Zodiac Sign(作者 タテガミ
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#デビルキングワールド  #シナリオテーマは年末年始のようなもの(曖昧) 


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#デビルキングワールド
#シナリオテーマは年末年始のようなもの(曖昧)


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●zodiac
「チチチ、早く行くでチ!」
「……おれにも、計画的犯行ということばがあってだなあ」
 "度胸試しの館"。
 そう呼ばれる、世襲制の四天王の血族しか訪れることが出来ない場所があった。
 特に、禁則とされているのは年末年始。
 干支の号を名乗る四天王は全部で十二人。
 今年は子の悪魔が度胸を試され、次の度胸試しは丑の悪魔が赴く。
 必ず前任の悪魔と二人で、"大富豪の済む城"を襲うのだ。
 館の前で会話する悪魔は、討ち入りを計画している――。

 ある部屋では紙質の音も、金貨の音もどちらも等しく数えるような音が聞こえてくる。
 これは、D(デビル)通貨(紙幣)の舞う音。
 どちらもが無造作に。戯れに。投げられては放られる。
 大量の大金が、部屋に無造作に集められているのだ。
 その内側に、集めた主。悪事を働いたオブリビオンが息を潜めている。
「妾は……この流れに飽いておる」
 ため息まじりにチロリと長い長い舌を覗かせる蛇の悪魔。
 もう年の瀬、いつもの訪問者がある日取り。
 蛇の悪魔には予感は在るが、先の時代がくるか、訪問者が殴り込みに来るかその予測は経たない。いいや、そんなものを待っている時間が――勿体ない。
「奪い、集めて浴びるほどのDがあれば、待つのは終い……ああ、待ち遠しい」
 世界がカタストロフする程の悪事の働き方は、Dの多さで決まるという。
 蛇の悪魔の願いの達成。
 目標達成残高まで――あと少し。
 残りの足りないDは、必ず来る"悪魔"を襲って達成するとしよう。

●蛇使い座
「年の瀬、新年、はっやいわねー!」
 気の早い空裂・迦楼羅(焔鳳フライヤー・f00684)。
「私の聞いたところでは、デビルキングワールドにも伝統的な儀式があるんですって。所謂、四天王の順位変動行事……みたいな…………?」
 ある場所の四天王は総勢十二人。
 固定された号を名乗る血族であり、順位は一年ごとに固定順序で更新される。
「今年は子、鼠の悪魔が最強だったみたい。来年はそう、牛の悪魔ね。一年の経過で得られる最強の座とはいえ、……椅子に座っていて得られるものではないらしいから、度胸試しの悪事を働くのが習わしなんですって」
 本当は固定されたおやつの時間にキッチリドーナツを食べたい悪魔たちだが、"デビルキング法"が彼らのやる気を上げた。
 曰く、おやつの時間をあえてずらした悪いやつは、格好いい、みたいな。
「"度胸試しの館"。そう呼ばれる貧相なアパートの一室に大富豪役がいるんですって。部屋数は全部で12、前任者から数えて、6番目の号を持つ"オブリビオン"の悪魔が湧いて待ち構えている……うん、熱い展開ね」
 屋敷というのは、干支と関係ない者たちが、別の階層に住んでいるからだ。
 口にする悪魔によって名称が変わる"悪魔アパート"。
「エレベーターという素敵な文明機械は無いわね。階段だけよ。一階と二階、三階は疎らに一般の悪魔が住んでいるの。四階は年末だけ借りられる四天王限定別荘って扱いらしいのだけど……」
 迦楼羅が言うには、悪魔アパートの住人は訪問者を襲うことを美徳としている。
 即席のガードマンということだ。
 住人以外の訪問を、潔癖症のように追い返そうとするという。
「住人はね、暮らす家賃を四天王に納期してるの。訪問者の襲撃は悪事の範囲で認めれていて……臨時ボーナスとして、悪事ポイントが与えれるとか」
 ちょっと頭の悪い悪魔がいるアパート、と思えばいい。
 真面目な悪魔ばかりの世界とはいえ、手の込んだ悪事をぽんと思いつかない悪魔もいるのだ。悪魔の美徳が上がる、それだけで、住んでいる価値がある。
「全力で通っちゃ駄目、される可能性が高いから……貴方の悪事が、試されるところね」
 悪魔はあくまで"真面目"なのである。
 話しかければ耳を傾けるし、闘うなら頑張って応戦する。ただし戦闘になると人数をどんどん増やして立ちはだかるので、現実的ではないかもしれない。
「ええと……命を取る、は悪ではないから気をつけて?オブリビオンは、お金に溢れた部屋にいるから。メッ、てするならお金に埋もれた元・四天王にすることよ」
 オブリビオンは、オブリビオン。
 お金を巻き上げた張本人から、根こそぎ奪う悪事を見せるときだ。
「言い忘れていたけれど、鼠と、牛の悪魔の子は現地に来ているのだけれど戦闘には関わらないわ。貴方達が、最高に格好いい悪事を働く限りはね」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 "年末年始"をテーマに始まるなんか悪魔的ファンタジー。
 雰囲気は、単純に悪事がメイン。

●集団戦
 一般住人であり、オブリビオンではないですが。
 四天王に金で買収(笑)されている立場のため、猟兵は上の階へ進むのを妨害されます。集団戦といいながら、冒険章として、見ていただいたほうが無難です。
 悪事は人の心を動かすでしょう。
 想像力、無限大。

●ボス戦
 蛇の悪魔。巳年の元・四天王。
 いつかどこかでオブリビオンに堕ちた四天王のひとりだった悪魔。
 傲慢で強欲。金の亡者。大富豪役に抜擢され、住人から金を搾り取っていた魔性の女。あらゆるもの(この場合は特に金)を、欲しがり収集する原初の罪。
 この世界の悪魔だったのにも関わらず、いい子を悪の道(犯罪)に落とす事に喜びを感じていた真の悪魔だったようです。
 地獄の沙汰も金次第。さあ、その金は奪う(剥奪)しちゃおうねえ。

●その他
 鼠の悪魔と牛の悪魔。
 鼠っぽい特徴的前歯とか、だいたい牛っぽい角を持つ20歳くらいの男の子。
 シナリオ上では、ボスオブリビオンからお金を奪う、をするために来ました。
 家賃をごりごり回収しているので、Dが溜まりまくるのです。家賃レートクソ高い。
 猟兵が代わりに派手な悪事をやると「言った」という体裁で始まるため、彼らが集団戦、ボス戦に絡むことはありません。え?だって悪事をばばーんとやってみせる猟兵カッケーじゃないですか。
 まあ、部屋の隅っことかの方でじぃいと見てるだけのいい子です。

 日常章では、猟兵たちに他の悪事の例を示してみせてくれ、って頼んでくる欲望を爆発させます。よければ、奪ったお金を盛大に使って貰って構わないので、なにかユーベルコードを絡めてみせてあげてください。悪事の限りを尽くして。

 ※他の猟兵、一般住民に迷惑が掛かる感じのプレイングは採用を見送る可能性があります。お気をつけてください。
 ※特に多くを記載していない部分は、想像で補って頂いて、構いません。
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第1章 集団戦 『ブギーキャンサー』

POW ●キャンサー・パレード
【蟹脚を蠢かせながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のブギーキャンサー】の協力があれば威力が倍増する。
SPD ●フィアー・キャンサー
【知恵の布】を脱ぎ、【おぞましき巨大魔蟹】に変身する。武器「【長く伸び敵を切り刻む巨大蟹の鋏】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ ●キャンサー・カース
攻撃が命中した対象に【蟹型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【呪詛】による追加攻撃を与え続ける。
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Zodiac Palace

 カサカサ……カサカサ。
 関節が軋むような音。
「ねえちょっと聞いた?」
「なになに、何の話?」
 囁く声は、各部屋から聞こえてくる。
 部屋越しに、誰かが会話しているようだ。
「そろそろ、訪問者が来るんですって。ほら、"いつもの"年末だから」
「やだー、そういうことなら……」
「今日はいい日ね!素敵な日じゃないの、ありがとう!」
 誰かが廊下を通り過ぎれば、ギィと軋む扉を開けて悪魔は年末感謝祭パレードを始める。カサカサと個体数より多い足の音が、行く手を遮る気のようだ。
「こんにちは!こんにちは!」
「どうするお茶にする?」
「今日はとってもいい日ね!お菓子はいかが?」
 ポップな絵柄満載の知恵の布をすっぽり被った悪魔は話好き。
 話の対価に、四天王から納期される臨時ボーナスを期待して。
 出会った瞬間、世間話から始まる足止め攻撃。
 井戸端会議は、悪魔の中でも流行りの軽い悪事の一部なのだ。
コノカ・ハギリガワ(サポート)
『やるわ。私に任せなさい!』
 サイボーグの鎧装騎兵×戦巫女、18歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
出身世界:スペースシップワールド

性格:勇敢
戦場では積極的に前線に切り込み、敵の注意や攻撃を引き受けます

・戦闘
勇翠の薙刀を主に使って戦います
また、エメラルドアームから発生させた障壁で仲間を庇います

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


●一階の妨害

 耳を澄まして聞こえるのは複数の存在の足音。
 カサカサと、連続して聞こえる音は横へ行ったり来たりを繰り返している証拠か。
 ――そんなに堂々と待ち構えているの?
 ――敢えて、誰かが通り過ぎるまで待っているのね?
 コノカ・ハギリガワ(勇を示す翠・f06389)は、各室内に蠢く誰かの気配にそう思う。足音を消して素早く通り過ぎてしまうのが一番だろうが。
 はたして――本当に、そうだろうか。
「ねえ、お客様の到着時間、誰か聞いてるー?」
「聞いてないわよ!貴方は?」
「例年通りならそろそろよ、ああ、待ち遠しいわ!」
 ざわざわ、わさわさ。扉越しに堂々と話し込む誰かの複数の、声。
 扉を開けて面と向かって話せば良いものを、敢えて誰も廊下へ出てこない。
 ――まるで牢屋のようね。
 巡回する看守のように通り過ぎることになる。
 ――どんな人たちなのかしら。
「お話中失礼するわ?ちょっと廊下を通っていっても?」
 勇敢な少女は、一応声を掛けて訪れを告げる。
 声を聞いたからか、囁く声が突然無くなり静寂が場を占める。
 そして、キィイ、と一斉に開く扉からデビルキングワールドではよく見る布を被った集団が現れた。多種多様、それぞれにポップな装飾を書き加えられた布から生える、人ではまずありえない数の足。
 表情もまた、一律。布越しでは表情を伺えない。
「いいわ、いいわ!いらっしゃい、是非通っていって?」
「でも……うん。その前に、私達とお話ししましょ?」
 話し好きのブギーモンスター、いや、キャンサーたちは訪問者の声を聞きつけて殺到する。まるで突然開幕するのが当たり前の、パレードのように、一体に続き複数体がどどど、突進するように埋めよってくる。
 お祭り騒ぎは皆で。そう決められた行事かなにかだろうか。
「お話、は良いけれど……その速度は怪我人が出てしまうと思うの」
 冷静に、素早く数えてひぃふぅみぃ。
 三体から五体のブギーキャンサーたちの殺到を、エメラルドアームから障壁を発生を事前に展開し到達点を遠くに保つ。
 どのキャンサーの顔もコノカの方を見ているようだがそのわりには、恐れのない速度で近づいてくる。ぶつかるまでどこまでも直進してくるつもりなのだ。
 コノカにぶつかるより早く、前面に展開した障壁に当たるだろうが――。
「お話好き、なのね」
 コノカは愛用の勇翠の薙刀を手に、フォースの刃を鋭く煌めかせて光の斬撃を放つ。撃ち込む先は、アパートの天井。攻撃回数を高め、幾つもの翠刃閃を放って、停まるものなら良いのだが、布で不鮮明な布の下は頑丈そうな気配が在る。
「そうよとってもお話大好き!」
「貴方どこからきたの?ねえねえねえ!」
 人懐っこい言動が多い年齢不詳のキャンサーたちは、天井が多少崩されたくらいではびくともしない。
 止らない。お金の力はこれほど、気持ちを高ぶらせる、のか……?
「遠い所。さて、私はそろそろ、上階に行きますね」
 槍投げの構えから、薙刀をブギーモンスターの向こうに投げ、突き立たせる。
 ――除けるには狭い。
 ――斃すには敵ではないし……これが丁度良いかな、と。
 先頭のキャンサーが障壁にぶつかると同時に、他のキャンサーたちも殺到する。
 ぶつかった反動で、誰もその場から動けなくなり、先頭は特に身動きからできなくなるはずだ。即席袋小路に追い込まれたら、次の行動は、必然と遅れるもの。
「よい、しょ。頭の上、ちょっと失礼していくわ?」
 布越しの不思議な手触りの事を敢えて考えないようにして、住人たちの頭上を通り過ぎ薙刀を回収してコノカは上層階へ向かう。
 さっさと駆けていくコノカに再びのパレードは間に合わない。
 住民たちは、後ろ姿を見送るしかできず、この後を口々に語る。
 "脚が二つしかないのに足の早い子だったわ!"。
 "凄いわね!三時間は盛り上がれるわ!"等。
 見知らぬ訪問者を褒め称えながら各々の部屋へと戻っていった。
成功 🔵🔵🔴

