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辻斬り剣鬼、狂い哭く

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●剣鬼は眠れぬ夜を往く
「……これが、この時代の侍か」
 刀を振るう度、倦怠と落胆に苛まれるようになったのは、何時からだったか。
 何を喰らっても満たされぬ飢えと乾きが、影法師のように己に付き纏う。

 足元に転がる屍は誰だったか。確かなんとかの守とか言うここの藩主だったはずだが。
 もう忘れた。思い出す必要もない。
 己が斬り掛かっても部下に守られているばかりの、挙句みっともない命乞いまでして、一太刀も交えることもなくそっ首落とされた、このようなものなど。
 虚仮威しの刀を差してやあやあ我こそは侍でございと肩で風切り歩く、こやつらの何が士(さむらい)なのかと、目にする度に虫唾が走る。

「血が沸かぬ。肉も踊らぬ。これでは狂えぬ――死狂えぬ!」
 ぬるま湯の如き太平の世とやらが、己を正気へと引き戻す。これは悪夢か。己は唯、一振りの兇刃として振舞っていられればそれで良いというのに。
 嗚呼第六天魔王よ、何故己をこの時代に黄泉還らせた。己は唯、冥途の獄卒衆と屍山血河を築いていれば、それで満足だったというのに!!

 下らぬ侍もどきを何人斬り捨てようと、己の乾きは言えず。
 嗚呼阿弥陀仏よ、慈悲の心あらば、我を地獄に落としたまえ。
 この悪鬼に、相応しき戦場と死を授けたまえ――!!

●兇刃を阻む者たち
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「サムライエンパイアのとある藩にて、オブリビオンによる辻斬り事件を予知しました」
 辻斬りの標的となるのは、藩主や家老といった藩の重要人物ばかり。襲撃はいずれも人気のない時刻や場所を狙って行われる。
 もしもこれを見過ごせば、トップや重鎮を失った藩は大混乱に陥るだろう。そこからどれだけの不幸が連鎖するのか、想像もつかない。
「幸い、辻斬りの標的となる人間や場所・時刻は判明しています。この情報を元にすれば犠牲が出る前に現場に駆けつけたり、辻斬りを別の場所に誘導することも可能でしょう」
 そう言ってリミティアは自身の予知情報を纏めた資料を猟兵たちに渡す。
 予知された辻斬り事件は一件ではなく、藩の城下町で連続して起こる。辻斬りが犯行を諦めるまで何度も繰り返し阻止するしか無いだろう。

「辻斬りの目的は単純に考えれば藩の重要人物の首級――なのでしょうが、リムの予知した彼はそれだけが目的では無いように視えました」
 それに不可解なこともあります、とリミティアは続ける。
「辻斬りはどうやって標的の行動を把握しているのでしょう。何らかの情報源がなければ、こうも立て続けに藩の重要人物を闇討ちするなど不可能です」
 この事件には何かまだ裏がある、そう彼女は考えていた。
「辻斬りから藩の重要人物を守り抜けば、彼らの協力を得てその裏を暴くことが出来るでしょう。全ては彼らの命を救う所からです」
 藩主も重鎮たちも、治める藩の人々のために心を砕き、太平の世を維持するために奔走する、善良な者たちだ。
 それがオブリビオンの兇刃に斃れることなどあってはならないと告げて、リミティアは手のひらにグリモアを浮かべる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 戦場と書いて「いくさば」と読む。こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはサムライエンパイアにて、オブリビオンの辻斬りから藩の重要人物を守るのが最初の目的となります。
 狙われる人物と辻斬りが起こる場所・タイミングは判明しています。皆様は現場に駆けつけて標的を守ったり、辻斬りを挑発して誘導したりして、事件を阻止してください。
 OP冒頭のシーンから垣間見える辻斬りの人物像もプレイングの参考にどうぞ。

 無事に第一章をクリアできれば、第二章では暴かれた事件の「裏」を追及していき、第三章でボス戦となります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『おまえの首をくれ』

POW   :    正々堂々一対一で勝負

SPD   :    地の利がある場所に罠など仕掛ける

WIZ   :    アイテムやユーベルコードを上手く活用

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ボドラーク・カラフィアトヴァ
辻斬り。
ええ、きっと私も、どこかで道を踏み外せば、きっとそうなっていたのでしょうね。
あるいは、いつかの私は……

さて。私のやる事、やるべき事はひとつ。
辻斬りに遭うであろう方の護衛です。
――さすれば、きっと直接、この方と死合えるのでしょう?

その剣はどれほどの血を吸って来たのでしょうか。
まさか、なまくらでは無いことを願います。

あなたがきっと、そうであるように。
わたしも、生死をかけた戦いを求めています故に。

……なあに、あなたを退屈させるつもりはありません。
ですから、あなたもわたしを、愉しませてくださいな?



「――御家老殿と御見受け致す」
 深夜、月明かりに照らされ姿を現したるは不審な男。
 歳は三十か、四十か。はっきりとした容貌は見えぬが、その腰に刀を帯びるからには何処かの武士か。
「何奴だ!」
 護衛の者達が家老の前にさっと出る。刀を手にかけている彼らに対し、男は動じた様子もない――まるで脅威を感じていないように。
「恨みはないが、故あって斬らせて頂く」
 そう言って男は刀の鯉口を切る。それだけで、凄まじい剣気と殺気が溢れ出す。
 家老も、護衛も、まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。そんな中――。

「あなたが、噂の辻斬りですね?」
 唯一人動けたのは、ボドラーク・カラフィアトヴァ(笑う銀鬼・f00583)。
 予知の情報を元に、あらかじめ護衛の中に加わっていた。そうすればきっと直接、この相手と死合えると踏んで。

「女か。まだ噂になることをした覚えはないが」
「まだ、ね。ええ、そうでしょうとも」
 こちらにはグリモア猟兵の予知がある。しかしそれを一々説明する義理もない。
 むしろ野暮だ。斬り合いの前にそんな話をするのは。
「その剣はどれほどの血を吸って来たのでしょうか。まさか、なまくらでは無いことを願います」
 そう言って彼女が構えた刀の名は『無銘』――超科学の粋が生み出した、決して折れぬという刀。
 それを構えた瞬間、男から放たれる剣気が強まる。

「匂い立つな、貴様。血の匂いだ。修羅の匂いだ」
「ええ。あなたがきっと、そうであるように。わたしも、生死をかけた戦いを求めています故に」
 微笑みの瞼で隠されていた瞳を、すうと覗かせて。そこに渦巻く本心は、底知れぬ戦への渇望。
 女は笑う。ゆらりと。釣られるように男も笑う。
「丁度退屈していたところだ。そこまで言うなら、試させて貰おう」
「……なあに、あなたを退屈させるつもりはありません。ですから、あなたもわたしを、愉しませてくださいな?」

 審判はいない。いざ尋常に、始めの合図もない。
 だが、まるで示し合わせたかのように、二人の剣鬼は同時に動いた。
 ボドラークが放つは無形殺人刀・零式。斬れぬものなしと謳う、我流にて極めし彼女の奥義。
 対して男が放つは居合い斬り。刹那にも満たぬ一瞬の内に、二つの刃が交錯し――。

 ピシリ。
 ボドラークの『無銘』に、ほんの小さなヒビが入る。
「!」
 物理的に決して折れないはずの刀にヒビが。それは即ち、男の剣技は物理の域を超えた先にあるということ。
「折れたか」
 一方の男の刀も、ボドラークの"零式"を受けて中ほどから真っ二つに折れていた。
「なまくらでは無かった筈なのだがな。やはりこの時代の刀は脆い」
 今宵は退くとしよう――そう言って踵を返す男に対し、ボドラークは。
「もう終わりですか?」
「何れまた見えることもあろう。お互いに死んでいなければな」
 夜の闇に包まれて、辻斬りの姿は影法師のように消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオン・アーヴニル
第1目的は『要人の保護』
カモフラージュに現地の一般的な外套、頭巾等を着用し、
更に防具とスペルカードの機能(迷彩・目立たない)を発動して極力顔や姿を隠す。

現場に駆け付ける直前に【リヴ・レリクト】を発動。
目立つ赤髪の別人格(以下『グロウ』)と、
そいつが使う長巻にも似た柄の長い長剣を召喚。
到着直後に俺は要人に駆け寄り猟兵である事を告げ、
ここは大人しく従えと小声で指示。

グロウには件の剣鬼と1対1(又は他者との連携)で戦わせる。
フェイントを交えながらの全力戦闘を指示し、可能な限り相手の手札を晒させる。
俺自身は要人を庇いつつ第2目的である『相手の力量を図る』事に専念。
そう、全ては『次に相対した時』の為に。



 ――それからまた別の夜、事件は起こる。
(第1目的は『要人の保護』だ)
 現地の風俗に合わせた外套と頭巾、更に隠匿のスペルカードや迷彩機能を持つコート等、あらゆる手段で隠密に努めながら、セリオン・アーヴニル(並行世界のエトランジェ・f00924)は夜の城下町を駆ける。

 駆け付けた所はまさに今、辻斬りが要人へと斬り掛からんとする現場だった。
 セリオンは即座に【リヴ・レリクト】を発動――自身の別人格の中から、長柄の長剣を振るう赤髪の「グロウ」を召喚し、辻斬りに差し向ける。

「待ちなッ! 俺が相手だッ!」
「む……新手か」
 横合いから斬り掛かってきた「グロウ」の斬撃を、辻斬りは摺り足で避ける。
「貴様が何者かは知らんが、用はない」
「お前になくてもこっちにはあるんだよッ!」
 鬱陶しそうな口調ながらも、辻斬りには隠し切れぬ笑みが浮かんでいる。
 さてどれほどのものかと、「グロウ」の剣腕を見定めようという意図が透けて見える。

 そして別人格が辻斬りと戦っている隙に、セリオンは要人たちを下がらせ、その護衛につく。
「お、お主等は一体……」
「猟兵だ。これを見れば分かるか?」
 江戸幕府から与えられている天下自在符を示して、戸惑う彼らの信用を得る。
「事情は後で話す。ここは大人しく従え」
「あ、相分かった」
 小声での指示に彼らが頷いたのを確認してから、セリオンは戦場へと視線を移す。

 別人格「グロウ」の剣技は、長巻にも似た豪快な得物を扱いながら、その実巧み。何手ものフェイントを織り交ぜた連撃で、息吐く隙も与えず攻め立てる。
 しかし辻斬りもまた達人、容易にフェイントには引っ掛からない。
 いや、正確には掛かったと感じた時は何度かあった。しかしその度に辻斬りの身体は異様な加速を見せて斬撃を回避しているのだ。
 そのくせ、自身の刀は鞘に納めたままであるのがいかにも怪しい。

