宮殿広場のクリスマスマーケット
●Weihnachtsmarkt
まるで、お伽話の世界に迷い込んだよう。
どれだけの人がこの場所を歩いていったのだろうか。歴史を感じる石畳の広場に、僅かな隙間も惜しいと軒を連ねる屋台の数々。そして、粉砂糖を塗したみたいに雪の帽子を被った建物たち。
建築物をデコレーションするかのように張り巡らされたイルミネーションがキラキラと輝いて、何とも幻想的な光景だった。
屋台の装飾コンテストが開催されているだけあって、何処も一等飾り付けに力を入れているらしい。動くトナカイや、音楽を奏でる人形楽団なんかまで屋台の屋根に並んでいる。
肌を刺すような厳しい寒さは辛いけど、マーケットを前にすれば、そんな寒さも何処へやら。
石畳の地面を踏みしめてイルミネーションと屋台の迷路に足を運べば、何処からともなく漂ってくるスパイシーな香りが鼻先を擽っていく。
香りの持ち主はホットワインだろうか。それとも、ソーセージ? 或いは焼き菓子だろうか。香りの主が何にせよ、寒さで冷えた身体を程よく温めてくれるに違いない。
おや、屋台で飲み物を買おうとして、値段に思わず二の足を踏んだ観光客が。
でも、安心して。飲み物の値段は、マグカップの値段込み。マグカップを返却すれば、その分のお金が返ってくる。勿論、お土産としてマグカップを持ち帰ることも可能だ。
有名なシュトーレンは、そもそもクリスマスを待つ間少しずつ食べることを想定して作られたお菓子だ。伝統的なものだと固いかもしれない。虫歯は無いだろうか。歯が欠けてしまわないように、ご注意を。
もしも迷子になった時の為に、待ち合わせは広場中央の大きなツリーの前で。
それとも、存在感のある市庁舎の前も良いかもしれない。クリスマスのこの季節、市庁舎の窓が巨大なアドベントカレンダーに早変わりするのだ。
この大きなマーケットの中に、飾り付けられたサンタさんは合わせて何人いるのだろう? 数えながら巡ってみるのも、面白いかもしれない。
食べ物も良いけれど、お土産や雑貨、工芸品、日用品だって捨てがたい。
ざっと並べられたスノードームやツリーのオーナメント、キャンドルの数々は、見ているだけで時間があっという間に過ぎ去っていく。
木でつくられた手作りのおもちゃは、手に持つだけで暖かみが伝わってくる。
運が良ければ、屋台で少しおまけをしてもらえたり、素敵なアンティークアイテムに出会えたりするかも。
でも、良い人ばかりとは限らない。くれぐれも、スリやお釣り、値段の誤魔化しには気を付けて。
クリスマスマーケットは昼間に来ても良いだろうけれど、きっと本番は夜の方だ。
でも、夜になったら子どもたちは眠らなくちゃいけない?
いいや、クリスマスの夜は特別だ、って。子どもたちもちゃんと、楽しめる場所がある。
大きな駅舎から少し歩いた先、子どもたちの瞳に映りこむのは、スケートリンクや小さな子ども用観覧車にメリーゴーランド、ミニチュアの街中を走る機関車といったアトラクションの数々。ちょっとした遊園地みたい。
お伽話の街のようなこのクリスマスの市場を自由に巡ることができたのなら、きっと楽しいだろう。
そうだ。
そうなんだよ。
きっと楽しいはずだった。
自分に友達が居たら。成績が良ければ。もう少しだけ運動が得意だったら。きっと、この修学旅行も。
何の心配もなく、皆と一緒に楽しむことが出来たに違いないのに。
ズルい。
皆、私のことなんか小指の先ほども気にかけてないみたいに、自分たちだけで楽しんで。
憎い。
私を抜きに、クリスマスマーケットを楽しんでいるあの子たちが。
●Die Verwandlung
「自分か、周りか……。変わったのはいったい、どちらだったんだろうね?」
グリモアベースに集まった猟兵たちを前に、影杜・梢(月下故蝶・f13905)は読んでいた文庫本に視線を落したまま静かに話を切り出した。
彼女が現在進行形で読んでいる小説は、男がある朝突然、巨大な虫になってしまうという物語だ。
そう。生贄にすら出来ないほどに不浄な生物に変わってしまった、とある男の物語。
「この小説で特筆すべきところは男の姿が変わってしまったところだけど、本当に変わってしまったのは、妹や両親――周りの態度や思考だっていう考えもあるよね」
変わらない事なんて、存在しない。
予知と何か関係があるのか、一人しみじみと呟いてみせる。
「男が虫じゃなくて小鳥や猫になっていたら、他の結末もあったのかな? まあ、考えたところで今さらだけどさ」
変身した姿が、もしも可愛らしい小鳥や猫だったら。
男の家族の態度は、また変わっていたのだろうか。
微かな沈黙の後、小説の話題をそこで一区切り付けるように、梢は開いていた文庫本をパタリと閉じる。
「さて、ここで本題に入ろうか。この小説の作者の出身地でもあるドイツに、皆で遊びにいかないかい? って。ボクからのちょっとしたお誘いだよ」
あちらでは、ちょうどクリスマスマーケットが開かれている時期だから。
折角の機会なのだし、遊びに行ってはどうだろうかと梢は告げる。
「クリスマスマーケットの本場と言えば、ドイツだからね。猟書家だの何だの、年の瀬だというのに忙しいし、偶には息抜きも必要だろう?」
まるで緊張感の欠片もないような、間延びした声で梢はそう言いきった。彼女の場合は、万年息抜き状態だ――定期試験にレポート課題? 知らないね、そんなもの。
「とりあえず、マーケットを楽しめば良いよ。あと、会場で何か異変が起こったら……サクッと解決して貰えると嬉しいな」
――仲間外れが悲しくて。邪神と契約してしまった、彼女たちの分まで。
「どうせ変わってしまうのなら、少しでも良い方向に変わりたいものだよね。今年も残り僅か。キミたちにとって、良い思い出になることを願っているよ」
閉じた文庫本を右手に抱えたまま、梢はひらひらと左手を振ってみせる。これで話はお終いのようだ。
「……そうそう。今年は何故か会場周辺で盗難事件が多発しているみたいだから、気を付けて。最も、キミたちなら大丈夫だと思うけどね」
送る間際になって思い出したのだろう。サラリと重要な情報を付け加えると、梢は今度こそ猟兵たちを送り出したのだった。
夜行薫
●
お久しぶりです、もしくは初めましてでしょうか。未だにウムラウトの発音は苦手、時刻は毎回少し考えてしまいます。夜行薫です。
今年こそはじっくりと時間をかけて巡りたかった。そんな思いを込めて書きあげたオープニングです。
今回は、本場ドイツでのクリスマスマーケットのお誘いを。
情勢的に呑気に旅行とは行かない世の中ですが、此処だけでも楽しんで頂ければ幸いに思います。
それと、UDC討伐も忘れずに。
●目的
『クリスマスマーケットを楽しもう!』
『一般人に危害が及ぶ前に、UDCの企みを阻止する』
上記二つとなっております。
●クリスマスマーケットについて
場所はドイツの某都市。時刻は夕方~夜を想定しています。
食べ物や飲み物の屋台から、クリスマスオーナメント、雑貨や工芸品を販売する屋台、移動式の小さな遊園地まで、色々とあります。
言葉の壁は世界の加護があるので、問題ないでしょう。
思い思いに過ごしていただければと思います。
●プレイングの受付/リプレイについて
各章とも、MSページでご案内させていただきます。
全員の描写を目指しますが、力及ばず流れてしまったら申し訳ございません。また、再送をお願いする可能性がございます。
第1章 日常
『【Q】旅行とかどうでしょう』
|
POW : とにかく気力体力の続く限り、旅行先を満喫する
SPD : 旅行先で目ざとく面白いものを見つけて楽しむ
WIZ : 事前に下調べを行い、綿密に計画を立てて楽しむ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Frohe Weihnachten
夜が近づくにつれて、まるで地上に星々が落ちてくるように、次々に灯り始めるイルミネーションの灯り。汚れ、傷のついた石畳はそれだけ多くの人々が歩いた証なのだろう。
駅から歩いて少しの広場には沢山の人々が行き交い、屋台の棚には少しの隙間もないくらい大量の商品が並べられていて。屋台の屋根の上にも人形や飾りが賑やかに飾り付けられ、マーケットに彩りを添えている。
屋台で売られている商品も実に様々で、売られて無いものを探す方が難しいと思えてしまうくらい。
クリスマスシーズン定番の、ツリーオーナメントやスノードーム、キャンドルにキャンドルホルダーは外せない。手袋やぬいぐるみ、文房具といった雑貨小物も、クリスマスマーケットでは買えてしまうらしい。それでも、一部にサンタさんの刺繍が施されていたり、カラーリングがツリーを彷彿させるものだったりと、クリスマスマーケットで購入したものであることを程よく思い出させてくれる。
屋台の一角に並べられたアドベントカレンダー。アドベントカレンダーって、子ども向けしれない? そんな疑問を一瞬で吹き飛ばしてしまうように、隣にお菓子の代わりにテーバッグやコスメの入った大人向けのカレンダーも売られている。
クリスマスのお菓子として今や日本での有名なシュトーレンやレープクーヘン、プレッツヒェンは此処にいることがさも当たり前だというように、あちこちの屋台でその顔を覗かせ。有名なお菓子の他に、郷土料理の臭いも鼻腔を擽って走り去っていく。少し探せば、クリスマス限定の形をしたり、包装に身を包んだりしたお菓子と出会えるかもしれない。
お菓子の他にも、世界的にドイツと言えばなビールやソーセージだって。クリスマスマーケットならではの、シナモンやクローブを始めとする数種類のスパイスが入ったグリューワインやホットドリンクは外せない!
