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骸の月戦記~オブシディアンの墓船

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #バトラー・サファイア #クリスタリアン #漿船

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 ――その漿船(クリスタルシップ)は、かつては数多の漿船と船団を組んで航行していた一隻であったという。
 航路の管制を司る母船を中心に、一般のクリスタリアン達が生活を営む居住船、その衣食を賄う生産船、青少年の教育を担うアカデミー船等々――船毎に定められた役割を全うしながら、その船団は宇宙の旅を続けてきた。
 だが、永き永き時を経て……今はその呼称さえも喪われた大船団の漿船も、稼働しているのはその一隻のみ。
 漿船「黒曜」――その名の通り、オブシディアンで構築された漆黒の宇宙船の役割は「鎮魂」、或いは「墓標」。
 広大な船倉部分に、数多のクリスタリアン達の生きてきた証を収め、上層に住まい、漿船を守り続ける墓守の末裔達が、日々レイクエムを奏で唄い続ける。
 今や訪れる者も殆どなく、静かに宇宙を漂い続けるオブシディアンの墓標。よもや、そんな静謐の漿船にさえも、猟書家の――帝国継承軍の魔の手が迫ろうとは。
「……嗚呼、あなたもまだ、『私達』を覚えていたのね」
 静寂に充ちた漆黒の船底に顕れたバトラー・サファイアは、冷ややかに微笑む。
 世界最古の移民船「漿船」は、かつてはその全船舶が、クリスタリアンの最長老、すなわち猟書家「プリンセス・エメラルド」の所有物であったのだ。
「ならば、主命に従うのも、当然でしょう。私達は漿船(あなた)の力を必要としています」
 宝石で出来た漿船は、僅かに意志を有する――ささやかながらも、明確な拒絶を感知したか、いっそ憐れむように唇を歪めるバトラー・サファイア。
「……ええ、私は今から、あなたの中の異物を、全て排除します」
 数多のクリスタリアンの鎮魂を祈り続ける、無辜の墓守達を、1人残らず。
「あなたの『墓標』としての役割は、帝国継承軍に於いてはリソースの無駄でしかないのですから」

「今回はスペースシップワールド、プリンセス・エメラルドの執事にして暗殺者の『バトラー・サファイア』がお相手や」
 年明け早々の依頼は、猟書家関連から――各務・瞳子(七彩の聴き手・f02599)は、集まった猟兵達を見回すと、「今年も宜しゅうに」とペコリと会釈した。
「最初から暗躍しとる幹部猟書家やさかいな、知っとる人も多いと思うけど……バトラー・サファイアは、古代宇宙船『漿船(クリスタルシップ)』を狙っとる」
 漿船とは、ロストテクノロジーで建造された神秘の宝石宇宙船である。
「何でも、漿船の最初の持ち主はプリンセス・エメラルドやったらしくてな。クリスタリアンの最長老様だけが知る『転送装置』が、漿船の何処かに仕込まれとったんやて」
 この転送装置――インフィニティゲートを利用して、バトラー・サファイアは単身、漿船に出現する。
「帝国継承軍の戦力増強は勿論、漿船のクリスタリアンさんらを虐殺されるのかて、絶対阻止せなあかん。皆には、バトラー・サファイアの転送ポイントを探し出して、迎撃して貰いたいんよ」
 今回、狙われるのはオブシディアンの漿船「黒曜」。上層部には数百人程度のクリスタリアンが居住しているが、船の大半は謂わば「禁足地」とされている。
「船倉の部分には……何世代にも渡って、亡くなったクリスタリアンさんらの『形見』が収められとるんよ」
 黒曜の住人であるクリスタリアン達は『墓守』として、漿船を守り続けてきたという訳だ。
「けどまあ、バトラー・サファイアは、このめっちゃ広い船倉の何処かに現われるみたいや。皆には、墓守さん達曰く『闇の宇宙のその闇の底』を探索してもらう事になるなぁ」
 幸い、船倉に収められているのは『形見』であり、死者の眠りを直接妨げる訳ではない。だが、灯り1つ無い漆黒の中を往く事になる。何より、広大な船倉を闇雲に彷徨っていては、バトラー・サファイアの来襲に間に合わないだろう。
「実はな、漿船は僅かやけど『意志』があってな。住人のクリスタリアンとだけ、テレパシーで意思疎通が出来るんや」
 この特性を利用すれば、墓守のクリスタリアンや『黒曜』の意志から手掛かりを得る事も可能だろう。
「……あ、ちなみに、漿船自体、随分なお年寄りやさかいな。『転送装置』の存在自体は忘却の彼方で、直截質問しても転送のポイントは判らへんで」
 だが、墓守達が語り継いできた伝承やレクイエム、残存している記録媒体等にも手掛かりはある筈だ。
「上手い事推理して先回り出来たら、転送ポイントでバトラー・サファイアを迎撃や。先にきちんと信頼を得られとったら、墓守さんや漿船も、艦内の武装を使って協力してくれるさかい。皆、宜しゅう頼むで!」