「良い腕だ。昨夜の鬼といい、この時代にもこれほどの剣客がいるとはな」
「余裕見せてんじゃねぇッ!」
 辻斬りと「グロウ」の戦いは長期化し、やがて騒ぎを聞きつけたか人の気配が近付いてくる。
「――少し興じ過ぎたか。引き際だな」
「待て、ッ?!」
 追撃しようとする「グロウ」を、突如として巻き起こった衝撃波が襲い。
 咄嗟に「グロウ」が防御した直後には、辻斬りの姿は跡形もなく消えていた。

「逃げられたか」
 その戦いをつぶさに観察していたセリオンは、第2目的である『相手の力量を図る』事は果たせたと判断。
 全てとは言えないが、相手の手の内を知ることはできた。
 この情報はきっと『次に相対した時』、己と仲間たちの役に立つだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

戦場外院・晶
【WIZ】

「随分と荒れておられる御様子。……その憂い、払って差し上げる」

しずしずと、【忍び足】で参ります

「失礼、名乗らせて頂きます。……戦場外院・晶。ここに見参」

聞けばこの方、辻斬りだとか。
正々堂々の名乗り合いなど流儀ではないでしょうし、此方が名乗ったら

襲い掛かります

【奥義・不生】を活用致しまして、近寄る私を斬ろうとする、その呼吸を読み取ります

その刹那に【手をつなぎ】
【怪力】と【グラップル】で畳んで仕舞いましょう

「貴方様は、この浮き世を儚んでいらっしゃいましたが、とんでもない」

決して手を離すことなく、刀よりさらに内の超々近距離で、殴り、崩し、極めて見せます

「ここより楽しい場所などございません」



「やれやれ、こうも次々と邪魔が入るとはな」
 人気のない通りを選んで撤収中、ふと辻斬りは呟く。
 その身からは抑え切れぬ高揚が、修羅の剣気が溢れ出している。
 常人であれば、その剣気のみで卒倒するやもしれない。

「随分と荒れておられる御様子。……その憂い、払って差し上げる」
「……何奴」
 不意に、暗がりからかけられた女の声。男は刀に手をかけ立ち止まる。
 姿を現したのは戦場外院・晶(強く握れば、彼女は笑う・f09489)。しずしずと音も無く、撤退する辻斬りの元に忍び寄っていた。

「失礼、名乗らせて頂きます。……戦場外院・晶。ここに見参」
 言うや否や、晶は辻斬りに襲い掛かった。
 正々堂々名乗りを交わすなど流儀ではないだろう。遠慮も容赦も必要なし。

「何者かは知らんが、道理は弁えた娘だ」
 辻斬りにとっても、その振る舞いは好印象だったらしい。
 接近する晶に向かって鯉口を切り、居合いを放とうとする――その刹那の呼吸を読み取って、晶は辻斬りの手を掴んだ。
「……そこです」
「む」
 手を抑えられ、居合いを放ち損ねる辻斬り。
 そのまま晶は得意の組み手で畳み掛ける。

「貴方様は、この浮き世を儚んでいらっしゃいましたが、とんでもない」
 相手の利き手を抑えたまま、刀の間合いの更に内側に入り込んで、拳を振るい、脚を払い、関節を狙う。
「ここより楽しい場所などございません」
 晶の口元には隠し切れぬ享楽の笑みが。それを見た辻斬りも笑う。
「成程、そうかもしれん。貴様のような者も居るならばな」
 この超々至近距離での立ち回りで優位にあるのは晶。
 しかし辻斬りも巧みに打撃の芯を外してダメージを抑えている。

「――!」
 不意に危機を感じ取った晶はさっとのけぞる。
 その直後、引いた鼻先を掠めたのは辻斬りが逆手で抜いた短刀。
 生じた隙を突いて掴まれた手をするりと解くと、辻斬りは晶から距離を取る。
「このまま興じたいところだが、生憎とまだ用があってな。詰まらぬ用だが、義理は果たさねばならん」
「それは、誰への義理でございますか?」
 晶の問いに男は答えず。
 その姿は今度こそ、闇夜に紛れて消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

空廼・柩
辻斬り、ね…それとも死狂いとでも呼ぶべき?
ドラマみたいに悪い奉行を斬ってくれるならばまだしも
善良な人達を手に掛けようとしてるって話だし
…ならば止めないと寝覚めが悪いよね

先ずは情報収集、と
予め城下町で、辻斬りの通りそうな場所を調査
極力人が通らない場所が良い
罠を張る心算だから他の人が引っかかったら大変だ

何かしら情報源があるみたいだし
事前に行動を予測されるのは避けたい
夜、辻斬りが訪れる少し前に罠をセット
拘束用ロープに閃光弾に…大盤振る舞いでいこう
勿論、引っかからなくても問題ない
目的は奴にダメージを与えることじゃない
奴が警戒する事で犯行を諦めてくれれば僥倖
…それにしても、奴の情報源って一体何だろうね?



 戦いの夜が明けて、日中。
「辻斬り、ね……それとも死狂いとでも呼ぶべき?」
 再び事件が起こるであろう夜に備えて、空廼・柩(からのひつぎ・f00796)は仕込みと情報収集を行っていた。
「ドラマみたいに悪い奉行を斬ってくれるならばまだしも、善良な人達を手に掛けようとしてるって話だし……ならば止めないと寝覚めが悪いよね」
 無辜の犠牲を生み出さないために、彼は行動を開始する。

 柩は予知された事件の現場から、辻斬りが通るであろう場所を予測する。
 導き出した経路を自分の足で歩きながら、極力人の通らない場所を選び出す。
「ここが良いかな」
 目星を付けたポイントを記憶すると、一旦はそこから立ち去る。
 行動を予測される痕跡は残したくない。「仕掛け」を行うのは敵が動き出す直前にすべきだろう、と。

 時は流れて夜。
 予定された少し前の時刻に、柩は目星を付けた場所に罠を仕掛けると、自身は万が一に備えて要人の護衛についた。

 そうとは知らぬ辻斬りは、今宵こそは標的を仕留めるべく、夜闇に紛れて町を駆け――。
「むっ」
 不意に足元に何かが引っ掛かる感触がした直後、暗がりから小さな何かが顔目掛けて飛んでくる。
 辻斬りは即座に居合いを放ち、空中でそれを両断するが――斬り捨てられたのは閃光弾。眩いばかりの光が彼を襲う。
「ぐ――」
 夜の闇に慣れていた辻斬りにとって、その光はあまりに強烈だった。
 思わず目を庇ったところを追撃するように、今度は拘束用ロープが飛んでくる。
「小癪な」
 視界が利かぬながらも心眼で見極め、ロープを斬り捨てる。
 しかし、柩が仕掛けた罠はそれで終わりではなかった。辻斬りが先に進めば進む度に、手を変え品を変え新しい罠が作動する。
 道を変え迂回しようとしても、それさえ柩は予測して迂回路にも罠を張っていた。

「――これは機を逸したな。日を改めるか」
 辻斬りが罠に足止めを食らっている間に、標的は既に襲撃予定の場所を通り過ぎていた。
 無理を通して襲撃を決行しても、おそらく迎え撃つ準備は万全に整えられているだろう。
 彼は死合を好むが、あると分かっている罠に踏み込むほど愚かでもない。
 それに、このように細々と罠を張る手合いは、辻斬りの好む敵ではなかった。

(……どうやら諦めたみたいだね)
 彼方から感じられていた剣気が遠ざかっていくのを悟り、柩はほっと息を吐く。
 ひとまず今夜のところはまた、辻斬りの犠牲者は出さずに済んだ。しかしまだ襲撃は続くだろう。
(……それにしても、奴の情報源って一体何だろうね?)
 辻斬りに情報を流し続けている謎の影。その正体は他のオブリビオンなのか、それとも――?

成功 🔵​🔵​🔴​

伊能・為虎
(WIZ重視)
狙われる人とか、場所のことはちゃちゃっと聞いておいて
ユーベルコードとか色々使って「辻斬りの誘導」を狙ってみよー♪

僕の妖刀は、刀身の御札をわざと派手に貼りなおしておいて目立ちやすく
【疾駆する狗霊】さてさてわんちゃん、出番だよ!
わんちゃんと僕で標的に向かう道をとおせんぼ
<殺気2>でこっちに注意を向けてもらおっと

ヒマそうな辻斬りさん、こんにちはー!
ヒトはさぞ斬り慣れたご様子。でも幽鬼の類はどうかなぁ?

でも本格的に戦うより、<怪力5><武器落とし>的な感じで刀を狙ったり注意を逸らすのに重点
もし向こうが血の気がのぼった様子ならわんちゃんの咆哮で意識を逸らしてそのすきにさよーならっ



 その次の夜も、辻斬りは標的を狙って夜の町を駆ける。
 今度は昨夜のような罠にも警戒し、より気を張り詰めて。
「――む?」
 その進路上に立ち塞がる人影を見つけ、立ち止まる。
「ヒマそうな辻斬りさん、こんにちはー!」
 派手な御札で刀身を覆った妖刀を携えた、一見すれば可憐な少女のような――彼の名は伊能・為虎(天翼・f01479)。

「さてさてわんちゃん、出番だよ!」
 狙い通りに辻斬りを見つけた為虎は、妖刀に憑いた霊を召喚する。
 刀から溢れ出た首だけの狗の霊が、為虎と共に標的に向かう道をとおせんぼする。
「面妖な技を使うものだ」
「ヒトはさぞ斬り慣れたご様子。でも幽鬼の類はどうかなぁ?」
 花のような笑顔を浮かべる為虎だが、その内面からは鋭い殺気を放ち、辻斬りを挑発する。
「確かにヒトと比べれば経験はないな。だが問題はあるまい――今は己もその幽鬼と大差ないモノだ」
 向けられた殺気に笑みを浮かべ、オブリビオンの剣鬼は狗霊に襲い掛かる。

「――破ッ」
 短い呼吸と共に居合いを繰り出す辻斬り。
 その斬撃は神速の域にあり、抜いたかと思った次の瞬間には、刃は鞘に納まっている。
 目にも留まらぬ斬撃に切り裂かれていく狗霊。しかしその隙に為虎は辻斬りの背後に回りこみ。
「えいっ!」
 掴んだのは男の腰にある鞘。その見た目からは思いもよらぬ怪力で、腰から引っこ抜くように奪い取る。
「む……!」
 男の手には抜き身の刀が残っている。だが――。
「鞘がなければ居合い斬りは難しいでしょ?」
 敵の得意の"武器"を封じてみせた為虎は、得意げな笑顔。

「貴様……」
「あっ、怒った? 怒っちゃった?」
 殺気の裏から放たれる怒気を感じつつ、あえて挑発を重ねる為虎。
 対する辻斬りは抜き身の刀を上段の構えに変えて。
「……返してもらおうか」
「やーだよっ!」
 踏み込んだ辻斬りの前に首だけの狗霊が立ち塞がり、呪詛を含んだ咆哮を放つ。
 男が一瞬ひるんだ隙に、為虎は踵を返して駆け出す。無論、鞘は握ったまま。
「さよーならっ」
「待て……!」
 後を追う辻斬りだったが、繰り返しけしかけられる狗霊の妨害にあって、やがてその姿を見失う。
 為虎一人に時間を取られてしまった。これでは襲撃の予定にももう間に合うまい。

「……まったく無様なものだ」
 己を嘲るように呟きながら、しかし剣鬼の口元には笑みが。
 己が梃子摺るような手合いが毎夜毎夜現れる。嗚呼――これこそ己が望んだものではなかったか?

