「カタストロフの前兆だっていう幽世蝶が現れやがった」
子墨・次郎吉(ねずみ小僧・f30682)は芝居がかった調子でそう、猟兵に告げた。
幽世蝶というのは、カクリヨファンタズムの滅亡を幾度も救った故か感じ取れるようになった「世界の崩壊するしるし」だ。
それが群生し、向かう先に崩壊を起こそうとするオブリビオン化した妖怪がいるのだという。
「方向から考えれば、温泉宿だな。別に変わったとこの無い普通の宿のはずだが、まあ、既にオブリビオンの影響を受けてるかもしれねえな」
だが、問題は温泉宿だけではないらしい。そこまでの道に触手植物が大量に増殖した森があるのだ。鬱蒼としたこの森を進むには幽世蝶を見失わないようにするのが一番だという。
「まあ、触手っていってもヌルヌルした液体を纏ってるだけで毒性があったりはしねえから、安心だな」
べっとべとに汚れるかもしれないが、温泉宿にいって、オブリビオンに気付かれないように他の客を避難させる際についでに温泉に入って体を洗えば大丈夫。とあまり繊細さの見受けられない事をいう次郎吉は、そんじゃあ一丁頼んだぜ。と転移を開始した。
◇◇◇
「動きたくない……」
自堕落を地でいくオブリビオン化した妖怪がぼやいた。
「なんで、動きたくないのに動かないとダメとか言われるんだろうなあ……っ、そうだ……もう皆自堕落でだらだらしていっぱい肥えちゃえば、だらだらするのに文句も言われないんじゃ?」
そして、見つめるのはいつか行きたいなと思っていた温泉宿。
「え、ウチ天才? 発想が神なんだけど草、そうと決まったら、なるはやでしょー!」
熱血漢
第一章。ヌルヌルな触手が蔓延る森を、幽世蝶を追って抜けます。
触手に邪魔されすぎて蝶を見失わないように頑張って下さい。
触手に毒性は無いです。ただ分泌液でぬるぬるするだけです。
第二章は、オブリビオンの影響でみんな自堕落になってしまった宿で、彼らを避難させる日常場面です。
温泉宿を楽しみすぎると影響をうけて肥満化するので気を付けてください。
第三章は、原因となったボスと戦います。
肥満化してしまっても倒せば元にもどります。
ではプレイングお待ちしています!
第1章 冒険
『触手の森?』
|
POW : 絡みつく枝や蔓を力づくで引きちぎって突破する
SPD : 枝や蔓に絡みつかれる前に避けまくって突破する
WIZ : 斬ったり焼いたりと枝や蔓に対処しつつ突破する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
中小路・楓椛
◎
WIZ
別の世界でのダゴン焼き屋台営業の帰り路なのですが、崩壊の兆しとは穏やかではありませんね?
粘液の触手と来ましたか。好きな方は好きなのでしょうけれど、私は生憎とそういう性癖は持ち合わせおりませんので、ええ。
UC【こる・ばるぷす】で幽世蝶と同行の猟兵の方を巻き込まないように配慮しつつ灼き払い粘液を蒸発させ、更に【こる・ばるぷす】の浄火を術式付与(エンハンス)した【ろいがーのす】と【谺(魔笛/鼓)】で絡みついて来そうな枝や蔦等を微塵に刻み砕いて燃やしておきますね。
「まあまあ、戻ったと思えば崩壊の危機だなんて」
ふさふさの尻尾を揺らして、中小路・楓椛(流しのダゴン焼き屋台牽き狐・f29038)は困ったように両手を合わせた。
他の世界でダゴン焼きの屋台営業を終えたばかり。少しどこかで休んで次の興行に向かおうなんて考えていたのに、流石に見逃せない。
「穏やかではないですね」
毎日のようにカタストロフが起こってるとはいえ、起きない方が万倍マシなんだから。
次寄れば、空間まるまる虚無に呑まれてるかも、なんて心労は遠慮したい。
「さて、粘液の触手ですか……好きな方は好きなのでしょうけれど」
暗い森の陰りに蠢く何かを見据えて楓椛は手を伸ばす。
敵意に気づいたのか、それとも、そのわずかな距離で索敵範囲に触れたのか。ごわ! と触手の蔦が迫り来る!
