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花落ちのレヴリ

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #レプ・ス・カム #フェアリー

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●眠るカケラ
 目を開けた時――広がる世界は、甘い甘い色をしていた。
 春に咲くチューリップやポピー。夏に咲く向日葵にクレマチス。コスモスや薔薇、カレンデュラに水仙。色も季節も様々なここは、夢の世界なのだろうか。
「……あ、」
 揺れる目の前の黄色い水仙に触れようと、花に比べて自身の小さな手を伸ばした時。異変に気付き思わず言葉を零してしまった。
「無い」
 その言葉の通り――いつも指先に輝いている、銀色の指輪が無くなっている。
 記憶の最後には、確かにあったはず。大切なあの指輪を、失くすなんてありえない。気づけば逆の手で触れてしまう程に、その指輪の存在は大きなものだから。
「どこにいっちゃったの……?」
 辺りを見渡せば、どこまでもどこまでも続く花畑だけ。その果てはどこにあるかも分からない。色も、香りも、吹く風に舞う花弁も。全てが美しいけれど、どこか悲しいのは気のせいだろうか。
 透き通る翅を羽ばたかせる彼女の姿を、笑う影は誰のもの?

●花零れし
 数多の世界で現れた猟書家達。アックス&ウィザーズの世界でも、幹部による事件は相次いでいるのだと、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は語りだす。
 今回起こる事件の主犯は、フェアリーの少女が作り出したフェアリーランド内に現れる『レプ・ス・カム』と云う名の幹部だ。
「フェアリーランドは、言わば自身の力が生み出した世界です。幹部がその世界にいる間は術を解除することすら出来ず……そのまま、女の子は」
 ――生命力を消耗し、いずれは命を落としてしまうだろう。
 世界を荒らすだけでなく、罪も無い少女の命を奪う未来はそう遠くはない。だから、そうなる前に。少女を救って来て欲しいと、ラナは祈るように猟兵達へと告げた。

 フェアリーランドの主であるフェアリーは、デジレという14歳ほどの少女。彼女は家族を亡くしており、母親の形見である指輪をとても大切にしている。
 けれど――この世界で、彼女はその指輪を失くしてしまった。
 たったひとつの、肉親との繋がり。今は亡き人々の記憶の欠片を失くしたことで、精神を乱した結果がこの世界なのだろう。
 その為、彼女の亡くし物を探してあげることが大事。
 フェアリーランドの中は、悪夢とは思えぬほど美しい花景色が広がっている。
 澄んだ空は穏やかで、そよぐ風も心地良い程。四季折々の花が咲いている景色はまるで楽園のようだが――その景色の中には、異色が存在している。
「それは、ぬいぐるみや人形です。彼等は言葉を交わすことは出来ずに、こちらに危害を加えることもありません。ただ、ふゆふゆと漂っているだけなんですけど……」
 彼等は、ただの愛玩道具では無い。そう、彼等こそが悪夢の正体。
「このフェアリーランドの世界に降り立つ際に、不思議なことに何かひとつ身に着けている物が無くなってしまうんです。それは、彼等のうち誰かが持っているみたいで」
 数多いるぬいぐるみ達。彼等の中から、自身の物を見つけることは相当大変だろう。
 彼等は継ぎ接ぎがあったり、瞳がボタンだったり、太目な糸が見えていたりと。見るからに作りものだと分かるような見た目をしている。刃を立てればその身体は抵抗なく切り裂かれ――隠された宝物と共に、零れ落ちるのは鮮血では無く鮮やかな花。
 深い赤がぼろりと溢れ出ることもある。
 純白の花が、むせかえるような香りと共に零れることもあるだろう。
 その花々が、彼等の身体の中身。
 一瞬驚くようなこともあるだろうが、彼等は元より生きてはいない。己の大切なものを。そして、どこかに隠されたフェアリーの少女の宝物を。探すために数多の花を溢れさせる必要があるだろう。

 無事に探し物を見つけることが出来れば、この悪夢を見せた張本人である猟書家『レプ・ス・カム』が現れる。
 彼女は敵とは思えぬ友好的な笑みを浮かべているが、言葉巧みに猟兵を惑わすだろう。
 彼女の最大の目的は、フェアリーランドの中にある『鍵』を見つけること。フェアリーの少女を、そして猟兵達を惑わしている間に相手が目的を達成してしまえば世界は更なる危機に襲われてしまう。そうなる前に、素早くこの場から敵を追い払う必要がある。
「夢の世界のようなものです。ですから、惑わす夢に負けず。自身の心を強く持つことが大事だと思うんです」
 今回は、純粋な力での戦いとは違う。
 不安と、失った空白と、そして惑わしという心との闘い。
 お気を付けて下さいと、ラナは言葉を添えた後――世界の危機を防ぐ為に猟兵達を送り出す。美しき花の中、欠片を失くした少女の元へと。

 零れる花は鮮やかな色。
 薄れゆく記憶は、この色に染まってしまいそう――。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『アックス&ウィザーズ』での幹部シナリオをお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 冒険(痕跡の調査)
 ・2章 ボス戦(レプ・ス・カム)

●フェアリー『デジレ』
 透き通るオパールグリーンの髪にマルベリーの大きな瞳。
 家族を失った彼女は、母親の形見である指輪を大切にしていました。
 その指輪を無くしてしまったことが、彼女の悪夢です。
 溢れる程のぬいぐるみの中に、彼女の指輪もあるでしょう。

●1章について
 花が散る花畑。
 そこには沢山のぬいぐるみや人形があり、皆動いています。
 大きさや種類は様々ですが、目がボタンだったりとあからさまにそれだと分かります。

 このフェアリーランドに入った時、何かひとつ身に着けているものが無くなっています。
 それはどこかのぬいぐるみや人形の中に隠されています。
 お腹を裂くと中に詰められた花と一緒に何かが出てきます。

 アイテムは、お好きにご指定頂いて構いませんが。装備欄で活性化されているアイテムのみイラストや設定は参照させて頂きます。それ以外の参照はお約束出来ません、ご了承下さい。
 また、詳細な描写を確約するものではありません。リプレイの流れ次第で描写具合は変化致します。

 探す過程でデジレの探し物は見つかりますので、自身の探し物を重視して頂いて大丈夫です。

●2章について
 各々の、そしてデジレの宝物を見つけることが出来れば『レプ・ス・カム』が現れます。
 SPDとWIZで攻撃をした場合、先程失くしたアイテムは『自分の物では無い』『大切な物では無い』『捨ててしまおう』と云った感情を与えられます。プレイング次第で色々と調整は致しますので、お好きに考えて頂ければ。

●その他
 ・基本的に心情重視での描写予定です。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・どちらかだけの参加も大丈夫です。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、又は不採用の場合があります事をご了承下さい。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『痕跡の調査』

POW   :    見えるものから適当に辿る

SPD   :    くっきりとした痕跡を辿る

WIZ   :    見えないものを調べて辿る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●失くし物
 甘い甘い世界の中。
 揺れる花々の中、歩むのは人影では無く愛らしい影達。大きなボタンの目をした猫は、咲いているヒナゲシを一輪手に取ると自身の耳の辺りへと飾る。大きな耳をぴょこんと揺らした兎は、ほつれた尾を揺らしながら花の中へと転がった。犬とクジラが会話をするかのように顔を寄せ。栗毛のお人形はくるくると花の中を踊るように回り、真っ白のワンピースを翻す。 
 纏う心地良い花の香りはまるで夢へと誘うように。
 愛らしい物語のような彼等の中心で――スイートピーの花の傍、透き通る空色の翅を持つ少女が俯いていた。
 淡く透き通る髪はさらりと揺れる。顔を手で覆っている為表情は見えないが、肩を震わせている様子はとても幸せそうには見えない。
「無い、無い……」
 手で顔を覆ったまま、漏れるように聞こえる声は微かな――けれど悲鳴のようにも聞こえる程悲痛な色をしている。この広い世界は、自分の世界のはずなのに。ちっとも自分らしさが無い此処は、一体誰の世界なのだろう。
 彼女の周りで、ぬいぐるみや人形達はくるくると楽しそうに踊っている。

 ――ねえ、アナタの大切な物はなあに?
 ――記憶を隠すように。わたし達がアナタの大切な物を隠しちゃうよ。
レザリア・アドニス
失うもの:顔を隠す黒いヴェール

…まったく、人のものを盗んでどうするつもりですか?
探せって言ったら、全てを見てみれば、きっと見つけるんでしょう
花畑にゆっくり歩いて、出会うぬいぐるみを順次に掴んで、引き裂けて
淡々とその腹の中に手を入れて花も何も掻き出す
違う、違う、これも違うーー
ヴェールがなくなったのは慣れないけど、表情はほとんど変わらない
というか、より一層、感情が顔に出なくなる
歩いた道には、ぬいぐるみの残骸と鮮やかな花が散る
…あ、あった。やっと、見つけた
ヴェールを被り直し、ゆっくり微笑む
死の花嫁のヴェールは、お前らが外すものではないよ…?




