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鉄錆と破壊の攻防戦……

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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 ……魔界、それは。
 謀略と暴力が荒れ狂う波濤の如くひしめくとされるまさに魔境。
 それをこそ真面目に貫き通せば、破滅の限りを尽くして阿鼻叫喚と化したろう。
 しかし、ここデビルキングワールドの住人は、悪事を行うには善良過ぎた。
 見た目の凶悪さと相反する人の好さが災いし、逢引したりましてや門限を破ったりすることにすら罪悪感を覚えてしまう生真面目さに、種族の先細り、なんかもうダメなんじゃないかという危機感が生じた。
 そこで彼らは、種族存亡の危機から脱するべく、進んで悪事を行う法律を立ち上げ、悪事こそ美徳であるとした。
 このデビルキング法を、真面目な悪魔たち住人は真面目に順守し、今日も真面目にあくどい事に手を染めていくのだった。
「あの、これ……」
「おや、これはお隣の」
 そして今日、『皆殺しの公道』と呼ばれる整備された道を挟んだ二つの国で争いが巻き起ころうとしていた。
 ちょっと引っ込み思案な気質の淡水の悪魔の国が、質実剛健を旨とする鎧の悪魔の国へと侵攻しようというのである。
 今回はその挨拶として、宣戦布告を告げる特使が菓子折りを手に鎧の国の関へと出向いたというわけである。
 断じて、暮の元気なご挨拶ではない。
「あのぅ、これ、うちの特産の練り物の詰め合わせで……」
「おお、これはこれは、私も好物です。貴国のカマボコはうどんに最適だ!」
「そ、そうですよね! おつまみにもちょうどよくって……」
 穏やかな調子の全身鎧の悪魔の言葉に、セーラー服の淡水の悪魔はぽっと頬を染める。
 そして、そのついでに明朝、国に攻め入る旨を真面目に伝えると、その一大事に鎧の悪魔も驚愕に胸を抑える。
「なんとなんと! それはあくどい! これは一大事ですなぁ!」
「はいぃ、あの、そういうわけですので、国主の方によくよくお伝えしていただくよう、お願いします」
「これはどうも、丁寧に。確かに心得ました。そちらもお気をつけてお帰りください」
 鎧の奥でにっこりと笑って、終始ほのぼのとした調子で両国の者たちは別れるのであった。
 そして、かつてない、国盗り戦争が始まる……。

「デビルキングワールドのことは、もう聞いているだろうか?
 基本的に善良な住人ばっかりなんだが、中には本物のオブリビオンも混じっている」
 今回はそんな話だ。と、グリモアベースはその一角で、リリィ・リリウムはいつもよりも若干穏やかな調子で話し始める。
 気のいい連中ばかりのかの世界では、オブリビオンという本当に悪事を働いて世界を滅ぼさんとしている者の登場により、そのデビルキング法にこの上なく適合する存在に沸いているという。
 巨悪こそ正義。一日一悪。途方もない悪事をぶち上げるオブリビオンに、彼ら住民は賛同せずにはいられないのだ。
「オブリビオンの最終目標はカタストロフ。すなわち、世界の崩壊だ。
 今回、とある国同士で諍いを起こしたのも、仕掛けた側の親玉がオブリビオンっていうタネがあるのさ」
 オブリビオンがわざわざ国盗りのために住人を引き入れている。そんなまだるっこしい。
 そう思うかもしれないが、かの世界の住人はマジ強いのである。
 それこそ個人でオブリビオンに匹敵するほどの力を有している。冒頭でそんな素振りなかったけどね!
「国同士でつぶし合いをさせ、長い目を以て崩壊させる……というのもまた違う。
 連中が求めているのは、デビルキングワールド特有の通貨、Dの確保だ。
 このDには魔力がこもっているんだ。うまく使えば銭投げで大ダメージを与えたり、ミストファイナーがガー不になったりする。
 冗談はともかく、大量に集めれば、世界を消滅させかねない儀式も可能ってことさ」
 ひとまず、オブリビオンの目的はそれであるようだ。
 そして重要なこととして、リリィは今回の戦争を終結させるための算段を話す。
「今回、淡水の悪魔たちを従え、王になったオブリビオンを仕留めるには、淡水の悪魔たちを突破しなきゃならない。我々だけで小国の軍勢を相手取るのは少々無謀だろう。
 そこで、攻め入られる鎧の悪魔たちをこちら側に引き入れるんだ。
 それで戦力としては五分。我々も入れれば、オブリビオンを討伐するだけの余力は確保できる筈だ」
 何しろ魔界の住人は個人個人がオブリビオン級。味方にできればかなり心強いはずだ。
 無論、説得にはそれ相応の準備や知略が必要かもしれないが……。
「なに、連中はちょっと感覚が常人とは違うが、悪事には敏感だし、殺さない程度にぶっ飛ばして言う事を聞かせるというシンプルな方法も手だ」
 そうして一通りの説明を終えると、リリィはひとつ咳ばらいをする。
「長くなってしまったが、魔界の連中は凶悪の見た目の割に、気のいい連中だ。国盗り戦争なんかで失うのは勿体ない。どうか、助けてやってほしい」
 そうして口元に笑みを浮かべると、猟兵たちを送り込む準備を始めるのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 新しい世界。ひとまずやっておこうという感じで書き始めましたが、感覚が違うというのは、いろいろ難しいものですね。
 この世界では、集団敵として扱われるのはオブリビオンではなく、魔界の一般住民です。
 魔界の人たちはオブリビオン並に強いので、猟兵と言えどぶっ飛ばすのも一苦労だと思いますし、むごたらしく殺されたりはしないと思います。
 基本的に真面目で気のいい連中ですが、悪者アピールなどをすると、喜んだりしてくれるかもしれません。
 何か、説得の糸口にしてみてもいいかもしれません。
 以上を踏まえたうえで、今回のシナリオは、集団戦→集団戦→ボス戦というフレームを使わせていただいております。
 最初は、鎧の悪魔たちの国に出向いて、何らかの説得、仲間と認めてもらうなりが必要になると思います。
 2章では、淡水の悪魔たちと戦わねばなりませんが、こちらでもある程度の説得は通用するかもしれません。1章で味方を作っていれば、手を貸してくれるかもしれません。
 3章はボス戦です。はい。
 初めての世界で、色々ぼろが出るかもしれませんが、頑張って書いていきますので、お付き合いください。
 どうでもいい話ですが、ガー不になるのは別の技です。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 集団戦 『鎧の悪魔』

POW   :    アーマーフォース
【鎧を着た者】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[鎧を着た者]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    アーマーエンハンス
対象の【鎧】に【追加装甲】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[鎧]を自在に操作できる。
WIZ   :    アーマーラビリンス
戦場全体に、【鋼の鎧】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──鎧の悪魔の国。
 首都近郊の大広場では、戦士階級の鎧の悪魔たちが整列し、隊長格の悪魔から薫陶を受けているところであった。
 なにしろ、明日には隣国の淡水の悪魔たちが攻め入ってくる。
 もしかしたら死ぬかもしれない。
 そんな戦いに赴かねばならない戦士たちに、厳しくも心強い激励の言葉を、質実剛健たる悪魔たちは待っていた。
「諸君、明日には淡水の悪魔の皆さんがこの国を襲いにやってこられる!
 他国への宣戦布告! そして理由なき侵略行為! まったくもって悪辣たる行為は、称賛に値する! すごいぞ!」
 熱のこもった言葉は、この世界の人間でなければ腰が砕けそうな内容ではあるのだが、言葉を受ける悪魔たちの中には、はやくも感動に打ち震えて胸を抑える者までいる。
「さて、諸君らも重々承知かと思うが、淡水の悪魔の皆さんは、いずれも劣らぬ見目麗しいご婦人方だ。まさかと思うが、その見目に懸想をしておる罪深い者はおらぬと思うが、戦場で間違いがあってはならぬ!
 仮に、そのような軟弱者が、あわよくばかのご婦人方にお近づきになりたいなどと申す場合は……事前に書面を交わしておくように!」
 兵役を辞するのではないのか!?
 列をなす鈍色の鎧の中にさざ波のような動揺が走る。
 なおも隊長は続ける。
「そして、戦いは熾烈を極めることであろう。万一にも生死に関わる事にもなろう。
 戦いに倒れることは必定。真剣勝負の前に倒れることは致し方のない事。
 だが、問題は、怪我をさせてしまう事だ。
 わが軍には、敵方のご婦人を傷物のまま帰すような不届き者はおるまい!
 万一、ご婦人の顔にでも傷をつけてしまったのならば、速やかに名乗り出、しかるべき責任を取ってもらうこととする。よいな!」
「はっ!!」
 どこかずれたような激励の言葉を受けて、鎧の悪魔たちは皆そろって敬礼を送るのであった。
白斑・物九郎
●説得トライ



・マイ飛空艇にて嵐と共に広場へエントリー(天候操作技能による演出)
・ドクロの意匠だらけのもう凄いワルそうな佇まいとあと魔王オーラとで「どっかの国からお越しの魔王かな?」って思わせる作戦


おとなりさんと戦争だァ?
ンじゃ暇してますし、飛空艇移動国家、我が『白斑王国(モノクロ・キングダム)』も淡水国ボコるの手伝ってやりまさァ
(事前告知なしの友軍による挟撃!ワル!)

戦争の後、おたくらが疲弊してようモンなら、裏切ってトドメ刺してカネありったけ巻き上げてやりますからな!覚悟しなさいや!
(裏切りも有り得る!ワル!)

ァ?
淡水国の女へ好いた惚れた云々?
次会ったら秒で告れ!!
(段階とか踏まない!ワル!)



 血気に逸る鎧の悪魔の国の広場には、元からあまりよくはない空模様が、唐突にぐずり始める。
 妙だな。と、眉をひそめる者も出始めるほどの嘶きを見せる空のうねり。
 特大のどら猫が喉を鳴らすかのような稲光がしたと思えば、それは渦巻く風となって吹き荒れる。
 そう、嵐だ。
 ぽつぽつと鎧の悪魔たちの身に纏う甲冑を穿つのは、雨粒ではなく細かな砂の粒である。
 どこからか巻き上げられた砂塵がこの国の、この広場に局所的に吹き荒れるというのか。
 実に妙な話だ。
 何かが来る。という予兆と共に、渦巻く嵐の空から、一隻の艦影が下りてくる。
「くぅ、なんて嵐……それに、あの船……着艦許可は出ているのか!?」
 ドクロの意匠をこれでもかと引っ提げた、いかにもワルそうな飛空艇が、まさに威風堂々と広場に着陸するのを、吹き荒れる砂嵐に圧倒されながらも悪魔たちの目に、嫌でも突き刺さる。
 広場の着陸許可など、無論なし。
 事前にこんなことしますよなんて、調子のいいことは言わない。ゲリラライブだ!
 海賊ルックの船員たちが駆る空飛ぶ船が座礁するかのように広場に降り立ち、タラップが下りる頃には、砂嵐は上空へと鳴りを潜める。
 まるでこれから現れる者がそうさせたかのように。
 まるで、悪天候ではドローンによる撮影が捗らないからとでも言うかのように。
 すべての幽霊船員が傾注し、その船の主がゆっくりと気だるげにすら思わせる足取りでタラップを降りる。
 いましがたの砂嵐が、この場のすべての者たちの言葉を奪っていた。
 故に、広場に響くタラップを鳴らす下駄の音だけが妙に引き立って聞こえる。
 紺の甚平に、ワイルドな黒髪をピタッとセットするヘアピンがトレードマークの猟兵、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は、王笏のような巨大な鍵を肩に担ぎながら、王たる威厳を振りまきながらのっしのっしと広場に降り立った。
 むすっとしたワルの顔立ち。天候を操作した登場の演出。ユーベルコード【砂嵐の王・死霊大隊】を用いたマイ飛空艇。
 この静寂を見聞きすればわかる。
 完璧に決まったな。
 褐色の肌艶には表情にこそ出さないが、キマイラ特有の自前の猫耳はぴこっとドヤっていた。
 最近魔王を生業にし始めた物九郎は、その登場の仕方にも一工夫し、動画映えするような演出でエントリーをキメたのである。
 果たしてその効果はあったようで、
「な、何者なんだ……あの異様なオーラ……」
「さては、さる国の魔王殿では……?」
「うわぁ、ま、魔王さんが広場を練り歩いてるぅ!」
 鎧の悪魔たちの反応は、一様に物九郎の演出にはまっているようであった。
 ぶっちゃけ、堂々とした佇まいで甚平の若者が歩いてるだけだぞ。いいのかそれで。
 だがしかし、それを是とするだけの空気ができてしまっている。いいのだ。
 屈強な悪魔の戦士たちが恐れおののき、雰囲気に呑まれて距離を取る中、その歩みを妨げるかのように立ちはだかるのは、先ほど演説していた隊長格の悪魔であった。
「待たれよ! どこのお国のどなたかは存じぬが、いったい我が国にどのような用向きか!」
「あン? やっと話しかけてくれましたなぁ?」
 腰をカクンと折り曲げるようにして、下から睨み上げるようにして、いわゆるメンチを切ると、隊長格の鎧の悪魔はわずかにたじろいだのがわかった。
 大丈夫か、地の口調が出かかってるぞ。
「聞くとこによると、おとなりと戦争だそうですなァ?
 ンじゃ暇してますし、飛空艇移動国家、我が『白斑王国(モノクロ・キングダム)』も淡水国ボコるの手伝ってやりまさァ」
「なっ……友軍! しかし……」
 狼狽える隊長。無理もない。この異様な雰囲気を放つ(あくまでも演出としてそう感じさせているだけだが)者を信用していいものか。
 いやしかし、この悪そうな佇まいから繰り出されるのは、一軍を率いての挟撃ときたものだ。
 独断先行、不意の友軍による挟撃。それは戦の華とは言え、この調子では行き当たりばったりに決めた感もある。
 なんて、なんて……ワルなんだ。
 隊長格の悪魔は、感動して肩を震わせていた。
「て、手を貸していただけるのはありがたいが……しかし、かの国はその多くをご婦人方で構成されている。その、あまり手荒なことは……」
「はっ、甘いなァ。甘い甘い! そんなことじゃあ、一朝一夕じゃあ片付かない。
 いいんですかい、そんなのんびりやっちまって」
 渋るような隊長格の様子に、物九郎はくるりと下駄の踵を返すと、振り向きながらギラッとした目を向ける。
「戦争の後、おたくらが疲弊してようモンなら、裏切ってトドメ刺してカネありったけ巻き上げてやりますからな! 覚悟しなさいや!」
「な、なんと! 裏切ったうえで、漁夫の利を得ようというのか!?」
 すごい。そんなことを事前に言うべきじゃないだろとか、言うまでもなく、悪事を面と向かって言えるその胆力よ。
 魔王だ。ここに魔王がいる。
 こんなやつを信用していいのかとかいう以前に、この世界の悪魔は、悪者の思想には目が無いのである。
 この男には、絶対にやるというスゴ味がある。
「い、いやぁ、いやしかし!」
 確実に決まったな! と心中で拳を握り締める物九郎であったが、隊長格の鎧の悪魔がなおも食い下がることに、思わず首をかしげる。
「お待ちあれ。かのご婦人方に、万一傷をつけるようなことがあっては……それに、彼女たちはいずれも劣らぬ美少女ぞろい……」
「はふんっ」
 鎧の悪魔のあまりにずれた紳士っぷりに、思わず変な息が漏れてしまうが、すぐに咳払い。
 すぐに持ち直して、威厳を感じさせる魔王オーラを纏い直す。
「ァ?
 淡水国の女へ好いた惚れた云々?
 次会ったら秒で告れ!!」
「な、なにぃ!?」
 段階とか踏まないのォ?
 がしゃん、とどこかで膝を折る悪魔の様子が見て取れた。
 まずはお互いのことを知るために文通。そして折を見て逢引。3度目には映画鑑賞を兼ねた食事。
 そういうものではないのか!?
「決めた……私は、貴方についていこう」
 膝を折った悪魔の一人が、むくりと立ち上がって仲間になりたそうな視線を向けてくる。
 その波は、じわじわと他の戦士たちにも伝播しはじめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勝堀・円稼
国盗りとかどうでもいいんにゃけど、大きくお金が動くなら見過ごせにゃいのにゃ
上手くすればあたしもネコババチャンスが狙えそうだし張り切っていくにゃよ!