飲み物の注がれるマグカップは都市や年度でデザインが変わるから、コレクションとして集めている人も意外と多いんだとか。
期待に目を輝かせた子どもたちが並んでいる小さな観覧車は残念ながら子ども向けだけど、スケートリンクや精巧につくられたミニチュアの街を走り抜ける機関車は大人でも利用できる。
短い日が西の向こうに姿を消して。それからが、このマーケットの本番だ。
食事に遊び、ショッピングやお土産に至るまで。誘惑や興味を惹かれるものばかり。さあ、何処から巡ろうか?
雨宮・新弥
◆
まーくん(f01832)やべぇ。ツリーでけぇ。
この光景だけでテンション上がるよなぁ
とりあえずマグカップ確保だろ
そんで、シュトーレンの味比べだろ?アプフェルクーヘン、プレッツェルと…ソーセージは外せねえし。ビーフシチューも美味そう。
やべー。食いたいもんありすぎて俺が足りねェ
まーくん一緒に食って。
待って普段自撮りしねえからベスポジわかんねぇ(ごつん)
そういや去年はプレゼント交換とかしたっけ…
せっかくだし、今年もどうよ?
んぁ?ばっちし空いてる空いて、る……、
なー。ピアスってさ、基本二個入りだよな。
…いやぁ…言い出しといてだけど、さっき、ちょ~っと、散財しすぎちゃったっつうかぁ…
…いいじゃん、なっ?
新堂・十真
◆
やっぱ海外はスケール大きいよなぁ、ツリーもさ
シンちゃん(f04640)も、たまには見上げる側の気分味えて良いだろ
ははっ、シンちゃんテンション上がりすぎ
そういうとこ、子供のころから全然変わんないよな
飯も頼みすぎだし……しゃーないな、シェアしよ
せっかくだから写真もとろーぜ
自撮りモードで良いっしょ? ほら、もーちょっと寄って
なんやかんや言って、一年の中じゃ大きいイベントだからなぁ
ん、プレゼント交換すんの?
じゃ、今年は何にしよっかな
……んー(シンちゃんの耳をつまみつつ)
や、プレゼント選ぶのにさ、ピアス穴ふさがってないかなって
大丈夫そう?
…………あ、そう。じゃあ……シェア、する?
●
妖精たちが祝福を授けに来ているのだろうか。青に白、白から金へと移り変わる煌めきを身に纏い、大きなモミの木は幻想的な輝きを放っている。
20mを超える巨大なクリスマスツリーの存在は、マーケットのちょっとした道案内役をかって出られるくらいには目立っていた。
「まーくんやべぇ。ツリーでけぇ。この光景だけでテンション上がるよなぁ」
「やっぱ海外はスケール大きいよなぁ、ツリーもさ」
そう。何もかもが桁違いだ。周囲に並ぶ屋台の数も、賑わう市場を歩む人々も、施されるイルミネーションの規模も。そして、目の前に聳え立つツリーの大きさも。
間近で並んで見上げれば、遠くからその姿を眺めるよりも、より大きさを感じられる。
「シンちゃんも、たまには見上げる側の気分味えて良いだろ」
雨宮・新弥(宵待人・f04640)の幼馴染みであり、普段はその新弥を見上げる側でもある新堂・十真(ライトネスハート・f01832)は、隣でツリーを見上げている新弥に話しかける。
身長のお陰で、どうしても見下ろす側になることが多い彼のことだ。偶には別の立場になってみることも新鮮だろう。
「ツリーも見たし、そろそろマーケット巡りといくかぁ。とりあえずマグカップ確保だろ。そんで、シュトーレンの味比べだろ? 後はアプフェルクーヘン、プレッツェルと……」
「ははっ、シンちゃんテンション上がりすぎ。どれだけ頼むつもりなのさ」
ソーセージは外せねえし。ビーフシチューも美味そう。
視界一杯に広がる食べ物の屋台。どれか一つに絞ることなんて到底できそうにない。
興味と誘惑の赴くままに。この街の名所である市庁舎や宮殿が印刷されたマグカップに、異なる屋台で購入した味も形も違った数種類のシュトーレンに――。
屋台から屋台へ。片っ端から食べ物を買いに走る新弥の姿を、十真は微笑ましさと若干の呆れが入り交じった表情で眺めていた。
「やべー。さすがに買いすぎたかも。食いたいもんありすぎて俺が足りねェ。まーくん一緒に食って」
「そういうとこ、子供のころから全然変わんないよな。飯も頼みすぎだし……しゃーないな、シェアしよ」
広場の片隅に置かれたテーブルに2人揃って座る頃。
それでも、新弥が我に返るには少し遅すぎたらしい。2人掛けのテーブルの上に並べられた料理の数々は、とても1人では食べきれないほどの量になっていた。
「せっかくだから写真もとろーぜ。自撮りモードで良いっしょ? ほら、もーちょっと寄って」
「待って、普段自撮りしねえからベスポジわかんねぇ」
買いすぎたことに違いはないが、テーブルに敷かれた真っ赤なテーブルクロスに中央に灯るLEDのキャンドル、それに主役である屋台の料理たち。まるで小さなパーティーのような様相は、写真映えすることは間違いない。
テーブルと自分たちが丁度良い具合に映る角度を模索しながら。十真はスマホを片手に携えたまま、新弥にもう少し寄るようにジェスチャーを送る。
……そう。あくまで「もーちょっと」と十真は言っただけで、決して「勢いよく近づいて」と声をかけた訳ではない。テンションがそのまま行動の勢いにまで現れてしまったのか、新弥の頭が十真にごつんとぶつかった。
「……シンちゃん、勢い良すぎ。ブレたらどうしてくれるの」
「ゴメンって。でも、まーくんナイス。良い感じに写ってる」
若干の痛みが残る側頭部をさすりながらも、十真はシャッターをしっかりと押していた。画面に表示された写真は、十真の狙い通りの構図で写されている。
「なんやかんや言って、一年の中じゃ大きいイベントだからなぁ」
「そういや去年はプレゼント交換とかしたっけ……せっかくだし、今年もどうよ?」
「ん、プレゼント交換すんの? じゃ、今年は何にしよっかな」
屋台の料理に舌鼓を打ちながら、食事の話題に上ってきたのは去年のクリスマスのこと。お互いに、ピアスと手袋を贈り合ったのだ。
「……んー」
今年のプレゼントはどうしようか。考え始めた十真の視界に飛び込んできたのは、短く切り揃えられた黒髪から覗く新弥の耳だった。
徐に自分の耳を摘まんだ十真に、どうしたのかと新弥は食べていたビーフシチューから十真へと意識を移動させていく。
「や、プレゼント選ぶのにさ、ピアス穴ふさがってないかなって。大丈夫そう?」
「んぁ? ばっちし空いてる空いて、る……」
勢い良く「空いている」と言いきろうとして。途中で何かを思い出したのか、新弥の歯切れが妙に悪い。何だろう。良くない予感がする。
「……なー。ピアスってさ、基本二個入りだよな」
「ピアスなんだから、当たり前じゃん」
「……いやぁ……言い出しといてだけど、さっき、ちょ~っと、散財しすぎちゃったっつうかぁ……。……いいじゃん、なっ?」
「…………あ、そう。じゃあ……シェア、する?」
十真が返事を返すまでの、短いようで長く感じられた数秒間。その間の沈黙が雪のような冷たさを纏って新弥に降り注いだのは、きっと気のせいではないだろう。
食べきれないほどに料理を買い込んだ挙句、プレゼント交換を言い出して、それを買うだけのお金が心許ないと来た。
それでも何故だか憎みきれない目の前の存在に、十真は軽く息を吐き出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
笹塚・彦星
【星雨】
伊能龍己(鳳雛・f21577)と参加
ちゃんと温かい格好してきたか?風邪引かねぇようにな。
俺はちゃんとコートとマフラーで防寒バッチリ。
まず何か…お、ホットワインある。ノンアルのもあるな。俺は最初これにしよ。龍己も飲む?
んーうま。大人になったから飲んでみたかったんだよなこれ。
飲み物片手に食い物もいい。このままオーナメントやスノードームなんかの土産物見てもいいかも。うろきょろしてるから、さり気なく人にぶつからない様に手を引いてやろうか。
…ツリーは事務所にあったから、ちょっとしたオーナメント買ってこうかな。雪だるまの可愛い物とか、変わり種の物もいいかもしれねぇ。
いいのみっけた?
