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メゾン・ド・カダンの取立人(作者 G.Y.
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#デビルキングワールド 


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#デビルキングワールド


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●メゾン・ド・カダンの華麗な日常
 マンションダンジョン!
 デビルキングワールドに建てられた、次々と行われた増築の果てに出来上がった悪夢の建造物である!
 悪夢って『悪』がついてるからきっと悪そう! というわけでマンションダンジョンを居住地とする悪魔達は多く、迷宮並みながら皆楽しく暮らしていた。
 マンションダンジョンは迷宮だけどマンションである以上、大家がいて、家賃の支払いが発生する!
 しかし、デビルキング法は良い子を許さない。住民達は当然のように家賃を滞納し、大家は大家でデビルギャング達を雇って毎日取り立てを行っているのだ。
 これがマンションダンジョンの日常。それがデビルキングワールドの生活なのだ!

「おらぁ! 取り立てじゃーっ!」
「蔦ばっか生やしやがって、マンションの原型がねぇーじゃねぇかぁー! 修繕費は敷金だけじゃ足んねぇぞ!」
 ここ、メゾン・ド・カダンでもそんなマンションダンジョンを巡るデビルギャングと住人達の攻防が繰り広げられていた。
 植物の悪魔が大量に住むこのマンションは、本来の姿である鉄筋コンクリートの面影などまったくなく、縦横無尽に草木が生い茂り、地面からたくましい木の幹が元気に成長している。さらに蔦が何重にも絡んでしまっていて、そのシルエットは遠くから見れば巨大な大樹のようにも見える。まさに迷宮という言葉が似合うような雰囲気だ。
 内部には、徘徊する強力な悪魔が眼を光らせ、侵入するギャングを阻む。ギャングもそれを巧みにかわしながら、住人に家賃の取り立てを行っている。
 だが、今日は何か様子が違う。ギャングが迷宮を一歩進むと、突如、床が沈み込んだ。
「へ……、へ……、へっくち!!」
 ギャングの一人が盛大なくしゃみを放つ。タイルが沈んで、埃が舞ったようだ。
 鼻水をずびりとすすると、ギャングは視界が歪んでいることに気が付いた。
「ふぇ……? なんだ、ぁ……?」
 足から力が抜けて、へたりと床に倒れ伏した。
「お、おいこんなとこで寝るな……あ?」
 注意をしようとした仲間が、ギャングの頭を見る。そこには可愛い一輪の花が凛と咲いていた。
「へ……?」
 気が付けば、その仲間の頭にも花が咲いていた。そして、先に倒れたギャングと同じように、彼は床に崩れ落ちるのであった。

 すーすーと寝息を立て始めたギャング達を、蔦の間からひょっこり覗く影があった。
「このタイルトラップ、とても悪いですね」
「花粉で眠らせて風邪をひかせるなんて、凄い悪い作戦です。あの人の悪さはイケてますね」
 それは下半身の巨大な花びらから人の身体が生えた悪魔、アルラウネ達であった。
「私達家族多いから家賃払えませんもんね」
「居心地良いここからは離れられませんもんね」
 ギャング達を窓から投げ落として、アルラウネ達はふへっと笑うのであった。

●発見! デビルキングワールド!
「皆様! 新たな世界が発見されましたわよ!」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)が興奮気味に、猟兵達に告げた。
「その名もデビルキングワールド! なんだか悪そうな響きですわね……そう、実際悪いのですわ!」
 デビルキングワールドは、魔界とも呼ばれるおどろおどろしい世界である。その世界に住む住民達は皆『悪魔』と称し、日夜悪事を繰り広げているのだという。
「これは、彼らがとっても『良い子』だったことで、絶滅寸前に陥った過去が原因と言われていますわ」
 エリルが言う。悪魔達は良い子過ぎて絶滅しかけたことを反省し、『悪い奴は格好いい』『欲望は素晴らしい』といった悪魔の道徳『デビルキング法』を制定したのだ。真面目で良い子な悪魔達はそれを守り、今や悪事はこの世界の日常と化したのだ。
「そこに、オブリビオンが出現したら、どうなるかしら」
 エリルが問う。オブリビオンは、世界を崩壊させるために行動している。つまり、方法はどうあれ、本気で悪事を働いている、とも言えるのだ。
 ――となれば。
「オブリビオンをサイコーに格好良い存在と見なして、住人達が味方を始めちゃったんですの!!」

