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ショコラに恋して~迷宮ショコラティエールの侵攻作戦~

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●迷宮侵攻
「くそっ、なんて数だ!」
「必ずここで止めるのよ! 突破されれば大惨事になる!」
 人間大のクレイゴーレムの大群を、アルダワ魔法学園の学生達が食い止めていた。
 戦場と化した迷宮のそのエリアは、さながら大食堂のようだ。縦に長い広間には、百人以上も並んで着席できそうな長テーブルが三台もある。天井からは様々な高さにシャンデリアが吊り下げられていて、低い位置に下がっていたものを、テーブルに乗ったゴーレムが腕で薙ぎ払った。
 学生達が銃を構えて弾丸を撃ち込むが、泥人形のゴーレム達は損傷など歯牙にもかけず突き進んでくる。
 その一団の奥から、突然、鈴を転がすような声があがった。
「ああ悲しいわ、なぜ私の前に立ち塞がるのかしら」
 歩み出てきたのはチョコレートの装飾が目を引く奇妙なドレスの少女だった。スカートの裾を両手でつまんで一礼する。
「申し遅れました、私は迷宮ショコラティエール」
 恭しいカーテシー。戦場の只中にあってその様は明らかに異質だ。
「くっ……止まって……止まれぇぇっ!」
 接近戦で傷を負った少年の前で、学園生の少女がゴーレムに銃を連射する。
「あら、貴女もしかして……? 止まりなさい、ゴーレム」
 二人が肉塊にされようとした直前、振り上げられたゴーレムの腕が停止した。
「恋は時に甘く、ほろ苦いショコラに似て……」
 指揮棒でも振るうような迷宮ショコラティエールの仕草に合わせて、ゴーレムが二人の学生を軽々と薙ぎ払う。
「さあ参りましょう。ショコラへの愛が足りない哀れな者達に思い知らせてやるのです」
 呼応したゴーレム達が肩を怒らせて前進する。
 防衛線の突破も最早、時間の問題だった。

●防衛の為に
「アルダワ魔法学園の地下迷宮で災魔の侵攻が確認されました。皆さんの力が必要です」
 書架に囲まれたグリモアベースの中で、化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)が猟兵達に頭を下げる。
「現在、強力なオブリビオンに率いられたクレイゴーレムの一団が迷宮を逆進行しています。迷宮内で、辛くも学生達に食い止められているのですが……」
 侵攻は苛烈で、このまま何もしなければ突破されるのは確実だ。
「そこで皆さんには急ぎ戦場に転移の上、クレイゴーレムの群れと、それらを率いるオブリビオンを撃破して頂きたいのです」
 ゴーレムを率いているのは、自らを迷宮ショコラティエールと名乗るオブリビオンだ。
「迷宮ショコラティエールは、チョコの魅力に取り憑かれ、チョコを愛そうとしない全ての人を恨むようになったチョコ職人の成れの果て、のようですが……詳しいことは分かっていません」
 恋する乙女には一片の優しさを見せると言う情報もあるが、オブリビオンである以上、猟兵とは滅ぼし合うのが運命だ。確かなのは、このままでは迷宮が突破され、学園内に大きな被害が出るということ。
「戦場となっている迷宮の広間は、まるで大食堂のような構造をしているようです。百人以上が並んで席につけるような長テーブルが三つ。天井からは様々な高さのシャンデリアが吊り下げられています」
 うまく地形を利用すれば戦闘を有利に運べるかもしれない。
 そこまで語ると、那由他は思い出したように言った。
「あ、戦いに勝利したら、学園内の温室カフェで寛がれては如何でしょう」
 学園の中にある植物園のような温室カフェでは、多種多様なチョコレートが楽しめる。
「ホットチョコレートや真っ赤なベリーが載ったチョコケーキもオススメだそうですよ」
 色とりどりの花々に囲まれながら、甘くゆったりした時間を過ごせることだろう。勿論、侵攻を食い止められれば、の話だけれど。
「皆さんならきっと解決できると思います。どうぞ宜しくお願いします」


相馬燈
 相馬燈です。迷宮ショコラティエールを名乗るオブリビオンが、クレイゴーレムを引き連れて迷宮を逆侵攻してきています。防衛戦が繰り広げられているので、戦場に転移後、敵を全滅させ侵攻を防ぎましょう。

●戦場
 迷宮内部の、大食堂めいた縦に長い大広間です。百人以上が席につけそうな長テーブルが三つ並べられていて、シャンデリアが様々な高さに吊り下げられています。上手く使うとスタイリッシュな戦闘が出来るかも知れません。

●第一章の目的など
 まずは大広間でクレイゴーレムを撃破しましょう。状況的に、第一章の時点ではボスに攻撃は届かないものとお考え下さい。迷宮ショコラティエールとの対決は第二章で行われます。

●第三章について
 逆侵攻を食い止めることができれば、学園内の温室カフェでゆったりとした時間をお楽しみ頂けます。植物に囲まれた豊かなカフェ店内では紅茶やコーヒーのほか多彩なチョコレートのお菓子を味わえるようです。

 以上です。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『クレイゴーレム』

POW   :    上官を呼ぶ
自身の身長の2倍の【クレイゴーレム】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    仲間を呼ぶ
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【クレイゴーレム】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    配下を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【クレイゴーレム】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シェルティス・レグナード
「さあ、戦の始まりだ!」
転移直後にユーベルコードの咆吼を使用、同じ依頼を受けた味方に活力を与え能力をブースト
その後は乱戦、機動力を生かしテーブルからテーブルへ飛び移り、味方をサポートしつつクレイゴーレムの数を減らしていきます


黒木・摩那
★雑魚はまとめて片付ける
【WIZ】

チョコの恨みで逆侵攻するとかマジ迷惑なんですけど。
このまま学園までたどり着いたら、学園中がチョコでべたべたになりそう……
それは勘弁ね。
とにかくクレイゴーレムの進撃をここで食い止めるため、頑張ります。

手持ちの中のUCで数減らしに効果があるのは「風舞雷花」。

まずは電脳ゴーグルを駆使して、ゴーレムの配置を確認します。
かつ、味方を巻き込まないような位置を見つけます。
長テーブルの上を走っていけば早いですかね。
狙いの場所に着いたらUCを発動します。

向こうの方が数が多いようなので、相手に近づかれない内に仕掛けます。


箒星・仄々
心情
確かにチョコは美味しいです!
でもそれで人を傷つけていい訳はありません

過去そのものであるオブリビオンさんの
その頑なで囚われたお心を
倒すことで解放して差し上げたいです

まずはゴーレムさんたちを撃破しますよ!