柊透胡
 少々遅ればせながら、明けましておめでとうございます。柊透胡です。今年も宜しくお願い致します。
 「骸の月戦記」は、「猟書家の侵略」関連のシナリオです。「2章構成のシナリオ」で、第1章に続き、第2章のボス戦で完結します。

 今回の舞台は「スペースシップワールド」。猟書家「バトラー・サファイア」は、プリンセス・エメラルド目論む「帝国継承軍の誕生」を実現すべく、「漿船『黒曜』」に現れます。
 漿船には、プリンセス・エメラルドだけが知る「転送装置」が何処かに仕込まれており、このままでは、バトラー・サファイアの奇襲を許してしまいます。
 漿船「黒曜」は謂わば「共同墓地」のような船で、墓守のクリスタリアンが住むのは上層部のみ。その大半の船倉には膨大な数の「故人の形見」が収められています。転送装置は、船倉の何処かにあるようです。

 第1章は「日常『闇の宇宙のその闇の底』」。墓守のクリスタリアン達の信頼を得て、伝承等の手がかりをもらい、転送場所を推理しましょう。墓守達は日々、鎮魂を祈り、レクイエムを歌い奏でる事を日々の営みとしています。凡そ、平穏を良しとする物静かな性情であるようです。
 又、船倉には光源の類は一切ありませんし、膨大な量の物品が詰め込まれています。船倉で迅速に動くには、それなりの工夫が必要でしょう。
 第2章は「ボス戦『バトラー・サファイア』」です。転送場所から現れた幹部との決戦になります。前章をうまく成功していれば、墓守や漿船も、艦内の武装を使って協力してくれます。

 プレイングボーナス(全章共通)……クリスタリアンや漿船の協力を仰ぐ。

 それでは、皆さんの熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『闇の宇宙のその闇の底』

POW   :    勇気を振り絞って一歩ずつ進む

SPD   :    できるだけ急いで踏破しようとする

WIZ   :    あえてゆっくり慎重に行動する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――――。
 漆黒の船に、旋律が響く。それは、レイクエム。それは、祈り。
 クリスタリアン達の魂が、永久に安らかに眠り続けられるように。
 だが、クリスタリアン達の生きた証を載せた漿船(クリスタルシップ)は、このままでは蹂躙される事になる。船自身も望まぬ、帝国継承軍の戦力に加えられてしまう。
 ――まだ、時間はある。
 「黒曜」には、「記憶」が集積している。墓守に伝わる口伝の歴史、日々唄い続けられるレクイエム、記憶媒体も代々の墓守の長老が幾らか受け継いできているようだ。
 記憶を辿れば、漿船自身すら忘却していた『転送装置』の位置にも、辿り着けよう。
 尚、クリスタリアン達の形見を収めた広大な船倉は、十字を切るように四区画に分けられている。場所に目星をつけられれば、バトラー・サファイアの奇襲を迎え撃つべく、猟兵達も漆黒の只中に足を踏み入れる事になるだろう。

 闇の宇宙のその闇の底には、『外』に繋がる門がある――。
岩倉・鈴音
墓地船盗られたらクリスタリアンさん人生はかないになっちまいますからンフフ。

カニ食べながら口伝やレクイエムの聞き取り。
余所者には言わなそうな口伝があるんならンッフッフすとーきんぐで聞き耳をたてとくよ。



「ンフフ♪ ここが黒曜石の漿船だね」
 漆黒の宇宙船内をカニ脚片手に見回すのは、岩倉・鈴音(銀河連合調査員【第六猟兵世界担当】・f09514)。ンフフ美少女な見た目の色々と訳アリサイボーグだ。
 銀河連合調査員の本日のお仕事は、猟書家バトラー・サファイアの暗躍阻止。
(「墓地船盗られたら、クリスタリアンさんも人生『はかない』になっちまいますからンフフ」)
 故郷の名産、スペース毛ガニを頬張りながら、早速ンフフと調査開始する鈴音。
 漿船自身すら忘却した『転送装置』の場所を探るには……やはり、クリスタリアンの墓守達から、口伝やレイクエムの聞き取りするのが、まずはオーソドックスだろう。
「ンッフッフ♪」
 鼻歌交じりに、目に付いた墓守に近付いてみる。
 そう言えば、余所者など珍しいだろうに、墓守達は鈴音を見咎める様子もなく、各々、静かに祈りを捧げ、或いはレクイエムを唄い奏でている。

 ――眠れ 眠れ 安らかに
 ――其処は 闇の宇宙の闇の底 静寂を枕に 揺蕩い眠れ

 鈴音が耳を澄ませるまでもなく、墓守のか細い唄声が聞こえてくる。

 ――永き永き刻の果て 翠玉来りて 楽園の福音齎さん

(「……うん?」)

