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増えよ、増えよ

#クロムキャバリア #純戦闘 #無双系

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#クロムキャバリア
#純戦闘
#無双系


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「侵略だよ侵略! いんべーだー!」
『騒がないでよ、ドリー。説明できないでしょうが』
 双子と見紛うばかりのグリモア猟兵、ドリー・ビスク(デュエットソング・f18143)が君たちの前できゃいきゃいと話し合う。
『クロムキャバリア――巨大ロボットと都市国家の世界での依頼よ』
「おっきな国の軍のえらーい人が、オブリビオンマシンに乗っちゃって大変らしいね!」
『オブリビオンマシンって言うのは……まあ、過去から蘇った巨大ロボットね。猟兵以外が乗るとロクでもない思想を持つようになるわ』
「そのオブリビオンマシンに乗ったえらーい人が、なんとお隣の国に勝手に侵略しに出ちゃうんだよ!」
 この侵略行為はまだ瀬戸際で阻止できる。ゆえに猟兵たちで割って入って侵略軍を食い止め、最高指揮官のオブリビオンマシンを破壊するのが作戦目標となる。
『最高指揮官さんのオブリビオンマシンは……“フルングニル”。古代魔法帝国が開発した、対国家用のキャバリアね。キャバリアを食べて増えて戦うっていう、厄介な敵よ。産めよ増えよ地に満ちよ、をキャバリアでやるなんて、ホントロクでもない……』
「安心してね! まずはよわよわさんたちから蹴散らさないといけないから、ボスは後回しのいっちばん最後だよ!」
『あなたたちがまず相手にするのは、こっちの“ファイア・リグオン”。重装甲高火力の量産型キャバリアね。……最高指揮官さんのオブリビオンマシンに影響されて、こっちまでオブリビオンマシン化してるから気をつけて頂戴。影響を受けただけの半端モノでも、強化はされてるから』
 量産型キャバリア“ファイア・リグオン”は全身の火器を用いた砲撃戦を部隊で行い、アウトレンジから攻撃する戦法を得意とする。遠距離から放たれるガトリングやバズーカなどの実弾砲撃をどのようにして掻い潜るのか、やり過ごすのか、というのが戦闘のポイントになるだろう。
「あとねあとね! なんとキャバリア、お貸しします!」
『あたしたちが借りて来たキャバリアを個人で所有してない人用に貸し出すわ。搭乗訓練を受けてなくても、まあ補助AIがうまくやってくれるでしょうよ。問題なく動かせると思うわ』
「ユーベルコードも、キャバリアの武器からちゃーんと出てきたり大体同じことできるから安心してね!」
 一点、注意するべきことがある。
 このクロムキャバリア世界では、空を飛べない。
 厳密に言うと、空を飛ぼうとすると遙か上空に浮かぶ暴走衛星に撃ち落とされる危険性がある。よって、空を高速飛翔するような行為は避けた方が無難だろう。
「そうそう、オブリビオンマシンに乗ってるのはフツーの人間だから! 気を付けると楽しいよ! 気を付けなくても楽しいけど!」
『なるべくなら生かしてやれると良いわね。面倒だろうけど、お願いするわ』
「猟兵さんたちだったらきっとだいじょーぶ!」

「『――それじゃあ行ってらっしゃい、猟兵さん』!」


三味なずな
 最後に見たロボ(?)アニメはデカダンス。
 お世話になっております、三味なずなです。

●章構成
・1章:集団戦「ファイア・リグオン」
 重装甲高火力の旧式量産型キャバリア群。めっちゃ砲撃してくるのでそれを掻い潜るなりやりすごして戦いましょう。

・2章:集団戦「Coyote」
 低火力・紙装甲・高機動、大量配備のローエンド量産型キャバリア。とにかく数が多い。

・3章:ボス戦「Type-XXフルングニル」
 古代魔法帝国が作った試作型キャバリア。増殖・再生・進化を繰り返して敵国を滅ぼすとか。


 なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。

 また、キャバリアの詳細な設定などにつきましてはステシ(一言欄含む)やプレイングにご記載ください。

 今回のテーマは「物量戦」です。砲撃が、敵の数が、物量の並となってあなたたちを襲います。
 数の暴力を前に、あなたがたはどのように立ち向かうでしょうか?
 皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ファイア・リグオン』

POW   :    戦術パターンA『火力制圧』
【全武装の一斉射撃による飽和攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    戦術パターンB『可変射撃』
【RS-Sショルダーキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    戦術パターンC『牽制射撃』
【RSハイパーガトリングガン】【RS-S高誘導ミサイル】【RS-A左腕部ロケットバズーカ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 無尽の荒野があった。
 起伏はあるものの丘と呼べるようなものはなく、見渡せば地平線が見える。
 草木は少ない。見上げるほどの大岩に混じって、まばらに枯れ木や倒木が見えるが、それらはこの荒れ地の寒々しさを覆せない。

 荒野を進む者たちがいた。
 ファイア・リグオン。旧式なれど火力に偏重した、量産型キャバリアたちだ。
 機械的に整然と並び、肩部に載せられた砲身を揺らしながら荒野を進む様は、さながら葬式めいて生気がない。オブリビオン・マシンの影響を受けていることは明白だろう。
 一機が何かに気づいたように立ち止まると、ファイア・リグオンの部隊は分散した。
 隊伍を組んでそれぞれ大岩の影に隠れ、あるいは密集陣形を組み始めた。君たちに気付いたのだろう。

 そして君たちに気付いた彼らが次にやることはすでに決まっている。
 何十、何百と重なった、砲撃音。
 面を等しく押し潰すかのような、砲弾による火の雨が降り注ぐ――。
ラニューイ・エタンスラント
◎心情
ふぅん……まぁ、この世界の情勢なんかには興味がないのだけれど
新しい『玩具』を手に入れたから、それの試し斬りにはもってこいのお相手ね

・戦闘
生身で戦うわ
敵の砲撃は、当たりそうなものだけ【無敵斬艦刀】で【なぎ払い】、【怪力】で地形を砕いて盾にしたりで防いでいくわ
それで、ユーベルコード『無敵斬艦爆砕撃』で攻撃するわね?

この巨人達、人が操るって話だけど……まぁ胴体を避ければある程度はどうにかなりそうね?
なんなら、その鎧を【怪力】でひっぺがして引きずり出せばいいんでしょう?

さぁ、暴れましょうか



 新しい世界に足を踏み入れる時、誰しも何かを期待する。
 己の“世界”にはなかった未知を求める。

 とはいえ、その世界の詳細な情勢へ興味を向ける者は多くないだろう。ラニューイ・エタンスラント(闇と光のダンピールイェーガー・f05748)もその一人だ。
「この世界の国同士がどうこうなんて、あまり興味はないけれど……」
 無尽の荒野を軍が駆け抜け、敵地を侵略する。
 その光景は自分の故郷にもあったものだ。特筆するべきものでもないし、多くの世界に普遍的に見られるものだ。
「……けど、新しい“玩具”の試し切りにはちょうど良いわ」

 ずしん。地が僅かに揺れた。
 鋼だ。戸建ての家よりも高く、ラニューイが小人に見えてしまうほどに大きい、剣の形状をした鋼。

   Real  Xross
 ――実体 ・ 近接兵器、無敵斬艦刀。キャバリア用に鍛造されたはずの、およそ人間が扱えるはずのないそれを、ラニューイはその細腕からは想像もつかないほどの圧倒的な怪力によって手にしていた。

「受け太刀なんて弱気なことはしないわ」
 家の建材よりも長く、太く、大きな斬艦刀をラニューイは振るう。言葉の通り、敵の砲撃を受けるためではない。
 彼女へ飛来する砲撃を弾き飛ばすためだ。遠距離から放たれた実体弾はその尽くがラニューイの斬艦刀によって弾かれ、あるいは斬り捨てられる。

「臆病な犬ほどよく吠えるものだけど」
 斬艦刀を引きずりながら、ラニューイは彼方の敵を見遣る。
 射手は敵に近付かれることを厭う。ゆえに臆病な射手ほど、犬が吠えるように矢を射かけてくる。
 果たして、ファイア・リグオンたちはラニューイの健在を見て取って、その全火砲を一斉に解き放った。

「あなたたちも犬同然ね」
 斬艦刀が天を指す。まるで塔の如くそびえ立ったそれは、勢いよく地へと叩き付けられた。
 立ち込める砂埃が視界を遮る。構うものかとばかりに砂煙の中へガトリング弾が、ライフル弾が、ロケットバズーカが、ミサイルが着弾し、爆発していく。

 爆発が途絶え、砂煙がまるでつむじ風に巻かれたように吹き飛ばされる。
 煙の中から現れたのは、斬艦刀を手にしたラニューイだった。
「でも残念。私、野良犬に噛まれてやる趣味はないの」
 彼女の背には、割れ砕けた岩盤が浮かび上がっていた。無数の銃痕、爆発痕。斬艦刀で砕いて強引に引き出し、盾として利用したのだろう。

「さあ、しつけの時間よ」
 言葉と同時に、ラニューイは眼前へと斬艦刀を振り下ろした。
 振り下ろされた斬艦刀は大地を割りながらもその刀身を横たえることなく、ラニューイの体を持ち上げる。
 まるで棒高跳びのような強引な移動によって肉薄したラニューイは、いまだに火器のリロードを行う敵目掛けて斬艦刀を振り下ろす。
「まずはその無粋な鎧から引き剥がしてあげるわ」
 力任せの一撃は、ファイア・リグオンの一機の右腕を両断した。

 慌てて別のファイア・リグオンがガトリングの銃口を斬艦刀の柄へと向けるが、そこにラニューイはいない。
 彼女は――斬艦刀を捨ててキャバリアの胴体に取り付いている。
 拳打、一撃。細腕から繰り出されたものとは思えないほど強烈な一撃が、キャバリアの上体を仰け反らせる。どう、と仰向けに地面へ倒れると同時に、一枚の装甲が宙を舞った。コックピットの前面装甲だ。
 コックピットから引き抜き、地面へと放り捨てたパイロットをラニューイはおもむろに見下ろす。
「寝るのなら、ちゃんとした棺桶で寝た方がいいわよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

朱鷺透・小枝子
これは戦争ではありません。
故に命を奪う事はしません。

だがオブリビオンだ!敵だ!壊せ!
ディスポーザブル01を操縦。

流血は継戦能力で耐え
スラスター(推力移動)補助のダッシュ。吶喊!

駆けろ、壊せ、この命を壊せ!『ディスポーザブル』!!
(技能レベル1~9を自身のレベル×10に変更)
(オーラ防御、機体を構成する霊物質が強化され更に堅牢に)
機体の堅牢さに任せて戦場を真っ直ぐ駆けて敵に近付きー!
怪力、スクリュー式ドロップキック。

早業で即座に置き上がり、パワークローを構え、
敵目掛けてさらなる吶喊を開始!
毟り壊す、引き裂き壊す、殴り壊す。

敵と戦う。破壊する。きっとそれが自分の生きている理由である故に。



 敵が目の前にいる。
 この上なく単純なシチュエーションであるが、人によって取る選択肢は違う。戦う、様子を見る、逃げる、助けを呼ぶ……。
 だが、朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)の場合、どんな状況であっても選ぶ択は一つ。“戦う”ことだけだ。

「“ディスポーザブル01”、朱鷺透・小枝子。エンゲージ」
 荒野を駆けるのは虚空から現れた“ディスポーザブル01”。
 “使い捨て(Disposable)”の名の通り量産型キャバリアであるはずのそれは、目の前に展開された重火力武装のファイア・リグオン群を前に怯むことなく突撃していく。重装甲とはいえ、複数のファイア・リグオンが火力を集中させればひとたまりもないはずなのにも関わらず、だ。

「これは戦争ではありません。ゆえに、命を奪いはしません」
 ファイア・リグオン数機が“ディスポーザブル01”目がけて火力を集中する。突出したものから各個撃破するのは戦闘の基本だ。陽動であれなんであれ、叩き潰しておけば敵の戦力を一機分は減らせる。
 ――そのはずだった。
「だがオブリビオンだ! 敵だ、壊せッ!!」
 スラスターが火を噴く。急加速。無誘導ロケットバズーカが“ディスポーザブル01”の通過跡で爆裂した。

 ファイア・リグオンのガトリングガンが迎え撃つも、重装甲には銃痕一つ付かない。
 量産型の領域を遙かに超えた高機動、重装甲。尋常ならざる雰囲気を察した敵が誘導ミサイルを射出するも、“ディスポーザブル01”は爆風を突っ切って吶喊する。
 止まらない、止められない――倒せない。
 その事実を敵が受け止める頃には、“ディスポーザブル01”は格闘戦の間合いに入っていた。

「跳べ、壊せ、この命を壊せ! ――『ディスポーザブル』!!」
 跳躍。重装甲キャバリアとは思えないほどの軽やかな挙動で跳んだ“ディスポーザブル01”は、ファイア・リグオンの一機目がけて飛び蹴りを入れる。インパクトと同時に空中でスラスターを起動し、強引に身を捻ることで威力を上げたスクリュー式ドロップキックだ。

 喉笛を噛み切られた草食獣のようにファイア・リグオンが倒れ込み、スラスターを吹かして着地した“ディスポーザブル01”は肉食獣の如く次の獲物へと飛びかかる。
 殴る。蹴る。むしる。引き裂く。折る。砕く。
 戦争のように命は奪わない。戦闘のように相手を打ち負かすことを至上としない。
 戦術も作戦も何もかもを置き去りにした、原始的な暴力。
 破壊のための破壊が、そこにあった。
「敵の命までは奪わない! ただ壊す! あくまで壊すッ!! 壊すために破壊するッ!!!」

               Disposable
 きっとそれが、小枝子という “使い捨て” がまだ生きている理由だから。

成功 🔵​🔵​🔴​

猿投畑・桜子

おおー、ここが「くろむきばりや」だべか?
暴れん坊共ばぶっ飛ばすならお任せだべー。
あ、なんかでっかくて頑丈な板とかあったら貸してけろ?

しっかし面白いとこだなぁ、おらと背比べ出来そうな人形がいっぱいだぁ!
んだけど、おらのがまだまだでっかくなれるべよー!

