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メイドがちょこっとやってくる

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●あるショコラティエールの追憶
 チョコレートって、素敵よね。甘くてほろ苦い、それはまるで恋の味。
 私はチョコレートを愛して、愛して、愛し続けたわ。過去に沈み、忘れ去られた後でさえ。

 だから、分からない。
 どうして人は、もっとチョコレートを愛さないの?

 分からない。分からない。分からない。
 私、ちっとも分からない。なんで。どうして。どうしてよ。ねえ。

 ――ああ、分かった。
 みんな、本当に美味しいチョコレートを食べたことがないのね。
 それなら……私が、教えてあげないと。

 さあ。行きましょう、メイドたち。
 もちろん、「外」に出たら調理も手伝ってもらうわよ?
 たぁくさん、チョコレートを作らないといけないんだから。


「集まってくれてありがとう。バレンタイン前で、人によっては忙しいと思うけど……ううん、だからこそ、こんな事件が起きたのかしらね」
 周囲に浮かべた、無数の小さな星型のグリモアを輝かせ。スバル・ペンドリーノと名乗った銀髪の少女は、集まった猟兵たちを見渡した。

「アルダワ魔法学園の迷宮は知ってるわよね? 今回は探索というより、地上――つまり迷宮の出口を目指して上がってくるオブリビオン、災魔を迎撃してもらいたいの」
 迎撃に失敗すれば、非戦闘員も多くいる学園に攻め込まれてしまう。
 由々しき事態だが、一つだけメリットもある。それは、迎撃に有利な地点を選べることだ。

「災魔の先触れは、身長80センチくらいの、メイド姿の人形たちよ。一体一体は大したことないけど、かなり数が多いわ。暗殺に長けてるし、隠れて待ち伏せされると厄介そうなの。だから、迎え撃つのは、ここ。――探索済みの、迷路エリアの中よ」
 スバルの白い指先、赤い爪が示す先で、星型の光が互いに連結し、像を結ぶ。映し出されたのは、蔦に覆われた壁で細かく区切られた庭園のような、迷路の地図だった。
「見ての通り、私たちにはルートが分かってるから、迷う心配はないわ。通路は2、3人くらいなら横に並んで通れる程度……だから、メイド人形たちは数体ごとの班に分かれて、迷路を探索しているみたい」
 正しいルートが分かれば、奥に控える主人に伝え、一挙に突破する……という手筈らしい。
「だから、貴方たちにも手分けして、メイド人形たちを各個撃破して欲しいの。ルートは指示するから、戦いのことだけ考えてくれれば大丈夫。出会い頭に不意を突かれないよう、油断だけはしないでね」
 メイド人形たちの武器は仕込み箒と、全身に仕込まれた暗器。
 戦いに長けた者なら、1人で数体を相手取っても勝てない相手ではない。だが、成り行きで同じルートに案内された他の猟兵と共闘することもあるでしょうね、とスバルは話す。

 そして、メイドたちを倒して進み、迷路を抜けた先の広場に控えている災魔の親玉の名は、『迷宮ショコラティエール』。
 嘘か真か、チョコレートの魅力に憑りつかれた果てに、チョコレートを愛さない全ての人を恨むようになった元チョコレート職人だという。迷宮の外に出て、チョコレートの魅力を布教することが目的らしい。
 無論、オブリビオンである。布教と言っても、まっとうな手段ではない。チョコレートを自在に操り、文字通り「死ぬほど」喰らわせて回るだけ。
 話が通じることを期待すべきではないが――ただ、チョコ好きと恋する乙女には、少しばかり甘いとか。あるいは、そうしたアピールが気勢を殺ぐこともあるかもしれない。

「まったく。お菓子作りが好きなら黙って作っていればいいのに……迷惑な話よね」
 不機嫌そうにそう付け足したスバルは、ふと何かを思いついた様子で、ぱっと顔を上げ。
「そうだ。事件が終わったら、皆で一緒にチョコを作らない? ほら、バレンタイン前だしね。本番でもいいし、練習でもいいし。苦手な人には得意な人が教えてあげたり……うん、楽しそうでしょう?」
 そうだ、それがいいわ。学園に頼んで調理実習室を予約しておくわね、などと。楽しげに笑いながら、猟兵たちを送り出すのだった。


黒原
 チョコってついつい摘まんでしまいますよね。黒原です。

 1章、2章は戦闘です。
 色々とフレーバーを口にしておりますが、戦闘以外のことはあまり考えなくて大丈夫です。
 キャラの思いや口調、戦闘スタイルなど、ご自由に詰め込んで下さい。
 割とアレンジや猟兵同士の絡みを入れる方なので、NG指定はお気軽にどうぞ。

 3章はチョコ作り。と言っても味見担当や、もちろん男性も歓迎です。
 合わせプレイングでのグループ参加も歓迎。プレイング冒頭にグループ名、ないしお連れの方の名前とIDを記載の上で、なるべく近い時間に送付頂けると助かります。
 スバルもお声かけ頂ければ顔を出しますが、特にお気遣いなく。料理が得意で面倒見が良い少女なので、請われればやり方を教えることもできます。
 黒原的には、参加者の皆様同士で教え合う感じのプレイングが楽しいのではないかな、と思っております。

 ではでは。プレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『メイド人形』

POW   :    居合い抜き
【仕込み箒から抜き放った刃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    暗殺
レベル分の1秒で【衣装内に仕込まれた暗器】を発射できる。
WIZ   :    人形の囁き
対象のユーベルコードに対し【対象の精神に直接響く囁き声】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

キケ・トレグローサ
キケの兄、勇敢な歌い手エドの人格で迷宮に足を踏み入れる。
エド)「通路での戦闘か、相手が物量で攻めてくるのなら同じ手段で戦ってやろう、あいにくこちらは無限の騎士団だがな!」
 迷宮全体に声が響く中腹でエドはUCを使用、騎士団と歩兵部隊を召喚する。歩兵が大盾を構え先行し騎士が続く。エドは彼らを見送りさらに歌う。
『彼の者らに名はなく、彼の者らに名誉あれ。刃が煌めき、盾は破れぬ。英雄の他に値する名、他になし!』
エドが一節歌うごとに彼らは召喚され時間とともに数を増加、迷宮を埋め尽くすローラー作戦。騎士と歩兵一人ずつに英雄の意志があり、会話はできないが合流した猟兵と連携することも可能。
*アドリブ絡め歓迎


アルトリウス・セレスタイト
数は多いな

魔眼・掃滅で纏めて消し飛ばす
潜んで行動し視界内の敵性個体全て放逐
見えず聞こえない行動への対処はそうそう出来ないだろう

味方に出くわしたら協働
敵の武装や攻撃を放逐して支援
傷を負っているようなら魔眼・円環で回復させる



●猟兵達の詩
「これが迷路、か。確かに、道を聞いてなきゃ参ったかもな」
 迷路の中を進みながら、「彼」は感心したように呟いた。
 高くそびえ立つ、蔦に覆われた壁に区切られたラビリンス。その様は、まるでテーマパークのアトラクションのような……現代地球の文化に親しんだものならば、そう感じることもあったかもしれない。
 アックス&ウィザーズの、それも裕福とは言えない環境で生まれ育った彼に、そうした感覚があるかはさておいて。深緑色の髪を自然に伸ばしたショートヘアの青年は、感心したように呟いた。
 名を、キケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)。否――エドと、今はそう呼んだ方が適切だろう。多重人格者であるキケの身体に宿った、亡き兄の人格の名だ。

 エドは不意に、足を止める。聞いた話では、そろそろ戦闘を警戒すべき頃合いだ。
 無論、それを恐れたわけではない。ただ、彼の目指した地点に辿り着いただけのこと。
「相手が物量で攻めてくるのなら同じ手段で戦ってやろう。――あいにくこちらは、無限の騎士団だがな!」
 堂々と胸を張り、自信に溢れた表情の宣言。 
 続いて、その喉が紡ぎ始めたのは――英雄たちの、詩だ。

『彼の者らに名はなく、彼の者らに名誉あれ』

 朗々と響く歌声に誘われるように。
 どこからともなく、次々と姿を現すのは、長剣を抜いた騎士と、大盾を構えた兵士たち。

『刃が煌めき、盾は破れぬ』

 その歌に、どこか誇らしげに、フルフェイスヘルムで顔を覆った騎士たちは長剣を掲げ。
 1人の騎士の道先を開くは、1人の兵士。ツーマンセルを組んで、迷宮の先へと踏み出していく。

 迷路の入り口は一つではなく、その面積は想像よりも広大だ。エドの歌声も、戦場全体を包み込む、とはいくまい。
 だが、歌の一節ごとに尽きることなく呼び出される戦士たちは、彼の歌が続く限り迷宮を踏破し、出会った猟兵たちの力となることだろう。

 故に。

『――英雄の他に値する名、他になし!』

 エド・トレグローサは、迷宮の果ての果てまで響き渡れと、高らかに、戦士たちの勲を歌い上げる――。


「……歌、か」
 迷宮の壁越しに微かに聞こえる歌声に。淡青色の光の粒子を纏う大柄な男、アルトリウス・セレタイト(原理の刻印・f01410)は、声を漏らした。

 ――よく通るものだな。

 かすかな驚きも当然だろう。気配を消し、身を潜めて様子を伺う彼の耳を叩く、激しい戦闘の喧騒を思えば。
 4体ものメイド人形に立ち向かうのは、一組の騎士と兵士だ。
 猟兵と出会えば連携しようと考えていたアルトリウスだが、ほんの数秒、その光景に迷いが生じる。侍女服姿が敵なのは間違いないだろうが――相対するのは、本当に味方だろうか。魂なき傀儡に変わりはないのではないか。

 だが、逡巡は真に、数秒で終わった。
 仕込み箒から放たれる斬撃を兵士の大盾が受け止める。入れ替わるように前に出た騎士が力強く長剣を振り下ろすものの、その一撃は別の侍女によって弾かれて。追い打ちのように降り注ぐ、後衛のメイドが袖から投げ放った飛針を、割り込んだ兵士が庇い、その身で受け止め――。

 その戦いの様、声なき声を漏らしながら庇い合う兵士と騎士を見れば、どちらが人形かなど一目瞭然だ。
 仮初の身なれど、各々に英雄の意志を備えた戦士たち。
 元より、彼らを呼び出した歌い手自身、余人から見れば仮初の存在に過ぎない。なれば、『英雄達の詩(ポエジア・デル・エロエ)』によって召喚された彼らの意志を、魂を、誰が否定することができるだろう。

 無論、アルトリウスに、彼らを呼び出した術者のことなど知る由もない。
 彼に分かるのは、傀儡のように見えた戦士たちが、確かに味方であるという事実。そして、世界が構成される前のルールである『原理』だけだ。

 だから。アルトリウスは、藍色に輝く瞳を鋭く細め、メイド人形たちを見つめ。

 睨み据え。

 ――それで、終わった。

 『魔眼・掃滅』。4体の人形は、淡青色の粒子に包まれるように虚空に消え、異空へと放逐された。
 どこに飛ばされたのかは、アルトリウス以外には分からない。だが、戻ってくることがないのであれば、それは消滅したのと同じこと。

 突如劣勢を覆された騎士と兵士は、戸惑ったように辺りを見渡してから。
 戦闘は終わったと判断したのか、がしゃりがしゃりと武具を鳴らしながら、無言で行軍を再開していく。

 その背を、静かに見つめ。

「……声を、かけるべきか?」

 さすがに、会話が通じるものだろうか。いつも沈着な声に、微かな戸惑いを乗せながら。
 ひとまず彼らと行動することにしようと、兵士たちを追うように、迷宮を進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラニューイ・エタンスラント
チョコ……チョコね。好きな方だし甘いものは別腹って言葉もあるけれど、さすがに死ぬほどは食べきれないわね……もしかして、それでも食べる人は居たりするのかしら?それはともかく、戦闘はPOWのユーベルコードを使用するわ。居合い抜きは怖いわね。刃を避けれるように注意するか、いっそ相手の武器をユーベルコードで破壊するように動くべきかしら?アドリブ等は大歓迎よ。


ミーユイ・ロッソカステル
……あなたらしい、夢見がちな予知ですこと。
少し、恋というものを神格化しすぎなのではない? スバル。
なんて、この事件を予知したグリモア猟兵に向けて、呟いては迷宮を行く


前哨戦は使用人の姿をした機械人形の群れ、と。
……へぇ、私たちの心に直接語り掛けてくる術を持つのね。
いいわ、なら「お友達」になりましょう?

そうして脳裏に浮かんだ楽譜から選び取った曲目は、「眷属のための葬送曲 第1番」。
既に戦闘で破壊されたメイド人形を眷属と化し、敵の集団と戦わせる。
既に破損した人形だから、推し負けてしまうでしょうけれど……えぇ、他の勇敢な皆様方のおかげで、次の「お友達」はいくらでも。

人形の墓場の中心で歌い続けましょう。



●ブラッド・クロス
「チョコ……チョコね。好きな方だし、甘いものは別腹って言葉もあるけれど、さすがに死ぬほどは食べきれないわね……」
 コツコツと響く、2対のヒールの足音。
 その片割れであるラニューイ・エタンスラント(ダンピールの聖者・f05748)のぼんやりとした呟きに、ミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)はさりげなく口元に手を添え、顔を伏せて小さくあくびを噛み殺してから、苦笑気味に唇を歪めた。
「随分と、淑女らしくないというか……色気のない感想ね。まあ、スバルほど夢見がちに……恋を神格化してしまうのも、どうかと思うけれど」
「あら。さっきのグリモア猟兵の子? あの子は、それでも食べてしまうのかしら?」
「いえ、そうではなくて」
 また一つ、苦笑を深めて。

 赤と紅。共に燃え立つような髪を長く伸ばした豊かな肢体、上質な衣装。華のある令嬢たちの姿は、どこまでも迷宮に似つかわしくなく。それでいて、如何なる場にあろうとも、その空気を塗り替えるほどに鮮烈だった。
「それはともかく、居合い抜きは怖いわね。ミーユイさん、貴女、避けられる?」
「必要とあらば。――けれど出来れば、息を切らせて走り回るようなことは遠慮したいわね。歌に魂を込めるのが、私にとっての戦いだもの」
「そう。なら」
 一つ頷くラニューイは、不意に視線を上げて。虫でも払うようにふわりと上げた白い手に、いつの間にか握られているのは長剣だ。その細腕での軽々とした片手打ち、聖霊剣グロワール・リュミエールの一撃が、刀を構えて頭上から飛び掛かってきたメイド人形の体を切り裂き、地面に叩き付ける。
 砕けた身体から歯車らしきパーツをまき散らしながらバウンドした小柄な身体に、ラニューイはとんと掌底を押し当てて。

「ユーベルコード、リベレイション――オーヴァードライブ・ブラッドクロス!」

 放たれる緋色の輝き。十字架型のエネルギー波が死に体の人形をばらばらに砕きながら跳ね飛ばし、さらに曲がり角から姿を現した新たな人形を巻き込み、薙ぎ倒した。

「前衛は、私が引き受けるわね」
「…………頼もしいこと」

 驚きをなんとか飲み込んで、歌姫はこれまた一つ、曖昧な苦い笑み。
 だが何にせよ、歌う間の壁役を引き受けてくれるというならありがたいことだ。見れば、曲がり角からは続々と人形が姿を現している。素直に言葉に甘えることとして、唇を開き――その動きがぴたりと止まる。

(「どうして邪魔をするのです」)
(「ご主人様は、甘いチョコレートを味わって欲しいだけ」)
(「貴女とて、憧れないではないのでしょう?」)
(「――甘くて苦い、恋の味」)

 頭の中に直接届く、人形の囁き。心を惑わし、ユーベルコードの発動を妨害しようというのか。
 その囁きに、ミーユイは――先の苦笑とは違い。ほんの刹那、ただ気分を害したように、眉を顰めて。

「……へえ。いいわ、なら、『お友達』になりましょう」

 呟き。何事もなかったかのように、歌い始める。野次を飛ばされたくらいで口をつぐむ歌姫はいない。こんなもの、ミーユイ・ロッソカステルにとって、何の障害にもなりはしない。
 ――目覚めよ我が子よ、我が同胞よ。汝の御霊、気高くあらん。その身、魂なき傀儡なれど、我が友となるならば。
 眷属のための葬送曲、第1番。歌声が響き渡る中、ラニューイの砕いたメイド人形がゆらゆらと起き上がり、同士討ちを始める。

(「これは……」)

 その光景に、かすかに目を瞠るのはラニューイ。死体を眷属として操る、魔法というより呪いの歌は、まるで死霊術師のそれだ。
 同族の聖者。どこか近しいものを感じていた彼女の意外な力そのものが、どう映ったかは別として。

(「――寂しい歌ね」)

 ただ、そう思う。
 友となる。そう言いながら、支配し、従える。レクイエムはどこか冷たく、突き放すようですらあった。
 先程、微かに漏れ聞こえたメイド人形の声。恋の味への誘惑は、彼女にとって、どのような響きを持ったのだろう。そんなことを、考えながら。

「残念、数の優位は崩れたわね。蹴散らしましょうか」
 再び聖剣を掲げ、新たに現れた人形を薙ぎ払う。切り倒された人形は、歌声に促されるように立ち上がり、かつての同胞たちに向かっていく。
 無論、一度破壊された人形は万全ではない。ラニューイの壊し方によっては、立ち上がれずにばたばたもがいているだけであったり、あっという間に破壊されてしまう。
 けれど、それで十分。上半身だけになった残骸が掴みかかり、動きを止めた人形の首をラニューイが撥ねる。戦えば戦うほど、周囲にはミーユイの眷属の材料が転がって、そしてラニューイが突破されない限り歌声は止まらない。

 積み重なっていく、人形の墓場の中心で。ダンピ―ルの令嬢たちは、歌い、舞い続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
ひぅ……災魔に仕えるメイド人形たち……一杯いて何だか怖いかも……一体一体は可愛いのに……
ショコラティエール……チョコレートが大好きなんだ……だったらもしかしたらお話、合うかも……?
とにかくメイド人形さん達を突破しないと……


使うユーベルコードは「神薙胡蝶蘭」
数体のメイド人形が纏めてやってくるならこれが有効だもんね
出会い頭の不意打ちに気をつけろって言ってたから、逆に隠れちゃおう
どこから来るか分かるなら、逆に、技能【地形の利用】【目立たない】【迷彩】で物陰に隠れるよ

そうやって歩いてきたメイド人形たちを纏めて、鉄塊剣を胡蝶蘭の花弁に変えた胡蝶蘭の嵐で攻撃するよ!
【全力魔法】で強化して一網打尽だよ!