それにしても、ここの鎧達はむさくるしくてバk…チョロそうにゃん
典型的な騙しやすいカモタイプだにゃ
配信映えもしそうだし手駒にしてやるのにゃ

それでは配信していきますにゃん♪
まずは手頃な鎧を連れ出してお金を握らせるにゃ
そしてこの後の八百長で派手に負けるよう言い聞かせるのにゃ

仕込みが済んだら隊長から見える場所でわざと口論するにゃ
そのまま喧嘩したように見せかけて、手筈通り鎧をド派手にぶっ飛ばすんにゃ!
これでこいつ等はあたしのトリコという算段にゃ
んな~っはっは!



 ああ、なにはなくとも、金が欲しい。
 質実剛健を体現するかのような鎧の悪魔の国に、おおよそ似つかわしくない煽情的な曲線を思わせるシルエットが、どんよりとした雰囲気を纏いながら、広場を闊歩する。
 戦隊ヒーローを思わせる全身スーツに、ちりんと小銭のような音を奏でる首の鈴。
 勝堀・円稼(借金100億のマネーファイター・f30508)は、とにかく散財どころか借金まみれになってしまう体質なおかげで、今もなお首が回らない。
 いつカードゲームの豪華客船に連れ込まれるかわかったものではない。
 スーツ含む課金装備で動画配信によってお金を稼がないと、夢のバラ色人生どころかますます借金が膨らんでしまう、年がら年中ピンチと背中合わせなのである。
 そんな生い立ちゆえに、お金には目が無い円稼ではあったが、国盗り物語にどう関係していくのか。
 いやいや、戦争ほど金になることもない。
 何しろ人も金も動く。特需万歳という奴だ。
 我ながらあくどい!
 ちなみに、彼女の一挙手一投足は、飛行カメラによって動画配信されているため、
「上手くすればあたしもネコババチャンスが狙えそうだし張り切っていくにゃよ!」
 体のラインが浮き出るようなスーツを嘗め回すかのようなカメラワークに、にまぁっと笑うゲスっぽい表情もきっちり配信されていたりする。
 イメージ大丈夫だろうか。そこがいい? 世の中には、色んな需要があるのです。
「むむ、そこのご婦人。ここは現在、兵役の者が出入りしておりますので、少し離れてもらえませんと」
 さーて、何から手を付けたものかと、ぽてぽて歩いていると、円稼を呼び止める鎧の悪魔の姿があった。
 おどろおどろしいデザインの武骨な甲冑に身を包んだ邪悪な兵士のような姿に似合わず、その声色は誠実な印象を受けた。
 普通の者ならばそこは好意的に受け取るところなのだろうが、ちょっぴり金にがめつい円稼は大概に打算的であった。
 むさい感じだが、こいつはたぶんバk……もとい、ちょろい。
「カモだにゃ……」
「は?」
「ううん、なーんでもないにゃ♪」
 低くなる声を誤魔化すかのように、大げさな仕草で手招きするような媚びるようなポーズをとると、鎧の悪魔の目線がやや泳いだのが見て取れた。
 動画配信及びスパ〇ャで稼げる程度には、円稼は動画映えする。いわゆるビジュアル的に持っている程のスタイルを誇るためか、免疫の薄いデビルキングワールドの朴訥とした悪魔にはこのスーツ姿はちょっぴり毒なようだ。
 使えるかもしれない。
 悪魔の目を盗む円稼の目がぎらりと光る。
「ねね、ちょっとちょっと、こっちきてほしいにゃ」
「え、え、ちょ……私にもお仕事がぁ……」
「まぁまぁいいからいいから」
 まさに猫のようなしなやかさでするっと鎧の悪魔の手を取り、縋るように腕に絡みついては必要以上にくっつくと、動揺するのも構わず近くの物陰にまで引きずっていく。
 屈強そうな見た目にたがわず、悪魔の体幹は実にしっかりしていたが、性格でほぼ全損している以外は女性としてのパワーに優れている身体で引き寄せられては、一瞬で骨抜き状態であった。
 それはもう、新手の体術もかくやというところだが、悲しいかな、実のところ鎧の悪魔がピュアすぎるのに助けられているところが大きそうだ。
 とにかく、巧みな手練手管(笑)によって引きずり込むことに成功した鎧の悪魔に円稼は、ぐっと五百円硬貨を握らせる。
「こ、これは……?」
「っふー、ここなら問題ないにゃ。いい? それであたしに買われにゃさい!」
「えっ……ハッ! こ、これは、まさか、賂(まいない)というものでは!?」
 どやっと胸を張る円稼に、悪魔は目を輝かせる。
 そう、この世界の悪魔は、悪事に目が無い。
 買収の為に握らせたのが五百円というのが涙を誘うが、そういうのがいいんだろぉ!?
「声が高いにゃ。そのお金で、あんたはあたしに殴ってもらえるんだにゃ。ありがたく思うにゃ」
「なんと……どこからそんな自信が……しかし、すごく、魅力的です!」
「ほんとぉ? ありがとにゃー」
 初めての賄賂に心躍らせる悪魔に褒められて、円稼は思わずほんわか微笑んでしまう。
 たぶん、彼女が望む意味とは違っているのかもしれないが、人に褒められるのは実際嬉しい。そうでもなきゃ、動画配信なんてやっていないのだ。
 でもちょっとチョロいぞ!
 それはともかくとして、完璧な計画を賂によって購入した円稼は、兵士を伴って広場に出る。
 目指すは兵士たちに薫陶を与えていた隊長格の悪魔である。
「む、どうした。報告が遅いぞ。……うん? その方は?」
「ハッ、こちらのご婦人は、こたびの戦役にて助力を申し出てくださいました!」
 隊長の前に出ると、先ほどのようなでれっとした様子とは打って変わって、兵士らしい雰囲気をちゃんと出している。
 さすがに訓練されているだけあって、その仕草や姿勢はきびきびとして綺麗である。
「ほう。しかし……失礼だが、あまり使い手であるようには見えぬが……」
「何を仰います。この方はこう見えて……」
「ふっ、見る目のない隊長を持つと、苦労するにゃねぇ~」
 食い下がろうとする兵士の言葉を遮るかのように、円稼はやれやれと肩をすくめて見せる。
 その大げさな身振りにぱちんとウィンクをすれば、さすがの兵士も察しがついた。
「なんですと!」
「おいおい、よさないか。相手はご婦人だぞ」
「いいえ、私が連れてきた方とはいえ、容認できかねます。残念ですが、お引き取りを」
 とつぜん激昂した兵士をなだめようとする隊長の言葉にも引き下がらず、厳しい口ぶりをしながらも、兵士は実に緩慢な動作で円稼の手を取ろうとする。
「ふん、ならばよく見ておくにゃ!」
 するりとその手から逃れて、円稼はたたらをふむかのように見せかけた兵士に対し、カッコイイポーズから正拳突きを繰り出した。
 もちろん、ここまで仕込みの口論なので、殴りつけるのも見せかけである。
 ぽてっと肉球のような質感で殴りつけられた兵士は、
「ぐっふぉおっ!?」
「えっ……」
 引くほどのカッコイイ悲鳴を上げて錐もみ回転しながらド派手に吹き飛んでくれた。
 さすがに魔界の住人。その身体能力はオブリビオンクラス。演技とはいえ、全力でぶっ飛んでいく姿は、かなりすさまじかった。
 それにしても、不自然なくらい吹っ飛んでしまったが大丈夫だろうか。
「うぐぐ……なんという重いパンチ」
「お、おお……あやつをあそこまで見事に吹き飛ばすとは、なんたる武勇!」
 なんかうまくいっていた。
 がくがくと足に来ているかのようにゆっくり立ち上がる悪魔の兵士の名演も手伝って、隊長の悪魔はすっかり傍若無人な暴力女に仕立て上げられた円稼をほめたたえた。
 さすがにわざとらし過ぎたか。という懸念は、ひとまず置いておこう。
 これで悪魔たちは自分のトリコにゃ。
「んな~っはっは!」
 腰に手を添えて、豪快に笑うことで、今のうちに悦に浸るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
ええと…なんだ…どうすればいいんだ?
悪者…銀河帝国兵として振舞ってみればいいのだろうか…?
拷問は…流石にちょっと…とりあえず、殴ろう。殴って、従えさせよう。

『戦争腕・停滞』
動きを停滞させ、推力移動と早業、問答無用で殴りかかる(すまない)

その後で
「都合により、お前達を服従させる。降伏しない者は殴る」
一方的に告げて殴り倒した悪魔の足を掴んで怪力で振るい武器にする。

仲間で仲間を殴る…明確な敵相手なら遠慮なくできるというのに…
善良な者相手に行うと思うと、胸の内に痛みを錯覚する。
だが、これも必要な事…やらねばならない。


…お前達が降伏しない限り、仲間が仲間を傷つける事になる。
さぁ、次はお前が武器になる番だ



 ずむずむ、と肩で風を切るかのような強い足取り。
 それは今しがた演説の行われた広場へ向かうテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)のものであった。
 2メートルを超えるウォーマシン。そしてほぼ肌を露出せず、シルエットと唯一人に近しいと思わせる女性型の顔ですら、マスクでその大半を覆ってしまっている。
 そして彼女はもとより表情による感情表現が希薄である。
 あと口数もそれほど多くはなく、ややもすれば戦場を同じくする味方ですら彼女の声を聞いたことが無いという者も少なくはないほどである。
 そしてそして、多くの戦場で油断なく冷静沈着に、冷徹なまでの判断力で以て行動するテリブルは、まさに戦争のための存在と言えなくもなかった。
 その威容、迷いのない足取りは、この国の住人である鎧の悪魔たちをして、身構えさせるほどの圧力を、本人の自覚もないまま振りまいていた。
 しかし、当の本人はというと、
(ええと……なんだ、どうすればいいんだ?)
 武骨なアーミールックに身を包み、油断の見えない無表情の奥で、テリブルは当惑していた。
 かなりの死線をくぐり、それこそ殺戮マシンの如く戦い続けてきたが、その実、争いを好むわけではなく、穏やかな性格である彼女は、悪人アピールという面で壁にぶつかるのであった。
 戦場で敵意を向けられることは、幾度となく遭遇してきた。
 しかし、ここは戦場ではなく、あまつさえ彼らは敵意すら持っていないように見える。
 戦場に於いて、敵意や害意などというものは些末になってくる。敵と定めたものを、ただ倒せばいい。
 だがしかし、彼らは明確な敵と言えるのか。
 いやいや、真剣に考えなくてもいい。悪人であるかのように振舞えばいいのだから、多少の荒事は仕様があるまい。
 殺す事ばかり考えるな。
 それにしても、悪人か……。
 テリブルの脳裏に、悪人と言えば、それはかつて自分を作ったらしい銀河帝国のやり方がそれに相当した。
 どこの軍属であろうとも、悪辣な手段をとる者はいる。
 とはいえ、
(多少は痛めつけても問題ないとは聞いたが……さすがに、拷問などにかけるわけにはいくまい)
 あれこれと考えるテリブルの思考は、徐々に熱を帯びていく。
 シンプルでない問題をあれこれ考え続けるのは、戦う事のみを念頭に作られたウォーマシンにはあまり得意なことではないのか、戦闘用AIが煮立つのを感じる。
(まあいい。とりあえず、殴って従わせよう)
 暴力はシンプルである。どんなに文明が発達しても、多くの場合で直接的な手段が歴史を動かす。
 決して、脳筋なわけではない筈だ。
 とはいえ、アピールするのだから、なるべく目立たなくてはならない。
 少し考えた後、テリブルは標的を一人に見定め、ユーベルコードを発動させる。
「……換装完了」
 【戦争腕・停滞】によって瞬時に換装された片腕には、時流を遅延させるフィールドを発生させる装置が内蔵されている。
 それにより唐突に体に重みを感じる鎧の悪魔は、小首を傾げるのだったが、その直後、
 ドワォッと、トレンチコートがまくれ上がった下からスラスターを吹かして飛び上がったテリブルの姿に、多くの悪魔たちが目を向けた。
 その動きは素早く、身体に重みを感じた悪魔は、飛び掛かりつつ申し訳なさそうに目を細めるテリブルの繰り出した拳の先を見たのを最後に、意識を手放した。
 金属同士がぶつかり合う激しい衝突音が広場に響き渡り、少し遅れて空気と地面が脈動するかのような衝撃波を、周囲の悪魔たちは鎧越しにびりびりと感じるのであった。
(一番頑丈な額を突いたが……)
 人の頭を殴るのは危険である。殴られる方はもちろんのこと、脳を守る頭蓋の中でも額のあたりをうっかり裸拳で叩いてしまえば、手の骨が砕ける。
 それくらいに頑丈な部位である。
 ただ、今の状況をただの拳と額に当てはめるのは無理がある。
 飛び上がって体重を乗せたかのように見せかけ、その実は力がうまく逃げるよう一番丈夫な部位を殴りつけたつもりだったが、いきなり殴りかかられた悪魔は激しい衝撃と音響によってすっかり目を回し、甲冑と広場の地面とで火花を上げつつズザーっとダウンしてしまった。
 派手に見せるにしても、少々やり過ぎたろうか。いや、これくらいで倒れるようなものではないと信じたい。すまない、ホントにすまない。
「都合により、お前達を服従させる。降伏しない者は殴る」
 静まり返る広場の中で、一人つかつかと歩き、目を回して倒れ伏す悪魔の足をひっつかんで振り回す。
「うおぉっ!? な、なんだこの方は!?」
「いきなり殴りかかるなんて……それに、殴り倒した奴を振り回し始めたぞ!」
「なんたる傍若無人!」
 いきなり暴力を振るうテリブルの奇行に、誰もが目を丸くしてそれを取り押さえようとするが、すさまじい怪力で振り回される鎧の悪魔にバチーンとぶつけられて数人まとめて吹き飛ばされてしまう。
 なんという暴力。なんという不遜。
 なだめようとする筈の鎧の悪魔たちの眼差しが、キラキラと羨望のそれに染まりつつある。
 暴風のような悪逆。まるで聞かん坊だ。
 世間的な悪事を大変好む悪魔たちにとって、テリブルの行為は、とてもカッコよかった!
 ただ、当の本人であるテリブルは、人知れず心を痛めるのであった。
 仲間で仲間を殴る。これが明確な敵であるならば、気兼ねすることなど無いのだが。
 なぜか彼らはウキウキしながら善良な眼差しで迫ってくる。
 彼らは気のいい奴らだ。
 テリブルの不動の理性の中身。形状のない何かがチクリと痛むのを感じる。
「ゆるして……ゆるして……」
「ぐっ!」
 これ以上は武器にしている悪魔が持たないかもしれない。
 思わず、最初に武器にした悪魔を手放すと、マスクの奥で歯噛みしながら、別の悪魔を掴んでそれを振り回す。
 重たい甲冑鎧の悪魔は、その質量でもって鈍器になり得る。
「まだ、続けるか……お前達が降伏しない限り、仲間が仲間を傷つける事になる」
 鋼鉄の意志で痛みを生じる何かをねじ伏せつつ、さあ次はお前が武器だ。とばかりに襟首を無理矢理掴むと、その悪魔は諸手を上げて降参の意を示していた。
 見れば、周囲の悪魔も距離を取って攻撃の意思がないようであった。
「おみそれいたしました。素晴らしい暴力だ」
「……そうか」
 キラキラした目つきで、そんなことを言われても、あんまりうれしくないテリブルであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒に知恵をしぼって行動するよ
ヨロイの悪魔のヒトたちに仲間に入れてもらう方法
それは武勇談!

UC【むかしむかしあるところに】

♪むかしむかしある国に
みんなに恐れられている悪魔がいました

ある時、軍隊が悪魔をやっつけようと突撃しました
悪魔は巨人に姿をかえて、軍隊をペタンコにふみつけちゃいました
悪魔はなんにでも変身できたのです

けれどある時、ちいさな妖精が、悪魔の前にやってきてこう言いました
「ボクはパンケーキが怖いなー。それもハチミツがのったパンケーキ!」
悪魔はさっそくハチミツたっぷりのパンケーキに姿を変えました

妖精はそれをパクリと食べてしまいました

なにをかくそう、その妖精は……


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

ミフェット(f09867)と一緒に作戦会議だ!
仲間になってもらうには……ボクたちがとっても悪いヤツだって思ってもらえばいいんだね!