※貸出用キャバリアの装甲部分やら大盾やら、兎に角頑丈で大きなモノを借りて防具にし戦闘準備。
リグオンの部隊を発見したらUCで巨大化しキャバリアでも影に隠れられるサイズの大岩をポイポイぶん投げ陣形を乱し、怯んでいる間に吶喊。
適当なリグオンを捕まえ他のリグオンに叩きつけたり、空に投げ飛ばすことで暴走衛星の的にする。
圧倒的物量には暴力的質量で対抗する。



 クロムキャバリアという世界に来て、抱く感想は猟兵の数だけあるだろう。
 しかしそれでも傾向というものはあって、概ね断絶された世界を見て未来を憂いたり、あるいはキャバリアという巨大ロボットを見て感心や興奮を覚える者が多い。
 
 キャバリアと並んでも遜色ないほどの長躯を持つ巨人、猿投畑・桜子(いなかっぺプリンセス・f26313)はそのどちらでもなかった。
「くろ、む……きばりや? なーんか明るい感じの世界だぁ。“気張りや”って世界が応援してるみたいだべさ」
 まったくの誤解である。
 誤解なのだが、当の本人は「よーし頑張るべさー」とやる気を出している以上は誰も指摘する気になれない。というか、指摘する前に桜子はキャバリア用の大盾を抱えて足取りも軽やかに前線へと向かっている。

「おおー、おらと背ぇ比べできそうな人形がいっぱいだぁ!」
 遠方の敵群を見て、桜子が喜色を示す。生まれてからこっち、自分と同じぐらいの体躯というものになかなかお目にかかる機会が少ないからだろうか。
 しかし、敵の“歓待”は手荒いもので、ガトリングガンの弾幕が桜子を迎える。
「わあ、蜂の巣を突っついた時みてぇだぁ!」
 驚きと共に構えたキャバリアシールドが、機関銃弾を受けて弾く。盾越しに伝わる衝撃が、生身で受ければ蜂の巣になるのはこちらであることを語っていた。

 このまま一方的に受けていても集中砲火を受けるだけだ。桜子は近くにあった大岩をむんずと片手で掴み上げる。
「こっちも負けてらんねえべさ!」
 えいや、と軽めの掛け声と共に、大岩が敵陣めがけて投石される。いかな重装甲とはいえ、大質量を直撃してはひとたまりもない。大盾を構えながら桜子の手から投げられる岩を避けようと、敵の配置が乱れ始める。
 付け入る隙としては、あまりにも十分だった。

「おらだって、まだまだでっかくなれるべさぁ!」
 変身ポーズの直後、桜子の額に燃え盛るような角が生えた。キャバリアと肩を並べるほどの巨躯が、見る間にそれに倍してなお余りあるほどの大きさにまで桜子は巨大化する。
 怯みながらもキャバリアたちが果敢に反撃を始める。桜子も放たれたロケットバズーカと誘導ミサイルを、すっかり小さくなってしまった大盾で撃ち落とす。だが、敵の物量に対して桜子には手数が足りなかった。ミサイルの爆裂が桜子の巨体を揺らす。

 溢れ出す血と迸る激痛。
「負けねぇっ!!」
 流れ出そうになる涙を、桜子は叫びと共に抑え込む。
 キャバリアの脚をむんずと掴み、横に薙ぐ。鉄と鉄が激しくぶつかり合い、不快な音が荒野に響く。
 振り抜かれたキャバリアはそのまま投げ飛ばされて空を飛翔し――衛星“殲禍炎剣(ホーリーグレイル)”によって撃ち抜かれた。

「暴れん坊には手痛いお仕置きだぁ! さあ、覚悟すんべぇ!」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ティー・アラベリア

奉仕人形ティー・アラベリア、ご用命に従い参上いたしました
地を圧する砲声、いつ聞いてもゾクゾクしてしまいますね♪
対砲迫戦であればお任せくださいませ☆

魔導波探信儀と防空探信儀をフル稼働させ、敵位置と敵弾を捕捉・追尾を実施
脅威となりそうな攻撃に絞って95式の誘導弾と近接防御妖精の弾幕を用いて迎撃
敵砲列に対して92式の砲撃によって圧迫を加えつつ、探信儀でつかんだ敵の位置情報から着弾観測と指揮統制を実施している機体を特定し90式で狙撃
火勢域に穴ができた時点であらかじめ展開していた同化妖精を活性化
擱座した敵機の操縦系統を同化し同士討させ、混乱に乗じて敵砲列に突入
97式と零式を用いた白兵戦で制圧致します



 寒々しい荒野が爆ぜる。
 幾重にも重なった砲声が大地を揺るがし、鋼の塊どもがその上で踊る。
 乾いた土と、油、硝煙の香りで満たされたそこは、戦場だ。

「――奉仕人形ティー・アラベリア、ご用命に従い参上いたしました」

 その戦場に、メイドがいた。ティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)だ。
 場違いなほどに礼儀正しいカーテシーは、一体誰に向けられたものなのか。
 一見して楚々として美しい彼だが、砲声が轟くたびにその表情は次第に恍惚としたものへと変わっていく。

「ああ……。地を圧する砲声、いつ聞いてもゾクゾクしてしまいますね♪」
 いわく、大砲は戦場の女神、戦場の王。その咆哮を聞くだけでティーは興奮を隠しきれない。
「迷子の捜索から戦地での索敵、お子様との雪合戦から対砲迫戦まで。このティー・アラベリアにお任せくださいませ☆」

 言葉に反応するように、ティーの周囲に浮いていた魔杖が敵陣へと向けて構えられる。
 彼の視線は、敵の居場所などすでに探知したと言わんばかりに真っ直ぐ一点へ向かっていた。
「砲兵の分散配置と有機的な集中砲撃、実に素晴らしいです。配置転換もあって、地上標定、音源標定は共に困難でしょう」
 ですが、とティーは付け加える。
「ご安心ください。特殊な魔導波の発振により、すでに敵の位置情報と射線の把握は済んでおります」

 敵の位置。そこから放たれる砲撃。戦場の気象条件。味方の位置。それらの情報から、ティーは敵に優先順位をラベリングしていく。
 砲門には――火力には限りがある。離れた敵を同時に撃破するわけにはいかない。限られた火力を集中運用して各個撃破を狙うのが、今回自分のこなすべき役割だ。
 ゆえに、より戦術的に優位な場所に配置された、脅威となる敵の撃滅。それが最も優先される。

 ふと、ティーが空を見上げる。
「優秀なFCSをお持ちのようで」
 言葉と同時に、滞空していた魔杖と人工妖精が魔力弾を放射した。
 魔杖から放たれた誘導性の高速弾が向かう先は、今まさにこちらへ迫らんとする砲弾だ。空中で激突したそれは、目標へ届く前に爆発してしまう。

「では、こちらの手番ということで」
 諸元入力。砲撃。
 甲高い音を立てながら、魔杖から次々と魔力弾が投射されていく。放物線を描いて向かう先は、当然ファイア・リグオンたちが陣取る位置だ。
 敵を殺すための正確な狙撃ではなく、敵をその場に留めて攻撃させないための広範囲に渡る制圧的な砲撃。そして――

「――ファイア」
 足を止めた敵の狙撃。
 ティーが構えた魔杖から放たれたレーザー状の高出力魔力砲がファイア・リグオンの一体に命中。撃破する。
「……狙撃成功。やはりあれが指揮統制機だったようですね」
 反撃の手がすぐに出てこないということは、あの機体が隊の“頭”だったのだろう。

 魔杖を持ち替え、ティーは前線へと歩み行く。
 戦場――ティーの狙撃した敵陣では、ファイア・リグオンたちで同士討ちが始まっていた。破壊したファイア・リグオンの一機を、彼が展開していた浸食同化妖精が乗っ取ったのだろう。
「それでは、傀儡劇を始めましょう」
 人形による人形劇。敵同士が争い、傀儡の増えていくその白兵戦の渦中へと、ティーもまた身を投じるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

牙・虎鉄

(瞑目しつつ戦場を駆ける。)

《カカ、鉄火場だなア小僧!!最初は好きにやるが良い、赦す》
……言われずともそうする。

(銃口が狙う気配。殺気。)
征くぞ。

(索敵と野生の勘で見切りつつ、"シャンユエ"の装甲を瞬間的に足に具象、爆発的加速で砲火を凌ぐ。【操縦×肉体改造】)

(肉薄、右腕に機甲着装。
虎爪にて脚を抉り飛ばす。
体勢を崩した機体の装甲を足蹴にし跳躍、別機へ飛び肘打。

着地と同時に脚部機甲展開、着装、蹴脚にて別機一蹴。
……背後に敵の気配。)

――温い。
("シャンユエ"機甲完全顕現――鉄山靠にて撃滅。)

《カカ、弾頼りの愚者共には負けてられるよなア、良かろう ――だがまだまだだな》
……言っていろ。



 荒野の戦場を一人の男が駆けている。牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)だ。

《カカ、鉄火場だなア、小僧!! 最初は好きにやるが良い、赦す!》
 影、“シャンユエ”の言葉に、虎鉄は瞑目しながらも不愉快そうに顔をしかめる。

「……言われずともそうする」
 並び立つ者でもなしに横から口出しされるのは、一介の武人として許容できない。
 ここは戦場で、今そこに立っているのは虎鉄なのだ。この生身にて機甲どもを相手取り、打倒する。それこそが彼の目的であるがゆえに。

 背筋を撫でられるかのような感覚と共に去来する予感。貫くようにこちらへ向けられた殺気。銃口の向けられた気配。
「――征くぞ」
 合図と共に虎鉄の脚部を“シャンユエ”の装甲が鎧う。
 爆発的加速。およそ常人ならざる加速力で虎鉄が荒野を駆け抜けた。直後、彼のいた場所に爆煙が立ち昇る。キャノン砲が着弾したのだ。

《次だ、来るぞ》
「わかっている」
 “シャンユエ”の言葉に短く返しながら、進行方向を直線から斜めへと変える。乱射されるガトリングガンの弾幕を横に避けて――跳躍。急激な方向転換と共に敵へと肉薄する。

 機甲装着。両脚に代わって“シャンユエ”の装甲が虎鉄の右腕を覆う。
「オオ――ッ!」 
 雄叫びと共に振るわれる右腕。虎のごとく鋭利な爪が、キャバリアの脚を抉り飛ばす。体勢を崩すファイア・リグオン。それを足場に、再び虎鉄は跳躍。向かった先のキャバリアへと肘打ちを叩き落とす。

 一瞬で二機が地に這わされたとなれば、その僚機とて尋常ではいられなくなる。敵が生身の人間であれば尚更だろう。まるでトンファーのようにガトリングガンでの殴打が振られるも、再び“シャンユエ”の装甲に覆われた脚によって迎え撃たれる。
 生身の人間とキャバリア。馬力の優劣がどちらにあるのかなど愚問だろう。この世界の戦う人間はみんな勝つためにキャバリアに乗っている。
 生身の人間はキャバリアに勝てない。そのはずだ。

 だが、目の前の光景はどうだろうか?
 振り抜かれた虎鉄の脚。ガトリングガンごと千切れ飛んだファイア・リグオンの右腕。逆転してしまったかのような結果になってしまっている。

 “シャンユエ”の機甲が完全に虎鉄の全身を鎧う。
「――ぬるい」
 振り返りざまに放たれた鉄山靠が、背後より迫っていた敵を吹き飛ばす。

《カカ、弾頼りの愚物共には負けてられんよなア、良かろう》
 全身を鎧う装甲が解け、影から“シャンユエ”の愉快げな声が響く。
《――だが、まだまだだな。敵に背を取られ、機甲を完全顕現してようやく対処など、貴様の未熟さが浮き彫りになった一戦だ》
 装甲に覆われていない生身の右腕を見下ろしながら、虎鉄は呟きを返す。

「……言っていろ」

成功 🔵​🔵​🔴​

アルナスル・アミューレンス
並のキャバリアとか、軍の下の方のヒトは大変だねぇ。
偉いの(アタマ)がイカレたら、雪崩れるように巻き込まれちゃうんだからさぁ。
その辺、同情だけはするよ。

でも、遠慮はしないけどね。
遠慮なく『氾濫(オソウ)』よ。

とりあえず、生身で行くよ。
戦闘知識や第六感を生かして射線を見切り、ダッシュで突っ込みましょうか。
まぁ、直撃しようが爆風に巻き込まれようが構わないけどね。

――拘束制御術式、限定解除

影の様な不定形の異形に体を変化させ、津波の様に嵐の様に襲い掛かるよ。
撃たれようが爆ぜようがその端から再生し、怪力でキャバリアを引き裂いて捕食し尽くすよ。
嗚呼、君らは犬の肉(エサ)だ。



まあ、今日はヒトを喰わないけどね。



 組織の中でも下位の人間は大変だ。組織の規模が大きくなるほど、より上位の人間に振り回されやすい。
 目の前のファイア・リグオンたちがまさにそれだ。上層部(アタマ)がイカれてしまえば、雪崩れるように巻き込まれてしまう。

「……同情だけはするよ」
 アルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)は溜息とともに呟く。
 少し大きめの拠点(ベース)で、トップが偏執狂(パラノイア)をこじらせて破滅に向かったり、あるいは現実の見えていない意思決定でオブリビオンどもの餌になったり……。そんな話は嫌というほど聞いてきたし、見てきた。

「ああ、同情はするさ。遠慮はしないけどね」
 アルナスルは砲煙弾雨の荒野を征く。
 キャバリアなど大それたものは必要ない。彼は過酷な環境の中で頼るべきが、己の肉体と知識、そして経験であることを知っている。

 荒野であっても、射線を防げる岩場や斜面などいくらでもある。そういったものを利用しながら、敵に勘付かれないように素早く、慎重に接近していく。
「……まぁ、直撃しようが爆風に巻き込まれようが構わないけどね」
 多少雑に動いたところで、自分がそれで死んでしまうほどヤワではないことは知っている。しかしそれでも痛いものは痛い。
 たとえば今のように。接近したファイア・リグオンに気付かれ、普通の人間が直撃すれば肉片しか残らないようなガトリングガンで迎え撃たれた時なんかは。

「――――ッ…………」
 本当に、痛みに身を焼かれそうになる。
 だが、本当に痛いのは――機銃で蜂の巣にしたはずが、五体満足のまま立っている自分を怪物を見るような目で見る敵の視線だ。

「……まあ、サンカクってところかな」
 人にして人に非ず、化物にして化物に非ず。

 ――拘束制御術式、限定解除

 アルナスルの身体が黒く染まり、夜の海のように波打つ。
 人間の姿をしていたものが、影のように不定形な異形へと変貌する。

 悲鳴を上げるように、再びガトリングガンが銃声を轟かせた。秒間何百発もの銃弾を叩き込まれて、しかしその異形は堪えた様子すら見せない。ミサイルや砲弾を撃ち放とうとも、その端から再生していく。
 
            エサ
『――ああ、君らは犬の 肉 だ』

 影が津波となってキャバリアへと襲いかかる。影がキャバリアへと取り付いて、端から鋼鉄を引き剥がし、引き裂いていく。まるで捕食するかのように。

 化物のなかから、何かが吐き出される。荒野の上に排出されたそれは、うめき声を上げながら地面の上を転がった。ファイア・リグオンのパイロットだ。

『まあ、今日はヒトを喰わないけどね』

成功 🔵​🔵​🔴​

天城原・陽
二番機も三番機も居ない…私一人でやれるのかしら…否、やらなきゃならないのよ天城原陽…その為に私は此処に居る
(低軌道輸送機にて戦地へ輸送される赤雷号の操縦席の中で自己暗示めいた鼓舞を行う)
『私は 強い 可愛い 天才』

「良し…いいわよ!エントリー!!」
(輸送機から切り離され自由落下する自機を空中で制御しつつ【オーラ防御】と【推力移動】で弾幕を掻い潜りつつ狙撃砲に装填。爆薬と散弾を撒き散らす徹甲榴散弾を発射。集団の出鼻を挫き、脚を止める。同時にブースターを吹かし狙撃砲のモードチェンジを行いつつ着地。足を止めた敵に狙いを定め)
「動くんじゃないわよ!当たり所が悪くても知らないから!!」
(加粒子砲発射)



 低軌道輸送機で戦地に輸送されるのは、いつだって緊張するものだ。
 いつもは任務を共にする僚機がいないとなれば、尚更に。天城原・陽(陽光・f31019)は輸送される生体決戦兵器“赤雷号”のコックピットの中で吐息する。

  2番機   3番機
「 “灰風号” も “黄昏号” も居ない……私一人でやれるのかしら……」

 脳裏に浮かぶのは、二人の幼馴染の顔だ。彼の笑い声はいつも緊張をほぐしてくれたし、彼女の援護はいつだって窮地を救ってくれた。

『あっはっは! 心配性だなぁ、ギバちゃんは!』
『陽なら大丈夫でしょ、これぐらい』

 今はここにいないはずの二人の声が、どこかから聞こえてきた気がした。
「……いいえ、“やれるのか”じゃなくて、“やらなきゃ”よね。天城原陽」
 緊張のほぐれた口元が、緩い笑みを形作る。

「私は、強い 可愛い 天才!」
 己を鼓舞する言葉と共に、陽は操縦桿を握る。

「良し。――いいわよ、エントリー!!」

 直後、輸送機から“赤雷号”が切り離された。
 自由落下の浮遊感の中で“赤雷号”は二十二式多目的狙撃砲を地上に向ける。
 空挺降下中射撃。空中の中で狙撃砲が火を噴き、装填された徹甲榴散弾が地上に爆薬と散弾を撒き散らす。
 岩場に隠れていようが、文字通り頭上を取った“赤雷号”からは隠れていないのと同じことだ。

「ここまではよし――」
 敵小隊に打撃を加え、混乱させる。“ご挨拶”としては上々だろう。
 だが、戦場には他の敵もいる。
 けたたましいアラート。空挺降下中の“赤雷号”目がけて放たれたのは、誘導性のミサイルだ。
 肩部と背部に装備されたブースターユニットが火を噴き、空中での姿勢制御を補助する。次の銃口の向かう先は、件のミサイルだ。

「私なら、できるッ!」
 発射。ミサイルが徹甲榴散弾に撃ち抜かれ、空中で爆発する。
 爆風が“赤雷号”を揺らすが、大したことはない。狙撃砲を変形させながら空中姿勢制御を行い、着地する。

「さあ、動くんじゃないわよ!」
 バチバチと電気を帯びた銃口が、ファイア・リグオン群へと向けられる。
 そこから放たれるのは、一条の加粒子砲だ。

「――当たり所が悪くても知らないから!!」

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト

セフィリカ(f00633)と協働
キャバリアを借りてくるという話
では時間稼ぎ兼ねて働いておくか

天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオンマシン及びその全行動
搭乗者は除く
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める

見えず触れ得ずとも虜囚
囚われたものは外界へ何も出来ぬ故、必然搭乗者への影響も切れる
機体が勝手に駆動しようと攻撃手段含め自壊し続けまともには動かん

外から内へは全て自由
放っておけばセフィリカが叩くだろう

迷宮は『再帰』で無限循環させ無数に重ねて強度と自壊速度を最大化
出口は自身へ設定
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給


セフィリカ・ランブレイ

アルトリウス君(f01410)と

『セリカ、融通の効く機体作ったら?』

相棒の魔剣、シェル姉の小言を聴きつつ作業

愛機は戦闘力極振り稼働時間6分、
出撃後の総メンテ不可避仕様。この状況には合わない
故、ファイア・リグオンを借り、自分用に調整
私もメカニックとして機体弄りは慣れたもの
足回りの強化を重点的に行い、乱戦に対応

彼もキャバリア、乗ってみたらいいのに
『乗れる機体を作る所からの気がするけどね』
一理ある。彼が先行してるこの区域ほぼ無力化されてて私の仕事もうないな…?