月輪・美月
なるほど……チョコ作りですか。つまり、作りすぎちゃった、美月くん……チョコどうぞ……みたいなアレって事ですよね

よーし、僕頑張ります。今年は身内以外からちゃんとしたチョコを貰ってみせる

まずはメイド人形……ずいぶんと可愛らしいお姿ですが危険な相手のようです、不意打ちには注意して行きたいですね

特に同じ区画を守る人とは協力し、危ない状況なら助けに入れるように目を光らせていましょう。地の利はこちらにありますし、こちらから不意打ちしていきたい

攻撃は、影を纏っての肉弾戦……練り上げた影は、刀をも受け止める硬さとなります……人形の囁き対策も含め、一撃で仕留めて行きましょう

他の人との協力や描写の追加等は大歓迎



●美月の場合
「なるほど……チョコ作りですか。つまり、作りすぎちゃった、美月くん……チョコどうぞ……みたいなアレってことですよね」
 ばきりと、1体だけで孤立していたメイド人形を影の狼に噛み砕かせながら。うんうん、と、月輪・美月(月を覆う黒影・f01229)は頷いた。
 思い返すのは故郷の風景。もちろん、今まで貰えたことがないわけではない。だが、何故だろう。母とか姉とか親戚とか幼馴染とか、そういう身内相手から貰うだけでは、何かこう――足りないのだ、ときめき的な何かが。

「よーし、僕頑張ります。今年は身内以外からちゃんとしたチョコを貰ってみせる……!」
「……美月、チョコ欲しいの……?」
「うわぁぁぁ!?」
「ひぅっ……!?」

 後ろから不意にかけられた声に、思わず驚きの声を漏らした美月を責めるのは酷だろう。ただでさえ、女友達にはちょっと聞かれたくない独り言である。
 とはいえ、気の小さい浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)が驚いて飛び上がった――元々飛んでいるが――このネタ3回目くらいな気がする――のもまた、無理のないことだった。

「い、いえ、違うんですよ、シアさん。今のは、あの……漫画の話です」
「……そ、そうなんだ……?」
 小さな頭の上に疑問符を浮かべながらも納得してくれた様子のシアラに、ほっと一息。美月はさっさと話題を変えて、
「それより、敵は可愛らしい姿ですが危険な相手のようです。不意打ちには注意していきましょう」
「う、うん……じゃあ、シア、隠れて進ませてもらうね。美月には、なんだか悪いけど……」
「いえ、任せて下さい。シアさんの盾になれるなら、喜んで」

 唇の前で人差し指を立て、にこりと笑えば。
 戸惑いがちに頷くシアラを後に残し、前に出る。対峙するのは曲がり角から姿を現し飛び掛かってくる、新たなメイド人形たち。

「黒く、黒く、黒く……影よ、月を喰らって力と変えろ」

 纏うは父より受け継いだ影狼礼装。足下の影が帯のように舞い上がったかと思えば身体に纏わりつき、その身を黒く染めていく。
 誇り高き狼を名乗る気にはなれずとも。守るべき少女の前に立つその足取りに、躊躇いなどあろうはずもなく。

 なお、涼やかな表情で戦いに臨む彼の内心は、
(「よーーーし誤魔化せたぁ……!」)
 その一心であった。

●シアラの場合
(「……チョコ、やっぱり欲しいのかな?」)
 もちろん誤魔化せてなかった。

 シアラは先程の会話を思い出しながらも、美月の後ろに少し離れ、小柄な身体を生かして気配を殺す。
 心の中で燃え上がる地獄の炎に、右目を赤く染め。緑と赤のオッドアイが見つめる先で、早くも戦いが始まっていた。

 メイド人形たちの動きは速い。抜き放たれた仕込み箒、スカートの中から抜き放たれた投げナイフ。
 ほぼ同時に降り注ぐ無数の刃を、しかし影を纏う美月は正面から受け止め、或いは黒く染まった両腕で捌く。返す刀とばかりに放たれた後ろ回し蹴りが、一撃の下にメイド人形の一体を叩き伏せた。

「ひぅ……一杯いて何だか怖いかも……。一体一体は可愛いのに……」
 味方が叩き壊されても、人形たちは顔色一つ変えることはない。味方の残骸を踏み越えるように刀を振るう人形たちの姿は、シアラならずとも不気味に見えるだろう。
 そんな人形たちに、美月は顔色一つ変えずに立ち向かっている。ユーベルコードで防御力を高めているのだろう、いつもの涼しげな表情を崩すことなく人形たちを引き付けてくれる友人の姿に、感謝と共に、すごいな、と思う。小柄な身体ながら、両親、ことに父から武術の手ほどきを受けたシアラの目だからこそ、美月の戦いぶりが、地道な鍛錬の積み重ねに支えられていることくらいは、すぐに見て取れた。

 ――無論。シアラとて猟兵だ。ただ隠れて震えているわけではない。
 美月が稼いでくれた時間を無駄にすることなく、全力を注ぎ込むように、力を高め、研ぎ澄ましていく。
 紫の輝きを放つ、自身の身長ほどもある鉄塊剣をよいしょと構え、姿を現すと。

「美月、下がって! ……行くよ、綺麗な胡蝶蘭だって、時に切り刻む牙になるんだから……!」
 剣の刃がほどけるように煌めいて。無数の胡蝶蘭の花びらとなって、飛び退いた美月と入れ替わるように、残った数体の人形たちをまとめて飲み込み――微塵と切り裂いた。

 振り向き、やりましたね、と笑顔を向けてくれる美月に、はにかんだように笑い返しながら。

 内心では、
(「……チョコ……」)
 やっぱり、忘れてはいなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鳴宮・匡
灯(f00069)と同行


面倒そうにぶちぶち言う灯と連れ立って迷宮へ
「まあまあ。好きだろ、甘いもの」
え、違うのか?
メロンパン買ってたからてっきりそうだとばかり
まあいいや、ついてきたのが運の尽きと思って手伝ってくれよ

経路案内はこっちで受け持とう
【追跡】【聞き耳】で得た周囲の気配と聴覚情報を頼りに
敵の接近にも気を配る

集団に遭遇したら出会い頭の【クイックドロウ】で【先制攻撃】
……その前にあっちが飛び出してそうだな

「了解。思いっきりやっていいぜ」

前を担ってくれるなら丁度いい、【援護射撃】に徹しよう
灯の死角にいる敵や撃ち漏らしを優先して掃討
――勿論、頼まれたからにはきっちりやるさ
任せておきな、漏らさないぜ


皐月・灯
匡(f01612)と同行

ったく、迎撃戦は好みじゃねーんだよ。
後方を守りながらの戦いだなんてめんどくせーったらねー……
……終わったらチョコレート作りとかやるらしいけど。
それはまあ、その……だな、うん……。

「ッ……だ、誰が甘いもん好きだ!」
ガキじゃねーんだぞ甘いもんなんぞ興味ねーし!

オレは探索得意じゃねーからな、任せるぜ。
その代わり、敵の出現は対応する。
たとえ背後から斬りかかられようと、即座に【見切って】【カウンター】を叩き込んでやる。
【早業】だろ? 独りで戦ってきたんでな、不意打ちにゃ慣れてんだよ。

「真ん中ブチ抜く。周りは任せた」

連中が何をするより早く【先制攻撃】だ。
《猛ル一角》を叩き込む!



●彼らの戦場
「ったく、迎撃戦は好みじゃねーんだよ。後方を守りながらの戦いだなんてめんどくせーったらねー……」
 ぶつぶつとぼやきながら迷路を進む、黒髪の少年――皐月・灯(灯牙煌々・f00069)。ぶっきらぼうに言い放つその言葉は、独り言というわけではない。隣を歩く、連れの青年に向けたものだ。
「まあまあ」
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、灯を宥めるように、どうどうとジェスチャーをして。
「好きだろ、甘いもの」
「ッ……だ、誰が甘いもん好きだ!」
 かっと顔を赤くして怒鳴る灯に、匡は戸惑ったように首を傾げる。メロンパンを買っているのを見たから、てっきりそうかとばかり思っていたが、勘違いだっただろうか。
「まあいいや、ついてきたのが運の尽きと思って手伝ってくれよ。せっかくここまで来たんだし……ああ、好きじゃないなら、終わった後の、何だったか。そうだ、チョコレート作りまでは、無理に付き合わなくても……」
「いッ、いや……それはまあ、その……だな、うん……」
 無理にゴネる気はねぇとか、その時の気分次第じゃ行っても良いとか、ぶつぶつと言い訳を始める灯。匡には彼の考えがいまいち分からないが、まあ、手伝ってはくれるようだし、構わないだろう。能力が、立場が、とりあえずその場で信用できるかどうか。戦場では、それだけ分かれば十分だ。なにせ、既に――

「灯」
「あぁ!? まだ文句が……」
「来るぜ。15秒後、3体」
「!」
 端的に告げた匡の言葉に、灯は即座に表情を引き締める。
 灯は、探索が得意ではない。自分を狙った不意打ちになら対処してみせるが、それ以上のことを期待されても困る。
 だから、最初から匡に任せた。その匡が来ると言うのだから、来るのだ。だから、返し、交わす言葉は、

「真ん中ブチ抜く。周りは任せた」
「了解。思いっきりやっていいぜ」

 互いにその一言で、十分だった。


 曲がり角から、跳ねるように飛び出す灯。人形共もこちらの動きを察知していたのか、数本のダガーが振り注ぐ――が、遅い。踵に身体軽量化の術式を組み込んだ靴、メテオ・レイダーが蹴るのは、床ではなく壁だ。
 地面と水平に壁を走るように回り込む動きはさすがに予想していなかったようで、あっさりと、3体の人形の背後に回り込み。
「アザレア・プロトコル1番――」
 囁くように口にしながら。中央の人形が振り向きざまに放とうとした、居合いじみた仕込み箒の一撃を――止める。初速が乗り切る前に、ガントレットに包まれた掌で柄頭を叩いてやれば、抜き切ることすら出来ず、ただでさえ無理な体制であった人形はつんのめってバランスを崩す。その隙を、灯が逃すわけもなく。
「――《猛ル一角(ユニコーン・ドライブ)》!」
 薄い胸元に、拳を叩き込む。手の甲に刻まれた魔術回路を通じて打ち込んだ術式で、所詮生物ではなく無機物に過ぎない人形の身体の中に宿る大地の魔力を、地面と同様に「活性化」してやれば。
『――ッ!?』
「まずは、一体――!」
 ばきりとその身体が爆ぜ割れ、壁際まで吹き飛んだ。

 顔を上げる。左右には同時に刀を抜き放ち、対照な弧を描くように降りぬいたメイド人形たち。
 どちらも見切れるか? 彼の経験は、身に着けた術理は、五分だと答えた。渾身の一撃を放った直後だ。どうあれ、隙になる。
 だが、そもそもその必要はない。だからこそ、隙を見せたのだ。

 ――たたたん。

 響くのは乾いた銃声。匡のアサルトライフル、RF-738Cから放たれた3発の弾丸が、灯から見て左の人形の膝頭を撃ち抜き、破壊する。
 あまりにも正確な射撃。異能じみたクイックドロウを支えるのは、しかし、純粋な彼自身の射撃技術と行動予測――あくまで積み重ねてきた技術に過ぎない。

 崩れ落ちる仲間の姿に微かな動揺を見せた、向かって右の人形の顔面に、灯は裏拳を叩き込む。同時に業火の術式を打ち込めば――炎上。火柱と化した人形が声なき声を漏らすのと同時、倒れ伏した左の人形に匡の弾丸が降り注ぎ、物言わぬ残骸に変えた。

「なんだ、もう終わりか。手応えねぇな」
「敵は弱い方が楽だろ? ……ああ、けど。そうもいかないみたいだな」
 灯の軽口にまともに答えた匡が、銃口を向けた先。通路の先からは、ぞろぞろと、メイド人形たちが姿を現して。
 その様を見た灯は、獰猛な笑みを漏らし。
「突っ込むぜ。今の調子で頼む」
「――ああ、任せておきな。頼まれたからには、きっちりやるさ」
 
 歴戦の傭兵に背中を預け。二色の瞳を持つ少年は、再び人形たちの群れの中に飛び込んでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雪華・グレイシア
さーて、甘い時間に無粋な輩は不要なもの
ご退場して頂くためにも少し頑張っていこうか

見目麗しいお嬢さんたちだけど、生憎とボクの好みからは外れていてね
盗むものもあまりないようだし、軽く片づけていこうか
ああ、勿論油断はしないよ?
これでも迷宮に来るのは慣れているんだ、逆に【地形の利用】をして物影からこちらが不意を突こうかな

それに怪盗相手に【暗殺】だなんて通用しなよ、レディ?
せめてその可憐な姿のまま時を止めてしまうといいよ……なんてね
冬将軍を呼び出したら氷嵐で暗器ごと彼女たちを凍らせていくよ


【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】



●怪盗は歌を口ずさむ
 「少女」は、音もなく迷宮を駆けていた。
 その顔を覆うは認識阻害の魔術を込めた黒いマスク、頭上にはシルクハット。
 やや短めのスカートを揺らし、青いマントをたなびかせ。
 知る人ぞ知る怪盗、雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)だ。

 足音こそ響きはしないものの、闇夜ならぬこの迷宮の中、黒を基調とした衣装が迷彩の役を果たすかは怪しいところだ。
 否。予告状を出し、世間を騒がせて。怪盗とはそもそも、真に闇に紛れる存在ではないのかもしれないが。

「――さーて、甘い時間に無粋な輩は不要なものだね。ご退場して頂くためにも、少し頑張っていこうか」
 その証拠が、この口調。生来のものとも、「普段の演技」とも違う芝居がかった台詞回し。
 仕草もまた舞台役者のように――ぴたり、立ち止まったグレイシアは、位置を直すように、大仰な仕草でシルクハットに手をかけて。

 ――その背後。薄暗い角に身を沈め、潜んでいたメイド人形が、ダガーを腰溜めに構え、グレイシアの背に向けて突進する。
 それと同時だ。頭上に潜んだ別の人形が、抜き放った仕込み箒を手に飛び掛かり――。

「生憎だけど」
 百も承知、とばかり、身を翻し。ばさりと振るったマントで背後の人形の視界を奪い、体を入れ替えるように突き放せば、頭上の人形の刀は無残にも味方に突き刺さる。
『『――!?』』
「――怪盗相手に暗殺なんて通用しないよ、レディ?」
 蹴り離し、距離を取る。

 怪盗とは、地形の利用に長けているものだ。
 走りながらでも一目見れば、この程度の敵が隠れる場所など容易に推理できた。
 不意を打ったのは、人形ではなく怪盗だった。これはただ、それだけのこと。

(「……とはいえ」)
 表情を動かすことなく、背後――といっても、先ほど走っていた位置からすれば進行方向側だ――に意識を向ければ、いくつもの気配が潜んでいるのが分かる。
 今いなした2体の人形も、まだ動く。
 前後を挟まれ、囲まれた形。立ち位置を誤ったか、と思うものの、余裕の笑みは崩さない。それが、怪盗としての振る舞いだ。

 だから、「彼女」はゆっくりと口を開き。

「――――凍えて」

 歌い出す。冷たく、けれどどこか勇ましい、冬の行進曲。歌に誘われるように召喚された『凍てつく大地の将軍』が掲げた槍は、凄まじい氷の嵐を巻き起こし――。

 ――歌が終わる頃には。迷宮の一角は霜に覆われ。傷ついた人形も、隠れ潜んだままだった人形も、全て凍てつき、動きを止めていた。

「手荒ですまないね。せめてその可憐な姿のまま、時を止めてしまうといい」
 グレイシアは、人形たちにその一言だけを手向けに残して。迷路の奥へと、進んでいく。

 凍り付いた人形。その光景は、少し皮肉だ。
 そんなことを、思いながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

作図・未来
趣味嗜好なんて人によって違う、そんなことは当たり前だろう。
自分の主張の押し付け、ましてそれを理由に危害を加えるだなんて絶対にあってはいけない。
惨劇を止めるためにも、ここで迎撃させて貰うよ。

僕は砕牙の舞踏で戦おう。
路地が狭いから集団戦は向かないかなとも思ったけれど、君たち(獣)なら上手くかく乱する戦いもできそうだからね。任せたよ。

3匹の狼は作戦通り、かく乱するように常に移動しながら戦ってもらう。
背が低く、かつ素早い相手では敵も攻撃を当てにくいんじゃないかな。

大狼の方は、敵の後方に回らせることで逃げ道を塞いでもらおう。
攻撃だけでなく、吠えたりして威圧することで敵の隙を作りたいね。

※アドリブ絡み歓迎



●白狼とチョコレート
 5体からなる、そのメイド人形の一隊は、3頭の白狼を追いかけていた。

 メイド人形たちに与えられたは、そう複雑ではない。
 目的は迷路の踏破、次いで障害の排除。
 あるいは、その狼たちが逃げの一手を打ったのであれば、わざわざ追いかけることはなかったかもしれない。
 だが、付かず離れず、深入りしない程度に攻撃を繰り返してくるとなれば、話は別だ。
 人形たちは張れて狼を敵と認定し、相も変わらず攻撃を繰り返しながら逃走する狼たちを追いかけていた。

 ――そう。
 それが誘いかもしれないと判断する力は……あるいは、その判断を行動に反映できるほどの権限は、彼女たちには与えられていなかったのだ。


「――趣味嗜好なんて人によって違う、そんなことは当たり前だろう」
『――!?』
 人形たちを釣り出した白狼たちの頭を撫でてやりながら。作図・未来(朝日の死者のタンツ・f00021)は、立ち止まった人形たちに、そう言い放った。
「自分の主張の押し付け、ましてそれを理由に危害を加えるだなんて絶対にあってはいけない。惨劇を止めるためにも……君たちは、ここで倒させてもらうよ」

 突き放すように冷たく言い放つ未来を、やはり敵と認識したのだろう。人形たちは扇型に展開し、スカートの内側から引き抜いたダガーを一斉に投げ放ち――応じるように跳躍した白狼たちが、刃を叩き落とし、あるいはその身で受け止める。
 その隙に、未来は懐から飛び出した小さな石を、人形たちの背後に投げ放った。
「古の勇者達よ、其の刃を以って全てを砕け。――そこだ」
 詠唱と共に、石の下――つまり人形たちの退路を絶つように呼び出されたのは、白狼たちより二回りは大きな体躯を持つ、白き大狼だ。
 大狼は透き通るような遠吠えを上げると、白狼たちと共に、人形に躍り掛かる。
 元より、3頭の白狼を仕留め切れなかった人形たちだ。1体、また1体と、人形はその姿を減らしていき――。 

(「――どうして、邪魔をするのです」)
「……何?」

 未来の頭の中に、直接声が響く。
 人形の囁きだ。惑わされればユーベルコードを妨害される。
 ジジッと、つかの間、死霊術で呼び出した狼たちの霊が揺らぐ。

(「ご主人様は、甘いチョコレートを皆に愛して欲しいだけ」)
(「貴方は、憧れないのですか?」)
(「甘くて苦い、恋の味。乙女たちから、想いを捧げられたいと」)

 その言葉に。未来は、かすかに目を見開いて。
「――わざわざ何かと思えば、下らない」
 はぁ、と溜め息一つ。ただそれだけで、狼たちは実体を取り戻し。最後に残った人形を、叩き潰した。

 その残骸を、未来はじっと見つめて。
「別に。恋の話が嫌いなわけじゃないさ。ただ……」
 彼女たちのやり方の先に、幸せな恋も、明るい未来も、待ちはするまい。
 彼が求めるのは、蕩けるようなハッピーエンド。バッドエンドはもちろんのこと、甘味の欠けたチョコレートのようなビターエンドでもないのだから。

 そんな言葉を、結局、最後まで形にすることはなく。
 狼たちを従えて、未来は、次の戦場へと歩んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コーディリア・アレキサンダ
【ステラ・ペンドリーノと同行】

チョコレート、好きだよ。甘いからね
恋のほうはイマイチわからないけれど

さ、なんにしても防衛戦というわけだ。ボクらはボクらの仕事をこなそう
すれ違っても困るし出口近くの分岐路辺りで待ち構えようか、ステラ
敵の話を聞いていたら少し小腹が空いたし、チョコレートでも食べながらね

《壊し、破るもの》を起動
キミたちの暗器とボクの魔弾。弾が先に尽きるのはどっちだろうね?
勿論、第一射が終われば〈高速詠唱〉で矢継ぎ早に第二射だ。弾幕勝負といこう

「ボクらがここに陣取った時点で、ここの突破は不可能になったことを識るべきだったね」

ステラとボクの中の悪魔全て――数的有利もボクらにあった、という話さ


ステラ・ペンドリーノ
【コーディリア・アレキサンダと同行】

チョコレートは好きだけれど、好みを強制するのは良くないわよね
食べ物を愛するのなら、それが好きな人へ向けて届けるべきなのに
魅力の押し売りに至ってしまったのは、残念だわ

さて、戦闘ね…あまり場慣れしていない私は、リアから離れないのが無難でしょう
待ち伏せなら考えることも少ないのだし
あら、リアはチョコレートを持ってきたの?
じゃあ自慢の妹に淹れて貰ったミルクティーと一緒につまんでいましょうか

ええと、いっぱい来る敵をいっぱい攻撃すればいいのよね?
細かく狙う必要はないんだし≪邪神殺影≫、使っても大丈夫でしょう
目に入ったもの片っ端から凍らせちゃえば、リアが砕いてくれるだろうし



●かもめ亭の淑女たち
 一方、その頃。
 コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)とステラ・ペンドリーノ(きみと見つける流れ星・f00791)は迷路の中ほどにシートを敷き、腰を下ろしていた。
 決してサボっているわけではなく、れっきとした待ち伏せだ。互いの能力と経験を示し合わせた結果、それが最前と判断したまでである。

「チョコレート、好きだよ。甘いからね。……恋のほうは、イマイチわからないけれど」
「そうね。私も好きだけれど……好みを強制するのは良くないわ。食べ物を愛するのなら、それが好きな人へ向けて届けるべきなのに」
 持ってきたチョコをひとかけ口に放り込むコーディリアに頷きつつ、ステラが差し出すのは白い湯気の立った水筒のカップ。中に注がれているのは、どうやらミルクティーのようだ。
 素直に礼を言って受け取って、口を付けてみれば――美味しい。淹れて時間も立つだろうに茶葉の香りが引き立って、甘すぎないすっきりとした後味は、まるでチョコレートと一緒に食べることを見透かしていたかのようだ。

「美味しい。これは、ステラが?」
「いえ。自慢の妹が、家を出る前に淹れてくれたのよ」
「……初仕事の当日に何をやっているんだい、あの子は」
 その声に、微かに呆れの色を乗せながら。コーディリアは、ステラの妹……此度の依頼を案内したグリモア猟兵、スバルの顔を思い出した。もっとも、姉に対する、文字通り溺れるほどの愛を隠そうともしない彼女のことだ。喜んで自分から準備をしたのだろうということは、容易に想像がついたけれど――。

 はた、と気付く。これでもしステラに怪我をさせて帰ろうものなら、果たして彼女は自分を許してくれるのだろうか?
 かと言って自分が不用意にステラを庇おうものなら、それはそれで、スバルはもちろん、ステラまで叱ってくるだろうことは身に染みて分かっていた。全く、厄介なくらいお節介な姉妹だと……一瞬、生々しく思い出しかけた感触を振り払うように、微かに首を振って。

