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デストロイマンションを攻略せよ!

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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「グワーッハッハッハッハッハ!! 弱い!!」

 ドッカーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!
 大砲でも直撃したかのような轟音が起こり、マンションの一角が瓦礫の山に変わる。
 ここは悪魔が暮らす魔界の総合住宅「マンションダンジョン」。現在、家賃を滞納する悪魔の居住者と、家賃を取り立てる悪魔ギャングによる、熾烈なバトルが行われていた。

「わあ、デストロイキングさん、凄いです」
「パンチ一発で取り立て屋の方が吹っ飛んじゃいました」
「ついでにお部屋も吹っ飛んじゃいました」
「あそこ、私の住んでたお部屋なんですよ」

 滞納者グループの戦闘に立って、ひときわ派手に暴れているのは、青い肌をした巨漢の悪魔だった。豪快な笑い声をマンション中に木霊させながら、押し寄せる悪魔ギャングを木の葉のようになぎ払う。その余波で建物が破壊されてもまったくお構いなしだ。

「すごく悪いですね」
「とっても悪いです」
「憧れちゃいます」

 それを眺める悪魔達は、自分の住んでいる所が壊されているというのに、惚れ惚れとした様子で目を輝かせている。ついでに撃退された取り立て屋グループまで清々しい顔だ。
 なにしろここは魔界。日々真面目にコツコツ悪いことをしている悪魔にとって、堂々と躊躇なく悪事を行える者は尊敬と憧れの対象、大いにリスペクトを受ける存在なのだ。

「グワッハッハッハ! このマンションは我、デストロイキングが頂いたぞ!」
「「「きゃー、デストロイキング様すてきー」」」

 ――問題は、それが本当に魔界を滅ぼしかねない悪党、オブリビオンだという事だが。
 何も知らないマンションの住人達は、新たにやって来たリーダーに率いられるままに、今日もせっせと家賃を滞納するのであった。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「デビルキングワールドの大都会にある高層マンションの一棟をオブリビオンが支配し、居住者を統率して家賃を滞納しています」
 ――なんだかよく分からない事件だと思うかもしれないので、少し説明させてほしい。
 悪魔を自称する善良な種族が暮らす魔界・デビルキングワールド。この世界ではあまりに善良過ぎる悪魔が絶滅してしまわないよう、あえて悪事を推奨する「デビルキング法」が制定されている。真面目な悪魔達は日々がんばって悪事に励んでいるのだが、それに乗じて本物の悪党――オブリビオンが邪悪な陰謀を張り巡らせているのだ。

「件のマンションに住んでいる悪魔達は、何十年にも渡って『家賃を滞納する』という悪事を続けています。大家さんは悪魔ギャングの『取り立て屋』に依頼して、定期的に家賃を取り立てているので、実際のところはちゃんと家賃は支払われていたのですが」
 滞納する側と取り立てる側の、ある種出来レースのような関係のバランスが、新たに入居したオブリビオンによって壊れてしまった。このオブリビオンは強大な悪のカリスマ性で滞納者達を統率し、取り立てにやって来た悪魔をことごとく撃退しているのだ。
「結果、このマンションにおける取り立て率は激減。事実上マンションを支配下に置いたオブリビオンはここを要塞化して自らの拠点にしようとしています」
 元々このマンションは長年に渡る増築によって非常に入り組んだ構造となっており、そこに滞納者達がトラップを山のように仕掛けたことで、完全なダンジョンと化している。もはや一般悪魔の取り立て屋にはどうにもならない状況だ。

「そこで皆様には悪魔にかわって『取り立て屋』となり、マンションに乗り込んで滞納者から家賃を取り立てつつ、オブリビオンを退治して欲しいのです」
 悪い奴はカッコいい、という道徳観を持つデビルキングワールドの悪魔は、より悪い奴に憧れる傾向が強い。現在滞納者達がオブリビオンに従っているのもそのせいで、逆に言えば猟兵がもっと「ワル」なところを見せつければ彼らはあっさり戻ってくるだろう。

「マンションの床には色とりどりのカラフルなタイル床が敷き詰められていて、これを踏むと色ごとに様々なトラップが作動する仕掛けになっているようです。滞納者達の元にたどり着くには、まずはこの仕掛けを突破する必要があります」
 赤いタイルなら炎が吹き出したり、青いタイルなら水浸しになったり、金色のタイルなら金ダライが降ってきたり――という具合に、色ごとにどんなトラップが作動するかを考えるが攻略のカギだろう。何なら壊しても飛び越えてもそれはそれで「ワル」だろうが。
「そして滞納者を発見したとしても、すんなりと家賃を支払ってはくれないでしょう。彼らは自分の住んでいるマンションの構造をよく把握していますし、そのうえ悪魔は全員が猟兵に匹敵する強大なユーベルコードの使い手で、肉体的にもとても頑丈です」
 真面目に家賃を滞納する悪魔から強引に家賃を『取り立てる』。それが今回猟兵達が働くべき「悪事」である。要するに戦って懲らしめろということだが、彼らは根が善良なので、別に命まで奪う必要はない。倒せば素直に家賃を支払って退去していくだろう。

「無事に悪魔から家賃を取り立てることができれば、あとはマンションを牛耳るオブリビオンを倒すだけです」
 今回の事件を引き起こしたオブリビオンの名は「デストロイキング」、かつてデビルキングワールドに覇を唱えんとした魔王一族の一人だ。元は豪快な中に優しさを併せ持つ魔王だったが、オブリビオンとなった今、名前の通り破壊だけを求める悪漢と化している。
「圧倒的な暴力で『取り立て屋』を撃退するデストロイキングの姿は、純粋無垢な悪魔達から見ればさぞかし魅力的な『ワル』に見えたのでしょう。なら、ここで猟兵達がデストロイキングを暴力で上回れば、彼らの目を覚まさせることもできます」
 元魔王と言うだけあってデストロイキングの実力は悪魔の中でも群を抜いているが、彼自身は入居してきたばかりでマンションの構造には詳しくないのが弱みになるだろう。悪魔も惚れ惚れするようなダーティファイトで、オブリビオンの野望を打ち破るのだ。

「発見されたばかりの世界での依頼、勝手の違うこともあるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。善良な悪魔の皆さんを救うためにも」
 リミティアはそう言って手のひらにグリモアを浮かべ、デビルキングワールドへの道を開く。悪事大好き(でも根はいい子ばかり)な悪魔が暮らす、魔界の冒険が幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 年の瀬にやって来た新世界。今回の依頼はデビルキングワールドで家賃滞納を働く悪魔の元締め、マンションダンジョンのボスとなったオブリビオンを撃破するのが目的です。
 すごく大雑把に言えば、「ワルぶっている善良な悪魔を救うため、適度に自分達もワルぶったりしつつ、本当に悪い奴をやっつける」シナリオです。

 一章は悪魔達の暮らすマンションを攻略します。
 何度も増改築を繰り返されたことで内部は迷宮のように入り組んでおり(九龍城砦のようなイメージです)住民の仕掛けたトラップが大量にあります。
 床に敷かれたタイルを踏むとトラップが作動するので、避けて進むか、あえて踏み潰すか、攻略の方法は各自にお任せします。

 二章はマンションにいる悪魔との集団戦です。
 彼らはオブリビオンではない普通の一般悪魔ですが、全員が猟兵に匹敵するユーベルコード使いです。根は善良ないい子達ですが「デビルキング法」に基いて、家賃の滞納を続けるためにがんばって戦います。
 悪魔は頑丈なのでちょっと派手に痛めつけても死にはしませんし、恨んだりもしません。倒せば素直に家賃を支払ってくれます。

 三章はオブリビオン『デストロイキング』とのボス戦です。
 このマンションに住んでいる悪魔の中で、彼だけが破壊だけを求める本物の悪漢です。このままでは善良な悪魔の皆さんに悪影響を与えかねないので、さっさと退治してください。
 暴力の魔王である彼に戦いで勝利すれば、悪魔達もきっと猟兵のことを尊敬してくれることでしょう。オブリビオン以上のワルとして――。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『悪魔のトラップタイル』

POW   :    罠を踏むことは承知の上で、最短距離を最速で進む

SPD   :    危険な罠のタイルを破壊し、安全地帯を確保する

WIZ   :    自分や味方は有利な効果のタイルを、敵は不利な効果のタイルを踏むよう工夫する

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カビパン・カピパン
「ワルといえば、この私は外せないだろ?」
『いや…相棒は、確かにこれ以上無い程に(ギャグの)ワルとして立ってまんねんけど』
「けども無い。過去から現在に至るまで…幾百千のワルが世に出て幾百星霜!だが、この私を越えるワルなど存在しない!」
『そ、そうでっか…』
「そうだ!!」

そして、持ち前の幸運で何事もなかったかのようにマンションを走破してしまった。悪のカリスマの頂点に立つものとして、これでいいのだろうか?冷たい風が、カビパンの頬を一発殴った。

いや、いくない。

己を恥じて反省した彼女はくるりと踵を返し、引き返し始めた。
様々な罠にワザと面白く引っ掛かったカビパンは最後に爆発オチでゴール地点にたどり着いた。



「ワルといえば、この私は外せないだろ?」
 キリッ、とした顔でさも当然のように、そう言い放ったのはカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。悪魔が暮らすマンションダンジョンを前にして、やけに自信たっぷりな彼女に、相方の「ラーメン大好きトリッピー」がツッコミを入れる。
『いや……相棒は、確かにこれ以上無い程に(ギャグの)ワルとして立ってまんねんけど』
「けども無い。過去から現在に至るまで……幾百千のワルが世に出て幾百星霜! だが、この私を越えるワルなど存在しない!」
『そ、そうでっか……』
「そうだ!!」
 古今において自分こそ史上最強のワルだと豪語して憚らない不遜っぷり。これにはトリッピーも返す言葉がない。ワルぶっているだけで根は善良な悪魔たちが、果たして彼女に太刀打ちできるのか――トラップ満載複雑怪奇なマンションという迷宮の攻略が始まる。

「……何も来ないな」
『せやね』
 ――マンションダンジョン突入から数十分後。カビパンとトリッピーはぽつりと呟く。
 ここまで彼女が引っ掛かったトラップはゼロ。正確にはトラップ自体が見当たらない。
 生まれながらにして女神の加護を受けた彼女は、普通では考えられないほど運気と巡り合わせが圧倒的に良い。ただ普通にマンションの中を走っていただけなのに、本人も意図しないままトラップを回避し、分かれ道のたびに正解のルートを引き当て続けている。
『この調子ならゴールまですぐに着けそうやな』
「…………」
 驚異の強運のみを武器としてマンション走破一番乗りを果たそうとしているカビパン。
 しかし当初の自信に違わない結果にも関わらず、本人はあまり浮かない顔をしていた。

「……いいのか?」
『おん?』
「悪のカリスマの頂点に立つものとして、これでいいのだろうか?」
 何いうてまんねんと使い魔トリッピーが首を傾げるなか、ひゅうと吹いた冷たい風が、カビパンの頬を一発殴った。それは彼女の中の眠れる芸人魂を目覚めさせる天啓だった。
「いや、いくない」
 このままヤマもオチもなく迷宮をクリアしてしまったら自分の撮れ高はゼロ。もしこれが番組なら出番ごとカットされるような失態だ。【ハリセンで叩かずにはいられない女】がそんな事ではダメだ。ただ攻略するだけでなく本物のワルを悪魔に見せつけなければ。

「私としたことが、とんだミスを犯すところだったわ」
 己を恥じて反省したカビパンはくるりと踵を返し、それまで通ってきた道を引き返し始めた。そしてもう一度最初から、今度は仕掛けられた罠にワザと引っ掛かりながら進む。
 様々な色に塗り分けられたタイルを踏むたびカチッと音が鳴り、火攻め、水攻め、様々なトラップが襲う。彼女はそれを全力で受け止め、面白可笑しいリアクションを決める。

「あっちぃ~~!?」
「がぼがぼがぼがぼ」
「ぎゃー! シビれるー!」
「あいったぁーー!!」

 悪魔基準で用意されたトラップには、割とガチで命が危ないのも混じっているのだが。
 自分の真価を思い出したカビパンはユーベルコードの力で環境をギャグ時空に変化させ、ギャグ補正によって実際のダメージを軽減している。
「ぐわーーーーっ!!」
 そして最後を締めくくるのはド定番の爆発オチ。ドクロマークのタイルを踏んだ瞬間、足元で起こる大爆発に吹っ飛ばされて、彼女は見事ゴール地点に辿り着くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

新しい世界が発見されたと聞いたが…随分とユニークな世界だな
まぁ郷に入っては郷に従えとも言うし、存分に「ワル」く振舞おう

UCを発動してトラップ床を踏み壊しつつ移動
このパワードスーツなら炎や水に金ダライぐらいならものともしないだろう
炎に巻かれながら力押しで進めばこの姿も相まって悪鬼のように映る事だろう

フン、落とし穴か…
そんな小手先のトラップで私の進撃を防げるとは思わない事だ

落とし穴があったら底に付く前に背部ブースターを噴射させて復帰
衝撃で多少は周囲に損害が出るかもしれんが…まぁこの方が受けは良いだろう

さて、楽しい楽しい取り立ての始まりだ!
覚悟するがいい滞納者共よ!
…こんな感じかな?



「新しい世界が発見されたと聞いたが……随分とユニークな世界だな」
 善良な悪魔が悪事に励むデビルキングワールド。種族の絶滅を避けるために制定された「デビルキング法」に基づき、今日も真面目に家賃を滞納する悪魔が暮らすマンションの前で、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は若干の困惑を隠せずにいた。
「まぁ郷に入っては郷に従えとも言うし、存分に『ワル』く振舞おう」
 価値観の違いは呑み込むとして、ここではワルい奴が正しく尊敬の対象になるのなら、自分達もそう振る舞うのが得策だろう。取り立て屋を撃退するための罠が満載された物騒なマンションに、彼女はワルらしく堂々とした態度で足を踏み入れる。

「その全てを蹂躙してやろう……Viens! Conquérant!」
 生身の人間が歩くには危険すぎるマンションを攻略する為に、キリカはパワードスーツ【コンケラント】を召喚・装着。漆黒の装甲に身を包み、重量で床を軋ませながら進む。
(このパワードスーツなら炎や水に金ダライぐらいならものともしないだろう)
 どのタイルを踏めばどんな罠が起動するのか、などといった小賢しいことは考えない。
 全て踏み壊して突破する。様々な環境での戦闘を想定して開発された「コンケラント」の装甲強度は高く、悪魔のイタズラ程度では傷ひとつ付けることはできない。

「ひゃあ……なんですかあの人、すごい……」
 物陰から様子を窺っていたマンションの住人たちは、吹き上がる炎に巻かれながらも、まるでそよ風のように平然としている新たな取り立て屋を見て、畏怖と尊敬と念を抱く。
 あちこちから熱い視線を受け、キリカは状況が自分の狙い通りに進んでいると感じた。
(力押しで進めばこの姿も相まって悪鬼のように映る事だろう)
 重厚な機械装甲と重武装に覆われた今の彼女は、まさに鋼の悪鬼と呼ぶに相応しい姿。どんなトラップも正面から攻略していく姿勢と合わさり、相当の威圧感が生まれている。
 それで悪魔達の敬意を買えるのなら上々。敢えて実力を誇示するようにキリカが迷宮の奥に足を踏み入れると――ふいに足元のタイルが抜け、突然の浮遊感が彼女を襲う。

「フン、落とし穴か……そんな小手先のトラップで私の進撃を防げるとは思わない事だ」
 これまでとは趣向の異なるトラップの不意打ちに、しかしキリカは慌てふためかない。
 底に付く前に背部に搭載したブースターを噴射。本来は飛行用ではなく地上や宇宙での高速戦闘用だが、重装甲のスーツごと着用者を一時的に浮き上がらせる程の出力はある。
「だいじょうぶですかー……って、うわあ!?」
 落とし穴の淵から心配そうに覗き込んでいた悪魔が、物凄い速度で浮上してきたキリカにビックリしてひっくり返る。屋内で噴かしたジェットの衝撃は、老朽化が進んだ部分からマンションの構造を一部損壊させてしまうが――まあ、この方が受けは良いだろう。

「さて、楽しい楽しい取り立ての始まりだ! 覚悟するがいい滞納者共よ!」
 ズシン、と音を立てて元の位置に復帰したキリカは、魔王のごとく高らかに宣言する。
 どんなトラップも自分の道を阻む事はできないと、身を以て証明した直後だからこそ、その宣言は悪魔たちの心に響く。
(……こんな感じかな?)
 パワードスーツのセンサーで周囲の反応を窺ってみると、居合わせた者はみな震え上がりながらも、キラキラと目を輝かせている。悪魔のリスペクトを大いに勝ち取ったキリカは、そのまま威風堂々とした態度を崩さず、マンションダンジョンを攻略するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

…あー…
なぁんかこのトンチキさに覚えがあるような気がすると思ったら、アレだわ。
これキマフュー世界と同じノリだわぁ…
ちょぉっと頭痛くなってきたわねぇ…

…気を取り直して。タイルを踏んだらトラップが発動するんだっけ?まぁ、わざわざハマりに行く必要もないわよねぇ。
ミッドナイトレースに○騎乗、●轢殺・適応を起動してテイクオフ。高耐久モードで○空中浮遊しながら進みましょ。

やぁねぇ、人が仕掛けたものを無駄にするとか十分「ワル」だし…よく見てちょうだいな。
…建物の中でバイクに乗るとか、すごぉく「ワル」だと思わない?
(…この程度で○言いくるめられるとか、ホントに善良なのねぇ…)



「……あー……なぁんかこのトンチキさに覚えがあるような気がすると思ったら、アレだわ。これキマフュー世界と同じノリだわぁ……」
 新世界の概要を耳にしたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が連想したのは、欲望とパッションに溢れる未来世界・キマイラフューチャーだった。
 世界観としては寧ろ対照的なのだが、全体的に漂う住人のノリの軽さ(本人は大真面目なのだろうが)とか、深刻さがあまり感じられない雰囲気などが、とても良く似ている。
「ちょぉっと頭痛くなってきたわねぇ……」
 あの世界と同様、ここでも住人のノリに振り回されることになるのだろうかと思うと、少しばかり頭を抱えたくなる。が、それでもオブリビオンの陰謀を放ってはおけない。

「……気を取り直して。タイルを踏んだらトラップが発動するんだっけ?」
 下降したテンションを取り戻しつつ、悪魔のマンションに踏み込んだティオレンシアの前には色とりどりのタイルが敷き詰められた床がある。正攻法としては、どの色のタイルでどの罠が作動するのか、予想や確認を行いつつ攻略するのだろうが――。
「まぁ、わざわざハマりに行く必要もないわよねぇ」
 彼女は愛用のバイク型UFO「ミッドナイトレース」に跨り、【轢殺・適応】を発動してテイクオフ。床から1メートル程度の高度を浮遊し、タイルを踏まずに駆け抜けていく。
 もしも床以外にトラップが仕掛けられていた場合に備えて、機体は高耐久特化モードに変形している。ちょっとやそっとの妨害程度なら、このバイクはびくともしないだろう。

「そ、そんなのアリですかー!?」
 様子を見ていた悪魔達は、トラップの前提を覆す攻略法にガーンとショックを受ける。まあ、わざわざ仕掛けたのだからどうせなら引っ掛かって欲しいという気持ちは分かる。
 しかしティオレンシアは素知らぬ様子で、口元に淡く微笑を浮かべながら彼らに言う。
「やぁねぇ、人が仕掛けたものを無駄にするとか十分『ワル』だし……よく見てちょうだいな」
 ふわりふわりとトラップを飛び越えつつ、現在の自分の様子を示す。ここはマンション内の通路、当たり前過ぎるが徒歩で移動すべき場所で、車両はもちろん自転車すら乗り込み禁止のはずである。

「……建物の中でバイクに乗るとか、すごぉく『ワル』だと思わない?」
「たっ、確かに……! めちゃくちゃワルですね!」
 にっこり微笑みながらそう言われて、まるで雷に打たれたような衝撃を受ける悪魔達。
 ワルぶってはいても根が善良な彼らには、どうやら思い付きもしない事だったらしい。屋内で堂々とバイクを乗り回すティオレンシアの姿には、たちまち尊敬の視線が集まる。
(……この程度で言いくるめられるとか、ホントに善良なのねぇ……)
 こんな様子で大丈夫なのかとふと心配になるが――事実、大丈夫ではないのだろう。だから悪魔は過去に絶滅寸前にまで陥り、今も騙されてオブリビオンの手先になっている。
 トンチキではあるが、どうにも憎めない「良い子すぎる」彼らを守るために、ティオレンシアは滞納者とオブリビオンの元に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榛・琴莉
家賃の滞納…はぁーーーーー(クソデカため息)
いえ、彼らは至って真面目に悪事を働いているわけで…絶滅を回避する為にやっているわけで…
(普段の仕事と比べると)…………平和。

ゲームみたいな床ですね。
どこになんのトラップがあるやら…
何にしても、踏む前に壊してしまえば良い話ですが。
Harold、仕事です。分散して。
近場のタイルから虱潰しにしますよ。
何が発動したところで貴方達なら大体は元に戻りますし、問題ないでしょう。
じゃんじゃん行って。

あーあー、見事に飛び散って。
それでも元通りなんですから、便利なもんですねぇ。
…いつも以上にぐちゃぐちゃですけど。
足、多過ぎでは?



