狐狗狸の聖夜は、かまくらティータイム!
「今年は、クリスマスがやりたいコン!」
こんこ、こんこと。
カクリヨファンタズムのとある妖狐の里に、雪が降る中。額に切り傷のある小さな妖狐が言いました。
「くりすます……コン?」
クリスマスとは何だろう?
集った子狐たちは「ここん?」と首をかしげます。
「前に猟兵が言ってたんだコン。クリスマスって言うのは……」
赤い服を着た人が、トナカイという動物に乗って、家々を回るのだそう。
大きな袋に沢山の贈り物を詰め込んで、みんなを笑顔にするためにやってくるのだとか。
「それで、贈り物を受け取った人たちは、家族や友達とご馳走を食べたりして過ごすんだコン!」
「すごいコン!」
「楽しそうだコン!」
やんちゃそうな子狐が説明を終える頃には、子狐たち目がキラキラと輝いて。
「その赤い服を着た人は『サンタ』って言うんだコン!」
「サンタコン? じゃあ、俺がサンタになるコン!」
「ダメー! サンタはあたしがやるコン!」
「いえ。クリスマスにおける大事な人ならば、ここはボクがやるコン!」
こんこん。ここん!
一体だれがサンタをやるかで、子狐たちは大騒ぎ。
あーだこーだと紆余曲折を経た結果、子狐たち全員が『サンタクロース』に。そして、妖狐の里の大人たちが『トナカイ』という動物の役をすることになりました。
「トナカイ……というのは分からないけど、鹿に変化すればいいコン?」
「そうだコン。鹿に似てるって、猟兵が言ってたコン」
……少し、内容が怪しいけれど。
来たるクリスマスに向けて、妖狐たちはせっせと準備を始めます。
赤い衣装を繕って。贈り物のお菓子を作って。
きっと楽しい『クリスマス』になると、今からワクワクそわそわ。
けれど、妖狐たちは重大な過ちに気付いていません。
村中の妖狐が『サンタ』と『トナカイ』になってしまったら、一体誰が贈り物を受け取ってくれるのでしょう?
●
「クリスマスといっしょに、せかいがカタストロフなのですよ」
集った傭兵たちを見回して、キマイラのグリモア猟兵――琴峰・ここね(ここねのこねこ・f27465)は、カクリヨファンタズムがまた滅びの危機にあるのだと告げた。
日常とカタストロフが同意なこの世界では、例え聖夜であっても気は抜けないらしい。
事件の起こる場所は、カクリヨファンタズムにある妖狐たちの里。
とある世界にいる妖狐たちとは、少し違って。狐そのものの姿をして。二本の足ですたすたと歩き言葉を話す妖狐たちは、猟兵たちから話に聞いたクリスマスをやってみようと準備をすすめていたのだが……。
「このままだと、クリスマスにならないのです」
何故なら、妖狐たちが準備しているクリスマスには『サンタ』と『トナカイ』しか居ないから。
つまり、『サンタからプレゼントを受け取る人』が存在していないのである。
「クリスマスができないと、『ようこ』さんたちがかなしむのです」
その悲しみから発生した力は、なんやかんやあって強力なオブリビオンを生み出し、妖怪たちの世界を崩壊させてしまう。
「なので、『ようこ』さんたちのクリスマスを、せいこうさせてあげてほしいのです」
サンタクロースとトナカイは、家々を回って贈り物を配るもの。ならば、足りていないのは『家』と『贈り物を受け取る人』だ。
「ゆきがいっぱいあるので、『かまくら』をつくるのがいいとおもうのです」
妖狐の里の周辺にかまくらを作ってその中で待っていれば、子狐サンタたちは喜んでプレゼントを配りに来てくれるだろう。
料理が得意な妖狐たちは、様々なお菓子のプレゼントを用意してくれている。
かまくらの中から雪を眺めて、好みの暖かい飲み物を口にして。
次々と送られる美味しいお菓子を頬張って過ごす、ちょっと変わったクリスマスを過ごす事が出来るかもしれない。
「あとは、じゅんびをてつだってあげるのも、いいとおもうのです」
かまくらを作る作業は勿論の事、クリスマスらしい飾りつけや、サンタらしい言動を教えてあげるなど。よりクリスマスらしい雰囲気を作る事ができれば、妖狐たちも喜んでくれるだろう。
「たのしいクリスマスで、せかいをまもってくださいなのです」
一風変わったクリスマスでも、みんなが楽しく過ごせたならば。それはきっと『楽しい』が一杯の思い出になるはずだから。
いってらっしゃいなのですよ、と。何処かのんびりした声で、ここねは猟兵たちを送り出すのだった。
音切
音切と申します。
カクリヨファンタズムのクリスマスをお届けにあがりました。
※このシナリオは、クリスマスの特別シナリオ(1章シナリオ)です。
舞台は過去シナリオ『#狐狗狸のシリーズ』にて登場した、妖狐たちの里です。
特に、過去シナリオの知識は必要ありませんので、お気軽に参加いただけましたら幸いです。
【このシナリオで主に出来る事】
①クリスマスの準備を手伝う
かまくらを作ったり、クリスマスらしく飾りつけをしたり。
妖狐たちにクリスマスの事を教えてあげたりします。
②かまくらでプレゼントを受け取る
作ったかまくらで寛いでいると、
子狐サンタたちが次々とお菓子をプレゼントしにやってきます。
その場で食べてもいいですし、ラッピングされているのでお持ち帰りもできます。
また、この里の妖狐たちは猟兵さんたちが大好きなので、
話しかければ喜んでお喋りしてくれます。
その他:
ここねが同行しています。プレイングに記載がある場合のみ、ここねもプレゼントを配りにくるかもしれません。
筆は大変遅い方です。執筆状況等、連絡事がある場合はマスターページにてお知らせしています。
第1章 日常
『カクリヨファンタズムのクリスマス』
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POW : カタストロフを力ずくで解決して、妖怪達とクリスマスパーティーを楽しむ
SPD : カタストロフから妖怪達を救出して、クリスマスパーティーを楽しむ
WIZ : カタストロフの解決方歩を考えたり、クリスマスパーティーの企画や準備をする
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
篝・倫太郎
【華禱狼】で②
出来上がったかまくら(自作・ネロinサイズ)で寛ぐ
ネロが落ち着きなくそわそわしてるのは
尻尾を見れば分かるから
夜彦と顔を見合わせて笑い
仔狐た……もとい、サンタクロースがやってきたら
メリークリスマス!
子供サンタからお菓子を受け取って
……遊びたいのは判るけど
お仕事あるだろ?サンタさん?
プレゼントを届けるっていう大事な仕事が
安心しなって、逃げやしねぇよ
ネロも遊びたいみたいだし
だから、仕事きちっと片付けてきな?
お菓子喰いつつ待ってるから
そう送り出したら俺の貰った分を開封して皆で分けよう
ネロのは持って帰って家でのオヤツにしような?
少し長くなるけど
サンタの仕事上がりを待つには良いかもしれないな
ネロ・ヴェスナー
【華禱狼】②
オトウサン達ト一緒ニ、カマクラ作ッタヨ!
エヘヘ……ボクガ入レルクライノ、大キイノナンダヨ
作ルノ大変ダッタケド、楽シカッタナ……
コノ世界ニ来ルノ、スゴク久シブリ
コンコンノ子達、覚エテテクレテルカナ?
サンタクロースノ皆、早ク来ナイカナ……!
サンタクロース達が来るまで待って、見えたらお出迎え
メリークリスマス!皆、素敵ナ恰好ダネ!
プレゼントモ、アリガト、アリガト……オ菓子、大好キ!
ボクモ遊ビタイケド、サンタクロースノオ仕事、マダアルンダヨネ?
ボク、待ッテルカラ、終ワッタラ一緒ニ遊ボ?
待ッテル間ハ、オトウサン達ト一緒ニオ菓子食ベルンダ
オトウサン、オトウサン、クリスマスノコト、モット教エテ?
