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書の海に沈むモノ

#アルダワ魔法学園 #スペシャル・ライター

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#アルダワ魔法学園
#スペシャル・ライター


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●書の迷宮
「あれ、イコは?」
 ――アルダワ魔法学園。
 学園迷宮の探索から帰還し、入り口の方を振り返った学生の1人が、不思議そうにふわりと、首をかしげる。
「イコなら、まだあの迷宮に残っているかもね。あの子、本が大好きだから」
「あいつ、本を読んでると周りが見えなくなるよな。……仕方ない、探しにいくか」
 2人の学生は、先ほど自分たちが探索した迷宮内部を、溜息混じりに思い出す。
 敵らしきものは見当たらず、四方全ての壁が本棚になっている迷宮内は、まるで図書館のよう。床一面にも大量の書物が敷き詰められ、天井高く積み上げられた本が、木々のようにずらりと並ぶ光景は、本好きには、きっと天国に違いないだろう、と。

 同時刻。
 無機質なキータイプ音が、カタカタと書の迷宮の下層から、静かに響く。

 ――嗚呼、心を震わせる良い物語を、書かなければ。
 ――もっともっと読みたいと求める読み手の存在は、嬉しくもあり、苦しくもある。
 ――嗚呼、もっと魅力的な物語を! どんな手を使っても! あらゆる手段を用いて!

 薄闇の中、ソレは泣き叫ぶようにして、紙に激しく文字をつづる。
 ふと、キータイプ音が止む。一拍置いて、カタカタと乾いた音を短く響かせた。

 ――絶望、はどうだろうか。
 淡々と紡がれた文字は、不気味なくらいに、青白く輝いていた。

●書の海に沈むモノ
「同じ本の虫でも、両者が合間見えた場合、そこにあるのは悲劇なのですじゃ」
 グリモアベースの一角。
 ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)は小さく吐き捨てると、猟兵たちに向き直り、ぺこりと頭を下げる。
「アルダワ魔法学園に、幾つも存在しているという学園迷宮の1つに、災魔――オブリビオンが潜んでいることが、判明したのですじゃ」
 オブリビオンの名は『スペシャル・ライター』
 迷宮の罠などを利用して、その身を隠しているため、迷宮探索を行って、オブリビオンが潜んでいる下層にいく必要があると、ユーゴは溜息混じりに告げた。
「実は、スペシャル・ライターが潜んでいる上の階層を、イコという女子生徒が単独で探索中での。また、2人の学生がイコどのを探しておるが、このまま放ってしまうと、全員が惨たらしく、殺されてしまいますのじゃ」
 身を震わせるほどの凄惨さだったのだろう、ユーゴはぶるっと体を震わせる。
 けれど、平静を装うように、手のひらを掲げると、ふわりとグリモアを顕現させた。
「これから皆を送る場所は、ちょうど迷宮の入り口地点にあたる場所ですじゃ。迷宮内部は壁も床も本で囲まれており、場所によっては天井まで高く積み上がった本が、障害物になっているようなところも、あるみたいですじゃ」
 迷宮内には、学生たちもいる。
 学生たちは猟兵を「転校生」として迎え入れているので、警戒することはないけれど、驚かせてしまった場合は、下層の方に逃げてしまう可能性もある。
「まずは、イコどのを含めた3人の学生たちの身柄を確保することが先決じゃ。その後、オブリビオンが潜んでいる下層への道のりを探しだし、奴を倒して欲しいのですじゃ」
 迷宮内にはスペシャル・ライターが残した原稿も、幾つか落ちているという。
 イコが心奪われないよう。また痕跡を探す手掛かりになるかもしれないので、余裕があれば拾っておいて欲しいと、ユーゴは付け加える。
「心を震わせたいという想いは、わしも料理人だからわかる。だからこそ、悪事に味を占める前に、オブリビオンに印籠を渡して欲しいのですじゃ」
 説明を終えたのだろう、ユーゴは再び手のひらのグリモアを掲げる。
 そして、猟兵たちをアルダワ魔法学園の書の迷宮へと、送り出すのだった。


御剣鋼
 御剣鋼(ミツルギ コウ)と申します。
 このシナリオは『アルダワ魔法学園』での冒険シナリオになります。

 戦闘は3章のみです。
 1章と2章は冒険パートになりますので、気楽に楽しんで頂けますと、幸いです。
 判定も緩めに行いますので、やってみたいことをのびのびと書いて頂けると、嬉しいです。

●同行者について
 単独描写の希望、旅団の仲間と冒険したいなど、
 プレイングにご指定頂ければ、可能な限り対応いたします。

 ご一緒したい方がいる場合は【相手のお名前】を明記して頂けますと助かります。
 グループでご参加の場合は【グループ名】で、お願いいたします。

 猟兵の皆様のプレイング、心よりお待ちしております!
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第1章 冒険 『迷子を救い出せ』

POW   :    直感で道を決めて進む

SPD   :    隠し扉や隠し扉を探しながら進む

WIZ   :    行きそうな場所を考え、先回りする

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 迷宮に足を踏み入れると、四方八方から無数の書物が出迎える。
 鼻孔をくすぐる埃臭さも、書が好きなものにとっては、居心地がいいのだろうか。
 左右に分かれた道からは、それぞれ学生の声が聞こえてくる。

 右側からは、男の子がイコを呼ぶ声が。
 左側からは、女の子が同じようにして、イコを呼びかける声が聞こえてくる。
 イコ自身の声は聞こえない。おそらく、本に夢中になっているのだろう……。

 壁の本棚を調べてみる。
 この迷宮の蔵書は、全て部類・ジャンルごとに並べられているようだ。

 さて、この書の海。どうやって溺れずに、探索しようか――。
カリオン・リヴィエール
いいですね、実にいい。古書の香りは落ち着きますからね。とはいえ、飲まれるわけにはいかないので、一瞥だけで大抵は無視します。一度は探索をしている学生さんにどんな特徴があるかを聴き込みたいところですが、イコちゃんを早く見つけないといけませんね。今回は、隠し通路を探してみましょうか。勘の向くままに歩き回りますが、1つだけジャンルの異なる書物があったり、落ちてる原稿には注意を払います。

単独、絡み、いかようにも大歓迎です!



「いいですね、実にいい。古書の香りは落ち着きますからね」
 四方八方を書に囲まれた迷宮を見回し、カリオン・リヴィエール(石を愛す者・f13723)は、赤色の瞳をゆるりと細める。
 けれど、それも一瞬。飲まれるわけには行くまいと、カリオンは速やかに視線を逸らすと、敢えて学生たちの声が届かぬ、深淵の方へと爪先を滑らせる。
 自分とほぼ同時刻に迷宮内へ踏み入れた猟兵の何人かが、左右の道――イコを探す学生たちの気配がする方向の、探索を始めている。
 ならば、自分がすることは、おのずと1つだけ……。
「イコちゃんを、早く見つけないといけませんね」
 ただ、想定していたよりも、迷宮内は広い。
 カリオンは、隠し通路が隠されていそうな場所を、重点的に調べていく。
 規則正しく並べられている書架に、1つだけ異なる分類の本を見つけたカリオンは、そっと人差し指を本の角に掛けた。
 ……本は、何かに引っ掛かっているみたいで、動かない。
 違和感が確信に変わったカリオンは、本の背を掴むと、静かに水平に引く。
 ……カチリ。
 小さな音が漏れると同時に。すぐ左側の書架が動いて、中から薄闇が顔を出した。
 
 そこにあったのは、真新しい原稿だった。
 
 ――着実な『絶望』のため、下層に至る道に『幻』を用意した。
 ――幻は、足を踏み入れたネズミどもに、堪え難い『幸福』を、与えることだろう。
 ――幸福の泉に浸かりきったネズミどもが、一瞬にて絶望に変わる時の、鳴き声。
 ――それは、私の物語にも、素晴らしいインスピレーションを、与えてくれるはずだ。
 
「悪趣味ですね」
 狂気で歪んだ青白い文字に目を通したカリオンは、小さく吐き捨てる。
 下層に至る道のりに『とても幸福な幻惑を見せる罠がある』というのは、下層に潜む災魔を倒さんとする猟兵たちにとって、重要な情報になるのは間違いないだろう。
「声が聞こえますね、一度戻りましょう」
 生徒たちの探索も、上手く行っているようだ。
 入り口の方から聞こえてくる賑やかな声にカリオンは口元を緩め、静かに踵を返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルヴィ・アウレアム
まずは二次災害を防いでからやな。無闇矢鱈とイコって子ぉを探すより、声の聞こえる方から保護したほうが効率的やしね。
それに、よう知らん子ぉを探すんやったら、ウチが無闇矢鱈に探すより、連れ合いの子ぉにあたりをつけてもーたほうがええやろて。

・行動【WIZ:行きそうな場所を考え、先回りする】
まずは声の聞こえる方向に行き、二人の学生の保護を優先します。
学生たちには「自分もイコを探していること」「可及的速やかに保護するために協力を願いたいこと」を伝え、普段よりイコが取りそうな行動、行きそうな場所についての当たりをつけ、その情報を周囲の猟兵たちと共有します。

・アドリブ、共闘歓迎です


クーナ・セラフィン
平和に済めばよかったんだろうけどもね。
片方がどうしようもない悪意を持ってるなら無理だけど。
大事になる前に人助け、始めようじゃないか。

左の女の子の声をまず追ってみる。
身軽さを活かしUCも活用しつつ本の上へ。もっと上手く足場にできそうな場所あるなら其方を。
少しでも高い視点から見れば何か気付く事があるかもしれないしね。
ショートカットとか、読んでるうちに周りに積み上がって読者を隠してる本の山とか。
もし怪しい原稿とかあったら拾って内容を確認しておこうかな。

