閉月驟禍~来たるは呪言、舞うは剣
●グリモアベース:予知者、ムルヘルベル・アーキロギア
「サムライエンパイアで、猟書家が動き出した。彼奴の目的は京都を潰すことだ」
大きな本を手にした少年めいた姿の猟兵が、集まった一同に告げた。
「敵の名は『大天使ロロサエル』。あの天上界を求める謎めいた大天使の同胞、らしい。
大天使とやらがいかなる存在なのかはまだわからぬが、決して油断できぬ敵である」
ムルヘルベルの背後に、グリモアがふたつの映像を投影する。
ひとつは、いましがた名を告げられた『大天使ロロサエル』の姿。
その隣に浮かび上がるのは……かつて滅ぼされた魔軍将、『安倍晴明』である。
「そして彼奴は『超・魔軍転生』という邪法を使い、この安倍晴明の魂を配下に宿す。
すなわち敵は、ロロサエルだけでない。大量の、憑装された術師の群れである」
憑装――かつて第六天魔王・織田信長が用いた、魔軍将の魂を宿す技。
猟書家は、それを単体ではなく多数に分割・強化せしめるのだ。
しかも素体となるのは、『安倍清濁』と名乗る少年風の姿をした邪悪な術師である。
「もとより陰陽術を振るうオブリビオンが憑装を受ければ、さらに強大となろう。
……幸い、京には陰陽師たちが数百年かけて構築した強力な結界が張られておる。
彼らの術を連携して活用すれば、敵の威力を削ぎ、動きを止めたりも出来るはずだ」
つまり戦うならば、京を守る陰陽師たちとの協力は重要だということ。
配下を蹴散らしロロサエルを討ちさえすれば、敵は烏合の衆となる。
「連中は主に北側から攻め込んでくる。だが、内部に入り込んだ輩も少なくあるまい。
戦場は広くばらけることになるやもしれぬが、オヌシらならばそう問題はなかろう」
京の北部……現代日本では上京区とされるエリアには、多数の寺社仏閣が存在する。
名を伏せられし大魔縁にして雷神を奉った北野神社や、鬼の逸話で知られる一条戻橋。
さらに南に下れば、二条城や六角堂など、現代でも名所として知られる場所も。
……そう聞くと観光めいた気分にもなるかもしれない。だが、これは戦いである。
歴史ある名所史跡や京の人々を守るためにも、手を抜くことは出来まい。
「偉大な俳諧師に曰く……"京にても京なつかしやほととぎす"という詩がある。
京の都にありてなお、杜鵑の声に郷愁に惹かれるほど、京は趣深いということか。
ま、いずれにしても、連中に好きにさせる理由はあるまい。オヌシらの健闘を祈る」
その言葉が、転移の合図となった。
唐揚げ
生八ツ橋です。年末駆け込み猟書家シリーズ第10弾!
今回はサムライエンパイアの京都を舞台とした戦いです。
猟書家ってなあに? とか詳しい話は、下記のURLをご参照ください。
●参考URL:猟書家の侵略
『 https://tw6.jp/html/world/441_worldxx_ogre.htm 』
●プレイング上の備考
戦いの舞台は、主に京都北部(現代で言う上京・中京区あたり)となりますが、
敵はいろんな術を使って忍び込んでいるので、他のエリアでも戦えます。
そして京都といえば……そう、風光明媚な観光スポットですね。
OPで提示されているスポット以外にも、清水寺だとか三十三間堂だとか、
サムライエンパイアにありそうな名所史跡をプレイングしていただければ、
そこを舞台にしたリプレイをお届けします。このご時世なのでせめて旅気分を!
……まあ血みどろの戦いなんですけれども。そこはお忘れないように!
あ、あと名前を出したらヤバい系のあれこれはこう、マイルドにします。
色々ありますからね、京都だと。こう……ね! よろしくお願いします!
●プレイングボーナス
『陰陽師と協力する』
陰陽師は直接的な戦闘力は低いですが、術の妨害や敵の束縛などが出来ます。
あえて彼らを守ったりする必要はありませんが、庇う系の方向でもOKです。
●プレイング受付期間
特に設けず、書ける時に書いていきます。ご参加はお早めに。
第1章 集団戦
『安倍清濁』
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POW : 形代封じ・大威徳
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【符術を操る自分自身】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD : 悪業罰示・無為識神
自身の身長の2倍の【霊獣、または十二神将】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 毒するは濁り酒、分つは清刀。
【祝詞と呪詛】を向けた対象に、【角を持つ種族を殺める酒と刀】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:一羽
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●サムライエンパイア:京、北部
「――発動せよ、「超・魔軍転生」!」
背には白き翼、手には禍々しい魔本を持つ男が、朗々と口訣を唱えた。
「クルセイダーの名の元、私が呼び出すは……陰陽師「安倍晴明」!
界渡る者にして魔軍将……私の軍勢全てに分裂し、憑装せよ!」
魔本が不穏な輝きを放ち、やがて男――ロロサエルの立つ地面までもが光り輝く。
光はまたたく間に地を覆い、立ち並ぶオブリビオンどもを下から照らした。
呻き沸き立つは亡者の怨嗟……のたうつ不浄な輝きが残骸の身体に絡みつく。
「京の結界は護りが堅い。ですがあなたの術理であれば、穴は開けましょう?」
『――噫』
うなだれたオブリビオンの群れが、まったく同時に、同じ声を漏らした。
吐息。あるいは落胆、あるいは退屈を示すような。
同じ姿をした者どもが、同じ声で、同じように嘆息する。
異様な光景である。まるで、群れがひとつの生き物であるかのようだ。
『またしても私は、斯様に退屈で、変わることなき存在に成り果てましたか』
憑装は、滅ぼされた残骸の意識をすら再現せしめる。
今このとき、安倍清濁たちは間違いなく『安倍晴明』であった。
『して、私に何を望みます。天上より追われし天使の御方』
「あれなる都の滅亡。そして、我らの勝利を」
『――なるほど』
紫色の輝きを帯びた双眸が、気だるげに都の遠景を見下ろした。
『我らが動けば、彼らも来ましょう。ならば、多少は退屈せずに済みますか。
……クルセイダーの名のもと、この地にて、我が業(カルマ)を蒐めましょうぞ』
きゅう、と、笑みが人ならざる不気味な形に吊り上がる。
次の瞬間、配下の姿は闇色の靄に覆われ、そして消えて失せていた。
「――さて、まずはあちらの出方を伺うとしましょうか」
ロロサエルは悠然と微笑み、雅やかなる京の大気を胸に吸い込んだ。
これよりこの地は、死と血風が支配する絶望の領域と成り果てる。
月舘・夜彦
【華禱】
梅がまだ咲いていなかったのが幸いかもしれませんね
人が集まっている状況では、被害も大きくなっていたでしょう
来年、穏やかに梅を眺められるように此処を守りましょう
陰陽師達には攻撃が届かないように離れて援護を要請
結界を優先し、問題なければ敵の妨害をお願いします
私達が来たのは猟書家を倒す為……此処はお任せください
倫太郎の術、または陰陽師達の術で動きを止めた敵を優先
2回攻撃となぎ払いにて、手数多く広い範囲を攻撃
視力にて周囲を警戒し、召喚の類いには抜刀術『神嵐』
召喚されたものの動きを封じた隙に本体を狙う
敵の攻撃は残像にて回避、回避が困難であれば武器受けにて防御
いずれも凌いだ後にカウンター
篝・倫太郎
【華禱】
北野神社……北野天満宮
梅苑が有名だよな
梅って天神様に縁あるしさ
時期はもう少し先だけど
咲いた花をさ
京の街の人たちが……穏やかに愛でられるようにしなねぇと?
陰陽師達には敵から目視出来ない箇所で
術式を強化するように頼んどく
見えると狙われるからさ……
餅は餅屋、オブリビオンは猟兵にってな?
拘束術使用
射程内の総ての敵に鎖での先制攻撃と同時に拘束
拘束したらダッシュで接近し吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃の範囲攻撃
出来るだけ施術中の陰陽師から遠ざけるように立ち回り
敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ
負傷は激痛耐性で耐えて
以降の攻撃には生命力吸収を乗せて対処
●雷神のおわす場所
北野神社――またの名を、北野天満宮。
都に仇なす大魔縁を、"天満大自在天神"として信仰し慰めるため建立された地。
平時であれば、春は梅、秋には紅葉の名所として知られる平和な場所だ。
しかして……否、だからこそであろうか。
安倍晴明の魂を憑装せし陰陽師の群れは、雷神の力を簒奪せんとして、
愚かにして傲慢にも、この地を破壊せんとして殺到していたのである!
「あれが、噂に聞く超・魔軍転生せし化け物どもか……!」
「呑まれるなよ。この地に先祖伝来の結界あり! 我らに守るべき使命あり!」
「応さ! 術式勝負で敗けるわけにはいかぬ!」
陰陽師たちは、その命を散らしてでも宮を守るつもりであった。
だが――安倍晴明どもが落着するわずか1分前、参陣せし者らあり。
「間に合ったか。その奮戦、待ったをかけるぜ!」
「我々は猟兵です。都を守りし術師たちよ、どうかお頼みしたい儀がございます」
月舘・夜彦と篝・倫太郎は、焦りながらも落ち着いた口調で言った。
「なんと、上様の計らいにござるか? これは心強い!」
「まあ、そんなところさ。それよりも……あんたたちのことについてだ」
「ええ。敵は我々が引き受けます。術師殿、あなたがたには身を隠して頂きたい」
陰陽師たちは、夜彦と倫太郎の物言いに、顔を見合わせた。
「役立たずだって言ってるわけじゃねぇんだ。ただ、餅は餅屋、って言うだろ?」
「その通り。貴殿らには、敵の妨害と結界の強化をお願いしたいのです」
さもありなん。陰陽師らは命を賭してでもここを死守するつもりであった。
それを他ならぬ天下御免の猟兵に言われたとあっては、認めるほかなし。
「……かたじけない。ならば都を守る役目、ともに果たしましょうぞ!」
「応。……俺も、綺麗な梅を愛でる平和な春を迎えてぇからさ」
陰陽師の言葉に、倫太郎は悪童めいて健やかに笑った。
夜彦はそんな彼の横顔を、頼もしげな表情で見つめ、こくりと頷く。
「人が集まる状況でなかったのが幸いです。……さあ皆様、後退を」
かくして、陰陽師らは安全な後衛からふたりを援護することと相成ったのである。
……それからわずか20秒後!
おぞましき負の気配と、吐き気を催すほどの濃密なる死の匂いが辺りを染める。
先のエンパイア・ウォーにて、幾度となく調伏せしめた"業"の気配。
これが、恐るべき水晶屍人の作り手、安倍晴明の持つ邪悪なる法力……!
『――これは異な。はたして都を守る術師は何処にありましょうや?』
同じ顔立ちをした"安倍清濁"どもは、しかして憑装されしモノの声で喋った。
『なるほど、察するに貴方様がたが退かせましたか。してやられた、というところでございましょうか。実に……興味深い』
「ハッ。一度は滅ぼされたオブリビオンが、強者ぶるなんざ片腹痛ぇぜ」
「然り――この世界に、もとよりお前の在るべき場所はなし」
倫太郎と夜彦が猛烈な殺気をほとばしらせると、安倍清濁は身構えた!
『悪業罰示・無為識神……! 来たりませぃ、十二神よ! 霊獣どもよ!!』
一瞬にして印を結び口訣を唱えれば、業臨せしは邪悪に染まりし獣と神!
しかして彼奴らの動きは、見えざる枷を嵌められたかのごとくぴたりと止まった!
「侮ったな、安倍晴明! 後ろが居るとわかってて無視するたぁよ!」
「此処を守るのは私たちだけに非ず――その驕慢を斬って差し上げます!」
ふたりは境内を颯爽たる速度で駆け抜け、一瞬にして敵の間合いに入った。
天神様の強力を彼奴らが利用したとすれば、それは恐るべき雷撃となろう。
斯様な罰当たりな真似は、この国を守った勇士として見過ごせぬ。
ならばその邪悪下劣なる力が発揮される前に、一刀両断に斬り伏せるべし!
『何……? 都の術師ども、これほどの……否、これは……!』
安倍晴明を驚嘆せしめたのは、なによりも猟兵たちの決断的な戦いぶりだった。
なるほど、こやつらならば、第六天魔王を滅ぼし我等を退けるに足るか。
退屈に塗れた魂がいまさら驚愕とともに本領を見せようとて、もはや遅い。
「戒めをくれてやる……消えな!」
華焔刀を振るえば見えざる鎖が手足を縛り付け、敵を跪かせた。
さながら裁きを受ける罪人のごとく、うなだれた頸を刃が刎ねる!
「――奪え、嵐」
続く夜彦の剣は、召喚されし十二神将を破魔の嵐にて祓魔せしめた。
荒れ狂う斬撃の壁は、膾斬りところか微塵にせしめ、血風を逆巻かせる!
『これは……どうやら私の認識が、甘かったと言わざるをございませんな……』
晴明はくくっ、と愉快げに喉を鳴らし、そしてその頸も刎ねられた。
境内にびしゃりと血がほとばしり、いまだ芽吹かぬ梅の木を赤く染める。
それはオブリビオンの死体が消えるとともに、ふわりと雲散霧消せしめた。
「……まったく。天神さまのおわす場所を汚すもんじゃねぇぜ」
「ですが、これにて一件落着。まずはひと心地、といったところですね」
ふたりは残心を切った上で顔を見合わせ、頷きあった。
そして互いに信頼の笑みを浮かべ、拳を突き出し勝利を祝う――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霑国・永一
【盗人と鴉】
死んでも魂酷使されるとは、ブラックな職場だなぁ
そう思わないかい、コノエ?