手段
魔法で宙に溶けるように姿を隠した後
一気に残像分身して一斉攻撃!
シャンデリアを振って落下攻撃したり
長テーブルの下に潜って眩ませたりと
分身さん達&私が様々な動きをしながら
小柄な体を活かして懐に飛び込んで
炎の魔力で刃が高熱を帯びたKナーゲル(=トリニティで攻撃力↑
で泥を溶しながらで貫きます
:迷彩&忍び足&残像&早業&先制攻撃&見切り&属性攻撃&串刺し

敵攻撃は迷彩&残像&早業&見切り&忍び足で回避


トール・テスカコアトル
「うわあああぁ!うわあああぁ!」

斧を振り回す!ブンブン振り回す!
ごめんなさい一緒に来た猟兵さん達!
あんまり、周り見る余裕無いの!

「最初に見たときは、ちょっとかわいい!って思ったのに!黙ってたくさん迫られると……ひぃ!」

……でも

【勇気】を出して心を落ち着けたら、こいつ!

「弱点発見!……かも」

頭が光ってて、いかにも弱点って感じ!

広いから、攻撃を大きく下がったり、振り回して凌ぎながら観察するよ

「おっきくって、当てづらい……なら!」

怖いけど、これしかない!

「うおりゃあああ!」

【捨て身】で懐に踏み込んで、細っこい足に斧を叩きつける!

態勢崩して頭が下がったら

「くらえぇーーー!!」

ぶっ潰すよ!



「さあ、戦の始まりだ!」
 ゴーレムの大集団が進撃するその広間に、シェルティス・レグナード(人狼の探索者・f10672)の咆哮が轟き渡った。
 彼と同じく転移してきた猟兵達が、反撃の始まりを告げる吠声に背中を押されて一斉に攻撃を開始する。
「見ろ、援軍が来たぞ!」
 数に圧倒され、後退せざるを得なかった学生達も、予想外の味方に俄に活気づいた。負傷した者も傷口を押さえながら腕を振り上げ、ゴーレムの大集団に突っ込む猟兵達に期待の眼差しを向ける。
「うわあああぁ! うわあああぁ!!」
 巨大なバトルアックスを担いで真っ先にゴーレムの群れに突っ込んでいったのは、トール・テスカコアトル(ビビりテスカ・f13707)だ。
 その英雄然とした突撃に学生達が歓声をあげるが、テーブルの上を駆け抜けるトールは早くも涙目だったりする。
(「最初に見たときは、ちょっとかわいい! って思ったのに! 黙ってたくさん迫られると……!」)
 恐怖に目を閉じそうになりながらも、ゴーレムに接近。
 とにかく斧を振り回す。ブンブン振り回す。
 幅の広いテーブルの上を二列縦隊で進撃してきたゴーレムの先頭が、弾け飛ぶように両断された。
「ひぃ!?」
 数に任せて尚もわらわらと迫り来るゴーレムに、トールは足をもつれさせてテーブルから転げ落ちるが、テーブルさえも吹っ飛ばす勢いで滅多矢鱈に巨大斧をぶん回す。
 群れをなして迫る集団には効果があったようで、トールの振るう斧に薙ぎ払われたゴーレムがただの泥の塊に変わっていく。

「チョコの恨みで逆侵攻するとかマジ迷惑なんですけど」
 一方、三つ並んだテーブルの真ん中に乗った黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、高性能ウェアラブルデバイスである電脳ゴーグルを操作していた。
 レンズ部に投影されているのは、迫り来るクレイゴーレムの数と配置だ。
(「このまま学園まで辿り着かれたら、学園中がチョコでべたべたになりそう……それは勘弁ね」)
 そんなことにでもなれば、大惨事もいいところだ。Gから始まるあの虫だって湧かないとも限らない。
 ゴーレムの進撃を食い止めようと、摩那はゴーグルに表示された彼我の位置関係から、自身が力を振るうべき地点を割り出す。 
「味方を巻き込まずに済む位置は……あの辺りですか」
 敵が数で押してくる以上、接近され囲まれては不利になる。
 判断を下した摩那は小さく頷くと、ずっと先まで伸びる長テーブルの上を駆け出した。
 広間のあちこちで猟兵達が戦況をひっくり返し始めているが、まだ戦い始めたばかりだ。数は捌ききれていない。
 テーブルとテーブルの間の床を列をなして行進してくるゴーレムがいれば、テーブルの上によじ登って攻めて来る一団も見える。
 まるで押し寄せる波の如き敵の群れを前に、摩那は位置につくと足を止め、飽くまで冷静に細身の魔法剣を正面に構えた。刀身のルーン文字が光を受けて、万華鏡さながらに輝き、移り変わる。
 摩那は電脳ゴーグルに映し出された敵数と彼我の相対距離を再確認。
 一瞬だけ瞳を閉じ、そして細剣に魔力を込めた。  
「励起。昇圧、帯電を確認。敵味方識別良し――」
 魔法剣が光を放ち、摩那を包み込む。
 次の瞬間、剣そのものから高電圧を帯びた七色の花弁が溢れ出した。
「――散開!」
 目を開き告げた言葉に呼応して、電磁的な音を立てながら多色の花弁が迫りくるゴーレムの群れに殺到する。
 風舞雷花(フルール・デ・フルール)。
 ふわりと舞い、超高速で飛んだ花弁に数えきれない程のゴーレムが貫かれ、四肢を溶かされながら吹き飛ばされて崩れ落ちる。
 七色の花が敵を蹂躙し、敵の数が急速に減っていくのを、摩那は電脳ゴーグル越しに見届ける。


