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嘆きの天牢雪獄

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●しんしん
 ひとひら。小さな花びらのような雪片が舞い落ちた。
 この辺りでは、雪なぞ滅多に振らない。
 村人たちは最初「珍しいことがあるものだ」としか思わなかった。
 けれど雪は次第に吹雪へと変わり。
 まるで意思持つ何者かがそうしたように。
 いつまでもいつまでも、降り続いた。

 やがて井戸は氷り、実りを得られず僅かな備蓄も底をつく。
 飢えと寒さが村人たちを襲った。

 ある家では、最後の時が迫るのを感じながら、家族が身を寄せ合う。
 こごえる幼子を抱きしめる母親もまた震えていた。
 暖炉の火は小さく、もうじき消えてしまうだろう。
 薪はもう無い。
 外へ出て焚き木を探すことも叶わない。
 深々と積もった雪は、出入り口を塞ぎ家人を閉じ込めた。
 家の中にある燃やせるものはすべて使った。
 椅子を砕き、テーブルを割って、わずかな家財を薪にして……それでも足りない。
 火が隙間風に揺れるたび、人々は絶望の表情を浮かべる。
 瞳からこぼれた涙さえも凍りつく。

 みし、みし。ぎしり。

 雪巻く風に家は揺れ、積もった雪の重みで屋根がいやな音を立てた。

 しかしやがて。音は絶え。

 すべて雪に閉ざされる。

●グリモアベース
「ダークセイヴァーにて、吹雪により村が滅びようとしている」
 とぷん。クック・ルウ(水音・f04137)は重い水音を立てた。
「自然現象ではない。雪は、オブリビオンの仕業だ。村人全ての命を奪うまで、止むことはないだろう。だが今なら、間に合う」

 凍える人に、ぬくもりを、糧を、知恵を。分けてはくれないだろうか。
 雪に閉じ込められた人々を救い、元凶たるオブリビオンを討つこと。
 それができるのは、猟兵達だけだ。

「村を襲う無数の影も視えた。戦いの準備は万端に」

 どうか彼等の絶望を払ってくれ。願うように小さく告げて。
 クックはグリモアを翳し、猟兵の転移をはじめた。


鍵森
 ご覧頂き有難うございます。鍵森と申します。
 今回は、ダークセイヴァーでの事件となります。

 第1章、雪積もる村での救助活動。
 第2章、村を襲う敵との集団戦。
 第3章、『往生集め『エルシーク』』とのボス戦です。

 村は閑散としており、辺りは荒野が広がっています。狩りをするならば数は少ないですが、鹿や兎などの動物がいるでしょう。
 寒さに凍え、衰弱している人が多いため、村人の協力がいる作業は難しいかもしれません。
 また普段なら比較的温暖な気候の土地のため、雪に対する知識は乏しく、防寒具の用意やこしらえかたも覚束ないようです。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしています。
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第1章 冒険 『白に沈む村』

POW   :    雪かきや屋根の雪下ろし、薪割り等の肉体労働を行うなど

SPD   :    狩りで食料を入手する、温かい料理を作るなど

WIZ   :    体調不良の村人を救護する、寒さ対策の情報を啓発するなど

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カリオン・リヴィエール
まず、家々の雪かきを行う。外に出られる体力のある者は毛布等を渡して外に出てもらう。体力のない者は家の中で待機。雪は音を吸い込んでしまうので、ある程度雪の壁が薄くなったところで、ユーベルコード【シンフォニック・キュア】を発動させある程度の体力を回復させる。また、出来るだけ女子供を優先させる。


ルセリア・ニベルーチェ
アドリブ歓迎ですの

この手のやり口で襲うとは陰湿な敵ですね、これは討伐しなければ。
寒さは姿無き魔物、音も無く忍び寄り弱きもの、小さきものから
連れ去って行く……この村に冬は来させないわ。

ルセリアさんは、得意分野で何とか貢献するとしましょうか
範囲攻撃・属性攻撃・念動力で村の上に疑似的な炎の太陽を作り
村の暖と、雪を溶かすのに利用するとしましょうか。

後は黒剣で木々を怪力で切り刻みつつ、薪でも作りましょうかね?
枯れ木が多いと助かるのですが、火のつきにくい生木は
生命力吸収で程よく手を加えるとしましょうか。


ルーヴェニア・サンテチエンヌ
わたくし1人では覚束ないので…できれば、他の方と協力したいですわ。
雪の降る国ですら大変なのですもの、普段降らないなら尚更ですわ。とにかく、まずは体を温めてもらいましょう。今回はSPDで行動させていただきます。
料理であれば、修道院でお手伝いしたことがありますわ!
もし食材が足りない場合は狩りに協力させていただき、【気絶攻撃】でなんとかできれば…良いのですけれど…不安ですわ。


リリウム・コルネリウス
・救護と寒さ対策重視
最終的に薪割り・狩りの面で村人の協力が得られる状態にしたい

まず、暖炉の火に薪を足す
「皆さん、薪を持ってきました!」
次に村人各々の家にあるもので、隙間風を防ぐ
その他、熱した石を水に漬ける等して家の温度を上げる
準備不可なら私の服を燃やし、凍傷等外傷があれば生まれながらの光で回復
首、脇の下、内太腿といった大動脈を冷やさないように指示
村人が散開しているなら、一か所に集まるよう指示し人の熱で互いを温める
「(散開されているより、護りやすい筈)」
可能なら石やメイスを熱し、カイロ作成

敵:聖銃で遠距離攻撃

他者と共闘・協力歓迎


彩花・涼
ただでさえ暗闇の世界で更に吹雪とは…本当にオブリビオンはロクなことをしないな
まずは人々を救出しないとな

予めある程度の材料を持っていき【料理】で温かいビーフシチューを作ろう
牛肉は所属旅団の牛肉をもらっていくぞ
大きな鍋も用意して多くの人々に行き渡るようにする
「まずは全員、体を温めてから作業しよう」

食材が足りなくなれば、動物の痕跡を【追跡】して【地形の利用】で動物の通り道に罠を設置したりして食料を確保しにいく
作業している人たちの空腹状態を把握しながら、料理を作り続けるぞ

人々の生活が安定したら、元凶を倒しに行こうか


フェン・ラフカ
一面に広がる白銀の光景は懐かしさを感じさせますが、それはここには似つかわしくない物です。


何をするにしてもまずは拠点です。
当然ではありますが建物は寒冷地に向いた物ではありません。
これならばいっその事『カマクラ』を建てた方がマシかもしれませんね…
これなら周囲の雪かきや屋根の雪下ろしをしながら避難箇所が作れて一石二鳥です。


中央に焚き火を作れるように広場を作り、その周囲に作れるだけ数人が入れる大きさの『カマクラ』を作ります。
出来上がった物には小さな火鉢、もしくは耐火性のある物を置いて火を着けて中を順次暖めていきます。

「食事も大事ですが、まずは寒さを凌げる場所です!」

※絡み・アドリブ等歓迎です。


ユリウス・リンドグレン
雪の匂いは好きだけど……これはよくない匂いがするな。美しくない。

ここは俺がこの村をいい色で美しくしないとな!
さて……まずは美味しい食事からだ。
凍えるほど寒い日には温かいご飯が人を幸せの色でいっぱいにするんだ。俺はそういう絵のが好きだ!
野生の勘で動物の住処を見つけ出し、食料の確保だ。
料理は他のやつに頼むが、盛り付けなら任せろ?俺の最高のアートで更に美味しく美しくしてやるからな!
冷えた体があったまれば、活力も湧いてくるだろ?



