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紅き月の輝夜姫

#UDCアース #輝夜姫伝説

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#輝夜姫伝説


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●紅い月の祝祭
 紅い月は不吉の印と言われている。
 だがしかし、その村ではそれは吉兆の印だ。
 紅い月の出る日にはカミサマがやってくる。
 そしてカミサマには生贄を捧げるのがこの村の決まりだった。
 そのカミサマは女神で、故に生贄として捧げるのは若い男女ーーそれも村の外から訪れる何も知らない人間を選ぶ。
 それは古よりの契約の履行のために必要不可欠なこと。
 生きた人間を捧げる事でしか成り立たないその契約のため、村人達はこの度の祝祭でも村の外から来た若者を歓迎するのだった。

●祝祭への参加
「奇祭というものはどこの国、世界でも存在しているものだな」
 猟兵達を待っていた黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は、グリモアベースのブリーフィングルームに入ってきた猟兵達を認めるなりにそう口を開いた。
「この忙しい時期に招集に応じてくれて感謝する。
 早速だが、UDC組織から邪神を信仰している村への潜入調査の依頼だ」
 その村では、紅月祭という祭りが不定期に行われている。
 条件は「月が赤く染まっている夜」だが、この条件に当てはまる日は実際にはそう多くはない。
「月が赤く染まるのは一般的にはとても低い位置に月がある時や皆既月食の時が該当する。
 だが、この祝祭が行われようとしている日はそのいずれでもない事が多いらしい」
 気象や様々な要因により月が赤く見える日を選んで祝祭を行っていたこともあるようだが、大半は今回の祝祭のようにはそういった現象が確認されない時期に執り行われている様子だ。
 事実、祝祭の日には必ずこの村の付近でのみ月が不自然なほどに紅く染まっているのが確認された。
「これは彼の地に封じられている邪神が関係しているとのUDC組織の見立てだ。
 私の予知でもその邪神の姿までは見ることは叶わなかったが、現地に向かえば何かわかるかもしれないな」
 月が赤くなるのは邪神が現れる兆しなのだとか。
 そしてその祝祭に欠かせないのが邪神に捧げるための生贄だ。
「詳細は不明だが、何らかの影響で生贄となることを自ら望むようになるらしい。
 おそらく邪神の力によるものだろうが、耐性がそれなりに高いと効きにくいようだな」
 とはいえ、その対象が一般人であるならば確実にアウトだ。
「UDC組織の協力により、この日は村周辺で一般人の立ち入りを禁じている。
 もちろん、そのことは村の人間は知らないから、お前達のことを生贄候補として見てくる」
 親切な村人を装って近づいてくる村人達を見て、訪れた人々を邪神に捧げる生贄とするべく画策しているとは誰も思わないだろう。
「これ以上の被害者を出さないためにも、ここで確実に邪神を仕留めてくれ」
 朔良の手のグリモアが輝き、村へと続く道を開く。
 紅い月と共に現れるという邪神、それは猟兵達自らの目で確かめるしかない。


綺朔
 今年も残り少なくなってまいりました。
 どうも、綺朔(キサク)です。
 おそらくこれが年内最後のシナリオとなるかと思います。

 この度はUDCアースのとある邪神を崇める村の祝祭で邪神降臨の兆しを見つけたため、その邪神の降臨を阻止していただきます。
 なお、本シナリオは通常通りの3章構成となります。
 第3章の情報は現時点では明かされていませんが、邪神との戦いとなりますため非常に厳しいものとなるでしょう。

● 日常『「祝祭」への参加』
 村人達は生贄の候補たる外部の人間をとても歓迎しています。
 現状では殺意等は感じませんが、何らかの方法により生贄の候補達が自ら進んで生贄となることを望むようにしているようです。
 おそらくはこれも邪神の力によるものであると思われますが、猟兵達に効いている様子はありません。

● 集団戦『奇跡亡き夜の囚人』
 紅い月が完全に昇りきる深夜へと向かうにつれて、不自然な程に夜の闇が濃くなっていきます。
 村人達は周囲の変貌に気付いていないかのように祭りを続けていますが、狂気に侵されているため止まることはありません。
 また村人の中には眷属へと姿を変えてしまうものも出て来てしまいます。
 彼らは眷属となることは光栄なことであることと考えているため、周りで変化した人間が現れたとしても意に介さずに祭りを続けるでしょう。

●ボス戦『???』
 紅い月が天の頂点に昇る時に現れるとされる女性型の邪神です。
 猟兵達が眷属を倒しきっていれば弱体化した状態で現れますが、それでも邪神に名を連ねるだけありかなりの強敵です。

 主神である邪神が倒されると、正気に戻った村人達は茫然自失とします。
 その後の彼らのことはUDC組織に任せておけば問題はないと思われますので特に言及はしなくてもいいですが、猟兵の皆さんで決めてもらっても構いません。

●リプレイ執筆について
 各章共に状況説明を兼ねた断章追記後のリプレイ執筆となります。
 プレイングは随時受付ますが、断章追加のタイミング等によっては返却する可能性もありますためご了承ください。
(その場合はお手数ですが再送いただけますと幸いです。)

 その他については綺朔のマスターページをご参照ください。

 それでは、皆さんの素敵なプレイングお待ちしております。
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第1章 日常 『「祝祭」への参加』

POW   :    奇妙な食事を食べたり、奇怪な祈りのポーズを鍛錬する等、積極的に順応する

SPD   :    周囲の参加者の言動を注意して観察し、それを模倣する事で怪しまれずに過ごす

WIZ   :    注意深く会話を重ねる事で、他の参加者と親交を深めると共に、情報収集をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●紅き月の輝夜姫伝説
 その村には『輝夜姫』の伝説があった。
 かつてこの村を襲った飢饉の折に、月からカミサマが降りてきて救ったという、どこにでもある伝説だ。
 カミサマが降臨したとされる日の月も、その伝説によれば紅かったとされている。
 そのカミサマは大層美しく、村の男達のみならず女達もたちまちに魅了された末、『輝夜姫』と呼ばれ崇拝されるようになった。
 ――初めの生贄となったのは村に住む若い男女だった。
 それから月が紅に染まるたびに、『輝夜姫』は生贄を求めて現れる。
 そして村人達はその度に生贄を捧げ、カミサマの力を享受し続けて今に至るのであった。
秋山・小夜
アドリブ、絡み歓迎

