化された手先の器用さを活かし、混乱する彼らの懐から鈍色の鍵をくすね取った。そんなことにも気付かずに、てんやわんやの大騒ぎを繰り広げながら、助けてー!直してー!誰かー!と、逃げ出す子らを尻目に、そそくさと、そしてちゃっかりと牢の鍵を解放したなら、バーン!と効果音が響き渡りそうな勢いで、鉄格子の扉を開け放つ。

 ――さあ野郎共、起床の時間だオラー!

 かくして、海賊達は目覚めの時を迎えた。
大成功 🔵🔵🔵

浮世・綾華
メガリスの試練ってのもやっかいなもんだなぁ
それがその人らの生き方ってんなら否定も出来ないが
海賊の掟とはいえ、嘗ての仲間を手に掛けてしまうのはきっと本意じゃないはず

仲間を手にかける前に骸に送る
そこに持っていくならきっと後悔は少ない方がいいから

千変万化ノ鍵
さぁて、何が出るか――そう来るか
出てきたのは大量のお菓子
こりゃあ完全に…

敵が気をとられている隙
牢にさえ辿りつけりゃあ解き放つのは容易い
気づかれても声や気配で分かるだろうが
ララ、あいつらが向かってきたら知らせてくれ


おはよう
寝起きで悪いが状況、分かるでしょ
海賊の掟。逃がすよりも選ぶのは

助けてやったんだ
俺にも一枚噛ませてくれよ
鍵刀構え
んじゃ、やりますか


キトリ・フローエ
新しい年のはじまりのお祭り
無事に皆が楽しめるように頑張らなくちゃ!

身を隠せそうな場所はあるかしら?
なるべく目立たないように近づいて
マンティコアの子達に小さな星の子守唄を聴かせましょう
うまく眠ってくれたらそのまま鍵を探すわ
眠ってくれなかったら…申し訳ないけれど全力の雷魔法で攻撃を
あたしが開けられる大きさの鍵ならそのまま開けて
難しそうなら鉄格子の間から牢屋に入って
海賊の皆を起こしましょう
頬をぺちぺちしたり耳元で起きてって声を掛けたりしつつ
あなた達、こんな場所で呑気に眠っている場合じゃないわ
あたしは海賊の掟とかよくわからないけれど
大事な仕事の途中なんでしょう?
あたし達が力を貸すわ、頑張りましょう!




 「メガリスの試練ってのもやっかいなもんだなぁ」
 浮世・綾華(千日紅・f01194)は、指先で遊ぶ鍵を口許に当て独り言ちた。それが彼らの生き方と言うのならば否定も出来ないが、海賊の掟とはいえ、嘗ての仲間を手に掛けてしまうのは、きっと本意じゃないはずだ、と。胸中に抱けば、暗さを増す洞窟の奥をしかと見据える。
 「仲間を手にかける前に骸に送る」
 小さく呟いたその言葉には、そこに持っていくならきっと後悔は少ない方がいいから、と。彼の思いが籠り、洞窟の反響と共に静かに響いた。そうして幾つかの分岐を曲がり、選び、彼が進む先に妖精の少女、キトリ・フローエ(星導・f02354)が奥を窺っているのが見えた。

 「……あれは、キトリちゃん?」
 「あら、綾華じゃない!……っと、大声を出しちゃいけないわね」
 知り合いの顔を視界に拾えば少しばかり気も緩むもので、互いに名を呼び合えば、空気が少し和らいだ。そうして、この先に居るのよ、と。キトリが指差す先を綾華の紅い眸が追ったなら、其処には何やら身振り手振りを交えて話す、マンティコアキッズ達の姿が見える。
 「新しい年のはじまりのお祭りが待っているもの。無事に皆が楽しめるように頑張らなくちゃ!」
 そう気合を入れて語る彼女の姿は、綺羅星の如く明るくて。ふ、と小さく笑った彼もまた、そだネ、と返し。此処で出逢ったのも何かの縁だと、作戦を互いに擦り合せる。
 身を隠し、彼らを眠らせる予定だったキトリの話を聞き、綾華が気を逸らせる役をかって出た。互いのタイミングを確認し合い、キトリは洞窟の上部へと羽ばたいて、窪みに身を潜めたなら、綾華が鍵刀を手に奥へと歩みを進めてゆく。

 「な、何だお前!」
 「こんな奥まで来るやついる?他の奴ら何やってんだよー」
 「俺らみたいに遊んでたんじゃね?」
 やんややんやと言い合いながら、近づいてくる綾華へと警戒の色を深めてゆく異形の子ら。内の1頭が飛び掛かるのを鍵刀でいなしてはひらりと躱し、避けた向こうで壁に頭をぶつけ、ぎゃん!と喚く彼を横目に一瞥。
 「ふは、まったく血の気の多い事ですネっと。んじゃ、こっちも行きますか」

 ――千変万化ノ鍵。

 彼が喚び出すは、対峙する困難を打開せし『鍵』。さぁて、何が出るか。そう目を細めた綾華の前に、どさどさどさっと音を立てて現れた出でたのは。

 「――そう来るか。いやぁ、こりゃあ完全に……」
 「おやつだーーー!」
 「甘い匂いがいっぱいだーっ!」
 「スゲェ!山盛りだぜ!」
 綾華が言いきらぬうち、警戒と緊張を纏った空気は一変。マンティコアキッズ達は我先にと、現れたお菓子の山に群がってゆく。これは俺のだ、こっちはオレが目を付けてたんだと、獲りあっては口へと運び、つい先程の静寂とは全く異なる騒がしさが、暗き場を満たしてゆく。
 気づかれぬ様と、洞窟の窪みを利用して姿隠し近付くキトリは勿論のこと、眼前の綾華の事も、もう眼に入ってはいない様子。策は大いに成ったものだが、こうも簡単でいいのだろうかと軽く肩を竦めて笑う彼は、様子を窺うキトリへとひらり手を振り合図を送った。
 合図を受けた彼女もまた、おやつに夢中な彼らにくすりと笑みを零したなら、念には念を、と夢中な彼らへと子守唄を紡いでゆく。
 「美味しいお菓子で満たされて、そのまま優しい夢を見るといいわ」

 ――おやすみなさい。

 そう告げたキトリの柔い唇から、穏やかな旋律が紡がれてゆく。其れは、小さな星の子守唄。静かに瞬く光の様に、小さな抑揚を付けながら、心地よい波にのまれゆくように。菓子に群がり、その腹を満たしていた彼らの瞼がゆるりゆるりと降りてゆき、騒がしさに満ちていたその場所が、いつしか、規則正しい寝息が紡がれる寝所へと姿を変えた。大量のお菓子をベッド代わりにして。

 すっかり夢の旅路へと繰り出した彼らを横目に、綾華とキトリは頷き合う。今は眠りし彼らの1頭が持っていたのか、床に鈍色の鍵が転がっているのをキトリが見つけ、己の身よりも大きい其れを彼へと預けた。
 「牢屋はあっちみたいよ」
 ひらり、星色の翅を羽ばたかせ、奥を指差したなら、導くように飛んでゆく。彼女を追う様に一歩踏み出す彼であったが、ふと、振り返れば背後にはすっかり熟睡したマンティコアキッズ達。
 「気づかれても声や気配で分かるだろうが……ララ、あいつらが向かってきたら知らせてくれ」
 念には念を。橙と緋色の炎纏う精霊に、そう言付けて。承知の意を籠めくるりと円を中で描いた精霊は、眠る子らを静かに照らし見守りゆく。

 ――ギィ、ガチャン。

 錆びた鉄の音を立て、手にした鍵で南京錠を開いたなら、此処でもまた、すやすやと眠る者達。
 「あれだけ騒がしかったのに、よく寝てるわね」
 「んー、それも『侯爵夫人』とやらのお力なんでショ?」
 硬い床……とも言えぬごつごつとした岩肌で、よくもまあ熟睡できるものだ、と。感心するほどに、牢の中で横たわる海賊達も心地よさ気な夢の中。しかし、その先はと言えば……そうさせない為に来たのだ。

 眠る彼ら彼女らの頬をぺちぺちと叩いては、耳元で声を掛けて回るキトリと、眠る身を揺すって起こしてゆく綾華。手分けして牢内の海賊たちを目覚めへと導く。
 「あなた達、こんな場所で呑気に眠っている場合じゃないわ」
 「――……んん?」
 「……あれ、俺達なんで、こんなとこ」
 「おはよう。寝起きで悪いが状況、分かるでしょ」
 眠る前を思い出せ、そうして今と照らし合わせて。そう告げるようにふたりは彼らを真っ直ぐと見据えて。「海賊の掟」。そう、逃がすよりも選ぶのは。
 「あたしは海賊の掟とかよくわからないけれど。大事な仕事の途中なんでしょう?」
 「『海賊の掟』……そうだ、俺達はアイツを」
 「あゝ、エリカを……アイツだった奴を、眠らせに来たんだ」
 彼等の言葉で、為しに来たことを思い出した海賊達の瞳が現在を映す。決意を宿したその輝きをみとめたふたりは、互いに頷き合って。

 「助けてやったんだ。俺にも一枚噛ませてくれよ」
 「いいのか?」
 「ええ、あたし達が力を貸すわ、頑張りましょう!」
 「――んじゃ、やりますか」
 起き上がる海賊達を鼓舞するように、明るく声を掛けたなら、キトリは花蔦絡む杖を、綾華は鍵刀を構え、この洞窟の奥、コンキスタドールとなった、彼等の嘗ての仲間が座す地へ向かうため、一歩踏み出した。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

千波・せら
腹ペコな配下たちは食べ物でおびき寄せるよ。
お腹が空いているなら私の携帯食を近くに置いて小石を投げるよ。
いい匂いがしたら近寄ってくれるかな?

携帯食のパン!
ちょっと硬いけどその硬さが癖になるパンだよ。
バターの風味が食欲を増幅させるんだ。

おびき寄せている間にレプリカクラフトで罠を作って鍵を壊すよ。
爆弾で一気に壊したい気もするけど、こっそりとが一番!
針金で鍵を作って鍵穴に差し込むんだ。

助けに来たよ!パンに夢中になっている間に早く早く。

バレちゃったら今度はジャムもあげるんだ。
探索先でもらった手作りのジャムだよ
パンと一緒に食べたらとっても美味しいんだ。


萌庭・優樹
アドリブ・他の方との絡みOK

強化の上であの牙や爪にやられたら
おれなんか一溜まりもないじゃあないですかっ
正面切っての戦いはどうにか避けて
鍵だけ奪う作戦で!

攻撃は回避か手持ちのダガーで相殺
見切りの能が少しでも役立てば

おいでませ、ガジェットショータイム!
呼び出したのはオルゴールと蓄音機を併せた奇妙なガジェット
備わった手回しハンドルぐるぐる回せば
流れ出す音楽は敵にのみ作用し、睡魔を誘うもの
今眠るべきは、おまえたちだ

敵たちが寝付いたと見えたら、鍵を拝借!
海賊さんを助けに、起こしにゆきます
お仲間の「ケリ」をつける掟
おれにもお手伝い、させてください!
楽士さんが、誰かの命を奪ってしまう前に
還してあげましょうね


 ●

 千波・せら(Clione・f20106)は、鉄格子の前に陣取る異形の子らを、海の如きその瞳に映しながら、洞窟の壁に身を隠し機を窺っていた。そんな彼女の後ろから、同じ道を辿り、この地へ着いた少女が現れる。
 あどけなさを残しつつも、温かに包み込むよな森の色を湛えた彼女は、萌庭・優樹(はるごころ・f00028)。先客に気づいた優樹は物音を立てぬよう、それでいて先窺う彼女を驚かさぬよう、静かに近付いて合図を送る。せらもまた、近付く彼女に気づけば口許に人差し指を当て手招いた。

 手招きに応じ、隣からそっと奥を覗いた優樹の瞳に映ったのは、幼さ残る言動とは裏腹に、鋭い牙や爪を持つその姿。洞窟内に吊るされた僅かな灯りを受け、ギラリ、妖しげに光る鋭利な其れが、奮われ噛み付く様を想像する。妙に生々しく浮かんだ映像に、ぶるり、その身を一度震わせて。
 「強化の上であの牙や爪にやられたら……おれなんか、一溜まりもないじゃあないですかっ」
 「あのね、私、腹ペコな配下たちを、食べ物で誘き寄せようと思ってたんだ」
 此処で会ったのも何かの縁、互いに一人よりは、と告げあって、ふたりは協力して救出を実行することにした。正面切っての戦いはどうにか避けて、鍵だけ奪う作戦を、と提案する優樹に頷いて、ふたりは互いの策を組み合わす。先ずはとせらの用意した、ほんのりとバターが香る携帯食のパンをセットして、ふたりは其々に身を隠した。

 「なぁ、なぁ、なんか食いもんの匂いしねぇ?」
 「えー?そうかぁ?」
 「そんなこと言うから、ますます腹減って来たじゃんか」
 「するって!なんかこう……バターみたいな!」
 「ならお前見てこいよー。俺腹ペコで動けねぇもん」
 「えー?でも気のせいだったらさぁ」
 そんな会話が交わされる中、カツンと、小さな石の当たる音が響く。それに反応した1頭が視線を其方へ動かせば、ほんのりバターの香るパンの姿。
 「あ!ほら!やっぱりあるじゃん!」
 「ホントだ!俺もーらい!」
 「おい!俺が最初に気付いたんだぜ!」
 食べ物がそこにある、と認識した途端、我先にとその場へ群がるマンティコアキッズ達。

 その様子を隠れて見ていたふたりが、静かに移動を開始する。見つからないように、そーっと、そーっと。抜き足、差し足、忍び足……と、壁伝いに移動するふたりであったが、腹ペコな彼らはあれよあれよとパンを平らげ、その双眸を持ち上げた。そして、その視界に入ったのは……。
 「あーっ!」
 「あーっ!バレちゃった!」
 「なんだお前ら!いつの間に!」
 「此処は通すなって、こーちゃ……『侯爵夫人』が言ってたんだぜ!」
 お役目を果たせなければ、おやつの代わりにお仕置きだ。それは困る、と、1頭がウウッと唸りを上げる。一戦交えねば仕方がないか、と、僅か震える手にぐっと力を籠めて、優樹は手にしたダガーを構える。ギラリと光る爪も、牙も、怖くないと言ったら嘘だけれど……彼女が目指すのはそう、『王子様』!この先に護るべき人達がいるのなら、奮い立たずして如何する、と。いつか、あなたの『王子様』と成る為にも、一歩一歩、重ねてゆくのだ。今この時も。

 地を蹴る1頭が優樹に迫る。勢い付いた突進を其の儘受けては危ない、と、シーフたる身軽な動きでフェイントをかけ、其れに釣られた軌道を見切り、躱す。掠った爪の先が彼女の焦茶を数本散らしたけれど、その身は傷つくことなく地を一転し、次の動きに備え再び短刀を構えた。
 「こいつ、なかなかやるぞ!」
 「せーので俺らも一斉に行こうぜ!」
 加勢しようと鬣を震わせる2頭が構えを変えたその瞬間。
 「バター味のパンだけで、お腹は足りたかな?美味しいジャムパンの追加は、どうかなっ?」
 明るい声が洞窟内に響いたならば、彼らの頭上にぽいぽいと、甘い香りを纏ったパンが放り投げられた。いつだって腹ペコの子ども達、反射的に全員が顔を上げ、とろりと甘い、苺ジャムが塗られた其れに目を奪われる。彼らに生まれた大きな隙。いまだよ、とせらが優樹に瞬きすれば、優樹も応えるように笑み向けて。

 「おいでませ、ガジェットショータイム!」
 高らかな宣言と共に優樹が呼び出したのは、オルゴールと蓄音機を併せた奇妙なガジェット。とすん、と優樹の目の前に現れ出でた其れへと、慣れた風に手を伸ばし、備わった手回しハンドルぐるぐる回せば、流れ出す音楽は、敵にのみ作用し睡魔を誘うもの。花咲くよな蓄音機のラッパから響く自鳴琴の音色は、洞窟内を穏やかに包み込んでゆく。午後の微睡を想起させるよなお昼寝誘う旋律は、優樹やせらの心をも温かに抱いてくれるよう。
 「今眠るべきは、おまえたちだ」
 そう告げた優樹の言の葉通りに、うと、うと、と。先程まで宙に舞うパンを追っていた子らの眼が、響く音色と共に夢見がちな色を帯びて行く。そうして、いつしか、3頭ともが地面をベッドにすやすやと、眠りの世界に落ちたのだった。

 深い眠りについた彼らの身を探るせらと優樹。しかし、彼らの持っていた鍵は古い物であった為か、はたまた、戯れに彼らが弄り過ぎたのか、錆びた部分からぽっきりと折れてしまっていた。此れは困った、と眉を下げた優樹だったが、その肩をポンと叩いたせらが笑む。
 「大丈夫、私にまかせて!鍵のレプリカをつくっちゃうよ」
 本当は、爆弾で一気に壊したい気もするけど、こっそりとが一番!と、両の手に握り拳を作りながら、笑って告げるせらは、存外豪快な性格なのかもしれない。そんな彼女の作成したレプリカの鍵で牢の扉を開け放ったなら、手分けして夢に浸る海賊達を起こして回る。救出に来たふたりへと感謝を述べる彼らに、優樹は柔く首を横に振って。
 「お礼なんて、そんな!それよりも、お仲間の「ケリ」をつける掟。おれにもお手伝い、させてください!」
 「――え?アンタらが?」
 「うん、うん。私も一緒に手伝うよ!大事な仲間、だったんだよね?」
 「あゝ、彼女は……エリカは、アタイ達の大事な仲間、だったんだ」
 「だからこそ、俺らでケリをつけなきゃなんねぇ」
 そう告げる海賊達の眼は、過去を懐かしむようでもあり、成すべき事への意志をも帯びていた。そこに宿るものを感じた二人は顔を見合わせ頷き合う。

 ――楽士さんが、誰かの命を奪ってしまう前に。還してあげましょうね。

 そう告げた優樹の言葉と共に、彼らは奥へと歩みを進めるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

カエナ・ネオフォカエナ
おやおや穏やかではないのう。
海賊⋯⋯海に生きる子のためにも
ちょいとお手伝いしてあげるかの。

花降る祭りも気になるしの⋯⋯!

