ブレイク・ザ・マンション
●わるいこと
「悪いこと、大好きー!」
それはとある高層マンションの中に連日響き渡る号令の如き言葉であった。
キャッチフレーズと言ってもいいだろう。
ここはデビルキングワールド。
悪魔を自称する『良い子すぎる種族』が住む魔界とも呼ばれる世界である。
彼等はあまりにも良い子すぎたせいで絶滅寸前に陥った者たちであり、『悪魔の美徳』たる『デビルキング法』によって、絶滅を回避した者たちでもある。
彼等は性根があまりにも善良であるが故に滅びかけた。
ならば、悪事を為すことこそが美徳であるとすれば、隆盛を極めることができる。
それこそが『デビルキング法』である。
マジで何言ってるかわからんと思うだろう。それが普通の反応である。
だが、ここデビルキングワールドでは違う。
善悪の基準がひっくり返れば、このような世界もまた在り得るのだと知らしめるような可能性に満ちた世界でさえ在るのだ。
そんな世界にある高層マンション――否、度重なる増築で迷宮のように入り組んだ『マンションダンジョン』の一つの中に数十年と家賃を滞納している悪魔たちが無数に存在している。
「家賃は滞納するもの! D(デビル)をビタ一文も払わない! 俺ってかっこいいー!」
「ヒュー!」
「敷金礼金なんて払わない! 勝手に内装を改装して壁紙全部ピンクにしてやったわ!」
「ヒュー!」
「僕なんて部屋で燻製しちゃったから煙すぎて匂い取れないもんね!」
「ヒュー!」
そんなこんなで悪魔たちは真面目に悪事を働いているのだ。
だが、そんな彼等とて大家に雇われたギャングたちが昼夜問わずにダンジョンと化したマンションに挑んでくれば家賃であるD(デビル)を渡してしまう。
何故なら、根が真面目で善良であるから!
「そんでそんで、アンタはどんなことをしてるんだい?」
一人の悪魔が新入居者の悪魔に尋ねた。
その新入居者は美しき六翼の堕天使であった。彼女は微笑みながらこともなげに、こう応えた。
「私はまずドアノブにスタンガンと手榴弾を仕掛けました。よしんば、それで無事であっても今度は対人クレイモアも設置していますから、ここでさらに侵入者は激選されることでしょう。廊下を進めば地雷。天井からは釣り斧。壁からはスパイクウォールを。これはアクセント程度ですね。でも、最後のリビングはすごいですよ。ガトリングガンを4門。毎分6000発弾丸を打ち込めますから、この時点で相手は穴だらけどころか肉片一つ残っていないでしょうね?」
ものすごい早口で捲し立てる堕天使。
その言葉は物騒極まりないものばかりであった。誰だってドン引きする。何もそこまでと思うだろう。
「やべぇ……」
「どういう発想すればそんなことが……」
ほらみれ、悪魔だってドン引きしてる。
ふるふると肩を震わせる悪魔たち。
だが、つぎの瞬間、彼等の顔はぱっと花が開いたかのようなキラキラした瞳を堕天使へと向ける。
「す、すげぇ―――!? え、やばい。かっこよすぎる……!」
そう、悪魔たちにとって悪事とはかっこいいこと!
極悪非道なるトラップダンジョンへと部屋を改造した堕天使に惜しみない称賛が送られる。
「アンタがキングだ! デビルキングに相応しい!」
「俺たちアンタについていくぜー!」
「ええ、皆さん。これからよろしくおねがいしますね? みんなで悪事を働いていきましょう。少しずつでいいのです。ゆっくりと滞納したD(デビル)をためていきましょう。みんなで悪さをしましょう。そうしましょう――」
●強襲、わるいこ!
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は新たに見つかった新世界『デビルキングワールド』における事件となっております」
そういうナイアルテの顔は困惑に満ちていた。
新たに発見された世界、『デビルキングワールド』。そこは悪事が美徳とされる世界。通常の世界では考えられぬ程に善悪が逆転した世界であると言えよう。
だが、そんな世界に住まう悪魔たちは、根が真面目過ぎるのだ。そう、『良い子』すぎて絶滅しかけたほど彼等の心根は姿形とは裏腹なほどに善良すぎるのだ。
「はい、実はデビルキングワールドに存在する高層マンションの一つがダンジョン化しているのです。マンションのあらゆる場所にトラップが仕掛けられ、対人地雷や機関銃、落とし穴に吊り天井、それはもうあらゆる罠が仕掛けられた魔窟と化しているのです」
確かに悪魔たちは善良であるが、善良であるがゆえに『悪魔の美徳』たる『デビルキング法』を遵守し、悪事を働こうとする。
これまでは他愛のない悪事ばかりであったが、此処最近急激に、そのダンジョンの罠の凶悪化が始まったのだという。
「言うまでもなく、事の裏にオブリビオンの影があるのです。首魁たるオブリビオンの影響から、このマンションに住まう家賃滞納者である悪魔たちを味方につけ、マンションを強固な要塞に変えて大規模な殺戮に乗り出そうとしているのです」
そうなる前にオブリビオンを対峙しなければならないのだが、前述した通り、マンションは強固な要塞……ダンジョンと化しているのだ。
そのトラップをくぐり抜け、躊躇なく悪事を働くオブリビオンに憧れ従う悪魔たちをさらなる悪事で魅了するも、ぶっ飛ばすも猟兵次第なのだという。
「ですが、悪魔たちは皆さんに匹敵するユーベルコード使いでもあります。全力で皆さんがぶっ飛ばしても死ぬことはありません」
シュッシュッと拳が空を切る。
ナイアルテの拳であった。なんで急にシャドーはじめたの、と皆疑問に思ったことだろう。
彼女はわりと怒っていた。
悪徳が美徳とされる世界。けれど、やっていいことと悪い事の範囲を今回は越えているのだ。だから、怒っている。
「まずはダンジョン化したマンションを踏破してください。言うまでもなくオブリビオン主導で凄まじいトラップが満載です。それらを突破し、オブリビオンに統率された悪魔たちと戦い、彼等から滞納した家賃を接収してください。倒せば彼等の根は善良ですから……ちゃんと払ってくれます」
ですが、とナイアルテが瞳を釣り上げた。
「オブリビオンはダメです。倒してください。悪魔の皆さんを唆して、一線を越えたのは許してはなりません。悪魔の皆さんはマンションの構造を熟知していたので皆さんでも手こずるはずですが、オブリビオンは構造を熟知していません。強敵ですが、ここに何か戦いを優位に進める鍵があるはずです」
どうかお願いいたします、とナイアルテはぷんすこしながら、猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回は新世界『デビルキングワールド』においてダンジョン化した魔窟、マンションを牛耳ろうとしているオブリビオンを打倒するシナリオとなります。
シナリオに登場する悪魔たちは猟兵の皆さんに匹敵するユーベルコード使いで強いです。完全に殺し切ることはできませんし、傷を追ってもむっくり起き上がって生きています。
ので、オブリビオンを上回る悪徳を見せつけて、彼等を改心(?)させましょう。
●第一章
冒険です。
迷宮のように入り組んだマンション、いえ、ダンジョンの中に仕掛けられた物騒なトラップを躱し、もしくはぶっとばしたり、卑劣なるショートカットを行ったりしながら進みましょう。
あくどいやり方をすればするほど、よいでしょう。わるいこ推奨であります。
●第二章
集団戦です。
オブリビオンに統率された『家賃滞納悪魔』達との戦いになります。彼等はオブリビオンではありませんが、複雑なマンションの形状を熟知し、猟兵に匹敵する戦闘力を持つ強敵です。
が、根が善良なので、ぶっとばされれば普通に家賃を払ってくれますし、オブリビオンの見せた悪徳以上のワルさを見せつければ感化して言うことを聞いてくれたりもします。
●第三章
ボス戦です。
マンションを牛耳るオブリビオンとの戦いです。
強敵ではありますが、前章の悪魔たちとは違い、マンションの構造を熟知しておりません。ですので、そこに活路を見出すことができるかもしれません。
それではこれまでとは一風変わったデビルキングワールドの世界、そこに住まう『悪いこと大好き』な悪魔たちと、それを利用しようとするオブリビオンを打倒する、ものすんごいワルな物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『派手にぶっ壊そう!』
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POW : とにかくパワーに任せて壊しまくる
SPD : 華麗な身のこなしで素早く壊しまくる
WIZ : 頭脳プレイで効率的に壊しまくる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
誰が言ったか、ダンジョンズマンション。
そこはそう、すでに魔窟とでも言うべきか、それとも地雷原と呼ぶべきか。はたまたトラップハウスと呼ぶべきか。
どれもが正しく、どれもが正しくない。
床には地雷。
天井には物騒な刃物がふんだんに仕込まれている。
あちことにあるドアノブには当たり前みたいに手榴弾がかけられている。
今日び、サンタクロースを刈ろうという連中であっても、ここまではしない。
「悪いこと、大好きー!」
いえいいえい!
そんな風に『家賃滞納悪魔』たちは気炎を上げる。
彼等の性根は確かに善良其の物であったが、ここ『デビルキングワールド』においての美徳とは即ち悪徳である。
彼等は彼等なりに真面目に美徳とされる悪いことや欲望まみれの行いを行おうとしているのだ。
だが、彼等の純粋なる悪徳(?)を利用しようというのがオブリビオンである。
マンションはもはやダンジョンというにはあまりにも生易しものへと変わり果てた。
征くも地獄。退くも地獄。
そんな阿鼻叫喚なる火薬の匂いむせかえるダンジョンを進め、猟兵。
この『デビルキングワールド』において、成さねばならぬは悪徳。オブリビオンが齎す醜悪なる悪意すらも凌駕せしめて、示せ、悪のギャングスター!
月夜・玲
わぁいあたまわるい
あきら、あたまワルい世界だーいすき!
いえいいえい!
ちわーす三河屋でーす
家賃貰いにきましたー
トラップ沢山!これは大変だ!
だけど我々は猟兵であると同時に家賃徴収人でもある
なんやかんやで家賃を徴収する権利を有しているから…
いやめんどくさいな、IQを下げていこう
目の前にはトラップがあるであろう扉!これをどうするか…
ぶった斬る!破片、爆風は『オーラ防御』で無理矢理やり過ごす
目の前にはトラップ満載の通路!これをどうするか…
【疑似神性・解放】を起動!
通路ごと無に還して綺麗な通路にリフォーム!
リビングこいつぁ強敵だ!
勿体ないけどさっきと同じように無に還して綺麗にリフォーム!
綺麗になりましたー
新たなる世界『デビルキングワールド』。
そこは悪徳こそが美徳とされている世界である。通常の世界とは一線を画する世界観に猟兵たちは戸惑うことも多かったことだろう。
悪いことはかっこいいこと。
欲望のままに振る舞うことはいいこと。
家賃滞納は即ちいいことなのである!
いや、そうはならんやろ。
だが、デビルキングワールドではそうなのだ。所変われば法も変わる。
そういうものなのだ。
「わぁいあたまわるい。あきら、あたまワルい世界だーいすき! いえいいえい!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)の言語能力は著しく低下していた。
お嬢ちゃん何歳かな? とそんな質問が似合いそうなほど玲の言葉は拙く、同時にデビルキングワールドに順応していたように思えた。
気の所為ではない。
確かに彼女のは順応していたのだ。それはもうノンストップである。ノーモーションでナチュラルにダンジョンと化したマンションの入り口に立つ。
もう少し警戒とかそういう類のことはないのだろうかと心配に為るほどに同土道と正面からたちは居るのだ。
「ちわーす三河屋でーす。家賃貰いにきましたー」
元気よく玲が足を踏み入れた瞬間、炸裂する爆発。
それは火薬の匂いむせ返る地雷原に足を踏み入れたのと同じことであった。だが、彼女とて猟兵である。
火薬程度に怯んでいて取り立て人ができるものかと玲はさらに足を踏み入れる。
「ふむふむ。対人のものばかりと。トラップ沢山! これは大変だ! だけど我々は猟兵であると同時に家賃徴収人でもある。なんやかんやで家賃を徴収する権利を有しているから……」
輝くインテリジェンス。
だが、その輝きも長くは保たない。
「いやめんどくさいな、IQ下げていこう」
玲の顔がなんかすごくIQの低そうな顔に為る。言う成ればデフォルメ顔。
手にした模造神器を目の前の扉に振るう。
勿論トラップがあるであろう扉だ。ここにきて扉に罠を仕掛けていないということはないだろう。
逆説的に考えてない。だからこそ、ぶった切る!
瞬間、玲を包み込む爆風。
しかし、彼女を護るオーラの力の前に爆風など意味をなさない。破片だろうがなんだろうが、彼女のオーラの力で無理矢理やり過ごすのだ。
ずんずん進む玲。
もうトラップがあろうがなかろうが関係ない。
通路も当たり前のようにユーベルコードを発動させる。
疑似神性・解放(ギジシンセイ・カイホウ)によって発言した全てを無に還す光がリビングへと連なる通路の全てを破壊し、きれいな通路にリフォームという寸法である。
「いえいいえい!」
いいのかそれでと疑問を呈したくなるような参上であるが、彼女の攻撃能力は極悪そのものであった。
どんなトラップも全てを無に還す光の前には無残なものであった。
そこへ打ち込まれてくるガトリンガンの弾丸。
オーラの力によって弾かれる弾丸があちらこちらの壁や床に生々しい弾痕を刻んでいくが、玲は構わなかった。
「もったいないけど、同じように無に還して綺麗にリフォーム!」
どっせい、と振るう光の一撃でガトリングガンが分解され、何もなかったかのように更地にしてしまう。
部屋をリフォームどころの話ではない。
やりすぎでは?
と誰かが言ったかも知れないが、そんなこと気にしていられない。
何故なら今の晶のIQは著しく低下している!
即ち目につくトラップ全てを破壊し踏破する蹂躙者なのだ。そんな彼女の手に携えられた力は『全てを無に還す』力!
一番持ってちゃいけないタイミングで、尋常ならざる力を振るう玲を止められるトラップなど、どこにもないのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「本人達が楽しそうにしているから邪魔するのも
悪い気もするけど。オブリビオンが居るんじゃ
ほっとけないか。」
アンノウンブレス発動。
幽霊の壁抜けや超感覚で内部の構造、トラップの位置や性質を把握。
「自らは動かず幽霊に内部を探らせるのも悪っぽいか。」
トラップは自身や幽霊の念動力で解除し最短ルートを進む。
事前に調べた構造から効果的な場所で
フレイムテイルの炎、スカイロッドの風を使い壁や天井を破壊。
ショートカットを行う。
家賃滞納悪魔が居たら
「この罠の張り方は中々の悪さがあるね。
ついては今後の参考にしたいから
どこにどんな罠が張ってあるか
教えてくれないか。」
褒めながら罠の位置を聞き出す【言いくるめ】
これも悪徳。
悪徳こそが尊ばれることであるとするのが『デビルキング法』である。
この世界に住まう悪魔たちの性根は善良そのもの。
彼等はあまりにも良い子すぎたせいで滅びかけた存在である。自称、悪魔を標榜する彼等にとって悪事とは真面目に働くものである。
悪ければ悪いほどいい。
その法に則って行動した結果、オブリビオンは何の躊躇いもなく己の欲望を満たすために行動する。
それが悪魔たちにとっては、たまらなく、この上なく至上なるものに思えたのだろう。
だからこそ彼等はオブリビオンをデビルキングにしようと真面目に悪事に取り組んで協力するのだ。
「本人たちが楽しそうにしているから邪魔するのも悪い気もするけど、オブリビオンが居るんじゃ、ほっとけないか」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、楽しげに暮らしている悪徳が美徳である世界、『デビルキングワールド』を前にしてそうつぶやいた。
悪魔たちだけで世界が回っているのならば、この世界の法に従っている以上、フォルクたち猟兵の仕事はない。
けれど、彼等を利用して悪事を働こうとするのがオブリビオンであるというのならば、それを止めなければならない。
「悪徳こそが美徳……なら、自らは動かず幽霊に内部を探らせるのは悪っぽいか――地の底に眠る不明なる霊。呪われたる棺の蓋を開きて、その異能を存分に振るい。我に仇なすものを退け、我と共に歩む者を助ける力となれ」
フォルクのユーベルコードが輝く。
それは、様々な姿に変身し、実体を掴ませない正体不明の幽霊たち。
地底から現れ、棺桶の中から幽霊たちが飛び出していく。それこそが、彼のユーベルコード、アンノウンブレス。
その姿はまさしく悪の首魁。
幽霊たちを顎でこきつかって、内部の罠を調べさせる手法はたしかにあくどいの一言に尽きる。
ダンジョンと化したマンションはトラップが満載である。
普通に足を踏み入れたのでは突破も難しいであろう。だが、すでに幽霊たちがトラップの位置を把握し、さらに幽霊たちが操る念動力によってトラップは次々と解除されている。
「さらに……炎と風をお見舞いしてやろう」
盛大に炎と風で壁や天井を破壊する。トラップは尽く解除され、通路はショートカットされる。
それは極悪非道なる振る舞いであった。
「これが家賃滞納者にすることかよー!」
だぁん! と悪魔たちがモニターを見て拳を叩きつける。
自分達がせっせと真面目に構築したダンジョンがあんな簡単に踏破され、破壊されたのだ。
その心の中はどれほどのものであろうか。
「……なんてかっけーんだ! やばすぎんだろ!」
あれー!?
と普通ならなるだろう。反応が逆ではないだろうかと。だが、『デビルキングワールド』ではこれが正常な反応なのだ。
フォルクの極悪極まりないショートカットは悪魔たちにとっては憧れそのもの。
誠心誠意込めて創ったトラップを無駄にしてしまう行為こそが、『デビルキング法』の真髄!
「そこの君」
フォルクは壁をぶち抜いてモニターを確認していた悪魔たちの元へとやってくる。
その進撃の力、まさしく悪魔!
さっきまでモニターに映っていたはずなのに、もう着てる!? と悪魔たちはさらなるあこがれの眼差しをフォルクに向けるのだ。
「この罠の張り方はなかなかの悪さがあるね。ついては今後の参考にしたいから、どこにどんな罠が張ってあるのか教えてくれないか」
まさか、あんなカッケー人がこちらに教えを乞うなんて。
悪魔たちは根っからの善良さでフォルクに罠の位置やら種別を教えていく。
なるほど、とフォルクが頷いて、霊たちがその位置や仕組みを理解して、全てを台無しにしていく。
「えー!?」
悪魔は驚いた。
まさかそんなやり方で、そんなあくどいやり方があったなんてと。
こ、これが本物の悪。
ごくりんこ。
「ふ……これも悪徳だろう?」
なんて、フォルクはフードに隠れた顔の奥で微笑む。
それもまた悪役っぽい! そこにシビれる憧れるー!
悪魔たちは次々とフォルクの悪役ムーヴに引き込まれ、素直に家賃を手渡していくのだった。
それで、いいのか――!?
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……ダンジョン、ねぇ……え、これ罠とか壁とか破壊してもペナルティ無いの?じゃあ罠に付き合う必要ないね…
マンションが倒壊するのはたぶん一応困るからそこだけは一応気をつけようか……
…罠の場所は罠使いの知識により把握…
…そして【縋り弾ける幽か影】を発動……罠は驚異だからね…片っ端から爆破していくよ…
…物騒な罠なら発動前に破壊するのが一番楽だものね…
…うーん、根が真面目なのか凶悪だけど悪辣さが足らないな…破壊や解除に連動したトラップも二重トラップもないものな…
…せめて壁の中に毒ガスとか混ぜないとこんな風に壁抜きすれば余裕だものね…
…あ、いたいた。家賃ちゃんと払ってね…あの壁みたいになりたくないよね…?
デビルキングワールドは悪徳が蔓延る世界である。
だが、それは通常の世界とは異なる法と律によって構成されているがゆえに、悪徳こそが美徳であるのだ。
善悪が逆転している世界とでも言えばいいだろうか。
それは他の世界を見てきた猟兵たちにとっても、奇異なる世界であったことだろう。
目の前にはダンジョンと化したマンションがそびえ立っている。
此処には十数年と家賃を滞納した悪魔たちが住まう場所である。すでにトラップハウスのごとくあらゆる場所に罠が仕掛けられ、侵入者――つまりは家賃徴収者たちを拒むように、激烈なる火薬によって完全武装されているのだ。
「……ダンジョン、ねぇ……え、これ罠とか壁とか破壊してもペナルティ無いの?」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は思わず大家に聞いてみた。
大家の顔は破壊こそ悪徳とばかりに大真面目に頷いている。
彼等悪魔の性根は善良其の物であり、真面目なのだ。だからこそ、悪徳の法である『デビルキング法』に基づいて、破壊はかっこいいこと、と刷り込まれている。
だから、メンカルの言葉にも喜んで頷いたのだ。
えぇ……と若干引くかと思われたメンカルであったが、彼女の反応は実に淡白であった。
「じゃあ罠に付き合う必要ないね」
しれっとそう言い放ちメンカルはマンションの前に立つ。
マンションが倒壊するのが一応困るから、そこだけは一応気をつけようとスル程度には、メンカルには歯止めがあった。
「――忍び寄る破滅よ、潜め、追え。汝は炸裂、汝は砕破。魔女が望むは寄り添い爆ぜる破の僕」
詠唱を開始する。
メンカルのユーベルコードに瞳が輝く。
縋り弾ける幽か影(ステルス・ボム)。それが彼女のユーベルコードである。
極めて発見しづらい自爆機能付きガジェットたちがマンションの中に飛び込んでいく。
メンカルもまた罠や策を多用する猟兵である。
であればこそ、彼女の知識と照らし合わせれば、どこにどんな罠を、トラップを仕掛けるかなど、俄仕込みの悪魔たちの思惑など透けて見えるようなものだった。
「――見つけた」
そうつぶやいた瞬間、マンションの中から轟音が響き渡る。
明らかにトラップとして仕掛けられた爆発物の音ではない。まるで誘爆したような音……それが連鎖するようにマンション中から響いてくるのだ。
「物騒な罠なら発動前に破壊するのが一番楽……片っ端から爆破していくのが効率的……」
どごんどごんどんどこどーん! とまるで太鼓を打ち鳴らすようにマンションから響き渡る爆発の音。
それはメンカルの放ったガジェットたちが引き起こす連鎖反応。
流石にやりすぎではないだろうかという心配もなんのその。ここまで悪どくやるほうが彼等にとってはいいのだ。
「……うーん、根が真面目なのか凶悪だけど悪辣さが足らないな……破壊や解除に連動したトラップも二重トラップもないものな……」
さらっとメンカル女史が怖いこと言った。
聞き間違いかな?
聞き間違いだよね?
「……せめて壁の中に毒ガスとか混ぜないとこんな風に壁抜きすれば余裕だものね」
あ、聞き間違いじゃないやつですね。
そのままゆったりとした足取りでメンカルはマンションの中を進む。
それはもうショートカットとかいう部類ではなかった。
もうなんていうか、理不尽の権化。
トラップ? 爆破すればいいでしょ。とでもいいたげなメンカルの所業は、悪魔たちにとって憧れの存在へと映るだろう。
目的のためなら、手段は選ばない。
最速最短最効率を目指すメンカルの悪魔的手法は、ぶち抜いた先にいる悪魔たちをして羨望の眼差しにさせる。
そんな彼等に向かってメンカルは最後のひと押しと言わんばかりに、ヒールも斯く在りきと言わんばかりにつぶやくのだ。
「家賃ちゃんと払ってね……あの壁みたいに成りたくないよね……?」
それは最大級の脅し文句として、悪魔たちをしびれさせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
何とも珍妙な世界ですが……それがここでの理なら従うのみ。
まず【堅甲利兵】にて我が手勢を召喚。
如何なる難関であろうとこの竜胆の旗に集いし勇士たちとなら制覇できましょう。
しかし悪徳も示さねばならぬと――分かりました、覚悟を決めましょう。
そう、兵たちが。
「え?」という声が聞こえた気がするのは無視。
まず罠に対しては、適当な兵を進め犠牲になって貰う。
時には捨て身で解除させたり、私を身を挺して庇わせるよう指示。
そうして安全を確保して、悠々と進んでいきましょう。
兵が底を尽きかけたら再度召喚して何度でも向かわせます。
だんだんと私を見る目が厳しくなってくるのは感じますがこんな所業は今回限りだから許せ! 多分!