いや。死人なしで壊すのが私の仕事ね。彼、手加減って言葉と無縁だもんね…
【火雷ノ禊】の技術を応用して、的確に部位破壊

よし、この調子で行こう!



 軍隊は腐っても軍隊だ。
 トップがオブリビオンマシンの影響を受けようとも、その戦術や作戦から合理性は喪われない。行軍中のセオリーは変わらず守られている。

「いたか」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が崖の上から見下ろすのは、本隊から離れて別働隊として移動するファイア・リグオン隊だ。
 
 対砲迫戦であれば、砲撃戦能力に特化したファイア・リグオンを分散配置するはず――などという戦術上の推理推測は一切していない。
 敵がここにいるとわかっていた。ゆえにここに来た。彼にとってはそれだけだった。

「惑え」
 漂う淡青の光が明滅する。それと同時に、戦場に青白い迷宮が形成されて、ファイア・リグオンの別働隊が囚われる。

「ねえ、ちょっと早くない?」
 エルフの女、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)が借り物のファイア・リグオンをいじりながら問いかける。
「問題ない。原理で編まれた論理の牢獄からは逃れられないだろう」
 見下ろす青白の迷路では、実際ファイア・リグオンたちが迷路の壁を壊そうとしているが、火器も機体も思うように動かないようでいる。

「そうじゃなくて。あの中にいると壊れていっちゃうんでしょ?」
「中身の人間は対象から外している」
「……ホントかなぁ」
 ことアルトリウスほど、手加減という言葉の似合わない男もいない。加減しているとしても、セフィリカが思わず疑ってしまうのも無理はない話だ。

「ていうか、よかったの? 本隊叩かなくて。あっちの方が多かったのに」
 ファイア・リグオンの足回りを調整しながら問いかけたセフィリカに、アルトリウスはしばしの沈黙を返す。
「…………以前、対集団戦で今回のように天楼を使った」
「そしたら?」
「“獲物を横取りするな”と言われた」
「あー……」

 さもありなん。戦果の独占は、依頼の私有化に等しい。
 よし戦うぞと戦場に向かってみたら、敵がみんな一人で殲滅されていれば拍子抜けするか怒るかのどちらかか、あるいは両方だろう。

「それより、改造の方はどうだ?」
「あ、そろそろ時間? ちょっと待ってね、あとはここだけ……よしっ!」
 レンチでボルトを締めて、セフィリカは立ち上がる。軽い身のこなしでファイア・リグオンの装甲をよじ登ってコックピットに搭乗すると、ファイア・リグオンが立ち上がった。

「……うん、システムオールグリーン。大丈夫そう」
「そうか。気を付けろ」
 それは敵に気を付けろなのか、それともあの原理の迷宮で壊されないように気を付けろなのか。セフィリカには怖くて聞けなかった。
 
「任せたぞ」
「任された!」
 ファイア・リグオンが崖の上から迷宮へと落下する。吸い込まれるようにして、青白い牢獄へとセフィリカは突入して行った。

「さて、と。敵はどこにいるのやら……」
『もう少し融通の効く機体を作れば良いのに。少なくとも、今みたいに索敵で苦労することはなくなると思うけど』
 辺りを見回していると、相棒の魔剣シェルファが呟いた。

「“スプレンディア”以外に? うーん……まあ、考えとく」
 実際、彼女の所有するサイキックキャバリア“スプレンディア”は戦闘力こそ極めて高いものの、稼働時間は6分と短く、また出撃後にはオーバーホールの必要がある。かなり融通が効かない機体だ。
『考えとくだけじゃない』
「愛着があるの、愛着が。一人で二機所有するのもちょっと贅沢な話だしね」
 仮にもう一機所有したとして、序盤・中盤でその機体で戦った後に“スプレンディア”で戦えば、損傷の修復を含めて整備量は単純に2倍だ。いくらセフィリカとはいえ、作業量的にやってられないだろう。

「……あ、そうだ。アルトリウス君もキャバリアに乗ってみたらいいんじゃない?」
『まず必要があるのかどうか。次に彼の乗れる機体があるのか、作れるのかってところからじゃない?』
「…………」
 ぐうの音も出なかった。エルフが魔剣に言い負かされた瞬間である。

 シェルファとそんなやり取りをしながら迷宮を進んでいくと、索敵レーダーに反応を検知した。
 角を曲がり、キャノン砲を向けるが――そこにいたのは、倒れ伏した敵のファイア・リグオンだ。すでにだいぶ自壊が進んでいて、回路がショートしているのか壊れた端々から電気が迸っている。

「……ほぼ無力化されてて私の仕事もうないな……?」
『良かったわね、本隊を狙わなくて』
「乱戦想定で足回り強化してた私はなんだったのよぉ……」
『この後もどうせ敵と戦うんだから、活かすならそっちで活かせば良いじゃない。ほら、さっさと救助する』

 魔剣にせっつかれながら、セフィリカはガトリング砲を剣のように振るう。
 一閃。まるでブレードによって両断されたかのように、敵キャバリアが裂ける。コックピットの切断面から出てきたのは、パイロットだ。
「一人目救助っと……。よし、この調子でいこう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玉響・飛桜

こっちだって数の有利で戦えるでござる!
…でもユーベルコードの有効範囲まで近寄らなきゃ厳しいでござる…
おお、広報殿!支援ありがたいでござる!
広報殿を弾除けにしながら奴らまで近寄れれば勝ち筋が見えるでござる!!
がんばれ広報殿ー!(女の子を平然と弾除けにするクズ忍者並の感想)
よーしここまでくればもう大丈夫!
トランペッター!行進曲(マーチ)演奏開始!
2番機軒猿《イーヴスモンキー》
3番機三ツ者《サードマン》
5番機奪口《マウススティール》
上記3機を敵密集地に展開!
近接武器でずんばらりんでござる!
こっちの分身は壊れても痛くも痒くもないでござるが同士討ちは痛いでござるよなあ、ハッハッハ!


クリームヒルト・クルスクロイツ
【騎士と忍者】

あっはっは、お困りかな、玉響君!
生徒会広報、そう、ボクだ!
鈍重な砲撃型が隊列を組んで銃火を放つ……得意分野だとも!

突破口を開く!剣と盾を構えて全力突進だ。弾雨は切り払い、盾で弾く。勿論、弾けるのなんて一部だから大部分は喰らうことになるが……その辺りは、セントールの装甲を舐めるなよ、ってね!
弾丸を引き受けながら敵まで肉薄すれば……あとは、タックルで隊列を崩してやろうか!

さあ、到着だよお客様。お代は後で請求させてもらうねっ!
……ここまで来たら、あとはトランペッターに任せて、ボクは余裕を持ってタックル&アウェイで戦線をかき乱そうかな。適材適所、ってね!



「はてさて、どうしたもんでござろうか……」
 戦場から一歩引いた地点で、玉響・飛桜(カゲロウ・f30674)は思い悩むように前線を眺めていた。

「こちらも数を揃えて戦えはするものの、ユーベルコードでは有効範囲が限られる。さりとて、敵を範囲に収めようともそこはすでに敵の射程距離……。難しい話でござる……こういう時どうすればよいのでござったか……」
 戦術教本の内容を思い出そうとするものの、うろ覚え過ぎて使い物になりやしない。

「こういう時、上級生殿たちがいてくれれば……」
 たとえば、銃火器が使えなくて格闘戦を挑みに行く連中だとか。そもそもアウトレンジから前線ごと吹き飛ばす広範囲殲滅砲をぶっ放す連中だとか。機体の損傷を顧みずに戦う連中だとか。およそ尋常じゃない機動力で全部黙らせて敵を鏖殺していく連中だとか。
「……さては拙者と戦術が噛み合う上級生殿がいないのでは?」

「いるさ、ここに一人ね!」
「そ、その陽気な声は!」
「生徒会広報! そう、ボクだ!」
 飛桜が振り返った先、声の主はジャイアントキャバリア“セントール”、それに搭乗したクリームヒルト・クルスクロイツ(エッヘ・ウーシュカ・f30673)だ。

「広報殿、援軍かたじけのうござる!」
「ふっふっふ。敵は砲撃型だけみたいだからね。昔から砲兵をやっつけるのは騎兵の役割……って戦史の教科書に書いてあったし、ボクの得意分野だよ!」
 “セントール”は名前の通り半人半馬のキャバリアだ。その機動力と突破力は従来の人型キャバリアよりも数段高い。

「突破口を開く! さあ、付いて来て!」
 携えた剣と盾を構え、“セントール”はリズミカルな馬蹄の音と共に駆け出す。
 荒野を駆ける騎兵を出迎えるのは砲煙弾雨だ。飛来する誘導ミサイルを切り捨て、キャノン砲ロケットバズーカを持ち前の機動力で躱し、ガトリングガンを盾で受ける。

「“セントール”の装甲を舐めるなよ! 車は急には止まれない、ってね!」
 突撃(チャージング)。
 “セントール”の分厚い装甲と巨大な質量が敵陣を大きく崩す。

「さあ、到着だよお客様。お代は後でウチの会計から請求させてねもらうね!」
「うぇっ、運賃取るのでござるか!?」
「冗談冗談」
 からからと笑うクリームヒルト。“セントール”の背にしがみついていた守銭奴こと飛桜は、ほっと安堵の吐息を漏らしながら飛び降りる。

「――“トランペッター”!」
 呼び声と共に、一陣の風が吹く。そこから現れたのは、忍者のような造形をした一機軒猿のサイキックキャバリア“トランペッター”だ。

  マーチ      イーヴスモンキー サードマン  マウススティール
「 行進曲 演奏開始! “軒猿”! “三ツ者”! “奪口”!」

 “トランペッター”の姿がブレたかと思えば、その陰から現れたのは影分身もかくやの同型3機だ。前線へと向かうと、とてもキャバリアとは思えない軽い身のこなしで3機は忍者刀で敵へと白兵戦を挑みかかる。
「こっちの分身は壊れても痛くも痒くもないでござるが、近接戦では自慢の重火器も同士討ちが怖くて使えぬでござろう! ハッハッハ!」

「よーし、あとは適材適所だ! ボクがタックル&アウェイで戦線をかき乱す!」
「拙者が白兵戦で乱れたところを叩くでござる!」
 まるで事前に作戦を立てていたかのような巧みな連携で、“トランペッター”と“セントール”は敵の攻め手を潰し、次々にファイア・リグオンを撃破していく。

「……ところでこれ、鹵獲したらそこそこ良い額になるのではござろうか」
「鹵獲はいいケド、ボクの“セントール”は運ばないからね?」
「そ、そんな! そこをなんとか!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート

貸し出しはいらねぇ
悠長に調整する時間も無いし、絶対の自信がある装備品以外はリスクがある
それに──的は小さい方がいいだろ?
被弾?確かにキャバリアサイズじゃ直撃しただけで死ぬがな
鼻先の『死』と踊るのは、俺にとって『いつも通り』だよ

セット、『Reflect』
放たれた弾丸、砲弾を障壁で反射し身を護る
同時に跳弾を繰り返し、自分のコントロール下に置いて軌道を自在に変えながら、奴らに還す
かなりの大混乱で、しかも火力は大きく落ち…ユーベルコードは封じられる
後は簡単、【ハッキング】でメインシステムを落とし、武装をロック
パイロットを生かしつつ、これで無力化できる

今回のダンスも、先にヘバったのは『死』の方だったな



 強さはシンプルであればあるほど良い。
 複雑な強さには必ず間隙が生まれる。セキュリティホールのように空いたその間隙は複雑であるがゆえに埋めづらく、後戻りもできない。そして、間隙を突かれた瞬間にそれは強さではなく弱さへと変貌してしまう。

 下層民(ストリート)のロクでなしも、いけすかない企業(コーポ)の野郎どもも、そのこを弁えているやつは強かった。それがわかっていない弱い馬鹿は死んでいるのだから当然の話だが。

「装甲も射程も火力もある。一人で大砲を持ち運んでるようなものと思えばまあ強ぇだろうな」
 生身のまま、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は荒野を歩む。彼の展開する仮想ウィンドウには、すでにファイア・リグオンのカタログスペックや敵の配置が映し出されていた。
 そしてマップ上に映し出される自分の現在位置は、当然のように最も敵の多い場所。

「だけどよ、お前らの強さはちょっとばかし“複雑”過ぎるな」
 敵が銃口を向けて来ている。電脳ゴーグルが警告するも、ヴィクティムはその通知を切ってしまう。悠然と前へ歩み出ながら、彼はファイア・リグオンたちがいる場所へと手を伸ばす。
「かかって来いよ。わかりやすく負かしてやる」
 遠くからでも、わかりやすいように。彼の右手は挑発的な手招きを寄越した。

 本来であれば生身一体、どうとでもなるとファイア・リグオンたちは判断しただろう。だが、今回の敵はおよそ尋常ではないことを彼らは気付き始めていた。
 ゆえに、彼らは火力を叩き込む。誘導性ミサイル、ロケットバズーカ、ガトリングガン。それらをヴィクティムへと向けて――

「セット、“Reflect”」
 ヴィクティムを蹂躙するはずだったミサイルも、ロケットも、銃弾の雨も、全てが弾かれた。ついさっきまで荒野に転がっていたはずの岩によって。
 弾かれた弾丸は跳弾し、浮遊する次の岩に弾かれて、またそれを繰り返し続ける。その様はまるで、ファイア・リグオンたちの弾薬を全て吸い込んでいるかのようだ。

「お前たちのもんだろ? どれが誰のだったかは忘れちまったが、返すぜ」
 言葉の直後、岩と岩の間で跳弾されていたはずの銃弾が弾幕となって返って来た。
 跳弾に次ぐ跳弾で威力は減じているものの、それでもなおガトリングガンの火力は馬鹿にならない。あっと言う間に敵陣は混乱の渦に飲み込まれてしまう。
「おいおい、鼻先の死と踊るのは初めてか? “死者と踊るの(ダンス・マカブル)”は戦争稼業の嗜みだろ」

 不敵な笑みと共にヴィクティムが仮想キーボードのエンターキーを押下する。と同時に、ファイア・リグオンたちが次々に地に膝を付いて倒れ伏し始めた。
「――機械に頼った複雑な強さってのは、セキュリティをしっかりしとかないとハッキングで一発だぜ」
 メインシステムがダウンし、武装がロックされたファイア・リグオン群へと歩きながら彼が指を鳴らすと、キャバリアのコックピットハッチが開く。
 その中の一つを覗き込めば、そこには五体満足のパイロットがいた。生存を確認すると、ヴィクティムはまた荒野を歩き始める。

「……なんだよ。今回のダンスも先にヘバっちまったのは“死”の方か」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御門・白
◎●

有史以前から、数は偉大。数は力。
さて、厄介ですね。旧式とて数を揃え、砲撃に徹するならばそれだけで脅威に値する
一騎当千、なんていうものは早々に実現しない

―――……その理不尽を為すがあやかし

傷を負うことを恐れないように、ツクヨミを駆り【切り込み】、舞うように移動しながら格闘戦の【暴力】で沈めていく
多少掠めても足は止めない
あなたは、再生するものね?(継戦能力)


……でもさすがにこれだけ居るなら、もう少し乱暴にしましょうか

生ずるは嵐。漆黒の禍津風
素早く懐に飛び込んで、風と雷で吹き飛ばし
大筒の照準など赦すつもりもなし
浪の矢を飛ばして打ち砕く

暴風は、やりすごすもの
半端な抵抗は選択ミス、でしたね?