とりあえず、この祭り?のこととか、とにかく情報があるに越したことはありませんので、周りの方々に聞いたり、周りで交わされる会話などに注意を払いながら情報を探れたらいいなと思います。
ただ、怪しまれては元も子もないと思うので、そこらへんは、周りの様子を見ながらほどほどに変なポーズをとったりできたらいいなと思います。

にしても、一体全体、なんでこんな行事が生まれたのでしょうかね。


ロバート・ブレイズ
「輝夜姫の伝説。紅に染まり潰されれば、成程、狂気に中てられるのが人類の本質か。兎角――私は『貴様等』に興味を抱いた。ならば隅々までも覗き込むのが礼儀だろうよ。クカカッ――緊張する事は無い」
大学教授の肩書きで『この地』の伝説を調べに来たフリだ
脳髄の蛆を使用し自身のレベルまで情報収集を引き上げる
言動模倣は要らないだろう? どうせ最初から生贄への視線だ
手帳を片手に村人達に話し掛けよう
「神仏の類は常々、救いを与えようと身を尽くす。祟りを抑え込む為の『場合』も在るが、果たして唯一は何を望んで在る。嗚呼、大丈夫だ。【私は悦んで贄に成って魅せるとも】……」
狂気耐性には自信がある。これも嘘だとも



 祭りのことや村のこと等、情報はあるに越したことはない。
 そう考えたのは秋山・小夜(歩く武器庫・f15127)だけではなく、大学教授の肩書を持って潜入を果たしたロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)もまた同じであった。
「輝夜姫の伝説。
 紅に染まり潰されれば、成程、狂気に中てられるのが人類の本質か」
 人類学のフィールドワークで訪れたと、村人達に手帳を片手に話しかけるロバートの傍らには、目的を同じくしている小夜の姿があった。
 山々に囲まれた、ある意味で陸の孤島とも言えるこの村がある地域には様々な伝説がある。
 この村に伝わる輝夜姫の伝説もその一つで、内容は飢饉の折に神様が助けてくれたというどこにでもあるものだ。
「一体全体、なんでこんな行事が生まれたのでしょう」
 村人達に話を聞く中で、頻りに名前が出ていたカミサマ――輝夜様は、かつてこの村を救う見返りとして若い男女数名の生贄を所望した。
 その最初の生贄となった者たちがどうなったか、それを記すものはなく、伝えられてすらいない。
 最もこの手の話には生贄の末路が伝えられていないことはよくあることだ。
 そしてそれは『二度と返ってくることはなかった』と言う事実を暗に示しているのだろう。
「神仏の類は常々、救いを与えようと身を尽くす。
 祟りを抑え込む為の『場合』も在るが、果たして唯一は何を望んで在る。」
「学者先生の言葉はむつかしくていかんねえ。
 輝夜様の望みなんざ、わしらのような下々の人間がわかるわけがあるめえ」
 とある村人は、ロバートのその問いにカラカラと笑いながら答える。
 それからしばらく。 
 小夜とロバートは手分けをしながら村人達に同じような質問をするが、どの村人も似たような答えだった。
 ロバートのユーベルコード【脳髄の蛆(デ・ウェルミス・ミステリイス)】は、自身の情報収集能力を飛躍的に上げる。
 そんな彼の能力を持ってしても、思うように情報が集まらない。
「思ったよりも情報が集まりませんね」
「否、情報が集まらぬこともまた一つの『情報』よ。
 クカカッ、中々に興味深いではないか」
 ロバートの言うように、情報が集まらないことも一つの情報である。
 村人達にも輝夜姫の目的が秘匿されているか、あるいは本当に知らないのか、知らないフリをしているだけか――
 しかし、それらを詮索したところで意味はないだろう。
 結局の所、ここに居る彼らが『生贄』となることはすでに決まっている。
「大丈夫だ、私は悦んで贄に成って魅せるとも」
 クカカッと、また一つ笑うロバートは誰に言うでもなく嘯く。
 狂気への耐性にはひときわ自信がある彼だからこそのその言葉は、嘘か真か。
 共にいる小夜には判断が付かないが、それすらも些末なことに思える彼女もまた贄となることを望み始めていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カツミ・イセ
僕の神様は言ったよ。「生贄を捧げる、というのは確かにある」って。
でも、僕が神様から聞いたの、生贄の人もその土地の人だった話なんだけどな…。僕の神様は生贄とらないし…。

お祭りがあるって聞いて来たけれど、親とはぐれた…ってことにしておこう。僕の外見年齢的には、その方が自然でしょ。
親切な村人たちに、表向きは心配されるだろうね。でも、すぐに他のことに夢中になるように仕向けられるかな。
そうしたら、それに乗ろう。なるべく、年相応の子どもっぽくしたいからね。
それにしても…なんで男だけでなく女もなんだろ?ある意味平等だけどさ…。



 一方その頃――
「おやおや、お嬢ちゃん。
 こんなところで一人で何をしているね?」
「お祭りがあるって聞いて両親と一緒に来たんですけどはぐれちゃって……
 あの、探すのを手伝ってくれませんか?」
 泣きそうな顔をして話しかけてきた村人を見つめるカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)だが、それが演技であることに村人は気付いていないようだった。
「そうかいそうかい。
 中央の広場で待ってればご両親が見つけてくれるかもしれないね」
 さあ、こっちだよ、と。
 イセに声をかけてくれた村人は彼女の手を引いて先導する。
 祭りの会場でもある中央の広場には、櫓が建てられてその上には簡易的な祭殿が置かれていた。
 一見すると、普通のどこにでもあるような祭殿だ。
 しかし、そこから漂う異様なほどの、狂気とも呼べる嫌な感覚はこの地に封じられていると言われる邪神のものだろうか。
 村人達は、イセが感じた狂気の中で、まるでそれが感じていないかのように談笑しながら祭殿を整えている。
 ……そも、生贄を捧げる行為は確かにある、とイセを造りだした神は言った。
 だが、その際の生贄はその土地の人だったし、ここ数年では生身の人間ではなく人形や形代に取って代わっている。
 それは時代の移り変わりとともに出来上がってきた倫理観や道徳観に依るものだ。
 だがそれが『狂気』により歪められてしまっていたとしたら――。
 その事実に気づいて、イセは自身の背がゾクリと粟立つのを感じた。
 それと同時に気付く。
 この土地の神は、生贄を所望した『だけ』であり、その他は何も指定していないのだ。
 つまり、初めに生贄となった数人の男女は自ら望んで生贄となった。
「ある意味平等だと思ったけど、当然のことだったんだ……」
 そう、男だけでなく女も生贄として『選ばれた』のではなく、生贄として『受け入れた』。
 誰が――カミサマ、つまり輝夜姫が。
 いや、あるいは初めに生贄となった村の人間か。
 考え込むイセの耳に、祭りの準備に勤しむ村人達の声が遠く響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《華恋》

SPD

男に変装しシホと村に入る
普段の偽乳を外しただけだわ…

一人称は俺で通す

神の贄として美しく育てられたシホと従者でありながら恋に落ちた設定だ
邪神の贄となる男女を救った輝夜姫の伝説を頼って此処にきた―と、誤認を装うよ

歓迎されりゃシホと手を取り合って大感謝

抜け目なく読心術で察し村人の望むよう行動する
輝夜姫の庇護を得る儀式とかあるのかな、なんて言えば生贄にされる?