人魚の体をふわりと浮かびながら動いて
こっそり洞窟の影からちびっこ門番たちの声を聞く

ううむ、こんなにも幼気だとためらってしまうが
心を鬼にせねばな。悪いのう⋯⋯。

指揮棒のような杖をくるりと振るい
生み出すのは水の泡、魔女の呪い。
触れたものには溶けてしまうような痛みを。
⋯⋯悪い子にはおしおきが必要じゃからね。

どうか、勘弁じゃよ
苦しむ彼らを横目にそっと鍵を奪い取った


 ●

 「――……おやおや穏やかではないのう」
 グリモアベースで話を聞いたカエナ・ネオフォカエナ(彼の背骨・f27672)は、素直な感想を口にした。今在るこの地より遠き海。これより送られる青満ちる世界を眺むるよに、そうと視線を遥かへ向けた。
 「海賊⋯⋯海に生きる子のためにも、ちょいとお手伝いしてあげるかの」
 長きを海で過ごしてきた彼女にとって、そこで生きる海賊達もまた、ヤンチャ盛りの子どものよに、見守り慈しむ対象であるのか、やんわりとその眸を細めてみせて。其の儘一度瞼を伏せたなら、一拍、二拍。そしてぱちりと翠の双眸を明かしたならば、好奇心に満ちた声音で一言添えた。

 ――花降る祭りも気になるしの⋯⋯!

 かくして、彼女は現在、暗き洞窟をふわり、ふわりと浮かび動いていた。まるで海中を泳ぐよに、人魚の体を優雅にくねらせては、路を辿る。そんなカエナの耳に、賑やかな門番達の声が届いた。そこへ静かに近づき、こっそり洞窟の影からちびっこ門番たちの其れを聞く。

 「腹減ったなー」
 「なあなあ、次のご褒美ってなんだと思う?」
 「俺、肉がたらふく食いたい!」
 「おれもー!」
 無邪気に交わされる会話は、それだけであればひとの子とはなんら変わりないように聞こえる。あれやこれやと話す彼らの様子は、あどけなくもあって。
 「ううむ、こんなにも幼気だとためらってしまうが……」
 されど、どんなに幼なさ帯びていようと、そこに居るのはオブリビオンなのだ。つ、と、その眼を細めたカエナは、心を鬼にせねばな、と胸中一度呟いて。再び、マンティコアキッズ達をしっかりと見つめ、心を決めた。

 「……悪いのう。されど……消えゆくお前も綺麗じゃよ」
 小さな謝罪の言葉を一つ。そして、唱えるよに言の葉繋げて、カエナの手で振るわれるのは、指揮棒のような細い杖。くるりと軽やかに振るうその様は、まるでこれから一曲を奏でるかのよう。しかし、そこから生み出されるのは旋律ではなく、ぽこぽこと生まれて弾ける水の泡。其れは海の魔女の呪い。
 「わ、わ、わ!なんだ、なんだ!?」
 「なんか、ふよふよ浮いてるぞ!」
 「これ、食えるかな……?」
 突然目の前に現れた沢山の水泡達に、驚き興味を示す異形の子ら。その1頭が、興味の儘、泡の一つに触れた瞬間。つん、と突いた彼の鋭利な手の爪から、ジュウ、と音を立て溶けるような感覚が伝い、身を襲う。

 「――……っ!ぎゃーっ!痛え!」
 「どうした、どうしたっ?」
 「この泡なんかやべえよ!」
 実際には溶けていない。しかし、泡へ触れたものに及ぶ幻覚が齎す痛みは、確実にその身を蝕んでゆく。幻想的でもある泡の持つ危険性を感じ、慌てふためき始めるキッズ達。しかし、気づいた時にはもう、彼らの周囲を水泡が覆い始めていた。そう、深く、深く潜る海の底。深海へと誘うかのように。
 「⋯⋯悪い子にはおしおきが必要じゃからね」
 彼女の手で振るわれるタクトに呼応し、増えては踊る水泡が、彼らの業を示すよに、犯した罪をその身に告げるよに。じくじくと痛みを与え続けてゆく。其れは、彼らが骸の海へと還るまで続くのだろう。

 ――どうか、勘弁じゃよ。

 そっと眉を下げ、苦しむ彼らを横目に。カエナは彼らの落とした鍵を、そっと奪い取った。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『『侯爵夫人』と『島喰らい』』

POW ●島を喰らう牙
【『島喰らい』の牙 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD ●ホエールシャーク・アンサンブル
【『島喰らい』の 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【『侯爵夫人』】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ ●コラプシング・ノクターン
装備中のアイテム「【堕落の音色を奏でるハープ 】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠銀山・昭平です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ●

 彼女の奏でる旋律は、いつでも彼らの日々を彩り傍にあった。
 手にした財宝に船内が沸く日には、踊り出す爪先を尚軽やかに誘って。故郷懐かしむ者には、その郷愁へ寄り添って。未知なる地へと向かうなら、鼓舞の響きで背を押して。そして、仲間との別れには、ただただ静かに……安寧なる路迂を示すよに。
 爪弾く彼女の心のように、いつも、いつでも。常に彼らに寄り添って、そして時に導いてもきた。
 彼らにとって彼女の音色は、日常の一部でありそのものであった。

 ――だから。
 団員の誰しもが、彼女しかいないと思ったのだ。

 其の在処を掴んだ「メガリス」が、『楽器』だと、ハープだと分かった時。其れを手にするのは、その試練に最も相応しいのは、この船で彼女以外に居ないと。得た力でこの船を、未来を、更なる彩で満たしてくれるのだと。信じて疑わなかったのだ。

 しかし、現実はそう甘くはない。
 呪いの秘宝「メガリス」を手にした者に待つ未来は、ふたつ。生きてユーベルコードに覚醒するか、死んでコンキスタドールになるか。

 彼女は……後者であった。

 稲穂色の髪は深海の如き緑へと、穏やかに笑む表情は蠱惑的な其れへと変わり、慎ましやかにその身を包んでいた衣装は、艶やかな赤のドレスへと。
 エリカと呼ばれていた女性は、『侯爵夫人』と名を変えて、島をも喰む海獣を従えるコンキスタドールへと、姿を……その存在を変えたのだ。爪弾くハープの音色。其れだけが、嘗ての儘を残して。

 洞窟にハープの音が響く。

 ある者には恍惚とした感情を、ある者には懐かしさを、ある者には怠惰を誘う音帯びて。寄せては返す波のよに、心揺さぶり乍ら、ゆらゆら、と。そうして、奥へ、奥へ、己の在る場所へと。
 この地に在る者を手招き誘い、呑みこむように。
千波・せら
綺麗な音色だけが今でも残っているんだね。
命を落として、それでもコンキスタドールになって
ここで楽士みたいに音楽を奏でているんだね。

冒険に試練は付き物だよ。
ラスボスだって沢山戦ってきたもん。まだ音楽を奏でている貴女を思うと、可哀想だなとか
ここで死にたくなかっただろうなとか過るけど
でもいつまでも思っているだけじゃダメだから……!

今日の天気はみぞれのち晴れ!
落石にはご注意ください!
岩属性の雨を降らせるよ。私も当たらないように気をつけなきゃ。

試練に破れた貴女に挑んで悲しい物語を終わりにするんだ!
わくわくどきどきの楽しい冒険に!


キトリ・フローエ
死んでしまっても尚、美しい音を奏でるあなた
島を喰らうなんてそんな恐ろしくて悲しいことを
本当のあなたは望んでいないはず
だから、ここで終わらせましょう

海賊の皆には安全な場所で応援していてほしいけれど…
きっと彼らにも思う所があるでしょうから
戦うというのであれば無理に止めるつもりはないわ
彼らの命が脅かされることがないよう注意しながら
あたしは破魔の力を込めた夢幻の花吹雪で攻撃を
動きを止めて、海賊達が少しでも攻撃を当てられるように
海賊達がハープの音色に負けてしまいそうになったら
しっかりしなさい、あなた達がちゃんと見届けなくてどうするの!
と彼らを鼓舞
あたし自身は護りのオーラで音色を跳ね除けつつ戦いを続けるわ


 ●

 救助した海賊達と共に、洞窟内を移動する千波・せら(Clione・f20106)。宝石の片足をしゃらりと鳴らし、軽やかなステップを踏むように進む彼女の耳には、その爪先を誘うような音色が届いていた。
 「――綺麗な音色だけが今でも残っているんだね」
 命を落として、コンキスタドールになって……それでもここで、楽士みたいに音楽を奏でている“彼女”。届く音色に耳傾けて、まだ見ぬ姿に想いを馳せる。

 そうしてまた別の道。此方では、海賊達の前をひらりと羽撃く少女の姿があった。星色の翅を煌めかせるキトリ・フローエ(星導・f02354)だ。彼女の耳にもまた、同じ音色が響いている。
 「死んでしまっても尚、美しい音を奏でるあなた」
 海賊達から聞いた、生前の彼女を思い出す。島を喰らうなんて、そんな恐ろしくて悲しいことを本当の彼女は望んでいないはず。胸の内に抱く想いのまま、キトリは軽く眸を伏せた。
 「――だから、ここで終わらせましょう」
 そう告げて意志秘めた眼差しで先を見たキトリの眸に、別の道との合流点が映った。

 「――あ!君は、マジカルキトリ!」
 「あら、そう云うあなたは、せらブルーじゃない!」
 いつかの日、共闘した相手の姿をみとめたならば、互いに当時の名乗りを呼んで、くすりと笑いあう。そんな彼女たちへ不思議そうな表情を見せた海賊達に、知り合いで共に戦う仲間なのだと告げたなら、其れを聞いた彼らもまた、其々と同行していた仲間達との再会と無事を喜び確かめあい、先を急ぐ。

 奥へ、奥へと進む毎、大きくはっきりしてゆく竪琴の音色。道幅も徐々に広くなり、突然視界が開けたと思ったならば、海水の入り込む、洞窟内の入り江と称せる場に辿り着く。彼らの足音が洞の内に響くと共に、奏でられていた其の音がぴたりと止まり、ザザ……と波の音が静かに皆の耳へと届いた。
 「――……おかしいわね。貴方達はまだ、寝て居る頃だと思ったのだけれど」
 爪弾く手を止めた女が、眺めていた波間から視線を移し、此方をゆるりと振り返る。深海の色を帯びた深い緑の髪が、ゆら、と揺れて。向けられた双眸が、辿り着いた彼女らと海賊達を捉えた。その眼差しには、彼らに聞いた慈しみの色を垣間見ることも出来ず。キトリはそっといたましげに眉を顰めた。

 「みんな!冒険に試練は付き物だよっ!」
 しん、と静寂が広がり、後ろに集う海賊達の士気も危ぶまれそうな中、声高に告げたのはせらだ。
 「姿を変えて、それでもまだ音楽を奏でている貴女を思うと、可哀想だなとか、ここで死にたくなかっただろうなとか過るけど……」

 ――でも、いつまでも思っているだけじゃダメだから……!

 「……あゝ、確かに、嬢ちゃんの言う通りだ」
 「うん、遠巻きに見て燻ってるなんて、アタイ達の柄じゃないね!」
 「ケリ、つけに来たんだもんな」
 両の手で握り拳を作り語る彼女の声を受け、海賊達もまた、各々の武器を握り締めた。そう、此処に来たのは感傷に浸る為ではない。嘗ての彼女の面影を追ってでもない。為すべきことを成すためなのだと。
 そんな姿をアイオライトの眸に映し、彼ら、彼女らを思って下げた眉をきりりと持ち上げ、キトリもまた前を向く。海賊の中には、ユーベルコードの力を持たない者も数多い。そんな彼らには、安全な場所で応援していてほしい、そうも思うけれど。意志を宿し、前を向く彼らにもまた、思う所があるのだろうから、と。鼓舞の意を籠めてひらりとその身を舞わせたならば、彼女もまた、花咲く杖へと身を変じた精霊のベルと共に、『侯爵夫人』と向かい合う。
 「戦うというのであれば、無理に止めるつもりはないわ。一緒に、成しましょう!」

 「そう、抗うつもりなのね?そのまま夢を見ていれば苦しまず終われたのに……」
 「終わりはそっちだよ!試練に破れた貴女に挑んで、悲しい物語を終わりにするんだ!」
 続く彼らの火付け役になるべく、率先してせらが前に出る。この試練を超えた先、「海賊の掟」を成した先、彼らにも自分にも、わくわくどきどきの楽しい冒険が待つことを願って。
 「いいわ、来るなら来なさい。但し、相手は私だけじゃないわよ?」
 そう告げた侯爵夫人が、再びその手元のハープを爪弾く。誘うよな音色に、大きな音を立て入り江に渦が巻き起こった。そこから姿を表したのは、巨大な海獣『島喰らい』だ。

 「で、デケェ……!」
 「あ、あれに、敵うのか……?」
 大きな咆哮を上げ、その名の通り島をも喰らう大口を開けた異形の姿に、海賊達が思わず声を上げる。
 「大丈夫よ、あたし達もついてるわ!」
 怯む彼らに声を掛け、キトリはくるりとその周囲を舞い飛ぶ。煌く翅で軌跡を描き、彼らを鼓舞する姿は宛ら流星のよう。その姿に励まされる海賊達の耳に、続いて響くのはせらのお天気予報だ。
 「大きくたって怖くないよ!今日の天気はみぞれのち晴れ!落石にはご注意ください!」
 よく通る声で宣言された彼女の周囲に、魔力の暗雲が垂れこめる。集う力は岩属性を纏った雨。ゴツゴツとした岩の如き氷の塊が、嵐と混じり島喰らいの巨体を襲う。その身が大きければ大きいほど、当たる面積も大きい。ガツン、ゴツンとぶつかる氷の岩が島喰らいを怯ませ、ダメージを与えてゆく。

 流れ弾ならぬ流れ岩が海賊達に当たらぬよう、キトリが安全な場所を見つけては誘導してゆく。島喰らいの巨体がそうすぐに倒れることはないと言えど、着実に体力は削られている。せらの操る氷の岩がぶつかりゆくのを見て、キトリは花杖をくるりと回した。
 「あなた達、これからあたしが隙を作るから、思いっきりやっちゃいなさい!」
 背後に控える海賊達に声をかけたキトリは、その身を高く舞わせて、手にした杖へと魔力を込める。

 ――花よ、舞い踊れ!

 力宿す言の葉と共に、破魔の力を込めた夢幻の花吹雪が花杖から無数に舞い散り、島喰らいと侯爵夫人の視界を覆い隠してゆく。光纏う花弁の嵐に包まれて、動きの止まったその身へと海賊達の攻撃が向かいゆく。
 飛び出した一人の振るうカトラスが島喰らいの身に傷をつけ、そこを目掛けてラッパ銃の発砲音が響いた。ひとつひとつは猟兵に満たぬ小さな力でも、為すためと振るう彼らの技もまた、確実に巨体に傷を増やしてゆく。
 そんな時だ。空気を震わす音色が響いた。どこか悲哀を帯びたその旋律は、聴くものの心を揺さぶるようで居て。

 「――……あ。」
 「エリカ……」
 海賊達の一部が、ゆら、とその身をふらつかせる。その眸には幻覚でも見えているのだろうか、瞼が重く下りそうな者が現れた。そんな彼らの周囲を、護りのオーラで身を包んだキトリが翔ける。
 「しっかりしなさい、あなた達がちゃんと見届けなくてどうするの!」
 時にその頬をぺちりと叩きながら、心奪われそうな彼らを叱咤してゆく。
 「そのエリカが、あなた達を害する事を望む訳ないでしょう?そんな事をさせない為に来たんでしょう?」
 ハープの音色に惑わされないで。そう紡ぐキトリの言葉にハッと我に帰る海賊達。虚になりかけた瞳に光が戻るのを見て、笑みを浮かべた彼女は大きく頷いた。

 「さぁ、まだまだいけるわね?」
 「海賊の掟を全うするまで、一緒に頑張ろう!」
 そう、まだ戦いは始まったばかりだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ミラ・ホワイト
淑やかな指先が奏でるのは
柔らかな旋律で綴るのは
希望の音色だった筈なのに

侯爵夫人――いえ、エリカさま
海賊の皆様にとって同胞であったあなたを
傷付けたくはありませんけれど
嘗ての貴女がもう亡いとゆうのなら
これ以上皆様が哀しみ苦しまないよに
安らかに睡るお手伝いを、させて下さいな

讃美歌の一節をなぞれば
ひらり舞い相手へと向う萌葱色
纏わり刺さる柊の葉
共に在る猟兵の方々の力を届かせて
剥き出される大きな牙が届かぬよう
私にできる精一杯を

貴女に相応しいのは
島喰う魔物の横ではなく
歌い踊り盃交わす、仲間のお傍ではないかしら

最期はどうか、想いの強い方の手で


再び海原へ出る事は叶わずとも
彩溢れる御伽の島から
見守って居て下さいね


浮世・綾華
悪いが感傷に浸ってる暇はねーよ
エリカって人の為にも、だ
――あんたら、何ができる?

数が多いだけでも隙は作りやすいはず
危なくなったら避けりゃいい
俺?会ってすぐ信用しろってのも難しいか
んなら、今から示すしかねーよなぁ

まずはあの島喰らいってのが邪魔だな
行くぞ、ララ

炎を放たせ己も鬼火を
強い攻撃が海賊に向かないように炎で誘導するが
あの人らにもプライドがあるだろ
多少なら気にせず自分の行動に集中する

敵に近づけたら鬼火で視界を奪い鍵刀で切りつける

仲間の期待に応えられなかったとかそんな想いがあるだろうケド
やっぱりこれ以上後悔させたくねぇ

…今日は花が降る日なんだってよ
花降る下で本当のあんたが奏でる音を聞きたかったな


 ●

 洞窟の最奥、竪琴の旋律が響き渡る。その音に合わせ島喰らいの突進が繰り出され、時にその岩肌が削られてゆく。奏でられる音色は艶やかであり乍ら、時に癒しすら、懐かしさすら覚えるものであるのに、振るわれる力はその旋律が齎すものとはかけ離れていて。
 「――……淑やかな指先が奏でるのは、柔らかな旋律で綴るのは、希望の音色だった筈なのに」
 思わずそう口をついたのは、先程この地に辿り着いたミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)だ。『侯爵夫人』の従える『島喰らい』が、所狭しとその身を振るう様を目の当たりにして、爪弾く音色の主が己らの知るその姿を保たぬ様を目にして、彼女の後ろ、数人の海賊達もまた其の嘗ての姿を想い、手で口元を覆った。
 嘗て同胞であった彼女の、今の姿を前にして絶句する彼らへと掛ける言葉を探るよに、そのかんばせを仄か曇らせたミラが、そっとその柔い両の手を己が胸へと添えた……その時であった。

 「悪いが感傷に浸ってる暇はねーよ。……エリカって人の為にも、だ」
 良く通る声できっぱりと、彼らの背後から言の葉が向けられた。振り返る海賊達とミラの眸に映ったのは、暗い洞窟の中でも確かな灯りを燈すよな、赤を湛えた浮世・綾華(千日紅・f01194)の姿と、その後ろについて駆けつけた海賊達。その足音が収まりゆく頃、綾華の赤はゆっくりと周囲を見回し、惑いを抱く海賊達の其れを射抜くように真っ直ぐに向けられた。

 ――あんたら、何ができる?

