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凍える子供たちに笑顔を

#アポカリプスヘル #お祭り2020 #クリスマス

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#クリスマス


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 サンタに扮した父親が眠った子供の枕元にプレゼントをそっと置く――。
 クリスマスのそんな幸せな光景は平和な世界の情景。寒さに凍え、食べるのもやっとという世界ではそんな温かな家族の姿は見られない。誰も彼もがただ生きるのに必死で、子供であろうとも労働力として扱われる。
「にいちゃん、おなか空いた……」
「ああ、ちょっと待ってな。ほら、これ半分っこにしよう」
 腹を鳴らした妹に、少年が一枚のビスケットをポケットから取り出して半分に割る。その大きな方を小さな少女に渡し、白い息を吐く二人は身を寄せ合ってかじった。湿気ったビスケットでも甘いお菓子は貴重なご馳走だった。
「にいちゃん、おいしいっ」
「ああそうだな。よし、荷物運びをしたら今夜はあったかいスープが食えるからな。がんばろう!」
「うん、がんばるっ」
 雪の積もった大地に小さな足跡を刻んで歩き出す。
 荒野を生きる子供達は逞しく、今日を生き残る為に懸命に働き続ける――それはクリスマスであろうとも変わらぬ光景だった。


「諸君。クリスマスに必要なものは何かな?」
 凍えそうな雪の積もる荒野を映すグリモアベースで、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が猟兵達に問いかけた。
「プレゼント、美味しい料理、家族との団欒…………」
 挙がる意見をバルモアが口にして、クリスマスらしい光景を思い浮かべる。
「しかし、世界によってはそんなクリスマスとは縁の遠い場所もある。冬を越すのも難しいような荒野、アポカリプスヘルだ」
 アポカリプスヘルでは常に物資が不足し、特に作物の実らぬ冬は餓死や凍死で被害が出るような辛い季節となっている。
「アポカリプスヘルの子供達は労働力として扱われ、大人顔負けで働いている者も大勢いる。そんな子供達にプレゼントをあげないのはサンタの怠慢だろう」
 そう言ってバルモアは猟兵達の顔を見渡し、サンタの赤い衣装を取り出した。
「そこで諸君にはアポカリプスヘルにサンタとして訪れ、物資に困っている拠点の子供達にクリスマスプレゼントを渡してやってほしい」
 最もプレゼントを欲しているだろう世界で、猟兵にサンタ役をお願いしたいという依頼だった。

「子供達の欲しがるようなプレゼントを用意してある。もちろん自前で用意してもらっても構わない。とにかく子供達を喜ばせてやってくれ」
 お菓子におもちゃに絵本と、所狭しとさまざまなプレゼントが用意されている。
「それとだが、子供以外にも腹を空かせた人々の為に炊き出しをするつもりだ」
 厳しい世界を生きる大人達にもプレゼントがあってもいいだろうと、凍える人々の為に温かなスープでも振舞おうと材料が用意されていた。
「だがまあ、やはりクリスマスは子供達の為のものだと思う。子供を楽しませるのを一番に考えてくれ。プレゼント以外にも、一緒に遊んだり、仕事を手伝ってやったりと、好きな事をやってもらって構わない」
 サンタが訪れてプレゼントを貰う子供達の顔を思い浮かべ、バルモアの厳つい顔が和らいだ。

「では準備が済み次第現地に向かってくれ。サンタの衣装は強制ではないが、着た方が子供達は喜ぶだろう」
 雪に閉ざされた拠点へとゲートを開き、バルモアは用意してあったサイズがさまざまなサンタ衣装から大きなものを手にする。
「やはり子供には笑顔が似合う。凍えて厳しい顔で固まった子供達を、気持ちの籠ったプレゼントで温め、笑顔を取り戻してやってくれ」


天木一
 こんにちは天木一です。アポカリプスヘルでのクリスマスイベントとなります。凍える子供達にプレゼントをあげて、笑顔にしてあげましょう!