 この美しき地へと降り立った時には、レザリア・アドニス(死者の花・f00096)の視界をぼんやりと夜へと染めるヴェールは無くなっていた。
 いつもならば、この鮮やかな景色も薄い黒の霧が掛かったように見えている。
 けれど、今は彼女の大きな緑の瞳に映る景色は鮮やかな色そのもの。どこか眩しくも感じ、ぱちぱちと瞳を無意識に瞬いてしまう。
「……まったく、人のものを盗んでどうするつもりですか?」
 落ち着かないのか、艶やかな黒い前髪に無意識に触れるレザリア。そのまま辺りを見渡せば、瞳に飛び込む鮮やかな花々と――ふわふわと漂うぬいぐるみ達。
 こちらに危害を加えてくる様子は無い。ただ花を楽しむように、彼等は揺蕩っているだけなのだが。彼等の中に失くした物があると分かっている為、無視は出来ない。
 ぬいぐるみや人形は種類こそ様々で、同じ見目などいないようだが。どの子が何を持っているのかは見当も付かない。ちらりと彼等を見た後、レザリアはひとつ息を零すと。
「探せって言ったら、全てを見てみれば、きっと見つけるんでしょう」
 ――そう紡ぐ彼女の瞳には感情は見えない。
 背の灰色の翼を揺らし、一歩踏み出す。美しき黒艶の髪が揺れれば、福寿草の花も合わせるように揺れた。さくり、さくりと花をかき分ける音が響く中。彼女は迷うこと無く手袋覆われた手を伸ばすと――掴んだ猫のぬいぐるみの腹部を、勢いよく引き裂いた。
 ビリビリと響く布の破れる音。
 すると同時に濃い花の香りがレザリアの鼻をくすぐり、ぽろぽろと青い花が零れ落ちる。その花と一緒に落ちたのは真珠のイヤリング。これは違うと彼女は首を振ると、次なるぬいぐるみへと手を伸ばし、同じ行為を繰り返す。
「違う、違う、これも違う――」
 零れる言葉はどこまでも淡々と。表情もほぼ変わらないけれど、その心には慣れぬ景色の戸惑いの色が広がっていく。
 歩み、手近なぬいぐるみを引き裂き、また歩む。繰り返していけば、レザリアの歩んだ道にはぬいぐるみの残骸と、花が散り鮮やかな道を作っている。
 隠す霧が無い為、より一層感情が顔に出ていないことに彼女は気付いていない。
 そして彼女が、狼のぬいぐるみへと手を伸ばした時――。
「……あ、あった。やっと、見つけた」
 ほっと安堵の息と共に零れたのは、黄色の花弁とするりと滑り落ちる柔らかな布。見慣れたその霧のような黒と、柔らかな手触りにレザリアは瞳を細めると慣れた手付きで自身の頭へと。うっすらと覆われた霧に覆われた視界は、先程の色は映さない。その見慣れた心地に静かに微笑むと――。
「死の花嫁のヴェールは、お前らが外すものではないよ……?」
 尚も辺りをくるくると踊るぬいぐるみに向け、そっと彼女は囁いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
やあ、や、お前の仲間がいるねえ
僕の愛し子、お前とおんなじお人形
お前にも花を飾ってやろうな
あなたもおひとつ如何かしら

両の手さしのべて抱き留めたなら
僕とも内緒のお話してくださる?
ね。どうして隠してしまったかしら
大事なものが欲しいのかしら、な

ね、大事なものならば
消えてしまうの不安だものな
ね、大事なものだから
僕の短剣も返してくださる
あれがなければ帰る路も
いつかの君も、わからない

笑って歌う僕は楽しそうに映るかしら
あなたのよに泣けないけれど
僕には大事なものだもの
その心臓を返してくださる
見えずとも辿れる僕の楔よ

どうぞどうぞ泣かないで
ねえ。こんなに綺麗な場所だもの
涙の色では、さみしいものな




 鮮やかな色がイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)の足元に広がる中、くるくると踊る綺麗なドレスを身に纏う人形達。
「やあ、や、お前の仲間がいるねえ」
 彼は黒衣のドレスを纏う人形――謳う愛し子へと声を掛けると、緩やかに口元を和らげる。そのままさくりと一歩踏み出して、一輪その細い手に取るのはガーベラ。鮮やかな花弁をそっと愛し子へと添えて、イアは微笑むと辺りを見る。
 ――あなたもおひとつ如何かしら。その言葉と共に、伸ばされる透き通る指。光に煌めく彼の指に触れたのは、ふかりとした柔らかな心地だった。差し出された左の手を掴んだならば、もう片方へも手を伸ばし。そのまま優しく抱きとめる。
 栗茶の三つ編みに水色のワンピースの少女の人形の身は柔らかな心地で、距離を詰めればふんわりと甘い香りがする。
 イアは胸の中の人形の、瞳であろうボタンをじっと見つめると。
「ね。どうして隠してしまったかしら。大事なものが欲しいのかしら、な」
 そっと、内緒話をするように囁いた。
 零れる言葉は密やかに、甘やかに。その声は楽しげに辺りを漂う彼女の好奇心を誘ったのだろうか。黒いボタンの瞳でイアを見つめると、何かを伝えたげにぽすぽすと胸を叩く。それはまるで生きているかのような行動だけれど、彼女は生きてはいないヒトガタ。
 誰かの大事な物を隠してしまうぬいぐるみと人形。
 鮮やかな花々の中、どこか楽しげに彷徨う彼等。
 その目的は、大事な物に対してなのか。それとも、迷い込んだ人に対してなのか――。
 それは、言葉を発せぬ彼等から答えが聞けぬ以上真相は闇の中。けれどイアはどこか楽しげで、どこか悲しげな腕の中の人形へとそっと語り掛け続ける。
 ね、大事なものならば。
 消えてしまうの不安だものな。
 ね、大事なものだから。
「僕の短剣も返してくださる」
 そう、いつの間にやら消えていた短剣。細かな装飾が美しいあの剣が無いとは、すぐに気づいていた。あの大きさの物を隠せる子をと、彼はこの子を手に取ったのだ。
 紡ぐ言葉の色は変わらずに。けれどそれは、イアの心からの言葉だった。
 あれがなければ帰る路も。いつかの君も、わからない。
 笑ってそう紡ぐイアは、楽しそうに映るのだろうか。石である彼は泣けないけれど、確かに失くした物は彼にとっては大切な物。雫を零せなくとも、その想いに偽りは無い。
「その心臓を返してくださる」
 見えずとも辿れる僕の楔よ――。
 言葉の直後、びりりと響くのは悲しげな音色。
 はらはら零れる布の欠片と深い青の花びらと共に――零れ落ちるは透き通る短剣。

 どうぞどうぞ泣かないで。
 ねえ。こんなに綺麗な場所だもの。
 涙の色では、さみしいものな。
 溢れる鮮やかな赤の花々がその短剣を抱きとめてくれたから、落ちた音は響かない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
【希蕾】人形や詰めた花の種類お任せ
失物:久遠の華

デジレ、大丈夫よ
マリア達も探すわ
必ず見つかるから
だから諦めないで

数多の人形に気が遠くなるも一生懸命探す
途中、自分も指輪を紛失してる事に気付く

えっ…マリアの指輪もないわ!
何故…
大事な、大事な物なのに…!(マリアの16歳の誕生日に霞架から貰った

顔面蒼白し動揺する
思わず金の宝石雫が目から零れ

ごめんなさい霞架…
一時でもマリアが手離すなんて
霞架も?…それはどんな形かしら
小さい頃に貰ったの?
お母様代わりの人が…そう
その方は今の霞架のしるべを作った人なのね(霞架の両親は確かあまり…
ええ、全部見つけるのだわ

涙を拭う
人形の腹を優しく裂き捜索
発見後は大事に握り締める


斬崎・霞架
【希蕾】

景色は悪くないのですが、これでも悪夢…ですか
そうですね。探して差し上げましょう

流石に数が多いですね
とは言え、纏めて吹き飛ばしてはなくした物まで傷つけてしまうかも知れません
地道に一つずつ、ですか

(マリアを優しく宥め)
落ち着いてください、マリアさん
なくしたのならば探せば良いのです
どうやらここは、そういう場所のようですから

…ええ、僕もなくしてしまったようです
(左手首に身に着けていた『アイリス』をなくし)
僕の母親代わりをしてくれた人がくれた物です
父親代わりの人から貰った耳飾りと一緒に
強くて、綺麗で…大切なものを守れるように強くなれと、教えてくれた人です
…―あれを、なくしたままには出来ません




 透き通る青空。四季と色とりどりの花は美しく、肌を撫でる風は心地良い。
「景色は悪くないのですが、これでも悪夢……ですか」
 辿り着いた先、視界に広がるその光景に斬崎・霞架(ブランクウィード・f08226)は思わず言葉を零していた。
 まるで夢のような世界だとは思う。
 このように綺麗な景色を現実で見ることは難しいから。
 けれどその美しく穏やかな景色は『悪夢』と云う言葉からは遠いような気がした。
「デジレ、大丈夫よ。マリア達も探すわ」
 すぐ傍の少女が、一輪の花へと語り掛ける。――否、そこにはオパールグリーンの髪をしたフェアリーが居た。顔を両手で覆い、表情は見えないけれど。零れる声は確かに泣き声。だから少女――マリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)はどこまでも優しく、年の頃の変わらぬ彼女へと語り掛ける。
 必ず見つかるから。だから諦めないで、と。
 そんな懸命なマリアドールの声と、悲しげな少女の姿を見ては霞架だって放ってはおけない。こくりと頷くと、穏やかな微笑みと共に。
「そうですね。探して差し上げましょう」
 涙を流す少女を勇気づけるように、紡いだ。