 短く彼らへと問う言の葉は、先の其れと同様に現実を突きつけるようでありながら、紡ぐ声音には其の背を押す温かな響きが宿っていた。一拍、二拍ほどおいた後、海賊の一人が口を開いた。
 「――……アタシはさ、多少なら癒しの力が使えるよ」
 「……俺は、ユーベルコードは使えねぇ。けど、射撃の腕にはちょいと自信があるぜ!」
 あのデカブツ相手にどこまで通じるか分からねぇが。ちら、と、暴れる島喰らいへと視線を向けそう続けた男に、綾華は笑んだ。
 「ユーベルコード使いだけが戦力じゃないだろ。数が多いだけでも隙は作りやすいはず」
 危なくなったら避けりゃいい、と続けた綾華にミラが続く。
 「わたしも、皆さまをご助力いたしますっ」
 気心知れた人達と重ねた冒険は数あれど、彼女にとってひとりで赴く其れは今回が初めてだ。ともすれば緊張もする。けれども、自分の力も役に立つのだと、赴くのはひとりでもこの地に立つのはひとりではないと、先の一戦で、海賊達と駆けた道中で、そうも感じ取れたから。木苺の眸には仄かな自信と、この地で為す事への気概が確かに宿っていた。

 「ありがてぇけどよ、アンタ達は……大丈夫なのか?」
 海賊の一人が口を開く。囚われの自分達を助け、此処まで連れて来てくれたのは確かに彼ら、彼女らだ。しかし、目の前で振るわれゆく力の大きさも勿論のこと、出会ったばかりの二人の力もまた、はかりかねていて。
 「俺?んー、会ってすぐ信用しろってのも難しいか。んなら、今から示すしかねーよなぁ」
 その問いは至極尤もだ、と云わんばかりの表情で綾華は笑みを作った。手放しで己らを信じるよりも、そう問えるだけの慎重さ、冷静さも戻っているなら上々だ。
 そうして、ちらりと戦音響く先を眺める。海賊達の士気が戻ってきたのならば、此処で立ち止まる理由はもう無い。最後の一押しは、自分たちが見せる番だと視線をミラの方にも向けたなら、雪色の少女もまた木苺の眸を彼へ向け、大きくひとつ、頷いた。
 「ええ、参りましょう!」
 「ン、あんたもいい返事だ。まずはあの島喰らいってのが邪魔だな。行くぞ、ララ」
 木苺の瞳を見返して口許に笑みを作ったなら、綾華は傍の精霊にそう告げて、暴れる巨体へ向け炎を放たせ、己も緋色の鬼火を呼び出し地を蹴った。

 島喰らいに向かい先駆ける綾華の背を見送りながら、ミラの眸は侯爵夫人を捉えていた。
 「侯爵夫人――いえ、エリカさま。海賊の皆様にとって同胞であったあなたを、傷付けたくはありません」
 静かに彼女の名前を呼び、胸の内をそっと語る。彼女のことは、海賊達から聞いた話が全て。自身が生前の彼女を知るとはとても言えない。けれど、それでも思うのだ。ハープの奏でる音色が、嘗ての心を表し教えるように、ミラの胸の奥にも響くから。
 「あら、貴方もその名で呼ぶのね?姿変われど、存在変われど……嘗ての面影とやらを、拭えぬのかしら?」
 「――けれど。嘗ての貴女がもう亡いとゆうのなら、これ以上皆様が哀しみ苦しまないよに。安らかに睡るお手伝いを、させて下さいな」
 けれども、そう続けて一度首を振り、相手を見据えた彼女の赤は、揺らぎなく。出逢った海賊達を、そしてもう亡き『エリカ』を想うからこそ、為すべき事を言の葉と変え、そうして彼女は奏でだす。優しく澄んだ讃美歌を。

 ――Fa-la-la。

 なぞる一節。ミラの鈴鳴る声は力を帯びて、ひらり舞い相手へと向うは萌葱色。歌声と共に差し向けた柔らかなてのひらの先、侯爵夫人の身に纏わり刺さる柊の葉が、鮮やかな色を仄かな照明に煌めかせながら、ぎり、と赤きドレスを一部裂き彼女の身へと食い込み捕縛し、自由を奪う。
 爪弾く指先の自由を奪われ、ハープの音色が途切れた時、彼女が従える島喰らいの動きもまた鈍った。歌う讃美歌、行使される縛めの力、その代償がミラの身を襲い蝕むけれど……きゅ、と眉に力を込めて、彼女は耐える。共に在る猟兵達の力を届かせて、剥き出される大きな牙が届かぬように。

 ――私にできる精一杯を。

 そう、今、ミラが為すことは、為したきことは、それだから。この一瞬に精一杯の力と想いを込めて。そしてその想いと力は、確かに伝わる。共に戦う仲間達へと。

 島喰らいと対峙していた綾華と海賊達が、その巨体の異変に気づいた。
 強い攻撃が海賊に向かぬよう、炎で誘導しながら強力な突進を避け受け流し戦い続けていた彼の姿に、侯爵夫人と気丈に対峙するミラの姿に、海賊達もふたりへ信を置き動いた。
 「おい、援護するぜ、炎使いの兄ちゃん!」
 「アイツが鈍ってる少しの間なら、オレら総出でアンタの代わりに抑えてやれらあ!」
 「『侯爵夫人』を、あの嬢ちゃんを頼むよ!」
 「……ハッ。言うじゃん。あんたらも無理すんなよ」
 掛かる言葉に小さく笑い、一斉に島喰らいの足止めに向かう海賊達を横目に、地を蹴った綾華が鍵刀を構えミラの柊に捕われし侯爵夫人へと肉薄する。
 「――仲間の期待に応えられなかったとか、そんな想いがあるだろうケド。やっぱりこれ以上後悔させたくねぇ」
 「貴女に相応しいのは、島喰う魔物の横ではなく、歌い踊り盃交わす、仲間のお傍ではないかしら」
 侯爵夫人に、そして、エリカに、綾華の言葉とミラの言葉が重なり紡がれる。

 「再び海原へ出る事は叶わずとも、彩溢れる御伽の島から見守って居て下さいね」
 「……今日は、花が降る日なんだってよ。花降る下で、本当のあんたが奏でる音を聞きたかったな」
 其々の想いを胸に、縛めの柊が解かれると同時、綾華の振るう黒き鍵刀が在るべき先を切り開くかのように、侯爵夫人の身を抉った。
 
 ――最期はどうか、想いの強い方の手で。

 そう願うミラの想いも織りなされ、戦況はまだまだ巡ってゆく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

音が聴こえる
不思議な音色だね
噫、惑わす厄の音色だ
私の巫女の耳を塞ぎたい
余計なものに惑わされて仕舞わないように

サヨこそ気をつけて
美しい音色に囚われて仕舞わないように
いとしいきみが、のみこまれてしまっては大変だ
ふふ
きみは私が守る
可愛い巫女
……あの様な穢れがきみに触れることなど赦さない

早業で駆けて先制攻撃
サヨの桜吹雪に添えるのは、神罰だ
その音色が私達を害すこと、其の厄を断ち切り
サヨに幸運を約そうか

動きを第六感で視て見切り
結界で衝撃和らげ、放つ
―春暁ノ朱華
邪となってしまった音色ごと切断する

そなたの音色は愛されていたのだね
其れを手にしたもの
きっと
誰かのためだったに違いない
傷つけぬうち、かえりなさい


誘名・櫻宵
🌸神櫻

美しく、誘うような絡めとるような
然して何処か寂しげだと感じる
私は余り音楽に詳しい訳では無いけどその位はわかるわ

カムイ、気をつけて
大きいのが突進してくるよう
かぁいいあなたが、吹き飛ばされたら大変だもの
うふふ
じゃあ私を守って頂戴ね
かぁいい私の神様
あなたは私が守るから

衝撃波と共に放つ斬撃に桜化の神罰を添えて
「艶華」
私の神の邪魔はさせない
邪な音色は浄化と共になぎ払う
カムイの太刀筋などるよう
傷を抉り裂くわ

元のあなたの音色を聴きたかったものだけれど
凡てもう遅い

あなたの音色があなたの大切な人たちを壊してしまわぬうちに――どうぞ、お眠りになって
音色の代わりに、弔い桜を添えてあげる

もちろん、花はあなたよ




 「音が聴こえる……不思議な音色だね」
 「ええ、美しく、誘うような絡めとるような。然して何処か寂しげだと感じる……」
 私は余り音楽に詳しい訳では無いけど、その位はわかるわ、と。隣添う朱き神に告げるのは、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)。その言葉を受け、響く旋律に耳傾けて、朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)もまた思う。噫、惑わす厄の音色だ、と。

 ――私の巫女の耳を塞ぎたい。余計なものに惑わされて仕舞わないように。

 口には出さず、心にて紡いだその言の葉を、ぎゅう、と握りしめた掌に閉じ込めるようにして、カムイは櫻宵の一歩前へと踏み出だし、眼前にて繰り広げられる戦いをしかと見据えた。
 集う猟兵達と海賊達によって、その身に多くの傷を負いながら、尚、島喰らいの荒ぶる力は衰えてはいない。地揺らすほどの咆哮に眉を顰めた櫻宵が、その手に武器を構え彼と並ぶ。

 「カムイ、気をつけて。大きいのが突進してくるよう」
 かぁいいあなたが、吹き飛ばされたら大変だもの。そう続けては、艶やかでいて少し悪戯な笑みを彼へと向けて。
 「サヨこそ気をつけて。美しい音色に囚われて仕舞わないように」
 いとしいきみが、のみこまれてしまっては大変だ。その眸に櫻宵の姿を映し、向けられた笑みと言葉に応えるように、カムイもまた紡ぐ。
 交わし合う言の葉と思いに、ふたりは互いに顔を見合わせ眦柔く微笑みあって。
 「うふふ、じゃあ私を守って頂戴ね、かぁいい私の神様。あなたは私が守るから」
 「ふふ、きみは私が守る。可愛い巫女」
 愛しみの色を帯びた眼差しで櫻宵に告げたカムイは、その視線を対する巨獣へと移したならば、その色もまた鋭さ帯びたものへ変え、赤き刀身の太刀を一振りする。

 「……あの様な穢れが、きみに触れることなど赦さない」
 その言葉を皮切りに、先手を取るべく早業で駆け出すカムイの横を、櫻宵の放つ衝撃波もまた疾く翔けた。其れと共に地を踏み切る櫻宵が繰り出すのは「艶華」。

 「夢見るように、蕩けるように。甘く咲いてたべさせて」
 艶やかな笑みと共に告げ放つ斬撃に、桜化の神罰を添え、肉薄した島喰らいの巨体を横に薙ぐよう斬りつけた。与えた傷は、その身に比べ小さきものであったけれど、その切先が与えゆくのは眼に見える傷だけではない。その真性は込められた神罰に在る。
 すぐに全てが飲み込まれるわけではない。しかし、じわり、じわりと、その魂を、存在を、侵食されると共に、奪われゆくそれは桜花の一部となってその地を彩ってゆく。
 ひらり、はら、はら。舞う花弁をその眸に映したなら、恍惚とした表情で櫻宵の唇が動いた。

  ――ほら、こんなにうつくしい。

 そうして舞う桜吹雪に、カムイの神罰も乗る。疾く駆けし身は、ハープを爪弾く侯爵夫人の元へと。
 「その音色が私達を害すこと、其の厄を断ち切り、サヨに幸運を約そうか」
 「……それ以上、近づかないで頂戴!」
 接近される気配を感じた侯爵夫人は、爪弾く弦の音階を変え、其の音色に反応した島喰らいが駆けゆくカムイへ向けて身を震わせた。己へと突進してくる其の動きを、カムイは研ぎ澄ませた第六感で視て見切る。
 「あゝ、もう!ちょこまかと、すばしこいこと……暫く眠っておいでなさい!」
 「あら、私の神の邪魔はさせないわ」
 当たらぬ攻撃に業を煮やす侯爵夫人が、次いでハープより放つ音の力を、櫻宵が浄化の力乗せた太刀でなぎ払う。微か残る響きの力も結界で和らげながら、カムイは赫の一閃を振るう。

 ――春暁ノ朱華。

 短く唇を動かしたなら、邪となってしまった音色ごと、其の向こうの彼女の身を切断し、彼の太刀筋などるよう、櫻宵の振るう太刀もまた其の傷を更に抉り裂く。
 ふたりの刃で齎されし、その身に走る激痛に金切声を上げながら、膝をついた侯爵夫人は傷口を押さえ、距離を取るべく後方へと地を蹴った。
 眉根を寄せてふたりを睨み付ける其の様を眺め、厄を帯びて奏でられる音色を思い、櫻宵もまた静かに眉尻を下げる。

 「……元のあなたの音色を聴きたかったものだけれど、凡てもう遅い」
 告げてちら、と眺め見るのは彼らの援護を後方から担う海賊達の姿。
 彼らがこの地に集ったのは、「海賊の掟」と言うものもあったろうが、こうなってしまった“彼女”をそのままには出来ない、と。純粋なる其の思いもあっただろうから。そしてまた、彼女が奏でし音色に、殊更に影響を受けやすいのも、其の音色に思い入れが強いからであろうから。
 嗚呼、それ程までに、彼らの中に彼女の存在は、音色は、根付いていたのだと知れるから。それ故に、聞いてみたかった。こうなる前の、あなたの音色を。

 「……そなたの音色は愛されていたのだね」
 櫻宵と同時、カムイもまた海賊達を、そして目の前の侯爵夫人をその瞳に映して告げる。刃振るう瞬間とは異なった色を帯びて。
 そして、其の視線はそのまま、彼女の持つハープへも注がれる。
 「其れを手にしたのも、きっと誰かのためだったに違いない」
 そう、メガリスを手にして訪れる結末を、ふたつの其れを、知らぬ筈はなかったろう。それでも、其の力に手を伸ばしたのは……得た力で、彼らの力になりたかったのだろう。己の音を愛してくれる彼らに、新たな音を届けたかったのだろう。ともすれば、其の音で彼らを護りたかったのだろう。
 ……で、あればこそ。其の対極を行く現状が、痛ましくてならない。

 「あなたの音色が、あなたの大切な人たちを壊してしまわぬうちに――どうぞ、お眠りになって」
 倒すべき敵としてだけでなく、其の向こう、嘗ての姿を想いながら、この戦いの先、其の彼女の安らかなる眠りを想いながら。櫻宵の言葉と共に、再びふたりは太刀を構える。

 ――傷つけぬうち、かえりなさい。
 ――音色の代わりに、弔い桜を添えてあげる。

 重なるふたりの声が、目の前の彼女へと紡がれて。もちろん、花はあなたよ、と。添えた櫻宵の言の葉を皮切りに、彼女へと、安寧なる眠りを齎すべく、彼らは同時に地を蹴った。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

波山・ヒクイ
海賊の皆様、よそ者が宿命の対決に参加するのも癪かもしれないけど、あのコンキスタドールは…強いぜ?わっちが手を貸そうじゃないの
こう見えてわっちには策があるのよ。
ただわっちだけじゃ火力不足でつらたんだから、動きを止めたら一斉攻撃してくんない?

つーわけでさぁ来い島喰らい!所狭しと飛び回るわっちを捉えられればじゃけどな!
そして、間違いなく公爵夫人は加勢し、わっちに攻撃を当てる為の手を打ってくるはず。
その瞬間がチャンス。わっちのローカルルール発動!2対1で更にパワーアップは卑怯ですので、お二人には…「小さくて弱くて遅い」姿になって貰います!

…さあ後は頼んだぞ野郎ども!ありったけの援護攻撃よろしく!




 「海賊の皆様、あのコンキスタドールは……強いぜ?わっちが手を貸そうじゃないの」
 そう言葉を紡ぐのは波山・ヒクイ(ごく普通のキマイラ・f26985)だ。よそ者が宿命の対決に参加するのも、癪かもしれないけど……と、そう思いを抱きながらも、集う海賊達相手に告げた申し出は、彼女の想像と裏腹に、彼らへと真っ直ぐに受け入れられた。
 海賊の掟を己らで成す。其のことに対して、海賊達にも矜持はある。されど、彼らは身をもって知っていた、彼らだけで為せるほど対する相手が甘くはないということを。そして、己らの矜持よりも、“彼女”を在るべき場所へと送ることこそが何よりであるのだと。
 その意志を感じ取ったヒクイは、その面差しをニィ、と満足げに和らげて、集う彼らへと告げた。

 ――そうか、なら聴くといい。こう見えてわっちには策があるのよ。

 その言葉の後、語られる策に場を同じくする面々が耳傾ける。
 「……と、いう流れなんじゃが、ただわっちだけじゃ火力不足でつらたんだから、動きを止めたら一斉攻撃してくんない?」
 と、ヒクイが視線を向けた先は海賊達だ。言葉の通り、火力不足を補う為、という事もあるだろうが、彼らの大半を占めるユーベルコードを持たない面々も、この作戦の内容ならば、侯爵夫人や島喰らいに一矢報いる事ができるだろう。
 「ここまでお膳立てされて引っ込んでちゃ、海賊の名折れだろ?」
 「アタイらの息のあった力、見せつけてヤローじゃねぇか」
 「あんたがミスすんじゃねーぞ?」
 「違ぇねぇ、ちゃんと止めろよ?不発じゃ俺ら吹っ飛んじまう」
 「わっちを誰だと思ってんの?カメラがなくても、このワザ存分に魅せてやろーじゃないの」
 翼の腕をポン、と叩き、海賊達を見回すヒクイの目には、やる気に満ちた彼らの姿が映っていた。満足げに頷いた彼女は、そうと決まれば行動あるのみ、と、その視線を戦音響く先へと向けて、翼をばさりと羽撃かせた。

 「つーわけで、さぁ来い島喰らい!所狭しと飛び回るわっちを捉えられればじゃけどな!」
 高らかに宣言したヒクイは、バサリと翼を鳴らすと共に、その身を洞窟の天井近くまで持ち上げて、島喰らいの頭上を自由に飛び回る。その素早さに、巨体を唸らせる島喰らいも狙いを定め損ねていた。
 時にその動きを止め突進を促せば、ひらりと避けて洞窟の壁へとぶつかる様に誘って。彼女の捉え難い動きによって、島喰らいの身にひとつ、またひとつと傷が増えてゆく。

 「ああ、もう……全く何をやっているのかしら。鳥一羽、捉えられないの?」
 その様子を見かねた侯爵夫人は軽く頭を押さえ、仕方が無いわねと言いたげに、ハープに添えた指先の動きを、海獣の力増す其れへと変え弾く。
 その様を見て、変わる音色を聞いて、ヒクイは笑みを深める。そう、島喰らいを翻弄し、侯爵夫人が加勢する。彼女はその瞬間を待っていたのだ。

 「あーっダメじゃダメダメ!そーいうずるいのはわっちがゆるしませーん!そんなずるいお二人には、わっちのローカルルール発動!2対1で更にパワーアップは卑怯ですので、お二人には……」

 ――「小さくて、弱くて、遅い」姿になって貰います!