 荒野にぽつんと黒があった。
 女性的な曲線。まるで喪服のように黒いキャバリアの名を、“ツクヨミ”と言った。

「有史以前より、数は偉大。数は力――」
 水面の異界から“ツクヨミ”の瞳を通じて、御門・白(月魄・f30384)は敵軍を見遣る。
「さて、厄介ですね……。旧式とはいえ、数を揃えて砲撃に徹するならばそれだけで脅威に値する」
 敵は五機からなる一個小隊。普通のキャバリアではまともな勝負にすらならない戦力差である。数とは力であり、より少きを圧し潰す。
 一機が五機に勝てる道理など無い。弾幕を張られてしまえば、もうそれだけで身動きが取れない。

「『一騎当千、なんていうものは早々に実現しない』」
 さて、これは誰の言葉だったか。
 故郷の誰かだったかもしれないし、あるいは学園の誰かだったかもしれない。もしかすれば、自分のだったか。
 数の道理を前にして、それを覆そうとするのは道理に反する。まったく理屈も筋も通ってない、理不尽な話だ。

「――……その理不尽を為すがあやかし」

 身を沈め、次の瞬間には“ツクヨミ”は駆け出していた。
 余人がそれを見れば蛮勇と呼んだに違いない。傷も恐れず敵陣へと切り込んでいく姿は、蜘蛛の巣へ飛んで行く蝶の舞いに等しい。

 ファイア・リグオンが膝立ちの状態へと移行する。砲撃形態だ。
 ショルダーキャノンを正確に“ツクヨミ”へと照準。――砲撃。
 キャノン砲はミサイルと違って非誘導性の実体弾だが、その弾速と射程距離は素晴らしいものだ。胸部に当たれば、分厚いコックピットの装甲さえも貫いてくれるだろう。

「逆を言えば、『必殺の威力を持っているのだから急所を狙いたい』とあなたたちは考える」
 舞い踊るかのようなステップ。“ツクヨミ”が半身になって反らしたコックピットのすぐ眼前を砲弾が掠めていく。
「一つ」
 躱した先へ、置くように次のキャノンが撃ち込まれる。急制動、急旋回。砲弾の爆裂音が“ツクヨミ”の背から聞こえて来る。
「二つ」
 続けざまに3発。狙いもへったくれもない、横一文に並べられた砲撃。生半な回避では逃げ切れないそれを、“ツクヨミ”は跳躍して回避する。
「三つ、四つ、五つ。――さあ、それではこちらの番ですね」

 またたく間に眼前へと肉薄していた“ツクヨミ”を見て、ファイア・リグオンたちが慌てて機銃で応戦しようとするも――遅い。
 機銃の弾幕をその身で受けながら、“ツクヨミ”はその優美な外見からは想像もつかない乱暴な蹴りを放つ。
 鋼と鋼が打ち合う音と共に、ファイア・リグオンの一機が地に倒れる。

 からんからん、と音を立ててファイア・リグオンの装甲に落ちたのは、“ツクヨミ”に命中したはずの弾丸だった。見れば、“ツクヨミ”に当たったはずの銃痕が、みるみる内に塞がっていくではないか。
 怪物。“ツクヨミ”を取り巻くファイア・リグオンたちが畏怖したように一歩後退る。

「……少し、数が多いですね。これだけ居るなら、もう少し乱暴にしましょうか」
 白の呟きと共に、空気がざわめいた。一陣の風と共に、嵐のような強風が“ツクヨミ”を覆い、その風は次第に漆黒の禍津風へと変化していく。
 ファイア・リグオンたちの本能が警告するよりも先に、“ツクヨミ”は動いた。

 暴風と共に肉薄したかと思えば、つむじ風と共に雷撃を叩き込んで吹き飛ばし、あるいはこちらを狙ったキャノン砲は“ツクヨミ”に放たれた水流の矢によって撃ち抜かれてしまう。
 風が襲い、雷撃が灼き、水矢が砕く。一機たりとも逃げる間もなく――ファイア・リグオンの部隊はたった一機のキャバリアによって制圧されてしまった。

「暴風は、やりすごすもの。天変地異に半端な抵抗は選択ミス、でしたね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『Coyote』

POW   :    RS-A『散弾砲』 / RX『ナイフ』
【至近からの散弾】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ナイフ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    RS『短機関銃』 / RS-S『ミサイルポッド』
敵より【ダッシュなどで高機動状態の】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    『Coyote』
【他のCoyote】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[他のCoyote]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 荒野の戦場にて、行進中だった重装甲砲撃戦に特化したキャバリア、ファイア・リグオンの全部隊はその尽くが猟兵たちの力によって無力化された。
 敵味方に犠牲を一人たりとも出すことのない、まさに快挙と言えるほどの大戦果である。

 その大戦果をまざまざと見せつけられれば、正常な思考を持つ者であれば撤退を考えるだろう。
 だが、およそオブリビオンマシンの支配下に置かれてしまったこの軍隊に正常な思考はありえない。

 彼らの考えることはただ一つ。
 犠牲になったファイア・リグオンどもを、いかにして勝利の道へ活用できるかだ。

 そして、彼らの結論は今まさに、猟兵たちの前で姿を現す。

 君たちを包囲するように現れたのは、痩躯のキャバリア、Coyoteだ。
 安価で生産性に優れ、機動力があるが火力と装甲に乏しい、数合わせの量産機。大量に配備されたそれらが、包囲網を形成していた。

 息をつく暇もなく包囲されてしまった猟兵は一体どう対処するのか。
 包囲の外から援軍は来るのか。

 そして、数を頼みに襲いかかるCoyoteの群れを、君はどう撃滅するだろうか。
朱鷺透・小枝子
◎捨て石となるのも厭わないか、
だが、己の意志なき進軍に、名誉等あるものかッ!

『劫火絢爛武闘』壊せ!ディスポーザブル!!
引き続き01操縦、分身を召喚し、前後へ向けてパルスアトラクター
電磁パルスの衝撃波マヒ攻撃で弾丸を吹き飛ばし、敵の動きを一時停止

分身増殖、分身がプレスブロウを発射、自身は敵陣目掛けて走る。
分身達増殖、分身がホーミングレーザー射撃で敵を抑え
自身はクローで敵を引き裂く。

増殖、数体が周囲のキャバリア残骸からコックピットを回収し守る。小枝子は持ち前の瞬間思考力と機体の継戦能力で時間稼ぎ。

増殖、半数が小枝子と共に敵と接近戦を行い始める。
増殖、破壊される。増殖、破壊する。増殖、戦い続ける。



 最後の一機になったファイア・リグオンの頭部を握り潰す。
 “ディスポーザブル01”に搭乗した朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)が周囲を見渡すと、いつの間にかにぐるりとCoyoteたちがこちらを取り囲んでいた。

  Disposable
「 捨 て 石 となるのも厭わない、か……」
 今しがた握り潰したファイア・リグオンの頭部を、“ディスポーザブル01”は見下ろす。

 自分も敵も、同じ“消耗品”だ。なのに自分は生きていて、敵は壊されてしまった。性能差や時の運で説明を片付けてしまうのは簡単だろう。
 だが、自分たちの“在り方”は間違いなく同じはずなのだ。なのに、自分たちは同じようにならない。

 一つだけ違う点があるとするならば、それは戦場に立つ理由だろう。
「――己の意志なき進軍に、名誉などあるものかッ!」
 彼らは操られていて、小枝子は自分の意思でこの地に立っている。

 自分たちは一山いくらの雑兵だ。使い捨てだ。だが、それでも自分たちの胸には名誉があった。名誉を胸に、戦場へと出撃していた。
 守るべき者たちに知られず、指揮官には書類上で数字として扱われる身であっても、それだけは許されていた。名誉と誇りがなくなれば、もう何も無いような兵士などいくらでもいた。
 そんな自分たちから、残された名誉と意思すらも奪い取ろうとするのを――きっと小枝子は許せなかったのだろう。

 “ディスポーザブル01”の姿がブレたかと思うと、まったくの同型機がそこに現れる。分身だ。

「壊せ、壊せ! 壊せ!! ――“ディスポーザブル”ッ!!」
 小枝子の咆哮に共鳴するかのように、“ディスポーザブル01”のパルスアトラクターが電磁パルスを撒き散らす。衝撃波を伴った電磁パルスはCoyoteたちが撃ち放った散弾を吹き飛ばし、数機のCoyoteの電気系統をショートさせて行動を封じる。

「壊せ! 壊せ壊せ壊せ壊せッ!」
 小枝子が敵へ飛びかかると同時、分身たちもそれに続く。
 射出した拳を起点に発生させた重力が敵の機体を押し潰し、分身は増殖する。
 ホーミングレーザーが戦場を駆け抜けて敵を撃ち抜き、さらに分身は増殖する。

 “ディスポーザブル”たちが包囲網から戦場へと解き放たれる。増えて、壊されて、殖えて、毀されて――増殖と破壊を繰り返しながら、飽くなき戦いを続ける。
 その先陣で、小枝子はCoyoteの華奢な機体をパワークローで引き裂きながら駆け抜ける。

「壊してやる! マシンも、戦場も、敵の思惑も――何もかも、壊してやる!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ラニューイ・エタンスラント
◎心情
あら、次はずいぶんと躾のなった『犬』なのね
まぁ、そうでなくては面白くないのだけど

・戦闘
引き続き『無敵斬艦刀』を【怪力】で振り回して、『無敵斬艦爆砕撃』で攻撃するわ
今回はちゃんと考えているわよ?
どうも、至近距離から散弾を当ててナイフで攻撃するみたいだけど……それ、『巨人達(あなたたち)』向けの技よね?
私にどうやって散弾を当てるつもりなのか、見せて貰おうかしら?
……まぁ、当たったとしても【怪力】で受け止めて返すつもりではあるけれどね?



「あら、次はずいぶんと躾のなった“犬”なのね」
 キャバリアサイズの無敵斬艦刀を手に、ラニューイ・エタンスラント(闇と光のダンピールイェーガー・f05748)は自分を包囲するCoyoteたちを見回す。
「こうして囲まれても、可愛げがないのが残念だけど。まぁ、退屈せずには済みそうね」

 人の身に余るような長大な柄を両手で持ち上げたかと思うと、ラニューイは無敵斬艦刀を頭上で振り回してみせる。
「犬のあしらい方は心得ているわ。――いらっしゃい」
 挑発的なラニューイの言葉を合図にしたかのように、包囲網のCoyote数機が構える。彼らの左腕部に搭載されているのは、散弾砲だ。

 砲声と共に散弾がばら撒かれる。
 弾丸の嵐。しかしラニューイは意に介した風もなく、前へと直進する。
「残念。はずれみたいね」
 散弾が拡がりきる前に射線を避けたのだ。
 軽量さゆえの軽い身のこなしでCoyoteはバックステップと共にナイフを振るが、ラニューイの細腕によって払われて懐へと潜り込まれてしまう。

「芸がないわね。死になさい、駄犬」
 まるでギロチンのように無敵斬艦刀が振り下ろされる。コックピットを避けた袈裟斬り。Coyoteの頭部と右腕が轟音と共に地に落ちた。

   対キャバリア
「 あなたたち向け の技を私に向けてどうするつもりだったのかしら」
 これだから駄犬は。呟きと共に無敵斬艦刀を後ろへ振る。
 何重にも響く音。背中から撃たれた散弾を刀身で防いだのだ。

「見飽きたわ」
 横薙ぎ。宙を舞うCoyoteの上半身を無感動に一瞥すると、ラニューイは溜息をついた。
「期待はずれの肩透かしね。少しはマシかと思ってたのに、こんな駄犬だとは」
 侮蔑の視線を他のCoyoteたちへと向ける。対人戦法がまるでなっていないとは思いもしなかったのだろう。

 踏み込みと共に包囲の一角へ突撃。無敵斬艦刀の柄を盾に、迎え撃つ敵の散弾銃をやり過ごしてから刃を薙ぐ。
 重なる手応え。包囲を形成していた数機のCoyoteが刃によって食い千切られるように大破する。

 包囲から脱したラニューイは、ドレスに付いたほこりをはたき落としながら、無敵斬艦刀の刃を見る。
「ああ、もう。なんなのよ……」
 憂鬱そうな溜息。
 散弾を受け止めたのとCoyoteを一息に数機撃破した影響だろうか。彼女の握る無敵斬艦刀の刃は欠け、曲がっていた。これでは切れ味が格段に落ちるどころか、いつ折れてしまってもおかしくない。
「こっちもこっちで、とんでもない駄剣ね……」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

猿投畑・桜子
うう、いてぇだ……やっぱ鎧とか着たほうが良いべかなぁ。
とりあえずぶっ壊したやつらのば貰っとくべ。
刃物が刺さったらあぶねぇとこはちゃんと守っとかねーとだな。
今度の連中はすばっしこそだけど、とりあえず向かってくるの一匹捕まえてみるだよ。
ふん捕まえたら他のやつにぶつけてやるべさ。
あんだけいっぱい集まってたら幾らすばっしこくても他のが邪魔で動きにくいべよ……多分!