ミフェットのお話に合わせて、それがボクだー!とばばーんと飛び出すね♪
ふふーん、どうだ!ボクのあくらつひどうな作戦は!
みんなも食べちゃうぞーと脅しつつ、周りの鋼の鎧で出来た迷路の壁を【妖精姫のタライ罠】でタライに変えて
悪魔さん達の頭の上に落としちゃうね♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 穏やかな国だと思った。
 とても翌日には戦を控えているような雰囲気ではない。
 それでも、勤勉に戦に備えて、兵站や現金輸送車などを配備しているところは物々しく、広場を行き交う鎧の悪魔たちの足取りもきびきびと規律が取れているように見える。
 そんな中、どこへ向かうでもなく、この国の住人をのんびり観察するようにゆるゆる歩く小さな人影。
 ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)は、ブラックタールの少女である。
 本来は液体生物に分類されるのかもしれないが、人が好きな性分を得ているためか、滅多なことでは人間の年齢相応の姿から変わることはないという。
 ただし、液体で繊細な髪の毛一つ一つを再現するのは難しいのか、髪だけはちょっぴり妥協して太めの触手の状態であっちゃこっちゃとぷらぷらしている。
 のんびり歩を進めるたびに跳ねるその髪の上で、ぽいんぽいんっと同じように揺られるのは、フェアリーの猟兵、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)であった。
 大の仲良しである二人は、子供ながらに幾多の戦いを潜り抜けてきた猛者である。
 はたから見るだけでは、そんなふうには見えないが。
 しかし、数々の強敵を相手取ってきた二人に、今回の依頼はやや難敵と言わざるを得なかった。
「仲間になってもらうには……ボクたちがとっても悪いヤツだって思ってもらえばいいんだね! うーん、どうしよっかー」
 考えるより行動タイプのティエルは、珍しく腕組みをして首をひねる。
 何しろ、二人とも見た目は子供。その力量は大人顔負けとはいっても、単純にぶん殴って言い分を聞いてもらうにしたって、どうしても愛らしい見た目がネックになってしまう。
 今回の依頼は、彼女たちにとって分が悪いのかもしれない。
 可愛いは正義とはよく言ったものである。
 いいや、そんなものに胡坐をかいていてはいけない。
 猟兵ならば、力で解決できないことでも、その知恵と根性で、なんとかすべきだ。
「傷つけずに済むなら、それが一番いいと思うな……あ、じゃあ、こういうのはどうかな?」
 広場の一角、そのよく整えられた花壇の植物をちらっと見ると、水をやった後なのか花弁や葉っぱがキラキラとしていた。
 それを横目に頬が緩むと、ミフェットはふと思いついたことを、ティエルとこそこそ話し合う。
 神妙な面持ちでミフェットの話を聞いていたティエルは、最後までその提案を聞き終えると、にやっといたずら小僧のような笑みを浮かべる。
「どうかな?」
「ふふーん! いいと思う! 仕上げにボクが、ババーンとやっちゃえばいいんだね♪」
「うん、うん!」
 やや興奮気味に両手を握って頷き合う二人に、タイミングよく鎧の悪魔が近づいてきた。
「ああ、すまないね、お嬢さん。ここは兵隊さんがいっぱい通るから、危ないよ」
 厳つい甲冑に全身を包む物々しい姿に似合わず、悪魔の声は穏やかでとても気遣わしげであった。
 恐ろしげな姿だけに、中身の人の好さが透けて見えるようで、ちょっぴり気が引けてしまうミフェットだったが、それでもティエルがささーっと素早くミフェットの髪の影に隠れるのを見て、意を決する。
「お兄さん、どうもありがとう……でもね。ミフェットは忠告に来たんだよ」
「うん? お話かい? うーん、あんまり時間を取ると、僕も上司に怒られてしまうよー」
 困ったなぁと自分の兜を撫でつける鎧の悪魔の朗らかさに、なんとも脱力しそうになるのだが、やると決めたからには、最後までやるしかない。
 そう、これはミフェットにとっての戦いなのである。
 そうして発現するユーベルコードは、【むかしむかしあるところに】あったかもしれない、悪魔をも恐れさせる妖精の武勇談!
「むかしむかしある国に
みんなに恐れられている悪魔がいました……」
 物語仕立ての歌を紡ぎ始めるミフェットに、鎧の悪魔は何事かと首をかしげたが、すぐにその歌声に聞き入り始める。
 この世界の悪魔たちは、基本的にいい人たちなので、子供相手でもまずは真摯に話を聞いてくれるのである。
 それに、みんなに恐れられる悪魔。それはこの世界の悪魔たちにとって、気になるお話だ。
「ある時、軍隊が悪魔をやっつけようと突撃しました
 悪魔は巨人に姿をかえて、軍隊をペタンコにふみつけちゃいました
 悪魔はなんにでも変身できたのです」
 広場に響き渡る歌声を聞きつけた鎧の悪魔たちが、ぞろぞろと誘われてやってくる。
 なんと悪い悪魔なんだろう。すごい力を持っているのはもちろん、その力を好き勝手に自分勝手に振るう傍若無人。まさに悪魔である。
 素晴らしい悪事に、聞き耳を立てずにはいられない。
「けれどある時、ちいさな妖精が、悪魔の前にやってきてこう言いました
 『ボクはパンケーキが怖いなー。それもハチミツがのったパンケーキ!』
 悪魔はさっそくハチミツたっぷりのパンケーキに姿を変えました」
 ほほう、流石は変身の得意な悪魔だ。
 それくらいできて当然だな。
 寄り集まってきた悪魔たちは、物語の中の悪魔の強大さを、その純粋なイメージ力で勝手に形成していく。
 そのイメージを助長させるかのように、ミフェットはうぬぬーっと集中して、頭の触手の一部をしゅるしゅると変形、発色させ、パンケーキに擬態させると、頭の上にハチミツバターの乗ったパンケーキが生まれたようであった。
 ざわざわと歓声が上がるが、それはまだ序章に過ぎない。
「妖精はそれをパクリと食べてしまいました」
 なんとなんと! せっかく力を見せてあげたのに、それはいたずら妖精の策略だったのである。
 なんてやつだ。相手の力を利用して、食べてしまうなて……。
 歌の終わりと共に、悪魔たちの間にショッキングな沈黙が訪れるが、ミフェットは最後に言葉を続ける。
「なにをかくそう、その妖精は……」
 ぱくん、と真っ二つに割れる頭の上のパンケーキ。その中から、小さな人影が虹色の光彩を帯びる羽根を広げ、
「それが、ボクだーーーー!!」
 元気いっぱいの声を上げて、ばばーんと飛び出すティエルの姿に、うおおっと悲鳴にも似た歓声が上がる。
 いや、悲鳴かもしれない。
 やだ、すごい驚いてくれてる。
 妖精という性分でもあるのか、驚かしたり悪戯が嫌いではないティエルは煽り立てるように光り輝く鱗粉を振りまきながら周囲を飛び回る。
 それだけで、ミフェットの歌声に聞き入っていた悪魔たちは後ずさりする。
「ふふーん! どうだ、ボクのあくらつひどうな作戦は!」
 さあ、ボクの言う事をきいてもらうぞー! と、可愛らしくすごんで見せると、あわあわと口元に手をやって肩を縮め込む。
 本当に悪魔か? というような狼狽っぷりであったが、中には勇気ある悪魔もいたもので、弱弱しくティエルを指さす。
「い、いや、私達はパンケーキにはならない。所詮は、相手の力が無くては、貴女はただのいたずら妖精のはず!」
 た、確かに! と、どことなく安堵する悪魔たちであったが、それを一蹴するかのようにティエルは緩やかに腕組みし、不敵に笑う。
「ふーん。ボクのパワーを疑うんだね♪ じゃあ、見せてあげるよ! そーれ、ずっこけちゃえ!」
 想定済みとばかりに発動させたユーベルコードは【妖精姫のタライ罠】
 周囲の街灯やベンチをこっそり金タライに変換して、それらを悪魔たちの頭上に落としてやる。
 格別の力ともいうべきユーベルコードによって突如として出現した金タライに、悪魔たちは抗う術を持たなかった。
「あいったぁー!」
 カコーン! という小気味いい音と共に倒れ伏す悪魔たちは、もはやその奇跡のような力を疑う余地もなかった。
 元より純粋な住人である。それがたとえ子供の悪戯であっても、本物の片鱗、ましてや猟兵の力であり、うっかり創作の空気にのめり込んでしまえば効果も覿面という者であった。
「信じる気になったかなー。えへへ!」
 思いっきりの悪戯に、なんだか胸がすく思いがして、ティエルははにかむ。
 どう見ても無邪気な子供それにしか見えないはずだが、彼女を取り囲む屈強な鎧の悪魔たちが向ける視線は、憧憬のそれに近かった。
 彼等からすれば、ティエルは、今まさに現れた『悪魔をパンケーキにして食べちゃった妖精』なのだから。
 そしてそのどこか誇らしげなティエルの姿を見上げるミフェットもまた、自分の物語をやりきった満足感と共に、笑みを浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
アドリブ・連携歓迎。

オブリビオン退治の為にまずは鎧の悪魔さん達を調略ですか。
同じ世界の依頼に参加しましたが、神で巫女装束というのは説得しづらいのですよね…<汗>。

(という訳で邪神ぽい服装に着替えて)
天候操作で雷雲を呼び出しておどろおどろしく登場。
鎧の悪魔さん達に「明けましておめでとうございます♪これは(神社)近くのお店で売っている人気お菓子です。」と丁寧な挨拶と共に菓子折りを手渡した後、悪のカリスマと威厳と(意味は無いが)雷の属性攻撃を身に纏い、「貴国が淡水の悪魔の国と戦端を開くと耳にした。我は彼女達と因縁がある故、貴国に助力する。」と申し出ます。
(内心、演技とはいえ心が痛い、と頭抱えてます)



 敢えて悪事をアピールせよ。
 デビルキングワールドの住人のトレンドを掴むという意味では重要な要項であるとはいえ、進んで悪事に手を染めるような真似に抵抗があったり、性分などから悪行が難しかったりする猟兵は少なくない。
 基本的に人助けの傭兵であるため、そういう人物は多いのかもしれない。
 アウトローな猟兵のほうが、きっとこういうお仕事には向いている。
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)もまた、その在り様からしてこたびの世界に注目を浴びるには、少々手間取るのであった。
 なにしろ、彼女は神社に奉られるほどの神様である。
 世のため人のため、巨悪に立ち向かうことはあっても、些細な悪事すらできない、まさに虫も殺せないような性分が女性の形をしているようなものだ。
 この世界限定で言うなれば、この神性ともいうべき性分は障害となり得るだろう。
 かといって、己の在り方をそうそう簡単に曲げられるわけでもなし。
 思いつく限りの手立てを用意して、協力してしてもらおう。
 同じような依頼に参加したこともあるらしい詩乃は、同じ轍を踏まぬよう、なるべく清楚な巫女装束から離れた邪悪な神をイメージした装束に身を包む。
 でもなるべくかわいいのがいいなぁ。
 そして、できればむやみに肌を晒さない方向だといいなぁ。
 あとあと、やっぱり巫女装束はアイデンティティのような部分もあるし……。
 あれこれと服を選んでいるうちに、すっかり出遅れてしまったが、結局はいつもの巫女装束の上に、なんか極彩色の高そうな刺繍の入った上着を羽織って、こころなしいつもよりも険しい表情で臨むことにした。
 悪……いのか?
 とにかく、出陣だ。
 鎧の悪魔の国は、その決起集会が開かれた広場には、詩乃が天候を操作して招き寄せた雷雲が渦巻いていた。
 ちょっと前に砂嵐と共に飛空艇がやってきたのを覚えている悪魔たちは、またも恐ろしい何かがやってきたのかと辺りを見回す。
「ふっふっふっ……」
 不敵な笑い声。低い声を出し慣れていないのかちょっと息が切れそうになっているが、そんなものは鳴り響く雷鳴でかき消される。
「なんだぁ、何者かぁ!」
 稲光を迸らせる雷雲から一条の閃光が広場を穿ち、激しい落雷に周囲にはもうもうと煙が上がる。
 避雷針も何もない広場に不自然に落ちた雷。その煙の中から、なんか派手な上着をまとった和風ないでたちの詩乃が険しい表情で現れた。
 すぐさま身構える悪魔たち。
 それらを見据え、目を細める詩乃は、思い出したかのように手提げを持ち上げる。
 丁寧に包装されたそれは、お店の名前と達筆な宛名書き。
「明けましておめでとうございます♪これはうちの近くのお店で売っている人気お菓子です」
 一触即発に見えた詩乃の表情が、ぱっと華やぐ。
「あっ、これはどうも、ご丁寧に」
 ひりついていた鎧の悪魔たちも、なぜか動じることなく、半ば反射的に恐縮した様子で菓子折りを受け取りつつ好感を寄せるような柔らかい物腰で対応する。
 彼らの本性なのか、それがもしやうっかりすると老人に拝まれたりもする詩乃の神性からくるものなのか、それはわからない。
 いやー、なんだびっくりしたなぁ。と弛緩しかけている空気に、いち早く気付き、慌てて表情をキリリっと引き締め直す。
 悪のカリスマと威厳をその身にぴかーっと宿しつつ、でも悪のカリスマってなんだろうとか頭の片隅で疑問符を投げつつ、ついでに演出として身に纏う衣服にもばちばちと雷光を迸らせる。
「貴国が淡水の悪魔の国と戦端を開くと耳にした。我は彼女達と因縁がある故、貴国に助力する……」
 時には残酷にもなる神の荒々しさと威圧的な雰囲気を押し殺したかのような口調で、あくまでも言葉少なにそれっぽく伝える。
 実際に因縁があるかどうかは置いておいて、それっぽい演技をするだけでも、温和な詩乃からすれば心が痛い。
 家で飼えなくなった動物を野生に返す時に敢えて心を鬼にする気持ちになる。
 その必死さが伝わったのか、あるいは悪役っぽく凄そうオーラを醸し出した成果か、
「お、おお……なんという圧力……そうですか。貴女もまた、我々に手をお貸しいただけると……」
 なにやらちょっと感動した様子ですらあった。
 うまくいったらしい。内心でホッと胸を撫で下ろす。
「そういえば、こちらは、ひょっとして生菓子ですか?」
「あ、はい。お茶にとってもよく合うんですよ」
 それはそれとして、二言目には緩んでしまいそうになるたびに、詩乃は人の好さを滲ませつつ、なんとか悪い感じの邪神を演じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『淡水の悪魔』

POW   :    進撃!お魚軍団
レベル×1体の【お魚軍団】を召喚する。[お魚軍団]は【水】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    淡水砲
【指先】を向けた対象に、【水鉄砲】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    悪魔降雨術
【淡水の雨】を降らせる事で、戦場全体が【川や湖】と同じ環境に変化する。[川や湖]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──翌日。
 鎧の悪魔の国と、淡水の悪魔の国とを結ぶ『皆殺しの公道』には、危ないので交通規制が敷かれた後、両軍の精鋭たちは交換日記のような約定で定めた通りの時刻を目前に控えたところで、距離を保ったまま相対する事になった。
 皆殺しの公道は、二つの国が交流を盛んにするようになってから、お互いの行き来をより容易くするため道を整備し、樹木や雑草、岩山などを切り開いて見通しよくしたことからそう名付けられたという。
 草木を駆りつくして固く踏み固めたのだから、そう名付けたっておかしくはない。だってそういう名前の方がかっこいいからだ。
「ククク……恐れずにやってきたか、鎧の悪魔どもめ!」
 豪快に笑うオブリビオンの魔王は、淡水の悪魔たちの陣営側から、遠くに望む鎧の悪魔の軍勢を目の当たりにし、その巨岩の如く隆起した筋肉を盛り上がらせる。
 純粋な破壊を目論むその性分は、もはや後先など考えていない。
 破壊だ。破壊しかない。確かに、奴らを倒して滅ぼせば、国一つ分のDは得られるだろう。
 そうなれば、カタストロフの儀式を行うのに一歩近づくことだろう。
 いいや、目的はそれだけではない。
 破壊だ。破壊しかない。
 この整備された道を、かの堅牢な鎧たちを、蹂躙し破壊し尽くす。
 そこにこそ、目的があった。
「さあ、ゆくぞ、彼の者たちを、我らが破壊の坩堝にくべてやるのだ!」
 破滅的な思想。破壊的な衝動からくる、圧倒的な暴力の気性は、悪魔たちにとって輝かんばかりの魅力であった。
「はぁあ……素敵だわ……それこそ、悪事……」
 人の好い悪魔たちは、悪いことを美徳とされつつも、肝心なところで詰めが甘い。
 悪に振り切れていない純真さといえば変な表現だが、本質的にいい子なので、本物の悪事が輝いて見えるのだ。
「うーん、でも、殺し合いか……うーん、いいのかな。うーん……」
 基本的に温厚で引っ込み思案な淡水の悪魔たちは、迷いながらも、強烈なリーダーシップを誇るオブリビオンに言われるがまま、悪事に手を染めようとする。
 猟兵たちは、それを説得してもいい。
 彼女たちを打倒して懲らしめてもいい。
 なお、鎧の悪魔たちを味方につけることに成功したので、君たちが行動を起こせば、彼等も手伝ってくれるかもしれない。
 すべては、猟兵たちの悪事(っぽさ)にかかっている。
白斑・物九郎
●WIZ