 世界の人々がオブリビオンに味方をする……。そんな状況、前代未聞である。しかも、この世界の住人達は皆『猟兵並みに強い』のだから始末に負えない。
「ですから、皆様もオブリビオンに負けず悪事を働いて、人々の目を覚まして欲しいのですわ!」
 そう言って、エリルは猟兵達を見つめ返すのであった。

●メゾン・ド・カダンの取り立て屋
「今回オブリビオンが出現したのは、マンションダンジョンと呼ばれる、悪魔の集合住宅ですわ」
 エリルがマンションの様子を猟兵達に見せる。何本もの木々が絡まり合った巨大な樹木に、鉄骨のマンションが持ち上げられているように見える。内部はさぞ複雑になっていることだろう。
「ここに住む住人は、ずっと昔から家賃を滞納していて、定期的にギャングの取り立て屋が迷宮に侵入し、家賃の取り立てを行っているのだけれど、最近はその『取り立て率』が急激に悪くなったらしいんですの」
 その原因が、オブリビオンの出現なのだという。
「オブリビオンは家賃滞納者達を味方につけ、統率をとることによってギャング達を撃退しているようですわ。このままでは、いつかオブリビオンは迷宮を要塞化し、本当の悪事、大虐殺を行ってしまいますわ。そうなる前に止めてくださるかしら!」
 そう言うと、エリルはオブリビオンの障壁となるものの説明を始めた。
「まずは罠。マンションダンジョン、と呼ばれているだけあって、このマンションには至る所に罠が張り巡らされていますわ。その代表が、踏むと発動するタイルの仕掛けですわね」
 タイルを踏むと、床が抜ける、蔦が絡んでくる、丸太が飛んでくる、おならみたいな音がする……などキケンな効果が目白押し。中でも注意すべきなのが、花粉の仕掛けだ。
「踏むと花粉が飛び出して、吸った人の頭に花を咲かせますの。すると、意識が朦朧となって、眠くなってしまう……この寒い冬では風邪をひいてしまいますわ!」
 エリルも至極真面目に警鐘を鳴らす。ともかく、まずはこのタイルを突破しなくてはならない。
「そして次に、オブリビオンに協力している滞納者をやっつけてくださいまし!」
 それは、デビルキングワールド特有の対処と言えた。だって、滞納者はオブリビオンではないのだから。
「悪魔達は普通に皆様並に強いですわ。ですから、ユーベルコードもばしっと使っちゃって構いませんのよ。もちろん殺したりはしちゃダメですわよ?」
 しかも、やっつけられると喜ばれるというのだからまぁ、障害はさっくり排除してしまおう。
「滞納者達をやっつければ、とうとうオブリビオンとの対決ですわ! こちらはしっかりやっつけて、マンションダンジョンを解放してくださいまし!」
 エリルがそう締めくくると、グリモアを輝かせる。
 破天荒で例外だらけなデビルキングワールド。そのハチャメチャな冒険が、今始まった!





第2章 集団戦 『アルラウネ大家族』

POW ●同化花粉散布
対象の【脳】に【花】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[脳]を自在に操作できる。
SPD ●花畑化増殖
【花の種】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から大量の花が咲き】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ ●一家大集合
レベル✕1体の【アルラウネ・シスターズ】を召喚する。[アルラウネ・シスターズ]は【花】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