 ――闇の通い路 惑い路 同じく彩を 標とし
 ――外なる光が射す刻まで 眠れ 眠れ 安らかに

「え~っと……?」
 ンッフッフと小首をかしげる鈴音。
 帝国継承軍の編成を目論む猟書家であり、クリスタリアンの最長老の名は、『プリンセス・エメラルド』――ならば、この歌は、その到来を歓迎している。
「まあ、やって来るのは執事の方だけどね」
 尤も、オブリビオンである限り、『彼女』の性質も未来の浸食に変質してしまっているのだから、何とも皮肉な話ではある。
 ともあれ、キーワードは寧ろ「同じく彩を標とし」の方だろう。
「同じ……翠玉?」
 或いは、船倉は、宝石の種類で区画されているのだろうか?
 くるりと見回すも、船内マップらしきは認められない。殊、船倉は『立入禁止』である訳だし。
「ではでは……ひそめ! さぐれ! のぞきみよ!! ンッフッフ♪」
 流石に、そう簡単には余所者に船のマップを見せないだろう。思い切りよく、影の追跡者を召喚。
(「大事なものなら……やっぱり、長老さんが持っているよね♪」)
 影の追跡者に向かわせながら、鈴音はンフフと三角帽の下で含み笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルフローレ・カノン
漿船『黒曜』に存在する転送装置を探しましょう。
とはいえ、お墓の役目の船ですから、
騒々しくせず、粛々と行動していきましょう。

まずは故人に祈りを捧げるところからです
墓守のクリスタニアンがいるそうなので、
この漿船そのものや祀る故人の伝承など訪ねましょう。
意味を踏まえて、故人を悼みます。
なにか転送装置のヒントが手に入ればいいですし、
あ、猟書家が来るという事情は説明しておくべきでしょうか。
転送装置を探すにも、猟書家を迎え撃つにも
墓守の皆さんの許可や協力は不可欠ですし。

うまく転送装置のアタリが付けばそこに移動になりますが
光源は必要なのですよね。
ユーべるコードはそれに合わせて用意しておきました。



 レクイエムの歌声が静けさに響く。
 クレリックであり、パラディンであるメルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)にとっては、馴染み深い空気であろうか――船内を往く足取りは、粛々と楚々として。
(「転送装置を探さないといけませんけど……お墓が役目の船ですから」)
 まずは、故人に祈りを捧げる所から。やはり祈り続けている墓守と並んで、そっと膝を突くメルフローレ。
「もし……すみません。お話、宜しいですか?」
 ひとしきり祈った後、墓守に声を掛ける。漿船『黒曜』そのものや祀る故人について尋ねるべく。
 ――かつて。漿船の大船団は、安住の地を探し求めて、旅を続けてきた。
 だが、悪辣なる銀河帝国との戦いで、全ての居住可能惑星を失った宇宙世界に於いて、数多のクリスタリアンを受け入れられる星など、見つかりようもなく。
「我々の祖先は、せめて永久の眠りに就いたその先に『楽園』が在る事を希うようになりました……『鎮魂』を願い、『墓標』となったこの船は、最後の希望でもあったのです」
 故に、『黒曜』のレクイエムは何種類かあるようだが、どれも『楽園の福音』を謳っている。
「なるほど……」
 歌詞での「楽園の福音」は、共通して『外』からの誘い、又は導きとされる。或いは、クリスタリアンの最長老が繋げるインフィニティゲートの暗喩か。
(「でしたら、転送装置へのヒント、でもありますよね」)
 メルフローレの脳裏に浮かぶのは、先んじて他の猟兵が発見した『黒曜』の船内マップだ。どうやら、故人の宝石の種類によって、形見の安置場所が分かれる模様。所謂「貴石」と称される宝石のクリスタリアン程、深層に形見が収められているようだ。
(「レクイエムでも歌っていた翠玉の標……エメラルドも貴石の1つ、でしたね」)
 ならば、船倉の底まで、潜らなければならないかもしれない――正に、闇の宇宙の闇の底、だ。
 光源が必要だろうと、全身より神々しい光を放つユーベルコードを使う算段のメルフローレだが、その前に、まだやるべき事がある。
(「猟書家が来るという事情は、説明しておきましょうか」)
 転送装置の場所の特定も、更にはバトラー・サファイアを迎え撃つにも、墓守達や『黒曜』自体の許可や協力は不可欠なのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

う~ん、とても綺麗な曲。
レクイエムって言うんでしたっけ?
とっても綺麗でとてもいいんですけど・・・聞いてるとだんだん眠くなってきますね。(お菓子もぐもぐ)
(本当に寝ちゃう前に情報を聞いて回りましょうか)

(上層のクリスタリアン達にいろいろな伝承や聞いていたレクイエムの歌詞の意味などを聞いて回ります。)

う~んなんとなくわかったような気がします?
それにしても・・・どうしよう、本当に眠くなってきた。

(それっぽいところを探しておいて近くまで行ってからそこで体力温存もかねて寝ておこうかな・・・)

