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やがて私たちは鳥になる いずれソコには花が咲く(作者 拳骨
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 淡く、叶えようともしなかった夢が潰えたとき。鮮明に爆ぜるガラス細工の火花に魅入られた私は、失った後に気づく後悔とはこのように眼神経を蠱惑してくるものなのかと心臓を脈打たせた。


 友人と肝試しを行った。私も友人も、決して恐怖に打ち勝てるような強き心は持ち合わせておらず、しかし私は気の迷いを晴らしたくて。友人は私を元気づけたくて。
 彼は、私の友人である桜田柚鶴は。本当に、とても私に良くしてくれた。
 事故で両の足を悪くし、走れなくなった私を病人扱いすることなく。見舞いの品を己の胃の内で消化して出来た空籠に、くずを入れ花を造る桜田は、変わらず対等で居てくれた。
 元より、熱意のなかった陸上の道をスッパリ諦めると公表した時、私に興味を持った人間は総じて変異してしまった。失意に落胆、怒号に落涙。期待するも応援するも、どうやら急には辞められないらしく。終いには罵倒されるものだから私は驚かずにはいられない。そこまで私に一生懸命で、夢中で。私を誰と重ねているのだろうと、その誰かが少しだけ羨ましくなってしまうほどに。私は目立てど陰の薄さが強まるばかりだ。

「そもそも、咲間はどうして陸上に?」
「さあ、どうだったか。なあなあで入ったし。私を誘った桜田はいつの間にか消えていたし」
「だって練習キツかったんだもん。あと、どうやら俺は走るのは好きじゃなかったらしい」
「なるほど。私は走る事も励む事も苦ではなかったから、か」
「歩くのは好きだよ俺」
「それは同意」

 これは先程、肝試しを始めた夕刻の会話だ。走馬灯ではないが、私は気が少なからず動転している。
 花を添える。誰に? 花神様に。
 花を喰らう。誰が? 鳥神様が。

「やがて私たちは鳥になる」
「なにそれ」
「わかんない。でも肝試しにしては簡単そうじゃん?」
「そうだな……参加者も多いし、何よりお祭りらしいし」
「一番こわいのは宗教勧誘かな、あと高い壺」
「遠慮しますと断ろう」

 これは、先日、肝を試す題材を物色していた放課後の会話だ。選ばれた祭は『鳥神様とやらに花を捧げる』たったそれだけ。……シンプルなやり取りだからこそ、肝を冷やす効力は確かなものといえるか。
 だが、ただ美しいだけの景色を魅せられて恐怖するとはあり得ることだろうか。神とやらもただ可愛らしいだけの鳥じゃないか。これのどこが恐ろしいと思えるんだ桜田よ、桜田。なあ、桜田……。

「桜田」

 桜田。

 どうしてお前は、草花生い茂る地の中で蹲っている。

 ……ひどい汗だ、震えている。怖がっている。どうして? どうしてって……あれ、? ……恐怖が連なり、気分を悪くしたからじゃあないのか。
 でも、なぜ? 私は、この景色を美しいと。……おかしい。何かが。
 どうして、どういうことだ、お前は怖いのが苦手で、私だって苦手で……じゃあ、どうして同感覚ではない。単なる感性の違い? でも、でもどうしてこの綺麗な綺麗な光景を気味が悪いと吐き泣ける。どうして私は桜田に共感できない、私は桜田の神経を疑っている。だっておかしいだろう。おかしいのは……いや、違う。違う!! どういうことだ、どうして私は桜田を不快に思っている!?
 どうして私は今にも倒れそうな友人に駆け寄らずに彼の姿を見下ろしている!?!