月舘・夜彦
【華禱狼】で②
仔狐達が来る前はかまくらを作ります
ネロは大きいですからね、彼が入る程の大きなものを作りましょう
かまくら作りの合間もネロが落ち着かないのは、彼等のことなのでしょうな
サンタクロース達が来ましたら
メリークリスマス、と挨拶
皆さん、お久し振りですね
楽し気にお菓子を配る様子から、元気なのが良く分かります
ふふ、遊びたくなる気持ちはあるのでしょうけど
まずは皆へのプレゼントを配ってからです
皆、楽しみにしているでしょうからね
ネロも、彼等が終わるまでは我慢できますね?
倫太郎のお菓子を三人で頂きながら待ちましょう
……クリスマスですか?
私もまだクリスマスは二年目なものでして
倫太郎に聞くのがよろしいかと
ぺたぺた。ぺたぺた、と。
一生懸命に集めて、積み上げた雪は半円形に。
そこに唯一開けられた扉型の穴からは、黒いもふもふとしたものが飛び出して。何処か陽気に、ぱたぱたと揺れている。
「オトウサン、デキタヨ!」
黒いもふもふの正体――ネロ・ヴェスナー(愉快な仲間のバロックメイカー・f26933)がカリカリと、内側を掘って仕上げたそれは、特大サイズの『かまくら』。
「頑張りましたね」
ネロの鼻先に付いた雪を、優しく拭って。月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が柔らかな毛並みを撫でれば。
「さっそく入ろうぜ」
冬の夜の冷たさに少し鼻先を赤くした篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が、ニカっと笑う。
雪は冷たくて、重たかったけれど。オトウサンたちとネロが一緒に入るのだから、大きく作るのだと。
三人で力を合わせて作ったかまくらは、周辺のそれと比べてみても、一回りも二回りも大きくて。
180cmを越える体格の三人でも、寝転がってゆったりと……とは。流石にいかない。
そこは『かまくら』であって、家のリビングではないのだから。
強度を考えれば、三人が身を寄せて入る大きさがやっと。
それでも、触れる体温の暖かさがあれば、狭いと感じる事もない。
「コンコンノ子達、覚エテテクレテルカナ?」
ネロが以前、この世界を訪れたのは。まだ緑も濃い季節のこと。
その緑も、今は全て雪の白さに染められてしまったけれど。小さな妖狐たちと話をした思い出は、今もネロの中で色鮮やかなまま。
「サンタクロースノ皆、早ク来ナイカナ……!」
柔らかな毛並み越しに感じるネロの息遣いは、そわそわと落ち着かなくて。
逸る心を表すように、その尾がぱたぱたと揺れる様子に、零れそうになる笑いを倫太郎が喉の奥に隠せば。
自然と目があった先、夜彦もまた口元を緩ませる。
(かまくら作りの合間も落ち着かなかったのは、やはりそういう事ですか……)
ネロの心を宥めるように、夜彦がその毛並みを撫でてみても、尻尾の揺れは収まる気配もなくて。
あの夏の日、初めて出会う子狐たちに挨拶をしたネロは、緊張を隠せないでいたけれど。あの日の経験は、ネロの中で良い思い出として残っているのだろう。
言葉を交わす事も、触れ合う事も。きっとそうやって、少しずつ慣れて。子供は成長していくのだと思えば。
指先に触れる、柔らかな感触と暖かさが、夜彦の心までぽかぽかにしてくれる。
そんなネロの待ち人は、シャンシャン、シャランと。
高らかな音と共に、かまくらの中へと飛び込んで来た。
「メリークリスマスだコンっ!!」
首元に鈴をぶら下げた、鹿たちの引くソリに乗って。颯爽と現れた子狐は、赤い狩衣姿で白い袋を背に負っていて。
その姿は、サンタクロース……と呼ぶには、ちょっぴりヘンテコで。クリスマスと言うには、何かがあべこべだけれど。
妖狐たちが一生懸命に準備したクリスマスなのだから、返す挨拶は一つしかない。
「「「メリークリスマス!」」」
「皆さん、お久し振りですね」
「あっ! 猟兵たち、遊びに来たコン?」
「本当だ。猟兵さんだコン」
「いらっしゃいだコン」
見知った姿に、子狐が声を上げれば。鹿に変じた大人の妖狐たちも、かまくら中へと顔を突っ込んでくる。
「皆、素敵ナ恰好ダネ!」
「ネロ! 久しぶりだコン。覚えててくれたコン?」
かまくらの中に、賑やかな声が溢れて。空気が暖まってゆく中で、ネロの足は自然と子狐たちの方へ動いた。
怯えもなく、緊張もなく。自分から歩み寄ったネロの行動は、無自覚だったのかもしれないけれど。
親である倫太郎の目線から見れば、それはとても大きな変化。
出来る事ならば、今すぐに。わしゃわしゃとその頭を撫でて褒めてやりたい衝動を、倫太郎はぐっと堪える。
友達との事は、友達とのふれあいの中で学んでいくもの。
親である倫太郎は、友達の代わりにはなれないのだ。
ネロの足元で、子狐がぴょこぴょこと飛び跳ねながら、最近の出来事を話せば。
ネロがぴこぴこと耳を動かして、楽しそうに返事を返す。
久しぶりに会った友達とのお喋りは楽しくて、時間だって忘れてしまうもの。
けれど、今日の子狐たちには忘れてはいけない事があるはずだから。
「あ゛ーー」
子供たちのお喋りを止めるように、倫太郎はわざとらしくこほん、こほんと咳払い。
「……遊びたいのは判るけど、お仕事あるだろ? サンタさん?」
倫太郎に言われて、ネロと子狐はそろって目をきょとり。
「ふふ、遊びたくなる気持ちはあるのでしょうけど、まずは皆へのプレゼントを配ってからです」
そんな子供達の様子に、笑みを誘われながら。夜彦が説明を付け足せば、子狐はハッと目を見開いて。
「そうだったコン! 今日のおれはサンタなんだコン」
大きな袋に手を入れて、がさがさごそごそ。
「クリスマスのプレゼントだコン」
お饅頭に金平糖に、煎餅に。子狐サンタが手渡したのは、どれもこれも美味しいお菓子のプレゼント。
「アリガト、アリガト……オ菓子、大好キ!」
「それはよかったコン」
無事にプレゼントを渡したサンタクロースは、次のお家へと向かうもの。
けれど、その場から中々動こうとしない子狐サンタの様子に、倫太郎は笑みを浮かべて。安心させるようにぽふぽふと、子狐の頭に手を置く。
「安心しなって、逃げやしねぇよ」
遊びたい気持ちは、きっとネロだって一緒。だから。
「仕事きちっと片付けてきな? お菓子喰いつつ待ってるから」
倫太郎の言葉に、子狐サンタは手にした袋を背負い直して。
「ネロも、彼等が終わるまでは我慢できますね?」
優しく諭す夜彦の言葉に、ネロもこくりと頷く。
「ボクモ遊ビタイケド、サンタクロースノオ仕事、マダアルンダヨネ?」
だって、サンタクロースのプレゼントは、沢山の人が楽しみにしているのだから。
「ボク、待ッテルカラ、終ワッタラ一緒ニ遊ボ?」
「約束だコン! いってくるコン!」
黄色い手をふりふりと、大きく振って。
子狐サンタを乗せたソリは、徐々に小さくなってゆく。
けれど、それとは別にシャンシャンシャン……と。また近づいてくる、鈴の音。
「メリークリスマスだコーン!」
さっきの子とは、また違う子狐サンタが、入れ替わり立ち代わりに訪れて。
気が付けば、かまくらの中はお菓子で一杯。
勿論、ネロの遊ぶ約束も、予約が沢山だ。
「せっかくだし、プレゼントを広げながら待つとするか」
大勢のサンタクロースがくれた、沢山のプレゼントは、どれも美味しそうで。
「ネロのは持って帰って家でのオヤツにしような?」
持ち帰ったらきっと、弟妹たちも喜んでくれる気がする。
こんなにも胸の奥がそわそわして、ぽかぽかするクリスマスって何だろう?