エヴァンジェリ・マクダウェル
ポッキーを食べながら、やぁ、推定蟹さん達。私が思い至って食べたい時がおやつたいむだよ、こんにちわ。お菓子は何をくれるんだ?
ここではその愉快な被り物は一般的なのか?中々良いデザインだな、ついでにその中身も気になる所
言いつつ体を色々触って調べてみようか、勿論許可なんてとらない。かるっちに悪事をご所望されてしまったからには仕方ないよな?ついでに悪魔と言う不思議生物の生態に対する知的好奇心を満たしておこうか
自分の体が真っ黒スライムもどきなのは棚に上げて
抵抗されてもまぁ、ある程度は大丈夫
流動体だから怪我と呼べるような事には早々ならない……けどちょっと痛いんだぞ!
満足したから私は先に進ませてもらうよ


●二階の出来事

 ポリポリ。お菓子の小箱につい手が伸びるエヴァンジェリ・マクダウェル(鍵を持つ者・f02663)。
 今、棒状チョコレート菓子の三箱目が開封された。やめられない、とまらない。
 彼女は端から見ると、奇妙な程にとても身軽であった。
 しかしどこからともなく、次々に箱が出現するのである。
 黙々と食べ続ける彼女の一体どこから出てくるのか。
 五箱目を流れる動作て胸元から取り出して、ざくざく食べながら、彼女はアパートの廊下を歩いていた。
 ゴミの回収もまた勿論忘れない。
 何故かこれもまた、胸元に押し込むようにして消す。ブラックタールの身体を利用した、バウンドボディをいい感じに利用しているのである。
 普通に鞄などを持ち歩けばいいだけの話だが、何故か彼女は、それをしない。
 白衣を身に纏うブラックタールの彼女は、誰から見ても人型をしているが、実は……自分の体の伸縮性を活かしてお菓子の箱を死ぬほど持ち歩いているのが、趣味なのである。
「あら、何の音かしら……」
「風の音、ではないわよね……?」
 きぃ、と幾つかの扉が音を立てて不思議な布が顔を覗かせた。
 ブギーキャンサーの頭上、ぴょこっと括り付けられた帽子のような何かが揺れる。
「やあ、私だよ。推定蟹さん達」
 何故か親しげにニンマリ微笑んで見せるエヴァンジェリ。
 別に知り合いでもなんでも無いので、お世辞レベルの笑みであったりするのだが、まあ、ブギーキャンサーの表情だってよくわからないのだ。
 内心が絶妙に噛み合ってなくても、大した問題ではないだろう。
「それは、何の音なのかしら」
「食べ物よね、チョコレート?中がたっぷりな奴もってるけれど、食べる?」
 口々に問いかけながら扉から出てくるキャンサー達。
 このままでは会話に足止めを食らってしまう。そう考えたかどうかは定かではないが、エヴァンジェリは何故かしたり顔だ。
 これは別名、ドヤ顔である。
「私が思い至って食べたい時がおやつたいむの物理的効果音だよ、こんにちわ。中がたっぷりな奴か、私の手持ちにはないな……貰おうか、ああいや貰っていい場面なのか?」
「お客様なら大歓迎さあどうぞ」
 差し出された別のお菓子の箱を、躊躇せず貰って、早速開封。
 同じ味のお菓子ばっかり食べていただけあって、なかなか新鮮な見た目な気がした。ただ、味はチョコレートなので、何かが異なる事はない。
 そう、――これは気分の問題。
「んまい。なあ、ここではその愉快な被り物は一般的なのか?中々良いデザインだな、中身は何がどうなっている?」
 飛び出す蟹脚の数から見て、ポップな布で隠れた部分は想像が難しい。
「私も私で不思議な身体をしているような気もするが……まあ、それはそれだ」
 さり気なく、お菓子の箱を渡してきたキャンサーの一体に触り身体を調べ始めるエヴァンジェリ。
 ボロ布のパッチワークかとも行き来や、実はそんなことはなく。
 布はペイントで塗られている、だけだった。
 頭部の装飾は後から付けられたモノのようだが、手触りからして、顔付近の色の異なりはただの絵の具だ。
「ふむふむ、良い布だな」
 許可を取らずに掴むとしたら、頭部が最適解。
 ――転送前にかるっちに悪事をご所望されてしまったからなあ。
 ――勿論許可を取らずにやるわけだが。
 ――……仕方がない、事だよな?
「あ、ありがとう?」
 "知恵の布"を褒められたと思ったキャンサーがお礼を口にした直後、エヴァンジェリの悪事が発動!
 ――crime hit!
 犯罪は、成された。
「きゃっ!?」
 キャンサーから布が剥がされると同時に、トラップ発動中身を見た瞬間巨大化する身体!布が隠していた体積よりもぐぐぐっと巨大化したそれは、誰がどうみても蟹のそれ。
『ガニ"ィ"イ"イ”イ"イ"イ”』
 可愛らしい喋り方が台無しになるほどの濁声。
 長く伸び、あれが本気を出せば敵を簡単に切り刻むだろう大きな鋏が振り回される。壁や扉、同じ階の同居人。そして下層の住人に気遣い等見せずに暴れる様は、理性が喪失しているようである。
「ふうん?悪魔とか言う不思議生物の生体に対する知的好奇心的にはうん、最高に理解できたわ。満足したから私は先に進ませてもらうよ」
 完全なオブリビオンとして敵対するならいざしらず、あれは一般住民の悪魔。
 敵対する必要は無いのだ。
 ついでに、中身を識ったことでエヴァンジェリの興味が突然失われる。
 結果が知れれば、あとはどうでも良くなってしまったのである。
 正気度の失われた狂人特有の、病気(性癖)だ。
「いやぁ真っ黒蟹とは面白みがない。私は私で真っ黒スライムもどきだけれど、特徴はあるし。あるし!」
 奇声を上げながら暴れるキャンサーは話を聞いていないようで、仲間たちも逃げ惑う姿が大きくなった蟹脚の隙間越しに見て取れる。
 流動体な身体であることだし、上手く通り抜けることができると悠々と歩み寄り、まるでトンネルでも通るかのごとく自然な動作で通り抜けようとして、腰辺りが詰まる。
「……んーいくつか潰れるが、まあ仕方がないか」
 バウンドボディ化している身体の中で極まった異物、お菓子の箱が邪魔をしたのだ。綺麗な形で持ち帰るのが理想だったが、潰すだけで通れるのだ。許容しよう。
「よし、通りぬーけた。そこの蟹さんたち、布は返しておいてくれたまへ。ついでに私の好きなお菓子の箱もつけよう。お詫びしておいてくれたまへ」
 地味に潰れた箱と布を渡して、エヴァンジェリは廊下を通り抜けていった。
大成功 🔵🔵🔵

シキ・ジルモント
できれば走って突破したいが数が多い
囲まれそうならこちらから話しかけてみる
聞いた通りの『良い子』の悪魔なら、話に耳を貸して足が止まるかもしれない
「まぁ待て、お茶なんかよりもっといい物がある。…そうだな、こんな物はどうだ?」

会話によって悪魔たちがこちらに注目するように仕向けてから、小型スタングレネードを彼らの足元へ転がし炸裂させる
閃光で怯んで動きが止まった隙に間をすり抜けて先へ進みたい
効果が及ばなかった者はユーベルコードで、それでも驚かせる程度に留めて足止めする

悪魔たちを騙すようなものだが、これも仕事だ
しかし、このくらいの悪事なら、ここではむしろ喜ばれるのかもしれないな
…全く、妙な世界もあるものだ


バスティオン・ヴェクターライン(サポート)
戦闘スタイルは盾群付右義腕による【盾受け】や剣による【武器受け】で敵の攻撃の受け止め+気迫と鬼気迫る眼力で【恐怖を与える】事による敵の注意の引きつけ
護りに徹し味方に攻撃が向かないように立ち回る
集団戦の場合出来るだけ多くの敵を自分に引きつけるようにする、または自分を越えなければ先に進めない状況を作る。
UC【テリトリー・オブ・テラー】で広範囲を一気に威嚇したり、UC【フォーティテュード・フォートレス】で作った壁で通れる場所を制限したり、護りに徹するならUC【バリアブル・バリアー】で作った盾ドームで安全地帯を作ったりする