 ――嗚呼そうか。お前には理解ができないのだろう。

 落胆と同時に私は理解してしまった。理解してしまったからこそお前の反応が正常だと断言できる。肝試しとは本来恐ろしいものであり、それに恐怖を覚えない私こそがおかしくなったのだ。
 おそろしいと判断できる君が、正しい。だからこそ一刻も早くこの場から君を遠ざけねばならない。

「もし、そこの御二方。……大丈夫、ですか」
「っ大丈夫なわけないでしょ、う……」

 ぬらりと音もなく現れたらしい女人に肩をそっと叩かれた私は、威嚇に啖呵を切るも言動は徐々に小さくなり、息が詰まる。
 黒い帽子に黒いドレス、髪に合わせた黒一色の衣に身を包んだ彼女は真白い肌をしていた。だがその白は端の爪先までは届かず、あるのは空洞で……つまるところ、人差し指と薬指が、無かった。

「戻りなさい。これは夢。こわい夢。忘れなさい。……もう、ここに来ちゃいけないよ」

 指の欠けた女人は桜田に近づく。静かに腰を下ろし、三つ指で背中を撫で、片腕から体温を分けて落ち着かせようと桜田に寄り添っていた。
 ……身体を震わせ、肩で息をし、背にも涙をする友人に対して私は。包み込んでやることもできないのか。

「……生きる人にとって、此処の空気はきっと……猛毒です。から、貴方も。この人を連れて、おうちに帰った方がいい。早く。まだ、お若いでしょう」
「いいや、戻りません。私は戻るわけにはいかない」
「鳥になりたいですか?」

 私は。このままでは、お前をこちら側へと引きずり込んでしまうだろう。もう一度、君と肩を並べて歩くには。私は何に魅入られたのか、確かめなきゃお前の元へ戻れそうにない。

「鳥になりたいのですか?」
「ええ、鳥になりたくて此処に居ます。きっと、なれます」
「へえ。じゃあなってみようかな」

 非難の目玉が此方を向いている。失意混じる絶望が、するりと私の影隣に待ち針を置いてきた。止めてくれと、私を刺せない桜田は己に自爪を食い込ませている。

「桜田」

 友人が伸ばしてくれたヒトの手をはたき落とす。爪痕が消えない桜田は、それでも桜田は私を見ようとしてくれる。すまない。すまない桜田。お前は私よりも肝が小さいのに、無理をさせて、このような目に合わせてしまった。

「お前は明日を生きなさい」

 私は、お前が恐怖した何かに打ち勝たねばならない。


「鳥になる会、だそうで。老若男女問わずの信者にランク付けはなく教祖的なのが一人だけ。
 活動スタイルは来る者拒まず去る者追わずで信者は自らが志願した者のみで構成されていて、自主性を重んじているらしく脱退も容易みたいです。
 肝心の信奉対象であるUDCを予知できなかったのがネックすぎるけど多分、鳥! 鳥ですねはあい次っ!」

 グリモアベースにて。
 だって鳥神様って言ってるしと棚上げ発言をした日向・陽葵(ついんてーるこんぷれっくす・f24357)は自前のノートパソコンとプロジェクターを持ち込んでいた。空間に映し出されたマウスポインタは画面読込に合わせてくるくると弧を描いている。
 映し出された衛星写真上から目的地である村を見てみると、森林に囲まれた辺鄙な場だと頷ける。それでも交通機関を乗り継げば都市部からもアクセス可能らしい。
 大きな建物はないが、ビニールハウスが複数、少し開けた場所が花畑になっている事の二点は目を引くといえようか。

「村ぐるみで儀式は行われています。祝祭の生贄は外部からの信者が主。時折村人からも選抜されてたぽいですが内部事情がわからないので詳細不明。
 でも、どっちも意欲的だったみたいです。生贄になる事を拒んだ者はいなかった」

 猟兵たちは祝祭に侵入し、祝祭の時のみ姿を表すUDCを倒さなければならない。今でこそUDCは正体不明だが、信者たちは穏やかで気性が大人しい者が多いらしく、聞けば何か情報が得られるかもしれない。
 多分なんですケドと、グリモアを展開させた日向は目を逸らしながら呟く。