「ステラは……あまり、場慣れしていないんだったよね」
「ええ、正直……だから今日は、リアの傍にいさせてね。もちろん、私なりに戦う力はあるから、安心して」
「そう、了解したよ」
 小さく頷くと、コーディリアはそっと、紅茶を飲み終えたカップを近くに置いて、立ち上がり。
「なら、やっぱり、前に出るのはボクがいいね」
 呟いて。赤い瞳を向けた先から――遠く。カタカタと、何かが動く音が響き始めていた。


「権能選択。限定状態での顕現――承諾確認。我身に宿る悪魔、破壊の黒鳥――撃ち落としなさい」
 歌うような詠唱と共に、コーディリアが銀の指輪を嵌めた白い指先を向ければ、百にも及ぶどす黒い呪詛の弾丸が嵐のように撃ち出された。魔弾はそれぞれが生きているかのように自在に軌道を変え、メイド人形たちを貫き、あるいは彼女たちが放つダガーや飛針の類を正確に打ち落とす。
 生き残った人形たちは、破壊された味方の身体を盾として進軍しようとするが、
「再度、顕現――承諾確認。撃ち落としなさい」
 第二射。卓越した高速詠唱の技術に支えられたコーディリアの魔弾が、それを牽制し、隙ができたと見るや撃ち抜いていく。

 雑兵だ。一体一体は物の数ではない。
(「けれど。少し、数が多いかな」)
 胸中で呟いて。弾幕を張り続けながら、さて、彼女はどうしたかと隣を見やれば。
「んー……ここは、もう少し……」
 構図を探る画家か、あるいは写真家のように。彼女は両手の指で長方形を作り、その窓から敵を覗き込んでいた。
「……ステラ?」
「あ、リア。メイドちゃんたち、もう少し左に寄せられない? こう、右の方に、どかんって」
「それは、構わないけれど」
 キミは一体何をやってるんだい、そう思う言葉を一旦飲み込み、再度の連射。前進しようとするメイド人形たちを牽制し、指示された位置に追い立てていく。
「あー、そこそこ、うん、いい感じ――はいっ、フリーズ!」
 ぱしゃり。と、記念撮影のシャッター音でもしそうな、ステラの明るい声が響いた瞬間。

 目の前で戦っていた全てのメイド人形たちが、彼女らの投げ放った刃が、容易には壊せぬはずの迷宮の壁が、そして無数に飛び交うコーディリアの魔弾、実体を持たぬ呪詛の塊までもが、一斉に凍り付き、微塵と砕け散った。

「――――え?」
 今、何を。説明を求めるコーディリアの視線に、ステラは何でもないことのように、小首を傾げて。
「ええっと、なんていったら良いのかな……局所的な時流停止を起こして、分子を凍結させた……?」
 多分、母から受け継いだ悪魔の力だと思うんだけど……そう、少々自信なさげに話すステラの端正な顔を、コーディリアは、じ、と見つめる。
(「――今のが、悪魔の権能だって?」)
 悪魔と称される力の源など、世界ごとにまちまちだろう。彼女とてその全てを知るとは言えない。だが、その身に数多の悪魔を宿す彼女だからこそ、感覚で分かった。
 今のは、『違う』。もっと人から遠い、正気で関わること能わない『何か』の力だ。例えるならば、そう、別の星の理を、無理やりに適用したかのような――。

「ええっと、リア……? 私、何か失敗した?」
「……ああ、いや。ごめん、何でもないよ。助かった」
 戸惑いの色を浮かべたステラに、小さく頷きを返す。見る限り、別に心配はないだろう。ステラに無理をしている様子はないし、制御できているのなら、その力は頼もしい。
 故にコーディリアは思索を打ち切り、ステラが破壊した壁の穴に視線を向ける。
 索敵に放った悪魔が、壁の向こうの気配を告げる。壁の破壊を察知して様子を見にきたメイド人形だろう。

「リア。今みたいに、いっぱい来る敵を、いっぱい攻撃すればいいのよね? さっきはよく狙ったけど、もう少し大雑把に」
「ええと。壁を巻き込むのは程々に。それと、ボクたちまで凍らせないでね」
「たち……? ええ、分かったわ。気を付けるわね、なるべく」
 頼もしいのか危なっかしいのか分からないステラの返事に、微笑とも苦笑とも付かない曖昧な笑みを浮かべて。コーディリアは、壁の向こうに向き直り。

「すまないね。壊れた壁を突破口と見るのは分かるが――ボクらがここに陣取った時点で、ここの突破は不可能になったことを識るべきだ。
 ボクの中の悪魔全てと、ステラの――ああ、とにかく。キミたちの強みだった数的有利も、ボクらにあるのだから」

 彼女の、宣言通りに。
 十数分後、2人の淑女によって、この一帯のメイド人形たちは掃討されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エスチーカ・アムグラド
もっ、どーして無理やり布教なんてするんでしょう!
あーんなに美味しいんですから、そんな事しなくたって心配ないのに!
チーカたちでここを防ぎきって、ショコラティエールの侵攻も布教も止めないと!

敵は数が多くて……ちょっと小さいんですね
でもでもっ、それでもチーカの方が小さいですから!
向かってくる集団の中に潜り込んで、刃嵐の範囲攻撃でどーん!です!
どうやって潜り込むかは……えーっとえーっと……迷宮の曲がり角を使ったり、天井の方まで飛んで飛び降りたり?
それかそれか!他の猟兵さんと協力して!


氷室・癒
チョコっ! チョコは大好きです! この季節はもーっと好きですっ!
家族とチョコ交換! 甘いお菓子は幸せの味! チョコレートで人を悲しませる敵に、チョコレートの本当の意味を教えてあげます!

メイドさんですっ! わーっ! メイド服はとってもかわいいですね!
ぼくにも似合うでしょうか……はっ、いけないいけない! 敵ですから戦わなくては!

メイドさんとかわいさバトルですっ! いやしちゃんういーんくっ!
かわいさバトルに勝てば動きが止まったりダメージが出たりするはずですっ!
あるいは、一緒に戦う仲間の手助けになるはず!
ふふっ、他にもいやしちゃんは避けたり飛んだりラッキーだったり、他の人を助けるのは得意ですからねっ!



●可愛さの暴力
「わぁ、またメイドさんっ! わーっ! やっぱり、メイド服は何度見てもとってもかわいいですね!」
 迷路をひとり進む先。氷室・癒(超ド級ハッピーエンド・f00121)は、ばったり出くわしたメイド人形の愛らしさに、思わず歓声を上げた。
(「ぼくにも似合うでしょうか……あっ、今! 絶対すごく似合うから一刻も早く着て欲しいってテレパスが飛んできた気がします! びびび! ……はっ、いけないいけない、敵ですから戦わなくては!」)
 ふにゃふにゃと相好を崩してどこからかの電波を受信した矢先、メイド人形が姿勢を落とし、仕込み箒から刀を引き抜いて飛び掛かってくるのが目に入り、癒は慌てて向き直る。すっと身構え、顔の横でぴっ、と指を立て。
 彼女の戦闘スタイルは至極明快。

「いやしちゃんういーんくっ! きらきらーんっ! ぴかっ!」

 言葉通りの天然なのかあるいは実は計算なのか、見える限りはその前者。自分がもっとも可愛く見える角度をキメて、ばちこーんと渾身のウィンク一つ。
 ――そう、かわいさバトルである!

『――ッ!』
「わきゃーっ!?」
 無論、心なき人形はそんなものでは怯んでくれず、容赦なく刀が降り抜かれるわけだが。
 癒は悲鳴を上げて飛びのいてかわし、ばさりと黒い翼をはためかせ、方向転換! 自分の半分ほどの背丈しかない小柄な人形の横をギリギリですり抜け、背中を取るように振り向いて。
「もう、おいたはダメですよーっ。めっ!」
 白い指先を伸ばすと、振り向いて追撃を加えようとしてきた人形の額をちょんっ。
 するとどうしたことだろう。
 癒の仕草のあまりの可愛さに動揺したのか――いや恐らくは単に運悪く――無理な体勢で攻撃しようとしていた人形は、自分の足に足を引っ掛けるような無様な姿でバランスを崩し、

 ごッ。

 鈍い音を立てて後頭部から迷宮の壁に激突し、そのまま動かなくなった。
 その様子を、癒はぱちぱちと目を瞬かせてしばらく見つめ。

「おやおや、もう降参ですか? ふふっ、かわいさバトルはいやしちゃんの勝利のようですねっ! ぶいっ!」

 華麗な、勝利宣言。
 その真の武器は、愛らしさか、運か、運動能力か――否、恐らくは全てを自分のペースに巻き込むいやしちゃん時空。
 そう、最初のセリフでお察しかもしれないが。氷室・癒はここまでずっとこの調子で、無傷で迷路を踏破してきたのである……!


 ――なんだあれ。

 その一部始終を見つめていたのは、曲がり角から新たに現れた、3体のメイド人形と1人の妖精剣士であった。
 心なきはずの人形たちの間に広がる動揺。癒の脅威度を測りかねたのか、無言で視線を交わし合い。
「あやー、すごいですね、いやしお姉さん。その可愛さは三千世界に響き渡るっ。ってところでしょうか!」
 うんうん、と感心したように、妖精剣士、エスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)もまた頷く。
『――。……。……? ……!?』

 ――なんだお前!

 癒がかきまわした空気に紛れたのか、いつのまにか自分たちの中に紛れていた、自分たちのさらに半分の、それまた半分ほどの背丈しかない小さな妖精に。人形たちは慌てたように身構えて、一斉に仕込み箒の刀を抜き打った。
 一見すれば一糸乱れぬ連携――だが。

「おおっと、甘いですよっ! チーカの方が小さいからって、甘く見ないで下さい!」
 それに倍する速度で引き抜かれるのは、妖精の腰に佩かれた剣――グラディオラ。
 ただでさえ動揺していたところに咄嗟に放たれた攻撃など、日々の鍛錬を積み重ねてきた本物の剣士には通用しない。ひらひらとカラフルな羽根をはためかせ、刀を受け流し、あるいはかわしながら、エスチーカはふわりと舞い上がり。
「さあ、今度はこっちの番です……風に舞え、花の刃! どーんっ!」
 付け足された擬音は、あるいは先ほど目にした「可愛さの暴力」の影響か。高く掲げたグラディオラははらりとほどけるように、無数の桃色のグラジオラスの花びらに姿を変えて、人形たちを飲み込んでいく。
 吹き荒れる『刃嵐(トルメンタ・デ・グラディオラ)』が収まった時には、もはや人形たちは一体たりとも動いていなかった。

「わぁ、すっごく綺麗……って、ちーたん!」
「えっへへー、こんにちはーっ、いやしお姉さん!」
「ふっふっふーっ、こんにちはっ」
 ひょこひょこと近付いてきた癒に、エスチーカもまた、姿を戻した剣を古めかしい鞘に納めながらひらひら飛んで近付いて、いえーいと親しげな様子でハイタッチ。
「ちーたんも来てたんですねっ! いやしちゃんびっくりですっ! このまま一緒に行きませんか?」
「もちろんっ。一緒にここを防ぎきって、ショコラティエールの侵攻も布教も止めましょう! ……大体、なんで布教なんてするんですかねー。あーんなに美味しいんですから、そんな事しなくたって心配ないのに!」
「ほんとですっ! 家族とチョコ交換! 甘いお菓子は幸せの味! チョコレートで人を悲しませるひとには、チョコレートの本当の意味を教えてあげましょう!」

 ふわふわ、にこにこ。
 宿のロビーで談笑する時と、何ら変わりなく。少女たちは笑い合いながら、迷路の先へと進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高坂・透
かわいい人形なのに物騒だよねぇ
きっと、妹が好きそうな感じなのに……勿体無いなぁ
一体くらい持ち帰って、妹の墓前に飾ってあげられないかなぁ……え?ダメ?だよねぇ
まぁ、襲ってくるなら仕方ないよねぇ

人形とは出来るだけ距離を取りつつナイフを投げて応戦するね
サインペンに見せかけた仕込み暗器

一応沢山持ってきてるけど、もし途中で投げる分がなくなったら
UCでアイツにチェンジ……すごく、イヤだけど

『やぁっと俺様の出番かよ!待ちくたびれたぜ!好きなだけ壊していいんだよなァ?ヒャハハハハハ』
ああもう、うるさいなぁ
これだからイヤなんだ
戦闘が終わったら体、返してよね?



●透と透
「かわいい人形なのに物騒だよねぇ……わわっ、っと」
 曲がり角に飛び込んで、高坂・透(多重人格者のサイキッカー・f09810)はほっと一息。一瞬前まで彼が立っていた位置に、数本の飛針が突き刺さる。
「きっと、妹が好きそうな感じなのに……勿体無いなぁ。一体くらい持ち帰って、妹の墓前に飾ってあげられないかなぁ……え? ダメ? だよねぇ」
 ここにいるのは透一人。だというのに、まるで誰かと言葉をかわしているかのように溜息一つ。足を止めずに走り抜けながら、懐から2本まとめて引き抜いたのは、サインペンに見せかけた仕込みナイフだ。

 不意に振り向き。曲がり角から姿を現したメイド人形に向け、ノーモーションで投げ放つ。
 刃は読まれていたようで、当然のように仕込み箒に撃ち落とされるが――本命は投げ放ったナイフの影に隠れるよう、同時に投げ放っていた2本目だ。刃はとんっと軽い音を立ててメイドの額に突き刺さり、目を見開いた人形は、ゆっくりと崩れ落ちていった。
「また一つ……っと。……わわ、また来た……キリがないなぁ……」
 一息つく間もなく響く複数の足音に、青年は眠たげな顔立ちをかすかに曇らせ、懐を探る。
 たくさん持ってきたつもりの暗器だが、連戦に次ぐ連戦の末、残弾数は心もとない。
「これは……仕方ない、かな。……すごく、イヤだけど。今だけ、力を借りるよ……『俺』」
 はあ、と、重苦しい溜め息を一つ。目を閉じ、自らの心と向き合うように、意識を沈め――。

「やぁっと俺様の出番かよ! 待ちくたびれたぜ!」
 目を開けた時には、その形相は別人のよう。獣のような笑みを浮かべ、透は駆け出し、現れたメイド人形たちの中に飛び込んでいく。
(「ああもう、うるさいなぁ――これだからイヤなんだ。戦闘が終わったら体、返してよね?」)
「へっ、つれねぇなぁ! わーってるよ、もう一人のオレ! 信用してくれって、ヒャハッ」
 嗤う『透』は、刀を振り上げてきた人形の細い手首を掴み、引きずり倒し、その喉元にナイフを叩き込む。ぐり、と抉れば、メイド人形の細い首はあっさりともげて、地面に転がる。その頭部を、ばきりと踏み砕き。
「ひとぉつ! 脆い脆い、壊しがいがあるぜぇ! 好きなだけ壊していいんだよなァ? ヒャハハハハハッ!!」
(「――本当に分かってるんだろうね、『俺』……」)
「うるせぇなぁ! 今良いトコなんだ、分かんだろ! お前は俺様なんだからさぁ! 分かったらちょっと静かにしてな、『ボク』ちゃんよ!」
 品のない哄笑を上げながら。片手にナイフ、片手に奪い取った自分にはいささか短い刀を握り。『透』は破壊衝動に身を任せ、嬉々として新たな獲物に飛び掛かっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

露霧・霞
迷宮にメイドッスか……結構目立ちそうッスよね
不意打ちされるのも怖いッスし、気をつけていきたいッス

可能なら携帯用の灯りを持っていきたいッスね。腰にでもつりさげられるやつ
こちらの位置もバレちゃいそうッスけど、不意打ちされたり暗所で戦うことになるよりは良いと思うッス
戦闘ではバトルアックスを振り回してグラウンドクラッシャーを使うッス
身長低いっスけどあたし、力には自信あるッスよ!
メイド人形自体そんなに大きくないらしいッスし、上からこうグチャッとやっちゃうつもりでいくッス
「容赦はしないッスよ! ドーンッて食らうといいッス!」
「にしても、人形だから不愛想ッスね。なんか、こう……可愛げがないッス?」



●羅刹の斧
「迷宮にメイドッスか……結構目立ちそうッスよね」
 独り言を呟きながら、露霧・霞(あたしってば最高ッスよ・f00597)は迷宮を行く。
 もっとも、目立つというのであれば、故郷に伝わる民族衣装に身を包み、腰にはランタンを吊るした霞とて、負けてはいないだろう。ゆらゆらと揺らぐ灯りが、薄暗い道を照らし出す。自分の位置も遠くからも目立ってしまうだろうが、物陰から不意打ちを受けるよりはずっとマシだと霞は考えていた。

「お……来たッスね!」
 ランタンの照らす先。羅刹の少女の赤い瞳に、正面から近付いてくる3体のメイド人形が映し出された。気付かれたことを察したのだろう、仕込み箒を引き抜いて駆けだした人形たちを見据え、霞もまた、体格に似合わぬバトルアックスを構え直して――
「容赦はしないッスよ! ドーンッて食らうといいッス!」
 振り下ろす。
 リーチの差を生かした先制攻撃。重量のある戦斧は刃というより鈍器のように、中央の人形を叩き潰した。声なき断末魔と共に、歯車や、霞には何なのかよく分からない部品が飛び散って、勢い余ってそのまま迷宮の床にめり込む。バキバキと亀裂が走り、大穴を開けた。
 無論、残り2体の人形も、黙って見てはいない。左右に飛びのいてかわし、霞を挟むように弧を描き、刀を振るうが――

「甘いッスよ!」
 地面にめり込んだ斧を起点に、柄の上に逆立ちするように。両手だけで軽々と自らの体重を支えれば、小柄な人形たちの斬撃は霞に届かず、ぎぎんと戦斧の柄に叩きつけられた。
 そう、これこそが――
「通販で買った、逆立ち健康器具の成果ッス!」 
 誇らしげに叫びながら。思い切り身体を振って反動を付け、空中で斧を引き抜いて。桃色のツインテールが尾を引いて、嵐のように振るわれたバトルアックスが、地上の人形たちを軽々となぎ払った。
 ……あの健康器具、頭に血が上るものだから、3日も経たずに飽きてしまったが。やっぱり何でもやっておくものだと、鍛錬マニアの少女は思う。

「にしても……」
 メイド人形たちの部品がまき散らされる中、すとんと着地した霞は、ふと、首を傾げ。
「人形だから不愛想ッスね。なんか、こう……可愛げがないッス?」
 これならあたしの方が可愛いッス。素敵な笑顔は大事ッスからね。人目がないことを良いことに、なかなか図々しく、美少女としての自負に満ちた呟きを漏らしながら。霞は再び、歩き出した。

 迷路の出口は、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『迷宮ショコラティエール』

POW   :    チョコレート・ソルジャーズ
レベル×1体の、【頬】に1と刻印された戦闘用【チョコレートで出来た兵隊】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    チョコレート・コーティング
【溶かしたチョコレート】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    チョコレート・グラフティ
【溶かしたチョコレート】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を自分だけが立てるチョコの沼にし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠御剣・誉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷宮ショコラティエール
 ――迷路エリアを抜けて。
 別行動を取っていた猟兵たちはほぼ時を同じくして、複数の出口から、次のエリアへと足を踏み入れた。

「あら、あら……メイドたちの報告がないと思っていたら。もしかして、貴方たちが邪魔していたの?」
 見通しの良い広場に、おっとりとした女性の声が響く。
 一見すれば清楚さすらも感じさせる淑女だが、無論、見た目通りの存在ではない。
 その証拠に。彼女のその身を包むミントのようなドレスの周囲には、チョコレートが生き物のように蠢き、彼女を守るように舞っていた。

 迷宮ショコラティエール。堕ちたる菓子職人。
 そして今は、アルダワ魔法学園の地下に広がる広大な迷宮に潜む無数の災魔の一、すなわちオブリビオンである。

「私は早く地上に行きたいのだけど……仕方ないわね。チョコレートを愛さないというのなら」

 ――貴方たちにも、恋の味を教えてあげる。

 甘い囁きと共に。ほろ苦い戦いの火蓋が、切って落とされた。
月輪・美月
敵が可愛い女の子ばっかりで戦い辛いんですけど……! 
しかもチョコくれるっぽいんですけど……でも、今は勝たなきゃ駄目だ……格好良く勝って、他の参加者の女性陣にいいところを見せる……それがチョコに繋がる道、僕は負けない……

僕と、僕の狼さんは甘党なんですよ。さあさあ、白影、おやつの時間です。素敵な女性からのチョコは残したりするものではありません、全部喰らいつくしなさい…………あれ、一応敵ですからね、恋の味を知っては駄目ですよ

チョコの沼って……ちょっと衛生面が気になります
【影から巨大な狼を召喚し、ボスの周囲のチョコを飲み込む。参加者の女性がやられそうなら庇う。他の人との合わせ、行動アレンジ追加大歓迎】


エギーユ・シュマン
わかる。わかるっすよ。
美味しいものはみんなで共有したいっすからね。
自分の作った美味しいものは食べてもらいたいっすもんね。
わかるっす。痛いくらいにわかるっす。

だから、あちきがなんとかするっすよ。
そこのチョコレートの兵士、とっても美味しそうっすよね。
極上のチョコレートの気配がプンプンするっす。
丁度お腹がすいてきたところっすからね。

ああ、大丈夫っす。心配なんてしなくても平気っすから。
だって、チョコレートを愛して欲しいっすよね?