 転移を終えた猟兵達を荒々しい風雪が迎えた。
 身を刺すような冷気。けれど、それに怯むものはいない。
 ある者は明かりを灯し、ある者は荷物を運び、ある者は仲間の手を握った。
 吹き荒れる風に立ち向かうように、一同は深い雪に埋もれゆく家々を目指す。

●雪の使い道
 最初は空耳だと、少年は思った。
 なんだか家の外がにぎやかだ。
 雪が降ってから、ずっと静かだったのに。
「おかあさん、なにか聞こえるよ」
 抱きしめる母親の腕の中から、少年は顔を出した。
 扉が開く。
 見たこともない女の人が立っていた。

「ほら、毛布だよ。今から雪かきだ。外に出られそうな元気のある奴は手伝え」
 カリオン・リヴィエール(石を愛す者・f13723)は、声を掛けながら持ってきた毛布を家の中に置く。
 一家は怯えるような戸惑うような顔をして、火が消えかけた暖炉の前に座り込んだまま固まっている。
 助けが来たことも理解できないのか、もしくは具合がわるいのかと顔を見れば、キョトンとしたまばたきが返ってくるばかり。
 よく見れば、家族が被っているのも継ぎ接ぎの布だ。カリオンは一度置いた毛布を拾うと手で広げ、有無を言わさず一家にかぶせた。
「巻いておけ。じきに焚き木も届く」
 言い置いて、外へ出ようとするカリオンの耳に、か細く震えるよう声が聞こえた。
「……こんな上等なものを……良いのですか……?」
「好きに使え。もう、お前たちのものだ」カリオンは硬い声で言った。


「何をするにしてもまずは拠点です」
 雪かきや屋根の雪下ろしで出来た雪の山を村の広場に集めているのは、フェン・ラフカ(戦場傭兵な探索者・f03329)だ。
 当然、この村の建物は寒冷地に向いた物ではない。
 ならばいっその事『カマクラ』を建てた方がマシかもしれない……。と彼女は考えた。
「これなら邪魔な雪も利用でき、避難箇所も作れて一石二鳥です」
 フェンは広場の中央には後で焚き火を設けられるように場所を開け、周囲を囲むようにカマクラを作っていった。
 故郷で覚えたのだろうか。フェンが作ったカマクラは本格的な作りになっていて、ドーム型の雪の家といってもいい程の出来栄えだった。
 分厚く頑丈な壁は風を通さず、中は火鉢で暖められており。体を休められるようにスペースは広く、下は体を冷やさぬように敷物が引いてある。横風が入らないように入り口に布をかけてはいるが、天井にはちゃんと換気用の空気穴もあった。
 これなら村人を集めることも、猟兵達の拠点にすることもできるだろう。
「食事も大事ですが、まずは寒さを凌げる場所です!」
 十分な量を作り上げると、フェンは休むことなく潰れてしまいそうな家々を回り、村人をカマクラの中へと迎え入れていった。
 カマクラが足りなければまた作ることもできるだろう。
 なにしろ雪だけはあるのだから。

 雪は、まだ止まない。
 フェンは重苦しい雪雲に覆われた天を見上げた。
「一面に広がる白銀の光景は懐かしさを感じさせますが、それはここには似つかわしくない物です」

●刃と光
「この手のやり口で襲うとは陰湿な敵ですね、これは討伐しなければ」
 凍える人々を目の当たりしたルセリア・ニベルーチェ(吸血鬼嬢は眠らない・f00532)は、オブリビオンへの静かな怒りと戦いへの決意を深める。

 寒さは姿無き魔物、音も無く忍び寄り弱きもの、小さきものから連れ去って行く……この村に冬は来させないわ。

 薪が足りないならば、と彼女が向かったのは村外れだ。周囲は荒野に囲まれてはいたが、数本の木であればすぐに見つけることができた。
 十二の黒刀が、雪に埋もれた木を切り刻む。
 無数の刃を手と念力で優雅に操る。その姿からは想像もつかない怪力で、幹を両断し、返す刀が枝を落とす。切り裂かれた白雪が、ルセリアの周囲を舞った。
 あっという間に、山程の薪が積み上がる。
「でも、このままじゃ燃えにくいものね」
 ルセリアは刀を仕舞い、ゆるりと手を閃かせた。
 その掌から、生命力を吸い取れば、木々はすぐに乾いて枯れていく。
 からりとするまで絞りとった薪ならば、さぞかしよく燃えることだろう。
「さあ、これでいいわ」
 薪の準備が整ったと、ルセリアは仲間へ伝えた。


「皆さん、薪を持ってきました!」
 リリウム・コルネリウス(矛盾だらけの理想主義者・f03816)は腕一杯に薪を抱えて、家々を回った。
 暖炉の火を焚き、リリウムは隙間風の塞ぎ方や、熱した石を使った暖房の仕方を教えた。
 聖者である彼女を警戒する者は少なく、村人たちは話に耳を傾ける。
 「広場に集まってください。後で食事も用意しますからね」
 どの家でもリリウムは、必ずそう伝えた。
 ある家を訪ねると、中にいた女性がリリウムの前へ祈るように跪いた。
 訳を尋ねれば、女性は嗚咽混じりに訴える。
「ああ。ああ。どうかお助け下さい。夫の手足が赤く腫れ上がり治らないのです」
 流行病なのかと、女性は怯えていた。
「見せて下さい、手当をしましょう」リリウムは女性を立たせて部屋を案内させた。
 寝台に寝かされた男性を診てみると、確かに手足に腫れがある。
 凍傷だ。
 これは極度の低温に長時間さらされると起こり、悪化すれば命の危険もある。
「首、脇の下、内太腿といった大動脈を冷やさないようにして下さい」
 リリウムは患者の手当をしながら、女性に凍傷になった時どうすれば良いか説明する。
「部屋を暖めましょう。暖炉に火を起こして石を入れますね」
 熱した石を、水が入った鍋や桶に投じれば、蒸気が部屋を暖め、お湯を長く保たせることもできるだろう。
 リリウムは丁寧に治療法を指示した。また同じような事が起きた時、自分達の力で命を守れるように、知識を伝える。
 しかし症状が重ければ、治療が間に合わないこともある。
 男性が、苦しげにうめいた。
 時間がない。
 そう判断したリリウムは、瞳を閉じて。聖なる光を男性へと浴びせた。
 光が、みるみる内に男性の身体を癒やしていく。徐々に苦しげだった顔が穏やかなものとなり、患部の腫れが嘘のように引いていった。

 何度も感謝の言葉を繰り返す女性へ頷くと、リリウムは次の家へ向かう為に立ち上がる。
「他にも同じ症状の方がいれば教えて下さい、すぐに参りますから」
 力を使った代償による疲労を隠して、優しく微笑むのだった。

●狩人達
 足りない食材を集めるために狩りへ出た者もいた。
「雪の匂いは好きだけど……これはよくない匂いがするな。美しくない」
 ユリウス・リンドグレン(フードペインター・f13837)が雪原を見やって、鼻をふすりと鳴らす。
 薄暗い影が降りた雪原は灰色の砂漠のような光景だったが、ユリウスが言っているのはもっと抽象的なことなのだろう。
 野生の勘を頼りに雪に埋もれろくな目印もない場所を、迷いの視えない足取りで進んでいく。
 その後ろをルーヴェニア・サンテチエンヌ(人と狼の狭間が産む讃美歌・f13108)がはぐれないように付いて行く。
「雪の降る国ですら大変なのですわ」
 狩りの手伝いができないかとやって来たのだが、雪の上を歩くのは想像以上に大変だ。足は雪に沈み、視界は舞い散る雪が邪魔になる。
 村の人達はもっと大変だったことだろう。ルーヴェニアはその苦しみに思いを馳せた。
 すこしだけ、足取りが重くなる。
 その思いの揺れを感じ取ったかのように、ユリウスは振り返り「俺の足跡の上を歩くといいよ」と小さな同行者へアドバイスを送った。
 ルーヴェニアは、嬉しそうにしっぽをふりふりさせた。

 動物の巣を見つけた二人は、協力して鹿を狩った。
 大きな獲物だ。皮は加工もできるし、肉が残れば村の蓄えにもなるだろう。
 獲物を抱えて来た道を戻っていくと、彩花・涼(黒蝶・f01922)と出会った。
 彼女は罠を張って、兎を獲っていたところだった。