・鎧の悪魔陣営に【悪のカリスマ】を漂わせながらエッラそうにふんぞり返っている
・手近な鎧の悪魔を呼び付けて「ンで? おたくが惚れてんのはどいつっスか」ってド真ん中直球で訊く
・答えを渋るようなら【野生の勘】で、そいつが懸想しているお相手を「ははぁん、あの娘ですわな」くらいの気軽さでさっさと探り当てる

・【ワイルドドライブⅢ】発動
・鎧の悪魔君と、そいつがホの字の淡水の悪魔ちゃんとを、邪魔が入らず面と向き合えるように迷宮形成

・鎧の悪魔は「秒で告れ!!(段階とか踏まない!ワル!)」っつって送り出す

・こんな感じで以下繰り返し
・淡水の悪魔達の、オブリビオンに煽動されるがまま戦闘に及びそうな頭数を削る



 根は良くとも、彼らが行わんとすることは、まぎれもない悪事。
 皆殺しの公道を舞台に、二国の軍勢が対峙、その火ぶたを切ろうとしていた。
 いや、とっくにその戦端は開いていてもおかしくないのだが、真面目で基本的に根がいい奴らである悪魔たちは、ゆっくりゆっくりと歩みを進め、なかなかお互いにぶつからない。
 急いだり、走ったりしたら、万一転ぶかもしれない。
 そんな緩慢な進軍を退屈そうに見やっていた白斑物九郎であったが、いざ会敵とあいなる直前、ゆるい半眼がぎらりと光る。
 ピクニックのように弛緩していた空気が、謎の悪のカリスマオーラに引き締められる。
 チャイの中に溶け込んだピンクペッパーのようなピリッとした緊張感。
 厳つい鎧たちの中では細っこくて頼りにならないかのようにも見える甚平姿で、無用に偉そうな雰囲気を漂わせてふんぞり返る物九郎は、張った胸に更に顎を突き出して低い位置から見下ろすように、
「ンで? おたくが惚れてんのはどいつっスか」
 まるで思春期の学生みたいな事を、手近な鎧の悪魔に問いかけた。
 そんな公衆の面前で!
 ざわりと、周囲の悪魔たちの中に動揺が走る。
「え、自分でありますかぁ? いやぁ、あの、そのぉ……」
 唐突に問われた鎧の悪魔は、内またでモジモジ、いかつい肩を縮め、こりこりと兜の登頂を掻き始めたりする。
 大の男が、何をそんなに言い淀むか。とも思ったが、彼らは純真な心の持ち主だ。
 子孫の繁栄すら危うくなるほどに。
 性教育、ちゃんとしなさい。
 心中でツッコミを入れつつ、気色悪いモジモジ具合を軽く鼻で笑ってやる。
 ピュアだなんだと言いつつも、この手の色気に疎い男どもは単純でわかりやすい。
 悪魔のような軽薄な笑みを湛えつつ、持ち上げた指でスーッと向かいの戦線をなぞり、ぴたりと止める。
「ははぁん、あの娘ですわな」
「な、ななな! なぜ、お分かりになった!?」
 物九郎の選考基準は、あくまでも動物的な直感、野生の勘による選抜であったが、どうやら間違いではなかったようだ。
 彼我の物量を鑑みれば天文学的に近い確率の様にも見えるが、鎧の悪魔の視線を辿ればだいたいの位置は当たりがついていた。
 ならば答えは早い。そして、悪は急げだ。
 めきめき、と左腕に刻まれた刻印が疼くのを感じる。
 それはユーベルコードの発動を促していた。
「デッドリーナイン・ナンバーナイン・ダッシュ」
 空間に割り込むかのようなパスコードじみた言葉を口ずさむと、湧き上がる何かが体表にモザイクとなって脈打つ。
 それを地面に打ち付ければ、脈打つモザイクが地面に伝播し、モザイクの何かでできた障壁が広い行動を縦横に隔てていく。
 【ワイルドドライブⅢ】によって生まれたモザイク空間は、破壊困難な迷宮を周囲に構成していく。
 会敵に合わせて、大規模な衝突を避けるかのような迷宮の出現に、物九郎と鎧の悪魔の一人、そして物九郎が射止めたかのような淡水の悪魔の一人が、迷宮の小部屋に取り残された。
「前もって言っといたっすね。ここなら邪魔は入らない……さぁ、秒で告れ!!」
 どんっと鎧の悪魔の背を殴りつける様にして送り出す。
 段階を踏まない急転直下の展開は、まさに悪魔の悪戯といってもいい。
 雰囲気的に蹴りつけてもよかったのだが、まさか勝負に出る前から土を付けるわけにもいかない。
 物九郎も、善人というわけではないにしろ、縁起というものは馬鹿にしない。
 だが、事の成り行きを盗み見るくらいはする。
「あ、あの!」
「ひっ、あ、前に会いましたね……?」
 声が裏返り気味に声をかける鎧の悪魔と、驚き委縮しつつも相手のことをちゃんと認識する淡水の悪魔。
 どれも似たような鎧なのに、見分けがつくのか。という野暮なツッコミは入れない。
 戦場であれば、敵味方。それは悲劇というほかにないのだが、お互いに口をつぐんだまま気まずい沈黙が訪れる。
 んもう、秒で告れっていったじゃーん!
 と、物九郎が険しい目つきで、口にこそ出さないまま戦いを急かす。そう、これは戦いなのだ。
 戦え、悪魔よ!
「たいへん、大変不躾なことを言うようだが……貴女に相応しい墓を用意してやろう。そこに先に入るのは、おそらく私の方だが!」
「えっ……えっ……!?」
 何とも奥ゆかしい、遠回しな言葉で愛の告白をする鎧の悪魔。
 その言葉が遠回し過ぎて、ちょっと困惑している淡水の悪魔の手を強く握り、やがてその言葉と行動の意味を理解して、その頬に朱が差す。
 お互いを見つめ合う視線に飴が溶けるような熱が混じるのを見たあたりで、
「ふんっ、見てらんないっすねぇ」
 口の端を吊り上げた物九郎は自ら作り出した迷宮の小道へと姿を消す。
 同じように隔離した小部屋はまだまだたくさんある。
 そいつらの背も押してやらねばならない。
 こうして頭数を減らしていけば、淡水の悪魔たちの戦力も削いでやることができるはずだ。
 きっと、将来的には鎧の悪魔の国にはおびただしい数の墓が立つことになろう。
 なんという、あくどい悪魔だろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
ワルになりきる……かぁ、ボクもそう言うのは余り得意じゃないけど、やらざるを得ないなら

そうだ、ボクに餃心拳を捨てろと
人質とってまで脅迫してきた奴らと思えば

●POW
相手がUCを撃ってきたら『早業』で
真の姿になりUCを『範囲攻撃』の『砲撃』でぶっぱして相殺&恫喝&ダメージを狙い

あっ、勿論ある程度手加減するよ

低空『空中戦』で『第六感』で『見切り』ながら詰めより相手を『怪力』で放さない様に捕まえ

人質をとってみる

ついでに攻撃を仕掛けてきたら
捕まえた悪魔ちゃんに

『オーラ防御』張って『盾受け』し
撃ってきた相手に詰めより悪魔ちゃんを武器に『グラップル』で『蹂躙』

……これで良いのかな?

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 ついに二国の戦端が開き、恐る恐るといったところから、悪魔同士の国盗り合戦が始まっていた。
 それはもう、根が善人な悪魔たちが、美徳として悪を成すというからには、積極的な殺し合いにはなかなか発展せず、どうだ驚いたか! の応酬から始まり、引いてくれないかなーという打算的で厭戦的ムードは、どうにも拭えない。
 しかしながら、それでもいざ戦いが始まってしまえば、その力量はオブリビオンクラス。
 探るようなぶつかり合いがエスカレートして、徐々に剣呑の色を強めていく中で、ふと戦場に似つかわしくない風が吹く。
 戦場の鋭い雰囲気が、ふと忘れたものを思い起こさせる香りをはらむ風に、思わず手を止めてしまう。
 仄かに香る、中華の、ニンニクやラー油のあの特有の香り。
 獣のような毛並みを誇るドラゴニアン、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は、戦場に立つ中で、その身の振り方をまだ考えているところであった。
 倒すべき敵なのか。倒さねばならないのか。
 だが、倒さずに勝つのは、至難。
 オブリビオン級に強い魔界の悪魔とはいえ、彼らは一概に悪人とは言い難い、拭いきれぬ人の好さのようなものがにじみ出ている。
 打倒する事を考えれば、彼等も死に物狂いになろう。
 あの数を、必死の覚悟と化した者を相手取るというのは、なかなかに難しかろう。
 まして……エミリロットの修める餃心拳は、食に通ずる拳法。
 無辜の民を無用に傷つけて、何が武道か。
 武で競い、友となった相手と食を交わしてこその餃心拳。
 この道を捨て去るわけにはいかない。
 なればこそ、悪を装い、双方生かす道を見出さなければならない。
「卑怯者と謗りを受けてもいい。生きて、おいしいを共有する喜びに比べれば……ハッ、そうか!」
 戦場の空気が鉄錆の香りをはらみ始めたところ、瞑想にふけっていたエミリロットは開眼する。
 広がる眼前には、淡水の悪魔が放つ魔魚が迫っていた。
 当然、それらが鎧の悪魔を直接撃つことはしないが、息をひそめて瞑目し、戦場と合一していたエミリロットにはその限りではない。
『Dumpling System!』
『Emergency! Kōrēgusu!Shima pepper!』
 即座に発動したユーベルコード【緋雪餃帝・高麗島唐縮餃砲】により、専用のドライバーから機械音声が発せられると、赤い毛皮のその身をクリーム色の甲冑が包み込んで、その胸当てからビームが発射されると、飛び掛かってきたお魚軍団を撃ち返した。
 突然現れた甲冑姿の少女の姿に、周囲は騒然となるが、敵か味方かという判別も待たず、エミリロットは低空をすべるようにして移動、お魚軍団を放った淡水の悪魔の一人のその懐にまで素早く踏み込むと、重そうな甲冑も物ともしない早業で両手の自由を奪いつつ、首に手をかける。
 いつでも殺せるんだぞ。という意思表示。
 それは、いつかエミリロットに餃心拳を捨てよと人質を取ってまで脅しをかけてきた悪人と同じ行為であった。
 エミリロットもまた、積極的に人を嬲者にするような性分ではない。
 守れるものは、せいぜい自分の正道と、手の内にあるものくらいだ。
 だから、人質に取った彼女は、絶対に傷をつけない。
「さあ、この子を傷つけたくないなら、手を引くんだ!」
「こ、これは、あくどい……! 人質とは!」
 当然の謗り。わかってはいたが、心に堪えぬわけではない。
 しかし、エミリロットを見つめる視線は、なぜかキラキラと期待するものが多かった。
「はなして! その子を放してよ!」
「ま、まって、あの子にあたる!」
 人質に取った悪魔の友人と思しき淡水の悪魔が、先ほどと同じようにお魚軍団をけしかけてくる。
 その怒りも焦りも御尤もだと思う。ごめんなさい。
 心中で謝罪しつつ、エミリロットは硬気功……というかオーラで人質を包み込んでコーティングし、それら魚群に向かって盾としながら突撃する。
「え、え、人質を盾に!? なんて、悪いひとなのかしら!」
「うおおおお!」
 傍から見れば、なんと非人道的な行為だろうか。
 防御コーティングした人質を盾にしながら魚群を突っ切り、攻撃をやり過ごしつつ淡水の悪魔たちに近づいたエミリロットは、盾に使った悪魔をそのまま麺棒の様にスイングする。
「キャアアッ!!」
 横薙ぎに数人分まとめて突き飛ばし、盾にした悪魔も放り投げて戦線に穴をあける。
 あまりの暴れっぷりに、周囲は敵味方もなく、茫然とエミリロットの動向を伺っていた。
「ふう、ええと……お魚の餃子も、ボクは好きだな。次はだれが、武器になってくれるのかな?」
 お前らも餃子にしてやろうか。
 その威容を以て、如実に語る荒ぶる鬼神の如く、静かに告げる。
 派手に暴れたように見せかけて、なぎ倒した悪魔や当然盾や武器にした悪魔も、元から頑丈なのもあって怪我をしていない。
 なんとか悪役ぶろうと涙ぐましいセリフ回しで見栄を切ってみるエミリロットは、その実、暴れっぷりから期待の眼差しを受けているのであった。
 ……これでよかったのかな。
 これくらいの暴れっぷりは、昔からよくあったと思うけど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
破滅主義か…絶滅回避の為だろうに…

鎧悪魔達、淡水悪魔達の攻撃を『アーマーフォース』で防げ
耐えて、彼女達の悪事を見続けろ

説得を試みる
全てを破壊する、悪としては3流も良い所だ。
その悪事には先がない。悪を悪と見る者がいなくては、虚無しか残らんぞ。

説得兼時間稼ぎと鎧悪魔達で淡水悪魔をおびき寄せ、
早業で『爆破工作』。
淡水悪魔達の背後へ配置した爆破ロボ達で、範囲攻撃。
後方から淡水の悪魔達を爆風で吹き飛ばし、鎧悪魔達に確保させる。

鎧の悪魔達よ、破壊は簡単だ。殺せば良い。だが支配は難しい。
殺さず何年でも付き合っていかなければならない。
…より困難な悪を行ってこその、デビルキング法だろう?
決めるのはお前達だ。


大町・詩乃
(衣装そのままで)
また(憎めないという意味で)戦いにくい悪魔さん達が出てきましたね<汗>。できれば傷つけずに穏便に済ませたいですし。

ここは鎧の悪魔さん達にも協力してもらいましょう。
名づけて”プロポーズ大作戦”。

淡水の悪魔さん達のUCは詩乃の初発之回帰で無効化。
「貴女達の長所は術にあります。それを封じ、鎧の悪魔さん達の力で以って一方的に蹂躙する。これぞワルというものです!」と宣告。

(前もって打合せ済の)鎧の悪魔さん達には「彼女達を傷つけない様に捕縛お願いしますね。どなたかが言っていましたが、好きな方がいるならワルらしく秒で告るのも有りですよ。」と悪のカリスマと威厳を出しつつ指示します。