・・・置いて行かれても嫌ですし、見つけて貰えそうなところで寝ましょうかね。



(「う~ん、とても綺麗な曲」)
 聞こえてくる旋律に、紅の双眸を細める神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)。その繊細な調べは、確かに耳に心地好いけれど。
(「……聞いてると、だんだん眠くなってきますね」)
 半眼を瞬き、お菓子を口に放り込む。
「本当に寝ちゃう前に、情報を聞いて回りましょうか」
 お口をもぐもぐしながら、墓守に近寄る七十。例えば、伝承やレクイエムの歌詞の意味――彼らの口伝に、転送ポイントの特定に繋がる手掛かりは無いだろうか?
「……へぇ、ここにあるのは形見ばかりなんですね」
 『墓標』と定められたこの漿船は確かに巨大だが、それでも、スペースに限りはある。船倉が形見で埋め尽くされて久しく、墓守の末裔達は、今も故人の鎮魂を祈り続けている。彼らも生を全うすれば、船倉の一隅に形見を収める事になる。
「翠を辿る……?」
 翠玉といえば、エメラルド。だが、その瑞々しい煌めきは、エメラルドのみならず。若葉のようなペリドット、鮮烈に輝くグリーントルマリン、奥ゆかしきディアスポラ、甘やかに艶めくプレナイト――上層部から深層に掛けて、緑なすクリスタリアン達の形見は、連綿と続いているようだ。
「う~ん……なんとなくわかったような気がします?」
 この漆黒の漿船で『緑』が特別な色であるのは、数ある伝承とレクイエムの歌詞から明白だ。かつての持ち主を思えば、それも当然かもしれないが……誰ぞの自画自賛の気配に、七十も苦笑を禁じ得ない。
「……どうしよう、本当に眠くなってきた」
 この船には、他にも猟兵が訪れている模様。敵を迎撃するならば、足並みは揃えておくに越した事はない。
(「よし。体力温存も兼ねて、寝ておこうかな……」)
 堪え切れず、大欠伸1つ――まあ、逆に置いてけぼりも嫌だし、他に見付けて貰えそうな寝床を適当に見繕うとしよう。

成功 🔵​🔵​🔴​

神宮時・蒼
…鎮魂、祈り…
…地を、離れ、宙へ、至っても、悼む心は、途絶えない、のですね…
…死は、何処の世界でも、平等、なの、ですね…
…さて、そんな、祈りの場を、破壊、させる、わけには、いきません、ね

【WIZ】
まずは「祈り」ましょう
謎を解く為とは言え、死者眠る墓標へ、足を踏み入れるのですから

さて
まずはお話を伺いましょうか
数多伝わる伝承も、紐解けば一つのお話が歪曲された物かもしれません
何かしらの共通項があるかもしれません
自身の「第六感」も頼りにしつつ、船内を回りましょう
慌てては事を仕損じる…
必要な情報のみを精査して
そうすればきっと、転送装置に辿り着けるはず、です

…皆様の、眠りを、護る、為に、出来る事を…



 鎮魂、そして、祈り。
 母星を離れ、宇宙へ至ったとしても、悼む心は、決して途絶えない。
(「……死は、何処の世界でも、平等、なの、ですね……」)
 ならば、その祈りの場を、破壊させる訳にはいかない――決意を胸に、瞑目する神宮時・蒼(終極の花雨・f03681)。
「……」
 墓守達の作法に倣い、蒼も又、祈る。謎を解く為とは言え、これから死者眠る墓標へ、足を踏み入れるのだから。
(「……さて。まずは、お話を、伺い、ましょうか……」)
 数多伝わる伝承も、紐解けば1つの逸話が歪曲・散在したのかもしれない。或いは、何かしらの共通項が見えてくるかもしれない。
 まず誰に尋ねようかと、表情乏しく首を巡らせる蒼。
「……あ」
 その時、少女の五感の埒外、又は直感とも言える感性が、伝承ではなく、『祈り』そのものに意味を見出す。
(「……皆、同じ、方に、向いて、祈って……?」)
 祈りを捧げる墓守達は全て、船の舳先の方角に向いている。まるで何かを、崇め奉るように。
「……何か……『外』に繋がる、『門』とか……」
 ならば。転送装置は、舳先の方向――船首のエリアにあると見て間違いはないか。
「……落ち着いて。慌てては、事を、仕損じる……」
 転送装置の位置は、船倉の船首のエリアの再深層――座標は、大まかに判じられようか。後は、其処に至る経路だ。

 ――闇のの通い路 惑い路 同じく彩を 標とし

(「……皆様の、眠りを、護る、為に、出来る事を……」)
 努めて冷静に、蒼は船倉に降りるステップを探す。
 クロムスフェーン――ホログラムのような複雑にゆらぐ反射に、ダイヤモンドを凌ぐ強いファイアを持つその宝石は、深いオリーブグリーン。
 恐らくは、『起点』であろうクリスタリアンの形見に埋もれるように、金髪の少女が眠りこけている。少なくとも、クリスタリアンではない。
「……」
 怪訝そうに眉を顰めるのも束の間。蒼と同じく漿船に乗り込んできた猟兵だろうと判断する。戦力は増えるに越した事はない。跨いで通る代わりに、彼女を揺り起こす事にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
船全体が墓地というのは珍しいですね。
それだけの歴史があるということでしょうか。