結婚式!
さっと頬が朱に染まる
俺もしたい

花嫁姿のシホに嘆息
綺麗だね…少し悔しい
贄として振舞う為でなくその美しさを俺に向けて欲しい
本音が漏れるぜ
シホの言葉に泣きそうなくらい嬉しそうな顔しちゃう

俺は一人で着替えるよ
スタイリッシュに決めるぜ


シホ・エーデルワイス
《華恋》


燦と駆け落ち中のカップルを装う

世間知らずの箱入り娘を演技しつつ
【覚聖】で村人を誘惑しおびき寄せ
身の上話しながら
祭りを情報収集


実は私には神様の贄となる宿命があります
胸元の『聖痕』がその証です

皆さんが私に惹かれるのは
多分贄に相応しい容姿となる様
目指して育てられたからでしょう

最近まで何の疑問も持ちませんでしたが
燦に恋をして…抗いたいと思う様になりました


村人が贄の儀式を隠して
挙式を提案するようコミュ力で誘導


お祭りの儀式を燦と受ければ庇護を得られると?
ありがとうございます

衣装に着替え燦に見せ

まるで結婚式みたい
私…いつか燦と式を挙げたいと思っていたの


燦の呟きに
もちろん今は燦の為でもありますよ
と囁く



 世界には『生贄』となるために生まれた人間が居る。
 そう語る四王天・燦(月夜の翼・f04448)の傍らには、まさに贄に相応しい美しさをしたシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の姿があった。
「ここの伝説にある輝夜姫は、邪神の贄となる男女を救ったと聞きます。
 俺は従者の身であるにも関わらず彼女に身分違いの恋をした……。
 どうか、俺達に輝夜姫の庇護を受けさせてください」
 必死なように見える燦の様子とその後ろに隠れるように身を縮こませているシホを見て、祭りの準備に勤しんでいた村人達は手を止めて話を聞くことにしたようだ。
「残念ながら輝夜様は昔に飢饉を救ってくだすったカミサマなんだよ」
「そんな……」
「ああ、そんな残念そうにしなさんな。
 ……ちょうど今夜、輝夜様がこの村に降りてきてくださる特別な日だ。
 確かにあんたらが考えてるカミサマとは違うかもしれんが、それでもよければわしらの村で婚儀を挙げていってくれやせんかね」
 輝夜様もきっと祝福してくださるはずさ、と目を細める村人に、燦とシホは手を取り合って大喜びする。
 村人達はこのふたりの若者たちが本当に駆け落ちして来たものだと思っているが、実際には違う。
 確かにふたりは恋人同士であることに違いはない。
 しかし燦にいたっては男ですらないのだが、男装と身に纏う雰囲気が相まって、何も知らなければ男と見間違うほどの出来だった。
 そうとは知らない村人達は、ふたりの婚儀の準備を祭の準備と並行して取り掛かることにしたようだ。
 燦は男衆に、シホは女衆に連れられて、それぞれの準備をすることとなる。
「一生に一度の大事な式だってのに、大した準備もできそうになくてごめんねぇ。」
「いいえ、突然の無茶な申し出をしたのは私達の方ですから」
 申し訳無さそうな村の女達に囲まれてシホは婚儀の準備を始める。
「昔に来て取っておいた白無垢が残っていてよかったよ。
 あたしのでよければ使っておくれ」
「そんな、いいんでしょうか」
「もちろんだともさ。
 あんたはなぁんにも心配しないで、輝夜様の祝福をお受けになるといいさ」
 耳元で囁かれるその言葉は甘美な含みを孕んでシホの中へと入ってくる。
 ツキリ、とシホの胸元の聖痕が疼いた気がした。
 彼らがシホに惹かれるのは、贄として相応しい容姿となるように目指して育てられたからだろう、とシホはもちろんのこと、この場にはいない燦も気付いていた。
 それは、シホと燦がそう仕向けるように動いていた結果でもあるが、それだけではない何かがこの村にはある。
 例えばそう、先程のような――
「そういえば、あんたらはなんで駆け落ちなんざしたんだい?
 今の世の中、そんなことしなくても自由に恋愛して結婚できるだろうに」
「え……あ、実は……」
 髪を結っている女に訊ねられ、シホははっと我に返って、自分たちの身の上話をする。
 ユーベルコード【【覚聖】覚醒せしアセビの聖痕(カクセイ・メザメシアセビノスティグマ)】を使いながらのその話に、村の女達はシホへの準備の手を止めないながらも話を聞いていた。
 神様の贄の宿命を背負った彼女だが、燦に恋をしてその宿命に抗いたいと思うようになった。
 そして、邪神の贄となる男女を救った輝夜姫の伝説を聞いて、この村へと逃げ延びた、と。
「なるほどねえ。
 生贄だなんて今じゃこの村だけの風習かと思ってたけど、そんなこともなかったんだねぇ」
 村人達は生贄のことを自覚していながらも、それが悪いことであると感じていない。
 世間話の続きを話しているようなその返しに、シホはこの村の異様さを改めて実感した。
「さあ出来た……やっぱり不安かい?」
「そう、ですね」
「なに、なるようにしかならないさ。
 大丈夫、輝夜様の祝福を受けりゃあ、あんたらにもシアワセが与えられるさ」
 シホの考えていることを気付かれたと思ったが、そんなことはなく。
 その代わりにまた、胸の聖痕が疼いたのだった。