伊能・龍己
【星雨】
笹塚・彦星(f00884)先輩と一緒に
はーい、先輩。あったかい格好してきました
マーケットの雰囲気にわくわくするまま、手袋つけた手をちょっと挙げたり
(先輩と一緒、とっても楽しみにしてたんすよね)
ホットワイン、ですか?はい、ノンアルの方飲んでみたいです
あったかくて美味しいですね
俺も大人になったら、お酒の方も飲んでみたいっす
(大人になった時、また先輩も一緒にいてくれるかな、とか。そんなこと考えたり)
屋台もおみやげも見て回るのが楽しくて、きょろきょろ
バイト先のツリーが思い浮かんで、お店の飾りに目を留め
サンタさんのとか、可愛いっすね
あ、こういうベルとかどうっすかね
●
冬が一年の中で最も寒い季節であることは、何処の世界でも同じこと。
それでも北の方に位置するこの国の冬は、日本より寒さも冷え込みも格段に激しいもので。
降雪が多く日照時間も短いため、16時を過ぎる頃にはもう辺りが暗くなってしまう。晴れることも少ないため、旅行に行くうえで防寒対策は必須であった。
「ちゃんと温かい格好してきたか? 風邪引かねぇようにな」
「はーい、先輩。あったかい格好してきました」
コートとマフラーを華麗に着こなし、バッチリ防寒対策を施してきた笹塚・彦星(人間の剣豪・f00884)がすぐそばを歩く伊能・龍己(鳳雛・f21577)に問いかける。
賑やかなマーケットにちらりちらりと視線を投げかけながら、龍己は手袋つけた手をちょっと挙げてみせたりなんかして防寒対策は抜かりないことを伝えるのだ。
(「先輩と一緒、とっても楽しみにしてたんすよね」)
気心の知れた先輩と一緒にお出かけというだけでもワクワクするのに、目の前に広がるのはまるで絵本の世界から抜け出してきたようなファンタジックな街並みだ。浮足立つ雰囲気に促されるまま、少しだけ足早になった歩みでマーケットへと足を踏み入れる。
「まず何か……お、ホットワインある。ノンアルのもあるな。俺は最初これにしよ。龍己も飲む?」
「ホットワイン、ですか? はい、ノンアルの方飲んでみたいです」
日も落ちて後は段々と気温が下がるだけ。そうなる前に何か身体が温まるものを、と彦星がマーケットを見渡した先に発見したのは、ホットドリンクを販売している屋台だ。
幾らかのお金と引き換えにワインとノンアルコールドリンクを購入すれば、飲み物が並々と注がれたマグカップを手渡される。マグカップを受け取った後、店主のウインクと共に差し出されたツリーやスターを模したレープクーヘンはサービスなのだろう。
2人の手に収まった雪だるまの表情は、先ほどの店主と同じようなウインクを浮かべていて。雪だるまを象った可愛らしいデザインのマグカップとは反対に、注がれた飲み物から漂う香りは少しスパイシーなものだ。
「んーうま。大人になったから飲んでみたかったんだよな、これ」
「あったかくて美味しいですね。俺も大人になったら、お酒の方も飲んでみたいっす」
今年の7月に20歳になったばかりの彦星は、かねてより興味があったホットワインを飲むことが出来て満足げ。甘めな味付けも、彦星の舌に合っていたよう。
味は大きく変わるはずないのだが、龍己はそれでも先輩が手にするアルコール入りの方が気になってしまう。
(「大人になった時、また先輩も一緒にいてくれるかな、とか」)
ホットドリンクで暖を取りながら、心の中でそんなことを考えていたり。
遅れて生まれただけの年数。自分が成人を迎えるまでの数年が、非常にもどかしいものに感じられたから。
「龍己が大人になったら、一緒に飲めると良いな」
「そうっすね」
大人になった時、一緒に先輩とお酒が飲めるように。そう胸の中でこっそりと願ったのは、龍己だけの細やかな秘密に。
マグカップとクッキーをマーケット歩きのお供に、2人は屋台やおみやげを見て回る。
屋台の飾りつけも個性があって、売られているおみやげもまたそれぞれで。そして、手元にはスパイスの利いたドリンクと相性の良い甘いレープクーヘン――あっちを見たりこっちを見たりと、とりわけ龍己は忙しそう。
人にぶつからないように、迷子になってしまわぬように。彦星はうろきょろしてる龍己の手を、実にさり気なく手を引いて歩いていた。手を引きながらもオーナメントやスノードームといったお土産を探しているのだから、抜け目がない。
そうしてマーケットでお土産を見て回ること、少しの間。店先に並べられたオーナメントの数々に、バイト先のツリーの存在を思い出した龍己がお店の前で足を止めた。
「折角だし見ていくか? ……ツリーは事務所にあったから、ちょっとしたオーナメントでも買って行こうか」
彦星は提案に二つ返事で頷いた龍己と共に、並べられたオーナメントへと手を伸ばす。
折角なのだから、木彫りの雪の結晶の中に佇む雪だるまといったマーケットならではの物や、固めに焼かれた天使やトナカイを模した装飾用のレープクーヘンといった変わり種なんかを中心に。
「サンタさんのとか、可愛いっすね。あ、こういうベルとかどうっすかね」
「いいのみっけた? こっちのコレとか良さそうだよな」
「はい、見つけたっす。先輩のも良いっすね」
ふさふさのお髭を生やした愛らしいサンタさん人形も捨てがたいが、隣に並ぶ金古美のベルも捨てがたい。細かな装飾の刻まれたベルは、如何にもアンティークだとおいうという雰囲気を醸し出しているのだから。
思い思いに選んだツリーのオーナメント。それらはそれから程なくして、2人の手元に収まるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
臥待・夏報
◆
風見くん(f14457)と
夏報さんも、南極じゃない海外旅行は初めてかな
といっても言葉が通じちゃうから、どっちかというと遊園地に来てる気分かも……
街並みもまるで可愛い絵本や積み木のおもちゃみたいで
これが全部本物だって思うとなんだか不思議だ
ふたり並んで歩く間に陽が落ちて
冷える身体をグリューワインで温める
口当たりがいいから何杯でも行けちゃいそうだけど……酔いつぶれたら大変だもんね
風見くんもあんまり浮かれて迷子になっちゃだめだよ
欲しいぬいぐるみが居たらまず夏報さんに見せるんだぞ
うーん
可愛いもの全部は買えないし、お土産は厳選しなくっちゃ
まず、このマグカップかな
なんだかんだ持ち歩いてたら愛着湧いちゃった
風見・ケイ
◆
夏報さん(f15753)と
私、海外旅行って初めてです……異世界には何度も行っているのに
映画の中に入り込んだような、華やかな街並み
……確かに、吹き替え映画を観ている気分です
それじゃ、本物かどうか確かめに行きましょう
甘酸っぱいグリューワインに、隣には夏報さんがいて
芯から温まるな……おかわりしたくなるけど、今は程々に
見たことない屋台から、焼き栗なんて見慣れたものまで
可愛い雑貨もたくさんあって目移りしてしまいます
はい夏報先生……なんちゃって
もう、迷子になんてなりませんよ――探偵ですから(テディベアに伸ばしかけた手をこっそり戻す)
私もこのカップが、想い出のひとつ目かな
お揃い……といっても、みんなそうか
●
幾つもの世界を渡り歩く猟兵にとって、異世界とは実に身近な存在だ。
それでも、その殆どがオブリビオンの引き起こす事件や調査絡みなのだから、単純に旅行やお出かけとして各地を見て回る機会は存外少ないのかもしれない。
「私、海外旅行って初めてです……異世界には何度も行っているのに」
「夏報さんも、南極じゃない海外旅行は初めてかな」
だからだろうか。思わず零れ落ちた風見・ケイ(星屑の夢・f14457)の呟きに、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)も同意を示す。
広場を取り囲むのは、形はそっくりだけど、色彩の異なるレンガで作られた建築物たち。建物に等間隔にはめ込まれた小さな窓ガラスは、日暮れを目前に灯りだしたイルミネーションの光を一身に反射させている。200年近く昔の街並みを今も色濃く残す市街地は、中世でその刻を止めたまま今に至る。
中世で刻の止まったこの街を歩けば、華やかな市街が舞台の映画に誘い込まれたような、不思議な気分になってしまうのだけど。
「といっても言葉が通じちゃうから、どっちかというと遊園地に来てる気分かも……」
「……確かに、吹き替え映画を観ている気分です」
悲しいかな。世界の加護をもってしたら、地元の人々の世間話も、観光客のお喋りも、全て等しく同じ言葉で聞こえてしまう。
お節介な世界の加護の存在に少しテンションが下がりかけた気がしないでもないが、クリスマスの絵本や積み木を彷彿とさせる可愛らしい街並みに、好奇心が擽られるのもまた事実。
「――これが全部本物だって思うとなんだか不思議だよね」
「それじゃ、本物かどうか確かめに行きましょう」
この街並みが幻かどうか。それは自分の目で歩いて確かめることが一番だろう。
夏報とケイ。マーケットを往く2人分の影が石畳の広場に長く伸びて、2人の後を追いかける。太陽は遠く霞む街並みの向こうに隠れ去って、それから少し遅れて空が深い藍色へと染まっていくのだ。
日が落ちて、頬を掠めていく風もさらに冷たいものに変わるから。どちらからともなく、マーケットのグリューワインに目を留めるのだった。
「芯から温まるな……おかわりしたくなるけど、今は程々に」
「口当たりがいいから何杯でも行けちゃいそうだけど……酔いつぶれたら大変だもんね」
「シュトーレンとの組み合わせも合いますから、つい……と思ってしまうのですが」
「食べ過ぎ飲み過ぎはいけないよ」
グリューワインはシナモンを始めとする数種類のスパイスが利いていて、身体がポカポカと温まる。蜂蜜が入っているからか、口当たりもあっさりとしていて飲みやすい。
ワインが売られていた隣の屋台で購入した、スライスされたシュトーレンとの組み合わせも抜群で。
つい何杯もおかわりしたくなるところを、ケイはグッと堪えて自分自身に言い聞かせた。
「Fröhliche Weihnachten & einen guten Rutsch ins neue Jahr 2020」と美しい筆記体で刻まれたブーツ型の赤いマグカップを両手で持ちながら、ケイの隣でグリューワインを飲み進める夏報。そんな彼女の視界の端で、酔い潰れた地元のオジサンたちと思しき集団がテーブルを占拠した挙句、何とも楽しそうな笑い声をあげている。酔い潰れた結果の、とても分かりやすい結末だ。
「風見くんもあんまり浮かれて迷子になっちゃだめだよ。欲しいぬいぐるみが居たら、まず夏報さんに見せるんだぞ」
「はい夏報先生……なんちゃって。もう、迷子になんてなりませんよ――探偵ですから」