(リグオンの残骸で盾にできそうな部分を拝借し急所を守りつつ、Coyoteが接近戦で攻めてくるのをカウンターで捕まえ、そのまま敵陣へびったんびったん叩きつける。
大量の量産機が囲んでくるということは、大量の武器を引っ掴んで叩き込めるということだ)



「うう、いてぇだ……」
 猿投畑・桜子(いなかっぺプリンセス・f26313)は、ファイア・リグオンの残骸に囲まれながら座り込む。
 ちょっとしたビルほどの大きさまで巨大化した彼女だが、致命傷からは程遠いもののやはり痛いものは痛い。目尻に涙を浮かべ、痛む銃創や爆破痕を擦りながらキャバリアの残骸を手に、ちょうどよさそうな鉄板を引き千切っては懐に入れて防弾チョッキに代わりにする。

「でっかくはなれっけど、やっぱ生身じゃ無謀かぁ。鎧とか着た方が良いべかなぁ」
 巨大化した時に身体に合わせてサイズが変わるのは最低条件として、できればデザインが可愛いのが良い。彩り豊かで、あと肌触りが良いとなお良いだろう。
「……ま、そんな都合の良いもんそう簡単には見つからんけど」
 溜息。衣服にここまで困るのは、巨人ならではの悩みだろう。

 いそいそ即席鉄板を作っていると、いくつもの重い足音が聞こえて来た。
「うわっ、うわうわうわっ、一体なんだべこいつら……」
 瞬く間にこちらを包囲するCoyoteたち。手にしていたファイア・リグオンの残骸を手に、桜子は辺りをきょろきょろと見る。

「あ、もしかしてこいつらの仲間――」
 遅れて状況を推察した直後、Coyoteたちは左腕部の散弾銃を撃ち放った。わあ、と驚いた声を上げながら地に伏せ、積み上がった残骸を壁にする。
「い、い、いきなりご挨拶だべなあ!?」

 残骸を壁に使われては射撃戦は不利と判断したのか、Coyoteたちはすぐさまナイフを抜いて白兵戦へと移行する。
「こ、こっち寄るでねえ!」
 飛びかかる数機のCoyoteたちへと、桜子は残骸と化したファイア・リグオンの脚を掴んで横薙ぎに振り回す。
 激突。その軽量さゆえに、Coyoteたちは重量級のファイア・リグオンの衝突を受けて吹き飛んでしまった。

 桜子の雄叫びと共に振り回され、投げ飛ばされる残骸。残骸はCoyoteを砕き、新たな残骸を作っていく。
「もう、矢でも鉄砲でも持ってこい! おらがとっちめてやるべさ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

アルナスル・アミューレンス


なーるほどねぇ。
支配されちゃうと、ここまで合理的になるんだねぇ。
関心関心、軍隊として実にいいんじゃない?

まぁ、そっちが容赦なく来るなら、
こっちもそれ相応の手口を使うまでさ。

――拘束制御術式、解放
遠慮なく『氾濫(オソウ)』としよう。

さあ、蹂躙を始めようか。

影の様な不定形の異形に体を変化させ、放出し、襲撃するよ。
第六感と戦闘知識を生かし、連中の動きの先を見切り、片っ端から捕食していこうか。
どんなに速く動いても、「面」での攻撃からは逃がさないよ。
いくら狂おうと、その本能に「死」の恐怖を与えるのに耐えられるかな。

存分に撃っていいよ、刺しても斬ってもいいよ。
その位じゃあ死ねないし止まらないからさ。



 合理的になる、というのはなかなか難しいことだ。人間に備わった感情をいかに割り切るか。割り切った後、どれだけケアできるか。
 アポカリプス・ヘルでのサバイバルに合理性は必須だが、合理性に徹することができる者はそういない。

『なーるほどねぇ。支配されちゃうと、ここまで合理的になるんだねぇ』
 ファイア・リグオンたちの残骸から、ぬるりと黒い影のようなものが這い出る。先の戦いで異形化したアルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)だ。
 アルナスルは影から頭部だけを実体化させ、こちらを包囲するCoyoteたちをぐるりと見渡す。

『感心感心、軍隊としては実にいいんじゃない?』
 仲間を犠牲にして敵を包囲する戦術は、アルナスルの目には少しばかり珍しく映っていた。アマチュア戦闘員が戦わざるを得ないアポカリプス・ヘルでは、人的資源の希少さゆえに仲間を見殺しにする戦術を使いたくないと考える者は少なくない。

『ここまで容赦ないなら――遠慮もいらないよね』
 荒野の残骸から影が伸びる。
 遠距離から砲撃されようが、包囲されようが関係ない。散弾とナイフに迎え撃たれるが止まらない。
 黒の帳がCoyoteたちに覆い被さり、引き千切る。噛み砕く。

 知覚範囲の端側で、蹂躙される仲間を見て背を向けて逃走しようとするCoyoteが見えた。苛立つように揺らいだかと思うと、影が凄まじい勢いで伸びていく。
『ああ、やだやだ。人のことを化物みたいに扱ってくれちゃってさ』
 Coyoteが駆け抜けるよりも早く、影はその逃げ先に回り込んで退路を塞ぎ、捕らえる。鋼鉄でできた身体がみしみしと音を上げながらねじ切られる。

 狂乱状態のCoyoteが銃を乱射し、ナイフで何度も刺突する。その生き足掻こうと抵抗を続ける両腕を引き千切る。
『化物なら犠牲になった仲間に夢中で君を逃してくれるかもしれないけど、生憎と僕はプロなんでね』
 だから、逃がすつもりなんて無いよ。

『さあ、どうぞ存分に撃って刺して斬ってくれ。そのぐらいじゃあ止まらないし、死ねないからさ』

成功 🔵​🔵​🔴​

天城原・陽

ッ!?(神経接続している赤雷号から、オブリビオンマシンに向けた殺意が流れ込んでくる。機体のエネルギーが増幅していくのに比例して制御が困難になっていくのも理解した)
ッぐ…落ち着きなさい赤雷号…良い子だから…言う事を聞いて…だぁ!もう!!(コンソールをぶん殴り)駄々捏ねてる場合じゃないのよ!今は私と!あんたが!都市の旗背負って人んち殴り込みに来てんだから無様晒してらんないっての!!
(狙撃砲にエネルギー充填。10カウント開始。大跳躍、姿勢制御。目標、前方オブリビオンマシンが位置する『地表』)殺すのがダメなら吹っ飛ばすまでよ!(カウントゼロ 加粒子の奔流が地表を敵ごと吹っ飛ばし突破口を開かんとする)



 キャバリアは子どものようなものだ。
 そんな呟きを漏らしたのは、確か格納庫で一番古株の整備士だっただろうか。
 元気に外に出て行っては泥だらけになって帰って来る。少しでも手を抜けば、とんでもない大事故を起こしてしまう。だから我が子のようにキャバリアは大切に扱ってやらなくてはならない。
 そんなことを休憩中、安物のコーヒーを啜りながら老整備士はぽつりぽつりと語っていた。

 キャバリアが子どもというのは、まだ年若い天城原・陽(陽光・f31019)でもなんとなく理解できた。
 たとえば今乗っている“赤雷号”が子どもだとしたら、こいつは間違いなく駄々っ子だ。
「ッ……落ち着いて、“赤雷号”……お願いだから……」
 赤雷号へと接続された神経ケーブルを通してドス黒い感情が流れ込んで来る。
 ファイア・リグオンとCoyoteの撃破を重ねるごとに、“赤雷号”はエネルギーの増幅と共に『こんなニセモノじゃダメだ』とオブリビオン・マシンへの殺意を高めていた。

 早く。早くオブリビオン・マシンを壊そう。こんな雑魚たちは放っておいて、なんでオブリビオン・マシンを殺さないの? ねえ、どうして? ねえ、ねえ、ねえ!
 計器のエネルギーメーターが危険域を示す。“赤雷号”が制御に反して勝手な動きを無理矢理始めようとするのを、神経ケーブルを通してなだめすかす。

 暴走したら、どうする?
 以前、そんな問いかけを仲間にした。
 一つが『エネルギーの増幅は暴走のリスクと相関関係にあるから、暴走しないようにエネルギーの管理を行いながら戦闘を行うのが重要』云々。という理屈っぽい答え。
 もう一つが――『わからないなら、わからせてやればいいさ』というわかりやすい答えだった。

「――――だぁ、もう!」
 操縦桿から手を離して、コンソールを殴りつける。
「駄々捏ねてる場合じゃないのよ! いい加減にしなさいよねッ!!」
 神経ケーブルを通して流れ込んで来る殺意を堰き止め、押し返さんとばかりに陽は叫ぶ。
「今は私と! あんたが! 都市の旗背負って人んち殴り込みに来てんだから、無様晒してらんないっての!!」
 怯んだように、流れ込んで来る感情の波濤がピタリと止まる。操縦桿を握り直すと、操作した通りに機体が動いた。

「……今は私に任せて。大丈夫、私は強くて天才なんだから」
 半分は“赤雷号”へ、もう半分は自分に言い聞かせて。陽はエネルギーの充填を始めた狙撃砲を構える。

「――10カウント!」
 画面にエネルギー充填に必要な時間が表示されるのと同時に、“赤雷号”は上空へ跳躍する。ブースターユニットの噴射が空中制御を補助し、狙撃砲の銃口が地表へと向く。
 
「5カウント。目標、Coyoteたちの包囲するド真ん中」
 ガンサイトの照準が、ついさっきまで自分のいた位置へと合わされる。
 一呼吸。引き金を絞る。
「――カウント・ゼロ。ファイア」
 加粒子の奔流。地表が穿たれ、Coyoteどもが瓦礫諸共に吹き飛ばされる。

「殺すのがダメなら吹っ飛ばすまでよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

ティー・アラベリア

なるほど、砲撃の次は包囲でございますか
味方の犠牲を活用しようとする姿勢、嫌いではございません♪
やはり、闘争とはお互いが全力を尽くしてこそ愉しいものとなるのですから

それでは、同化妖精の本領をお見せいたします♪
先ほど処理した敵の砲撃機を活用させていただくとしましょう☆
ちょっとした意趣返しといったところでございます
戦場に擱座しているありったけのファイア・リグオンに侵食同化妖精を凝着させ、操縦系と電子系を掌握
各探信儀と指揮通信機構を使用して砲撃管制を実施し、92式の砲撃も含めて敵に火力の雨をたたきつけましょう☆
あくまで直撃は避け、敵の機動と連携を制圧し、最後は95式と90式の精密射撃で無力化致します



 闘争はお互いが死力を尽くしてこそ闘争足り得る。ティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)はそう思う。
「なるほど、砲撃の次は包囲と……。味方の犠牲を活用しようとする姿勢、嫌いではございません♪」

 腑抜けた戦いをされては、とてもではないが楽しめない。生きるか死ぬかの瀬戸際で、死力を尽くさずしていつ尽くすのか。
 そういう意味では、次善策を打つ敵の姿勢をティーはそれなりに評価し、これからの戦いに期待していた。

「全力をもって、お迎え致しましょう。浸食同化妖精の本領、どうぞ心ゆくまでご堪能ください♪」
 ティーの一礼と共に、戦場に横たわるファイア・リグオンたちが幽鬼の如く起き上がる。
 浸食同化妖精。ファイア・リグオンに凝着したそれらは電子回路へと名前通り浸食し、操縦系を掌握。ティーの手によって再び傀儡と化す。

「撃滅されたはずのお仲間との再会、お気に召して頂けたでしょうか?」
 こちらを包囲するCoyoteたちに、目に見えて動揺が走る。オブリビオン・マシンの影響を受けているとはいえ、戦友と銃口を向け合うのには躊躇いがあるのだろう。

 それが判断の致命的な遅れとなった。砲撃戦に特化した敵を前にしたら、Coyoteたちは即座に分散するべきだった。
「それでは、祝砲をお楽しみください☆」
 ティーの号令一下、ファイア・リグオンたちが一斉に砲撃を開始する。砲弾が火の雨となって降り注ぎ、敵の包囲は一瞬で瓦解した。

「もうお帰りですか?」
 ティーの構える二本の魔杖の矛先は、砲煙弾雨の中で逃げ惑うCoyoteたちだ。
 95式四年誘導型魔杖から放たれる高速魔法弾が正確に敵の手足を壊し、90式爆縮破砕型魔杖による高出力魔力放射による爆裂がCoyoteの軽い身体を吹き飛ばす。
「お帰りの際にはお土産をお忘れなく☆」

大成功 🔵​🔵​🔵​

牙・虎鉄

(瞑目。耳を澄ます。足音からして)
高機動性の量産機。
足音に重々しさがない。
――装甲性能を犠牲にしているな。

《ならばどうする小僧。》

知れた事。
"より早く穿つ"迄。
《良かろう やってみせい。》

(疾走し間合を詰める。短機関銃の照準を見切りシャンユエの機甲を腕部に装着【操縦×肉体改造】、銃口を払い退け友軍誤射を誘う。【受け流し】

その隙に更に至近し――)

【炸雷】。
(初手、機甲掌打。
間をおかず1/70秒で肘打、更に貼山靠。武器を取り落とす様な間抜けならば他敵に投げつけ次の接近の布石とし、「炸雷」連打の餌食にする。)

高機動する暇など与えない。
《及第点だ だがまだ遅い。更に疾さを磨け》

言われずとも。



 目を閉じた先にある闇は、第二の視界である。

 いつだったかに師より説かれた言葉だ。説かれた当時こそその真意を理解しかねたが、修練を積んだ今ならばわかる。
「――軽い。足音に装甲の重々しさが無い」
 瞑目した牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)は、耳から入った情報から敵の性質を類推する。

「――装甲を犠牲にした、高機動性の量産機か」
《ならばどうする、小僧》
 影、“シャンユエ”のこちらを試すかのような含みを持った問いかけへ、虎鉄は鼻を鳴らす。

「知れたこと。――“より早く穿つ”まで」
《良かろう。やってみせい》
 直後、虎鉄は疾駆した。目指すは包囲の一画を成すCoyoteの一機。
 だが、敵の短機関銃が疾走する虎鉄を迎え撃つ。

「粗いな」
 左右へステップを踏み、弾幕を避ける。
 短機関銃はその軽さゆえに銃身が跳ねやすく、狙いが荒くなりがちだ。軽量、高機動、大量生産を旨としたCoyoteの馬力では、弾幕を貼ることはできても精密な狙いをつけて連射するリコイルコントロールは至難の業だろう。

 接近。短機関銃の銃口とすれ違い、真横へと跳躍する。
「借りるぞ」
 瞬間装着。“シャンユエ”の装甲を腕部に纏う。
 一閃。虎鉄の腕が真横に薙ぎ払われ、短機関銃の銃口があらぬ方向へと向かう。けたたましい銃声と共に、包囲網を形成していた別のCoyoteが銃弾の餌食となった。

 そしてCoyoteの腕を足場に駆け上がり、虎鉄はその右手を振り被る。
「――疾ッッッ!!」
 掌底打ち。敵の機体が大きく揺らぐ。間髪入れずに肘打ちが追撃となり、続けて貼山靠が揺らいだ敵の身体を押し倒す。

 轟音と呼ぶには軽い音を立ててCoyoteが地に倒れる。その手に握っていたはずの短機関銃が宙に浮いた。
「間抜けめ」
 跳躍。一蹴。
 鋭い蹴りによって、短機関銃が隣のCoyoteへと射出される。怯んだ敵へと目標を定め、虎鉄はまた疾駆する。

《遅い。が、及第点をくれてやろう。更に疾さを磨け》
「……言われずとも」

成功 🔵​🔵​🔴​

玉響・飛桜

※他キャラ、特に新世界学園所属のキャラとの絡み歓迎

はー??
コンセプトが被ってるでござるがー??
トランペッターの機動性と同一機体とのコンビネーションというコンセプトが真似されてるでござるがー?パクリ!パクリ野郎共でござる!
なら出し惜しみは無し!
展開中の軒猿《イーヴスモンキー》、三ツ者《サードマン》、奪口《マウススティール》に加えて
6番機細作《スリムメイク》
8番機黒脛巾《ブラックゲートル》
を包囲網の外から展開!挟撃に回すでござる!
あとはピンチになりそうなら
4番機伺見《シーカー》
7番機草屈《グラスクラウチ》
を土中に展開!Coyoteの脚掴んで引きずり倒すでござる!
ふん、パクリ野郎に負けぬでござる!