 口早に捲し立て、びしぃっ!と音が立つほどの勢いで空中から指差したヒクイの術が、侯爵夫人と島喰らいに襲いかかる。彼女の指定した条件のうち、彼らに作用したのは『弱くなる』姿。
 その見た目は大きく変わらないが、変化の力が彼らに全て及んだ時、島喰らいの突進は威力を減らし、侯爵夫人の爪弾く音色に宿りし力も、その効果が減少する。
 そして何より、変化の完了に至るまでの間、彼らの動きが止まるのだ。

「……さあ、後は頼んだぞ野郎ども!ありったけの援護攻撃よろしく!」

 今だ、行けー!と、叫んだひとりの号令を皮切りに、海賊達が我らも一矢報いん、と、静止した島喰らいと侯爵夫人へ攻撃を仕掛けてゆく。
 そしてその様子を、ヒクイは満足げに上から眺めるのだった。そう、静止したもの達が再び動き出す、その時に備えながら。
大成功 🔵🔵🔵

萌庭・優樹
アドリブ・他の方との絡みOK

なんてやさしい音だろうって
微睡んでしまいそうな、ハープの音楽
…でも同じなのは、あの音色だけだ

『島喰らい』の脅威は侮れません
やつが攻撃を仕掛けてくるのなら
その相手をすることに集中します
まずは真正面から、島喰らいに向けて空砲でフェイント
やつが避けたその場所へ、今度は本当のUCで
脚などを狙って、杭で地へ打ち留め
あるいは、先制攻撃敵わないなら
自分の体勢崩さぬよう注意しながら、牙の回避を試みつつUC発動

かのじょの体はメガリスに奪われて
このままじゃあ永遠に洞窟に囚われたまま
そんなのイヤですよねって海賊さんたちへ伝え
『掟』を貫くそのキモチ
絶対絶対、忘れないで、一緒に戦いましょう!


カエナ・ネオフォカエナ
爪弾く音色にうっとり心奪われ
瞳を閉じてつい、聞き惚れてしまう

海の底、微睡みの中で聞くような優しい音
いつの日か海辺で聞いた、
海を馳せる強者たちに彩を添えるようなそんな音

ああ、なんと心地の良い音色、なのに
……人から離れた存在になってしまうとは。
なんと悲しいことか。そんな小さな呟きをほろり零して

姿形は違うのに
嘗て愛した彼の人に重ねているのじゃろうな

魔力を編み込んだ泡で喚びだすのは海の強者と幽霊船。
海の水を、泡を纏いし戦士らが相手してやろうぞ

力を求め、呑み込まれてしまった貴女よ
どうかどうか安らかにお眠りよ

お主の存在は、奏でた音色は
きっと彼らの許に残り続けると思うのじゃ
……たとえ形無きものであろうと、な




  萌庭・優樹(はるごころ・f00028)の耳には、幾度となく奏でられた侯爵夫人の旋律が響いていた。

 ――なんてやさしい音だろう。

 微睡んでしまいそうな、ハープの音楽。胸の奥にまで響く様な、まるで聞く者の心に寄添う様な旋律に、優樹は静かに一度、其の瞼を伏せた。
 カエナ・ネオフォカエナ(彼の背骨・f27672)もまた、夫人の爪弾く音色にうっとり心奪われ、瞳を閉じる。其の耳に、心に響くのは、海の底、微睡みの中で聞くような優しい音。
 いつの日か海辺で聞いた、海を馳せる強者たちに彩を添えるようなそんな音……嗚呼、つい、聞き惚れてしまうようだ。

 「……でも。同じなのは、あの音色だけだ」
 その旋律の持つ力は、その先に待つものは、決して優しいものでは無い。嘗てを思い起こす耳心地のいい音色に隠された、コンキスタドールが齎すものは、聞く者の未来を奪う終焉の響き。
 ふるり、と首を一つ振り、明かした陽色の瞳で前を見据え、己に、そして共に脅威へと対峙する仲間たちにも言い聞かせるように、きっぱりと優樹は言葉にする。其の声に、カエナも伏せていた瞼を柔らかに持ち上げて。
 「ああ、なんと心地の良い音色、なのに……人から離れた存在になってしまうとは」

 ――なんと悲しいことか。

 そんな小さな呟きを、ほろり零した彼女の心を占めるのは、明かした瞳に映る侯爵夫人の姿ではなくて。響く音色で呼び起こされる、“かのひと”の。
 「姿形は違うのに。嘗て愛した彼の人に重ねているのじゃろうな……」
 心の裡に描いた其の姿をそっと拭うよに、カエナもまた其の首を嫋やかに一度左右へと動かして。しかと、目の前の女の姿を見据えた。
 集う猟兵達、そして海賊達の手によって、侯爵夫人も島喰らいも、姿を現した頃に比べその力は削られ、手負いとなっている。しかし、それでも尚。

 「『島喰らい』の脅威は侮れません。やつが攻撃を仕掛けてくるのなら、おれはその相手をすることに集中します!」
 其の姿現した時こそ、其の大きさに、纏う力に怯む心もあったものだが、ここまで共に戦ってきた皆の力を、そして其の先に待つ未来を思えばこそ、優樹の手にも足にも、震えなど微塵も起こらなかった。
 優樹は手にした機械銃をしっかと構え、荒狂う嵐の海のよに、波を起こしながら暴れる島喰らいの姿を真正面から捉えた。踏みしめた足に力を籠めて、渾身の一発を放つ。
 発砲音が大きく響き、向けられた銃口に反応した島喰らいの巨体が、飛んでくるであろう正面の軌道を避けるように、地に前足をかけ動いた。
 正面からの分かりやすい軌道は、まんまと読まれてしまった様にもみえたが、しかし其れは二発目に繋ぐ為、優樹が仕掛けたフェイントの空砲だ。
 素早く構え直した銃口を、地に着いた前足に向け、撃ち込むと同時、彼女のユーベルコードが発動する。

 ――貫け……!

 叫ぶ彼女の声に呼応して、撃ち出された弾丸は大きな杭へと形を変えて、其の地へ繋ぎ止めるように深々と海獣の前脚へと突き刺さった。

 ――グオォオオォォン……!

 地を揺らすよな咆哮を挙げ、島喰らいの動きが止まる。身を捩り、後脚で蹴り上げながら拘束を解こうとするが、残る体力では力宿し地と繋ぐそれを外すこと叶わぬ様子。
 よしっ!とガッツポーズを見せた優樹は其の勢いのまま振り返る。
 「これで、島喰らいの動きは封じました!」
 そして残るは……視線を向けた先、カエナと向き合い、苦々しい顔をした侯爵夫人だ。
 「こんな、こんな事って……」
 信じられないことが起きている、という表情で、手にしたハープを掻き抱いた彼女は、しかしまだ終わってはいないと正面のカエナを睨みつける。
 抗う様子を崩さぬ彼女の姿を目に留めて、ならば、と手にしたタクトを軽く振り、カエナの周囲に現れ浮かぶは、魔力を編み込んだ泡。ぷかぷかと、浮かび集う泡が喚びだすのは、海の強者と幽霊船だ。まるで異界の扉を開けるよに、彼岸と此岸を繋ぐよに、ゆらゆらと輪郭を揺らす泡の向こうから、実体無き戦士を乗せた船が着岸する。

 「海の水を、泡を纏いし戦士らが相手をしてやろうぞ。……そして、嘗て貴女と共に海を翔けた子らも、な」
 告げて彼女の緑が眺めるのは、己が呼び出した幽霊船から現れ出でる戦士達、と……そして、この地に集った海賊達だ。
 其の言葉を受け、優樹もまた大きくひとつ頷いて、海賊達へ視線を向けて口を開く。
 「かのじょの体はメガリスに奪われて、このままじゃあ永遠に洞窟に囚われたまま……」

 ――そんなのイヤですよねっ!

 巨大な島喰らいの身は拘束され、対する侯爵夫人も弱っている。今の状態ならば、海賊達も肩を並べて前線で……そう、主力として戦い、成すことも叶うだろう。

 そう、「海賊の掟」を。
 
 「『掟』を貫くそのキモチ、絶対絶対、忘れないで、一緒に戦いましょう!」
 彼らの背を押すように、優樹が明るく告げて手を伸ばす。其の先に待つ別れは、胸痛むものかもしれないけれど、彼らはそれをも覚悟の上で集ったのだろうから。彼女に眠りを齎すならば、自分たちの手でと、そう願って来たのだろうから。護るべき後方から、自分たちの隣へ、彼らを呼ぶのだ。そう、願いを叶える場所へ。

 「アンタ達……」
 「あゝ、あゝ、そうだな。『掟』を成すのは俺たちだ」
 「エリカを、送ってやんなきゃなんねえな」
 「そうさ、送り出す音楽はアイツのようには奏でらんねぇけど」
 「アイツを送ってやれるのは……」

 ――俺たちだ。

 思い思いの武器を手に、馴染みのそれを構える姿は、きっと、共に在った彼女も見てきた姿だろう。『侯爵夫人』の瞳には、彼らがどう映っているかはわからないが、きっと、其の向こうには届いていると信じて。

 彼らの姿を一瞥し、視線を交わし合った優樹とカエナも口許和らげ頷き合い、彼女達以外の猟兵達もまた、其々の近くへ立つ海賊達と肩を並べゆく。
 そして、侯爵夫人と島喰らいに、最後の時を与えるべく、この地に集った全員が残る力を一斉に振るう。そう、猟兵達だけでなく、海賊達も共に。

 地に縛られた島喰らいへと、鋭い刃が振るわれれば其の身を裂き抉る。響く銃声と共に弾丸が其の傷口を捉え、傷つく仲間を癒す力もこの地を巡る。
 氷岩の嵐が巻き起こり、破魔の花弁が舞う。柊が、奏でる指先を縛れば、黒き鍵刀が閃いた。上空から鋭き爪が身を抉り、赫と桜花の太刀が神罰を下す。機械銃から放たれる弾丸が杭と化し巨体を貫けば、泡纏いし戦士が海賊達と共にその身を切り裂いてゆく。
 激しい戦いの音が繰り広げられる中、いつしか巨大なる海獣は地響きのよな音を立てて倒れ伏し、侯爵夫人もまた、蝕まれ呑まれゆく力のもと、その身に残る力は僅か。最後の時を迎えようとしていた。
 誰ともなく道を開き、岩壁に体を預ける侯爵夫人と対したのは、カトラスを片手に握った、海賊団を率いる一人の男であった。

 「――これで、終わりだ」

 一拍の間見つめ合い、短く告げた男が一息に地を蹴ると、その切先は侯爵夫人の身を深々と刺し貫いた。ビクリ、と身を震わせた彼女が力尽きる其の直前。深海の髪は稲穂色へと彩を変え、柔らかな笑みを浮かべた女性が、微かに唇を動かした。

 ――ありがとう。

 ……と。全員が、其の姿に目を見開いた直後、彼女の身は、洞窟に吹きこむ風に流されるかのように。微かな光とこの地に舞った花弁の中で掻き消えた。
 そうして、彼女が手にしていたハープの地に落ちる音が響き、”終わり”を告げたのだった。
 
 そして海賊達は歌う。爪弾く弦の音は響かずとも、その裡に残り響く音色を伴奏として。嘗て彼女が、別れの折に奏でた音色を、安寧願う弔いの歌を……彼女の為に。
 見守る猟兵達の想いをも連れて。

 「……お主の存在は、奏でた音色は、きっと彼らの許に残り続けると思うのじゃ」

 ――……たとえ形無きものであろうと、な。

 彼らの歌を聴きながら、地に残されたハープに触れてそう告げたカエナの言葉は洞窟内に響き。「海賊の掟」はこの地に集う全ての者達によって、履行されたのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『言ノ葉流し』

POW思うままに書きなぐる
SPD言葉を書きつける物や素材を選ぶ
WIZ手紙を流す場所を探す
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 洞窟での一件が幕を閉じ、静けさが取り戻された頃。
 ひらり、はらり、と、花が降る。
 雨や雪のように空を覆う雲は無く、高く高く、青の彼方から。
 今年初めての、『彩』が来る。

 静かに音も無く降り注ぐ花々は、今の季節に咲くものが幾分多くはあるものの、咲く季節を問わず舞い降りて。その彩をもって空を、地を、海を、そして人々をも染めてゆく。
 新年の言祝ぎに似合いの紅白梅に、雪のよな真白のスノードロップ。鮮やかな陽色のカレンデュラが太陽に重なれば、慎ましやかな色纏う冬咲のクレマチスの隣には、鮮やかなプリムラが添い陰に休む。
 豊かな色彩だけでなく、降る花が淡く纏う香りが手元に届くのも、彩の楽しみであるもので。清楚なスイセンを手に香り楽しむ者もあれば、其の傍に降るのは匂い桜の別名を持つ桃色のルクリア。波間で揺れつつ甘い甘い香りを纏うのはロウバイだ。

 空からの鮮やかな贈り物。
 新年初の彩りを島の者たちも、祝祭を持って出迎える。

 海岸沿いには出店が立ち並び、花を模した食べ物の並ぶ屋台が往く人々の目を惹いてゆく。花弁型に象ったチョコが散らされたクレープに、色取り取りのソーダ水を泳ぐのは同じ味纏う氷の花。一口サイズのハッシュドポテトも小花の形を成して、紙の器に花束の如く納まっている。先に挙げた以外の食べ物も、何処かに花の形を添えて貴方達を出迎えるのだ。

 並ぶ店は食べ物の其ればかりではない、この祝祭にて行われる催しに合わせ、花や想いを詰める為の小瓶も数多く扱われている。大きさは掌に納まるものが主流で、無色透明でシンプルなコルク瓶から、色鮮やかな香水瓶のようなもの、此処でも花の形を模したもの、探せばあらゆる形の瓶が手に入るだろう。
 そうして、同じく小瓶に入れるものとして、想いを綴る一筆箋や小さなメモ、栞を始め、インクや筆記具などを扱う文具店も出店として軒を連ねている様子。
 出店に並ぶ品々は、海に流す其れとしなくとも、持ち帰って土産として迎えるのも構わない。

 出店を回るだけでなく、降る花を静かに眺めるのも良いだろう。
 若しくは、この地を彩る花々で何かを作って遊ぶのも良い。
 波間に漂う、人々の流した小瓶の往く先を見守るのも味わい深い時間だ。

 そう、花降る日をどう過ごすかは、明確に定められてはいないのだ。
 初花が降る今日の日を、あなたの思う儘に彩ること。
 それが、『新年彩』というこの島の祭日の過ごし方なのだから。

 「海賊の掟」を履行した一団も、海岸の何処かで過ごしている事だろう。
 空から舞い降りる花の中から「エリカ」を探して。
榎本・英
やあ。ティル。案内を有り難う
良ければ一緒をしても良いかな?

降り注ぐ花々は雪花のようだね
雲は無いと云うのに、とても不思議で美しい景色だ

嗚呼。すまないね。花に見惚れていた
私は掌におさまる程の小瓶を探していてね
小ぶりで紫色の綺麗な花を小瓶に一寸ね

しかしだね、私は色々と疎い
だから君にお願いをしたいのだよ
紫の花を入れるかわいらしい小瓶を一緒に探して呉れ

あれはどうだ、これはどうだと悩みに悩んでしまうね
ちなみになのだが、君はどのような小瓶が好ましいと思うかな?