 ぶつかり合う両陣営。
 それは穏やかなようにも見えたが、悪事に手を染めることこそ美徳とされる彼らの常識に照らし合わせるのならば、本当の殺し合いが始まるのも時間の問題だ。
 風に錆びた匂いを感じる。
 鉄錆と砂塵。乾いた死の気配が近づいてくる、その独特の匂いに、テリブル・カトラリーは敏感であった。
 無論、ウォーマシンである彼女にとって、それはあくまでも微細なセンサーから感じ取れる総合的な数値からくる統計に過ぎないのだが……。
 臭気センサーに鉄錆を感じさせるようなものはない。
 ただ、戦況を読むためにアクティブにしているセンサー類の内、集音関連の反応にあった敵将と思しき淡水の悪魔を統べるオブリビオンの言葉は、そのまま淡水の悪魔たちを魅了する悪事のそれなのだろう。
 即ち、破壊せよ。
 ばかげている。
 笑いも洩れない。たしかに、原始的でもっともわかりやすい悪事だ。
 しかし、致命的にデビルキング法に反している。
「破壊主義か……絶滅回避の為だろうに……」
 戦うために作られ、それを生き甲斐にしているとはいえ、テリブルは本来むやみに戦うことを好まない穏やかな性格をしている。
 刹那的な思考のもとで行動するオブリビオンと、そしてそこに魅せられている悪魔たちにもまた、憂う気持ちを抱かずにはいられなかった。
「テリブル殿。我々も、そろそろ前に出ましょうか?」
 彼女の後ろには、事前に大立ち回りを見せた際に、その戦いっぷりに感服した鎧の悪魔たちが付き従っていた。
 テリブルの自由度は奪われてしまうが、一人で大軍を相手にするよりかは、勝機が見える。
 とはいえ、一軍の指揮を執るような経験はほぼなかった。
 だが、対する相手は、戦上手とは言い難いので、ここは一計を案ずる。
「いや……まずは耐える。正面から受け止め、彼女たちの悪事を見続けろ」
「は……? 了解しました」
 テリブルの意図を図りかねている様子だったが、飾り気のない武骨な言葉だからこそ、態度で示したテリブルを信用したのか、鎧の悪魔たちは素直に防衛陣形を敷き、それぞれがそれぞれを守るように並び立つ。
 重厚な鎧を身に纏うだけあり、鎧の悪魔たちは果てしなく頑丈である。
「そ、そこをどいてくださーい! 公道や、お宅を破壊しに行きますー! 邪魔するなら、皆さんも壊しちゃいますよー!」
 飛来するお魚軍団をその身に受けても、鎧の悪魔たちは怯まない。
 防衛するという指示を実直に守り、控えめな淡水の悪魔たちもまた、一歩も引かぬ鎧の悪魔たちの在り様に怪訝な顔を隠せない。
 そこへ、テリブルはマスク越しに淡水の悪魔たちへと語りかける。
「聞け。全てを破壊する、悪としては3流も良い所だ。
 その悪事には先がない。悪を悪と見る者がいなくては、虚無しか残らんぞ」
 その言葉に、鎧の悪魔たちに降りかかる攻撃が少し緩やかになる。
 破壊困難な鎧の悪魔とて、いずれは朽ちていくかもしれない。
 すべてを無に帰さんとするは、とても原始的で忌避される類の悪事なのだろう。
 しかし破壊した後は?
 短絡的な悪事に染まらず、先のことを考えろ。
 そう言葉にするテリブルの言葉はいかにもまっとうに聞こえる。
 生きるための悪事。それを忘れてはいけない。
「で、でも、私達には……これが綺麗に見えたの!」
 一部の淡水の悪魔が、テリブルの説得に揺れつつも、なおも攻撃を繰り出してくる。
 聞く耳を期待するのは間違いだったか……?
 マスクの奥で歯噛みするテリブルだったが、
「──歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう」
 涼やかな声。そして、神楽鈴の連なる鈴の音が、混迷の戦場を割るように響いた。
 ユーベルコード【初発之回帰】による、神々しい神力が波のように広がり、それが淡水の悪魔の攻撃を掻き消していた。
 遅れてやってきた風が、極彩色の上着を纏った、いつもよりもちょっとワルっぽい巫女服の少女、大町詩乃を降臨させる。
 また、やりづらい相手が出てきたものだ。と詩乃は心中でため息をつく。
 純粋な存在というのは、悲しい。
 すべての人間は無垢な子供であった。それが、様々な思想に触れて、複雑さを得ていくにつれて、雑多で賢く育っていく。
 それでも純朴な感性を傷つけずに生きていくものもいる。
 傷つきやすく壊れやすいそんな美しいものを、戦場に投入するというのは、神である詩乃にとっては、心を痛めるものがあった。
 テリブルとはまた違った感覚から、彼女たちを無用に気づ付けたくないという思いがあったからこそ、最初から大技を放ったのである。
 ここにはここの法がある。だからこそ、今は慈悲の気持ちはひとまず身の内に、流儀から逸れない範囲で、過激な説得を試みようと、詩乃は胸を張る。
「貴女達の長所は術にあります。それを封じ、鎧の悪魔さん達の力で以って一方的に蹂躙する。これぞワルというものです!」
 詩乃のユーベルコードで技を封じられ、あっけに取られていた戦場で、高らかに宣言されたその言葉はよく響いた。
 大胆な物言いが、あれこれと憶測を呼びそうなものだが、本人はそんな大それたことは考えていないし、そしてピュアな悪魔たちもそんな風には取らないだろうという、結局は人を信じてしまう神様らしい打算の甘い宣言のようにも聞こえる。
 ただし、詩乃は善意の人間をそうそう簡単には傷つけられない。
 高らかに宣言はしたものの、すぐに衝立の様に手で口元を隠し、鎧の悪魔たちにだけ聞こえる風に、
「彼女達を傷つけない様に捕縛お願いしますね。どなたかが言っていましたが、好きな方がいるならワルらしく秒で告るのも有りですよ」
 と、念押しするように、ちょっぴり鎧の悪魔たちをけしかけるのであった。
 そんな様子を見ていたテリブルは、ちっとも悪い神様に見えない詩乃を甘いと思いつつも、好ましく感じていた。
 合理的だが、おおざっぱ。伝承に聞く神とは、いつだってそんな感じの采配を下す。
 戦場に於いて神を信じたことはなかったが、信仰はそれでも戦場に蔓延する。
 神を見たとはこういうのかもしれない。
 ならば、それに乗っかるのも一興かもしれない。
 ──それに、もう充分時を稼いだし、分断も十分であろう。
 テリブルのガントレットの指関節が何かのスイッチであるかのように、カチッと乾いた音を立てたかと思った瞬間、遥か前方、淡水の悪魔の陣の中腹辺りから爆炎が上がる。
「きゃああっ!?」
 長々と防衛させ、奇しくも説得という形で淡水の悪魔たちを引き留めることに成功したテリブルは、その隙に密かに手配していた不可視の小柄ロボ爆弾を先行させる【爆破工作】を仕掛けていたのである。
 最初から、爆風で淡水の悪魔たちを分断するのが目的ではあったが、テリブルは言葉の通り、その先も準備していた。
 爆風で吹き飛ばされた淡水の悪魔たちは、事前に詩乃が話していたこともあり、防衛に回っていた鎧の悪魔たちに受け止められる。
 幾多の攻撃を受けきった彼等へと、テリブルは告げる。
「鎧の悪魔達よ、破壊は簡単だ。殺せば良い。だが支配は難しい。
 殺さず何年でも付き合っていかなければならない。
 ……より困難な悪を行ってこその、デビルキング法だろう?
 決めるのはお前達だ」
 そして何かを思いついたか、言葉を告げた後に、すぐ近くの詩乃の脇腹をつんつんとつっつく。
 何かを促すかのようなその態度に、怪訝な顔だった詩乃だが、あっとすぐに気が付いたのか、偉そうに腕組みをして悪っぽいカリスマオーラを背負って、
「……です!」
 と偉ぶって語尾だけ付け足す。
 いやしかしさすがにそれは、と不安になる詩乃は、それもつかの間、すたすたと先の戦場へ向かうテリブルを追いかける。
「あのぉ、よろしかったのでしょうか?」
「……貴女の方が目立つ。それに、死人の出ない戦場だ。これ以上は貰い過ぎだ」
 ぶっきらぼうに言い放つテリブルの言葉は、あくまでも武骨なそれだったが、どうにも照れている風に受け取ったのか、詩乃はどこかほっこりしたような顔で、その大柄な足取りを追いかけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

ミフェット(f09867)と一緒に悪いことしちゃうぞ☆
戦争中なのに戦わずにサボってお茶会とかするのはすっごい悪いことだよね♪

ミフェットのお歌に合わせてさっそく勧誘していくよ!
ほらほら、淡水の悪魔のおねえさん達も一緒に隠れてお茶会しよう!
ボクの【フェアリーランド】の中でやってれば周りのみんなにもバレないよ♪
鎧の悪魔さん達も先に中で悪い悪いお茶会をやってるからね!負けてられないよね!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒にがんばるね
まさかの逆転の発想に、聞いた時にはびっくりしたけど、やると決まったらしっかり準備して全力で悪いことするよっ

戦争前に、ティエルのフェアリーランドの中で〈料理〉でお茶会の準備!
中でお茶会できるように、いっぱいのパンケーキと紅茶、珈琲、しっかり用意

戦いがはじまったら、戦場からちょっと離れた場所に行くね
ティエルと一緒に悪魔さんたちを誘っちゃおう

UC【むかしむかしあるところに】

♪良い子の悪魔は命令通りに 真面目に戦争そんな時
ワルの悪魔はこっそりサボって こっそりおいでよ 秘密のお茶会
テーブルにならぶのは 秘密のお茶とパンケーキ
美味しさのヒミツは ワルの味!



 鎧の悪魔、淡水の悪魔たちが国盗り戦争だと激しく……それほど激しくぶつからず、戦いの始まる中でも、どこか相手を気遣いながら目に見えて悪事というよりかは、そろそろ合コンの様相を呈してくるころであった。
 いや、鎧の悪魔も淡水の悪魔も、そのどちらも本当の実力をもって戦えば、それは常人に非ざる力を発揮する筈なのだが、戦争らしい戦争など全然なかったのもあり、戦いは遅々としてその効果を上げていなかった。
 そんな泥沼の戦争? まあとにかく、両軍がぶつかり合うよりもちょっと前である。
 いたずら妖精として広場のあれこれをタライに変えて、鎧の悪魔たちにその悪さを示し、力を示すことに成功したティエル・ティエリエルと、ミフェット・マザーグースのコンビであったが、率先して鎧の悪魔たちを率いて戦場に出ることはしなかった。
 それよりもやる事があるといって、戦争の準備に忙しい鎧の悪魔の国をちょっとだけ離れていた。
 何より、戦まで一日しかなかったので、準備をするにしても急ピッチであった。
 二人が用意したのは、パンケーキにスコーン、紅茶にコーヒー。
 戦を前に炊飯を始めるとは、なんと豪気な!
 という具合に、鎧の悪魔の国では快く厨房を貸してくれた。
 なんと、手を貸してくれたコックですら鎧を着込んでいたのだからびっくりである。
 そんな彼らは、ティエルとミフェット子供二人の立てた恐ろしい作戦を耳にして、『そのために一生懸命準備をするなんて、とても頑張り屋さんだね』と太鼓判を押してくれた。
 どこをとっても、多少デザインセンスが独特な以外は、鎧の悪魔は気のいい人たちばかりだった。
「よーし、やるだけはやったぞー!」
「うん、ここからまた、一仕事だね!」
 戦場である皆殺しの公道からは、ちょっとだけ逸れた場所で、二人はちょっとおねむであったが、心地よい疲労感に高揚しながら、ハイタッチして気合を入れる。
 尤も、ミフェットはリュートを抱えている弾き語りスタイルで両手が塞がっているため、髪に擬態している触手でティエルの小さな手に合わせる形になったのだが。
 そうして、二人の恐るべき戦略が花開く。
 手始めに、ティエルはその腰に下げている小さな妖精の壺【フェアリーランド】に繋がるそれの蓋を敢えて開きっぱなしにしておく。
 ユーベルコードで形成されるという壺の中身は、妖精郷とも名高いフェアリーランド。
 そこには、二人で一生懸命作ったお茶会セットが設えられた庭園がある。
 ふたを開けっぱなしにされたため、そこからは戦場に似つかわしくない甘やかな香りが漂う。
 香ばしいふかふかのパンケーキに、たっぷりかかったバターとメープルシロップの甘い匂い。
 よく香りの乗った爽やかな紅茶の香り。午後の小腹の減る時間帯には、抗いがたいものがある筈だ。
 曰く、荒んだ戦場に身を置き続けた者は、干した洗濯物の洗剤の香りや、パンケーキの焼ける匂い、いわゆる幼いころに当たり前にあった日常を想起させるものを感じ取ると、涙を流すのだという。
 それほどではないにしろ、風に乗って鼻をかすめる甘やかなお茶の香りは、闘争に傾き始めた悪魔たちの頭を日常に傾かせるのには、十分なものであったのだろう。
「なんだか、いい匂いがする……ああ、でも、今は戦わなきゃ」
「うーん、でも、おいしそうな香り……おいしいお店があるのかなぁ」
 ほのぼのとした空気を感じ、淡水の悪魔たちは、元からそれほど高くもない統率に支障をきたし始める。
 戦列がざわめき始めたのを感じ取り、これは戦う雰囲気に影響をきたすのでは。と一部の悪魔が危惧し始める頃、その視界の端をきらきらと軌跡を残して横切るティエルの人影。
「あれあれ、今、お腹鳴った? 鳴ったよね? わかるわかる。お腹空く時間だよねー」
「な、なにこの子!?」
 人畜無害そうににこにこ笑うティエルの、そのあまりにも戦場に似つかわしくない姿に、淡水の悪魔たちは動揺する。
 そこへ更に、ぽろろんとリュートを爪弾くミフェットが現れ、軽快な音色に、ますます戦う気力を削がれていく。
「ふーん、みんなこれから戦いにいくんだー? それじゃあ、サボっちゃうのはワルいことだよねーえ? そんなワルいことに誘っちゃうのはなー。なんだかなー♪」
 あっちゃこっちゃと、まるで煽り立てるかのように飛び交いながら、遠回しにサボりは悪ということを刷り込んでいく。
 すると、悪いことに対して淡水の悪魔たちは徐々に興味を持ち始める。
「悪いこと、悪いことなの? 詳しく話を聞かせて」
 興味を持たれてしまっては、もはや術中。
 更にダメ押しとばかり、ミフェットが【むかしむかしあるとことに】とリュートを手に歌い始める。
「良い子の悪魔は命令通りに 真面目に戦争そんな時
 ワルの悪魔はこっそりサボって こっそりおいでよ 秘密のお茶会
 テーブルにならぶのは 秘密のお茶とパンケーキ
 美味しさのヒミツは ワルの味!」
 軽快な歌声による勧誘、時折いらずらっぽく微笑みながら戦場を歌い歩くさまは、それこそここが戦場である事を忘れさせる一幕であった。
 重要な仕事をサボってしまうのは、生真面目な悪魔たちにとって禁忌であり、禁忌とはすなわちこの上ない魅力でもあった。
 堕落。生真面目な悪魔たちにとって、その誘いはまさしく甘露の如く甘いものであった。
「ほらほら、淡水の悪魔のおねえさん達も一緒に隠れてお茶会しよう!
 ボクのフェアリーランドの中でやってれば周りのみんなにもバレないよ♪」
 純真そうな笑みで誘うそれは、その実、妖精のいたずら心しかない筈なのだが、
「鎧の悪魔さん達も先に中で悪い悪いお茶会をやってるからね! 負けてられないよね!」
 より、きちんとサボれたほうが最も悪いよ。
 積極的にダメな方向に、明るい顔で誘うその姿は、まさに正しく悪魔のような所業であった。
 軽妙な誘い文句と、愉快な音楽と甘いお菓子の香りにつられて、戦うことも忘れてフラフラと壺の中に身を投じていく淡水の悪魔たちは、ちょっぴり異様な光景ですらあった。
 実際の悪魔も、こんなふうに一生懸命準備して誘うのだったら、やっぱり悪魔というのは真面目な種族なのかもしれない。
 もしもデビルキングワールド以外の悪魔に遭遇することがあったなら、たまには労ってあげるのも悪くないかもしれない。
 感慨深い事をちらっと考えたが、ティエルとミフェットもまた、楽しげにお茶会に身を投じていく中で、そんなことはすぐに忘れてしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

勝堀・円稼
ついに稼ぎ時にゃ!?猫の手も借りたいようだから協力してやるんにゃよ
敵をいっぱい戦闘不能にして報酬をガッポリ請求してやるのにゃ!

相手はお魚なのかにゃ?
んな~っはっは!これは勝ったにゃす!
骨の髄まで搾り取ってやるのにゃ!