「家賃の滞納……はぁーーーーー」
 これまで自分が関わってきた中でも、かつてない規模でちっさい「悪事」を聞かされた榛・琴莉(烏合の衆・f01205)の口からは、深く大きなため息が漏れた。仮にも悪魔を名乗る種族が、日々せっせと家賃滞納に励むとはどういうスケールの小ささなのか。
「いえ、彼らは至って真面目に悪事を働いているわけで……絶滅を回避する為にやっているわけで……」
 事情は分かる。それがこの社会を維持するうえで必要なのだろうという事も。しかし、普段の仕事――例えば闇夜に覆われた世界で吸血鬼を狩るとか、現代社会の裏に潜む邪神を討つとか、そういうのと比べてしまうと。
「…………平和」
 そういう感想が出てくるのも、致し方のないことだろう。

 ――閑話休題。気を取り直して、ここからはマンションダンジョン攻略の時間である。
「ゲームみたいな床ですね。どこになんのトラップがあるやら……」
 行く手を阻むのはカラフルなタイルが敷き詰められたトラップ地帯。色からおおまかな予想は立てられても、実際に何が飛び出すかは踏んでみないと分からない。頑丈な悪魔の基準で仕掛けられたそれに、人間が引っ掛かって大丈夫なのかという心配もある――が。
「何にしても、踏む前に壊してしまえば良い話ですが。Harold、仕事です。分散して」
 悪魔のイタズラに、こちらまで真面目に付き合う必要はない。琴莉の呼びかけに応じてコートの中から這い出してきたのは、いびつな鳥のような形をした小型のUDC群。不定形な水銀状の身体を持ち、命令のままに諸々の役目を果たす、使い魔のようなものだ。

「近場のタイルから虱潰しにしますよ」
 しっかりとガスマスクを被った琴莉の指示通り、「Harold」の群れはほうぼうに散って罠のタイルを踏む。その途端、足元から火柱が吹き出し、壁から水しぶきが浴びせられ、天井から金ダライの雨が降り――何ともはやカオスなトラップの数々が襲い掛かる。
「思ったより威力はありそうですね」
 巻き込まれないようすっと後ろに下がりつつ、琴莉はトラップが収めるのを待つ。罠を踏まされたほうはもちろん無事では済まないが――飛び散ったり、潰されたり、流されたりしたHarold達はスライムのようにうぞうぞと床を這い、また元通りに集まっていく。

「何が発動したところで貴方達なら大体は元に戻りますし、問題ないでしょう。じゃんじゃん行って」
 不定形ゆえの耐久性を良いことに、Haroldをぞんざいに扱いつつトラップを踏み潰していく琴莉。物陰からその様子を見ていたマンションの住人達は、彼女に熱い視線を送る。
「部下のことをまるで捨て駒みたいに……!」
「なんてワルなんだ……!」
 根っこが善良かつワルに憧れる悪魔的には、今の琴莉の行動はだいぶワル度が高かったらしい。迷宮を攻略する傍ら、住民から大いに尊敬されているのを彼女はまだ知らない。

「あーあー、見事に飛び散って。それでも元通りなんですから、便利なもんですねぇ」
 目についたところのタイルを全て潰したところで、琴莉は戻ってきたHarold達を見る。けっこう酷い目にあってた気もするが、彼らは文句も言わず不満を訴える様子もなく、散らばった自分達をかき集めて、また鳥のような姿を取る。どうもこの形状が好きらしい。
「……いつも以上にぐちゃぐちゃですけど。足、多過ぎでは?」
 それでもまだ多少のダメージはあったのか。一度原型を留めぬほど破壊された彼らは、足を引っ込めたり嘴を伸ばしたり目を生やしたり、どうにか鳥っぽく成ろうと試行錯誤。
 ああでもないこうでもないと、余計にぐちゃぐちゃになる彼らに「置いてきますよ」と声をかけつつ、琴莉はトラップの消えた通路をすたすたと歩いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
…善良過ぎて絶滅しかけたって何があったのかしら?

とりあえず、魔力弾【高速詠唱】で罠をまとめて爆破して進みつつ、【虜の軍勢】で罠うさぎ(3羽)、万能派遣ヴィラン隊(多数)を召喚。
罠うさぎとヴィラン隊は道中の罠察知と共に【えげつない多段トラップ】や【あらゆるニーズにお答えします】で逆に罠を乗っ取って大幅改良・新規設置を指示するわ。

言い方は悪いけど、所詮は良い子達が作った素人罠。
罠の専門家である罠うさぎと元悪人なヴィラン隊により、「悪辣な罠」の格の違いを見せてあげるわ♪

後、ヴィラン隊にはついでに、わたしがより悪っぽく、威厳がある様に住民達に見せる為、「絶対強者」的な悪役演出をする様指示するわ



「……善良過ぎて絶滅しかけたって何があったのかしら?」
 恐らく後にも先にも聞くことが無さそうな種の絶滅の危機に、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は首を傾げる。悪を奨励する「デビルキング法」を制定する必要があった程、突き抜けた善政を持つ種族――それが滅びかけた理由とは?
 様々な原因が考えられるが、少なくとも彼らはまだ絶滅の危機を脱したとは言い難い。悪を尊ぶがゆえにオブリビオンに騙され、世界の破滅に加担してしまっているのだから。

「とりあえず、まずはこの罠を何とかしないといけないわね」
 色とりどりのトラップタイルが敷かれたマンションダンジョンで、フレミアはおもむろに指先から魔力弾を放つ。離れた床に命中したそれは着弾と同時に爆発を起こし、付近にあった罠を纏めて吹き飛ばした。
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
 単純かつ効率的な方法でトラップを処理しつつ、彼女が喚び出すのは【虜の軍勢】より「ダンジョン罠うさぎ」と「万能派遣ヴィラン隊」の集団。トラップだらけのダンジョンの攻略なら、それにまつわる技術や知識を持った眷属が役に立つだろうとの判断だった。

「言い方は悪いけど、所詮は良い子達が作った素人罠。罠の専門家による『悪辣な罠』の格の違いを見せてあげるわ♪」
 フレミアは高邁かつ上品な笑みを浮かべながら眷属達に指示を出し、道中の罠を察知すると共に、逆に悪魔達の罠を乗っ取って大幅に改良、あるいは新規設置するよう命じる。
 罠うさぎ達とヴィラン隊は主人の要望に応えるために、さっそく各々の技能を駆使してマンションダンジョンの改修に取り掛かった。

「一つ仕掛けて終わりじゃなくて、他の罠とも連動させなきゃ」
 異世界の大迷宮アルダワでトラップ作りに専心してきた罠うさぎは、その経験を活かして【えげつない多段トラップ】を仕掛けていく。まず動きを拘束してから本命の罠に嵌めるその手法には、善良な悪魔には思いつかないであろう性格の悪さがにじみ出ていた。
「色ですぐに何のトラップか分かるようでは問題がありますね」
 そしてヴィラン隊はあらゆるニーズに応える為に身につけた数々の技能で悪魔の罠を看破すると、タイルの色をランダムに塗り替えていく。同じ色でも同じ罠が作動するとは限らなくなれば、目印だったはずの"色"は侵入者を疑心暗鬼に陥らせる要素に一変する。
「あ、あの人たち、私たちのトラップを勝手に!」
「しかもめちゃくちゃヤバい罠ばかり仕掛けてる!」
 自分達の想像をはるかに超える悪辣な罠が仕上がっていく様に、様子見していた悪魔達はガタガタと震え上がりつつも目が離せない。嫌な言い方にはなるが、罠を作るうえで重要なのは"悪意"である。それが不足しがちな悪魔達にとって、本職の仕掛ける罠は大いにリスペクトの対象だった。

「フレミア様。進路上の罠の撤去、並びに改良と再設置が完了致しました」
「ご苦労様。では行くわよ」
 眷属達が罠どころか小石ひとつ無いように整えた道を、フレミアは悠然とした足取りで歩いていく。その口元に浮かべた冷たい微笑と高慢な表情、そして後から付き従うメイドのヴィラン隊は彼女の威厳をより一層高め、絶対強者としての悪役感を演出していた。
「か……カッコいい……!」
 多くの配下を引き連れたカリスマ性あふれる姿に、ワルいものに弱い悪魔は惚れ惚れ。マンションのあちこちから熱い視線を感じつつ、吸血姫は滞納者の元に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
「見た目怖い!」
「不気味!」
「でも良い人!」

見た目や住人のイメージと住人の気質とかが見事に合って無いね…。

「ポイ捨てしてた!」
「でも拾ってた!」
「でもその人も捨ててた!」
「「「結局どっち?」」」

良い子なのか悪い子なのか…。

探知術式【高速詠唱、呪詛、情報収集】で罠を探知しつつ前進…。
避けるものは避けつつ、避けるのが面倒な罠や危険なものは【unlimited】でまとめて廊下中を面制圧して罠を破壊し、更に【呪詛】で罠を侵食…。

侵食した罠は後で使えるかも…。
そういえば、有利な効果のタイルもあったね…。

「キノコ!」
「無敵になれるスター!」
「亀の甲羅!」

……それは見なかった事にしようかな



「見た目怖い!」
「不気味!」
「でも良い人!」
 マンションのあちこちから顔を覗かせる悪魔達を見て、メイド服を着た人形達が叫ぶ。
 人間とは異なる外見にユーベルコードの力。種として恵まれた特性を持っていながら、彼ら悪魔からはまったくと言っていいほど悪意を感じられない。
「見た目や住人のイメージと住人の気質とかが見事に合って無いね……」
 メイド達を引き連れる雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)も意見は同じだった。呪力による探知術式を発動して仕掛けられたトラップを探しながら、彼女達は悪魔の暮らすマンションを進み、その暮らしぶりを目の当たりにすることになる。

「ポイ捨てしてた!」
「でも拾ってた!」
「でもその人も捨ててた!」
 ゴミを捨てたり拾ったり。ポイ捨てという小さな悪事ひとつ取っても、悪魔達の人柄はにじみ出る。飲み終えたジュースの空き缶を手に、きちんと近くのゴミ箱に入れるかその場に投げ捨てるか、ひどく真剣に悩んでいる様子の悪魔をメイド人形達は見かけた。
「「「結局どっち?」」」
 根が善良だからこそ、一生懸命に悪事を為そうとする。「デビルキング法」という悪魔の道徳規範に基いた彼らの行動は、傍目に見ればとてもちぐはぐに映る。当人達があくまで大真面目なのも、余計に見る人を混乱させる一因だろう。

「良い子なのか悪い子なのか……」
 奇妙不可思議な悪魔の行動に困惑しつつも、璃奈は順調にマンションの攻略を進める。
 探知術式で発見したトラップタイルのうち、避けれそうなものは避け、それが面倒な場合や危険なものは【unlimited curse blades】で召喚した魔剣でまとめて薙ぎ払う。
「呪われし剣達……わたしに、力を……」
 廊下中を面制圧する数百本もの魔剣の豪雨は、悪魔達が頑張って仕掛けた罠を根こそぎ破壊し、さらに刃に込められた呪詛で侵食していく。さながら地獄にあるという剣山刀樹の如き光景に、様子見していた悪魔達は「なんてことを!」と目を見張った。
「私たちの作ったトラップがまるで役に立ってません」
「それにあの呪いの力、なんとなくワルな感じです!」
 どうも怒っているのではなく感心しているらしいが。ワルそうな奴を心からリスペクトする悪魔達の好感度の基準に、璃奈とメイド達は「よく分からない……」と首を傾げた。

「侵食した罠は後で使えるかも……そういえば、有利な効果のタイルもあったね……」
 閑話休題。滞納者やオブリビオンとの戦いを見据えて、璃奈は罠の破壊と掌握を進めていく。探知するまで分からなかったが、仕掛けられたタイルには有利になるものがある。
 踏むと回復したり、不思議と力が湧いてきたり――これもワルになりきれない悪魔の良心がなせる技だろうか。何にせよこれは使えるように残しておいて損は無いはずだ。
「キノコ!」
「無敵になれるスター!」
「亀の甲羅!」
「……それは見なかった事にしようかな」
 ――違う意味で危なそうなものに関してはスルーしつつ。魔剣の巫女とメイド達は残したトラップの位置や構成を把握しながら、マンションダンジョンの奥を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
悪っぽく【演技】して尊敬集めるっす!(正義の狸忍者)

「はーっはっは!飛べば罠など無効っす!でも住民どもが一生懸命設置した罠だから、あえて破壊っす!どうだ悪だろうっす!」

【罠使い】と【第六感】で罠を捜索
炎の罠や紫タイルの毒の罠、黒タイルの闇の罠等危険度の高いのからユベコも使い慎重に解体or破壊&撤去
青タイルの水や氷の罠はこの寒いのに風邪ひいちゃうっす!とかぼやきながら解除

「ごみは不法投棄っす!そこの奴、部屋に入れなくて迷惑っしょ!泣きながら分別して片付けるがいいっす!」と一般悪魔に依頼

ついでにマンション地図を作って壁に張り、仲間に道を示すほか危険個所も伝達
「勝手にあちこち張り紙しちゃうっす!」



「はーっはっは! 飛べば罠など無効っす!」
 いかにも悪人っぽい高笑いを上げながら、悪魔のマンションに現れたのは家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。日頃は正義の狸忍者として活動している彼も、この魔界では悪魔の尊敬を集めるために、あえて悪っぽい演技で振る舞っていた。だいぶ頑張っている。
「でも住民どもが一生懸命設置した罠だから、あえて破壊っす! どうだ悪だろうっす!」
「な、なんてワルい人だ……尊敬する!」
 かなり言い慣れていない感のある悪役ゼリフだが、善良な悪魔を戦慄させるには十分だった。敬意と憧れの籠もった住人達の視線を浴びながら、彼はマンションの攻略に挑む。

「こんな罠、おいらにかかればイチコロっす!」
 衣更着は忍者として身につけた罠使いの技能や持ち前の第六感を駆使して、床に敷かれたトラップタイルを調べていく。赤タイルなら炎の罠、紫タイルなら毒の罠、黒タイルなら闇の罠といった具合に、頑丈な悪魔の基準で作られた罠には危険度が高いものも多い。
「打綿狸の本領発揮、この綿はこんな風にも使えるっす!」
 武器としても第三第四の手としても使える【綿ストール・本気モード】も駆使して慎重に解体作業を行う。仕掛けが作動しないようタイルを剥がし、罠本体を無力化――熟練の作業員のような巧みな手並みで、次々とトラップを破壊もしくは撤去していく。

「この寒いのに風邪ひいちゃうっす!」
 赤、紫、黒に続いて、氷水を浴びせられる青タイルの罠もぼやきながら解除。別に全部を壊さなくてもマンションは攻略できるが、衣更着は悪っぽさのアピールに余念が無い。
「ごみは不法投棄っす!」
 悪魔が頑張って作った罠をぶっ壊した後、残った残骸はそのへんにぽいっと捨て置く。
 ここはダンジョンだが、それ以前に多くの悪魔が住んでいる。それも承知で、わざと扉の前や階段の途中など邪魔になりそうなところに置いて、近くにいた悪魔を呼びつける。
「そこの奴、部屋に入れなくて迷惑っしょ! 泣きながら分別して片付けるがいいっす!」
「はっ、はい! ぴえーん!」
 命令(という体裁の依頼)を受けた一般悪魔は、律儀に泣き真似をしながらごみの撤去に励む。その横暴な振る舞いは多くの悪魔の目に留まり、さらなるリスペクトを受けた。

「自分で出したごみを片付けもせず、通りがかりの相手に無理やり押し付けるなんて!」
「まだまだっす! さらに勝手にあちこち張り紙しちゃうっす!」
「ああっ?! 別の場所にちゃんと掲示板があるのに!」
 演技を続ける内に衣更着もだんだん熟れてきたのか。ノリ良くぺたりと壁に紙を張る。
 それは探索の過程で彼が作成したマンションの地図であり、後からくる仲間に道を示すほか、迷いやすかったりトラップの多い危険箇所についての伝達も兼ねている。

「この調子で完全攻略してやるっすよ! はーっはっは!」
 悪役笑いを続けながらも、実際には堅実かつ順調にマンションを攻略していく衣更着。
 その演技をすっかり信じこんでいる純朴な悪魔達は「なんて恐ろしい人だ……!」と、キラキラ憧れの眼差しを向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ムシカ・ガンダルヴァ
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
善良な悪魔?よくわからないよ……
適度に悪ぶれば良いのだな?

UC【冥神の王国】で巨大鼠を召喚し、あらかじめどのタイルを踏めばどんな効果が起こるかを確認する
その後、有利な効果のタイルは自分で踏み、不利な効果のタイルは敵が踏んでしまうように巨大鼠で誘導する
不利な効果を受けた敵を、有利な効果を受けた状態で「呪詛」を掛ける事で戦闘不能状態に陥らせる
「ネズミ」「呪詛」ってワードからしてワルっぽいでしょ?
腹痛から重篤な悪重病まで何でもござれ。

事情があって支払えない市民から無理矢理徴収しようとする悪徳取立人ムーブが出来れば良さそう。
なお小市民根性としては滅茶苦茶心苦しいのだが!



