●例外の復讐者
その不思議の国は本当であれば『超弩級の闘争』実現のために殲滅されるはずであった国。
しかし、今はそこに在るのは一塊の集団であった。
彼等の瞳は爛々と輝き始めていた。
其処に在ったのは未だ理性の輝きであったが、どうしようもないほどの殺戮衝動に陰り始めていた。
「……ほう、やるじゃないか。お前達だな、この国の住人を逃したのは」
相対するオウガの大軍勢のから一人の男がふらりと歩みを進める。
その風貌、その鋭き眼光に宿した純粋なる獣性は『殺人鬼の集団』たちをして身震いさせる存在であった。
その言葉、その空気。
男の放つすべてがあらゆるものを無差別に破壊を齎すことを彼等は理解した。
言葉ではなく、全ての面において男は『殺人鬼』の誰よりも強いのだと理解できたのだ。
「ああ、そのとおりだ。お前達がやってくるのがわかっていたからな」
一人の殺人鬼が、その瞳を輝かせながら言う。
その言葉に男は頭を振った。そうじゃない。そういうことではないのだと『殺人鬼の集団』が何故不思議の国の住人たちを逃したのかを否定する。
そんなことは些細なことだと、意味のないことだと否定するのだ。
「俺も、お前達『殺人鬼』も、世界から捨てられた存在であることに違いは無い。生きていようが死んでいようが、俺もお前も『六六六(ダークネス)』を刻まれし咎人」
それは己と『殺人鬼』たちとの間に違いなどないということを示す言葉であった。
だというのに。愚かにも、と男は言う。
「なのに、せめて第二の故郷は守ろうという訳か。健気な忠誠心だ」
笑う。嗤う。その健気さも、己の本能を抑える理性も意味のないことであると嗤うのだ。
故に『殺人鬼』たちは構える。
あの男は敵だと自身の中にある衝動が理解している。あれは在ってはならないもの。
此処に居てはいけないもの。
不思議の国の住人たちは優しかった。己達殺人鬼が抱える殺戮衝動を理解し、それが落ち着くようにと心を砕いてくれた。
だから、護る。
この身のなにものを引き換えにしてでも、彼等だけは護ると己たちは決めたのだ。
「――…お前達はこう考えてるんだろう?」
男はそれでも嗤った。
圧倒的な力の奔流を『殺人鬼の集団』は解き放ちつつあった。その力はオブリビオンの大軍勢をしてでも鏖殺しつくさんとするほどの力であった。
だが、それでも嗤う。滑稽であると。
「普段抑えている殺人衝動を全開にすれば、倒せぬ者など無いと。確かに、殆どの場合、それは世界だろう。だが――」
そう、ここに在るのはむき出しの獣性にして、殺人鬼。
咎人にして身に宿すは『六六六(ダークネス)』。その心の内に存在する暗闇を覗き込み、知るが故に恐れてはならぬものを抱える者。
「運が悪かったな。俺の名はディガンマ」
オウガの大軍勢が咆哮を上げる。
それは『ディガンマ』と名乗った猟書家の獣性に呼応するかのようだった。男は、『ディガンマ』は嗤う。
己の中にもある殺人衝動。あらゆるものを破壊せしめる獣性を解き放つに値する者たちを前にしていることに喜びすら感じていたのだ。
「お前達が初めて出会う――『例外』だ……!」
●棄てられし者の
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はアリスラビリンスに現れた猟書家『ディガンマ』の引き起こす事件を解決していただきたいのです」
ナイアルテの瞳は僅かに陰っていた。
その理由は言うまでもない。アリスラビリンスに現れた猟書家『ディガンマ』が並々ならぬ存在であるからだ。
危険、死地に猟兵たちをこれから送らねばならぬということに僅かな躊躇いがあるのだろう。
「アリスラビリンスは今、猟書家『鉤爪の男』が目論む『超弩級の闘争』を実現すべく猟書家『ディガンマ』がある不思議の国を殲滅しようと現れたのですが、そこに暮らしていた住人たちを『殺人鬼の集団』が事前に逃してくれていたのです」
それは言うまでもなく、猟書家の目論見が最初から潰されていたことを示していた。
『殺人鬼』たちは己達に優しくしてくれた不思議の国の住人たちに報いるために、あえて不思議の国をもぬけの殻にした状態でとどまり、オウガの軍勢を食い止めようとしていたのだ。
それは彼等の持つ理性と優しさがもたらした結果であったのだろう。
「『殺人鬼』の彼等は普段抑えている『殺人衝動』を完全に開放し、オウガの軍勢と激突するのです……確かに彼等は強いです。恐らく、このまま皆さんが介入しなくても、オウガの軍勢を殲滅できるでしょう」
だが、そこに落とし穴がある。
完全に『殺人衝動』を開放した殺人鬼たちはどうなるだろう。
例え戦いに勝ったとしても、いや負けたとしても。
どちらにせよ、彼等の運命は決まっている。
「はい……『殺人鬼』の皆さんはどちらにせよ殺戮衝動に飲まれてオウガ化してしまうのです」
それがナイアルテの見た予知なのであろう。
生きながらにしてオウガ、即ちオブリビオンになるということが本当にありえるのかはわからない。
オブリビオンとは過去の化身。骸の海より滲み出た存在だ。死なぬ殺人鬼がオブリビオンになるとは考えにくい。
だが、それでも予知してしまったのだ。これを捨て置くことはできないのだと、ナイアルテは言う。
「そのためには殺人鬼の皆さんの『殺人衝動』を抑えつつ、共にオウガの大軍勢と戦いこれに勝利する必要があります。また、例え、彼等が『殺人衝動』を全開にしても、猟書家『ディガンマ』は倒すことはできないでしょう。それほどまでの獣性を秘めた存在なのです」
猟兵たちがやらなければならないことは多い。
『殺人鬼の集団』の『殺人衝動』を適度に抑えながら戦わなければならない。勿論、オウガの大軍勢は倒さねばならぬし、猟書家『ディガンマ』もまた倒さなければならない。
「……強敵を前に戦力となる『殺人鬼』の皆さんの力を抑え、同時に猟書家『ディガンマ』から護りながら戦わねばなりません。その難しさは言うまでもありませんが……それでも彼等を救っていただきたいのです。誰かのために己の力を振るう。そう決めた彼等の名が例え『殺人鬼』と呼ばれるのだとしても」
それでも、彼等は優しかったのだとナイアルテは頭を下げて猟兵たちを見送るのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアリスラビリンスにおける猟書家との戦いになります。不思議の国の住人たちを逃した『殺人鬼』たち。
彼等の『殺人衝動』を抑えながら迫る大軍勢、そして強敵である猟書家『ディガンマ』を打倒するシナリオとなっております。
※このシナリオは二章構成のシナリオです。
●第一章
集団戦です。
敵は『トランプの巨人』が無数に蠢く大軍勢です。
皆さんが転移し、駆けつけたときには『殺人衝動』を開放した殺人鬼たちの優勢です。
ですが、このまま彼等の『殺人衝動』を解放したままにすると戦いに勝利した後にオウガ化してしまいます。
彼等を適度に抑えつつ……言葉をかけるなど様々な方法があるかと思われます。
共に戦いオウガたちを打倒しましょう。
●第二章
ボス戦です。
猟書家『ディガンマ』との戦いになります。
『ディガンマ』の強さは改めて言う必要もないほどに強大です。仮に殺人鬼の殺戮衝動が全開になって束になったとしても彼には勝てないほどの力を持っています。
故に『殺人鬼』たちを護りながら戦う必要があるのです。
全ての戦いが終わった時、存命の殺人鬼は徐々に衝動が抜けていき、落ち着くことでしょう。
※プレイングボーナス(全章共通)……殺人鬼達を適度に抑えながら、共に戦う。
それで例外たる復讐者『ディガンマ』と殺人鬼たちの『殺人衝動』を適度に抑えながら、彼等のオウガ化を防ぐために皆さんの戦いが求められています。
そんな皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『トランプの巨人』
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POW : 巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
何もかもが無意味であると嗤う男、猟書家『ディガンマ』の言葉に不思議の国の住人たちを逃がすために残った『殺人鬼の集団』。
彼等は『ディガンマ』の言葉に頭を振った。
「例えそうだとしても、やらなければならない。彼等は俺達に優しかったんだ」
理性で抑え込んでいた『殺人衝動』がこみ上げてくる。
身の内側にこのような醜いものを抱えているというのに、不思議の国の住人たちは己たちの心をさえ癒そうとしてくれた。
それに応えるためには、皮肉にもこの方法しかなかった。
「ああ、そうだ。あの子達は優しかった。私の歌を聞いてくれた」
「俺の些細な手遊びですら、はしゃいだように笑った」
「彼等は心の底から僕たちの友達になろうとしてくれた」
「あの心の優しさがあったからこそ、オレたちは、この胸に抱いた『殺人衝動』を解き放つことができる」
そうだ、そのとおりだ。
確かに己たちは遺棄された者なのだろう。例外たる『ディガンマ』の言葉の通り無意味な存在なのだろう。
だが、それがどうした。
人の心に闇が在るように、人の心に光が在る。
その光を灯してくれたものたちのために戦える誇らしさを抱いて己たちは、己たちが最も嫌悪するものを開放する。
だが、そんな献身すらもオウガの軍勢は嗤う。嘲笑う。
お前達もこうなるのだと。
どれだけ綺麗事を宣ったところで、行き着く先は『この姿』であると嗤うのだ――。
小鳥田・古都子
手伝いに来たよ。
絶対にこの世界を守りたい、ってのは分かるけど、でも皆が犠牲になったら避難した人達が悲しむよ。
もう手段を選ぶ必要はないの。だって私達が来たんだから。
衝動なんか気にしないでいられる日常に戻れるように、みんなで頑張ろう。
【肉体改造】されて強化された【早業】で【ダッシュ】して敵を攪乱します。
近寄られたり包囲されたりしない様に、殺人鬼の皆さんとも連携して立ち回ります。
「内蔵武器」を起動。両腕に仕込んだマシンガンで【範囲攻撃】です。【ヴァリアブルウェポン】のUCで【武器改造】し攻撃回数を増加。腕だけじゃなく、背中や腰からもマシンガンの銃身を生やして掃射。大勢の敵を巻き込みます。
不思議の国に在りて『殺人鬼の集団』は、己の身に秘めたる『殺人衝動』を開放していく。
もう戻れなくなると知ってもなお、不思議の国の住人たちが与えてくれたものを抱えて彼等は戦う。
彼等の笑顔を、彼等の心の暖かさを知るからこそ、猟書家たちの目論む『超弩級の闘争』など、この世界に齎してはならぬと戦うのだ。
対するオブリビオン――オウガの大軍勢は凄まじい数だ。
己たちの『殺人衝動』を開放した殺人技巧を用いてもなお、追い込まれていく。
巨大な剣が巨人より振るわれ、その一撃が大地を穿つ。
飛び散った破片が皮膚を切り裂き血を噴出させる。
だが、それでもいい。その痛みこそが未だ己たちの『殺人衝動』を完全に開放していない証。
「まだ……! まだ私たちは!」
そう、戦える。これ以上の力を持ってオウガの大軍勢を鏖殺することができる。
喜びに震える。胸が高鳴る。これほどまでに心地よい気持ちを知らない。
「手伝いに来たよ」
それは小さな声であった。
己達の声ではない小さな声。その声の主を、『殺人鬼』たちは爛々と衝動に輝く瞳で見つめた。
そこに在ったのは、少女――小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)の姿であった。
「絶対にこの世界を守りたいってのは分かるけど、でも皆が犠牲になったら避難した人達が悲しむよ」
その言葉は事実であったことだろう。
きっと優しい彼等は泣いてしまうであろうことは、『殺人鬼』たちも理解していた。だが、それでも戦わねばならない。手段を選んでなどいられないのだ。
だが、古都子は続ける。
彼等がオウガ化してしまえば、守ろうとした者さえも傷つけてしまうであろうと。だからこそ、その犠牲は必要なものではないのだと、『殺人鬼』たちに先駆けて戦場を疾駆する。
『トランプの巨人』たちを翻弄するように駆け抜け、殺人鬼たちと連携するように、その腕に内蔵されたマシンガンから弾丸をばらまく。
「もう手段を選んでいられないだなんて、そんなこと言う必要なんて無いの」
古都子は言う。
『トランプの巨人』たちをマシンガンから放たれる弾丸で牽制しながら、『殺人鬼』たちに言うのだ。それ以上『殺人衝動』を開放しなくていいのだと。
確かに戦うためにそれは必要なものであろう。
「――だって、私達が来たんだから」
彼等だけではない。勿論、古都子だけではない。次々と転移してくる猟兵たちの姿が不思議の国に広がる。
何もかも自分たちだけで為す必要はないのだと。古都子は、その心に秘めたる優しさと、正義の味方としての存在を示すように瞳はユーベルコードに輝かせる。
「ヴァリアブルウェポン!」
両腕に仕込まれていた内蔵マシンガンだけではない、その背中や腰からマシンガンの備え付けられたアームが展開され、凄まじき勢いで弾丸をばらまいて『トランプの巨人』たちを掃討していく。
どれだけオウガたちが、己の未来の姿を暗示していたのだとして、『殺人鬼』たちは飲まれることはない。
そう、それこそが彼等の心に不思議の国の住人たちが宿した灯火。
「そうだ……俺達は、また……あの笑顔に逢いたい……!」
「衝動なんか気にしないでいられる日常に戻れるように、みんなで頑張ろう」
古都子の声が『殺人鬼』たちの心に広がっていく。
例え『例外』たる者が襲おうとも、古都子は護るだろう。
世界に遺棄された存在であっても掬い上げよう。
それを為すのが正義の味方、古都子の在り方であるのだと叫ぶように内蔵マシンガンの銃声がアリスラビリンスに鳴り響き、オウガの大軍勢を蹴散らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
亘理・ニイメ
まあ! まあ! 素敵だわ!