その他お任せ・他猟兵との絡みやアレンジ歓迎


●一階と二階二つの間の出来事

「若者がやることだヤンチャ盛りの方がいいと思うんだよねぇ」
 バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)は飄々と、行われた悪事の成果を流し見る。
 怪我人は無し、それどころか一階の廊下には微かに話し声が漏れ聞こてくるほど。
 二階から物理的に破られた一階廊下の天井。
 何があったのかの察しは付かないが、暴れたのは恐らく猟兵では、――ない。
「限度は、在るべきだと思うが……なかなかしっかりとした建造物じゃないか」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は誰かの破壊活動や、伴って起こる崩壊の規模の小ささに建物はかなりの強度で出来ているのだと、関心を示した。
 度胸試しの館はどこかが壊れたりすれば、改築工事が逐一行われる。
 いつからか制定された"デビルキング法"に建築家たちもギリギリ則って、修繕毎に必ずどこかに"欠陥"があるように作られているが、住人は特に気にしていない。
 例えば水が出ないだとか、電気がつかないだとか。
 果ては全室の壁がないだとか、内開きの扉が外開きに改変されていたり横開きになっていたりするだとか。
 苦情と言うよりも、謎の悪徳行為を思いついたアパートの持ち主にチップとしてDが多く収められるらしい。
 予測不能な悪いことを思いつき業者へ指示して行わせる、縁起のいい最強の"号"を名乗る一族たちへの信頼は厚いのだ。
「できれば突破したいが……あんたとの会話を盗み聞かれたか」
「へ?」
 カサカサと関節が擦れるような音が多数。
 上層の階の天井の穴から、今歩く一階の廊下から。
 ブギーモンスターたちが顔を覗かせる。ぴょこっと覗くポップな装飾。南瓜やコウモリ、お菓子のようなおかしいな布をはためかせてくるブギーキャンサーは、皆、同じ表情をしていた。
 真実の顔は布の下にあり。
「訪問者さんね!お客様ね!」
「ようこそようこそ、ゆっくりしていって!お茶も出しましょうね」
 人影よりも多い足の動く音。人口密度は廊下いっぱい、ぎゅうぎゅうだ。
「……」
 すでに、囲まれていると気づいたシキ。
 敵対しているわけではないが、表情が全く読めないのはどうもやりにくく思う。
 ――聞いていた通りの"良い子"なら。
 ――話に耳を貸して足が止まるかもしれない
「まあ待て。お茶なんかよりもっといい物がある」
 胸元を探るシキに、キャンサーたちの視線の気配が集中する。
 ついでに、バスティオンもちらりと覗き込む。
「はあ、もしや……お歳暮?ひゅぅ、見知らぬブギーなモンスターにも贈るつもりとは、やるねえ」
「そんな、晴れやかなものではないと思うが……」
 敵と見れば鬼気迫る眼力を発揮する慧眼が、シキと交わした短い言葉の中でなにかの意図を察したのかシキより数歩分前に進み出る。
 右の大型義腕をやや、前に翳して何かを遮るように、差し出した。
 当たり障りなく、会話を続けて。
 行動の意味を住人たちに悟られないようにしながら。
「俺は何も持ってないから、歓迎を受ける分には大歓迎なんだけどさあ」
 上からの視線の圧力、そして続々と進み出てくるキャンサーの群れ。
 すなわち、キャンサーパレード。
 彼らに攻撃の意図がなくとも、密集する無表情の軍団は、例え愛嬌があっても迫力がある。
「見ず知らずの訪問者へ、不用意な近づき過ぎはよくないねえ」
 多くのキャンサーの突進パレードが、バスティオンの前に停まるよう、意図した挑発的言動。悪意と思って聞くキャンサーはどうやらいないようだが、どこか悪の気配に羨望のような気配が紛れ込んでいる。
 これもまた、悪意の示す形。たくさんの良い子には、バスティオンのマイペースな振る舞いも貴重なものに映るようだ。
「………そうだな、こんな物はどうだ?」
 シキの手にするモノを覗き込もうとブギーモンスターたちが集まる中で、不意に足元へ投げられるなにか。
 節足だらけの重なりが転がる小型スタングレネードの転がる先を、見えなくする。
 コロコロ転がり、炸裂するのは目を焼くほど輝きを放つ――閃光弾。
「きゃっ!?」
 可愛らしい悲鳴。視界いっぱい光に驚いて、キャンサー達の行進が止まる。
 ただ、慌てて視界を着込んだ布で遮ろうとしたからか、光の効果が及ばず、むしろ布がはだけて中身が露出してしまう始末。
 おぞましく巨大な魔蟹の姿を顕したキャンサーに、意思疎通できる言葉は無く。
 大きな鋏を振り回し、暴れ狂うのだから始末に置けない。
「布にはそういう効果が……?はあ、なかなかすげえ悪魔なんだなあ」
「あんたはそれが分かってて俺の前に立ったんだろ」
 味方に攻撃が及ばぬよう、ライオンズ・ハートを用いたバスティオンはにっ、と笑った。
 出来るだけ多くの敵を惹きつけることで、暴れる大蟹の容赦のない攻撃をシキまで届かせない。
「疎通が取れなきゃあ恐怖の感情で止めるのも難しいなあ、あれは」
「"なにかされた"事実を作ればそれで十分だろう」
 ――大人しくしてもらおうか。
 不規則に振り回される鋏を後回しに、沢山の脚を撃つ。
 流れる動作、抜いて放つまでの速度。容赦のない悪の兆し。
 頭部を掠める射撃から、続け様に放つ鋏への打ち込み。
 カカカ、と強固な甲殻に跳ねる弾丸の音。
『……!?』
 いくら理性を欠落していようとも"痛み"または"攻撃を受ける"という感情までは喪失しない。
 故に、フィアーキャンサーへと至った個体は驚き止まる。
 同階層の住人に知恵の布を被せられて、もぞもぞと、元の姿に戻った。
「手荒い事をしたな、悪魔たちを騙すようなものだが……これも仕事だ」
 ビックリして腰が抜けた、驚きすぎて動けない様子のキャンサー達の横をシキはすぅうと通り過ぎていく。
「なあ。あの顔みたか?」
「顔?」
 バスティオンは問うが、シキには見えなかった。
 何しろ布に隠されていたか、巨大化した理性の無い黒々とした甲殻だった。
 表情は、どこにあったというのだろう。
「ああ。最後の君の打ち込み、あれは……惡の華だろうねえ」
 バスティオンが言うには、巨大化したフィアーなキャンサーは勿論。
 住人たちから羨望を向けられていた、という。
「このくらいの悪事で、言葉が出ないほど喜ばれていた?」
 ――……全く、妙な世界も在るものだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ルパート・ブラックスミス
まず前提として。
建物には玄関から入り、上階には階段を上り、歓迎に応えるものだ。
では、それら一切を無視して目当ての部屋に向かうのは(行儀の)悪(い)事だ。そうだな?

UC【炎吹きて蒼駆せし半身】に【騎乗】【ダッシュ】。
大富豪役の一室を目指し"度胸試しの館"を『壁伝い』に駆け上る(【地形の利用】)
足止めしてくる悪魔には、UCで脱いだ『知恵の布』を回収し被せ、理性を維持させた状態で一言。

「大富豪に急 い で 年賀状を届けたいので通して頂きたい」

お粗末な【言いくるめ】だが恐らく悪魔たちは一瞬怯む、というか遠慮する。その隙に突っ切ろう。

あ、それはそれとして年賀状どうぞ。
今年もよろしくお願いいたします。


●だいたい三階の出来事

 かち、かち……どこかの部屋から大きいな音で聞こえてくる時計の音。
 針が重なって、ぼーんぼーんと音を告げる。
「失礼する」
 建物の玄関は、居住する全ての住人の入り口でも在った。
 厳かに、騎士道溢れる言い方で律儀に声を発して扉を開け放った者がいる。
 それは、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)。
 ただし――彼はとんでもない姿で、"度胸試しの館"へ訪れたのだ。
 青く燃える鉛を纏うトライクへ、すでに騎乗済みのその姿。
 ――建物には玄関より入る。
 ――上階には階段を上つかい、歓迎には答えるのが騎士として在るべき姿。
 はじめからトライクより降りる様子さえ見せず。
 誰かの応じる声を待つでもなく。
 煌きの青き閃光は走り出す。道なき道を青い弾丸のように"度胸試しの館"を突き進む。室内、廊下をトライクにて突っ切る。そう――誰もが普通はそう思うのだ。
 彼の悪事の示し方。それは"想像を裏切る"事となる。

 少し後、幾人かのブギーモンスターの住人と視線が合った、――気がした。
 節足の脚の数が豊かな住人のようで、被った布は無機質な表情を浮かべているのが印象に残る。
 布を彩るポップな模様と、無機質な表情。それでいて、可愛らしい声で意思疎通を図ろうとする彼ら。
 ルパートが通り過ぎる気配は、壁を疾走る彼の姿として、目撃された。
 注目を浴びる。それは予め想定済み。阻まれること無く通り過ぎる事ができればいいのだが、しかしそれでは"特殊任務"を果たせない。

 だからこそ、ルパートの青い炎はやる気の現れのように激しく燃やし、落下のことを計算にいれない壁伝いの強行を、自らの本日の"義務"であるとあえて堂々とやり遂げる。
 キャンサーと目が合ったのは、外側に位置する窓ガラスから。
 当然、地形の利用をして壁を登っているのだから、そんなこともある。
 部屋数一二に対して、それが三階分ときた。
 目指すは四階。まっすぐ登れば確かに近い。
「ちょっと!折角の景色が青一色なんだけれど!」
「子供がねていたのに!強引な訪問者さんね!」
 窓をからりとあけて、自分から知恵の布を剥ぎ、騒音問題を注意するには強硬手段を取る住人もいた。
 当然だ。悪事の一種として、あえて、ぐるりぐるりと壁伝いに登るパフォーマンスの範囲で壁にタイヤ痕を残しているのだから。
 同じ場所を何度も通られたなら、幾ら"良い子"でもその行動を注意する。
 特に、三階住人は誰よりもその音を多く聞いている。
「たまには別の景色(いろ)をと思ったまで。理性を無くして暴れては、楽しめまい」
 おぞましき巨大魔蟹へとぐぐぐっと変貌を遂げていく住人の布が、はらりとアパートの外へ飛んでいくのを、ルパートはさり気なくキャッチ。
 捕まえた布を、巨大化したキャンサーにぽふりと掛けて、布を脱いだが為に巨大化する現象を食い止めて。
 切迫したように、彼は言うのだ。
「正月とは、新年とは。流れるように過ぎるもの。大富豪にもまた、急 い で年賀状を届けたいので通して頂きたい」
 加えて、これらの青の彩りは大富豪より直々に頼まれしモノ。
 年末年始故、激しく燃えるものを所望された、と。
 ルパートでも思うお粗末な言いくるめ。しかしキャンサーたちは一瞬黙り込んで、穏やかに笑いだす。
「やっだぁそういうことなら、事前にいってくれればもっと派手にしてくれてよかったのに」
「配達員さんだったのね、ご苦労さまです」
 明らかに態度が変わった。それも、無茶苦茶労働をねぎらう感じで。
 労働でもなんでも無いのだが、ルパートは敢えてそれに頷いて"大役"だと誉高いように語る。
 言いくるめられたのは間違いない。なにしろ、ルパートの進撃をもうキャンサーに阻む様子がないからだ。
「ああ、それはそれとして貴殿らにも年賀状が届いていた」
「え?」
「"今年も宜しくお願いいたします"、と」
 ルパートの度胸試しの館の壁外周の旋回炎上。
 これは住人全てに年賀状を渡すため――窓を開けさせようとした行為である。
 ブギーキャンサーたちもまた悪魔、良い子過ぎてその真意に気づくことはない。
 年賀状を渡し、ルパートは上層階へと挑んでいった。
 四階への突入方法はまあ――物理的お邪魔しますが、いいだろうか。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『邪蛇の女王・クィーヴラ』

POW ●精々糧となるがよい
自身の【傍らに従える黒大蛇】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[傍らに従える黒大蛇]から何度でも発動できる。
SPD ●不敬なるぞ?
【ヒトガタの皮】を脱ぎ、【超巨躯を誇る邪蛇の姿】に変身する。武器「【腐蝕毒の牙】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ ●妾の出るまでもない
レベル✕1体の【しもべ黒蛇】を召喚する。[しもべ黒蛇]は【毒】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はバルディート・ラーガです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魔性の蛇遣い座

 四階にて、たった一つ。
 誰かがいるという気配の数だ。
 聞いた話では六番目の部屋に、その存在はいるという。
 廊下にも明かりはなく、一つの部屋から明かりが漏れ出していた。

 猟兵が扉を開けると、どさぁあと流れてくるのはD(デビル)通貨(紙幣)だ。
 どれも現物であり本物。扱いは、無造作に流れ出す水のよう。
「誰かと思えば、見知らぬ者よ。妾の飽きの流れを留める為に遣わされた何者か?」
 ちろりと舐める口先。
 邪蛇の女王・クィーヴラが、訪れた者が"年の年号を所有するものではない"と見抜いた。しかし、通常通りの金の強奪に空いていたオブリビオンでもある。彼女は、毎年同じ流れを飽きもせず繰り返す"良い子"たちの流れからはみ出した者だ。
「まあよい。通常の理から異なったのなら、喜ぶべきことよ」
 鼠と牛の悪魔の訪れを、予感していたが異なる者がきた。
 変革の流れは彼女にあり。
「D通貨を持っておらぬか、妾のこの大金があれば"本年を巳年に変えてしまう"事もできよう。のう、持っては……おらぬか?」
 値踏みする蛇のように、上から下まで眺めた彼女。
 強欲で傲慢。どちらの答えで返そうとも、猟兵たちの持つ金銭を奪おうとするだろう。なにしろ此処は蛇の巣であり、蛇の腹の中でもある。
 大富豪の部屋。すでに住人たちから多めに家賃を取り立て続けていて大金を所持する魔性の女は、アパートそれから、現在のこの室内、――踏み入ったも全てを"自分のもの"と主張する。
「地獄の沙汰も金次第、悪事もそう。しかし妾は、ただ願い達成の為に――欲しい」
 大量の金銭。
 悪魔でありながらオブリビオンの蛇の好き勝手にさせていて、"良い"だろうか?
シキ・ジルモント
金を持っているかなど、知ったところで意味は無い
俺たちはこの場の全てを奪いに来たのだからな