ワイン注がれたマグカップを片手に持ち、のんびり歩くのは雑貨やぬいぐるみの屋台が並ぶマーケットの一角。
ふわふわとした冬らしい可愛らしい雑貨や、焼き栗なんかの屋台まで。ケイの視線はあっちへこっちへ蝶のように飛び交っていて。
明るく軽い調子で告げられる夏報の言葉に、ケイもおどけたように返事を返す。
……返事をしつつもケイが手を伸ばしかけた先に、もふもふとした愛くるしいテディベアが居たことは、きっと見間違いなのだろう。ベッドに並ばせるには、丁度良いサイズ感のテディベアが居たことは――。
「うーん。可愛いもの全部は買えないし、お土産は厳選しなくっちゃ」
ぬいぐるみに視線が向かうケイの横、真剣な表情でお土産の厳選に勤しみ始めるのは夏報だ。
ちまっとしたトナカイとサンタの置物に、小さな家を模したキャンドルホルダーとキャンドル。
目移りするものは多いけど、その全部を買っていたら財布が持たないし、持ち運べる量も限られてくる。名残り惜しさを感じながらも、厳選する他ならなかった。
「まず、このマグカップかな。なんだかんだ持ち歩いてたら愛着湧いちゃった」
「私もこのカップが、想い出のひとつ目かな。お揃い……といっても、みんなそうか」
「でも、夏報さんとお揃いであることに違いはないんだぞ」
持ち歩くうちに、愛着が芽生えたブーツ型のマグカップ。似たような形をしていても、夏報とケイの想い出が詰まったマグカップはこの世に2つしか存在しないのだから。
カップに続く想い出のふたつ目、みっつ目を探すため。2人のお土産探しはまだまだ始まったばかりだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィリアム・バークリー
同行:オリビア・ドースティン(f28150)
同じ世界の中でも、日本とは全然違うね。
それじゃ、ヴァイナハツ・マルクトを楽しもう。さあ、クリスマスツリーの下から出発だ。
うん、やっぱりまずは温かいものから行きたいね。グリューワインの代わりに、ホットのブドウジュースのキンダープンシュ。
ん、シナモンの風味がスパイシー。温まるね、オリビアさん。
マグカップ、記念にいただいて帰ろう。
飲むだけじゃなく食べ歩きもしたいよね。まずは定番のヴルストから。って、こんなに種類あるんですか? じゃあ、定番のものを三種類くらいお願いします。
うわ、歯ごたえが日本のものとは全然違う。
しっかり楽しんだよね。そろそろお仕事の時間だ。
オリビア・ドースティン
【同行者:ウィリアム・バークリー(f01788)】
「ウィリアム様はお誘いありがとうございます、良い思い出をつくりましょうね」
そして二人で出発です
まずは暖まる為にホットドリンクからですね。お薦めの物をいただきましょう。
「素敵なデザインですし記念になりますね」
次は食べ物ですね
「私はレープクーヘンとカリーブルストにしましょうか」
両方ともドイツでは有名ですしせっかくなので本場の味を知りたいところです
「本場の空気も合わさって凄く美味しいですね、ウィリアム様も一口いかがでしょうか?」
(切り分けたカレーブルストをフォークに刺して差し出しつつ)
では楽しみましたしそろそろ仕事にとりかかりましょうか
●
同じ世界に存在する国同士であっても、場所や文化、歴史が違えば、街並みもガラリと変わるもの。
日本では珍しいが、この国では身近に存在する、何処までも広がる石畳の広場を踏みしめながら、ウィリアム・バークリー(“聖願(ホーリーウィッシュ)”/氷聖・f01788)は、周囲をぐるりと見渡して息を吐いた。
感じられる日本とは空気もまるで異なって、日本の冬よりも幾分か凍り付いた吐息が宙へと昇っていく。
「同じ世界の中でも、日本とは全然違うね」
「はい、日本とは違った街並みが広がっていますね」
オリビア・ドースティン(西洋妖怪のパーラーメイド・f28150)は、そんなウィリアムに同意を示しつつ、お誘いへの礼も忘れずに告げていた。彼女の瞳にも、しっかりと異国の風景が映りこんでいる。
日本の一般的な家々よりも幾分か大きい建物たちは、とてもお掃除のやり甲斐がありそうだ――。
「ウィリアム様はお誘いありがとうございます、良い思い出をつくりましょうね」
「こちらこそ。それじゃ、ヴァイナハツ・マルクトを楽しもう。さあ、クリスマスツリーの下から出発だ」
クリスマス前のこの時期にしか体験することのできない、またとない機会なのだ。良い思い出を作るためのプランは、しっかり考えられていた。
ウィリアムの声を出発の合図に、2人はクリスマスツリーの下から歩き出す。マーケットへと繰り出すウィリアムとオリビアの姿を、見送るようにツリーが輝きを放っていた。
「うん、やっぱりまずは温かいものから行きたいね。キンダープンシュとか」
「日本よりも寒いですから、温まる飲み物が欲しくなりますね。私はお薦めの物をいただきましょう」
厳しい寒ささえ、地平線の向こうへと吹き飛ばしてしまいそうなほどに賑やかなマーケット。だけど、手ぶらで歩くには少し勿体ない気がするし、何より寒い。
暖まるためにも、と向かう先にはホットドリンクの屋台が。
「ん、シナモンの風味がスパイシー。温まるね、オリビアさん」
「お勧めであるだけあって、美味しいですね」
ウィリアムが頼んだのは、ブドウジュースを主として作られたキンダープンシュ。シナモンを始めとするスパイスと、リンゴジュースも少しだけ入っているようで、甘くもスパイシーな味わいとなっている。
オリビアは屋台の店員お勧めの、オレンジが加えられたキンダープンシュを受け取っていた。さっぱりとした甘口で、これなら幾らでも飲めてしまいそうだ。
「マグカップも素敵なデザインですし、記念になりますね」
オリビアとウィリアムの手に握られたマグカップには、雪の降るこの街とクリスマスマーケット、そして2人のお出かけの出発地でもあるクリスマスツリーの可愛らしいイラストが描かれている。クリスマスマーケットの良い記念になるだろう。
「飲むだけじゃなく、食べ歩きもしたいよね」
だけど、クリスマスマーケットの楽しみは飲み物だけに限らない。
有名なヴルストやシュトーレン、バウムクーヘンなど、食べ物も美味しそうなものばかりで。
「まずは定番のヴルストから――って、こんなに種類あるんですか?」
まずは定番にして有名なヴルストから、と屋台に並べられたヴルストを見たウィリアムはその瞳を丸くさせる。
ウィリアムの反応に、笑いながら説明してくれた店主曰く、本当に数えきれないほど沢山の種類があるらしい。
「じゃあ、定番のものを三種類くらいお願いします」
「私はレープクーヘンとカリーブルストにしましょうか」
屋台に並べられているだけでもそれなりに数になるため、定番のものを頼むことに決めたウィリアム。ウィリアムの後で、本場の味を体験してみたいと思っていたオリビアはレープクーヘンとカリーブルストを注文していた。
ウィリアムはヴァイスヴルストとニュルンベルガーヴルスト、ラントイェーガーとパンの乗った皿を、オリビアはカリーブルストとポテトの乗った皿と小袋に包装されたレープクーヘンの包みをそれぞれ受け取り、歩き始める。
「うわ、歯ごたえが日本のものとは全然違う」
「本場の空気も合わさって凄く美味しいですね」
さすが本場と言うべきか。ハーブの香ばしい匂いがウィリアムの食欲をそそる。一口齧ってみると、じんわりとした旨みが口内に広がった。
顔を綻ばせるウィリアムの隣で、オリビアはカリーブルストを切り分けていた。こちらもこちらで、溢れる肉汁とピリッとした味付けが堪らない。付け添えのポテトとの相性も最高だ。
「ウィリアム様も一口いかがでしょうか?」
「良いかな? じゃあ、こっちのヴルストも」
切り分けたカリーブルストをフォークに刺して差しだしてみせたオリビアに、お礼にと、ウィリアムもまた切り分けたヴァイスヴルストをオリビアに差し出す。
そうして、2人の皿が空になる頃には、それなりにお腹も膨らんでいた。味わった飲み物や食べ物は、良い思い出の1ページだ。
「では、楽しみましたし、そろそろ仕事にとりかかりましょうか」
「うん、しっかり楽しんだよね。そろそろお仕事の時間だ」
このまま楽しみたいけど、そろそろお仕事の時間だ。2人は気を引き締めて、クリスマスマーケットの調査を始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『窃盗事件の調査』
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POW : 強引な手段を用いた現場調査や、気迫のこもった聞きこみで情報を得る
SPD : フットワーク軽く現場を回ったり、多くの人から話を聞くことで情報を得る
WIZ : わずかな手がかりから、推理力や論理的思考力、魔法力を駆使して情報を得る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「それじゃあ、なんってたって言うんだい? 君が瞬き一つする間に、僕が君に預けていたカバンが忽然と消えたとでも? まるで魔法でも掛けられたみたいに? そんなこと、あるわけないだろう!」
「Toi toi toi! アンタらの旅の幸せを祈ってるよ!」
「『クリスマスマーケットマンキツ中だぞ☆ でも置き引きされちゃった、ぴえん』と――……まーァ、呟いてる場合じゃないんだけどぉー……」
日も落ちて本格的な夜を迎える時間帯に差し掛かった。少し広場の雑踏に耳を傾けるだけで、古今東西様々な人々の話声が耳に届く。
楽しそうな話題もあれば、その一方で、どこか不安を感じる穏やかではない話も。
……そう。確かにここに来る前、何処かのグリモア猟兵は「今年は何故か会場周辺で盗難事件が多発している」とは言っていた。それでも、何らかの異常を感じられるほどの件数だ。
マーケットを歩くだけでも、窃盗事件に巻き込まれたと思しき人間の話声が耳を通り過ぎていく。
そんな時だ。
マーケットに溢れかえる人波に紛れて走り去っていく”少女”の後ろ姿を見かけたのは。
何故か焦っているような取り乱し具合に、手に握られていたのは学生には似つかわしくない、高価なブランド品のバッグ――。
猟兵たちは直感で“少女”が人間ではないことを感じ取る。
彼女――いや、被害の多さを見るにきっと複数だ。彼女たちを放っておけば、きっとロクなことにならない――そんな予感がした。
●
幸せな人たちが憎かった。
今日は特に、本当に楽しそうにマーケットを巡る人間を何人も見かけていたから。普段以上に感情をかき乱された。
でも、最高の想い出を最悪な悪夢に変える方法を、私は知っている。
ほら、仲間外れにされた挙句、散々”遊んでもらった”修学旅行で、奴らが実践してくれたから!