そういった性癖を持っているなら、むしろ喜んで飛び込んでぬたぬたになってしまいたいと思うのかもしれないけれど。
「私は生憎とそういう性癖は持ち合わせおりませんので、ええ」
現れた八十八の火炎が迫ろうとする触手ごと、周囲の粘液を蒸発させた。浄化の炎は、一滴たりとも楓椛の柔らかな毛皮を汚すことなく防ぎきり。
「さて、案内していただきましょう」
一帯を焼き付くしたかの火炎弾幕に、しかし、楓椛の制御によってその羽の端すら焦がしていない幽世蝶が、森の奥へとヒラヒラと舞っていく。
ぞわり、とまるで底無しに楓椛へと襲いかかる触手を、浄火をまとわせた大型手裏剣で凪ぎ払い、行く手を阻むそれを2丁拳銃を合体させたバスターライフルで集束した火炎を打ち放つ。
「……こんな森があったのですね」
全く、未知の多い世界なこと。
暗い森にあふれる白銀浄化の光が幽世蝶の羽を照らし、こちらへこちらへと燐粉の瞬きが楓椛を誘うままに、彼女は魍魎の森を駆け抜けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
何とも変わった植物ですねぇ。
まず『ジャージ』等の『汚れても良い服』と『鉈』を【豊艶界】から取り出して着用、突破の際に使わない装備は入れ替えで【豊艶界】の中に入れ運搬の手間を減らしますぅ。
そして『FBS』を四肢に嵌め飛行、『幽世蝶』の高度等が不明ですから、数十cm程度の高さを飛行して追いますねぇ。
途中で絡んでくる『植物』は『FBS』の刃や『鉈』で払いつつ、[怪力]で引き千切って進みますぅ。
低空飛行状態故に『足場の影響』や『歩行によるスタミナの影響』等は防げますから、見失わない様『幽世蝶』に集中して追えるでしょう。
街に着きましたら、早く体を洗いたいですねぇ。
「変わった植物、ですね……」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、周囲に浮遊させた戦輪と手にもった鉈で襲いかかってきた触手蔦を切り裂いて、思わずにそう言葉を溢した。
いつもは和風メイド服に身を包んでいる彼女だが、今日はジャージ姿だ。粘液を分泌させる触手という事で汚れても問題ない服装を準備してきていたのだ。
「ん、っ……もう」
太ももを締め付ける蔦の残りを外し、両胸の付け根を縛るように巻き付いた蔦に手を掛ける。
体のラインが出にくいジャージとはいえ、袋の口を縛るように巻き付かれたら、すこしコンプレックスを感じている発育の良い体を過剰に強調されているようで、仕事中だと言うのに恥ずかしさが込み上げてくる。
「……、あ、追わないと」
るこるは、巻き付かれた蔦を除去して、慌てて飛んでいってしまう蝶を追いかける。
四肢の首部分に、ビーム刃を持つ戦輪を嵌めて浮遊能力を展開する彼女は、地上数十cmを低空飛行していた。足場の悪さやスタミナ消費は軽減されている。
その他の荷物も胸に触れたものを収納する『豊艶界』に仕舞い込んでいるから、身軽な状態だ。
「う……」
とはいえ、少し精神的な疲れは否めなかった。
潤沢と塗りたくられた粘液のせいでジャージが体に張り付いて冷たい。余裕のある服装だったのに、大きなシワと一緒に体つきが露になってしまう状況なのだから仕方がない。
張り付いた服を引っ張って浮かせても、動けばすぐにまた張り付いて来る。周りに誰もいなくてよかったと不幸中の幸いを思いながらも、小さく溜め息をつくのを止められなかった。
「街に着きましたら、早く体を洗いたいですねぇ」
幽世蝶が早く目的地に導いてくれる事を切に願いながら、るこるはその羽の瞬きを追い続けていく。
大成功
🔵🔵🔵
紅葉・智華
【妹(f12932)に拉致された】
◎
方針:WIZ
服装:ジャージ(黒)
口調:素
華織にゴリ押しされて来てしまった。とりあえず、汚れても大丈夫な格好に電脳魔術で着替えつつ、【選択UC】(盾受け,カウンター)を自分の周囲に球状に展開。壁に当たった触手を電流(属性攻撃)で焼き斬る。
「すぐに終わらせて、とっとと帰るからね、華織。いいね!?」
蝶を目視するのは私の役割。自分のUCなら自動迎撃だから負担も少ない。――とはいえ、触手につかまらなくても粘液がかかるから不快感は拭えない。
正直、嫌な予感がする。嫌な予感がするけど――オブリビオンは屠るべきだし、虎穴に入らずんば虎子を得ず、の精神で行こうそうしよう。
紅葉・華織
【お姉ちゃん(f07893)と】
◎
方針:WIZ
服装:ジャージ(赤)
温泉の二文字にピンと来て、お姉ちゃんの分のジャージも引っ掴んでお姉ちゃんと一緒にカクリヨファンタズムにエントリー!