悪徳こそが尊ばれるべき美徳たる世界。
『デビルキングワールド』。
これまでの世界にあった善悪の基準が天地をひっくり返した世界にあって、猟兵の眼差しに映る世界は如何なるものに映ったことだろうか。
人の心もまた善悪を宿すものである。
どちらか一つだけの存在などなく、光と闇があるように善悪もまた心に宿るものである。
その葛藤故に人の心は成長していくのだろうが、悪魔たちは性根が真面目すぎる善良なる存在出逢ったがゆえに絶滅の危機にひんしたというのは皮肉でしかない。
悪行が善行としてまかり通る世界に在りて、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は呆然とつぶやいた。
「なんとも珍妙な世界ですが……」
そう、彼の瞳にはあまりにも奇妙な世界であったことだろう。
これまで彼の人生において在りえぬ逆転が起こった世界。
その光景を目の当たりにして、僅かに心が混乱するのもさもありなん。
「それがここでの理なら従うのみ」
だが、それでも景正は生来の気質故であろうか、デビルキングワールドに順応しようと頭をひねる。
彼もまた真面目な気質、武人の気質を持つ猟兵であれば、その実直である性格は郷に入りては郷に従わんとする。
それが果たして吉と出るか強と出るかは、運命次第というやつであろう。
目の前にはダンジョンと化したマンション。
この中に家賃を滞納している悪魔たちが掬っている。それだけならばまだいい。このマンションを拠点とし、要塞化し殺戮に繰り出そうとしているオブリビオンがいるともなれば話は別だ。
「衆を闘わすこと、寡を闘わすが如きは形名是なり――鞍馬の統帥、御覧に入れる」
厳かな光が景正より放たれる。
それはユーベルコードの輝きにして、堅甲利兵(ケンコウリヘイ)たるサムライエンパイア兵の幻影たちが現れる。
槍や弓、鉄砲などといった隊は次々と一気呵成にマンションの中へと突入していく。
そう、如何なる難関であろうと、竜胆の旗に集いし勇士たちとならば制覇できるであろう。
だが、それだけでは足りない。足りないのだ。
ここは悪徳こそが美徳なる世界『デビルキングワールド』。
現に景正が部隊指揮する隣にいた大家は微妙な顔をしている。彼等の法である『デビルキング法』に照らし合わせてみれば、勇敢なことはどちらかというとネガティヴなものであったことだろう。
う、と景正は気がつく。
そう、悪徳も示さねばならないのだ。
それは実直を旨とする彼にとっては、あまりにも抵抗があることであったことだろう。だが、ここは覚悟を決めなければならない。
「……ええ、わかりましたとも。十分承知しています。覚悟を決めましょう」
凛々しい瞳がマンションに向けられる。
それは悪徳の限りを尽くすことを決意した男の目であった。
「そう、兵たちが」
盛大にどこかでずっこける音が聞こえたかも知れない。いや、気のせいだ。
景正は聞こえないふりをしたし、見てないふりをしたし、気がついてないふりをした。
何が何でも目をそらす。
都合が悪すぎる事実であるが故に、景正は目をそらす。それこそが悪徳。
いつもの兵を無駄にしない指揮とは裏腹な無謀な突撃を命令し、サムライエンパイア兵の幻影たちが、『えー!?』と言う気配を感じつつ、景正はテキトーに兵を進めて爆発物の満載したマンションを突き進めさせるのだ。
捨て身で罠を解除したり、時には景正の盾になたり(したり)しながら、彼は悠々とマンションの中を歩む。
例え兵が尽きたとしても、再度召喚すればいい。何度でも向かわせればいい。
それはまさに景正が思い描く将の姿とは真逆のものであった。
「う……」
景正はサムライエンパイア兵の幻影たちが自分を見る目が厳しくなっている気がしていた。
それも気のせいだとは言えないほどに。
だが、景正は居心地悪げにしても謝らない。
ここで謝罪してしまっては将として、そしてなにより、この世界においては悪徳でしかない。
だからこそ、今回ばかりと景正は念じる。
伝われ、この断腸の思い!
今回! 今回限りだから! 許せ! 多分!
だが悲しいかな。伝わっているのか伝わっていないのか、景正を見る瞳は、じっとりとしたものであったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
榊・ポポ
あんだって?家賃取り立てだって??
よっしゃ滞納分コミコミで毟り取ったろ!
ついでに地上げしてやる!
榊不動産でーすド――――ン!!(バリバリ君で突撃)
滞納者はいねがー?!
家賃払え!!
勝手に物件に手入れしてトラップハウスにしてる!
大家の許可無しで改築はダメだね!修理費用も毟り取ってやる!
大家?それは榊不動産のポポちゃんだー!(言いくるめ)
こんな事しても無駄だぞー!
ミニポポちゃんズでトラップをサーチ&デストロイ!
(レーザー射撃・破壊工作・情報収集)
アーンド差し押さえ!!
ポポちゃんがぶっ壊した分?お前ら(住民)が払うんだよ!
売り物にならなくなったら更地にして億ション建てて
投資家に売りつけっからな!
世界は一つだけではない。
それは猟兵であれば誰しもが知ることであったことだろう。様々な世界があり、あらゆる種族が存在している。
だが、『デビルキングワールド』ほど善悪の基準が真逆の世界もまた珍しいものであったことだろう。
悪徳こそが美徳。
それが『デビルキング法』によって定められ、善良で真面目な種族達が護る法である。それ故にこの世界では善悪は逆転している。
「あんだって? 家賃取り立てだって??」
それはあまりにもテンションの高い声であった。
榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)、その姿は数多いる猟兵の中でもさらに奇異なる部類に入る姿をしていたことだろう。
賢い動物。
それが種族を顕す名であるが、フクロウオウムそのものな姿である。本人は高性能アニマロイドであると主張しているが、確認できた者はいない。
そんなポポのテンションの上がり具合と言ったら天井知らずである。
「よっしゃ滞納分コミコミで毟り取ったろ! ついでに地上げしてやる!」
並々ならぬ気迫である。
これは只者ではない。さぞやなのあるデビルであろうと大家は何やら大満足である。そんな大家の心中を知ってか知らずかポポは容赦なく、そのフクロウオウムの力を持ってド――――ン!! とサラダ油で動く原付バイク、通称『バリバリ君』で突撃するのだ。
あまりにもあんまりな光景である。
フクロウオウムが原付きでマンションに突っ込むのだ。
ツッコミどころが多すぎてツッコミ不在であるのが悔やまれる。誰か! お客様の中にツッコミの方はいらっしゃいませんかー!?
「榊不動産でーす! 滞納者はいねがー?! 家賃払え!!」
オラァ!
と言わんばかりなポポの快進撃は地雷原を容易に突破し、あたりには破壊のあとだけが残る。
ギュゥピィィン、とそのつぶらな瞳が滞納者を探す。
もはや子供は泣き出してトラウマに成りかねない迫力である。だが、それ以上にポポの怒りとテンションは天井をぶち抜いている。
「勝手に物件を手入れしてトラップハウスにしてる! 大家の許可なしで改築はダメだね! 修理費用も毟り取ってやる! 大家? それは榊不動産のポポちゃんだー!」
いや、大家はちゃんと他にいるから……という主張もフクロウオウムの羽ばたきの前には虚しい主張にしかすぎない。
圧倒的な存在感でポポは爆発巻き起こるダンジョンマンションを闊歩する。
「こんなことしても無駄だぞー!」
ネットワークチューナーを兼ねた量産型半自律式小型カカポロボが目からビームを乱射しながら、トラップをサーチ・アンド・デストロイである!
ついでに差し押さえの札をぺたぺた張っていくものだから恐ろしいことこの上ない。
もはや怪獣である。
理屈は通じないのである。
例え、正論武装していたところで何の意味もない。
「ポポhちゃんがぶっ壊した分? お前等が払うんだよ! 売り物にならなくなったら更地にして億ション建てて投資家に売りつけっからな!」
もはやヤに丸がつくたぐいの人である。
極悪非道を滑走するが如くポポの快進撃は止まらない。
何か言おうものならば、目からビームで有無を言わせない。その姿はまさしく悪の権化。
刮目せよ、これこそが理不尽にして悪の権化。不動産界のカリスマ!
その名をポポちゃん!
めんたまかっぽじって、耳の穴から指突っ込んで奥歯ガタガタ言わせながら知れ!
これこそが真なる不動産ギャングの姿である――。
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
※二人で一人のキャラです。
「」の台詞はシニストラ
『』の台詞はデクストラです。
「マンションをトラップハウスにするなんて悪い子だね。」
『家賃を滞納するなんて悪い子だよ。』
だからそんな悪い子をブッ飛ばして家賃を奪うワタシタチの方が悪い子だよね💕
判定:POW
この扉トラップがあるね。
こっちの床はクレイモアが仕掛けられてるよ。
んーじゃあ、配下のモンスターを進ませるよ。
≪蹂躙≫しちゃえー。
だってねー。罠って一度発動したらもう使えないんだよ。
「もったいないねー。」
『きっと赤字だよ。』
配下のモンスターには修理もやっておいてね。
「これだけ変わると敷金帰ってこないねー。」
『むしろ罰金問題だよ。』
どんな顔するかなー
悪徳と悪逆こそが美徳たる世界。
その世界に在りて、シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)、その二人はダンジョンと化したマンションを見上げていた。
爆発音が聞こえてくるのはあちこちに仕掛けられた地雷やら手榴弾やら、そんなものが罠として作動しているからであろう。
それはもう、阿鼻叫喚の地獄絵図であったことだろう。
家賃を滞納する悪魔を責めるものはいない。
むしろ、よくやっていると褒め称えるものしかいないのが『デビルキングワールド』である。
姉であるシニストラが言う。
「マンションをトラップハウスにするなんて悪い子だね」
兄であるデクストラが言う。
『家賃を滞納するなんて悪い子だよ』
彼女と彼は一人で二人の躰と精神という異形を持って生まれた存在である。所謂ラスボスというやつである。
彼女たちはマンションを見上げる。
悪い子というのはこの世界においては褒め言葉である。シニストラとデクストラもまた同じように彼等を褒め称えていた。
流石悪魔。
だが、上には上がいることを教えなければならない。
それが魔王と勇者の役割を持つラスボスたる彼等の矜持。
「だから、そんな悪い子をぶっ飛ばして家賃を奪うワタシタチの方が悪い子だよね」
え、そうなの?
とにわかに納得し難い理論であったが、善悪の逆転した世界に在りては、それが正常なることである。
何もかもが逆転したからこそ成り立つものもまたあるのだ。
二人はマンションの中に駆け込んでいく。
扉にトラップがあるだとか、こっちの床にはクレイモアが仕掛けられているだとかを瞬時に見極める。
それはモット悪い子である自分達という自覚があるからこそ、踏み抜いて進まねばならぬという誇りがあった。
「炎の魔王軍――!」
炎の配下モンスターたちが一気に10体現れて、シニストラとデクストの号令によって進む。
何故って? 罠っていうものは一度発動したらもう使えないのだ。役に立たないのだ。
ならば、配下のモンスターたちを犠牲にしてしまえば、あっというまに安全な道が開けるというものだ。
なんて簡単。なんてイージー。
「もったいないねー」
『きっと赤字だよ』
クスクスと笑い合いながらシニストラとデクストラはマンションの爆発に吹き飛ばされた道を歩く。
楽しい。
楽しい。とっても楽しい。悪いこと大好き。これだけ壊してしまえば、大家さんも飛んでやってくるだろう。
修繕は配下モンスターたちに任せているが、修繕と呼ぶほどのこともできないだろう。きっと最初とは見る影もない部屋になってしまっているだろうが、そんなこと関係ない。
「これだけ変わると敷金帰ってこないねー」
『むしろ罰金問題だよ』
二人は笑う。笑う。笑いすぎて、ゲホゲホむせたけど、それでも笑う。
おかしくってしかたない。
だってそうだろう。
大家さんは無残にも姿を変えた賃貸を見て顔を青ざめる……いや、案外喜びそうだな。
この部屋を借りていた悪魔は、破壊され尽くした後、さらに帰ってこない敷金に顔を青ざめる……いや、むしろ尊敬の眼差しで見てきそうだ。
それは悪徳をモットーとするシニストラとデクストラにとっては面白くないかもしれないが、それでも『デビルキングワールド』においては、凶悪極まりないカッケーやつとして認知されることだろう。
だってここは悪徳こそが美徳の世界なのだから――!
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
辺りの風景はおどろおどろしいというのに、住んでいる人?たちは……キマイラフューチャーの住民と気が合いそうですね。
さて、ようは何でもありということですね。
そういうことなら容赦せずに行きましょう。
【吹雪の支配者】を使用、半径95m内の無機物を吹雪に変換します。
柱や床、天井まで吹雪に変えてしまってはマンションが倒壊しそうですし、さすがにそのあたりは加減しておきましょう。
壁と罠は吹雪に変換、元々は迷路のようだったらしいですが、これで見晴らしがよくなりましたね。
階を見渡して家賃滞納悪魔たちがいなければ階段まで一直線に歩いて上の階へ進んだらそこでも【吹雪の支配者】を使用、その階の壁と罠も変換して進みます。
『デビルキングワールド』は新たに発見された世界である。
その世界を目の当たりにした猟兵達の瞳には、この世界はどのように映ったことだろうか。
何もかもがこれまで見てきた世界とは違うものであったことだろう。
まさに地獄と呼ぶに相応しい雰囲気の世界。
だが、高層マンションが立ち並び、銀行や発達した文明を感じさせる建物が乱立している。
ちぐはぐな世界であれど、もっとも驚きに値するのは善悪の逆転であろう。
これまで経験してきた世界に共通するのが善悪の基準であった。
大小はあれど、善と悪とが真逆の意味を持つ世界はなかった。
だが、ここ『デビルキングワールド』は違う。
「辺りの風景はおどろおどろしいというのに、住んでいる人? たちは……キマイラフューチャーの住人と気が合いそうですね」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はなんとも言えない感情で爆発音が響き渡るマンションの前に居た。
すでにマンションはトラップが所狭しと設置されたダンジョンと化していた。トラップハウスと言ってもいい。
爆発音はきっと先に入っていった猟兵たちが仕掛けられたトラップを住人たちである家賃滞納悪魔たちをも度肝を抜く方法で打ち破っている音なのだろう。
「さて、ようはなんでもアリということですね」
セルマは冷静な瞳で見上げてつぶやいた。
物騒なことを考えているときの瞳であった。むしろ、ちょっと喜んでそうな気配すら感じるのは気のせいだろう。きっと。
「そういうことなら容赦せずに行きましょう」
あ、これはあかんやつや。加減の利かないパターンでは?
と誰かが危惧したかもしれない。
だが、もう遅い!
「この領域に足を踏み入れたが最後です……逃しません」
その瞳がユーベルコードに輝く。
尋常ならざる吹雪がマンションに吹雪く。天井であっても柱であっても、床であっても手当たり次第である。
いや、これでも手加減しているのだ。
マンションが倒壊しては意味がないと抑え気味のユーベルコードなのだ。
しかし、それでも吹雪の支配者(ブリザード・ルーラー)たるセルマの猛攻は止まらない。
生物の体温を急速に奪う凍てつく吹雪の変換するユーベルコードの輝きは、壁と罠を吹雪に変換していく。
「ふむ、これで元々は迷路のような増改築だった場所がなんということでしょう……というわけですね」
セルマは頷く。
彼女の目の前に広がるのは、見晴らしの良くなったビフォーアフターの光景である。
壁という壁とトラップが吹雪に変換され、吹きすさぶ中をセルマは悠々と歩んでいく。
階段を登っていく姿は、まさに氷雪の悪魔。
どんな罠も即座に吹雪に変え、爆発音すら響かせぬ圧倒的な力。しかし、力では悪魔たちはなびかない。
けれど、セルマの所業は凄まじかった。
壁という壁をぶち抜いていくのである。
吹雪に変えて、変えて、変えて、変えまくって、バリアフリーどころではないほどにストレスフリーなるお隣さんの話し声が聞こえるどころか、生活其の物が丸見えになってしまうマンションに早変わりである。
「ええ、手加減しているのですよ。本当です」
マンション毎倒壊させてしまわないだけ温情である。
いや、マジで制限なかったら本当にやってた勢いである。それを感じさせるセルマの冷静なる言葉は、悪魔たちをして震え上がらせる。
そう、震え上がるほどにしびれる所業なのだ!
クールなのだ! イカすのだ! 悪魔たちはセルマを見習おうと真面目にメモを取っている。
やってることがえげつなすぎて、彼等にとってセルマは氷雪の悪魔キング。
罠?
そんなの関係ねぇ! とばかりにセルマによる氷雪の行軍はさらに上階へと続くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
(呆れた表情で)色々とても残念な世界ですが、本人達は精一杯頑張って生きているのですよね…。
世界を滅ぼす訳にはいきませんので、何とかしてみましょう。
UC:産巣によりマンション内の無機物から次々と住人同様の悪魔(ここの住人は生物なので)を創造し、思いのままに動かす。
悪魔達は詩乃が進むルート上の全トラップを受け止め、破壊する。
時には倒されようと、詩乃がトラップさえも次々と悪魔に変換する為、圧倒的な突破力を誇示しつつ悠然と進みます。
住民達には「我は悪魔達をも生み出す、魔王をも超える存在、即ち邪神!
我に従い、疾く家賃を払うのです」と威厳とコミュ力をもって悪魔達を従わせます(内心、頭抱えています<笑>)。
いつもは朗らかなる表情で微笑みを絶やさぬ女神の顔は今、僅かに呆れを含んだ色をしていた。
そう、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は『デビルキングワールド』に転移して、その惨状を目の当たりにして呆れ果てていた。
悪徳が美徳である世界。
それが『デビルキング法』によって善悪の逆転の起こった悪魔たちの住まう世界である。
だが、彼等の性根は善良其の物にして真面目である。
今回のこともオブリビオンにそそのかされたが故であるというより、この『デビルキング法が厄介なのだ。
そう、悪魔の美徳。
悪いことはかっこいい! 欲望のままに振る舞うことは素晴らしい! そんなことが書いてあるがゆえに、躊躇なく悪事に手を染めるオブリビオンこそが憧れの的になってしまうのだ。
「色々とても残念な世界ですが、本人たちは精一杯頑張って生きているのですよね……」
本来の真面目さ、善良さが起点になっているからこそ詩乃はとても残念でならない。
神たる身である彼女にとってはそうであっても、悪魔である彼等には真逆のことなのだ。
「しかし、世界を滅ぼす訳にはいきませんので、何とかしてみましょう」
こんなときにも真面目にワルになりきろうとする詩乃は本質的に、デビルキングワールドの悪魔たちと似通っていたのかもしれない。
「神の理により、此処に生命を創造いたします」
彼女のユーベルコードが輝く。
マンションの中に充満した罠の数々の存在を詩乃は知っている。
だからこそ、このユーベルコード、産巣(ムスヒ)が絶大なる効果を発揮する。彼女を中心に半径内にある無機物を次々とマンション住人の悪魔たちと同様に想像せしめるのだ。
それは凄まじき力であったことだろう。
無機物、即ちトラップがユーベルコードの輝きに包まれたかと思えばトラップの悪魔となって詩乃に付き従うのだ。
「さあ、征きなさい。貴方たちの役目を果たすのです」
ああ、詩乃の心の叫びが聞こえてきそうなほどに無理してる悪役ぶり!
女神様があんなひどいことするわけない! と全世界の詩乃信者が叫びそうな光景である。
生み出したトラップの悪魔たちを罠に突撃させ、受け止め、破壊する。
それはあまりにも普段の詩乃の姿からすればかけ離れた所業であったことだろう。信者の誰もが目を覆いたく為る光景であった。
だが、それでも詩乃は大真面目に成さねばならぬことがあるのだ。
どれだけ汚れ役を引き受けようとも、これだけは譲れない。
「我は悪魔達をも生み出す、魔王をも超える存在。即ち邪神!」
とうとう自分で邪神と名乗り始めてしまった!
神たる身である詩乃にとっては、あまりにもあんまりな行動である。だが、これも世を正すため。オブリビオンによる脅威を振り払うため!
そのためならばどれだけ心のなかで頭を抱えていようが、それは些細なことなのである!
詩乃の生真面目さが、変な方向にかっ飛んでいった瞬間であった。
「我に従い、疾く家賃を払うのです!」
それは荘厳なる威厳を放つ詩乃の圧倒的なコミュ力の発露であった。
後光すら放ちそうな勢いである。その光景は、まさしく魔王を越えた邪神そのもの。あまねく全てを見通し、家賃滞納悪魔たちの為す悪事など歯牙にも懸けず、圧倒的な力で持って、彼等の滞納している家賃を徴収せしめる絶対邪神!
ちょっと邪神というには、神々しすぎるあれであるが、あれがあれしてあれな感じでいい感じに悪魔たちには見えた。
例え後光が差し込もうとも、その悪魔すらも生み出してしまうユーベルコードの力の前にはひれ伏すしかない。
やべぇ、やばすぎんだろ、あの邪神……!
家賃を差し出した悪魔たちが詩乃が悠々とマンション内部を歩く姿を見てヒソヒソとやっている。
だが、ここで否定してはこれまでの努力が水の泡である。
詩乃は言い返すに言い返せず、さりとて否定もできずに心のなかで葛藤し、懊悩し続けながらも、生真面目さ故に放り出すこともできずに、邪神ムーヴを続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めなってわぁぁぁぁ!?(トラップを踏み抜いた)
あ、あやうくスパイクに胸をもがれるところでした!?
危険なトラップはこうやってかわしましょう
というわけでシリカ(猫)いってらっしゃーい!(シリカ投擲)
なんか前にもよく似たことをやりましたが今回は本当に作戦です!
いいですかシリカ
ここではわるいこがスタイリッシュです
つまり可愛い小動物を生贄にするなんて、汚いなさすがクノイチきたない!という作戦
決して普段の仕返しとかそんなことはにぎゃぁぁぁぁ?!(ひっかかれた)
くっ、何度戻ってきても投げちゃいますからね!(再度シリカ投擲)
※アドリブ連携OK
火薬の匂いが立ち込めるマンション。
それは凡そ高層マンションには似つかわしい匂いであったことだろう。
歩けば地雷原。もたれかかればトゲトゲプレス。何かに引っかかってころんだかと思えば、手榴弾が転がってくる。
そんなダンジョンと化したマンション……すでにオブリビオンによって、この高層マンションに住まう家賃滞納悪魔たちのトラップは凶悪さを極め始めていた。
根が真面目である悪魔たちは、オブリビオンの指導をすんなりと受け入れ、悪徳こそが美徳たる『デビルキングワールド』において、その悪い子としてのムーヴに磨きをかけていたのだ。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めなってわぁぁぁぁ!?」
そう、我らがサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は今日も元気にクノイチしている。
颯爽と現れ、着地したはいいが早速彼女はトラップを踏み抜いていた。
彼女に襲いかかるはトゲトゲスパイクがいっぱい生えた壁である。
間一髪のところでサージェの胸元をかすめるだけにとどまったトラップを躱し、彼女は息を吐き出す。
「あ、あやうくスパイクに胸をもがれるところでした!?」
その褐色の膨らみに傷が付かなかったことは喜ぶべきことであるが、少年誌的なこう、ね?
不自然に破けた衣服とか、胸元だけ狙いすましたかのような爆破物とか。衣服だけ溶かすスライムとか。
なんかそういうのを期待していたので、ちょっと残念である。
誰の本音かとか、そういうのは今はいいのである!
ゆけ! 悪魔のトラップ達! そこだ! いけいけごーごー!
「危険なトラップが多いようですね……なら、こうやってかわしましょう」
サージェの手には白猫又のシリカさんがつまみ上げられている。
嫌な予感しかしない。
主にサージェが、という意味で。
勢いよくシリカを投げ飛ばしたサージェの笑顔はとてもよかった。なんか前にもよく似たようなことをやった意がするが、今回は本当に作戦なのである。
ぶん投げたシリカに向かってサージェはこうのたまうのだ。
「いいですかシリカここではわるいこがスタイリッシュですつまりかわいい小動物を生贄にするなんて汚いさすがクノイチきたない!という作戦決して普段の仕返しとかそんなことはにぎゃぁぁぁぁ?!」
ものすごい早口でまくし立てたが、そんなことシリカには関係ない。
爆発するトラップ。
その爆発の中から舞い戻ったシリカの必殺の爪が褐色の肌に刻まれる。
それはもう昭和であった。
何が昭和であるかは説明するにはとても言葉が足りないが、昭和的どったんばったんな土煙の中でシリカとサージェの格闘が続く。
「お姉ちゃんはいつもいつもいつも!」
「なんでですかー!? ちゃんと理にかなった作戦でしょう!?」
どったんばったん。
二人の攻防はいつのまにか周囲のトラップを巻き込んで作動させ、どえらい騒ぎとなってマンション中を騒動へと膨れ上がらせていく。
「くっ、何度戻ってきても投げちゃいますからね!」
再度シリカを投擲する。
もう未来は決定しているのだ。
そう、サージェが舞い戻ったシリカに引っ掻かれ、さらなる傷跡を肌に残すという未来が!
爆発の轟音が響き渡る中、サージェの悲鳴とシリカの叱責の声が響き渡る。
それは悪魔たちにとってはある意味で、これまで見たことのない光景であったとだろう。
悪徳が美徳とされるのであれば、サージェの所業は褒められたものであろう。
確かに彼女の作戦通り、あんな可愛らしい猫を投げるなんてとんでもないワルだぜ……とモニタリングしていた悪魔たちは喉を鳴らして、戦慄するのであった。
ついでにいうと、シリカに引っ掻かれるたびに何故か完成が湧き上がっていたとかいないとか――!
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
なんだろう微妙に気の抜ける世界だね
まあ放っておくわけにもいかないし
真面目に対処するとしようか
UCで巨大な飛竜型装甲を纏った使い魔を召喚
マンションにぶちかましさせて
ダイナミックエントリーといこうか
せーの! どっせーいですよー
マンションの内部に入ったら後は
使い魔に中で飛んだり跳ねたりして
天井をぶち抜いて貰いつつ上に向かおう
落ちてくる瓦礫は神気で防いで進むよ
私が言うのもなんですけれど
ちょっと大雑把過ぎませんの?