いやぁ、一緒に戦うのは初めてだけど、警備での腕前頼りにしてるよ。何せ、俺は非力な盗人だからねぇ
ははは、不信とは参ったなぁ(笑ってる)
ではでは御笑覧。狂気の使役を使うとしようか。霊獣やら十二神将が召喚されれば、その主導権を盗んでしまおう
同士討ちさせたり、コノエの攻撃に当てに向かわせたり嫌がらせさぁ。陰陽師連中の援護も合わさってまともに動けないだろさ
「ほーら、コノエ。丁度いい的を俺からプレゼント!是非受け取ってバッサリ宜しく」
「おっと、コノエにちょっかい掛けるのはNGさぁ(操って妨害する」
「やるじゃないか、コノエ」
朱葉・コノエ
【盗人と鴉】
…今回は雇い主様の希望で貴方と行動を共にしているまでです。
永一様の事はあまりまだ信頼はできませんが…任された以上は、最低限の仕事はいたしましょう。
敵は複数体、流石に一体ずつ相手にするのは厳しそうですね
紅颪流・数霧で数多の斬撃を飛ばしていきましょう
永一様の仕掛けた策が発動すれば、それに合わせるように敵を斬り伏せる
敵の攻撃に対しては翼を広げ、空に避けていく
「…貴方に言われずとも、すでに斬り落としています」
「…私は仕事を全うしたまでです。それと、まだ気を抜くには早いです」
●うごめく魔ははたしてどちらか
――あの男は信用できぬ。だがそれ以上に……気に食わぬ。
朱葉・コノエは心の中で思いつつも、実際のところ、驚嘆せざるを得なかった。
ここは都の動脈とも言うべき通りのひとつ、相対するは安倍晴明を憑装せし魔の群れ。
かの魔軍将の力を降ろした術師の群れは、陰陽師どもではあまりに荷が勝つ。
ふたりが……そう、コノエと霑国・永一がいなければ、勝負は明らかだったろう。
そして敵は安倍晴明……生命の理さえももてあそぶ、邪悪下劣な大魔道である。
それらが力を合わせ、恐るべき宮毘羅大将の霊を業臨せしめた。
呪によって十二神将の意を歪め、水の力にて大路を押し流さんとしたのである。
そう、押し流そうと"した"――だが!
『……これは!?』
生者をあざ笑い弄ぶ晴明をして、驚愕し困惑する光景であった。
安倍清濁が持つ霊力を結集して呼ばわれた宮毘羅大将の動きが、制御出来ぬ。
そして集められた水の神力は、猟兵ではなく安倍晴明を襲ったのである!
「あーあ残念。ちょうどいい駒が居たから、"盗ませて"もらったよぉ?」
はたして、いつの間に潜んでいたというのか。
宮毘羅大将の影から現れたのは、他ならぬ永一である。
『盗んだ、と? この私めが手ずから力を込めし神将を、こともあろうに……』
「証拠を見せてあげようか? そうら、水芸の始まりだ!」
宮毘羅大将の霊は水の神力を凝縮させ、無数の濁流として解き放った。
安倍晴明は咄嗟に護法結界を構築し、四方に飛び散って攻撃を避ける。
同時に呪をかけて神将の制御を脱しようとするが、てこでも動かぬか!
『……なるほど。これはなんとも芳醇なる"業"の香りを感じまするな――』
そして眼を細めた。あれなる猟兵から放たれる、強烈な負の気配に。
あれは、"同類"だ。本質的な存在としては、仇敵、相対するモノなれど。
生物としての指向性は、紛れもなく――!
「一瞬千斬、微塵と成せ――油断が過ぎるぞ、安倍晴明」
しかしてその思考を遮ったのは、背後から放たれしコノエの斬撃である。
宮毘羅大将は、安倍晴明らが霊力を縒り合わせて生み出した巨大な神将だ。
その制御を奪われたとあっては、霊獣を召喚するにもタイムラグが生じてしまう。
しかも注意が永一に向いていたことと、陰陽師らの存在が敵に仇なした。
刹那の一瞬、身動きが取れなくなる。コノエにとってはそれで十分なのだ。
ばさりと翼を広げた天狗少女の斬撃は、まさしく一瞬にして千の嵐。
"紅颪流・数霧"。その銘に違わずして、安倍晴明は霧の如く微塵に斬られた!
『なん、と……! いかに憑装へと身を落としたとて、これは……!』
ただの斬撃であれば、安倍晴明は回避するか防御することも出来ただろう。
その護りをも諸共に切り裂く斬撃の、鋭さと速さたるや!
「ほーら、コノエ。丁度いい的のプレゼントだ、愉しんでくれたかい?」
「……あなたに言われずとも、すでに斬り落としています」
「おやおや、つれないねぇ。せっかくの共同作業じゃないか」
安倍晴明らがバラバラにされて倒れる。あたりには血臭が満ちた。
しかして永一の"盗んだ"宮毘羅大将の霊は、いまだもがき苦しんでいる。
コノエはその様子に眉根を寄せた。"わざと残している"とわかったのだ。
「……もはや敵は討たれました。神将を還すべきかと存じますが」
「おやぁ、そうかい? 敵の第二波があるかもしれないだろう?」
永一は面白げな態度を隠しもせずに、うそぶいてみせた。
そう、嘘だ。この男は、盗んだものを甚振っているにすぎない。
大いなる神将の霊すらも手駒にする。これはまさしく……邪悪そのもの。
やはり、この男は信用出来ぬ。コノエは苦虫を噛み潰したような面持ちになった。
そして、一閃。
「おや」
「無用な力を使わないでください」
斬撃が神将の頸を刎ね、そして霊は霧散していく。
「これは残念。なかなかの大物だったから取っておきたかったんだけどねぇ。
……やるじゃないか、コノエ。これは、俺がいなくてもよかったかな?」
「……私は仕事を全うしたまでです。軽口を叩くにはいささか早いですよ」
取り付く島もない言葉に、永一はやれやれと肩をすくめてみせた。
かくして太路に蔓延る魔は、ふたりの猟兵によって討たれた。
――されど真なる邪悪は、はたして敵と味方いずれだったのだろうか?
コノエは他愛ない考えに囚われ……けれどもすぐ、その思考を振り捨てた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
場所はどこでもいい
強いて言うなら手薄なところを埋めるかな
霊獣だろうがなんだろうが、好きに呼び出せばいいさ
的がでかくなる分には歓迎だぜ
街への被害って意味じゃうまくないが
要は、被害が出る前に倒せばいいんだろ
陰陽師へは頼めるなら拘束を
一瞬で構わないよ、秒もいらない
それで片が付く
狙いは、違えず頭部だ
可能ならば本体の、無理ならば騎乗している存在の頭を撃ち抜くよ
一撃で殺せるのが一番無駄がないからな
世界を救う、なんて大義名分で戦ってるわけじゃないんだろう
結局のところあいつの為だ
同じ戦場で俺があいつ以上に働けば
人間性だとか、命だとかを擦り減らす機会が少しでも減るから
……ただ
それだけ、じゃないとは、思いたいけど
●誰が何を殺すのか
鳴宮・匡の頭にあったのは、京の都の人々や術師たちのことではない。
……もちろん、任務として守るべき人命のことは意識している。
実感としてそれらへの情を抱けぬとしても、それが仕事であるならば。
ただ匡を駆り立てる一番の理由は――そう、"彼"のことだった。
匡の予想通り、彼は此処に居る。気配を消して殺戮を振り撒いているのだろう。
確信があるし、事実、匡の鋭敏な知覚力は"それ"の残滓を感じていた。
人間性を摩耗させ、魂を貪食し、ついには虚無にせしめる力の残滓を。
ヴィクティムという男の魂と身体にこびりついて消えぬ、酸鼻なるにおいを。
(……止めやしないさ。それが、お前の戦い方なんだろ)
左京、銀閣寺へと通じる琵琶湖経由の小路――現代においては"哲学の道"と呼ばれる通りにて、匡は霊獣の群れと戦っていた。
彼奴らが召喚せしは、本来京を守るために配置されし四神の分け御霊である。
空には燃え上がる霊獣・朱雀が舞い踊り、炎の羽根を雨の如くに落とす。
小路に寄り添う小川を玄武の巨体がめきめきと破壊し、水を渦巻かせる。
匡は類稀な知覚力でこれらの攻撃を察知し、銃撃によって獣を術者ごと滅殺せしめた。
影を纏いし銃弾は、人の身が滅ぼし得ぬ霊獣を呪われたる術者もろとも殺す。
『さあさあ、おひとりでいつまで足掻けますかな? 実に心地ようございまする。
我はすでに死したる者、なればこの依代尽きるまでお相手いたしましょうや!』
安倍晴明の大音声も、匡の耳には届いているが心には伝わっていなかった。
殺すべき敵に寄り添う趣味などない。淡々と殺す――そう、殺すのだ。
あの男が、己の人間性を、魂を殺し続けてまで戦うならば。
(俺がお前以上に働けば、お前はお前自身を殺さないで済むだろ、ヴィクティム)
姿なき仲間に心で語りかけ、匡は弾丸をばらまき、青龍お分け御霊を殺した。
己は死神だ。殺すことしか出来ぬもの。血塗られ、呪われた存在。
ならば殺すことで、友が己を殺さずに済むよう呪いを振り撒いてやろう。
来るがいい魔よ。ことごとう死をくれてやるゆえに。
それ以外など"どうでもいい"。見知らぬ人の命など、友に比べれば――。
(――……いや)
そうであるのかも、しれない。
けれども、それだけではないと思いたかった。
大義名分を背負って戦うなんて真似は、出来ないとしても。
友のためだけでなく。己の心では感じれぬ、心動かぬ何かのためにも。
この命を使えるならば――どうか、そうあれかしと。
祈りを込めた影の魔弾が、分け御霊を貫き、魔将の魂を調伏せしめる。
大成功
🔵🔵🔵
御劔・姫子
(場所:御苑付近、姫子の実家もすぐ近くにある)
都と宮様を守るんが御劔の家の定めっ! 【覚悟】を決めて…姫子、参りますっ!
うちは呪術とか妖術は使えへんから、敵の術は陰陽師の人らに頼んで、できるだけ抑えてもらわなあかんなぁ…
あとは…この【狐のお守り】が頼りや。うちを守ってな…?(※呪詛耐性)
戦い方としては、敵の持つ酒と刀を狙って【切り込み、武器落とし】を仕掛けていこかっ
攻め手を削いだんやったら、すかさず【2回攻撃】の【なぎ払い】で【切断】したるっ!
それにこの辺りはうちの庭も同然、【地形の活用】もばっちりやからねっ!
都の邪を断ち切る御劔の技…たっぷり味おうてなっ!
※アドリブ、連携等歓迎
●狐の加護とともに
オブリビオンの魔の手は、触れてはならぬいと高き御所にすら向けられる。
かくて京の御苑は、血と酒の臭いが混じり合う凄惨な戦場と化していた。
『ふむ。これなる依代の羅刹への憎悪、なかなかに甘美にて……されど』
ぎょろり、と、安倍清濁――否、安倍晴明の凝視が御劔・姫子を襲った。
『どうやら、あなたを滅殺するには役に立たぬ様子。ままなりませぬな』
(ああは言っとるけど、だからって甘く見たらうちがやられる……っ!)
大悪・安倍晴明。
死者の眠りはおろか、生命の理すらも弄ぶ外道の中の外道。
もはやその残滓を憑装するに留まるとはいえ、目の前の敵のなんたる邪気か。
もとより油断・驕慢の類を知らぬ姫子だが、彼女は改めて気を引き締めた。
目の前に立つのは他ならぬ魔軍将そのもの……という意気さえも決めていたのだ。
そして相対する彼女と敵の周りを、脂汗を浮かべた陰陽師たちが包囲する。
「な、なんたる呪詛か……我らの結界を平然とはねのけよるわ……!」
「ぬかるなよ。ここより先は血に汚れてはならぬ領域ぞ」
「なによりも猟兵殿の奮戦を前にして、我らが粉骨砕身せずに居らいでか」
陰陽師たちは印を結び、少しでも安倍晴明の力を削ごうとしていた。
姫子がいなければ、敵はまず陰陽師どもを皆殺しにしていただろう。
「無理はせんどいてね、皆! 術を抑えてくれれば、それでええから……!」
姫子は敵を睨んだまま、陰陽師たちに気遣わしげな声をかける。
片手で刀を構え、もう一方の手に握りしめるは……大切な妖狐から賜った御守。
(どうかうちを守ってな……)
たとえどれだけ距離が離れていても、御守を握りしめればぬくもりを感じられる。
そうするとどうだろう、無駄な力が身体から抜けて、ふっと緊張は解けた。
『――ほう。私を前にしてそのような泰然自若を保つとは、いやはや』
安倍晴明はにたりと笑い……一瞬にして、姫子の間合いに踏み込んでいた!
「はあっ!」
姫子は柔らかくもしなやかな太刀捌きで、安倍晴明の振るった刀を弾く。
刃金がぶつかりあい、がきん、と鮮やかな火花が散った。
安倍晴明の表情が驚愕に染まる――見事なまでの後の先、敵にとって慮外!
「このあたりはうちの庭、都と宮様を守るんが御劔の家のさだめやっ!」
家の名と使命を胸に、姫子は半歩踏み込んで竜巻のような剣を振るう。
『――見事にござりまする、な……!』
晴明の声には、凄絶なる剣を目の当たりにした感嘆と、屈辱が入り混じっていた。
剣閃はその頸をばっさりと刎ね、邪なる気配さえも祓ってみせた。
「おお……!」
戦いを見守っていた陰陽師たちすらも、驚嘆にどよめいた。
「――これが都の邪を断ち切る、御劔の技や。たっぷり黄泉路で堪能してな」
かちん、という納刀の音がひとたび響けば、呪詛の気配は嘘のように消え去る。
まさしく京を守護するに相応しき、清廉にして美麗たる太刀なり!
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
三流役者の三文芝居を、何度も何度も何度も何度も
飽きもせずに愚かさを撒き散らす
お前らって真正の馬鹿なのか?自分の分を弁えるってことを知らないのか?