己の衝動を、どのように、使ったらいいか!
正しく、気づいた人達なんだわ!
私も、一緒に、戦いたいわ!
(ふだんは物静かながら、頬を紅潮させ興奮している)
……あら。
ユーベルコード、封じられてしまいました。
どう、しましょう。
……あっ。
殺人鬼さん。
助けて、下さるのですね。
ありがとうございます。
守って、下さるのですね。
あなたは、助け、守ることができる。
ありがとうございます。
何度でも、言います。
そして。
悪いことをする者には、悪いことがおこる…。
(連鎖する呪い)
(奮戦誓うも経験も力共に足りない。己の頼りなき小さな姿。
知ったうえで参戦し殺人者達の衝動の源を
変化させることができたらと願う)
オウガの大軍勢の軍容は言うまでもない。
『トランプの巨人』たちが振るう剣が大地を穿ち、不思議の国を蹂躙していく。
それは止めようのないことであったが、それでも『殺人鬼の集団』は己の心のなかに宿る醜き『殺人衝動』を開放し戦う。
己の殺人技巧のすべてを持って、己たちの心を癒そうとした不思議の国の住人たちに報いるために戦う。
「戦う。戦う。戦う。戦う――! 私達の中にある『殺人衝動』はこの日のためにあったのだから!」
殺人鬼たちは、喜びに満ち溢れた顔で殺人技巧を振るい続ける。
それは本来であれば忌むべき衝動であったが、それでも彼等は今喜びに打ち震えている。
封じてきた『殺人衝動』を開放できる喜びか、それとも何かのために戦えることへの喜びか。
それすらもわからなくなりはじめていた。
だが、そうしなければオウガの大軍勢を退けることなどできやしないのだ。
「まあ! まあ! 素敵だわ! 己の衝動を、どのように、使ったらいいか! 正しく、気づいた人たちなんだわ!」
次々と戦場に転移してくる猟兵たちの中に一人、幼き少女が混じって降り立つ。
彼女――亘理・ニイメ(結界崩壊・f31242)の瞳に映るのは自身の抱える『殺人衝動』を誰かために開放した殺人鬼たちの奮戦であった。
彼女もまた喜びに満ちていた。
こんなにも誰かのためを思って戦える者たちと共に戦えることに高揚していたのだ。
いつもは物静かな彼女であったが、頬がりんごのように紅潮していた。
それを興奮と呼ぶのかも知れない。
「私、一緒に、戦いたいわ!」
その小さな体で『トランプの巨人』犇めく戦場へと降り立つ。
だが、そんな彼女は経験不足であった。如何な猟兵と言えど、その力量の差があれば戦うことも儘ならぬことであったことだろう。
戦いの要であるユーベルコードを、彼女の体を縛り上げる巨大なトランプカードが封じる。
「……あら。ユーベルコード、封じられてしまいました。どう、しましょう」
戦えない。
これでは戦えない。小さき身であるニイメにとって、それは己の生命すらもおびやかす事態であった。
「――! 危ないっ!」
殺人鬼の一人が彼女ユーベルコードを封じる巨大トランプカードを一閃の元に切り捨てる。
彼女の体を抱えて、殺人鬼が戦場を駆け抜ける。それはニイメにとって驚きの連続であったのだろう。
「……あっ。殺人鬼さん。助けて、くださるのですね。ありがとうございます」
「こんな子供がなんで、戦場なんかに……!」
殺人鬼の衝動は開放されていたが、それでも小さき姿をしているニイメを放ってはおけなかったのだろう。
それが彼等の心に灯された明るいものであることをニイメは感じ取っていた。
それがたまらなく嬉しいのだ。
言葉はつまってなかなか出てこない。けれど、それでもニイメは伝える。伝えなければならない。
「護って、くださるのですね。あなたは、助け、護ることが出来る。ありがとうございます。何度でも、言います」
ニイメの微笑みこそが、殺人鬼の心に染まりつつ在った『殺人衝動』を別のものへと変えていく。
確かに開放された『殺人衝動』は強力なものであったことだろう。
彼等はそれを抑えていた。抑え続けていた。
ただの一度も己のために力を奮ったことがないのだろう。今だってそうだ。
自分を助けてくれた。
小さき姿。頼りない姿。それでも殺人鬼は窮地に陥ったニイメを助けたのだ。彼女にとって、それだけで十分だった。
「礼は、いい……此処は危ないんだ」
だから、と殺人鬼は己とニイメに追いすがる『トランプの巨人』が振り上げた剣を見遣り、ニイメだけは逃がそうとした瞬間、『トランプの巨人』を襲うのは切り裂いたトランプカードの破片であった。
『トランプの巨人』の頭蓋を割る巨大トランプカードの破片。
それはあまりにも偶然の出来事であった。誰も予想しないものであったことだろう。
だが、その不慮の事故とも言うべき出来事は、ニイメの周囲で次々に起こっていた。剣の破片が他の『トランプの巨人』に突き刺さり、崩れ落ちた『トランプの巨人』に躓き、団子状になったりと枚挙にいとまがない。
「なに、が……」
「何度でも、言います。ありがとうございます。そして。悪いことをするものには、悪いことが起こる……あたりまえのことですね?」
ニイメは確かに力不足であったことだろう。
経験も少なかった。
けれど、彼女のユーベルコードは裏切らない。
すでに彼女はオウガの大軍勢の中に癒えない傷跡を付与していた。それは確かに些細な傷であったことだろう。
だが、彼女の言葉通り、悪いことをするもの――即ち、オウガたちに振り注ぐ連鎖する呪いを持って、オウガたちの悪意を打倒するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイーズ・ハーシェル
ふ〜ん・・・・・・へー・・・・・・あなた達は人の為に殺せるんだ?
ま、アタシだって殺人鬼の端くれだし? ここはかっこよく助けてあげちゃおっか!
アタシはアタシである為に殺すけど、あなた達はどうかしら?
守りたーい! って思ったからあいつら殺しちゃおってなったんならさー? 最初の目的、忘れちゃダメだよ〜♪
衝動より自分の気持ちが大事なの!
トランプの兵隊さんだなんて素敵ね。
そっちからいっぱい来てくれるなら大歓迎よ♪ 【Child's Play】で兵隊さん達とガンガンヤり合うわ!
武器はFRYDAY! 守りたい人の為に戦う子達に協力するなら、あなたの出番で間違いないわ。
どんどん【部位破壊】して潰していくわよ!
オウガの大軍勢たる『トランプの巨人』たちの数は一向に減らなかった。
不思議の国に広がるオウガの姿。
彼等が生み出すのはトランプ兵士たち。『トランプの巨人』よりも体躯は小さいが、その数はあまりにも厄介なものであった。
『殺人衝動』を開放した『殺人鬼』達であっても、その数の前には手こずるものであったことだろう。
彼等は己の体の内側にある衝動から目を逸らすことはなかった。
「殺す――鏖殺する。お前達が雑草のように増えるのならば、オレは芝刈り機のように殺そう。あの子らのためにオレはオレでなくなったとしても!」
殺人鬼の一人が戦場を駆け抜ける。
彼の持つ殺人技巧は凄まじいものであったことだろう。
まるで芝を刈り取るようにトランプ兵士たちの首が飛ぶ。鮮血がほとばしり、むせ返るような血の匂いがあたりに広がる。
だが、それでも構わない。
こんなにも。こんなにも。心地よいのだから。
「ふ~ん……へー……」
それは関心したようでもあり、同時に呆れ果てるような声色のようにも聞こえたことだろう。
すでに戦場となった不思議の国に響き渡る声の主、ルイーズ・ハーシェル(死は救済ではない・f28083)が転移し降り立つ。
彼女の瞳に映るのは『殺人衝動』に身を任せ始めた殺人鬼の一人であった。彼の瞳はすでに衝動に染まりつつあり、このままではいずれ『オウガ化』するであろうことは分かりきっていた。
「あなた達は人のために殺せるんだ?」
ルイーズは違う。
自身が自身であるために殺す。
フィクションから生まれる恐怖を糧に生きるキラーであるルイーズにとって、それはある意味で対極に位置するものであったことだろう。
同じ『殺人鬼』であっても、こうも立ち位置が違うのであればこそ、ルイーズは尚更のこと張り切らねばならぬ。
彼等が彼等であるために。
己が己であるためにそれを為すように。ルイーズは戦場を駆け出す。
「ま、アタシだって殺人鬼の端くれだし?」
殺人鬼たちとトランプ兵士たちの間に降り立ち、大ぶりのマチェットを振るう。数多の犠牲者、そして己すらも葬った刃に込められた想いが発露する。
「守りたーい! って思ったからあいつら殺しちゃおってなったんならさー?」
振るう。マチェットの一撃がトランプ兵士たちの脳天から唐竹のように割る。鮮血ほとばしり、それでも止まらぬChild's Play(チャイルド・プレイ)。
まさしく遊びであった。
彼女の振るう刃は、遊び。
生命のやり取りがあっても、それはルイーズにとって糧を得る行為。
「最初の目的、忘れちゃダメだよ~♪ 衝動より自分の気持ちが大事なの!」
そう、何故己が衝動を開放しようとしたのか。
どれだけ強大な衝動が大きな力を生み出したとしても、それよりも優先されるべきものがあるはずだとルイーズは言う。
「オレ、は……あの子達を、守りたい、と……滅ぼさせてはならない」
そう思ったはずだ。
ルイーズが頷く。彼女の目の前には大量のトランプ兵士と『トランプの巨人』。その数は彼女の視界を埋め尽くすほどであった。
だが、それでも臆することはない。
「トランプの兵隊さんだなんて素敵ね。そっちからいっぱい来てくれるなら大歓迎よ♪」
笑う。それはもう楽しげに笑う。
ルイーズの笑顔が獰猛さを増す。すでにマチェットにはトランプ兵士たちの感触が覚えている。
その感触がルイーズの手に握る力を増し、ユーベルコードの輝きに満たしていくのだ。
振るう度に武器の命中力と威力がしていく。ただの遊びであっても全力だ。それが彼女の流儀。
あらゆる理不尽を体現する者。
恐怖のために笑うルイーズの振るう大鉈の一撃がトランプ兵士のみならず『トランプの巨人』すらも一撃の下に切り裂いていく。
「ええ、FRIDAY! 守りたい人のために戦う子達に協力するなら、あなたの出番で間違いないわ!」
その大鉈に込められた思いは『愛と怒り』。
愛の正しさと怒りの方向性すら間違えることなく、ルイーズは血風遊ぶ戦場に置いて、ワルツを踊るように華麗に戦う。
その姿は、たしかに殺人鬼そのものであったことだろう。
「ああ……! オレはオレが守りたい者のために戦う!」
二人の殺人鬼が『トランプの巨人』たちを鏖殺していく。
それはどれだけ絶望的な状況であっても覆ることのない圧倒的な力であった。その様子にルイーズは心底楽しげに笑う。
「どんどん潰していくわよ――!」
まるでミキサーに掛けたように、戦場は赤く赤く染まっていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私/私たち
使用武器:漆黒風
誰かのために己の持てる力を奮う。それは素敵なことですねー。
ですからー、その先はハッピーエンドでなければ。
何を思って戦うのかを忘れてはいけませんよー。
漆黒風で、指定UC+風属性攻撃をしますねー。
不幸と不運は連鎖して、止まるところを知らないんですからー。
敵の攻撃は、四天霊障での叩き落としを。
守りたいもののために戦うは、『私たち』の誓いでもありますからねー。
そう、あなたたちはまだ、戻れる場所にいるのですからー。
人は持てる力には限りが在る。
人は力を持てるとは限らないと知っている。だからこそ、誰かのために戦う者には強大な力が宿るのだろう。
また同時に強大な力を持つからこそ、誰かを守らなければならない。
不思議の国にて『殺人鬼の集団』は、その瞳を爛々と輝かせる。己の身の内に秘めた『殺人衝動』を次々と開放し、オウガの大軍勢である『トランプの巨人』たちとの戦闘行為に没頭していた。
今まで抑えてきた『殺人衝動』を全開にして戦う彼等は、戦いに在りて己の力を振るうことに喜びを見出していた。
