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明日、もし君に会えたら

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●例えば、もし
 吐き出した血が、どんな色をしているのかほんの一瞬、分からなくなった。成る程、これは無謀だったかと学園の生徒は思う。いやちょっとむしゃくしゃして、自分でも馬鹿だなぁと思いながらも潜ってしまったのだ。たった一人で迷宮に。
「自業自得もいいとこってやつ、なのはそーなんだけど、ね」
 そうだというのに思ってしまう。もし、来てくれたら。あいつがいたらなんて。最後に顔が見れたらなんてそうーー思うのだ。
「普通に考えて、この危機的状況で来ちゃダメだろ」
「そう思うんだったら、最初っから一人で行かないでよ」
 かつん、と足音ひとつ。振り返れば渋い顔をした彼女がーー本物の彼女がいて。
「なんで、お前いんだよ!? こんなとこ来て、家のやつが……!?」
「うっさい黙んなさい! 教授が道つけてくれたの! ってかあんたはさっさと逃げる。いくらあれが可愛いからって……!」
 廊下に置かれた謎の箱の中、そわそわそわとしてみせる虹色のそれ。
「とろりん?」
「りん? とろりん?」
 きらきらとしその目とフォルムに囚われてしまったらもう、抱き上げずにはいられなくなってしまうのはそうーー事実なのだけれど。
「あいつらだけじゃなくて、もっと、違うーー……」
 ぐいぐいと腕を引く彼女に、鈍る体を持ち上げる。二度目の違うの先、掠れた声でひとつを告げて青年は意識を失った。

●明日もし、君に会えたら
「何かがいる、と告げたところで彼は気を失ってしまったそうよ。幸い、学生の二人の脱出は無事に済んだけれど、押し寄せてきているものがいるのは事実」
 シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は一度伏せた瞳をゆっくりと開くと、集まった猟兵たちを見た。
「青年は別に何かを見た訳ではなく、嫌な予感を感じただけだそうだけれど、あながち間違ってもいなかったわ。学園迷宮のフロアボスが、配下を率いて上の階層に攻め上がってきているのが分かりました」
 全ての階層を突破されてしまえば、学園施設への侵攻も考えられる。非戦闘員も多くいる施設まで攻め込まれるわけにはいかないのだ。
「防衛に適した場所での迎撃を依頼します」
 フロアボスの名は無限回廊の亡霊。
 嘗て、迷宮に挑んだ学生ーーとも噂されている存在。誰が見たというわけでもなく、そんな噂があるのだという。
「交戦場所は……そうね、今から向かうのであればこの、礼拝堂に似たエリアが良いでしょう」
 廃墟となった礼拝堂のエリア。
 迷宮にどうしてそんなものが作られているかは知らないが、なぜが夕日が差し込み、壊れたステンドグラスの淡い光が礼拝堂を淡く染めている。
「礼拝堂へと向かうにはこの、廊下を通る必要があるのだけれどそこにとろりんがたくさんいるの」
「……」
「にじいろとろりんが」
 とろりん。
 さみしがりやのすらいむさんだ。それはもう可愛いフォルムで、かわいい雰囲気で。それはもうひとをみつけるとじっとこちらを見つけて訴えてきちゃうのだ。
 ほう、とひとつ息をつき、シノアは顔を上げる。
「かれらは拾ってほしそうにこちらを見てくるわ。無限回廊の亡霊も、外に帰ることが目的、と噂されているから何か通じ合うところがあったかーー単純に行先が一緒だったのかもしれないわね」
 上層ーー上。外へとたどり着かれてしまえば、大変なことになる。
「にじいろとろりんたちは長く続く廊下を移動しているわ。こちらの気配に気がつけば、各々これぞ、という視線を向けてくるから気をつけてちょうだい」
 目があってしまえば、それはもう耐えられるのだろうか。この世に存在しているものにーーと個人的には思ってしまうのだからそれはもう。
「とろりんたちに出会っても、亡霊に出会うことがあっても学園と生徒たちにとっては、由々しきことでしょう」
 迷宮が必ずしも安全な場所ではないと、彼らがよくよく知っているとしても。
「一人が無事に戻ったのであれば。待ち続けることがどんなものか、分からない訳でもないのだから」
 それと、とシノアは猟兵たちを見る。
「無事に戻ったら、あとひとつ、頼まれてくれるかしら? ちょっともふもふが川に……詰まってしまったようで」
 もふもふ。ここにきて再びのもふもふである。
 曰く、アルダワのとある川にて、蒸気のラインが近くを通った為、川の水温があがったのだという。温泉状態である。
「そうしたらカピパラとか小動物たちがすし詰めになってしまったみたいで……、川の流れが悪くなってしまったそうなの」
 つまり、もふもふたちの移送を手伝って欲しい、ということなのだ。
 思うがままに、もっふもふたちを掴みーー否、移動させてほしいという依頼だ。
「迷宮から戻ったばかりで、疲れているかもしれないけれど。良かったら手伝ってくれると嬉しいわ」
 まずは迷宮から。上層を目立つフロアボスを押しとどめるため。
「どうか、気をつけて。良き戦いとなりますよう」


秋月諒
 秋月諒です。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 シノアはもふもふと戯れられる場所を見つけた! 訳では無いですが、心情よりになるかと。

●リプレイについて
 各章、開始時、章切り替えのタイミングで序章部分が追加されます。

●各章について
 第一章では、にじいろとろりんとの集団戦となります。
 幅の広く、長い廊下での戦いとなります。

 第二章では、ボス無限回廊の亡霊との戦いとなります。
 廃墟となった礼拝堂エリアでの戦いとなります。

 第三章では、あったかもふもふ蒸気温泉でのひと時となります。
 もふです。もふたちの移動です。
 そんな感じでよろしくお願いいたします。
 三章のみ、お声がけがあればシノアが登場します。

 それでは皆様、
 ご武運を。
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第1章 集団戦 『にじいろとろりん』

POW   :    とろりんは、ひろってほしそうに、きみをみている。
【ひろってほしそうなまなざし】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ひろってあたっく】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    とろりんは、うったえている。
【拾ってほしい気持ちを訴える鳴き声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ   :    とろりんは、りらっくすしている。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【体の一部】から排出する。失敗すると被害は2倍。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●とろりんとろりん
 石造りの、長い廊下であった。半円状の天井は高く、足音がやたら大きく響く。来客を注げるように、侵入を注げるように届く足音に廊下にあった『彼ら』はぴこん、と顔を上げる。
「りん、とろりん」
「とろりんとろりん?」
「とろりん!」
 いそいそと箱を用意して、すたたっとにじいろとろりんたちは積み重なって。
 じぃっと、それはもうじぃぃいいっと、廊下の向こう、訪れるものたちに視線を向けていた。
白波・柾
うっ、戦いづらいな……
このつぶらな瞳、ぷにぷにボディ、愛くるしい表情……
戦意を喪失させるには十分だ
だが、戦わねばならない時がある……それは今だ
許せ、俺はお前たちと戦うしかない

手近な敵に狙いを定めて
大太刀の間合いに入れば正剣一閃で攻撃していこう
猟兵の仲間たちとも連携して、数を減らしていけたらいいな


パーム・アンテルシオ
ふふ。これはまた、随分と可愛い侵略者さんだね。
拾ってあげたいのは山々なんだけど…
私も、今は旅館暮らしだから。ペットは多分、ダメなんじゃないかなぁ…

私としては、敵意が無いなら放っておいてもいいのかな、なんて思うんだけど…
…別に、可愛いから手を出しづらい、ってわけじゃないよ?
でも、学園まで行っちゃうと…問題なのかな。何が問題なんだろ…

…さて。ちょっと可哀想だけど…いつまでもお見合いしてるわけにもいかないし。
ごめんね、私はヒトだから。ヒトの害になるものは、倒さないといけないんだ。
ユーベルコード…金竜火。
迷宮の底に逃げ帰って、大人しく暮らすなら、それでも良し。
そうじゃないなら…ここで灰になって貰うよ。


栗花落・澪
ちょっと待って
あの、待機の仕方可愛すぎません?

拾ってもらえないの寂しいよね
誰かと一緒に居たいよねぇ
わかる、わかるよ
オブリビオンじゃなければ喜んで連れて帰るのになぁ…

仕方ないので戦うよ
…隙あらばちょっとくらいつついたり飴あげたりして反応見たいけど!

見た目と名前的に、この子達は…液体?なのかな

集団の中央辺りまで翼で突っ込み
★staff of Maria をバトンのようにくるくる回しながら風の【全力魔法】を組み合わせ
発生させた竜巻でまとめて打ち上げる
その隙に魔力を氷に変え
打ち上げた子達を【範囲攻撃】で凍結
液体は軽いし凍りやすいからね

残った子達も
UCを【優しく】発動させて痛くないように一掃
ごめんね


ファレリア・リトヴァール
にじいろとろりん……何て可愛らしいんですの……?
いえ、敵であるとは分かっておりますわ。被害を防ぐ為に討伐せねばならない事も。
ああでも、上の階層になんて来なければ倒す必要もありませんでしたのに!

りらっくすしている時にユーベルコードを無効化するなら、
りらっくす出来ない様にすればいいのですわ。まず衝撃波や誘導弾で攻撃いたします。
ええ、じぃっと見てくる愛らしい視線になんて負けませんとも!
りらっくす状態を解除出来たらまとめて瓊嵐で吹き飛ばしますわ!
せめて苦しまずにお逝きなさいませ!