じゃあ、残さず、ぜーんぶ、あちきが食べてあげるっす!

狩猟者の本能でチョコ狩りっすよー!
今日はチョコレートパーティっすー!



●赤ずきんの狩人と狼
「メイドたちは、やられてしまったのね。やっぱり借り物の従者じゃダメだわ。――なら、作らないと。新しい手足を、私の作品を」
 その言葉と共に。迷宮パティシエールが周囲に纏うチョコレートが、どろどろと形を変え、溢れ出すように体積を増して。
 まぁるいチョコレートボンボンの頭部に、生チョコの頭部。手には板チョコの盾と、ドリルのような形のチョコを取り付けたスティックの槍。
 まるで玩具のような、お菓子のようなチョコレートの兵士を、形作っていく。
 数十、あるいは百を超すチョコレートの兵士たちは、生まれるいや否や、手近な猟兵たちに襲い掛かっていった。

「ねえ。どうして。どうして分からないの? 私はただ、甘いチョコレートを……」
 戦闘の趨勢を、分かっているのかいないのか。うわごとのように繰り返す迷宮ショコラティエール。だが、その言葉を聞く者は誰も――否。

「わかるっすよ」
「!?」
 彼女の前に立った、赤いフードを頭の後ろに下ろした狩人――エギーユ・シュマン(はらぺこ狩人・f05780)は、深々と頷いて。
「自分で作った美味しいものは食べてもらいたいっすもんね。わかるっす。痛いほど、わかるっす」
「……! そうでしょう!? ふふ、猟兵にしては話が分かるわね! なら、私を手伝って……」
「――だから、あちきがなんとかするっすよ」

 構えたのは狩猟用のロングボウ、矢筒から引き抜いたのは何の変哲もない一本の矢。番えた、そう見えた瞬間には、既に矢を放っていた。
 ユーベルコード、狩猟者の本能。空腹感による食への渇望、敵に向けた食欲により矢の威力を強化する力は、甘いお菓子の兵士に囲まれ絶好調だ。
 チョコの兵士の3体が、纏めて1本の矢に貫かれ、粉々に弾け飛び。
 くるくると飛んできたチョコレート兵士の『腕ほどの大きさの破片』を、エギーユは分厚い手袋に包まれた掌でぱしりと掴み取り。
「んーっ、なかなか美味しいっす! 言うだけのことはあるっすね、『迷宮ショコラティエール』!」
 むしゃむしゃと、食べた。

「――――え?」
 ここに来て初めて、ショコラティエールは小さな動揺を顔に浮かべた。敵対に、ではない。猟兵は敵、オブリビオンにとっての本能だ。だから、それは良い。だが。

 なによそれは。おかしいでしょう。
 食べた量に応じて自身を強化し癒す力ならば分かる。
 喰らいついて攻撃するユーベルコードならば分かる。
 だが、今のは違う。見れば分かる。狩人の攻撃は、弓を放った瞬間に、もう終わっていた。

 ――今のは、ただ、私の、強敵であるはずの私の目の前で、何の意味もなく、倒した兵士を食べただけだ。

「なんで驚くんっすか」
 エギーユは、小さく、心から不思議そうに首を傾げた。邪気のない琥珀色の瞳に、理解しがたい物を前にした顔を向けてくるショコラティエールを映す。
 狩人の少女は、純粋だ。美味しいものを食べたい。そして皆で共有したい。それだけの動機で戦っている。
 だから、共感していたのだ。嫌味でも揺さぶりでもなんでもなく。あなたも。

「食べて欲しかったんじゃ、ないんっすか?」
「――――ッ!」

 そのどこまでも純粋な言葉に、何を思ったか。迷宮ショコラティエールの華奢な身体がぐらりと揺らぎ。
 返答の言葉はなく。
 見たくないものを押し流そうとするかのように、災魔の足下から、溶けたチョコレートが津波のように巻き起こり、不遜な赤ずきんを押し潰さんと迫る。


「あ、やば。これ…………食べられないっすね!」
 一瞬、飲み干せないかと思ってしまった雑念が致命的。
 でも、仕方ないと思う。ケーキの中を食べながら掘り進むあれを、誰だって3日に1度は夢見るはずだ。
 とはいえ諦めるわけにはいかないと、身体を低く沈め、全身のバネを引き絞り――

「おっと、丁度いいですね。そのままで、素敵なお嬢さん」
 その身体を。エギーユの影の中から現れた青年が、腰を抱き寄せるようにかっさらい、再び影の中に引きずり込んだ。

 一瞬後。誰もいない場所を、チョコレートの津波が押し流す。


「さぁさぁ、白影。おやつの時間ですよ。素敵な女性からのチョコを残したりするものではありません、全部喰らい尽くしなさい」
 エギーユと共に、少し離れた影から姿を現せば。間髪入れず、月輪・美月は影の巨狼を呼び出して、チョコレートの兵士たちにけしかける。
 うぉん、と吼えて飛び掛かる頼もしい相棒を見ながら、美月は、

(「――今のは、決まった!」)

 内心、ガッツポーズ。
 敵が可愛い女の子ばっかりで戦い辛い、しかもチョコくれるっぽい。攻撃したくないんですけど。最初はそう思ったが、よくよく考えればそういうわけにはいかない。
 何故ならば――そう、今がバレンタイン前だから。
 美人揃いの女性猟兵たちに良いところを見せつける。それがチョコ獲得につながる最短ルート。そのためなら、僕は負けない……!

「あ、あの……助かったんっすけど、その……」
「おっと、失礼」
 モノローグの最中、すぐ傍からかけられた言葉に、狩人の少女を抱き寄せたままだったことに気付き、ちょっと、いや大分慌てて手を放す。咄嗟のこととはいえ、強引過ぎた。セクハラとか言われたらどうしよう……と見下ろせば、おや、彼女はまだ何かを言いたげな様子。

 ……待って、チョコですか? これは早速チョコチャンス来ましたか?
 いやあ顔が良すぎるのは罪ですね! まさか本気を出したその場でチョコチャンスとは……!

 ここまで1秒。そわっと身じろぎして、意味もなく襟など正してみる美月を、エギーユは熱のこもった視線で見上げ。

「全部独り占めはダメっす、あちきの食べる分も残しておいて欲しいっすよ……!」
「……ええー……」
 軽く引いた。しかも比喩ではないらしい。どっちにしても怖いが。
「まあ、美味しそうに見えるのは分かりますが……その、ちょっと衛生面が……」
「大丈夫っすよ! あちきのお腹、丈夫っすから! さあ、行くっすよー!」
 今日はチョコレートパーティっす! そう叫んで、元気良く駆けだしていく狩人の背中を呆然と見送りながら。

「……あー、その、白影。あれ、一応敵ですからね。恋の味を知っては駄目ですよ。あと、程々に」
 うぉふ。主人を慰めるように鳴いた白影は、のっそりと一つ頷いて。
 どうやらそのためだけに戻ってきたのか、再び敵に飛び掛かっていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

露霧・霞
恋の味ってなんだかドキドキするッスね!
でもお姉さん、服にチョコたれてるッスよ?
それじゃ恥ずかしくて好きな人どころか、人前出れないッス

まずは力任せに一発! ッス。まずもなにも、力任せに殴ることしか出来ないッスけど!
「うわっ、薙刀にチョコついちゃったッス。これ後で綺麗に取れるッスかね……」
愚痴りつつも、そのまま殴り続けるッスよ
そもそもチョコへの愛とか言ってるわりに、こうやってチョコと戦う羽目になってるあたし達は、チョコへの愛情グングン下がってるッスけど

あー……にしても甘い匂いがすごいッスね。なんだかお腹すいて来ちゃったッスけど、食べるなら動かないチョコがいいッスねえ


エスチーカ・アムグラド
恋の味……というのはいつかチーカ自身で知りますので!
心配ご無用です!
……でもでも、甘い香りに惑わされないように気を付けないとっ

チーカは【空中戦】が得意ですから、翅で風に乗って戦いますよ!
【属性攻撃】も得意ですからね!風の斬撃で攻撃していきます!
もしかしたら、ショコラティエールの周りのとか、飛んでくるチョコレートを風で冷やして固めてしまったりとかも出来るかも……?
この後チョコレート作りにチャレンジするんですから、チャレンジが一つくらい増えたって平気です!
チーカは【勇気】を持って何でも挑戦しますよ!



●二振りの刃
「私の自慢のチョコレートに、随分と好き放題してくれるじゃない……いいわ。お前たち、本気を出しなさい!」
 業を煮やした迷宮パティシエールの号令に、チョコレートの兵士たちはすぐに応えた。
 生き残った兵士たちが、否、既に倒された残骸までもがどろどろに溶け、一カ所に集まって――形作られたのは、身の丈数メートルに及ぶ巨大なチョコレート兵士だ。
 巨大兵士は高々と槍を掲げ、声なき咆哮を――

「まずはいっぱぁっつ! ッス!」
 最初に動いたのは、露霧・霞だった。
 力任せの斬撃。横薙ぎに振るわれた薙刀が、兵士の腹を深々と切り裂いて。
「薙刀にチョコついちゃったッス。これ後で綺麗に取れるッスかね……」
 嫌そうに眉を顰めて穂先を見つめつつ。兵士の様子を見上げれば――

『――ッ!」
「うわっ、効いてないッスか……!?」
 何事もなかったかのように突き込まれる、巨大なチョコの大槍。慌てて横に飛び退いてかわしながら様子を見れば……今切り裂いたばかりの傷口が、どろどろと溶けたチョコレートに覆われ、消えていくのが見えた。
「ちょっ……どうすればいいんッスか、これ!」
 ぶんぶんと力任せに振るわれる大槍を、受け、かわし。隙を見て反撃を入れるも、やはり効いた様子はない。
「ああもうっ……チョコへの愛とか言ってるわりに、こうやってチョコと戦う羽目になってるあたし達は、チョコへの愛情グングン下がってるッスけどー!?」
 もっともな文句も、満足げな笑みを浮かべる迷宮パティシエールの耳に届いた様子はない。
 ……だが、その言葉を聞き届けた小さな影が、一つだけ。


「ほんとに。これじゃあ食べる前に嫌になっちゃいそうですよね。……にしても、あれって」
 霞の言葉にぽつりと同意しながら――エスチーカ・アムグラドは翅で風に乗り、上空から戦況と敵の隙を伺っていた。
「あれってもしかして……合体した時にどろどろになったチョコが、まだ固まりきってないんでしょうか……?」
 もし、その推測が正しいのなら……自分にも、出来ることがあるはずだ。
 上手くいく自信なんてない。けれど、
(「どっちみち、このあとチョコレート作りにチャレンジするんですから。チャレンジが一つくらい増えたって平気です!」)
 心の中で、自分にそう言い聞かせ。

 エスチーカは顔の前に剣を掲げ、ほんの一時、目を閉じて。
「風の精霊さん……チーカに力を貸してください!」
 振るう。剣の振り下ろされた先に、不可視の刃が伸びたかのように。百に及ぶ風の刃が放たれ、巨大兵士に無数の傷をつけた。
 『烈風(ヴィエント・フエルテ)』。精霊たちはエスチーカの願いを聞き届けたのだ。

「ははっ、無駄よ無駄! そんな小さなナイフで、私のチョコレートを何とかしようなんて……。……!?」
 迷宮パティシエールの高笑いが不意に途切れる。
 エスチーカの付けた傷は、やはりすぐに再生を始めているが――治りが、明らかに悪い。
「な……何をしたの!?」
「簡単です。風の精霊さんの力を借りて……冷やして、固めてしまっているだけですよっ!」
 得意げに言い放ったエスチーカは、再び風の刃を放つ。
 刃は巨大兵士の身体を切り裂き――そして、その傷口につむじ風が吹き荒れては、断面のチョコレートを乾かしていく。再生が完全に止まったわけではないが、うまくくっつかず、時にはズレてしまっている場所まで生まれていた。

「し……素人の子供なんかが、私の作品に手を加えるなんて! 貴女、知りたくないの!? 私のチョコの味! 甘くてほろ苦い――」
「恋の味、というのなら……いつか、チーカ自身で知りますので! 心配ご無用です!」
 びしりと、剣を突き付けて。
 今度は迷宮パティシエールに向けて、エスチーカは牽制の風刃を放っていく――。


「すごいッス。あんな方法があったなんて……」
 赤い瞳をまぁるく見開き、霞は頭上に浮かぶ妖精剣士を見上げていた。
 見たところ自分よりも年下なのに、随分と機転の利いた戦いをする。力任せに振り回すしかできない自分とは大違いだ。それに、何より……
「恋の味は、自分で知る……ッスか」
 恋の味。なんだかドキドキするッスね、なんて、他人事のように思うだけだった。自分もいつか、その味が分かるのだろうか。そう、彼女のように胸を張って言い切れるだろうか。その答えはすぐには出ない。……けれど。今、霞にできることが一つだけあった。

 チョコレートの巨大兵士に、向き直る。兵士は再生に手こずりながらも、徐々に体勢を立て直しているようだ。
 ……やり方が分かったのなら、自分にだってできる。それだけの積み重ねがあるのだから。

「さぁ、この一撃は痛いッスよ!」
 薙刀を肩に担ぐように振りかぶり。霞は大きく跳躍。軽々と数メートルの高さまで飛び上がり、全ての力を刃に込めて。
「歯ぁ、食いしばれッス!」
 ――振り下ろす。
 猛烈な一撃を、つなぎ損ねた腕で受け止めることはできず。頭から真っ二つ、左右に両断されたチョコレートの身体は――そのまま、びしりびしりと凍り付き始めた。
「凍っちゃえば、チョコも固まるッスよね? たぶん」
 『氷力刃舞』。力任せの一撃には、違いないのだが。刀身に氷の刃を込める、極寒の里に生まれた霞に相応しい斬撃だった。

「……貴女も。貴女も、チョコレートが嫌いなのね? だからこんな酷いことをするのね……?」
 エスチーカの刃をかわしながら、熱に浮かされたような様子でこちらを睨み据えてくる迷宮パティシエ―ル。
 その姿を、霞はじっと見つめ返して。
「さっき言ったッスよ。食べるなら、動かないチョコがいいッスねえ……」
 そう苦笑いしてから。「あ、そうだ」と、ふと思い出したように。

「お姉さん、服にチョコたれてるッスよ? それじゃ恥ずかしくて、好きな人どころか、人前出れないッス」

 ――返答は、チョコの津波であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイラ・エインズワース
チョコレートの甘い香り
甘くておいしいチョコレートを薦めるダケの存在
……だったらよかったんだケドネ
ソレが過去の夢ナラ、ココで終わらせるヨ

朗々と、天に響くように【高速詠唱】するノハ鎮魂の調べ
【全力】の魔力を籠めて作成するのは冥府の槍
コレは貴女の墓標
ここで貴女は討ち取るカラ
百を超える槍、さばききれるカナ
基本的には本体狙い
取り巻きが多かったラ、そっちにも槍を割り振るヨ
チョコレートの沼は焼いて焦がして蒸発させちゃオウ!
被弾しても刺した槍から【生命力】を奪って再生するヨ
フフフ、見た目通りの子じゃないんダヨ

アドリブ・絡み歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


ステラ・ペンドリーノ
【コーディリア・アレキサンダと同行】

まったく、甘くておいしいチョコレートを攻撃の手段に使うなんて
菓子職人にしては随分と無粋なのね
このオブリビオンが一番チョコを愛していないんじゃないかしら

あら、なぁにリア
貴女の中って色々いるみたいだけど、スイーツ担当の子もいるの?
うーん、でもうちに悪魔を潜ませているっていうのはいかにも術師っぽくてちょっとカッコいいわよね
私も何かそう言う魔法とか召喚とか使ってみたいかも……

って、あら、あらあら?
いけない、すっかりぼーっとしちゃってたわ!
ああ、もう……えっと、何で攻撃すれば……
あぁん、もう! だから戦うのは慣れてないんだってば!
助けてリア!
助けてスバルちゃーん!!


コーディリア・アレキサンダ
【ステラ・ペンドリーノと同行】

待ち伏せしていた分、少し遅れたかな?

チョコを武器にするのは好きなのか嫌いなのかわからなくなって来ないかい?
しかし武器がチョコレートだとしても変幻自在のそれは厄介だ

「さて――」

ならばやることは一つ
ボクの中の悪魔たちからアレを何とか出来る悪魔を――
ああ、水域の公爵。またキミかい?
いや、理屈はわかるけれど……
キミ、最近水域というよりスイーツ公爵になっていないかい?

「全智の書」より水域の公爵の権能を起動
敵の放つ溶かしたチョコ、その操作権を奪って無効化を狙おう
悪魔は奪う者、だからね

しかし、見るだけで胸焼けがしそうな光景だね
ボクは好きだけど……一口ぐらいならいいかな、チョコ



●続・かもめ亭の淑女たち
「……まだ! まだよ! 私は幾らだって、チョコレートを作れるのだから……!」
 崩れ落ちる合体兵士の姿に、悔しげに顔を歪めながら。
 足下から再び巻き起こしたチョコレートの津波が、猟兵たちを片端から飲み込もうと襲い掛かり――

「キミ。そんな戦い方をしていて――チョコを好きなのか嫌いなのか、分からなくなって来ないかい?」
 逆方向から全く同じように放たれたチョコレートの渦が、ショコラティエールの技を相殺した。
 魔女、コーディリア・アレキサンダの『全智の書(アルス・ノヴァ)』――その細身に宿す数多の悪魔の中から、敵の技に似た権能を持つ悪魔を探し出し、再現させる魔法である。
 今回呼び出したのは、水域の公爵。かつて売れ残りクリスマスケーキ怪人のクリーム攻撃を再現したのと同じように、今度は迷宮ショコラティエールが先に放って地面に溢れていたチョコレートの支配権を奪い、操って……
「……キミ、最近水域というよりスイーツ公爵になっていないかい」
 小声の『独り言』にまるで誰かからの返事でもあったかのように、一拍遅れて顔を顰めるコーディリア。

 そんな魔女の様子を意にも介さず、ショコラティエールは、ぎり、と歯ぎしりの音が聞こえるほどに、その、生前は愛らしいと評されたであろう顔を歪めて。
「――私はッ! 私ほど、チョコレートを愛している者はいないわ……!」
「そうかい。キミがそう思うなら、ボクは別に構わないのだけれど」
 叫びと共に放たれるチョコレートを、再び相殺。容易いこと……とまでは言うまい。無限に続けられることではない。だが、動揺を誘い、隙を作った。今はそれで十分。何故なら彼女は一人ではなく。

「――今だよ。ステラ!」
「えっ!!?」
「……えっ?」
 驚いたような声。打ち合わせ通りのはずが、まさか何かあったのか。思わず、心配げに後ろを振り返れば――。


(「まったく、甘くておいしいチョコレートを攻撃の手段に使うなんて!」)
 隙を突くべく物陰に身を潜めたステラ・ペンドリーノは、不満げに心の声を漏らす。
 無粋だ、と思う。本当にチョコレートを愛しているのだろうか。地に広がるチョコレートの沼――もちろん、食べられないだろう―ーを見れば、その思いは強さを増す。

 だから、目の前のコーディリアがパティシエールに向けた言葉は痛快だったし、足下のチョコレートを自在に操ってみせた時は驚いた。
 彼女の中に多くの悪魔が宿っているという話は聞いたが、まさかスイーツ担当の悪魔までいるとは。まぁ、世の中にはヒトデの悪魔だっているのだし、おかしなことではないのかもしれないけれど。
(「――ああ、でも」)
 その身の内に悪魔を潜ませる、というのはいかにも魔術師らしい。カッコいい。ちょっと故郷のサブカルチャーに影響された価値観かもしれないけれど、いいじゃない。
 私もなにか、そういう魔法とか召喚とか使ってみたいかも。正直そういうのはあまり得意じゃないけど、練習すれば覚えられるものかしら? そういえばスバルちゃんも影の中に――

「――今だよ。ステラ!」
「えっ!!?」

(「いけない、すっかりぼーっとしちゃってたわ……! えーっと、えーっと……!」)

 ステラの名誉のために付け足せば、別段、彼女が鈍いわけではない。むしろ世界一賢く、聡明で、機転が効き、常に余裕を忘れない――というのは、さすがに、とある身内の贔屓目であるが。
 不慣れな戦い、初めての依頼の緊張が、不意に、それも最悪のタイミングで途切れてしまったという失態。ほんの数秒、頭が真っ白になってしまったとしても、無理からぬことだろう。

 ――ただ。迷宮パティシエールにそれを待つ義理はない。
 助けを求めようと、ステラがコーディリアに視線を向ければ――心配げに振り返る、そう、振り返ってしまった魔女の、その先。飛び道具が通じないなら至近距離でと開き直ったのだろう、距離を詰め、その細い首に向けて腕を伸ばす、災魔の姿が――