死者の静謐を守るためにも、猟書家の脅威を一刻も早く除去しましょうか。

と、言ってもこれだけの物品があると探すのも大変です。

転送装置があって、猟書家がここに来ているということは、転送装置は動いている。
ならば、なんらかのエネルギーがここに来ているということです。
ここはそのエネルギーの流れを探査します。
船倉内にドローン『マリオネット』を飛ばして、熱源や音源を探ります。
また、自分もスマートグラスを暗視モードにすれば、暗闇は対応できます。

あとは墓守たちにも話を聞いて、範囲を絞っていきましょう。
キーワードは門とか異界、ですかね。



(「船全体が墓地というのは珍しいですね」)
 首を巡らせる黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の眼鏡越しの眼差しに、好奇心が入り混じる。
(「それだけの歴史があるということでしょうか」)
 船倉を埋め尽くす故人の形見は、そのまま『黒曜』が積み上げてきた歴史そのもの。
「そうは言っても……これだけの物品があると、探すのも大変です」
 自らのスマートグラスを、暗視モードに切り替える摩那。これで、光源の無い船倉でも視界に不自由はないが、山積みを崩さぬよう、その間を縫うように先を進まざるを得ない。
(「転送装置があって、猟書家がここに来るという事は……転送装置は動いている」)
 ならば、何らかのエネルギーの流れを探査すれば……それで、ドローン『マリオネット』を飛ばして、熱源や音源を探してみた。
 確かにそれは、悪くない着眼点であっただろう――転送装置が稼働していれば。
 だが、現状はまだ、猟書家の来襲前だ。或いは、転送装置が動いていれば、漿船『黒曜』自体が感知していたであろうし、実際、バトラー・サファイアの転送後、漿船はその来襲を察知している。
 だからと言って、猟書家の来襲を待って動いていては、折角の待ち伏せの機会を喪う事になる。流石に惜しい。
 急がば回れ。ここは、暗視モードを駆使しながら、『翠』を辿るのが1番の近道だろう。
(「確か、楽園の福音、だったでしょうか……後は、門とか異界とか」)
 伝承の内容からして、決してネガティブなイメージは無かった『転送装置』の存在は、永き時を経て、虐殺の足掛かりとなってしまった。
 骸の海に排出された過去が牙を剥く。そんなオブリビオンの悍ましさに、摩那は暗闇の中で顔を顰める。
(「死者の静謐を守る為にも。猟書家の脅威は、一刻も早く除去しましょう」)

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

辺りに響く鎮魂歌、ねぇ。
アタシはそこまで嫌いじゃないよ、
黙する死者に敬意を表するのは生者の務めだろうさ。
そこに積み重なる先人の想いも、蔑ろにしちゃいけないだろ。
そこに残る思念を、【超感覚探知】のテレパスを使って汲み取り
『情報収集』といくかねぇ。

こういう時はさじ加減が難しいんだよなぁ。
余りへりくだっても慇懃無礼になるし、
砕けすぎても無作法だ。
『コミュ力』でその辺りのバランスを取りながら、
形見の記憶との対話を試みるよ。

騒がしくしてすまねぇな、
でも、これ以上のヤバい喧騒をここに起こさないための
要の場所を、こっそり教えてくれないかい?



 船内に響く鎮魂歌――静かな旋律は、何処か物悲しい。聞く者によっては辛気臭いと批判しそうだが、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はそこまで嫌いではなかった。
(「黙する死者に敬意を表するのは、生者の務めだろうさ」)
 故に、眼前に積み重なる先人の想いも、蔑ろにしてはいけないと思う。
 多喜の『超感覚探知』は本来、テレパス能力を攻撃回避に応用するユーベルコードだ。
 情報収集への転用は、ユーベルコードの厳密な運用という観点からすれば、無理がある。
 だが――サイコメトリーという超能力がある。その特徴は、物体に残る人の残留思念を読み取る事。サイキッカーでもある多喜であれば、永き時を経た故人の形見から情報を得る事も不可能ではない。
(「こういう時はさじ加減が難しいんだよなぁ」)
 余りへりくだっても慇懃無礼になるし、砕けすぎても無作法だ――『記憶』と対話を試みる手法は、コミュ力に長けた多喜ならではかもしれない。
「騒がしくしてすまねぇな」
 此処は「エメラルド」のクリスタリアンの形見が収められているエリア。今となっては、上層に住まう墓守さえも訪れぬ、船倉の再深層。
 形見自体は、これまでに通過してきたエリアに在った物品とさして変わりない。だが、『翠』のエリアに限っては、必ず緑色の宝石が漆黒の中に煌めいていた。まるで、常夜灯のように――標のように。
「でも、これ以上のヤバい喧騒は、あたしだって起こしたくねぇんだ」
 壁に埋め込まれたエメラルドに手を翳し、多喜は石に秘められた「記憶」を探る。
「なぁ、要の場所、こっそり教えてくれないかい?」
 暫時の静寂――俄かに茶の瞳を見開いた多喜は、身を翻す。
 或いは、虱潰しに捜索しても発見は叶っただろう。そう思わせるに足るサイズの正体不明の装置が、謂わばスリープ状態のまま船首の直下に安置されていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『バトラー・サファイア』