 本シナリオはクリスマス限定の一章のみとなっております。

 雪の積もる寒い峡谷にあるスノウドロップという名の拠点が舞台となります。雪深い地域である為、冬場は食糧に燃料と物資に困る場所です。
 大量の物資などを運び込むとオブリビオン・ストームが発生するので、精々ひと冬を越せる程度の持ち込みが限界です。
 お誘いがあればバルモアも参加します。

 複数人で参加する方は最初にグループ名などをご記入ください。
 プレイングの締め切り日などは決まり次第マスターページにて。
 寒さに凍える子供達にプレゼントをあげて笑顔にして、皆様もいっしょに楽しいクリスマスをお過ごしください!
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第1章 日常 『アポカリプスヘルのクリスマス』

POW   :    子供たちに、ちょっとしたお菓子や食べ物をプレゼントする

SPD   :    子供たちに、手作りのおもちゃ等をプレゼントする

WIZ   :    子供たちに、絵本や実用書などをプレゼントする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラブリー・ラビットクロー
【兎爪】

サンタ
らぶも知ってる
マザーに教えて貰ったなん
【良い子にしてましたか?】
今日は特別な夜だかららぶ達がサンタのお手伝い
行くぞししょー
みんなもセカイも笑顔に変えるんだ!

クリスマスといえばやっぱりでっかいツリー
だかららぶ鞄に入れて持ってきたのん
もみの木の苗木
これを育てればきっといつかでっかいツリーが…
あれ?ししょー何持ってきたんだ?やきゅー?
おわあアポカリプスナイン再結成なん
みんな集まれー!
ししょーはバットを振る係りのヒト
みんなはボールを投げる係りのヒトなんな!
らぶも雪球投げちゃうなん
マザーはしんぱんだぞ
【では始めます。プレイボール】
(苗木は大人に預けてそこそこに、皆との野球ごっこに夢中です)


クロゼ・ラビットクロー
【兎爪】
ラブリーのことはラビィと呼ぶ
ラビィ以外には敬語だけど適当で可

クリスマスに必要なもの?
コンビニのチキンかな…
コンビニ滅んじゃったけどね…
世界と一緒に…

サンタね、オーケー
僕のガスマスクは子供に泣かれるんだけど、
サンタ服でだいぶ緩和されるかな?

ヘルで喜ばれる物といえば缶詰だけど特別感はないな…
子供が喜びそうなといえばお菓子、おもちゃか。
僕は地元アポヘルの民なのでお菓子は難しいな

野球道具とかどうかなー。
ちょうどここにモヒカンから徴収した釘バット…
危ないから釘は抜いておこう。
ボールも用意してと

え? 僕も遊ぶなんて言ってないけど?
ちょ やめ ボール投げないで
雪に足をとられてかわせな… ごふッ!!



●プレイボール
「クリスマスに必要なもの? コンビニのチキンかな……」
 ガスマスクで表情の見えないクロゼ・ラビットクロー(奇妙なガスマスクの男・f26592)がバルモアの問いかけに思い浮かべたのは、なんてことはないどこのコンビニでも売っているただのフライドチキンだった。
「コンビニ滅んじゃったけどね……世界と一緒に……」
 そんな当たり前のものさえ手に入らない崩壊した世界の辛さは、生き物の居ない瘴気の街に住むクロゼが誰よりも身に染みて知っていた。

「サンタ。らぶも知ってる。マザーに教えて貰ったなん」
 隣でラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)がうんうんと教わったばかりのサンタを思い浮かべて頷いていた。
【良い子にしてましたか?】
 『ビッグマザー』が良い子にしている子供を喜ばす日だと教えていた。
「今日は特別な夜だから、らぶ達がサンタのお手伝い。行くぞししょー、みんなもセカイも笑顔に変えるんだ!」
 寒さも陰鬱さも吹き飛ばすような元気いっぱいの笑顔で、サンタ服のラブリーは雪原をざっくざっくと駆け出した。
「サンタね、オーケー。僕のガスマスクは子供に泣かれるんだけど、サンタ服でだいぶ緩和されるかな?」
 クロゼもサンタ服を纏い、怪しいサンタとなってラブリーの後に続いた。