「た、」

 思わず声を漏らすステラの姿に、コーディリアも危険を察して飛び退こうとするが、間に合わない。
 だから、
 
「助けて、スバルちゃん――……ッ!」

 気が付けば。姉は、妹の名を呼んでいた。


 ルールの話をしよう。
 事件を予知したグリモア猟兵は、戦うことができない。厳密には、戦場に足を踏み入れることが許されていない。事件現場へのテレポートを行えるのが、その本人だけだからだ。
 だから、愛しい姉の呼び声に、妹は応じることができない。

 ――ただ。ルールを破れないとして、自分がついていけないとして、この世で最も大切な姉の安全のために、この妹が備えないわけがあるだろうか。
 スバルの足下に伸びる影から、影絵のような蝙蝠の群れが舞い上がる。
 姉の危機に反応するよう、妹が予め前夜に数時間かけてこっそり仕込んでいた、不要ならば無駄になる使い捨ての術式。

 『星見る影の六連星(スバル・ペンドリーノ)』。
 本人が駆けつけられない状況ならば名代たる眷属が。無論、可能ならば本人が――突如、姉の影の中から現れて手助けしてくれる。
 妹から譲り受けた、れっきとした、「ステラ・ペンドリーノのユーベルコード」である。

「なっ……!?」
 まるでビデオの一時停止のように。迷宮パティシエールの動きがピタリと止まる。
 その隙に距離を取ったコーディリアの瞳には、災魔の影の中に、影の蝙蝠が潜り込んでいく姿が見えていた。
 以前にも目にしたことがある、ステラの妹の魔法。

「……この場合。妹が姉離れ出来ていないのか、それとも逆か……どっちなんだろうね」
「あ、あはは……よく出来た妹でしょう?」
 心なしか呆れたようなコーディリアの視線に、ごめんなさい、と謝りつつ、さすがに少々気まずげなステラ。
 別に責めてはいないけどと溜め息一つ、漏らした瞬間。

「マァマァ。微笑ましくて良いじゃナイ? コーディリアサン」
 くすくすと、堪え切れないような笑い声と共に。
 鬼火を纏いし、百を超す槍の雨が降り注いだ。


 朗々と天に響くは鎮魂の調べ。
 遥か頭上、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)が全力の魔力を込めて生み出したのは、冥府の属性を持つ黒槍の雨だ。

「コレは貴女の墓標。ここで貴女は討ち取るカラ――百を超える槍、さばききれるカナ」

 次々と降り注ぐ槍。
 ある槍は地面に突き刺さったかと思えば、纏った焔でチョコレートの沼を蒸発させ、またある槍は、パティシエールが防御のために展開したチョコレートの盾を、数の暴力で貫いていく。
 ようやくステラの呪縛を振り払った迷宮パティシエールも、この全ての槍を防ぎ、かわすことはできず、次々と槍に貫かれ、灼かれ、炎に包まれて、悲痛な叫びを漏らす。

 『再演・冥府の槍(リプロデュース・ファントムスピア)』。
 その本質は、幻燈が映し出す過去の再演にある。
 この、地獄の獄卒が振るう責め苦のような光景が、かつて如何なる世界で繰り広げられたものか。それをレイラが語ることは今はない。ただ、
「――継ぐモノが残り続ける限り、見果てぬ夢はないんダヨ」
 静かに、呟くだけだ。

「見るだけで胸焼けがしそうな光景だとは、思っていたけれど。まさか本物の火の海にしてしまうとはね」
 手出しを避け、敵の様子を警戒しながらも、そう言ってレイラに近付いてくるコーディリア。後ろには、熱を避けるように顔をぱたぱたと仰ぐステラも一緒だ。
 2人に向けて、無事で良かっタヨ、と、レイラは淡く微笑みを返し。
(「甘くておいしいチョコレートを薦めるダケの存在……だったら、よかったんだケドネ」)
 彼女はもはや過去の夢、オブリビオンに過ぎない。ならばその夢を終わらせるのも自分の役目だろうと――過去を映し出す幻燈は、一時も目を逸らすことなく、槍が突き立ち、燃え上がる災魔の姿を見つめ――。


「……まだ」

 それでも。

「まだよ、まだ私は……!」

 それでも、迷宮パティシエールは止まらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆灯(f00069)と同行


わざわざ会話を成立させてやることもないと思うけど
なんというか、お人好しだよな

……それくらい普通って、別にまだ何も言ってないんだけど
優しいヤツだなって思ったくらいだぜ?

ま、仕事の手が緩まないなら何でもいいさ
さっさと終わらせようぜ

【援護射撃】で灯の突っ込む道を空けてやる
わらわら出てくる兵隊とやらは出現した傍から潰していくぜ
数がいると面倒そうだ

沼が出来たら
視界が途切れた隙を見て【抑止の楔】で封じを試す
相手の有利なフィールドは面倒だからな
隙さえ作れば、あとは周りに任せられるし

……見知った顔がいた気がするんで
できるだけ【目立たない】ように戦闘しようかな
いや、さすがにバレるか……


皐月・灯
匡(f01612)と同行

別にチョコレートを嫌ってるわけじゃねーぜ。
旨いチョコケーキを出す店の1軒や2軒、知ってるしな。
……なんだよ、それくらい普通だろ。

正直、他のオブリビオンの方が気に食わねーくらいだが。
「押し付け」はいただけねーな。
チョコレートが殺人道具だなんて悪評はご免だ。
……時の果てに還りな、災魔。道案内はしてやるよ。

《猛ル一角》だ。
溶けたチョコ相手じゃただ殴っても意味ねーだろうが、
コイツは当たった時点でダメージが通る。

チョコの沼化は、逆に【地形の利用】を試す。
【衝撃波】で沼を跳ね上げて、視界を遮るカーテン代わりにしてやるのさ。

オレ達の姿を見失うのは一瞬だろうが――十分だろ?



●続・彼らの戦場
 チョコレートを集め、身体を包むようにして傷口を塞ぎ、火を消す迷宮パティシエールの姿を油断なく観察しながら。
(「見知った顔が、多いな……」)
 鳴宮・匡は、心なしか表情を固くしていた。いや、別段何か悪いことをしたわけではないのだが、不思議と気まずいような感覚があるのは何故だろう。思わず気配を薄くして、目立たないポジション取りを……あっダメだ今紫色の髪の彼女と目が合った。見透かしたようににこっと笑ってル……。

「おい、どうした? 何か問題か?」
「……いや、大丈夫だ」
 かすかな動揺を嗅ぎ取って声をかけてくる皐月・灯に、軽く頭を振ってみせる。事実だ。こんなことで照準がブレるような殊勝な性格はしていないし、さすがに説明する気にもならない。
 幸い、灯はそーかよ、と興味なさげに頷いて。
「んじゃあ、任せたぜ」
「応」
 短いやり取りだけを残して駆け出す灯の背中を見て、優しい奴だな、なんて益体もない考えをちらつかせる間にも、無意識の域に至った思考は戦場を俯瞰し、この場での相棒の障害となり得る要素を抽出していく。
 匡は一度だけ、アサルトライフルのグリップを握り直し――。


 地面を濡らすチョコレートの沼を避けるように、黒髪の少年は迷宮の地を駆ける。
 沼の中から立ち上がるように、続々とチョコレートの兵士が身を起こし始めるが、灯はその大半を気にも留めない。

 ぱぁん、と音を立て。灯に槍を向けようとしたチョコレートの兵士の足が弾け飛ぶ。一体、また一体。即死させることよりも、体勢を崩すことを優先した射撃。体勢が崩れれば、間をすり抜けるにはそれで十分だ。
 憎たらしいほど正確な援護射撃。敵に回せば面倒だが、背中を預ける分には、これ以上頼もしい相手もそうはいないだろう。

「貴方も……貴方も、私の邪魔をするのね! チョコレートを嫌うのね!」
「別に、チョコレートを嫌ってるわけじゃねーぜ。旨いチョコケーキを出す店の1軒や2軒、知ってるしな」
 こちらの姿を認め、ヒステリックな叫びを向けてくる迷宮パティシエールに、冷たく返す。

 ――わざわざ会話を成立させてやるなんざ、なんというか、お人好しだな。

 そんな視線を背中に感じた気がして、うるせぇ、と苛立たしげにガントレットに包まれた拳を一閃。手近なチョコ兵士の身体がわずか一撃で弾け飛ぶ。溶けたチョコレートを必死に殴るくらいなら、術式を打ち込んで破壊する技の方が的確だ……という考えは間違っていなかったらしい。
 それで最後、迷宮パティシエールと灯の間を遮る物は何もない。

「じゃあ、どうして! どうして邪魔をすると言うの……!」
「チョコレートが殺人道具だなんて悪評はご免だからな。……時の果てに還りな、災魔。道案内はしてやるよ」
 話を打ち切り、あえて先ほどよりも大仰に拳を振りかぶってみせる。
 災魔は傷ついた身体に鞭打って距離を取りつつ、溶かしたチョコレートを放ってくるが――それこそ、彼の狙い通り。

 拳を叩き込むのは敵ではない――その、チョコレート。
「アザレア・プロトコル1番――《猛ル一角》!」
 地形に打ち込み、働きかけることこそ、この術式の本懐。効果のほどはつい先ほど確認済みだ。術式とパティシエールの力が反発し、チョコレートは弾け飛ぶ。大きく広がり、カーテンのように迷宮パティシエ―ルの視界を塞ぐ。
 無論、こんな子供騙しが通用するのは精々一瞬だろう。
 だが――

「――十分だろ?」
 灯の呟きと同時。
 それを肯定するように、立て続けに銃声が響き、オブリビオンの手足を正確に貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

富波・壱子
最初から戦闘用の人格に切り替えた状態で対峙します
チョコレートの類は私も好む所ですが、それで怒ることも手心を加えることもしません。元よりチョコ以外ならば許されるというものでもありません
他のオブリビオンと同様に、人を害するのなら殺します

交戦開始
踏み入れば沈むチョコの沼地とは厄介ですね
……………………なるほど。あなたは沈まないのですね

拳銃を片手にユーベルコードを用いて敵の頭上に瞬間移動
敵の髪を掴んで身体に取り付き、拳銃による零距離射撃を行います
体勢を立て直されれば振りほどかれるのでしょうが、味方の攻撃のための時間を稼ぐことが出来ればそれで十分
チョコに身体が落ちる前に再度瞬間移動を行い離脱します


氷室・癒
あなたは間違っています!
チョコは甘いんですっ! とーっても甘いんですっ!
甘いっていうのは優しいっていうことなんです! 一口食べてにこにこ笑顔! 美味しくて美味しくて、食べたら幸せいっぱいになるんですっ!
あなたのやろうとしていることは全然幸せじゃありませんっ! 誰も笑顔になれませんっ!
ぺけぺけぺけのばつばつばつですっ! むむむむーっ!
それにっ何よりっ! 食べ物を粗末にしちゃいけませーんっ!

いやしちゃんタックルしますっ!
ウイング全開にして突撃です!
ユーベルコードを応用して突然どっかーんっ!
そんなに強くはないですが、チョコの沼から押し出すぐらいはできるはず!
今ですよ! 後は他の人にお任せですっ!


アレクシス・アルトマイア
むう、いつの間にやらメイド対決は終わってしまった模様。
しかし、出番はまだ残されていたようですね。

チョコレートは私も好んで食べますが……
貴方のチョコレートは、頂けませんね。

そもそもそんな蠢くチョコはいやですし…
衛生的にもいかがなものかと。
ほろ苦さに土とか混じっていませんか?

砂糖ではなく、砂でジャリジャリは欠けてしまいますよ。
歯とか、あと思いやりとかも

などとダメ出しして相手の攻撃を無効化しつつ
ダガーですぱすぱ切ったりばすばす銃で撃ったりいたしましょう。
援護射撃や2回攻撃での仲間のサポートも忘れずに。

チョコレートの戦いは……物理ではなく、心の戦いであるべきでしょう。
恋の味というのなら、なおさらです。



●甘い夢の終わり
「くっ……!」
 迷宮パティシエールは、手足を貫く痛みに顔を歪める。
 ぐらりと傾ぐ身体を踏み止まらせたのは執念の成せる業か。
 まだだ。まだ諦めたりなんかしない。私のチョコで地上を覆い尽くすまでは――。
 魔術拳士を振り払い、狙撃手を牽制するようにチョコレートの大波を放ちながら、周囲に大量のチョコレートを生み出す。

「――こうなったら、この一帯ごと! 貴方たちまとめて、甘い沼に沈めてあげるわ……!」
「僭越ではございますが……貴方のチョコレートは、頂けませんね」
 その眼前に、不意に姿を現して。ふわりと告げるのは目隠しの従者、アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)。
「なにを――」
 それだけは聞き逃せないとばかりに睨み返す災魔に、アレクシスは微笑を返し。
「そもそもそんな蠢くチョコはいやですし……衛生的にもいかがなものかと。ほろ苦さに土とか混じっていませんか?」
「……うるさい」
「砂糖ではなく砂でジャリジャリするのでは、欠けてしまいますよ。歯とか、あと思いやりとかも――」
「うるさいって、言ってるでしょうッ!」
 率直で的確なダメ出し、『従者の諫言(ノーモア・アドバイス)』。時には耳に痛い正論を口にし、諫めるのも従者の役割である――のだが。
 激昂し切った迷宮パティシエールの耳に、彼女の言葉は届かない。ずぶずぶと、これまでとは規模の違うチョコレートの沼が災魔の足下を中心に広がり、一帯を飲み込んでいく。

「あらあら……困りましたね」
 アレクシスは頬に手を当て、ダガーの柄に手をかけて――。


「……なるほど。厄介な技ですが、あなたは沈まないのですね?」
「っ……!?」
 富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)。多重人格者である彼女の戦闘用人格が呟いた言葉は、迷宮パティシエールの頭上から。
 『あなたを決して逃さない(アサルトジョウント)』。瞬間移動による接近、その力を用いて壱子が選択したのは、パティシエール自身の身体を足場にすること。その首筋に足を絡め、栗色の長い髪を乱暴に片手で掴む。
「痛っ……は、離しなさい……!」
「要求を拒否。これより攻撃を開始します」

 冷たく言葉を返し、パティシエールの頭部に向ける自動拳銃の名は、ビーチェ。かつて忌まわしきあの場で、解剖され標本にされた同期の形見。
 もみ合いながらも銃口を敵の頭部に向け、自分や味方に貫通しないよう注意しつつ慎重にトリガーを引く。一発、二発。

(「さすがに、オブリビオン。これでも斃れませんか」) 

 壱子も、チョコレートは好きだ。今の人格であっても、それを否定はしない。
 だが、だからと言って手心を加えはしないし……逆に、特別怒ったりはしない。
 元より、チョコ以外ならば許されるというものでもないだろう。それは本質からズレている。

 ――他のオブリビオンと同様に。人を害するのなら殺す、それだけだ。

「いい加減にっ……しなさい!」
「っ……!」

 迷宮パティシエールが壱子の足を掴み、強引に振りほどく。見た目に似合わぬ膂力を発揮し、軽々と壱子の身体を振り回す。
 さすがに敵が動揺から立ち直り、純粋な身体能力となれば分が悪い。だが、これで十分だ。味方が攻撃する隙さえ稼ぐことができたのならば。

 ――チョコの沼に叩き込まれる前に転移し、離脱する直前。
 感情を感じさせない壱子の瞳には、高速でこちらに接近する――黒い羽を羽ばたかせる、愛らしい純白の天使の姿が映っていた。 


「――あなたは、間違っています!」
 氷室・癒は、思う。
 チョコは甘い。とーっても甘い。
 甘いっていうのは、優しいっていうこと。一口食べてにこにこ笑顔、美味しくて美味しくて、食べたら幸せいっぱいになる。
「あなたのやろうとしていることは全然幸せじゃありませんっ! 誰も笑顔になれませんっ! ぺけぺけぺけのばつばつばつですっ! むむむむーっ!」

 ばさばさと自慢の黒い翼をはためかせ、銀色の髪をなびかせて。
 チョコの沼を飛び越えながら叫ぶ、まるで子供の癇癪のようなその言葉に。
 ――何故か、一瞬。迎撃しようとしたパティシエールの手が、止まり。

「それにっ、何よりっ!」

 残り距離は数メートル。そこで、ふっと癒の姿が消える。
 『今ここにある花(ノーウェアキュート)』。幸せを振りまき、人を笑顔にする癒やしの花は、いつでも誰かの傍らにある。
 文字通り、誰かの懐に飛び込んで、その愛らしい笑顔で動きを縫い留める力。だが、癒の顔は、今だけは、ちょっぴり怒りを浮かべて。
 
「食べ物を粗末にしちゃいけませーんっ! いやしちゃんタックル、どぉーんっ!」
 驚きにか、それとも別の感情にか。固まったままの迷宮パティシエールを、沼から押し出すべく。
 思い切り、体当たりをぶちかます。


 ――その瞬間。
 ふっと、迷宮パティシエールの背後に、女の影が現れて。
 その背から、心臓目掛けてダガーを突き立てて。

 そして、消えた。
 その従者の姿は、少なくとも癒の目には映らなかった。


「…………あれっ!?」
 ふわりと舞い上がり、迷宮パティシエールに視線を向けて……癒は、ぱちくりと目を見開く。
 ただ沼から押し出し、最後の一押しは他の仲間に任せるつもりが、地面に倒れた敵が起き上がってこないのだ。

「……えとえと、もしかしていやしちゃん、倒しちゃいました……?」
「ええ、お見事でしたよ!」
 にっこり笑って声をかけながら、よく研がれたダガーに付いた血を払い、鞘に納めるのはアレクシス。
 ところで関係ない話だが、アレクシスには、『従者の気配り上手(アテンション・プリーズ)』なるユーベルコードがある。仲間の攻撃が命中した対象に対し、周囲に感知されないトドメの一撃を放つ……主人に花を持たせる従者の技だ。まあ、今はちっとも関係ない話だが。

 迷宮パティシエールの身体は――溶けるように。チョコレートの沼の中に、沈んでいく。
 彼女の力が途切れたためだろうか、あちこちにできたチョコの沼は、次々と光の粒子となって消えていった。

「え、えーっと……皆さんの攻撃が効いてたんですねっ! つまり、みんなの勝利ですっ! ぶいっ!」
 戸惑いながらも胸を張ってみせる癒の姿に。ある者は笑顔で同意して、またある者は真相を見抜いて曖昧な笑みを浮かべ。
 快哉が広がる中――
 アレクシスは、消え行くチョコレートの沼に視線を向けて。

「チョコレートの戦いは……物理ではなく、心の戦いであるべきでしょう。恋の味というのなら、なおさらです」
 囁きは、諫言というよりも手向けの言葉のように。目隠しに包まれた瞳がどんな色を浮かべていたのかは、誰も知る由はなく。

 ――けれど、結局。その言葉が、一連の騒動を現す、全てであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『アルダワ的調理実習』

POW   :    レシピなんて見なくても気合いと間隔で料理できるさ!

SPD   :    料理もスピードがいのちだよね!

WIZ   :    料理は科学だ。正確に計量して料理する、

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月輪・美月
お疲れ様でした。こう見えても僕、お菓子作りには自信がありまして!(女の子にモテると聞いて必死に練習した時期がある)
チョコ、見るも嫌になった方がいるかもしれませんから、チョコクッキーなど作ってみましょうか

前の章でご一緒したシアさんや、エギーユさんが参加していたら、ぜひお渡ししたいなあと。あわよくば交換って流れにすることも可能でしょう! ……エギーユさんは自分の分は自分で食べそうだな。

相手が喜ぶことを考えて、相手の事を思って作られたチョコって素敵ですよね、ショコラティエールさん
無理に沢山食べさせるんじゃ、嫌になってしまいますけど。いや、僕は女の子からのチョコはいくらでも食べられますが!!


雪華・グレイシア
はー、やれやれ
あの物騒な女の相手を任せている内に奥も調べてみたけど今回も収穫もなし、と
やんなっちゃうね、まったく
これは甘い物でも食べて気分を変えないと
……色々話を仕入れながらね?

怪盗としての姿は仕舞って、皆さんの帰りの迎えるために待っていた学生のフリ
えへへ、お疲れ様でしたっ
美味しくて甘ーいチョコを食べて、疲れを癒しちゃいましょーっ
手慣れた様子でチョコ作りを進みながら、皆さんの間をちょこちょこ動き回って手伝いながら
色々な話を伺いましょう、普段から【情報収集】のためのアンテナを張っておくのは大切ですから!
折角ですし、スバルさんからもグリモア猟兵としてのお話伺えないかな?


浅葱・シアラ
えへ……皆でお料理会だね……!
シアも頑張るよ……フェアリーだってちゃんと料理できるんだから……!


【WIZ】で判定
お菓子はね、分量を守るところから……といっても手作りチョコレートってあんまりその辺拘らないかも?
でもでも、ちゃんと作りたいの、綺麗で、可愛いの、作ってあげたいんだ……!

ハート型だと、ありきたりだし、何か重くて引かれちゃうかな……?
えへ、蝶々さんの形、作っちゃお!
虫さんの形は嫌われがちだけど、蝶々さんなら綺麗だよね

綺麗な蝶々さんのチョコレートが出来たら……
美月にあげに行くの!勿論人間サイズだよ!