 鎖が断ち切られるような音がしたかと思うと、行進するクレイゴーレムの一団の頭上に突如としてシャンデリアが落ちてきた。
 混乱に陥りながら一ツ目を上下左右に動かして索敵するゴーレム達。その人間サイズの一体に、横一閃の切れ目が走った。溶け折れる土人形。
 ゴーレムや周囲で抗う学生達にも、咄嗟には何が起こったのか把握できなかった。
 テーブルの上を行進していた個体が斜めに斬られて溶け崩れ、別個体が泥でできた足を失って前のめりに倒れると、後ろからきたゴーレムの前進を阻んでしまう。
「数が多いですね……まずはゴーレムさんたちを食い止めましょう」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が俊敏な動きで駆け回り、まるで分身しているかのような残像を伴って、四方八方からゴーレム達を撹乱し撃破しているのだ。
「ゴーレム、しっかり敵を狙いなさい。味方は沢山いるのですから、囲んで囲んで」
 迷宮ショコラティエが敵集団の奥で下知している。
(「確かにチョコは美味しいです! でもそれで人を傷つけていい訳はありません」)
 心を囚われた悲しいオブリビオンを、倒すことで解放したい――仄々は思いながら剣を手に駆け巡る。
 両刃細身の魔法剣、カッツェンナーゲルが宿しているのは炎の魔力。一振りすると、その剣風に吹かれただけでもグレイゴーレムの体は溶融する。
 一ツ目を光らせて漸く仄々を視認したゴーレムが腕を振り上げるが、仄々はテーブルを蹴って軽々と回避。隣のテーブルの下に潜り込んだ。
 ゴーレムはどれもきょろきょろと探るだけで、仄々の姿を捉えることができない。
 テーブルの向こう側で、銃を弾き飛ばされた眼鏡の学生が、ゴーレムを前にへたり込んでいた。
 学生に振り下ろされた土人形の豪腕が、斬撃を受けて溶けながら吹っ飛ぶ。
 小柄を活かしてテーブルの下から飛び出した仄々が魔法剣で一閃したのだ。
「大丈夫ですか?」
「君は、そうか……助かったよ……」
 ケットシー用に縫製された魔法学園服を纏った仄々を見て、眼鏡の学生が心底安堵したように息を吐いた。
「無理はしないでください。私達が何とかします」
 仄々の視線の先、テーブルの上を駆けていく者があった。
 鉄塊の如き巨大剣を手にしたシェルティスだ。
 武器の重さを利用して回転しながら、目の前のゴーレム数体を両断する。
「待ってな、今助ける!」
 数名の学園生が苦戦しているのを見て、テーブルから飛び降りた。床を蹴り、隣のテーブルに跳び乗ると、すぐ傍にいたゴーレムを斬り飛ばし、足元の別個体を巨剣で突き崩した。
 不利を悟ったのか、ゴーレムの群れが一斉に泥の塊を撒き散らし始める。
 積もり積もった泥の中から、シェルティスの腰ほどの高さの小型戦闘用ゴーレムが生まれ、一ツ目を輝かせる。
 しかしシェルティスには笑う余裕さえあった。
「離れてな!」
 学生達に言うと、回転しながら質量に任せて鉄塊剣を振り回し、迫りくる小型ゴーレムを木っ端微塵に吹き飛ばした。


 このままでは押し負けると判断したゴーレムが無言で一ツ目を動かし、目配せし合ったようだった。
 突然密集しはじめたゴーレム達が両手をあげて崩れ落ちる。そうして出来た泥の塊が、意志を持っているかのようにうごめいた。
 土塊が、三メートルを超える巨大なクレイゴーレムに変貌を遂げる。
 震えながら見上げるトール。
 その背後で、シェルティスの咆哮が響き渡った。それは戦う猟兵の戦意を鼓舞するユーベルコードだ。
「落ち着け! 倒せない敵じゃないはずだぜ!」
「は、はいっ……!」
 大斧を構え直して頷いたトールが、戦意を瞳に宿して巨体を見上げた。
(「こいつ……もしかして……!」)
 ゴーレムの巨腕が振り落とされるよりも早く横に跳んで避ける。
「弱点発見……かも!」
 次々に振り落とされる腕がテーブルを破壊して破片を飛び散らせる。トールは勇気を振り絞って攻撃を避けながら、隙を窺い、ここぞと懐に飛び込んだ。
「うおりゃあああ!」
 まさに捨て身の一撃。
 斧で片足を切断されて膝をつく巨大ゴーレム。
 無事なテーブルに飛び乗ったトールは、そのまま跳躍。
「くらえぇーーー!!」
 一ツ目めがけて斧を振り落とした。
 呻きに似た重い音を響かせて、巨大ゴーレムがただの土の塊と化して崩れ落ちた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


「嗚呼、なぜ私の気持ちは伝わらないのかしら。……行きなさい、ゴーレム達。まずは邪魔な猟兵を薙ぎ払うのよ」
 広間に残存する多数のクレイゴーレムが、オブリビオンの少女の下知を受けて一斉に一ツ目を光らせる。
 多くの味方が動かぬ土塊に変わっても、土人形の兵隊に動揺はない。
 迷宮ショコラティエールの指揮の下、物言わず猟兵達に襲いかかる。
笹鳴・硝子
みゃー(f00134)、北斗ちゃん(f05072)と

「チョコケーキ、食べに行きませんか
この時期は種類が多くて良いですよね、チョコレート
苺とチョコの組み合わせも鉄板ですけど、オレンジとチョコも良いですよね
温室カフェでチョコレート、素敵ですよね?」
まあ、その前にゴーレムをチョコっと倒さなくちゃですけど、カロリーを先に消費しておけば安心してチョコを食べられますから無問題ですね

【梟師】で戦霊・磐具公を召喚してゴーレムを攻撃(技能【なぎ払い・カウンター・鎧砕き・鎧無視攻撃】使用)(磐具公が蕨手刀で切った疵からは炎が噴き出る)

「知ってます?チョコって失敗すると泥みたいなんですよ」


水沢・北斗
【笹鳴f01239、三岐f00134と行動】
ねえ硝子さん、学園にチョコケーキ食べに行きましょうって言いましたよね?
何か大きいのがどったんばったんしてるんですけど?
これ仕事じゃないです?また騙しました?硝子さん??ねえ???

気持ちを切り替えていきましょう。
援護しますから止めはお願いしますね!
紫電光で矢を打ち出して攻撃。
特にその必要はないけど普通に弓を使って打ち出す。
配下や仲間がいる場合はそれを減らすのを優先する。
技能:2回攻撃、鎧無視攻撃、援護射撃、スナイパー、誘導弾、見切り
さて、たかが土くれ程度いくらでもブチ抜いてあげますよ!

……ていうか私ヤドリガミだからカロリーとかあんまり関係が……


三岐・未夜
硝子と北斗と。

チョコ好きだけど……学校きらい……。
学校というものが、なんかもう駄目だ。駄目駄目だ。テンションが上がらない。
……まあ、硝子楽しそうだしやるけど。……やるけどさ。
いつも通りわあわあしている硝子と北斗を眺める視線。この2人、見てるだけでも結構面白い。

チョコゴーレムは溶ければ良いと思う。
食べられない癖にチョコのつもりで存在しないで。チョコは食べられてこそだよ、食べられないチョコなんてチョコじゃない。存在全否定で溶かしに掛かる。
玄火を融合強化して【操縦、誘導弾】。火力が足りなきゃ【属性攻撃】で更に強化。
2人が危なくないように【誘惑、催眠術、おびき寄せ】でヘイトは僕が受け持つよ。