「わぁっ! なんか派手な赤い服がいる!」
「赤い赤いっ真っ赤だ! それにマスク! 変な顔!」
「あれってサンタじゃないか?」
 子供達がおかしな赤い服のラブリーとクロゼを見て騒ぎ出し、少し年長の少年が小さな頃に見たサンタを思い出していた。

「ヘルで喜ばれる物といえば缶詰だけど特別感はないな……子供が喜びそうなといえばお菓子、おもちゃか」
 怖いもの見たさに群がる子供達に、クロゼは特別なプレゼントを考える。
「僕は地元アポヘルの民なのでお菓子は難しいな」
 クロゼがどうしたものかと自分の持ち物を漁る。するとちょうど遊びに使えそうなバットを見つけた。
「野球道具とかどうかなー。ちょうどここにモヒカンから徴収した釘バット……危ないから釘は抜いておこう。ボールも用意してと」
 取り出したバットに付いた釘を抜いて、クロゼはバットとボールの準備を始めた。

「クリスマスといえばやっぱりでっかいツリー。だかららぶ鞄に入れて持ってきたのん」
 ラブリーは鞄から小さな苗木を取り出した。
「なになに!? ちっちゃな木?」
「これはもみの木の苗木なのん。これを育てればきっといつかでっかいツリーが……あれ? ししょー何持ってきたんだ? やきゅー?」
 子供達にその苗木の説明をしていると、ラブリーの前にクロゼが野球道具を用意して並べていた。

「おわあ、アポカリプスナイン再結成なん。みんな集まれー!」
「わーい!」
「あつまれー!!」
 ラブリーが手を振ると、子供達が集まりなんだなんだと並べられた野球道具を見つめる。
「ししょーはバットを振る係りのヒト。みんなはボールを投げる係りのヒトなんな!」
「え? 僕も遊ぶなんて言ってないけど?」
 子供にボールを渡すラブリーの言葉に、クロゼは驚いたように一歩後退する。
「らぶも雪球投げちゃうなん」
「ちょっ」
 こんな風にとラブリーが固めた雪玉をクロゼに投げつけると、クロゼは慌てて躱す。しかし深い雪に足を取られて思うように動けず雪玉が掠めた。
「たのしそー!」
「やっちゃえー!」
 子供達もそれに続き、ボールや雪玉を好き放題に投げつけ始めた。
「ちょっとこれ預かってほしいのん。マザーはしんぱんだぞ」
【では始めます。プレイボール】
 ゲームが始まってから遅れて掛け声が響き、ラブリーは苗木を大人に預けて野球ごっこに夢中になる。
「ちょ やめ ボール投げないで、雪に足をとられてかわせな……ごふッ!!」
 躱し切れずにクロゼは次々と直撃を受けて全身を雪塗れにされ、その姿を見たラブリーや子供達が無邪気に笑っていた。

「もっと投げてやるのん」
「まあ、子供達が笑ってるからいいか……なんて言わないからな。ホームランを打ってやる!」
 ラブリーと子供達がまた球を投げると、野球はこういうものだとクロゼはバットを振り抜き、飛んでくる球を捉えてカンッという乾いた音と共に高々と空に飛ばした。
「わぁぁああっ!!」
「すっげーーーー!!」
 それを見て子供達は歓声を上げ、自分も打ってみたいとバットを手にして野球ごっこに熱中し、寒さなんて忘れたように元気な笑顔を浮かべていた。
「ガキどものあんな顔見たのはいつ以来かな……」
 そんな無邪気な笑顔に、仕事をしながらそれを見ていた大人達の表情も和らいでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
大狼は戦闘には苛烈だが、それ以外は大人しく優しい性格