お姉ちゃんの電脳魔術で私もジャージに着替えさせてもらいつつ、手裏剣を用意。妖手裏剣【炎蛇】と聖手裏剣【驟雨】を【投擲】して【炎蛇】で焼き斬り(属性攻撃)つつ、【驟雨】の水飛沫で粘液をできる限り洗い流す。
触手の動きを観察していけば、より正確に屠れる筈(選択UC)。――でも。
「やっぱりべとべとだよぉ……。うん、気持ち悪いよぉ……だから、温泉入ろうネ!(本題)」
お姉ちゃんと温泉お姉ちゃんと温泉……。(欲望に忠実)
「……来てしまった」
なんかうごうごと、何かを引きずるような音が蠢く森を歩いて、黒いジャージを着た紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)は、淡い光を発する蝶を追いながら渋い顔を浮かべていた。
「ふ、ふー」
隣の妹、紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)は相反するように上機嫌だ。
汚れてもいいようにと、智華の電脳魔術で色違いの赤いジャージに着替えさせてもらった華織は、少し落ち着く少なく、手の中の手裏剣を手慰みにしている。
智華はその様子を見ながら、どうしても拭えない嫌な予感を無視できずにいた。というのも、やけに前のめりな華織にゴリ押しされ、断る口実を探している間に参加を確定されてしまった経緯もあるからか。
「すぐに終わらせて、とっとと帰るからね、華織。いいね!?」
「うん! 早く行こうね、お姉ちゃん!」
(ああ、不安だ……)
元気のいい返事に、智華は長年の勘が怪しいぞ、と告げるその瞬間。
「……ッ」
森が蠢いた。
粘液にまみれた蔦触手が二人目掛けて襲い掛かってきたのだ!
まるで無数の指を持つ掌が包み込むように、二人を捉えんと球状に絡まった、その途端。ズバンッ!! とさながらにその蔦の中で爆発が起こったように触手が弾け飛んだ。
智華の周囲に展開していた電脳魔術による自動迎撃障壁。それが不可視の壁に触れた触手に強烈な高圧電流を放ったのだ。焼け焦げた匂いが充満する。
「来たね」
「うん! お姉ちゃんは私が守るからね!」
「え、……うん」
電脳魔術で守ってるんだけど、という言葉を姉としての矜持で飲みこんだ智華の隣で、華織は弄んでいた手裏剣を鋭く投擲した。
突如と、刃がそれぞれに火炎と飛沫を纏い散らして、空を駆ける。智華の結界に迎撃された仲間を認知していないのか、ただそこまでの知性はないだけか。再度二人に襲い掛かろうとしていた触手が、妖手裏剣、炎蛇の火炎に焼き切られ、舞う粘液が聖手裏剣、驟雨によって散り落とされていく。
さながら紅葉と雨粒が舞い、時折雷電が走る。そんな嵐にも似た斬撃を周囲に絶えず舞わせながら、二人は蝶を追っていく。
「うん、触手の動きにも慣れてきたけど……」
華織は、徐々に智華の電脳魔術に触れさせる事無く触手を迎撃する事も、片手間にできるほどにその動きを習熟しながらも。
「やっぱりべとべとだよぉ……。うん、気持ち悪いよぉ……」
舞い散る粘液の全てを洗い流すことは敵わないでいた。毒性もなく、伐採した後の触手からこぼれたものだからか、智華の電脳魔術もすり抜けるそれに、二人はそのジャージをひどく汚している。
しみ込んできた粘液に、辟易した声を上げながら、しかし。
「だからお姉ちゃん、一緒に温泉入ろうネ!」
(……うん、虎穴に入らずんば虎子を得ず)
オブリビオンは屠るべきであるし、と。
どこか嬉し気に言う華織に、智華は嫌な予感を更に深めながら、蝶の後を追っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『おいでませ、あやかし温泉宿へ!』
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POW : 妖怪達と温泉卓球バトル!
SPD : 部屋で秘伝の妖怪マッサージを受けてリフレッシュ!
WIZ : 温泉でのんびり過ごす(謎の温泉たまごもあるよ!)
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
受付の男性は、卵を思わせるようなふくよかな体で、カウンターの中でだらけていた。
「えー……、お客さんですか?」
「ああ、えっと、じゃあ、まあ、ごゆっくりどうぞー」
「え? 支払いとか、別に……なんかそういう気分じゃないっていうか」
「なんか、今日だけでお腹周りがきついっていうか……太ってきちゃってるんですけど、まあ、別にいいかなって」
「お料理とかは、厨房が惰性で作ったのとか……、惰性でマッサージしてたり、掃除してたり……、まあ、ぐだぐだしてますんで、営業はできてますけど」
「え? 世界が崩壊? へえ……、まあ、それもいいんじゃないですかね」
「えー、避難しろって、面倒くさいですよ……、他の人も動かないんじゃないすかね、なんか、こう……」
「自堕落な理由があれば、まあ……そっちに行くでしょうけど」
「え? あー……え? 美味しいご飯があるとか噂するとか……まあ、だらだらできるっていえば行くんじゃないですかね?」
「いや、まあ、知りませんけど……」
◇◇◇
第二章、温泉宿から他のお客さんを引き剥がしつつ、温泉宿をほどほどに楽しんでください。
オブリビオンは、旅館をうろうろしてますが、この章では戦闘にはなりません。プレイング次第で登場したりしなかったりします。
ただ、温泉旅館を楽しみすぎると、自堕落ゆえの肥満化が進行するので気を付けてください。
プレイングおまちしています!
中小路・楓椛
アドリブ連携歓迎
WIZ
危難です、そして避難です。
面倒で動かないのは大変宜しくありません。
とにかく皆を外に引っ張り出す切っ掛けを作り出します。
ダゴン焼きの無料試食会を開催して興味を引いてみましょう。
持ち込んだサーキュレーターで建物内部へネギとソースの焼ける匂いをお届けします。
温泉に誰か入っているのなら、そちらにも声掛ける必要があるじゃないですか?