ってやめろにゃー!猫に水はNGなんにゃ!
(ぷるぷると身体を振って水気を飛ばす)
こうなったら、さっき手下にした鎧を【¥近招来マネキネコ】でひょいと招いて盾にするにゃ
洗車かわりにゃ、感謝するんにゃよ

こっちから近寄れず手をこまねいてる場合じゃないのにゃ
悪魔を一人ずつ招いて、鎧達に捕縛させるのにゃ
遠距離攻撃さえ封じてしまえば、無駄に頑丈なこいつらがやってくれるにゃ
馬鹿と鎧は使いようにゃす



 迷宮、お茶会、分断作戦。などなど、猟兵たちの介入によって、悪魔同士の国盗り合戦は、いよいよ決着の時を近くしていた。
 それでも、まだまだ破壊を求めるオブリビオンに与する淡水の悪魔たちは健在であり、猟兵たちが突破するにはまだ戦力を削らなくてはならないようであった。
 ならばならばと、勝堀円稼は、絶大なパワーを発揮する代わりに多額のレンタル料が発生するスーツに身を包み、本日もまた戦果に身を投じるついでに配信もするのであった。
 全身、それこそ体のラインが惜しげもなく浮き出るかのようなぴっちり具合のスーツであるが、ファンの間では実は肌に映像を投影しているだけで全裸なのではという噂があるが、本人がそれに言及することはない。
 だいたいホントにボディペイントだったら、ポッチとか浮き出て放送コードに引っかかったりしちゃうのである。
 いくらキマイラとはいえ、毛皮もなしにそんな大胆な状態で配信するわけはない。はずである。
「さあさあ、円もたけなわ……ついに稼ぎ時だにゃ! 猫の手も借りたいようだから協力してやるんにゃよ」
 敵をこらしめて、がっぽり報酬をせしめてやろう。ということまでは言わないが、その顔はそう言っているかのようであった。
 お金が離れていく体質のせいか、円稼はすっかりがめつい心根を持ってしまっているようである。
 だが、お金に若干汚い部分も含めて、ファン層を得るほどには支持されているらしいぞ。
 そんな円稼が戦場に到着する頃には、戦局はもう傾いていた。
 元より、戦にあんまり向かない性分の悪魔同士がぶつかっているためか、それぞれに力はあってもなんだかんだで甘いのである。
 今一歩が踏み出せない状態で、鎧の悪魔たちが優勢を維持しながらも攻めあぐねているようであった。
「おやおや、相手はお魚なのかにゃ?
 んな~っはっは! これは勝ったにゃす!
 骨の髄まで搾り取ってやるのにゃ!」
 その戦場に割って入るかのようにすたっと着地した円稼が、並み居る淡水の悪魔たちをびしぃっと指さす。
 さすがに黒猫のキマイラだけあってか、お魚は好物であるようだ。
 だが、生きている魚は意外と強敵だぞ。
「誰? 猫さん?」
「かわいい……」
「いや、あいつも破壊しなきゃダメだよ!」
 動画映えを重視した登場の仕方を意識したためだろうか。円稼の存在はやたら目立っていた。
 そして次の瞬間には、矢面に立った円稼めがけて淡水の悪魔たちから高出力の水鉄砲がぶっかけられる。
 そう、ぶっかけられる。
「にゃにゃ!? やめろにゃー! 猫に水はNGなんにゃ!」
 あっという間に濡れ鼠ならぬ濡れ猫にされてしまった。
 ひとまず目立つポイントから降りつつ、ぶるぶるぶるっと体を犬ドリルならぬ猫ドリルで振るい、水気を飛ばす。
 その拍子に玉と散る水滴の奥で揺れるあれこやこれ、濡れて肌に張り付く髪の毛などがなまめかしく、配信のコメント欄が湧くのだが、それは置いておこう。
 あれっ、全身ずぶ濡れのはずなのに、スーツだけは無事だぞ。特殊強化スーツだからね!
「ぬぬう、こうにゃったら、手の内を一つ見せてやりにゃす」
 額に張り付く髪の毛を乱暴に掻きあげると、円稼はユーベルコードを発動させる。
 いつもの媚びっ媚びの顔を脱ぎ捨てることで、招き猫の御縁を勝手に結ぶその名は【¥近招来マネキネコ】。
 つまりそれは、無理矢理縁を引き寄せるということ。
「あたしは招き猫にゃ、誰がにゃんを言おうと招き猫にゃんにゃ」
「うわぁ!?」
 再び飛んできた水鉄砲。しかし手前の虚空をガォン! と招く仕草をした次の瞬間には、円稼の手の武器で削り取られた空間の分だけ瞬間移動した鎧の悪魔が、まるで盾になるかのように、代わりに水鉄砲を食らっていた。
 そう、手近にいた鎧の悪魔を、文字通りに招き寄せたのである。
 しかしそれは、縁というより無理矢理物理的に引っ張りよせたのでは?
 などと野暮なことを言ってはいけない。
 招き猫なんだから、招いたっていいだろう。招いてるんだから。
「ぶふっ、い、いきなり何を!?」
「洗車がわりにゃ。感謝するんにゃよ」
「えぇ……!?」
 フッ、何を言ってるんだ。という具合にぽむっと肩を叩いてやる円稼に悪びれる様子はない。
 平気で味方を盾にするク……悪人ムーブには、さすがにコメント欄も荒れそうなところだが、そういうところも支持されているらしいぞ。
 そうして要領を得た円稼は、鎧の悪魔を盾代わりに、今度は淡水の悪魔を同じように次々と招き寄せていった。
「奴らは遠距離攻撃が得意にゃ。それさえ封じれば、無駄に頑丈なあんた達でどうにかできるにゃ!」
 いうが早いか、招きよせた先から次々と鎧の悪魔に宛がっていく。
 非常に強力なユーベルコードを用いながら、どうにも他力本願に見えるところだが、その実は、戦力の各個撃破という貢献に至っている。
「す、すごい。なんて的確であくどい作戦なんだ!」
 鎧の悪魔たちの畏敬の眼差しを受けて、円稼はしばし悦に浸りながら戦い続ける。
 ふっ、馬鹿と鎧は使い様にゃ。
 だが、強力なパワーにはデメリットも付きまとう。
「うっ……」
 ぐらっと、自身の中で理性が揺らぐのを感じる。
 膨大な力は徐々に理性を削り取り、純粋な本能、欲求に従わせようとする。
(金、金、金……!)
 最終的に円稼は、目を¥マークにしながら、淡水の悪魔を拉致し続けたらしい。
 ともあれこれで、猟兵たちの突破口はできそうである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『デストロイキング』

POW   :    デストロイキング軍
レベル×1体の【ビューティスパイダー】を召喚する。[ビューティスパイダー]は【女郎蜘蛛】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    デストロイ光線
レベル分の1秒で【背中の魔力角から破壊光線】を発射できる。
WIZ   :    デストロイウェポン
【腹部の巨大な口に取り込んだ物体】から、対象の【全てを破壊したい】という願いを叶える【破壊兵器】を創造する。[破壊兵器]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 皆殺しの公道における戦いは、鎧の悪魔と猟兵たちの勝利となった。
 ケガ人はいくらか出たものの、死亡者は出ない、なんともレクリエーションのようなぶつかり合い。
 とはいえ、それぞれがオブリビオンクラスの力を持っているだけに、その惨状たるや語るべくもないだろう。
 ちなみに、この戦いでいくらかカップルが成立したらしい。
 とにかくそういうことがあり、どういうことだと言われそうな国盗り合戦は終局を迎えようとしていた。
 やや待たずして、淡水の悪魔の陣営、最後の砦にも猟兵が流れ込んでくることだろう。
「くっ……なんたる惨状。なんという無様。破壊の為に、我々は集ったのではないのか! まったく、軟弱だぞ、貴様ら!」
 国盗りを扇動していた本物のオブリビオンが、その衝動のままに鋭い雄叫びを上げる。
 破壊こそ、絶対悪。
 悪こそ、美徳。
 その為に、その為だけに存在するオブリビオン、もはやそれしか考えられない悪魔の王、デストロイキングは憤慨していた。
 隆起した筋肉が、その身から立ち上る闘気が、大地を鳴動させていた。
 くだらぬくだらぬ。
 破壊を目的としていながら、どうして貴様らは、友愛を育んでいるのか。
 貴様らの悪とは、その程度のちんけなものだったのか。
「軟弱。軟弱……もはや、助けなどいらぬ。諸共に、破壊し尽くしてくれるわ!」
 張り詰めた空気が、その声に反応して割れるかのようにびりびりと振動する。
 そこにあるのは、もはや手加減の必要はないオブリビオン。
 この場所を本当の『皆殺しの公道』にすることはない。
 ここにようやく、猟兵らしい戦いがやってきたのである。
白斑・物九郎
●POW



国家間お見合いパーティーはぼちぼち終わりでよさゲですわな

出て来なさいや、黒幕
ココからがワイルドハントの始まりっスよ


・【白斑王国】発動
・でっかいヤツとかちっちゃいヤツとか頭に手ぬぐい巻いて踊るヤツとか、化け猫の群れを連続召喚

・【野生の勘】で敵の布陣状況と用兵を見抜き、デストロイキング軍目掛け適宜陣形を組ませて送り込む!

・ビューティスパイダーらの頭数を押さえ込ませると同時、蜘蛛の糸も巣も爪牙で【蹂躙】し、デストロイキング目掛け自身が接近出来るルートを切り拓かせ直接戦闘を挑むことが目的

・【怪力】で取り回す巨大魔鍵を武器に、直接ブン殴る「暴力モード」と肉体透過攻撃「精神攻撃モード」で攻め立てる



 国家間戦争の舞台となった……にしては穏やかな状態が続いていた皆殺しの公道に築かれた迷宮。
 それは白斑物九郎が、敵対する悪魔たちを分断し、孤立させて合コン状態にするという本当にそれをやるかという作戦の為だけに築かれたものであった。
 淡水の悪魔との戦いを制し、戦いも収束しようという辺りで、謎の次元のひずみから作り出された迷宮の壁がびりびりと震える。
 どうやら、淡水の悪魔の戦いぶりにしびれを切らした大将がお出ましのようであった。
 破壊衝動のままに、かつての四天王クラスのカリスマと力量を振りかざし、原始的な悪行をもって悪魔たちを率いていたデストロイキングには、もう付き従う部下は存在しない。
 彼自身がその能力で以て呼び出しでもしない限りは。
 ごおん、ごおん、と、急造した迷宮の壁面に、彼の者の激しい咆哮が反響する。
 迷宮の壁上に片膝を立てて座り込んでいた物九郎も、その獣のような吠え声には辟易したように耳をぴくぴくとさせて眉を顰める。
 なるほど、穏やかな戦争は、ここいらで仕舞いというわけだ。
「国家間お見合いパーティーはぼちぼち終わりでよさゲですわな」
 王笏の様にも見える巨大な鍵を肩に担ぎ、ひらりと身を翻し声のする方へと降り立つ。
 悪戯小僧のようだった褐色の顔色には、いつしか暴力的な笑みが浮かんでいた。
 身の毛もよだつような激しい空気のうねりの中で、物九郎は笑う。
 ゆるりとした足取りは変わりないというのに、魔王たる威を放つその姿は孤軍なれど、嵐のような咆哮の中にも遜色ない。
「出て来なさいや、黒幕。
 ココからがワイルドハントの始まりっスよ」
 破壊衝動が意志を持って風に目を付けるかのように、その挑発に一斉に目を向けたかのようであった。
 隆起した筋肉に見参の如き角の生えた異様に突きつける笏が、戦いの始まりを告げていた。
「矮小な猫め……我らが眷属の礎となるがいい」
 嵐のような咆哮が止んで、静かなはずの声が腹腔に押し込まれるかのように響いた。
 まぎれもない怪物。
 群れを率いる必要などあったのか。
 疑問に思うほどの威圧。
 それでも、だからこそ、潰し甲斐がある。
 すべてを破壊する衝動。破壊できるという傲慢。それゆえに、そいつはこちらを侮る。
 せいぜい侮るがいい。
 その顔面が壊れても、同じだけ傲慢でいられる余裕があるならば。
「ぬぅぅん!」
 デストロイキングの力の奔流が、大地を揺るがすと、アスファルトで塗り固められた公道のあちこちがぼこぼこと膨れ上がり、配下の魔物がはい出してきた。
 ビューティスパイダーと呼ばれるそれは、蜘蛛の身体に人間の女性の上半身をくっつけた、いわゆる女郎蜘蛛の姿をとっていた。
 牛二頭ほどもある体格は、同サイズの虫をも筋力でねじ伏せる原寸大の蜘蛛と同じと考えるなら、数を相手にするのは危険だ。
「そんならこっちも──王制を敷く」
 宣言通りに眷属を呼び出してきたのに対応するように、物九郎もまたユーベルコード【白斑王国】を発動させる。
 ぽぽぽん、とあちらこちらの物陰から、妖しげな猫たちが二本足で直立した格好で王たる物九郎のもとへと参じる。
 おっきいやつ、ちっさいやつ、手ぬぐいを鉢巻きがわりに踊りながらやってくる奴。
 頼りになるんだかならないんだか、猫の気まぐれな気風をまったく損なわない王国の民が、文字通りに化けて出た。
「フハハ、そんなうらぶれた連中が、お前の兵か! 踏み潰してくれるわ!」
「おお、余裕ッスねぇ? 路地裏を生き抜いた野生、嘗めないことでさぁね」
 物九郎と化け猫たちを囲う様に展開するビューティスパイダーが、その体格差を以て圧し潰しにかかろうという狙いを、物九郎は軽口を叩きながらも瞬時に読み取り、
 不吉なほど卓越した野生の勘で、化け猫たちにチームを組ませて、それぞれに対応させる。
 ネコ科の動物は、ほとんど群れない。
 個々の運動性能を最大限に生かし、縦横無尽を可能にするしなやかさで翻弄しながら確実にその爪牙を突き立てる。
 だが、それがもしチームワークを組めるほどの統率のもとにあったならば?
 王笏の様に魔鍵を振るいながら、巧みに化け猫たちに陣形を組ませて攻撃を仕掛ける物九郎の、その王国民は、体格も見た目もばらばらだ。
 猫であることを除けば、まるで統一性が無い。
 だがそれ故に、一つとして同じ個性はなく、バラバラなようで同じ意思のもと、チームで攻勢をかける様は、陣を細分化しているようでもあった。
 一体のビューティスパイダーに対して、足止めをしながらかつ狙いを定めさせず死角から攻撃を加える三方攻撃を仕掛けたり、体格差をものともしない凶暴さを遺憾なく発揮していた。
 そしてそれらは、あくまでも女郎蜘蛛たちに対応するだけではなく、王たる物九郎の進む道を開くためのものであった。
 猫たちの鋭い爪牙が、蜘蛛の固い体毛を突き破り、手足をもげば、蹂躙の先に拓けた活路にもまた化け猫がいた。
 ヘルメットをかぶり、敵影無しと指さし確認した後、ぐっと体を縮めてヘルメットを抑える。
「とうりゃっ!」
 それを足場に物九郎は跳躍する。
 切り開いた道は、デストロイキングへと直接殴り込む為のもの。
 王笏? 違う、この魔鍵は殴りもいける。
「ぬうう、この俺を直接叩きに来るか! 面白いっ!」
 ならば直接叩き壊してやろう。
 拳を振りかぶるデストロイキングと、巨大魔鍵を振りかぶる物九郎。
 その交錯は一瞬。
「ぐおおおっ!?」
 大きくのけぞったのは、デストロイキングの方であった。
 物九郎の怪力も手伝ったろう。
 しかし、その魔鍵は『心を抉る鍵』。すなわち、物理的にだけでなく、その心までも同時に殴る。
 思わず数歩引き下がって殴られた顔面を押さえるデストロイキング。
 だが、それでもまだ倒れはしない。
「ぐぅう、クククク……魂を、揺さぶるッ! いいぞ。もっと、来い、小僧!」
「おやぁ、ちょっと打ちどころ悪かったっすかね? まあ、こちとら、叩いて治す方法しかしらねぇんスけどね」
 顔を腫らし、しかしその顔には闘争の悦びが笑みとなって浮かぶ。
 それを物九郎もまた、犬歯を剥いて不敵な笑みで迎えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
もう、ワルのふりは……しなくて良いのかな?

皆、貴方の掲げる破壊の先に何もない事を解ったんだと思うけど

●POW
二回連続で同じUCを使って真の姿になるのもアレかも知れないけど

相手の戦法には此方かな?