それが例え誰かのための戦いであったとしても、それは必ずや彼等に『オウガ化』という破滅を齎すことだろう。
「全て殺そう。僕たちはそのためにいるのだから。どれだけ世界に見捨てられたとしても、在ってはならない存在だと言われても。それでも僕らは!」
戦う。戦って、己たちのために心を砕いてくれた者たちに報いたい。
その思いだけで『殺人鬼』たちは戦いに挑んでいた。
「誰かのために己の持てる力を奮う。それは素敵なことですねー」
戦場となった不思議の国に転移してきた猟兵、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、複合型悪霊である彼等の一柱である『疾き者』が戦場に舞う殺人鬼たちの殺人技巧を見つめる。
彼等の奮う技巧は確かに殺人のためにあるものであった。
だが、いまの彼等のそれは違う。誰かのためにと振るわれる力である。その力の在り方は、是。
如何に正しき力の使い方をしていても訪れるのは『オウガ化』である。
それは悲劇、バッドエンドというほかないだろう。
「ですからー、その先はハッピーエンドでなければ」
義透は駆け出す。
その手には漆黒の棒手裏剣。次々と放たれ、『トランプの巨人』たちの体に癒えぬ傷跡を刻み込む。
それこそが彼のユーベルコード。
悪霊である彼が持つ連鎖する呪いである。オウガたちを一撃のもとに倒せずとも、連鎖する様に起こる不慮の事故が『トランプの巨人』たちの連携を崩していく。
「不幸と不運は連鎖して、止まるところを知らないんですからー」
互いの剣が仲間である『トランプの巨人』を穿つ。倒れ伏したオウガにつまずくなど、不幸の連鎖は止まるところを知らない。
「何を持って戦うのかを忘れてはいけませんよー」
その言葉は殺人鬼たちに届いただろうか。
彼等の衝動は開放されてしまえば矢のように飛ぶだけだ。飛んで、戻ってくることはない。
それを義透たちは惜しいと思うことだろう。
正しきに力を使うことができる。
そんな彼等を捨て置くことなど出来やしない。『トランプの巨人』の攻撃をオーラの障壁で受け止めながら言葉を紡ぐ。
「守りたいもののために戦うは、『私たち』の誓いでもありますからねー」
そう、護るべきものを喪った己達とは違う。
喪ってしまった者は、もはや元通りに成ることのない心の中に在る虚を一生抱えて生きていかねばならない。
けれど、殺人鬼の彼等は違う。
いまだ何も喪ってはいないのだ。彼等が守ろうとした不思議の国の住人たちも、何もかも。
「そう、あなたたちはまだ、戻れる場所にいるのですからー」
その瞳に映る殺人鬼たちの瞳には、理性の輝きが戻っていた。
それは彼等の戦闘力の低下を招くことであったかもしれない。けれど、義透はそれでいいと思ったのだ。
彼等がもはや戻れぬところまで征くことはない。
ここには彼等だけではないのだ。
そのために己達、猟兵が駆けつけた。その意味を義透たちは胸に刻む。オウガ化など決してさせはしないと戦場を連鎖する呪によって包み込んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「派手に殺ってちっとは同胞さん達に落ち着いてもらおうかねぇ。」
この後にメインディッシュが待ってるんだしね。
という事で、世界喰らいのUCを発動。強化された腐蝕竜さんに纏めて敵さんらを滅ぼしてもらおうか。
「同胞さん達ー。まだ死にたくないなら、ちと離れてねー。」
腐蝕竜さんには、爪や牙での攻撃、体当たり、尻尾でのなぎ払い、ブレス攻撃なんかで攻撃してもらう。
僕は彼に乗って、ピンチそうな同胞さんを悪魔の見えざる手でこちらに回収。こんなヤツらに堕とされちゃ可哀想だしね。
まあ、腐蝕竜さんの乗り心地は保証できないけど。
「さあ、腐蝕竜さん。楽しい楽しい、ご飯(殺戮)の時間だよ。」
オウガの大軍勢の大部分は『トランプの巨人』達であった。
彼等はその巨体を生かした一撃を繰り出す他、トランプ兵士たちを呼び出し、さらなる軍勢へと姿を変えていく。
その物量の前に『殺人鬼の集団』は徐々に押されつつあった。
追い込まれていると言ってもいい。
だが、それでも彼等に敗けるつもりはなかった。己たちの敗北とは即ち、逃した不思議の国の住人たちの安全を脅かすということだ。
「それだけはさせてなるものか……!」
殺人鬼たちは咆哮する。
それは誰かのために戦うことへの喜びか、それとも己がこれまで抑圧してきた『殺人衝動』を解放できることへの歓喜か。
それすらもわからなくなるほどに殺人鬼たちは戦場を駆け抜ける。
彼等の持つ殺人技巧でもってあらゆる障害を排除せんと血風遊ぶ不思議の国を征く。
「派手に殺って、ちっとは同胞さん達に落ち着いてもらおうかねぇ」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、殺人鬼の集団をして同胞と呼んだ。
彼等の戦いは破滅的なものであった。
力の解放は、衝動を全て己の魂に明け渡す行為だ。それがどんな結末を齎すのかは言うまでもない。
だからこそ、莉亜はユーベルコードに瞳を輝かせた。
「僕の敵を滅ぼせ――世界喰らい(ワールドイーター)」
そのユーベルコードの輝きは、アリスラビリンスの一つの国から力を奪い取ることによって生み出される巨大なる腐食竜がもたげる顎へと変貌し、トランプ兵士ごと『トランプの巨人』を丸々と飲み込んでいく。
それは圧倒的な蹂躙であった。
どれだけ『トランプの巨人』が巨大であっても関係がない。飲み込み、咀嚼し、その尽くを消滅させていく。
「同胞さん達ー。まだ死にたくないなら、ちと離れてねー」
莉亜の言葉が戦場にのんびりと響き渡る。
獰猛さを増す腐食竜は爪や牙で『トランプの巨人』を引き裂き、しっぽで薙ぎ払っては、オウガの大軍勢を蹴散らしていく。
その獅子奮迅たる活躍は言うまでもなく。
腐食竜の背に乗って莉亜は戦場を駆け抜ける。誰も死なせはしない。どれだけ殺人鬼たちが衝動を開放しても、数に押されてしまう。
見えざる悪魔の手が窮地に陥った殺人鬼たちをすくい上げ、腐食竜の背に乗せて回収していく。
「こんなヤツらに堕とされちゃ可愛そうだしね。まあ、腐食竜さんの乗り心地は……正直、そんなに良くはないみたいだけどね」
莉亜は凄惨成る戦場にありても変わらぬ微笑みを浮かべる。
それは殺人鬼達にとってはあまりにも場違いなものであり、その笑顔の裏腹に抱える殺人衝動は測りしれぬものだと知るだろう。
「助かった……ありがとう。だが、俺達はまだ戦える……!」
その言葉を莉亜は制する。
人差し指を立ててひそひそ話をするみたいに言うのだ。この後にメインディッシュ――猟書家『ディガンマ』が待っているんだよ、と。
それが彼の楽しみであることは言うまでもない。
だからこそ、莉亜は殺人鬼たちを腐食竜の背に乗せたまま両手を広げる。
「さあ、腐食竜さん。楽しい楽しい、ご飯の――殺戮の時間だよ」
その微笑みとともに腐食竜が咆哮する。
蹂躙とも呼ぶべき戦場を飲み込む腐食竜が次々とオウガたちを霧散させ、骸の海へと還していく。
誰一人殺人鬼を欠けさせない。
それは彼等の心に抱いた灯火を与えた不思議の国の住人たちの優しさに報いるためなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
POW
彼らの想いは尊いもの、失わせるわけにはいかない!
ここの住人達は貴方達が自分達の為に犠牲になったなんて知ったら悲しむだろう
まだだ、まだ諦めちゃいけない!俺達猟兵が力になるから!
声掛けし殺人鬼達の衝動を緩和させながらも敵に突撃
彼らに見せねば…、自分達が犠牲になる必要がない証を
敵の一撃は重いが単調だ。それを突けば勝機はある!
相手の一撃の太刀筋を【見切り】、相手の腕を【踏みつけ】ながら【ダッシュ】で駆け上がりそのまま上空へ【ジャンプ】
一旦上空へ逃れる事で敵の一撃の余波を回避
退魔刀を納刀状態で維持したまま着地、相手の一撃の後の隙を突くように相手の防御を貫通する(【貫通攻撃】)灰燼一閃を叩き込む
『殺人鬼の集団』の咆哮が次々と戦場となった不思議の国に響き渡る。
血風が吹きすさぶ戦場にありて、彼等の瞳は疲労するどころか益々持って爛々と輝き始める。
開放された『殺人衝動』。
それは常日頃から抑えてきたものであり、開放することは即ち彼等が今までこらえてきた時間の全てが無意味と成ることを意味していた。
「彼等を安全に逃がすために、まだ俺達は倒れられない――!」
その手に手繰るは超絶為る殺人技巧。
それら全てを使ってオウガの大軍勢たる『トランプの巨人』の放つ斬撃を躱し、オウガを打倒する。
その戦いは美しいものであったのかもしれない。
繰り広げられる光景は凄惨の一言に尽きるものであった。けれど、それでも、その先に待ち受ける結末を知る鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)にとって、それは必ずや回避せねばならぬ未来であった。
「彼等の想いは尊いもの、失わせるわけにはいかない!」
そう、失わせてはいけないものだ。
彼等の想いは、彼等に心を砕いてくれた不思議の国の住人たちあってのことだ。そのために彼等は抑えていた衝動を開放し、勝利の先にある破滅をも厭わなかたのだ。
「けれど!」
ひりょは叫ぶ。
そうしなければならなかった。叫ばずにはいられなかった。彼等の思いが尊いものであるからこそ、咆哮する。
「ここの住人たちは貴方達が自分達の為に犠牲になったなんて知ったら、悲しむだろう! まだだ、まだ諦めちゃいけない!」
その言葉は殺人鬼たちの衝動を緩和させただろうか。
それを確認する暇もなくひりょは戦場に駆け出し、『トランプの巨人』の巨大なる剣の一撃、その一閃を見切り躱す。
大地がえぐれるほどの重たい一撃。
地面が吹き飛んだ破片が飛んでくるが、それを気にはしない。
ひりょが『トランプの巨人』の腕に飛び乗り、そのまま駆け上がっていく。咆哮が轟く。
それは『トランプの巨人』の上げる咆哮であった。迫る猟兵を必ずや滅ぼさんとする咆哮。
「そんなもので怯むものかよ! 俺達猟兵が力になるから! そう彼等に俺は示さなければならないんだ!」
ひりょの瞳がユーベルコードに輝く。
それは破魔の力を開放し、彼の手にした退魔刀へと集約させる。その輝きの後に放たれる一閃こそがオウガ――過去の化身たるオブリビオンを灰燼一閃(カイジンイッセン)の元に骸の海へと返す一撃である。
放たれた斬撃は『トランプの巨人』の一瞬の隙を突いて放たれた鋭くも絶大なる一撃。
その一閃の元に立つ『トランプの巨人』の姿はない。
放たれた斬撃の全ては首を断ち切り、その体を尽く霧散させ、消滅させる。
「大丈夫だ。貴方達はオウガになんかさせやしない。また生きてもう一度彼等にあって欲しい。それが俺の願いでもあり、貴方達の願いでもあるはずだ」
ひりょは見ただろう。
殺人鬼たちの瞳に在るものを。
其処に在ったのは確かに『殺人衝動』などではなかった。かすかに在りし破滅の未来すらも、ひりょの斬撃は一閃の元に切り捨て、彼等を確かな未来へと導くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束
というわけで私、超絶正統派クノイチのサージェ参上です!
え?単語の意味ちゃんと調べてこい?
アハハーやだなーもー
まぁ戦闘前のアイスブレイクはこの辺にして
その衝動の解放はその辺で
変わり果てた貴方たちを住人の人が見たら
きっと悲しみます
今の出来る範囲でご助力ください!
こーゆー時は【かげぶんしんの術】です!
UCを封じられようと数の暴力で倒します!
殺人鬼さんたちのサポートもできちゃいますよ!
クノイチらしくカタールでさっくり切断してあげましょう!