発見したら怯えさせないようにまず恭しくご挨拶。
皆心配してるからまずは戻ろう、と。
ミイラ取りがミイラになるのは怖いからにゃー、と。

※アドリブ絡み等お任せ



●書の迷宮の物語
 ――話は少しだけ、さかのぼる。
「大事になる前に人助け、始めようじゃないか」
 左側の道を見据えるように、藍色の瞳を凛と細めたクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は、羽根付き帽子を被り直す。
 時と場所が違えば、本の話に華を咲かせる同士にも、なり得ただろう。
 けれど、災魔――オブリビオンは過去の残穢(ざんえ)。片方が癒えること無き悪意を剥けようとしているのなら、出会いは悲劇に繋がるだけだ……。
「まずは二次災害を防いでからやな」
 左側の女の子の声を追ってみたいと提案したクーナに、セルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)もまた、無闇やたらと探すよりも効率的だと、にこっと八重歯を見せて笑う。
 2人は女の子の声が聞こえる方向に五感を研ぎ澄ませ、迷いなく進んでゆく。
 程なくして、山のように高く積み上がった古書たちが、2人の行く手をぬっと阻んだ。
「ウチらの背丈やったら大丈夫そうやけど、ここらへん、視界が乏しいなぁ」
「この本の山の上なら、近道など何か気付くことがあるかもしれないね」
 セルヴィの横で白雪と白百合の銀槍を納めたクーナは、強く地を蹴って跳躍する。
 宙を何度かトントンと蹴り上げて高く高くジャンプしたクーナは、書の山の頂上に、ふわりと降り立つ。
 視線だけでセルヴィを書の並びが穏やかなポイントに誘導すると、そのすぐ先でイコを探していた女の子が怯えないように、そっと降り立った。
「こんにちわにゃー」
「あら、可愛らしい転校生さんね、こんにちわ!」
 恭しく挨拶する灰色の滑らかな毛並みに女の子は大きく瞳を見開くものの、直ぐに姿勢を正して、お辞儀を返す。
 少し遅れて合流したセルヴィが「自分たちもイコを探していること」、「可及的速やかに保護するために協力を願いたいこと」を伝えると、女の子は安堵に似た笑みを浮かべ、もう一度2人に深々と頭を下げた。
「ウチらが無闇矢鱈に探すより、連れ合いの子ぉに、あたりをつけてもーたほうがええやろて思うてな」
「そうですね……イコは重みのあるハードカバーの本が好きで、お気に入りの本を見つけると、書架の近くに隠れて、本の世界に浸ってることが多いです。好きなジャンルは……私の他にもう1人男の子がイコを探しているのですが、彼が詳しいと思います」
「なるほどなぁ、イコの行動パターンは他の猟兵たちにも、共有した方が良さそうやなぁ」
「皆心配してるからまずは戻ろう、ミイラ取りがミイラになるのは怖いからにゃー」
 ひとまず一緒に戻ろうと告げた、クーナとセルヴィに、女の子も快く頷く。
 そして、ふと思い出したように、ポーチから紙切れを取り出すと、2人に見せた。
 それは、物語の大まかな内容が書かれている、プロットだった。
 ――内容は、こうだ。

 主要人物は、主人公と、友だちの2人。
 友だちには幼馴染の男の子がいて、友だちは主人公に「実は幼馴染の男の子がずっと好きなんだ」と打ち明ける。
 けれど、主人公もその男の子が好きで、焦った主人公は友達に内緒で、男の子に告白をしてしまう。それが切っ掛けとなり、2人は仲違いしてしまう。
 主人公は気持ちがグチャグチャになりながらも、友だちが大切であることを認める。
 そして、卒業式の日。主人公は勇気を出して、友だちに気持ちをぶつける。
 ――私は謝らない。だって彼が大好きで、この気持ちにウソはないから。……でも、でもね、キミとずっと話せないのは嫌なんだ!
 友だちもまた、瞳を涙いっぱいにして、ありのままの気持ちをぶつける。
 ――私は絶対に許さない。私の方が先に好きになったし、昔から大好きだしッ! ……でも、私もずっとアンタと、このままなのは、嫌なんだよッ!!
 プロットは、ここで途切れている。
 すぐ真下には、覚え書きと思われるものが、残されていた。

 ――この物語を、終わらせたくない。
 ――終わらせると、もっといいものを読みたいと、求められるからだ。
 ――それが、とても苦しい。

「最初の別れ道の手前で拾ったんですけど、すごく気になってしまって……」
 女の子の不安げな眼差しに、クーナとセルヴィは神妙に顔を見合わせる。
 ……プロットを読む限り、至って普通の青春物語。
 だからこそ。強い違和感を感じられずには、いられなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・弥生
影のお友達に協力してもらって探すよ!
見つけたら手を繋いで私の方まで来てもらっても良いよね?
あと、装備の飛来の夜伽を使ってギャビンを呼ぶよ!
そしたら建物の中でも本に負けないで探せるかな?

それでも見つからなかったら、ネズミさんとか居るかもしれないから【動物会話】でどこに居るか聞いてみようと思うの

「みんなどこー?」


ワルゼロム・ワルゼー
【WIZ】
ふむ、イコとやらは恐らく呼びかけには応えるまい。…となると、まず彼女の趣味を把握するが先決か。声を頼りに、まずは学生達とコンタクトを取ろう。可能なら【失せ物探し】を使おうかな。
学生達とコンタクトが取れたのなら、イコの好きな本の種類を聞き出そう。ジャンルを絞れば、探索範囲もかなり狭まろうて。安全のために探索は我々が引受け、そのまま学生たちは帰還を促そう

ジャンルを絞った後は再び【失せ物探し】で該当する本棚を探すぞ。おっと、オブリビオンが残した原稿もきちんと回収するかな。仮にジャンルが絞れなかった場合は、原稿を辿ると同時に、彼女の痕跡も探してみようか



●書の迷宮の物語〜白紙の結末
「ギャビン、お願いー!」
 柊・弥生(獣婚師・f01110)が、迷宮の天蓋に向けて、高らかと放った真っ白な大鷹は、大きく羽ばたきながら右側通路の先に向きを変えると、ぐるりと旋回を開始する。
「ふむ、あの大鷹の下に学生の1人がいるのは、間違いなさそうだな」
 イコという少女が、学生たちや猟兵の呼び掛けに応える気配は、感じられない。
 一瞬だけ思案に耽けた、ワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・f03745)は、右側の通路に向けて緑色の双眸を細めると、ふわりと霊衣の裾を翻した。
「……となると、まず彼女の趣味を把握するのが先決か」
「私も、影のお友達に協力してもらって探すよ!」
 右側通路の先から聞こえてくる男の子の声を頼りに、ワルゼロムが「まずは学生達とコンタクトを取ろう」と呼びかけると弥生も頷き、その背中と紫の髪を追う。
 程なくして、少しだけ開けた空間が、2人の視界に飛び込んでくる。
 そして、ほぼ同時に。視界の隅に男の子を捉えた弥生は、素早く影を呼び出した。
「影さん、影さん、私と一緒に踊りませんか?」
 弥生と五感を共有した影の友人は、音を立てずに、するりと男の子へ伸びていく。
 影に掴まれた男の子が驚いて声をあげた刹那、地を鋭く蹴って距離を詰めたワルゼロムが、男の子を手短に呼び止めた。
「我々もイコを探していてな。話を聞きたい」
「あ、ああ、転校生か! うわびっくりした!」
 落ち着きを取り戻した男の子に、ワルゼロムが「イコの好きな本の種類」を訪ねると、彼は「あんた良い眼をしてるね」と、満面の笑みを返す。
「教室でよく読んでるのは恋愛小説かな。そっちの書架は、俺の他にもう1人女の子がいるんだけど、彼女が探しているはずだ。あとは……親子で読むような、童話だな」
 クラスメイトの視線を気にしてるので、一部しか知らないと、男の子は微笑む。
 この広間にある書架も、ほとんどが童話のよう。けれど、イコはここにはいないみたいだなと、男の子が軽く肩をすくめた時だった。
「ネズミさんが、ここにあるのは小さな絵本だけで、別の場所に古くて立派な絵本が置いてあるって、言ってるよー!」
 書架の隅っこの方で、自分の瞳と同じ色のネズミと話していた弥生が振り向くと、男の子は「それだ!」と短く叫ぶ。
 どうやら、男の子は詰めが甘いタイプらしい。
「おそらく、稀覯本(きこうぼん)っていう奴だな。それなら迷宮の奥で見かけたぜ」
 迷宮の奥に、如何にも貴重そうな絵本と童話が納められた、書架があるという。
 大きめの本ばかりなので、一目でわかるはずだと、男の子は確信を持って頷いた。
「ふむ、探索範囲もかなり絞り込むことができたな。後は我々が引受けよう」
 耳を済ませば、入り口の方から鈴の鳴るような、女の子の声が聞こえてくる。
 共に帰還を促すワルゼロムに、男の子は一瞬渋るものの、ふと思い出したようにポケットを探ると、丁寧に折りたたんでいた紙を、2人に広げて見せた。

 それは、冒頭に『結末』と書かれていた、ほぼ白紙の原稿用紙。
 原稿の真下をみると、寂しげな筆跡の覚書きだけが、辿々しく添えてあった。

 ――物語を書くのを諦める。そう思ったのは、何度目になるだろう。
 ――しかし、気が付けば、私は呼吸をするように、何度も物語を綴っている。

 ――読み手は乾いた砂のように、新しい驚きと娯楽を、求めてくる。
 ――けれど、私の中の水差しは常に平凡。あるいは、既に空のようなものだ。

「この広間に落ちてたんだ。最初は謎解きかなと思ったけど、なんだか感情的だし、よくみると、筆跡も新しくて怖いし、貰ってくれると嬉しいぜ!」
 男の子から押し付けられる形で紙を受け取った、ワルゼロムは、慎重に目を通す。
「ふむ、己が平凡であることを、只々嘆いている風にも、読めるかな」
 原稿に特殊な仕掛けは見当たらず、至って普通の紙切れとも言える、が……。
「他にも落ちているの?」
 もう一度、弥生がネズミに訪ねてみると、ネズミは「たくさん」と短く鳴いて。
 そして、ぶるっと身体を震わせると、逃げるように書架の隙間へと、消えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルファ・オメガ
「がう、今回は迷宮探索だねー」
探索ってわくわくするよね
人命かかってるから急がないといけないけどね!

よーし、がんばるぞー
図書館の迷宮かー
本は嫌いじゃないけど見てると眠くなるんだよねーすやあ……はっ、いけないいけない

こういう時は動物のというかケットシーの直感でいくぞー!
失せ物探しがちょっと得意なボクはスペシャルライターの原稿を目当てにいくよ
猫の毛づくろいでぺろぺろ舐めておいて摩擦係数減らしておこう
小さな隙間にも入れるしね!