成功 🔵​🔵​🔴​

御剣・刀也
POW行動

辻斬りね。さて、どれ程のものか
俺もそういうわけではないが、武の道に入れば腕が上がれば更に強い者と戦い勝利し、上達を感じたいもの
ま、俺も真剣勝負は何度か経験あるし、相手を殺しもしたが、今回はどうもそういうのとは違うようだ。
天武古砕流後継者として、堂々と戦って、堂々と倒して見せよう

辻斬りと正々堂々一対一で戦う
慢心も何もなく、ただ己の持てる技と力、心を振り絞り、全力で
相手が物足りなければ
「この程度か」
と落胆し、満足いく相手なら
「良い勝負だった。お前の強さが紛い物でないと証明するため、俺は勝ち続け、生き続けよう」
と相手に敬意の念を払う



 猟兵の度重なる妨害によって阻止され続ける辻斬り事件。
 しかしそれでもまだ、辻斬りは藩の要人を狙うことを諦めてはいなかった。

「辻斬りね。さて、どれ程のものか」
 今宵、辻斬りの前に立ちはだかるのは御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)。
 要人の護衛を下がらせ、正々堂々、一対一の戦いを挑む。
「天武古砕流後継者、御剣刀也。参る」
「ほう……懐かしい名を聞いた」
 戦国の世に端を発するというその流派の名に、聞き覚えでもあったのか。
 辻斬りの全身に剣気が漲った。

 達人同士の戦は、極まれば間合いの制し合いになるという。
 刀也と辻斬りは互いに必殺の構えのまま、摺り足で彼我の間合いを測りあう。
 静かな、しかし熾烈な戦である。
「俺も真剣勝負は何度か経験あるし、相手を殺しもしたが、お前が望むのはどうもそういうのとは違うようだ」
 相手の刀と眼から視線を外さないまま、刀也は問いかける。
 部の道に入った者ならば、腕が上がれば更なる強者との戦いと勝利を求め、己の上達を感じたくなるもの。
 しかし目の前の剣鬼の戦への執着は、それとは異なる次元にあるように思えた。
「貴様からも匂うぞ。己と同じ修羅の匂いだ」
「一緒にしないでもらおうか」
 少なくとも刀也は、己の力の奮い所を知っている。
 一歩、踏み込む。それは刀也と剣鬼、双方の必殺の間合い。

 愛刀「獅子吼」に己の心技体すべてを乗せて、刀也が繰り出すは渾身の剣刃一閃。対する辻斬りは神速の居合斬りにて迎え撃つ。
 キンッ――刃と刃の鳴く音が響き、断たれた一方の刀身が空を舞う。残ったのは――刀也の「獅子吼」。
「貴様の勝ちだな」
 一夜目の戦いのように、再び刀を折られた辻斬りが呟く。
 対する刀也はじわり、と血のにじむ自分の胸元に手を当てる。後一刹那、相手の刀を断つのが遅れていれば、斬り捨てられていただろう。

「今宵も良い真剣勝負が出来た」
 刀を折られた辻斬りは、ゆらり、と満足げな笑みを浮かべたまま踵を返す。
「この程度か」
 最期まで死合っては行かないのかと。物足りなさを覚えた刀也がその背中に問いかける。
「まだ、先方に果たすべき義理が残っているのでな。あの俗物の言いなりもいい加減に飽いてきた所だが」
 "俗物"とは彼に情報を提供する人物を指しているのか。
 何れにせよ、その義理とやらを果たし終えるまで、辻斬りが最期まで死合に応じることは無さそうだった。
「それに、己は欲深い。より面白い趣向を思いつきだした所よ」
 それは一体、と刀也が問いかけるよりも速く、その姿は夜風に紛れ消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

傀童・沙華
行動指針 POW

この拳、肉体こそがわらわの武器じゃ
わらわが望むべきはただ一つ
たった一つのユーベルコード
天蓋抂乱を以て立ち合うべき相手と死合うことじゃ

「打ち倒すべき敵に我が身を晒し、心に宿すは不退転。それが喧嘩の華である……『天蓋抂乱』!」
「いざ!尋常に死合おうぞ!」

わらわの喧嘩の流儀は、
相手の攻撃は避けず、ひたすら攻撃を繰り出し合うことじゃ

この事件の裏なぞ興味はない
今この一瞬に己の生を賭けてこそ、死合う意味があるのじゃ
悪いが、後のことは他の猟兵にお任せじゃ



 グリモアに予知された事件も残り少なくなった。
 しかしまだ油断はできない。たとえ一人でも藩の要人に犠牲者を出せば、それは猟兵の敗北なのだ。
 今宵も辻斬りは現れる。そして、立ちはだかるのは赤髪の羅刹、傀童・沙華(鬼哭童子・f12553)。

「この拳、肉体こそがわらわの武器じゃ」
 そう宣言し、沙華は徒手にて辻斬りと相対する。
 武の道を行く者であれば一目で理解できよう。その拳が、容易く人の命を奪える凶器であることに。
「成程。であれば丸腰の女だからと容赦することは無いな」
「最初から容赦する気などさらさら無かったように見えるがのぅ?」
「お見通しか」
 ならば参ると、居合いの構えを取った辻斬りを、沙華は堂々と迎え撃つ。
「打ち倒すべき敵に我が身を晒し、心に宿すは不退転。それが喧嘩の華である……『天蓋抂乱』!」
 自らの流儀を貫き通す、決意と覚悟が彼女の肉体を強化する。
「いざ! 尋常に死合おうぞ!」

「往くぞ」
 鎧も纏わず、一見して隙だらけにも思える沙華に対し、辻斬りは容赦なく得意の居合斬りを放つ。
 殺った――一度はそう確信する。しかし直後に刃から伝わる手応えは予想に反したもの。
「悪くはないのぅ」
 斬れてはいる。だが断たれてはいない。必殺の一刀を耐えてみせた沙華は、お返しとばかりに拳を叩き込む。
「ぬ……っ」
 胸板を打つ衝撃を、辻斬りは自ら後方に跳ぶことで受け流す。
 すかさず沙華は追撃する。回避の事など一切考えず、ただ攻撃のみに意識を集中させて。
「成程。これが貴様の"喧嘩の流儀"か」
 悪くないと口の端を歪めながら、辻斬りは再び居合を放つ。

 血飛沫が舞う中で拳と刃が交錯し、羅刹と剣鬼は暫し闘争に酔いしれる。
「地獄にも、貴様ほど恐ろしい鬼は居なかったぞ」
「それは光栄じゃのぅ」
「器量においては、比べるまでもないか」
「カカッ! 褒められたところで拳しか返せぬのぅ!」
 刀を振るいながら冗談を口にするあたり、辻斬りも相当に興が乗っていると見える。

 だが、あまり長い時間の闘争は、夜の町とはいえど耳目を集めすぎる。
 騒ぎを聞きつけた町人の気配を察すると、辻斬りは沙華から距離を取る。
「今宵はここまでか」
「先の事など考えておって良いのか? 今この一瞬に己の生を賭けてこそ、死合う意味があるのじゃ」
「耳が痛いな」
 苦笑いを浮かべる辻斬りだったが、さりとて死合を続行する気はないようだ。
 目晦ましに刀から斬撃の衝撃波を放つと、次の瞬間には姿を消していた。

「ちと不完全燃焼じゃが……悪いが、後のことは他の猟兵にお任せじゃ」
 喧嘩が終わってしまえば事件の裏になどさらさら興味のない沙華は、血の火照りを覚ますべく、自らも夜の町にふらりと消えていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天堂・理一郎
まったく……正面切ってサシでの斬った貼ったなんてのは柄じゃあないんだけどねぇ。

とは言っても一度受けた仕事だ。僕もたまには頑張ろうじゃないか。

さて、そうと決まればまずは挑発だ

悪鬼羅刹……いや、ここまでくればもう餓鬼か
如何様にして彼岸から迷い出たかは知らないが、狙う獲物があまりにもチンケじゃあないか
まずはこの天堂理一郎がお相手致そう
我が居合、ニノ太刀要ラズご賞味召されい

なんてね。ちょっと仰々しすぎたかな?

アドリブ絡み歓迎



 夜は巡る。そしてまた闘争の刻は訪れる。
「悪鬼羅刹……いや、ここまでくればもう餓鬼か」
 またも姿を現した辻斬りに対して、天堂・理一郎(夢喰み・f05738)は挑発を仕掛ける。
「如何様にして彼岸から迷い出たかは知らないが、狙う獲物があまりにもチンケじゃあないか」
「己ではない。雇い主の趣向だ――などと口にするのも言い訳がましいか」
 苦笑を浮かべ居合いの構えを取る辻斬りに対し、奇しくも理一郎も同じ構えを取り。
「まずはこの天堂理一郎がお相手致そう。我が居合、ニノ太刀要ラズご賞味召されい」
 ――なんてね。ちょっと仰々しすぎたかな?
 心の中で舌を出しながら、皮肉屋な剣豪は一斬一殺の間合いを計る。

(まったく……正面切ってサシでの斬った貼ったなんてのは柄じゃあないんだけどねぇ)
 真っ向からぶつけられる殺気と剣気に心中でぼやきながらも、理一郎は呼吸を整える。
(とは言っても一度受けた仕事だ。僕もたまには頑張ろうじゃないか)
 同じく居合いを得意とする者だからこそ分かる、相手の呼吸、足運び、斬り込むタイミング。
 自然と両者の呼吸は同期し、いつ抜くか、いつ抜かせるかを予測する勝負となる。

 張り詰めた糸のような静寂が続いたのは、何秒か、あるいは何分か。
「!」
 理一郎は見た。刀にかけられた辻斬りの手元が微かに動くのを。
 フェイントか? 確信はない。だがもし振り遅れれば屍を晒すことになるのは必定。
(――一ノ太刀ヲ疑ワズ)
 その一刀に全てを賭ける、二ノ太刀要ラズの心構えを再確認。
 雑念を捨て、全神経を集中させた居合斬りを放つ。

 ――果たしてその結果は。
「御見事」
 紙一重の差で敵の神速を上回った理一郎の一太刀は、辻斬りの刀を見事にへし折っていた。
「己の居合が破られるとはな。貴様にはいずれ礼をしたいが、今宵はここまでらしい」
(いいよいいよ、礼なんて。まったく)
 帰るならさっさと帰ってくれという素振りはおくびにも出さず、理一郎は刀を鞘に納めなおし警戒を緩めない。
「次で最後だ。止めてみるがいい、猟兵」
 そう言い残して、剣鬼は折れた刀を鞘に納めて去っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天秤棒・玄鉄
 死狂いか。
 たく反吐が出らぁな。
 生きて暴れてこそ華ってもんだ。

 一先ず【捨て身の一撃】さながら突っ込んでみるぜ。【第六感】で刀の軌道と奴さんの狙いを探るぜ。何かに気付いたとしても、おれじゃ役者不足かも知れねえが、声張り上げて知らせるくれえは出来んだろ。
 攻撃は【武器で受け】流しつつ、【激痛耐性】で体を盾にして標的を庇ってやらあ。
 何、死なねえなら安い。幸いヤドリガミは、腕ハねられてもその内再生する。
 おれと肉薄するなら、【クイックドロウ】さながら「霖」で不意討ちして挑発してやる。
 背後関係?んなモン今はどうでもいい。この喧嘩に興じるだけだ。
 愉しもうぜ、なあ?