「えへ、美月、いつも守ってくれてありがとうね……
これ、シアからのバレンタインの気持ち……!」



●怪盗は実習室で調理する、或いは狼と蝶の場合
「はー、やれやれ。今回も収穫なし……か。やんなっちゃうね、まったく」
 スバルが予約してくれたものの、まだ誰も戻っていない調理実習室にて。
 天井近くでおぼろげに揺れる光の精霊が部屋を照らす中、マスクで顔を隠した怪盗、雪華・グレイシアは溜め息を一つ。
 あの物騒な女――迷宮ショコラティエールとやらの相手を皆に任せているうちに、迷宮の先を探っていたが……グレイシアの目的に近付く情報は、未だ見つからず。その顔には疲労が浮かんでいた。

 とはいえ、怪盗とは転んでもただでは起きないものである。普段からアルダワ魔法学園に通っている土地勘を生かし、一足早く先回りして実習室に辿り着いたのには、もちろん理由がある。
「甘い物でも食べて気分を変えようってのは、悪くないアイディアだ。ボクもご一緒しないとね……色々、話を仕入れながら」
 意味ありげに微笑んで。怪盗は変装を解き、その装いを変える――。


 その、1時間後。

(「今日は、なんていい日なんだ……!」)
 月輪・美月は、グッとガッツポーズしたい気持ちを抑えるのに精いっぱいであった。

 幸先が良かったのは、調理実習室に入って第一歩目。
 彼にとっても見知った顔であるグレイシアが一足先に調理を始めており、早速チョコレートをくれたのだ。
『えへへ、お疲れ様でしたっ。美味しくて甘ーいチョコを食べて、疲れを癒しちゃいましょーっ』
 そう言って柔らかい笑顔で一口大のチョコをつまんで差し出してくれた彼女の様子は、(今日はなんとしてもチョコをもらって帰ってみせる……!)と肩に力が篭もり過ぎていた美月の目に、まるで天使のように映ったものだ。
 ……なお、グレイシアは実際のところ「彼女」ではないのだが、無邪気に喜ぶ美月の知る由のないことなので一旦脇に置く。

 その後も、美月はてきぱきと実習室を歩き回っては、チョコ作りに難航する女性の――まぁ放っておくわけにも行かないので男性も――手助けをしてまわっては、時にはお礼、時には自ら焼いたチョコクッキーとの交換で、いくつかのチョコレートを入手していた。
 なにせ美月には、それがモテると聞いて必死にお菓子作りを練習した過去がある。周りを見渡せばラーメン屋さんの方が里の女性に囲まれている気がしたので一度は諦めたのだが、今、その努力が確かに報われていたのだった。

 ――と。
 くいくい、と背中の服を引っ張られる感触。なんだろう、と振り向いてみれば……。


 時は、少しだけ遡り。

「えへ……皆でお料理会だね……! シアも頑張るよ……フェアリーだってちゃんとお料理できるんだから……!」
 浅葱・シアラもまた、実習室の片隅でチョコレート作りに挑戦していた。

 実は12歳のフェアリーとしてはそう低くもないとはいえ、それでも30センチに満たない背丈のシアラにとって、人間サイズのチョコレート作りはなかなかの重労働だ。
 それでも……彼に、喜んでもらいたいから。よいしょ、よいしょと材料を運び、丁寧に作業を進めていく。

 思い出すのは、和菓子職人の母の言葉。和も洋も、お菓子作りはまず分量を守るところから。気持ちを込めるのはもちろん大事だけど、それは思いつきでアレンジを加えるってことじゃないわ。しっかり時間を測って、一歩一歩、手を抜かずに丁寧に進めるのが、お菓子に気持ちを込めるってこと。
 一緒にお父さんに渡すチョコを作りながら、そう教えてくれたっけ。
(「……お父さん、シアがこんな風に、男の子に渡すチョコ作ってるって知ったら、どんな顔するかな……?」)
 きっと驚いて、それから応援してくれるだろうな、と思う。……お、応援って、そういうことじゃないけど。

「よーし、できたっ。えへ……喜んでくれるかな?」
 出来上がったチョコレートは、デフォルメされた蝶々の形。虫の形、っていうとイメージ良くないかもしれないけど、蝶々ならきっと、喜んでくれるよね。
 シアラは、満足げに作品を見下ろして。可愛くリボンを付けたそれを抱えると、ふわりと舞い上がり……。


「えへ、美月、いつも守ってくれてありがとうね……これ、シアからのバレンタインの気持ち……!」

 ――ああ、ショコラティエールさん。
 こうやって相手が喜ぶことを考えて、相手のことを想って作られたチョコって素敵ですね。無理にたくさん食べさせるんじゃ、嫌になってしまいますよ。
 ……いや僕は女の子からのチョコはいくらでも食べられますが!

 胸の片隅で、過去の残滓に語りかけながら。
 美月は内心のちょっぴりの動揺を押し隠し、にっこり笑って、甘い甘い蝶を受け取るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラニューイ・エタンスラント
……チョコを、作るのね。ええ、精一杯頑張るわ。えぇ。(チョコどころか何か料理を作るのは初めてだしなんか無駄に気合いが入って逆にから回りそうなのは気のせいではない)■アドリブや他の猟兵との絡みは大歓迎ですしスバルさんにも参加して頂けると嬉しいですむしろ助けてください。



●恋知らぬ令嬢たち
「……チョコを、作るのね。精一杯頑張るわ。えぇ」
 ラニューイ・エタンスラントは、両手の平を合わせ、静かに呟く。どこかぼんやりとしたその瞳は、人によっては感情が読みにくいと評することもあるかもしれないが――今は心なしか、静かな気合に満ちていた。
 
 彼女がまず手に取ったのは、誰が用意したのか、大きなカカオの実であった。白く透き通るような掌を、そっと硬い表皮に押し当てて。
「まずはこれを、砕けば良いのね……? ユーベルコード、リベレイショ」
「待って待って待って待って待って」
 がしっとその手首を掴んで止めたのは、スバルであった。引率のグリモア猟兵として、調理実習室で惨事が起きるのを見逃してはおけないのである。

「ラニューイ、だったわよね。ええと、料理の経験は……?」
「ないわね。けれど、大丈夫よ」
「……理由を聞いてもいい?」
「頑張るもの」
 その返答に、スバルは頭を抱え。ラニューイの手からカカオの実を取り上げると、
「これは没収! ちゃんと手順を教えてあげるから、頑張るのはそれからね。まずは……『料理は科学』! はい復唱!」
「りょ、りょーりはかがく……!」

 スバルの剣幕に目を白黒させながら、ラニューイは頷いて。言われるがまま、チョコレート作りを始めていく。
 チョコレートを溶かし、好きな型に入れ、固める。それだけなら、手順通りにやれば失敗することはないのだ。もちろんその中にも幾つも細かなコツはあって、それを守れば完成度はぐっと上がる。スバルは手馴れた様子で、そうした手順を教えてくれた。

 ラニューイはそんな作業の中、ふと、口にする。
「ねえ、スバルさん。貴女は、恋の味を知っているの?」
 思い出すのは、迷宮ショコラティエールの言葉。聖者としての力を持ち合わせていたが故に幼い頃から幽閉されてきたラニューイは、未だ恋を知らない。こんな機会でなければ是非教えて欲しいものだと、そう思ったものだ。
 甘くてほろ苦いチョコレートは、恋の味だという。ならば、こうもてきぱきチョコレートを作る、この年の近い少女は、恋を知っているのだろうか?
 不意の問いかけに、スバルは困ったように首を傾げ。
「どうかしら。知ってるのかもしれないし、知らないのかもしれない。けど……確かに、きっと。甘いだけのものじゃ、ないのでしょうね」
「そういう、もの? ……そういうものかも、しれないわね」

 恋の話は、それでおしまい。
 令嬢たちは、チョコレート作りに明け暮れる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
せっかくだし挑戦するか

レシピなどあるだろうし参考に
まずは書かれた通り作るのを目標とする
奇をてらう必要もない

とはいえ初体験
スバルは詳しそうだし、手が空いていれば指導願いたい所

料理は愛情と聞くが、どうやって入れるのだろうな
計量したり、作業しながらつらつらと考える
これも料理上手なものなら知っているんだろうか



●料理は愛情?
 チョコレートをボールに入れて、45度から50度程度に加温して溶かす。
 水を張ったボールに漬けて底を冷やしながら、空気が入らないようゆっくり混ぜて。温度が25度から27度程度まで下がったら一度水から外してー……

 ――アルトリウス・セレスタイトもまた、配られたレシピのメモを見ながら、チョコ作りを始めていた。
 まずは書かれた通り作ること。奇をてらうこともない。その選択はとても無難で、恐らくは正解だ。そう、基本的には。

「あら、アルトリウスさん。久しぶりね、調子はどう? ……って、順調そうね」
 テーブルを巡っては様子を見て回っていたスバルは、見知った顔に足を止め。安心したように頬を緩めた。
「いや、初体験だからな。手が空いているなら、指導を頼みたいんだが」
「それはもちろん、構わないけれど」
 スバルは首を傾げ、自ら用意したレシピのメモを手に取る。見たところ手順通り、丁寧に進めているようだし、心配はいらないだろう。
「適切なタイミングで温度を測るのが、難しそうだ」
「ああ……慣れてないと、そこはそうよね。うん、じゃあ、お手伝いしていくわね」

 頷き、隣でコツを教え始めるスバル。こうして一度冷やしてもう一度温める行程をテンパリングと言って、大いに出来映えが変わるのだと、銀髪の少女はそう語り。
 その手馴れた様子を見て……この少女なら、分かるだろうかと。アルトリウスは作業の手を止めぬまま、疑問を口にする。
「聞きたいことがある」
「貴方も?」
「『も』?」
「いえ、なんでもないわ。なぁに?」
 軽く首を振るスバルに視線を向けて。
「料理は愛情と聞く。どうやって入れるのだろうな」
 熱のない藍色の瞳に映るスバルは、少し意外そうな顔をして。
「このチョコは、誰かにあげたくて作ってるの?」
「……いや。せっかくだから挑戦してみようと思っただけだ。まずかったか?」
「まさか、歓迎よ。……けど、そうね。もし誰かに作ってあげたいと思えたなら、きっとその時は、自然に入ってるものじゃないかしら?」
「そういうものか」
「ええ。そういうものよ」

 くすりと笑うスバルをもう一度、見返して。
 そんな日が来るかどうかは、大いに疑わしいものだが――もしもそんな未来が来るのなら、悪くはないな、と。
 人ならぬ人たる青年は、少しばかり周囲の空気に当てられたような思考をよぎらせながら。チョコ作りに戻っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キケ・トレグローサ
エド)「無事にボスを倒したんだな。一応、騎士団に迷宮に生き残りの配下がいないか探させていたが、見つからなかったようだ」
 ショコラティエールとの戦闘は味方に任せ、迷宮内に残党がいないか騎士団とともに捜索していたエドが猟兵たちとともに調理実習室へ
エド)「チョコづくり、と言っても俺は料理がすこぶる苦手なんだ…なぜかいつも焦がしたりしていてな…妹と弟にまかせっきりなんだ」
 苦笑しつつ味見担当になります。材料の運搬などの手伝いはする程度。仲間が作ったチョコは美味い美味いとほめる・・・失敗してても褒めてあげる紳士なお兄ちゃん
 エドが作るとほんとに焦げ焦げの炭になります
 食べたら歌でも歌って楽しみますか 


露霧・霞
さー、一仕事終えてチョコ作りッスよ!
料理は愛情とパワー! ……と測量と経験ッス
(ちゃんと材料を計測しながら)
(料理は普通にできる)

普通の料理ならともかく、お菓子はちゃんと計量しないと失敗しちゃうッスからね。……これ豆から作ればいいッスか?
(ゴリゴリと炒ったカカオ豆の中身をすりつぶしつつ)
あー……手がだるくなってきたッス。一から作るのって大変ッスよねぇ……
湯せんは確かお湯が中に入らないように気をつけなきゃッスよね
後は型に流し込んで冷やして……完成ッスね!
もし作るのが苦手な人とかいたら、手伝うッスよ。力仕事もお任せッス!

アレンジ可、他の人との絡みも歓迎ッス


富波・壱子
戦闘人格から日常人格に戻っておくよ

お菓子作りは任せて!いつも作ってるから得意だよ!
レシピを軽く確認しながら慣れた手つきでチョコレートを作っていくよ

渡す相手で思い浮かぶのは、いつも手伝ってくれる影の子供達に、お世話になった里親のおじさんおばさんに、依頼で助けてくれた人達に……
これはいっぱい作らなきゃ。頑張ろっと

恋の味、かぁ……
今はまだ義理チョコしか作る機会がないけれど、いつかわたしも誰かに向けて本命のチョコを作ったりするようになるのかな?
出来たら、いいな

あっ、そこの人!ちょっと味見お願いしてもいいかな?
どう?美味しい?ちゃんと出来てる?
えへへ、やった

よーしこの調子でどんどん作っていっちゃおう!



●ゴリゴリゴリゴリ
 戦闘人格から日常人格に戻った富波・壱子は、迷宮での酷薄な様子とは打って変わって表情豊かに、楽しげにチョコ作りを開始していた。
 危なげのない手つきでチョコを溶かし、型に流し込んでいく。なお、この作業は本日これで2度目。最初に仕込んだチョコレートも徐々に固まり始めており、この上なく順調だった。いつも作ってるから任せて、と話していた本人の言葉通り、お菓子作りは大の得意のようだ。

 とはいえ、こうもたくさんチョコレートを作っているのには、もちろん理由がある。壱子には、チョコを渡したい相手が沢山いるのだ。もちろん、恋多き、というわけではなくて。
 作業がひと段落したところで、相手の顔を浮かべながら、指折り数えてみる。いつも手伝ってくれる影の子供たち……で、もうざっと20以上。里親のおじさんおばさんに、そうだ、依頼で助けてくれた人にもあげたいな。うーん、まだ足りないかも? もう一回作ろうかなぁ。うん、そうしよう。

 そんな壱子の脳裏に、ふとよぎる、一つの言葉。

(「……恋の味、かぁ。今はまだ、義理チョコしか作る機会がないけど。いつかわたしも誰かに向けて、本命のチョコを作ったり……」)

 ――ゴリゴリゴリゴリ……

(「……出来たら、いいな)」

 ――ゴリゴリゴリゴリ……

「……えっ、これ、何の音……?」
 ほんの少し切なげな乙女の思索を邪魔する、えらく無骨な物音。訝しげに振り向き、背後のテーブルを見れば――そこにあったのは、ボウルに入れたカカオ豆をゴリゴリとすり潰す、露霧・霞の姿であった。
「えっ、豆から……!?」
「あ、あれ? ここまでしなくても良かったッスか?」
「良かったっていうか、できるの……?」
「時間さえかければ、何とかなるッスよ?」
 慣れているとはいえ、さすがに豆から作る経験はなかったらしく目を丸くする壱子に、笑って説明する霞。
 作り方自体は簡単で、よーく洗ったカカオ豆をフライパンで焙煎し、皮を剥き、砕いてからめん棒ですり潰す。後は湯せんにかけて、お湯が入らないように気を付けながら溶かし、砂糖を加えるだけだという。

 なるほどなるほど、と。壱子は感心したように頷いて、
「それ、結構大変だよね……?」
「……まあ、割と……そろそろ手がだるくなってきたッス……」
「あ、あはは……ちょっと代わろうか?」
「いやいや、それも悪いッスから。あたし、力仕事は得意ッス。料理はパワー! と、愛情……と、測量と経験ッス」

 話しながらも、ゴリゴリゴリゴリ。
 と、その時。手伝いを遠慮する霞の手のめん棒とボウルを、隣から伸びてきた大きな手が、ひょいとかっさらう。

「わわっ!?」
「すり潰せばいいんだろ? 手伝うよ。力仕事なら、俺も得意だ」
 にっ、と自信ありげな笑みを浮かべる大柄な男性は、エドと名乗った。なんでも、念のために戦闘後の迷宮に敵の残党がいないか見て回ってから戻ってきたところ、今になってしまったのだとか。
 なお、エドは、内気な少年キケ・トレグローサの中に宿る、兄の人格である。実のところ、料理自体は苦手なのだが――最後の一人の人格である妹と近い年頃の少女たちが苦労している姿に、つい、手を出してしまったらしい。

「うーん、それなら交代お願いしちゃうッスかね。ありがとうッス!」
「お兄さんは自分のチョコ、作らないの?」
 笑顔で礼を言う霞の隣、首を傾げて見上げる壱子。その視線にエドは小さく苦笑して、
「俺は料理がすこぶる苦手なんだ。なぜかいつも焦がしたりしていてな……いつも妹と弟に任せっきりだ」
 お礼に教えるッスか? という霞の提案にも、エドは笑って首を振り、
「俺は味見担当でいい。こういう力仕事なら、幾らでも任せてくれ」
「あ、なら、わたしのチョコの味見、お願いしてもいいかな? ちょうど、そろそろ固まってると思うから!」
「ああ。それなら、喜んで」

 ――そうして、しばらく後。
 壱子の持ちきれないほど大量に作ったチョコレートと、霞のカカオ豆から作った本格派チョコレート。
 完成したチョコの数々を、「味見」というにはちょっぴり余分につまみ合いながら――BGM代わりに、楽士だというエドの歌が響いたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミーユイ・ロッソカステル
【マクスウェルの止まり木】の皆と

丁度いい、と思ったのだ。
作るならば、その後に食べるのが相場、と。
どうやら元々振る舞う予定だった面子はなにやらここに集まるようで、おまけにもう一人、振る舞う予定だった顔もいる。
そう考えて、グリモア猟兵のスバルにも声をかけ。

持参したのは、先日これまた魔法学園にて購入した、チョコのフィナンシェ。
ふわりとバターの香り漂うソレを並べながら……どうせならお茶が欲しいわね、などと考えて、調理器具を利用して紅茶の用意を。

さて準備は整ったとばかりに、わいわいとケーキを作るという仲間たちへと声をかけに向かう。
予想外の用意が進んでいるとも知らずに。


※アレンジ・アドリブ歓迎


ピート・ブラックマン
絡み希望:マクスウェルの止まり木の皆
アドリブ描写や上記以外の絡みも大歓迎

他の奴らがケーキを作っているのを尻目にチョコケーキをつまみ食い
まぁつまみ食いしてばっかだと悪ぃし、ちゃんと手伝うか
菓子作りはやった事ねぇけど、簡単な料理なら作れるし、少しは力になれるだろ
ほら、春子も手伝え
一応、一番年長者だろ

最後はミーユイの誕生日を祝う
年に一回の大事な日だ、盛大に祝ってやるさ
「さ、折角作ったんだ。みんなでケーキ食おうぜ! 一人で食うにはデカいだろ。まぁミーユイが一人で食うって言うなら止めやしねぇが……太っちまうかもな」


フィアラ・マクスウェル
絡み希望:マクスウェルの止まり木の皆
アドリブ描写大歓迎

チョコはチョコでも、チョコケーキ
つまみ食いしてくる人には生地混ぜを押し付けます
ココア風味に焼いたスポンジにチョコをコーティング
彩りは、そうですね……ミルクとストロベリーのソースを用意して、混ぜたピンクから段々と赤に表面をグラデーション
優しい甘みから刺激的な酸味も楽しめますように

どうですか?中々の腕前でしょう。そして最後に……これで完成です
やってきたミーユイへ自慢するように手渡し、出来上がりと思わせてのサプライズ
そっと隠していたチョコプレートをケーキに乗せる
描かれている文字は「Happy Birthday」
大切な家族へ、おめでとうの贈り物


ミーナ・ペンドルトン
【マクスウェルの止まり木】のみんなと参加だよー。
諸々ご自由に!

1度のつまみ食いはいいけど、2度目は絶対に許さない。
ケーキはみんなが用意してるから、私は飲み物を用意しようかな。
バレンタインっぽさもありつつ、さっぱりしたチョコレートラッシーがベストかな。
牛乳とヨーグルトを1:1。甘すぎない程度にチョコレートソース、さらにレモン汁を少し加えてー、しっかり混ぜたらこれでさっぱり美味しいチョコレートラッシーの完成だー。

ミーユイちゃんの誕生日だ、お祝いだー。
おめでとうしたら、みんながお祝いしてる間に、切り分ける準備しておかないと。
あ、全員分の飲み物と取り皿も用意しないといけないね。


ジョン・ブラウン
【マクスウェルの止まり木】のみんなと行動

とは言っても、僕お菓子とか作れないし……
せっかく魔法学園に来てるんだ、僕は色々お菓子を買ってこよう!
後は温室があるんだ、ハーブの苗とかポプリなんかも扱ってそうだよね良い香りのを探そうかな

うん?そんなに買ってどうするって?
もちろん、ミーユイへのバースデープレゼントさ!
ハッピーバースデイミーユイ!これからもよろしく……

え、あれ. どうしたのミーナ怖い顔して

つまみ食い?僕はまだ……
『しっとりまろやかな甘さだむー』
『しつこくなくそれでいてまったりとしてるむー』

お、お前らぁ!?
『ちゃんと取ってあるむー』
『感謝するむー?』

いや、待って、違う、違うんだぁぁぁ……ぐふっ


秋冬・春子
絡み希望:マクスウェルの止まり木の皆
アドリブ描写や上記以外の絡みも大歓迎

ケーキを作るみんなに絡む様につまみ食いを敢行するわ!
手を出して実際に口に入れるのも良いし、手をひっ叩かれて叱られるのも良いわね!
最終的にはみんなを手伝って、ケーキを完成まで持って行きたいところだけれども!