ある意味尊敬するよ
過去から這い上がってまで、無意味なこと続けられるんだからな
身も心も破壊して、放逐してやる
来いよ、何百だろうと纏めてな
陰陽師どもは進行方向に結界を張って時間を稼いでくれ
大丈夫だ、一手で終わる
──乗ったな…セット、『Weakness』
本体も乗騎も纏めて、苦痛に堕とす
生命力共有してんだ…さぞかし堪らない痛みだろうよ
あとは簡単だ…本体を潰す
引きずり落として頭を踏み潰し
この手で縊り殺し
脳天にナイフを突き刺し
ドタマをショットガンで吹っ飛ばす
●何度でも、何度でも
四神、四霊、四罪、四凶……。
極東におけるあらゆる霊獣・魔獣の類が、百鬼夜行じみて京の大路を征く。
人よ、けして見るなかれ。見れば目は爛れ痴れ狂うであろう。
これなるは死さえも弄ぶ外道の行進。魔軍将・安倍晴明が喚ばう獣の群れ!
『はて、さて――どこから貪り、蹂躙し、穢すか。実に心躍……ッ!?』
だが。
この世の王とばかりにふんぞり返っていた安倍晴明は、違和感を覚えた。
反射的にえづき、うつむいて嘔吐する。
吐き出されたのは胃液――だけではない。黒ずんだ動脈血である。
『これ、は……!!』
さらに耳鳴り。目は血走り、眦からは赤い涙がしとどに溢れた。
手は震え足はがくがくと笑い、呼吸をひとつするごとに全身が悲鳴をあげる。
遠隔呪詛による壊死か? 否、京にそこまでの術者は居まい。
ならばこれはなんだ。"己が知覚できぬ魔術による攻撃"だとでも……?
「――……三流役者の三文芝居を、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も」
ざす、ざす、ざす。
「飽きもせず、学びもせず、懲りもせず覚えもせずに愚かさを撒き散らしやがる」
ざす、ざす、ざす――ざしゃり。
『……なる、ほど、あなたの仕業にござりまする、か……ッ』
ヴィクティム・ウィンターミュートは、ただ冷たく侮蔑の眼を向けていた。
「お前らって真性の莫迦なのか? 自分の分をわきまえるってことを知らないのか?
……ああ、あるいみ尊敬するよ。過去から這い上がってまで無意味を続けるんだ」
ヴィクティムは安倍晴明の言葉に応えず、代わりにナイフを振るった。
術者を守るべき霊獣・魔獣たちも、血を吐き、毒を飲んだかのように震えている。
術者と獣は一心同体。一方が毒を喰らえば、もう一方も同じ。
いのちなき獣ですらも耐えきれぬほどの苦痛。それもナイフの一閃で終わる。
「くだらねえ」
散弾が脳みそと頭蓋骨と血と肉をミックスして終わらせる。
「何もかも、くだらねえ。何度でも、何度でも殺して放逐してやる」
淡々と、稲を刈るように、無慈悲に。
「……ほ、本当にあれが、京を守るために馳せ参じてくださった猟兵殿なのか?」
「滅多なことを申すでない!」
「あ、相すまぬ。だが、あれはまるで……」
足止めを買って出た陰陽師たちも、ヴィクティムの手管には呻いた。
血と臓物に塗れる男の姿は、鬼へと堕ちたそれにしか見えなかったゆえに。
大成功
🔵🔵🔵
雨宮・いつき
京都の陰陽師…このような事態の中でなければ、色々と教えを請いたいところでしたが…
ええ、それはまたの機会に
今は猟書家の侵略を食い止める事に注力致しましょう
本場の方々の目の前です、情けない戦い方は見せられません
最初から全力で行きますよ、九頭龍様!
九頭龍様の神々しい御姿で陰陽師の方々を【鼓舞】して共に轡を並べましょう
神酒の霧を戦場に広げる事で敵の呪詛を【浄化】、さらに酩酊させたところを陰陽師の方々の術で束縛して頂きます
…僕も陰陽師の端くれ
故に、されたくない事はよく分かります
呂律が回らず、手印や九字も切れぬまでに束縛されれば抵抗の手段は限られる
その隙を突いて、九頭龍様の水の刃と共に一気に攻め立てます!
●白玉椿を染めしは
"花の天井"で知られる平岡八幡宮にも、安倍晴明の魔の手は伸びていた。
内部への侵入を赦さじと、陰陽師たちが横列を組んで印を結ぶが……!
「ぬ、ううう……!」
浴びせられる呪詛のあまりの強烈さに、ひとりの術者が鼻血を噴き出して倒れた。
緊密な術のバランスが乱れ、徐々に術師たちが圧されている!
「これほどのものか、安倍晴明……!」
『よくもまあ耐えるものにございまするな。それもこれも千年の結界あらばこそ。
要となりし寺社仏閣を尽く穢し、京を屍人の跋扈する魔都へと変えましょうや』
安倍晴明はにたりと凶悪なる笑みを浮かべ、呪詛の力を強めた。
もはやこれまでか? ……否! 押し負けかけた結界の護りが再び立ち上がる!
『……これは……?』
安倍晴明は訝しみ――そして、弾かれるように彼方を見た。
椿に彩られた境内に駆け込んできたのは、雨宮・いつきである!
「そこまでです! 安倍晴明、これ以上の狼藉は許しません!」
『なるほど、あなたも陰陽師のはしくれにございますか。これは――愉快』
安倍晴明は口元に剣指を押し当て、低く唸るように祝詞を唱えた。
見えない呪詛の圧が、陰陽師たちからいつきひとりに向けられる。……重い!
「く……っ! 本場の方々の前で、不甲斐ないところは見せられませんね……!」
いつきは膝を突かせようとする呪詛の重力に抗い、奥歯を噛みしめる。
「参りませ、九頭龍大明神!!」
黒い靄めいた呪詛をはねのけ、いつきの足元から噴き出す水の本流。
それは九つの頭を持つ、白く神々しき龍となりて牙を剥いた!
「な、なんと! あれほどの神霊をこの一瞬で……!」
「なんたる霊力。さすがは上様がお認めになられた天下御免の猟兵殿……!」
命からがら呪詛の檻を脱した陰陽師たちは、感嘆と驚愕に震えた。
そして彼らは顔を見合わせ、えい、と気合を入れて印を結ぶ!
「我らも続くぞ!」
「「「応!」」」
『ぬ……!?』
安倍晴明は、陰陽師たちの決死の反撃を予測していなかった。
練り上げられた霊力の結界が、安倍晴明の動きを束縛し呪詛を阻む!
『なる、ほど……龍神の姿によって、一度は折れた術師の心を鼓舞する、とは……』
安倍晴明は返しの術を編もうとして、ふらりとよろめいた。
霧状に散布された神酒が、酩酊をもたらし集中をかき乱しているのだ。
――そう気づいた瞬間には、すでに龍神の水刃が頸に迫っている!
「水神の逆鱗に触れし者、そして京の都を脅かす悪逆非道の外法師よ!
その命、此処で断ち切ります――骸の海に還りなさい、安倍晴明ッ!!」
龍の息吹と陰陽術のあわせ技が、安倍晴明の魂を砕き、祓った。
呪詛を洗い流す龍神の清廉なる神水が、雨のように降り注ぎ白玉椿を染め上げる――。
大成功
🔵🔵🔵
花邨・八千代
俺がやり合うならやっぱり一条戻橋しかねぇよなぁ
せいぜい腕でも切り落とされんよう気ぃ付けるかね
まぁ生憎と大江山で収まるような鬼じゃねぇけどな、俺
ところで俺鬼だけど陰陽師って手ぇ貸してくれんの?
貸してくれんならありがてぇけど無理はすんなよ
かぁいい鬼に任せて後ろに居てくれや
武器は黒塚、掌掻っ捌いて【ブラッドガイスト】だ
鬼に横道なし、真正面からぶちのめす!
怪力任せに武器ぶん回して薙ぎ払うぞ
攻撃は第六感で避けつつ、2回攻撃だ
どうした脇腹丸出し小僧、俺を酔わせてみせろよ
でねぇと千々に引き裂いて堀の魚の餌にしちまうぜ!
あ、でも中身安倍晴明なんだっけ?
ははーん、ますます殴り甲斐あるぅ
俺、お前のこと嫌いなんだよ
●酒も命も呑み干して
羅刹(おに)のはしくれとして、来るならばやはり此処を置いて他に無し。
……と、意気揚々、一条戻橋へと参着した花邨・八千代。
やってくるなり、結界の維持に腐心する陰陽師どもを不躾に見やった。
「なあ。自分で言うのもなんだが、俺って鬼だぜ? 手ぇ貸してくれんの?」
「異なことを申される。他ならぬ我らの上様こそ同族であらせられましょうに」
「……あー、そういやそうか。まあそれはそれでちょいと違うんだけどなぁ」
八千代はなるほどなあ、と言いつつ、ぶおんと薙刀を軽々振るった。
「どのみち手伝ってくれんならそれでいいや。かぁいい鬼に任せときな。
アンタらは後ろから術で支援してくれりゃそれで十分だぜ。ハッハッハ!」
などと呵々大笑するさまは、豪放磊落というよりは天真爛漫。
緊張していた陰陽師たちも、毒気を抜かれた様子で顔を見合わせた。
「猟兵殿とは、まっこと変わったばかりでいらっしゃるものよ」
此処を死地と定めていた陰陽師たちにも、自然と笑いがこみあげてくる。
そういう意味では、八千代の鬼としての器は山ひとつに留まらぬものを感じさせられた。
――そして。
「来なすったなァ、安倍晴明」
八千代がにたりと笑みを浮かべると、途端にあたりの空気が重くのしかかる。
陰陽師たちは、向こうより近づく呪詛と死の気配にふつふつ脂汗を浮かべた。
徒歩(かち)にて、ひとり――少年の依代に宿りし大悪が、橋の向こうに来る。
『これはこれは……たったひとりで、私を止められるおつもりとは』
「ハ、当然のように陰陽師(あいつら)は埒外かよ。ホント高慢ちきだなァ」
八千代は刃でずるりと掌を斬り裂いて、しとどに溢れる血で拳と刃を濡らした。
「俺よ、お前のこと嫌いなんだよ――正面からぶちのめしてやらァ!!」
『いざ参られませい。その肉、散々に裂いてくれましょうや!』
対する安倍晴明は、三! そして同時に印を結び、凶悪なる呪詛を放つ!
八千代の全身に見えざる蛇めいた呪いが絡みつき、肉に染み込み血を穢した。
凄絶なる苦痛が全身を駆け抜け、眼と口からごぼりと鮮血が溢れる――しかし!
「痒いねェ!!」
『!!』
八千代は呪詛をものともせず、豪腕で真正面の清濁を殴り砕いた!
ミンチじみた血と肉が爆発的に吹っ飛び、橋を濡らす。なんたる有様!
「オォラッ!!」
『これはなんとも愉快にて!』
安倍晴明は破壊された同類の死体をチェーンソー剣に変え、刃を受け止める。
残った死体が符呪により、新たな安倍清濁となって起き上がる……が!
「「「させぬわ!」」」
陰陽師たちの不縛結界が、背後からの不意打ちを阻止!
八千代は肩越しに彼らを振り返り、「やるじゃねぇか」と不敵に笑った。
「残念だったな安倍晴明――堀の魚の餌になっちまいな!!」
三方を囲んだ安倍清濁の肉体を、黒塚の魔刃がばっさりと両断した。
荒れ狂う暴風はその体を微塵に砕き、宣言通りぼとぼとと残骸を堀に落とす。
「あーあ、すっきりしたァ!」
雨のごとく降りしきる血を浴びて、八千代はぺろりと口元を舐めた。
大成功
🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
【場所:京都嵐山・渡月橋】
こんな素敵な街を滅ぼそうだなんて……させないわよ、絶対に!!
まずは敵を誘き寄せつつ陰陽師の皆様の案内で橋のところまで。
この辺りの地理なら皆様の方が詳しく知っているでしょうし、側にいればいざというときも即座に守れるもの。【盾受けx庇うxオーラ防御】
橋に辿り付いたら陰陽師の皆様とは分かれそのまま橋の中程まで。
そして、周囲に誰もいないことを確認してからUCを発動するわ。
紡がれし冷気の糸よ。河と交わり氷柱となって、敵を呑み込み消し去って!
橋は壊さないよう慎重に。でも確実に敵を葬る!
これ以上、アナタ達の好きにはさせないわよ、猟書家……!!
●糸が編みしは雪景色
ゆるやかに流れる大堰川を跨ぐ京の名所のひとつ、渡月橋。
春頃は桜の名所としても人々の心を癒やす、都を代表するスポットのひとつだ。
冬の寒風吹きすさぶ景色もまた、寂々としていながらも美しい。
――ただし今は、景色を楽しむ余裕も穏やかさも在りはしないが。
「来たぞ! 絶対にこの橋を渡らせるな、なんとしてでも死守するのだ!」
音頭を取る術師の号令のもと、陰陽師たちは一斉に印を結び、術をかけた。
安倍清濁――否、憑装されし今は安倍晴明と呼ぶべきだ――の"群れ"は、
人のものでありながら人ならざる凶悪なる笑みを浮かべ、その努力を一蹴する。
『かそけき努力を踏みにじることこそ、我が喜び――来たれや、十二天!』
呪詛によりて穢され貶められたる騰虵・朱雀・そして火天の三柱が降臨す。
熱波は冬の寒風さえも焼き焦がし、陰陽師たちを吹き飛ばした!
「ぐわっ!!」
『生きながらにして骨身を焼かれる愚者の悲鳴を、どうぞお聞かせくださりませ。
一度滅びてなお舞い降りしこの魂、業と苦惨を感じたくて仕方のうござりまする!』
安倍晴明は凶笑を浮かべ、魂をも滅ぼす呪いの炎を解き放った。
もはや打つ手なしか? 京の都は、このまま蹂躙されてしまうのか!
「……させないわ!」
しかして、そこに割って入る妖精あり。
フェルト・フィルファーデンは騎士人形に盾を構えさせ、火勢を退けた!
「お、おお……猟兵殿! かたじけなし……!」
「いいえ、大丈夫。さあ、立って皆様。ここからはわたしが守るわ!」
陰陽師たちはフェルトの言葉に奮起し、再び術を編み上げ炎を防ぐ。
見えない壁がぐわんと安倍晴明を押し戻した。拮抗する呪力が川を波立たせる!