POW   :    ナイブスストーム
【サファイアでできた無数の暗器】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    アカンプリッシュメント・オブ・アサシン
レベル分の1秒で【麻酔針】を発射できる。
WIZ   :    サファイア・フラッシュ
【サファイアの肌】から【蒼く眩い閃光】を放ち、【目を眩ませること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エリル・メアリアルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――――。
 唐突に、気配が生じる。
 カツリ――。
 ヒールが床を叩く微かな音が、1度。
「……嗚呼、あなたもまだ、『私達』を覚えていたのね」
 今しも稼働したばかりの『装置』を背に、その呟きは冷え冷えとして。
 仄かに、サファイアの肌が輝いて見えた。
 バトラー・サファイア――プリンセス・エメラルドの執事にして暗殺者。
 だが、猟兵の迎撃態勢は既に調っている。彼女が虐殺を始めんと動き出す前ならば、その出端を挫く事が出来る筈だ。
「ならば、主命に従うのも、当然でしょう。私達は漿船(あなた)の力を必要としています」
 ――この静謐の場で、全てを終わらせなければならない。
岩倉・鈴音
強敵、しかも忍んだりしそうだね。
だけど猟兵は狩りじゃ負けないんだよ。

あらかじめ物陰に待機、サファイアが気づく前に先制攻撃っ。
「お命頂戴ー!!」
渾身の貫通だ。
ワタシだけでコイツを仕留められないが暗殺者にこそこそ隠れながらクリスタリアン達を虐殺させるわけにもいかない。
そこで【怪しいバッドすてーたす】を張り付けるよ。
なんかにゃんこの湿布だけどこれがまた沁みて効くンだわ。
以後サファイアの振る舞いはすべての者に注目されて気づかれるさ。ワッハッハ!

ワタシは回避しながら切り込んでいくスタイルで戦っていくよ。



 プリンセス・エメラルドの執事、バトラー・サファイア――強敵、しかも『暗殺者』でもあるからには、忍んだりもしてきそう。
(「だけど、『猟兵』は狩りじゃ負けないんだよ」)
 既に迎撃態勢は調っている。この状況を、活かさない手はない!!
「お命頂戴ー!!」
 本来は略奪の得物『勝虎巣』を手に、岩倉・鈴音単身特攻。渾身の突撃で、敵の防備を貫かんと。
 ――――!
 流石に目を瞠ったバトラー・サファイアだが、そこは沈着冷静に。僅か一歩、左に躱し、執事服の脇を切り裂かれるに留まった。
(「うん。やっぱり、ワタシだけじゃコイツを仕留められない」)
 鈴音とて、先制攻撃でケリが付くなんて考えていない。警戒すべきは、暗殺者の挙措。こそこそ隠れられて、片っ端からクリスタリアン達を虐殺させる訳にはいかない。
 ――――!!
 麻酔針が奔る。その一閃は、敏捷に長けた鈴音の反応速度をも上回り、スカート越しの太腿に突き刺さる。
「くっ……」
 即効の麻痺に、堪え切れず膝を突く。だが、侮る表情のバトラー・サファイアを真っ向から見上げ、鈴音はにんまりと笑み零れる。
「貼ったらしみてきてきっくぅー」
「……!?」
 よもや、バトラー・サファイヤの切り裂かれた左の脇腹に、お祭りニャンコのメダルが貼り付けてられていようとは。
「それ、小さいけどなんか湿布みたく、これがまた沁みて効くンだわ」
 まんまと敵に擦り付けた怪しいバッドすてーたすは、『注目』。
「これから、君の振る舞いはすべての者に注目されて気づかれるさ。ワッハッハ!」
「貴様……」
 片足の麻痺でとうとうひっくり返りながらも、大いに胸を張って高笑いの鈴音を、バトラー・サファイアは今にも射殺しそうな険悪で睨み付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

こういう場所で騒ぎにするのはどうかと思いますよ?
静かに眠るのを起こさないで上げてくださいよ

(UC『万花変生』を使用。暗闇にして貰い蔓で周囲を把握しながら大剣と蔓で、防戦を演じながら一緒に出した、夢の中のような幻覚を見せる香りの花と眠りに落ちるように力が抜ける香りの花を出して)

眠くなってきました?
此処は多くの人が眠っているそうですが。

(幻覚を見せながら力の抜けたサファイアを蔓で包んでいき、隷属させる植物を植え付けて)

貴方にここは相応しくないと思います。
だから此処で眠らせても、終わらせても上げません。
私と一緒に出で行くのですよ。

(力を奪っていきながら隷属させようとしていき)