さて、食事の準備が出来るまで遊びたいっていう子はいるか
楽しませたくて俺の友達を連れてきた、ただ、痛い事はしないであげてくれ

俺は食事の前に子供達と遊ぶ
【怪力】を駆使して肩車したり、追いかけっこしたり、自分が敵役で奪還者ごっことかもいいかもしれない
大狼の白瑛も連れていってみる
ここ辺りで見られるか分からないが動物好きな子は喜んでくれるんじゃないだろうか
白瑛は優しい性格しているし、撫でても背中に乗っても怒らないと思う
ただ、危ないから痛い事や背中で暴れたりしたらしっかり注意する


霧島・絶奈
◆心情
例え其れが一時の夢なのだとしても…
人生にはその一時の憩いこそが必要です

◆行動
子供達の労働は『獣ノ爪牙』にて呼出した軍勢に肩代わりさせましょう

バルモア・グレンブレア殿をお誘いします

先日振りです、バルモア殿
本日は宜しくお願いします

…ただ与えられるだけでは人は堕落します
ですが、日々の頑張りへのささやかな褒賞であるならば話は別です
暖かい甘味と言う事でお汁粉でも振舞おうかと思っています
子供だけでなく大人にも…
バルモア殿もお手伝い頂けますか?

あとは…そうですね
子供達には特別に「紅茶を練り込んだクッキー」を日持ちする様にパッキングして贈りましょう
此方はどちらかと言えば私の感動の御裾分けでもありますが…


ブギウギ・チャリオット
こんな寒い土地で懸命に生きる、大きな人間さんや小さな人間さんたち…いい話だなぁ(号泣)
尊い…せめて俺も何かお手伝いせねば…。

SPD行動

サンタの帽子は借りていくとはいえ、俺はこんなナリなのでおいそれと人間さんの前には姿を現せねぇ。
俺は遠くから人間さんを応援できるだけで満足なんだ…。
小さい人間さんが寝静まった後、人目を避けてひっそりプレゼントを置いていこうと思う。
人間さんが何に喜ぶのかよく知らないので、用意してもらったプレゼントに四つ葉のクローバーを添えてプレゼントだ。
あとは自前で粘つかない新鮮なクモの糸を用意して、ぐるぐる巻いて毛布みたいな暖房グッズするぞ。

アドリブなどご自由に


イスラ・ピノス
サンタ衣装でいくよ。
少しでも冬を越える助けをさせてね。

僕はお菓子の方にする。
UDCアースで目をつけた、栄養価高い・甘い・コンパクトなスナックバー。
後、ポップコーンの種のままなら結構持ち込めんじゃないかな。
炊き出しをする時には火も使えるだろうからそこで作って子供たちにあげたいね。
種は長持ちするからその後も火が使える時には多分作れるし、今後作るのは難しそうなら今日使い切っちゃう。
その2つで上手く使えそう・出来るだけ持ち込めそうな感じでチャレンジだ。

後は子供達と相談して遊ぼう!
一緒にポップコーン作ったり、鬼ごっことか物がなくても平気なゲームしたり。
後はそーちゃんをトラクション代わりにして貰おうかな?



●温かな御裾分け
「例え其れが一時の夢なのだとしても……人生にはその一時の憩いこそが必要です」
 ちらちらと降る雪を見上げ、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)はこの厳しい世界を生き抜くには希望が必要だと掌で雪を受け止める。体温で雪は幻のようにすぐに溶けて消えてしまう。
「さあ、今日の仕事は終わりです。今日は特別な日。其ならば特別な出来事が起きても不思議ではありません」
 絶奈はユーベルコード『獣ノ爪牙』によって軍勢を呼び出し、子供達の仕事を肩代わりさせる。
「わっ!?」
「えっ、もってくれるの? にいちゃん、にもつもってってくれたよ!」
「ああ……あっ、ありがとう!」
「ありがとー!!」
 子供達の運ぶ荷物を持ち上げ、黙々と軍勢は仕事を片付け始めた。