一々トラップの対処するのもめんどくさいしね
善悪の基準が違うみたいだし
たぶん大丈夫なんじゃないかなぁ
悪魔達も結構丈夫らしいし
…ああ、構造材を固定して崩落は防ぐよ
そういう問題では無い気がしますの…
悪徳が美徳と言われる世界。
それが『デビルキングワールド』である。
この世界を初めて訪れる猟兵は多いだろう。新たに発見された世界であるがゆえに、この世界の善悪が逆転したモラルは、馴染みがなさすぎて戸惑うばかりである。
「なんだろう微妙に気の抜ける世界だね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)がそう思うのも無理なからぬことであった。
悪魔と呼ばれる種族が住まう世界である『デビルキングワールド』には『デビルキング法』と呼ばれる悪魔の美徳と呼ばれる法が制定されている。
悪いことをいっぱいすることがかっこいいこと。
単純であるが、なんとも気の抜ける文言である。
しかし、彼等は本気なのだ。根が真面目で善良であるがゆえに滅びかけた経緯からか、彼等は『デビルキング法』を遵守するためにあらゆる悪徳を積み重ねていくんのだが、根が真面目で善良であるが故に、頼まれたらあっさり家賃を渡してしまったりする。
それくらい本末転倒な世界である。
「まあ放っておくわけにもいかないし、真面目に対処するとしようか」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。
「せーの! どっせーいですよー」
式神白金竜複製模造体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ)をまとった使い魔が高層マンションの壁に突撃し、凄まじい轟音を建てて侵入する。
いや、侵入というには生易しいものであった。
まさかの玄関から入らないダイナミックエントリー。
誰もが目を疑ったことだろう。大家さんだって目をまんまるとさせている。だが、ここは悪徳が美徳の世界。
あまりにも豪快な晶の突入に周囲の悪魔たちは大歓声を送る。
え、こわ。
どういう世界観なんじゃ……と普通の世界の人々ならばそう思っただろう。だが、悪魔たちは悪いことがかっこいいことと認識している。
故に晶の壁から失礼しまーす! という突入方法は大喝采で受け入れられるのだ。
「私が言うのもなんですけれど、ちょっと大雑把すぎませんの?」
晶の身に融合した邪神が、彼女をしても若干引き気味につぶやいた。
突入した使い魔たちはマンションの内部で飛んだり跳ねたりしながら、壁という壁を、天井という天井をぶち抜いては破壊の限りを尽くしている。
ダンジョン?
そんなの知らない! と言わんばかりの暴れっぷりに罠が作動して爆発を引き起こしてもこれ幸いとばかりに超硬装甲と神気を盾に力の限り暴れまわるのだ。
「一々トラップの対処するのもめんどくさいしね」
晶はこともなげに言う。
なんという怠惰! だが、それがいい! このせデビルキングワールドでは、それこそが尊ばれるべき美徳なのだ。
マンションの入り口で晶は崩落してくる壁やらを見上げて言う。
こんなのでいいのかなぁ、と思うが、そもそも善悪の基準がまったく違う世界に生きていたのだ。
このデビルキングワールドではこれが善であるというのならば、それに従わなければならない。
まあ、たぶん大丈夫なんじゃないかなぁとのんびりとしたものである。いつもであれば、一般人に気を使うところであるが悪魔たちは猟兵に匹敵するユーベルコード使いだ。大丈夫でしょ、と晶はのびをする。
「ああ、そうだ。構造材を固定して崩落は防いでおこうね。建物事態がこわれたらオブリビオンも逃げ出すかもだし」
「そういう問題ではない気がしますの……」
日頃のストレスの発散だろうか。
晶は使い魔達の暴れっぷりに息を吐き出す。少し胸がスカっとするのは、身の内にいる邪神がいつもと違う反応を自分に見せたからかもしれない。
たまにかこういう世界もいいのかもなぁ、なんて晶はのんびりとしたことを考えながら、使い魔たちの暴れる音と爆発音をBGMに悠々と階段を登っていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
善悪の基準は人其々、視点を変えるだけで容易く正義と邪悪は裏返る。
戦国の世で身に染みた事実だが、ここまでおかしな世界というのも、何と言うか…引くな。それでいいのか、お前さん達は?
……いや、表面だけを見て蔑むなど愚の骨頂。
彼らの苦難を解消する。己の責務のみに専念すべし。
『ダンジョンの突破』に専念する事で【忍の極意】を発動。忍者としての技能を人外の域に高める。
罠の発動条件を見抜き解除。
解除不能な罠は、人形を身代りにして回避する空蝉の術、爆薬を仕込んだ手裏剣を投じ罠自体を爆破し無効化する火遁の術、などの忍術で無効化し進む。
ガトリングの乱射等、小細工ではかわせない罠は刀での【武器受け】で全て打ち落とす。
「善悪の基準は人其々。視点を変えるだけでたやすく正義と邪悪は裏返る」
それは髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)にとって真理であった。
これまで彼が生きてきた人生。
顧みれば、たしかにとうなずけるものであったかもしれない。戦国の世で身にしみた事実に鍬丸は嫌というほど直面してきた。
習わしであると言われればそれまでである。
人の世とは斯く在りき。
それに馴染めなかったが故に、今の猟兵としての鍬丸がいる。
鍬丸の目の前に広がる『デビルキングワールド』は、その真理をもってしてもおかしな世界であると言わざるを得ない世界であった。
悪徳が美徳。
それは『デビルキング法』が定められてから、ずっと悪魔たちに根付いてきた価値観である。
彼等の根は善良にして真面目である。
だからこそ、絶滅の憂き目にあったというのは皮肉でしかない。けれど、それでも、と鍬丸は思うのだ。
「なんというか……引くな。それでいいのか、お前さん達は?」
その問いかけに応える悪魔たちは居ない。
「……いや、表面だけを見て蔑むなど愚の骨頂」
鍬丸は頭を振って、その考えを否定する。
未だ彼はこの世界を知らない。
善悪の判断が逆転した世界を知らない。無知であることは罪であろう。だが、それでも知ろうとする意志さえあるのならば、何も遅いことはない。
彼等には彼等の苦難があり、地獄がある。
だからこそ、鍬丸はダンジョンへと駆け込む。
「彼等の苦難を解消する。己の責務のみに専念すべし」
彼の瞳がユーベルコードに輝く。
今の鍬丸の胸中にあるのは、ただ『ダンジョンを突破』するという一念のみ。
それこそが、忍の極意(シノビノゴクイ)である。忍者としての技能を人外の領域へと引き上げる。
こと、それに関してだけ言えば鍬丸の技量は物理法則すら無視する鬼神の如き領域まで強化されるのだ。
罠の発動条件など見ていなくても手に取るようにわかる。
一瞬の早業にて解除せしめれば、彼の通った道には爆発音一つ立つことはない。
「解除不能な罠などはない――!」
空蝉の術を使うまでもない。爆薬を仕込んだ手裏剣を投げつけ、罠事態を爆破してしまえばいい。
あらゆる状況にたいいて対応する忍術。
それはワンダフルというほか無い。モニタリングしていた悪魔たちがどよめく。わーお、ニンジャ……オー……と何故かアメリカンな反応をしていたことを鍬丸は知らない。
だが、それでもあっという間に鍬丸は罠を踏破する。
それ以外のものなど必要ない。
今の彼は忍びである。
たった一つの目的のために命を賭す者である。
「ガトリングの乱射等……!」
打ち込まれる毎分数千発と言われたガトリングの弾丸の斉射を手にした忍び刀で尽くを撃ち落とす。
それは人の業ではなかった。
もはや鬼神。忍びの神の如き技量でもって、ガトリングの弾薬が尽きるまで鍬丸は全てを撃ち落とし、傷一つ負うことなく、ダンジョントラップを踏破する。
その姿は圧倒的であり、悪魔たちが絶句するに値する光景であったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
善悪があべこべになった世界かー
ああ、いや他の世界と比べたらって話だけどね?
[SPD]
さて突破方法だが罠があくまで対悪魔用なのがポイントだ
つまりドローンは想定してない筈だからEsを先行させたら
道中の罠を【索敵】で割り出して貰って
雷鳴で片っ端からぶっ壊していくぜ(UC、地形破壊
『了解…ですがそんな行為(器物破損)をして大丈夫ですか?』
この世界は悪行が正義らしいし大丈夫だ問題ない!
リビングとか面倒臭そうな所は壁をぶち抜いて
卑劣なショートカットで対処な
悪魔達のいる部屋に着いたら
サングラスを装着して悪な雰囲気を出しながら(コミュ力
【オーラ防御、念動力】纏いながら突撃だ
家賃徴収の時間だオラァ!
アドリブ歓迎
新たに発見された世界である『デビルキングワールド』は猟兵たちにとって、これまでとは違った意味を齎した世界であったのかも知れない。
根は善良であり、真面目な悪魔を自称する種族達が住まう世界。
彼等は真面目であるがゆえに絶滅しかかったという経緯を経て、『デビルキング法』と呼ばれる悪徳こそが美徳とされる法を、これまた真面目に遵守しようとがんばっている。
がんばって悪事を働くというのも、通常の世界に住まうものから見れば、あまりにも奇異に映ったことだろう。
「善悪があべこべになった世界かー……ああ、いや他の世界と比べたらって話だけどね?」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)はなんとも言い難い顔をしながら、マンションを見上げていた。
時々破壊音が響き渡っているのは先に突入した猟兵たちがトラップを物ともせずに踏み抜いている音であろう。
それは凄まじいものであり、仕掛けられたトラップの凶悪さを物語っているのかもしれない。
下手に突っ込んでは猟兵と言えど生身の人間である祐一にとっては危険なものであった。
だからこそ、彼は頭を巡らせる。
「……さて、罠があくまで対悪魔用なのがポイントだな」
そう、家賃を滞納している悪魔たちは、悪徳をなそうとするがゆえに家賃を滞納する。だが、家賃を取り立てる徴収人もまた悪魔であることは言うまでもない。
ならば、その仕掛けられている罠はすべて悪魔を想定しているわけである。
「なら、ドローンは想定していないはずだ……『Es』、出番だぜ」
「了解……ですがそんな行為をして大丈夫なのですか?」
AIの若干倫理観に悖るような声が響くが、祐一は気にするなと笑う。何故なら、ここは『デビルキングワールド』である。
「この世界は悪行が正義らしいし、だいじょうぶだ問題ない!」
というわけで、ということではないが祐一の行動は盛大であった。
ドローンから送られてくる索敵情報を元に罠の位置を特定すると有無を言わさず、ユーベルコードの輝きを秘めた冬雷(トウライ)の一撃でもって撃ち抜いていく。
片っ端から容赦なく破壊していく姿は、通常の世界であれば褒められたことではないだろう。
だが、此処では違う。
どこまで行っても破壊行為こそがかっこいいことなのだ。
憧れられることなのだ。
だからこそ、器物破損なんか路傍の石を蹴っ飛ばすくらいの気軽さで行うことこそが、善行と言えよう。
「決め台詞はなんにしようかな……サングラスもいるよな……」
爆発音にまぎれて祐一がつぶやく。
ヒール役をやることになれていないのだろう。彼の中にある悪役のイメージがサングラスというのもまたギャップがおもしろい。
リビングや面倒な場所は壁をぶち抜いて、ダンジョンの意味すら踏み躙るように祐一はマンションの中を踏破していく。
卑劣であれば卑劣なほど良い。
それがデビルキングワールドの掟である。だからこそ、ダンジョンをマッピングするなんてまどろっこしいことはしない。
するわけない。
「え、なになになに!?」
真面目な悪魔の一人が困惑するように破壊音響き渡るマンションを見回す。そこへオーラの力を纏った祐一が壁を蹴破って登場するのだ。
「家賃徴収の時間だオラァ!」
!?
サングラスに青筋建てて、背後に『!?』と謎のエフェクトを利かせながら祐一は殴り込むのだ。
おうおうねーちゃん払うもの払ってもらおうやんけ!
そんな雰囲気のまま乗り込んだ祐一の姿は悪魔にとって、しびれる存在であったことだろう。
強引なのも好きなのだろう。すんなり、家賃を手渡されて祐一は微妙な気持ちになった。
こんなすんなり渡すなら家賃滞納するなや……多分、そんなことを思ったのだろう。気合い入れて悪役の雰囲気を醸し出しのが肩透かしになった気分で祐一はD(デビル)を片手に、さらなるダンジョンの奥へと突き進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
悪徳が美徳とは、なんともやりにくいですね…
この世界の住人が皆善良なのは喜ばしいことなのですが
とはいえ、それを利用するはオブリビオン
ならば騎士として討ち果たすのみです
UCの妖精ロボを●操縦し情報収集
●ハッキングやレーザーでの回線への●破壊工作で電動の罠を無力化
落とし穴等のアナログな物は●瞬間思考力で作動を●見切り、●推力移動で回避
攻撃系は剣盾の盾受け武器受けで防御しながら●怪力で破壊
搦め手と真正面からの両面のアプローチで突破しつつ住人の反応を見てみましょう
そういえば
デビルキング法で悪いことが善い事と定められているならば、
善い事は悪魔の皆様の目にどう映るのでしょうか…
(次章のフラグ)
騎士道を宿すウォーマシンであるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、これほどやりにくい世界はないだろう。
「悪徳が美徳とは、なんともやりにくいですね……」
彼の炉心に燃える騎士道精神とは相容れぬ世界観。
善悪の基準が逆転した世界であればこそ引き起こされる深刻なエラー。
「この世界の住人が皆善良なおは喜ばしいことなのですが……」
そう、この世界『デビルキングワールド』に住まう悪魔たちの心根は皆善良で真面目なのだ。
それが唯一の救いであった。
悪魔たちは真面目なのである。
真面目であるがゆえに悪魔の美徳たる『デビルキング法』を遵守し、日夜悪事を真面目に働いているのである。
相反するような事柄であるが、それもまたトリテレイアを含む異世界に住まう猟兵たちの持つ倫理観と同様に悪魔たちにとっては、それこそが守らねばならぬモラルなのだろう。
「とはいえ、それを利用するはオブリビオン。ならば、騎士として討ち果たすのみです」
トリテレイアの周囲に自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)が浮かび上がる。
マンションの至るところにトラップが仕込まれていることは、すでにわかっている。
地雷原や壁トラップ。手榴弾にマシンガンにガトリングガンなど凡そトラップと呼んでいいのかもわからぬほどに凶悪さを極め始めていた。
重火器が多いというところが、この事件の首謀者であるオブリビオンの趣味なのかもしれないとトリテレイアは分析していた。
妖精ロボたちによるハッキングによってマンション中に散らばっていた電動の罠を無効化していく。
「アナログなもの……なるほど、手榴弾ですか。ドアノブに引っ掛けているとはまた古典的ですね」
だが、古典的であるが故に威力は言うまでもない。
一瞬の思考と共にトリテレイアのスラスターが噴き、その爆風を回避する。
吊り天井が落ちてくれば大盾で受け止め、怪力で破壊する。
「この程度のものですか。もっと用意周到かと思われましたが、この程度」
剣で振り子の大斧を薙ぎ払い粉々に破壊する。
電装関係の罠は全てトリテレイアと妖精ロボのハッキングによって取り除かれている。今もモニタリングしている悪魔たちの反応を逆にトリテレイアは見ていた。
彼の圧倒的な力と、罠を無遠慮に踏破する姿は、悪魔たちにとっては脅威に映ったことだろう。
「罠が作動しないってどういうこと?! え、ボタンも利かない?」
なんでなんでと悪魔たちは大慌てである。
あの騎士鎧の猟兵を前に悪魔たちは正直ビビっている。あくどいことをしていないのに、平然としている。
トリテレイアは搦手と正面突破。
両方のアプローチで己に対する悪魔たちの反応を探っていたのだ。
デビルキング法によって悪いことが善い事と定められているがゆえに、善い事は悪魔たちにとってどのようなものに映るのかを知りたかったのだ。
それは最早言うまでもないだろう。
「なんともしてもあのだっさいやろーをぶっ飛ばして、俺達が真にクールなヤツらだってことを知らしめてやろうぜ! えいえいおー!」
そう、悪いことがかっこいいこと、クールなことだとするならば。
善いことはかっこわるいこと、ださいことなのだ!
故に悪魔たちは奮起する。かの白き機械騎士の鼻を明かしてやろうと、真面目に悪事を働くためにトリテレイアへと殺到せんと直接攻撃に移行するのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
なんて恐ろしい世界でしょう!
悪徳が美徳などとは恐ろしい!
でも郷に入っては郷に従えです
これはもう仕方ない事ですね
指を鳴らし、身長18mばかしの蒸気ゴーレムを召喚する
「緊急警報! 巨大ゴーレムが暴れています! 退避をお願いします!!」
罠とか仕掛けとかありますが、そんなのは踏み砕いて進んでいきます
なんて酷い光景でしょう。胸が痛みます
「あの! 出す物を出せば進路変更もあるようです! 具体的には家賃ですね! 10数える間だけ待ってくれるようです!!」
心が痛みますが地元の流儀には逆らえません
カウントを九つばかし飛ばして、関係ない場所に鉄拳の示威行為のお茶目を入れつつ
皆さんの賢明な行動に期待しましょう
「なんて恐ろしい世界でしょう! 悪徳が美徳などとは恐ろしい!」
そんな風に慄くように才堂・紅葉(お嬢・f08859)の声が『デビルキングワールド』に響く。
善悪の基準が裏返った世界において、これまで経験したことのない世界を前に猟兵である彼女をしても恐れを抱かずにはいられなかったのかもしれない。
だが、我々は知っている。
我らのお嬢がそんなタマではないことを!
「でも郷に入っては郷に従えです。これはもう仕方ないことですね」
なんだか棒読みな気がするし、妙に芝居がかっているような気がするのは気のせいだ。気の所為だったら気の所為だってば! あとでお嬢にシバかれんぞ!
ぱちんと指を鳴らし、全長18mもあろうかという蒸気ゴーレムが高層マンションの前に鎮座する。
それはユーベルコードによって呼び出された、蒸気王遠隔機動(リモートモード)状態のゴーレムであった。
拡声器を手に紅葉は声を張り上げる。
「緊急警報! 巨大ゴーレムが暴れています! 退避をお願いします!!」
蒸気王が足をすすめる。
玄関の高さが合わないとかそんなことお構いなしに罠ごと踏み抜いていくものだから、周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図である。
罠が仕掛けられていると聞いていたが、そんなのは踏み砕いて進めと言わんばかりに紅葉と蒸気王は進む。
天井をぶち破って蒸気王の頭がこんにちは。
どっかんどっかんと火薬が爆ぜる音が響き渡るが、紅葉の顔は爽やかな笑顔であった。うわ、こわ。
「なんてひどい光景でしょう。胸が痛みます」
手の甲にハイペリアの紋章を輝かせていることが、蒸気王のコントロールを持つ事を示しているのだが、わざとらしくしなを作ってよよよと紅葉は嘆いて見せた。
悲劇。
悲劇である。これは怪獣が街を踏み荒らすのと同じようなものである。進路上に罠があったから踏み抜いただけ。
ただそれだけのことなのだと言わんばかりに紅葉は蒸気王に盛大に足踏みさせる。地震かと見紛うほどの強烈揺れがマンションを襲う。
悪魔たちからすればたまったものではないだろう。なんでこんなことになったのだろうとさえ思っているのかも知れない。
「あの! 出すものを出せば進路変更もあるようです! 具体的には家賃ですね! 10数える間だけ待ってくれるようです!!」
そんな声が拡声器から響き、紅葉のテンカウントが始まった瞬間、蒸気王の鉄拳がマンションの壁をぶち抜く。
今、カウント9つ位飛ばさなかった?!
そんな抗議の声が響きそうになった瞬間、さらにカウントを9飛ばして鉄拳がマンションにめり込む。
それは示威行為であった。
「ちょっとしたおちゃめです」
そんなおちゃめあるかい!
またまた鉄拳が飛ぶ。悪い。ワルすぎる。このお嬢、皆さんの賢明な行動に期待しましょうとかなんとか行って楽しんでる……!
なんというワル。
余裕を与えてから、その余裕を取り上げるという悪魔的手法!
だが、それこそがデビルキングワールドにおいては尊ばれることである。この上なく善行であり、クールであり、かっこいいことなのだ!
「たまにはこういうのもいいですね」
紅葉は爽やかに笑って、蒸気王の鉄拳をまたもやテンカウント待たずに打ち込む。
マンションの壁面に穿たれた大穴の数だけ、紅葉は善い笑顔を浮かべ、取り立て人という労働に精を出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『悪魔のボディガード』
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POW : ガードキャノン
自身の【デビルキャノン】から、戦場の仲間が受けた【攻撃の合計回数】に比例した威力と攻撃範囲の【暗黒の砲撃】を放つ。
SPD : 護衛契約
他者からの命令を承諾すると【契約書】が出現し、命令の完遂か24時間後まで全技能が「100レベル」になる。
WIZ : トリモチシュート
【デビルキャノン】から【トリモチ弾】を放ち、【強烈な粘着力】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:もにゃ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「やべぇ! とんでもないヤバい奴等を大家さん雇いやがった!」
悪魔たちが慌てふためく。
彼等は家賃滞納悪魔である。これまで数十年となく家賃を滞納してきたワルである。
それは善悪が逆転している世界であるからこそ、善行を積み重ねてきた証でもあった。
だが、今回の家賃取り立て人たちは、これまでとは一線を画する存在であった。
「私達が丹精込めて改築したダンジョンをこうも簡単にぶち抜いてくるなんて……」
震える悪魔たち。
それはそうだろう。大抵の猟兵達は皆、ショートカットなんて当たり前という風に罠を踏破してきているのだ。
悔しだろう。悲しいだろう。
「……なんて――カッコイイんだ! 俺達も負けてはいられない! ボディーガードの悪魔さん! やっちゃってください! 俺達は俺達のD(デビル)をビタ一文渡さないぞ!」
そう、猟兵たちのあくどいやり方はカッコイイ。正直しびれる。
けれど、己たちにも退けぬものがあるのだ。
重々しい装甲に包まれたボディーガードの悪魔たちが歩みをすすめる。
「任せておけ! 今までも、これからも真面目に悪事を働くために、勤続20年の私達が君たちの家賃滞納を保証しよう。ゆくぞ!」
どたどたと重たい音を立てながら、『悪魔のボディーガード』たちがどこからともなくダンジョンと化したマンションに飛び散っていく。
彼等はこのマンションのダンジョンという地形を熟知しているものたちである。
ゲリラ戦などお手の物なのだ。
そうでなくても、悪魔とは真面目な者たちである。
契約は絶対!
そう、彼等は家賃滞納悪魔たちを護るために戦う、正義の……あ、いや、悪魔の手先なのである――!!
シニストラ・デクストラ
「勤続20年のボディガードだって…。」
『ずっと働いているなんて善人だね。』
「給料もらってるのかな?」
『払ってないんじゃないかな?給料踏み倒しなんて悪そうだし。』
行動:
引き続きシニストラの魔王軍の配下モンスターがマンションを改築しています。
『敵が地形を熟知してるなら、知らない地形にしたらいいよ姉様。』
「きっとビックリするわね。」
戦闘:
奇襲で混乱を尻目にデクストラが≪援護射撃≫を行い、シニストラが≪蹂躙≫を行います。
また、配下モンスターは「炎属性」の攻撃で改築時のゴミを燃やして「火事だー。」と叫んで注意を引き付けます。
「嘘だよ兄様」
『火事のふりって悪い子だね姉様』(でも実際の放火できない子達)
猟兵たちの活躍……と言っていいのか、今やダンジョンと化したマンションはトラップを踏み抜いたり、無効化したり、はたまたダンジョンと呼んでいた残骸にしかならぬほどに無理くりにショートカットした痕が痛々しい光景へと様変わりしていた。
それは猟兵たちの暴虐なる立ち振舞い……即ち、ワルのやり方によって、オブリビオンのワルさを信奉する悪魔たちの心変わりを狙ったものであった。
だが、そこで諦めていたら試合終了だよってんで、悪魔たちが呼び出したのは勤続20年を誇る『悪魔のボディーガード』である。
彼等は根が善良であるゆえに、その見た目の怖さとは裏腹に真面目な勤務態度でこれまで何度も家賃滞納を取り立てるギャングたちから家賃滞納悪魔たちを護ってきたのだ。
いや、わかっているとも。
一体何を言っているんだということくらい。
だが、善悪の逆転した世界『デビルキングワールド』ではこれこそが美徳なのだから!
「勤続20年のボディーガードだって……」
『ずっと働いているなんて善人だね』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は彼等の前に現れた『ボディーガードの悪魔』の勤務実績に若干引いた。
なんで引いた! 言え!