 アドリブ、絡み描写歓迎です。



 剣鬼が「最後」と告げた辻斬り事件。
 その標的となったのはこの藩のトップ――すなわち藩主であった。

「死狂いか。たく反吐が出らぁな。生きて暴れてこそ華ってもんだ」
 殺気に青ざめる藩主と辻斬りの間に立ち塞がる猟兵の名は、天秤棒・玄鉄(喧嘩魂・f13679)。
 自身の本体を模した黒い天秤棒をぶんぶんと振り回し、その先端を突きつける。
「生憎と己は屍人でな。生も華も遠いものよ」
「辛気臭ぇ奴だなぁ! 喧嘩は愉しもうぜ、なあ?」
 その空気ごと纏めてブッ飛ばしてやんよとばかりに突っ込んでいく玄鉄。

「――己は屍人だが、その熱気と闘志は心地良いぞ」
 にぃと笑って、構えを取る辻斬り。玄鉄の喧嘩屋としての直感は即座に敵の狙いを悟る。
「危ねっ!」
 咄嗟に天秤棒で斬撃を受け止める。反応が遅れていれば首を刎ねられていたかもしれない。
 だがその隙を突いて辻斬りは玄鉄の横をすり抜け、標的である藩主へと向かう。
「あ、てめぇっ!」
「この男の首だけは絶対に取れと、五月蝿く言われたものでな」
 猟兵でない一般人の護衛など、男の前に立ちはだかることさえできない。
 瞬く間に距離を詰め、藩主の首をその凶刃にかけようとする辻斬り。

「やらせるかよっ!」
 しかし間一髪、追いついた玄鉄がその身を盾にして藩主をかばう。
 抜き放たれた刃は天秤棒で受け止めても勢いを殺し切れず、その片腕を跳ね飛ばした。
「お、お主、腕が……!」
「何、死なねえなら安い。いいから下がってな!」
 愕然とする藩主に一括すると、玄鉄は残った片腕のみで天秤棒を構え直す。
 ヤドリガミである彼の肉体は、本体が無事であればそのうち再生する。この場を凌ぎ切れれば、だが。

「仕留め損なったか。ならばやはり、貴様の首から順番に貰っていこう」
 片腕を失った玄鉄に、容赦なく辻斬りは刀を振るう。
 だが、その刃が標的を捉える寸前、玄鉄の姿が視界から消え失せる。
「――何?」
 それまでの荒々しい気魄が嘘のような、日照り雨の様な静謐な気配に一時、心を鎮め。
 死角へと回り込んだ玄鉄の天秤棒が辻斬りの背を打った。
「ぐっ……」
「隙だらけだッ!」
 直後、再び闘気を開放した玄鉄は、嵐の如き疾風怒濤の追撃を放つ。
「猪突猛進かと思えば、このような技も持っていたとはな……!」
 予想外の攻撃に不覚を取った辻斬りは、たまらず防御を固めながら後退する。

「殿、ご無事ですか!」
「おお、お前たち……!」
 そこに、藩主の危機に駆けつけた城の武士たちが現れ、藩主を城内に逃がしていく。
「――仕損じたか」
 藩主抹殺の失敗を悟り、辻斬りは刀を納める。
「これで、己の仕事はすべて失敗したわけだ。見事なものだな、猟兵よ」
 そう語る表情はむしろ清々しい。まるで煩わしい重荷をすべて捨て去ったかのように。
「今宵は去るが、次に会い見えることがあれば、その時こそ心行くまで死合おうぞ」
「死合じゃなくて喧嘩が好きなんだがなぁ、おれは」
 ケッ、と吐き捨てる玄鉄に、辻斬りは笑みを深め、さらば、と。
 ――かくして、城下町を騒がせた辻斬り騒動は、この一件を最後に途絶えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『おぬしも悪よのう』

POW   :    武力や気力で脅しをかける

SPD   :    悪事の証拠を突きつける

WIZ   :    問答したり説教したりする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンの辻斬りから無事、藩の要人たちを守り抜いた猟兵たち。
 しかし、まだ戦いは終わりではない。そもそも辻斬りは何故、藩主たちを襲ったのか?

 藩の全面協力のもと調査が行われた結果、辻斬りの背後にあったものは明らかになった。
「此度の騒動、裏で手を引いていたのは"白鷺屋"という商家の主であった」
 そう語るのは猟兵らに命を救われた藩主である。
 白鷺屋は表向きは真っ当な商家として名を馳せてはいるが、裏ではあくどい商売に手を染め、藩内の一部の家臣とも癒着している。
「辻斬りに私や藩の重鎮たちを殺させ、開いた席に自らの息のかかった人間を据える。そうして裏から藩の政治を操ることが、白鷺屋の主の狙いだったようだ」
 蓋を開けてみれば実に俗な計画である。だが猟兵の介入がなければその承認の野望は実現していた以上、笑い話にはできない。
 藩の調査によると白鷺屋の主はオブリビオンではないらしい。ただの人間にどのような経緯でオブリビオンが従っていたのかは謎だが……。

「ともかく調査の結果、白鷺屋を追求できるだけの証拠は揃った。しかしこれを突き付けても、彼奴めには用心棒がいる」
 白鷺屋の用心棒――すなわち、あの辻斬りである。
「言い逃れできぬよう追い詰めても、彼奴めが開き直って『先生、お願いします』とばかりにあの怪物をけしかければ、我らに対抗する術はない。そこでどうか貴殿らに白鷺屋に向かって、彼奴をひっ捕らえて貰いたい」
 あの辻斬りを幾度と退けた猟兵たちならば、何が起こっても対処できるはずだ、と。

 かくして猟兵たちは辻斬り事件の証拠を携えて、白鷺屋の屋敷へと向かうのだった。
御剣・刀也
POW行動

何処にでもいる小悪党だな
こんな奴に何であいつが付き従ってるのか
考えてもわからんが、何かしら思いついたと言っていたのも気になる
証拠はそろってるようだし、俺は強硬手段に出て来た時に備えようか


腕を組んで仁王立ちで白鷺屋の入り口に立つ
眼光鋭く睨みを利かせて証拠の隠滅に動こうとしたり、どこかに行こうとするそぶりを見せたら
「動くな。命が惜しいならな」
と脅しをかける
刀は抜かないが殺気と気迫で白鷺屋の主人にプレッシャーをかける
「悪党には悪党の矜持があるはずだ。お前も悪党の一人なら露見した以上潔くしたらどうだ?下手なあがきは見苦しいぞ」


セリオン・アーヴニル
漸く理解出来た。
コイツは結局、何も分かってないのか。
『事が済めば用済みだ』と言う事を。

問答や論破は他の猟兵に任せ、脅しも兼て…になるが、
俺自身が感じた剣鬼《ヤツ》の本質、その一部分でも語ってやろう。
どんな経緯で奴と共謀したか、そんなものは知った事ではないがな。
「助けを呼ぶならそうしろ。その時は遠慮なくお前を盾にする」
そして一呼吸を置き、囁く様に告げてやる。
「奴は間違いなく、自分の目的の『邪魔』は文字通り『斬り捨てる』ぞ?さて、その場合の邪魔は…一体何だろうな?最も、それを理解した時、お前は死んでいるだろうが」
心を砕ければ良し。
助けを求められたら応じよう。
だが、あくまで抵抗するなら…棄て置こう。


ボドラーク・カラフィアトヴァ
しかし、そうなるとひとつ不可解なのは、彼ほどの手合が、かような俗物に仕えている理由です。

故に、この商人をひとつ、揺さぶってみる訳ですが。
【恫喝】、【殺気】、【恐怖を与える】……なあに、こんな小物、直ぐに折れましょうて。

さてさて、追い詰められた彼奴は、彼を呼び出すのでしょうか。
さすればそれ即ち重畳。あの夜の続きが出来ます。

わたしは彼とこそ、話がしたい。
何ゆえに、このような者と手を組んだのか。
指図されて狩る獲物も――そう。狩りであり、標的は只の獲物。あなたの敵では無いでしょうに?

或いは。目立てば、我々が現れると?
ははぁ。――なかなかいい趣味をお持ちで。
ああ、もう一度。剣戟を交えては頂けませんか?


天堂・理一郎
ははあ、白鷺屋ねぇ
わかりやすい黒幕だこと
とりあえずそうだね、話を聞かせて貰おうじゃないか

藩の皆さんが必死こいて集めてくれた証拠もあるし、それを使わせてもらおうかな
脅しとか説教とかそういうのは疲れるしね

ああ、まず1番初めに浄玻璃鏡を使って白鷺屋さんにルールを宣告しておこうか
【例の用心棒を僕らにけしかけない事】
これで絶対安全、とまでは言えないけどある程度の抑止にはなるだろう

さて、ネタは上がってるってやつだ。言い逃れもできないし、正直に白状しちゃった方が身のためだと思うぜ、白鷺屋さん?

あとはそうだね、どうやってオブリビオンを操ってたのか教えてくれると色々と楽に済むんだけどね。


伊能・為虎
問答主体のWIZ判定+証拠をつきつける、感じでいこうかなっ
連携や絡み描写歓迎!協力しちゃおう

【追跡する狗霊】

まず確認、辻斬りさん(一応用心棒って事になっている人)は今鞘を持っているかな?
抜身の刀だけ持っていても目立ちそうだし、
鞘を新しく替えたとしても、刀との違いや、鞘の傷……何かしら変に見えるかも
わんちゃん、その人の様子見てきてねっ
教えてもらえたら、それを基に考えを組み立てよう

辻斬りと交戦した際、盗った鞘を持って行く
これ、ここの用心棒さんのだよね?『拾った』から持ってきたんだ(……なーんてね)
でも、刀を抜かないと鞘だけにならないよね?誰かに刀を抜くご用事があったのかな?何か聞いてない?