「ぐ、ぬうう……!」
「これでもまだ結界を破らんとするか、安倍晴明……!」
「……皆様、わたしに策があるわ。術を維持したまま、少しずつ後ろに下がるの」
「なんと、何を申されるか猟兵殿!?」
驚く陰陽師に対し、フェルトは真剣な面持ちで言った。
「わざと橋を跨がせて、わたしと皆様で安倍晴明を挟み撃ちにするのよ。
あとは、一瞬でも奴らの動きを止めてくだされば、あとはわたしが片付けるわ」
危険です、と口に出しかけ、陰陽師は言葉を飲み込んだ。
フェルトの眼差しは、己らと同じ――すなわち、命を賭けた者のそれ。
「……承知いたしました。ご武運を!」
かくして陰陽師たちは、敵の攻撃を受けぬようにじりじりと後ろに下がる。
根負けしたと早合点した安倍晴明は、少しずつ彼らを押し込んでいく……!
騎士人形たちが陰陽師たちの盾となって、彼らを呪いの炎から守っていた。
だが貶められたる十二天の炎は、着実に人形たちを焦がしている。
『さあ、さあ、さあ! 如何にいたしまするか猟兵よ、このまま――ん?』
その時、安倍晴明は気づいた。
人形はあれど、繰り手はなし――フェルトがそこに居ないことに。
『これは……!』
背後! 振り返ったその時、フェルトは安倍晴明らのど真ん中に飛び込んだ。
彼女は橋をくぐる形で密かに後ろに回っていたのである!
『なるほど、おびき寄せられたと。しかして如何にするとおっしゃるのか!』
「わたしが、人形がいなければ何も出来ない妖精だと思ったかしら?」
フェルトは嘲りの笑みを浮かべた。
「それが間違いであることを、教えてあげる――さあ、跡形もなく消えなさい!」
フェルトが両手を突き出すと、掌から放たれたのは冷気を紡いだ電子の糸。
朱雀の炎がその身を焼くよりも疾く、大気を凍らせた糸が熱を奪う!
『なんと……!? この一瞬で、十二天の炎をすら凍らせるとは……!』
ぶつかり合う呪力で荒れる水面から、ぞぞぞぞ、と水柱が立ち上る。
それは冷気の糸と交わり凍りつき、さながら龍の如く橋の上を薙ぎ払った!
苦悶の断末魔――安倍晴明を飲み込んだ氷の柱は、昇龍めいて空舞い砕け散る。
「これ以上、アナタたちの好きにはさせないわよ、猟書家……!!」
決意するフェルトを慰撫するように、きらきらとつかの間の雪が降り注ぐ。
凍った水が雪華となって光を散らすさまは、術師らをして見惚れるほどに美しかった。
大成功
🔵🔵🔵
花剣・耀子
観光で来たかったわ……。
後で羊羹の一本でも買う間はあるかしら。
否、お仕事は忘れていないけれど。それはそれでこれはこれなのよ。
……、――そう。お仕事は忘れていないのよ。
あたしは、おまえを忘れていない。
一条戻橋に詰めましょう。
此処は異界。ようく知っているわ。
陰陽師の皆さんには結界の補強をお願いするわね。
あたしが斬るから、斬ったところを塞いで貰えるかしら。
どれを斬ってもおなじこと。
その符を、斃れた形代を、跡形もなくなるまで斬りましょう。
易く立ち返れると思わないことね。
こんな形でまた遭うなんて、皮肉だわ。
おまえ、生を望んだ訳でもないのでしょう?
退屈凌ぎに使われるのも業腹だわ。
――もう一度死になさい。
●此岸と彼岸を分かつもの
「……観光で来たかったわね」
ざあ、と、暮れゆく夕日が一条戻橋を照らす。
すでにここでは一度、壮絶な死闘が繰り広げられ、そして過ぎ去った。
陰陽師たちは結界の維持に務め、猟兵は遊撃的に敵を叩き潰してまわる。
つまり警邏の役目は赦されない――そこを、敵も狙う。
花剣・耀子はそれを見越して、あえてこの橋へと足を運んだ。
結果は当たりだ。尋常ならざる魔の気配とともに、現れたるは……!
「あとで羊羹の一本でも買う間はあるかしら――でも、そうね」
耀子はレンズの下の瞳を鋭くぎらつかせ、彼方より来る魔を睨んだ。
オブリビオン、安倍清濁。あるいは魔軍将、安倍晴明を。
「おまえをさっさと祓ってしまえば、その暇も生まれるでしょう」
『……これは、これは。そこまで剣呑な目で私を睨む理由が、あなたにはおありで』
「…………ええ、そうでしょうね。おまえはすべてを忘れている」
オブリビオンは記憶を保持できぬ。
同じモノであったとしても、それは洞窟に浮かぶ影法師のようなもの。
蘇るたび、それは同じかたち・こえ・ちからを持ちながら、別のもので在る。
「けれど、あたしは、忘れていない」
水面が剣気を浴びて揺らめいた。陰陽師たちもさっと蒼白になるほどだ。
彼らは恐れを捨て、ひたすらに結界の維持と強化に務める。
安倍晴明の存在は、それ自体が結界を脅かす毒のようなもの。
ここで斬らねばならぬ。斬るために此処に来た。ならば、そうするまで。
『……私は、斯様な不死の身に成り果て、ひとつ得たものがございます』
「退屈を、でしょう?」
安倍晴明はゆるりと笑った。けものの笑みである。
『左様にて。私の心はどこまでも渇き、虚のごとくに風が吹くのでございます。
ですが、噫――あなたのその殺意、怒り、覚悟。実に……好ましいかと』
安倍晴明は、愉しんでいた。己に向けられる凄烈なる剣気を。
耀子は短く呼吸を整える。そして、機械剣を構えた。
「……来なさい。すべて斬り捨ててあげる」
応えたのは声ではなく風――踏み込んだ晴明の起こした旋風である。
耀子は真一文字に刃を振るう。だが、切り裂かれたのは符で生んだ身代わり。
斬撃の勢いそのままに、耀子は剣を引き戻し、敵の刃を受けた。
がぎん――火花が散る。押し勝ったのは耀子、今度は地摺り残月。
『心地ようございます』
またしても形代。敵は背後。耀子は振り返らず前へ飛んだ。
脊髄を貫かんとした刃が、がちん、と橋に突き立つ。晴明は嗤笑。
刀はチェーンソー剣に変じ、振り返った耀子と猛烈な剣戟を繰り返す。
撃つ、弾く。撃つ、弾く。撃つ、弾く。
撃つ、弾く。撃つ、弾く。撃つ、撃つ。
撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。
撃剣。撃剣。撃剣、撃剣、撃剣撃剣撃剣撃剣撃剣!!
「なんと……!」
陰陽師のひとりは、思わず精神集中を乱しかけた。
目にも留まらぬ斬撃の嵐――火花はもはや火の織めいて吹きすさぶ。
もはや術師たちには、何がどうなったのか見えはしない。
しかしどうやら、対手のあいだには納得と必然があった。
耀子の剣が、安倍晴明の胴体に食い込んでいた。
「おまえ、生を望んだわけでもないのでしょう?」
耀子の目が覗き込む。晴明は訝しみ――そして、瞠目した。
――"飽いて死なないただの罰のような存在の中で、ねえ"
機械剣が唸りを上げる。
――"お前、生きていたいの"
因果、巡りて再び応報す。
「退屈凌ぎに人を使った代価を、支払うときよ」
安倍晴明は理解した。己はまた殺されるのだ。かつてと同じように。
路端の石めいて省みられることなく、憎悪も怒りも殺意もなく。
「もう一度、死になさい」
有象無象の如くに、ただ斬られて。
それは愉悦に飽いた晴明にとって、この上ない侮辱であり屈辱であり。
……そして再び味わう、完膚なきなまでの敗北だった。
大成功
🔵🔵🔵
トキワ・ホワード
【魔桜】
芙蓉、旅行に連れて行ってやろう
京の都、観光のし甲斐は十分だぞ
さて、現地に着いたらまずは北区を目指し…
おい、どこへ行く
…あいつは理性という物がないのか?
まぁいい
やる気を出したのなら十二分に働いてもらうだけだ
目的地は最前線だったんだが…
ここにも敵は入り込んできているようだな
ここに向かったのはお前の意思だろうに
俺に文句を言われてもな
キリキリ働け
奴らを斃せば目当ての観光もし放題だ
芙蓉を前衛に駆り出しUCを発動
『問おう、お前達はこの場から生きて還れると思うか?』
答えは…ノーだ
さぁ、好きなだけ食い散らかせ
俺の狼と芙蓉
三匹の猟犬から逃げ切れるかな?
芙蓉や陰陽師へフォロー入れるよう狼を操作
敵を殲滅する
芥子鴉・芙蓉
【魔桜】
ろくでなしのトキワから旅行のお誘いを受けたんじゃ。
あちらから誘うということはつまりおごりじゃろ?うへへ!
さて、京都と言えば金閣寺!GO・TO・金閣寺じゃ!
金運が上がりそうじゃし、心行くまで拝んで帰──
……は?なんかめっちゃ敵おるんじゃけど?
──騙され、た?
貴様ぁー!
トキワぁーー!
ド畜生めがぁーーー!
この怒り、オブリビオンどもにぶちまけやるんじゃぁーーー!
おらぁ!陰陽師どもぉ!わらわの鬱憤晴らしの為になんかこうイイ感じに援護するんじゃよぉッ!
(敵に突っ込み、怒りのまま、当たれば長時間対象を蝕む【毒功手】を振り回します。その姿はさながら狂犬。そう、トキワが行使する狼の三匹目であるかの如く)
●学習をしない愚かな桜の精と、魔術師の話
……思えば、前もこんな流れがあった。
どこぞのあのクソ仏頂面な嘘つき剣士(当社比)が、カニを食わせるだのなんだの甘言を使って自分をだまくらかしやがったのだ。
挙句の果てにどこぞのヤミ金企業もびっくりの超違法重労働を課せられた挙句、
自分はろくにカニを食べれないで……いやカニは喰ったわ。酒も飲んだわ。
「くっ、おのれ叢雲の!! そうやってわらわをもてあそんだのじゃなーっ!!」
「おい、いつまで喚いている? もう敵が来ているぞ」
「えっ!? マジ!?!??」
……というわけで、非常に主観的な芥子鴉・芙蓉の独白はさておき。
ここはサムライエンパイアは京の都、現代でも有名な金閣寺の前。
結界の間をすり抜けて、安倍晴明はここにさえ入り込んでいたのである!
「いやじゃー! わらわもてあそばれたくないーっ!!」
「何をわけのわからないことを。いいから構えろ、来るぞ」
一方の魔術師……トキワ・ホワードは呆れた様子でぶっきらぼうに言った。
はたして、一体ふたりの間にどんな経緯があったというのか?
ぶっちゃけそんなもんを振り返る必要はまったくないのだが……。
「ほわんほわんほわん、ふよふよ~」
「本当に何を言っているんだお前は」
とこんな感じで、(芙蓉の主観で)回想が始まった。
でも本筋に一切関係ないので、ダイジェストでお送りしますね!
「芙蓉、旅行に連れて行ってやろう」
「なんじゃと!? いや待てトキワ……そのう、旅費は……」
「ちなみに行き先は京の都だ。サムライエンパイアのな」
「はい来た! おぬしの誘いなんじゃから奢り間違いなしじゃうへへへ!」
「……まあ旅費の心配はしなくていい(テレポートしてもらうから)」
「そうかろそうじゃろ! 京都といえば金閣寺! Go・To・金閣寺じゃ!
金運が上がりそうじゃし、心ゆくまで拝んで美味いもの食べたいのう~~~!!」
「(敵を倒せば)観光もし放題だぞ」
「もちろん飯も奢りじゃよな!?」
「(敵を倒せばきっと陰陽師たちが報酬をくれるから)そうかもな」
「やったーーー!! やーったやったー!! やったやった(ごちん)あいて!!」
……ほわんほわんほわん、ラリラリ~。
「騙されたーーーーーー!! わらわ、またしても騙されたーーーーー!!」
芙蓉は喚いた。そして、例にもよって子どもみたいにジタバタする。
「貴様ぁー! トキワぁー!! ど畜生めがぁー!!!!」
「わけのわからんことを云うな、ここに向かったのはお前の意思だろうに」
「はいそれ! それロジハラってやつじゃぞ! ハラスメントじゃぞそれ!」
「どこでそんな言葉を覚える……いいからキリキリ働け」
「んもー!! どうしてわらわの周りの野郎どもはこんな、もぉー!!」
芙蓉はばっと飛び起きると、うおおおお!! と怒りの雄叫びを上げた。
「おらぁ! 陰陽師どもぉ! わらわの鬱憤晴らしの時間じゃぞー!!
なんかこう……イイ感じに援護せい! この怒り晴らさでおくべk」
『なにやら騒がしゅうございますな。隙だらけでございまするよ(ズバーッ)』
「ギャーーーーーーーーーー!!」
で、援護する暇もなく、芙蓉は安倍晴明にぶった切られた。
まあ芙蓉はゴキブリ並みの生命力で蘇るとして。
「隙を見せたのはお前の方だ、安倍晴明――さあ、この俺が問うぞ」
芙蓉を捨て石……もとい身代わり……もとい前衛として術式を編み上げたトキワ。
「"問おう。お前たちはこのバカラ生きて帰れると思うか?"」
『そのようなことは答えるまでものうございますな』
「だ、ろうな。だが答えはひとつ――それは、ノーだ!」
トキワの影より生まれし二体の狼が、雄叫びをあげて襲いかかる!
召喚された霊獣の喉笛を噛みちぎり、荒れ狂う牙が安倍清濁を仕留めるのだ!