 鮮やかな花々の中、自由に動き回るぬいぐるみや人形は10では済まされない。20、30……ずっと奥まで含めれば100をも超えているのだろうか。
「流石に数が多いですね」
 口元に手を当て、眼鏡の奥の瞳を細め霞架は紡ぐ。
 とはいえ、まとめて吹き飛ばしたりしては失くした物まで傷付けてしまう可能性がある。残念ながら効率よりも、今は地道にひとつずつということになるだろう。
 改めてその数の多さと地道な作業に、マリアドールは一瞬だけ頭がくらりとした。けれど、なんとかその場に踏み留まり。次にはゆっくりと歩を進める。
 鮮やかな花の中ひらひらと華水晶の波打つ髪が空に泳ぐ。光を浴び、輝きを放ち色を変える彼女の姿は美しく――興味を持ったのか、ぬいぐるみ達から近付いて来た。マリアドールはふわりと優しく笑みを浮かべると、申し訳なさそうに瞳を細めた後その柔らかな身体を引き裂いた。
 びりりと響く音。
 はらはらと落ちていく真紅の花。
 世界に広がるむせるような生花の香り。
 その光景にマリアドールは小さく咳き込んでしまうが、花と共に零れ落ちたのが桜の栞だと気付くとこれはハズレなのだと気付き次なる対象へ。
 次へ、次へ。
 躊躇わず失くし物を探す彼女に倣い、霞架も柔らかな身へと手を伸ばそうとした時――。
「えっ……マリアの指輪もないわ!」
 突然上がった可憐な声に、思わず顔を上げていた。
 そこには顔を青ざめ、身体を震わせる小さな少女。マリアドールが見つめる指先へと視線を移せば、そこには本来ならば輝く守護の祝福が存在しなかった。
「何故……。大事な、大事な物なのに……!」
 瞳から零れ落ちるは、金の宝石雫。
 その雫は地へと落ちると、カツリと音を立てて跳ねていく。
 少女のその異変に、動揺に。すぐに霞架は駆け寄ると――。
「落ち着いてください、マリアさん」
 優しく彼女の肩に触れ、宥めるように声を掛けた。
「なくしたのならば探せば良いのです。どうやらここは、そういう場所のようですから」
 だから仕方が無い。失くなった場所が分かるのならば、いくらでも解決法が見つかる。だから大丈夫だと、安心させるように。勇気を出せるようにと霞架は少女を導く。
 彼の言葉と熱にマリアドールは少しの安堵を感じたようで、じっと彼を見上げた。
「ごめんなさい霞架……。一時でもマリアが手離すなんて」
 まだ、その声は震えている。
 けれどこうして会話が出来るようになったということは、ある程度は落ち着いている証拠。霞架は微かに安堵の息を零したが――その時、自身の左手首の異変に気付く。
「霞架?」
「……ええ、僕もなくしてしまったようです」
 不思議そうに首を傾げる少女に向け、自分も無いと示すように何も無い左手首を見せる。そこには、本来ならば花を模した首飾りが揺れている筈。
 それはどんな形なのかしらと、マリアドールが問い掛ければ。彼は瞳を細め説明と共に思い出を語る。霞架の、母親代わりをしてくれた人がくれた物だと。それは、父親代わりの人から貰った耳飾りと一緒で、とても大切な物。
「強くて、綺麗で……大切なものを守れるように強くなれと、教えてくれた人です」
 ……――あれを、なくしたままには出来ません
 懐かしむように紡がれる声は、真剣さをも孕んでいる。
 彼のその声に、マリアドールは静かに瞳を伏せる。
「お母様代わりの人が……そう」
 霞架の両親は確かあまり――そう、過去に聞いたことを思い出す。けれど、その思い出の人は。今の霞架のしるべを作った人なのだろう。
 だったら――。
「ええ、全部見つけるのだわ」
 今度は、マリアドールが霞架を勇気づけるように。笑みと共にこくりと頷き紡ぐ。
 その言葉を零す彼女の瞳には、もう先程のような戸惑いの色は無い。涙を拭い、再び彼女は金髪の人形へと向き直る。そんな彼女の背を見て、霞架は柔く笑むと自分も花畑の中を進みゆらゆら揺れる熊のぬいぐるみへと手を伸ばす。
 赤が散り、青が散り、白が散り――数多の花弁が散り、共に零れ落ちる欠片達。けれどなかなか目当てが見つからず、微かに焦りを覚える中。
 ざくりと、やけに強く裂ける音が響いた気がした。
 重い手応えと共に、マリアドールが引き裂いた桃色の髪に菫色のドレスを着た人形の中からは。白から水色へと移り変わる花弁が零れ落ちる。
 ふわり香る心地良さ。カツリと地に落ちる金属音を聴き――少女は慌てて手を伸ばす。
 生誕祝う輝石が、少女の手の中でキラリと輝いた。
 良かったと、笑みと共に零す少女の姿を見る霞架の手の中にも。モーブ色の花弁と共に紫色の石が輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
「悪夢の滴」たるこの私の前で悪夢を弄ぶ愚かな猟書家
その増上慢、すぐに悔いることになるでしょう、絶望の中で

しかしなかなか厄介な世界です
やはり無くなっていますね、53枚の死神札のうち一枚だけが
53通りの怨念のうち、なくなったものは……
許されざる恋に非業の死を遂げた恋人たちが
世界を呪い運命を呪ったあの札ですね

私も魔性のものでありながら女神という許されぬ相手と恋に落ちた身
故に他人事とは思えないのです

それほど強い呪いは逆に
それほど強い愛だったことの裏返し
いわば尊い怨念です
だからこそ見つけなければ

美しい花の中だからこそ逆に怨念は強く感じ取れるはず
第六感で探りつつ範囲攻撃とUCで人形たちを倒して行きましょう




 『悪夢の滴』たるこの私の前で悪夢を弄ぶ愚かな猟書家。
(「その増上慢、すぐに悔いることになるでしょう、絶望の中で」)
 澄んだ青い空を見上げながら、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は静かに思う。そよぐ風が漆黒の髪を躍らせ、甘い花の香りを風が運んでくるこの景色はとても穏やかだが。
「なかなか厄介な世界です」
 ひとつ、失くなっていることに気付き溜息を零す。
 彼女の手の中にあるのは札。全てで53枚あるその札のうち、1枚だけが今回は無くなっている。一体何が無いのだろうと、魅夜は1枚1枚札を捲り確かめる。
 ぱっと見は普通のトランプ。けれども全ての札がジョーカーの絵柄となったトランプは、53通りの怨念が込められている。
 今回無くなった怨念は――。
「許されざる恋に非業の死を遂げた恋人たちが、世界を呪い運命を呪ったあの札ですね」
 ひとつ頷き、確かめるように彼女は言葉を零す。
 どの世にも、悲恋の話は付き物。恋から生まれる怨念は、とても深くどこまでも絡みつくような恐ろしいもの。
 魅夜自身もかつて、許されぬ相手と恋に落ちた。
 そう、魔性のものでありながら。女神という許されぬ相手と――だからこそ、彼女はこの怨念が他人事とは思えないのだ。
 それほど強い呪いは逆を言えば、それほど強い愛だったことの裏返し。
「いわば尊い怨念です。だからこそ見つけなければ」
 言葉を紡ぎ、顔を上げた彼女の眼差しはとても強いもの。辺りを見渡せば、美しき花々の中踊るぬいぐるみや人形達の姿をしっかりと捉えることが出来るが。皆、魅夜の真剣な姿には気付いた様子もなく、尚もくるくると楽しそう。
 此処は、一見華やかな場。
 だからこそ、逆に怨念は強く感じ取れる。
 そうっと瞳を閉じて。深く深く深呼吸をする。
 再び彼女は瞳を開いた時――視界に映るぬいぐるみや人形を襲うのは、数多の鎖。玩具達だけでは無い、花々をも鎖が襲い世界に花弁が舞い上がる。
 ――それはまるで、零れ落ちる鮮やかな雨にも。涙にも見える情景。
 花弁に混ざりはらりと零れ落ちた1枚のジョーカーのカードは、白きハルジオンの下へと滑っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神宮時・蒼
…何とも、まあ。…見た目は、可愛らしくとも、内面は、醜悪、と、言った、ところ、でしょうか…
…おや、髪飾りが、なくなって、います、ね。…けれど、彼女の、失くし物に、比べれば、些事、です。…此方は、ついでで、いい、でしょう

【WIZ】
…さすがに、此の、ぬいぐるみを、相手に、するのは…
此処は、「第六感」を信じて、進みましょう、か
もし、物を隠したぬいぐるみたちの心が読めるなら「読心術」も試して、みましょう
流石に、心の中まで、嘘はつけないでしょうから…

お腹を裂いて―、…流石にちょっと酷い事を、している気に、なります、ね
…ああ、ありました。…白花の髪飾り
…デジレ様の、指輪は、どちらに、ある、でしょう…




「……何とも、まあ。……見た目は、可愛らしくとも、内面は、醜悪、と、言った、ところ、でしょうか……」
 色の違う双つの瞳を細め、微かに俯いた時。さらりと神宮時・蒼(終極の花雨・f03681)の切り揃えられた髪が揺れた。
 いつもとは違うその流れに、蒼は顔を上げると不思議そうに髪へと触れる。いつもの流れるような髪の触り心地。けれど、そこにあるのは髪だけで。
「……おや、髪飾りが、なくなって、います、ね」
 いつの間に、と少し驚くように彼女は紡ぐ。
 けれど彼女の――今尚泣いているデジレの失くし物に比べれば些細なこと。自分の物はついででいいと、蒼は迷うこと無く花畑の中一歩踏み出した。
 辺りには数多の花が揺れている為、傷付けずに歩むことは難しい。一歩一歩なるべく傷付けないようにと考えながら、蒼はごろごろとひなたぼっこをするぬいぐるみへ近付く。
 果てが分からないほどの、続く色と四季折々の景色。密集している訳では無いぬいぐるみや人形は、各々好きに行動している為まとめて対応することは難しい。だからといって、無策と云う訳にはいかない。
(「此処は……」)
 すうっとひとつ息を吐き、瞳を伏せて蒼は感覚を研ぎ澄ます。
 皆が皆宝を握っている。手当たり次第よりは、少しでも絞れるほうが良いだろうから。
 これだと思う子を感覚に任せ、蒼は切り裂く。微かな破れる音は耳に残るような気がする。零れる花々の赤色を見た時、少し彼女の瞳が揺らいだ。
「……流石にちょっと酷い事を、している気に、なります、ね」
 けれど続けなければ、事件は解決しない。
 花と共に零れ落ちた物は知らぬ本だと云うことを確認した後、蒼は次に空色の猫へと月花ノ吹雪を向ける。声を上げぬぬいぐるみは、衝撃を受けその場で切り裂かれる。同時に白い花が零れ落ちた中に――キラリと、輝いたのが見えた。
 慌てて蒼は駆け寄り、輝いた物を探す。かぐわしい白い花の中、確かに生花とは違う手触りの花を手に取ると。
「……ああ、ありました」
 少しの安堵の色を込めた声を、彼女は零す。
 けれどその途中、目当てである小さな指輪は見つからなかった。
「……デジレ様の、指輪は、どちらに、ある、でしょう……」
 だから蒼は再び立ち上がり、次なる対象へと花を散らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御乃森・雪音
何か一つ身に着けているものがなくなる世界、ねぇ。
さて、何が無いのかしら……成程。
Rosa nera……いつも腰の辺りに着けてるはずのマイクが無い、と。困ったわねぇ、歌えないじゃない。
猟兵になってから手放したことが無いものだから、無いと落ち着かないものね。何かすごく、胸の辺りがざわざわするわ。
デジレもすごく不安でしょうね、必ず見つけないと。