旅行中に物を盗まれる。それだけで、素敵な旅行が思い出したくもない悪夢に変わる。
財布に、私物。お土産に、大切な情報が入ったスマートフォン。何一つ戻ってくることはなくて、盗まれたものをダシに脅されるんじゃないかと、ずっと怯えていた。
だから。
【補足説明】
※窃盗犯の少女たち(UDC)を探せ! な第2章です。
窃盗犯とは言えど、素人かつ元の能力がダメダメであるため、食べ歩きしているだけでも何らかの情報は手に入るでしょう。
引き続きマーケットを楽しみながら行方を追うか、それともしっかり調査するかはご自由に。
なお、ダメダメな自分を変えるために邪神と契約してしまった少女は一人だけではありません。複数の少女たちがマーケット内に紛れ込んでいます。
ウィリアム・バークリー
同行:オリビア・ドースティン(f28150)
窃盗事件ねぇ。大虐殺でないだけマシだけど、“彼女”たちはどうして盗みを働いてるんだろう?
ぼくはオリビアさんと並んで幸せそうなカップルを演じる。実際にそうならいいのに。
荷物を盗まれたら、Stone Handで少女を拘束する。
強大なオブリビオンならともかく、素人同然じゃこの腕からは逃げられないよ。
さあ、大人しく品物を返して。
それからぼくらとお話しよう。「優しさ」で接する。
君はどうして泥棒をしてるの? 見た感じ悪事に手を染めている感じはしないんだけど。
誰かに命じられてのことかな? それとも、自分でも分からない感情が心に渦巻いてる?
とにかく、拠点に案内して。
オリビア・ドースティン
【同行者:ウィリアム・バークリー(f01788)】
事件も掃除と一緒で小さな汚れが大きな汚れになりますしきっちり解決しましょう
「第六感」や「見切り」を使いウィリアム様の隣で待機
またお土産を覗かせているバックを片手に持っています(囮用)
近くで見つけたり囮にかかったら素早く確保
品物は無事ですね。
初犯かどうか分かりませんがなんでこんな事をしてるのですか?
「演技」も使いウィリアム様の優しさを感じられるように強めに当たります
自分が不幸にされたら他人を不幸にして良いという免罪符は存在しないのですよ?
今が引き返せる最後のチャンスかもしれませんがどうしますか?
ウィリアム様と連携して情報を聞き出したいですね
●
一休みするように建築物の背にもたれて雑踏に目を向けているのは、一見すると観光の為にこの地を訪れた幸せそうなカップル――のように見えるが、それは調査のための仮の姿だ。
オリビア・ドースティンは物珍しさにキョロキョロと辺りを見回すふりをして、物を盗んで走り去った少女たちを探していた。無警戒な様子を振舞いつつも、内心では警戒を緩めていない。
少女たちを探すオリビアの隣でウィリアム・バークリーは顎に手を当て、彼女たちの目的について思考を巡らせている。
「窃盗事件ねぇ。大虐殺でないだけマシだけど、“彼女”たちはどうして盗みを働いてるんだろう?」
「理由は気になりますが、事件も掃除と一緒で小さな汚れが大きな汚れになりますし、きっちり解決しましょう」
賑やかなマーケットの裏で暗躍しているUDCと思しき少女たちの存在。窃盗する理由は気になるところだが、それは後で問い詰めれば良いだけのこと。
今は窃盗だけで済んでいるが、それもいつまで続くか不明なのだ。もしかしたら、明日には人を傷付けてしまうかもしれない。
事件も掃除も、初期対応が重要になってくる。早いうちに解決しましょうと意気込むオリビアの横顔を、ウィリアムはこっそりと眺めていた。
(――実際にそうならいいのに)
端から見れば、幸せいっぱいのカップルに見えるのだろう。それが現実のものならばと思わなくもないが、とりあえず、今は事件解決に向けて集中すべきだ。ウィリアムは頭を振ると、意識を切り替える。
「この辺りにはいないようですね。移動しましょうか?」
「そうだね。少し中心部から離れてみようか」
囮として用意したお土産がたくさん入ったバッグを掲げながら切り出されたオリビアの提案に、ウィリアムも2つ返事で賛成を返す。他の所を歩いてみれば、遭遇できるかもしれない。
そうして中心部から離れ、人通りの疎らな路地を歩いて数分経った頃か――突然、オリビアの持っていたバッグが背後から走ってきた何者かに盗られたのは。
「! 早速姿を現したようですね」
「捕獲は任せて! 強大なオブリビオンならともかく、素人同然じゃこの腕からは逃げられないよ。Stone Hand!」
オリビアの声にウィリアムは即座に反応を示すと、地面から岩石で出来た大地の精霊の腕を少女の進路状に放った。突然地面から現れた腕にぶつかる格好になった少女は、そのまま反撃らしい反撃をする間もなく、精霊の腕に身体を捕縛されることになる。
「さあ、大人しく品物を返して。それからぼくらとお話しよう」
目線を合わせて、努めて優しく。追いついたウィリアムが諭すと、逃げられないと観念したのだろうか。少女は俯き加減で少し躊躇った後、手に持っていたバッグを2人に向かって差し出した。
「品物は無事ですね。……初犯かどうか分かりませんが、なんでこんな事をしてるのですか?」
バッグごと品物を受け取ったオリビアはすぐにお土産の傷の有無を確認する。幸いにして、お土産の数々に傷はついていないようだ。
オリビアによる咎めを含んだ強めの当たりに、少女は更に視線を下に向ける。ごく自然な口ぶりだが、この口調も憎まれ役をかって出るためのもの。
「君はどうして泥棒をしてるの? 見た感じ悪事に手を染めている感じはしないんだけど」
市場の中心からも離れ、この路地にはウィリアムとオリビア、それから少女しか居ない。
少女が口を開くまでの数十秒か、数分か――離れた広場の雑踏が、やけに大きく聞こえたのは気のせいなのだろうか。
やがて……少女はポツリと声を零す。皆が羨ましかった、と。
「自分が不幸にされたら他人を不幸にして良いという免罪符は存在しないのですよ?」
残酷なようだが、オリビアの言葉は正しい。繰り返した分の過ちは、全て少女の罪となる。オブリビオンとなった、今でさえ。
「誰かに命じられてのことかな? それとも、自分でも分からない感情が心に渦巻いてる?」
ウィリアムの問いに、微かに首を左右に振る。少女の様子を見るに、推測通り様々な感情がごちゃ混ぜになった上での犯行なのかもしれない。
「今が引き返せる最後のチャンスかもしれませんが、どうしますか?」
引き返したところで、元には戻れない。それが分かっているのだろうか。少女は俯いたまま、黙り込んで口を噤んでいた。
「とにかく、拠点に案内して」
広い路地や細い路地、様々な路が複雑に入り組んでいるのがこの街だ。拠点が何処にあるのかも分からない今、道案内に頼るのが手っ取り早い方法だろう。
ウィリアムが少女の身を開放すると一瞬。それまでの様子が嘘のように俊敏な動きで、少女は踵を返して走り出す。
直前になって怖気づいたか、それとも、自分たちを救えるのは彼らしか存在しないと思ったのか。
少女の様子からはそのどちらでもあるようにとれたし、そのどちらでも無いのかもしれない。
道案内をするには早い速度で、しかし、逃げるには遅い速度で。少女は人気の無い、狭い路地の先を進んでいく。
ウィリアムとオリビアは顔を見合わせると、少女の後を追いかけ始めるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
風見・ケイ
◆
夏報さん(f15753)と
名残惜しいけど、お仕事の時間ですね
夏報さんが助手だったら、解けない事件はありませんね
複数の被害者から情報収集を
『こちらも何か盗まれた』というていで話しかけてみます
・二つ結びで眼鏡をかけた学生服の少女
・紺色のリュック
・ワインの店付近
……皆さん、
ワインまみれでふらついていたり
仲良く腕も指も組んだふたりだったり
そんな、一際楽しそうな方達でしたね
――よし、夏報さん
私達も、もっとこの夜を楽しみましょうか
そうすれば、その子の方から
派手な物、というと(視線の先にテディベア)
手袋を外した右手でこっそり触れて、巡り廻り目眩く
これでどうかな
(彼女の表情と言葉に赤くなって)……ありがとう
臥待・夏報
◆
風見くん(f14457)と
仕事……か。君からすれば『本業』だもんね
よし、じゃあ今日の夏報さんは探偵助手だ
という訳で、切って貼って瞬いて
それだけ犯行件数が多いなら、たとえ意識はしてなくとも、僕だって祭のどこかで彼女を『視』ているはず