『これは……! 十二天の獣さえも屠るとは……!』
「あんなうすらボケに気を取られたお前の負けだ、安倍晴明。
ここには陰陽師の結界があり、そして俺の猟犬は問うた相手を逃さない。
俺の望む答え――すなわち、お前たちの滅びがもたらされるまでは、絶対に!」
安倍晴明は強力な霊獣を力を合わせて呼び出そうとする、が。
無慈悲なる爪牙と、陰陽師たちの連携攻撃がその集中をかき乱す。
さらにぶっ倒れていた芙蓉まで立ち上がり、怒りのままに毒を撒き散らす!
「うおおおおお!! わらわが三匹目の猟犬じゃー!!」
「な、なんというトンチキな猟兵……!」
「この女はうすらボケだが実力はたしかだ。侮ったのがお前の敗因だな」
毒に呑まれた安倍晴明は悔しげに血を吐き、呪いを吐き捨てようとした。
だがそれよりも疾く、狼の牙は喉笛を切り裂き、呪われた生に幕を下ろさせる。
「まだまだ怒りが晴らし足りん! おのれトキワーーーッ!!」
「ここに奴らが現れたのは、安倍晴明とロロサエルのせいだぞ」
「そうか、そうじゃった! おのれ猟書家ーーーーー!!」
怒りの矛先まで制御されていた。こんなだからポンコツなのである。
「うむ。実に御しやすくて助かるな」
トキワに、特に良心の呵責とかはなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グウェンドリン・グレンジャー
【渡月橋血風譚】
ここ……が、名高き、渡月橋
ゆこう、源次。オブリビオン、すべて、倒そう
陰陽師……達、に、攻撃、当たらないよう、盾に、なる
第六感、で、感知。念動力、壁状に展開。清濁らの、攻撃、防ぐ
(鞘から抜いた白妙の太刀、麝香百合を右手で握りしめる。耳の横へ振りかざすような『蜻蛉』の姿勢から、最も近い敵の個体を狙う。二体同時に狙えるか)
(力任せでなく、刃に自分の怪力を伝導させるように斬り伏せる)
初太刀だけ、じゃない……私は、全身が、武器
(念動力と空中戦でハイジャンプ。己を狙った個体を狙ってAngel's Hammer、遠心力を付けた馬鹿力で蹴り飛ばす)
(ふと振り返れば、血溜まりに月が映っていた)
叢雲・源次
【渡月橋血風譚】
…久方ぶりのサムライエンパイアに来たと思えば、よもや安倍の名を持つものと戦う事になるとはな。(エンパイアウォーで死闘を繰り広げたかの名前を持つ者と再び戦う事になるとは…因果なものを感じつつ)
(仰ぎ見るは嵐山、静寂にせせらぐは桂川、屍山血河となるべくは、渡月橋かかるこの舞台か。陰陽師達を背に、橋の袂にてグウェンを連れ立つ。不動、不屈。霊獣、及び十二神将を前にしても動じる事無く。徒手にて待ち構える事)
………。
(二歩、三歩、歩み出て徐に七閃絶刀。予備動作なくそれを放ち眷属諸共安倍清濁を斬り捨てんとす)
すまんな、折角の景観を血で汚した。グウェン、そちらはどうだ。片付いたか。
●血溜まりに揺らめくは
安倍晴明の軍勢による襲撃は、断続的かつ波状攻撃めいて続いた。
太陽は中天から西の空へ沈み、やがて月が煌々と桂川をまばゆく照らす。
夜である。陰陽師たちも、いい加減に疲弊の極みにあるようだった。
「――……久方ぶりのサムライエンパイアに来たと思えば」
渡月橋。ざす、ざすと足音を鳴らし、現れたるは黒髪の偉丈夫。
叢雲・源次は彼岸めいて邪気に揺らめく橋の彼方を静かに睨んでいる。
「よもや安倍の名を持つものと、戦うことになるとはな」
「……源次、は、"安倍晴明"を、識って、いる、の?」
グウェンドリン・グレンジャーは、ぽつりぽつりと問いかけた。
無論彼女とて、猟兵としてエンパイアウォーのことは知っている。
問いかけの意味は"そういうこと"ではない――剣士として、剣士に問うたのだ。
「識っている」
源次は端的に答え、言葉を継いだ。
「魔軍将の一にして、水晶屍人を量産し、次代のフォーミュラを作ろうとしたモノ。
……あの大いくさの折には、この手で斬りもした。なんとも因果なものだ」
かのエンパイアウォーで、第六天魔王・織田信長が見せた"魔軍転生"の術。
敵はその応用版を利用し、死した魔軍将を再び憑装せしめた。
向こうに回す狩衣姿の少年の笑みは、源次が知る晴明のそれと同一。
おそらく依代の意識は、真白なキャンパスめいて塗りつぶされていよう。
「だが、相手にとって不足なし。ここに立った以上は、斬るまでだ」
「……うん。この、名高き、都……奪わせたくは、ないね」
ふたりはつかの間、空に浮かぶ月を、そして嵐山の景色を仰ぎ見た。
桂川の流れはゆるやかであり、月光を浴びてきらめく川の水は絹糸のよう。
ちらちらと空気に舞い踊る雪華の残滓は、昼間に行われた激闘の余韻である。
渡月橋は、春には桜が、夏には緑鮮やかな風景が人々を楽しませるそうだ。
四季に愛されし地、サムライエンパイア。その美しさを、少女は好ましく思った。
「……ゆこう、源次。オブリビオン、すべて、倒そう」
「――是非もなし」
ふたりは一歩前に出た。陰陽師らは、こちら側で結界を維持する役目である。
下手に手を出せば、逆にふたりの邪魔になる――それを剣気から察していた。
……そして。
『たったふたりで、私どもを止めようとおっしゃられまするか。これは、これは』
安倍清濁……否、安倍晴明の群れは、同じ声、同じ言葉でころころt哂った。
『私はたしかに一度滅びた身。されどこの身に本質的な死はございませぬ。
ゆえに私は飽きました。せめて、あなたがたの怒りで愉悦を嗜みたく……』
安倍晴明が印を結ぶと、一斉に十二神将――すなわち十二天の霊獣が降り立った。
朱雀。
玄武。
白虎。
青龍。
騰虵。
勾陳――。
『――いざ、尋常に、参りまするぞ』
呪によって戒められ歪められた天の将とともに、邪鬼が雪崩を打って飛びかかる。
敵の獲物は刀、あるいは晴明の力によって編み上げられたチェーンソー剣。
いずれも術師としても剣士としても超一流。源次とグウェンドリンは数で劣勢だ!
「参る、と言ったな」
だが、見よ。
「それは間違いだ、晴明よ。――すでに俺が、先の先を得ている」
『『『!?』』』
無造作に見えた源次の歩みは、その実神速の斬撃の予備動作であった。
淀みない攻撃移行から放たれた連続斬撃が、金の蛇を、龍を、虎を斬り殺す!
『これは!』
「逃さん」
疾い! 十二尺をゆうに超える間合いを一息に詰め、逆袈裟の斬撃!
安倍晴明はチェーンソー剣で受け止めんとするが、それさえも刃は切り裂く!
ぞぶりと切り裂かれた肉から血がほとばしり、静謐なる渡月橋を赤く穢した!
『ぬ、う……!』
ならば、と安倍晴明は狙いをグウェンドリンに切り替えようとした。
たしかに剣士としては、その道を究めた源次に技量・経験で軍配が上がろう。
ならばグウェンドリンは弱小なのか――そう判断するならば愚かも愚か。
見よ。白妙の太刀、"麝香百合"を構える姿勢は『蜻蛉』のそれ。
二体の霊獣が襲いかかる――グウェンドリンは、呼気を鋭く吐き出した!
「――ふっ!」
裂帛、一閃。緩やかに見えた斬撃は、その実音を超えるほどに疾い。
怪力を載せた剣閃はばっさりと霊獣を惨殺せしめ、しかもそれで止まらぬ!
「初太刀だけ、じゃない……私は、全身が、武器」
斬撃の勢いを器用に転がし、グウェンドリンはふわりと跳躍した。
あまりに体軸がブレないために、まるで浮遊するかのようである。
朱雀の炎が誰も居ない橋を焦がした。グウェンドリンは頭上を取っている。
「……もたもた、してる、から……よ」
そしてぐるんと毬めいて身を丸め、重力と加速を乗せた踵落とし!
破城槌もかくやの一撃は、炎の霊獣を霧散せしめる。なんたる怪力か!
『なるほど、ふたりで来るのは驕慢にあらず、と……!』
「然り。貴様は覚えていまいが、今再び斬らせてもらうぞ、魔軍将」
源次の抜き撃ちと呪いの刀がぶつかりあい、月光に火花を散らした。
他方、グウェンドリンは着地と同時に円月めいた剣を滑らせ、敵を拒絶する。
趨勢は一瞬にして逆転していた。踊るように攻め込むは二体の剣士。
……否、もはや刃そのものである。そうとしか言いようのない太刀捌きだ!
『この依代では、いささか――否、これは、なるほど』
安倍晴明は、観念したような透明な笑みを浮かべた。
『かつての私が敵わぬわけでございまするな、これは』
源次の斬撃は、横一文字に。
グウェンドリンの刃は、縦一文字に。
両断された残骸がどちゃりと血溜まりに転がり、静寂が訪れた。
「……すまんな、せっかくの景観を血で汚した」
残心もそこそこに、源次は呟いた。
「グウェン、そちらはどうだ。大事ないか――」
そしてグウェンドリンを見やれば、少女はぼんやりと血溜まりを見つめている。
「……グウェン」
「…………源次」
まるで夢から醒めたように、グウェンドリンは振り向いた。
「……大丈夫。怪我は、ない」
「ならばいい。……戻るとしよう」
源次はそう言って、振り返らずに歩き出す。
グウェンドリンもあとに続き……もう一度、血溜まりを振り返った。
あかあかと広がる血の池に、ゆらめき映るは水の月。
赫灼と染まる月は、どことなくグウェンドリンの血を騒がせた。
「…………」
少女は今度こそ踵を返し、血の臭いに背くように歩き出す。
静かなる月風が、酸鼻なる屍山血河を洗い流し、淀みを祓った……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
セイメイ?
サヨと因縁あるものかい?
…きみの敵は私の敵だ
陰陽師……?
サヨは私の巫女(神妻)だろう
噫、そうだった
きみは昔から陰陽師だ!
見渡す立派な社
満ちた気に
崇められる神の神威を感じる
…私はまだ未熟であるからね
先輩の神からも学ばねば…強くならないと
私はきみの神なのだから
少しワクワクしているのは秘密だ
アレがそうか
社を穢されぬよう結界を重ねて
…私の愛し子を殺めると?
赦さない
きみを守るよ
サヨ、酒は駄目だ
…酒癖が
リルにも怒られる
美しい桜花と共に轟かせる神罰は朽ち果てさせる駆逐の雷光
第六感で察し見切り
早業でかけ切り込み、切断する
そなたが約す厄災ごと、断ち切り龍の幸いとなるよう結び直す
業など重ねさせない
誘名・櫻宵
🌸神櫻
晴明
また対峙する時がくるなんて
いけ好かない野郎だったのよう
同じ陰陽師としても
……
私、あなたの巫女(妻)でもあるけれど
その前に陰陽師よ?!
でもカムイが他の神の神社に興味を示すなんて
はしゃいでるの?かぁいいわ
雷神、だったかしら
私にとっては
あなたが一番の神様よ
悪い子にはお仕置をしなきゃ
あら
私、美しい角があったわ!
頼もしい神様に守ってもらわなきゃ
酒はちょっと興味あるわ
に、睨まないのよカムイ
冗談よ!
神降りる場は清めなきゃ
生命を喰らい咲く桜吹雪かせ蹂躙し
『浄華』
破魔のせた衝撃波と共になぎ祓う
抉って斬って、神罰よ
桜のように散りなさい
我が故郷を好きになどさせない
何度だって
つまらぬ業ごと祓い斬ってやるわ
●天満宮に桜花舞う
学術の神にして雷神として知られるかの天神は、恐るべき悪霊でもある。
都に仇なす大魔縁を神として崇めることで、その魂を慰め加護を得たのだ。
荒御魂と和御魂――神が持つ矛盾したふたつの側面の好例と言える。
そしてかの天神の力満ちる天満宮に、ふわりと桜の華が舞っていた。
無論、尋常の桜ではない――誘名・櫻宵が生み出すユーベルコードの華。
それ自体が破魔の力を宿した矛にして盾であり、いわば城壁とも言えるもの。
生中な魔が桜花に触れれば……いやさ、その残り香を浴びるだけで滅びよう。
そんな桜花のなかにありて、薄く笑む敵は紛れもなく魔将のそれだった。
「……晴明。また対峙する時が来るだなんて思わなかったわね」
櫻宵の脳裏に、あのエンパイアウォーの激闘の記憶が蘇る。
退屈を持て余し、ただ興味と愉悦の赴くままに命を弄んだ外道。
屍人を辱め、あろうことかオブリビオンでありながら"いのち"を作りもする。
かつて櫻宵は安倍晴明を斬るため、鳥取城に赴き彼奴と相対したのだ。
ゆえに、わかる。目の前のそれは依代こそまったく別人のものなれど、
憑装されし魂――魔の気配は、紛れもなく安倍晴明のものであると。
「セイメイ……? サヨと因縁あるものかい?」
対して朱赫七・カムイは、神らしく超然とした様子で言った。
「いけすかない野郎だった……いえ、目の前にいるんだから過去形は変かしら。
ひとつの敵としても、同じ陰陽師としても……本当に、憎らしい相手だったわ」
「陰陽師、か。噫、そうか――きみはたしかに昔から陰陽師だった」
などとうそぶくカムイだが、どうやらわざと、というわけでもないらしい。
安倍晴明『の群れ』と相対していながら、なかなかの胆力である。
「私の巫女にして陰陽師のサヨよ。きみの敵は、私の敵だ。力を貸すとも」
言いつつカムイは、この宮に満ちる天神の神気をたしかに感じていた。
己は神としてはいまだ未熟、国を挙げて崇敬された天神には並ぶまい。
だからこそ、中途半端な戦いは出来ぬ。彼らしい理由で、カムイも奮起していた。
「……カムイ、あなたはしゃいでいるの?」
「そうだな。少しワクワクしているのは……秘密にしておこうと思った」
ふっとカムイは笑い、薄ら笑みを浮かべる安倍晴明を睨み返す。
言語ではなく本能としてわかる。これは、見過ごしてはならぬ邪悪なのだと。
「私の愛し子を殺め、社を穢し、この国を滅ぼす――大した企みだ。だが、させぬ」
『そうこなくては私も退屈でございますゆえに。実に、僥倖』
愉悦のためにひとを弄ぶ外道の笑みに、櫻宵は静かな殺意を放射した。
ぴりぴりと張り詰めた空気が、見守る陰陽師たちに波及し脂汗を噴き出させる。
『――しからば、いざ!』
安倍晴明の群れは刀あるいはチェーンソー剣を構え、風となった。
カムイの結界に守られた櫻宵もまた、刃風となって真正面からぶつかり合う!