「こういう場所で、騒ぐのはどうかと思いますよ?」
 ザワリ、と何かが蠢く。
「静かに眠っているのを、起こさないで上げてくださいよ」
 僅かな光源とも言える壁に埋め込まれた翠玉が、何かに覆われていく――。
 ――――!
 暗闇の中、神咲・七十は漆黒の大剣を振るう。迫り来る無数のナイフを薙ぎ払い、時に蔓で絡め取って防戦する事暫し。
「……あ、眠くなってきました? 此処は多くの人が眠っているそうですが」
 その実、『防戦』の呈は演技。バトラー・サファイヤと戦う中、七十の紅いコートより、幻覚と眠りを齎す花の香りが広がる。
「貴方にここは相応しくないと思います。だから眠らせても、終わらせても上げません」
 万花変生――七十が召喚した数多の未知の植物は、敵を隷属させ取り込む魔性。
「私と、一緒に出で行くのですよ」
 ――敵に、敗北や服従の感情を植え付けられれば。
 ――――!!
 今しも、七十の蔓に力無く呑まれようとしたバトラー・サファイアの肌が、眩く輝く。
「……っ」
「生憎と、私の主は、プリンセス・エメラルド様のみ」
 ほんの刹那、七十が目を眩ませた隙を逃さず、バトラー・サファイアは蔓を刻んで包囲網を突破する。
「あーあ」
 執事としての矜持が、喩え魔王であろうと猟兵への屈服を良しとしなかったか。
「私に取り込まれた方が、きっと楽に終われたのに」

成功 🔵​🔵​🔴​

神宮時・蒼
……鎮魂の場を、…死者の、眠りを
…妨げる、事は、許され、ません。…主命、など、関係、ありま、せん
…此の場で、眠るのは、貴方、です

【WIZ】
目くらまし、厄介ですね
ならば、なるべく相手の方を見ないように立ち回りましょうか
「第六感」に頼りつつ、「目立たない」ように行動します
相手の攻撃範囲が広いのならば「高速詠唱」「範囲攻撃」で白花繚乱ノ陣を
吹き荒れる花吹雪が、閃光を遮る壁となるでしょう
「結界術」で防げるものは、「結界術」を
攻撃の隙が生まれたならば、「全力魔法」を乗せた白花を向けましょう

……これで、この船の、静寂は、護られた、でしょうか……
最後に、この船に眠る魂に「祈り」を捧げましょう



(「目くらまし、厄介ですね」)
 最初に仕掛けられた『注目』がある限り、彼の執事であり暗殺者が行方を眩ませる心配はない。
 だが、神宮時・蒼は不用意に近付かない。
(「なるべく、相手の方を見ないように立ち回りましょうか」)
 バトラー・サファイアの動向は知れても、予見となれば勘頼り。神経を研ぎ澄ませ、蒼は密やかに先回りを試みる。
 カツン――。
「……鎮魂の場を、……死者の、眠りを……妨げる、事は、許され、ません」
 船倉の一隅にて、漸く察知したか。身構えるバトラー・サファイアを映す蒼の双眸は、虚無の色。
「……主命、など、関係、ありま、せん。……此の場で、眠るのは、貴方、です」
 女執事がサファイアの輝きを放つと同時、花吹雪が吹き荒れる。
「……っ」
 光は僅かな間隙さえも貫けば、花吹雪とて全てを防ぎきるのは厳しい。結界術の重ね掛けで辛うじて、閃光の束縛から逃れる蒼。
「……何にも、染まらぬ、誠実なる、白。何にも、染まる、無垢なる、白。……舞え、吹き荒れろ」
 時によって違う姿を見せる魅惑の花は、夜に瞬く月下香。甘く惑わす、魔性の白――杖が描いた陣術より、先と比べ物にならぬ激しさで月花ノ吹雪が迸る。
 この船の静寂を護るべく、後で、この船に眠る魂に祈りを捧げるべく、今は出し惜しみせず、蒼は全力の魔法をバトラー・サファイアに叩き付ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

いよぅ、待ってたよ執事さん。
しかしまぁ、ここに来るのはちょっと早すぎるんじゃないのかい?
何せここは墓標船。
生を全うしたモノが最期に辿り着く場所さ。
ああいや、そういう意味じゃ「遅すぎた」のかねぇ?
アンタも過去の残滓だろ、バトラー・サファイア。
骸の海へ最初に旅立ったのは、『なんどきだったんだい?』

馴れ馴れしく『コミュ力』で語り掛けながら、
『挑発』するように煽り立てるよ。
まぁ冷静沈着な執事さんの事さ、
サラッと受け流してくるだろうけどね。
本命は挑発に紛れ込ませた【時縛る糸】!
思念に気付いて痺れ針を飛ばしてくるかもだけど、
アンタの時も止まる筈。
その間に皆、思い切りやっとくれ!