都槻・綾
※絡み、アドリブ歓迎

敵攻撃は
研ぎ澄ませた第六感と見切り、残像で回避
自他共にオーラで防御

美しき虹色は
昏い迷宮の中に在って
地上への憧れの表れでもあるのだろうか

縁日の水飴みたい
そう…嘗て水飴であった記憶の具現であるならば
きっと子供達を笑顔にして来ただろうことに感謝して
いとけない姿に笑み零す

けれど
連れて行くことは叶わぬものだから

せめても――貴方達が纏う彩りの花を、ご覧に入れましょう

微笑んで差し述べる手
抱き上げる為では無く
符を七色の花弁や葉に変えて贈る為

紅椿、マリーゴールド、山吹、萌ゆる新緑、ネモフィラ…
四季折々の幻想
どうか
愛らしき彩りが寂しさで翳らぬように
花の揺り籠に包まれて――暖かな夢に、眠りなさい


須辿・臨
やー亡霊も、カピバラさんも、大変っすね。
問題は早急に解決すべきっす。
ということで、さっさと片付け…………そ、そんな目で見ないでほしいっす!

ひとまず心を鬼にして、こっち来たら斬るぞ!って恫喝してみるっす。
まあ、逃げないっすよねー。
せんせー、この子持って帰っていいっすか!
(※彼に先生などいません)

戦闘は、至近距離からフェイントとか駆使して仕掛けるっす。
とろりんを蹴りつけて後ろをとってみたりとか……。
剣刃一閃は充分な射程に入ってから、一撃で倒し切るつもりで仕掛けるっす。
他の猟兵さんとも連携しつつ、心を鬼にして、道を作るっす!

申し訳ないっすけど、オレらはこの先に行かなきゃなんねーっすよ。

アレンジ歓迎


神宮時・蒼
…好奇。…一体、誰に、捨てられた、という、のでしょう。…貰い手がない、という、部分は、ボクと、一緒、ですね。
…まあ、呪われた、この身が、拾われることは、この先、ない、のでしょう、けれども。

円らな瞳には屈しませんな姿勢。
可愛いけれど、何をしても許される訳ではありませんしね。
スライム、ですし、直接的な物理攻撃は、そのぷにぷにボディに吸収されてしまいそうですね。
…全力魔法に氷の属性攻撃を乗せて、凍らせたら、こう、ぱりーんと倒せないでしょうか。
多少の罪悪感はありますが、オブリビオンなので、其処はグッとこらえましょう。


ジゼル・スノーデン
間に合ったか!?いや、今少し忙しくてな!もふもふとかぷにぷにとか!

【WIZ】

えーと、とろりん。
とろとろか。
あれだな、ケーキシロップみたいなものか。虹色とはステキだな。
しかし!生半可な可愛さでわたしがやられると思わないでもらおうか!
……しまった、かわいい
なんだお前、拾って欲しいのか
そうかそうか……
…………あの、連れて帰っちゃダメか?ちゃんとわたし、お世話するから!
(カノープスにぺしぺしされた。ちょっと痛かった)
ううだめか
ぷにぷにももふもふもそうだっったが、とろりんもだめか
せつない。世の中せつない。

わーわーわー!
わたしは何も見えないぞ!そんな目で見るなー!(オールの杖でべしべし)



●とろりんってば罪深い
 その廊下を、果たして何と表現すれば良いのだろうか。天井から降り注ぐ灯はロウソクのそれにしては明るくーーだが迷宮と思えばその違和も納得に変わる。暗い場所など無い。手持ちの灯など必要としないその空間に彼らはーーにじいろとろりんたちは並んでいた。それはもういそいそと用意した箱に収まって。キラキラと期待に満ちた目でこちらを見ていたのだからーーだから。
「うっ、戦いづらいな……。このつぶらな瞳、ぷにぷにボディ、愛くるしい表情……」
 小さく、白波・柾(スターブレイカー・f05809)は息をつく。
「戦意を喪失させるには十分だ」
「りん?」
「とろりんとろりん?」
 期待に満ちた眼差しを向けるにじいろとろりん達を前に、柾は息を吸った。ひとつ、大きく。
「だが、戦わねばならない時がある……それは今だ」
 なにせ目の前の相手がーーやりにくすぎる。
 心の底、一度落ち着かせるように刀に手を掛ける。
「許せ、俺はお前たちと戦うしかない」
 足を引く。身を低める。手近な敵に狙いを定め間合にてーー見た。
「俺の一刀―――受けてみろ!」
「とろりーん!」
 極限まで研ぎ澄ました精神は、その一瞬を逃すことはない。キラキラと向けられた視線、瞬間、動きだそうとしていたにじいろとろりん達よりも早く柾は抜いたのだ。
「とろりん……!」
 ぱふん、と一刀ににじいろとろりんが光となって消える。まずは一体。ぷにぷにボディ相手でも刀は通る。だがぷにっと微妙に飛んで同じ箱の中の数体が避けていくのはーー少し、面倒か。柾は気がつき、刃を返して届かせたがーーさて。この分だと時間がかかる。
「戦わねばならない時であれば」
 行くだけだ。
 他の猟兵たちと共に、柾はにじいろとろりんの群れへと切り込んだ。
 にじいろとろりん達が此処まで出てきてしまった理由は『拾ってもらいたい』だけでは無いのだから。
「ふふ。これはまた、随分と可愛い侵略者さんだね」
 ぴん、と立った妖狐の耳に、にじいろとろりん達の声が届いていた。ゆる、ゆるり、ともっふもふの尻尾をパーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)は小さく揺らす。
「拾ってあげたいのは山々なんだけど……。私も、今は旅館暮らしだから。ペットは多分、ダメなんじゃないかなぁ……」
「りん……」
「とろりんりん……」
 ちょっと切なげな声が返ってくる。ペット判定も構わないのか、ちょっとへたったにじいろとろりん達が箱に収まり直す。
「私としては、敵意が無いなら放っておいてもいいのかな、なんて思うんだけど……」
 別に、可愛いから手を出しづらい、ってわけじゃないのだ。うん、多分。
「でも、学園まで行っちゃうと……問題なのかな。何が問題なんだろ……」
 にじいろとろりんを拾って、みんなで何もしなくなってしまうとか起きてしまうんかーーいやにじいろとろりんより、その奥から来る奴への道をつけてしまうからか。
「……さて。ちょっと可哀想だけど……いつまでもお見合いしてるわけにもいかないし」
 ごめんね、とパームは告げた。
「私はヒトだから。ヒトの害になるものは、倒さないといけないんだ」
 指先を伸ばす。パームの後ろ、空間が歪みーー熱を帯びる。
「陽の下、火の下、命の欠片を喚び出そう」
 さわさわと妖狐の髪が揺れる。背後に描かれし陣が、淡い光を零しー小さな狐の形をした桃色の炎が顕現した。
「迷宮の底に逃げ帰って、大人しく暮らすなら、それでも良し。そうじゃないなら……ここで灰になって貰うよ」
「とろりん?」
 むむーとちょっと考えた様子の後、それでもやっぱりしゅたたっと箱の中でポーズを取るのは帰る気は無いですということなのか。
「……ごめんね」
 二度目の言葉と共に、炎を操る。触れれば、ぱふん、とにじいろとろりん達が光となって消えた。
「とろりん」
「とろとろりん?」
 りん、としゅたた、とにじいろとろりんたちがポーズを取る。多少数が減ったところで、あまり彼らが気にする様子は無いのか、それよりも久しぶりに出会う『相手』の方に興味があるのか。
「……好奇。……一体、誰に、捨てられた、という、のでしょう」
 ひろってください、の文字に神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)は、薄く、口を開く。
「……貰い手がない、という、部分は、ボクと、一緒、ですね」
 本来は祝いの品であった。ヒトの欲に歪まされたひとつのブローチは、水晶石と琥珀を抱き呪いを経て今の姿を得た。蒼は、そういうものであったのだ。
「……まあ、呪われた、この身が、拾われることは、この先、ない、のでしょう、けれども」
 落ちた息に色は無く、感情の乗らぬ瞳がにじいろすらいむ達と出会う。
「……」
 円らな瞳がじぃっと蒼を見ている訳で。見つめている訳で。
「可愛いけれど、何をしても許される訳ではありませんしね」
 すぅ、と息を吸う。円らな瞳には屈さないのだ。きらきらとした視線とか、うるうるとした瞳とかも向けられるけれどーー此処で膝を折る訳にはいかない。
「いきます」
 すい、と伸ばす指先。琥珀の瞳に、空間が色を変えるのが映る。凍気だ。掌からこぼれ落ちる魔力が全力の魔法を紡ぎあげる。ピン、と張り詰めた冷気がにじいろとろりんたちに届いた。
「とろりーん!?」
「りん!?」
 ぱち、と瞬いた先、にじいろとろりんたちが凍ったにじいろとろりんになってーーぱりーん、と割れた。
「……」
 多少の罪悪感を、グッと堪えるように蒼は顔をあげた。なにせ廊下には、まだまだにじいろとろりんたちがいるのだから。
「りん」
「とろりんりん」
 拾ってほしそうな強い眼差しに、其処から届く圧に都槻・綾(夜宵の森・f01786)は足を引く。はたと靡く衣が残像を残して掻き消えれば、にじいろとろりんたちが驚いたような声をあげた。
「とろりん!?」
「とろとろりん!?」
 じっと見合わせて、こてっと首を傾げて。不思議そうに見つめられれば、ふ、と口元も緩む。美しき虹色は、昏い迷宮の中に在って地上への憧れの表れでもあるのだろうか。
「縁日の水飴みたい」
 嘗て水飴であった記憶の具現であるならば、きっと子供達を笑顔にして来ただろうことに感謝して綾は笑みを零す。
 どれほどの可愛さがあっても、連れていくことは叶わないから。
「せめても――貴方達が纏う彩りの花を、ご覧に入れましょう」
 微笑んで綾が差し伸べる手に、にじいろとろりん達がぱぁっと目を輝かせる。指先は符を七色の花弁や葉へと変えて贈る為。抱き上げる為ではなくーーふわり、と花の香りが踊った。
「りん?」
「とろりん?」
 見上げる彼らに、届ける花々。
 紅椿、マリーゴールド、山吹、萌ゆる新緑、ネモフィラ……四季折々の幻想。
「どうか、愛らしき彩りが寂しさで翳らぬように。花の揺り籠に包まれて――暖かな夢に、眠りなさい」
 囁くように告げた先、ぽふり、と頭に花を乗せて、椿を受け止めてーー新緑の褥に、ふわふわと眠りに落ちるようにしてにじろとろりんたちは淡い光となって消えていく。
「とろりん、りん……」
 すより、と花々にそっと、身を寄せるように。