「善良な悪魔? よくわからないよ……適度に悪ぶれば良いのだな?」
 悪を自称するくせに善良で、そのくせワルい奴こそカッコいいと信じて真面目に悪事を働く悪魔達に、ムシカ・ガンダルヴァ(世界の終焉に降臨せし第四の冥神(見習い)・f30907)は困惑していた。とりあえずこの世界ではワルい奴ほど尊敬される――なので猟兵もワルになりきったほうが住民の支持を得られやすい、という事だけは分かった。
「ならボク……こほん、我にも考えがある。我は鼠の冥神なるぞ。我に服従せよ!」
 彼女は疫病と死を司りし鼠の神。一声叫べば【冥神の王国】より配下の巨大鼠の群れが馳せ参じ、神の手足となって働く。その様相をこの世界の言葉で例えれば――「魔王」。

「征け、我が眷属よ!」
 ムシカの号令の下で巨大鼠はマンションを突き進み、敷き詰められたタイルトラップに引っかかる。爆発や洪水、電流や金ダライなど、悪魔達が頑張って仕掛けた数々の罠により、彼らは次々と力尽きていくが、引き換えに貴重な情報を主にもたらした。
「赤いタイルは爆発で、黄色のタイルは電流。桃色のタイルは強化……ふむふむ」
 どこに何のタイルがあり、どのタイルを踏めばどんな効果が出るのか、事細かに確認しては頭に叩き込む。それは神として尊大に振る舞ってはいても、小心者で慎重なネズミの性根によるものか。しかし初見のダンジョン攻略においてそれは有利な資質だった。

「部下を犠牲にして罠を突破するなんて……なんてワルい奴なんだ! サイン下さい!」
 ムシカが順調にマンションを進んでいると、何やらここの住人らしい悪魔が尊敬の眼差しでこっちを見ている。だいぶ奥まで来たし、あれも家賃を滞納している一人だろうか。
「我は鼠の冥神なるぞ。家賃を納付せよ!」
「えっ……ごめんなさい、それは。だって家賃払ったら悪事じゃなくなっちゃうし!」
 とりあえず普段通りの演技で家賃を要求してみると、相手はごめんなさいと何度も謝りながら襲い掛かってきた。悪事を奨励する「デビルキング法」に基いて、取り立て屋であるムシカを力づくで追い返すつもりらしい。何故ならそれがワルだから。

「愚かだな。少し痛い目を見ることになるぞ」
 内心ではビクつきながらも、ムシカは尊大な態度を崩さずに巨大鼠達に迎撃を命じた。
 この辺りに仕掛けられた罠はもう全て把握済みだ。自分は有利な効果が出るタイルの上に乗りつつ、不利な効果のタイルを敵が踏んでしまうよう、鼠達に誘導させる。
「わっ、危ない……うぎゃっ?!」
 巨大鼠の群れに追われて悪魔が踏んだのは黄色いタイル。足元からビリッと走る電流で敵が痺れた直後、強化のタイルを踏んで「冥神の錫杖」を掲げたムシカが呪詛を掛ける。

(「ネズミ」「呪詛」ってワードからしてワルっぽいでしょ?)
 疫病の神の手にかかれば、腹痛から重篤な悪重病まで何でもござれ。悪魔は頑丈なのでこのくらいで死にはしないだろうが――急病を発症した敵はばったりとその場に倒れた。
「さあ、家賃を支払うがよい」
「ご、ごめんなさい、実はお金ないんです……恵まれない人に全額寄付しちゃって……」
 戦闘不能になった相手に改めて詰め寄ると、悪魔は苦しそうに呻きながらそう答えた。
 何でも生活費すらも全て寄付してしまったらしく本当に一文無しらしい。それで生活ができるのも凄いが、底が抜けた善良っぷりである。

「汝の事情など知らぬ。とっとと支払うがいい」
「そっ、そんなぁ!」
 仕方がないのでムシカは事情があって支払えない市民から無理矢理徴収しようとする悪徳取立人ムーブをかます。小市民根性が根付いている彼女の本心としては滅茶苦茶心苦しいのだが、詰め寄られる悪魔のほうはなぜか妙に嬉しそうでもあったという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
連携・アドリブ歓迎。

ここの悪魔さん達って、こっそりと野良猫に餌をあげたり世話したりしてそうですね。
憎めないのですが、彼らの支持を得る為には悪い事をしなければならない…難しいです<汗>。

トラップのタイルについては、空中浮遊で浮かび、念動力で自分を動かし、更に結界術で自分の周囲に防御結界を展開しつつ進んで無効化。
悪魔さん達からのクレームには、「貴方達のルールに違うと、いつ言いましたか?私は私のやりたいようにやるだけです。」とワル風に論破します。
ついでに襲ってくる悪魔さんが出ない様、炎の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で、周囲を炎で包んで見せて強さをアピールします。
(…心が痛いと内心嘆きつつ)



「ここの悪魔さん達って、こっそりと野良猫に餌をあげたり世話したりしてそうですね」
 フィクションの中の不良のような悪役感を思い浮かべ、そう呟いたのは大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)。ああいった悪人になりきれないワルこそが魔界の悪魔の実情であり、でなければ「デビルキング法」などそもそも律儀に守ろうとしないだろう。
「憎めないのですが、彼らの支持を得る為には悪い事をしなければならない……難しいです」
 さてどうしたものかと汗をかきつつ苦笑いを浮かべて。自分も一生懸命ワルぶっているこの世界の悪魔を見習って、考えたワルのイメージをできる限り表現してみる事にする。

「ふっふっふっふ……」
 そういう訳でマンションダンジョンに突入した詩乃は、不敵(?)に笑いながらふわりと空中に浮かび、念動力で先に進む。地に足を付けなければタイルのトラップは作動しないだろう、その上さらに自身の周囲には術で防御結界を展開する念の入れようである。
「そ、それじゃあ折角のトラップが意味ないじゃないですかー!」
 頑張って作ったものを根本から無効化され、様子を見ていた悪魔からは抗議のクレームが飛ぶが、詩乃はそんなもの知った事じゃないと言わんばかりにワルい笑みで言い返す。
「貴方達のルールに違うと、いつ言いましたか? 私は私のやりたいようにやるだけです」
「…………!!」
 すごく身勝手でワル風な言い分に何も反論できず、驚愕――そして尊敬を示す悪魔達。
 堂々とワガママを貫き通し、自分の道を突き進む。確かにそれはグウの音も出ないほどワルであり、デビルキング法の下では正しい行いであった。

「おっと、近付いてはいけませんよ。火傷したくないのでしたらね……」
 善良な悪魔達を論破した詩乃は、巫女服の中から数枚の御札を取り出し、自らの神力を籠めて放る。すると霊符はたちまち燃え上がり、彼女の周囲を真っ赤な炎で包み込んだ。
「うわっ?!」
 炎の渦に巻かれないよう、慌てて逃げる悪魔達。人間よりも頑丈な悪魔でさえ「熱い」と感じる猛烈な熱気、その中心にいる詩乃に近付こうとすれば火傷では済まないだろう。強さをアピールすることで襲ってくる悪魔が出ないようにする、彼女の心配りである。
「な、なんてこと……!」
「これじゃあ近付けないです!」
 その目論見は上手くいったようで、マンションダンジョンの住人達は炎の結界を纏ってトラップの上を飛び越えていく詩乃を、ただ指をくわえて見送るばかりだった。

「マンションの中で火を放つなんて……火事になるかもしれないのに!」
「すごい! なんて悪いやつなんだろう!」
 詩乃のワルっぷりを目に焼き付けた悪魔達は、口々にその所業を称賛(?)しつつ憧れの眼差しを送る。もちろんこの炎も術によって生み出した威嚇目的である以上、無闇矢鱈に周囲を燃やすことはないはずだが――そんな事彼らには分かりっこないので。
(……心が痛いです)
 根がお人好しな詩乃はワルな振る舞いでワルとして称えられるのにも内心で嘆きつつ。しかし今更止めるわけにもいかずに、表向きは毅然とした態度で先に進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
悪事が推奨される世界…
清廉潔白な身であるとは口…スピーカーが裂けても言えませんが大変困りました

兎も角、先ずは潜入です
大きなラスボス種族の存在で余裕ある構造なのは僥倖でした

天井や欄干、壁面にUCを命綱代わりに射出
複数ワイヤーアンカーを引っ掛け荷重を分散
●ロープワークと●推力移動、しがみ付く●怪力で工作員か蜘蛛の如く移動
床を無視しマンション奥地へ潜入しましょう

…罠を避けた姿を見られても『ワル』だと感銘を受けるのですね

ん?
デビルキング法で『悪』が推奨されているなら、『善』は彼らの目にどう映るのでしょうか
確かこの世界の『勇者』は最も恐れられて…

…住人と本格的に接触する際には試行する価値はありそうですね



「悪事が推奨される世界……清廉潔白な身であるとは口……スピーカーが裂けても言えませんが大変困りました」
 弱きを助け強きを挫き、善を為して悪を討つ。そんな御伽噺の騎士を理想とするトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、己と悪魔の道徳観の差に悩む。
 常日頃のような品行方正な振る舞いを心掛けていても、この世界の民の支持を得るのは難しい。オブリビオンの悪行に誑かされた彼らを救けるには、よりワルくならなければ。
「兎も角、先ずは潜入です」
 どういった態度を取るべきか考えながら、ひとまず彼はマンションの天井に向けてワイヤーを射出。固定用のアンカーが引っ掛かったのを確認すると、巻き取り機構を作動させて自分の機体を持ち上げる。

「大きなラスボス種族の存在で余裕ある構造なのは僥倖でした」
 外見上の差異が大きい魔界種族が居住するからだろう、マンション内は複雑に入り組んでいるが十分なスペースが保たれていて、ウォーマシンのトリテレイアでも移動に不都合はない。その上で注意するべき点はやはり、床のあちこちに敷かれた罠のタイルだろう。
「一つ一つ確認して進むのでは時間がかかりますね」
 天井からぶら下がった彼は、別のワイヤーアンカーを近くの欄干や壁面に向けて放ち、それを伝って移動を開始。その様子はさながら何処ぞの工作員か、或いは蜘蛛の如しだ。

「こうすれば床の罠は無視できるでしょう」
 タイルに足を付けず、張り巡らせたワイヤーを命綱にしたアクロバティックな移動法。大きく自重もあるトリテレイアにそんな芸当ができるのは、複数のワイヤーにかかる荷重の分散、スラスターによる姿勢制御、しがみつく為の怪力など様々な要素によるものだ。
「え、すごい! こんなトラップの攻略法があったなんて!」
 鈍重さを感じさせずスイスイと奥に進んでいく彼を見て、マンションの住人達は仰天。ある意味空を飛ぶよりも難しそうな移動法もそうだが、善良過ぎる彼らにはまず「罠を避けて進む」という発想そのものが相当にワルく感じられるらしい。
「罠があったらとりあえず踏んじゃいますよね?」
「頑張って作ったものを無視するのも何だか申し訳ないし……」
 悪魔を自称していながら底抜けに「良い子過ぎる」彼らは、堂々とトラップを回避するトリテレイアをキラキラとした瞳で見上げている。それはもう、敬意を向けられるほうが困惑してしまうほどの真っ直ぐさで。

「……罠を避けた姿を見られても『ワル』だと感銘を受けるのですね」
 トリテレイアは悪魔の道徳観についてひとつ理解を深めつつ、襲ってくる訳でもない彼らはひとまずスルーして先に進んでいたが――その途中、ふとした疑問が思考を掠める。
「ん? デビルキング法で『悪』が推奨されているなら、『善』は彼らの目にどう映るのでしょうか。確かこの世界の『勇者』は最も恐れられて……」
 悪魔達は根が善良だからこそ「悪」法にも律儀に従う。法に倣うことで、社会の秩序が保たれる事を知っているから。裏を返せば、法に従わずに自分の中にある「善」のみを規範として行動する勇者は、社会秩序を乱しかねない「ワガママ」な奴らという事になる。
「……住人と本格的に接触する際には試行する価値はありそうですね」
 他世界の住人には悪魔の精神性や価値観は一筋縄では理解しがたいが、トリテレイアは何かを考えついたらしい。そうしている間も彼は淀みのない動作でワイヤーを手繰って、滞納者とオブリビオンのいるマンション奥地へ潜入を果たすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
おー!なんか、ワクワクするね。

それじゃあ、もっと面白くしちゃうよ。
ここに住んでたらどのタイルがどんな効果が出るか覚えて面白くなくなるよね。ランダムにシャッフルされるように変えちゃおうっと。

わあ、これは面白い!ぼく自身もなにがでてくるかわからないからドキドキだよ。

タイルを踏んだときの初動を見て、素早く適格に対象する必要があるね。金タライがでてきたら、ヘルメットを被る。炎がふきでてきたら耐火シールド。あ、様子を見に来た悪魔さんも楽しんでけれてるみたいだね。



「おー! なんか、ワクワクするね」
 カラフルなタイルが敷き詰められたマンションを前にして、まるでテーマパークを訪れたように目を輝かせるのはアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。
 踏んだら何が起こるか分からないスリルと緊張感は、確かにアトラクション的な面白さに通じるかもしれない。仕掛けられているのが人間的には命に関わる罠なのが問題だが。
「それじゃあ、もっと面白くしちゃうよ」
 "お話"を好物とする情報妖精の彼女にとっては、好奇心やワクワクを刺激してくれる事のほうが大事。鼻歌交じりに【アナロジーメタモルフォーゼ】を発動し、悪魔達の作った罠に手を加えだした。

「ここに住んでたらどのタイルがどんな効果が出るか覚えて面白くなくなるよね」
 半径数十mにある無機物を情報的に分解し、再構成するのがアリスの能力。今回それを使って行うのは大規模な改変ではなく、床に敷かれたタイルの色を塗り替えるだけの些細なもの。しかしこのマンションのトラップの仕組み上、それは非常にワルい行為だった。
「ランダムにシャッフルされるように変えちゃおうっと」
 赤を青に、青を黒に、黒を黄色に。規則性もなくタイルの色を変更してしまえば、もう何が何の仕掛けだったのか分からなくなる。有利な効果も不利な効果もひっくるめて混ぜ合わせた後には、誰にも把握できない新たなトラップ地帯が完成する。

「わあ、これは面白い! ぼく自身もなにがでてくるかわからないからドキドキだよ」
 再構成を行った本人にすら未知と化したダンジョンに、アリスは楽しそうに挑戦する。
 色によるトラップの種類が判別できないなら、求められるのは瞬間的な判断力だろう。
「タイルを踏んだときの初動を見て、素早く的確に対処する必要があるね」
 そうっとタイルに片足を乗せてみると、パカッと音がして上から何か降ってくる気配。アリスは物質再構成で作ったヘルメットをさっと被り、金ダライの落下から頭を守った。
 他にも、炎が吹き出てきたら耐火シールド。電流が走ったら絶縁体の靴。付近の無機物を素材にした柔軟な対応手段を生成して次々とトラップを攻略していく。いっそ空を飛んでしまえば簡単だが、もちろんそんな「面白くない」攻略法を彼女が取るはずもない。

「大丈夫ですかー……うわっ!」
「なんで緑のタイルから炎が!?」
 騒ぎを聞きつけて様子を見に来た悪魔達にも、リニューアルされたトラップは容赦なく牙を剥く。なまじこのマンションの構造は把握しているという油断があったためだろう、彼らは面白いほど単純にトラップを踏み抜いては「ぎゃーっ?!」と悲鳴を上げた。
「あ、悪魔さんも楽しんでけれてるみたいだね」
 右往左往する彼らの様子を見て、アリスは満足げな顔。実際、身体の頑丈な悪魔にとってこの程度のトラップは命の別状はなく、それこそアトラクションのようなものだろう。
 すでにコツを掴んでいた情報妖精はそんな彼らを置き去りにして、ルンルンと楽しそうに迷宮のゴールに駆けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アルラウネ大家族』

POW   :    同化花粉散布
対象の【脳】に【花】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[脳]を自在に操作できる。
SPD   :    花畑化増殖
【花の種】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から大量の花が咲き】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    一家大集合
レベル×1体の【アルラウネ・シスターズ】を召喚する。[アルラウネ・シスターズ]は【花】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。

イラスト:エル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あららー……今日の取り立て屋さんは手強そうですね」
「こんなに悪い人たちは初めて見ました」
「でもデストロイキングさんの方が悪いかもしれません」

 トラップ満載のダンジョンをそれぞれの「ワル」な手法で突破して、マンションの奥にやって来た猟兵達。そこに居たのは下半身が植物の花と根になった女悪魔の集団だった。
 容姿は一人ひとり異なっているが、みな親子か姉妹と思える程度には似ている。どうやら彼女達こそがオブリビオンに従って、取り立て屋を撃退している悪魔のようだ。

「あ、どうも。私達、花の悪魔アルラウネです」
「本当はあんまり戦うのは得意じゃないんですけど」
「でもデストロイキングさんに任せてばかりだと申し訳ないですし」
「家賃をお支払いしないために、ここは頑張らないと」

 彼女達の態度や言葉は穏やかなもので、まるで敵意らしいものは感じられない。だが、素直に家賃を支払ってくれる気もないようだ。「デビルキング法」が施行されるこの魔界においては、きちんと毎月耳揃えて家賃を払うヤツなんてめちゃめちゃダサいのである。
 暴力の権化たるオブリビオン「デストロイキング」に感化されたアルラウネ達は、彼に倣って暴力で猟兵達「取り立て屋」にお引き取り願うつもりのようだ。

「あ、そこ気をつけてくださいね。床が修繕したばかりで脆いので」
「ちょっと、ダメですよ。そういうことは黙っておかないと」
「そうでした。そのほうが策士って感じで悪そうですものね」

 ――言動からして既に、まったく戦い慣れていない感じがにじみ出てしまっているが。
 それでも彼女らはれっきとした悪魔の一因。美しいバラには棘があるという言葉通り、儚げな見た目に油断すれば痛い目を見るだろう。

「私達、お花畑を作ったり、脳にお花を咲かせて操ったりする位しかできませんけど」
「でも一生懸命戦いますから、どうかお手柔らかにお願いします」
「「ぐわーっはっはっはっはっは!!!」」

 尊敬するデストロイキングの笑いを真似しつつ、襲い掛かってくるアルラウネ大家族。
 ワルに憧れる彼女らをオブリビオンの下から連れ戻すため、猟兵達も戦闘態勢を取る。
カビパン・カピパン
「……はぁ」
花の悪魔達を見ると、はぁっと溜め息をつく。
なんてギャグセンスのないやつ等だ。笑い方も下品でデビルカビパン様へ失礼にもほどがある。私はナイス・ギャグで場を和ませる癒し系なんだぞ。

―その瞬間、黒柳の部屋のスイッチが押されたのを聞いた―

「あーた達、酷い奴対決よ。お互いに相手の酷いこと言ってどちらがワルか勝負!」

「(ここに戌MSさんの今年一年の恨みが篭ったカビパンへのありとあらゆる罵倒や悪口が入ります)」
黒柳カビパン。柳に風とばかりに受け流す。

「(アルラウネ大家族への容赦ない無慈悲で強烈な言葉が入ります)」
花の悪魔達はこのワルに負けた。

あ、そうだ!皆さん新年明けましておめでとうございます。



「……はぁ」
 ようやく現れた家賃滞納者――花の悪魔を見ると、カビパンははぁっとため息をつく。
 なんてギャグセンスのないやつ等だ。笑い方も下品でデビルカビパン様へ失礼にもほどがある。その吐息に含まれる感情を翻訳するならこんなところだろう。
「私はナイス・ギャグで場を和ませる癒し系なんだぞ」
「癒し系、ですか? あんまり悪くなさそうな響きですね~」
 カビパンの不満をよく分かっていない様子で、悪魔アルラウネはのほほんとしている。
 ちょっと天然入っていそうなこの大家族に、カビパン様の偉大さを知らしめるにはどうすれば――その瞬間、彼女は【黒柳カビパンの部屋】のスイッチが押されたのを聞いた。

「あーた達、酷い奴対決よ。お互いに相手の酷いこと言ってどちらがワルか勝負!」

 伝説級のトーク力を誇る霊を降霊させたカビパンは、それまでとは雰囲気まで変わってまくし立てる。悪口という形で互いのワルさを競い合うというシンプルだが奥深い(?)この提案に、それまで戦う気まんまんだったアルラウネ大家族はあっさりと承諾した。
「構いませんよ」
「酷いことを言えばいいのですね」
「私達、悪口はあまり得意ではないですけど」
 逆にどんな悪事なら得意なのか分からないが、真面目な悪魔は悪口も真面目に考える。
 と言っても初対面の相手に酷いことをいきなり言えというのも結構難しい。暫しシンキングタイムを挟んだ後に、まずは先行・アルラウネ大家族からということになった。