●腹を満たすということ
 カマクラに囲まれた広場の中央では火が焚かれ、炊き出しが行われていた。
 村人達が暖を取りながら、湯気を立てる熱いビーフシチューを口へ運んでいる。
 次の作業を始めようとするユリウスとルーヴェニアを涼は留めた。
「まずは全員、体を温めてから作業しよう」
 そう言うと涼は、ユリウスとルーヴェニアにビーフシチューが入った皿を差し出した。
「君達は狩りで体が冷えただろ? だからまずは食べて体を温めたほうがいい」
 たしかに雪原を歩いてきた体は冷え、体力を消耗した。そしてビーフシチューの美味しそうな匂いは、食欲を刺激する。 
 だが、村人達に用意したものを自分達が食べていいのかと、ルーヴェニアは迷う。
「それじゃ、頂くよ」ユリウスが皿を受け取った。
 戸惑うルーヴェニアと目を合わせて、彼はやわらかく笑う。
「冷えた体があったまれば、活力も湧いてくるだろ?」
「! そうですわね」なるほど、とルーヴェニアは頷いた。

 救助が終わっても、その後にはオブリビオンとの戦いも起こるはずだ。
 きっと長い一日になる。
 助けに来た側も適度な休息や食事をしなければ、もたないだろう。
 ビーフシチューは、とてもおいしい味がした。

「牛肉は旅団から持ってきたものだが、現地で手に入れた獲物の調理法は、村人に聞くのがいいかもな」
「料理であれば、修道院でお手伝いしたことがありますわ!」
 調理法について話し合うルーヴェニアと涼へ、ユリウスは大きく頷いた。
「料理は他のやつに頼むが、盛り付けなら任せろ? 俺の最高のアートで更に美味しく美しくしてやるからな!」
「じゃあユリウスさんはトッピングと配膳の担当ですわね」

 食事を終えて三人は別々に別れ、それぞれ行動に移った。
 ふいに強い風が吹く。雪を舞い上げ一瞬視界を白く染めるような、そんな風だ。
「ただでさえ暗闇の世界で更に吹雪とは……本当にオブリビオンはロクなことをしないな

 涼はその場にいない敵へ向かって低く呟いた。
 けれど、必ず。
 この雪を止めてみせよう。

「凍えるほど寒い日には温かいご飯が人を幸せの色でいっぱいにするんだ。俺はそういう絵のが好きだ!」
 ユリウスは宣言する。
 赤い火を囲み、見たこともない美しい盛り付けの料理をしげしげと眺める瞳、湯気を立てるカップを両手で包みこんでスープを飲む老婆のほころぶような笑み、子どもたちの歓声がひびき、大人達はまるで夢のようだと笑っている。
 そこにはユリウスが求める光景が、たしかに出来上がりつつあった。


●光
 未だ深い雪の残る場所へ、ルセリアは足を向けた。
 屋根の雪を下ろし、埋もれていた壁や道を掘り起こし、雪に沈んだ村を救った。
 けれども雪はまだ容赦なく降り続けている。

「ルセリアさんは、得意分野で何とか貢献するとしましょうか」
 呟いて、指先にまるい火球を生み出す。
 上空へ飛んだそれはルセリアの力によって、巨大な炎へと膨れ上がった。
 カマクラのある広場を避けてはいたが、その熱と光を村人達は感じる。

 それは夜と闇に覆われた世界に現れた太陽だった。

 手をかざし、その眩しさに天を見上げる人々の耳に、
 風にのってどこからか、うつくしい歌声が聞こえてくる。
 カリオンの歌声は、耳を澄ませて聞き入る人々に力を与えた。

「あたたかい……」
 手伝いに駆け回っていたルーヴェニアは、足を止めると声に合わせて、遠くの声に合わせて歌を口ずさむ。

 歌声は、どこまでも遠くへ響いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

「被災地の支援に行くときは、被災地の方々の迷惑にならないように、物資は現地調達ではなく、あらかじめ調達しておくのが常識です」
別世界から調達した物資を運搬できれば良いのですが、それが出来ない場合は、近隣の村々を巡って物資を購入したり、雪がまだ降っていない地域で弓で動物を狩ったりするとしましょう
近隣の村々や雪がまだ降っていない地域がどんなに遠くにあっても私には問題ありません
なぜなら、私には土の精霊さんを宿したゴーレムさんたちがついているからです!

ゴーレムさんたちに運んでもらった大量の材料を利用して、部族に伝わるお肉と野菜の暖かいスープを作って村人さんたちに笑顔で振る舞います


エウトティア・ナトゥア
【獣人同盟】で参加

腹ペコは可哀想なのじゃ
早急に食事と暖を取れるようにしないといかんのう
スピレイルの作る暖かいスープは良い考えじゃの。わしもスープを作るのじゃ

そうと決まれば材料集めじゃの!
わしの能力の及ぶ限りの狼を呼び出して材料を集めるのじゃ
(狼達に指示を出す)
お主ら、ちと狩りに行ってきてくれんかのう?
周辺から動物や野草と柴を獲ってくるのじゃ!
ついでじゃ、他の猟兵が活動しやすいように村の中だけでも通行に支障がないよう雪かきをしておくれ

わしは、狼達が調達してきた材料を使って、竈を組んでスープ作りじゃ

スピレイルや、こうやって野外でスープを作っていると故郷を思い出すのう


ライヴァルト・ナトゥア
【獣人同盟】で参加

【SPD】、料理技能を使います

なぜスピがそんな心得を知っているのかは知らないが、概ねその通りなので野暮は言わないことにしよう
(村の近隣での狩は避けて、極力遠出する。運搬は召喚した狼と一緒に、血抜きなどの下処理は終えてからね)
このスープを妹達も当たり前のように作るようになったと思うと少々感慨深いね。もう1、2年前はまだ包丁を持つことすら覚束なかったって言うのに。時が過ぎるのは早いものだ。もう数年もすれば、俺もウザがられたりするのかな
(益体も無い事を考えつつ、調理を進めていく。流石に妹にはまだ負けられないしね)
さて、こんなものかな。うん、良い味だ。きっと村人達も喜んでくれるだろう



●兄と妹達
「被災地の支援に行くときは、被災地の方々の迷惑にならないように、物資は現地調達ではなく、あらかじめ調達しておくのが常識です」
 スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)は、どこかで覚えたらしい心得に則り、持てるだけの荷物を持って村を訪れた。
 ライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)はそんな妹の言葉に(なぜスピがそんな心得を知っているのだろう)と思ったが。小さな体で一所懸命荷物を抱えるその姿を見ると、野暮は言えなかった。
 妹のがんばりを尊重するライヴァルトは、さりげなく荷物を半分もってやり、もう一人の妹であるエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)と微笑ましげにこっそりと目配せを交わしたのだった。

 荷解きをして、必要な物資を他の猟兵に渡したり村人達へ配り終える頃には、村の広場にカマクラや焚き火が出来上がっていた。
 他の者達と協力して衰弱した村人を家から連れ出し、火の当たるそばへ運ぶライヴァルトの後ろをついて歩きながら、スピレイルとエウトティアは相談をはじめる。
「腹ペコは可哀想なのじゃ。早急に食事と暖を取れるようにしないといかんのう」
「材料はたっぷり持ってきましたから、これでスープを作りましょう!」
「暖かいスープは良い考えじゃの」
 双子の姉妹はこれで決まりだと頷きあった。
 しかし、物資はかなりの量を用意していたのだが、村人全てに振る舞うには少し心もとないような気もした。
 それならば、狩りに出ようと提案したのはライヴァルトだ。
「できるだけ村の遠くにいる獲物を狩ろう」
 それはスピレイルがはじめに言った心得を汲んでの提案だったのだろう。
「お兄様……、では私は弓を使いますわ」
 スピレイルは嬉しそうに笑うと弓を持って、ライヴァルトと共に狩りへと向かった。

「それではわしは竈の準備をしようかの」
 村に残ったエウトティアは、その力を使って狼の群れを喚び出した。
 天狼の巫女の名の下に現れた狼達は、エウトティアの周りを囲んで座る。
 彼女は近くに居た一頭の頭をなでてやり、狼達へ指示を出した。
「お主ら、ちと狩りに行ってきてくれんかのう?」
 お任せ下さい。とばかりに狼達は尻尾を振り、小さく吠える。
「周辺から動物や野草と柴を獲ってくるのじゃ! それから、残っている雪かきをしておくれ!」
 最後の合図にエウトティアは犬笛を吹けば。
 忠実で賢い獣達は、役目を果たすべくそれぞれ駆け出していくのだった。