んー、でも次に繋がる道はどこにあるのやら
野生の動物で気になったところをにくきゅうでぽふぽふ叩いてみようかな?
ボクのにくきゅうなら本も悪くならない!と思う…



●書の迷宮の物語〜捨てられた結末
「本は嫌いじゃないけど、見てると眠くなるんだよねーすやあ……はっ、いけないいけない!」
 四方八方を書物に囲まれたアルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)を襲ったのは、災魔ではなくて、睡魔でして。
 ハッと身体を起こしたアルファは素早く毛づくろいすると、災魔が残したと思われる原稿を、動物もといケットシーの直感で、いそいそとかき集めていく。
「がう、中身は小説だねー」
 断片的で流れは掴めにくかったけれど、全て至って普通の、青春物語。
 また、迷宮の奥に近づけば近づくほど、落ちている原稿も多くなっているようだ。
「よーし、がんばるぞー」
 この近くに、下層へ繋がる道があるのは、ほぼ間違いないだろう。
 アルファは弾む心を抑えながら、ぽふぽふと肉球で迷宮の奥の書架を叩いていく。
「んー、でも次に繋がる道はどこにあるのやら」
 書架から少しだけ飛び出していた青い本に、愛らしい肉球が軽く触れた時だった。
 カチリと音が鳴ると同時に、アルファの身体がぐいっと書架の方へ持っていかれる。
 咄嗟に半歩下がって態勢を立て直したアルファの眼前に、闇夜が滲むように、現れた。
「何だろう?」
 深淵の隅に転がっていたのは、丸められて捨てられた、原稿用紙。
 それは、他の猟兵が見つけたプロットや原稿に欠けていた、結末のパートだった。

 ありのままの気持ちをぶつけて涙を流した友だちが、ふと「ありがとう」と洩らす。
 許したわけでもない、諦めたわけでもない。けれど、このまま卒業したら、ずっとずっと、後悔を抱えて生きて行くことに、なっていたから、と……。
 ――これからは、恋のライバルだよ。
 堰が壊れて号泣する友だちに変わり、主人公も唇を震わせたまま、何度も頷く。
 ――これからは、恋のライバルだね、と。

「なんで、ぐしゃぐしゃにしちゃったんだろう」
 斬新ではないけど、普通に綺麗な終わり方だと、アルファは思う。
 けれど、災魔はこの結末が許せなかった。あるいは、ありきたりな結末を超えることができない自分自身に、絶望したのかもしれない。
「あっ!」
 その深淵の先に下層に繋がる階段を見つけたアルファは、急いで踵を返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリス・ホワイト
【WIZ】
迷宮だからね、迷い子が出てしまうこともあるだろう。
僕は迷子たちを対象として【過ぎ去りし郷愁】で追跡できるか試してみるよ。
ひとが通った道なら痕跡があるかもしれないし、迷宮の歩き方が分かれば自ずと行きそうな道も分かるかもしれない。

原稿も見つけ次第、拾っておくとしよう。
あとは……もし見つけられたら。
迷子たちが驚かなくてもよいように、無事に帰すまで【手をつないで】歩こうか。
お話しして【鼓舞】してあげるのも良さそうかな。
そうすれば、気が紛れるかもしれないよ。

近くに迷子を探してるひとがいれば、一緒に探すよ。
こういうのは、人手は多いほうが良いからね。

(連携、アドリブ歓迎)


ユエイン・リュンコイス
【連携・単独・アドリブ全て歓迎】
本は好きだけれどもね? 現実あっての空想、愉しむもので溺れるモノではないよ。

そうだね…迷宮内はきっと視界も悪いだろう。ボクは黒鉄機人の肩にでも乗って、視界を広く保ちながら探索しようか。【第六感】で大まかな方向に当たりをつけ、【視力、暗視、情報取集】で視線を巡らせて、学生さんの姿を探そうか。

驚かせるといけないから、姿を見つけたら機人より降りて【コミュ力、礼儀作法】で事情を説明し、迷宮外に出てもらうようお願いしよう。
もし見つけたのがイコで、本を読み続けようとしているのであれば、周囲を警戒しつつ可能な限り付き合ってあげようかな。携帯茶器を使用。読書の供に紅茶はいかが?



●書の迷宮に浸る少女
「イコがいる場所が分かったのは、僥倖だね」
 先行して探索を進めていた猟兵から情報を受けた、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)は、黒鉄の機甲人形の肩に乗ると、イコ捜索に重点を絞るべく、迷宮の奥深くへ進んでゆく。
 その途中。機甲人形の足元から声がしたので歩みを止めると、シルクハットを被った上品な装いのケットシー、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)が「一緒に探すよ」と、呼び止めた。
「こういうのは、人手は多いほうが良いからね」
 クリスは、低身長を生かして、低い位置からイコの痕跡を探す。
 原稿は、先行した猟兵が拾い集めてくれたのだろう。本好きのイコが心を奪われたり、拾い集めている痕跡は、なさそうだ。
 暫く探索を進めていくと、目的の書架が集まる一角を発見した。
「ここだね……手分けしてイコを探そう」
 ユエインの漆黒の瞳が、稀覯本らしい童話や、絵本が納められた書架に止まる。
 周りの書に埋もれるようにして鎮座するその書架を調べると、先行した猟兵の情報通り、大判の本だけが、納められていた。
(「この書架の近くにいるはず……」)
 大型の本を抱えながら移動するのは、大人でも困難だ。
 黒鉄機人の肩の上で視野を広く保ったまま、ユエインは感覚を研ぎ澄まし、クリスも艶のある上品なフォルムのステッキの先端を、軽く地につける。
「9つの眠りを越えて、またひとり」
 現れた思い出の人影は、書架の近くの本の山へ音もなく駆け、ぴたりと止まる。
 影を通して世界を覗くと、女の子が1人、大判の童話に釘付けになっていた。
 ――彼女がイコに、間違いない。
 本の山を隠れ蓑にして、楽しそうに物語に浸るイコを驚かさないよう、クリスはゆっくり歩むように近づき、ユエインも黒鉄機人から、そっと降りた。
「やあ、君がイコだね」
「ハッ! は、はいぃぃ、わ、私がイコですっ!!」
 クリスが呼び掛けると同時に、イコは脊髄反射の勢いで立ち上がる。
 どうみても、授業中に先生に起こされる、居眠り中の生徒と全く同じ反応だった。
「僕の名前はクリス。仲間と一緒に君を探しにきたんだ」
「わ、私を? ……な、なんで私を――ん?」
 イコの頭に浮かんだ「?」は、3秒も経たずに「!」に変わる。
 顔面はみるみる内に青くなり、大量の冷や汗を浮かべたイコは、突然絶叫した!
「ああああ、私、また、やっちゃったああ――!!!」
「大丈夫、君と一緒にいた2人は怒っていないよ」
 どちらかというと「またか……」と呆れていたのは、内緒♪
 動揺するイコの気を紛らわせようと、クリスが会話で繋いでいく中、周囲の警戒に徹していたユエインが、ゆっくり携帯茶器を取り出した。
 白き月の意匠が散りばめられた、モノトーンを基調とした礼装で、ユエは慣れた手付きで湯を沸かしていく。
 そして、手早く茶葉を入れると、紅茶の優しい香りが、3人を包み込んだ。
「紅茶はいかが?」
「ありがとう……」
 まるで、物語の一幕のように差し出されたティカップを、イコは慎重に受け取る。
 小さな口を縁に付け、そして、フーフーと冷ましながら、ゆっくり飲み干した。
「もう少しここで本を読んでいくかい?」
「ううん。2人が心配してると思うの。それに、あの、道がよくわからなくて……」
 ユエインを見上げたまま、イコが「どうしよう」と洩らした時だった。
 クリスがイコに向けて、愛らしい肉球を差し出したのは……。
「お嬢さん、お手をどうぞ」
 一瞬、目を瞬いたイコは「ありがとう、青い瞳の猫さん」と、その手を取った。


「あ、2人がいる!」
 出入り口に見覚えがある影を見つけたのだろう、イコの表情がパッと輝く。
 そして、共にイコを見守っていた猟兵たちの方へ振り向くと、ほぼ180度に近いお辞儀を、ぺこりと返した。
「皆さん、本当にありがとうございました。……私、2人に怒られて、きますッ!」
 初めて子供らしく笑ったイコに、クリスも釣られるようにして、笑みを返す。
「3人は仲がいいのかな?」
「うん、男の子は私の幼馴染で、女の子は私の1番の友達なの!」
 弾む足取りで外に向かうイコの小さな背中を、ユエインは淡々と見つめる。
 本を楽しむのも現実が在ってこその空想。溺れるものではないと、思う……。
 ――書の迷宮の物語。
 仲良く抱擁を交わしあう3人の子供たちが、一瞬だけ、その物語と重なった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『どうしても抗えないものがある』

POW   :    気合で耐える。見なかったことにして突っ切る。

SPD   :    誘惑に負けてしまう前に走り抜ける。罠の影響を受けない手段を用意する。

WIZ   :    帰った後の自分へのご褒美を想像する。罠に屈しない理屈を組み立てる。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幸福の海
 ――書の迷宮の奥深く。
 そこに隠されていた下層に至る階段を、猟兵たちは慎重に降りていく。
 下層に至る道のりに『とても幸福な幻惑を見せる罠』が張り巡らされているのは、とある猟兵の活躍で、すでに明らかにされている。
 不意を突かれることがなくなったのは、幸いともいえた。
「おそらく、ここですね」
 先頭を進んでいた猟兵の1人が、視線で仲間を促す。
 その先に在るのは円形の青い広間。広間の壁一面にぐるりと並べられた書架により、本に囲まれる布陣になるのは、まず避けられないだろう。
「まるで、海底にいる気分ね」
 おそらく、各々で『幸せな幻惑』と、対峙することになる。
 この広間では、仲間の支援は期待できないと思った方が、良さそうだ……。
「準備はいい? 入るわね」
 1人の猟兵が広間に足を踏み入れた、その刹那。
 広間の本が一斉に書架から飛び出して、ページを勢いよくパラパラとめくりだす。
 視界を覆っていた青が、白に変わり、そして――!