 分裂しようと両手を上げたクレイゴーレムのモノアイに矢が突き立った。
 溶け崩れる同胞を横目に、左右のゴーレムが机に挟まれた床を前進するが、その二体も正確に目を射抜かれて崩れ落ちる。
「ねえ硝子さん、学園にチョコケーキ食べに行きましょうって言いましたよね? 何か大きいのがどったんばったんしてるんですけど?」
 水沢・北斗(ヤドリガミのアーチャー・f05072)が洗練されたフォルムの弓を構えて立て続けに矢を放ちながら訊いた。
 メルエ・ユライド。夢想弓を意味するその弓から射出される矢は射手の優れた技能によって襲い来る土人形を瞬く間に土塊と化させるが、それはいいとして――これはどう見ても聞いていたことと話が違う。
「これ仕事じゃないです? また騙しました? 硝子さん?? ねえ??」
 北斗は横目で『発案者』を見やる。
「顕現せよ、磐具公。虎の如く猛け、剣をもって神威を示せ」
 隕鉄製の小刀を手に朗々と詠唱する笹鳴・硝子(帰り花・f01239)は眼前に勇壮なる古の戦霊を召喚すると、澄まし顔でちらと北斗を見返した。
「まあ、チョコを味わう前にゴーレムをチョコっと倒さなくちゃですけど。カロリーを先に消費しておけば安心して食べられますから無問題ですよね」
「そういう問題ですか……ていうか私ヤドリガミだからカロリーとかあんまり関係が……」
 北斗が言いながら思い返す。
 ――チョコケーキ、食べに行きませんか? この時期は種類が多くて良いですよね、チョコレート。苺とチョコの組み合わせも鉄板ですけど、オレンジとチョコも良いですよね。温室カフェでチョコレート、素敵ですよね?
 そんな甘い言葉に誘われてみればこれである。
 ともあれ目の前に迫る脅威には対処しなければならない。
 北斗が弓に矢を番えて秒間20発に迫る高速射撃で援護する中、蝦夷の戦人――磐具公が蕨手刀を手にゴーレムの大群に分け入っていく。
 その時、大小に分裂して戦霊を囲もうとするクレイゴーレムを、頭上から次々に降り注ぐ黄昏色の火の玉が瞬く間に溶解させた。
「……ここが学校じゃなければまだ良かったんだけど」
 夜の暗さが混ざり物悲しささえ湛えた日暮れの炎――寂しい太陽の如く燃え上がる火の塊を操っているのは、三岐・未夜(かさぶた・f00134)だ。伸びた前髪で目元を隠しているその容姿は、高い背丈もあり二十歳を過ぎた頃とも思われるが、軽く首を振って表情を歪めた仕草に15歳という年相応のものが垣間見える。
(「チョコ好きだけど……学校きらい……。学校というものが、なんかもう駄目だ。駄目駄目だ。テンションが上がらない」)
 学園の地下迷宮とは言え、学校と名の付くものに拒絶反応を示してしまうのは、辛い過去の出来事ゆえ。それでも何とか戦えているのは、やはり同行する二人がいるからだ。
「それにしてもチョコみたいなゴーレムですよね。知ってます? チョコって失敗すると泥みたいなんですよ」
「……何だか失敗したことがあるみたいな口振りですね? 硝子さん」
 前進してくるゴーレムの大群を前にしても硝子と北斗は楽しそうな会話を続けている。そんな二人を見ていると、結構面白いと未夜は思う。胸中に蟠る暗い思いがほんの一時、心の隅に押しやられるくらいには。
「……まあ、二人とも楽しそうだしやるけど。……やるけどさ」
 黄昏色の炎を操り、ゴーレムにけしかける。直撃を受けた集団が、熱せられた洋菓子さながらに溶け崩れる。
 土人形が振り回す腕を軽々と避けて、磐具公が縦横に蕨手刀の威を示し、斬撃され仰け反ったゴーレムはどれもが傷口から炎を吹き出させて溶け折れた。磐具公に殺到するゴーレムの中で特に危険度が高いと判断された個体は、北斗が矢で射抜いていく。それは確かな技量に裏打ちされた正確無比な援護射撃だ。
「たかが土くれ程度いくらでもブチ抜いてあげますよ!」
「なるほど、これなら存分に戦えますね」
 硝子が素っ気なくも感心したように言う。
「ま、飛ばせるものなら何でも良いんですけど」
 その射撃の腕前は硝子も未夜も分かっている。姿勢をぶれさせることなく北斗が番えた矢を放ち、十数の矢が狙い過たず土人形を射止める。
「チョコみたいなゴーレムなんて溶ければ良いと思う」
 未夜の操る暗さを帯びた玄火が空中で重なり合い巨大化しながら弧を描いて飛び、ゴーレムの一団に着弾、炎上させた。それだけには留まらず、炎の幾つかは、ふらふらと舞ってゴーレムの一ツ目を惑わし始める。
 それはまるで催眠術のようで。
「食べられない癖にチョコのつもりで存在しないで。チョコは食べられてこそだよ、食べられないチョコなんてチョコじゃない」
 言葉が通じているのか、はたまた玄火の妖気が眩惑しているのか、ゴーレム達が両手を上げて未夜の操る炎を追いかけ始める。
「もうひと押しですね」
「打ち払え、磐具公」
 降り注ぐ矢がゴーレムの数を着実に減らし、集団に飛び込んだ磐具公の振るう蕨手刀の下、斬られた土人形達が炎を吹き上げながら溶けていった。近距離、中距離、遠距離とバランスの取れた連携攻撃によって、広間を席捲しようとしたクレイゴーレムはここに全滅を遂げたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『迷宮ショコラティエール』

POW   :    チョコレート・ソルジャーズ
レベル×1体の、【頬】に1と刻印された戦闘用【チョコレートで出来た兵隊】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    チョコレート・コーティング
【溶かしたチョコレート】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    チョコレート・グラフティ
【溶かしたチョコレート】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を自分だけが立てるチョコの沼にし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御剣・誉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「嘘、嘘よ……あれだけのゴーレム達が……」
 ぐずぐずに崩れて土塊となり果てたクレイゴーレムを見て、迷宮ショコラティエールが口元に手を当てる。
 しかし驚いたのも束の間、くすくすと笑い出し、不敵な表情を浮かべて両手を広げた。
「面白いわ。恋に障害が付きものだから。全てを乗り越えて、きっと想いを遂げましょう」
 そしてスカートの裾を摘み上げ、恭しく一礼。狂気を湛えた褐色の瞳を猟兵達に向けた。
「私は迷宮ショコラティエール。ショコラを愛する想いにかけて、ここを通らせて頂きます」
シェルティス・レグナード
ショコラティエールから一定の距離を保ち、味方を援護しながらソルジャーを大剣で切り裂く
「ここだ!」
一瞬の隙を突き、ショコラティエールに大剣をぶん投げる。自身の獲物を手放すという意表をつき、かつ投擲された巨大な剣に意識を集中させる
投擲と同時に、自身の脚へ[力を込める]、一瞬にして力を練り上げる[早業]は人ならざる者の血が混じっているからか。
投擲した剣は当たるとは思っていない、防ぐにしろ避けるにしろ、相手の一挙一等足から相手のアクションを[見切る]
テーブルを蹴り敵との距離を詰める。そして、速度の乗った手刀で必殺の一撃を入れる
これで決まるとは思っていない、狩りとは集団で行うものだ
「やれ!」
仲間へと繋ぐ


トール・テスカコアトル
ショコタティエールさん、すっごく、悲しそう……でも

「あなた……言ってることメチャクチャだよ!」

なんで、こんな風にしか、できないの!?