……ところでですね?たとえ危難が迫っているとはいえど温泉と名物料理に心惹かれない狐が居るでしょうか?いや居ません(反語)
獣の毛皮の長所にですね?多少肥えても外観が激変したように…見えないんですよ、いいですね?わかりましたか?
(その手には名物温泉卵が)
「全く、面倒を理由に命の危険にまで動かないなんて……大変宜しくありません」
と、中小路・楓椛(流しのダゴン焼き屋台牽き狐・f29038)は、声を掛けてみた所誰一人その場を動こうとしなかった客や従業員へと憤慨しながら、彼らを動かすための作戦を敢行していた。
それは――。
「いい感じに焼けてきましたね……」
じゅーじゅーと香ばしい香りと共に耳に心地いい、熱した鉄板に水分が弾ける音。
焦げるネギとソースの、殺人的とも言える芳しい香りが立ち上るのをサーキュレーターの風で旅館の方へと流し込む。
そう何を隠そう、誰もが知っているだろう軽食の代表格、ダゴン焼きだ。
いや、そこまでかは分からないが。ともかく、この香り。空腹であれば如何なる人間だろうと、空腹でなくとも僅かな胃の隙間を意識してしまうだろう香り。
そして極めつけに。
「ダゴン焼きの無料試食会ですよーっ、今だけ! 今を逃しては食べられませんよー!」
『期間限定』『無料』この言葉に食いつかぬ自堕落はいなかった。
◇◇◇
「……自堕落に料理、……仕事とは別なんでしょうか……? 難しいですね……」
という訳で、殺到してきた客を何故か料理をする亡者のようになっている料理長だという従業員に任せて、楓椛は宿の中へと呼び込みに来ていた。
その足が向かうのは。
「……温泉にいらっしゃる方も、お連れしなくてはいけませんから……、ええ……仕方ないですよね、従業員でもないのに衣服を着たまま入るのも不躾でしょうか、ええ、不躾になってしまいますよね、ええ、ええ……」
命の、いや世界の危機だぞ、という内心の声に反論しながら、いそいそと脱衣所から暖かな湯気が上る湯殿へと踏み込んだ楓椛の手には、なんと、名物の温泉卵が!
一体、どんな言い訳があるというのか。
果たして。残る切り札は。
「温泉と名物料理に心惹かれない狐が居るでしょうか……いいえ、狐足るもの、狐の矜持を以て満喫するべきです!」
楓椛は狐柄のジョーカーを切ったのだった。
もう、誰も彼女を止められない。
◇◇◇
数分後。
「い、いえ……冬毛……ッ、これは冬毛ですから!」
楓椛が鏡に写る自分の、もっふりとふくらんだ姿に、焦り焦り言い訳する姿があったとか、無かったとか。
真実を知るのは彼女と、自堕落な姿を目敏く見つけたオブリビオンと化した自堕落妖怪だけであった。
大成功
🔵🔵🔵
紅葉・智華
【妹(f12932)と】
◎
方針:WIZ
服装:ジャージ(黒)
口調:素
【選択UC】(第六感)でこの後どうなるかは見えている。急いで避難させて、自分達も離れないと。
受付の言葉を信じるなら「外ならだらだらできる」と言えば大丈夫そうだから、華織と二人で走り回ればそんなに時間はかからない。
「よし、華織、早く出よ――!?」
待って華織。私の方が(サイボーグだし)体重あるよね? さっきも思ったけどなんで軽々と引っ――ちょ、待っ――
(暫く後、温泉にて)
「――私が確りしなくちゃ……!」
変わり果てた身体と、華織を見て、ギリギリ保てた理性で私は標的を探す。……華織がいなかったら多分、自分もより堕落してそうと思いながら。
紅葉・華織
【お姉ちゃん(f07893)と】
◎
方針:WIZ
服装:ジャージ(赤)
「えへ、えへへ……!」
温泉だ。間違いなく温泉だ。客を避難させるという事は、お姉ちゃんと二人きりの空間を作れるという事なのではないか。そうだ、そうに違いない。
『おーい、持ち主ー、いつもの直感はー?(秘刀・月華)』
なんか月華から声が聞こえる気がするケド、まあ空耳でしょ空耳。さて、「外でだらだらできるよ!」と言いふらしながら走って、そのままお姉ちゃんを脱がして温泉にダイブ!