罠をかいくぐる暴虐たる猟兵達の働きに、アルラウネ達はもはや心を奪われつつあった。
「凄いワルの取立人ですね」
「最高にワルです」
 マンションを焼いたり壊したり、せっかく作った罠を素通りされたり、やりたい放題されたこと。それらの行いは、猟兵達へ向ける目を凄い格好いいワルへと変えていたのだ。
「でも、私たち大家族、この家を出払うわけにはいかないのです」
 そう言って出てくるのは、同じような顔をしたアルラウネ達。まさしく大家族だ。
「あなたも家族になりませんか?」
 そう言って、アルラウネ一家は猟兵達に襲い掛かるのであった。
メナオン・グレイダスト
家族、であるか?
断る。我輩は家賃を取り立てに来たのだ。家族は求めていない。
いずれ我輩が領主となった暁に、領民としてならば迎えるであろうが。

花の種による遠距離攻撃、加えて変化した地形による能力の向上…厄介であるな。
正面からの戦闘は分が悪い、と認めざるを得ぬであろう。“灰色の魔王”は未熟であるが故に。
外套や籠手で遠距離攻撃を凌ぎつつ…気づかれぬよう少しずつ灰色砂塵を散布、アルラウネ達へと投射。
機を見てアルラウネ達に【グレイダスト・ギフト】。敢えてかの者達の戦闘能力を強化しよう。
我輩からの贈り物だ。対価として…その身体を支配する。
さあ、撃ちあえ。戦え。我輩に屈服するまで、存分に同士討ちさせてやろう。


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

断る、私はお前達の取り立てに来たのだからな
家族ごっこは余所でやってもらおうか

とワルぶって辛辣な言葉を吐きつつ攻撃
ナガクニの峰打ちやグラップルと言った白兵戦による気絶攻撃で対処する
人的被害を出さないように徹底しよう

フン…くだらん小細工だ…
気が済んだなら、存分にお返しをしてやろう

敵UCを確認したらこちらもUCを発動
花の種を撃ち落とし、地形の花畑を薙ぎ払い、最後にアルラウネ達を攻撃
もちろんアルラウネ達を攻撃する時は気絶する程度にまでパワーを落とす
ワルと言えど、線引きはきっちりとな

抵抗を続け銃火を浴び続けるか、私に従い家賃を支払うか
お前達に残された道は二つだけだ…好きな方を選ぶがいい


 説明しよう。
 アルラウネ大家族は花の悪魔である。
 彼らの花から放たれる花粉によって、ところどころで新しい兄弟が増えたりするのである。その結果、彼らは大家族となってしまったわけだ。
「家族、であるか?」
 メナオンは問い返す。花粉をばふーっと出して、アルラウネが言う。
「そうです、それで一緒に住めば取り立ても必要無いですからね」
 名案だという感じでアルラウネはふんぞり返る。
 その様子に、メナオンの隣に立つキリカは呆れたように一息ついた。
「「断る」」
「我輩は家賃を取り立てに来たのだ」
「私は前達の取り立てに来たのだからな」
 メナオンとキリカが言い返すのは、ほぼ同時であった。
「家族ごっこは余所でやってもらおうか」
 キリカは冷淡な目つきでそう言い放つ。アルラウネはそれを聞き、残念そうにしゅんとする。
「駄目ですか……」
 案外ダメ元のつもりだったみたいだ。とはいえ、悪ぶった辛辣な言葉に、アルラウネ達は興味津々だ。
「とても悪い人ですけど、負けません。家族が駄目なら出て行ってもらいます」
「家賃滞納記録を伸ばしますよ」
 アルラウネの花が開く。そして、その中心からまるでマシンガンのように種子が放たれた。
「ムッ……」
 メナオンとキリカが散開する。種子が誰もいなくなった床に着弾すると、そこから大量の花が咲き始める。
「どんどんいきますよー」
 また別のアルラウネが、花が咲き乱れる地域から顔を出し、種子を発射する。その威力は、先ほどの攻撃より、より強くなっているようであった。
「花の種による遠距離攻撃、加えて変化した地形による能力の向上……厄介であるな」
 弾丸を受ければダメージに、避ければ相手の能力強化へと繋がる。アルラウネ達は大家族というだけあって大群だ。四方八方から放たれる種子の弾丸に少人数で対応するのは分が悪いと言えた。
 特にメナオンは“灰色の魔王”を自称しつつも、それが未熟であることを自覚していた。だからこそ、真正面からではない突破方法を考える。
「フン……くだらん小細工だ……」
 対するキリカは、種子を短刀のナガクニで弾きながら、周囲に無数の卵型浮遊砲台『オーヴァル・レイ』を呼び出す。
「気が済んだなら、存分にお返しをしてやろう」
 90個をも越えるオーヴァル・レイから放たれる粒子ビームで種子を撃ち落とし、手にしたナガクニで花畑を薙ぎ払いながらキリカは真正面から進んでゆく。
「行け。しかし殺しはするな」
 キリカがそう指示すると、オーヴァル・レイは種子の弾幕をかいくぐり、アルラウネ達へと迫る。
「ひゃぁ、熱いです」
 ビームをびしばしと浴びて、アルラウネが抑揚のないながら情けない声を上げた。
 その隙に、キリカがアルラウネへと肉薄し、ナガクニを振り下ろした。
「はうっ……!」
 煌めく刃が走り、アルラウネがぺたりと倒れる。だが、床に血は流れておらず。よく見ればアルラウネの頭にはたんこぶが出来ていた。
「安心しろ、峰打ちだ」
 ナガクニを構え、キリカはそう告げるのであった。