その花は、思い出の詰まった花なのだよ
今ここに降り注ぐ花々のように、色あせる事なく
小瓶の中で生かしておきたいのだ
写真みたいなものさ


 ●

 ひらり、ひらりと花が降る。
 そんな海辺の地に足を踏み入れ、並ぶ出店を眺めるのは榎本・英(人である・f22898)だ。祝祭の雰囲気に満ちた賑やかな通りを眺めれば、彼の眸に、空から降る其れではなく、髪に揺れる鈴花が目に入る。足元に添い往く白き仔と共に、見知る姿へ徐に近づきその名を呼ぶ。
 「やあ。ティル。案内を有り難う。良ければ一緒をしても良いかな?」
 穏やかに届く彼の声に振り返り、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は、親しき年上の友を、愛らしい仔猫をその眸に映したなら、勿論、と返して微笑み頷いた。

 並ぶ出店を眺めつつ、海岸沿いをゆく。その間も、ひらり、ふわりと色彩豊かな花々は、街に、海にと降り注いでゆく。そんな空より贈られる百色を、英は見上げ、ほぅ、と息をついた。
 「降り注ぐ花々は雪花のようだね」
 雲は無いと云うのに、とても不思議で美しい景色だ。そう続けた彼の足が、暫し止まる。音もなく、静かに舞い降りる花々は、見上げれば己の裡まで染めゆくようで。まるで万華鏡のような空に、唯々言葉なく、彼は移り変わる色彩を眸に、心に刻んでいた。
 隣ゆく少女もまた、そのひと時を、彼が裡刻む景色を邪魔せぬように、空見上げる彼の姿をも、今の思い出と刻むように並び見上げて。

 そうして、少しの時が流れた時。
 満足したように視線を戻した英は、ねだるよに足元を掻く感触に、はた、と。
 「……嗚呼。すまないね。花に見惚れていた」
 「ほほ、降る花に見惚れる気持ち、わかるよぅ!」
 妾も共に楽しんでいた。ナツ殿、お待たせ。と仔猫に告げる少女に笑み返し、彼は周囲の出店をくるりと見廻した。
 「私は、掌におさまる程の小瓶を探していてね」
 「ほぅ、英殿もお花を小瓶に?」
 「嗚呼、小ぶりで紫色の綺麗な花を、小瓶に一寸ね」
 その花は、今この頭上に舞っているだろうか。彼の言葉にも一度空を見上げた少女は、続く言葉で再び視線を戻す。
 「しかしだね、私は色々と疎い。だから君にお願いをしたいのだよ」
 「……お願い?」
 きょと、と瞬く彼女へ笑みを向けた英は、一度、こくりと頷いて。
 「嗚呼、紫の花を入れるかわいらしい小瓶を、一緒に探して呉れ」
 いいだろうか、と。小首を傾げた彼へと、握り拳を作り、勿論!と意気込む少女。互いに頷き合ったなら、小瓶探しの小さな旅が始まった。

 小瓶、と一口に言っても、この祝祭のメイン行事に使うとあって、扱う出店の数も多く、その形状も様々だ。
 ボトルシップを入れるよな、シンプルな円柱型のコルク瓶は勿論のこと、きららかな装飾施された香水瓶は、鮮やかな色も細工も目を惹いて、ビンテージ品を扱う店には、古いラベルの付いた薬瓶や、小ぶりの洋酒瓶も並んでおり、手紙を込めるにも味がある。
 あれはどうだ、これはどうだと、手に取っては陽に照らし、近くの花を添えてもみながら、時に悪戯な仔猫を制止しながら、二人は悩みに悩んでしまう。

 何店舗か巡った頃、ふむ、と顎に手を当てた英は徐に。
 「……ちなみになのだが、君はどのような小瓶が好ましいと思うかな?」
 「妾かえ?ううん、そうじゃなぁ……」
 問われた少女は少しばかり思案して。
 「英殿は、その小瓶に詰めたお花を、どのようにされるおつもり?」
 小瓶に詰める紫の花、其れも彼の思い入れがある花なのだろうか、と。そう問い返す少女に、脳裏に花を思い浮かべるように、柔い表情となった彼が語る。
 「その花は、思い出の詰まった花なのだよ」
 「英殿の、思い出のお花?」
 「嗚呼、今ここに降り注ぐ花々のように、色あせる事なく、小瓶の中で生かしておきたいのだ」
 「色褪せることなく、か」

 ――写真みたいなものさ。

 そう告げた彼の言葉を耳にして、ふと、少女は一つの店を思い出す。
 こっち、こっちと手招く少女に連れられて、英が辿り着いたのはシンプルな透明の瓶が並ぶ店。
 「思い出のお花を眺めるのなら、やはりお花の色をそのまま見せる小瓶がいいと思うのよぅ!」
 告げて少女が一つ選んだのは、透明でいてシンプルな、前後が平らな丸いコルク瓶。
 「まぁるい形が、其方の眼鏡のレンズのようじゃろ?其方の見る世界と同じ、まぁるい透明を通して、お花を残すのもいいのではない?」
 その平な面を正面から眺めたならば、詰め方によっては、切り取った絵画や写真のようにも見えるかもしれない。

 「それにね、不思議な力が込められていて、蓋を閉じている間ずっと、中身は色褪せないのだそうじゃよ?」
 ね?と振り返った少女に、店主が肯定するよう、こくりと頷く。
 どこか猫のような顔をした店主は、シンプルな小瓶を飾る為の結い紐も、望むならば一つ付けてくれると言う。小瓶の口に結ばれたサンプルと、その横に下げられた色とりどりの紐を指差して、好みの色があればどうぞ、と告げた。

 さてはて、彼がどこの店でどんな小瓶を買い求めたか。
 其れは彼の帰りし先、窓の外に舞う桜が見える部屋、其処に置かれた小瓶を見たものだけが知るだろう。
 想い出の紫を抱く小瓶を。
大成功 🔵🔵🔵

キトリ・フローエ
両手で抱えられるくらいの大きさの小瓶を持って
ティルを見つけたらそちらにひゅーんと
ティル、貴女の時間を少しだけ、あたしに頂戴?

青と白、貴女を彩る藤色に、それから、鈴蘭!
こういうのは欲張りなくらいでちょうどいいのよ
ティル、貴女が選んだお花も一緒に入れてほしいわ
空から降る祝福を溢れるくらい集めて小瓶に詰めたら
海に流しに行きましょう
この世界の海もとっても綺麗で
見ているだけで何だか心がわくわくするのは
…やっぱり、貴女が隣にいてくれるからかしら?

雨のように降る花達に彩られた水面へ
花と想いを詰め込んだ小瓶をそっと託して
ティル、貴女のゆく先に、この一年もその先も
たくさんの幸いがありますように
今年もよろしくね!


 ●

 賑わう海岸沿いの店先を彩る様々な小瓶たち。
 キトリ・フローエ(星導・f02354)は、目移りするよな色彩の波を泳ぐよに、彼方此方と眺めゆく。
 妖精である彼女の身には、ヒトの掌サイズの小瓶といえども、両手で抱えて運ぶ大きさのものばかり。けれども、気に入りのひとつを見つけたならば、それもまた、好きを両手に抱え込めるよな贅沢になる。

 買い迎えた其れを両手で抱え、人並み縫うよに飛ぶ彼女が見つけたのは、あたりをきょろりと見回して歩く鈴蘭の少女。見知った彼女の元へと、ひゅーんと一直線に向かったならば、その名を呼びつつ少女の目の前へと現れ出でて。
 「ティル!」
 「おぅや、キトリ殿ではないか!件の折は、お疲れ様であったなぁ。其方も今日の日を、楽しんでおれるかえ?」
 「もちろんよ!ほら、こんなに素敵な瓶も見つけたの。ねぇ、ティル、貴女の時間を少しだけ、あたしに頂戴?」
 「おぅや、ほほ。妾で良いなら喜んで。其方のお時間を妾も頂戴出来るなら、嬉しいよぅ」
 微笑みあったふたりは花降る中をゆるり、海辺へとむかう。目の前が海の青と砂浜の白で開けたならば、その地を彩る花々へも目を向けて。キトリの小瓶に詰める其れを選び探してゆく。

 どんな花を詰めるのか、探しているのかと問う少女に、キトリは明るく笑みを咲かせてくるりと宙を舞う。星彩纏う彼女が、真昼の空を彩りに紛れるよにひらりと征けば、手にして戻る花々は、青と白。そして、今共にある少女を彩る藤色に、それから、鈴蘭。
 キトリの抱く瞳の色に、彼女の精霊が変じる花杖に咲く真白。其処に加え、ティルの色も花もと選んでくれたと知ったなら、心温まる思いで、満ちるよで。秘色の少女は少しばかり面映げに、しかし嬉しげな咲みを彼女へ向けて。
 「これは、これは……」
 「ふふっ、こういうのは欲張りなくらいでちょうどいいのよ」
 だからね、と続けたキトリは悪戯めかした笑みを咲かせて。
 「ティル、貴女が選んだお花も一緒に入れてほしいわ」
 「妾の選ぶ其れも、一緒にいれて良いの?」
 問い返した少女へと、くるりと宙に円描いて、にこりと笑ったキトリと共に、ふたりは更に花を探して求めて、海岸を彼方此方と指差し駆け回る。
 欲張りに、と決めたのだ。先に詰めた花々も色も、一輪だけなどもったいない。あそこにも、ここにも、と。見つけては小瓶にたあんと詰めて、満たしてゆくのだ、想いも彩りも。

 小瓶に満ちた花色は、キトリの選んだ初めの花に、ティルの選んだ花も色添えて、幾重にもその彩りを重ねてゆく。
 鈴蘭の少女が選んだのは、彼女と己の、互いの生まれの日を祝う花……誕生日花である二種。互いを表すだけでなく、紫をやわき白が包んだムクゲも、明るく周りを照らすよな黄色のサンダーソニアも、隣で笑う優しき妖精の友に、きっと似合うと思ったから。彼女が欲張りにと選んだ花色に、共に添えたいと思った、彼女に似合いの、ふたりの花。

 キトリの両手には、鮮やかな色が満ち満ちた、ふたりぶんの想いを詰め込んだ小瓶が抱えられ、陽を受けきらりと煌めいた。
 空から降る祝福を、溢れるくらい集めて小瓶に詰めたなら。
 「ね、ティル、海に流しに行きましょう?」
 「うむ!」
 にこりと微笑みあったふたりで、波打つ際まで。
 ザザ……と、寄せて返す波の音。それに合わせて、ゆらゆらと水面に浮かび彩る、花と小瓶たち。
 恒は白砂に青が寄せるのみの海岸が、彩の日は鮮やかな色彩で満ちている。そして、今日という祝祭の日には、其処に想いの詰まった、沢山の、そしてただひとつの小瓶たちが加わって、海を染めてゆくのだ。

 この世界の海もとっても綺麗で、見ているだけで何だか心がわくわくする。キトリは胸の内に広がる其れを、小瓶と共に抱えて想う。ちら、と隣立つ少女をアイオライトの眸に映して。

 ――……やっぱり、貴女が隣にいてくれるからかしら?

 溢れた小さな言の葉に、隣の少女はひとつ瞬いて、そしてはにかむように、嬉しげに微笑んだ。妾も同じよ、と。

 いつかの日、彼女と見た海の街とはまた違う、けれども並び見る景色は、同じくらいにキラキラとしているから。そっと少女は妖精の友を手招いて。そのいつかとおなじよに、己の肩へ迎えたなら、暫し共に、静かにその景色を互いの眸に、心に刻んで。
 そうして、胸に広がる温かさをも共有したなら、雨のように降る花達に彩られた水面へと、花と想いを詰め込んだ小瓶をそっと託して、キトリは送り出す。
 そうして、傍にいる相手へは己の言葉で伝えるのだ。
 「ティル、貴女のゆく先に、この一年もその先も
たくさんの幸いがありますように」
 「キトリ殿、其方の眸に映る世界が、その輝きに負けぬほど、いっそう煌めいて優しきものでありますように」

 ――今年もよろしくね!
 ――今年もよろしく!

 ふたりの声と想いが重なって、波音と共にとけてゆく。
 今ここに共にある縁を喜ぶと共に、この新たなひととせもまた、想い出を重ねてゆけますように、と、願いも込めて。
大成功 🔵🔵🔵

浮世・綾華
ウェリナちゃん(f13938)と

すっげぇ降るじゃん
な。めっちゃ綺麗
好きな花、降ってきた?
桜に梅に、向日葵に――
たくさんの彩を映して満足気に君に問う
へえ、そんな意味があったんだ
めっちゃ素敵な名前だなぁ

ん、どれ…おおほんとだ
もう既に楽しいケド、もっともっといいことあるといいねえ

ウェリナちゃん花似合う
髪にたくさんの彩を纏う君を見てくすくす
あれ、俺も?

あ。そうだ
あら、ありがとう。綺麗でかわいい
俺のも。はい、ドーゾ
差し出すのはメレンゲフラワー
これ、めっちゃ可愛くない?

そういえば花の小物もいっぱいあったなぁ
前に雑貨屋に行ったとき、楽しそうにしていたことを思い出して
後で見に行こっか
気に入るもん、あるといいネ


ウェリナ・フルリール
アヤチャン(f01194)と

はわ、おはながいっぱい!
リナのなまえ「あいをこめて、はながさく」っていみなのです
なので、どのおはなもすきですけれど…(きょろ
(赤牡丹と相棒竜の背にも咲く白木蓮見つけ)
アヤチャンとピエールのいろです!
こうはくは、おめでたいってききました
リナたちにも、いいことありますね!(にぱっ
はわ、リナのかみが、おはなばたけに…
アヤチャンもなのですっ(一緒に楽しく笑い

リナはピンクのおはなのソーダに
アヤチャンにもおすそわけ
はわ、アヤチャンのおはな、たべられるです?
そろーり、ぱくり
さくっとしておいしいです!

おかいもの!
リナ、もらったおとしだま、もってきたです(ぐっ
えへへ、たのしみです!


 ●

 高き空から降る花は止め処なく、ひらり、はらりと舞い続けている。

 「すっげぇ降るじゃん」
 その様を見上げて、思わず声が溢れたのは浮世・綾華(千日紅・f01194)。
 「はわ、おはながいっぱい!」
 そして、その綾華の隣、瞳を大きく開いて無邪気な声を上げるのは、ウェリナ・フルリール(ちいさな花騎士さん・f13938)だ。
 その声を穏やかに受け止めた綾華は、同意するよにゆるりと頷いて。再び空を見上げる紅の瞳に映るのは、桜に梅に、向日葵に――
 「な。めっちゃ綺麗。ウェリナちゃんの好きな花、降ってきた?」
 たくさんの彩を映して、彼は満足気に彼女へと問う。そんな問いを受け、ウェリナは、ぱちり、ぱちり、と瞳を瞬かせた後、そっと口を開いて。

 「リナのなまえ『あいをこめて、はながさく』っていみなのです」
 「へえ、そんな意味があったんだ。めっちゃ素敵な名前だなぁ」
 名の由来を告げるウェリナに眦緩める綾華へと、なので、どのおはなもすきですけれど……と、続けた彼女は小首を傾げ、暫し。
 うーんと首を捻り、きょろり、きょろりとあたりを見回したその目に映ったのは、赤牡丹と、相棒竜の背にも咲く白木蓮。見つけたその彩りに、隣ゆく彼と少女の大切な相棒の存在を其処に重ねてみたならば、ぱっと輝くよな笑みを咲かせて、隣の彼を手招き指差す。
 「アヤチャンとピエールのいろです!」
 「ん、どれ……おおほんとだ」
 「こうはくは、おめでたいってききました。リナたちにも、いいことありますね!」
 「もう既に楽しいケド、もっともっといいことあるといいねえ」
 にぱっと、今日の日差しのよに、眩しくも柔らかな笑みを浮かべるウェリナにつられ、愛らしい少女を見守るように、眦緩めた綾華もまたその言の葉に今の思いを其の儘返す。共に過ごす今が楽しい気持ちも、さらに幸が訪れることも。

 そうして、そんな更なる幸を探すよに、ふたりの爪先は先を往く。
 歩きゆく彼らの上には、未だやむことない花が降りてくる。ひらひらと、その地を、海を彩る百色は勿論、街並みも、そして彼らをも染めて行くのだ。そう、心だけではなく。
 ふと隣を見た綾華の目に映るのは、小さな花々を沢山纏った少女の姿。気づくこと無く、その頭に髪にと彩に満ち行く姿が愛らしくて、思わずくすくすと笑いを零して。
 「ウェリナちゃん、花似合う」
 「はわ、リナのかみが、おはなばたけに……!」
 彼の笑い声に、告げられた其れに、頭にはてなを描きつつ、そっと触れた髪には花々の積もった感触。その現状に気が付いたなら、驚きと少しの慌てた気持ちが心を占めて、ほのりと頬も染まるけれど……見上げた彼もまた、同じ様に色を纏っていて。其れに気付けば、ウェリナからも楽しげな笑い声が零れだす。
 「アヤチャンもなのですっ」
 「あれ、俺も?」
 ウェリナの指摘に彼もまた、己の頭に手を伸ばしたなら、彼女を笑う事の出来ないほど、綾華の髪も頭部もまた鮮やかなお花畑。其々の頭に咲いた花を見て、お揃いのお花畑をみとめあったなら、ふたりの笑い声も重なった。

 並ぶ出店の前往けば、あちらこちらから手招く様な美味しそうな香りに、降る花に負けず、目を楽しませる食の群れ。誘われるように、星の煌きを宿すよな澄んだ青を大きく見開き、ウェリナは店を渡りゆく。彼女が逸れぬ様にとその傍を往く綾華もまた、時折誘う香りや彩りに目も向けて。
 「リナはピンクのおはなのソーダにします!」
 いっとう目を惹いた華やかで甘やかなドリンクをその手に迎えて、ふわりと笑んだウェリナは彼を見上げて。早速口許へ運んでその味を楽しんだなら、口内を満たすのは冷たくも甘い、甘い、桃の味。甘さの中に、しゅわりと泡が弾けて口の中がパチパチと楽しい。共に往く彼にもその楽しさを味わってほしくて。
 「とってもおいしいですよっ、アヤチャンにもおすそわけっ」
 「あら、ありがとう。綺麗でかわいい。じゃあ俺のも。はい、ドーゾ」
 そう言って、ソーダのお礼に綾華が彼女へ差し出すのはメレンゲフラワー。
 「これ、めっちゃ可愛くない?」
 「はわ、アヤチャンのおはな、たべられるです?」
 ふわふわとした見た目は愛らしく、食べられるお花にどきどきとして。そろーり、ぱくり、と彼女が口へ運べば、さくりとした食感の後、メレンゲがしゅわりと口の中で溶けてゆく。その感触は寄せて返す波の泡にも似て、雲を食べたらこうなのだろうかと想像も広がるような。
 「さくっとしておいしいです!」
 手元に咲く甘い花に負けぬ程、幸せな笑顔で咲う少女に綾華も何処か満足げ。互いに笑い合えるひと時は、こんなにもあたたかい。

 「そういえば花の小物もいっぱいあったなぁ」
 前に雑貨屋に行ったとき、彼女が楽しそうにしていたことを思い出して。そっと提案を投げかける。
 「後で見に行こっか。気に入るもん、あるといいネ」
 「おかいもの!リナ、もらったおとしだま、もってきたです」
 己の提案に、ぐぐっと握り拳を作って返す少女の姿があどけなくて。彼女の選ぶ品はどんなだろうか、どんな品の並ぶ店へと向かおうか、喜ぶものはなんだろう、と。先に待つ楽しみに思いを馳せる。

 ――えへへ、たのしみです!

 と、笑う花の如き表情は、今日どれだけ、どんな色を咲かせゆくだろう。
 新年最初の彩の日に、咲くのは降る花だけでなく。
 綾華とウェリナの笑みも心もきっと、百色に。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

波山・ヒクイ
どーも!地味コスに伊達メガネにキャスケット帽…今日は普通の買い物女子なわっちです。
新年そうそうの出撃だったんだから、今日ぐらいはゆったりまったり配信から離れてプライベートを過ごすってのも悪くない。
それにこんな…「今日のお天気・花」の下で、いつものノリじゃあ失礼ってもんじゃろ?

…おっ、いいねこのお花をあしらったようなデザインのウクレレ!配信映えしs…おい切り替わってねーぞわっち。
そうじゃね、今日はカメラの前じゃなくて波打ち際でウクレレウキウキお姉さんになっちゃおう。
…え、こう見えても配信に耐える程度には弾けるんですけど?
おほん、それでは一曲。タイトルは―「人魚姫」。


 ●

 いつもの配信者たる装いから、やや地味な衣装に身を包み、伊達メガネにキャスケットという風貌で街をゆくのは、波山・ヒクイ(ごく普通のキマイラ・f26985)。
 「ふふん、今日は普通の買い物女子なわっちです」
 誰に告げるとも無く、ひとりごとを風に溶かして彼女は花降る街を眺めゆく。ひらひらと舞い降る花も、賑やかに声が飛び交う出店の通りも、オフの時間を彩るようで。
 「新年そうそうの出撃だったんだから、今日ぐらいは!」
 そう、一仕事も終えたのだ、ゆったりまったり配信からも離れて、プライベートを過ごすってのも悪くない。

 ――それにこんな……『今日のお天気・花』の下で、いつものノリじゃあ失礼ってもんじゃろ?