一度目を閉じて、意識を整えて。
大丈夫、声が出ないわけじゃない。歌える。大丈夫。
取り返せば良いだけ。

この綺麗な世界を、傷つけることが無いように。
Fiamma di incenso rosa……花びらと共に炎よ、踊れ。
踊って舞って、花を咲かせましょう。




 何か一つ、身に着けている物が無くなる世界。
 それが、御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)がこの世界へ訪れる前に聞いた情報。それならば、自分は何が無くなったのだろう――と視線を下ろすと。いつもならば腰の辺りにつけている筈の、漆黒の短剣兼マイクが無くなっていた。
「困ったわねぇ、歌えないじゃない」
 彼女は音楽を奏でるもの。マイクは大切な武器の一つだ。猟兵になってから手放したことが無かった為、改めて無くなると落ち着かなくなる。
 何度も本来はそこにある筈の腰当たりに手が伸びてしまう。宙を切る感覚に違和感に満ちると共に、胸の辺りがざわつく感覚がする。
 こんなにも、不安なのだ。それならば――。
「デジレもすごく不安でしょうね、必ず見つけないと」
 思い出す涙を流す小さな少女。
 大切な物を失くして苦しんでいる者は、自分一人では無いから。だから雪音は前を向いて、戸惑うこと無く進もうと思う。
 そうっと瞼で、鮮やかな青い瞳を隠す。
 ひとつ、ひとつ。深呼吸をして意識を整える。胸元に手を当て、雪音は自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
(「大丈夫、声が出ないわけじゃない。歌える。大丈夫」)
 そう、四肢は満足。マイクが無くとも、変わらず歌は奏でられるので行動に支障は無い。この世界のどこかには必ずあると分かっているから、大丈夫。
 ――取り返せば良いだけ。
 その言葉が心に満ちた時、雪音は瞳を開けると辺りを見渡す。
 穏やかな澄み渡る空。鮮やかな四季折々の花々は美しく、ふわりと優しい風が雪音の肌と漆黒の髪を撫で揺らしていく。
 なんとも穏やかで、美しい世界。
 一瞬だけれど見惚れてしまうような光景に、雪音は傷付けることは無いようにと誓う。
 ふわふわ漂うぬいぐるみ達が目の前を行進してきたのはその時だ。
「Fiamma di incenso rosa……花びらと共に炎よ、踊れ」
 雪音はチャンスを見逃さず、呪文を唱えると――色とりどりの薔薇の花弁が宙を舞い、ひらりとぬいぐるみに触れると一気に燃え上がる。声を発さぬ彼等は悲鳴を上げることなく、中の花弁と共に燃えて姿が消えてしまう。
 はらりと炎の欠片が落ちるのと一緒に。
 輝くマイクが、花畑の上にぽとりと落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
フェルト(f01031)と共に
フェアリーを苦しませる猟書家
ちゃんと、分からせてあげなきゃね!
世界を救うフェアリーの力!

ハピネス……ねぇ、ハピネス、どこ!?
……探しだしてあげるからね、必ず

「悪夢を照らす光よここに」
悪夢を照らす夢幻の蝶は作り物の命すら眠らせる

大人しくなった人形たちのお腹を切り裂いて探していこう
大丈夫だよ、ハピネス、必ず見つけるから

あなたのその名前は、フェルトに与えてもらった名前

必ず、その名を呼ぶから!

【失くした物:ハピネス・オブ・フェアリア
フェルトに名付けてもらった空飛ぶ箒がエレメンタルロッドとなった姿
精霊魔法を使うシアラを支える魔法の相棒】


フェルト・フィルファーデン
シアラ(f04820)と
まだいたのね、猟書家。本当に、いい加減にしてもらいたいものね。
さあ、デジレ様を一刻も早く救いましょう。そして、わたし達フェアリーを傷つけたこと、後悔させてあげる。


……護身剣が!?いつの間に……
いえ、今は動揺している暇はないわね。
デジレ様の大切な指輪も見つけなきゃいけないし、きっとその過程で見つかるはずよ。

それでは片っ端から探しましょう。UCで兵士人形達を呼び出し、人形達を隅々まで捜索よ。
見つけたら腹を裂いて、大切な物を絶対見つけだす!


【失くした物:浅葱色の親友(護身剣) 自分の身を守るようにと、かつて騎士であり、今は大切な親友のシアラからもらった浅葱色の刃を持つ両手剣】




 此の世界は、自身と同じフェアリーの少女が作り出したモノ。
 悪夢に苦しみ、涙を流す少女――フェアリーを苦しめる猟書家の作り出した事件。
「ちゃんと、分からせてあげなきゃね! 世界を救うフェアリーの力!」
 ぐっと両手を握り締め、浅葱・シアラ(世界の友達は貴女の親友・f04820)は言い放つ。自分と同じ年頃の少女の悩みに、放ってはおけなかったから。
 彼女の傍らで、こくりと頷くのはフェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)。猟書家の引き起こす事件と云うことに、微かに溜息を零した後。
「さあ、デジレ様を一刻も早く救いましょう。そして、わたし達フェアリーを傷つけたこと、後悔させてあげる」
 確かな決意を胸に、ふたつの翅は作り出された世界を舞い踊る。
 けれどそう簡単に探し物はさせてくれない。
「……護身剣が!? いつの間に……」
 最初に気付いたのはフェルトだった。無くなってしまったのは両手剣。浅葱色の両刃は、持ち主を守り導く剣で。それは親友であるシアラから貰った大切な物。いつだって傍に置いておいた筈なのに、今は温かな浅葱色はどこにもない。
 慌てるようにきょろきょろと辺りを見るフェルトを見て。シアラも付いてこない相棒の姿に異変を感じ、視線を泳がす。
「ハピネス……ねぇ、ハピネス、どこ!?」
 名を呼ぶ彼は、杖の主である精霊。
 その名はフェルトに名付けて貰った、かつては空飛ぶ箒だった者の名。
 自然と対話するように、精霊魔法を用いるシアラにとっては支えてくれる、とても大切な相棒。いつもだったらすぐ傍に居る筈なのに、いつまで待っても姿を見せない。
 ――これは、フェルトの護身剣と同じく奪われてしまったのか。
 此の地は、何かひとつの者が無くなる不思議な地。
 だから、何が無くなったのかが分かれば大丈夫。後は見つかるように探すのみ。
「……探しだしてあげるからね、必ず」
 きゅっと唇を結び、胸元で手を握ると決意をシアラは口にする。彼女のその言葉に、慌てていたフェルトは今やるべきを思い出したように瞳を瞬く。
「いえ、今は動揺している暇はないわね」
 気を取り直すように両頬を微かに叩き、世界へと向き直る。涙を流すデジレの大切な指輪も見つけるのだ。きっとその過程で見つかると、自分を鼓舞するように言い聞かせる。
 俯いていた友が前を向いたことを確認して、シアラは小さく笑むと深く息を吸う。
「さあ、悪夢はここまでよ。幸せな夢に案内してあげる!」
 続き紡がれるは呪文。すると辺りに、ふわりと光り輝く蝶が現れた。美しき世界に舞う輝く蝶は、この地を更なる夢の世界へと誘うようで――彼等は、悪夢を照らす夢幻の蝶。作り物の命すら眠らせる彼等の力があれば、数多のぬいぐるみ相手でも怖くはない。
 蝶に惑わされぽてりと花畑に落ちるぬいぐるみ達。
 その姿を確認して、次はフェルトが兵士人形を呼び出す。彼等は次々とぬいぐるみや人形へ触れ、その中から花と共に宝物を見つけ出す。
 鍵。ネックレス。髪飾り。
 出てくるものはどれもこれも、ふたりには大きい通常のサイズのものばかり。人形達だけに任せず、シアラも自身の手で自分よりも大きなぬいぐるみを引き裂いていく。
「大丈夫だよ、ハピネス、必ず見つけるから」
 聴こえているかは分からない。
 けれど、自身の心を言葉にして。懸命に彼女は相棒を探す。
 相棒の名は、フェルトに与えて貰った名前。だからこそ、何度だって口にしよう。
「必ず、その名を呼ぶから!」
 強く、強くシアラがそう言い放った時。破れた兎のぬいぐるみから零れた、淡い緑の花弁の花がシアラへと降り注いだかと思えば、輝く何かが現れる。
「ハピネス……!」
 咄嗟に瞑った瞳を開き、映ったその姿を見てシアラは幸せそうな声を上げる。その声に反応してフェルトはシアラのほうを見ると、相棒と再会出来た友の姿を見て微笑んだ。
 ――微笑む彼女の手には、しっかりと浅葱色の剣が握られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月見里・美羽
……ボクの大事なリップが見つからない
「桜色リップ」
仲良しの蓮夢ちゃんが、クリスマスにくれたもの

「美羽ちゃんのサンタさんになるのだ!」
蓮夢ちゃんの言葉は覚えているのにみつからない

こんな甘い世界だから、何かを疑うのはとても辛いのだけど
大事なリップをボク自身が落としたとも思えない
ねえ、キミたち
そんな笑顔で、何かを隠していない?