空廼・柩
本当に悪代官と商家の繋がりってあったんだ
金色の菓子の取引とかあるのかな
っと、今はそれどころじゃないか
こんな血腥い事件、今日中に解決してしまおう

辻斬り事件の証拠を白鷺屋に突きつける
あんたの悪事なんて疾うに重鎮達にばれてる
…まあ、そんな事どうでも良いか
辻斬りに殺してもらえばそれで終りだからね
とはいえ彼等は殺されない
俺達が殺させないから
――なんなら此処で辻斬りを呼んでも構わないよ?
あんたがあの辻斬りを呼んだならば、寧ろ好都合

辻斬りがいつ現れても良いよう常に警戒は怠らず
聞き耳で足音等に注意
万一辻斬りが白鷺屋を攻撃しようとしたら
棺型拷問具で庇うか【咎力封じ】で動きを拘束
彼には生きて罪を償わせるべきだから



「ようこそお出でくださりました。して、本日は我が白鷺屋に何用で?」
 白鷺屋を訪れた猟兵たちを、店主はまるで疚しい事など無いといった態度で出迎えた。
 藩からの遣いという触れ込みでやってきた猟兵たちに薄ら笑いでへりくだってはいるが、目はまったく笑っていない。
 適当に誤魔化して早々にお帰り願おうという魂胆が透けて見えていた。

「藩からの頼みとあらば何だってご協力いたしますよ。ええ、常々お世話になっている方々ですからねぇ」
 揉み手で胡麻をする白鷺屋に対し、最初の釘を刺したのは理一郎。
「なら、まず初めにルールを宣告しておこうか」
 呼び出した浄玻璃鏡に男の姿を映しながら、違反すればダメージを負う決まりを告げる。
「【例の用心棒を僕らにけしかけない事】」
「なっ、何のことですかな?」
 ギクリ、と目に見えて白鷺屋が動揺を見せる。
 この場に例の辻斬りの姿は見えない。白鷺屋からすれば自分の犯行の動かぬ証拠なのだから、そうそう人前に出させないのは当然だろう。
 それでも、何かあれば直ぐに呼び出せる場所には控えさせているはずだ。その魂胆を見抜かれたがゆえの動揺。
「分からないって言うならそれでもいいさ。とりあえずそうだね、話を聞かせて貰おうじゃないか」
 だけど、と理一郎は続ける。
「ネタは上がってるってやつだ。言い逃れもできないし、正直に白状しちゃった方が身のためだと思うぜ、白鷺屋さん?」
 藩の者たちがかき集めた動かぬ悪事の証拠。それを手に猟兵たちは白鷺屋の追及を始める。

「――ですから、うちも辻斬り騒動には困っているのですよ。あんな騒ぎが長続きすれば客足も遠のいて、商売上がったりでして」
 辻斬り事件への関与の疑いに対し、白鷺屋はさすがに商人らしく、ぺらぺらと淀みのない調子で弁解を述べたてる。
「そもそも藩主様や藩のお歴々を殺めて何の得が? うちはしがない商家でございますよ?」
「とぼけても無駄だよ。あんたの悪事と魂胆なんて疾うに重鎮達にばれてる」
 そう告げたのは柩。同時に一枚の証拠を白鷺屋の目の前に突きつける。
 そこには白鷺屋と裏で繋がりのあった藩の役人の名簿と、彼らに自白させた供述が記されている。
 藩のポストに空きができれば、白鷺屋がカネと根回しで彼らの重役就任を後押しする。その見返りとして彼らは白鷺屋に今後より一層の便宜を図る――藩政を裏から操り旨い汁を吸う、白鷺屋の計画も、はっきりと。
(本当に悪代官と商家の繋がりってあったんだ。金色の菓子の取引とかあるのかな)
 まるで時代劇で聞くような話だと、柩はふと思う。
 しかしすぐに気持ちを切り替えると、油断なく周囲を警戒し聞き耳を立てる。いつあの辻斬りが姿を現しても、即座に対応できるように。
(こんな血腥い事件、今日中に解決してしまおう)
 長く続いた辻斬り事件に、今日こそ本当の意味での終止符を打つのだ。

「なッ、何の事やら分かりませんなッ? まったくそんな、荒唐無稽な……」
「へーえ、じゃあ、これを見て貰っていいかな?」
 狼狽する白鷺屋に、為虎が見せ付けたのは一振りの鞘――辻斬りとの交戦時、彼が奪い取ったものだ。
「これ、ここの用心棒さんのだよね? 『拾った』から持ってきたんだ」
「そ、それはッ……?!」
 見るからに狼狽の度合いを増す白鷺屋。それで為虎は自分の考えが正しかったことを知る。
 為虎に鞘を奪われた次の夜も、現れた辻斬りはきちんと鞘付きの刀を携えていた。別の猟兵に刀を折られた時も、その次には新しい刀を持って現れている。
 誰かが辻斬りが刀を紛失・破損するたびに新しい武器を渡していたのだとすれば、そんな者のは背後の黒幕以外にありえない。
 為虎自身も追跡する狗霊を駆使して裏を取った。この鞘と同じ拵えをした刀が、過去に白鷺屋で取引されていることを。
「刀を抜かないと鞘だけにならないよね? 誰かに刀を抜くご用事があったのかな? 何か聞いてない?」
「ぐ、ぐぬぬっ……」
 にっこりと笑いながら問い詰める為虎。物証を提示された白鷺屋の顔色が青ざめてくる。

「し、知りませぬ。とにかく私は知りませぬ!」
 もはや言い訳のタネも尽きたか、弁解にもなっていない言葉を白鷺屋を繰り返す。
「そ、そうだ。まだ野暮用が残っていたのでした。申し訳ありませんが私はこれで、まだ話を聞きたければ他の者に――」
「動くな。命が惜しいならな」
 額の汗を拭いながら席を立とうとした男を、入り口を塞ぐように立っていた刀也が制する。
 刀は抜いていない。だがその殺気と気迫は、向けられた相手からすれば抜き身の刃を喉に突きつけられたに等しい。
 逃げ出す気か、それとも証拠の隠滅に動く気か。どちらにしてもさせはしないと、その鋭い眼光が語っている。
「悪党には悪党の矜持があるはずだ。お前も悪党の一人なら露見した以上潔くしたらどうだ? 下手なあがきは見苦しいぞ」
「し、知らんと言ってるでしょう! 私は潔白だ! その証拠もすべて捏造に違いない!」
 ――まさに、見苦しいあがきであった。
 ここに来ても罪を認めようとしない男に、刀也は心の中で嘆息する。
(何処にでもいる小悪党だな。こんな奴に何であいつが付き従ってるのか)
 考えても分からないが、捨て置くわけにもいかない。あの時、あいつは何を「思いついた」のか。

「み、皆さんも今日はそろそろ帰られた方がよろしいのでは? じきに日も暮れる。それこそ、辻斬りの被害にあってしまわれるかもしれませんしなぁ?」
 ここに来て白鷺屋が切ってきたカードは、露骨な脅迫。
 そう――自分にはオブリビオンの力があるのだから。いかに追い詰められようとも、この切り札で覆せる。そう思っているのだろう。
 だが、こと猟兵がそのような脅しに動じるはずもない。
「助けを呼ぶならそうしろ。その時は遠慮なくお前を盾にする」
「な……ッ?!」
 素っ気無く非情なセリオンの返答に、白鷺屋が凍りつく。
 それから一呼吸を置いて、囁く様に彼は告げる。彼自身がその目で感じた剣鬼の本質、その一部分を。
「奴は間違いなく、自分の目的の『邪魔』は文字通り『斬り捨てる』ぞ? さて、その場合の邪魔は…一体何だろうな? 最も、それを理解した時、お前は死んでいるだろうが」
「ば、馬鹿な……奴が私を斬り捨てる? ありえん……これだけ便宜を図ってやった私を裏切るなど……」
 動揺のあまり、心の声が漏れ出している。それを聞いたセリオンはようやく理解した。
 この男が結局、自分が従えている――従えていると「思っている」オブリビオンの本質を、何も分かっていないことを。
 ただの人間がオブリビオンを、あの辻斬りをいつまでも御しきれるわけがない。「事が済めば用済みだ」という事さえこの男は理解していなかった。
(コイツがどんな経緯で奴と共謀したか、そんなものは知った事ではないが)
 これで心を砕ければ良し。助けを求められたら応じよう。
 だが、あくまで抵抗するなら……鬼を飼いならせたと信じ込む愚者にこれ以上骨を折ってやるつもりは、セリオンには無かった。

(まったく不可解ですね。彼ほどの手合いが、かような俗物に仕えているとは)
 微笑の瞼の裏から様子を眺めていたボドラークは、疑問を抱きつつもすでに目の前の小物から興味を失っていた。
 もう一息に心を折ってしまおうと、刀に手をかけすっと前に出る。
「どうしても白を切り通すと言うなら――こちらも力尽くで話してもらうまでですが」
「ひっ!!」
 白鷺屋の前に置かれていた茶の湯飲みが、スパッと真っ二つに切断される。
 ただの商人であり一般人である彼には、ボドラークが刀を抜いた瞬間さえ見えなかっただろう。
 だが彼女が放つ、真冬の夜風よりも冷たい殺気は、男を心胆寒からしめるには十分すぎた。
「わ……わたしは……」
 恐怖のあまり、満足に声も出せない白鷺屋。
 ――その時、猟兵たちは座敷の奥から近付く足音を聞いた。

「そろそろ限界だろう。ここが往生の際というやつだ、白鷺屋の」
「せ、先生……!!」
 姿を現したそれは見紛うはずもない、あの辻斬りの男。
 咄嗟に棺型の拷問具を盾のように構えた柩に対し、意図を察した男は笑み。
「心配せずとも、斬りはせん。白鷺屋のには世話になったからな」
 それに、今は先に斬りたい者達がいる……と、男は刀に手を当てる。
 直後、嵐のように吹き荒れる殺気。一応は味方のはずの白鷺屋が卒倒するほどの。
「……どうやってこんなオブリビオンを操ってたのか、教えてくれると色々と楽に済んだんだけどね」
「わたしからも、お聞きしたい。何ゆえに、このような者と手を組んだのか」
「操られていた訳ではない。この時代に黄泉還り、退屈していた自分に、偶然出会ったこの男が申し出てきたのだ……己に斬る甲斐のある相手を用意する、だから力を貸せとな」
 理一郎とボドラークの問いに、剣鬼が答える。
「別に期待していた訳ではなかった。藩主だ何だと言っても、特別腕が立つようには見えなかったからな。心底退屈していたので物の試しに乗った、それだけだった」
 もしも盟約を違えるような相手しかいなければ、その時は白鷺屋も斬り捨てて次を探すだけ。その筈だった。
 だが、結果として盟約は果たされたのだ。白鷺屋も剣鬼も予期しなかった介入――猟兵の出現によって。
「噂には聞いていたが、期待以上だ。猟兵か、なるほど貴様らは黄泉還りと成った俺を狩るに足る力を持つ」
 死合うに相応しい相手だと、もはや高揚と狂気を隠そうともせずに剣鬼は笑みを深め。
 それに釣られるようにして瞼を開いたのはボドラーク。
「ああ、もう一度。剣戟を交えては頂けませんか?」
「無論、そのつもりで待っていた。貴様らならここに辿り着くと信じてな」
 この場に集った猟兵たちを前に、剣鬼は宣言する。
「己の思いつき通りの景色がここにある。いずれ劣らぬ猛者どもが幾人も――そうだ。これこそが己の求めた戦場よ!!!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『用心棒』