「カビパンなんてお腹壊しそうな名前ですね!」
「癒し系なんて言ってもちっとも癒しを感じません!」
「ちーび、ちーび!」
「変なトリついてますよ?」
 大人数という口の多さを武器に、花の悪魔達はわーわーぎゃーぎゃーとまくしたてる。
 ぶっちゃけ罵倒や悪口を言おうにも、特にこれといった恨みのない彼女達は適当な事を言うしかない。そんなパンチの低い言葉を、黒柳カビパンは柳に風とばかりに受け流す。
「あらあらその程度かしら? ぜんぜんワルさを感じないわね!」
「ぜー、はー……そんな、私達の悪口がまったく効いてないです」
 何を言われても顔をしかめるどころか眉ひとつ動かさない相手を見て、実はこの人すごいワルなんじゃと思い始めるアルラウネ大家族。そして後攻のカビパンのターンが始まると、その疑念は確信へと変わる。

「この×××! ××××! あーた達なんて××して×××すればいいのよ!!」
 まさにマシンガンのように乱れ撃たれる、アルラウネ大家族への容赦ない無慈悲で強烈な言葉の弾幕。その内容はあまりに過激すぎて文章に起こすことはできない。決して筆者の語彙力の不足とかではない。お間違えのなきよう。
「なっ、なんて酷い……!」
「こんな酷いことを言われたのは初めてです……!」
 純粋無垢で善良なアルラウネは、この罵詈雑言の嵐に凄まじい衝撃を与え、中には泣き出す者まで出る始末。しかしそれは悲しみの涙ではなく、感涙とかそういう類のやつだ。
 伝説級のトーク力を最大限悪用した、相手の心をへし折るための話術。花の悪魔達はこのワルに敗北を喫し、彼女こそオブリビオン以上の酷い奴だと認めるに至ったのだった。

「あ、そうだ! 皆さん新年明けましておめでとうございます」
「「「本年もどうぞよろしくおねがいしまーす」」」
 酷い奴対決に決着がつき、どちらがワルか白黒つくと、カビパンはノーサイドとばかりに新年の挨拶。さっきまで悪口を言われまくっていたアルラウネ達も笑顔で挨拶を返す。
 今年一年はいったいどんな年になるのか。異世界からの猟兵の到来もあって、これからの魔界は大いに騒がしくなるだろう――それだけはまず間違いの無いことだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
(~しょ、は無理してる部分)

【化術】で【迷彩】、ユベコの提灯お化けで【おどろかし】、【毒使い】で死ぬ危険のない毒を手裏剣に塗って奇襲っす

「はーっはっは!卑怯は忍者の誉め言葉!毒手裏剣で奇襲ドッキリとか超悪いっしょ!」

悪魔を勢いのまま【コミュ力】で言いくるめっす
「お前ら、脳に花咲かせて操るとか見どころあるから配下にしてやるっす!裏切りとか悪いっしょ!」

「配下取り込みに、取り立ても手伝って貰うっす。家賃とかダサい?なら同額の賄賂要求っす!」
家賃回収の言いかた変えただけ
その後、裏切り者と残りも倒し配下にするっす

「デストロイキングと戦う邪魔になる悪魔達と避難して貰うっす。嫌がるやつらは操れっしょ!」



「ふっ、隙だらけっしょ!」
「え? きゃーーーっ!?」
 やる気まんまんで戦いの構えを取るアルラウネ大家族の背後で、どろんと立ち上る煙。
 なにも正面から挑むだけが戦いでは無い。綿狸忍者の衣更着はお得意の化術で悪魔達の背後に潜むと【トリプルどろんチェンジ】で提灯お化けに化け、奇襲を仕掛けたのだ。
「これでもくらえっす!」
 相手がびっくりしている隙に、投げつけるのは毒を塗った忍者手裏剣。もちろん死ぬ危険のないように毒性をだいぶ薄めたものだが、そもそも毒付きの武器という発想自体が、純朴な悪魔の思考では想像もできないようなダーティな行為だった。

「ひ、卑怯です……!」
「後ろから攻撃して、しかも毒まで使うなんて~」
 まんまと不意打ちを食らったアルラウネ達は、身体に刺さった手裏剣を引っこ抜きながらめそめそ喚く。悪魔は頑丈なのでこの程度のダメージは平気だろうが、それより精神的なショックのほうが大きかったらしい。
「はーっはっは! 卑怯は忍者の誉め言葉! 毒手裏剣で奇襲ドッキリとか超悪いっしょ!」
 対する衣更着は渾身のドヤ顔。実は相当無理してワルそうなキャラを作っているのが、いつもと違う語尾に表れている。しかしファーストインパクトで強い印象を与えられたのは僥倖、その勢いのまま彼は悪魔達を持ち前のコミュ力で言いくるめにかかる。

「お前ら、脳に花咲かせて操るとか見どころあるから配下にしてやるっす!」
「え? でも私達、もうデストロイキングさんの配下ですし……」
「裏切りとか悪いっしょ!」
「あっ、確かに!」
 チョロい。衣更着の想定よりも数段のチョロさで、奇襲されたアルラウネはあっさり彼の軍門に下った。理論武装まで完璧なワルさを見せつけられては、寝返らざるを得まい。
 そんなわけで配下ゲットに成功した衣更着は、まだ残っている他の滞納者を倒すために彼女らの力を借りることにする。
「配下取り込みに、取り立ても手伝って貰うっす。家賃とかダサい? なら同額の賄賂要求っす!」
「賄賂。なんだかとっても悪そうな響きの言葉です」
 家賃回収の言い方を変えただけなのだが、そのフレーズは悪魔的にウケが良いようだ。ワルい綿狸忍者の指揮の下、裏切りの悪魔達はかつての家族にノリノリで襲い掛かった。

「賄賂くださーい」
「配下になりなさーい」
「きゃー!!」
 花の種を銃弾のように撃ち出し、マンションのあっちこっちをお花畑にしながら、家賃改め賄賂を請求するアルラウネ達。取り立てられたアルラウネの方も、その見事な裏切り行為に黄色い悲鳴を上げ、賄賂を支払った後は自分から衣更着の配下になりたがる始末。
 その階層での戦いが終わる頃には、彼の下についた悪魔は数十人に膨れ上がっていた。

「デストロイキングと戦う邪魔になる悪魔達と避難して貰うっす。嫌がるやつらは操れっしょ!」
 滞りなく家賃回収と悪魔の懐柔を成功させた衣更着は、花の悪魔達に新たな命を下す。
 力はあるとはいえ猟兵ではない一般悪魔を、オブリビオンとの戦いに巻き込むわけにはいかない。心配だからではなく「邪魔だから」という理由を付ければ、なんてワルなんだろうと感心しながら彼女らは従う。
「「了解っしょ!」」
 リスペクトのつもりなのか主君の語尾を真似しつつ、アルラウネ大家族は散っていく。
 それを見送った衣更着はほっと疲れたような息を吐くと、ひとり先を急ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン、お前達がどう思おうが私には関係ない
滞納した家賃全額、此処で頂いていくぞ!

前回に引き続きパワードスーツを着用して行動
彼女達がばら撒いてくる花の種をビームライフルで撃ち落とし、咲き出した大量の花はレーザーブレード等で纏めて焼却する

何をしようと無駄だ…
お前達に教えてやろう、圧倒的な力の差という物を!

ツインアイを発光させてビームライフルやレーザーガトリングの一斉発射を彼女達にお見舞いする
もちろん、殺さない程度にだ
猟兵に匹敵する実力なら出力を私が気絶する程度に落とせば十分だな
「ワル」く振舞うが、人的被害だけは出さないように徹底しよう

さぁ、私に従うか否か
この銃口の前で宣言するがいい…



「フン、お前達がどう思おうが私には関係ない」
 健気に抵抗の姿勢を見せるアルラウネに、不遜とすら映る態度で言い放つのはキリカ。
 マンション攻略から引き続きパワードスーツ【コンケラント】を着用したその格好は、見た目にも威圧感があり、いかにも険呑な雰囲気をかもし出している。
「滞納した家賃全額、此処で頂いていくぞ!」
「わ、渡すわけにはいきませんー!」
 ジャキンと武装のロックが解除される音に、アルラウネ達はびくりと怯えながらも一歩も譲らない。根が善良で真面目だからこそ、彼女らは一生懸命悪事を働こうとするのだ。

「えーいっ!」
「あたってください!」
 アルラウネ達の体や髪から放たれる花の種。銃弾のようなスピードで飛ぶそれは、当たれば痛いのはもちろん、外れても着弾点で【花畑化増殖】を引き起こし、彼女らの戦闘力を高める。戦うのは苦手だと本人達は言っていたが、決して侮れないユーベルコードだ。
「ふん、まるで素人だな」
 しかし、こと実戦経験という点ではやはり、歴戦の猟兵にして戦場傭兵であるキリカに分がある。彼女は悪魔達がばら撒いてくる花の種をビームライフル「Colère」で撃ち落とし、地面に落ちて咲き出した花はレーザーブレード「黄泉返太刀」で纏めて焼き払う。
「まあ……?!」
 高度なテクノロジーが生み出した、戦闘と破壊のみのために作られた兵器の力は、悪魔の権能にも劣りはしない。燃え上がる花畑を踏みにじりながら傲然と立つ黒鉄の悪鬼に、アルラウネ大家族は驚愕とともに身を震わせる。

「何をしようと無駄だ……お前達に教えてやろう、圧倒的な力の差という物を!」
 自身の実力を見せつけたところで、キリカはスーツのツインアイを発光させ、搭載された武装を一斉発射する。唸りを上げて回転するレーザーガトリングの砲身、閃光を発するビームライフルの銃口――戦場に降り注ぐ光の弾幕から、逃れる場所などありはしない。
「「きゃーーーーっ!!?」」
 火力も規模も自分達とは比較にならない猛攻撃をお見舞いされ、アルラウネ達は為す術なくなぎ倒される。もちろん威力は殺さない程度に設定されているので心配はいらない。
(猟兵に匹敵する実力なら、出力を私が気絶する程度に落とせば十分だな)
 肉体的に人より頑丈な悪魔は、当たりどころが悪くても意識が飛ぶ位で済んでいるようだ。動ける敵を視界から一掃したところで、キリカはゆっくりと彼女らに近付いていく。

「さぁ、私に従うか否か。この銃口の前で宣言するがいい……」
 戦闘不能になったアルラウネの前で、銃を突きつけるキリカ。その振る舞いは実にワルいが、その反面人的被害だけは出さないよう配慮は徹底している。倒れている悪魔の中で重傷を負った者はおそらく一人もいないだろう。
「はわぁ……し、従います、素敵なお方……」
 そんな細やかな心配りまでは気が付かないアルラウネ達は、キリカのワルぶった態度と圧倒的な実力に惚れ込み、デストロイキングのことも忘れて自ら服従を誓うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
「教えてくれて良い人!」
「でも悪い人!」
「結局わからない!」

根は良い人で間違いないんだろうけどね…。
…ところで、貴女達、身体は大丈夫?
わたし、さっき魔剣で罠やフロアを【呪詛】で侵食したから、そこに根を下ろしてる貴女達、死んじゃうよ…?
死にたくなければ、わたし達の言う事を聞きなさい…(命を脅して言う事聞かせるワルムーブ)
(【呪詛】で侵食したのは本当だが、死ぬ程はしてない。オブリビオンでも弱体化するくらいのレベルで侵食)

「ご主人は九尾の狐!」
「つまり、傾国の美女!」
「国を滅ぼす程のワル!」
「「「ご主人に着けば間違いないよ!」」」
(何故かサングラスなメイド)

わたし、そんな事してないけどね…。



「教えてくれて良い人!」
「でも悪い人!」
「結局わからない!」
 やる気まんまんの様子を見せたかと思えば、敵のはずの猟兵に忠告をしてくれたりと、相変わらずちぐはぐな行動を取る悪魔達に、首をひねるメイド人形のラン、リン、レン。
「根は良い人で間違いないんだろうけどね……」
「やっつけちゃいますよー、えい、えい、おー」
 逆に人が良すぎるからこそ疑いなく悪事を行ったり、オブリビオンに騙されたりもするのだろう、と璃奈は思う。悪魔の道徳を定めた「デビルキング法」に基いて、アルラウネ大家族は今日も家賃を滞納し、取り立て屋を追い返そうと一生懸命だった。

「……ところで、貴女達、身体は大丈夫?」
「え?」
 そんな健気にがんばるアルラウネ達に、璃奈はぽつりと声をかける。魔剣や妖刀を構えるでもなく、徒手のままの指先は彼女達が立っているマンションの床を指し示している。
「わたし、さっき魔剣で罠やフロアを呪詛で侵食したから、そこに根を下ろしてる貴女達、死んじゃうよ……?」
「「えええっ!!?」」
 何気ない口調で語られる突然の恐ろしいカミングアウトに、仰天するアルラウネ一同。
 勿論これは璃奈のハッタリだ。呪詛で侵食したのは本当だが、死ぬ程ではない。オブリビオンでも弱体化するくらいのレベル――頑丈な悪魔なら体調不良になるくらいだろう。

「そ、そういえば、さっきから気分が悪いような……」
「し、死んじゃう? 私達死んじゃうんですか?」
 しかし思い込みの力とは強いもので、素直な悪魔達は表れだした不調を本当に死の前兆だと信じこみ、真っ青になって慌てふためく。そんな彼女らを璃奈はいつもと変わらない無表情で眺め――静かな口調で脅しをかける。
「死にたくなければ、わたし達の言う事を聞きなさい……」
「きょ、脅迫なんて、なんて恐ろしい。とんでもない悪人です!」
「これは何でも言いなりになるしかありません……!」
 相手の命を握ったうえで、脅して言う事を聞かせようという渾身のワルムーブに、悪魔の心はあっさり陥落した。死にたくないという思いも当然あっただろうが、それ以上に自分達を遥かに超えるワルさに感服してしまったと言うのが、理由としては大きいだろう。

「ご主人は九尾の狐!」
「つまり、傾国の美女!」
「国を滅ぼす程のワル!」
 璃奈のムーブに箔を付けようと、メイド達もこぞって主人のワルさを喧伝する。美貌と妖力で数多の権力者をたぶらかし、幾つもの国を傾けたという伝説の妖狐のエピソードを元に、何故かサングラスをかけて熱弁を振るう。
「わたし、そんな事してないけどね……」
「すごいです! 悪の中の悪ですね!」
 本人からの控えめな訂正は、残念ながらアルラウネ達の耳には届かない。捏造を交えてメイド達の口から語られる武勇伝の数々に、純粋な悪魔達はすっかり夢中の様子だった。

「「「ご主人に着けば間違いないよ!」」」
 きらーん、とサングラスを光らせて断言するメイド達。璃奈のワルい魅力をたっぷりと力説されたアルラウネ大家族は、キラキラと楽しそうに目を輝かせながら命乞いをする。
「これからは貴女様のために誠心誠意働きます」
「貴女様に言われたら何だってします」
「「なので殺さないでくださーい!」」
 単に暴力を誇示するより、脅迫という手段は悪魔の心を掴むのに効果的だったようだ。
 オブリビオンの支配から悪魔を懐柔するという目的の一つは無事達成できたものの――その後、このマンションでは九尾の大妖狐「璃奈」の悪名がしばらく轟き渡ったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
カリスマ悪役ムーブで参上。

わざわざ出て来て喋ってる間に遠慮なく【魅了の魔眼・快】【催眠術】魅惑のフェロモンで視界内のアルラウネ達を全員魅了。
悪役が向上に付き合ってアゲル必要はないしね♪

みんな魅了して、他所からの増援も1章で罠うさぎ達とヴィラン隊が作ってくれた罠に嵌めて(ついでに【念動力】で強引に押し込んだり放り込んだりして)動けなくなったりボロボロなところを更に【魅了の魔眼・快】で魅了してあげるわ♪

あ、わたしのモノになった以上、デビルキング法なんて従わなくて良いわ!
お仕置き?真の悪は法になんて従わないものよ。
つまり、わたしが全て!わたしが法よ!(バーン!とヴィラン隊による効果演出付)



「あの人達、思った以上に悪い人です」
 これまでの取り立て屋とは一味も二味も違う猟兵達の強さとワルさを見て、アルラウネ大家族の間には動揺が広がっていた。このままワルい奴に負けるのは本望だが、家賃を支払わされてしまったらもう滞納を続けることができなくなってしまう。
「でも、私達もまだまだこれから―――」
「はい、そこまでよ」
 そんな頑張る悪魔達の言葉を遮って、いきなりフレミアが【魅了の魔眼・快】を放つ。
 わざわざ敵の前に出て来て長話をするなんて、その間に攻撃してくれと言っているようなもの。かわいらしく純粋な花の悪魔達を前にして、彼女が遠慮するはずが無かった。

「悪役が口上に付き合ってアゲル必要はないしね♪」
 魔力を込めた視線と共に放たれた魅惑のフェロモンは、フレミアの視界内にいた相手に強烈な快楽を与え、催眠状態に陥れる。抵抗する暇もなく魅了されたアルラウネ達は、頬を赤らめながら陶然とした表情でその場に立ち尽くした。
「ふわぁ……何ですかこれ? 胸がドキドキして止まりません……」
「あれ、どうしたんですか姉妹達――」
 仲間の異変に気付いてやって来たのはアルラウネ・シスターズ。しかし手のひらや根っこでぺちぺち叩いても、一度掛かった魅了は簡単には抜けない。どうしましょうと困惑している内に、フレミアの手は彼女らの元にも伸びていく。

「隙だらけよ」
「きゃー?!」
 どん、と見えない念動力の手がアルラウネ達を突き飛ばす。その先に用意されているのはマンションの攻略中に罠うさぎとヴィラン隊が作った仕掛け――悪魔が用意したものより数段バージョンアップしたトラップの数々が、連鎖反応を起こしながら起動する。
「あついです!」
「しびれます!」
「ずぶぬれですー!?」
 元は自分達が仕掛けたものを改造され、ボコボコにされるアルラウネ達。慌てて逃げ出そうとしてもそうはいかない。フレミアはカリスマ悪役らしい堂々としたムーブを崩さずに、念動力を使って悪魔達を罠のある所に押し込んだり、あるいは強引に放り込んだり。

「わたしの僕になりなさい……あなたはもう、わたしのトリコ♪」
 増援がボロボロになって動けなくなったところで、フレミアは先にいた者と同様に魅了の魔眼にかける。身も心も完全に屈服させられたアルラウネ達は、恋する乙女のような表情で新たな主に忠誠を誓う。
「貴女様ほど悪いお方には出会ったことがありません」
「これからは貴女様をデビルキングにするために、誠心誠意お仕えします!」
 すっかり虜になった花の悪魔の姉妹を見て、フレミアは満足そうに微笑む。もう彼女らはオブリビオンの事など覚えてもいまい。強くてワルい奴に従うのが悪魔の道徳なのだ。

「あ、わたしのモノになった以上、デビルキング法なんて従わなくて良いわ!」
「え、ええっ?! でも法律にはちゃんと従わないとお仕置きが……」
 新たな配下に向けてフレミアが最初に放った命令は、アルラウネ達を驚愕させるものだった。魔界の全悪魔にとって行動規範であるデビルキング法、それに従わない悪魔など、俗に「勇者」と言われる反逆者くらいのものだ。
「お仕置き? 真の悪は法になんて従わないものよ」
 されど彼女は堂々とした態度で法の遵守を拒否する。ともすれば傲慢と捉えられるようなその振る舞いは、しかし悪魔にとっては目が離せないカリスマ性に満ちあふれていた。

「つまり、わたしが全て! わたしが法よ!」
 バーン! とヴィラン隊の用意した効果音と演出が、悪役ムーブをさらにもり立てる。
 吸血姫の魅力にすっかりメロメロになったアルラウネ達は「一生ついていきます!」と黄色い歓声を上げて、我がままに生きる新たな主君を讃えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
アドリブ・連携歓迎