御門・白

―――……次、が来ましたか
羨ましいくらいの動員数

行こう、ツクヨミ。化かし合いに。
数に頼む者はそれが崩れれば脆い
から

敵影を確認したら【切り込】んで【暴力】で沈めていきます
迂闊に囲まれないように、霊的器官で絶えず【索敵】して
攻撃の癖を【見切り】、【カウンター】気味に迎撃しながら

……とはいえ、多勢に無勢なら手札を一つ切ります

力場を放射して攻撃
躱させるつもりです
それで……ここは、私の時間

意識の統一、というものは難しい
オブリビオンが指向性を与えているとしても、時間が経てば必ず……個人個人の思考の乱れ、というものが出て来ます
相手の体感時間を早めて、分断し……あとは各個撃破
敵の攻撃は時間の鎧で弾いて制圧



 喧騒に満ちた荒野の只中。
 いかなる原理か、御門・白(月魄・f30384)の乗る“ツクヨミ”の周辺だけが静かだった。

「―――……次、が来ましたか」
 静寂を打ち破ったのは、大挙してこちらへ押し寄せて来るCoyoteたちだ。

 冷たい視線で敵を一瞥すると、白は吐息する。
「……羨ましいくらいの動員数」
 自分の所属する新世界学園も、いつもこれぐらい動員できれば良いのに。そんなことを考える。

「寂しいのでござるか?」
 少年とも少女ともつかない声がした。いつの間にか、近くまで来ていたキャバリアは“トランペッター”。その搭乗者は同じく新世界学園の生徒、玉響・飛桜(カゲロウ・f30674)だ。

 白が特に驚いた様子を見せないのは、接近を事前に感知していたからだろう。
「……いいえ。“ツクヨミ”がいますから。あなたもそうでしょう?」
「寂しくはないでござるが、“トランペッター”は口うるさいでござるからなあ」
 ワハハと飛桜が笑った直後に通信の向こう側で何やら聞こえて来るのは、彼とAIの口論だろう。

 通信を聞き流しながら、さて、と白は周囲を見渡す。大挙してやって来たCoyoteはすでにこちらを包囲する形で展開済みだ。
「……個々の性能は低い。ですが。多勢に無勢ですね」
 旧型なファイア・リグオンと比べ、軽量型であることを差っ引いてもCoyoteの装備はお世辞にも性能が良さそうには見えない。
 性能差で勝っていたとしても、真正面からぶつかれば利があるのは数の多い方だ。単騎行動中の新型機が旧型機の部隊に撃破される話など、多くはないが聞かされる話である。

 ようやくAIとの口論も一区切りついたのだろう。切り替えるような飛桜の吐息が聞こえて来る。
「して、いかにするでござるか?」
「……数は偉大。ですが。偉大なものが崩れた時ほど、脆いものです」
「まずは敵の和を崩すのでござるな。承知つかまつったでござる」
 作戦の通信はそれだけで十分だった。

「――……行こう、“ツクヨミ”。化かし合いに」
 白が敵の包囲網へと切り込んで行く。
 当然、Coyoteたちの短機関銃が迎え撃つが“ツクヨミ”は被弾を恐れず吶喊していく。真っ直ぐ、一本の矢の如く敵へと肉薄し、逃げ遅れた敵へと拳を叩き込む。

 鮮やかな一撃で敵を一体沈めた直後、隣の敵へと蹴撃。霊力の警告。目を向けることもなく裏拳を繰り出して、後ろから迫っていた敵を撃退する。
 警告。警告。警告。重なるアラートに対応して、“ツクヨミ”は跳躍することで敵の銃撃を躱す。

「……苦しくなる。その前に。一枚、手札を切ります」
 空中で身を捻りながら“ツクヨミ”が放射したのは、特殊な力場だ。敵は被弾することなくそれを避けるが、それで問題ない。
「これで……ここは、私の時間」

 攻撃を繰り返していた敵の連携が、次第に崩れ始める。テンポが、タイミングがちぐはぐになって、それが更に混乱を呼び、悪循環へと陥っていく。
 “ツクヨミ”の放った力場が時間を加速させ、敵機の意思統一を乱したのだ。
「……統一は、難しいですから」
 ある程度の指向性が与えられていたとしても、少し狂わせてやれば乱れは簡単に起きる。あとは各個撃破するだけだ。
「……では、お願いしますね」
                     マーチ
「ここからが拙者の出番でござるな! ――“行進曲”!」
 飛桜の明るい声と同時に、包囲の外から何機もの“トランペッター”が現れる。

 イーヴスモンキー  サードマン  マウススティール  スリムメイク  ブラックゲートル
「“軒猿”、“三ツ者”、“奪口”、“ 細作 ”、“黒脛巾”!」
 分身を使った、同型機多重操作だ。
 合計5体の“トランペッター”が、連携の乱れた敵陣へと切り込んでいく。

「一機残らず撃破するでござるよ! そやつらは“トランペッター”の機動性と同一機体とのコンビネーションというコンセプトを真似したパクリ野郎どもでござるからな! パクるなら金を払うでござる! 金が払えないなら壊すでござる!」
 妙に気合いの入った様子で“トランペッター”たちは連携していく。敵を混乱させては次々に分断し、各個撃破。
 言ってしまえばその繰り返しだが、その有機的な連携は同型機の多重操作でなければ再現できないものだろう。

「……脆い。時間はそこまで必要ないですね」
「ちゃちゃっと撃破していくでござるよ! パクリ野郎に負けぬでござる!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート


なるほど、悪くないやり方だ
状況を逆手に取って有利に事を運ぶ
しっかり考えてるじゃねーかよ
ただまぁ、少し残念だな
相手を選ぶべきだった
普通の常識が通用しない相手は、初めてかい?

さて、システムごと落とそうにも手が足りないな
できれば同時に纏めて無力化したいんだが……おっ
そういやちょうど良く残骸が沢山あるな
こいつで手を増やしてやるか
セット、『Maestro』
こいつらの制御は俺の物さ
増やした手で【ハッキング】
制御システムをダウンさせ、さらに乗っ取って新たな手にする
こいつらに自爆でも仕込んでおけば良かったな?
ま、手札はまだまだあるんだけど
そら、吹けば飛ぶような生身一つだぜ?気合入れて殺しに来いよ!!



 人間は間違える生き物だ。
 機械やプログラムでさえエラーを吐き出すのだから、人間が間違えないわけがない。
 ゆえにこそ、失敗しないことにリソースを費やすよりも、失態を犯した時に有効な善後策を打てることこそがリソース上では効率的であり良しとされる。

「なるほど、悪くないな」
 包囲するCoyoteたちを一瞥してヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は肩をそびやかす。
「状況を逆手に取って、次へと有利に事を運ぶ。しっかり考えてるじゃねーかよ」
 手持ちの情報と、これから起こりうる予測を冷静に分析しなければ難しいことだ。
 引き際の良さは負けを作らないが、抜け目なさは勝機を掴む。
 時折くそったれなギャンブラーどもや、ろくでなしのランナー連中が呟くストリートの警句の一つだ。ストリートで生き抜く上で臆病さは重要だが、それはあくまで生きるだけ。成功したいならば、抜け目なく冷静に思考を回すべきなのだ。

「ただまぁ、少し残念だったな」
 ヴィクティムが両手を構える。構えは格闘技のものではない。むしろ、オーケストラの指揮者のそれに近い。
 獰猛な笑みと共にヴィクティムが両手を振り上げると、周囲に倒れていたファイア・リグオンの残骸がカタカタと微細に揺れる。
「そら、吹けば飛ぶような生身一つだぜ? 気合入れて殺しに来いよ」
 挑発するヴィクティム。不気味な尋常ならざる雰囲気を感じた敵機が、彼へと向けていた短機関銃の引き金を絞ろうとして――動かない。
「セット、『Maestro』。――普通の常識が通用しない相手は、初めてかい?」

 ファイア・リグオンは砲戦用のキャバリアだ。砲戦には複雑な演算を要求されるため、搭載される演算処理装置の性能も他と比べて高い。
 スクラップと化したファイア・リグオンの中で、まだ生きている演算処理装置へとヴィクティムは並列クラックを行って掌握。獲得した演算処理能力を用いて、次々に演算能力を肥大化させて――遂には、自分を取り囲むCoyoteたちの制御システムをも掌握していた。

「ここに勝機はねえ。お前たちの指揮官は単に引き際が悪いだけだ」
 武器を取り落とすように武装解除し始めた敵機は、次々にシステムダウンして地面へ座り込み、あるいは倒れ込む。
「今回のは引くのが正解だ。……殺し(ギーク)は仕事に含まれてないんでな。国に帰ってもこの失敗はよく覚えとくといい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
引き続きセフィリカ(f00633)と協働

態々集まってくれたか
止めてしまえば的だな

魔眼・封絶で拘束
対象は戦域のオブリビオン
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する

『天光』にて捉えた全個体を同時拘束
心に写せば捕らえる魔眼。何処にいようと例外はない
能力上昇も消え、後は討てば良い

あとは搭乗者を殺さぬよう機体を破壊
拘束を維持したまま『討滅』を乗せた打撃で一つずつ
悪足掻きも出来まい

俺は特に負担などは
……ああ、気遣ってくれているのか
ありがとう。大丈夫だ
無理はせん

戦況は『天光』で常時把握
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)と
あのね、ここは囲まれた!
何とか突破を試みるぞ!ってシーンじゃない?

『保有リソース差故の認識違いね。それが全てではないけど、この場じゃ最重要か』
慣れた様子のシェル姉の反応
私もだけどね

必要以上に倒すより崩せる部分から攻略の方針!
私のリグオンの弾薬には限りがあるし、刃も使えば劣化するの!

【月詠ノ祓】

戦況としては先とやる事が一緒だけど、囲まれてて相手に有利な状況は早めに脱したい
敵機体を早々に無力化しよう

頼もしいのはいい
けど、能力はともかく、身体の強度は私達と変わらない筈なのに……
こんな大きな力行使し続けて、悪影響無いものかしらね
お節介だし余計な心配かもしれないけど



 大挙して押し寄せて来る敵を見た時。多くの者は畏怖し、絶望する。
 それだけ数の力とは大きなものであり、本能的な畏敬をもって扱われるものなのだ。
 普通は。

「わざわざ集まってくれたか」
 大挙してこちらを包囲しようと押し寄せるCoyoteたちを眺めながら、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は平然と呟く。

「あのね、アルトリウス君? ここは『囲まれた! 何とか突破を試みるぞ!』――ってシーンじゃない?」
 借り受けたファイア・リグオンに搭乗したセフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)が臨戦態勢で表情を緊張させながらもアルトリウスを横目に見る。しかし、彼の表情には畏怖や畏敬、絶望などといった負の感情はなく、ただ淡々とした平坦さだけがあった。

 意思を持つ魔剣、シェルファが妙に冷静な声で呟く。
『保有リソース差ゆえの認識違いね。それが全てではないけど、この場じゃ最重要か』
「……シェル姉、適応力高くない? もうアルトリウス君に慣れたの?」
『それは私とあなたでお互い様でしょ』
 その通りだ。慣れることができなければ、そもそも彼との友好関係を持続させるのは難しい。

「捕らえる」
 アルトリウスの周囲に浮かぶ青白い光が瞬いたかと思うと、周囲のCoyoteたちの動きが、まるで金縛りに遭ったかのように停止する。
『薄い部分を突破よ、セリカ』
「えっ? あっ、うん!」

 シェルファの言葉で、突然の出来事に一瞬呆然としてしまっていたセフィリカは、ファイア・リグオンを操作して包囲網の薄い部分を一直線に駆ける。
「一式――」
 月詠ノ祓。
 刃が敵機を切り裂き、次々に無力化していく。
 砲戦に特化したファイア・リグオンを扱いながらにして、その鈍重さを感じさせない軽量型の如き運動性能の発揮は、セフィリカの天賦の才能ならではであろう。

「……戦況としては、さっきとやってること変わらないような」
『長居は無用よ、さっさと包囲を脱しましょう』
 もっともな意見だ。必要最低限、包囲を切り崩すのに必要な敵を無力化しながら、二人と一本は他の猟兵たちとの合流へ向かう。

「アルトリウス君は大丈夫? さっきからずっと、結構な力使ってるみたいだけど」
 機体のカメラをアルトリウスへと向ける。
 頼もしいのは良いことだ。だが、身体の強度は自分たちとさほど変わらないはずの彼が、こうも大きな力を行使し続けて何の反動や後遺症といった悪影響を受けずに済んでいることが、セフィリカには不思議でならなかった。

「…………。ああ、気遣ってくれているのか」
 しばしの沈黙の後、ようやく気付いたというようにアルトリウスは声を上げる。かなりの力を行使しているように見えて、しかし本人にとっては大したことではないらしい。

「特に負担ではない。大丈夫だ。が――」
「えっ、何かあるの?」
「この先“討滅”の原理で機体を破壊して、中身のパイロットまで滅ぼさない保証ができない。引き続き拘束は担当する。撃破は任せた」
「………………」
 本当にこの男は、手加減というものを知らないようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『Type-XXフルングニル』

POW   :    Regeneration
全身を【高度な自動修復機能を有する特殊強化装甲】で覆い、自身が敵から受けた【ダメージを修復し、捕食したキャバリアの数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    Evolution
【敵性体から受けたダメージへの高い耐性】【敵性体に有効なキャバリア用内臓兵器】【敵性体の活動限界を上回るエネルギー】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    Proliferation
自身の【口で捕食してきたキャバリア】を代償に、【敵性体の数×10体のベルグリサル】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【体内で生成した敵性体に有効な武装】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はノヴァンタ・マルゲリータです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHH!!!!!!』

 咆哮が、戦場に轟く。
 荒野の向こうからこちらに駆けるのは、たった一機のキャバリアだ。しかしその雰囲気は異様であり、獣じみた外観からは禍々しいオーラのようなものが放たれていた。

 オブリビオンマシン、“Type-XXフルングニル”だ。
 戦場に辿り着くや否や“フルングニル”が真っ先に飛びかかった先は、キャバリアの残骸の山だ。
 猟兵たちが撃破したファイア・リグオン、そしてCoyote。大破して今や無人となった鋼の塊たちを、引き裂き引き千切って、獣のアギトで咀嚼していく。

 壊して、食らって、壊して、食らって――かつて友軍だったはずの機体を貪る“フルングニル”から、黒いもやのようなものが出現した。
 地に落ちた黒のもやが急速に集まり――“フルングニル”そっくりのキャバリアが形成された。
 むくりと起き上がったそれは、“フルングニル”同様にキャバリアの残骸を貪り始め、黒いもやを作り始める。

『足りない……。足りない! “我々”はもっと殖えなくては! 地を覆い隠すほどに多く! いかなる敵をも撃滅するために増えなくては!』
 貪る。増える。増え続ける。まるでねずみ講さながらに、“フルングニル”は荒野の戦場でその数を増やしていく。

『もっと……もっとキャバリアを寄越せ! ああ、隣国のキャバリアも、そのまた隣国のキャバリアも……いいや、全てのキャバリアを食らわせてくれ!』
 “フルングニル”たちの咆哮が荒野を揺るがす。

『ああ――そこにちょうどいい敵がいる。隣国に行くついでに、平らげてしまおう』
ラニューイ・エタンスラント
◎心情
……嫌なもの、思い出させるわね
駄剣も使い物にならなくなってしまったようだし……少しばかり、本来の戦い方に戻すかしらね?

・戦闘
真の姿を解放
【怪力】、【なぎ払い】、【重量攻撃】……使えるものは全る使って、ユーベルコード『闇と光のダンピールイェーガー』で全力で攻撃するわ
他の人達の攻撃も合わせれば、その勝手に直る鎧も打ち砕けるでしょう?