 巡る巡る。
 これは、『幸福な幻惑』を打ち破り、『前へ進む』物語――。

※第二章につきまして
 幸福な幻惑は、シュールなものや、コミカルなものでも、大丈夫です。
 キャラクターらしい『幸福な幻惑』と、それを『打破する方法』を、のびのびとプレイングに記載してください。
 リプレイは肉親で同じ幸福を共有しているなど、特殊な事情がない限り、全て個別でのお返しになります。
 また、第二章のみの途中参戦も、大歓迎です。
セルヴィ・アウレアム
「ああ…先生、なんで、ここに…。」
晴れた視界の先。そこで待っていた白衣の男の姿を見、呆然とする。
「嫌や、ウチあそこには帰りとうない!」
蹲るセルヴィの頭にぽん、と手を置き。撫でる。
「先生?うん、うん…そうなんよ…。ウチ、ずっと、頑張ってたんよ。だから、もっと。」
男の前で泣きじゃくり、縋るように嗚咽混じりの言葉を漏らす。
「…でもな、あかんねん。先生。先生は絶対うちのこと褒めたりせーへん。」
「せやから…堪忍なぁ…ほんま、堪忍なぁ…。」
と言って、その男の首を短剣で掻っ切る。

行動【POW:見なかったことにして突っ切る】

「あー…くっそ。けったくそ悪いことしてくれよって。」
夢のあと、そう吐き捨てて先へ進む。



●無機質な温もり
「ああ……先生、なんで、ここに……」
 青から白に変わり、さらに一転して、晴れた視界の先。
 目の前に現れた白衣の男の姿を見た、セルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)は、呆然と立ち尽くしてしまう。
 何処かで腹は括っていたはずなのに。なぜ、先生がそこにいるのですか?
 ――同時に。セルヴィは、発狂に似た悲鳴をあげた。
「嫌や、ウチあそこには帰りとうない!」
 無意識的に激しく頭を振ったセルヴィは、その場でぎゅっとうずくまる。
 目の前の夢から隠れるように、小さく小さく貝の如く縮こまったセルヴィの頭に、不意にぽんと優しい感触が触れた。
「先生?」
 少しだけ顔をあげたセルヴィの視界に飛び込んできた顔は、変わらない。
 けれど。白衣の男が、赤茶の頭を優しく撫でるように手を動かすと、セルヴィの黒い瞳が瞬く間に潤んで、とめどなく涙が溢れた。
「うん、うん……そうなんよ……。ウチ、ずっと、頑張ってたんよ。だから、もっと」
 周囲は、不気味なまでの静寂に、包み込まれている。
 だからこそ、ふわりと乗せられた手は、とても温かくて、心地よくて……。
 セルヴィは泣きじゃくったまま、すがるように、嗚咽混じりの言葉を漏らす。
 とめどなく瞳から溢れる涙が次から次へと頰を伝い、現実感が乏しい床を、ひたりひたりと濡らした。
「……でもな、あかんねん。先生。先生は絶対うちのこと褒めたりせーへん」
 セルヴィは、はっきりと思い出す。
 褒められた記憶がない、それだけじゃあない。
 優しく撫でられたことも、温かさも、心地よさも……。
 全てが己の心の深淵から生み出された、ただ幸せなだけの、マボロシだから。
 ――現実は。
「せやから……堪忍なぁ……ほんま、堪忍なぁ……」
 無意識に、セルヴィはゆるく微笑む。
 紡がれた言葉はか弱く。けれど、その手にはしっかりと諸刃の短剣が握られていて。
 ――先生、さよなら。
 迷いなくするりと奔った軌跡は、白衣の男の首に、鮮血に似た赤い筋を描く。
 そして。そのまま容赦無く、横に薙ぎ払うようにして、真っ二つに掻っ切った。

●夢の跡
「あー……くっそ。けったくそ悪いことしてくれよって」
 かき消されるように視界が晴れ、セルヴィの黒い瞳に、一面の青が広がっていく。
 残されたのは、偽りの幸福の残穢(ざんえ)。
 小さく吐き捨てたセルヴィは、足元に伏した真っ二つになった本を鋭く一瞥すると、すぐに本から視線を背けて、広間の奥へと突っ切るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス
【アドリブ大歓迎】
幸せな幻覚か…トラウマであれば、この間宇宙で見せつけられたけれども、さて。何が出てくるだろうね。

(感情に乏しく、孤独に過ごしてきた人形少女の幸福とはそれと真逆ではなかろうか。感情豊かに、人々に囲まれること…つまりアイドルでは???)

みっんな〜、可愛い可愛いユエインちゃんだぞ♡ みゃはミ☆
今日はぁ、ファンのみんなをメロメロにしちゃうぞ♪

(サイケな光溢れる舞台上、フリフリファッションかつノリノリでマイクを握るその姿はとてもとても感情豊かであった)

……自分の顔面に拳を叩き込んで前に進もう。これはきっと悪い夢だし、なるにしても段階ってものがある。気にせず行こう…誰も見てないよね?



●人形が視る幸福
「幸せな幻覚か……トラウマであれば、この間宇宙で見せつけられたけれども、さて。何が出てくるだろうね」
 先の攻略戦を思い出した、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)は、ちらりと背後を仰ぎ見る。
 あの時と同じように、己の半身とも呼べる黒鉄機人の姿は、見当たらない。
 けれど、絶望に似た空虚さはなく、自然と口元が緩んだ。
「あの時とは真逆の夢が見れそうだね」
 孤独に過ごしてきた人形の幸福は、何だろうと、ユエインは思う。
 感情豊かに人々に囲まれる……もしかして、と、薄っすら笑みが溢れた時だった。
 視界を覆っていた白が晴れ、辺りが静寂と闇に包まれる。
 固唾を呑んだその時。色鮮やかなスポットライトがユエインの前方を照らし、ステージのようなものが浮かび上がる。
 ――そして!
「「「ユエイン、ちゃああああん!!」」」
 轟くのは、感極まった野太い声ッ!
 ステージをぐるりと囲むのは、色鮮やかなサイリウムの海ッ!
 そんな馬鹿なとユエインが上げた声は虚しくかき消され、ダメ押しといわんばかりに、サイケな光溢れる舞台の一部が、ウィィンと上がってくる。
 そして、その上に立つ人影を見て、ユエインは無意識に天を仰いだ。
「みっんな〜、可愛い可愛いユエインちゃんだぞ♡ みゃはミ☆」
 きゃは♡とステージ上で可愛くポーズを取るのは、ユエインその人でして。
 否。本物のユエインは眼前のフリフリピンクinミニスカ姿の自分に卒倒しかけてるので、本人の名誉のために「ユエインちゃん♡」と呼ぶことにしよう。
「今日はぁ、ファンのみんなをメロメロにしちゃうぞ♪」
 ユエインちゃん♡がノリノリでマイクを手にして、ぱちんとウィンク☆
 さらにファンも盛り上がっちゃうYO、イエアアアア☆
 ――ユエインちゃん、愛してるううう!!
 ――ユエインッ! ユエインッ! ユエインッ!
「ああああああああ、よせやめろ、待った、タンマ、ストップ!」
 轟くユエインコールの中、ユエイン(本物)は絶叫しながらステージに雪崩れ込む。
「私は、前に進む!」
 そのままユエインちゃん♡の足元に鋭くスライディング。
 態勢を崩させるや否や、強烈なアッパーカットを見舞って宙に浮かせると、半歩下げた左足を瞬時に前に出し、落ちてきた顔面目掛けて無駄に助走をつけ、真っすぐ拳を叩き込んだ。

●夢の跡
「これはきっと悪い夢だし、なるにしても段階ってものがある」
 ユエインは足元でサンドバックと化した本から視線を逸らし、後ろを振り向く。
 そこには忘れ得ぬ朋友である黒鉄機人が佇んでおり、安堵したように息を吐いた。
「気にせず行こう……誰も見てないよね? 」

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・弥生
幸福『痛みも無い穏やかな世界で家族(動物たち)との生活』

うわわっ!
本がばさぁー!!って来たよ!

あれ?
皆どこ?
(後ろではポコポコという水音が聞こえる)
あの音は嫌い!ここに居たくないよ。
(段々とグズグズと泣きながら前に進みながらウロウロすると聞こえる沢山の唸り声)
う......な、に?
(『あ、、じ!もど○#5×あるじ』)
誰の声?ねぇ、だぁれ?

(怖いと思わなかった声の方へ向かうとガウガウさんやギャビンの影が見えて、金色のライオンがいつのまにか背後にいる)
う......?......ガウガウさん?

(気が付いたらガウガウさんに咥えられながら本の海を抜けていくの)

(『まったく、主は手がかかる』)



●幸福の色
「うわわっ! 本がばさぁー!! って来たよ!」
 視界が白に覆われた刹那。
 柊・弥生(獣婚師・f01110)は、咄嗟にガウガウさんのたてがみにしがみつこうとするけれど、不意にその手はスルっとすり抜けてしまう。
 瞬く間に紙をめくるような無数の雑音が消え、床に落ちた弥生が灰色の瞳をゆっくり開くと、そこは一面の闇に覆われた空間だった。
「あれ? 皆どこ?」
 弥生は共にいた動物たちを探そうと、埃を払いながら立ち上がる。
 ――その時だった。
 弥生のすぐ後ろから、水中をたゆたうような、水音が聞こえてきたのは。

 ポコポコポコポコ……。

「あの音は嫌い! ここに居たくないよ!」
 それは、とっても不快な音。
 胸がぎゅっと押し潰されそうになった弥生は、たまらず大きく羽ばたく、が。

 ポコポコポコポコポコ。
 ポコポコポコポコポコポコ!
 ポコポコポコポコポコポコ!