また(憎めない相手なので)やりづらい相手が出てきましたね。
とはいえ、世界崩壊を防ぐためには任務を全うしないと。
と、内心苦悩しつつもアルラウネさん達が納得して引き下がるよう頑張ります。

相手のUCについては、詩乃の初発之回帰で無効化します。
その上で「相手の流儀を一方的に破って、自分の流儀を押し付ける。これこそがワルというものでしょう。さあ、観念して大人しく家賃を差し出しなさい。」と精一杯ワルぶってアルラウネさん達を説得。

それでも応じない場合は、多重詠唱の炎と雷の属性攻撃を刃に纏った煌月の『柄』で頭をゴチンとやって、「これ以上ワガママ言うと、本当に怒りますよ!」と言う事聞かせます。



(またやりづらい相手が出てきましたね)
 オブリビオンに味方しているとは言えどうにも憎めない相手に、詩乃は戸惑いを隠せなかった。敵意はないくせに大真面目に戦うつもりで、そこそこ強いため下手な手加減もできない。もう少し相手が「悪魔」らしければ彼女も本気で戦いやすかったのだろうが。
(とはいえ、世界崩壊を防ぐためには任務を全うしないと)
 内心の苦悩を秘めつつ、アルラウネ達に納得して引き下がって貰えるよう、ワルい戦い方を頑張って考える。ある意味これは、普段の敵以上に頭を悩ませる戦いかもしれない。

「来ないならこっちから行きますよー?」
「先制攻撃です」
「えーい」
 一向に攻めてくる様子のない詩乃を見て、アルラウネたちは【一家大集合】を発動し、別の所にいた同族を大量召喚する。何十人という花の姉妹が一堂に会する光景は庭園のように華やかだが、それが一斉に花びらを散らして攻撃してくれば見惚れてもいられない。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう」
 対する詩乃は【初発之回帰】を発動。植物を司る女神アシカビヒメの神力が悪魔の攻撃と衝突し、まるで逆再生のように花吹雪を押し返していく。これは対象のユーベルコードを発動前の状態まで遡及させる時間操作の権能――その影響は召喚された悪魔にも及ぶ。

「あれれ、もう戻らなきゃいけないんですか」
「あら? みんなどこに行くんですか?」
 たった今喚び出されたばかりの姉妹達が、詩乃の権能によって元いた場所に送還されていく。ぽつんと取り残された者達は何が起こったのか分からない様子で首を傾げ、もう一度召喚を行うが――またもや【初発之回帰】に阻まれ、今度は召喚自体が不発に終わる。
「相手の流儀を一方的に破って、自分の流儀を押し付ける。これこそがワルというものでしょう」
 アルラウネ達の力を封殺してみせた詩乃は、なるべくワルそうな表情を作りつつ笑う。
 植物神としての強大な神力を誇示すれば、花の悪魔は格上にあたる存在からのプレッシャーにぷるぷると震えだす。怯えているような尊敬しているような、複雑な表情である。

「さあ、観念して大人しく家賃を差し出しなさい」
「う。で、でもこれが私達の悪事なので……!」
 精一杯ワルぶった態度で説得を行う詩乃に、まだ抵抗を続けようとするアルラウネ達。
 真面目で強情な彼女達に詩乃はやれやれと小さくため息を吐いてみせ、薙刀「煌月」の刃に炎と雷を纏わせると、花吹雪の攻撃を切り払いながらあっという間に距離を詰めて。
「これ以上ワガママ言うと、本当に怒りますよ!」
「あいたっ!? ごめんなさーい!!」
 柄で頭をゴチンとされると、半べそになったアルラウネ達はようやく戦うのを諦めた。
 滞納した家賃を捧げて「ははー」とひれ伏す様は、さながら敬虔なる神の信徒のよう。
(ふう……)
 結局タンコブひとつで大した被害もなく、その場を収めることができた詩乃は、悪魔達の手前でワルぶり続けながらも、内心ではほっと胸を撫で下ろすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

…この手合いって、周りを操るなりなんなりで矢面に立たせて自分は裏から補助や妨害に回られるとものすごぉく厄介で死ぬほどめんどくさいんだけど。
…なぁんでのこのこ前線に出て来ちゃうかなぁ…
やっぱり根本的に悪辣さが足りないのよねぇ、きっと。

…やっぱ「ワル」いとこ見せつけないと、よねぇ。
●虐殺であたり一帯纏めて○範囲攻撃で薙ぎ払いましょうか。
使う魔術文字はカノ(炎)に不動明王印、焼夷手榴弾も合わせて咲いた花ごと〇焼却しちゃいましょ。…不動明王の破邪顕正の権能は上手く働かないかもだけど。
…ああ、それと。これ敵味方無差別だから、味方さんは頑張って避けてねぇ?


ムシカ・ガンダルヴァ
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
ワルになって戦うって何だろうね……
まぁいいや、ボクなりにワルくなって戦おう

UC【冥神の王国】で武装巨大鼠達を召喚し、「呪詛」で〈武装の弾頭を発射すると花を弱らせる呪いを散布〉〈巨大鼠を倒すと花を弱らせる呪いを散布〉するように呪っておく。
この時、あえて呪いの方向性を無差別にしておき、「フレンドリファイア上等の作戦」「じわじわと弱らせる」という悪事(?)と思わせる。
巨大鼠達を特攻させて敵が弱った所で、「お前達は戦いに向かないからもっと建設的な悪事をすべき。例えば空き地に無許可で花畑を作るとか」的な事を言って説得を試みる。
その後は……ボクの知った事じゃあないよ!



「……この手合いって、周りを操るなりなんなりで矢面に立たせて自分は裏から補助や妨害に回られるとものすごぉく厄介で死ぬほどめんどくさいんだけど」
 使い方次第でいくらでも凶悪になりうる花の悪魔の力。それを聞いたティオレンシアは頬に手を当てて眉をひそめ、呆れと困惑が入り混じったような顔でアルラウネ達を見る。
「……なぁんでのこのこ前線に出て来ちゃうかなぁ……やっぱり根本的に悪辣さが足りないのよねぇ、きっと」
 もし自分が彼女達のような能力を持っていれば、少なくとも今から戦う敵にそれを教えたりはしない。持って生まれた力を十全に使いこなせないのがこの悪魔達の欠点であり、同時に美点でもあるのだろう。そんな彼女らに矛を収めさせるにはどうすればいいか。

「……やっぱ『ワル』いとこ見せつけないと、よねぇ」
「ワルになって戦うって何だろうね……」
 ワルい奴ほど敬われるのが魔界のルール。やるしかないかと銃を構えるティオレンシアの隣では、まだこの世界の価値観に慣れていないムシカが首を捻っていた。オブリビオンという本物の邪悪から悪魔達を守るためにワルになれ、というのも奇妙な話ではある。
「まぁいいや、ボクなりにワルくなって戦おう」
 頭を切り替えて【冥神の王国】を発動すれば、先のマンション攻略でも活躍した巨大鼠の群れが再び現れる。今回は探索目的ではなくきっちりと戦闘仕様、その身体から生えた銃火器には花を弱らせる呪いの弾頭が装填されている。

「ねずみさんはよく齧られるので怖いです」
「でも私達も負けませんよー」
 巨大鼠の大群を見ても健気にがんばるアルラウネ達は【一家大集合】で仲間を増やし、種をばらまいて【花畑化増殖】を引き起こす。あっという間にマンションのワンフロアは大量の花が咲き乱れる花園と化し、その上に立つ悪魔達の戦闘力を強化する。
「やっぱり能力は優秀なのよねぇ……じゃああたり一帯纏めて薙ぎ払いましょうか」
 フィールドを形成した花の悪魔に対し、ティオレンシアは【虐殺】を使用。カノ(炎)のルーンに不動明王印を刻んだ銃弾、焼夷手榴弾など、炎上と延焼を目的とした武装の数々を乱れ打ち、咲いた花畑ごとアルラウネ・シスターズの焼却にかかった。

「……正直、こういう『数撃ちゃ当たる』ってのは好みじゃないんだけど。背に腹は代えられない、か」
「「きゃーーーっ!?」」
 あまり乗り気ではなさそうな発言とは裏腹に容赦のない炎弾と爆発が、戦場を花畑から火炎地獄に変える。見た目通り火に弱いらしい花の悪魔は悲鳴を上げてはね回り、身体に燃え移った火を消そうと大慌て。
「……不動明王の破邪顕正の権能は上手く働かないかもだけど」
 "悪魔"を自称するくせに悪意のカケラもない彼女らに、破邪の力が効いた気配はない。が、今回はそれで良かったかもしれない。ティオレンシアが操るルーンが十全に威力を発揮していれば、見た目より頑丈なアルラウネもただでは済まなかっただろう。

「……ああ、それと。これ敵味方無差別だから、味方さんは頑張って避けてねぇ?」
「え?」
 戦場が炎上する中、何気ないノリで付け加えられた一言に、目を丸くしたのはムシカ。
 見れば、ティオレンシアが乱射した弾丸とグレネードはアルラウネだけではなく、彼女らと相対した巨大鼠まで巻き込んでいる。まさかの無差別攻撃を食らった鼠達は悲鳴を上げて丸焼きになっていくが、ムシカの反応はそれに怒っているという感じではなく。
「……ボクも同じことを考えてたんだけど」
「え?」
 今度はティオレンシアがきょとんとした直後、虐殺された巨大鼠の屍が爆ぜ、その中から大量の呪いがまき散らされる。ムシカが呪詛を仕込んでいたのは武器の弾頭だけではなく、鼠が敵に倒されれば自動的に散布される呪いも施してあったのだ。

「う、く、くるしい……」
「なんなんですか、これは……」
 猟兵達のフレンドリファイアの割りを一番に食らったのは、対峙するアルラウネ達のほうだった。毒ガスのように広がる呪いは彼女達の身体をじわじわと侵食し、死なない程度にではあるが弱らせていく。ただでさえ苦手な火に晒されていた彼女達にこれはキツい。
「味方を犠牲にすることも上等の作戦なんて……」
「しかも一思いに殺さずじわじわと弱らせるなんて……」
「「なんて悪い作戦なんですかー!!」」
 悪魔の基準からすれば悪辣というほか無い戦法に、アルラウネ達は苦しみながらも称賛を禁じえない。憧れと尊敬の念が高まっていくのを感じ、ムシカはさも「全て計画通り」という顔をして、まだ生き残っている巨大鼠達も炎の戦場に特攻させる。

「我は鼠の冥神なるぞ。我に服従せよ!」
「はやく降伏した方があなた達のためよぉ?」
 尊大に振る舞うムシカの指揮の下、呪いの銃弾を放ちながら味方の攻撃に倒れ、さらなる呪いをばら撒く鼠の群れ。しれっと味方の方にも無差別に流れこんでくるその呪詛を、ティオレンシアは不動明王印で祓いながら、持っている火種を手当たり次第に投げ込む。
 この残酷非道(悪魔目線)な攻撃には、いくら丈夫なアルラウネ達でも心身ともに耐えられない。明らかに敵が弱ってきた所で、ムシカは鼠達を一旦下がらせ、説得を試みる。

「お前達は戦いに向かないから、もっと建設的な悪事をすべき。例えば空き地に無許可で花畑を作るとか」
「はっ……その手がありました!」
 その提案にアルラウネ達は「名案です!」と目を輝かせて、あっさり戦うのを止めた。
 新しい悪事が見つかったのなら、もう家賃を滞納する必要もない。根っこは黒コゲで花はしおれたボロボロの状態ながら、彼女らはニコニコと満面の笑顔で家賃と感謝を渡す。
「良いことを教えてくれてありがとうございます。お姉さん達は悪の中の悪ですね!」
「別に……それでどうなっても、後はボクの知った事じゃあないよ!」
「褒めてくれてるつもりなんでしょうけど、やっぱり微妙ねぇ……」
 純粋に感服しているらしい花の悪魔に見送られ、ムシカとティオレンシアは先に進む。
 結果としては完勝なのだが。やはりまだ、この世界のノリには慣れない二人であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
脳にお花を咲かせて操れるって、本気になったら、世界征服とかできちゃうんじゃ。こんな能力を持った悪魔がごろごろいるなら、絶滅しかけたってのも納得だね。

それじゃあ、デビルキング法にのっとって、結束できないように、私利私欲を教え込もうか。

壁を爆発して登場することで悪さを演出するよ。

キミたち、ワルの本質を理解してないみたいだね。
誰かの言うことを聞くなんてカッコ悪い。自分の私利私欲をただ叶えるのがワルだよ。

隣のヤツよりいっぱい食べたい、隣のヤツより楽したい。その欲望に従えばいいんだよ。キミたちにはその力があるんどから。

仲間割れを始めたところでこっそり抜けていくよ。



「脳にお花を咲かせて操れるって、本気になったら、世界征服とかできちゃうんじゃ」
 花の悪魔アルラウネの恐るべき力を聞いて、アリスはぽつりと呟きながら首を傾げる。
 本人たちは思いつきもしない事のようだが、実際に彼女らが"悪意"をもってこのユーベルコードを使えば、家賃滞納よりもずっとスケールの大きい悪事が行えたはずだ。
「こんな能力を持った悪魔がごろごろいるなら、絶滅しかけたってのも納得だね」
 善良過ぎる精神性に反して、悪魔という種族が持つポテンシャルは凄まじい。それをこのままオブリビオンに利用されていては、今度こそ本当に絶滅してしまうかもしれない。

「それじゃあ、デビルキング法にのっとって、結束できないように、私利私欲を教え込もうか」
 登場は派手、かつワルそうに。魔力を込めた杖をマンションに向けると、ドッカーン! と大きな爆発音と共に建物の壁が吹き飛び、爆風と瓦礫の中からアリスが姿を現した。
「だれか出てきました」
「かわいいのに悪です」
「壁を爆破しちゃうなんて」
 まるでヒーローショーの悪役のような登場演出に、アルラウネ達は目を輝かせている。
 第一印象で心を掴んだところで、アリスはびしりと彼女達に指を突きつけて言い放つ。

「キミたち、ワルの本質を理解してないみたいだね」
「……? それは、どういう……」
 ワルの本質とは一体。首を傾げながらも興味津々な様子のアルラウネ達に、端的に分かりやすく、ワルとは何かを語る。それはこの世界の悪魔にとっては衝撃的な内容だった。
「誰かの言うことを聞くなんてカッコ悪い。自分の私利私欲をただ叶えるのがワルだよ」
「「「―――!!!!」」」
 その瞬間のアルラウネ達の表情ときたら、まるで雷に打たれたかのようだった。それはデビルキング法に従いながらも、家族仲良く協力して悪事を働くのが当たり前だと考えていた彼女達の常識を、根っこから覆す発想だった。

「隣のヤツよりいっぱい食べたい、隣のヤツより楽したい。その欲望に従えばいいんだよ。キミたちにはその力があるんどから」
「そ……そうなんでしょうか……いえ、そうかも……?」
 自分の能力の強大さに自覚がないアルラウネ達に、アリスは私欲に走れと囁きかける。
 これだけを見ればもはやどっちが悪魔なのか分からないだろう。すっかり妖精の言葉を信じこんだ花の悪魔は、隣にいる家族や姉妹と顔を見合わせて。
「私達はみんな家賃を滞納しています……つまりここで私達が一人になれば……」
「……家族みんなの家賃をひとりじめできる……?」
「「すっごくすっごく悪いです! やりましょう!」」
 歓声。まさに悪魔的発想に辿り着いた彼女達は、嬉々とした顔で仲間を攻撃しだした。
 相変わらず敵意のない、はたから見れば姉妹のじゃれ合い程度のものだが。ワルの本質を教えてもらった彼女達は、それを忠実に果たそうとノリノリで同士討ちに励む。

「よかったね。それじゃあ通させてもらうよ」
 アルラウネが仲間割れを始めたところで、アリスはその横をこっそり抜けて先に進む。
 果たして悪魔一家がその後どうなったかまでは、彼女の預かり知らぬことだ――まあ、悪魔なので放っておいてもそのうち仲直りしているだろうが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榛・琴莉
言っちゃうんですね、それ…足元には気をつけておきます。
こんにちは、取り立て屋です。
悪魔は頑丈だと聞いていますし、多少は手荒くとも問題ないでしょう。
Ernest、魔弾の準備を。

飛んできた種はHaroldに任せます。
武器受けからカウンターする形で、氷の属性攻撃で薙ぎ払って。
凍らせてしまえば、花を咲かすことはできないでしょう?
三冬尽くのは遠そうですねぇ。
反撃は、飛び交う種とHaroldの間を掻い潜る様な魔弾。
撃ち抜き凍てつかせ、身動きを封じさせてもらいましょうか。

家賃、払っていただけますね?
もし渋るようならMikhailを突きつけて脅かします。
Haroldも、こう、威嚇とかして。悪く見える様に。



「あ、そこも踏み抜きやすくなってるので、注意してください」
「言っちゃうんですね、それ……足元には気をつけておきます」
 律儀にマンションの構造をこちらに教えてくれる花の悪魔に、感謝半分呆れ半分といった気持ちで琴莉は銃を向ける。敵意は無さそうだがそれはそれ、彼女らがオブリビオンに与しているのは事実だし、受けた仕事はきっちり果たさなければ。
「こんにちは、取り立て屋です」
「はじめまして、滞納者です」
 やっぱり平和――そんな感想がまた頭をかすめる、気の抜けた挨拶を交わしてから。
 冬の女神に愛された少女と、春爛漫を体現したような花の悪魔は戦いの火蓋を切る。

「悪魔は頑丈だと聞いていますし、多少は手荒くとも問題ないでしょう。Ernest、魔弾の準備を」
 琴莉はガスマスクのレンズ越しに目標を捉えながら、戦闘補助AI「Ernest」に指示を送る。視界の隅で鳥のアバターが羽ばたき、現状に最も適した弾丸の生成が開始される。
「えーい! お花畑にしちゃいます!」
 その間に降りかかるのは花の種。アルラウネ達は無邪気だが、銃弾のようなスピードで飛来するそれが人間に当たれば「痛い」では済むまい。装填に専念する琴莉を守るように「Harold」の群れがその身を盾のように変形させ、花種の弾幕を受け止めた。

「凍らせてしまえば、花を咲かすことはできないでしょう?」
 盾から矛へ、意のままに。変幻自在のHarold達は水銀状の身体に冷気を帯びさせ、花の種をなぎ払う。弾き落とされたそれはあまりの寒さに芯まで凍り、発芽することはない。
 本来なら外れても【花畑化増殖】を起こし、アルラウネ達を有利にするはずの攻撃は、しかし女神から雪華の魔力を与えられた琴莉とは最悪の相性だった。
「三冬尽くのは遠そうですねぇ」
 花咲く季節にはまだ早いと、マスクの下で口ずさむ。その視線にさえ寒気をたたえて。
 飛んでくる種の迎撃をHaroldに任せつつ、琴莉はアサルトライフル「Mikhail」を構えて反撃の体勢を取った。詠唱機構を通じて装填された魔力は鉛玉を氷の魔弾に変え、銃器と電脳的にリンクしたErnestがその弾道を設定、【CODE:スカジ】を起動する。

「撃ち抜き凍てつかせ、身動きを封じさせてもらいましょうか」
 そっと引き金に指をかければ、放たれた魔弾はありえざる軌道で飛び交う種とHaroldの間をかい潜り、目標に的中する。琴莉が女神より授かった祝福、あるいは呪い――凍てつく冬を体現した極寒の魔弾は、花の悪魔を心底震え上がらせた。
「さささっさ、さむいです」
「う、動けないです……!」
 身体から咲いた花には霜が降り、意気消沈した様子でガタガタと震えるアルラウネ達。
 花種による攻撃もピタリと止んだところで、琴莉は動かなくなった彼女らの前までつかつかと歩いていくと、その眉間にMikhailの銃口をぐいっと突きつける。

「家賃、払っていただけますね?」
 淡々とした口調で凄むガスマスクの少女。一緒にいるHaroldも威嚇のつもりなのか、ばっさばっさと翼を羽ばたかせ、嘴をかちかち鳴らしてアルラウネ達に詰め寄る。悪く見えるように精一杯頑張っているようだが、正直なところあんまり怖くはない。
「は、払います、払いますー!」
 が、純粋な悪魔にはそれでも効果覿面だったようだ。脅かされてすっかり戦意を失ったアルラウネ達は、慌てて滞納していた家賃を差し出す。それもきっちり利子まで付けて。
「こんなに悪いひとが世の中にはいるんですねー……次は私達もがんばります!」
「……またやるつもりなんですか?」
 それでもまったく懲りていない様子の悪魔達に、琴莉はふうと小さくため息を吐いて。
 きしゃーがおーと威嚇するHaroldを回収して、マンションの更に奥に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(怪力で大盾をなぎ払い花粉を吹き飛ばしつつ)

…少し脅かしてみましょうか
声と身振りを大仰な物に調整し、私物の本を取り出して…

皆様、此方の本をご覧ください
この中には魔王や怪物、邪竜を打ち倒す騎士…この世界では発禁処分モノの愛と勇気、勧善懲悪の御伽噺が大量に収められています

私はこの御話を人々に語り継ぎしデビルキング法に…いえ、この世界に反旗翻す悪逆の騎士!
法の下の悪など及びもつかぬ社会秩序揺るがす極悪人!