「先日振りです、バルモア殿。本日は宜しくお願いします」
「こちらこそ今日はよろしく頼む」
 そうして子供達を仕事から解放し、絶奈は拠点の広場で大鍋に水を張るバルモアに話しかけた。
「今日はクリスマスだ。盛大に祝ってやるとしよう」
「……ただ与えられるだけでは人は堕落します。ですが、日々の頑張りへのささやかな褒賞であるならば話は別です」
 大人も子供も寒さに震えながら働く人々を見て、絶奈はその身も心も温めるようなプレゼントが必要だと考える。
「暖かい甘味と言う事でお汁粉でも振舞おうかと思っています」
 貴重な甘味で温まるものという条件を満たすお汁粉の材料を用意していた。
「子供だけでなく大人にも……バルモア殿もお手伝い頂けますか?」
「ああ、勿論だとも。一人でも多くの人に楽しんでもらおう」
 視線を合わせて朗らかな顔でバルモアが頷き、早速調理に取り掛かろうとまずはたっぷり持ち込んだ燃料を使って火を起こした。
「あとは……そうですね。子供達には特別に『紅茶を練り込んだクッキー』を日持ちする様にパッキングして贈りましょう」
 大切そうに絶奈は手作りのクッキーを取り出す。それは自分がクリスマスプレゼントに貰った紅茶入りのクッキーを真似て作ったものだった。
「此方はどちらかと言えば私の感動の御裾分けでもありますが……」
 この溢れるような温かな気持ちを分け合いたいと思う絶奈に、バルモアは優しい視線を向けた。
「クリスマスには子供達だけでなく、日々を頑張る皆にプレゼントがあってもいい。勿論、君にも」
 微笑みを交わし、メリークリスマスと祝福の言葉を唱えた。


●子供は元気に
「さて、食事の準備が出来るまで遊びたいっていう子はいるか」
「はーい!」
「あそびたい!」
 戦場とは違い鋭い瞳に穏やかな光りを宿し、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)が子供達を見渡して尋ねると、元気よく幼い声で遊びたいと声が上がった。
「楽しませたくて俺の友達を連れてきた、ただ、痛い事はしないであげてくれ」
 そう言ってルイスは白い大狼の白瑛を紹介する。
「わっ、おっきなイヌだ!」
「犬じゃなくて狼だろ」
 子供達が大人しくしている白瑛に恐る恐る近づき、その体に触れてみる。すると白瑛はされるがままにして子供達を受け入れていた。その様子は戦闘での苛烈な顔とは全く違い、優しい親のような包容力を放っていた。
「この子おとなしいよ」
「猟犬みたいだな。猟犬ってすっごいかしこいんだぜ!」
 触っても大丈夫だと分かると、子供達はその白い毛並みに触れて笑顔を浮かべる。

「ねえねえ! このオオカミさんにのってみてもいい?」
「構わないが、暴れて落ちると危ないから気をつけて乗るんだ」
 少女がルイスを見上げて尋ねるとルイスは白瑛に視線を向ける。するとすっと屈み込んで子供が乗りやすい体勢になった。
「やった! ありがとうオオカミさん!」
 背に少女を乗せると白瑛が立ち上がってゆっくり歩き出す。少女ははしゃいで嬉しそうに笑顔を咲かせた。
「いいないいな! オレも乗りたい!」
「それなら肩車をしてやろう」
 羨ましそうにしている少年をルイスが持ち上げて肩車をしてやる。
「うわっ高い高い!」
 そのふくれっ面が顔があっという間に笑い顔に変わり、少年は高い視点から雪の積もる大地を大人になった気分で見下ろした。
「ボクもボクも!」
「あたしもしたいー!」
 そんな様子に子供達がルイスと白瑛の元に集まって来る。
「それじゃあ追いかけっこをして追いついた子と交代だ」
「つかまえるぞーー!」
「おっかけっこーっ!」
 ゆっくりとルイスと白瑛が逃げ始めると、子供達は喜んで追いかけ始めた。