「オトウサン、オトウサン、クリスマスノコト、モット教エテ?」
「……クリスマスですか?」
夜彦の足に、前足を重ねて。首を傾げるネロの問いに、夜彦はしばし考え込む。
沢山ある世界の中には、元よりクリスマスという文化が存在した世界もあれば、そうではない世界もある。
夜彦の居た世界は、後者。
「私もまだクリスマスは二年目なものでして……」
だから、教えて欲しいと思うネロの気持ちはよく分かる。
この世界の妖狐たちに、妖狐たちだけのクリスマスの形があるように。色々な世界で、色々な人たちの間で、沢山のクリスマスの形があるのだと、そう思うから。
「倫太郎に聞くのがよろしいかと」
今日は夜彦もまた、ネロと一緒に教わる側。
「んー、少し長くなるけど……」
今日は年に数回の、夜更かしが許される日。
甘い香りと共に、サンタクロースのお仕事が終わるまで。
倫太郎の語り声が、かまくらの中に響いてゆく――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リゼ・フランメ
とても危うい均衡の上にあるカリクヨの世界でも
平等に、そして平穏で幸せに、クリスマスのお祝いは訪れるのね
子狐たちのうっかりも、確かに可愛らしいし
その「受け取り手」のいないとても珍しいお祝いを、楽しませて貰いましょうか
雪の降る中、かまくらの中でプレゼントを受け取っていきましょう
変わりにひとつずつ、受け取れば他の世界のお話を
群竜大陸という空飛ぶ大陸があったこと
不思議の国が、誰も脱出できない迷宮のようにあること
永久に咲き誇る桜が、転生の救いをもたらす優しい国のこと
……それに私の故郷、蒸気と沢山の夢のある学園都市と迷宮のこと
それらに負けない位
子狐たちに貰ったプレゼントと思い出は素敵だと、微笑み返しながら
踏みしめた雪は白く、吐く息も白く染まって。
夜闇に満ちた澄んだ空気の中、見上げた空には星が瞬いている。
正しく巡り来たる冬は、指先に。耳に。痛みを覚える程、冷たく冴えていて。
けれど、リゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)が紅玉の瞳で見つめる先は、暖かな灯火の色に染まっている。
雪化粧をした妖狐たちの里は、この闇の中、存在を主張するように暖かな色に照らされて。
妖狐たちは今この時も、クリスマスの準備に駆けまわっているのだろう。
村中に灯る光の中に、妖狐たちの影が過って。
ゆらり、揺らめく光が、その営みを伝えてくれる。
今再び、この世界に危機が迫っている事を、妖狐たちは知らない。
この世界は、波打ち際の砂城のように、とても危うい均衡の上に成り立っていて。いつ、何がきっかけで崩れてしまうか分からないけれど。
それでも平等に、そして平穏で幸せに。
(――クリスマスのお祝いは訪れるのね)
作り上げたかまくらに、足を踏み入れて。キャンドルに火を灯せば。
炎の色に照らされた雪の壁は、何とも暖かく見える。
腰を下ろして、冬の静けさに耳をすませば。シャンシャン、シャラリと。
遠くに聞こえる、澄んだ音。
何かしら……と。リゼが首を傾げる間に、音はゆっくりと近づいてきて。
「メリークリスマスだコン!」
リゼが音の正体に思い当たるのと、その正体が顔を出したのは同時。
トナカイに見立てた鹿のソリに乗って、赤い衣に身を包んだ子狐サンタが姿を現して。鹿たちがふるりと頭を振れば、首元を飾る鈴が、シャラリシャラリと澄んだ音を立てる。
「あ、猟兵! 遊びに来てくれたコン?」
大きく膨らんだ白い袋を担いで、かまくらの中に入って来た子狐サンタは、リゼの姿を見つけてキラキラと目を輝かせた。
此度の世界の危機を知らない妖狐たちにとって、今日の猟兵たちは助けに来てくれた人ではなく、遊びに来たお客さん。
きっと、それでいいのだ。
今夜は聖なる夜なのだから。世界の危機なんて、知らないままに。
子狐たちの可愛いうっかりだって、全部楽しい思い出に変えてくれる夜。
だから、最初の挨拶はこう。
「――メリークリスマス。サンタさん」
「そうなんだコン。今日のおれはサンタなんだコン」
ふかふかの手で、袋を探って。
子狐サンタが差し出したのは、キャンディの形をしたとても珍しいお祝い。
受け取り手のないプレゼントに、リゼが手を伸ばせば。
聖夜は聖夜のまま。穏やかに時は過ぎていく。
甘い贈り物のお礼に、リゼが語るのは異世界のお話。
西洋竜が支配する、空を飛ぶ大陸があった事。
不思議と常識があべこべな、迷宮のような国がある事。
まるでお伽噺のようで、全てが本当にある世界のお話。
子狐サンタの中には、サンタがお返しを貰っていいのかと、気にする子も居たけれど。
サンタさんから受け取ったお祝いと思い出は、何物にも代えられない素敵なものだから。リゼは語る。
永久に咲き誇る桜が、転生の救いをもたらす優しい国の事。
それから、自身の故郷の話も――。
語り、弾む声が。
雪降る冷たい空気を、ゆったりと暖めてゆく――。
大成功
🔵🔵🔵
林・水鏡
くりすます…?あぁクリスマスな。
もちろん知っておるぞ?弟子が好きそうな西洋由来のお祭りじゃ。
あの妖狐達。今度はクリスマスがしたいのか。
よいよい。楽しめるものが多いのはよいことじゃ
しかし、皆が皆サンタにトナカイとは。
プレゼントをもらうのは醍醐味のようにおもうのじゃが…。
まぁ、あやつらが楽しいならそれでよい。
喜んでプレゼントを貰うとしよう。
(はたと気付いて)
ちょっとまて我のこの格好。赤に白とまさしくサンタさんカラーなんじゃが大丈夫じゃろうな?
大丈夫じゃとよいのだが。
ふわり。林・水鏡(少女白澤・f27963)の優雅な手の動きに合わせて、舞い飛ぶ白の剣が、サクサクと雪の形を整えていく。
緩やかに丸い半円形の形に、扉のような穴を刻んで――。
――今年は、クリスマスがやりたいコン! と。
水鏡と同じく、カクリヨの世界を住みかとするあの妖狐たちは、そのように言っていたという。
(あの妖狐達。今度はクリスマスがしたいのか)
くりすます、クリスマス……。
東方の妖怪たちには、少し聞き慣れない響き。
けれど見た目は幼くとも、齢を重ねた大妖怪たる水鏡は、ちゃんと知っている。
クリスマスは、人間の世界に広く知られている西洋由来のお祭りの事。
西洋の装いを好む水鏡の弟子も、今頃はそわそわと。もみの木に飾りを付けたりしているのかもしれない。
(よいよい。楽しめるものが多いのはよいことじゃ)
白剣を手繰って、最後に床となるべき部分を平らに整えたなら。ただの雪の塊は、見事な『かまくら』へと変化する。
入口をくぐり覗けば。かまくらの中では、風の音は遠くに感じて。夜の闇よりいっそう暗い静寂に満たされているけれど。
ひとたび灯籠を灯せば、光に浮かぶ雪壁の白さに橙色が映えて。
まるで空気まで、暖かくなったかのように思える。
入口から外へと溢れ出る光は、きっと妖狐たちの元まで届く事だろう。
贈り物の受け取り手はここにいるのだと、そう伝わるはずだ。
あとは、腰を降ろして。ゆっくりとお茶でも飲みながら、サンタとトナカイたちの到着を待つだけ。
(しかし、皆が皆サンタにトナカイとは……)
クリスマスとは、そのように楽しむお祭りであっただろうか?