いや、まあ非常に分かりづらいが、真面目な勤務態度というのは、悪徳が美徳の世界においては、そう褒められたものではないからだ。
シニストラとデクストラもまた、魔王と勇者である。
だからこそ、彼等の勤務実績に、ドン引きであった。
「お給料もらっているのかな?」
『払ってないんじゃないかな? 給料踏み倒しなんて悪そうだし』
そんな彼等の前で肩に担いだガードキャノンを向けるは『ボディーガードの悪魔』であった。
「確かに踏み倒されているが! それは彼等の美徳故! 我らは我らの職務を全うする!」
頼まれたら断れないのが悪魔たちである。
そう、どうあっても仕事はしてしまうのである。例えそれが美徳ならざる悪徳だとしても。
放たれた暗黒の砲撃がぶっぱされる。
後先考えない砲撃が二人を襲うが、彼等の前に立つは炎の魔王軍たる配下モンスターたちである。
炎の属性を持ち、二人を護るとマンションに散っていく。
何を、と言えばそれは陣地作成である。
破壊に次ぐ破壊。
その残骸を使って、二人の呼び出した配下モンスターマンションを改築していくのである。
『敵が地形を熟知してるなら、知らない地形にしたらいいよ姉様』
デクストラの口がカタカタ笑う。
それに対してシニストラの口も同じようにカタカタ笑った。それは二人がとびっきりのいたずらを思いついた証拠であった。
「きっとびっくりするわね」
二人が見ている前で汲み上げられていく陣地。
それはマンションを改築し、その間をすり抜けるようにして逃げる二人を負う『悪魔のボディーガード』にとっては知らぬ土地と同義であった。
「ぬう! なんだ、この迷路は! 私達は知らないぞ、こんなダンジョン……! なんといういたずら! すげぇ!」
もう勤務のことは若干頭からすっぽぬけているが、それでもボディーガードの仕事をしようとするところが、悪魔たる所以であろう。悪魔ってなんだっけ。
『どんどん撃ってしまうよ』
手にした勇者の銃から放たれる弾丸が、『悪魔のボディーガード』の鎧を撃つ。
それに気を取られていた間にシニストラが魔王笏を振りかぶって、『悪魔のボディーガード』を追い詰めていく。
「だが、この程度では! 私達がボディーガードと呼ばれる所以! それはこのタフネス!」
だが、次の瞬間、シニストラが命じていた配下モンスターたちが改築時に出たゴミを燃やして『家事だー! いや、火事だー!』と叫び始める。
これには『悪魔のボディガード』も大慌てである。
「しょ、消火! そう、消化器! あわわわわっ!」
真面目である。
とことん真面目なのである。
「嘘だよ兄様」
『火事のふりって悪い子だね姉様』
ごつん! と無防備な『悪魔のボディガード』の後頭部を打ち据えるシニストラとデクストラ。
本当に放火することができないほどに根が善良なのは、彼等も同じであった。
悪いことをしているけれど、一線は越えられない。
けれど、それでいいのだ。
真面目に悪事を働く悪魔であるからこそ、彼等は本当に悪いことをしないだろう。
勤続20年の『悪魔のボディーガード』を昏倒させて、ごめんね、と謝る程度には、彼等もまた正しく悪魔なのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
勤続二十年――それはもう忠義であり美徳ではなかろうか。
とまれ、今回も詭計、悪辣を以て制するが勝ちのようですな。
【風鬼来】にて忍びを呼び出し、密かに背後に回り込むよう指示。
自らは伏兵の控えていそうな場所で声を張り上げましょう。
えー、諸君。諸君らを悪魔の中の悪魔と見込んでの提案ですが――我らの方に寝返りませんか?
裏切りや契約破棄とは古くより悪の中でも最たるもの。
いま鞍替えすれば、人面獣心、表裏比興とその悪名は後々まで語り継がれるでしょう。
それで効果があろうと無かろうと関係なく、靡く気配の無い者は忍びに不意打ちさせ、姿を晒した者は斬撃の【衝撃波】で仕留めます。
さ、家賃を徴発したら次に進みましょう。
悪徳が美徳の世界である『デビルキングワールド』において、通常の世界での悪徳こそが称賛されることである。
故に、『悪魔のボディーガード』たちの言う勤続というワードは在る種の蔑称であったのかもしれない。
けれど、そこはそれ。
根が真面目で善良なる悪魔たちにはどうしようもないことなのかもしれない。
悪事に憧れつつ、けれど悪事をしつくすことができない。
それが悪魔たちを憎むに憎めない要因であったのかも知れない。
鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)もまたそう感じている猟兵の一人であったのかもしれない。
「勤続二十年――それはもう忠義である美徳ではなかろうか。とまれ、今回も詭計、悪辣を以て制するが勝ちのようですな」
そのとおりである。
だが、この世界においては悪徳そのものである。
「相手はこのマンションダンジョンの地形を熟知している者、ならば――。およそ戦は、正を以て合い奇を以て勝つ――そして決するは千里の外に」
その瞳がユーベルコードに輝く。
いつのまにか景正の背後に控えているのは風鬼来(フウマ・ケンザン)によりて呼びつけた風魔忍者である。
その気配はまるで見えない存在であり、主である景正の呼びかけによってのみ姿を顕現させる気配無き者。
「さて、私は、と」
景正は伏兵として『悪魔のボディーガード』が潜んでいそうな場所であえて声を大にして張り上げる。
「えー、諸君。諸君らを悪魔の中の悪魔と見込んでの提案ですが――我らの方に寝返りませんか?」
――!?
それは電流のように『悪魔のボディーガード』たちの間に広がった。
あくまのなかのあくま。
あまりにも甘美な響き。
え、まじで? あの御仁、私達のことをそんなに買ってくださってる? トゥンク……。
と謎のエフェクトとつぶらな星を宿す瞳になりながら『悪魔のボディーガード』たちに心をときめかせるのだ。
砲撃することも忘れている。マジか。それでいいのか。
そう、景正の狙いは悪魔としての性質を利用する奸計である。
裏切りや契約破棄は古くよりは悪の中でも最たるもの。
デビルキングワールドにおいては、極上のワルさ!
「今鞍替えすれば、人面獣心、表裏比興とその悪名は後々まで語り継がれるでしょう」
微笑む景正。
えぇ……あの御仁。マジで? マジでおっしゃってる? あんな情熱的な誘い文句アタイ初めて……!
みたいな雰囲気が『悪魔のボディーガード』の間に流れていく。
若干もじもじしているのが、微妙に気になるが、それでも景正は関係なかった。
そう、この文言に効果があろうとなかろうと関係なく、すでに景正は風魔忍者を放っている。
そう、狙うは闇討ち不意打ちなる極悪非道なる所業。
ふらふらと誘われるように『悪魔のボディガード』が姿を表せた瞬間、景正はその刀を奮った衝撃波によって切り捨てる。
「ぐ、ぐわー!? 私の純情を弄んだー!? でも、それがいい! すんごい悪い! かっこいー!」
微妙に倒している気がしないのだが、景正はなんとも言えない気持ちになる。
その背後でさらにドサドサと風魔忍者の不意打ちによって打ち倒され、ばたんきゅーと倒れ込む『悪魔のボディガード」たち。
さらに追い打ちをかけるように景正は微笑む。
「さあ、家賃を頂きましょう。わかっていますね?」
悪魔の心を弄ぶ悪魔キラーと化した景正の甘言は、悪徳が美徳とされる世界において、今後悪魔をカモる魔法の言葉として、一瞬流行ったり流行らなかったりしたのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
家賃滞納を保証するとか中々のパワーワードです
「中々の職務熱心さですね。契約履行にかける素晴らしい職業意識ですね」
顎に手を当て感嘆の溜息を漏らす
地形を把握した見事なゲリラ戦の手並みも素晴らしい
それも、契約履行にかける情熱の表れだろう
「なので、とても残念です。どうやら、契約書をよく読んでいないようですね」
拡声器で告げ、契約書の見直しを勧める
「そこには『勤続20年満了後、護衛者は住人一同から家賃を取り立てる裏切りの悪事を為す事』と記されていますよ?」
袖の中の帝竜の秘宝の効果で、契約書の内容はこちらの思うままです
哀しいお話ですね
「いやまったく。住人の方々は何を思って、そんな契約をなさったのでしょうね」
「くぅ……! 仲間たちが次々と倒れている……! だが私達は負けない! 何故なら、家賃滞納悪魔の皆さんの契約書がある! これが在る限り、私達は家賃滞納を保証するために力を降るうこうとができる!」
ダンジョンと化したマンションは、すでに廃墟じみた光景が広がっていた。
どこを見てもダンジョン……? と小首をかしげたく為るほどにショートカットされ、無慈悲にもトラップは踏み抜かれている。
もうダンジョンとは言えないタダの平屋みたいに壁はぶち抜かれているせいで、せっかくのダンジョンの地形を熟知した戦いができない。
だが、彼等には契約履行という責務がある。
いや、契約不履行って悪だと思うんだけど、そういうところは真面目なのね、と誰もツッコま無い所が、悪魔たちの真面目さを物語っている。
「家賃滞納を保証するとかなかなかのパワーワードです」
才堂・紅葉(お嬢・f08859)は呆れ返るというよりも、かえって関心すらしていた。
こんな世界であっても、法があろうとも、悪魔たちの勤勉さ、真面目さは変わらないのだから。
「いたぞ! 侵入者だ! それいけー!」
ゴーゴー! と雪崩れるように紅葉を発見した『悪魔のボディガード』たちが更地となったダンジョンに駆け込んでくる。
「なかなかの職務熱心さですね。契約履行にかける素晴らしい職業意識ですね」
顎に細い手を当て感嘆の溜息を漏らす紅葉。
更地になっているのならば、その瓦礫をも利用したゲリラ戦を行う『悪魔のボディガード』たちの見事な手並みも良い、と紅葉は関心しきりであった。
他の世界の人々もこういうところは見習って欲しい。
そんな風に思うほどに彼等の働きぶりは素晴らしいものであった。
だからこそ、そこを突く。
拡声器を手に紅葉は声を張り上げる。とても残念だ。
「なので、とても残念です。どうやら契約書を良く読んでいないようですね!」
その声に、え? と『悪魔のボディガード』たちは足を止める。
なになに? どしたん? と彼等は無防備に姿を表す。こんなときにまで真面目か! と誰も突っ込まない。紅葉の言葉に素直に出てきたのだ。
まじかよ。
ホントいい子すぎんだろ……。
「そこには『勤続二十年満了後、護衛者は住人一同から家賃を取り立てる裏切りの悪事を成すこと』と記されていますよ?」
ファ!?
『悪魔のボディーガード』たちは皆、一様に手にした契約書を見直す。
そこには確かに紅葉の言う通りの文言が記されていた。
「え、え、え? なんで? この間までなかったよな? ちゃんと読んだよね?」
あれ?! と彼等はみな混乱している。
それもそのはずである。
彼等は皆真面目なのである。悪魔だから。だから、契約内容もちゃんと把握しているし、覚えている。
だからこそ、何故契約書の内容が記憶と食い違っているのか理解できないのだ。
そう、それこそが紅葉のユーベルコード。
帝竜の秘宝:因果の一筆(カルマストローク)。
契約書の内容に彼等も知らない追記事項を追記し、彼等の戦闘力を増加させるのだ。さらに契約の内容は紅葉の思うままである。
こわっ。なにそれ狙いすましたかのようなユーベルコードじゃん! と誰もが思っただろう。
けれど、悲しいけれど、これが現実です。
契約はー?
ぜったーい!
そういうことである。悪魔は真面目な種族である。
契約書にそう書いてあるしなぁって、信じてしまう。彼等は次々に家賃滞納悪魔たちに家賃を徴収する取り立てを行い始める。
「えー!? なんで!? なんで急に裏切ったのー!?」
「だって、契約書に書いているし」
「そんなー!」
なんてやり取りがマンションのあちらこちらで巻き起こる。それを紅葉は見つめ、演技力を遺憾なく発揮して肩をすくめる。
「いやまったく。住人の方々は何を思って、そんな契約をなさったのでしょうね」
全部紅葉の掌の上であるが、それをおくびにも出さないのが真のワルである。
常識の楔から解き放たれた猟兵のえげつなさ、此処に極めりである――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
用心棒のお出ましか。
滞納家賃の取り立てという大義はこちらにある。正々堂々、小細工無しで相手してやろう。
「双身斬刀」を構え、迎え撃つ。相手の攻撃を【見切り】、【武器受け】で受け流し、かわす。「風魔手裏剣」による【衝撃波】の刃の投擲で反撃。
任務遂行の為なら万能になれるユーベルコードか。大したものだな。正攻法で倒すのは難しい、か。
だが、正々堂々と言ったな。あれは嘘だ。
風魔手裏剣での攻撃に紛れ、密かにUC【春花の術】を発動しておいた。衝撃波の刃は囮。その巻き起こす風に紛れた無力化の毒が本命さ。
睡眠、麻痺、幻惑の毒を吸い動きを鈍らせた相手を「夜刀神」のワイヤーの【ロープワーク】で縛り拘束していこう。
ダンジョンと化した高層マンションの中を進む髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)の前に現れたのは、『悪魔のボディーガード』たちであった。
彼等はこの高層マンションの家賃滞納悪魔たちに雇われたものたちであり、二十年無遅刻無欠席のエリートボディーガードであった。
だが、悪徳が美徳なる『デビルキングワールド』において、無遅刻無欠席は褒められたものではない。それはひとえに悪魔たちの性根の善良さ、生真面目さが起因しているのだろう。
どこまでも真面目な彼等にとって、頼まれごとは断れないのだ。
それでこそ自称悪魔であり、良い子の種族の証明でも在った。
「これ以上先には進ませない! 私達は決して家賃であるD(デビル)を渡したりなんかしないぞ!」
漲る決意。
彼等の手には契約書が握られている。
それは彼等に力を与えるユーベルコードであり、契約を履行しなければならないものとして、彼等の生真面目さを縛るものであった。
「用心棒のお出まし化。滞納家賃の取り立てという大義はこちらにある。正々堂々、小細工なしで相手してやろう」
鍬丸もまた退けぬ身である。
このダンジョンと化したマンションのどこかにオブリビオンが存在しているのであれば、これを討たなければならない。
それこそが鍬丸の使命だからだ。
手にした輝く忍者刀を構え、互いにじりじじりと距離を詰めていく。
相対するは悪魔。
それ一人ひとりが猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。ならばこそ、ここは油断などできようはずもない。
どちらからともなく駆け出す。
手にしたバズーカの砲身を振り回し、鍬丸を圧殺せんとする『悪魔のボディーガード』。
「えい! えい! とりゃー!」
なんとも気の抜けた声である。
良い子ばかりである悪魔にとって、戦いにはそもそも不向きな心根の者が多いのかもしれない。
だが、それでもその一撃に触れてしまえば猟兵と言えどタダではすまないだろう。
「その技能……! 任務遂行のためなら万能になれるユーベルコードか。大したものだな」
その打撃を躱しながら、鍬丸は驚いていた。
『悪魔のボディーガード』たちの格闘術はエキスパートと言っても過言ではないものばかりであった。
それを躱すことのできる鍬丸もまた同様である。
「正攻法で倒すのは難しい、か」
手にした風魔手裏剣を投げつけるも、バズーカの砲身に阻まれ弾き飛ばされる。
やはり真っ向から戦うことは無策に等しい。
だからこそ、鍬丸は初手から搦手を使っていたのだ。
そう。ただ手裏剣を投げつけたり、科学忍者刀で斬りつけていただけではないのだ。それは全てブラフ。
鍬丸の本命である春花の術(シュンカノジュツ)から注意をそらすためのものであった。
いつのまにか巻き起こった眠りの風、しびれの風、惑わしの風が『悪魔のボディーガード』たちへと命中していたのだ。
「はれ……なんだか、眠いようなしびれるような、幻覚がみえるよーな?」
あれれ、と『悪魔のボディーガード』たちが倒れ込んでいく。
「やはりな。その正直さがお前さんの不覚さ」
鍬丸は動きを鈍らせ、膝をついた『悪魔のボディーガード』たちへと視線を向ける。
その手袋から放たれるワイヤーが彼等の体を縛り上げ、拘束する。
一瞬の早業であった。
「うぐぐ……小細工なしでって言ったのにー」
悔しげに呻く『悪魔のボディーガード』たち。それを見下ろして、鍬丸は自分で言うのもなんだけれど、と前置きしてから、この世界の流儀に則っていたずらっぽく笑う。
「正々堂々と言ったな。あれは嘘だ――」
大成功
🔵🔵🔵
榊・ポポ
出たな!家賃滞納者め!
家賃払えなかったらさっさと撤収してよね!後の人つっかえてるからさー、これ鉄則!
ついでに礼金も置いてけ!
払えないなら物理行使すっぞ!デキるロボ子で!(蹂躙・無差別攻撃)
用心棒雇っても無駄ッ!
てなわけで引っ越し!引っ越し!さっさと引っ越しィ!!
立ち退きアタァーック!!(UC:ポポちゃん地上げ屋)
書類拒否ったらこのマンション、ポポちゃんがお買い上げだからね!
暴れて壊れて物件価値がゼロになったら仕方ない!売地で市場に出すからね!
大家さんには後でもっといい物件紹介するからさー
楽しみにしててねぇ、ぐへへ(ゲス笑い)
わらわらとマンションのどこに居たのかと思うほどに大量の『悪魔のボディーガード』たちが現れる。
彼等は家賃滞納悪魔たちに雇われた悪魔たちだ。
勤続二十年の大ベテランである。彼等にかかれば取り立て屋のギャングなどいないのと同じである。
いや、まあ、普通に家賃を払ってと言われたら、普通に手渡してしまうのだが、そこは自称・悪魔である彼等の性根の善良さである。
「賊は手強い! だが、私達にもプライドというものがある! 家賃滞納は私達が保証する限り、ずっと家賃は滞納しつづけるのだ!」
ちょっと意味分かんないことを連呼しているが、彼等とて猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。
その実力は言うまでもない。
「出たな! 家賃滞納者め!」
だが、そんな空気など読むこともなく、榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)は、そのフクロウオウムの体を家賃滞納者玉砕兵器『デキるロボ子』に納め、サイズ差なんて気にしてられっか! とばかりにマンション内部で暴れまわる5mクラスのサイキックキャバリアを駆るのだ。
「家賃払えなかったら、さっさと撤収してよね! 後の人つっかえてるからさー、これ鉄則! ついでに礼金も置いてけ!」
払えないわけではないのだけれど、それでも滞納し続けるのは、それがワルそうだから。
悪魔たちは『デビルキング法』を遵守しようと真面目にがんばっているのだ。
それは間違った方向の努力であったのかも知れないが、それは異世界から見た場合である。
この『デビルキングワールド』に置いては、それこそが善であるのだ。
「わー!? なんだあのわけわかんないの!? フクロウオウム!?」
『悪魔のボディーガード』たちは混乱の極みに居た。
ここ高層マンションだよね?
え、なんであんなでかいロボが……とか冷静になってしまったのだ。
いいかい、悪魔たち。
この戦い。冷静になったほうが負けなのだ! ノリと勢いだけが全て! 全ての悪は悪ノリで生きているのだ!
「てなわけで、引っ越し! 引っ越し! さっさと引っ越しィ!! 立ち退きアタァーック!!」
ポポちゃん地上げ屋(ココカラココマデゼンブ)の本領発揮である。
くっそ分厚い立ち退き契約書の束の過度で『悪魔のボディーガード』の頭をごっすりぶっ叩くのだ。
防護鎧の上からでも結構な衝撃である。
「書類拒否ったら、このマンション、ポポちゃんがお買い上げだからね! 暴れてこわれて物件価値がゼロになったら仕方ない! 売地で市場に出すからね!」
まさに外道!
何食べてたらあんなこと考えられるのか。
『悪魔のボディーガード』たちは震えた。
そう、それは恐れから来る震えではない。憧れからくるしびれであった。
善悪の基準がひっくり返っているがゆえにポポの悪逆無道なる振る舞いは、尊敬の眼差しとなって注ぐのだ。
それを受けてポポはさらに良い気分で高笑いするのだ。
「大家さんには後でもっといい物件紹介するからさー楽しみにしててねぇ、ぐへへ」
凡そ、正義の味方がしていい顔じゃないし、笑い声ではない。
けれど、それが素晴らしくカッコイイと感じる悪魔たちにとって、ポポはある意味悪のカリスマとして悪魔たちの頂点に至らんとさえしていたのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
踏破した内部構造を把握
更に破壊された部分も覚えて
利用しボディーガード達を穴に落とす
壁の穴から逃げる。
崩れ易い所に誘い出す等して
ボディーガード達が経験で把握した
構造の裏をかいて行動。
「相手の根城を破壊、それを利用してこそ悪と言えるだろう。
大人しく現状(のダンジョン)に収まっているだけなら
ただの善良な住民と変わらない。」
悪者のアピールをし
トリモチ弾は
瓦礫等を利用したグラビティテンペストを発動。
重力で跳ね返して捕らえ。
動ける相手も重力で跳ね飛ばし
トリモチで捕らえて共々動けなくして。
「大人しく家賃を払えば
大家の軍門に下ったと見なして見逃してやろう。」
悪いんだか良いんだか
分らないセリフで取り立てを敢行。
家賃滞納悪魔たちが立てこもり、ダンジョンと化したマンションは今や、以前の姿を止めてはいなかった。
壁には大穴が空いており、無理矢理踏破した痕は爆発物の煤がこびりついている。
さらにはショートカットするためにぶち抜いた壁の穴などは無残極まりなく、さらには下の階から天井すらもぶち抜いたのであろう大穴が空いている。
それら全ては猟兵と家賃滞納悪魔たちの戦いの痕跡であり、すでに『悪魔のボディーガード』たちが熟知していたダンジョンの地形ではなかった。
本来であれば、この光景だけで戦意喪失してしまいそうなものであったが、悪魔たちはその性根が善良であり真面目であるがゆえに何も諦めてはいなかった。
「ここからが正念場だ! これを乗り切れば、また好き勝手に増改築できるぞー! いけいけごーごー!」
なんて脳天気なことを言いながら士気高く、猟兵たちを迎え撃とうとしているのだ。
その光景を見て、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は僅かにため息を付いた。フードに隠れて顔は見えないが、それでも苦笑いのようなものが浮かんでいたのは間違いなかった。
「相手の根城を破壊、それを利用してこそ悪と癒えるだろう。おとなしく現状に収まっているだけなら、ただの善良な住民と変わらない」
故に、フォルクは騙し討ちを結構する。
すでに踏破したマンションダンジョンの内部構造は把握済みである。
どこに破壊された部分があり、どうすれば『悪魔のボディーガード』たちを陥れることが出来るかを理解していた。
だが、これは卑怯ではない。
いや、見た目はとっても卑怯であるがフォルクは背中からどーん! と『悪魔のボディーガード』たちを押しやって、床に開いた穴に突き落としたり、崩れやすいところに誘い出すなどして、『悪魔のボディーガード』たちが経験によって把握した構造の裏をかき続けていた。
「だから、こんな簡単に俺の一手に引っかかる」
あー!?
と悲鳴を上げながら大穴に落ちていく『悪魔のボディーガード』たちを見下ろしながら、ニヤリと笑う姿はまさしく悪役であった。
だが、それに卑怯者ー! と罵る声ですら、彼等にとっては称賛であった。
善悪が逆転しているがゆえに分かりづらいというか、未だ成れることとの出来ない事実であるが、彼等は真面目に悪いことをしようとしているのだ。
今のフォルクは言うまでもなく悪者である。
そう彼がアピールしているのだから、そのとおりに見えるのは狙い通りであるが、なんとも微妙な気分になってしまう。
「くらえ、トリモチ弾!」
よせばいいのに、わざわざ言葉に出してからトリモチ弾をフォルクに向け、撃ち込んだのだ。
そんなことをすれば簡単に避けられてしまうことはわかっていることだが、性根が善良である悪魔たちにとっては、難しいことなのだろう。
そのトリモチ弾をフォルクはユーベルコードを発動させ跳ね返す。
周囲に山積していた瓦礫を重力、斥力を操る微粒子に変え、グラビティテンペストによって跳ね返したのだ。
当然トリモチ弾は撃ち込んだ『悪魔のボディーガード』たちに命中し、その体をねばねばのトリモチによって動きを止められてしまう。
「わ、わー!? 撃て撃てー!」
「押し潰せ、引き千切れ、黒砂の陣風を以て。其の凄絶なる狂嵐の前には何者も逃れる事能わず。ただ屍を晒すのみ。吹き荒れよ、滅びの衝撃」
まさかの反撃に『悪魔のボディーガード』たちはトリモチ弾を連射する。
実弾ではなくトリモチというところに彼等の優しさを感じてしまってどうにもやりづらいが、ここは戦いの場だ。
容赦をしていては悪役ではない。
だからこそ、フォルクは遠慮なしに追加の詠唱でもって重力の嵐を引き起こし、尽くを彼等に打ち返して、トリモチだらけにしてしまうのだ。
そんな彼等を前に、フォルクはほくそ笑むようにして立ちふさがる。
「もがもがー!」
「……おとなしく家賃を払えば、大家の軍門に下ったとみなして見逃してやろう」
だが、それを拒んだらどうなるかわかるな?
フォルクのフードの下に隠れた表情はそう言っていた。
その表情はまさしく悪役! 極悪なる立ち振舞に、『悪魔のボディーガード』たちはときめきっぱなしである。
そう、悪ければ悪いほどに憧れられる。それがデビルキングワールド!