「お待たせしました、燦」
 村の女に手を引かれて現れたシホの美しすぎる白無垢の姿に、先に着替えを済ませて待っていた袴姿の燦は本来の目的すら忘れて息を呑んだ。
「祭の初めにふたりの婚儀の式を執り行いたい。
 今までもこういったことはなかったわけじゃないが、問題はないだろうか」
 祭りの準備を仕切る村人の言葉に、他の村人達は賛成の声を上げる。
 シホと燦がふたりで見つめ合う最中にも、村人達により話は進んでいく。
「私…いつか燦と式を挙げたいと思っていたの」
 シホがポツリと漏らすのは、心からの本心だった。
「シホ……とても綺麗だけど、少し悔しいな
 贄として振る舞うためでなく、その美しさを俺にだけ向けてくれればいいのに」
「どうして?
 これはもちろん今は燦の為でもありますよ」
 燦はシホからの言葉を聞いて泣きそうなくらいに嬉しそうな顔を見せる。
 準備が整ったという声がかかるまで、ふたりは手を取り合って笑い合っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『奇跡亡き夜の囚人』

POW   :    乱心『明けぬ夜の旅』
【失われたはずの自我が不意】に覚醒して【邪神の力を完全制御した闇を纏う姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    汚染拡大『数珠繋ぎの不運』
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【影人間】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    変異侵食『悪夢が始まった日』
自身が戦闘で瀕死になると【全身から無数の影人間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●祭のはじまり
 一組の婚儀が終わり、祭が本格的に始まる。
 今宵は満月、月が赤く染まる日。
 ――しかし猟兵達は知っている。
 それはこの周辺だけに起きている現象であるということを。
 太鼓に笛が鳴り響き、祭囃子に合わせて村人達が踊る。
 祭囃子が激しくなるにつれて、徐々に闇が深くなる。
 そして全てが闇へと呑まれた時、ただただ紅く染まった月だけが煌々と浮かび上がっていた。

●闇の中の紅い月
 周囲が闇に包まれてもなお、村人達は気付いていないかのように祭囃子を奏で、踊りを続けていた。
 狂気が充満したその空間に突如として現れた『影』を、猟兵達は捉えるだろう。
 闇の中、光などないにも関わらず、ソレを『影』だと認識できる……?
 邪神の影響を受けていない猟兵達は正常な思考で持って疑念を抱く。
 だが――村人達は、邪神の影響を受けてしまっている人間は思考を放棄する。
 あるいは、祭の最中は狂気により思考自体が麻痺しているのか。
 何れにせよ、ソレを認識したところで放棄された思考では何が起きているか理解できるはずもなく。
 影は一人、また一人と村人を呑み込んでいくのだった。

※現在の状況※
 祭が始まり、周囲が闇に包まれてしまいました。
 天には紅く染まった月が煌々と浮かんでいて、その影響かはわかりませんが闇の中にも関わらず周りの状況ははっきりと見えるようです。
 敵は周囲の闇からも生まれるようで、祭殿の周りで祭囃子に合わせるように踊り狂っている村人達をUDCへと変えながら数を増やしています。
 根源を絶たない限りは敵が生まれ続けるでしょうが、それが何なのか今はわかってはいません。
 なお、現在の時刻はおよそ夜の10時頃です。
 あと2時間ほどで月が天頂へと昇り切り、邪神が復活するでしょう。
 眷属を生み出している元となる根源を見つけ出して破壊することが出来れば、復活する邪神のさらなる弱体化が望めます。
 眷属である『奇跡亡き夜の囚人』ももちろん邪魔をしてきますが、探す際はそれを退けながら探してください。
秋山・小夜
アドリブ・絡み歓迎

まったく、一般人(?)もいるとは厄介ですね。
まぁでも、狂ってるなら気にしなくてもいいですかね。

右手に妖刀夜桜、左手に二〇式戦斧 金剛を展開してUC【桜月夜】を発動し、根源を探しつつ、とにかく高速で動き続けながらなるべく早めの殲滅を狙うとします。
可能ならUC【千本桜】も発動して一般人以外の敵に多少のダメージを負わせてみようかと思います。

わたしたちの邪魔をするならどんな奴でも叩きのめす、それが信条ですし、歩く武器庫を自称してますからね、本気で行かせてもらいますよ。



 一般人がいるとは、全くもって厄介なことこの上ない。
 しかし狂っているならば気にしなくとも問題はないか、と考えつつ秋山・小夜(歩く武器庫・f15127)は右手に妖刀夜桜、左手に二〇式戦斧 金剛を構える。
「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」
 それは妖刀夜桜の力を開放するための言霊。
 ユーベルコード【桜月夜(サクラヅキヨ)】により、小夜の白銀の髪が漆黒に染まり真の姿へと変化する。
 影達は村人達を取り込みながら増え続けている。
 戦闘をしながら根源を探そうにも、囚人達とそれが操る影人間たちに阻まれてしまう。
 しかし――と、ここで小夜は気付く。
 彼らは、特に囚人たちは何かを守っているように戦っているということに。
「彼らは何を守っているのでしょう‥‥?」
 候補ならばある。
 祭囃子を奏でている奏者、狂気に苛まれ踊り狂っている村人達、それらが取り囲む祭殿……。
 その中でも一番怪しいのは――
「っ!囲まれてしまいましたか……
 戦いの中での考え事はいけませんね」
 気付くといつの間にか増えた影人間達が小夜を取り囲んでいた。
 影人形は村人達の成れの果てだが、小夜は猟兵としての本能で感じる。
 ――彼らはもう、『人間』に戻ることは出来ない。
「元は一般人ですが取り込まれてしまえば助けることは不可能ですか。
 しかし、邪魔をすると言うならば叩きのめすだけです」
 敵を生み出す根源を探すためにもまずは彼らを殲滅しなければ始まらないだろう。
「これでも『歩く武器庫』を自称していますからね、本気で行かせてもらいますよ」
 まずは周囲にいる影人間達を一掃するために、小夜は妖刀夜桜と二〇式戦斧 金剛を構え直したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロバート・ブレイズ
「たとえば――門にして鍵。月が狂気を孕むのは当たり前だが、如何しても『彼女』は無理難題を好むと謂う。邪悪と神性を纏った垂れ流しどもは、嗚呼、可哀想にも贄の名を忘却していた――見える。視定める方法ならば幾等でも思い付くだろう。されど憑かれた連中、中毒症状の原因も解せないとは奇怪の極みだ……根元から絶つのが我々の真なる否定……」
情報収集。根源を『探す』という非戦闘行為に没頭しよう
彼等の事は無碍にして、ただ否定が為に暴いて魅せよう
それが我々(にんげん)の願いで在り、魔女が叶えるべき冒涜だ
「十二・零に開かれる『輝夜姫』とは不可解な。貴様の名は灰かぶりではないのか――兎角。いとは界を断ずるもの。局外者」