※アドリブ連携OK
不思議の国は今や戦場であった。
どこを見ても『殺人鬼の集団』が己の体の内に秘める『殺人衝動』を開放し、その瞳を爛々と輝かせていた。
彼等の心は喜びに満ちていた。
どこまでも続く開放感。
これが彼等がこれまで抱え、理性に寄って抑え込んでいた衝動の正体。彼等は今まさに生まれたのだと実感できたのかもしれない。
「これが衝動の解放! 清々しい! ああ! 誰かのために戦うことは、こんなにも心がおどることなのか!」
だが、きっと彼等の誰もが戻らぬ者になるだろう。
開放された衝動のままに振る舞えば、彼等は生命の果てに『オウガ化』するだろう。それ故に猟書家『ディガンマ』は無意味だと嗤ったのだ。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて火潜めないとかそんなことないもん!!」
いつものお約束の前口上。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はいつもと変わらぬ明るい雰囲気で血風遊ぶ戦場に転移してきていた。
彼女の姿は天真爛漫であったのかもしれない。
それこそ、殺人鬼たちの抱える衝動を吹き飛ばすものであったのかもしれない。
「というわけで私、超絶正統派クノイチのサージェ参上です!」
ばしぃ! と決めポーズまで決めてくるあたりノリノリである。
しかし、この場合はこれが正解であったのかもしれない。サージェに飛ぶはオウガの大軍勢を構成する『トランプの巨人』が放った巨大なトランプカードである。
それに絡め取られてしまえば、猟兵と言えどユーベルコードを封じられてしまう。
「おっと……! ふふーん。私から狙うとは良い狙いですね!」
やはり溢れ出してしまうものであるのだな、サージェは己のクノイチオーラに鼻がびぃよーんと伸びる。
だが、それをへし折るわけではないが、殺人鬼たちの言葉がサージェに飛ぶのだ。
「いや、超絶正統派とは一体……」
彼等にとってサージェの登場はあまりにも性急為る展開であった。あっけにとられたと言ってもいい。
だが、それで一時でも彼等の胸に抱いた衝動が弱まるのであれば、それはサージェとって都合の良いものであった。
「アハハーやだなーもー……まあ、戦闘前のアイスブレイクはこの辺にて。いい具合に衝動から開放されているみたいですね! 不思議の国の住人たちが変わり果てた貴方たちを見たらきっと悲しみます!」
それは真摯なる思いであったことだろう。
誰もがそう思う。例え『例外』たる者が何を言おうとも、それは変わらぬ真実であった。
「今の出来る範囲でご助力ください! ――しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)。それは無数に増えたサージェの分身達。
例えユーベルコードを封じられようとも数の暴力でなんとでもなる。
それはクノイチらしいのか? という疑問を殺人鬼たちは抱きそうに為るが、サージェの勢いは怒涛の如く。
彼女の戦いぶりを見て、深く考えることが馬鹿らしくなった殺人鬼たちはサージェたちと共にオウガの大軍勢たちに立ち向かう。
「そんなに難しく考えなくっていいんですよ! 単純でいいんです。誰かを助けたい、守りたいっていう思いがあれば」
それが衝動にも打ち勝つ原動力となるだろう。
無数に展開されたサージェの分身体たちが一気に戦場を押し返す。カタールを両手に次々と『トランプの巨人』達を鱠切りにしていくのだ。
「あなたたちが今胸に描いているのは優しかった住人の皆さんでしょう。誰かの言葉に惑わされるひつようなんてないんです――!」
サージェのことばに殺人鬼たちの衝動は収まっていく。
たったそれだけでよかったのだ。
自分達が何のために戦うのか。
それを思い出すだけで、きっと訪れるはずだった破滅は回避されるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
自らを犠牲にしてでも恩を返そうという
彼らの気持ちを無駄にはしたくないね
少しでも力になれたらいいな
女神降臨を使用
ドレスを騎士服っぽくして纏うよ
さあ気合いを入れていこうか
今回は流石に茶化しませんの
殺人鬼様達の気高い覚悟を支えて下さいまし
そうそう、もし殺人鬼様が堕ちそうなりましたら
誰かを傷つける前に
美しい姿のまま永遠にして差し上げますの
ガトリングガンの援護射撃で
殺人鬼に存在を示しつつ巨人達を攻撃
援護するよ、後ろは任せて
使い魔のマヒや石化を用いて
巨人達の邪魔をしますの
巨大なトランプはガトリングガンで
穴だらけにして使い物にならなくしようか
後は殺人鬼達と協力し巨人達を倒すよ
前座にはさっさと退場して貰おうか
自己犠牲は尊いものだ。誰かのために何かをしたいと思うことは尊ぶべきものであったのかもしれない。
『殺人鬼の集団』が己の中にある衝動――『殺人衝動』を開放したのは、人としての生命が、そうさせたのかもしれない。
そうあるべきと咆哮したのは彼等の心。
散り散りになって傷ついた彼等の心を癒やした不思議の国の住人たちのために、彼等の心に報いるために『殺人鬼』たちは咆哮する。
「――行かせはしない! 俺達が守らなければならないもののためには!」
彼等の心が衝動に染まっていく。
それはどうしようもないことであったのかもしれない。
この衝動に身を任せなければオウガの大軍勢は倒せない。己たちが倒れてしまえば、オウガたちが襲うのは不思議の国の住人たちであろう。
そんなことはさせないと次々と衝動を開放した『殺人鬼』たちがオウガたちと激突する。
「自らを犠牲にしてでも恩を返そうという彼等の気持ちを無駄にはしたくない……少しも力になれることがあるのなら!」
自身がどれだけ小っ恥ずかしいても、それは多少の我慢であると言い聞かせながら、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は宵闇のドレスを纏い、女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)の如き後光でもって戦場を照らしながら舞い降りる。
騎士服の如き壮麗さ、その精美たる姿を晒しながら戦場を疾駆する。
晶にとって『殺人鬼』たちの見せた衝動を開放するきっかけは、大切にするべきものであると考えていた。
その考えに邪神もまた同調したのだろう。
晶の気合に気圧されただけかもしれないが、今回は流石に茶化すことができないと融合した邪神は晶に力を貸す。
「殺人鬼様たちの気高い覚悟を支えて下さいまし。あ、そうそう、もし殺人鬼様が堕ちそうになりましたら、誰かを傷つける前に美しい姿のまま永遠にして差し上げますの」
「そんなことにはならない――!」
晶が手にしたガトリングガンの弾丸が『トランプの巨人』たちを穿つ。
「援護するよ、後ろは任せて」
「――……! 君は!」
言葉を交わす時間はなかった。それほどまでにオウガの軍勢の勢いは凄まじかった。地平線を埋め尽くす『トランプの巨人』たちの体躯。
それを前にして一歩もひるまずに晶と殺人鬼たちは戦う。巨大なトランプカードを弾丸が打ち抜き、穴だらけにして使いもにならぬようにしながら、使い魔達が隙を突いて『トランプの巨人』たちを石化させていく。
「前座にはさっさと退場して貰おうか」
そう、晶にとって『トランプの巨人』たちは前座でしかない。
彼等の後に控える猟書家『ディガンマ』の存在こそが、今回の戦いにおける肝心要なるオブリビオンである。
『殺人衝動』の全てを開放した殺人鬼たちですら勝てぬ相手。
だが、それでも晶たち猟兵はやらねばならない。戦わなければならない。
己の全てを賭してでも誰かのために戦える者のためにこそ、晶は己の力を振るわねばならないと思った。
「だから……! さっさと片付けて、みんなで迎えよう! 君たちが逃した不思議の国の住人たちを。君たちがいなければ、彼等だってきっと悲しいはずだから――!」
その言葉に殺人鬼たちの瞳は衝動に濁った色が抜け落ちていく。
彼等はきっと、それを心の奥底で望んでいたに違いない。
抱えるものがどれだけどす黒いものであったとしても、灯火を与えてくれた者たちと共に在りたいという願いは、誰にも否定される理由なんてないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
っしゃあ!助太刀に来たぜ!
折角今まで抑え込んできたんだろ?なら無理に解き放つ必要はねえ
一緒に戦おうぜ
[SPD]
殺人鬼達と共に戦うぞ
基本は熱線銃による射撃戦(2回攻撃
トランプ兵は流星の【乱れ打ちによる弾幕】を浴びせて(マヒ攻撃
巨人はUCで強化した雷鳴で関節を【貫通攻撃で部位破壊】して
それぞれ【体勢を崩す】事で殺人鬼達を支援するぜ(援護射撃、集団戦術、戦闘知識
攻撃は【第六感、読心術】で避けて対処な
誰かの為に自分の全てを引き換えにするってのはカッコいいけどさ?
残された人達が悲しんじゃったら本末転倒になっちゃうし適度に頑張ろうぜ
なに心配すんな足りない部分は俺がまあいい感じになんとかしたる!
アドリブ歓迎
人が人を助けるのに理由なんて必要なのだろうか。
それは誰かの命題であったのかもしれない。
人が人である以上、一人では生きていけない。それは真理であろう。誰もが無関係ではいられない。誰もが誰かに隣り合っている。
どれだけ遠くに離れていても、誰かの心が誰かの心を救うことだってある。
そういう生き物であるからこそ、人の心は癒やされるのだ。
それを悲しいだとか無意味であるとかは誰が言えるのだろう。
『例外』である猟書家『ディガンマ』の言葉は、たしかに『殺人鬼』たちの心を衝動に染め上げるには容易いことであったことだろう。
「それでも――!」
殺人鬼たちは咆哮する。
己の胸の中にある『殺人衝動』。これを抱えてきた意味を彼等は知る。それは今まさに此処でこそ解放しなければならないと感じていた。
「彼等のために僕は!」
例え、この身が崩れ落ちたとしても。
眼前に迫る『トランプの巨人』の拳。
誰かを護って死ぬことができるのであれば、それは良い人生であったと。
そう思った瞬間、熱線が『トランプの巨人』の体を射抜いた。
「っしゃあ! 助太刀に来たぜ!」
その快活なる声は、扇状に響き渡った。
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は転移してすぐに、その瞳に映った殺人鬼の窮地を間一髪のところで救ったのだ。
手にした熱線銃を放ち、祐一は殺人鬼に手を伸ばす。彼等の心にある者を祐一は知っている。
彼等がどんな想いで戦場に立つのかを知っている。
だからこそ、助けなければと思ったのだ。
その心こそが人を人たらしめるものであろう。どれだけ否定することがあろうと関係ない。誰かの手を取るのに理由なんていらない。
「せっかく今まで抑え込んできたんだろ? なら無理に解き放つ必要はねえ」
誰の心にも闇はある。
どうしようもないことだ。光と闇があるように、人の心もまた二面性にまみれている。
あふれかえるトランプ兵士たちを熱線銃の乱れ打ちにて牽制しながら、それでも祐一は殺人鬼に手を伸ばす。
この手をとってほしい。
そうすれば己たちはきっと彼等の力になれる。そのために転移してきたのだ。
「……僕は……僕たちは……!」
否定されてきた人生であったのだろう。
深く傷ついてきた生命であったのだろう。だからこそ、不思議の国の住人たちは彼等の心を癒そうと心を砕いたのだ。
それを祐一は知っている。伸ばした手で強引に彼等の手を取った。
「一緒に戦おうぜ」
力強く言葉を紡ぐ。
たったそれだけのことが殺人鬼たちの心を染め上げていた『殺人衝動』を憑き物が落ちたように濯ぎ落とした。
そう、それだけでいいのだ。
「誰かのために自分のすべてを引き換えにするってのはカッコいいけどさ? 残された人達が悲しんじゃったら本末転倒になっちゃうし適度に頑張ろうぜ」
それでいいのだろうか。
そんな風に殺人鬼たちは考えるだろう。
けれど、それでいいのだと祐一は笑う。そのために己達がいるのだ。誰も悲しませないようにと、己を犠牲にする必要なんて無い。
誰かの思いが誰かの心を傷つけることなってあっていいはずがない。
「なに心配すんな。足りない部分は俺がまあいい感じになんとかしたる!」
こんなふうにな、と祐一のユーベルコードが輝く。
それは冬雷(トウライ)の如く。
青白い光弾が乱舞するように放たれ、オウガの大軍勢を穿つ。そう、それだけでいいのだ。
何もかも全て一人きりで背負う必要なんて無い。
誰かと共に担ぐことだってしていいのだ。だから、誰かを悲しませないためにも。
祐一は己の力を最大限に発揮し、悲しみの元凶を打ち砕くように熱線銃のトリガーを引くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナギ・ヌドゥー
六六六(ダークネス)とやらが何なのか知らんが……
この殺人鬼達は未だ光を失ってはいない!