 そんな言葉もほろり零して、穏やかな時に、その身を任せて。そう、今日は絶好のお買い物日和なのだから。
 彩の日に合わせて並ぶ品々は、食べ物や催事のものだけでも無い。そう、今日という日を楽しみ彩る為のものならば、軒を連ねる店主の好みで、様々なものが売られている。
 そんな中、ヒクイの眼と心を惹きつけたのは……。
 「……おっ、いいね、このお花をあしらったようなデザインのウクレレ!」
 「おや、嬉しいこと言ってくれるねぇ、お客さん。どれもこれも、ワシの作った一品物じゃよ」
 手作りの木製楽器を陳列する店に置かれたその姿に、ヒクイの眸が釘付けになる。
 深き皺の刻まれた器用な手先で、一つ一つ彫られた表面の細工は様々だが、どれも花降る日に店先を彩る相応しい、柔らかな花弁持つ意匠が施されていた。中でも彼女が目に留めたウクレレは、海辺にぴったりなハイビスカスの花が咲き誇っている。
 「これは配信映えしそ……おい、切り替わってねーぞわっち」
 体に染みついた感覚は、もはや職業病とも云うべきだろうか。今日は忘れてと思っていた其れを思わず口にして、ぶんぶんと頭を振る。そんなヒクイの様子を不思議そうな眼で眺めた店主に、なんでもない、と笑いながら、彼女は己の心を掴んだその一本を迎え、意気揚々と街を往く。

 「そうじゃね、今日はカメラの前じゃなくて、波打ち際でウクレレウキウキお姉さんになっちゃおう」
 にしし、と悪戯めいた表情を浮かべ、爪先軽やかに波の音が静かに寄せて返す海へと。そう、足を踏み出そうとして……ぴたりと静止したかと思ったならば。

 ――……え、こう見えても、配信に耐える程度には弾けるんですけど?

 徐に振り返って告げる彼女には、誰かの声が聞こえているのだろうか。其れとも大きな独り言?いや、これもまた、常カメラの前に立ち、生配信に合わせて己へ向けられる視聴者の言葉に、自然と返す癖が付いているからなのかもしれない。きっと。そう、きっと。

 そんなこんなはさて置いて。花に彩られし海辺もまた、人々が集い賑やかな場所もあれば、静かに波打つ音が響く地もある。ヒクイが訪れたのは丁度その中間点。
 丁度いい大きさの岩場に腰かけて、彼女は包まれていたウクレレの身を露わにする。
 「おほん、それでは一曲」
 慣れた手つきで、真新しいウクレレを構えた彼女は、その爪を器用に操ってポロロン、と軽やかな音を響かせた。漣の音に交ざるよに、ヒクイの奏でる弦の響きが風に乗り、海へも漕ぎ出すように空気を揺らし、流れてゆく。

 ――タイトルは、「人魚姫」。

 そう告げた後、爪弾く音色が響いて泳ぐ、花降る海辺で歌が往く。人魚が海を往くように、抱く想いを歌うよに。
 その音色を耳にした者達は、空より贈られる花のみならず、ヒクイの齎す彩りにも染まりゆくのだろう。
大成功 🔵🔵🔵

ミラ・ホワイト
ひらり、
澄み渡る空より落つ雪の雫
希望抱く白い一片をそつと手のひらに受けて
爪先は御伽の海のほとりへ

鈴蘭揺れる白緑が目に留まれば
お隣をご一緒しても良いでしょか
お友達へ文をしたためるための
ペンとインクをが欲しいのですけれど
馴染むひとつを、一緒に探してくださると嬉しいの

花蓋咲う硝子の小壜
マーブルグリーンの万年筆
溢れる彩の中から手にしたふたつ
うふふ、素敵な子が見つかりました!
ふくふく笑顔でもひとつお願い
――ね、せっかくですもの
花染めるインクのお色は
ティルさまに選んでいただきたいわ
その子達で、あなたへお手紙を書いてもいい?

初花の日に迎えた彩を添えて
誰かを想い綴る言の葉は
流すのでなく、お届けしたいと思うから


 ●

 ひらり、はらり。
 舞う花々の中、ミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)の頭上から、まるで彼女へと逢いに来たかのよに、一輪の花が舞い降りた。
 其れは、澄み渡る空より落つ雪の雫。木苺の瞳に映した真白の花を、希望抱く白い一片を、そつと手のひらに受けて。迎えたその花へと、柔らかな笑みを咲き零したなら、嫋やかな爪先は賑やかな喧騒を抜け、御伽の海のほとりへ。

 ミラが海岸へとついた頃、小瓶を流してきた後であろうか、波打ち際から此方へ向かうティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)の鈴蘭揺れる白緑が、目に留まる。その姿に近づいて、そっと窺うような声音で声を掛けた。
 「あの、お隣をご一緒しても良いでしょか」
 「おぅや、其方は、此度の件を担ってくれた……ミラ、殿?」
 確認するよなティルの声に、笑顔で頷いた彼女へと、少女もまた笑みを返して。妾で良いなら勿論、と告げた後、改めて自己紹介を終えたふたりは、並んで海辺を歩いてゆく。

 「ミラ殿は、何か決めたご予定はあられるの?」
 「お友達へ文をしたためるための、ペンとインクが欲しいのですけれど……」
 「おお、それはとても素敵な探し物!」
 ぱちんと手鳴らして、彼女の求める其れを思えば、きっと素敵な買い物のひと時となるのだろう、と。そう鈴蘭揺らす少女が微笑ましげな笑みを浮かべたなら、木苺色の眸もつ少女は更に続ける。
 「それで、馴染むひとつを、一緒に探してくださると嬉しいの」
 そっと告げたミラの言葉に一つ瞬いた後、嬉しげな笑みを向けたなら。勿論!と、握り拳を作ったティルは、ならば文具は彼方にあったよぅ。と、手招いて、雪色の少女を文具の集まる場へと導いてゆく。

 最初に目に留まったのはやはり、色取り取りに、形様々に彼女達を出迎える小壜たち。文綴る為の文具も勿論だけれど、今日という祝祭の日にこの地へ来たのだもの、迎え往かねば勿体ない。
 ふたりの少女は其々の眸を、光受ける小壜に負けぬほどに煌めかせ、あちらの小壜が愛らしい、此方の小壜は色が綺麗だ、あ、あちらにも……と、指差し悩み笑い合う。
 そんな中、ミラの心をいっとう惹きつけたのは、花蓋咲う硝子の小壜。詰め込む花々だけでなく、小壜の上で柔く咲う其れは、此方の心も綻ばせてくれるよう。

 迎えた小壜を大切そうに抱いた柔き指先が、続いて手繰りゆくのは、文綴る為の万年筆。
 手に馴染むものがいいだろう、と、鳥のよな頭を持った店主が店先を手の平でなぞれば、ミラの柔いその手に丁度添うよな、細めのボディーをした万年筆が姿を現した。手品のよな、魔法のよな其れに二人は顔を見合わせて。
 「まぁ……!まるで魔法のよう。一体どのようになさったのかしら」
 「ほんになぁ!それに並ぶお色もとうても素敵」
 ここでもあれやこれやと悩みつつ、試し書きもした後に、ミラがこれと決めたものは、マーブルグリーンの万年筆だ。

 「うふふ、素敵な子が見つかりました!」
 「ほほ、良き子が見つかって良かったのぅ」
 迎えたふたつを抱きしめて、満足げな表情で笑みゆくミラに、ティルもまた、眦緩めて柔く笑む。
 ふくふくとした表情を湛えて、柔く細めた木苺色を、隣にそっと向けたなら、もひとつお願い、と彼女は紡ぐ。
 「――ね、せっかくですもの」
 「……ん?」
 「花染めるインクのお色は、ティルさまに選んでいただきたいわ」
 そう告げる彼女のおねがいに、ぱちりと瞬かせた藤色を、柔く柔く緩めたならば嬉しげに、少女は勿論!と告げ返す。
 「妾が選んでいいと言うのなら、喜んで!」
 告げては彼女の隣でぴょんと跳ねて見せる少女の様子に、ミラの瞳もまた微笑ましげに和らいで。最後の品を求めてふたりは再び歩き出す。

 空より降りる花色に負けぬほど、彩りに満ちたインクのお店で、優しき少女に選んだ色は、彼女の瞳によく似た鮮やかな木苺色と、濃い色便箋に煌めき映える、白に金のラメ混じり。
 「へへ、其方のふたつは其方のお色。綴られし文字を言の葉を追いながら、其方の姿をなお鮮明に描けるように」
 そしてもう一つ、と追って手渡されたのは、シンプルな黒……のようでいて、彼女に促され、蓋を開たミラに届いたのはふわりと漂う花の香り。
 「そうして、其方の黒インクは、其方の綴る思いに添うて、お花の香りが一種、其の文字に宿る不思議なインク」
 今日という花に満ちた日を、綴る其方も思い出せるよう。優しき香りが其方にも、送る相手にも添いますよう。
 そんな願いを込めて、少女より贈られたみっつのインクを手に、ミラは眦緩めて礼を告げた後、今日最後のお願いをもうひとつ、と紡ぎ出す。

 ――その子達で、あなたへお手紙を書いてもいい?

 初花の日に迎えた彩を添えて、誰かを想い綴る言の葉は、流すのでなく、お届けしたいと思うから。……と、続けた彼女からの、重なる優しくも温かな申し出に、再び嬉しげな笑みを零した少女はおおきくおおきく頷いた。

 初花の日に迎えた筆記具は、きっとこれからも彼女に寄り添うだろう。
 優しき雪色と木苺の傍で、嫋やかなな指先が綴る、想いの傍で。
大成功 🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サヨ
美しいさいわいが舞い降りてきた

祝す華火の様だ
空より降る極彩に手を伸ばす
華やかな花々の香りと花の彩
桜はないかな…
サヨ?拗ねてるの?
噫、
私の桜は此処に咲いていた
可愛らしい巫女の膨らんだ方頬をつつき
咲き誇る桜枝の角を撫で

カラス
花を持ってきたの?
咥えているのはスターチス
カグラに渡している

ならば私はいっとう惹かれたこの花を
桜色の胡蝶蘭
華やかできみに似合うと思って
艶やかに笑うサヨから受けとったこの花は可愛らしい白
なんという?
調べておくよ

新年彩の祝祭をサヨの手をとり歩む
小瓶を買おう
きみがくれた倖の花を永遠に捕らえておけるよう
其れに龍の桜も添えて
心までと願うのはきっと、いけないこと

絆ぐ掌があたたかい


誘名・櫻宵
🌸神櫻

本当ね!
絢爛の祝福が空から舞い降りてくるよう
舞う花々と踊るように身を翻す
続く神の言葉に少し拗ねた仕草
あなたの桜は隣に咲いているでしょう、なんて
あなたが咲かせてくれたんだから!

撫でて褒めてくれるなら許してあげる

さてどんな花をつかまえましょう
カグラったら…カラスに想われているわねぇ
仲良しなふたりに咲み
絢爛に手を伸ばす
とらえた白は、ハナミズキ
あいをあなたへ、返礼とそして―
花に秘めたる言葉は内緒
カムイ
あなたがよみといて
もうひとつは人魚へのお土産に

神がくれた桜色の胡蝶蘭を髪飾り
綻ぶように礼を言う
小瓶に花を囚うなら私の桜もどうぞ

カムイと私の小瓶ね!
さぁ、あっちにもいってみましょ
絆ぐ掌
もう、離さない


 ●

 青き空から静かに舞降る彩豊かな花々。
 音も無く、空を、街を、海を染めゆく彩りを見上げながら、眦和らげ朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)は、隣ゆく誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)へと柔く紡ぐ。
 「サヨ、美しいさいわいが舞い降りてきた」
 「本当ね!絢爛の祝福が空から舞い降りてくるよう」
 祝す華火の様だ、と、空より降る極彩に手を伸ばすカムイの傍で、舞う花々と踊るように身を翻す櫻宵は、其の身に咲かす桜のみならず、その地の花々とも一つとなるかのよう。

 そんな姿へとあたたかな眼差しを向けたなら、再びその瞳を空へと持ち上げ、隣の愛しき姿を其処にも探すよに。
 「華やかな花々の香りと花の彩。桜はないかな……」
 零れるよに告げたカムイの言の葉を耳に拾えば、ぷくっと頬を膨らませた櫻宵は、少し拗ねたよな仕草を添えて。
 「……もう!あなたの桜は隣に咲いているでしょう?」
 ぷいっと、あどけなさすらも感じさせるそんな仕草と言の葉に、空へ向けていた朱を櫻宵へと戻し、パチリと瞬いた彼。
 「サヨ?拗ねてるの?」
 櫻宵の花だからこそ、その身以外にもつい目で探してしまうものだけれど、拗ねた姿も言葉も向けられるそれが嬉しくて。眉尻下げて微笑んだなら。
 「噫、私の桜は此処に咲いていた」
 「そうよ、あなたが咲かせてくれたんだから!」
 忘れずにいて、と言わんばかりのその様に、可愛らしい巫女の膨らんだ方頬を戯れにつつくカムイ。そんな彼へと櫻宵は続ける。

 ――撫でて褒めてくれるなら許してあげる。

 噫、そんな姿も可愛らしい、と。内に湧き行く感情の儘、強請る言葉に応えるように、彼は咲き誇る桜枝の角をそっと撫でた。
 己が角に柔く触れる指先の、撫でゆく優しき感触に、其処から伝わる温もりに、満足げにその眦を緩めたなら、櫻宵はそのまま、にこりと笑みを咲かせて、くるりと身を翻した。
 「うふふ、さてどんな花をつかまえましょう」
 櫻宵の機嫌が直った様子に、カムイもまた頬を緩めゆく。どんな様子も表情も、愛らしくて素敵だけれど、やはり笑顔が一番だから。

 そんな思いに満ちているカムイの元へ、紅き三つ目の鴉が翼の音を響かせてやってくる。視線を向けたふたりの眼には、一輪の花を咥えたその姿が目に入った。
 「カラス、花を持ってきたの?」
 問うカムイの言葉をするりと抜けて、カラスが向かうは朱き神の傍に控える、荒御魂の宿りし人形、カグラの元。嘴より差し出す花はスターチスだ。
 「カグラったら……カラスに想われているわねぇ」
 そんな様子を眺め見て、仲良しなふたりに咲んだ櫻宵は、己も彩を、と絢爛に手を伸ばす。その指先がとらえた白は、ハナミズキ。
 その花が抱く言の葉へと想い寄せて見つめる櫻宵の横、ならば私はいっとう惹かれたこの花を、と。カムイもまた、天へと手を伸ばし一輪を手に迎える。其れは、桜色の胡蝶蘭。
 「華やかで、きみに似合うと思って」
 「カムイ、私からは此れを――」

 ――あいをあなたへ、返礼とそして……花に秘めたる言葉は、内緒。

 そう告げて、カムイからの花を受け取る代わりと、艶やかな笑みと共に櫻宵が手渡したのは、先程手に招いた白花。
 「サヨ、きみから受けとったこの可愛らしい白は、なんという?」
 「ハナミズキよ。篭めたものは……カムイ、あなたがよみといて」
 そっと、何処か請うよに紡いだ櫻宵の言の葉を、頷き一つ、朱き神は受け止める。
 「噫、調べておくよ」
 そう、返す一言に全てを籠めて。
 その言の葉に、様子に櫻宵は柔く笑んだなら、先につかまえたハナミズキをもう一輪。こちらは人魚へのお土産に、と。大切に、その花崩れぬよう包み仕舞った。
 そうして、神がくれた桜色の胡蝶蘭を髪飾り、改めて、綻ぶように礼を言う。くるりとその身を翻して見せたなら、柔き薄紅色が、元より咲く桜花に寄添って、ふたつの花がふわりと揺れる。
 やはりとてもサヨに似合う、と。眦緩めて眺めた彼は、そんな櫻宵の手を取って、祝祭の地を共に歩むのだ。

 「小瓶を買おう。きみがくれた倖の花を、永遠に捕らえておけるよう」
 「うふふ、小瓶に花を囚うなら、私の桜もどうぞ」
 「噫、そうだね。その小瓶にきみのくれた、此の龍の桜も添えて」
 「カムイと私の小瓶ね!」
 櫻宵が己の角に咲く桜を嫋やかに手に迎え、其れを彼へと差し出したなら、柔き笑みをもってカムイもまた、その花を大切に、大切にと受け取った。
 てのひらに納まる桜は芳しく、麗しく。徐にそっと包みこんだなら、静かにその目蓋を伏せて。

 ――心までと願うのはきっと、いけないこと。

 朱き神の胸裡に浮かぶ言の葉は、音には変えず。唯、その裡でのみ、響かせて。
 そんな彼と繋いだ手を、くい、と引き、櫻宵は明るく先へと誘う。
 「さぁ、あっちにもいってみましょ」
 「噫、いこう、サヨ」

 ――絆ぐ掌があたたかい。
 ――絆ぐ掌。もう、離さない。

 そうして、ふたりは賑やかな祝祭の波へとその身を投じてゆく。
 ふたりの小瓶を探すため、そうして、絆いだ互いとの今日という日を刻むため。
 掌に伝わりあうぬくもりは、互いの傍にあるのだろう。
 そう、この先も……ずっと。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

蘭・七結
桜世界にて手にしたサクラの彩り
あわい春を纏いて島へと降り立ちましょう

ご機嫌よう、ティルさん
皆さんのご案内、お疲れさま
もし良ければあなたのお時間をいただける?