「なんで、チョコレートを愛する事が……こんな風に暴れる事になるの!?」

とっても悲しいし、怖いけど!

「トールはバカだから、なんて言ってあげたらいいか、分からないけど!」

間違ってるなら、止めないと!

「愛することを誰かに強制するなんて、愛じゃない!……変身」

説明しよう!
恐怖に打ち勝ち、勇気をもって何かを護らんとして立つ時 !

気弱なトールは「勇気の戦士」へと変身するのだ!

「うおぉーーー!!くらえぇーーー!!」

渾身の、右拳!

「ブレイブ・スマーッシュ!!」

鉄拳制裁!


箒星・仄々
引き続き分身攻撃です
冷気纏う刃で(=トリニティで状態異常力↑
チョコ兵隊さんを次々と貫きます
:迷彩&忍び足&残像&早業&先制攻撃&見切り&属性攻撃&串刺し

例え傷は浅くても冷気がチョコを固くし
動きを鈍らせ合体阻止

敵攻撃は迷彩&残像&早業&見切り&忍び足で回避

溶かしたチョコやチョコ沼は
刃から放つ水の魔力で固め
その効果を減弱します


事後
災魔さんへ鎮魂曲を奏で歌います

今を生きる皆さんは一所懸命です
きっと誰かに恋したり
愛しながら

だからきっとより善き世界を
未来へと繋げて下さるでしょう
…貴女が嘗てして下さったのと同じように

今を生きる方々へ
どうか安心してこの世界を託されて下さい
骸の海でどうぞ静けく安けく


黒木・摩那
★言ってわからないなら拳で語り合います

食べるチョコは好きだけど、かけるチョコはべたべたになるから、
ダメだって言ってるでしょうが。
ともかくここを通すわけにはいきません。
言ってわからないならば、実力行使です。

UC「サイキックブラスト」を両拳に溜めて、
一発お見舞いします。

髪に溶けたチョコが掛かるとか最悪ですけど、
ここは仕方ないです。
むしろ、その怒り分も含めて倍返しです。



「さあおいでなさい、ショコラの兵隊。アン、ドゥー、トロワ!」
 迷宮ショコラティエールが大仰な手振りで何もない空間を撫でると、床からフルプレートのチョコレート・ソルジャーが湧き上がった。
「食べるチョコは好きだけど、かけるチョコはべたべたになるから、ダメだって言ってるでしょうが」
 加えて災魔の少女の掲げた両手からは蕩けたチョコが溢れ出していた。それを見た摩那は険を含んだ口調で言うと、左右の掌に力を込める。電光が迸り、プラズマが音を立てて弾け合う。
「あら、それは差別ね。どんな食べ方でもショコラは平等に愛されるべきだわ」
「なんで、チョコレートを愛する事が……こんな風に暴れる事になるの!?」
 大斧を手にトールが糾弾する。投げかける声は届くことはない――そうだとしても、トールは訊かずにはいられなかった。何故、このようにしか想いを伝えられないのか。
「言ってわからないなら拳で語り合うしかありませんね。実力行使です」
 吐息した摩那が拳を打ち鳴らし、立ち塞がる兵隊にも構わず突っ込んだ。
(「40体程度、と言ったところね」)
 判断を下し、正面から振り下ろされる大剣を避けてカウンターを見舞う。高圧電流を纏った掌をかざすだけで、チョコレートの胴体が弾け飛んだ。
「彼女のチョコへの愛は本物なのでしょうね」
 仄々はチョコレートの兵隊が滅多矢鱈に武器を振り回す中、残像を伴いながら駆け回って翻弄する。
「でも……これでは人が傷つき悲しむだけです」
 兵隊が薙ぐ大槍の下を潜り、振り下ろされた大斧を跳んで避け、宙で身を捻りながら水の魔力により強化された魔法剣を閃かせる。着地と同時に目の前の鎧を貫き、幾重にも斬撃された他の兵隊達も床に膝をついて、凍ったように動きを止めていた。
「まずは数を減らさないとな。かかってこい!」
 一方でシェルティスも大剣を手にチョコレートソルジャーに接近戦を繰り広げていた。テーブルとテーブルに挟まれた道に兵隊を誘い込み、鉄塊剣を振り下ろす。シェルティスの膂力によって大斧を手に突撃してきた何体かが纏めて叩き潰される。
「おっと、流石に喰らうとヤバそうだ」
 テーブルの上に乗った兵隊の刺突を回避。逆方向から繰り出された別の槍を鉄塊剣の刀身で受け切る。防御から一転、力を込めた薙ぎ払いが、周囲の兵隊を一度に両断した。
 迷宮ショコラティエールが両手から蕩けたチョコレートを迸らせながら円舞する。
「だから、ベトベトになるって言ってるでしょうに」
 毒づきながら摩那が間合いに踏み込んだ。チョコの飛沫が顔や髪に飛び、足元にはねるが構ってはいられない。果敢に間合いを詰めて高圧電流を纏った拳をショコラティエールめがけ振り抜く。悲鳴をあげた少女はしかし繊手から溶けたチョコを飛ばし、直撃だけは避けながらバックステップして見せた。
「マジ最悪」
 熱湯じみたチョコレートを浴びて毒づく摩那。
 無論、災魔の少女も無傷とは行かない。ふらついて、けほ、と咳き込む。
「なんで、チョコレートを愛する事が……こんな風に暴れる事になるの!?」
 トールが襲い来る兵隊を大斧で薙ぎ倒しながら叫ぶ。一体一体は大したことがないが、数で迫られると厄介だ。
 打開するための方法は一つ。
「決まっているでしょう? 誰も彼も私の想いを受け止めて下さらないからです」
「愛することを誰かに強制するなんて、愛じゃない! 変身!」
 言葉が鍵となり力が溢れ出す。
 トールの腰帯――そこに光る石が光を放ち、その身を包み込んだ。
 恐怖に打ち勝ち、勇気をもって何かを護らんと立つ時、気弱なトールは『勇気の戦士』へと変身を遂げる。
「なんて言ってあげたらいいか、分からないけど……間違ってるなら、止めないと!」
 大剣を振り被った兵隊達が、凛然と立つトールの拳に瞬く間に粉砕される。
「ピエスモンテ!」
 ショコラティエールの一声で、何体かの兵隊が蕩け、スライムのようにうごめき溶け合った。融合し、フルプレートの巨大な兵士の形を取るが、
「何故……こんな筈じゃ……」
 災魔の少女の顔に浮かんだのは驚愕だった。
「出来ませんよ。もう手は打ってありますから」
 仄々が静かに告げる。
 猟兵達の目の前で、一旦は形を成した巨大兵士が泥のように蕩け、崩れ落ちた。
「そんな……これは……水分量……?」
 ショコラティエールも流石に状況を理解した。
 仄々が斬撃と共に放っていた水の魔力が、敵の組成を崩していたのだ。
「今を生きる皆さんは一所懸命です。きっと誰かに恋したり愛しながら――そんな未来を、過去からの手で塗り潰させるわけにはいきません」
 