風見くんの情報から時間や場所を絞り込み、いくつか写真を出して犯人の姿を探してみる
――この少女で間違いないかな
楽しむ……成程、囮作戦だね
犯人は思い出の品とか一番大事なものとかじゃなくて、単に目立つものを盗んでるように思える
何か派手なものを用意しないと……
(味わい深い顔でテディベアを見る)
……やっぱり欲しかったんだなそれ
店の人に取り置いてもらったから、後で買いにいこっか
●
名残り惜しいが、何処の世界でも楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。深まりゆく夜が、マーケットを歩く2人に仕事の時間が迫っていることを告げていた。
「名残惜しいけど、お仕事の時間ですね」
「仕事……か。君からすれば『本業』だもんね。よし、じゃあ今日の夏報さんは探偵助手だ」
「夏報さんが助手だったら、解けない事件はありませんね」
「そうそう、風見くんと2人だったら、どんな事件だって解決するはず」
探偵である風見・ケイにとって、少女探しは『本業』と言っても過言ではない分野だ。
それに今は、ケイ一人でこの場にいるわけではない。頼もしい探偵助手と化した臥待・夏報だって傍に居る。
世界的にも有名な探偵のコンビのように。現代を生きる2人は、霧の都を拠点に持つ有名な探偵と助手のタッグさえも追い抜いてしまうかもしれない。
事件解決のためにも、早速捜査を開始するケイと夏報だった。
「まずは場所の絞り込みから、ですね」
「あそこの人たちとか、それっぽいけど」
「……盛り上がっていますが、被害に遭ったことは間違いなさそうです」
捜査は足で稼げ、とは誰が言った言葉だっただろうか。目撃者や実際に窃盗事件の被害にあった人々の証言は最有力の情報となる。
円滑な情報収集を行うためにも、『同じく盗みにあった観光客』という体を装って。
ワインによく合うソーセージと同じように、窃盗被害もおつまみの一つと化してしまっている。2人は長時間テーブルを占拠してすっかり出来上がっているであろう、酒盛り真っ最中の集団に声をかけた。
「――カミさんご所望のキャンドルホルダーだ! 盗られたなんて、信じてもらえると思うか?」
「ムリだろ! 酒代に消えたって誤解されるのがオチだ、賭けても良いぜ!」
「すみません。その話を詳しく聞かせてもらいたいのですが」
「……なんだぁ? もしかして、嬢ちゃんたちもやられたのか?」
賑やかな集団を始めに、仲睦まじげな若者や、修学旅行中の学生まで。被害に遭った人たちを聞いて回ったところ、浮かんできた共通点が3つほど。
「紺色のリュックに二つ結びで眼鏡をかけた学生服の少女……」
「それから、どうもこのワインの店付近で多発してるみたいだね」
ある程度情報を集めたところ、ここで助手である夏報の出番がやってくる。
ケイが中心となって聴き込んだ情報を元に、時刻や場所を絞り込んで。
「という訳で、犯人捜しの時間だよ」
これだけ犯行数が挙がっているのだ。直接近くで顔を合わせることはなくても、すれ違ったり近くを通っていったり。無意識のうちに、その顔を視ているはず。
そうして夏報が作り出した、複数枚のポラロイド写真の中に。
通りがかったワイン店の付近、何処か怯えたような、羨むような。複雑な表情を浮かべ、人並みに消えていく少女が映りこんでいた。
「――この少女で間違いないかな」
「……そのようですね。皆さんが挙げていた特徴とも一致します」
そこで、何かに気付いたかのように。「そういえば、」とケイは言葉を区切る。
「……皆さん、ワインまみれでふらついていたり、仲良く腕も指も組んだふたりだったり。そんな、一際楽しそうな方達でしたね」
「きっと、一際楽しんでいる人たちをターゲットに狙っているんだろうね」
夏報のポラロイド写真に写り込んだ少女の妬みを含んだ視線は、間違いなく楽しそうな集団を捉えていて。
「――よし、夏報さん。私達も、もっとこの夜を楽しみましょうか」
「楽しむ……成程、囮作戦だね」
結論が導き出せれば、自ずと取るべき行動が見えてくる。
自分たちが楽しんだ分だけ、きっと。そうすれば、その子の方から引かれてやってくるだろうから。
「犯人は思い出の品とか一番大事なものとかじゃなくて、単に目立つものを盗んでるように思える。何か派手なものを用意しないと……」
「……派手な物、というと」
情報収集の結果、盗まれたものは高価なものからガラクタ同然の物まで、実に様々で。それらの共通点と言えば、目立つものであったこと。ならば。
目立つものと視線を巡らせる夏報の隣で、ケイの視線はじっと何かを捉えて離さない。
ケイの視線の先には、先ほどぶりのテディベアが。
「これでどうかな」
手袋を外した右手でこっそり触れて。
そうして、手元の作り出された物と店先に並んだままの元の物と。計4つのつぶらな瞳が、ケイをじいっと見つめている。
「……やっぱり欲しかったんだな、それ」
いつの間にかケイの隣から姿を消していた夏報が、味わい深い顔をテディベアに向けながら戻ってくる。
幾らこっそりひっそりしていても、夏報には全てお見通しだったよう。
「店の人に取り置いてもらったから、後で買いにいこっか」
優秀な助手は判断も行動も早いものなのだ。ケイがテディベアと睨めっこしているうちに取り置きをお願いするのも、あっという間に済ませてしまっていた。
「……ありがとう」
夏報の言葉と表情に、ケイは顔が赤く染まっていくのを自覚する。
「テディベアを迎えに行くためにも、早く解決しちゃおうか」
――遠目からでも目立つこの子なら、きっと少女たちも気付くだろうから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ステラ・クロセ(サポート)
真紅の瞳。燃える炎。あふれる勇気。直情正義、元気全開、単純明快!
正しい心で悪しきを討ち、そして弱き者を救い、その盾とならん、我こそは義侠のスーパーセル!
スーパー純粋熱血、ハイパーテンプレ系ヒロイン、それがステラです。
一人称は「アタシ」ですが殆どの猟兵は先輩に相当するので話すときは「わたし、あなた」といった礼儀正しい振舞いとなります。
探索系はストレートな解決法を選び、
戦闘では正々堂々と敵の正面に立って攻撃を引き受け味方にチャンスを作る方が好みです。なお、近接戦闘派です。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
正義を大事にするので、他の猟兵の意図を阻害したり公序良俗に反する行動はしません。
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そこにどんな理由があれ、悲しむ人がいる以上、やってはいけないことがある。
それでも、誰もが救われる結末も在るはずだ。
「捜査の王道と言えば、尾行調査だよね。困っている人がいる以上、見過ごせないから!」
降り積もる雪すら、異国の寒さごと燃やしてしまいそうなほど。壁からひょっこりと熱い意思の宿る真紅の双眸を覗かせながら、その片手にはアンパンの代わりに、目に着いた屋台で購入したカレーヴルストホットドッグしっかりと持って。
ステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)は、盗難事件の犯人である少女たちを探していた。
マーケットで盗難被害に遭っている人たちは、皆一様にこの催しを楽しんでいる人たちばかりだ。人一倍楽しんでいる人たちをマークしていれば、自ずと犯人も出てくるはず!
どうやら犯人である少女たちもワケアリらしいが、その理由は直接聞き出せば良いだけのこと。
「弟たちへのお土産も選びたい――けど、今は調査っと」
家の形のアドベントカレンダーに、天使や星の形をしたレープクーヘン。マーケットの品々には思わず目を引かれてしまう。弟たちが気に居るプレゼントもきっとあるはず――だけど、それは事件が解決してからの話。
(あの人たちとか、狙われそうな感じがするね。追いかけてみようか)
マーケットの屋台を巡りながらも、気を緩めず周囲を意識していたステラは賑やかな3人組に目を付ける。
両手いっぱいにお土産を抱えながら、ワイワイとお喋りの華を咲かせる彼らは、何処からどう見ても冬のイベントを満喫中だ。おまけにお喋りに夢中になるあまり、周囲への注意が疎かになってしまっている。
不自然じゃない。偶々3人とアタシの向かう方向が同じだけだから!