「あ゛ぁ゛~……き゛も゛ち゛い゛ぃ゛~……」
『だめだこりゃ(月華)』
(だから何も気づかない。いつもの直感や抵抗力は姉への愛が深すぎるが故に鈍ってしまった)
ここまで来れば、未来を予測するのも難しくはない。満ちた空気に混ざるユーベルコードの残滓が克明に示している。
この宿に長く居着き、えもいわれぬ怠惰の快感に身を委ねたその末路。紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)はそれを自らも辿るかもしれないという恐れを少しの焦りに滲ませながら宿の客達を誘導していた。
「これから、宿の中だとダラダラ出来なくなる、でも外ならダラダラできるから」
と、促せば、じいと智華を見つめた後、とても、とても面倒くさそうに、智華が確固として動かなさそうだと悟ったのか、徐に腰を上げて外へと向かっていった。
「――」
助けに来ているというのに、なんだか邪険にされたような気がして、腑に落ちない所はあったけれども、妹の紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)と分担して廻れば、他の猟兵とも合わせて避難はすぐに済んでいた。
そして、華織と合流しようと待ち合わせ場所へと向かった智華が見たものは。
「えへ、えへへ……」
怪しげな笑みを浮かべる妹の姿だった。
◇◇◇
「え、っと……華織」
「あっ、お姉ちゃん!」
姉に声を掛けられれば、まるでさっき浮かべた姿が幻だったように凛々しい眼差しを華織は返す。
「お姉ちゃん、もう避難終わったんだね」
「よし、華織、早く出よ――!?」
言葉を聞くよりも早く、華織は智華の腕を掴み、駆け出していた!
「待って! 私の方が体重あるよね?」
智華は外見はただの若い女性だが、その中身はサイボーグだ。華織が軽々と引っ張っていけるような体重差では無いはずなのに、思えば依頼を受けると行った時も引き摺られていた。
そんな力が何処から沸いてでるのか。
「ごめん、お姉ちゃん! 実は、温泉の避難が出来てなくてね!?」
(お姉ちゃんと温泉。お姉ちゃんと二人じめ温泉……お姉ちゃんと二人っきり温泉!!)
煩悩であった。
「華織、ちょ、待っ――ッ」
遂に足も浮くような勢いで智華を引っ張る華織は、脱衣所に駆け込むと。
「外でだらだらできるよ!!」
叫び、あまりの形相に客が全て慌てて外へと駆け出し、誰もいない湯殿を見て。
(温泉! 二人きり!!)
『……おーい、持ち主ー、いつもの直感はー、て、ぅわぁ!?』
スパアン!
主の痴態に堪らず、脳内へと言葉を投げ掛けてきた秘刀、月華を瞬時に脱いだ衣服に丸めこむと。
「え、――ッ」
ズバアン!
瞬く間に智華の服も剥いでいた。もはや何かしらの新な技を身に付けたとしか思えぬ神速。暴走した妹を止められるものはなく。
『だめだこりゃ』
全てを諦めたような幻聴……いや、刀の嘆きが空しく無視された。
◇◇◇
「あ゛ぁ゛~……き゛も゛ち゛い゛ぃ゛~……」
ぶくぶくと腹回りから胸や手足、顔まで、何故か健康的な艶肌を見せながらも膨らんで、至福の笑みを浮かべる妹。
いや、自分一人なら、もしかしたら私がこうなっていたのかもしれない。慌てる時、自分以上に慌てるものがいたら落ち着く、とはよく言うが。
「――私が確りしなくちゃ……!」
変わり果てた妹を見て、智華はそう気を引き締めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
大変な事態では有りますが、粘液を流さないと戦闘もし辛いですからねぇ。
まずは温泉ですぅ。
一先ず【饒僕】を使用し『女神の僕』を召喚、一部に『鞄』の中の『[大食い]用食料』を『避難先』に運ばせ、残りの子達は『住民の多い場所』を[情報収集]、そこで『避難先に美味しい食べ物が有る』と囁かせ誘導しますねぇ。
後は他の場所でも同様に繰返しつつ『元凶の骸魂』の捜索を指示しますぅ。
ただ、私自身は温泉を非常に楽しんでいる上、『僕』達の摂取カロリーは私に回るのですよねぇ。
今回の『状況』を考えますと、殆どの影響が私に出るでしょうが、その分『僕』達の行動には支障が出ませんし、まあ?