「……く」
 白き花吹雪より逃れ、蒼玉の執事は船倉の床を蹴る。まだ膝を突かぬのは、幹部猟書家に数えられるだけあるか。
「いよぅ、待ってたよ執事さん」
 それでも、ダメージ浅からぬバトラー・サファイアに、数宮・多喜は衒いなく声を掛ける。
「しかしまぁ、ここに来るのはちょっと早すぎるんじゃないのかい?」
 何せ、ここは墓標船。生を全うしたモノが最期に辿り着く場所なのだから。
「……ああいや、そういう意味じゃ『遅すぎた』のかねぇ?」
 わざとらしく、にやりと笑って見せる多喜。
「アンタも過去の残滓だろ、バトラー・サファイア」
「さて」
 馴れ馴れしく、いっそ煽るように喋り続ける多喜を前に、バトラー・サファイアの沈着の表情は崩れない。
(「やっぱり、サラッと受け流してきたね」)
「骸の海へ最初に旅立ったのは、『なんどきだったんだい?』」
 ――――!!
 準備動作すら見せず、バトラー・サファイアは麻酔針を放つ。
「……うぐっ」
 回避の暇もなく、多喜のスキニーライダースーツまでも貫いた鋭い針は、すぐさま、彼女の自由を奪う。
「はは……」
 クラリと眩暈に襲われ、たたらを踏む。だが、多喜の不敵な表情は変わらない。
「これで、アンタも動けない」
「!?」
 多喜曰く『時縛る糸』は、文字通り、敵の時を止める思念波。ユーベルコード発動のトリガーワードは、『なんどきだったんだい?』。
 まさか、言葉のやり取りが、既に命のやり取りであったとは。
「さあ、思い切りやっとくれ!」
 奪った時間は98秒。その有効活用は後に託し、多喜は大の字にぱたりと倒れ込む――何だか、安らかな寝息が聞こえてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルフローレ・カノン
転送装置で転送してくるバトラー・サファイアを迎え撃ちましょう。
明かりは……【祝福の光】で自分で光ります。
あと、墓守や漿船には、戦闘で騒々しくなることを詫びておきますか。
それでは……全力で行きますよ!


私たちが迎撃する側ですから、敵の出現時を襲うなり、
他の方と交戦する隙を狙うなりして、
先手を取り攻撃を見舞いましょう。
そのあとは力押しで行きますが。
[怪力][力溜め]の上で[2回攻撃][傷口をえぐる]でひっぱたきます。
折角飛べる状態なので、空を飛んで攻撃をかわしたり
スピードを乗せてまっすぐ突っ込み[シールドバッシュ]を
食らわせたりもしましょう。

敵の飛び道具は[武器受け][盾受け]で払いのけますか。


黒木・摩那
遠いところから来てもらって悪いんですが、出オチにさせてもらいます。
ここはクリスタリアンの聖地であって、あなたのような猟書家が来るようなところではありません。
お門違いだし、迷惑です。

帝国の野望はここで潰します。

相手からの攻撃は【第六感】と、スマートグラスで弾道予測した上で【念動力】で軌道を逸らします。

攻撃はヨーヨー『エクリプス』で戦います。

UC【トリニティ・エンハンス】で【風の魔力】と【炎の魔力】を付与します【属性攻撃】。ヨーヨーに炎をともし、それを風の魔力で回転させて、炎のヨーヨーにします。
暗器を【武器落とし】【なぎ払い】でまとめて叩き落しつつ、一撃を叩きこみます。



 一斉に、飛び出したのは、黒木・摩那とメルフローレ・カノン。
「遠いところから来てもらって悪いんですが、出オチにさせてもらいます」
 摩那が構えるのは、超可変ヨーヨー『エクリプス』。謎金属のボディが燃え上がるや、疾風を纏って高速回転。
「ここはクリスタリアンの聖地であって、あなたのような猟書家が来るようなところではありません」
 敵が動けぬ好機を逃さず、炎のヨーヨーは唸りを上げて青き痩躯を抉る。
「私も、全力で行きますよ!」
 自ら神々しい光を放ちながら、メルフローレは低空飛行で急接近。これ以上ない先手を取り、スピードを乗せたシールドバッシュを真っ向から浴びせ掛けた。
「神よ、私に更なる祝福の光をお与えください……」
 メルフローレの信仰と正義の心は揺ぎ無い。揺ぎ無いが……硬直したまま、派手に吹っ飛ばされたバトラー・サファイアが形見の山に突っ込んだのを目の当たりにして、後で墓守達や漿船に謝罪しようと考える。
「……っ」
 更に数手――業炎のヨーヨーと輝ける突貫に、何度かバトラー・サファイアの身体が宙を舞う。
 ドガシャァァッ!
(「ああっ! 本当にごめんなさい!」)
 内心で何度も謝るメルフローレが得物を構え直した刹那、形見の山を吹き飛ばし、青刃が幾重にも渦巻き迸った。
 ――――!!
 だが、その尽くを、摩那はヨーヨーの軌道でなぎ払う。スマートグラスの演算による弾道予測の賜物だ。
「過去の亡霊なんて、お門違いだし、迷惑です。帝国の野望はここで潰します」
 凛とした言葉と共に放たれた炎の一撃に、メルフローレの剛剣が追撃する。
「……ここまで、か……」
 摩那のヨーヨーに続き、メルフローレは左右の得物で傷口を抉られ、亀裂が青き全身に走るに至り、バトラー・サファイアは眉根を寄せて瞑目する。
「主よ……今1度、暇を頂きましょう。次こそは――」
 言い終えるより先に、粉々に砕け散った。

 斯くて、『闇の宇宙のその闇の底』は、猟兵達の活躍で静寂を取り戻す。漆黒の漿船は、これからも『墓標』で在り続けるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年02月04日


挿絵イラスト