 そんな直接的な攻撃の横で、メナオンは防戦に徹していた。
 外套や籠手を器用に使うことで、大きなダメージは受けていない。だが、反攻に転じる余裕も無いように見えた。
 だがそれはあくまで「そう見えた」だけであった。
 メナオンを攻撃するアルラウネ達は気が付かなかった。じわりとその輪郭が歪んだことを。そして、彼が身体の一部である灰色砂塵が戦場に散布されていたことを。
「降参しちゃいませんか? やっぱり家族になってしまいませんか?」
 アルラウネが種子を撃ちながら再び聞く。メナオンは鼻で笑って答えた。
「我輩は家族は求めていない。いずれ我輩が領主となった暁に、領民としてなら迎えるであろうが」
 メナオンの言葉に、アルラウネが首を傾げた。
「領民ですか? 家賃タダに出来ますか?」
「それはない。だが贈り物はしよう」
「えっ……」
 突如、アルラウネ達の身体が大きくなってゆく。
 花が巨大化し、種も大きくなった。ちょっと身体つきもマッチョになった気がする。メナオンの撒いた灰色砂塵がアルラウネ達の身体を強化したのだ。
「我輩からの贈り物だ。受け取るがよい」
 困惑するアルラウネ達。これはもしかして敵は良い事をしてるのでは? などと思いもしたが、なんにせよこれは敵に塩を贈る行為。ならば遠慮なく悪い事に――。
「対価として……その身体を支配する」
「えええ……」
 イケてる取り立て屋はやっぱり悪い奴だった。強化されたアルラウネ同士が向き合い、種子を向け合っている。
「さあ、撃ちあえ。戦え。我輩に屈服するまで、存分に同士討ちさせてやろう」
「家族同士の争いを誘うなんて……悪い奴です!」
 そう言って目を輝かせながらも、彼らは望まぬ同士討ちを始めるのであった。

「さて、抵抗を続けるか、家賃を払うか。お前達に残された道は二つだけだ」
 キリカが告げた。戦場は阿鼻叫喚であった。家族同士が同士討ちをしているし、せっかく咲いた花も焼き払われた。オーヴァル・レイの銃口はまんべんなくアルラウネ達に向いているし、もはや攻撃どころではない。
「好きな方を選ぶがいい」
 ――程なくして、アルラウネ達は家賃を選択した。
 彼らから受け取ったたっぷりのDを抱えながらも、武器は収められない。何故ならば、まだ彼らの「いとこ」や「はとこ」を含めた親戚一同からも取り立てなくてはならないからである。そういうわけで、猟兵達の取立はまだまだ続きそうであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