はら、はらと降り注ぐ花々のうつくしいこと
とても不思議な光景だわ
傘を逆さにしたのなら、掬い集めることが出来るのかしら
お気に入りの傘はお留守番なの
そうと手のひらにて掬い取りましょう

この花々は無し色を染める彩のよう
あなたも訪れたことのある常夜の館
あの場所は、何時しか数多の彩で満ちたわ

手のひらから溢るるような彩
とりどりの花に館に住まうひとを浮かべる

香水瓶のような小瓶へと移しましょう
持ち帰ったのなら、皆さんにお見せをしたいわ

また遊びに来てちょうだいね


 ●

 柔らかな花々の舞い降りる地。
 其処に爪先かろく降り立ったのは、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)。彼女をよく知る者ならば、今日そのかんばせに添う色が、少しばかり淡いことに気がつくかもしれない。
 この地とは異なる花弁が常に舞い、サクラの色で包む世界。彼の地で迎えた花の彩りを、淡い春を纏いて彼女は花降る島を往く。
 ふわりと、降る花も、彼女の髪も泳がせた風が抜けた先、つと視線を向けたなら、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)の秘色の髪も同様に揺れているのを目に留めた。

 「ご機嫌よう、ティルさん。皆さんのご案内、お疲れさま」
 「わぁ!七結殿、こんにちは!へへ、労いのお言葉、ありがとう!」
 こつりと靴を鳴らし近づいて、友たる彼女の名を呼べば、にこやかな藤色が振り向いて、七結の姿を映して和らいだ。
 「もし良ければ、あなたのお時間をいただける?」
 「もちろん、もちろん!妾とて、今日という日の七結殿のお時間を頂けるなら、とうても嬉しいよぅ」
 柔く問う七結の申し出に、こくりこくりとふたつ返事に応えた少女は、嬉しげにぴょんと、ひとつ跳ねても見せて。
 「あのね、七結殿。今日纏われているお色、とうてもとうても、お似合いよ?」
 その意味を示すよに、少女は己の唇へと指先あてて、常のも勿論お似合いだけれど、とも添えながら、にっこりと七結へと微笑んだ。
 その言の葉受けて、七結は返事の代わりに柔く眦を緩め笑んだなら、行きましょうか、と手を差し出した。

 手を繋ぎ、ゆくふたりの上からとめどなく花が降る。
 「はら、はらと降り注ぐ花々のうつくしいこと」
 とても不思議な光景だわ、と、空を見上げて目を細める七結に、隣ゆくティルもまた、大きく頷いて。
 「ほんににぁ、青き空からの贈り物のよう!」
 「傘を逆さにしたのなら、掬い集めることが出来るのかしら」
 「傘を、さかさに?わぁ!それはたくさん集まりそう!」
 彼女の言葉にパチリと瞬いたなら、想像が膨らんで。きっと、大きな器代わりとなった其処へと、数多の色が積もりゆくのだろう。脳裏に描いては瞳煌めかせる少女へと、微笑ましげな笑みを柔らかに浮かべ。
 「ふふ、けれどもね、お気に入りの傘はお留守番なの」
 「おぅや、そうなの?」
 「ええ、だから。そうと手のひらにて掬い取りましょう」

 そう穏やかに告げたなら、微笑みあったふたりは一度繋いだそれを互いに解いて。そうして七結の柔らかなてのひらが、滑らかな器を形作ったなら。
 ひらり、はらり、と。空より降りる色彩が、ひとつ、またひとつと、彼女の白き其処へと舞い降りて降り積り、あざやかないろで満たしてゆく。
 それは、そう、まるで。

 ――この花々は無し色を染める彩のよう。

 想い馳せるよに、どこか愛おしげに。そっと言の葉を紡いだ七結は、その色彩を眸に映したまま、心には彼女の大切な場所を重ね描いて。
 「あなたも訪れたことのある常夜の館」
 「うん、七結殿の館。大切な場所。知っておるよぅ」
 「あの場所は、何時しか数多の彩で満ちたわ」
 空より迎える花々で、手のひらから溢るるような彩。とりどりの花に、七結は館に住まうひとを浮かべる。
 愛らしくも優しさに満ち、時に凛と咲く色もあれば、全てを包み込むよな温かな色、瞬きの間に異なる色を纏う様や、陽のような穏やかな彩りも。同じ色でも並び合う相手や、過ごすひと時のなかで、その色彩もまた、ひとつ、ひとつと宿す色を変えてゆく。
 そう、想い馳せる間に、てのひらに満ち満ちて、時に溢れてなお、新たな色が降り積もる、この花達のように。時に色を入れ替えながらも、満ち満ちてゆくのだ。想い出も、心のいろも。

 そんな七結のてのひらに溢れゆく花々を見つめながら、ティルもまた目を細めて。其処に集い重なり合った彩りを、そうして縁を想い、頬を緩める。
 「きっと……とうてもとても、素敵な彩りで満ちておるのじゃろうなぁ」
 「――ええ、とても」
 七結から返る言葉は短くも、其処に全てが籠められているようで。言の葉よりも、映す眸に、かんばせに、想いが宿るようで。ティルはそっと彼女の姿と、そのてのひらの色彩を心に刻むのだ。

 暫し、てのひらに迎えた花達の姿を眺め見たなら、静かに七結が桜纏う唇を開いて。
 「香水瓶のような小瓶へと移しましょう。持ち帰ったのなら、皆さんにお見せをしたいわ」
 空より降りてきたの初花達を。そして、集う皆のような色彩を。この花はあなたのようね、この花はあなた、と、指差し手に乗せ語るのも良いかもしれない。
 花彩詰めた、この小瓶を前にした人々の姿を思い描けば、また。七結のかんばせも、花のように咲くのだ。彼女の彩りをもって。

 そうして、視線を、心を、今この時へと戻したなら、鈴蘭の少女を眸に映し柔らかに告げる。
 「ティルさんも、また遊びに来てちょうだいね」
 「へへ、もちろん!」
 にこりと返した少女は頷き告げて、微笑んだ。
 彼女の大切な館の内で、素敵な色彩纏う人たちと咲う七結もきっと、いっとう素敵ないろを纏って咲くのだろう、と。そう、想い馳せて。
大成功 🔵🔵🔵

千波・せら
【Clione】
亮と一緒にティルを探して合流したいな!

今日はおめでたい日なんだよね?!
海岸沿いの出店なんてわくわくしちゃうよ。
いつもの海もいいけどこの海も花の雰囲気もあって
なんだか特別な海に見えちゃう。

私はクレープ!
見て!花型のチョコがすごく可愛い!
他にも花の形をしたものが沢山あるよ!
亮とティルはどれにする?

あっ、ソーダも飲みたい……!
あのね、氷の花が凄く可愛くて……!
亮とティルのも可愛いね!

初花の降る日にこうして一緒が出来た事がとても嬉しいんだ。
二人と出会って、もうすぐ一年
色んな海を一緒に見たけど、初花の降る海も思い出になるね

花の味はどうかな?一緒にいただきますをするんだ!


天音・亮
【Clione】

セラにお呼ばれしてティルとも3人で新年彩を回るよ

花が降るだなんてロマンチックな天気だよね
海が花彩に染まるなんてこともあるのかな?
そうなったら殊更特別な海だよね
鼻で息を吸い込めばいい香りが身体を満たす

わ、クレープかわいい!
花型のチョコだなんてすごくインスタ映えするよね
私はハッシュドポテトがいいな
少し小腹が減っちゃってて、えへへ
せらもティルも、おひとつどーぞ
私のソーダ水は黄色!レモン味〜

私も二人と一緒にまたひとつ思い出を増やせて嬉しい
そっかぁ、もう一年経つんだね
今年はどんなことをしようか?またたくさん遊びたいね!

ふふ、じゃあもうひと遊びのその前に腹ごしらえだね
いただきまーす!


 ●

 空から降る鮮やかな色彩、そして寄せて返す波の音。
 その景色に楽しげな声を響かせるのは、千波・せら(Clione・f20106)と、天音・亮(手をのばそう・f26138)のふたり。
 ひらひらと降りゆく花が染める海辺を、きょろりきょろりと、瞳を顔をと動かし探すのは、彼女達の友である少女の姿。
 鈴蘭揺らすその姿を見つけたならば、一緒に回ろう!と手招いて。彼女たちのその声を、その姿をみとめた少女、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)もまた嬉しげに、ふたりの元へと駆けたなら、妾からも是非、と微笑み添うて。

 「今日はおめでたい日なんだよね?!」
 きらきらと、宝石の身よりも煌くほどに、その瞳を輝かせたせらが言う。海岸沿いの出店なんてわくわくしちゃうよ、と、続けながら、出店の並ぶ地へと爪先向けるその足取りも軽やかだ。
 「花が降るだなんてロマンチックな天気だよね。海が花彩に染まる、なんてこともあるのかな?」
 と、亮は青き海が花色に染まる様を想像し、うっとりとその表情を綻ばせる。
 「ほほ、確かに。空から花が降るならば、海が染まる事もあるやもしれぬなぁ?」
 「もしそうなったら、殊更特別な海だよね」

 今は、海そのものが染まるというよりは、天からの彩で着飾っている、というような風だけれど。其れでも、一面の青に染まる海が、花と小瓶で鮮やかに彩られる様は、常と異なる姿はどこか特別で。
 「いつもの海もいいけどこの海も、花の雰囲気もあってなんだか特別な海に見えちゃう」
 海が大好きな少女は、波間と同じ色宿すその眸に、百色が浮かび揺れる姿を映して微笑んだ。
 その様に、言葉に頷いて、鼻でおおきく息を吸い込んだ亮の身体をいい香りが満たしてゆく。
 ふたりのその姿に、ティルもまた微笑んで、花に彩られた海を眸に心に刻みながら、並ぶ友と同じように、優しい花の香りを大きく吸い込んだ。

 そうして、三人がやってきたのは、花とは違う甘い香りや、芳ばしい匂いが漂う賑やかな海岸沿い。此処に並ぶのは、花を模した様々な食べ物を扱う出店の集まりだ。右を見ても、左を見ても、美味しそうな食べ物がずらりと並び、その見た目には必ずどこかに花があしらわれていて、口へ運ぶにも目で楽しむにも満たされる。
 「やはり、どれも美味しそうで迷ってしまうのぅ」
 「私はもう決めてるんだ!最初に買うのは、クレープ!」
 取り取りの食べ物に、目移りするよなティルの隣、にっこり笑って宣言したせらが、早速その手に迎えたのはフルーツやクリームがたっぷり内に巻かれ、もちもちな生地がいい香りをさせたクレープ。ふんわり山になったホイップの上に、まるで雪上に花が咲くように、色とりどりのを花型チョコが咲いている。
 「見て!花型のチョコがすごく可愛い!」
 「わ、クレープかわいい!花型のチョコだなんて、すごく画面映えするよね」
 「ほんに、食べるのが勿体なくなってしまいそうじゃなぁ」

 「他にも花の形をしたものが沢山あるよ!亮とティルはどれにする?」
 彼女のクレープに、ふたりも瞳を輝かせたのを見て、にこりと笑ったせらが問う。そんな中、次いでふわりと漂ってきたのは芳ばしい揚げ物の匂い。その香りに誘われるように、視線を向けた亮は少しくすぐったそうな顔をして。
 「私はハッシュドポテトがいいな。少し小腹が減っちゃってて、えへへ」
 そっと頬を掻いたなら、花束のように包み盛られた、小花型のハッシュドポテトをその手に迎えて。揚げたてポテトと塩の香りが、早く食べてと云わんばかりに、空いた小腹をいっそう囃し立てるよう。
 「亮殿のポテトも可愛らしい!それに、それに……とうても美味しそうな香り……!」
 今にもお腹が、ぐぅとなってしまいそう!と、じゅるりと音鳴りそうな口元を押さえたティルが声を上げる。その言葉と様子に、せらと亮も顔見合わせたならくすりと笑って。
 「せらも、ティルも、おひとつどーぞ!」
 告げて差し出す亮の手の花束から、さくさくホクホクなお花へと指先伸ばして、三人一緒にちょっぴりつまみ食い。揃って咲う笑顔もほくほく。

 妾はこれにする!と、ティルが選んだ花の形に整えられたサンドイッチも迎えたなら、思い出したよにせらがパチンと手を叩く。
 「あっ、ソーダも飲みたい……!あのね、氷の花が凄く可愛くて……!」
 そう告げて、先程一度通り過ぎた先を指差して。
 「確かに、食べ物をこうして迎えたなら、お飲み物も欲しいなぁ」
 「よーし、じゃあソーダを買いに行こう!」
 くるりと爪先向き替えて。行ったり来たりも、仲良しな皆と巡るショッピングの醍醐味だもの。一度通り過ぎたはずの店も、再びその前を通ればまた、誘われゆくよな心地になるのは、ちょっぴり悩ましい贅沢だ。
 私も食べて、と云わんばかりの数々の誘惑に、きゅっと耐えて進んだなら、目的のソーダ水がお出迎え。
 陽射しを受けて、きらきらと輝く色とりどりのソーダの中を、泳ぐようにぷかりと浮かぶ氷の花はきららかで。しゅわりと音立てる其れを迎えたならば、喉を潤すだけでなく、心の内も鮮やかに彩るだろう。

 「私のソーダ水は黄色!レモン味~!」
 目移りするよな色彩の中、早速自分の一つを選んだ亮が掲げたのは、向日葵の様な陽色の様な、鮮やかな黄色のレモン味。
 「じゃあ、私はこれっ!」
 続いてせらが選ぶのは、澄み渡った空のよな何処までも続く海のよな、爽やかな青のラムネ味。ふたりとも早い!と声を上げながら、ティルが選んだのは淡い紫のぶどう味。三人揃って手に持って、しゅわしゅわと泡立つソーダに咲く花を眺めたなら、透明なカップの向こう、皆の顔もソーダの色に染まったかのよう。
 「亮とティルのも可愛いね!」
 「色違いのお揃い持って歩くのって、わくわくするよね!」
 「へへへ、お揃い……良き響きじゃなぁ」
 笑顔もお喋りも、三人揃えば舞う花に負けぬ程に咲き誇る。
 そんな笑顔を見回して、せらはその眸を嬉しげに細めたならそっと口を開いた。
 「初花の降る日に、こうして一緒が出来た事がとても嬉しいんだ」
 「私も、二人と一緒にまたひとつ思い出を増やせて嬉しい」
 「へへ、もちろん、妾も!」
 明るく同意を重ね行き、お揃いな気持ちも互いに告げあったなら、三人の心にも花が咲く様で。ぽかぽかと胸の裡が温かくなる。

 そんな胸へと手を当てて、せらは想い出を紐解くように、視線を空降る花を受け止める海へと移す。
 「二人と出会って、もうすぐ一年。色んな海を一緒に見たけど、初花の降る海も思い出になるね」
 「そっかぁ、もう一年経つんだね」
 「ひととせ、か。ほほ。出会った日が昨日のようにも、ずっと前にも、思えるなぁ」
 交わす言葉で出逢いの日を、重ねてきた日々を振り返り、亮とティルも、想い出を空に描くよに、色とりどりの日々を花に重ねて思うよに、降り注ぐ花を並び見上げて。そうして、暫くした後に、視線を二人に戻した亮が明るく告げる。
 「今年はどんなことをしようか?またたくさん遊びたいね!」
 「うむ、うむ!一緒にまた、沢山遊ぼう!」
 「そうだね!……あっ、花の味はどうかな?」
 はっと思い出したように、せらは手に持った美味しい花をそっと掲げて。
 「先ずは一緒に、いただきますをするんだ!」
 「ふふ、じゃあもうひと遊びのその前に、腹ごしらえだね」
 「ほほ、そうじゃな。美味しい花を、一緒に!」
 
 ――せーの、いただきまーす!

 三人の声が綺麗に揃って。同時にぱくりと口へ迎えたら、心もお腹も満たされてゆく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

 ●

 新年初の彩の日を、海辺でのんびりと寛ぎ過すのは、カエナ・ネオフォカエナ(彼の背骨・f27672)。
 ひらり、はらりと、空から舞い降る花眺め、柔らかにその眦を緩めてその景を楽しむ。
 「おやおや、まあまあ。なんと、綺麗な色彩溢れる空だこと」
 澄み渡る青、時折流れる白き雲、その二色のキャンバスを、何処から贈られ来るのか、数え切れぬ程の彩りが、様々な形を成してふわりふわりと染めてゆく。

 「……良い機会じゃ、舞い踊る天からの贈り物で花冠でもつくってみようか」
 ついでに小瓶に添える花も見繕うかの、との言の葉も添えて、花々が降り積もる白き砂浜を嫋やかに歩いてゆく。
 「ふむ、この辺りは様々な色の花に満ちているじゃろうか」
 暫くその足を進めた後、くるりと見渡した少し岩陰になった場所。そこに腰を下ろしたなら、彼女の細い指先が可憐な花咲く白詰草を手繰りゆく。そこにブルースターを編み込めば、白に青き星が咲く輪が整えられてゆく。
 「……おや?」
 そんな彼女の目の前に、ふわり、と舞い降りた彩は春告色のミモザの花。そっと掬うように迎えたその色も添えて、静かな時間が流れてゆく。花降る中で花を編む彼女の姿は、まるで一枚の絵のようであった。

 暫く、静かに黙々と、指先手繰った花と戯れ、芳しい冠が生まれたならば、そっとその花の環を空の青に掲げて見せて。
 「うむうむ。良い出来ではないかえ?」
 満足げに呟いたカエナの頬も、何処か柔く染まって見えて。穏やかな春の日を思わす様な、あたたかな時間が巡ってゆく。
 完成した花冠を、一頻り満足げに眺めたカエナが、ふと周囲を見渡す。
 「この花冠、己で被っても良いが……」
 近くに人がいたらプレゼントしてもよいかもしれぬのう、と。そんな彼女の心の声が、聞こえたかどうかはわからないが、ひょこ、と岩陰から覗く小さな頭。
 「……あ!」
 カエナと眼が合えば、まるで悪戯が見つかったかのように、小さな頭がひょこりと消える。
 「少し待ってはくれぬかえ。お主は、島の子?」
 そう、カエナが声を掛けた数拍あと、小さな頭にぴょこ、とウサギの耳を生やした一人の少女が顔を出す。
 「……うん、そう。おねえちゃんは?」
 「わらわは島の外から来たものじゃよ」
 「そうなの?」
 緊張しているのか、覗いた岩場から近付くことなく、言葉少なに言葉を交わす少女の眼は、カエナの手に注がれている。其れに気付いた彼女は小さく笑って。
 「うふふ、この花冠が気になるかえ?」
 「……え?あっ」
 見過ぎた事を咎められるかと思ったのか、僅か慌てた風の少女を、ひら、と手で制し。
 「丁度、この花冠の貰い手を探しておったのよ。貰ってはくれぬかえ」
 「わたしが、もらっていいの?」
 彼女の言葉にぴたりと動きを止めて、おずおずと問う少女にカエナは柔く笑って手招きをする。そんな様子に、ゆっくりと近づいたウサギ耳の少女の頭へふわりと花冠を被せたなら、嬉しげな色を宿した少女は、彼女へお礼を告げて、跳ねるよに岩の向こうへ帰って行った。

 少女を見送ったなら、再び静寂が訪れる。
 波の音のみが響く中、カエナが次に手に取ったのは、海に送り出すための勿忘草。片手に収まる硝子の小瓶に、花弁ふたつと自身のソーダ水を収め、丁寧にコルクで栓をした。
 そうして、軽く振ればちゃぷりとソーダと花が揺れる小瓶を波間に預けて。
 「波と踊る数多の瓶と共に海旅へ。さあ、お行きなさい」

 ――お主のこと、今日も忘れることなど出来ずに此処にいるよ。

 静かに、けれども、確かに。ゆらゆらとその身を揺らしながら、花と小瓶の色に満つ海原へ旅立ってゆく己の小瓶を、カエナは見守る。波の向こう、その姿が見えなくなるまで。
 己が裡に宿る、忘れられぬそのひとを、いつまでも見つめるかのように。
カエナ・ネオフォカエナ
海辺でのんびりと寛ぎながら彩を楽しむのじゃ

おやおやまあまあ
なんと、綺麗な色彩溢れる空だこと

…良い機会じゃ
舞い踊る天からの贈り物で花冠でもつくってみようか
ついでに小瓶に添える花も見繕うかの

可憐な花咲く白詰草にブルースターを編み込んで
空から掬った春告色のミモザも一緒に添えて
うむうむ。良い出来ではないかえ?