破魔の桜花が狂ったように舞い踊るなか、白刃がぶつかり火花を散らした。
暮れつつある夜闇のなかのそれは、空を照らす星のように厳かだ。
結界維持に務める陰陽師のなかには、半ば魅入られてしまいそうになる者も居た。
しかして油断するなかれ、それはいのちを狩らんとする死神の爪である。
ぶつかりあいはすなわち殺意の拮抗であり、紙一重の差が死へとつながろう。
剣を振るうたび、櫻宵は余計な煩悩が洗い流されていくのを感じる。
殺意は研ぎ澄まされ、透明な澱みなき剣の意思となりて対手の頸を狙う。
桜花が舞い踊る――風雅なる風に交じるは、神をも惑わす酒の気配。
「噫――心地よい香りだわ」
「サヨ。……酒は、駄目だ」
「じ、冗談よう……!」
軽やかに会話しつつもその実、剣戟のリレイは続いていた。
気を取り直した櫻宵は破魔の権能をもて、酩酊もたらす酒精を払う。
ごくり、と喉が鳴った。甘露を求めて渇きが増す――だが酒は必要なし。
ならば代わりにこれなる邪を斬りて、その血で剣の渇きを癒やしてみせよう!
『疾――ッ!』
安倍晴明は複数の祝詞と呪詛を重ね合わせ、網のようにすることで封縛を狙う。
一瞬でも足を止められればそれでよし。この刃でもろとも斬れば済む話だ。
「それは、させぬ。そなたが約す厄災は、龍の幸いとなりて断ち切られるべし」
『!』
割って入ったカムイの神威が、呪詛を反転させ見えざる追い風とする。
桜花の流れが変わった。晴明は身が縛られたのを感じる――神罰の戒めに!
「業など重ねさせぬ。汝は、ここで祓われるが定めだ」
「何度でも蘇るがいいわ。何度でも、その業ごと祓い斬るまで!」
清廉に染まりし場において、晴明が汲み上げるべき業は何処にもなかった。
かくて神の加護を得た桜嵐の剣は、一閃にて千撃を見舞い、邪を微塵に裂く!
『あなや――』
晴明は驚愕、そして屈辱を浮かべ、断末魔もなく散って消えた。
ざあざあと吹き荒れる桜花が屍を覆い隠し、祓い、風へと還す。
邪の在るべき場所は、この世界に――否、宇宙のどこにもありはしない。
ちん、という涼やかな納刀の音が、戦いの終結と勝利を知らせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
羽月・姫香
(場所:一条戻橋)
あー…都に来るんは前の戦以来やなぁ…
で、ここやけど…曰く付きの橋らしいなぁ?
そういやウチ、橋のたもとに捨てられてた言う話やけど…まさかここやあらへんよな?(※本人は知らないが、まさにここである)
まずは気配を殺して橋の下に潜伏や。陰陽師の力も借りて、結界やらなんやらで出来るだけ【目立たない】ようにしとこか
で、ウチを見逃したんやったら…それこそ運の尽きや。【忍七つ道具】と【南洋手裏剣】を使い分けて…【先制攻撃、暗殺、毒使い、投擲、不意打ち】…忍の持つありったけの力で闇討ちするでっ!
「なんやウチにもよぉ分からへんけど…この先に進めるとは思わんといてなっ!!」
●一条戻橋のたもとにて
「…………」
羽月・姫香は一条戻橋の真下、結界の隙間に身を隠し息を潜めていた。
狙いはただひとつ――此処を通るであろう安倍清濁を不意打ちで討つためだ。
(なんやろ、ここ……いわくつきの橋らしいけど)
けれど姫香の心をざわめかせていたのは、戦いが近づく緊張感ではない。
この一条戻橋の……まさに今立つ『此処』から得られる、奇妙な感覚。
郷愁……? あるいは、懐旧、だろうか。
あまり感じたことのない妙な違和が、背筋から全身を包んでいた。
(そういやウチ、橋のたもとに捨てられてた云う話やけど……まさか、な)
偶然やってきた此処が、他ならぬ己が捨てられていた場所である。
――ということを、姫香は他愛なく思いつき、一笑に付した。
運命と云うべきかめぐり合わせと云うべきか、当人が気付かぬのも無理はなし。
気付いたところでなんだというのか。いまは、これから生命の奪い合いをするのだ。
姫香は呼吸を深め、違和感を振り払う。戦いにおいて邪念は命取りである。
奔放な彼女とて、敵を油断し見下してはならないという理解は得ていた。
この地に刻まれた他の猟兵たちの戦いぶりが、全感覚にそう訴えかけている。
傲れば、やられる。勝負は一瞬――そこに己のすべてを賭けるべし。
(陰陽師の力も借りたんや、そうそう見破られることはあらへんな)
それでも念には念を入れて、姫香は忍びの技で心拍数を限界まで少なくした。
冬眠状態の獣めいて身体は凍りつき、吐息は魚のあぶくよりも静かなる。
――やがて。
(……来た)
ぴりぴりとした違和感――此度のそれは、邪悪が放つ穢らわしい気配である。
姫香は思わず顔を顰め、しかし心を揺らすことなく気息を調えた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。気配は橋の上を渡り……ぴたり、と足を止める。
『はて?』
「……!」
安倍晴明の声がした。
『何か、妙な気配を感じるような……よもや鬼でも出ましょうや』
「…………」
どうする。出るか。仕掛けるか。姫香は迷い……辛抱を決めた。
一秒が一分に感じられるほどの長い沈黙――そして。
『……さて、私の目を盗んでみせるならば、大した鬼と言わざるを得ませぬな』
安倍晴明はそう嘯き、再びからんころんと歩き出す。
一歩、二歩、三歩――ここだ。姫香は撥条仕掛けめいて飛び出した!
「残念やったな、出てきたんは鬼やなくて忍びやでっ!!」
『……なんと!?』
安倍晴明は呪詛を結ぼうとする――だが、させぬ!
「なんやウチにもよぉわからへんけど、この先に進めるとは思わんといてなっ!!」
研ぎ澄ませた毒刃がひとつ、ふたつ、みっつと白い肌を斬り裂いた。
断末魔さえもなく。大悪はげく、と血を吐き、そして崩れ落ちる。
……静寂。姫香はどっと汗をかき、ふう、と嘆息した。
「なんやろうなあ、この変な感じ……ウチ、どうも妙やわ」
彼女が己の出自を知ることは、はたしてあるのか、それとも。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
過去の残骸めが性懲りも無く現れたか
ならば遣るべきは同じ――何をも成す事はさせん
相手は晴明、何処を狙うかは陰陽の術理を読むと見るのが妥当
ならば向かうは大将軍堂――大将軍八神社の天門守護の破壊辺りか
あれが相手では陰陽師には対抗し難かろう
此方で引き受けている間に結界の強化を頼む
――禁精招来
此れより此の戦いにて溢れた氣の総て、呉れて遣るゆえ力を貸せ
お前の膝元に於いての悪行、見逃す事など出来まい?
歳殺を盾として万物必滅にて祝詞と呪詛を相殺
生憎と角なぞ持たぬ身、酒にも刀にも殺されはせん
視線や切っ先の向きから攻撃方向を見切り躱して一息に接敵
怪力乗せた斬撃を叩き込んでくれる
幾度現れようが悉く斬り斃す
疾く潰えろ
穂結・神楽耶
名所とは言うものの…
こんな状況で呑気に観光とは洒落込めませんね。
平和になった後の楽しみを取っておきたいので、速やかに沈黙して頂けますか?
――まあ、問答無用ですけれど。
【猩猩緋宴】、光あれ。
ひとは知覚の大部分を視覚に頼っています。
呪詛も祝詞も、正確に捧げるには対象が見えている必要がありますね?
だから、させません。
あなた方が見るのはこれより訪れる破滅のみで宜しい。
陰陽師様方、拘束の術を。
動けなくなった者は後回しに。
術の懸かりが弱い…強そうな個体から斬り捨てましょう。
退屈結構。
本来、昨日と同じ今日こそが尊くも得難いものなのです。
理も無く世を乱すとあらば――わたくしから渡せるものは此ひとつ。
引導のみ。
●八将神の加護ぞあれ
「――やはりか」
御所より北西、すなわち乾の方角。
天門守護がため築かれし大将軍堂、またの名を大将軍八神社。
鷲生・嵯泉の陰陽師としての読み通り、敵の本懐は此処にあった。
北野天満宮と並ぶ御所=大内裏の霊的守護の要にして、いわば逆鱗。
京の都を裡より呪わんとするならば、此処を於いて他は考えられなかった。
「たとえ左道の輩とて――否、だからこそその術理は妥当に読めるものだ。
陰陽師たちよ、下がっていろ。彼奴は私が引き受ける、結界の強化を頼む」
「ぎょ、御意!」
陰陽師たちは嵯泉の言葉を受け、素直に下がり社にて結界の維持に腐心した。
天門とは魑魅魍魎の通り道であり、陰陽道においてはもっとも忌むべき方位。
ここを突破されれば、京の都そのものの霊的守護が損なわれることとなろう。
ゆえに此処へ差し向けられた安倍清濁――否、安倍晴明の力は、最大のそれであった。
『なるほど。蛇の道は蛇……道を重んずればその行く先も読まれる、と』
「いまさらお前の術師としての技量を疑いはすまい。ならばこそ山を張ったのだ」
敵対者の実力を正しく測り認めたからこそ、嵯泉はこの企みを予期できた。
ある種の信頼とでも云うべきか……されど両者、向けるは凄絶なる殺気。
嵯泉は隻眼で安倍晴明の群れを鋭く睨みつけ、刀の柄に手をかけた。
「……なにやら馴染みの気配を辿って来てみれば」
いまに火蓋が切られようとしていたその時、徒歩にて割って入る者あり。
穂結・神楽耶はふわりと花咲くような笑みを、隻眼の剣豪にのみ向けた。
「宴もたけなわ、これより死合の頃にございましょうか。わたくしも加わっても?」
「……穂結か。恩に着る」
嵯泉は揶揄や皮肉は口にせず、端的に彼女に礼を述べた。
オブリビオン相手に遅れを取るつもりなど一切ない――だが敵は強敵である。
それを理解しているからこそ先回りが出来た。ならば、油断するべからず。
なによりも見知った相手である神楽耶の剣は、肩を並べるのに信頼十分。
『ふむ。よもやふたりきりで、私どもを阻めると?』
「当然でしょう? わたくしどもは一度はこの世界を救ったのですもの」
「……驕るつもりはない。だが、驕慢はむしろお前に巣食っているぞ、外道」
安倍晴明はふたりの剣幕に、ぞっとするほど涼やかな笑みを浮かべた。
『なれば白黒つけるといたしましょうや。我が業、たんとおあがりくださりませ!』
直後、安倍晴明の群れは瞬時に印を結び、恐るべき呪詛を大地より汲み上げた。
ここは天門の方角、素戔嗚命の加護あれど業を啜るには十分の土地か!
「そうはさせません――神焔拝領、光あれ!」
神楽耶は自らの本体たる神剣を掲げ、その反射光を御鏡の如く照覧した。
安倍晴明は咄嗟に目を呪詛によって防護し、恐るべき赫炎の幻影を防ぐ。
だが、一手。四方より襲い来ると見えた呪詛の波はコンマ秒妨げられた!
『ぬう……この神威、ただのヤドリガミにはございませぬな。心地よし!』
「わたくしを退屈の慰みにでもなさると? ――身の程を弁えよ、下郎!!」
堂々たる大音声が、びりびりと戦場の空気を震わせた。
刃の放つ輝きは、目はおろか肌さえも突き刺すほどに煌々と燃え上がる!
『ぐおお……!』
「退屈結構。昨日と同じ今日こそが、この世でもっとも尊く得難きものなのです。
理もなく世を乱すとあらば――わたくしから渡せるものはただひとつ。すなわち」
ぎらりと神楽耶の目が煌めいた。赫炎纏いし剣にて滑るように切り込む!
「引導のみ――! 鷲生様、どうぞ存分に!」
「応」
嵯泉もまた風のごとくに斬りかかり、凄烈なる剣で晴明の受け太刀を払う。
そして小柄の裡より現れたるは、八将神が一、大威徳明王・歳殺神なり!
『太白星の精を喚ばうとは! 目には目をとはまさにこのこと!』
万象必滅の術を操る歳殺神は、神でありながら魔たる穢れの神である。
「これよりこの戦いにて溢れた氣のすべて、くれてやるゆえ力を貸せ」
重圧さえもたらす歳殺神に、重々しき声と覚悟でもって嵯泉は命ずる。
赫炎の輝きが呪詛を祓い、歳殺の験力が邪なる酒精と業の妖気を吹き飛ばした!
