猟書家の侵略~主の願いを叶える為に~
「そう、見つけましたか」
深い森。その入口に立つ、一人の女がいる。
纏う衣服は場に似付かわしくないメイド服。その長いスカートを翻しながら、女が振り向けば……そこに跪いて控えているのは、数人の女の影。
「やはり、森に潜むエルフを探すにはこちらもエルフを使う、と。この考えに間違いはありませんでしたね」
跪く女達のその耳は、笹穂型。その耳の形は、エルフと呼ばれる種族の特徴だ。
だが彼女達はタダのエルフなどではない。その正体は、その身に忍びの業を身に付け、それが故に危険視されて滅ぼされ、オブリビオンとして蘇った……『クノイチ』と呼ばれた存在であった。
そんな存在を傅かせるメイド服のこの女もまた、オブリビオンである。
「さぁ、行きなさい。森を焼き払い、民を殺し、思う存分に暴れるのです」
女の命に答えを返す事無く、クノイチ達が姿を消していく。
その気配は森の奥深くに消え……やがて一つ、二つと。森に火の手が上がるだろう。
「……そう、全てはお嬢の為に」
呟く女が、その脚を燃え上がり始めた森へと踏み入れる。
炎に照らされたその肌は……不自然な程の硬質な輝きを放っていた。
●
「お集まり頂きまして、ありがとうございます」
居並ぶ猟兵達を迎え入れる、艷やかな銀の髪のグリモア猟兵。
ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の顔は、鋭く引き締まった真剣な物だった。
「今回皆さんに赴いて頂くのは、アックス&ウィザーズの辺境地域。その地に暮らす、エルフの集落です」
エルフは世界各地に他の種族と共存している。
だがしかし、樹上のツリーハウス集落で暮らす、エルフだけが暮らす『エルフの森』と呼ばれる地も、まだ世界各地に数多く存在するらしい。
こうした森は多種族にとっては迷いの森であり、集落に辿り着く事も出来ぬらしいのだが……。
「そんな地に狙いを定めた猟書家の撃破が、今回の任務となります」
そんな森を突破する為に、今回の相手となる猟書家は一計を案じたらしく。
『エルフのクノイチ』と呼ばれるオブリビオンを用い、迷いの森を焼き払い……集落の襲撃を企てているようなのだ。
……しかし何故、エルフの集落を狙うのかと。当然の疑問が、猟兵の口から出るだろう。
「……実は『エルフの森』と呼ばれる地には、『世界樹イルミンスール』から株分けされた『聖なる木』が存在しているそうで……」
その『聖なる木』を狙ったのが、目的の一つ。
もう一つは、集落に住まう優秀なエルフ達を皆殺しとし、オブリビオン化して将来的な戦力としようと企んでいるらしい。
……そんな事を、許す訳にはいかない。
「これから皆さんを、現地集落に送り出しますが……幸いな事に、集落のエルフの皆さんは皆さんに協力的です」
普段は世間から隔絶した暮らしを送るエルフ達だが、彼らは例外なく『神秘的な事柄への順応力』が高い。その為、猟兵達の存在はすんなりと受け入れてくれるし、状況の理解も疾く、迅速に協力を得られるはずだ。
そうして彼らの協力を得る事が出来れば……森に散って焼き働きをしている『クノイチ』達を探し出す事も難しく無いし、戦いの際にも優位を得ることが出来るはずだ。
「ただ、注意して頂きたいのは……相手も一筋縄ではいかぬ存在であるようです」
『クノイチ』達は忍びの業をその身に宿す曲者揃い。その上今回に限っては、猟書家から力を借り受けているらしく……何やら強力な重火器(スペースシップワールド世界のアームズフォートの様な物だ)を携えているのだという。
そんな重装備を携えた存在だ。攻撃力に関しては油断ならない相手となるだろう。
そういった意味でも、森のエルフ達から受ける支援を上手く使う事が重要となるかもしれない。
「最後に、今回の討伐目標である猟書家について……」
敵の名は、『チーフメイド・アレキサンドライト』。スペースシップワールドで活動が確認されている猟書家『プリンセス・エメラルド』が派遣したメイドであるらしい。
重火器を用いた『掃除』が得意であるとの事であり、こちらもその攻撃力に付いては注意が必要だろう。
……スペースシップワールドで活動している猟書家の従僕が、何故この世界に派遣されてきたのか。その辺りの疑問は尽きぬだろうが、問うても答えが返ってくることは無いだろうから、戦いに集中し撃破を目指して欲しい所である。
「新たな猟書家の企み。その企みを挫く為に……」
皆様の御力を、お貸し下さい。
丁寧な礼をして、ヴィクトリアは猟兵達を現地へと送り出すのだった。
月城祐一
ぐっと寒さが増してまいりました。
どうも、月城祐一です。遂に冬本番か……(寒さが苦手勢)
今回は二章構成の猟書家シナリオ。アックス&ウィザーズでの戦いです。
エルフ達の暮らす『エルフの森』を狙う猟書家の討伐戦となります。
以下、補足となります。
第一章は集団戦。
敵は忍びの業をその身に宿す、『エルフのクノイチ』となります。
戦場となるのは、『エルフの森』の各所。
この森はエルフ以外には『迷いの森』として牙を剥く深い森となっており、通常の手段で探索するのは不可能です。電子機器や超常手段、どれを用いても不可能だとお考え下さい。
ですので、皆さんには現地集落のエルフの援護を受けて頂きます。
現地集落のエルフ達は猟兵に対して非常に友好的であり、援護に対して拒絶する事はありません。よっぽど非人道的な手段で無い限り、協力してくれる事でしょう。
そんな彼らの支援の下、敵を捜索、撃破するのが第一章の目的となります。
なお、OPの通り敵のクノイチ達は重火器で武装を施された状態で登場します。
その攻撃力はかなりの物。この辺りの対策も、必要かもしれません。
第二章はボス戦。敵は幹部猟書家『チーフメイド・アレキサンドライト』。
現時点での詳細は不明です。章の進展時に詳細開示がなされますのでご了承下さい。
辺境の森に住まうエルフ達。その地を支える聖木を狙う悪意。
森を包まんとする悪意を、猟兵達は防ぐ事が出来るだろうか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 集団戦
『エルフのクノイチ』
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POW : ニンポー・クナイ分身の術
レベル×5本の【の数に分身する毒】属性の【毒の塗られたクナイ】を放つ。
SPD : ニンポー・変わり身の術
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【身代わりにした物】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ : ニンポー・房中術
【色仕掛け】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:仲村くさた
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
グリモア猟兵の手引の下、猟兵達が降り立ったのは深い森だった。
視線を上げれば、樹上には複雑に組み上げられた人工物が見えるだろう。
どうやらここが、この森に住まうエルフ達の集落であるのは間違いないようだが──。
「何者だ! どうやってこの地に……!」
瞬間、猟兵達が感じたのは複数の人の気配と、こちらを狙う鋭い意識。
だがそのどれもに、悪意は無い。あくまでも村を守らんとする、気高い意思ばかりである。
──森が襲撃を受けている。我々は、君達を助けに来た者だ。
……姿を見せぬ声の主に向け、事情を説明する。
誠意を込めて言葉を尽くせば、村の者達にもその意思は通じて……。
「済まなかった。突然現れたものだから、こちらも焦ってな……」
鋭い意思は収められ、樹上から軽やかな身のこなしで降り立って。
この地に暮らすエルフ達が、その姿を現す事だろう。
降り立ったエルフ達の目に、敵意は無い。誠意を示した猟兵達と、その身に宿す『生命の埒外としての力』……『神秘』を感じ、友好的な態度だ。
だが、しかし。
「……しかし、襲撃とは。一体何者が……?」
恐らく村の纏め役なのだろう。エルフ達の先頭に立つ壮年の男が首を傾げる。
どうやら、まだオブリビオンによる襲撃は始まってはいないようだが……。
──ピクッ。
瞬間、エルフ達の耳が何かを感じたかの様に僅かに動く。
それと同時に、感覚に鋭い猟兵になら判るかもしれない。
森の各所から感じる淀み……悪意を示す存在がある事を。
そしてその悪意と共に、森の各所から立ち上り始める黒煙の香りを。
……どうやら今、このタイミングで。オブリビオンによる襲撃が。忍びの手による森に対する焼き働きが、始まったらしい。
ざわつく住人達。そんな彼らの動揺を鎮める様に。
──急ごう。森が焼かれる、その前に。
猟兵が告げたその言葉は、不思議な程に強く響いて。
エルフ達は、己を取り戻し……森を護る為に、その手に弓を取る。
猟兵とエルフ達の、共同戦線。森を護るための防衛戦が、幕を開けようとしていた。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
対応武器:漆黒風
危険視…まあ、忍ってそういうものですよ。
でも忍に重装備って、なに考えてるんですかね。
エルフには道案内と水の魔法攻撃お願いしたいんですよ。
結界術で防御施しておきますねー。
使い慣れない武器に、魔法攻撃をされる。それで完全脱力など難しい。
おまけに、火と水で蒸発してるんですよ。
指定UCで呪詛+風属性攻撃。狙いは眉間、こめかみ、喉をランダムに。
私は一投一投、場所を変えて投げますからねー。
私は四天霊障による四重のオーラ防御を。他の三人も黙っちゃいないんですよねー。
エルフに攻撃いきそうなら、庇います。
忍には忍を。
●
鬱蒼と茂る森の中を駆ける影が、二人。
弓を手に先導する青年エルフの姿を付かず離れず追いながら、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は考えを巡らしていた。
(その業を危険視され滅ぼされた……まあ、忍びってそういうものですけどね)
義透は、多重人格者である。が、それはあくまでも表向きの姿。
彼の本質は、オブリビオンの手により殺害された四人の意識が寄り集まった複合型の悪霊。表に出る意識を切り替える事で、常に状況に沿った最適な行動を取ることが出来るのが彼の強みである。
今回表に出ているのは、四人の内の第一人格『疾き者』。義透が取る基本の姿にして、唯一『忍び』としての業を修めた最年長だ。
そんな彼であるからこそ、気付く事がある。
(……ふむ。これは確かに『迷いの森』ですね)
鬱蒼と茂る森の中は、とかく同じ風景が続くもの。方位方角もまた、簡単に見失ってしまうものである。
その上で、森自体に何やら不可思議な力が働いているようで。例え猟兵が挑んだとしても、突破するには中々の苦労が必要となるだろう。
だが、この森で暮らすエルフはそんな森の中であっても身のこなしに迷いが無い。随分と卓越した斥候や野伏としての技能を有しているらしい。
……成程。これだけの技能を有する存在であれば、この地に降り立った幹部猟書家が戦力にと考えるのも頷けようと言うものだ。
(まぁ、目の付け所は中々ですが……)
その辺りの考えは、流石は幹部猟書家。一筋縄ではいかぬ相手とも思える。
だが、しかしだ。
(……でも忍に重装備って、なに考えてるんですかね)
兵の運用、という点に関しては。これは少々、どうなのかと首を傾げざるを得ない。
忍とは本来、敵地に忍び込んでの情報収集や破壊工作などを生業とする者たちだ。
そんな彼らに求められるのは、あくまでも敵の目に止まらぬ為の『目立たない』力だ。
それなのに、今回の敵は忍に重装備を施し運用しているのだという。その運用法は、あまりにもミスマッチ過ぎやしないだろうか?
(──まぁ、そこに付け入る隙があるからいいんですけどねー)
心中で呟いた、その瞬間。先導するエルフの動きが止まる。
此方に視線を向ける事無く、木の陰からエルフが手で前方を指し示す。その先を義透もまた覗き込めば……そこに居たのは、大型の重火器を携えた女エルフ。
女エルフの目の前には、今まさに燃え上がり始めた積み重ねられた枯れた枝や葉の山がある。
どうやら今まさに、火を付けたばかりであるらしい。ここで止める事が出来れば、森を襲う火の勢いを幾らかは減じる事が出来るはずだ。
(……では、手筈通りに)
状況を確認し、エルフと視線を交わせば。彼も一つ、力強く頷くだろう。
ここからの行動は、予め打ち合わせてある。その打ち合わせの通りに、まずはエルフが木陰から飛び出して。
「そこまでだ!」
『なっ、しまっ……!?』
気勢一喝。その気勢のままに撃ち放つのは、練り上げられた魔力の矢。
乗せた属性は、水。その属性魔法が火元へと飛び込んで……!
──ジュワァァァアアア!!!
瞬く間に打ち消し合い、蒸発。
瞬間、立ち上ったのは真白い蒸気と高温だ。
蒸気は視界を隠し、高温は集中力を妨げる。その上敵の手には使い慣れない重火器があるのだ。
こうまで条件が揃えば、完全脱力など難しいはず。
「──私の早業、受けてみますー?」
機を見計らい、義透の手が閃いて。投げ放たれたのは、忍者手裏剣。
呪詛と風の力が篭められたその手裏剣は、のほほんとした義透の口調と反比例するかのように鋭く飛んで……。
──ゴッ、ガガッ!
『カッ、は……!?』
動揺するクノイチの、眉間、蟀谷、喉……人体急所に、的確に突き刺さる。
そうしてそのまま崩れ落ちれば、限界を迎えたクノイチの身体が塵となって消えていく。
協力者であるエルフへの的確な指示と、その存在を活かした的確な戦術。
そして何より、忍には忍をという矜持。
その全てが噛み合った、僅かな反撃すら許さぬ完璧な勝利であると言えるだろう。
「さて、この調子で他の所にもいきましょうかね」
消えゆく敵の姿を見送りつつ義透が言えば、協力者であるエルフも頷いて。
二人はそのまま数箇所を巡り、見事な働きを見せるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
舞莽・歳三
忍者のくせにそんなもん持ってたら機動力落ちるんじゃね?忍ばないタイプ?まぁどっちでもいいけど
エルフの側を離れないようにして、エルフに攻撃がいけばナイフの【投擲】で牽制して相手がひいたらこっちも引くぜ
【地形の利用】をして背後から【暗殺】を試みてみるかな
折角だからクナイの打ち合いと洒落込むか…
●
パチリ、パチリと。燃え上がろうとする、炎の塊。
その直ぐ側には、忍び装束を纏ったエルフの女。その手には確かに、似付かわしくない重火器が存在を主張していた。
(忍者の癖に、良くもまぁ……)
森に火を掛けた下手人をその目で見留め、怒りに震える案内役のエルフを手で制しつつ。舞莽・歳三(とし・f30567)は敵の様子を見定める。
先にも触れたが、忍とは本来情報収集や工作任務を生業とする者だ。
そんな彼らに、重装備を施す理由とは何だろうか。森に火を付けるというその為だとしては、火力が過剰過ぎるだろうし。
(忍ばないタイプ? ……いやまぁ、どっちでもいいけど)
そこまで考えて、頭を振って考察を打ち切る。
今回の歳三の務めは、この『エルフの森』を襲わんとする悪意を断つ事。そしてこの企みの首魁である幹部猟書家を討つことだ。
疑問は無いではないが、答えを見出す事に意味はない。今はただ、動くのだ。
「まずは、火を頼む」
「任された!」
歳三の声に、今か今かと動く時を待ち侘びていたエルフが躍動。その手に水の魔力を練り上げて、燃え上がろうとする炎を打ち消さんと水撃を放つ。
だがその魔力の揺らぎを、クノイチもまた感知していたらしい。
飛来する水弾を術者ごと射抜かんとするかのように、クノイチはその手の火器の筒先を案内役へと向けて指向して……。
「やらせねぇ、よ──ッ!」
瞬間、響いたのは歳三の声。その声が消えるよりも疾く、敵の火器の筒先に銀の線が突き刺さる。
敵の意識が案内役に傾いた、その瞬間。歳三が放ったクナイが、見事に銃口を貫通してみせたのだ。
銃口を貫かれれば、重火器などちょっと重い鈍器でしかない。暴発の危険性を考えれば、鈍器にすら扱いは劣る。
そうなる可能性に思い至ったか。敵はそのまま銃を捨てて……くるりと踵を翻し、逃走を選ぶ。
どうやら自身の不利を理解し、仕切り直しを選んだらしい。その判断の速さ、そして銃を捨てた事で得た(いや、取り戻した、と言うべきか)身のこなしは、中々に巧みであると見えるだろう。
だが、しかしだ。
「ちっとばっかし、遅かったな……!」
その動きは、歳三からすれば『遅すぎる』。
逃げる敵のその背を睨み、意識を一点に集中する。瞬間、歳三の身体が纏うのは不可視の力場。
その力の性質は、『反重力』。物体を引き付ける万有引力を打ち消すその力を用いれば。
……この程度の距離など、有って無きが如し!
──ヒュンッ!!
もう一歩、速く。その一念のみを心に描いて地を蹴れば、重力から開放された歳三の身体が宙を翔け、逃げるクノイチとの距離を瞬く間に埋めていく。
あと、5メートル。愛用のナイフを右手で引き抜く。
あと、3メートル。左肩までナイフを持ち上げ、構える。
あと、1メートル。背後に迫る殺気に気づいたクノイチが振り向く。
驚愕に染まるクノイチの顔。その下の、細く白い首を目掛けて。
──ザンッ!!
左から右へ横一文字。ナイフを振り抜いて、すり抜ける。
直後、歳三の背後から聞こえるのは噴き出すのような勢いの良い水音。
その音が何を指しているのかは……明確に記さずとも、良いだろう。
(折角だからクナイの打ち合いと洒落込みたかったが……まぁ、いいか)
一つ息を吐いて、纏う力を解除する歳三。
その存在を『躯の海』へと還していくオブリビオンの気配を背後で感じつつ、マイペースに歳三は気持ちを切り替えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼静
ふむ…エルフの支援を受けてクノイチとメイドを探す依頼か。
成る程、分からん
エルフは世界にもよるが
閉鎖的で魔法や野菜が主食というイメージも根強い
(知人らを連想し頭を振り)
ここらで見聞を広めておくのもいい機会かもな
▼動
道案内や消火の魔法は任せるとして。
狙われないようフォローはしっかりしないとな
【洸将剣】で単車(2人乗り)を
ブレード付きの装甲車っぽく覆い火の場所までアクセル全開
森の仕組みや由来、稀有な動植物など生活の様子を
余所見しつつ興味深く聞こう
(敵が出てきても気付かず、そのまま轢く事で攻撃とする)
しかし…敵の潜伏能力は中々だな。
周囲に気配も無いし次に行くとしようか
運転マナーは大切に
アドリブ歓迎
●
──ヴォォォォオオオンッッ!!
普段は静謐に包まれた森に響く重低音。
科学が生み出した鋼鉄の悍馬……ユーベルコードの力で装甲化された大型自動二輪を駆り、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)が森を駆ける。
愛馬を御するアネットの背には、案内役の少女エルフがしがみついている。彼女の案内もあってか、森に宿る不思議な力はその効力を発揮せず。アネット達はここまで順調に道を進む事が出来ていた。
……が、しかし。全てが全て、順調と言う訳では無かった。
──ヴォォォォオオオンッッ!!
「ぴゃぁぁぁぁぁっ!?!?」
再び響く、重低音。アクセルを全開にした事で響き渡る轟音や揺れ動く車体の衝撃に、少女エルフは甲高い悲鳴を上げっぱなしであった。
……アクセル全開とは言いつつも、アネットとしては一応運転には気を使っているつもりである。だが案内役の少女にとっては、自動二輪など未知の存在。見るのも乗るのも初体験なのだ。
故に、こうして悲鳴を上げっぱなしになるのは当然であると言える。むしろ案内役という使命を放り投げてパニックに陥っていないだけ、立派なものだとすら言えるだろう。
(……とは言え、色々聞いてみたかったんだが)
森の仕組みや由来、深い森に棲む稀有な動植物や生活の様子。
未知に挑む者である『冒険者』であるアネットとしては、そういった諸々に興味を抱いていたのだが……この調子では聞き出す事は難しそうだ、と。
再び上がった悲鳴に苦笑を零しつつ、アネットは思う。
(しかし、ふむ……『エルフの森』、か)
世界にもよるが、エルフという存在は様々なイメージと共に語られる存在だ。
曰く、優れた弓術の使い手。曰く、精霊と心を通わせた魔術の使い手。曰く、長命であり閉鎖的な気質。曰く、菜食主義者である。曰く、曰く、曰く……。語られるイメージには、枚挙に暇が無い程だ。
……まぁ、それらのイメージはあくまでイメージ。実際に生きているエルフ達はそんなイメージに囚われない型破りな者も多い事を、エルフの知人も多いアネットは知っていた。
だからこそ、こういった語られるイメージに近い生き方をするエルフ達についても。見聞を広げる為に、色々と知っておきたかったのだが……。
「ひぃっ!? 揺れっ!? ガタッてぇ!」
……背後の少女は、ご覧の有様。ほぼ半泣きと言った状態であるからして。
(やはり無理、か……む?)
アネットの口から再び苦笑が零れ落ち掛けた、その瞬間。アネットの視界を遮ったのは、モクモクと煙る黒煙だ。
同時にアネットの鋭い感覚が、燃え上がる炎の勢いを感じ取る。
どうやら火元の一つの近くまで、辿り着けたらしい。
火勢の程は、中々に激しく思える。ここは時間を掛けずに火元まで駆け抜けるのが上策か。
「しっかり掴まっていろ。少し飛ばすぞ──!」
「えっ、これ以上……ひえぇぇぇぇぇっ!?」
覚悟を決めるまでは、ほんの一瞬。アネットが後ろに掛けたその声に、一瞬呆気に取られた少女だったが……その声はすぐに、今日一番の悲鳴へと変わる。
だが、その今日一番の悲鳴は……。
──ゴッ! ガッ!! ドンッ!!
「ちょっ! いまっ!? 何かぶつかってぇぇぇああああまたぁぁぁぁああっ!!!」
ほんの僅かな間を置いて、更新された。
響いた音は、何かを弾き飛ばすかのような鈍い音。ちらりと見えた影の姿は、何やらヒトの形をしていたような……?
それが一度、二度、三度と続くが……。
「気にするな。(山道なら)良くある事だ」
「良くあるってぇぇええええええええ!?!?」
運転手アネット、まさかのスルー。気にせずに火元へ向けて一直線だ。
そんなアネットの態度に、少女の上げた悲鳴は更に今日一を更新して……森へと響くのだった。
……なおこのあと火元には無事に辿り着き、少女の水の魔術により火は掻き消された事は、しっかりと書き添えておく事としよう。
大成功
🔵🔵🔵
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ようし、森のエルフさん達と協力して悪いエルフさん達をやっつけるぞー☆
くノ一ってあれだよね!しょーぐん様のいるサムライエンパイアにいっぱいいる人たち!
この世界にもくノ一がいたんだね!
でも、くノ一って素早い動きでひゅんひゅんしているイメージだからあんな重たそうな武器持ったら逆に大変じゃないのかな?
重火器を振り回してるくノ一たちを【妖精姫の括り罠】で足止めして、その隙を森のエルフさん達に攻撃してもらうね!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
眼下で枯葉や枯枝を掻き集め、火付けの為の仕込みを進める忍び装束の女。特徴的な笹穂耳を見れば、その種族がエルフである事が判るだろう。
……アレこそが討伐目標の『エルフのクノイチ』で、間違いないはずだ。
(──すごいや! この世界にもくノ一がいたんだね!!)
そんな敵の姿を樹上から見下ろす様にして、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)が目をまんまると見開き輝かせながら見つめていた。
ティエルにとって『くノ一』とは、『しょーぐん様(皆さんご存知、上様こと家光公の事である)』のいるサムライエンパイア世界にいっぱいいる人たちであるという認識である。そんなくノ一が、ティエルにとっての生まれ故郷でもあるこの世界にもいたとは……!
好奇心が旺盛な少女であるティエルである。そんな知らなかった事を知って、目を輝かせたのも当然の事であろう。
……とは言え、だ。
(でもくノ一って、素早い動きでひゅんひゅんしてるイメージだから……)
ティエルがこの場に足を運んだのは、ただ見知らぬ事を知るためだけではない。
年端も行かぬ少女であるとは言え、ティエルも立派な猟兵だ。オブリビオンから森のエルフ達を救うために、ティエルはこの場に戦いに来たのだ。
(……あんな重たそうな武器を持ったら、逆に大変そうだよね?)
……相手の姿、背景、与えられた武器。全てを確認し、冷静に分析する。
お転婆で、無邪気で、天真爛漫が姿を取った様なティエルである。だがそれだけが、ティエルの全てでは無い。
その目で正確に情報を集め、的確な行動を行う判断力を振るう姿もまた、ティエルの一面であるのだ。
「……よーしっ! きーめたっ☆」
そうして敵を見極めれば、あとは動くだけ。
敵のクノイチが、此方に気づいた様子は無い。どうやら森に宿る不思議な力も、ティエル達に味方してくれているようだ。
伴をしてくれた案内役のエルフ(こちらも年端のいかない少女であるが、優秀な罠使いにして弓の使い手でもあるらしい)に声を掛け、行動について簡単に打ち合わせを済ませて……。
「──そこだっ! 引っかかっちゃえー☆」
タイミングを見計らい、響き渡るティエルの声。
その甲高い声と同時に顕れたのは、脚を捕まえ動きを封じる括り罠。顕れた場所は当然、クノイチの足元だ。
『敵……っ! くっ、括り罠!?』
突然の脚を縛められた感覚に、クノイチが動転した様な声を上げる。
……ここで彼女が、普段どおりの身軽な姿であれば。即座に罠を抜け出す事も出来ただろう。戦闘態勢に以降して、ティエルに一矢を報いる事も出来たかもしれない。
だがクノイチは、慣れぬ重装備で身を固めている。動きは鈍化し、また装備を投げ出すべきか否かで判断に迷いも生まれ……反撃の機を、みすみすと失って。
「よーしっ! 今だよ☆」
ティエルの指示を受けた少女エルフが放った矢を受けて、倒れ伏す。
少女エルフが放った矢は、クノイチの額を見事に射抜いていた。
エルフ自身の卓越した弓の実力も見事なものだが……それもティエルが括り罠で見事に相手の脚を封じたからこそである。
連携攻撃が上手く決まった事実に、互いの手と手を叩いて打ち鳴らすティエルと少女エルフ。
年少コンビである二人だが……この調子なら、この後も大きな心配は要らないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
鍋島・小百合子
SPD重視
郷に入れば郷に従うべし
まさにこの言葉通りであるのう
「えるふ殿や、森の中が庭も同然であればお願いしたいことがある」
現地のえるふ達に姿を隠しながらの周辺索敵を依頼
森で迷わぬように常に彼らと行動を共にし案内を受ける
こちらも隠密重視(忍び足、目立たない、闇に紛れる併用)にて敵に気づかれぬように行動
えるふ達から索敵の結果を教えてもらえればUC「魔弓神狙射」発動
暗視で敵の姿を捉えれば長弓に矢劇薬の矢を番い、木の上や樹の陰等敵の死角となりそうな位置にて敵の頭から首元目掛けて狙い射る(視力、スナイパー、マヒ攻撃、毒使い、継続ダメージ、部位破壊併用)
討ち取った敵の死体を森の中に隠しつつ、各個撃破を狙う
●
森の木々に紛れる様に。木々を渡る風の様に。二人の人影が、樹上を往く。
エルフの集落を発った、その直後。
──えるふ殿や。森の中が庭も同然であれば、お願いしたい事がある……。
鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)が彼女に付いた案内役に頼み込んだのは、索敵だった。
敵情を把握する事は、勝利への第一歩。敵の動きを知れば、幾重にも対策を練ることが出来るからだ。
だが、小百合子はこの森に詳しくない。下手に動けば、足を引っ張るのが目に見えていた。
故に小百合子は、この森に詳しく庭同然に動ける案内役に索敵の大任を頼み込み……。
「──視えました。あそこです」
「ふむふむ……?」
その成果を、こうして享受するに至ったのだ。
樹上に止まるエルフの、細く囁くかのような声。その指が指し示す先は……どうやら火を付けるに最適な場所を探しているのか? 地を警戒しつつ歩む、忍び装束の女の姿。
その歩みは、中々に見事。ふっと意識を外すと姿を見逃してしまいそうな程に、存在が希薄に思えてならない。
だが、しかし。それほど見事な隠形を修めていても、『エルフの森』に棲むエルフ達の目は誤魔化せなかったのだ。
……森の加護もあるが、アレだけ重そうな物を引き摺っていれば、と。見つけたエルフの側は、苦笑混じりではあったが。
「いやはや、流石よの。やはり郷に入れば郷に従うべし、じゃ」
案内役がいなければ、敵の動きを掴む事など出来なかったのだ、と。
エルフの動きを褒め称えつつ、小百合子が取り出したのは愛用の長弓。
霊木を削り出し拵えられたその弓に弦を張り、矢を番え、敵の姿を見定める。
番えられた鏃は、予め神経に左右する劇薬に浸した毒矢だ。
怪しい輝きを放つその矢で以て……。
(我はつがえる、祝福の矢……)
確実に……狙い、射抜く!
ヒュンッ、と。小百合子の弓から放たれた矢は風切り音を伴って飛んでいく。
……忍び装束のオブリビオンが、こちらに気付いた様子は無い。森の木々が、そして満ちる加護が。小百合子の姿と気配を、敵から匿ってくれているかのようだ。
そんな状態であれば。
『……がっ! ……っ、ぁ……!?』
狙い定めた矢が、目標を外す道理などありはしない。
放たれた矢は、まるで結果を逆再生するかのように一直線に。オブリビオンの首を、見事に射抜く。
不意の一撃を受け、崩れ落ちるクノイチ。声を上げ敵襲を知らせようと藻掻くが……それを防ぐ為の、神経毒だ。
その藻掻きはただただ虚しく虚空を泳ぐのみで。やがて、その足掻きも止まる事になる。
「……さて、えるふ殿。次の敵を……」
消えゆくクノイチの姿。その姿に一瞥をくれ、小百合子が傍らのエルフに声を掛ける。
森の防衛戦は、まだまだこれから。被害を少しでも少なくする為に、可能な限り多くの敵を各個撃破しようと。
小百合子の戦意は、静かに。だが確かに、高まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
神咲・七十
アドリブ・連携お任せ
う~ん、相手がエルフということは森の中だと不利かもですね(お菓子もぐもぐ)
申し訳ないのですが、協力していただけませんか?
なんか、重武装のせいか動きずらそうじゃないですか?
なら、これでいけますかね?
(UC『制約:征服者』を使用。クノイチエルフたちから捕食していき、弱って動けなくなっていったクノイチエルフから順にエルフさん達に樹上から攻撃して貰って、倒していきます。)
う~ん、貰ったぽい武器は強力そうでしたけど、宝の持ち腐れ状態でしたね。
(今回の猟書家の人はずいぶんとおっちょこちょいですね。うまくいけば、あっさりと取り込まれてくれるかも?)
まぁ、戦う時考えますか(お菓子もぐもぐ)
●
エルフのクノイチ。森に棲むエルフ達と、敵はその種を同じくしている存在だ。
で、あるならば。森の中での戦いは不利となるかもしれないと。神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)もまた、森の民に助力を求め、行動を共にしていた。
森と、住まう民を護る戦い。そこに挑む決意は、猟兵であろうと森の民であろうと変わりはしない。
お互いの意思を通じ合わせる事で、敵の捜索はスムーズに進み……七十達は今、樹上から眼下に敵のその姿を見留るに至っていた。
(なんか、重武装のせいか動きづらそうじゃないですか?)
樹下で今まさに火を熾しているクノイチ達のその動きは、どこか窮屈そうに七十には思える。
それはきっと、敵が携えた重火器が原因なのだろう。事実、クノイチ達はそれを重そうに引き摺るようにしているのだから。
……身軽さを身上とする忍びという存在の持ち味を消すかのような、その装備。貸与したという上役……猟書家は、一体何を考えているのやら。
「……っと。まずは、クノイチ達を仕留めてしまいましょうか」
──Die Wurzel, die dem Leben beraubt.
呟くその言葉は、戦場を覆う結界を作り出す為の『力ある言葉』。
敵と見定めた対象から血や寿命、生命力と言った活力を奪い捕食するその結界が張り巡らされれば、眼下で工作活動を続けようとするクノイチ達の動きは少しずつ奪われ、その動きが鈍っていく事だろう。
……もし、通常の状態での戦闘であれば。相手も即座に動き結界を脱するか、その力を利用した反撃を企図するかもしれない。
だが、今回に関してはその心配は無い。不思議な力に満ちる森の加護は、森の民であるエルフと、彼ら彼女らが味方と認めた猟兵達の存在を敵の目から誤魔化し、匿ってくれているからだ。
そんな状況であるからして。敵が七十の張った結界に気付いたのは、術が形成され最大出力を発揮する段階になってから。
有り体に言えば。敵の行動は完全に後手となり……七十の術の前に、完全に屈する形となったのだ。
「──っ、ぅ……」
だが当然、敵をここまで衰弱させるような強力な術であれば反動もまた存在する。
体中を蝕む負の力に、七十の口元から溢れる一筋の鮮血。これ以上この力を行使すれば、後の戦いに差し支えが出るかもしれない。
その事を、術者である七十は良く知っているからこそ……。
「それじゃあ、後はお願いしますね」
術を解き、一歩退いて。敵のトドメを、同行するエルフ達に任せる。
例え敵がオブリビオンであろうと、動けぬのならばエルフ達の弓でも十分倒せる。
樹上から放たれた矢が、一体、また一体とクノイチ達を貫き仕留めていき……やがてその場に立つ敵の存在は、消えた。
(うーん。貰ったらしい武器は強力そうでしたけど、撃てずに終わっては宝の持ち腐れ状態ですね……)
そんな様子を、菓子を口に頬張る七十が見届ける。
さて、後は敵が起こした火を消して。黒幕である猟書家を討つだけだが……。
──ゾワッ。
七十がそう思考を巡らせた、その瞬間。
感じたのは、身体を貫くかのような鮮烈な悪意。
「避けてっ!」
強烈な悪意を受けてその場を飛び退きながら、口を突いたのは回避を促す言葉。
切羽詰まった七十の声に、その場にいたエルフ達も慌ててその場から退けば。
──ドッガガガガガガガガガガガッ!!
直後、七十とエルフ達がいた大樹の枝を撃ち払ったのは鉛の弾雨。
あと一瞬、気付くのが遅れていたら。飛び退くのが遅れていたら……五体無事とは、いかなかったはずだ。
『──ほう、中々良い勘をしているようですね』
響いた声に、視線を向ける。
茂みを掻き分けるように顕れたのは、侍従服に身を包んだ一人の女だ。
女の手には、服に似付かわしくない程に無骨な重火器の姿。垣間見える肌は、不気味な硬質の輝きを放っていた。
その特徴的な姿を見れば、すぐに察しが付くだろう。この女こそが……。
『随分と火の回りが弱いと思えば。まさか邪魔者がこうまで現れるとは……』
幹部猟書家の一人、『チーフメイド・アレキサンドライト』であると。
『お嬢の望みを叶える為に。邪魔者は、私自らが『掃除』致しましょう』
銃器を構えた猟書家が、七十を、集まりつつある猟兵とエルフ達を睨む。
その威圧感の強さは、敵が並大抵では無いことを猟兵達に意識させる事だろう。
……悪意に狙われた『エルフの森』の防衛戦は、新たな段階に突入しようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『チーフメイド・アレキサンドライト』
|
POW : カラーチェンジ
対象の攻撃を軽減する【赤紫色のボディ】に変身しつつ、【100発/秒で弾丸を発射するガトリング砲】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : メイドの嗜み
【カラーチェンジした腕】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、カラーチェンジした腕から何度でも発動できる。
WIZ : 掃除の時間
【ガトリングからサイキックエナジーの弾丸】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:サカサヅキミチル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠月夜・玲」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
『──ほう、中々良い勘をしているようですね』
響いた声に、視線を向ける。
茂みを掻き分けるように顕れたのは、侍従服に身を包んだ一人の女だ。
女の手には、服に似付かわしくない程に無骨な重火器の姿。垣間見える肌は、不気味な硬質の輝きを放っていた。
その特徴的な姿を見れば、すぐに察しが付くだろう。この女こそが……。
『随分と火の回りが弱いと思えば。まさか邪魔者がこうまで現れるとは……』
幹部猟書家の一人、『チーフメイド・アレキサンドライト』であると。
『お嬢の望みを叶える為に。邪魔者は、私自らが『掃除』致しましょう』
銃器を構えた猟書家が、七十を、集まりつつある猟兵とエルフ達を睨む。
その威圧感の強さは、敵が並大抵では無いことを猟兵達に意識させる事だろう。
……悪意に狙われた『エルフの森』の防衛戦は、新たな段階に突入しようとしていた。
====================
●第二章、補足
第二章、ボス戦です。敵は『チーフメイド・アレキサンドライト』となります。
重火器による『掃除』を得手とする、スペースシップワールドの猟書家『プリンセス・エメラルド』が派遣してきた侍従という立場の敵です。
成功条件は、『敵の撃破』です。
戦闘能力に関しては高めで、一章のクノイチ達の様に容易く攻撃を通す事は難しいでしょう。
そんな相手に対しては決定打とはなれませんが、伴に付いてくれたエルフ達の援護も一章に続いて期待出来ます。
彼ら・彼女らを上手く使えば、猟兵にとって有利な流れを掴み取る事が出来るかもしれません。
(上手くエルフと協力出来たと判定されたプレイングにはボーナスが与えられます)
また、判定は通常のボス戦に準拠したものとなります。
確実に先手を取られるという事はありませんので、ご安心下さい。
主の命を受け、世界を渡った幹部猟書家。
猟兵達はその悪意を打ち崩し、『エルフ』の森を護れるか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
====================
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『疾き者』
エルフには結界術で、防御の術を施しましてー。
私が近接攻撃しかけましたら、援護射撃お願いしますねー。
初手は指定UC使用での呪詛+風属性の投擲攻撃。狙いはガトリング砲持ってる腕ですねー。
コピーされても、知られている彼女ですから、即座に効果を失いますしー。
忍は、技を盗まれないことも大切なんですよー。
そのあとは、漆黒風を近接武器として使用。暗殺要領での近接攻撃ですねー。
ガトリング砲を鈍器として使ってくる可能性を、戦闘知識と第六感、見切りで回避しましょう。
万一の防御は四天霊障で。これの防御オーラ制御は、他の三人に任せますー。たぶん、三重になってますね。
●
──ドッガガガガガガガガガガガッ!!
再び森に響く、無数の炸裂音。
『チーフメイド・アレキサンドライト』が携えた重火器から放たれた弾丸が放たれる度に、森の木々は打ち砕かれて、薙ぎ払われる。
……凄まじい破壊力だ。驟雨の様なその密度も相まって、まさに『鉄の暴風』と言える程の火力である。
重火器の扱いを得手とするというその特徴は、伊達ではないと言った所か。
(さてさて。エルフの皆さんに施した防御の術はどれほど持ちますかー……)
その圧倒的な火力と相対しながらも、義透の表情は変わらない。常の飄々とした『疾き者』のままであるが……その頭の内では、素早く考えを巡らせていた。
エルフ達に施した結界術は、そう容易く破られる物では無い。だがそれとて、この火力の前ではそう長くは耐えられないだろうことは想像に難くない。
ならば出来る限り敵の意識を此方に引き付ける必要があるだろう。
その為の手は、ある。だがその動きをする事は、自身の行動が戦いの決定打とは成り得ない事を意味する物であるが……。
──それが、どうした。
義透の使命は、この森に住まうエルフ達を護る事。そして目の前の猟書家を討ち果たす事。
最終的にその目的が果たされるのであれば、自身の活躍の過多などはどうでも良いのだ。
いや、むしろ。自身の行動が布石となって勝利に繋がるのであれば。
……忍びとしては、これこそが本懐ではないか。
「では、参りましょうかねー」
緩やかな態度の底に隠された意思を示すかのように、投げ放たれたのは棒手裏剣。
猟書家の右の腕を狙い目にも留まらぬ早業で繰り出されたその一撃は、先程クノイチを容易く打ち崩した義透の十八番だ。並大抵の敵であれば、捌き切る事など不可能であろう。
だが。
『その様な見え透いた暗器など……!』
目の前の猟書家は、並の敵などではありはしない。
閃光の様に飛ぶ手裏剣に対して、左の腕を一閃。暗器の全てを、その指で受け止めて見せたのだ。
何という動体視力と反射速度であろうか。しかも、その上で……。
『お返し致しま──ッ!』
色を変じた左腕を振るい、義透に向けて投げ返そうと……した、その瞬間。彼女が違和感に気がついた。
おかしい。敵が暗器を投じた際に感じた異能の力、ユーベルコードの力を感じない。
これは、一体──!?
「惑いました、ねー?」
ほんの一瞬、猟書家に浮かんだ戸惑い。その一瞬を、義透が突く。
一息に距離を詰め、猟書家の懐へと飛び込めば。仕掛ける攻撃は棒手裏剣をその手で突き入れる白兵戦だ。
義透が手裏剣を投擲した、その瞬間。その瞬間には確かに、異能の力は乗っていた。
だがその力はあくまでも、『義透を感知していない敵』に対して発動される物である。
つまり、義透の姿を敵が感知しているのならばその力は発動されないという事であり……投じられた暗器からは、ユーベルコードの力が霧散していたのだ。
……こうなってしまえば、猟書家の返し技も効果を発揮する事など無いだろう。
「技を盗まれない事も、大切なんですよー」
『ちっ、くぅ……ッ!』
逆手に握られた棒手裏剣の切っ先が狙うのは、猟書家の人体急所。
のほほんとした態度のまま繰り出されたその体捌きは、『疾き者』として修め、積み上げてきた戦闘技術の顕れだ。
……そしてその戦闘技術には。当然『守り』の技術も含まれている。
『このっ──!』
懐に踏み込まれたのを嫌がる様に、猟書家が振り回したのはその手に携えた重火器だ。
ただでさえ大質量のそれを、オブリビオンとしての圧倒的な力のままに振るったのだ。その威力は空気を引き裂き、掠りでもすれば骨も容易く砕けるだろう。
だが、その一撃も。義透にとっては、想定の範囲内。
「よっ、とー……!」
風切り音を上げて迫る鉄塊を、翳した手に宿る念動力で受け止める。
義透という男を作る四人分の内、三人分の力が宿る三重の防壁だ。鉄壁のその念で、戦鎚と化した銃器を受け止めて……。
──ふわり。
同時に突き抜けた衝撃を殺すかのように。義透の脚が軽やかに地を蹴り、猟書家の懐から後退する。
追撃を狙うかのように再び銃を構える『チーフ・アレキサンドライト』。その筒先が再び唸りを……。
「──さて、今ですよー」
……上げる事は、無かった。
のほほんとしたままの義透の声が響けば、次いで響いたのは撓る弓と鳴る弦の音。
そして、その直後。
『っ、くっ……ぅ!?』
頭上から降り注いだ幾筋も閃光が、幹部猟書家の輝く身体に降り注ぐ。
その閃光は、防御結界に守られていたエルフ達が放った矢や魔術であった。
エルフ達の放つ攻撃に、オブリビオンを討ち果たす力は無い。だがそれでも、手傷を負わせる事が出来る程度には、彼らの実力は高い。
彼らの力を上手く引き出す事が出来れば……義透は最初から、コレを狙って動いていたのだ。
「まだまだ、いきますよー」
エルフの援護射撃に動きを止めた猟書家の懐へ、再び踏み込む義透。
一息に勝負を決める必要は無い。まずは着実に、布石を作る。
一歩ずつ、一歩ずつ。猟書家が沼に嵌まり込む様に体力と気力を失う状況を、義透は見事に作り上げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鍋島・小百合子
WIZ重視
冥土に似つかわしくない物騒な物など持ち出しおって
恥を知るがいい!
「えるふ殿や、この森に甘味となれる食べ物はあるかえ?できるだけたくさんじゃ」
えるふ達に甘味の調達を依頼したら魔に奉ずる舞からUC「魔眷属降臨」発動しキメイエスの眷属を召喚
眷属にえるふの森の甘味を報酬として提示、協力を取り付けられればわらわとえるふ達とで敵将と相対す
それぞれには敵の射撃に対して森の地形を活かしての回避を徹底(見切り)
えるふ達と長弓のわらわとで援護射撃を行い眷属の攻撃が通るように連携を重視(遊撃、集団戦術併用)
長弓で攻撃する際は敵の武器の持ち腕を狙い射る(視力、スナイパー、部位破壊、弾幕、鎧無視攻撃、併用)
●
『このっ、鬱陶しい──!』
エルフ達が放つ矢は、オブリビオンである致命打を与える事は無い。
だがそうと判っていても、手傷を負う可能性がある以上は無視を決め込むのも難しい。
そんな攻撃が延々と続く状況に『チーフメイド・アレキサンドライト』の声に苛立ちの色が浮かぶ。その苛立ちを示すかのように、携えた火器からは弾雨が激しく放たれていた。
(めいどに似付かわしくない物騒な物など持ち出しおって……)
恥を知れ、と叫びたい思いを飲み込みつつ。小百合子は戦場から一歩離れた位置にいた。
あの圧倒的な火力を前に真正面から戦うのは、正直愚策だ。搦手を使うべきであろう。
……幸いにして、戦場である『エルフの森』に対する火付けは猟兵達の活躍で随分と抑え込めている。森の民であるエルフ達も、猟兵に協力的だ。
ならば、未だ多く残る森の木々と加護を活かして立ち回るのが最善であるが……それだけでは、恐らく一歩足りないだろう。
その一歩足りない『何か』を、埋めるべく。
「……我は呼び、喚く」
すぅ、と息を整えて。小百合子が舞う。
その両の手には、鶴の番いが舞う愛用の扇。
鮮やかなその扇が。長く艷やかな黒髪が。深い森の中で、舞い踊る。
「深淵たる魔界に存ずる魔の僕よ──」
小百合子のその舞は、異界に在る『力ある者』へと奉じる物。
舞が進めば進む程に、『力ある者』の気配もまた少しずつ強くなっていく。
「──来い!」
その存在を小百合子が明確に感じた、その瞬間。
小百合子の呼び声に応えるかのように目の前の空間が歪み……顕れ出るは、一人の人影だ。
褐色の肌に薄絹を纏った女である。だがその頭には大きく捻れた角が有り、手には怪しげに輝く抜身の細剣を携えていた。
この女こそ、小百合子が喚び出した『力ある者』。類稀なる細剣の技と魂喰らいの術を操る、大悪魔キメイエスの眷属であった。
「うふふ……私の力が必要かしら?」
喚び出された眷属は妖艶な笑みを浮かべている。
どこかのんびりとしたその佇まいであるが……その身に宿る力は本物である事を、小百合子は良く知っている。
そんな眷属の問い掛けに、うむと一つ頷く小百合子。
だがここで、一つ問題がある。その問題とは、悪魔を使役する上で支払わねばならぬ報酬だ。
強力な悪魔を従える場合、報酬は不可欠だ。だがその報酬がいくら豪華であろうとも、悪魔当人が気に入らなければ彼らは力を貸してはくれないのだ。
……とは言え、小百合子はこの眷属の好みを良く知っている。
「報酬の方は──今、来たようじゃの」
その報酬を提示する、その直前。
森の木々を掛け渡り、小百合子の側に着地したのは、先程小百合子と行動を共にしていたエルフであった。
エルフの手には、何やら布で包まれた小包がある。
「遅くなりました。これを……」
「うむ、どれどれ……ほう、これは」
その小包を小百合子が受け取り、中を検めれば。瞬間、ふわりと漂うのは甘い香り。
包まれていたのは、森で獲られた果物や蜜をふんだんに使った焼き菓子であった。
森の恵みが凝縮された様な逸品である。そんな品であれば……『甘い物に目が無い』眷属なら、絶対に食いついてくれるはずだ。
「……眷属よ。この菓子が報酬じゃ。敵はあの、物騒なめいど。戦ってくれるかえ?」
「あらあら。そんな美味しいそうな物を出されたら……少し、本気を出さないといけないかしら?」
果たして、小百合子のその考えは正鵠を得た。
漂う香りに目を輝かせる眷属のその様子は、まさにやる気十分。
これなら存分にその力を発揮してくれるはずだ。
「では眷属には接近戦を。わらわとエルフ殿は、その援護を……!」
いざ! と、発せられた小百合子の号。
その号を受ければ、まず動いたのは眷属だ。
未だ健在な木々に身を隠すかのように、素早く進む褐色の影。戦場の地形を活かしたその素早い動きを、今もエルフ達の矢に意識を向けられた猟書家は気付け無い。
だが、まだだ。確実に、眷属が一撃を見舞う為にも……!
「わらわ達も、仕掛けようぞ!」
取り出した長弓に矢を番え、放つ。
眷属の召喚に力を注いだ為か、異能の力を矢に込める余力は無いが……そうであっても、この距離を外す様な軟な鍛錬を小百合子は積んでいない。
鋭く放たれた矢は、猟書家の銃を支える右の腕へと吸い込まれ……。
『──ッ、チィ!!』
その手に突き刺さる寸での所で、弾かれた。
キッと矢の射手、小百合子をキツく睨む猟書家。向けられた明確な敵意に、思わず小百合子が息を飲んで。
……直後、その口の端がニヤリとした笑みを作った。
「──貰った、わぁっ!」
『何……くぁっ!?』
そう。猟書家が小百合子に意識を向けた、その瞬間。
眷属が猟書家の下に辿り着いたのを。小百合子の目は見たのだ。
猟書家の身体を貫かんと、突き入れられる眷属の細剣。その鋭い刃に、意識を逸していた猟書家の反応は僅かに遅れ……。
──ガッ、ギィッ!!
その脇腹を、細剣の剣先が……叩き、傷つけた。
刃が胴を貫く、その瞬間。猟書家は身体を捻り、剣の切っ先を逸して。間一髪の所で躱してみせたのだ。
『ぐ、ぅっ……!』
「胴を貫けた、つもりだったけど……!」
だが、流石に無傷とは行かなかったか。
猟書家の纏うメイド服。その右の脇腹は大きく切り裂かれ、剥き出しとなった硬質な肌にも罅が入っているのが見えるだろう。
悔しげな声を上げる眷属ではあるが……彼女の刃は、確かに手痛い一撃を猟書家に与えたのだ。
……敵の力は、強大だ。だがそれでも、戦いは猟兵の側に優位に進みつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
随分と忠誠心があるみたいだけど
私も世界が選んだ猟兵の一人として世界に報いたい
これ以上、豊かな森を、物言わぬ命を荒らさせないわ
🧝エルフさん達へ
先ずは命を守る行動を
ガトリングは最初に駆動音がするの
聡い耳で兆候を聴いて銃弾を回避してね
平面上に敵の死角は殆ど無い
鬱蒼の森の地形を活かして木陰に隠れ
視力に優れたエルフさんにベストな樹を教えて貰って木登り!
敵の後頭部の上あたりから『ラッコの石』を剛速球で投げ
奇襲を警戒して挙措が止まった隙にUCで花輪を掛ける
可愛いメイドさんには頭にちょこんと乗るくらいがいいかしら
燐光に触れた途端、武器が重く感じる筈
弓の上手なエルフさんは虚脱した契機に矢を
彼女を戒めてあげて!
●
『おのれ……お嬢より頂いた、この服を良くも──!』
服を裂かれ、確かな傷を負って。猟書家の態度が、変わる。
苛立ち止まりであった『チーフメイド・アレキサンドライト』のその瞳は、今や強い憤怒の光に輝いていた。
その強い憤りのままに、猟書家が手に携えた銃器を構える。
──ブゥゥゥン……。
まず鳴り響いたのは、銃器の駆動音。
不気味に低く響くその音は、ほんの一瞬。
──ズドドドドドドドッ!!
すぐさま駆動音は放たれる弾雨の轟音に上書きされる。
森を薙ぎ払わんと言わんばかりに唸りを上げるガトリング。その圧倒的な火力の前に斃れた者は……。
「──みんな、無事かしら?」
誰一人、居なかった。
銃弾を躱したニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)の声に、返ってきたのは無事を知らせるエルフ達の声。周囲を見渡せば、皆五体無事と言った様子であった。
……敵の持つ銃は、圧倒的な火力と制圧力が特徴の重火器である。非常に強力な火器であるが、幾つか欠点も存在する。
その欠点の一つが、騒音だ。特に発砲時の轟音はそれはもう凄まじいが……発砲直前の駆動音もまた、特徴的な物がある。
ニコリネはそんなガトリングの特徴を(特に、発砲直前の駆動音について)エルフ達に事前に伝えており、その鋭い聴覚で兆候を聞き分け回避行動を取るという策を同時に授けていたのだ。
(まずは、回避出来たけれど……)
皆の命を守る行動。その為の策は、まずは上手くいった。
だが圧倒的な制圧力を誇る敵である。死角も殆ど無いであろうし、木々を遮蔽物とするのは耐久力の面で少々心許ない所である。
……長時間の戦闘となれば、協力してくれるエルフ達に『万が一』が起こりかねないし。それに何より花を売る事を生業とするニコリネとしては、この森の木々をあたら傷つけるような真似はしたくはない。
出来るなら、短期決戦。それが叶わずとも、敵の力を削ぐ事が出来れば……。
「……そうだ! 誰か、登り易い樹を教えて!」
唐突なニコリネのその言葉に、偶然側にいたエルフが一瞬狼狽える。が、ニコリネの目に浮かぶ真剣な光を見れば即座に一つの樹を指し示す。
幹は程よく太く、ザラザラとした樹皮をしている。あの樹なら確かに、登り易いだろう。
「ありがとう!」
エルフに自慢のスマイルを浮かべて礼をして、駆け寄り手を掛け脚を掛け。ニコリネの身体が、するすると樹上へ登っていく。
そんなニコリネの行動に、猟書家は一瞬眉を顰めるが……先に鬱陶しいエルフ達を仕留める事を優先したのか。即座にニコリネの事を、意識の外へと放り出す。
……その選択が、この戦いの分かれ目であるとも知らずに。
(相手は随分と、忠誠心があるみたいだけど……)
樹上に昇り、目指す場所は猟書家の頭上。
そろりそろりと脚を動かしながら、ニコリネは思う。
ニコリネも、世界に選ばれた猟兵だ。オブリビオンの脅威に晒される世界の為にその力を振るい、報いたいという思いは誰にも負けぬ程強い。
その思いを貫く為にも。これ以上この豊かな森を、物言わぬ命を荒させる訳にはいかないのだ。
(──凍りついて息も出来ないほどに)
懐から取り出した石を胸に抱いて、想いを込めて。
樹上の上で器用にバランスを取りながら──大きく振り被って、投げた!
狙いは眼下の猟書家。今もエルフ達を狙いガトリングを唸らせる、邪悪なメイドさんだ。
どんな頑丈な貝であってもぐちゃぐちゃに粉砕する、強固極まりない『ラッコの石』が風を切って飛んでいって……。
──ガッ!
『痛ッ!?』
見事に、メイド服を纏う女の身体に当たる。
響いた音が鈍く響かぬのは、女の身体が硬質な物体で出来ているからであろうか。
ともあれ、見た目には特にダメージは無いように見える。事実、猟書家の身体に直接的なダメージは無かった。
……だが、それで良いのだ。
『巫山戯た真似を……! こんな石ころ、で……ぇッ!?』
直後、猟書家の様子に異変が生じる。
今まで軽々と構えていたガトリングを支えられなくなり、大きく身体をふらつかせたのだ。
『何故、こんな重く……!?』
銃を持ったままヨロヨロと蹌踉めき、近くの樹へと身体を預ける猟書家。その表情は何が起きたか判らぬと、狼狽しきりと言った状態である。
その異変の原因は、彼女の頭に小さく乗った燐光放つ花輪にあった。
【Kryptonite(クリプトナイト)】。ニコリネの振るう、ユーベルコードの一つである。
その効果は、攻撃が命中した相手を虚脱・弱体化させるという物であり……ニコリネはその力を、先程投じた石に篭めていたのだ。
……もし、猟書家がニコリネの動きに警戒心を向けていたら。エルフ達の援護に、意識を傾ける程の苛立ちを覚えていなかったら。こうまで見事に、この一撃が決まる事は無かっただろう。
「今よ、皆! 矢で彼女を戒めてあげて!」
だが現実は違う。ニコリネの力は敵の力を削ぎ落とし、大きく弱体化させる事に成功していた。
その上で、樹上からニコリネがエルフ達へと呼び掛ければ。弓が達者な者たちが、挙って矢を引き絞り……。
『くっ、あぁぁっ!?』
次から次へと猟書家の纏うメイド服を貫き、木の幹へと繋ぎ止め……その動きを、封じていく。
苦痛の悲鳴を上げる猟書家。力を大きく削がれた事で、戦況が大きく揺るぐ事は無いだろう。
ニコリネは決定的な仕事を、見事にこなしてみせたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
むむむー、次はどうしようかって悩んでたら、猟書家が現れた場所の近くにエルフの子が設置した罠がいっぱいあるらしい!
ようし、じゃあボクがそこまで誘導していっちゃうね♪
【ライオンライド】で呼び出した子ライオンくんに乗って足元を中心に攻撃するよ!足元への攻撃は腕で防御するのは難しいよね!
それでヒット&アウェイで攻撃しては離れながら、ライオンくんの巧みなステップでガトリングガンの攻撃を避けつつ目的の場所まで敵を「おびき寄せ」るぞ☆
エルフの女の子が設置した罠に猟書家が引っかかったらライオンくんの爪とボクのレイピアで渾身の一撃をお見舞だ!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
『ぐっ、うぅ……一度ならず、二度までも……ッ!!』
木の幹に身体を繋ぎ止めた矢を引き抜きながら、猟書家が呻く。
彼女が纏う衣服は既に穴だらけとなり、彼女自身も猟兵とエルフ達の巧みな連携の前に体力を激しく消耗し、銃器を支えとして立つのがやっと。
まさに心身ともに満身創痍といった様子であるが……手加減は不要と言わんばかりに、猟兵の攻勢は続く。
「いっくよーっ♪ ライオンくんっ!」
森に響いた甲高い声に視線を向ければ、目に飛び込むのは橙の髪と黄金の毛並みの子獅子。
喚び出したお友達である『ライオンくん』に跨った、ティエルの姿。深い森の中で一際目立つその姿があった。
「ボクたちがやっつけてやるぞーっ☆」
愛用のレイピアを引き抜いて、跨る子獅子の腹を脚でトンと叩けば。ティエルの意思を汲み取って、子獅子が地を疾駆する。
小柄なフェアリー種の中でも更に小柄なティエルが喚び出した相棒だ。人騎一体と化してなお、その動きは地を這うが如く低く、疾い。
『ぐっ、つぅ……!』
そんな小さな騎兵の纏わりつくかのような動きを受けて、『チーフメイド・アレキサンドライト』は防戦一方。
カウンターを試みようとその腕の色を変えつつ振るうが……膝下辺りを執拗に狙うティエルの動きに、消耗したその身では対応は難しい。
……尤も、仮に彼女の状態が万全だったとして。ティエルと子獅子のステップワークを捉えきれるかは怪しい所ではあるけれど。
『このっ! 鬱陶しい!!』
そんな状況に業を煮やしたか。銃器を構え、薙ぎ払うかのように猟書家が弾雨を放つ。
蹌踉めく身体で安定しない姿勢のまま放たれた盲撃ちだ。数々の厳しい戦いを潜り抜けてきたティエルが、今更そんな攻撃に怯む事など無いのだが……。
「わわっ! ライオンくんっ、一回撤退だよっ!」
どうしたことか。相棒の首を軽く叩いてティエルが敵から離れていって……またすぐに、レイピアを煌めかせて挑みかかる。
……そんな事が、都合数度。普通であれば、冷静であれば、ティエルの行動に違和感を覚えるはずだ。
だが、しかし。『チーフメイド・アレキサンドライト』は既に心身を激しく消耗している。冷静さを保つ余力など、残ってはいないのだ。
『えぇい、小煩い羽虫が……!』
故に、ティエルの挑発するようなその動きを見抜ける事など出来ず。
そして、それが故に。
ティエルが退く方向が、一定の方向で固定されていた事に。
そして自分が、その方向へ誘い込まれるように脚を進めている事に。
彼女は、気付けなかったのだ。
──ガギンッ!
『──っぐ!? あ、脚が!?』
突如足元から響いた、金属が響く様な硬質な音。そして同時に、鋭く、そして激しい激痛を感じた猟書家の表情が変わる。
視線を向ければ、自らの脚を挟み込む金属製の罠……トラバサミの存在が目に映る。
「ふふーんっ! ひっかかったねっ♪」
そんな敵の姿に、小さな胸をいっぱいに張るティエル。狙い通りと言わんばかりに、その表情はコレでもかというドヤ顔であった。
猟書家との戦いが始まった直後、ティエルはどう動くか悩んでいた。
そんなティエルに行動の方針を与えたのは、ティエルと共に行動していた少女エルフの存在であった。
年端もいかぬ年頃のエルフであったが、村の中では彼女は弓と罠の使い手として一目置かれる存在であり……その彼女が仕掛けた罠が近くにあることを教えて貰ったので、有効活用しようとティエルは頑張ってここまで誘導してきたのだ。
……そんなティエルの頑張りが今、こうして結実したのが目の前の光景なのである。
「これでもう動けないよねっ☆」
脚を戒められ苦痛に呻く猟書家。そんな動けぬ相手に向けて、とうっ! と子獅子から飛び立つティエル。
キラキラと輝く鱗粉を翅から撒き散らし、構えたレイピアを閃かせ。
「やああぁぁぁぁぁッ!!」
橙色の流星と化したティエルの剣の切っ先が、『チーフメイド・アレキサンドライト』のその身を穿つ!
『ぐっ、ッゥ──!?』
ティエルの細剣が貫いたのは、猟書家の右の腕。武器を保持するその手であった。
……胴体のど真ん中を狙ったが、猟書家が足掻くように身体を捻ったせいか。ティエルの狙いは、ほんの僅かに逸れてしまったらしい。
とは言え、だ。
『う、腕が……私の、腕がぁッ!!』
苦痛に叫ぶ両初夏のその言葉通り。ティエルの刃は敵の右腕を貫き、切り飛ばすに至っていた。
敵を仕留めるまでには至らなかったが、それでもあと一歩まで追い詰める程の傷を負わせる事が出来た。
再び手と手を打ち鳴らす、ティエルと少女エルフ。二人は決定的な仕事を果たしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
神咲・七十
アドリブ・連携お任せ
う~む、いきなりで驚きましたね。
えぇ、まぁ、頑張りますけどね
(エルフさん達に樹上から攻撃して貰って接近する隙を作ってもらい、大剣と尻尾の連帯攻撃をしながら、アレキサンドライトに触れて)
何をしたかですか?
すぐにわかりますよ。(お菓子もぐもぐ)
(UC『万花変生』の力でアレキサンドライトの触れた部分から取り付いた相手から力を奪っていく苔を生やす。それが徐々に全身に繁殖していき)
力出ませんか?
仮に毟り取っても繁殖力がすごいので取り切るのは難しいですよ。
(そんな状態のアレキサンドライトに隷属させる植物を植え付けて弱るまで戦っていき、出来る条件を満たしたら隷属させて取り込もうとして)
●
苦痛に叫ぶ、『チーフメイド・アレキサンドライト』。
纏う衣服は切り刻まれ、全身至る所は傷だらけ。脚は拷問具が如き罠に戒められ、右の腕は切り飛ばされて……。
最早いつ限界を迎え、躯の海へと消えてもおかしくない。そう思えるほどの、無残な姿であった。
「いきなりで驚きましたけど。こうなっては、型無しですね」
そんな猟書家の前に、静かに歩み出たのは七十だった。
瀕死の相手を前にしても未だ弓を構え警戒を露わとするエルフ達とは打って変わって、菓子をもぐもぐと頬張る七十のその姿に、緊張感も警戒心も無い。
だがその実、この場で誰よりも敵に対して警戒を抱いていたのは七十であった。今もその右の手は背の大剣の柄を掴み、腰から生える尾は油断なく猟書家の様子を伺っているのが、その何よりの証明であった。
「……さて、仕上げをさせていただきましょうか」
悔しげにこちらを見上げる猟書家に、反撃の予兆は無い。
そんな相手の様子をしっかりと確認し、菓子を摘んだ指を舐める七十。
そうしてそのままその指で、敵の眉間を一つ小突けば……。
──ゾワッ。ゾゾゾゾ……!
『ヒッ!? な、何を……!』
「何を、ですか? すぐにわかりますよ」
瞬間、猟書家の身体の芯に奔る怖気にも似た違和感。
動揺に声を震わせた猟書家。残った左腕で違和感の根本、額を拭えば。
『──苔? ぅ、ぁ……ッ?』
硬質な肌に付着していた苔に、眉を顰めて……直後、身体から力が抜けたように女の身体が地に崩れ落ちる。
何が起きたか判らない、というかのように目を白黒とさせる猟書家。そんな彼女に向けて……。
「力、出ませんか?」
七十の声は、常と変わらぬ声色であったが……どこか淡々とした、冷たい物であった。
【万花変生(バンカヘンジョウ)】。七十のユーベルコードの一つである。
その効果は、敗北や屈服と言った感情を覚えた対象を隷属へと導く力を秘めた植物を植え付けるという物。
……つまりこの苔は、その力で生み出された存在であり……猟書家の身体を、魂を。隷属させ取り込む為に、力を吸い上げながら繁殖していく存在なのだ。
『こ、こんなもの! ……な、なんで……!』
「無駄ですよ。これ、繁殖力がすごいので取り切るのは難しいですから」
淡々と告げられた説明に、苔を毟り取ろうと猟書家は残る腕を動かすが……毟った先から増殖する苔に、その表情に焦りが滲む。その焦りは更に冷静さを失わさせて、更に強い焦りを生んで。
『くっ、ぅぅ……!』
遂にその力を失って。猟書家のその全身が、苔に覆われる。
最早指先の一本も動かない、といったその様子を見れば。
「……さて、大人しく隷属する気になりましたか?」
心は折れた、と見て。しゃがみこんで、猟書家と目を合わせる七十。
……確かに、相手は折れた。それは間違い無いだろう。これが並のオブリビオンであれば、七十の誘いに首を振り、この苦しみから逃れようと考えるだろう。
だが、しかし。この敵は、並の敵ではない。幹部猟書家にして、異世界のオウガ・フォーミュラの腹心とも言える程の力を持つ存在なのだ。
『私が、お嬢以外に傅くと? 笑えない冗談ですね』
それほどの存在だ。当然、その格という物は他のオブリビオンとは別格で。
その上に、主に対する篤い忠誠心を持つ存在であるのだから……七十の誘いに唾を吐き捨て、その直後。
『そんな事をするのなら──ッ!』
グッと、何かを噛み切る様に猟書家がその顎に力を入れれば。瞬間、口から噴き出したのは鮮やかな液体。そうしてそのまま、グタリと崩れ落ち……その存在を、『躯の海』へと還していく。
……どうやら、舌を噛み切って自決を選んだらしい。
七十としては残念な結果であるが。二君に仕えぬという姿勢をその生命で示すとは、見事な忠誠心の発露と称えるべきか。
ともあれ。こうして『エルフの森』を狙った猟書家は討たれたのであった。
その後、森の危機を救った猟兵達はエルフの村落で歓待を受け。
もし今後、自分たちと森の主たる『聖なる木』の力が必要となればいつでもすぐに協力しようという誓いも受ける事になる。
彼らの力が、今後の情勢でどう活きるかは判らないが……きっと大きな力となってくれるはずだ。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年12月25日
宿敵
『チーフメイド・アレキサンドライト』
を撃破!
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