 月は狂気を孕んでいるものだ、とロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)は言明する。
 そして『彼女』は何時如何なる時でも無理難題を好む、とも。
 それはこの場に降臨するであろう『輝夜姫』とやらも同じであろう。
「邪悪と神性を纏った垂れ流しどもは、嗚呼、可哀想にも贄の名を忘却していた」
 聞こえるのは祭囃子と、贄を求める邪神の眷属達に対抗している猟兵達の戦闘音。
 その狂気の中でロバートは根源を『探す』という非戦闘行為に没頭する。
「視定める方法ならば幾等でも思い付くだろう。
 されど憑かれた連中、中毒症状の原因も解せないとは奇怪の極みだ。
 ……根元から絶つのが我々の真なる否定」
 根源を『探す』と決めたその瞬間、 ユーベルコード【私はロバート・ブレイズだ。兎角。貴様等、此度――(アンノウン・カダス)】によりロバートの周囲に見えない壁が現れる。
 自身の思考を整理するかのごとく紡ぎ出され続ける言の葉によるその壁は、囚人や影人間の一切の攻撃からロバートを護る。
「神の戯れにより生み出される眷属は更なる眷属を呼ぶ。
 生み出されし影の行き着く先に光はなく闇に閉ざされて居る」
 生まれ続ける影人形には目もくれず、ロバートはただただ根源を探すことに没頭する。
 その行為はただ狂気の源である彼女という存在を否定するためだけに行われる。
 果たしてそれは誰の願いであろうか。
 ロバートは誰がためにその冒涜とも呼べる願いを叶えるのだろうか。
「十二・零に開かれる『輝夜姫』とは不可解な。
 貴様の名は灰かぶりではないのか――
 兎角。いとは界を断ずるもの。
 局外者と成るは果たして」
 ふと、今宵の月が頂点に昇り切るのは十二時丁度と、ロバートは思い出す。
 見上げた月は、『紅』という狂気を更に色濃く映しているようにも見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カツミ・イセ
連携・アドリブ歓迎。

ああ、もう!
いや、落ち着くんだ僕。僕の神様は「変異には、必ず原因となるものがある」と言ってたよ。じゃあ、早く原因…根源を探さなきゃ。
怪しいのは祭囃子の楽器かな…?先んじて現れる紅い月も怪しいけどね…。

あっ、邪魔しないで!水流燕刃刀を伸ばして、鞭みたいに操って対抗しよう。
!相手、UCで寿命削るの。なら、このUCがカウンターになるはず。
寿命削るなら、それは『生命を蝕む原因』になるのだもの。
…UDCに変異した人、助けられるといいんだけど。



 変異には必ず原因となるものがある、という言葉はカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)を創り出した神が言っていたのだったか。
「ああ、もうどうしてこうなっちゃったのかなぁ!
 いやいや、落ち着くんだ僕……僕の神様も言ってたじゃないか」
 予感はしていたはずだ。
 だが止めることは叶わなかった。
 だからこそ、これ以上の犠牲者を出してはいけないのだ。
「そのためにも早く原因……根源を探さなきゃ」
 祭りの準備の様子を見ていた限りでは、変わったところは特になかった様に思う。
 どこにでもあるような祭りの準備の風景。
 ただ、毎回唐突に行われる、不定期なもの故に少しばかり慌ただしかったようにも思うがそれだけだ。
 祭囃子に使われる楽器にも、特別な術などが掛けられているわけでもなく。
 しかし、現在鳴り響いている祭囃子には何かしらの力が篭もっているように、イセは感じていた。
「僕の神様から賜りし水の権能、その一つ。浄化と癒しをここに」
 ユーベルコード【水の権能、一『浄癒』(ジョウユ)】により「水流燕刃刀」に浄化と癒しの魔力が籠もる。
 浄化の力を持った「水流燕刃刀」が奏者達へと向けられて、彼らの中の邪神の影響を断ち切っていく。
 そうして邪神の影響が断ち切られた奏者達は演奏を止め、眠りについた。
「これでいいんだよね……」
『嗚呼、此処は何処だ』
「えっ……?」
 不意に聞こえたその声は、誰のものだろう。
 周りで戦っている猟兵のものだろうか。
『暗くて、何も見えないなぁ。
 そうは思わないかい、そこの君?』
 否、この声はおそらく――
 気付いた瞬間、ゾクリとイセの背に悪寒が走る。
『嗚呼、怖がらせる積りは毛頭無い。
 尤も君が何処に居るかはまだ視えていないのだがね』
 声を上げてはいけない、気付かれてはいけないと本能が訴える。
 いくら埒外たる猟兵だとしても、今の状態の彼奴に気付かれればどうなるか理解らない。
(あれ、でもあの状態は確か寿命を削っているはず……
 なら僕の『浄癒』でどうにか出来るんじゃないかな?)
 寿命を削るということは、それは『命を蝕む原因』となるものだ。
 ユーベルコード【水の権能、一『浄癒』(ジョウユ)】の力がカウンターと成る可能性は十二分にある。
(この手の相手は声さえ出さなければ気付かれない。
 それに僕の得物は蛇腹刀だから、容易に位置もバレないだろう)
 ならばやることは一つだ、とイセの気配を探っているらしい囚人に目掛け、「水流燕刃刀」を伸ばし鞭のように操る。
 バシュッ、という小気味いい音とともに、囚人が纏っていた闇が祓われ、同時に囚人の姿が掻き消える。
 この時、イセは囚人自身が彼女の神様によって『命を蝕む原因』と断定されたのだと理解した。
「……うん、ならやることは一つだね」
 自身の力で持って囚人を倒せると気付いたイセの行動は早かった。
 UDCに変異した者たちが助かることはないだろうことは、猟兵としての直感が告げていた。
 変異したばかりの場合や、特殊な状況下では助けることは出来ることは、イセも話に聞いたことがある。
 だがこの場でUDCへと変異させられてしまった人たちはもう助からない。
――これ以上の犠牲者を増やさないようにするには元を断つしか無い。
「骸の海にお帰り願おうか」
 人間から神へと成ったというイセの神様のためにも、ここで全てを終わらせる。
 それが神の子機たる自身の役割なのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・エーデルワイス
《華組》

アドリブ歓迎

村人はもっと身勝手かと思っていましたが…
婚儀の準備をしていた時の親身さといい
悪意や害意は無かったです
村人はどこまで邪神の影響を受けているのかしら?