『なんと、我が術が斯様に乱れようとは……!』
「符呪による復活など赦さぬ。疾く潰え骸の海へと還るがいい」
晴明は剣を盾とした――だがその護りさえも、怪力の太刀は叩き切った。
『バカな……!』
「言ったでしょう、渡せるのは引導のみと」
神楽耶が静かに言った。
「あなたがたが見るのは己に訪れる破滅のみ。――おさらばでございます」
断末魔が木霊し、死に際の呪詛もまた歳殺神の呪力にて祓われた。
赫炎が潰えれば、先ほどの戦乱が嘘のように静寂と静謐が訪れる。
「……鷲生様、大事のうございますか?」
「仔細なし。この程度は必要経費というやつだ」
歳殺神の力は強大だが、それゆえに強いられる代償は相応のものだ。
けれども嵯泉がそう言うならば、神楽耶はそれ以上何も言わなかった。
「……わたくしどもは、ほとほと無茶をしがちなものでございますね」
「それで斬れるものが斬れるならば、構わん。そのための生命と心得ている」
巌の如きその言葉に、神楽耶は敬服の眼差しを向けた。
天門に風が吹く。邪悪祓われしその風は、吉兆を告げるかの如く健やかだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『大天使ロロサエル』
|
POW : 月閃乱撃
【日本刀による隙無き連撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 月呪審判
【三日月の如き刃】【朧月の如き羽】【月蝕の如き呪言】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 月焔邪視
【魔眼や呪言】を向けた対象に、【精神や身体の内側から蝕む焔】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:秋城結花
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠筧・清史郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●サムライエンパイア:京・二条城
「……なるほど。ここまで、ということですか」
月光照らすなか、白い翼を背負いし美丈夫は悩ましげに嘆息した。
もはや転生されし配下はなく、猟兵の方位はロロサエルの退路を奪う。
進もうとするならば、この場に集いし仇敵を尽く滅ぼすほかにない。
二条城には奮起せし陰陽師らが結集し、結界にて決戦の舞台を覆っていた。
「もとより、敵を前にして背中を見せて逃げるほど臆病者ではありません。
私はどうしても見たい。クルセイダーの抱く野望が成就するその瞬間を」
猟書家の証たる侵略蔵書を手に、ロロサエルは双眸を煌めかせた。
刀を掲げ翼を広げれば、月光に照らされた刃が恐ろしげに鈍く輝く!
「クルセイダーが将の一として、この大天使ロロサエル、お相手仕ります。
我が身に憑装なし――ただしそれが、私の未熟に繋がるとは思わぬことです。
この剣と月の魔力宿せし呪言、驕り見誤ればその生命を奪うと知りなさい!」
言葉通りである。彼奴こそ猟書家の一、呪いの言霊と魔眼を操る大天使!
来たるは呪言、舞うは剣――抜かれば此方の素っ首が地を転がろう。
この戦いに決着をつけるため、いまこそ月下に舞え、猟兵よ!
●プレイング受付期間
同じく書けるときに書きます。前章よりはスピーディにやっていくつもりです。
🔵が規定数になったらそのまま完結する可能性もあります。ご了承ください。
花邨・八千代
やる気に満ち溢れてんなぁオイ
いーじゃんいーじゃん、そういう奴って嫌いじゃねぇぜ
やっぱ敵はアンタみてぇのが良い
だが口上が長いのがちと気になるなァ
口開く暇あんなら俺ら一匹でも潰してみやがれよ
来いよロロっち、喧嘩しようぜ!
武器は黒塚、たっぷり振り回して【羅刹旋風】だ
全身全霊の怪力を乗せてぶち込むぞ!
返す刃で2回攻撃、畳みかけるぜ
遠慮なく傷口えぐって追い打ち仕掛けてくぞ
敵の攻撃はある程度オーラ防御で凌ぐか
兎に角攻撃重視だ、一撃でも多くぶち込んで押し切る!
いやぁ、やっぱ喧嘩は派手じゃなきゃ楽しくねェなぁ
ロロっちも死ぬほど楽しんでるぅー?
ところでその羽いーなぁ、ふかふかしてそう
千切っていい?だめ?
だめかー
●喧嘩の時間
「おォらッ!!」
花邨・八千代の怪力を込めた薙刀の一撃が、ロロサエルの刀の峰を叩く。
ゴォン!! という大音声が響き渡り、月光に彩られし夜露を晴れさせた。
「なる、ほど……この一撃は、重い……ッ!」
ロロサエルは腕の痺れに顔を顰め、だが淀みない動きで懐に潜り込んだ。
並の使い手であれば、怪力の代償として体幹を崩さざるを得ない。
重い一撃はそれだけ隙を産む――ただし、尋常の使い手であれば、の話。
「おいおい、これで終わりだと思ってんのか、ァアッ!?」
「ッ!!」
返しの二連撃! ロロサエルの切れ長の瞳は驚愕に瞠目した!
(この程度で終わっちゃくれねえよなァ、色男!)
ゆっくりと刃が首元に吸い込まれる――八千代は狂おしい甘美と期待を覚えた。
前提として敵は殺す。だがこんなところで終わってくれるな。
矛盾する感情は、さながら恋の炎のように女鬼の身を焦がしている。
ロロサエルの頸は宙を舞う……否! 神速の刃が、頸と薙刀の間に割り込んだ!
「そォこなくっちゃァ!!」
ロロサエルは刃に沿うようにして刀を走らせる。
鋭い刃金がレールのようにすれ違い、ギャギギッ! と火花を散らした。
今度こそ攻守交代。ロロサエルの剣は重くはない――だが恐ろしく、疾い。
八千代の両足が飛び退ろうとした……八千代は、意思の力でそれをねじ伏せる。
(下がったって無駄だ、逃げられやしねェッ!)
然り。この斬撃はそれこそ二町近い距離をさえカバーしてみせるだろう。
斬撃は一に見えて、四。八千代は全身の傷と噴き出す血を視認した。
痛みが到達したのはそれからコンマ2秒後。斬撃が音を超えた証である!
「ッはァ!」
歓喜、あるいは感嘆ともとれる吐息を漏らし、八千代はふらつく身体を支えた。
まるで踵から杭を突き刺したかのごとく、女鬼の肢体は不動を保つ。
「見事なものです」
「お褒めに預かり恐悦至極、ってなァ! 行くぜロロッちィ!!」
再びの攻守交代――は、ならず! ロロサエルの斬撃は続いている!
(ウッソだろオイ!)
刃が加速した。いましがたのは小手調べということか!?
一、二、三、四――八! 瞬き一つの間に八の斬撃!
今度こそ斬撃は肉を切り裂き骨に到達。八千代は吐血した。ダメージが大きい!
「クッハ……ハッハッハァ! 喧嘩ってのは派手じゃなきゃ楽しくねえなァ!!」
八千代の裂けんばかりの笑みを見て、ロロサエルは理解した。
いまのは、己が先んじたのではない……"譲られた"のだ。
頭上。薙刀は天下無双の剛力僧よろしく、ぶんぶんと円を描いていた!
「じゃ、今度こそ俺の番だ。――受け止めてくれよ」
羅刹の剛力は旋風一陣ごとに、累乗倍に高められるという。
袈裟懸けの刃は、ロロサエルの肉をばっさりと、骨に届くまで斬った。
「かは……っ!」
「ひひ」
双方二歩後ずさり、よろめき、血を吐いて頭を振った。
八千代は笑み。ロロサエルは苦痛と笑みの間の子と言ったところ。
「どーよロロっち、死ぬほど愉しんでるぅー?」
「御冗談を……私はあなたほど苛烈な戦士ではありませんよ」
「嘘つけ。そんな目ぇぎらつかせておいてよ!」
ふたりの双眸がぎらつくのは、けして月光のせいなどではあるまい。
鬼と天使。互いに人外のものとして、この程度は挨拶代わりであった。
「なあ、その羽根ちぎらせてくれよ。いいだろ?」
「断ります。あなたの頸を刎ねていいというなら話は別ですが」
「ハ! だめかー。ま、しゃーねェ!」
双方、構える。空気が張り詰めてどろりと濁った。
「「――ならば(じゃあ)殺すのみ(だけだ)!!」」
刃風がぶつかり合う。これは鬼と魔の貪食なり……!
大成功
🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
その瞬間こそ望みならば、あなたは背を向けて逃げ出すべきでした。
大天使ロロサエルよ。
あなたがクルセイダーの将を名乗るのであれば否は無し。
世界を護る一振の刀として、あなたに引導を差し上げます。
辞世の句の準備はお済みですか?
それが呪によるものとしても、わたくし、燃えることには慣れてますから。
耐えますよ。
これが慣れられる痛みではなくっても。
まだ燃え尽きる訳には――破滅に呑まれる訳にはいきません。
世界を滅ぼさせてはなりませんから。
狙いは素っ首ひとつきり。
『結火』の焔で目を眩まし、
噴射した炎で加速を得、勢いのまま斬り落とします。
あなたの好奇心がひとを害する方へと向かなければ――
なんて、今更な話ですね。
●炭に変わって塵となりて
――燃える。
穂結・神楽耶の身体が、こころが、魂が、絶え間ない焔に灼かれ、燃える。
不思議なことに、神楽耶を包む焔は、神楽耶以外には燃え移らなかった。
ただ彼女だけを、まるで責めさいなむように、燃え続けている。
「……あなたはどうやら、私の呪言を浴びせるまでもなかったようですね」
ロロサエルは、人型の焔と化した神楽耶を鋭く睨みつける。
侮蔑――いや、哀愍か。眼に込められた感情は、敵へのそれではない。
「ええ、あいにくわたくし、燃えることには慣れていますから」
「哀れなものです。あなたたち猟兵は、いわば世界の未来を守りしもの。
でありながら、あなたのそのさまは――我々よりよほど、過去に執着している」
「…………なんとでも、お好きなように」
神楽耶は揶揄の言葉に取り合わず、刀に破滅の焔をまとわせた。
ロロサエルは剣戟で迎え撃つ。神速の斬撃が鏡合わせめいて撃ち合う!
「これはわたくしの悔悟。わたくしが背負う罪であり、贖えない業のあかし。
そこへいまさらあなたの呪言が降ろうと、耐えられぬわけがありません」
――嘘だ。
焔は身を、魂を、こころを灼く。
ヤドリガミという霊体であるがゆえに、その苦痛には終わりがない。
焔は苦痛をもたらすが死はもたらさない。これは拷問のようなものなのだから。
それでいい。望んだ痛みだ。当然の苦しみだ。こうあるべきなのだ。
だからといって、痛みが、苦しみが、なんの意味も持たないわけでは、ない。
苦痛を感じなかったら、耐えられてしまったら、贖いの意味を持たぬ。
泣き出したいほどに苦しい。
叫び喚きたいほどに痛い。
けれど、耐える。
"耐えられる"のではない、"耐えねばならぬ"のだ。
だからこそ、罰は罰として機能する。
……罪の贖いを認めてくれる裁判官など、此処には居ないが。
「終わりない痛み。晴れぬ苦しみ。生命を守るべき者がそんなものを抱くとは。
……いえ、"だからこそ"なのでしょうか。なるほど、我々に"それ"はない――」
剣を撃ち合いながら、ロロサエルは淡々と云う。
「後悔、懊悩、慚愧、苦悶。過去に執着するからこそ、未来を守ろうとする」
美丈夫は、す、と目を細めた。
「――なんとも強く美しく、けれど哀れですね。あなたたちは」
「その頸、戴きます」
神楽耶は取り合わない。
取り合ってはならない。
あの哀れみを、受け入れてはならない。
自分は可哀想な存在なのだと、認めてはいけない。
可哀想などではない。
裁かれるべき罪人であり、永遠に苦しむべき咎人であり、呪われるべき魂なのだ。
だから、認めてはいけない。
あの眼差しを、生かしていけはいけない。
神楽耶の剣は逸った。頸を狙った剣はわずかに逸らされる。
鎖骨を割られたロロサエルは苦悶の吐息を漏らし、退き、跪いた。
「――……是非はなし。わたくしはあなたに引導を渡します」
ただ一振りの刃として。
神楽耶は揺れる己の心を殺す。
痛みと苦しみで思考を染め上げる。
「辞世の句を、どうぞご用意くださいませ」
趨勢は明らかだ。立つのが神楽耶で、跪くのがロロサエルだ。
けれども。
哀愍の眼差しだけは、焔ではかき消せはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
それが誰かにとって、命に代えても貫くべきことなら
その為に何もかもを燃やし尽くすことを、本人が是とするなら
俺の言葉も、行為も、きっとただの“余計なお節介”だ
――そうだって、わかってる
だからこれも、多分
あいつの為、とかじゃなくて、ただの自分の我侭なんだろう
ただ、自分のこころがそこにあると思いたいだけの――
――いや
言い訳は、やめにするんだったな
見える刃も羽も、見えない呪言も
相手の動きを注視さえしていれば“視える”ものだ
見切るのは簡単だ、なにせそれが一番得意なんでね
すべて、この影で撃ち落とすよ
邪魔がなければ、あとは本体を墜とすだけで済むだろう
……見えてるんだ、さすがに外さないぜ
●水面の月のように、形なく
渇望に突き動かされた叫声のように、黒き死の運び手が火を噴いた。
鳴宮・匡の裡から滲み出した"影"が、自動小銃に寄り添うように絡みつく。
放たれた弾丸もまた黒く染まり、三日月の斬影を砕いて夜闇に翔ぶ。
「……っ!」
ロロサエルは追撃を諦め、目にも留まらぬ速度で刀を振るう。
"影"からよからぬ気配を感じる。おそらくこれは、受けてはならぬものだ。
単純な威力のどうこうではなく、もっと超自然的な何かが宿っている。
匡の狙いも攻撃のタイミングも厄介だが、なにより"影"が危険に思えた。
両者は10メートルほどの距離を取り、二条城を背景に相対する。
ロロサエルは近づけず、匡は弾丸を命中させることが出来ない。
狙いは正確。ただ、ロロサエルの斬撃は弾丸さえも斬り捨ててしまうのである。
「あなたはなにゆえ私を止めるのです。見たところこの国の住人ではありませんね」
「……だから?」
匡は小銃を構えたまま、敵の隙を見切ろうとする。
ロロサエルの動きに油断はない。踏み込むタイミングを狙っているようだ。
「多かれ少なかれ、ヒトは何かを求め、あるいは背負うことで強くなるもの。
私が惹かれた、クルセイダーの大望のように。あなたがたからも"それ"を感じる」
ロロサエルは身構えたまま言葉を続ける。甘言で隙を産もうというのか?