大事なものなんだ、返して

【シングオーダー】を使って【ゲート・オブ・サウンド】を起動させ
UCを使用するよ
背に現れた機械仕掛けの翼で薙ぎ払ってあげる

花びらの中からリップが見つかれば少しだけ罪悪感を覚えるけど
これはそれだけ大事なもの
キミたちなんかに、あげたりしない

アドリブ歓迎です




 不思議な世界へと降り立ち、すぐに月見里・美羽(星歌い・f24139)は異変に気付く。
「……ボクの大事なリップが見つからない」
 焦るように眉を下げ、入っていた筈の場所を探す。けれどそこには輝くような欠片は無かった。――今残るのは、自身の唇を彩る桜色のみ。
 失くした欠片は、クリスマスに仲良しの友達から貰ったもの。彼女が自分のサンタさんになるのだと、言ってくれたその言葉は覚えている。
 あの言葉は確かだから。その言葉と共に贈られた大切なリップを、失くすなんてありえない。それにそう簡単に落とすような場所にも無かった筈。
 確かに桜色があったと確かめるように、無意識に美羽の指先は唇に触れる。柔らかな心地は、あのリップが、そして友の想いがくれたものだから――ぐるりと辺りを見回して、少女は大切な物を探す。
 焦っていた為世界を認識していなかったが、鮮やかな花々に穏やかな風。楽しそうにくるくると踊るぬいぐるみや人形達。その光景はどこか甘く、夢のようで――だからこそ、疑ってしまうのはとても辛い。
 きゅっと胸元で手を握り。唇を結んで。
 でも、失くしたきっかけは――。
「ねえ、キミたち。そんな笑顔で、何かを隠していない?」
 くるくると手を取り合い、周る彼等に向け美羽は語り掛けた。すると彼等は動きをぴたりと止め、一斉に美羽へと視線を送る。
 黒いボタン、糸で作った円らな瞳。彼等は確かに瞳を持っているけれど、それはどれも偽物故にどこか焦点が合わなければ精気も無い。言葉を話せない彼等はじいっと美羽を見た後、何事も無かったかのように再び踊り出す。
「大事なものなんだ、返して」
 一歩踏み出し、少し声を大きくして。
 必死に美羽は語り掛けるけれど、彼等は楽しく踊るだけ。
 その様子に彼女は溜息を零すとマイクを手に、歌を奏で始めた。
 穏やかな世界に広がる歌声はまるで穏やかな子守唄のよう。その歌に惹かれたのか動きを止めたぬいぐるみの元へ――降り注いだのは、機械仕掛けの黒い翼。
 鋭い翼は小さな身を襲い、切り裂き、一斉に花が溢れ強い生花の香りが充満する。
 零れ落ちるは青に白――そして淡い淡い桜色の花が落ちた時。
「あった!」
 キラリと煌めいた欠片を見つけ、美羽は駆け出し手を伸ばした。小さな彼女の掌の中、ころりと転がるのは大切な桜色。ほうっと安堵の息を零すと同時、安心したからか辺りの光景に少しの罪悪感を覚えるけれど――これは、それだけ大事なものだから。
「キミたちなんかに、あげたりしない」
 すうっと瞳を細め。美羽は手にしたリップに口付けをした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
綺麗な花畑だね、カグラ
此処はフェアリーランドという――あれ、ない!!
私の大切な、櫻龍ノ桜角が
あの子の、角の欠片が!
だめだ、あれは
私の覚悟
愛しいきみを、守るという

どうして
私はいつも落し物をする
大切な記憶を、約束をおとしてしまう
君と重ねた大切なたからものを
落としたくなんてないのに

カグラ、一緒に探そう
噫!容赦なくペンギンのぬいぐるみの腹を!
カグラ…意外と容赦ないよね
可愛らしい人形を裂くなんて抵抗がある
何処にある?
私のきみよ
私の桜は――何処に咲いている
カラスがこちらだと教えてくれる

蛇のぬいぐるみ
まるで大蛇だ
腹を躊躇なく裂けば、溢れる桜吹雪と

あった!!
大切に心のしるしを抱きしめる
もうなくさないよ
舞い散る




「綺麗な花畑だね、カグラ」
 そっと優しく、朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は傍らの人形へと語り掛ける。此処はフェアリーランドという力で作られた不思議な世界。故に現実とは違う景色や物事が広がっているのだが――。
「――あれ、ない!!」
 世界を説明した時、カムイは思わず声を上げていた。
 ぱたぱたと身体中触れ、どこにも無いと気付くと慌てたように唇を震わせる。
 そう、無いのだ。大切な、大切な――。
「あの子の、角の欠片が!」
 あれは、カムイの覚悟の証。愛しいきみを、守るという――だから、失くすわけにはいかないのだ。例えいつも自分が落とし物をするとしても。
 嗚呼、そうだ。
 想えば大切な記憶を、約束をおとしてしまう。
 けれど、君と重ねた大切なたからものを、落としたくなんてないという気持ちは何よりも強い。だから、だから――。
「カグラ、一緒に探そう」
 傍らの人形へと語り掛けると、桜竜神の魂宿るその人形はこくりと頷いて。すぐに横をふわふわと揺れていたペンギンのお腹に向け勢いよく飛びついた。
「!?」
 一瞬の出来事にカムイは驚いたようで瞳を見開く。衝撃で腹が裂ければ花が溢れ、その花にカグラが埋まっていく。
「カグラ……意外と容赦ないよね」
 知らなかったその姿に苦笑交じりにカムイが零せば、赤色の花弁をその身に纏わせたカグラが戻ってくる。
 彼の人形のように、可愛らしいぬいぐるみを裂くなんてカムイには抵抗がある。でも、やらなければいけない。大切な、証を手にする為に。
 何処にある? 私のきみよ。
 私の桜は――何処に咲いている。
 そうっと問い掛けるように紡げば――ひとつの鳴き声と共に、組紐纏うカラスがカムイを呼んだ。こっちだと導くように羽ばたく彼についていけば、そこにあるは蛇のぬいぐるみ。真白の身体に赤いボタンの瞳。ぬいぐるみ故、にょろりというかふわふわまるまるとして確かに愛らしさをもっている。
 ただし、とても大きなその姿は大蛇のようで――カムイは、今度こそ躊躇することなくその腹部を勢い良く切り裂いた。
 布の切れる微かな音と感触。
 するとすぐに――淡い色の桜吹雪が、溢れた。
「あった!!」
 はらはらと零れていく花弁の中、ころりと掌に転がった花弁とは違う感覚に。何だろうと確かめると同時、カムイは大きな声を上げていた。それもそのはず、探していた大切な物が、見つかったのだから。
 嗚呼――漏れる声と共に心のしるしを抱き締めるカムイ。
 もうなくさないよと、誓いを立てながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千波・せら
あれ、あれ?
おかしいな。私の写真が無い。
いつの間にか無くなってる……!

お友達からもらった大切な写真なんだ。
私の知らない景色の写真だよ。
ぬいぐるみ達に話を聞いてみようかな。

近くにいた熊の子に話しかけてみよう。
私の写真をどこかで見てないかな?
温かい景色の写真で、花と緑と蝶がいる温室の写真なんだ。
友達からもらった大切な物だから無くしたら困る物だよ。
鞄に入れてたのにな。おかしいな。

お腹を破るの?
ぬいぐるみのお腹を破るのは可哀想になっちゃうけど
そこに私の写真があるなら……。
本当にあった。痛かったかな。ごめんね?

次はデジレの探し物も探さなきゃ。
私に任せて!




「あれ、あれ?」
 この世界へと降り立ち、すぐに千波・せら(Clione・f20106)は異変を感じた。ぱちぱちと水晶の大きな瞳を瞬き、何かを探すように身体中に触れてみる。
 無い、無い。
 そう、彼女にとって大切な物――写真が、無くなっていた。
 あれは赤い友から貰った大切な写真。海では無い、緑と花の輝く温室。永遠の春を写した鮮やかな景色は、せらの知らない世界の色。
 海では無い、鮮やかな色。
 あの色が無いのは困るから――せらはきょろきょろと辺りを見回した。
 降り注ぐ陽射しがせらの髪へと降り注ぎ強く煌めく。心地良い風は海とは違う穏やかなもので、色とりどりの花達はあの写真に咲いていた花のよう。
 その中、数多のぬいぐるみが楽しそうに過ごす美しい世界だと、彼女は想う。
「そうだ」
 目の前をふわふわと過ぎ去っていった小さな羽を持つ兎を見送った時、せらは思いつき両手をぽんと合わせる。失くなったのが確かならば、彼等に話を聞いてみようと想い。
 たんっと軽やかに地を踏み締めて、揺れる花々が足をくすぐる中彼女は歩む。すぐ傍で、花をじいっと見ていたふわふわの毛並みの熊へと。
「私の写真をどこかで見てないかな?」
 優しく問い掛けてみれば、彼は何? と言いたげにこちらを見上げる。
 円らな瞳は陽射しを浴びてキラキラと輝き、そよぐ風が柔らかな毛を揺らしていく。敵意は無いのだとじっとこちらを見てくる彼を見て理解すると、せらは更に唇を開く。
「温かい景色の写真で、花と緑と蝶がいる温室の写真なんだ。友達からもらった大切な物だから無くしたら困る物だよ。鞄に入れてたのにな。おかしいな」
 どんな物か。
 どれだけ大切な物か。
 それを説明するように彼へと語り掛けるけれど――熊は不思議そうに首を傾げ再び花へと意識を向けてしまった。
 せらは小さく息を吐く。
 あの反応は、こちらに興味が無いのか。それとも何も知らないのか。はたまた知っているけれどこちらに教えるつもりが無いのか。
 ぬいぐるみ故に表情の無い彼からは何も読み取れない。だからせらは決意と共に手を伸ばすと――熊のぬいぐるみの腹部を、切り裂いた。
 破れる音。
 一瞬で広がる濃い花の香りに、ぽろぽろと零れ落ちる水面を写したかのような花々は無限に溢れてくる。すると――ひらりと、落ちる紙に気付きせらは手を伸ばす。
 そうっと手元に引き寄せて。裏返してみればそこに映るのは、実物は見たことが無いけれど、何度も見た景色。
「本当にあった」
 感嘆の息と共に零れる言葉。良かったと、安堵の色を混じえ紡がれれば、せらはまだ手にしていた熊のぬいぐるみの名残へと唇を開く。
「痛かったかな。ごめんね?」
 彼は応えることは無い。
 動いてはいたがそれは此の世界故のこと。命があるわけでは無い。
 けれど、温かなセラの言葉はきっと彼に伝わっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『レプ・ス・カム』