 ただの試し斬りのつもりだった。
 斬り甲斐のありそうな敵のいる場所に、新しい玩具がどの程度遊べるものなのか試しに来たのがラニューイ・エタンスラント(闇と光のダンピールイェーガー・f05748)の本来の目的だったはずだ。
「……この駄剣も、すっかり使い物にならなくなってしまったわね」
 新しい玩具が壊れてしまった時点で、ラニューイはそのまま帰還することもできたはずだ。しかし、彼女は今にも折れてしまいそうな無敵斬艦刀を捨て置き、前へ――前線へと歩み出ていた。
 
「……あなたを見ていると、嫌なものを思い出すわ」
 群れる“フルングニル”たちを目の前にして、ラニューイは微かに表情を歪める。彼女の脳裏に思い浮かぶのは、彼女の世界の記憶か。
 いずれにせよ、今の彼女は機嫌が悪かった。目の前の敵を相手に、思い切り暴れ回りたいと考えるほどに。

「――少しばかり、本来の戦い方に戻しましょうか」
 うねるような禍々しくも紅いダンピールのオーラ。輝かんばかりの聖者の聖なる光。それらが渾然一体となってラニューイの全身から放たれる。紫色の右目が揺れ、赤く染まる。

「さぁ……いくわよ」
 自身の身長に数倍する“フルングニル”へと、ラニューイは徒手空拳で挑みかかる。
 一見して無謀な突撃。オブリビオンマシンの一機がその鋭い爪牙を剥き出しにして、ラニューイを迎え撃つ。
 言うまでもなく、キャバリアと人間とでは質量も馬力も桁違いだ。キャバリアに撫でられただけで人は吹き飛び、物言わぬ血袋と化す。
 普通の人間であれば。

「随分硬いのね」
 だが、ラニューイは立っていた。オブリビオンマシンの爪を片手で受け止めたばかりか、キャバリアの指を握力でもって握り潰さんとしていた。みしみしと音を立てながらも、それでもいまだ原形を保っていられるのはオブリビオンマシンの特殊な強化装甲の強度の高さと、自動修復機能ゆえにだろう。

 “フルングニル”がラニューイを圧殺せんともう片腕を振るう。しかし、当然のように彼女はそれを受け止めてしまう。
「ところでこの硬い装甲、一つ気になったのだけれど」
 一歩、軽く後ろへ引く。まるで拍手するように、両手を前へと出す。
「硬い装甲同士で打ち合わせたら、どうなるのかしら?」
 高い金属音。凄まじい勢いで強化装甲同士が打ち合わされて、亀裂が入った。
 ラニューイは合掌の形となった両手をそのまま握り、オブリビオンマシンを遠心力に任せて振り回す。それに巻き込まれて、“フルングニル”たちが薙ぎ払われる。

「新しい玩具はあなたに決めたわ。精々、長く楽しませて頂戴」

成功 🔵​🔵​🔴​

槐・白羅
おお…
酷い光景だ(飛来する神機
地獄の様なのはこういうのを言うのかなモルスよ
(しかし意外にも否定の気配を放つオブビリオン神機

そうか…生きるが故の地獄か
では…死を与えよう

すまないな
貴様らを蹂躙するのが雷神ではなく死である事を詫びよう

UC発動
攻撃は【受け流し】

【属性攻撃・弾幕・空中戦】
超高熱熱線を驟雨の如く振るいつつ
死の閃光を放ち周囲の敵のエネルギーを容赦なく奪い己の活力と回復に使い

【貫通攻撃・重量攻撃・殺気】
殺意を放ち周囲の意識を己に集中させ
死の運命により力を篭めた斬撃で容赦なく貫通し切り裂いていく

逆に敵陣の生命力を容赦なく吸収し続ける

搭乗者の生命は奪わないぞ

それこそ産んで増やすに相応しいだろう



「おお……酷い光景だ」
 低速巡航モードのオブリビオンマシン、“モルス”に搭乗した槐・白羅(白雷・f30750)は、“フルングニル”たちの広がった地を見てそう評した。

「国における軍隊とは、すなわち暴力装置であると言ったのは誰だったか……。いやしかし、これはいささか度が過ぎている。ここにあるのは名誉や栄光などではなく、ただ恐怖と獣性のみではないか」
 世界を放浪する中で、白羅も武力を行使しないに越したことはないと知っていた。
 オブリビオンマシンの絶大な力を持つ彼だが、いちいち戦っていてはいつかは消耗し、力尽きてしまう。一度戦えば、そこから恨みが生ずる。
 ゆえに、戦う数は少なく済ませられるならばそちらの方が良い。それは国家とて同じだろう。

「地獄、とはこういうものを指すのかな、“モルス”よ」
 然り、とは返って来なかった。
 神機“モルス”は、否と返した。

「……そうか。この世こそが苦界、生きるがゆえの地獄か」
 この世以上の地獄はあるまい。神機の気配を汲み取って、白羅は吐息する。まったく否定の言葉が出なかったのは、彼にも思い出すことがあったがゆえにだろう。

「では……苦界との紐帯を断ち、終わりを与えてやろう」
 “モルス”が応答して機体に禍々しくも神々しい光を纏わせて――放った。眩き超高熱熱線が地上へ降り注ぎ、“フルングニル”たちへ襲いかかる。
 一度は目をくらませたかのように怯んだ“フルングニル”たちが、次々に膝をつく。“モルス”から放たれた死の閃光が、敵の生命力とエネルギーを奪っているのだ。

「――すまないな。貴様らを蹂躙するのが雷神ではなく、死であることを詫びよう」
 本来、天上から地上に降り注ぐべきは死の閃光ではなく稲妻であり、冥道へと導くべきは死以外のものであるべきだ。
 死とは結果であり、過程ではないのだから。

『GRUAAAAAAAAAAAAAAAAHHHH!!!!』
 咆哮と共に、跳躍でもって“モルス”へと肉薄するものがあった。
 己の分身を盾として死の閃光から免れ、こちらへと爪牙を向ける“フルングニル”だ。
「他者の死の上に立たんとするか。ああ、貴様は生きているな。生きるとは他者の死の上に立つことだ」
 “モルス”の魔剣が爪牙を受け流す。“フルングニル”の獣の如き機体が宙を泳ぐ。
「――生きているがゆえに、貴様こそ死に値する」
 一閃。魔剣が振るわれる。その銘に刻まれた“死の運命”へ従わせるが如く。
 貫かれた“フルングニル”が黒い塵と化し、散った。

「さて。ここから骨が折れるぞ、“モルス”よ。搭乗者のいる機体を避けて叩かねばならない」
 無機質な応答が返ってきて、白羅の口元に笑みが浮かぶ。
「俺たちが行うべきは救済ではなく、救助だ。産んで増えるに値する生者をみすみす殺すようなことはしないさ」

成功 🔵​🔵​🔴​

天城原・陽

うひぃ悪趣味…というか悪食?赤雷号の教育に悪いわ
さておき、あの手の輩は本体をブッ潰すのがセオリーなのかしら
そこに辿り着くにしたって増えたのも潰さないとだけど

「ま、両方やればいいわ、私天才だし。いくわよ!赤雷号!」
(最初の一体はマーカー済。狙撃砲、ギガントアサルト…セット。ブースト)
「…ッ!!」
(高機動推進ユニットを最大稼働。同時に瞬間思考力で軌道計算。鋭角機動で増殖体を交わしながら銃弾と砲弾を叩き込みながら突撃。軌道を読まれ立ち塞がれたとしても軌道を再計算し回避しつつ攻撃)
「ナメんな!」
(アサルトを帯電熱超硬度短刀に持ち替え)
「私の方が!!」
(本体の頭部に突き立てんとする)
「上なのよ!!!」



「うひぃ、悪趣味……というか、悪食?」
 殖える“フルングニル”たちを見て、天城原・陽(陽光・f31019)は顔をしかめる。死骸にたかるハイエナのようにキャバリアの残骸を貪るオブリビオンマシンには、無機物のはずなのにどこか生々しい残酷さがあった。

 その光景に影響されたのだろう。神経接続ケーブルから“赤雷号”の悪感情が流れ出て来る。
「ああ、もう。“赤雷号”の教育に悪いったら……」
 オブリビオンマシンへの殺意。負けたら壊されるだけでなく、食われてしまう恐怖。アンサーヒューマンゆえに、流入する“赤雷号”の殺意と怯えが理解できてしまって、感情を押し殺すのに少しばかり苦労する。こういう時ばかりはジャイアントキャバリアの不便さを感じざるをえなかった。

「大丈夫よ、“赤雷号”。私たちは食われないし負けない。――私は天才なんだから!」
 神経接続ケーブルから流れ込む悪感情が、やんだ。
 高機動推進ユニットが噴射されて、“赤雷号”が地上を疾走する。
 索敵レーダーを一瞥。最初の個体は追跡レーダーでロックしてあるが、狙撃するには増殖した機体が邪魔だ。

「本体を叩くには、まず増えた分を潰さないとか……」
 敵集団の未来位置を予測。構えた小銃型レールガン、ギガントアサルトを発射する。警告するような甲高い音の直後、一本の線のように連射された弾体がまるで吸い込まれるように増殖個体たちへと命中する。
 背部推進ユニットを停止、右肩部のユニットを最大稼働。左脚を軸にして右脚で地を蹴る、強引な鋭角機動。

「ナメんな!」
 敵が口腔から放つエネルギー弾を躱しながら、浅い角度で敵集団へと最大加速で吶喊。小銃型レールガンから持ち替えたナイフ、帯電熱超硬度短刀で敵の胴体を撫でるように切り裂く。

「私のほうが!!」
 サブアームにマウントされていた狙撃砲を握る。銃口の向かう先は――“フルングニル”本体。

「上なのよ――ッ!!」
 加粒子放射。一条のビームが倒れ伏す増殖個体どもの頭上を超えて、“フルングニル”本体の片腕を灼き尽くした。

「胴体を撃ち抜くのは勘弁しといてあげる。そこに乗ってる人は、アンタと違って罪はないわけだしね」

成功 🔵​🔵​🔴​

アルナスル・アミューレンス


へぇ、興味深いねぇ。
マシンだかキャバリアだかの身で、捕食して増殖できるんだ。
蟲かネズミを彷彿とさせる増え方だねぇ。

確かにわらわら増えたけど……
まぁ、どっちが喰われる側か分かってない時点で、動物以下かな。


――拘束制御術式、解放

君らの一切合切、『枯渇(ウバウ)』としよう。


基点は動けなくなるけど、向こうからこっちに来てくれるんだ。
実にありがたいねぇ。
遠慮なく、蹂躙させてもらおうか。

地面下に不定形の異形と化した体を巡らせ、最大範囲まで広げた後、
逃げ場を断つように外周で壁の様に展開。
そうしておけば、他のヒトも楽かなーってね。

後は異形の躰で、腕で、顎で、怪力でねじ伏せ、
砕き、飲み込み、捕食し尽くすよ。



 増殖する“フルングニル”を見た者の反応は人それぞれだが、概ね良い感情を持つ者は少ない。
「へぇ、興味深いねぇ」
 不定形な異形体から、上半身だけ人間体にしたアルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)がガスマスクの中で目を細める。

「マシンだかキャバリアだかの身で、捕食して増殖できるのか……。増え方が似てるねえ。蟲か、ネズミか……」
 拠点(ベース)の内側に蔓延る害悪なる隣人どもの姿を思い浮かべて、首を横に振る。
「この増え方、ゾンビに似てるのか」
 アポカリプスヘルにも出現するオブリビオンの一種だ。一般人がひとたび捕まれば餌食になればまだ良い方で、最悪の場合は動く死骸として彼らの仲間入りを果たし、荒野を延々とさまようらしい。「黙らないとゾンビの群れに放り込むぞ」は拠点の中で暴れる馬鹿を素早く黙らせる常套句だった。

「いやいや、まさか別の世界まで来て本当に“放り込まれる”とはね。全然予想してなかったよ」
 参ったな、と飄々とした様子で頭を掻きながら、迫り来る敵を見遣る。
 肉薄した“フルングニル”の増殖体たちが、アルナスルの不定形な身体へ爪を沈み込ませ、あるいは鋭牙でもって噛み付いて来る――が、アルナスルは肩をすくめるだけだ。

「まぁ、どっちが喰われる側か分かってない時点で、畜生以下か」
 どろり。アルナスルの人間体が溶けるように異形体へと吸い込まれ、黒い影となって波打つ。
          コカツサセル
『君らの一切合切、“奪 う”としよう』

 ――拘束制御術式、解放。

 地面がひび割れ、脈動する。
 地震のような揺れ。戦場の周辺に大きな黒い壁のような迫り上がる。
『さ、おいでよ。捕食のイロハってやつを教えてあげるからさ』
 増殖体が一斉にアルナスルへと襲いかかり、アルナスルはそれらを捕らえ、砕いて飲み込む。
 増殖体が噛みつき、引き裂く。異形体が腕で、顎で捻じ伏せる。互いに生命力を奪い合ってその身を、あるいは数を削り合う。
 逃げることあたわぬ捕食者同士のデスマッチが、そこにはあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱鷺透・小枝子
◎デモニック・ララバイに搭乗操縦。

オブリビオンだ。敵だ。
喰ってるんじゃない!…私が敵だ!!私を見ろォッ!!!

楽器演奏、前方へ爆音の塊を放出。超振動で攻撃。破壊する。
壊してやる!そうだ、お前らを、どいつもこいつも!
オブリビオンマシンは敵だ!壊せ!!

早業、空中浮遊、上空へ推力移動し、敵の攻撃を回避。
跳びついてきた時は戦鎌で防ぎつつ、殺戮音叉を複数生やして串刺しにし、破壊。空から再度爆音の塊を放出し攻撃を続行しつつ『小さな恐楽隊』発動。

音を防ごうとすれば動きが鈍る。奏でろ楽隊!
動体視力と瞬間思考力で思考を回し、眼頭を操り防音壁を展開した敵へ
オブリビオンホーンをつき刺し、超音波の振動で破壊する。



 “フルングニル”を見て、朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)はしばらく動けなかった。
 数多の戦場を渡り歩いた。幾多の地獄を乗り越えた。敵と戦って、殺し合った。時に戦友の遺体が晒し者にされて、戦死者への冒涜へ憤慨することもあった。
 だが、遺骸を糧として増殖を繰り返す“フルングニル”のような敵は、初めてだった。

 ファイア・リグオンを、Coyoteを食い散らかす“フルングニル”どもへと咆哮する。
「……喰ってるんじゃない! 喰うのをやめろッ!」
 いつの間にか、小枝子の乗っていた“ディスポーザブル01”は霧散するように消えて、気付けば彼女はシャープな曲線で形作られたサイキックキャバリア“デモニック・ララバイ”に搭乗していた。

 生き残るために戦う。それは自分も、他の誰かも、そしてあの“フルングニル”たちも同じだ。
 戦って、勝てば生き残れる。負ければ死ぬ。そこまでは共通している。
 だが、あのオブリビオンマシンは敗者を捨て置かず、晒し者にするでもなく、食い散らかす。
 これは誇りある人間同士の戦いではない。人間と、獣の戦いだ。

 次の瞬間、胸の奥から湧き出て来る本能的な恐怖と嫌悪感は闘争心で洗い流されていた。
「壊してやる! そうだ、お前らを――どいつもこいつも!」
 胸部のパルスアトラクターから、爆音波が放出される。大気が揺れ動き、増殖体どもの機体がみしみしと不快な音を立てる。
「――オブリビオンマシンは敵だ! 壊せ!!」

 跳躍。漂うように増殖体どもの頭上を浮遊し――“デモニック・ララバイ”はその身から無数の棘を伸ばした。殺戮音叉と呼ばれるそれは、増殖体どもに鋭く突き刺さると内側から直に振動を伝導させて砕く。
「――奏でて、壊せッ!!」
 爆音波と共に散らばった自律式兵器“眼頭”が、超音波とビームで増殖体たちを攻撃し始める。

 荒野の戦場で、音を響かせ敵を砕く。
 その音はまるで泣き声のように悲しく――あるいは、葬送曲のように響き渡っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と協働

本人は戻りうるか否か
どちらにせよまずは討たねばならんな

戦況は『天光』で常時把握。搭乗者が戻れるか否かも確認
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給

顕現にて討つ
召喚物含むオブリビオンとそのユーベルコードに破壊、味方に創造の原理を
指揮官は戻り得ないなら前者、戻れそうなら後者
判別不能なら『天冥』にて対象自体から除外

後は放っておいてもどうとでもなろうが、相手も動けない訳ではない
なのでセフィリカに無力化して貰うとする
常に破壊されながらでは少なくともまともな動きはできまい
被害はこちらで阻むので、任せる


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)と

圧倒的だ、彼は
戦えと言われたら私は逃げるね
避けられないなら無理とは言わないけど

体調に問題ないとは言ってた
それは、正常な運用をしている限りでは?もし歯車が一つでもずれたら?
私はそれが怖い
(贈ったゲーム、そもそも楽しむって概念、あるのかな)

『肉体的には、セリカと大差ないからね。彼』

…ああもう!戦闘以外で心配させる男だな!
そこまで徹底的にやらなくても、止めてくれればいい!
足止め優先して!私が決めに行く!