「ですが、あなたからは何も感じられない。信念も、覚悟も、私に対する怒りも」
刀の表面に月光が反射し、匡の凪いだ表情が映し出された。
「……さあな」
匡に、敵とおしゃべりをしてやるような趣味はない。にべもなく一蹴する。
もっともよほど親しい仲間でもなければ、心情を吐露したりはすまい。
――匡のなかにあったのは、まさにその"戦う理由"への懊悩なのだから。
仲間のため。
それはいかにも素晴らしい文句で、いかにも……"人間らしい"。
唱えるのは簡単だ。だが匡は、自分というものをよく理解している。
余人が抱くであろう情念はそこになく、言葉は水泡のようにはかない。
結局は、余計なお節介なのだ。あいつも、自分も、わかっている。
(――だから、俺が戦うのは。きっと、ただの自分の"わがまま"なんだ)
この胸に、人間らしい"こころ"が存在しているのだと。
自分も少しは人間らしくなれたのだと、そう信じたいがためのエゴ。
虚無感が去来する。ロロサエルはその隙を逃さなかった。
「虚ろなるあなたを、私が裁いてあげましょう……!」
斬撃が真空の刃となって三日月を描き、ロロサエル自身も羽ばたきで加速する。
飛ぶ斬撃と本体の剣、そして言葉に宿った一種の呪いによる束縛。
斬撃自体の速度も極めて疾く、後の先を得ることは至難である。
「悪いな」
「!」
影が、三日月の形をした斬撃を砕いた。
(フェイント? 私の呪言に縛られたと見せかけるための……!)
策士策に溺れる。ロロサエルの斬撃は空を切った。
ロロサエルは、まるで見えていたかのように攻撃を避けた匡と目が合う。
……事実、見えているのだ。だから匡は反応することが出来た。
「お前に問われなくても、俺はずっと考え続けてるんだ」
叫ぶような銃声。影の弾丸が、ロロサエルの脇腹から胸にかけてを走る。
「がは……!」
「――自分のことも、お前のことも。俺は、ずっと見えているんだよ」
匡の表情は凪いでいた。
苦しみも痛みも引き連れると決めた彼の"こころ"は、呪言ですら縛れない。
大成功
🔵🔵🔵
雨宮・いつき
ええ、良く分かっておいでで
貴方はここまでです
他人の夢の成就を願う
その行為自体は尊いものであれど、目指す所が人々の安寧を脅かす事であれば認める事など出来ません
物理的にも干渉する【結界術】を施した氷の壁を、【高速詠唱】で多数生み出して連撃を防ぎましょう
一閃でも貰えば只では済みません
耐えて、耐えて【時間稼ぎ】を
そして密かに【多重詠唱】で顕現の仕込みを
こちらの防御を上回ろうと幾重もの剣閃が向けられれば、それに込められた殺意を糧に伊吹大明神をお呼びします
地に埋まる金、地を流れる水、地の底で滾る火
"地"が内包するあらゆる力で無数に刃を織り、伊吹様の八刀と合わせて【範囲攻撃】で以って剣閃ごと敵を斬り裂きます
●地より来たれ、竜の御霊
――雨宮・いつきは、自分が頸を斬られ無残に死ぬ姿を幻視した。
「っ!!」
鋭い殺気を浴びた脳が、錯覚を与えることで警戒を促したのである。
ほとんど本能の危機感に従うようにして、いつきは符の力で大きく飛び離れた。
展開された氷の壁が、ばくりと斜めに切断されて砕け散る。
(一町……いえ、二町近い距離があるというのに!)
ロロサエルの姿は点のように小さい。にもかかわらず斬撃はここまで届いた。
猟書家の持つ底力を、いつきは改めて思い知った。油断など出来るはずもなし!
「陰陽師の皆さん、どうか少しばかり僕にお力を……!」
戦場の外側で結界を維持する陰陽師たちが、いつきに力を貸した。
いつきは跳ぶように後ろに下がりながら、二枚、三枚と氷の壁を作り出す。
ありったけの霊力を込めた永久氷壁だ。地獄の業火でも溶かせまい。
その分厚い結界を、ロロサエルは力任せに斬り捨てて低く飛翔する。
接近速度は想定よりも二倍近く速い。万事休すか……!?
(――こうなれば……!)
いつきは残った霊力のすべてを注ぎ込み、特大に強固な氷壁を作り出した。
そして観念したのか足を止め、猛スピードで近づくロロサエルをきっ、と睨む。
「あなたに恨みはありません。ですが――お命、頂戴いたします」
斬撃。いつきの目には、一閃だけのように見えたが、実際は八。
遅れて氷壁がバラバラに斬り裂かれて、がらがらと音を立てて崩れた。
いつきは硬質化させた符の盾を掲げていた――が、符ごと片腕を斬られる!
「ぐ、あぁ……っ!!」
幸いにして、斬撃は骨までは到達していない。かろうじて。
いつきは燃えるような痛みに崩折れる。滲み出す血が狩衣を白く染めた。
「…………」
ロロサエルは処刑人めいて刀を振り上げた。命脈を断つために。
あとは振り下ろすだけで、終わる――にも関わらず、剣は落ちなかった。
「……恨み辛みに畏れに怒り、無心にあらずんば……それすなわち、信仰なり」
「!!」
何か、まずい。
ロロサエルは咄嗟に退いていた。それがひとまずは奴を救った。
いつきを守るようにして、彼の周囲の地面が隆起した!
「これは……!」
「怨嗟を喰らいて神威と成し、我らがために振るい給え……!」
傷口から流れ出した血が、地面の裂け目にぽたぽたと零れている。
隆起から現れた何かは、それを美味そうに嚥下していた。
……八つの頭に八つの頸。禍々しい闇を纏う、その威容は……!
「八岐の大蛇……いえ、伊吹大明神を口寄せしましたか!」
「この僕の血をお捧げいたします。伊吹大明神よ、あれなる敵を滅ぼしませい!」
ロロサエルはいつきを殺そうと刀を振るった。だが届かない。
金気を纏った竜の鱗が刃を弾いたのだ。そして裂け目から濁流!
ロロサエルの両足が流れに取られ、竜の頸が手足に絡みつく!
「ぐッ!! これほどの、御霊を操る、とは……!」
「あなたは、ここまでです。僕はあなたのその望みを、認めません」
尾が変化した神剣を、いつきは無事な方の手で掴み取った。
「人々の安寧を脅かすもの……それを祓い清めることこそ、僕の使命。
夢の成就を願うあなたの心ごと、その存在を、今こそ調伏いたします!!」
無数の剣戟がロロサエルに襲いかかる。まるで意趣返しのように!
大いなる竜の怒気が、邪悪なる猟書家の全身をずたずたに斬り裂いた……!
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
【盗人と鴉】
おやおや。コノエ、あの天使やる気満々みたいだねぇ?
でもま、嘲りや堪能こそさせては貰うけど、驕りとかはする気は無いんだよねぇ。俺は奪うのには真面目だよ。はは、そんな眉を顰めない顰めない(コノエの態度に笑ってる)
空飛ぶ怪盗劇をご覧あれ
狂気の禁癒を発動してコノエと共に空中戦と行こうじゃあないか。翼持つ二人だけが飛ぶのはズルいしねぇ
飛び回りながら相手に認識される位置から、または死角から特殊な銃弾を撃ち込もう
俺がノーコンでない限り、逃げることも防ぐことも…治す事さえも許さないよ。そういうの盗んだからねぇ
どうだい、コノエ。腕前くらいは信頼できる盗人だろう?
終わったら空の散歩でも如何かな?(笑)
朱葉・コノエ
【盗人と鴉】
…向こうもようやく力を見せに来た、ということでしょうか。
…余裕を見せるのはいいですが、戦いの時は永一様も真面目にすることです。
貴方は何をするかわかったものではありませんから(永一に対して)
翼を持って空を制するのは貴方だけではありませんよ。
翼を広げてロロサエルとの空中戦へと持ち込みましょう。
敵の攻撃を抜刀斬りでいなしつつ、永一様が銃弾を撃ち込んで与えた隙…その一瞬目掛けて居合を思わせつつ、鞘撫で打撃を打ち込みましょう。
…悪くない援護でした。
しかし盗人に信頼は縁なき言葉でしょうに。
…私と一緒に?…物好きなお方ですね。
●月は空より堕ちて逝く
サムライエンパイアの空に浮かぶ月は、ふたつ。
すなわち本物の月と、猟書家の儀式魔術の結果――"骸の月"である。
下弦の月は拮抗を示す。この世界は侵略の只中にあるのだ。
この戦いも、緒戦に過ぎない――たとえ、どちらがしょうりしたとしても。
そんな夜空に、バチ、バチと花火のように光が瞬いた。
霑国・永一のように鋭敏な視覚を持つ者なら、光の正体を見切れるだろう。
光は、火花だ。
空舞う大天使ロロサエルと、朱葉・コノエの刃が撃ち合い生まれる火花である。
両者は獲物を奪い合う禽獣の如く獰猛に、しかして静かにぶつかっていた。
翼を羽ばたかせ、夜闇を叩き、目にも止まらぬ速度で斬撃を繰り出す。
反発力で飛び離れたふたりは、八の字を描く形で再び交錯、火花が散る。
永一は、お月見気分で死闘を見上げていた。
「おやおや。コノエ、君がそこまで手こずるとは、珍しいねえ?」
……という盗人のからかう声も、コノエには届いていない。
大天使ロロサエル。相対し、刃を交わしてみて、改めてわかったことがある。
(――強い)
なんの衒いもない純粋な剣の腕。そこに呪言や三日月の斬撃も混じる。
コノエは全神経を集中させ、あの忌々しい男の言葉を野放しにせざるを得ない。
「助けは要るかい? 俺が何かすると君はすぐ目くじらを立てるからなあ!」
(……いけしゃあしゃあと……ッ!)
皮肉を返してやる余裕もない。その事実が、コノエのはらわたを煮えさせた。
ロロサエルは深手を負っている。仕留めるにはあと一歩――いや、二歩か。
その二歩が遠い。この状況、やはり自分だけでは打開できぬか。
「……永一殿! 戦いのときは……真面目にッ! することですッ!!」
油断ならぬ斬撃を抜刀斬りでいなし、コノエは相手から大きく飛び離れた。
「ははは! 怒られてしまったねぇ。なら、俺もお邪魔するとしようか」
「――!(あの男……)」
ロロサエルは、永一がふわりと翼もなく浮かび上がったことに気付いた。
飛行術を持っていながら、今の今まで高みの見物を決めていたというのか。
(なるほど。彼女が刺々しくなるのもわかります。あの男は――腹に据えかねる)
ロロサエルの冷たい視線を浴びて、同じ目線に浮かんだ永一は喉を鳴らす。
「ふたりして眉を顰めることはないじゃないか。さあ、怪盗劇の始まりだよ」
「いいですから、真面目に戦いなさい……!」
「あっはっは。そこまで熱望されたなら――少しはきちんと働こう」
(――……来るか!)
三者は同時に消えた。そして火花の数が二倍に増える。
蜂鳥の舞のような空中戦は、永一の参戦によりさらに加熱していった!
「も、もはや我らでは、この目で捉えることも出来ぬ……!」
結界を維持し続ける陰陽師が、空をぽかんと見上げて呻いた。
ただ、とてつもなく速い何かが、頭上を飛び交いぶつかっているのはわかる。
銃撃、そして斬撃。呪言の禍々しい妖力をも断ち切る天狗の刃。
月光だけが、まるで遠い世界のことのように変わらず輝いていた。
一方で、戦い続ける三人は、潮流が変わりつつあることを感じていた。
永一の参戦により、ロロサエルはどうしても手数が足らなくならざるを得ない。
一方的だった攻撃は、徐々にふたりの攻撃を凌ぐ守勢に変わっていく。
(まるで真綿で首を絞められるような心地ですね、これは)
ロロサエルは、脇腹や鎖骨の傷の痛みに顔を顰める。
自分が、徐々に手詰まりの状況に追い詰められているのは感じていた。
だが、打開が出来ない。そのための手段を少しずつ丁寧に刈り取られている。
「私を、鳥籠にでも追い詰めるおつもりか――!」
ロロサエルは起死回生の一手に打って出た。危険なのは……この男!
「おやぁ、狙いは俺かい? 困ったねぇ」
二町の距離をも埋める斬撃が、永一の頸・肩・胴体を狙って連続で放たれた。
永一は……避けない!? いや違う、斬られたのは……残像!
「!」
「――ほら、せっかくの手品がバレちゃった」
音のしない銃弾が、ロロサエルの肩を貫いていた。
騙された。ロロサエルの驚愕は、すぐに絶望に取って代わる。
「これにて終いです。――御然らば」
神速の居合。ロロサエルは防ぐことも避けることも出来ぬ。
二段構えの剣が、大天使の頸をずるりと斬り落とした。
……まず生首が、遅れて胴体が落下し、そして溶けるように消えていく。
一拍遅れてふたりが着地し、コノエはふらりとよろめいた。
「おっと、大丈夫かいコノ――」
「……必要、ありません」
差し伸べられた永一の手を、コノエは反射的に振り払った。
永一はあるかなしかの笑みを浮かべ、やれやれと肩をすくめる。
「本当につれないねぇ。これで俺の腕前は、信頼できるってわかっただろう?」
「……信頼など、盗人には縁のない言葉でしょう」
「俺は仲良くしたいのさ。コノエとも、他のみんなともね」
「不要です。……ですが」
コノエは頭を振りつつ、視線を外して言った。
「援護だけは、悪くないものでした」
「……ふ、あっはっは。そうだろうそうだろう、いやぁ認めてもらえてよかった」
「っ、認めたとは一言も」
「まあまあ。それよりふたりで、空の散歩とかはどうだい?」
「……物好きな方ですね。ですが、それも不要です。お断りします」
おやまあ、とおどける永一を無視して、コノエは踵を返した。
月は変わらず輝いている。死闘の風が夜霧に溶けても、変わることなく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