POW   :    ミラージュ・ラパン
自身と自身の装備、【自身がしたためた招待状を持つ】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    兎の謎掛け
【困惑】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【鬼火の塊】から、高命中力の【蒼白い炎の矢】を飛ばす。
WIZ   :    素敵な嘘へご案内
【巧みな話術】を披露した指定の全対象に【今話された内容は真実に違いないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハーバニー・キーテセラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●心の色
 数多の花を散らせれば、溢れる程の探し物が見つかった。
 それは自分の心と向き合うかのような大切なひと時。これが無いと困ると、改めて確認するかのようなひと時。
 そしてそれは――デジレにとっても同じこと。
 あることが当たり前な大切な物。縋って、心の拠り所にしていたもの。
 まだまだ幼い彼女だから、それで良いのだろう。けれど大きくなったその時に、今は亡き人を縋っては生きていけない。
「……お母さんは、きっとそれを伝えたかったんだね」
 猟兵達から小さな指輪を受け取ると、大きな瞳から雫を零して少女は紡いだ。

「よいしょっと。あーあ、折角鍵を見つけようと思っていたのに、もう覚めちゃった?」
 デジレが指輪を受け取った瞬間、どこからともなく現れたのは白い兎耳を頭に生やした女性。吊り上がった赤い瞳に、金色の髪。ゆらゆら揺れるランプを手に、今にもどこかへと導きそうな彼女は――デジレを見て、深い溜息を零した。
「困ったなあ、覚めるなんて予想外。ササっと鍵は見つけるつもりだったけど、意外と見つからないものだなー」
 この世界が広すぎるからいけないんだと、ぶつぶつと彼女は文句を言う。
 その姿に――猟兵達は、彼女こそが少女に悪夢を見せた張本人。猟書家『レプ・ス・カム』なのだと察する。彼女が全ての原因。そして、アックス&ウィザーズを荒らす者。
「夢から覚めたのはアナタ達のせい? ならば仕方が無い、アナタ達を倒してもう一度悪夢を見て貰えば良いんだ!」
 名案を思い付いたようにレプ・ス・カムは紡ぐと、ゆらりとランプを揺らす。
 ゆらり、ゆらり。
 その炎の揺らめきは、どこか心を見透かしているようにも見えた。
月見里・美羽
大事な宝物、桜色のリップ
――なのにどうしてだろう、こんなもの捨てても構わないと思える

どうせ量産品だもの
なくなったってまた買えばいい
きっとくれた友だちも許してくれる
そうだ、捨てて、捨てて――…

友だち
大事な、友だち

大事な友だちからもらったものなら、それがなんであれ大事なもの
値段だとか価値だとか関係ない
そこには「想い」が詰まってるから
だから、それは大事な宝物になる

それが、ボクの真実
だから、キミの言葉はボクにとっては偽り
さあ、次はボクの幻想の歌を歌おう
UC起動、機械妖精たち、あの子を攻撃して

大事なものは、渡さない
デジレさん、後ろに隠れていてね

アドリブ歓迎です




 大事な大事な宝物――それは月見里・美羽の掌に握られたリップ。
 桜が開くような淡い色は、いつだって美羽に春を運んでくれた。友人から贈られたキラキラと輝く小さな宝物を、先程失くした時は胸が締め付けられ苦しかった。
(「――なのにどうしてだろう、こんなもの捨てても構わないと思える」)
 掌の中のリップを見て、美羽は深く息を吐く。
 ――ねえ、アナタはどうしてそんな物を大切にしているの? 世界でひとつだけの物のほうが良くない?
 先程目の前の猟書家に紡がれた言葉が脳裏に響く。
 そう、これはただの量産品。もしも失くなったとしても、欲しくなったらまた買えば良い。きっと、このリップをくれた友だちも許してくれる。
「そうだ、捨てて、捨てて――……」
 きゅっとリップを握り締めて、ふるふると震える手から零そうとするけれど――美羽の心の中で言葉が引っ掛かる。『友だち』という言葉が。
 そう、これは友だちがくれたもの。
 大事な、大事な友だち。友のカタチは様々だけれど、この宝物をくれた人は一人だけ。
 淡く色付く唇が震える。戸惑うように大きな青い瞳が揺れる。
 そうこれは――。
「大事な友だちからもらったものなら、それがなんであれ大事なもの」
 美羽の唇から零される言葉。それは静かに零れ落ちるように、けれど確かな熱を帯びた彼女の想い。そう、このリップと云う物自体は量産品かもしれない。けれど、このカケラに込められた想いは――たったひとつだけ。その想いが詰まっているから、それは美羽にとって大事な宝物となるのだ。
「それが、ボクの真実。だから、キミの言葉はボクにとっては偽り」
 きゅっとリップを強く強く握りしめる。もう失くしたりしないという意志を込めて。
 そのまま猟書家を強く見れば、彼女は笑みを浮かべたままランプを揺らす。
 再び惑わそうとしているのだろう。けれどももう、その手には引っ掛からないと言わんばかりに、美羽はリップを仕舞うと口元のマイクの位置を調整する。
「さあ、次はボクの幻想の歌を歌おう」
 言葉の後、彼女の口から紡がれるのは歌声。幻想を見せるように現れた数多の機械妖精達は、くるくると辺りを楽しげに舞いながら猟書家へと近付いて行く。
「デジレさん、後ろに隠れていてね」
 機械妖精達と同じ程の大きさの小さな少女へと、美羽は声を掛けながら前を見る。
(「大事なものは、渡さない」)
 ――もう、戸惑ったりはしないと。強い意志を宿しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
何がいけなかったか教えてあげましょう愚かな兎
世界が広いからではなく
あなたが無計画で杜撰だからですよ、ふふ

「早業」「範囲攻撃」で「呪詛」を撒き散らします
もちろん呪いだけで倒せるとは思っていません
せいぜい……微かに口を痙攣させる程度の効果でしょうね、ふふ
どうしたのです?唇は戦慄き、舌はもつれ、言葉はつっかえ
まったく「巧みな話術」でも何でもありませんね、ふふ

……くっ、なんということ、身振り手振りでもその技は効果を?
いけません、術に囚われてしまう……

……と思っているのでしょうが、既にそれは私が見せた夢
先ほどあなたが慌てた隙に発動していたのです
さあ真の悪夢がいかなるものか
その身で思い知りなさい




「何がいけなかったか教えてあげましょう愚かな兎」
 立ちはだかる兎耳を揺らす少女へ向け、黒城・魅夜は強く強く言い放つ。柔らかな風が吹けば艶やかな漆黒の髪が揺れ、そっと唇に浮かぶ笑みは華やかに咲く。
「世界が広いからではなく。あなたが無計画で杜撰だからですよ、ふふ」
 紡がれる言葉にレプ・ス・カムはイラついたように眉を寄せ瞳を釣り上げた。――その生まれた一瞬の隙を狙うように、魅夜は瞬時に鎖を振るうと共に辺りに呪詛を撒く。
 それは徐々に身体へと浸透していく呪い。一瞬の出来事にレプ・ス・カムは油断しており、その呪いを身に受け――驚いたように、唇へと触れた。
 動揺した色を見せ揺れる瞳。その姿に満足そうに魅夜は笑う。
 この呪いだけで倒せるなどと思ってはいない。
 そう、せいぜい微かに口を痙攣させる程度の効果だということは自分も分かっている。
「どうしたのです? 唇は戦慄き、舌はもつれ、言葉はつっかえ。まったく『巧みな話術』でも何でもありませんね、ふふ」
 漏れるように零れる声は動揺の証か。それとも本当に声が出ないのか――戸惑う猟書家の姿を前にして、魅夜は静かに笑い続ける。
 けれどレプ・ス・カムは――掲げた青い光を零すランプを、ゆらりと揺らした。
 ゆらり、ゆらり。
 怪しげな揺れは不規則で、その光の動きから目が離せなくなる。
 さあ、大切な物は何かな? 本当に大切なのかな?
 心に訴えるような動き。その光に魅夜は戸惑うように、頭に手を当てる。
「いけません、術に囚われてしまう……」
 苦しむように零した言葉――その姿に一瞬レプ・ス・カムは笑みを浮かべるけれど。ひらりと、世界に舞う真紅の胡蝶を前にして魅夜は笑う。
 そう、これは魅夜の魅せる悪夢。
 こちらが惑わされる寸前に、彼女は悪夢の蝶を解き放っていた。
「さあ真の悪夢がいかなるものか。その身で思い知りなさい」
 ひらり、ひらりと。世界に胡蝶が舞う。
 舞い散る粉が光に輝けば――更なる悪夢へと誘うことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
フェルト(f01031)と共に
悪趣味極まりないと思わない?
言葉巧みに騙して、悪夢に落として
大切なものを失くしていく

レプ・ス・カム
フェアリーの敵だよ、ここで言葉ごと、消してあげる

喋らせない
その声がシアラに届く前に、シアラは言葉の早さで勝てる!
【高速詠唱】によって彼女の巧みな話術が届く前に術式は完成する!