 そして、準備は整い。
異世界から持ち込んだ物資と、皆で集めた材料を使って、三人はスープを作る。
 石を組んで作った竈の上に鍋を乗せ、中身をかき混ぜなから、ふいにエウトティアは微笑んだ。
「スピレイルや、こうやって野外でスープを作っていると故郷を思い出すのう」
「ふふ、そうですねエウトティア」
 部族に伝わるお肉と野菜の暖かいスープ。
 このスープを妹達も当たり前のように作るようになったと思うと、ライヴァルトは少し感慨深くなる。
 ほんの1、2年前は、まだ包丁を持つことすら覚束なかった妹達。
 時が過ぎるのは早いものだ。
(もう数年もすれば、俺もウザがられたりするのかな)
 幼い二人の成長の速さを喜びつつも、寂しくなるような未来を想像する。
 益体も無い事だと、ライヴァルトは複雑な気持ちを胸にしまった。
「さて、こんなものかな」
 煮立った鍋を覗き込んで、火の通り具合を確かめ、一匙掬って味をみる。
「うん、良い味だ。きっと村人達も喜んでくれるだろう」
 兄からお墨付きを貰ったスピレイルとエウトティアは、ぱぁっと明るい笑みを浮かべる。
 その顔は、まだ子供のものだ。
 出来たての温かいスープを振る舞おうと、スピレイルとエウトティアはライヴァルトに鍋からスープをカップに注いでもらい。それを持って凍える村人達へ届けて回った。

「部族に伝わるお肉と野菜の暖かいスープです!」
「どうぞ召し上がれ!」
 彼女達の笑顔は、見た人の胸までも温かくなり。
 しばし、雪の寒さを忘れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幽囚の亡者
 夜になった。
 村人達を休ませたあとも警戒を続ける猟兵達は、遠くに篝火の群れを見る。
 赤々と燃える長い篝火を杖にして、重い体を引きずるように雪の上を、黒いローブを纏った一団が村へと迫りつつあった。
 あれこそが、村を襲うと予知された敵だろう。

 けれど、気がついた者もいただろうか。
 近付くにつれ漂ってくる死臭に。ローブの裾から覗く継ぎ接ぎの体に。光を失った瞳に。
 死してなお解放されず、オブリビオンの傀儡とされた彼等の嘆きに。
 もし、猟兵達が間に合わなければ、この村の人々もこうなっていたのだろう。
「死体……あつめる……ご主人さま、めいれい」
 唱えるように呟きながら、亡者達は襲いくる。
 村を守るには、戦う以外の道はない。
カリオン・リヴィエール
共闘大歓迎です。私は支援に回ります。ユーベルコード【共振の唄】で味方を鼓舞します。襲いかかってくる亡者達に対しては、手持ちのオブシディアンの原石を割って挑みます。切れ味は抜群です。


ルーヴェニア・サンテチエンヌ
…何の罪もない隣の村の方々が…こんな姿に…!
…こんなの、ひどすぎます!あの方々に…救いはないのですか…?
…とにかく、これ以上新たなる亡者にされてはかないませんわ。
まずはUC【サウンド・オブ・パワー】で味方の戦闘力を上げ、気絶を防ぎますわ。
それでもピンチになるなら、UC【Hymne pour le salut】で治癒させますわ。
…もっとわたくしに力があれば、あの方々も救えたのでしょうか…もしそうでなくても、やはり悔しいですわ…!せめて…
「あわれみ深い神よ、臨終の床を奪われてしまった兄弟姉妹を、あなたのいつくしみで包んでください…。」
(アドリブ、共闘など思うがまま行動させてくださいませ。)


フェン・ラフカ
あれがミーティングで聞いた影ですか。
…彼らにしてやれる事は”安らかな睡眠”を与える事ですね。
前衛は他の方に任せましょう。


昼間雪下ろしをした中で、一団に近く損傷の少なかった家屋の屋根に登って天辺に腰掛けて射線を確保。
夜なのでサプレッサーを装着しましょう。
剣戟音は離れれば気にする事はないですが銃声は違いますからね。
…それに、戦闘音は不安を呼ぶだけですから可及的速やかに終わらせたいものです。

『スナイパー』として集落に近づく者から攻撃していきます。
そして戦闘になっている前衛への『援護射撃』を。
害意あるモノを、通す訳にはいきません。


「…とはいえ、なんともやるせないですね」


※絡み・アドリブ等歓迎です。



●悲劇を終わらせる者たちへ
 暗い夜の中を彷徨うような足取りで、ゆらりゆらりと篝火を揺らしながら亡者達は村へ近づいてくる。

「あれがミーティングで聞いた影ですか」
 家屋の屋根に登って見張りをしていたフェン・ラフカ(戦場傭兵な探索者・f03329)は、屋根から飛び降りて仲間達に情報を伝えた。

 おおよその数、向かってくる位置、その速度。
 同じように、または何らかの方法で、亡者の群を発見した猟兵達も情報を出し合い。
 それぞれの戦いへと散っていく。

 戦う相手が亡者であると知ったルーヴェニア・サンテチエンヌ(人と狼の狭間が産む讃美歌・f13108)は瞳を揺らし、声を絞り出すように言った。
「……何の罪もない村の方々が……あんな姿に……!……こんなの、ひどすぎます!あの方々に…救いはないのですか……?」
 言わずには居られなかったけれど、ルーヴェニアにも解っていた。
 戦うしかないのだ。

 亡者達は、隣の村の者であったかもしれない。
 彼等が何処の誰で、生まれや育ちを知る者はもういないかもしれない。
 亡者の数は、あまりにも多すぎる。
 滅んだ村は一つや二つではないのだろう。昨日や今日のことだけでもない、猟兵達がグリモアベースを発見するより前から、悲劇は繰り返されていたのだ。

 この世界は、あまりにも長く、支配されていた。
 今、それを断ち切り、止められるのは、ここにいる者達だけだ。
 ルーヴェニアの脳裏に、この村の人々の顔が過る。

 だから、戦って――守らなくては。

「……とにかく、これ以上新たなる亡者にされてはかないませんわ」
「……彼らにしてやれる事は”安らかな睡眠”を与える事ですね」
 ルーヴェニアが決意を込めた言葉にフェンは頷く。
 避難させた村人達は、きっと怯えているだろう。
「前衛は他の方に任せましょう。私は屋根から狙撃して援護します」
 不安を呼ばないよう、可及的速やかに終わらせたいものです。

 カリオン・リヴィエール(石を愛す者・f13723)の耳の奥にさきほど聞いたルーヴェニアの悲痛な叫びが木霊する。グッと力を込めた掌の中で黒曜石の原石が割れた。
 戦闘が近付くにつれ、カリオンは覚醒へと近づく。
 艶と輝く黒々と深き色持つ石は、その断面にあるような鋭く研ぎ澄まされた力を彼女に与えるだろう。
 カリオンはルーヴェニアと共に、戦場が見渡せる小高くなった雪山の上に登った。
 篝火が燃える無数の灯りを見つめながら、湧き上がる思いを胸に滾らせて、
「歌いましょう」
「……はい!」

 息を吸い、カリオンとルーヴェニアは声を合わせて歌いだした。

「地の底より生まれしものよ、我が声を聴きその為すところを伝えよ。彼方まで響かせ給え」
「神の愛のもとに、この歌をもって、救いがもたらされますように……」

 戦いへ身を投じる仲間達を鼓舞し、力を与えるために、
 悲しき亡者たちの苦しみを癒すように、
 朗々と力強く美しい歌声は、風にのって遠くまで響き渡るのだった。


 屋根の上で一人、フェンは引き金を引く。
 撃つ度に、篝火の数は減った。
 一体でも、その侵入を許す訳にはいかない。
 ……とはいえ、
「なんともやるせないですね」
 魔弾に撃たれ折り重なるように倒れていく亡者の姿は、フェンの心に影を落とした。
 小さな銃声が、また一つ鳴る。