そうね…
少なくとも参列者に暴れるオブリビオンは断りたいです

『聖鞄』から私達の服と装備を出し早着替え
白無垢と羽織袴は村人の良心を信じて大切にしまう


『聖笄』で光学迷彩を纏い目立たなくなりつつ
破魔の祈りを籠めて
燦の援護射撃

村から見る月が紅く見えるなら
村の何かがこの現象を起こしている?
怪しいのは祭殿
けど
複数あるかも?
第六感と聞き耳で気の流れも暗視で見切って追跡し情報収集

根源を見つけるか敵が邪魔なら
【終癒】で村人を傷つけず
根源や敵のみを浄化


四王天・燦
《華組》

演技終了で一人称をアタシに直す

偽りの挙式だけど余韻でうっとり
本当の式はどんな風にしよう?

早着替えで羽織袴はシホに預けるよ
次はドレスもやってみたいね

って、お仕事だ
装備を回収していざ出陣

アタシが前衛
戦闘力爆発してようが勇気をもって踏み込む
シホの支援が心強い

慈悲の聖剣で村人に憑いた影を斬り、UDCとの接点を断つぜ
人に戻りな――解放は式の礼だ
たとえ救えなくてもせめて人として逝けますように

影自体は稲荷符貼り付けて破魔で滅すぜ

影の出所を巡りシホと村を駆ける
あは、本当に駆け落ちみたいな絵になったね

村人が正気に戻れば贄を何処に捧げるか聞く
月に投石したりもするけど、やっぱ祭殿が一番怪しいな…強硬突破だ!



 時は少し遡り、結婚式の模様が終わり、祭が始まろうとしている頃。
「村人はもっと身勝手かと思っていました」
 もと来ていた服に戻ったシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は、同じく着替え終わった四王天・燦(月夜の翼・f04448)にのみ聞こえる声で呟くように言った。
「婚姻の準備をしていたときの親身さといい、悪意や害意は全く感じませんでした」
「それだけこの村に邪神の影響が定着してるってことだろうね。
 まあ、アタシとしては結婚式の予行演習みたいのが出来たから嬉しかったけど」
 演技をやめた燦が先程の結婚式の様子を思い出して余韻に浸るようにうっとりと答える。
 今回は和装でやったから、次は洋装で……。
 また自分が男装してもいいけれどお互いにドレスっていうのも悪くないかもしれない、などと思いに浸っている燦に、シホはやや呆れ気味だ。
「あれ、シホは嬉しくなかった?」
「いえ、そんなことはありませんが……
 少なくとも参列者に暴れるオブリビオンは断りたいです」
「あは、違いないね」
 村人から借りた白無垢と羽織袴を大切にしまうシホは、村人の良心を信じていた。
 この一件の後、彼らがどうなるかは、UDC組織に任される。
 法の裁きを受けさせるにせよ、そうでないにせよ、村人達が全員影に飲み込まれては意味がない。
「差し当たっては根源を見つけなければなりませんね」
「それと同時に村人達とUDCの接点も、だな。
 そっちはアタシに任せてくれよ」
 燦のユーベルコード【巫術[慈悲の聖剣](ナースウィッチ・セイバー)】は、肉体を傷つけることなく憑依されている存在との霊的接点のみを断つことができる。
 完全に影人間になった村人を助けることは出来なくても、そうなる前ならば眷属の影響を断ち切ることができるはずだ。
「さて、それじゃあお仕事だ」
 これ以上の犠牲者を出さないために、燦とシホは共に戦場へと向かっていった。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
 耳障りな祭囃子に踊り狂う村人達の中から影が生まれている。
 周囲が闇に閉ざされているというのに、その影だけはやけにはっきりと浮かんでいた。
 その影が、祭の初めと今とでは明らかに異なっている、と眷属の影響を断ち切っていく燦は感じていた。
 生贄の風習はおそらく憑かれていたからであろう。
 村人達と話をしていた限りでは、彼らの中に少なくともある程度の常識は残っていた様に燦は思えた。
『嗚呼、此処は一体……』
「え…?」
 唐突に祭囃子の音が止んだその時、燦と退治していた囚人に異変が生じる。
『貴方は誰だ……私は、誰だ……』
 囚人の自問自答。
 彼らの失われたはずの自我が蘇ったかのようなその問いが耳に入った瞬間、囚人のまとう闇が更に色を増したような気がした。
「はは、冗談きついって」
 囚人の纏う闇は周囲を侵食しながら広がる。
 それに同調するかのように、月の紅が更に濃くなったような気がした。

 一方その頃のシホは、燦の援護をしながらも根源と成る物を探していた。
 この状況の中で一番怪しいと睨むのは祭殿だ。
「近付ければいいのですけど」
 燦の援護をしながらでは些か難しくはあるが、やはりシホの読みは当たっているようで、囚人や影人間達は明らかに祭殿を護るように配されていることが見て取れる。
 この現象を生み出している原因たる物は祭殿の他にもあるが、それは自分達以外の猟兵が見つけている。
 影人間達が生まれるのを止めるために一番確実な方法は、踊り狂う村人達を止めることだろう。
 あるいは、UDCとの繋がりを断つとも言えるか。
 だがそれは燦が今まさに行っている最中である。
「ならば私のやることは」
 シホが見据えるは祭殿だ。
 幸い、囚人や影人間達は燦や他の猟兵に掛り切りになっているために、シホの行動は気付きそうにない。
 しかし、念には念を入れるために「聖笄」による光学迷彩を使い、シホは自身の姿を隠しながら燦の援護射撃を行いつつ祭殿へと近づいていく。
 そんなシホの思惑に気付いてか、はたまた同じこと思っていたからか、燦もシホと同様に祭殿へと近づきながら闇を祓っていた。
 囚人や村人がシホと燦の意図に気付いたのは、シホが祭殿に丁度たどり着いた頃合いで。
「怨嗟に喘ぎ苦しむものに安息を、死してなお彷徨うものに道標を、旅立つ魂に救いあれ」
 シホのユーベルコード【【終癒】死者へ捧げる弔いの祈り(シュウユ・シシャヘササゲルサプリケーション)】により、この現象の一番の根源とも言える祭殿と、その周囲の影人間達が浄化されていく。
「間に合ったようですね」
「うん、そうだね。
 でも、これからが本番みたいだよ」
 合流したふたりが顔を見合わせてた後に同時に月を仰ぎ見る。
 祭囃子の音が止み、祭殿や影人間達は浄化された。
 眷属達の数はかなり減っていて、どう見ても猟兵達の優勢だ。
 それなのに、妙な胸騒ぎが猟兵達を襲っている。
 ――月は今正に、頂点に達しようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『灼紅の女王・ブラッドクィーン』