怯えなさい
竦み上がりなさい
そして大人しく道を開け、家賃を差し出すのです

さもなくば…
大音声で朗読会を開きこの世界に根付くまで子供達に愛と正義を語りますよ!

…恐らく、普通に悪らしい行為の方が楽でしたね…



「ここは通しませーん」
「お帰りくださーい」
 押し寄せる猟兵の『取り立て屋』を迎え撃ち、懸命の抵抗を続けるアルラウネ大家族。
 性格的に戦いに向いていない悪魔と、多くの修羅場を潜ってきた猟兵とでは、実戦での力の差は歴然。それでも彼女らは真面目に「デビルキング法」を遵守すべく戦っていた。
「……少し脅かしてみましょうか」
 トリテレイアは手にした大盾を力任せに振り回し、散布される【同化花粉散布】を風圧で吹き飛ばしながら、彼女らの戦意を挫く方法を考える。今回の目的は悪魔を痛めつける事では無いのだから、敵味方とも最小限のコストで事を収められればそれが最良である。

「皆様、此方の本をご覧ください」
 【覆面の機械騎士】は己の身体の挙動・言動をデータベースから調整し、なるべく大仰な身振りと声でアルラウネ達にアピールしながら、私物である御伽噺の本を取り出した。
「この中には魔王や怪物、邪竜を打ち倒す騎士……愛と勇気、勧善懲悪の御伽噺が大量に収められています」
「な、なんですって……!?」
 それを聞いた悪魔達はみな一様に驚愕する。なぜなら悪徳と欲望を肯定する「デビルキング法」の制定下において、勇気だの愛だの善だのを肯定する文章など発禁処分モノだ。善良な一般悪魔にとっては所持を公言することすら憚られるような恐ろしい代物だろう。

「私はこの御話を人々に語り継ぎしデビルキング法に……いえ、この世界に反旗翻す悪逆の騎士! 法の下の悪など及びもつかぬ社会秩序揺るがす極悪人!」
 夢と希望の御伽噺、愛と正義の騎士道物語を手に、トリテレイアは高らかに宣言する。
 魔界の社会と道徳に真っ向から反抗を表明するその非道さに、アルラウネ達は真っ青になって「ひええ……!」と震え上がった。
「怯えなさい。竦み上がりなさい。そして大人しく道を開け、家賃を差し出すのです」
 身を寄せ合ってぷるぷる震える悪魔達を、まるで悪の大魔王のような振る舞いで威圧する機械仕掛けの騎士。彼は駄目押しとばかりに「さもなくば……」と御伽噺の本のページを開いて、最後通告を行う。

「大音声で朗読会を開き、この世界に根付くまで子供達に愛と正義を語りますよ!」
「「そ、それだけはどうかご勘弁を~~~っ!!!!?」」

 もはや尊敬とかいうレベルでなく、マジのガチめな恐怖の悲鳴を上げるアルラウネ達。
 トリテレイアの宣言は異世界では慈善事業に該当する類のものだが――それが違法行為になるのが魔界の法。こんな脅迫を受けて善良な一般悪魔が抵抗できるはずがない。
「や、家賃支払いますから、払いますから~」
「は、はやくその本をしまって下さい~!」
 必死な悪魔達から家賃を押し付けられ、逃げるように道を譲られる悪逆(?)の騎士。
 脅しは上手くいったが「少し」では無かったかもしれない。綺麗さっぱり誰もいなくなった進路を見て、彼は機体の収納スペースに本をしまった。

「……恐らく、普通に悪らしい行為の方が楽でしたね……」
 ストレートな脅しよりもだいぶ捻った手法になったのは、善良な民を傷つけたくないという思いと、騎士としての拘りの強さゆえだろうか。何にせよ、無血で悪魔達の妨害を退けたトリテレイアは、いよいよオブリビオンのいるマンションの最深部に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『デストロイキング』

POW   :    デストロイキング軍
レベル×1体の【ビューティスパイダー】を召喚する。[ビューティスパイダー]は【女郎蜘蛛】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    デストロイ光線
レベル分の1秒で【背中の魔力角から破壊光線】を発射できる。
WIZ   :    デストロイウェポン
【腹部の巨大な口に取り込んだ物体】から、対象の【全てを破壊したい】という願いを叶える【破壊兵器】を創造する。[破壊兵器]をうまく使わないと願いは叶わない。

イラスト:シャル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「グワーッハッハッハ! また性懲りもなく取り立てに来たか! 馬鹿な奴らめ!」

 アルラウネの妨害を退け、ついにマンションダンジョンの最深部に辿り着いた猟兵達。
 そこで待ち受けていたのは筋骨隆々とした肉体を誇る巨漢。暴力的で威圧的なオーラを纏ったこの悪魔こそ、現在マンションを支配する魔王「デストロイキング」である。

「このマンションは既に我の城だ! ここにある全てのカネ、全ての生命、全ての存在は我だけが利用し、破壊する権利を持つ! 邪魔する奴もデストロイだ!」

 その言動はまさに傲岸不遜。他者を蹂躙する対象としか見ていない、破壊衝動の権化。
 ワルぶってはいても善良だった他の悪魔とは根幹からして違う。オブリビオンとして蘇った彼は生前の優しさや高潔さを全て失い、純然たる邪悪として魔界を破滅に導く存在。

「我こそはデストロイキング! 新たな魔界の覇者、デビルキングとなる者だ!」

 このマンションダンジョンにおいて彼だけが、猟兵が倒さなければならない真の邪悪。
 悪魔達の善良さにつけ込み、利用し、邪悪な野望の片棒を担がせる――そんな所業を見過ごしていては、いずれこの世界はオブリビオンが支配する本当の魔界になってしまう。
 確かにデストロイキングは強者だが、彼は自分の「城」の造りを把握している訳ではない。ここまで攻略してきたマンションや罠に関する知識が、猟兵達の武器となるはずだ。

 本当の「悪魔」から魔界を守り、暴力に魅了された悪魔達を非道から連れ戻すために。
 猟兵達は戦闘態勢を取り、大ボスとの決戦に挑む。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン、自称「デビルキング」か…
こんなマンション一つで大騒ぎとは、おめでたい事だ

パワードスーツをパージ
身軽になると同時に銃器でキングとスパイダー達を狙撃し、犇めく蜘蛛達を踏み付けながらダッシュでキングに接近をする

自分の城にどんな罠があるのか、その身で味わうのも一興だろう
なに、礼には及ばんさ

キングに接近したらUCを発動
全力で蹴りを叩き込み、キングを罠のある場所まで吹き飛ばす
数々の罠に晒されたキングの動きが止まったら、周辺の蜘蛛をキングの元に蹴り飛ばし、打ち当てる事で追い討ちをかける
事前にアルラウネ達から罠の密集地帯を聞き出しておこう

充分に楽しんだか?
最後は骸の海がお前を待っているぞ



「フン、自称『デビルキング』か……こんなマンション一つで大騒ぎとは、おめでたい事だ」
 悪魔の王を称するオブリビオン、破壊の悪魔「デストロイキング」に冷ややかな眼差しを向けるのはキリカ。善良な悪魔達を騙し、たかだか不法占拠と家賃の滞納程度でもう世界を獲ったつもりとは片腹痛い。世界には彼よりもっとワルい奴らがいるのだ。
「フン! 我が覇道はこれから始まるのだ! いでよ、デストロイキング軍!」
 小馬鹿にされたデストロイキングはフンと鼻を鳴らしながらユーベルコードを発動し、蜘蛛型の魔物「ビューティースパイダー」の群れを召喚する。アルラウネ大家族のように心酔させた悪魔とは異なり、こちらは彼の手となり足となり働く忠実な眷属達だ。

「征けい!」
 デストロイキングの号令一下、ビューティースパイダーの群れはカサカサと床や壁を這って進撃を開始する。対するキリカはここまで世話になったパワードスーツをパージし、身軽になると同時に自動小銃"シルコン・シジョン"を構え、押し寄せる敵を狙撃する。
「邪魔だ」
『ピギャー?!』
 聖書の箴言が込められた神聖なる弾丸が、魔王の眷属を撃ち抜く。先程まで相手にしてきた善良な自称悪魔達ならいざ知らず、真に邪悪なる者とその配下には効果覿面だろう。
 マンションに響き渡る断末魔の悲鳴をよそに、キリカは犇めく蜘蛛達を踏みつけ、逆に足場として利用しながらダッシュでデストロイキングに接近する。

「自分の城にどんな罠があるのか、その身で味わうのも一興だろう」
「ヌゥ?!」
 射撃から格闘戦の間合いに踏み込んできたキリカに、デストロイキングはとっさに両腕を交差しガードの構えを取る。ご自慢の屈強な肉体で攻撃を受け止め、反撃に繋げる算段なのだろうが――その判断は甘かった。
「吹き飛べ」
 着用者の身体・運動能力を極限まで高める「アンファントリア・ブーツ」を履いた状態で彼女が放つ【サバット】の威力は、一蹴りで戦艦すらも破壊する。人間の域を超えた重い衝撃をモロに食らったデストロイキングの巨体は、ガードの上から吹き飛ばされた。

「ヌオォォォォォォ?!」
 暴力の悪魔が吹き飛ばされた先に待っていたのは、このマンションの住人――すなわち彼の元・配下が仕掛けたトラップ。巨体が踏みつけたタイルから炎が吹き出し、電流がほとばしり、金ダライが降り注ぐ。仮にも対悪魔用トラップ、威力自体は折り紙付きだ。
「き、貴様ァッ!!」
「なに、礼には及ばんさ」
 数々の罠に晒された敵の怒号を、キリカは涼しげな冷笑で受け流す。この作戦のために彼女はあらかじめ味方につけたアルラウネ達から罠の密集地帯を聞き出しておいたのだ。
 これで敵の動きが止まったらしめたもの。追い討ちとばかりに彼女は周辺にいる蜘蛛をサッカーボールのようにキングの元に蹴り飛ばし、厳つく歪んだ顔面に打ち当てる。

「ごはッ! グオッ!? ガハァッ?!!」
 クリーンヒットの衝撃でのけぞるデストロイキング。たたらを踏んだ拍子にまた新しいトラップタイルが作動し、絶え間なく連鎖する罠と攻撃の無限ループに彼は陥れられる。
「充分に楽しんだか? 最後は骸の海がお前を待っているぞ」
「ぐ、ま、待て、待つのだ……グワーーーッ!!!?」
 付近の罠があらかた出尽くしたところで、仕上げにキリカはもう一度、渾身のサバットを直接叩き込む。今度はガードする暇もなく直撃を食らったデストロイキングは、初撃よりも大きく彼方まで吹っ飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ムシカ・ガンダルヴァ
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
死こそが最大の破壊である、万物に死は訪れるのだよ。
そう、死の神であるボクを除いて、ね?

UC【冥神の王国】を用いて武装巨大鼠を召喚。
「呪詛」を用いて<思考を曖昧にさせる呪詛を散布する自爆装置>を武装させ、<取り込まれると取り込んだモノを自壊させる呪詛>を巨大鼠にかける。
デストロイキングの腹部の口に巨大鼠を無理矢理突撃させて自爆・自滅させる事で、創造された破壊兵器を自壊させたり、キングの思考を曖昧にして願いを叶えさせないようにする。
後は『鉄鼠君初號機』に乗って『EP多腕』で殴りまくって『RXSマントラ・チャクラム』で切り裂いてフィニッシュ!
……出来ればいいなぁ



「死こそが最大の破壊である、万物に死は訪れるのだよ」
 破壊の王を名乗る傲慢なオブリビオンに、ムシカは尊大かつ威厳ある態度で言い返す。
 生物は無論、あらゆる物質、蘇りし『過去』にすら例外なく訪れる終焉、それが死だ。どんな腕力や暴力をもってしても、この運命の力から逃れることはできない。
「そう、死の神であるボクを除いて、ね?」
 【冥神の王国】より召喚せし武装巨大鼠を従えて、冥神(見習い)はにこりと微笑む。
 その背から放たれる黒紫の光明は、彼女が持つ神の力を分かりやすく視覚化していた。

「デビルキングとなるこの我が、死など恐れるものか! 小鼠風情が調子に乗るな!」
 対するデストロイキングは大音声で宣うと、腹部の巨大な口でマンションにバリバリと齧りつき、それを素材とした【デストロイウェポン】を創造する。「全てを破壊したい」という彼の願望が具現化されたそれは、通常の武器とは異なる禍々しい形状をしていた。
「行け、我が眷属よ!」
 武器を得たことで膨れ上がる敵の威圧感にも怯まず、巨大鼠の群れは突撃を仕掛ける。先刻のアルラウネ戦の時のように、ムシカの呪詛で武装させられた鼠達はそれ自体が凶悪な生物兵器と化しているが、デストロイキングはまだその事を知らないはずだ。

「目障りだッ!」
 デストロイキングが破壊兵器をひと振りするだけで、鼠の群れは木っ端微塵に吹き飛ぶかマンションの赤いシミとなる。流石は過去に名の知れた魔王一族の出だった事はあり、その豪快かつ強靭な蛮力は、あるいは本当に"死"さえも破壊してしまうかもしれない。
 だが冥神の眷属達はそれでもめげずに突撃を続け、散っていった何十という仲間の屍を超えて、一匹がデストロイキングの元に辿り着く。そして無防備に開かれたままの腹の口に狙いを定めると――自らその口内に飛び込んだ。
「グワーッハッハッハ……ムグッ?!」
 巨大鼠を虐殺して勝ち誇っていたデストロイキングが、無理矢理口の中に突っ込んできた違和感に閉口する。今回ムシカが眷属達にかけておいた呪いは二種類あり、その一つは「思考を曖昧にさせる呪詛を散布する自爆装置」だった。

「な、何だコレは……頭がクラクラするぞ……?」
 たった一匹とはいえ、腹の中で自滅した巨大鼠の呪いをモロに喰らったデストロイキングは、酷い酩酊状態に陥った時のように、頭を押さえながらふらふら千鳥足でよろめく。
 このチャンスを逃さず、ムシカは鼠獣人型オブリビオンマシン「鉄鼠君初號機」に乗って急接近。サブアームも含めた2対の腕で、朦朧状態の敵を殴って殴って殴りまくる。
「これでも喰らえ!」
「ゴフッ、ゴハッ! ちょ、調子に乗るな……?!」
 ボコボコにされて少しは意識のはっきりしたデストロイキングは、怒りと共に反撃を仕掛けようとするが――見れば、彼の持つ破壊兵器はボロボロに朽ち果ててしまっている。
 それはムシカが巨大鼠にかけていた「取り込まれると取り込んだモノを自壊させる」もうひとつの呪詛の作用だった。慌てて新しい武器を創造しようにも、呪いで曖昧にされた思考では【デストロイウェポン】を発動させるための願いも定まらない。

「最後はこれでフィニッシュ! ……出来ればいいなぁ」
 ここぞとばかりにムシカの「鉄鼠君」が構えたのは「RXSマントラ・チャクラム」。微妙に弱気の漏れた本人の性根とは裏腹に、ある神より賜りし疫病と死の戦輪は、容赦なくデストロイキングの巨体を切り裂いた。
「グワーーーーッ!!!?!!」
 ばっさりと裂けた傷から鮮血が吹き出し、耳をつんざくような絶叫が辺りに響き渡る。
 死こそが最大の破壊である。冥神が告げた言葉を、彼は身を以て思い知る事になった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「いろいろ言いたい事はあるっすが」

どろんと妖怪煙を広域散布。自身は【化術】で【迷彩】
煙に含まれる妖力を使い【化術】で猟兵の【残像】を見せ、敵の攻撃をスカしつつ誘導する

「とりあえずツッコませろっす」

【罠使い】で迷宮や残存罠を利用、崩れやすい通路で破壊光線を撃つと危険と思わせる。それでも撃つなら床を崩し、落下先に配置した【毒使い】の麻痺毒の罠にかける

「金集めにマンション支配とか!それを破壊とか!この世界の全てに!なぁんでやねん!っす」

『綿ストール・本気モード』!
ハリセンモードで往復ビンタ【乱れ撃ち】!
反撃【見切り】して【カウンター】で摩擦減のストール踏ませて【体勢を崩し】とどめの全力【なぎ払い】!