などと言いながら散らばる紙幣を一掴み取り上げる
安い挑発だが、金銭に執着するなら多少は効果があるだろう
敵の巣へ踏み込んでいる以上、策を練られては不利
複雑な戦法を考える事のできない精神状態へ持ち込みたい

牙の攻撃はカウンターで射撃を叩き込んで軌道を逸らし、狭い室内でも最低限の動きで回避を試みる
怯んだ隙にユーベルコードで反撃する
貯め込んだ金共々その命も置いていってもらおうか、オブリビオン

…これも一応、強盗ということになるか
少々複雑だが、そんな内心は表に出さず堂々と『悪事』を成す
それがこの世界のやり方なのだろうからな


阿紫花・スミコ(サポート)
アルダワ魔法学園の生徒。暗い過去を持ちつつも性格は明るい。自信家で挑発的な一面がある。力があれば何をしてもいいというようなダークセイバーの領主達を心底嫌っている。機械系に強く様々な世界の機械知識を広く持ち自作ガジェットの研究・開発を行っている。

からくり人形「ダグザ」:巨大な棍棒で敵を粉砕する。
精霊銃「アヴェンジングフレイム」:黄金に輝くリボルバー。弾丸には炎が宿る。
ワイヤーギア:射出したワイヤーを引っかけ、巻き取りと、蒸気噴出で推進力を得る。

「力があれば何をしてもいいって思ってるんだろう?お前が奪われる立場でも同じことが言えるかな!」

(エロやグロに巻き込まれなければどんな展開でも大丈夫です)


●スネーク・SCHOTT!

「ふ-ん?」
 阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)は乱雑な室内を見て、敵対する大富豪役の女を見た。
 D、すなわち金を集めるという姿勢に偽りはない。
 だが、扱い方はどうにも雑だ。自分のものだと疑っていないがゆえの雑さ。
「ボクが来たのは偶然だね。子供のような見た目に見えないのだけど、お年玉が欲しいのかな?」
 スミコがデビルキングワールドに訪れたのは、これが初めて。
 この世界の通貨に持ち合わせなどなかった。だから渡せるとしたら別の世界の通貨だ。そうでなくとも、悪魔の大半が無償で何でもしようとしてしまう世界。
 Dが必要になる場所のほうが実際は少ないのだ。このような、非常時を除いては。
『……妾のお年玉、と。今そう申したのだな?』
「うん。そうだけれど、どうかな。ボクには少なくともそういう物言いに聞こたのだけど」
 ぴりりとスミコの肌が感じる寒気。これは、――警告。
 魔性の女がチロリと口元を舐めているが、その目は随分と冷めきった色をしていた。値踏みしている、見定めている。
『……不敬、不敬でなるぞ?妾は邪蛇の女王。娘子に慈悲で施されては堪らぬ。――なあに、貰ってやらぬとは言わぬよ。貰えるものなら貰おう』
 クィーヴラから見て、スミコが真偽どちらを話しているか等、どちらでも良かった。彼女が求めた真実は、たったひとつ。
 "金がある"。
 その事実だけが、蛇の女王の関心を買った。
 鋭利な爪を自身の顔に立て、ぎぎぎ、と力を込めて引きちぎる。
 緑の衣装、緑の頭髪。
 彼女をイメージさせる象徴色はそのままに、クィーヴィラの姿が部屋の中で一気に膨れ上がる。椅子代わりにしていたしもべの黒蛇よりも三倍、いや五倍近く巨大な黒々とした体躯。
 ずるり、と室内の質量を変温の鱗をギラつかせて大きな肢体が埋め尽くす。
 巨大な、巨大な邪蛇の姿と成って、猟兵たちを見下ろしている。D紙幣をその身の下に敷き潰しながらだ。
『それで?妾に幾ら施すと?幾ら持っておるのだ?』
「金を持っているかなど、知ったところで意味は無い」
 足元に散らばる紙幣を一掴み拾い上げたシキ・ジルモントの挑発。
「俺たちはこの場全てを奪いに来たのだからな」
 渡そういうスミコに対し、シキは渡さないと意志を示す。
 それが蛇の巣へ踏み込んだ猟兵の言葉であると、蛇は受け取り――愉快そうに笑い出した。
『――ッはは!そちらはその一握りに飽き足らず妾より全て奪うと。なんという非対称!悪魔相手に矛盾を持ち出すか!』
 発言上だけ理性が在るように振る舞う邪蛇は、他人が金を握った事に怒り来るように大口を開けて、腐食毒がぼたりぼたりと漏れ出す牙を振りかざして飛んでくる。
 溶かし腐らせ喰らおうという真の悪魔的考察。
 金が溶ければまた集めればいい。ただし、集めた自分の私物が奪われる事は言語道断なのだ。
 ――策を練られては不利。
 ――舌先で会話を成立させているようだが……案の定だ。
 一旦、掴み上げた紙幣を視界を塞ぐように投げて飛び退く。
 開かれた大口の下を、まるでスライディングするようにだ。
 蛇の下へと滑り込み、カウンターの射撃を顎に向けて叩き込んで、壁への直接的被害を反らす。
 逸した先は、山のように積み上がるDの山。
 視界を紙幣で隠されたとして蛇は蛇。舌先があれば、回避されてしまう可能性も考慮した最低限の回避。
 シキを見失った蛇は、勢いよく紙幣の山へと牙を向けてなだれ込む。ぶわああ、と舞い上がる紙幣。
 突き刺さった紙幣が幾つも見える。己自身の牙でDを腐食させて、無価値なゴミに仕上げさせる。
「悪魔がするような常套手段だろう?まあ、この世界のの悪魔はしなさそうだが」
 飛び退いた先で、シキが蛇を見上げた。
 ――喰らいついたD。溶かしてしまった身銭の分、虚無感でも味わっているか?
 ――次はプライドを捨てて怒り狂う、か?
 ぴたりと動きを止め、蛇は溶かしてしまったゴミをじっと見つめている。
 今何が起きたのか。舌先で空気を捕らえることで、判断しているようだ。
 ――複雑な戦法を考える事は出来ないだろう。
 ――なにしろ。金を蓄えたいのに自分自身で減らされている、これに耐えられない、と俺は考える。
『不敬不敬不敬不敬不敬――!!!』
 蛇の身のこなし、転進の速度は早い。
 巨大な体躯でありながら、身を翻し即座にシキを狙い大口を開けてせまくるのだ。
 確実に狙い定めてくる蛇へ向けてのフルバーストショット。
 速度には速度。額に口に、どこかへは突き刺さるだろう弾丸の連射。
 弾倉内の玉を全て撃ち切る高速の弾丸を、蛇は動じない。
 ――理性ついでに、痛みまでどこかにやったのか?
「俺だけを狙っている所悪いが……もうひとり、此処に居た事を覚えていないのか?」
「力があれば何をしてもいいって思ってるんだろう?」
 紙幣が舞い踊る狭い室内。ぎゅうぎゅうの蛇がガンガンに攻めるこの部屋の中。
 小柄な少女は息を潜め、狙撃用スコープから蛇を穿てる最高のベストポジションから狙っていた。
 すなわち――部屋の外、ドアに身を潜めた狙撃手として。
「これでも喰らえ!」
 ロングレンジ・ショットは蛇の鱗を激しく抉る。
 たとえ邪蛇の王女、クィーヴラといえど、無傷では済まされない。
『――!!!!!』
 耳障りな、表現し難い大絶叫。
 吹き飛んでいた喪失していた理性が戻ってきて、超巨躯より元の姿にこれまた皮を脱ぎ捨てるように戻る。
 その体は赤の似合う姿に変わっていてしもめ黒蛇さえ艶かしく見えるほど。
 乱れた髪から覗くクィーヴラの視線は呪詛すら籠められていそうな射殺す視線。
「……これも一応、強盗ということになるか」
 汚れていないD紙幣を知らん顔でポケットに詰め込むシキとスミコ。
「お年弾は大奮発してお渡ししましたし、モノは考えようかと!」
 明るく笑顔で言い切るスミコに、シキは少々複雑な気分になる。
 ――『悪事』を見せるのに、顔色まで出すわけにはいかない。
 ――それに。
 ――これが、この世界のやり方なのだろうからな。
 堂々盗まれ、しかし蛇の悪魔は動けない。まさに身を抉られた痛みが、それを阻止すること叶わず。彼女の悲願成就が、地味に遠退いた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ハルア・ガーラント
【WIZ】
鼠さん・牛さん悪魔を巻き込まない為にはダークヒーロー的な言動が必要なんですね
[第六感と視力]で敵の動きを多角的に捉え分析し、攻撃を〈咎人の鎖〉で防ぎつつ考えます

羞恥心を捨て厨二的ポーズを取り、札束を[踏みつけ]言い放ちましょう

ふふ、蛇を財布に入れるとお金が貯まると言います
この部屋丸ごとわたしのお財布にしちゃいましょう、勿論あなたも含めて

UCを発動し蛇達の毒を無力化
〈銀曜銃〉を炸裂弾形態にして蛇達へ撃ち込みます
集めたお金が突然植物に変われば彼女も動揺或いは激昂しないかな?
そんな隙を見せたところへ[魔力溜め]した魔弾を放ちましょう

――あっ、お財布に入れるのは蛇の「抜け殻」だったかも……


●幸運の蛇

 こそこそ、と覗いている視線を感じた。実際ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)の背後に扉の外に悪魔たちが控えているのだ。
 ――鼠さんと牛さん悪魔を巻き込まない為には……。
 ――ダークヒーロー的な言動が必要、と。
 猟兵たちの実行する"悪事"を眺めている彼ら。デビルキングワールドにおいて、"良い子"な彼らには思いつかない格好良さに釘付けだ。
 蛇の部屋に踏み込む少し前。
 彼らが猟兵たちの行う悪事に感動したからとワルさを測るバロメータ代わりに溜めていたDを差し出してきたので、ハルアは首を振って辞退した。
 ぽん! と二人の悪魔の手元で何かが爆ぜる。爆竹に似た、小規模で可愛い破裂音。悪事大好き悪魔たちの、ちょっぴりのサプライズ交流か。
 それとも単純に、からかったのか。
 ニシシ、と笑ってぱたぱたと彼らは後方から覗き見る仕事に戻っていった。
 表情にこそあまり出さなかったハルアだが、翼の方はだいぶ正直で。
 すこーし膨らませてしまっていた。案外簡単なものであるほど不意打ちで驚くものである。