POW   :    剛なる居合い
【居合い 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    飛刃縮地の構え
自身に【修羅の気 】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    死者の誘い
【用心棒が殺した死者 】の霊を召喚する。これは【悲痛な叫び声】や【生前持っていた武器になりそうな物】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 白鷺屋を追い詰めた猟兵たちの前に、再び姿を現した辻斬りの用心棒――否、そこに居るのはただの剣鬼。
「貴様らのような敵手と巡り合わせてくれた白鷺屋には感謝のしようもない。故にこれまではこの男との義理を優先してきた」
 だがそれももはや終わり、と。義理を果たし終えた剣鬼に浮かぶのは喜悦の笑み。
「ああ、これでようやく、己は――義理も正気も拭い去って、ただの死狂いに戻ることが出来る――!!」
 溢れ出す剣気と殺気。過去に一度でも彼と対峙した猟兵は、以前とは比較にもならぬ脅威を理解する。
 これが、剣鬼の本性なのだ。これまでの彼は、言わば鎖に繋がれた餓狼だった。
「貴様らは閻魔の使いか御仏の使者か。何だって構わん。さあ己と死合え、剣鬼に相応しい地獄と戦場を寄越せ。酬いはこの首と命のみ、どうせ安物だ、遠慮はいらんぞ――!!!!」
天堂・理一郎
報酬は首と命のみ、ね。
こいつは参った。どう考えても割に合わない。
黒幕も特定した事だし、後は他の皆さんに任せてトンズラこきたいところだが……まあ、乗りかかった船ってやつか。
お望み通り彼岸に送り返してあげよう。

一度はこちらが勝ったが、二度目はどうかな?
我が二ノ太刀要ラズ、もう一度受けてみるかい?
居合の勝負ってやつさ。

とは言っても一太刀で屠れる保証もなし、一つで仕留められなければ二ノ太刀を見舞うまで。
二ノ太刀は要らないと言ったが、すまない。ありゃ嘘さ。


天秤棒・玄鉄
 命の安売りは好かねえな。
 どうせなら吹っ掛けて欲しいもんだ。安い喧嘩は興が乗らねえだろよ

 斬った腕を喧嘩棒術、熾で再生しながら強化。斬撃は【第六感】と【見切り】で【武器受け】流しつつ、【激痛耐性】の多少の傷も【覚悟】の上、厭わず【捨て身の一撃】。手裏剣【投擲】、接近しての【グラップル】も織り混ぜる。
 生憎、腕が劣る相手に行儀よく戦う趣味は無えんでな。
 小細工も労していく。
 他の連中の邪魔にならねえよう動く。他の猟兵に意識が向けば忍び足からの不意討ちでも仕掛けてやる。
 多対一だからって疎かにされちゃあ寂しいだろうが。

アドリブ、絡み描写歓迎です。



「報酬は首と命のみ、ね。こいつは参った。どう考えても割に合わない」
「命の安売りは好かねえな。どうせなら吹っ掛けて欲しいもんだ。安い喧嘩は興が乗らねえだろよ」
 剣鬼の宣言に対し、皮肉げに呟く理一郎と、不満げに言う玄鉄。
 ただこの死合いを愉しむため、己の命さえ端から捨てるつもりで挑む剣鬼に対し、感じるところは違えど、思うところは同じ。
「生憎と己は、貴様らのような気高い使命も、未来の希望も持ち合わせてはおらぬ。死人はただ、己の全てを賭けるのみよ!!」
 吼える剣鬼が修羅の気を纏う。初手よりの全力。一切の容赦はなし。
 対峙する猟兵たちはそれぞれの得物を構え、悪鬼が望んだ地獄の戦場に足を踏み入れる。

「黒幕も特定した事だし、後は他の皆さんに任せてトンズラこきたいところだが……」
 冗談交じりに呟く理一郎の首元を、居合いの斬撃が襲う。愛想のないことを言ってくれるな、とばかりに。
「まあ、乗りかかった船ってやつか。お望み通り彼岸に送り返してあげよう」
「そうこなくてはな!」
 矢継ぎ早に放たれる斬撃の連鎖。その居合いの速度は以前よりも格段に速い。
 一度見た技でなければ即座に首を落とされていたかもしれない――だが一度は見た、そして一度は破った技だ。
 まさに紙一重、文字通り首の皮一枚で、理一郎は剣鬼の斬撃を凌ぎ続ける。

「これでも首を落とせぬか――面白い!!」
 修羅の笑みを口元に貼り付けた剣鬼が、さらに斬撃の速度を上げようとした瞬間、横合いから放たれた手裏剣が彼の腕に突き刺さる。
「むッ!」
「多対一だからって疎かにされちゃあ寂しいだろうが」
 理一郎が剣鬼の注意を引いている隙に、その死角へと忍び寄っていた玄鉄が放った一投。
 玄鉄はそのまま天秤棒を握り締めて打ち掛かる。喧嘩棒術、熾――辻斬りに斬り落とされた片腕の傷口から自らの喧嘩魂を炎と迸らせ、腕を再生させるばかりか余剰の炎を天秤棒に纏わせ強化しながら。
「喧嘩師か。次は腕ではなく、首を貰うぞ」
「やれるもんならやってみな。こっからが喧嘩の華だぜ!」
 放たれた居合いの斬撃を、玄鉄は強化した天秤棒で受け流し。剣鬼が抜いた刀を鞘に納め、次の斬撃を放つまでの一瞬の間に、捨て身の覚悟で打ち掛かる。
「オラァッ!」
「ぐ……っ!」
 燃える天秤棒が肩にめりこみ、剣鬼から苦悶の声が漏れる。僅かに手元が狂った状態で放たれた斬撃は、玄鉄の首ではなくその胸板を切り裂くに留まる。
 上がる血飛沫。だが玄鉄はその苦痛を覚悟で耐えると、天秤棒を手放し組み合いの距離での勝負を仕掛ける。
「手裏剣、棒術、お次は体術か……!」
「生憎、腕が劣る相手に行儀よく戦う趣味は無えんでな」
 武術の技量では玄鉄は剣鬼に劣る。だが純粋な体格と筋力であれば負けはしない。至近距離での肉弾戦は、まさに"それ"が物を言う世界。
 喧嘩商売で鍛えた拳を剣鬼の顔面に叩き込む。それで相手が怯めば、丸太のような両腕で捕まえて。
「そぉらよっ!!」
 投げ飛ばし、叩き付ける。白鷺屋の壁をぶち抜いていった剣鬼の体は、そのまま道端をごろごろと転がった。

「ハハ……喧嘩というのも馬鹿にできんなァ……!」
 投げ飛ばされた剣鬼が即座に立ち上がると、その目の前に待ち受けていたのは理一郎。
 その刀はすでに鞘の内。それが彼の必殺の構えであることは、剣鬼も知っている。
「一度はこちらが勝ったが、二度目はどうかな?」
 剣鬼がなんと答えるか承知した上で、理一郎は挑発を仕掛ける。
「我が二ノ太刀要ラズ、もう一度受けてみるかい? 居合の勝負ってやつさ」
「望むまでもない――!!!」
 己の矜持に賭けて、今度こそは打ち破ってみせると、剣鬼は気合を漲らせ構えを取る。
 あの夜の再現が始まる。一触即発の空気の中、半歩にも満たぬ間合いをじりじりと計りあう両者。
 だが、此度の睨み合いの結末は前回とは違った。相手の動性から、先に"機"を見出したのは剣鬼。
(殺ったぞ……ッ!)
 刹那にも満たぬ隙を突いて、必殺の斬撃が放たれる――まさにその寸前。それに「待った」をかける者がいた。
「させるかよ!」
 背後からの怒号と風切り音。反射的に剣鬼がのけぞった直後、玄鉄が投擲した天秤棒が呻りを上げて通り過ぎていった。
「貴様……ッ!」
「言っただろ。腕が劣る相手に行儀よく戦う趣味は無えってな」
 にやりと笑う玄鉄に、剣鬼が気を逸らした一瞬。
「実は僕も、正々堂々なんて柄じゃあないんだよねぇ」
 皮肉げな笑みを深めた理一郎の居合いが、剣鬼に襲い掛かる。
「ッ……!!」
 修羅の気を纏う剣鬼は、その超人的な速度を以って斬撃を避ける。理一郎の一ノ太刀が切り裂いたのは剣鬼の着物と薄皮一枚のみ。
 凌いだ、そう思った剣鬼が反撃の構えを取ろうとした時――。
「ああ、そういえば一つ訂正しないといけないんだった」
 渾身の「筈」の一ノ太刀を放った理一郎は、そのまま淀みなく刀と言動を翻し。
「二ノ太刀は要らないと言ったが、すまない。ありゃ嘘さ」
 一ノ太刀が必殺であるならば、二ノ太刀は――死。
 その斬撃は今度こそ、剣鬼の肉体を深々と斬り裂いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御剣・刀也
俺は死に損なった戦馬鹿。お前は死んでも戦から離れられない戦馬鹿
俺とお前は同じ修羅なのかもしれん。が、少なくとも俺は殺人者であっても殺人鬼じゃない。お前の様に、空気を吸うように人は斬れん
人を斬る事、命を奪う事、それがどれ程重い意味を持っているか、思い出させてやる

居合は間合いに入らないよう気を付け、間合いに入ったら第六感を信じて受け止める。空振りさせたら鞘に戻す隙に斬りかかる
飛刃縮地は間合いを離されないよう先読みして動く。衝撃波はサムライブレイドで弾くか避ける
死者の誘いは邪魔にならない限り無視。邪魔になるなら斬り捨てる
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れんぞ。掛かって来い。命の限り相手してやる!」



「俺は死に損なった戦馬鹿。お前は死んでも戦から離れられない戦馬鹿」
 血飛沫を上げる剣鬼に、ゆらりと刀を構え間合いを詰めるのは刀也。
「俺とお前は同じ修羅なのかもしれん。が、少なくとも俺は殺人者であっても殺人鬼じゃない。お前の様に、空気を吸うように人は斬れん」
「――では、如何とする? 己と同じ貴様が、己と異なる道を往くというなら」
 構えを崩さぬまま、剣鬼の眼差しが刀也を射抜く。常人であればゆうに致命傷であろう傷を負っても、その程度で死狂いは止まりはしない。
 悪鬼の笑みを浮かべ煮え滾るような殺気を放つる男に、刀也はあくまでも静かな剣気と闘志のまま。
「人を斬る事、命を奪う事、それがどれ程重い意味を持っているか、思い出させてやる」
「やってみせるがいい!!」
 放たれる斬撃の衝撃波。これ以上の問答は不要。あとは刃で語れば事足りる。