最後はやっぱり誕生日の主役であるミーユイちゃんへのお祝いを全力で行きたいところ。
「ハッピーバースデー、ミーユイちゃん! これで一つ大人になったわね! ええ、大人よ! 一年に一歳大人になって行くの! 良く良く憶えておきなさいね! お姉さん忠告したから!」


九十九・九
【マクスウェルの止まり木】の皆と

こう見えても菓子作りは得意なんだ
普段は面倒でやらないがね
だが世話になってるものたちの役に立つなら、まぁ、悪くはなかろう

浮遊する無数の機械手をフル稼働
スポンジ作りからクリーム作りまで全力でやるさ
甘くほろ苦く作り上げて見せよう
私自身は見てるだけ――というわけにもいかんな
多少は働かせてもらうさ

出来上がればサプライズだ
この中に誕生日を祝うべきものがいるらしいな
ああ、この間の菓子は美味かっただろう?
今回は皆で力を合わせてつくったのさ
美味くないはずがない
浮遊する機械腕たちが立てた蝋燭に火をつけ、手拍子を叩かせる
こういう時は、何か祝いの歌を歌うのだろう?

アドリブや絡みは歓迎さ



●マクスウェルの止まり木で
「さあ、始めますよ、皆。作るのは、チョコはチョコでもチョコケーキ――お祝いごと、ですからね」
 ぱん、と手を叩き。フィアラ・マクスウェル(精霊と止まり木の主・f00531)は一行を見渡し、そう呼びかけた。
 フィアラと、その家族。今日都合が付いたのは、マクスウェルの止まり木と呼ばれる寮で共に生活する、5人の……
「ジョンが時間を稼いでくれているうちに、頑張って準備を終わらせましょう」
 もとい。今はこの場にいない2人を含めて、総勢7人の一行だ。

「菓子作りか。普段は面倒でやらないが、こう見えて得意なんだ。世話になってるものたちの役に立つなら……まぁ、悪くはなかろう」
 そう語った九十九・九(掌中の天地・f01219)は、浮遊する機械腕をフル稼働。スポンジ作りからクリーム作りまで縦横無尽の大活躍だ。
 彼女自身も見ているだけではなく、フィアラと相談しながら、共に細かな味の調整や飾りつけを担当していた。

 もはや工場のような分担作業に目を丸くしつつ、じゃあ私は飲み物を用意しようかなー、と動き出したのはミーナ・ペンドルトン(小学生妖狐・f00297)。
 用意するのは、バレンタインらしくもさっぱりとしたチョコレートラッシー。牛乳とヨーグルトを1:1で、チョコレートソースは甘すぎない程度に。最後に垂らすのはレモン汁。
 年に似合わず、寮でも色々と家事を担当しているだけあって、その手つきには危なげがない。

「おっ、ケーキ生地、柔らかくていい感じだな。よく焼けてると思うぜ」
「チョコレートも美味しいわ! 指先で掬って食べるチョコレートって格別よね。なんだか駄菓子屋さんに通った頃を思い出して……え、知らない? そう……」
 そして、ピート・ブラックマン(流れのライダー・f00352)と秋冬・春子(宇宙の流れ星・f01635)は、味見という名のつまみ食い担当だった。
 ……これでも、当寮を代表する年長組である。

「おっ、こっちも食ってみろよ、春子。甘すぎなくていいぜ、チョコと合わせるためかね。肴になるんじゃねえか」
「あら、どれどれ? 私も一つ貰うわね」
 悪の道へと誘うピートの言葉にあっさり乗った春子は、ケーキ用のフルーツに遠慮なく手を伸ばし……

 ――べしッ。

「春子ちゃん、ピートくん」
 その手を容赦なくはたき落としたミーナは、真顔でじっと2人を見つめて。
「2度目は、ないよ?」

「はい、ごめんなさい……」「悪かったよ……」
 12歳の少女の威圧にびくりと震え上がり、声を揃えて屈する春子とピート。
 繰り返すが、これでも、当寮を代表する年長組である。

 まあまあ、と、フィアラは少女を宥めるように、けれど褒めるような笑顔を浮かべ、ミーナの二の腕にそっと触れてから、
「さ、続きをしましょう。そろそろ時間がありません。ピートと春子も、食べた分は手伝って下さいね?」
 はぁい、とこれまた声を揃えた返事。言われるまでもなく、2人だってちゃんと手伝うつもりでいた。「気持ち」は3人と同じなのだから。

 5人は今度こそ息を合わせて、「目的」のための準備を進めていく――。


 ――ちょうどいい、と思ったのだ。
 ミーユイ・ロッソカステルは、魔法学園の廊下を歩きながら、戦いを終えた時のことを振り返る。
 
 つい先日、やはりアルダワ魔法学園で購入したチョコフィナンシェ。
 元々寮生へのお土産として買ったのだし、こうした催しで振る舞えるなら、それに越したことはない。皆を誘ってみれば妙に乗り気で、どうやらケーキを作るようだから、その後に出すことにしよう、と。

「まあ、その前に、こうも長々買い物に付き合わされるとは思わなかったけれど」
「ゴメンゴメン。僕もお菓子とか作れないしさ、ミーユイみたいに買ってこようと思って。助かったよ。こっちの店選びとか分からないし」
「それは、構わないのだけれど」
 隣を歩くのはジョン・ブラウン(ワンダーギーク・f00430)。
 理由は話している通り、なのだが。
「貴方、結局お菓子はすぐに選び終えて、見てたのはハーブの苗とかばかりだったじゃない……」
「いやあ。せっかく温室があるんだしさぁ」
 へらへらと笑うジョンに軽くため息。ミーユイも別に本気で怒っているわけではない。随分と真剣に選んだ末、気に入ったものが選べたようだから、それは良いのだが。

 ……と、小さな違和感に首を傾げて。
「『キャサリンがこういうの好きでさ』とかなんとか、言わないのね?」
「…………いやあ、さすがにそれは、デリカシーがないっていうか」
「?」
 あったのね、デリカシー。ギークというのだったか、彼の故郷のジョークセンスは難しい。

 違和感といえば、あれはどういう意味だったのだろう?
 ミーユイが思い返すのは、仲間たちを誘うために、一度寮に往復させてもらった時のグリモア猟兵、スバルの態度。彼女は寮生でこそないが、菓子は友人である彼女の分も購入していた。それこそ丁度いいと彼女も誘ったら……後で寄るから先に楽しんでて、との答え。
 まあ、この場を手配してくれたグリモア猟兵には色々と仕事もあるのだろうが――口元に手を当て、何やら、からかうような笑みを浮かべていたような。

 そうこうしているうちに、2人は仲間の待つ調理実習室に辿り着き。
「あ、先どうぞ」
「? ええ」
 道を譲るジョンにまた一つ首を傾げながら、がらりと引き戸を開いて、

 ――ぱん、ぱん、ぱんっ。

 一斉にクラッカーが弾け、ひらひらと紙吹雪が視界を埋め尽くし。

「ミーユイちゃん、おめでとー!」
「誕生日おめでとう、ミーユイ」
「ハッピーバースデー、ミーユイちゃん!」
「おう、おめっとさん、ミーユイ」
「おめでとう、ミーユイ。ジョンもお疲れさまです」

 仲間たちの笑顔が、続けて目に飛び込んできた。

「…………へ、え?」
 ぽかん、と、珍しく口を開けて呆然とした顔を晒すミーユイの手の中に、隣のジョンは買ってきたばかりのポプリを押し付けて。
「おめでと。これ、僕からね」
「ちょっと、貴方まで……!? というか、諮ったわね……!?」
 徐々に理解の色を浮かべ始めたミーユイにつかつかと近付いた春子が、その肩を両手でがしりと掴み。
「これで一つ大人になったわね! ええ、大人よ! 一年に一歳大人になっていくの! よくよく憶えておきなさいね! お姉さん忠告したから!」
「近い近い近い、揺さぶらないで! 私はまだ10代なのだけど……!!?」
「じゅッ」
 胸を抑えてうずくまる春子は置いておいて、

「……貴方たち。何かこそこそ話していると思ったら……私の、誕生日……?」
「ふふ。見てください、なかなかでしょう? 九のゴーレムが大活躍でしたからね、思った以上の出来栄えですよ」
 質問に直接答えることなく、フィアラは得意げに、完成したチョコレートケーキを示す。
 ココア風味に焼いたスポンジにチョコをコーティング。ミルクとストロベリーのソースを用意して、混ぜたピンクから段々と赤に表面をグラデーション――まるで誰かの美しい髪のようなその色合いは、優しい甘味から、刺激的な酸味までを楽しめるように。
「そして――これで、完成です」
 最後にちょこんと載せたのは、後ろ手に隠し持っていたチョコレートプレート。描かれた文字は『Happy Birthday』。
 集った寮生たちが力と気持ちを合わせて作り上げた、祝いのケーキだった。

「もう、もう……もう……!」
 感極まって言葉も出ない様子のミーユイに笑みを浮かべ、ぱちんと指を鳴らしたのは九。浮遊する機械の腕が一斉に動き出し、ケーキの上に蝋燭を立てて火を点け、手拍子を鳴らし出し。
「こういう時は、何か祝いの歌を歌うのだろう? ああ、待った。君は、今日は聴衆だよ?」
 手拍子は、すぐに全員の手から鳴り響き。
 ある世界の者ならば国境を越えて誰もが知る、そうでないものにも耳に馴染む定番のメロディラインに載せて、6人の声で祝いの歌が唱和する。

 誕生への祝福、生まれてきてくれた幸い。そしてこの世界で、道を同じくしたことへの感謝を――。

 歌が終わる頃には、ミーユイは指先で、そっと目尻を拭っていたけれど。
 そのことを指摘する者は、誰もいなかった。

 ――その後。

 促されるままに蝋燭の火を吹き消せば、あとはもう、大騒ぎ。
 ミーユイが紅茶でも淹れようかと立ち上がろうとすれば、「飲み物も用意してあるから、任せて任せて。ミーユイちゃんはここ!」と、ミーナに座らされたのは文字通りのお誕生日席。
 そのミーナがケーキを切り分け、自分の小皿にチョコレートプレートを丸ごと置いてくれるのを、所在なさげに見守るばかりである。

「おいおい、どうした、そんなにミーナの手元ばっかり見て。全部食いてぇのか? 主役がそう言うなら止めやしねぇが……太っちまうかもな」
「…………良い度胸ね?」
 そんな様子を、ピートにからかわれたり。

「あれ、私のケーキ、ここに置いてなかったかしら? ……待って、生暖かい目で見ないで、今日はまだお酒入ってないわ!」
「……ジョンくん。つまみ食い、2度目はないって言ったよね?」
「え、聞いてない……っていうか何の話……」
『しっとりまろやかな甘さだむー』『しつこくなくそれでいてまったりとしてるむー』
「お、お前らぁ!?」
『ちゃんと取ってあるむー』『感謝するむー?』
「ジョンくん、言い訳は?」
「いや、待って、違う、違うんだぁー!」
 謎生物、だむぐるみを巡って大騒ぎしたり。
 ――なお、ミーナはちゃんと『マーシャルアーツ』の分のケーキを切り分けていたので、春子がケーキ抜きという事態にはならなかったとか。

「…………まったく、最後まで良い話で終わらせられない子たちね」
 ミーユイは苦笑しながら、つまみ上げたチョコレートプレートをぱきりと噛み砕く。ほんのりと苦みのあるはずのそれが、今は、ただただ甘い。
 ふと指先に視線を落とせば、当然ではあるが、指先にチョコレートが――
(「……あ」)
「どうかしましたか、ミーユイ?」
 いつのまにか隣に座っていたフィアラが首を傾げ、覗き込んでくる。その顔に、ミーユイはふわりと柔らかい笑みを返し。

「いえ。……いいえ」
 取り出した仕立ての良いハンカチで指先のチョコを拭いながら、天井を仰ぎ。
「……本当に、お節介ばかりね、と。そう思っただけよ」

 身長差のあるミーユイが上を向いてしまえば、フィアラから表情は窺いづらい。
 けれど、緩み切ったその顔が目に浮かぶようで。
 そうですか、と。返すフィアラもまた、満面の笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

古谷・沙亜来
レイラ・エインズワース(f00284)と行動
スバル・ペンドリーノ(f00127)を呼び出す

チョコレートを作りましょう!

私の故郷では無かった催しだからとっても楽しみ
猟兵になってから何回か食べたのだけれど、あの甘くて幸せなチョコレートが作れるだなんて!
スバルさん、レイラさん、今日はよろしくねっ

スバルさんに教えてもらった通りに丁寧に調理をするわ
お料理は得意だからできるとは思うのだけれど、洋菓子は作ったことがないからちゃんとやり方を見ておかなくちゃ

何か一工夫あるともっといいの?
えっと……そうね、前どこかで見たんだけれど、抹茶を何かに使えないかしら?

ふふ、こうして皆で何かをするのって、とっても楽しいわね


レイラ・エインズワース
古谷・沙亜来(f00379)サンと一緒に
スバル・ペンドリーノ(f00127)サンを呼ぶヨ
アドリブ絡み大歓迎
好きに動かしてネ

誰かと一緒にお菓子作り、ナンテ
絶対楽しくなりそうだヨネ
甘くておいしいチョコレート、お世話になったみんなに配りたいナ

ウンウン、二人トモよろしくネ
一人ダト、ちょっと心ぼそかったカラ、一緒にできて嬉しいナ
心なしかランタンの火も嬉しそうに揺れてるヨ

教えてもらい恐る恐る
デモ、お菓子以外は作ったコトあるカラ
そこマデ不器用じゃないケド、初体験だカラワクワク
美味くできるカナ?

一工夫ナラ、私はドライベリーを持ってきたんダ
コレも何かに使えるカナ?

出来上がったら
まずは二人にハイ、笑顔で手渡すヨ



●かもめ亭とチョコレート 1of4 団欒編
「さあ、チョコレートを作りましょう!」
 古谷・沙亜来(フワリ蒲公英・f00379)の呼びかけに、オー、と応えるのは、レイラ・エインズワース。手に持った杖の先では、彼女の本体であるランタンの紫炎が、心なしか嬉しそうに揺れていた。
 そしてもう一人、
「ふふ、約束だものね。まさか魔法学園で、なんて思わなかったけど」
 両掌を合わせてくすりと笑うグリモア猟兵、スバル・ペンドリーノ。
 バレンタインに向けて、チョコレート教室を開こうと約束したのは宿のロビー、数日前のこと。思わぬ運びではあるけれど、彼女に否やがあるはずもなく。

「確か、2人の故郷にはバレンタインってなかったのよね?」
「ええ、私の故郷では無かった催しね。だから、とっても楽しみ。チョコレートは何度か食べたけれど、あの甘くて幸せなチョコレートが作れるだなんて!」
「私もダヨ。ケド、誰かと一緒にお菓子作りナンテ、絶対楽しくなりそうダヨネ。当日は、お世話になってる人たちに贈ろうと思ってるんダ」
 うんうん、と頷きながら、2人の腕前を確認するスバル。どうやら2人とも、洋菓子作りには慣れていないだけで、むしろ台所の扱いには通じているらしい。そう聞くと、スバルは小さく首を傾げて、
「うーん……そうなると、ただ溶かして固めるだけ、ってのも勿体ないわよね。何か一工夫してみましょうか」

「あ、それなら」
 沙亜来が翡翠のような瞳を輝かせ、取り出したのは――抹茶缶。
「前どこかで見たんだけれど……抹茶を何かに使えないかしら?」
「だったラ、私モ。これは何かに使えないカナ?」
 そしてレイラが持参したのは、ドライベリーだ。
「あら、美味しそう。お抹茶にベリーね……どちらもお菓子には定番だけど」
 思考は数秒。うん、とアイディアがまとまった様子で。
「うん、行けそう! じゃ、早速始めましょうか!」
「はぁい。よろしくね、スバルさん……ううん、スバル先生」
「フフ、よろしくネ、センセイ?」
「……せ、先生はやめてって!」
 顔を赤らめ抗議するスバルを、2人してからかいながら――調理開始。

 ちょっぴり恐る恐るのレイラの物腰に、沙亜来とスバルは視線を交わしてくすりと笑いあい。
 沙亜来が味見にぺろりとチョコを舐め、ふにゃりと幸せそうな笑みを浮かべれば、今度はそれを残りの2人が微笑ましげに見守って。

「なるほど、洋菓子作りは分量も時間もきっちり計って、丁寧に進めるのが一番大事なのね」
「そうね。和菓子は技術が大きい印象だけど……あ、ええと、タイマーの設定、やってもらえる? 沙亜来さん、得意よね」
「……得意とか苦手とかアル? スバルサン、なんで今の流れで出来ないノ……?」
 そんな一幕も、あったりなかったり。

 3人の少女たちは、かしましげに、調理を進めていく――。


 それぞれに配るチョコレートとはまた別に、出来上がったのは、ドライベリーをチョコレートでコーティングした一口サイズのお菓子だった。
 抹茶と粉砂糖を混ぜたパウダーをまぶしてやれば、彩りもばっちりだ。
 バレンタインは甘い愛を届けるイベントだけど、一足お先に、これは3人のお茶会用。――もう一人渡す相手がいるのだけれど、それは後で持っていくことにして。ちゃっかり紅茶など淹れて、それぞれに菓子を頬張っては、頬を緩める少女たち。

「……ふふっ」
 不意に笑みを漏らした沙亜来は、集まった友人たちの視線に、妖狐の耳をぴょこんと揺らしてにっこり笑い。

 ――こうして皆で何かをするのって、とっても楽しいわね。

 その言葉に、3人は顔を見合わせ、くすくすと笑い合うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

十河・アラジ
雨宮・新弥さん(f04640)と同行

前にアルダワでお菓子作りをしてから興味が湧いたんだよね
いい機会だし新弥さんを誘って教えてもらおうっと

体験したと言ってもボクは詳しくないから基本は新弥さんの手伝いだ
お菓子作りはレシピ通りに作るのが大事って前に分かったし
お手本を見たり教わったりして自分でも作れるようにならなきゃ

バレンタインは感謝を伝える日とも聞いたし
普段お世話になってる人達、これから仲良くなりたい人達へ贈れるチョコ菓子を作りたいな
……やっぱり最近お世話になってるかもめ亭の皆さんへ、かな
そういえばスバルさんもかもめ亭の人なんだっけ
初めましてって挨拶くらいはしなきゃ

※15歳以上の人には敬語


雨宮・新弥
[WIZ]

アラジ(f04255)と。
正直、まだ人にモノ教えられるほどじゃねーんだけどな…
引き受けたからにはしっかりやるさ

アラジはほとんど初めてみたいなもんなら、簡単な方がいーよな
チョコクッキーでも焼いてみるか?
かもめ亭の皆に渡すなら…かもめの形とか、カワイイんじゃねーかな

基本を丁寧にしっかりと…って、俺に菓子作り教えてくれた人も言ってたっけ
キッチリ計って手順通りにやりゃまず外さねーよ
大丈夫、ちゃんと見てるからさ

クッキー焼けたらチョコペンで顔描いてやろう
せっかくならかもめ亭の皆っぽい顔で…どっちが上手く描けるか勝負な!