「期待は背中に存分に受けておきます。こんにちは、ごきげよう?」
 ハルアが邪蛇の女王・クィーヴラの姿を探すと、しもべの大きめな黒蛇を椅子代わりにふんぞり返って座っていた。
 すでに一度、大暴れした彼女の服装、髪型。
 それらは大変乱れていて、彼女の視線はどうにもハルアを見ていない。
 ゆるりと振るえそうな袖もまた、赤黒く染められていて。
 すでに、負傷が在るのが見て取れる。
『集金の類いの増援か?何人来ようと、これ以上は奪わせてはやらぬ』
『シィャァ!』
 大きな黒蛇が威嚇しながら、鋭く睨む。
 D紙幣の影に紛れてしもべの黒蛇が、ぞろぞろとクィーヴラの周囲にポツポツと集まってくる。
『フフ――妾の出るまでもない』
 手を上げ下げする動作だけで、蛇をハルアに向かわせる。流石は邪蛇の女王。
 小型のしもべ黒蛇が一斉にハルアに向けて牙をむく。
 群れる蛇が乱舞する中で、お金を蹴り上げて軽くながらも隙を生み多角的に物事を見定める。
 ――蛇が紙幣を軽く除けて向かってくるのは当然でしょう。
 ――気になるのは、親玉である"蛇さん"が動かないところですね。
 すれ違いざまに蛇よりも長い咎人の鎖がハルアの意志を読み取り、素早く疾走り絡め取るようにぎゅっ、と蛇の口を縛り上げる。
 じたばたのたうち回る個体とは別の個体が躍り出てきてキリがない。
 女王様のしもべなのだ、十分な数が存在してもおかしくはないのだ。
 視力全てで攻撃を感知するのでは蛇の多さに逆に絡め取られかねないと判断し、ハルアは少し溜息のように息を吐く。
 いいや、息を整えることにしたのだ。
 あくまで、これは最終手段。そんな気配をたくさん出して。
 解決はそう、――"金"にあり。
 ――今日のわたしはダークヒーロー……!
 何とか強く気持ちを持って、クィーヴラの御前に躍り出る。
「ふふ、蛇、蛇、蛇。こんなにたくさん……」
 決めたからには羞恥心は後で拾えばいい。
 ガッ、と踏みつける紙幣の束。
 女王様を見据えて、親指で口元を拭うようにして、舐める。
『何が言いたい?』
「蛇をお財布に入れるとお金が貯まると言います。イイですよね、蛇……」
 目元を緩めて、ニィと突然表情を厨ニ病な不安定さで蔑むように見てやった。
「この部屋丸ごと、わたしのお財布にしちゃいましょう。勿論あなたも含めて」
『全てのDも妾もしもべも丸ごと?――ハハッ、戯言を。しもべの一つもくれてはやらぬわ!ああ、でも』
 クィーヴラの憤怒は、言葉と一緒にしもべの蛇を投げて来たことでハルアにも伝わる。しもべの投擲など、無茶苦茶だ。
『毒の馳走なら無料にしてやってもいいがなあ!』
 毒腺から十分すぎる毒液を牙から滴らせた一体。
 足元から四方八方ずるずる這いずる沢山のしもべの黒蛇。
「……毒蛇?はて。不思議な事を言いますね」
 カツンと高らかに鳴らすのは靴音。幾ら紙幣に囲まれていようと、天が認めたハルアの靴音はトリガーとなって周辺の紙幣の姿を変じさせる。
 ざわざわと、紙幣が目に優しい緑を中心とした植物に姿を変える。
「黒い良質の皮が沢山にょろにょろしているだけですよ?」
 しゅぅううと、毒素が浄化され毒液の痕跡は蒸発するように一気に消え失せた。
 炸裂弾形態に変えた銀曜銃で迫りくる蛇達に威嚇射撃行うと、しもべ黒蛇は一気にハルアの視界から元紙幣の茂みに逃げていく。
『あっ、こらお前達!』
 彼らは一様に、皮を剥がれる事を恐れて逃げ出したのだ。
『よくも妾の紙幣を……!』
「やっとわたしを見てくれました?」
 視線が合った。威嚇射撃だけでは終わらない。
 溜められた魔力の装填は既に終わっている。
 向けた銃口が音を炸裂させるまでの間に、クィーヴラは答えなかった。
 反撃するより早く、女王はその身に重たい銃弾を受けることになったから。
『……見たとも。だからなんだという。妾たちがいるだけで縁起がいい?やや認識不足だ、娘。…………見事な不意打ち、足元のは褒美に与えてやってもいいが』
 強欲な女が顎をしゃくって示したモノ。
 床板にふよりと風になびく、植物でも生きた蛇でもない、"なにか"。
 ――あっ、お財布に入れるのは蛇の「抜け殻」だった……?
「も、貰って良いなら貰っておきますけどね!」
 女王様が"ただでやるとは言っていない"と言い出す気配がしたので言葉を発される前に鎖でぎゅっ、と縛り付けておいた。褒美は褒美。勝利報酬に、大量の紙幣と一緒に"黒蛇に抜け殻"もトーゼン、お財布行きだ。
大成功 🔵🔵🔵

ルパート・ブラックスミス
この辺り一面のD通貨が貴様の目的、不可欠要素というわけか。
成程。……成程。


UC【燃ゆる貴き血鉛】。目前のD通貨を【焼却】し始める。
貨幣損傷だ、判り易い悪事だろう?

強欲・傲慢な所有者は当然黙認できまい。
放火されたD通貨に【おびき寄せ】られた敵UCの黒大蛇を
【踏みつけ】や大剣の【串刺し】、頭部を【部位破壊】し無力化する。

こちらのUCをコピーできるようだが。
常時それで火達磨になっている当方の【火炎耐性】には通じんし
つまり燃えるのはD通貨だけなわけだが。…するのか?

どうあれ後は接敵、大剣で黒大蛇諸共【なぎ払い】だ。

年賀状も渡しておかねばな。
新年明けまして、猟兵参戦だ。
厄年確定だ、覚悟せよオブリビオン。


●進撃のあけおめ

 しもべ黒蛇の顎の下を撫でて、体重を預け座る女の姿。
 鎮座するは女王が如し。
『はぁ……なんとも、"飽く"べき時間よ』
 深々と、ため息まじりの声が漏れる。
 減らされる集めてきた資金、邪蛇の女王の財産。
 一年掛けて集めに集めて巣の内に引き込んだ、強欲の数々。ルパート・ブラックスミスが見える全てが、蛇の悪魔たる彼女の奪いに奪った悪辣の私物。
「この辺り一面のD通貨が貴様の目的、不可欠要素というわけか」
 誰かが動けば舞う紙幣に通貨。
 それほどまでに敷き詰められても、ぬくもりの欠片すらない無機質な紙。
 これらの価値は、聞き及んだ話では一つ一つのレートがとても小さなものだという。百集めても、周囲から尊敬される勲章には遠く、もっともっと集めなければワルとしては小物でしか無い。
「成程……なるほど」
 クィーヴラは、人丈を踊らせるほどの財を室内に集めて見せた。
 この女は、悪の極めの到達しそうなモノである。ただし、悪魔の枠からこぼれ落ちたオブリビオンなれば。悪の度合いは、世界という箱庭から突き抜けて、極悪非道に堕ちる日もあり得てしまう。
『何がナルホドか。どれ、余興として聞いてやろう……なんぞやと』
「いや。蛇と蛇の悪魔では事情が異なるのであろうが……欠伸ばかりで目が覚めぬとみた」
 黒の鎧から、ぽたりと何かが落ちる。
 紙幣に触れた瞬間――広がるのは青の漣。ぶわぁああと凄まじい速度で、ルパートの周辺が青の焔に包まれる。
 ルパートから滴った燃える鉛が、クィーヴラのD通貨と紙幣に悪事の手が伸ばされた。言うより早く、燃えるが早い。消さねば被害は広がるばかり。
 だが、ルパートは言う。冬場のまどろみにいるだろう、蛇共へ。
「見えるか?貨幣損傷だ」
 ――判り易い悪事だろう?
 ――消すなり、止めたりせねば被害はそちらに広がるばかりだぞ。
 ――強欲・傲慢な所有者は当然黙認できまい。
『……ほう。悪事とは言えぬなあ、それは犯罪という更に高度の"悪"。ふむ、どうやら妾直々に手をくだされたいと見える』
 すぅう、と手を上げて。椅子代わりにしているしもべ黒大蛇を差し向ける。
 クィーヴラより離れ、見た目よりも大きく口を開けて、ルパートの炎の悪事を丸ごと飲み込み沈下する。
 全ての炎の呑みつくし、黒大蛇の口から漏れて溢れるのは、飲み込んだ色を写し取ったように蒼い炎。
「本当に、全てを手中に収めなければ気がすまないか」
 大蛇はルパートへ近づく過ぎた。
 捕食したユーベルコードをコピーし、燃える鉛の礫を吐き出して直接燃やそうと吹き付けるが鎧姿の者へ鉛も炎も効く様子はまったくない。
 ぼう、と大蛇が舌先を燃やさんばかりに過激に燃やし吐き出す燃える鉛はルパートの内の鉛と同質のものだ。
『妾に使える最も古きしもべの糧となることを、喜ぶとよい』
 ユーベルコードすらコピーして奪い、出鼻をくじいたと愉悦に浸るクィーヴラ。
 D紙幣の損害は、その身の破滅を持って支払わせるつもりで嗤う。
「喜ぶ。……この身を喰らうと?こちらのUCをコピーできるようだが、それだけで楽しくなれるとは、良い性分をしているようだ。行動全てへは魔性の悪へとつながるものの、性根は良い子の分類から離れてはいないな」
『……なに?』
「常時火達磨になっている当方に、当方と同質の炎と質量は微風にもならんし、"いつものこと"以上になにか特別な事を思うでもない。気づいていないなら教えよう」
 ルパートは大蛇がルパートに攻撃を繰り返したことで何が起こっているのかを足元を指差すことで示す。
 足元の床には、燃えカスだけが広がっていた。何かが燃えた痕。何かが激しく焦げて、黒ずんだ跡。
「当方の誘発は初回のみ。此処に燃えるD通貨は傍らの大蛇の仕業……それ以上、何度も発動していいのか?」
 クィーヴラの喉の奥で音が鳴る。
 燃え移り、大量のD通貨が燃えている。破損している。この何割がD通貨として利用できるものかと、そのことだけで頭がいっぱいになる。
「自分の領域を侵されるのは苦手のようだな」
 ぐっ、と踏み込むルパートが大蛇の下方より大剣の薙ぎ払いを利用して顎を砕く。
 ぐらりと揺れて怯んだ蛇を踏みつけて行動の範囲を狭める。口は封じられた、もう火炎を吐くことはない。
 体に大剣を突き刺し、痛みにのたうち回る胴体を無視して串刺しに。床に縫い付けてしまえばもう――動けまい。
『……!』
 ツカツカと接敵したルパートが、クィーヴラの傍にやってきて。
 スッ、と渡すのは熱量に弱そうな紙だ。
「年賀状を渡しておかねばな。新年あけまして、猟兵参戦だ。悪事の競り合いが派手に始まるぞ?厄年確定だと断言してやろう、今後ともヨロシク」
 ――覚悟せよ、オブリビオン。
大成功 🔵🔵🔵

エヴァンジェリ・マクダウェル
うわっ、まさか部屋から溢れる程溜め込んでるとは……銀行無いの?いや儀式だもんな?手元に置いてないと都合悪いかぁ
Dならもっるぞ?ほら。今拾った物だが
片手にノートを持って。もう片手に銃っぽい黒い塊を構えて銃口から炎弾を撃ち出す
魔法に銃口はいらないが。なに、この方が楽しいじゃないか
黒蛇が近くに来たな?なら見せてあげようじゃないか
ガトリングは、これが正しい使い方ぁ!
ホームラン狙えるフルスイング

黒蛇くんたち、純粋物理はちょっと痛いくらいで……めきょ?
あああーーーお菓子潰れたじゃないか!べんしょーだ!代わりにD食べてやる!!
まずい
なんだか気分も悪くなってきたな……え、毒?
ずるいじゃんそれー
おうちかえるぅ