誰もいない温泉。
「ん、……ぁふ」
桶に掬ったお湯が、豊かな隆丘の輪郭をなぞりながら滴り落ちていく。濡れた肌を手でなぞれば、全身に粘り付いていた青臭い粘液が洗い流されていく。ふくよかな体の隙間に入り込んだ粘液も丹念に押し流すその心地よさに、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、そんな声を発していた。
思わず、漏れた声に周りを見渡す。
誰かが同じ空間にいれば、恥ずかしさにそそくさと離れていっていただろうけども、幸い今はこの湯には一人。快感に上ずる声を、こくりと飲み込んで、粘液が洗い流せたかと全身を改める。
「……うん、大丈夫みたい、……ですね」
るこるは、その放漫な肉体を白く揺らぐ湯気に包まれながら、広々とした湯船へとその足先をゆっくりと沈めていく。
じんわりと広がる温度に、全身が柔らかい痺れと共に弛緩するのを感じながら、腰までを浸けていく。
「は、ふう……」
息を吐く。
まるで何もせず、ただ温泉を満喫しているだけのように見えるが、その実、半分ほどはそうではない。
おどおどとした態度では、正面から避難を誘導しても聞いてくれない可能性が高かった。ので、召喚した小動物の姿をした女神の僕に、大量の食料を運んでもらい、『避難先に美味しい食べ物が有る』という情報を囁いて、拡散させてもらっているのだ。
それを繰り返す傍ら、元凶の骸魂の情報収集も行ってもらっている。
ということはつまり、やっぱりるこる自身は、この温泉を純粋に楽しんでいるだけだということで。
「……ぁう」
ただでさえ豊かな体が、膨らんでお腹周りまでもが太くなっていくという状況に、コンプレックスを加速させていく結果になっていた。
「……うう、また大きく……」
それでも、召喚を解けば女神の僕は消えてしまうわけで、出来るだけ体をリラックスさせるのが最善な状況に身をおき続けるしかないのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『寝惚堕ねこデラックス』
|
POW : ぱーふぇくとぼでぃ
自身の肉体を【物理攻撃を無効化するわがままボディ】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD : たたかうのめんどー
【自身を含む対象の脂肪と体重を増やすオーラ】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
WIZ : みんないっしょになぁ〜れ
【自身を含む対象の脂肪と体重を増やすオーラ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「雨音・玲」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ふふーん、みんな自堕落になってんじゃーん」
思い通りに事が進んだ、後は自分もダラダラと過ごすだけ……。
そう明るい展望と、働いた疲労で、眠気に身を任せようとしたその時。
「……んー?」
そんな極楽の形成を邪魔する存在がいることに気付いた。温泉旅館の温泉に入っているものの、堕落しきらずにこちらを探っている。
「むむむ、これって猟兵ってやつ? なんで邪魔すんのさあ!」
布団を敷いた部屋からのそりと這い出た彼女は、邪魔者を排除するべく動き出――さなかった。
「てか、この部屋から見えんじゃん、草」
じゃあいつか気付くでしょ、と温泉に入っている猟兵達を見下ろして、オブリビオンは彼女たちが頭上から注ぐ視線に気付くのをただ何もせず待っているのだった。
◇◇◇
第三章です。
寝惚堕ねこデラックスとの戦いです。
部屋に乗り込むなり、温泉から攻撃をぶちこむなりしてください。
プレイングお待ちしています!
中小路・楓椛
アドリブ連携歓迎
WIZ
――冬毛なのです。異論はありませんね?(真顔)
では諸問題の元凶を可及的速やかに排除しましょう。
先程から温泉を注視している実にそれっぽいオーラを放っている方がそうなのでしょう。違っていたら後で謝るとして…今は早急に拘束します。
今の私は身軽さと多少縁遠くなった冬毛の狐ゆえに動かずに対処します。
装備【ばーざい】全技能使用、【神罰】【呪詛】併用でUC【アトラナート】起動、銀の蜘蛛の神威を発現。
目標の部屋に多数の蜘蛛を派遣し数の暴力の霊糸で縛り上げます。
抵抗すれば【谺(魔笛/鼓)】の【スナイパー】【誘導弾】で対人衝撃無力化弾(ソニックインパクター)を叩き込みノックアウトです。
ふう。
中小路・楓椛(流しのダゴン焼き屋台牽き狐・f29038)は、自分を落ち着かせるように息を吐いた。
決していつもより動きにくいからではなく、オブリビオンのものだろう気配を感じ取ったからだ。
決していつもより動きにくいからではなく。
「……違っていたら……、あとで謝ります」
今はとにかく、可及的速やかに元凶の拘束、排除に動かねばならない。世界の危機なのだから。
とはいえ冬毛になったばかりで少し、体が動かしにくいのも確か。
確実を取るには、むしろ楓椛自身は動かない方がいいだろうと判断した。その代わり、焜鉾に全霊を込める。
もとは薙刀だったそれを能力行使の補助として、己の能力を増幅させる。織りなすは多元霊子複合拘束術式。
焜鉾『ばーざい』から銀の光があふれ、無数の蜘蛛の形をとってオブリビオンの気配へと殺到していく。
そして。
◇◇◇
「……は? え、ちょ、ま……っきもいきもいッ!!」
無数の蜘蛛が這い上がって自分に迫っている光景に、驚愕し窓を離れた寝惚堕ねこデラックスだが、しかしその動きは緩慢に過ぎる。
銀の蜘蛛、その素早い動きに成すすべもなく取り囲まれ、銀の糸が容赦なく巻きつけられた。
「いや、マジないってこれ……ッ!!」
寝惚堕ねこデラックスは、それから逃れようと四肢を振り回す。と同時にオーラがあふさせながら暴れる動きに、神威纏う糸が千切られていく。
いや、蜘蛛がそのオーラの影響で動きを鈍らせているのか。
「――ッ、そこまで自由を縛られたくないという事ですか……、ならッ」
それを悟った楓椛は、魔笛と鼓。二丁拳銃を一丁のバスターライフルへと組み上げ、銀糸の霊的側面から詳細に捕捉した寝惚堕ねこデラックスへと、引き金を引いた。
弾かれ駆ける対人衝撃無力化弾。音圧を固め、衝撃波として放散させる音の弾丸が、自らが起こした震動を渡り、風鳴りと共に寝惚堕ねこデラックスに直撃した。
――ッ!!