 村の周りのあちこちで、戦いの音が聞こえてくる。
 ルーヴェニアは懸命に歌い続けながら、心の中で祈る。

 ……もっとわたくしに力があれば、あの方々も救えたのでしょうか……
 もしそうでなくても、やはり悔しいですわ……!せめて……

 あわれみ深い神よ、臨終の床を奪われてしまった兄弟姉妹を、あなたのいつくしみで包んでください……。


 ルーヴェニアは純真にただひたすらに救いを願う。
 カリオンは、導くように、深く包み込むように、声を重ねた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

彩花・涼
死してなお奴らに使われるか…助けられず無念だが、被害者を更に増やすわけにはいかないのでな
悪いが、倒して解放する事で救われてくれ

予め【地形の利用】と【戦闘知識】で攻められるルートに鋼糸を貼ってすぐに攻め込まれないようにトラップを貼る
無論仲間には教えておくぞ
篝火の影に入ると回避されてしまいそうなので、まずは近づかれる前に黒鳥で【スナイパー】で先制攻撃するぞ

ある程度近づいてきたら黒華・改と黒爪に持ち替えて【ダッシュ】で影に入らないよう注意して【2回攻撃】する
敵が回避したら、カウンター警戒で黒蝶の輪舞曲を使用して高速移動で離れつつ斬撃を飛ばす



●葬送の舞蝶
 村の裏手に回った彩花・涼(黒蝶・f01922)は白い息を吐いて亡者を待つ。
 辺りには予め罠を仕掛け、それは仲間にも伝えている。
 仲間の動きを制限することがないように手薄になりそうなこの場所を選んだが、裏を返せばそれは涼が一人で戦うことを意味していた。

 亡者が持つ篝火に照らされて、張り巡らせた鋼糸が煌めく。
 バリケートは、思考力の弱まった亡者たちを足止めさせるだろう。
 伸びる影は、五つ。
 涼は黒鳥を構え、照準を合わせた。

「死してなお奴らに使われるか……」
 ライフルが火を噴き、亡者の頭を撃ち抜いた。
 まずは一体。
 続けて隣にいたもう一体も撃つ。
 しかし、倒れる衝撃で亡者の持つ篝火が手元から抜け落ち、上空へ飛んだ。
 涼の足元に亡者たちの影が差す。

 武器を黒華・改と黒爪に持ち替え、涼は駆け出した。
 いつの間にか、その身に黒い羽がひらめいていた。
 夜闇から抜け出たように、黒い蝶は数を増し、彼女を夜に隠す。
「ごしゅ……じ……めい、れい」
 涼の姿を見失ってうろめく亡者へ肉薄し。
 黒蝶を纏わせた涼は、ひとひらの蝶が羽ばたくが如く、軽やかな身のこなしで、漆黒の斬撃を見舞う。

「助けられず無念だが、被害者を更に増やすわけにはいかないのでな」
 左にいた一体に、黒剣を突き立て。
「悪いが、倒して解放する事で救われてくれ」
 少し離れたところに居たもう一体は、弾丸を撃ち込む。
 迷いのない動きだった。

 けれど、亡者たちへ掛けられる言葉は慰めからなるもの。

 残った最後の一体は、篝火を振り上げた。
 その動きは緩慢で、涼はすかさず間合いへ飛び込み、黒剣で斬り込む。
「……」
 はくり。最後の吐息をはいて、糸が切れた人形のように亡者の体が沈む。
 涼は、倒れた亡者たちに静かな眼差しを向ける。

 白い雪の中を、一羽の黒い蝶が群れを離れ天へ上るように消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エウトティア・ナトゥア
WIZを使用します。
民族は違えど魂を循環の輪へ還してやるのはわしらの役目じゃ。

妹(f06014)の送り火にあわせて破魔の風で亡者を包み込み哀れな魂を大いなる精霊の元へ導いてやるとするかの。

マニトゥ!わしとスピレイルへの守りは任せるのじゃ。

《精霊の唄》「全力魔法」「破魔」「祈り」「歌唱」使用。 【破魔】属性の【風】
精霊よ謳え!風よ、哀れな魂達を精霊の元へ導いておくれ。
お主らを縛るものはわしらが取り払ってやろう、あるべき場所へ還るのじゃ。


スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

「死んだあとも利用されているというわけですか……見るに堪えません」
お兄様やお姉様も私と同じ気持ちだろうと、二人を横目で見ます
「いま生きているひとたちを助けるために、私はあなたたちを倒します。苦しまずにいけるように、せめてもの弔いになるように、炎の精霊の力をもってしてあなたたちを送ってさしあげましょう」
あと、亡者さんたちを炎の精霊で燃やせば、寒さにいまだ震えている人々を少しでも暖めることができるかもしれません

「死んだひとをこんなふうに利用するだなんて絶対に許せません。村人さんたちのためにも、この世界のためにも、みんなで力を合わせて絶対にオブリビオンさんを倒しましょう!」


ライヴァルト・ナトゥア
【獣人同盟】で参加

(スピの言葉に)
死者の冒涜は霊魂への侮辱だ。我らが祖霊、そして守神に代わり、俺達が彼らを救ってやらなければな
(ユーベルコードを起動。亡者達を【フェイント】で牽制しながら妹達の援護を待つ)
考えることのない人形など、木偶の坊とそう変わらん。準備ができるまで、俺とのダンスに付き合ってもらおうか
(準備が出来次第、後方へ【ジャンプ】で跳躍、足止めに敵前列に飛ぶ斬撃を放つ)
っと、それじゃあ後は頼んだよ?ティア、スピ
(炎の竜巻を見て、綺麗だなどと感想を漏らす。もちろん警戒は護人として怠っていない)
あなた方の次の生が、安らかなものであらんことを
(目を閉じ、【祈り】を捧げる)



●精霊の送り火
 篝火の杖をつく亡者達の足取りは覚束ず、中には深い雪に足を滑らせて倒れる者もいた。
 悲鳴一つ、苦痛のうめきすら上げず。
 じた、じた。雪の中で藻掻く。
 それはもう起き上がりたくないと立つ事を拒むような動きにも見えた。
 けれど命令に背くことは出来ない、見えない鎖に繋がれたようにまた亡者は起き上がる。

 底知れぬ絶望が、そこに漂っていた。

「死んだあとも利用されているというわけですか……見るに堪えません」
 思わず目を覆いたくなるような光景に、スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)は悲壮な面持ちで心の内を告げた。
 そっと兄と姉の顔を忍び見れば、二人もまた気持ちは同じなのだと悟る。
 
「民族は違えど魂を循環の輪へ還してやるのはわしらの役目じゃ」
「死者の冒涜は霊魂への侮辱だ。我らが祖霊、そして守神に代わり、俺達が彼らを救ってやらなければな」
 巫女姫たる者の役目を果たそうと、巨狼マニトゥを連れたエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は、スピレイルに頷き返した。
 ならばそんな彼女たちを守護するのは、兄であり護人であるライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)の役目。

「っと、それじゃあ後は頼んだよ? ティア、スピ」
 ライヴァルトは二人を背に、雪の地面を蹴って駆け出した。
 普段は抑え込み、封印している力を限定的に解き放てば、それは溢れるままにその身を覆い。しばし青い狼は、天狼と成る。
 だがそれは、ライヴァルトの命を削る行為でもあった。
「考えることのない人形など、木偶の坊とそう変わらん」
 亡者たちの前に踊り出て、ライヴァルトは牙を剥くように笑ってみせた。
 命を賭けた時間稼ぎ。駆け引きをしようと、冗談めかしてみせる。
「準備ができるまで、俺とのダンスに付き合ってもらおうか」