スプレンディアの使い時は今だ!
超高速、大出力。稼働6分後総メンテの鬼札だ

最速最短で、突っ切る。本体への道筋を見定めて……、一直線に、切り開く!

【月詠ノ祓・隠神】



 圧倒的の一語に尽きた。
 直径にしておよそ200mほどにいた敵が、音もなく黒の塵と化す。
 その中心に立つのは、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)だ。

「……いささか数が多いな」
 戦場となる荒野は広く、そこに展開された敵の数もまた多い。増殖体の数もそうだが、“フルングニル”たちが召喚する丘の巨人(ヒル・ジャイアント)、ベルグリサルたちが特筆して多い。

「いや、多いなじゃ済まないと思うんだけど」
 大量の敵を目にしたセフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は頭痛を抑えるように額に手を当てる。
「……なるほど。では――極めて敵が多いな。殲滅しよう」
「そうなんだけど、そうじゃない……!」
『諦めなさい、セリカ。彼は私たちとへ別の基準で生きてるわ』
 とっくの昔に諦めたと言わんばかりの魔剣シェルファの言葉に、少し遠くを見つめて黄昏れたくなる。

「いずれにせよ、オブリビオンマシンは多寡に関わりなく討たねばならん。サポートする。セフィリカ、やれるか?」
「……“スプレンディア”を使えば、やれる」
 何か言いたげだったのをぐっと飲み込むように、セフィリカはうなずきを返す。

「本体がいて、残骸がある限り増殖は止まらないだろう。止めるには本体を叩く他ないが、増殖体に守られている」
「なら、私たちの役目は敵の漸減ね。――行こう!」
 ファイア・リグオンのハッチからセフィリカが飛び出すと、虚空から紫水晶の戦姫が如きサイキックキャバリア、“スプレンディア”が現れてセフィリカをその中へと招き入れる。

「――成れ」
 アルトリウスの周囲に漂う、淡い光が飛散する。増殖体とベルグリサルどもに光が触れたかと思うとぐらりと膝を付き、その身体を維持できぬとばかりに脆く砕ける。

 その光景を見て、セフィリカは唸るような声を上げる。
「凄まじい力……」
 圧倒的だ。もし戦う必要があっても、自分は逃げることしかできないだろう。
 無謬の完全性が目の前にあるように思えた。
 そう思えたと同時に、セフィリカはその完全性を疑っていた。
 どんな機械でも誤動作は起きる。すさまじい馬力を誇る装置も、ネジが一本外れればただのガラクタと化す。そういう世界でセフィリカは生きてきた。己を最強と自負し、無敵の存在と豪語するオブリビオンたちを屠る猟兵たちを見てきた。
「あの力が、もしも歯車一つでもズレてしまったら……?」
 機能しなくなるだけなら可愛いものだろう。一番怖いのは暴走だ。何人束になろうとも御し切れる力ではない。
『肉体的にはセリカと大差ないからね、彼。肉体への過剰な負荷で……なんて、ありえない話ではないわ』
「戦闘中に不安になること言わないで欲しいんだけど……!!」
 シェルファの言葉で焦燥感を駆り立てられて、セフィリカはブーストを起動する。

 周囲の敵が塵と化し、再び無人となった荒野を一機の戦姫が征く。
 空は飛べない。ゆえに精霊魔法を補助として、“スプレンディア”は駆け抜ける。
「一式改・隠神――!」
 甲高い金属の音。一条の軌跡。直線上の増殖体とベルグリサルたちが、両断されて黒の塵へと還る。神速の居合斬り。
 敵集団を高速で突っ切って、その刃が届く限りの敵を切り裂き破壊する。その様、まさしく彗星の如く。“スプレンディア”は限りある6分間を駆け抜ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玉響・飛桜

※他キャラ特に新世界学園所属のキャラとの絡み歓迎

だから!被ってるでござる!コンセプトが!しかも負担なし際限なしで頭数増やしやがるでござる!こっちは増やし過ぎたら負担が出るの、に…?
うわ…キャバリア食ってる…グロ…パクリじゃないでござるな…もっと気色悪いでござった。
よし、トランペッター。例の新技やるでござるよ。
奥の手その二!分散和音(アルペジオ)!
やつの頭部や脚部やらにトランペッターの頭や腕、脚とかを生やすでござる!
んで同型機多重同時操縦機能で奴の身体のコントロール奪うでござる!
同士討…いや共喰いでもしてろでござる。
んでコントロールしてる機体がダメになったら他の機体を同じようにして共喰いで


御門・白

尽きせぬ闘志。
死したるキャバリアを喰らい、その血で儀式を行うもの。
あれは、刑天。
―――……対呪術戦を開始

敵の攻撃をいなし【カウンター】気味の【暴力】を叩き込んで
……どんどん、攻撃が通りにくくなってる
それにあれは、あやかし殺しの概念。厄介な攻撃
でも。【呪詛】の分野で私とツクヨミは負けませんけれど

地雲薙剣を喚んで
敵の無限にも等しいエネルギーを【切断】
舞うように切り結びながら
≪月詠久遠衣≫を纏います

切り結び、攻撃を叩き込むたびに敵の躯体は刻を経て風化していく
これは私が与えている傷じゃない
時間は先へ進む、というごく自然な理です
耐性の得ようもないでしょう?

過去は過去へ
急々如律令



 まるで獣だ。
 その場にいた誰しもが、“フルングニル”とその増殖体を見てそう捉えた。
 荒野に転がる鋼の骸を貪っては、その数を増やす。生きているはずもない存在であるにも関わらず、おぞましいまでの生命力が伝わってくる。

「まーたコンセプト被りかと思ったら……いやーこれはちょっとナシでござるな」
 サイキックキャバリア“トランペッター”のコックピットの中で、香るはずのない悪臭に鼻を覆いながら玉響・飛桜(カゲロウ・f30674)は眉をしかめる。
「というか、近似のものとして分類しないで欲しいやつでござるよコレ。グッロ……」
「……闘志尽きせずして、死したるキャバリアを喰らい、その血で儀式を行なう者――すなわち、刑天。油断は、できませんね」
 ゆらりと現れたのは、御門・白(月魄・f30384)の駆るオブリビオンマシン“ツクヨミ”だ。

「“トランペッター”で頭数を多少増やしたところで、これはちょっと難しそうでござるなぁ」
「……交代しましょう。私が急襲します。あなたが援護を」
「あまり連携は得意ではござらんが、承知したでござる」
 “トランペッター”へと頷きを返し、「では」と“ツクヨミ”は構えを作る。

「――……対呪術戦を開始します」
 黒い装甲の上に、夜のように黒い羽衣のようなものが現れる。キャバリアらしからぬひらひらとはためくそれを纏って、“ツクヨミ”は敵集団へと吶喊した。
 序盤は圧倒的だった。敵の爪牙をうまくいなし、カウンター気味に拳を叩き込む。“ツクヨミ”の纏う夜闇の衣が撫でるだけで、敵の装甲は風化して動きが鈍り、脆くなる。
 しかし、撃破数が十を超えた辺りから状況が変わり始めた。

「……どんどん、攻撃が通りにくくなってる」
 こちらの攻撃を見切った防御や回避などの対応が始まったのはまだ序の口。敵の胴体に貫き手を叩き込んでも、強い弾性で弾き返されるようになってきたのだ。敵も学習し、適応しているのだろう。
 同じ手が通用しない。このままでは不利だと悟った“ツクヨミ”が下がる素振りを見せると、それを好機と見て増殖体が襲いかかってくる。

「……地雲薙剣」
 手をかざして銘を呼べば、虚空より刃が現れる。不死殺しの権能を帯びた剣は回転しながら襲いかかる敵を薙ぎ払って、“ツクヨミ”の手に収まる。
 だが、それで対処できたのは精々が一列程度。黒い塵と化す屍を乗り越え、次から次へと増殖体が迫り来る。

                   アルペジオ
「させないでござるよ! 奥の手その二、 分散和音 !」
 後方にいた“トランペッター”が印を結ぶと同時、増殖体の四肢から新たな腕が、脚が生え始めた。印が変化すると同時、生えてきた脚が大地を蹴り、腕が隣の敵機を掴む。出鼻をくじかれて敵機たちは次々に転倒してしまう。
「せっかく作った好機、これだけで終わりじゃないでござるよ!」
 結ばれる印が再び変化すると、増殖体の一体の動きが止まった。背中に生えているのは“トランペッター”と同型の頭部。制御系を乗っ取ったのだ。
「同士討ち――いや。共食いでもしてろ! でござる!」
 乗っ取られた増殖体が、隣の増殖体に噛み付く。予想外の方向から攻撃を受けた敵陣は、大混乱に陥り始める。

 こうなってしまえば、波濤の如き数の暴力も烏合の衆同然だ。
 剣を手にした“ツクヨミ”が舞うように敵陣を駆け巡り、切り伏せる。
「……過去は、過去へ。急々如律令」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート


オイオイ、随分と大飯食らいなのがいやがるな
テーブルマナーの基本くらいは学んでから来た方が良いぜ
っかし、"獣"ね…他人の気がしねえな
だがまぁ、ナンセンスだ
人の世には相応しくない──撃滅だ

ありゃ数が増えるだけじゃねえな
進化し、適応するだけの力がある
だったら逆手に取る必要があるってわけだ
エクストラストレージ開放、電霊同期
変換式を展開──完了
幻想励起──『運命はひっくり返る』

何、なんてことはない
お前を強くしていた何かもが、この瞬間弱みに変わっただけさ
獣は何時か放逐される…俺も、お前もいずれな
仕上げと行こうか
今なら防壁も反撃も碌に機能しねえだろ
【ハッキング】でシステムを完全に堕とし、終わらせてやる


牙・虎鉄

――獣のようだな。
お前と似ている。
《群れる仔犬風情と一緒にするな、不愉快だ――まこと、実に不愉快だ。》

連中のエモノがか。
(群体から聞こえる着装・装填音。遠距離武器の類。此方が肉弾戦のみで戦うと見ての装備か。)
《左様――笑止千万。故に小僧》

《此れより連中に"禁"を科す。時間内にケリを付けてこい》

――承った。

(――影から波動が飛ぶ。キャバリアであれば凡そ5m以上の射程を持つ攻撃全般が無為となる。当然泡を食うだろう。その間に肉薄し――)

(蹴撃、肘撃、背撃、拳打、掌打。縦横無尽に駆け抜け機甲纏う拳脚を振るい、敵を殲滅する。【グラップル】)

――50秒。
まだまだ修行が足りぬか。



 猛る“フルングニル”の咆哮が耳朶を打つ。
「――獣のようだな。お前と似ている」
 牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)の言葉に“シャンユエ”が抗議するように揺れる。
《群れる仔犬風情と一緒にするな、不愉快だ。――まこと、実に不愉快だ》

 言葉を交わしながらも、意識は戦場に向いている。群体から聞こえて来る音。内蔵されてるのは、着装音と装填音から察するに遠距離で使用できる銃火器の類だろう。
「……こちらが肉弾戦のみで戦うと見ての装備か。成程、お前が気に食わんと喚くわけだ」
《左様。花拳繍腿にも劣る児戯よ》
 ゆえに、と影が揺らめく。
《これより連中に“禁”を科す。時間内にケリを付けてこい》
「――承った」

 影から黒い波動が放たれると同時、虎鉄は駆ける。
 増殖体たちの顎門が開かれ、そこから現れた銃口が虎鉄へと向けられて――しかし、いつまで経っても銃弾は撃ち放たれなかった。
《己が手で鍛えし武以外を頼みにするとは笑止千万! 汝らの武器に縛りを科す!》
「これよりこの場は武道の世界。己が四肢でもってその武を示せ」
 蹴撃。増殖体が横へと吹き飛ばされ、倒れ伏す。流れるように別個体へと肘打ちが打ち込まれる。目の前の敵へと闘争本能に従って爪を伸ばした増殖体の腕が裏拳でねじれ、続く虎鉄の拳打が胴を穿つ。

 何十といる敵機の中で縦横無尽の大立ち回りをしてみせる虎鉄の様は、まさしく獅子奮迅。だが――
《そら。もう刻限だ》
「……わかっている」
 多勢に無勢であることもまた事実。十の敵機を薙ぎ倒そうとも、また新たに十の敵が生み出される。いたちごっこよりなおタチが悪い。
 敵も混乱が落ち着いて、銃器が使用できるようになったことに気付いた頃だ。そろそろ離脱するべきか――そう思考し始めた矢先に、目の前を何かがよぎった。



 敵機に命中するなり弾けたそれは、水弾だ。
「オイオイ、人がコードの準備してる間に随分と大飯食らいなのがいやがるな」
 忌々しげに呟きながら、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は敵群を睨めつける。
「貪って力を付ける“獣”。……他人の気はしねえが、ナンセンスだな」
 彼はその指に挟んだ霊符へと、電子的なコードを走らせる。

 エクストラストレージ開放、電霊同期。
 変換式を再展開──完了。
「人の世には相応しくない。──撃滅だ」
 幻想励起――『運命はひっくり返る』

 霊符が放たれると同時、目の前の増殖体どもへと水弾の弾幕が襲う。一撃一撃の火力は低く、敵を撃滅させるに足るものではない。ヴィクティムの放ったユーベルコードの真価は、もっと別のものだ。
 ある増殖体が戦場に転がるキャバリアの残骸を喰らい、その数を増やそうとして――しかし、黒いもやのようなものは機体の形をなさないまま崩れ去った。
「最高効率の害獣駆除方法を教えてやるよ。――去勢だ」
 水弾の効果は単純。ユーベルコードの効果を反転させるものだ。
 増殖を阻止され、あまつさえどんどん脆くなっていく敵機たち。防壁も、内蔵兵器も崩れ去って黒い塵へと化していく。

「テーブルマナーの基本ぐらいは学んでから来た方が良いぜ」



《千載一遇とはこのことよ。小僧、核を叩くぞ》
「言われるまでもない」
 “シャンユエ”を纏った虎鉄が一直線に荒野を駆ける。
 増殖体を掻き分けるようにして目指す先にいるのは――“フルングニル”本体。

 虎鉄の放つ掌打が胸部装甲を砕く。
 反転のユーベルコードによって弱化した装甲は、オブリビオンマシンのものとは思えぬほど脆かった。

 砕いた装甲へと貫き手を放ち、“フルングニル”の胸部装甲の先へと潜り込ませ――掴んだ。
「――これだ」
 勢いよく引きずり出されたのは、一人の男。この事件の原因でもある、“フルングニル”のパイロットだ。
 がくんと“フルングニル”が倒れ伏す。それと同時に、増殖体が次々に黒い塵となって散っていく。

「……終わったか」
 オブリビオンマシンに乗っていた男を一瞥する。散々“フルングニル”に利用され尽くしたであろう男は、死んではいないものの気絶した状態だった。
《結局開花もせずに至らぬままか。……しかしまあ、いい刺激にはなっただろう》
「対多戦の経験にはなった」
 装甲化の解除された己の手を見下ろし、虎鉄は呟く。
「いくら敵が多かれど、磨き抜いた己が武を信じて振るうのみだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月01日


挿絵イラスト