●蛇の圧迫面接

「がちゃ」
 開ける音を自分で言って、入室を試みるエヴァンジェリ・マクダウェル。
 四階の六番目の部屋の扉だ。間違いはない。
 入室待ちの面接官のように待ち構えてるに違いないのだ。開けた瞬間雪崩れるように崩れ落ちてきたなにかに埋まりかけて、一度ドアを閉め直す。
 気のせいだ。今のはなにか、全く知らないドアを開けただけなのだ。気のせいだ。
 一度深呼吸。気の所為なのだから、仕切り直して開け直すことにする。
 がちゃり。扉に鍵はかかっていない。
 開くと広がる景色は先程と同じ。ばさばさと部屋から溢れてくる紙、紙、紙。
 全てが金銭を主張する紙幣である。
「うーーーーーわ、目の錯覚だと思ったが現実だった……。なあ、これ夢でしょ。まさか部屋から溢れる程溜め込んでるとは…………銀行とかに預けないの?」
 室内にいると思われる邪蛇の女王・クィーヴラに適当に話しかけるが、これの答えはあまり待たない。
「いや……集めた資金で儀式する、って話を小耳に挟んだぞ。つまり、全てを手元に置いておかないと都合が悪いもんなあ」
『それが此処へきた動機か?そうか、妾が話をタダで聞くと思っておるならば大間違いであると知れ』
「Dなら待ってるぞ。じゃらじゃらだ。ほら」
 拾い上げた硬貨を自らが所持するものをぶちまけるように、魅せつけるエヴァンジェリ。
『ほおう……?』
「まあ今拾った落とし物なので、私のでもないんだが」
 片手に持ったノートに硬貨を挟み込み、もう片手に銃のようなものを携える。
 今まさに物理的挨拶をしにきたと、彼女の顔は謎の笑みを讃えっぱなしだ。
「これの所有を主張するなら、まずは私のお年玉を盛大に受け取ってからにしてもらおう」
 言うが早いか銃っぽい形状なのに、ふつふつと泡立つ銃身から、盛大な火炎がぶち撒けられる。
 ノートリガー。ノーライフ。
 手で支えているのは、あくまで銃の形状。トリガーに手を添えてすら居ない魔法由来の炎の弾丸を部屋の中に打ち込む。
「トリガーハッピーのお年玉は燃えるように熱いらしいぞ。魔法に銃口はいらないが、なに、泡立つこれが私の銃であり玩具なのさ」
 ざあああと身を捩り除ける気配。
「この方が楽しいだろう、運動は程々にするべきだしな。この方が楽しいだろう?」
 あえて二度言う。楽しいだろう?
『どこが楽しいというのか!しかし、わら我が出るまでもない』
 ずるずると進んでくる音は、しもべ黒蛇の進み来る音か。
 一匹以上が散らばった紙幣の上、もしくは内側から身を這わせて近寄ってくるのが判る。
 しかし、出現場所までは……いや、エヴァンジェリには判る!
 ――みせてあげようじゃないか。
「ほんとうにいいのか?」
 銃の名は、最極の空虚。空虚であり、ガトリニングガンなのである。
 魔弾として撃つだけ撃った後、彼女が選ぶ選択肢は、親友がやりたがることに寄る――すなわち。

 がごぉおん。

「この狭い室内で狙うのは難しいが私はやろう!やるといったらやるぞ、――すーぱーふるすいんぐ!」
 一匹、二匹と毒牙を煌めかせる黒蛇に銃身で殴り掛かるのにも関わらず満面笑みの女の姿。
 ああ、こわい。これが狂気の沙汰である。
『室内フルスイングするやつがあるか!……うっ』
 エヴァンジェリが銃で殴った蛇が、クィーヴラに直撃したようだ。
 重量級の蛇と、フルスイングの威力が合わさって最強に見える。いや、しもべの毒牙が容赦なく、彼女の腕に刺さった。
 眷属のように使えるしもべとは言え、その毒性に耐性をクィーヴラが持ち得るかはエヴァンジェリの識るところではない。
「これで大体の掃除は……ああこれこれ、黒蛇くんたち、入水物理攻撃はちょっと痛いくらいが…………」

 めきょ。

 なにかおかしいな音がした。
 銃で受け残った打撃を、身体が受けただけなのだが、何故音がしただろう。
「ああああーーーーー!!!!!私のお菓子の箱が潰れたじゃないかああ!!べんしょーだ!!でもそちらはきっと、ケチだから払ってくれないよな、じゃああ代わりにこれ食べてやる!」
 これと言って取り出したのは、クィーヴラのD通貨。エヴァンジェリが勝手に奪ってポケットに詰めていたものだ。
 もぐぅ、と齧ってやったが内側にチョコが詰まってる偽物とは違い……。
「まずい」
『どうして食べられると思った。正気か?』
 悪魔とはいえオブリビオンに正気を疑われるエヴァンジェリ。
「そんなことはどうでもいい。なんだか気分が悪くなってきたな……」
 落とし物を拾い食い未遂した猟兵の言葉とは到底思えない。
 なんという自由。なんという狂気の日常。
『……妾の傷口に毒を叩き込んだ者の言うこととは到底思えぬ…………』
「え?毒蛇だったの、黒蛇君。ずるいじゃんそれー、そういうの研究し放題じゃん?」
 研究という言葉には釣られて。
 室内を荒らしに荒らしたエヴァンジェリは、ハンチング帽を拭いで、帽子の内側に通貨と紙幣をぎゅっと詰めて。
 悪びれずに、言うのだ。
「おうちかえるぅ」
 通り魔のように訪れて、倒し切るわけでもなく去っていくブラックタール。
 クィーヴラに打ち込まれた黒蛇の毒が回りきったら、既に重傷だった彼女はこの先をその目で見ることはないだろう。奪われてしまった金銭のほうが気になる蛇が大富豪役等務められるわけがなかったのだ。
 猟兵たちの連続した悪の丘内に、悪事は潰える。
 最後は悪魔のように話を聞かない女が、悪事を阻止していったのだ。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 日常 『ワルく使うぜユーベルコード』

POW自分自身のユーベルコードで、悪事の実例を示してみせる
SPDユーベルコードをアイテムと組み合わせ、新たな使い道を考える
WIZ悪魔のユーベルコードの特性を活かした悪事を考える
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●どでかい悪事の達成記念

「やぁやぁ見ていたでチよ、凄いでチね?」
 興奮冷めやらぬ様子で、猟兵達に親しげに話しかける鼠の悪魔。
 背中に大きめな風呂敷を背負っていて、身じろぎする度にころりと通貨が転げ落ちる。大富豪から奪った"D通貨"と"D紙幣"だ。
「おれとコイツで二人だったら、一体何時間掛かったことやら……」
 彼らの本来の目的、度胸を試された牛の悪魔もこれにはにっこり。
 毎年恒例の行事は、これで全てではない。
「奪ったコレを、パーッとヤルのが度胸試しなんだなあ」
「そうでチ。派手にワルく使うまでが、四天王の掟なんでチ!」
 二人の悪魔が言うことを総合すると、大富豪より奪ったD通貨は派手に使わなければならない。
 誰かの金でワルを働く――使い方は想像次第だ。
 大量のDがオブリビオンに渡ればまた、世界崩壊の危機が絡みだしてしまうのでただ遣うに止めなくてもいいらしい。奪い取ったD通貨ごと抹消してしまっても問題ないようなので、入手した者が利用方法を考えなければならない。
「"奪った金を使う"のが掟でさあ、別におれらがやらなくてもいいんだよねえ」
「ちいみにワルさよく知る凄い人たちならば、何をするでチ?」
 二人の悪魔だけならば、四天王の掟通りに行動したので奪ったDは全額募金をするつもりらしい。悪事の後に良いことをしたくなる、良い子なのであった。
 しかし、その行いはワル度が低いのだ――。
 年に一度一世一代の達成記念に魅せる悪事。
 その内容を、君たちに委ねようと言うのだ。
「此処で派手なワルさを見せてくれなら、きっと今年はいい年になるよ。おれが保証する。どんと一発、ワルのお手本を教えておくれよ!」
「さあさあ無礼講でチ!街に遊びに行こうでチ!」
十字路・冬月(サポート)
 「踊ろう!なに踊る!?」

 ダンスしていれば幸せ。
 心の声は保護者的存在(多分男性)の、いわゆるイマジナリーフレンドです。
 難しいことを考えることは苦手ですが、心の中で会話することで解決策を見出すことがあります。

 隙あらば踊ろうとします。一人でも勝手に踊っていますが、できれば他の人とも踊りたい。

 「どんなダンスが好き?あたしは何でもどんとこいさ!」

 物欲はあまりありませんが食欲はあります。料理はできません。
 「美味しそうなものは食べたいなー。」
 子供も大好き。

 戦闘は苦手。踊りで解決できないかチャレンジ。
 できなければ楽しく踊るため、オカンに励まされつつ頑張ります。

 あとはおまかせ!


薙沢・歌織(サポート)
 人間のマジックナイト×聖者、18歳の女です。
 普段の口調は女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)、楽しい時は 明るく(私、~君、~さん、ね、わ、~よ、~の?)です。

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

◆選択肢傾向
WIZ>POW>SPD

◆基本立ち回り
依頼内容に合わせて、ゆったりと日常を楽しんでいます。
何らかの課題がある場合は、その解決に向けてお手伝いします。

所持技能から依頼に応じて使えそうなものを活用します。


●光のダンスホール

「……遊びに、ですか。行ってみたい場所はありますか?」
 鼠の悪魔に、牛の悪魔に。それから、もうひとりの猟兵に。
 訪ねたのは、薙沢・歌織(魔法学園の術剣士・f26562)。
 急に他人の集めたお金を使えと言われても、歌織はやや困惑したものだ。
 悪徳を美とする世界とはいえ、価値観はそう簡単に変わらない。
「行ってみたい場所でチ?」
「うーん……?」
「特に思いつかなそう、なのかな。じゃあ、はいはーい!」
 元気に、限りなくアクティブにそわそわとしていた十字路・冬月(人間のスカイダンサー・f24135)の向ける満面の笑み。
「ダンスパーティ開こうよ!」
 ダンスへ向ける情熱を持って、そう主張する。
 ――ちょっと!意見が出揃ってから主張しなよ。
 心の声がなにか言う。
 まさしくそのとおりでも在るが、冬月は特に引こうとしない。
「あなた達にも協力してほしいんだよね」
「なにか、大きく大量の資金を使いそうな思いつきなのですね?わかりました、協力します」
 歌織の考えつかない事で、大量のお金が動く。
 それは――どんなことだろう。

 少しして、鼠と牛の悪魔は大きなホール、一つを丸ごと半日だけ借りる契約をしてきた。契約とは言っても、書類の類は一つもない。
 "借りたいな"という申し出に"いいよ!"と友達の貸し借り感覚で貸し出されたのである。当然、此処にD通貨は使用されていない。
「とびきり大きい所を借りてきたでチよ」
「おれも、色んな人に声掛けてきた……これでいい?」
 悪魔二人にもキチンと働いて貰って、冬月は満足げにニッコリ。
「バッチリ!夜のダンスパーティという名の新年会!これはもう踊らないと損だよ!」
「わかったでチ。そろそろ開催時間でチね、演出の方、よろしく頼むでチ!」
「……たのしみに、しているね」
 言われたとおりに実行してきた良い子の背中を見送って。
 会場のスポットライトが一気に彼らに当たる。
 悪魔による悪魔のための新年会が、始まり――盛大な拍手が、会場を包み込む音が聞こえてくる。
「開催の内容と、主催を彼らに任せて……私たちは本当に"それ"をするのですか?」
 影の方に身を隠し、歌織が不安げにするのは当然だ。
 冬月が二人の悪魔が色々している間の時間に打ち明けてきた作戦は、"悪事"そのものだったから。
 しかし、D通貨や紙幣を遣うなら、ある意味で正当な理由とも成り得た。了承は出来る、しかし、"実行犯"になるのは、少しばかり気が引ける気がしたのだ。
「余興、とかもう少しふんわり考えるといいんじゃない?」
 アクティブな彼女はもう、"踊れる機会"を得られる事が確定してワクワクし通しだ。飲めや歌えや楽しく過ごす新年会に、華を添える役を買って出たのも、誰かとも踊りたいからである。
 今日の相手は、歌織。それから、悪いことが終わったら、悪魔たちとも愉快に踊り明かすつもりだ。
「――さあ、覚悟を決めて。自由演舞だよ、剣舞だって勿論オッケー!」
「"剣舞"はあくまで建前、でしょう。まあ……一緒に行えば、些事かもしれませんが」

「さあ!皆々様此処でスペシャルダンサーの登場でチー!」
「みんな、ちゃんと"見てて"貰うからね……」
 呼び込んだ客の頭部に、ぐるぐる巻き角がにょきりと生える。
 あるものはにょきりと長めで立派な前歯が生えた。
 これは、鼠と牛の悪魔のデビルズ・ディール。生やす事で、対象にされた客全ての視線を猟兵に釘付けにするために使われている。