少なくとも水鏡の知るクリスマスでは、人の子らがサンタから貰えるプレゼントを心待ちにしているお祭りであったはず。
クリスマスを一番楽しみにしている筈の者たちが、プレゼントを贈る側というあべこべな状況で、本当に良いのだろうか?
うぅむ……と考え込む水鏡の耳に、シャラリシャラリと。
高く澄んだ音が、徐々に大きさを増してゆく。
「メリークリスマスだコン!」
元気いっぱいな声と共に現れたのは、赤い衣を纏った小さな妖狐。
首元を鈴で飾った鹿の引くソリには、大きな白い袋も乗せられている。
「おぉ、息災のようじゃな」
「あ、久しぶりだコン!」
水鏡の姿を見て、ぱたぱたと駆け寄ってくる子狐の顔は、満面の笑みを浮かべていて。
「今日のぼくは、サンタなんだコン」
白い袋を背に担ぎ、えっへんと胸を張る姿をみれば。プレゼントを贈る側か貰う側かなど、些末な事。
「うむ。その赤い装いは、確かにサンタじゃな」
妖狐たちが目一杯楽しんでいるのなら、きっとそれが妖狐たちにとってのクリスマスなのだ。
水鏡の手に、頭を撫でられて。
嬉しそうな子狐さんは、ごそごそと袋を探る。
「だから、これがプレゼント……コン?」
「ん?」
しかし、袋から大判焼きを取り出した子狐サンタは、水鏡の姿をじっと見つめて首を傾げた。
「猟兵……実はサンタだったコン?」
……サンタ?
はて、この童は一体何を言っているのだろう?
子狐の言葉が理解できずに、水鏡が目を丸くしたのは、ほんの数秒。
子狐の視線が水鏡の顔ではなく、その装いに注がれて居る事に、はたと気付いた。
水鏡の纏う衣――白と赤の布地が、美しく折り重なる大陸風の装い。
色味だけならば、サンタクロースにかなり近いものがある。
「い……いや。これは、お主らとは異なる地の衣でじゃな」
「サンタは異国の服を着てると聞いたコン」
「それはもっと西の方の……」
「コン?」
こんこん、ころり。
首を傾げる子狐が、水鏡がサンタではないと理解するのには、あともう少し時間が必要なのでした――。
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【金蓮花】アドリブ◎
前に会った妖狐達と会いたい
②ここねもプレゼント交換会へ呼ぶ
うっし、俺もプレゼント欲しいしな
ちったァ手伝うか
力仕事なら任せろ
腕捲り
遊び心で狐耳の立派なかまくら作る
上出来じゃねェの
自画自賛しかまくらの中へ
狭いので端に寄る
中は結構温かいンだなァ
気が利くな、澪!
俺は砂糖もミルクも無しで
紅茶飲み一息
子供達には軽く手振り喜んで迎える
メリークリスマス!
菓子、あンがとなァ
甘くねェヤツがあるなら俺それがイイ(我儘
俺も話してェな、妖狐達の最近のマイブームとか聞きたいぜ
澪は準備万端じゃねェか
ま、俺もこんなコトがあろうかと用意してきたケド
サンタだってプレゼント欲しいだろ
遠慮すンなや
星型の煎餅を配る
栗花落・澪
【金蓮花】◎
ここねさんも
クリスマスの主役はめいっぱい立ててあげないとね
ほら力仕事、手伝って!
かまくら作り
力仕事はクロウさんに押し付け…こほん
任せつつ僕は魔法で水を撒いたり
雪で狐耳を作って翼飛行でぺたり貼り付け
…うん、よし
可愛くできた♪
中で暖かいものでも飲んで待ってようか
僕紅茶淹れてきたんだ
子供達用に砂糖とミルクも別容器で
クロウさんはストレート?
子供達は笑顔でお迎えを
すごーい!美味しそう!
びっくりしたよー、貰っていいの?
ありがとう!
折角だしサプライズ感を演じつつ
メリークリスマス
折角だからお話しようよ
これはサンタさん達へのお礼
★Candy popを一粒ずつ手渡し
クリスマスの定番、プレゼント交換だよ
ぽふぽふ。ぺたぺた。
触れる雪は、手袋越しでも指先がひんやりするほど冷たくて。
それでも、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は手を抜く事はなく、綺麗に雪の壁を整えていく。
だって、今日はクリスマス。主役はめいっぱい立ててあげなければならない。
「ほら力仕事、手伝って!」
「……ちったァ手伝うか」
唇を尖らせる花盛りの少年に、ヤンキー座りで自主休憩としゃれこんでいた成人男性――杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は、ようやく重い腰をあげる。
何せ『家』である『かまくら』が完成しなければ、サンタクロースはやって来ない。つまり、プレゼントも貰えないという事。
クリスマスを成功させるためにも、そしてプレゼントのためにも。ここが気合の入れどころ。
息も染まる空気の冷たさも構わずに、ぐいと腕を捲りスコップを握る。
巨大な魔剣さえ振り回すクロウの力ならば、重たい雪も難なく扱えるだろう。
体よくクロウに力仕事を押し付け……否、適材適所の仕事を割り振る事に成功した澪は、聖なる杖をひらりと振るって。
クロウの積み上げる雪に、優しく水を撒いてゆく。
立派なかまくらを作るコツは、適度に雪を湿らせる事。
だからこれは、澪にしかできない大事な仕事。決して、楽をしている訳ではないのだ。
「あれ? クロウさん何つくってるの?」
かまくらの形も綺麗に整った頃、てっきり中を掘っていると思っていたクロウの姿を見つけて。澪がきょとりと覗き込んでみれば。
ニヤリ、と。
クロウが返すのは、悪戯を思いついた子供のような笑み。
その手元には、何やら三角形に整えられた雪の塊が置かれていて……。
「あ、ぼくに任せて!」
それが、かまくらの最後の仕上げだと気付いた澪が胸を張る。
雪の塊は、相応の重量があるけれど。両の手でしっかりと抱えて。
真白の翼を羽ばたかせたなら、クロウの誘導に従って右に左に。
慎重に位置を決めて、そーっとかまくらの上に張り付ければ。
「…うん、よし。可愛くできた♪」
元気にピンと耳を張った、狐耳かまくらの出来上がり!