「いい加減に退きなさいっての」
 摩那がチョコまみれになりながらも、残った兵隊を雷を纏った拳で粉砕する。怒りが更に雷撃の威力を強めているようだった。
「大分減ってきたな」
 鉄塊剣が兵隊を叩き潰し、両断する。シェルティスは、敵の動きを見切りながら力を溜めて鎧を砕き、効率的に打倒していった。
 仄々が魔法剣を振るい、刀身から迸る水の魔力によってチョコの池を薄める。
「私のショコラ・ショーが……」
「足元の心配をしている場合ですか」
 チョコの川となった床を蹴って摩那が災魔の少女に間合いを詰めた。咄嗟に溶けたチョコレートを飛ばして防ごうとする災魔だが、
「二度も同じ手は喰いませんよ」
 紙一重で避けた摩那は勢いを殺さず突っ込む。
「髪を汚された分も含めて倍返しです。あと服の分も!」
 ショコラティエールの胴に電撃と怒りを込めた摩那の拳が炸裂する。
 電流に痺れ、衝撃で壁に叩きつけられれば、さしもの災魔もすぐには立ち上がれない。
 鉄塊剣を振るうシェルティスも、今や数に勝っていた兵隊を完全に圧倒していた。
「ここだ!」
 遂に囲みを破り、テーブルに飛び乗ると、鉄塊剣を災魔の少女に投げつける。
 よろめきながらもなんとか立ち上がったショコラティエールは咄嗟にそれを避け、背にした壁に大剣が突き刺さる。が、もとより命中は期していない。
 すかさず脚に力を込め、テーブルを蹴ったシェルティスが災魔の少女めがけて走る。猛然たる勢いは、その身に流れる人狼の血の為せる業か。シェルティスは絶好の間合いに至ると、鋭利な爪を閃かせ、速度の乗った手刀を振り抜いた。
 深く切り裂かれ、たたらを踏むショコラティエール。
「やれ!」
 狩りとは集団で行うもの。背後を振り向いたシェルティスが叫ぶ。
 災魔の少女の澱んだ瞳が、その時、燦然と輝く光を見た。
 トールだ。
 手を差し伸べるように掲げたショコラティエールが、板チョコレートに似た防壁を何枚も発生させる。
(「ここで止めてあげないと!」)
 決意を胸に走るトール。
(「だってショコラティエールさん、すっごく、悲しそうな目をしていたから……!」)
 苦し紛れの防壁を次々に破砕し、最後の一枚を叩き割ったトールが拳を振りかぶる。
「うおぉーーー!! くらえぇーーー!!」
 迷宮ショコラティエールが目を見開いたまま小さく言葉を紡いだ。
「嗚呼、駄目ね……私の想いは届かなかった……」
「ブレイブ・スマーッシュ!!」
 渾身の右拳が少女の胴に炸裂。災魔の体が宙を飛び、空中で跡形もなく霧散した。


 迷宮ショコラティエールが消滅すると同時、広間のあちこちに積み上がった土塊も塵と化して消えていった。静寂に満ちた迷宮の一間に、穏やかな竪琴の音が響き始める。
 仄々の爪弾くカッツェンリートだ。
 ねこのうたを意味する楽器は蒸気機関式。懐中時計の形状からボタン一つで展開したそれは仄々の手で柔らかな旋律を奏でる。
 少女が如何にして過去から来たる災厄の魔物と成り果てたのか、それは分からない。けれどそれが如何なるものだったとしても。
(「今を生きる方々に、どうか安心してこの世界を託されて下さい。骸の海でどうぞ静けく安けく」)
 祈るような鎮魂の歌と音楽は、束の間、広間を包み、戦場の殺伐を洗い流していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『花やかなお茶会』

POW   :    カフェでまったり過ごす

SPD   :    お菓子を購入する

WIZ   :    温室の花を観賞する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 この時期の温室カフェは学園内でもちょっとした穴場となっていた。
 格子状に仕切られた天窓から穏やかな光が差し込む中、温暖な気候で育つ瑞々しい緑や色とりどりの花々が咲き誇っている。とげのある多肉植物が花を咲かせているかと思えば、不思議な形の果実も実っている。
 人工池に花開いた睡蓮も見どころの一つだ。
 温室内のカフェテリアには趣ある木製のテーブル席が点在している。カウンターに足を運べば、プラリネ、ガナッシュ、オランジェット――種類豊かなチョコレートを購入することができる。
 園内のあちこちにも席が設けられているので、自分だけの静かな場所を探しても良い。温かな雰囲気が訪れる者を包み込むことだろう。
※成功度数の関係上、本章のお返しは2月10日夜を予定しています。ご了承下さい。
トール・テスカコアトル
「チョコレート一つ、くださいなっ!」

カウンターで張り切って注文するも

「ふぇ!?がなっしゅ!?お、おらんじぇっと!?……ええと……ええっと」

聞きなれない単語に、おめめグルグル

「……おすすめ、くださいな」

チョコを買うという高難度ミッションを辛くも切り抜け、やって来ました、隅っこのテーブル

色とりどりのお花を眺めて、チョコをパクつきます

「……あまあま、美味しい」

お口に広がる幸せに、ほっぺたゆるゆるトールです

「チョコレート、幸せだね……強制しなくたって」

みんな、愛してるのにな
回りの、幸せな人達を眺めて、ショコラティエールさんを思う


……想いは、届くよ、きっと届く

「……苦いな。美味しいな」

甘くて苦くて、綺麗


シェルティス・レグナード
POW カフェでまったり過ごす
アドリブ大歓迎(アドリブしか無い)

「お~、良い感じの穴場だな」

カウンターからお菓子を見繕い席でお菓子を堪能

一緒に依頼を受けた方とお話でもできればー

「同じ狩り場で戦い、同じ釜の飯を食った(お菓子)仲だ、他の依頼でもよろしくな!」

参加者皆さんにサムズアップ


水沢・北斗
【笹鳴f01239、三岐f00134と行動】

【POW?】
え、硝子さん何かゆいましたか??(生チョコたっぷりのケーキをホールで頂きながら)
カロリーで一喜一憂……ヒトは大変ですね……
現実問題として私、この身体が出来たときから体形変わってないので!