オレは今まで数え切れぬほどの咎人を葬って来たから解るのだ。
彼らの咎はこの国で浄化出来ると。
お前もそう思うだろう……呪獣ソウルトーチャーよ
「禍ツ凶魂」にてトランプ兵共の血肉を喰らい尽くしてやろう
殺人鬼達よ、人を守りたいという気持ちは絶対に失うな。
……もしソレを失くせばアンタ達もこの呪獣の餌になっちまうぜ。
【殺気】の【呪詛】を発し敵に【恐怖を与える】
この殺意の呪縛で敵を封じる【捕縛・精神攻撃】
奴等の士気を挫きソウルトーチャーに【捕食】させる
「禍つ魂の封印は今解かれる――恐怖を知れ」
それはユーベルコードの輝きとともに生まれる咎人の肉と骨にて錬成されし呪獣。
名を『ソウルトーチャー』。
ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は、不思議の国の戦場に在りて、その瞳を真っ直ぐに向けた。
彼の瞳に映るのは咎人にして過去の化身たちだけである。
今の彼の瞳に『殺人鬼の集団』たちが見せる魂の輝きやは眩しいと思えるものであった。
どれだけ『例外』たる猟書家『ディガンマ』が貶めようとしても貶めることのできぬ光を見た。
殺人鬼たちは誰も彼もが誰かのために戦うことを決意したものたちだ。
己たちの未来に在るのが破滅だとしても、今を生きる者たちのために己の最も恐怖するところのものをさらけ出すと覚悟した者たちだ。
その覚悟が己を呼んだのだ。
「『六六六(ダークネス)』とやらが何なのかは知らんが……この殺人鬼たちは未だ光を喪ってはいない!」
彼等の魂の輝きは闇に染まるに値しない。
無数の、それこそ数え切れぬほどの咎人を葬ってきたナギだからこそ解るのだ。
彼等の魂こそ、この不思議の国にて浄化できると。浄化されるはずであると信じていた。
そのために邪魔の存在が要る。
必要な存在を締め出し、『超弩級の闘争』などという馬鹿げたことを実現しようと画策するものたちが居るのだ。
それをどうしても許せない。在ってはならぬことであると、己の心が叫ぶ。
それは同時に――。
「お前もそう思うだろう……呪獣『ソウルトーチャー』よ」
その肉と骨によって生まれた獣に宿るのは、禍ツ凶魂(マガツキョウコン)。ナギの心と与えられた血によって咆哮する。
悍ましくも、強烈なる存在感を解き放ち、呪獣が千住を駆け出す。
その顎はあらゆるものを噛み砕き、その牙はあらゆるものを貫く。その爪はあらゆるものを引き裂く。
どこまでいっても破壊の権化でしかなかった。
「殺人鬼達よ、人を守りたいという気持ちは絶対に失うな」
ナギの瞳にあるのはまばゆき光。
それが失われなければ、彼等はきっとだいじょうぶであると彼は感じていた。きっとあの眩さも、不思議の国の住人たちが心を砕いた結果なのだろう。
そうあることによって、彼等は誰かの心を癒やす。
抱えきれぬほどの『殺人衝動』があっても、彼等の心はきっと癒やされていたのだ。
だからこそ、それをかげらせてはならない。
「……もしソレを失くせばアンタ達もこの呪獣の餌になっちまうぜ」
けれど、そんな未来は来ない。
そのためにナギは戦場に立つ。身体が噴出するは呪詛の如き殺気。最早、ナギの瞳には咎人たるオウガたちの姿しか映っていなかった。
「だから、何も不安に思うことはない。アンタたちに与えてくれた彼等のことだけを考えていればいい。後は」
己の領分であるとナギと呪獣『ソウルトーチャー』が咆哮する。
その咆哮はあらゆるオウガたちの身体をすくめさせるには十分すぎるものであった。身体が竦んだ者から呪獣の顎の餌食になる。
「オレたちがやる……その目映い灯火のひとかけらとて奪わせはしないさ――」
狂乱の如き呪獣の捕食が始まる。
咎在りき者は逃さず、その咎の一片までも己の腹の中に飲み込む。
それこそが呪獣『ソウルトーチャー』。
誰も止められぬ恐怖の権化。
その晩餐は、オウガの大軍勢が霧散するまで続くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ディガンマ』
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POW : 引き裂く獣腕
単純で重い【獣腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 恩讐の獣霊
【周囲の廃品や不用品と融合する】事で【獣性を露わにした姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 縫い留める獣爪
命中した【獣腕】の【爪】が【怯えや劣等感を掻き立てる「恨みの針」】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠虚空蔵・クジャク」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オウガの大軍勢は、尽くが倒され尽くした。
数の利はすでになく、この不思議の国を殲滅するという目的は果たされなくなってしまっていた。
膨大な数のオウガたちの骸が霧散し、骸の海へと還っていく。
だが、それでも猟書家『ディガンマ』は嗤っていた。
「何もかも無意味だ。どれだけ尊い想いがあろうとも、時間は過去に排出される。棄てられる。棄てられた者たちにとって、それがどれほどの苦痛であるかを知れ」
獰猛なる獣性。
これだけの猟兵が集まり、劣勢であるというのにそれでも『ディガンマ』は嗤う。
あらゆる生命を嘲笑する。
生命である限り終わりがある。だからこそ、終わった後の生命が骸の海へと遺棄され堆積し、今に滲み出る過去の化身と為ることを憂う。
「わかるか。どれだけの輝きがあっても、それは終わる。終わってしまう。何のために生まれ、何のために死ぬのかも知らぬままに生命は終わる」
それがどうにも許せないのだと『ディガンマ』はあらゆる生命を侮辱しながら嗤う。
そうすることでしか。
いや、そうであるべきと歪んだ魂が今、獣性と共に戦場を駆ける。
その重圧、その力、尋常ならざるものである。
どれだけの経験も、どれだけの技量も、練磨も、尽く破壊し尽くさんとする権化が今、猟兵と『殺人鬼』たちを襲う――。
小鳥田・古都子
世界が気に入らないから世界を滅ぼそう、って事かな?乱暴な話だね。
世界征服でも目指してくれた方が、まだ健全なの。あなたみたいな破滅的な人、問答無用で倒すしかないじゃない。
鞘に納めた刀を構えます。
強敵なの。一撃に懸けます。
【ピーキーブレイド】。攻撃回数と引き換えに威力を強化。「フォースオーラ」と【念動力】を刀身に集中。【肉体改造】された全身のギアやモーターの配置が調整されて、抜刀術に最適な形にチューニング。
【ダッシュ】して一気に間合いを詰めます。【瞬間思考力】で相手の単純な攻撃の所作を【見切り】回避。
相手の勢いを利用した【カウンター】の抜き打ち。【衝撃波】を伴う斬撃からの一撃離脱戦法を狙います。
その男――猟書家『ディガンマ』は嗤った。
あらゆるものを冒涜せんと嗤った。
全て無意味であると侮辱して嗤った。
生命であるかぎり終わりはやってくる。どれほど強烈なる輝きに満ちていたのだとしても、その輝きは有限であると無限の如き過去を圧縮した存在が嘲笑うのだ。
「全てが無意味だ。全てが過去に排出されていく。忘れ去られてしまう。どれだけ尊いものであっても人は忘れる。捨て去ってしまう」
『ディガンマ』が咆哮する。
その左腕、獣腕を変異させながら猟兵たちへと襲いかかるのだ。その速度、その威力、どれをとっても並のオブリビオンでは出せぬ一撃。
人の形をしていたのだとしてもまさしく人外であると言わざるを得ない。
殺人鬼たちが力を奮っても、その力など意に介することなく破壊の力を振りまくのだ。
「世界が気に入らないから世界を滅ぼそう、って事かな? 乱暴な話だね」
小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)は構える。
鞘に収めたままの刀。
敵が強敵であることはわかっている。言うまでもない。あの力、あの暴力、その全てが他者を傷つけ破壊することでしか存在意義を見出だせぬ者。
だからこそ、古都子は構えるのだ。
「世界征服でも目指してくれた方が、まだ健全なの」
そうすれば己の立ち位置もまたわかりやすいものであったと、古都子は感じていた。悪者がいるからこそ、己は正義の味方として刃を奮うことができる
「ああ、そうとも! そうだとも! 簡単な話だよな、猟兵! 善悪に分かたれていれば、こんなにも世界は簡単だと言うのに。輝きが満ちる世界は、どこまでいっても二色では表現できないのだ」
『ディガンマ』の奮う獣腕の衝撃がほとばしる。
殺人鬼たちが古都子に必要な時間を稼いでくれている。だが、それも時間の問題だ。間に合うか、間に合わないかの瀬戸際に彼女は立たされていた。
念動力とオーラの力が刀身に集中していく。
攻撃回数を惜しんでいては、かの猟書家『ディガンマ』は倒せない。それがわかっているからこその集中。
「だから壊す。全て壊して、過去にしてやろう。遺棄されたものの苦しみ、悲しみ、それら全てを俺は代弁する。世界が俺達を捨てるというのなら、俺達こそが世界を破壊しなければならないのだと、俺達こそが知っている!」
殺人鬼が吹き飛ばされる。
古都子はそれでも動かない。一分の隙もない抜刀の構えを解かない。迫る『ディガンマ』の顔が嗤った。
彼女の全身、あらゆる箇所が駆動する。
それは抜刀術に最適な形に己の身体を改造してる最中であった。
ギアやモーター、あらゆるフレームがただ一撃のために作り変えられていく。
古都子は今、ここに至って一撃のための存在へと成る。
「……偏向、集中」
この一刀は、かけがえのない尊き想いの輝きを見せた殺人鬼たちの為に。
あの他者を嘲笑う猟書家に最大にして至高の一撃を届かせるために。
それは、ピーキーブレイドと呼ばれていた。
踏み出す足の一歩は脱力の一歩。
ゆらりと身体が揺れるようであった。だが、最大の脱力から放たれる瞬発の一撃は振り幅となって、大波となって力を増幅させる。
「――一撃に懸けます」
その斬撃は見えなかった。
交錯する『ディガンマ』と古都子の身体。
一白の後に凄まじい衝撃波が古都子の背後から吹き荒れる。
それこそが古都子の至った至高の一撃。
誰の瞳にも映らぬ神速の斬撃であった。それは過たず『ディガンマ』を袈裟懸けに切り結び、鮮血を迸らせる。
「――何、が?」
『例外』たる男の顔がひきつる。
何をされたのかわからなかったのだろう。確かに己の獣腕は古都子を捉えたはずだった。
だが、そう思った瞬間に己は袈裟懸けに斬撃を受けていた。
理解が及ばない。混乱だけが彼の頭の中を埋め尽くしていく。
「問答無用。貴方との言葉のやり取りは意味がない――」
古都子の刃が鞘に納められた瞬間、彼女の背後で猟書家『ディガンマ』の胴にさらに逆袈裟に斬撃が刻まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『疾き者』
武器持ち替え:四天霊障
ええ、生命はいつか終わりますね。それはわかってますよ。
殺人鬼の一人に、漆黒風貸しまして。私が仕掛けるときに投げてほしいと頼みましょう。
ダッシュで近づき、見切りましてー。
…その怒り、ぶつける好機ですよ、『侵す者』殿。
※人格交代
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
四天霊障での、炎属性攻撃つきUC。
ははは、『疾き者』にはばれておったか(呵呵大笑)
それを八つ当たりというのだ、ディガンマ。
同じ特徴のUCであれば、あとは間合いとタイミングの問題よ。わしはそれをよく知っておるからの。
叩きつけられた斬撃は、いかに猟書家『ディガンマ』が強大な存在であったとしても、その痛烈なる痛みを彼に与えたことだろう。
迸った血潮は一瞬であった。
猟兵の放った斬撃の一撃を受けてなお、その傷を己の筋力だけで塞ぐ。
この程度のことなど造作もなく行えるからこそ猟書家。そういうかのように『例外』の名を持つ『ディガンマ』は嗤った。
未だ己を倒すこと叶わぬ猟兵達に対しても嗤ったのだ。
「だが、これでも俺は終わらない。終わる生命にとって俺は『例外』そのもの。生命は終わる。お前達の紡いできたものも終わる。それが必定なのだから」
その左腕の獣腕が大きく膨れ上がる。
圧倒的は破壊の気配が不思議の国に充満していく。
「ええ、生命はいつか終わりますね。それはわかっていますよ」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、それをわかっていた。
生命の最後にあるものは誰も彼も終わることである。それは変わらない。唯一の不変たる事実である。
悪霊として4っつの魂が複合した存在と成った己達ですら理解している。
だが、終わらせてはならぬ生命を終わらせる者がいるのならば、それは防がねばならない。
そのために己たちは一つになったのだから。
殺人鬼の一人へと、『疾き者』は棒手裏剣を手渡す。
「私が仕掛ける時に投げてほしいのです。できますか」
ああ、と殺人鬼が頷く。彼等の瞳はまだ死んでいない。衝動にも飲まれていない。
ならば、この戦いは己たちの勝利である。
誰も死なせず、衝動に飲まれず。戦う前から結果は決まっていたのだ。『ディガンマ』にとって、この戦いははじめから負けていた。
そう、猟兵でも誰でもない。殺人鬼たちが不思議の国の住人たちを逃した時点で『ディガンマ』の敗北は決定していたのだ。
「ああ、お前『達』の在り方も終わる。俺が――破壊するからだ!」
互いに踏むこむ。
その速度は互いに凄まじきものであった。互いの視線が交錯する。そこへ殺人鬼の放った棒手裏剣が『ディガンマ』へと迫る。
「見え透いた手だな、猟兵!」