太陽のような色を宿したポニーテールをキラリと翻しながら、そんなことを自身に言い聞かせつつ、3人の後を追いかけるステラ。
犯人はきっと直ぐに姿を現すはず。不思議とそんな予感が胸の中にあった。そして――その時は突然やってくる。
「どんな理由があっても、悪いことは許さないからね!」
3人の持っていた荷物を覚束ない手つきで、それでもやけに素早く掠め盗った影が一つ――気弱そうな見た目の少女はとても悪いことに手を染めるタイプには見えなかったが、それはそれ。これはこれ。
どんな理由があったとしても、他人の物を盗む理由にはならない。
「絶対に捕まえてやるんだから!!」
物陰から飛び出してきたステラの姿を見た途端、捕まっては不味いと思ったのか、盗んだ荷物を放り出して走り出す少女。
路地を駆け抜けながらも、乱雑に放り出された荷物を見事キャッチし(全部無傷だ!)、ステラが少女を捕まえるのは、時間の問題だった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『不幸少女』
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POW : 現実は必ず突きつけられる
無敵の【完璧になんでもこなす最高の自分】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 数秒後に墜落するイカロスの翼
【擦り傷や絆創膏の増えた傷だらけの姿】に変身し、武器「【赤点答案用紙の翼】」の威力増強と、【本当は転んだだけの浮遊している妄想】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : 同じ苦しみを味わう者にしか分からない悲痛な声
【0点の答案用紙を見られ必死に誤魔化す声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:エゾツユ
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🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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追いかけ、炙り出し、捕まえ、或いは言葉を用いて。
思い思いの方法で窃盗事件の犯人である少女たちの足取りを掴んだ猟兵たちは、少女たちを追ううちに、新宮殿前の広場へと辿り着いた。
時計の短針も天頂近くを指す時間帯、夕方であってもマーケットと比べると人通りは寂しいほどに疎らだ。夜も更け、周囲には人っ子一人の姿すら見つけられない。
少し離れたところに聳え立つ新宮殿と、宮殿の前に高い塔が見える他には世界的に有名な車の形をしたイルミネーションがただ煌々と明かりを放っているだけだ。人気の無い今の時間帯に至っては、少しの不気味ささえ感じられてしまう。
――と。猟兵たちの気配に気が付いたのか、暗がりから何かが顔を覗かせる。
猟兵たちが窃盗犯として追いかけていた少女たちと瓜二つの見た目。彼女たちもまた、ダメな自分を変えたいと思い、邪神と契約してしまった少女たちなのだろう。
マーケットの会場に近く、夜間の人通りは無いに等しい。仮の拠点にでもしていたのだろうか。
或いは――マーケットを楽しむ人々に吸い寄せられるようにして、ここに集まってしまったのだろうか。
どちらにせよ、これ以上被害を増やさないためにも、ここで彼女たちを止めるしか方法は無い。
【補足】
3章は『不幸少女』との集団戦となります。
周囲に人影はなく、多少派手に騒いでも問題にはならないでしょう。(用心するに越したことはないですが)
ウィリアム・バークリー
同行:オリビア・ドースティン(f28150)
これは――オブリビオン化して分割存在になった?
それなら、対処法は一つ。殲滅です。
オリビアさん、Search and Destroy. No Marcyですよ。一人残らず、討滅します。
弱いものいじめのようで気が引けますが、丁寧に蹂躙しましょう。見逃すことのないように。
まずはフィールドから作ります。「範囲攻撃」のPermafrost。この地に極北の冷気を。
ぼく自身は「氷結耐性」で何ともありません。足回りもしっかりしたブーツですし。
これで敵が身動きとれなくなるといいんですけど、飛ぶんだろうなぁ。
そこをIcicle Edgeで片っ端から撃墜していきます。
オリビア・ドースティン
【同行者:ウィリアム・バークリー(f01788)】
どうやら引き返すタイミングはとうに過ぎ去っていたのでしょうか?
ここまで来たら最後まできっちりと掃除と致しましょう
集団戦なので相手の攻撃は「第六感」や「見切り」で対処し、こちらもサモニング・ガイスト(以下兵士)で攻め手を増やします
ウィリアム様を援護するように立ち回りウィリアム様を狙う敵への牽制をしつつ兵士の炎や槍で攻撃します
きっちり掃除するのもメイドの仕事です、お覚悟を
●
不幸少女たちの過去について、今さら何を言ったところで――過去は過去だ。変えられないことに変わりはないが、それでも何も思わない訳ではない。
オリビア・ドースティンは相見えた少女たちへとちらりと視線を向けると、静かに緑色の瞳を伏せる。
(「どうやら、引き返すタイミングはとうに過ぎ去っていたのでしょうか?」)
タイミングが過ぎ去っていたとしても、関わった以上、きっちりとけりを付けたかった。
せめて……これ以上罪を重ねてしまう前に在るべき流れへと戻すことがオリビアに出来ることだ。
「これは――オブリビオン化して分割存在になった?」
オリビアを不幸少女たちから守るように少し前に出ていたウィリアム・バークリーは、少女たちをじっと見据えたまま、警戒を強めていた。
分割したのか、ダメな自分という仲間意識から似たような姿を取っていたのか。
そもそもの発端となった邪神がここに存在しない手前、確かなことは分からないが。
前者だとしたら、厄介だ。
「それなら、対処法は一つ。殲滅です」
「はい。ここまで来たら最後まできっちりと掃除と致しましょう」
中途半端に情けをかけて禍根を残してしまうと、いずれ彼女たちのような存在が再び現れる可能性だってある。
過去は変えられないが、未来の犠牲者を減らすことはできるはずだ。
「オリビアさん、Search and Destroy. No Marcyですよ。一人残らず、討滅します」
「承知いたしました」
時には非情な愛も、救いになるのだと信じて。
ウィリアムの宣言が戦闘開始の合図となった。それと殆ど同時にオリビアの呼びかけに応じて、その姿を現した兵士が広場へと姿を現す。
まるで中世ヨーロッパから抜け出してきたかのような、炎を纏った槍を持ち、頑丈な鎧に身を包んだ古代の兵士。
兵士の姿を視界の端に捉えながら、ウィリアムもまた行動を開始する。
「弱いものいじめのようで気が引けますが――一人残らず、見逃すことのないように。Permafrost!」
詠唱と共に、戦地と化した広場に吹き付け始めたのは視界を覆う猛吹雪。
この場に存在する全ての者を等しく凍てつかせんと吹き付けるそれは、まさしくNo Marcy――無情の愛そのもので。
冷たさや寒さに耐性のあるウィリアムなら永久凍土と化したこの場でも自由自在に動くことができるが、まさか吹雪が襲い掛かるとは思っても居なかっただろう。
まともに対策すら施していなかった少女たちは、思うように動くことができないようだった。
それでも少女たちも負けじと、同じ苦しみを味わう、仲間たちにしか分からない悲痛な叫び声を上げて一斉にウィリアムたちに向かっていこうとしたのだが……。
『きっと……には――分からない……!』
おうおうと狼のような風の唸り声に掻き消されて、果たして、その叫び声が味方の耳元に届いていたのかどうか。
「声を上げてから襲い掛かってくるとは、見え見えの攻撃ですよ」
凍り付いた地面に足を取られながらも、ウィリアムへと襲い掛かった少女たち。しかし、彼女たちの攻撃は彼に届く前にオリビアの率いる兵士によって遮られた。
見方を守る強固な盾と成る兵士の霊に、生半可な攻撃は通用しないだろう。
「さて、今度はこちらが攻める番ですね」
オリビアの指示によって守りに徹していた兵士は、攻撃へとその行動を転じていく。
吹雪を受けて覚束ない足取りで駆けだした少女たちを薙ぎ払い、飛ばしてきた無数の赤点答案用紙を焼き捨てて。
舞い散った赤点答案用紙と共に地面の氷が炎の余波でじゅわりと溶け始めた。紙の燃える、焦げ臭い臭いが強風に巻き上げられる。
兵士に気を取られていた少女たちは、終ぞ気づくことなかった――いつの間にか、オリビアが兵士の傍から姿を消していることに。
「きっちり掃除するのもメイドの仕事です、お覚悟を!」
彼女たちがオリビアの存在に気が付くのは、背後からモップで薙ぎ払われ、頭部に強い衝撃を受けてからのことだろう。
「これで敵が身動きとれなくなるといいんですけど、飛ぶんだろうなぁ」
猛吹雪によって身動きを制限され、兵士とオリビアによってまともに攻撃さえもできぬまま。
このまま大人しく倒されてくれればと思ったウィリアムだが、そうは行かないことは百も承知だった。
『違う……! 今回は偶々、0点だっただけ! 次は100点に決まってる!!』
案の定、追い詰められた少女たちは猛吹雪にも負けぬ一際大きな叫び声をあげると、赤点答案用紙の翼を大きく広げ、滑空しながらウィリアムたちへと飛び掛かった。
翼から抜け落ちる答案用紙はどれも0点ばかりで、それらはふわりと吹雪に舞い上げられ、辺り一帯に飛んでいく。
「撃墜しますよ――Icicle Edge!」
「これで終わりにします、燃やし尽くしてください!」
もう少しで少女たちの手が触れる、その瞬間だった。地面から次々に突き出した氷柱の槍によって、翼を串刺しにされ、地面に墜落したのは。
あ、と声を出す間もなく。最後は兵士の炎を纏った槍の薙ぎ払いによって、少女たちは在るべき流れの元へと還されていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
臥待・夏報
◆
風見くん(f14457)と
修学旅行……そういえば行けなかったなあ
UDCに隔離されたのがちょうど高二の夏だったから
大人になるまで検査とか訓練ばっかりでさ
風見くんは?
赤点を取る人の気持ちなんてわからないし
辛いのは君だけじゃないだとか説教するつもりもない
邪神なんかの力で八つ当たりするくらいなら
下らないことする連中に灯油でもぶちまけてやるべきだったとは思うけど
――こういう風にね!