「エレメンタル・ファンタジア」発動!
【氷属性】と【濃霧】を融合
レプ・ス・カムの周囲のみ空気をすべて凍てつかせる濃霧が発生する
これにより彼女の肺も凍らせていく
言葉は出てくることなく、音すら凍っていく

終わりの見えない極寒の霧の世界
どう?貴女にとっての悪夢の世界

フェルトの制限時間内に終わるよ、きっと


フェルト・フィルファーデン
シアラ(f04820)と
また会ったわね、猟書家。何度も何度も、フェアリーの皆を追い詰めて……今すぐその命、終わらせてあげる!


――!?…………こんな剣、わたしは何のために……別にこんなもの、無くったって……

……違う。わからないけれど絶対違う!シアラが、わたしの大切な親友が、どうでもいいものを渡すはずがない!!

そうよ、この剣は大切なもの。大切な友がくれた護身剣!その力を、解き放つ!

護身剣よ、抗い護る力をここに。……これで、アナタの悪しき言葉は届かない!!

この力を使える時間は僅か。でも、シアラなら、何とかしてくれる!そうでしょう?シアラ!

猟書家よ、もうアナタの戯言は聞き飽きたわ。ここで、消えなさい!




「また会ったわね、猟書家」
 キラキラと光に輝く淡い髪を揺らし、フェルト・フィルファーデンは目の前の兎耳を生やす女性を強く見つめつつそう零す。
 相手は自身よりも大きな存在。けれど、小さな自分だからこそ許せないことがある。
「何度も何度も、フェアリーの皆を追い詰めて……今すぐその命、終わらせてあげる!」
 数多のフェアリーの力を狙い、命を奪おうとしたから――いつもは穏やかなフェルトの顔には、強い表情が浮かんでいる。
「悪趣味極まりないと思わない?」
 彼女の傍らで、紡ぐ浅葱・シアラの表情も険しいもの。
 言葉巧みに騙して、悪夢に落として。大切なものを失くしていく――。そのまま命を落とす人は、どれ程までに苦しむだろう。
「レプ・ス・カム。フェアリーの敵だよ、ここで言葉ごと、消してあげる」
 きゅっと唇を結んで、シアラは紡ぐ。
 強く語る少女達の姿を見て、猟書家は――余裕げに笑むと手元のランプを掲げた。
「ふふ、そんな上手くいくかなー?」
 くすくすと笑みを零しながら。ゆらり、ゆらりとランプを揺らした時――フェルトは自身の心臓が、強く強く鳴った気がした。手にした浅葱色の両刃剣を持つ手が震える。
「…………こんな剣、わたしは何のために……別にこんなもの、無くったって……」
 手から滑り落とそうとしたところで――戸惑いが生まれ柄を握る。本当に良いのかと、自身の中で生まれる疑問。
 ぐるぐると胸の中で問い掛けが巡り続ける。
 そう、これは――傍らに立つ彼女がくれたもの。それは、どうでも良いの?
「……違う。わからないけれど絶対違う! シアラが、わたしの大切な親友が、どうでもいいものを渡すはずがない!!」
 自身に問い掛け、否定するようにフェルトは強く首を振るう。
 これは、ただの剣では無い。ただ敵を殺める為の道具では無い。
 誰でもない、親友であるシアラがくれたもの。殺める為で無く、護る為の剣。
「そうよ、この剣は大切なもの。大切な友がくれた護身剣! その力を、解き放つ!」
 全てを思い出したように、フェルトは瞳を開き強く強く言い放つ。そのまま剣を構えれば、彼女は呪文と共に光り輝く障壁を作り出した。
 それは敵の力を無力化する力。
 護身剣により抗い守る力を得れば、彼女の言葉は届かない。
「そうでしょう? シアラ!」
 先程までの戸惑いの色は吹っ切り、笑うフェルトの傍らで。剣と同じ色を宿す少女は武器を構え呪文を唱える。言葉巧みに紡ぐ敵よりも、早く動けば良いのだと。そう想うから――小さな唇は素早く動き、紡がれる言葉は聞き取れないほどに早い。呪文に乗せ、素早く編み込まれていく術式。
 そのまま彼女から放たれたのは――強い冷気を帯びた濃霧だった。
 華やかな世界に広がる濃霧。それはレプ・ス・カムの周囲だけを満たし、その身体の体温を奪っていく。息を吸えば肺にまで凍て付く霧は到達し、その肺すら凍るだろう。
 霧の奥で敵は、寒さに震え。呼吸をするほどに苦しくなる姿に胸を押さえる。
 喉の奥から生まれる言葉は出ることが無く、音すら凍っていくはず。
「終わりの見えない極寒の霧の世界。どう? 貴女にとっての悪夢の世界」
 口元に人差し指を当て、片目を瞑りながらシアラは紡ぐ。
「まだ……まだ、鍵は……」
 苦しげに敵が紡ぐ言葉は途切れ途切れ。目当てを達成出来ていないけれど、一度悪夢を破られてしまっては再度落とすのは難しいことは彼女だって分かっている。けれども諦めきれないのか、再び重い腕を上げランプを掲げようとするけれど――。
「猟書家よ、もうアナタの戯言は聞き飽きたわ。ここで、消えなさい!」
 苦しげに呻く敵に向け、フェルトは強く言い放つ。
 ――その眼差しには、先程までの戸惑いの色は一切無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
さて、どんな話をしてくるかしら…?

蛇竜に変身した死霊ちゃんに、敵を攻撃させつつ、死霊騎士に守ってもらう
敵の話なんか聞き入れるわけですか?
…ふむ、面白い話、ですね…
それが真実だって、どうする?
ヴェールをはずして、敵を直視する
残念ですけど、なくなって困るほどでもないよ
ただ少し、世界がよりはっきり見えるだけ――

被るものがなくなって、目を少し細めて周りを見るけど、攻撃はやめない
むしろより苛烈になる
終わったらやっぱりかぶりなおして、いつもの薄暗い世界に戻る
大切な物というものはね、たまに奪われてはいけない宝であり、たまには外してはいけない枷でもあるよ
言ったでしょう?お前が外すものではないね……




 レザリア・アドニスの目の前に立つのは、死霊騎士。彼女を守るように剣を掲げつつ、蛇竜が猟書家を襲う様子を静かに眺めている。
 ――それは、レザリアも同じ。
(「さて、どんな話をしてくるかしら……?」)
 変わらず世界を薄い霧で覆う黒のヴェールで視界を遮り。薄い墨のように染まる世界を彼女は見る。鋭い牙を突き立て、身を叩く蛇竜に恐れることなく。レプ・ス・カムは手にしたランプを不規則に揺らすと、レザリアを見る。
「アナタに世界はどう映っているの?」
 それは些細な問い掛け。
 普通ならば、それほど心に届かない問いだろう。けれども心が揺さぶられるのは――彼女が惑わすように、ランプを揺らしているからか。それとも不思議な力を用いているのか。その答えは分からないけれど、拒絶することなくレザリアは耳を傾ける。
「世界はもっと鮮やかで、広いの。そんなもので覆ってしまうなんて勿体無い!」
 だから捨ててしまおうと、無邪気に笑いながら敵は紡ぐ。
「……ふむ、面白い話、ですね……」
 仄かに俯けば黒いヴェールがひらりと揺れる。視界を覆われたレザリアの表情は相手には見えないけれど――彼女は、静かに笑みを落としていた。
「それが真実だって、どうする?」
 紡がれる声はどこか涼やかだった。そのままレザリアは――自身の視界を覆うヴェールを外し、鮮やかな緑の瞳で敵を見据える。
 はらりと、ヴェールを外した拍子に黄色の花弁がひとつ落ちていく中。敵は、彼女の行動に楽しそうに笑みを浮かべた。その笑顔からは視線を逸らさず、レザリアは唇を開く。
「残念ですけど、なくなって困るほどでもないよ。ただ少し、世界がよりはっきり見えるだけ――」
 大きな瞳をそうっと細め、辺りを見渡す。
 色の遮らない鮮やかな色は先程とは全く違う色をしており、揺れる花々の美しさが分かる。流れる風もそのまま優しく頬を撫で、心地良い感覚はあるけれど――それだけ。
 静かに立ち続けるレザリアの心を感じ取ったのか。蛇竜は苛烈をきわめ攻撃を繰り出す。鋭い牙を、長い尾を、迷うこと無く敵の細い身体へと向けていく。
「大切な物というものはね、たまに奪われてはいけない宝であり、たまには外してはいけない枷でもあるよ」
 手の中で風に揺れる黒いヴェール。
 この戦いが終われば、彼女の視界は再び薄暗い世界に覆われるのだろう。
 ――言ったでしょう? お前が外すものではないね……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
やあ、や、宝物は見つかったかしら
可愛い子、泣かないでえらいねえ
愛し子と一緒に良い子でいらして
そうっと背に負いお辞儀をひとつ

お寝坊さんなお誘いだこと
銀の短剣を縋る灯りの代り
祈る様に柄に手をかけたら
瀲靜の浪を広げましょう
僕の夢の続きと、致しましょ

僕のでないなら真っ黒に
なるまで抱えていたのは何故かしら
要らないのなら今までも
離せずにいるのはどうしてだろか
僕は、――刃で砕く必要などないのに
ぱちんと立ち上る泡に瞬き
僕は、きちんと貫かなくてはいけないの
物語のおしまいには相応しくはなくとも
誰も知らねば消えてなくなってしまうもの