フォルクは悪いんだか良いんだかわからないセリフでもって、さらなる取り立てを敢行し、彼の通った後にはトリモチに塗れた悪魔たちであふれかえることとなるのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
今度は重装備の強そうなボディガード…家賃滞納を護って勤続20年ですか(絶句)。
防御力は高いでしょうし、(ほぼ瓦礫とはいえ)地形を利用してのゲリラ戦は厄介です。
なので響月を取り出し、悪魔の皆さんに「これより仕掛けます。大怪我しない様、しっかり注意して備えなさい。」と声掛け。
そしてUC:帰幽奉告に楽器演奏・音の属性攻撃・マヒ攻撃・範囲攻撃を上乗せ。
相手は障害物に隠れて攻撃に備え、耐えた後に反撃をと考えている筈。
なので音にはつい耳を澄ませてしまうでしょうし、そうなれば全員纏めてマヒさせられます。
無力化した相手を見下ろし、「ふっ、全ては私の掌の上、さあ家賃を差し出すのです。」とワルっぽく取り立てます。
「よーし! 今日もがんばって家賃の取り立てに断固はんたーい!」
えいえいおー! と『悪魔のボディーガード』たちが一斉に拳を突き上げる。
ここはダンジョンと化したマンション。
すでに猟兵達によってトラップというトラップは踏み抜かれ、または無効化され、迷路のようになっていた通路の尽くがぶち抜かれていた。
果ては床も天井も繋がるほどに崩落しており、この凄まじき惨状を前にしても怯むことなく『悪魔のボディーガード』たちは粉骨砕身の思いで取り立てるギャング……即ち、猟兵たちからD(デビル)を守ろうとがんばっている。
「勤続二十年の底力をみせたるわー!」
がちゃがちゃと重そうな装甲鎧をならしながら悪魔たちが瓦礫とかしたダンジョンの中を巧みな移動方法で走っていく。
地形を熟知した動きであったことは、離れてみていた大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)にもよくわかることだった。
「今度は重装備の強そうなボディーガード……家賃滞納を護って20年ですか」
絶句してしまっていた。
家賃滞納を二十年も続けているというのもそうだが、その退去を強制しない大家のおおらかさというか大雑把さにも詩乃は驚いていた。
これが『デビルキングワールド』である。
悪徳が美徳とされる世界の洗礼に詩乃はくらくらとしていた。頭を抱えたものであるが、気を取り直して彼女は踏み出す。
『ボディーガードの悪魔』たちはほぼ瓦礫とは言え、地形を利用しながら猟兵達を警戒している。
あの重装備の装甲鎧から察するに防御力も高いだろう。
何より、彼等は一般的な悪魔と言えど、猟兵に匹敵するほどのユーベルコード使いなのだ。油断はできない。
だが、それでも詩乃はあえて言葉を投げつけた。
「これより仕掛けます。大怪我がないよう、しっかり注意して備えなさい」
その言葉は本来であれば美徳そのものであったことだろう。
敵と言えど、怪我をしてほしくない優しい心遣い。
けれど、ここ『デビルキングワールド』においては逆効果である。それは悪徳というのだ。
「なにおー! 絶対絶対やっつけてやらー!」
『悪魔のボディーガード』たちが詩乃の言葉に反応していきり立つように飛び出してくる。
だが、それさえも詩乃狙いであったのだ。
彼女の優しさは尊ぶべきものであるが、ここでは挑発の類になってしまう。
「この曲は貴方達の葬送の奏で。音に包まれて安らかに眠りなさい」
詩乃の奏でる龍笛の音色が響き渡る。
帰幽奉告(キユウホウコク)、それは魂と精神へと直接に作用する音色であり、その音色を耳にするもの全てに効果が現れるユーベルコードである。
悪魔たちの殆どは挑発に乗らずに障害物に隠れているだろう。
しかし、彼女の奏でる音色は物陰に隠れていたとしても、攻撃という言葉を聞いてはそれに耐えようと耳を済ませる。
普通ならば、これに耐えて反撃をと考えるだろう。
「あ~……なんかいい気持ち~」
音色は優しかった。
これが攻撃の意思のあるものとは思えなかっただろう。だから、耳をすませば済ますほどに詩乃の龍笛の音は彼等の精神と魂を揺さぶるのだ。
「そうでしょうとも。この音色は私のユーベルコード。身体がしびれるように動けない……皆さんそうですね?」
「仕掛けますって、大怪我しないようにって言ったのにー!」
悪魔たちからはブーイングではなく、称賛の声が上がっていた。なんて卑劣な誘導攻撃! 自身の得意を押し付けるスタイル!
我を通すスタイル、嫌いじゃないし、どっちかっていうといいよね!
詩乃が歩みを止め、麻痺して動けない悪魔たちを見下ろす。
これが彼女の精一杯である。結構頑張ったほうなのではないだろうか。普段の彼女の優しさや慈しむ心からすれば、相反することをなんとかひねり出したのだろう。
「ふっ、全ては私の掌の上、さあ家賃を差し出すのです」
きらりと薙刀の刀身をきらめかせ、詩乃は精一杯に声を低くして脅すのだ。
はっきり言って、そんな怖くないなーって悪魔たちはおもっていたけど、真面目に取り立てて偉い! と思ったのだろう。
すんなり家賃を手渡してくれるのだ。
悪徳が美徳であっても、その性根は善良。
不可思議な種族、悪魔。
それを前に詩乃はなんとも微妙な笑顔のまま、家賃たるD(デビル)を徴収するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
真面目に悪事…いやそう言う世界なのは判るんだけど…
…なるほど、契約は絶対、ねぇ…
…あれ?契約を守るのは良いことだから悪いことなのでは…?
ひとまず【戯れめぐる祝い風】を使って、と…
…その辺どうなの?一般通過悪魔さん
(『幸運にも』騒ぎを見にきた悪魔を捕まえて聞いてみる)
…やっぱりそうだよね、律儀に契約守るのはダサいよね…
(ボディーガードに聞こえるぐらいの音量で会話、言いくるめで結論を巧みに誘導する)
悪魔なら悪事を…例えば契約してるからとボディーガードを信じてる悪魔を裏切って突き出すとかして欲しいよね…そう言うのこそしびれる悪事だよね…
…誘導しておいて言うのもなんだけど、この世界大丈夫なのだろうか…
悪魔にとって契約とは絶対に遵守しなければならないものである。
それは『デビルキング法』をしっかりと護って、悪いことをしようとする悪魔たちにとっては当たり前のことであった。
当たり前すぎて、誰も疑問に思わないのだ。
契約遵守ってすごく良いことだよ、と。
いや、むしろ、デビルキングワールドの誰もが疑問に思わなかったのだろうか。
約束事は必ず護る。
『悪魔のボディーガード』たちは皆、勤続二十年を勤め上げた立派な仕事人である。
これまでも家賃滞納悪魔を守り、D(デビル)を一枚たりとて家賃として支払わせることなく、取り立て屋を撃退してきたのだ。
ただし、家賃払ってねってお願いされたら手渡してしまうガバ具合。ガバガバすぎる。
「真面目に悪事……いやそういう世界なのはわかるんだけど……」
なるほど、契約は絶対、ねぇ……とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は思案していた。
何かあくどいことを考えつこうとしているのだろうか。
いや、だがしかし、メンカルははたと思い至る。
「……あれ? 契約を護るのは良いことだから悪いことなのでは……?」
???
きっとこの言葉を聞いた悪魔たちも同じように頭にはてなまーくを浮かべたことだろう。どゆこと? と。
「遙かなる祝福よ、巡れ、廻れ、汝は瑞祥、汝は僥倖。魔女が望むは蛇の目祓う天の風」
だが、そんな悪魔たちの疑問に応える前にメンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
戯れ巡る祝い風(ブレス・オブ・ゴッデス)が戦場となっているマンションとはもう到底呼べない廃墟の如き部屋の中に吹き込む。
それが一体何を為すのか皆目検討もつかないが、メンカルは『幸運にも』騒ぎを見に来た悪魔を捕まえて聞いてみるのだ。
「そのへんどうなの? 一般通過悪魔さん」
えっ!
どこからともなく一般通過悪魔がメンカルにとっ捕まえられている。
無辜なる悪魔をいきなり捕まえて尋ねる手腕は、並のワルではない。というか、なんでここに一般通過悪魔さんが!?
「えー……それはやっぱり、そのぉ、だってかっけーことは、やっぱり反逆精神でしょ。無理で道理が引っ込むなら、道理だって無理を押しのけてもいいわけだし?」
「そうそう。契約遵守なんて良い子のやることだよ」
「うんうん。良い子はだっせーので」
「……やっぱりそうだよね、律儀に契約守るのはダサいよね……」
メンカルは巧みに結論を誘導していた。
マジで悪魔の手法である。メンカルに都合の良い言葉を引き出す言葉。だっせー! と言わせたかったのだ。
その言葉の一撃は、下手な攻撃よりも心に来る。
それは『悪魔のボディーガード』たちだって同じであったことだろう。ちょっと心が痛むけれど、これもオブリビオンを打倒するためである。
言い訳だって立派なワルである。
「悪魔なら悪事を……例えば契約してるからとボディーガードを信じている悪魔を裏切って突き出すとかして欲しいよね」
「そうそう。そういうのかっこいいよ! やっちゃおやっちゃお!」
メンカルと一般通過悪魔の無責任な言葉がマンションに響く。
もう結果は言うまでもないだろう。
「……そういうのこそしびれる悪事だよね。わかってたよ、私は。君たちがしびれるほどにカッコイイ悪魔だって」
数分後、メンカルの目の前には『悪魔のボディーガード』たちによって簀巻きにされた悪魔たちが差し出されていた。
まじかよ。
うらぎりものー! と『悪魔のボディーガード』たちをなじるが、それはこの世界では褒め言葉だ。
みんな幸せそうな顔をしている。
大家は家賃を回収できてニコニコ。
『悪魔のボディーガード』たちは裏切りという大罪、否、善行を行えてニコニコ。
悪魔たちはみんな、しびれる悪事に簡単できてニコニコ。
ニコニコ笑顔が溢れる素敵な世界だ!
「……誘導しておいて言うのもなんだけど、この世界大丈夫なのだろうか……」
メンカルは、自分で為したことであるが、今更に不安になってしまう。
けれど、これでオブリビオン以外の悪魔を無事退去させるこてはできる。未だ善悪の基準の反転した世界、デビルキングワールドに慣れることはないが、それでも、メンカルは戦うことなく、この場を納めることに成功したのだった。
流石、ワル――!
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
んん?
20年真面目に家賃滞納させるのは一周回ってクソ真面目な善良悪魔なのでは?
もしかしてボディーガードって超イケてない職業?
ちょっとさー説明してくんない?
でも思うんだよ
1度悪魔に産まれたからには、精勤手当はドブに捨て
賠償Dを払うくらいのイケてる仕事をするのが悪魔の生き方じゃないのか!
そんな腑抜けた悪魔にお母さん育てたつもりはありません!!
だれがお母さんだよ!!
そんな年じゃない!!!
聞いているのかボディーガードくん!!
そこに座れ!話を聞け!!
年下の女にこんな事言われる前に何か言い返してみたらどう!?
…何を言い返しているんだ!!
『エネルギー充填』【エナジー開放】起動!
やっぱりあの悪魔が悪いよなあ…
「うおー! 私達の勤続二十年の重みをしれー!」
『悪魔のボディーガード』たちは一斉に廃墟と化したダンジョンの中を駆け抜ける。
彼等は家賃滞納悪魔たちを護って二十年の大ベテランである。
何度も家賃を取り立てるギャングたちを撃退しているのだ。
それはひとえに契約を守らなければならないという悪魔特有の生真面目さゆえに力を発揮するユーベルコードの力があってこそだろう。
その手に在る契約書には、勤続スタンプが無数に捺印されており、それこそが彼等の誇りであったのだ。
善悪の基準が逆転した世界にあっても、悪魔は良い子すぎたのだ……!
「んん?20年真面目に家賃滞納させるのは一周回ってクソ真面目な善良悪魔なのでは?」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は気づいた。気づいてしまっちゃったのだ。
そう、悪魔の見た目の怖さに惑わされてしまいがちであるが、彼等は基本的に『良い子』なのだ。
悪徳を美徳とする世界にあってなお、その性根の善良さは損なわれていない。
一周回って、それはどうなのだと思うこともない。
「もしかしてボディーガードって超イケてない職業? ちょっとさー説明してくんない?」
玲は華麗に『悪魔のボディーガード』たちの攻撃を躱しながら、彼等に迫っていく。
なんかいい感じに避けてるんだよ。本当だよ。酔っ払いのおじさんが若人に絡んでる感じじゃない。振りほどいてもしつこく絡んでくるおじさんみたいなムーヴを玲はしてない。断じて!
「な、なんだ、このひと! 攻撃が当たらない!」
悪魔たちも騒然としている。
よくわからないけど、玲に攻撃が全然当たらないのだ。ここまで来ると理不尽でしかない。
そんな悪魔たちをよそに玲は『悪魔のボディーガード』たちの肩を組むように引き寄せる。
「でも、思うんだよ。一度悪魔に生まれたからには、精勤手当は溝に捨て、賠償Dを払うくらいのイケてる仕事をスルのが悪魔の生き方じゃないのか!」
――カッ!
玲の瞳は爛々と輝いていた。
いや、その言葉はどうなのだと素面の猟兵が聞いたら思ったことだろう。だが、ここにいるのは玲しかいない。
誰も彼女を止められない。
「そんな腑抜けた悪魔にお母さん育てたつもりはありません!! だれがお母さんだよ!! そんな年じゃない!!!」
一人でボケて一人で突っ込む。
誰も口を挟む暇もないスタイル。それが玲スタイル。
そうだぞ!
玲さんは23歳。
花も恥じらうかどうかはわかんないけど、未だイケイケごーごー! な人なんだ。若干、悪魔たちは「この人の情緒どうなってんだよ……」的な顔をしていたが、気にしてはいけない。
深淵を覗く時、玲もこっちを見ているってことを自覚しなければならないのである!
うわ、こわ。
と悪魔たちはそさくさと立ち去ろうとする。だが、逃さぬとばかりに玲の手が彼等の体を捕まえてその場にひきずりたおすのだ。
「ひぇっ」
「聞いているのかボディーガードくん!! そこに座れ! 話を聞け!! 年下の女にこんな事言われる前に何か言い返してみたらどう!?」
玲の怒声が響き渡る。
凄まじい啖呵である。まだ言い返すことがあったら言ってみろと、手をくいくいしてるところが優しさであろう。
故に悪魔たちはおずおずと、あのぉ……と手を上げる。
「えっと、全部お姉さん一人でボケツッコミ倒してるけど、それはぁ……」
「……何を言い返しているんだ!!」
どっせい!
玲のユーベルコードがマンションの一室に輝いた。
エナジー開放(エナジーバースト)によって投射された高エネルギーの一撃が悪魔とボディーガードたちを盛大に吹っ飛ばす。
理不尽極まりない。
だが、その理不尽こそがデビルキングワールドにおいては美徳なのだ。
きれいにふっとばして退去させた悪魔たちが超絶かっこいいー! とか黄色い悲鳴を上げながら落ちていく様を見ながら玲は冷静にポツリとつぶやくのだ。
「やっぱりあの悪魔が悪いよなあ……」
――!?
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
とりあえず最後通牒は言っておくべきかな
これ以上支払いに抵抗するなら部屋を破壊するよ
もうやってる?
まあ示威行為という事で
命に対する考え方が致命的に厄介なのを除けば
邪神、特に分霊は案外普通の感性なんだよなぁ
とはいえ悪魔達は素直に応じないんだろうね
引き続き使い魔に暴れて貰うよ
あれだけ鎧着込んでいれば大丈夫じゃないかな
なんか派手にぶちのめすと喜ばれるらしいし
それだけ聞くとちょっと危ない人のようですの
噛みついて放り投げたり
尻尾で薙ぎ払ったりして貰おう
トリモチで攻撃されたら
金属化の能力でトリモチを金属に変え
装甲に取り込んで対処させるよ
もしこっちに来たら神気で防御した後
ワイヤーガンで簀巻にして吊るしておこう
かつてマンションであったものは、ダンジョンへと変わり、そして今、ダンジョンと化したマンションは廃墟の如き破壊の渦に飲み込まれたような惨状へと変わり果てていた。
それは猟兵たちとや賃貸滞納悪魔たちとの苛烈なるやりとりがあったからには違いなく……いや、どっちかというと猟兵たちの容赦のないワルな行いによって壁はぶち抜かれるは、床も天井もないくらいに穴だらけにするわで凄まじい攻勢に家賃滞納悪魔たちは追い詰められていた。
「はー! ……かっけぇ……!」
だが、悪魔たちは自分達がしてやられているというのに、猟兵たちの容赦のないワルな攻勢の前に痛所の世界では見られない感嘆の溜息を吐き出していた。
その瞳は憧れにも似た輝きを宿していた。
「だけど、俺達ももっと悪いことするぜ! おなしゃす! 『悪魔のボディーガード』のみなさん!」
「よっしゃー! 勤続二十年の私達におまかせだー!」
わーわーと『悪魔のボディーガード』だちが廃墟とかしたダンジョンの中に飛び込んでいく。
彼等は悪魔で徹底抗戦をするつもりなのだろう。
「とりあえず、最後通牒は言っておくべきかな。あーあー、マイクテス。これ以上支払いに抵抗するなら部屋を破壊するよ」
拡声器を手に佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が声を張り上げる。
その言葉は廃墟と化したマンションの様相とはある意味で釣り合っていなかったように思えた。
体の中に居る邪神がぼそっともうやってるじゃないですかとツッコミが入るが、晶はしれっとしたものであった。
「まあ示威行為ということで」
さらっと受け流し、晶はわらわらとやってくる『悪魔のボディーガード』たちに式神白金竜複製模造体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ)を放つ。
「ご褒美くれるなら頑張るのですよー!!」
金属柱を元に構成された使い魔たちが飛ぶ。
彼女たちを撃ち落とそうとトリモチ弾が放たれるが、そんなもの彼女たちは即座に金属化の能力でトリモチ事態を金属に変えて、装甲に取り込んでいくのだ。
「まあ、素直に応じないだろうとは思っていたけれど……引き続き暴れてもらおうかな」
邪神が若干引いているような気がするが、晶は気にしていなかった。
生命に対する考え方が致命的に厄介なのを除けば、邪神、特に分霊は案外普通の感性なのだ。
むしろ、この状況に適応しつつある晶のほうが邪神たちからすれば、若干悪魔寄りであったのかもしれない。
「あれだけ鎧着込んでいれば大丈夫じゃないかな。多少むちゃしても。なんだか派手にぶちのめすと喜ばられるらしいし」
そんな風に晶が言うものだから、身の内に融合している邪神は、えぇ……と困惑した顔にもなろうというものである。
「それだけ聞くとちょっと危ない人のようですの」
そんな二人のやり取りがある中、超硬装甲の使い魔たちが『悪魔のボディーガード』たちに噛み付いたり、放り投げたりしっぽで薙ぎ払ったりと大立ち回りを続けている。
わーわーきゃーきゃー、わりと緊張感のない戦いが繰り広げられている光景を見ていたら、晶でなくても善悪ってなんだっけ? と小首をかしげたく為るのもわからぬでもない。
むしろ、契約を遵守しようとがんばっている『悪魔のボディーガード』たちのほうが他の世界の人間たちと比べると善良なのでは? とそんな風に考えてしまいそうに為るほどであった。
「でも、まあ……それも世界が違えばってことなんだろうけれど」
晶は溜息を突き出す。
吹き飛ばされてきた『悪魔のボディガード』の体を神気で防御したあと、ワイヤーがんで容赦なく簀巻きにして吊るしていく。
それは通常の世界であれば、大変な非道であったかもしれないが、その情け容赦のなさが返って悪魔たちに大ウケであるところをみると、これがデビルキングワールドのやり方なのかもしれない。
「ほんと、ちょっと危ない人たちなのではないのです?」
そんな風に邪神が引きつった顔をするのも、無理なからぬことと晶はまるで作業をこなすように次々と『悪魔のボディガード』たちを簀巻きにして吊し上げていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
勤続20年て…ああいや真面目だろうがなんだろうが
契約内容はちゃんと守るのは悪魔らしいのかな?
[SPD]
ところで…その契約ちゃんとDは出るのかい?
ほら昔から悪魔の契約には対価が付き物って言うし
ちょっと【契約書】を見せてくれないかなー!(コミュ力
ここに受け取った【契約書】があるだろ?
これを(EKを取り出し)…こうだ!(焼却
悪く思えよこれもまたワルの手口って奴さ(サングラススチャ
搦め手の成否に関わらず
BRTで【不意打ち、地形破壊】を仕掛けたら(先制攻撃
熱線銃で【弾幕】を形成して注意を引いて
【迷彩】状態のEsの【マヒ攻撃】で隙を作ってUCでパパっと仕留めるぜ
……よし家賃徴収の時間だオラァ!
アドリブ歓迎
ダンジョンと化したマンションは最早廃墟同然であった。
猟兵たち――即ち家賃取り立て人たちの立ち回りがそれだけ激しかったのも在るし、仕掛けられた爆薬やら地雷やらの威力が凄まじかったのも起因しているだろう。
それだけ派手にやらかしていてもなお、悪魔たちは家賃を滞納しつづけようと、真面目にがんばっているのだ。
『悪魔のボディーガード』たちもそうだ。
「我ら勤続20年! これからもしっかりがんばります! というわけで、契約書を取ったので、家賃取り立て人は退去してもらおう!」
彼等は契約書を片手に一気呵成に戦場となったダンジョンの廃墟へと飛び出していく。
「勤続20年って……ああいや真面目なんだろうがなんだろうが契約内容をちゃんと守るのは悪魔らしいのかな?」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は悪魔たちの言葉になんとも言えない表情を作っていた。
いや、微妙に戦いにくい相手なのだ。
それは実力が猟兵に匹敵するほどのユーベルコード使いであることもあるのだが、それ以上になんというか、全力でぶっ叩いていい相手のようには思えないのだ。
彼等悪魔の性根がそもそも善良であるが故に、祐一は中々に責めづらいと感じていた。
「というわけで、我ら勤続20年パンチをくらえー!」
放たれる『悪魔のボディーガード』の拳を祐一は紙一重で躱す。
「ところで……その契約ちゃんとD(デビル)は出るのかい? ほら昔から悪魔の契約には対価がつきものっていうし、ちょっと契約書を見せてくれないかなー!」
祐一は身を翻し、その手を差し出す。
ちゃんとお願いをすれば、悪魔は言うことを聞いてくれる。
そういう『良い子』の種族なのだ。
祐一の言葉に契約書をはいどうぞと手渡すのは、ありがたいのだが、彼等が絶滅しかかったという理由をなんとなく察することができよう。
「ふむふむ。ここに受け取った契約書があるだろ? これを」
祐一の手にはエクステンドナイフと契約書。
なんだろう、手品でもはじまるのかなと悪魔たちはちょっとドキドキワクワクしていた。
「……こうだ!」
だが、その期待は無残にも破られる。
発生したエネルギーによって契約書は一瞬で消し炭。
残ったものはなにもない。
あるのは祐一のサングラスを懸けて悪そうな笑みで、言うのだ。
「悪く思えよ、これまたワルの手口ってやつさ」
そうニヒルな笑みを浮かべる祐一に悪魔たちはさぞしょんぼり……してないどころか、尊敬の眼差しを向けている。
え。
どゆこと、と思われる方はもうお客様の中にはいらっしゃらないだろう。
アテンションプリーズ!
そうここはデビルキングワールドである! 悪徳を美徳とする世界であればこそ、祐一のワルい行動は輝くのだ!
「不意打ちってのはこうやるんだよ!」
冬雷(トウライ)の力が込められた熱線銃の一撃が辺り一面を破壊し、廃墟の残骸すらも吹き飛ばすのだ。
悪魔たちはひとたまりもない。
というより、祐一のあくどいやり方に心酔してさえいる。
サポートAIは若干引いているような気がするが、デビルキングワールドではこれが世界なのだ。
だからこそ、祐一は、ぱぱっと仕留めて次なる行動へと移る。
そう――。
「家賃徴収の時間だオラァ!」
そのフレーズ、気に入ったんだね。
悪魔たちの羨望の眼差しを受けて、サングラスがきらりと輝く。
祐一のワルさと、そのフレーズはきっと今後デビルキングワールドの借金取り立てを請け負うギャングたちで流行ったとか流行らなかったとか――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(確かこの世界では愛と勇気を胸に戦う『勇者』は悪魔に最も恐れられているのでしたか)
ならば…
皆様、家賃滞納の悪事が生む事態はご存知でしょうか
ひもじい大家さんは暗い年越しを迎えるかもしれません
年明けにお孫さんにお年玉を配れぬかもしれません
そのような悲しい事など、あってはならないです!
(握り拳グッ)
それを防ぐ為
私は正義の、いえ悪逆の騎士として
デビルキング法に、いえ、この世界に高らかに叛意を告げましょう!
この巨悪、恐れぬ者からかかってきなさい!
センサー情報収集で敵所在を見切り剣盾振るうUCで委縮した敵を一掃
家賃回収
善行と言う悪行を為せた貴方達は立派な『ワル』ですよ
何を言っているのでしょう、私は…(ボソ
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は考えていた。
そう、このデビルキングワールドでは愛と勇気を胸に戦う『勇者』は悪魔に最も恐れられている存在であった。
悪徳を美徳とする世界であればこそ、愛と勇気というものは悍ましいほどに目を背けたくなるものであったことだろう。
故に魔王たる悪魔たちにとって勇者とは唯一恐れるべき存在であったのだ。
トリテレイアは故にそれを利用すると決めた。
「皆様、家賃滞納の悪事が産む事態はご存知でしょうか」
静かに声が響く。
それはしんみりとした雰囲気であり、これまでのコメディタッチな雰囲気からは一線を画するものであった。
え、なになにいきなりシリアスな雰囲気になったんだけど、と『悪魔のボディーガード』たち及び家賃滞納悪魔たちはキョロキョロしだす。
「ひもじい大家さんは暗い年越しを迎えるかもしれません。年明けにお孫さんにお年玉を配れぬかもしれません」
それは電流のごとく悪魔たちの心に響いた。
だが、それは『デビルキング法』の前には仕方のないことなのだ。悪いことがカッコイこと。
故にお年玉は貰うものではなく、奪うもの。
けれど、D(デビル)がなくちゃあどうにもならないのが世の中というものである。
大家さん……!