『早業』でUCを発動

女郎蜘蛛ごと『範囲攻撃』の『貫通攻撃』の『砲撃』の島唐辛子餃子と高麗胡椒の縮光弾の『弾幕』を『属性攻撃(島唐辛子)』を加え強化し

召喚主(デストロイキング)ごと『焼却』

『空中戦&ダッシュ&推力移動』で詰め寄り、攻撃は『第六感』で『見切り』『怪力&オーラ防御&激痛耐性』で『受け流し』

武装の【発勁&健脚&シャオロン(麺棒モード)】で『早業&グラップル』で畳み掛け

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 疲労の色が濃かった。
 悪意のない戦場。
 それは、願ってもない場所のはずだったのに、なぜだか気が重かった。
 諍いの中にあって、片方に加担するならば、もう片方を打倒さなくてはならなかった。
 それも、悪を装って戦わねばならないというのが、何よりもエミリロット・エカルネージュの心にのしかかるものであった。
 しかし、それもいつしか終わりを迎えていた。
 淡水の悪魔たちは、なるべく大怪我をさせないように振り払った。
 悪者を演じるには正直すぎる自身の在り様を隠すため、纏っていた甲冑を解除する。
 戸惑いや申し訳なさを表に出さぬため、マスクの様に纏っていた甲冑は、その為だけに使うにはやや体に対する負担が大きかったようだ。
 餃子の拳法と甲冑、その因果関係や如何にというツッコミが聞こえてきそうなものだが、その実、ご当地の素材のパワーを万倍にも引き出すため、大地の力を得る姿である、らしい。ので、それを一身に受ける術者たるエミリロットは、その拳法を扱うが故に行使できるが、同時に反動もあるようだ。
 露骨な言い訳はひとまず置いておいて、基本的には善良な悪魔同士で戦う必要性、そして敢えて悪人アピールをする必要がない事を悟り、エミリロットは改めて胸を撫で下ろす。
 しかし、争いの種ともいうべきオブリビオンの危機はまだ去っていない。
 この国盗り合戦の発端となった淡水の悪魔の総大将、デストロイキングを倒さない限り、この戦いに終わりは訪れない。
 まだまだ戦乱の形跡の残る皆殺しの公道には、デストロイキングの巨大な気配と、その遠巻きにも肌身に感じる雄叫びの震えが、ファードラゴンたる羽毛や毛皮を震わせる。
 一つ、深呼吸。
 思えば、仕事とはいえ、初めてやってきた世界、デビルキングワールド。
 種の存亡をかけた風変わりな法律と、ちょっと変わった悪魔たち。
 この国の気候も、食性も、まだまだ知らない事ばかりだ。
 だが、空気を吸えばわかることもある。
 この場所に住まう、穏やかな人たち。
 それを奪わせるわけにはいかないのだ。
「もうワルのふりはしなくてもいいのかな……いや、いいんだ。ボクはボクで」
 この力を悪というのなら、それでも正義と信じる自分の心も悪なのか。
 それでも歩んできた道に後悔が無ければ、それは正義を成した事になるのだろうか。
 迷いは尽きないし、答えは出ないのだろう。
 故に、そこに在る敵を排除するという、許された正義を全うする事が、遠い近道になるのかもしれない。
 餃心拳の悟りは遠い。だからこそ、歩み続けなくてはならないのだ。
『Dumpling System!』
『Emergency! Kōrēgusu!Shima pepper!』
 再び、エミリロットは甲冑を身に纏う。
 道を志す信念ある限り、この世にはびこるオブリビオンの存在を許す理由なし。
 【緋雪餃帝・高麗島唐縮餃砲】によって、発動シークエンスと共に鎧装を身に纏い、その推進装置により、一気に飛んでデストロイキングのもとへと到達する。
 巌のような筋肉と、剣山の様に生えた角。その圧倒的な存在感を醸しているのは、破壊衝動という原始的で底知れぬ敵意からくるようだった。
 正気と狂気のはざまにいるようなその眼差しが捉えたのは、一見すると面妖な機動鎧。
 まさか餃子や包子がモチーフの高次物質装甲(なのか?)とは夢にも思うまい。
「懐かしい。何故だか、懐かしい匂いを纏って現れよるわ……その甲冑、実に壊し甲斐がある!」
 ごうっと、暴風のような敵意を向けられ、エミリロットは装甲越しとはいえ威圧感に後ずさりそうになる。
「もう、貴方一人みたいだね。まあ、皆、貴方の掲げる破壊の先に何もない事を解ったんだと思うけど」
「もとより、全て壊し尽くす予定よ。それが早まっただけのこと」
 底知れぬ破壊衝動も、もしかしたらと思って話しかけてみたが、なるほど、これではお話にならない。
 もはや、どちらかが倒れるまで戦わなくては終わらぬらしい。
 悪を打倒すは必定。しかし、悪を演じたからこそ、改めて思う。
 自分が悪と断じた相手にも、思うことがあるのだ。相手もまた、理性をもって、言葉を持っていた。
 それでも、善だ悪だと、争いは生じてしまう。
 それを倒してきた自分は、果たして善であったろうか。
 葛藤がエミリロットに隙を生じさせる内に、周囲のアスファルトがぼこぼこと隆起して、デストロイキングの眷属を生み出していく。
 女郎蜘蛛型の魔物ビューティスパイダーという手勢がまだあったことに、多少の戦力差の誤算はあったものの、敵の出現はエミリロットの生存本能を想起させる助けともなった。
「集中しないと」
 とはいえ、デストロイキングはもう目の前だ。
 強引に押し切る戦法を取る。
 胸部装甲から、高麗胡椒と島唐辛子餃子の大地の力を得た縮光弾を放つ。
 さながら大昔のアニメヒーローの様に、広範囲を射程距離に収めたそれが、デストロイキングをもまとめて包み、焼却せんとまばゆい光とともに迸る。
 やったか。いや、やっていない。
 恐ろしい存在感というのは、物理的感覚を介さずとも、知覚できてしまう。
「クハハハハ! 懐かしさはこれよ! この手の辛味は、さんざん喰らってきたわ!」
 結構な辛さだと思うのだが、焼け付いた蜘蛛たちの残骸に混じって、煤けた煙を上げる両腕を盾に光弾を耐えきったデストロイキングが哄笑を上げる。
 やはり魔界に活火山麻婆豆腐は欠かせないのか。どうやら生前から辛いものには慣れっこだったらしい。
「……オブリビオンになる前だったら、いいお客さんになったかもしれないね」
 残念でならない。もう手遅れなのだ。骸の海から蘇った者は、そこへ還すしかないのだ。
 これ以上、後悔しないために、エミリロットは麺棒を手に地を蹴る。
 槍の如き麺棒が手元からするりと伸びては、その打突をデストロイキングの隆々とした腕が払う。
 突進の勢いを消さぬまま、水餃子の如きしなやかな足が弧を描いて浴びせ蹴りを見舞う。
 迎撃の拳が踵とかち合い、爆裂音と共に反発。
 打ち据えたままの麺棒を支点に回転することでその反発力を殺し、着地と同時に再度踏み込み……。 
 繰り出すエミリロットの拳と、やや崩れた体勢からのデストロイキングの拳がすれ違う。
 顔面までの距離、そしてリーチの長さは、圧倒的にデストロイキングの方が長い。
「ッ、ぐ、う……!!」
 胸部を強く打たれた。激しい衝撃と共に突き飛ばされ、息が詰まる。
 その様子に勝ち誇った笑みを浮かべるデストロイキングだったが、直後に、
「ぐ、ぐおおおっ!?」
 形容しがたい衝撃が、デストロイキングの脇腹に一拍遅れてやってきた。
「ふっ……ワンインチ、餃発勁拳……!」
 ワンインチパンチとは、ほぼ密着した距離から、重心移動や筋力からくるエネルギーを瞬間的に、それこそ爆発するようなスピードで押す力として発現させる体術奥義の一つである。
 達人は、それを密着した距離から、どのような体勢からでも放てるという。
 エミリロットは、拳を打ち出し、デストロイキングと拳を交差させた、まさにその直後にもう片手でワンインチを放っていた。
 結果的にデストロイキングのパンチを貰う羽目になったが、餃発勁拳はちゃんと効果を発揮したらしい。
「ぐうう……クハハハ、侮りがたし、餃発勁!」
「まだ、全てを出し切ってないよ!」
 乱れかける呼吸を整えながら、雌雄決さんと再び向き合う。
 人を活かす食の拳。
 全てを破壊する魔界の拳。
 奇しくも、向き合う二人は笑っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

大町・詩乃
(ホッとしたように)ようやく本来の自分で戦えますね。

全てを破壊するのが貴方の望みですか、ならば私は全てを護りましょう!
凛とした口調で宣言。
空中浮遊した自分を念動力で動かし、空中戦によって空を自在に翔け、第六感と見切りで相手の攻撃を回避。
躱せない時はオーラ防御を纏った天耀鏡で盾受け。

天候操作で植物を潤す慈雨を降らせて発動条件を整え、UC:神域創造を使用します。
貴方の破壊兵器がどのような物であろうと、この神域では作動しませんし、他の攻撃も効きませんよ!

多重詠唱による光属性攻撃と雷属性攻撃、更に神罰を刃に籠めた煌月によるなぎ払いで、相手の防御を貫通(攻撃)して討ち取ります。

これで戦争終結です!


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

ミフェット(f09867)と一緒に悪いヤツをやっつけちゃうね♪
なんだかお外で騒いでるヤツをやっつけにミフェットと一緒に飛びだすよ!

悪いヤツをやっつけて、ボクがげこくじょーだ!
【お姫様ペネトレイト】でお姫様オーラを纏って、破壊兵器をどかどか貫いて
そのままお腹のお口に飛び込んでそのまま突き抜けちゃうぞ☆
ふふーん、ミフェットのお歌で元気になってるボクのお姫様オーラは無敵だよ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒にオブリビオンをやっつけよう!
悪っていったいなんだろう?
デビルキング法って読んでみたいかも

お茶会を放り出して、フィナーレに飛び込むよ!
得意のリュートを取り出して〈楽器戦争・歌唱〉でティエルを〈鼓舞〉するよ
一緒に戦ってくれるなら、猟兵でも悪魔でもまとめていっしょに応援!

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】

♪ブンブン腕を振り回し ドカンドカンと大ハカイ!
キングの命令、悪こそハカイ! そんなの今じゃ、もう古い!

今の流行りは下剋上!
悪のココロは自由のココロ! 命令なんてムシしちゃえ!
キングがハカイと命令するなら、キングを逆にやっつけちゃうぞ!



 うーん、なにか騒がしい。
 妖精の壺の中。フェアリーランドに、巧みな策と音楽で悪魔たちを誘い込み、戦時中に豪遊という、聞きようによっては不謹慎にも聞こえるような、実際にはただのお茶会を楽しむティエル・ティエリエルとミフェット・マザーグースは、外の世界から鳴動する何かを感じ取る。
 何か忘れているような。と小首を傾げるティエルは、ちょっぴり固めに仕上がったクッキーをぼりっとかじる。
 妖精の体格からすれば、片手に収まるようなクッキーでも一抱えはある。それを顔半分くらい大口を開けて豪快に齧り取れば、小気味いい歯触りと糖分が頭に巡り、忘れかけていた当初の目的を思い出す。
「あーっ、まだ親玉を倒してないよ!」
 すっかり悪魔たちとのお茶会にのほほんとしてしまいそうになっていたが、これはお仕事である。
 猟兵のお仕事は、オブリビオンを退治することだ。
「ミフェット、ミフェットー!」
 口中のクッキーをもっしょもっしょと咀嚼しながらお行儀悪く、すぐ近くのテーブルで甲斐甲斐しくお茶のお代わりを悪魔たちに注いで回るミフェットのもとへとすっ飛んでいく。
 慌てた様子のティエルから事情を聞いたミフェットも、すっかり忘れていたと、和みかけていた表情を引き締める。
「表ではもう、あいつが暴れているのかもしれない。すぐに行かなきゃ」
「二人で、えーっと、何ていうんだっけ?」
 すぐに戦う覚悟を決めたはいいが、肝心の言葉が出てこない。
 うーん、なんだったか。
 言葉に詰まる二人を見かけた悪魔が、気になったらしく話しかけてきた。
「おや、お二人とも、お花摘みですか?」
「違うよ。今から……そう、げこくじょーだ!」
「下剋上だ!」
 やっと出てきた言葉に顔を見合わせる子供二人。
 その元気な様子に、話しかけた鎧の悪魔も、おおっと感心した様子であった。
「下剋上、実にいい響きだ! 国盗りの首魁を、討ちに出るのですな! ならば、お気をつけて!」
 お堅い鎧の悪魔らしく、暑苦しいような義理堅いような、そんな激励を受けて、二人はフェアリーランドを飛び出していく。
 それにしても、悪いことが美徳とされているのに、本当にこの世界の悪魔たちは根が善人である。
 その輪の中に入って、普通に和んでいたミフェットは考える。
 悪っていったいなんだろう。
 デビルキング法。機会があれば読んでみたい気もする。
 それは、ミフェットが本好きというのもあったかもしれない。
 ──一方、そのフェアリーランドの外では、吠え猛るデストロイキングにたった一人、対峙する人影があった。
 周囲の空気をも震撼させる絶対的なその存在感は、原始的な破壊欲求を体現しているかのようだった。
 恐ろしいほどの敵意。しかし、だからこそ、立ち向かう大町詩乃の心は凪いでいた。
 実のところ、ホッとしていた。
 良くも悪くも祭り上げられた神という存在の域から、ちょっぴり迂闊な程度しかはみ出ない詩乃は、だいぶ控えめに言ってもお人好しである。
 神ゆえに、相対するものの本質を見極める眼力を持ち、
 神ゆえに、善意ある者には手を差し伸べてしまう。
 悪を美徳とし、心根が素直であるがゆえに頑張って悪行を全うしようとするこの世界の悪魔の美しいまでの純真さに、演技とはいえ悪を以て接するというのは、詩乃にとっては心苦しいところがあった。
 たぶん、善意100パーセントで接したところで、彼等ならのほほんと対応してしまいそうだが、詩乃もまた真面目に悪を装って頑張ってしまう性分であるため、気疲れを起こしてしまうところだった。
 しかしながら、やっとオブリビオンのところまでたどり着いた今、敵を前に安心してしまうというのは、いささか不謹慎だろうか。
 いいや、悪にとって悪足るならば、それでもいい。
 進んで悪行を行う者が稀有であるように、善悪は必ずしも正対しない。
 それでも、この原始的な悪意を捨て置けるわけもなく、その為に己にとって正しく力を行使できるなら、それ以上は無いのだ。
 邪神を装うためにわざわざ用意した、悪い女っぽい極彩色の上着が泡沫の如く消えていく。
 残った巫女装束の詩乃の手には、いつしか愛用の薙刀。緋々色の光沢を持つオリハルコン製の刃を持つ煌月が握られる。
「笑止なり、異の神よ。その細腕で、我を滅ぼせるとでも思うのか?」
「滅ぼす……。全てを破壊するのが貴方の望みですか、ならば私は全てを護りましょう!」
 悪を演じていた時よりも張りのある凛とした佇まいで、デストロイキングの威圧に一歩も引くことなく、目の前の暴力に異を唱える。
 この世界、この国。変わった法則を持っているとはいえ、愛すべき人徳を築いているには違いあるまい。
 ならば、神たる詩乃は、見守るべく、脅威を払うが務めというものだ。
 その為ならば、無限に力が湧いてくる気がするのだ。
「うわー、もう始まっちゃってるよー!」
「ティエル、まってー!」
 と、一触即発の空気を、能天気な子供の声が割って入る。
 フェアリーランドから飛び出してきたティエルとミフェットは、今まさに、張り詰めた空間に唐突に出てきたのであった。
 妖精の壺はどこに行ってたんだ? などと、今更野暮なことを言ってはいけない。
「あらあら、子供が危ないところにでちゃ、ダメですよ」
「危なくないよ。だって、ボクたちは、げこくじょーをしに来たんだ!」
「まぁ!」
 思わず世話焼きっぽいお姉さんに立ち返った詩乃に対して、ふーん! っと鼻息荒く胸を張るティエル。
「悪いヤツをやっつけて、ボクがげこくじょーだ!」
「まぁまぁ!」
 これがデストロイキングほどの隆々とした恐ろしげな姿をしていれば、詩乃にも思うところがあったかもしれない。
 しかし血気に逸るように自信満々に宣言するのは、20センチちょっとの可愛らしい妖精だ。
 それができるかもしれないポテンシャルを見抜きつつも、子供っぽいほどに粗野な野心を目にしてしまうと、詩乃にはそれは陽光のような輝きに見えてしまう。
 ヒーローズアース出身としては、悪い奴をぶっとばせの精神をここまで素直に体現する者を止める術はない。
「ふむふむ、では悪の親玉に下剋上をしたら、貴女はどんな悪事をなさるんですか?」
「えー、うーん……とりあえず、お茶会の続き。夜中までどんちゃん騒ぎだー!」
「うふふふ。夜更かしに、寝る前のおやつですか。それは、悪い子ですね」
「ちゃんと、歯を磨くよ!」
 愛用のレイピアを構えるティエルを横目に、詩乃は思わずにこにこしてしまう。
 それくらいの悪事は、このうっかり神もやっちゃうのだ。
 よき二人の猟兵を見た。
 悪事としてはしょうもないレベルのティエルと、なんとかいい子の方向にもっていこうとするミフェット。
 二人はそういうバランスでできているのかもしれない。
 いいだろう。ならば、それも守ってあげなくては。
「羽虫が増えたところで……俺を嘗めるなよ……!!」
 平和な空気を作りかけた三人を前にしびれを切らしたか、デストロイキングは、憂さを晴らすかのように公道の脇に添えつけられた雨避けやらを怪力で引きちぎり、腹部の口に詰め込んでいく。
 取っ手の様に残った鉄骨を、閉じた口から引き出し始めると、それは巨大で武骨な、槍のような剣のような槌のような、とにかく振り回す鉄塊らしいのが見て取れる。
「いけない……!」
 あれを生み出させてはいけない。本能的に察知した詩乃は、天候を操って周囲に雨を降らし始める。
 その雨は植物を潤す慈しみの雨。そこから生じる領域は、神の御業が最大限に及ぶ陣地。
「干天の慈雨を以って私はこの地を治めましょう。従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる」
 【神域創造】によって生み出された神の庭の前に、狼藉はかなわない。
 その言葉の通り、デストロイキングが生み出そうとする破壊兵器は、その場で引き抜くことはできず、隆起した筋肉が倍に膨れ、血管が浮き出るほど力んでも腹にうずまった兵器はびくともしない。
 だが、
「うぬぬ……小癪。だが神よ、それで俺を止められると思うな。ヌオオオ!!」
 ばきばきと何かが軋む音とともに、その束縛を無理矢理に引き千切ろうとする。
「なんという……」
 もっと時間をかければ完全に領土とすることも可能だが、それとデストロイキングが怪力で兵器を引っ張り出すかは、五分といったところだろうか。
 やはり打って出るしかない。
 詩乃はその身を浮かせて念動力で飛翔しつつ、薙刀を構える。
 その脇を、輝く鱗粉が横切っていく。
 レイピアを構えたティエルが持ち前のスピードで突撃していくのが見て取れた。
 なんと、兵器を呑んだままのその腹部へと向かって。
「待って、それはいくら何でも!」
 引き留めようとする詩乃の言葉を遮り、ぽろろんとリュートを掻き鳴らす旋律。
 ミフェットの歌声が三度、魔界に響く。
「ブンブン腕を振り回し ドカンドカンと大ハカイ!
 キングの命令、悪こそハカイ! そんなの今じゃ、もう古い!」
「フゥゥン、しゃらくさいわ!」
 【嵐に挑んだ騎士の歌】が、ティエルの豪気を後押しする。
 心を通じ合う親友同士だからこそ行える突撃に、デストロイキングは歌を嫌う様に手近な建造物を殴りつける。
 飛散する礫が迫るが、
「子供の演奏を、邪魔しちゃいけません」
 詩乃の、その周囲を浮かぶ金剛の輝きを帯びる鏡が、盾の様に展開してミフェットを、そしてティエルに並走するように飛翔して守る。
「今の流行りは下剋上!
 悪のココロは自由のココロ! 命令なんてムシしちゃえ!
 キングがハカイと命令するなら、キングを逆にやっつけちゃうぞ!」
 なおも歌い上げるミフェットの歌声に呼応するように、ティエルは加速する。
 お姫様特有の気合、オーラを纏った【お姫様ペネトレイト】は、光の尾を引いて、やがて詩乃も追いつけないほどのスピードまで加速し、一直線に、デストロイキングの兵器めがけて突撃していく。
 どうしてわざわざそんな危険なところに向かっていくのか。
 妖精はやっぱり気がふれているのか?
 それは、象徴だからだ。
 激しい衝突音。
 そんな最中にあっても、ティエルは鼻を鳴らして笑うのだ。
「ふふーん! ミフェットのお歌の中でなら、ボクは無敵だぁー♪」
 何かが砕ける。破滅の槌の取っ手が、鉄塊が、それを呑む口をも貫いて、なんか勢い余ってあらぬ先まですっ飛んでいく。
「……すごい、お見事……!」
「ぐおおおっ!? ば、馬鹿な……あのような、羽虫に……!」
「よそ見はよくないです!」
 続いて、追いついた詩乃が、感嘆の声とともに、雷光を帯びた薙刀を一閃させる。
 完全に虚を突かれたデストロイキングは、肩から逆側の腹にかけて深手を負うが、その怪物じみた生命力は図体通りであった。
 詩乃の痛烈な一撃を浴びながら、瞬時に地を穿ち、衝撃波とアスファルトの破片をまき散らすと、飛び退って距離を取ったのであった。
 致命傷にならなかった。と冷静な分析をしつつも、詩乃は油断なく薙刀を構え、あくまでも決定事項のように凛とした言葉を差し向ける。
「幕です。これで、戦争終結と致しましょう」
 恨みがましく、デストロイキングは、詩乃ではなく、今しがた地を穿った両手を見やる。
「引く? この俺が、引くために破壊しただと……? おのれ」
 そして改めて詩乃と、その後ろに控えるミフェットを見据え、吠えるのだった。
「おのれぇぇぇぇぇ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
(両腕を換装、武器改造、流動黒剣を全身に纏う)
……所詮私は戦うだけの機械…悪を張るのは難しいな。