「上出来じゃねェの」
満足のいく仕上がりに、工事現場の兄ちゃんよろしく、スコップを肩に担いだクロウもうんうんと頷く。
かまくらの中に入ってしまえば、そこには星の光も届かなくて。
夜の闇よりいっそう暗い闇の中、クロウが黄金に燃ゆる蝶たちをそっと放つ。
「中は結構温かいンだなァ」
ひらり煌めく羽ばたきが、白い雪の壁に映えて。
冬風に冷え切った指先に、耳に。熱を届けてくれるよう。
あとは、この暖かな光を目印に、サンタクロースがやってきてくれるのを待つだけ。
「暖かいものでも飲んで待ってようか」
ふふん、と得意げに。澪が取り出した水筒を開ければ。
「僕、紅茶淹れてきたんだ」
「気が利くな、澪!」
微かな湯気と共に、ほのかに甘く深い香りが鼻腔をくすぐってゆく。
「クロウさんはストレート?」
一応、本人に聞いてみたものの。クロウが何と答えるかは、想像が付いている。
澪の準備に抜かりはなく。最初から別容器で用意した砂糖とミルクは、クロウではなく、これからやってくる主役達のためのもの。
その主役は、かまくらの中いっぱいに紅茶の香りが広がる頃に。
「メリークリスマスだコンっ!!」
「メリークリスマスなのです」
シャンシャン、シャラリと。賑やかな音を立てながら、ようやく姿を現した。
「プレゼントを渡しにきたコン」
「クリスマスのプレゼントなのですよ」
鹿が引くソリに乗って現れたサンタ子狐と、サンタ猫……を背負ったトナカイここねが揃って入り口から顔を覗かせれば。
クロウはひらりと、手を振って。澪がおいでおいでと手招く。
「あ、また遊びに来てくれたコン?」
見知った顔に、子狐サンタがぱぁと表情を明るくさせて。
「今日はおれ、サンタなんだコン。プレゼントどれがいいコン?」
ぱたぱたと駆け寄って、その手の袋から取り出すのはお菓子、お菓子、またお菓子。
「すごーい!」
可愛くラッピングされた沢山のお菓子に、美味しそうだと澪が目を輝かせれば。
「いろいろ、いっぱいあるのですよ」
ここねも一緒になって、お菓子を順に並べてゆく。
「甘くねェヤツがあるなら俺それがイイ」
「甘くない……コン?」
「えっと、きっとしょっぱいおかしなのです」
ここぞとばかりに希望を述べたクロウへのプレゼントは、どうやら『塩大福』に決まったもよう。
「僕も、貰っていいの?」
あまりに沢山のお菓子に、どれにしようか、澪は少し迷ってしまうけれど。
「もちろんだコン」
「すきなのぜんぶプレゼントなのですよー」
今日はクリスマスで、大勢のサンタクロースがやってくる日だから。
チョコレートもキャンディも、カップケーキだって。どれにしようか迷うのなら、『全部』を選ぶ事も出来るのだ。
「ありがとう!」
「よろこんでもらえて、よかったコン」
澪の笑顔に、サンタのお仕事をしっかり出来た事を知って。子狐たちもにっこり。
そろそろ、次のお家に行こうかと。子狐が踵を返そうとした、その時――。
「メリークリスマス」
「コン?」
不意打ちで澪が差し出したのは、小さな瓶。
「これはサンタさん達へのお礼」
小瓶の中の色とりどりな丸い玉は、元気が出るおまじないが込められたキャンディたちだ。
「澪は準備万端じゃねェか」
茶化すようなクロウの言葉に、笑みを返す澪の瞳が自信満々に「もちろん」と語る。
「ま、俺もこんなコトがあろうかと用意してきたケド」
しかしそこは年長者として、クロウもまた抜かりはなく。取り出したのは、星型の煎餅。
「でも、今日は俺がサンタだコン」
「もらってもいいのですか?」
このサプライズのお返しに。子狐サンタとここねは、顔を合わせて目をきょとり。
「サンタだってプレゼント欲しいだろ」
澪とクロウが手にする、キラキラのキャンディに可愛い形のお煎餅。そこにじっと注がれる熱い視線からしても、子狐たちがお菓子を欲しがっていない訳はないのだ。
「これはクリスマスの定番、プレゼント交換だよ」
「そうなのコン?」
クリスマスは誰もが、誰かのサンタさんになって良い日。だからサンタさんの所にも、サンタさんはやってくるのだと説けば。
「じゃあ、えんりょなく貰うコン」
「おかしが、もっといっぱいになったのです」
安心したように、小さいサンタたちもその手を伸ばす。
美味しいお菓子には、美味しい紅茶も添えて。
「遠慮すンなや」
味はクロウのお墨付き。けれど今度は、ミルクも砂糖もたっぷり足して。
「折角だからお話しようよ」
「最近のマイブームとか聞きたいぜ」
みんなでやった猟兵ごっこの事とか、火鼠を探しにいった事とか。
楽しいお喋りは、時間が早く過ぎてゆく。
けれど今日は、大人に叱られる事もない。
夜更かしだって、クリスマスの特権なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リリアネット・クロエ
メリル(f14836)
雪いっぱい…!
一緒に入れるかまくら作ろ!
やっと出来たね…!
かまくらの中で休憩しよっか!
メリルと一緒にいるから…、紅茶頂こうかな
メリークリスマス!
メリルと一緒に作ったマフィンお口に合うと嬉しいな
わぁ…、メリルからのプレゼント嬉しい…。
大切にするね…!ありがとう!!
へへっ、どうかな?似合ってる…かな
えっとねぼくも、メリルにプレゼントあるんだ
ぼくからのクリスマスプレゼント
手作りのブレスレット
これでお互い繋がったみたいになったね…
ぼくの方こそありがとっ!メリル!
来年のクリスマスも一緒に!
メリル・チェコット
リリアくん(f00527)
すごい積もってるー!
いいね、二人で一番おっきいの作ろう!
完成!
さっそく入ろ、入ろっ
リリアくん、寒くない?
もう、恥ずかしいこと言わない!
魔法瓶にあったかい紅茶いれてきたから、お茶にしよっか
かわいいサンタさんたちが来てくれれば
プレゼントのお礼にと、リリアくんと一緒に作ったマフィンを渡す
メリークリスマス!
あのね、リリアくん
メリルからもプレゼントがあるんだ
シンプルな細身のバングル
うん、やっぱりよく似合うよ!
えっ、メリルにも?
……開けていい?
わあっ、かわいいブレスレット!
それに手作りだなんて……!
ふふ。目に見える繋がり、嬉しいな
大切にするね
ありがとう
…来年も一緒にいてくれる?
地に降り立った足が、ぎゅっと音を立てて。
星灯りに青い影を落とした雪原に、柔らかく沈む。
吐く息は白く染まって。
指先から瞬く間に熱を奪ってゆく冬の景色に、メリル・チェコット(ひだまりメリー・f14836)は、お日様の光に似た目をキラリと輝かせた。
「すごい積もってるー!」
どこまでもなだらかな雪原に、足を踏み出せば。
雪はぎゅっぎゅと音を立てて、足跡がメリルの後を追いかけてくる。
これだけたくさんの雪ならば、きっとステキな『お家』を作る事ができるだろう。
「リリアくん、一緒に入れるかまくら作ろ!」
メリルが振り返る先には、共にこの世界へとやって来たリリアネット・クロエ(恋するうさぎ💕・f00527)の姿。
「いいね、二人で一番おっきいの作ろう!」
かまくら作りは、猟兵といえど簡単な作業ではないけれど。
地道な作業も二人でならば、楽しい時間に変えてゆける。
固めて、削って、整えて。仕上げにランタンを飾ったら――。
「やっと出来たね……!」
今宵一夜の二人のお家、『かまくら』の出来上がり。
「かまくらの中で休憩しよっか!」
「さっそく入ろ、入ろっ」
小さな入り口をくぐれば、風の音は遠くに聞こえて。
雪壁が、ランタンの影を映して、何だか幻想的に見える。
風を凌げるというだけで、外よりは幾分暖かく感じるけれど……。
「リリアくん、寒くない?」
顔を覗き込むように、メリルがリリアネットへと問えば。
「メリルと一緒にいるから……」
「もう、恥ずかしいこと言わない!」
リリアネットがさらりと返した言葉は、メリルには少し甘みが過ぎた。
けれど、でも。
本当に、メリルが居てくれるから、こんなにも暖かいのだ。
かまくらという限られた空間では、自然とメリルとの距離も近くて。
心から、こんなにも温かくなるのだと伝えたら。やっぱり恥ずかしいことと言われてしまうだろうか。
「魔法瓶にあったかい紅茶いれてきたから、お茶にしよっか」
メリルの淹れる紅茶の香りが、かまくら一杯に広がる頃に。
「メリークリスマスだコン!」
狐の姿をしたサンタクロースたちが、次々かまくらへとやって来る。
「始めて見るお客さんだコン!」
「いらっしゃいだコン」
「プレゼントもらうコン」
こんこん、ここん!