●いっしょに
「僕はお菓子を用意したよ」
 サンタ衣装のイスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)が子供の好きそうでいて実用性も高いお菓子を用意しようと、食料を持ち込んでいた。
「UDCアースで目をつけた、栄養価高い・甘い・コンパクトなスナックバー。これはそのまま食べられるし、期限もすぐには切れないから冬の間の食事代わりにもなるよね」
 幾つもの段ボール一杯に入った食料を置いて、がそごそと中身を確認する。
「それとポップコーンの種。膨らむ前なら量が少ないから結構持ち込めたよ」
 そして乾燥したポップコーンの種が大量に入った袋から、今から使う分を取り出した。
「ご飯は時間がかかりそうだし、炊き出しの火を使っておやつにポップコーンを作ってみようかな」
 イスラはポップコーンの種をフライパンに入れて蓋をする。火にかけてしばらく待つと、ポンポンと音がしてポップコーンが弾け出す。さらに揺すると音が続き、中から香ばしい匂いが漂い出した。

「なんか音がしたよ!」
「イイ匂いもする!」
 そんなポップコーン作りを聞きつけた子供達が集まってくる。
「これはポップコーンっていうお菓子よ。食べてみる?」
「食べる!」
「オレもー!」
 イスラが塩を振ってポップコーンを差し出すと、子供達はパクパクと食べ始める。
「おいしー!」
「ふかふかだなー」
 子供達が夢中で食べると、フライパン一つ分のポップコーンなどあっという間に無くなってしまった。
「あっ、外の奴にもやればよかった……」
「ぜんぶ食べちゃった」
 夢中で食べ尽くしてから、他の仲間の事を思い出す。
「それならまた作ればいいよ。一緒にポップコーン作ってみる?」
「できるの?」
「やってみたい!」
 イスラの提案に子供達が飛びつき、一緒にポップコーン作りを始めた。
「うわっすごい音がする!」
「なんか爆発してる!」
「大丈夫。驚いて手を離さないように気を付けて、中が焦げないように揺らしてあげてね」
 ポップコーンの弾ける音に驚く子供達に、イスラが優しく作り方を教えてたっぷりのポップコーンを完成させた。
「これで完成。零さないように紙袋に入れておくからね」
「おねえちゃんもいっしょに行こうよ!」
「外で鬼ごっこしてるんだ! いっしょにあそぼー!」
 イスラは子供達に手を引かれ、釣られるように笑顔になると、それじゃあ一緒に遊ぼうと寒い外へと駆け出した。


●心を籠めて
「こんな寒い土地で懸命に生きる、大きな人間さんや小さな人間さんたち……いい話だなぁ」
 サンタの帽子をかぶったブギウギ・チャリオット(戦車の四天王・f31481)は、離れた場所で健気に生きる人々を見て号泣していた。
「尊い……せめて俺も何かお手伝いせねば……」
 自分にも何かできないだろうかと考え、自分の体を見下ろした。そこには怖ろしいクモの姿をした四天王の姿がある。
「サンタの帽子は借りているとはいえ、俺はこんなナリなのでおいそれと人間さんの前には姿を現せねぇ」
 この姿を見せれば子供達どころか大人まで怯えさすことになるだろうと身を潜める。
「俺は遠くから人間さんを応援できるだけで満足なんだ……」
 憧憬の眼差しを向け少し寂しそうなブギウギは、姿を見せずにできる事を考えて、サンタらしく子供が寝静まった後にこっそりとプレゼントを渡そうと決めていた。
「人間さんが何に喜ぶのかよく知らないから、用意してもらったのをプレゼントするとして、自前のものも添えようかなぁ」
 用意されているのだけでは寂しいと思い、ブギウギは気持ちを籠めて粘つかない新鮮なクモの糸を使って、ぐるぐると巻いて毛布のような暖房グッズを作り出した。