 水音は弥生から離れようとせず、その背に絡み付くように、追い掛けてきて。
「う……ヒック、嫌だ、嫌だよ!」
 弥生の瞳に、たちまち涙が溢れ出す。
 顔を涙でグズグズと濡らしながらも、それでも弥生は懸命に羽ばたき、先が見えない道のりを、独り前へ前へと進んでいく。
 不安と恐怖に駆られながらも、懸命に――。
「う……な、に?」
 ふらふらと身体が覚束なくなった弥生の耳に、ふと沢山の唸り声が響いた。

 ――あ、、じ!もど○#5×あるじ

「誰の声? ねぇ、だぁれ?」
 獣のような唸り声は、不思議と怖くなくて、とても幸せに感じられて……。
 弥生は縋るように、声が聞こえる方角へ真っ直ぐ向かう。薄闇の中に、見覚えのある影が幾つも見えてきた瞬間、弥生の瞳が大きく瞬いた。
「ガウガウさん、ギャビンー!」
 そこは、痛みも無い穏やかな世界。家族(動物たち)との温かな生活が暮らせる、とても幸せな場所。
 眼前の幸福の海に飛び込んだ弥生は、微睡むように、睫毛を閉じる。
 そして、重くなった弥生の身体は、深い海の底に向かうように、落ちて――。

 ――まったく、主は手がかかる。

「う……? ……ガウガウさん?」
 辛うじて振り向いた弥生の視界に飛び込んできたのは、大きな金色のライオン。
 ライオンは、互いの生命力を共有するように、弥生をそっと咥える。
 そして、偽りの幸福の海を駆け抜けようと、力強く四肢を蹴り上げた。

●夢の跡
 弥生を優しく咥えたまま、ガウガウさんは飛び交う本をすり抜けるように、風になる。
 弥生の瞳に薄っすらと残る涙を拭うように、真っ直ぐ広間の奥を目指して――。

成功 🔵​🔵​🔴​

カリオン・リヴィエール
小さい時に、仕事でなかなか帰ってこなかった父親が、ある時にいきなり帰ってきたこと。他の家族は帰宅を知っていたけれど、私だけは内緒にされていましたね。いつも本を読んでいたけれど、その日も変わらない1日で…いきなり後ろから抱き上げられて、びっくりすると同時に嬉しかったなぁ。

と、まぁ、昔々の追想ですね。結局、そんな幸せを壊したのは私自身ですし。過去の幸福は甘いものですが、私にとっては同時に苦いものでもあるのですよ。……なにせ、そんな家族を殺したのは私ですからね。
ユーベルコードは使用しません。意志の力でどうにかします。あえて、持っている黒曜石で自分を傷つけるのもいいかもしれませんね。



●昔々の追想
「幸福な幻惑ですか、飲まれるわけにはいきませんね」
 視界を白が覆われてゆく光景を、カリオン・リヴィエール(石を愛す者・f13723)は冷静に観察する。
 酒でも出て来るのだろうかと、口元を緩めた時、視界がふわりとひらけた。
 そこに在ったのは、苦くて甘い昔々の追想。在りし日の幸福だった……。
「なるほど、そう来ましたか」
 幸福に彩られた温かな空間にいるのは、幼き頃のカリオン。
 その日は変わらないはずの日常で、幼い自分は周りの微妙な変化に気づかず、本に夢中になっている。
 家族が面白がって名前を呼ぶけれど、本の世界に浸る少女は応えようとせず、頰に掛かった髪が読書の邪魔にならないように、掻き分けた時だった。

 ――ただいま。

 聞き覚えのある声と同時に、小さなカリオンの身体が、ふわりと宙に浮かぶ。
 いきなり後ろから抱き上げられた少女は、驚きの余りに大きく目を見開くものの、すぐに振り向いて、自身を抱き上げた人物――父親に「おかえり」と、抱きついた。
「あの時は、びっくりすると同時に嬉しかったなぁ」
 仕事で中々帰ってこなかった父親が突然帰って来る、驚きが入り混じった幸せ。
 他の家族がクスクスと笑っているのを見て、自分だけ内緒にされていたことに気付いた幼いカリオンは、頰を膨らませて抗議するけど、すぐに皆と笑い合って――。

 穏やかな日常に咲いた幸福。幸せな家族との団欒(だんらん)。
 それは、とても温かくて、心地良くて――。

「そんな幸せを壊したのは、私自身ですし」
 ざくり。
 カリオンの色白の手に、赤い筋がじわりと滲む。
 ざくり。
 ためらいなく鋭利な黒曜石で自身の手を刺すと、ひたりひたりと赤が床に落ちた。
 ――これは、昔々の追想。
 過去の幸福がとても甘くもあり、同時に苦いものでもあるのは、カリオン自身がよく知っている。
 ――なぜなら。
「……そんな家族を殺したのは、私ですからね」
 漆黒のガラスにも似た黒曜石は、躊躇なく、カリオンの手の肉を削いでいく。
 白に赤が滲み、零れる。そして、夢は現実で、侵蝕されていく――。

●夢の跡
「……っ」
 カリオンが血が滲む手の甲を抑えようとした刹那、気配を感じて顔を上げる。
 ――同時に。
 纏わりつくように周囲に飛び交っていた本が、すっと離れていった。
 まるで、本に血が、現実が憑くことを、嫌がるように……。
「過去の幸福は甘いものですが、私にとっては同時に苦いものでもあるのですよ」
 今更見せられなくても、わかっている。
 そう言い聞かせるように、カリオンの赤色の双眸は、迷いなく広間の奥を見据えていた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

クーナ・セラフィン
誘惑か。…あのプロット読んだ感じだとほら来た!な展開のための布石なんじゃないかにゃー。
つまり持ち上げてから奈落へごー、的な?
ああ怖い怖い。

幻惑は色取り取りの花が咲き乱れる花畑。
あー成程。確かにこれは幸福だね。
この花とか、とても貴重で凄い薬の原料になると聞いたことがある。
それだけじゃない。ここにあるのは…滅んだかそれに近い花々。
学者とかだったら垂涎ものの光景なんじゃないかな。

けれど、これは幻覚。
この場にはないし持ち帰ることも出来ない。
だったらさくさく進もうか。ない物に囚われてる暇なんてないしにゃー。
本を閉じればいいのかな?

…失くしたモノに囚われない、そんな風に私はやれてるかな?

※アドリブ等お任せ



●失くした楽園
「誘惑か。……あのプロット読んだ感じだと、絶望のための布石なんじゃないかな」
 まるで、持ち上げてから、奈落へと突き落とすように……。
 パラパラと無数の本が奏でる雑音に耳を傾けていた、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は、冷静に周囲の状況を観察する。
 暫くして、視界がふわりと開けると「やはり」と、確信をもって、頷いた。
「あー成程。確かにこれは幸福だね」
 クーナの藍色の瞳に飛び込んできた景色は、色とりどりの花々が咲き乱れる花畑。
 注意深く足を踏み入れると、爪先から柔らかな草木の感触が、伝わってくる……。
「ああ怖い怖い」
 何ともリアルな感覚に、クーナは余裕を保つように、口元を緩めて。
 もう少し身近で観察してみようと片膝をつくと、間近で揺れる白い花に肉球を添えた。
「この花とか、とても貴重で凄い薬の原料になると、聞いたことがある」
 特に、スペースシップワールドでは、珍しい花だったはず。
 それだけではない。向こうに咲く紫色の花々は、アルダワ魔法学園では既に無くなっているか、それに近しい絶滅の危機に瀕した、貴重な花々だった。
「ふふ、学者とかだったら垂涎ものの光景なんじゃないかな」
 けれど、これは幻覚。
 この場にはなく、持ち帰ることも出来ないモノに、囚われている暇と時間はない。
「先へ進もう」
 そう、クーナは呟きだけを落として、再び歩き出そうとした時だった。

 ――ねえ、本当にこのきれいなお花は、全部夢なの?
 ――夢じゃなかったら、ぼくのお母さんの病気も、治るかもしれないのに?

 不意に耳元に囁く子供のような声に、クーナは足を止める。
 放浪の旅を続けてきたクーナは、いろんなものを見てきた。その中には、薬が間に合わず、力尽きた人々がいたのかもしれない。
「私は、他人の人生模様を見るのが、好きだからね」
 なるべくなら、皆が幸せになればいい。幸せになって欲しいと、クーナは思う。
 ――だからこそ。
「私はここで旅をやめるわけには、行かないよ」
 振り向かずクーナはしゃがみこむと、白い花を両手で優しく挟み、ゆっくり包み込む。
 まるで、本を閉じるように、ゆっくり両手を合わせていく――。

●夢の跡
「おや?」
 その瞬間、クーナの手から本がするりと抜け、慌しく宙へ逃げてゆく。
 そして、そのまま溶けるように、消えていってしまった。
「……失くしたモノに囚われない、そんな風に私はやれてるかな?」
 羽根付き帽子を整えたクーナは、白雪と白百合の銀槍を構え、前を見据える。
 その先の倒すべき敵を、しっかり捉えるように――。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリス・ホワイト
▼幻惑
背を撫でる優しいその感触を、いまでもよく覚えている。
陽だまりの中でまどろむような、そんな幸せと共に眠りたくなることもある。
……けれど、すべては過ぎ去りし郷愁。
僕はもう、ただの猫じゃない。すべて昔の話さ。

▼対策
仲間と分断されてしまった以上、ここはひとりで切り抜けなければいけないようだね。
幻惑を打ち破るためにも、心はしっかりと持つべきだ。
自分を【鼓舞】しながら、前に進もうじゃないか。
まずは【トリニティ・エンハンス】を使って、
【花属性】の魔力で状態異常力を強化しよう。
何、心配することはない。
これが物語だとすれば、どんなお話であっても読み終えてしまえば閉じられる代物だからね。

(アドリブ歓迎)



●微睡みの揺り籠
「ここはひとりで切り抜けなければ、いけないようだね」
 青い瞳の先に広がるのは、白紙のページのような、白い空間だけ……。
 クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は、この幻に囚われているのが、自分1人だけであることを確信すると、上品なフォルムのステッキを、小さく揺らす。
 すぐに、クリスを護り、鼓舞するように、炎と、水と、風の力が集まった。
「よろしく頼むよ」
 集まった花属性の魔力が、クリスの状態異常に対抗する力を、ぐんと高めていく。
 心強い魔力に背を押されたクリスは、ステッキを握り直し、一歩前に踏み出した。

 どれくらい、歩いたのだろうか。
 どのくらい、時間が経ったのだろうか。
 けれど、白紙のページのような、白い景色は変わらない。

 目の前に広がる光景は、クリスには見覚えがない。
 けれど、ふわりと背中を優しく撫でるような感触は、今でもよく覚えている。
 背中と一緒に、心まで解きほぐすような、この微睡みに似た、甘い感覚を――。

「懐かしいな……いや、これは違う」
 クリスは気付く。
 これは景色ではなく『陽だまりの中』だと、いうことを――。

「幻惑を打ち破るためにも、心はしっかりと持つべきだ」
 変わらぬ景色と心地よい温かさに、クリスの瞼がだんだん重くなっていく。
 陽だまりの中で微睡むような、そんな幸せと共に眠りたくなってきた、その時。
 ――チリーン。
 鈴蘭の紋章が彫られた鈴のお守りが、鋭くも涼やかな音を、鳴らしたのは。
「何、心配することはない」
 クリスは「僕は大丈夫」と返すように鈴のお守りに視線を落とし、口元を緩める。
「すべては過ぎ去りし郷愁に過ぎない」
 クリスが頭の上に手を添えると、仕立ての良いシルクハットの感触が伝わってくる。
 逆の手には、艶のあるステッキが、強くしっかりと握ったままだ。
「僕はもう、ただの猫じゃない。すべて昔の話さ」
 クリスは自身の存在を示すように、強く鼓舞するように、叫ぶ!
 僕は、グリモア猟兵の、クリス・ホワイトだ、と――。