 衝撃波を愛刀「獅子吼」で切り払いながら、自身の間合いへと踏み込む刀也。
 すかさず振り下ろされた刃を、剣鬼は縮地の速度で避ける。その動きを先読みし、間合いを離されぬよう追随する刀也。
「戦場では俺は死人。死人は死を恐れんぞ。掛かって来い。命の限り相手してやる!」
「笑止。生者に死人の真似事ができるものではないぞ!」
 死狂いは嗤い、鞘の内より居合いを放つ。この距離は既に互いの間合いの内、一太刀一太刀が必殺となり得る距離。
 理詰めで避けきれるものではない。刀也が頼ったのは己の第六感。五感よりも早く敵の攻撃の起こりを察知した体が、反射的に斬撃を回避する。

 居合使いにとっての最大の隙――それは必殺の一刀を回避された直後、刀を鞘に戻すまでの時間。
 無論、剣鬼ほどの達人にとってその隙は一瞬のものだ。しかし刀也にとっては十分すぎる時間。
 極限の集中状態の中で刀也の思考は加速し、一瞬の時は数十秒に引き伸ばされる。
 何処を狙う? 首か? 心臓か? 否――。
「貰うぞ」
 短く告げて、刀也が放つは雲耀の太刀。その切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん――即ち、乾坤一擲の覚悟を込めて。
 雷光が閃くよりも速く、振るわれた刃は狙い過たず剣鬼の肉を裂き、骨を断つ。

「お、おぉぉぉぉぉ……ッ!!!!!!!!」
 一瞬遅れて、剣鬼の喉から漏れ出したのは慟哭にも似た絶叫。
 男が断たれたのは――右腕。修羅と成り果ててより刀を握り続けてきた片腕が、肩口からばっさりと断ち斬られ、地面に転がっていた。
 刀也は言った、思い出させてやると。人を斬る事、命を奪う事の意味を。
「お前にとっては首よりも命よりも重いだろう。人を斬り続け、命を奪い続けてきた、その腕は」
 お前が奪ってきた命の重さはそれ以上なのだと、刀也は獅子吼に付いた血を払いながら冷徹に告げる。

「ク……ハハハ、成る程、少しだけ理解できた……これが己の、罪の重さか」
 喪って初めて気付くとはこういう事かと、隻腕となった剣鬼は清々しいまでの笑みを浮かべ。
「だが、それを知った所で何になる。剣鬼に後悔も引き返す道も不要、地獄の底まで突き進むのみよ!!」
 瞬時に鞘の位置を反対側に変え、残った左腕のみで居合の構えを取る。
 罪を識り、片腕を失ってもなお、剣鬼は止まらない。

成功 🔵​🔵​🔴​

傀童・沙華
不完全燃焼じゃったから気にかけておいたが……。
カカッ!
これは愉快じゃ。
愉快すぎて、怒りでこの身が張り裂けそうじゃ。

ゆっくりと歩みを進め、無言で天蓋抂乱を発動じゃ
口上を述べる気にもなれん

……おい。
お前さん、今、『鬼』を名乗ったな?

命のやりとりである死合いの場で。
一度でも義理や正気なんぞの、下らん鎖に繋がれた身を晒した俗物風情が。
『鬼』を名乗るか。
『鬼』をなめるなよ。この下郎が。

技能の『怪力』と『殺気』を最大限利用して殴り合うぞ

その剣気と殺気、枷は確かに外れたであろうな
じゃがの
一度でも俗物なんぞに飼われて鈍った死に損ねているだけの骸にくれてやるほど、この首、安くはないぞ



「嗚呼、愉しい、愉しいな。これぞまさに、己の求めた地獄の戦場よ!」
 片腕を失い、全身を鮮血に染めながら、尚も剣気と殺気を撒き散らし男は嗤う。
 その姿はまさしく「悪鬼」――だが、ここにただ一人「それ」を認めぬ者がいる。

「カカッ! ああ、これは愉快じゃ」
 鬼哭童子・沙華が嗤う。その内より迸る激情のままに。
「愉快すぎて、怒りでこの身が張り裂けそうじゃ」
 喜びよりも熱く、激しく、重い感情を乗せて、ゆっくりと男に向けて歩みを進める。
 そして天蓋抂乱を発動。今はとても口上を述べるような気分ではない。
 あの男は、彼女の誇りに障ったのだから。

「……おい。お前さん、今、『鬼』を名乗ったな?」

 無造作に。技も術もない、ただ純粋な腕力のみで、沙華は男に殴り掛かった。
 男はそれを鞘に納めたままの刀で受ける――いや、受けようとした。
「ぬぅ、ッ?!」
 竜巻と正面衝突したような衝撃に、男の体が吹き飛ばされる。
 小柄な娘の姿からは想像もできぬ膂力。否、今の彼女を果たしてそう呼んでいいものか。
 そこに立っていたのは、嵐のような殺気と凶気を放つ、一匹の「鬼」であった。

「命のやりとりである死合いの場で、一度でも義理や正気なんぞの、下らん鎖に繋がれた身を晒した俗物風情が『鬼』を名乗るか」
 怒りのままに鬼は拳を振るう。
 乱暴に。乱雑に。豪快に。暴虐に。真の「鬼」とは如何様に振舞うものか、その全身全霊を以って体現する。
「『鬼』をなめるなよ。この下郎が」
 これぞまさしく怪力乱神。理屈を超えた圧倒的で理不尽な暴力の権化がそこに在った。

「――嗚呼、成程。これが本物の『鬼』か」
 戦慄と歓喜がない交ぜになった笑みを張り付かせながら、暴力の嵐に曝される男は答える。
「確かに貴様が相手では、己程度が剣の鬼など片腹痛い。せいぜい『人でなし』を名乗るのが関の山か」
 現し世の義理もしがらみも気にせず、只管に己の衝動をぶつけてくる沙華の姿に、男は何を思ったか。
「その純粋さ、その危うさ。己には辿り着けなかった境地だ――何だろうな、この湧き上がる熱は」
 振り下ろされる拳を避ける男。次の打撃が飛んでくる一瞬の間に、左腕のみで構えを取り。
「己も常に、貴様のように在りたかった。そうか――これが嫉妬というものか!!!」
 放たれる剛なる居合い。逆腕で繰り出されたものであっても、その太刀筋は健在。
 殺気を乗せて鋭さを増した刃は神速の域に達し、真っ直ぐに沙華の首を狙う。

 一瞬、それを見た誰もが、沙華の首が落ちるところを幻視した。
 だが、男の感じた手応えは、首の肉と骨を断つそれではなかった。
「なんと……!!」
 思わず漏れる感嘆の声。彼の刀は受け止められていた――刃に噛み付いた沙華の牙によって。
(その剣気と殺気、枷は確かに外れたであろうな――じゃがの)
 沙華はニィ、と笑みを浮かべながら捕らえた刃を噛み砕き、その際に切れた口の中の血をぺっ、と吐き捨てて。
「一度でも俗物なんぞに飼われて鈍った死に損ねているだけの骸にくれてやるほど、この首、安くはないぞ」
 その拳を、相手の胸のど真ん中に叩き付ける。
 肉と骨が潰れ砕ける鈍い音が響き、男の身体が宙を舞った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ボドラーク・カラフィアトヴァ
よもや。
よもや、これほどとは。
あの夜も、私の『無銘』を欠けさせたほどだと言うのに。
それさえも、まだ貴方の全力では無かったのですね。ふふ……恐ろしいお方です。

“零式”――は、やめておきましょう。もう一度受けてくださるほど、甘くはないでしょう?
もし、再び打合う事となれば。次は我が剣では済まず、この首さえもへし折られるやもしれません。

故に打ち合いは避け、まずは回避に専念しましょう。
【残像】、【見切り】、【第六感】。
使える技は、何でも。さもなくば、死ぬのはきっと、わたしですので。

そうして、万が一にも、彼に一寸もの隙が出来たなら。
“疾風”。この一突きで。
ええ、涅槃へと、一足お先にお帰り願いましょうか。


セリオン・アーヴニル
全てを捨ててでも己の意思に従うその様は、少し焦がれる。
だからこそ、ここを奴の終着点にしなければならない。

前回(1章)の情報を元に基本的な動きを予測し戦う。
速度と予想外の動きには『第六感・残像・見切り』を活用し不足分を補い対処。
使う得物は槍剣のみ。せめてもの礼儀に剣士として相対しよう。

ある程度経過した段階で攻撃強化重視の【無窮流転】を発動。
『アイツ』がどうしてもお前との斬り合いをしたいと言うのでな。
人格を『グロウ』に替え、同時に髪を赤く変化させる。
「さあ、文字通り最後の『一閃』と行こうか!」
相手の一撃に、覚悟を決めた最大の一撃で応えよう。
「来世で会えたら、また斬り結ぼうぜ。今度は『人』としてな」


空廼・柩
黄泉から還っても戦いたいだなんて相当の死狂いだね
全く、なんて殺気だよ
肌にびりびり来て仕方が無い
――けれど、己を奮い立たせるにも充分

眼鏡を外し、拷問具を手に【咎力封じ】を使用
あの剣客は只でさえ手練なんだ
ならば少しでもその動きを鈍らせよう
彼は卑怯と憤るかも知れないけれど、生憎俺は『処刑人』だ
――処刑の方法に手段は選びはしない
威力を少しでも削ぐ事叶えば、俺の速さでも拷問具で攻撃を受けきれる筈
体力の危ない猟兵が居たりしたら積極的に庇いにいこう
互いに支援を欠かさず、隙を補い合う
数が多いからこその戦い方が俺達には出来るのだから

さて、終らせたら後はこの世界に住む人達の仕事だ
…疲れたし、甘味でも食べて帰りたい


伊能・為虎
ヒマそうな前とは全然違う!
今度はもう、いろんな事考えずに本気の本気って感じだね!
よぉし、辻斬りさんも本気だし僕らも本気で行こうじゃないか!

【疾駆する狗霊】
(無い尻尾がぶんぶん振られているんじゃないかってぐらいの狗霊を呼んで)(狗に引っ張られているのか自身の気付かない性質なのか。結構な戦闘好きの片鱗ちらり)
妖刀をくるくるっと、<フェイント>しつつの身軽な刀撃
時々<鎧砕き1>とか、<怪力5>とかも利用して隙あらば大きな一撃をどーんっとやるのを狙うよ

死者の霊が加勢に入れば【疾駆する狗霊】を使って応戦
そっちがその気なら僕も考えがあるんだからね!わんちゃんお願い!