強烈な衝撃が室内に吹き荒れて、その重い巨体も溜まらず吹き飛んだ。
「ちょっと、ガチで……許さないかんな……ッ」
窓を枠ごと破壊して屋根へと転がり出た寝惚堕ねこデラックスはだらけ場所を追い出されたことに顔を歪めていた。それに対し、楓椛は手応えと共に糸をすべて千切られたことに気付いて息を吐いて。
「……仕留めきれませんでしたか、元に戻ってもいません……し、……」
蜘蛛越しにオーラの影響を受けたのか、また少しふと……毛並みが膨らんだ姿に絶句するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・☆◎
■行動
温泉でのんびりしておりましたら、『僕』さん達が元凶を見つけてくれましたが。
此処まで色々と『膨らんで』しまうと服が着られないでしょうし、折角見える位置にいますので、このまま仕掛けましょう。
【乳焔海】を使用し『波動』を広範囲に放射、『乳白色の炎』で温泉の中から攻撃しますねぇ。
同時に『FRS』を展開、『FCS』で弾頭を『発信機』に変更し発射、猫さんが視界外に逃げても場所が判るようにし、後は弾頭を戻して追撃しますぅ。
『攻撃範囲』が広い分、位置さえ判れば狙えはしますので。
まあ、私自身は『殆ど動かずに放射と操作をしている』状態な分、まだまだ影響が出そうですが、[恥ずかしさ耐性]で何とか?
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、ただでさえ大きいそれが更に膨れ上がってしまっているバストを抱え……ようとして腕からこぼれるのをしたから持ち上げて、湯から出るのをあきらめる。
このまま上がったとして、着られる服がない以上、裸で歩き回らなくちゃいけない。避難をしてもらって猟兵以外いないとは知っていても、やはり気が逸れてしまうだろうし。
「……それに、せっかく見える位置にいますので」
屋根を転がる寝惚堕ねこデラックスの姿に、手を差し伸べる。先手を取った猟兵の元へと向かおうとしたのか。しかし、そんな初動も遅い。容易く、彼女の動きよりも早く放たれた波動が放射され、乳白色の炎が彼女とその周囲を包み込んだ。
「っ……ぁあぐ!?」
寝惚堕ねこデラックスからすれば突如として周囲に火炎絨毯が敷かれたような変化。空白にとぶ思考に思わず炎を振り払おうとする寝惚堕ねこデラックスへと、るこるは更に追撃を打ち放つ。
空へと放たれて、放射線を描いて火炎の中、寝惚堕ねこデラックスへと着弾したそれは、攻撃を主にしたものではない。特殊な波動を放つ発信機だ。
「なんだってのさっ……!」
寝惚堕ねこデラックスは、漸くに宿の敷地の外へとその身を飛び下ろした。その体躯でしかし、本気を出せば素早い動きが出来たのだろう。しなやかな動作で着地の衝撃を和らげた寝惚堕ねこデラックスはそのまま逃避しようとした、その時。
上空から、今度こそ攻撃を主にした炸裂弾が彼女目掛けて突っ込んできていた。視界一杯に広がるその弾丸に、直後、眩く燃える閃光が寝惚堕ねこデラックスを焼く。
「あう……また、大きくなってる……」
発信機を付けたまま逃げる寝惚堕ねこデラックスへとFRSの連続使用で追い詰めていくるこるは、結局温泉でゆっくりしているものだからどんどんと増えて、堕落した肉塊ともいえるような姿になってしまいそうな成長を、愁うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
紅葉・智華
【妹(f12932)と】
◎
服装:ジャージ(黒)
口調:素
とりあえず、電脳魔術でジャージに着替える(早業)。華織よりはマシとはいえ、少し影響出てるから普段の格好はちょっと……うん。
とにかく、敵を視認したら【目立たない】場所があればそこから『唯射』を構えて【選択UC】で狙撃(スナイパー,援護射撃,鎧無視攻撃)する。
「――やっぱりそうくるか……!」
とはいえ、狙撃ポイントを安易に移動できない以上、相手からもそのうち狙われる。動けなくなる事も想定してるけど……!
(戦闘終了後)※自動で体型が治らない場合
まあ、うん。これ位ならすぐに燃焼できるかな。(サイボーグ特有の超速脂肪燃焼)
華織は……自業自得かな……。
紅葉・華織
【お姉ちゃん(f07893)と】
◎
服装:ジャージ(赤)
温泉が気持ち良いのに、お姉ちゃんがどっか行ってしまった。気づけば、湯船からは引き摺り出されて、ジャージを着せられて……なんか、きつ……!? ちょ、なんで!? いや、それよりも!