「いろいろ言いたい事はあるっすが」
 悪魔の王になるだの何だの大言壮語をのたまう今回のボスに胡乱な視線を向けながら、衣更着は十八番の化術を使った。どろんと出てきた妖怪煙が辺り一面に広がっていき、彼の姿を敵の視界から隠す。
「とりあえずツッコませろっす」
「断る!」
 デストロイキングは無駄に男らしい一言で返すと、煙幕に向かって【デストロイ光線】を放つ。仮にもこのマンションの悪魔を従えていた暴力は伊達ではなく、直撃すれば重傷間違いなしの破壊光線が、もうもうと立ち込める煙を吹き飛ばしていく。

「ツッコミ所満載のくせに、真っ当に強いのが嫌になるっす」
 衣更着はぼやきながら妖怪煙の散布を続け、それに含まれる妖力を使って自分や味方の幻を作り出す。煙のスクリーンに浮かび上がる猟兵のシルエットを見たデストロイキングは、背中の魔力角から矢継ぎ早の速度で光線を連射する。
「隠れても無駄だ! 全員デストロイしてやるぞ! グワーッハッハッハ!」
 豪快に笑いながら破壊の嵐を巻き起こす姿は「破壊の王」の名に恥じぬものではあるが、どうも彼の頭脳はあまり良くないらしい。見せられているものが全て虚像で、実体には一発も当たっていないのに気付いていない。これが脳筋というやつかと衣更着は呆れる。

「こっちっすよ」
「待て待てぇい!!」
 幻で攻撃をスカしつつ衣更着が声をかけると、デストロイキングはズシンズシンと足音を響かせて追ってくる。何が待っているかも分からない煙幕の中に飛び込むのが、いかに危険な事か考えもしないで。
「うん? 今何か踏んづけたような……ぐおッ?!」
 カチリと小さな音がした直後、彼の足元でドカンと爆発が起こる。ここはマンションに住む悪魔達が仕掛け、まだ解除されないまま残存していたトラップ地帯。しかも度重なる増築で構造的に脆くなっており、いつ崩れてもおかしくない状態の通路だった。

「ここで破壊光線を撃つと危険っすよ?」
「フン! そんな脅しで我が怯むとでも思ったか!」
 衣更着としてはここで敵が光線の使用を躊躇してくれれば良かったのだが。よく言えば豪快、悪く言えば考えなしのデストロイキングは知ったことかとばかりに光線を撃った。
「また悪魔共に建て直させればいいのだ! デストローイ!」
「あんたの下にだけはつきたくないって心から思ったっす」
 自分で自分の拠点を破壊する敵に呆れつつ、衣更着は首から巻いた綿ストールをひと打ち。その衝撃が駄目押しとなって床に亀裂が走り、双方を巻き込んでの崩落が始まった。

「うおおおおおッ?!」
 ガラガラと崩れ落ちる瓦礫に紛れ、落下していくデストロイキング。見た目通り強靭な肉体を持つ彼なら、1フロアぶんの落下など大したダメージにはならないだろうが――。
「―――ぐがッ?! か、身体が痺れ……!」
 彼が落ちてきたポイントに仕掛けられていたのは麻痺毒の罠。言うまでもなく衣更着が事前に配置していた物で、敵が光線を撃つのに躊躇しなかった場合に備えた第二の策だ。
 動きの止まったデストロイキングを見て、綿狸忍者が落下物を足場にして降りてくる。その手に構えた綿ストールは、妖力を注がれることで巨大なハリセンに形を変え――。

「金集めにマンション支配とか! それを破壊とか! この世界の全てに! なぁんでやねん! っす」

 溜まりに溜まったツッコミ衝動を込めた、【綿ストール・本気モード】の往復ビンタ。
 ビシバシビシバシと快音を立てて叩きつけられる衝撃に、デストロイキングの顔が右に左に揺れまくる。
「がふっ、ごほっ、げはっ、ぐおぉっ?! こ、こいつッ――!」
 痺れの残った身体で繰り出された反撃をひらりと見切り、逆に摩擦係数を減らしたストールの端を踏ませる。まんまとすっ転んだ無様な敵に、大きくハリセンを振りかぶって。
「もいっちょ、なぁんでやねん! っす!」
「ぐ、グワーーーーッ!!!!?!」
 スパーン! とマンション中に響き渡るような小気味いい音と絶叫を残し、衣更着の全力を食らったデストロイキングは、崩落した瓦礫の向こう側まで吹っ飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「…はぁ」
二度目の溜め息をつく。その深ーい溜息つきながらも圧倒的な悪のカリスマを持った女がじりじりとにじり寄って来る。

「と、言う訳で黒柳カビパンの部屋のゲストへようこそ」
「――っ!」

嫌な予感から身を翻して逃げようとするデストロイキング。
が、黒柳カビパンに回り込まれた。大魔王からは逃げられない。それは世界の絶対法則。だが黒柳カビパンは非常にテンションが低く、いつも以上に冷酷な塩対応。

「そういうの辞めた方がいいわよ✋我々はもういい大人なんだから、つまらないワルは卒業しましょう✋あなた子供だと思われますよ✋」
言葉と言う名の、冷たいナイフを容赦なくデストロイキングに遠慮なく突き立てる。その様は無慈悲。



「グヌヌ、貴様らなかなかやるではないか……これはデストロイし甲斐がありそうだ!」
 予想を超えた猟兵の反撃に逢いつつ、悪魔の王を目指すデストロイキングは挫けない。
 トレードマークとも言える「グワーッハッハッハ!」という豪快な笑いと共に立ち上がる彼を見て、自称・悪のカリスマの頂点ことカビパンは本日二度目の溜め息をつく。
「……はぁ」
「……何だ貴様? 何か文句があるのか?」
 その深ーい溜め息をつきながらも圧倒的な悪のカリスマを感じさせる女が、じりじりとにじり寄って来る。デストロイキングは油断なく拳を構えながらも、戸惑いを隠せない。
 この女はヤバいと本能が訴えている。己が暴力で破壊できないものなどこの世には無いはずだが、魔王としての彼の直感は暴力とは別ベクトルのヤバさを感じ取っていた。

「と、言う訳で黒柳カビパンの部屋のゲストへようこそ」
「――っ!」

 デストロイキングの嫌な予感は、この一言でいよいよ確信に変わる。彼は反射的に身を翻して逃げようとするが、正面にいたはずのカビパンに一瞬のうちに回り込まれていた。
「大魔王からは逃げられない。それは世界の絶対法則でしてよ?」
 再びユーベルコードを発動することで黒柳カビパンとなった彼女はこともなげに言う。
 暴力の魔王何するものぞ。寧ろ、ただ破壊することしかできない輩と、カビパンが司るギャグは相性最悪と言える。そういった無粋な蛮力を笑い、からかい、はぐらかすのは、鉄板の「ネタ」の一つである。

「それじゃあ、まあ、適当に自己紹介してくださる?」
 だが今回の黒柳カビパンは非常にテンションが低く、いつも以上に冷酷な塩対応でゲストに接する。完全に舐め腐った態度にデストロイキングの怒りのボルテージが急上昇するが――ここでキレて暴力を振るえば、それこそ彼女の挑発に負けたも同然である。
「我は暴力の魔王デストロイキング! 大魔王だと? 悪魔ですらない人間が片腹痛い! 貴様など我が拳をひと振りしただけで吹き飛ぶような脆弱な存在だろう!」
 塩対応の意趣返しとばかりに、傲慢かつ不遜な物言いで応戦するデストロイキング。
 しかしそれに返ってきたカビパンの答えは、怒りではなくさらなる塩対応であった。

「そういうの辞めた方がいいわよ」
 すっと「STOP」の仕草で片手のひらを向けながら、冷たい笑みを浮かべるカビパン。
 その口ぶりはまるで聞き分けのない若者を諭すようで、無性に神経を逆撫でされる。
「我々はもういい大人なんだから、つまらないワルは卒業しましょう。あなた子供だと思われますよ」
「ぐっ……き、貴様ァッ!?」
 完全に小馬鹿にされている。というかまともに相手にすらされていない。頭に血を上らせて真っ赤になったデストロイキングに、カビパンは言葉という名の冷たいナイフを容赦も遠慮もなく突き立てていく。

「はい、じゃあ今回の黒柳カビパンの部屋はここまで。お話ありがとうございました」
「まだ何も話しておらんわァッ!!!」
 自分だけ言いたい放題言うだけ言って、しまいに勝手に番組を終わらせてとっとと撤収しようとするカビパンに、とうとうデストロイキングはキレた。【デストロイウェポン】を振り回し、ぎったんぎったんにブチのめしてやろうと息巻くが、やはり時すでに遅し。
 女神の幸運に味方されたカビパンは、あっという間に敵の前から姿を消したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
マンション一つ支配した程度で何を大口叩いてるのかしら、この筋肉ダルマは…。

二章で虜にしたアルラウネ達に案内して貰い、マンションの管理室の場所を確認。
管理室への道中に1章から連れてる罠うさぎとヴィラン隊、アルラウネ達に罠を仕掛けさせ、管理室から館内放送で全体にデストロイキングを徹底的に侮辱、罵倒し、自身こそがデビルキングに相応しい吸血姫であり、異議があるなら掛かって来なさいと挑発。
敵がキレて差し向けて来た軍を仕掛けた罠で全滅させつつ、自身は別ルートで回り込んでイライラしてる敵の背後へ。
全力の【限界突破】【神槍グングニル】を叩き込んで吹き飛ばしてあげるわ♪

こんなのと真面目に戦うのも馬鹿らしいしね♪



「マンション一つ支配した程度で何を大口叩いてるのかしら、この筋肉ダルマは……」
 呆れた、と言わんばかりの態度で呟くと、フレミアはデストロイキングから踵を返し、味方が戦っている隙に前線から遠ざかる。もちろん逃げたのではない、作戦があるのだ。
 フレミアには先の戦いで虜にしたアルラウネ達がいる。このマンションで長く生活してきた彼女らは、当然その構造に詳しい。建物の管理に関する事柄についても知っている。
「こちらがこのマンションの管理室です~」
 花の悪魔の案内で【虜の軍勢】と共にやって来た吸血姫は、そこにある館内放送の設備を見るとにやりと笑い。マイクを手に取るとスイッチを入れ、ボリュームを最大にする。

『聞こえるかしら、デストロイキング。いえ、お山の大将と言ったほうが良いかしら?』
「ムッ! なんだこの声は!」
 館内放送を通じて発信されたフレミアの声は、戦闘中のデストロイキングにも届いた。
 こいつは他の悪魔を邪悪さで従えていたものの、越してきたばかりでマンションの構造には疎い。一体どこから声が聞こえてくるのだとキョロキョロする様子が、監視カメラを介して管理室のモニターにはっきりと映し出されていた。
『あなたみたいな筋肉ダルマが王だなんて下らない冗談だわ。しかるべき教養もカリスマもない、壊すことしかできない無能が威張ったところで、真の王者には敵わないのよ』
「なんだとッ?!」
 遠くにいるのを良いことに、フレミアはデストロイキングを徹底的に侮辱し罵倒する。それは本人だけでなくマンション全体に放送されており、かの者がいかに愚かであるかをここに住んでいる全悪魔に伝える、盛大なネガティブキャンペーンにもなっていた。

『デビルキングに相応しいのは吸血姫であるわたし。異議があるなら掛かって来なさい。それとも場所を教えてあげないとだめかしら?』
「馬鹿にするなッ! 八つ裂きにしてくれるッ!」
 怒りと恥辱で顔を真っ赤にしてブチ切れたデストロイキングは、フレミアのいる管理室に【デストロイキング軍】を差し向ける。召喚された眷属「ビューティースパイダー」の群れは、主君の怒りに応じてカサカサと進撃を開始するが――。
『だから愚かだと言うのよ』
 デストロイキングのいるフロアから管理室までの道中には、罠うさぎとヴィラン隊、そしてアルラウネ達の手による罠が大量に仕掛けられている。バカ正直にも足を踏み入れた敵軍は連鎖起動するトラップの"歓迎"を受け、たちまち阿鼻叫喚の事態に陥った。

「ギャァァァァァァァァァーーー!!!」
 爆発、電流、落とし穴、金ダライ。悪魔達だけで作ったものよりクオリティの上がった罠により、ビューティースパイダー達は全滅。「軍」同士の戦いでも率いる者の資質に差があれば、こうも一方的な結果になるのだという、お手本のような戦果であった。
「グヌヌヌヌヌ……! 使えないヤツらめ!」
 指揮官としての己の無能を棚に上げ、イライラをつのらせるデストロイキング。かくなる上は自分が直接乗り込むまでだと、床を踏み壊さんばかりの勢いで管理室に向かう――その時。彼の背後に黄金の髪をなびかせながら、紅い槍を持った影が音もなく近付いた。

「本当に使えないのは誰かしらね?」
「なッ?!」
 慌ててデストロイキングが振り返った時にはもう遅かった。館内放送とトラップを布石にし、敵の注意を引きつけたうえで自身は別ルートから背後に回り込む――フレミアの立てた作戦は完璧に成功し、敵は【神槍グングニル】を構えた彼女の前で隙を晒している。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……吹き飛ばしてあげるわ♪」
「き、貴様ッ―――グワーーーーーッ!!!?!」
 にこやかな微笑みと共に放たれた全力の神槍は、デストロイキングの土手っ腹に見事に突き刺さり、圧縮された莫大な魔力と超威力で吹き飛ばす。破壊を司りし暴力の悪魔は、結局フレミアとは一度も拳を交える機会さえ与えられず、悲鳴と共に吹き飛ばされた。

「こんなのと真面目に戦うのも馬鹿らしいしね♪」
 彼方に吹っ飛んでいったデストロイキングを見送り、グングニルを回収するフレミア。
 王としての格を見せつけたその勝ち方に、眷属は勿論、放送を聞いていた悪魔達からも大いに尊敬と敬服が寄せられるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
外見的にパワーや耐久力はありそうだね…。
でも、その割に近接戦闘系の能力無いんだ…。

「見せ筋?」
「でもムキムキ!」
「パンチで部屋吹き飛ばしてた!」

正面から戦っても面倒そうだし、地形を利用させて貰おうか…。
二章で仲間にしたアルラウネの子達に協力して貰い、『花畑化増殖』でキングの部屋の外を大量のお花畑に…。
それにより、床の罠や【呪詛】による侵食を隠しつつ、敵を黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】や呪力弾【呪殺弾、呪詛、高速詠唱】による遠距離攻撃で部屋の外へ誘き寄せてマンション内の罠や自身で侵食した地帯を利用…。

敵を罠に嵌めたり、呪力で汚染したりで弱らせ、【ultimate】で仕留めるよ…。



「外見的にパワーや耐久力はありそうだね……。でも、その割に近接戦闘系の能力無いんだ……」
 猟兵達と戦うデストロイキングの姿を遠巻きに眺め、その戦い方を観察するのは璃奈。
 いかにもステゴロ上等といった雰囲気を出していながら、その実使うユーベルコードは配下を召喚したり、光線を撃ったり、武器を作ったり。意外に小器用と言えばそうだが、特徴的なフィジカルをあまり活かせていない気もする。
「見せ筋?」
「でもムキムキ!」
「パンチで部屋吹き飛ばしてた!」
 一緒に様子を見ていたメイド達も、口々にそんなことを言う。まあ基本的に頑丈な悪魔の中でも上位にあたる強者だ、その肉体が虚仮威しということはあるまい。事実、結構なダメージを受けているにも関わらず、敵の気勢はまだ衰える様子を見せなかった。

「聞こえているぞ貴様ら! 言いたいことがあるなら戦え!」
 自分の部屋に戻ってきたデストロイキングは、璃奈達を見つけると適当な瓦礫を腹の口に放り込んで【デストロイウェポン】を創造。禍々しい形状の破壊兵器を振り回しながらのしのしと近付いてくる。
「正面から戦っても面倒そうだし、地形を利用させて貰おうか……」
「「まかせてくださーい」」
 対する璃奈は先ほど仲間にしたばかりのアルラウネ達に協力してもらい、敵の部屋の外に花の種を撒く。【花畑化増殖】により咲き乱れる大量の花が、たちまちマンションの床を覆い尽くして一面の花畑に変えた。

「呪力解放・黒桜……」
 璃奈は花畑の上に立って呪槍・黒桜を振るい、矛先より放たれる呪力の桜吹雪や弾丸でデストロイキングに遠距離攻撃を仕掛ける。建物内に吹きすさぶ黒い花弁の嵐は、美しくも生命を蝕む呪いの洗礼だが――これだけで敵を止められるとは彼女も思っていない。
「遠くからちまちまと小賢しい! 悪魔たる者、正面粉砕デストロイあるのみよ!」
 自分も破壊光線とか撃っていたのを棚に上げて、デストロイキングは己のタフさにものを言わせて呪詛をはね退け、強引に距離を詰めてくる。小柄な少女と屈強な悪魔とでは、肉弾戦になった際の優劣は明らかなように見えた。

「グワーッハッハッ……ハ? 何だ?」
 しかしデストロイキングが自分の部屋から花畑に出た瞬間、ガシャンと音を立てて何かが彼の足を挟んだ。それは悪魔達がマンションに仕掛けていた罠のひとつ――それを作動させるタイルが一面の花に隠されていたせいで、彼は気が付かなかったのだ。
「ここは貴方の城じゃない……」
 マンションの何処に何の罠があるかなど、こいつは知らないだろう。璃奈がアルラウネ達に頼んで戦場を花で埋め尽くした理由がこれ。見惚れてしまうほど美しい花畑の下に、一体何が隠れているのか、知っているのは彼女達だけだ。

「グヌヌ! 罠くらい、力尽くでデストロイして……グゥっ?」
「罠だけじゃないよ……」
 デストロイキングはなおも息巻きながら力押しの戦法を続行しようとするが、再び前に出ようとした身体がぐらりとよろめいた。マンションの攻略中から璃奈が建物に侵食させてきた呪詛、それがもう1つのトラップとなって悪しきオブリビオンを汚染している。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……」
 二段構えの仕掛けで弱らせた敵の前で、璃奈は【ultimate one cars blade】を発動。
 魔剣の巫女である彼女が奉ずる魔剣・妖刀達が、純粋な「終焉」の力となって彼女の手に集まっていく。高まる力の波動を感じ取って、さっと青ざめるデストロイキング。

「その力を一つに束ね、我が敵に究極の終焉を齎せ……!」
「ま、待て―――ッ!!!!!」
 制止の言葉よりも早く、振り下ろされたのは全ての魔剣の力を集約させた究極の一刀。
 それはデストロイキングの巨躯を袈裟懸けに斬り伏せ、ご自慢の破壊兵器を粉砕する。
 遅れて上がった絶叫とおびただしい量の鮮血が、彼の受けたダメージを物語っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
分かりやすいと言いますか、何と申しましょうか
今、私は御伽噺の悪役のような貴重な存在と相対しているのやも…

…失礼、騎士としてお相手しましょう

地形は●情報収集しマッピングは完璧
キング軍を迎え打ち数を減らしつつ●推力移動の逆噴射滑走で多勢に無勢と後退
細い通路で軍団とキングが縦に並べば反撃開始

昔日であればこの状況に気づけた筈
領地を把握し気を配ってこその王ですよ

UCの鉄球を高速回転させ●推力移動で射出
逃げ場無き女郎蜘蛛達を潰しつつキングへ直撃させ爆破
鉄爪の感電と合わせ拘束しワイヤー巻き取り

広い場所へ引き摺り出し●怪力で鉄球宜しく地や壁面へ叩きつけ

…もしや、このような所業が悪魔受けが良いのでは!?