POW   :    敵から護る赤黒くおぞましきモノ
【敵対 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【絡みつく赤黒き触手の群れ】から、高命中力の【高粘着性の強酸溶液】を飛ばす。
SPD   :    解放されてはならない狂気の姿
【世界に隠匿された真の邪神の身姿 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    死しても逃さぬ邪悪なる降霊
【 自身に挑んで返り討ちにあい支配された敵】の霊を召喚する。これは【生前に使用したユーベルコード】や【得意としていた武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアイリス・スノーキャッスルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●其れは美しくも醜悪で
 『奇跡亡き夜の囚人』により生み出された闇に全てが染まり閉ざされた。
 唯一闇の中で色を持つは天頂に存在する紅き月――否、あれは月ではない。
 月でないならば、と考えたところで、猟兵達はそこであることを思い出す。
 紅き月が確認されるのは、この村の周辺のみに起こる現象ではなかったろうか。
 瞬間、『月』がこちらを見た。
 其れは美しい女の姿をしていたが、下半は醜悪な紅に染っていた。
 ――あれが村人達の言う『輝夜姫』に違いない。
 そして今、その『輝夜姫』の力は猟兵達でも倒せる程までに減じられている。
 この狂気の元凶たる彼の者を滅するにはこれ以上の好機はない。
 
※現在の状況※
 邪神が降臨しました。
 しかしながら、前章での猟兵達の活躍のおかげでその力はかなり削がれています。
 むしろ、倒すのであるならば今しかありません。
 なお、村人達や眷属の姿は見当たらず、この空間に居るのは現在猟兵達及び邪神のみとなります。
 邪神を倒した後、村人達は正気に戻ります。
 その後の彼らについてはUDC組織に任せても問題ありませんので、戦闘に集中してくださってかまいません。
シホ・エーデルワイス
《華組》

アドリブ歓迎

あれが輝夜姫?
どちらかというと吸血姫の方がしっくりします

…可能性は…あります←悲し気


フェイントも交えながら重力属性攻撃を込めた誘導弾を
邪神に当て地上へ落す

燦!今です!


燦の短剣が刺さったら
短剣を追跡する誘導弾でスナイパー
更に押し込むなり動かすなりして傷口を広げる

任せて!

霊が召喚されたら燦と息を合わせて
破魔の祈りを籠めた【樹浄】を周辺に撃ち込んで結界を展開し
燦の不浄を祓う場を強化


敵の攻撃は第六感と聞き耳で見切り残像回避

当たりそうなら
狂気と呪詛耐性のオーラ防御で耐える


戦後

世間から隔離され
社会常識を歪められて育ってしまった人達が
適切な情操教育を受けて社会復帰できるよう【輝喘】で祈る


四王天・燦
《華組》

求婚者喰い殺して人肉の味を覚え、月に還っても生贄を求めた―
新説・輝夜姫伝説ってか

シホの生贄の宿命って怪物の餌の可能性もあるのかな
何があっても宿命から護るよとシホの手を握る

攻撃が届かない…降りてこいよ!

石やガラクタを投げてやる
錯乱を装いアークウィンドも投擲…刺されば風の衝撃波で傷口を抉るぜ
シホ、あの傷を広げて欲しい

邪悪な降霊を使われたら真威解放で不浄を祓う場を作る
舞う符に破魔と祈りを込めて支配を断つ
シホと共に弔いの句を送るぜ
どうか安らかな眠りを―

広がった輝夜の傷口に時限爆弾・カウントダウンを投擲
堕ちな
人を惑わす禍月め

今まで生贄にされた者たちに祈りを捧ぐ
組織には亡骸はなくとも弔ってもらうぜ


ロバート・ブレイズ
「輝夜姫と言うよりは吸血鬼の類か。火鼠の衣を纏う事を赦す――されど忘れるな。我が身は土から生じ、混沌は枕元でも囁きを辞めぬ。断章――」
不完全が騒々しい。我が身は常に『完全』なのだ
断章で変身し、思考(のう)の数を増やす事で収集する情報(よわみ)を高める。相手の脆い部分を栞(いと)で絡め取りつつ壊す
その際、恐怖を与えるで『神意(ほんもの)』を叩き込む
酸に溶かされるならば何度でも『変身』して魅せる

貌は幾等有ると言うのか。正気固定機を突き付け『狂気そのもの』を正気へと落とす

相手が弱ってきたならば鉄塊剣で圧し潰す
「貴様が如何様な化け物でも人間と成せば遍く普遍。成程、哀れな事に冒涜からは逃れられぬ」


カツミ・イセ
うわぁ、本当に『紅い月』。
僕の神様、覚醒してあの姿(真の姿)になっていい?

…いいって神託があった。だから、ここから
(真の姿&口調『神の子機』へ)
私は神の子機、水の権能授かりし、空も泳げる人魚たる者。
UC発動後、【似姿】の皆と一緒に水流燕刃刀を展開。そう、皆もこの武器を持っているから増えている。
触手を、展開した水流燕刃刀で切り裂く。
強酸溶液も、水の前では薄まり無意味。…皆、水でできてるし。

私はあなたを許さないし、逃がさない。隙なく展開した水流燕刃刀から逃げられると思うな。
それに、猟兵は私だけではない。
大人しく骸の海に帰るがいい、邪神。


秋山・小夜
アドリブ・絡み歓迎
(真の姿)
やっと本体が出てきましたね。とりあえず、わたしたちの前に立ちふさがるなら、叩き潰すまでです。

右手に妖刀夜桜、左手に二〇式戦斧 金剛を展開すると同時にUC【桜月夜】と【荒城の月】を発動して、遠近どちらも対応できるようにしたうえでラスボスに挑むとします。可能なら多くの敵に囲まれないように飛び回りつつ本体にダメージを入れていけたらと思います。