放たれた棒手裏剣を獣腕ではない手で掴み取る。それは絶技と呼ぶに相応しき技量であったことだろう。
目の前には義透。そして、迫る棒手裏剣。通常の人間であればどちらかに意識が持っていかれることだろう。
だが、それでも『ディガンマ』は反応し、『疾き者』へと獣腕を奮う。
その単純ながら重たい一撃は受けてしまえば防御ごとへし折るほどの一撃であった。だが、それを『疾き者』は見切って躱す。
その頬をかすめてもなお、己の身体が揺らぐ。
「……その怒り、ぶつける好機ですよ、『侵す者』殿」
瞬間、義透の雰囲気が一変する。
展開される霊障のオーラ。それが『ディガンマ』が再度奮った獣腕の一撃をいなす。
「ははは、『疾き者』にはバレておったか」
そう呵呵と大笑いするのは『侵す者』。
彼等は四つで一つの複合悪霊であればこそ。その身に宿す怒りは如何様なものであっただろうか。
それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)烈火たる一撃。
「それは八つ当たりというのだ、『ディガンマ』……覚えておくといい。お前の抱えるもの、遺棄されたがゆえに憤りを感じるのまた無理なからぬこと」
だが、と『侵す者』は言う。
その怒りは、ただの傲慢でしか無いのだと。
震えるように天高く伸びる炎は『侵す者』が『ディガンマ』に覚える怒りと同じように地の底から噴出するようにユーベルコードに輝く。
互いにユーベルコードの性質は同じ。
であればこそ、『侵す者』はよく知っている。その間合い、タイミング。あらゆるものが己と同じであると知る。
知るからこそ為せる業がある。振るわれる獣腕の軌跡。
それは単純であればあるほどに威力を増す。それは獣の一撃。けれど、人は獣ではない。確かに獣から枝分かれした生命には他ならぬ。
だが、その純粋なる暴力を武に磨く者がいるのもまた人の練磨の紡いだもの。
『侵す者』は武の天才である。
手にした槍の柄でもって『ディガンマ』の防御不能なる獣腕の一撃をいなす。まるで実体のない炎を相手にするかのように『ディガンマ』の獣腕が空を斬り、大地を穿つ。
「わしはそれをよく知っておるからの――ただの暴力に武は負けはせんよ」
放たれた槍の一撃が『ディガンマ』を大地へと叩きつけ、その身体を盛大に沈み込ませる。
それは獣性に勝る武の骨頂を見せつける一撃であった――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「生命が終わる事なんて考えた事ないけどね、僕は。」
そんな事は、喰らい尽くして良い敵を全部殺してから考えるさ。
UCで吸血鬼化して戦う。敵さんの生命力を奪い、自身の強化と再生に充てながら二振りの大鎌でバラしにかかるかな。
ついでにArgentaも周囲に展開して、防御と足場に利用。
強化された戦闘能力を駆使して、宙に浮く槍を足場に三次元的に動き敵さんの喉元を狙って行こう。
敵さんの爪が刺さりそうなら腕を差し出して、刺さった瞬間に腕を斬り落として回避(?)からの敵さんの生命力を奪う速度を上げて腕を再生させる。
「ほらほら、同胞さん達もぼさっとしてないで混ざりにおいでよ。」
これは殺して良い敵さんなんだから。
大地に叩きつけられた猟書家『ディガンマ』は立ち上がる。
猟兵たちの攻撃を受けてもなお、その瞳は陰ることはなかった。これが『例外』たる力。
『殺人衝動』を全開にして襲い来る殺人鬼の集団をしても倒すことの敵わぬと言われた強大なオブリビオン。
その姿はまさしく純粋なう獣性を宿した化身であった。
「『例外』なく終わらせる。俺はそのために世界から遺棄された存在。生命が死で完結するのなら、俺こそが『例外』だ。俺が全ての生命を終わらせる。終わらせるためにある者だと俺自身が自覚している」
己以外の全てを破壊するまで止まらない。止まれない。それこそが『ディガンマ』という過去の化身なのだろう。
何処まで行っても破壊しか齎さぬ者に、世界に居場所はない。
その獣腕が変化する。
鋭き爪はまるで針の様に変化し、その瞳は獣性に滾るのだ。
「生命が終わることなんて考えたことないけどね、僕は」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は『ディガンマ』と相対する。その瞳に輝くユーベルコードの光が、全身へと行き渡っていく。
不死者の血統(イモータル・ブラッド)故の感覚。
生命が終わるということを考えない者がいる。それこそが莉亜の体に脈々と流れる不死者としての血脈である。
全身が吸血鬼化し、他者の生命力を奪うオーラで満たされる。
「そんなことは、喰らい尽くして良い敵を全部殺してから考えるさ」
それはオブリビオン――莉亜が『敵さん』と呼ぶ者たちである。
オブリビオンを全て殺し尽くした後にこそ、生命の終わりが見えるのかも知れない。けれど、それはずっとずっと先のことだ。今じゃない。
莉亜は駆け出す。
二振りの大鎌が白と黒の閃光の如く振るわれる。
斬撃が弾いたのは、『ディガンマ』の鋭き獣爪であった。完全に莉亜はバラすつもりではなった斬撃であったが、逆にこちらが押される。
「それは永遠に来ない。過去に時間が排出される以上、棄てられる以上、俺達は生まれ続ける。そういう生き物なんだよ、俺達は!」
銀の槍が宙を舞う。
どうにかして、あの『ディガンマ』を捉えなければならない。
だが、その銀の槍すらも獣の如き動きで躱していく。
「いいね……さあ、遊ぼうか。どっちが先に死ぬのかな?」
「お前を殺して、俺は『例外』の先に行く。そのために俺は滲み出たのだから」
槍の上を飛び跳ねて莉亜が『ディガンマ』の爪を躱す。
どれも間一髪のタイミングだった。タイミングがズレていれば、莉亜の胴を薙ぎ払っていたであろうほどの鋭い一撃。
『ディガンマ』にとってそれはただの攻撃でしかなかったのかも知れない。
それほどまでに強大な敵を前にしても莉亜はひるまない。
宙に浮く銀の槍を足場に三次元的な立体の動きで『ディガンマ』を翻弄し、その喉元を狙う。
「その生命力を奪う力もまた、他のオブリビオンであれば致命的な能力であっただろうがな……! 俺の抱えるものがなんであるのかを知らぬ者に、この闇は吸いきれぬよ!」
放たれた爪が莉亜をついに捉える。
とっさに腕でかばったが、それでもその針は莉亜の中にある感情を増幅させんとユーベルコードの輝きを放つ。
「――!」
莉亜の判断は早かった。
一瞬で己の腕を切断し、己の体から切り離す。それは通常の猟兵であれば為すことのできぬ判断であったことだろう。
だが、血統に覚醒した莉亜ならばできる。
その体はまさに吸血鬼。不死者の代名詞にして体現者。即座に奪った生命力から切り離した腕が再生する。
瞬時とも言える速度で再生した腕に白の大鎌が握られる。
「ほらおほら、同胞さん達もぼさっとしてないで混ざりにおいでよって――」
そう言おうと思ったのに、と莉亜は微笑んだ。
彼が腕を切り離した瞬間、殺人鬼の集団は動いていた。きっと彼等は莉亜が窮地に陥ったと思ったのだろう。
それは優しさであったのかもしれない。
誰かのために戦うことを良しとした彼等の選択であったのかもしれない。どれだけ『殺人衝動』を全開にしても敵わぬ相手であっても、一瞬の隙を、莉亜が離脱できるだけの時間を稼ごうとしたのだろう。
「心配無用さ――だって、これは殺し良い敵さんなんだから」
その瞳が獰猛に輝く。
嗤う。
無意味だと嗤った者を嗤う。何も無意味なんてことはない。己が目の前にする敵ほどに無意味なことはあれど、己の同胞たちが為すことに無意味など無い。
その血統がざわめく。
血脈の中で蠢く圧倒的な生命力。その吸血の王たる力によって莉亜は凄まじき斬撃を二振りの大鎌によって繰り出す。
「なに――!?」
『例外』がどれだけ強大であろうと関係ない。
ここにあるのは『血統』の末である。同時に最新にして最高たる者である。故に、その斬撃に一撃は『例外』を上回り、その身に癒えぬ傷跡と、その甘美たる『例外』の血潮を莉亜に与えるのだ。
「あぁ……こういう味。どんなものにも『例外』はある。こんな風味も敵さんにあるんだねぇ――」
大成功
🔵🔵🔵
亘理・ニイメ
そう、ね。そうだよ、ね。
…痛い。突き刺さった、爪ごと、私は行く。
…痛い。『ディガンマ』も、連れて、行く。
あなたがもう、行くこと、叶わない、その先へ。
ああ、こんなにも、痛かった、んだね?
私、は。
今を、否定、しない。
胸が、熱い。
私が、今、したいことは。
『殺人鬼』と呼ばれた皆と、『ディガンマ』と、共に。
続く、先へ踏み出す、こと。
何のため、でもなく、私が、そうしたいから。
記憶と、記録の巻き戻しは止めよう。
恨みの針よ、私と、共に、燃えて。
炎の、矢となれ。
己が嘆きを、彼を穿て。
ちり、ちり、燃える。
小さな火よ、やがて、炎となりし焔よ。
ありがとう、ありがとう、殺人鬼さん。
私、忘れないわ!
この灯、消さないわ!
猟書家『ディガンマ』の身体が血飛沫に濡れる。
それは猟兵たちの放った斬撃の痕であった。それほどまでに凄まじい攻防が広げられている。例え、その体を血潮に濡らしたとしても『ディガンマ』は止まらない。倒れない。
それが強力なオブリビオンであるからであったことだろうが、『例外』たる彼にとって、それは些細なことであった。
「俺達を遺棄した世界に対する復讐……それだけで俺は生きている。生まれている。『例外』として世界に在る。俺は此処にいるのだと俺を構成するものが叫ぶ」
その咆哮が轟く。
『ディガンマ』の獣腕の爪が針のように変形する。駆け出す姿はまさに獣。その瞳に在るのは『衝動』ではなく『獣性』。
ただ、目の前の敵対者を屠り、己の獣性のみを満たそうとする。それだけの存在。
「そう、ね。そうだよ、ね」
亘理・ニイメ(結界崩壊・f31242)は彼の言葉に一定の理解を示したのか、それとも共感したのか。
それは彼女しか理解しえぬことであった。己を封じ込めていた結界を崩壊させ出てきた自分と、過去の集積地、骸の海から滲み出た存在である『ディガンマ』。
そこに重なる部分もまたあったのかもしれない。
彼女の言葉には哀惜の念があったのだろう。
けれど、獣には関係ない。獣腕から放たれた爪がニイメの身体を突き刺さる。決して抜けることのない針の一撃。
目の前には獣性を顕にした破壊の権化たる『ディガンマ』の顔。
「……痛い。貴方の憤怒も恐れも、その爪ごと、私は行く」
痛い。とても痛い。
それは身を切る想いであったことだろう。決して抜けぬ爪。それがニイメに痛みを齎し続ける。
だからこそ、彼を、『ディガンマ』を放ってはおけない。
「連れて、行く。あなたがもう、行くこと、叶わない、そのさきへ。ああ、こんなにも、痛かった、んだね?」
痛みにあえぐ。
それは猟兵とオブリビオンが相対する洗浄においては意味のないことであったことだろう。
どれだけ痛みを訴えたところでオブリビオンは容赦はしない。
互いに滅ぼし合う関係であればこそ、そこに加減は介在しない。
「私、は。今を、否定、しない」
胸が熱い。
何かを為そうと燃えるように盛る何かがあった。それを『ディガンマ』は理解しないだろう。いや、できないだろう。
彼女がこれまで見た『殺人鬼』たちは心を傷つけながらも前を向いていた。今を生き、未来を見ていた。
だが、ディガンマはどうだろう。今を見ていても未来を見ていない。いや、見ることなど出来ないのだろう。
どうしようもなくおわってしまっているから。
「いいや、今を否定しろ。過去から連なる今から先すべてを否定する。俺は俺事態が生まれることが在ってはならぬ『例外』であると知る。それでも生まれてしまったからには」
破壊を齎さなければならない。
世界を破壊しなければならない。それはどうしようもなく悲しいことであると思えたかも知れない。
だからこそ、ニイメは頷く。
先に踏み出す。何のためでもなく己自身がそうしたいと願うから。
「記憶と、記録の巻き戻しは止めよう。恨みの針よ、私と、共に、燃えて」
それはニイメのユーベルコードの輝きであった。実を貫く炎を焼くはユーベルコードの光。
矢となって、浮かび上がる。
だが、それをさせぬと『ディガンマ』の獣腕がニイメに振り下ろされる。
「させるものか! もうこれ以上俺達の前で誰かの生命が奪われることは!」
あってはならぬと殺人鬼たちが一斉にニイメと『ディガンマ』の間に割って入る
彼等も最早満身創痍であったことだろう。
オウガとの大軍勢との戦い。
その最中で傷ついた者だっていた。それでもニイメを護るように壁と成ったのだ。
「ありがとう、ありがとう、殺人鬼さん」
それは誰かがいつかに彼等に与えた灯火であったことだろう。
連鎖するように誰かの心に明かりを灯す。誰かのために戦えるものは確かに己のために戦う者に敗けることもあるだろう。
だが、連綿と続くのだ。
誰かのためになりますようにと願った戦いは、いつか結実する。
「私、忘れないわ! この灯、消さないわ!」
それは今は小さな火であったのかもしれない。けれどいずれは炎となり、焔へと変わる。
浮かび上がったウィザード・ミサイルが一斉に『ディガンマ』へと降り注ぎ、その破壊の権化たる力を削ぎ落とすように焔に彼を包み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
WIZ
何のために生まれ、死ぬのか…そんな事は俺にもわからない
でも、だからこそ、今を必死に生き抜くんだ
例え絶望的な状況だって乗り越えてみせる!明日を信じて
敵の攻撃は【リミッター解除】し自分の限界を超えた速度で【見切り】を試みる
万一針を受けたとしても自分の理性をフル稼働させ【落ち着き】【オーラ防御】で耐え凌ぐ
そう、俺の今までの人生は失敗、挫折、絶望感、そういったものは数えきれないくらい経験してきたさ
それでもね…、俺は例え地に這いつくばってでも。その状態から立ち上がってみせる
それが俺の生き方だからだ!