「分かりやすいと言いますか、何と申しましょうか」
 言葉の響きに若干の呆れめいた気持ちを秘め、この迷宮の王と相対するトリテレイア。
 破壊の悪魔デストロイキング。万物を破壊する事しか頭にない、粗暴で野蛮な振る舞いと傲慢な言動。彼が戦ってきた敵の中でも、ここまで「分かりやすい」輩はレアである。
「今、私は御伽噺の悪役のような貴重な存在と相対しているのやも……」
「何か言ったか貴様!」
「……失礼、騎士としてお相手しましょう」
 これ以上を口にするのは流石に、騎士としての礼を失すると思ったのか。彼は発言を止めて剣と盾を構える。さながら魔王に挑む勇者といったその佇まいに、デストロイキングは己が眷属を差し向けた。

「蹂躙せよ! デストロイキング軍!」
 蜘蛛型眷属「ビューティースパイダー」で構成された軍勢は、主命に忠実に牙を剥く。
 個々の戦闘力で言えば先程戦った悪魔達のほうが強いだろう。しかし敵に手心を加えるような善良さを持たず、主に絶対服従するという点では此方のほうが厄介か。
「しかし戦法はただの力押し。ならば恐れる必要はありません」
 トリテレイアは迫る蜘蛛を盾で受け止め、剣で切り払い、格納された銃器で迎え撃つ。
 やはり一対一では相手になるような敵ではない。しかし主君に似て恐れ知らずな蜘蛛達は、仲間の屍を踏み越えてなおも進撃を続け、徐々に騎士を包囲しようとしていた。

「グハハハハ、どうしたどうした!」
「……流石に多勢に無勢ですね」
 勢いの止まらないデストロイキング軍に対し、トリテレイアは一時後退を選択。脚部のスラスターを逆噴射させ、銃撃で敵を牽制しながら滑るようにマンションを駆けていく。
 無論、逃げる相手を見過ごすような連中ではない。追撃するビューティースパイダーとデストロイキングの高笑いに追われ、彼は次第に隘路へと追い込まれていくが――表面上は焦ったように銃器を乱射する彼の内心は、「計画通り」と冷静に状況を判断していた。
(地形は情報収集しマッピングは完璧)
 既に敵以上にここの構造を把握しているトリテレイアは、追われるように見せかけて、実際には多勢を一網打尽にできる場所に敵軍を誘導していた。そうとも知らずに彼の後を追いかけたデストロイキング軍は、自分達の無策無謀のツケをすぐに支払うことになる。

「……誠に失礼ながら、ここまで簡単にいくとは思いませんでした」
 細い通路で軍団とデストロイキングが縦列に並ぶと、トリテレイアは反撃を開始する。
 取り出したのは【拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球】。ワイヤーに繋がれバーニアから炎を噴き出す巨大な棘付き鉄球が、轟々と唸りを上げて高速回転する。
「些か蛮族染みてはいますが、重火器よりは騎士として格好がつくでしょうか」
「んな――ッ!?」
 剛速で射出される棘鉄球が、押し寄せるビューティースパイダーを轢き潰す。仰天したデストロイキングはここに至り、左右を壁に挟まれ逃げ場が無い事にようやく気付いた。
 軍団を一網打尽にした鉄球は勢いを落とさずキングに直撃し、爆発。さらに鉄球から飛び出した鉤爪が標的の身体に突き刺さり、高圧電流を体内に流し込む。

「昔日であればこの状況に気づけた筈。領地を把握し気を配ってこその王ですよ」
「ぐ、お、おのれぇぇぇぇぇッ!!?」
 感電と拘束により満足に動けないまま、咆哮するデストロイキング。鉤爪とワイヤーにより繋がれた暴力魔王の巨体を、トリテレイアは巻き取り機構を作動させて引き寄せる。
 そのままズルズルと通路から広い場所まで引きずり出してから、ウォーマシンの膂力をフル活用し、地面や壁面へと力任せに叩きつける。
「ごはっ、ぐがっ、げほぉっ!!?!」
 鉄球宜しく打ちのめされるデストロイキングの悲鳴が、マンション中にこだまする。
 その仕掛け人であるトリテレイアは、ワイヤーを振るう腕を緩めないままふと思う。
「……もしや、このような所業が悪魔受けが良いのでは!?」
 ――正解である。

大成功 🔵​🔵​🔵​


『カッコいい……!』
 御伽噺の騎士らしさからは遠ざかる暴力的な戦法、暴力の魔王を容赦なく叩きのめすその姿が、密かに様子を見ていた悪魔達の支持を集めているのを、彼はまだ知らない――。
大町・詩乃
ようやくオブリビオンのお出ましですね。
生前は優しく高潔な魔王さんなので、それを思い出して骸の海に還れるよう頑張ります!

ビューティースパイダーによる糸等の攻撃は、触れない様に結界術による防御結界で受け止めて、衝撃波で弾き飛ばします。
更に風の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃で反撃、蜘蛛さんの身体は柔らかいので広範囲に斬る攻撃が効果的です。

その攻撃に隠れるように、残像を残しつつ、空中浮遊・自身への念動力・空中戦でデストロイキングさんに素早く近づき、相手の攻撃はオーラ防御を纏った天耀鏡で盾受けして凌いた上で、UC使用。

「元の優しい魔王さんに戻って下さい!」と慈悲の祈りの元、浄化を籠めて頬をはたきます。



「ようやくオブリビオンのお出ましですね」
 善良な悪魔達をなるべく傷つけないようここまでやって来た詩乃は、ついに真の邪悪と対峙する。だがオブリビオン化して悪意に染まったとはいえ、あのデストロイキングも元は善良な悪魔の1人だったことに違いはない。
「生前は優しく高潔な魔王さんなので、それを思い出して骸の海に還れるよう頑張ります!」
「フン! 優しさ? 高潔さ? そんなものビタ一文の価値もないわ!」
 あくまで人(悪魔)の善を信じる女神に対し、破壊の権化と化した悪魔は辛辣だった。
 再び召喚された【デストロイキング軍】ことビューティースパイダーの群れが、糸を吐いて彼女を捕らえ、鋭い牙で肉を噛み千切ろうとする。

「すっかり悪に染まってしまわれているのですね……ですが、私は諦めません」
 詩乃は結界を張って蜘蛛の攻撃を触れないよう受け止め、さらに衝撃波で弾き飛ばす。
 この軍団はあくまでユーベルコードで召喚された魔王の眷属。数の多さと一糸乱れぬ行動力は厄介だが、ここまでに会った悪魔達のような情けをかける必要はない。
「蜘蛛さんの身体は柔らかいので、広範囲に斬る攻撃が効果的ですね」
 神力を込めて神楽鈴「瓏月」をリンと鳴らすと、澄んだ音色に共鳴して大気が逆巻き、彼女を中心とした竜巻が生じる。その風圧は研ぎ澄まされた刃となって蜘蛛を切り刻み、総大将までの道を阻む軍勢を吹き飛ばした。

「ムゥッ……!?」
 荒れ狂う風刃が巻き上げる砂塵と血煙が、デストロイキングの目を一瞬だけ眩ませる。
 その一瞬の内に詩乃は残像を置いて彼の元に急接近。念動力によって宙に浮かびつつ、風に乗って空を翔ける様は、まるで天女の舞のように美しい。
「何故そんなに破壊したがるのです? 生前の貴方はそうではなかったはず」
「破壊こそ我が権能! 我が本望! 邪魔をするなら貴様もデストロイだ!」
 説得の呼びかけになおも傲り荒ぶるキングは、握り固めた拳を渾身の力で叩きつける。
 詩乃は傍らに浮かぶ神鏡「天耀鏡」にオーラの輝きを纏わせ、その一撃を受け止める。オリハルコンから研ぎ出された鏡は超硬の盾となって破壊の拳を防ぎ、醜悪に歪んだ悪魔の姿をその鏡面に映し出した。

「元の優しい魔王さんに戻って下さい!」
 破壊の魔王の攻撃を凌いだ直後、慈悲の祈りの元で詩乃が放ったのは【改心の一撃】。
 全てを破壊せんとするオブリビオンの拳に比べれば、彼女の手は小さくか弱い。しかしその手には相手を真人間、もとい真悪魔に戻そうとする愛情と浄化の力が籠もっている。
「グハァーーーーッ!!?!」
 デストロイキングの頬をはたいたその一撃は、見た目よりも遥かに重く、痛烈だった。
 身体が斜めに傾くほどの衝撃の中で、彼はかつての己を取り戻す。それはほんの一時のことだったが、その刹那に放たれた言葉は彼の良心の叫びだった。

「グ、ウゥ……我を、倒せ……我が目指したデビルキングは、こんなものでは……!」
 どんなに高潔で善良な者も、オブリビオン化は世界を滅びに導く存在に変えてしまう。
 死してなお歪んだ覇道を邁進する『過去』からの、魂の嘆きがマンションに木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
いや、デビルキングになるのはこのぼくだよ。

キミみたいな弱っちいやつにデビルキングなんて無理だからね。

挑発してから走り出して、改良した罠のあるタイルの廊下に誘きだすよ。

対オブリビオン用に罠を強化、これについてはランダムではなく、ぼくの方でコントロールするよ。

ぼくがトラップを踏んで水をかぶったタイミングで。
油断したね、今だよ。下からの火炎放射機で火炙りだ。


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

やぁっと心おきなくブッ飛ばせるのが出てきたわねぇ。
…ホント、調子狂うったらなかったわぁ…

早撃ちなら負ける気はないけれど…せっかくトラップ全スルーしてきたんだし、有効活用しちゃったほうがいいわよねぇ。
シゲル(光)とエオロー(結界)で対光線の〇オーラ防御を展開。ミッドナイトレースにに○騎乗して曲がり角とか瓦礫から○挑発とイヤガラセでおびき寄せましょうか。
罠にハマったら反転攻勢、デバフ特盛○乱れ撃ちの釣瓶打ちでボッコボコにしちゃいましょ。

卑怯?汚い?ふふ、やぁねぇ。最高の褒め言葉よぉ?
こと悪意という面において、悪魔が人間に勝てるわけないでしょぉ?



「わ……我はデビルキングになる器だぞ! 貴様らのような虫ケラごときが……!」
「いや、デビルキングになるのはこのぼくだよ」
 猟兵との激しい攻防の末、劣勢に立たされたデストロイキングは苦い顔で喚き立てる。
 それを遮ったのはアリス。幼く愛らしい顔立ちに精一杯ワルそうなドヤ顔を浮かべて、シンプルかつストレートな言葉で敵を挑発する。
「キミみたいな弱っちいやつにデビルキングなんて無理だからね」
「なんだと貴様ァ!!!」
 敵がキレたらすぐさま背中を向けて走り出す。見るからに力自慢と素直に正面から戦う必要はない。ここには彼女が道すがら改良してきたトラップがまだ大量にあるのだから。

「早撃ちなら負ける気はないけれど……せっかくトラップ全スルーしてきたんだし、有効活用しちゃったほうがいいわよねぇ」
 一方ではティオレンシアも、アリスと同じ敵を挑発して罠に嵌める作戦を考えていた。
 【デストロイ光線】対策として、シゲル(光)とエオロー(結界)のルーンによる守護のオーラを展開し、曲がり角から半分だけ身体を出してデストロイキングの足元を狙う。
「見るからに脳筋バカって感じねぇ。こんな所でお山の大将して威張り散らしてるのが、いかにもって感じだわぁ」
「グヌヌッ?! き、貴様ら、言わせておけばッ!!!!」
 嫌がらせ目的で正確に撃ち込まれる銃弾と、脳が溶けそうな甘い声色で放たれる嫌味。
 デストロイキングの顔色は茹で上がったタコのように真っ赤になり、怒りのままに猛然と襲い掛かってくる。まんまと相手が挑発に乗ったところでティオレンシアはミッドナイトレースに乗って駆け出し、アリスと一緒になって敵をトラップ地帯までおびき寄せる。

「待て、待たんか貴様ら、ブチ殺してやる……ぐわッ!?」
 二人を殺すことしか眼中に無かったデストロイキングは、トラップタイルの敷かれた廊下に誘い出されるなり、あっさり罠に引っ掛かった。元は悪魔達が仕掛けたそれはアリスの【アナロジーメタモルフォーゼ】で改良され、対オブリビオン用に強化されている。
「これについてはランダムではなく、ぼくの方でコントロールするよ」
 マンション攻略を楽しむためではなく、ボスキャラを倒すために本気を出したアリスの手練手管の数々は、爆炎や豪雷あるいは鋼鉄の金ダライとなって襲い掛かる。ここに越してきたばかりのデストロイキングに、これらのトラップを見破る手立てはない。

「やぁっと心おきなくブッ飛ばせるのが出てきたわねぇ。……ホント、調子狂うったらなかったわぁ……」
 敵が罠に嵌まったのを確認次第、ティオレンシアもバイクを止めて反転攻勢。状態異常のルーンを特盛にした愛銃「オブシディアン」の弾丸を、一切の情け容赦なく叩き込む。
「がッ、ぎぃッ、ぐがぁッ!?」
 彼女の銃撃に派手さはないが、針に糸を通すような精度で、的確に急所に当ててくる。
 善良な悪魔相手には使えない、【射殺】の為に研鑽された射撃技術。釣瓶打ちを喰らうデストロイキングの苦痛の叫びがマンションの廊下に響き渡った。

「これじゃあ手応えがなさすぎるかな? っと、わっぷ!」
 一方のアリスは挑発的な笑みを浮かべながら罠のコントロールに専念していたが、敵の無様な姿に油断したのか、自分で仕掛けたタイルを踏んでしまう。ぱかりと開いた天井から大量の水をかけられて、たちまち彼女はびしょ濡れに。
「ククク、馬鹿め! そういうのを策士策に溺れると言うのだ!」
 罠と銃撃でボッコボコにされながらも、反撃のチャンスを諦めていなかったデストロイキングは、すかさす腹の口から【デストロイウェポン】を取り出す。罠使いが自分の罠に引っかかり隙を晒したその様子は、彼の目には千載一遇の好機と映っただろう。

「油断したね、今だよ」
 ――だが、それさえも情報妖精が仕掛けた罠の一環でしかなかった。攻撃のために隙を見せたデストロイキングの真下から、ひょこりと砲口を覗かせたのは巨大な火炎放射器。
「これで火炙りだ」
「ぐがああアアッ?!!」
 オブリビオンも丸焼きにできるよう強化されたその火力は、もはや地獄の業火もかくやという勢いで。敵は悲鳴を上げながら火炎放射から逃げようとするが、そうはさせまいとティオレンシアが追い撃ちの銃弾を浴びせる。
「どこにも行かせやしないわよぉ。死ぬまで踊り狂ってなさい」
 麻痺に毒に能力低下など、弾丸に付与されたデバフのオンパレードがデストロイキングの動きを封じる。見た目からしてタフネスには自信がありそうだが、それなら息絶えるまで一方的に削り殺すまで。ここはもはや戦場ではなく、彼女達のための"狩場"だった。

「ぐ、グヌヌヌ、卑怯者めが! 罠ばかりに頼って汚いぞ!」
「卑怯? 汚い? ふふ、やぁねぇ。最高の褒め言葉よぉ?」
 負け惜しみを叫ぶデストロイキングに、ティオレンシアはにこやかな微笑みを返して。
 お礼とばかりにオブシディアンのトリガーを引き、無慈悲な弾丸を悪魔に送りつける。
「こと悪意という面において、悪魔が人間に勝てるわけないでしょぉ?」
「こ、こいつッ……グワーーーーッ!!!!?」
「ほらほら、足元注意だよ。楽しんでいってね」
 乱れ撃ちにのけぞったところに、またもや足元で作動するトラップタイル。一体いくつ仕掛けられているのか、アリスが改良・創造したそれはまだまだ尽きる様子を見せない。
 この地の支配者を豪語していた魔王は今、そのマンションの罠に追い詰められていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榛・琴莉
Ernest、Hugoを起動して。
悪魔ならまだしも、相手はオブリビオン。
Hugoだけで倒せるとは思いません。
ので、本命は別に。
周囲の罠や構造は把握していますね?

取っ組み合いでも殴り合いでも構いません。
休まず攻めたてて、破壊兵器を使わせない様に。
それから、適度に罠の床を踏む様に誘導して。
相手がHugo、そして罠に順応してきたら仕留めに行きます。

Ernest、誘導先を罠ではなく、脆くなっている床に変更。
罠を踏み続けて、避け続けていたら、嫌でもカラフルなそちらを気にしてしまうもの。
安全だと思って踏んだ床が脆いなんて、思いもしなかったでしょう?
一瞬でも反応が遅れれば充分。
貫かせていただきます。



「Ernest、Hugoを起動して」
 暴れ回るマンションのボス、破壊の魔王デストロイキングを視界に捉えた琴莉は、AIに命じて巨大な機兵を呼び出す。直立した獣人の如きフォルムに鰐の様な竜頭、暴走を戒める為に課せられた電脳の枷――それは破壊衝動を形にした様な、凄まじき殺意の異形。
「悪魔ならまだしも、相手はオブリビオン。Hugoだけで倒せるとは思いません。ので、本命は別に」
 周囲の罠や構造は把握していますね? という少女の問いかけに、レンズの中の青い鳥は"Yes"の表示を返し、電脳空間を介して機兵「Hugo」を遠隔操作する。これは敵を策に嵌めるための囮、ならば思い切り派手に暴れて踊らせてみせよう。

「ムム、何だコイツは? 見たことのないモンスターだな!」
 猛然と飛び掛かってきたHugoを見て、デストロイキングは凶悪な相貌をさらに歪めながら迎え撃つ。既に相当の負傷を受けている筈だが、真っ向勝負は望む所だとばかりに。
(取っ組み合いでも殴り合いでも構いません。休まず攻めたてて、破壊兵器を使わせない様に。それから、適度に罠の床を踏む様に誘導して)
 それが琴莉からErnestに送られた指示。彼(?)はそれに従って機体を操作し、両腕に備わった鉤爪で敵を引き裂く。対するデストロイキングも一歩も退かず、武器がなくとも我にはコレがあると言わんばかりに、握り固めた剛拳を叩きつける。

「グワーッハッハッハ! やはり、戦いはこうでなくては……なッ!!」
 機兵との闘争を楽しむかのように、豪快に笑うデストロイキング。そこでHugoは背面から魔力を放出して翼を形成、冷気を吹き散らしながら空に飛び上がる。このタイミングで退けば相手は肉弾戦に固執して追ってくるだろいうというErnestの判断だ。
「逃がすものか―――ぬおッ!?」
 案の定のこのこと誘導された魔王は仕掛けられていたタイルを踏み抜き、悪魔謹製の罠の洗礼を受ける。その隙をみてHugoは急降下し、逆関節構造になった脚部の鉤爪を一閃。そのモーションは歪ではあるものの、地上の獲物を捕らえる猛禽の動きに似ていた。

「ええい、また罠か! いい加減にしろッ!!」
 ここまで散々マンションの罠を利用する猟兵達に苦しめられてきたデストロイキング。脳筋な彼でもいい加減学んだのか、これ以上は引っかかるまいと足元に気をつけ始めた。
「ようは色のついたタイルを踏まねばいいのだろう。簡単なことだッ!」
 行動は多少制限されるものの、そこはやはり"キング"を自称するほどのオブリビオンである。どっしりとした構えで空中からのHugoの攻撃を捌き、カウンターの拳を振るう。
(Ernest、誘導先を変更)
 相手がHugoの動きと罠に順応してきているのに気付いた琴莉は、すぐさまAIに指示を出した。ここまでは彼女の作戦通り――敵が罠を警戒して避けるようになるのも、全て計算のうちだ。

「また逃げる気かッ!」
 琴莉の指示を受けたHugoが高度を上げると、デストロイキングは逃すまいと跳躍する。
 突き上げられた拳が機体をかすめ、装甲の一部が破損。ようやく一撃を見舞えた魔王はにやりと笑いながら、色の付いていないタイルの上に着地しようとするが――。
「掛かりましたね」
「ンなぁッッ!?」
 ズシンと巨漢の体重が乗っかった瞬間、その足場はメキメキと音を立てて崩れ落ちる。
 罠を踏み続けて、避け続けていたら、嫌でもカラフルなそちらを気にしてしまうもの。それを見越したうえで、琴莉はErnestに敵の誘導先を変えさせたのだ。

「安全だと思って踏んだ床が脆いなんて、思いもしなかったでしょう?」
 アルラウネ達から教えてもらった事が役に立ったと、琴莉はマスクの下で目を細める。
 長きに渡り増築と破壊と修復を繰り返されてきたマンションの床は、もはやデストロイキングの暴力に耐えきれなかった。それはこの建物そのものが彼を拒んだようでもある。
「し、しまった……ッ」
 抜けた床から敵が体を起こすまでの僅かな間、一瞬でも反応が遅れれば彼女には充分。
 構えたライフルの銃口は、既にデストロイキングの胸にピタリと照準を合わせている。

「貫かせていただきます」
 対象の動きを完全に予測した上で放つ、魔力の弾丸【CODE:ジャック・フロスト】。
 霜の妖精の名を冠したその一撃は、着弾と同時に美しくも鋭い氷の槍を作り上げる。
「グガ、ッ!!?」
 凍てつく氷槍はデストロイキングの胸を抉り、その奥で脈打つ心臓を串刺しにした。
 その直後、彼の身体はわななくように小さく震え、口からは大量の血があふれ出す。

「こ、この我が、まさか、敗れ――……グワーーーーーッ!!!!!!!」

 敵は断末魔の絶叫と共にどうとその場に倒れ、そして二度と起き上がってこなかった。
 マンションダンジョンを暴力で支配した破壊の権化、デストロイキングはこうして骸の海に還っていったのである。

 ――かくして猟兵達は善良な悪魔を唆し、悪事を企んでいたオブリビオンを打倒した。
 オブリビオンをも超える彼らのワルさと強さは、その後のマンションで語り草となり、大いにリスペクトする悪魔が続出したというが――それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月13日


挿絵イラスト