とかなんとか、勝手に悪魔たちは打ちひしがれていた。
それは良い子過ぎるがゆえに、彼等の心をひどく打ち付けたのだ。
「そのような悲しいことなど、在ってはならないのです!」
拳をぐっと握り、トリテレイアは続ける。
彼の宣言はあまりにもこれまでの家賃滞納悪魔たちの良心……えっと、この場合は悪心。ややこしいな! それをえぐったのだ。
「それを防ぐため、私は正義の、いえ悪逆の騎士としてデビルキング法に、いえ、この世界に高らかに叛意を告げましょう!」
それは世界に対する宣戦布告であった。
反逆、叛逆、なんてカッコイイ言葉の響き……。悪魔たちは皆、その大逆の宣言に聞き惚れていた。
「この巨悪、恐れぬ者からかかってきなさい!」
びっしぃ! とトリテレイアは剣を構えて言う。
そう、彼の心もまた散々に千切れそうなほどに本来の意志とは真逆のことをしようとしていることに打ちひしがれていた。
「ええい! それでも――!」
「それでも、守りたい家賃滞納履歴があるんだ――!」
『悪魔のボディーガード』たちが一斉に巨大な砲身をトリテレイアに向ける。
もうやけくそであった。放たれる暗黒の砲撃の尽くを躱し、トリテレイアの機体が駆け抜ける。
「肝要なのは現状を俯瞰的に捉える事、走らずとも止まらぬ事、射線から外れる事、その繰り返しの他は…騎士として危地に踏み入る覚悟です」
それはまさに機械騎士の戦場輪舞曲(マシンナイツ・バトルロンド)であった。
敵の数的、地理的優位を無に返す一挙一動は、砲撃を躱し、振るう剣と大盾の打撃は、その重厚な鎧を砕いて叩きのめす。
「ぐわー!」
ただ、なんというか、非常にほんわかしたやられ具合なのが気になるが、デビルキングワールドとはそういう世界である。
「うう……家賃、これで大家さんのお孫さんにお年玉を……」
泣きべそかきながら悪魔たちが次々と打ちのめされてはトリテレイアに家賃を手渡していく。
こういう所がなんとも憎めないところであるのだが、それらを慰めるようにトリテレイアは告げるのだ。
「善行という悪行を為せた貴方達は立派な『ワル』ですよ」
それは春の暖かな光のように自主的に家賃を納めに来た悪魔たちの心を明るくする。
いいはなしだなー。
だが、トリテレイアは思った。
「何を言っているのでしょう、私は……」
確かに。
ちょっと意味分かんない。いい雰囲気に流されそうになっていたが、それでもトリテレイアは家賃徴収を見事にやりきり、反逆の騎士として、その勇名を轟かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
ふぅ、大変な目にあいました
それでは改めて目立たないクノイチ、サージェ参りま…あれ?
なんか声(天の声?)が聞こえたような?
サービスが足りないってなんにゃああああああ?!(よそ見してたらトリモチった
なっこれはくっころ体勢?!
肘と足の裏とお尻くっついて本当に動けない!
ちょっと待ってこれ以上は健全クノイチ的に危険な気がします!
あのちょっとトリモチ追加はダメですよー?!
シリカー!シリカ来てー!
ファントムシリカを呼んで【快刀乱麻】で一網打尽
ふぅ危うく健全クノイチ生命が断たれるところでした…
セーフですよね?ね?
※アドリブ連携OK
「ふぅ、大変な目にあいました」
そう言って、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は汗を拭うふりをした。
別に汗かいているわけではない。
かわりにあちこちに引っかき傷が残っていて、ヒリヒリするだけだ。
何があったのかは前章をチェックしてくれ!
「それでは改めて目立たないクノイチ、サージェ参りま……あれ? なんか声が聞こえたような?」
メタの壁を突き抜けてくるんじゃあない!
サービス精神が足りないとか、ちょっと少年誌的なやつが欲しいとか、そんなんじゃないんだからね!
謎の電波というか、天の声を受信したであろうサージェが見せた隙。
その一瞬の隙を縫って『悪魔のボディーガード』たちが殺到する。
「見つけたぞ! あいつが家賃取り立て人だー! いけいけ! 容赦するなー!」
「トリモチ弾をくらえー!」
次々に乱射されるトリモチ弾。
その猛攻は凄まじかった。どれだけ身のこなしに自身のある猟兵であっても躱すことはできななかったことだろう。
それほどまでの集中砲火を受けて、サージェは目をパチクリさせた。
「サービスが足りないってなんにゃああああああ?!」
彼女の体にべっとりはりつくトリモチ。
白いねばねばーなやつが褐色の肌に張り付いて、こう、ふふふって感じなっていますね。かわいいですね。
なんて、どこかの動物愛好家みたいなナレーションが聞こえてくるようであった。
決して、天の声のとか、地の文の、とかそういう思惑は一切ない。
「なっこれはくっころ態勢?!」
知っているのか、サージェ!
むぅ……それは肘と足の裏とお尻がトリモチによってくっついて身動きの取れない状態のことを差す。
主に女騎士が、こう、ね、ムフフなことになる時に『くっ、殺せ!』と叫ぶことに由来している。
まさかこの目で見ることになろうとは……っ!
とかなんかそんな感じにいい感じのナレーションが流れているが、実際サージェは大ピンチであった。
「ちょっとまってこれ以上は健全なクノイチ的に危険な気がします!」
確かに。
全年齢だから危ないパターンに嵌ったってやつかもしれない!
だが、ここは悪徳が美徳たる世界、デビルキングワールドである! そこに情け容赦などないのだ。
どんどん追加されるトリモチ弾。
もはやくっころ女騎士とかそんなことじゃなく、ただの雪だるまみたいになってしまったサージェ。
やばい!
これ以上は、サージェのクノイチアイデンティティ的にもヤバい!
「シリカー! シリカ来てー!」
そう叫ぶが白猫又のシリカは来ない。
そう、さっきのことをまだ根に持っているのだ。
「シリカー! シリカさーん!? あれ!? シリカさーん! 助けてー!」
さらに追加されるトリモチ。
あーもーべたべただよー。
なんて言っているところにファントムシリカの機体が飛び込んできて、ユーベルコードの快刀乱麻(ブレイクアサシン)の詠唱によって溜め込まれた斬撃の一撃が『悪魔のボディーガード』たちとサージェの身を包んでいたトリモチを吹き飛ばすのだ。
「反省しました?」
「はい……」
しょんぼりしおらしくサージェはトリモチから開放されてぐったりしていたが、伏せた顔の表情は舌を出していた。
「ふぅ、危うく健全クノイチ生命が断たれるところでした……セーフですよね? ね?」
え、アウトだと思うけど。
白いねばねば塗れのクノイチって健全かな?
どっちかというとセーフよりのアウトっていうか、セウトって感じ! そんな謎の天の声が響き、サージェはそれでも登り続けるだろう。
この健全クノイチ坂を……――!
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『セラフィムブラスター』
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POW : 銃撃の使徒
自身の【翼】を代償に、【空飛ぶデビルガトリング】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【魔力弾の銃撃】で戦う。
SPD : セラフィムブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【デビルガトリング】から【銃弾の雨】を放つ。
WIZ : スマイルガトリング
自身が【微笑んでいる】いる間、レベルm半径内の対象全てに【デビルガトリングの掃射】によるダメージか【セラフィムの加護】による治癒を与え続ける。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ふぁー……」
そこはダンジョンと化したマンションの最上階であった。
猟兵たちと悪魔たちに寄る家賃取り立て合戦は、猟兵たちの勝利に終わった。全ての悪魔たちは家賃をちゃんと納めて、危ないからとマンションから退去済みである。
そう、残すはオブリビオンのみ。
そのオブリビオンである『セラフィムブラスター』は、のんきに最上階で惰眠をむさぼっていたのだ。
何故ならば、彼女はオブリビオンであり、その躊躇なく悪事を働く凶悪さを悪魔たちに見込まれて、彼女をデビルキングにしようと滞納した家賃を貢いでいたのだ。
そうなれば、黙っていてもD(デビル)は溜まっていく一方で在るし、無理に戦わなくていいし、簡単に世界を滅ぼせるはず――だったのだ。
「え、ええええ――!? え、なんで? 猟兵なんで?」
『セラフィムブラスター』は完全に油断していた。
寝ぼけているのかな?
まだ夢の中かな? とありもしない可能性にすがろうとするほどに彼女は慌てふためいていた。
自分の根城の防御は万全だと思っていたがゆえの油断。
そう、最上階で寝ぼけ眼のオブリビオン『セラフィムブラスター』は、これだけの騒ぎをして眠りこけていたのだ。
なんという怠惰。
猟兵達は必死にがんばっていたというのに!
あ、いや、デビルキングワールド的には最高に善行なのだが、もはや此処に在るのは猟兵だけである。
その理屈はもう通じぬと知れ――!
メンカル・プルモーサ
いや…流石に寝てるだけで全てが解決すると思うのは甘いんじゃないかな…
…こっちが頑張…(所業を思い返し)頑張ってたっけ?まあいいや。
…破壊活動や詐術なんかの悪事に勤しんでる間に眠っているとはいい度胸だね…ここからはシンプルに八つ当たりをするとしよう…うーん、これも悪事…
…ガトリングの掃射は術式組紐【アリアドネ】を盾状に展開して防御…自己治癒も同時に行う気なのだろうけど…
…【神話終わる幕引きの舞台】を発動…鍵剣の封印によって加護を減衰させるよ…さて、何時まで微笑んだままで居られるかな……?
…あとは術式装填銃【アヌエヌエ】を用いて誘導術式を込めた銃弾で羽根を射撃…まずは機動力を奪うとしよう…
オブリビオン『セラフィムブラスター』は完全に寝ぼけていた。
いや、だってそうだろう。
悪魔たちは勝手に自分をデビルキングに相応しいとか言って祀り上げてくれたのだ。通常の世界であれば、あれやこれやなんやかんやで策略を練り上げて、ここまでの地位を獲得するのだ。
それが悪魔たちが自主的にこちらにD(デビル)を上納してくれるイージーモード。はっきり言ってクソチョロな世界にあって、彼女は完全に舐めプしていたのだ。
その結果がこれである。
「ええええ!? 猟兵!? もう来ちゃったの!? 寝てるだけの簡単クソチョロ、世界侵略クソチョロって言ってたあの日はどこに!?」
そんな『セラフィムブラスター』を前にしてメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は呆れ果てていた。
「いや……流石に寝てるだけで全てが解決すると思うのは甘いんじゃないかな……」
メンカルにとって、その怠惰はあまりにも自分に都合が良すぎるものであった。
メンタル甘々すぎるにも程がある。
そう、今回わりと猟兵達はがんばっていた。
悪魔たちは猟兵達に匹敵するユーベルコード使いであり、普通に戦っても彼等は強敵なのだ。
「……こっちが頑張……」
メンカルは思い返していた。
トラップ満載のダンジョン。『悪魔のボディーガード』たち……みんなみんな良い思い出……。いや、そうでもなかった。
「頑張ってたっけ? まあいいや。こっちが破壊活動や詐術なんかの悪事に勤しんでる間に眠ってるとはいい度胸だね……」
メンカルさんもだいぶデビルキングワールドに馴染んできたご様子。
ナチュラルに悪事に勤しんでるって言った!
だが、相対する『セラフィムブラスター』は微笑んでいた。
余裕綽々である。なにせ、彼女にはD(デビル)が潤沢にあるのだ。消耗激しいガトリングガンの弾薬など掃いて捨てるほどある。
この物量で推しきれぬ的など居ないと微笑んでいたのだ。
「なるほどなるほど。あなたも怠惰に過ごしたかったけど、私が羨ましかったのですね」
わかる。
イエス怠惰。ノー勤勉。
だめだこの堕天使。いや、堕天使だからいいのか? よくわからなくなったところで、メンカルに飛ぶガトリングガンの弾丸。
毎分数千発も放たれる速度の弾丸の雨は凄まじい。
だが、それを術式組紐『アリアドネ』の結界が盾のように折り重なって、弾いていく。面で強度を増すよりも、角度をつけ、曲線を描いた方が弾丸を弾く効力は強い。
「ここからはシンプルに八つ当たりをするとしよう……うーん、これも悪事」
彼女のユーベルコードが輝く。
それは彼女の悪事をなそうという気概に反応したわけではないが、八つ当たりという感情の発露を伴って強く輝いていた。
「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
それは世界法則を改変する数多の鍵剣が降り注ぐ光景であった。
あらゆる加護と呪詛が極度に減衰される結界へと変貌する。
例え、『セラフィムブラスター』が余裕の笑みを浮かべ、己を強化しながら弾丸を放ち続けようとも、すでに整った、神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)の上では無意味である。
「こ、これは……! 加護が減退されている……!?」
それは彼女にとって誤算そのものであったことだろう。
D(デビル)の上納金によって強化され、笑いの止まらなかった生活が長すぎたのだ。怠惰すぎたがゆえに、彼女の力は油断という一瞬の隙の前に瓦解するのだ。
「……さて、いつまで微笑んだままで居られるかな……?」
「あ、ちょ、ちょっとまって! タイム! ターイム!」
手をクロスさせ、停戦を申し立てる『セラフィムブラスター』。だが、メンカルは待たない。
だって今のメンカルは悪事をなそうとしている。
どれだけフェア、アンフェアを説いたところで意味など無い。だってそれが、ワルのやることだ。
「……」
微笑むまでもない。
これが答えだというようにメンカルは術式装填銃『アヌエヌエ』の銃口を『セラフィムブラスター』に向け、躊躇なく引き金を引いた。
「あー!? タイムって言ったのにー!?」
羽が撃ち抜かれ、『セラフィムブラスター』の避難の声が上がる。
だが、そんなことを待つメンカルではない。今のメンカルは正真正銘、本物のワルなのだから――!
大成功
🔵🔵🔵
シニストラ・デクストラ
「寝てたんだって兄様。眠いのかな?」
『寝てたんだって姉様。じゃあ寝させてあげよう。』
永遠に…ね。(魔王剣と勇者の銃を構えつつ二人ともにっこり)
「ねえ兄様。家賃を貢いでもらってたんだってニートだね。悪い子だ。」
『ねえ姉様。惰眠を貪るほどさぼってたんだって引きこもりだよ。頭が悪い子だ。』
挑発してオブビリオンを部屋からおびき出します。
何度も挑発し押されているようなふりをして
前章で配下のモンスターが改装した場所までおびき寄せます。
「もう帰れないね。迷子だ。」
『もう帰れないよ。墓場だ。』
シニストラが前衛で斬りかかり、デクストラが援護射撃します。
ダメージが重なったら、原初の魔王で変身します。ラスボスぽく。
銃声が響き渡り、オブリビオン『セラフィムブラスター』の羽が撃ち抜かれる。
これまで悪魔たちの上納金、すなわちD(デビル)の上にあぐらをかいた上に惰眠まで貪っていた彼女にとって、それは目覚めるには十分な痛みであったことだろう。
だが、これまでの怠惰な生活が、彼女の性能のエンジンをかけるには、あまりにも重たい障害となって残っていた。
いわば彼女は食っちゃ寝状態だったのだ。
そんな怠惰を極めた彼女が即座に猟兵に相対することができることができようか。否、できるはずがない。
「寝てたんだって兄様。眠いのかな?」
『寝てたんだって姉様。じゃあ寝させてあげよう』
シニストラ・デクストラ(双躰のラスボス・f31356)の二人は、クスクス笑いながら、魔王剣と勇者の銃を構えつつ、そのお人形のような顔をにっこりとさせていた。
「永遠に……ね」
さらっと怖いこと言った。
それはあんまりにもさらっと言うものだから、え、と『セラフィムブラスター』は固まってしまった。
だが、状況は飲み込めている。
相対するは猟兵である。オブリビオンである以上、猟兵は敵であると正しく認識できる。
「何が永遠によ! 私はずっとクソチョロ人生を送ってエンジョイライフするんだから!」
彼女の翼がそらとぶガトリングガンとなって宙を舞い、毎分数千発という速度で弾丸をシニストラとデクストラに飛ばす。
「ねえ兄様。家賃を貢いでもらってたんだってニートだね。悪い子だ」
『ねえ姉様。惰眠を貪るほどさぼってたんだって、引きこもりだよ。頭が悪い子だ』
二人の言葉は弾丸が雨あられとなって降り注ぐ最上階にあっても『セラフィムブラスター』の耳に届いた。
それは挑発というには、あまりにも褒め言葉であった。
デビルキングワールドにおいて、悪徳は美徳である。通常の世界であれば、悪口になるが、ここでは称賛の言葉にしかならない。
「えへへ、そうでもないよ? 君たちもさ、ここまですぐに上がれるよ。ま、こんなイージーにできるのは私くらいなものかな?」
『セラフィムブラスター』さん、めっちゃ吹かす。びゅんびゅん吹かしている。
シニストラとデクストラはため息を付いた。
調子づかせるつもりはなかったけど、調子に乗ってグイグイ来る。ちょっと鬱陶しいなって思っていたのだ。
「わー大変! 強すぎるわー」
『ほんとうだー! たいへんだー』
若干二人はめんどくさいなって思ったが、『セラフィムブラスター』を部屋からおびき出すためには必要な演技であった。
正直、演技の必要もないほどに『セラフィムブラスター』はクソチョロな性格であった。
空飛ぶガトリングガンにまかせておけばいいのに、先輩風びゅんびゅん吹かせたくて、誘いに乗ってひょいひょいでてきてしまっているのだ。
「って、あら……?」
『セラフィム・ブラスター』が周囲を見回せば、そこはすでに、シニストラとデクストラの配下モンスターが改装した場所であった。
そこはもうダンジョンそのもの。
二人の姿はもう見えない。彼女の知るダンジョンとは様変わりした迷宮が広がり、困惑した顔の『セラフィムブラスター』に二人の声が響く。
「もう帰れないね。迷子だ」
『もう帰れないよ。墓場だ』
二人の銃撃と斬撃が『セラフィムブラスター』の体へと刻まれる。
悲鳴が上がるが、それでも彼等二人の攻撃はやまない。
「原初の魔神(チェントロ)――ねー面白いね」
『うん楽しいよ』
二人の身体がユーベルコードの輝きに包まれる。二人は一人。二つの身体。それが合わされば、魔神の姿に変貌を遂げる。
その姿は新たなダンジョンの主――即ちラスボスそのもの。
如何に堕天使と言えど、その姿は恐怖其の物。根源的な恐怖だ。目の前にいるのが、ラスボス。
それは彼女の人生において、現れることのない存在であったはずだ。
だが、その存在が今目の前にいる。
「踊ろうね。たくさん踊ろうね」
『くるり、くるりと沢山、踊ってね』
二人の声が重なって聞こえる。
魔王の剣と勇者の銃、その二つの攻撃が『セラフィムブラスター』の身体を貫き、その痛みを持ってオブリビオンの企みを散々に砕くように、ラスボスの哄笑がダンジョンの中に響き渡るのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「こんな時に熟睡とは、良い身分だな。
もう少し寝ててくれれば
仕事も楽に終わったんだけど。」
敵の武装を確認しディメンションカリバーを発動。
月光のローブに魔石を施す。
(武装の巨大さ、破壊力はかなりの物だろうが。
接近戦は死角になると見た。)
【オーラ防御】やディメンションカリバーの斬撃で
デビルガトリングの掃射を相殺し
【ダッシュ】して接近。
敵の眼前まで来たら【残像】を
残し後ろに回り込み
振り返りざまに魔石をスカイロッドに付け替え
不可視、高速の斬撃で攻撃。
(その武器なら後ろも死角になるだろう)
「善良な悪魔を良い様に使った責任を取ってもらう。
(本人達が被害を受けた認識がなくとも)
取り合えず責任を取ってもらう。」
オブリビオン『セラフィムブラスター』は散々な目にあっていた。
寝坊助の如く惰眠を貪って、起きたら目の前には猟兵が勢揃いである。こんな寝起きある!? と混乱した頭で思ったものだ。
だが、それでも彼女の微笑みは絶えない。
だって、彼女にはD(デビル)がある。
悪魔たちが勝手に彼女をデビルキングにしようと上納金として納めてきた家賃滞納分のD(デビル)があれば、消耗激しいガトリングガンの弾丸だって買って有り余るほどあるのだ。
まだまだガトリングガンぶっぱしても平気平気。
猟兵がいるけど、大丈夫?
大丈夫大丈夫! とまだまだ余裕の微笑みを浮かべていたのだ。
「でもでも、あんまりだわ! 私、ただ寝てただけなのに!」
そんな風に憤慨する『セラフィムブラスター』を前にして、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はフードの奥で溜息を突いた。
「こんな時に熟睡とは、良い身分だな。もう少し寝ててくれれば、仕事も楽に終わったんだけど」
え、寝首をかくつもりでおられた?
それはそれで卑怯極まりない。なんという悪逆非道。いやでも、ここデビルキングワールドだから、推奨される行為ではあるので、フォルクの言動は悪魔たちにとっては概ね肯定的に受け取られていただろうし、なんならマジでそんなことを!? と称賛されていたことだろう。
どちらにしたってフォルクはきっと困惑しただろうけれど。
「広大なる大空の力を内包せし魔なる欠片。この手に宿りてその力を示し。聖も魔も、絹も鋼も等しく断ち切れ」
フォルクの手にした魔石と『セラフィムブラスター』の放ったガトリングガンの弾丸が飛ぶのは殆ど同時であった。
雨のように降り注ぐ弾丸。
それを受けてはフォルクもひとたまりもないだろう。
だが、純白のローブがひらめき、フォルクの姿を隠す。同時に放たれる距離を無視し、空間すら断つ斬撃を放つ力によって、その尽くを無効化するのだ。
「な、なに、その反則的なやつ!? ずるだわ! ズールー!!」
『セラフィムブラスター』の抗議も最もだろう。
あちらの最大火力を簡単に無力化してしまうフォルクのユーベルコードは、彼女にとっての生命線を断つに等しいものであった。
「いいや、ずるくはない。れっきとした力だ。その武装の強大さ、破壊力はかなりのものだろうが――」
駆け出すフォルク。
しかし、『セラフィムブラスター』も負けては居ない。
ガトリングガンの斉射が防がれたとしても、その強大な砲身を叩きつければ、接近戦の不利もカバーできるのだ。
「接近戦は死角になるって思ったんでしょう! 甘――」
い、と言いかけた『セラフィムブラスター』の表情から微笑みが消えた。
確かに長大な砲身をフォルクに叩きつけたはずだった。だが、その砲身はフォルクの生み出した残像を捉えただけにすぎなかった。
次の瞬間、フォルクが現れたのは、彼女の背後であった。
純白のローブに備え付けた魔石を取り外し、風の杖に付け替える。
風の力が渦巻、さらには魔石の力の加えられた不可視、高速の斬撃が背後から『セラフィムブラスター』を切りつける。
「善良な悪魔を良いように使った責任をとってもらう」
「なんでよ! あいつら勝手に私を奉ったのよ! わたし、ただ寝ていただけだもの!」
それは身勝手なる振る舞いであった。
だが、それがデビルキングワールドでは美徳なのだろう。悪徳こそが美徳。だからこそ、オブリビオン『セラフィムブラスター』は悪魔たちに尊敬の眼差しで持って迎えられたのだ。
しかし、それはオブリビオン側の理屈だ。
此処に相対するのはあくまでも何でも無い。猟兵、フォルクなのだ。
「……」
確かにそうかも、と一瞬思った。本人たちが被害を受けた認識はない。むしろ、彼等は進んでオブリビオンのワルさに引かれ、かっこいいと思って為したことだろう。
けれど、それでも。
大きな力には必ず責任が伴う。
その意味を履き違えてはならない。
「――とりあえず、責任を取ってもらう」
奮った不可視の風の斬撃が、理不尽なまでに防げぬ攻撃となって『セラフィムブラスター』の背面をしたたかに斬りつけ、彼女の怠惰を斬って捨てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「結局、強固な要塞というのは攻略されるためにあるのです。」「もう、あきらめなさい。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【コキュートス・ブリザード】で、『セラフィムブラスター』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
斬りつけられた背中が痛む。
翼の一つは撃ち抜かれ、体は剣と銃によって打ちのめされている。それでもオブリビオン『セラフィムブラスター』はこれまでの怠惰なる生活を棄てきれない。棄てれるはずがない。
一度ぬるま湯に浸かってしまえば、そこから抜け出すことのできる意志を持つ者は少ない。
誰だって心地の良い場所にとどまりたいと願うだろう。
それは当然のことであったかもしれない。
「やだー! 私、まだまだこれからたくさんお昼寝するんだから!」
第一声はそれであった。
何故ならば、この世界『デビルキングワールド』は悪徳こそが美徳とされる世界である。
そんな世界にありて『セラフィムブラスター』の怠惰なる悪事はこれからも隆盛を極めて行くはずであったのだ。
「結局、強固な要塞というのは攻略されるためにあるのです」
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)の声が響き渡る。
すでにマンションはダンジョンから廃墟のようになっている。猟兵達による取り立てとダンジョンを突破するために踏み抜いたトラップが、マンションの部屋という部屋の天井や床、壁をぶち抜いていたのだ。
本来であれば、ダンジョンの迷路の如き通路で猟兵たちを疲弊させ、火力を増した爆発物で撃退するつもりだったのだ。
「もー! なんでなんで! 私の上納金生活が!」
流石堕天使である。
その理屈はまさに悪徳そのもの。
オブリビオンであるからこそ、躊躇なく為せる悪こそが、この世界に生きる悪魔たちに憧れとともに受け入れられるのもうなずけるというものである。
だが、盛者必衰の理と同じように、栄えた悪は必ず滅びる。
明が言うように強固な要塞はいつかは攻略されるのである。
「もう、あきらめなさい」
「いやー!」
放たれるは空飛ぶガトリングガンの掃射。
弾丸は毎分数千発。
相対するは猟兵。その瞳がユーベルコードに輝く。
「我、求めるは、冷たき力」
彼女のユーベルコード、コキュートス・ブリザードが発動し、壮大なる数の氷矢が形成されていく。
例え毎分数千発放つことができるガトリングガンであっても、打ち出されるのは一発ずつである。
互いの手数で勝負が決するのであれば、一度に数百の矢を放つ明に歩があったことだろう。
放たれ、相殺されていく氷矢とガトリングガンの弾丸。
その破片が舞い散る中、明は飛ぶ。
「残念、それは残像です」
打ち込まれた弾丸は尽くが明の生み出した残像に吸い込まれ、その弾丸は当てもなく空を切る。
あの弾丸が悪魔たちが上納したD(デビル)によって賄われているのならば、ここで無駄に消耗させることが明の目的であった。
少しでも消耗させる。
次なる猟兵のために、明ができることをする。
その献身はデビルキングワールドにおいては悪徳そのものであったが、世界がどれだけ変わろうとも変えられぬものもあるのだ。
悪魔たちの性根が善良であるように、その献身は必ずや実を結ぶことだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
榊・ポポ
イエーイ!大家さんですかー?