 斬撃を振るい戦うライヴァルトの後方で、エウトティアとスピレイルは送り火を喚ぶ儀式を進めていた。
「マニトゥ! わしとスピレイルへの守りは任せるのじゃ」
 儀式を遮るものは、何人たりとも許さぬと。
 巨狼は大きく吠え声を上げた。
 力強く頼もしい響きに、双子の巫女姫の瞳におごそかな光が宿る。
 哀れな亡者へと向けて彼女達は言葉を重ねた。

「いま生きているひとたちを助けるために、私はあなたたちを倒します」
「お主らを縛るものはわしらが取り払ってやろう、あるべき場所へ還るのじゃ」
「苦しまずにいけるように、せめてもの弔いになるように、炎の精霊の力をもってしてあなたたちを送ってさしあげましょう」

 二人の心に共鳴するように、熱気が起こり風が音を立てる。
 精霊たちは、この汚らわしき雪に抗うようにうねり、大きく膨らむように司る力を示そうとしているようだった。
 儀式に集中するスピレイルは、ふいにエウトティアの手を握る。
 意図した仕草ではなく、それは自然に本人も気が付かぬような小さな行為。
 エウトティアもまた、自然と温かく触れ合う指先に力がこめた。

「炎の精霊さん。あの人たちを助けて」
「精霊よ謳え! 風よ、哀れな魂達を精霊の元へ導いておくれ」

 虚空に――花開くように。
 巫女姫の目の前に、荘厳な輝きを持つ炎風が顕出した。
 ライヴァルトは、それを合図に地面を蹴って後ろへ飛ぶ。
 入れ替わるように、炎から散った火の玉が亡者たち一人一人に放たれた。
 連れ行くうたう風は、亡者を抱きしめるように吹きつける。

 亡者たちは、その火を恐れなかった。すがるように腕を伸ばし、胸に火を抱く。
 精霊の送り火は苦しみを与えず。一瞬でその身を灰へ溶かした。
 ふっ、とほどけるような静かさで砕け散る灰を、意思持つ風がすくい上げるように舞い上げて、いずこかへと運んでいく。
 おぞましく歪められた躯の檻から魂を解き放ち、彼等はあるべき場所へと還るだろう。

 ああ、その炎と風はとても「綺麗だ」ライヴァルトは呟きを零す。
 未だ油断なく、周囲への警戒心を張り巡らせてはいたが、
「あなた方の次の生が、安らかなものであらんことを」
 ようやく終わりを得た彼等のために、束の間だけ瞼を伏せて祈るのだった。

「死んだひとをこんなふうに利用するだなんて絶対に許せません。村人さんたちのためにも、この世界のためにも、みんなで力を合わせて絶対にオブリビオンさんを倒しましょう!」
 スピレイルは彼方へと舞う送り火を見送りながら、声高に叫んだ。
 喚び寄せた炎が、寒さで震える誰かを暖めるものであれと祈りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリウム・コルネリウス
亡者を作らせない為、『生まれながらの光』で皆さんの回復を主に行う
高速同時治療を行う事で、猟兵側のダメージを最低限にする
篝火からは距離を置き、遠距離から回復>攻撃
「どうか……私の行動が、誰かの笑顔になりますように」
ただの一存在の私、救済とか守護なんておこがましい
「私は祈る。地に縫い付けられた傀儡に、安息の日がありますように」
手が空けば聖銃で攻撃。主に援護射撃を行う

どうしても行いたい事。
傀儡とされた方々の為、祈る。
「もう、傷付け傷付く必要はないのです。どうか安らかにお眠り下さい」
可能であれば、遺品回収・祈りに村人を呼ぶ

他者と共闘・協力歓迎



●祈る声
 戦場となった村の周辺を巡りながら、リリウム・コルネリウス(矛盾だらけの理想主義者・f03816)は、怪我人の手当を行っていた。

 新たな亡者を作らせぬために、尽くすその手に迷いはないように見える。
「どうか……私の行動が、誰かの笑顔になりますように」
 けれど。
 ふと、自嘲する。
 ――ただの一存在の私、救済とか守護なんておこがましい
 湧き上がるその思いに秘められているのは、果たして。

 リリウムは流れるように、戦場を歩む。

 村の外れに来たリリウムの行く手に、亡者が立っていた。
 死の香りを漂わせ、昏き闇のような衣を纏うその身は傀儡。
 見えない糸に雁字搦めにされたまま、命じられるままに命を狩り、死体を集めるだけの傀儡。
 リリウムは銃を抜いた。
 よろめくようなその体に狙いを定め、引き金に指をかける。
 亡者が持つ篝火が迫る、その前に、
「私は祈る。地に縫い付けられた傀儡に、安息の日がありますように」
 投げかけたのは祈りの言葉。
 その声が届いたのか、わからぬままに聖銃を撃つ。
 もとより亡者の心を知るすべなぞここにありはしない。

 乾いた銃声が響いて、雪の中に亡者は倒れる。
 リリウムは銃を下ろし、亡者へと静かに歩み寄った。
 あたりには他に動くものの気配はない。

 リリウムは傍らにひざまずき、地に伏した亡者の体を仰向けに寝かせると、やさしく手を取って胸の前で組ませた。黒い衣の下から現れたのは、死してなお虐め抜かれたようなその身体だ。見るも無残な姿だったけれど、リリウムには少しの嫌悪もない。

「もう、傷付け傷付く必要はないのです。どうか安らかにお眠り下さい」

 亡者の傷はもう癒やすこともできないだろう。
 けれどもリリウムは、その身から柔らかな光を放ち亡者を照らした。
「あとで村の人を呼んで、埋葬いたしますからね」

 リリウムの胸の内にどのような思いがあろうとも、彼女は誰かを救った。
 目の前にいるのはもはや傀儡ではなく、安らかに眠る一人の死人。

 光の中で亡者の顔が穏やかに微笑んでいるように、リリウムの瞳にも見えただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『往生集め『エルシーク』』

POW   :    賢者の双腕
見えない【魔力で作られた一対の腕】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    蒐集の成果
自身が装備する【英雄の使っていた剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    幽暗の虫螻
【虫型使い魔】の霊を召喚する。これは【強靭な顎】や【猛毒の針】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルディー・ポラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が、亡者たちを倒し終えたその時。

 ひぃ、ひぃ、ひひひ。

 何処からともなく声がした。
 老人めいた嗄声は、耳障りな音を立てて笑っている。

「ああ、役立たず共め。命じたこともこなせないとはなあ」

 異形の影が、村を守る猟兵達の前に降り立った。

 それは頭部である大きな獣の骨をカタカタと震わせた。
 実体のないその身にローブを纏わせ、ぐるりと這う虫けらを巨大な手が撫でる。
 あれこそが元凶たるオブリビオンだと、猟兵達は悟っただろう。

「まあよい、所詮はクズの寄せ集めだったということ。」

 それが亡者達の事を指しているのは明らかだった。
 誰ともなく怒気を向ければ、オブリビオンは愉快そうにまた笑う。

「ああ。それにしても。わし自ら出向いた甲斐があったものよ。なんと活きの良い人間だ。久々に腕なるわい。……ん、おやおや。村の人間もまだ生きておったのか。しぶといのう。せっかく傷をつけぬよう凍え死なせてやろうとしたというのに」

 オブリビオン――往生集め『エルシーク』。

 この異形にとって、人間はただの部品か何かでしかないのだろう。
 見繕うながらんどうの眼差しが、猟兵達を舐める。
 その手の中から一振りの剣が浮き上がった。
 浮遊する剣が次々分身をつくりだし、その切っ先が猟兵たちへ向く。

「傷がつくと価値が下がる。さっくりと死んでおくれ」
スピレイル・ナトゥア
「そんなふうに虫を身にまとっていて、むずがゆくならないんですか?」

お兄様(f00051)が隙を作ってくださっているうちに、お姉様(f06014)の狼に騎乗してお姉様のユーベルコードで透明になるとしましょう
エルシークの視界を塞ぐように炎の精霊を発射することで、大技を放とうとするお兄様を【援護射撃】します
騎乗している狼の移動に合わせて発射地点が変わる攻撃なので、相手への牽制効果はきっと抜群です!
「凍え死なせた時点で皮膚が凍傷になっていたりして価値が下がっているような気がするのですが、私の気のせいでしょうか? まあ、そんなことより、私たちがあなたを傷だらけにして価値がないものにしてさしあげます」


ライヴァルト・ナトゥア
【獣人同盟】で参加

下衆が。お前さんのやったこと、その落とし前の付け方くらいは、知ってるんだろうな?
(駆け出し、前線へ。その際に、妹達に目配せを。前線で鎌を振るって敵を牽制する。浮かぶ剣の対象が後方へ向かないよう、【空中戦】と【2回攻撃】の手数で残らず撃ち落とす)
ハッ、所詮は手下をけしかけて踏ん反り返っていた奴だ。その軽そうな頭には知性というものが備わってないみたいだな?
(後方からの攻撃を待って、攻撃を中断)
ナイスだ、スピ、ティア!
(相手が防御しているうちに封印解除、懐に潜り込む)
気を取られたな?こちらが、本命だ!!
(600m範囲を消し飛ばす天狼の爪を至近距離でぶちかます)
地獄で猛省するがいい!