かまくらの中に、賑やかな声が満ちて。
次々と渡されたプレゼントのお菓子は、直ぐには食べきれそうにないくらい。
プレゼントをちゃんと渡す事が出来て、子狐たちは満足そうだけれど。
せっかくのクリスマスだから。
「「メリークリスマス!」」
子狐サンタたちに、2人で作った可愛いマフィンをプレゼント。
「お口に合うと嬉しいな」
「わぁ、ありがとーだコン!」
もふもふの手を元気に振って、子狐サンタがかまくらを後にすれば。
シャラシャラと。ソリを引く鹿たちの鈴の音が、遠のいていく。
もしかすると、サンタクロースはさっきの子が最後だったのかもしれない。
かまくらの中では、外の音は遠くて。
「あのね、リリアくん」
静寂の帳の中、メリルは陽だまりの色をした瞳を、真っ直ぐリリアネットへ向けた。
「メリルからもプレゼントがあるんだ」
大切に、両の手でそっと差し出したそれは、リリアネットの為にメリルが選んだプレゼント。
「わぁ……」
どんなファッションにも合うようにと、フォルムは細くシンプルに。けれどそこに、確かな想いを刻み込んで。
「メリルからのプレゼント嬉しい……」
手渡されたバングルを、さっそく付けてみれば。
リリアネットの動きに合わせて揺れるそれは、キャンドルの光に橙色に輝いて。
「どうかな?似合ってる……かな」
「うん、やっぱりよく似合うよ!」
メリルの瞳に、見つめられているような。メリルが触れてくれているような、そんな気もして。
嬉しくて、嬉しくて。けれど少し、くすぐったくて。
「大切にするね……!ありがとう!!」
慈しむように、確かめるように。バングルを優しく撫でれば。自ずと、表情も緩んでしまう。
「えっとねぼくも、メリルにプレゼントあるんだ」
「えっ、メリルにも?」
渡すのは、メリルに先を越されてしまったけれど。
「ぼくからのクリスマスプレゼント」
込めた思いはメリルにも負けてはいない。
「わあっ、かわいいブレスレット!」
リリアネットからのプレゼントに、メリルの表情がぱぁっと明るさを増す。
その、お日様のような笑顔に映えるように。一粒一粒、リリアネットが石を選んで作り上げたブレスレットには、黄色い花飾りが一輪添えられていて。
ずっと、お日様を見つめている花の飾りは、リリアネットの願いの形。
「これでお互い繋がったみたいになったね……」
互いに、プレゼントで飾った手を、翳して見れば。
触れあい、絡み合う指先が、とても温かい。
「ふふ。目に見える繋がり、嬉しいな」
きっと、このプレゼントを見るたびに、思い出す。
胸を満たすこの気持ちも、指先の温もりも。
「大切にするね。ありがとう」
「ぼくの方こそありがとっ!メリル!」
けれど、気持ちと言うのは不思議なもので。
こんなに満たされているのに、あと少し。
もう少しだけ、欲張りたくなってしまうのだ。
だから、ぼく―わたし―だけのサンタクロースに、もう一つだけお願いを。
『来年のクリスマスも、一緒に』と――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
可愛いサンタさんたちからのプレゼントか
楽しみだ
世界を救うためにも目いっぱい楽しむぜ(ぐっ
行動
かまくらで寛ぐ
結構あったかいよな
地獄の炎もあるけど
火鉢を持ち込んで暖を取りつつ
サンタが来るまでは雪見
ホットの柚子蜂蜜で口を湿らせつつ
ギターも爪弾くぜ
うん、この一時も最高の贈り物ってカンジだぜ
サンタさんたちがきたら感謝のハグも
ありがとな(ふかふかだぜ
これはサンタさんへのお礼だぜ
火鉢で炙っといた焼き団子を子狐サンタ&トナカイ達へ
あんこにみたらし、醤油もあるぜ
ここねもお疲れさん
沢山喰ってくれ
皆の笑顔が最高の贈り物だよな
メリーXマス!
頑張っているサンタたちへ
エールの曲
来年も皆の笑顔を守るぜ
と誓いを新たに
夜の闇に、星の光が瞬いている。
空気は冷たく乾いて、耳が痛くなるようで。
けれど、周囲を見回せば。建ち並ぶ、いくつもの『かまくら』たち。
また今日も、滅びに向かおうとする世界を救うために猟兵たちは集い。彼らが懸命に作った『家』から、温かな光が零れている。
(可愛いサンタさんたちからのプレゼントか……楽しみだ)
今宵、世界を救うのに剣を手にする必要はない。
必要なのは、彼らを迎えるための『家』と、この一夜を目一杯楽しむ心構えだけ。
ようやく完成した『かまくら』の中は、気温が変わった訳でもないのに、どこか暖かくて。
持ちこんだ火鉢に、火種を入れれば。翳した指先を包み込むように、柔らかな熱が伝わって来る。
溢れた過去を送る炎も、今日は必要ないだろう。
僅かな空気の流れに、濃く薄く。赤色を明滅させながら燃える火鉢に、お団子を刺したなら準備は万全。
可愛いサンタクロースがやってくるまで、しばしの間。
このかまくらの中は、ウタのためだけの世界。
冬の静けさに、耳を傾けながら。
冷たく澄んだ空気の中で、マグカップから立ち上る甘く爽やかな柚子の香りが、ウタの鼻腔をくすぐってゆく。
指先も、体も、ぽかぽかと温まったなら。
星灯りの元、青く影を落とす雪を眺めて弦を爪弾けば。
(うん、この一時も最高の贈り物ってカンジだぜ)
響く音も、いっそう澄んで聞こえる。
冬の夜の空気を壊さぬように、テンポはゆったりと。
けれど、可愛いサンタクロースたちが笑顔になれるように、曲調は明るく。
響く音に誘われたのか、シャンシャン、シャラリと。
何処からか、合いの手のように鈴の音が近づいて来て――。
「メリークリスマスだコーン!」
「メリークリスマスなのです」
白い袋を背負ってサンタになりきった子狐と、サンタ猫を背負ったトナカイのここねが、入り口からひょこりと顔を出す。
「おう、お疲れさん。元気にしてたか?」
「あ、兄ちゃんまた来てくれたコン? 今日は猟兵さんにいっぱい会えるコン」
既にいくつかの『かまくら』を回って来た後なのだろう。
子狐サンタの背負う袋は、少し嵩が減っていて。軽い足取りでぴょこぴょこと、ウタの方へ駆けよってくる。
「今日のおれは、サンタクロースなんだコン」
真新しい赤い衣装を見せびらかすように、子狐サンタは胸を張って。
「クリスマスのプレゼントなのですよ」
差し出されるのは、タルトにチョコに。甘いお菓子のプレゼント。
「ありがとな」
ぽふぽふと。ウタが子狐の頭に手を置いて。感謝の気持ちをハグで表せば。
「よろこんでもらえて、よかったコン!」
すっかりと冬毛に切り替わった柔らかな毛並みが、ふかふかとして。何とも心地よい。
勿論、お礼はこれだけではない。
火鉢に刺しておいたお団子も、ちょうど香ばしく焼けた頃。
「これはサンタさんへのお礼だぜ」
あんこにみたらし、醤油も付けて。美味しい焼き団子の出来上がり!
「わーい、おれ醤油がいいコン」
「きょうはサンタさんがいっぱいなのですね」
「沢山喰ってくれ。ほら、外のトナカイたちも」
「あ、どうもですコン」
ウタの誘いに、外で待っていたトナカイ……もとい、鹿に変化していた妖狐たちも加わって。
みんなで笑い合って。ふーふーはふはふと頬張るお団子は、こんなにも美味しい。
(皆の笑顔が最高の贈り物だよな!)
危うい均衡の上に成り立つ世界でも、こうして穏やかな時間を紡ぐことはできる。
この右腕に宿る炎は、きっと。そんな穏やかな時を守る事ができる力。
来年も、皆の笑顔を――。
誓いを新たに、拳を握るウタの仕草に気付く者はなく。
ただ、賑やかな声と音楽が、夜風の中へと響いていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アイン・セラフィナイト
千夜子さん(f17474)と。
②かまくらでプレゼント
かまくらの中でプレゼント交換なんて最高だね!あ、千夜子さんみかん食べる?あとはココアとか……まずい、眠くなってきちゃいそうだよ。
わ、狐さんたちが一斉に!