家賃滞納者をお仕置きしてたら物件滅茶苦茶になっちゃいましてー
いやぁ~実に申し訳ない!
なのでこの物件は持つだけ損ですので!
更地にして榊不動産に売り渡して頂きたく~...
いやいやいやいや!
タダで立ち退きはさせませんて!
此処よりも良い物件ご紹介致しますので
そちらに変更手続きをですね、はい!
お勧めはこれですね!オラァ!
ん?物件?
このマンションの近場にある、魔城に備え付けの番犬小屋だよ!
しかも寸法間違っててクッソ狭いんだわ!
何で犬小屋だって?資料にあったから仕方ない!
「魔城」で登録されてるもん!ポポちゃん悪くない!
見た感じ大家の図体デカイからさー、転送された瞬間圧殺だね!
ガトリングガンが斉射され、打ち合う氷の矢の破片がきらきらと世界を彩る。
そんな最中にあってなお、オブリビオン『セラフィムブラスター』は未だ怠惰なる上納金生活を諦めきれていなかった。
ある意味当然である。
一度ぬるま湯に浸かったものは、向上しない。
抜け出すこともできない。
ただ、泥濘に中に沈むがごとく、怠惰を極めるのみである。
だが、猟兵――榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)は違う。
常に上を目指している。
「イエーイ! 大家さんですかー?」
いや、違う。
オブリビオンは大家じゃないのだ。どっちかっていうと家賃滞納悪魔の親玉? というよりも、滞納した家賃を集めてマンションを要塞化しようとしていた悪の権化である。
悪魔たちが憧れ、勝手に彼女『セラフィムブラスター』をデビルキングにしようとせっせと真面目にD(デビル)を献上していた相手なのだ。
まあ、細かいことはどうでもいい。
「家賃滞納者をお仕置きしていたら物件めちゃくちゃになっちゃいましてーいやぁ~実に申し訳ない!」
このカカポ、一ミリ足りとて悪いって思ってない。
悪どすぎる!
「なのでこの物件は持つだけ損ですので! 更地にして榊不動産に売り渡して頂きたく~……」
しれっと交渉し始めるフクロウオウム。
マジで何がどうなっているのだ。戦いに来たと思ったら、まさかの交渉である。
『セラフィムブラスター』は本当に意味がわからなかった。
何を言っているんだろう、このフクロウオウムは、くらいに思っていた。
「いやいやいやいや! タダで立ち退きはさせませんて! こちらよりも良い物件ご紹介致しますので、そちらに変更手続きをですね、はい!」
「え~でもでも~お高いんでしょ~? でも一応見とこうかな~」
気持ち悪いくらいトントン拍子である。
何か裏があるのではないかと勘ぐってもいいはずであるが、『セラフィムブラスター』は長年の勘が怠惰なる上納金生活で鈍っていた。
頷いてはいけないところで頷いてしまったのだ。
「おすすめはこれですね! オラァ!」
放たれたのはポポのユーベルコードであった。
強制的に棲家にされるクソ不動産物件の資料を放ち、凄まじい音を立てて『セラフィムブラスター』の脳天に落ちる分厚い紙束。
えぐい。
ポポちゃん不動産(クソブッケン)のが今回ご紹介するのは、こちら。
「このマンションの近場にある、魔城に備え付けの版援護やだよ! しかも寸法間違っててクッソ狭いんだわ!」
「え~! そんなのやだー!」
ポポの言葉に抗議の声を飛ばす『セラフィムブラスター』。このフクロウオウム確実にわざとである。
「それになんで犬小屋なの?」
「資料にあったから仕方ない! 『魔城』で登録されてるもん! ポポちゃん悪くない!」
どっせいと蹴り込むポポ。
あくどいこと極まりなく、同時にどっちが悪役なのかわからぬムーヴである。
どかっと音を立てて蹴り立てる『セラフィムブラスター』のお尻を見てポポの怒りはさらに頂点に達するのだ。
「見た感じ図体でかいからさー、転送された瞬間圧殺だね! この! この!」
理不尽極まりない。
だが、それもまた事実である。転送された場合、彼女の体は圧縮されてしまうだろう。
だが、ユーベルコードの効果によって拒否するだけで『セラフィムブラスター』はダメージを負う。
「八方塞がりなんだよ!」
故にポポの追撃に『セラフィムブラスター』は反撃もままならず悲鳴を上げるほかなかったのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
あれが此度の大将ですか。
怠惰も悪徳ではありましょうが、謀多きは勝ち、少なきは負けるという言葉もあります。
――お覚悟を。
◆
しかし、あの銃撃をまともに受ければ我が剣でも防ぎ切れぬでしょう――ならば防げるようにするまで。
【曇耀剣】にて、雷電を網の如く巡らした【結界術】で銃弾を防御。
そのまま接近し、疾走の勢いと【怪力】を籠めた稲妻の剣を見舞うとしましょう。
オブリビオンは討つ。
その一念に曇りなく、邪心なし。
それがこの世界の法に背く事であれば、楠公が如く悪党の名に甘んじましょう。
……ところで少しビリッと来ましたがどういう裁定ですか建御雷。
敵の肌を見て一瞬精神を乱した罰だとか言いませんよね建御雷。
「あれが此度の大将ですか」
鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は鳥類の猟兵に足蹴にされるオブリビオン『セラフィムブラスター』をみやり、なんとも微妙な気分になっていた。
いや、まあ気持ちもわかる。
彼がこれまで対峙してきたオブリビオンの中でも格段にゆるい感じなのだ。
彼女のしでかしてきたことを景正は正しく認識している。
悪徳が美徳たる世界。
それがデビルキングワールドである。そこにありて、躊躇なく悪事を行うオブリビオンは悪魔たちにとって憧れの存在であり、彼女こそがデビルキングに相応しいと思わせるには十分な素養であったことだろう。
彼女の上納金生活は凄まじい怠惰そのものであった。
「怠惰も悪徳ではありましょうが、謀多きは勝ち、少きは負けるという言葉もあります」
「え、ちょっとむずかしいこと言われてもわかんないから~とりあえずぶっぱすれば解決だよね~」
『セラフィムブラスター』の翼が空飛ぶガトリングガンへと姿を変える。
「私の上納金生活のために、猟兵は排除しなくっちゃ! これまで結構やられちゃったけど、いい子ちゃんには負けないんだから!」
元気よくはずむ『セラフィムブラスター』。
……。
いや、別に何がどう弾むとかそういうのを言ってるわけじゃないから。堕天使の無邪気な邪悪さを表現しただけだから。本当だから。
「――お覚悟を」
だが、景正は浮かれた天の声、地の文とは違う。
キリッとした眼差しのまま油断なく空飛ぶガトリングガンを見据える。
あの銃撃をまともに受ければ、景正の剣といえど防ぎきれぬものであろう。毎分数千発もの弾丸を打ち出すのであれば、景正の剣は押し切られてしまうかもしれない。
ならば如何なされる。
そう答えは単純である。
防ぎきれぬ弾丸の雨が降るというのならば、防げるようにするまでだ。
「当流が守護神、建御雷に願い奉る――神征の剣、貸し与え給え」
その心は澄んだ湖面の如く。
揺らぐことはなく、波紋の一つもなく空の色を映し出す心鏡。故に、その誓約は果たされる。
それこそが、曇耀剣(フツノミタマ)。
封印をほどかれれば、稲妻が周囲にほとばしり、景正の体を中心にして結界が生み出される。
網目のごとく巡らせた稲妻の結界が放たれる弾丸を撃ち落としていく。
構えるは神速の一撃。
その一撃は雷鳴よりも速く、剣先は稲妻よりも鋭い。
「オブリビオンは討つ。その一念に曇りなく、邪心なし」
その行いはもしかしたのならば、このデビルキングワールドにおいては法に背くことであったのかもしれない。
けれど、景正の心は決まっていた。
例え、楠公が如く悪党の名で謗られようとも、どれだけ己の名が悪名で呼ばれようとも、オブリビオンは討ち果たす。
その一念のみがほとばしる雷撃の剣閃となって『セラフィムブラスター』へと放たれる。
斬撃の鋭さは言うまでもない。
絶叫すらも雷鳴にかき消されるほどの一撃。
納刀した瞬間、その斬撃は翼が変化したガトリングガンすらも切り捨て、景正の絶技を知らしめる。
「ええ、甘んじて受け入れましょう。悪名を。それが私が成さねばならぬことであるのならば」
この世界の悪魔たちは皆、性根が善良であった。
だからこそ、その善良さを謀るものは誅せねばならない。
「……ところで少しビリッときましたが、どういう裁定ですか建御雷」
景正はちょっと気になっていた。
ユーベルコードの力を身におろした時に、ちょっぴり電流が走ったのだ。いや、誓約を破った覚えなど無い。
まったく身に覚えない。
いや、本当に。
でもでも、あれですよね。わかりますわ。
『セラフィムブラスター』、そのぉ、ほら、ね?
「敵の肌を見て一瞬精神を乱した罰だとか言いませんよね建御雷」
景正はまるで動揺していない。
なんたる精神力。ビリっと来ていても、あくまで気のせいだといいはるのだ。
それは称賛に値することであったが、男子であれば仕方なし。
女人の肌って、わかっててもドキってするものね。しゃーなし。だが、建御雷の裁定は辛い。シビアなのだ。
またビリっと来た気がしたが、景正はやせ我慢するように一向に精神を乱したことを認めなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由に
その眠りを消し飛ばーす
今こそ見せてあげよう
僕の破壊活動
僕の悪行
僕のジャスティスを!
破壊こそ正義!
自爆こそジャスティス!
登場即自爆
自爆できれば台詞も活躍もいらぬ!
速攻で自爆することが最優先
1歩も動かず即自爆
それがジャスティス
ただ自爆するためだけに現れる存在
何かいきなり自爆する
そういう怪奇現象
もはや災害である
技能:捨て身の一撃を用いてのメッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆
射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
大事なのは自爆までのスピードさ
捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は四散して戦闘不能の即退場
斬撃の一撃がオブリビオン『セラフィムブラスター』の身に刻まれる。
その一撃は猟兵達による攻撃の積み重ねであった。
オブリビオンは常に猟兵よりも強大なる存在である。だからこそ、彼等は慢心する。個の力で勝るが故に、猟兵たちの連携を過小評価する。
そこが落とし穴であると『セラフィムブラスター』は未だ理解していなかった。
いや、例え理解していたとしても、猟兵の全てを理解することはできないだろう。
何故ならば――。
「も~! 私の安眠を妨げるなんてひどい!」
憤慨する『セラフィムブラスター』。
彼女はただ惰眠を貪りたかっただけなのだ。悪魔たちに上納金を貢いでもらって、デビルキングとして世界に君臨して楽しく暮らしたかった。
世界が滅びるなんてどうでもよかったけれど、自分さえよければいいのだ。
だからこそ、彼女は気が付かない。
その惰眠があらゆる点において、何もかもを手遅れにしてしまったということを。
「その眠りを消し飛ばーす」
虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)のその奇妙なる外観から声が発せられたと思った次の瞬間、あらゆる行動はすでに終わっていた。
そう、うつろぎの絶対正義。
それは破壊活動。彼の悪行。彼のジャスティス。そう、破壊こそが正義なのだ。イコール、自爆こそジャスティス!
もう悪徳が美徳の世界であれば、何言っているのか全然わからなくなるほどの論理。
彼の心にあったのは自爆という名の破壊行為のみである。
ただ自爆するためだけに現れる存在。
それがうつろぎである。
言葉は要らない。
主義主張はたった一つで良い。そう、自爆である。もはや怪奇現象、災害、そんな名で呼ぶのが相応しいほどの理不尽。
その権化がうつろぎなのである。
「へ―――?」
それがうつろぎが戦闘不能になる数瞬に聞いた最後の言葉であった。
「うつろぎ式・切宮殺戮術『一爆鏖殺』 これが僕の鏖殺領域さ」
ウツロギ(メッサツモード)の自爆攻撃の一撃が、理解不能なる速度で『セラフィムブラスター』へと見舞われる。
大事なのは自爆までのスピードである。
速さが足りすぎて、正直意味がわからない。
『セラフィムブラスター』に至っては、何をされたかすら知覚できなかったであろう。
それとわかるのは己の身を焼くユーベルコードの自爆攻撃の熱量だけであった。
言葉すらもいらぬ開幕速攻自爆。
防ぐ手段も、制止も届かぬほどの超高速自爆。
な、なにをいっているのかわからねーと思うが、本当に理解不能なる一撃は『セラフィムブラスター』に反撃も防御もできぬ程のユーベルコードの自爆の一撃を加える。
爆散四散して、担架に運ばれていく文字人間ならぬ、うつろぎ。
ただそのためだけに突撃してきた彼の雄姿はきっと星空に星座として取り上げられたことだろう。
いや、多分そんなことないだろうけど――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
結局、どんな世界だろうと俺のやるべき事は変わらない。
倒すべき敵がいるなら手段を選ばず倒す。御下命如何にしても果たすべし。
探索の内に建物の設計は把握した。壁や曲がり角等の遮蔽を利用し銃撃に対処する。
さて、この弾幕を潜り抜けて奴の背後を奪うにはどうする。
……一つ、命でも賭けるか。
無造作に遮蔽物から出て、無防備に銃火に身をさらす。死して屍拾うものなし。どうという事もない。
UC【微塵隠れの術】。脱力して銃撃を受ける事で、自身を中心とした爆発を起こし銃弾を全て正反射。ガトリング砲を撃破する。
同時に爆心地から姿を消しセラフィムの背後の影から出現。気配を消し死角から【暗殺】。「双身斬刀」で急所を切り裂く。
凄まじい自爆攻撃の爆発に巻き込まれてオブリビオン『セラフィムブラスター』は這々の体で瓦礫の中から這い出してきた。
理不尽過ぎる攻撃。
一体全体自分が何をされたのかも理解できぬ開幕自爆攻撃の前に未だ混乱から脱しきれていなかった。
「何がどうなったの……? 私のD(デビル)は無事だよね? あれがないとまたイチから貯めないといけないのやだー!」
未だ上納金生活の甘美なる怠惰な生活から抜け出せていないのだろう。
彼女は未だD(デビル)に対する執着に塗れていた。
その欲の皮が突っ張るような姿を見ても、髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は冷静そのものであった。
悪徳が美徳の世界であるデビルキングワールド。善悪の基準が真逆の世界に在りても鍬丸の瞳は真っ直ぐに見据えられていた。
「結局、どんな世界だろうと俺のやるべきことは変わらない。倒す敵がいるなら手段を選ばず倒す」
そう、鍬丸はこれまでもそうであったように、これからもそうやってオブリビオンを打倒していく。
世界の敵、世界を滅ぼす者を討ち倒す。
それこそが、彼に下された命であり――。
「御下命如何にしても果たすべし」
すでに鍬丸は廃墟とかしたマンションダンジョンの基礎設計を把握している。
壁の残骸や曲がり角の破損具合を全て頭に叩き込んでいる。
「あはは、隠れたって無駄だよ!」
『セラフィムブラスター』の放つガトリングガンの銃撃は凄まじいだろう。だが、ここは最上階と言えど、天上のある戦場だ。
どれだけ高速で飛び回り、ガトリングガンの斉射を行おうとも放たれる弾丸の射線は限られている。
乱れ撃たれたとて、こうも障害物の多い地形では効果は薄い。
弾幕の如き弾丸の雨をやり過ごしながら鍬丸は考える。
「さて、この弾幕を潜り抜けてやつの背後を奪うにはどうする」
だが、どれだけ考えても鍬丸の考えは一つだった。
これまでそうであったように、これから為すことはシンプルなものだった。
「……一つ、生命でも賭けるか」
障害物から鍬丸は身を無防備にさらけ出す。
それは自殺行為であった。
戦場にありて到底許容できるものではなかった。
「死して屍拾う者なし。どうという事もない」
それは完全なる無心。どれだけ『セラフィムブラスター』のガトリングガンが恐ろしいまでの威力を持っていたとしても、彼の心は凪いだままであった。
どこまでも平静に。
そのユーベルコードを発動させる。
その瞳に恐れはない。あるのは、ただ己の心が命ずるものだけである。それを如何にしても果たさねばならぬという揺らがぬ決意だけである。
「……微塵隠れの術(ミジンガクレノジュツ)」
鍬丸へと放たれる弾丸。
それらを前にしてもすくむことなく完全なる脱力状態で弾丸を受ける。
その弾丸は確かに鍬丸の体を肉片へと変える威力を持っていた。
だが、弾丸が彼の体に着弾した瞬間、周囲に吹き荒れるのは爆発であった。
「え―――!?」
『セラフィムブラスター』の驚愕なる声が響き渡る。
それこそが彼のユーベルコード。
完全なる脱力が見える脅威なる業。巻き起こった爆発が、打ち込まれた弾丸の全てを反射するのだ。
全ての弾丸が発射されたガトリングガンの銃口めがけて飛んでいく。
それはあまりにも信じられない光景であった。銃口に反射された弾丸はガトリングガンの内部で爆発を起こし、その銃身をいびつに捻じ曲げさせるのだ。
「よくも――!」
「遅い」
それは短い言葉であった。爆発の瞬間、己の影へと沈んだ鍬丸は一瞬の隙を突く。
影から影への移動。
鍬丸は『セラフィムブラスター』の背後の影へと転移し、気配を消した死角からの一撃、その科学忍者刀でもって背面へと刃を突き立てるのだ。
これこそが忍びの戦い方。
生命を賭けるが故に、その生命の価値を凌駕する戦果を上げる。
それが鍬丸の戦い方だ。
どんな世界であっても、どんなオブリビオンが相手でも変わることのない為すべきこと。
「御下命如何にしても――」
その言葉通り、鍬丸の一撃は深々と『セラフィムブラスター』へと叩き込まれ、その命を違えず果たすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
(ほっとした口調で)後は貴女を倒すだけ。ようやくいつも通りの依頼内容です。それでは行きます!
ガトリングガン掃射は結界術による防御結界とオーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防ぎ、天候操作で雨を降らして発動条件を満たした上で、UC:神域創造を発動。
周囲の空間の絶対支配権を得た以上、相手のガトロングガンは沈黙し、セラフィムの加護も消失、逃げる事も出来ない状態となる。
悪魔さん達を唆した罪は許せませんし、私としてもここまで来るのに心苦しい事が多かったので、きついお仕置き行きますよ!
と、多重詠唱による光と雷の属性攻撃&全力魔法&神罰&高速詠唱で、雷纏う巨大な光の槍を作り、スナイパー&貫通攻撃で撃ち抜きます!
「あいったー!?」
猟兵たちの一撃を受けて、オブリビオン『セラフィムブラスター』は痛みを訴える緊張感のない声を張り上げた。
彼女にとって、この『デビルキングワールド』はイージーな世界であった。
何故なら、いつもどおりにしているだけで、悪魔たちは自分を信奉してくれるし、家賃滞納分のD(デビル)を上納してくれる。
こっちは寝てるだけでカタストロフを起こせるだけのD(デビル)が集まるのだ。
クッソチョロくて最高じゃん!
と思っていたがゆえに猟兵たちの苛烈なる責めは完全に計算外だったのだ。
その様子を見て大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)はわずかにほっとしたようだった。
彼女はこれまで悪魔たちをしばき倒すのに抵抗を感じていた。
だって、悪魔たちは自称悪魔であって、その性根は善良そのものであったのだ。だからとても心苦しく、やりづらさを感じていた。
けれど、今目の前にいるオブリビオンは違う。
「後は貴女を倒すだけ。ようやくいつもどおりの依頼内容です。それでは行きます!」
相当フラストレーションが溜まっていたのだろう。
いつもの詩乃以上に気合い充分なのは気のせいだろうか。うん、気のせいだ。
「なにをー!」
これまで数多の猟兵達に追い詰められてもなお、『セラフィムブラスター』には微笑みが絶えない。
何故なら、これをしのぎさえすればいいのだ。
そうしたらまた、自分は寝っ転がって怠惰を貪るだけ貪っておけば、悪魔たちが勝手に上納金を納めてくれる。
それでカタストロフを起こせば良いのだから、簡単すぎてチョロすぎである。
こんなクソチョロ生活やめられないのだ。
「干天の慈雨を以って私はこの地を治めましょう。従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる」
だが、そんな彼女の目論見は詩乃の前では御破算になる運命である。
例え悪魔たちが許したとしても、神たる詩乃が許すわけがない。
そんな印税生活みたいな自堕落な生活。なにより、詩乃は怒っていた。それを表すように本来植物を潤す慈雨は豪雨のように廃墟となったマンションの最上階を満たしていく。
それは詩乃が絶対支配権を持つアシカビヒメの神域へと塗り替えるユーベルコードであった。
それはまさしく神域創造(シンイキソウゾウ)と呼ぶに相応しい権能であったことだろう。
此処に至ってガトリングガンの斉射など、詩乃には無意味である。
あらゆる弾丸が彼女のオーラの前に弾け飛んで霧散していく。そして、絶対支配権を持つ詩乃を前にすれば、そのガトリングガンは尽く機能を停止していく。
「え、えー!? なにそれずっこい!」
「いいえ、ずっこくありません。悪魔さん達を唆した罪は許せませんし、私としてもここまで来るのに心苦しいことが多かったので、きついお仕置き―――行きますよ!」
「ちょ、え、マ?」
マジである。
それほどまでに詩乃は怒り心頭である。
正直若干神の怒りということでのっぴきならない事態になりそうである。それほどまでに詩乃はフラストレーションがたまりにたまっているのだ。
多重詠唱が光と雷を紡いでいく。
天上に在りし光の全てを束ねたかのような神罰の槍が廃墟とかしたマンションの天井を吹き飛ばす。
「良い子の皆さんをたぶらかした罪! その身を持って償いなさい! そういう悪いことしたら―――めっ、でしょう!」
放たれた光の槍が巨大なる一撃となって『セラフィムブラスター』を撃つ。
高層マンションの最上階にてほとばしる雷撃と光はまさしく神々しいまでの光景となって、その怠惰なる堕天使に神罰の一撃を加え、詩乃のフラストレーションはたしかに目減りしたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
「面白いわね、あんた。分ってやってるのかしら?」
上着を脱ぎ捨て、真の姿の【封印を解く】
敢えてゴミの如く踏み砕いて見せたが、あの罠の数々は本当に性質が悪い
エスカレートを重ねれば、悪魔の身と言えども命に関わる物になる筈だ
事が命に到れば、後は陰惨な殺し合いになる
故にこいつはここで潰す
「私が遊んであげるわ。そう言うのは得意よ」
超重力を纏って飛翔し、肉弾戦で叩き伏せよう
ガトリング奏者は鋭角な機動で散らし、当たる物は重力を纏った廻し受けで【受け流し】だ
打撃を放ちつつ、狙いは関節技による【捕縛】
空中で相手を捕え、重力【属性攻撃】を加えた落下技で豪快に地面に叩きつけてくれよう
「ハイペリア重殺術……落星!!」
神罰の槍の如き一撃がオブリビオン『セラフィムブラスター』を穿つ。
その一撃で全身まっ黒焦げになりながら、べそをかく姿はいっそ憐れであったかもしれない。
けれど、未だその力は健在であった。
「えんえーん、なんでみんなしてそんなに私を倒そうとするかな? 私そんなに悪いことした? あ、したかもしれないけど、ちょいっとみんなにトラップのこと教えただけだし?」
この段に至ってもなお、『セラフィムブラスター』はわかっていない。
一体誰の虎の尾を踏んだのかを知らない。
一体誰の竜の逆鱗を逆撫でしたのかを知らない。
「面白いわね、あんた。わかってやってるのかしら?」
そこにあったのは、上着を脱ぎ捨てた才堂・紅葉(お嬢・f08859)の姿であった。
その表情を見て、『げぇ!猟兵!』じゃーじゃーん! とトボけた雰囲気は出せなかった。どこかにすっ飛んで言ってしまっていた。
「えー……な、なんのことか、私わかんなーい」
そんな風にとぼけることしかできない。
だが、それで誤魔化される猟兵はいない。よしんばいたとしても、今目の前にいる猟兵、紅葉をだまくらかすことはできない。
そう、紅葉は敢えてトラップをゴミの如く踏み砕いて見せたが、彼女をしてあの罠の数々は本当に性質が悪い。
エスカレートを重ねれば、悪魔の身と言えども生命に関わるものになるはずだ。
事が生命にいたれば、後は陰惨な殺し合いになる。
だからこそ、紅葉は決意していた。
己の封を解き、その力を顕現させる。
ハイペリアの姫(プリンセス・オブ・ハイペリア)たる彼女の背に浮かぶ紋章による超重力の力場が彼女の体を覆う。
「故にあんたはここで潰す。私が遊んであげるわ。そういうのは得意よ」
も、もしかして……。
その、遊ぶっていうのは……。
「言うまでもなく――!」
「い、いや――!? こ、来ないで来ないで、やだやだやだー!?」
ガトリングガンの斉射が始まる。
ばらまかれる弾幕の凄まじさは言うまでもないだろう。
だが、超重力をまとって飛ぶ紅葉の体を捉えることができない。鋭角な機動で飛ぶ紅葉の姿は物理法則の範疇を越えているような異次元の動きであった。
どれだけ弾丸を増やそうとも、彼女を捉えることはできない。
もしも、仮に捉える事ができたとしても重力をまとった回し蹴りによって弾丸そのものを受け流すのだ。
正直、その怖さは対峙した者にしかわからないだろう。
人が弾丸みたいな速度で迫ってくるのだ。
おまけに弾丸は当たらないし、あたったと思っても弾き飛ばすのだから、『セラフィムブラスター』の胸中は推して測ることができよう。
「逃げるな! 当たりどころが悪くなるかもしれないでしょうが!」
「ひぇ! 物騒すぎる!」
これはたまらんと『セラフィムブラスター』は逃走しようとするが、その羽を掴む者がいた。
そう、紅葉である。
「え、ええっと……この後の展開って……」
たらりと冷や汗が落ちる『セラフィムブラスター』。
対する紅葉はニコリともしていない。そう、『セラフィムブラスター』の敗因はたった一つである。
紅葉を怒らせたことだ。
「ハイペリア重殺術……落星!!」
掴んだ羽をむしり取らん勢いで紅葉の投げ技が決まる。
超重力の力を取り込んでのマンションの最上階へと叩きつけられる豪快な一撃。
それはまさしく彼女の語る業の名と同じ、落ちる星の如く。
その一撃を持って、紅葉は文字通り『セラフィムブラスター』と遊んでやったのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
なんかこう、気が抜けるんだけど
いやまあこの世界のオブビリオンだから
元々緩いところがあるのかなぁ
世界を滅ぼす為に行動している
それは変わらないだろうから
ここで滅ぼさせて貰うよ
そんなに怠惰に過ごしたいのでしたら
息さえしなくて良い体にして差し上げますのに…
あなた様ならきっと素晴らしい彫像になると思いますの
まあそっちは任せた
こっちは空飛ぶデビルガトリングをなんとかしよう
使い魔を呼んで鉑帝竜に同乗
さて同じ武器同士の勝負といこうか
兵器創造でキャバリア用のガトリングガンを生成
両足と尻尾を建物に固定しよう
攻撃回数を5倍、移動力を半分にして射撃
対人装備にキャバリア兵器をぶつけるのは
卑怯な気もするけどこの世界だしね
落下するオブリビオン『セラフィムブラスター』は流星のようにマンションの最上階へと叩きつけられた。
その一撃は言うまでもなく彼女を消耗させる。
数多の猟兵たちの攻撃を受けてなお、此処まで絶えているのは、オブリビオンとしての体力の為せるものであったことだろう。
だが、それで猟兵たちが許すわけがない。
「あーん、もう! なんでこんなに猟兵がいっぱい集まってるの! いじめ? いじめかしら!?」
堕天使である『セラフィムブラスター』にとっての計算外は、此処まで猟兵たちがデビルキングワールドに集まっていたことであった。
どう考えても過剰な戦力じゃない!? と彼女は嘆いた。
これまでの怠惰なる上納金生活が身に染み付きすぎて、困難を前に逃げぐせがついていたのだろう。
そんな彼女の心中を知ってか知らずか、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はまたもや気の締まらない思いであった。
「なんかこう、気が抜けるんだけど。いやまあこの世界のオブリビオンだから、元々ゆるい所があるのかなぁ……」
デビルキングワールドは自称・悪魔と呼ばれる『良い子』の種族が住まう世界である。
その過去の化身であるオブリビオンならばこそ、この微妙に緊張感のない雰囲気はうなずけるのかも知れない。
けれど、どれだけゆるい雰囲気であったとしても、世界を滅ぼす為に悪魔たちにD(デビル)を集めさせ、上納金として納めさせている以上、それは他の世界のオブリビオンと変わらぬ悪行であることだろう。
「だから、ここで滅ぼさせて貰うよ」
晶は金属の使い魔たちを呼んで、鉑帝竜に搭乗する。
式神白金竜複製構造体であるオブリビオンマシンは5mクラスの機動兵器だ。
多少卑怯な気がしないでもないが、まあデビルキングワールドだし、の一言で晶は片付けていた。
「そんなのアリ!? サイズ差ありすぎじゃない!? サイズ補正はどこなの!?」
対する『セラフィムブラスター』の訴えを晶は聞き流した。
卑怯かもしれないが、このデビルキングワールドにおいて卑怯とはまっとうな手段である。
褒められた行いなのだ!