エウトティア・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します。

さて、彼奴に報いをくれてやろうかのう。

兄様が前衛で『エルシーク』の攻撃を叩き落してくれているようじゃの。 スピレイルや、そのうち兄様が攻めに転ずる筈じゃ。
わしがお主を彼奴の死角に連れて行くでの、兄様の為に隙を作っておくれ。

「迷彩」「忍び足」「騎乗」「ダッシュ」使用 マニトゥに妹を乗せて透明化状態で『エルシーク』の死角に回り込むのじゃ。
(攻撃のタイミングを計り)スピレイル今じゃ!

「援護射撃」「誘導弾」「破魔」「祈り」使用
スピレイルの攻撃後、再びスピレイルを拾って後退しつつわしも手製の短弓で援護するかの。
「破魔」の「祈り」を乗せた我が一矢喰らうがよいわ!



●吠え声高く
「下衆が」啀むようにライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)が吐き捨てた。
 雪に埋もれるはずだった村人達は今、あたたかな火の傍にいる。
 送り火に運ばれた亡者達には、もう、絶望も、痛みもない。

 けれど、亡者達と直接対峙したライヴァルトは知っていた。
 亡者達の痩せた体を、刻まれた深い傷を、悲しげにこぼれた吐息を。
 触れたからこそ覚えている。爪に、牙に、その胸の中に、残っている。
「お前さんのやったこと、その落とし前の付け方くらいは、知ってるんだろうな?」
 心安らかにと天へ送った者達の為に、ライヴァルトは雪を巻き上げて駆け出した。
 刹那。
 ライヴァルトのくれた一瞥に、スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)とエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)も理解する。
「スピレイルや」
「ええ、姉様」
「そのうち兄様が攻めに転ずる筈じゃ。わしがお主を彼奴の死角に連れて行くでの、兄様の為に隙を作っておくれ」
 目配せを走らせ、小さく言葉を交し。
 息を潜めてその時を伺う。
 狙うのは、一瞬の隙。

 居並ぶ剣の切っ先に恐れもなく歯向かうライヴァルトを見たオブリビオンは驚いた様子を見せた。ここに来て、オブリビオン――エルシークは、相手が唯者ではないと悟っただろうか。
「おお、勇敢な狼め。後ろにいるのは妹か? ずいぶん愛らしいのう!」
 簡単には動揺を見せまいと、言い放たれたのは見え透いた挑発。
 老獪なやり口は、流石に手慣れたものなのだろう。

 だが、守るべき人がいる戦場で、護人が揺らぐことはない。
「ほざいていろ!」
 牙で噛み砕くように鎌を振るい、向かってきた剣を叩き落とす。
 ぐるり。宙を舞う剣が次々とライヴァルトを向いた。四方を囲い、じわじわと追い詰めるように飛び交う。
 ライヴァルトも果敢にその剣を鎌で弾き、打ち落とす。
(そうだ、もっと引き付けてやる)
 敵からの攻撃を一手に引き受けるライヴァルトの姿は、妹を守らんとする健気な兄の姿にも見えた。その姿はエルシークの加虐心を煽り、攻撃は苛烈さを増す。
 だが、その意識が完全にライヴァルトに向く事こそが彼等の狙いだった。

 一陣の風の報せを感じ取ったライヴァルトは、それを合図に高く後ろへ飛んだ。
 見上げているエルシークを、まだ気が付かないのかと笑って。
「ハッ、所詮は手下をけしかけて踏ん反り返っていた奴だ。その軽そうな頭には知性というものが備わってないみたいだな?」
 
「何を」、言いかけたエルシークの顔面を赤い炎が焼いた。「ウガアアァァァ!!」悲鳴を上げて骨頭を振るい、攻撃がどこから来たのかとエルシークは辺りを探ったが、そこには何も居ない。
 いや、目を走らせてみれば、子供が居ない。双子がいつのまにか消えている。

「さて、彼奴に報いをくれてやろうかのう」エウトティアとスピレイルは巨浪マニトゥの背に乗ってエルシークの死角に回り込んでいた。
 エウトティアと風の精霊の力によって、透明な姿になった二人と一匹は大胆な接近を可能とした。
 けれど敵を恐れない心と、卓越した状況判断ができなければこの作戦は上手くいかない。
「ナイスだ、スピ、ティア!」
 ライヴァルトは誇らしげに叫ぶ。

 してやられた。
 たかが人間に、それもあれほど幼い子供に。
 この支配者たるエルシークが、英雄と呼ばれた者を屠った事すらある自分が。
「ああだが何度もそんな手が通じると思うてか!!」
 屈辱に震えながら、エルシークはがなる。

 スピレイルのあどけない声が、なにもない所からした。
「そんなふうに虫を身にまとっていて、むずがゆくならないんですか?」
「ひひひ、ならばお前も纏うてみるがよい。きっと気にいるだろうて」
 エルシークは猫なで声で答えながら、幽暗の虫螻を喚び寄せた。
 カチカチと顎を鳴らし、毒針を持つ虫達と共に姿を消した獲物を追う。
 所詮は幼子。
 ぶきみな光景を見れば、悲鳴の一つも上げるだろう。
 けれど。
「凍え死なせた時点で皮膚が凍傷になっていたりして価値が下がっているような気がするのですが、私の気のせいでしょうか?」
「さあてのう」
 当のスピレイルは、エウトティアとそんな会話をしていた。
 巨浪マニトゥの背に揺られながら、必死になって自分達を探しているエルシークを翻弄する。
「まあ、そんなことより、私たちがあなたを傷だらけにして価値がないものにしてさしあげます」

 スピレイルは一人、マニトゥから飛び降りて姿を現してみせた。
 矢面に立つような行為にも思えたそれは、攻撃の合図。
「炎の精霊さん。助けてくれない?」先程やってみせたように、炎の精霊を放つ。
 エルシークは即座に反応した。けれどそれが命取り。
 そうだ。もう、囮は入れ替わっている。

「気を取られたな?こちらが、本命だ!!」

 エルシークの死角から、ライヴァルトが飛び出した。
 左手をかざしたライヴァルトの封印が限定的な解放と共に強大な力を放つ。
 この技は広範囲に及ぼす、だから他の者達と離れる必要があった。
 怒りに目がくらんだエルシークは、まんまと誘い出されていたのだ。

「地獄で猛省するがいい!」

 振り下ろされた巨大な天狼の爪が、エルシークを切り裂く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カリオン・リヴィエール
今回は戦います。
ここまできて、まだ自分が優位に立っていると思われているのが癪ですね。ユーベルコード使用にて、敵の攻撃を阻止、その上で急所と思われる所を狙います。
途中で敵の攻撃が私に当たりかけても構いません。かすり傷など気にしてられませんからね。

共闘大歓迎です!