 たたた――っと駆け出す二人はホール内に躍り出る。
 やや暗がりに、ぽつぽつと灯るランタンのような明かりの場所は既に予め把握済み。光量が落ちているだけで、とても豪奢なシャンデリアであることも、勿論解っていた。呼ばれたフロアに、ステージなどの垣根はない。椅子も長机も、大体のものが隅の方に在る。
 広い広いフロアに響く音楽は、二人が選んだ曲も合わせたミックスチョイス。
「あたしの踊りを照らし出さないのは、この光かな?」
 冬月がピッ、と指差すのはシャンデリア。降り注ぐ天の光は天井等お構い無しで貫き、電球を破壊した。
 灯るひとつではない。
 シャンデリアごと、ガラスだけを破壊する光を踊りながら指差して、ジャッジメントを下すのだ。
 ぱりん。ぱりんと軽い音を立てながら、ガラスの破片は天からの光で完全に焼いて飛沫で被害を出さないという仕様。
「照らす輝きは。もっと明るく強いものでしょう。例えばそう、こんな感じで……」
 歌織が指差すのは、シャンデリアではない。
 一緒にホールへ突入した冬月へだ
 天空、この場合は天井に光の線が疾走り魔法陣が生成されて、そこから光の煌きが降り注ぐ。
 裁きの名を関するはずの光の柱が、猟兵に向けて放たれることになるが、これはあくまで、演出。
 命中率が高いユーベルコードではあるが、踊りに夢中の冬月に当たる様子はない。
 当たりそうに成れば飛び退いて、困難な光を見を反らすように踊りの一環として除ける。
 同じことを冬月もまた、歌織へ仕掛ける。
 これが、ダンスパーティにに紛れ込ませる悪意。演出の範囲で、明かりを破壊する。ただし、明かりはユーベルコードに寄る光の柱。
 勿論だが、良い子ならば真似をしてはならない。冬月の光は、それこそ手加減も予備動作もなく降り注ぐので、剣舞に煌きの華を灯す。
 輝きを斬り伏せて、霧散する煌きを動作に引き連れて、踊る。
「わああ、綺麗……」
 悪魔の誰かが見惚れて呟く。
 曲の流れている間、情熱のダンスが繰り広げられ、曲が止まると同時に破壊されていなかったスポットライトで二人はパッ、と照らし出される。
 ぺこりと下げた頭。
 全力を出して踊った為に肩で息をしながらも、溢れ出る満足感。
「ありがとうございましたでチ!」
 盛大な拍手は鳴り止まない。アンコールや、一緒に踊ろう等誘いの声もやまない。
 二人のダンスは悪魔たちの新年を激しく盛り上げた。

 後に猟兵たちから施設の貸し出し人宛に封筒が届く。二人に割り当てられたDは全て紙幣に変換されていて、それが全て、詰まっていた。
 封筒の中には一枚の手紙。そして、一文。
『シャンデリアの修繕費と、ホールの修繕にお使いください』。
 派手に色々破壊することで、二人は大量のDを消費する事を選んだのである。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ルパート・ブラックスミス
近場の自動車工場に乗り込もう。
鼠と牛の頭の意匠(取り外し可能)を凝らしたオーダーメイドの高級車を作らせる。黒塗りの。

アポイントメント?営業部との交渉?勿論無い。
本来必要な手続き云々を無視し、大量のDを掴ませて業者に非公式な仕事をさせる。すなわち裏取引だ。

……四天王の専用車なんぞ幾らでも公式発注できるだろうし正直無意味と自分でも思うが、そこはそれ、それらしい態度(デビルキング法的【礼儀作法】)と【言いくるめ】で悪事らしく振舞おう。
金の為に悪事をするのではなく、悪事にする為に金を積む……それがデビルキングワールドなのだ。きっと。

使わない時?
……。"度胸試しの館"住民に貸し出せばいいのではないかな。


●どうせなら十二のトップを戴く意匠を

「無礼講だな?了解した」
 即答で返したルパート・ブラックスミスは歩き出す。
 二人の悪魔はルパートが何かをするのだと察して、ちょこちょことついてくる。そこそこに発展を繰り返した町並みの中で、一際目立つ工場の姿を、目撃していたのだ。アパートより少し離れて二十分もアレば辿り着く場所。
 それは――。
 組み立て待ちの板金や、馬車に取り付ける鋼鉄に車輪。
 現金輸送車まで送り出す頑丈な装甲で守られた、強固の要塞。
 この街の自動車工場の作業工程は、多種多様。
 独創性が豊かに進んでいて、同じ車両を連続で創り出さないという信条を持つ。
 工場の社訓だが、悪魔の道徳に添って独自に練られた悪意である。
 緊急に車両の台数が必要なときでも、二度手間な二重発注をさせるのだ。
 ああ、なんという、悪の工場か。
「頼もう」
 開け放たれたシャッターから、声を掛けながら鎧が入り込む。
 訪れた訪問者にびっくりした気配を出して見せたのはこの街の、仕事の従事に勤しむブギーモンスターだ。
「部外者の方でしょうか?ええと、そちら本来入り口ではございませんなのです。……訪問の予定を聞いていないのですが、アポイントメントをお持ちですか?」
「いやいやいや、もしかしたら営業部から来たヒトかもよぉ」
 布をばさばさ、互いに手振りを加えてルパートに確認を求めている。
 別の作業の手が停まっていることは、好都合。
「アポイントメント?営業部との交渉?勿論無い」
 堂々と言い切る。いい切ったモノ勝ちだ。
「そんなことよりそれらの仕事の羽振りはいいのか?」
 必要な交渉の第一段階をすっ飛ばし、話をすすめるルパートの背後で、きょとんとした顔の悪魔たち。
 実に堂々とした悪の姿に、目をまあるくしている。
 あの目はそう。
『この男ルパートは、おそらくこれで、終わらせまい』。
 内心でとても期待しているものだ。期待を背中に受けながら、どう返事をしたものかと困惑の気配を顕にする従業員に告げる。
「此処だけのこの工場、誰もが特をする話をしよう。偉い立場のモノはいないか」
 持ち込み企画を披露する気だ、とブギーモンスターの誰もが理解した。
 突然の仕事依頼はお断り!その張り紙が至るところに張ってあるというのに、勇気のある無謀を働く鎧だ、と。
「はあ……ワタクシが、此処を預かり運営する所長でございますれば?」
 ヤギのように立派な角と立派なヒゲの悪魔が、小さめの丸メガネをちょこっと上げて、応じる。
 いかにも、仕事の話だと理解している風である。
「時期も時期、多忙にてございます……既に承っている仕事の納期もあるのであるからして」
 待った、と所長へ掌で示し、後方に向けてワンサイン。指をクイっとする。
 その動作の意味に気がついて、鼠と牛の悪魔が持っていた風呂敷包みを、ルパートと所長の間にどさりと床に置いた。
 はらりと解ける結び目から現れる――大量のDの札束。
「ほう。それはそれは、当方の提示する額より高いのだろうな?」
「――。これはこれは、お客様。何をお求めでしょう?」
 掌がくるりと、回る。周囲の従業員たちも露骨に目をそらしだした。
 我々は何も聞いてない。
 突然優先しなければならない仕事なんて、知らない。興味しかないけれど、知らないんだから。
「黒塗りの高級車だ。意匠に、鼠と牛の頭を凝らして欲しい。ああ、意匠が取り外しが可能となるならば、もう少し足元の束にプラスが乗るだろうが……」
「オーダーメイド、ええ、ええ!二種の意匠で宜しいのでしょうか?」
「なにか気がついたか、貴殿。察しがいいことを評価して、もう幾つか積もう。あと十の獣の意匠も頼まれてくれ」
「――かしこまりまして」
 手を打つこと二拍。
 しんとした工場内に、所長命令が下る。
 最優先事項として『高級リムジンの作成を急げ、お客様を待たせるな』と。
 忙しなく活動が活発化する工場内。表情にこそ、ブギーモンスター同様に顔には出ないルパートだが……。
 ――……四天王の専用車、なんぞ幾らでも公式発注出来るだろう。
 ――この二人が持っていないだけで、既に存在する可能性すらある。
 ――正直無意味と自分でも思うが、それはそれ。
「……これは、どういう悪事の収まり方なのでチ?」
 鼠の悪魔は問いかける。非公式な仕事をさせて、業者を操る裏取引。
 結果的に彼らは儲かり、悪い内容ではないように思うらしい。
「金の為の悪事をするのではなく、悪事をする為に金を積む……己の手ではなく、結果的に悪事に昇華させるのだ」
 ――デビルキング法的な礼儀がこのような在り方と認識した。
 ――言いくるめみたが、ああ……成程。
 ――それほど誤差なく認識で来ているようだな。
 ――そうか、これが、デビルキングワールドなのだな、きっと。
「ねえ……作った車。納期されたら、どうするの?」
「あれは貴殿ら、四天王の毎年のトップ者が使えばいい。世襲制の愛車という奴だ」
「……でもあれ、悪目立ちしちゃうよ。使わない時、どうしたらいいかな…………車庫とか、入らない大きさだし……」
「使わない時?」
 それは考えていなかった。
 ルパート、ややの沈黙。
「……ああ、"度胸試しの館"住民に貸し出せばいいのではないかな」
「!」
「ナイスアイディアでチね!車庫いらずで管理要らず!ハッピーでチ!」
 緩やかに金は一台の車に姿を変えて、一気になくなる未来を得た。
 納期された高級車もまた、悪事にさらされて新しい世界で生きるのだ。
 困るものなど誰もいない。良い子だらけの悪魔が楽しく暮らす日常の1ページ。
 そう――これこそがデビルキングワールドなのである。
大成功 🔵🔵🔵

ハルア・ガーラント
ゲリラ花火大会とかどうでしょう
仕事や勉強の手が止まるような

そうと決まれば鼠と牛の悪魔さんにはとにかく派手で高級な打ち上げ花火を調達してきて貰います
わたしはふたりと住人達からイベント広場のような場所を[情報収集]
出来ればこの世界の学校やオフィス街からも見えるような場所がいいな