この花冠、己で被っても良いが
共闘した者でも、島の子でも…
近くに人がいたらプレゼントしてもよいかもしれぬのう~

海へ送り出す花は勿忘草
片手に収まる硝子の小瓶に
花弁ふたつと自身のソーダ水を収めコルクで栓を

波と踊る数多の瓶と共に海旅へ
さあ、お行きなさい
お主のこと、今日も忘れることなど出来ずに此処にいるよ


 ●

 新年初の彩の日を、海辺でのんびりと寛ぎ過すのは、カエナ・ネオフォカエナ(彼の背骨・f27672)。
 ひらり、はらりと、空から舞い降る花眺め、柔らかにその眦を緩めてその景を楽しむ。
 「おやおや、まあまあ。なんと、綺麗な色彩溢れる空だこと」
 澄み渡る青、時折流れる白き雲、その二色のキャンバスを、何処から贈られ来るのか、数え切れぬ程の彩りが、様々な形を成してふわりふわりと染めてゆく。

 「……良い機会じゃ、舞い踊る天からの贈り物で花冠でもつくってみようか」
 ついでに小瓶に添える花も見繕うかの、との言の葉も添えて、花々が降り積もる白き砂浜を嫋やかに歩いてゆく。
 「ふむ、この辺りは様々な色の花に満ちているじゃろうか」
 暫くその足を進めた後、くるりと見渡した少し岩陰になった場所。そこに腰を下ろしたなら、彼女の細い指先が可憐な花咲く白詰草を手繰りゆく。そこにブルースターを編み込めば、白に青き星が咲く輪が整えられてゆく。
 「……おや?」
 そんな彼女の目の前に、ふわり、と舞い降りた彩は春告色のミモザの花。そっと掬うように迎えたその色も添えて、静かな時間が流れてゆく。花降る中で花を編む彼女の姿は、まるで一枚の絵のようであった。

 暫く、静かに黙々と、指先手繰った花と戯れ、芳しい冠が生まれたならば、そっとその花の環を空の青に掲げて見せて。
 「うむうむ。良い出来ではないかえ?」
 満足げに呟いたカエナの頬も、何処か柔く染まって見えて。穏やかな春の日を思わす様な、あたたかな時間が巡ってゆく。
 完成した花冠を、一頻り満足げに眺めたカエナが、ふと周囲を見渡す。
 「この花冠、己で被っても良いが……」
 近くに人がいたらプレゼントしてもよいかもしれぬのう、と。そんな彼女の心の声が、聞こえたかどうかはわからないが、ひょこ、と岩陰から覗く小さな頭。
 「……あ!」
 カエナと眼が合えば、まるで悪戯が見つかったかのように、小さな頭がひょこりと消える。
 「少し待ってはくれぬかえ。お主は、島の子?」
 そう、カエナが声を掛けた数拍あと、小さな頭にぴょこ、とウサギの耳を生やした一人の少女が顔を出す。
 「……うん、そう。おねえちゃんは?」
 「わらわは島の外から来たものじゃよ」
 「そうなの?」
 緊張しているのか、覗いた岩場から近付くことなく、言葉少なに言葉を交わす少女の眼は、カエナの手に注がれている。其れに気付いた彼女は小さく笑って。
 「うふふ、この花冠が気になるかえ?」
 「……え?あっ」
 見過ぎた事を咎められるかと思ったのか、僅か慌てた風の少女を、ひら、と手で制し。
 「丁度、この花冠の貰い手を探しておったのよ。貰ってはくれぬかえ」
 「わたしが、もらっていいの?」
 彼女の言葉にぴたりと動きを止めて、おずおずと問う少女にカエナは柔く笑って手招きをする。そんな様子に、ゆっくりと近づいたウサギ耳の少女の頭へふわりと花冠を被せたなら、嬉しげな色を宿した少女は、彼女へお礼を告げて、跳ねるよに岩の向こうへ帰って行った。

 少女を見送ったなら、再び静寂が訪れる。
 波の音のみが響く中、カエナが次に手に取ったのは、海に送り出すための勿忘草。片手に収まる硝子の小瓶に、花弁ふたつと自身のソーダ水を収め、丁寧にコルクで栓をした。
 そうして、軽く振ればちゃぷりとソーダと花が揺れる小瓶を波間に預けて。
 「波と踊る数多の瓶と共に海旅へ。さあ、お行きなさい」

 ――お主のこと、今日も忘れることなど出来ずに此処にいるよ。

 静かに、けれども、確かに。ゆらゆらとその身を揺らしながら、花と小瓶の色に満つ海原へ旅立ってゆく己の小瓶を、カエナは見守る。波の向こう、その姿が見えなくなるまで。
 己が裡に宿る、忘れられぬそのひとを、いつまでも見つめるかのように。
大成功 🔵🔵🔵

萌庭・優樹
目を瞠るようなうつくしさ
なんてステキなお祭り!
降る花のどれもが主役みたいで
――欲張って花束にしてもいいかなぁ

花々は一点で待っていても降ってくるけれど
つい海岸じゅうを駆けたくなる
抱えるまでお花を集めにゆきましょう
その中でもしエリカの花を見つけたら
あとで海賊団の人達へ持って行こうと心に決め

家に帰って、好きなあの人に見せたら喜ぶかなぁ
…なんて惚けていたら花々を結ぶリボンの色が決まらない

ティルさん!
お疲れさまですっと手を振って
あのね、どっちのリボンがいいでしょうか
緑と、紫と
片や己の好きな色
片や『エリカ』に影響受けて――と、あなたのおめめのようでもありますね!
良かったら、決めてほしいと両のリボンを掲げて


 ●

 空から降るな花々が彩りゆく海辺の街。
 空も、街並みも、海も。様々な色が溢れる姿をその眸に映して、萌庭・優樹(はるごころ・f00028)の表情もまた、きらきらと眩しい程に輝いていた。

 「目を瞠るようなうつくしさ……なんてステキなお祭り!」
 空から降る花はもちろんのこと、初花を迎え祝うこの島の空気もまた、華やかに花咲くようでいて。其処に立っているだけで、心も温かく包まれ綻んでゆくかのよう。
 降る花のどれもが美しくて、主役みたいで。ただ一輪、と決めてしまうには、勿体無い気持ちが湧いてくる。

 ――欲張って、花束にしてもいいかなぁ。

 そう、ほろりと零れた呟きは、優樹の心にそのまま染み渡り。じわじわと胸の内へと広がったなら、そう、それがとびきりの名案だとばかりに、その顔を綻ばせ、前へ海へと駆け出す源となるのだった。
 
 花々は一点で待っていても降ってくるけれど、満ちた心に、移りゆく景にあと押され、つい海岸じゅうを駆けたくなる。
 「抱えるまでお花を集めにゆきましょう!」
 意気込みも十分に、握り拳を交えて言葉にしたなら、いっそうの素敵を抱えてゆけそうで。
 白き砂浜を、多くの彩り求めて駆けゆく優樹の目の前に、ふわりと降りゆく花があった。まるで、受け止めて欲しいと言わんばかりに、その手の中へ納まったのは、濃淡の紫を宿した花。
 パチリ、と瞬いてその花の名が脳裏に浮かべば、温かな橙の眸にいっそうの温もりを抱いて。
 「この花は、あとで海賊団の人達へ持って行ってあげましょう!」

 ――きっと、探しているはずだから。

 その手に届いたらどんな顔をしてくれるだろう。そんな想像をしたならば、優樹の胸の中も暖かくなるようで。今集めている花束とはまた別に、形崩れぬようにとエリカの花をそっと仕舞う。

 胸に温かなものを抱いたまま、優樹の花束作りは再開される。ひとつ、またひとつと増えゆく花の色。手にした花束が大きくなるごと、想い馳せるはあの人のこと。
 「家に帰って、好きなあの人に見せたら喜ぶかなぁ」
 贈る彼のことを想い、その瞬間を思い、両手の花を柔らかに抱く。胸に広がるあたたかさを、さらにその上から包むよに、優しい花香が目を瞑る優樹に淡く寄り添った。
 そうして暫く惚けるように、その場に佇んだ優樹が、はっと顔をあげる。
 「あっ、花々を結ぶリボンの色を決めなくちゃあいけません!」
 花を集めるのに夢中で、其処までまだ考えていなかった、と。
 集めに集めた彩りが、こんなにも素敵なのだもの、とくべつ素敵なリボンを選ばなくては!と、再び彼女の爪先は軽やかに跳ねてゆく。

 それから暫くの時が経った頃。
 人並みの中、優樹が目に留めたのは、揺れる鈴蘭と白き翼。それを持つ少女の名を浮かべたなら、足早に近寄りながら呼びかけて。
 「ティルさん!お疲れさまですっ!」
 と、手を振って駆け寄る彼女へ、呼び掛けられたティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は、その髪揺らして振り返り。
 「おぅや、ほほ。優樹殿こそ、此度はお疲れ様じゃったなぁ。そうして……わぁ!とてもご立派で素敵な花束!」
 「えへへ、そうでしょう?」
 その手にした花々を見て、眦柔く告げる少女に集めた花を褒められたなら、嬉しげに微笑んだ優樹は、更に言葉を続ける。

 「あのね、この花束を纏めるなら、どっちのリボンがいいでしょうか」
 そうして彼女がティルへとひらり、揺らして見せたのは、二色のリボン。その彩りは、緑と、紫と。
 「実は、迷っているんです!」
 自分だけでは決めかねてしまって、と。少女に助けを求めてきたのだ、と。
 彼女がいうには、片や己の好きな色。片や『エリカ』に影響受けて。
 「――と、あなたのおめめのようでもありますね!」
 と、笑み告げる優樹の言葉を聞けば、そのように並べて称して貰えたら光栄じゃなぁ、と、少女もまた藤色細め、嬉しげに微笑んだ。

 良かったら、決めてほしいと、両のリボンを再び掲げて告げる優樹と二色を、その眸に映したティルは少しばかり思案して。
 「そうじゃなぁ……ねぇ、優樹殿、そのおリボンお借りしてもいい?」
 「ええ、もちろん!」
 そう告げて差し出す優樹の手から、二色を丁寧に受け取ったティルは、徐にそのふたつを螺旋状にくるくると編み重ねて。
 「今日という日は、欲張るくらいが丁度良いと、お友達もいうておったの。だから、これで如何?」
 少し悪戯交じりに、にっこり笑った少女の手から返されたのは、どちらか、ではなく。緑と紫が柔らかに合わさった、二色で一本の贅沢なリボン。
 その返答に、返された姿に瞬いた優樹は、思わずクスッと笑った後、その笑みを深めて。

 あゝそうだ、花色だって束にして……と、欲張ったんだもの、リボンだって欲張って良いのかもしれない、と。
 そうして、優樹のあたたかな欲張りに満ちた花束は、帰る先で手渡されるのだろう。
 彼女の集めた、たくさんの彩りをひとまとめにして、其処に込められた想いと共に。
 ――そう、大切な”あなた“へと。
大成功 🔵🔵🔵

ライラック・エアルオウルズ
紛れて、ひとり、花降る空を見る
宛ら惚ける自身を急かすように
額を小突く、柔い真白に瞬いて
てのひら招けば、ついと綻んだ

心の裡を代弁するかのよな
星のかたちの、アングレカム
此度は、君の詞を借りようか

詰める小瓶はどれがいいかな
きっと、彼女も迷うであろう
素敵なものばかりで首を捻る
けれども、星を宿すのならば
ふたりの路を照らすようにと
洋灯めく円らかな瓶にしよう

灯も、花も、彩も――もう、君には
幾つも、幾つも、贈っているけれど
虹彩から始まるふたりなのだもの
あらたな彩を、幾つだって
重ねて、足しても、良いだろう?

――そんな訳でね、ティルさん
君への、幾度目かの贈り物だ
淡紫のリボンで飾る小瓶に
共にあれるよう、祈りを込めて


 ●

 祝祭の日、賑わう人通りの中に紛れて、ひとり、花降る空を見るのは、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)。
 花色宿すその眸に、一輪、また一輪と、青より舞い降りる彩りを映しては、瞬きする間に纏う色を変えゆく空の景に、唯々見惚れて。歩む足もぴたりと止まる。

 己が動かずとも、留まりても、刻一刻と変わりゆく空。先行く為に目を離すうち、見逃してしまいそうな一瞬を惜しむよに、どれくらいそうしていただろう。
 そんな時。宛ら惚ける彼を急かすように、其の額をこつりと小突く、柔い真白に彼は瞬いて。己の意識を引き戻した柔き花をてのひら招けば、そのかんばせがついと綻んだ。
 そう、その真白は、彼の心の裡を代弁するかのよな、星のかたちの、アングレカム。

 ――此度は、君の詞を借りようか。

 その花の名を、抱く詞を、己が裡から掬いあげたなら、淡紫の眸を細め、柔らかな声音を真白へ零し、止まった足に力を込めて。そのつまさきを、前へ進めた。

 歩む先は海を眺める出店の通り。色鮮やかで、形も豊かな、数多の小瓶が集まる場所。
 「詰める小瓶はどれがいいかな」
 添えた指先で顎を摘み乍ら、小瓶の群れを眺めみて。目移りするよな素敵に溢れたその様に、唯一つを決めかねたライラックは首を捻った。

 ――きっと、彼女も迷うだろうな。

 と、今は隣に居ない少女の悩む様が脳裏に過ったなら、恒立つ其処へと視線を向けて、幻視した其れに小さく笑みも零れるものだけれど、今は、先ほど手招いた白き星宿す先を見付けなくてはならない。
 星抱く夜空を思わすよな紺色の小瓶に、手の花と揃うよな蓋が星飾りとなった小瓶、はたまた星に添うよな月の意匠か、と、様々な小瓶がライラックの淡紫を誘う。
 「――けれども、星を宿すのならば……」
 そう呟いた彼の手が、自然と伸びていったのは……ふたりの路を照らすようにと、そんな願いを籠めるよな。
 「この、洋灯めく円らかな瓶にしよう」
 触れたライラックのてのひらに、ぴたりと納まるまどかな瓶が、彼の迎えた柔らかな星の住処と決まった。

 宿す先も、宿す花も決まったならば、向かう先はただひとつ。小瓶に込めた花を抱き、足速に人並みを抜けながら、彼の裡巡る言の葉は想う相手へ語りかけるよに、溢れ溢れるよに静かに音を纏って紡がれる。
 「灯も、花も、彩も――もう、君には幾つも、幾つも、贈っているけれど」
 新年、初めて花降る日に想うのは、ふたりの出逢いし雨降る日。そしてそれは同時に、止む雨の先、虹彩から始まるふたりをも現して。

 あゝ、そんなふたりなのだもの。

 「あらたな彩を、幾つだって、重ねて、足しても、良いだろう?」
 先よりも少し通る声で、そう紡ぐライラックの視線の先には、聞き慣れた、耳馴染む声を受け止め振り向いた、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)の姿があった。
 振り向く視線の先に、彼の姿をみとめた少女もまた、藤色を柔らかに緩めて綻んで。ふたりは互いに距離を縮めてゆく。
 「――そんな訳でね、ティルさん。君への、幾度目かの贈り物だ」
 そう告げて、ライラックは淡紫のリボンで飾る小瓶を彼女へと贈る。その内に抱く、白き星の花が語るまま。

 ――共にあれるよう、祈りを込めて。

 そうして、彼から贈られた花抱く小瓶を、両の手で受け取って。花が語る言の葉を、込められた祈りをもまた己が裡へと受け止めたなら。綻ぶ咲みを彼へと向けたティルは、そっと唇を開く。
 「ありがとう、ライラック殿。とても……とうても嬉しい」
 贈られた小瓶も勿論だけれど、彼が此処に来てくれたことも、共に過ごせることも。嬉しくて、幸せだから。
 受け取る小瓶を愛おしげに胸に抱き、感謝の言葉を告げる彼女に、ライラックもまたその顔を綻ばせる。そんな彼を見つめる藤色が、ふと、悪戯めいた色を帯びて。
 「けれども。ねぇ、もしかして。渡すだけで満足されている?」
 と、窺うような視線で、高き彼の淡紫の眸をまっすぐと捉えたなら。
 「これは、妾からあなたへ」
 そう告げて、そっと彼女から差し出されたのは、ライラックの眸と同じ色を宿した、いつかの其れに似た淡き紫水晶で出来た小瓶。其処に籠められた小さな花々は、ブルースターにナンテン。そしてヤドリギ。小瓶の口には蔦巻くよな、空からでも地に咲くでもない鈴蘭が、結び飾られて。

 「今日という日は、欲張っていいのだそう。だからね、あなたに伝える欲張りを、ぎうと詰めたのよ」
 花に託した言の葉は、欲張りな其れは、届いたかしら、と。嘗て花を選ぶ時、どこまで籠めていいのかと。詞を選び、摘むことなく隠した花もあったけれど。これからはもう、そんなこともしないから。だからね。

 ――あなたのいろに詰めた、妾の想いが、我儘が、届きますように。

 詠み解いて、叶えてくれる?と、唇に人差し指あてて微笑んだ少女に、彼がどんな顔をしたのか。どう返したのか。その先は、ふたりのみが。そして、その周りに降る花のみが知るのだろう。


 ●

 ひらり、はらりと花が降る。
 空より贈られし彩りが、地を、海を、街を。
 そして、人々をも染めてゆく。

 新年彩。初花の日。祝祭の日。
 空より降る花々は、染めるだけでなく、見守り寄り添ってゆくのだ。その日を真に”彩る“人々の、十人十色のいちにちに、そこに咲く心に。

 今年もまた、新年彩が過ぎてゆく。
 この島に住まう者達の、掟を履行し得た海賊達の、そして、猟兵達の新年彩が、刻まれてゆく。
 全ての人たちの新たなるひととせが、彩りに満ちたものになりますように、と、空より寿ぐ彩に見守られて。

 そう、今日この日に咲いた、笑顔も、願いも、想いも全て。
 今を生きる者達の、かけがえのない彩だから。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年01月22日
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