 ――チリーン。
 もう1度だけ鈴の音が鳴った。

●夢の跡
 ――パラパラパラパラ。
 クリスの覇気に気圧されたのだろう。纏わりつくように飛び交っていた本が、慌しく飛び去ると同時に、宙に消えていく。
 視線を戻したクリスが周囲を見回すと、時間はそれほど経っていない感じだった。
「どんなお話であっても、読み終えてしまえば、閉じられる代物だからね」
 ――物語には、必ず終わりがある。
 もう1つの物語に終止符を打たんと、クリスは広間の奥を目指して、歩き出す。
 その背中は、少しだけ誇らしく見えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワルゼロム・ワルゼー
【WIZ】
教団の運営が大成功!一生お布施生活の左団扇!
「ふははは、猟兵しながらせかせか稼ぐなど、やめ、やめ。
我はこれから死ぬまで楽して暮らすのである!」

――否。我が真に求めるは、修羅道に近きもの。教導の果てには数多の死と嘆き、恨み辛みを残すであろう。
そんな道程に、もとより我が身の幸せなどあるものか。よって幻惑の陥穽など一切が無意味。我自身、幸福の展望が見えていないのだから。

この命が尽きるときまでに小さくてもいい、一つぐらい凡人らしい幸せを見つけることができればよいのだがな。



●求道者の路
 ――教団「システィ・マリス」
 人生の謳歌と腐敗した世界の救済を掲げた教団の教祖たる、ワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・f03745)の不断の努力が実り、その評判はうなぎ登り!
 教えを請いたいと門を叩く者は連日増え続け、今日も教団は活気で満ち溢れていた。
「ワルゼロム様、教団は先月も今月も絶好調です!」
「お布施もドンドン入ってきてますね、そろそろ支部も検討してみては如何でしょう?」
 ワルゼロムに声を掛ける信者たちは、皆生き生きとして、幸福で満たされていて。
 磨かれた大理石の上に紫の髪を優雅になびかせ、豪華な椅子に悠々と腰掛けたワルゼロムは、壇上下に集まった信者たちの顔を見回すと、覇気のある声を高らかに上げた。
「ふははは、猟兵しながらせかせか稼ぐなど、やめ、やめ。我はこれから死ぬまで楽して暮らすのである!」
 教団の運営は、大成功!
 一生お布施生活の、左団扇!
 猟兵なんて3K過ぎるし、もうこのままここで一生楽に暮らして――。

 ――否。

「我が真に求めるは、修羅道に近きもの」
 ワルゼロムの足場が、豪華な教団の壁が、磨かれた大理石の床が、瞬時に死骸の山へと変わっていく。
 教導の果てに残るのは栄華ではない。数多の死と嘆き、恨み辛みという残滓の路。
 決して綺麗な道のりではないことを、教祖たるワルゼロムは良く知っている……。
 幸福を『修羅道』で上書きすることなど、何の躊躇いも、問題もなかった。
「我に幻惑の陥穽など、一切が無意味」
 ワルゼロムは迷うことなく立ち上がると、風を切るように前へ突き進んでいく。
 その時だった。彼女の霊衣の裾を、無数の手が掴んだのは――!
「私たちが不幸になるとわかって、前に進もうとするのですか?」
「そうです、僕たちはこのままで幸せです。それじゃあ駄目ですか?」
 信者たちは皆、此処にとどまるように、縋るように、ワルゼロムに纏わりつく。
 ワルゼロムは短く笑いを殺すと、世界の真理が書かれている噂の外典に魔力を籠めた。
 自分は生まれながらの導く者。ならば『訊すこと』も、教祖たる者の役目――!
「そんな道程に、もとより我が身の――我が教団の幸せなど、あるものか!」
 高めた魔力が爆ぜた刹那。
 かき消されるように、視界が赫から、青に染まっていく。

●夢の跡
 自分自身、幸福の展望が見えていない。ワルゼロムはそう思っている。
「この命が尽きるときまでに小さくてもいい、一つぐらい凡人らしい幸せを見つけることができればよいのだがな」
 ――人を導く者は、強くなければならない。
 それを信念に、ワルゼロムは今日もたゆまぬ努力を続けていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルファ・オメガ
「がうー、今度はとても幸福な幻惑を見せる罠かあ」
とても幸福なって言われるとなんだろう?
そういえばお腹すいた…お肉食べたい…

がう!?なんかお肉いっぱい出てきた!
わーすごーい!量も種類もいっぱいだー!
食べきれるかなー?あれもこれも味見したいなー
がう、いただきまーす!

がうー、いっぱい食べると眠くなるのは猫の習性…
おやすみなさーい…むにゃむにゃ幸せ…

……うーん、やっぱり幻惑じゃお腹は膨れないねー
それに、美味しいご飯もひとりじゃちょっと味気ないかな?
がう、旅団に帰ったら皆でワイワイご飯食べよー!
だから、この幻惑はここでおしまい
少しの間、幸福をありがとう!
ボク、いくね!



●幸福に満たされて
「がうー、今度はとても幸福な幻惑を見せる罠かあ」
 ――パラパラパラパラ。
 無数の本がページをめくる雑音に耳を傾けながら、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)は思う。自分にとって『とても幸福な夢』は、何だろう、と。
「そういえばお腹すいた……お肉食べたい……」
 ぐぎゅるるるるぅ。
 と、アルファのお腹の虫が、盛大に抗議した時だった。
「がう!? なんかお肉いっぱい出てきた!」
 待ってましたと言わんばかりに視界が開け、一面に並ぶのは、最高級品のお肉たち!
 好奇心赴くまま、アルファが赤身と霜降りが細かく折り重なった、厚みのある焼き肉を口に運ぶと、噛み切る前にトロリと溶けてしまうほど、柔らかい。
 そして、美味しいっ!!
「わーすごーい! 量も種類もいっぱいだー!」
 手前の熱々の骨付き肉も、外はパリっとしてるけれど、中は肉の甘みがギュっと詰まっていて、とってもジューシー!
 その奥の一晩醤油に漬け込んだあと炭火でじっくり焼き、ふわっと炊いた白米にこれでもかと肉を乗せたタワー肉丼なんて、もはや食べ物ではなく、飲み物であーる!
「食べきれるかなー? あれもこれも味見したいなー」
 叩きに煮込み、串焼き、肉寿司、丸焼きなど、古今東西のお肉のオンパレード!
 忙しなく視線を動かしていたアルファは、意を決して肉球をぽんと合わせた。
「がう、全部いただきまーす!」

 暫くして。
「がうー、いっぱい食べると眠くなるのは猫の習性……」
 幸せをお腹いっぱいに詰め込んだアルファは、そのまま、おやすみなさーい。

 ――には、ならなかった。

「美味しいご飯も、ひとりじゃちょっと味気ないかな?」
 お腹を軽く触ったアルファは、逆に現実感を覚えて、しょんぼり肩を落とす。
 ――やっぱり、美味しいものは皆で食べたい。
 そうアルファが確信した時、身体の内側から温かいものが、ぶわっと湧き上がった。
「がう、旅団に帰ったら、皆でワイワイご飯食べよー!」
 未来を見据えて力強く立ち上がる、アルファ。
 幻も慌てるように、これでもかと最上級クラスのお肉を大量投下するけれど、毛づくろいを済ませたアルファは、瞬時に後ろ足に力を込めた。
「ボク、いくね!」
 幸せな幻惑は、ここでおしまい!
 固い意思を持って物語の終わりを告げたアルファは、強く大地を蹴る。
「少しの間、幸福をありがとう!」
 そしてそのまま一陣の風になり、幸福の雨をすりぬけていく――。

●夢の跡
 瞬間。アルファの視界からお肉が全て消え、一面に青が広がる。
 誰もいなくなった幸福の海。そこで虚しく羽ばたくのは、偽りの物語だけ……。
 そして、飛び交う白は全て消え、後には静寂だけが、残されていた――。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『スペシャル・ライター』

POW   :    修正箇所
【修正箇所を確認する目の青白い光】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    印字作業
【26個のキーから青白い光】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    より良い作品を
対象のユーベルコードに対し【正確に全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はライラック・エアルオウルズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●書の海に沈むモノ
 ――深淵。
 下層はその名に相応しく、まるで海底のように、書物が積み重なっていた。
 元々は巨大な書斎のような空間だったのだろう。中央にはぽつんと重みのある木製の机が置かれており、その周りには書きかけの原稿が、山積みになっている。
 その隙間から、真鍮(しんちゅう)色の機械のようなモノが、忙しなく動いているのが、垣間見えた。

 ――幸福な物語だけでは、心を震わせることは、叶わなかったようだ。
 ――やはり、心を震わせるには、負の感情に書き変えるのが、効果的のようだ。
 ――私は修正する。物語の結末は、――絶望である、と。

 カタカタカタカタカタカタカタカタカタ。 
 激昂する感情をぶつけるように、文字を原稿に叩きつけていく災魔は、そこで時間が止まっているかのようにも見えて……。
 ――否。彼の時間は本当にそこで止まったまま、骸の海に飲み込まれたのだろう。
 カタカタ、カタン。
 不意にタイプ音が止まる。
 そして、無機質な青白い双眸が、ゆっくり猟兵たちへと剥けられた。
「修正スル。マズハ、彼ラカラ、修正スルノダ」
 素早く武器を構えた猟兵たちに、災魔――スペシャル・ライターも、真鍮色の身に纏う26個の青白き光を、爛々と輝かせる。
 ――此処に。書の迷宮の物語の幕が、切って落とされようとしていた。

 ※第三章につきまして
 都合により、執筆は【3月2日(土)朝9時】から開始いたします。
 上記の時間までに期限を迎えたプレイングは、一旦お返しすることになります。
 ご迷惑とお手数お掛けします、宜しくお願いいたします……!
カリオン・リヴィエール
他人の物語を修正するとは、傲慢ですね。そんなに物語を紡ぎたいなら、自らが物語の結末になればいいんですよ。
ユーベルコードで、終焉を迎えさせてあげましょうか。ちなみに、暗殺者の名前はウルといいます。
こちらにも攻撃が飛んできたら、真の姿を解放します。黒い靄のようなものとなります。

共闘、苦戦いかようにも!