お菓子を受け取って、食べさせてもらうね!とっても美味しい……って千夜子さんがもふもふに埋もれてる……。なんていうか、狐さんのもふもふ自体がプレゼントだね。
そうだね、みんな一緒にお菓子食べようか!メリークリスマス!
ボクもクッキー作っておいたんだ。口に合えば良いんだけど。
うん、みんなで一緒にいればあったかいよね!カタストロフなんて吹き飛ばして、楽しいクリスマスにしよう!
薄荷・千夜子
アイン君(f15171)と
②かまくらでプレゼント
冬にかまくら、季節の醍醐味ですね、と楽しそうに笑って
みかんもありがとうござい…あ!アイン君、狐さんたちが来ましたよ!
お菓子を届けてくれた狐さんをお迎えしてありがとうございますと感謝を伝えつつ(隙あらば)狐さんをぎゅーっと抱きしめ
可愛い…もふもふ…もうこの癒しな感じがプレゼントでは?
せっかくですから狐さんも休憩を兼ねて一緒にお菓子を食べませんか?
アイン君もメリークリスマス!
持参したチョコをアイン君と狐さんに渡しながら
頂いたプレゼントのお菓子も広げて(お菓子はお任せ)アイン君のお菓子はなんでしたか?
せっかくです、半分こして食べましょう!
一たび、かまくらへと入れば。
風の音も、人々の喧騒も、遠くに聞こえて。
キャンドルに火を灯せば。雪壁の白さに、橙色が映えて。空気まで暖かくなったかのよう。
「冬にかまくら、季節の醍醐味ですね」
懸命に、丁寧に削り上げた雪壁を、そっと撫でて。
薄荷・千夜子(陽花・f17474)が、笑みを零せば。
「かまくらの中でプレゼント交換なんて最高だね!」
微かに揺れるキャンドルの炎に目を細めて、アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)もまた、顔をほころばせる。
猟兵とはいえ、かまくらを作り上げるのは、それなりの重作業。
けれど、一生懸命に体を動かした分だけ、完成したかまくらで過ごす時間は格別に感じるもの。
言ってみればこの小さな空間は、自分たちで作り上げた一冬だけの秘密基地なのだ。
「あ、千夜子さんみかん食べる?」
「ありがとうございます!」
実年齢より落ち着いて見える少年は、かまくらの中でのんびり過ごせるようにと。事前に色々と詰め込んでおいたバックを、がさがさごそごそ。
「あとはココアとか……」
いくらかまくらが暖かいといっても、ほとんど屋外である事に変わりはなく。徐々に冷えていく体には、温かい飲み物が一番。
けれど、ぽかぽかになるとサンタクロースが来る前に、眠くなってしまうだろうか。
どれにしようと真剣に悩むあどけない横顔に、笑みを誘われながら。
千夜子の耳に届いたのは、シャンシャン、シャラリと。待ち人の来訪を告げる音。
「……あ!アイン君、狐さんたちが来ましたよ!」
「「「メリークリスマスだコンっ!!」」」
鹿のソリに乗って、颯爽と現れたサンタクロースたちは、みんな小さな狐の姿。
「わ、狐さんたちが一斉に!」
妖狐とは、事前に聞いていたものの。
ふかふかの黄色い尻尾を揺らして、二本の足でぴょこぴょこと歩いてくる姿を実際に目にすると、何とも不思議で新鮮な感じがする。
「あれ? 初めて見るお客さんだコン」
「おねーさんたちも猟兵コン?」
自分たちの事が見える新しいお客さんに、子狐さん達も興味津々。
ぱたぱたと駆け寄って来たかと思えば。
「俺たち、今日はサンタなんだコン」
「プレゼントを受け取るコン!」
えへんと胸を張り、沢山のお菓子をプレゼント!
「ありがとう、食べさせてもらうね!」
これも、これもと。出てくる、出てくるお菓子の山に、アインが年相応の笑顔を見せて礼を述べれば。
「ありがとうございます」
千夜子の手はさりげなく、子狐サンタの方へと動く。
もふり。もふもふ。
ふっくらとした冬毛の向こうから、子狐の体温が何とも温かくて。
「どれも美味しそうですね!」
思わずぎゅーっと抱きしめれば。
「猟兵、どうしたコン?」
「もしかして、寒いコン?」
「それはいけないコン!」
雪崩式に勘違いを起こした子狐たちが、千夜子を囲んでもふもふむぎゅり。
猿団子……ならぬ、狐団子となって、千夜子を包みこむ。
「可愛い……もふもふ……」
「……って千夜子さんがもふもふに埋もれてる……」
いつの間にか出来上がっていた珍妙な光景には、アインも思わず目をきょとり。
狐団子の中心は、もふもふで。ふかふかで、さらふわで、ぬくぬくで。
それはもう、表情だって蕩けてしまう。
「なんていうか、狐さんのもふもふ自体がプレゼントだね」
千夜子の幸せそうな表情に、アインもそーっと手を伸ばして。
柔らかな毛並みを、もふりもふもふと撫でれば。
冬の空気に少しかじかんでいた指先も、ぽかぽかと温かくなってゆく。
「せっかくですから、狐さんも休憩を兼ねて一緒にお菓子を食べませんか?」
「コン?」
もふもふなプレゼントに、心までぽかぽかにしてもらったお礼にと。千夜子の出した提案に、しかし子狐サンタたちは首を傾げた。
だってそのお菓子は、今しがた子狐たちがプレゼントしたもの。
「自分で食べたら、プレゼントじゃなくなる気がするコン」
サンタになりたい子狐たちにとっては、プレゼントを受け取ってもらう事が重要らしい。
「でしたら、私のチョコなら受け取っていただけますか」
「ボクもクッキー作っておいたんだ」
ちょっと律儀すぎる子狐たちに、二人が差し出したのは、動物型のチョコに、精霊を模したクッキー。
「すげぇコン」
「猟兵もサンタだったコン?」
自分たちの為に用意されたプレゼントならば、サンタクロースが貰っても問題ないと思ったのだろう。
これには、子狐サンタの目もキラキラと輝く。
「わかったコン。もらうコン!」
「たべたいコン!」
こん、ここん!
子狐たちも納得してくれたのならば、クリスマスの本番はこれから。
それに――。
「アイン君のお菓子はなんでしたか?」
「えっと……」
貰ったお菓子を並べてみれば、最中や大福の和菓子から、マカロンといった洋菓子まで。
種類も沢山のお菓子たちは、どれもこれも美味しそう。
「せっかくです、半分こして食べましょう!」
「そうだね、みんな一緒にお菓子食べようか!」
みんなで食べると、お菓子はいっそう美味しくなるのだから。
●
――かまくらの中は賑やかな声と、お菓子の香りに満たされて。
世界を壊す『かなしみ』なんて、入り込む隙間は一部も無い。
沢山の笑顔の前には、冬の寒ささえ解けてゆくよう。
平穏な明日に繋がる聖なる夜は、ゆっくりと更けていくのでした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と
かまくらの中を飾りましょう
アカネはリース飾りを
エリシャ様は何を飾ったのですか?
美味しいお菓子でお茶会です
以前レシピを教わったのでカフェオレには自信があります
このレープクーヘンも教えて頂いたレシピなんですよ
たくさんの方々に気にかけて頂けてアカネは幸せです
エリシャ様もどうぞ
かわいいサンタ様トナカイ様に笑顔
お久しぶりです子狐様方!お元気ですか?
お菓子を頂戴するだけでは申し訳ないのでアカネからも手袋のプレゼントを
プレゼント交換って言ってクリスマスの楽しみの一つなんですよ
子狐様の手にモフを感じて
その、少しだけモフらせていただいても?
OKならばそっとモフ
何よりのプレゼントです…!
エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と
子狐さんたちはほんとにお祭りが好きなのね
これは楽しく盛り上げないとね!