てゆか人を汚れてるみたいに言わないでください。
メンテナンスはちゃんとしてますので!!
特にこういう甘い物食べた後とかあちこち焼き付きそうな気がして……

学校って楽しそうにも見えてたんですけど、意外とそうでもないんですか?
とかなんとなく聞ける雰囲気ではないのでおとなしくホールと戦います。
意外と手強い……。


笹鳴・硝子
みゃー(f00134)、北斗ちゃん(f05072)と

さて、お待ちかねのチョコケーキですよ
わたしはオペラにしますね

何故カロリーが敵なのか
脂肪が体につくからです
北斗ちゃん、カロリーが関係ないと言って無視はできませんよ
戸棚にしまいっぱなしのお茶碗にも油汚れはつくものです
ギトギトに汚れた本体は嫌でしょう
でもケーキは食べたいですからね

みゃー、ほらあーん
――美味しいですか?美味しいでしょう?
できるだけ、「学校」らしからぬ場所にしたつもりですけど、無茶をさせていたらごめんなさい
美味しい、とか、楽しい、とか
そういうので「学校」の記憶の端っこだけでも上書きできたら、って思ったんですけどね
……美味しいですよね?


三岐・未夜
【笹鳴・硝子、水沢・北斗と】

ちょっと疲れた気がするのは、此処が学校という鬼門だからだきっと。
でも、勝手知ったる相手がいるのが救いだった。

チョコケーキ……僕フォンダンショコラ食べたい。
紅茶にも角砂糖をひとつ入れ、牛乳をたっぷり。甘いミルクティーが好き。

いつも通りわちゃわちゃ賑やかな2人を眺めていたら、不意に硝子から差し出されたケーキ。思わず、ぱくっと行った。じんわり甘くて美味しい。
……「上書き」なんて考えたことなかった。
それでもやっぱり学校はこわいけど、でも、硝子が僕の為を想ってくれたのは何となく分かった。
だから「おいしいよ」って笑って、フォンダンショコラを同じようにあーんと差し出すことにした。


黒木・摩那
一度戻ってシャワーを浴びて。
それから温室カフェ探訪です。

ショコラティエールと戦って、ずっとチョコまみれだったから、
チョコ食べたいんです。

チョコは小さな宝石箱。
でも、宝石と違って気軽に買えるのが良いですね。

ひと仕事終えたあとの甘味分は最高です!
おいしくいただかせてもらいます。



● 
 災魔との戦いとはいえ大変な目に遭った。
 食べるのは良いとしても、かけるチョコレートが攻撃の手段に使われては堪らない。
「ここが温室ですか」
 シャワーを浴びてきた摩耶は、足取りも爽やかに温室へと足を踏み入れた。
 高い天井から陽が差し込み、旺盛に葉を伸ばす緑や咲き誇る花々が摩耶を迎える。温かく清浄な空気に包まれながら整えられた小径を歩くと、何処からか香ばしくも甘やかな香りが漂ってくる。そうこうしている内に、道脇にカフェと書かれた案内板が現れた。
 蔦と花で彩られたアーチ状の門を潜ると、その先は広いカフェスペースだ。
「カウンターは何処でしょうね」
 すぐに見つけた摩耶は、笑いさざめく学生達を横目に歩いていく。
 店頭には様々な菓子が並べられていた。蒸気機関式冷蔵装置のように見える機械のガラス越しに多数のチョコレートが収められている。カウンターの奥ではこれまた蒸気式らしいごてごてしたコーヒーミルが騒がしい音を立てていた。
「なかなか種類も豊富のようね」
 呟きながら、並べられたチョコを品定めする。
 あれもこれもと注文し、やがてテーブルの一つを占めた摩耶の目の前には、多種多様なチョコレートが勢揃いしていた。
 四角い銀色のプレートの上に載っているのは、プラリネ、ガナッシュ、フランボワーズ。更にチョコレートマカロンにオランジェットに黒と白のトリュフ、岩石のようなロシェと、ベリーを鮮やかな色のチョコレートで包んだパンワークチョコ――それはめくるめくチョコの競演だ。
「チョコは小さな宝石箱。でも、宝石と違って気軽に買えるのが良いですね」
 マヤが手始めにガナッシュをフォークで刺して口に運んだ。
 広がる上品な甘みに思わず目を細める。
「ひと仕事終えたあとの甘味分は最高です!」
 個性豊かなチョコレートの数々を摩耶は存分に堪能するのだった。 