セルヴィ・アウレアム
「スペシャルタイプライター……とか言ったっけか。人の心の傷を抉る。それ自体は至極まっとうな戦術やと思うで。」
「せやからな。……それが破られた以上、相応の罰は受けてもらうで!」

●行動
POW「UC/『迷宮喰らい』」を使用。
スペシャルタイプライターに接敵し、左手でライターの体を無造作に掴む。
そのまま「内蔵ハンド・ファーニス」を用い、ライターの体を『迷宮喰らい』の発動コストにする。
迷宮喰らいからの抵抗はガードせず、食らえるところまで喰らった時点で腕部から巨大な槍を生成し、ライターの顔を狙って突き刺す。


ユエイン・リュンコイス
初手、「月墜」による先制射撃を行う。弾種榴弾、水平射。
キミが悪いのかどうかは分からないけど、取り敢えず御礼にこれを受け取ってほしい。なに、別に他意はないよ、うん。

射撃後は再利用せず投棄し、そのまま接近戦へ移行。黒鉄機人による格闘戦を仕掛けつつ、ボクは「観月」の援護射撃にて支援。
相手は光が主な攻撃方法かな? 「水月の識眼」の遮光モードや、機人の陰に位置取り、光を直視しないよう注意。視界を封じられないように立ち回るよ。

ルールを課せられたら逆に好機。それを破ってでも強引に機人を吶喊させ、【絶対昇華の鉄拳】を叩き込もう。
紙に火気は厳禁だろう?
絶望の脚本を破却し、大団円の結末を見せてあげようか!



●書の迷宮の物語〜決戦
「他人の物語を修正するとは、傲慢ですね」
 仄暗き、深淵の中。
 明確な殺意を込めた青を弾き返すように、カリオン・リヴィエール(石を愛す者・f13723)は、赤色の瞳をすっと細める。
 大切な大切な思い出に土足で踏み込み、そして弄んだ輩には慈悲など、ない。
 そう、突きつけるように――。
(「相手は光が主な攻撃方法かな?」)
 ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)が小さく瞳を瞬くと、眼球装着型デバイスが、瞬時に遮光モードに切り変わる。
 視界が少しだけ薄暗くなるものの、戦いに支障はなさそうだ。
「スペシャルタイプライター……とか言ったっけか。人の心の傷を抉る。それ自体は至極まっとうな戦術やと思うで」
 その隣で拳を軽く鳴らしていた、セルヴィ・アウレアム(『迷宮喰らい』セルヴィ・f14344)もまた、黒い瞳を据わらせたまま、鋭く吐き捨てる、が。
「否。スペシャル・ライター、デアル」
「そうそう、スーパータイプライターやったな! ってウチに漫才させんな!」
「即刻、訂正ヲ、要求スル」
 直すどころか、面白可笑しくするのが、ライターという生き物なのか!
 真顔で告げるスペシャル・ライターに、セルヴィは危うく釣られそうになるものの、直ぐに態勢を整えると、しなやかに地を蹴った。
「せやからな。……それが破られた以上、相応の罰は受けてもらうで!」
「そんなに物語を紡ぎたいなら、自らが物語の結末になればいいんですよ」
 セルヴィが駆け出すと同時に、カリオンも赤茶色を追うように、一陣の風になる。
 逆に。先陣を切った仲間のサポートに徹しようと後方に下がったユエインは、真っ直ぐ射抜くように、真鍮色を見据えた。
「キミが悪いのかどうかは分からないけど、取り敢えず御礼にこれを受け取ってほしい」
 ――なに、別に他意はないよ、うん。
 そう、ユエインが口元を緩ませたのも一瞬、傍の黒鉄の機甲人形に鋭く命じる。
 同時に。戦場の空気が、ドンッと震えた。
「弾種榴弾、水平射!」
 黒鉄機人から正確無比に放たれた砲撃が、スペシャル・ライターの左肩に爆ぜる。
 ぐらりと真鍮の身体が右側へ傾くや否や、間合いを詰めたカリオンがスペシャル・ライターに終焉を与えるべく、古の殺戮者の名を短く呼んだ。
 ――ウル、と。
「影に紛れし者よ、人知れず朽ち果てし者よ……我が声に応え今甦れ!」
 カリオンの影が大きく伸縮し、瞬く間に古の殺戮者へと姿を変える。
 そのまま右脇腹に肉薄した殺戮者が死角から刃を煌めかせると、スペシャル・ライターも横薙ぎの一閃を避けるべく、身体を左に背けながら、短くタイプ音を打った。
「ヨリヨイ作品ヲ、書カナケレバ。ヨリヨイ作品デ、上書キシナケレバ」
 影と真鍮の間に割り込むように躍り出たのは、カリオンのものと全く同じ影。
 影と影がぶつかり、激しい鍔迫り合いを繰り広げる。
 そして、迫り合い負けた真鍮に火花が奔り、大きく仰け反ったスペシャル・ライターの左腕を、セルヴィが無造作に掴んだ。
「ウチを本気にさせたこと、後悔すんなや。……一切合切、喰ろうてくれる!」
 セルヴィの腕に内蔵した溶練機関が、スペシャル・ライターの腕を溶かしていく。
 溶かした金属を喰らって全身の強化に当てたセルヴィは、強烈な眩暈に堪えながら、逆の手をスペシャル・ライターに向けた時だった。
「修正箇所発見。POWノ攻撃ヲ却下スル」
 青白く爛々と輝いた双眸が、セルヴィに攻撃の停止を宣告する。
 身体の内側から浸透する衝撃にセルヴィの顔が歪むものの、奥歯にギリッと力を入れ、そのまま大きく前に踏み込んで、青白き光を押し返した。
「ウチらを、未来を、……甘く見んといて!」
 セルヴィの腕部から生成された巨大な槍が、スペシャル・ライターの左頰を砕く。
 眼球装着型デバイスに送られた情報を操作するように瞳を瞬いたユエインも『月墜』を捨て置いたまま、黒鉄機人と一緒に距離を狭めた。
「サポートはボクに任せて 」
 初撃を担う形となった猟兵たちが、POWとWIZを主体にしているのもあり、SPDによる範囲攻撃が来る素振りは、見られない。
 格闘戦は黒鉄機人に託し、ユエインはその陰に隠れるように、月の名を冠したマルチガジェットを構える。
「ありがとうございます」
 頼もしい援護射撃に背を押され、カリオンは再び戦場の風になる。
 埃が薄っすらと舞う闇の中。幾つもの刃が奔り、火花が弾け、煌めいた。
「修正箇所発見。POWノ攻撃ヲ却下スル」
 怒りで爛々と輝く青白き双眸が、再びセルヴィに剥けられた時だった。
「絶望の脚本を破却し、大団円の結末を見せてあげようか!」
 そのルールを逆に好機だと捉えたユエインが、黒鉄機人と共に距離を詰める。
 迎え撃つスペシャル・ライターもまた、零距離からの青白い光をユエインに見舞った。
「……っ!」
 内側から蝕むような苦痛で身体が軋みつつも、ユエインは強引に機人を進ませる。
 ――前へ、前へ、進め、と!
 そして、機人が大きく振わんとする右掌に合わせて、ユエインは瞳を見開いた。
「白き指先、繋がる絹糸、振るわれるのは昇華の鉄拳……欠片も残さず、無に還れ」
 黒鉄機人の右掌から発せられた高熱が、スペシャル・ライターに強烈な一撃を叩きこみ、放たれた絶対昇華の炎が、真鍮色の身体をみるみるうちに焦がしていく。
「紙に火気は厳禁だろう?」
 金属が燻る匂いが書斎のような空間に広がり、ユエイン達の鼻孔を刺激する。
 ……炎と煙の奥。その隙間から真鍮色の機械が、よろよろと起き上がる。
 そして、戦いは始まったばかりだと告げるように、強烈な怒りと殺意で満ち溢れた双眸を、猟兵たちへ剥けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

クリス・ホワイト
【WIZ】
彼が今回の災魔の正体なんだね。
機械染みた造りに反して、案外単純じゃあないか。
幸福な物語で望みが叶わないなら、絶望に変えようだなんて。
――まぁいい。君に僕の物語を修正できるとは思わないからね。

▼戦闘
近くに仲間がいるなら、彼らと共闘しよう。
僕が使用するのは【過ぎ去りし花燭】。
【花属性】の攻撃は得意だからね。彼がボスなら此方も【全力】で行かせてもらうよ。
もし絶望に飲み込まれそうな仲間がいたなら、そっと【鼓舞】を送ろう。
君の物語は、君だけの物なのだから。迷うことはない。

物語において、絶望を否定する気はないんだ。
ただ、彼のやり様ももう少し違ったなら、と考えてしまうよ。
(連携、アドリブ歓迎)


クーナ・セラフィン
ああ、やっぱりダメな方か。
震わせる事が出来ない、だからと言って書き上げたものを書き換えるというのは三流作家だよ。
絶望を書くなら書けばいい、けれどそれは新しくやるべきだと。
…私ならそう思うけどにゃー。
とりあえず、故障品が人に迷惑をかける前に片づけてしまわないとね。

基本は援護攻撃。
その双眸に向けてUC発動、連射はせずここぞという時に視界を塞ぎ惑わそう。
害する事しかできない眼は幻に。上手くやれれば光を放つキーも凍らせたりして挙動を妨害できるかな。
或いは相殺されるかもしれないけど、一瞬視界を潰せたなら機会はある。
敵が此方を見失った瞬間身軽に跳び跳ね上から槍で串刺しにしてやろうか。