●かもめ亭とチョコレート 2of4 青春編
「正直、まだ人にモノ教えられるほどじゃねーんだけどな……」
「ま、まずかったですか……?」
 雨宮・新弥(宵待人・f04640)がぽつりと漏らした呟きを聞き取って、隣に立つ十河・アラジ(マーチ・オブ・ライト・f04255)は不安げに見上げた。
 新弥をこの場に誘ったのは、アラジだ。以前にもアルダワ魔法学園で経験してから興味を持っていたお菓子作り。先ほど挨拶を済ませた本日の講師役、スバルもまた同じ宿に滞在する相手ではあるものの、やはり今日は忙しいだろう。実際、さっきも挨拶もそこそこに、何やら銀髪の少女――いやしさんに引っ張られていってしまった。
 それに、教えてもらうなら、同性相手の方がやりやすい部分もある。そんなわけで、同じくかもめ亭に滞在中で、パティシエ志望の新弥に相談したわけだが……強引過ぎただろうか。

 そんなアラジに、新弥は、いや、と首を振り、
「気にすんな。引き受けたからにはしっかりやるさ」
 その声と表情には、およそ愛想というものが感じられないが――怒っているわけではなく、これが彼の平常運転。実際のところ、頼られることも、年下の少年がお菓子作りに興味を持ってくれていることも、悪い気はしないくらいだ。
「アラジはほとんど初めてみたいなもんなら、簡単な方がいーよな。チョコクッキーでも焼いてみるか?」
「チョコクッキー……チョコを入れて茶色くした生地を型に入れて焼いて、ですか?」
「そうだな。渡すのは、誰にだ?」
 不意の問いかけに、アラジは少しだけ考える。
 バレンタインは恋する乙女のためだけのものではなく、感謝を伝える日とも聞いた。普段お世話になってる人たち、これから仲良くなりたい人たち。思いつく顔は色々あるけれど、最初に考えたのは、
「……やっぱり、最近お世話になってるかもめ亭の皆さんへ、かな」
「そうか。なら」
 ぐるりと、大柄で不愛想な青年は、首筋に手を当て、頭を回すような仕草をしながら、
「……かもめの形とか、カワイイんじゃねーかな」
「ああ、いいですね! それで行きましょう!」
 見た目に似合わぬ――というと大概失礼であるし、実際のところ、新弥を知る者であればそう意外でもない提案。アラジも笑って頷いて、本日の方針は決定。

「お菓子作りはレシピ通りに作るのが大事……なんですよね?」
「そうだな、キッチリ計って手順通りにやりゃまず外さねーよ。基本を丁寧にしっかりと……って、俺に菓子作り教えてくれた人も言ってた」
 前にやった時のことを思い出しながら問いかけるアラジに、新弥は頷き一つ。
 なら、今日は手伝いメインの方がいいよね。そう考えるアラジの目の前に、新弥はボウルを差し出して。
「新弥さん……?」
「レシピは目、通したんだろ? やってみろよ。分からない所は教える。大丈夫、ちゃんと見てるからさ」
「……! ……はい!」
 そうして、隣からあれこれ新弥に教えてもらいながら、作業に取り掛かり。アラジが焼き上げたクッキーは。

「ん、良い焼き具合だな。チョコペンで顔書いてやろうぜ、かもめ亭の皆の」
「絵……!? が、頑張ります!」
「へっ。どっちが上手く描けるか勝負な!」
 に、と新弥がわずかに口角を上げて。最後の最後の仕上げまで、男たちのクッキー作りは、楽しく進んでいく――……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆灯(f00069)と同行


見知った顔ぶれが賑やかにしているのを密かに確認
……うん、こっちに注意は向かないだろ、多分
(※本人はこう言っていますがどうなるかはお任せします)

とりあえず作るけど、お前は……うん知ってた
まあいいや、ちょうどいいから味見でもしてくれ
俺、味の良し悪しがわかんねーからさ

いや、レシピはさすがに見るけど
っていうか、この間怒られたばっかりだしな……(思わずスバルの方を見る)

物足りない、なあ
レシピ通りのつもりだけど、なんだろうな……?

(暫し顔を見合わせ、首を傾げ)

……まあいいか、とりあえず形にはなってるし
付き合わせて悪かったな
残り、よかったら持って帰りなよ
足しになるかわかんねーけどさ


皐月・灯
匡(f01612)と同行

こいつ何を気にしてんだ?
……まあいいや。オレの仕事は終わった。

(椅子に陣取って机に頬杖)
じゃ、あとは頑張れよ。
んだよ、エプロン付けて湯煎するとでも思ったか?
残念、オレは食う専だ。

味見? 構わねーけど、オレでいいのか。
……全部チョコだろ。良し悪しがわかんねーってなんだよ。

おい、大丈夫だろうな。ちゃんとレシピ見ろよ?
……やらかしたことあんのかよ……。

……美味いけど、何か物足りねーな。
レシピ通りだし、味はチョコだけど……ほっとしねーっていうか。

(どうにも解せずに首を傾げ)

……いいよ、暇だったからな
そんじゃコイツは貰ってくぜ
……その、非常食には十分だし。不味いわけじゃねーし、な



●戦場を離れた彼ら
「…………こっちに注意は向かないだろ、多分。と、思ってたんだが」
 鳴宮・匡は、戸惑ったように視線を落とす。手元にあるのは――抹茶パウダーだという緑の粉末を散らした、幾つもの一口大のチョコレート。3人のかしましい少女たちがやってきて、嵐のように押し付けていったものである。一部、本番はまた別の物をくれるかもとかいう話も聞いたような聞かないような。
 先日、チョコレート作りの予行練習に材料を提供したお礼。そういう話は確かにしていたわけだが。とりあえず一つ、口に放り込んでみると――甘いチョコと風味豊かなパウダーに包まれたドライベリーの酸味が引き立って。チョコレートはカロリーが豊か。材料的に見た目より日持ちしそうだし、非常時の栄養食になるかもしれないな、と匡は思う。

「……迷宮の中から、何を気にしてたのかと思えば……まあ、いいけどよ」
 その様子をうろんげに見つめるのは、実習室の椅子にどかりと腰かけ、机の上に頬杖を突いた皐月・灯。
 なんとなく居心地の悪さを感じた匡は、その視線に気付かないフリ。刺されんなよ、とか聞こえた気もするが、戦闘はとっくに終わっているのに何を言っているのだろうか。
「まあ、これは置いといて。俺は作るけど、お前は……」
「あとは頑張れ」
「……知ってた」
 机に陣取ったまま微動だにしない灯に、肩を竦める匡。
「なんだよ、エプロン着けて湯煎するとでも思ったか?」
「それはそれで見たい気もするが……まあいいや、じゃあ、味見頼むよ。俺、味の良し悪しがわかんねーからさ」
「味見?」
 オッドアイの少年は、訝しげな顔。食う専のつもりでこの場に来たのだから、望むところではあるのだが。今さっき彼が食べていたような凝ったお菓子ならともかく、溶かして固めるだけのチョコに、良し悪しなどあるのだろうか。
「構わねーけど、大丈夫だろうな……。ちゃんとレシピ見ろよ?」
「いや、レシピはさすがに見るけど。こないだ怒られたばっかだしな……」
「……やらかしたことあんのかよ……」
 クッキーを焼く際、生の生地の時点で味見をしたら味気ない気がして砂糖を足してみたら、えらく甘くなってしまっただけのこと。やらかした、というほどでもないと思うのだが……。

 ちなみに、叱った相手はすぐそこにいる。思わず匡が向けた視線の先、テーブルの向こうにいたグリモア猟兵・スバルは、不思議そうに匡と灯の姿を見比べて――……。
 ぐっ、とサムズアップ。
(「大丈夫、私、理解ある方だから」)
 そんなパワーを込めた視線をこちらに向けながら、何やらもう一人の銀髪の少女に引きずられ、退場していった。

(「……よく分からないが、何か誤解された気がする。というか、なんだ今の」)
「おい……?」
「ああ、いや、大丈夫。ちゃんとやるよ」
 言って、レシピを確認。それなりに危なげのない手つきで、調理に取り掛かり――。


 ぱく、と。匡の仕上げたチョコレートを、灯は口に放り込む。
 宣言通り、レシピに忠実に作ったのだろう。何でも卒なくこなす匡らしく、ちゃんと美味い。美味い、が。
「……美味いけど、何か物足りねーな。味はチョコだけど……ほっとしねーっていうか」
「物足りない、なあ。レシピ通りのつもりだけど、なんだろうな……?」
 なんとなく漏れた灯の呟きに、不思議そうな顔をする匡。
 灯もまた、はっきりと根拠のある話ではなかったようで、2人は少し、戸惑ったように視線をかわし。

「……まあいいか、とりあえず形にはなってるし。付き合わせて悪かったな」
「……いいよ、暇だったからな。これ、貰ってって良いか?」
「ああ。足しになるかは、わかんねーけどな」
 灯は立ち上がり、匡が包んだ残りのチョコレートを手に取る。
 ふと、視線を落とす。今、物足りないと評したばかりのそれ。手の中のチョコレートと匡の顔を見比べて。
「……その、非常食には十分だし。不味いわけじゃねーし、な」
 何となしに、そう、フォローするように付け足せば。

「おう。チョコは栄養価も高いしな。今は大丈夫だろうけど、暖かくなったら溶けないように気を付けろよ」
 そう、平然と答えてくる匡。
 ……全くもって。味見のしがいがない男であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エスチーカ・アムグラド
さー、チャレンジの時間ですよ!
どーんっ!っとおっきいチョコレートを、たーっくさん作ります!
具体的には、(フェアリー視点で)4号のホールケーキ位大きい(人間視点では2cm程、一口サイズの)チョコレートを……!

溶かして、流して、固めて、チーカにはそれ位しかできないかもしれませんけど、チョコレートの大きさに負けないくらい感謝の気持ちだけは籠めますっ!かもめ亭の皆さんにはいつもよくしてもらっていますしっ!

あとあと、デコレーション位はちょーっと位頑張れたらいいな、って……
スバルお姉さんに聞いたら可愛いチョコレートの作り方、教えてくれるでしょうか?


氷室・癒
どこからかメイド服を借りてきましたっ!
どうでしょーっ! 似合っていますか、メイドいやしちゃんっ!
スバルさんもどうでしょうっ! 一緒に着てみませんか! メイド服っ!
ご主人様っ。なーんて!

こまかーく図ったり、ぴったーりに揃えたり。そういうのはちょーっと苦手ないやしちゃんですがっ、全く作れないというわけではありません。作り方も知ってます!
しかし……えへへへへっ、いい匂い!
幸せの匂いがいっぱいいっぱいですっ!
やっぱり味見しましょうっ。味見!
メイドいやしちゃんが味見役ですっ!

「ご主人様っ、これはあまままですよっ! 完璧ですっ!」
ぐーっとにっこり微笑んでお墨付き!

やっぱりチョコレートは幸せの形でしたねっ!



●かもめ亭とチョコレート 3of4 冥途編
「さー、チャレンジの時間ですよ!」
 エスチーカ・アムグラドは、並べた材料を前に気合を入れる。
 キッチンの諸々の設備はもちろん人間サイズ。ひらひらと鮮やかな色の翅を羽ばたかせて宙を舞う妖精、フェアリーであるエスチーカにとって、なかなかの重労働。それでも手を抜く気はない。
「作ってみせます。4号のホールケーキくらい大きい贅沢チョコレートを、たーっくさん……!」
 一般に、4号のケーキと言うと、直径12cm。普通なら3、4人くらいで食べるサイズだ。それを沢山となると、本来であれば、本当に物凄い量になるだろうが……。
(「溶かして、流して、固めて、チーカにはそれ位しかできないかもしれませんけど……」)
 チョコレートの大きさに負けないくらい、感謝の気持ちを込めるのだ。配りたいのはかもめ亭の皆。いつもよくしてもらっているから、感謝と親愛の気持ちを込めて。
「さー、頑張りますよー!」
 ひらひらと、桃色の髪をなびかせて。せわしなくキッチンを飛び回りながら、エスチーカはチョコレート作りに取り掛かる――。

 ……そして、しばし後。
 四苦八苦の末、なんとか形になった山ほどのチョコレートを前に、エスチーカは首を捻っていた。
「うーんうーん、デコレーション、頑張りたいですね。せっかく大きく作ったんですし……。……あ!」
 そんな折、目に入った顔に、エスチーカは救いを見つけたように声をかける。先ほども会ったばかりの馴染みの顔、それに同じくかもめ亭に住む、お菓子作りが得意だと聞いていたグリモア猟兵のお姉さん。きっと力になってくれるだろうと、腕を振り、
「いやしお姉さーん! それに……スバル、お姉……さん……?」
 ぱちくり。妖精の笑顔が、きょとんとした色に染まる。


「ちょ、ちょっと、引っ張らないでってば、恥ずかしい……!」
「ふふふーっ、よく似合ってますよっ。――あっ、ちーたん! どうでしょー、似合っていますか、『メイドいやしちゃん』っ!」 
 そう。空飛ぶ美少女いやしちゃんこと氷室・癒、そして癒に手を引かれて気恥ずかしげに歩くスバルの服装は、黒のワンピースに白のエプロン、落ち着いたデザインながらも随所にフリルが施され、頭にはばっちりカチューシャを付けた――そんな、クラシカルなメイド服であった。
 揃いの銀の髪がモノクロームな装いによく映えて、それはもう画像でお見せできないのが残念なほどの愛らしさであった。

「か、可愛いですよ、いやしお姉さん! 可愛いですけど……なんでメイド服なんですか?」
「ふっふっふーっ。メイド人形さんたちが可愛いなーって……帰って探そうとしたら、学園の人が用意してくれてたんですよっ。ちーたん……いえ、ご主人様!」
「ご、ご主人様……!?」
 天が呼ぶ、地が呼ぶ、呼んでなくてもぼくが呼ぶ。つまり、そう、世界がメイドいやしちゃんを求めていたのであった。
 なお、赤い顔で溜め息をつくスバルは癒に巻き込まれただけらしい。

 ええと、とまだ驚いた様子のエスチーカは、気を取り直して相談を口にする。頑張って大きなチョコレートを作ったから、可愛らしいデコレーションをしたいのだ、と。
「あ、ああ。デコレーションね、それならホワイトのチョコペンで――」
 どれどれ、とエスチーカの手元を覗き込んだメイドスバルの顔が、一瞬引きつる。
 エスチーカの作ったチョコレートは、4号ホールケーキサイズ――但し、フェアリー換算で。メートル法で言えば、大体直径2センチほどであったのだ。
 これに? デコ? 私知ってるわ、米粒にお経書く奴ね……?

「あ、あの……難しいでしょうか?」
 そんなメイドスバルの様子を、不安げに見上げるエスチーカ。しっかりしているように見えても、エスチーカはまだ9歳の女の子だ。そんな妖精の少女に見つめられて、突き放すことなどできるだろうか。
「だ、大丈夫よ、ネイルくらいのサイズだと思えば! 一緒に頑張りましょ。まずはビニール袋になるたけ小さい穴を空けて、チョコペンの代わりに……。いやしも手伝って貰うわよ!」
「はいはいはーいっ! メイドいやしちゃんにおまかせですっ! ではまずは味見を……んーっ! ご主人様っ、これはあまあまですよっ! 完璧ですっ!」
 ぐーっとにっこり微笑んで、味はメイドいやしのお墨付き。メイドスバルは隣で頭痛を堪える表情をしているものの、なんだかんだでご主人様、もといエスチーカがほっとした顔をしていたので良しとする。
 2人のメイドとご主人様。なぜかそんな組み合わせになった3人は、協力してチョコのデコレーションに取り掛かる。よりによって「細かい作業はあんまり得意じゃないんですっ」というメイドいやしは致命的にこの作業に向いていなかったが、そこはそれ、材料の扱い自体は案外てきぱきと、細かな模様に向き合う2人をサポート。
 しばらく後、エスチーカの作った大量の「贅沢サイズのチョコ」は、残らず可愛らしくデコレーションされていたとか。

 ――やっぱりチョコレートは、幸せの形でしたねっ!

 できたー! と喜ぶエスチーカとメイドスバルの姿を見つめて、楽しそうににこにこと。そんな、メイドいやしの声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コーディリア・アレキサンダ
【かもめ亭】
チョコ作り……いや、ボクは別に
先に帰るからあとはステラと仲良くね。それじゃスバル、よろしく――
……待って、帰るってボク言ったよね(ずるずる)


(ぶすっと不満たらたらな顔)

(危なっかしくて見てられない顔)

……あっ。いや、今のは砂糖じゃなくて

(口出ししてしまってばつの悪そうな顔)

………………仕方ないな。ボクは別に上手ではないからね?
宿のみんなの分ぐらいは作ってあげよう……うん。お世話になっているからね

……公爵、分量これでよかったっけ?
水じゃないからわからない?
キミ、絶妙に役に立たないね……


ステラ・ペンドリーノ
【かもめ亭】

さてさて、これで平和においしいチョコづくりに専念できるかしらね。
かもめ亭のみんなも来てるみたいだし、作ってるところを参考にするのもいいかも
なにせ普段はこういうの、スバルちゃん任せだしねー

とはいえ、今回はUDCアースから買ってきたお菓子の素を持ってきたんだもの
レシピ通りに正確に計量すれば、私にだってそこそこ美味しいチョコが作れるわ

うーんと、定規とビーカーと秤を使えばまず間違えないわよね
ふふん、お菓子は科学だもの。キッチンタイマーも持ってきたし

あ、ダメダメ、スバルちゃんは作ってるところは見ちゃダメよ
どんなふうに出来るかは、貰う時まで楽しみにしておいてね♪



●かもめ亭とチョコレート 4of4 星霜編
 チョコ作り。その言葉に、コーディリア・アレキサンダは思う。
 別段、お菓子が嫌いなわけじゃないけれど……自分はただ、学園の危機だと聞いて、そして友人の付き添いのために、この地に訪れただけ。脅威は既に晴らされた。ならば自分は、そのような場に相応しくは――。
「そういうわけでボクは帰るから、あとはステラと仲良くね……って、さっき言ったよね? ねえ、聞いてる?」
 ずるずるずる。
「ダメダメ、そういうこと言いっこなしよ、リア。まったく、ほんとに帰ろうとするんだもの。捕まえるのに随分時間がかかっちゃった」
 嫌がる猫にするかのような扱い。ステラ・ペンドリーノはリアの腕をしっかり抱いて、空いたテーブルを探して、調理実習室を練り歩く。
「分かった、逃げない、逃げないから引っ張るのは……あーーー」
 ずるずるずる。
 微笑ましくも珍妙な姿に、周囲の猟兵たちから視線が集まる――のみならず。
 コーディリアの手元には、なぜか見知った顔の皆からの、チョコレートのお裾分けが積み重なっていった。例によって本番は別のチョコレートが届くかもしれないが、同じ場所に集ってみれば、縁というのはあるもので。

 金と紫の少女からは、緑色のパウダーをまぶしたチョコ菓子。
 大柄な青年と小柄な少年からは、コーディリアとステラの顔らしき絵が描かれた、かもめの形のチョコクッキー。 
 妖精の少女と天使のメイドからは、可愛らしくデコレーションされた、一口サイズのチョコレート。
 戦場帰りの青年からの、飾りっけのないチョコレートまで。

 ――道中、なぜかメイド姿の妹を見たステラが、思わずコーディリアを取り落としかけたのはご愛敬としておいて。

「ね、戻って良かったでしょう?」
「……………………」
 ぶすっと、「ボクは不満なんだからね」という態度を隠しもせず、それでも抱えたチョコレートの山を手放しはしないコーディリアに。くすりと笑って、ステラは調理の準備を――。

 ……。

(「……え、スバルは呼ばないの?」)
 口は出すまいという決意も早々に、思わず訝しげにステラの顔を見るコーディリア。彼女、普段の自炊は妹に任せきりだったはずだが。
 そんなコーディリアに、ステラは皆まで言うなと手で制し、得意げに豊かな胸を張り。
「ふふ、今回はUDCアースから買ってきたお菓子の素を持ってきたの。レシピ通りに正確に計量すれば、私にだってそこそこ美味しいチョコが作れるわ! お菓子は科学、ってスバルちゃんもよく言ってたし」
「……」
 本当に大丈夫かな、と思わざるをえないコーディリアである。

「キッチンタイマーも持ってきたし……入れ物は、定規とビーカーと秤を使えばまず間違えないわよね」
 ステラはお菓子の素のパッケージの裏を見ながら準備を終えると、一部に違和感のある光景ながらも、作業に取り掛かる。その手つきはいちいちパッケージを確認しながら、おっかなびっくり、いかにも不慣れな様子でゆっくりと。
「…………」
 段々危なっかしくてそわそわし始めたコーディリアである。

「あっ、ダメダメ、スバルちゃんは作ってるところは見ちゃダメよ。どんなふうに出来るかは、貰う時まで楽しみにしておいてね♪」
 しまいには、心配して様子を見に来た妹を追い返す姉。いや、妹に渡すというなら当然かもしれないが。
「むむむ、お姉さまがそう言うなら……。リアもいるなら、大丈夫よね。お姉さまをよろしくね……?」
「……………………」
 それはそれとして、去り際のスバルから受けた視線の『圧』の強さに冷や汗を流すコーディリアである。

「えーっと、ここで砂糖ね。これを計って……」
「あっ、違う、それホットケーキミックス……!」
 そしてついに、ステラのミスに口を出してしまい、コーディリアはばつの悪げな顔。
 あらいけない、と口元を抑えてから、からかい交じりの感謝の笑みを向けてくるステラに……
「………………仕方ないな。ボクは別に上手ではないからね?」
 はあ、と溜め息。根負けを認め、コーディリアもまた荷物とチョコレートを置いて、キッチン台に向かう。
(「宿のみんなの分ぐらいは作ってあげよう……うん。お世話になっているからね。……貰う方も、貰ってしまったし」)
 そんな言い訳を心の中で繰り返すコーディリアの様子に、ステラはどこか妹を慈しむ姉のような、暖かい目を向けて。

「……公爵、分量これでよかったっけ? 水じゃないからわからない? キミ、絶妙に役に立たないね……」
「リアの悪魔って、そういう相談もできるんだ……」

 まあ、その助っ人がどこまで頼もしいかは別の話であったのだが。
 彼女たちのチョコが無事に完成したのかは――神と、それを渡された幸運な誰かのみぞ知る、というところであった。



●メイドはちょこっとやってきた
 ――かくして、メイドと迷宮とチョコを巡る顛末はこれにてお仕舞い。
 甘くて苦いという恋の味にどう向かい合っていくかは、各々が紡ぐ、また別の物語。
 猟兵たちは一先ず、今年も無事にバレンタインを迎えることができたのでした。

 めでたし、めでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト