●予知
嘗ての隆興と現在の衰亡を示す標。
聳え立つ高層建築の残骸の一つ。
それを取り囲むように集った、数多の略奪者たち。
篝火揺らぐドラム缶の傍ら、肉や酒を貪っていた彼らは瓦礫の小山の頂に視線を注ぐ。
其処には胡散臭いスーツ姿の、ギラついた眼の男が一人。
「諸君! 存分に英気を養ってくれたまえ!」
そうする必要などないと知るからこそ、男は薄ら笑いを浮かべながら快弁を振るう。
「此度の人間狩りは、この都を統べる“ヴォーテックス一族”から直々に命じられたもの! 故に生半可な成果では許されない! はためく“髑髏と渦巻“の紋章に恥じぬ、暴虐と略奪の限りを尽くすのだ! そして、王の中の王へと捧げるに相応しき供物を!」
自らに酔いしれる男が片手を掲げれば、グラスを満たす鮮紅色が雄叫びに揺れた。
――悪徳の都、ヴォーテックス・シティ。
瓦礫と巨骨と巌窟が複雑に入り交じる、狂気の超巨大都市。
悍ましい獣共が解き放たれるまでは、あと僅か。
●詳説
「……と、言うことで。アポカリプスヘルで健気に生きる幾許かの人々の生命が、正しく今、危機に晒されようとしている訳ですが」
物々しい予知の光景を語り終えると、テュティエティス・イルニスティア(искатель・f05353)は楽観的な声音で言葉を継いだ。
「こうして事前に捉えられたのですから、状況は一転したと言って良いでしょう。これはピンチでなくチャンスです。略奪者(レイダー)たちが移動に用いる乗り物――所謂“人狩りバギー”だとか“残虐戦車”などを悉く破壊してしまうのです。足がなければ、略奪遠征どころではありませんからね」
その為の道具は用意した――と、テュティエティスは“それら”を猟兵に見せつける。
「爆破初心者でも大丈夫、安心安全取り扱い簡単な破壊工作用の爆弾です。略奪者たちの乗り物に取り付けておくだけで、あら不思議。アポカリプスヘルの荒んだ大地には、燃え盛る炎の大輪が咲き乱れることでしょう」
そうして人狩りの目論見を盛大に爆破すれば、後は離脱するだけだが――。
「指揮官と思しき男や、異変に気付いてヴォーテックス・シティのあちこちから駆けつける援軍など、幾つかの障害が予想されます。それらを倒し、掻い潜ってシティの外へと出るためには……略奪者への偽装も兼ねて、此方も足を用意しておくべきでしょうか」
無論、そうしたものを使わずに、猟兵としての力のみで全てをこなす事も可能だろう。支給される爆弾を仕掛け、爆発と破壊を巻き起こし、無事にシティから脱出さえ出来れば、それ以外の部分は全て作戦に臨む猟兵次第だ。
「――では、此方をどうぞ」
テュティエティスは爆弾を手渡すと、敵地への道を開いた。
天枷由良
●シナリオ構成
1章:冒険『人狩りマシンに爆弾を』
人間狩りに参加する略奪者たちの集合場所へと潜入し、人狩りバギーや残虐戦車などのマシンに爆弾を仕掛けていきます。
全く発見されずに行動するのは至難の業ですが、略奪者たちは前祝いで浮かれているので、適当に話を合わせてあげれば誤魔化せます。
何となく悪そうな言動をしつつ、事前に支給されている爆弾(時限式で後々一斉に炸裂します)を、サンタクロースのごとく密やかにプレゼントして回りましょう。
2章:ボス戦『ゾンビジャイアント』
爆弾が起爆して一帯が炎に包まれる中で、作戦を台無しにされた敵指揮官が悍ましい姿と本性を曝け出し、怒り狂って襲いかかってきます。
戦場一帯が混乱している内に、指揮官を倒してしまいましょう。
3章:集団戦『レイダー』
爆発を感知した略奪者たちがシティ中から向かってきます。
変装のついでに用意したマシンや、戦場に残っている無事なマシンなどに乗り込み、執拗に追ってくる敵群を退けつつ、街から脱出しましょう。
空飛んだ方が早えーし! みたいなタイプの方は、勿論そうして頂いて構いません。追撃を凌いで脱出出来れば、何であれ成功です。
よろしければマスターページ等もご確認ください。
ご参加、お待ちしております。
第1章 冒険
『人狩りマシンに爆弾を』
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POW : 喧嘩騒ぎを起こすなどして注意をそらしている隙に、他の誰かに爆弾を仕掛けてもらう
SPD : レイダー達に見つからないように隠密行動を行い、秘密裏に爆弾を仕掛ける
WIZ : 怪しまれないように他のレイダー達から情報を得て、効率的に爆弾を仕掛ける
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ドラム缶から立ち昇る炎が煌々と照らす空間。
大型商業施設の駐車場のような其処には、略奪者の愛車たちがずらりと並ぶ。衝角のごとき突起を付けた二輪車や、回転鋸が唸るバギー、まるで針鼠のように無数の棘を生やす戦車――。
乱雑に留め置かれたそれらの合間で、略奪者たちが極悪な話に花を咲かせている。やれ無力な者をいたぶるのが一番楽しいだとか、女子供の悲鳴は最高だとか、せこせこと貯めた食料などを奪い去ってやった時の、絶望に打ちひしがれる様が堪らないとか……。
ともすれば今すぐに殴りかかってもやりたくなるところ、しかし猟兵たちはぐっと我慢して使命を果たさなければならない。怒りを抱くのなら、それは手にした爆弾へと託そう。
……いや、或いはわざと騒ぎを起こして、注意を引きつけるのも一つの策か。
何れにせよ、略奪者たちの愛車がド派手な最期を迎えられるように努めよう。
キャロライン・メイ
「バギー?・・・ああ、あの騒々しい機械のことか。」
キャロラインは、かつて、なんどかこの世界に来た時のことを思い出しながら、つぶやく。
「なら、私は陽動の方が向いてそうだ。」
爆弾など扱ったこともない。こっちの方が自分向きだろう。
普通に切り込んでもいいが、その場合、そのバギーとやらに乗って敵が集まってしまう。(私はそれでもかまわないが)
・・・火だな。
ある程度の時間で消し止められるくらいの小火騒ぎでいい。わずかな時間、バギーから意識を話すことができれば、猟兵たちならなんとかするだろう。
町のあちこちに火を起こす。こんな連中だ、自分に火の粉が飛んでこなければ動かないかもしれないからな。
阿紫花・スミコ
「ようするに、奴らのバギーやら何やらに爆弾をしかけてくればいいんだろ?」
どこからともなく取り出したスイーツをかじりながらスミコがつぶやく。
「まあ、まかしといて。こういうのは得意なんだ。」
自作ガジェット「アクアカーモ」を起動する。
アクアカーモ・・・!
ガジェットから噴出した特殊溶液の霧がボクの体を包み、光の屈折を変化させ、一定時間ボクの身を隠す。
素早く移動しながら、敵のバギー、戦車?、あらゆる脅威となる機動兵器に爆弾を取り付けていく。・・・できるだけ、見えづらい場所に。
「にっひひ。あいつら驚くぞー。」
いたずらっぽい笑みが霧の中でこぼれる。
(UC、迷彩、ものを隠す、メカニック、運搬)
●アイスドール&ガジェットガール
「――ようするに、だ」
何処からか特製激甘ケーキを取り出して齧ると、阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)は今日すべき事を一行に纏めた。
「奴らのバギーやら何やらに爆弾をしかけてくればいいんだろ?」
「バギー? ……ああ、あの騒々しい機械のことか」
蛮族共の酒宴を遠巻きにして眺めつつ、キャロライン・メイ(アイスドール・f23360)が言葉を重ねる。
手繰り寄せた記憶――このアポカリプスヘルを訪れた幾度かを思い起こせば、名称と実像は合致した。
それらも踏まえて、自らに役を割り振るなら。
「……私は陽動の方が向いていそうだ」
此処へ至る際に預けられたものは、どうにも上手く扱えそうにない。
やはり己が手で掴むべきは唯一つ。生き血啜る魔剣。漆黒の刃。
「それの始末は任せる」
「まかしといて。こういうのは得意なんだ」
軽く放られた爆弾を受け止めて、ニヤリと笑うスミコの姿は――ガジェットから忽然と噴出する霧の中、溶けるように消えていった。
そうして語るべき相手を失うと、キャロラインもすぐさま動き出す。
(「このまま切り込んでも構わないのだがな……」)
酔っぱらい同士の喧嘩程度ならともかく。猟兵が息巻いて殴り込めば当然、宴は戦に早変わり。略奪者たちは自慢の愛車に乗って大いに暴れまわるだろう。
そればかりか、街のあちこちから異変を察知した仲間たちも集まってくるはずだ。
無論、其処までを含めての“構わない”であるのだが――真に為すべきを忘れて突撃するほどキャロラインは愚かではない。故に、鉄砲玉のような作戦は却下するとして。
(「――火だな」)
次点の案は捻り出すまでもなかった。
広大なヴォーテックス・シティの全てを焼き払うような大災害は必要ない。へべれけの略奪者たちが援軍など求めなくても片付けられる程度の、しかし見て見ぬ振りで宴席に留まっているのは躊躇うくらいの小火騒ぎ。それならば、容易く仕掛けられる。
それで略奪者たちが愛車から意識を逸らすのは、恐らく少しの間だけ。
だが、充分なはずだ。オブリビオンが覗かせた小さなひび割れのごとき隙を、決定的な傷にまで抉じ開けてしまうのが猟兵という存在であるのだから。
(「貴様らとて、自分に火の粉が飛んでくるかもしれないと思えば……さすがに動くだろう?」)
杯を手に盛り上がる略奪者たちの動揺を期待しつつ、いよいよ騒乱の火種を撒く。
キャロラインは――しかし、氷のように冷たい表情を崩さない。
その姿を確かめられない程度には離れたところで、スミコはまず一つめの爆弾をセットすると大型四輪の下から這い出た。
どんちゃん騒ぎの最中、いきなり車の下に潜り込む略奪者などおるまい。しかし、未だ充分な猶予を示す表示盤のカウントがゼロになった時、この四輪の持ち主は奇行に及ばなかった事を後悔するのだ。
(「にっひひ。あいつら驚くぞー」)
やたら刺々しい装飾を纏うモヒカン頭やらスキンヘッドやらの厳つい男たちが、盛大な爆炎の中で見せる間抜け面を想像すれば、早くも笑みが溢れる。
だが、そんなスミコの存在は誰にも咎められはしない。自作ガジェット“アクアカーモ”が噴く特殊溶液の霧に包まれた彼女の身体は、あらゆる方向から来る光を折り曲げる。
つまり――見えないのだ。足音や体温までを誤魔化せはしないが、果たして、のべつ幕なしに悪辣な話をするばかりの酔っぱらい共が、それらを感じ取るはずもなく。
にわかに毛色の違うざわめきが起こり始めた彼方の一群も、小火に気を取られるばかり。
(「ちょろいちょろい」)
不用心にも開け放たれたままだった戦車のハッチに爆弾を放り込んで、バギーの燃料タンクの下にも隠すようにまた一つ。
からくり人形やガジェットなどと比べれば、略奪者たちのマシンなど遥かに簡単な構造だろう。その脆い部分、最も盛大な爆発を呼びそうな箇所をメカニックとしての素養で見抜きつつ、スミコは手際よく仕掛けを施していく。
それらが炸裂する瞬間を想って、また悪戯っぽい笑みを浮かべながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
まるで頽廃の都が蘇ったかのような光景ですね……
ともあれ今は雌伏の時
あらかじめバニーに変身(狂乱の斬り裂き兎)し、コンパニオンとして潜入
他の方が爆弾を仕掛け易くなるよう、お酒を給仕してレイダーの気を惹いておく(存在感・誘惑・おびき寄せ)
もちろん、不埒な接触は軽やかな身のこなしで躱しますが
悪党を歓待するなど業腹ですが、油断していても暴力で身を立てている者たち
ここでひとり激発して斬りかかっても、倒せるのはせいぜい10人程度でしょうか
笑顔の裏で殺意を研ぎ澄ませておきましょう
給仕をしながら【聞き耳】を立て、走行ルートを探る
先頭を走る車両に爆弾を仕掛け、後続車を効率よく巻き込むように
●オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)
(「まるで頽廃の都が蘇ったかのような光景ですね……」)
人混みに交じり、墓標のごとく聳え立つ多層建築の廃墟を見上げて想う。
周囲の騒々しさも全て過去からの侵略者――オブリビオンのレイダーたちによるものであれば、正しく此処はオリヴィアが感じた通り、存在そのものが摂理に悖る不健全の塊。
今すぐにでも大鎌で死を刻み、或いは悪穿つ黄金の穂先で悉く屠って然るべきだが。
(「今はまだ、雌伏の時です」)
内なるものは柔らかな笑みの下へと秘して、槍や鎌の代わりに掴むのは銀の丸盆。
そして、くるりと踵を返すオリヴィアは、騎士でも狩人でも修道女でもなく。
俗悪な酒宴の中を彷徨くに相応しい――所謂、バニーガールの姿をしていた。
「おいおい! 今日の大将は随分気前がいいじゃあねぇか! あんな上玉を連れてきてるなんてよぉ!」
下劣な欲望を隠そうともしない略奪者の一人が言う。
その視線が豊かな胸に注がれているのは丸わかり。見るに堪えない汚らしい舌舐めずりは、女を欲の捌け口としか考えていない低俗な思考の証明。
けれども、オリヴィアはまるで意に介さず。
むしろ盆に乗せた杯より、己自身を見せつけるかのようにして近づいていく。
荒くれ者たちの気を惹いておけば、他の猟兵が“仕掛けやすく”なるに違いないからだ。
「お酒のおかわりはいかが?」
「……へへ、それもいいけどよぉ」
などと答えつつ伸ばされた腕は、乙女の柔肌でなく空を掴んだ。
途端、不満げな略奪者が向けてきた鋭い視線には、これ以上無い笑顔を返して。
「大仕事の前でしょう?」
何とも意味ありげに囁けば、悪漢は舌打ちしつつも引き下がった。
ご馳走にありつけないもどかしさを堪えたのも、表情をまた下卑た笑みに変えたのも、オリヴィアの言葉を『略奪遠征で成果を上げてきたなら、その時は……』などと都合よく解釈したからだろう。
まったく――そう、まったくもって不愉快極まりない。実に業腹だ。オリヴィアの肉体も精神も、野蛮で悪辣極まりない略奪者たちを悦ばせる為に存在しているのではないのだから。
だが、怒りを激発させて斬りかかったところで得られるものは少ない。此処は敵地の真っ只中で、ずらりと並んだ阿呆面は“暴力”で身を立てている者たち。蛮勇振るって十も首を刎ねた頃には詰んでしまうだろうとは、オリヴィア自身の見立てだ。
それを理解していながら、刹那の鬱憤晴らしで何もかもを台無しにしてしまうようなら……こんなところでバニーガールになどなっていない。
「それじゃあ、お兄さん。頑張ってきてくださいね」
入念に取り繕った妖艶の下、オリヴィアはウインクを置き土産にして別の集団へと向かう。
そうして我慢と給仕を続けていれば、相応の成果も得られるというもの。
聞き流すしかない戯言ばかりの中、僅か届いた声に耳をそばだてれば――拾えたのは“特攻隊長”なる言葉。
その意味するところを確かめるべく近づいて、愛想と酒を振り撒くオリヴィアの色香に、略奪者たちは雁首揃えて堕ちていく。
「――だからよぉ、こいつのチームが略奪遠征の先陣を切るってわけよ!」
「まあ! それは名誉なことですね!」
なんて適当な相槌を打つだけで気を良くしてくれるのならば、舐め回すような視線を浴びるより遥かにマシだ。
さらに二、三と言葉を重ねて、聞き出した厳つい戦車の砲身には密かにプレゼントを滑り込ませておく。
後は、略奪者たちが意気揚々と出立の準備を始めるまで辛抱するばかりだが。
略奪軍の先頭を行く車両の爆発――悪漢共の言葉を借りれば“特攻隊長”の盛大な爆死と、それに巻き込まれる間抜け共を想像すれば、四方からの不快感も幾分、薄れたような気がした。
大成功
🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◆心情
破壊工作…と言うわけですか
偶にはこう言った趣向も悪くありません
◆行動
【聞き耳】を立て、成るべく略奪者達に出会わ無い様に注意
可能な限り【目立たない】様に立ち回ります
さて…
万が一に備え破落戸を擬態するのでしたか?
では【優しさ】を込めて【恫喝】する…
そんな形で【恐怖を与える】様な悪役を演じるとしましょう
敵対者に死を与え、健気にも反抗して来た相手は周囲諸共蹂躙する…
其れ自体は別に唾棄すべき行為ではありません
必要があれば躊躇わず実行しましょう
(尤も、積極的に行う必要もありませんが…)
さて…
注意が逸れた所で【罠使い】の面目躍如です
支給された爆弾を上手く配置して少しでも多くの車両を巻き込むとしましょう
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
僅かな高揚と共に踏み込めば、悪漢たちがにわかにざわめく。
己の風貌――ではなく、酒宴の端々で起きている小さな混乱のせいなのだとは、誰に問わずとも耳に飛び込んできた。
恐らくは他の猟兵が何某か仕掛けたからだろう。破壊工作を円滑に進める為の工作、という訳だ。なかなかどうして、仕事を理解っている者もいるらしい。
(「この状況、有益に使わせて頂くとしましょう」)
略奪者たちの視線、言葉、動き――それらを余すところなく拾い上げて、露見という可能性の少ない方へと歩んでいく。
その姿は異質かつ異様。然れど、略奪者たちの目には留まらない。
ともすれば奇跡のような行軍は、現状を形成する様々な要素から導き出した結果。
とはいえ、やはり有象無象の略奪者と絶奈は違う。
その差異を不審と感じ取り、疑念を払うべく立ち塞がる者が居なかった訳ではない。
「……見ねぇ面だな。あんた、何処のチームのもんだ?」
熱気からは少し離れたところ。一際大柄な男が正面から問えば、それに呼応して幾人かが囲いを作る。
答え次第では叩きのめすつもり……という訳だ。
実に解りやすい。何一つ言葉を返さなければ、次にどう出るか。それさえも手に取るように解る。
「おい、何か言ったらどうなんだ?」
大男が銃を抜いて詰め寄り、下っ端共もじりじりと包囲を狭めていく。
端から見れば絶体絶命の窮地。大ピンチ。
けれど、絶奈は微かに俯いたまま微笑み、子に語りかける母のような声音で告げる。
「――問えば全てを知られるとでも?」
漣立つような囁き。ただそれだけで、堪えきれない一人が本能に従った。
足を止めるばかりか、程なく逆行を始めたのだ。今すぐにでもこの場から逃れたいと、眼前の何者かから離れたいと、そう言わんばかりに。
そうして起こった小さな綻びが、堤を崩す。左右と背後からの圧力は僅かに遠ざかり、ただ一人、相対する大男だけが怒りに腕を震わせる。
「舐めた口利いてくれるじゃあねぇか。テメェが何者でも構いやしねぇが、この俺にふざけた態度を取ったツケは払ってもらうぜ……!」
大男は激情に任せて銃口を向け、そして――。
そして。
子分たちが見守る最中、突如として前のめりに倒れた。
への字に折れた身体がゆっくりと大地に沈んでいく。そうして完全に横たわった大男の死体を前に、理解が及ばない下っ端一同は只々立ち尽くして。
「……ツケがどうのなどと口走っていましたが。親から取り立てられない分は、やはり子に求めるべきでしょうか?」
絶奈が淡々と宣った瞬間、半狂乱の状態で次々と殴りかかってくる。
理解し難い恐怖との接触が、オブリビオンにも常人のような混乱を齎す事があるのか――などと思いながら、得物で一薙ぎしてやれば。健気にも神に抗おうとした荒くれ者たちは、次々に大男の後を追った。
途端、辺りには静けさが返る。彼方で大盛り上がりの略奪者たちは、宴席の外れで起きた惨劇になど気づいてすらいないだろう。
(「……さて」)
必要に迫られたが故、極めて直接的な武力を行使したが、しかし。
それが良い結末を迎えたのは、敵がごく少数かつ宴の中心に遠い場所での出来事だったから。
より大きな騒ぎとなれば、本来の目的を成し遂げるのも難しくなるだろう。それは絶奈とて本意ではない。
(「此処からは“罠使い”らしくいきましょうか」)
自前の武装よりは遥かに簡素な作りの爆弾。着々と過ぎゆく時を示すそれを、絶奈は乱雑に駐められた様々なマシンの間に隠していく。
それもまた秩序や法則に欠けた配置のようでいて――より多くを葬る為、冷酷に計算し尽くされた結果なのだとは、やはり略奪者たちは知る由もない。
成功
🔵🔵🔴
神宮時・蒼
…なんとまあ…。…悪漢を、絵に、描いたような…。
…兎に角、時間が、あまり、ありません、ね。…急ぎ、行動、しましょう。
【SPD】
「忍び足」と「第六感」で、進めるところまで進みましょう
見つからなければ御の字、見つかったら、その時はその時で。
怪しまれているようなら、狐花恩寵ノ陣で麻痺毒に侵して動きを止めてしまいましょう
逆に、怪しまれていないなら、適当に話を合わせます
何故こんなところにいるのか、という問いがあれば、車両の様子を見ておこうかと思って、とそれっぽい事を伝えます
爆弾が設置出来たら、すみやかに撤退行動に移りましょう
…こういうのを、汚い、花火を、言います、ので…?
●神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)
攻撃的な服装。前衛的な装飾。退廃的な頭髪。刺激的な言動。
(「……なんと、まあ……」)
これぞ、絵に描いたような悪漢。
あまりにも典型すぎる敵群の姿に、蒼は感嘆にも似た吐息を漏らした。
そのまま遠間から見守りつつ、十秒経ち、三十秒経ち――。
(「……ああ、いけません、ね」)
悠長にしていられないのは、預かった爆弾の表示盤が示している。
悪漢観察日記の作成でなく車両爆破が目的ならば、蒼も素早く密やかに行動しなければならない。
それを成すに有用なのは、やはり“忍び足”だろう。
気づかれぬようにと思うなら、足音を忍ばせて進むなど基本中の基本。
さらに加えるとすれば、叩いた石橋が妙な音を返してきたなら決して渡らない事。
より平易に言えば怪しい/危ないと感じたら退くべきなのだ。
たとえ、その根拠が“己の直感”しかなくとも。
(「あとは……見咎められさえ、しなければ……」)
などと思った矢先、出会してしまうのだから運命も意地が悪い。
素知らぬ顔で通り過ぎようとすれば、太く厳つい腕が行く手を遮る。
「……なに、か?」
やむなく発した言葉には下卑た笑い声が返った。
蒼は猟兵であり、永い年月の果てに肉体を得た器物、即ちヤドリガミである。
しかし、略奪者から見れば――ただ儚げで、か弱い雰囲気の少女。
絶好の獲物という訳だ。
「嬢ちゃん、どっから逃げてきたんだァ? 悪い子だねェ」
蒼を明らかに格下と定めて、略奪者が間合いを詰める。
それが人の姿をしたオブリビオンであるとはいえ、軽度の人間不信を患う蒼がどのように感じたかは語るまでもないだろう。
「悪い子にはお仕置きしなきゃねェ――あがっ!?」
両の手をわしわしと動かしながら迫る略奪者が、短い悲鳴を上げて突っ伏した。
じとりと拒絶の視線を向ける蒼の足元には、杖で描いた陣が一つ。
其処から逆上るように放たれた朱い花弁の毒が、略奪者から自由を奪い去ったのだ。
これで一安心――と、そうは問屋が卸さない。素っ頓狂な声を耳聡くも聞きつけた略奪者が一人、二人……雨後の筍とまでは言わずとも、ぽつりぽつりと湧いてくる。
「何してんだぁ? お前ら」
ついに一人が口を開けば、蒼は傍らのバギーを叩き、努めて平静を装いながら答えた。
「車両の様子を、見ておこうかと、思いまし、て……」
実にそれらしい物言いだが、しかし苦しい言い訳のような気もする。
ともすればもう一度、術を用いて切り抜けるしかないか――と、そう思いかけたところで。
蒼に問いかけた略奪者はニヤリと笑い、酒臭い息を吐いて言った。
「ははーん。あんたの車から、そこに寝てるボケナスが何か盗もうとしてたんだな? そんで返り討ちにしてやったと」
「……ええ、そのような、ところ、です」
「ガハハ! 見かけによらずやるねぇ! ……ま、自業自得ってやつだぁな。そんな阿呆は転がしたままにしとけや。それより食って飲んで、気合い入れとかねえと仕事がはかどらねぇぜ!」
「……そうです、ね」
訝しみながら返す蒼に、荒くれは手を振ると千鳥足で離れていく。
――間抜けで助かった。
(「これ以上、絡まれる、前に……」)
速やかに爆弾を置いて、場を離れよう。
蒼は今しがた自分の物と偽ったバギーに仕掛けを施すと、宴席から遠ざかっていく。
成功
🔵🔵🔴
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
ニコリネのねーさんだきゃズイブンと気合入った格好しましてからに
どんだけ肩からトゲ生やしたかったんスか
・ニコリネの運転の助手席に同乗し現場へエントリー
・ニコリネが注目を集め始める傍ら【ビーストドライブⅡ】発動、ちっちゃなブチ猫に変化(化術)し場を離れる
・【野生の勘】でルートにアタリを付けつつ、狭所通過の能力の使用も含め建造物の隙間等を縫いパパッと移動
・咥えて運ぶ爆弾をデカめの乗用機械の燃料系付近にセットして、ハイ破壊工作完了
ンじゃテキトーに退散するとしましょっかや
どれ、ニコリネのねーさんの方は、と――
……スゲエ違和感なくコミュニケーション取ってますわな
なんスかあのレイダー系女子
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
事前に略奪者の嗜好を情報収集し
愛車Floral Fallalを彼等好みに改造する
両側に鋸刃をギャンギャン回転させた車で乗り込み
助手席の猟団長(f04631)の降車後、爆音で注目を集める
運転席から出て来た私の衣装も世紀末に
肩にトゲトゲ、ギラギラのスタッズベルト、謎の頭蓋骨をアクセに
悪徳の都(シティ)から来たイケてる女を演出
女だからってナメられちゃいけないわ
趣味の悪い車ばかりね
アタシの『魔破(マッハ)★轟一郎』に敵う男前はいるかしら?
と煽りつつ車を見て回る
あら暴力的で退廃的で素敵じゃない
とか何とか褒めながらこっそり爆弾をセット
略奪に勤しむイイ子ちゃん達にX'masの贈物をあげるわ
●ワイルドハント
潜入破壊工作という作戦の性質からして、戦いは既に始まっているも同然。
現地に飛び込んでからあれこれと考えるのでは遅いのだ。事前に得られる情報を全て活用し、入念な準備を行ったものこそが、最大限の成果と己の明日を両取りするに相応しい勝者となれる。
果たして、宴席に乗り込んだ彼らはその資格を得ていただろう。
唸るエンジン。滑るタイヤ。巧みなシフトチェンジと踊るようなペダルワーク。
猛烈なドリフトをぶちかますそれが四駆の移動販売車と知れば、走り屋の一面もある略奪者たちはさらに驚愕したに違いないが――彼らがまず認識したのは、その暴れ馬の両サイドに生えたえげつない鋸刃。
得物を求めてギャンギャンと吼えるそれに気を取られていては、助手席から飛び出した小さな毛玉など目に入らない。まして、砂煙を撒き散らしながらようやっと止まったモンスターが不機嫌そうな爆音を響き渡らせるものだから、略奪者たちの興味はその操縦者にばかり注がれる。
宴もたけなわというところ、遅れてきたそれは如何なる強者なのか。
厳つい男たちが固唾を呑んで見守る中、ついにドアが開いて――まずスラリと伸びた足が覗く。
「女だ……」
誰に向けるでもない呟きを篝火の爆ぜる音が掻き消せば、いよいよ四駆から姿を現したのは。
靡くブロンド。鋭いサングラス。刺々しい肩アーマー。ギラギラなスタッズベルト。そして極め付きのアクセサリー、謎の頭蓋骨!
典型的かつ前衛的、世紀末の支配者に相応しき風貌の彼女こそ、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)!
(「いやどんだけ力入れてんスか。そんなに肩からトゲ生やしたかったんスか」)
混沌に飲まれた酒宴の端で、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)だけは唯一人、冷静なツッコミを入れる。
しかし、今の彼は獣人の形でなく、黒地に白斑の小さな猫。あの助手席から飛び出した塊だ。零した言葉は胸中に留まって誰にも届かず、また届かせてはならないのだと彼も理解していた。
(「ニコリネのねーさんがやらかし……じゃなくて、ブチかましてる間にちゃちゃっと済ませちまいやスか」)
気合が漲りすぎている女傑から目を逸らすと、物九郎も自身の為すべきを為すべく動き出す。目の前に転がしていた爆弾をひょいと咥え上げ、無秩序に駐められた単車やらバギーやらの合間をするすると抜けて。
目指すは――とりあえずデカめの獲物。
(「……あの辺でいいっスね」)
つい先程まで乗り合わせていた暴走車の何倍あろうかという巨大戦車を認めると、物九郎はその下に潜り込んでいく。
(「これがオブリビオンのだろうと、作りは大して変わらんでしょうや」)
戦車ならば当然、無限軌道があって、砲身があって、装甲があって――そして、燃料タンクがある。
それを鼻先に纏わりつくような油の臭いでちょいと嗅ぎ分け、当たりをつけたら爆弾をぺたり。お仕事終了。
(「ンじゃ、テキトーに退散するとしましょっかや」)
ニコリネの車には戻れそうもないが、爆心地からは離れておかねばならない。
変わらず軽い身のこなしで悪漢たちの愛機の隙間を縫うように抜けると、物九郎はひと気の感じられない瓦礫に登って彼方を見やった。
(「さて、ニコリネのねーさんは――」)
「……趣味の悪い車ばかりね」
徐にサングラスを外して言うと、それらの持ち主たちをぐるりと一瞥していく。
ニコリネは自身がされているように、略奪者たちを値踏みしたのだ。此処でナメられてはいけない。鼠だと思われてはいけない。あくまでも獅子やら豹やら、狩る側に立つ者なのだと思わせておかなければならない。
その為には悪徳の都に相応しい“イケてる女”を装わなければ。
何、案ずる事はないだろう。念入りな準備をしてきたのだ。花の香り芳しい愛車“Floral Fallal”も、今日ばかりは残虐戦車とタメを張る極悪非道のマシーン。
そのボンネットを艶やかな手付きで撫でて、ニコリネは宣う。
「アタシの『魔破(マッハ)★轟一郎』に敵う男前はいるかしら?」
「魔破」
「轟一郎」
鸚鵡返しの後に広がるざわめき。明らかな困惑の中で、しかしニコリネだけは満足げに微笑むと『魔破★轟一郎』から離れ、手近なところから略奪者たちの愛車を見て回る。
「……あら、これはなかなか暴力的で退廃的で……素敵じゃない」
「は、はぁ……」
果たして、未だ反響する『魔破★轟一郎』の名付け親とセンスが合致するのは喜ぶべきか否か。
引きつった笑みで答える持ち主は――そうして余計な事を考えたせいで、愛車の下に転がされたクリスマスプレゼントには気づかず。
ニコリネの度肝を抜く登場やドラテクに魅せられた一部が杯を手に寄ってくれば、もはや何某かの疑問を抱くような余地などなくなってしまった。
「姐さん、中々いい腕してるみてぇだな」
「キヒヒ、そいつで何人轢き殺して、何人の首を刎ねてきたんだァ?」
「景気づけに一杯やっとけよ。今回の略奪、ヘマこくわけには行かねぇからな」
「ええ、その通りね。でもお酒に頼るようじゃ、まだまだ青いんじゃないかしら?」
ごく自然に会話をこなしてグラスを取ると、それを地面に叩きつける。
大柄な荒くれ共に負けないニコリネの振る舞いに、略奪者たちから歓声が上がる。
(「……なんスかあのレイダー系女子」)
違和感がなさすぎる。というかもうすでに派閥を作りかけている気がする。
すっかり荒くれの群れに順応したニコリネを、物九郎は遠巻きに眺める他なかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ゾンビジャイアント』
|
POW : ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD : ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「――諸君! そろそろ出立の時間だ!」
瓦礫の山の頂に、再びスーツ姿の男が現れた。
荒くれ者たちは酒を飲み干し、各々の愛車へと向かう。
程なく無数のエンジン音が響き始めて、それを満足気に眺める男は腕を掲げると叫んだ。
「では行こうか! 我らがヴォー――!!」
ヴォーテックス一族の為に。
決め台詞として温めていたであろう言葉が、突如起きた大爆発に掻き消される。
人狩りバギーに残虐戦車。その他、数多の車両と略奪者が次々に炎に飲まれていく。
猟兵たちの仕掛けた爆弾が炸裂したのだ。
「……こういうのを、汚い、花火と、言います、ので……?」
何処から仕入れてきた知識なのか、猟兵の一人がぽつりと零した。
爆発の中、無事であるのは彼らだけ。
――否、もう一人。
「なんだこれは……私の……私の略奪軍が……ああ……」
未だ火球が爆ぜる傍ら、スーツ姿の男は絞り出すように言った。
ヴォーテックス一族直々の命令。
それを遂行出来なくなった彼に、如何なる運命が定められたか。
街の住人ではない猟兵でも解るだろう。
絶対の権力を持つ者の機嫌を損ねれば、どうなるかなど。
「……おのれ、おのれおのれおのれオノレオノレエエエエエ!!」
錯乱して叫ぶ男の身体が、風船のように膨れ上がっていく。
一張羅は破れ、露わとなったのは真白い肌。
だが、決して美しいものではない。むしろ真逆だ。醜い。
とてつもなく醜い欲望が作り出したであろう怪物が、其処には居た。
「GYAAAAAAARYYYYYYY!!!!!」
奇声と共に瓦礫を蹴った巨体が、炎から脱しようとする猟兵たちの前に降り立つ。
平凡な成人男性の三倍近い大きさだろう。
その悍ましい本性を曝け出した怪物は、猟兵たちを決して逃しはしない――!
阿紫花・スミコ
「・・・人間やめちゃってない?あれ・・・?」
目の前に現れた禍々しい巨人に目を丸くするスミコ。やれやれと、頭をかきむしると、手元のガジェット「ワイヤーギア」に手をかける。
手近なところにワイヤーを射出、蒸気機関がワイヤーを巻き取り、スミコの体を中空へといざなう。
敵の攻撃をギリギリのところで回避しつつ、頭部に大きく開いた禍々しい大口を見つめる。。
「・・・あそこだな!」
光学迷彩ガンベルト「ガンハイダー」の迷彩を解除する。黄金に輝く精霊銃「アヴェンジング」を引き抜く。腰だめに構えて引き金を引くと同時に左手で撃鉄を高速ではじいた。
・・・ファニングショット!
刹那に放たれた六発の弾丸。・・・これでもくらえ!
●阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)
「……人間やめちゃってない? あれ……?」
行く手を阻む巨躯の悍ましい姿に、スミコは目を丸くする。
はてさて、どうしたものだろうか。困り果てたかのように頭を掻き毟ってはみるが、しかし何をすべきか、何を為さなければいけないのかは、考えるもなく結論が出ているはずだ。
逃走? 命乞い? いいや、そうではなく。
――やるしか、ない。
「――――っ!」
覚悟を決めてガジェット“ワイヤーギア”に手を掛ければ、悍ましい巨体は見た目からは想像も出来ない速さで間合いを詰めてきた。
狙いを正確に定めている暇はない。遮二無二、ガジェットから射出したワイヤーは――爆発の余波で新たに出来上がった瓦礫の山の頂、先刻までは残虐戦車などと呼ばれていた物の残骸へと絡みつく。
それは文字通りの命綱。全力全開で作動する蒸気機関の白霧だけを地表に残して、スミコの身体は吸い込まれるように宙空へ。
僅か遅れて、彼女が居た場所へとオブリビオンの牙が喰らいつく。ほんの一瞬、瞬き一つ程の逡巡をしていれば、今頃スミコは怪物の腹を満たすだけの存在に成り果てていただろう。
だが、紙一重の差で形勢は一気に逆転した。
制御や抑制などという言葉とは無縁に見える異形は、疾うにスミコが居なくなった所、即ち何もない空間をひたすら凄まじい勢いで貪っている。
止まらないのではない。止められないのだ。実に化け物らしい有様ではないか。
それが直視するのも憚るほどの醜い姿に行き着いた理由など定かでないが、どうせ碌でもない欲望を発端としているに違いない。
でなければ捻れ曲がった頭部から腹の上まで、ばっくりと裂けるように開いた口の禍々しさに説明がつかない。
「……あそこだな!」
かくも恐ろしき牙を生やした真っ赤な口内は、真白の表皮より遥かに柔いと見えた。
光学迷彩ガンベルト“ガンハイダー”の迷彩を解除。
其処から引き抜くのは、黄金に輝く精霊銃――“アヴェンジング・フレイム”!
「……これでもくらえ!」
自らを叱咤するように吼え、腰だめで構えて。
右手で引き金を引く! ――と同時に、左手で撃鉄を弾く!
その繰り返しで刹那に放つは炎纏う六発の弾丸。
これぞ紛うことなき――ファニングショット!
「GYURAAAAAAA!!!」
内蔵を抉り抜く礫に、異形は堪らず倒れて転げ回る。
其処から仄かに立ち昇った焦げと死臭のコラボレーションのごとき悪臭に、スミコは顔を背けると、さらなる安全地帯へとワイヤーを伸ばした。
大成功
🔵🔵🔵
キャロライン・メイ
「化け物め・・・ついに正体を現したか。」
氷のように冷たい視線を敵に向けると、背中より身の丈ほどの大剣「ダーインスレイヴ」を引き抜く。
(殺せ、殺せ、殺せ・・・!)
魔剣から押し寄せてくる狂気の意志。
(・・・流されるな。ただいつものように冷ややかな心で剣をふるえばいいんだ。私は人形。感情に惑わされるな)
キャロラインの思いとは裏腹に、漆黒の大剣は邪悪なオーラを発し、僅かに振動しはじめる。
「・・・ふ、お前も大概だが・・・我ながらこれは・・・邪悪極まりないな。」
血を欲して、キーンと耳障りな振動音を立てる魔剣を再び握りしめると、大きく振りかぶって、一息に振り下ろす。
・・・今更神に好かれようとも思わないさ。
●キャロライン・メイ(アイスドール・f23360)
「化け物め……ついに正体を現したか」
氷のように冷たい視線を向ければ、もはや元の男の影も形もない怪物も此方を見やる。
捻れ曲がった頭の端に微か残る赤い瞳は、絶えず世界の全てを蔑んでいるようだ。
一体、何故そのような化け物に成り下がったのか。
斯様な異形を孕み産み落とす骸の海の恐ろしさも、改めて感じられるようだが、しかし。
キャロラインは表情を変えない。只々冷ややかな目を向けたまま、背に預けていた身の丈ほどもある大剣“ダーインスレイヴ”を引き抜く。
(「殺せ、殺せ、殺せ……!」)
途端に押し寄せてくるのは、剣そのものが持つ狂気の意志。
故に、その漆黒の刃は魔剣と評される。血を啜り、持ち主を理外へ導こうとする。
(「……流されるな」)
耳を傾ければ、魔剣の思う壺。
いつ如何なる時であろうと、相手が何であろうと、キャロラインが為すべきは一つ。
ただいつもと同じように、冷ややかな心で剣を振るうだけ。
(「……私は人形。感情に惑わされるな」)
しかし、キャロラインの抵抗を嘲笑う者が二つ。
一つは邪悪なオーラを発しながら、微かに振動を始めた漆黒の大剣。
一つは歪な叫びを上げて猛進する、異形のオブリビオン。
「GUUUUURAAAAAAAAA!!!」
「――っ!」
真に戦うべきは魔剣に非ず。
そう言わんばかりに叫ぶ異形は、右腕に生えたチェーンソーも唸らせて迫る。
直情的で直線的。見かけによらない疾さこそあったが、その正直すぎる軌道は決して避けられないものではない。
だが――キャロラインが邪なる囁きを払い除けようとした、その一瞬が彼我の境目。
盾にされる大剣を弾き返し、残虐非道なる刃が漆黒の鎧ごと肉を抉り取る。
その激痛に耐えながらも腕を振り返せば、辛うじて異形を引き剥がすことは出来たが――。
「く……」
脇腹に添えた片手の生暖かい感触。
目を落とせば、掌も染めた真紅が魔剣の刃に一滴落ちる。
途端、漆黒の大剣はさらなる血を求めて耳障りな振動音を立てた。
「……ふ、お前も大概だが……我ながらこれは……邪悪極まりないな」
魔剣を握り直して異形を見据える。
果たして、眼前のオブリビオンからすればキャロラインの方が怪物だろうか。
呪われし大剣によって黒騎士へと身を堕とした、己こそが――。
「GYURAAAAAAA!!」
再度の咆哮。
それを掻き消す程に唸るチェーンソーを見据えて、キャロラインは腕に力を籠める。
初手こそ不覚を取ったが、二度目はない。
「……喰らえ!」
血に吸い寄せられるような猛進を僅かな身動ぎで躱して、振りかざした大剣を一息に下ろす。
意外や堅牢な白皮を物ともせずに切り裂いて、大きく裂けた肉塊から血と嘆きが噴出する。
「GERYAAAAAAAAA!!!!」
同じようでいて、まるで違う叫声。
怪物はのたうち回り――そのまま瓦礫の裏へと転がっていく。
キャロラインはそれを見送り、傷を押さえて。
「……今更神に好かれようとも思わないさ」
誰に向けるでもなく、ぽつりと呟いた。
苦戦
🔵🔴🔴
オリヴィア・ローゼンタール
頽廃の都が火の海に沈むは必定
もっとも、御使いに程遠い私では、こうして一角を焼き払うのが関の山ですが
バニーの姿のまま、瓦礫の中に隠していた大鎌を構えて対峙する
身形で誤魔化していたようだが、それが本性か
腐った性根に相応しい醜さだ
【死睨の魔眼】を起動し【視力】を強化
怒りに任せた乱雑な攻撃を【見切り】、ウサギの脚力で躱す(ダッシュ・足場習熟)
か弱いウサギの一匹も狩れないとは、その爪牙は見掛け倒しのようですね?
爆破した戦車の砲身を掴み、【怪力】を以って叩き付ける(地形の利用)
反射的に喰らい付けば中断できない隙を突いて、死の呪力を帯びた大鎌で斬り裂く(属性攻撃・切断)
●オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)
悪徳の都が、その一部とはいえ火の海に沈んでいくのは必定。
(「もっとも、御使いに程遠い私では、こうして一角を焼き払うのが関の山ですが」)
独り言つオリヴィアの眼差しは鋭く。
悪漢に振り撒いていた笑顔などは疾うに失せていた。
「……それが本性ですか。腐った性根に相応しい醜さですね」
姿こそバニーガールのまま、しかしオリヴィアは邪悪に対する苛烈さを滲ませて。
瓦礫の中へと腕を伸ばせば――その手が掴むは、死の運命を刻み付ける大鎌。
「GYARUUUAAAAAA!!!」
炎に照らされるそれを見た途端、異形が吼えたのは神秘の匂いを嗅ぎ取ったからか。
元より理性など欠片も感じられない巨躯が震えて、両脚に力が籠もる。
刹那、オリヴィアの金瞳は理から逸れた。
意識の全てを視界へと注ぎ、高速で迫る怪物の表皮に起きた僅かな引き攣りさえも見逃さない。
然すれば、憤怒に突き動かされてくる敵の乱雑な攻撃など――。
(「見切るのは容易い!」)
異形のそれとは比べ物にもならない美しい脚で地を蹴り上げ、あちこちに築かれた不安定な瓦礫の山を足場として、兎のごとく跳び回る。
その俊敏さには、只々猪突猛進して宙空を齧るだけの異形では追いつけない。
「か弱いウサギの一匹も狩れないとは、その爪牙は見掛け倒しのようですね?」
不敵な台詞を吐けば、叫声だけは威勢よく返ってくるが。
開いた大口は阿呆の証明としか思えない。自らが爆破したであろう、あの厳つい戦車の砲身を取り上げて叩きつければ、何とも耳障りな音と共に汚らしく濁った血が飛び散る。
「GUUUURUUUUU!!!!」
「それで充分でしょう。餌を選り好み出来る立場だとでも思っているのですか?」
あくまでも挑発的な態度を崩さないのは、見切ったのが攻撃の軌道ばかりではないから。
世の理すらも引き千切るような突撃は確かに疾く、力強く、決して軽んじる事は出来ないもの。
だが、それも当たらなければ意味がない。それどころか有り余る力のせいで、避けられたと知って尚、無意味な猛進を続けなければならない。
そうして無様に曝け出した“隙”を、オリヴィアの魔眼が見過ごすはずがなく。
「――――!」
大鎌一閃。死の呪力を帯びた会心の一撃は、化物の鎧たる厚い肉を斬り裂き、塊と呼ぶべきほどに刈り取り、先んじて骸の海へと送り返す――。
大成功
🔵🔵🔵
神宮時・蒼
…汚い、花火、から、醜い、怪物が、生まれ、ました、ね
…こういうの、目が汚れる、って、言う、の、でしたっけ…?
…では、なくて。まさか、変身、するとは…。けれど、逃げられない、のは、其方も、同じ。全部、纏めて、焼き尽くして、あげましょう
【WIZ】
生体レーザー、厄介ですね
命中が高いとの事なので、左腕の砲口の動きを「見切り」ながら、レーザーは「結界術」で防ぎましょう
汚い物は、焼却、すると、良い、と、聞きましたので…
徒花惨烈ノ陣で「範囲攻撃」「全力魔法」「属性攻撃(炎)」でどかーんと燃やし尽くしてしまいましょう
…さすがの、ぞんびも、跡形もなく、燃えてしまえば、ひとたまりも、ない、でしょう?
●神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)
「……汚い、花火、から、醜い、怪物が、生まれ、ました、ね」
訥々と呟く蒼は異形を見据えて、すぐに顔を背けた。
「……こういうの、目が汚れる、って、言う、の、でしたっけ……?」
「GYURAAAAAAA!!!」
ちょうど良く怪物が叫びを重ねてくれたが――勿論、その意味するところなど知りようがない。
そも、独り言を続けている場合でもないだろう。
まさか変身するとは。それも、曲がりなりにも人の姿であったところから、此処まで悍ましい化け物へと。
「……けれど」
行く手を阻み、逃げ道を塞いだくらいで勝ち誇るのは大間違い。
「逃げられない、のは、其方も、同じ」
爆ぜてがらくたと化した数多のバギーや戦車と、それらに巻き込まれた略奪者たち同様に。漂う血と腐臭すらも一纏めとして。
「――焼き尽くして、あげましょう」
小さくとも凛々しい声色で告げて、蒼は杖を手に異形と真っ向から対峙する。
「GYURAAAAAAA!!!」
その決意ごと押し潰さんと、敵が左腕を振り上げた。
叩きつける――かと思いきや、掌などと呼ぶのも憚る肉の塊を裂いて現れたのは、血の色に染まった砲塔。
まるで戦車が生やしていた物のようだ……などと、思ったのも束の間。
「っ……」
蒼白い炎のごとき閃光が伸びて、蒼の間近で炸裂する。
間一髪、展げた結界が奏功して傷こそ負わなかったが、しかし。
(「……厄介、ですね」)
あの異形が、ごく僅かな間に照準を合わせたとは思えない。
遮二無二撃ち出しても、閃光の方が自ずと敵に寄っていくのだろう。
それは、まるで――。
(「……生きている、ようです、ね」)
ぞくり、と背筋が寒くなる。果たして、あの怪物は如何なる経緯であのような姿に行き着いたのか。それを紐解く事が出来たとしたなら、何かとてつもない邪悪の一端を覗き込んでしまうような気がして。
蒼は僅かに頭を振り、敵の左腕に集中する。確かに命中率は高いようだが連射は利かないらしい。ならば落ち着いて、その発射の瞬間、砲塔の動きを見極めてしまえば。
(「……防ぎ、凌げる、はず」)
確信を現実として示すべく、再び展かれた結界は……先の一撃よりも充分な余裕をもって閃光を弾いた。
怪物が苛立つように叫び、唸る。
だが、どれほど駄々を捏ねても状況は変わらない。まず防御を固めた蒼は至極冷静に狙い澄まして、己の力のありったけを攻勢へと転化する。
「GYAAAAAARAAAAAA!!!!」
其処に何かを察するだけの、生物の本能のようなものが備わっているのだろうか。
異形は一際大きく叫び、またしても砲口を差し向けるが――もはや、遅い。
「汚い物は、焼却、すると、良い、と、聞きましたので……」
何処かで齧った豆知識を口にしたのも、また確信の表れか。
蒼が力を解き放つ刹那、可憐な五花弁が咲いた後に噴き上がるのは、極大の火柱。
「GYUREEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!」
恐ろしい叫びが響いたのも一瞬。
炎は嘆きすらも悉く滅ぼすように広がり、異形の巨躯を飲み込んでしまう。
「……跡形もなく、燃えてしまえば、ひとたまりも、ない、でしょう?」
煌々と燃える巨塊に向けて、蒼はひっそりと、囁きを焼べた。
大成功
🔵🔵🔵
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
だァれがネコチャンですかっつの
俺めのコトは猟団長と呼べ
(ニコリネの魔破★轟一郎(Floral Fallal)の助手席に颯爽搭乗、鼻を擽られれば猫の姿から人型に戻る)
このドライブを楽しんでねえと、時間鈍化の効果に飲まれちまうんでしたよな
そんじゃませいぜい声ェ張るとしましょっかや
ヒャッハー!
寄せろ寄せろォ!
(ハコ乗りキメながら【花屋式機動支援】――刺せば敵の力を殺ぐ魔鍵を抜く!)
・敵巨体を掻い潜っての接近はニコリネに任せ、己は【野生の勘】による敵の捕食攻撃の到来の予期/対処に全集中
・敵が攻撃に用いる口腔を片端から魔鍵で捌いていなして喉奥を刺突、敵の各口腔を都度封印――“施錠”する
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
――乗って!
爆風が吹き荒ぶ中、炎を切り裂きネコチャンの下へ
指でお鼻をムズムズ擽って猟団長(f04631)に戻す
魔破★轟一郎(Floral Fallal)の助手席に同乗して貰い
二人で世紀末モンスターへ一気爆走!
悪辣な改造車で略奪に勤しんでいたようだけど
もっとイカした車の愉しみ方を教えてあげる
UDCアースの都会に生きる私だからこそ磨き上げられた奥義
どんな隙間にも滑り込む精確精緻のドリフト芸【STIG!】
敵の挙動やチェーンソーの間合いを見切り
巨躯にあるスペースに割り込み縦列駐車!
慣性を緩めない轟一郎に無数の牙が迫るけど
両脇の鋸刃で戦おうなんて思ってないわ
私にはもっと頼れる力がある!
●ワイルドハントII
爆ぜるマシーン! 燃えるシティ!
悪徳のカケラは業火に焼かれ、地獄へ墜ちた!
されど地獄の縁に手を掛けて、過去から現在へと滲み出すからこそのオブリビオン!
「GYAAAAWWWRRRRYYYYYY!!!!」
人の皮を剥ぎ取った異形が、身を竦ませるほどの強烈な叫びを上げる!
――が、しかし!
それすらも掻き消す爆音!
揺らめく炎の合間から立ち昇るタイヤスモーク!
腐臭纏いし怪物よ、その潰れた目ン玉ひん剥いて篤と御覧じろ!
爆炎貫き姿を現す、あれこそが、そう!
魔 破 ★ 轟 一 郎 ! ! !
「行くわよ行くわよー!!」
私の愛車は二千馬力!(推定)
アクセル踏めば地響きのごとく震え、急加速は全身をシートに押し付ける!
けれど、それを楽しめないようじゃ走り屋など名乗れやしない!
もっと! もっとだ! パワーを寄越せ! 今がパーティーモードの使いどきだ!
「どうしたの轟一郎!! あんたの本気はこんなもんじゃあないでしょう!!」
叫ぶニコリネは――大丈夫! 素面です! 今日もニコニコ安全運転!
卓越したステアリングワークで爆風吹き荒ぶ戦場を駆け抜けて、向かう先は異形――でなく、瓦礫の山で踏ん反り返る黒白ブチ猫!
「――乗って、ネコチャン!」
サイドブレーキをガツンと引いてターンすれば、開けたままだった助手席の窓から小猫がするり!
その鼻をムズムズ擽ると――あら不思議!
「だァれがネコチャンですかっつの!」
人の姿に戻った物九郎はどっかと座り直して「俺めのコトは猟団長と呼べ!」などと宣う!
そんな彼が腕組みしたまま、鋭い眼差しで射抜くのは――化けの皮を自ら剥ぎ取った世紀末モンスター!
「ぶちかませオラァ!」
「ええ、突っ込むわよ!」
ニコリネが片足踏み込めば再び響き渡るエキゾーストノート!
魔破★轟一郎の雄叫びに合わせてシフトアップすれば、メーターパネルのあらゆる計器が振り切れる!
「ヒャッハー!!」
堪らず物九郎も身を乗り出し、窓枠に腰掛けたのは、ブチ上げたテンションばかりのせいでもなく!
このスリルドライブは“楽しまなければならない”のだ!
そうでなければ――飲み込まれる! 時の狭間で置き去りにされてしまう!
故に、コ・ドライバーの物九郎が為すべきはひたすら声張って気分を上げること!
「寄せろ寄せろォ!!」
狩りをする獣のごとき瞳で叫べば、尚も続く爆発と廃車たちの残骸をすり抜けて、魔破★轟一郎が巨躯の異形へと迫る!
「GYAAAAAARAAAAAAAA!!!」
来るなら来い! 八つ裂きにして喰らってやる!
そう言わんばかりに叫ぶ異形もチェーンソーを唸らせ、無数の牙を生やした悍ましい口をがばりと開く!
猛進する鉄の馬ごと二人の猟兵を屠るつもりか!
危うし! 魔破★轟一郎!
――と、そんな戦慄さえも興奮の隠し味!
「本当にイカした車の楽しみ方ってのを教えてあげるわ!」
ニコリネが魅せるは棘や鋸を生やす悪辣な改造でなく、ましてやそれに乗り合わせての略奪でもなく!
生き馬の目を抜くようなUDCアースの交通事情に磨き上げられた奥義!
どんな隙間にも滑り込む精確精緻のドリフト芸――“STIG”!!
数多の駐車スペース争奪戦に勝利したであろう圧巻のドラテクで、横薙ぎのチェーンソーをすり抜ければ!
轟一郎の鼻先をミリ単位まで異形に近づけての急制動と急旋回!
その動きは正しく世界レベルの――縦列駐車!!
けれど、懐に踏み込んでも轟一郎の両サイドを飾る鋸刃は動かない!
所詮は文字通りの付け焼き刃! そんなものよりも!
「私にはもっと頼れる力がある!」
即ち、猟団長! 白斑・物九郎!!
「――――ッ!!」
白い歯を剥き出し、双眸を爛々と輝かせて!
物九郎がニュッと取り出したるは巨大な魔鍵!
それを――遮二無二、怪物の牙へと、口へと、叩きつける!
達人のように洗練された動きではなく、野生丸出しの荒々しい連撃!
だがそれでいい!
他を寄せ付けぬ圧倒的な“野生の勘”こそが、物九郎の真なる武器!
視るでもなく聞くでもなくただ感じ取るまま、打つべきところへと魔鍵を振るえば!
理外の疾さで繰り出される異形の噛みつきさえも悉く捌き、いなし、封じられる!
そして!
「気張れや薄鈍ォ!!」
渦巻く地獄のごとき怪物の喉奥へと魔鍵を突き刺せば、その大口は“施錠”されて二度と開けない!
「UUUUUUUUUUU!!!」
まるで猿ぐつわでも噛まされたかのように悶える異形!
其処へおまけの一発! 念じれば只の鈍器ともなる魔鍵に捻れた頭を叩き割られて、異形はついぞ何一つ齧りつけずに昏倒した――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◆心情
逃がさない?
其れは重畳…
存分に愉しみましょう
◆行動
<真の姿を開放>し『666』を使用
一部の<私達>は【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別するサーメート」を複数設置
追加の炎でも存分に踊って下さい
更に【空中浮遊】を活用し<私達>全員で射線を調整
<私達>其々が【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
恵まれた体躯は確かに戦闘能力を齎しますが…
巨体故に的が大きいと言うのも考え物ですね
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
【オーラ防御】は球状に展開しチェーンソー回避の時間を稼げるようにしておきましょう
尤も、【空中浮遊】で射程外に逃れれば良いだけではありますが…
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
牙を封じられても、尚。
肉を斬り落とされても、尚。
骨まで焼き尽くされても、尚。
異形は猟兵を屠らんと立ち上がり、その姿を追い求めて。
決して逃すまいと、行く手を阻む。
其れは――其れは真に、重畳である。
(「存分に愉しみましょう」)
そう囁いたような気がした。
其れは――其れは一体、何なのだろうか。
爆炎の合間に蠢くもの。揺らめく影。異端の神々。
幾つかの言葉を当て嵌める事は出来よう。
けれど、それを最も正しく言い表すものがあるとすれば。
絶望。
空を覆い、地を埋め尽くして、最先と弥終を結ぶもの。
その姿を追う異形は、まず無数の猛炎で焼き払われた。
いつの間に仕掛けられていたのだろうか。
影の行き交う最中に置き去られた筒が爆ぜる度、異形は焼け焦げる悪臭と悍ましい悲鳴を垂れ流す。
それでも歩みを止めぬのは、やはり其れが理外の怪物であるから。
溶け落ちたような身体を引き摺り、駆動する刃を唸らせて。
ついに絶望へと迫った異形は、この悪夢を終わらせるべく腕を振り抜く。
――が、しかし。
僅かな望みすらも絶つが故の絶望。
震える刃は球状に展がる護りすらも喰い破れず、ただ徒に時を消費していくばかり。
そして到頭、追い縋るような刃を払い除け。
絶望は空覆う一部の元に還り、混ざって。
其処から降り注ぐは――正しく蹂躙の二文字。
常人には恐ろしい異形の巨躯も、もはや只の大きな的でしかない。
「GYURA――RA――RARA――GA――A――」
衝撃波などいう言葉ではあまりにも生温い。
何時終わるとも知れぬ破滅の嵐に、弄ばれた肉塊は嘆く事すら奪われて。
牙も、骨も、肉も、血も、怒りも憎しみも何もかもを失い。
その存在の一片たりとも残せず、骸の海へと消えた。
後に残るは、燃える街と揺蕩う絶望だけ――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『レイダー』
|
POW : レイダーズウェポン
【手に持ったチェーンソーや銃火器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : レイダーバイク
自身の身長の2倍の【全長を持つ大型武装バイク】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : レイダーズデザイア
【危険薬物によって身体機能】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
悍ましい怪物の嘆きが消え去ると共に、爆炎の名残も少しずつ薄れていく。
見渡せば、廃墟の其処彼処を飾るのは、吹き飛んだ残虐車両たち。
任務完了だ。
間もなく都を発つはずだった略奪軍は、完膚なきまでに叩き潰された。
――しかし。
猟兵たちが屠った戦力は、この超巨大都市に存在する極一部でしかない。
「あいつらだ! 逃がすんじゃねぇ!」
「このヴォーテックス・シティから無事に出られると思うなよ!」
「ぶっ殺してやる!!」
口々に吐き捨てて、四方から迫るのはおびただしい量の略奪者たち。
それらとまともに戦う理由はなく、また真っ向からぶつかれば数の力で押し潰されるのは必然。
バギーや戦車で執拗に追いかけてくる彼らを退けるのは最低限にして、この悪辣の都から無事、脱出するのだ――!
キャロライン・メイ
「貴様ら烏合の衆が集まったところで、本当に我々に勝てると思っているのか?」
氷のように冷たい視線を投げかけるキャロライン。
「私も貧民街の出身だが、お前らと決定的な違いがある。・・・貴様らは、飢えていない。」
「大勢で押し込めば、相手が泣きわめいて命乞いをするとでも思っているんだろう?・・・気づいているか、今、お前たちは狩られようとしているんだぞ・・・?」
漆黒の魔剣「ダーインスレイヴ」は、より振動を増し、邪悪なオーラを発していた。
大上段に構えた魔剣を一息に地面にたたきつける。衝撃で地面がえぐれる。
グラウンドクラッシャー・・・!
「それでも死にたいなら手加減はしない。魔剣はお前らの血を欲しているぞ。」
●キャロライン・メイ(アイスドール・f23360)
「貴様ら烏合の衆が集まったところで、本当に我々に勝てると思っているのか?」
巨大な異形に相対した時と同じく、キャロラインは敵群に冷え切った眼差しを向ける。
それは警告のようなものであったが、しかし猟兵一人に睨みつけられたくらいで怯むようでは略奪者の間ですら笑いものになるだろう。
故に、バイクを唸らせ群れを飛び出した活きの良いモヒカン頭は、視線を物ともせず距離を詰めてチェーンソーを振り上げ――それを下ろすより先に自らの半身とさよならする羽目になった。
「て、てめ……ごばっ」
程なく今生との別れも訪れ、無慈悲な二の太刀を浴びせたキャロラインは骸の海へと還り逝くものを一瞥すると、さらに言葉を次ぐ。
「私も貧民街の出身だが、お前らと決定的な違いがある……貴様らは、飢えていない」
「ごちゃごちゃうるせ――えぎゃ!?」
先走った者がまた一人、首を刎ねられて散った。
彼らの強み、この戦場における優位性は“群れ”であることなのだから、当然の帰結と言えよう。
もっとも、キャロラインにはその膨大な数ですら何ら意味を成していないようだが。
「大勢で押し込めば、相手が泣きわめいて命乞いをするとでも思っているんだろう?」
迫る大軍を前にして語る彼女の手、握る漆黒の魔剣“ダーインスレイヴ”は振動と邪悪なオーラを強めるばかり。
「……気づいているか」
それが何を指し示しているのか。
語り続けながら、キャロラインは刃を大上段に構える。
「今、お前たちは狩られようとしているんだぞ……?」
刹那、振り落とされた魔剣は地を叩き、抉る。
先に戦場を焼いた数多の爆弾が、今一度炸裂したのではないかと思うほどの衝撃が駆けていく。
その一撃が敵群全てを巻き込み、屠るわけではない。ないが、しかし。
勢いに任せて猟兵を押し潰そうとする略奪者は、悪路に変わった地形に突っ込んで横転、或いは進軍速度を大きく落とす。
そうして、包囲の一辺はたちまち崩れてしまった。
「それでも死にたいなら手加減はしない。魔剣はお前らの血を欲しているぞ」
混乱に陥る敵を横目に吐き捨てると、キャロラインはシティを脱していく。
成功
🔵🔵🔴
阿紫花・スミコ
「あれま・・・たくさん集まってきちゃって。」
頭を掻きつつ、黄金に輝く精霊銃「アヴェンジングフレイム」のシリンダーを開けると、空になった薬きょうを落としつつ、腰に差し込んだ赤いラインの入った弾丸を込めていく。
「にひ、ボクからのプレゼント・・・受け取ってもらえるかな?」
不敵に笑うと、照準に敵車両のある部分を狙って放つ。
放たれた弾丸は、空中で青い光を放ち、急激に加速を始める。
パワーショット・・・!
魔法蒸気技術で作れた魔法弾は、燃料タンクをその強力な破壊力によって貫通、さらに精霊銃の魔力により、炎を帯びる。
「お気に召してくれたかな?・・・さて、逃げますか。」
ワイヤーギヤに手をかけるスミコ。
●阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)
「あれま……たくさん集まってきちゃって」
窮地を窮地と思わぬ声音で言って頭を掻く。
その手を黄金に輝く精霊銃“アヴェンジング・フレイム”に運ぶと、スミコはシリンダーを開けて空薬莢を落とした。
新たに籠めるのは腰に差し込んでいた赤いライン入りの弾丸。
「にひ、ボクからのプレゼント……受け取ってもらえるかな?」
不敵な笑みと共に零して、狙うは四方の一辺、迫る敵群を引っ張る先頭車両。
引き金を引けば――放たれた弾丸は青い光を放ち、飛び立って尚、加速していく。
それが魔法蒸気技術で作られたものだとは、略奪者たちには知る由もない。
無数の残虐車両が迫る中、小娘が一人、玩具のような銃を構えた。
そして暫しの後、何か青い光が飛んできた――と、彼らの認識は、せいぜいその程度だったはずだ。
故に、程なく起こった出来事もすぐには理解出来なかっただろう。
銃弾一発くらいでは大した被害になるはずがない。そんな彼らの想定を根底から覆すように、装甲板を貫いた弾丸は燃料タンクを破壊する。
ただそれだけでも充分な惨事だが、事態をより悲惨にしたのは、それが“精霊銃から放たれた炎の弾丸”であった事だ。
油に火種を放り込めばどうなるかなど、態々言うまでもなく。
かくして大爆発を起こした先頭車両は、その衝撃と飛び散る破片に仲間を次々巻き込んだ。
直接の被害を被らなかった者たちも、残骸と化したものに突っ込んでしまうか、はたまたそれを避けようとハンドルを切って横転するか。
ついには猟兵を蹂躙せんと息巻いていたはずの一団が、被害の責任を押し付け合って罵詈雑言を飛ばし始めた。
「お気に召してくれたかな? ……さて、逃げますか」
悪辣の都に相応しい低俗な内輪もめを笑って呟きつつ。
スミコはワイヤーギアを構えると、その射出と巻取りを用いて敵群を飛び越え、そのまま戦場を離脱していった。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
あとは撤退すれば任務は完了ですが、統率を失っているこの状況、捨て置くには惜しいですね
バニー姿のまま
壊れた車両や瓦礫も足場にして縦横無尽に駆け回り(ダッシュ・足場習熟)、手当たり次第にレイダーを大鎌で【切断】しながら撤退
追撃者の中には、先ほど私の胸ばかりを見ていたレイダーの姿も
私の注いだお酒(爆弾)は、お口に合いませんでしたか?
と、給仕していた時と同じ笑顔で言えば、罠に嵌められたと欲望の詰まった頭でも理解できるでしょう
激昂したところでタイヤを斬ってクラッシュさせる
【死睨の魔眼】で建物の脆い部分を見抜き、鉄骨を斬り裂いて倒壊
追跡者たちを圧し潰す(破壊工作・地形破壊・地形の利用・重量攻撃・蹂躙)
●オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)
(「後は撤退するだけですが……」)
兎耳尻尾を付けているからと、脱兎のごとく逃げ出すだけでは勿体ない。
オリヴィアはシティからの脱出路に立ちはだかる敵の一角を見据え、大鎌を握り直す。
それから地を蹴って跳ね上がれば、悪徳の都に描かれたのは地獄絵図。
未だ燻る残虐車両の残骸、爆発が築いた瓦礫の小山たち――それらを平地のような感覚で踏みつけ、戦場を縦横無尽に駆け回るオリヴィアが大鎌を振るう度、バギーから身を乗り出したり、バイクで猛進する最中であった略奪者たちの厳しい面が宙を舞った。
兎は首を刎ねるものと相場が決まっている。そうして鮮血に飾られた空と大地を、操縦者を失い横転した車両が爆発して煌々と照らす。
「他愛ないですね」
所詮は数に任せて暴力を振るうだけの集団。群れなければ何も出来ず、故に個々の力量などオリヴィアに及ぶべくもない。
哀れな略奪者たちの死骸を轍にして、オリヴィアは悠々とシティの外に向かっていく。
――それを追うものが、一人。
「クソアマァ! 逃げんじゃねェ!」
低俗な叫びは“後方”から。
振り返れば、オリヴィアの眼が捉えたのは半壊した車両と見覚えのある面。
「あら、私の注いだお酒<爆弾>はお口に合いませんでしたか?」
給仕してやった時と同じく、これ以上無い笑顔で言葉を投げてやれば、さらに下劣で聞くに堪えない罵詈雑言が返る。
その中身はさておき、悉くが火の海に沈んだ中で生き残るとは見上げたものだ。
頭領たる男――あの巨大な異形も骸の海へと還した猟兵に敵うはずもないだろうに、それでも無残に焼けた車両の尻を叩いて来るのは、欲望だけが詰まった脳みそでも罠に嵌められたと理解できたからか。
……いっそ、それすらも解らぬほどの阿呆であったなら。
もう暫くは生き長らえる事も出来ただろう。
だが、もう手遅れだ。怒りに任せて迫る男からの銃撃と、既にがらくた同然の車両による突撃。双方を金瞳で見据えて難なく躱したオリヴィアは、すれ違いざまに大鎌を振るう。
それは今日初めて、敵でなく物を切った。
ざっくりと切り開かれたタイヤが爆ぜて、バランスを崩した車両がひっくり返る。幾度か地面を弾んだそれは一瞬の沈黙の後、盛大な爆発を起こして破片を撒き散らす。
如何にしぶとい略奪者でも、その惨事の中心にいてはどうにもなるまい。
「さて……」
余興もそろそろ終演とすべきだろう。
オリヴィアが揺らぐ炎から目を移すのは、シティのあちこちに聳え立つ墓標の一つ。本来の価値を失って久しい高層建築。
辛うじて形を保つ、それを支える“芯”と呼ぶべき鉄骨を魔眼で見抜くと、オリヴィアは敵群を蹴散らして一気に肉薄、大鎌の一振りで断ち切った。
「何してやがんだ!」
「構わねェ、轢き殺せ!」
略奪者が口々に叫びながら迫り――オリヴィアはそれを嘲笑うと、シティの外へ向かってまた跳ねる。
瞬間、墓標は真にそれを意味するものと化した。
ずるりと滑るように、或いは積み上げた石が崩れるように、高層建築は凄まじい音を立てながら崩壊をはじめ、側を通り過ぎるはずだった略奪者たちの頭上に瓦礫を降り注がせる。
それを喰らった車両が一足先に残骸となって、後続の仲間たちの足も止める。考えなしに猟兵を追っていたが為に碌な減速も出来ず、後から後から次々に突っ込んでいくものだから、後退することさえままならない。
そうして一塊となった敵群に伸し掛かるのは本命、摩天楼の上層部。
略奪者たちは、まるで人に踏み潰される虫のような想いを抱きながら死んでいったに違いないが――それを起こしたバニー姿の死神は、疾うに恨み辛みなど届かない彼方へと失せていた。
大成功
🔵🔵🔵
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
モテモテじゃニャーですか、ニコリネのねーさんだきゃ
レイダー系女子アピがハマリ過ぎたのが原因ですわな
ともあれ――王の名に於いて許す、飛ばせ
『ワイルドハント』の行軍を追っ掛けたヤツはどうなるか、キッチリ教えてやりまさァ!
・ニコリネの運転に同乗、魔破★轟一郎のフォルムから来るヤバそうなオーラを己の存在感でブーストし全周威嚇(悪のカリスマ+殺気+威厳+精神攻撃)
・レイダー共の機先を【野生の勘】で察知し抜き、頭数に囲まれた際は、サイドアームからの【威嚇射撃】や【天候操作】により喚起した砂嵐で適宜対処を
・対処に攻撃力が要りそうな大型連中は魔鍵で手ずからブッ飛ばす!(怪力+暴力+なぎ払い)
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
猟団長(f04631)、あいつら簡単に帰してくれないみたい
ちょっと荒っぽく行っていい?
えへへ、いきまーす!
引き続き猟団長を乗せた魔破★轟一郎で【WILD HUNT】!
悪逆車輛にカーチェイスを挑む
トー、キャンバー、キャスター
全てのアライメントを地形に合わせて調整した相棒に隙は無し
抜群のコントロールで攻撃を躱し、敵のハンドルミスを狙う
迫るレイダーズウェポンは側面の鋸刃に火花を散らせて角逐し
最適の距離を保って猟団長にやっつけて貰う
私のボスは砂嵐の王
弱者は彼が巻き起こす嵐に呑まれるしかない
制禦を失ってあらぬ方向へ旋回失速する車を抜いて更に加速!
爆炎散華を背に去る
――ゲットワイルド退勤
●ワイルドハントIII -Get Wild Hunt-
瞳に映るは、地平線を埋め尽くすほどの略奪者たち。
退路阻む強大な異形を退けて尚、絶体絶命。
「簡単には帰してくれないみたいね」
呟くニコリネに、物九郎はさも当然と言う。
「モテモテじゃニャーですか、ニコリネのねーさんだきゃ」
「ちょっと、私のせいだって言うの?」
「レイダー系女子アピがハマリ過ぎたのが原因ですわな」
猫のキマイラは、口元だけを僅かに歪めながら語って。
刹那、その全身から天賦の超人性を溢れさせた。
より平易に表せば――そう、所謂“カリスマ”だ。
他者を惹きつけ、感銘を与え、時に支配する。
強烈な個性。王の資質。嵐呼び起こす者。
間近で味わえば、ぞくりと震える。
なればこそ、ニコリネはまず「猟団長」と前置きして。
「ちょっと荒っぽく行っていい?」
真剣な声で尋ねれば、物九郎は眉一つ動かさずに告げた。
「――王の名に於いて許す、飛ばせ」
途端、ニコリネは笑顔を咲かせる。
ともすれば少女のように。或いは健気な花のように。柔らかく。
しかし、彼女が為すのは可憐さなどからかけ離れたもの。
「えへへ、いきまーす!」
そんな(まだ)可愛らしい宣言よりも遥かに目立つトゲトゲ肩パッドの操縦者が足を踏み込めば。爆裂するエンジン音。ギャンギャンと激しい音立てて回る鋸刃。
お馴染み魔破★轟一郎が、今再び、悪徳の都を走り出す――!
「な、なんだあいつは!」
「こっちに向かってきやがるぞ!?」
厳つい略奪者たちが情けなく叫ぶのも無理はない。
このアポカリプスヘルを走り慣れているであろう彼らすら、殊更気合を入れて乗り切らねばならない悪路。爆発やその他諸々で焼け焦げ抉れた瓦礫だらけの戦場を、鋸刃生やした中古の移動販売車が猛進してくるのだから。
「ヒャッハァー!!」
「イェーイ!」
脳揺らす激しい振動も興奮の材料。
しかし、二人が蛮族よりもノリノリなのには当然、他にも理由がある。
それはニコリネが最適化した魔破★轟一郎のトー、キャンバー、キャスター。
完璧なホイール・アライメントが力を余すとこなく路面に伝えて、抜群にトラクションが掛かったそれは益々速度を上げていく。
その前に立ちはだかる勇気は――ない。
「ブチ抜けェ!」
「了解!」
大きくハンドルを切って右へ左へ。稲妻のような軌跡を残しながら、魔破★轟一郎はあっという間に包囲の一角を突き抜けた。
「……ば、バッカヤロー!」
「逃がすんじゃねェ! 追え! 追えェッ!!」
抜き去られて漸く我に返り、略奪者たちは一斉に反転。
爆走する四駆の後を追う――が、しかし。
「『ワイルドハント』の行軍を追っ掛けたヤツはどうなるか、キッチリ教えてやりまさァ!」
狂乱の眼差しで振り返る物九郎が叫べば、ただそれだけで幾つかの残虐車輌が追撃を諦めた。
「何やってんだテメェら!!」
同胞の叱咤にも、ブレーキを踏んだ者たちは首を振るだけ。
追跡対象から迸る“ヤバい”気配。近づけばタダでは済まないという予感。
手が震え、ハンドルすら握れなくなった――とは、後に一人が語ったところであると言うが、さておき。
恐らくは鈍感であるが故、生き残った略奪者たちは果敢にアクセルを踏む。
「まだ来るわね!」
余裕たっぷりに言って再びハンドルを切れば、急激なコーナリングに技術で敗北した一台がひっくり返って爆ぜて。
「しこたまブチ込んでやりまさァ!」
身を乗り出した物九郎が拳銃で威嚇射撃を行えば、運悪くタイヤに喰らった一台が盛大にスピンしながら瓦礫に突っ込む。
それでも、その向こうから二台、三台と新顔が現れて、徐々に魔破★轟一郎を射程圏内へと収めた。
サブマシンガンやらアサルトライフルやらの銃火器から放たれる弾丸は、物九郎の言を受けて尚昂ぶるニコリネのドライビングテクニックと、魔破★轟一郎の走破性、さらに火花散らす鋸刃で凌ぐが――まともに相手にしていては限りがない。
だが。
そもそも、略奪者たちが追う相手の方が“まともではない”のだ。
何の予兆もなく、忽然と巻き起こる砂嵐。
王はアポカリプスヘルの天候さえも睥睨して跪かせ、その支配下に置いた。
(「弱者はそれに呑まれるしかないのよ――!」)
故に、彼は王。故に、白斑・物九郎。
それをニコリネが実感すればするほど、嵐が孕む殺気は増していく。
有象無象には銃弾一つどころか、指一本すらも触れさせない。
程なく魔破★轟一郎が嵐を抜ければ、追随していたはずの略奪者たちは悉く姿を消していた。
しかし、物九郎は表情を緩めない。むしろ更に爛々と輝く瞳で先を見据える。
其処から来ると勘付いているのだ。
一際、威容を誇る残虐車両の一群。並の乗用車を遥かに凌ぐ、超巨大戦車軍団!
「カモがネギ背負って来やがったぜ! 全砲塔、照準合わせェ!」
ハッチから此方を見やる恰幅のいい男が、勝利を確信しながら吼えて。
金属を打ちつける音と共に、それは宙を舞った。
逆さになった世界で遠ざかるのは、魔鍵握る獣人と車一台。
「そ、そんな――」
戦車を片腕で吹き飛ばすなど、そんな馬鹿な。
我が目を疑っての呟きは、地面に叩きつけられた乗機の大爆発が掻き消す。
そして、シンセサイザーとベースの音色――否、華々しく開いた炎の大輪を背に。
物九郎とニコリネを乗せた魔破★轟一郎は、悪の都を脱していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神宮時・蒼
…こんなに、いた、の、ですか…。…壱、見かければ、参〇は、見かける、という、件の、アレ、のよう、ですね…。
…とは、言え、この数は、さすがに…。…無事そうな、車に、乗って、何とか、脱出、しましょう。…問題は、車の、運転、した事、ない、点、ですが…。
【WIZ】
車の運転は「第六感」で何とかします、なんとかなる。
どうしても避けられない戦闘は対応
目の前に勢いを落とさぬ車が迫れば、さすがに畏れるでしょう?
黒花狂乱ノ陣を「全力魔法」「高速詠唱」で強化してぶっ飛ばしましょう
畏れずに立ち向かってきたならば、「呪殺弾」を放って相手に苦痛を差し上げましょう
…ええと、…それでは、さようなら。
●神宮時・蒼(終極の花雨・f03681)
群がる、と言うより蠢く、と言うべきなのか。
それが全て人間だったなら、今頃卒倒していたかもしれない。
けれど、あれはオブリビオン。
そう思いながら一つ深呼吸して、蒼は右から左へ、つつつと指を動かす。
「ひー、ふー、みー……」
うん。たくさん。計測断念。
(「壱、見かければ、参〇は、見かける、という、件の、アレ、のよう、ですね……」)
アレ。アレとの違いは囓られるのが御器でなく蒼になりそうなところか。
ならば、先の異形へと喰らわせたように『どかーん』とやってしまうべきだろうか。
(「……いえ、この数は、さすがに……」)
まず間違いなく焼け石に水。つまり、蒼が取るべき手段は一つしかない。
(「何とか、脱出、しましょう」)
しかし、どうやって?
蒼は視線を彷徨わせて――瓦礫の合間に、それを見つけた。
ドアハンドルを引いて、跳び跳ねるように乗り込む。
何分、厳つい略奪者の厳つい四駆だ。小柄な蒼では運転席に上がるだけでも一苦労。
(「……どうして、こんなに、大きな、タイヤが、必要、なので、しょうか……?」)
蛮族のセンスはよく解らない。
小首を傾げつつも、蒼はとりあえずハンドルを握る。――勿論、車は動かない。
(「……ええと、恐らくは、これを……」)
右手の方にあった髑髏の装飾が付いた鍵を捻れば、途端に起こった振動で尻が浮いた。
うるさい。いざ乗り合わせてみると、とにかく煩い。
(「……どうして……」)
次々に湧き上がる疑問を、蒼は心の小瓶に詰めて厳重に封じる。
今はそんな事を考えている場合ではない。
シートベルトを閉め――ああ、そんなものは付いていないらしい。
致し方なし。ぎゅっとハンドルを握って、アクセルを――。
(「あ、足が……」)
運転席にしっかり背をつけて座ると全く届かない!
やむなく少し浅めに座って仕切り直し。
(「……いき、ます」)
ようやっと動き出す蒼のくるま。
無論、これが初めての運転であることは言うまでもなく。
若葉マークなんぞ用意されていないのも言うまでもなく。
それでも何とかなるとすれば、其処は第六感、センスが良いとしか言いようがないが。
日頃、此処まで肩に力を入れる事などないだろうというくらい、強くハンドルを握りしめたまま、アクセルベタ踏み。悪路を物ともせずに突き進む蒼のくるまは――ともすれば、暴走しているようにしか見えず。
「お、おい! 何か突っ込んでくるぞ!」
略奪者たちが俄にざわつくのも仕方のないこと。
飛んで火に入るも限度がある。曲がろうとしているのか、ステアリングを操りきれずにふらふらしているのか。それすらも定かでないまま、しかし彼我の距離だけは確実に狭まっていって。
ざわめくばかりであったから――略奪者たちは、先手を取られた。
刹那に刻む詠唱。一時、運転中であることも蚊帳の外に置いて放つ全力。
玉のように咲く悪魔の花、鉤爪のごときそれから繰り出される衝撃波が、蒼の退路を阻む略奪者たちを幾つか、車両ごと吹き飛ばす。
そうして開いた隙間を、とかくスピードだけは早い蒼のくるまが、ぎこちなく抜けていく。
「ば、馬鹿野郎! 何やってんだァ!」
思わず見送ってしまったのも束の間、略奪者たちは薬物で感覚を強化すると反転、蒼を追う。
(「……まだ、来ます、か……」)
ちらりとサイドミラー越しに確認すれば――何だか、運転慣れしてきたのでは?
なんて、その幻覚をさらに強めるつもりは毛頭なかったが、蒼は車庫入れでもするかのように後ろを振り返ると、ハンドルから離した手で呪殺弾を放つ。
それらは鋭敏な感覚を得ているはずの略奪者を次々捉え、苦痛を授け、追撃を諦めさせて。
「……ええと……それでは、さようなら……」
次第に数を減らし、遠ざかっていく追手へと呟いた蒼は。
「……わ、あ、あぶ、ない……」
あわや瓦礫に突っ込むというところでハンドルを切り、安全運転を心に刻みながらヴォーテックス・シティを離れていった。
大成功
🔵🔵🔵
霧島・絶奈
◆心情
終わりなき闘争には心惹かれますが…
此方が無事に離脱する方がヴォーテックス・シティへの攻撃になりそうですね
◆行動
<真の姿を開放>
車両を拝借
【罠使い】として持ち込んでいた「魔法で敵を識別するサーメート」を複数投下しつつ逃走
途中で操縦を誤った風を装い車両を破棄
私は【目立たない】様に【空中浮遊】で離脱
残された車両には「魔法で敵を識別するサーモバリック爆薬」を設置
止めを刺そうと迫る敵を逆に鏖殺
【罠使い】の嗜みです
生身での離脱中は『涅槃寂静』にて「死」属性の「濃霧」を行使
追い縋る敵には【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
幾ら倒しても尽きる気配のない敵。
終わりなき闘争。
そう容易く得られるものではないが、しかし。
(「此方が無事に離脱する方が、ヴォーテックス・シティへの攻撃になりそうですね」)
後ろ髪引かれる思いを冷静に断じた絶奈は、幸か不幸か、爆発を逃れていた軍用小型四輪駆動車に乗り込むと、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
略奪の最中でエンストでも起こせば笑いものになるからか、実に整備の行き届いた車両は何ら問題なく走り出す。
それが動いている事より、それを操っている者の方が余程目を引くだろう。燻る戦場、悪徳の都に在って鮮明に浮き上がる白。真の姿を解放した絶奈は、数多の略奪者たちの耳目を集めた。……それが見るべくして見たのか、見ざるを得なかったかは定かでないが、ともかく。
「居たぞ! 散々やらかしてくれた連中の一人だ!」
「追え! 殺せ!」
実に典型的な悪漢の台詞を吐きながら、略奪者たちが各々の残虐車両を駆って絶奈を追い始める。
そして、程なく。
前方から転がってきた何かに触れると、次々に爆ぜた。
魔法で敵を識別するサーメート。絶奈が数多の世界、数多の戦場で仕掛け、炸裂させてきたそれが、今日は四駆の脇から落とされて転がり、略奪者たちを愛車共々盛大に葬っていく――が、しかし。
「クソッタレ!」
そう叫んだのは何台目だったか。
ミラー越しの彼方に見えたのは、自らに薬物を投与する姿。
途端、略奪者たちの運転に生まれたのは尋常ならざるキレ。完璧なタイミングで投下されたはずのサーメートを、片輪走行などで躱してみせるのだ。
(「……中々愉快ですね」)
略奪者から曲芸師に鞍替えしたらしい、などと諧謔を弄する事はないが、もう一手打たなければならない様子。
絶奈は暫し黙考して――突如、ハンドルを大きく切った。
それはアクセル全開のままで行われたが為に、誰しもが予想する結末に至る。
四駆は横転。派手に転がり続けて瓦礫に衝突。唸るように大きな騒音を一度立てた後、完璧に沈黙してしまった。
略奪者たちは歓喜に湧く。獲物は逃走に必要な足を失った。そして投げ出されなかったところを見るに、運転席で失神でもしているのだろうから、もはや勝利に等しい。
かくしてスクラップとなった四駆の元へと、略奪者たちは先を競いながら迫って。
そして、程なく。
四駆のドアに手を掛けようかというところで、諸共爆ぜた。
先に投下されたものとは違う、大爆発。炎は一帯の略奪者たちを一纏めに飲み干して、焼き払い、悉く骸の海へと還す。
それが何か、何が起きたかと問われれば……無論、罠だ。車を横転させたのも――いや、そもそもが車両なぞに乗り込んだところから全て、何もかもが、罠。
(「しかし、これほど容易く掛かるとは……」)
疾うに四駆から離脱していた絶奈は、空を漂いながらじっと爆発の痕を眺めて。
「居たぞ!」
強い既視感を覚えた。
ともすれば、彼らは略奪者という枠組みではなく、皆等しく同一の存在なのではないだろうか。
そんな戯言が過るほどに代わり映えしない反応へと、絶奈は“死”で応じる。
霧の形をしたそれに抗う術を、略奪者たちは持たない。一人、また一人と倒れて――その亡骸を積み上げ、絶奈にまで手を伸ばそうと尚も湧き出でる。
だが、そう易々とは触れられないからこそ、それは絶奈なのだ。
四方薙ぐ衝撃波が骸の塔を崩して、其処に登っていた略奪者たちは絶望に目を見開きながら濃霧の中へと沈んでいく。
それは長々と見続けられるほど愉快なものでもなく、絶奈は幾度目かの塔の崩壊を見守ると、空へ溶けるように消えた。
大成功
🔵🔵🔵
ミスト・ペルメオス
【WIZ】
既に事は済んでいたか…だが。
こちらブラックバード。撤退を援護します!
愛機たる機械鎧を駆って戦場に飛来、任務を果たした猟兵達の撤退の援護にかかる。
デバイス等を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
スラスターを駆使して戦場を飛翔しつつ、念動力を最大限に解放。
【サモン・シュラウドレイダー】。
異次元より招来するは亡霊宇宙戦艦、そして精神生命体の戦士達が駆る異形の艦載機群。
戦域の上空に展開させ、地上の敵集団に対し対地掃射の嵐を見舞う。
自身も愛機を駆って敵集団へと突撃、ヘルファイア・デバイス展開。弾幕を張ることで敵の撃破と進撃の阻害を図る。
無論、殲滅は無理と承知の上。頃合いを見て撤退する。
●ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)
世界が開けた瞬間、見えたのは燻る街並みと数多の略奪者。
その追撃から逃れようとする幾つかの人影や車輌。
(「既に事は済んでいたか……だが」)
何もかもが終わったという訳ではないようだ。
ならば出来ることが――いや、ミストだからこそ成せることがある。
「こちらブラックバード。撤退を援護します!」
そう高らかと声響かせたのは、悪徳の都に飛来した“黒い鳥”が何者かを知らしめる為。
有象無象の悪漢たちが上空を見やる。その阿呆面へと見せつけるように飛んだミストは、デバイスを通じて念能力で愛機を制御、スラスターを勢いよく噴かせながら猛禽の狩りのごとく急降下していく。
「うおおっ!?」
突如現れた人型機動兵器が間近にまで迫って、さすがの略奪者たちもハンドルを右へ左へ。
それを嘲笑うかのように、またミストは高く翔ぶ。都の性質が自然までも歪めているのか、空は薄汚れてどうにも低く感じるが――ならば雲さえも切り裂いてみせようと言わんばかりに、ブラックバードは速度を上げて。
(「来たれ、来たれ、来たれ――!」)
加速するのは機体ばかりでなく。操手たるミストもまた、昂りを胸の内で曝け出せば。
一際黒く重たい雲を割って、姿を現したのは――異次元より招来せし亡霊宇宙戦艦。
「……な、なんだありゃ……」
トゲ付きバギーも残虐戦車も霞む、その威容に略奪者たちも言葉を失くす。
文明そのものの差異に頭を殴りつけられたような感覚がしているのだろう。地を這って略奪に勤しむ彼らからすれば、星々の海を征く船など、もはや理の外に在るものだ。
しかし、此処までなら“驚く”だけで済んでいたのだから、ある意味でまだ幸せだったに違いない。
略奪者たちの驚愕を恐慌へと変える、次なる一手。
それは、戦艦から次々に飛び立つ異形の艦載機群。
精神生命体の戦士達が操る数百ものそれらが一斉に対地掃射を始めれば、呆然とするばかりだった略奪者の群れのあちこちで喧しい悲鳴が上がる。
「ち、畜生! アレが何でも構わねェ! 落とせ! 落とせェー!!」
そう叫んだ一人が、腕に何かを打ち込んだのが見えた。
釣られるようにしてさらに数人、数十人、数百――瞬く間に広がるその行為は、オブリビオンといえど人の形をしていた略奪者たちから、理性という枷を取り払う。
それを齎した物の正体は概ね見当がつく。何某かの薬物だ。戦場で、まして窮地で取り出すならそれ以外にない。
ミストは断じて、愛機から冷ややかに様子を窺う。
すると――狂化した略奪者たちは、既にスクラップと化していた残虐車両の数々や、それらの砲塔など、人の大きさでは到底扱いきれないものを掴み取り、或いは放り投げてきた。
戦艦や艦載機が相手では豆鉄砲のような銃火器より、そちらの方が有用だと判断した――いや、単に猛り狂って暴れているだけか。
何れにせよ、先程よりは幾らか脅威を増したのは確かだろう。
とは言っても、毛の生えたようなものだが。
「あの一角は直接叩くッ! 行くぞ、ブラックバード――!!」
獲物を見定めたミストは愛機を駆り、再び地上ヘと迫っていく。
放り投げられる戦車の残骸を撃ち落とし、引き剥がした砲塔構える略奪者からの一撃は、スラスターの急制動で躱して。
その最中に展開するのは、多連装粒子散弾砲“ヘルファイア・デバイス”。
照準に精密さは必要でない。無論、敵は少しでも多く倒すべきだろうが、しかし。
撤退支援という役割を顧みれば、もっとも重要なのは略奪者たちの進撃を阻むこと。
「――――ッ!!」
迫る敵群に向けて、力を解き放つ。
圧倒的な量で築かれる弾丸の幕は、獣と化していた略奪者の一群を広く、面で制圧していく。
――それで得られた平穏は、ごく僅かなもの。
一体、どれだけの数が潜んでいるのか。ようやっと見えた地表、瓦礫ばかりが散乱する其処を、再び略奪者たちの大軍が埋めていく。
これを片付けるには、それこそ戦争でも起こすくらいでなければならないか。
推し量る事すらも難しいが――無論、殲滅が無理だとはミストも理解しているところ。
(「……頃合いだな」)
愛機が拾い上げる幾つかの情報から、此度の破壊工作に従事した全猟兵の撤退が確認できた。
幾千幾万幾億の軍勢であろうと、もう追撃は成し得ない。
「任務完了。これより戦域を離脱する。――繰り返す、全機撤退! 戦域を離脱する!」
尚も略奪者たちの掃討に勤しむ戦士達へと呼び掛けながら、ミストは再び空高く舞い上がった。
大成功
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