多くの人を犠牲にしてきた奴なんかに手加減してたらこっちが危ないのでね、とにかく本気で叩き潰すとしますよ。



 求婚者を食い殺して人肉を覚え、月に還っても生贄を求めた――
 さながらそれは「輝夜姫」というよりも「吸血姫」ではないだろうか。
「新説・輝夜姫伝説ってわけ?」
「どちらかというと『吸血姫伝説』といった方がしっくりくる気がしますが」
「あは、確かにそうかもね」
 はるか上空に揺蕩う紅の存在を見上げながら、四王天・燦(月夜の翼・f04448)とシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が互いに言い合うのを横目に、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)もまた、同じようなことを考えていた。
「輝夜姫と言うよりは吸血鬼の類、火鼠の衣を纏う事を赦すのは――」
 「輝夜姫」と呼ばれる邪神が纏う下半の赤を火鼠の衣と例えるロバートの呟きは闇へと消え、彼の姿さえも変えていく。
「――されど忘れるな。我が身は土から生じ、混沌は枕元でも囁きを辞めぬ」
 ロバートのユーベルコード【断章(アザトホース)】により、周囲に色濃い狂気が蔓延する。
「――沸騰せよ我が脳漿」
 姿を表すは完全なる邪神の王――白痴の魔王とも呼ばれるロバートの真の姿。
「うわぁ、本当に『紅い月』。
 って、あっちの方が危険な気もするけど、一応味方なんだよね?」
 現れた「輝夜姫」と、ロバートの真の姿を見て不安そうな声を上げたカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)が、その瞳を伏せて彼女の中の神様に問いかける。
「ねえ、僕の神様。
 僕も覚醒してあの姿になってもいい?」
 しばしの沈黙の後、うん、わかったよ。と頷いたイセの姿が変化する。
「……私は神の子機、水の権能授かりし、空も泳げる人魚たる者」
 神の子機たる人魚の姿へと変化したイセは、それと同時にユーベルコード【水の権能、二『似姿』(ニスガタ)】により水で作られたイセによく似た球体関節人形を召喚する。
「さあ、私の似姿達。
 目の前の『敵』を討ち果たしなさい」
「夜桜、敵を斬りに行きましょう」
 「輝夜姫」へと向かっていく80体弱の似姿達に紛れるようにして、ユーベルコード【桜月夜(サクラヅキヨ)】の力により真の姿へと至っていた秋山・小夜(歩く武器庫・f15127)が、「二〇式戦斧 金剛」で「輝夜姫」を砲撃する。
「地上に降りてくる気配はなさそうですね」
「本当にねぇ。
 そういえば、シホの生贄の宿命って怪物の餌の可能性もあるのかな」
 その様子を離れたところから観察していた燦が、隣のシホにふとした疑問を投げかける。
「……可能性は、あります」
 悲し気に顔を伏せるシホが思うことは、失った前世の思い出。
 忘れてしまったはずのそれは、しかしシホの中で未だに罪として燻っている。
「……大丈夫だよ、シホ。
 あたしが、何があっても宿命から護るから」
「ありがとうございます、燦」
 悲しげに俯くシホの手を取り、燦が告げるのは確かな言葉だった。
 ようやく見せたシホの笑顔に、燦もまた笑顔で頷く
「この村の人達を解放するためにも、あいつを必ず倒さなきゃね」
 邪神は変わらず空にあり、敵対の感情を与えた相手に対して絡みつく赤黒い触手が蠢くように猟兵を襲っている。
 その触手はシホと燦の元へと辿り着く前に、イセの似姿達が切り裂いていく。
「あいつをどうにかして地上に落とすことが出来ればなんとかなると思うんだけどな」
 なにか投げるものをと燦が周囲を見渡すが、元の空間と隔絶されている闇の帳の中故か、石ころ一つも見つけることは出来なかった。
「輝夜姫は罪を犯して地上へと堕ちてきた。
 であるならば、再び地上へと貶すことも容易で在ろう。
 ――情報(よわみ)は既に完全たる我が身の手の内よ」
 ロバートのその言葉には純然たる確証があった。
 内にある騒々しいまでの不完全さが消え失せた今のロバートにとっては、彼の邪神を地上へ落とすことなど容易く、それを証するように「銀糸の栞」で邪神を絡め取っていた。
 そのロバートの攻撃を支援するようにシホがフェイントを交えながら重力属性攻撃を込めた誘導弾を「輝夜姫」に向けて放つ。
 さらに、小夜の「二〇式戦斧 金剛」による砲撃と、イセの似姿達の攻撃も加わり、「輝夜姫」は徐々にその高度を維持できなくなっていた。
 足掻きを見せるように「輝夜姫」の邪悪なる降霊により現れた霊が猟兵達に放たれるが、それに声を上げたのは燦だった。
「あの霊はあたしとシホに任せて!
 符術の極意とくと見よ! 御狐・燦が願い奉る。ここに稲荷神の園を顕現させ給え!」
 燦のユーベルコード【真威解放・四王稲荷符【陽】(フォーチュンフィールド)】の展開により、破魔符の雨が降らされ戦場全体が神聖な領域へと変化していく。
「とっておきです!」
 その燦のユーベルコードの展開に呼応するように、シホが自身のユーベルコード【樹浄】邪を清め祓いし聖霊樹の庭(ジュジョウ・セイクリッドピュリファイガーデン)】を発動させ、邪悪なる霊たちを次々と撃ち落としていく。
『――――!』
 ふたりのこの攻撃は邪神としてこの場に降臨している「輝夜姫」にも効果が覿面で。
 声にならない叫びを上げながら真の邪神の身姿へと変貌しようとしていた。
「そうはさせませんよ。
 ここで終わりです」
 完全に真の邪神へと変わる寸前、「輝夜姫」のその身がふたつに割れた。
 小夜が妖刀「夜桜」により一刀両断、ついでロバートの鉄塊剣「立ち去れ」が放出した炎が「輝夜姫」のその身を炎に包む。
『――――!!』
 耳障りとも思える断末魔の叫びを上げながら、「輝夜姫」は炎に焼かれて消滅した。
 それと同時に辺りを包む闇が晴れ、村の景色が戻ってきた。
 ――堕ちた禍月に変わり、金色の月が優しく夜を照らしていた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
 その後、「輝夜姫事件」と名付けられた一連の事件はUDC組織の尽力もあり事件の真相は伏せられたまま解決を迎えることとなる。
 正気に戻った村人の中には、自責の念に駆られて自ら警察へと出頭するものも多くいたという。
 この村のあった土地及び残った村人達はUDC組織の預かりとなり、再び邪神降臨の儀式を行うことがないように監視されることとなったことは、語るまでもないことであろう。
 ――以降、この村周辺で『紅い月』が目撃されることは二度となくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月21日


挿絵イラスト