「よくもお姉ちゃんに手を出したな!? そこの太っちょ!!!」(自身の事を棚に上げる)
【選択UC】で一気に接敵してぶった斬る!
身体が重たくとも、技を忘れた訳じゃない。というより、お姉ちゃんの為なら限界だって超えて見せる……!
(戦闘終了後)※自動で体型が治らない場合
「……で、これ戻るの……?」
お姉ちゃんはともかく、私も基礎代謝はいいけど、人の範囲内だし……。どうしよう。
走った電網が形作るポリゴンに実態が伴えば、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)の体は、先程紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)に脱ぎ去られたジャージを纏っていた。
改造したライフルの重みの慣性を利用した慣れた体捌きで、柵に脚をかけて屋根に上って智華は、コンスタントに爆発を叩き込まれて逃げて、こちらの宿へと走りくる寝惚堕ねこデラックスへとその銃口を向ける。そのスタンバイに1秒とかからないのは、流石というべきだろうか。
その時。
「あれ!? お姉ちゃん!?」
「……、はあ」
狙撃に注いだ集中が霧散する。
湯船から引きずり出して、同様に無理矢理ジャージを着せた華織が叫んでいた。
「え、ジャージなんか、きつ……!? じゃなくて、あ、いた! あれ、お姉ちゃん少し太った?」
どうやら屋根に陣取った姉に気付いてくれたようだ。ここにきてから色々鈍くなってるし、私の妹は大丈夫か、と思う思考を脇に寄せて、再度スコープの中で走る寝惚堕ねこデラックスに、その引き金を引く。
ガッ! と重い衝撃が智華の全身をたたき、吐き出された弾丸が空を駆ける。距離を食い破り、音速を超える弾丸は、寝惚堕ねこデラックスの足に過たず着弾した。
普通に人間なら、骨をも砕き、脚を両断するほどの弾丸だが、それはオブリビオンと化した妖怪の足を貫くにとどまる。だが、走る脚を射抜かれた寝惚堕ねこデラックスは、その全身をしたたかに地面に打ち据える。
「……ッ」
命中を確認して、次弾装填――、しようとした智華は、スコープの中で目標と目があった。一撃。それだけで智華の居場所を見抜いたのか。
「こ、の――ッ」
立ち上がろうとする寝惚堕ねこデラックスが、咆哮する。と同時に、放たれたオーラに智華は自らの体が重く屋根に沈むような感覚に襲われた。
膨らむ体に潰された内臓機構が軋みあげる。視界がぶれる、次射が放てない。
「――やっぱりそうくるか……!」
暴発を防ぐために引き金から指を引く。いい加減目を覚ましてくれるだろう。
そう、思ったその瞬間に、寝惚堕ねこデラックスの体が、瞬時に距離を詰めた華織の刃に一閃されていた。
◇◇◇
あれ、お姉ちゃん太った?
ていうか、なんで銃構えてるんだろう。
そんな腑抜けきった考えは、直後放たれた銃声に吹き飛ばされた。
(オブリビオン!? いつの間に……っ)
姉にその心の声を聴かれていたら、いつの間にも何もと冷ややかな視線を向けられそうな思考だったが幸い、智華は着弾観測に集中していた。
華織は、ジャージと一緒に転送された秘刀、月華を掴む、その瞬間、姉の体が瓦屋根にめり込んだ。ぐごしゃ、と潰れるような音と共に……、一回りその胴体が太くなる。
サイボーグにすら、強制的に脂肪を与えるその力には称賛するが……。
「……っ、よくもお姉ちゃんに手を出したな!? そこの太っちょ!!」
叫ぶ。
オーラの放射、その衝撃に吹き飛んだ壁の向こうにいた寝惚堕ねこデラックスへと、今の自分の姿をすっかり棚に上げた罵声と共に、動かしにくい体を無理矢理に動かす。
(身体が重たくとも、技を忘れた訳じゃない――、お姉ちゃんの為なら)
限界だって超えて見せる。
本来、その体重で剣を振るうほどの動きに耐えれるはずもない華織の体が、世界が距離というものを忘却したかのように疾駆する。
一歩。
ただそれだけで、華織の姿は寝惚堕ねこデラックスの懐へと滑り込んで――。
一閃。
寝惚堕ねこデラックスを屠る。
◇◇◇
「……で、これ戻るの……?」
残心を解いて、ようやく自分の現状を顧みて、絶望する。
姉の智華は脂肪の燃焼速度とかそこらへんの常識は当てはまらないが、華織はあくまで人の範疇。
一体どれ程の期間、ダイエットをしなければいけないのか。もしかすると、いや、もしかしなくてもこれは数年スパンの計画が必要なのでは、と、絶望せんとした手で顔を覆おうとした、まさにその時。
「あれ……、戻ってる……?」
見慣れた細い指を付けた手が眼前に広がっていて。
「はあ~……」
安堵に、華織は膝をついたのだった。
◇◇◇
その瞬間、他の猟兵や妖怪たちも元に戻り、いつもの姿に安堵するとともに、世界が崩壊を免れたことを知るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