詠月・しきみ
家族で住む所が必要なのは分かります
ですが家賃の滞納は駄目ですよ?
それに……私には帰る家があります
きっちりお仕事して、帰らせていただきますね

敵が多くて足場も狭そうなので、空を飛びましょうか
『ドレスアップ・プリンセス』で自分を強化しつつ戦います
悪い子達はプリンセスハートでどんどん薙ぎ払っちゃいますよ!
廊下を飛び回りつつ敵の数を減らしましょうか

籠城されるのも怖いですね
何かを建造しているアルラウネを優先的に攻撃しましょうか
場合によってはフラワーボムで【爆撃】も辞さない構えです
お花の悪魔に花を模した爆弾を投げ込むのはちょっとアレですけど……
同じお花のよしみで!
爆発して下さい!
命までは取りませんから!


ミア・ミュラー
あなたたちとはあんまり戦いたくないけど、邪魔をするなら、仕方ない。ん、ちょっと痛い目に遭ってもらう、よ。……これはけっこう悪っぽい、台詞?

おー、これは確かに、大家族。まともに戦うのは厳しそうだから、今度はわたしが罠にかけちゃおう、かな。走ってみんなをタイルのある床に誘導したら、【雷盾】で乗ってるタイルを雷に変えて痺れさせて、あげる。そんなに急いだら前の人にぶつかって、みんな感電しちゃう、よ?

ん、動けなくしたらちゃんと取り立てしないと、ね。あと、わたしがさっき壊しちゃった床の修繕費ももらっちゃおう、かな。んー、これは悪いことをしちゃった、かも。


 猟兵達の活躍により、とうとう家賃支払いが行われた!
 長年滞納していた家賃額は相当なDとなっていたが、元来良い子であるアルラウネ達は全額払えるだけの貯えをちゃんと残しているようだった。
 とはいえ、今まで踏み倒していた家賃を支払うことになったことは変わりない。その事実はこのマンションに住む親戚のアルラウネ達を震撼させた。
「アーちゃん家がやられたらしいですね……」
「あの家は我が親戚一同が住まうマンションの中でも下層、最初に取り立てられるのは仕方のない事です……」
 そんな風に会話を交わしているアルラウネ達が、気配を察知して向き直る。そこに立っていたのは、しきみとミアであった。
「見つけ、たよ」
 ミアが告げ、しきみが前に出る。
「家族で住む所が必要なのは分かります。ですが家賃の滞納はだけですよ?」
 しきみがそう諭すように言う。だが、アルラウネ達も引くわけにはいかない。
「そうはいきません、家賃滞納もワルのうちです。あなた達も家族になって取り立てから逃れませんか?」
 アルラウネはそう言って、ばふっと花粉を出す。あれが脳に入ると、アルラウネに操られてしまうのだという。それに臆さず、しきみは首を振った。
「私には帰る家があります。きっちりお仕事して、帰らせていただきますね」
「駄目ですか……。では、皆さんいらっしゃい」
 残念そうに言いつつも、アルラウネが合図を送る。すると、四方八方から新たなアルラウネが呼び出された。
「呼びましたか? 姉さん」
 彼女達はアルラウネ・シスターズ。同じマンションの別フロアに住むアルラウネのきょうだい達である。
「おー、これは確かに、大家族」
 ミアは周囲を見渡して感心したように言った。だが実際、多勢に無勢。まともに戦うには猟兵達には分が悪い。
「なら、今度はわたしが罠にかけちゃおう、かな」
 アルラウネが殺到する前に、ミアが駆け出した。
「追いましょう」
 何十人ものアルラウネの間を潜り抜けたミアを、アルラウネが追ってゆく。そのうち1人が飛び掛かろうとした時、突如宙を舞うハートが、その脇腹に突っ込んでゆく。
「げふっ?」
 くるりくるりと宙を舞うのはプリンセスハート、そしてそれを操るのは、同じく宙に浮き、きらびやかなドレス姿へ変身したしきみであった。
「悪い子はプリンセスハートでどんどん薙ぎ払っちゃいますよ!」
「ゆ、勇者が来たのですか……っ!?」
 悪い子退治宣言にアルラウネ達が戦慄する。その隙にプリンセスハートはどんどんアルラウネ達を薙ぎ払ってゆく。
「飛んでいては攻撃も難しいですね、あっちを追いましょう」
「では私たちはお部屋を……」
 宙に浮くしきみを狙うのは困難と判断したか、アルラウネ達はミアへと標的を絞り始めた。ミアを追わない一部は、籠城用に蔦を伸ばし始める。
「籠城はさせません!」
 行動の変化に、しきみはいち早く反応した。手にしたのは蒲(ガマ)の穂の形をした花の爆弾だ。
「お花の悪魔に花を模した爆弾を投げ込むのはちょっとアレですけど……」
 呟きつつも、しきみは意を決してそれを投げつけた。
「同じお花のよしみで! 爆発してください!」
「ひぇっ?」
 どぉおおんっ! とマンション全体を震えさせるような激しい爆発が巻き起こる。
「命までは取りませんから!」
 築き上げられた蔦の城を焼き払い、爆音鳴り響くその中心で、しきみはそう叫ぶのだった。