「死を救済と捉える人はー、特に。目を奪われないように気をつけてって思います」

 うつくしき猟兵よ。怪物を討て。





第3章 ボス戦 『邪神『パトリック』』

POW ●かわいいはな
戦闘中に食べた【信者】の量と質に応じて【身体の周囲に信者の意識を宿した花が咲き】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD ●はながきれい
自身の身体部位ひとつを【花】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ ●さいたさいた
全身を【信者の意識を宿した花】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠トゥール・ビヨンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ヒトが居た場所に金貨を置けば、それを見た者はヒトが金貨に化けたと錯覚するだろう。
 花畑は呼吸をしている。大地に根を張り、地中からエネルギーを吸収するそれは水がなくとも光があれば成長する。自ら発光する植物の最奥にて、UDC怪物は顕れた。
 カエルの指を脚としたそれは青い絨毯に腰掛ける。濃淡入り混じる表皮の斑点は液体のように動いていて、長細い胴や手足を循環していた。顔と思わしき頂点には目と鼻の器官が備わっていて、音を発する口は見当たらない。
 ほろほろと、先の見えない洞窟から花が噴いている。目と呼べる空洞から。丸みを帯びた胴体から。四つの花弁を持ち、浅葱に内から発光するふしぎな青花が無数に浮いて、熟れている。

「haNaイ■セニ■ うミゑひつヴみい ■■そゐう hanア_いり■■」

 花神様に花を添えた者は、複雑な音階を理解できない言葉だと思えるだろう。空耳を潰すも、己が知っている単語と非常に似ている音韻が頭蓋に響いて脳味噌をグツグツ濁らせてきた。

『花が一杯。今日も賑やか。いい天気。花、可愛い』

 邪神『パトリック』。そのUDC怪物は花を好み、花を咲かせるだけしか能を持たないオブリビオンであった。が、『鳥になる会』に花神様として祀られたことにより、周囲に超自然の庇護を与えられる程度には邪神の役割を担えていた。庇護とは花だ。花を咲かせることだ。大地に花を咲かせるだけのパトリックに対し、鳥になる会の信者たちは「鳥になりたい」という思いを込めて花を添えていたものの、パトリックは青い花を咲かせるだけだった。

「はNa_hあNA いり■■ と」

 花と戯れるように、パトリックは棒切れのような腕部で風を撫でた。そよ風が此方にやってくる。猟兵にとっては何ともない、ただのそよ風だ。
 何も無い。
 花の匂いも、風の衝撃も。何より攻撃の意思表示が見られない。それなのに鳥になる会の長である女人は「あ」と声を漏らして。

 消えた。

 誰かの目にある色彩はノイズを起こす。不具合を生じた本能が異物混入を訴える。女人が居たはずのところには何も無い。そこに有るのは花だけだ。瞬きする間もなく、女人は途端に消えたのだ。

「鳥に、なりたいだって?」

 震える唇を手で覆い抑える咲間少年は、脂汗をかきつつも乾いた目を逸らさなかった。閉じる隙もなかった。少年の前には、少年が追い求めた真実がある。私は何に恐怖したのか、私は死に魅入られたのか、私は、私はアレを可愛らしい鳥だと認識していたのか。ああ、答が見えた。理解できてしまった。私はアレがひどくおそろしくてたまらないのにどうしてめをそらせないのだろうどうしてあのひとはきえてしまったんだろうどうしてそこにははながさいているのだろう。

「何が、やがてだ……」

 人が花になる瞬間を見たことがあるだろうか。それを、花と認識するか。その花を、人だったものと捉えるか。手品にはタネがある。花にだって種はある。それらは明かされなければ包まれたままだ。だからって、でも。いくら鳥が花を食べたって。それは鳥になったといえるのか? そもそも、本当に死ん……、……消えた、のかもどう、か。

 死とは。どこからが死なのだろう。

「■ほイねセそ■ち■ ゐほ_■Eち■ みセいし き■そA」

 生贄に捧げられた人間は、本当に鳥になりたかったのだろうか。

「ハな はな_うよ■つき■し と」

 鳥になりたい人は花になった。花は鳥に食べられた。鳥が花を食べたら私たちは鳥になる。鳥になれる。鳥になった。
 だが、女人がなったのは鳥ではなく、

「花じゃないか……」

 やがて私たちは鳥になる。いずれソコには花が咲く。鳥となった私たちを、貴方は再び撃ち落とせますか。撃ち落としますか。貴方は自由であるべきだ。
 うつくしき祝祭の怪物を討つ時は来た。猟兵たる[   ]よ。[   ]ならどうする?