ルーヴェニア・サンテチエンヌ
…これが、全ての元凶…!いえ、憎しみに囚われてはいけませんわね。いちど深呼吸…。

真の姿として、ハイイロオオカミになりますわ。この寒さにも似つかわしい姿だと思いますの。
格段に上がった身体能力を駆使して敵の攻撃を避けながら、味方を巻き添えにしないよう注意してUC【人狼咆哮】を放ちますわ。少しは体も大きくなるはずなので、どなたかを背中に乗せて一緒に戦うのもいいかもしれませんわね。
あとは……吠え方でなんとかUC【サウンド・オブ・パワー】が発動できないでしょうか?(無茶)

(アドリブ・共闘等、ご自由に行動させてくださいませ)


彩花・涼
ダークセイヴァーのオブリビオンはこんな奴ばかりか……
クズの寄せ集めはどちらか思い知らせてやろう

黒華・改と黒爪を持って近接戦を行う
敵のUCの操る剣は【ダッシュ】で補足させないよう動きながら【見切り】と【残像】で回避し、回避出来なかった剣は黒爪で【武器受け】して弾き飛ばして接近する
【2回攻撃】と【生命力吸収】で敵の体力を削りつつ、他の猟兵が攻撃されていたら【殺気】を出してコチラに意識を向けさせて【かばう】
「そちらにばかり気を取られていていいのか?」

敵がコチラの動きを捕らえたと思ったら、UCを使って黒蝶で敵の視界を奪い高速移動で懐に入り漆黒の斬撃を放つ
「貴様のようなクズと語る言葉はもうない」


フェン・ラフカ
あぁ…只々嫌な視線ですね。
ここにあなたの様な者に渡すモノは何もありませんよ。


手数で押していきます。
『2回攻撃』で剣を撃ち落としましょう。
隙があれば本体を『スナイパー』で狙います。

足らなければ【戦場の亡霊】で補えば良いのです…少々死にかける位では止まる気はありませんよ。


「どこまでいけるか…やってみましょうか」


※ダメージ・絡み・アドリブ等歓迎です。



●報い
 後衛から援護を行い、戦いに加わろうと駆けていた者達の前に、突如エルシークが降り立った。

「……これが、全ての元凶……!」
 ルーヴェニア・サンテチエンヌ(人と狼の狭間が産む讃美歌・f13108)は目を見開く。
(いえ、憎しみに囚われてはいけませんわね。いちど深呼吸……)
 手を握りしめ、小さく自分へ向かって呟きながら黒く染まりそうな心を律し、深く息を吸った。

 猟兵の攻撃に、エルシークは思わぬ痛手を受けた。
 あの場は離脱したが、この恨みは必ず返さなくてはならない。
 なればこそ、新しく亡者が必要だ。
 今度は頑丈で力のある奴隷を作り出そう。

 その為にはまず素材がいる。

「ひひひ。よい。よいぞ! お前達なら良い材料になるだろうて!」
 その叫びは初めに聞いたものより、真に迫っている。そこには焦りも見えた。早々とした決着を望んでか、瞬時に空中に分裂した剣が現れ、一斉に放たれる。

「まずはその人狼の小娘を串刺しにしてやろう!」
 そう言ってエルシークが指し示したのは、ルーヴェニアだった。
 エルシークの剣は、操る主の怒りに共鳴してか、凶暴な動きでルーヴェニアを貫かんと襲いかかる。

「あぁ……只々嫌な視線ですね。ここにあなたの様な者に渡すモノは何もありませんよ」
 フェン・ラフカ(戦場傭兵な探索者・f03329)は、皆から一歩離れた場所から。淡々と引き金を引いた。狙撃銃から放たれる魔弾は、正確に剣を撃ち落とす。

「ここまできて、まだ自分が優位に立っていると思われているのが癪ですね」
 カリオン・リヴィエール(石を愛す者・f13723)も、影から自身が召喚した暗殺者の霊を向かわせてその攻撃を防がんとした。
 だが、ルーヴェニアの様子に気づき、口元に笑みを浮かべる。
「どうやら、援護射撃は十分なようですね」

 ルーヴェニアの瞳が、爛々と輝いている。それは誇り高き獣がもつ煌きだ。
「……わたくしを侮ってもらっては困りますわ!」
 ルーヴェニアは、倒すべき敵へ向かって大きく咆哮を上げた。
 その躰はみるみる内にハイイロオオカミへと変じ、雷鳴のように響き渡る吠え声は衝撃波のように剣を跳ね返し、魔力で複製された剣を消滅させた。

「おのれェ……!!」エルシークが軋るような声を上げる。
 好機を逃さず、夜闇から滑り出すように黒蝶が舞う。彩花・涼(黒蝶・f01922)は間合いへ飛び込み、黒剣でエルシークを斬りつけた。
「ガッ……く、ズめがああぁぁぁ!!」
「ダークセイヴァーのオブリビオンはこんな奴ばかりか……クズの寄せ集めはどちらか思い知らせてやろう」
 剣の勢いを緩めず、攻撃を重ねる。
 反撃がくれば体を捻り、軸足で体を支えながら体を反らして躱してみせる。踊るように華麗な動きから繰り出される一撃は鋭く、激しい。

 エルシークは一振りの剣を浮かび上がらせた。
 その刀身の輝きを一目見て猟兵達は悟る。あれが複製品の元となる本物の剣だという事に。あれを使わせては、また無数の剣が作り出されてしまうだろう。

「どこまでいけるか……やってみましょうか」
 フェンは、仲間達への警告を含めてわざと銃声を鳴らして一発目を撃った。
 雪の降る中、隙間を縫うような射撃が、空中の剣を弾く。やはりオリジナルの剣は複製品と違って頑丈らしい。
 攻撃された剣が、まるで反撃するようにフェンを目掛けて飛んだ。触れる相手を切り刻もうと回転しながら、風切る音と共に迫る。
「……少々死にかける位では止まる気はありません」
 その場を動かず。引き金を引く。轟くような銃声が辺りに響いた。

 剣はフェンの胸を裂いた。だが、それ以上は刺さらず、中心からひび割れて砕け散る。
 魔弾が剣を穿っていた。正確無比な二つの弾丸は寸分違わず同じ場所に撃ち込まれていたのだ。

 負傷したフェンをハイイロオオカミとなったルーヴェニアが飛び込んで拾う。
「大丈夫。かすり傷です」
 心配そうに鼻を鳴しているルーヴェニアを安心させるようにフェンは優しく言った。
 その傍らにフェンの負傷を代価に召喚された戦場の亡霊が現れる。

「ひひひ! いいぞ、まずは一人目じゃ!」
 傷ついたフェンを見て喜色を滲ませたエルシークの言葉に涼は殺気を漲らせた。
「そちらにばかり気を取られていていいのか?」
 黒蝶は地を蹴った。黒刀を振り上げ、全身全霊の力を込めて、正面からエルシークの頭を叩き割るような一撃を振り下ろす。
 防ごうとしたエルシークの視界を黒い蝶が埋める。いや、それは蝶だけではない。
「グオ……ごっ!!」
 硬い音を立てて、骨に亀裂が走った。

 咄嗟にエルシークは再び逃げようとした。
 けれど、体が動かない。
 黒い影が背後から角を掴み、顔を掴んでいる。
 それは、カリオンが召喚した暗殺者の霊だった。
 皮肉にもさんざん弄んできた死者の腕が、エルシークを捕えたのだ。

「ま……待て!」最後の最後で、みっともなく乞うようにエルシークが叫ぶ。
 涼は静かに黒爪の銃口を向けた。
「貴様のようなクズと語る言葉はもうない」

 銃口が火を噴く。銃声は二発。
 涼の撃ち込んだ弾丸と、戦場の亡霊の狙撃が、同時にエルシークを撃ち抜いていた。


●雪溶け

 エルシークが死ぬと、雪はやんでいた。
 降り積もっている雪も、やがては溶けて消えるだろう。
 この村にはこれからも人の営みが続き、命が巡っていく。

 この世界にいつ終わるとも知れない夜と闇に覆われていたとしても。
 猟兵達がもたらした光は、村人達の中にいつまでも灯り続けるだろう。
 ぬくもりを、糧を、知恵を、そして希望を与えてくれた彼等のことをずっと忘れないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月13日


挿絵イラスト