 ずずん、と地面が揺れた。
「派手にやってる、ね」
 ミアは背後で繰り広げられる戦いを身体で感じつつ、追ってくるアルラウネ達をチラリと見返した。
 やはり狭い通路とあっては追ってくる数も限られる。その分はしきみがきっと成敗してくれているに違いない。
「逃がさないですよ。はとこのルーちゃん一家、出番です」
 アルラウネ達はさらに家族を呼び出した。当然彼らも家賃未納者である。
「増えたなら、好都合」
 ぽつりと呟くミアの眼前に、目標地点が迫る。それは、タイル床地帯であった。
「其は雷……遮り、迸れ」
 ばちん、と床が跳ね上がる。床のタイルは、姿はそのままに機能を雷の盾へと変えていた。それをミアはひょいと飛び越え、アルラウネへと振り返る。
「あなたたちとはあんまり戦いたくないけど、邪魔をするなら、仕方ない。ん、ちょっと痛い目に遭ってもらう、よ」
「ふふふ、私たちの作った罠に、私たちがかかるハズ……」
 余裕たっぷりでアルラウネがタイルを踏み抜いた。
「ふぎゃ!?」
 アルラウネに電撃が走る!
「どうしました兄さん?」
 その様子に、後ろのアルラウネが駆け寄る。だが。
「そんなに急いだらぶつかって、みんな感電しちゃう、よ?」
「ほぎゃっ!!」
 感電したアルラウネを触ったアルラウネが感電して、さらに後続のアルラウネ達までもを巻き込んでバチバチと激しい電撃が走ってゆく。
「びびびびびび、れれれれれれっ」
 今度は数が増えたことが災いしたようだ。こうしてアルラウネ達は一家全員、仲良く感電してしまうのであった。

「はい、確かに受け取りました」
 しきみは、手にしたD袋の中身を確認しながら微笑んだ。痺れたり黒焦げになってまともに動けなくなったアルラウネ達は、悪い事をしたりされたりした満足感に浸りながら滞納分を支払ってくれていた。彼らは根は良い子なのである程度悪いことが出来たり悪い事をされたら、あとは快く応じてくれるのだ。
「これからは滞納してはいけませんよ?」
 そう窘めるしきみに、アルラウネは頷いた。まぁでも、またしばらくしたら滞納を始めそうではあるのだが……。
 そんな中、「あ、」とミアが思い出したように言う。
「そうだ。あと、あの床の修繕費、必要、だよね」
 ミアが手を出し、アルラウネ達は顔を見合わせた。あれはミアが壊したものだ、という顔をしながら。

「んー、これは悪い事をしちゃった、かも」
 封筒に入ったDをぺらぺらと数えながら、ミアは棒読み気味に言う。
「でも、大家さんは喜ぶでしょうね」
 苦笑気味にしきみが言う。しかしまだまだ取り立ては終わらない。アルラウネ一家はなにしろ数が多い。大叔父さん、大叔母さんなどなど、まだまだ親戚は多いのだ。
 猟兵達は次なる取り立てへと歩みを進めるのであった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