「嗚呼、嗚呼――素晴らしい」
 吹き飛ばされた剣鬼は受身を取って地面を転がると、よろめきながら立ち上がる。
「腕は斬られた。刀も折れた。この身はもはや満身創痍、剣鬼などと驕っていた己を恥じるばかりよ」
 そう自嘲するように語る彼だったが、その表情は寧ろ歓喜に満ちている。
「これぞまさに、畜生にも劣る戦餓鬼に相応しい末路よ」
 誉れ高き勝利など端から求めてなぞいない。男が欲するは心ゆくまでの死合いと、悪鬼に相応しき最期。
「己の願いはここに叶った。あとは力尽きるまで戦うのみよ!!!!」
 死の淵に迫るたび、男は研ぎ澄まされていく。ただ純粋な一振りの兇刃として。

「よもや。よもや、これほどとは」
 その姿を目の当たりにして、瞼を開き笑みを浮かべるのはボドラーク。
「あの夜も、私の『無銘』を欠けさせたほどだと言うのに。それさえも、まだ貴方の全力では無かったのですね。ふふ……恐ろしいお方です」
 その身体の震えは恐怖か武者震いか、あるいは歓喜のそれか。一度は欠けた愛刀を構える。

「全てを捨ててでも己の意思に従うその様は、少し焦がれる」
 その危うき直向さに、セリオンは素直な感想を口にする。例えそれが、認めるわけにはいかないものであっても。
「だからこそ、ここを奴の終着点にしなければならない」
 槍剣『オルファ』を手に対峙するは、剣士としてのせめてもの礼儀。

「黄泉から還っても戦いたいだなんて相当の死狂いだね。全く、なんて殺気だよ」
 肌をびりびりと刺すような剣鬼の気魄に、しかし柩は怯まない。
 むしろ己を奮い立たせる糧として――眼鏡を外し、討つべき咎人をその瞳で見据え。
 棺の拷問具を構え、処刑の機を窺う。

「今度はもう、いろんな事考えずに本気の本気って感じだね!」
 ヒマそうな前とは全然違う! と感心するのは為虎。
 その陽気な態度は剣鬼の気魄に呑まれていない証。
「よぉし、辻斬りさんも本気だし僕らも本気で行こうじゃないか!」
 妖刀を手に、狗霊を従え、可憐な少年は宣言する。この戦いに終止符を打つために。

「そうだ。来い、来い、来い!!」
 猟兵たちの闘気に呼応して剣鬼は笑みを深め。その周囲に異変が生じる。
 彼の足元の影から染み出すように、刀を手にした剣士の亡霊が姿を現した。
「――どうやら地獄の顔馴染みが俺を連れ戻しに来たらしい。あるいは貴様も暴れたいだけか?」
 それに答えるように、亡霊は剣鬼にも、猟兵たちにも、等しく刃を向けた。
「いいだろう。生者と死者と入り乱れる、本物の地獄の戦いを始めよう!!」

 決戦の先陣を切ったのは、狗霊と共に疾駆する為虎。
「そっちがその気なら僕も考えがあるんだからね! わんちゃんお願い!」
 召喚された亡霊に対抗すべく狗霊をけしかける。
 尾があれば千切れんばかりに振っていそうなほど昂ぶった狗霊は、呪詛を込めた咆哮で亡霊を吹き飛ばし、呪いの牙で襲い掛かる。
 戦場の空気にあてられたか、普段よりも荒ぶる狗霊の様子に引きずられたか、為虎も好戦的な笑みを浮かべながら剣鬼に斬り掛かる。

「いくよっ!」
 天狗のような身軽な跳躍と共に、妖刀で斬りつける為虎。
 対する剣鬼は得意の居合い斬りで迎撃する。刀が折れたことでリーチは半分近くまで狭まったが、その威力は隻腕でも十分。
 キンッ、と剣戟の音が響いた直後、追撃の衝撃波が為虎に襲い掛かる。
「おおっと!」
 咄嗟にガードし衝撃に吹き飛ばされながらも、着地した為虎は即座にくるっと刀を構えなおす。
「いいね、なんだかこっちも楽しくなってきた!」
 本人も気付いていないのか、その笑みは次第に人狼らしい鋭さを増していく。
 それを見た剣鬼もにやり、と笑い。
「どうやら貴様にも修羅の片鱗は眠っていそうだ」
「一緒にされるのはイヤだね!」
 今度は獣のように低い姿勢で戦場を駆け、剣鬼に襲い掛かる為虎。

「来い――!!」
 為虎を迎え撃たんと構えを取り直す剣鬼。その横合いから槍剣が襲う。
「悪いが、一対一に興じさせてやるつもりはない」
 槍剣の主、セリオンは告げる。辻斬り事件の際に剣鬼の戦いを観察していた彼は、容赦なく相手の隙を突く。
「私のことも、忘れてもらっては困ります」
 セリオンの逆側からはボドラークが。迂闊に間合いには踏み込まず、しかしギリギリの位置から殺気を当てて牽制する。
「お返しにどーんっといくよ!!」
 二人の牽制による援護を受けながら、為虎は剣鬼の正面から勢いよく妖刀を振り抜いた。
 
「くく、多勢に無勢か。望むところよ!!」
 剣鬼は放たれた為虎の斬撃をあえて避けなかった。
 深々と胴を切り裂かれながらも、攻撃の勢いを利用して独楽のように体を回転させ、居合一閃。
 円を描く斬撃と衝撃波が、三人の猟兵にほとんど同時に襲い掛かる。
 剣鬼の斬撃の威力を十分に警戒していたボドラーク、剣鬼の戦術を分析していたセリオンは、間一髪でその攻撃を回避する。
「あ、やばっ――」
 しかし攻撃の直後だった為虎には回避の余裕がない。
 無慈悲なる兇刃が少年に襲い掛かる――。

 ――しかし、その刃が為虎の命に届くことはなかった。
「殺させないよ」
 為虎の前に飛び出した柩が、その拷問具を盾にして剣鬼の攻撃を受け止めたのだ。
 盾となった拷問具は斬撃に深々と切り裂かれ、衝撃で歪んでいる。しかしまだ武器としての機能は保っているし、柩も為虎も健在。
 もしも、剣鬼の利き腕が落とされていなければ。もしも、その刀が折れていなければ。
 万全の威力、速度、リーチを保った居合い斬りであれば、拷問具でも受けきれず、そもそも柩の援護も間に合わなかっただろう。

 互いに支援しあい、隙を補い合い、誰かが打ち込んだ布石が、後に続く者の勝機となる。
「これが俺達の戦い方だ――そして、これが"俺"の戦い方だ」
 そして今また新たな布石を打つべく、柩は破損した拷問具の隙間から拘束具を射出する。
 今度は自らが攻撃後の隙を突かれる形となった剣鬼の腕を手枷が封じ、口を猿轡が封じ、拘束ロープが脚を封じる。
「――!!」
 咎力封じが発動し、剣鬼からユーベルコードの力が失われる――その身に纏っていた修羅の気が消えていく。
「俺は『処刑人』だ――処刑の方法に手段は選びはしない」
 敵が手練であるならば、少しでもその動きを鈍らせる。
 ユーベルコードを封じても、剣鬼の技量であればこの程度の拘束はすぐに断てるだろう。
 だが、それでいい。一寸でも隙を生みさえすれば十分だという確信が、柩にはあった。

 そして――この一寸の好機を待ち続けてきたもう一人の剣鬼、ボドラークが動く。
 拘束を受けていようとも、あの神速の居合いに今度こそ完全に打ち克つには、一度手の内を曝した"零式"では不適。
 ならば、己が持つ最速の技を以って勝負に臨む。
「ただ疾く、疾く。この突きは、この剣は、我が身は、風の如し」
 間合いに踏み込む。剣鬼も反応するが、枷の嵌った腕で放つ居合い斬りは、今の彼女には遅すぎる。
 一陣の風と化したボドラークは、抜き放たれた刃の下を潜り抜け。
「この一突きで――ええ、涅槃へと、一足お先にお帰り願いましょうか」
 高速打突術、四式"疾風"。その名に相応しい刺突が、剣鬼の心臓を貫いた。

「あ、嗚呼――そうか。これで、終わりか」
 刀を引き抜かれた剣鬼の体から力が抜けていく。
 為虎の狗霊が押さえ込んでいた亡霊も、ふっと闇に溶けるように消えていく。
 コレはもう死に体だ――猟兵の誰もがそう理解する。しかし、剣鬼はまだ刀を手放してはいなかった。
「クク……快い。実に快い死合いだった」
 敗北と死を受け容れながらも剣鬼は戦いを止めようとしない。否、止められないのだ、彼自身。
 朽ち果てる最期の一瞬まで、その死狂いは戦いを求め続ける。

 ――そんな男の前に立ったのは、セリオンだった。
「『アイツ』がどうしてもお前との斬り合いをしたいと言うのでな」
 ユーベルコード、無窮流転を発動。彼の髪は赤く染まり、人格は「グロウ」へと切り替わる。
「さあ、文字通り最後の『一閃』と行こうか!」
 長柄の長剣を構える「グロウ」を見た剣鬼は、ふっ、と一瞬だけ穏やかな笑みを見せ。
「忝い――己の今生最期の一太刀を以って、お相手致す」
 直後、弾けるように殺気を爆発させ、残された全身全霊を込めた一撃が放たれる。
 同時に「グロウ」も、覚悟を決めた己の最大の一撃でそれに応える。
 二振りの刃が交錯し――砕け散ったのは剣鬼の刀。
 それが、最後の枷だったかのように。剣鬼の肉体が崩壊していく。

「来世で会えたら、また斬り結ぼうぜ。今度は『人』としてな」
「はは……どうだろうな。またいずれ、貴様らの前に『人でなし』として姿を顕すやもしれん」
 崩れていく剣鬼は、皮肉げな笑みで「グロウ」の言葉に答える。
 オブリビオンとは、すなわち過去。その妄執を完全に絶つことは容易ではない。
「その時は、また。心ゆくまで死合いましょう」
 そう告げたのはボドラーク。
 例え何度顕れようとも、自分が――あるいは他の猟兵が何度でも剣鬼を討つ、と。
「この世界が、あなたを退屈させることはありません」
「ああ……それは、素晴らしいな……」
 満足そうに呟いて、剣鬼は完全に消滅していった。

「後はこの世界に住む人達の仕事だ」
 戦いの終わりを見届けた柩は、とさりとその場に腰を下ろす。
 白鷺屋の主への処罰や、今回の騒ぎの後処理などは、彼の言う通りこの世界の人々に任せて大丈夫だろう。
「……疲れたし、甘味でも食べて帰りたい」
「いいね! 行こう行こう!」
 柩の呟きに為虎も笑顔で同意する。

 かくして、城下町を騒がせた辻斬り事件は幕を閉じ。
 黄泉路より迷い出た一匹の剣鬼は、再び冥土へと帰っていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月10日


挿絵イラスト