※アドリブ連携等お任せ



●書の迷宮の物語〜大義の傀儡
「君の物語は、君だけの物なのだから。迷うことはない」
 スペシャル・ライターの激昂が轟く中、駆けつけたクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)の鼓舞に似た言葉が、猟兵たちの緊張を優しく取り払う。
「震わせる事が出来ない。だからと言って、書き上げたものを書き換えるというのは、三流作家だよ」
 白雪と白百合の銀槍を構えたクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は火とススで塗れた真鍮色を、観察するように見据える。
 目の前で燻る災魔は先陣の猟兵たちの攻撃を受け、体力を大きく消耗している。
「シ、修正スル。全テヲ、修正スル」
 ……あと一押し。
 けれど、油断してはならない状況だ。
「彼が今回の災魔の正体なんだね。機械染みた造りに反して、案外単純じゃあないか」
「とりあえず、故障品が人に迷惑をかける前に、片づけてしまわないとね」
 世間話でも持ち掛けるようなクリスに、クーナもまた藍色の瞳を柔らかく細めて。
 ――否、それは共闘の合図。2人のケットシーは素早く地を蹴った。
「害する事しかできない眼には幻をくれてやる」
 先陣と切り替わるように駆け出したクーナが、青白き双眸を狙って銀槍を突き出す。
 スペシャル・ライターもまた、正面からの突撃に備えて、護りを固める、が。
「こんな趣向はどうだい?」
 それも計算の内だと応えるように、クーナが速度を緩めた、その刹那。
 銀槍から解き放たれた雪混じりの花は瞬く間に吹雪となり、災魔へと吹き荒れた。
「ヨリ良イ作品ヲ、作ルノダ」
 即座に反応したスペシャル・ライターもまた、キータイプ音を短く打つ。
 青白き双眸から放たれた全く同じ花吹雪が、鍔迫り合うように、激しく衝突する。
 一拍置いて。クーナの花吹雪が押し切り、災魔の双眸を穿った。
「ウゥ、アアア!」
 青白き瞳から広がる氷雪が、みるみるうちに真鍮色の身体を侵食する。
 見たくもない幻に身体を折り曲げる災魔。隙だらけの背に、クリスが回り込んだ。
「君、花は好きかい?」
 前方の花吹雪と挟むように、クリスは高らかにステッキを掲げ、先端を揺らす。
 身に纏う魔法の杖と剣も、無数のバイカウツギの花びらへと、姿を変えていき――。
「――まぁいい。君に僕の物語を修正できるとは思わないからね」
 自分の物語を変えるのも選ぶのも、他ならぬ自分だけ。
 そう告げるようにクリスが指先を振ると、無数の花びらは瞬時に刃へと変貌する。
 スペシャル・ライターもまた、全く同じ白き花で、相殺を狙わんとする、が。
「……ク、身体ガ、動カヌ!」
 一瞬とは言えど、視界が潰されて動きを止められた、その代償は大きい。
 白き花の暴風を前に為す術はなく、スス塗れの真鍮は深く抉られ、削られていく。
 ――同時に。
 一気に距離を詰めたクーナが大きく躍動し、振り下ろすように、銀槍を突き刺した。
「……私ノ物語ハ、心ヲ震ワセルコトハ、叶ワナイノカ」
 半歩後退し、弱々しくキーを叩く災魔に、クリスは宝石のような瞳を瞬く。
「物語において、絶望を否定する気はないんだ」
 ただ、やり方がもう少し違っていたならば……と、クリスは思う。
「絶望を書くなら書けばいい、けれどそれは新しくやるべきだ」
 銀槍を構えたままクーナが重ねた言葉に災魔は動きを止め、そっと天を見上げた。
「ナルホド。絶望ヲ否定セズ、新シキ路ヲモ示ス、カ……ハッ、此ノ物語ハ!」
 互いに許すわけでもない、互いに引くわけにも行かない。
 けれど、ありのままの気持ちを、全力でぶつけあう。――この感覚は!
「私ガ捨テ去ッタ結末ヲ、私自身ガ体験シテイル! 面白イ、実ニ愉快デアル!」
 ――嗚呼、今なら、実体験を元にした物語を描くことが、できる!
 ――否。それだけではない!
「今此処ニ私ノ心ハ震エテイル! 嗚呼、骸ノ海ニ帰スノガ、惜シイ! ……否、全力デ送ッテ貰ッタ方ガ、ヨリ良イ物語ガ、書ケソウダナ」
 憤怒から一転し、チラっチラっと猟兵たちを見てくる、スペシャル・ライター。
 そのお目目は「全力で倒してね」と、此方の理解を超えるものになっていた……。
「ああ、やっぱりダメな方だにゃー」
「まぁいい。此方も全力で行かせてもらうよ」
 っていうか、ダメ過ぎるだろ、このライターあああ!!
 思わず天を仰ぐクーナ。クリスが小さく肩をすくめると、鈴のお守りもまた、涼やかな音を鳴らして、応えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルファ・オメガ
「がう、やっと見つけたー!」
こいつを倒せばこの迷宮も前みたいに使えるね!
よーし、やるぞー

先制攻撃はれっど・ふぁいあでどーん!
こっちに注意を引きつけたら
エレメンタル・ファンタジアで仕掛けるよ!
暴走した時ボクが自爆するくらいならいいけど、
他の人が巻き込まれるのはマズイから声かけてからいくね
「くらえー! 炎ノ霹靂!」
5回に1回くらいは暴走して自分に落ちてきそうだけど、
気にせずどんどんいくよ(涙目)
相殺されるかもだけどもしかしたら相手も自爆するかもしれないし!
大きな隙ができたら、ぶらっく・せいばーで駆け抜けながら切りつけるよ!


ワルゼロム・ワルゼー
(アドリブ・連携歓迎)

物語の結末とは、己の行動を以て演じるものよ。物書きの絡繰如きが、人様の運命を語るなど烏滸がましいにも程があろう。どれ、自分の散り様でも存分に書かせてやるとしようか。

呪詛を込めた闇の属性攻撃を弾丸状にして狙撃。さらに高速詠唱による原罪のフラクタルで、敵のカウンターよりも早く叩きこんでくれよう。
敵の攻撃に対しては、第六感・残像で回避。
さらに攻撃チャンスに恵まれるなら、高速詠唱を利用して、敵のカウンター速度を上回る速さで原罪のフラクタルを可能な限り打ち込もうかな

己の物語の終わりは、幽世の底で書くが良いさ



●書の迷宮の物語〜激情の果てに
「がう、やっと見つけたー!」
 猟兵たちと対峙する災魔を射程に納めるや否や、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)は、肩に担いだ大口径熱線銃の引き金を、強く引く。
 ――ドンッ!
 戦場の空気が震えると同時に、弾丸に抉り飛ばされた、スペシャル・ライターの右腕が、ありえない方向に大きくねじり曲がる、が。
「新手カ、面白クナリソウダナ」
 けれど、己が全てを賭すことを決めた災魔は、楽しそうに青白き双眸を灯すだけ。
 その怪しき光と視線を遮るように、ふわりと鮮やかな紫がなびいた。
「物書きの絡繰如きが、人様の運命を語るなど、烏滸がましいにも程があろう」
 物語の結末というのは、己自身の行動を持って演じるもの。
 満身創痍の真鍮色と対峙し、涼しげに緑色の双眸を細めたワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・f03745)は、素早く呪詛を込めた闇の弾丸を撃ち込む。
 ――同時に。
 スペシャル・ライターもまた、弾丸の軌道を避けるべく、後方に飛び退く。
 辛うじて軌道から逃れた災魔が、態勢を立て直そうとした、その時だった。
「ここはボクに任せて!」
 災魔がワルゼロムと距離を取った一瞬を狙って、アルファが躍動する。
 黒い刀身を高らかに掲げたアルファを中心に、炎の竜巻が巻き起こり、そして――。
「くらえー!  炎ノ霹靂!」
 周囲の本や原稿用紙を巻き込みながら、炎は激しい奔流と化す。
 地を舐めるように迫り来る超常現象に対し、傷塗れの真鍮は嬉々とキーを鳴らした。
「ハハハ、コレハ面白イ物語ガ、書ケソウダ!」
 狂気を秘めた双眸から放たれた、全く同じ朱き竜巻が、アルファを飲み込む。
 ――刹那。タイミングを測るように懐に滑り込んだワルゼロムが、小さく息をついた。
「どれ、自分の散り様でも存分に書かせてやるとしようか」
 ワルゼロムは、そのまま災魔の鳩尾目掛けて、拳を真っ直ぐ突きだす。
 同時に。高速詠唱で紡いだ伸縮自在の闇刃を、勢いよく零距離から叩き込んだ。
「ククク、マダダ。モット諸君ノ本気ヲ、見セタマエ!!」
 しかし、スペシャル・ライターは、倒れない。
 むしろ覚悟を固め、1人でも多くの猟兵を道連れにしようと、魔力を高めていて。
 次の一撃で最後になるのは間違いない。ワルゼロムとアルファは視線だけを交わした。
(「少々危険であるが、これは攻撃のチャンスに恵まれたとも言えるな」)
(「こいつを倒せばこの迷宮も前みたいに使えるね、頑張るぞー!」)
 窮鼠猫を噛む、ということわざがある。
 教団に伝わる外典を手に、ワルゼロムは高速詠唱で魔力を高め、毛並みが少しだけ焦げて涙目になっていたアルファも、すぐに前向きに思考を切り替えて、前を見据えた。
「よーし、やるぞー」
 アルファはもう一度、刃紋に紅が入った黒き刀身を、高らかに煌めかせる。
 朱き大渦の範囲が広がっていく。それを正面から見据えたまま、スペシャル・ライターも、狂気と激情に駆られた双眸を瞬かせた。
「二度モ、ウマクイクト、思ウナ!」
 拮抗した朱と赤の凶渦が、再び戦場にて激しくぶつかり合う。
 全員が固唾を飲んで見守っていたその時、両者の炎の渦が突如乱れ、暴発した。
「がぅっ!?」
「ッ、マサカ、同時ニ暴走スルトハッ!!」
 乱れた炎の奔流の余波で、アルファの小さな身体が後方に吹き飛ばされる。
 災魔に至っては強く地面に叩きつけられ、一瞬、呼吸を止めてしまうほどで。
 ――それが、スペシャル・ライターにとって、致命傷となった。
「その眼で然りと刮目するがいい」
 その隙を逃さず、身を低くして疾走したワルゼロムが、瞬時に距離を詰める。
 そのまま懐に潜り込むと、拳に集めていた全ての魔力を、一気に解放した!
「衆生済度、寂滅為楽。我が慈悲と憐憫を、その身に刻んでくれようぞ!」
 裂帛の気合と共に突き出されたワルゼロムの拳と闇刃は、災魔の背をも打ち砕く。
「……良イ、物語ガ、書ケソウダ」
 スペシャル・ライターが視た、最後の光景。
 それは、踵を返す荒ぶる教祖の背と、武器を納めるアルファと猟兵たちの姿。
 未来を生きる命たちは、安堵を浮かべながらも、晴れ晴れとしていて……。
「己の物語の終わりは、幽世の底で書くが良いさ」
 崩れ落ちる機械仕掛けのライターを背に、ワルゼロムは、ぽつりと呟く。
 ――それが。書の迷宮に『平穏』という物語が訪れた、瞬間だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月07日


挿絵イラスト