●にじいろとろりんと猟兵たち
「にじいろとろりん……何て可愛らしいんですの……?」
 ファレリア・リトヴァール(白花を纏う紫輝石・f05766)は息を飲んだ。勿論、敵であることは分かっているのだ。被害を防ぐ為に討伐せねばならない事も。
「ああでも、上の階層になんて来なければ倒す必要もありませんでしたのに!」
「とろりん」
「とろりん、とろりん?」
 ファレリアの言葉に反応したのかーーそれとも新たなお客さんだわーい、の心が働いたのか。いそいそとこちらを向こうとするにじいろとろりんたちを前にファレリアは息を吸った。とりあえず深呼吸をひとつ。りらっくすしている時にユーベルコードを無効化するというのであればーー。
「りらっくす出来ない様にすればいいのですわ」
 すい、と手を伸ばし、にじいろとろりんたちの気を引くように誘導の一撃を放つ。ぱ、と顔を上げたにじいろとろりん達の視線は、もちろんファレリアの方を向く訳で。
「りん」
「とろりん?」
「ええ、じぃっと見てくる愛らしい視線になんて負けませんとも!」
 きゅ、っと拳を握って、ファレリアは一つの力を解き放つ。
「煌めく玉よ、我が意のままに!」
 舞い踊るは無数の宝石の花びら。色とりどり、鮮やかに美しい煌めきに、わぁっとにじいろとろりん達が視線を上げた。
「とろりん!」
「せめて苦しまずにお逝きなさいませ!」
 ぱふり、触れれば宝石と一瞬色を同じくして。淡い光の中、にじいろとろりんは消えていく。
「やー亡霊も、カピバラさんも、大変っすね。問題は早急に解決すべきっす」
 ふぅ、と一つ息を吐き、須辿・臨(風見鶏・f12047)は担いだ刀に手をかけた。
「ということで、さっさと片付け……」
「りん」
「とろりん」
「……そ、そんな目で見ないでほしいっす!」
 それはもうきらきらした目で。期待に満ちた目な訳で。
「こっち来たら斬るぞ!」
「とろりん?」
「……」
 ひとまず心を鬼にして恫喝しては見たけれど。まぁ結果は八割分かっていたというか、見えていたというか。
「とろりん♪」
 なんだか意気揚々とこっちを向いて箱に収まり直している訳で。
「まあ、逃げないっすよねー。せんせー、この子持って帰っていいっすか!」
 思わず虚空に臨が投げた声に、それだったらよかったのに! と笑う声と切なさの溢れる猟兵たちの声が重なる。
「りん?」
「とろりんりん?」
 こちらにとっての戦いも、彼らにとっては戯れの範疇なのか。箱と一緒にずずい、っとやってくるにじいろとろりん達にーー踏み込む。詰められる前に、踏み込むことで潰した間合い。蹴りつければぽふり、と足に返る感触が柔らかい。
「……」
 すごい、やわらかい。
 ぽふん、ぽてぽて。と転がったにじいろとろりんに、一瞬止まりかけた足に、身を倒して体重を掛ける。一気に飛ぶように身を前に飛ばせば、臨の体はにじいろとろりんの背後を取った。
「とろりん!?」
「申し訳ないっすけど、オレらはこの先に行かなきゃなんねーっすよ」
 間合いにて一閃。薙ぎ払う刃に、ぱふん、とにじいろとろりんたちが光となって消えていく。心を鬼にして、道を作るべく臨は刀を握り直した。
「とろりん!」
「りん。とろりん!」
「……」
 なんだか微妙に、やっぱり戦闘も遊んでもらっていると思われているだけな気が、するけれど。
「持ち帰れたら良かったっすねー……」
 こう、なんか。色々な意味で。
「えーと、とろりん。とろとろか。あれだな、ケーキシロップみたいなものか。虹色とはステキだな」
 うんうん、とジゼル・スノーデン(ハルシオン・f02633)は頷きーー顔を上げた。
「しかし! 生半可な可愛さでわたしがやられると思わないでもらおうか!」
「りん?」
「とろりん?」
 びしぃっと杖を向けた先。それはもういそいそと箱に詰まっていたにじいろとろりんを見つけた訳ですから。円らな瞳と出会ってしまった訳ですから。
「……しまった、かわいい」
 可愛かったのだ。それはもうすごく可愛かったのだ。
「なんだお前、拾って欲しいのか」
「とろりん!」
「りん!」
「そうかそうか……」
 そうだよな、とジゼルは思う。箱の中、身を寄せ合っていたにじいろとろりんたちがじぃっとジゼルを見る。ちょっと目がキラキラしている。
「…………あの、連れて帰っちゃダメか? ちゃんとわたし、お世話するから!」
 ぱっと振り返った先、ぺしぺしとカノープスがジゼルを叩く。ひりひりとした痛みにうう、と声をあげれば光を宿すクラゲが全くとばかりに光を揺らしていた。
「ううだめか。ぷにぷにももふもふもそうだっったが、とろりんもだめか」
 せつない。世の中せつない。
「とろりん?」
「とろとろりん?」
 どうしたの? と言わんばかりの視線に、きらきらと視線はそれはもう、ジゼル相手にもすごいパワーを持っているわけで。
「わーわーわー! わたしは何も見えないぞ! そんな目で見るなー!」
 オールの杖でべしべしと、切なさ溢れかえりながらジゼルはにじいろとろりんたちとさよならをしていった。
 淡い光の中、一体、また一体とにじいろとろりんたちが消えていく。この廊下にいるものだからか、彼らには逃げるという選択はないらしい。久しぶりの戯れにやっぱりどこか楽しそうにとろりん、とろりんと鳴いては、またいそいそと箱に入る。
「ちょっと待って。あの、待機の仕方可愛すぎません?」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は言った。思わずーーというか、耐えきれずというか。
「りん?」
「とろりん? とろろりん?」
 こてり、ぽてり。首を傾げるようにしてーー箱から落ちてしまった一体がいそいそと戻る姿に息を飲んだのは自分だけでは無い筈だ。
「拾ってもらえないの寂しいよね。誰かと一緒に居たいよねぇ」
 わかる、わかるよ、と澪は頷く。遠い日に、囚われて生きた己の記憶がチラつきーー息を、吐く。
「オブリビオンじゃなければ喜んで連れて帰るのになぁ……」
「りん? とろりん?」
「……」
 やりにくい。とってもやりにくいけどーー、ふ、と息を吐き、澪は床を蹴った。ばさり、と翼を広げ一気に、にじいろとろりんたちの集団の中央へと突っ込む。
「りん?」
「とろりんとろりん!?」
 驚いた様子のにじいろとろりん達の前、清浄な輝きを放つ杖を澪はバトンのように回した。ふわり、と生じるのは風。発生した竜巻ににじいろとろりん達がーー浮いた。
「とろりーん!」
 小さな目をぱちくりとさせたにじいろとろりん達がーー凍る。踊るように振るった腕、瞬間、変換した魔力は凍気を帯びていたのだ。
「液体は軽いし凍りやすいからね」
 ぱふん、とにじいろとろりん達が消えていく。空に残った箱だけがぽすり、と落ちれば、新しい住処とばかりに残ったにじいろとろりん達がその中に収まった。
「……」
 そう、収まってしまったのだ。するするっと、ちょっと数は足りないので。三体固まってはダメだったけど。
「りん」
「とろりんとろりん」
 とろりんは、うったえている。
 拾って欲しい気持ちを込めて聞こえた鳴き声に、澪の体が癒えていく。これという傷を受けていた訳では無いけれど、ふわりと感じる可愛らしい魔力に、そそっと、澪は手を伸ばした。
「りん?」
 ついつい、とつつけばこてりと首を傾げて。こぼれ落ちかけたにじいろとろりんが、はわわっと仲間に捕まったところに、思わずほっと息をついてしまえばーー、そう可愛いのだ。
「これ、いる?」
 飴をひとつ手渡せば、ぱち、ぱちと瞬いたにじいろとろりんがぱふり、と飴を飲み込んでほんのり色を変える。
「とろりん。とろりん♪」
 箱からいそいそと出て、ぴたっと澪の足にくっつく。その姿に、澪は優しく光を紡ぐ。
「全ての者に光あれ」
 ごめんね、と告げればすりすりと身を寄せて、小さく首を振るようにしてにじいろとろりんは淡い光と共に消えた。

●とろりん、りん
 それはそれはとても久しぶりの出会いだったのです。なにせ迷宮は迷宮だった訳ですから。拾ってもらえる誰かに出会えるなんてことはあまりに少なかったものですから。
『りん。とろりん』
 とってもとっても久しぶりの出会いに。ちょっとの触れ合いに。もらったものに。なんだか少し心を満足させてにじいろとろりんたちは淡い光の中に消えてゆきました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『無限回廊の亡霊』