「そんなに怠惰に過ごしたいのでしたら、息さえしなくて良い体にして差し上げますのに……あなた様ならきっと素晴らしい彫像になると思いますの」
さらっと邪神様が怖いことおっしゃられていおる!
ひえって『セラフィムブラスター』が身の危険を感じて飛び退こうとするが、もう遅い。
晶の駆る鉑帝竜が咆哮し、兵装創造(オルタナティブ・ウェポン)によって錬成されたキャバリア武装用の巨大化したガトリングガンが空を舞う『セラフィムブラスター』のガトリングガンを打ち抜き、爆散させる。
「ああー!? 私のガトリングがー!?」
流石にこれはひどい。
あれだけのキャバリアの巨体であるが、しっかりと両足としっぽをマンションの最上階に固定しているが故に、転落の心配もなければ、隙もない。
「まあ、なんていうか。卑怯って言われるんだろうなぁって思ったけど、そうでもないんだね。あくまで褒め言葉は敵には言いたくないかな?」
「そういう問題じゃなくない!? サイズ差があるって言っても限度があるでしょう!?」
ねぇー!? と『セラフィムブラスター』が叫ぶが、それは盛大に打ち込まれたキャバリア用兵器のガトリングガンが上げる唸るような銃声にかき消され、その訴えすらもなかったことにするように、斉射の一撃を加えるのだ。
「うん、わかってるけど。でも郷に入りてはなんとやらってやつだよ。デビルキングワールド、善悪が逆転してるってことは、今の僕の行いこそ、痺れるワルってやつさ。そうだろう?」
晶はマンションの眼下にて、猟兵とオブリビオンの戦いを見て歓声を上げる悪魔たちに応えるように、鉑帝竜のしっぽを振って応えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
下で結構騒ぎがあった筈なのによく寝てたな
此方は必死な思いでワルい事してたのにさー!
『それにしては割と乗り気な様子でしたが…』
いや違うんだEs…これには特に深くない訳が(以下言い訳
[SPD]
さてそろそろ眠気は取れたか?それならいくぜ!
相手の機動を【瞬間思考力で見切り】
移動先に弾を置く様に雷鳴でガトリングを攻撃
(部位破壊、スナイパー、貫通攻撃
次いで羽を狙って相手の攻撃・移動手段を封じたら
流星の【乱れ打ち、マヒ攻撃で体勢を崩し】
UC付きの雷鳴で仕留めるぜ
なんか妙に憎めないヤツだけど
住人たちを利用したのは事実だし何よりオブリビオンだからな
猟兵としては見逃す訳にはいかねぇんだ…悪く思うなよ!
アドリブ歓迎
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は驚愕していた。
いや、高層マンションの最上階がすでに数多の猟兵たちとオブリビオンの攻防によって廃墟と化していたのもそうであるが、それ以上にオブリビオンである『セラフィムブラスター』の剛毅さというか、豪胆というか、胆の据わったような態度に驚いていたのだ。
「下で結構騒ぎがあったはずなのによく寝てたな。此方は必死な思い出ワルいことしてたのにさー!」
祐一の抗議に『セラフィムブラスター』は知らんがなっていう顔をしていた。
むしろ、この悪徳が美徳なる世界『デビルキングワールド』において、ワルいことをするのは推奨されていることだ。
何をそんなにかしこまる必要があるのだとさえ、彼女の瞳はいっていた。
しゃべれないのは、単純に猟兵たちの相次ぐ攻撃と怠惰なる上納金生活が身にしみすぎての運動不足で言葉を吐く余裕がなかったからである。
その変わり似というわけではないが、サポートAIが若干冷めたような声色で言うのだ。
『それにしては割と乗り気な様子でしたが……』
う、と祐一が固まる。
「いや違うんだEs……これには特に深くない訳が」
延々と続きそうに為る長い長い言い訳の間に『セラフィムブラスター』も漸く息が整ったのだろう。立ち上がり、宣言する。
「そういうイチャコラはお家でやってくださーい! というわけで私は逃げます!」
ここに来て逃げの一手である。
ここを凌げば、このオブリビオンにとってイージーなワールドであるデビルキングワールドにおいて再起を目指すことは簡単である。
だからこそ、逃げる。
逃げて、逃げて、逃げまくって、いつかクソチョロ印税生活をするんだと、『セラフィムブラスター』は意気込んでいた。
「眠気は取れたろうが、そはいかせない。いくぜ!」
一瞬の思考で『セラフィムブラスター』の目論見を看破した祐一は先回りするように青白い光弾が飛ぶ。
それは弾を置くように放たれ、『セラフィムブラスター』が逃走しようとした先へと着弾する。
「―――わぶっ!?」
頭から光弾にぶち当たった『セラフィムブラスター』は涙目である。
逃げようと思ったら、すでに光弾があったのだ。避けることなどできようはずもなく、鼻っ柱がぺしゃんこになってひんひん泣く姿が情けない。
「この一撃雷で終わりにしようぜ…!」
放たれるは、冬雷(トウライ)の輝き秘めし、熱線銃の一撃。
翼を打ち抜き、乱れ撃つ熱線の一撃が次々と『セラフィムブラスター』の逃走を阻み、再び高層マンションの廃墟の上へと彼女を撃ち落とすのだ。
「なんか妙に憎めないヤツだけど住民たちを利用したのは事実だし、何よりオブリビオンだからな」
そして、祐一は猟兵である。
どれだけ同情できようが、感情移入できようがオブリビオンは滅ぼさなければならない。
「悪く思うなよ!」
そんな風にきれいに納めた祐一の横でサポートAIドローンの冷ややかな声が響く。
『まだお話は終わっていませんが……』
じっとりとした言葉であった。
それは祐一にとっては、未だ終わらぬ言い訳の続きを再開するということに他ならず、彼の言い訳はまだまだ長く続きそうなことを予見させるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
積極的でなかろうと収集D(デビル)でカタストロフを画策していたのは事実
そうである以上、この世界での悪逆の騎士として貴女を討たねばなりません
弾丸を盾で防御しつつ脚部スラスターでの●推力移動で滑走し回避
射線を迂回するよう●ロープワークで操る先端に剣を接続したワイヤーアンカーでガトリングに生やした翼を攻撃し切断
落下した4つのガトリング奪取
アンカーで電装に●ハッキング
射撃速度限界突破し攻撃力5倍
モーターや銃身、残弾の消耗が酷くなろうと問題無し
返して欲しいと…良いでしょう
●怪力で鈍器替わりに返却
オブリビオン相手だと抵抗が減る私も真の騎士とは言えませんが
恐らく、このような所業が悪魔受けが良いのでしょうね…
「もう! なんで私ばっかりこんな目に!」
それはオブリビオン『セラフィムブラスター』の悲哀なる叫びであった。
彼女はただ寝てただけなのに、と主張しているが悪魔たちを唆し、D(デビル)を上納させていた事実は変わらない。
どれだけ彼女が弁明したところで、それは変わることはない。
「せっかくのイージーライフが台無し! 猟兵のバカバカおバカバカ!」
罵声にもあんまり切れ味がないのは、これまで猟兵たちの攻撃に晒されてきたからであろう。
正直に行って、ドン引きするレベルで彼女は打ちのめされていた。
これまでの怠惰なる上納金生活が板に突きすぎて、蒲鉾レベルでくっついてしまったがゆえであった。
「積極的であろうとなかろうと収集D(デビル)でカタストロフを画策していたのは事実。そうである以上、高尾世界での悪逆の騎士として貴女を討たねばなりません」
それはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が騎士として、どこの世界であっても成さねばならぬことであった。
それこそが彼の炉心に燃える愛と正義の象徴であるのならば、例え善悪が逆転した『デビルキングワールド』であっても、やらねばならぬことなのである。
「そういうのいいから! 私はのんびりカタストロフ生活したいの!」
放たれるガトリングガンの弾丸は凄まじい。
毎分数千発という速度で放たれるガトリングガンの弾丸は、容易に防げるものではないだろう。
如何に分厚い装甲板を積層させた大型シールドであっても、抜かれてしまう。
だからこそ、トリテレイアは守るのではなく踏み込んだのだ。
脚部スラスターが火を噴き、推力で滑走しながら射線を迂回するように駆け抜け、同時にワイヤーアンカーのように接続した剣を投擲し、『セラフィムブラスター』の翼を狙うのだ。
「そんな直線的な動き!」
だが、『セラフィムブラスター』もさるものである。投擲した剣を交わし、さらなる集弾性能でもってトリテレイアの大盾へと弾丸を収束させていく。
「ですが、これならば如何です!」
突き刺さった剣がアンカーのように廃墟とかした高層マンションの残骸に突き立てられ、それを起点にワイヤーとスラスターでもって円を描くように機動する。
そうすれば、ワイヤーは『セラフィムブラスター』の操るガトリングガンをはたき落とすことが出来る。
「あー!? そういうのずっこい!」
「いいえ、たしかに無作法ですがこれも戦法。ご容赦を」
そう言ってトリテレイアのはなったアンカーがガトリングガンに突き立てられ、ハッキングする。
トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
アンカーから侵入したコードがガトリングガンの内部を掌握し、トリテレイアの武装として認知させるのだ。
「えー!? 強盗騎士(システム・マルチウェポンマスタリー・ローバー)じゃん! どろぼー!」
そんな『セラフィムブラスター』の避難の声さえも、『デビルキングワールド』においては称賛の声である。
なんだか釈然としないものを感じつつ、トリテレイアはガトリングガンから弾丸を斉射し、『セラフィムブラスター』のガトリングガンと打ち合う。
だが、それはユーベルコードの力によって通常の連射速度を超えていた。そんなことをすれば、ガトリングガンが保たない。
けれど、それでいいのだ。
「あー! あー! 私のガトリングガン還して! かえしてー!」
こわれてしまうー! と『セラフィムブラスター』は涙目である。
なんだか悪いことをしているような気がするのだが、それもこれもみんな『デビルキング法』が悪い。
恨むのならば法律を恨むしかない。
しかし、トリテレイアは頷いた。
「良いでしょう。お返しします」
え、ほんと? と『セラフィムブラスター』の顔がぱっと明るくなった瞬間、彼女の脳天を直撃するのはワイヤーに接続されたガトリングガンを鈍器として扱ったトリテレイアの非常なる一撃であった。
うわ、ものすごい音したよ。
「……オブリビオン相手だと抵抗が減る私も真の騎士とは言えませんが」
少し自嘲気味であったが、なんとなしすっとした気分になっているであろうトリテレイアが頷く。
「恐らく、このような所業が悪魔受けが良いのでしょうね……」
それはマンションの眼下に見える悪魔たちの声援を受ければ、自明の理であった。
それでもトリテレイアはなんとも言えない気分になりながら、己の悪逆なる振る舞いが憧れの的になっていることに戸惑わずには居られないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お昼寝最高ですよね
私もお昼寝…シリカ(猫)さん待ってください帰ってからの話です!(誤魔化し
仕方ありません
ここは健全(強調)クノイチらしく
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み、影より悪を討つ者なり!
いやーはじめてまともに言えた気がします
おかしいですね…
そんなわけでー
いきなり【VR忍術】大・召雷の術!!
空を舞うガトリングごと落雷で撃ち落とす作戦です!
ガトリング弾は残像ができるくらい素早い移動で大雑把に回避
見切りとか怖いですし!
隙を見て接近戦を挑みましょう!
しかし、うーん
クノイチ的にもこういうガトリングスタイルを取り入れた方がいいんですかね?(悩
※アドリブ連携OK
脳天を直撃したガトリングガンの銃身の一撃にオブリビオン『セラフィムブラスター』は昏倒していた。
あの重量と、凄まじ音である。
脳天がカチ割れていない所がオブリビオンたる所以であろうか。頑丈すぎるのも考えものである。
そんな彼女の姿を見て、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はのほほんと言った。
「お昼寝最高ですよね」
にっこり笑顔である。
いいよね、お昼寝。できたら嬉しいよね、お昼寝。そんな感情がうずまきそうな言葉であったが、サージェは背後に気配を感じて振り返った。
「私もお昼寝……シリカさん待ってください帰ってからの話です!」
今しようとしていたとか、オブリビオンが昏倒しているから、今ならいいかなとか、そんなこと微塵も考えていたわけではないとサージェは言い訳がましく、背後で爪をにゅってさせた白猫又に弁明するのだ。
「仕方ありません。ここは健全(強調。此処大事テストにでます)クノイチらしく!」
コホンと空咳してごまかしながら、サージェは声高らかに宣言するのだ。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み、影より悪を討つ者なり!」
決まった。
決まってしまった。いつも最後まで言わせてもらえない前口上が言えてしまったのだ。
だが、うーん、なになに? と昏倒から回復したオブリビオン『セラフィムブラスター』には悲しいかな、届いていなかった。
せっかく前口上最後まで言えたというのに、聞くものがいないというのは、これ如何に。そういう運命なのだろうか。
「いやーはじめてまともに言えた気がします。おかしいですね……聞いていようが、聞いていまいが、そんなの関係ありません! そんなわけでーいきなり参りましょう!」
未だ『セラフィムブラスター』は状況が飲み込めていないようだった。
マジでなんのこっちゃであった。
起きてみたら猟兵が、なんかすんごいユーベルコードを発動していたのである。
「あれー?!」
「メモリセット! チェックOK! 参ります!」
「ちょっとまって!? 状況が飲み込めてないんですけど!?」
『セラフィムブラスター』の言葉ももっともであろう。だって昏倒から目覚めたら、なんか上空に渦巻く暗雲があるのである。
もしかしなくても、それが猟兵の放ったユーベルコードであることは間違いようがない。
だからこそ、焦っていたのだ。
ガトリングガンを構える。とっさのことだった。
だが、もはやそれは遅きに失するものであったことだろう。加減というものを知らない。いや、この『デビルキングワールド』において加減なんてするものじゃない。
だって、悪徳が美徳の世界である。
お約束とか、そういうのは破るためにあるのだから!
「大・招雷の術!!」
サージェのVR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)が炸裂し、空を舞うガトリングガンごと、『セラフィムブラスター』を討つ。
奇しくも雷撃の攻撃は本日二度目である。
一度目は丸焦げになったが、二度目の雷撃は『セラフィムブラスター』の頭をアフロヘアーみたくするほどの一撃であった。
がっくり崩れ去る『セラフィムブラスター』。
そんな様子を見ながら、勝利を確信し、サージェは首をひねる。
「しかし、うーん。クノイチ的にもこういうガトリングスタイルを取り入れたほうが良いんですかね?」
悩むところである。
世のクノイチは多種多様増加の一途をたどっているのである。
最先端を征く気概があるのであれば、それらを取り入れるのまたクノイチを称するサージェにとっては避けては通れぬ道であったことだろう。
そんなことを悩みながら、今日もサージェは征く。
あ、きれいに終わった!
とサージェが喜んでいるのもつかの間、その肩に白猫又のシリカさんが飛び乗ってくる。ふふ、こういうマスコットキャラって良いよね、と悠長に思っては居られない。
お姉ちゃん。
とシリカの声が底冷えするみたいに響く。
「も、もしかして……」
お説教ですか?
イエスイエスイエス!
今日も どこかでサージェのお説教に咽び泣く声が響くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
分かる
超分かる
不労所得良いよね…不労所得で生活しつつ好きな事だけして生きて居たい…
クソチョロ人生送りたい…
私も寝てるだけでお金が貯まって
地面に剣突き立てたら上からオブリビオンが落ちてきて、勝手に死ぬボーナスステージで生活したくなる時あるもん
セラフィムブラスターちゃん略してブタちゃんもそんな生活で堕落するのも仕方ないね
まあ、それはそれとして
オブリビオンは倒すのは仕方ないね
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:C.S】を起動
銃弾は『オーラ防御』で弾いて残りは『武器受け』してやりすごす
此方も加速して一気に接近して斬る
こんな所で飛び回るのは大変でしょ、特に駄肉付きだとさ!
雷撃を受けてアフロヘアーみたくなったオブリビオン『セラフィムブラスター』は、がばりと立ち上がり、頭をくしゃくしゃー! としてヘアスタイルを整えると開口一発叫ぶ。
「やだー! このまま上納金生活するのー! またイチからなんてやだー!」
それは魂の叫びであった。
このクッソちょろい悪魔たちから貢がれるだけ貢がれる生活に頭からどっぷり使った『セラフィムブラスター』にとって、今回の現界によって得た生活は失うことは考えられないほどの心地よいぬるま湯であったのだ。
働かずとも入ってくる上納D(デビル)。
それは甘美なるものであったことだろう。だって、だって寝てるだけでD(デビル)が勝手に増えるとか、なにそれ錬金術でも、そんなことないよってなるから。
だからこそ、『セラフィムブラスター』は今に執着するのだ。
「分かる。超分かる」
そんな声がいつのまにか『セラフィムブラスター』の横から聞こえる。
そこには物憂げな表情で遠くを見つめる月夜・玲(頂の探究者・f01605)の姿がった。
え、と『セラフィムブラスター』は玲の横顔を見つめる。
その瞳には自分と同じ憂いがあった。現状を失いたくないと願う心があった。
「不労所得良いよね……不労所得で生活しつつ好きなことだけして生きていたい……」
「それな!」
二人はいきなり意気投合していた。
もはや、言葉を紡げば同意しか出てこないほどに。
「クソチョロ人生送りたい……私も寝てるだけでお金が溜まって地面に剣突き立てたら上からオブリビオンが落ちてきて、勝手に死ぬボーナスステージで生活したくなる時あるもん」
「寝てるだけでD(デビル)欲しい。具体的には5000兆D(デビル)くらい。わかるよ、玲ちゃん」
だよねー。
二人は顔を合わせてうなずき合う。
とてもいい雰囲気である。女子高生、即ちJKがおしゃれでポップなインスタ映え映えするようなタピオカ的なドリンクを片手におしゃべりスルような雰囲気で二人は、クソチョロ人生について語っていたのだ。
非常に申し訳ないが、いい雰囲気すぎて聞き流しそうに為ることばかりである。
「セラフィムブラスターちゃん略してブタちゃんもそんな生活で堕落するのも仕方ないね」
「でしょでしょー! ていうかブタちゃんてひどいよ、玲ちゃんー!」
なんて冗談を言い合いながら二人はじゃれるみたいにキャッキャしていた。
青春であった。
正直、二人ともJKって感じじゃないけど、まあ雰囲気でどうとでもなるものである。こういうときの雰囲気づくりである。
其処のところは任せて頂きたい。
だが、悲しいかな。
二人は猟兵とオブリビオンである。
「まあ、それはそれとして」
うん、と玲は頷いた。
え、なにそのずんばらりんって引き抜いた模造神器は。しかも二振り。
えっと、なんか瞳がユーベルコードに輝いてたりするんですけど。
「封印解除、時間加速開始」
容赦のないユーベルコードであった。
今までのやり取りとか、意気投合した雰囲気とか、そういうの全無視であった。
時間加速の封印を解除された玲のユーベルコード、Code:C.S(コード・クロノシール)の発現によって、一瞬で玲は『セラフィムブラスター』へと模造神器の一撃を振るうのだ。
「なんでー!? さっきまであんなにキャッキャしてたのにぃ――!?」
「や、なんか無駄肉ついて動きづらそうだなーって最初から思ってたので」
玲はこともなげに言う。
あ、もしかして、そういうスタイル的なお話? 仲良くなったのにぶった切らないといけないとかそういう悲壮感なんてどこにもない感じで玲の模造神器の斬撃の一撃が、『セラフィムブラスター』の体を切り裂き、霧散させていく。
きらきらと無駄にきれいな粒子が骸の海へと還っていく中、『セラフィムブラスター』は微笑んで言うのだ。
「最期に、いい?」
それは消えゆく定めだからこそ。
玲は頷く。それくらいはいいだろう。骸の海に還ることは変わらない。ならば、と頷いたのだ。
最後の別れくらいキレイに終わっても良い。
「『ブタちゃん』ってアダ名やめて――」
その切なる願いはきっと届くだろう。アダ名にしてはちょっとひどいなって天の声っていうか、地の文も思ってた。
ブタちゃんはないなって。
玲は微笑んだ。
「―――ヤダ」
なんでぇぇぇ――!?
その『セラフィムブラスター』の最期の悲哀なる叫びは、『デビルキングワールド』の価値基準に置いて、最高にクールな返答によって切り捨てられたのだった――!
大成功
🔵🔵🔵