黄昏の翼を発動、負傷を力に変え、生命力吸収効果で回復し敵に【ダッシュ】
【破魔】付与の退魔刀の一撃を
盛大なる焔が猟書家『ディガンマ』を焼く。
ここまで力を削ぎ落とすように『ディガンマ』を追い詰めてもなお、消滅しない。骸の海へと還っていかない。
それは『ディガンマ』が抱える破壊と世界に遺棄されたことへの復讐心が為せる業であったことだろう。
どこまでも己のために。
どこまでも獣性に充実に。
そのようにして戦う『ディガンマ』を前にして、強烈なる個を示す輝きは益々もって燃え盛る。
「無意味だと言ったはずだ。俺は滅びない。どれほどお前達が俺を消滅させようとも、必ず俺は世界を破壊する。復讐する。誰のためでもない俺自身のために!」
咆哮する『ディガンマ』の獣腕の爪の鋭さは益々持って鋭くなっていく。
それが世界に対する怨嗟であると誰もが知るであろう。
「何のために生まれ、死ぬのか……そんなことは俺にもわからない。でも、だからこそ、今を必死に生き抜くんだ」
鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)の瞳は輝いていた。
己の限界を超える。相手がどれだけ強大なオブリビオンであっても関係ない。己がそれを為すと決めた以上、懸命に生きることこそが己の生命に対する真摯なる行いであったことだろう。
振り下ろされた『ディガンマ』の爪の一撃は鋭い。
どれもが並の反射速度では躱すことは出来ないだろう。だからこそ、限界を超える。己の脳が危険であると判断し懸ける制御を尽く無視する。
己の身を顧みて勝てる相手ではないことは百も承知であった。
「例え絶望的な上古湯だって乗り越えてみせる! 明日を信じて!」
「明日など不確定なものを信じるまやかしなど!」
棄ててしまえ、と『ディガンマ』が吠える。
振るわれた獣腕の一撃を躱し、それでも肉薄する。あの爪は受けてはならない。受けてしまえば、きっと己は足を止めてしまう。
恐怖を前に足を止めてしまうことは生命として正しいことだ。
ぶつかるよりも回避することのほうが正しいだろう。
無闇に傷つくことなんてないのだ。己の中の何かが言う。
ひりょの人生は失敗、挫折、絶望感、そういったものを数え切れないくらい経験してきた。
またそれを繰り返すと何かが言う。
けれどひりょは否定する。己の中にあるそういったものに飲み込まれない。
「それでもね……俺は例え地に這いつくばってでも。その状態から立ち上がってみせる」
爪の一撃がひりょの胸を穿つ。
襲い来る感情が己の心さえも縛り上げるようであった。
凌ごうと思って凌げるものではない。
なぜなら、彼が今相対するのは『ディガンマ』ではなく過去の己であるからだ。
絶望にまみれた己がいる。
今を生きる己の足を掴む者がいる。
未来を見たいと願った己すらも引きずり倒そうとする弱さが在った。
「ああ、そうさ。失敗もする。挫折もする。絶望だって味わう。けれど、それでも俺は懸命に生きる。これからも何度もそうなるだろう! わかっているさ」
黒と白のオーラが全身を覆う。
翼を象るオーラがほとばしり、その体を癒やすのだ。それがユーベルコードの輝き。どれだけ失敗にまみれてもいい。
失敗は誰にだってあることだ。失敗だらけの人生であると嗤うのならば、それでいい。人は失敗からしか学べない。
天秤のように同じだけの成功があるというのに、未来に手を伸ばさぬ者がいることこそ、笑って許すべきだ。
「それが俺の生き方だからだ!」
黄昏の翼(タソガレノツバサ)。それこそが彼の生き方。
噴出するオーラが『ディガンマ』を吹き飛ばす。
「俺は否定する! お前の生き方も! その人生も!」
相対する『ディガンマ』へと放たれる斬撃の一撃が閃光のように閃いて、その肉体に傷をつける。
例えどれだけ否定されても構わない。
地に這うこともあるだろう。少しでも何かが違っていたのならば、今大地に伏しているのは己であったかもしれない。
けれど、それでもひりょは立っている。
立って、明日を見据えているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
その生が無意味かどうかは本人が決める事だ
他人が横合いから入ってきて勝手に決めるんじゃないよ
[SPD]
俺にも嗤ってみせろよできるんならさ!
と此方に注目する様に仕向けつつEKを構えて【ダッシュ、切り込み】
まあ真っ二つにされてると思うがそれはEsの作ったホロ分身で
俺は直前にFZの【迷彩】で姿を隠してるけどね(残像、戦闘知識
UCを発動したら分身に攻撃して出来た隙を流星で突き(不意打ち
【マヒ攻撃で体勢を崩し】たら殺人鬼達に合図を送るぜ囲んで棒で叩いちまいな!
相手の反撃等は雷鳴で全部潰させて貰うぜ(部位破壊、瞬間思考力
因果は巡り己に帰る…それはお前も「例外」じゃないのさ
観念して往生するんだな!
アドリブ歓迎
いつだって人の生命に付き物なのが、誰かの生命である。
生命は一つでは成り立つことができない。自己を認識するために他者が必要なように、たった一つの生命で成り立つことはできない。
だからこそ、誰かの人生には常に他者の存在が在る。
「だからこそ、俺は破壊しよう。俺を必要としなかった世界に、遺棄した世界に復讐しよう」
猟書家『ディガンマ』は復讐者である。
世界に対して、己と同じ様に必要なしと棄てられた者全てのための復讐者である。己が遺棄されたことが無意味であると断じられたからであるのならば、他者もまた等しく無意味でなければならない。
それが過去に歪められた結果であったのだとしても、今の『ディガンマ』は、獣と同じだ。
瞳に宿る獣性が言っている。
「俺は破壊する。その生命が無意味であると知らしめなければならない」
周囲に点在するオウガの大軍勢であった残骸が『ディガンマ』へと集積していく。これまで猟兵たちが傷つけ、消耗させた『ディガンマ』の体を修復していく。
瞳は獣のようにかがやき、目にも留まらぬ速度で戦場を駆け抜ける。
「その生が無意味かどうかは本人が決めることだ。他人が横合いから入ってきて勝手に決めるんじゃないよ。ああ、そうだ。俺にも嗤ってみせろよ――できるんならさ!」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は咆哮した。
その生命を無意味と断じる『ディガンマ』の超スピードを前にしてたじろぐこと無く注意を引きつける。
手にしたエクステンドナイフを構え、己を襲わんとする『ディガンマ』へと吠えるのだ。それは『ディガンマ』からすれば弱者の言葉に過ぎなかったことだろう。
事実、一瞬の内に祐一の体は脳天から股下まで爪の一撃で両断される。
だが、それは幻影であった。
戦闘サポートドローンによるホロ分身。『ディガンマ』が切り裂いたのは、その分身でしかない。
「姿を――見せろっ!!」
獣性の増した『ディガンマ』が吠え猛る。次々に生み出される祐一のホロ分身。
その尽くを切り裂き、周囲に破壊を齎す『ディガンマ』を見つめるのは迷彩に寄って姿を隠した祐一であった。
「嗤えなくなってんぞ、『ディガンマ』! 瞬いてる暇なんてねえぞ!」
放たれるは春雷(シュンライ)。
目にも留まらぬ高速の弾丸が打ち出され、『ディガンマ』の体を穿つ。それは雷撃を伴った弾丸。穿ち、『ディガンマ』を倒すことは出来ないまでも、その体を一瞬でも止めることはできる。
「今だ! みんな!」
祐一の合図と共に殺人鬼たちが一斉に『ディガンマ』へと襲いかかる。
その身に宿した殺人技巧を駆使し、少しでも『ディガンマ』の力を削がんと襲いかかるのだ。
「今更この程度の殺人衝動で、俺が滅せると思ったか――!」
吹き荒れる破壊の突風に殺人鬼たちが吹き飛ばされる。だが、彼等は致命傷に至ってはいない。なぜなら祐一の放った光弾が尽く反撃の一手を相殺していたからだ。
それだけの速度で弾丸を放ちながら、祐一は駆け出す。
「因果は巡り己に帰る……それはおまえも『例外』じゃないのさ。観念して往生するんだな!」
突きつけられた銃口が『ディガンマ』の頭を穿つ。
放たれた弾丸は破壊の因果から、その身を骸の海へと還すように破壊の権化たる獣を穿ち、無意味と嗤った者たちに寄って集積した獣を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
仰る通り命は儚く壊れやすいものですの
ですから私は永遠にしたいと思いますの
敢えて壊すなんて以ての外ですの
僕は終わりがあり忘れるから
人は前に進めるんだと思うし
限りがあるからこそ尊いんじゃないかな
それに無為とするかどうかは自分次第だよ
ここにいる皆も無為だとは思って無いんじゃないかな
とは言え過去になったディガンマは
考えを変え無いだろうから
力ずくでも止めさせて貰うよ
ガトリングガンで射撃
殺人鬼達を援護しよう
使い魔の石化で邪魔をしますの
失われるのが嫌でしたら永遠にして差し上げますの
ディガンマが接近してきたら
兵装創造でガトリングガンを
プラズマグレネードに変形
攻撃回数を減らし攻撃力を強化
自分はワイヤーガンで退避
穿たれた頭部。
猟書家『ディガンマ』は片目を失いながらも、未だ骸の海へと還ることはなかった。その眼窩の如き虚を抱えながらも彼は足を踏み出す。
そこに最早理性はない。
在るのは獣性だけだ。
「破壊する。俺はそのために生まれたのだ。破壊して、破壊して、生命の儚さを知らしめるためだけに存在する獣……それを要らぬと遺棄した世界を、その全てを破壊しなければ、俺と同じ様に遺棄されたものたちが浮かばれない――」
滾る獣性。
その咆哮は世界を震わせる。何処まで行っても獣でしかないのだ。破壊するしか無いのだ。
例え、それが過去に歪められたからであったとしても、そうあらねばならない。
それが猟書家『ディガンマ』であるのだから。
「仰る通り、生命は儚く壊れやすいものですの。ですから私は永遠にしたいと思いますの。あえて壊すなんて以ての外ですの」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)と融合した邪神が言う。
それは邪神としての価値観であったことだろう。固定、停滞するという権能。それを司る邪神だからこその価値。
固定概念と言ってもいいのかもしれない。
傲慢たる言葉であったかもしれない。
「僕は終わりがあり忘れるから人は前に進めるんだと思うし、限りが在るからこそ尊いんじゃないかな……そう思うよ」
晶と邪神。
その言葉は正反対のものであったのかもしれない。
けれど、その根底にあるのは同じであったことだろう。人の生命は儚いけれど美しい。
そこに灰色の如く停滞を見て変わらぬ不変を美しいと感じるか。
それとも虹色の如き刹那によって輝きを見て美しいと感じるか。その違いでしかない。
ガトリングガンの斉射が飛ぶ。
戦場となった不思議の国にはオウガが次々と霧散していく様子が見て取れる。それでも戦いは終わらない。
凄まじい速度で『ディガンマ』がガトリングガンの弾丸を躱して肉薄する。晶に『ディガンマ』が近づかぬようにと殺人鬼たちが応戦してくれているが、『殺人衝動』の解放を抑えている彼等では抑えきれないだろう。
「無駄だ! 俺を止めようなど! お前達殺人鬼もそうだろう! 遺棄されたんだよ! おまえは要らぬと世界から爪弾きにされたからこそ、お前達は此処にいるんだろうが!」
咆哮する『ディガンマ』の言葉こそ、遺棄された者たちの怒りの正当なる代弁者であったことだろう。
だが、違う。違うのだと晶は瞳を見据えて言う。
「それを無為とするかどうかは自分次第だよ。ここにいる彼等も皆も、無為だとは思ってない」
過去に成った『ディガンマ』は考えを変えようとはしないだろう。
それが過去に歪んだ存在オブリビオンであるからだ。だからこそ、力がいる。力づくでも止めなければならないと晶は知っている。
使い魔たちが乱舞し、『ディガンマ』の動きを止める。
「失われるのが嫌でしたら永遠にして差し上げますの」
邪神の権能が使い魔を通して顕現し、さらに『ディガンマ』の動きを封じる。
「失われてしまう悲しさ、爪弾きにされる悲しさ、誰も彼もから自分を自分と認識されない辛さ。わかるよ、といいたいけれど、それでも」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。
手にしたガトリングガンを兵装創造(オルタナティブ・ウェポン)によって分解し、プラズマグレネードへと変化させる。
それは巨大なる鋼鉄の巨人の持つ装備そのもの。
それは皮肉にも超弩級の闘争を求めた『鉤爪の男』の世界に在るものであった。
プラズマグレネードが炸裂した瞬間、晶と殺人鬼たちはワイヤーガンで飛び退る。これで大きく力を削ぐことはできただろう。
己を遺棄された者たちのための復讐者という『ディガンマ』。
その怒りは、その悲しみは本物であったことだろう。
けれど、晶はつぶやく。
「世界に復讐したって、戻らないんだよ。だから、自分の手で変えていくしかないんだ。自分自身か、自分の意味を――」
大成功
🔵🔵🔵
ルイーズ・ハーシェル
終わるからこそ価値があるのよ♪
たくさんの始まりと終わりの集合体であるアタシが、あなたに教えてあげるね!
アタシは痛いのとか平気だし、アタシが前に立つから殺人鬼の皆はアタシ前に出ちゃダメだからね? 絶対よ?
あなた達はあなた達のまま生きて、あなた達が守った子達に合わないとね!
えっとー・・・・・・あなたはディガンマ・・・・・・だっけ? 自分を例外っていってるけど、アタシにとって、アタシ達にとっての例外はファイナルガールだけよ。
今回使うのは【スラッシャーズ】!