●温かな食事、溶ける心
「味見してみましたが、美味しく出来ていると思います」
「うむ、美味い。では皆を呼ぶとしよう」
 絶奈とバルモアが甘いお汁粉と具沢山のスープを完成させて寒さに凍える人々を呼ぶ。
「わぁっあまいイイ匂いがする!」
「おおっこりゃ旨そうなご馳走だ!」
 子供も大人も匂いに釣られるように拠点の広場へと集まってきた。

「いい匂いがする!」
「おなかすいたー」
「そろそろ食事の時間だ。みんな手を洗ってから食べに行こう」
 たくさん遊んで満足した子供達に、ルイスが声をかけて良い香りのする方へと向かう。そこには炊き出しで使う大きな鍋が二つ並び、甘いお汁粉と具沢山のスープがたっぷりと作られていた。
「ご飯だよー! そーちゃん、遊んでるみんなを連れて来て!」
 イスラが一緒に子供と遊んでいたソーダ水のそーちゃんにお願いすると、そーちゃんは走り回る子供をぽよんぽよんと浮かべて運んできた。
「きゃーふよふよする!」
「オレものるー!」
「ほらほら、ご飯よ。遅くなると食べる分がなくなっちゃうかも」
 子供達にイスラが急かすように声を掛けると、ご飯ご飯とすぐに遊びからご飯モードになって子供達が戻ってきた。

 広場の大きなたき火の元に人が集まると、猟兵達は木の椀にお汁粉や具沢山スープを入れて配っていく。
「このスープあまーい!」
「こっちのは具がたっぷりで腹が膨れるぞ」
 絶奈とバルモアが作ったスープに舌鼓を打ち、人々は火を囲みほっこりと緩む顔で体を温める。
「好評のようですね」
「ああ、やはり寒い日には温かな汁物が美味い」
 二人はその反応に満足し、自分達も肩を並べお汁粉を味わった。
「ねえ、この子もこれ食べるかな?」
「ありがとう。少し冷ましたら食べられるよ」
 少女が乗せてくれたお礼にと具沢山のスープを持って白瑛の前に差し出すと、ルイスが微笑み心優しい少女の頭を撫でた。
「これで少しでも冬を越える助けができたかな」
 イスラは笑顔の人々を見渡す。皆が寒さなんて忘れたようにほっかほかに身も心も温かく包まれている。きっと冬の寒さなんかに負けないだけの元気をあげることができたと確信し、サンタ役を全うできたと安堵した。


●メリークリスマス
 たっぷりの食事を終え、日が沈むと皆は寝静まり拠点は火が消えたように静かになる。
「みんな良い子にして眠ったみたいだなぁ」
 音を立てずにクモの脚を使ったブギウギが、子供達が雑魚寝する部屋に忍び込んだ。
「あれだけ遊び回ってお腹一杯食べたんだから、気持ち良く眠れてそうだねぇ……」
 クリスマスを満喫した子供達はすやすやと眠り、ちょっとやそっとでは起きそうになかった。
「それじゃあプレゼントを置いていこうか……」
 こそこそとブギウギはプレゼントの箱に四つ葉のクローバーを添えて枕元に置き、暖かな毛布のような自作の暖房グッズも置いていく。
「これで全員に行き渡ったかなぁ」
 確認したブギウギが立ち去ろうとしたところで、子供が寝返りを打つ。
「サンタさん、きょうは……ありがとぅ………」
 サンタの夢を見ているのか、子供はむにゃむにゃと寝言を呟く。
「人間さん……俺の方こそありがとう。そしてメリークリスマス……」
 クモのサンタは泣き笑いのようにくしゃっと顔を崩し、風邪をひかないように毛布を掛け直して、静かに寝室を立ち去った。
 子供達が起きた時の笑顔を思い浮かべるだけで心に温かなものが宿る。


 今日は聖なる日。良い子に笑顔を。その笑顔は大人も笑顔にして、世界は喜びに包まれる。そんな一年に一度の誰もが心温まれる特別な日。
 猟兵という名のサンタは凍える人に笑顔をプレゼントする――メリークリスマス!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月30日


挿絵イラスト