POW   :    ……あナ……タ、も…………
【怨念を宿した弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【引きずり込む亡霊の腕】で繋ぐ。
SPD   :    …………た、ス……け………
いま戦っている対象に有効な【ジョブの、冒険者の亡霊】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ……ア、ああアアあアあああアアアアアアアア
対象の攻撃を軽減する【おぞましい亡霊の姿】に変身しつつ、【断末魔の金切り声】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はバルディート・ラーガです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●明日、もし君に会えたら
 差し込む光が、その色を変えていた。にじいろとろりん達と別れ、長い廊下を抜けた先に『それ』はあったのだ。古びた扉。これが礼拝堂に似たエリアへの入り口だろう、と猟兵達は思う。
「……」
 扉には何時ついたものか知れぬ傷跡が幾つもあった。戦いでついたものだろう。木製の扉についた黒が何であるか、分からぬ者はいない。
「……ア、ああアアあ」
 壊れかけた扉の向こうから声がする。古い骨と鉄の匂いに混ざって。触れるその前に、扉は崩れた。崩壊の定めにあったのかーーそれとも、終わりを迎える時が今であったのか。招かれた礼拝堂の奥、ステンドグラスの差し込む光の中『彼』は立っていた。
「……ア、ああア、ナ……タ、も……」
 その目に色は無く。表情もなく。だが、彼がーー無限回廊の亡霊が纏うものが何であるか、猟兵達は知っている。
「……ア、ああアアあアあああアアアア」
 紛れもないーー殺意だ。
栗花落・澪
悲しい声…
敵として蘇った存在である以上
今更その想いを汲み取る事はできないけど

魔法の遠距離攻撃での援護主体
【破魔】を宿した【全力魔法】で光の球体を放ち
他の猟兵の隙を埋めるように攻撃
更に味方が不利な状況になれば
【催眠】の【歌唱】で敵の注意を引き付ける
あわよくばまどろませて隙作りに貢献

敵のUCで攻撃対象が増える場合
光魔法の輝きに【範囲攻撃】の力を付与して攻撃
翼で羽ばたき【空中戦】の素早さを活かして敵の背後に回り込み
隙を見て【優しく】その体を抱きしめる
少しくらいなら攻撃されても耐えながら

…ごめんね
【破魔、優しさ】を乗せたUCで浄化攻撃
トドメは他の人に任せるとして…
少しでも伝わってくれれば嬉しい、かな


白波・柾
亡霊か
なるほど、此処に相応しい
とろりんたちとの落差が激しすぎて戸惑うが
俺たちのやることは決まっている
さあ、尋常に―――勝負だ

【殺気】【ダッシュ】【フェイント】を利用して
可能な限り有利になるように立ち回る
基本はヒットアンドアウェイ
あまり距離を詰めすぎても、距離を置きすぎてもいけない
行動しやすい射程を常に維持
大太刀の間合いに入れば正剣一閃で攻撃していこう
猟兵の仲間たちとも連携して、堅実に攻撃を積み重ねて行きたい


都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

慟哭にも似た声は
届かぬ祈りへの悲痛な叫びか
絶望への儘ならぬ怒りか

そう
帰りたいのですね

望郷を胸に抱いたまま
独り彷徨い続けるのは
辛く悲しかったことでしょう

淡く笑み
符を持つ手で空に描く五芒星は
導べとなる北極星の如し

なれば――航路を標します

帰るべき骸海へ向けて
今度こそ澪に迷わぬように

不意打ち、死角に備えて第六感を働かせ
見切り回避
オーラで自他共に防御

流星符で捕縛し、皆の援護
添えるのは
もう独り泣かなくて良いのだと、寄り添う祈り

黄泉路灯す山吹を、餞に贈る花筐

航海の先で大切な人達に逢えますように
もし逢えたら
どんな思い出話に花が咲くのでしょう
いつか私も海へ辿り着いた時に
貴方の笑顔が見れたら良い


ジゼル・スノーデン
【wiz】
哀れだな
亡霊になにが起きたか。どうしてこうなったかなどの、因果はわからないけれど
哀れだよ、今もなお嘆き続けなくてはならないのだから
ましてや、これは海から湧き出した過去の泡のようなものなのだから、いま倒したところで嘆きが終わるわけじゃない

これもまた、せつないものだな

「カノープス、行く道を照らすもの。水先案内人、照らしてやれ。そして弔いの風をもって、死者が安らぐところまで運んでやれ。凪いだ海に至れるように」
無限回廊など、暗くて寒いだろう?
悲鳴も呻きも、わたしにはわからない
けれど、今はカノープスと共に弔い人になろう。


須辿・臨
綺麗だけど寂しいところっすね。こんなところじゃ寂しいままだろうに。
あんたの求めてるもんを見せてやることも、知る事もできねっすけど。
……いざ、勝負っす。

オレは守りは気にせず踏み込むっす。
剣で仕掛けるとみせかけキャノン打ってみたりとか、動きでフェイント仕掛けるっす。
……亡霊に効くんすかね?
羅刹旋風は簡単にゃ当たらなさそうっすから、懲りずに何度でも。
他の猟兵さんの力も借りつつ、少しでも力になれたら。

引き摺りこんでくる腕も、亡霊も。
生憎と。一族の教えで「道を阻むものは親でも斬れ」って言われてるんす。
この先に助けを求めてるヤツらがいるんで――通して貰うッスよ。

アドリブほか歓迎。


ファレリア・リトヴァール
この方がフロアボスですのね。
礼拝堂に現れる亡霊なんて、救いを求めている様ですわね……?
噂通りに『かつて学生であった亡霊』でしたら、
打ち倒し解放して差し上げる事こそ救いとなる筈ですわ。

私の頼もしい『お友達』を召喚。(サモニング・ガイスト)
さあ行きますわよ、お友達!
哀れな亡霊を解放し、その哀しみを焼き払って差し上げましょう!
金切り声には、歌唱で対抗出来ませんかしら。
優しい歌で少しでも仲間を守れればと思いますわ。


パーム・アンテルシオ
さて、元凶のお出ましって所かな。
この回廊で命を落とした…学生?の亡霊、って所かな。
可哀想というか、哀れというか。そう、感じなくもないけれど。
…倒すべき敵として立っている以上は…哀れんでばかりも居られないよね。

私は、あなたのお仲間には、なってあげられないけど。
せめて、その無念を焼き尽くす手伝いを。
その苦しみを、灰と化す事での終止符を。
ユーベルコード…金竜火。

使い方は…そうだね。
相手が一人のままなら、合体させて、大技にしてもいいけど…
敵が増えるなら。…撒き、っていう手もありかな。
大丈夫だよ、仲間外れにはしない。みんな、ここで終わらせる。
…いくら数が増えても。私たちだって、一人じゃないんだから、ね。