リースとっても素敵だわ
あたしはポインセチアの鉢を持ってきたの
あとは大きな靴下ね
サンタさんたちいらっしゃい!
良い子にしてたからプレゼントをもらえるのね
心のこもった手作りのお菓子とっても嬉しいわ
アカネちゃんありがと
カフェオレとっても美味しいわ
レープクーヘンは食べるのがもったいない可愛さね!
そうそうプレゼント交換
あたしからはアイシングクッキー
あなたたちをイメージして作ったのよ
アカネちゃんはすっかりもふもふが気に入ったのね
あたしも少し撫でさせてもらっていいかしら?
確かに他にない何より素敵なプレゼントよね
そっと、ランタンに火を入れれば。
柔らかな光に照らされて、真っ白な小さな世界が浮かび上がる。
一生懸命に作った『かまくら』の中では、外の音は少し遠くて。
風が遮られるというだけで、ずいぶんと暖かい。
(子狐さんたちはほんとにお祭りが好きなのね)
一体誰がサンタをやるかで大騒ぎしていたという、子狐たちの話を思い出して。エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)の口元に、笑みが浮かぶ。
いつも元気いっぱいで、人懐こい子狐たちのこと。大騒ぎしていたという、その姿もありありと想像できる。
「これは楽しく盛り上げないとね!」
「えぇ、エリシャ様。かまくらの中を飾りましょう」
みんなで楽しく過ごすには、まずは雰囲気作りから。
アカネ・リアーブル(ひとりでふたりのアカネと茜・f05355)が取り出したのは、赤いリボンも鮮やかなクリスマスリース。
『かまくら』に扉はないけれど、入り口に飾ればきっと効力は同じ。
「リースとっても素敵だわ」
厄除けでもある定番の飾りを吊り下げたなら、それだけで。クリスマスらしさが、ぐんとアップして見える。
「エリシャ様は何を飾ったのですか?」
「あたしはポインセチアの鉢を持ってきたの」
対して、エリシャが置いたポインセチアは、クリスマスフラワーとも呼ばれる植物。
見事な赤色は、本当に大輪の花のようで。白いかまくらに良く映えて、華やかさがいっそう増す。
これならば、妖狐たちもきっと喜んでくれるだろう。
「あとは……」
とても大事な最後の仕上げ。
サンタクロースを迎えるのに忘れてはいけない、クリスマスの定番と言えば……。
「大きな靴下ね」
巨人サイズの靴下を、壁に吊り下げ並べたのなら。今度こそ準備は万全。
主役の到着を待つ間は、お茶会の時間。
そしてそれは、アカネにとっては発表会。
この一年、新たに教わったレシピ。頑張って練習したレシピを披露するのだと。
まずは、自信作のカフェオレから。
マグカップから湯気が上ると、かまくらの中に優しい香りが広がってゆく。
「エリシャ様もどうぞ」
「アカネちゃんありがと」
温かなマグカップが、かじかむ指先に熱をくれて。
口をつければ、ミルクと珈琲の風味が鼻腔をくすぐって。体の奥から、冬の寒さを解かしてくれる。
「カフェオレとっても美味しいわ」
エリシャの反応は上々。
ここはダメ押しに、美味しいお茶請けも出したい所。
「このレープクーヘンも教えて頂いたレシピなんですよ」
しっとり甘くて、ちょっと刺激的な焼き菓子は。こちらも、クリスマスに定番のお菓子。
デコレーションは、クリスマスらしく華やかに。
「食べるのがもったいない可愛さね!」
エリシャから貰った嬉しい感想は、アカネ一人の力では得られなかったもの。
(たくさんの方々に気にかけて頂けてアカネは幸せです)
年の瀬も迫る、この日に。結んできた沢山の縁が、今のアカネを作っているのだと。そんな風に感じれば。
その結んできた縁の一つ――今日の主役たちも、ようやくその姿を現す。
「「「メリークリスマスだコン!!」」」
「サンタさんたちいらっしゃい!」
「お久しぶりです子狐様方!お元気ですか?」
小さなサンタクロースたちは、鹿の引くソリに乗って。
白い袋を背に意気揚々と、かまくらの中へと入ってきた。
「あ、おねえさんたち。また遊びに来たコン?」
「元気だコン! 猟兵も元気コン?」
「このおうち、飾りがピカピカだコン!」
こんこん、ここん!
小さなサンタクロースたちの登場で、にぎやかな声が溢れて。
エリシャとアカネが飾り付けたかまくらの華やかさに、目を輝かせて視線をきょろきょろ。
「あんな所に靴下があるコン」
「でっけーコン。誰の靴下コン?」
「あれはね……」
サンタクロースは、靴下にプレゼントを入れるものなのだと。
エリシャが説明したその瞬間、子狐たちの目がキラリと光る。
「それじゃあ、靴下にプレゼント入れるコン!」
「あたしも、あたしも入れるコン!」
こん、ここん!
自分こそがサンタクロース、サンタクロースは自分だと。
子狐サンタたちが、我先にと靴下に群がってゆく。
「良い子にしてたからプレゼントをもらえるのね」
「そうだコン」
「おれたちサンタだから、プレゼントあげるんだコン!」
ピンっとつま先立ちをして、靴下の中にプレゼントを詰めてゆく子狐たちの姿は、何とも可愛くて。
「心のこもった手作りのお菓子とっても嬉しいわ」
「ほんとコン?」
「おれが作ったお菓子もあるコン!」
サンタクロースとして誇らしげな姿は、ずっと眺めていたくなるけれど。
「子狐様方、お菓子を頂戴するだけでは申し訳ないので……」
「コン?」
ほおっておくと、靴下がはち切れるまでお菓子を詰めていそうなので、アカネが優しく声をかける。
「アカネからも手袋のプレゼントを」
そんなアカネが、子狐たちへと差し出したのは小さな手袋。
子狐たちの、ぷにぷに肉球が冷えないように。アカネが身をもって(ほっぺで)測った、ジャストサイズの手袋だ。
「すげぇコン!」
「かわいいコン!」
これには、子狐たちもサンタから子供に戻って表情を輝かせる。
「……でも、俺たちサンタだコン」
サンタがプレゼントをもらっていいのだろうか……と。
子狐の一人がそう言うと、「そうだったコン……」と。今度は耳が、ぺたりと下がる。
くるくると表情が変わる子狐たちに、笑みを誘われながら。
「これは、プレゼント交換って言ってクリスマスの楽しみの一つなんですよ」
「そうそう、プレゼント交換」
サンタクロースに準えて、互いにプレゼントを贈り合う。そんな素敵な風習もあるのだと伝えたら。
「あたしからはアイシングクッキーね」
エリシャが渡すのは、にっこり笑顔の狐さんクッキー。
一体『誰』をイメージしたのかは……言うまでもない。
「おれたちだコン!」
「そっくりコン!」
差し出されたプレゼントに、今度は子狐たちも遠慮なく手を伸ばす。
ふかふかで、ぷにぷにな小さな手が、アカネの前にも伸びてきて……。
「子狐様方、その……少しだけモフらせていただいても?」
今日は大人しかったはずのアカネ『もふ欲』が、にょきっと顔を出す。
(アカネちゃんはすっかりもふもふが気に入ったのね)
けれど、気持ちはわかる。
すっかり冬気になった子狐たちは、夏に出会った時よりも少しふっくらしていて。
その毛の柔らかさが、目で分かる。
……いつもは、見ている事が多いけれど。今日は、クリスマスだから。
「あたしも、少し撫でさせてもらっていいかしら?」
プレゼントを心待ちにしている、子供の気分で。サンタクロースにお願いを。
「もちろんだコン」
「寒いなら、あっためるコン!」
こんこん、もふもふ。
カクリヨで過ごす、ちょっと変わったクリスマスは。
柔らかくて、温かなぬくもりと共に更けてゆく――。
大成功
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