 天井から注ぐ暖かな日差しが瑞々しい草花を輝かせている。
 どこかから水の流れる涼やかな音が響く中、硝子と未夜、そして北斗の三人は同じテーブルを囲んでいた。
「わたしはオペラにしますね」
「……僕フォンダンショコラ食べたい」
「チョコケーキはあるでしょうか。出来るだけ大きめの」
 そんなカウンターでのやりとりを経て、卓上を彩るのはそれぞれが選んだ思い思いの品々だ。テーブルの上にはティーポットを始めとする茶器も並んでいる。未夜はシュガーポットの蓋を開けると、ころころした角砂糖を一つ掬って、温かな乳白色の紅茶が揺蕩う白磁のカップへ落とした。角砂糖が小さな水の王冠を作って転がり込めば、牛乳たっぷりの甘いミルクティーが出来上がる。カップを口に運びながら、未夜は円いテーブルの左右に座る硝子と北斗の会話を聞いていた。
「北斗ちゃん、カロリーが関係ないと言って無視はできませんよ」
 硝子の皿には、表面のグラサージュショコラに金箔が散りばめられ、バタークリームとガナッシュが何層にも重なり合う、オペラと称されるチョコケーキが載っていた。
「え、硝子さん何かゆいましたか??」
 対する北斗はと言えば、硝子に向かい合う席で、先程から生チョコたっぷりのホールケーキを堪能していた。とろりとした甘く柔らかなチョコクリームをフォークに乗せて口に運ぼうとしたまさにその時に声をかけられたものだから、北斗はそのままの姿勢で固まって目をぱちくりさせた。
「何故カロリーが敵なのか。脂肪が体につくからです」
 ぱくり、と口に運んでから、北斗は続く硝子の言葉にやれやれと首を振った。
「カロリーで一喜一憂……ヒトは大変ですね……現実問題として私、この身体が出来たときから体形変わってないので!」
(「この二人、さっきも似たような話してなかったかな……」)
 フォンダンショコラとミルクティーの芳醇な香りと甘みを味わいながら、チョコレートのようなゴーレムと戦っていた時の会話を未夜はふと思い出す。
「戸棚にしまいっぱなしのお茶碗にも油汚れはつくものです。ギトギトに汚れた本体は嫌でしょう。でもケーキは食べたいですからね」
「てゆか人を汚れてるみたいに言わないでください。メンテナンスはちゃんとしてますので!! 特にこういう甘い物食べた後とかあちこち焼き付きそうな気がして……」
 楽しげに話し続ける二人の声を耳にしながら、未夜はほんの少しだけ思考の中に沈んでいた。
(「ちょっと疲れた気がするのは、此処が学校という鬼門だからだきっと」)
 それでも、勝手知ったる相手がいるのが救いだった、と思う。
 未夜の様子に気付いた硝子が小さく吐息した。
「できるだけ、『学校』らしからぬ場所を選んだつもりですけど、無茶をさせていたらごめんなさい」
 硝子は陽光を浴びる花々に視線を流す。三人で囲む賑やかなテーブルの上にも。
「美味しい、とか、楽しい、とか。そういうので『学校』の記憶の端っこだけでも上書きできたら、って思ったんですけどね」
 まだ半分以上が残っているチョコのホールケーキを、北斗はフォークで崩して、
 ――学校って楽しそうにも見えてたんですけど、意外とそうでもないんですか?
 とかなんとなく聞ける雰囲気でもないので、無言でケーキと格闘していた。
(「意外と手強い……」)
 カウンターで大きめの品を選んで、その時は軽く平らげられると思ったのだが、どうやら相手にとって不足はなかったようだ。生チョコをフォークで削って口に運んだところで未夜の声がして、北斗はつとそちらを見た。
「……上書き、なんて考えたことなかった」
 俯いて乳白色のカップの中身に視線を落とす。
 暫しの沈黙。
「みゃー、ほらあーん」
 と、不意に隣り合う硝子からケーキが差し出された。
 未夜は軽く目を見開いたが、考えるより先にそれをぱくっと口にしていた。
「美味しいですか? 美味しいでしょう?」
 硝子が小首を傾げて未夜の反応を見る。
「……美味しいですよね?」
 やっぱり学校はこわいけど、でも、と未夜は思う。
 ――硝子が僕の為を想ってくれたのは何となく分かった。
「おいしいよ」
 未夜が柔らかに微笑して頷く。
 そしてお返しに蕩けるフォンダンショコラをスプーンで掬い、そっと硝子に差し出した。


「チョコレート一つ、くださいなっ!」
 植物園の中に作られたカフェスペースに足を運んだトールは、意気揚々とカウンターに向かっていった。そうして張り切って注文の声をあげたまでは良かったものの、
「承ります。どの品物に致しましょう」
 なんて尋ねられてメニューを見るや、その豊富さに仰け反りかけた。見慣れない単語ばかりが並んでいる。一口にチョコレートと言ってもそれはもう色々な種類があるらしく。
「ふぇ!? がなっしゅ!? お、おらんじぇっと!? ……ええと……ええっと」
 そう言えば温室カフェの説明を聞いたときもそんな単語があったような。慣れないシチュエーションに両目をグルグルさせるトール。早く選ばないとなんだか背後からの視線も痛いような気がして焦りが募り、尚のことあわあわと混乱してしまう。
 その時、絶好と言えば絶好のタイミングでシェルティスがカフェスペースにやって来た。
「お~、良い感じの穴場だな」
 カウンターで何やら列が出来ているのを見つけると、そちらの方へ歩いていく。見覚えのある少女があたふたしているのを見て、シェルティスは足を早めた。
「済まん、ちょっと道を開けてくれ」
 言いながらカウンターの周りの学生達を掻き分け、トールの隣に立つ。
「ええっと……その……どうしよう……」
「これだけあると悩んじまうよな。美味そうなの選んでもらったらどうだ?」
 トールが横を見ると、シェルティスがにっと笑って見せた。
「おすすめ、くださいな」
 頷いておずおずとそれだけを伝えると、店員は人気であったり食べやすかったりするチョコレートを幾つか見繕ってくれた。無事に注文を終えて、品物の載ったトレイを手にトールはほっと一息。
「あの……ありがとうございました」
「いやなに。大したことじゃないさ」
 シェルティスが片手を上げて見せる。
 二人が同じ戦場で戦い、勝利したのは偶然に過ぎない。示し合わせたわけでもない。
 しかし勇気を振り絞って敵に向かっていったトールに、絶好のサポートをしたのがシェルティスであったことは他ならぬ事実で――ここで会ったのも、また一つの縁というものか。
 シェルティスは購入したものの一つである砂糖菓子を口に運ぶと、笑みを見せて、
「同じ狩り場で戦い、同じ釜の飯を食った仲だ、他の依頼でもよろしくな!」
 同じ釜の飯というのは、同じ場所で菓子を味わったという意味だ。
 サムズアップして歩いていくシェルティスを見送った後、トールはカフェの端の席を選んで座った。
 穏やかな陽光が透明な天井から差し込み、生命力を感じさせる緑や多色の花弁が目を楽しませてくれる。トールは色とりどりの花を眺めながら、白磁の皿に載ったチョコレートを摘んで口に含んだ。頬が落ちるような感覚を味わった後、広がる甘さに相好を崩す。
「……あまあま、美味しい」
 蕩ける風味と食感は、心までを満たすようで。
「チョコレート、幸せだね……強制しなくたって」
 カフェスペースの片隅から、トールは穏やかなひとときを過ごす学生達を見渡した。和気あいあいと語らうそれぞれのテーブルの上にはやはり美味しそうなチョコレートがある。
 ――みんな、愛してるのにな。
 トールは目を閉じて振り返る。
 愛ゆえに嘆き、愛ゆえに道に迷ったあのショコラティエールの言葉を。
(「……想いは、届くよ、きっと届く」)
 王冠のような形に整えられたチョコレートを口に運ぶ。
「……苦いな。美味しいな」
 少しビターで、甘い味わいが、口の中でほろりと溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月10日


挿絵イラスト