「この方がフロアボスですのね。礼拝堂に現れる亡霊なんて、救いを求めている様ですわね……?」
 冷えた空気が震える。礼拝堂に呻きにも、叫びにも似た声が響いていた。ゆらり、ゆらり、進む足は頼りなく。彷徨うように揺れた体は、傾げた首はだがこちらをひたり、と見据えていた。
「……あナ……タ」
 ファレリア・リトヴァールに耳に届いたのは『言葉』であった。呻くだけの声では無い。確かにあった言葉が、また揺らぐ。その淀みに、ファレリアは息を吸った。
「噂通りに『かつて学生であった亡霊』でしたら、打ち倒し解放して差し上げる事こそ救いとなる筈ですわ」
 此処で彷徨い続けるよりも、何処か分からぬ外を目指し続けるよりも。
「ア、ぁ、……ァア」
 ゆら、ゆらと揺れる頭が止まる。ぐん、とこちらを見る。来る、と猟兵達の声が重なった。
「さあ行きますわよ、お友達!」
 ファレリアは告げる。その呼びかけに応じるように虚空から、古代の戦士の霊が召喚される。淡い光の中、虚空を切り裂くように振るう刃と共にファレリア『お友達』は顕現する。
「哀れな亡霊を解放し、その哀しみを焼き払って差し上げましょう!」
 白花を纏う、歌う娘に呼応するように礼拝堂の床をーー蹴った。
「……ア、ああアアあアあああアアアアアアアア」
 踏み込む、戦士に無限回廊の亡霊が吠えた。絶叫に近いその声が、戦士の動きを僅か、鈍らせる。刃を握る手が震えーーだが。
「ーー」
 刃は、届いた。斬撃に、ぐらりと無限回廊の亡霊は身を揺らしーーその姿を、歪めた。空間を、礼拝堂の一角を歪ませるほどの熱量を以って彷徨う死者はおぞましい亡霊の姿へと変貌する。
「ぁああ、ああアアアあァア」
 それは既に言葉からは遠く、叫びであるかすら分からず。ただ、ただただ、殺意が、狂気が零れ落ちる。思わず、足を止めてしまいそうになる程の。恐怖からでは無い、その断末魔の悲鳴に何かを思ってしまいそうになる。
 ーーだが。
「この、歌を……」
 そこに、ひとつの旋律が届いた。優しい歌。ファレリアの歌声が、亡霊の金切り声に重なり響く。柔く、優しく届く旋律に栗花落・澪は息は薄く口を開く。
「悲しい声……」
 琥珀色の瞳は無限回廊の亡霊を捉えていた。踏み込みはひとのそれだというのに、駆ける姿は獣のように。けれど、けれどその手は求めるようにこちらに伸びようとしていた。
 此処から抜け出す術を、もしかしたら誰かを求めるように。
「敵として蘇った存在である以上、今更その想いを汲み取る事はできないけど」
 せめて、とは言わない。ただ、澪は手を伸ばす。破魔を宿した光の球体が浮かび上がる。
「援護は任せて」
「あぁ」
 短く、応じた白波・柾が踏み込む。距離を詰め過ぎても、置きすぎてもいけないのは事実。あちらの間合いは、不可視のそれだ。確認し、把握しきれば対応のしようはあるがーー掴み切るにはまだ、かかる。
「……あナ……タ、も……、ァア、アア」
「亡霊か。なるほど、此処に相応しい」
 礼拝堂のステンドグラスが、淡い光を戦場に落としていた。何処から生まれた光か、色彩は血と古い骨の匂いがする戦場に不釣り合いな程に美しく落ちる。
(「とろりんたちとの落差が激しすぎて戸惑うが
俺たちのやることは決まっている」)
 息を吸う。抜き払った刀に淡く、光が落ちる。俺の刀は敵を斬るためにある。
「さあ、尋常に―――勝負だ」
「ァア、ぁァアア……!」
 咆哮に似た叫びが柾に向いた。一撃では無く、ただ威嚇と殺意を零す声に床を蹴る。崩れかけた礼拝堂の椅子を蹴り上げ、一度身を低めたのは無限回廊の亡霊の周囲、その空気が変わったからだ。
「…………た、ス……け………」
 空気が一気に冷える。青白い冷気に床の色が変わる。霜を踏み、召喚されたのは悪鬼の如き甲冑を纏う亡霊。
「冒険者の亡霊か」
 間合いを警戒した柾に対し、亡霊は飛び込む。とった距離を先に殺す気か。獣のように身を倒し、一気に飛びかかってくる冒険者の亡霊に柾は腕を振り上げた。
「ーー」
 凪ぐのでは無い。一撃、飛び込みから掛けられた体重を、亡霊の重みを大太刀で受け止める為だ。長い刃を振り上げれば、刀身を亡霊の拳が滑り火花を散らす。
「はぁああ……!」
 声と共に、払いあげる。瞬間、冒険者の亡霊がかき消えーーその青白い冷気の中を、柾は突破する。足裏、捉えた床をそのまま蹴って身を、飛ばす。
「俺の一刀―――受けてみろ!」
 間合いにて止めた足。流すように横に向けていた刃を一気に振るう。
「ァア、ァぁあああ……」
 素早い一撃が無限回廊の亡霊を切り裂いた。刀身が青白い体に沈み、こぼれ落ちたのは炎か。あぁあ、と呻くような声が響き、瞬間、柾は身を横に飛ばす。
「……あナ……タ、も……」
 伸びた腕。手にした拳銃がゆらり、とこちらを向いていたからだ。銃弾は、さっきまで柾がいた場所を撃ち抜く。ガウン、と鈍い音と共に床の色が変色していた。
 無限回廊の亡霊の叫びは、青白い冷気から新たな死者を呼ぶ。冒険者の亡霊は、無限回廊の亡霊よりは薄くーーだが、その声は、まだ言葉として僅かに響いていた。一撃を受けては霧のように消え去り、冷気だけを礼拝堂に残しーーあとは主たる亡霊が佇む。断末魔の悲鳴を響かせ、ゆらり、揺らした身を次の瞬間には獣のような素早さで前に飛ばして。
「綺麗だけど寂しいところっすね。こんなところじゃ寂しいままだろうに」
 須辿・臨の前、礼拝堂の椅子が砕け散る。降り注ぐステンドグラスの光だけは変わらずに、祈りの場に血と鉄の匂いが注ぐ。
「あんたの求めてるもんを見せてやることも、知る事もできねっすけど」
「ぁあ、アァあ……」
「……いざ、勝負っす」
 呻き落ちた声に、踏み込む事を応えとする。椅子の破片を飛び越え、着地のその場所で担ぐ刀に手をかける。ぐん、と無限回廊の亡霊がこちらを向く。距離に反応してか。向けられた銃に臨は構わず踏み込む。守りを気にせず、ガウン、と放たれる銃弾に軽く身だけを逸らし刀に手をかける。瞬間、跳ねるように無限回廊の亡霊は身を後ろに飛ばした。刀ならば届かぬと。だがーー。
「これは、届くっすよね」
「ッァア、ぁああ……!?」
 キャノンだ。仕込み銃の一撃に、ぐらり、亡霊が身を揺らす。
「……亡霊に効くんすね」
「刀も届くから、かもな」
 ざ、と足を引き、距離を取り直した柾が声を返す。動きへの反応、というものは使えそうだ。噂が正しければ元はこの迷宮に挑んだ者。故に染み付いた戦いの勘というものが無限回廊の亡霊にも残っている。 
「……あナ……タ、も…………」
 ぐらり、揺れた身が跳ねるように置きた。ぐん、とこちらを向いた無限回廊の亡霊が銃口を向ける。ガウン、と一撃が、刀を振り回す臨へと届いた。
「ーー」
 最初に感じたのは痛み。次に感じたのはーー冷気だ。刀を振るう腕が、引っ張られるように浮く。腕から血がし吹きーー赤く染まる亡霊の腕が臨の目に見えた。
「ぁあ、あ、コ……レで」
 これ以上、振り回させぬか。行かせぬとでもいうのか。亡霊の腕で臨と自らを繋いだ無限回廊の亡霊が、その視線を向ける。目が合えば、構えられた銃に冷気が帯びるのが分かる。ギシ、と亡霊の腕が逃さぬとばかりに絡みつく。
「引き摺りこんでくる腕も、亡霊も」
 は、と臨は息を吐く。ぱたぱたと足元、溢れた血を気にせずに腕を引く。
「生憎と。一族の教えで「道を阻むものは親でも斬れ」って言われてるんす」
 血が落ちる。赤に、腕の感覚が戻っていく。その熱に、臨は床を踏んだ。床を蹴りーー。
「この先に助けを求めてるヤツらがいるんで――通して貰うッスよ」
 身を、前に飛ばす為。
 距離を詰めれば、繋がれた亡霊の腕が僅かに浮く。振るう刀が今度こそ、臨の刀身に力を乗せた。赤き刃は絡みついていた亡霊の腕をーー払う。
「……ア、ああアアァアア」
「哀れだな」
 叫ぶ声に、零れ落ちる青にジゼル・スノーデンは呟いた。
「亡霊になにが起きたか。どうしてこうなったかなどの、因果はわからないけれど」
 哀れだよ、と少女は紡ぐ。
「今もなお嘆き続けなくてはならないのだから」
 ましてや、これは海から湧き出した過去の泡のようなものなのだから、いま倒したところで嘆きが終わるわけじゃない。
 終わらないのだ。あの亡霊は。完全には終わりきれない。
(「これもまた、せつないものだな」)
 ほう、と落とす息が白く染まる。礼拝堂には、冷えた死者の空気が満ちていた。
 カノープス、と少女は告げる。守護者たる少女人形は、オール型の杖を掲げ光を宿すクラゲを礼拝堂に招ぶ。
「カノープス、行く道を照らすもの。水先案内人、照らしてやれ。そして弔いの風をもって、死者が安らぐところまで運んでやれ。凪いだ海に至れるように」
 無限回廊など、暗くて寒いだろう?
 吐息ひとつ零し、ジゼルは無限回廊の亡霊を見た。まっすぐに、その目を逸らす事なく。
(「悲鳴も呻きも、わたしにはわからない」)
 けれど、と薄く口を開く。
「けれど、今はカノープスと共に弔い人になろう」
 淡い光が、礼拝堂に落ちた。
「……ア、ああアアあアあああアアアアアアアア」
 その柔い色彩に、声に無限回廊の亡霊が暴れるように吠えた。ぶるり、と頭を振るい、獣のように床を蹴る。爆ぜたタイルの破片が青白い光に飲まれ、おぞましい亡霊の姿へと変じて死者は吠えた。
「ァアアぁああァアア!」
「ーーっ」
 金切り声に、ジゼルは息を吸う。振るう杖が淡い光が、不可視の音を払う。散らしきれなかった分、僅かに痛みが走るがーー大丈夫。大丈夫だ。今日の自分は、弔い人であるのだから。
「闇夜の灯台、指し示すもの。風を起こし、道を示せ」
 光の中、道を示す風が戦場に吹き込んだ。旋風に亡霊の纏う影が揺れ、青白い光が溢れていく。
「ぁあ、ぁ……」
「……」
 慟哭にも似た声は、届かぬ祈りへの悲痛な叫びか。絶望への儘ならぬ怒りか。
「そう、帰りたいのですね」
 都槻・綾は告げる。彷徨い、殺意を零す亡霊に。求めるように伸ばしていた手さえ、すでに床を掻き、柱に罅をいれるものへと変わり果てた亡霊に。
「望郷を胸に抱いたまま、独り彷徨い続けるのは辛く悲しかったことでしょう」
 淡く微笑み、符を持つ手で綾が青白い空気へと描く五芒星は導べとなる北極星。
「なれば――航路を標します」
 礼拝堂の中。何処とも知れぬ光の差す空間に、星が如く符が舞う。
「帰るべき骸海へ向けて。今度こそ澪に迷わぬように」
 ざぁぁあ、と符が舞った。吠える死者の腕に、足に触れて行けば、踏み込む足が鈍る。向いた視線は戸惑いよりは、違和感にか。一度下を向いた瞳が、次の瞬間、殺意を込めて綾を見た。
「……ア、ああアアあアあああアアアアアアアア」
 断末魔の金切り声が、響き渡った。符の威力を鈍らせるそれに、はたと靡く衣を綾は振り上げる。空を震わせる一撃を、払い、見切れば再び符を舞わせた。無限回廊の亡霊へと。添えるのは、もう独り泣かなくて良いのだと、寄り添う祈り。
「ぁあ、ァアアア……!」
 おぞましい姿へと変じた無限回廊の亡霊は、吠える。己の形さえ見失い、暴れるように伸びた腕を、獣のように振り下ろす。撃ち出される銃弾の精度は今や低い。ーーだが、最初のその時より鈍っているだけだ。暴れるような動きだというのに、銃弾は、腕は、咆哮は、確かに猟兵たちに届いている。
「ぁあ、ァアアぁあ……!」
 それが、この先を求めるということなのか。それとも災魔というものなのか。吐き出される殺意に、暴れる腕がその形を見失いかけたその時ーー。
「ぁあ、あ……」
 腕が、回っていた。背後から、亡霊を抱きしめるように。ばさり、と翼が開く。澪だ。
「……」
 背後から抱きしめたその腕に、回された熱にーー生者の体温に亡霊が暴れる。
「……ア、ああアアあアあ? アアアアアアアア」
 戸惑いか、混乱か。
 無限回廊の亡霊から溢れる声が殺意の中揺れ、おぞましい亡霊へと、変じることに失敗しながら金切り声をあげる。衝撃に、体に響くその声に澪の腕が血に染まる。断末魔の悲鳴に、一瞬、視界が歪む。けれどーー回したその手を、離すことは無かった。
「……ごめんね」
 背の翼がほんの少し色を変える。優しさを乗せて、体温を届けて、澪は魔を浄化する光を放つ。
「……ァア、ァアア、あ」
 戸惑うようにほんの僅か声が揺れ、だが塗り潰すように金切り声が響く。
「歌を、今……!」
 ファレリアが高く、歌う。癒しを、幸いを届けるように。澪の腕を振り払い、ぐん、と亡霊は振り返る。だがそこに、花がーー舞った。
「航海の先で大切な人達に逢えますように」
 黄泉路灯す山吹を、餞に綾は贈る。
 無数に舞うは山吹雪。向かう筈の腕が、花に触れて絡め取られる。
「もし逢えたら、どんな思い出話に花が咲くのでしょう」
 いつか私も海へ辿り着いた時に貴方の笑顔が見れたら良い。
「ぁあ、ぁあああァアア!?」
 殺意の果てに、戸惑いの先に、亡霊の声が揺れる。さっきまでの、ただただ殺意に濡れた怨嗟の声ではない。ほんの僅か、軋むように揺れているのがパーム・アンテルシオの耳に聞こえる。
「私は、あなたのお仲間には、なってあげられないけど」
 せめて、とパームは告げる。
「せめて、その無念を焼き尽くす手伝いを」
 無限回廊の亡霊は、この回廊で命を落とした学生の亡霊なのかもしれない。
(「可哀想というか、哀れというか。そう、感じなくもないけれど。……倒すべき敵として立っている以上は……哀れんでばかりも居られないよね」)
 終わりを告げる為には、一度でも眠りにつかせるには戦うしかないのだ。
「その苦しみを、灰と化す事での終止符を」
 冷気に満ちた礼拝堂に、火が生まれる。さわさわとパームの髪が揺れる。
「ユーベルコード……金竜火」
「ぁあ、ぁあああ……!」
 顕現した桃色の炎に、無限回廊の亡霊が吠える。ぐん、と身を起こし、伸びた腕が端からおぞましい亡霊へと変じていく。再び、あの声を響かせる気か。完全にその姿を変える前にと、臨と柾が前に出る。ファレリアの歌声が響く。
「大丈夫だよ、仲間外れにはしない。みんな、ここで終わらせる」
 小さな狐の形をした炎を合体させ、炎の狐が礼拝堂に立つ。亡霊の金切り声に、僅か炎を散らしながらも合わせた熱は、炎は、その程度では削られない。削りきれはしないから。
「……いくら数が増えても。私たちだって、一人じゃないんだから、ね」
 この炎は、あなたの苦しみを灰にできる。
 ごぉおおお、と桃色の炎が唸る。呻く死者が向けた銃弾を食らいつくし、払うジゼルが風を招く。
「ぁあ、ぁああああ……ぁ」
 炎の狐が、無限回廊の亡霊へと届いた。食らいつく牙に、炎に、亡霊が燃え上がる。ぐらり、とその身を揺らし、青白い炎を零しーー手から銃が、落ちた。カタン、と思うより軽い音が響き、先に消える。茫洋たる死者の瞳は一度猟兵たちを向きーーゆっくりと、閉じられた。
 無限回廊の亡霊は、消えた。礼拝堂に差し込む光がほんの少し、葬送を告げるように、猟兵たちを労わるように揺れた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『あったかもふもふ蒸気温泉』