悪い夢は海の底
骸の海へと還りましょ
氷る世界と書き換えて
悪い子はもう、おやすみよ




 小さな肩を震わせ、喜びに微笑む小さな少女。
 見た目も、年頃も。随分と幼いその子の儚い姿を見て。イア・エエングラは優しく笑むとそうっと少女へと語り掛ける。
「やあ、や、宝物は見つかったかしら」
 ――可愛い子、泣かないでえらいねえ。
 優しく紡がれる言葉に、デジレは透き通る翅を震わせた。そんな彼女の傍へと、寄り添うように舞うのはイアの愛し子。昏き泡沫の子と一緒に良い子でいらしてと、イアは紡ぐとそのまま彼女を守るように背にし――優雅な一礼をひとつ。
「お寝坊さんなお誘いだこと」
 目の前に立つのは、兎耳を生やす猟書家。愛らしい見目に似合わず不敵な笑みは、自信の証なのだろう。先程囚われた、失くし物への心地も元はと言えば彼女が原因。
 きゅっと握るは銀の短剣。
 その短剣をちらりとレプ・ス・カムは見ると――イアの大切な物だと気付き、笑みと共にランプを揺らす。
「ねえ、それは本当にアナタの物? 本当に持っていて良いもの?」
 問い掛けられる言葉に、イアの心に小さな波が生まれる。――けれどそのまま彼は、祈るように剣の柄に手を掛けると共に呪文を唱えた。
 生まれゆくのは、立ち上がる銀の泡。
 ぷくぷくと仄かな音を立て、鮮やかな世界を水に染めていく不思議な泡。それは戦場を包み込み、水の波紋を広げ、イアの心を落ち着かせる。
 ――僕の夢の続きと、致しましょ。
 柔く笑み、そうっと瞳を閉じて。彼は敵の言葉と、自身の心としっかり向き合う。
「僕のでないなら真っ黒になるまで抱えていたのは何故かしら」
 要らないのなら今までも、離せずにいるのはどうしてだろう。
 今も彼の透き通る指でしっかり握られる銀の剣。美しき装飾の剣は、瞳を閉じていてもその造形が分かる程に大切な物だった筈。
(「僕は、――刃で砕く必要などないのに」)
 必要なのか? 離せない?
 様々な想いが湧き上がり、思考を巡らせていた時――ぱちんと立ち上がる泡の音に、イアは思わず瞳を開きそのまま瞬いた。
 その泡の音は、彼の記憶を。そして想いを呼び覚ますかのように。
「僕は、きちんと貫かなくてはいけないの」
 瞼を軽く伏せ、静かに優しく笑むとイアは小さく零す。
 物語のおしまいには相応しくはなくとも。誰も知らねば消えてなくなってしまうもの。
 夢を払うように首を振るうと、彼は泡の中から敵を見る。
「悪い夢は海の底。骸の海へと還りましょ」
 氷る世界へと書き換えて――悪い子はもう、おやすみよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
【希蕾】

デジレに酷い悪夢を見せた悪い兎さん
幕引きなのよ
ええ、マリア達が全部晴らすのだわ!

竪琴構え
敵へ麻痺の糸絡めた銀河の旋律奏でて謳う(範囲攻撃

敵の話術に嵌り
「久遠の華は敵の所有物。壊さないと悪夢を見せられる人が増える」という内容を信じ込む

…まぁ、いけないわ
幸せを奪う物は
壊さなくっちゃ

音の誘導弾で壊そうとして塞ぐ彼に首傾げ

霞架?
そこを退いて頂戴
どうしてそんな顔をしてるの

護る?
力?(頭が痛い
この指輪は、

指輪見て徐々に本当の真へ

っ…霞架!
霞架の誓い、散らせはしないわ
…あなただけは許せないのよ

【透白色の奏】使用
狙いは敵へ

こんなボロボロになってまで…

後で霞架に治癒の詩(うた)を
霞架を抱き締め
指輪は死守


斬崎・霞架
【希蕾】

アレが今回の元凶ですか
夢の時間は、もうお終いですよ

さっさと呪い滅ぼしてしまいましょうか
しかし、良く回る口ですね
…!?
これは…この首飾りは僕の物では…ッ…いや…
(「守るための力」を説く育ての親の声と、「力による蹂躙」を嘯く“生みの親”の声が頭に浮かび
惑わす…能力…!(マリアの様子を見て覚悟を決め、自傷で正気を保つ
指輪を壊そうとするマリアの前に立ち

…マリアさん。貴女がそれをどうしようと…僕は何も言いません
それに籠めたモノ(誓い)は、今も僕の中にあるので
(首飾りと同様に育ての母親から譲り受けた『梅花』を構え
…何があろうと、貴女を護るのだと
その為の、力なのだと…誓った!!

――瞬刻【死屍刎刃】




 小さく幼い少女を苦しめたのは、目の前に立つ一人の女性。
「デジレに酷い悪夢を見せた悪い兎さん。幕引きなのよ」
 マリアドール・シュシュは煌めく金色の瞳で敵を見据えると、いつもの彼女はとは違い強く強く言い放つ。彼女の言葉とその姿に、斬崎・霞架も今回の元凶である敵をしっかりと見据えると。
「夢の時間は、もうお終いですよ」
「ええ、マリア達が全部晴らすのだわ!」
 放たれる言葉は芯を帯び、そのままマリアドールの細い指先が奏でる竪琴の調べが戦場を満たす。――それは、麻痺の糸を絡めた銀河の旋律。段々と敵を拘束していく筈だが、敵も大人しくはしていない。少しの動ける隙を見極め、ランプを揺らす。
 ゆらり、揺れるランプはどこかへと導くかのように青く輝き。
「ねえ、それは本当にアナタの物?」
 問い掛ける言葉は飾らない言葉。
 けれど何故だろう――深く深く入り込んでくるのは。
 細い指で煌めくルチルクォーツ。その煌めきへと視線を落としたマリアドールは――瞳を曇らせ、ゆっくりと唇をから言葉を零す。
「……まぁ、いけないわ。幸せを奪う物は、壊さなくっちゃ」
 この指輪は敵の所有物なのだから。
 今すぐに壊さないと悪夢を見せられる人が増えてしまう。

「しかし、良く回る口ですね」
 言葉を零しながらも、霞架の心を支配していく不穏な影がいた。左手で揺れる、紫色の石がキラリと輝けば――霞架は驚いたように瞳を見開く。
「これは……この首飾りは僕の物では……ッ……いや……」
 戸惑い、首を振り。事態を把握するように霞架は自身の心と向き合う。
 捨ててしまおうか。いや、それはダメだと。葛藤するように唇を強く結び、右手でその首飾りに触れる。相反する言葉が脳裏に繰り返し浮かぶけれど――何か、大切なことを忘れている気がして彼は記憶を手繰り寄せる。
 そう、これは大切だった筈。
 何故大切だったのだろう――。
 その瞬間、彼の頭に浮かぶ言葉があった。『守るための力』を説く育ての親の声。そして『力による蹂躙』を嘯く“生みの親”の声が。
「惑わす……能力……!」
 戸惑いの色を宿していた瞳を大きく開き、彼は眼鏡の奥の瞳を瞬いた。
 そのまま顔を上げれば、マリアドールが自身の指輪へと手を伸ばしていた。
「――ッ!」
 言葉にならない声が漏れる。まだ戸惑いが支配する心を振り払うかのように、霞架は首飾り揺れる左手で、右腕へと白い刀を走らせた。
 激痛が伝わり顔を歪める。
 けれどその分だけ、意識ははっきりとした。
 そのまま彼は――マリアドールの元へと手を伸ばす。
 ――先程彼女に語った想い。それと同じだけ、彼女だって想いがある筈。だから。
「霞架? そこを退いて頂戴」
 立ちはだかる霞架の姿に。マリアドールは戸惑うように瞳を瞬いた。痛みに顔を歪め、どこか苦しげに自身を見る彼の姿に――彼女は不思議そうに小首を傾げる。
「……マリアさん。貴女がそれをどうしようと……僕は何も言いません」
 それに籠めたモノ(誓い)は、今も霞架の中にある。
 その想いを露わにするために、彼は先程自身の心を取り戻す手助けをしてくれた。白い刀を構えると、彼女に向けて強く言い放つ。
「……何があろうと、貴女を護るのだと。その為の、力なのだと……誓った!!」
 誓いの、言葉を。
 その言葉にまだ、マリアドールは不思議そうに瞳を瞬く。
「護る? 力?」
 眉を寄せ、言葉を繰り返し、考えれば強い激痛が頭に走る。抑えるように手を添えて、考えていけばもやの掛かった頭に光が射しこむ。
「この指輪は、」
 はっとしてマリアドールは、大きな瞳を見開いた。
 そのまま目の前の彼を見上げて、剣を掲げる彼の手へと自身の手を添えその名を呼ぶ。
「っ……霞架! 霞架の誓い、散らせはしないわ」
 全てを取り戻した彼女の瞳に、霞架は優しく笑む。
 ぽたりと零れる鮮血へと視線を落とすと、マリアドールは敵へと視線を向け確かな敵意を露わにした。
「……あなただけは許せないのよ」
 自身の心を。霞架の心を。そして、数多の人を惑わす彼女を。
 そのまま彼女がハープで音色を奏でれば、生まれた隙に霞架も刀を振るう。迷いの晴れた猟兵達の攻撃により、猟書家であろうとも余裕ではいられない。積み重なる攻撃に静かに膝を折った姿を見届けた後――マリアドールは、荒い息を吐く霞架を抱き締めた。
「こんなボロボロになってまで……」
 ぽたりと零れる鮮血が、小さな海を作っている。
 その痛々しい姿に一筋の雫を瞳から零しながら、彼女は癒しの詩を紡いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月18日
宿敵 『レプ・ス・カム』 を撃破!


挿絵イラスト