全身に纏った流動黒剣で武器受け、
糸や攻撃を弾き魔王目掛けて推力移動。

障害となるビューティスパイダーを掴み『邪神腕・破神』の効果発動
デストロイキング軍を代償にし、障害を排除。

お前を悪とは呼ばんよ、オブリビオン。
私にとってお前はただの敵だ。

魔王へ接近し、怪力で拳を振るう。
早業で連撃を繰り出し、戦闘知識で動きを見切り、
ダメージを最小限で抑えつつ、部位破壊に集中。

フェイント、敵後方に召喚したビューティスパイダーで、
攻撃、糸で動きを封じさせたり、攻撃させ、
自身も拳による攻撃を続行。


勝堀・円稼
手助けはタダじゃないんにゃ!
悔しかったらお助け料一億万円用意するにゃす
それなら寝返るのも考えなくもないのにゃ

って、誰にゃその蜘蛛おんにゃ達は!?
仲間はいらないって発言はどこいったんにゃ!
おまけにあたしの猫の手を無下にするとは、配信者としてのプライドが許せないのにゃー!

こうなったら多少の恥は我慢してでも、こっぴどく懲らしめてやるにゃす
【大¥上ラッキーハプニング】でサービスシーンにゃ
鎧達からもついでに徴収にゃよ

ぬっふっふ、これで装備も使い放題にゃす
あの忌々しい城を『¥チャント』した『爆¥ガントレット』で爪とぎしてやるにゃ!
そしてボスが見えたら投資した闘志の炎を込めてぶん殴ってやるのにゃー!!



 鉄の焼けたような、錆びたような饐えたにおいがする。
 深手を負ってなお、デストロイキングはその戦意を失わず、その身を突き動かす破壊衝動は更に激しさを増しているかのようであった。
 綺麗に整備された『皆殺しの公道』は、すっかりその激しい衝動と戦闘行為に巻き込まれて、あちこち破壊されている。
 歩くだけでも均されたアスファルトが彼処にヒビを走らせる。もはやそれは、歩く災害であった。
「おんやぁ? ずいぶんと、調子悪そうにゃねぇ?」
 そびえる山の如き威容と例えるならば、デストロイキングの負傷はまさしく山河の様相であった。
 それをあざ笑うかのように猫なで声を浴びせるのは、勝堀円稼。
 妙にムカつく笑みが実に似合う配信ヒーローである。
「戦うのが辛いってんにゃら、手を貸してやってもいいにゃ。
 ただーし、手助けはタダじゃないんにゃ!
 悔しかったらお助け料一億万円用意するにゃす
 それなら寝返るのも考えなくもないのにゃ」
 チチチッと指を振って、その指でコインを象るかのように輪っかを作って見せる。
 本気の様にも、ただ煽っているようにも見えるが、逆にそれが本気に見えるほどお金にがめつい円稼も大概であるが、デストロイキングは歯牙にもかけぬ様子で敵意をただただ向ける。
「豚の様に醜い犬猫め。もはや、助けなど要らぬと言った!」
 救いのヒーローと同等のギャランティを請求したのが仇となったか、増大する敵意が周囲のアスファルトをぼこぼこと盛り上がらせて、その中からビューティスパイダーが這い出てくる。
「にゃにゃ!? 誰にゃその蜘蛛おんにゃ達は!?
 仲間はいらないって発言はどこいったんにゃ!」
 誰よその女! とはちょっと違うが、至極もっともなツッコミを入れつつ、大げさにのけぞって見せる。
 リアクションが大きいのは、円稼にとっては最早日常であるためか、ホントにびっくりしていても大袈裟になってしまうらしいぞ。
 配信者としての業が深まる中で、盛大に煽ってしまってから、気づけば数的不利を背負ってしまっていた。
 こいつは軽いピンチ。しかし、ピンチが無ければ動画映えしない。こいつはおいしい!
 窮地をオイシイと思ってしまうのもまた業である。
 奇しくも、この冒険で出会った鎧の悪魔たちと同じように、わくわくした目をしてしまう。
 と、そんなピンチに追い詰められた状況に割って入るかのように、何か大きな人影が降ってきて、ビューティスパイダーの一体を圧し潰した。
「金か……善悪ではなく、金。下手な信仰より、信用できるな」
 感情を感じさせない、無機質な声色。
 降りかかった巨体、テリブル・カトラリーは、その両腕から突き出した黒い剣の切っ先のような骨子をビューティースパイダーに突き刺したまま、両腕を新たに構築、換装していく。
 両腕を兼ねる流体金属の黒剣は、そのままビューティスパイダーの存在を奪い、邪神の如く喰らって拳を成した。
 これぞ、ユーベルコード【邪神腕・破神】。相手のユーベルコードによって生み出された女郎蜘蛛を代償として効果を発揮する。
 この過激な登場に、円稼(のリスナー)は沸いた。
「ダークなヒーローにゃ!?」
「ヒーロー? ……所詮私は戦うだけの機械……悪を張るのは難しいな」
 ビックリ! といったリアクションに対しては特に言い返すこともなく、テリブルは最後の敵を前に、これまでの戦いを振り返る。
 戦場に善も悪もない。自分と、敵だけだ。
 それ故に、戦場にそぐわない空気の中で戦うのはなかなか苦戦した。
 殴ってばかりで済まなかった。たまに爆破もしたが。
 ようやくらしい仕事ができる。
 言葉少なに拳を構え、戦の風に白い髪を嬲られる様は、かなり配信的にきまっていた。
「にゃ、にゃ、にゃ! ちょ、待つにゃ!」
 円稼の切羽詰まった声が、緊張した戦場に響く。
 このままでは主役を奪われてしまう。それはこれから先の配信人生に関わってしまう。
 慌てた甲斐あって、デストロイキングもテリブルも律儀に視線を向けてくれる。
 えー、こほん。と咳払い。
「あたしの猫の手を無下にするとは、配信者としてのプライドが許せないのにゃー!」
 とりあえず、言うべきは言った。それと、お株を奪われると、色々とまずいので、こっから先は、サービス展開だ!
 注目が集まったことを利用し、円稼はここぞとばかりユーベルコードを発動させる。
 【大¥上ラッキーハプニング】それは、なんと、スーツの投影機能を止めることで、危うくBANされる危険性を帯びることにより、自身をさらなる窮地に追い込むことで底力を発揮するものである。
 って、ちょっと待つんだ。それだと、ボディペイントがバレてしまうぞ!
 ポッチが写り込むのはさすがにまずい! いや、ポッチ以外もまずいのだが、ここは健全サイトなんだ。
 よい子にも優しい配信を心掛けろ。汚い道にまで落ちるんじゃない!
 でもそのハプニング、イエスだね!
「ヒェッ! ちょちょちょちょ、ストーップ! 「炎上確定記念」じゃねーんだわ、応¥札投げんな!」
 いくらどこが露出してるのか曖昧なキマイラとはいえ、スーツの立体投影が薄くなるのは、色々とまずい!
 とはいえ、その口角はつり上がっている。コメント欄をちらっと見れば、投げ銭がえらいことになっているのだ。
 よぅし、これで課金装備も使い放題だ。
「服を着た方がいいと思うぞ」
「んなこたぁわかってるにゃ!」
 至極もっともなツッコミに反射的に突っ込んでしまうが、特殊スーツの投影機能が復旧するまで待っていられない。
 苦しいところだが、ここはアーマークラスを下げて回避力を高めていると思ってもらうしかない。
 ちなみに、あわよくば鎧の悪魔たちからも徴収。と思っていたが、硬派な彼らは、兜のバイザーを深くかぶって見ないふりをしてくれていた。
 いい奴らだなぁ、ちくしょう。
 タイムシフトに残らなくったっていい。一時の金。何はなくとも金!
 その牙城を突き崩すべく、円稼の課金装備、『¥チャント』により強化した『爆¥ガントレット』が投資の、あいや、闘志の炎を吹き上げる。
「もういいのか?」
「うむ、待たせたにゃ! いくぞーっ!」
 律儀に待っていてくれたテリブルに力強くうなずき、円稼はなんだかスーツにプライバシー保護のもやもやしたものを纏って突っ込んでいく。
 DVD版でも晴れません。
「茶番は終わりか。ならば、来るがいい! 何者であろうと、叩き潰してくれる!」
 デストロイキングは、その見事な体格と、手駒のビューティスパイダーをけしかけてくる。
「……!」
「これが城だっていうんにゃら、こいつらで爪とぎしてやるにゃー!」
 湧き出る女郎蜘蛛たちを、次々と二人で殴り、切り裂き、薙ぎ払っていく。
 片や、重量とパワーに任せたハンマーパンチ。
 片や、しなやかな動きとバネで振り回す炎の爪。
 堤を破った二人は、ほぼ同時にデストロイキングの眼前に到達し、そのスラスター推力、跳躍の軌道のままそれぞれに拳を繰り出す。
 そのまま、すさまじい殴り合いに転じるが、それぞれタイプが違うとはいえ、さしものデストロイキングも、二人相手には殴り負けてくる。
 戦闘経験から裏打ちされた無駄のない連続攻撃を繰り出すテリブルはもちろんのこと、ド派手な演出に見えるフェイントを交えた円稼の攻撃も時折鋭い輝きを見せていた。
「ぐ、ぐおお!? 俺が、絶対たる破壊悪が、後れを取るというのか!?」
「お前を悪とは言わんよ、オブリビオン」
 金属の拳がデストロイキングの脇腹と咽頭を捉え、わずかに距離が開く。
 指さしたテリブルの意志を汲むかのように、たたらを踏んだデストロイキングの手足を後方から飛んできた蜘蛛の糸が絡み取る。
「こ、これは!? なぜ、我が手足が裏切るか!?」
 それは、テリブルのユーベルコードで代償にした女郎蜘蛛の能力。再召喚した蜘蛛による拘束であった。
「私にとって、お前はただの“敵”だ」
「ぶん殴ってやるのにゃー!!」
 振りかぶったテリブルと、円稼の投資の炎で燃え上がるガントレットの拳が重なる。
 激しい爆炎が上がり、強大な破壊衝動によって圧迫していた空気を払い、消えていく。
「勝った! 金の力で勝ったにゃあー!!」
 ぐおおっと諸手を上げて勝利を宣言する円稼。だが、その姿はちょっぴりあられもない。
 なので、気を使ったテリブルが、危ういところが写り込まないようにコートを広げてカメラドローンの視界を妨げる。
 さすがに破壊衝動のオブリビオンというだけあって、皆殺しの公道はめちゃめちゃにされた場所もあるが、幸いにして住民の被害は一人も出なかった。
 この後、公道を整備がてら、やたらと仲良しになってしまった二国は、この道を通じて一つに交わっていくのだが……。
 それはもう少し先の、別のお話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月16日


挿絵イラスト