POW   :    沢山のもふもふをかかえたり、荷車等でたくさんのもふもふを移送させることができます

SPD   :    巧みなもふもふ術でもふもふを魅了したりして、もふもふの興味をひくことができるかもしれません

WIZ   :    もふもふに語りかけたり習性を理解し、もふもふと仲良くなり移送させることができるかもしれません

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幸いの在り処
「お疲れ様。お帰りなさい」
 猟兵たちを出迎えたのはシノアだった。無事の見送りを、と告げたのは回廊の亡霊を送ったことにだろう。
「戻って早々にごめんなさいね。こちらもこちらで、なんというか大渋滞で……」
 アルダワのとある川。蒸気のラインが近くを通った為に温泉状態になった結果、動物たちが集まってしまっているのだ。
「現地への案内は問題ないわ。とにかく、位相を手伝って欲しい、ということだそうなの」
 案内と共に、先に現地に入っているのは学園の教師や生徒の一部だという。先に迷宮で怪我をした二人はいないそうだが、彼女の手助けをした教師は出てきているそうだ。
「兎に角、手が足らないそうよ。良かったら、手伝っていただけるかしら」
 迷宮の外。死者の弔いの後に、ほんの少し、向けた手を癒しに。

 斯くして、辿り着いた猟兵たちの前にそのなんともギャップ感溢れる状況は展開していた。
 もふもふなのである。とにかく、もふもふでみっちみちなのである。カピパラとか、小動物とかがもふっと川に詰まって。
「……」
 みっちみち大渋滞だ。
●もふっとみちっと
 もふっと、みちっと。それはそれはもうみっちりと、動物たちは川に詰まっておりました。なにせ川がとっても温かくなったのですから。ぽっかぽかなのですから。水を飲みにやってきた川が、一歩踏み入れたら逃れられない程にぬくぬくだったものですから。みちっとみちっとみんなで揃って川に入って。
「もふ……」
 大渋滞を起こしてしまっておりました。
栗花落・澪
よーし、やるかぁ…!
大きい子はちょっと力弱くて運べないので
小さい子中心に運搬します

★飴瓶から、食べると幸せな気持ちになれる魔力を宿した
特別製の飴をいくつか取り出し
★杖で砕いて差し出してみたり
【優しい歌唱】で気を引きながら優しく撫でたりしてみるね
動物会話使えないのが残念だけど
大きい子は出来ればこれで
自分から出て来てもらえると嬉しいなぁ…
美味しいよ、お食べ

小さい子達はそっと抱えて運びます
甘い香りのする上着で包むようにしたら
うさぎサイズなら2、3匹くらいは同時にいけるかなぁ…

どこに移動させたらいい?
他の子達も着いて来てね
道しるべになるように
見失わないよう速度は合わせる
こっちだよ、おいでおいでー♪



 もふもふなひよこたちに子羊、カピパラさんも沢山だ。大きなカピパラたちが川の水ーー蒸気のおかげで温泉と化した川の流れを遮れば、その間に小さな動物たちがもふっと挟まり直していく。
「よーし、やるかぁ……!」
 もっふもふとみっちみちの現状に、栗花落・澪は息を吸った。大きい子は運ぶのは難しそうだ。立派なカピパラたちを視界に、まずは、と澪は小さな動物たちを見た。
「むぅ?」
「もふ?」
 ぴよ、と一緒に聞こえたのはひよこだろうか。澪は小さく笑って、小瓶を開けた。中に入っているのは食べると幸せな気持ちになれる、魔力を宿した特製の飴。とん、と杖で砕いて差し出した。
「美味しいよ、お食べ」
「むい?」
「みゅぅ?」
 こてり、と温泉状態の川の中、もふもふな動物たちが首を傾げる。優しい歌唱で、気をひきながらそう、と手を伸ばせば鼻先をあげたうさぎが、つい、と鼻をつける。触れても良い、ということだろうか。ゆっくり、優しく撫でてゆけば気持ちよさそうに仔ウサギ達が目を細める。すんすん、と興味深げに鼻先をあげたのは子羊だ。
「うん。気になる? 美味しいよ」
「めぇ?」
 すんすん、と鼻先、少し興味深げにけれどちろり、と舐めていった羊が、ぴん、と尻尾を小さな尻尾をあげた。
「めぇ」
「ん? 気に入った?」
 めぇ、めぇ。と頷くように子羊が澪に擦り寄る。一匹、そうすればぼくもぼくも、と子羊たちが澪に近づく。そっと、足を引けばぱしゃん、とぱしゃん、と川から子羊たちが上がっていく。
「うん。いい子」
 甘い香りのする上着を広げ、仔ウサギたちと、ふわもふな動物たちを包むようにして抱き上げる。
「よし、っと。どこに移動させたらいい?
「あぁ、では。こちらに。布も用意してありますので」
 もふもふ達のちょっとした休憩所。湯上がりの体が冷えたりしないように、もっこもこの毛布が広げられた場所まで。みゅぅ? みゅ。とひたとくっついたもふもふに澪は笑みを零した。さぁ、振り返れば子羊さんに、甘い香りの飴に誘われて出てきたカピパラさん。
「こっちだよ、おいでおいでー♪」
 誘う声に、もふもふと。小さな足で、川から上がった動物たちがついてくる。見失われないように、歩幅も合わせて。小さな行進の前を澪は歩いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

境・花世
動物にも催眠術ってきくのかなあ
小さくしゃがみこんで、
一際柔そうな兎に囁いてみる

きみはだんだん移動したくなーる
移動した――もふぅ!?
顔に飛びつかれて呼吸困難
た、助けて誰か、シノアー!

ん、んん、ありがと
とんだもふもふな目に遭ったよ……
胸に抱えた仔にめっとしながら
森へお帰りと離してあげて

いつかシノアとすれ違った闇とは
まるでかけ離れた明るい世界
みっちみちのとこから一匹借りつつ
平穏だね、なんてゆるく笑う

何が正しいなんて知らないけど
もふもふがあったかい世界は
多分救う価値がある、と思うんだ
しりあすなかおで語るけど
手は高速でカピバラを撫でるのを忘れない

ね、きみもそう思うよn……もふぅ!?