お金はお二人に渡し、会場のレンタル交渉の際に問答無用でUC発動
ついでにそのまま臨時スタッフとして働いて貰いましょう

本来の花火大会のようなきちんとしたものではないけれど
皆日々頑張っているんだもの
たまにはサボって休憩することも大事

全ての花火の打ち上げが終わったら、設置物の撤去やお掃除までやります
明日からの悪事も頑張ってくださいね


●HIBANA

「ふむ……ほかのみなさんがワルの限りを尽くしてもまだまだある、と」
 ハルア・ガーラントは悩ましい。
 蛇の悪魔の一年掛けた壮大なD収集の賜物は、こんなところで弊害を生んだ。
「そうでチね。もっとパーッと派手にやらないといけないでチ」
「ぱーっと、……ああ」
 ぱあっと派手で、お金が掛かりそうなことを一つ思い描く。
「なにか、できそう……?」
「ええ。ゲリラ花火大会とかどうでしょう?」
「新年花火大会でチね!超派手でチ!」
 ちちちち、と笑い出す鼠の悪魔。
 彼はとても乗り気で、牛の悪魔はマイペースに同意する。
「そうと決まれば……わたしは立地に詳しくないので、お二人にお願いが」
 二人の悪魔に耳を寄せて、ごにょごにょと。
 "悪巧み"はトントン拍子に進んでいく。
「まずは、第一に花火の調達からですよ、とにかく派手で高級な打ち上げ花火をあげましょう。その調達からお願いしますね?……あとは、そう。お二人に質問が」
「なんでチ?応えられることなら、ドンと任せるでチ!」
 胸を張って調子に寝る鼠の悪魔の鼠耳がパタッとする。
 自分なら何でも出来る、という自信の表れか。次を収めるべきは牛の悪魔で在るはずなのだが……。
「……おれは知り合いの花火技師に、心当たりがあるからね。たぶん、大丈夫だよ。ええと、質問は、なんだろう?」
 他人のコネを我が事のように言う些細な悪事が働かれていた。
 鼠に悪びれる様子はなく、牛も細かく気にする様子がない。
 彼らの中では、このようなやり取りはよくあることのようだ。
「イベント会場として使えそうな広い場所に心当たりは……?」
 二人の悪魔は、ニッコリ笑い合って口を揃えて同じ場所の名を挙げる。
 その名は――"度胸試しの館"。
 建物の屋上に、広い広いスペースが有るという。
 十二の部屋を携える棟の上だ。そこそこに高い場所からの打ち上げが可能で、建物が壊れるなら修繕費に回せばいい。
 貧相なアパートなので、ボロい箇所はよく目立つ。そろそろ、見栄えとともに内側も全面的な改修工事に着手してもいい頃合いなのだ。
「アパートのことならおれたち、四天王の一族が責任者だからねぇ。もし、気になるなら周囲住民に聞いてみて?」
 ハルアの質問に答えて、花火調達に駆け出していった二人。
「そういう、ものなんでしょうか」
 ――仕事や勉強の手が止まるような、音は間違いなく上がると思うけれど……。
「もし、もし?」
 ブギーキャンサーの住人に問えば、楽しい事ならオーケーと布の下から鋏をカシャカシャされて歓迎された。
 ――会場費として、誰に渡すのが適切でしょう。
 ――彼らの一族、親族から場所を借りるならお金はとても浮きますねぇ。
 アパートの外にも一応の意見を聞きに乗り出すハルア。
 学校や、オフィス街の丁度真ん中。誰の目にもとまりやすい場所という立地。改めて見ると、オンボロな建物は、それはそれで愛されている証拠なのかも知れない。
「お二人のお使いで……ええ。十二星座、並びに十二支の四天王の皆々様にはどうぞ一度、館前にお集まりいただければ。――ええ、10分後。大至急です」
 駄目という住民は恐らく存在しないのだ。ハルアは敢えて、声を掛けて手伝い人を増やすことにした。
 今年一番頑張るべき"牛の悪魔"が招集した、と言えば、みんな集まるだろうと仮定して。
「……さて、お集まりの皆さん!お願いします、私たちに力を貸してください!」
 ハルアが話し始めるまでに何かを呟いていたことに気がついた悪魔は何人いただろう。天使言語だった故に、聞き取れても言葉として受け取ることは不可能。
 直球の問答無用の先制攻撃!
 ――今日はそのまま臨時スタッフとして働いて貰いましょう!
 バタバタと早足に。交渉を成功させて戻ってきた鼠と牛の悪魔にそそくさとDを大量に渡して、これで作戦は完璧。
「そちらは、集まってくださったスタッフさん全員の給料です。お収めください?」
 片目を閉じて、ウインク。
 さあ、空に派手さを撃ち込む準備の始まりだ。


 二人より三人、それから沢山の臨時スタッフの手助けを得て。
 着実に、テキパキと進む花火の打ち上げ陣営。打ち上げる係を当番制として回し、誰もが遠目に大輪の華を眺められるようにした。
 良い子で働き者の悪魔が多いので、反対意見がでるはずもなく――。
「さあ、みんな。順番に打ち上げていくでチよ!」
 ドォーーーーン。
 間近で、真下から見上げる花火。新年の空に開く火炎の華。
 ――本来の花火大会のようなきちんとしたものではないけれど。
「皆日々頑張っているんだもの」
 ――たまには、空を見上げてサボって休憩することも大事かと。
「……わたしの番ですね、上手くできればいいな……!」
 ほかの十二支の悪魔たちにアシストされながら、着火したロープからジジジっと勢いよく花火玉へ。
 青と、赤と、それからもっと色々な色の花を咲かせた空。
 大量の高級花火だ、早々に作り込まれていて、形の崩れを知らないまあるい華だ。
 誰の視線も集中力も独占する轟音と共に、大輪の花が次々に咲く。
 ――全ての花火の打ち上げが終わったら、設置物の撤去からお掃除から。
 ――率先して手伝わせて貰わなくちゃ。
 ――給料以上に、働きすぎだもの。
「綺麗……」
「でしょう?あれはあなたが打ち上げたんですよ」
 ――ふふ、働いてくれたみなさんも。
 ――今しっかり休んでいるどこかのあなたも。
「明日からの悪事、頑張ってくださいね」
 応援のメッセージも兼ねた、手を止めさせる悪事の華。
 火の粉はアパートを多少燃やして半壊させたが、それは笑い話として片付く。
 誰も怒るものはなく、必要悪だから仕方がないと笑顔の華が咲き誇る始末。
 平和な悪事だ、――とっても。
 ちなみにこのゲリラ活動は、最近急上昇に利用者を増やしている――通称デビルズネットワーク(SNS)も同時進行で炎上させたという。
 想像以上に多くの悪魔が、空に咲く花を、――みて、休んでいた。
大成功 🔵🔵🔵

シキ・ジルモント
手本と言われてもな…まぁ、Dを使うなら協力はしよう

バイクに乗ってユーベルコードを発動
これなら重力下でも飛行が可能だ
エンジン音を気にせず悪魔たちの街の上空へ飛び上がる

街の上空、建物スレスレを飛び回りながら、先に奪ったD紙幣と硬貨をばら撒く
地上の悪魔たちがこちらに気付くように、エンジン音は抑えず全開に
騒音や周囲の迷惑?ここでなら、気にすることはないだろう
ネズミとウシの悪魔が希望するなら一人ずつ後ろに乗せてみるか

お年玉と言ったところか、募金よりは派手な使い方だろう
たくさんの悪魔に少しずつDを拾ってもらうのが目的だ
不特定多数に広く金が渡れば、オブリビオンが再び現れて集めようとしても苦労するだろうからな


●空から降る価値の在るモノ

 ――既に大量に使われたD通貨と紙幣。
 通貨ほ殆ど紙媒体に変えて、持ち運びやすさを上げたとはいえ。
 大量のDを一気に使うというのは、なかなかに難しい話。
 当てた宝くじを今日中に使い切れ、と言われているようなものだ。
 そう簡単に思いつくものでもない。
「手本と言われてもな……まあ、Dを使うなら協力しよう」
 シキ・ジルモントもまた、大量消費の一躍を買うことになった。
 なにかの縁だ。
 一年掛けて収集されたDを大量に使うのは掟だと彼らはいうが、実際のところは奪ったモノを利用して地域に還元する縁起物に属する類のものかもしれない。
 つまり、巡り巡って縁起がいい(ワルい)行いなのだ、これは。
「――システム、起動」
 実用性重視のカスタムバイクに乗って、軽くボディを叩き合図を遅れば宇宙バイクは呼び掛けに応える。
 ヴゥウン――とバイクから放出される防衛用ビームシールドの、展開。
「これなら、重力下でも飛行が可能だ」
「……え?これ、飛ぶの……?」
 半信半疑は牛の悪魔の困惑は、バイクに激しいエンジン音を吐き出させて応える。
 空に続く冷たい風も、どこ吹く風のシキは速度を挙げる、高度が上がる。
 鉄の馬は、空に透明な道でも在るかのように飛翔してみせた。
「わああ!飛んでるでチね!?」
「そこから、よく見てるといい」
「……ねえ!おれも連れって、くれないかな…………!」
 牛の悪魔の提案を了承し後ろに乗せて、一気にアクセルを踏む。
 鼠の悪魔の頭上を疾走り抜け、街の上空へ。
 程よく強い風が街の上空には吹き荒れていた。
 ――好都合だな。
 建物スレスレを敢えて選び、エンジン出力を抑えない疾走り。
 まるでシキが風だった。吹き荒れる一迅の風。
 通り過ぎる空間に、沢山の紙が舞い踊った。
 発生源もまた、シキ。
 奪ったD紙幣と硬貨を、無造作にばら撒いたのだ。
 紙質よりもやや重たい硬貨が先に、地上へくるくる回りながら落ちていく――。

 手加減など無い、加速と共に吼えまくる空の轟音。
 エンジン音を抑えずに全開で、空を疾走る。
 ――地上の悪魔たちがこちらに気づく事を祈る。
 シキの思惑通りの事が、地上で始まっていく。
 色んな悪魔が足を止めて、空を見上げる――地上の誰かが上空に何がいると、目ざとく気がついた。
 誰かはソレを、夜空を掛ける大きな鳥だと表現した。
 あまりの速さで、バイクであると認識できなかったのだ。飛ぶ何かには、鱗のような翼があり、それが剥がれて落ちてきているのだ、と――。
 カツーン。ジャラジャラジャラ。
 何かが置いてきて、続けて金目のちゃりんという音が連続する。
「……ん?なあに、これ」
「え?D硬貨じゃない……?」
 ひらひらと、遅れて降りてくる紙が、通貨であると誰もが気がつく。
「……え、どうしよう。お金交番に届けた方が、いいかな?」
 良い子ムーブが、悪魔たちの周囲を動かす。
 "みんなで全部拾い集めなければ"。
 そう思わせることができれば、概ね作戦は、成功だ。
「騒音と周囲に、迷惑……かからない、よね?」
「空に交通規制でもあるのか?気にすることはないだろう」
 全てのDを、牛の悪魔と協力して空の風に流すのだ。
 一枚残らず。風の勢いが面白くなった牛の悪魔はついでに、包みとして使っていた風呂敷も飛ばしてしまった。
「……へへ、凄いワルい事を思いつくね。全部のお金を、ばら撒くだなんて」
「まあお年玉と言ったところだ。少なくとも募金よりだいぶ派手な使い方だろう」
「うん。派手だね、あの蛇の人もビックリの悪事だよ」

 空から手放したDは、地に着いた時点で"落とし物"となる。
 それは、シキと牛と鼠の悪魔がそう決めたからだ。
 自分のものだと主張しない。
 敵の目論見が、叶わなくなる悪事の極。
 オブリビオンには弾丸を。ただし住人たる悪魔には少々甘めの、正真正銘のお年玉として無差別に振る舞った。
「たくさんの悪魔に少しずつDを拾ってもらうのが目的だからな」
 シキの目的は、不特定多数に拾わせること。
 後にどのような扱いになるかまでは、拾い主の悪魔の自由だ。
 財布を温めるのもよし、隣人からかすめ取るもよし。
 警察に届けたいなら、届ければいい。
 持ち主不在で、巡り巡って、いつかは届けた悪魔の元へ一部は届く。
 ――オブリビオンが再び集めようとしても、苦労するだろうからな。
 広く多くの悪魔に金が渡れば――それでいいのだ。


●ワルの流儀
 収集されたDは全てを奪われ、奪ったDは全て消費され、手元に残る金銭はない。
 しかし、鼠と牛の悪魔は笑っていうのだ。
「最高のワルでチ!」
「今年、沢山いいことがあるといいねー」
 満足げな笑みだと猟兵の誰もが思ったが、笑顔になにか表現し難い違和感が。
 ちらちらと、様子を伺う牛の悪魔の視線も、怪しい。
「……あー、その顔はもう気がついた顔でチね?」
 ポケットや、手元。何故か鎧やバイクの間。
 腰のかばんや身に付ける装飾品に紛れ込むように、所どこに挟まっている。
 どれもこれもが、猟兵たちも死ぬほど見た――D通貨。
「それは……ええと、蛇のモノじゃないよ。おれたちの」
「そうでチよ、誇るでチ!素晴らしいワルを見せて貰った報酬でチよ!」
 ワルさを測るバロメータとして、気軽と言っては少し多いくらいのD硬貨。
 それらを、二人は活躍を認めてくれるというのである。
「おれらのだけどプレゼントの返品は、お断り。お年玉を皆にあげた人に、あげないのはフェアじゃないからね……へへへ」
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年01月15日
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