【月面下にして炎天下】
呪詛の炎は街を燃やさないよう範囲を絞るよ
それでも火力は最大だ。あとは風見くんが――苦しませないようにやってくれる筈
無事終わったら、またマーケットに戻ろっか
あの娘とは別の方法で、青春ってやつをやり直そうよ
風見・ケイ
◆
夏報さん(f15753)と
高校のには行ったけど……楽しくはなかったな
中3で母が亡くなってからずっと荒れていて、クラスに馴染めず浮いた存在だったから……
ひとりで勝手にふらついていたら、担任に見つかって強制連行です
今日は楽しかった……きっと、夏報さんとだから
彼女達の姿は、私にも在りえた『過去』だ
それでも――感傷の情に堪えずとも、『今』を脅かす彼女達を見過ごすことはできない
呪詛の炎に右手をかざし、【結んで開いて】
必要以上には広げずに、『星屑』で作った炎を混ぜ込み――呪いに眠りを加える[属性攻撃]
……こんなもの、自己満足でしかないな
青春……それじゃ、ふたりの修学旅行の続きだね
ワインの次は、ビールかな
●
修学旅行。普通ならば待ち遠しいはずの旅行で。けれども、目の前の少女にとってはきっと、自らのダメさを思い知らされた行事で。
不幸少女たちの背格好を見、そういえばと臥待・夏報には思い出す昔話が一つ。
「修学旅行……そういえば行けなかったなあ。UDCに隔離されたのがちょうど高二の夏だったから」
夏報がUDCと関わることとなった原因――高二の夏休みに起きたとある事件で、それからずっと高校生らしい”日常”とは無縁の生活を送っていたのだから。
修学旅行なんて、とても行けるような状況ではなかったのだ。
「大人になるまで検査とか訓練ばっかりでさ。風見くんは?」
「高校のには行ったけど……楽しくはなかったな」
中3で母が亡くなってからずっと荒れていて、クラスに馴染めず浮いた存在だったから……。
夏報の問いに答えるケイの静かな呟きが、夜の広場にゆっくりと広がっていく。ケイの視線は少し先の少女たちを映しているようでいて、その実何処か遠くを捉えていた。
もう戻ることは出来ない、在りし日のことを。
「それで……ひとりで勝手にふらついていたら、担任に見つかって強制連行です。今日は楽しかった……きっと、夏報さんとだから」
本人の意思が存在しない強制連行など、楽しめるはずもなく。あまり修学旅行の内容も覚えていないような気がする。
当時の灰色の修学旅行と比べ、今日のクリスマスマーケットを楽しむことが出来たのも、夏報と一緒だったからだ。
親しい人と一緒だったから楽しめたのだと、ケイはそっと瞳を伏せた。
(「彼女達の姿は、私にも在りえた『過去』だ。それでも――感傷の情に堪えずとも、『今』を脅かす彼女達を見過ごすことはできない」)
もし、彼女たちのような道を歩んでいたら?
想像がつきそうで、つかないようで――しかし、それ以上考えることは止めておいた。
自分たちには『今』がある。今日この日、夏報と共に巡ったクリスマスマーケットだって、たった先ほどまでは『今』の出来事だった。
過去は既に過ぎ去った日々の出来事。未来へと繋がる『今』ごと脅かしてしまう存在を、みすみす放置することは出来ない。
夜のような沈黙を纏ったままのケイに対し、それまで黙っていた夏報が徐に口を開いた。
「赤点を取る人の気持ちなんてわからないし、辛いのは君だけじゃないだとか説教するつもりもない」
――そもそも、他人の気持ちなんて分かるはずもない。
どれだけ境遇が似ていたところで、自分ではないのだから。他人にはなれないのだから。
「邪神なんかの力で八つ当たりするくらいなら、下らないことする連中に灯油でもぶちまけてやるべきだったとは思うけど」
方法はどうでも良い。飛び切り派手な方法で仕返ししてしまえば、少しは気分が晴れたかもしれないのに。
「――こういう風にね!」
そこで夏報は場違いなほどに大きな声をあげると、ニィと意味ありげな笑みを浮かべる。先ほどまでのしんみりとした空気を、遥か彼方まで吹き飛ばしてしまう様に。
論より証拠。言葉より実践。そう言わんばかりに最大火力の呪詛の炎を発現させると、呪詛の炎は瞬く間に炎の奔流となって少女たちを飲み込まんと牙をむいた。
街を燃やさないように。傍から見れば、クリスマスにはしゃいだ若者たちがオイタをしている風に見えるように。範囲は最小限で、しかし、対する火力は最大だ。
「あとは風見くんが――苦しませないようにやってくれる筈」
恐らく、信頼だとか友情だとか云う関係を依り代に、諸々をケイへとぶん投げる。
夏報の繰り出したパスを受け取ったケイは、夏報が放出させた呪詛の炎へと手を翻して。
眠るように還ることができるように。『星屑』で作った炎が混ぜ込まれたそれは、あっという間に少女たちを答案用紙の翼諸共飲み込み――悲痛な声はおろか、言葉の一つさえ聞こえなかった。
後に残ったのは、微かな灰の一片だけ。それも風に吹かれて、空高くへと舞い上がっていく。
「……こんなもの、自己満足でしかないな」
例え自己満足であっても、それが幸いに繋がるのであれば。
「無事終わったら、またマーケットに戻ろっか。あの娘とは別の方法で、青春ってやつをやり直そうよ」
「青春……それじゃ、ふたりの修学旅行の続きだね。ワインの次は、ビールかな」
残りも数えるられるほどとなった少女たちに向き直り、夏報とケイは『これから』の話を交わす。
間もなく決着がつくだろう。それまで、もうひと踏ん張りだ。
クリスマスマーケット名物のワインは楽しんだが、有名なビールはまだ飲んでいない。この一仕事が終わったら、青春を取り戻そう。
参加できなければ、楽しむこともできなかった修学旅行の分まで。
2人の青春にアルコールが付いて回っているのは――きっと気のせいだ。
成功
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ベリザリオ・ルナセルウス(サポート)
人々を救う事や未来を蝕む者を倒す事は責務ですが、オブリビオンにも救いが訪れる事を願ってやみません
オブリビオンが救われる世になれば大切な織久も安らげるかもしれませんから
救助活動や傷の治療は得意です。体の傷を癒し、心の傷も音楽によって癒しましょう
失せ物探しや動物も対象にできる情報収集で探索・調査も行えます。鈴蘭の嵐で花弁の流れや光の屈折率を変えてのカモフラージュの見破りもお任せください
仲間と連携しての戦いこそ私の真価が発揮できます
味方を鼓舞し、援護する事で敵を挑発して引き付け、味方を守る
より強力、広範囲の攻撃なら無敵要塞で庇います
剣と盾で攻撃を防ぎ、敵の武器を払い、味方が攻撃できる隙を作りましょう
●
骸の海より蘇ったオブリビオン。彼らを倒す事こそ猟兵の責務だ。
契約、憎悪に復讐、捨てきれない想いに至るまで。オブリビオンとなる原因は多岐にわたる以上、全ての存在をそのまま憎むことも難しく。
目の前の少女たちだって、ダメな自分を変えたいと切望するあまり邪神の誘惑に乗ってしまっただけの話だ。それが、決定的な命取りになってしまっただけのこと。縋る相手が邪神以外の存在だったのなら、違う道も開けたかもしれないのに。
(「オブリビオンが救われる世になれば、大切な織久も安らげるかもしれませんから」)
ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)は、少女たちを前に、少しの間瞳を伏せると剣を構える。
どうか、少女たちにも救いが訪れることを。そしていつか、とある戦士の忘れ形見である彼も安らげる世界に変わることを祈って。
「こちらは私に任せてください」
揺らぎのない声音で告げられる宣言と共に、鈴蘭の嵐と化した無数の花弁が少女たちへと襲い掛かる。
風に吹かれて舞い上がり、少女たちを変えるべき場所へと誘うようにふわりふわりと踊って。
純白の花弁の嵐はベリザリオの狙い通り致命傷を与えるには至らず、しかし、少女たちの攻撃をベリザリオに集めるには十二分な威力を持っていた。
『バカだって陰口を受ける気持ち……貴方たちには分からない、きっと――……!!』
偶々今回は赤点だっただけ。落第生なんかじゃない。
優先的に倒すべき脅威と判断したのか、少女たちは悲痛な叫び声を上げながらべリザリオへと向かっていく。
矢のように飛び交う赤点答案用紙に、燃え上がって小さな焔と化した答案用紙の数々。
しかしどれも、ベリザリオが構えた盾によって防がれる。表面的な焦げ跡を残すばかりで、曇りなき盾を傷付けるには至らず。その焦げ跡も、少しの後には何事もなかったかのように消え去った。
「そろそろ終わりと致しましょう」
これまで猟兵たちの攻撃を受け、満身創痍となっていた少女たちだ。
べリザリオが放った鈴蘭の嵐は一際激しい花嵐と化して、少女たちを飲み込んでしまう。
結んで開いて、ぐるりと渦を巻いて。視界一面を覆う、数えきれないほどの花弁。
そうして白花の花弁がべリザリオの元へと戻った後、そこには何も残されてはいなかった。
少女たちは鈴蘭の花弁に導かれ、居るべき場所へと戻ったのだろうか。もしも次があるとするのならば、今度こそは幸せになれるのだろうか。
どうかそうであって欲しいと、べリザリオは静けさを取り戻した広場で、祈りを捧げていた。
●
猟兵たちによって人知れず危機を免れたクリスマスマーケットは、事件前と変わらない賑やかさを保ったままでいた。
盗まれていた品々はあの後、宮殿広場の一角で発見され、盗難事件も無事に解決したといえよう。
平和を取り戻した現場を一目見、そのまま静かに去る者、後始末という名の盗品返却に力を貸す者、再びクリスマスマーケットの人波に紛れていく者など。猟兵たちは聖なる夜を祝う広場に、思い思いに散っていく。
もしも次があるのなら。次こそは、間違った道に進まないで欲しいと。
そんな思いを胸に抱きながら。
クリスマスマーケットの夜は更けていく。
成功
🔵🔵🔴