※アドリブ・絡み歓迎



 動物にも催眠術はきくのだろうか。
 少しばかり悩みながら、ふわふわと湯気の出る川の前、もっふもふとご機嫌な動物たちに境・花世(*葬・f11024)は膝を折る。近づいたのに気が付いたか、鼻先をあげた兎がぬくぬくご機嫌なままゆるり首をかしげる。
「きみはだんだん移動したくなーる」
 一番柔そうな兎にそう囁けば、ぱちと瞬く瞳。小さく兎の耳が動いてすくり、と身を伸ばす。
「移動したーー」
 やった、とあげるはずの声がもふぅ、と顔に飛びつかれてーー消える。
「た、助けて誰か、シノアー!」
 もふもふわたわた。飛びついたままのもふもふ兎はそれなりに重くて、ふらり、と寄ろめいたそこ、手が触れた。
「お嬢さん、大丈夫?」
 シノアだ。引き剥がされた兎が、もふり、と花世の膝の上に降りる。
「ん、んん、ありがと。とんだもふもふな目に遭ったよ……」
 まさかのもふもふによる呼吸困難。もふ困難。
 胸に抱えた仔にめっとしながら、森へと返す前、体調の確認だけをするのだと聞いた場所へ連れて行く。怪我もなければこのまま、森へと帰るのだろう。
「平穏だね」
 みっちみちのところから一匹借りつつ、花世は緩く笑う。
「何が正しいなんて知らないけど。もふもふがあったかい世界は多分救う価値がある、と思うんだ」
 シリアスな顔で語りながら、けれど手は高速でカピパラを撫でるのを忘れない。子供のカピパラの毛は柔らかくーーもふもふだ。
「ね、きみもそう思うよ……」
 ね、と続くはずの言葉は突進するちいさなカピパラさんに食べられて。お嬢さん、と慌てた様子のシノアの声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神宮時・蒼
…もふもふ。…いっぱい。…ボク、このまま、此処に、沈んで、しまいたい、です…。(無表情ながら、瞳はキラキラ輝いています)

【POW】
直接もふもふできるなら、いっぱい抱えて移送しましょう。
ちょっとゆっくり歩いてもふもふしても怒られませんよね…。
動物なら、怖くない。人は怖いけど、動物なら。

普段は冷静な思考も、もふもふの前には形無しです。
此処が、此処が楽園ですか。一緒に川に詰まりたい…。
頭の端っこは冷静なので、踏みとどまれると、いいですね…。



「……もふもふ。……いっぱい。……ボク、このまま、此処に、沈んで、しまいたい、です……」
 無表情ながら、神宮時・蒼の目はキラキラと輝いていた。なにせ目の前、温泉状態の川にはもふもふたちがいっぱいなのだ。みんなとっても気持ちよさそうに、もふっとみちっとしながらねむねむしている。
 とはいえ、このままだと川は大変なことになってしまう。そうっと、 蒼が近づけば仔ウサギたちが鼻先をあげる。なになに? どうしたの? と言いたげな仔ウサギの横、小さなカピパラも揃って首をかしげる。
「此処が、此処が楽園ですか。一緒に川に詰まりたい……」
 そう一緒に詰まればみんなでもふもふ。みちっともふもふ。ふかふかもふもふでぷかぷかでーー……。
「みゅ?」
 普段は冷静な蒼の思考も、もふもふの前には形無しだった。そう、もふもふは偉大なのである。思わず伸ばした手。頭の端っこ、冷静な自分はいるのにーー惹かれてしまう。
「みゅい?」
 つん、と指先に何かが触れる。ぱち、と瞬いた先、蒼の目に見えたのは、つんつん、と鼻先を押し付けてくる仔ウサギさんたちで。
「運びましょう」
 かき集めた冷静な思考で、もふもふな動物さんたちを抱き上げる。みゅい? みゅ? と首を傾げ、それでも抱き上げられればわたわたと蒼に抱きつく。
「むいっ」
 いっぱい抱えて運んでいけば、みゅいみゅい、ともふもふたちが腕にいっぱい。ちょっとゆっくり歩いても、もふもふしても怒られはしない。
「……」
 動物なら、怖くない。人は怖いけど、動物なら。
「みゅ?」
「みゅい?」
 抱きしめればやわらかく、優しいもふもふが蒼に触れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファレリア・リトヴァール
うふふ、もふもふがみっちみち……何て可愛らしいのでしょう。
でも、見ている分には可愛らしいですけれど、きっと窮屈ですわよね。
もっと広くてのんびり出来る場所に行きましょう?(もふもふをなでなでしつつ)

歌で誘導する事は出来ますかしら。
明るい楽しい歌で、一緒に来て下さる様呼びかけてみますわ。
歌で行進するもふもふさん達、とても可愛いと思いますの。

あの亡霊の方も、こうして一緒に来れたら良かったのですけれど……。
今頃は明るい場所に行けている事を願いますわ。



「うふふ、もふもふがみっちみち……何て可愛らしいのでしょう」
 もくもくふわふわ。
 湯気の上がる川には、相変わらずもふもふの動物たちが詰まっていた。
「でも、見ている分には可愛らしいですけれど、きっと窮屈ですわよね」
 ほう、とファレリア・リトヴァールは息をつく。そっと膝を折り、白い指先を伸ばす。
「もっと広くてのんびり出来る場所に行きましょう?」
 もふもふを撫でながらそういえば、みゅい? と小さな声が返る。心地よいのか、そのままうつらうつらし出した子羊たちにファレリアは、ふ、と笑う。とろり、とろける瞳も、もふもふもそれはそれは可愛いけれど、流石にこれではみっちみちすぎる。
「さぁ、こちらに行きましょう?」
 明るく楽しい歌を娘は口ずさむ。歌声にぴん、と仔ウサギが耳を立て、いつの間にか潜り込んでいたフェネックたちがゆるゆると顔をあげる。寝ぼけ眼も楽しげな歌声に、二度、三度と瞬いて。一匹、また一匹と川から出てくる。
 歌声に合わせて、行進するもふもふさん達に、わぁと上がった声は手伝いに来ていた学生達からか。可愛い、と落ちた声に、えぇ、とても。とファレリアも笑った。
(「あの亡霊の方も、こうして一緒に来れたら良かったのですけれど……」)
 今頃は明るい場所に行けている事を願いますわ。
 いつか、亡霊自身が全てから救われることを。願うように紫の瞳を伏せて、すぅ、と一つ息を吸う。歌声は明るく。気がつけば可愛らしいひよこたちも行進に混ざっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

壮観ですねぇ

川を埋め尽くす毛玉の群れを
ほくほく眺め乍ら
生徒2人の怪我の具合と様子を尋ねに
教師の傍らへ

礼拝堂に取り残された霊魂の素性もご存知なら
名を訊き
空へ彼の名を呼び掛ける
名も無き者でも
お休みなさいと祈る胸の裡


シノアさんの
もふへの溢れる想いを眼差しに見て
つい笑み零し

良かったら一緒に囲まれてみますか?

柔らかな笛奏で動物達の気を惹きつ
微笑んで
まるで井戸端会議の様子の
のんびり対話

暖かいですねぇ
好い天気ですねぇ
そろそろお腹が減りましたねぇ
食事に行きましょうか?

渋滞中の彼らへ
おいで、と甘く呼び掛け移動を促す

歩みは
弾む如く楽しげな笛音

もふもふに囲まれつつ
雲の中をふわふわと泳ぐ心地の大行進



「壮観ですねぇ」
 川を埋め尽くす毛玉の群れをほくほく眺め、都槻・綾が訪ねた先、学園の教師は生徒二人の経過は良好だと告げた。
「あれは運が良かったのでしょう。それに、向かうべき者が向かったのですから」
 初老の域に差し掛かった教師の金色の瞳が僅かに細められた。ほんの一瞬、遠くを見るような色彩に綾は口を開く。
「礼拝堂に取り残された霊魂の素性はご存知では?」
「ーーいいえ。あれのことは私は何も」
 緩く首を振り、私が知っているのは、と薄く口を開いたのは生徒二人を気にかけてきた綾相手であったからだろう。
「遠い昔、帰って来なかった者のことだけです」
 迷宮であればよくある話。帰り付かなかった者のそれ。来し方を思う老教師は金の瞳を一度伏せ、息をつく。
「無事に戻るのは良いことです。皆様のお陰で憂も晴れました」
 少しは学生達も落ち着くでしょう。と告げると、遠く、教師を呼ぶ声がする。運ばれた動物達も増えたのだろう。念の為、一度健康を確認してから放すのだという。
「失礼」
「いいえ」
 微笑と共に見送り、綾は目を伏せた。お休みなさい、と迷宮の奥、彷徨う亡霊へと祈りを捧ぐ。
 甘い香りに、歌声に、ふらりと誘われて。川辺に見えるのはもふもふの大移動だ。柔らかな笛の演奏にもふり川にはまっていた動物たちの視線がこちらをーー向く。
「みゅい?」
「むいみゅい?」
 こてりこてこて。首を傾げて。でもなんだか気になって。上がる動物たちに笑みを零しーーふ、と綾は笑った。
「良かったら一緒に囲まれてみますか?」
 笛で動物たちの気を惹きつつ、微笑み告げたのは音色に誘われ上がってくるもふもふたちを眺めるシノアに気がついたから。
「良いのかしら?」
 一応、そう一応聞きながらも注ぐ視線はもふもふに向いていて。ふ、と吐息を零すように笑い、綾は頷いた。
 そうして始まったのはもふもふと一緒の穏やかな時間。
「暖かいですねぇ。好い天気ですねぇ」
「みゅい?」
「むいみゅい?」
 みゅ、と落ちた声ひとつ、綾の足元にいた子羊がついついと足に触れる。
「移動したいの……かしら?」
「そのようですね。そろそろお腹が減りましたねぇ。食事に行きましょうか?」
 おいで、と甘く呼びかけ、綾は移動を促す。みゅいみゅい? と落ちた鳴き声に微笑んで、歩みは弾むが如く楽しげな笛音。もふもふに囲まれつつ、雲の中をふわふわと泳ぐ心地の大行進だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジゼル・スノーデン
うふふふふ
うふふふふふふ