意味無いとか棄てられたとかうじうじしてるあなたの怖がる姿はどんなのかしら?
アタシ、それが見たいわ。
プラズマグレネードの爆発が戦場と成った不思議の国にほとばしる。
その中心にありて猟書家『ディガンマ』は、その身を焼き焦げさせてもなお立っていた。爆心地の中心にて咆哮する。
それは怒りだった。
憎悪でもなければ悲哀でもなかった。
ただの怒りだ。
世界が己の存在を許容しないことへの怒り。無意味であると切り捨てた枝葉の一葉にすぎなかったのだとしても、この怒りは正当なるものであった。
「終わらせてなるものか。俺の怒りを、怒りを、怒りを! 俺は世界を破壊するまで終わらない。俺の恩讐は終わらない!」
周囲にありしオウガの残骸が彼の体へと吸い込まれていく。
すでに頭蓋は破れ、虚の如き眼窩にさえも残骸は集積し、その怒りを許容するように吸い込まれていく。
その瞳はやはり怒りしかなかった。
「終わるからこそ価値があるのよ♪」
そう言って戦場を駆け抜けるのはルイーズ・ハーシェル(死は救済ではない・f28083)だった。
彼女は痛みを受けたとしても平然としている。だからこそ、彼女は殺人鬼たちに言った。
己の前に出るな、と。
その献身こそ尊ぶべきものであるが、その献身を向ける相手は己ではないと言う。その相手を間違えてはならないとルイーズは言う。
彼女にとって痛みは問題ではない。
問題なのは、彼等が彼等のまま……そう、殺人鬼たちが護った不思議の国の住人たちと再び会えるか否か。ただそれだけなのだ。
だからこそ、ルイーズは単身『ディガンマ』に挑む。
「たくさんのはじまりと終わりの集合体であるアタシが、あなたに教えてあげるね!」
目の前に対峙するは猟書家『ディガンマ』。
『例外』たる存在にして猛る獣性に身を突き動かす破壊の権化。
「えっとー……あなたは『ディガンマ』……だっけ? 自分を『例外』っていってるけど、アタシにとって、アタシ達にとっての例外は――」
超高速の速度でもって駆け抜ける『ディガンマ』。その疾駆は獣そのものであった。
獣に恐怖は通じるのか。
それとも通じないのか。ルイーズの瞳にあるのは彼女の獲物だけであった。かの獲物たる『ディガンマ』に恐怖を与える、恐怖させる。
ただそれだけのために己の全てをルイーズは使う。
殺戮を齎す血塗れのチェーンソーが唸りを上げる。それは数多の犠牲者たちの生き血をすするもの。
「そう、例外は『ファイナルガール』だけよ」
「わけのわからないことを――!」
獣腕が振るわれる。
血塗れのチェーンソーと激突し、火花を散らせる。それでもルイーズは狂乱するように嗤う。
ああ、そうだろうとも。
わからないだろう。わかるわけがない。ルイーズにとって、彼女たちにとって殺戮は常なる者。
目の前に立った者は殺す。そうするようにできている。
だが、確実に『例外』はある。
そう、最後に生き残る少女。それだけが彼女たちが殺せない『例外』そのもの。ご都合主義、運、あらゆるものが彼女に味方する。
例え、それがルイーズの凄まじき力をもってしても殺せぬ者であると証明されてしまう。
「だけど、あなたは違う。今日の犠牲者はあなたにけってーい、してるの!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「意味ないとか棄てられたとかうじうじしてるあなたの怖がる姿はどんなのかしら? アタシ、それが見たいわ!」
解き放たれるルイーズのスラッシャーズとしての衝動。
それは何物にも止められない。
己を『例外』という猟書家『ディガンマ』でさえも止められない。
恐怖の権化と破壊の権化。
最後に立つのは一体どちらであったことだろうか。血飛沫舞い散る不思議の国に、彼と彼女の恐怖と破壊が輪舞曲する。
その血風はまさしくスプラッタ。
あらゆるものを血の赤に染めて――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
よーし、いい感じにクノイチムーブですね!(本人的には
ハリケーンスラッシュカタールを両手に装備
油断なく構えながらディガンマに相対です!
生命が終わることにどんな意味があるのか
それに対する答えを私は持ち得ません
でも想いが『過去に排出される』から意味が無いという考えは一切共感できませんね!
今を生きるために必要ならば
私たちはそれを認めて進むのです!
過去にすがることは世界を壊すことなのですから!
ひと通り啖呵を叩き付けたらダッシュ&スライディングで一気に距離を詰めて
【乾坤一擲】の一撃で真っ向勝負!
「この一撃に信念を賭けて! いざ、参ります!」
理不尽なんてぶっ飛ばしますよー!
※アドリブ連携OK
血風吹きすさぶ不思議の国に猟書家『ディガンマ』は咆哮する。
それは最早獣と同じであった。破壊だけを齎す存在。世界に爪弾きにされた者の末路。それこそが『ディガンマ』であった。
その姿は確かに人の形をした獣であったが、それでもなお、その瞳に宿るのは獣性であり世界に対する復讐の心だけであった。
「俺を遺棄した世界を許さない。枝葉と切り捨てた世界を許さない。俺と同じような存在が在ることが許せない」
その瞳に合った怒りは炎となって、その身を焦がす。
『ディガンマ』にとって世界は破壊して有り余るものである。己を不要と、無意味と切り捨てた全てに対して怨嗟を吐く。
だが、それでも世界に希望は在り続け、己以外の全てを救う光がある。
それすらも常闇の中に消えゆく定めであると知っているがゆえに、嗤う。嗤って、己の心の怒りを邁進させるのだ。
「よーし、いい感じにクノイチムーブですね!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)にとってはとてもいい感じにクノイチとしての役割を果たせたことにご満悦であった。
それはある意味で世界に憤り続ける『ディガンマ』とは正反対であったことだろう。
対峙するサージェの目の前の『ディガンマ』は獣の様相であった。誰も彼もに怒りをぶつける理性無き獣。
「生命は終わる。終わらせる。全て終わらせる。時間求める。最早排出すべき時間すらなくば、世界は終わっていく。だからこそ俺は――!」
すでに数多の猟兵達によって満身創痍である『ディガンマ』をして、その踏み込み。
それはサージェにとって予想外のスピードであったことだろう。
だが、それでもサージェは前を向いて言う。
「生命が終わる事にどんな意味があるのか。それに対する答えを私は持ちえません。でも――」
両手に構えたカタールの柄を握り直す。
それは決して違えてはならぬことであった。
そこを譲ってしまえばサージェは戦うことすらままならなかったことだろう。
「想いが『過去に排出される』から意味がないという考えは一切共感できませんね!」
駆け出す。あの敵を前に一歩でも引いてしまえば、あの獣性に寄って己の喉元は噛みちぎられるだろう。
だから、前に踏み出す。
どれだけ恐ろしい相手であろうとも、サージェは退かない。
それはクノイチの概念として正解であったかはわからない。けれど、時として生命にひいてはならぬ時がある。
それが今だ。
「今を生きるために必要ならば、私達はそれを認めて進むのです! 過去にすがることは世界を壊すことなのですから!」
振るわれた『ディガンマ』の獣腕の一撃を地面を横滑りにするようにして滑走して躱す。
「ほざけよ、猟兵! 世界は壊す! 壊して全て! 破壊のままにしておくのが――!」
だが、その言葉をサージェは聞かない。
聞く必要がない。
「この一撃に信念を懸けて! いざ、参ります!」
そう言葉を交わす必要なんて無い。
必要なものは全てこの、乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)たる一撃に込めた。
カウンターのようにサージェのカタールの切っ先が『ディガンマ』に振れる。瞬間、その一撃はユーベルコードの輝きに包まれて、凄まじい一撃となって『ディガンマ』の体を穿つ。
「理不尽なんてぶっ飛ばしますよー! くろすっ! いんぱくとーっ!!」
そのユーベルコードの一撃は、世界を照らすように激しく輝き、『ディガンマ』の体を吹き飛ばす。
この信念が『ディガンマ』に届いたかどうかはわからない。
人の歩んだ道には轍ができる。
それを人生と呼ぶのだろう。概念の集積した存在であるサージェにとって、それは己のこれまでだ。
けれど、その轍はいつだって、前を向いてこれからを生きていかねば刻むことの出来ぬものであると彼女は知っている。
『ディガンマ』と呼ばれた『例外』だけが、きっとそこから取り残されてしまったのだろう。
それを憐れに思うことすれあれど、それでも。
それでも世界を壊すほどの理由ではないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ナギ・ヌドゥー
全ての生命を殺し尽す……オレも全てを諦め、そんな風に暴れたら楽になれるのだがな……。
生憎オレはそんな楽しく死ぬつもりは無いんだ。
業深き者は地獄の苦しみの中で死ぬ、アンタもきっとそうなるさ。
ソウルトーチャーの「禍ツ骨牙」は咎人の歪んだ魂を裁く
奴の皮をじわじわと剥ぎながらその咎を暴いてやろう【傷口をえぐる】
【切り込み】と呪獣の骨牙の【2回攻撃】で追い込む
あのスピードは厄介だが骨牙は当たるごとに命中力を増していくのだ
殺人鬼達と連携し奴のスピードでも躱しきれない程の波状攻撃を行う
穿たれた胴はすでに大穴が空いていた。
体に刻まれた斬撃は深い。頭蓋は割れ、片目を失っている。体は焼け焦げ、それでも猟書家『ディガンマ』は立っていた。
凄まじき怒り。
世界に対する復讐。
たったそれだけのために『ディガンマ』は立っていた。これが殺人鬼たちが『殺人衝動』を全開にしても倒せぬと言われたオブリビオンとしての姿であった。
どこまでも怒りのために存在している存在。
それは怒りの矛先が世界であるがゆえに『例外』として存在することを許されたであろう破壊の権化。
「すべて、壊す……――」
周囲のオウガの残骸が『ディガンマ』に集約されていく。
それはまるでこのまま倒れることは許さぬとばかりに彼の体を支える怨念そのものであったのかもしれない。
「全ての生命を殺し尽くす……オレも全てを諦め、そんな風に暴れたら楽になれるのだがな……」
ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)にとって、それは最後の理性であった。
殺しの快楽に溺れながらも、それでもなお残った理性のひとかけら。
そのためにナギは前を向く。
「生憎オレはそんな楽しく死ぬつもりは無いんだ」
それは自分が決めたことだ。
そう決めて己は生きている。そうでなければ失われた生命に申し訳が絶たない。殺すことに悦楽を見出すのであればこそ、なおのこと。
だから、ナギは対峙する。
かの破壊の権化『ディガンマ』と対峙する。かの者は理不尽を振りかざす暴力装置。
そこにあったのは怒りだけだ。
怒りだけが『ディガンマ』を突き動かす。誰のために怒っているわけではない。己のために怒っているわけでもない。
ただただ怒りという概念だけが世界に復讐しようとしている。
「罪深き者は地獄の苦しみの中で死ぬ、アンタもきっとそうなるさ」
それは、生ある者であれば必ず咎を負うからこそ、己も『ディガンマ』も『例外』ではないのだと言う。
その重さを自覚した時、人はいつまで耐えられるだろうか。
けれど、その重さを背負ってもなお、誰かのために戦える者にこそ、真なる力が宿る。
「ああ、そうだとも。そうでなくては――」
死せる者も、生ける者も浮かばれない。
ナギの瞳がユーベルコードに輝く。
放たれるは禍ツ骨牙(マガツコツガ)。殺人鬼たちが最後の力を振り絞って戦場を駆け抜ける。
ナギのユーベルコード、呪獣『ソウルトーチャー』から放たれる骨牙の一撃を確実に『ディガンマ』へと届けさせるために走る。
彼等の姿を瞳の端に捉えながら、ナギは言う。
「これが咎を抱えながらに生きる者たちの姿だ。人の姿だ。どこにも『例外』はない。その怒りにも。復讐心にも。世界に遺棄された者にも、『例外』なんてないんだ」
骨牙の一撃一撃が『ディガンマ』の皮をはぐようにじわじわと追い詰めていく。
傷口をえぐり、切込み、骨牙はまるで咎人の咎を暴くように何度も何度も『ディガンマ』を削り取っていく。
殺人鬼たちが殺人技巧を開放し、『ディガンマ』を追い詰める。
「俺は――……!」
ただの『例外』だと『ディガンマ』は嗤う。
それは嘲笑であったのかもしれない。己の最後に対峙した猟兵、ナギの在り方に対するものであったのかもしれない。
己の最後の理性。
か細いそれに寄ってのみ、己の咎を支えるナギの姿に、『ディガンマ』は最後まで嗤った。
ああ、そうだとも。
楽に死ねるとは思っていない。
奪ってきた生命がそれを許さない。
だからこそ、懸命に明日を生きなければならない。
ナギは最後の骨牙が『ディガンマ』の体を霧散させた時、漸くにして戦いが終わったのだと知る。
「これが『例外』なき祝福だよ、『ディガンマ』――」
その言葉はきっと届いてない。
けれど、それこそが彼に……いや、生命に『例外』なき終わりという祝福なのだというようにナギは最後の一片が骸の海に還るまで見つめるのだった――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年12月18日
宿敵
『ディガンマ』
を撃破!
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