もふもふだな!もっふもふがみっちみちだな!!
しかもたおさないでいいとか。世の中捨てたものじゃない。もふもふはここにある

と、ときめき倒してる暇はないか。
えーと。とりあえず
【小さな船が、航海に】で、ボートを作るぞ
で、小さなもふもふをどんどん積んで、岸に輸送する
大きなもふもふは、……たくさんつむとひっくりかえるかもしれないし
あ、逃げるなよ!大丈夫。いじめやしないから
私は『救助活動』は大得意なんだぞ

ボートが邪魔になりそうなら出すのはやめて、素直に川に入る
………ポカポカだな
温泉だな
………………春まで、ここでもふもふと詰まっていたい……



「うふふふふ。うふふふふふふ」
 右を見ても、もふもふ。
 左を見ても、もふもふ。
 前を見ればーーそう、どうしたってどうみたってぬくぬくの川に、空いたスペースにもふっと動物たちが挟まってもふもふワールドが展開されているわけで。
「もふもふだな! もっふもふがみっちみちだな!!」
 もふもふの川辺で、ジゼル・スノーデンは目を輝かせた。
「しかもたおさないでいいとか。世の中捨てたものじゃない。もふもふはここにある」
 みゅい? むいみゅい? と川の方から声がする。ときめき倒しているジゼルに気がついたのかーーそれとも、移送が進んでちょっと空いてきた川にもふっと浸かってご機嫌だからか。川辺にもふり、と顎を置いた小さなカピパラの上、もふもふのひよこがすよぴよと気持ちよさそうにしている。ずっと眺めていたい光景に引きずり込まれそうになった心を、ジゼルは引き戻す。そう、とりあえずそのままにはできないのだけは此処も同じだ。
「えーと。とりあえず」
 とん、とオールの杖で地面を叩く。さぁ、と歌うようにジゼルは紡いだ。
「海に出よう。星を拾いに。月夜に浮かぶ真珠の泡を。誰かが作ったはじまりの歌を。拾い集めに、海へ。海へと」
 ぱしゃん、と川にボートが落ちた。移送も進んできた今であれば、もふもふたちの間を縫ってボードを浮かべることも容易だ。
「さぁ、いくぞ」
 小さなもふもふをどんどん積んで、岸に移送していく。対岸付近でもふもふとしていた兎たちを運んで行けば、じぃっとこちらを見るカピパラに気がつく。
「大きなもふもふは、……たくさんつむとひっくりかえるかもしれないし」
「むい……!」
 じりじり、とまずは一匹。近づこうとしたジゼルにカピパラはすたたっと短い足で川を蹴った。
「あ、逃げるなよ! 大丈夫。いじめやしないから」
「むい? みゅいむい?」
「私は救助活動は大得意なんだぞ」
 みゅい、と落ちた声ひとつ。そうなの? それならまぁそれなら、とボートに乗ったもふもふさんと一緒に。さぁ、もう一度出港だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須辿・臨
【POW】
はー、もふもふ。
疲れとか、怪我とか、吹っ飛ぶような……明日寝込んでるかもしれねっすけど。

はっ、顔の筋肉が緩んでたっす。
自分で出てきてもらえるように、お団子で釣ってみるっすね。
ほら、お団子っすよーこっちおいでっすよー。
ちゃんとこの日のために、野菜や穀物で作って貰ったお団子っす!
……シノアさんもあげてみるっすか?
誘き寄せて貰ったら、オレ、抱えて運ぶんで。

もふの詰まった荷車も破壊力あるっすねぇ。
なんて癒やされつつ、あの亡霊さんのことを考えて見たり。
いつも会えるって思ってる人といつ別れるかわからないっすからね。
一日一日、大切に。もふとの出会いも大事にしないとっすね!

アドリブ歓迎



「はー、もふもふ。疲れとか、怪我とか、吹っ飛ぶような……明日寝込んでるかもしれねっすけど」
 身動きが取れる程度の負傷とはいえ、血は流しすぎた。足りてないっすかねぇ、と呟きつつ須辿・臨はもふもふの川へと目をやった。
「みゅいみゅい」
「むいー」
「みゅい!」
 むちむち、みっちみちの状況が多少は改善されたとはいえ川でくるくると遊び出す子たちが増えたのも事実。少し流れては長居のカピパラさんたちでひっかかり、そこからみっちみちのもっふもふワールドが始まる。もっふもふのやつが。
「はっ、顔の筋肉が緩んでたっす」
 もふもふの威力の前、ふるり軽く頭を振って臨は菓子袋を手に取る。中から取り出したのはお団子だ。
「ちゃんとこの日のために、野菜や穀物で作って貰ったお団子っす!」
 そう、もっふもふさん達が食べても大丈夫。ひらひらと揺らして見れば、もふもふさんたちの視線が向く。ぴん、とたった耳に、あ、と声が落ちた。シノアだ。
「……シノアさんもあげてみるっすか?」
「え、いいのかしら?」
「誘き寄せて貰ったら、オレ、抱えて運ぶんで」
 適材適所。はいどうぞ、と渡したお団子の先、そうっと、そうっとシノアはもふもふ達のまどろむ川にお団子を向けた。
「ほら、美味しいお団子よ」
「……みゅい?」
「むいみゅい!」
 なにそれなにそれ、お団子お野菜? とでも言ったのか。すんすん、と鼻先を動かしていたもふもふな動物達が川からーー出てきた。
「ーーあ」
 息を飲む音がひとつ。目を輝かせるシノアのときめきも振り切れようとしていた。
 一匹、もう一匹。みっちみちのもふの川から、もふもふな動物達がお団子に誘われてやってくる。
「もふの詰まった荷車も破壊力あるっすねぇ」
 仔ウサギたちを抱え、小さなカピパラさんたちを抱えて荷車に乗せながら臨は小さく笑った。癒されるっすね、と思いながら、ふと、思い出すのは迷宮にいた亡霊のこと。
(「いつも会えるって思ってる人といつ別れるかわからないっすからね」)
 ふ、と息を吸う。みゅい、と溢れたもふもふさんたちの鳴き声に臨は頷いた。
「一日一日、大切に。もふとの出会いも大事にしないとっすね!」
 さぁまずは目の前のもふ達から。移動の開始だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
あはは、もふもふの大渋滞だね。
これは私も負けてられないね。

●WIZ
せっかくだから、もふもふで仲間になってみようかな?なんて。
ほら、動物って結構、集まって暖を取ったりとか、
前も見えないでしょ、ってぐらいくっついて行動したりするじゃない?
それを利用して…
前が開いてる動物に、尻尾をもふっと。
そのまま歩いていったら、付いてきてくれたりしないかな。
後ろの子たちまで、芋づる式に…なんて。
川の外に出るんだし、周りを狐火で温めるぐらいは、した方がいいかな?

まぁ、普通は同じ動物同士な気がするけど…これだけ渋滞してたら、効くかなぁ、って。
効かなかったら効かなかったで…ふふ、動物と触れ合って遊んでお終い。なんてね?



「あはは、もふもふの大渋滞だね。これは私も負けてられないね」
 ふふ、とパーム・アンテルシオは笑みを零した。相変わらずのもふもふの川も、随分と移送が進んでもふもふ達の数が減ってきていた。ーーだが減れば減ったで、存分にぷかぷかぬくぬくできるのだから! と川の中にいたもふたちが悠々自適に動き回る。浅い場所もある川だ。ひよこたちも小さなカピパラ達も楽しみだしている。
「……そうだな。せっかくだから、もふもふで仲間になってみようかな?」
 少し考えて、パームはそう言った。動物は集まって暖を取ることがある。前も見えないだろうと思うほどにくっついて行動するーーあれだ。
「それを利用して……」
 ゆるり見渡した先、少しばかり前の開いている川辺にいるもふもふな子羊と仔ウサギたちの前に、パームは自分の尻尾をもふっと置く。
「みゅ?」
「みゅい、み?」
 落ちた声は子羊たちと一緒にいたもふもふな動物からか。ゆらゆらと尻尾を揺らしーーそうして歩き出せばーー誘われたように、もふもふたちが川から出てくる。すたたた、と短い足で急ぐのは尻尾にじゃれつこうとしているからか。
「みゅい!」
「むいみゅい!」
 しゅたた、すたたた。
 追いかけてもふっと触れれば、みゅい! と落ちる声ひとつ。ひたりくっついていくのはパームをもふもふな仲間と認めてか。
「川の外に出るんだし、周りを狐火で温めるぐらいは、した方がいいかな?」
 一匹、また一匹と増えたもふたちを見ながらパームは手のひらを伸ばす。
「陽の下、火の下、命の欠片を喚び出そう」
 小さな狐の形をした桃色の炎に、ふぅ、と息を吹きかける。囲むようにして、炎を配置する。
「みゅいみゅー」
「むい」
 もふもふな上に、ぽっかぽかとなれば何あれなにあれ、と続くもふもふ達も川から上がってくる。
「まぁ、普通は同じ動物同士な気がするけど……これだけ渋滞してたら、効いたみたい」
 ふふ、と零した息ひとつ。ふっさふさのパームの尻尾を目印に、もふもふさん達が移動を開始する。もっふもふなパレードは、移送されるもふたちの最後の最後。大きなカピパラさんも参加してーー無事に、川に詰まっていたもふもふさん達は全て移送を終えた。

●さよならもふもふさん
 念のための健康診断も終えて、ぬくぬくぽかぽかの温泉を楽しんだもふさん達は森へと帰ることにしました。ぬっくぬくのぽっかぽかではありましたが、たくさんの誘いでちょっと楽しくなってしまったのですから。美味しい香りも、お誘いも存分に楽しんで、もふもふな動物達は森へと帰ってゆきました。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月15日


挿絵イラスト